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関連審決 無効2004-80205
関連ワード 技術的思想 /  方法の発明 /  頒布された刊行物 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  一致点の認定 /  相違点の認定 /  周知技術 /  技術分野の関連性 /  技術常識 /  優先権 /  技術的意義 /  置き換え /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  交換 /  設定登録 /  発明の範囲 /  請求の範囲 /  減縮 /  変更 / 
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事件 平成 17年 (行ケ) 10700号 審決取消請求事件
原告株 式会社荏原製作所
訴訟代理人弁護士大野聖二
同弁理士渡邉勇
同 伊藤茂
被告株式会社神鋼環境ソリューション
訴訟代理人弁理士藤本昇
同 中谷寛昭
同 小山雄一
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2007/04/25
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が無効2004-80205号事件について平成17年8月18日にした審決中「特許第3153091号の請求項1ないし20に係る発明についての特許を無効とする。」との部分を取り消す。
第2当事者間に争いのない事実1特許庁における手続の経緯(1)原告は,発明の名称を「廃棄物の処理方法及びガス化及び熔融燃焼装置」とする特許第3153091号(平成7年2月9日出願〔特願平7-22000号〕。優先権主張・平成6年3月10日,同年4月15日。平成13年1月26日設定登録。以下「本件特許」という。)の特許権者である。
(2)被告は,平成16年10月26日,原告を被請求人として,本件特許を無効にすることを求めて審判の請求をし,原告は,平成17年1月17日付け訂正請求書により特許請求の範囲の記載等の訂正(以下「本件訂正」という。)を請求した。
特許庁は,上記無効審判請求を無効2004-80205号事件として審理した上,平成17年8月18日,「訂正を認める。特許第3153091号の請求項1ないし20に係る発明についての特許を無効とする。」との審決をし,その謄本は,同月25日,原告に送達された。
2本件訂正後の明細書(甲44。以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された発明(以下,請求項1に記載された発明を「本件発明1」,請求項2に記載された発明を「本件発明2」などといい,これらを一括して「本件発明」という。)の要旨【請求項1】廃棄物を流動層炉にてガス化した後に,熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において,流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し,該廃棄物を該流動層炉に供給し,炉内を450℃〜650℃に維持し,該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし,該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とする廃棄物の処理方法。
【請求項2】前記流動層炉は,流動層温度が450℃〜650℃に維持されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】前記流動媒体の循環流は,流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され,流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環することを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され,前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成されることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】前記流動媒体の循環流は,質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給することにより形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項6】前記質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスは,ともに空気であることを特徴とする請求項4又は5記載の方法。
【請求項7】前記流動層炉へ供給される流動化ガスは,廃棄物の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下の空気量を含むことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】前記廃棄物に含まれる不燃物を流動層炉の炉底部より排出することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】前記流動媒体は砂であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】廃棄物をガス化する流動層炉と,該流動層炉内で生成されたガスとチャーを燃焼して灰分を熔融する熔融炉とを備えたガス化及び熔融燃焼装置において,前記流動層炉は流動化ガスを炉内に供給する流動化ガス供給手段を備え,該流動化ガス供給手段によって炉内に流動媒体の循環流を形成し,炉内を450℃〜650℃に維持して炉内に供給された廃棄物を該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし,前記熔融炉はガスとチャーを燃焼する燃焼室を備え,該燃焼室によって前記流動層炉より排出されたガスと該微粒子となったチャーを燃焼して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするガス化及び熔融燃焼装置。
【請求項11】前記流動層炉は,流動層温度が450℃〜650℃に維持されることを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項12】前記流動媒体の循環流は,流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され,流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環することを特徴とする請求項10又は11記載の装置。
【請求項13】前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段によって形成され,前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段によって形成されることを特徴とする請求項12記載の装置。
【請求項14】前記流動化ガス供給手段は,質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段と,質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段とからなることを特徴とする請求項10又は11記載の装置。
【請求項15】前記熔融炉の燃焼室は,ほぼ垂直方向の軸線を有する円筒形室からなり,該円筒形室の頂部に前記ガスとチャーを導入し,該円筒形室で該ガスとチャーを旋回させ,該円筒形室の下部には水平方向に対して傾斜して延びた室が連通され,前記熔融した灰分を該傾斜して延びた室の底部よりスラグとして排出することを特徴とする請求項10乃至14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】廃棄物を流動層炉にてガス化した後に,熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において,流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し,該廃棄物を該流動層炉に供給し,流動層温度を450℃〜650℃に維持し,該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし,該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とする廃棄物の処理方法。
【請求項17】前記流動媒体の循環流は,流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され,流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環することを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され,前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成されることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】廃棄物を流動層炉にてガス化した後に,熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において,流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し,該循環流は流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層が形成され,流動媒体が該移動層及び流動層を通って循環する循環流であり,該廃棄物を該流動層炉に供給し,流動層温度を450℃〜650℃に維持し,該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし,該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し,該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し,該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とする廃棄物の処理方法。
【請求項20】前記不燃物と流動媒体は,前記炉底部より下方へ取り出し,水平方向に定量排出した後,該不燃物と該流動媒体は分別されることを特徴とする請求項19記載の方法。
3審決の理由( )審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,本件発明1ないし9,16ない1し18は,特公昭62-35004号公報(甲7,以下「甲7公報」という。
なお,審決における「特開昭62-35004号公報」との記載は誤記と認める。)に記載された「固形廃棄物を流動層熱分解炉に供給し,該熱分解炉の流動層にてガス化した後,サイクロン燃焼炉にて灰分を溶融スラグ化する方法において,該流動層内の熱分解により生成されたガス並びにチャー及び灰分の微粒子を,サイクロン燃焼炉に供給し,サイクロン燃焼炉では灰分が捕捉され溶融スラグとなって排出口より排出される固形物の燃焼方法。」の発明(以下「甲7の発明1」という。)及び特開平6-307614号公報(甲14,以下「甲14公報」という。)に記載された発明(以下「甲14発明」という。)並びに周知の技術に基づいて,本件発明10ないし14は,甲7公報に記載された「供給された固形廃棄物をガス化する流動層熱分解炉と,該流動層内の熱分解により生成された可燃性ガス及びチャー並びに部分燃焼により発成した灰分及び燃焼排ガスを導入して該可燃性ガスと該チャーを燃焼し,高負荷燃焼により灰分を熔融するサイクロン燃焼炉とを備えた固形物の燃焼装置において,前記流動層熱分解炉は流動層の流動化空気供給ブロワを備え,前記サイクロン燃焼炉は可燃性ガスとチャーを燃焼する燃焼室を備え,該燃焼室によって前記流動層熱分解炉より排出された可燃性ガスと微粒子となったチャーを燃焼して灰分を捕捉し,熔融スラグ化として排出口より排出される固形物の燃焼装置。」の発明(以下「甲7の発明2」という。),甲14発明及び周知の技術に基づいて,本件発明15は,甲7の発明2,甲14発明,特開平3-241214号公報(甲19,以下「甲19公報」という。)に記載された発明及び周知の技術に基づいて,本件発明19及び20は,甲7の発明1,平成2年8月27日発行燃料協会誌69巻11号「無破砕旋回流型流動燃焼炉とその応用技術」(甲11,以下「甲11文献」という。)に記載された発明(以下「甲11発明」という。)及び周知の技術に基づいて,それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるとして,本件発明1ないし20に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,同法123条1項2号に該当するので,無効とすべきものであるとした。
なお,特許法29条の適用については,優先権の主張を認めず,現実の出願日である平成7年2月9日(以下「本件出願日」という。)を基準とするとした。
( )審決が認定した,本件発明1と甲7の発明1の一致点及び相違点2ア一致点廃棄物を流動層炉にてガス化した後に,熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において,該廃棄物を該流動層炉に供給し,該流動層炉より排出されたガスと微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化する廃棄物の処理方法。
イ相違点(ア)相違点A本件発明1は「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し」たものであるのに対し,甲7(注,甲7公報)には,このような構成について明示の記載がない点。
(イ)相違点B本件発明1は「(流動層)炉内を450℃〜650℃に維持し」たものであるのに対し,甲7には,このような構成について明示の記載がない点。
(ウ)相違点C本件発明1は(該廃棄物を)「該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし」たものであるのに対し,甲7には,このような構成について明示の記載がない点。
(エ)相違点D灰分を熔融してスラグ化することについて,本件発明1は「1300℃以上にて」するものであるのに対し,甲7には,温度については何ら記載がない点。
( )審決が認定した,本件発明10と甲7の発明2の一致点及び相違点3ア一致点廃棄物をガス化する流動層炉と,該流動層炉内で生成されたガスとチャーを燃焼して灰分を熔融する熔融炉とを備えたガス化及び熔融燃焼装置において,前記流動層炉は流動化ガスを炉内に供給する流動化ガス供給手段を備え,前記熔融炉はガスとチャーを燃焼する燃焼室を備え,該燃焼室によって前記流動層炉より排出されたガスと微粒子となったチャーを燃焼して灰分を熔融してスラグ化するガス化及び熔融燃焼装置。
イ相違点(ア)相違点E本件発明10は「該流動化ガス供給手段によって炉内に流動媒体の循環流を形成し」たものであるのに対し,甲7には,このような構成について明示の記載がない点。
(イ)相違点F本件発明10は「(流動層)炉内を450℃〜650℃に維持し」たものであるのに対し,甲7には,このような構成について明示の記載がない点。
(ウ)相違点G本件発明10は「炉内に供給された廃棄物を該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし」たものであるのに対し,甲7には,このような構成について明示の記載がない点。
(エ)相違点H灰分を熔融してスラグ化することについて,本件発明10は「1300℃以上にて」するものであるのに対し,甲7には,温度については何ら記載がない点。
( )審決が認定した,本件発明19と甲7の発明1の一致点及び相違点4ア一致点廃棄物を流動層炉にてガス化した後に,熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において,該廃棄物を該流動層炉に供給し,該流動層炉より排出されたガスと微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化する廃棄物の処理方法。
イ相違点(ア)相違点I本件発明19は「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し」たものであるのに対し,甲7には,このような構成について明示の記載がない点。
(イ)相違点J本件発明19は「該循環流は流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層が形成され,流動媒体が該移動層及び流動層を通って循環する循環流であり」としたものであるのに対し,甲7には,このような構成について明示の記載がない点。
(ウ)相違点K本件発明19は「流動層温度を450℃〜650℃に維持し」としたものであるのに対し,甲7には,このような構成について明示の記載がない点。
(エ)相違点L本件発明19は「該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし」たものであるのに対し,甲7には,このような構成について明示の記載がない点。(注,審決の相違点Lの摘示〔審決謄本45頁第8段落〕は,「本件発明19は『該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし』と」というものであるが,「相違点Lは,本件発明1において前記認定した相違点Cと全く同じ構成のものである」〔同46頁第4段落〕との記載から,上記のものと認める。)(オ)相違点M本件発明19は「該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し,該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し」としたものであるのに対し,甲7には,このような構成について明示の記載がない点。
第3原告主張の審決取消事由審決は,甲7の発明1の認定を誤り(取消事由1),本件発明1と甲7の発明1の一致点の認定を誤り,相違点を看過し(取消事由2),相違点AないしCについての認定判断を誤り(取消事由3ないし5),本件発明1の奏する顕著な効果を看過し(取消事由6),本件発明2,6,7,10,11,16及び19についての進歩性の認定判断を誤り(取消事由7ないし13),本件発明1,10,11,16及び19を直接又は間接に引用する本件発明3ないし9,11ないし15,17,18及び20についての進歩性の認定判断を誤り(取消事由14),その結果,本件発明1ないし20は,当業者が容易に発明をすることができたものであるとの誤った結論を導いたものであり,違法であるから取り消されるべきである。
1取消事由1(甲7の発明1の認定の誤り)(1)審決は,甲7公報には,「流動層内の熱分解により生成された可燃性ガス並びにチャー及び灰分の微細粒子,すなわち微粒子を,サイクロン燃焼炉に供給すること」(審決謄本25頁第6段落)が記載されているとして,「固形廃棄物を流動層熱分解炉に供給し,該熱分解炉の流動層にてガス化した後,サイクロン燃焼炉にて灰分を溶融スラグ化する方法において,該流動層内の熱分解により生成されたガス並びにチャー及び灰分の微粒子を,サイクロン燃焼炉に供給し,サイクロン燃焼炉では灰分が捕捉され溶融スラグとなって排出口より排出される固形物の燃焼方法。」(同頁最終段落)との甲7の発明1が記載されていると認定したが,誤りである。
( )審決は,本件発明1を含む本件発明の技術的意義を正解しなかったために,2甲7の発明1の認定を誤ったものである。
甲7の発明1においては,流動層において熱分解過程が行われ,この熱分解過程が行われた結果生成したチャーが微細な粒子であるので,流動層炉内において,生成されたチャーを微粒子とする処理を行う必要がなく,そのための構成もない。また,特公平1-52654公報(甲38)に記載の発明においては,流動層で熱分解を行わせてガスとチャーを生成し,熱分解生成ガスを旋回溶融炉に導入して,高温燃焼を行わせて灰分を溶融スラグ化するに当たり,処理対象物や熱分解の条件によってはチャーが流動層炉内に滞留してしまうので,生成したチャーを流動層から溢流させて流動層炉外に抜き出して,別途,粉砕処理して溶融炉に供給していた。また,特開昭54-43902号公報(甲39)に記載の発明においても,流動層熱分解炉で熱分解により生成されたチャーを流動層炉外へ溢流させて粉砕処理していた。
本件発明は,上記のような従前の事情に着目し,本件明細書の段落【0057】等に記載されているように,流動媒体の循環流中で,熱分解(ガス化)を行ってガスとチャーを生成し,ガス化の結果生成したチャーを生成ガスから分離して,循環流中で微粒子とするといった処理をしたものである。
その結果,本件発明においては,チャーを流動層炉内にとどまらせずに,可燃ガスに同伴して溶融炉に供給することができ,炉内に供給される廃棄物の質や量が変動しても低温域で廃棄物をガス化させて安定して可燃ガスと多量のチャーを生成し,ガス,タール,チャーの可燃分を多量に含む均質な生成ガスを得て,ガス,タール,チャーの可燃分の大部分を次段の溶融燃焼炉において利用できるようにしたという技術的意義がある。
( )甲7公報には,熱分解で生成された微細な粒子のチャーと可燃性ガスが,3そのままサイクロン燃焼炉に供給されることが記載されている。熱分解過程において,可燃ガスと,粒径の細かな熱分解生成物(チャー)や,粒径の粗い熱分解生成物(チャー)が生成され,粒径の粗い熱分解生成物(チャー)が,流動する流動媒体により解砕されたり,また,流動化ガスにより供給される酸素によって燃焼されたりして,細かくなり,微細な粒子のチャーが生成されることがあり,熱分解過程におけるこのような現象は,流動化ガスにより酸素が供給される流動層において,廃棄物の熱分解を行ってガスとチャーを生成する際に生じる一般的な現象である。
したがって,甲7の発明1においては,熱分解過程が行われた結果生成したチャーが微細な粒子であるので,流動層炉内において,生成されたチャーを微粒子とする処理を行う必要がなく,そのための構成もない。
これに対し,本件発明は,流動媒体が下降する移動層において廃棄物がガス化されてガスとチャーが生成され,ガス化によって生成されたガスはフリーボードへと抜け,ガス化によって生成されたチャーを,流動媒体の循環流により可燃ガスとは分離して流動媒体が上昇する流動層へと移動させて,比較的酸素含有量の多い周辺流動化ガスにより部分酸化させて微粒子とする処理をさらに行っている。
したがって,甲7公報には,本件発明1の,流動媒体が下降する移動層における「ガス化してガスとチャーを生成し」に対応する「熱分解過程によりガスとチャーを生成し」は存在するが,ガス化により生成されたチャーをさらに微粒子とする処理を行うという,流動媒体が上昇する流動層における「該チャーを微粒子とし」との構成は記載されていないのであり,甲7公報に流動層中で熱分解過程により可燃ガスとチャーを生成し,生成された該チャーをさらに微粒子としていることが記載されているとして,甲7の発明1を「固形廃棄物を流動層熱分解炉に供給し,該熱分解炉の流動層にてガス化した後,サイクロン燃焼炉にて灰分を溶融スラグ化する方法において,該流動層内の熱分解により生成されたガス並びにチャー及び灰分の微粒子を,サイクロン燃焼炉に供給し,サイクロン燃焼炉では灰分が捕捉され溶融スラグとなって排出口より排出される固形物の燃焼方法。」と認定した審決は誤りである。
2取消事由2(本件発明1と甲7の発明1の一致点の認定の誤り,相違点の看過)(1)審決は,本件発明1と甲7の発明1は,「廃棄物を流動層炉にてガス化した後に,熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において,該廃棄物を該流動層炉に供給し,該流動層炉より排出されたガスと微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化する廃棄物の処理方法。」(審決謄本26頁第2段落)の点で一致すると認定したが,誤りである。
前記1のとおり,甲7の発明1は,流動層内の熱分解により生成されたガス並びに生成された状態で微粒子のチャー及び灰分をサイクロン燃焼炉に供給するものであり,「流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし,該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給」している本件発明1とは,流動層炉から溶融炉にチャーを供給する過程が全く異なっているから,本件発明1と甲7の発明1が,流動層から溶融炉に同じように微粒子のチャーが供給されているとして,一致点を認定した審決は誤りである。
( )審決は,本件発明1の「該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子とな2ったチャーを旋回熔融炉に供給して」との構成について,本件発明1と甲7の発明1との相違点として認定しておらず,相違点を看過した。
本件発明1と甲7の発明1では,溶融炉に供給されるガスとチャーを得る過程が異なるのであるから,溶融炉に供給されるガスとチャーが一連の過程を経て得られるものであることを規定した本件発明1の「該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して」との構成も本件発明1と甲7の発明1の相違点として認定されるべきである。
3取消事由3(相違点Aについての認定判断の誤り)(1)審決は,相違点Aに係る本件発明1の構成について,「甲7(注,甲7公報)の流動層炉の流動層中に発生する流れを,相違点Aに係る本件発明1の構成,すなわち『流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し』たことは,甲7の発明1に上記認定した周知の技術を適用することにより当業者であれば容易に想到することができたものというべきである。」(審決謄本27頁第5段落)と認定判断したが,誤りである。
( )相違点Aに係る本件発明1の構成は,ガス化溶融の流動層炉において,流2動層内に循環流という流動媒体の流れを形成して,その流動媒体の流れを有する流動層において,廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し,生成されたチャーをさらに微粒子とするための構成である。
甲7の発明1には,本件発明1の,流動媒体が下降する移動層におけるガス化の過程に対応する熱分解過程は存在するが,ガス化により生成されたチャーを流動媒体が上昇する流動層においてさらに微粒子とするという本件発明1の構成はない。また,審決が「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し」を周知の技術と認定する根拠とした特開平2-147692号公報(甲8,以下「甲8公報」という。),特開昭57-124608号公報(甲10,以下「甲10公報」という。)及び甲11文献(以下,甲8公報,甲10公報及び甲11文献を併せて「甲8公報等」ともいう。)のいずれにも,循環流中でガス化してガスとチャーを生成し,チャーを循環流中で微粒子とするとの構成は開示されていない。
したがって,審決において,周知の技術と認定された「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し」との構成を,甲7の発明1の流動媒体の流れに適用して流動媒体の流れを変えても本件発明1の「該チャーを微粒子とし」との構成が得られることはないから,甲7の発明1に,周知又は公知の技術をどのように組み合わせても,本件発明1の「該チャーを微粒子とし」との構成が得られることはない。
( )審決は,以下の各点を看過し,相違点Aの容易想到性についての判断を誤3った。
ア審決は,流動媒体の流れと流動層の機能の関係を看過した。
相違点Aに係る本件発明1の構成は,ガス化溶融の流動層炉において,流動媒体の循環流を形成して,その流動媒体の流れを有する流動層において,廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し,生成されたチャーをさらに微粒子としているのである。それに対し,甲7の発明1においては,甲7の発明1の流動層の流動媒体の流れにおいて,可燃ガスと微細なチャーが生成されるという流動層の機能が発揮されている。そして,流動層炉は,種々の目的に使用され,使用目的に応じて,種々の要素の最適化の範囲が異なり,容易に相互移行は行えず,空気量(酸素量)等を調整することにより,使用目的に応じてガス化にも焼却にも適用し得るということはない。
甲7の発明1に,周知の技術と認定された循環流を適用すると,甲7の発明1の流動層内での物質・熱の移動の態様が変更されて,甲7の発明1の流動層の「可燃ガスと微細なチャーが生成される」という機能を変質させ,甲7の発明1の流動層熱分解炉の機能及び甲7の発明1そのものの機能を変質させる。したがって,発明の本質的な機能に係る甲7の発明1における流動層の流動媒体の流れを変更することに当業者が容易に想到することはない。
イ審決は,相違点Aに係る構成の作用機能を看過した。
甲8公報に記載された技術においては,流動層内の循環流においてガス化反応を完結しチャーをガスに転換させてしまうものであり,流動層炉からは可燃ガスが排出され,チャーの排出は例外的である。すなわち,甲8公報の下降移動層における「乾留してガスとチャーを生成し」との過程は,本件発明1における「ガス化してガスとチャーを生成し」に対応するものであるが,生成されたチャーはガス化反応が完結されてガスに転換されてしまい微粒子とされることはなく,流動媒体が上昇する流動層からチャーが排出されることはない。流動層炉から排出されるチャーは,下降移動層で生成されたチャーのうち粒径がかなり細かいものが,例外的に下降移動層から排出されるものであり,「ガス化してガスとチャーを生成し該チャーを微粒子とし」て排出するという本件発明1の構成は開示されていない。
甲10公報には,焼却炉の発明が記載され,熱分解炉においても焼却炉と同様である旨の記載があるが,それは単なる例示的な記載で,熱分解炉として使用する場合の具体的な構成及び作用機能についての実質的な記載はない。甲11文献に記載された技術においては,流動層内に循環流という流動媒体の流れを形成し,燃焼物は,流動層内で短時間に焼却されて燃え尽きてしまい,流動層炉からは燃焼排ガスが排出される。
すなわち,甲8公報等に記載された技術は,いずれも,流動層内に循環流という流動媒体の流れを形成して,その循環流を有する流動層内でガス化反応や燃焼を完結させるもので,流動層からガスとチャーを排出せず,流動層炉全体についても可燃ガスとチャーを排出しない。
したがって,甲7の発明1の中核をなす「可燃ガスと微細なチャーが生成される」という機能と密接に関係する流動媒体の流れに,炉内でガス化反応や燃焼を完結させて可燃ガスとチャーを排出していない流動層炉が記載されている甲8公報等に記載された技術を適用することに当業者が容易に想到することはない。
ウ審決は,流動媒体の流れと流動層の機能との組合せの関係を看過した。
流動媒体の流れは流動層の機能と密接に結びついている。循環流も流動の一態様であるが,流動の条件によって,流動層炉における流動層の機能は異なってくる。甲7の発明1においては,甲7の発明1の流動層の流動媒体の流れにおいて,可燃ガスとチャーが生成されるという流動層の機能が発揮されていて,流動媒体の流れと流動層の機能の組合せが示されている。他方,甲8公報等に記載された技術は,循環流を有するが,いずれも,流動層炉から可燃ガスとチャーを排出しておらず,「流動媒体の循環流」と「可燃ガスとチャーを生成」する流動層の機能との組合せは開示されていない。
甲7の発明1に,周知技術と認定された流動媒体の循環流を形成する技術を適用した場合,甲7の発明1の流動層がもともと持っていた機能とその流動層に形成された流動媒体の循環流とがどのように結び付くかは不明であり,審決は,流動媒体の流れと流動層の機能との密接な関係について,その整合性を何ら吟味することなく,前例のない「流動媒体の流れ」と「流動層の機能」の組合せである,「流動媒体の循環流」と「可燃ガスとチャーを生成」するという組合せを認定したものであり,このような組合せに当業者が容易に想到することはない。
( )甲7の発明1に,甲8公報等に記載された技術を組み合わせることには阻4害要因があるにもかかわらず,審決は,「被請求人(注,原告)が主張する阻害事由は根拠がないものといわざるを得ない。」(審決謄本49頁第1段落)としたものであり,誤りである。
ア甲7公報には,循環流が形成されていない流動層熱分解炉とサイクロン燃焼炉との組合せにより,両方法の長所が生かされ短所が相殺されて消滅し,相乗的な極めて顕著な効果を奏していることが記載され,技術的思想として,甲7の発明1の流動層を他の流動層に置き換えることができないことが記載されている。
そして,流動層で生成した可燃ガス,チャー及び灰分の混合物を次段のサイクロン燃焼炉に導入するという機能を有する甲7の発明1の流動層に代えて,可燃ガス及びチャーを次段に導入するという機能を有さず完全ガス化あるいは完全燃焼という機能と結びついていた循環流を適用することは,上記の甲7の発明1の「流動層熱分解方法とサイクロン燃焼方法とを組み合わせることにより,両方法の長所が生かされ短所が相殺されて消滅し,相乗的は極めて顕著な効果を伴う固形物の燃焼方法及びその装置を提供する」(甲7公報の7欄17行目〜8欄3行目)との目的に反することとなり,その組合せの阻害要因が認められる。
甲7の発明1において,流動媒体の流れとして循環流を採用した場合には,流動層炉の「流動方式」は「バブリング式」とは区別された「内部循環式」となり,ガス化溶融システムそのものの基本的条件を変更することとなり,甲7の発明1の流動層熱分解炉とサイクロン燃焼炉との組合せの関係を壊して,甲7の発明1が想定していない他の組合せに変えることに等しいものである。
イ甲7の発明1に,甲8公報等に記載された技術を適用すると,キャリーオーバーの問題(サイクロン燃焼炉に供給される固形物のうち,粒径の小さな粒子がサイクロン燃焼炉をすり抜けてしまう現象)が発生するので,その適用には阻害要因が存在する。本件出願日当時,旋回流溶融炉のスラグ化率は高くても80%であり,キャリーオーバーが生じることは当業者の技術常識であった。
甲7の発明1は,「集じん后も発じん防止などに特別な対策を要する。」ことを課題としていて,前段の流動層に微粒子化の機能を有する循環流を採用し,次段のサイクロン燃焼炉に,より微細なチャー等が供給されることは,甲7の発明1の目的に反する改変となる。また,微細なチャー等が供給されることにより,「サイクロン燃焼炉の高性能化」が必要となれば,そのこと自体が,甲7の発明1に循環流を組み合わせることを阻害する要因となる。
4取消事由4(相違点Bについての認定判断の誤り)( )審決は,甲14公報に「ガラス繊維を含む廃棄プラスチックスを燃焼分解1させる流動層熱分解炉と旋回燃焼炉を備えた廃棄物焼却方法において,流動層炉(流動層熱分解炉)内の温度を500〜600℃に温度制御することが記載されている」(審決謄本27頁第6段落)として,「相違点Bに係る本件発明1の構成は,甲7の発明1に甲14に記載された発明(注,甲14発明)を適用することにより当業者であれば容易に想到することができたものというべきである。」(同頁第7段落)と判断したが,誤りである。
( )甲14発明は,被処理物を「ガラス繊維を含む廃棄プラスチックス」に特2化した発明であり,チャーの発生は意識しておらず,その500℃から600℃という流動層炉(流動層熱分解炉)内の温度範囲は,「ガラス繊維を含む廃棄プラスチックス」を処理する場合にガラス繊維が軟化溶融してしまうという問題を解消するために選択されたものである。
他方,甲7の発明1は,一般の廃棄物を流動層熱分解炉でガス化してガスとチャーを生成し,サイクロン燃焼炉でガスとチャーを燃焼して灰分をスラグ化する2段の廃棄物の処理技術である。
チャーについて意識しておらず,被処理物が甲7の発明1とは異なる「ガラス繊維を含む廃棄プラスチックス」に特化され,その特化された被処理物固有の問題を解決するためにガラス繊維が軟化溶融しないように特定された甲14発明の流動層炉内の温度範囲と,一般の廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し次段のサイクロン燃焼炉に供給する甲7の発明1の熱分解炉の温度範囲は技術的意義が異なるので,甲14発明の温度範囲を,甲7の発明1に結び付ける動機付けはない。
(3)本件発明1の本質から,甲7の発明1に甲14公報に記載された流動層炉内の温度範囲を適用することができない。
本件発明1のガス化溶融炉においては,溶融炉で灰分を溶融するために,溶融炉を一定の高温に維持する必要があり,そのために流動層炉において可燃分(可燃性ガス,タール及びチャー)をできるだけ多く安定して生成させ,その安定,多量に生成した可燃分(可燃性ガス,タール及びチャー)を溶融炉に供給する必要がある。本件発明1において,流動層炉の温度を450℃から650℃としたのは,多量の可燃分(可燃性ガス,タール及びチャー)をできるだけ多く安定して生成させるためである。これに対し,甲14公報には,多量の可燃分(可燃性ガス,タール及びチャー)をできるだけ多く安定して生成させるという技術的思想は全く開示されていない。したがって,甲14公報に開示されている500℃から600℃という流動層炉の温度範囲の技術的意義と本件発明1において流動層炉の温度範囲を450℃から650℃とすることの技術的意義は全く異なるものである。そして,循環流を備えた流動層により,ガス,タール,チャーの多量の可燃分を含む生成ガスを得て,生成されたチャーを循環流中で微粒子としてガスに同伴されやすくし,多量に生成されたガス,タール,チャーの可燃分の大部分を次段の溶融炉に安定して供給するという新規な目的,課題に対応するために最適化された温度範囲を規定したのが相違点Bに係る本件発明1の構成であり,このような目的,課題は,甲14公報には開示されておらず,当業者は,本件発明1の課題自体を知らないのであるから,それを最適化する数値範囲を知ることはできず,この点に進歩性があるのは明らかである。
5取消事由5(相違点Cについての認定判断の誤り)(1)審決は,相違点Cに係る本件発明1の構成について,「(該廃棄物を)『該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし』たことは,甲7の発明1に周知の技術を適用した結果として当業者には自明の事項であるから,甲7の発明1と周知の技術に基づいて当業者であれば容易に想到することができたものというべきである。」(審決謄本28頁第3段落)と認定判断したが,誤りである。
(2)相違点Cに係る本件発明1の「(該廃棄物を)該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし」という構成は,廃棄物を循環流中でガス化してガスとチャーを生成し,ガス化により生成されたチャーを循環流中でさらに微粒子とすることによってガスと微粒子となったチャーを得る一連の工程を規定したものであり,次段の溶融炉に供給する「該ガスと該微粒子となったチャー」を得るための構成である。
審決は,相違点Cについての判断に当たり,甲7公報に「熱分解過程で可燃ガスとチャーが生成され,該チャーと該灰分が微細粒子,すなわち微粒子となることが記載されていると認められる。」(審決謄本27頁最終段落〜28頁第1段落)と認定して,甲7公報にも,熱分解過程でガスとチャーを生成し,生成されたチャー(該チャー)を微粒子として次段の溶融炉に供給する「該ガスと該微粒子となったチャー」を得るための構成が記載されていると認定したが,甲7の発明1においては,熱分解により生成した微細なチャーと可燃性ガスが,熱分解流動層炉から排出されサイクロン燃焼炉に供給されるのであって,熱分解で生成されたチャーが生成された状態で微細粒子であり,生成されたチャーがさらに微粒子とされることはない。したがって,審決の上記認定は誤りであり,誤った認定に基づく相違点Cについての判断は誤りである。
( )審決は,「なお,この認定(注,甲7公報に,都市ごみのような廃棄物を3流動層熱分解炉に供給すると,流動層内の部分燃焼により灰分が発生し残部が熱分解されるが,この熱分解過程で可燃ガスとチャーが生成され,該チャーと該灰分が微細粒子,すなわち微粒子となることが記載されていること)は,甲10(注,甲10公報)の上記3c(注,「このような状態の焼却炉6の炉内に,原料投入口60から投入されたごみは下降移動層46の頂部に下降する。頂部付近においては流動媒体の流れは外側から中心に向かつて集中する方向に流れるので,ごみはこの流れに巻き込まれて下降移動層46の頂部にもぐり込まされる。・・・下降移動層46の中では部分的に熱分解が行なわれ可燃ガスが発生する。」)及び3d(注,「下降移動層46の表面にびん,アイロンなどの如き重くかつ大きな物体を落下せしめて供給した場合,これらの物体は瞬時に空気室44の上まで落下するのではなく,下降移動層46に支えられて,流動媒体の流れと共に徐々に下降する。そのため,可燃物はかなりの大きさのものでも,下降移動層46の中で徐々に下降しているうちに乾燥,ガス化,燃焼が行なわれ,裾に達するときには大半が燃焼して細片化しているので,流動層の形成を阻害することがない。従つて,ごみは予め破砕機で破砕をしなくとも,給じん装置5で破袋する程度で差支えなく,破砕機や破砕工程を省略しコンパクトな装置とすることができる。」)に掲記した記載からも裏付けられる」(審決謄本28頁第1段落)と認定したが,誤りである。
甲7の発明1においては,熱分解で生成されるチャーが生成された状態で微細粒子であり,生成されたチャーがさらに微粒子とされることは記載されていないから,審決は裏付ける対象そのものを誤っている。また,甲7の発明1の流動層には流動媒体の循環流は存在しないのに対し,甲10公報に記載された焼却炉の流動層は流動媒体の循環流を有し,甲7の発明1と甲10公報に記載された発明では,流動層における流動媒体の流れが相違し,流動化の条件が変われば流動層炉の機能も変わるから,流動層の流動媒体の流れの条件が明らかに異なる甲10公報の記載をもって,甲7の発明1の流動層の機能を裏付けることはできない。また,甲10公報の焼却炉においては,生成された可燃ガスも「細片化された可燃物」も完全燃焼してしまい,熱分解過程でチャーを生成し,生成されたチャーをさらに微粒子として微粒子となったチャーを得る工程は記載されていないし,チャーは,燃え尽きる過程において出現するのかどうかも不明なもので,たとえ出現するとしても一時的に出現するものにすぎない。したがって,甲10公報の記載から,甲7公報に可燃ガスを生成すること及び熱分解過程で生成されたチャーをさらに微粒子として可燃ガスと微粒子となったチャーを得る工程が記載されていることを裏付けることはできない。
6取消事由6(本件発明1の奏する顕著な効果の看過)(1)審決は,「本件発明1の作用効果を検討しても,甲7及び甲14に記載された各発明(注,甲7の発明1及び甲14発明)並びに周知の技術から当業者の予測を超えるような格別顕著な効果を奏するものとみることはできない。」(審決謄本29頁第4段落)と判断したが,本件発明1の奏する顕著な効果を看過したものであり,誤りである。
(2)本件発明1は,流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し,廃棄物をガス化して生成した可燃ガスをあまり燃焼させずに次段の溶融炉に供給するとともに,循環流中でチャーを微粒子とすることにより,流動層炉で生成した可燃ガス及びチャーをともに安定して溶融炉に供給することができ,対象とするごみが質的及び量的に変動するごみ処理特有の課題において,ガス,タール,チャーの可燃分を多量に含む均質な生成ガスを得て,ガス,タール,チャーの可燃分の大部分を次段の旋回溶融炉において利用できるという顕著な効果を奏するものである。
これに対し,甲7の発明1,甲14発明及び審決が周知技術認定の根拠とした甲8公報等には,対象とするごみが質的及び量的に変動するごみ処理特有の課題において,ガス,タール,チャーの可燃分を多量に含む均質な生成ガスを得て,ガス,タール,チャーの可燃分の大部分を次段の旋回溶融炉において利用できるものであるとの効果は一切記載されていない。本件発明1のような問題意識がなければ,甲7の発明1,甲14発明及び周知技術から,その効果を当業者が容易に予測し得たということはできないことは明らかである。また,甲7の発明1には,本件発明1の効果を奏するための構成をほとんど欠いているから,甲7の発明1,甲14発明及び周知技術をどのように組み合わせても,本件発明1の構成に想到することはないのであり,本件発明1の効果は,甲7の発明1等から予測できるものではない。
7取消事由7(本件発明2についての進歩性の認定判断の誤り)( )審決は,「上記の事実に照らせば,請求項2で付加した構成,すなわち,1『流動層炉は,流動層温度が450℃〜650℃に維持されること』は,本件発明の出願前に当業者には周知の技術であったものと認められる。本件発明2の作用効果を検討しても,甲7及び甲14に記載された各発明(注,甲7の発明1及び甲14発明)並びに周知の技術から当業者の予測を超えるような格別顕著な効果を奏するものとみることはできない。したがって,本件発明2は,本件発明1について前示した理由に上記の理由を加えた理由によりその進歩性が否定されるものであるから,本件発明2の出願日前に国内において頒布された刊行物である甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。」(審決謄本30頁第3段落〜第5段落)としたが誤りである。
( )引用文献記載の発明に周知技術を適用して特許出願に係る発明の構成を得2ることが容易であったと認められるためには,当該周知技術が引用文献記載の発明に適用されることに適した内容のもの,すなわち,適用上の適性があるものであり,かつ,当該周知技術を適用して特許出願に係る発明の構成を得ることが技術的合理性の見地からみて可能であり,また,相当であることを前提とする。そして,周知技術が適用上の適性がある技術であるというためには,それが単に,引用文献記載の発明及び特許出願に係る発明と技術分野を異にしないものであるのみならず,技術的思想として,これらの発明に近接し,これと共通の要素を持つものでなければならない。
甲7の発明1の流動層熱分解炉は,廃棄物をガス化して,ガスとチャーを生成し,生成されたガスとチャーをサイクロン燃焼炉に供給するためのものである。また,本件発明2は,次段の溶融炉で灰分を溶融する場合,溶融炉を1300℃以上の高温に保つ必要があり,流動層炉で生成した可燃分をできるだけ多く安定して溶融炉に熱源として送り込む必要があるため,特に,流動層温度を450℃から650℃に維持することにより,廃棄物をガス化して可燃分を多量に含む均質な生成ガスを得ることができ,ガス,タール,チャーの可燃分の大部分を溶融炉で利用できるようにしたものである。すなわち,本件発明2は,ガス化溶融炉を大前提として,溶融炉にガス,タール,チャーの可燃分の大部分を送って利用できるようにするための構成を備えるものである。
これらに対し,審決が周知技術の根拠とした文献に記載された技術は,いずれも単なる流動焼却炉に係るものであり,廃棄物を流動層炉でガス化してガスとチャーを生成し,溶融炉にガスとチャーを送って利用できるようにしようとの技術的思想は全く存在しない。審決が周知技術の根拠とした文献のうち,平成4年7月発行エバラ時報No.156「高効率燃焼型流動床焼却施設」(甲12,以下「甲12文献」という。)は,流動床焼却施設についての記載であり,流動層から排出されるのは可燃ガスであり,チャーが排出されることは記載されていないし,流動層の温度範囲は,ガス化が完全に行われ,かつ,ガス化速度を緩慢とするための温度範囲である。また,甲25公報に記載された流動層焼却炉では,流動層炉より可燃ガスとチャーを排出することは記載されていないし,流動層の温度範囲は,都市ごみの着火温度以上で,かつ,クリンカ及びNO の発生や散気ノズルの損傷を回避するたXめの温度範囲である。特開平3-75406号公報(甲26,以下「甲26公報」という。)には,流動層炉から可燃ガスとチャーを排出することは記載されていないし,その温度範囲は,焼却炉において安定した燃焼を維持するためのものにすぎない。また,特開昭62-169921号公報(甲27,以下「甲27公報」という。)には,流動層炉より可燃ガスとチャーを排出することは記載されていないし,流動層の温度範囲は,焼却炉において流動層内での燃焼を安定して行うことができるようにするための温度範囲にすぎない。
したがって,審決が周知技術認定の根拠とした各文献には,溶融炉にガスとチャーを送って利用できるようにするために,特に流動層温度を450℃から650℃に維持し,廃棄物をガス化して,可燃ガスとチャーを得て流動層炉から排出することができるようにしたという技術的思想は全く示されておらず,技術的思想として,本件発明2,甲7の発明1に近接し,これと共通する要素を持つものとはいい難いものであるから,その技術は,甲7の発明1に基づいて本件発明2の構成を得るのに用い得るような適用上の適性を有するものとは認められない。
( )審決は,本件発明2の格別顕著な効果を否定したが,誤りである。
3本件発明2は,特に流動層温度を450℃から650℃に維持することにより,廃棄物をガス化して,ガス,タール,チャーの可燃分を多量に含む均質な生成ガスを得ることができるようにし,溶融炉にガス,タール,チャーの可燃分の大部分を送って利用できるようにするという効果を有するものである。
これに対し,甲7公報,甲14公報及び審決が周知技術認定の根拠とした文献のいずれにも,上記効果,特に流動層温度を450℃から650℃に維持することにより,廃棄物をガス化して,ガス,タール,チャーの可燃分を多量に含む均質な生成ガスを得ることができるようにし,溶融炉にガス,タール,チャーの可燃分の大部分を送って利用できるようにするとの効果は全く示されていないから,本件発明2の構成は,当業者の予測を超える格別顕著な効果を奏するものである。
8取消事由8(本件発明6についての進歩性の認定判断の誤り)(1)審決は,「本件発明4及び5についての判断においてそれぞれ前示した周知の技術に照らせば,請求項6で付加した構成,すなわち『質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスは,ともに空気であること』は,本件発明の出願前に当業者には周知の技術であったものと認められる。本件発明6の作用効果を検討しても,甲7及び甲14に記載された各発明(注,甲7の発明1及び甲14発明)並びに周知の技術から当業者の予測を超えるような格別顕著な効果を奏するものとみることはできない。
したがって,本件発明6は,本件発明4又は5について前示した理由に上記の理由を加えた理由によりその進歩性が否定されるものであるから,本件発明6の出願日前に国内において頒布された刊行物である甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。」(審決謄本33頁第8段落〜34頁第2段落)としたが,誤りである。
( )本件発明6は,特許請求の範囲の請求項1,請求項5及び請求項6の構成2を有する。そして,本件発明6における「前記流動媒体の循環流は,質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給することにより形成され,前記質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスは,ともに空気であり」との構成は,流動層炉内の流動媒体の循環流中に,質量速度が比較的小さい流動化ガスが供給され流動媒体が下降する空気量の少ない部分と質量速度が比較的大きい流動化ガスが供給され流動媒体が上昇する空気量が多い部分を形成させることを規定するものであり,「ガス化してガスとチャーを生成し該チャーを微粒子とし」との構成と有機的に結合して,流動層において熱分解(ガス化)を行い,熱分解過程の結果生成された流動層炉内にとどまりがちなチャーを,流動層炉外に抜き出すことなく,流動層内で熱分解過程の結果生成されたチャーを微粒子とする処理をさらに行わせるようにして該微粒子となったチャーを該ガスとともに次段の溶融炉に供給するようにしたものである。
これに対し,甲7の発明1は,流動媒体が下降する空気量の少ない移動層における本件発明6の「ガス化してガスとチャーを生成し」に対応する「熱分解過程によりガスとチャーを生成し」は存在するが,ガス化により生成されたチャーを流動媒体が上昇する空気量の多い流動層においてさらに微粒子とする本件発明6の「該チャーを微粒子とし」との構成はない。
また,審決が周知技術認定の根拠とした,甲8公報,甲10公報及び甲11文献には,いずれも,循環流中でガス化してガスとチャーを生成し,生成したチャーを循環流中で微粒子とすることは記載されていない。そもそも,本件発明5に係る構成についての周知技術の認定の根拠となった甲8公報には,本件発明6で付加された構成である「前記質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスは,ともに空気であり」は記載されていないのであり,甲8公報は引用文献として適切ではない。
甲7の発明1に,「前記流動媒体の循環流は,質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給することにより形成され,前記質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスは,ともに空気であり」との技術をどのように組み合わせても,「循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし」との本件発明6に係る構成に想到することはできない。
(3) 「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し,前記流動媒体の循環流は,質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給することにより形成され,前記質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスは,ともに空気であり」との技術は,焼却炉において周知であっても,ガス化炉においては周知ではなく,また,公知でもない。
流動層焼却炉において循環流を形成する場合には,質量速度の比較的小さい流動化ガスと質量速度の比較的大きい流動化ガスはともに燃焼用空気とされるのに対し,流動層ガス化炉において循環流を形成する場合には,質量速度の比較的小さい流動化ガスと質量速度の比較的大きい流動化ガスにはガス化剤が使用される。ガス化炉に係る甲8公報においては,流動化ガスは,「空気とスチームとの混合物又は酸素とスチームとの混合物」とされ,「中央部の室22から噴出する流動化ガス中の酸素濃度は,両側縁部の室21,23から噴出する流動化ガスよりも低いか,あるいはスチームのみとしてもよい。」と記載されていて,流動化ガスとして空気を使用することは記載されていない。
流動化ガスとして可燃物を燃焼させるために空気を用いていた焼却炉の技術分野において周知の技術手段であるからといって,可燃分を燃焼により消費しないで可燃分として回収するために空気以外のガス化剤を流動化ガスとして用いていたガス化炉の技術分野においてまで周知の技術手段であるとすることはできない。
9取消事由9(本件発明7についての進歩性の認定判断の誤り)審決は,本件発明7で付加した「前記流動層炉へ供給される流動化ガスは,廃棄物の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下の空気量を含むことを特徴とする」との構成が,「本件発明の出願前に当業者には周知の技術であったものと認められる」(審決謄本35頁第3段落)とし,「本件発明7の作用効果を検討しても,甲7及び甲14に記載された各発明(注,甲7の発明1及び甲14発明)並びに周知の技術から当業者の予測を超えるような格別顕著な効果を奏するものとみることはできない。したがって,本件発明7は,本件発明4ないし6について前示した理由に上記の理由を加えた理由によりその進歩性が否定されるものである」(同頁最終段落〜36頁第2段落)と認定判断したが,誤りである。
本件発明7の「前記流動層炉へ供給される流動化ガスは,廃棄物の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下の空気量を含むこと」との構成は,「循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子と」するための構成であり,廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し,生成したチャーをさらに微粒子とするための空気比を規定しているものである。
これに対し,審決が周知技術認定の根拠とした特開昭55―46370号公報(甲28,以下「甲28公報」という。)には,チャー及び可燃ガスに関する記載は全くないし,特開平4―327707号公報(甲29)においては,流動層に供給される荒粒子の理論空気量に対して100%以上であり,同公報に記載された流動層からは残存酸素を含む流動燃焼ガスが排出されるのであり,可燃ガスとチャーは排出されず,特開平7-35322号公報(甲30,以下「甲30公報」という。)には,チャーの生成に関する記載はない。
したがって,審決が周知技術認定の根拠とした公報には,いずれも,流動層からガスとチャーを排出する記載はなく,これらの文献に記載された空気比が,廃棄物をガス化してガスとチャーを生成する流動層の空気比として周知であるということはできない。
10取消事由10(本件発明10についての進歩性の認定判断の誤り)(1)本件発明10と甲7の発明2の一致点の認定の誤り審決は,本件発明10と甲7の発明2とは「廃棄物をガス化する流動層炉と,該流動層炉内で生成されたガスとチャーを燃焼して灰分を熔融する熔融炉とを備えたガス化及び熔融燃焼装置において,前記流動層炉は流動化ガスを炉内に供給する流動化ガス供給手段を備え,前記熔融炉はガスとチャーを燃焼する燃焼室を備え,該燃焼室によって前記流動層炉より排出されたガスと微粒子となったチャーを燃焼して灰分を熔融してスラグ化するガス化及び熔融燃焼装置。」(審決謄本38頁第2段落)の点で一致するとしたが,誤りである。
本件発明10の「微粒子となったチャー」は,本件発明10の「該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし」とするものであり,生成したチャーを循環流中でさらに微粒子としたものであるのに対し,甲7の発明2においては,熱分解によって生成したのが「微細な粒子のチャー」であり,これらのチャーは異なるのであるから,これらを同じものとした審決の一致点の認定は誤りである。
( )相違点Eについての認定判断の誤り2相違点Eに係る本件発明10の構成は,相違点Aに係る本件発明1の構成に「流動化ガス供給手段」によって循環流を形成するとの構成を付加したものであり,取消事由3(相違点Aについての認定判断の誤り)と同様の理由により,審決の認定判断には誤りがある。
( )相違点Fについての認定判断の誤り3相違点Fに係る本件発明10の構成は,相違点Bに係る本件発明1の構成と同じであり,取消事由4(相違点Bについての認定判断の誤り)と同様の理由により,審決の認定判断には誤りがある。
(4)相違点Gについての認定判断の誤り相違点Gに係る本件発明10の構成は,相違点Cに係る本件発明1の構成と同じであり,取消事由5(相違点Cについての認定判断の誤り)と同様の理由により,審決の認定判断には誤りがある。
(5)本件発明10の奏する顕著な効果の看過審決は,「また,本件発明10の作用効果を検討しても,甲7及び甲14に記載された各発明(注,甲7の発明2及び甲14発明)並びに周知の技術から当業者の予測を超えるような格別顕著な効果を奏するものとみることはできない。」(審決謄本40頁第7段落)と判断したが,方法の発明である本件発明1に対応する装置の発明である本件発明10は,本件発明1と同様の構成を有し,取消事由6(本件発明1の奏する顕著な効果の看過)と同様の理由により,審決の認定判断には誤りがある。
11取消事由11(本件発明11についての進歩性の認定判断の誤り)審決は,本件発明11について,当業者が容易に想到することができたと判断したが,本件発明11は,方法の発明である本件発明2に対応する装置の発明であり,取消事由7(本件発明2についての認定判断の誤り)と同様の理由により,審決の認定判断には誤りがある。
12取消事由12(本件発明16についての進歩性の認定判断の誤り)審決は,「請求項16に記載された構成は,本件発明1の構成のうち,『(流動層)炉内を450℃〜650℃に維持し』との構成を『流動層温度を450℃〜650℃に維持し』とし,『1300℃以上にて』を削除したものであるが,この『流動層温度を450℃〜650℃に維持し』とした点については,本件発明2で前示したとおり,本件発明の出願前に当業者には周知の技術であったものにすぎない。したがって,本件発明16は,本件発明1の方法の発明を引用した本件発明2について前示したものと同様の理由により,本件発明16の出願日前に国内において頒布された刊行物である甲7及び甲14に記載された各発明(注,甲7の発明1及び甲14発明)並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。」(審決謄本43頁最終段落〜44頁第2段落)と認定判断したが,誤りである。
本件発明16の構成のうち,「流動層温度を450℃〜650℃に維持し」との構成については,取消事由7(本件発明2についての認定判断の誤り)のとおり,審決の認定判断には誤りがあり,相違点A及びCに係る本件発明16の構成についても,取消事由3(相違点Aについての認定判断の誤り)及び取消事由5(相違点Cについての認定判断の誤り)と同様の理由により,審決の認定判断は誤りである。
13取消事由13(本件発明19についての進歩性の認定判断の誤り)(1)相違点Iについての認定判断の誤り審決は,「相違点Iは,本件発明1において前記認定した相違点Aと全く同じ構成のものであるから,相違点Aについて前示した理由により,相違点Iに係る構成,すなわち,『流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し』たことは,甲7の発明1に前記認定した周知の技術を適用することにより当業者であれば容易に想到できたものというべきである。」(審決謄本46頁第1段落)と認定判断したが,取消事由3(相違点Aについての認定判断の誤り)のとおり,相違点Aについての審決の認定判断は誤りであるから,誤りである。
(2)相違点Kについての認定判断の誤り審決は,「相違点Kは,請求項2において付加した構成と実質的に同じ構成のものであるから,本件発明2について前示した理由により,相違点Kに係る構成,すなわち『流動層温度を450℃〜650℃に維持し』とした点は,本件発明の出願前に当業者には周知の技術にすぎなかったものと認められる。」(審決謄本46頁第3段落)と認定判断したが,「流動層温度を450℃〜650℃に維持し」とした点については,取消事由7(本件発明2についての認定判断の誤り)のとおり,本件発明2についての審決の認定判断は誤りであるから,誤りである。
(3)相違点Lについての認定判断の誤りについて審決は,「相違点Lは,本件発明1において前記認定した相違点Cと全く同じ構成のものであるから,相違点Cについて前示した理由により,相違点Lに係る構成,すなわち『流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし』た点は,甲7の発明(注,甲7の発明1)に周知技術を適用した結果として当業者には自明の事項であるから,甲7の発明と周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものであるというべきである。」(審決謄本46頁第4段落)と認定判断したが,取消事由5(相違点Cについての認定判断の誤り)のとおり,相違点Cについての審決の認定判断は誤りであるから,誤りである。
(4)審決は,「本件発明19の作用効果を検討しても,甲7及び甲11に記載された各発明(注,甲7の発明1及び甲11発明)並びに周知の技術から当業者の予測を超えるような格別顕著な効果を奏するものとみることはできない。」(審決謄本47頁第3段落)と認定判断したが,誤りである。
本件明細書の段落【0057】等によれば,本件発明19では,流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し,廃棄物をガス化して生成した可燃ガスをあまり燃焼させずに次段の溶融炉に供給するとともに,循環流中でチャーを微粒子にすることにより,流動層炉で生成した可燃ガス及びチャーをともに安定して溶融炉に供給することができ,対象とするごみが質的及び量的に変動するごみ処理特有の課題において,ガス,タール,チャーの可燃分を多量に含む均質な生成ガスを得て,ガス,タール,チャーの可燃分の大部分を次段の旋回溶融炉において利用できるものである。また,本件明細書によれば,本件発明19は,現在の焼却システムでは,有価金属の回収が困難である(段落【0007】)という問題を解決し,廃棄物中の有価金属を還元雰囲気の流動層炉内から酸化しない状態で取出し回収する(段落【0008】)ために,流動層炉の炉底部より不燃物を流動媒体とともに排出し,該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻すようにしたものである。これにより,流動媒体は循環使用され,鉄,アルミ等の有価金属を酸化しない状態で回収できるので,リサイクルに好適であり(段落【0058】),顕著な効果を奏するものである。
14取消事由14(本件発明3ないし9,11ないし15,17,18及び20についての進歩性の認定判断の誤り)審決は,本件発明3ないし9,11ないし15,17,18及び20について,いずれも,当業者が容易に想到することができたと判断したが,本件発明3ないし9,11ないし15,17,18及び20は,本件発明1,10,16及び19を引用する発明であり,本件発明1,10,16及び19についての審決の認定判断が誤りであるから,本件発明3ないし9,11ないし15,17,18及び20についての審決の進歩性の認定判断は,いずれも誤りである。
第4被告の反論審決の認定判断は正当であり,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
1取消事由1(甲7の発明1の認定の誤り)について( )原告は,審決が,本件発明1を含む本件発明の技術的意義を正解しなかっ 1たために,甲7の発明1の認定を誤った旨主張するが,その主張する本件発明の技術的意義なるものは,本件明細書の記載と全く矛盾する。すなわち,原告は,本件発明について,流動層炉内に循環流を形成して,多量のチャーを微粒子化してガスに同伴しやすくし溶融炉に供給するという作用を有することを前提として,本件発明の意義を主張するが,本件明細書には,チャーをできるだけ飛散させずガス化させる旨が記載されている。これは,多量に生成したチャーを安定して溶融炉に供給するという作用とは全く矛盾するものであり,本件明細書に記載された流動層炉は,原告が主張する作用と全く反対の作用を有しているものである。
( )原告は,甲7公報には,本件発明1の流動媒体が上昇する流動層における2「該チャーを微粒子とし」との構成は記載されていない旨主張するが,甲7公報には,「熱分解の生成ガス中に含まれるチャー及び灰分が微粒子となる」(3欄32行目〜34行目)と記載されていて,審決が,甲7公報に,「流動層内の熱分解により生成された可燃性ガス並びにチャー及び灰分の微細粒子,すなわち微粒子を,サイクロン燃焼炉に供給すること」(審決謄本25頁第6段落)が記載されていると認定したことに誤りはない。
流動層内における熱分解は連続して進行するものであるから,甲7公報の「微粒子となる」とは,流動層中の廃棄物が流動層の熱により乾留され,乾留生成物たるチャーが連続的に熱分解が進行して一酸化炭素等のガスとなり,徐々に小さくなって微粒子となることを意味し,そうであるから,本件発明について,明細書に「該チャーを循環流中で微粒子とし」との記載はないが,「流動層炉から微粒子が排出される」との記載があることから,「該チャーを循環流中で微粒子とし」を追加する訂正(平成14年2月25日付け訂正請求,甲3)が認められた。
2取消事由2(本件発明1と甲7の発明1の一致点の認定の誤り,相違点の看過)について原告は,審決が甲7の発明1の認定を誤ったことを理由として,審決の本件発明1と甲7の発明1の一致点の認定を誤りである旨主張するが,前記1のとおり,審決の甲7の発明1の認定に誤りはないから,失当である。
また,原告は,審決が甲7の発明1の認定を誤り,本件発明1と甲7の発明1との相違点を看過した旨主張するが,甲7の発明1についての審決の認定に誤りはないから,失当である。
3取消事由3(相違点Aについての認定判断の誤り)について( )原告は,審決の甲7の発明1の認定が誤りであることを前提として,甲71の発明1に周知又は公知の「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し」との技術をどのように組み合わせても,本件発明1の「該チャーを微粒子とし」との構成が得られることがない旨主張するが,審決の甲7の発明1の認定に何ら誤りがないから,失当である。
( )原告は,審決が,流動媒体の流れと流動層の機能の関係を看過した旨主張2する。
しかし,甲7の発明1に,流動層を循環流としたものを適用すると,甲7の発明1の流動層の機能を変質させることとなるとする原告の主張は何ら根拠がない。甲7の発明1の流動層を循環流としても,甲7の発明1の「ガスとチャーを生成する」という流動層の機能は何ら変質することはないし,仮に,流動の態様によって多少の程度の差が生じることはあったとしても,当業者は,供給する空気量や廃棄物量などを適宜調整して所望の機能を発揮させることができる。
また,甲7公報には,流動層の流動媒体の流れを限定する事項は全く記載されていないし,甲7の発明1の流動層に,周知技術である「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し」との構成を適用すると,「可燃ガスとチャーを生成する」という機能が失われるならば,「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し」という構成と「ガスとチャーを生成し,該チャーを微粒子とする」という構成を有する本件発明1が実施し得ないものとなる。
そして,そもそも,流動層炉というものは,「循環流」の有無にかかわらず,空気量(酸素量)等を調整することにより,その使用目的に応じてガス化にも焼却にも適用し得るものである。甲8公報等の記載からも,「流動媒体の循環流」を有する流動層では,ガス化を行ったり,焼却を行ったりできるものである。
( )原告は,審決が,相違点Aに係る構成の作用機能を看過した旨主張する。
3しかし,原告が主張する「ガスとチャーを排出しない」という機能は,相違点Aに係る「循環流」という構成自体の機能ではなく,原告が流動層炉全体について評価した機能であり,原告は,実質的に,循環流の機能を流動層炉全体の機能にすり替えて主張しているのであり,失当である。また,甲8公報や甲10公報には,必然的にガスとチャーが排出される熱分解炉が記載されており,これらがガスとチャーを排出しない旨の原告の主張は前提を欠く。
( )原告は,審決が,流動媒体の流れと流動層の機能との組合せの関係を看過4したとして,甲7の発明1に循環流を形成する技術を適用した場合に,甲7の発明1の流動層がもともと持っていた機能と循環流とがどのように結び付くかが不明である旨主張する。
しかし,流動媒体は熱媒体であり,被加熱物に効率良く熱を伝達するために流動という流れを必要とするものであり,甲7の発明1の流動層もこのような流動という流れによって,被加熱物を効率よく加熱して,ガス化等の機能を発揮している。そして,周知技術である「循環流」は,流動という流れの一態様であることから,甲7の発明1の流動層に「循環流」を適用した場合,その「循環流」が少なくとも,流動という流れとして機能することは明らかである。
( )原告は,甲7公報には,循環流が形成されていない流動層熱分解炉とサイ 5クロン燃焼炉との組合せにより,両方法の長所が生かされ短所が相殺されて消滅し,相乗的な極めて顕著な効果を奏していることが記載され,技術的思想として,甲7の発明1の流動層を他の流動層に置き換えるということができないことが記載されている旨主張する。
しかし,甲7公報には,流動層熱分解炉の流動媒体の流れが,特許請求の範囲において一切特定されていないだけでなく,実施例においても好ましい流れやそのための条件が一切記載されていないのであり,審決は,甲7の発明1の流動層熱分解炉とサイクロン燃焼炉との組合せを維持しつつ,前段の流動層熱分解炉において何ら特定されていない流動媒体の流れとして,「循環流」という周知技術を採用しているだけである。また,仮に,甲7の発明1が,循環流が形成されていない流動層を前提とするものであったとしても,甲7の発明1の流動層における流動媒体の流れとして,「循環流」という周知技術を採用すると,甲7の発明1の流動層の機能が「完全ガス化あるいは完全燃焼」となるなどあり得ない。
また,原告は,甲7の発明1に甲8公報等に記載された技術を適用すると,キャリーオーバーが発生するので,その適用には阻害要因が存在する旨主張する。
原告主張の上記阻害要因は,流動層における流動媒体の流れとして循環流を採用すると,他の流動媒体の流れを採用した場合よりも飛散するチャーの粒径が微細となってキャリーオーバーの問題が増大するということを前提とするものと考えられるが,流動層中の微粒子は,上昇流が終末速度以上になると炉外に飛散することとなり,この終末速度は,粒径が小さくなるほど小さくなるものであって,流動層炉から飛散する微粒子の粒径は,同伴するためのガスの流速によって定まるものであり,循環流の有無は,飛散する最終的な微粒子の粒径とは無関係である。また,仮に,飛散するチャーの粒径が,他の流れを採用する場合よりも微細となるとしても,そのようなチャーは,微細であるため自燃して短時間で消滅しやすくなるはずであり,原告のキャリーオーバーに関する主張は,前提から誤っている。
甲7公報には,実施例において電気集じん器を設ける旨が記載されているのであるから,甲7の発明1においても一部のキャリーオーバーについては予定され,それに対し,電気集じん器を設ける程度のことは甲7の発明1においても予定されていることといえるし,本件明細書には,サイクロン燃焼炉の性能の特定はなされておらず,高性能なサイクロン燃焼炉を用いることも当然に課題を解決する発明の範囲に含まれるものであり,この程度の対策は,課題に記載された「特別な対策」に該当するものではない。そして,現実に,飛灰の大半(80%程度)はサイクロン燃焼炉で捕捉することができるのであり,実際にその程度の捕集率で十分に実機として機能しているのであるから,高性能化したサイクロン燃焼炉において一部がキャリーオーバーするとしても,阻害要因に該当しない。
4取消事由4(相違点Bについての認定判断の誤り)について( )原告は,被処理物が「ガラス繊維を含む廃棄プラスチック」に特化され,1その特化された被処理物固有の問題を解決するための甲14発明の流動層炉内の温度範囲と甲7の発明1の熱分解炉の温度範囲が技術的意義が異なり,甲14発明の温度範囲を,甲7の発明1に組み合わせる動機付けはない旨主張するが,失当である。
甲7の発明1と甲14発明とは,ともに廃棄物を流動層炉を用いて処理するものであり,技術分野を共通にするものであることから,両発明を組み合わせる動機付けがある。また,両発明の熱分解炉は,廃棄物を熱分解し,熱分解ガスと灰分とを次段の旋回式溶融炉に供給する点において作用機能を共通にするものであるから,その組合せの動機付けがある。
原告は,甲14発明が「ガラス繊維を含む廃プラスチック」に特化した発明であることを根拠に動機付けを否定するのであるが,ガラス繊維を含む廃棄プラスチックも甲7の発明1の処理対象に含まれる。
( )原告は,多量に生成されたガス,タール,チャーの可燃分の大部分を次段2の溶融炉に安定して供給するという新規な目的,課題に対応するために最適化された温度範囲を規定したのが相違点Bに係る本件発明1の構成であり,このような目的,課題は,甲14公報に開示されていない旨主張するが,本件発明1の技術的意義についての主張は,前記1のとおり,本件明細書の記載と矛盾するものであり,また,甲14発明は,本件発明1と同様に,前段で熱分解し,熱分解生成物である分解ガスを次段で利用するものであり,甲14公報には,前段を温度制御して,次段で補助燃料が必要とならない程に可燃分を生成するという思想も記載されていて,本件発明1と甲14発明の流動層炉の温度範囲の技術的意義が全く異なる旨の原告の主張は根拠がないし,結果的には,本件発明1と同じ程度に,多量の可燃分が安定して生成されるものであり,その点において,本件発明1と異なるものではない。
さらに,流動層炉を用いて熱分解を行う温度として,450℃から650℃は極めて一般的な温度であり,このことは,甲14公報,甲12文献,甲27公報及び特開昭60-96823号公報(甲13,以下「甲13公報」という。)等の記載からも明らかである。
5取消事由5(相違点Cについての認定判断の誤り)について( )原告は,甲7の発明1においては,熱分解で生成されたチャーが生成され1た状態で微細粒子であり,生成されたチャーがさらに微粒子とされることはないとして,甲7公報に「熱分解過程で可燃ガスとチャーが生成され,該チャーと該灰分が微細粒子,すなわち微粒子となることが記載されている」(審決謄本27頁最終段落〜28頁第1段落)とした審決の認定が誤りであることを前提として,相違点Cについての審決の認定判断が誤りである旨主張するが,甲7公報についての審決の認定に誤りはないから,失当である。
( )原告は,甲10公報の記載は,甲7公報において,熱分解過程で可燃ガス 2とチャーが生成され,該チャーと該灰分が微細粒子,すなわち微粒子となることが記載されていることを裏付けるものではない旨主張するが,甲7の発明1の流動層と甲10公報の流動層は,同じように流動媒体の流れが存在し,この流動媒体中で流動媒体を介して被処理物を加熱するという点で共通し,甲10公報の記載は裏付けとなるし,甲10公報の流動層が最終的に焼却まで行う流動層であっても,焼却の途中経過においてガスとチャーが生成され,チャーが微粒子となることが示されていれば,裏付けには十分である。
6取消事由6(本件発明1の奏する顕著な効果の看過)について原告は,本件発明1について,顕著な効果を否定する審決が誤りである旨主張するが,失当である。
原告は,本件発明1について,ガス,タール,チャーの可燃分の大部分を次段の溶融燃焼炉において利用できる旨主張するが,甲7公報には,流動層炉において,少量の空気で,低空気比として,熱分解に必要な発熱量に見合って部分燃焼させ,このような部分燃焼で生じたガス及びチャーをサイクロン燃焼炉に導入し,サイクロン燃焼炉において,特に燃料を要しない程度に利用できることが記載されている。供給空気量を抑えて低温(例えば,450℃など)にした場合に未燃成物である可燃分が多量に発生することは,技術常識であるから,ガス,タール,チャーの可燃分の大部分を次段の溶融燃焼炉において利用できるという原告主張の効果は,甲7公報のみからも,また,甲7公報及び甲14公報の記載からも,極めて容易に予測できるものである。
また,原告は,本件発明1の「循環流」が,流動層炉内にとどまりがちなチャーを微粒子とし,その大部分を溶融炉に送るという作用機能を有していることを前提として,このような「循環流」の存在と本件発明1の効果とを関係付けているが,原告主張の「循環流」の作用機能は,前記1( )のとおり,本件1明細書の記載と矛盾し,また,甲8公報に記載された発明についての原告主張とも矛盾する。
さらに,原告は,本件発明1が,「循環流」が流動層炉内にとどまりがちなチャーを微粒子とし,その大部分を溶融炉に送るという作用機能を有していることを前提として,処理する廃棄物の質や量が変動しても変動が抑えられ,処理対象の廃棄物が質的及び量的に変化する廃棄物処理特有の課題において,ガス,タール,チャーの可燃分を多量に含む均質な生成ガスを得るという効果を奏する旨主張するが,その前提が誤りであり,また,温度制御,特に低温制御によって反応の安定化,暴発の防止などの効果が得られることは,甲12文献,甲26公報,甲27公報の記載に照らしても,極めて常識的なものにすぎない。
7取消事由7(本件発明2についての進歩性の認定判断の誤り)について原告は,本件発明1に「流動層炉は,流動層温度が450℃〜650℃に維持されること」との構成を付加した本件発明2の進歩性を否定した審決の認定判断が誤りである旨主張するが,失当である。
原告は,上記構成が周知技術であることの認定に用いられた甲12文献等に記載された技術的思想が甲7の発明1,本件発明2と異なるとして,審決の認定判断が誤りである旨主張する。
しかし,審決は,本件出願日当時の技術水準から見て,「流動層炉は,流動層温度が450℃〜650℃に維持されること」が周知であるか否かを認定するのに,技術水準を示す資料として,先行文献を参照しているのであり,先行文献に記載された各発明について,それを甲7の発明1に適用できるとしているものではないから,原告の主張は失当である。そして,審決によって認定された周知技術は,都市ごみ等を流動層炉の熱分解,焼却によって処理するための技術であり,同じく都市ごみ等を流動層炉で熱分解する甲7の発明1に適用するのに極めて適しているものである。
また,原告は,本件発明2について,本件発明1の効果と同様の効果を主張し,本件発明2が格別顕著な効果を奏するものとみることはできないとする審決の判断が誤りである旨を主張するが,本件発明1と同様,原告主張の効果は認められない。
そもそも,本件発明2は,本件発明1に「流動層炉は,流動層温度が450℃〜650℃に維持されること」との構成を付加したものであるが,本件発明1には「炉内を450℃〜650℃に維持し」との構成が存在し,炉内には流動層及びフリーボードが含まれるのであるから,「炉内を450℃〜650℃に維持し」た構成を採用すると,結果的に,「流動層が450℃〜650℃に維持されること」となる。したがって,本件発明2は,一見構成が付加されているようであるが,実質的には本件発明1から何ら減縮されていないのであり,付加した構成について議論するまでもなく,本件発明2は,本件発明1と同様の理由によってもその進歩性が否定される。
8取消事由8(本件発明6についての進歩性の認定判断の誤り)について原告は,甲7の発明1及び審決が周知技術認定の根拠とした文献には,いずれも,循環流中でガス化してガスとチャーを生成し,生成したチャーを循環流中で微粒子とすることが記載されていない旨主張し,それらにより本件発明6に係る構成に想到することができない旨,また,「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し,前記流動媒体の循環流は,質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給することにより形成され,前記質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスは,ともに空気であり」との技術は,焼却炉において周知であっても,ガス化炉においては周知,公知ではない旨主張するが,失当である。
流動層炉では,空気量の調整によってガスとチャーを生成するガス化炉としたり可燃分をほとんど燃焼させる焼却炉とすることができるものであり,「質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスは,ともに空気であること」との構成を有する流動層炉においても,空気量の調整次第でガス化炉としたり焼却炉としたりできるものであるから,構成自体の周知性はガス化炉及び焼却炉についてのいずれの文献からも認定されるものであるし,その構成は,「循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子と(する)」ための構成といえるものではない。また,少なくとも甲8公報,甲10公報には,ガス化によって生成したガスと微粒子となったチャーを排出することが記載されている。
9取消事由9(本件発明7についての進歩性の認定判断の誤り)について原告は,本件発明7で付加した「流動層炉へ供給される流動化ガスは,廃棄物の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下の空気量を含むこと」との構成は,「循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子と(する)」ための構成であり,審決が周知技術認定の根拠とした文献には,いずれも流動層からガスとチャーを排出する記載はなく,これらの文献に記載された空気比が,廃棄物をガス化しガスとチャーを生成する流動層の空気比として周知であるということはできない旨主張するが,失当である。
そもそも,甲7公報には,「流動層での部分燃焼」が記載されているのであるから,「流動層炉へ供給される流動化ガスは,廃棄物の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下の空気を含む」との構成自体の周知性を認定すれば,本件発明7の進歩性は否定される。また,甲28公報,甲12文献,甲30公報の記載から,「ガス化してガスとチャーを生成する流動層の空気比として理論空気量の30%以下とすること」も十分に周知であると認められる。
10取消事由10(本件発明10についての進歩性の認定判断の誤り)について( )原告は,審決の本件発明10と甲7の発明2の一致点の認定が誤りである1旨主張するが,これは,取消事由2(本件発明1と甲7の発明1の一致点の認定の誤り,相違点の看過)と同様の主張であり,取消事由2に理由がないのと同様,失当である。
( )原告は,相違点E,F及びGについての審決の認定判断の誤りを主張する2が,それぞれ,取消事由3ないし5(相違点AないしCについての認定判断の誤り)と同様の主張であり,取消事由3ないし5に理由がないのと同様,失当である。また,原告は,本件発明10の奏する顕著な効果の看過を主張するが,取消事由6(本件発明1の奏する顕著な効果の看過)と同様の主張であり,取消事由6に理由がないのと同様,失当である。
11取消事由11(本件発明11についての進歩性の認定判断の誤り)について原告は,方法の発明である本件発明2に対応する装置の発明である本件発明11の進歩性を否定した審決の認定判断の誤りを主張するが,本件発明2に進歩性がないから,失当である。
12取消事由12(本件発明16についての進歩性の認定判断の誤り)について原告は,本件発明16の「流動層温度を450℃〜650℃に維持し」との構成に係る認定判断については,取消事由7(本件発明2についての進歩性判断の誤り)のとおり,審決の認定判断に誤りがあるから,本件発明16についての認定判断も誤りである旨主張するが,取消事由7に理由がないから,失当である。また,原告は,相違点A及びCに係る本件発明16の構成についても,取消事由3(相違点Aについての認定判断の誤り),取消事由5(相違点Cについての認定判断の誤り)と同様,審決の認定判断が誤りである旨主張するが,取消事由3及び5に理由がないから,失当である。
13取消事由13(本件発明19についての進歩性の認定判断の誤り)について原告は,審決が,相違点I,K及びLに係る本件発明19の構成についての認定判断を誤った旨主張するが,相違点I及びLについては,それぞれ,取消事由3(相違点Aについての認定判断の誤り),取消事由5(相違点Cについての認定判断の誤り)と同様の主張であり,それらの取消事由に理由がないから,失当であり,相違点Kについては,取消事由7(本件発明2についての認定判断の誤り)と同様の主張であり,取消事由7に理由がないから,失当である。
また,原告は,本件発明1の効果として主張した内容に加えて,本件発明19は,流動媒体が循環使用され,鉄,アルミ等の有価金属を酸化しない状態で回収できるので,リサイクルに好適であるなどの効果を奏する旨主張する。しかし,本件発明1の効果として主張した内容については,本件発明1の効果についての原告の主張に理由がないから,失当であり,「鉄,アルミ等の有価金属を酸化しない状態で回収できる」との効果は,そもそも部分燃焼を行っている甲7の発明1においても奏されるものであり,不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻すとの構成は甲11公報,甲12公報に記載されるとおり周知の技術であって,このような構成によって流動媒体が循環使用されるとの効果も極めて当たり前の効果であり,本件発明19は,何ら顕著な効果を奏するものではない。
14取消事由14(本件発明3ないし9,11ないし15,17,18及び20についての進歩性の認定判断の誤り)について原告は,本件発明1,10,16及び19についての審決の認定判断に誤りがあることを理由として,それらの発明を引用する本件発明3ないし9,11ないし15,17,18及び20についての審決の認定判断が誤りである旨主張するが,本件発明1,10,16及び19についての審決の認定判断に誤りはないから,失当である。
第5当裁判所の判断1取消事由1(甲7の発明1の認定の誤り)について( )審決は,甲7公報に,「固形廃棄物を流動層熱分解炉に供給し,該熱分解1炉の流動層にてガス化した後,サイクロン燃焼炉にて灰分を溶融スラグ化する方法において,該流動層内の熱分解により生成されたガス並びにチャー及び灰分の微粒子を,サイクロン燃焼炉に供給し,サイクロン燃焼炉では灰分が捕捉され溶融スラグとなって排出口より排出される固形物の燃焼方法。」(審決謄本25頁最終段落)である甲7の発明1が記載されていると認定したが,原告は,その認定が誤りである旨主張する。
( )原告は,まず,審決が,本件発明1を含む本件発明の技術的意義を正解し2なかったために,甲7の発明1の認定を誤った旨主張するので,本件明細書についてみると,以下のとおりの記載がある。
ア「【産業上の利用分野】本発明は,流動層炉において可燃物をガス化し,生成された可燃ガス及び微粒子を熔融燃焼炉において高温燃焼させ灰分を熔融する方法及び装置に関する。」(段落【0001】)イ「【従来の技術】近年,多量に発生する都市ごみ,廃プラスチック等の廃棄物を焼却し減量化すること,及びその焼却熱を有効利用することが望まれている。廃棄物の焼却灰は,通常,有害な重金属を含むので,焼却灰を埋め立てにより処理するためには,重金属成分を固化処理する等の対策が必要である。これらの課題に対応するため,特公昭62-35004号公報の固形物の燃焼方法及びその装置が提案された。この公報の燃焼方法においては,固形物原料が流動層熱分解炉において熱分解され,熱分解生成物,即ち,可燃ガス及び粒子,がサイクロン燃焼炉に導入される。サイクロン燃焼炉の中で加圧空気により可燃分が高負荷燃焼され,旋回流により灰分が壁面に衝突し溶けて壁面を流下し,熔融スラグとなって排出口から水室へ落下し固化される。特公昭62-35004号公報の方法においては,流動層全体が活発な流動化状態であるため,生成ガスに同伴して炉外へ飛散する未反応可燃分が多いため,高いガス化効率が得られない等の短所があった。また,従来,流動層炉が使用できるガス化原料としては,石炭等の場合は,粒径0.5〜3mmの粉炭,廃棄物の場合は,数十mmの細破砕物とされてきた。これより大きいと流動化を阻害するし,これより小さいと完全にガス化されないまま未反応可燃分として生成ガスに同伴して炉外へ飛散してしまう。従って,これまでの流動層炉では,ガス化原料を炉に投入する前の前処理として,予め粉砕機等を用いて破砕・整粒することが不可欠であり,所定の粒径範囲に入らないガス化原料は,利用できず,歩留まりをある程度犠牲にせざるをえなかった。」(段落【0002】,【0003】)ウ「上記の問題を解決するため,特開平2-147692号公報の流動層ガス化方法及び流動層ガス化炉が提案された。この公報の流動層ガス化方法においては,炉の水平断面が矩形にされ,炉底中央部から炉内へ上向きに噴出される流動化ガスの質量速度が,炉底の2つの側縁部から供給される流動化ガスの質量速度より小さくされ,炉底側縁部の上方で流動化ガスの上向き流が炉中央部へ転向され,炉中央部に流動媒体が沈降する移動層が形成され,炉の両側縁部に流動媒体が活発に流動化する流動層が形成され,移動層に可燃物が供給される。流動化ガスは,空気と蒸気の混合物,又は酸素と蒸気の混合物であり,流動媒体は,珪砂である。しかしながら,この特開平2-147692号公報の方法は,次の短所を有する。即ち,(1)移動層及び流動層の全体において,ガス化吸熱反応と燃焼反応が同時に生じ,ガス化し易い揮発分がガス化すると同時に燃焼され,ガス化困難な固定炭素(チャー)やタール分等は,未反応物として生成ガスに同伴して炉外へ飛散し,高いガス化効率が得られない。(2)生成ガスを燃焼させ蒸気及びガスタービン複合発電プラントに使用する場合,流動層炉を加圧型とすることが必要であるが,炉の水平断面が矩形のため,加圧型とすることが困難である。好ましいガス化炉の内圧は,生成ガスの用途によって決定される。一般の燃焼用ガスとして使用する場合は,数千mmAq程度で良いが,ガスタービンの燃料として使用する場合は,数kgf/cm 以上が必要であり,更に,高効率ガス化複合発電用の燃料として使用2する場合には十数数kgf/cm 以上が適当である。」(段落【00024】,【0005】)エ「都市ごみ等の廃棄物処理については,依然として可燃性ごみの燃焼による減量化が,重要な役割を担っており,それに付随して,近年,ダイオキシン対策,媒塵の無害化,エネルギー回収効率の向上等,環境保全型のごみ処理技術の必要性が増大している。我が国の都市ごみの焼却量は,約100,000トン/日であり,都市ごみ全量のエネルギーは,我が国の消費電力量の約4%に相当する。現在,都市ごみのエネルギーの利用率は,約10%に止まっているが,利用率を高めることができれば,それだけ化石燃料の消費量が少なくなり,地球温暖化防止にも寄与できる。しかしながら,現在の焼却システムは,次の問題を含んでいる。即ち,@HC に□よる腐食の問題があり,発電効率を高くできない。AHC ,NOx,S □Ox,水銀,ダイオキシン等に対する公害防止設備が複雑化してコスト及びスペースが増大している。B法規制の強化,最終処分場の用地難等により,焼却灰の熔融設備の設置が増大しているが,そのため別設備の建設が必要であり,また電力等を多量に消費している。Cダイオキシンを除去するには,高価な設備が必要である。D有価金属の回収が困難である。」(段落【0006】,【0007】)オ「【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は,従来技術の前記の問題点を解消することにあり,都市ごみ,廃プラスチック等の廃棄物や石炭等の可燃物から多量の可燃分を含む可燃ガスを高効率で生成し,生成された可燃ガスの自己熱量により燃焼灰を熔融することができる処理方法及びガス化及び熔融燃焼装置を提供することにある。本発明においては,熔融炉へ供給される生成ガスは,自己熱量により1300℃以上の高温を発生するような充分な熱量を持ち,チャー,タールを含む均質なガスであるようにされ,またガス化装置から不燃物の排出が支障なく行われるようにされる。本発明の別の目的は,廃棄物中の有価金属を還元雰囲気の流動層炉内から酸化しない状態で取出し回収できるガス化方法及び装置を提供することにある。本発明の更に別の目的は,図面を参照する実施例の説明において明らかにされる。」(段落【0008】)カ「【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するため,本発明の廃棄物の処理方法の1態様は,廃棄物を流動層炉にてガス化した後に,熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において,流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し,該廃棄物を該流動層炉に供給し,炉内を450℃〜650℃に維持し,該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし,該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。前記流動層炉は,流動層温度が450℃〜650℃に維持される。前記流動媒体の循環流は,流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され,流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する。また,前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され,前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成される。更に,前記流動媒体の循環流は,質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給することにより形成される。前記質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスは,ともに空気である。
また,前記流動層炉へ供給される流動化ガスは,廃棄物の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下の空気量を含む。また,前記廃棄物に含まれる不燃物を流動層炉の炉底部より排出する。更に,前記流動媒体は砂である。
本発明のガス化及び熔融燃焼装置は,廃棄物をガス化する流動層炉と,該流動層炉内で生成されたガスとチャーを燃焼して灰分を熔融する熔融炉とを備えたガス化及び熔融燃焼装置において,前記流動層炉は流動化ガスを炉内に供給する流動化ガス供給手段を備え,該流動化ガス供給手段によって炉内に流動媒体の循環流を形成し,炉内を450℃〜650℃に維持して炉内に供給された廃棄物を該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし,前記熔融炉はガスとチャーを燃焼する燃焼室を備え,該燃焼室によって前記流動層炉より排出されたガスと該微粒子となったチャーを燃焼して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。前記流動層炉は,流動層温度が450℃〜650℃に維持される。前記流動媒体の循環流は,流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され,流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する。また,前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段によって形成され,前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段によって形成される。前記流動化ガス供給手段は,質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段と,質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段とからなる。更に,前記熔融炉の燃焼室は,ほぼ垂直方向の軸線を有する円筒形室からなり,該円筒形室の頂部に前記ガスとチャーを導入し,該円筒形室で該ガスとチャーを旋回させ,該円筒形室の下部には水平方向に対して傾斜して延びた室が連通され,前記熔融した灰分を該傾斜して延びた室の底部よりスラグとして排出する。
本発明の廃棄物の処理方法の他の態様は,廃棄物を流動層炉にてガス化した後に,熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において,流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し,該廃棄物を該流動層炉に供給し,流動層温度を450℃〜650℃に維持し,該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし,該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。前記流動媒体の循環流は,流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され,流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する。また,前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され,前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成される。
本発明の廃棄物の処理方法の更に他の態様は,廃棄物を流動層炉にてガス化した後に,熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において,流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し,該循環流は流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層が形成され,流動媒体が該移動層及び流動層を通って循環する循環流であり,該廃棄物を該流動層炉に供給し,流動層温度を450℃〜650℃に維持し,該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし,該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し,該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し,該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。更に,前記不燃物と流動媒体は,前記炉底部より下方へ取り出し,水平方向に定量排出した後,該不燃物と該流動媒体は分別される。
本発明においては,可燃物が流動層炉で可燃ガスにガス化される。
本発明の方法において,流動層炉の水平断面がほぼ円形にされ,流動層炉へ供給される流動化ガスが,炉底中央部付近から炉内へ供給される中央流動化ガス及び炉底周辺部から炉内へ供給される周辺流動化ガスから成り,中央流動化ガスの質量速度が,周辺流動化ガスの質量速度より小にされ,炉内周辺部上方における流動化ガスの上向き流が炉の中央部へ向うように傾斜壁により転向され,それによって,炉の中央部に流動媒体(一般的には,硅砂を使用)が沈降拡散する移動層が形成されると共に炉内周辺部に流動媒体が活発に流動化している流動層が形成され,炉内へ供給される可燃物が,移動層の下部から流動層へ及び流動層頂部から移動層へ,流動媒体と共に循環する間に可燃ガスにガス化され,中央流動化ガスの酸素含有量が,周辺流動化ガスの酸素含有量以下であり,流動層の温度が450〜650℃に維持される。」(段落【0009】)キ「【作用】本発明のガス化装置は,流動層炉の循環流により熱が拡散されるので,高負荷とすることができ,炉を小型にすることができる。本発明においては,流動層炉が少量の空気で燃焼を維持できるので,流動層炉を低空気比低温度(450〜650℃)とし,発熱を最小限に抑えて,ゆるやかに燃焼させることにより,可燃分を多量に含む均質な生成ガスを得ることができ,ガス,タール,チャーの可燃分の大部分を次段の熔融燃焼炉において利用できる。」(段落【0020】)ク「本発明においては,流動層炉へ供給される中央流動化ガスの質量速度が,周辺流動化ガスの質量速度より小にされ,炉内周辺部上方における流動化ガスの上向き流が炉の中央部へ向うように転向され,それによって,流動媒体の沈降拡散する移動層が炉の中央部に形成されると共に,炉内周辺部に流動媒体が活発に流動化している流動層が形成される。炉内へ供給された可燃物は,移動層の下部から流動層へ及び流動層頂部から移動層へ,流動媒体と共に循環する間に可燃ガスにガス化される。可燃物は,最初に,炉中央の下降する移動層の中で,主として揮発分が流動媒体(一般的には,硅砂を使用)の熱によりガス化される。そして,移動層を形成する中央流動化ガスの酸素含有量が,小さ(い)ため,移動層内で生じた可燃ガスは,ほとんど燃焼されずに中央流動化ガスと共にフリーボードへ上昇され,発熱量の高い良質の生成ガスとなる。移動層において揮発分が失われ加熱された可燃物,即ち,固定炭素(チャー)やタール分等は,次に流動層内へ循環され,流動層内の比較的酸素含有量の多い周辺流動化ガスと接触し燃焼され,燃焼ガス及び灰分に変わると共に炉内を450〜650℃に維持する燃焼熱を発生する。この燃焼熱により流動媒体が加熱され,加熱された流動媒体が炉周辺部上方で炉中央部へ転向され移動層内を下降することにより移動層内の温度を揮発分のガス化に必要な温度に維持する。可燃物が投入される炉中央部ほど低酸素状態であるので,高い可燃分を有する生成ガスを発生することができる。また,可燃物中の金属が不燃物取出口から未酸化の有価物として回収することができる。」(段落【0021】,【0022】)ケ「可燃物供給口104から移動層9の上部へ供給された可燃物11は,流動媒体と共に移動層9中を下降する間に,流動媒体の持つ熱により加熱され,主として揮発分がガス化される。移動層9には,酸素が無いか少ないため,ガス化された揮発分から成る生成ガスは燃焼されないで,移動層9中を矢印116のように抜ける。それ故,移動層9は,ガス化ゾーンGを形成する。フリーボード102へ移動した生成ガスは,矢印120で示すように上昇し,ガス出口108から生成ガス29として排出される。移動層9でガス化されない,主としてチャー(固定炭素分)やタール114は,移動層9の下部から,流動媒体と共に矢印112で示すように炉内周辺部の流動層10の下部へ移動し,比較的酸素含有量の多い周辺流動化ガス8により燃焼され,部分酸化される。流動層10は,可燃物の酸化ゾーンSを形成する。流動層10内において,流動媒体は,流動層内の燃焼熱により加熱され高温となる。高温になった流動媒体は,矢印118で示すように,傾斜壁6により反転され,移動層9へ移り,再びガス化の熱源となる。
流動層9の温度は,450〜650℃に維持され,抑制された燃焼反応が継続するようにされる。」(段落【0028】,【0029】)コ「図1及び図2に示すガス化炉1によれば,流動層炉2にガス化ゾーンGと酸化ゾーンSが形成され,流動媒体が両ゾーンにおいて熱伝達媒体となることにより,ガス化ゾーンGにおいて,発熱量の高い良質の可燃ガスが生成され,酸化ゾーンSにおいては,ガス化困難なチャーやタール114を効率良く燃焼させることができる。それ故,可燃物のガス化効率を向上させることができ,良質の可燃ガスを生成することができる。」(段落【0030】)サ「【発明の効果】(1)本発明のガス化装置は,流動層炉の循環流により熱が拡散されるので,高負荷とすることができ,炉を小型にすることができる。(2)本発明においては,流動層炉が少量の空気で燃焼を維持できるので,流動層炉を低空気比低温度(450〜650℃)とし,発熱を最小限に抑えて,ゆるやかに燃焼させることにより,可燃分を多量に含む均質な生成ガスを得ることができ,ガス,タール,チャーの可燃分の大部分を次段の熔融燃焼炉において利用できる。(3)本発明においては,流動層炉の循環流により大きな不燃物も容易に排出できる。また,不燃物中の鉄,アルミが,未酸化の有価物として利用できる。(4)本発明によれば,ごみ処理を無害化し,高いエネルギ利用率を有する方法又は設備が提供される。」(段落【0056】〜【0059】)上記記載によれば,本件明細書には,本件発明は,廃棄物から多量の可燃分を含む可燃ガスを高効率で生成し,生成された可燃ガスの自己熱量により燃焼灰を溶融することができる処理方法等の提供を目的とすること,移動層内で生じた可燃ガスは,ほとんど燃焼されずにフリーボードに上昇し,良質の生成ガスとなり,チャーが流動層において燃焼されることで,燃焼熱を発生し,燃焼ガス,灰分になること,ガス化ゾーンGにおいて,良質の可燃ガスが生成され,酸化ゾーンSにおいては,チャー等を効率よく燃焼させ,「それ故」(上記コ)可燃物のガス化効率を向上させ,良質の可燃ガスを生成できることは記載されているが,生成されたチャーについて,従来技術と比較した粒径や生成量についての記載はない。
原告は,本件発明においては,チャーを流動層炉内にとどまらせずに,可燃ガスに同伴して溶融炉に供給することができ,炉内に供給される廃棄物の質や量が変動しても低温域で廃棄物をガス化させて安定して可燃ガスと多量のチャーを生成し,ガス,タール,チャーの可燃分を多量に含む均質な生成ガスを得て,ガス,タール,チャーの可燃分の大部分を次段の溶融燃焼炉において利用できるようにしたという技術的意義がある旨主張するが,上記のとおりの本件明細書の記載,殊に,上記イのとおり,従来技術の課題として,未反応可燃分がガス化されずに炉外に飛散したこと,及び,チャー等が未反応物として炉外に飛散し,高いガス化効率が得られなかったことが記載されていることを併せ考慮すると,本件発明について,ガス化効率を高め,良質の生成ガスを得ることを目的としているものであることは認められるものの,更に進んで,次段の溶融炉に供給するという目的で,従来技術によるものよりも,チャーの粒径を小さくし,また,チャーを多量に生成することについてまでの技術的意義が記載されているものとは認められない。
(3)甲7公報には,以下の記載がある。
ア「固形物原料を,流動層熱分解炉において熱分解を行い,熱分解生成物をサイクロン燃焼炉に導入し,該サイクロン燃焼炉の中で加圧空気により可燃分を燃焼せしめ,灰分の分離を行うことを特徴とする固形物の燃焼方法。」(特許請求の範囲の請求項1)イ「本発明は,都市ごみ,廃プラスチックなどの固形廃棄物や,スラジなどの液の中に多く含まれている固形有機物や,石炭などの固形燃料,その他の固形物の燃焼方法及びその装置に関するものである。」(1欄18行目〜22行目)ウ「周知のサイクロン燃焼炉は,強力な空気の旋回流によつて能率的な燃焼が可能となるのみならず,高負荷燃焼を行えば灰分をサイクロン内壁に捕捉溶融せしめて集じん性能を向上させると共に溶融スラグとして取り出せるという利点がある」(3欄9行目〜14行目)エ「本発明は,熱分解過程を流動層により行い,熱分解の生成ガス中に含まれるチヤー及び灰分が微細粒子となる事実を利用して,このガスをサイクロン燃焼炉に導入し,此処で加圧空気によつて可燃分(ガス及びチヤー)を燃焼せしめることにより,従来の方式の上記の欠点を除き,熱媒体の凝塊形成がなく,灰分の集じん性能が良好であり,流動層炉の大きさも小さくなり,重金属の溶出も防がれ,またサイクロン焼却炉用の特別な微粉砕前処理を必要としない高性能でありかつコンパクトで構造簡単な固形物の焼却方法及びその装置を提供することを目的とするものである。」(同欄32行目〜43行目)オ「本発明は,固形物原料を,流動層熱分解炉において熱分解を行ない,熱分解生成物をサイクロン燃焼炉に導入し,該サイクロン燃焼炉の中で加圧空気により可燃分を燃焼せしめ,灰分の分離を行なうことを特徴とする固形物の燃焼方法,及び,流動層熱分解炉とサイクロン燃焼炉とを備え,前記流動層熱分解炉の炉頂部出口と前記サイクロン燃焼炉の炉頂部入口とを熱分解生成物移送路にて接続し,かつ前記サイクロン燃焼炉に燃焼用加圧空気を供給する空気供給装置を備え,前記流動層熱分解炉の上部には原料固形物供給機構を備え,下部には不燃物排出口を備え,前記サイクロン燃焼炉の上部には排ガス出口を備え,下部には灰分排出機構を備えていることを特徴とする固形物の燃焼装置である。」(3欄44行目〜4欄14行目)カ「第1図及び第2図において,2は流動層熱分解炉,11はサイクロン燃焼炉である。流動層熱分解炉2においては上部に原料供給装置1を備え,下部には分散板6を備えてガス室5が仕切られている。4はガス室5へ流動化ガスを導入するガス入口であり,この流動化ガスが分散板6より噴出して砂を熱媒体とする流動層3を形成するようになつている。」(4欄16行目〜23行目)キ「サイクロン燃焼炉11においては,上部に接線方向に入口23が設けられ,上部中央には排ガスの出口18が設けられている。13は溶融スラグの流下を示す矢印であり,14は溶融スラグの排出口である。15は溶融スラグを冷却して粒状固化するための水室,16はコンベア,17は二重排出弁である。」(同欄28行目〜34行目)ク「空気エジエクタ9にはブロワ10により加圧空気が供給され,フリーボード7からのガスを吸引し,サイクロン燃焼炉11に供給するようになつている。」(同欄37行目〜40行目)ケ「都市ごみ,スラジなどの原料は原料供給装置1から流動層熱分解炉2に供給され,流動層3内で部分燃焼によつて残部が加熱されて熱分解される。空気はガス入口4からガス室5に入りガス分散板6を通つて砂を流動化させ且つ原料の一部を燃焼する。熱分解により生成したチヤーと可燃性ガス及び部分燃焼により発成した灰分と燃焼排ガスは,全て塔頂部フリーボード7から分解炉出口8に出て,空気エジエクタ9においてブロワ10により供給される加圧空気によつて,吸引加速され,空気とガスとの混合ガスはサイクロン燃焼炉11に接線方向に高速で送られ,矢印12の方向に強力な旋回流を生ぜしめられて熱分解生成物(ガス及びチヤー)は燃焼される。・・・サイクロン焼却炉11の外面は水冷室(図示せず)とし内面はカーボランダム又はクロム鉱耐火物とするとよい。高負荷燃焼を行わせると灰分は融けて壁面を点線矢印13のように流下し,灰分やチヤーは旋回流に基づく遠心力によつて壁面に衝突して融灰により濡れ状態となつた壁面に付着し,チヤーは高速の旋回流を行う空気との間に大きな相対速度を生ずるので極めて高い燃焼速度で燃焼する。又遠心力効果と濡れ壁効果とによつて灰分は高い効率で補捉され溶融スラグとなつて排出口14から水室15に落下し」(5欄2行目〜29行目)コ「上述の実施例は以上の如く構成され作用するので次の如き効果を有する。熱分解は吸熱反応であるから,熱分解に必要な発熱量に見合つた部分燃焼を行わせるような少量の空気を供給すればよいので,プラスチツクのような極めて高い発熱量の原料でも,@流動層の局部の異常高温による熱媒体(砂)の凝塊形成が無く,A部分燃焼であるから所要空気量が少いので,流動層の塔径を過大に設定する必要はない。又,熱分解過程を終つたあとでBサイクロン燃焼炉自体が集じん機能を果たすのみならず,高負荷燃焼を行えば灰分はサイクロン内壁に捕捉溶融され内壁面は濡れ状態となつて微細な灰分の集じん性能が向上し,C灰分を溶融することにより原料中の有害重金属が封じ込められて,埋立に際して重金属溶出を防ぐ為の固化処理等の対策が不要となる。更に,Dサイクロン燃焼炉に供給される固体は熱分解で生成したチヤーと部分燃焼で生成した灰分などの微細な粒子であるから,在来のサイクロン燃焼法に不可欠であつた原料の微破砕処理が不要となる。などの極めて優れた効果が得られる。」(6欄16行目〜40行目)上記によれば,甲7公報には,固形廃棄物を流動層熱分解炉に供給し,熱分解炉の流動層でガス化した後,サイクロン燃焼炉において灰分を溶融スラグ化する方法において,流動層内の熱分解により生成されたガス,チャー,灰分をサイクロン燃焼炉に導入し,サイクロン燃焼炉では,灰分が捕捉され溶融スラグとなって排出口から排出される固形物の燃焼方法が記載されている。
そして,熱分解の結果生成し,サイクロン燃焼炉に導入されるチャーについては,「熱分解過程を流動層により行い,熱分解の生成ガス中に含まれるチヤー及び灰分が微細粒子となる事実を利用して,」(上記エ),「熱分解により生成したチヤーと可燃性ガス及び部分燃焼により発成した灰分と燃焼排ガスは,全て塔頂部フリーボード7から分解炉出口8に出て,空気エジエクタ9においてブロワ10により供給される加圧空気によつて,吸引加速され,・・・」(同ケ),「サイクロン燃焼炉に供給される固体は熱分解で生成したチヤーと部分燃焼で生成した灰分などの微細な粒子であるから,在来のサイクロン燃焼法に不可欠であつた原料の微破砕処理が不要となる。」(同コ)との記載に照らしても,流動層炉の流動層における熱分解の結果発生するもので,流動層において,「微細粒子」となり,微破砕処理も不要であり,可燃性ガスに同伴するもので,微粒子となっていると認められる。
したがって,甲7の発明1を,前記( )のとおり,「固形廃棄物を流動層1熱分解炉に供給し,該熱分解炉の流動層にてガス化した後,サイクロン燃焼炉にて灰分を溶融スラグ化する方法において,該流動層内の熱分解により生成されたガス並びにチャー及び灰分の微粒子を,サイクロン燃焼炉に供給し,サイクロン燃焼炉では灰分が捕捉され溶融スラグとなって排出口より排出される固形物の燃焼方法。」と認定した審決に誤りはない。
( )原告は,本件発明1は,流動媒体が下降する移動層において廃棄物がガス4化されてガスとチャーが生成され,ガス化によって生成されたガスはフリーボードへと抜け,ガス化によって生成されたチャーを流動媒体の循環流により可燃ガスとは分離して流動媒体が上昇する流動層へと移動させて,比較的酸素含有量の多い周辺流動化ガスにより部分酸化させて微粒子とする処理をさらに行っているものであるとして,甲7公報には,上記構成に係る本件発明1の「該チャーを微粒子とし」との構成は記載されていない旨主張する。
本件発明1の特許請求の範囲の記載は,前記第2の2のとおり,「廃棄物を流動層炉にてガス化した後に,溶融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において,流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し,該廃棄物を該流動層炉に供給し,炉内を450℃〜650℃に維持し,該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし,該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とする廃棄物の処理方法。」というものであり,チャーについては,「該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成」すること,「該チャーを該循環流中で微粒子と(する)」というものである。同記載によって,本件発明1は,循環流中でガスとチャーが生成され,その循環流中でチャーが微粒子とされるという構成を備えるものであることが理解できるところ,それを超えて,特許請求の範囲の記載が,廃棄物がガス化されてガスとチャーが生成される工程と,生成されたチャーを流動媒体が上昇する流動層へ移動し部分酸化させて微粒子とする工程という2段階の工程を規定しているものとまでは認められない。
そうすると,チャーについて,本件発明1に,生成させる過程と生成されたチャーを流動媒体が上昇する流動層へ移動し部分酸化させる工程が規定されていることを前提として,甲7の発明1の認定の誤りをいう原告主張は,前提を欠くものであり,採用できない。
また,仮に,本件明細書の記載及び技術常識等から,流動層内の流動媒体を循環流とした流動層炉において,循環流中の下降流である移動層でガス化がされ,循環流中の上昇流である流動層においてチャーが部分酸化することがあったとしても,後記5( )のとおり,流動層内の流動媒体の流れを循環2流とした場合には,そのような作用は当業者が容易に予測し得るものにすぎないのであって,循環流におけるチャーの生成及びチャーを微粒子とすることに係る構成については,別途,相違点Cとして認定され,その容易想到性について判断されているのであるから,上記流動層においてチャーが部分酸化することがあることが,審決の上記甲7の発明1の認定及び相違点の認定判断に影響するものではない。
( )したがって,原告主張の取消事由1は理由がない。
52取消事由2(本件発明1と甲7の発明1の一致点の認定の誤り,相違点の看過)について( )審決は,本件発明1と甲7の発明1が,「廃棄物を流動層炉にてガス化し 1た後に,熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において,該廃棄物を該流動層炉に供給し,該流動層炉より排出されたガスと微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化する廃棄物の処理方法。」(審決謄本26頁第2段落)の点で一致すると認定したのに対し,原告は,本件発明1と甲7の発明1が,流動層炉から溶融炉にチャーを供給する過程が全く異なっているとして,本件発明1と甲7の発明1において,流動層から溶融炉に同じように微粒子のチャーが供給されているとして一致点を認定した審決が誤りである旨主張する。
原告の同主張は,本件発明1が,廃棄物をガス化してガスとチャーを生成するという工程と,流動媒体の循環流により可燃ガスとは分離して流動媒体が上昇する流動層へと移動させて,比較的酸素含有量の多い周辺流動化ガスにより部分酸化させて微粒子とする処理をするという工程という2段階の工程があることを前提とするものであると解される。しかし,前記1のとおり,本件発明1が原告主張のような構成のものであるとは認められないし,また,仮に,循環流中の下降流である移動層でガス化がされ,循環流中の上昇流である流動層においてチャーが部分酸化することがあったとしても,そのような作用は当業者が容易に予測し得るものにすぎないのであって,循環流におけるチャーの生成及びチャーを微粒子とすることに係る構成については,相違点Cとして認定され,その容易想到性について判断されているのであるから,上記流動層においてチャーが部分酸化することがあることが,審決の相違点の認定判断に影響するものではない。
( )原告は,本件発明1と甲7の発明1では,溶融炉に供給されるガスとチャ2ーを得る過程が異なるのであるから,溶融炉にガスとチャーが一連の過程を経て得られるものであることを規定した本件発明1の「該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して」との構成も,本件発明1と甲7の発明1の相違点として認定されるべきであるとして,審決が同相違点を看過した旨主張するが,上記( )と同様の理由で,失当で1ある。
(3)したがって,原告主張の取消事由2は理由がない。
3取消事由3(相違点Aについての認定判断の誤り)について( )審決は,相違点Aに係る本件発明1の構成について,「甲7(注,甲7公1報)の流動層炉の流動層中に発生する流れを,相違点Aに係る本件発明1の構成,すなわち『流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し』たことは,甲7の発明1に上記認定した周知の技術を適用することにより当業者であれば容易に想到することができたものというべきである。」(審決謄本27頁第5段落)としたのに対し,原告は,その認定判断が誤りである旨主張する。
( )そこで,相違点Aに係る流動層炉における循環流に関する本件出願日前の2技術水準について検討する。
ア甲8公報には,以下の記載がある。
(ア)「ガス化炉の炉底部より上方に向けて噴出せしめた流動化ガスにより,流動媒体を流動化して形成せしめた流動層により,石炭等をガス化する流動層ガス化方法において,・・・前記流動化ガスは,中央部よりも両側縁部が低く形成されているガス分散機構から噴出せしめられ,前記流動化ガスの質量速度を,前記炉底の中央部付近におけるよりも,該中央部の両側の両側縁部において,より大となし,・・・炉底の中央部には,流動媒体が沈降する移動層を形成し,両側縁部には流動媒体が活発に流動化している両側縁流動層を形成し,前記流動媒体を,前記移動層内で沈降せしめ,該移動層の下部で前記両側縁部に移行せしめ,前記両側縁流動層内で上昇せしめ,・・・炉内を循環せしめつゝ前記移動層に石炭等を供給して該石炭等のガス化を行なわしめることを特徴とする流動層ガス化方法。」(特許請求の範囲の請求項1)(イ)「従来の流動層では,層内全体を活発な流動化状態で均一に保とうとしたため,生成ガスに同伴して炉外へ飛散する未反応チャーの量が多く,高いガス化効率を得られなかつた。」(2頁左下欄11行目〜14行目)(ウ)「ガス化炉3にて生成したガスは,二段のサイクロン4によりガス中に含まれる固形物を分離する。一段目のサイクロンで分離された固形物中には,未反応チャーが含まれるので,再びガス化炉3に供給される。」(3頁右下欄最終段落)(エ)「ガス化炉3について説明する。第2図に示すごとく,ガス化炉3の炉底部には流動化用のガス化剤の分散板20が備えられている。分散板20は両側縁部が中央部より低く,炉の中心線36に対してほぼ対称な山形断面状に形成されている。両側縁部には不燃物及び灰分排出口30が接続され,32,33のスクリユーコンベアにより,粗大な不燃物が流動媒体とともに排出される。」(4頁左上欄7行目〜15行目)(オ)「予熱された酸素とスチームの混合ガスからなるガス化剤は,分散板20から炉内に噴出し,傾斜壁24に当たつて垂直面内の旋回流となり,珪砂などの流動媒体をこれに沿つて動かしめて旋回流動層35が形成される。さらに・・・炉内中央に下降移動層34が形成され,この下降移動層34及び旋回流動層35によつて石炭は短時間にガス化反応を完結させるため,粉砕・整粒を行なわなくとも流動化を阻害することなく高いガス化効率を得ることが出来る。予熱された酸素とスチームの混合ガスからなるガス化剤は,導入部の室21,22,23を経て分散板20から上方に噴出せしめられている。両側縁部の室21,23から噴出するガス化剤の質量速度は流動層を形成するのに十分な大きさを有するが,中央部の室22から噴出するガス化剤の質量速度は前者よりも小さく選ばれている。・・・中央部の室22から噴出する流動化ガス中の酸素濃度は,両側縁部の室21,23から噴出する流動化ガスよりも低いか,あるいはスチームのみとしてもよい。室の数は3以上の任意の数が選ばれる。多数の場合でも,流動化ガスの質量速度は中心に近いものを小,両側縁部に近いものを大となるようにする。両側縁部の室21,23の直上に流動化ガスの上向き流路をさえぎり,流動化ガスを炉中央に向けて反射転向せしめる反射壁として傾斜壁24が設けられている。」(4頁左上欄16行目〜左下欄9行目)(カ)「ガス化炉3の原理につき説明する。通常の流動層においては,流動媒体は沸騰している水のごとき激しい流動状態を形成しているが,室22の上方の流動媒体は弱い流動状態にある移動層34を形成する。この移動層34の幅は,上方は狭いが,裾の方は分散板20の傾斜の作用も相まつてやや広がつており,そこでは室21,23からの大きな質量速度のガス化剤の噴射を受け,流動化され上方に吹き上げられる。こうして裾の流動媒体が除かれるので,室22の直上の流動媒体の層は自重で降下する。この層の上方には,後述のごとく旋回流を伴う流動層35からの流動媒体が補給される。これを繰り返して室22の上方の流動媒体は,弱い流動状態の下降移動層34を形成する。室21,23上に移動した流動媒体は流動化され上方に吹き上げられるが,傾斜壁24により反射転回して炉の中央に向いて旋回し,前述の下降移動層34の頂部に移動し,徐々に降下し,移動層34の裾に至つて流動化され再び吹き上がつて循環する。一部の流動媒体は,旋回流として流動層35の中で旋回循環する。」(4頁左下欄16行目〜右下欄17行目)(キ)「下降移動層34の中では,石炭の乾留反応が主体的に,ガス化反応が部分的に行なわれ,ガスとチヤーが生成する。ここで生成したガスは上方または水平方向に抜け,チヤーは流動媒体と共に両側縁部の流動層部35へと移動し,流動化ガスとして供給された酸素とスチームの混合ガスからなるガス化剤と,部分燃焼をともなうガス化反応を引き起こす。下降移動層34の中で生成するガスは,ガス化剤の質量速度が小さいので,燃焼による損失を減らすことができる。」(5頁左上欄11行目〜右上欄1行目)(ク)「下降移動層34は,流動化が比較的穏やかなので,生成したチヤーのうち粒径がかなり細かいものでも,通常の流動層のようにガス化されずに飛散するようなことは起らない。例え一部が飛散しても,炉外でサイクロン4により捕集して,再度炉に戻せば,比較的容易にガス化することが可能である。」(5頁右上欄4行目〜10行目)(ケ)「そのため石炭はかなり大きなものでも,下降移動層34の中で徐々に下降しながら乾留が行なわれ,下降移動層34の両端に達するころには大半が細片化したチヤーになる」(5頁左下欄3行目〜6行目)(コ)「破砕設備が不要となるため,石炭のように簡単に破砕できない廃木材などのバイオマス原料や廃プラスチックを,ガス化原料として利用することが可能となる。・・・また破砕の困難な粗大不燃物を含むような,例えば現状では埋立て処分されている燃焼不適ごみを,ガス化原料として用いることもできる。」(5頁左下欄18行目〜右下欄7行目)(サ)「E・・・移動層の不活発な流動化の中で乾留による微粉化が行なわれる」(6頁右上欄12行目〜14行目)(シ)第2図には,石炭ガス化炉の縦断面図が図示されており,下降移動層34と流動層35とで流動媒体の循環流が形成されている構成が矢印で示されている。
イ上記アによれば,甲8公報には,ガス化炉において流動層炉内の流動媒体が循環流を形成していること,循環流中の「下降移動層」において,石炭のガス化反応が部分的に行われ,ガスとチャーが生成されること,流動層炉内の循環流中の上昇流である「流動層」において「生成されたチャーが部分燃焼を伴うガス化反応を引き起こす」こと,「石炭」は「下降移動層で乾留が行われ,大半が細片化したチャーになる」こと,「廃木材」,「廃プラスチック」及び「燃焼不適ごみ」が利用可能であることが記載されている。
ウ甲10公報には,以下の記載がある。
(ア)「本発明は,流動層を用いる焼却炉,熱分解炉などの熱反応炉に関するものである。この種の熱反応炉として,例えば都市ごみの焼却炉においては,近年ストーカ炉よりも燃焼効率がよく,かつ焼却残渣の少ない流動層炉が用いられて来ている。」(2頁左上欄2行目〜7行目)(イ)「ブロワ7から送られた流動化空気は,空気室43,44,45を経て分散板42から上方に噴出せしめている。両側縁部の空気室43,45から噴出する流動化空気の質量速度(kg/m ・sec)は流動層2を形成するのに十分な大きさを有するが,中央部の空気室44から噴出する流動化空気の質量速度は前者よりも小さく選ばれている。・・・空気室の数は3個以上の任意の数が選ばれる。多数の場合でも,流動化空気の質量速度は,中心に近いものを大に,両側縁部に近いものを小になるようにする。両側縁部の空気室43,45の直上に流動化空気の上向き流路をさえぎり,流動化空気を炉内中央に向けて反射転向せしめる反射壁として傾斜壁9が設けられている。」(4頁右上欄2行目〜左下欄1行目)(ウ)「焼却炉6の作用につき説明すれば,ブロワ7により,流動化空気を送り込み,空気室43,45からは大なる質量速度にて,空気室44からは小なる質量速度にて噴出せしめる。通常の流動層においては,流動媒体は沸とうしている水の如く激しく上下に運動して流動状態を形成しているが,空気室44の上方の流動媒体は激しい上下動は伴なわず,弱い流動状態にある移動層を形成する。この移動層の幅は上方は狭いが,裾の方は分散板42の傾斜の作用も相まつて,稍広がつており,裾の一部は両側縁部の空気室43,45の上方に達しているので,大きな質量速度の空気の噴射を受け,吹き上げられる。裾の一部の流動媒体が除かれるので,空気室44の直上の層は自重で降下する。この層の上方には後述の如く旋回流10を伴う流動層からの流動媒体が補給され堆積する。
これを繰り返して,空気室44の上方の流動媒体は,或る領域の部分がほぼひとまとめとなり,徐々に下降する下降移動層46を形成する。空気室43,45上に移動した流動媒体は上方に吹き上げられるが,傾斜壁9に当たり反射転向して炉の中央に向きながら上昇し,炉内断面の急増に伴い上昇速度を失い,前述の下降移動層46の頂部に落下し,徐々に下降し,裾に至つて再び吹き上げられて循環する。一部の流動媒体は旋回流10として流動層の中で旋回循環する。」(4頁右下欄4行目〜5頁左上欄10行目)(エ)「このような状態の焼却炉6の炉内に,原料投入口60から投入されたごみは下降移動層46の頂部に下降する。頂部付近においては流動媒体の流れは外側から中心に向かつて集中する方向に流れるので,ごみはこの流れに巻き込まれて下降移動層46の頂部にもぐり込まされる。・・・下降移動層46の中では部分的に熱分解が行なわれ可燃ガスが発生する。」(5頁左上欄11行目〜右上欄4行目)(オ)「下降移動層46の表面にびん,アイロンなどの如き重くかつ大きな物体を落下せしめて供給した場合,これらの物体は瞬時に空気室44の上まで落下するのではなく,下降移動層46に支えられて,流動媒体の流れと共に徐々に下降する。そのため,可燃物はかなりの大きさのものでも,下降移動層46の中で徐々に下降しているうちに乾燥,ガス化,燃焼が行なわれ,裾に達するときには大半が燃焼して細片化しているので,流動層の形成を阻害することがない。従つて,ごみは予め破砕機で破砕をしなくとも,給じん装置5で破袋する程度で差支えなく,破砕機や破砕工程を省略しコンパクトな装置とすることができる。」(5頁右上欄8行目〜左下欄1行目)(カ)「以上は焼却炉における例を示したが,熱分解炉その他の熱反応炉においても同様である。」(6頁左下欄18行目〜19行目)(キ)第9図には,焼却炉の縦断面図が図示されており,前記(ウ)の流動媒体の旋回流10が流動層炉の砂層中に生じていることが示されている。
エ上記ウによれば,甲10公報には,焼却炉において,質量速度の比較的大きい流動化ガスと質量速度の比較的小さい流動化ガスを供給することにより流動媒体の循環流を形成すること,循環流の下降移動層において,乾燥,ガス化等が行われること,焼却炉だけでなく,その技術は熱分解炉においても同様に適用できることが記載されている。
オ甲11文献には,以下の記載がある。
(ア)「一般の流動層焼却炉は,流動媒体(砂)があたかも沸騰している湯のように上下に動いて流動するかたちの流動層を形成しているが,本技術では移動層(のみ込み層)と流動層の組合せによって図1に示すように砂が適度に循環・旋回を行い,砂の沈降に伴い投入された燃焼物を熱砂の中にのみ込み,熱的に燃焼物を破壊し拡散する効果を持たせたものである。」(1034頁右欄10行目〜1035頁左欄3行目)(イ)「TIF旋回流型流動燃焼炉の構造図を図2に示す。流動床は空気分散部を四つのブロックに分け,おのおのに燃焼用空気を送り込むが,中央部の2ブロックには少量の空気を入れて移動層を作り,両端の2ブロックには多量の空気を入れて流動層を形成する。移動層と流動層との空気量の比は約1:3 である。」(1035頁左欄20行目〜27行目)(ウ)「この移動層と流動層の組合せに加えて,ディフレクタプレートによるガス流屈折作用の効果により,炉床全体の砂の上下運動に加えて旋回運動が生じる構造としてある。この旋回流により,下記の特長が生ずる。
( )移動層部では砂はゆっくりと斜め下方に移動している。ここに燃焼1物が投入されると,砂の熱により蒸し焼きにされ水分がなくなりもろくなる。( )もろくなった燃焼物は砂の旋回により拡散していき,流動層2部での激しい砂の動きにより解砕され細かくなり,短時間に燃えつきる。
( )したがって大きな燃焼物でも破砕せずに焼却することができる。」3(1035頁左欄28行目〜41行目)(エ)「燃焼物中の不燃物は砂の動きとともに炉の両側に送られ,砂とともに炉外に取り出すことができる。」(1035頁左欄末行〜右欄2行目)カ上記オによれば,甲11文献には,焼却炉の流動層において,質量速度の比較的大きい流動化ガスと質量速度の比較的小さい流動化ガスを供給することにより流動媒体の循環流を形成することが記載され,流動層中の上昇流である流動層部において,燃焼物が解砕されて細かくなり,燃焼することが記載されている。
キ実願昭57-111269号(実開昭58-58232号)の願書に添付された明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(甲21,以下「甲21マイクロフィルム」という。)には,以下の記載がある。
(ア)「3.〔考案の詳細な説明〕本考案は流動床式焼却炉に関する。・・・この様な流動床式の焼却炉に於ては硅砂等の流動媒体が使用されている。この如き流動床式焼却炉には通常流動媒体(本文に於ては砂と称する)が床面積全般に渉り流動化して,この砂の流動状態の部分の上方,所謂フリーボードと称する部分から焼却物の投入を行つて来た。しかしながらこの様な作動方式の場合には,次の様な問題が経験されている。
即ち( )焼却物中の比較的比重の小さい成分(例えば紙類,プラスチ1ツクス類等)は流動する砂の上部に於て停滞浮遊する。このため,これらの比較的可燃性傾向の高い成分は流動する砂の上部で良好に燃焼してもその燃焼による発生熱量は砂に伝達されることが少く従つてその熱が有効に利用されない。( )上記のため,砂の温度も不安定・不均一と2なり,従つて排ガス温度も変動が激しい。( )発生熱が砂に有効に還 3元伝達されないため,砂温を上昇させるために補助燃料(例えば助燃油)を必要とする場合が多く,燃料の節約が困難である。上記の如き比重の比較的低い焼却物,或いはこれらを含んだ焼却物を在来の流動床式焼却炉により焼却を有効に行うための方策としては焼却物を砂の上部に投入する代りに,砂の中,又は砂の底部に強制的に供給して砂の内部で燃焼させることが考えられる。この様にするためにはスクリユーフイーダ,等の機械的押込作用を行う装置が必要となる。但しこの様な装置を使用して強制押込を行うためには更に付随する問題が生ずる。即ち,(イ)砂中,又は砂の底部に於ての投入のため,流動化状態を維持している高い風圧をシールする必要がある。(ロ)スクリユーフイーダ等で強制的に押込む場合に焼却物自体によつてシール(マテリアルシール)を行わねばならないために,焼却物自体の形状が制限され,焼却に必要な程度以上に細かく破砕を行う必要がある。従つて,高馬力,高性能の破砕機が必要となる。本考案は従来の流動床燃焼方式による上記した如き種々の欠点,問題点を克服するための流動床式焼却炉を提供することを目的とするものである。」(2頁3行目〜4頁8行目)(イ)「本考案による焼却炉は具体的には,焼却炉内の砂の部分に於て二種類の流動層を生ぜしめること,即ち一部に於ては比較的激しい流動状態となる流動層を生ぜしめ,他方の部分に於ては流動化の程度を比較的低度,或いは実質的に流動を行わず砂が下方に移動することにより重力により逐次全体として下方に沈降する移動層を生ぜしめる様になつている。尚上記の流動層上部から流動状態の砂は移動層の方に偏向され,又移動層の下部からは流動層の下部に砂が移行する様にして,砂全体が二つの移動層,流動層の間で循環する様になされている。この様な態様は特開昭52-118858号に開示された熱反応装置に於ける流動床にも見られるが,この例に於ては流動床に焼却物を直接投入しているため,前述した問題が生ずる。本考案の方式に於ては炉体上部からフリーボードを介して落下する如く投入すれば移動層の上部に落下した焼却物の上に流動層の砂を受けて下方に漸次沈降する。又流動層上部に落下した焼却物は流動層上部から移動層上部にカスケード的に移行する砂と共に移動層上部に動き前述の如く移動層を沈降する。」(4頁9行目〜5頁10行目)(ウ)「以下本考案を添付の図面により説明する。第1図,第2図は本考案の理解に便ならしめるため,従来の炉を説明するものである。・・・第2図は別の形態の焼却炉で・・・この炉に於ては圧縮空気源からの流動化用圧力空気を多孔板11’又はサンドトラツプの下方の複数の空気室12a,12b,12cを介して砂13’中に送給し,その各々の風速を図に於ては12aより右の方の12cに至るにつれ順次大きくなしてある。又風速の大なる部分の上方に偏向手段としてのデフレクター17と旋回空気送入口18を設けて空気室12a,12b,12cからの風速差と相俟つて砂13’の循環を助長する様にしてある。」(6頁15行目〜8頁2行目)(エ)「第3図に本考案による流動床式焼却炉の断面図が説明図的に示されている。・・・炉体の内部下方に中央部を高く,両側部に向けて傾斜させた多孔板21又はサンドトラツプが配置されてその下方に空気室を形成する。空気室は22a,22b,22cに区分されている。この区分された領域室22a,22b,22cに対応する炉内の上方部分で移動層,流動層が形成されて・・・。A及びC領域の上方で炉体内部に於て炉体の両側壁に夫々デフレクター24が設けられ,デフレクター24はその下面が側壁から中央に向けて上向きに傾斜した面を有している。
・・・空気室22a,22b,22cには圧縮空気源31より空気を供給されるが,配管に適宜な圧力調整装置又はダンパ32,33を設けてダンパ32からは室22a,22cに圧縮空気を供給し,ダンパ33から中央の室22bに圧縮空気を供給する様にしてある。」(8頁7行目〜9頁13行目)(オ)「この焼却炉の作動方式について以下に説明する。前記の如く,流動化用空気は空気室22a,22b,22c,より多孔板21を介して夫々上方に送気され,領域A,B,Cの砂を流動化させるが,この送給空気量は両側領域A,Cに於て中央領域Bより大きくなる様にダンパ32,33により制御し領域A,Cに於ては激しい流動化が生じ中央領域Bに於ては流動化の程度を低度に,或いは実質的に流動化が行われない程度とする。この様な送給空気量の調整,制御により,領域A,Cの砂は激しい流動を行い上方に移行する砂はデフレクター24により中央領域Bの上部にカスケードされる。中央領域Bの砂の高さはこのため領域A,C,よりも高くなる傾向となる。従つて領域Bの砂は底部から領域A,Cの側に流れる様になる。このため,上記状態となされた砂の領域A,C,の部分を流動層,領域Bの部分を移動層と称する。デフレクターの反転偏向作用と,移動層部分A,Cと流動層部分Bとの砂層高即ち砂量差傾向により,領域A,Cの上方に於ける流動層から移動層へ,又B領域下方に於ける移動層から流動層への砂の移行が行われ,領域A,C,と領域Bとの間でほぼ均一な砂の循環流が得られる。」(9頁17行目〜10頁19行目)(カ)「領域A,B,C,の上部にデフレクターの存在により実質的にはBの上部に落下した焼却物中の比重の小さい部分は砂上に於て停滞し,そこで燃焼することなくA,Cの流動層からカスケードされてくる高温(例えば600〜800℃)の砂に覆われ移動層の砂と共に下方に沈降する。供給された焼却物は領域Bの下方に動き多孔板21の位置に至る間に,焼却物中にあるプラスチツク類は液化,又は一部ガス化し,水分を含むものは更に水分を蒸発させ焼却物は概ね脆化の傾向を示す。・・・領域A,Cの下方部分で移動層から流動層へと移行した焼却物は水分も蒸発し,より可燃性となつているため,多量の空気(流動用並びに燃焼用)により撹拌作用を伴つた激しい流動化状態となり,瞬時に燃焼する。焼却により生じたガスはデフレクター24下側と流動層領域A,Cの上方との間の間隙を通過し排気口26から排気ガス処理設備へ送られる。高温の砂は上記の如く再び移動層を形成し,沈降,循環を繰り返す。」(11頁13行目〜12頁15行目)(キ)「本考案の焼却炉は上記の如く構成されているから焼却物が砂の上部に停滞することがなく,焼却熱等は有効に砂に還元され,又移動層で沈降中により可燃性が高くなされて流動層に於て瞬時に燃焼し,砂の温度を均一に安定させ,排ガス温度変動が少い。又助燃油は殆んど必要がない。尚焼却物は移動層に於ける脆化の進行と,流動層に於ける激しい流動撹拌により破壊されて停滞することがなくクリンカの発生が実質的に防止されるので,比較的大きな粒径のものも焼却可能となるから前処理用破砕の程度は簡単,或いは省略も可能である。又投入は砂の上方から行うため,投入機に於けるシールはその部分の炉内圧に対するものを考慮するだけの簡単なものでよく,マテイアルシールの必要はなく,この面からも前処理破砕の必要性が低減されるか,省略され得る。」(14頁10行目〜15頁6行目)(ク)第3図には,流動層式焼却炉の縦断面図であり,流動層中で流動媒体が,左側(領域A側)においては時計回りに,右側(領域C側)においては反時計回りにそれぞれ循環し,中央部(領域B)では上方から下方へ沈降する様子が示されている。
ク上記キによれば,甲21マイクロフィルムには,焼却炉の流動層において,質量速度の比較的大きい流動化ガスと質量速度の比較的小さい流動化ガスを供給することにより流動媒体の循環流を形成すること,流動媒体が沈降する「移動層」において,「焼却物」が「ガス化,液化,脆化」し,流動媒体が上昇する「流動層」において,燃焼することが記載されている。
( )上記( )によれば,廃棄物の処理を行うガス化炉(熱分解炉。甲8公報,32甲10公報)及び焼却炉(甲10公報,甲11文献,甲21マイクロフィルム)において,流動層を設け,その流動層を循環流とすることは,本件出願日前に,周知の技術であったと認められる。そして,流動層ガス化炉と流動層焼却炉に係る技術は,流動層を用いて廃棄物を焼却ないし加熱して処分する方法の技術である点で共通し,また,流動層を循環流とする技術について,焼却炉にも熱分解炉にも適用される(前記( )ウ(カ))とされ,甲7公報にも,2「固形物を燃焼する場合,砂などの固体粒子を熱媒体とする流動層焼却炉は周知の様に多くの利点があるが,下記の欠点がある。・・・これを解決するために流動層熱分解方法が用いられ,この方法は吸熱反応であるので上記@の問題を解決し,Aの問題も部分燃焼法などを用いて解決することができる。
しかしながら,流動層熱分解方法においてもB及びCの問題点を解決することはできなかつた。」(1欄末行〜3欄8行目)として,廃棄物の焼却処分に当たり,熱分解炉と焼却炉の技術が比較検討されたことが記載されているように,流動層焼却炉と流動層ガス化炉が,密接に関連する技術分野に属するものであることは明らかである。
甲7の発明1は,廃棄物処理を行うガス化炉に係る発明であるから,上記周知技術に係る技術分野と技術分野が重なっているということができる。
そして,甲21マイクロフィルムにおいては,焼却炉の流動層において,流動層に循環流を設けない場合には,流動層に有効に熱が伝達されないという課題があったこと,流動層に循環流を設けることにより,その課題を解決したことが示されている(前記( )キ(ア))。また,甲8公報には,流動層に2循環流を設けなかったガス化炉においては,未反応のままでチャーが炉外へ飛散し,高いガス化効率が得られなかったという課題が存在したこと,循環, 流を設けることにより,その課題を解決したことが示されている(同ア(イ)(オ)及び(カ))。
甲7の発明1は,前記1( )のとおり,流動層において熱分解を行うもの3であって,流動層に対する効率的な熱の伝達を課題とし,また,ガス化によるガスを利用するものでガス化効率が高まることが望ましいといえるものであるから,その炉内の流動層について,上記甲21マイクロフィルム及び甲8公報に記載されていた,既に知られていた課題を有していたというべきであり,その課題について,甲21マイクロフィルム及び甲8公報に記載された技術と同様,流動媒体の流れを循環流とするという構成を採用することにより解決するという動機付けがあったと認められる。
なお,本件明細書には,甲8公報が【従来の技術】欄に掲げられ,そこに記載の技術の短所が記載されているのであるが(段落【0004】,【0005】),そうであるからといって,甲8公報に上記課題が記載されていること,それを循環流の採用により解決したこと,甲7の発明1も同様の課題を有していたことにかんがみると,直ちに,甲7の発明1に甲8公報に記載された技術を組み合わせることを阻害するものではない。
さらに,甲7の発明1は,流動層炉の「流動層内の熱分解によりガス化してガス並びにチャー及び灰分の微粒子を,サイクロン燃焼炉に供給し」,それらのガス及びチャーを次段のサイクロン燃焼炉において燃焼するものであるが,甲8公報の記載(上記( )ア(ウ),(キ)及び(ク))によれば,本件出願日2当時,当業者は,流動層炉の流動媒体の流れが循環流である場合において,廃棄物の熱分解により,ガス及びチャーが生成され,そのガス及びチャーを炉外に排出するとの構成をとることが可能であると容易に理解することができたものと認められる。
この点について,原告は,甲8公報に記載された技術は,流動層内の循環流においてガス化反応を完結しチャーをガスに転換させてしまうものであり,流動層炉からは可燃ガスが排出され,チャーの排出は例外的である旨主張する。しかし,上記のとおり,本件明細書の【従来の技術】欄に甲8公報が記載されていることは,そこに記載された技術と本件発明1との関連を示すものであり,また,本件発明1は,甲8公報記載の技術と同様,ガス化効率を高めることを目的としているものと解され,チャーを多量に生成することについてまでの技術的意義が本件明細書に記載されているとは認められないから,甲8公報に記載された技術についての原告主張の事実は,甲7の発明1に甲8公報に記載された技術を組み合わせることを阻害するものとは認められない。
以上を総合すると,甲7の発明1と甲8公報等記載の技術の技術分野の関連性,甲7の発明1も,甲21マイクロフィルム,甲8公報に記載されていた,既に知られていた課題を有し,その課題を流動媒体の流れを循環流とすることで解決するという動機を有していたこと,当業者は,甲7の発明1の流動層において,甲8公報等に開示された構成を採用しても,炉内に投入された廃棄物によって,循環流中でガスとチャーが生成し,それらのガスとチャーを炉外に排出する構成をとることが可能であると容易に理解できることから,当業者は,甲7の発明1に,甲8公報等において開示されている,流動媒体を循環流とするという構成を組み合わせ,相違点Aに係る本件発明1の構成に想到することが容易であったと認めることができる。
( )原告は,甲8公報等には,廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し,生4成されたチャーをさらに微粒子とする処理を行うという本件発明1の構成が記載されていないことを理由として,甲7の発明1に対し,甲8公報等に記載された,流動媒体の循環流を形成する技術をどのように組み合わせても,本件発明1の構成が得られることがない旨主張する。
しかし,前記1のとおり,本件発明1について,特許請求の範囲の記載が,廃棄物がガス化されてガスとチャーが生成される工程と,生成されたチャーを部分酸化させて微粒子とする工程という2段階の工程を規定しているものとは認められず,それらが規定されていることを前提とすると解される原告の主張は前提を欠くものであり,採用することができない。
また,仮に,本件明細書の記載及び技術常識等から,流動層内の流動媒体を循環流とした流動層炉において,循環流中の上昇流である流動層においてチャーが部分酸化することがあったとしても,そのような作用は当業者が容易に予測し得るものにすぎないのであって,循環流におけるチャーの生成及びチャーを微粒子とすることに係る構成については,別途,相違点Cとして認定され,その容易想到性について判断されているのであるから,上記流動層においてチャーが部分酸化することがあることが,審決の相違点Aの認定判断に影響するものではない。
(5)相違点の看過についてア原告は,審決が,流動媒体の流れと流動層の機能の関係を看過したと主張して,甲7の発明1に対し,周知技術と認定された循環流を適用すると,甲7の発明1の流動層内での物質・熱の移動の態様が変更されて,甲7の発明1そのものの機能等を変質させる旨主張する。
しかし,甲7の発明1は,「流動層内の熱分解によりガス化してガス並びにチャー及び灰分の微粒子を,サイクロン燃焼炉に供給」するものであるが,甲7公報には,流動層について循環流としないことが甲7の発明1の前提になっていることを示唆する記載はないと認められるのであって,流動層を循環流としても,その「流動層内の熱分解によりガス化してガス並びにチャー及び灰分の微粒子を生成」するものである以上,甲7の発明1の本質が変更されるとは認められないから,原告の主張は失当である。
なお,この点,原告は,炉内の流動条件によって,流動層炉における流動層の機能が異なる旨指摘するが,そもそも甲7の発明1において,流動層を循環流としないことが前提であるとは認められないのであるから,原告が指摘する事実は,上記判断を左右しない。
イ原告は,審決が,相違点Aに係る構成の作用機能を看過したとして,甲8公報等に記載された技術は,いずれも,流動層内に循環流という流動媒体の流れを形成して,その循環流を有する流動層内でガス化反応や燃焼を完結させ,流動層炉から可燃ガスとチャーを排出していないことを主張する。
しかし,発明の進歩性判断における相違点についての容易想到性の判断に当たり,相違点に係る構成を開示している発明について,進歩性判断の対象となる発明と同じ構成を備える必要はない。そして,本件においては,甲8公報において,流動層炉の流動層が循環流であったとしても,廃棄物の熱分解により,ガス及びチャーを生成し,そのガス及びチャーを炉外に排出することができることが記載されていることは,前記( )ア(ウ) (キ)2,及び(ク)のとおりである。この点について,原告は,甲8公報に記載された技術においては,流動層内の循環流においてガス化反応を完結し,チャーをガスに転換させてしまい,流動層炉からは,可燃ガスが排出され,チャーの排出は例外的である旨主張するが,前記1( )のとおり,本件発明21は,甲8公報記載の技術と同様,ガス化効率を高めることを目的としているものと解され,チャーを多量に生成することについての技術的意義が本件明細書に記載されているとは認められないから,原告主張の事実が,甲7の発明1に,甲8公報に記載された技術を組み合わせることを阻害するものとは認められない。
ウ原告は,審決は,流動媒体の流れと流動層の機能との組合せの関係を看過したとして,審決は,流動媒体の流れと流動層の機能との密接な関係について,その整合性を何ら吟味することなく,前例のない「流動媒体の流れ」と「流動層の機能」との結びつきを認定した旨主張する。
しかし,甲7の発明1に対し,甲8公報等から認められる周知技術を組み合わせることができることは,前記(3)のとおりであり,他方,その組合せについて,技術的に妨げとなる要因がないことは,後記(6)のとおりであって,原告の主張は理由がない。
( )組合せの阻害要因について6ア原告は,甲7公報には,循環流が形成されていない流動層熱分解炉とサイクロン燃焼炉との組合せにより,両方法の長所が生かされ短所が相殺されて消滅し,相乗的な極めて顕著な効果を奏していることが記載され,技術的思想として,甲7の発明1の流動層を他の流動層に置き換えることができないことが記載され,甲7の発明1の流動層に変えて,可燃ガス及びチャーを次段に導入するという機能を有さず完全ガス化あるいは完全燃焼という機能と結び付いた循環流を適用することは,甲7の発明1の目的に反することとなり,その組合せの阻害要因が認められるとする。
原告は,上記主張の根拠として,甲7公報の,「流動層熱分解方法とサイクロン燃焼方法とを組み合わせることにより,両方法の長所が生かされ短所が相殺されて消滅し,相乗的は極めて顕著な効果を伴う固形物の燃焼方法及びその装置を提供する。」(7欄最終段落〜8欄第1段落)との記載を挙げるが,上記記載は,その内容に照らしても,流動層熱分解方法とサイクロン燃焼方法との組合せについて述べたものであって,流動層熱分解方法の流動層の態様について,循環流を除くとか,特定の態様の流動層に限るなどの限定があることを記載しているものとは認められない。また,甲7公報の他の箇所においても,その流動層熱分解方法の流動層が特定のものに限定されていることを示唆する記載もない。流動層を循環流としても,「流動層内の熱分解によりガス化してガス並びにチャー及び灰分の微粒子を生成」するのであるから,甲7の発明1において,流動層を循環流としても,甲7公報が述べる流動層熱分解方法とサイクロン燃焼方法の組合せの意義が損なわれるものとは認められない。
この点について,原告は,甲7の発明1において,流動媒体の流れとして,循環流を採用した場合には,流動層炉の「流動方式」は,「バブリング式」とは区別された「内部循環式」となり,ガス化溶融システムそのものの基本的条件を変更することとなる旨主張するが,甲7の発明1の「流動層熱分解方法」が「バブリング式」に限定されるものであるとは認められないのであるから,原告の主張は上記判断を左右しない。
イ原告は,甲7の発明1に,甲8公報等に記載された技術を組み合わせると,キャリーオーバーの問題が発生する旨主張する。
しかし,甲7の発明1において,ガスとともにガス化炉の外に排出される,「微細な粒子」等と表現されるチャーの粒径を数値的に明らかにした記載は甲7公報にはないし,甲7の発明1の流動層炉の流動媒体が循環流を有する場合に生成されるチャーの粒径を認めるに足りる証拠はない。本件明細書にも,生成されるチャーの粒径の記載やチャーの粒径とキャリーオーバーとの関係は何も記載がない。
原告は,流動層炉の流動媒体が循環流を有した場合には,そうでない場合に比して,その生成されるチャーの粒径が小さいことを前提とした主張をするが,甲8公報に「従来の流動層では,層内全体を活発な流動化状態で均一に保とうとしたため,生成ガスに同伴して炉外へ飛散する未反応チャーの量が多く,高いガス化効率を得られなかった。」(2頁左下欄11行目〜14行目)との記載があるように,流動層炉の流動媒体が循環流を有する場合,未反応チャーの炉外への排出が減少することはうかがえるものの,キャリーオーバーが問題となる,流動層炉から排出されるチャーのうちでも粒径の小さいチャーについて,流動層炉の流動媒体が循環流を有する場合に,そうでない場合に比して,必ず多量になると認める足りる証拠はない。
そして,本件発明は,ガス化炉の流動層の流動媒体の流れを循環流として,そこで生成されたチャーを次段の溶融炉に供給するものであるが,本件明細書にも,チャーの粒径が小さくなることにより,原告が主張するキャリーオーバーの問題が発生する旨が記載されているものではないし,また,本件発明は,粒径の小さいチャーについて,甲7の発明1が備える構成とは異なる特段の構成により,対応しているものとは認められない。
甲7公報には,「燃焼排ガスはサイクロン炉の出口18より熱交換器19,及び要すれば未捕集のダストを集じんする為の電気集じん器20を通して系外に排出される。尚,電気集じん器20を設けた場合は,此処から排出されるダストを再びサイクロン燃焼炉11に供給して・・・溶融固化すると良い。」(5欄34行目〜40行目)と記載され,必要に応じて電気集じん器を設置することが示唆されているから,旋回溶融炉において捕捉し得ない塵芥等が発生することは,甲7の発明1においても予定されているものということができる。そうすると,仮に,チャーの微細化によりサイクロンで捕捉し得ないチャーが増大したとしても,電気集じん器によりチャーを捕捉するなどにより対応可能であることは明らかであるから,原告の主張するようにキャリーオーバーの増大の問題が生じるものであったとしても,甲7の発明1に「循環流」を適用することを阻害するとまではいえない。
そうすると,甲7の発明1の流動媒体の流動層の流れを循環流とした場合に,原告主張の阻害要因が存在するとは認められない。
( )以上によれば,原告主張の取消事由3は理由がない。 74取消事由4(相違点Bについての認定判断の誤り)について( )審決は,相違点Bに係る本件発明1の構成について,甲14公報に「ガラ1ス繊維を含む廃棄プラスチックスを燃焼分解させる流動層熱分解炉と旋回燃焼炉を備えた廃棄物焼却方法において,流動層炉(流動層熱分解炉)内の温度を500〜600℃に温度制御することが記載されている」(審決謄本27頁第6段落)として,「相違点Bに係る本件発明1の構成は,甲7の発明1に甲14に記載された発明(注,甲14発明)を適用することにより当業者であれば容易に想到することができたものというべきである。」(同頁第7段落)としたのに対し,原告はその認定判断が誤りである旨主張する。
( )そこで,検討すると,甲14公報には,「ガラス繊維を含む廃棄プラスチ2ックス中のプラスチックスを流動層熱分解炉内で熱分解して分解ガスとするために,プラスチックスが500℃以上で熱分解を起こす特性を有するのを利用して,流動層熱分解炉内の温度を500℃〜600℃に温度制御して,廃棄プラスチックス中のプラスチックスを燃焼させて分解ガスとする。」(段落【0008】)との記載がある。
他方,甲12文献には,「( )温度範囲の設定基準@流動層ごみのガ1ス化速度をより緩慢にするためには,低温の方が好ましい。このことから上限を700℃に設定した。一方下限は,都市ごみを構成する物質のガス化温度に支配される。ガス化が完全に行われ,不燃物の熱しゃく減量が極めて少ないことが重要である。紙,プラスチック等都市ごみを構成する物質の熱分解温度は400℃以下であり,十分余裕をみて下限を600℃に設定した。
Aフリーボードと後燃焼領域サーマルNO の発生を抑制し,更に飛灰にXよるダストトラブルを防止するため上限を950℃に設定した。一方下限は,良好な燃焼状態を確保するため800℃以上とした。」(46頁右欄下から3行目〜47頁左欄11行目)との記載がある。また,甲13公報には,「従来のこの種の流動床焼却方式の装置を第1図に示すが,この装置においては,燃焼不適ごみ1は,先ず供給機2から流動焼却炉3内へ投入される。
この流動焼却炉3の下部には砂等の流動媒体が充填されており,空気吹込み管から供給される空気の作用により流動層4を形成している。上記により投入された燃焼不適ごみ1は,この流動層4中で空気吹込み管5から導入される空気と接触して燃焼し,焼却処理される。この場合,流動層4の温度は一般に800℃以上の高温となるため,NO が発生する上ごみ中の重金属がX生成ガス中へ揮散する。」(2頁左上欄3行目〜14行目),「本発明の目的は,上記した従来技術の欠点をなくし,排ガス中のNO や重金属を増加Xさせることなく,燃焼不適ごみを処理することができる流動床焼却方式の処理方法を提供することにある。上記目的を達成するため・・・上記流動層焼却部での焼却処理を400℃〜600℃の比較的低温下で部分酸化方式により行い,次いで該処理で発生する分解ガスを空気の供給下に700〜750℃で二次燃焼することを特長とする。上記の構成とすることにより,流動層焼却部の温度は400〜600℃と比較的低温であるためNO の発生や重X金属の揮散が抑制される。またこのようにして得られるNO および重金属 X含有の低い分解ガスが次に比較的低温下で二次燃焼されるので,可燃分の燃焼をNO および重金属の増加をともなうことなく可燃分を良好に燃焼させXることができる。本発明において,流動層焼却部の温度を400〜600℃に保つには,例えば流動層への吹込み空気量を理論燃焼空気量よりも少くすればよい。」(2頁右上欄11行目〜左下欄13行目),「第5図は,本発明の他の実施例に係る流動床焼却方式の装置を示すもので,このものは,空塔内の二次燃焼部に替えてその後流に独立の2次燃焼炉26を設けることと,流動化空気の吹込み管に替えて分散板25を設けること以外は第2図に示す装置と同様な構成である。」(3頁右下欄13行目〜18行目)との記載がある。さらに,特開昭55-102682号公報(乙1,以下「乙1公報」という。)には,「熱分解炉におけるごみの燃焼割合は,炉1に供給される空気2の量によってきまる。十分な空気量を供給すれば,投入されるごみ3の全量が燃焼し,逆に,空気量を制限し,かつ燃焼発熱量の代替熱量を外部から供給すれば,投入ごみ3は全量が熱分解する。熱分解炉は,上述の如く,空気量の調整ひとつで焼却および熱分解の間での相互移行が容易に可能である。通常は,熱分解炉の温度が450℃〜550℃程度になるように,供給空気量によって燃焼割合が調整されている。熱分解炉は,その炉温度が焼却炉の場合に比較して低いため,二次公害物質の発生や炉材上の問題が少ないことが特長のひとつとなっている。」(1頁右欄下から4行目〜2頁左上欄9行目)との記載がある。
上記によれば,甲14公報に,廃棄プラスチックの熱分解に関し,流動層熱分解炉内温度を500℃から600℃とすることが記載されているほかにも,甲12文献においては,都市ごみの熱分解に関し,熱分解温度を600℃から700℃とすることが記載され,甲13公報には,熱分解を行う流動層焼却部の温度を400℃から600℃とすることが記載され,さらに,乙1公報によれば,ごみの熱分解炉の温度が通常は,450℃から550℃であることが記載されている。
これらによれば,ごみを熱分解するための温度範囲として,流動層熱分解炉の炉内温度を450℃から650℃程度とすることは,本件出願日前に,当業者に周知のことであったと認められる。
そうすると,甲7の発明1の流動層熱分解炉は,ごみを熱分解するためのものであって,甲7の発明1の流動層熱分解炉において,炉内温度を450℃〜650℃の範囲に設定することは,当業者が必要に応じて適宜なし得る程度の設計的事項にすぎないというべきである。
したがって,相違点Bに係る本件発明1の構成に当業者は容易に想到することができたものと認められ,審決の結論に誤りはない。
( )原告は,チャーについて意識しておらず,被処理物が甲7の発明1とは異 3なる「ガラス繊維を含む廃棄プラスチック」に特化され,その特化された被処理物固有の問題を解決するためにガラス繊維が軟化溶融しないように特定された甲14発明の流動層炉内の温度範囲と,一般の廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し次段のサイクロン燃焼炉に供給する甲7の発明1の熱分解炉の温度範囲は技術的意義が異なるので,甲14発明の温度範囲を,甲7の発明1に結び付ける動機付けはない旨主張する。
しかし,上記( )のとおり,廃棄プラスチックに限定されず,ごみを熱分2解するための温度範囲として,流動層熱分解炉の炉内温度を450℃から650℃とすることは既に周知であったと認められるのであり,原告の上記主張は,上記( )の判断を左右するものではない。
2また,原告は,本件発明1において,流動層炉の温度を450℃から650℃としたのは,多量の可燃分(可燃性ガス,タール及びチャー)をできるだけ多く安定して生成させるためであり,そのような新規な目的,課題に対応するために最適化された温度範囲を規定したのが相違点Bに係る本件発明1の構成である旨主張する。
しかし,上記のとおり,ごみを熱分解するための温度範囲として,流動層熱分解炉の炉内温度を450℃から650℃とすることは既に周知であったと認められるのであり,他方,本件明細書においては,「流動層炉内の温度を450℃〜650℃に維持する」場合が,それ以外の温度で熱分解を行う場合に比して,多量の可燃分(可燃性ガス,タール及びチャー)を多く安定して生成させるものであるものである旨の記載もないし,上記温度範囲が,そのような目的により定められたものであると認めるに足りる証拠もなく,相違点Bに係る本件発明1の構成が,従前の熱分解炉におけるものを越えた新規な目的,課題に対応するために最適化されたものであると認めるには足りない。
( )以上によれば,原告主張の取消事由4は理由がない。 45取消事由5(相違点Cについての認定判断の誤り)について( )審決は,相違点Cに係る本件発明1の構成について,「(該廃棄物を)1『該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし』たことは,甲7の発明1に周知の技術を適用した結果として当業者には自明の事項であるから,甲7の発明1と周知の技術に基づいて当業者であれば容易に想到することができたものというべきである。」(審決謄本28頁第3段落)としたのに対し,原告は,その認定判断が誤りである旨主張する。
( )確かに,甲7公報においては,廃棄物を流動層内の熱分解によりガス化し2てガスとチャーを生成することは記載されているが,流動層炉における循環の有無については,明示の記載がなく,上記生成作用を「循環流中で」することについての記載はない(相違点C)。
しかし,特開平2-195104号公報(甲9,以下「甲9公報」という。)には,「流動層に投入された石炭は短時間で加熱により揮発分が分離する。分離した揮発分は一部層内で燃焼し,他は層表面へ出てフリーボード部で燃焼する。揮発分が分離した後の未燃炭素分(チャー)は,流動層中を数10回にわたり旋回循環しながら比較的長い時間をかけて燃焼する。チャーは当初揮発分の分離により多孔質状態となり,その後燃焼の進行に伴い,漸次微小化する。」(3頁右下欄5行目〜13行目)との記載がある。
そして,甲7の発明1の流動層炉内の流動媒体の流れについて,循環流を有するとの技術を適用した場合には,甲9公報の上記記載や前記3( )ア(キ),2オ(ウ),キ(カ)の記載に照らしても,その循環流中の熱分解過程において,廃棄物がガス化して,ガスとチャーを生成し,また,その過程でチャーが燃焼,解砕等により微細化するものであることは,明らかというべき事項である。
そうすると,甲7の発明1に対し,周知技術を適用して,その流動層炉内の流動媒体の流れを循環流とすると,廃棄物をガス化してガスとチャーを生成しチャーが微粒子化する過程が,「循環流中で」されることは,当業者にとり明らかであるから,相違点Aについての前記1における判断と総合すれば,当業者は,相違点Cに係る本件発明1の構成について,容易に想到することができたと認められる。
なお,原告は,本件発明1が,廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し,ガス化によって生成されたチャーを流動媒体が上昇する流動層において部分酸化させて微粒子とする処理を行うというものであり,そのような構成が甲8公報等に記載されていない旨主張する,しかし,チャーの生成等について,本件発明1の構成として,原告主張の構成が必ずしも認められるものではなく,また,前記3(2)によれば,甲8公報,甲10公報及び甲21マイクロフィルムにおいて,流動層の流動媒体の下降流において,ガス化が行われることが記載され,甲8公報において,流動層の流動媒体の上昇流で部分燃焼がされることが記載され,甲21マイクロフィルムにおいて,流動層の流動媒体の上昇流でガス化後の燃焼物等が燃焼することが記載されているのであって,これらの記載に照らせば,流動媒体の流れが循環流である流動層炉において,技術常識から,流動層に供給される空気量等との関係で,循環流中の下降流である移動層でガス化がされ,循環流中の流動媒体が上昇する流動層において,チャーが部分酸化することがあることは,当業者が容易に予測できたものであると認められる。
( )原告は,相違点Cに係る本件発明1の構成は,廃棄物を循環流中でガス化3してガスとチャーを生成し,ガス化により生成されたチャーを循環流中でさらに微粒子とすることによってガスと微粒子となったチャーを得る一連の工程を規定したものであるのに対し,甲7の発明1においては,熱分解で生成されたチャーが生成された状態で微細粒子であり,生成されたチャーがさらに微粒子とされることはないとして,審決の認定判断の誤りを主張する。
しかし,取消事由1(甲7の発明1の認定の誤り),取消事由2(本件発明1と甲7の発明1の一致点の認定の誤り,相違点の看過)において検討したとおり,原告の上記主張は,審決の認定判断を左右するものではなく,採用できない。
( )以上によれば,原告主張の取消事由5は理由がない。
46取消事由6(本件発明1の奏する顕著な効果の看過)について( )原告は,「本件発明1の作用効果を検討しても,甲7及び甲14に記載さ1れた各発明(注,甲7の発明1及び甲14発明)並びに周知の技術から当業者の予測を超えるような格別顕著な効果を奏するものとみることはできない。」(審決謄本29頁第4段落)とした審決の判断を争い,本件発明1は,流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し,廃棄物をガス化して生成した可燃ガスをあまり燃焼させずに次段の溶融炉に供給するとともに,循環流中でチャーを微粒子とすることにより,流動層炉で生成した可燃ガス及びチャーをともに安定して溶融炉に供給することができ,対象とするごみが質的及び量的に変動するごみ処理特有の課題において,ガス,タール,チャーの可燃分を多量に含む均質な生成ガスを得て,ガス,タール,チャーの可燃分の大部分を次段の旋回溶融炉において利用できるという顕著な効果を奏するものである旨主張する。
(2)しかし,原告が主張する効果のうち,循環流中でチャーが微粒子となることは,前記5(2)のとおり,当業者が容易に予測できたことであり,また,その結果,微粒子となったチャーが可燃ガスに同伴して溶融炉に供給できることも同様である。さらに,可燃ガスの生成のために流動層熱分解路の炉内温度を450℃から650℃程度とすることは,前記4のとおり,周知の技術であり,同温度範囲において,生成ガスを安定して得られることは,当業者が容易に予測できたといえるものである。このように,原告が主張する効果は,当業者が当然に予測し得たものであり,また,これらを総合した効果についても,当業者が予測し得ない格別顕著な効果であるとは認められない。
なお,原告は,本件発明1を含む本件発明に,多量のチャーを生成するという技術的意義があることを主張するが,前記1(2)のとおり,そのような技術的意義があるとは認められない。
( )以上によれば,原告主張の取消事由6は理由がない。
37取消事由7(本件発明2についての進歩性の認定判断の誤り)について( )審決は,本件発明2の進歩性について,「上記の事実に照らせば,請求項12で付加した構成,すなわち,『流動層炉は,流動層温度が450℃〜650℃に維持されること』は,本件発明の出願前に当業者には周知の技術であったものと認められる。本件発明2の作用効果を検討しても,甲7及び甲14に記載された各発明(注,甲7の発明1及び甲14発明)並びに周知の技術から当業者の予測を超えるような格別顕著な効果を奏するものとみることはできない。したがって,本件発明2は,本件発明1について前示した理由に上記の理由を加えた理由によりその進歩性が否定されるものであるから,本件発明2の出願日前に国内において頒布された刊行物である甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。」(審決謄本30頁第3段落〜第5段落)としたのに対し,原告は,その認定判断が誤りである旨主張する。
( )しかし,前記4( )のとおり,甲12文献には,流動層の温度を600℃22から700℃とすることが記載され,甲13公報には,熱分解を行う流動層焼却部の温度を400℃から600℃とすることが記載されているほか,甲27公報には,「流動層内に被焼却物を供給して焼却するに際して,その流動層内の温度を520〜650℃に保って燃焼させることで,流動層内に投入された被焼却物の燃焼・熱分解を緩やかに,しかも安定して行うことができ,ばいじんなどの発生を抑えることができる」(2頁左上欄17行目〜右上欄3行目),「流動層の温度が520℃以下では流動層内での被焼却物の燃焼が不安定(燃えにくくなる)となって好ましくな(い)」(3頁右上欄末行〜左下欄2行目),「被焼却物を緩慢に燃焼し熱分解させるので分解ガスやばいじんの大量発生を抑制することができる。」(4頁左上欄8行目〜10行目)との記載があり,流動層温度を520℃から650℃とすることが記載されていると認められるから,請求項2で付加した「流動層炉は,流動層温度が450℃〜650℃に維持されること」は,当業者には周知の技術であり,当業者は,甲7の発明1及び周知技術に基づき,本件発明2に容易に想到できたものと認められる。
( )原告は,引用文献記載の発明に周知技術を適用して特許出願に係る発明の3構成を得ることが容易であったと認められるためには,当該周知技術が引用文献記載の発明に適用されることに適した内容のもの,すなわち,適用上の適性があるものであり,かつ,当該周知技術を適用して特許出願に係る発明の構成を得ることが技術的合理性の見地からみて可能であり,また,相当であることを前提とするとして,本件発明2が,溶融炉にガスとチャーを送って利用できるようにするために,特に,流動層温度を450℃から650℃に維持したのに対し,審決が周知技術の認定の根拠とした文献には,そのような技術的思想が記載されず,適用上の適性がない旨主張する。
しかし,甲7の発明1は,ごみを流動層内で熱分解する発明であるから,上記( )掲記の各文献と技術分野を共通にし,他方,請求項2で付加した2「流動層炉は,流動層温度が450℃〜650℃に維持されること」との構成が,次段の溶融炉にチャーを送って利用できるという原告主張の効果のために特定された温度範囲であること,同温度範囲において,他の温度範囲と比して原告が主張する効果を特に奏する旨は,本件明細書には何ら記載がなく,これを認めるに足りる証拠もないことにかんがみると,原告の主張する事実により,上記各文献に記載の技術を甲7の発明2に適用することができないと認めることはできない。
( )また,原告は,本件発明2の格別顕著な効果を否定した審決の判断を誤り 4である旨主張するが,原告主張の本件発明2の効果のうち,本件発明1と同様の効果をいう部分は,取消事由6(本件発明1の奏する顕著な効果の看過)と同様理由がなく,本件発明2が特に流動層温度を450℃から650℃に維持することにより効果を奏することをいう部分は,上記( )のとおり,3同温度範囲とすることにより原告主張の効果を奏する旨の記載が本件明細書になく,これを認めるに足りる証拠もないのであり,理由がない。
( )以上によれば,原告主張の取消事由7は理由がない。
58取消事由8(本件発明6についての進歩性の認定判断の誤り)について(1)審決は,本件発明6の進歩性について,「本件発明4及び5についての判断においてそれぞれ前示した周知の技術に照らせば,請求項6で付加した構成,すなわち『質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスは,ともに空気であること』は,本件発明の出願前に当業者には周知の技術であったものと認められる。本件発明6の作用効果を検討しても,甲7及び甲14に記載された各発明(注,甲7の発明1及び甲14発明)並びに周知の技術から当業者の予測を超えるような格別顕著な効果を奏するものとみることはできない。したがって,本件発明6は,本件発明4又は5について前示した理由に上記の理由を加えた理由によりその進歩性が否定されるものであるから,本件発明6の出願日前に国内において頒布された刊行物である甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。」(審決謄本33頁第8段落〜34頁第2段落)としたのに対し,原告は,その認定判断が誤りである旨主張する。
(2)しかし,甲8公報の上記3(2)ア(ア),(オ)の記載,甲10公報の同ウ(イ),(キ)の記載,甲11文献の同オ(イ)の記載,甲21マイクロフィルムの同キ(ウ),(オ)によれば,流動層炉の流動層に循環流を形成するに当たり,質量速度が比較的大きい流動化ガスと質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給することによって,循環流を形成すること,流動化ガスとして空気を用いることは周知の技術であったといえるから,本件発明6は,甲7の発明1に周知技術を適用することで,当業者が容易に想到することができたと認められる。
( )原告は,甲7の発明1には,ガス化により生成されたチャーを流動媒体が3上昇する空気量の多い流動層においてさらに微粒子とする本件発明6の「該チャーを微粒子とし」との構成はないとして,甲7の発明1に周知技術を組み合わせても本件発明6の構成に想到しない旨主張するが,取消事由1(甲7の発明1の認定の誤り),取消事由2(本件発明1と甲7の発明1の一致点の認定の誤り,相違点の看過)の説示に照らし,本件発明6の構成についての原告の主張は採用できず,理由がない。
( )原告は,「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し,前記流動媒体の循環4流は,質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給することにより形成され,前記質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスは,ともに空気であり」との技術は,焼却炉において周知であっても,ガス化炉においては周知ではなく,また,公知でもないとして,流動化ガスとして可燃物の燃焼させるために空気を用いていた焼却炉の技術分野において周知の技術手段であるからといって,可燃分を燃焼により消費しないで可燃分として回収するために空気以外のガス化剤を流動化ガスとして用いていたガス化炉の技術分野においてまで周知の技術手段であるとすることはできない旨主張する。
しかし,甲7公報の「21は,流動化ガスとしての空気を供給するブロワである。」(4欄末行〜5欄1行目),「空気はガス入口4からガス室5に入りガス分散板6を通って砂を流動化させ且つ原料の一部を燃焼する」(5欄6行目〜8行目)との記載のとおり,ガス化炉の発明である甲7の発明1も,炉内に流動化ガスとして空気を供給するという構成を前提としているものであることからすると,ガス化炉の技術分野においては,性質上,必ず空気以外のガス化剤を流動化ガスとして用いていたものとまでは断定することはできない。そうすると,焼却炉において,「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し,前記流動媒体の循環流は,質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給することにより形成され,前記質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスは,ともに空気であり」との構成が周知であったとき,その流動化ガスが空気であることを理由として,同技術をガス化炉に適用することができないものということはできず,原告の主張は,採用できない。
( )以上によれば,原告主張の取消事由8は理由がない。
59取消事由9(本件発明7についての進歩性の認定判断の誤り)について( )原告は,本件発明7で付加した「前記流動層炉へ供給される流動化ガスは,1廃棄物の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下の空気量を含むことを特徴とする」との構成が「本件発明の出願前に当業者には周知の技術であったものと認められる。」(審決謄本35頁第3段落)とするなどして本件発明7の進歩性を否定した審決の認定判断が誤りである旨主張し,その根拠として,「前記流動層炉へ供給される流動化ガスは,廃棄物の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下の空気量を含むことを特徴とする」との構成は,廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し,生成したチャーをさらに微粒子とするための空気比を規定しているものであり,審決が周知技術認定の根拠とした文献には,いずれも流動層からガスとチャーを排出する記載はなく,これの文献に記載された空気比が,廃棄物をガス化してガスとチャーを生成する流動層の空気比として周知であるとはいえない旨主張する。
( )しかし,本件発明1におけるのと同様の理由により,本件発明7も,生成2したチャーをさらに微粒子とするという工程を規定しているものとは認められない。そして,本件発明7で付加した構成に関し,本件明細書には,「第1表に示すように,中央流動化ガス7は,水蒸気,水蒸気と空気の混合気体,及び空気の3種の気体の内の1つであり,周辺流動化ガス8は,酸素,酸素と空気の混合気体,及び空気の3種の気体の内の1つである。中央流動化ガスの酸素含有量は,周辺流動化ガスの酸素含有量以下とされる。流動化ガス全体の空気量が,可燃物11の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下とされ,炉内は,還元雰囲気とされる。」(段落【0026】),「図3のガス化装置において,図1のガス化装置の場合と同様に,中央流動化ガス7は,水蒸気,水蒸気と空気の混合気体,及び空気の3種の気体の内の1つであり,周辺流動化ガス8は,酸素,酸素と空気の混合気体,及び空気の3種の気体の内の1つである。中間流動化ガスの酸素含有量は,中央流動化ガスの酸素含有量と周辺流動化ガスの酸素含有量の間に選定される。それ故,流動化ガスの好適な組合せは,第2表の15通りである。各組合せにおいて,流動層炉の中央部から周辺部へ拡がっていくにつれて,酸素供給量が増加することが重要である。流動化ガス全体の空気量が,可燃物11の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下とされ,炉内は,還元雰囲気とされる。」(段落【0033】),「図10の装置においては,流動層炉2の燃焼が低空気比による低温部分燃焼とされ,流動層温度が450℃〜650℃に維持されることにより,高熱量の可燃ガスを発生させることができる。また,低空気比により還元雰囲気で燃焼が行われるので,不燃物中に鉄,アルミが未酸化の有価物として得られる。流動層炉2で発生された高熱量の可燃ガス及びチャーは,熔融燃焼炉41において,1300℃以上の高温燃焼することができ,灰を熔融させ,ダイオキシンを分解させることができる。」(段落【0050】),「(2)本発明においては,流動層炉が少量の空気で燃焼を維持できるので,流動層炉を低空気比低温度(450〜650℃)とし,発熱を最小限に抑えて,ゆるやかに燃焼させることにより,可燃分を多量に含む均質な生成ガスを得ることができ,ガス,タール,チャーの可燃分の大部分を次段の熔融燃焼炉において利用できる。」(段落【0057】)との各記載がある。
これによると,本件発明7の構成により,「炉内を還元雰囲気」とすることができること,それにより,鉄,アルミが未酸化の有価物として得ることができること,また,流動層炉が少量の空気で燃焼を維持できるから,流動層炉を低空気比,低温度とし,発熱を最小限に抑えて,ゆるやかに燃焼させることにより,可燃分を多量に含む均質な生成ガスを得ることができ,ガス,タール,チャーの可燃分の大部分を次段の溶融燃焼炉において利用できることが認められるものの,空気比を理論燃焼空気量の30%以下とすることが,次段の溶融炉に送るためのチャーの生成のための構成であると本件明細書に記載されているものではない。
( )原告は,審決が周知技術認定の根拠とした文献には,いずれも流動層から3ガスとチャーを排出する記載はなく,これらの文献に記載された空気比が,廃棄物をガス化してガスとチャーを生成する流動層の空気比として周知であるとはいえない旨主張するが,周知技術の認定の基礎となる文献に特許出願に係る発明の構成が記載されている必要は必ずしもない。流動層炉における流動層の流動化空気を理論燃焼空気量の30%以下の空気とすることが本件出願日当時,周知技術であったとき,本件発明7は,同周知技術と空気を流動化ガスとして用いる流動層炉という点で共通の技術分野に係るものであり,他方,本件明細書には,本件発明7で規定される理論燃焼空気量比が,次段の溶融炉に送るためのチャーの生成のための構成であることが記載されているものではないのであるから,仮に,理論燃焼空気量比に係る周知技術認定の根拠となった文献にチャーの排出等が記載されていなかったとしても,同周知技術を適用できないものとは認められない。
( )以上によれば,原告主張の取消事由9は理由がない。
410取消事由10(本件発明10についての進歩性の認定判断の誤り)について原告は,本件発明10の進歩性を否定した審決の認定判断を争うが,そのうち,本件発明10と甲7の発明2の審決の一致点の認定の誤りをいう主張は,取消事由1(甲7の発明1の認定の誤り),取消事由2(本件発明1と甲7の発明1の一致点の認定の誤り,相違点の看過)の説示と同様の理由により,採用できず,相違点EないしGについての認定判断の誤りをいう主張は,取消事由3ないし5(相違点AないしCについての認定判断の誤り)の説示に照らし,採用できず,本件発明10の奏する顕著な効果の看過をいう主張は,取消事由6(本件発明1の奏する顕著な効果の看過)についての判示に照らし,採用できず,原告主張の取消事由10は理由がない。
11取消事由11(本件発明11についての進歩性の認定判断の誤り)について原告は,本件発明11の進歩性を否定した審決の認定判断を争うが,本件発明11は,方法の発明である本件発明2に対応する装置の発明であり,取消事由7(本件発明2についての認定判断の誤り)についての判示に照らし,採用できない。
したがって,原告主張の取消事由11は理由がない。
12取消事由12(本件発明16についての進歩性の認定判断の誤り)について原告は,本件発明16の進歩性を否定した審決の認定判断を争うが,本件発明16は,本件発明1の構成のうち「(流動層)炉内を450℃〜650℃に維持し」との構成を「流動層温度を450℃〜650℃に維持し」とし,「1300℃以上にて」との構成を削除したものであって,本件発明1についての前記説示及び取消事由7(本件発明2についての認定判断の誤り)の説示のとおり,流動層温度を450℃から650℃に維持することが,当業者に周知であったことに照らし,原告主張の取消事由12は理由がない。
13取消事由13(本件発明19についての進歩性の認定判断の誤り)について原告は,本件発明19の進歩性を否定した審決の認定判断を争うが,相違点I,K及びLについての認定判断の誤りをいう部分については,取消事由3(相違点Aについての認定判断の誤り),取消事由7(本件発明2についての認定判断の誤り)及び取消事由5(相違点Cについての認定判断の誤り)についての判示に照らし,理由がない。
また,原告の主張のうち,本件発明19の効果として,本件発明1の効果と同様の効果をいう部分については,取消事由6(本件発明1の奏する顕著な効果の看過)の説示に照らし,理由がない。本件発明19の効果として,有価金属を酸化しない状態で回収できることをいう部分については,これは流動層炉内を還元雰囲気として金属が酸化しないことによるものであり,当業者が予測し得る効果にすぎず,また,不燃物を流動媒体と共に排出し,それを分別した後に流動媒体を流動層炉に戻し,流動媒体を循環使用することも当業者が予測し得る効果である。
したがって,原告主張の取消事由13は理由がない。
14取消事由14(本件発明3ないし9,11ないし15,17,18及び20についての進歩性の認定判断の誤り)について原告は,審決が,本件発明3ないし9,11ないし15,17,18及び20の進歩性を否定したのに対し,これらの発明は,本件発明1,10,16及び19を引用する発明であり,本件発明1,10,16及び19についての審決の認定判断が誤りであることを理由として,本件発明3ないし9,11ないし15,17,18及び20についての審決の進歩性の認定判断が誤りである旨主張するが,前記のとおり,本件発明1,10,16及び19についての審決の認定判断に誤りはない。
そうすると,原告主張の取消事由14は理由がない。
15以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 宍戸充
裁判官 柴田義明
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