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関連審決 不服2001-23177
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成17行ケ10273審決取消請求事件 判例 特許
平成17行ケ10405審決取消請求事件 判例 特許
平成16行ケ268審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 創作性(創作) /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  発明特定事項 /  一致点の認定 /  周知技術 /  慣用技術 /  技術常識 /  明確性 /  遡及 /  分割出願 /  置き換え /  容易に想到(容易想到性) /  拒絶査定不服審判 /  拒絶査定 /  拒絶理由通知 /  請求の範囲 /  減縮 /  変更 /  要旨変更 /  除斥 /  異議申立 / 
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事件 平成 16年 (行ケ) 267号 審決取消請求事件
原告 エイディシーテクノロジー株式会社
訴訟代理人弁理士 足立勉
被告 特許庁長官小川 洋
指定代理人 片岡栄一江畠博高橋泰史涌井幸一宮下正之
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2005/02/21
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の請求
特許庁が不服2001―23177号事件について平成16年5月12日にした審決を取り消す。
事案の概要
本件は,原告が,後記本願発明の特許出願をしたところ,拒絶査定を受け,これを不服として審判請求をしたところ,審判請求は成り立たないとの審決がされたため,同審決の取消しを求めた事案である。
1 特許庁における手続の経緯(当事者間に争いがない) 原告は,昭和63年6月6日に出願した特許出願(特願昭63―138679号)を分割した特許出願(特願平10―58567号)をさらに分割して,平成12年5月9日,特許庁に対し,発明の名称を「番組表示装置および番組表示方法」とする発明につき出願した(特願2000-135905号。以下「本願」という。)ところ,特許庁は,平成13年11月21日,拒絶の査定をした。
そこで,原告は,同13年12月26日,拒絶査定不服審判の請求をした(不服2001―23177号。以下「本件審判」という。)ところ,特許庁は,平成16年5月12日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)を行い,その謄本は,同16年5月25日,原告に送達された。
なお,原告は,拒絶査定を受けるに先立つ平成12年9月27日に手続補正をしたが(甲10),特許庁は,平成13年7月12日付け(起案日)拒絶理由通知書による拒絶理由通知をした(甲9)。そこで,原告は,同13年9月20日に手続補正をしたが(甲2),特許庁は,前記のとおり,同13年11月21日付け(起案日)拒絶査定書による拒絶査定をした(甲8)。そのため,原告は,同13年12月26日,本件審判の請求をするとともに,同日付け手続補正をした(甲3)。
2 特許請求の範囲 平成13年12月26日付け手続補正(甲3)により補正された明細書の請求項3の記載は,下記のとおりである(以下,この発明を「本願発明」という。)。なお,本願発明は,同13年9月20日付け手続補正書(甲2)における請求項5に係る発明と同一であるところ,上記請求項5に係る発明は,平成12年9月27日付け手続補正書(甲10)における請求項6に係る発明を減縮したものである。
記 「少なくともテレビ放送の各番組内容とその開始時刻とその終了時刻とその放映チャンネルとを含む情報を外部から取り込み, 該取り込まれた上記情報から,電源を投入した日の各チャンネルのテレビの番組内容を取り出して,チャンネルの違い毎に縦もしくは横の内の1方向に並べて画面に表示し, 電源を投入した日の,取り込まれた上記情報中の同一チャンネルの番組内容を,その放送順に,上記1方向と垂直な方向に上記画面に並べ,且つ各番組内容の放送時間に応じた長さで表示し, 上記画面に表示された番組内容の中のある番組内容を,他の番組内容と識別可能に表示し, 使用者の指示を受けると,該識別可能に表示させる番組内容を変更することにより,別の番組内容を識別可能に表示し, 該指示が,識別表示させる位置を上記画面外へ変更させるものであると,上記画面に表示させる番組表の領域を更新し, 該指示が,所望の番組を設定するものであると,上記識別可能に表示された箇所に対応する番組内容を所望の番組として設定する ことを特徴とする番組表示方法。」 3 本件審決の理由の要旨 本件審決は,下記のとおり,本願発明は特開昭61-227486号公報(甲13。以下「引用例1」という。),特開昭55-63185号公報(甲15。以下「引用例2」という。)及び特開昭63-54884号公報(甲17。以下「引用例3」という。)に記載された各発明(以下,「引用発明1」等という。)並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとした。
記 (1) 本願発明と引用発明1との対比 (一致点) 少なくともテレビ放送の各番組内容とその開始時刻とその放映チャンネルとを含む情報から,各チャンネルのテレビの番組内容を取り出して,画面に表示し, 上記情報中の同一チャンネルの番組内容を,その放送順に,縦の方向に上記画面に並べ,表示する, 番組表示方法。 (相違点a) テレビ番組情報の取り込みに関し,本願発明においては,テレビ放送の各番組内容とその開始時刻とその終了時刻とその放映チャンネルとを含む情報を外部から取り込むものであるのに対し,引用発明1においては,番組終了時刻をも含むテレビ番組情報を外部から取り込むことについて特に示されていない点 (相違点b) テレビの番組内容の画面表示に関し,本願発明においては,電源を投入した日の番組内容を表示するものであるのに対し,引用発明1においては,番組表示セットスイッチがONされた時刻以降の番組名称(内容)を表示するものである点 (相違点c) 番組内容の表示の仕方に関し,本願発明においては,番組内容をチャンネルの違い毎に縦もしくは横の内の1方向に並べて画面に表示するとともに,同一チャンネルの番組内容を,その放送順に,上記1方向と垂直な方向に上記画面に並べ,且つ各番組内容の放送時間に応じた長さで表示し,上記画面に表示された番組内容の中のある番組内容を,他の番組内容と識別可能に表示し,使用者の指示を受けると,該識別可能に表示させる番組内容を変更することにより,別の番組内容を識別可能に表示し,該指示が,所望の番組を設定するものであると,上記識別可能に表示された箇所に対応する番組内容を所望の番組として設定するものであるのに対し,引用発明1においては,このことについて示されていない点 (相違点d) 番組表の領域の更新に関し,本願発明においては,使用者の指示が番組内容を識別表示させる位置を画面外へ変更するものであると,画面に表示させる番組表の領域を更新するものであるのに対し,引用発明1においては,このような領域の更新については特に示されていない点 (2) 判断 ア 相違点cについて(相違点a,b,dについての判断は省略) 引用発明1は,テレビの番組内容を同一チャンネルの番組内容を放送順に縦方向に画面に並べて表示するものである(第2図を参照)が,一般には,むしろ,テレビ番組内容を放映チャンネル毎に時刻情報とともに放送時間に応じた長さで放送順に並べて表形式で表示するのが普通である〔新聞,雑誌等のテレビ番組欄を想起されたい。また,特開昭61-113379号公報(甲25)(特に,第4図を参照。このような番組表を画面上に表示して所望の番組を(予約)設定するものである。),及び,実願昭56-56229号(実開昭57-170166号公報)のマイクロフィルム(甲28)を参照。〕。 しかるところ,引用例2,3には,チャンネル番号枠と時刻枠とからなるマトリックス状の表示選択領域を画面上に映出するテレビ受像機が開示されており,これらにおいては,番組予約設定したい領域を指示することによりその領域の表示(色)を変えて他の領域と識別可能に表示し,使用者の指示によりその領域に対応する番組を所望の(予約)番組として設定することができるよう構成されていることが認められる。 したがって,引用発明1においても,上記周知のもののように,テレビ番組内容を放送局(放映チャンネル)毎に時刻情報とともに放送時間に応じた長さで放送順に並べて表形式で画面上に表示し,引用例2,3に記載されたもののように,番組(予約)設定したい領域を指示することによりその領域を(着色等させて)他の領域と識別可能に表示しその領域に対応する番組を(予約)設定することは当業者が容易に想到できたものである。 イ 効果について そして,本願発明の奏する効果は,各引用例及び上記周知技術から当業者が十分に予測可能なものであって,格別のものとはいえない。 ウ 手続について なお,請求人は,拒絶査定での審査官の指摘に対応して,補正前の請求項3,4,7,8を削除し他の請求項1,2,5,6(補正後の請求項1,2,3,4)を残す手続補正をしたにもかかわらず,審査前置解除通知がなされたのは誤りであり,審査前置の段階で特許査定できない新たな拒絶の理由を発見した場合には,特許法163条2項の規定により新たに拒絶理由を通知すべきである旨主張する。 しかしながら,上記補正後の請求項3に係る発明(本願発明)が特許法29条2項の規定に該当し,進歩性を備えるものではないことは上記したとおりであるところ,その根拠となる引用例1ないし3は,いずれも,本件の審査手続きにおける拒絶理由通知(平成13年7月12日付け)において引用されたものである。 したがって,上記補正後の請求項3に係る発明に対しては,審査手続きにおいて提示された拒絶理由が該当するものであるから,請求人の上記主張は採用の限りではない。 なお,審査においてされた拒絶理由通知拒絶査定に対する審判においてもなお効力を有することは,特許法158条に規定されるとおりである。
(3) むすび 以上のとおりであって,本願の請求項3に係る発明(本願発明)は,引用発明1ないし3及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。したがって,本願は,その余の請求項について論及するまでもなく,拒絶すべきものである。
原告が主張する本件審決の取消事由
1 取消事由1(除斥事由のある審判官が関与した手続の違法―特許法139条5号違反) 本件審決に関与した審判官3名のうち,A審判官(以下「A審判官」という。)は,本願について原告が平成13年9月20日付けでなした手続補正の申出を却下する平成14年7月2日付け決定(甲4),及び原告が平成13年12月26日付けでなした手続補正の申出を却下する平成14年7月2日付け決定(甲5)につき,いずれも原告が提起した補正却下決定の取消訴訟(東京高等裁判所平成14年(行ケ)第412号,同第413号)において,当事者である特許庁長官の指定代理人であった。したがって,同審判官は,特許法139条5号にいう「事件の当事者の代理人」であったというべきである。
すなわち, (1) 特許法139条5号所定の「事件」とは,本件審判事件だけに限定されず,本件審判に係る特許出願である本願についてされた補正却下決定の取消訴訟事件も含むと解すべきである。その根拠としては,@裁判官の除斥について定める民訴法23条において,「事件」とは,裁判の公正を担保する趣旨から広く解するとされている(甲29)ところ,特許法139条5号においても,審判の公正を担保するため,同様に考えるべきであること,A本願についての補正却下決定取消訴訟は,本件審判と密接な関係を有し,しかも,その判決は,本件審判の審決に重大な影響を及ぼすものであること,B特許法において,審判のみを意味する場合には「審判事件」という用語を用いているが,139条5号では,あえて「事件」という異なる用語を用いていること,C特許法139条6号は,「審判官が事件について不服を申し立てられた査定に審査官として関与したとき」との除斥事由を規定しているところ,この規定ぶりによれば,「事件」という用語は,審判だけではなく,同一の出願についての査定も含んでいると解されること,が挙げられる。
(2) 上記のとおり,補正却下決定取消訴訟も,拒絶査定不服審判と同一の「事件」に含まれると解すべきである以上,上記訴訟の当事者である特許庁長官は,自己の利害の有無にかかわらず,特許法139条5号における「事件の当事者」に当たる。
また,特許庁長官は,補正却下決定取消訴訟において,補正却下の妥当性を主張する立場にあったところ,補正却下が妥当であると出願は拒絶される可能性が高いから,結局,特許庁長官は,補正却下決定取消訴訟において,出願の拒絶の可能性を高める主張をする立場にあったのであり,言い換えれば,特許庁長官は,「特許の成立を阻止しようとする者」であったから,このような立場にある特許庁長官は明らかに「事件の当事者」に当たる。
(3) 拒絶査定に対する審判において審決をした審判官が,審決取消訴訟が提起され審決が取り消されて特許庁において再び審理が行われる場合に,その事件に審判官として関与することが可能であっても,前の審決に関与した審判官と,補正却下決定取消訴訟の被告である特許庁長官の指定代理人であったA審判官とを同視することはできない。
2 取消事由2(拒絶理由の未通知―特許法159条2項違反) 本件審決は,査定の理由と異なる理由で請求が成り立たないと判断したものであるにもかかわらず,新たな拒絶理由が原告に対して通知されていないから,本件審決は,特許法159条2項に違反する。
すなわち, (1) 拒絶査定(甲8)では,平成13年9月20日付け手続補正書(甲2)における請求項3,4,7及び8についての拒絶理由のみが指摘されていたので,原告は,本件審判請求時に,同年12月26日付け手続補正書(甲3)を提出し,拒絶査定時における請求項1〜8のうち,拒絶理由を指摘された請求項3,4,7及び8を削除した。本願発明は,同年9月20日付け手続補正書における請求項5に係る発明と同一であるが,拒絶査定では,上記請求項5に係る発明についての拒絶理由は指摘されていない。したがって,本件審決の理由は,拒絶査定の理由とは異なるものである。
(2) 本願発明の拒絶理由は,審査手続においても通知されていない。
本願発明は,平成12年9月27日付け手続補正書(甲10)における請求項6に係る発明に対応する。上記請求項6に係る発明については,平成13年7月12日付け拒絶理由通知書(甲9)において,特許法29条2項による拒絶理由が通知されているが,同年9月20日付け手続補正の結果,本願発明は,上記請求項6に係る発明とは大きく異なるものとなった。
具体的には,上記請求項6に係る発明における「少なくともテレビ放送の内容と放映時間とを含む情報」は,本願発明においては「少なくともテレビ放送の各番組内容とその開始時刻とその終了時刻とその放映チャンネルとを含む情報」となっている。
また,上記請求項6に係る発明では,情報は「予め記憶する」のに対し,本願発明では,情報を「外部から取り込み」となっている。
さらに,本願発明は,上記請求項6に係る発明にはない独特の発明特定事項として,「該取り込まれた上記情報から,電源を投入した日の各チャンネルのテレビの番組内容を取り出して,チャンネルの違い毎に縦もしくは横の内の1方向に並べて画面に表示し,電源を投入した日の,取り込まれた上記情報中の同一チャンネルの番組内容を,その放送順に,上記1方向と垂直な方向に並べ,且つ各番組内容の放送時間に応じた長さで表示し」,及び「該指示が,所望の番組を設定するものであると,上記識別可能に表示された箇所に対応する番組内容を所望の番組として設定する」を有する。
このように,本願発明は,平成12年9月27日付け手続補正書における請求項6に係る発明とは大きく異なり,しかもはるかに限定された発明であるから,上記請求項6に係る発明について特許法29条2項による拒絶理由が通知されていても,本願発明が同じ拒絶理由に該当するとはいえない。
上記(1)のとおり,拒絶査定書に,平成13年9月20日付け手続補正書における請求項5に係る発明(本願発明と同一である。)について何ら記載されていないことからも,本願発明についての拒絶理由が解消されたと解すべきである。
(3) 特許庁が平成5年11月に公表した特許出願の審査の進め方に関する「審査ガイドライン」(甲11)には,「拒絶査定を行う際には,先に通知した拒絶理由が依然として解消されていないすべての請求項を指摘する。」,「意見書における出願人の主張及び補正内容に対する審査官の判断とともに,解消されていないすべての拒絶理由を明確に拒絶査定書に記載する。」と記載されている。
これによれば,本件についても,拒絶査定時には,平成13年9月20日付け手続補正書における請求項5に係る発明(本願発明と同一である。)の拒絶理由は解消されていたと解すべきであり,本願発明についての拒絶理由が通知されていたと解することはできない。
なお,審査ガイドラインには,適用対象となる出願が制限される旨の規定は一切ないから,これが,平成5年法の適用を受ける出願についての取り扱いを示したものであるとはいえない。
3 取消事由3(進歩性の判断の誤り―一致点の誤認・相違点の看過) 本件審決は,本願発明と引用発明1との一致点を,「少なくともテレビ放送の各番組内容とその開始時刻とその放映チャンネルとを含む情報から,各チャンネルのテレビの番組内容を取り出して,画面に表示し,上記情報中の同一チャンネルの番組内容を,その放送順に,縦の方向に上記画面に並べ,表示する,番組表示方法。」と認定する。
上記認定は,複数の放送局の番組表示を,放送局ごとに区別して画面に表示するということである。しかしながら,引用例1の第2図において画面に表示されているのは,「Kプログラム」という1つの放送局名の番組表示のみである。また,引用例1には「本発明によれば,テレビ受像器本体又はアダプター構成にて選局した放送局の今後の番組が画面自体に写つし出される」(2頁左上欄7〜9行目)と記載されている。つまり,引用発明1は,予め選局した1つの放送局のみについて,番組表示をするものである。
したがって,本件審決は,上記下線部を一致点として誤認し,相違点を看過したものである。
4 取消事由4(進歩性の判断の誤り―相違点cの判断の誤り) 本件審決は,相違点cについて,「引用発明1においても,上記周知のもののように,テレビ番組内容を放送局(放映チャンネル)毎に時刻情報とともに放送時間に応じた長さで放送順に並べて表形式で画面上に表示し,引用例2,3に記載されたもののように,番組(予約)設定したい領域を指示することによりその領域を(着色等させて)他の領域と識別可能に表示しその領域に対応する番組を(予約)設定することは当業者が容易に想到できたものである。」と判断したが,誤りである。
すなわち, (1) 引用発明1における番組等の表示形式を,新聞のテレビ欄等のような周知のものに置き換え,その上でさらに引用発明2,3を適用するというような進歩性の判断手法は,引用発明1を恣意的に変化させて新たな発明を創作した上で,これを主引用発明として容易想到性を判断していることになり,不当である。このような手法は,特許庁の審査基準(甲32)にも反するものである。
(2) 引用発明1は,予め選択された1つの放送局のみの番組を表示することを前提としているのであるから,新聞等のテレビ欄のような,複数の放送局の番組を表示する周知の番組表形式を適用することはできない。
(3) 引用発明1に引用発明2,3を適用することはできない。
すなわち,引用例2,3には,チャンネル番号枠と時刻枠とからなるマトリックス状の表示選択領域が記載されているが,このマトリックス状の表示選択領域において,チャンネル番号枠と時刻枠とにより形成される各コマの開始時刻及び終了時刻は,予め固定されたものであり,チャンネル番号枠と時刻枠とにより形成される各コマごとに設定を行うものである。
したがって,引用例2,3に記載されているマトリックス状の表示領域を引用発明1に適用し,マトリックスの各コマにそれぞれ1つの番組表示をしようとすると,番組の実際の開始時刻や終了時刻は,○時ちょうど,○時30分,○時55分等様々であるため,番組の開始時刻や終了時刻を正確に表示することができなくなってしまい,「見たい番組の予定が即座に見ることができスムーズな選局が可能となる」という引用発明1の目的を達成することができなくなってしまう。
また,上記のように,番組の実際の開始時刻や終了時刻が,マトリックス状の表示領域の各コマの途中であると,コマごとに設定を行い,その設定したコマにおいてテレビのスイッチをONにしたり,番組の録画を行う場合に大きな不都合が生じてしまう。このように,引用発明2,3を引用発明1に適用しようとすると,予め固定されたコマ単位でしか設定を行うことができなくなることにより,使用者の使い勝手が非常に悪くなってしまう。
(4) 引用発明1における番組等の表示形式を,新聞のテレビ欄等のような周知のものに置き換えても,引用発明2,3を適用することはできない。
すなわち,新聞のテレビ欄等のような周知の番組表では,多くの場合,1つのコマの中に複数の番組が記載されている。例えば,9時00分から9時54分までの番組と,9時54分から10時までのニュース番組とは,9時から10時までの1つのコマに記載されている。したがって,引用発明1における番組等の表示形式を,新聞のテレビ欄等のような周知のものに置き換え,その上で引用発明2,3を適用すると,1つのコマを選択した場合,そのコマに含まれる複数の番組が同時に選択されてしまうことになり,使用者の使い勝手が非常に悪くなってしまう。
被告の反論
本件審決の判断に誤りはなく,原告の主張する本件審決の取消事由には理由がない。
1 取消事由1について 補正却下決定取消訴訟と拒絶査定不服審判とはいわゆる続審の関係にはない。また,拒絶査定不服審判で争われるのは,審査における拒絶査定が妥当であるかどうか,あるいは,本件特許出願が最終的に拒絶されるものであるかどうかであるのに対して,補正却下決定取消訴訟における争点は,手続補正を要旨変更であるとして却下したことが妥当であるかどうかであって,争点が異なる。したがって,両者が,同一の事件に含まれるということはできない。
また,補正却下決定取消訴訟の被告は,特許庁長官とされている(特許法179条)が,特許庁長官は,自己の利害のために特許の成立を阻止しようとする者ではないから,特許法139条にいう「事件の当事者」ということはできない。そして,補正却下決定取消訴訟の被告である特許庁長官の指定代理人が,関連する拒絶査定不服審判事件を担当したとしても,審判の公正が確保されないということはない。
そして,現行法においては,拒絶査定に対する審判において審決をした審判官は,審決取消訴訟が提起された後に審決が取り消されて特許庁において再び審理が行われる場合にも,その事件に審判官として関与することが可能である。すなわち,前の審決に関与した審判官は,後の審理において除斥原因があるとはされていない。前の審決に関与した審判官と,審決取消訴訟の被告である特許庁長官の指定代理人であった審判官とに格別違いはないから,後者についても,前者と同様に,除斥原因はないと解される。補正却下決定取消訴訟の被告である特許庁長官の指定代理人であったA審判官についても,同様である。
したがって,A審判官には,特許法139条5号に規定する除斥原因はない。
2 取消事由2について (1) 本件審決の引用例1ないし3は,平成12年9月27日付け手続補正書における請求項6に係る発明(本願発明に対応する。)を含む請求項1〜10に係る発明が,進歩性を備えるものではなく特許法29条2項の規定に該当するという理由の証拠として,平成13年7月12日付け拒絶理由通知書(甲9)の中で他の引用例とともに提示されたものである。
一方,特許法158条に規定されるように,審査においてされた手続は,拒絶査定に対する審判においても,なお効力を有するのであり,これを本件についてみれば,審査において上記拒絶理由通知書が出願人に送達されたことにより,特許法50条に規定する拒絶理由通知の手続がされ,これは審判においても効力を有するものということができる。
したがって,本願発明については,審査において特許法50条に規定する拒絶理由通知がされているものを,重ねてしなければならない理由はなく,本件審決が改めて拒絶理由通知をせずに直ちに審決をした点について,特許法159条2項に規定する手続に違反しているとはいえない。
(2) 原告が指摘する「審査ガイドライン」は,平成5年改正法の成立に伴い,改正法の運用のために平成5年11月に作成されたものであるから,基本的に平成5年法適用の出願(平成6年1月1日以降の出願)を対象とするものであることは明らかである(乙3,4参照)。
なお,本件分割出願について適用される昭和62年法の下では,審判における審理の結果,拒絶査定においては指摘されていないが特許要件を具備しないと認められる請求項があれば,審査段階で拒絶理由の通知がされていなくても新たな拒絶理由を通知することなく審判請求が成り立たない,とする運用である(乙5参照)。
3 取消事由3について 本件審決が,本願発明と引用発明1との一致点を,「少なくともテレビ放送の各番組内容とその開始時刻とその放映チャンネルとを含む情報から,各チャンネルのテレビの番組内容を取り出して,画面に表示し,上記情報中の同一チャンネルの番組内容を,その放送順に,縦の方向に上記画面に並べ,表示する,番組表示方法。」と認定したのは,単に,ユーザが選択した「各(個々の)放送局のテレビの番組名称を取り出して放送局名毎に(個別に)…表示する」,言い換えれば,「放送局個々に画面に表示する」という意味であることは明らかであり,それ以上の意味はない。そして,複数の放送局の番組表示を放送局毎に区別して画面に表示することについては,本件審決が,本願発明と引用発明1との相違点cとして挙げている。したがって,原告の主張する一致点の誤認・相違点の看過はない。
4 取消事由4について 本件審決は,単純に,引用発明1に引用発明2,3を直接適用するとしたものではなく,一般に,テレビ番組内容を放映チャンネル毎に時刻情報とともに放送時間に応じた長さで放送順に並べて表形式で表示するのが周知であることを考慮すると,引用発明1においても,上記周知のもののように,テレビ番組内容を放送局(放映チャンネル)毎に時刻情報とともに放送時間に応じた長さで放送順に並べて表形式で画面上に表示し,引用発明2,3のように,番組(予約)設定したい領域を指示することによりその領域を(着色等させて)他の領域と識別可能に表示しその領域に対応する番組を(予約)設定することは,当業者が容易に想到できたものである,としたものである。
引用発明1は,選局のために,現時刻以後のテレビ番組の予定を表示する装置に関するものであり,上記周知技術及び引用発明2,3は,共に,テレビジョンの番組予約(選局プログラム)装置に関するものであり,いずれもテレビ番組の選局操作に関連する技術である点で共通するということができる。したがって,引用発明1に上記周知技術,引用発明2,3を組み合わせることには,技術上何らの困難性(阻害要因)もないというべきである。
したがって,相違点cについての判断に誤りはない。
当裁判所の判断
1 取消事由1(除斥事由のある審判官の関与)について 特許庁における手続の経緯は,前記第2の1のとおりである(当事者間に争いがない)。原告は,本件審決に関与したA審判官には,本願についての補正却下決定の取消訴訟において,被告である特許庁長官の指定代理人であったから,本件審決には,特許法139条5号違反の瑕疵がある旨主張するので,この点について検討する。
証拠(甲1ないし7)によれば,平成16年5月12日付けでなされた本件審決には,A審判官が審判長として関与していること,一方,本願に関し原告が平成13年9月20日付けでなした手続補正の申出を却下する被告の決定,同じく原告が同13年12月26日付けでなした手続補正の申出を却下する被告の決定に対し,いずれも原告が東京高等裁判所に対し,特許庁長官を被告としてその取消しを求める行政訴訟を提起した(同庁平成14年(行ケ)第412号,第413号)ところ,いずれも平成15年9月29日に判決が言い渡された同訴訟事件において,A審判官が指定代理人として関与していたことが認められる。
ところで,特許法139条は,審判官が除斥されるべき事由を列挙し,その一つとして原告が主張する「審判官が事件について当事者,参加人若しくは特許異議申立人の代理人であるとき又はあったとき。」(平成15年法律第47号による改正前の5号)を定めている。同条は,審判官が事件や当事者と特殊な関係にあるためその事件を担当することが審判の公正と信頼からみて適当でないときに,審判の公正を保つためその審判事件の審理から除斥されることを定めたものであるが,同条5号にいう「事件」とは,前記のような趣旨によれば,当該審判事件及びそれに先行する審査手続の対象たる事件をいうと解するのが相当である。
そして,A審判官は,前記のとおり前記各訴訟事件の被告指定代理人になったにすぎず,本件審判請求や,その前審たる拒絶査定審査に,代理人として関与しているわけではないから,A審判官に同条5号の除斥事由があるということはできない。
原告は,特許庁長官が同号にいう「当事者」である旨を主張するが,前記のような特許法139条の趣旨からすると,同長官を当事者と解することはできない(特許法137条1項は,特許庁長官が,各審判事件の合議体を構成すべき審判官を指定しなければならない旨定めているところ,仮に,原告主張のような解釈を採れば,審判官が「当事者」によって指定されるという極めて不自然な事態となってしまう)。
原告の取消事由1の主張は理由がない。
2 取消事由2(拒絶理由の未通知)について 原告は,本件審決は査定の理由と異なる理由で請求が成り立たないと判断したものであるにもかかわらず,新たな拒絶理由が原告に対して通知されていないから,本件審決には特許法159条2項違反の瑕疵がある旨主張するので,この点について検討する。
(1) 前記事案の概要に後掲各証拠を併せれば,次の事実が認められる。
ア 原告は,平成12年9月27日,手続補正をしたが,その手続補正書(甲10)における請求項6に係る発明が,本願発明に対応するものであった。
イ 特許庁は,上記補正を前提に,平成13年7月12日,拒絶理由通知をしたところ,その拒絶理由通知書(甲9)には,拒絶理由として,「この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許をすることができない。」と記載された後に,請求項6を含む請求項1〜10が挙げられ,また,引用文献1〜7が提示されている。なお,上記引用文献1,2及び4は,本件審決の理由に引用された引用例1ないし3に対応する。
ウ これを受けて,原告は,平成13年9月20日,手続補正をしたところ,その手続補正書(甲2)における請求項5に係る発明は,上記請求項6に係る発明を減縮したものであり,かつ,本願発明と同一のものとなっている。
エ 特許庁は,上記補正を前提に,平成13年11月21日,拒絶査定をしたところ,拒絶査定書(甲8)には,「この出願については,平成13年7月12日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって,拒絶すべきものである。なお,意見書並びに手続補正書の内容を検討したが,拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせない。」と記載されると共に,その備考として,「本願請求項3,4,7,および8に係る発明は依然として平成13年7月12日付け拒絶理由通知書における各引用文献に記載された発明および上記周知技術に基づいて当業者が容易になし得たものである。」等と記載されている。
オ そこで,原告は,平成13年12月26日,本件審判の請求をするとともに,手続補正をしたところ,その手続補正書(甲3)における請求項3に係る発明が本願発明であり,これは,上記請求項5に係る発明と同一のものである。
カ 特許庁は,平成16年5月12日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との本件審決をした。本件審決は,本願発明が,引用発明1ないし3及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許を受けることができないと判断している。
(2) 以上の事実によれば,拒絶査定書(甲8)には,「この出願については,平成13年7月12日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって,拒絶すべきものである。」と記載されているところ,上記拒絶理由通知書には,本願発明に対応する発明である,平成12年9月27日付け手続補正書における請求項6に係る発明について,引用例1ないし3等に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであり,特許法29条2項により特許を受けることができない旨記載されている。
一方,本件審決も,本願発明が,引用発明1ないし3及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたから,特許を受けることができないと判断したものである。
そうであれば,本件審決が,査定の理由と異なる拒絶理由で請求が成り立たないと判断したということはできないから,本件審判手続において,改めて拒絶理由通知をする必要はなかったというべきである。
(3) なお,上記認定のとおり,拒絶査定書(甲8)には,その備考に,「本願請求項3,4,7,および8に係る発明は依然として平成13年7月12日付け拒絶理由通知書における各引用文献に記載された発明および上記周知技術に基づいて当業者が容易になし得たものである。」と記載されており,ここには,本願発明と同一である請求項5に係る発明については指摘がない。しかしながら,上記記載は,あくまで,備考として参考のために付記されたものにすぎないから,ここに上記請求項5に係る発明については指摘がなくても,上記認定のとおり,拒絶査定書に,「この出願については,平成13年7月12日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって,拒絶すべきものである。」と記載されている以上,上記請求項5に係る発明についての拒絶理由が拒絶査定書に記載されていないということはできない。
また,仮に,拒絶査定書に,上記請求項5に係る発明についての拒絶理由が記載されていないと解しても,特許法158条には,審査においてした手続が,拒絶査定不服審判においても,効力を有する旨規定されているところ,上記認定のとおり,拒絶理由通知書には,本願発明に対応する請求項6に係る発明について,本件審決と同旨の拒絶理由が記載されている。そうであれば,本願発明についての拒絶理由は既に通知されていると解されるから,結局,本件審決に特許法159条2項違反の瑕疵があるということはできない。
(4)ア 原告は,本願発明が平成12年9月27日付け手続補正書における請求項6に係る発明を大幅に減縮したものであるから,拒絶理由が通知されていたことにはならない旨主張する。
しかしながら,本願発明に対応するものである上記請求項6に係る発明について,本件審決が引用した引用例1ないし3を挙げて,拒絶理由が通知されている以上,本願発明が上記請求項6に係る発明をどのように減縮するものであっても,既に本願発明についての拒絶理由が通知されていたとみることができることは明らかである。したがって,原告の上記主張は理由がない。
イ また,原告は,特許庁が平成5年11月に公表した「審査ガイドライン」の記載によれば,拒絶査定で指摘されなかった請求項については拒絶理由が解消されたと解すべきであるから,本願発明についての拒絶理由が通知されていたと解することはできない旨主張する。
しかしながら,上記ガイドラインは,特許庁が特許法に基づき特許出願の審査を行うに際して定めた運用基準であり,これによって特許法の解釈が左右される筋合いのものではないから,原告の上記主張は理由がない。
なお,平成5年法律第26号(以下「平成5年改正法」という。)の運用について特許庁担当者が解説した「注解:改正特許・実用新案法の運用のてびき」(乙3)には,上記ガイドラインが平成5年改正法の運用に関して特許庁より公表されたものである旨記載されている。また,特許庁が定めた「特許・実用新案審査基準」(乙4)には,上記ガイドラインと同一内容を規定する(弁論の全趣旨)「審査の進め方」が収録されており,かつ,その適用を受ける出願が,平成5年改正法が施行された平成6年1月1日以降の出願であることが明記されている。
これらによれば,上記ガイドラインは,平成5年改正法による改正後の特許法の適用を受ける出願について定められたものであることが明らかである。しかるところ,本件分割出願は,原出願の出願日である昭和63年6月6日まで出願日が遡及する結果,平成5年改正法による改正前の特許法の適用を受けるものである(平成5年改正法附則2条1項)から,本件分割出願の審査に,上記ガイドラインが適用されるものとはいえない。
(5) 以上のとおり,本件審決には特許法159条2項,50条違反の瑕疵はなく,原告の取消事由2の主張も理由がない。
3 取消事由3(進歩性の判断の誤り―一致点の誤認・相違点の看過)について 原告は,引用発明1は,予め選局した1つの放送局のみについて番組表示を行うものであるから,本件審決は,一致点のうち「各チャンネルの」の部分を誤認し,相違点を看過したものである旨主張するので,この点について検討する。
(1) 引用例1には,「第2図は第1図の番組表示処理部2で処理された内容が,テレビ受像機1に写し出される画面表示例の一例である。この例では,放送局名3と番組表示セットスイッチ6とがONとされた時刻以降の番組名称表示5とそれに対応した時刻表示4が写し出される。この写し出された内容は例えばある時間(例えば5秒後)自動的に消え,通常のテレビ画面にもどるようになっている。」(2頁右上欄9〜16行)との記載があり,これに第2図の記載を併せれば,引用発明1が,予め選局した1つの放送局のみについて番組表示を行うものであることは,明らかである(引用例1には,複数の放送局の番組内容を表示することの記載はない。)。
(2) 本件審決は,本願発明と引用発明1との一致点を,「少なくともテレビ放送の各番組内容とその開始時刻とその放映チャンネルとを含む情報から,各チャンネル のテレビの番組内容を取り出して,画面に表示し,上記情報中の同一チャンネルの番組内容を,その放送順に,縦の方向に上記画面に並べ,表示する,番組表示方法。」であると認定しているが,これが複数の放送局の番組を表示する点を認定したものであるかどうかは,上記認定自体からは必ずしも明らかではない。
しかしながら,本件審決は,相違点cとして,「番組内容の表示の仕方に関し,本願発明においては,番組内容をチャンネルの違い毎に縦もしくは横の内の1方向に並べて画面に表示するとともに,同一チャンネルの番組内容を,その放送順に,上記1方向と垂直な方向に上記画面に並べ,且つ各番組内容の放送時間に応じた長さで表示し,上記画面に表示された番組内容の中のある番組内容を,他の番組内容と識別可能に表示し,使用者の指示を受けると,該識別可能に表示させる番組内容を変更することにより,別の番組内容を識別可能に表示し,該指示が,所望の番組を設定するものであると,上記識別可能に表示された箇所に対応する番組内容を所望の番組として設定するものであるのに対し,引用発明1においては,このことについて示されていない点」を認定している。
そうすると,複数の放送局の番組内容を表示することの有無は,相違点cとして認定されているから,本件審決の一致点の認定は,やや明確性を欠くものの,そこで認定されているのは,単に,「同一チャンネルの番組内容を,その放送順に,縦の方向に画面に並べ,表示する」ことと解される。したがって,本件審決の一致点の認定に格別誤りはなく,相違点の看過もないというべきである。
(3) 以上のとおり,原告の取消事由3の主張も理由がない。
4 取消事由4(進歩性の判断の誤り―相違点cの判断の誤り)について 原告は,本件審決の相違点cについての判断は誤りである旨主張するので,この点について検討する。
(1) 特開昭61-113379号公報(甲25)には,「このシステムでは,番組予約をする場合,端末器4の利用者は,加入者宅に送られてくる番組表を見る(第4図参照)。」(2頁左下欄4〜6行)と記載されると共に,第4図の番組表が記載され,また,実願昭56-56229号(実開昭57-170166号公報)のマイクロフィルム(甲28)には,「テレビ等の番組表」として,第2図のものが記載され,さらに,周知の新聞,雑誌等のテレビ番組欄も考慮すれば,本願出願日以前に,テレビ番組内容を放映チャンネル毎に時刻情報とともに放送時間に応じた長さで放送順に並べて表形式で表示することが,周知であったと認められる。
(2) 引用例2(甲15)には,「テレビジョン受像機の選局プログラム装置」について,「本発明の選局プログラム装置は第1図乃至第3図に示すように構成されている。第1図はテレビジョン受像機の画面である。そして選局プログラム時には画面1上にタイム表のパターン2つまり時間-ポジションチャートが現われる。
この例では横軸に時(1日分)、縦軸にポジション番号(チャンネル番号)(0〜13)をとっている。そして、プログラムを入力するには、例えば8〜9時、1ポジション、9〜11時、3ポジション、11〜12時、オフ(OFF)とするには、第2図に斜線にて示してある位置に1コマずつ第3図(a)(b)に示すライトペン3を当てて記憶させる。」(2頁右上欄3〜15行)と記載されると共に,画面表示例として第1図,第2図が記載されている。
また,引用例3(甲17)には,「番組予約装置」について,「この発明に係る番組予約装置は、装置本体に接続されたテレビジョン受像機の画面に、少なくともチャンネル番号枠と時刻枠とからなるマトリックス状の着色選択領域を映出させるためのマトリックス状領域発生用の読み出し専用メモリと、上記マトリックス状の各領域ごとに対応して設けられて番組予約情報が書き込まれたメモリと、上記着色選択領域のうちの所望領域が指定された際、この領域を着色表示させるとともに、この着色領域に対応するメモリ内容を読み出させる制御手段とを設けたものである。」(2頁左下欄17行〜右下欄7行),「上記テレビジョン受像機(2)の画面(101)には、上記ROM(6)により、第3図に示すように横軸方向のチャンネル番号枠、すなわちプリセット可能なチャンネル数と同数の1〜12までのチャンネル番号枠(15a)と縦軸方向の時刻枠、たとえば毎整時毎の枠(15b)とからなるマトリックス状の着色選択領域(15)が映出されるようになっている。この例では毎整時の枠(15b)はさらに15分毎の枠(150b)に細分割されている。」(3頁右上欄1〜9行)と記載されると共に,画面表示例として第3図が記載されている。
これらの記載によれば,引用例2及び3には,チャンネル番号枠と時刻枠とからなるマトリックス状の表示選択領域を画面上に映出するテレビ受像機であって,番組予約設定したい領域を指示することによりその領域の表示(色)を変えて他の領域と識別可能に表示し,使用者の指示によりその領域に対応する番組を所望の予約番組として設定することができるものという発明が記載されていると認められる。
(3) そうであれば,予め選択した1つの放送局の番組内容を,その放送順に,縦の方向に画面に並べ,表示するという引用発明1の番組表示方法(前記1のとおり)に,引用発明2又は3に示されたように,マトリックス上の表示選択領域を画面上に映出して番組予約したい領域を指示することにより予約番組の設定を行う設定方法を適用する場合は,上記(1)認定の周知事項を考慮して,まず,テレビ番組内容を放送局(放映チャンネル)毎に時刻情報とともに放送時間に応じた長さで放送順に並べて表形式で画面上に表示するようにした上で,引用発明2又は3に示された上記設定方法を適用することは,当業者が容易に想到することができたことというべきである。したがって,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
(4)ア これに対し,原告は,本件審決の進歩性の判断手法は,引用発明1を恣意的に変化させて新たな発明を創作した上で,これを主引用発明として容易想到性を判断していることになり,不当である旨主張する。
しかしながら,引用発明の適用に際して,その発明の属する技術分野における周知技術技術常識を考慮することは,当業者であれば当然に行うことというべきであるから,原告の上記主張は理由がない。なお,原告の指摘する特許庁の審査基準(甲32)においても,「論理づけに最も適した一の引用発明を選び,請求項に係る発明と引用発明を対比して,請求項に係る発明の発明特定事項と引用発明を特定するための事項との一致点・相違点を明らかにした上で,この引用発明や他の引用発明(周知・慣用技術も含む)の内容及び技術常識から,請求項に係る発明に対して進歩性の存在を否定し得る論理の構築を試みる。」(13頁1〜5行)と,進歩性判断に際して周知・慣用技術を考慮することが明記されている。
イ また,原告は,引用発明1は予め選択された1つの放送局のみの番組を表示することを前提としているのであるから,複数の番組を表示する表形式を適用することはできない旨主張する。
しかしながら,引用発明1においても,選択された放送局の番組情報だけでなく,複数の放送局の番組情報を表示した方が視聴者の選択に都合がよい場合が多いことは明らかであるから,当業者が,引用発明1をもとにして,複数の放送局の番組情報を表示することを想到することには何ら阻害されないというべきである。したがって,原告の上記主張も理由がない。
ウ さらに,原告は,@引用発明2,3は,チャンネル番号枠と時刻枠とから形成される各コマの開始時刻及び終了時刻が予め固定されたもので,各コマごとに設定を行うものであるから,引用発明1に引用発明2,3を適用することはできない旨や,A新聞のテレビ欄等のような周知の番組表では,多くの場合,1つのコマの中に複数の番組が記載されているから,引用発明1の番組表示形式を,上記周知のものに置き換えても,引用発明2,3を適用することはできない旨主張する。
しかしながら,番組情報を取り出して画面表示する引用発明1において,引用発明2,3のようにチャンネル枠と時刻枠から構成されるコマ単位の番組設定方法を採用する場合,テレビ番組内容を放送時間に応じた長さで放送順に並べて表形式で表示するという前記(1)認定の周知技術を考慮すれば,各コマの長さを番組の放送時間に関係なく設定するのではなく,むしろ,各コマの長さを放送時間に応じた長さに設定することは,当業者が容易に想到し得ることというべきである。
したがって,各コマの長さを番組の放送時間に関係なく設定することを前提とする原告の上記主張は,その前提を欠き理由がない。
(5) 以上のとおりであるから,原告の取消事由4の主張も理由がない。
5 結論 以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,他に本件審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,原告の本訴請求は理由がないから棄却し,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 青柳馨
裁判官 沖中康人
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