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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成12ワ16531特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成12ワ2091特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成12ワ12728特許権侵害差止請求事件 判例 特許
平成12ワ27714特許権に基づく製造販売禁止等請求事件 判例 特許
平成12ワ7510特許権侵害差止請求事件 判例 特許
関連ワード 技術的思想 /  公知技術 /  技術的範囲 /  権利の濫用(権利濫用) /  対象製品 /  参酌 /  均等 /  置き換え /  同一の作用効果 /  容易に想到(容易想到性) /  意識的除外(意識的に除外) /  禁反言 /  特許発明 /  実施 /  耐用期間 /  構成要件 /  差止請求(差止) /  侵害 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 11年 (ワ) 9987号 特許権侵害行為差止等請求事件
原告 アイエヌジ商事株式会社
訴訟代理人弁護士 藤木久
被告 古河マゴト株式会社
訴訟代理人弁護士 安田有三
補佐人弁理士 越場隆
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2001/05/22
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告は、別紙被告製品目録(原告)記載の物件を製造し、輸入し、使用し、
譲渡し、貸し渡し、又は譲渡若しくは貸渡しのために展示してはならない。
2 被告は、その占有に係る前記目録記載の物件及びその半製品を廃棄せよ。
3 被告は、原告に対し、金100万円及びこれに対する平成5年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
(争いのない事実) 1 原告は、次の特許権(以下「本件特許権」という。)を有している。
(1) 特許第1618574号 (2) 発明の名称 粉砕機に使用される破砕面部材 (3) 出 願 日 昭和61年12月9日(特願昭61-292884号) (4) 公 告 日 平成2年9月7日(特公平2-39939号) (5) 登 録 日 平成3年9月30日 (6) 特許請求の範囲 本件発明の特許出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)記載の特許請求の範囲第1項の記載は、別添特許公報(以下「本件公報」という。)該当欄記載のとおりである(以下、その特許発明を「本件発明」という。)。
2 本件発明は次のとおり分説するのが相当である。
@ 破砕面aと破砕面bとの間に連続的に材料を噛み込み粉砕して行く粉砕機の破砕面部材A、Bであって、
A その少なくとも表層部分に耐摩耗性の異なる2種類のブロック1、2が、
前記破砕面a、b上で材料の噛み込まれて行く方向Xに交互に配列されており、
B 耐摩耗性の低いブロック2の巾wが耐摩耗性の高いブロック1の巾Wに対して0.1×W〜1.0×Wを満足し、
C 且つ、使用時の摩耗に伴って耐摩耗性の低いブロック2に生じる安定的な凹みの深さlが0.5〜15oになるように両ブロックの耐摩耗性および巾が設定されてなる D ことを特徴とする粉砕機に使用される破砕面部材 3 被告は、ベルギー国の法人であり親会社でもあるマゴトー・ソシエテ・アノニムから、商品名が「DUOCAST」という粉砕機に使用される破砕面部材を輸入し、販売している(そのパンフレットが甲9)。
(原告の請求) 原告は、上記「DUOCAST」のうち形状がテーパー状のもの(以下「被告製品」という。)は、本件発明の技術的範囲に属するから、被告がそれを輸入、
販売等することは本件特許権を侵害するとして、その製造、輸入、譲渡等の差止めと損害賠償(弁護士費用)を請求している。
(争点) 1 被告製品の特定。
2 被告製品は構成要件@及びAを充足するか。
3 被告製品は構成要件Bを充足するか。
4 被告製品は構成要件Cを充足するか。
5 損害の額。
争点に関する当事者の主張
1 争点1(被告製品の特定)について 【原告の主張】 被告製品は、別紙被告製品目録(原告)のとおり特定されるべきである。
【被告の主張】 被告製品は、別紙被告製品目録(被告)のとおり特定されるべきである。
2 争点2(被告製品は構成要件@及びAを充足するか)について 【原告の主張】 (1) 被告製品の破砕面部材は、粉砕機に単体(対象物を噛み込んでいく破砕面の一方)で使用されるものであるが、このようなものも本件発明の技術的範囲に属する。構成要件@には「破砕面部材A、B」と記載され、構成要件@及びAには「破砕面a、b」と記載されているが、@本件明細書添付図面では、破砕面部材Bは第9図にしか記載されておらず、同図は粉砕機の一般的な粉砕原理を図示したものにすぎないから、本件明細書添付図面上は破砕面部材Bには本件発明の構成が要求されていないこと、A特許請求の範囲の記載に当たり、明細書添付図面中の符号を使用したとしても、それは、特許請求の範囲の記載を理解するためのものであり、その技術的範囲を同図面の符号記載のものに限定することにはならないこと、
B本件発明は、破砕面部材の構成に関する発明であって、セットとなる破砕面部材との組み合わせに関するものではないこと、C粉砕機の破砕面部材である以上、他の破砕面部材とセットで使用する必要はあるが、その他方の破砕面部材に本件発明を使用しなくても、本件発明の構成上全く支障がなく本件発明の作用効果に影響がないことは、本件明細書の記載から明らかなことから、本件発明の構成を具備する破砕面部材は1つで足りる。
したがって、被告製品は、構成要件@及びAを充足し、本件発明の技術的範囲に属する。
(2) 本件明細書の特許請求の範囲には、「破砕面部材A、B」と記載されているが、本件発明の技術思想や作用効果からは破砕面の一方で本件発明の破砕面部材が使用されていればよく、本件明細書には破砕面の一方に本件発明の破砕面部材が使用された場合が記述されているから、破砕面の両面で本件発明の破砕面部材を使用することを前提にしたかのような特許請求の範囲の記載は、明らかな誤記と理解することができる。仮に明らかな誤記といえないとしても、同様の理由から、本件発明の破砕面部材を片面若しくは両面のいずれで使用するかは、実質的な意味のない微差にすぎない。
(3) 仮に、被告製品が破砕面部材単体であることをもって、本件発明の文言侵害に該当しないとしても、被告製品は、本件発明と均等であり、その技術的範囲に属する。すなわち、本件発明の本質的部分は、耐摩耗性の高いブロックと低いブロックを構成要件Aのように交互に配列することと、構成要件B、Cの部分にあり、
破砕面部材Bの存在は本質的部分でない。その他、被告製品のように破砕面部材を対で使用しなくても本件発明と同一の作用効果を奏するし、そのことは当業者が容易に推考できたものであり、また、被告製品は本件発明の特許出願時の公知技術と同一又は当業者がこれから同出願時に容易に推考できたものではなく、特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外したというような特段の事情もない。
【被告の主張】 (1) 本件発明は、「破砕面部材AとB」及びその「破砕面aとb」を必須の要件とするものである。本件発明の特許請求の範囲には、符号が使用されているが、
当該符号を取り除いたとしても、構成要件@が、2つの破砕面部材の存在を要求していることは明らかである。
被告製品を使用する粉砕機は、被告製品を一方の破砕面とし、他方の破砕面がテーブル状破砕面となるものであって、被告製品は1個単位で使用されるものであり、被告製品を2つ並べて接触させ、その2つのロール両面で粉砕作業がなされることはないから、構成要件@及びAを充足しない。また、被告製品が採用される縦型ローラミルでは、押し潰し粉砕手段が採用されているから、構成要件@の「噛み込み粉砕」を行っていない。
(2) 原告は、本件発明の特許請求の範囲の記載は誤記であると主張するが、誤記とは、例えば「長さ5平方センチメートル」というように記載自体が矛盾しており、その記載を訂正しないと意味自体が把握できない場合をいうところ、構成要件@及びAに「誤記」など存在しない。
したがって、原告の主張は失当である。
(3) 原告は、本件発明の破砕面部材を片面と両面のいずれで使用するかは実質的な意味のない微差にすぎないと主張するが、「破砕面部材Aと破砕面a」だけの場合、構成要件@の「破砕面aと破砕面bとの間に連続的に材料を噛み込み粉砕」及び構成要件Aの「表層部分に耐摩耗性の異なる2種類のブロック1、2が、前記破砕面a、b上で材料の噛み込まれて行く方向Xに交互に配列され」との構成及び作用が得られない。
したがって、「破砕面部材Aと破砕面a」だけと、構成要件@及びAとの間には、本質的な相違があるから、その相違を微差ということはできない。
(4) 原告は、被告製品は本件発明と均等であると主張するが、被告製品と本件発明には、上記(3)記載のとおりの本質的な相違があるのであるから、均等に当たらない。また、原告の主張によれば、被告製品には、そもそも本件発明の「破砕面部材B」と均等を論ずる物がそもそも存在しないこととなるから、特許発明の要件中「対象製品等と異なる部分」と「対象製品等におけるもの」との存在を前提とする均等が成立する余地はない。
また、原告は、本件特許出願の過程で平成2年1月12日付手続補正書を提出し、本件発明の出願当時公知であった実公昭55-9389号実用新案公報(乙3)記載の考案により容易推考との拒絶理由を回避するため、構成要件B及びCを特許請求の範囲に加えた。したがって、構成要件B及びCを有する2つの破砕面部材が存することが、本件発明の作用効果を生じさせる技術的思想の中核をなす特徴的部分であるというべきであるとともに、原告は、構成要件B及びCを具備する2つの破砕面部材でないものを、本件発明の技術的範囲から意識的に除外したというべきである。
また、破砕面部材Bがあるものと、破砕面部材Bがないものとを置き換えた場合、その作用効果が異なるものとなることは明らかであり、また、そのように置き換えることは本件明細書の記載と矛盾するものであるから、当業者が容易に想到することはできない。
さらに、被告製品は、上記公知技術から当業者が容易に推考できたものである。
したがって、原告の主張は失当である。
3 争点3(被告製品は構成要件Bを充足するか)について 【原告の主張】 被告製品が構成要件Bを充足していることは、被告製品を撮影した写真(甲5)を見れば明らかである。
【被告の主張】 構成要件Bは、両ブロックの全長にわたっての要件であるが、被告製品はリブ50部分において構成要件Bを充足しない。
4 争点4(被告製品は構成要件Cを充足するか)について 【原告の主張】 (1) 本件明細書の記載(本件公報5欄8〜20行)からすると、構成要件Cの「使用時の摩耗に伴って耐摩耗性の低いブロック2に生じる安定的な凹み」とは、
使用後に、耐摩耗性の低いブロック2が耐摩耗性の高いブロック1よりも早く摩耗することによって生じる凹みのことであり、いったん所定の深さの凹みを生じると、耐摩耗性の高いブロック1の摩耗進行の分だけ、耐摩耗性の低いブロック2の頂部が摩耗するので、凹みは常にほぼ同じ深さを維持することを示している。
したがって、前記「安定的な凹み」が製品出荷時における使用前の状態や、ブロック1が摩耗し尽くして製品寿命が終了した段階の状態でないことはいうまでもない。
そして、被告製品はマゴトー・ソシエテ・アノニムの有する特許第2799250号特許権に係る特許発明実施品でもあるところ、その特許公報(乙1)の記載(同証拠の【0015】)からすれば、被告製品が「使用時の摩耗に伴って耐摩耗性の低いブロック2に生じる安定的な凹み」を有していることは明らかである。
(2) また、破砕面部材の少なくとも表層部分に耐摩耗性の異なる2種類のブロックが、破砕面上で材料の噛み込まれていく方向に交互に配列されて破砕面部材においては、耐摩耗性の低いブロックに生じる凹みの深さは、当該ブロックの幅よりも大きくならない。なぜなら、原料は、まず耐摩耗性の高いブロックによって粉砕され、耐摩耗性の高いブロック相互の隙間(耐摩耗性の低いブロックの幅)よりも小さくなったものだけが、耐摩耗性の低いブロックによって粉砕されるところ、原料は自らの大きさ以上には耐摩耗性の低いブロックを摩耗できないから、結局、耐摩耗性の低いブロックの幅以上には、当該ブッロクを摩耗できないからである。しかも、対となる破砕面の間には、実際は3〜8oの遊びがあることや、粉砕された原料によるセルフライニング効果(粉砕された原料が溝の底に埋没して溝の摩耗進展を防止すること)などのために、その凹みの深さはその幅よりも浅くなるのである。
そして、被告製品における耐摩耗性の低いブロックの幅は7〜8oであるから、その凹みの深さもこれ以下となると考えられるところ、実際、被告製品のパンフレットには、その凹みの深さが3〜4oであると記載されている。したがって、被告製品は、構成要件Cの「安定的な凹みの深さlが0.5〜15oになるように両ブロックの耐摩耗性および巾が設定されてなる」という要件を充足する。
(3) なお、被告が提出する被告製品の写真(乙9ないし12)に写されている被告製品は、粉砕を行う大径部分において、耐摩耗性の高い部材がすべて摩耗して消失しており(穴や亀裂が生じているものもある。)、溝がなくなっているから、
商品寿命のなくなった廃品であり、これらの写真を根拠に、被告製品が構成要件Cを充足しないということはできない。
【被告の主張】 (1) 原告の本件特許出願に対する審査における主張及び構成要件Cの記載からすれば、構成要件Cの「安定的な凹み」とは、ロール幅(長手軸)方向に存在する耐摩耗性の高いブロック1(幅W)が同方向での偏摩耗をせず、耐摩耗性の低いブロック2(幅w)にブロック1の表面に対して凹みが生じることをいう。すなわち、ブロック1がロール幅方向で偏摩耗しないので、「ブロック2の凹みがロール幅方向のブロック1の全長に沿って溝状に延在していること」になる。
しかし、被告製品のロール面には使用に従って絶えず摩耗し続け、しかも、ロール幅(長手軸)方向で偏摩耗を生じさせるものであるから、「使用時の摩耗に伴って放射状フィン52に安定的な凹み」はそもそも存在しない。
(2) また、被告製品は、「安定的な凹みの深さlが0.5〜15oになるように両ブロックの耐摩耗性及び巾が設定」されていない。被告製品でも、使用中両ブロックが併存するときは、耐摩耗性の低い部分に自然発生的に凹みが生じる。しかしその深さは、「0.5〜15o」が過渡的かつ局部的に生じても、凹みの深さが同数値範囲に維持されることはない。また、耐摩耗性の高いブロックが消失しても、耐摩耗性の低い支持部材42の耐摩耗性を利用して粉砕を行うから、この時点では両ブロック間の凹みを論ずる余地がない。
したがって、被告製品は、構成要件Cを充足しない。
(3) なお、原告の主張によれば、耐摩耗性の異なるブッロク1及び2が存在すれば、本件発明の技術的範囲に属することになるが、そのような主張は、原告が、
実公昭55-9389号実用新案公報記載の考案により本件発明の特許出願が拒絶されることを回避するために、構成要件Cを追加する補正をした行為と矛盾するものであり、禁反言の法理から見ても許されず、また、そのような主張は権利濫用であり許されない。
5 争点5(損害の額)について 【原告の主張】 原告が本件解決のために要した弁護士費用のうち、少なくとも金100万円を被告に負担させるのが相当である。
【被告の主張】 争う。
争点に対する判断
1 争点4(構成要件C充足性)について 被告製品の構成の特定については、当事者間に争いがあるが、被告製品の構成全体の認定はひとまず措き、まず争点4について判断する。
(1) 構成要件Cには、「使用時の摩耗に伴って耐摩耗性の低いブロック2に生じる安定的な凹みの深さ」という記載があるが、これが具体的にどのような状態を意味しているのかについては、特許請求の範囲の記載からは、一義的に導き出されない。そこで、本件明細書の記載を参酌するに、証拠(甲1)によれば、本件明細書には次の記載があることが認められる。
ア 問題点を解決するための手段 (ア) 本件公報5欄5〜20行 ブロック1よりブロック2の耐摩耗性が劣ると規定して、本発明のローラAで材料の粉砕を行えば、第2図イ、ロに示されるように、使用開始後しばらく経過すると、耐摩耗性の低いブロック2の頂部破砕面は耐摩耗性の高いブロック1より速やかに摩耗を生じ、図に示した深さlの凹みを自然発生的に生じる。
このような状況に至ると材料の噛み込みが良くなり、粉砕効率が急激に改善され、その後、耐摩耗性の高いブロックlが使用限界まで摩耗するまで、高水準の粉砕効率が維持継続される。
すなわち、一旦所定の深さlの凹みを生じると、耐摩耗性の高いブロックlの摩耗進行の分だけ、耐摩耗性の低いブロック2の頂部が摩耗するので、凹みは常に同じ深さlを維持するものである。
(イ) 本件公報8欄19〜23行 この凹みは、主に耐摩耗性ブロック1(耐摩耗性の高いブロック1のこと)とスペーサブロック2(耐摩耗性の低いブロック2のこと)との耐摩耗性差に支配されるが、スぺーサブロックの幅wによる影響も受ける。したがって所望の深さlを得るためには、耐摩耗性差とブロック幅の双方が調整される。
イ 発明の効果(本件公報9欄33行〜10欄24行) 本発明の粉砕面部材はその少なくとも表層部分に耐摩耗性の異なる2種類のブロックを交互に配列し、耐摩耗性の劣るブロックに自然発生的に凹みを形成させて、材料の噛み込み状態を良好ならしめるもので、粉砕面部材そのものの寿命は耐摩耗性の高いブロックに支配されるので、粉砕面部材は全体として極めて高い耐久性を示すことになり、更に、その間、凹みは両ブッロクの耐摩耗性の差に応じて一定に保持されるので、耐用期間の全体にわたって良好な粉砕効率を維持し、また、この凹みは自然発生的に形成されるので、凹みに起因して騒音や振動を生じることも極めて少ないものである。
(2) 以上の本件明細書の記載を参酌すれば、構成要件Cにいう「使用時の摩耗に伴って耐摩耗性の低いブロック2に生じる安定的な凹みの深さ」とは、耐摩耗性の高いブロックと耐摩耗性の低いブロックが交互に配列されている破砕面部材において、使用時の摩耗に伴って耐摩耗性の低いブロックが耐摩耗性の高いブロックよりも、その耐摩耗性の差に起因して先に摩耗することによって生じる凹みであって、しかも、その深さが、耐摩耗性の高いブロックが使用限界まで摩耗するまで、
常に所定の深さを維持することを意味しているというべきである。 被告は、「安定的な凹みの深さ」とは、ロール幅(長手軸)方向に存在する耐摩耗性の高いブロック1(幅W)が同方向で偏摩耗せず、耐摩耗性の低いブロック2(幅w)にブロック1の表面に対して凹みが生じることをいうと主張する。
しかし、耐摩耗性の高いブロックがロール幅(長手軸)方向に偏摩耗しても、その偏摩耗に応じて隣接する耐摩耗性の低いブロックが摩耗することにより、耐摩耗性の低いブロックに生じる凹みの深さが所定の深さを維持し続けることはあり得るのであって、その場合には、本件発明が「安定的な凹みの深さ」との構成によって奏しようとした効果が奏されると解されるから、被告の主張は採用することができない。すなわち、「安定的な凹みの深さ」とは、ロール周方向に着目し、耐摩耗性の低いブロックに生じた凹みの深さが、所定のものかどうかを検討すれば足りるものと解される。
なお、構成要件Cには、「安定的な凹みの深さlが0.5〜15oになるように・・・設定」と記載されているが、これは、0.5〜15oの範囲で所定の深さが設定されることを意味し、設定された所定の深さが変動することを予定しているものではないことは、本件明細書の上記記載から明らかである。
(3) そして、構成要件Cは、「使用時の摩耗に伴って耐摩耗性の低いブロック2に生じる安定的な凹みの深さlが0.5〜15oになるように両ブロックの耐摩耗性及び巾が設定されてなる」とあるので、所定の凹みの深さは、両ブロックの耐摩耗性及び幅を設定することにより達成されるものであると認められる。このように、両ブロックの耐摩耗性を設定するのは、破砕面部材が粉砕する原料との関係で、適切な耐摩耗性を有するブロックを選択することにより、両ブロックの耐摩耗性の差を利用して、耐摩耗性の低いブロックに凹みを生じさせることができるからであると考えられる。また、耐摩耗性の両ブロックの幅を設定するのは、本件明細書の上記(1)ア(イ)の記載及び弁論の全趣旨からすると、耐摩耗性の低いブロックに生じた凹みの深さは、耐摩耗性の高いブロック相互間の幅に規制されることになるからであると認められる。すなわち、@破砕面部材の少なくとも表層部分に耐摩耗性の異なる2種類のブロックが、破砕面上で材料の噛み込まれていく方向に交互に配列された破砕面部材においては、原料は、まず耐摩耗性の高いブロックによって粉砕され、耐摩耗性の高いブロック相互間の幅よりも小さくなったものだけが、耐摩耗性の低いブロックによって粉砕されるが、A原料は自らの大きさ以上には耐摩耗性の低いブロックを摩耗できないから、結局、耐摩耗性の低いブロックは、耐摩耗性の高いブロック相互間の幅以上には摩耗しないこととなる。
(4) 以上を前提に、被告製品について検討すると、弁論の全趣旨によれば、被告製品は、耐摩耗性の低いブロックと同一部材を支持部材としつつ、耐摩耗性の低いブロックと耐摩耗性の高いブロックとを、材料の噛み込まれていく方向に交互に配列していると認められる。そして、証拠(甲5)によれば、未使用の被告製品と、ある程度の時間使用した被告製品とを比較すると、前者よりも後者の方が、少なくともロール大径部において、耐摩耗性の高いブロック相互間の幅が広くなっていると認められる。これは、そもそも、被告製品の 耐摩耗性の高いブロック相互間の幅(耐摩耗性の低いブロックの幅)が、表面部分よりも中心部に近い方が広く設定されているためか、被告製品の耐摩耗性の高いブロックの耐摩耗性が原料との関係で十分ではなく、当該ブロックの幅方向中央部よりも耐摩耗性の低いブロックとの境界付近(いわゆるエッジ部分)が早く摩耗してしまったため、その結果として耐摩耗性の高いブロック相互間の幅が広がってしまったかのいずれかであると推認される。
そうすると、少なくとも、被告製品のロール大径部に着目した場合には、
耐摩耗性の低いブロックは、使用時の摩耗に従って耐摩耗性の高いブロック相互間の幅が広がっていくのに伴い、当初よりも直径の大きな原料を粉砕することになるので、それにより「使用時の摩耗に伴って耐摩耗性の低いブロックに生じる」「凹みの深さ」は、耐摩耗性の高いブロックが使用限界まで摩耗しないうちに、より深くなる方向で変化してしまうものと考えられる。
そうすると、被告製品は、「使用時の摩耗に伴って耐摩耗性の低いブロック2に生じる安定的な凹みの深さl」を得るために、「両ブロックの耐摩耗性及び巾が設定」されているとは認められないから、構成要件Cを充足しているとは認められない。
なお、原告は、被告製品はマゴトー・ソシエテ・アノニムの有する特許第2799250号特許権に係る特許発明実施品でもあるところ、その特許公報(乙1)の記載(同証拠の【0015】)からすれば、被告製品が「使用時の摩耗に伴って耐摩耗性の低いブロック2に生じる安定的な凹み」を有していることは明らかであると主張するが、乙1には、使用時の摩耗に伴って耐摩耗性の低いブロックに凹みが生じることは記載されていると認められるものの、その凹みが、耐摩耗性の低いブロック又は耐摩耗性の高いブロックのどちらかが使用限界まで摩耗するまで、常に所定の深さを維持することまで記載されているとは認められないから、
原告の主張は採用することができない。
2 以上より、その余の争点について検討するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がないから、主文のとおり判決する。
追加
被告製品目録(原告)1被告製品の構成被告製品は別紙図面1記載の破砕面部材であり、その構成は次のとおりである。なお、以下の符号は別紙の各図面で使用のものである。
(1)破砕面aが他の破砕面(たとえば竪型ローラミルでは別紙図面2のテーブル面b)との間に材料を噛み込み粉砕していく粉砕機の破砕面部材Aであること(2)右破砕面部材の少なくとも表層部分に耐磨耗性が異なる2種類のブロック1、2が、前記破砕面上で材料の噛み込まれていく方向に交互に配列されていること(3)耐磨耗性の低いブロック2の幅w(ダブリュの小文字)が耐磨耗性の高いブロック1の幅Wに対して0・1×W〜1・0×Wを満足すること(4)使用時の磨耗に伴って耐磨耗性の低いブロック2に生じる安定的な凹みの深さl(エルの小文字)が0・5〜15mmになるように両ブロックの耐磨耗性及び幅が設定されていること2別紙図面の説明図面1は被告製品を図示したもの。
図面2、3は参考に竪型ローラミルの全体図とそのうちの粉砕部を図示したもの。被告製品の特定には直接関係しない。
3作用効果本件発明と同じである。
4本目録及び別紙図面における符号の説明A破砕面部材a破砕面部材Aの破砕面1破砕面aのうち凸部の耐摩耗性の高いブロック2破砕面aのうち凹部の耐摩耗性の低いブロックWブロック1の幅w(ダブリュの小文字)ブロック2の幅。wは0・1×W〜1×Wの関係にある。
l(エルの小文字)ブロック1とブロック2との凹みの深さ。使用時の摩耗に伴って生じる安定的な凹みの深さが0・5〜15mmになる。
図面1図面2図面3被告製品目録(被告)「環状バイメタル鋳物」(商品名「DUOCAST」)1図面の説明図1は、被告製品の全体斜視図図2は、インサート斜視図図3は、図1上部端面円内の拡大図であり上側は断面図で示した図。
2符号の説明1・・環状バイメタル鋳物42・・展性の高い材料(支持部材)44・・インサート50・・リブ52・・放射状フィン3構成(1)鋳型内にセットした耐摩耗性の高い材料からなるインサート44の周りに展性の高い材料42を鋳造して作った二種類の金属からなるバイメタル鋳物。
(2)互いに隣接する二つのインサート44はインサート成型時にスぺーサーの役目をするリブ50によって互いに隔てられている。
(3)互いに隣接する二つのインサート44の間には鋳造時にできる展性の高い材料42からなる放射状フィン52が存在する。
図面1・3図面2
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 安永武央
裁判官 高松宏之
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