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事件 平成 16年 (ワ) 14649号 損害賠償等請求事件
原告 アエロテルリミテッド
訴訟代理人弁護士 森崎博之
同吉野正己
同根本浩
同竹田稔
同川田篤
同飯野泰子
同大野聖二
訴訟代理人弁理士 小栗久典
同田中久子
補佐人弁理士 稲葉良幸
同大貫敏史
被告 KDDI株式会社
訴訟代理人弁護士 大場正成
同 牧野利秋
同 尾崎英男
同 那須健人
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2006/04/13
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の請求
被告は,原告に対し,金30億円並びにこれに対する内金10億円について平成16年7月15日から支払済みまで及び内金20億円について平成13年7月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は,電話の通話制御システム及び電話の通話制御方法に関する後記の本件各特許権を有する原告が,被告が提供する国内電話及び国際電話サービス(以下「被告サービス」という )は,本件各特許権を侵害すると主張して,被告に対 。
し,本件各特許権侵害による損害賠償及び不当利得の返還を求めている事案である。
1 前提となる事実(当事者間に争いのない事実及び証拠により容易に認定され。,。 ) る事実 証拠により認定した事実については該当箇所末尾に証拠を掲げた()当事者1ア 原告は,通信機器,医療機器の製造,販売及びライセンス事業等を業とするイスラエル国法人である。
イ 被告は,電気通信事業法に定める電気通信事業等を目的とする株式会社である。
( ) 原告の権利2ア 原告は 次の特許権 以下 本件特許権1 という を有している 甲 ,(「 」。)(1,3 。)) 登 録 番 号 第2672085号 a) 発 明 の 名 称 電話の通話制御システム b) 出 願 日 昭和61年1月13日 c) 出 願 番 号 特願昭61-6163 d) 登 録 日 平成9年7月11日 e) 優先権主張番号 74048 f) 優 先 日 昭和60年1月13日 g) 優先権主張国 イスラエル h) 優先権主張番号 76993 i) 優 先 日 昭和60年11月10日 j) 優先権主張国 イスラエル k(「 」 l) 請求項の記載 本件特許権1に係る明細書 以下 本件特許1明細書という。本判決末尾添付の特許公報〔以下「本件特許1公報」という 〕参照 )の特許請求の範囲の請求項1 。。
の記載は,次のとおりである(以下,請求項1記載の特許発明を「本件特許発明1」という 。。)「特殊な交換部(A)を有する電話の通話制御システムであって,特殊な交換部(A)は,メモリー手段( )86とコード確認手段( )と預託金額確認手段( )と制 83 84御手段( )とを有し,メモリー手段( )は,特殊コ 88 86ードが所定の預託金額と一連で記憶され,通話費用を差し引いた預託金額の残高が記録され,その特殊コードは預託金額に対応する支払いがあった時から,通話を行うのに必要な預託金額の残高がある間使用可能とされるものであり,コード確認手段( )は,発呼者の入力する 83特殊コードを確認し,預託金額確認手段( )は,メモ84リー手段( )に記憶された預託金額またはその残高を 86確認し,制御手段( )は,接続・遮断手段( )と比 88 92較手段( )とを有し,比較手段()は,メモリー手 93 93段( )に記憶された預託金額またはその残高と,通話 86を開始するための最小費用またはその後の通話費用とを比較し,接続・遮断手段( )は,発呼者の入力した特 92殊コードがメモリー手段( )に記憶されたものと一致 86したときにおいて,メモリー手段( )に記憶された預86託金額またはその残高が,通話を開始するための最小費用より多い場合には,被呼者との通話を接続し,その後の通話費用を負担し得なくなった場合には,被呼者との通話接続を遮断する電話の通話制御システム 」。
) 構成要件m本件特許発明1を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した各構成要件をその符号に従い「構成要件1-@」のように表記する 。。)構成要件1-@ 特殊な交換部を有する電話の通話制御システムであって,構成要件1-A 特殊な交換部は,メモリー手段とコード確認手段と預託金額確認手段と制御手段とを有し,構成要件1-B メモリー手段は,特殊コードが所定の預託金額と一連で記憶され,通話費用を差し引いた預託金額の残高が記憶され,構成要件1-C その特殊コードは預託金額に対応する支払いがあった時から,通話を行うのに必要な預託金額の残高がある間使用可能とされるものであり,構成要件1-D コード確認手段は,発呼者の入力する特殊コードを確認し,構成要件1-E 預託金額確認手段は,メモリー手段に記憶された預託金額またはその残高を確認し,構成要件1-F 制御手段は,接続・遮断手段と比較手段とを有し,構成要件1-G 比較手段は,メモリー手段に記憶された預託金額またはその残高と,通話を開始するための最小費用またはその後の通話費用とを比較し,構成要件1-H 接続・遮断手段は,発呼者の入力した特殊コードがメモリー手段に記憶されたものと一致したときにおいて,メモリー手段に記憶された預託金額またはその残高が,通話を開始するための最小費用より多い場合には,被呼者の通話を接続し,その後の通話費用を負担し得なくなった場合には,被呼者との通話接続を遮断する構成要件1-I 電話の通話制御システムイ 原告は,次の特許権(以下「本件特許権2」といい,また,本件各特許権1及び同特許権2を総称して 「本件各特許権」という )を有してい ,。
る(甲2,4 。)) 登 録 番 号 第2997709号 a) 発 明 の 名 称 電話の通話制御方法 b) 出 願 日 昭和61年1月13日 c) 出 願 番 号 特願平9-117138 d) 分 割 の 表 示 特願昭61-6163の分割 e) 登 録 日 平成11年11月5日 f) 優先権主張番号 74048 g) 優 先 日 昭和60年1月13日 h) 優先権主張国 イスラエル i) 優先権主張番号 76993 j) 優 先 日 昭和60年11月10日 k) 優先権主張国 イスラエル l) 請求項の記載 本件特許権2に係る明細書(以下「本件特許2明細 m書」という。本判決末尾添付の特許公報〔以下「本件特許2公報」という 〕参照。また,本件特許1明細書及 。
び同2明細書を総称して 「本件各明細書」という ) ,。
の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりであ(, 「 」 る 以下 請求項1記載の特許発明を 本件特許発明2といい,本件特許発明1とあわせて「本件各特許発明」という 。。)「特殊な交換部(A)を利用し,次のステップを含む電話の通話制御方法であって,(a) この特殊な交換部(A)において所定の預託金額に対し特殊コードを予め割り当て,これら預託金額及び特殊コードの複数組合わせを記憶し,(b) 前記特殊コードは,対応する預託金額の支払いを条件として使用可能とされ,(c) 発呼者の電話( )から,入力された特殊コードと被呼者の電話 81番号を発呼時に送信し,(d) 前記特殊コード及び被呼者の電話番号を特殊な交換部(A)が受信し,(e) この受信された特殊コードが,記憶された特殊コードの一つと一致して使用可能であるかを確認し,(f) 前記受信された特殊コードの預託金額の残高と,発呼者の電話( )を被呼者の電話に接続するために必要な最小費用と 81を比較し,(g) 前記預託金額の残高が必要な費用より多い時に,発呼者の電話( )を被呼者の電話に接続し, 81(h) 前記預託金額の残高が,発呼者と被呼者との通話接続を継続するのに必要な費用より少なくなった場合には,発呼者と被呼者の通話接続を遮断するように,発呼者の電話( )が被呼者の電話と接続を開始してから遮断 81されるまで通話費用をモニターする,電話の通話制御方法」。
)構成要件n本件特許発明2を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した各構成要件をその符号に従い「構成要件2-@」のように表記する 。。)構成要件2-@ 特殊な交換部を利用し,次のステップを含む電話の通話制御方法であって,構成要件2-A この特殊な交換部において所定の預託金額に対し特殊コードを予め割り当て,これら預託金額及び特殊コードの複数組合わせを記憶し,構成要件2-B 前記特殊コードは,対応する預託金額の支払いを条件として使用可能とされ,構成要件2-C 発呼者の電話から,入力された特殊コードと被呼者の電話番号を発呼時に送信し,構成要件2-D 前記特殊コード及び被呼者の電話番号を特殊な交換部が受信し,構成要件2-E この受信された特殊コードが,記憶された特殊コードの一つと一致して使用可能であるかを確認し,構成要件2-F 前記受信された特殊コードの預託金額の残高と,発呼者の電話を被呼者の電話に接続するために必要な最小費用とを比較し,構成要件2-G 前記預託金額の残高が必要な費用より多い時に,発呼者の電話を被呼者の電話に接続し,構成要件2-H 前記預託金額の残高が,発呼者と被呼者との通話接続を継続するのに必要な費用より少なくなった場合には,発呼者と被呼者の通話接続を遮断するように,発呼者の電話が被呼者の電話と接続を開始してから遮断されるまで通話費用をモニターする構成要件2-I 電話の通話制御方法( ) 被告サービスについて 3,() 被告は プリペイドカードによる国内電話サービス 平成10年2月から及び国際電話サービス(平成9年7月1日以前から。発売当初の名称は「KDDスーパーワールドカード」であったが,平成13年4月ころから「KDDIスーパーワールドカード」に名称変更した )を提供している(なお, 。
,「」, 平成13年9月ころからは KDDIスーパーワールドカード@ca も平成15年11月ころからは 「KDDIスーパーワールドカードPLUS ,TEXT」も提供している 。ただし,被告サービスに使用されている電 )話の通話制御システム及び電話の通話制御方法の具体的構成については,後記のとおり争いがある。以下,被告サービスにおいて使用されているシステム及び方法を,それぞれ 「被告システム」及び「被告方法」といい,それ ,らを総称して「被告システム及び方法」という。
2争点( ) 被告システム及び方法の具体的構成(争点1) 1( ) 被告システムは,本件特許発明1の技術的範囲に属するか(争点2 。 2 )ア 被告システムは 「特殊な交換部 (構成要件1-@及びA)を充足す ,」るか(争点2-1 。)イ 被告システムは 「預託金額確認手段 (構成要件1-A)を充足する ,」か(争点2-2 。)ウ 被告システムは 「特殊コードは預託金額に対応する支払いがあった時 ,から,通話を行うのに必要な預託金額の残高がある間使用可能とされる」(構成要件1-C)を充足するか(争点2-3 。)エ 被告システムは 「残高が,通話を開始するための最小費用より多い場 ,合には,被呼者の通話を接続し (構成要件1-H)を充足するか(争点 」2-4 。)オ 被告システムは 「その後の通話費用を負担し得なくなった場合には, ,被呼者との通話接続を遮断する (構成要件1-H)を充足するか(争点 」2-5 。)( ) 被告方法は,本件特許発明2の技術的範囲に属するか(争点3 。 3 )ア 被告方法は 「特殊な交換部(構成要件2-@及びA)を充足するか ,」(争点3-1 。)イ 被告方法は 「預託金額 (構成要件2-A)を充足するか(争点3- ,」2。)ウ 被告方法は 「特殊な交換部において所定の預託金額に対し特殊コード ,を予め割り当て (構成要件2-A)を充足するか(争点3-3 。 」)エ 被告方法は 「特殊コードは,対応する預託金額の支払いを条件として ,使用可能とされ (構成要件2-B)を充足するか(争点3-4 。 」)オ 被告方法は 「預託金額の残高が必要な費用より多い時に,発呼者の電 ,話を被呼者の電話に接続し (構成要件2-G)を充足するか(争点3- 」5。)カ 被告方法は 「残高が,発呼者と被呼者との通話接続を継続するのに必 ,要な費用より少なくなった場合には,発呼者と被呼者の通話接続を遮断するように,発呼者の電話が被呼者の電話と接続を開始してから遮断されるまで通話費用をモニターする (構成要件2-H)を充足するか(争点3 」-6 。)( ) 本件各特許発明に係る特許は無効理由を有するか(争点4 。 4 )ア 本件特許発明1の願書に添付した明細書の補正は,出願当初の明細書の要旨を変更するものか(争点4-1 。)イ 本件特許発明2の願書に添付した明細書の補正は,出願当初の明細書の要旨を変更するものか,また,同出願は,分割出願の要件に違反するものか(争点4-2 。)ウ 本件各特許発明進歩性を有するか(争点4-3 。)エ 本件各特許発明新規性又は進歩性を有するか(争点4-4 。)( ) 損害(争点5)5
争点に関する当事者の主張
1 争点1(被告システム及び方法の具体的構成)について(原告の主張),「 」 ( ) 被告システム及び方法の具体的構成は別紙 原告主張被告システム目録 1及び別紙「原告主張被告方法目録」各記載のとおりである。
( )ア 被告が上記各目録について主張する訂正を求める部分のうち,電話回線 2の接続は,SSP(サービススイッチングポイント)において行われるものであり,SCP(サービスコントロールポイント)ではないとする点については,SCPから通話回線を中継接続する指示を受けて,通話回線を接続するという動作自体を行うのがSSPであることは争わないが,SCPの指示によるものである以上,上記各目録の訂正の必要性は認めない。
イ 被告が主張するそのほかの各訂正は,争点2及び3において詳述するとおり,いずれも被告システム及び方法の具体的構成に基づかない主張であり,相当ではない。
(被告の主張)( ) 被告システム及び方法においては,SSPが電話回線の接続を行うもので 1あり,SCPではない。したがって,別紙「原告主張被告システム目録」及び別紙「原告主張被告方法目録」における各記載は,そのように訂正されるべきである。
( ) 被告システムにおいては,@カード番号は,カード金額に対応する支払い 2があった時から,通話を行うのに必要なカード金額の残高がある間使用可能とされるものではないし,Aその後の通話費用を負担し得なくなった場合には,相手方との通話接続を遮断するものでもない。
また,被告方法においては,@SCPの記憶装置において……所定の預託金額に対し,当該カードに記載されているカード番号を予め割り当てているものではないし,Aカード番号は,これに対応する預託金額の支払いを条件として使用可能とされるものではないのみならず,BSCPは,SCPの記憶装置に記憶された預託金額の残高が0でない場合には,SSPを介して利用者の電話を相手方の電話に接続するものではない。
したがって,別紙「原告主張被告システム目録」及び別紙「原告主張被告方法目録」における各記載は,訂正されるべきである。
2 争点2(被告システムは,本件特許発明1の技術的範囲に属するか)及び争点3(被告方法は,本件特許発明2の技術的範囲に属するか)について( ) 争点2-1(被告システムは 「特殊な交換部 (構成要件1-@及びA) 1 ,」を充足するか )並びに争点3-1(被告方法は 「特殊な交換部 (構成要 。,」件2-@及びA)を充足するか )について。
(原告の主張)ア 本件各特許発明は 「特殊な交換部」を有する電話の通話制御システム ,,。 ・方法であって そのシステム・方法の運営・管理者は限定されていない本件各特許発明の「特殊な交換部」とは 「メモリー手段 「コード確認 ,」,手段 「預託金額確認手段」を有するものであり,メモリー等それぞれ 」,の手段の集合体であるものの,単一のハード機器がすべての手段を備えている必要はない。本件各特許発明の「特殊な交換部」とは,文言上,こうした各機能を備えたハードと回線の集合体で足りるものであり,本件各明細書の各記載,出願経過をみても 「特殊な交換部」が単一のハードでな ,ければならず,交換機,記憶装置等のようにハードとして分離しているものの集合体であってはならないという限定はない。したがって,被告システム及び方法において,記憶装置を含むSCPと交換機を含むSSP及び料金計算システムの機能的集合体は,本件特許発明1の構成要件1-@及びA並びに本件特許発明2の構成要件2-@及びAの「特殊な交換部」を充足する。
イ 本件各明細書には 「電話機81は,符号82で示される一般の電話シ ,ステム,即ち電話回線と接続して (本件特許1公報8欄6〜7行,本件 」特許2公報10欄【0015 )と記載されており,一般の電話システム 】82を経て特殊な交換部Aと接続されているのであるから(上記各公報第2図ないし図2参照 「特殊な交換部」は,一般の加入者電話と同様に ),端末側に属するものではない。被告は,被告サービスにおけるSSPは,交換機機能を有するが,端末機ではないこと及び「メモリ手段,コード確認手段,預託金額確認手段等」を備えないことから,特殊な交換部には該。, , 当しないなどと主張する しかし被告システム及び方法におけるSSPSCP及び料金計算システムの全体が本件各特許発明の「特殊な交換部」に相当するのである。
被告は,本件各特許発明の「特殊な交換部」は,端末側に存在することを前提としているし,その場合,完全なキャッシュレス通話にならないなどと主張する。しかし,本件各特許発明の特許出願当初の明細書(昭和61年1月13日付け。以下「本件出願当初明細書」という。乙1の1・乙3)には,本件各特許発明が電話会社自体の通信システムではなく,電話会社の通信網を利用する端末事業者のみが利用する発明であったことを示す記載はないし,特殊な交換部を有する者が電話会社と契約した端末事業者に限定する記載も,電話会社の有する基幹システムを排除する記載もない。また,発呼機から特殊な交換部までの回線の接続につき発呼者に課金されないよう電話会社との間で別途契約等を締結することなどにより,特殊な交換部が端末側にあったとしてもキャッシュレス通話を実現することは可能であるから,被告の主張は誤りである。
(被告の主張)ア 本件出願当初明細書に記載されている特許発明は,被告サービスで採用されているプリペイドカードを用いた電話料金課金システムとは異なり,電話会社との契約により電話会社の通信網の端末電話機を使用して事業者が提供する前払式電話転送サービスに関するビジネスモデルに関する発明である。これに対し,被告サービスは,平成7年に被告が独自に開発したプリペイドカードを用いた電話料金の課金を集中管理するシステム・方法である。被告は,そのため,SCPと呼ばれるシステムを設け,記憶装置を設置し,被告が発行するすべてのカード番号と当該カードの利用可能金額を予め記憶させている。カードを購入した利用者が,任意の電話機から被告サービスに対するアクセス番号を入力すると,当該回線は被告の所有する交換機のうちの特定の交換機(SSP)に接続され,利用者が入力したカード番号と相手先電話番号をSCPに送信する。SCPは,当該カード番号の存在,有効期限内の使用であること及び利用可能金額の残高の有無を確認し,利用可能金額がゼロでなければ所定の通話時間の通話が可能となり,通話終了時には,SCPは通話開始時の残高から当該電話に要した電話料金を差し引き,新たな残高を記憶装置に記録する。
イ 電話による通話を行う場合,電話会社の電話回線網を介することは必要不可欠であるが,本件各特許発明の「特殊な交換部」は,当然に電話会社の電話回線網の一部を構成するものではない。一般に,電話会社の電話回線網に関係する発明の特許出願の場合,明細書中に必ずそのことが明らかに理解できるような記述が存在するのに対し,本件各明細書には 「特殊,な交換部」という不明瞭な用語が用いられており,それが電話会社の交換機などの設備であることを技術的に明記している記載は全く存在しない。
ウ 本件特許発明1の「特殊な交換部」は,本件特許1明細書第2図に図示されているとおり,電話会社の電話回線網内に位置して電話回線を接続するいわゆる交換機能を有する設備ではなく,一般の加入者電話と同様に端末側に属するものである。特に,82と表記されている部分は「一般の電話システム」であり,これが中継交換機,加入者線交換機及びそれを接続するための電話回線で構成される電話会社の電話回線網の全体に対応するもので,特殊な交換部も「一般の電話システム (電話回路網)に接続さ 」れている。本件各明細書には 「特殊な交換部」は 「再ダイアル手段8 ,,9へ指令して被呼者の電話番号をダイアルし (本件特許1公報8欄3 ,」,【】), 5〜36行 本件特許2公報11欄 0016 と記載されているなど特殊な交換部が端末側に属することを前提とする記載もある。
特殊な交換部が端末側にある本件各特許発明実施例では,発呼者がまず特殊な交換部の所定の電話番号をダイアルして,発呼者と特殊な交換部が一般の電話回線で接続される(1通話目)ため,発呼者と特殊な交換部までの通話費用は発呼電話機に課金される。特殊な交換部が本件各特許発明によって通話を制御するのは,特殊な交換部と被呼者の間の通話(2通話目)だけである。したがって,上記実施例の通話は完全なキャッシュレスではない。
これに対し,被告システムではSSPを介した発呼者と被呼者の間の通話が1通話である。発呼者からSSPまでの部分については,経由する国内電話会社が発呼電話機を通話料金の計算及び請求から除外するように被告との間で取り決められているから,発呼者と被呼者の地域に基づいて両者間の通話料金を計算し,カード金額の残高から,発呼者と被呼者の間の通話料金を課金でき,完全なキャッシュレスが実現できる。
このように,本件各特許発明と被告システム・方法はキャッシュレス通話の実質において著しく異なるものである。
( ) 争点2-2(被告システムは 「預託金額確認手段 (構成要件1-A) 2 ,」を充足するか )及び争点3-2(被告方法は 「預託金額 (構成要件2- 。,」A)を充足するか )について。
(原告の主張)ア 「預託金額」については,本件出願当初明細書においては,クレジット額などの複数の用語が記載されていたが,補正を経て,預託金額に統一された。預託金額により,特殊コードを入力するだけで事後精算の必要がないキャッシュレス通話が実現されること,及び特殊コードの取得時には対応する金額を支払うだけで,入金等のデータを特殊な交換部に入力する等の手間は一切必要ないこと等の本件各特許発明の効果にかんがみれば,預託金額という用語は,通話開始前に前もって支払われた金額であることを意味するにすぎない。したがって,被告システム及び方法におけるカード金額は,預託金額に当たるものというべきであり,被告システムは,本件特許発明1の構成要件1-Aを,被告方法は,本件特許発明2の構成要件2-Aを充足する。
イ 被告は,預託とは,預託金額に未利用分が発生した場合,利用者に返却することを想定している用語であるなどと主張する。
しかし,本件各特許発明における預託金額とは,本件出願当初明細書において用いられていた同じ対象を指示する用語であった「前払い額 「ク」,レジット ,及び「クレジット額」を統一したもので,単に「クレジット 」額(信用額 」という用語のみを置き換えたものではない。また,このよ )うな補正の経緯,本件各特許発明の効果からすると 「預託金額」という,用語が,通話開始前に前もって支払われた金額であること以上の意味を有していないことは明らかであるから,被告システム及び方法におけるカード金額が売り切り方式で返金を予定していないとしても,本件各特許発明における「預託金額」に当たることは明らかである。
したがって,被告システム及び方法のカード金額は,本件各特許発明の「預託金額」に相当する。
(被告の主張)ア 預託とは 「預け任せること (広辞苑第5版)を意味する。したがっ ,」て,預託とは,預託金額に未利用分が発生した場合,これを利用者に返却することを想定している用語である。原告が主張するとおり,前もって支払われたこと以上の意味を有しないのであれば,むしろ前払金などの用語を用いるはずである。
イ 被告サービスにおいては,300円から8050円まで14種類のカード金額を利用者に販売する方式が採用されている。利用者はこれらカード金額を支払ってカードを購入し,被告サービスを利用するが,未利用分についても金銭の返却は行わない。被告サービスにおける買取り式のカード金額と本件各特許発明における「預託金額」は,文言上も法的意味も異なることは明らかである。前払い金を本件各特許発明のように「預託金額」(クレジット額)とする場合は,金額を自由に設定することができる長所がある。これに対し,被告は不正使用対策や大量のカードの販売活動における便宜を考慮して,固定の比較的低額の金額によるカード売り切り方式としているのである。本件各特許発明と被告システムはこの点においても相違するものである。
( ) 争点3-3(被告方法は 「特殊な交換部において所定の預託金額に対 3 ,し特殊コードを予め割り当て (構成要件2-A)を充足するか )につい 」。
て(原告の主張)ア 本件特許発明2における「特殊な交換部において所定の預託金額に対し特殊コードを予め割り当て」とは,特殊コードを予め割り当てられた預託金額の組合せの複数のものが,特殊な交換部に記憶されることを規定するものであり,それ以上に,預託金額に対する特殊コードの割り当てが,特殊な交換部で行われることを必要とするものではない。
イ 被告方法においても,カード番号が,カード金額と対応付けられて作成された後,カード番号とカード金額とが特殊な交換部において記憶されているのであるから 「特殊な交換部において所定の預託金額に対し特殊コ ,ードを予め割り当て」を充足するものというべきである。
(被告の主張)ア 本件特許発明2の構成要件2-Aは 「特殊な交換部」において預託金 ,額に対し特殊コードが割り当てられ,かつ記憶されるものと規定されているのであるから,預託金額に対する特殊コードの割り当てが特殊な交換部で行われる必要はないとする原告主張は誤りである。原告は,補正により「おいて」という文言を追加したのであるから,割り当てと記憶を特殊な交換部において行うことを強調しているというべきである。特殊な交換部以外の場所で記憶と割り当てが行われることを含むとする解釈は,禁反言の原則に反するというほかない。
イ 被告方法では,カード金額に対してカード番号を生成する作業は,営業所において,担当者がSCPとは全く別のカード番号生成支援ツールを操作してカード番号を自動生成して行っている。したがって,被告方法は,「 」 特殊な交換部において所定の預託金額に対し特殊コードを予め割り当てるとの構成を充足しない。
( ) 争点2-3(被告システムは 「特殊コードは預託金額に対応する支払い 4 ,があった時から,通話を行うのに必要な預託金額の残高がある間使用可能とされる (構成要件1-C)を充足するか)及び争点3-4(被告方法は, 」。
「特殊コードは,対応する預託金額の支払いを条件として使用可能とされ」(構成要件2-B)を充足するか )について。
(原告の主張)ア 本件各特許発明は,カード番号と預託金額の組合わせが事前にあり,その預託金額に対する支払いがあったときから使用可能となることを想定している。被告システム及び方法においては,利用者はカード金額の支払いによって,カード番号の使用が可能になる。したがって,被告システムにおいては「特殊コードは預託金額に対応する支払いがあった時から,通話を行うのに必要な預託金額の残高がある間使用可能」となるものであるか,, , ら本件特許発明1の構成要件1-Cを充足し また 被告方法においても「, 」 特殊コードは 対応する預託金額の支払いを条件として使用可能とされるものであるから,本件特許発明2の構成要件2-Bを充足する。
イ 被告は,カードが窃取された場合などを想定して,被告システムは本件特許発明1の構成要件1-Cを充足せず,被告方法は,本件特許発明2の構成要件2-Bを充足しないなどと主張する。しかし,被告サービスは,預託金の支払がなくても無条件に使用されるシステム及び方法であるはずがないから,窃取等の異常事態における特殊事情を前提とした主張は無意味である。
(被告の主張)ア 本件特許発明1の構成要件1-Cにおいては 「特殊コードは預託金額 ,に対応する支払いがあった時から」使用可能とされており,本件特許発明2の構成要件2-Bにおいては 「特殊コードは,対応する預託金額の支 ,払いを条件として」使用可能とされているのであるから,本件各特許発明においては,預託金額が支払われて初めて特殊コードを使用した通話が可能となる。本件出願当初明細書では 「顧客,例えば正規の電話使用者或 ,いは旅行者は現金或いはクレジットカード支払いにより特別の中央局で,特別のコード,クレジット額(信用額)及び電話番号を取得する……支払われた額は取得者のクレジット(信用貸し)となり,今後の電話使用ができる。クレジット額は特別のコードと共に特別の中央局のメモリーに記憶される (乙3・11頁17行〜12頁9行)と記載されており,前払 。」いにより特殊コードを取得した後にクレジット額と特殊コードが特殊な交換部のメモリに記憶されることが明記されていた。上記記載からしても,本件各特許発明においては,当然,特殊コードは預託金額の支払があった時から,あるいは支払を条件として使用可能となるものである。
イ 被告システム及び方法においては,生成されたカード番号が印刷業者に送られ,印刷業者によりカード番号を印刷したカードが製造され,被告に納入される。被告は,これと並行して,カード番号をマスタ・データベースに登録し,マスタ・データベースからSCPに転送し,SCPの記憶装置に記憶する。記憶後は,カードが販売される前であっても当該カード番号を使用した通話が可能となるから,被告システム及び方法においては,利用者の代金支払いは,カード番号の使用による通話を可能とする条件にはなっていない。
ウ 本件各特許発明では,預託金額が支払われたことを条件として特殊なコードを使用できるようにするので,それによって本件各特許発明実施したサービスの提供者は預託金額が支払われずに通話がなされるリスクを全く負わない。これに対し,固定の比較的低額のカードを毎日四,五万件作製して数百万件のカード番号を処理する被告システム及び方法においては,カード金額が支払われ,被告に入金される前にカード番号をSCPに記憶して使用可能とするので,カード金額が被告に入金されずにカード番号を使用して通話がされるリスクを被告が負担している。
エ 原告は,被告サービスは,預託金の支払がなくても無条件に使用されるシステム及び方法であるはずがないから,窃取等の異常事態における特殊事情を前提とした主張は無意味である,と主張する。
しかし,本件各特許発明技術的範囲は,特許請求の範囲に記載された技術的事項によって定められるものである。本件各特許発明の場合は,預託金額の支払がなされてから特殊コードを使用可能とすることによってサービス提供者が特殊コードの不正使用のリスクを負わないようにしているのに対し,被告サービスにおいては,極めて多数のカードを販売して多くの利用者がカード番号を利用できるようにするため,カードが購入されてからカード番号を使用可能とすることはせず,不正使用などカード代金が被告に入金されていないままカード番号が使用されるリスクを被告が負うのである。したがって,被告システム及び方法においては,本件特許発明1の構成要件1-C及び本件特許発明2の構成要件2-Bの構成を充足しない。
( ) 争点2-4(被告システムは 「残高が,通話を開始するための最小費用 5 ,より多い場合には,被呼者の通話を接続し (構成要件1-H)を充足する 」か )及び争点3-5(被告方法は 「預託金額の残高が必要な費用より多 。,い時に,発呼者の電話を被呼者の電話に接続し (構成要件2-G)を充足 」するか )について。
(原告の主張)ア 被告システムは,残高があれば通話を開始できるシステムなのであるから,被告システム及び方法においては「1」が通話を開始できる最小費 ,用であるというべきである。被告システム及び方法においては,預託金額またはその残高と1とを比較することによって,通話を接続するか否かを判断している以上,残高が,通話を開始するための最小費用より多い場合には,被呼者の通話を接続しているものであるから,本件特許発明1の構成要件1-H及び本件特許発明2の構成要件2-Gを充足する。
イ 被告は,被告システム及び方法においては,6秒当たりの通話時間として設定されている単位通話料金を前提として,最小費用未満であっても0でなければ通話を接続しているなどと主張している。しかし,被告システム及び方法においては,あくまでも必要な最小費用は1であり,0ではないことを確認している以上,必要な最小費用との比較を行っているものというべきである。
(被告の主張)ア 本件各特許発明における被呼者との通話の接続条件である「最小費用」又は「必要な費用」の意味は必ずしも明確ではない。しかし,本件各特許,「 」 「 」 , 発明においては 残高と 最小費用 ないしは 必要な費用 を比較して残高が「最小費用」ないしは「必要な費用」より多い場合に通話を接続するのであるから,通話システムを運営する上で「最小費用」ないしは「必要な費用」以下では通話接続をすることができない所定の額が設定されているものと解するのが合理的である。
イ これに対し,被告システム及び方法では残高が0でなければ通話を接続するのであるから,本件各特許発明における「最小費用」ないし「必要な費用」の概念は存在しない。仮に,被告システムにおける最小課金単位を被告システム及び方法における最小費用と考えると,それは最小単位の通話時間である6秒当たりについて設定されている単位通話料金であると解することになる(例えば6秒当たり10円であれば10円が最小費用となる 。被告システム及び方法では残高が0でなければ,たとえ残高が最 。)小単位通話料金未満であっても(例えば1円であっても ,6秒間通話で)きる。つまり,残高が最小単位通話料金未満であれば,被告が最小単位通話料金に足りない分の通話費用を負担することになる。
このように,被告システム及び方法と本件各特許発明では通話の接続条件が明らかに異なるのであり,被告システム及び方法においては 「残高,が,通話を開始するための最小費用より多い場合には,被呼者の通話を接続し (構成要件1-H)ているものでも 「預託金額の残高が必要な費 」,用より多い時に,発呼者の電話を被呼者の電話に接続し (構成要件2-」G)ているものでもない。
この点について,原告は,被告システム及び方法においては「1」が最小費用であると主張するが 「1」は最小費用ではない。仮に,被告シス ,「」 , , テム及び方法において 1 が最小費用であるとしても 被告システムは残高を「1」と比較しているのではなく「0」でないことを確認して, ,接続しているものである。したがって「0」はいかなる意味においても ,「通話を開始するための最小費用」とはいえない。
( ) 争点2-5(被告システムは 「その後の通話費用を負担し得なくなった 6 ,場合には,被呼者との通話接続を遮断する (構成要件1-H)を充足する 」か )及び争点3-6(被告方法は 「残高が,発呼者と被呼者との通話接 。,続を継続するのに必要な費用より少なくなった場合には,発呼者と被呼者の通話接続を遮断するように,発呼者の電話が被呼者の電話と接続を開始してから遮断されるまで通話費用をモニターする (構成要件2-H)を充足す 」るか )について。
(原告の主張)ア 被告システム及び方法においては,預託金額の残高を,通話可能な時間に換算し,この通話時間が通話可能な時間に達した場合には通話回線を切断しているのであるから,当該通話時間中にかかる通話費用の積算を時間で計算しているものというべきであって,被告システムにおいても 「預,託金額または残高と・・・その後の通話費用とを比較し (構成要件1ー」G ,その結果に基づいて「被呼者との通話接続を遮断する (構成要件 )」1-H)ものであり,被告方法においても 「残高が,発呼者と被呼者と ,の通話接続を継続するのに必要な費用より少なくなった場合には,発呼者と被呼者の通話接続を遮断するように,発呼者の電話が被呼者の電話と接」() 続を開始してから遮断されるまで通話費用をモニター 構成要件2-Hしているものというべきである。
イ 本件特許発明2の従属項である請求項4は,被告が主張する「前記発呼者の電話を被呼者の電話に接続可能な最大通話時間を,通話のために必要な費用と通話開始時の前記預託金額の残高とに基づいて決め,通話時間をモニターし,この通話時間が上記最大通話時間に達した時に発呼者と被呼者の通話を切るようにした請求項1記載の電話の通話制御方法 」という。
方法を規定している。したがって,かかる請求項4が従属する独立項である請求項1の通話の制御方法には,被告が主張する被告方法は当然に含まれているというべきである。
(被告の主張)ア 被告システム及び方法においては,料金計算システムによって計算されたカードの残高に応じた通話可能時間が通話の接続前にSSPに知らされており,通話の開始とともにSSPは通話時間の計測を行い,通話可能時間が経過すると通話回線を切断する。したがって,被告システム及び方法においては,料金計算システムが通話可能時間を計算し,SSPは通話時間を計測して,通話可能時間が満了すると通話回線を遮断しているのであって,通話可能時間は「その後の通話費用 (構成要件1-H)及び「通 」話接続を継続するのに必要な費用 (構成要件2-H)に対応していない 」から 「預託金額またはその残高と・・・その後の通話費用とを比較し」 ,(構成要件1-G)ておらず,また 「預託金額の残高と・・・必要な最 ,小費用とを比較し (構成要件2-F)ておらず,そのような比較の結果 」に基づいて通話接続を遮断するものではないことも明らかである。
また,被告システム及び方法における通話可能時間は,通話開始時のカード残高を6秒分の単位通話料金で割って,余りがあればこれを繰り上げて商を求め,これに6秒を掛けて算出している。したがって,争点2-4及び同3-5において述べたとおり,例えば,当該通話の単位料金が5円で,カード残高が56円の場合,通話可能時間は11単位でなく12単位,。,, 分 すなわち60円分の通話が可能となるそこで 本件特許発明1では預託金額の残高がその後の通話費用を負担し得なくなった場合に,被呼者との通話接続を遮断するのに対し,被告システム及び方法では,上記の例においては60円分(6秒×12単位=72秒)の通話が可能となり,カード残高が56円であるときに56円分の通話時間を過ぎても被呼者との通話接続を遮断するものではない。
イ 原告は,被告システム及び方法においては,当該通話時間中にかかる通話費用の積算を時間で計算しているにすぎないと主張する。しかし,本件各特許発明は,いずれもその特許請求の範囲に「残高とその後の通話費用とを比較し (構成要件1-G)又は「預託金額の残高と・・・必要な最 」小費用とを比較し (構成要件2-F)と記載され,金額に係る比較を行 」うことが明記されている以上,金額と異なる概念・内容である時間に換算した比較をするものも含むと解することはできない。
3 争点4(本件各特許発明に係る特許は無効理由を有するか)について( ) 争点4-1(本件特許発明1の願書に添付した明細書の補正は,出願当初 1の明細書の要旨を変更するものか )について。
(被告の主張)ア 本件特許発明1は,その出願(以下,本件特許発明1にかかる特許出願を 「本件出願1」という )後,手続補正が繰り返され,最終的に,本 ,。
件出願当初明細書に記載された優先日から12年経過後である平成9年5月7日付手続補正(以下「本件出願1補正」という。乙1の15)において,その後の技術状況を前提として,その全文が補正されたものである。
原告は,本件出願1補正において,メモリー手段への特殊コードと所定の預託金額とを一連で記憶する動作を「預託金額に対応する支払いがあった時」と同時ないしはそれよりも前に行うことを新たに追加したほか 「最,小費用」についても新たに追加した。これらは,いずれも本件出願当初明細書には記載されていない事項であり,この補正により,特許請求の範囲に記載した技術的事項が願書に最初に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内のものでなくなったのであるから,明細書の要旨を変更するものであり,平成5年法律第26号改正前の特許法(以下「旧特許法」という )40条に該当するものである。 。
イ 本件出願当初明細書においては,特殊コードは,顧客が預託金額を支払った後に,当該預託金額とともに中央局のメモリーに記憶され,使用可能となるものであった。原告は,本件出願1補正により,預託金額が支払われる前に,各預託金額ごとに付される特殊コードとともにメモリーに予め記憶されており,特殊コードは,顧客が預託金額を支払った時点で即使用可能になるように,その要旨を変更した。
すなわち,本件出願1補正の手続補正書(乙1の5)1頁9ないし11行において,特許請求の範囲第1項を「その特殊コードは預託金額に対応する支払いがあった時から,通話を行うのに必要な預託金額の残高がある間使用可能とされるものであり (以下「補正事項1」という )と,同 」。
補正書5頁24ないし26行において,本件出願当初明細書12頁6ないし9行の「支払われた額は取得者のクレジット(信用貸し)となり,今後の電話使用ができる。クレジット額は特別のコードと共に特別の中央局のメモリーに記憶される 」を 「上記預託金額は,各預託金額毎に附され 。,る特殊コードと共に前記特殊な交換部のメモリー手段に予め記憶されていると共に,通話費用を差し引いた預託金額の残高が記憶される (以下。」「」。), , 補正事項2 という と 同補正書10頁21ないし23行において「, , また 特殊な交換部に予め預託金額及び特殊コードを記憶してあるので特殊コードの取得時には対応する金額を支払うだけでよく,入金等のデータを特殊な交換部に入力する等の手間は一切必要ない (以下「補正事。」項3」という )を新たに追加する補正がなされた。 。
本件出願当初明細書に記載された特許発明における顧客が特別のコード,クレジット額及び特別の中央局の電話番号を取得し,電話を使用できるに至るまでの技術的事項は,本件出願当初明細書の11頁17行ないし12頁12行の「顧客……は現金或いはクレジットカード支払いにより特別の中央局で,特別のコード,クレジット額(信用額)及び電話番号を取得する。……支払われた額は取得者のクレジット(信用貸し)となり,今後の電話使用ができる。クレジット額は特別のコードと共に特別の中央局のメモリーに記憶される。コード及び電話番号は第1図のブロック12に示されている。次いで,取得者が市内電話或いは市外電話をしたい事態が生ずる 」との記載,第1図のブロック12及び特許請求の範囲第1項に 。
記された方法の発明における「前払いにより特別のコードを取得し;特別交換局のメモリーに,呼出者の呼出しを確認するために使用するよう前払い額を挿入し;」という経時的過程を示す記載等からすれば 「特殊コー,ドは,顧客が預託金額を支払った後に,該預託金額と共に中央局のメモリーに記憶し,使用可能となる」ことが記載されているだけである。
しかし,補正事項2は,預託金額が,その支払いの前に,各預託金額毎に附される特殊コードと共に前記特殊な交換部のメモリー手段に予め記憶されているとするものであり,入金後にメモリー手段に記憶させることとする本件出願当初明細書に記載された技術的事項を変更するものである。
また,補正事項3は,上記補正事項2に対応する発明の効果であることは明らかであり,この補正により,上記補正事項2は 「特殊な交換部に,予め預託金額及び特殊コードを記憶してあるので,特殊コードの取得時には対応する金額を支払うだけでよく,入金等のデータを特殊な交換部に入力する等の手間は一切必要ない 」という効果(補正事項3)を奏するこ 。
とになる。この効果は,本件出願当初明細書には何ら開示されておらず,本件出願1補正により新たに付加された事項による効果であることは明らかである。
補正事項2及び3はそれぞれ補正事項1(特許請求の範囲第1項 「そ)の特殊コードは預託金額に対応する支払いがあった時から,通話を行うのに必要な預託金額の残高がある間使用可能とされるものであり 」の発明,の構成と効果に係る記述であるので,補正事項1の技術的事項を上記補正事項2及び3を参酌して解釈すると,補正事項1の技術的事項は,預託金額が各預託金額毎に附される特殊コードと共に前記特殊な交換部のメモリー手段に予め記憶されていること(補正事項2)から,又は特殊な交換部に予め預託金額及び特殊コードを記憶してあること(補正事項3)から,顧客が預託金額を支払った時点で特殊コードを即時に使用可能とするようになり,本件出願当初明細書における技術的事項は実質的に変更されたことになる。したがって,補正事項1ないし3は,前払い式電話制御システムにおいて重要な料金課金に関して,本件出願当初明細書に記載された特許発明では,顧客が預託金額を支払った後に預託金額と特殊コードを中央局のメモリーに記憶するものであったものを,預託金額及び特殊コードを予め特殊な交換部のメモリー手段または特殊な交換部に記憶しておくというように逆の意味に変更するものであるから,本件特許発明1の重要な技術的事項を変更するものであるというべきである。
したがって,補正事項1ないし3は,出願当初の明細書に全く記載されておらず,かつ当該明細書に記載された事項からみて当業者に自明でない新規な技術的事項を含むものであり,この補正により,明細書の特許請求の範囲に記載された発明が願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した範囲内のものでなくなったので,明細書の要旨を変更するものであるというべきである。
ウ さらに,本件出願当初明細書では,クレジット額と通話開始のための接続の関係の明示がなく,かつ通話の切断は「クレジット残額がなくなったとき」とされていた。これに対し,本件出願1補正は,新たに接続の条件,, , , を加え かつ 切断については クレジット額がなくなったときではなく「その後の通話費用を負担し得なくなった場合には (本件特許発明1」特許請求の範囲)とされるなど,明らかに実質的な変更を行っている。
本件出願1補正の補正書1頁16ないし22行において 比較手段( ),「93は,メモリー手段( )に記憶された預託金額またはその残高と,通話を開 86始するための最初費用またはその後の通話費用とを比較し,接続・遮断手段( )は,発呼者の入力した特殊コードがメモリー手段( )に記憶された 92 86ものと一致したときにおいて,メモリー手段( )に記憶された預託金額ま 86たはその残高が,通話を開始するための最小費用より多い場合には,被呼者との通話を接続し,その後の通話費用を負担し得なくなった場合には,被呼者との通話接続を遮断する (以下 「補正事項4」という)と,同 」,5頁13ないし17行において 「メモリー手段に記憶された預託金額ま ,たはその残高が,通話を開始するための最小費用より多い場合には,被呼者との通話を接続して通話状態が維持され,その後の通話費用と預託金額またはその残高とを比較手段で比較して,その後の通話費用を負担し得なくなった場合には,被呼者との通話接続を遮断するように構成されている (以下「補正事項5」という)と,同9頁1ないし11行において, 。」「尚,前記レジスタ には前述した通話距離による料金率や時間変換の 88ための単位が記録されており,発呼者から入力された被呼者への通話のために必要な最小費用及び前記通話を維持するために必要な費用をチェックすると共に,被呼者と接続後の通話費用が記録されるようになっている。
そして,符号 で示される比較手段により,前記メモリー手段 に記憶 93 86された預託金額またはその残高と,通話を開始するための最小費用,前記通話を維持するために必要な費用及びその後の通話費用とが夫々比較され,該預託金額またはその残高が,通話を開始するための最小費用より多い時のみ,被呼者との接続を行い,接続後は通話費用と上記預託金額またはその残高との関係を比較して,その後の通話費用を負担し得なくなった時には,発呼者と被呼者の通話を切るように前記接続・遮断手段 を作92動させるものである (以下「補正事項6」という )と,同10頁14 。」。
ないし20行において 「メモリー手段に記憶された預託金額またはその ,残高が,通話を開始するための最小費用より多い場合には,被呼者との通話を接続して通話状態が維持され,その後の通話費用と預託金額またはその残高とを比較手段で比較して,その後の通話費用を負担し得なくなった場合には,被呼者との通話接続を遮断するように構成されているので,特殊コードを入力するだけで事後精算の必要がないキャッシュレス通話を行うことが可能となる (以下「補正事項7」という )と追加する補正が 。」。
なされている。
補正事項4ないし7は,それぞれ,本件特許発明1の特許請求の範囲に記載された発明,作用,実施例及び発明の効果に関するものである。
補正事項4は,本件出願当初明細書における「通話できる十分なクレジット」を「通話を開始するための最小費用」と変更するものであるのみならず,補正事項4ないし7は,電話料金前払いの通話制御システムの通話開始のための接続条件と接続遮断のための条件を規定する技術的事項に関するものであり,やはり本件特許発明1の本質あるいは根幹にかかわる重要な技術的事項である。本件出願当初明細書には,クレジットが十分であることが確認されると接続が行われる旨の記載があるのみで,上記各補正事項のように通話を開始するための最小費用が確認されると接続が行われる旨の記載又はこれを示唆する記載は全くない。また,本件出願当初明細書には 「クレジットの残額がなくなった時は前記通話を断線する」との ,記載があるのみで 「その後の通話費用を負担し得なくなった場合には, ,被呼者との通話接続を断線する」旨の記載又はこれを示唆する記載も全くない。これらの補正は,本件特許発明1の重要な技術的事項を変更するものである。さらに,本件出願当初明細書においては,通話を開始させるクレジットの額は,想定される通話相手がかなり遠距離である場合でも十分な通話ができるように最小費用よりも多い額を想定していたものと解されるが 「預託金額またはその残高」が「通話を開始するための最小費用よ ,り多い」との条件と,本件出願当初明細書に記載された「クレジット」の額が 「通話できる十分な場合」という条件は,全く異なる概念であり, ,同じものあるいは下位概念に含まれるものでもない。そのほか,本件出願当初明細書においては,クレジットの額が幾らあれば被呼者との通話が接,, 続されるかについて特定されておらずクレジットの額が少しでもあれば最小費用に満たない場合でも被呼者との通話接続を許容することを含む記載となっているが,最小費用に満たない場合に被呼者との通話接続を許容しても,後から料金を請求しさえすれば課金をすることは全く不可能ではないから,補正により最小費用との文言を挿入したことは,直ちに自明な補正であるということはできない。
よって,補正事項4ないし7は,本件特許発明1の特許請求の範囲における技術的事項を実質的に変更するものであり,この補正により,明細書の特許請求の範囲に記載された発明が願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した範囲内のものでなくなったので,明細書の要旨を変更するものであるというべきである。
エ 原告は,@本件出願当初明細書においては,預託金額及び特殊コードのメモリーへの記憶は,預託金額の支払前から記憶されていることに限定されていない,A本件出願当初明細書においては,預託金額及び特殊メモリ,, ーへの記憶と 対応する金額の支払いの前後関係が規定されていない以上補正により前後関係を確定したことは,発明の減縮に当たる,B通話の接続及び遮断条件に関して追加した事項は,いずれも本件出願当初明細書において明確であったなどと主張する。しかし,@本件出願当初明細書においては,前払いにより特別のコードを取得した後にクレジット額と特別のコードがメモリーに記憶されることに限定した記載がされていること,A本件出願当初明細書においては,金銭が支払われて金額が特定されたクレジット額をその後特別のコードとともに記憶させるという,支払と記憶の間の経時的関係が明確に記載されていること,B「通話を開始するための最小費用」は,本件出願当初明細書においては開示されていない特定の金額を想定した概念であるとともに「クレジットの残額がなくなった時」 ,とは,残額が0となることを示唆するのに対し,本件出願1補正において追加された「その後の通話費用を負担し得なくなった場合」とは 「残額,がなくなった時,或いは所定の金額以下になった時」を意味し,その内容が明確に拡張されている。原告の主張は誤りである。
オ 以上のとおり,本件特許発明1に関する本件出願1補正は,本件出願当初明細書の要旨を変更するものである。したがって,本件出願1は,旧特許法40条の規定により本件出願1補正をした平成9年5月7日に出願されたものとみなされる。そして,本件特許発明1は,特開昭61―210754号公報(乙3。以下「乙3文献」という ,特開平5-2842 。)57号公報(乙4。以下「乙4文献」という )及び特開平7-2125 。
04号公報(乙5 「乙5文献」という )に記載された発明(以下,そ 。。
れぞれ「乙3発明 「乙4発明」のようにいう )に基づいて当業者が容 」,。
易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項,同法123条1項2号の規定により無効理由を有するものというべきである。特許庁も,被告による無効審判申立てを受けて,同様の理由により無効審決をした(無効2004-80203。以下「本件特許権1無効審決」という。乙19 。)) 乙3文献についてa乙3文献は,本件特許発明1の公開特許公報である。乙3文献の記載事項に対して,本件出願1補正により補正事項1ないし7が新規に追加又は変更されているものの,これらはいずれも本件出願1補正前において公知の各種文献(乙4文献及び乙5文献)において開示されている事項を追加し,又は変更しているものにすぎない。
) 乙4文献は,被告の出願にかかる「プリペイドカード残金額・残度数 b管理装置」の発明の公開特許公報であり,その【0005】には 「各,プリペイドカードをユニークに識別するカード番号および当該カード番号に対応する残金若しくは残度数の情報をあらかじめ記録しておく記録手段」が記載されているから,当業者は,当該記載により,本件特許発明1における「メモリー手段( )は,特殊コードが所定の預託金 86額と一連で記憶され 」及び「金額とコードがメモリ手段に予め記憶さ ,れている」という要旨変更事項について,容易に想到することができるものというべきである。
) 乙5文献は,プリペイドカードの電話装置の発明に関する公開特許公 c報であるところ,その【0011】には 「カード15の残額が10円 ,以上か否かを判定する。カード15の残額が1通話に相当する単位通話料金の10円に満たない場合は,通話を許容できないということで,ステップST4でカードリーダ14に指示してカード15を排出させる」旨の記載があり,また【0012】には 「カード15の残額が1 ,0円以上の場合は,……この挿入カード15に残額があるということでステップST9で回線1を捕捉する」旨の記載がある。すなわち,乙3文献による開示事項に加え 「……カード金額またはその残高と, ,通話を開始するための最小費用……とを比較し 「通話を開始するた 」,めの最小費用より多い場合には,被呼者との通話を接続」するという技術思想を開示しているものというべきである。
,「」, さらに その後の通話費用を負担し得なくなったとき については乙5文献における単位通話料金不足となったときの取扱いから容易に想到することが可能である。
(原告の主張)ア 特許法上,補正の適否と,優先日後の経過年数とは一切関係がなく,本件出願1においては,特許法の要件を満たしていたからこそ各補正が認められたのであり,補正時期を論じる実益はない。
また,本件出願1は,昭和60年1月13日及び同年11月10日のイスラエル国における特許出願を優先権主張日として,昭和61年にされたものであり,その補正については,旧特許法41条及び53条が適用されるべき事案である。旧特許法41条は「願書に最初に添附した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を増加し減少し又は変更する補正は,明細書の要旨を変更しないものとみなす 」と規定し,。
同法53条1項は 「願書に添附した明細書又は図面について出願公告を ,すべき旨の決定の謄本の送達前にした補正がこれらの要旨を変更するものであるときは,審査官は決定をもってその補正を却下しなければならない 」と規定していたから,上記規定の適用に当たっては 「出願当初の 。,明細書又は図面に記載されていない事項(新規事項)を追加する補正であっても,明細書又は図面の要旨を変更しない限り自由に補正を行い得ることとされていた。補正事項1ないし4は,本件出願当初明細書及び図面の記載に基づき,発明の技術的課題,構成及び作用効果を検討して本件出願当初明細書に記載されている技術内容を出願時において当業者が客観的に判断すれば,いずれも本件出願当初明細書の記載から自明な事項であり,発明の本質に変化を生ぜしめない範囲における補正である。しかし,本件特許権1無効審決は,実質的に,平成5年法律第26号による改正後の特許法における「直接的かつ一義的に導き出せない場合は新規事項として許されない」との判断基準に依拠して,旧特許法における補正の基準に反する認定判断をした結果,本件特許権1を無効とする誤った結論を導き出したのであって,違法であることは明白である。
イ 本件特許権1無効審決は,メモリー手段( )への特殊コードと所定の預 86託金額とを一連で記憶する動作を「預託金額に対応する支払いがあった ,時」と同時ないしはそれよりも前に行うことを特定する点で,本件出願当初明細書には記載されていない新たな作用効果を奏しており,明細書の要旨変更に該当すると判断した。しかし,これらは,本件出願1に適用することができない現行の特許法の「自明な事項であっても,それが明細書又は図面に記載した事項からみて,当業者が直接的かつ一義的に導き出せない場合は,新規事項を追加するものとして許容されない」という判断基準に実質的に依拠してなされた誤った判断というべきである。本件出願1当時の当業者の技術常識を前提として,本件出願当初明細書に記載された技術的事項を合理的に理解すれば,同明細書に開示された発明において,メモリーへ記憶する動作を「支払いがあった時」と同時ないしはそれよりも前とすることは,明らかに理解されることである。すなわち,本件出願1当時,当業者にとって 「後払い方式」である自動クレジット方式の電話 ,システムは周知であり 「前払い式」の電話システムとしては「テレホン ,カードシステム」が周知であった。しかし,テレホンカードシステムを利用するためには,利用者が磁気カード読み取り機能を備えた公衆電話機を探し出し,その設置場所まで出かける必要があった。そこで,当業者は,この発明の技術的課題としては,自動クレジット方式を否定し,前払い方式を実現するに当たり,専用電話機を使用する必要がない電話システムを,。 創出することが 本件各特許発明の技術的課題であると理解するのであるしたがって,本件各特許発明は,顧客が支払をして特殊コードを取得したのに,その直後は電話使用ができず,メモリーへの記憶のための面倒な手続を顧客に強いた上で,初めて電話使用が可能になるというシステムを想定しているものではない。また,本件出願当初明細書においては,支払の後にメモリーに記憶する態様のみならず,クレジットカード会社を通じて,,, 特別のコード クレジット額及び電話番号のセットを取得する態様 空港ホテル,レンタカー事務所等の販売地点において購入する態様の双方が明示されている。仮に入金後に記憶するシステムを前提としているのであるならば,空港などの販売地点と特別の中央局との間のセキュリティ確保の必要性が生じるのみならず,多数の連絡集中などによる記憶の遅延によって,顧客の利便性が著しく損なわれる危険性が存在するのであって,このようなシステムを想定していると解することはできない。しかも,本件出願当初明細書においては,テレホンカードのように前払い方式でありながら,磁気カード読み取り機能のない電話機からでも通話可能とされる発明が明示されているのであるから,使用可能ないずれの電話機からでもかけられることを除外すれば,テレホンカードシステムと類似したものとなることは当然である。したがって,テレホンカードと同様,特別のコード及,。 びクレジット額は 支払前に記憶されているものと考えるのが普通であるしたがって,旧特許法における「明細書の要旨を変更しない」という判断基準によれば,支払いよりも前にメモリーへ記憶することは,本件出願当初明細書に記載された事項の範囲内であるというべきであるし,本件出願1補正により,預託金額が,支払いの前に,各預託金額毎に付される特殊コードと共にメモリーに予め記憶されており,特殊コードは,顧客が預託金額を支払った時点で即使用可能になるように,逆の意味に変更されているとの被告主張は誤りである。本件当初明細書においては,メモリーへの記憶と預託金額の支払いの前後関係については限定されておらず,メモリーへの記憶が取得者の電話利用前であることのみが記載されていたところ,補正事項2において,メモリーへの記憶が取得者の電話利用前であることをより明確にしたものにすぎないのである。
さらに,本件出願当初明細書には,預託金額及び特殊コードのメモリーへの記憶と,対応する金額の支払いの前後関係は規定されていない以上,補正により,その前後関係を確定したところで,発明の減縮であるから,補正事項3も出願当初の明細書の要旨を変更するものではない。
ウ 被告は,本件出願1補正により,新たに接続の条件を加え,かつ切断については,クレジット額がなくなったときではなく 「その後通話費用を,負担し得なくなった場合」に切断するものとされており,さらに 「通話,できる十分なクレジット」を「通話を開始するための最小費用」と変更するなど,明らかに実質的な変更がされているなどと主張する。
しかし,明細書の要旨とは 「明細書又は図面に記載された,発明の構 ,成に関する技術的事項(旧審査基準」をいい,明細書を補正した結果, )特許請求の範囲に記載した技術的事項が出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内でないものとなったときに,その補正は要旨変更とされ。, 「」 るものである 本件出願当初明細書には 問題点を解決するための手段において 「本発明の別の特徴によれば,……十分であり確かなものであ ,ることが確認されると,即ち,呼出者が適切なコード番号を使用しており通話できる十分なクレジットをもっている時には,通常の発信音が呼出局に送られる 」と記載されており(乙3・11頁7〜13行 「実施例」 。) ,において 「クレジットが有効なものであるなら,…相手先の電話機に接 ,続した時に通常の発信音が呼出局に送られる 13頁5〜8行 や 呼 。」(),「出者のクレジットが通話料を支払うのに十分であるかどうかを連続的に決定する…クレジットが使用された通話時間料に等しい時には,…自動的に終了する (15頁7〜11行)等,クレジット額と通話開始のための接 」続の関係は明示されており,また「メモリー中のクレジットと通話費用 ,とを比較することにより…クレジットを確認し;確認に従い呼出者と相手先とを接続し,そして,クレジット残高が無くなった時は前記通話を断線する (特許請求の範囲第1項 「…コードがメモリー手段中のコードに 」) ,対応するかまた呼出者が残額のあるクレジットを有するかを確認する手段;及び,前記確認により呼出局を相手先と接続する手段 (同第10項)」等,通話費用を負担し得なくなった場合に通話を切断することが記載されている。したがって,補正事項4に係る技術的事項は,本件出願当初明細書に明示されているものというべきである。
被告は 「メモリー手段( )に記憶された預託金額またはその残高」が ,86「通話を開始するための最小費用より多い」との条件と,本件出願当初明細書の「クレジット」の額が「通話できる十分な場合」という条件とは,全く異なる概念であり,同じもの,あるいは下位概念に含まれるようなものではない,と主張する。しかし,被告の主張及び本件特許権1無効審決は 「通話を開始するための最小費用」の意味内容について,文言の通常 ,の語義からみても,明細書全体の記載から総合的にみても,あり得ない解釈を前提としており,明らかに失当である 「通話を開始するための最小 。
費用より多い」という条件は 「通話できる十分な場合 「クレジットと ,」 ,通話経費を比較することにより…確認 「残額のあるクレジットを有す 」,る 「前払いクレジットを持っている 「クレジットが残っている」と 」,」 ,いう各条件と同じ概念である。本件特許権1無効審決は,本件出願当初明細書の「通話できる十分なクレジット」という記載の意味内容について,「どのぐらいの時間通話をすることができれば十分なのか」という「個人個人の主観により異なる」概念が含まれることを前提とするが 「十分」,,「, 」 (), の意味は 物事が満ち足りて 不足・欠点のないさま 広辞苑第5版「条件を満たして,不足がないさま (大辞林)であるから 「通話でき 。」,る十分なクレジット」とは 「通話するのに不足のないクレジット」であ ,ることは明白である 「通話するのに不足」があるかないかは,電話シス 。
テムによって客観的に定まるのだから「通話できる十分な」に,個人個 ,人の主観が入ることはあり得ない。本件特許権1無効審決の認定及び被告の主張は,誤りである。
エ 以上のとおり,本件出願1補正における補正事項はいずれも要旨変更ではないからこそ,特許庁審判官は補正を認めたのであって,補正は適法なものである。したがって,本件特許発明1の優先日は,昭和60年1月13日であるところ,被告が引用した乙3文献ないし乙5文献は,いずれも,。 優先日以降に以降に公開されたものであるため 先行技術とはなり得ない( ) 争点4-2(本件特許発明2の願書に添付した明細書の補正は,出願当初 2の明細書の要旨を変更するものか,また,同出願は,分割出願の要件に違反するものか )について。。
(被告の主張)ア 本件特許発明2に係る出願は,平成9年5月7日,特許法44条1項に基づき,本件出願1より分割して出願されたものであり(以下「本件出願2」という。乙2の1 ,優先日から12年経過後である平成9年6月6 )日付手続補正(以下「本件出願2第1補正」という。乙2の3の2)及び平成11年7月5日付け手続補正(以下「本件出願2第2補正」という。
乙2の6)において,その後の技術状況を前提として,その全文が補正されたものである。
イ 本件出願2第1補正及び同第2補正は,親出願である特願昭61-6163号(本件出願1。以下「本件親出願」ともいう )の出願当初の明細。
書(本件出願当初明細書)及び図面に記載した事項の範囲内のものでないから,本件出願2が分割出願の要件を満たさないことは明らかである。よって,本件出願2の出願日は本件親出願の出願日まで遡及することができ,()。, ず 平成9年5月7日付けの出願 乙2の1参照 とみなされる そして本件出願2第1補正及び同第2補正は,本件出願2の出願当初の明細書に記載した事項の範囲内でなされたものでないから,本件特許発明2に係る特許は,特許法第17条の2第3項に違反するものであり,特許法123条1項1号により,無効とすべきものである。
ウ 本件出願2第1補正は その全文訂正明細書の 0007 において 上 ,【】「記預託金額は,各預託金額毎に附される特殊コードと共に前記特殊な交換部のメモリー手段に予め記憶されていると共に,通話費用を差し引いた預託金額の残高が記録される 」と補正し(以下「補正事項@」という , 。。 )【0023】において「また,特殊な交換部に予め預託金額及び特殊コードを記憶してあるので,特殊コードの取得時には対応する金額を支払うだけで良く,入金等のデータを特殊な交換部に入力する等の手間は一切必要ない 」と補正するものである(以下 「補正事項A」という 。本件出願 。,)2第2補正は,その特許請求の範囲【請求項1】において「 a)この特(殊な交換部(A)において所定の預託金額に対し特殊コードを予め割り当て,これら預託金額及び特殊コードの複数組合わせを記憶し (b)前記,特殊コードは,対応する預託金額の支払い条件として使用可能とされ 」,と補正するものである(以下「補正事項B」という 。。)本件出願当初明細書に記載されている技術的事項は,その発明の詳細な「」「 ( ) 説明の 実施例 として 支払われた額は取得者のクレジット 信用貸しとなり,今後の電話使用ができる。クレジット額は特別のコードと共に特別の中央局のメモリーに記憶される (乙3・12欄6〜9行)と記載 。」されているように,クレジット額は,顧客が該クレジット額を支払った後に,特別のコードとともに中央局のメモリーに記憶されるようにするものであり,補正事項@のような 「上記預託金額は,各預託金額毎に附され ,る特殊コードと共に前記特殊な交換部のメモリー手段に予め記憶されている ものではない このことは 本件出願当初明細書の特許請求の範囲 請 」。, 【求項1】の方法の発明における 「前払いにより特別のコードを取得し; ,特別交換局のメモリーに,呼出者の呼出しを確認するために使用するよう」。, 前払い額を挿入し; との経時的な記載からも明らかである したがって補正事項@は,本件出願当初明細書の上記実施例及び【請求項1】に記載された技術的事項を逆の意味に変更するものである。
さらに 【請求項1】に関する補正事項Bを補正事項@及びAを参酌し ,て解釈すると,補正事項Bは,所定の預託金額に対し特殊コードを予め割り当て,これら預託金額と特殊コードの複数組合せを前記特殊な交換部のメモリー手段に予め記憶し,顧客が預託金額を支払った時点で特殊コードが即使用可能となることを意味することとなり,本件特許発明2の特許請求の範囲における技術的事項を実質的に変更することになる。上記各補正は,本件出願当初明細書の記載からみて当業者に自明な事項ではなく,それどころか発明の構成に関する技術的事項を逆の意味に変更させるものである。したがって,本件出願2は,これらの補正により,分割出願の特許請求の範囲に記載された発明が分割前の原出願に包含された二以上の発明のうちの一つでなくなったので,分割出願の要件を満たさないものであることは明らかである。よって,本件出願2の出願日を親出願の出願日まで遡及させることはできない。
また,本件特許発明2第1補正及び同第2補正は,本件特許発明2の出願当初の明細書に全く記載されておらず,かつ同明細書に記載された事項からみて当業者に自明でない新規な技術的事項を追加するものであり,特許請求の範囲の技術的事項を実質的に変更させるものであるから,これらの補正により,特許請求の範囲に記載した技術的事項が本件特許発明2の明細書又は図面に記載した範囲内のものでなくなったということができ。, , , る また 上記各補正により 本件出願2の出願当初の明細書においては顧客が預託金額を支払った後に預託金額と特殊コードを中央局のメモリーに記憶するものであったものを,預託金額及び特殊コードを予め特殊な交換部のメモリー手段又は特殊な交換部に記憶しておくというように逆の意味に変更することは,本件特許発明2の重要な技術的事項を変更するものであるというべきである。
エ 本件出願2第1補正では,特許請求の範囲の請求項1について 「 f),(前記預託金額の残高が,発呼者と被呼者との通話を継続するのに必要な費用を負担し得なくなった場合には,発呼者と被呼者の通話接続を遮断するように,発呼者の電話が被呼者の電話と接続している間,通話費用をモニターし (以下「補正事項C」という )と,第0017段落第5ないし ,」。
11行において 「前記メモリー手段86に記憶された預託金額またはそ ,の残高と,通話を開始するための最小費用,前記通話を維持するために必要な費用及びその後の通話費用とが夫々比較され,該預託金額またはその残高が,通話を開始するための最小費用より多い時のみ,被呼者との接続を行い,接続後は通話費用と上記預託金額またはその残高との関係を比較して,その後の通話費用を負担し得なくなった時には,発呼者と被呼者の通話を切るように前記接続・遮断手段92を作動させるものである (以。」下「補正事項D」という)と,それぞれ補正された。 。
さらに,本件第2特許第2補正の特許請求の範囲第1項の第12ないし15行において 「 f)前記受信された特殊コードの預託金額の残高と, ,(発呼者の電話(81)を被呼者の電話に接続するために必要な最小費用とを比較し (g)前記預託金額の残高が必要な費用より多い時に,発呼者 ,の電話(81)を被呼者の電話に接続し(h)前記預託金額の残高が, ,発呼者と被呼者との通話接続を継続するのに必要な費用より少なくなった場合には 発呼者と被呼者の通話接続を遮断するように 発呼者の電話 8 ,,(1)が被呼者の電話と接続を開始してから遮断されるまで通話費用をモニターする (以下「補正事項E」という )と,第0006段落第5ない ,」。
し11行において 「特殊コードの預託金額の残高と,発呼者の電話を被 ,呼者の電話に接続するために必要な最小費用とを比較して,前記預託金額の残高が必要な費用より多い時には,発呼者の電話を被呼者の電話に接続し,発呼者の電話が被呼者の電話と接続を開始してから遮断されるまで通話費用をモニターして,前記預託金額の残高が,発呼者と被呼者との通話接続を継続するのに必要な費用より少なくなった場合には,発呼者と被呼者の通話接続を遮断するように構成されている (以下 「補正事項F」 。」,という)と補正され,第0022段落第5ないし12行において 「特殊,コードの預託金額の残高と,発呼者の電話を被呼者の電話に接続するために必要な最小費用とを比較して,前記預託金額の残高が必要な費用より多い時には,発呼者の電話を被呼者の電話に接続し,発呼者の電話が被呼者の電話と接続を開始してから遮断されるまで通話費用をモニターして,前記預託金額の残高が,発呼者と被呼者の通話接続を継続するのに必要な費用より少なくなった場合には,発呼者と被呼者との通話接続を遮断するように構成されているので,特殊コードを入力するだけで事後精算の必要がないキャッシュレス通話を行うことが可能となる (以下「補正事項G」 。」という )とそれぞれ補正された。 。
上記補正事項Eの(f)の「発呼者の電話を被呼者の電話に接続するために必要な最小費用」に係る技術的事項は,本件出願当初明細書の第11頁第9ないし13行の 「十分であり確かなものであることが確認される ,と,即ち呼出者が適切なコード番号を使用しており通話できる十分なクレジットをもっている時には,通常の発信音が呼出局に送られる 」旨の記。
載における「通話できる十分なクレジット」を変更するものである。
また,上記補正事項Eの(h)の「前記預託金額の残高が,発呼者と被呼者との通話接続を継続するのに必要な費用より少なくなった場合には,発呼者と被呼者の通話接続を遮断する」に係る技術事項は,本件当初明細書第1頁第19ないし第2頁第1行の「クレジット残高がなくなった時は前記通話を断線する」を変更するものである。
さらに,本件出願当初明細書におけるクレジットの額については,幾らあれば被呼者との通話が接続されることになるのかは特定されていないが,クレジットの額は,十分な場合に被呼者との通話が接続されることになるところ 「通話できる十分な額」については,どのくらいの時間通話 ,することができれば十分なのかは,個人個人の主観により異なるものであり,また,たとえ多数の人間の平均をとって十分な通話時間を想定したとしても,通話相手との距離に応じてどれだけの額が十分なものなのかは異なってくるのであるから,本件出願当初明細書においては,通話を開始させるクレジットの額は,想定される通話相手がかなり遠距離である場合でも十分な通話ができるように最小費用よりも多い額を想定していたものと考えられる。かかる条件と,預託金額の残高が発呼者の電話を被呼者の電話に接続するために必要な最小費用より多いとの条件は,全く異なる概念であり,同じもの,あるいは下位概念に含まれるようなものではない。
したがって,上記補正事項Eの(f)の「発呼者の電話を被呼者の電話に接続するために必要な最小費用,及び(h)の「残高が発呼者と被呼 」者との通話接続を継続するために必要な費用より少なくなった場合」に係る技術的事項は,本件出願当初明細書に記載されておらず,かつその記載からみて当業者に自明な事項ではなく,かつ,特許請求の範囲に技術的事項を実質的に変更させるものである。
本件出願2の出願内容は,本件出願当初明細書の記載内容とほぼ同一であるから,上記補正事項CないしGは本件出願当初明細書に記載した事項の範囲内でなされたものでない。しかも,上記補正事項CないしGは,電話料金前払いの通話制御システムの通話開始のための接続条件及び接続遮断のための条件を規定する技術的事項に関するものであり,本件特許発明2の発明の本質或いは根幹にかかわる重要な技術的事項であり,この補正。, は本件特許発明2の重要な技術的事項を変更するものである したがって本件特許発明2第1補正及び同第2補正は,本件特許発明2の特許請求の,, 範囲における技術的事項を実質的に変更するものであり この補正により特許請求の範囲に記載した技術的事項が本件特許出願の明細書または図面に記載した範囲内のものでなくなったということができる。
よって,本件特許権2は,特許法第17条の2第3項の要件を満たしていない補正をした特許出願に対して付与されたものであり,特許法123条1項1号により,無効とすべきである。特許庁も,同様の理由により,本件特許権2を無効であると判断した(無効2004-80204 (以。
下「本件特許権2無効審決」という。乙20 。)原告は,同審決は,改正後特許法の定める判断基準に依拠しており,違法であるなど主張するが,同審決は,例えば 「 最小費用』という文言 ,『を入れることが,直ちに自明な補正であるとまでは言えない」と認定判断,。 しているとおり 旧特許法の判断基準に依拠していることは明らかである(原告の主張)ア 本件出願2は,親出願が昭和61年1月13日になされたものであるから,分割出願の適否については,旧特許法における「自明な事項」という判断基準によらなければならない。しかし,本件特許発明2に係る特許を無効とした審決は,実質的に,改正後特許法の「直接的かつ一義的」に導き出せる事項でなければ分割の要件を満たさないという判断基準に依拠して認定判断をした結果,本件特許2を無効とする誤った結論を導き出したのであって,これが違法であることは明白である。したがって,本件出願2における分割出願は適法になされたものであり,特許法17条の2第3項が適用される余地はない。そもそも,本件出願2は,特許庁において認められたとおり,適法にされたものであり,具体的には,親出願と比較して,親出願の特許請求の範囲第10項ないし第23項が特許請求の範囲から削除され,削除された内容が段落0030に移動され,親出願の9頁9行ないし10頁9行の「本発明の広い局面…接続しうるようにする 」が。
削除されているだけにすぎない。このため,本件出願2は,分割直前の親出願の明細書または図面に記載された発明の全部を分割出願に係る発明としたものでも,本件出願2の明細書または図面が,親出願の出願当初の明細書または図面に記載した事項の範囲内でないものを含むものでもない。
したがって,当該分割出願自体は適法なものであり,親出願の時に出願したものとみなされる。そして,本件出願2においてした各補正はいずれも適法であり,分割の要件も満たしているのであるから,本件出願2は,適法に分割されたものであり,親出願の出願日(昭和61年1月13日)に出願されたものとみなされる。よって,本件特許権2に無効理由は存在しない。
イ 被告は,本件出願当初明細書においては 「クレジット額は,顧客が該 ,クレジット額を支払った後に,特別のコードと共に中央局のメモリーに記憶されるようにする」という技術的事項が開示されているところ,補正事項@は当該技術的事項を逆の意味に変更するものであると主張する。
しかし,争点4-1において先に述べたとおり,本件出願当初明細書には,クレジットに関しては,前払いクレジットを用いることのみが記載され,その取得方法・手順等についての限定はない。したがって,補正事項@にいう「メモリー手段に予め記憶される」とは,取得者の電話使用に先だってメモリー手段に記憶される,という意味であり,預託金額の支払い前から記憶されていることに限定された表現ではない。補正事項Aのとおり 「特殊な交換部に予め預託金額及び特殊コードを記憶」しておけば, ,本件特許発明2の本質的な動作を完遂できるのであるから,補正事項@も,。 Aも 本件出願当初明細書に記載された技術的事項の範囲内のものであるまた,本件出願当初明細書に記載された技術的事項は,顧客が預託金額を支払った後に記憶するものに限定されないことは,当業者にとって自明である。さらに,補正事項@ないしBは,顧客が預託金額を支払う前に予めメモリーに記憶されることは何ら規定していない。つまり,各補正事項は 「メモリー手段に予め記憶され (補正事項@ 「特殊な交換部に予 ,」) ,め預託金額及び特殊コードを記憶し (補正事項A ,及び「特殊コード 」)は,対応する預託金額の支払いを条件として使用可能とされ (補正事項」B)とされ,メモリーへの記憶と使用との関係を規定するのみで,預託金額支払いとメモリーへの記憶とを関連づけた記載はない。したがって,これらの補正は,発明の構成に関する技術的事項を逆の意味に変更させるものなどではなく,また,この補正により分割出願の特許請求の範囲に記載された発明が分割前の原出願に包含された二以上の発明のうち一つでなくなったものでもない。よって,本件出願2は分割の実体的な要件を満たすものであり,親出願の出願時にしたものとみなされるものである。
ウ 被告は,本件出願2第2補正は,本件出願当初明細書の「通話できる十分なクレジット」及び「クレジット残高がなくなった時は前記通話を断線する」を変更するものであるとも主張する。しかし 「通話できる十分な,クレジット」に相当するのは,補正事項Eの「預託金額の残額」であり,「被呼者の電話に接続するために必要な最小費用」ではないし,補正事項Eにおける「残高が発呼者と被呼者との通話接続を継続するために必要な費用より少なくなった場合」も,本件出願当初明細書の「通話できる十分なクレジットをもっている時には」という技術的事項と表現上の差があるだけであるから,本件出願当初明細書に記載されており,当業者に自明な技術的事項であるというべきで,特許請求の範囲の技術的事項を実質的に変更させるものでもない。その他の補正事項C,F及びGについても,補正事項Eと同様に,本件出願当初明細書に記載されており,当業者に自明な技術的事項であり,かつ,特許請求の範囲の技術的事項を実質的に変更させるものでもない。このように,本件特許発明2を特許請求の範囲の文言に基づいて正しく解釈すれば,特殊コードが「使用可能とされ」る前に記憶 する動作が行われることと 預託金額の 支払い がなければ 使 「」 , 「 」 「用可能とされ」ることはないことが規定されているところ,親出願の本件出願当初明細書には,これらの事項が,明らかに記載されているものである。
さらに被告は,補正事項CないしGが電話料金前払いの通話制御システムの通話開始のための接続条件及び接続遮断のための条件を規定する技術的事項で,本件特許発明2の本質あるいは根幹にかかわる重要な技術的事項であり,この補正はこの発明の重要な技術的事項を変更するものであると主張するが,発明の本質にかかわる重要な技術的事項であっても,補正の基準や分割出願の要件は通常の場合と異なるものではなく,法定の要件を満たせば,補正や分割出願は認められるものである。被告の主張は採用できない。
( ) 争点4-3(本件各特許発明進歩性を有するか)について。 3(被告の主張)ア 本件各明細書には,本件各特許発明により,旅行者などが任意の個人電話機等から電話をかけられることが記載されている。しかし,このような発呼者が使用する電話機以外の第三者の電話機に課金することにより,発呼者がキャッシュレスで任意の電話機から電話をかけることが可能となるいわゆる自動クレジット通話方式は,当該方式に関連する特許出願が多数されていること(乙7ないし13)から明らかなとおり,本件各特許権の優先日当時,既に周知であった。もっとも,当時の自動クレジット通話方式は,電話会社と契約した第三者の電話機に課金し,請求するものであるから,前払い式ではなく,後払い式であった。
他方,前払い式の電話課金システムは,国内においては,昭和57年に日本電信電話公社によるテレホンカードシステムが実用化され,昭和60年ころには広く普及していた(乙14,15 。したがって,前払い式の )課金方式というコンセプトも周知であった。
本件各特許発明は,後払い方式の周知の自動クレジット通話方式を前払い方式としたものである。周知の自動クレジット通話方式が後払い式であるために通話料金をメモリに加算するのに対し,本件各特許発明は前払いされた預託金額から通話料金を減算し,残高によって通話を接続遮断する点が相違するにすぎない。本件各特許発明の「特殊な交換部」及び通話の接続・遮断条件をそれぞれ広く解釈するならば,そのような本件各特許発明を想到するのは当業者にとって容易である。
イ 昭和56年2月25日に公開された特開昭56-20371号公報(乙8。以下「乙8文献」という。また,同文献において開示されている発明を 「乙8発明」という )には,電話交換網内の発信側交換局にメモリ ,。
を有するデータセンタを設け,契約者がダイアルする登録番号,暗証番号が予め照合ファイルに登録されている番号と一致した時に,通話接続を行い,通話料金を課金ファイルに蓄積する技術に関する次の記載がある。
「本発明は公衆電気通信システムにおける加入者ダイヤル発信通話の課金方式特に,第三者課金方式に関するものである (2頁左上欄末行〜右 。」上欄2行)「自宅の加入電話以外から掛ける電話通話の料金を,当事者と電話運営企業体との直接契約に基づいて,その当事者の加入電話に,その発信通話の料金等に含めて請求する『クレジット通話』は,交換手が仲介する手動式のものが諸外国に散見されるのみで我が国にはなく,ましてやこれを自動式で行なうサービスは全く存在していない (右上欄下から2行〜左下 。」欄5行)「本発明はかヽる時代の要請に応えるため,電話運営企業体と電話加入者との間の直接契約に基づき,該加入者の情報を蓄積するデータセンタと発信側電話交換局に設けた特殊装置との協同動作によって,該加入者又はその縁故者が該加入者の加入電話以外の電話から発する通話の料金を該加入者に課金することを可能とする全自動式クレジット通話サービスを提供するものである (2頁左下欄13〜末行) 。」「契約発信者がクレジット通話をしようとする場合は,押しボタンダイヤル式の発信電話機1から先ず特番例えば“#XYZW”をダイヤルする。
……発信加入者交換機2では公知の方法により,特番を短縮ダイヤル機能により9桁の特定数字(以下システムコードという)に変換し,恰も通常の市外通話の如く発信電話機1を出トランク3に接続し,システムコードを図示していない発信センタから出トランク3に送出する。……以下回線は公知の方法により市外発信交換機4を経て市外中継交換機5に延長され,市外中継交換機5は受信したシステムコードの中の通信センタアクセスコードによってクレジット通話用の特殊課金トランク6を捕捉し,特殊課金トランク6は通信処理装置7を起動する。起動した通信処理装置7は市外中継交換機5に信号を返して……アナウンス機能によって契約発信者に登録番号の入力を促がす。……通信処理装置7は登録番号からその番号に関するデータを管理しているデータセンタを探し出すデータセンタ選択機能を有しており,この機能によって今受信した登録番号を,それを管理するデータセンタ8に図示していないデータ通信網を介して転送する。データセンタ8はその照合ファイルを検索して通信処理装置7から転送されてきた登録番号を検証し,それが正当且つ有効なものであれば通信処理装置7に登録番号整合信号と照合ファイルから読出した該登録番号対応の暗証番号を送り返して復旧する。データセンタ8から以上の回答を得た通信処理装置7は,そのアナウンス機能によって契約発信者に暗証番号の入力を促がし,その入力を受信して先にデータセンタ8から受信している暗証番号とのつき合せを行う。つき合せの結果,両者が一致すると,通信処理装置7は再びそのアナウンス機能によって契約発信者に被呼者番号(全国番号)の入力を促がし,それを受信一時記憶し,以下の3つの動作を行なって後復旧する。即ち,@ 被呼者番号を公知の方法により市外中継交換機5に送り,……発信電話機1と着信加入者11との間の通話路を完成させる。
A その課金情報検出機能により,被呼者番号の中の着信局番と先に受信一時記憶している発信局コードの2つの番号から課金指数(単位課金時間を課金タイマから抽出するための情報)を検出し,これを特殊課金トランク6に送る。……このようにして,着信加入者11が応答すると特殊課金トランク6は……公知の方法により通話度数を記録せしめる……。なお,この場合前位局には……課金パルスは送られないので発信電話機1に対する課金は行なわない。
通話が終……ると,通信処理装置7はその時計機能によってその時点の時刻(凡ね終話時刻に相当する)を記録すると共に,……発信局コード,登録番号,被呼者番号および通話度数を読出し,……これら5つの課金データを……課金ファイルに蓄積される (3頁左下欄3行〜4頁左下欄 。」8行)ウ 昭和58年1月10日に公開された特開昭58-3367号公報(乙16。以下「乙16文献」という。また,同文献において開示されている発明を 「乙16発明」という )には,メモリ手段であるカードに通話度 ,。
数が記憶され,残度数が でない場合には通話を接続し,残度数が にな 00ったときは通話接続を遮断する技術に関し,次の記載がある。
「磁気カードにより与えられる金額情報と電話機から与えられる通話料金情報とを比較し,この比較結果に応じて電話機の通話制御を行うと共に金額的演算を行って磁気カードの記録内容を書き変えて返却するような磁気カード式公衆電話機を提供するものである (2頁左上欄4〜10行) 」「磁気カード式公衆電話機1には主制御部3によって制御される磁気カード取扱装置2が備えられ,又,主制御部3はインターフェース4を介して電話機の通話を制御できるようになっていて,受話器上げ下げ信号および通話料金に相当する減算信号を電話機1から得て,通話回線オンオフ信号を電話機1に与える (左上欄15〜末行) 。」「磁気カードがカード挿入口に挿入されると,カードのデータが読み取られ,金額データは記憶演算部に授受される (右上欄10〜13行) 。」「主制御部3はキーコードが与えられ,また記憶演算部7から残額が0でない旨の信号が与えられてインターフェース4に通話回路オンの信号を与え電話機1の通話回線を接続する (4頁左上欄6―9行) 。」「カードの記憶内容一杯まで通話が行われた場合は,記憶演算部7からの残額=0の信号に基き主制御部3がインターフェース4を介して電話機1に対し通話回線オフの信号を与え,通話を停止させる (4頁右下欄下。」から2行〜5頁左上欄3行)エ 乙8文献においては,電話交換網内の発信側交換局にメモリを有するデータセンタを設け,契約者がダイアルする登録番号,暗証番号が予め照合ファイルに登録されている番号と一致した時に,通話接続を行い,通話料金を課金ファイルに蓄積する方式による後払い式の自動クレジット通話方式に関する技術が開示されている。
また,乙16文献においては,メモリ手段であるカードに通話度数が記憶され,残度数が でない場合には通話を接続し,残度数が になったと 00きは通話接続を遮断するカード方式による前払い式の自動クレジット通話方式に関する技術が開示されている。
乙8文献に開示された後払い式の自動クレジット通話方式に,乙16文献において開示された前払い方式を組み合わせれば,本件各特許発明における前払金の支払があればメモリに予め通話度数を記憶させ,契約者のダイアルする登録番号,暗証番号が一致したときに残度数が0でなければ通話を接続し,残度数が になれば通話を遮断する構成は,当業者にとって 0容易に想到できるものである。
オ 原告は,本件出願1当時,前払い方式はテレホンカードと専用電話機を必要とするカード方式により初めて実現する方式であったから,テレホンカードによらずして前払い方式を実現するのは困難であり,本件各特許発明の前払い方式には進歩性が認められる旨主張する。
しかし,前払い方式を実用化したのはテレホンカード式公衆電話機を用いる方式であったとしても,本件各特許発明における前払い方式の電話システムは,争点2において先に述べたとおり,完全なキャッシュレスを実現するものではないから,実際に実用化されるような発明ではなかった。
本件各明細書には,任意の場所から任意の場所に前払い式電話を完全なキャッシュレスでかけることを実施可能とする手段が記載されておらず,テレホンカード方式に代わりうる実施可能性を具備した技術を具体的に発明したものではなく,単に乙8発明により開示された後払い方式を前払い方式に変更しただけのものである。しかも,置換されるべき技術事項は,乙16発明のような周知技術にすぎない。本件各特許発明がそのようなものである以上,後払い方式を前払い方式とする単なるアイデア上の置換は容易と考えられる。したがって,本件各特許権は進歩性を有しない。
(原告の主張)ア 被告は,任意の電話機からキャッシュレスで電話をかけることができる,, 自動クレジット方式は 本件各特許発明優先日当時において周知でありさらに,前払式電話課金システムも,テレホンカードシステムにより実用化されていて周知であったと主張する。
しかし,優先日当時,任意の電話機からキャッシュレスで電話を掛けることができる自動クレジット方式,及びテレホンカードシステムによる前払式電話課金システムが,それぞれ独立に存在していたとしても,本件各特許発明の作用効果の一部を実現する技術がそれぞれ個別に存在していたにすぎず,双方の作用効果を同時に実現する本件各特許発明の構成が公知であったことにはならない。
イ 被告が周知技術であると主張する第三者の電話に課金できることは,本件各特許発明の従来技術に属するコレクトコールやクレジットカード通話と同様の後払いシステムの一つであって,何ら本件各特許発明の構成を示唆するものではない。さらに,被告が指摘する各特許公開公報(乙7ないし13)も,いずれも通話料金の後払いに関するものである。後払い方式は,本件各特許発明が解決すべき課題である従来技術にすぎない。
被告は,昭和57年当時には,テレホンカードシステムが実用化され,昭和60年ころには広く普及しており,前払い式の課金方式というコンセプトも周知であったなどと主張する。確かに,そのころテレホンカードシステムが普及し始めたことについては否定するものではないが,テレホンカードシステムも,本件各特許発明が従来技術として認識している技術にすぎないものであるし,本件各特許発明は,最も手近の個人用電話機又は公衆電話機を使用できることを目的とし,カード読み取り機を備えた特殊な電話機のみが使用可能なテレホンカードシステムからは容易に想到できない発明である。後払いの自動クレジット通話方式では,既に発生した具体的な通話料金を記録すればよいのに対し,前払いでテレホンカードのような媒体を用いず,キャッシュレス通話を行うには,どのように預託金額の残高を把握し,どのように接続・遮断を制御すればよいかについて,解決手段を提供することを要する。本件各特許発明はこのような解決手段を具体的に提供したものであり,特殊な交換部を広く解釈すれば容易に想到することができるものではない。
ウ 被告は,特殊な交換部が端末側にあるという誤った前提に基づき,本件各特許発明は,単に乙8発明の後払い方式を,乙16発明のような周知技術置換して前払い方式にしただけのものであると主張する。
しかし,被告の主張は,そもそもその前提自体が誤りである。本件各特許発明優先日当時,カード専用電話を用いず,前払いで実現されるキャッシュレス電話システムは存在せず,前払いといえばテレホンカードを利用するという発想しかなかったのであり,テレホンカードを購入してテレホンカード専用機を利用するしかなかった時代に,カード専用機を用いる必要のない前払い式キャッシュレス電話システムを着想したという点において,本件各特許発明は,著しい進歩性を有する技術的思想創作であった。本件各特許発明は,前払い方式でありながら特殊なカード専用機を不要とするという課題を解決するため,必要とされる構成を備えて完成したものである。
また,乙16発明は,磁気カード式公衆電話に関する発明であり,カード専用電話機内において,単に電話機内に挿入されたカードそのものから残額に関する情報を読み取ることを示唆しているにすぎない。前払い方式のキャッシュレス電話において,どのように「預託金額またはその残高」を把握し比較するかを問題にしているのであるから,磁気カードそのものを情報源として利用する磁気カード式公衆電話を対象とする乙16発明の記載は,何ら当業者に本件各特許発明に想到するに至る動機付けを与えるものではない。しかも,乙16発明は,電話機内に挿入されたカードそのものから読み取られた残額に関するカードの記録内容に基づいて,磁気カード式公衆電話が通話を停止させるものにすぎず,カードや磁気カード読取装置を必要としない前払い方式のキャッシュレス電話において,どのように預託金額またはその残高を把握し通話を停止するかについて記載されておらず,何ら当業者に本件各特許発明に想到するに至る動機付けを与えるものではない。したがって,乙8発明及び乙16発明から,本件各特許発明容易に想到することはできない。
( ) 争点4-4(本件各特許発明新規性又は進歩性を有するか)について。 4(被告の主張)ア 本件各特許発明における「特殊な交換部」や通話の接続遮断条件を原告が主張するように広く解釈すると,本件各特許発明は,任意の電話機を利用できる通話制御方式に限られず,多数の利用者が1台あるいは複数台の電話機を利用する場合に各利用者の通話可能残高が存する限り電話機を接続利用できるように制御する通話の制御方式まで包含することになる。そうであるならば,本件各特許発明は,昭和59年12月12日に公開された,英国特許公開公報2141309A(乙17。以下「乙17文献」という )に記載された発明(以下「乙17発明」という )と実質上同一 。。
のものである。
本件各特許発明と乙17発明の各構成要件の対比は,別紙「本件特許発明1と乙17発明との対比」及び同別紙「本件特許発明2と乙17発明との対比」各記載のとおりであって,本件各特許発明は乙17発明と実質上同一の発明であり,本件各特許発明はいずれも新規性を有しない。
仮に,乙17発明と本件各特許発明とが同一ではないとしても,本件各特許発明は,少なくとも乙17発明から容易に想到することができるものであるから,進歩性を有しない。
イ 乙17文献には,次の記載がある。
「電話呼モニター装置は,いくつかの口座の残高を保持することのできるメモリー6を有する。ユーザーは,発呼する前に,アクセスコードまたは機械読み取り可能トークンにより,ユーザー自身を識別する。その結果通話費用は,ユーザーの個人口座に累積される (乙17・1枚目)。」「本発明によれば,電話機は各ユーザー毎のメモリーをもっている。各ユーザーは,各通話の前に,アクセスコードまたはユーザー固有の機械読み取り可能トークンを用い,本発明(装置)に対して本人であることを識別させる。通話費用を課金する方法は,通常,交換機から送られるパルス信号を計測することによりもたらされる (乙17・4枚目・明細書原文 。」16〜22行)「各ユーザーが通話をする時,適切な課金単位数がユーザーのメモリーから減算される(または,加算される 。ユーザーの残高が0に達した場 。),, 合には 選択的にそのユーザーからさらなる発呼を行うことを制止するが他のユーザーはなお発呼を行うことができる (同22〜26行)。」なお,クレーム5には 「ユーザーの口座がある値に達した場合,その ,口座のユーザーがさらなる発呼を自動的に禁止する前記各クレームの装置 (同99〜101行)と記載されており,通話の制止は,口座残高が 」0または「ある値に達した」場合のいずれかについて,システム運営者が選択できることが開示されている。
また,乙17発明の第2実施例については,本文中の記載では 「電話,機と主交換機との間の任意の位置に本発明(の装置)を配置する場合は,単一の装置が複数の電話回線の使用を制御することができる (同33〜」35行)と記載されており,ここにいう単一の装置が,本件各特許発明における「特殊な交換部」に相当する。
ウ ) 乙17発明における「アクセスコード」が本件各特許発明の「特殊 aコード」に,乙17発明における「メモリー」が本件各特許発明の「メモリー手段」に該当することは明らかであり,通話可能金額を確認する手段,その金額から通話により通話料相当を減額して通話可能金額との比較を継続モニターする方式がそれぞれ存在すること,その結果さらに「単一の装置が電話回線の使用を制御すること」が制御手段に該当することは,両者の説明の表現上の相違だけで,実質的に全く同じ構成を具備するものである。
) 本件各特許発明において,特許請求の範囲として「特殊な交換部」が b端末側にあることを除外する理由はない。乙17発明の第2実施例は,電話機と主交換機の間に,同発明の電話呼モニター装置を配置するものThe second であり(英国特許の明細書原文62行ないし65行「embodiment is a self-contained unit forinterposition between a conventional( ) 」の記載 ,このモニター telephone or telephones and the main exchange.)装置には,メモリー手段(図面2の番号6,コード確認手段(図面2 )の番号4 ,通話可能金額確認手段(図面2の番号4 ,接続手段(図 ))面2の番号15)を有している。したがって,上記電話呼モニター装置は,本件各特許発明における「特殊な交換部」の要素,機能をすべて具備しているというべきである。また,通話制御については,乙17文献「」 において 単一の装置が複数の電話回線の使用を制御することができる(乙17・4枚目・明細書原文30〜35行)と記載されている。そこで,乙17発明においても,メモリー手段,コード確認手段,通話可能金額確認手段,制御手段が存在する。
もっとも,通話可能金額確認手段が「預託金額確認手段」と同じかという点については,乙17発明の口座( )に通話可能金額がい accountかにして設定されるかは明らかでない。しかし,予め電話使用限度が定まる一定の金額という点では,本件各特許発明の預託金額と共通しているものであるから,その金額から,通話により消費される通話料金を差し引いた残高をモニターしている点も共通しているので 「特殊の交換,部」におけるモニター及び制御の機能は,この金額が予め支払われたかどうかによって左右されない。したがって,乙17発明においても,その残高がメモリーに記録されているということ,その残高が通話による通話料の差引きにより減少するのをモニターして,その残高が一定の値または0に達したとき使用可能範囲の限度とする点で共通しており,通話のモニター及び制御に関しては,メモリーの残高の金額だけが問題であることに変わりはないから,預託金額についての支払いに関する記載は存するものというべきである。
) 確かに,乙17発明には 「切断 「遮断」の文言はなく 「さらなる c ,」,,発呼を制止される ( )は,新たな発呼 」prevented from making further callsの問題であると解せられ,残高が0になってもそのまま通話を継続できるのかは明らかではない。しかし,原告も,本件各特許発明において,残高がゼロになったときに遮断するとか,その後の通話費用を負担し得なくなったときに遮断するとか,あいまいな条件を設定しており,乙17発明において,一度接続すれば通話者自身が切断するまで通話が継続するとしても,本件各特許発明と乙17発明における遮断条件との間に明確な差異は存しないものというべきである。
エ 以上より,乙17発明には,実質的に本件各特許発明の構成がすべて開示されているものというべきである。また,仮に,@乙17発明の口座( )の金額が,本件各特許発明における預託金額のように予め支 account払われる金額かどうかは明らかでないこと,A乙17発明の通話制御ではいったん接続された通話の遮断に関する明示の記載がないことを乙17発,, 明と本件各特許発明の相違点として把握したとしても これらの相違点は特定のコード保有者が一定金額の範囲で通話することを許容するためのモニターと制御のシステムに直接関係することではなく,営業上の選択の問題で,いずれかを決定すればこれを採用することには技術上何らの困難性もない。
まず,一定金額の範囲で通話を許容するためにその残高の変化をモニターすることに関連して検討すれば,口座( )の設定金額と残高の account金額が問題であって,その金額を予め支払うものとするかクレジットとしておくかは直接関係がない。そして,そのいずれかにするかは営業方針で決めればよいことであって,クレジットにより口座を設定することを,予め支払うことに変更することは特段技術的な困難性を伴うことではない。
また,通話の制御手段として一定の手段を満たした場合に電話を接続するほか,一定の条件,例えばカード金額の不足などで通話を遮断する手段は,テレホンカード(乙16発明など)においても実現されている周知手段である。乙17発明の制御手段でも,新たな発呼を制止する手段については明示されているのであるから,乙17発明の制御手段においても,通話による通話料金と口座残高をモニターした結果,残高が最低通話料金以下になったとき,通話を遮断する手段を制御手段に含ませることは技術的に何らの困難性もなく,単に営業方針として通話中でも一定条件で通話を遮断することを決めさえすればよいことである。したがって,上記の相違点はいずれも営業方針上必要または望ましいとして選択さえすれば,乙17発明のシステムにこれを組み込むこと自体は技術的には何らの困難性もないのであるから,これらの相違点により,本件各特許発明が乙17発明に対して進歩性がある発明であるとは到底考えられない。
(原告の主張)ア 被告の前記主張は,本件各特許発明の「特殊な交換部」が端末側に設け。, , られているという誤った前提に基づくものである しかも 乙17発明は電話機自体に組み込まれているか,交換機と電話機の間に存在する構成を有するものであり,被告は,これをもって,本件各特許発明の特殊な交換機が開示されていると主張しているのである。しかし,本件各特許発明の「特殊な交換部」は,電話システム内に存在するものであるから,本件各特許発明の主要な構成要素の一部を乙17発明が備えていないことは明らかである。
イ 乙17発明は,メモリーに記憶された残額は,特定の電話機からしか使用できないものであって,本件各特許発明が目的とするいかなる電話機からも通話できるものとは全く異なるものである。
ウ そもそも,乙17発明は,通話に使用した料金が,加入者電話ごとに,電話運営企業体で集中管理され,一定期間後,使用料金を積算して,その加入者電話(の所有者)に請求・徴収する課金システムを前提とする発明であるから 「前払い方式」でないばかりか 「前払い方式」を適用する ,,。, , ことを容易に発想することすらできない発明である また 乙17発明は加入者電話を複数ユーザーで共有し,使用した通話料金をユーザーごとに記録できるだけであり,電話システムから加入者電話に対して後日請求される通話料金は,あくまで加入者電話の所有者が支払うべきものである。
よって,乙17発明を利用して,各ユーザーが,請求された通話料金のうち各自が使用した分を支払うことも可能ではあるが,むしろそのようなことは全く行われない利用形態の方が現実的である。例えば,会社が一つ又は複数の加入者電話の所有者であって,乙17発明を利用して,会社の各従業員が使用した通話料金を記録する場合,会社は単に各従業員の使用量を把握したいだけであり,従業員にその分の通話料金を支払わせるわけではない しかも 乙17発明における 残り 単位数 は 後述する さ 。, 「()」, 「らなる発呼を行うことを制止する」という制御のために設定するものであり,その減算(または加算)も,通話料金の記録( 通話費用は,ユーザ「ーの個人アカウントに累積される )とは別に行われるものである。この 」ように 乙17発明では 各ユーザーのメモリー中に設定される 残り 単 ,, 「(位数 」は,従来の電話システムの後払い方式における「支払い」にすら )結び付けられていないのであり,ましてや 「前払い」を想起させるよう ,なものは全くなく,従来の電話システムの課金方式の変更というような発想の飛躍は,示唆されるものではない。
これに対し,本件各特許発明は,課金システム自体を「前払い方式」に変更するために 「特殊な交換部」に特殊コードが「所定の預託金額と一 ,連で」記憶され 「特殊コードは預託金額に対応する支払いがあった時か ,ら…使用可能とされる」ように構成したものである。このような構成を想到するに当たり,乙17発明における単位数の設定は,何の参考にもならない。
エ 乙17文献には,残高表示や,残高が差し引かれる旨の記載はあるものの,その残高がそもそもいかにしてメモリに入力されているのか,その対価の支払いはなされているのか,なされているとしたら,いかにしてなされたのかなどの支払いに関する記載が一切ないのみならず,通話の切断に。,「, 関する記載もない すなわち ユーザーの残高がゼロとなった場合にはそのユーザーが更なる通話を行うことを禁止し,他のユーザーにはそのまま通話させることができる 」との記載から明らかなように,あるユーザ 。
,, ーの残高がゼロになった場合に 他のユーザーは新たな通話をできるのに当該ユーザーは新たな通話ができないと記載されているのみで,当該ユーザーの通話を残高がゼロになったときに切断する旨の記載はない。すなわち,乙17発明では,残り(単位数)が0になっても,通話中の被呼者との接続を遮断することはなく,その次に改めて電話をかけること(発呼者の電話機を電話システムに接続すること)が電話機側で制止されるだけであるから,残り(単位数)が0になっても,そのときに通話中の被呼者との接続を長時間続けることは制止されないのであり,その結果,あるユーザーが指定された単位数よりも大幅に多い料金に相当する通話を実際にはしてしまう事態が生じ得る。しかし,乙17発明では,電話システムが課金する対象者は,あくまで加入者電話の所有者(例えば会社)であって,その課金には厳密さが要求されるものの,いったん課金された料金を複数ユーザー(例えば従業員)間で内部的にどのように処理するかは,その複数ユーザー及び所有者が自由に決めればよいものであり(実際には各ユーザーは各自が使用した分の支払いをしなくてもよい ,ユーザーごとの記)録は,その内部処理の参考にされるだけである。このような状況では,むしろ,クライアントと商談中のユーザーの通話を途中で切断するようなことは得策ではないから,乙17発明において,残り(単位数)が0になったからといって,そのときに通話中の被呼者との接続までをも切断するようなことは,発明の目的に反し,全く想定できないことである。
オ 乙17発明は,従来の電話の課金システム(後払い方式)をそのまま踏襲しつつ,加入者電話の所有者に対して請求される通話料金のうち,その加入者電話を共有する複数ユーザーのそれぞれが使用した分が管理できるように,電話機側に特殊な機構を設けたものである。よって,乙17発明を利用することができるのは,発呼者が接続される電話システムの入り口より手前に配置された「電話呼モニター装置」に附属する特定の電話機を使用するユーザーに限られる。これに対し,本件各特許発明は,電話の課金システム自体を全く新しい「前払い方式」に変更して「事後精算の必要がないキャッシュレス通話」を可能にするために 「特殊な交換部」を設 ,,。 けて どこにある電話機からでも電話がかけられるようにしたものであるこのように,両者は,その目的にも,構成にも,作用効果にも,全く共通部分がなく,乙17発明は,そもそも,本件各特許発明をなすに当たって当業者が基礎とするような先行技術たり得ないものである。
カ 以上のとおり 乙17発明及び本件各特許発明には 被告が指摘する 残 ,,「高 ( )や「課金単位数 ( )が予め支払われ 」」 The balance the number of unitsる金額かどうか不明であること,乙17発明では通話の遮断に関する明示の記載がないことのみが相違するだけではなく,より根本的な構成上の相違点が他にも多数存在するものである。特殊な交換機を備えていない,最も手近な個人用電話機又は公衆電話機を使用でき,かつ事後精算の必要がないキャッシュレス通話を可能にする電話の通話制御システムを提供している本件各特許発明構成要件について,乙17文献は,開示も示唆もしていないのであるから,本件各特許発明は,乙17発明によっても,新規性及び十分な進歩性を有するものである。
4 争点5(損害)について(原告の主張)( )ア 原告は,本件各特許権及び本件各特許権に基づく損害賠償請求権並び 1に不当利得返還請求権を,それぞれAから譲り受け,平成11年5月7日,本件特許権1について,平成12年2月18日,本件特許権2について,それぞれ移転登録を得た(甲1,3 。)イ 被告は,遅くとも平成9年7月11日には,被告システム及び方法を使用して被告サービスを提供しており,カードの販売によって,毎年,少なくとも年100億円以上の売上げを得ている。
( )ア 平成9年7月11日から平成13年7月10日までの損失について 2被告は,平成9年7月11日から平成13年7月10日までの間に,被告システム及び方法を使用して被告サービスを提供し,カードの販売によって,同期間中に,少なくとも計400億円の売上げを得た。
本件各特許権が第三者に実施許諾がなされる場合,その実施料率は5パーセントは下らない。
したがって,被告は同実施料率を売上額400億円に乗じた金額である20億円の利得を得,原告及びAは同額の損失を被った。
イ 平成13年7月11日から平成16年7月15日までの損害について被告は,平成13年 月11日から訴状送達の日である平成16年 月 7715日までの間に,少なくとも金300億円のカードの売上げを得た。したがって,原告は,上記売上げに本件各特許権の実施料率である5パーセントを乗じた金額である金15億円の損害を被った。
ウ 弁護士費用・弁理士費用 2億円( ) 以上のとおり,原告は,被告が,被告サービスを提供することにより,本 3件訴え提起の日から3年以内の日である平成13年7月11日から平成16年7月15日までに,少なくとも被告サービスの販売額に同実施料率5パーセントを乗じた金額の損害を被り,また平成9年7月11以降平成13年7月10日までの日本での売上げについては,被告は同実施料率を売上額に乗じた金額の利得を得,原告及びAは同額の損失を被った。
したがって,原告は,被告に対し,被告による本件各特許発明実施行為について,不法行為に基づく損害賠償及び弁護士・弁理士費用の合計金17億円の内金10億円並びにこれに対する訴状送達の日である平成16年7月15日から支払済みまで年5部の割合による遅延損害金の支払と,不当利得としての金20億円及びこれに対する不当利得の日の後であることが明らかな平成13年7月10日から支払済みまで年5部の割合による遅延損害金の支払を請求する権利を有する。
(被告の主張)原告の主張は否認ないし争う。
当裁判所の判断
1 争点4-1(本件特許発明1の願書に添付した明細書の補正は,本件出願当初明細書の要旨を変更するものか )について。
( ) 本件出願当初明細書及び図面に記載された発明について 1本件当初明細書及び図面に記載された発明の概要は,本件の争点に関する部分を除いて簡略にまとめれば,次のとおりである。
ア 発明が解決しようとする問題点市外通話(長距離通話)あるいは国際通話を行う方法として,ホテルの部屋の電話機を使用すると通話料が高くなり,公衆電話を利用すると大量のコインが必要となり,クレジットカードを利用するとしばしば誤った請求がなされ,セールスマンが客先の電話を使用すると不都合であるため,手近の電話機から通話できる方法が必要となる(乙3・7〜9欄参照 。)イ 問題点を解決するための手段,, 発呼者が予め預託金額を支払い本人確認のための特殊コードを取得し被呼者と通話する時に,特殊な交換部と接続してもっとも安価な通話ルートを選択する前払い通話方法(乙3・9〜10欄参照 。)ウ実施例,,, 顧客は 現金あるいはクレジットカード支払いにより 特殊な交換部で特殊コード,預託金額及び電話番号を取得する。預託金額は,特殊コードと共に特殊な交換部のメモリーに記憶される。取得者は,特殊な交換部に接続し,本人を特定するための特殊コード及び相手先番号をダイアルし,特殊な交換部が特殊コードと預託金額を確認した上で,相手先と接続し,預託金額で使用可能な通話時間を計算し,比較器で発呼者の預託金額が十分であるかどうかを連続的に決定し,預託金額と通話時間が等しい時には通話を自動的に終了する(乙3・11欄〜15欄 。)エ 発明の効果前払い電話通話のため,いずれの電話機を使用しても電話ができるサービスが必要な旅行者その他に利益がある(乙3・24欄 。)( ) 本件出願1補正について 2ア 本件出願当初明細書の特許請求の範囲の請求項1は,当初 「使用可能,ないずれかの電話機からでも電話通話をなしうる方法であって,下記段階: 前払いにより特別のコードを取得し; 特別交換局のメモリ-に呼出者の呼出しを確認するために使用するよう前払い額を挿入し; 電話呼出し接続が必要な時,前記特別交換局をダイアルし; 確認のため前記特別のコードを入力し;…… (乙3)と記載されていた。平成9年5月7日 」付けの本件出願1補正は,全面的な補正であり,上記記載を削除し,請求項1を,前記前提となる事実記載のものに補正し 「特殊な交換部(A) ,を有する電話の通話制御システムであって,……メモリー手段( )は,86特殊コードが所定の預託金額と一連で記憶され,通話費用を差し引いた預託金額の残高が記録され,その特殊コードは預託金額に対応する支払いがあった時から,通話を行うのに必要な預託金額の残高がある間使用可能とされるものであり」との構成要件1-@,1-B及び1-Cなどを規定するものである。
また,本件出願1補正により 【発明の詳細な説明】には,本件出願当 ,初明細書の「実施例」として記載されていた「支払われた額は取得者のクレジット(信用貸し)となり,今後の電話使用ができる。クレジット額は特別のコードと共に特別の中央局のメモリーに記憶される (乙3・1。」2欄6〜9行)との記載が削除され,その代わりに「上記預託金額は,各預託金額毎に附される特殊コードと共に前記特殊な交換部のメモリー手段に予め記憶されていると共に,通話費用を差し引いた預託金額の残高が記憶される (乙1の15・5頁3段,甲3・6欄14〜17行)と補正 。」され,さらに 「発明の効果」として「また,特殊な交換部に予め預託金 ,額及び特殊コードを記憶してあるので,特殊コードの取得時には対応する金額を支払うだけでよく,入金等のデータを特殊な交換部に入力する等の手間は一切必要ない (乙1の15・10頁4段,甲3・10欄21〜 。」24行)と補正されている(なお,本件出願1の出願人は,平成9年5月7日付け上申書により,本件出願当初明細書において,同じ対象を意味する用語が複数あり,不明確であったとして,今後,用語を統一することを上申している。同上申書によれば 「前払い額 「クレジット 「クレジ ,」,」,ット額」を「預託金額」に 「特別のコード 「特別コード」等を「特殊 ,」,コード」に 「特別交換局 「特別の中央局 「特別な中央局」等を「特 ,」,」,殊な交換部」に統一することが上申されている(乙1の16 。本判決に)おいても,以下,引用文を除いては,同様とする 。。)イ このような本件出願1補正によれば,本件特許発明1においては 「メ,モリー手段( )は,特殊コードが所定の預託金額と一連で記憶され,通 86話費用を差し引いた預託金額の残高が記録され,その特殊コードは預託金額に対応する支払いがあった時から,通話を行うのに必要な預託金額の残高がある間使用可能とされるものであ(構成要件1-B及び1-C)る 」から 【発明の詳細な説明】における上記補正事項も参酌すれば,メモリ ,ー手段に預託金額と特殊コードの組合せを一連で記憶する動作が,預託金額に対応する支払いがあった時よりも前であるもの,及び,支払いがあった時と同時であるものを包含する発明となっていることが明らかである。
しかし,本件出願当初明細書においては,上記のとおり,特許請求の範囲の請求項1において,顧客が前払いにより特殊コードを取得した後に,特殊な交換部のメモリーに預託金額と特殊コードを挿入(記録)することが経時的に記載されていること,及び【発明の詳細な説明】の実施例に ,おいても同様に,顧客が前払いにより特殊コード及び預託金額及び電話番号を取得した後に,特殊な交換部のメモリーに特殊コードと預託金額が記憶されることが経時的に記載されているのである。そして,本件出願当初明細書又は図面においては,これ以外に,メモリー手段に預託金額と特殊コードの組合せを一連で記憶する動作を,顧客が預託金額を支払う前に行うとか,預託金額の支払いと同時に行うことを明示する記載も,これを示唆する記載もない。すなわち,本件出願当初明細書においては,顧客が預託金額を支払った後に,当該預託金額と共に特殊コードを特殊な交換部のメモリー手段に記憶し,使用可能とするとの発明の記載はあるものの,メモリー手段に預託金額と特殊コードの組合せを一連で記憶する動作を,顧客が預託金額を支払った時と同時ないしはそれよりも前とする発明については,何らの記載も示唆もない。
なお,本件出願当初明細書の【発明の詳細な説明】には 「顧客……は,,, 現金或いはクレジットカード支払いにより特別の中央局で 特別のコードクレジット額(信用額)及び電話番号を取得する。コード,クレジット額及び電話番号は通常クレジットカード会社を通じて取得し,取得者のクレジットカードにより支払われるようにしてもよい。或いはクレジット額,電話番号及び本人特定コードは例えば空港,ホテル,レンタカー事務所等の販売地点で購入できるようにしてもよい (乙3・11欄17行〜1 。」2欄6行)との記載があり,この記載中,顧客が,特殊コード,預託金額及び電話番号を,特殊な交換部で取得するだけでなく,空港,ホテル,レンタカー事務所等の販売地点で購入するとの記載は,預託金額と特殊コードを予め特殊な交換部のメモリー手段に記憶させて販売することも想定し,, ていたことを示唆する唯一の記載のようにもみえるものの 同明細書ではこの記載に続いて 「支払われた額は取得者のクレジット(信用貸し)と ,なり,今後の電話使用ができる。クレジット額は特別のコードと共に特別の中央局のメモリーに記憶される。コード及び電話番号は第1図のブロック12に示されている。次いで,取得者が市内電話或いは市外電話をしたい事態が生ずる (乙3・12欄6行〜12行)との記載があることか 。」らすれば,上記記載は,顧客が預託金額を特殊な交換部のみならず空港,ホテル,レンタカー事務所でも支払い,特殊コードを取得することがあることを記載するだけで,顧客が預託金額の支払いをする前に,預託金額と特殊コードを予めメモリーに記憶させておくことを示唆する記載であるということはできない。
ウ 以上のとおり,本件出願当初明細書又は図面では,特殊な交換部におけるメモリー手段への特殊コードと所定の預託金額とを一連で記憶する動作を,顧客が預託金額を支払った時よりも後に行うとの発明のみを記載していたにもかかわらず,本件出願1補正は,顧客が預託金額を支払った時よりも前か,もしくはそれと同時に特殊コードと所定の預託金額とを一連で記憶する動作を行うとの発明を新たに追加するものである。すなわち,本件出願1補正は,顧客が預託金を支払う前に,特殊な交換部におけるメモリー手段に予め預託金額及び特殊コードを記憶させておくという実施例の記載を追加し 「特殊コードの取得時には対応する金額を支払うだけでよ ,く,入金等のデータを特殊な交換部に入力する等の手間は一切必要ない」という本件出願当初明細書には記載されていない新たな作用効果を奏する発明を追加的に記載したものというべきである。したがって,本件出願1補正は,出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を増加し減少し又は変更した補正であるとは認められず,明細書の要旨を変更するものであるので,本件特許出願1は,旧特許法40条により,本件出願1補正をした平成9年5月7日に出願されたものとみなされる。
エ 原告は,@旧特許法における「明細書の要旨を変更しない」という判断基準によれば,補正事項1ないし4は,当業者が客観的に判断すれば,いずれも本件出願当初明細書の記載から自明な事項であり,発明の本質に変化を生ぜしめない範囲における補正である,A本件各特許発明は,後払い,, 方式である自動クレジット方式を否定し 前払い方式を実現するに当たり磁気カード読み取り装置を備えた専用電話機を使用する必要がない電話システムを創出することを,その技術的課題とするものであるから,本件各特許発明は,顧客が支払をして特殊コードを取得したのに,その直後は電話使用ができず,メモリーへの記憶のための面倒な手続を顧客に強いた上で,初めて電話使用が可能になるというシステムを想定しているものではない,B本件出願当初明細書においては,支払いの後にメモリーに記憶する態様のみならず,クレジットカード会社を通じて特殊コード,預託金額及び電話番号のセットを取得する態様,空港,ホテル,レンタカー事務所等の販売地点において購入する態様の双方が明示されており,仮に入金後に記憶するシステムを前提としているのであるならば,空港などの販売地点と特殊な交換部との間のセキュリティ確保の必要性が生じるのみならず,多数の連絡集中などによる記憶の遅延によって,顧客の利便性が著しく損なわれる危険性が存在するのであって,このようなシステムを想定していると解することはできない,と主張する。
しかし,顧客が預託金額を支払う前に,メモリー手段に特殊コードと預託金額を予め記憶させておくというシステムが,本件出願当初明細書に明示的に記載されていなくとも,当業者にとって同明細書の記載から自明な事項であるとする根拠として,原告が上記に主張するところは,いずれも本件出願当初明細書における具体的な記載を根拠とするものではなく,理由がないものというべきである。すなわち,上記Aの顧客が支払の直後に電話を使用することができず,メモリーへの記憶手続が必要であるのは不便であるとか,上記Bの入金後に記憶するシステムでは,販売地点と特殊な交換部とのセキュリティの確保の必要性が生じるとか,多数の連絡集中による記憶の遅延による不便さが生じるとかは,本件出願当初明細書に記載された発明と,本件出願1補正後の本件特許発明1との差異を如実に物語るものであり,顧客が預託金を支払った後に,預託金額と特殊コードをメモリーに入力するとのシステムないしビジネス方法は,原告が主張するような欠点があり,顧客に同システムにおける預託金額と特殊コードを大量に販売するビジネスには馴染みにくい方法なのである。本件各特許発明は,電話の制御システムの装置又は機械そのものの発明ではなく,前払い方式の電話接続の制御方法及びシステムに関する発明であり,いわゆるビジネス方法の発明でもあるから,顧客の預託金額の支払いと,特殊コードと預託金額のメモリー手段への記憶の先後関係は,電話の制御システムの装置又は機械そのものの発明であればほとんど意味がないものであるとし,, 。 ても ビジネス方法の発明としては重要なポイントになるところであるそして,本件出願当初明細書において,出願人が,預託金額と特殊コードの大量販売による特殊な交換部への連絡が集中することによるメモリーへの記憶の遅延の回避策まで検討し,予めこのようなことも検討して本件出願当初明細書にその発明を記載していた,あるいは,その回避策については,これを記載していなくとも本件出願時の当業者にとってこれらのことが自明な事項であったとまで解する根拠は何ら示されていないといわざるを得ない。
また,原告は,本件出願当初明細書においては,テレホンカードのように前払い方式でありながら,磁気カード読み取り機能のない電話機からでも通話可能とされる発明が明示されているのであるから,使用可能ないずれの電話機からでもかけられることを除外すれば,テレホンカードシステムと類似したものとなることは当然であり,テレホンカードと同様,特別のコード及びクレジット額は,支払前に記憶されているものと考えるのが普通である,と主張する。
しかし,本件出願当初明細書においては 「発明が解決しようとする問 ,題点」として「公衆電話から長距離電話をすることは極めて困難である,なぜなら大量のコインを必要とするからであり 「市内或いは市外通話 」,を含む電話通話を容易に,安価にかつどの電話機からでもできるようにする方式の必要性が長い間感じられていた。即ち,呼出者が通話をしたいと考えた時,それが市内通話であれ,長距離国内或いは国際通話であれ,もっとも手近の電話機から通話を可能ならしめる方式である 「本発明の。」,別の広い局面においては,コインを使用しない専用公衆電話機を設けるこ,。 」 とを可能にする方法であって 下記段階:……を含む方法が提供される(乙3・8欄5〜7行,9欄1〜7行,10欄10〜20行)と記載されているように,長距離通話をするために大量のコインを必要とする公衆電話の不便さについて記載するのみであり,テレホンカードについての記載すらないのである。テレホンカードの技術が本件出願時において当業者にとって公知の技術であるとしても,本件出願当初明細書においては,磁気カード読み取り機能を備えた公衆電話機においてのみ使用することができるテレホンカードの使用とは異なる発想から,公衆電話も含めた「もっとも手近の電話機から通話を可能ならしめる方式」の発明が記載されているものであり,当業者であるならば,本件出願当初明細書に記載された発明において,テレホンカードにおける前払い方式を自明のこととして理解するものと認めることはできない。
原告は,本件出願当初明細書には,預託金額及び特殊コードのメモリーへの記憶と,対応する金額の支払いの前後関係は規定されていない以上,補正により,その前後関係を確定したところで,発明の減縮であるから,補正事項3も出願当初の明細書の要旨を変更するものではない,とも主張する。
しかし,本件出願当初明細書には,顧客が預託金を支払った後に,特殊コードと預託金額をメモリーに記憶させることのみが明示的に記載されているのであり,顧客が預託金を支払う前に,特殊コードと預託金額を一連のものとして予めメモリーに記憶させておくことは記載されておらず,また,このことが記載されていなくとも当業者にとって自明な事項であるとみることもできないことは上記のとおりである。したがって,本件出願1補正を,発明の減縮であるとみることはできない。
原告の上記各主張はいずれも採用することができない。
( ) 本件特許発明1の進歩性について 3次に,本件特許発明1が,平成9年5月7日当時に出願されたことを前提として,同発明の進歩性について検討する。
ア 乙3文献(昭和61年9月18日公開)は,本件出願1の公開特許公報である。そこで,同文献においては,本件特許発明1の構成は,本件出願1補正により補正された各事項を除いて,いずれも開示されているものということができる。したがって,本件特許発明1と乙3発明においては,共に 「特殊な交換部を有する電話の通話制御システムであって,特殊な ,交換部は,メモリー手段とコード確認手段と預託金額確認手段と制御手段とを有し,メモリー手段は,特殊コードが所定の預託金額と一連で記憶さ,,, れ 通話費用を差し引いた預託金額の残高が記録され その特殊コードは通話を行うのに必要な預託金額の残高がある間使用可能とされるものであり,コード確認手段は,発呼者の入力する特殊コードを確認し,預託金額,, 確認手段は メモリー手段に記憶された預託金額またはその残高を確認し制御手段は,接続・遮断手段と比較手段とを有し,比較手段は,メモリー手段に記憶された預託金額またはその残高と通話費用とを比較し,接続・遮断手段は,発呼者の入力した特殊コードがメモリー手段に記憶されたものと一致したときにおいて,メモリー手段に記憶された預託金額またはその残高に基づいて,被呼者との通話を接続し,その後の通話費用を負担し得なくなった場合には,被呼者との通話接続を遮断する電話の通話制御システム 」である点で一致し,次の点で相違する。 。
) 「特殊コード」が,本件特許発明1においては 「預託金額に対応す a ,る支払いがあった時から」使用可能とされるものであるのに対し,乙3文献記載の発明においては,顧客が預託金額を支払った後に,特殊な交換部におけるメモリー手段に,特殊コードと預託金額を記憶させるものであるため 「預託金額に対応する支払いがあった時から」使用可能と ,される旨の記載ないし示唆がされていない(相違点1 。)) 本件特許発明1においては 「比較手段(93 」が「メモリー手段 b ,)(86)に記憶された預託金額またはその残高と,通話を開始するための最小費用またはその後の通話費用とを比較」するものであり 「接続,・遮断手段(92 」が「メモリー手段(86)に記憶された預託金額 )またはその残高が,通話を開始するための最小費用より多い場合には,被呼者との通話を接続する」ものであるのに対し,乙3文献記載の発明においては 「比較器(29 」は「メモリー手段(86)に記憶され ,)たクレジット額またはその残高と通話費用とを比較」するものであるものの,乙3文献に,通話を開始する時点で「通話を開始するための最小費用」との比較を行うことについての記載ないし示唆はされておらず,また 「接続・遮断手段」は 「メモリー手段(86)に記憶されたク ,,レジット額またはその残高があるかまたは十分な場合には,被呼者との通話を接続する」ものであるものの,乙3文献に,通話を開始する時点でクレジット額またはその残高が「通話を開始するための最小費用」より多い場合に被呼者との通話を接続することについての記載ないし示唆はされていない(相違点2 。)イ ) 平成9年5月7日当時の公知技術であった乙4文献には,次の記載 aがある(乙4 。)「 0001】【【産業上の利用分野】本発明は,料金前払いカード(以下 「プリペ,イドカード」とする)を利用した公衆電話機発信の自動通話の分野において,その残金額・残度数管理機能を有するプリペイドカード残金額・残度数管理装置に関する 」。
「 0003】【【発明が解決しようとする課題】プリペイドカードの残度数をカードに記録し,残度数の減算を公衆電話機単体で行う従来方式においては,プリペイドカードの偽造・変造や公衆電話機の回路破壊による不正通話が問題となっている。
【0004】よって,プリペイドカードの残金額・残度数をカード外・公衆電話機外で管理して不正利用を防止することが,通信サービスを提供する側の切実な課題となってきている。ここにおいて本発明は,前記課題を解決するのに有効,適切なプリペイドカード残金額・残度数管理装置を提供せんとするものである 」。
「 0005】【【課題を解決するための手段】前記課題の解決は,本発明が次に列挙する新規な特徴的構成手段を採用することにより,達成される。
すなわち,本発明の第1の特徴は,交換機と接続しプリペイドカードの情報を管理する通信接続装置において,各プリペイドカードをユニークに識別するカード番号および当該カード番号に対応する残金額若しくは残度数の情報をあらかじめ記録しておく記録手段と,公衆電話機等の端末器からの呼接続依頼過程で当該端末器に入力したプリペイドカードのカード番号の有効検証を前記記録手段の情報により行う参照手段と,前記プリペイドカード番号が有効の場合は前記端末器より送られてくる相手番号を受領し,当該相手番号と前記記録手段からの情報とにより通信可能時間を算出しかつ前記交換機に対し接続指令を送出するとともに,当該呼が接続された後は,呼が接続されている通信時間を監視し,通信時間が前記通信可能時間に達した場合には,前記交換機に対し当該通信の切断指令を送出する制御手段と,通信切断情報により前記記録手段中の残金額若しくは残度数等情報を更新する更新手段と,前記通信可能時間算出・通信時間監視・接続指令及び切断指令送出処理動作に当って前記制御手段と前記交換機との情報授受を行うインタフェース手段とを備え,プリペイドカードの情報を前記端末器とは別に前記交換機側で管理してなる,プリペイドカード残金額・残度数管理装置である 」。
) 乙4文献には,料金前払いカード(プリペイドカード)の残金額・残 b度数をカード外・公衆電話機外で管理して不正利用を防止するために,プリペイドカード方式による電話システムにおいて,交換機側に,各プリペイドカードを識別するカード番号及び当該カード番号に対応する残金額若しくは残度数の情報をあらかじめ記録しておく記録手段を設けることにより,プリペイドカードの取得者が,当該プリペイドカードを取得した時点,すなわち当該プリペイドカードの対価の支払いがあった時から電話をかけるための当該プリペイドカードのカード番号の使用をできるようにするとの発明(乙4発明)が記載されていると認められる。
) 乙4発明は,公衆電話機で使用されるプリペイドカードに関する発明 cであるものの,プリペイドカードの残度数・残金額及び識別カード番号を公衆電話機外の交換機において記録し,これを管理するシステムであるから,この点で特殊な交換部のメモリー手段に顧客が前払いした預託金額と識別のための特殊コードを記録しこれを管理する乙3発明とは共通性を有しており,乙3発明に乙4発明を適用することを阻害する理由はない。そして,乙3発明には,前記のとおり,顧客が支払の直後に電話を使用することができず,メモリーへの記憶手続が必要であるのは不便であるとか,販売地点と特殊な交換部とのセキュリティの確保の必要性が生じるとか,多数の連絡集中による記憶の遅延による不便さが生じるとかの課題が生じ得るのであるから,これを解決するために,乙3発明に乙4発明を適用することは,当業者が容易に想到し得ることであると認められる。すなわち,乙3発明に乙4発明を適用すれば,メモリー手段に特殊コードと預託金額とを共に記憶する動作を,顧客が預託金額を支払う時点よりも前に予め行うようにして,もって当該特殊コードを,預託金額に対応する支払いがあった時から使用可能とすることは,当業者が容易に想到し得ることと認められるのである。
ウ ) 平成9年5月7日当時の公知技術であった乙5文献には,次の記載 aがある(乙5 。)「 0001】【【産業上の利用分野】本発明は,カードを用いて通話が可能な電話装置に関する 」。
「 0004】…本発明は,テレホンカード以外のプリペイドカード 【を用いて通話を可能とする電話装置を提供することを目的とする 」。
「 0011】図1は上述した自律課金を行うCPU8の動作を示す 【フローチャートであり,このフローチャートに従いCPU8の動作をさらに詳細に説明する。カード15がカードリーダ14に挿入されステップST1の判定が「Y」となると,ステップST2ではカード15に記録されている金額情報を読み取り,続いてステップST3では読み取った金額情報,即ちカード15の残額が10円以上か否かを判定する。ここでカード15の残額が1通話に相当する単位通話料金の10円に満たない場合は,通話を許容できないということで,ステップST4でカードリーダ14に指示してカード15を排出させると共に,カード15の排出が完了しステップST5で「Y」となると,ステップST7のオフフック検出判断へ移行する。
【0012】また,カード15の残額が10円以上の場合は,ステップST6で「ZGフラグオン ,つまりカード15に残額があること 」。, を示すZGフラグをRAM10の所定領域に設定する そしてその後ステップST7で「オフフック?」を判断し,オフフックが検出されるとステップST8で上述のZGフラグのオンを判断のうえ,これが「Y」となれば既にカード15が挿入されこの挿入カード15に残額があるということでステップST9で回線1を捕捉する (第3頁。」左欄第20〜42行)) 上記各記載からすると,乙5文献には,カード式電話装置において, bカードの残額が1通話に相当する単位通話料金の10円に満たない場合は,通話を許容しないようにすること,すなわち,カードの残額が通話を開始するための最小費用よりも少ない場合には,通話を許容しないようにするという発明(乙5発明)が記載されている。したがって,乙3発明に,この乙5発明を適用し,乙3発明の「比較器( )」を,通話を29開始する時点で「通話を開始するための最小費用」との比較を行うようなものとし 「接続・遮断手段」を,通話を開始する時点でクレジット ,額(預託金額)又はその残高が「通話を開始するための最小費用」より多い場合に被呼者との通話を接続するようにすることは,当業者が容易に想到し得る事項であると認められる。
エ 本件特許発明1の構成によってもたらされる効果も,本件特許発明1の構成から予測し得ない格別な効果が生じているものと認めることもできない。
オ 以上によれば,本件特許発明1は,乙3発明と乙4発明及び乙5発明から,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,進歩性を欠くものであり,本件特許権2に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものであると認められる。
2 争点4-2(本件特許発明2の願書に添付した明細書の補正は,出願当初の明細書の要旨を変更するものか,また,同出願は,分割出願の要件に違反するものか )について。
( ) 本件出願2第1補正及び第2補正について 1ア 本件出願2(本件分割出願)の当初明細書における特許請求の範囲の請求項1は,当初 「使用可能ないずれかの電話機からでも電話通話をなし ,うる方法であって,下記段階:前払いにより特別のコードを取得し;特別交換局のメモリ-に呼出者の呼出しを確認するために使用するよう前払い額を挿入し; 電話呼出し接続が必要な時,前記特別交換局をダイアルし; 確認のため前記特別のコードを入力し;…… (乙2の1)と記」載されていた。平成9年6月6日付けの本件出願2第1補正と平成11年,, 7月5日付け本件出願2第2補正はこれを全面的に補正するものであり,, , 上記記載を削除し 請求項1を 前記前提となる事実記載のものに補正し「特殊な交換部(A)を利用し,次のステップを含む電話の通話制御方法であって,(a) この特殊な交換部(A)において所定の預託金額に対し特殊コードを予め割り当て,これら預託金額及び特殊コードの複数組合わせを記憶し,(b) 前記特殊コードは,対応する預託金額の支払いを条件として使用可能とされ との構成要件2-@ないし2-Bを規定した 乙 ,」(2の3の2,乙2の6 。)また,本件出願2第1補正により 【発明の詳細な説明】には,本件出 ,願当初明細書から「実施例」として記載されていた「支払われた額は取得者のクレジット(信用貸し)となり,今後の電話使用ができる。クレジット額は特別のコードと共に特別の中央局のメモリーに記憶される (乙。」3・12欄6〜9行,乙2の1【0007 )との記載が削除され,その 】代わりに「上記預託金額は,各預託金額毎に附される特殊コードと共に前記特殊な交換部のメモリー手段に予め記憶されていると共に,通話費用を差し引いた預託金額の残高が記憶される (乙2の3の2【0007 , 。」】甲4・ 0007 )と補正され,さらに 「発明の効果」として「また, 【】 ,特殊な交換部に予め預託金額及び特殊コードを記憶してあるので,特殊コードの取得時には対応する金額を支払うだけで良く,入金等のデータを特殊な交換部に入力する等の手間は一切必要ない (乙2の3の2・ 00 。」【23 ,甲4【0023 )と補正されている。 】】イ このような本件出願2第1補正及び同第2補正によれば,本件特許発明2においては 「特殊な交換部(A)を利用し,次のステップを含む電話 ,の通話制御方法であって,(a) この特殊な交換部(A)において所定の預託金額に対し特殊コードを予め割り当て,これら預託金額及び特殊コードの複数組合わせを記憶し,(b)前記特殊コードは,対応する預託金額の支払いを条件として使用可能とされ(構成要件2-@ないし2-B) ,」との構成は,発明の詳細な説明における上記補正事項も参酌すれば,メモリー手段に預託金額と特殊コードの組合せを一連で記憶する動作が,預託金額に対応する支払いがあった時よりも前であるもの,及び,支払いがあった時と同時であるものを包含する発明となっていることが明らかである。
,, しかし 本件出願当初明細書及び本件分割出願の当初明細書においては上記のとおり,特許請求の範囲の請求項1において,前払いにより特別のコード(本人特定コード)を取得した後に,特殊な交換部のメモリー手段に預託金額と特殊コードを挿入(記録)することが経時的に記載されていること,及び 【発明の詳細な説明】の実施例においても同様に,顧客が ,預託金額を支払い,特殊コード,預託金額及び電話番号を取得した後に,特殊な交換部のメモリー手段に特殊コードと預託金額が記憶されることが経時的に記載されているのであり,本件出願当初明細書及びその図面並びに本件分割出願の当初明細書及び図面においては,これ以外に,特殊な交換部のメモリー手段に預託金額と特殊コードの組合せを一連で記憶する動作を,顧客が預託金を支払う前に行うこと,あるいは,預託金の支払いと同時に行うことを示唆する記載はない。すなわち,本件出願当初明細書及,, び本件分割出願の当初明細書においては 顧客が預託金額を支払った後に当該預託金額と共に特殊コードを特殊な交換部のメモリー手段に記憶し,電話の使用を可能とするとの発明の記載はあるものの,メモリー手段に預託金額と特殊コードの組合せを一連で記憶する動作を,顧客の預託金額に対応する支払いがある前か,それと同時とする発明については,何らの記載も示唆もない(なお,この認定に関する原告の反論を採用することができないことの詳細は,本件特許発明1において述べたとおりである 。。)( ) 本件分割出願の要件並びに本件出願2第1補正及び第2補正の違法性 2先に認定したところによれば,本件出願当初明細書又は図面並びに本件分割出願の当初明細書又は図面には,特殊な交換部におけるメモリー手段への特殊コードと所定の預託金額とを一連で記憶する動作を,預託金額に対応する支払いがあった時よりも後に行うとの発明のみを記載していたにもかかわらず,本件出願2第1補正及び第2補正は,預託金額に対応する支払いがあった時と同時ないしはそれよりも前にその動作を行うとの発明を追加するものである。すなわち,本件出願2第1補正及び第2補正は,顧客が預託金を支払う前に,特殊な交換部のメモリー手段に予め預託金額及び特殊コードを記憶させるという実施例の記載を追加し 「特殊コードの取得時には対応す ,る金額を支払うだけでよく,入金等のデータを特殊な交換部に入力する等の手間は一切必要ない」という本件出願当初明細書には記載されていない新たな作用効果を奏する発明を追加的に記載したものというべきである。したがって,本件出願2第1補正及び第2補正は,本件出願当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内において,本件分割出願における当初明細書の特許請求の範囲を増加し減少し又は変更した補正であるとは認められないから,本件分割出願は旧特許法44条1項分割出願の要件を満たさないものであり,平成9年5月7日に出願されたものとみなされる。そして,本件出願2第1補正及び第2補正は,本件分割出願の当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものと認めることもできないため,特許法17条の2第3項に反するものであり,本件特許発明2に係る特許は,特許法123条1項1号に該当し無効とすべきものである。
3 以上によれば,本件各特許発明に係る特許は,いずれも無効理由を有し,無効審判により無効にされるべきものと認められ,特許法104条の3により,本件各特許権に基づく権利行使は許されない。
結論
よって,原告の請求は,その余の点については判断するまでもなく理由がな,,, いから棄却することとし 訴訟費用の負担については 民訴法61条を適用し主文のとおり判決する。
追加
(別紙)原告主張被告システム目録1システムの特定被告が「KDDスーパーワールドカード」という名称または「KDDIスー,パーワールドカード」という名称を付したプリペイドカード(KDDIスー「パーワールドカードPLUSTEXT」及び「KDDIスーパーワールドカード@ca」を含む(以下総称して「本件カード」という。なお「本件カー。),ド」は,いわゆるカードの形態で販売されるのみならず,コンビニエンスストアやインターネットのウェブサイトにて番号のみが販売される場合があるが,かかる販売形態の場合の番号と使用可能金額の組合せも含むものとし,かかる場合の番号も「カード番号」というものとする)を利用した国内・国際電話。
サービスの提供に用いている電話の通話制御システム2システムの説明サービスコントロールポイント(以下「SCP」という,サービススイッ。)チングポイント(以下「SSP」という)及び料金計算システムを有する電話。
の通話制御システムであって,SCPが有する記憶装置は本件カードに記載されているカード番号以下カ,(「」。),,ード番号というと当該本件カードの所定のカード金額とを一連で記憶しまた,通話費用を差し引いたカード金額の残高を記憶し,カード番号は,カード金額に対応する支払いがあった時から,通話を行うのに必要なカード金額の残高がある間使用可能とされるものであり,SCPは,電話の利用者(以下「利用者」という)が入力するカード番号を。
確認し,SCPは,その記憶装置に記憶されたカード金額またはその残高を確認し,SCPは,その記憶装置に記憶されたカード金額またはその残高が0でないことを確認し,カード金額またはその残高と,SSPから通知されていた利用者の電話番号と相手方の電話番号とに基づき,料金計算システムに通話可能時間を問い合わせ,料金計算システムは,SCPからの問い合わせに応じて算出した通話可能時間をSCPを経てSSPに通知し,SSPは,通話時間を計測して,通話可能時間と比較し,SCPは,利用者の入力したカード番号が,記憶装置に記憶されたものと一致したときにおいて,記憶装置に記憶されたカード金額またはその残高が,0でない場合には,SSPを介して相手方との通話を接続し,SSPは,通話時間が通話可能時間に達して,その後の通話費用を負担し得なくなった場合には,相手方との通話接続を遮断する電話の通話制御システム(別紙)原告主張被告方法目録サービスコントロールポイント(以下「SCP」という)を利用し,次のステッ。
プを含む電話の通話制御方法であって,SCPの記憶装置において「KDDスーパーワールドカード」という名称または,「KDDIスーパーワールドカード」という名称を付したプリペイドカード(K「DDIスーパーワールドカードPLUSTEXT」及び「KDDIスーパーワールドカード@ca」を含む(以下総称して「本件カード」という。なお「本件),カード」は,いわゆるカードの形態で販売されるのみならず,コンビニエンスストアやインターネットのウェブサイトにて番号のみが販売される場合があるが,かかる販売形態の場合の番号と使用可能金額の組合せも含むものとする)の所定のカ。
,(「」ード金額に対し当該本件カードに記載されているカード番号以下カード番号といい,上記番号のみの販売の場合の番号を含むものとする)を予め割り当て,。
これらのカード金額とカード番号の組合わせを記憶し,カード番号は,これに対応するカード金額の支払いを条件として使用可能とされ,電話の利用者(以下「利用者」という)が電話をかける際,当該電話から,入力。
されたカード番号と相手方の電話番号が発呼時に送信され,カード番号と相手方の電話番号は,いずれも音声信号としてサービススイッチングポイント(以下「SSP」という)に伝送され,SSPはこれらをSCPに通知。
し,SCPは,SSPから通知されたカード番号の情報を,SCPの記憶装置に記憶されたデータと照合し,記憶されたカード番号の一つと一致すること,当該カード番号に対応するカード金額の残高が0でないことを確認し,SCPは,SCPの記憶装置に記憶されたカード金額の残高が0でない場合には,SSPを介して利用者の電話を相手方の電話に接続し,SCPは,前記カード金額の残高と,SSPから通知されていた利用者の電話番号と相手方の電話番号とに基づき,料金計算システムに通話可能時間を問い合わせ,料金計算システムは,SCPからの問い合わせに応じて算出した通話可能時間をS,,,CPを経てSSPに通知しSSPは通話時間が通話可能時間に達した場合には利用者と相手方との通話接続を遮断するように,利用者の電話が相手方の電話と接続を開始してから遮断されるまで通話時間を計測して通話可能時間と比較する電話の通話制御方法(別紙)本件特許発明1と乙17発明との対比本件特許発明1の構成英国特許引用例の構成特殊な交換部(A)を有する電話の通話特殊な交換部を有する電話の通話制御制御システムであって,システムである。
特殊な交換部(A)は,メモリー手特殊な交換部は,メモリー,アクセス段()とコード確認手段()と預託金額コード確認手段,通話可能料金確認手8683確認手段()と制御手段()とを有し,段と制御手段を有する。8488メモリー手段()は,特殊コードが所定メモリーにはアクセスコードと通話可86の預託金額と一連で記憶され,通話費用能料金がユーザ毎に一連で記憶され,,。を差し引いた預託金額の残高が記録され通話費用を差し引いた残高が記録されるその特殊コードは預託金額に対応する支アクセスコードは管理者がメモリーに払があった時から,通話を行うのに必要通話可能料金を記録した後,残高があな預託金額の残高がある間使用可能とさる間利用可能となる。
れるものであり,コード確認手段()は,発呼者の入力すアクセスコード確認手段は,発呼者の83る特殊コードを確認し,入力するアクセスコードを確認する。
預託金額確認手段()は,メモリー手段通話可能料金確認手段は,メモリーに84()に記憶された預託金額またはその残記憶された通話可能料金又はその残高86高を確認し,を確認する。
制御手段()は,接続・遮断手段()と制御手段は中継手段(リレー)と,残8892比較手段()とを有し,高をゼロと比較する比較手段を有する。93比較手段()は,メモリー手段()に記比較手段は,メモリーに記憶された通9386憶された預託金額またはその残高と,通話可能料金又はその残高をゼロと比較話を開始するための最小費用またはそのする。
後の通話費用とを比較し,接続・遮断手段()は,発呼者の入力し中継手段は,発呼者の入力したアクセ92た特殊コードがメモリー手段()に記憶スコードがメモリーに記憶されたもの86されたものと一致したときにおいて,メと一致したときにおいて,メモリーにモリー手段()に記憶された預託金額ま記憶された通話可能料金またはその残86たはその残高が,通話を開始するための高がゼロでない場合に,被呼者との通最小費用より多い場合には,被呼者との話を接続し,ゼロになった場合は,そ通話を接続し,その後の通話費用を負担の後の通話を禁止する。
し得なくなった場合には,被呼者との通話接続を遮断する電話の通話制御システム。電話の通話制御システム。
(別紙)本件特許発明2と乙17発明との対比本件特許発明2の構成英国特許引用例の構成特殊な交換部(A)を利用し,次のステ特殊な交換部を利用し,次のステップップを含む電話の通話制御方法であってを含む電話の通話制御方法である。,この特殊な交換部(A)において所定の特殊な交換部において所定の通話可能預託金額に対し特殊コードを予め割り当料金に対しアクセスコードを予め割りて,これら預託金額及び特殊コードの複当て,通話可能料金とアクセスコード数組み合わせを記憶し,の複数組み合わせを記憶する。
前記特殊コードは,対応する預託金額のアクセスコードは管理者が通話可能料支払を条件として使用可能とされ,金をメモリに記憶させることを条件として使用可能となる。
発呼者の電話()から,入力された特発呼者の電話から入力されたアクセス81殊コードと被呼者の電話番号を発呼時にコードと被呼者の電話番号を発呼時に送信し,送信する。
前記特殊コード及び被呼者の電話番号をアクセスコード及び被呼者の電話番号特殊な交換部(A)が受信し,を特殊な交換部が受信する。
この受信された特殊コードが,記憶され受信されたアクセスコードが記憶された特殊コードの一つと一致して使用可能たアクセスコードの一つと一致して使であるかを確認し,用可能であるかを確認する。
前記受信された特殊コードの預託金額の受信されたアクセスコードの通話可能残高と,発呼者の電話()を被呼者の料金の残高をゼロと比較する。81電話に接続するために必要な最小費用とを比較し,前記預託金額の残高が必要な費用より多通話可能料金の残高がゼロでないときい時に,発呼者の電話()を被呼者のに発呼者の電話を被呼者の電話に接続81電話に接続し,する。
前記預託金額の残高が,発呼者と被呼者通話可能料金の残高がゼロとなった場との通話接続を継続するのに必要な費用合に,発呼者が被呼者に通話できなくより少なくなった場合には,発呼者と被なるように,発呼者の電話が被呼者の呼者の通話接続を遮断するように,発呼電話と接続を開始してから遮断される者の電話()が被呼者の電話と接続をまで通話費用をモニターする。81開始してから遮断されるまで通話費用をモニターする,電話の通話制御方法。電話の通話制御方法。
裁判長裁判官 設樂隆一
裁判官 荒井章光
裁判官 鈴木千帆
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