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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成17ワ 785特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
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関連ワード 方法の発明 /  新規性 /  進歩性(29条2項) /  同一技術分野(同一の技術分野) /  容易に発明 /  周知技術 /  技術的範囲 /  技術常識 /  発明の詳細な説明 /  発明の概要 /  優先権 /  分割出願 /  共有 /  優先日 /  容易に想到(容易想到性) /  不存在 /  特許発明 /  実施 /  間接侵害 /  構成要件 /  方法の使用 /  のみ用いる /  差止請求(差止) /  侵害 /  損害額 /  実施料 /  相当因果関係 /  不法行為(民法709条) /  拒絶査定 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 17年 (ワ) 3155号 特許権侵害差止請求事件
原告 インバーネス・メデイカル・スウイツツアーランド・ゲゼルシヤフト・ミツト・ ベシユレンクテル・ハフツング
訴訟代理人弁護士 中島和雄
補佐人弁理士 川口義雄
同小野誠
同 大崎勝真
被告 株式会社ミズホメデイー
訴訟代理人弁護士 武末昌秀
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2006/04/13
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
請求の趣旨
1 被告は,別紙物件目録1記載のインフルエンザウイルス抗原検出試薬「クイックチェイサーFlu A,B」を製造し,販売し又は販売の申し出をしてはならない。
2 被告は,別紙物件目録2記載のHBs抗体検出試薬「クイックチェイサーHBsAb」を製造し,販売し又は販売の申し出をしてはならない。
3 被告は,別紙物件目録3記載のHBs抗原検出試薬「クイックチェイサーHBsAg」を製造し,販売し又は販売の申し出をしてはならない。
4 被告は,その保有する1項ないし3項記載の物件をいずれも廃棄せよ。
5 被告は,原告に対し,3億2800万円及び内金3億1300万円に対する平成17年10月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6 訴訟費用は被告の負担とする。
事案の概要
本件は,後記両特許権を有する原告が,被告が別紙物件目録1記載のインフルエンザウイルス抗原検出試薬を製造販売等することは後記特許権1を間接侵害し,被告が製造販売する同目録2及び3記載のHBs抗体・抗原検出等試薬は本件発明2の技術的範囲に属すると主張して,被告に対し,@それら特許権に基づき,それらの製造販売等の差止め及び廃棄,Aそれら特許権侵害不法行為に基づき,原告が被った3億2800万円の損害賠償及び内金3億1300万円に対する平成17年10月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求した事案である。
1 前提事実(争いがない)(1) 原告は,下記の特許権の特許権者である。
ア 本件特許権1以下 この特許権を 本件特許権1といい 同特許権に係る特許を 本 (, 「 」 , 「件特許1 ,同特許権に係る特許発明を「本件発明1」という。また,本 」件発明1の特許出願の願書に添付された明細書を「本件明細書1」という)。
発明の名称 検定法出願番号 特願平8-284355分割の表示 特願昭63-503518の分割出願日 昭和63(1988)年4月26日優先日 1987年4月27日及び1987年10月30日優先権主張国 イギリス(GB)登録日 平成11年4月23日特許番号 特許第2919392号特許請求の範囲(請求項1。なお,構成要件は次のとおり分説するのが相当である )。
@ 検体を含むと思われる水性液体試料の適用によって湿潤された多孔質キャリヤ中を自由に移動し得る,検体に対して特異結合性の標識付き試薬を使用すること,A 前記多孔質キャリヤ上に検出区域が設けられており,B 前記検出区域には検体に対して特異結合性の無標識試薬が固定化されて湿潤状態でも移動せず,C 前記無標識試薬は前記標識付き試薬および前記検体と共にサンドイッチ型反応に参加し得ること,D および前記多孔質キャリヤが分析試験装置の一部を構成することを含む特異結合アッセイにおいて,E a)標識が粒状の直接標識であること,F b)前記多孔質キャリヤの検出区域の下流に対照区域が設けられており,前記対照区域は前記標識付き試薬と結合し得る固定化された抗体または固定化された検体を含むこと,およびG c)前記標識付き試薬は,前記分析試験装置内における乾燥状態から前記水性液体試料によって捕捉されて前記検出区域および対照区域に亘って移動し,その結果,陽性のアッセイ結果は同一標識付き試薬の検出区域と対照区域の両者における可視的結合により示され,陰性のアッセイ結果は標識付き試薬の対照区域のみにおける可視的結合により示されることH を特徴とする前記特異結合アッセイ。
イ 本件特許権2以下 この特許権を 本件特許権2といい 同特許権に係る特許を 本 (, 「 」 , 「件特許2 ,同特許権に係る特許発明を「本件発明2」という。また,本 」件発明2の特許出願の願書に添付された明細書を「本件明細書2」という)。
発明の名称 検定法出願番号 特願昭63-503518出願日 昭和63(1988)年4月26日優先日 1987年4月27日及び1987年10月30日優先権主張国 イギリス(GB)出願公告 特公平7-46107号出願公告日 平成7年5月17日登録日 平成9年10月24日特許番号 特許第2132903号特許請求の範囲(請求項1。なお,構成要件は次のとおり分説するのが相当である )。
@ 不透湿性固体材料からなる中空ケーシング中に乾燥多孔質キャリヤを収容しており,A 前記多孔質キャリヤに液体試料が適用され得るように多孔質キャリヤはケーシングの外部と直接的または間接的に連通しており,B 湿潤状態において多孔質キャリヤ内部を自由に移動し得る,検体に対して特異結合性の標識付き試薬と,C キャリヤ材料上の検出区域に永久的に固定化されており,従って湿潤状態でも移動しない,同検体に対して特異結合性の無標識試薬とを含んでおり,D 適用された液体試料が標識付き試薬を吸収した後に検出区域に浸透するように標識付き試薬と検出区域との位置関係が決定されており,E さらに標識付き試薬が検出区域において結合された程度を観察できる手段を含む分析試験装置であって,F 標識が粒状の直接標識であって,液体試料が適用される前ケーシング内に乾燥状態で保存されているG ことを特徴とする前記分析試験装置。
(2) 被告は,別紙物件目録1ないし3のインフルエンザウイルス抗原検出試薬等を製造販売している。
別紙物件目録1記載のインフルエンザウイルス抗原検出試薬を用いたインフルエンザウイルス検出方法は,本件発明1の技術的範囲に属し,同検出試薬は,本件発明1の「方法の使用のみ用いる物 (特許法101条3項) 」に該当する。
別紙物件目録2記載のHBs抗体検出試薬及び別紙物件目録3記載のHBs抗原検出試薬は,いずれも本件発明2の技術的範囲に属する。
2争点(1) 特許法104条の3の抗弁ア 本件特許1についてイ 本件特許2について(2) 損害額
争点に関する当事者の主張
1 争点(1)ア(本件特許1の無効)について【被告の主張】(1) 無効理由1(進歩性欠如)ア 本件発明1の優先日より前に公開された特開昭61-145459号(乙1,以下「刊行物1」という )に記載された発明と,本件発明1と 。
は,次の点でのみ相違し,その余の点で一致する。
@ a)標識が粒状の直接標識であること。
A b)前記多孔質キャリヤの検出区域の下流に対照区域が設けられており,前記対照区域は前記標識付き試薬と結合し得る固定化された抗体または固定化された検体を含むこと。
B c)前記標識付き試薬は,前記分析試験装置内における乾燥状態から前記水性液体試料によって捕捉されて前記検出区域および対照区域に亘って移動し,その結果,陽性のアッセイ結果は同一標識付き試薬の検出区域と対照区域の両者における可視的結合により示され,陰性のアッセイ結果は標識付き試薬の対照区域のみにおける可視的結合により示されること。
イ 相違点@について本件発明1の優先日当時において粒状の直接標識が標識剤として使用可,(。「」。 ) 能なことは 特開昭55-15100号 乙4 以下 刊行物4 という「」 における 分散金属粒子で標識する分析方法並びにこれに使用するキットの発明として公知である。
また,各試験に如何なる標識を用いるかは試験者の選択の範囲であることは,特開昭53-47894号(乙3。以下「刊行物3という )にお。
いて 「標識体を含む反応剤からなる試験用具を用いて結合試験を行わん ,とするような場合,標識体は,試験を行う時に関係する他の物質に比べて特異な特性を有するものであればいかなる化学的な物質あるいはその一部分であってもよい。例えば,かかる標識体は,蛍光性,特異的な光吸収特性又は反応性を有することができる (10頁右下欄8行から15行)と 」して示唆されているとおりである。
このように,本件発明1の属する技術分野における通常の知識を有する者は金属コロイドの存在を容易に知り得るものであり,本件発明のような,, 分析デバイスにおいて 酵素標識に変えて金属コロイドを使用することは選択の範囲として容易に考え得ることであるというべきである。
ウ 相違点Aについて本件発明1の優先日より前に頒布された「HCGテストパック」の説明書(乙2の1及び2。以下「刊行物2の1 「刊行物2の2」という ) 」,。
から,次のことが理解できる。
(ア) 同商品は,尿中ヒト繊毛性ゴナドトロビン(hCG)検出用キットである。
(イ) 同キットは 反応ディスク 試薬A 酵素標識抗体 試薬B 洗 ,,(),(浄液 ,試薬C(基質,発色剤)で構成されている。 )(ウ) 反応ディスク表面のプラス形状の垂直方向には抗hCGβモノク,。 ローナル抗体が固相化され 水平方向にはhCGが固相化されているこの反応デイスクに被検尿を滴下すると,尿中にhCGが存在している場合には垂直方向に固相化された抗hCGβ抗体にhCGが結合する。この際垂直方向にはhCGβに特異的な抗hCGβモノクローナル抗体が固相化されているため,尿中のLH,FSHは反応デスクに結合しない。次に酵素標識抗hCGα抗体を添加すると,垂直方向および水平方向に結合しているhCGを介して抗原抗体コンプレックスが形成され,酵素反応によって+という形の発色がおこる。しかし,被検尿中にhCGが存在しない場合には,垂直方向にhCGの結合が起こらないため,次に添加された酵素標識抗hCGα抗体は水平方向にあらかじめ固相化されたhCGとのみ反応し-という発色を示す。
このように,刊行物2の1及び2に記載された発明では,検出区域(垂直方向デイスク)と対照区域(水平方向デイスク)との二つの区域(デイスク)の配置が 「+」の位置関係になっているのに対し,本件発明1で ,は「上流-下流」の関係になっている点で相違がある。
このように,刊行物2の1及び2においては 「検出区域」と「対照区 ,」「 」 , , 域 を + の位置関係に配置してあるが この位置関係における表示は特に家庭などの使用においては非常にわかりやすい表示方法である。
刊行物1に記載された発明を前提に,出願人が「対照区域」を設けた意図から考慮すれば 「検出区域」との位置関係は,本件発明1の「上流- ,下流」よりも,刊行物2の1及び2の「+」の位置関係のほうが進歩しているものというべきであり,これらの公知例の組み合わせと比較して本件発明1の組み合わせが特別に顕著な作用効果を作出させるに至っているというべきものは認められない。
エ 相違点Bについて相違点Bに係る本件発明1の構成は,相違点Aで示されている「対照区域」の構成を除いては,刊行物1記載の発明と同じである。
オ まとめこのように本件発明1の構成は,いずれも公知の技術の組合せであり,これらの組合せが各公知例と比較して顕著な作用効果を作出させるに至っているものではなく,また本件発明1はその優先日前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が,前記各公知例に基づいて容易に発明することができるものであるから,本件特許1は無効理由を有するものといえるものである。
(2) 無効理由2(進歩性欠如)ア 本件発明1の優先日より前に公開された刊行物3に記載された発明と,本件発明1とは,次の点でのみ相違し,その余の点で一致する。
@ 多孔質キャリヤの湿潤が,本件発明1においては「検体を含むと思われる水性液体試料の適用によって」湿潤されるものであるのに対し,刊行物3の発明では「展開液」の適用によるものである点。
A 本件発明1の標識が「粒状の直接標識」であるのに対し,刊行物3には,標識として「粒状の直接標識」が記載されていない点。
B 本件発明1では 「前記多孔質キャリヤの検出区域の下流に対照 ,区域が設けられており,前記対照区域は前記標識付き試薬と結合し得る固定化された抗体または固定化された検体を含む」ものであるのに対し,刊行物3の「終端区画16」は 「展開液による展開が ,完了したことを示すのに役立てるため展開液に感じる指示薬」を含むものであるが 「前記標識付き試薬と結合し得る固定化された抗 ,体」等が固定化される「対照区域」ではない点。
C 本件発明1では 「陽性のアッセイ結果は同一標識付き試薬の検 ,出区域と対照区域の両者における可視的結合により示され,陰性のアッセイ結果は標識付き試薬の対照区域のみにおける可視的結合により示される」ものであるのに対し,刊行物3には,このようなことは記載されていない点。
D 本件発明1では,前記無標識試薬は 「前記標識付き試薬および ,前記検体と共にサンドイッチ型反応に参加し得る」のに対し,刊行物3には 「標識体」が「サンドイッチ反応」することは記載され ,ていない点。
イ 相違点@について多孔質キャリヤを検体を含むと思われる水性液体試料の適用によって湿潤させることは,刊行物3にも従来技術として記載されているように,比較的多量の試料を要するという欠点を有するものの,従来から行われていたことにすぎない。
ウ 相違点Aについて(。「 」。) 特開昭60-53847号 乙9の5 以下 刊行物9の5 というは 「粒状の直接標識」を使用する装置を記載している。また,本件出願人 ,自身が,明細書中において 「金ゾルや染料ゾルのような直接標識が既知と ,なっており」と述べ,直接標識自身は優先日当時周知になっていることを自白しているように 「粒状の直接標識」を採用することは,従来から行わ ,れていたことにすぎない。
エ 相違点Bについて無効理由1の相違点Aに関する主張に同じである。
オ 相違点CDについてこれらの相違点は,刊行物2の1に記載されている。
カ まとめ以上のように,本件発明1は,当業者が上記刊行物に基づいて容易に想起できたものに他ならず,特許法29条2項の規定に該当し,本件特許1は無効にされるべきものである。
【原告の主張】(1) 無効理由1(進歩性欠如)についてア 本件発明1の検定法は,粒状の直接標識が多孔質キャリヤ上に乾燥状態で保持され,液体試料を適用すると粒状の直接標識が懸濁され,生じた懸濁液が多孔質キャリヤ内部を移動して検出区域を経て対照区域に到達し,液体試料が検体を含む場合は,検出区域に固着されている無標識試薬と可視的結合するが,検体を含まない場合は,検出区域での可視的結合をすることなく,対照区域においてそこに固定された抗体または検体とのみ可視的結合をすることにより,陽性,陰性の判定を容易かつ簡便になし得るところにある。
したがって,本件発明1の特徴は,構成要件E〜Hの構成a ,b)及)びc にあるが 優先日当時の技術水準との関係では とりわけa の 粒 ), , )「状の直接標識」の点が重要である。
イ 被告引用の刊行物1ないし3は,いずれも特異結合を伴う免疫学的検定法に関するが,いずれにも粒状の直接標識についての記載がない。
刊行物4は,被告主張のように,標識として金属ゾルを使用することを開示しているものの,懸濁液の形態で,すでに液体試料と接触している固相に直接適用するにすぎないもので,本件発明1のように,当初は乾燥状態で多孔質キャリヤ内に保持させておき,液体試料の適用に伴って湿潤したキャリヤ中を移動させて検出区域の固相と可視的結合をさせるという技術思想とは懸絶している。
「粒状の直接標識」が,それ自体としては出願前公知であることは,原告自身認めるところであるが,粒状直接標識を使用する従来のサンドイッチ型の免疫学的検定法の一般的手技は,抗体により内面を被覆した,プレート上のウェル(窪み)に,緩衝液中に溶解した抗原を含むサンプルを摘下して,37℃で一昼夜反応させ,非結合成分を除去すべくウェルを緩衝液で6回洗浄し,最後にウェル内面に結合した免疫複合物(抗体-抗原-金コロイド標識付き抗体)から金コロイド標識付き抗体を解離するために希塩酸を加え,解離後の金コロイド標識付き抗体の分散液の色強度を目視または色度計で読み取る,というものである(甲14 。このように,粒)状直接標識を使用する従来のサンドイッチ型の免疫学的検定法は,試験に長時間を要しかつ操作が著しく繁雑であるから,研究目的での実験室用途以外の商業的用途などは到底望み得ないものでしかなかったのである。
本件発明1のような自蔵式分析装置における標識として不溶性の粒状標識を使用することは,本件発明1の優先日当時知られていなかったばかりか,同優先日前,当業者は,粒状の直接標識を用いたのでは,粒子が液体試料中に懸濁する程度なので多孔質キャリヤ内を容易に移動できないであろうし,仮に標識試薬が検出区域まで移動できたとしても,粒状の直接標識試薬を用いたのでは肉眼で検出するには不明瞭な分析結果しか得られないであろうと考えていたのである。したがって,本件発明1のように,液体試料を適用して湿潤状態になると粒状の直接標識が多孔質キャリヤ内部を移動できるということは従来の常識に反することであった。
,「」 本件発明1は それ自体としては公知であるところの 粒状の直接標識とその余の構成要件との固有の組合せにより,それまで誰もなしえなかった簡便,確実かつ短時間に可視的判定を可能にした画期的な発明であり,そのため粒状の直接標識が周知となった1980年代当初から本件発明1に至るまで約7年もの年月も要したのであり,被告引用の刊行物から容易に発明できたものということはできない。
ウ 被告は,本件発明1はその指摘する刊行物に記載された公知の技術を組み合わせたものであり,これらの組合せが各公知例と比較して顕著な作用効果を作出させるに至っていないと主張するが,本件発明1は,粒状の直接標識を使用して前記のごとく構成することにより 「未熟者でも容易に,使用でき,また好適には装置の一部分のみ試料(・・・)と接触させれば良く,その後使用者が何もしなくても分析結果を観察できる試験装置を提供する (本件公報【0003】段落)という,これまでの分析装置には 」見られなかった顕著な作用効果を奏するものである。
被告が指摘する刊行物2の1及び2と比べても,同刊行物は,検体と特異的結合をする試薬Aとして水溶性の酵素標識を用いるもので,検体を含むと思われる液体試料を反応ディスクのフィルターに滴下してフィルターを通過するのを待って,上記試薬Aを滴下して1分間静置し,フィルターを取り除いた後試薬B(洗浄液)を反応ディスクに滴下し,さらに試薬C(基質,発色剤)を滴下するというもので,予め粒状の直接標識を乾燥状態で多孔質キャリヤに保持させておくことで,使用者は液体試料を多孔質キャリヤに適用するだけで陰陽の判定をなし得る本件発明1の検定法とは容易簡便性においてもまるで比較にならない。
エ 以上のとおりであるから,被告の無効理由1は,成り立たない。
(2) 無効理由2(進歩性欠如)について刊行物3において,多孔質キャリヤの湿潤が水性液体試料の適用ではなく展開液の適用によりなされること,及び免疫反応がサンドイッチ型反応ではなく競合型反応であることを除き,本件発明1の前提部分を開示するものであることは認める。しかし,本件発明1の特徴部分である構成要件EないしGについては,刊行物3,刊行物2の1,刊行物9の5のいずれにも開示するところがない。
すなわち,刊行物3については,標識としては放射性標識等を例示しているのみであって 「粒状の直接標識」については全然記載がない。 ,次に刊行物2の1には,酵素標識抗体と固定化抗体を使用した,機能的に区別された区域を有しない反応ディスク上のサンドイッチ型免疫アッセイを開示するにとどまり,構成要件EないしGについては何ら開示するものではない。
さらに刊行物9の5は,液体検定媒体中で免疫反応を行い,寸法の大きな粒子を吸水性部材の媒体との界面部位に物理的に捕捉,濃縮するというものであるから,液体検定媒体中での抗原-標識抗体型の凝集反応型の免疫検定に関するものであり,本件発明の多孔質キャリヤにおける標識付抗体-抗原-固定抗体型のサンドイッチ型免疫検定とは無関係である。
以上より,本件発明1は特許法29条2項に該当せず,被告主張の無効理由2は成り立たない。
2 争点(1)イ(本件特許2の無効)について【被告の主張】(1) 刊行物1に記載された発明と,本件発明2とは,次の点でのみ相違し,その余の点で一致する。
@ 本件発明2においては 「不透湿性固体材料からなる中空ケーシン ,グ中に乾燥多孔質キャリヤを収納しており 「前記多孔質キャリヤに 」,液体試料が適用され得るように多孔質キャリヤはケーシングの外部と直接的または間接的に連通しており」そして 「標識が液体試料が適 ,用される前ケーシング内に乾燥状態で保存されている」点について,刊行物1では,中空ケーシングに関する記載を欠いている。
A 本件発明2では 「標識」が「粒状の直接標識」であるのに対し,刊 ,行物1では 標識 について限定が付されているわけではないが 粒 ,「」 ,「状の直接標識」について記載されていない。
(2) しかし,相違点@は,特開昭61-142463(乙9の3。以下「刊行物9の3」という )に記載されている。 。
すなわち,刊行物9の3には 「ハウジング」内に収容された「吸収性材料 ,」「 」 , から成るストリップ からなる クロマトグラフィー装置 が記載されておりこれらは,それぞれ 「中空ケーシング 「乾燥多孔質キャリヤ 「分析試験装 ,」,」,置」に該当する。また,刊行物9の3の「ハウジング」は,熱可塑性樹脂等により構成されるから,不透湿性固体材料から成ることは明らかである。したがって,刊行物9の3は 「不透湿性固体材料から成る中空ケーシング中に乾燥多 ,孔質キャリヤを収容する」装置を記載している。
刊行物9の3のクロマトグラフィー装置は「ストリップの1部を液体媒質と ,接触可能とするため,ハウジングの基部の付け根に配設された手段」を有するから,刊行物9の3は 「前記多孔質キャリヤに液体試料が適用され得るように ,」。 多孔質キャリヤはケーシングの外部と直接的に連通 する装置を記載しているさらに,刊行物9の3の「免疫クロマトグラフ」は 「信号発生系の要素」を ,含有している溶液と接触後乾燥させて製造され,使用するときはじめて液体試,。, 料に接触するから 製造後当然に乾燥状態に置かれるものである したがって刊行物9の3は 「液体試料が適用される前」標識が「ケーシング内に乾燥状態 ,で保存される」装置を記載している。
このように,相違点@は,当該技術分野における周知技術である。
(3) また,相違点@は,刊行物3にも記載されている。
すなわち,刊行物3の「細片11」は 「乾燥多孔質キャリヤ」に相当し, ,この「細片11」は測定位置(区画15)以外のすべての表面を覆うことが記載されており,測定位置(区画15)でマスキング剤を使用することも記載されている。よって,刊行物3は 「不透湿固体材料からなる中空ケーシング中に ,乾燥多孔質キャリヤを収容」する装置を記載している。
刊行物3には 「使用に際しては,試料を細片11の試料受容区画13に塗布 ,配分し,始端区画12を展開液中に浸漬すると展開液は毛管現象によって細片11に沿って終端区画16に向かって移動し始める」と記載されており 「細 。,片11」の覆いは,始端区画では当然露出していなければならない。したがって,刊行物3は 「前記多孔質キャリヤに液体試料が適用され得るように多孔質 ,キャリヤはケーシングの外部と直接的または間接的に連通」する装置を記載している。
刊行物3の試験器具は 「反応成分」の細片への塗布後乾燥させて製造するも ,のであり,使用するに際して,試料を細片11の試料受容区画13に塗布配分し,始端区画12を展開液中に浸漬するものであり,製造後当然に乾燥状態に置かれる。したがって,刊行物3は 「標識」が「液体試料が適用される前ケー ,シング内に乾燥状態で保存され」る装置を記載している。このように,相違点@は,当該技術分野における周知技術である。
(4) 相違点Aについては,刊行物9の5は 「粒状の直接標識」を使用する装 ,置を記載している。また,本件発明2の出願人自身が,明細書中において 「金,ゾルや染料ゾルのような直接標識が既知となっており」と述べ,直接標識自身は優先日当時周知になっていることを自白しているように 「粒状の直接標識」,,。 を採用することは 当業者にとってさしたる困難性を伴わない設計事項である(5) したがって,本件発明2は,上記刊行物に接する当業者であれば容易に想起できたことは明らかであり,特許法29条第2項の規定に該当し,本件特許2は無効にされるべきものである。
(6) また,本件発明1と本件発明2との主たる相違は,本件発明1は本件発明2の構成要件からケーシングの要件が削除されていることにあるものである。本件発明2の特許出願に対する拒絶査定に対する審判請求書(乙8)において,出願人は「自蔵式分析装置は本願出願当時公知である」旨自認している。そして,本件発明2の要旨については 「粒状の直接標識-乾燥状態 ,-試料により移動-簡易な自蔵式分析試験装置」である旨を強調し,本件発明2は従来の酵素標識等を使用する従来の分析試験装置における欠点を解消することができた旨強調している。
したがって,出願人自体においても,蔵中の分析装置の新規性ないし進歩性を欠いた自蔵装置たるケーシング自体には何ら新規性進歩性を主張されておらないといえるものであり,本件発明1に無効原因が認められれば同時に本件発明2においても無効原因が認められるといえるものである。
【原告の主張】被告が公知例として指摘する刊行物1,刊行物3,刊行物9の3及び刊行物,, 9の5については それぞれ争点(1)アに関する原告の主張のとおりであってこれら刊行物には,検体を含む液体試料を多孔質キャリヤに適用し,試料中の検体と,乾燥状態で多孔質キャリヤに保存されている,検体に対して特異結合性である粒状直接標識付き試薬とを多孔質キャリヤ中で免疫反応させて検体-直接標識付き試薬複合体を生成させ,複合体を無標識試薬が固定された多孔質キャリヤの検出区域まで更に浸透させて両者の免疫結合により捕捉,濃縮するという本件発明2の特徴的構成については全く開示も示唆もない。刊行物9の5は,液体検定媒体中での抗原-標識付抗体型の凝集反応型免疫検定に関するものであり,本件発明2の多孔質キャリヤにおける標識付抗体-抗原-固定抗体型のサンドイッチ型免疫検定とは無関係である。
また,本件発明の「不透湿性固体材料からなる中空ケーシング」は,本件明細書2添付の図面からも明らかなように,中空構造の構造体であるから,刊行物3にいう細片表面のマスキング材による被服とは全く関係がない。したがって,刊行物3は「中空ケーシング」及び関連する事項を開示していない。
したがって,被告主張の無効理由は成り立たない。
3 争点(2)(損害額)について【原告の主張】(1) 特許法102条3項に基づく損害額ア 原告が本件特許権1及び2を取得した平成14年8月16日以降の被告の別紙物件目録記載の各物件の売上高は次のとおりである。
(ア) 別紙物件目録1記載の物件平成16年の製造販売開始から平成17年10月14日までの売上高は少なくとも5000万円を下らない。
(イ) 別紙物件目録2記載の物件平成14年8月16日から平成17年10月14日までの売上高は1億5800万円である。
(ウ) 別紙物件目録3記載の物件平成14年8月16日から平成17年10月14日までの売上高は10億4500万円である。
(エ) 合計は,12億5300万円である。
イ 本件における損害額の算定に際して適用すべき実施料率は,25%とすべきである。
ウ したがって,原告の被った損害額は,3億1300万円となる。
(2) 弁護士費用本件特許権侵害行為と相当因果関係を有する弁護士費用相当額は,1500万円である。
【被告の主張】争う。
当裁判所の判断
1 争点(1)ア(本件特許1の無効)の無効理由1について(1) 本件発明1の優先日の前である昭和61年7月3日に公開された刊行物1は,シート状診断デバイスの発明に関するものであるが,そこには次の記載があることが認められる。
ア 特許請求の範囲(請求項1)「生物学的親和性結合特性を有する被分析物として液体中の成分の検出又は測定をするための分析デバイスであって,相前後して配設されかつそれらの末端を介して相互に吸着的接触状態にある数個のシート状ゾーンからなり,デバイスの一方の末端に移動相適用ゾーン(MPAZ ,そして)もう一方の末端に吸着ゾーン(AZ ,ならびにその間に存在する他の吸 )着ゾーン(そこでは被分析物と生物学的親和性を有する相互作用をなしう,) る反応成分が 相互に空間的に分離されて存在するように配置されているを含有しており,その際a)反応成分が,共有結合または吸着によるか,またはMPAZおよびAZ間およびAZと接触して存在するゾーン中の生物学的親和性を有する相互作用により固相ゾーン(SPZ)に固定されるか,またはデバイスにおいて生ずる反応において共有結合または吸着によるか,または生物学的親和性を有する相互作用を介してSPZに固定された他の反応体に結合されており,b)更なる標識反応成分(接合体)がMPAZとSPZとの間に未結合状態で位置し,そしてc)被分析物適用ゾーンがMPAZであるかまたはMPAZとAZの間のゾーンであるようにしてなる,分析デバイス 」。
発明の詳細な説明の項(ア) 「本発明は,いくつかの作用セクターよりなり,そして生物学的流体中の物質または被分析物(anatyte)の検出または定量測定に用いられる固定診断デバイスに関する。本発明はまた,デバイスが流体と接触後,被分析物が生物学的親和性を有する特異的な結合パートナーと反応しそして標識試薬により検出されるようにしたこのデバイスを用いた方法にも関する (乙1の3頁右上欄3行目ないし10行目) 。」(イ) 「本発明に記載されているような一体化された乾燥化学試験エレメントは試験実施を簡素化しまた試験時間を短縮する (乙1の3頁左。」下欄12行目ないし14行目)(ウ) 「本発明はすべての試薬成分を含有し,そして作用シーケンスに必要なすべての成分のみならず,作用シーケンス自体も一体化された形で含み,そして被分析物の溶液をこの目的のために設計されたデバイスの作用領域と接触させそして被分析物を信号発生系を介して単一作用領域(固相ゾーン)で検出することにより生物学的親和性特性を有する被分析物を検出できるようにしたシート状診断用デバイスに関する (乙。」1の4頁左上欄13行目ないし右上欄4行目)(エ) 「このデバイスはすべての反応成分および試薬を脱水された形で含む (乙1の4頁右上欄最終行ないし左下欄1行目) 。」(オ) 「シート状診断デバイスは,水性溶液吸収能を有する材料の帯状片1枚または相前後して配置する数枚よりなる。それら帯状片は固体支持体に固定される。それらは特定の診断剤に必要な試薬成分を含有し,また従って作用セクターまたは作用領域となる。帯状片形状デバイスの一方の端に位置する作用セクター(溶媒適用ゾーン)は被分析物溶液と,後者に浸漬することにより,あるいは後者を塗布することにより接触させる。その溶液はすべての作用領域を通過移行する。帯状片を構成する支持体材料の吸収能により生じる液体の流れは,帯状片形状デバイスの他方の端で停止する (乙1の4頁左下欄2行目ないし14行目) 。」(カ) 「各種作用領域の構成分としての1枚または2枚以上の帯状片の形の吸収性支持体は,選択に応じて,セルロース,セルロースの化学的誘導体,または多孔質もしくは繊維質構造および充分な親水性特性を有するプラスチック…から構成されていてもよい (乙1の5頁右上欄1 。」2行目ないし左下欄3行目)(キ) 「生物学的親和性を有する1つの結合パートナーは反応の進行過程で結合するようになるか,または,被分析物の検出のために設計された作用領域(固相ゾーン)の支持体材料にすでに結合している。それは固有結合パートナーとも呼ばれる。他の結合パートナー(1種または複数種)は支持体材料中に存在する。それらには標識を施す (乙1の5。」頁右下欄4行目ないし11行目)(ク) 「標識には様々な可能性が知られているが中でも酵素標識が好ましい。それは,色素原基質系または蛍光または化学発光を生じる基質系を必要とする。化学発光標識は,試薬の添加後にのみ測定される標識のもう一つの例である。化学発光それ自体または後者(基質系)により励起された蛍光のいずれかを測定することができる。大抵の場合に,蛍光標識は,試薬の添加を要せずして測れる。…蛍光はある時点で,時間の関数として,あるいは蛍光偏光として測定することができる (乙1の。」5頁右下欄12行目ないし6頁左上欄10行目)(ケ) 「特異性の異なる2つの結合点が被分析物中に存在する場合には,サンドイッチ式免疫検定の原理に基づく,診断剤のいくつかの態様が考えられる。これらのうち2例について以下に説明する。
固相結合パートナーを固相作用領域の支持材料に共有結合によりまたは吸着により結合する場合,被結合と標識結合パートナーとで形成される二成分複合体は溶媒と共に固相作用領域中に移行しそしてそこで固相結合パートナーと反応して固相に結合した三成分複合体と形成するが,これは最初の結合パートナーの標識を通じて検出することができる。過,。 」 剰の標識結合パートナーは溶媒により 次の作用領域中に除去される(乙1の7頁右下欄8行目ないし8頁左上欄5行目)(コ) 「前述の態様,および免疫測定(immunometric)試験原理,間接的抗体検出の原理または免疫検定のELA(酵素標識抗原)原理に基づく別な態様を説明するために総括表TおよびUは,作用領域中の剤の成分の分布,および反応完了後の固相複合体の組成(その量は試料中の被分析物の濃度の尺度である)を例示的に説明している (乙1の8頁左。」上欄15行目ないし9頁上欄)そして 「総括表I:移動相の形の試料または予め希釈した試料を用 ,いる試験アセンブリ」と題する総括表Iにおいて 「試験アセンブリ」,のゾーンIは被分析物適用ゾーンで,ゾーンUには標識抗体1が未結合状態で位置し,ゾーンVには無標識抗体2が未結合の状態で位置してい,「」,「 」, ること ゾーンXが 検出ゾーン すなわち SPZ固相ゾーン で,, 無標識抗体3が固層に結合した状態で位置しており ゾーンXにおいて試料が標識抗体1,無標識抗体2及び無標識抗体3とサンドイッチ反応によって結合した状態で検出されること,ゾーンYが「吸収ゾーン ,」すなわち「AZ吸着ゾーン」であることが図示されている。
(2) 以上のような刊行物1の記載によれば,そこには次のような分析デバイスが記載されているといえる。
この分析デバイスは,水性溶液を吸収可能な材料(セルロース,セルロー,) スの化学的誘導体 多孔質構造及び充分な親水性特性を有するプラスチックから成る帯状片からなる。これら帯状片は,固体支持体に固定されている。
この分析デバイスは生物学的流体中の被分析物の検出又は定量測定のために用いるものである。
この分析デバイスの一端(溶媒適用ゾーン)に,被分析物の溶液を浸潤又は塗布により接触させると,分析デバイスの材料が持つ吸収能のために,その溶液は他端方向へと流れていく。
被分析物中に特異性の異なる2つの結合点がある場合には,サンドイッチ。, 式免疫測定の原理に基づく分析態様を採用することができる この場合にはまず溶媒適用ゾーンの下流の帯状片中に,被分析物と特異的結合性を有し,移動可能な結合パートナー(標識結合パートナー)を,標識を施して位置させておく。そして,溶媒適用ゾーンに被分析物の溶液を接触させると,被分析物と標識結合パートナーとが特異的結合により2成分複合体を形成し,溶媒と共に更に下流に移動していく。
さらにその下流領域(固相ゾーン)には,被分析物の他の結合点と特異的結合性を有する別の結合パートナー(固相結合パートナー)を,帯状片に結合した状態で位置させておく。そこに上流から,被分析物と標識結合パートナーとの2成分複合体が溶媒と共に移動してくると,この2成分中の被分析,, 物と固相結合パートナーが更に特異的結合し 3成分複合体が形成されるがこのうちの固相結合パートナーは帯状片に結合されていることから,この3成分複合体は移動することがない。
そして,標識結合パートナーのうち,被分析物と特異結合せず,過剰となったものは,溶媒とともにさらに下流に移動し,最終的に帯状片の他端(吸着ゾーン)に至る。
標識結合パートナーに施す標識は,酵素標識,蛍光標識ないし化学発光標識が利用できる。
上記のすべての反応成分や試薬は,乾燥された状態で分析デバイス中に配される。
,,, (3) そうすると 刊行物1に記載された発明と本件発明1とは 以下の点で一致し,また相違するといえる。
ア 一致点A 検体(被分析物)を含むと思われる水性液体試料(被分析物の溶液)の適用によって湿潤された多孔質キャリヤ(セルロース等から成る帯状片)中を自由に移動し得る,検体(被分析物)に対して特異結合性の標識付き試薬(標識結合パートナー)を使用すること,B 前記多孔質キャリヤ(帯状片)上に検出区域(固相ゾーン)が設けられており,C 前記検出区域(固相ゾーン)には検体(被分析物)に対して特異結合性の無標識試薬(固相結合パートナー)が固定化されて湿潤状態でも移動せず,D 前記無標識試薬(固相結合パートナー)は前記標識付き試薬(標識結合パートナー)および前記検体(被分析物)と共にサンドイッチ型反応に参加し得ること,() ( ) E および前記多孔質キャリヤ 帯状片 が分析試験装置 分析デバイスの一部を構成することを含む特異結合アッセイにおいて,F 前記標識付き試薬(標識結合パートナー)は,前記分析試験装置(分析デバイス)内における乾燥状態から前記水性液体試料(被分析物の溶液)によって捕捉されて前記検出区域(固相ゾーン)及びその下流に亘って移動し,その結果,標識付き試薬(標識結合パートナー)が検出区域(固相ゾーン)において結合された程度を観察できる手段を含むG 特異結合アッセイ。
イ 相違点@ 本件発明1では,標識が「粒状の直接標識」であるのに対し,刊行物1記載の発明では 酵素標識 蛍光標識ないし化学発光標識である点 本 ,, (件発明1の構成要件E 。)A 本件発明1では 「多孔質キャリヤの検出区域の下流に対照区域が設 ,けられており,前記対照区域は前記標識付き試薬と結合し得る固定化された抗体または固定化された検体を含む」のに対し,刊行物1記載の発明ではこのような対照区域が設けられていないこと(本件発明の構成要件F)B 本件発明1では 「陽性のアッセイ結果は同一標識付き試薬の検出区 ,域と対照区域の両者における可視的結合により示され,陰性のアッセイ結果は標識付き試薬の対照区域のみにおける可視的結合により示される」のに対し,刊行物1記載の発明では,アッセイ結果がこのような可視的結合によって示されず また陰性のアッセイ結果も示されない点 本 ,(件発明1の構成要件G 。)(4) 相違点@(粒状標識)についてア 本件発明1の優先日の前である昭和55年2月1日に公開された刊行物4は,分散金属粒子で標識する分析方法並びにこれに使用するキットの発明に関するものであるが,そこには次の記載があることが認められる。
(ア) 特許請求の範囲(請求項1)「水性テストサンプル中の特異結合性蛋白質と対応する結合可能物質との間の反応の1種又は複数種の成分を,前記の如き成分相互の公知の結合親和力を利用して検出及び/又は定量する方法において,金属又は金属化合物又は金属もしくは金属化合物で被覆された高分子核の分散水溶液の粒度少なくとも5nmの粒子に前記反応の所望成分を直接又は間接に結合して得られた1種又は複数種の標識成分を使用し,反応中又は適当な反応時間後,必要な場合結合及び遊離標識成分の分離後に,それ自体公知の方法を用いテストサンプル又は誘導分画の1つの中で凝集体含有の金属及び/又は形成金属の物理的性質及び/又は量を定量し,この定量によって,検出及び/又は定量されるべき1種又は複数種の成分が定性的及び/又は定量的に示されることを特徴とする特異結合性蛋白質と対応する結合可能物質との間の反応の1種又は複数種の成分の検出及び/又は定量方法 」。
(イ) 発明の詳細な説明の項(発明の概要について)a 「本発明は,水性試料中の特異結合性蛋白質と対応結合可能物質との間の反応の1又はそれ以上の検知及び/又は定量方法に関し,かかる成分の公知の結合親和力を相互に適用するものである (乙4の。」3頁右上欄4行目ないし7行目)(従来の技術とその問題点について)b 「多数の公知免疫化学方法があって,これで或種の免疫学的成分の存在をかかる成分,負の相互反応,例えば抗原とこの抗原に対する抗体との反応を利用して定性的及び/又は定量的に決定する (乙4。」の3頁右上欄10行目ないし13行目)c 「多数の標識技術が数年間の経過につれて開発されており,中でも赤血球凝集反応と称し,その成分の一つが赤血球の表面に結合されて,() いるものがあり 免疫蛍光技術であって一成分が蛍光化合物 蛍光団の標識を有するもの,ヤロー及びベルソン(Yalow and Berson)によって開発された放射線免疫学測定であって,蛍光団の代りに放射線活性原子又は放射線活性基を符票として使用するもの,並びに最近の酵素免疫学測定技術…があろう (乙4の3頁右下欄4行目ないし1 。」8行目)d 「多く使用された放射線免疫学測定は明らかに大きな長所を有しているが,この方法に伴う多数の本質的な欠点があり…。
該酵素免疫測定方法はこれらの不利益は有しないが,それでも更に感受性でもあり,更に急速に進行出来,更に容易に自動化出来,及び(又は)同時に一つ以上の免疫成分を評価可能にする新しい評価技術を開発することが望ましい (乙4の4頁左上欄4行目ないし1 。」4行目)(発明内容の説明について)e 「本発明方法は特に免疫化な成分,例えばハプテン,抗原並びに抗体の評価に適している (乙4の4頁右上欄16行目ないし17行 。」目)f 「金属,金属化合物又は重合体核(高分子核)であって金属又は金属化合物によって被覆されたものの水性分散物の粒子は,少なくとも5nmなるべくは10乃至100nmの粒子寸法を有する。分散相の粒子寸法10乃至100nmを有する分散物は通常コロイドゾルであるが,他の形式の分散物を除外しない (乙4の4頁右上欄18行目ない 。」し左下欄6行目)g 「金属コロイド粒子,特に金コロイド粒子であって,その表面を抗体で被覆しているもので,細胞表面上の抗原分布の…電子顕微鏡の手段による証明用の用途であって,該金属コロイド粒子をコントラスト高揚標識として使用するものは,既に数年前から記載されているが…分散粒子,なるべくは金属コロイド粒子の試験管内定性並びに定量的の免疫学成分,例えばハプテン,抗原並びに抗体の水性試料中の測定の応用は従来は報告がなく,かつ可能なことが驚くべきことに証明されている。
今日までに開発されている本発明による金属コロイド粒子免疫化学技術は,公知放射線並びに酵素免疫技術より遙かに高い感受性がある… (乙4の4頁左下欄下から2行目ないし右下欄14行目) 」h 「該金属コロイドゾルは金属又は金属化合物…によって被覆されたものからなるものでよい。例としては,白金,金,銀並びに銅等の金属…を挙げてもよい (乙4の5頁左上欄1行目ないし11行目) 。」i 「金属コロイド粒子の標識を設けた成分は薬剤として,一般には他の薬剤と組合わせて受容体蛋白及びハプテン,抗原並びに抗体の水性試料中の証明及び定量用に使用され,これに対し放射免疫並びに酵素。」 免疫の試験に使用するあらゆる種類の免疫化学技術が考慮を受ける(乙4の6頁左上欄9行目ないし14行目)j 「所謂サンドイッチ技術も多く使用される。本発明による金属標識成分の用途として特に適当なものもある。これら技術によれば,免疫学成分,例えば抗原を決定すべき折には抗体を固体担体にカップリング結合せしめることにより不溶性にする。この固体担体は例えば免疫化学反応を行う反応容器の内面である (乙4の6頁右上欄18行 。」目ないし左下欄4行目)k 「該金属標識成分は分散物として存在せしめることが出来るが,これは驚くべきことに使用前再分散可能の安定凍結乾燥生成物を得ることが出来ると思われる (乙4の7頁左上欄18行目ないし右上欄 。」3行目)イ 以上の記載からすると,刊行物4においては,特異結合を伴う免疫学的検定法において,従来用いられていた放射線免疫技術や酵素免疫技術に代,, えて 金属コロイドゾルなどの分散金属粒子を標識として使用し得ることこの分散金属粒子の標識はサンドイッチ技術にも適用し得ること,この分散金属粒子の標識は安定凍結乾燥生成物として得たものを再分散させて使用することができると思われることが記載されているといえる。
そうすると,刊行物4に係る発明と刊行物1に係る発明とは,特異結合を伴う免疫学的検定法という同一の技術分野に属するものであることに加え,刊行物4には,金属コロイドゾルなどの分散金属粒子標識を,刊行物1のような乾燥状態で,刊行物1で用いているサンドイッチ技術にも適用し得ることが示唆されているのであるから,刊行物4の記載に接した当業者が,刊行物1に記載された標識に刊行物4に記載された金属コロイドゾルなどの分散金属粒子標識を適用して,本件発明1の「粒状の直接標識」の構成を得るに至ることは,そのような適用を妨げる特段の阻害事情が存しない限り,容易に想到し得たものというべきである。
ウ 以上に対する原告の主張を検討する。
(ア) 原告は,刊行物4における金属コロイドゾルは懸濁液の形態で,すでに液体試料と接触している固相に直接適用するにすぎないもので,本件発明1のように,当初は乾燥状態で多孔質キャリヤ内に保持させておき,液体試料の適用に伴って湿潤したキャリヤ中を移動させて検出区域の固相と可視的結合をさせるというものではないと主張する。
しかし,刊行物4には前記ア(イ)kのように記載されているのであるから,刊行物1の標識のように,当初は乾燥状態で多孔質キャリヤ内に保持させておき,液体試料の適用に伴って浸潤したキャリヤ中を移動させるとともに検体と結合させるものについても,その適用が阻害されるとはいえない。
(イ) 原告は,粒状直接標識を使用する従来のサンドイッチ型の免疫学的検定法は,甲第14号証にあるように,試験に長時間を要しかつ操作が著しく繁雑であるものであったから,研究目的での実験室用途以外の商業的用途などは到底望み得ないものでしかなかったと主張する。
確かに,本件発明1の優先日より前に金属コロイドゾル等の粒状直接標識をサンドイッチ型の免疫学的検定法に用いた例としては,甲第14号証があり,そこでは原告が主張するような方法(プレートの窪みを利用する,反応に一昼夜をかける,緩衝液で試薬を希釈・混合する,プレートを6回洗浄するなど)で試験を行った旨の記載がある。
しかし,甲第14号証においても,金粒子等の標識をサンドイッチ法に用いる際の試験が,上記のようなものでなければ困難であるという趣,, 旨の記載はなく 他の方法による試験を排除しているものではないから甲第14号証が,刊行物1に記載された標識に刊行物4に記載された金属コロイドゾルなどの分散金属粒子標識を適用する試みを阻害するようなものとはいえない。
また原告の上記主張は,本件発明1の優先日前においては,金粒子等の標識をサンドイッチ法に用いるには甲第14号証記載のような試験方法によるのでなければ困難であるという技術的限界が存したという趣旨であるとも解される。しかし,仮にそのような技術的限界が存したのであれば,その限界の克服には相応の工夫が必要となると考えられるが,本件発明1の構成には何らそのような工夫は示されていない。そして,本件発明1は,そのような工夫なくして 「特に家庭での使用に適し, ,速効的で便利であり しかも使用者の手間をできるだけ少なくした 本 ,」 (件明細書1【0005 )という目的を達成する効果を奏するとされて 】いるのであるから,本件発明1の優先日前において,上記のような技術的限界が存在したとは認められない。
(ウ) 原告は,本件発明1の優先日前には,当業者は,粒状の直接標識を用いたのでは,粒子が液体試料中に懸濁する程度なので多孔質キャリヤ内を容易に移動できないであろうと考えていたと主張する。
そして,医科歯科キングズカレッジスクール産婦人科学部生殖生化学教授のウィリアム・パトリック・コリンズ教授の専門家鑑定書には 1,「986年までに金ゾル粒子は液相系で標識として使用されていた。ゾル粒子は酵素よりも著しく大きく,移動性試薬を標識するために使用するというアイデアが浮かんだとしても,標識試薬を少量の尿に再懸濁し,ストリップを移動する間に複合体の完全性を維持するのは実際には困難であるから,私ならばこのアイデアを捨てたと思う (甲10の添付。」資料の訳文15頁 「私は,抗体に受動的に(化学的に結合するので ),はなく)吸着した粒子標識が,その支持体から小容積の未希釈尿によって外され得,次いで当該未希釈尿の流れによって試験片に沿って輸送され得,最終的に狭い検出ラインに結合され得たことに驚いた (甲1。」8の訳分18頁)と述べている。
しかし,金ゾル粒子が酵素よりも著しく大きいとしても,刊行物4の記載によれば、その粒子寸法の下限は5nmあるいは10nmだというのであるから、キャリヤ内の孔の大きさ次第では,それが多孔質キャリヤ内を移動し得ることも十分に想定し得ることであり,金ゾル粒子に多孔質キャリヤ内を移動させることが原理的に不可能であったというわけではない(仮に原理的に不可能であったのであれば,その克服のために相応の工夫が必要となったはずであるが,本件発明1にはそのような構成は何ら示されていない 。そうすると,金ゾル粒子に多孔質キャリヤ内 。)を移動させることについては,コリンズ教授が指摘するような失敗可能性もある一方で,成功可能性もあったといえるから,その成功可能性に着目し,刊行物1に記載された標識に刊行物4に記載された金属コロイドゾルなどの分散金属粒子標識を適用してみることは,当業者にとって何ら阻害されるところではないというべきである。
(エ) 次に原告は,仮に標識試薬が検出区域まで移動できたとしても,粒状の直接標識試薬を用いたのでは肉眼で検出するには不明瞭な分析結果しか得られないであろうと考えていた点を阻害事由として主張する。
しかしまず,当業者がこのような点を技術常識として有していたことを認めるに足りる証拠はない。
また,先に(ウ)で述べたのと同様,このような点が原理的に不可能であるとされていたとも,実際にそれが不可能であったとの報告がなされ,, ていたとも窺われないから 仮にこのような失敗予測があったとしても他方で成功予測もあり得たものである。そうすると,やはりその成功可能性に着目し,刊行物1に記載された標識に刊行物4に記載された金属コロイドゾルなどの分散金属粒子標識を適用してみることは,当業者にとって何ら阻害されるところではないというべきである。
(オ) 原告は,本件発明1はこれまでの分析装置には見られなかった,簡便,確実かつ短時間に可視的判定を可能にした画期的な発明であると主張する。
しかし,刊行物1に記載された分析デバイスにおいても,検体を含むと思われる水性液体試料を多孔質キャリヤに適用するだけで,検出区域に標識が集積されるという効果は有していたのであって,ただそのように集積した標識を視覚的に検出するために,試薬の添加等の作業が必要となっていたものである。そうすると,刊行物1に記載された分析デバイスに金属コロイドゾルのような粒状の直接標識を組み合わせた本件発明1の効果は,検出区域に集積した標識を可視的に検出するに当たり,試薬の添加等の作業を不要とした点にあるといえるが,このような効果は,刊行物1に記載された分析デバイスに金属コロイドゾル等の直接標識を用いることから当然予測される効果であるにすぎない。
したがって,本件発明1に顕著な効果があるとはいえない。
エ 以上より,相違点@については,当業者が容易に想到し得たものというべきである。
(5) 相違点A(対照区域)についてア 刊行物3について(ア) 本件発明1の優先日の前である昭和53年4月28日に公開された刊行物3は,試験用具および試験方法の発明に関するものであるが,そこには次の記載があることが認められる。
a 「本発明は,試験用具およびそれを使用して,生物学的液体試料のような液体試料中のリガンドの定量もしくは液体試料のリガンド結合能の測定のごとき結合試験方法に関するものである (乙3の5頁。」左上欄3行目ないし7行目)b 「本発明は…,展開液を毛管現象によって長さ方向に移行させることが出来る材料から構成される細長い細片部分からなる用具を提供することである (乙3の6頁右上欄16行目ないし左下欄2行目) 。」c 「使用に際しては,試料を細片11の試料受容区画13に塗布配分し,始端区画12を展開液中に浸漬すると展開液は毛管現象によって細片11に沿って終端区画16に向って移動しはじめる (乙3の6。」頁右下欄14行目ないし18行目)d 「液体試料中のリガンドを測定するための本発明の試験用具の一例を挙げると,反応剤類は,リガンドおよびラベル化されたリガンドもしくはその結合類縁体を含む標識体に対する抗体又は他の結合蛋白の。 ような特異的結合対手…をはじめとする適当な結合試薬を含んでいる予め定められた量の標識体および固定形をした特異的結合対手をそれぞれ区画14および15に包含させる。使用に際しては,展開液が細片11に沿って進むに従って,試料と標識体は混合され,運ばれて固定された結合対手(パートナー)と接触する。その時,標識体および試料中のリガンドは競争して結合対手(パートナー)と結合する。首尾よく結合対手に結合した標識体の部分は,区画15において固定される。展開液が終端区画16へ進むに従って,結合していない遊離した標識体は区画15から遠くまで運び去られることになる (乙3の。」7頁右上欄13行目ないし左下欄12行目)e 「細片の終端区画には,展開液による展開が完了したことを示すのに役立てるため展開液に感じる指示薬を包含せしめるのが好ましい。
例えば,この指示薬は,展開液の溶媒もしくは溶質に感受性を有する呈色反応剤組成物を含んでいてもよい (乙3の10頁右上欄11行 。」目ないし16行目)(イ) 以上からすると,刊行物3においては,液体試料と標識体が展開液によって細片内を混合・移動していく際に,細片に固定された結合対手との競争的反応に基づく特異的結合を利用した免疫学的検定において,検出区域の下流側に,展開液による展開が完了したことを示すために,展開液に感じる指示薬を包含する終端区画を設けることが記載されているといえる。そして,このような終端区画の機能は 「使用者に対して,試料が所要距離に亘って試験装置に浸透したことを確実に知らせるインジケータ (本件明細書1の【0019 )である本件発明1の「対照区 」】域」の機能と同一であり,陽性の場合には検出区域と終端区画の双方に反応結果が生じるのに対し,陰性の場合には終端区画にのみ反応結果が生じることになる。
そうすると,刊行物3は,同じく被分析物と標識を含む液体が帯状片内を移動していくタイプの免疫学的検定法を用いる刊行物1の分析デバイスについても,被分析物の溶液の移動が完了したことを示すために,終端部である吸着ゾーンにおいて,過剰となった標識結合パートナーと反応する指示薬を包含させておくことを示唆するものであるといえる。
もっとも,刊行物3に示された終端区画における反応として示されているものは,展開液の溶媒又は溶質と指示薬との間に生じる呈色反応にすぎないから,刊行物3において,過剰となった標識結合パートナーと反応する指示薬をどのようにすべきかということが示唆されているとはいえない。したがって,刊行物1に記載された分析デバイスに,刊行物3に記載された終端区域を組み合わせても 「標識付き試薬と結合し得 ,る固定化された抗体または固定化された検体を含む」という本件発明1の構成要件Fに至るわけではない。
イ 刊行物2の1について(ア) 刊行物2の1は,その体裁からして,本件発明1の優先日前である1986(昭和61)年1月9日に発行された 「HCGテストパック」 ,という妊娠診断キットの説明書であると認められるが,そこには次の記載がある。
a原理「本キットは,固相法を利用したEIAにより,尿中のhCGを検出するものです。
すなわち,検体中のhCGは,反応ディスクに固定化された抗hCG抗体に結合し,次に,酵素標識抗hCG抗体を加えると,抗hCG抗体(反応ディスク)-hCG-酵素標識抗hCG抗体のサンドイッ。, チ型の複合物を形成します さらに基質及び発色剤を加えて発色させディスク上に表示された(+)または(-)により結果の判定をします」。
b キットの特長「陽性の検体ではプラス(+ ,陰性の検体ではマイナス(-)に )表示されますので,判定が容易です。
「操作を誤った場合,プラス(+)にもマイナス(-)にも表示されません 」。
c 使用法-B.操作法「A 1.専用ピペットで,尿検体を5滴,反応ディスクのフィルターに滴下する。検体がフィルターを通過するのを待つ。
2.試薬A(酵素標識抗体)を3滴,滴下する 」。
「B 1.フィルターを取り除く。
2.試薬B(洗浄液)を,付属のスポイトの白線まで取り,反応ディスクに)滴下し,洗浄する 」。
「C 試薬C(基質,発色剤)を3滴,滴下する 」。
「D 試薬D(洗浄液)を,付属のスポイトの白線まで取り,反応ディスクに滴下し,発色を止める 」。
d 結果の判定における注意「マイナス(-)に表示された場合,結果が陰性であることを示す,。 と同時に 尿検体添加後の操作は誤りなく行われたことを示している尿検体を添加しなかった場合でもマイナス(-)に表示されるため,注意すること 」。
「プラス(+)にもマイナス(-)にも表示されない場合,試薬の添加が不適当であるか,または試薬の劣化が考えられる 」。
(イ) 以上の記載によれば,刊行物2の1には,HCGテストパックの仕組みについて次のことが記載されているといえる。
a 本キットは,尿中のhCGを,サンドイッチ型反応によって検出する,免疫学的検定法を使用している。
b 反応ディスクのプラス(+)の縦軸には,最初にhCGと特異的に結合する抗hCG抗体が配置され,ここに検体たるhCGを含んだ尿が滴下されると 「抗hCG抗体-hCG」の複合体が形成される。 ,次にhCGと特異的に結合するhCG抗体に酵素標識を付したものを滴下すると,縦軸においてはサンドイッチ型反応によって 「抗hC,G抗体-hCG-酵素標識抗hCG抗体」の複合体が形成される。そして,これに基質及び発色剤を滴下すると,縦軸の酵素標識が発色することでhCGの存在が検出される。
他方,尿中にhCGが含まれない場合には,サンドイッチ型反応が生じないため,酵素標識抗hCG抗体が洗浄液によって洗い流され,基質及び発色剤を滴下しても縦軸は発色しない。
c 反応ディスクのプラス(+)の横軸(すなわちマイナス(-)軸)は,尿中にhCGが含まれている場合でもいない場合でも,酵素標識,。 抗hCG抗体を滴下した後に基質及び発色剤を滴下すると発色するこのことからすると,横軸には,酵素標識が当初からディスクに固定されているか,又は滴下した試薬A中に含まれている標識、すなわち酵素標識抗hCG抗体の標識ないしその他の標識がディスクに捕捉されるものと考えられる。
しかし,試薬Aを添加し忘れるなど試薬の添加が不適当であった場合には,プラス(+)にもマイナス(-)にも表示されないのであるから,酵素標識が当初からディスクに固定されていたものでないことは明らかである。したがって,横軸では,滴下した試薬A中の酵素標識がディスクに捕捉されるものと考えられる。尿検体を添加しなかった場合でもマイナス(-)に表示されることになるのはそのためである。
ところで,試薬A中に含まれている酵素標識抗hCG抗体の標識をディスクに捕捉するには,酵素標識抗hCG抗体と特異的に結合するhCGを当初からディスクに固定することによって滴下した試薬A中の酵素標識抗hCG抗体を補足すればよいことは,当業者であれば直ちに気付くことである。
そうすると,刊行物2の1においては,反応ディスクの横軸にはhCGが当初から固定されており,そこに酵素標識抗hCG抗体が滴下されると 「hCG-酵素標識抗hCG抗体」の複合体が形成される。 ,そして,これに基質及び発色剤を滴下すると,滴下した尿中にhCGが含まれているか否かを問わず,横軸の酵素標識が発色する。他方,酵素標識抗hCG抗体を滴下しなかったり,滴下しても特異的結合性や発色性が劣化していると,基質及び発色剤を滴下しても発色しないということが記載されているに等しいといえる。
(ウ) 以上からすると,刊行物2の1におけるディスクの横軸は,尿検体添加後の操作が誤りなく行われたことを確認するためのものであるから,本件発明1における「対照区域」と同じ機能を果たすものであるといえ,またディスクの縦軸は本件発明1の「検出区域」に相当するものであるといえる。
そして,ディスクの横軸には,検体であるhCGが固定化されているが,このhCGは,縦軸(検出区域)においてサンドイッチ型反応に参加し,かつディスクに固定されていない酵素標識抗hCG抗体と特異的に結合するものである。
そうすると,刊行物2の1には,水性液体試料がキャリヤ内を移動していくというタイプではなく,したがって,対照区域が検出区域の下流に位置するという関係にもないが 「前記標識付き試薬と結合し得る固 ,定化された抗体または固定化された検体を含む という本件発明1の 対 」「照区域」の構成を有し,かつ本件発明1の「対照区域」と同一の機能を営む横軸が記載されているといえる。
,, , ウ 以上に基づき検討するに 前記のとおり 刊行物3の記載に示唆を得て刊行物1に記載された発明に,刊行物3に記載された終端区画を組み合わせると,水性液体試料(被検出物の溶液)が多孔質キャリヤ(帯状片)中を移動していくタイプの免疫学的検定法において,検体(被検出物)が標識付試薬(標識結合パートナー)と特異的に結合して移動し,検出区域において固定された無標識試薬とサンドイッチ型反応により3成分複合体が形成・固定された後も,過剰となった標識付試薬(標識結合パートナー)は下流へと移動し,対照区域(終端区画)において塗布された指示薬と反応が生じるという検定法に到達する。
そしてこのような対照区域に塗布する指示薬として,刊行物2の1の横,, 軸に示された構成を適用すると 検出区域の下流に設けられた終端部には標識付試薬(標識結合パートーナー)と結合し得る検体を固定化しておくことになり,これは本件発明1の構成要件Fに係る相違点Aの構成に含まれるものである。
そして,刊行物1と刊行物3と刊行物2の1は,いずれも特異的結合を伴う免疫学的検定法という同一の技術分野に係るものであるから,当業者であればこれらの刊行物を組み合わせて,相違点Aに係る構成を想到するに至ることは容易になし得たというべきである。
(6) 相違点B(陽性・陰性のアッセイ結果)について以上のとおり,本件発明1の構成要件@ないしFの構成は,当業者が刊行物1,刊行物2の1,刊行物3及び刊行物4を組み合わせることにより容易,( ), に想到し得たものであるといえるが相違点B 本件発明の構成要件G はこれらの想到容易な構成から当然に導かれる作用効果であるといえる。
すなわち 前記のとおり刊行物1に係る発明においては 標識付き試薬 標 ,,(識結合パートナー)は,前記分析試験装置(分析デバイス)内における乾燥状態から前記水性液体試料(被分析物の溶液)によって捕捉されて前記検出区域(固相ゾーン)及びその下流に亘って移動するのであるが(前記(1)イ(ケ) ,検出区域の下流に対照区域が設けられる場合には,対照区域にまで )移動することになる。
そして,陽性の場合には,標識に粒状の直接標識が使用され,かつ対照区域が設けられるとすれば,検出区域において,サンドイッチ型反応により直接標識の可視的結合が生じるとともに,対照区域においても固定化された検体と移動してきた標識付き試薬との特異的結合により直接標識の可視的結合が生じることになる。
,, , 他方 陰性の場合には 検出区域においてはサンドイッチ型反応が生じず標識付き試薬へと移動していくから,直接標識の可視的結合は生じないが,対照区域においては,固定化された検体と移動してきた標識付き試薬との特異的結合により直接標識の可視的結合が生じることになる。
したがって,相違点@及びAについて当業者が容易に想到し得たものと認,。 める以上 相違点Bについても当業者が容易に想到し得たものと認められる(7) まとめ以上によれば,本件発明1には特許法29条2項に該当する事由があるから,本件特許1は特許無効審判において無効とされるべきものである。
2 争点(1)イ(本件特許2の無効)について(1) 先に認定した刊行物1記載の発明と本件発明2を比較すると,両者は以下の点で,一致し,また相違するといえる。
ア 一致点A 液体試料が適用され得る乾燥多孔質キャリヤからなり,B 湿潤状態において多孔質キャリヤ内部を自由に移動し得る,検体に対して特異結合性の標識付き試薬と,C キャリヤ材料上の検出区域に永久的に固定化されており,従って湿潤状態でも移動しない,同検体に対して特異結合性の無標識試薬とを含んでおり,D 適用された液体試料が標識付き試薬を吸収した後に検出区域に浸透するように標識付き試薬と検出区域との位置関係が決定されており,E さらに標識付き試薬が検出区域において結合された程度を観察できる手段を含む分析試験装置であって,F 標識が,液体試料が適用される前乾燥多孔質キャリヤ中に乾燥状態で保存されているG ことを特徴とする前記分析試験装置。
イ 相違点@ 本件発明2では,乾燥多孔質キャリヤは,不透湿性固体材料からなる中空ケーシング中に収容され,ケーシングの外部と直接的または間接的に連通して液体試料が適用され得るようにされ(本件発明2の構成要件@及びA ,標識もケーシング内に保存されている(本件発明2の構成 )要件F)が,刊行物1ではケーシングに関する記載がない点。
A 本件発明2では,標識が粒状の直接標識である(本件発明Aの構成要件F)のに対し,刊行物1では,酵素標識,蛍光標識ないし化学発光標識である点。
(2) 相違点@(中空ケーシング)についてア 本件発明2の優先日の前である昭和61年6月30日に公開された刊行物9の3は,クロマトグラフィー用装置の発明に関するものであるが,そこには次の記載があることが認められる。
(ア) 特許請求の範囲a請求項1「クロマトグラフィーの装置であって,(イ) ハウジング,(ロ) 上記ハウジング内部に取りはずしのできないように収容された,吸収性材料から成るストリップ,(ハ) 上記ストリップを,(1) ストリップの前後両面がハウジングの内壁に基本的に触れないように,また,(2) ストリップの毛管作用が実質的に変化することがないように,上記ハウジング内部に支持収納するため,ハウジング内壁に付設された手段,(ニ) 上記ストリップの1部を液体媒質と接触可能とするため,ハウジングの基部の付け根に配設された手段,および(ホ) 上記ストリップを目視的に観察するため,このハウジング内に配設された手段の組合わせを含んでいる装置 」。
b請求項5「吸収性材料からなるストリップが化学試験,測定または免疫測定実施用の試薬を含有している特許請求の範囲第1項記載の装置 」。
c請求項6「免疫測定実施用の試薬が,複数個の特異的結合対の構成要素および酵素から成る特許請求の範囲第5項記載の装置 」。
(イ) 発明の詳細な説明の項a 「第1図に示したクロマトグラフィー装置20は,熱可塑性物質等によって都合よく作成することができるハウジング22を有する。…吸水性の材料から成るストリップ24をこのハウジング内に取りはずしできないように収容する。…吸水性物質から成るストリップは紙のストリップが好ましく,さらに免疫クロマトグラフが好ましい (乙。」9の3の5頁左上欄5行目ないし15行目)b 「また,このクロマトグラフィー装置は,ストリップ24の1部が液体媒質と接触できるよう,ハウジング22の底部付け根に取付けた手段を具備している。第14図において,ハウジング22は,その底部に開口部52を備えている。この開口部は2重の機能を有する。即ち,これはストリップ24を液体媒質と接触させ,また後壁28にある開口部53と共に装置からの排水を行う (乙9の3の6頁右上 。」欄18行目ないし左下欄7行目)イ 以上の記載によれば,刊行物9の3には,多孔質キャリヤ(紙等のストリップ を 不透湿性固体材料 熱可塑性樹脂等 からなるケーシング ハ ), ( ) (ウジング)中に収容すること(したがって,このケーシングはストリップを収容する中空構造を有している ,また多孔質キャリヤは,ケーシング )の底部の開口部を通じてケーシングの外部と直接的に連通し,多孔質キャリヤに液体試料(液体媒質)が適用(接触)され得るようにされることが記載されている。
そして,刊行物9の3のクロマトグラフィー装置は,特異的結合を伴う免疫学的検定で,液体試料が多孔質キャリヤ内を移動していくタイプのものに使用することができるとされている点で,刊行物1記載の発明と同一の技術分野に属するから,刊行物9の3の記載に接した当業者は,刊行物1の帯状片(多孔質キャリヤであって,標識もその中にある )を刊行物。
9の3の構成のハウジング内に収容することにより,相違点@に係る本件発明2の構成を容易に想到することができたものというべきである。
(3) 相違点A(粒状の直接標識)についてア 本件発明2の優先日の前である昭和60年3月27日に公開された刊行物9の5は,粒子含有媒体中のアナライトの決定の発明に関するものであるが,そこには次の記載があることが認められる。
(ア) 特許請求の範囲(請求項1)「液体検定媒体中の特異的結合対の構成員(sbp構成員)の存在を検出する方法において,該特異的結合対はリガンド及び対応受容体(homologous receptor)から成り,特異的結合対の少なくとも1員が結合している粒子と,固体の吸水性部材と,該粒子又はsbp構成員に結合している少なくとも1種の標識を含む信号生成系が関与する方法であって,前記吸水性部材が水性検定媒体と接触せしめられるとき,空気/液体界面に隣接した該吸水性部材上の区域に所定の寸法,範囲及び電荷の範囲内のみの粒子が濃縮する条件下に,水性検定媒体中で該試料及び該粒子の少なくとも1種及び標識されたsbp構成員を一緒にし,但し該試料がsbp構成員を有する粒子に欠ける場合に粒子を加えるものとし,該吸水性部材を該検体媒体と接触せしめ,該検体媒体は該区域を通り過ぎてウイツキングされ(wicked ,)該所定の寸法及び電荷の範囲内の粒子は該区域の小さな部位に濃縮し,そして該信号生成系の結果として信号を検出し,該信号は該区域における標識の量に関係し,そして該区域中の標識の量は該試料中の該sbp構成員の量に関係していることを含む方法 」。
(イ) 発明の詳細な説明の項a 「本発明は,試料中のアナライトの存在又は不存在に関連して吸水性固体支持体上に,一般に約1mm巾より小さい1つの寸法を有する小さな部位における粒子の濃縮に基づいている。前記部位は点,直線状バンド又は曲線状バンド等であることができる。所定の部位における粒子の濃縮は部位における検出可能な信号を与えるのに使用することができる (乙9の5の3頁左上欄9行目〜16行目) 。」b 「検定に含まれる粒子は試料中に存在することができ,試薬として加えることができ又その場で形成することができる。粒子の性質は広範に変わることができ,天然に存在しているか又は合成のものであり,…合成粒子は合成の又は天然に存在する物質,たとえば,金属コロイド又はポリスチレンポリアクリレートから製造されたラテックス粒子… (乙9」の5の3頁右上欄4行目〜下から3行目)c 「濃縮部位における又は濃縮部位から離れたところで検出可能な信号を検出するための手段は粒子の固有の性質であってもなくてもよい 乙。」(9の5の3頁左下欄11行目〜13行目)d 「空気と液体との間の界面から離れたところに液体の毛細管移送を可能とする便利な吸水性吸収性の固体物質を使用することができる。種々の材料には紙,セルロース粒子,シリカゲル,セルロース性ビーズ,ガラス繊維,濾紙などが包含される (乙9の5の3頁右下欄7行目〜1 。」1行目)e 「本発明を更に説明するために,下記の説明的例を述べる。ハプテンに対する検定においては,ハプテンが適当なリンキングアームにより結合されているところの着色したビーズを提供することができる。検定条件及びビーズの寸法並びに吸水性部材の性質は,個々のビーズが溶媒と共に移行するように選ばれそしてバンドは観測されない。次いで,アナライトの問題の濃度で抗体部位の大きい割合が利用可能ハプテンにより充填されるように試料及び抗体を一緒にすることができる。
結合が起こるのに十分な時間の後,次いで検定媒体に粒子を加えそして着色したビーズ上のハプテンに利用可能な抗体結合部位の結合を許容するために第2の時間インキュベートすることができる。試料中のハプテンの不存在下においては,抗体によるビーズ間の実質的量のブリッジングがあるであろう。
次いで,吸水性部材を検定媒体と接触させそして実質的数の粒子が吸水性部材に隣接する空気-液体界面を横切ることができるように十分な量の検定媒体が吸水性部材にウイツキングされることを許容する。ビーズの色に基づいて,ハプテンの不存在下に鋭い,明白なバンドが観測され,そしてハプテンの存在下にビーズは実質的に観測されないであろう (乙9の5の7頁左上欄最終行ないし左下欄7行目) 。」イ 以上からすると,刊行物9の5には,特異的結合を伴う免疫学的検定法において,液体試料中で金属コロイド等の粒子を濃縮・凝集させることにより,その液体試料を吸収性部材に適用して,粒子の凝集による視覚的に検出可能な信号を検出することが記載されており,特異的結合を伴う免疫学的検定法において,金属コロイド等の粒子を免疫学的検定における直接標識として使用することが公知であったことが認められる。
また,本件明細書2においても 「金ゾルや染料ゾルのような直接標識 ,が既知となっており,それらを用いると,検出可能な信号を生成するために別の試薬を加えなくても分析結果を瞬時に得ることができる」と記載されており(本件明細書2の6欄32行目ないし33行目 ,金ゾル等の粒)状の直接標識を免疫学的検定法において使用することが公知となっていたと認められる。
そうすると,刊行物9の5に係る発明と刊行物1に係る発明とは,特異結合を伴う免疫学的検定法に関する発明である点で同一の技術分野に属するものであるから,刊行物9の5の記載に接した当業者が,刊行物1に記載された標識に刊行物9の5に記載された金属コロイドなどの粒子標識を適用して,本件発明1の「粒状の直接標識」の構成を得るに至ることは,容易に想到し得たものというべきである。
この点について原告は,刊行物9の5は,液体検定媒体中での抗原-標識付抗体型の凝集反応型免疫検定に関するものであり,本件発明2の多孔質キャリヤにおける標識付抗体-抗原-固定抗体型のサンドイッチ型免疫検定とは無関係であると主張する。しかし,原告が本件発明2の優先日当時の粒子標識化免疫学的検定の技術水準を示すものとして提出した甲第1,, 3号証では 無機コロイド粒子を標識として使用した抗体の使用についてサンドイッチ型反応を含む不均一免疫学的検定と凝集型反応を含む均一免,, 疫学的検定の両者を検討対象としているのであって このことからすると原告が指摘するような刊行物9の5と刊行物1の間の免疫学的検定の相違は,両者を組み合わせることを阻害する事由とはいえない。
また,原告が主張するその他の阻害事由が認められないことは,先に争点(1)アの相違点Aについて説示したとおりである。
ウ なお,被告は,本件発明1と本件発明2との主たる相違は,本件発明1は本件発明2の構成要件からケーシングの要件が削除されていることにあるものであり,本件発明1に無効原因が認められれば同時に本件発明2においても無効原因が認められる旨主張する。上記主張が,本件発明2に関しても,相違点@(ケーシングの点)以外に関して,本件発明1に関して主張したと同様の容易想到性(刊行物1,2の1・2,3,4記載の発明の組合せ,及び刊行物3,2の1・2,9の5記載の発明の組合せによる),() 容易想到 をも主張するという趣旨であれば 相違点A 粒状の直接標識は,刊行物1に刊行物4に記載された金コロイドゾルなどの分散金属粒子標識を適用することにより,容易に想到し得たと判断すべきことは,前記1(4)(本件発明1に関する相違点1の判断)のとおりである。
(4) まとめ以上によれば,本件発明2には特許法29条2項に該当する事由があるから,本件特許2は特許無効審判において無効とされるべきものである。
3結語よって,原告の本件請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がないから,これを棄却することとし,この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定めた上で,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山田知司
裁判官 高松宏之
裁判官 守山修生
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