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事件 平成 9年 (ワ) 11617号 特許権侵害差止等請求事件
原告 シルバー株式会社右代表者代表取締役 【A】 右訴訟代理人弁護士 岩田喜好
同 杉本啓二
同 村林隆一 右補佐人弁理士 【B】
同 【C】
被告 日本コントロール工業株式会社右代表者代表取締役 【D】 右訴訟代理人弁護士 安原正之
同 佐藤治隆
同 小林郁夫 右補佐人弁理士 【E】
同 【F】
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2000/10/19
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
差止請求―主位的請求 1 被告は、別紙イ号物品説明書、ロ号物品説明書、ハ号物品説明書及びニ号物品説明書各記載の電磁ポンプを製造し、譲渡し、貸し渡し、又は、その譲渡若しくは貸し渡しのための展示をしてはならない。
2 被告は、前項の電磁ポンプを廃棄し、別紙機械目録記載のロータリー機一○台を除却せよ。
差止請求―予備的請求 1 被告は、別紙原告主張方法目録記載の製造方法を使用して電磁ポンプを製造してはならない。
2 被告は、別紙イ号物品説明書、ロ号物品説明書、ハ号物品説明書及びニ号物品説明書各記載の電磁ポンプを譲渡し、貸し渡し、又は、その譲渡若しくは貸し渡しのための展示をしてはならない。
3 被告は、前項の電磁ポンプを廃棄し、別紙機械目録記載のロータリー機一〇台を除却せよ。
三 被告は、原告に対し、金六七九六万五〇〇〇円及びこれに対する平成一一年三月一日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は、原告が、被告に対し、@ 主位的に、特許法104条により被告が製造する別紙イ号物品説明書、ロ号物品説明書、ハ号物品説明書及びニ号物品説明書各記載の電磁ポンプ(以下、それぞれ「イ号製品」、「ロ号製品」、「ハ号製品」、「ニ号製品」といい、イ号ないしニ号製品を「被告製品」という。)は原告特許発明により生産したものと推定されるとして、被告製品の製造、譲渡等の差止めと製造のための機械の除却を、A 予備的に、被告は、原告主張方法目録記載の方法(以下「原告主張方法」という。)により電磁ポンプを製造しているとし、原告主張方法は原告特許発明技術的範囲に属するとして、原告主張方法による電磁ポンプの製造の差止め、被告製品の譲渡等の差止め、及び、同製造のための機械の除却を、B 被告製品の製造が、原告特許権ないし仮保護の権利侵害不法行為に当たるとして、五九七二万六四〇〇円の損害賠償をそれぞれ求めるとともに、イ号ないしハ号製品の製造、販売行為が原告実用新案権侵害不法行為に当たるとして八二三万八六〇〇円の損害賠償ないし補償金を求めている事案である。
一 争いのない事実 1(一) 原告は、次の特許権(以下「本件特許権」といい、その発明を「本件発明」という。)を有している。
特許番号 第二〇八〇一六三号 発明の名称 石油燃焼器の燃料供給用電磁ポンプの製造方法 出 願 日 昭和五八年一〇月二四日(特願平元―一八八五四号) なお本件発明は、実願昭五八―一六四三〇八号を、特願昭六二―二六七六七一号に出願変更し、それを分割出願したものである。
登 録 日 平成八年八月九日 特許請求の範囲 本判決添付の特許公報(以下「本件特許公報」という。)の該当欄記載のとおりである(ただし、本件特許公報1欄一五行の「吐出量と基準流量と、
その偏差に応じて」は、「吐出量と基準流量との偏差に応じて」の誤植である。)。
(二) 本件発明の構成要件は、次のとおり分説される。
A フリーピストン状のプランジャを収めたシリンダの外周に設けられた電磁コイルと、該電磁コイルからの二本のコイル端末を固定する第一、第二の端子、更に上記第一の端子との間で固定抵抗器が接続される第三の端子とを有し、石油燃焼器に組み込まれた状態で該石油燃焼器内の駆動回路から供給される駆動パルスが上記第二、第三の端子間に供給されて燃料を所定の吐出量で吐出する石油燃焼器の燃料供給用電磁ポンプにおいて、
B 上記固定抵抗器のない状態で、上記石油燃焼器内の駆動回路から供給される駆動パルスに対して上記所定の吐出量以上となるように、予め電磁ポンプを製造し、
C 吐出量検査用駆動回路からの駆動パルスを上記第一、第二の端子に供給して上記電磁ポンプの吐出量を測定し、このときの吐出量と基準流量との偏差に応じて、上記電磁ポンプの吐出量を上記石油燃焼器に組み込んだ状態で上記所定の吐出量に対する許容範囲内に収まる抵抗値を有する固定抵抗器を選定し、
D 該選定した固定抵抗器を上記第一、第三の端子間に接続すること E を特徴とする石油燃焼器の燃料供給用電磁ポンプの製造方法
2(一) 原告は、次の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という。)を存続期間の終了まで有していた。
実用新案登録番号 第二五四一二三四号 考案の名称 石油燃焼器の燃料供給用電磁ポンプ 出 願 日 昭和五八年一〇月二四日(実願平三―五九三七六号) なお、本件考案は、前記特願昭六二―二六七六七一号の特許出願を出願変更したものである。
公 開 日 平成四年八月五日(実開平四―八九八七〇号) 登 録 日 平成九年四月二五日 実用新案登録請求の範囲 本判決添付の実用新案登録公報(以下「本件実用新案公報」という。)の該当欄記載のとおりである。
(二) 本件考案の構成要件は、次のとおり分説される。
A′ フリーピストン状のプランジャを収めたシリンダの外周に配設され、コイルが巻成された中空部とその両端に鍔を有するとともに、上端の鍔に一体で延設された端子板及びこの端子板に配列して取り付けられた複数の端子を有するコイルボビンからなる電磁コイルを有し、上記電磁コイルから引き出されている二本のコイル端末に、駆動回路の第一、第二出力端子から駆動パルスが供給される石油燃焼器の機器内に配設される燃料供給用電磁ポンプにおいて、
B′ 上記コイルボビンの両端の鍔の各外面を覆う上下面部及び該上下面部間を上記コイルボビンの前後左右の一方側に形成された立直部を介して連結して環状磁路の外側部分を形成するヨークを有するとともに、
C′ 上記端子板は、上記コイルボビンの上端の鍔の前後左右の一方であって、上記ヨークの立直部とは異なる方向となる周縁から延設され、周方向に横長形状を有してなり、
D′ 上記端子は、上記端子板の長手方向に配列して取り付けられてなり、
@ 上記電磁コイルからの二本のコイル端末の一方が接続されており、
かつ、上記第一の出力端子が接続される第一の端子、
A 吐出量調整用の固定抵抗器の一端が接続されており、かつ上記第二の出力端子に接続される第二の端子、
B 及び上記電磁コイルからの二本のコイル端末の他方が接続されるとともに吐出量調整用の固定抵抗器の他端が接続された、上記第一、第二の端子に比して小寸法の第三の端子 E′ とを備えてなることを特徴とする石油燃焼器の燃料供給用電磁ポンプ。
3 被告は、被告製品(ただし、ニ号製品は平成一一年一月一日以降)を製造、販売している。
4 被告製品の製造方法について、原告は、原告主張方法であると主張し、被告は、別紙被告主張方法目録記載の方法(以下「被告主張方法」という。)であると主張している。
5 イ号ないしハ号製品は、本件考案の構成要件A′、E′を充足している。
二 争点 1 被告製品は特許法104条の規定に基づき、本件発明の製造方法により生産したものと推定されるか。
2 被告製品は、本件発明に係る製造方法により生産したものか 3 イ号ないしハ号製品は、本件考案の構成要件B′の「ヨーク」を備えているか。
4 イ号ないしハ号製品の端子板は、本件考案の構成要件C′の「コイルボビンの上端の鍔の前後左右の一方であって、ヨークの立直部とは異なる方向」から延設されたものか。
5 本件考案の構成要件D′における端子は、平面視において見える位置にあることを要するか、及びハ号製品の第三の端子は、本件考案の構成要件D′のBの「第一、第二の端子に比して小寸法」であるといえるか。
6 損害の発生及び額
争点に関する当事者の主張
一 争点1(被告製品は特許法104条の規定に基づき、本件発明の製造方法により生産したものと推定されるか。) 〔原告の主張〕 1 本件製造方法により製造された「フリーピストン状のプランジャを納めたシリンダの外周に設けられた電磁コイルと、該電磁コイルから二本のコイル端末を固定する第一、第二の端子、及び第一の端子との間に固定抵抗器を接続する第三の端子を有し、この固定抵抗器により燃料を所定の吐出量となるように調整するようにした石油燃焼器の燃料供給用電磁ポンプ」は、本件特許出願前に日本国内において公然知られたものではない。
被告製品は、シリンダ2、プランジャ3、電磁コイル14、第一の端子57、
第三の端子59、第二の端子58、〇オーム、又は三九オーム、八二オーム、一二〇オーム、一六〇オーム、二〇〇オーム、二四〇オーム、二七〇オーム、三〇〇オーム、三三〇オーム、三六〇オーム、三九〇オームのいずれか一個の所望する抵抗値の固定抵抗器61が第二、第三の端子58、59の間に接続されており、各電磁ポンプの吐出量のばらつきに応じ、適した抵抗値の固定抵抗器が接続されているから、被告製品の構造は、本件発明の目的物と同一であることが明らかである。
よって、特許法104条の規定に基づき、被告製品は本件発明に係る製造方法により生産したものと推定される。
2 被告は、104条の対象となる発明は、製造方法の痕跡が残らない物の生産方法に限られる旨主張するが、条文上そのような限定はないから、右主張のように限定的に解すべきではない。
3 被告は、公知資料が存在し、本件発明に係る方法により生産される電磁ポンプは公然と知られた物であると主張するが、右公知資料には、右電磁ポンプの構成の一部が含まれているものがあるとしても、すべての構成を含むものはないから、右電磁ポンプが公然知られた物ということはできない。
なお、実開昭五一―九二七三五号公報(乙一〇)の技術は、電磁ポンプの電流供給回路中に接続される固定抵抗器が、電磁ポンプの吐出量のばらつきを調整するものではなく、初期点火時のみに燃料油の供給を少なくして弱燃焼させるためのものであって、点火後に固定抵抗器のない回路に切り換えて平常燃焼させるものであるから、本件発明の目的物とは同一でない。
また、実開昭五三―三一三〇三号公報(乙一一)の技術は、電磁ポンプの吐出量を調整するのが固定抵抗器ではなく、可変抵抗器であり、製造後に可変抵抗器の抵抗値の変更と吐出量測定の繰り返しを必要とし、抵抗値を調整した後も抵抗値の変動に伴う異常燃焼の危険性を有するものである上、外観上も異なるものであるから、本件発明の目的物とは同一でない。
〔被告の主張〕 1 特許法104条の規定が設けられた趣旨は、物を生産する方法の特許の侵害訴訟において、原告が被告の製造方法を立証することが困難であることから、その物が公然知られていない物についてはその製造が知られていないことが通常であり、その物の製造方法が一つしかない場合にその物を製造する者は特許方法を用いているとの経験則を、法律上の推定までに高め、右立証の困難さを軽減するものである。
右趣旨からすれば、公然知られていない物とは、製造工程の痕跡をとどめていないことを前提としていると解すべきであり、そのような物は製造方法を立証することが困難であり推定規定が必要と理解されるが、機械や装置の製造方法の発明にあっては、製造方法の痕跡が明らかに残るのであり、このような場合、同条は適用がないものと考えるのが相当である。
被告製品にあって、抵抗器取付部58e、59eには、抵抗器61のリード線が挿入されるスリット70aが形成され、抵抗器61が仮止めのために着脱自在となっているし、またダミー抵抗の固定治具65の二本の挿入足65a、65aが挿入される円筒孔58d、59dを第二及び第三の端子58、59に有しており、まさに被告主張方法の痕跡を残しているものであり、同条による推定はない。
2 電磁ポンプの吐出能力を制御するに当たり、電磁コイルに直列に抵抗(固定抵抗なり可変抵抗)を入れて電流を制御することについては、実開昭五一―九二七三五号公報(乙一〇)、実開昭五三―三一三〇三号公報(乙一一)、実開昭五四―一一七九〇二の全文明細書図面(乙一三)及び実開昭五四―四四〇三号の全文明細書図面(乙一四)に、電磁ポンプの構造については実開昭五八―二三七七(甲二九)に、それぞれ示されているように本件特許出願前に公知であるから、当業者において、右電磁ポンプを製造する手がかりが得られる程度に知られた事実があり、
右電磁ポンプは公然と知られた物というべきであって、同条による推定はない。
本件発明の主要部は、固定抵抗器の適切な抵抗値を算定するための測定と選定の作業を行う構成要件Cにあるが、その前提構成が右のとおり公知である以上、構成要件Cの方法を経て得られた物が新規な物ということはできない。
二 争点2(被告製品は、本件発明に係る製造方法により生産したものか。) 〔原告の主張〕 1 被告製品は、原告主張方法により製造されたものである。
それは、被告製品が、シリンダ2、プランジャ3、電磁コイル14、第一の端子57、第三の端子59、第二の端子58、〇オーム、又は三九オーム、八二オーム、
一二〇オーム、一六〇オーム、二〇〇オーム、二四〇オーム、二七〇オーム、三〇〇オーム、三三〇オーム、三六〇オーム、三九〇オームのいずれか一個の所望する抵抗値の固定抵抗器61が第二、第三の端子58、59の間に接続されており、固定抵抗器61の抵抗値表示色の異なったものが存在しているので、各電磁ポンプに適した抵抗値の異なる固定抵抗器が接続されていることからも明らかである。
なお、被告は、被告主張方法により製造されたものであると主張するが、
一回の測定で調整抵抗の抵抗値を選定する原告主張方法と比較して、測定回数と作業工数が多く、そのための所要作業時間が多くなって製造経費が多額となるが、その作業結果として得られる調整抵抗値は一回法によるものとの間にほとんど差異がないから、被告主張方法のように測定を二回行う必要性、実益はなく、経済的に極めて不合理であって、被告が、被告主張方法を実施して電磁ポンプを製造しているとは到底考えられない。
2 原告主張方法は、本件発明の構成要件のすべてを充足しており、その技術的範囲に属している。
3 なお、被告は、本件発明の構成要件Cを、抵抗器がない状態で電磁ポンプの吐出量を測定すると解釈しているが、本件発明の特許請求の範囲には抵抗器のない状態で測定する旨の限定はされていないし、発明の詳細な説明実施例の項に「もしくは、ある特定の抵抗値の抵抗器を介在させた状態でポンプ吐出量を測定し」(本件特許公報7欄三二ないし三三行)との記載があるから、抵抗器を介在させて測定する方法も、介在させないで測定する方法も本件発明の実施方法である。
〔被告の主張〕 1 被告製品は、被告主張方法により製造されたものである。
2 本件発明の構成要件Cは、抵抗器がない状態で電磁ポンプの吐出量を一回測定して抵抗器を選定するものであるのに対し、被告主張方法は、吐出量の測定を二回行い、第一回目の測定では二〇〇オームのダミー抵抗を、第二回目の測定では四〇オーム、一六〇オーム、二七〇オーム、三六〇オームの各抵抗を用いて、電磁ポンプの吐出量を検査するものであるから、右構成要件Cを充足しない。
三 争点3(イ号ないしハ号製品は、本件考案の構成要件B′の「ヨーク」を備えているか。) 〔原告の主張〕 1 イ号ないしハ号製品においては、いずれも磁性材より成る上磁気プレート18、下磁気プレート19及び立面部30a、30bが外側磁路を形成しているところ、
「ヨーク」とは「N極とS極を磁気的及び構造的に連結する役目をする」ものをいうから、イ号ないしハ号製品は、本件考案の構成要件B′の「ヨーク」を備えている。
イ号ないしハ号製品のヨークは、上磁気プレート、下磁気プレート及び立面部の三個の部品から成るが、本件実用新案公報の実施例欄及び図面には、一体構造のヨークが記載されている。
しかし、ヨークとは磁気的な連結を構造的に支持したものであれば足りると解すべきであり、別部材である平面部と立面部とが組み付けられて一体化されたヨークを電磁ポンプに用いることは、本件考案の出願前に公知であった。本考案の実施例のように一体構造として構成した外部磁路と、複数の部材を組み付けて一体化された外部磁路との間に、磁束通路として格別違いがあるものではなく、単なる設計上の微差にすぎない。
2 イ号ないしハ号製品のヨークの立面部は、正面側から見て、前後左右のうちの左右側に形成されているが、構成要件B′の「コイルボビンの上端の鍔の前後左右の一方」とは、文言上、「前後」あるいは「左右」の一方を意味するから、イ号ないしハ号製品は右要件を充足する。
なお、立直部が二個あるイ号ないしハ号製品においては、立直部が一個のものより磁気抵抗が半減し、磁束を二倍流すことが可能となる結果、磁気飽和のレベルをその分高く設定でき、吐出量の増大が可能となるが、電磁ポンプの外側磁路の設計に際しては、石油燃焼器メーカーが要求する所定の吐出量を得られるよう、
駆動時に発生する磁束に対して、磁気飽和することのないように設計するから、立直部の個数のみによって吐出量が決定されるものではなく、立直部の外側磁路の機能からみても、特段の技術的差異はない。
本件実用新案公報の考案の詳細な説明の欄には、実施例としてヨークの立直部が一個のものが記載されているが、立直部が一個であるタイプと二個であるタイプはいずれも本件考案の出願前の公知の技術であり、右実施例に限定されるものではない。
3 被告は、本件考案の当初の出願時から登録に至るまでのヨークに関する補正の経緯を理由に、本件実用新案公報の実施例を越えて構成要件の範囲を解釈することはできない旨主張するが、ヨークに関する右補正は、拒絶理由を回避するためになした意識的限定ではなく、考案の要旨を明確にするために実用新案登録請求の範囲に繰り入れた要件であって、禁反言の法理が適用されるものではない。
〔被告の主張〕 1 原告は、本件実用新案のもととなった特許の出願時(分割出願時)の明細書の実用新案登録請求の範囲には、ヨーク及びそれを特定する記載をしていなかったが、拒絶理由通知を受け、意見書と同時に提出の手続補正書において、「上記コイルボビンの両端の鍔の各外面を覆う上下面部及び該上下面部間を少なくとも上記端子板とは異なる方向に形成された立直部を介して連結して、環状磁路の外側部分を形成するヨーク」と補正した。
その後、原告は、拒絶査定を受け、平成六年六月二七日付で拒絶査定に対する審判を請求し、同年七月二五日付で審判理由補充書を提出し、同年七月二七日付で手続補正書にて本件考案の実用新案登録請求の範囲のとおり補正したものである。
したがって、ヨークに関する構成要件は、願書の明細書の具体的実施例を根拠として限定補正されたものであるから、実施例を越えてこの構成要件拡張解釈することはできないというべきである。
2(一) 構成要件B′における「ヨーク」は、次のとおり解釈すべきである。
(1) 上面部、下面部及び立直部との「連結」とは、本件実用新案公報の実施例欄に「上下面部24a、24cと電磁ポンプの後方(図1中、上方)で一体連接される立直部24b」(8欄三四ないし三七行目)とあり、図面にも一体型が図示されているから、一体コ字型を成すと解される。
(2) コイルボビンの両端の鍔の各外面を上面部と下面部が「覆う」とは、
本件実用新案公報の実施例欄に「コイルボビン23の上下鍔の外面に接して配された上下面部24a、24c」(8欄三三ないし三四行目)とあり、図面にも接触した例が示されているから、直接に接触する構成を意味すると解される。
(3) 立直部がコイルボビンの「前後左右の一方側」に形成されるとは、本件実用新案公報の実施例欄に「上下面部24a、24cと電磁ポンプの後方(図1中、
上方)で一体連設」(8欄三五ないし三六行目)とあり、図面も前後左右の一面に一つの立直部が図示されているから、前後左右の一面に立直部があると解される。
(二) イ号ないしハ号製品のヨークは、上磁気プレート、下磁気プレート及び立面部の三個の部品からなり、コイルボビンの上下鍔の外面に直接接しておらず、立面部は、正面側から見て、前後左右のうちの左右側(二方向)に形成されているから、構成要件B′を充足しない。
四 争点4(イ号ないしハ号製品の端子板は、本件考案の構成要件C′の「コイルボビンの上端の鍔の前後左右の一方であって、ヨークの立直部とは異なる方向」から延設されたものか。) 〔原告の主張〕 イ号ないしハ号製品の端子取付片50は、ボビン15の上端の鍔の周方向の一部から該鍔よりも外方に延びて設けられており、その方向は、外板30の左右一対の立面部30a、30bとは異なる方向である正面側ボビン15側である。
また、端子取付片50は、端子取付部51、52、53がボビン15の鍔の径方向に直交する向きである周方向に横長形状を有して形成されている。
したがって、イ号ないしハ号製品は、構成要件C′を充足する。
〔被告の主張〕 構成要件C′において、端子板が延設される位置が「ヨークの立直部とは異なる方向となる周縁」とされるが、これはヨークの一つの立直部を前提としそれと異なる方向を意味するというべきところ、イ号ないしハ号製品においては、ヨークの二つの立直部を前提としそれと異なる方向にあって、ヨークの一つの立直部と異なる方向ではないから、構成要件C′の要件を充足しない。
五 争点5(本件考案の構成要件D′における端子は、平面視において見える位置にあることを要するか、及びハ号製品の第三の端子は、本件考案の構成要件D′のBの「第一、第二の端子に比して小寸法の第三の端子」であるといえるか。) 〔原告の主張〕 1 端子の位置について 被告は、端子は、平面視において見える位置、すなわち端子板の上面側に設けなければならないとするが、構成要件D′にはそのような限定はない。
「端子板と各端子を平面視においてヨークから露出して配設形成したので、駆動回路側との接続作業も容易確実に行える。」との効果において「端子板と各端子を平面視においてヨークから露出して」とは、電磁ポンプを上方から観察したとき、端子板と各端子がヨークの外側にはみ出していることを意味し、端子板及び各端子が上方から現実に見えるか否かとは無関係である。
2 ハ号製品における第三の端子の大きさについて ハ号製品の第一の端子57、第二の端子58は、その固定部57b、58bと挿入部57a、58aとを加えた長さ(長手方向の長さ)は等しく、かつ、第三の端子59の固定部59bと抵抗器保護片59fの先端までの長さ(全長)は、前記第一及び第二の端子57、58の長手方向の長さと同等であるが、第三の端子59の抵抗器保護片59fが第一の端子57の挿入部57a、及び第二の端子58の挿入部58aよりも下方に曲げられており、第三の端子59の前方への突出寸法は第一の端子57、第二の端子58よりも小さい。
ハ号製品の第三の端子59の右形状からすれば、「駆動回路へ接続される他の二本の端子との識別が容易となって誤配線を防止できるとともに、他の二本の端子の方が長寸法形状のため駆動回路への接続を容易に行うことが出来る」(本件実用新案公報11欄一八ないし二一行)という効果と、実質上同一の効果を奏することは明らかであり、第三の端子59は、本件考案の構成要件D′のBにいう「第一、第二の端子に比して小寸法の第三の端子」との構成と実質的に同一のものといえる。
3 したがって、イ号ないしハ号製品は、構成要件D′を充足する。
〔被告の主張〕 1 端子の位置について (一) 本件実用新案公報には、「端子26、28が平面視においてヨーク24の上面から露出しているので、固定抵抗器の接続作業はより一層容易迅速に行える。」(10欄一三ないし一五行)、「端子への固定抵抗器の取付け作業も容易であり」(11欄一〇ないし一一行)との記載があるから、この効果が発生するためには、本件明細書の実施例に記載されるように、抵抗器を支える第二、第三の端子と第一の端子は、平面視から見える端子板の上面になければならない。
実用新案登録請求の範囲は、考案の効果を達するための構成が記載されているものであるから、その効果を達する構成として理解すべきであり、しかもこの効果についての記載は、平成五年七月二一日付の手続補正書において追加加入され、それにより本件考案は登録されたものである。
したがって、構成要件D′における端子は、平面視において見える範囲に取り付けられたものと解釈すべきである。
(二) これに対し、イ号ないしハ号製品では、抵抗器61は端子取付片50の下方に配されていて、平面視では見えず、大変取り付けにくい位置にあり、本件考案の前記効果を有しないものである。よって、イ号ないしハ号製品は、構成要件D′を充足しない。
2 ハ号製品における第三の端子の大きさについて 第一の端子57、第二の端子58は、その固定部57b、58bと挿入部57a、58aとを加えた長さ(長手方向の長さ)は等しいが、第三の端子59の固定部59bと抵抗器保護片59fとを加えた長さ(長手方向の長さ)は、前記第一及び第二の端子57、58の長手方向の長さよりも長く構成されている。また、第三の端子59の抵抗器保護片59fの幅wfは、前記第一及び第二の挿入部57a、58aの幅waよりも大きい。
したがって、第三の端子59は、長手方向及び幅方向でも第一及び第二の端子57、58より大きい寸法を有しているから、ハ号製品は構成要件・のBを充足しない。
六 争点6(損害の発生及び額) 〔原告の主張〕 1 本件特許権ないし仮保護の権利侵害に基づく損害 (一) 被告は、被告製品を、訴外株式会社日立ホームテックに対し、本件発明の出願公告日である平成七年一一月一日から平成一一年二月末日までの間に、次のとおり合計六五万七〇〇〇個を、一個当たり四六〇円で販売した。
(1) 平成七年一一月一日から同年末日 三万六〇〇〇個 (2) 平成八年一月一日から同年末日 一九万〇〇〇〇個 (3) 平成九年一月一日から同年末日 一七万五〇〇〇個 (4) 平成一〇年一月一日から同年一〇月二四日 一九万六〇〇〇個 (5) 平成一〇年一〇月二五日から同年末日 三万〇〇〇〇個 (6) 平成一一年一月一日から同年二月末日 三万〇〇〇〇個 (二) 被告は、少なくとも右売上金額の二〇パーセントに相当する一個当たり九二円、合計六〇四四万四〇〇〇円の利益を受けており、原告は、右利益額に相当する損害を受けていると推定される。
(三) よって、原告は、被告に対し、右六〇四四万四〇〇〇円の内金五九七二万六四〇〇円及びこれに対する不法行為後である平成一一年三月一日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2 本件実用新案権侵害に基づく損害ないし補償金 (一) 被告は、イ号ないしハ号製品を、訴外株式会社日立ホームテックに対し、被告において当該公開を知った日以降である平成七年一一月一日から本件実用新案権が消滅する平成一〇年一〇月二四日までの間に、前記1の(一)記載のとおり合計五九万七〇〇〇個を、一個当たり四六〇円で販売した。
(二) 本件考案の通常受けるべき実施料は販売額の五パーセントが相当であり、一個当たり二三円が相当である。
(三) よって、原告は、被告に対し、実施料相当の補償金と不法行為による損害金合計一三七三万一〇〇〇円の内金八二三万六八六〇〇円及びこれに対する不法行為後である平成一一年三月一日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
〔被告の主張〕 原告の右主張は、争う。
争点に対する判断
一 争点1について 1 本件発明は、「石油燃焼器の燃料供給用電磁ポンプの製造方法」の発明であるが、原告は、本件において特許法104条の適用を主張するので、まず、本件発明が製造の目的とする電磁ポンプとはどのような物かについて検討する。
(一) 甲二によれば、本件発明の特許出願の願書に添付した明細書には、次の記載のあることが認められる。
(1) 従来の技術の欄 「民生用の石油燃焼器において燃料供給用として採用される電磁ポンプは、…ポンプ構成部品の寸法精度やバネ類の強さの僅かな誤差によっても、吐出性能に影響を受ける割合が大きく、…従って各ポンプ毎の吐出量を、該ポンプの組立て後に全数検査して、許容範囲内へ収まるように調整しなければならない。」(3欄二八ないし三六行) 「従来の吐出量調整は、電磁ポンプ側でなく、駆動回路側で行われている」(同欄四四ないし四六行) (2) 発明が解決しようとする課題の欄 ア 「しかしながら、先に説明した吐出量調整によれば、電磁ポンプと駆動回路との組合せがこの段階で決まってしまうため、電磁ポンプの生産者は、駆動回路の生産者から該回路を入手して組み付けた状態でないと、石油燃焼器の生産者へその電磁ポンプを供給できず、しかもその組み付け後に電磁ポンプが故障したときは、該ポンプだけを交換して駆動回路側での面倒な吐出量調整を再度行うかあるいは双方共に交換せざるを得ない、といったような不都合がみられる。」(4欄七ないし一五行) 「駆動回路3を予め自動制御回路4へ組み込んだ形態で製造するならば、…好都合である。しかしながら現実には、前記のごとく電磁ポンプの吐出量を駆動回路3側で調整しているため、該回路3を自動制御回路4に組み込んで製造することが、事実上不可能である。」(4欄二五ないし三三行) イ 「一方、実開昭五三―三一三〇三号公報(注・乙一一)に記載のものは、構造の上からは可変抵抗器を電磁ポンプと一体に構成したものであるが、吐出量の調整に関しては、この可変抵抗器は電磁ポンプのバラツキと該電磁ポンプを駆動する駆動回路部のバラツキの双方をまとめて解消すべく調整するものであって、あくまでも電磁ポンプと駆動回路部とが一対の関係にあるものを前提としているものである。」(4欄三四ないし四〇行) 「電磁ポンプと駆動回路部とが対の関係にある構成を前提とするものにおいて、ポンプ流量を所定流量に設定するには、@予め電磁ポンプに可変抵抗器が取り付けられているものでは、電磁ポンプを稼働させて吐出流量を測定し、その流量が少なめのときは可変抵抗器の可変接触子を摺動させて抵抗値を小さくし、
流量が多めになったときは抵抗値を大きくすることにより所定流量に近づけ、この調整作業を所定流量を探り当てるまで繰り返す、いわゆるカットアンドトライの方法が一般的であるが、そうであれば調整作業が非能率的なものとなる。A一方、予めポンプに可変抵抗器を取付けていない後付けの場合を考慮しても、ダミーの抵抗を用いてカットアンドトライの方法により最適の抵抗値を求め、可変抵抗器をこの求めた抵抗値に調整設定してからポンプに後付けすることになるが、この場合にも上記同様、非能率的である」(4欄四五行ないし5欄一〇行)と記載され、本件発明が従来のカットアンドトライの方式による場合の非能率性を克服することを課題とするものであることが示されている。
(3) 作用の欄 「かかる固定抵抗器の選定及び選定固定抵抗器の接続固定作業が各電磁ポンプ毎に一回の吐出量測定によって行われる。」(6欄四〇ないし四二行) (4) 実施例の欄 「カットアンドトライ方式によらず、一回の、すなわち同一状態の下での測定により抵抗器を選定して吐出量を調整するため、調整作業は簡単で短時間で行なえ、作業能率は極めて高いものとなる」(7欄三六ないし三九行) (5) 発明の効果の欄 「(本発明によれば)可変抵抗器の可変接触子を摺動しては吐出流量を測定する調整作業を繰り返すことを必要としない。従って、所定の吐出流量の電磁ポンプの製造が精度の高い性能を有しつつ、容易かつ一回の測定で迅速に行える」(本件特許公報9欄六ないし一〇行) (二) 乙一二によれば、本件発明の特許出願は、平成六年五月三一日に拒絶査定を受けたこと、その理由は、前記実開昭五三―三一三〇三号公報(乙一一)には可変抵抗器を設けた電磁ポンプが開示されており、この可変抵抗器を固定抵抗器に置き換えることは当業者が容易にできた程度のものであるとの点にあったことが認められ、これに対して原告は同年七月二九日付手続補正書(甲三)を提出すると同時に不服審判請求をしたが、原告が同日付で提出した審判請求理由補充書には、
次の記載があることが認められる。
「引用例に記載された電磁ポンプの構造は電気回路的には駆動源とコイル間に抵抗器を介在させている点で、本願発明の構成要件Aの構成と共通する。確かに、所要の抵抗値に設定された後においては、接続されている抵抗器が固定抵抗器か可変抵抗器かの違いを除いて、構造的にはほとんど差異はないといえなくもない。」 「しかしながら、本願発明は、電磁ポンプの構造に関する発明ではなく、製造方法に関する発明であって、吐出量を如何にして所期の値になるように製造段階(製造〜出荷前(石油燃焼機への組込前))で行うかという製造工程に係わる発明である。すなわち、本願発明は、前述したように、構成要件C、D(注・本判決における構成要件C)に、その製造方法としての意義を有するものである。」 「本願発明の構成要件C(注・本判決における構成要件Cのうち「ポンプの吐出量を測定し」までの部分)によれば、吐出量の測定は一回だけで済むものであることを示している。そして、このように、吐出量測定を一回だけで済ませ得るのは、構成要件D(注・本判決における構成要件Cのうち「このときの」以下の部分)を必須の要素としていることに他ならない。」 (三) 右認定からすれば、本件発明の製造方法としての特徴は、石油燃焼器に組み込まれる燃料供給用電磁ポンプの製造工程において、構成要件Cの方法を採用することにより、固定抵抗器の選定作業が一回の吐出量測定により行われることを可能とし、カットアンドトライの方式による非能率性を克服するものである点にあると認められ、本件発明の製造方法によって製造される物の構造は、構成要件A記載の電磁ポンプという以上に出るものではないというべきである。
2 そこで次に、本件発明により生産される電磁ポンプが同条にいう「公然知られた物でない」か否かについて検討する。
(一) 特許法104条は、物を生産する方法の発明は、たとえこれを第三者が実施したとしても、その第三者の生産方法を立証することが極めて困難であるため、その生産方法についての立証責任を転換せしめることにより右困難を救済する趣旨に出るものであるが、このような推定を合理的ならしめる前提には、新規物の生産方法の発明がなされた場合、その特許出願以前には当該新規物の製造方法が知られていなかったことから、他の者によるその物と同一物の生産はその特許方法によってなされている蓋然性が高いとの認識が存しているものと解される。したがって、同条にいう「公然知られた物でない」とは、右のような蓋然性の有無という観点からして、その物が現実に存在していないというだけでは足りず、少なくとも当該技術分野における通常の知識を有する者においてその物を製造する手がかりが得られる程度に知られた事実も存しないことをいうと解すべきである。
(二) 本件発明の出願前の公知資料としては、次のものが存する。
(1) 実開昭五一―九二七三五号公報(甲六、乙一〇)、実開昭五四―四四〇三号の全文明細書図面(乙一四)には、燃料油供給用の電磁ポンプにおいて、初期点火時には燃料油を少量供給して弱燃焼させ、燃焼室内が温められた時点で多量の燃料油を供給して強燃焼させるため、電流供給回路中に切り換え可能に固定抵抗器を接続し、弱燃焼時においては、当該電流供給回路に固定抵抗器が直列に接続されて、燃料の供給を少なくする技術が記載されている。
なお、右技術は、電磁ポンプへの電流供給回路の構成に関する技術であり、固定抵抗器を電磁ポンプと一体となるように接続した技術を含むものとは認められない。
(2) 実開昭五三―三一三〇三号公報(甲五、乙一一)には、電磁ポンプの流量のばらつきを調整するため、電磁コイルに直列に接続し可変抵抗器を電磁ポンプのケーシングに取り付け、その後に、可変抵抗器の抵抗値を調整することにより、上記電磁コイルに流れる電流を調整し、所定流量を得るようにする技術が記載されている。
(3) 実開昭五八―二三七七号明細書(甲二九)には、プランジャケース内に、両端をバネで支えられて軸方向に摺動往復自在に嵌装され逆止弁機構を内蔵した電磁プランジャと、前記バネ及び前記逆止弁と同一方向性をもって機能する他の逆止弁機構とが配設収納されていて、電磁コイルの軸心上の縦貫孔に、その両端部にそれぞれ嵌合する環状磁路を介して前記プランジャケースの両端にはさらに吐出接手と吸入接手とをそれぞれ嵌装して一体に組合わせた上、これをコの字型のヨークの両端平板部にそれぞれ設けた切欠きに、その開口側から挿入してヨークによって挾持させたことを特徴とする電磁プランジャポンプの技術が記載されている。
(三) そうすると、本件発明の目的物を構成するフリーピストン状のプランジャを納めたシリンダーの外周に電磁コイルを設けた電磁ポンプは公知のものであり、それに接続される固定抵抗器は、本件特許公報には特段の記載がないことから一般的なものと考えられ、また右固定抵抗器の接続方法は本件特許公報の(実施例)の欄に「半田付け接続されて固定支持されている」(7欄四二ないし四三行)とあるように一般的な方法によるものである。
そして、右電磁ポンプの電磁コイルに固定抵抗器を直列に接続する回路構成も公知であり、また、右の回路構成を有する可変抵抗器を電磁ポンプに一体に設置する構成も公知のものであるから、前記認定に係る出願経過も併せ考えれば、
固定抵抗器を電磁ポンプに一体に設置する公知技術がなかったとしても、本件発明の目的物は、少なくとも当該技術分野における通常の知識を有する者においてその者を製造する手がかりが得られる程度に知られた事実が存し、同条にいう公然知られた物に該当するものというべきである。
なお、原告は、実開昭五一―九二七三五号公報(甲六、乙一〇)の技術について、接続される固定抵抗器は、電磁ポンプの吐出量のばらつきを調整するものではなく、初期点火時のみに燃料油の供給を少なくして弱燃焼させるためのものであり、実開昭五三―三一三〇三号公報(乙一一)の技術について、電磁ポンプの吐出量を調整するのは固定抵抗器ではなく、可変抵抗器であり、製造後に可変抵抗器の抵抗値の変更と吐出量測定の作業の繰り返しを必要とする上、抵抗値を調整した後も抵抗値の変動に伴う異常燃焼の危険性を有するものであると主張する。しかし、特許法104条生産方法の推定のための規定であるから、同条の公然知られた物か否かの判断に当たっては、当該方法発明により生産される物が有する物理的ないし化学的構造に着目し、当業者が右構造を得る手がかりが得られる程度に知られた事実が存するか否かを判断すべきであり、どのような機能、効果を目的として当該構成部品が設置されているか否かについては右判断要素に含めるべきではないと解されるから、原告の右主張は理由がない。
二 争点2について 1(一) 被告製品が原告主張方法により製造されていることを認めるに足りる証拠はない。
かえって、証拠(乙一五ないし三三、検証の結果)及び被告製品がダミー抵抗を接続できるような端子固定用の孔54を備えている事実からすると、被告製品は被告主張方法により製造されていることが認められる。
(二)(1) なお、原告は、被告主張方法は、その作業結果として得られる調整抵抗値が、原告主張方法のように吐出量を一回測定する方法による場合とほとんど差異がないから、被告主張方法のように測定を二回行う必要性、実益はなく、経済的に極めて不合理である旨主張する。
(2) この点について、乙三一によれば、被告は次のような実験結果を得たことが認められる。
ア 被告製品一二〇個について、電磁コイルに、四〇オーム、一二〇オーム、二〇〇オーム、二七〇オーム、三六〇オームの各ダミー抵抗を接続して流量を測定し、右測定結果のうち試験中の流量不足と思われる二個を除いた一一八個の測定データから、抵抗値に対する吐出流量の平均変化率(-0.0115g/4min・オーム)を求めた。
イ 右平均変化率と二〇〇オームのダミー抵抗を接続した場合の吐出量とをもとに、原告主張方法により求められる抵抗値と、被告主張方法により求められる抵抗値とを比較したところ、一一八台中の六二台について異なる固定抵抗が選定された。
ウ また、選定された固定抵抗器を接続した場合の実測吐出量及び基準吐出量一六・八三(g/4min)からの偏差率は、原告主張方法では、最大一七・一五(g/4min)偏差率(+)一・九%から最小一五・八三(g/4min)偏差率(-)五・九四%まで、被告主張方法では、最大一七・〇七(g/4min)偏差率(+)一・四三%から最小一六・三五(g/4min)偏差率(-)二・八五%までの値であった。
右実験結果によれば、原告主張方法と被告主張方法とで選定される固定抵抗器はその過半数が異なる抵抗値であり、選定された固定抵抗器を接続した場合の電磁ポンプの吐出量は、被告主張方法による場合の方が基準吐出量との偏差が少ないことが示されている。
(3) また、甲三〇によれば、乙三一の実験結果の値をもとに、一二〇個の電磁ポンプにおける抵抗値と吐出量の関係をグラフ化すると、ほとんどの電磁ポンプの吐出量は抵抗値に応じて直線的に変化するものの、その変化率は必ずしも一定ではないこと、電磁ポンプによっては、吐出量と抵抗値とが直線的に変化するものではなく、直線からかなりはずれた変化をするものがあることが認められる。
(4) 原告主張方法は、各電磁ポンプにおいて、抵抗値に対する吐出流量の平均変化率が一定であることを前提とするものであって、右前提のもとでは一回の測定により基準吐出量に調整するための抵抗値が求められることになるから、測定を二回行う必要はないが、前記のように各電磁ポンプの抵抗値に対する吐出流量の変化率が異なる場合には、被告主張方法のように吐出量の測定を二回行うことにより、各電磁ポンプ毎の吐出量の変化率の差異に応じたより適切な固定抵抗器が選別されることになるというべきであって、そのことは、前記(2)の実験結果に示されるとおりである。
(5) そうすると、被告主張方法は、吐出量を二回測定することによって、
より適切な抵抗値を有する固定抵抗器を選定できるという技術的な意味があるというべきであるから、原告の主張は理由がない。
2 被告主張方法が本件発明の技術的範囲に属するか否かについて、原告は具体的主張をしていないが、念のため検討すると、前記一1で述べたところからすれば、本件発明の構成要件Cは、検査用のための駆動パルスを電磁コイルに供給して右電磁ポンプの吐出量を測定し、吐出量と基準流量との偏差に応じて、固定抵抗器を選定する際に、固定抵抗器の選定のための吐出量の測定を一回のみ行うものであって、複数回測定することを含むものではないと解されるところ、被告が実施する被告主張方法は、ダミー抵抗を接続して吐出量を二回測定するもので、しかも、前記の1、(二)記載のとおり、右測定を二回行うことで、より適切な抵抗値を有する固定抵抗器を選定できるという効果を有するものであるから、構成要件Cを充足しないというべきである。
3 よって、その余の点について判断するまでもなく、原告の本件特許権に基づく請求は理由がない。
三 争点3について 1 本件考案の構成要件B′において、環状磁路の外側部分を形成するヨークは、「上下面部及び該上下面部間を上記コイルボビンの前後左右の一方側に形成された立直部を介して連結」されたものであるとされるが、右「前後左右の一方側」とは、文言上、前後左右の四方向のうちの一方向の側と解するのが自然であり、このことは、ほぼ同じ文言が使用されている構成要件C′における「コイルボビンの上端の鍔の前後左右の一方」が端子板の延設方向に関するものであって、前後左右の四方向のうちの一方向の側と解されること、本件実用新案公報の実施例の記載を見ても、コイルボビンの後方のみの側に立直部が形成されているもののみが開示されていることからも裏付けられるところである。そして、本件実用新案公報中、イ号ないしハ号製品のように右ヨークが正面側から見て前後左右のうちの左右側(二方向)に形成されているものが含まれるとする原告の主張を裏付ける記載はない。
2 なお、原告は、本件実用新案のもととなった特許の出願時(分割出願時)の明細書の請求の範囲にはヨーク及びそれを特定する記載はなく、拒絶理由通知及び拒絶査定を受け、二回の補正を行って本件考案の請求の範囲のとおりになったという経緯があるが、ヨークに関する右補正は、拒絶理由を回避するためになした意識的限定ではなく、考案の要旨を明確にするために請求の範囲に繰り入れた要件であるから、禁反言の法理は適用されない旨主張する。
しかし、右のような出願経緯があったとしても、そのことが本件実用新案登録の請求の範囲拡張して解釈すべき理由にはならないものというべきであり、
原告の右主張は理由がない。
3 イ号ないしハ号製品は、ヨークの立面部が正面側から見て、前後左右のうちの左右側(二方向)に形成されているものであるから、本件考案の構成要件C′を充足しない。
4 よって、その余の点について判断するまでもなく、イ号ないしハ号製品は本件考案の技術的範囲に属さないから、原告の本件実用新案権に基づく主張は理由がない。
四 以上によれば、原告の請求はいずれも理由がない。
(口頭弁論終結日 平成一二年七月一〇日)
追加
別紙機械目録一ロータリー機九台ただし、別紙写真一及び二のもの二新ロータリー機一台ただし、別紙写真三のもの写真1写真2写真3別紙原告主張方法目録原告主張方法目録図表別紙イ号物品説明書一物品名電磁ポンプ二図面の説明図一は電磁ポンプの正面図、図二は同上の平面図、図三は図二のA―A線断面図、図四は図二のB―B線断面図、図五は同上の拡大斜視図、図六は端子の取付前の状態を示す斜視図、図七は抵抗器取付部58e(59e)の拡大図。
三構成図1ないし図7において、電磁ポンプ1は、シリンダ2内を往復動可能にプランジャ3が挿入されており、このプランジャ3を支持し、該プランジャ3の往復動を補助するために該プランジャ3の上方に上部ばね4が、下方に下部ばね5が設けられ、該プランジャ3はシリンダ2内に納められている。
シリンダ2は、上方及び下方にて外嵌するオーリング10、27にて下記する吐出ニップル34及び吸入パイプ22に油密に嵌合されている。
プランジャ3は、その中心部に貫通孔11が形成されており、この貫通孔11に吸入弁12及びばね13が配されている。
電磁コイル14は、樹脂製のボビン15に巻装され、前記シリンダ2の周囲に外嵌されている。この電磁コイル14を支えるボビン15とシリンダ2との間には、磁性材より成る上方で上磁極筒16が、下方で下磁極筒17が介在されている。また、前記ボビン15の上端側に磁性材より成る上磁気プレート18が、下端側に磁性材より成る下磁気プレート19がそれぞれ添着され、それぞれのシリンダ側端が前記した上下の磁極筒16、17に接し、反シリンダ側端が下記する外板30に接している。
吸入パイプ22は、樹脂などで製造されており、その中心に通孔23が形成され、
この上方に外方へ張り出すつば24を有しており、この吸入パイプ22の上方には、前記したシリンダ2の下端が挿入され、オーリング27にて油密が保たれている。この吸入パイプ22は、下板26が下方から挿入されて、つば24と係合し、下記する外板30にねじ28にてねじ止めされることで該吸入パイプ22は組み付けられる。
外板30は、前記電磁コイル14の外側に配され、磁性材より成り、正面から見て二つの立面部30a、30bと、この立面部30a、30bの上部間に横架される平面部30cとより成るもので、下面側が開口され、前記二つの立面部30a、30bの下部は外方へ直角に折曲され、取付部30d、30eとなり、該取付部30d、30eは、前記したように、ねじにて下板26とねじ止めされる。また、外板30の平面部30cの中央に、下記する吐出ニップル34が係合する六角孔33が形成されている。
吐出ニップル34は、外周に円状のつば部35と、円周方向に形成の六角部36を有し、内部に軸支方向に通孔37が形成されると共に、該通孔37内に吐出弁38とばね39とを順次収納し、吐出シート40が設けられた吐出シート押え41を押し込んで取付けている。この吐出ニップル34は、前記した外板30の六角孔33に係合され、もって前記吸入弁12より下流側の通路と通孔37が連通状態となる。
端子取付片50は、特に図3、図5、図6に示すように、ボビン15の上端から前記上磁気プレート18及び前記外板30の外に延長して設けられ、それぞれの上磁気プレート18及び外板30の外側端に接する面50aと下面50bがボビン15の上端面より上方に有して矩形をなし、下記する第1、第2、第3の端子57、58、59を取付ける端子取付部51、52、53が形成されている。この端子取付部51、52、53は、その中心に端子固定用の孔54、54、54と、端子がガタつかないように凹み55、55、55が形成されている。さらに、端子取付片50の全ての端子取付部51、52、53には、長溝56、56、56が形成されている。
第lの端子57は、図示しないコネクタへ挿入する挿入部57aと、前記端子取付部51に取付の固定部57bと、前記電磁コイル14のリード線の巻付けのためのリード線結線部57cとから構成されると共に、前記固定部57bの中心に固定のための鳩目用の円筒孔57dが形成されている。また、第2の端子58は、図示しないコネクタヘ挿入する挿入部58aと、前記端子取付部52に取付けの固定部58bと、この固定部58bの中心に固定のために形成の鳩目用の円筒孔58dとから構成されると共に、抵抗器61を取付けるための抵抗器取付部58eが設けられている。
第3の端子59は、前記端子取付部53に取付けの固定部59bと、この固定部59bの中心に固定のために形成の鳩目用の円筒孔59dと、電磁コイル14のリード線の巻付けのためのリード線結線部59cと、抵抗器61を取付けのための抵抗器取付部59eとから構成されるものである。
前記抵抗器取付部58e、59eには、抵抗器61のリード線が挿入されるスリット70aが形成されている。
なお、第1の端子57、第2の端子58は、その固定部57b、58bと挿入部57a、58aとを加えた長さ(長手方向の長さ)は等しいが、第3の端子59の固定部59bの長さ(長手方向の長さ)は、前記第1及び第2の端子57、58の長手方向の長さより短い。
上述の構成において、第1、第2、第3の端子の端子取付片50へ図1ないし図5に示す状態への取付は、第1の端子57ではその円筒孔57dを端子取付部51の孔54に挿入し、しかる後にポンチにより該円筒孔57dをかしめている。
第2の端子58では、その円筒孔58dを端子取付部52の孔54に挿入し、しかる後にポンチにより該円筒孔58dをかしめて取付けている。その際に折り曲げられた抵抗器取付部58eは、前記した長溝56内に挿入され、その先端が端子取付片50の下面側へ突出することになる。
第3の端子59では、その円筒孔59dを端子取付部53の孔54に挿入し、しかる後にポンチにより該円筒孔59dをかしめて取付けている。その際に折り曲げられた抵抗器取付部59eは、端子取付部53の右側部に配され、その先端が端子取付片50の下面側へ突出することになる。
第1、第2、第3の端子57、58、59の端子取付片50ヘの取付けが完了したら、
第1の端子57と第3の端子59のそれぞれのリード線結線部57c、59cに電磁コイル14のリード線を結線する。それから、抵抗器61の一方の足が前記抵抗器取付部58eのスリット70aに、他方の足が前記抵抗器取付部59eのスリット70aに取付けられ、該抵抗器61は前記端子取付片50の下方に配される。
抵抗器61は、抵抗値が〇オーム、または三九オーム、八二オーム、一二〇オーム、一六〇オーム、二〇〇オーム、二四〇オーム、二七〇オーム、三〇〇オーム、
三三〇オーム、三六〇オーム、三九〇オームのいずれかである。
図1図2図3図4図5図6図7別紙ロ号物品説明書一物品名電磁ポンプ二図面の説明図一は電磁ポンプの正面図、図二は同上の平面図、図三は図二のA―A線断面図、図四は図二のB―B線断面図、図五は同上の拡大斜視図、図六は端子の取付前の状態を示す斜視図、図七は抵抗器取付部58e(59e)の拡大図。
三構成図1ないし図7において、電磁ポンプ1は、シリンダ2内を往復動可能にプランジャ3が挿入されており、このプランジャ3を支持し、該プランジャ3の往復動を補助するために該プランジャ3の上方に上部ばね4が、下方に下部ばね5が設けられ、該プランジャ3はシリンダ2内に納められている。
シリンダ2は、上方及び下方にて外嵌するオーリング10、27にて下記する吐出ニップル34及び吸入パイプ22に油密に嵌合されている。
プランジャ3は、その中心部に貫通孔11が形成されており、この貫通孔11に吸入弁12及びばね13が配されている。
電磁コイル14は、樹脂製のボビン15に巻装され、前記シリンダ2の周囲に外嵌されている。この電磁コイル14を支えるボビン15とシリンダ2との間には、磁性材より成る上方で上磁極筒16が、下方で下磁極筒17が介在されている。また、前記ボビン15の上端側に磁性材より成る上磁気プレート18が、下端側に磁性材より成る下磁気プレート19がそれぞれ添着され、それぞれのシリンダ側端が前記した上下の磁極筒16、17に接し、反シリンダ側端が下記する外板30に接している。
吸入パイプ22は、樹脂などで製造されており、その中心に通孔23が形成され、
この上方に外方へ張り出すつば24を有しており、この吸入パイプ22の上方には、前記したシリンダ2の下端が挿入され、オーリング27にて油密が保たれている。この吸入パイプ22は、下板26が下方から挿入されて、つば24と係合し、下記する外板30にねじ28にてねじ止めされることで該吸入パイプ22は組み付けられる。
外板30は、前記電磁コイル14の外側に配され、磁性材より成り、正面から見て二つの立面部30a、30bと、この立面部30a、30bの上部間に横架される平面部30cとより成るもので、下面側が開口され、前記二つの立面部30a、30bの下部は外方へ直角に折曲され、取付部30d、30eとなり、該取付部30d、30eは、前記したように、ねじにて下板26とねじ止めされる。また、外板30の平面部30cの中央に、下記する吐出ニップル34が係合する六角孔33が形成されている。
吐出ニップル34は、外周に円状のつば部35と、円周方向に形成の六角部36を有し、内部に軸支方向に通孔37が形成されると共に、該通孔37内に吐出弁38とばね39とを順次収納し、吐出シート40が設けられた吐出シート押え41を押し込んで取付けている。この吐出ニップル34は、前記した外板30の六角孔33に係合され、もって前記吸入弁12より下流側の通路と通孔37が連通状態となる。
端子取付片50は、特に図3、図5、図6に示すように、ボビン15の上端から前記上磁気プレート18及び前記外板30の外に延長して設けられ、それぞれの上磁気プレート18及び外板30の外側端に接する面50aと下面50bがボビン15の上端面より上方に有して矩形をなし、下記する第1、第2、第3の端子57、58、59を取付ける端子取付部51、52、53が形成されている。この端子取付部51、52、53は、その中心に端子固定用の孔54、54、54と、端子がガタつかないように凹み55、55、55が形成されている。さらに、端子取付片50の全ての端子取付部51、52、53には、長溝56、56、56が形成されている。
第lの端子57は、図示しないコネクタへ挿入する挿入部57aと、前記端子取付部51に取付の固定部57bと、前記電磁コイル14のリード線の巻付けのためのリード線結線部57cとから構成されると共に、前記固定部57bの中心に固定のための鳩目用の円筒孔57dが形成されている。また、第2の端子58は、図示しないコネクタヘ挿入する挿入部58aと、前記端子取付部52に取付けの固定部58bと、この固定部58bの中心に固定のために形成の鳩目用の円筒孔58dとから構成されると共に、抵抗器61を取付けるための抵抗器取付部58eが設けられている。
第3の端子59は、前記端子取付部53に取付けの固定部59bと、この固定部59bの中心に固定のために形成の鳩目用の円筒孔59dと、電磁コイル14のリード線の巻付けのためのリード線結線部59cと、抵抗器61を取付けのための抵抗器取付部59eとから構成されるものである。
前記抵抗器取付部58e、59eには、抵抗器61のリード線の直径より小さなストレート溝71aと、その奥側に丸溝71bを有するスリット70bが形成されている。
なお、第1の端子57、第2の端子58は、その固定部57b、58bと挿入部57a、58aとを加えた長さ(長手方向の長さ)は等しいが、第3の端子59の固定部59bの長さ(長手方向の長さ)は、前記第1及び第2の端子57、58の長手方向の長さより短い。
上述の構成において、第1、第2、第3の端子の端子取付片50へ図1ないし図5に示す状態への取付は、第1の端子57ではその円筒孔57dを端子取付部51の孔54に挿入し、しかる後にポンチにより該円筒孔57dをかしめている。
第2の端子58では、その円筒孔58dを端子取付部52の孔54に挿入し、しかる後にポンチにより該円筒孔58dをかしめて取付けている。その際に折り曲げられた抵抗器取付部58eは、前記した長溝56内に挿入され、その先端が端子取付片50の下面側へ突出することになる。
第3の端子59では、その円筒孔59dを端子取付部53の孔54に挿入し、しかる後にポンチにより該円筒孔59dをかしめて取付けている。その際に折り曲げられた抵抗器取付部59eは、端子取付部53の右側部に配され、その先端が端子取付片50の下面側へ突出することになる。
第1、第2、第3の端子57、58、59の端子取付片50ヘの取付けが完了したら、
第1の端子57と第3の端子59のそれぞれのリード線結線部57c、59cに電磁コイル14のリード線を結線する。それから、抵抗器61の一方の足が前記抵抗器取付部58eのスリット70aに、他方の足が前記抵抗器取付部59eのスリット70aに取付けられ、該抵抗器61は前記端子取付片50の下方に配される。
抵抗器61は、抵抗値が〇オーム、または三九オーム、八二オーム、一二〇オーム、一六〇オーム、二〇〇オーム、二四〇オーム、二七〇オーム、三〇〇オーム、
三三〇オーム、三六〇オーム、三九〇オームのいずれかである。
図1図2図3図4図5図6図7別紙ハ号物品説明書一物品名電磁ポンプ二図面の説明図一は電磁ポンプの正面図、図二は同上の平面図、図三は図二のA―A線断面図、図四は図二のB―B線断面図、図五は同上の拡大斜視図、図六は端子の取付前の状態を示す斜視図、図七は抵抗器取付部58e(59e)の拡大図。
三構成図1ないし図7において、電磁ポンプ1は、シリンダ2内を往復動可能にプランジャ3が挿入されており、このプランジャ3を支持し、該プランジャ3の往復動を補助するために該プランジャ3の上方に上部ばね4が、下方に下部ばね5が設けられ、該プランジャ3はシリンダ2内に納められている。
シリンダ2は、上方及び下方にて外嵌するオーリング10、27にて下記する吐出ニップル34及び吸入パイプ22に油密に嵌合されている。
プランジャ3は、その中心部に貫通孔11が形成されており、この貫通孔11に吸入弁12及びばね13が配されている。
電磁コイル14は、樹脂製のボビン15に巻装され、前記シリンダ2の周囲に外嵌されている。この電磁コイル14を支えるボビン15とシリンダ2との間には、磁性材より成る上方で上磁極筒16が、下方で下磁極筒17が介在されている。また、前記ボビン15の上端側に磁性材より成る上磁気プレート18が、下端側に磁性材より成る下磁気プレート19がそれぞれ添着され、それぞれのシリンダ側端が前記した上下の磁極筒16、17に接し、反シリンダ側端が下記する外板30に接している。
吸入パイプ22は、樹脂などで製造されており、その中心に通孔23が形成され、
この上方に外方へ張り出すつば24を有しており、この吸入パイプ22の上方には、前記したシリンダ2の下端が挿入され、オーリング27にて油密が保たれている。この吸入パイプ22は、下板26が下方から挿入されて、つば24と係合し、下記する外板30にねじ28にてねじ止めされることで該吸入パイプ22は組み付けられる。
外板30は、前記電磁コイル14の外側に配され、磁性材より成り、正面から見て二つの立面部30a、30bと、この立面部30a、30bの上部間に横架される平面部30cとより成るもので、下面側が開口され、前記二つの立面部30a、30bの下部は外方へ直角に折曲され、取付部30d、30eとなり、該取付部30d、30eは、前記したように、ねじにて下板26とねじ止めされる。また、外板30の平面部30cの中央に、下記する吐出ニップル34が係合する六角孔33が形成されている。
吐出ニップル34は、外周に円状のつば部35と、円周方向に形成の六角部36を有し、内部に軸支方向に通孔37が形成されると共に、該通孔37内に吐出弁38とばね39とを順次収納し、吐出シート40が設けられた吐出シート押え41を押し込んで取付けている。この吐出ニップル34は、前記した外板30の六角孔33に係合され、もって前記吸入弁12より下流側の通路と通孔37が連通状態となる。
端子取付片50は、特に図3、図5、図6に示すように、ボビン15の上端から前記上磁気プレート18及び前記外板30の外に延長して設けられ、それぞれの上磁気プレート18及び外板30の外側端に接する面50aと下面50bがボビン15の上端面より上方に有して矩形をなし、下記する第1、第2、第3の端子57、58、59を取付ける端子取付部51、52、53が形成されている。この端子取付部51、52、53は、その中心に端子固定用の孔54、54、54と、端子がガタつかないように凹み55、55、55が形成されている。さらに、端子取付片50の全ての端子取付部51、52、53には、長溝56、56、56が形成されている。
第lの端子57は、図示しないコネクタへ挿入する挿入部57aと、前記端子取付部51に取付の固定部57bと、前記電磁コイル14のリード線の巻付けのためのリード線結線部57cとから構成されると共に、前記固定部57bの中心に固定のための鳩目用の円筒孔57dが形成されている。また、第2の端子58は、図示しないコネクタヘ挿入する挿入部58aと、前記端子取付部52に取付けの固定部58bと、この固定部58bの中心に固定のために形成の鳩目用の円筒孔58dとから構成されると共に、抵抗器61を取付けるための抵抗器取付部58eが設けられている。
第3の端子59は、前記端子取付部53に取付けの固定部59bと、この固定部59bの中心に固定のために形成の鳩目用の円筒孔59dと、電磁コイル14のリード線の巻付けのためのリード線結線部59cと、抵抗器61を取付けのための抵抗器取付部59eとから構成されるものである。
前記抵抗器取付部58e、59eには、抵抗器61のリード線の直径より小さなストレート溝71aと、その奥側に丸溝71bを有するスリット70bが形成されている。
上述の構成において、第1、第2、第3の端子の端子取付片50へ図1ないし図5に示す状態への取付は、第1の端子57ではその円筒孔57dを端子取付部51の孔54に挿入し、しかる後にポンチにより該円筒孔57dをかしめている。
第2の端子58では、その円筒孔58dを端子取付部52の孔54に挿入し、しかる後にポンチにより該円筒孔58dをかしめて取付けている。その際に折り曲げられた抵抗器取付部58eは、前記した長溝56内に挿入され、その先端が端子取付片50の下面側へ突出することになる。
第3の端子59では、その円筒孔59dを端子取付部53の孔54に挿入し、しかる後にポンチにより該円筒孔59dをかしめて取付けている。その際に折り曲げられた抵抗器取付部59eは、端子取付部53の右側部に配され、その先端が端子取付片50の下面側へ突出することになる。
なお、第1の端子57、第2の端子58は、その固定部57b、58bと挿入部57a、58aとを加えた長さ(長手方向の長さ)は等しいが、第3の端子59の固定部59bと抵抗器保護片59fとを加えた長さ(長手方向の長さ)は、前記第1及び第2の端子57、58の長手方向の長さよりも長く構成されている。また、第3の端子59の抵抗器保護片59fの幅wfは、前記第1及び第2の挿入部57a、58aの幅waよりも大きい。
第1、第2、第3の端子57、58、59の端子取付片50ヘの取付けが完了したら、
第1の端子57と第3の端子59のそれぞれのリード線結線部57c、59cに電磁コイル14のリード線を結線する。それから、抵抗器61の一方の足が前記抵抗器取付部58eのスリット70aに、他方の足が前記抵抗器取付部59eのスリット70aに取付けられ、該抵抗器61は前記端子取付片50の下方に配される。
抵抗器61は、抵抗値が〇オーム、または三九オーム、八二オーム、一二〇オーム、一六〇オーム、二〇〇オーム、二四〇オーム、二七〇オーム、三〇〇オーム、
三三〇オーム、三六〇オーム、三九〇オームのいずれかである。
図1図2図3図4図5図6図7別紙ニ号物品説明書一物品名電磁ポンプ二図面の説明図1は電磁ポンプの縦断面図、図2は同上の平面図、図3は同上の斜視図三構成図1ないし図3において、電磁ポンプ1はシリンダ2内を往復動可能にプランジャ3が挿入されており、このプランジャ3を支持し、かつ往復動を補助するために該プランジャ3の上方に上部ばね4が、下方に下部ばね5が設けられ、該上部ばね4及び下部ばね5は、その反プランジャ側がシリンダ2の両端に嵌合の受部6、
7に受けられ、該受部6、7にてプランジャ3はシリンダ2内に収められている。
この受部6、7には孔8、9が形成されている。
シリンダ2は、上方及び下方に嵌合するオーリング10、27、下記する吐出ニップル34及び吸入パイプ22に油密に嵌合されている。
プランジャ3は、その中心部に貫通孔11が形成されており、この貫通孔11に吸入弁12及びこれを付勢するばね13が配されている。
電磁コイル14は、樹脂製のボビン15に巻装され、前記シリンダ2の周囲に外嵌されている。この電磁コイル14を支えるボビン15とシリンダ2との間には、磁性材より成る上方で上磁極筒16が、下方で下磁性極筒17が介在されている。また、前記ボビン15の上端側に磁性材より成る上磁気プレート18が、下端側に磁性材より成る下磁気プレート19がそれぞれ装着され、内側端が前記した上下の磁極筒16、17に接し、外側端が下記する外板30に接している。
吸入パイプ22は、樹脂などで製造されており、その中心に通孔23が形成され、
この上方に外方へ張り出すつば24を有しており、この吸入パイプ22の上方には前記シリンダ2の下板26が下方から挿入され、オーリング27にて油密が保たれている。
この吸入パイプ22は、下板26が下方から挿入されて、つば24と係合し、下記する外板30に28にてねじ止めされることで該吸入パイプ22は組み付けられるものである。
外板30は、前記電磁コイル14の外側に配され、磁性材より成り、正面から見て二つの立面部30a、30aと、この立面部の上部間に横架される平面部30bとより成るもので、下面側が開口され、前記二つの立面部30a、30aの下部は外方へ直角に折曲され、取付部30c、30cとなり、該取付部30c、30cは前記したようにねじにて下板26とねじ止めされる。また、外板30の平面部30bの中央に、下記する吐出ニップル34が係合する六角孔33が形成されている。
吐出ニップル34は、外周に円状のつば部35と、円周方向に形成の六角部36を有し、内部に軸方向に通孔37が形成されると共に、該通孔37内に吐出弁38とばね39を順次収納し、吐出シート40が設けられた吐出シート押え41をオーリング42にて油密保持されるように押し込んで取付けている。この吐出ニップル34は、前記した外板30の六角孔33に係合され、吐出シート押え41が前記した受部6と接し、もって前記吸入弁12より下流通路を構成する孔8と通孔子37が連通状態となっている。
端子取付部50は、特に図2、図3に示すように、前記したボビン15の上端から前記外板30の外に延設して設けられ、矩形をなし、同形状の三個の端子51、52、53が並列に立設されている。第一の端子51は、前記取付部50に取付けの固定部(図示せず)と、前記電磁コイル14のリード線の巻付けのためのリード線結線部51bと、
固定抵抗器57の端子取付溝51cとから構成される。
また、第二の端子52は、図示しない燃焼器の持つ駆動回路からの接続部へ挿入する挿入部52aと、前記端子取付けの固定部(図示せず)と、前記電磁コイル14のリード線の巻付けのためのリード線結線部52bとから構成されている。更に第三の端子53は、図示しない燃焼器の持つ駆動回路からの接続部へ挿入する挿入部53aと、前記端子取付部50に取付けの固定部(図示せず)と、電源供給ピン62の接触部53bと、固定抵抗器57の端子取付溝53cとから構成されている。尚、第一の端子51の挿入部51aは使用されていない。
固定抵抗器57は、電磁ポンプ1の吐出流量を所定の流量範囲内に収めるためのものであり、両端の端子は端子取付溝51c、53cに圧入接続されている。
図1図2図3
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 高松宏之
裁判官 前田郁勝
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