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事件 平成 16年 (ワ) 14019号 特許権侵害差止等請求事件
原告 株式会社スタビロ
同訴訟代理人弁護士 窪田 英一郎
同 柿内瑞絵
同 乾裕介
同補佐人弁理士 相原正
被告 JFEソルデック株式会社
同訴訟代理人弁護士 吉原省三
同 小松勉
同 三輪拓也
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2005/07/29
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告は,別紙物件目録記載の動揺軽減装置を製造し,又は販売してはならない。
2 被告は,原告に対し,1600万円及びこれに対する平成16年7月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は,原告が,被告に対し,後記本件特許権の間接侵害に基づく後記被告装置の製造又は販売行為の差止め,並びに本件特許権の間接侵害及び独占的通常実施権間接侵害不法行為に基づく損害金及び遅延損害金の支払を求めたのに対して,被告が,構成要件の非充足及び進歩性欠如の無効理由等を主張して争った事案である。
1 前提事実 (1) 当事者 ア 原告は,船舶の動揺軽減装置の設計及び施工を業とする株式会社であり,丙(以下「丙」という。)は,原告の代表取締役である。
イ 被告は,船舶・船用艤装品等の開発,設計,制作及び施工等を業の1つとする株式会社である。
(以上,争いのない事実) (2) 本件特許権等 ア 本件特許権 丙は,次の特許権につき設定登録を受けた(以下,この特許を「本件特許権」といい,その請求項1の発明を「本件特許発明」という。また,本件特許権に係る特許公報掲載の明細書及び図面(甲2)を「本件明細書」という。)。
特許番号 特許第3125141号 発明の名称 船舶の動揺軽減装置の制御方法 出願日 平成10年5月29日 登録日 平成12年11月2日 特許請求の範囲 別紙特許公報写しの該当欄記載のとおり(争いのない事実) イ 分説 本件特許発明構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,各構成要件を「構成要件A@」のように表記する。)。
A@ 船体の両舷に設定した一対の少なくとも2つのウイングタンク(12a,12b)と, A これらウイングタンクの底部を連結して液体(17)を左右方向へ移動させる液体通路(13)と, Ba 前記の両ウイングタンク上部間に設けられる液体(17)の制動を目的とした遠隔駆動式のバルブ(15)等の手段を介して連通させる空気ダクト(14) b 或いは,各々のウイングタンク(12a,12b)の上部附近に設けられる大気へ開放可能とする遠隔駆動式のバルブ(15)付き空気ダクト(14)とを有し, C 更に,操舵輪部(1)からでる舵角指令情報を検知するポテンショメ-タ(4)等の手段から出力される情報と,船速情報を取り入れ,これらの内容を解読すると共に制御信号を出力するコントロ-ル部(2)と, D コントロ-ル部(2)からの制御信号を基に前記バルブ(15)を遠隔駆動させる開閉機器装置部(3)とを具備した E 液体(17)の移動または停止操作を自動的に成し得る船舶の動揺軽減装置の制御方法に於いて, B 船が急旋回行動をする時点の舵角指令と船速情報が,予め設定してある条件を満たす場合は,液体(17)を停止させない状況下に生じる液体移動による船体傾斜の増長を事前に防止し得るよう,舵圧により船体が旋回中心外側方向へ傾斜を起こす前に,バルブ(15)を強制的に閉じて移動用液体(17)を停止させる制動を,自動的に制御させる C ことを特徴とする船舶の動揺軽減装置の制御方法。
独占的通常実施権の許諾 丙は,原告との間で,平成12年11月2日,本件特許権につき,丙を許諾者,原告を被許諾者とする独占的通常実施許諾契約を締結した。
(弁論の全趣旨) エ 本件特許権の移転 原告は,丙との間で,本件特許権を譲り受けることを内容とする契約を締結し,平成16年6月15日,その移転登録を受けた。
(争いのない事実) (3) 被告方法等 ア 被告装置 被告は,平成13年3月以降,業として,別紙物件目録記載の動揺軽減装置を製造,販売している(以下,この動揺軽減装置を「被告装置」といい,動揺軽減装置の各構成は,別紙物件説明書記載の符号とともに「被告装置コントロール部3」のように表記する。)。
(別紙物件説明書記載の動揺軽減装置の下線部については,当事者間に争いがあるが,その余は当事者間に争いがない。) イ 被告方法の分説 原告主張の被告装置を用いた船舶の動揺軽減装置の制御方法を分説すると,次のとおりである(以下,この方法を「被告方法」といい,各構成を「被告方法A’ @」のように表記する。)。
A’@ 船体の両舷に設定した一対のウイングタンク4a及び4bと, A これらウイングタンクの底部を連結して液体8を左右方向へ移動させる液体通路5と, B 両ウイングタンク上部間に設けられ,コントロール部3からの指令によって制御可能なバルブ11を介して連通される空気ダクト6とを有し, C 更に,ポテンショメータ13からの舵角指令信号,船速検出装置9から出力される船速信号,及び横揺れ角検出装置14から出力される平均横揺れ角信号を取り入れ,これらの内容を解読すると共に制御信号を出力するコントロール部3と, D コントロール部3からの制御信号を基に前記バルブ11を遠隔駆動させる電磁弁12(開閉機器装置部)とを具備した E 液体8の移動または停止操作を自動的に成し得る船舶の動揺軽減装置の制御方法において, B’ 船が急旋回行動をする時点の舵角指令信号と船速信号が,予め設定してある条件を満たし,かつ,船舶の平均横揺れ角信号の解析結果が所定閾値を下回る場合は,液体8を停止させない状況下に生じる液体移動による船体傾斜の増長を事前に防止し得るよう,舵圧により船体が旋回中心外側方向へ傾斜を起こす前に,バルブ11を強制的に閉じて液体8を停止させる制動を,自動的に制御させる C’ ことを特徴とする船舶の動揺軽減装置の制御方法。
(4) 被告方法と本件特許発明との対比 ア 被告方法A’@ないしBは,本件特許発明構成要件A@ないしBaを充足する。
イ 被告方法A’D及びEは,同構成要件AD及びEを充足する。
ウ 被告方法C’は,同構成要件Cを充足する。
(争いのない事実) 2 争点 (1) 構成要件の充足 ア 被告方法A’Cは,本件特許発明構成要件ACを充足するか。
イ 被告方法B’は,同構成要件Bを充足するか。
(2) 無効 ア 本件特許権には,未完成発明又は実施可能要件欠如の無効理由が存在するか。
イ 本件特許権には,進歩性欠如の無効理由が存在するか。
(3) 間接侵害,共同不法行為,損害 ア 特許法101条3号間接侵害の成否 イ 特許法101条4号間接侵害の成否 ウ 共同不法行為 エ 原告の損害 3 争点(1)ア(構成要件ACの充足)に関する当事者の主張 (1) 原告の主張 ア(ア) 操舵輪の操作によって生じた舵角情報の電気信号への変換は,通常,操舵輪に取り付けられたポテンショメータによって行われている。
(イ) 被告装置においても,操舵輪に取り付けられたポテンショメータが操舵輪の操作を検知して舵角指令信号に変換している。
(ウ) 上記の被告装置のポテンショメータは,本件特許発明構成要件ACにいう「操舵輪部(1)からでる舵角指令情報を検知するポテンショメ-タ(4)等の手段」に該当する。
(エ) オートパイロットがオフの状態では,舵角指令信号は,操舵輪に取り付けられたポテンショメータからコントロール部に出力される。船舶が急旋回を行うのは非常事態であり,このような場合には,オートパイロットはオフであるか,少なくともオートパイロットをオフにして手動操作に切り替えてから急旋回操作を行うのが通常である。
(オ) 確かに,被告装置がオートパイロットを有し,オートパイロットがオンの状態で自動航行が行われる場合には,操舵輪に取付けられたポテンショメータを経由せずに舵角指令信号がコントロール部に送られるという構成を有することはあり得るが,オートパイロットからコントロール部に舵角指令信号が送られるという構成が付加されていることは,被告装置が本件特許発明構成要件ACを充足するとの判断を何ら妨げるものではない。
イ したがって,被告方法A’Cは,本件特許発明構成要件ACを充足する。
(2) 被告の主張 ア(ア) 原告の主張アのうち,(ア)及び(イ)は認め,(ウ)は否認する。
本件特許発明構成要件ACの「操舵輪部(1)からでる舵角指令情報を検知するポテンショメ-タ(4)等の手段から出力される情報」は,操舵輪部からの舵角指令情報をポテンショメータ等が変換して出力する電気信号のことであり,ポテンショメータ等の出力する電気信号にそれ以外の情報を加えたものは含まない。
このことは,丙が,その出願に係る特許第3474559号の願書の請求項1において,「操舵輪部(1)に操舵輪部を手動モードに切り替えて操作を行う時のみに舵角指令情報を出力するポテンショメータ(4)等」との記載をしたことからも裏付けられている。
(イ) 同アのうち,(エ)及び(オ)は否認する。
被告装置が前提とするオートパイロット装置では,オートパイロット装置の内部にポテンショメータが組み込まれているものがあるが,急速旋回を行う場合でもオートパイロット装置がオフになることはない。操船者が舵輪等を動かすと,その情報は,ポテンショメータからではなく,オートパイロット装置から,舵輪操作による情報以外の情報も加えられて舵角指令信号として出力される。
イ 同イは否認する。
4 争点(1)イ(構成要件Bの充足)に関する当事者の主張 (1) 原告の主張 ア 利用発明 被告方法は,舵角指令信号及び船速信号があらかじめ設定してある条件を満たすときには,ARTを非作動の状態にするという本件特許発明技術的思想を利用した利用発明である。
よって,被告方法Bは,本件特許発明構成要件Bを充足する。
イ 被告990号特許の出願経過 (ア) 被告の有する特許第3460990号(以下「被告990号特許」という。)の出願時の特許請求の範囲(甲6)には,船速信号と舵角指令信号とによりコントロール部がARTの作動/非作動の判定を行う装置に係る請求項1と,この請求項1に従属する請求項として,平均横揺れ角があらかじめ設定した値以上である場合には,船速信号及び舵角指令信号がART非作動の条件になっていても,減揺機能を発揮させる請求項7とが記載されていたが,被告は,本件特許発明を引用例とした拒絶理由通知(甲7)を受けて,請求項1に請求項7の構成を加えて補正した。
(イ) この経過は,被告自身も,「平均横揺れ角の入力」は付加的な構成要件であると考えていたことを示すものである。
ウ 無意味な構成の付加 ARTがその減揺効果を発揮するのは,ARTの固有周期に近い周期で船体が横揺れする場合である。しかし,急旋回を行うと,船体が波を受ける角度が急激に変わるため,船体の横揺れ周期も急激に変化するから,急旋回を行っている間ARTの動作を継続させたとしても,ARTがその減揺効果を常時発揮し続けることは不可能であり,ARTを作動状態にしておくことにより,旋回中心外側方向への傾斜分を上回る最大傾斜角の減少が得られるような場面が現実に生じるとは考えにくい。
したがって,被告方法における平均横揺れ角信号によるARTの作動/非作動の判定は無意味なものであり,このような無意味な構成を付加しても,本件特許発明構成要件の充足を回避することはできない。
(2) 被告の主張 ア 原告の主張ア(利用発明)は否認する。
被告方法は,舵角信号,船速信号及び平均横揺れ角信号の3つの情報によりARTの作動/非作動を制御する方法であり,本件特許発明と動作も異なるから,本件特許発明を利用している関係にはない。
すなわち,ARTは,船の横揺れを軽減する効果があるところ,ARTの動作を継続させることによって得られる最大傾斜角の減少分Aと,旋回による外方への傾斜分Bを比べて,A ≧ B であれば,ARTの動作を継続した方が最大傾斜角が小さくなるか,変らないことになる。そこで,被告方法では,舵角信号,船速信号がARTの動作停止の条件を満たしても,船舶の平均横揺れ角信号の解析結果が所定閾値を下回る場合に限り,ARTを非作動としたものである。
イ 同イ(被告990号特許の出願経過)(ア)は認め,(イ)は否認する。
被告990号特許の出願時の請求項7の発明は,同請求項1の発明とは技術的思想の異なる別発明である。
ウ 同ウ(無意味な構成の付加)は否認する。
「減揺タンク実船試験成績書」(乙9)には,漁業取締船の急速旋回時におけるARTの影響を調べるための試験結果が記載されているが,これによると,ARTを作動させておいた場合,非作動とした場合に比し,定常傾斜角の変化については大差がなかったが,最大傾斜角については1.99度の減少が記録された(乙9第16頁)。また,減揺率については,右旋回/左旋回とも,横揺れ振幅が減少している様子を読み取ることができる(乙9第17頁,18頁の図参照)。
したがって,平均横揺れ角信号を取り入れてARTの作動/非作動を制御する被告方法は,本件特許発明に無意味な構成を付加したものではない。
5 争点(2)ア(未完成発明又は実施可能要件欠如の無効理由)に関する当事者の主張 (1) 被告の主張 ア 未完成発明 (ア) 丙出願に係る特許第3474559号の早期審査に関する事情説明書(乙6の3)には,次の記載がある。
「航行中の船体は,出会い波や風の影響を受け船首がヨーイング(左右方向へ移動)し,または,横方向へ移動するために針路コースから逸脱することになる。
特に,時化の状態ではコースの逸脱が頻繁となる為,これに対応した転舵の手段が自動的に行われている。この転舵の舵角指令と急旋回を行う時の初期の舵角指令の内容が殆ど同じで区別がつかない。従って,荒天時の航海に於いて,単にコース修正の為に出力された舵角指令信号を急旋回と誤り,実際には減揺効果を必要とし,しかも,タンク内の液体が復原力に悪影響を与えていないにも係わらず,バルブを閉じ非作動とする,引用例-1(引用者注・後記文献(イ),すなわち本件特許権を意味する。)および引用例-2(引用者注・後記文献(ハ),すなわち被告990号特許を意味する。)の制御方法では,ARTとして適さない欠点のある操作方法であると引用例-3が指摘している。(本願発明の詳細な説明【0006】,【0007】に記載している)」(乙6の3第8頁1行〜10行) 「船の急旋回中は遠心力により,必ず旋回中心外側方向へ定常横傾斜を起こす。 この時,ARTの移動用液体によって発生する傾斜モーメント(遊動水)が遠心力に加わり,船体横傾斜角度を更に大きくするという,ARTの欠点を解消せしめる目的に関しては,本願と先行文献は同じであることを認めるが,特に文献(イ)と(ハ)の技術では,この目的を達成することができないのである。」(乙6の3第9頁2〜6行) (イ) したがって,本件特許発明は,未完成発明である(特許法29条1項柱書)との無効理由を有するから,その行使をすることができない。
実施可能要件欠如 (ア) 本件特許発明は,「船が急旋回行動をする時点の舵角指令と船速情報が,予め設定してある条件を満たす場合」にARTを非作動とする制御方法に関するものであるが,本件特許発明Bの「予め設定してある条件」については,本件明細書中に記載がない。
(イ) したがって,本件特許権は,実施可能要件(特許法36条4項(特許法等の一部を改正する法律(平成14年法律第24号)1条による改正前のもの))を欠く無効理由を有するから,その行使をすることができない。
(2) 原告の主張 ア 未完成発明 (ア) 被告の主張ア(ア)(事情説明書の記載)は認めるが,同(イ)(未完成発明)は否認する。
(イ) 同早期審査に関する事情説明書の記載は,本件特許発明の問題点を「目的を達成することができない」という表現を用いて指摘したものにすぎず,本件特許発明実施できないものであることを認めたものではない。
実施可能要件欠如 (ア) 同イ(ア)(条件の不記載)は認め,同(イ)(実施可能要件欠如)は否認する。
(イ) 当業者であれば,「船体が旋回中心外側方向へ傾斜を起こす前に」バルブを閉じるように,適当と考えられる任意の条件を選択することができるから,「予め設定してある条件」は,実施可能要件を充足している。
6 争点(2)イ(進歩性欠如の無効理由)に関する当事者の主張 (1) 被告の主張 ア 引用例1 (ア) 被告は,平成6年,海上保安庁に対し,ARTを搭載した大型巡視船「くだか」を納入したが,その際に交付した同年9月28日付け「減揺水槽取扱い説明書」(乙4)には,次の記載がある(以下「引用例1」という。)。
「NKK DESIGN & ENGINEERING CORPORATION 海上保安庁 大型巡視船 くだか DATE OF DWG. '94,Sep,28」(1頁)「V 減揺水槽主要目等 1)水槽型式 NKK式U字管型 2)水槽容積 68.00M3 3)水槽設備位置 曳航装置室両舷(F120〜F127)」(4頁1〜4行)「W 減揺水槽使用上の注意事項 2)減用水槽はエアーバルブの開閉により,作動又は非作動状態とすることが出来ます。
即ち エアーバルブ 全開 → 作動状態 〃 全閉 → 非作動状態です。この際注意すべきことは,減揺水槽非作動時には必ず水槽に設けられている空気管,マンホール等外部に通じる開口は総て閉鎖しておいて下さい。」(5頁1〜13行) 別紙図面記載の断面図(5頁下の断面図)「6)減揺水槽の自由液面による影響は,作動時横揺中は安全側に作用しますが,船が横揺しない状態で定常時に横傾斜をする様な時,例えば荷物が片舷側に集中した場合には,自由液面の影響により横傾斜は増長しますので,エアーバルブを閉じて下さい。
7)減揺水槽の性質として急速旋回をする場合,船の傾斜角が大きくなりますのでエアーバルブを閉じて下さい。」(6頁6〜11行) (イ)a これらの記載からすると,引用例1には,両ウィングの上部を連通させたエアバルブ付きの空気ダクトを有するARTについて,そのARTを搭載した船舶が急速旋回をする場合に,液体の移動による船舶の傾斜角の増大を防止するため,ARTのエアバルブを閉じて液体の移動を停止し,ARTを非作動とするARTの制御方法(以下「引用発明1」という。)が開示されている。
b 引用発明1の「急速旋回をする場合」(引用例1第6頁10,11行)とは,急速旋回をする前又はその直後のことである。
(ウ) 引用発明1は,大型巡視船「くだか」が納入されたころ,公然知られた発明となった。
イ 他の公知又は周知技術 (ア) 周知技術1 船体運動学の分野において,船舶が旋回するときに,最初に内側に傾斜し,旋回が進むに従って外方に傾斜すること,並びに外方傾斜の大きさには速度の高低及び旋回半径の大小が影響すること(以下「周知技術1」という。)は,本件特許権の出願前に,周知であった(大串雅信著「理論船舶工学(下巻)」五版(昭和44年5月1日発行,海文堂)262-263頁(乙2),橋本進=矢吹英雄共著「操船の基礎」(昭和63年4月25日発行,海文堂)12-17頁(乙16))。
(イ) 周知技術2 ARTの制御方法に係る技術分野において,ARTの空気ダクトに遠隔駆動式のバルブを取り付け,電気信号を入力しバルブの開閉判断を行うコントロール部が出力する制御信号を基に,バルブを遠隔駆動させる開閉器機装置部を有する構成とする技術(以下「周知技術2」という。)は,本件特許権の出願前に,周知であった(特公昭58-30196公報(乙18),特開平8-133182公報(乙19))。
(ウ) 引用例2 平成10年4月1日発行の社団法人日本深海技術協会会報(乙20。以下「引用例2」という。)には,各種の減揺システムの1つとして,舵のみを制御して船の横揺れを抑制する舵減揺装置について記載されているが,この舵減揺装置は,「コンピュータはジャイロコンパスからの船首方位信号,横揺れ角速度センサからの角速度信号,操舵装置からの応答舵角信号等を入力し,制御演算を行って,最適な舵角指令信号を操舵装置に出力する。」(乙20第17頁右欄2〜6行)という構成となっている。
(エ) 周知技術3 舵角の指令をポテンショメータを介して電気情報として取り入れ,舵の操作以外の目的に利用すること(以下「周知技術3」という。)は,一般に行われていることである。例えば,乙21は,株式会社丁の説明であるが,運輸省電子航法研究所 精度確認試験受験品 平成4年度受託第2号の装置は,船速(Speed-Log),舵角(Rudder-Angle)その他の情報を取り入れ,速力試験や旋回,操舵などの各種試験の計測,解析および成績書の作成を行うことができる。そして,この装置は,平成8年3月に市販されている(乙22)。
ウ 本件特許発明と引用発明1との一致点及び相違点 (ア) 一致点 本件特許発明と引用発明1とを対比すると,次の3点で相違し,その余の点で一致する。
(イ) 相違点1(遠隔操作) 本件特許発明は,ARTのウィングタンクの上部間に設けられる遠隔駆動式のバルブ等の手段を介して連通される空気ダクトを有しているのに対し,引用発明1には,このような構成が開示されていない(以下「相違点1」という。)。
(ウ) 相違点2(利用情報) ARTの作動/非作動の判定に当たり,本件特許発明は,舵角指令情報と船速情報を取り入れているのに対し,引用発明1では,どのような情報を利用しているのか不明である(以下「相違点2」という。)。
(エ) 相違点3(自動化) 本件特許発明では,ポテンショメ-タ等の手段で必要な舵角指令情報及び船速情報を自動的に取り入れ,コントロール部においてこれらの内容を解読するとともに制御信号を出力し,舵角指令情報と船速情報があらかじめ設定してある条件を満たす場合にバルブ(15)を強制的に閉じる制動を自動的に行っているのに対し,引用発明1では,船舶の使用者が判断してバルブを閉じている(以下「相違点3」という。)。
(オ)a 後記原告の主張ウ(イ)(相違点4(内側傾斜時))は否認する。
b(a) 本件特許発明構成要件Bの「船体が旋回中心外側方向へ傾斜を起こす前」は,特許請求の範囲においてそれ以上の限定はないから,船舶が旋回中心内側方向に傾斜している間をいうと限定して解釈することはできない。
(b) また,引用例1のARTは自動制御の装置ではないから,操船者が,急速旋回を始める前又は急速旋回を始めた直後に,急速旋回を行う必要があると判断して,エアバルブを閉じることになる。したがって,引用例1には,船体が旋回中心外側方向へ傾斜を起こす前にエアバルブを閉じることが開示されている。
(c) したがって,原告主張の相違点4(内側傾斜時)は存在しない。
エ 容易想到 (ア) 相違点1(遠隔操作) 周知技術2のとおり,ARTのウィングタンクの上部間に設けられる遠隔駆動式のバルブ等の手段を介して連通される空気ダクトを有するように構成することは,業者が容易に想到することができたことである。
(イ) 相違点2(利用情報) 周知技術1のとおり,旋回半径及び船速と船の旋回中の横傾斜との関係は,周知技術であり,ARTの作動/非作動の判定に当たり,舵角指令情報と船速情報を取り入れることは,引用発明1でも実質的には行われていたことであり,当業者が容易に想到することができたことである。
(ウ) 相違点3(自動化) 相違点3は,人間が行っていた業務をシステム化したにすぎず,当業者であれば,周知技術2及び3並びに引用例2に基づき,当業者が容易に想到することができたことである。
オ まとめ したがって,本件特許権は,進歩性(特許法29条2項)を欠き,無効審判により無効にされるべきものであるから,その行使は認められない。
(2) 原告の主張 ア 引用例1 (ア) 被告の主張ア(ア)及び(イ)aは不知,b(引用例1の解釈)は否認する。
引用発明1に開示されたエアーバルブの開閉装置は,手動のもので,実際に急旋回時にこれを閉じることは不可能である。
(イ) 同(ウ)(公知)は否認する。
イ 他の公知又は周知技術 同イ(ア)ないし(エ)は不知。
ウ 本件特許発明と引用発明1との一致点及び相違点 (ア) 同ウ(ア)(一致点)は否認し,(イ)ないし(エ)(相違点)は認める。相違点は,他にもある。
(イ)a 本件特許発明は,船舶が旋回するときに,最初に内側に傾斜し,旋回が進むに従って外方に傾斜するという船舶の運動中,舵角指令情報及び船速情報があらかじめ設定してある条件を満たした後から「船体が旋回中心外側方向へ傾斜を起こす前に」,すなわち船舶が内側に傾斜している間に,バルブを閉じることを特徴とするものである。
この点は,次の本件明細書【0027】の記載からも裏付けられる。
「本発明を実施した船舶に於いて,急旋回をするため舵角を操舵輪を操作して操舵ユニットへ指示をすると,(1) 舵は少しずつ舵角を取り,船は旋回を始める。
(2) この時,船は舵圧により旋回中心内側方向へヒールをする。
(3) タンク内の液体は,少し遅れてヒールした方向へ移動する。
(4) 船が指令された舵角を取り続けると,旋回による遠心力(遠心力は旋回中心外側方向に働く)が発生し,舵圧より勝ってくるから復原力となって,ヒールを元の状態に戻すことになる。
(5) この間にバルブ15を閉じると,タンク内の液体は,旋回中心内側の片寄った状態で停止する。」 b これに対し,引用発明1には,この点が開示されていない(以下,この相違点を「相違点4(内側傾斜時)」という。)。
エ 容易想到 同エ(ア)ないし(ウ)は否認する。
オ まとめ 同オは否認する。
7 争点(3)(間接侵害等)に関する当事者の主張 (1) 原告の主張 ア 特許法101条3号間接侵害 被告装置は,本件特許発明の使用にのみ用いる物である。
したがって,被告が業として被告装置を製造,販売する行為は,特許法101条3号により,本件特許権の侵害行為とみなされる。
イ 特許法101条4号間接侵害 (ア) 仮に,被告装置が本件特許発明の使用にのみ用いる物ではないとしても,平成15年1月1日以降に販売された被告装置は,本件特許発明の使用に用いる物であって,本件特許発明による課題の解決に不可欠なものである。
(イ) また,被告は,本件特許発明が特許されていること,及び被告装置が本件特許発明実施に用いられることを知っていた。
(ウ) したがって,平成15年1月1日以降,被告が業として被告装置を製造,販売する行為は,特許法101条4号により,本件特許権の侵害行為とみなされる。
ウ 共同不法行為 平成14年12月31日以前に販売された被告装置については,被告装置を使用している直接侵害者と被告とによる共同不法行為が成立する。
エ 原告の損害 (ア) 原告の逸失利益 a 被告は,平成13年3月以降,被告装置を少なくとも4台製造,販売した。
b 独占的通常実施権者であった原告は,被告の侵害行為がなければ,動揺軽減装置1台当たり300万円の利益を得ることができた。
c よって,特許法102条1項の類推適用により,原告が受けた損害額は,1200万円となる。
(イ) 弁護士費用相当の損害 a 原告は,本件訴訟を追行するため,訴訟代理人及び補佐人として本訴原告訴訟代理人及び補佐人を選任し,同人らに対し,相当の報酬を支払うことを約束した。
b 被告の行為と相当因果関係ある弁護士費用及び弁理士費用相当の損害は,400万円を下らない。
(2) 被告の主張 ア 原告の主張ア(3号の間接侵害)は否認する。
イ 同イ(4号の間接侵害)は否認する。
ウ 同ウ(共同不法行為)は否認する。
エ 同エ(ア)(原告の逸失利益)は否認する。同(イ)(弁護士費用等相当の損害)のうちa(支払約束)は不知,b(相当因果関係)は否認する。
当裁判所の判断
1 争点(2)イ(進歩性欠如の無効理由)について (1) 引用発明1 ア 証拠(乙4)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,平成6年,海上保安庁に対し,ARTを搭載した大型巡視船「くだか」を納入したが,その際に交付した同年9月28日付け「減揺水槽取扱い説明書」(乙4。引用例1)には,前記第2,6(1)ア(ア)欄のとおりの記載があること,これらの記載からすると,引用例1には,両ウィングの上部を連通させたエアバルブ付きの空気ダクトを有するARTについて,そのARTを搭載した船舶が急速旋回をする前又はその直後に,液体の移動による船舶の傾斜角の増大を防止するため,ARTのエアバルブを閉じることによって液体の移動を停止し,ARTを非作動とするARTの制御方法(引用発明1)が開示されていることが認められる。
実施不能の主張について 原告は,引用発明1に開示されたエアーバルブの開閉装置は,手動のもので,実際に急旋回時にこれを閉じることは不可能である旨主張するが,緊急事態の予想される際に,エアーバルブを開閉する担当者を配置し,無線で常時連絡する態勢を採る等の方法により,手動でも引用発明1に開示されたエアーバルブの開閉を行うことができると考えられるから,原告の上記主張は,採用することができない。
ウ 引用発明1の公知 引用発明1につき,被告と海上保安庁との間で秘密保持契約が結ばれた等の事情は認められないから,引用発明1は,大型巡視船「くだか」が納入された平成6年9月ころ,公然知られた発明となったものと認められる。
(2) 他の公知又は周知技術 証拠(乙2,16,18〜22)によれば,他の公知又は周知技術(前記第2,6(1)イ)が認められる。
(3) 一致点及び相違点の認定 本件特許発明と引用発明1との一致点及び相違点(前記第2,6(1)ウ)は,相違点4(内側傾斜時)の有無を除き,当事者間に争いがない。
(4) 相違点についての判断 ア 相違点1(遠隔操作) 周知技術2のとおり,ARTの制御方法に係る技術分野において,バルブを遠隔駆動することは周知の技術であったから,引用発明1の両ウィングの上部を連通させたエアバルブ付きの空気ダクトを遠隔駆動式のバルブ等の手段を介して連通されるものにすることは,当業者が適宜行うことができたことと認められる。
イ 相違点2(利用情報) 周知技術1のとおり,船体運動学の分野において,船舶が旋回するときの外方傾斜の大きさには,速度の高低及び旋回半径の大小が影響することは,周知であった。このことを前提にすると,引用例1の「急速旋回をする場合,船の傾斜角が大きくなりますのでエアーバルブを閉じて下さい。」には,急速旋回をする場合には,高速で旋回半径が小さいから,船の傾斜角が大きくなるので,エアーバルブを閉じることを実質的に開示されているものと認められる。
したがって,ARTの作動/非作動の判定に当たり,舵角指令情報と船速情報を利用している点において,本件特許発明と引用発明1との間に実質的には相違はなく,当業者が容易に行うことができたことと認められる。
ウ 相違点3(自動化) 一般に,人が行っていた作業を自動化することは周知の課題であるから,引用発明1において,船が急旋回行動をする場合の動作を自動化しようとすることは,当業者が容易に着想することができたことと認められる。
上記イのとおり,ARTの作動/非作動の判定に当たり,舵角指令情報と船速情報を利用することは,当業者が容易に行うことができたことからすると,ARTの制御の自動化を具体化するに当たって,舵角指令情報と船速情報を取り入れる手段,それらの情報を解読して急旋回行動であるかを判断し,バルブを閉じるための制御信号を出力する手段,及び制御信号を受けてバルブを実際に駆動する手段が必要であることは当然であるから,このような手段として,情報の取入手段,コントロール部及び開閉機器装置部を設けることは,当業者が容易に行うことができた設計的事項と認められる。
そして,周知技術2及び3並びに引用例2の存在を考慮すると,本件特許発明のように自動化の手段を構成することに格別の困難があったものとも認められない。
よって,引用発明1に基づき,ポテンショメ-タ等の手段で必要な舵角指令情報等を自動的に取り入れ,コントロール部においてこれらの内容を解読するとともに制御信号を出力し,舵角指令情報等があらかじめ設定してある条件を満たす場合にバルブを強制的に閉じる制動を自動的に行うようにすることは,当業者が適宜行うことができたことと認められる。
(5) 相違点4(内側傾斜時)の有無について ア 限定解釈の可否 (ア)a 原告は,本件特許発明は,船舶が内側に傾斜している間にバルブを閉じることを特徴とする旨主張する。
しかしながら,本件特許発明構成要件Bは,「船体が旋回中心外側方向へ傾斜を起こす前」というものであり,特許請求の範囲にそれ以上の限定はないから,バルブを閉じる時点として,船舶が旋回中心内側に傾斜する前から船舶が旋回中心内側に傾斜した後に外側へ傾斜する直前の直立した状態までを含んでいるものと認められる。
b 原告は,本件明細書の詳細な説明における【0027】の記載を指摘する。確かに,【0027】の記載は原告の主張に沿うものであるが,詳細な説明における上記記載の存在を考慮しても,特許請求の範囲における記載が上記のものにとどまる以上,本件特許発明構成要件Bを原告主張のように限定して解釈することはできない。
(イ) 引用発明1が,両ウィングの上部を連通させたエアバルブ付きの空気ダクトを有するARTについて,そのARTを搭載した船舶が急速旋回をする前又はその直後に,液体の移動による船舶の傾斜角の増大を防止するため,ARTのエアバルブを閉じることによって液体の移動を停止し,ARTを非作動とするARTの制御方法であることは,前記(1)のとおりである。そして,周知技術1のとおり,船体運動学の分野において,船舶が旋回するときに,最初に内側に傾斜し,旋回が進むに従って外方に傾斜することが周知であったことを考慮すると,引用発明1にも,液体の移動による船舶の傾斜角の増大を防止するため,急速旋回をする前又はその直後に,すなわち船舶が旋回中心内側に傾斜する前から船舶が旋回中心内側に傾斜した後に外側へ傾斜する前までの間に,エアーバルブを閉じることが開示されているものと認められる。
(ウ) そうすると,本件特許発明と引用発明1とは,船舶が旋回する際,バルブを閉じる時点において相違はなく,原告の相違点4の主張は理由がない。
イ 限定解釈をした場合 なお,本件特許発明Bにいう「船体が旋回中心外側方向へ傾斜を起こす前」が,原告主張のとおり,船舶が内側に傾斜している間にバルブを閉じることを意味するとしても,船体運動学の分野において,船舶が旋回するときに,最初に内側に傾斜し,旋回が進むに従って外方に傾斜することが周知であったこと(周知技術1)を考慮すると,引用発明1に開示された船舶が旋回中心内側に傾斜する前から船舶が旋回中心内側に傾斜した後に外側へ傾斜する前までの間から,船舶が旋回中心内側に傾斜している間にバルブを閉じるものと限定することに格別の困難があったものと認めることはできず,そのように限定することにより生ずるタンク内の液体を旋回中心内側の偏った状態で停止したことにより外側への傾斜角度を減少させるとの効果(本件明細書【0027】〜【0029】)も,そのように構成することにより当然予想される範囲のものと認められる。
したがって,相違点4(内側傾斜時)から進歩性を主張する原告の主張は,この点からも理由がない。
(6) まとめ したがって,本件特許権は,進歩性欠如(特許法29条2項)の理由で無効審判により無効にされるべきものと認められるから,原告は,被告に対し,本件特許権を行使することができない(特許法104条の3第1項)。
2 結論 よって,本訴請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がないから,主文のとおり判決する。
追加
・(別紙)物件目録別紙物件説明書及び別紙第1図ないし第3図記載の構成から成り,別紙物件説明書記載のとおり動作する船舶の動揺軽減装置・(別紙)物件説明書1別紙図面の説明第1図は,本件動揺軽減装置の概略図である。
第2図は,本件動揺軽減装置に用いられるエアバルブの模式図である。
第3図は,本件動揺軽減装置が船舶に搭載された状態の模式図である。
2符号の説明1動揺軽減装置2本体部3コントロール部4a,4bウイングタンク5液体通路6空気ダクト7エアバルブ8液体9船速検出装置10舵角指令装置(オートパイロット)10A操舵スタンド10B操舵機制御装置11バルブ12電磁弁13ポテンショメータ(ポテンショメータは第1図に図示されていない。)14横揺れ角検出装置15操舵装置3物件の構成(1)動揺軽減装置1は,本体部2及びコントロール部3から成る。
(2)本体部2は,2つのウイングタンク(減揺タンク)4a及び4b,液体通路5,空気ダクト6並びに空気ダクトに設けられたエアバルブ7を備える。
ウイングタンク4a及び4bは,その底部において,液体通路5を介して連通可能とされており,動揺軽減装置1の使用時には液体8が充填されている。
また,ウイングタンク4a及び4bは,その上部において,空気ダクト6を介して連通可能とされており,同空気ダクト6は,エアバルブ7によって開閉可能とされている。
(3)コントロール部3は,船速検出装置9からの船速信号と,舵角指令装置10からの情報を検知するポテンショメータ13からの舵角指令信号と,横揺れ角検出装置14からの横揺れ角信号とを取り入れる機能を備えており,コントロール部3は,エアバルブ7に対してその開閉を制御するための制御信号を送信することが可能である。
(4)エアバルブ7は,バルブ11及びこのバルブをシリンダを駆動することにより開閉する電磁弁12を備える。
4物件の動作(1)ウイングタンク4a及び4bは,船体の両舷に設けられ,この内部の液体8が液体通路5を介して両タンク間を左右方向に移動することにより船体の横揺れを減少させ得る。
(2)バルブ11を開閉することにより,ウイングタンク4a及び4b内の空気の移動を制御することが可能であり,その結果,液体8の移動を制御し,動揺軽減装置1の作動/非作動状態を切り換えることができる。
(3)船速検出装置9は,潮流観測装置及びGPS等から適宜選択されて,船体の速度を検出する。
舵角指令装置10は,オートパイロット装置である。
ポテンショメータ13は,舵角指令装置10に設けられ,舵角指令装置10から出力される舵角指令情報を検知する。
コントロール部3は,船速検出装置9からの船速信号と,ポテンショメータ13からの舵角指令信号と,横揺れ角検出装置14からの横揺れ角信号を取り入れ,船速信号と舵角指令信号と,コントロール部3で横揺れ角信号を解析算定した平均横揺れ角とに基づいて動揺軽減装置1を非作動とするか否かの判定を行う。
(4)具体的には,コントロール部3は,船速信号,舵角指令信号,平均横揺れ角の3情報に基づいて,あらかじめ設定された条件にもとづき,動揺軽減装置1を非作動状態とするように制御する。
コントロール部3からエアバルブ7の電磁弁12に,バルブを閉じる旨の信号が送られると,これを受けた電磁弁12は,バルブ11を閉じるべくシリンダを駆動し,バルブ11を閉じる。バルブ11が閉じられることにより,動揺軽減装置1は非作動状態になる。・(別紙)第1図第2図第3図図面
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 杉浦正樹
裁判官 高嶋卓
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