審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成11ワ12586特許権侵害差止等請求事件 平成13ワ3381特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成11ワ3012特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成12ワ12728特許権侵害差止請求事件 | 判例 | 特許 |
平成15ワ4287損害賠償等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成11ワ2311特許権等侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 技術的思想 / 製造方法 / 公知技術 / 技術的範囲 / 同一の発明 / 権利の濫用(権利濫用) / 特許出願日 / 均等 / 置き換え / 同一の作用効果 / 容易に想到(容易想到性) / 実施 / 先使用権(先使用) / 構成要件 / 業として / 差止請求(差止) / 侵害 / 実施権 / 通常実施権 / 請求の範囲 / 変更 / |
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事件 |
平成
10年
(ワ)
14072号
特許権侵害差止等請求事件
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原告 三菱レイヨン株式会社 同訴訟代理人弁護士 生田哲郎 同 名越秀夫 同 山田基司 同補佐人弁理士 杉森修一 被告 日東樹脂工業株式会社 同訴訟代理人弁護士 福田親男 |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2001/04/27 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
1 被告は,別紙原告主張製法目録記載の製法を使用して,別紙物件目録記載の物件を製造し,販売してはならない。 2 被告は,その所有する別紙物件目録記載の物件を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,金3億円及びこれに対する平成10年7月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 |
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事案の概要
本件は,表面特性に優れた合成樹脂成形品の製造方法に関する特許権を有する原告が,被告に対し,被告による別紙物件目録記載のノングレア・ハードコート・アクリルシート板(以下「被告製品」という。)の製造販売が原告の特許権の侵害に当たると主張して,その製造販売の差止め,損害賠償等を求める事案である。 1 争いのない事実 (1) 原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,特許請求の範囲第1項記載の発明を「本件発明」という。また,本件特許に係る明細書(甲第2号証)を,「本件明細書」という。)を有している。 登録番号 特許第1536559号 発明の名称 表面特性に優れた合成樹脂成形品の製造方法 出願日 昭和59年11月1日 (特願昭59-230891号) 公告日 平成1年4月19日 (特公平1-20969号) 登録日 平成1年12月21日 特許請求の範囲第1項 「あらかじめ微小な凸凹が形成された鋳型成形面に耐擦傷性皮膜形成性樹脂原料を塗布し,あとから注入される基材樹脂原料によって膨潤もしくは溶解しない程度にこの皮膜形成性樹脂原料を十分に重合硬化せしめて鋳型成形面に皮膜をあらかじめ形成し,次いで,鋳型内に基材樹脂原料を注入して重合し,上記のあらかじめ形成させた皮膜を基材樹脂側に転移せしめることを特徴とするノングレア性と耐擦傷性に優れた表面を有する合成樹脂成形品の製造方法。」 (2) 本件発明の構成要件を分説すると次のとおりである。 ア あらかじめ微小な凸凹が形成された鋳型成形面に耐擦傷性皮膜形成性樹脂原料を塗布し, イ あとから注入される基材樹脂原料によって膨潤もしくは溶解しない程度にこの皮膜形成性樹脂原料を十分に重合硬化せしめて鋳型成形面に皮膜をあらかじめ形成し, ウ 次いで,鋳型内に基材樹脂原料を注入して重合し, エ 上記のあらかじめ形成させた皮膜を基材樹脂側に転移せしめる オ ことを特徴とするノングレア性と耐擦傷性に優れた表面を有する合成樹脂成形品の製造方法 (3) 被告は,遅くとも平成元年4月19日から,業として,被告製品を製造販売していた。 (4) 被告製品の製造方法は,本件発明の構成要件ア,ウ及びオを充足する。 2 争点 (1) 被告製品の製造方法の特定 (2) 被告製品の製造方法が構成要件イを充足するか。 (3) 被告製品の製造方法が構成要件エを充足するか。 (4) 被告製品の製造方法が本件発明と均等か。 (5) 被告製品の製造方法は公知技術の実施か。 (6) 本件特許に無効理由が存在することが明らかであるか。 (7) 被告が本件特許権について先使用による通常実施権を有するか。 (8) 損害の発生及び額 3 争点に関する当事者の主張 (1) 争点(1)について 【原告の主張】 被告製品の製造方法は,別紙「原告主張製法目録」記載のとおりである。 【被告の主張】 被告が原告主張の方法で被告製品を製造していることは否認する(ただし,別紙「原告主張製法目録」記載の方法のうち,ア,ウ,エ及びオは認める。)。 被告製品の製造方法は,別紙「被告主張製法目録」記載のとおりである。 (2) 争点(2)について 【原告の主張】 ア 本件発明の構成要件イにいう「膨潤もしくは溶解しない程度にこの皮膜形成性樹脂原料を十分に重合硬化せしめて」とは,「ハードコート皮膜全体としては基材樹脂原料によって膨潤,溶解しない程度に十分に重合しているが,基材樹脂原料と接する側の皮膜のごく一部表面層のみが膨潤又は溶解する程度に,皮膜形成用樹脂原料を重合硬化せしめて」という意味に解すべきである。 その理由は,以下のとおりである。 (ア) 皮膜上に基材樹脂原料液,例えばアクリル樹脂液が注入されると,アクリル樹脂液中のアクリルモノマー等の低分子量成分の有する溶媒作用により,アクリル樹脂液と接する皮膜の表面部分は不可避的に膨潤する。この皮膜の表面部分の膨潤は,後の工程で基材樹脂原料を重合させて,皮膜を基材樹脂側に転移させる場合に,皮膜の膨潤層部分と基材樹脂液部分が一体重合して両者間の密着性を確保し,両者の接着性に優れた製品を得るために必要不可欠なものである。 そうすると,当業者の常識から,重合硬化の程度として,十分に重合されていなければならないといっても,ごく一部表面層のみが膨潤することを排斥しているとは考えられない。 (イ) 本件明細書には,皮膜形成用樹脂原料の重合硬化の実施態様として,2段硬化法が記載されているところ,この方法によると空気と接触した被膜の表面層は重合の進行が阻害されるから,表面層の重合硬化反応の進行度が相対的に低くなる。この方法を用いて重合硬化させた実施例1及び2のハードコート皮膜の表面部分では膨潤が起きていることが確認できる。そして,フィルムを使用しないで1段で硬化させた実施例3においては,皮膜表面層の重合がさらに不完全であることから,ハードコート皮膜の表面部分では膨潤が起きているものと解される。 したがって,ハードコート皮膜全体としては,十分に重合されていなければならないといっても,そこでいう重合硬化の程度としては,皮膜のごく一部表面層が膨潤又は溶解することが前提とされているものと解することができる。 (ウ) 原告は,耐擦傷性(耐摩耗性)合成樹脂成型品の製法に関して,本件特許の出願以前に3件の特許出願(特公昭49ー36830,特公昭54ー14617,特公昭56ー53488)をしている(甲第5ないし第7号証)が,これらの特許請求の範囲には,「あとから注入される基材樹脂原料によって膨潤もしくは溶解しない程度に(この皮膜形成性樹脂原料を)(十分に)重合(硬化せしめ)」る旨の記載が含まれている。そして,これらのうち,特公昭56ー53488の明細書(甲第7号証)には,「皮膜の重合硬化を酸素遮断下及び空気存在下の2段階に分けて行った場合,皮膜樹脂と基材樹脂との接着性の特に優れた品質の製品を得ることができる。これは皮膜樹脂層全体としては基材樹脂原料によって膨潤,溶解しない程度に充分に重合しているにもかかわらず,皮膜のごく一部表面層のみが重合不完全で基材樹脂原料と親和し易い状態になっている為と考えられる。」(6欄9ないし16行)と記載されていて,特許請求の範囲の上記記載が,「あとから注入される基材樹脂原料によって皮膜樹脂層全体としては膨潤しないが,皮膜の表面層が膨潤すること」を意味することを明らかにしている。 イ 上記の「ごく一部表面層」がどの位の厚さに相当するかについては,当業者の常識等から相対的に決められるというべきである。 被告製品では,ハードコート皮膜厚が25μm程度であるのに対して膨潤層の厚さが0.5μm程度であるから,ハードコート皮膜の2%程度が膨潤していることになる。 これは,ハードコート皮膜層と基材樹脂層が接着するに足りる膨潤層の厚さであるとともに,製品に欠陥が生じるほどの膨潤ではないということができるから,当業者の常識等からみて,ハードコート皮膜の「ごく一部表面層」のみが膨潤する程度に,皮膜形成用樹脂原料を重合硬化せしめたものということができる。 したがって,構成要件イにいう「膨潤もしくは溶解しない程度にこの皮膜形成性樹脂原料を十分に重合硬化せしめ」たものということかできる。 また,仮に,被告製品の膨潤層がハードコート皮膜の20数%であったとしても,その場合にハードコート皮膜層と基材樹脂層の接着性が確保され,かつ,十分なハードコート特性が得られていることは当業者に明らかであるから,この場合でも「ごく一部表面層」に該当する。 よって,被告製品の製造方法は,本件発明の構成要件イを充足する。 【被告の主張】 ア 皮膜形成性樹脂原料を「十分に重合硬化」すれば,その表面にアクリル樹脂液を注入接触させても被膜の表面部分が膨潤,溶解することはないのであり,構成要件イにいう「膨潤もしくは溶解しない程度にこの皮膜形成性樹脂原料を十分に重合硬化せしめて」とは,重合の完結ないし硬化の終了を意味するものと解すべきである。 イ(ア) 仮に,構成要件イにいう「膨潤もしくは溶解しない程度にこの皮膜形成性樹脂原料を十分に重合硬化せしめて」が皮膜の「ごく一部表面層」における膨潤又は溶解を含むとしても,それは重合硬化を実質上完結したのと同様にみられる範囲でのごくごく限られた膨潤,溶解をいうものと解すべきである。 (イ) 原告は,本件特許の出願に先立つ合成樹脂の製法に関する特許の出願(特公昭47ー13147,特公昭47ー13546)において,基材樹脂原料を注入する時点における皮膜樹脂の重合の程度について,「充分に重合」しているものとし,その重合の程度を,爪で傷がつかない程度に硬く重合していることを要するとしている(乙第11,第12号証)。この点は,その後に出願された本件特許においても変更されておらず,同一の「十分に重合硬化」との表現が用いられている。 したがって,本件発明の構成要件イにいう「膨潤もしくは溶解しない程度にこの皮膜形成性樹脂原料を十分に重合硬化せしめて」とは,皮膜の重合硬化が「爪で傷がつかない程度に十分に重合硬化する」ことを意味するものと解すべきである。 ウ(ア) 被告製品では,基材樹脂層(PMMA樹脂層)から皮膜層(UV樹脂層)中にアクリル樹脂モノマーの拡散による膨潤が認められ,その程度は,両樹脂の境界から被膜層の厚み方向へ25%程度に及ぶ。 そうすると,被告製品の基材樹脂原料による皮膜形成性樹脂の膨潤又は溶解が,厚み方向で25%程度という実質的な範囲で発生していることになるから,構成要件イにいう「膨潤もしくは溶解しない程度にこの皮膜形成性樹脂原料を十分に重合硬化せしめ」たものとはいえない。 (イ) 被告においては,被告製品を製造する第2工程で皮膜の重合の程度を半硬化の状態とするが,その重合の程度を確認するため,1980年代の中頃から現在まで,ライン始動時及び定時に,第2工程の重合後の皮膜表面を爪で軽く擦り,皮膜表面に爪の傷がつくことを確認した上でアクリル樹脂液の注入工程に進んでいる。 したがって,被告製品の皮膜は,本件発明の構成要件イにいう「十分に重合硬化せしめ」たものとはいえない。 (ウ) よって,被告製品の製造方法は,本件発明の構成要件イを充足しない。 (3) 争点(3)について 【原告の主張】 本件発明において,基材樹脂原料を注入する前のハードコート皮膜は,ゲル分率の値からしても100%完全に重合硬化していないため,皮膜中に重合が完了していない溶解性成分が存在し,基材樹脂原料を注入するとそれが重合し,ハードコート皮膜と基材樹脂は化学的に結合していると解することができる。 被告製品の製造方法においては,ハードコート皮膜がアクリル樹脂シートと化学的に結合して,その表面上に転移しているから,構成要件エを充足する。 【被告の主張】 本件発明では,重合硬化が十分に行われた皮膜に基材樹脂原料を注入するので,皮膜に膨潤や溶解は起こらず,表面皮膜と基材樹脂は,相互に結合して化学的に一体となるのではなく,物理的に密接な接触によって皮膜が基材樹脂側に転移することになる。 したがって,本件発明の構成要件エにいう「あらかじめ形成させた皮膜を基材樹脂側に転移せしめる」とは,化学的な結合ではなく,物理的に密接な接触によって転移することを意味していると解すべきである。 被告製品の製造方法では,ハードコート皮膜とアクリル基材樹脂は化学的に一体のシートとして形成されており,物理的に密接な接触によってハードコート皮膜がアクリル基材樹脂に転移しているものではないから,本件発明の構成要件エを充足しない。 (4) 争点(4)について 【原告の主張】 仮に,被告製品のハードコート皮膜厚の全厚みの20数%程度が膨潤していたとしても,被告製品の製造方法は,本件発明と均等の範囲に入るというべきである。 すなわち,本件発明にいう「あとから注入される基材樹脂原料によって膨潤もしくは溶解しない程度にこの皮膜形成性樹脂原料を十分に重合硬化せしめて」という皮膜樹脂層の重合硬化の程度は,本件特許出願日以前に公知であった(前記特公昭56ー53488の明細書(甲第7号証))から,これは本件発明の本質的部分ではない。本件発明の本質的部分はノングレアであって,かつ,ハードコートである皮膜樹脂層を有するノングレアハードコート皮膜付き樹脂板の製造方法にある。 本質的部分ではない皮膜樹脂層の膨潤の程度を20数%程度と置き換えても,本件発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって,被告がその製造方法を実施する時点において,このように置き換えることは当業者が容易に想到することができたから,被告製品のハードコート皮膜厚の全厚みの20数%程度が膨潤していたとしても,被告製品の製造方法は,本件発明と均等の範囲にある。 【被告の主張】 本件発明の構成要件イにいう「あとから注入される基材樹脂原料によって膨潤もしくは溶解しない程度にこの皮膜形成性樹脂原料を十分に重合硬化せしめて」という構成は,原告の関連出願に繰り返し表明されている要件であり,ローム・アンド・ハース・コムパニー(以下「ローム社」という。)出願のプラスチック製品の製造法についての特許(特公昭35-17847,以下「ローム特許」という。)等の公知技術と区別するために要件として入れられたものであるから,本件特許が有効であることを前提とする限り,この要件は本件発明の本質的部分というべきである。 したがって,被告製品の製造方法は,本件発明とその本質的部分において相違していることになるから,本件発明と均等の範囲にあるとはいえない。 (5) 争点(5)について 【被告の主張】 被告製品の製造方法は,ローム特許をそのままないし容易推考の範囲内で実施しているものであるから,公知技術の実施であり,本件発明の技術的範囲には含まれない。 【原告の主張】 ローム特許は,その表面が円滑であって硬い耐摩耗性表面を有するプラスチック製品の改良的製造方法に関するものであり,被告製品のような,表面に凹凸が形成されたノングレア性の耐擦傷性に優れた表面を有する合成樹脂形成品の製造方法ではない。 したがって,被告製品の製造方法は,ローム特許の実施ではないし,同特許から容易に推考することもできない。 (6) 争点(6)について 【被告の主張】 仮に,原告が主張するように,本件発明の構成要件イを,皮膜の厚さ方向全部にわたるまででない限り膨潤,溶解してもよいというように,重合硬化の程度の低いものを含むと解すると,それはローム特許における表面皮膜である重合体フィルムの乾燥沈着の状態を含むことになり,本件発明の「十分に重合硬化」はローム特許のフィルムの重合硬化の状態と区別できないことになる。 ローム特許の皮膜材が本件発明の「耐擦傷性皮膜形成性樹脂原料」に含まれることは明らかであり,本件発明とローム特許はその他の要件において同一であるので,本件特許には無効理由が存することになる。 以上によると,原告の本件請求は,無効となるべき特許権の行使であって,権利の濫用として許されない。 【原告の主張】 前記(5)【原告の主張】に記載のとおり,ローム特許は,円滑な表面を有するプラスチック製品の製造法に関するものであって,ノングレア性の表面に関するものではないから,本件発明がローム特許と同一の発明ということはできない。 また,ローム特許では,ハードコート皮膜が十分に重合していないために,後から注入した基材樹脂原料により膨潤又は溶解され,硬化皮膜のひび割れや鋳型からの型離れを生じるという難点がある。本件発明では,後から注入される基材樹脂原料によってハードコート皮膜の表面層は膨潤又は溶解するが,ハードコート液を「十分に重合硬化」させることで前記難点を克服している。したがって,本件特許とローム特許は明確に相違する。 よって,本件特許がローム特許に基づいて無効となることはない。 (7) 争点(7)について 【被告の主張】 被告は,本件特許の出願日である昭和59年11月1日より前である同年3月から今日まで,被告主張製法目録記載の製造方法によるハードコートノングレア合成樹脂板の製造販売を行っている。 したがって,被告は,被告製品の製造方法について,先使用による通常実施権を有する。 【原告の主張】 被告の主張を争う。 (8) 争点(8)について 【原告の主張】 被告が平成元年4月19日から現在までに販売した被告製品の売上げの合計は20億円を下らない。 被告が被告製品の販売から得た純利益は,売上額の15%を下らないから,被告は被告製品の販売によって少なくとも3億円の利益を得た。 したがって,原告は,特許法102条2項により,同額の損害を被ったものと推定される。 【被告の主張】 原告の主張を争う。 |
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当裁判所の判断
1 争点(1)について (1) 証拠(甲第12,第13号証)によると,原告の研究員が平成6年5月に製造した被告製品(サンプル帳在中のもの)から厚さ0.1μmの切片をミクロトームを用いて切り出して試験片を作成し,これを透過型電子顕微鏡で観察し,ハードコート皮膜の厚み及び「色が暗く,かつ平滑な(鱗状でない)層」の厚さを測定したところ,「色が暗く,かつ平滑な(鱗状でない)層」がハードコート皮膜厚全体の厚みの2%前後であったことが認められる。 (2) 証拠(甲第12,第14号証,乙第15ないし第19号証)によると,@ハードコート皮膜の膨潤していない層では,材料が均一であるため,屈折率が変化しないが,膨潤している層では,屈折率が連続的に変化するところ,屈折率は,干渉顕微鏡を用いることによって観察,測定することができること,A原告の研究員が,平成6年5月に製造した被告製品(サンプル帳在中のもの)から厚さ5.0μmの切片をミクロトームを用いて切り出して試験片を作成し,これを干渉顕微鏡で観察,測定したところ,「屈折率が連続的に変化する領域」(以下「屈折率分布領域」という。)は測定限界である1μm未満であって観察できず,ハードコート皮膜厚全体の厚みの4%未満(測定限界未満)であったこと,B株式会社日産アークが,被告の依頼を受けて,平成6年5月及び平成12年4月に製造した被告製品(平成6年5月に製造した被告製品は,サンプル帳在中のもの)から厚さ50μmの切片をカッターで切り出し,樹脂に包埋し,研磨して試験片を作成し,ハードコート皮膜の厚みを測定したこと,C慶應義塾大学のA教授が,被告の依頼を受けて,上記Bの各試験片を干渉顕微鏡を用いて観察,測定したところ,平成6年5月に製造した被告製品(サンプル帳在中のもの)においては,屈折率分布領域の幅が約6.5μmと測定され,ハードコート皮膜厚全体の厚みの約24.2%であり,平成12年4月に製造した被告製品においては,屈折率分布領域の幅が約6.3μmと測定され,ハードコート皮膜厚全体の厚みの約28.6%であったこと,以上の事実が認められる。 (3) 原告は,前記(1)の透過型電子顕微鏡の観察結果に基づいて,膨潤層は,硬度が高い非膨潤層に比べ,基材樹脂原料が混入しているため硬度が低く,ミクロトームによって平滑に切断することができるので,鱗状の模様が観察されないとして,「色が暗く,かつ平滑な(鱗状でない)層」が膨潤層であり,この層がハードコート皮膜厚全体の厚みに占める割合は2%前後であるから,被告製品ではハードコート皮膜の全厚みに対して2%前後の厚みで膨潤していると主張する。 原告の主張する透過型電子顕微鏡による観察は,非膨潤層と膨潤層の硬度の違いによって膨潤層を特定し,測定したものであるが,基材樹脂原料の混入が少ない場合でも直ちに硬度が変化し,切断面が変化することを認めるに足りる証拠はないから,膨潤している領域すべてが「色が暗く,かつ平滑な(鱗状でない)層」として観察されるとは認められない。「色が暗く,かつ平滑な(鱗状でない)層」のみを膨潤層として測定すると,実際の膨潤層の厚さよりも薄くなる可能性を否定することができない。 そうすると,原告の前記主張は,直ちに採用できない。 (4) 原告は,前記(2)Aの原告の干渉顕微鏡の観察結果によると,膨潤層が測定限界である1μm未満であって観察できず,これと異なる前記(2)Cの被告の干渉顕微鏡による観察結果は,試験片が不適切であるために誤っている旨主張する。 ア まず,原告は,原告の試験片の厚みが5.0μmであるのに対して,被告の試験片の厚みは50μmであることから,試験片を切り出す際にハードコート皮膜層と基材樹脂層の境界面とカッターによる切断面が直角になっていなかったり,試験片を樹脂に包埋する際に切断面と研磨面が平行になっていなかったり,ハードコート板の各面間が直角でなかったりした場合には,厚みの大きい被告の試験片では測定誤差が大きくなり,屈折率分布領域に,膨潤層のみならず傾斜領域(干渉光が基材樹脂層とハードコート皮膜層の2つの屈折率が異なる層を通過する領域)まで含むことになり,屈折率分布領域の測定値が膨潤層より大きい値になると主張する。 しかしながら,被告の実験における観察画像である乙第15号証図4及び乙第18号証図1のいずれにおいても,ハードコート皮膜層(UV樹脂層)とイマージョンオイルとの間に,明確な傾斜領域を認めることはできないから,仮に傾斜領域が存在しているとしても,わずかであると考えられる。そして,他に,被告の試験片のハードコート皮膜層と基材樹脂層の境界面が底面に対して直角でないことを認めるに足りる証拠はない。したがって,この点についての原告の上記主張を採用することはできない。 イ また,原告は,2つの物質の屈折率差が大きいほどベッケ線がはっきりと観察され,試験片の厚みが厚いほどベッケ線が広い幅で観察されるところ,被告の観察結果では,ハードコート皮膜層と基材樹脂層との屈折率差が0.030と大きく,試験片の厚みが50μmと厚いので,ベッケ線が現われて膨潤層が隠れてしまい,膨潤層の測定ができないと主張する。 しかしながら,証拠(甲第21号証,乙第26,第27,第30号証)によると,ベッケ線は試料に正しくピントを合わせたときは消え,ピントが合っていないときに現れるものであること,観察に当たっては,試験片の厚み全体にピントを合わせる必要はなく,試験片の上側(顕微鏡側)表面にピントを合わせればよいこと,そもそもベッケ線は明るい帯又は線であって,ピントをずらした状態で現れた乙第27号証図2に見られるような明るく見える線がベッケ線であること,以上の事実が認められる。 これらによると,乙第15号証図4及び乙第18号証図1で観察される屈折率分布領域は,ベッケ線とは違うものと認められ,ベッケ線に関する原告の上記主張を採用することはできない。 ウ さらに,証拠(甲第14号証,乙第15,第20号証)によると,@干渉顕微鏡による干渉縞の特徴は,屈折率が均一な領域では干渉縞が直線になり,複数本見られる干渉縞が互いに平行であって,屈折率が均一でない領域では,屈折率の変化に応じて干渉縞がずれるが,複数本見られる干渉縞は互いに平行になること,A被告の観察画像(乙第15号証図4)では,イマージョンオイル領域,PMMA層(基材樹脂層)及びUV樹脂層(ハードコート皮膜層)で複数本見られる干渉縞は直線かつ平行であり,屈折率分布領域でも複数本の干渉縞は平行であるうえ,UV樹脂層とイマージョンオイルとの境界線が直線で,UV樹脂層の厚さが均一であること,B原告の観察画像(甲第14号証図3)では,イマージョンオイル領域で複数本見られる干渉縞は直線かつ平行であるが,PMMA層及びUV樹脂層で複数本見られる干渉縞は平行になっておらず各々が異なる形状の曲線となっており,UV樹脂層において,その屈折率である1.52を超える1.54という屈折率が測定されるうえ,各層の境界線が曲がっており,UV樹脂層の厚さが一定ではないこと,以上の事実が認められる。 これらの事実からすると,被告の観察結果は干渉縞の基本的特徴を満たしており,干渉顕微鏡による観察結果として正常なものであるのに対して,原告の観察結果は干渉縞の基本的特徴を満たしていない異常なものであるというほかないから,原告の観察結果に基づいて膨潤層の幅を認定することはできない。 エ 以上によると,原告の干渉顕微鏡の観察結果に基づく前記主張は採用できない。 これに対して,前記のとおり,被告の干渉顕微鏡の観察結果に不適切な点は認められないから,被告の前記観察結果から,ハードコート皮膜の全厚みに対して,平成6年5月に製造した被告製品においては約24.2%の厚みで,平成12年4月に製造した被告製品においては約28.6%の厚みで,それぞれ膨潤していることが認められる。 (5) よって,被告が製造販売している被告製品の製造方法は,別紙「被告製法目録」記載のとおりであると認められる(以下,同目録記載の製造方法を「被告製法」という。)。 2 争点(2)について (1)ア 証拠(甲第7号証)によると,本件特許の出願以前に公開された原告の特許出願(特公昭56ー53488,以下「原告先願」という。)の明細書には,「皮膜の重合硬化を酸素遮断下及び空気存在下の2段階に分けて行った場合,皮膜樹脂と基材樹脂との接着性の特に優れた品質の製品を得ることができる。これは皮膜樹脂層全体としては基材樹脂原料によって膨潤,溶解しない程度に充分重合しているにもかかわらず,皮膜のごく一部表面層のみが重合不完全で基材樹脂原料と親和し易い状態になっている為と考えられる。」(6欄9ないし16行)と記載されていることが認められる。 原告先願の明細書における上記記載は,皮膜の重合硬化を酸素遮断下及び空気存在下の2段階に分けて行ったときには,皮膜層全体が十分な重合を達成している場合であっても,皮膜のごく一部表面層のみが重合不完全な状態であることがあり得ることを示しており,本件特許請求の範囲の記載を解釈をするに当たっては,この記載を,本件特許出願当時の技術水準を表わす一資料として考慮することができるというべきである。 イ 証拠(甲第2号証)によると,本件明細書では,「皮膜形成性樹脂原料の重合硬化の具体的方法は特に限定されない。」(6欄44行ないし7欄1行)とし,「皮膜原料をそれと親和性のないカバー体で密着被覆したうえ重合硬化する方法」(7欄7行ないし8行)や2段硬化法(皮膜の重合硬化を酸素遮断下及び空気存在下の2段階に分けて行う方法)が記載されているほか,実施例3では,重合硬化する際に皮膜形成性樹脂原料をカバー体で被覆することが示されていない方法が記載されていることが認められる。 これらの本件明細書の記載に上記アで述べたところを総合すると,本件発明においては,カバー体で被覆して重合硬化した場合には,皮膜形成性樹脂原料の重合硬化は完全に行われ,膨潤層が形成されないこともあり得る反面,2段硬化法によって重合硬化した場合などには,十分に重合硬化していてもなお,皮膜のごく一部表面層が膨潤していることがあり得るものと解される。 そうすると,「膨潤もしくは溶解しない程度にこの皮膜形成性樹脂原料を十分に重合硬化せしめて」という構成要件は,「ハードコート皮膜全体としては基材樹脂原料によって膨潤,溶解しない程度に十分に重合しているが,基材樹脂原料と接する側の皮膜のごく一部表面層のみが膨潤又は溶解している」場合を含むものと解することができる。 ウ 証拠(甲第2号証)によると,本件明細書には,本件発明に,基材樹脂原料と接する側の皮膜が「ごく一部表面層」を超えて膨潤又は溶解している場合が含まれる旨の記載はないものと認められる(実施例3も,重合硬化する際に皮膜形成性樹脂原料をカバー体で被覆することが示されていないというにとどまり,その場合の膨潤又は溶解の程度が記載されているわけではないから,本件発明に,基材樹脂原料と接する側の皮膜が「ごく一部表面層」を超えて膨潤又は溶解している場合が含まれることを示しているということはできない)から,本件発明に,基材樹脂原料と接する側の皮膜が「ごく一部表面層」を超えて膨潤又は溶解している場合が含まれることはない。 (2) 前記のとおり,被告製品では,ハードコート皮膜の全厚みに対して約25%程度の厚みで膨潤しているものと認められるところ,このようにハードコート皮膜の約4分の1という実質的な範囲で膨潤が生じている場合には,もはや,「基材樹脂原料と接する側の皮膜のごく一部表面層のみが膨潤している」ということはできない。 したがって,被告製法は,本件発明の構成要件イにいう「膨潤もしくは溶解しない程度にこの皮膜形成性樹脂原料を十分に重合硬化せしめて」という構成要件を充足しないというべきである。 3 争点(4)について (1) 均等が成立するためには,本件特許請求の範囲に記載された構成中の被告製法と異なる部分が,発明の本質的部分ではないことを要する。 そして,発明の本質的部分とは,本件特許請求の範囲に記載された発明の構成のうちで,本件発明特有の作用効果を生じさせる技術的思想の中核をなす特徴的な部分,すなわち,その部分が他の構成に置き換えられるならば,全体として本件発明の技術的思想とは別個のものと評価されるような部分をいうものと解するのが相当である。 (2)ア 証拠(甲第2号証,乙第1,第2号証)と弁論の全趣旨によると,ローム特許の発明の目的は,不規則性のない円滑な表面を有する硬い耐摩耗性表面を有するプラスチック製品の改良的製造方法を提供することにあること,この発明は,耐擦傷性皮膜形成性樹脂原料である「ジメタクリレートの少くとも二つの混合物又はこれ等ジメタクリレートの少くとも一つから誘導される可溶性低分子量合体の溶液」を鋳型部材の内面に適用し,溶液を乾燥してジメタクリレートの一つの重合体のフィルムを沈着し,その後,基材樹脂原料である「メタクリル酸エステル」とその重合開始剤との混合物を鋳型に導入して重合性ジメタクリレートのフィルムに接触させ,鋳型を封塞して外気と遮断し,鋳型内容物を加熱し,ジメタクリレートの重合とメタクリル酸エステルの重合とを同時的に行い,ジメタクリレートの交叉結合非融解性重合体よりなる硬質耐磨耗性表面を有する一体的鋳造物を形成することを特徴とする発明であること,ローム特許の明細書には,操作条件,鋳型の構成及び操作方法は,米国特許第2154639号記載のものを使用しうると記載されていること,同米国特許の明細書中(乙第2号証)には,製品表面にマット効果(ノングレア効果)を与える方法について記載されていること,以上の事実が認められる。 以上の事実からすると,本件特許の出願時に,ローム特許によって,耐擦傷性皮膜形成性樹脂原料を鋳型の内面に適用し,その後,鋳型内に基材樹脂原料を注入して重合し,耐擦傷性に優れた表面を有する合成樹脂成形品を製造する方法は,知られており,これに,前記米国特許の製品表面にマット効果(ノングレア効果)を与える方法を適用することは,当業者が容易にできたものと認められる。 しかしながら,本件発明では「あとから注入される基材樹脂原料によって膨潤もしくは溶解しない程度にこの皮膜形成性樹脂原料を十分に重合硬化せしめて鋳型成形面に皮膜をあらかじめ形成し,次いで,鋳型内に基材樹脂原料を注入して重合し,上記のあらかじめ形成させた皮膜を基材樹脂側に転移せしめ」ているのに対し,ローム特許の製造方法では,上記認定のとおり,皮膜樹脂原料を乾燥させた後,基材樹脂原料を導入してから外気と遮断し,加熱して皮膜樹脂原料と基材樹脂原料の重合を同時的に行うとされているから,この重合硬化の方法において,本件発明とローム特許とは相違していると認められる。 イ 一方,証拠(甲第7号証)によると,原告先願には,「あとから注入される基材樹脂原料によって膨潤もしくは溶解しない程度に十分に重合硬化せしめて鋳型成形面に耐摩耗性樹脂皮膜をあらかじめ形成し,その上に基材樹脂原料を注入し重合せしめて,上記の予め形成された耐摩耗性樹脂硬化皮膜を転移せしめる」技術が開示されているものと認められる。 ウ そうすると,本件発明の技術的思想の中核をなす特徴的部分,すなわち本質的部分は,上記ア認定のローム特許及び前記米国特許の方法に上記イ認定の方法を組み合わせたところにあるものというべきである。 しかるところ,被告製法は,この本質的部分について,本件発明とは相違するということができる。 (3) したがって,被告製法について,均等の成立を認めることはできない。 4 以上によると,その余の点につき判断するまでもなく,原告の本訴請求は,いずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 |
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追加 | |
別紙原告主張製法目録アあらかじめ微小な凹凸が形成されたガラス板の凹凸形成面上にアクリル樹脂液を含むハードコート液を塗布し、 イ後から注入される基材樹脂原料たるアクリル樹脂液によって、硬化されたハードコート皮膜のアクリル樹脂液と接する側がハードコート皮膜全厚みに対して約2%前後の厚みに膨潤する程度に塗布された該ハードコート液に紫外線を照射して重合硬化させて、ガラス板の凹凸形成面上にハードコート皮膜をあらかじめ形成し、 ウ次いで、凹凸形成面を有する該ガラス板を、形成されたハードコート皮膜が内側になるようにして別のガラス板と対向させ、周囲をガスケットで封じて得た鋳型内にアクリル樹脂液を注入した後、 エ該鋳型内の前記ハードコート皮膜とアクリル樹脂液とを加熱して重合させて、あらかじめ形成された前記ハードコート皮膜とアクリル樹脂基材とを一体化させるオことを特徴とするノングレア性と耐擦傷性に優れた表面を有するアクリル樹脂シートの製造方法。 物件目録1商品名クラレックスノングレアRH2構成メタアクリル樹脂層上に,その表面に微小な凹凸が形成されたハードコート樹脂層が積層されてなるノングレア・ハードコート・アクリルシート板別紙被告主張製法目録アあらかじめ微小な凹凸が形成されたガラス板の凹凸形成面上にアクリル樹脂液を含むハードコート液を塗布し、 イ後から注入される基材樹脂原料たるアクリル樹脂液によって、硬化されたハードコート皮膜のアクリル樹脂液と接する側の表面は膨潤するが皮膜の厚さ方向全部までは膨潤しない程度に塗布された該ハードコート液に紫外線を照射して重合硬化させて、ガラス板の凹凸形成面上にハードコート皮膜をあらかじめ形成し、 ウ次いで、凹凸形成面を有する該ガラス板を、形成されたハードコート皮膜が内側になるようにして別のガラス板と対向させ、周囲をガスケットで封じて得た鋳型内にアクリル樹脂液を注入した後、 エ該鋳型内の前記ハードコート皮膜とアクリル樹脂液とを加熱して重合させて、あらかじめ形成された前記ハードコート皮膜とアクリル樹脂基材とを一体化させるオことを特徴とするノングレア性と耐擦傷性に優れた表面を有するアクリル樹脂シートの製造方法。 被告製法目録アあらかじめ微小な凹凸が形成されたガラス板の凹凸形成面上にアクリル樹脂液を含むハードコート液を塗布し、 イ後から注入される基材樹脂原料たるアクリル樹脂液によって、硬化されたハードコート皮膜のアクリル樹脂液と接する側がハードコート皮膜全厚みに対して約25%前後の厚みに膨潤する程度に塗布された該ハードコート液に紫外線を照射して重合硬化させて、ガラス板の凹凸形成面上にハードコート皮膜をあらかじめ形成し、 ウ次いで、凹凸形成面を有する該ガラス板を、形成されたハードコート皮膜が内側になるようにして別のガラス板と対向させ、周囲をガスケットで封じて得た鋳型内にアクリル樹脂液を注入した後、 エ該鋳型内の前記ハードコート皮膜とアクリル樹脂液とを加熱して重合させて、あらかじめ形成された前記ハードコート皮膜とアクリル樹脂基材とを一体化させるオことを特徴とするノングレア性と耐擦傷性に優れた表面を有するアクリル樹脂シートの製造方法。 |
裁判長裁判官 | 森義之 |
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裁判官 | 岡口基一 |
裁判官 | 男澤聡子 |