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事件 平成 12年 (ワ) 7209号 製造販売差止等請求事件
平成 12年 (ワ) 14053号 同請求事件
原告(反訴被告) 株式会社呉商
原告(反訴被告) 株式会社サミット
原告(反訴被告)ら訴訟代理人弁護士 辻公雄
同 平野惠稔
同 若杉洋一
同 重冨貴光
同 嶋寺基
原告(反訴被告)ら補佐人弁理士 河野登夫
同 鮫島武信
被告(反訴原告) アサヒ電機株式会社
訴訟代理人弁護士 藤山利行
補佐人弁理士 古川泰通
同 中嶋隆宣
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2002/01/17
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告(反訴被告)らの本訴請求をいずれも棄却する。
2 原告(反訴被告)らは、被告(反訴原告)が製造販売する別紙物件目録1ないし5記載のパチンコ台の表示装置が、原告(反訴被告)らの別紙特許権目録記載の特許権を侵害するという事実を、文書又は口頭で、告知し又は流布してはならない。
3 訴訟費用は、本訴反訴を通じて原告(反訴被告)らの負担とする。
事実及び理由
請求
1 本訴 (1) 被告(反訴原告。以下「被告」という。)は、別紙物件目録1ないし5記載の製品を製造販売してはならない。
(2) 被告は、別紙物件目録1ないし5記載の製品を破棄せよ。
(3) 被告は、原告(反訴被告。以下「原告」という。)らに対し、金1000万円及びこれに対する平成12年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 反訴 主文第2項同旨
事案の概要
1 本件の本訴は、別紙特許権目録記載の特許権(以下「本件特許権」といい、
その特許発明を「本件発明」という。)を共有する原告らが、被告による別紙物件目録1ないし5記載のパチンコ台の表示装置(以下、別紙物件目録1記載のパチンコ台の表示装置を「イ号物件」、別紙物件目録2記載のパチンコ台の表示装置を「ロ号物件」、別紙物件目録3記載のパチンコ台の表示装置を「ハ号物件」、別紙物件目録4記載のパチンコ台の表示装置を「ニ号物件」、別紙物件目録5記載のパチンコ台の表示装置を「ホ号物件」といい、これらをまとめて「被告製品」という。)の製造販売が、本件特許権の侵害に当たるとして、被告製品の製造販売の差止め、廃棄及び不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。
反訴は、被告が、原告らに対し、原告らが、被告の取引先に、被告製品の販売が本件特許権を侵害するという事実を通知したことは、原告らと競争関係にある被告の営業上の信用を害する虚偽事実の告知に当たるとして、不正競争防止法3条1項2条1項14号(平成13年法律第81号による改正後。以下同じ。)に基づき、その告知又は流布の差止めを求めた事案である。
2 基礎となる事実((6)以外は、当事者間に争いがない。) (1) 原告らは、本件特許権を共有している。
(2) 本件発明の特許出願の願書に添付された明細書(以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲第1項の記載は、別紙特許権目録記載の「特許請求の範囲」記載のとおりである。
(3) 本件発明の構成要件を分説すれば、次のとおりである。
A パチンコ台毎に取付けられその台の作動状況等を表示するパチンコ台の表示装置において、
B 文字・図形を表示する表示板と、ランプと、呼出しスイッチと、制御装置とを一つの筐体に装着する一方、
C 前記制御装置は複数の表示内容を記憶するメモリと、CPUとを備え、
D 前記CPUはパチンコ台および呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を示すプログラムを前記メモリから読出して前記表示板およびランプに表示させることを特徴とするパチンコ台の表示装置。
(4) 被告は、被告製品を製造販売している。
(5) 被告製品の構成を分説すると、次のとおりである。
ア イ号物件 @ イ号物件の表示装置10はパチンコ店のパチンコ台Aそれぞれの上方に取り付けられ、店員の呼出し、及びパチンコ台Aの状況を表示するために使用されるものである。
A 表示装置10は、上縁が円弧、下縁が弦の形を有する背板12a及び該背板12aと同様の正面視形状を有し、背面側に湾曲凹部を有するカバー12bからなる筐体12に、表示板14、ランプ20aないし20f、呼出しスイッチ22及び制御装置25などの電子回路部品を装着してある。
背板12aには前記電子回路部品を実装したプリント基板25aが背板12aの中央部に平行的に取り付けられ、その前面に表示板14が取り付けられている。表示板14の背後に位置して左右に広がるように円弧状のランプ取付板25bが取り付けられており、ここに赤ランプ20a及び20g(最外側)、黄ランプ20b及び20f(その内側)、緑ランプ20c及び20e(中央側)並びに青ランプ20d(頂部)が取り付けられている。
B 制御装置25は、ワンチップマイクロコンピュータ29(三菱電機株式会社製M38067ECAGP又はカスタム品ASAHI RD9806D:製造時期によって相違する)及びこれに外付けされたメモリ32を備える。ワンチップマイクロコンピュータ29が備えるCPU28は、ワンチップマイクロコンピュータ29内蔵のメモリ30に格納したプログラムを実行することにより、呼出しスイッチ22及びパチンコ台Aの大当たり及びスタートなどに係る端子からの信号に応じたランプ20aないし20g及び表示板14の点灯制御を行うものである。メモリ32はデータ記憶用のものである。
C 呼出しスイッチ22は入力インターフェース41を介して制御装置25に連なり、制御装置25は入力インターフェース41を介してパチンコ台Aの大当たり及びスタートなどに係る端子にリード線25cによって接続される。
D パチンコ台Aには不正行為のために使用される磁石を検出する磁石センサ53が設けられており、その検出信号は入力インターフェース41を介して制御装置25へ入力される。制御装置25は該検出信号を受けると、ワンチップマイクロコンピュータ29のCPU28が、メモリ30に記憶してある内容に従い、赤ランプ20a及び20gを点灯させる。
E 表示板14は、いずれも複数の7セグメント表示素子を組み合わせてなる、本日の大当たり回数表示部14a、前日の大当たり回数表示部14b、前々日の大当たり回数表示部14c、及びスタート回数表示部14dを備える。大当たりの履歴など表示に係る内容は前記メモリ30に記憶される。
呼出しスイッチ22をオンすると制御装置25を構成するワンチップマイクロコンピュータ29のCPU28がオン信号を検出し、メモリ30に記憶してある内容に従い、赤ランプ20a、20g及び黄ランプ20b、20fが点灯するように制御する。
また大当たりが出た場合は、パチンコ台Aの前記端子からCPU28へ大当たりを報じる信号が入力され、CPU28は、メモリ30に記憶してある内容に従い、ランプ20aないし20gを、赤及び黄の組と緑及び青の組とが交互点灯し、これに続いて青→緑→黄→赤→青→・・・の流れ点灯を行うように制御する。
大当たりを報じる信号はメモリ30に記憶され、CPU28はこれを用いて表示板14に大当たりの履歴などを表示する。
F パチンコ台Aの上方にはパチンコ台Aへ供給した玉を計数するセーフ玉計数センサ51が設けられており、パチンコ台Aの下方にはパチンコ台Aから排出した玉を計数するアウト玉計数センサ52が設けられており、これらの出力はホールコンピュータと称する中央制御装置50へ入力される。
中央制御装置50はセーフ玉とアウト玉との差を算出し、これが所定値になった場合に打ち止め信号をパチンコ台Aへ出力するとともに表示装置10の入力インターフェース41を介して制御装置25へ打ち止め表示信号を出力する。
制御装置25は打ち止め表示信号を受けて、黄ランプ20b及び20fを点灯させる。
イ ロ号物件 @ ロ号物件の表示装置10はパチンコ店のパチンコ台Aそれぞれの上方に取り付けられ、店員の呼出し、及びパチンコ台Aの状況を表示するために使用されるものである。
A 表示装置10は、横長長方形状の背板12a及び該背板12aと同様の正面視形状を有し、背面側に湾曲凹部を有するカバー12bからなる筐体12に、表示板14、ランプ20aないし20e、呼出しスイッチ22及び制御装置25などの電子回路部品を装着してある。
背板12aには前記電子回路部品を実装したプリント基板25aが背板12aの中央部に平行的に取り付けられ、その前面に表示板14が取り付けられている。プリント基板25aの周りには3つのランプ取付板25bが取り付けられており、ここに赤ランプ20c及び20d(上外側)、黄ランプ20a及び20b(下外側)並びに青ランプ20e(中央上側)が取り付けられている。
B 制御装置25は、ワンチップマイクロコンピュータ29(三菱電機株式会社製M38869FFA)及びこれに外付けされたメモリ32を備える。ワンチップマイクロコンピュータ29が備えるCPU28は、ワンチップマイクロコンピュータ29内蔵のメモリ30に格納したプログラムを実行することにより、呼出しスイッチ22及びパチンコ台Aの大当たり及びスタートなどに係る端子からの信号に応じたランプ20aないし20e及び表示板14の点灯制御を行うものである。メモリ32はデータ記憶用のものである。
C 呼出しスイッチ22は入力インターフェース41を介して制御装置25に連なる。パチンコ台Aの大当たり及びスタートなどの信号も入力インターフェース41を介して制御装置25へ入力されるように接続される。
D パチンコ台Aには不正行為のために使用される磁石を検出する磁石センサ53が設けられており、その検出信号は入力インターフェース41を介して制御装置25へ入力されるように接続される。制御装置25は該検出信号を受けると、ワンチップマイクロコンピュータ29のCPU28が、メモリ30に記憶してある内容に従い、赤ランプ20c及び20dを点灯させる。
E 表示板14は、いずれも複数の7セグメント表示素子を組み合わせてなる、本日の大当たり回数表示部14a及びスタート回数表示部14bを備える。
表示に係る数値は前記メモリ30及び/又はメモリ32に記憶される。
呼出しスイッチ22をオンすると制御装置25を構成するワンチップマイクロコンピュータ29のCPU28がオン信号を検出し、メモリ30に記憶してある内容に従い、赤ランプ20c及び20d並びに黄ランプ20a及び20bが点灯するように制御する。
また大当たりが出た場合は、パチンコ台Aの前記端子からCPU28へ大当たりを報じる信号が入力され、CPU28は、メモリ30に記憶してある内容に従い、ランプ20aないし20eを、赤2灯の組と黄2灯及び青の組とが交互点灯し、これに続いて青→赤→黄→青→・・・の流れ点灯を行うように制御する。
大当たりを報じる信号はメモリ30及び/又はメモリ32に記憶され、CPU28はこれを用いて表示板14に大当たりの当日の回数を表示する。
F パチンコ台Aの上方にはパチンコ台Aへ供給した玉を計数するセーフ玉計数センサ51が設けられており、パチンコ台Aの下方にはパチンコ台Aから排出した玉を計数するアウト玉計数センサ52が設けられており、これらの出力はホールコンピュータと称する中央制御装置50へ入力される。
中央制御装置50はセーフ玉とアウト玉との差を算出し、これが所定値になった場合に打ち止め信号をパチンコ台Aへ出力するとともに表示装置10の入力インターフェース41を介して制御装置25へ打ち止め表示信号を出力する。
制御装置25は打ち止め表示信号を受けて、黄ランプ20a及び20bを点灯させる。
ウ ハ号物件 @ ハ号物件の表示装置10はパチンコ店のパチンコ台Aそれぞれの上方に取り付けられ、店員の呼出し、及びパチンコ台Aの状況を表示するために使用されるものである。
A 表示装置10は、上縁が直線、下縁が大径の円弧、左右両側縁が小径の円弧の形を有する背板12a及び該背板12aと同様の正面視形状を有し、背面側に湾曲凹部を有するカバー12bからなる筐体12に、表示板14、ランプ20aないし20g、呼出しスイッチ22及び制御装置25などの電子回路部品を装着してある。
背板12aには前記電子回路部品を実装したプリント基板25aが背板12aの中央部に平行的に取り付けられ、その前面に表示板14が取り付けられている。表示板14の背後に位置して上部から左右側部にかけて広がるように横長板状のランプ取付板25bが取り付けられており、ここに赤ランプ20a及び20g(最外側)、黄ランプ20b及び20f(その内側)、緑ランプ20c及び20e(更にその内側)並びに青ランプ20d(中央部)が取り付けられている。
B 制御装置25は、ワンチップマイクロコンピュータ29(三菱電機株式会社製M38067ECAGP)及びこれに外付けされたメモリ32を備える。
ワンチップマイクロコンピュータ29が備えるCPU28は、ワンチップマイクロコンピュータ29内蔵のメモリ30に格納したプログラムを実行することにより、
呼出しスイッチ22及びパチンコ台Aの大当たり及びスタートなどに係る端子からの信号に応じたランプ20aないし20g及び表示板14の点灯制御を行うものである。メモリ32はデータ記憶用のものである。
C 呼出しスイッチ22は入力インターフェース41を介して制御装置25に連なる。パチンコ台Aの大当たり及びスタートなどの信号も入力インターフェース41を介して制御装置25へ入力されるように接続される。
D パチンコ台Aには不正行為のために使用される磁石を検出する磁石センサ53が設けられており、その検出信号は入力インターフェース41を介して制御装置25へ入力されるように接続される。制御装置25は該検出信号を受けると、ワンチップマイクロコンピュータ29のCPU28が、メモリ30に記憶してある内容に従い、赤ランプ20a及び20gを同時点滅させる。
E 表示板14は、いずれも複数の7セグメント表示素子を組み合わせてなる、本日の大当たり回数表示部14a、前日の大当たり回数表示部14b、前々日の大当たり回数表示部14c、及びスタート回数表示部14dと、赤緑の両色表示灯を7灯縦配列して過去7回の確変突入(赤)/大当たり(緑)の履歴表示部14eとを備える。大当たりの履歴など表示に係る内容は前記メモリ30及び/又はメモリ32に記憶される。
呼出しスイッチ22をオンすると制御装置25を構成するワンチップマイクロコンピュータ29のCPU28がオン信号を検出し、メモリ30に記憶してある内容に従い、赤ランプ20a、20g及び黄ランプ20b、20fが点灯するように制御する。
また大当たりが出た場合は、パチンコ台Aの前記端子からCPU28へ大当たりを報じる信号が入力され、CPU28は、メモリ30に記憶してある内容に従い、ランプ20aないし20gを、赤及び黄の組と緑及び青の組とが交互点灯し、これに続いて青→緑→黄→赤→青→・・・の流れ点灯を行うように制御する。
F パチンコ台Aの上方にはパチンコ台Aへ供給した玉を計数するセーフ玉計数センサ51が設けられており、パチンコ台Aの下方にはパチンコ台Aから排出した玉を計数するアウト玉計数センサ52が設けられており、これらの出力はホールコンピュータと称する中央制御装置50へ入力される。
中央制御装置50はセーフ玉とアウト玉との差を算出し、これが所定値になった場合に打ち止め信号をパチンコ台Aへ出力するとともに表示装置10の入力インターフェース41を介して制御装置25へ打ち止め表示信号を出力する。
制御装置25は打ち止め表示信号を受けて、黄ランプ20b及び20fを点灯させる。
エ ニ号物件 @ ニ号物件の表示装置10はパチンコ店のパチンコ台Aそれぞれの上方に取り付けられ、店員の呼出し、及びパチンコ台Aの状況を表示するために使用されるものである。
A 表示装置10は、下縁が直線、上縁が大径の円弧、左右両側縁が小径の円弧の形を有する背板12a及び該背板12aと同様の正面視形状を有し、背面側に湾曲凹部を有するカバー12bからなる筐体12に、表示板14、ランプ20aないし20g、呼出しスイッチ22及び制御装置25などの電子回路部品を装着してある。
背板12aには前記電子回路部品を実装したプリント基板25aが背板12aの中央部に平行的に取り付けられ、その前面に表示板14が取り付けられている。表示板14の背後に位置して上部から左右側部にかけて広がるように弓形板状のランプ取付板25bが取り付けられており、ここに赤ランプ20a及び20g(最外側)、黄ランプ20b及び20f(その内側)、緑ランプ20c及び20e(更にその内側)並びに青ランプ20d(中央部)が取り付けられている。
B 制御装置25は、ワンチップマイクロコンピュータ29(三菱電機株式会社製M38869FFAHP)及びこれに外付けされたメモリ32を備える。
ワンチップマイクロコンピュータ29が備えるCPU28は、ワンチップマイクロコンピュータ29内蔵のメモリ30に格納したプログラムを実行することにより、
呼出しスイッチ22及びパチンコ台Aの大当たり及びスタートなどに係る端子からの信号に応じたランプ20aないし20g及び表示板14の点灯制御を行うものである。メモリ32はデータ記憶用のものである。
C 呼出しスイッチ22は入力インターフェース41を介して制御装置25に連なる。パチンコ台Aの大当たり及びスタートなどの信号も入力インターフェース41を介して制御装置25へ入力されるように接続される。
D パチンコ台Aには不正行為のために使用される磁石を検出する磁石センサ53が設けられており、その検出信号は入力インターフェース41を介して制御装置25へ入力される。制御装置25は該検出信号を受けると、ワンチップマイクロコンピュータ29のCPU28が、メモリ30に記憶してある内容に従い、赤ランプ部20a及び20gの同時点滅をさせる。
E 表示板14は、いずれも複数の7セグメント表示素子を組み合わせてなる数字の表示部を備え、該表示部は、本日の大当たり回数表示部14a、前日の大当たり回数表示部14b、前々日の大当たり回数表示部14c、スタート回数表示部14d、過去最高の大当たり回数表示部14f及び確変突入回数表示部14gを有する。表示板14はまた右下部分に、赤/緑/黄の選択表示をする上側の横1列の7灯、及び連続点灯又は点滅する下側の横1列の赤の7灯からなり、過去7回の大当たり間のスタート回数(上側 赤:500回以下〜301回以上、黄:300回以下〜101回以上、緑:100回以下など)及び単発大当たり(下側 連続点灯)/確変大当たり(下側 点滅)の別を表示する履歴表示部14eを備える。
大当たりの履歴など表示に係る内容は前記メモリ30及び/又はメモリ32に記憶される。
呼出しスイッチ22をオンすると制御装置25を構成するワンチップマイクロコンピュータ29のCPU28がオン信号を検出し、メモリ30に記憶してある内容に従い、赤ランプ20a、20g及び黄ランプ20b、20fが点灯するように制御する。
また大当たりが出た場合は、パチンコ台Aの前記端子からCPU28へ大当たりを報じる信号が入力され、CPU28は、メモリ30に記憶してある内容に従い、ランプ20aないし20gを、赤及び黄の組と緑及び青の組とが交互点灯し、これに続いて青→緑→黄→赤→青→・・・の流れ点灯を行うように制御する。
大当たりを報じる信号はメモリ30及び/又はメモリ32に記憶され、CPU28はこれを用いて表示板14に大当たりの履歴などを表示する。
F パチンコ台Aの上方にはパチンコ台Aへ供給した玉を計数するセーフ玉計数センサ51が設けられており、パチンコ台Aの下方にはパチンコ台Aから排出した玉を計数するアウト玉計数センサ52が設けられており、これらの出力はホールコンピュータと称する中央制御装置50へ入力される。
中央制御装置50はセーフ玉とアウト玉との差を算出し、これが所定値になった場合に打ち止め信号をパチンコ台Aへ出力するとともに表示装置10の入力インターフェース41を介して制御装置25へ打ち止め表示信号を出力する。
制御装置25は打ち止め表示信号を受けて、黄ランプ20b及び20fを点灯させる。
オ ホ号物件 @ ホ号物件の表示装置10はパチンコ店のパチンコ台Aそれぞれの上方に取り付けられ、店員の呼出し、及びパチンコ台Aの状況を表示するために使用されるものである。
A 表示装置10は、略横長長方形を有する背板12a及び該背板12aと同様の正面視形状を有し、背面側に湾曲凹部を有するカバー12bからなる筐体12に、表示板14、ランプ部20aないし20f、呼出しスイッチ22及び制御装置25などの電子回路部品を装着してある。
背板12aには前記電子回路部品を実装したプリント基板25aが背板12aの中央部に平行的に取り付けられ、その前面中央に表示板14が取り付けられている。表示板14の左右に位置してランプ取付板25b、25bが取り付けられている。ランプ取付板25b、25bに取り付けられたランプ部20aないし20fは光源として各4個のLEDを横配列してなるものである。ランプ部は左右それぞれに各3列取り付けられており、左右の上側のランプ部20a及び20bは赤、同じく中央のランプ部20c及び20dは青、同じく下側のランプ部20e及び20fは緑の色をそれぞれ有している。
B 制御装置25は、ワンチップマイクロコンピュータ29(三菱電機株式会社製M38869FFAHP)及びこれに外付けされたメモリ32を備える。
ワンチップマイクロコンピュータ29が備えるCPU28は、ワンチップマイクロコンピュータ29内蔵のメモリ30に格納したプログラムを実行することにより、
呼出しスイッチ22及びパチンコ台Aの大当たり及びスタートなどに係る端子からの信号に応じたランプ20aないし20f及び表示板14の点灯制御を行うものである。メモリ32はデータ記憶用のものである。
C 呼出しスイッチ22は入力インターフェース41を介して制御装置25に連なる。パチンコ台Aの大当たり及びスタートなどの信号も入力インターフェース41を介して制御装置25へ入力されるように接続される。
D パチンコ台Aには不正行為のために使用される磁石を検出する磁石センサ53が設けられており、その検出信号は入力インターフェース41を介して制御装置25へ入力される。制御装置25は該検出信号を受けると、ワンチップマイクロコンピュータ29のCPU28が、メモリ30に記憶してある内容に従い、赤ランプ20a及び20gの同時点灯をさせる。
E 表示板14は、いずれも複数の7セグメント表示素子を組み合わせてなる、本日の大当たり回数表示部14a、前日の大当たり回数表示部14b、前々日の大当たり回数表示部14c、及びスタート回数表示部14dと、赤/黄の選択表示灯(最下列)及び緑色表示灯をマトリックス状に配置してなり過去10日分の大当たり回数/大当たり間の平均スタート回数をグラフ状に表示する履歴表示部14eとを備える。各部の表示内容はモード切替スイッチ22a、22b、22cで切り替えられる。大当たりの履歴など表示に係る内容は前記メモリ30及び/又はメモリ32に記憶される。
呼出しスイッチ22をオンすると制御装置25を構成するワンチップマイクロコンピュータ29のCPU28がオン信号を検出し、メモリ30に記憶してある内容に従い、赤ランプ部20a、20b及び緑ランプ部20e、20fが点灯するように制御する。
また大当たりが出た場合は、パチンコ台Aの前記端子からCPU28へ大当たりを報じる信号が入力され、CPU28は、メモリ30に記憶してある内容に従い、全ランプ部20aないし20fの点滅をし、これに続いて赤→青→緑→赤→青→・・・の流れ点灯を行うように制御する。
大当たりを報じる信号はメモリ30及び/又はメモリ32に記憶され、CPU28はこれを用いて表示板14に大当たりの履歴などを表示する。
F パチンコ台Aの上方にはパチンコ台Aへ供給した玉を計数するセーフ玉計数センサ51が設けられており、パチンコ台Aの下方にはパチンコ台Aから排出した玉を計数するアウト玉計数センサ52が設けられており、これらの出力はホールコンピュータと称する中央制御装置50へ入力される。
中央制御装置50はセーフ玉とアウト玉との差を算出し、これが所定値になった場合に打ち止め信号をパチンコ台Aへ出力するとともに表示装置10の入力インターフェース41を介して制御装置25へ打ち止め表示信号を出力する。
制御装置25は打ち止め表示信号を受けて、青ランプ部20c及び20dを点灯させる。
(構成の番号が同じであっても、各物件によって構成の内容に異なる部分がある。しかし、本件発明の構成要件との対比を行う上において、各物件の構成の内容の相違は影響せず、同じ番号の構成であれば、同じように構成要件該当性を論じることができる。そこで、以下では、特に被告製品のうちのどの物件の構成を指すかを断らない限り、各被告製品の同じ番号の構成をまとめて、例えば「構成@」のように、番号をもって表す。) (6) 構成Bは構成要件Cを充足する(弁論の全趣旨)。
3 争点 (本訴) (1) 構成@の「パチンコ台Aそれぞれの上方に取り付けられ」という構成は、
構成要件Aの「パチンコ台毎に取付けられ」という構成を充足するか。
(2) イ号物件及びロ号物件の構成Eの「複数の7セグメント表示素子を組み合わせてなる」表示部を備える表示板14、並びにハ号物件、ニ号物件及びホ号物件の構成Eの「複数の7セグメント表示素子を組み合わせてなる」表示部及び複数の表示灯からなる履歴表示部を備える表示板14は、構成要件Bの「文字・図形を表示する表示板」という構成を充足するか。
(3) 被告製品は、構成要件Dを充足するか。
(4) 本件発明は、特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明、特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたか。
(5) 被告製品が本件特許権を侵害したとした場合の損害の額。
(反訴) (6) 原告らと被告は競争関係にあるか。
(7) 原告らは、他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布したか。
争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(構成要件Aの充足性)について (1) 原告らの主張 本件明細書には「パチンコ台の上方等」(本件特許権の特許公報(本件特許権の特許公報を指す場合は、以下、単に「特許公報」という。)2欄6行)と記載されており、パチンコ台の上方に取り付けられることが明示されているから、構成要件Aの「パチンコ台毎に取付けられ」という構成は、パチンコ台の上方に取り付けられることを含む。したがって、構成@の「パチンコ台Aそれぞれの上方に取り付けられ」という構成は、構成要件Aの「パチンコ台毎に取付けられ」という構成を充足する。
(2) 被告の主張 構成要件Aの「パチンコ台毎に取付けられ」とは、パチンコ台ごとにパチンコ台そのものに取り付けられることを意味する。本件明細書には「パチンコ台の上方等」(特許公報2欄6行)と記載されており、「上方」に限られないことは明らかである。構成@の「パチンコ台Aそれぞれの上方に取り付けられ」とは、パチンコ台とは別個にパチンコ台の上方に取り付けられていることであり、パチンコ台ごとにパチンコ台そのものに取り付けられていることではないから、構成要件Aを充足しない。
2 争点(2)(構成要件Bの充足性)について (1) 原告らの主張 ア 構成要件Bの「文字・図形を表示する表示板」の「・」は、著名な国語辞典である広辞苑によれば、「小数点や並列点などとして用いる印刷用活字」であり、並列とは、「並びつらなること。並びつらねること。」をいうにすぎず、並列という語に、「及び」や「又は」のどちらかを排除する意味はない。広辞苑によれば、並列助詞は並立助詞と同義とされているが、並立助詞は「国語の助詞の分類の一。二つ以上の物事を並べていうのに用いるもの。「筆と紙とを用意する」の「と」、「よいの悪いのと言えた義理か」の「の」、「父か母かが行く」の「か」などの類。並列助詞。」とされており、双方を示す「と」と、どちらか一方を示す「か」のいずれもの文例を引用している。そこで、「・」は、「又は」の意味と解することができる。
本件発明の、パチンコ台ごとにその台に関する作動状況等の情報を表示するという作用効果については、文字か図形のいずれかが台の作動状況等の情報を表示すればよく、文字と図形の両方が表示されなければならないとする理由はない。本件明細書の実施例においても、「開放台」、「本日の優秀台」、「いらっしゃいませ」、「本日の終了回数○○回」、「終了までジャンジャンお取り下さい」、「18才未満の方の入場は固くお断りしております」、「只今係員を呼び出しておりますので今暫くお待ち下さい」、「打止」、「フィーバ中」、「ヤッタ!ヤッタ!おめでとうございます」、「ジャンジャンお取り下さい」、「予定終了したしました」(「終了いたしました」の誤記と解される。)、「景品交換中」、
「1発残らず景品交換して下さい」、「トラブル1」、「トラブル2」のようにすべて文字だけの表示が挙げられている。
被告は、本件明細書のどこにも「表示板」が7セグメント表示素子でよいという記載がないこと、実施例に挙げられた表示内容がカタカナ、ひらがな、漢字、数字であることから、構成要件Bの「表示板」には7セグメント表示を含まないと主張する。しかし、構成要件Bには「表示板」と記載されているだけで、液晶板又はドットマトリックスなどと記載されているわけではないし、技術的にも、
「パチンコ台毎にその台に関する作動状況等の情報を表示でき」るという本件発明の目的を達成することができる点では、7セグメント表示と液晶板等で異なるところはない。また、数字は文字の一種であり、本件発明の実施例にも、数字を表示することが明示されている。
したがって、構成要件Bの「文字・図形を表示する表示板」とは、文字又は図形のどちらかを表示する表示板であればよいということを意味する。
イ イ号物件及びロ号物件の構成Eの「7セグメント表示素子を組み合わせてなる」表示部を備える表示板、並びにハ号物件、ニ号物件及びホ号物件の構成Eの「7セグメント素子を組み合わせてなる」表示部及び複数の表示灯からなる履歴表示部を備える表示板は、7セグメントの表示素子によって数字を表示するものである。したがって、文字又は図形を表示する表示板に該当し、構成要件Bの「文字・図形を表示する表示板」という構成を充足する。
(2) 被告の主張 ア 構成要件Bの「文字・図形」の「・」は、新明解国語辞典によれば、
「(縦書きの場合)小数点を示したり並列する名詞などの間に使ったりする点」とされている。
本件明細書には、「表示板」として7セグメント表示素子でもよいとは記載されておらず、液晶板しか開示されていない。「産業上の利用分野」、「発明の背景」、「発明の目的」の各項において、表示板に表示する事項は、当該パチンコ台に関する作動状況等の情報であり、この作動状況は、開放台か否か、打ち止め中か否か、呼出し中か否か、打ち止め回数、優秀台であるか否かなどであることが記載されており、表示内容が数字、漢字、カタカナ、ひらがなで表示されることが示唆されている。実施例には、表示内容として、具体的に、「打止」、「開放台」、「呼出し中」、「只今係員を呼び出しておますので今暫くお待ち下さい」、
「トラブル1」、「トラブル2」、「18才未満の方の入場は固くお断りしております」、「ヤッタ!ヤッタ!おめでとうございます」などが挙げられており、内容と長さの点から、液晶板で数字、漢字、カタカナ、ひらがな等の文字により固定表示又はスクロール表示することが開示されており、これらの表示は7セグメントの表示板では行うことができない。
表示装置の表示板は極めて小スペースであり、パチンコ台及び呼出しスイッチからの信号に基づいて作動状況に対応する比較的長文の表示内容を示すプログラムをメモリから読み出して表示するものとしては、液晶板又はドットマトリックス以外に考えられない。
したがって、構成要件Bの「文字・図形を表示する表示板」とは、文字と図形を表示することができる表示板、例えば本件明細書に記載されている液晶板又は発光ダイオードによって数字や絵等の図柄を表すドットマトリックス等を意味する。
イ イ号物件及びロ号物件の構成Eの「複数の7セグメント表示素子を組み合わせてなる」表示部を備える表示板14、並びにハ号物件、ニ号物件及びホ号物件の構成Eの「複数の7セグメント表示素子を組み合わせてなる」表示部及び複数の表示灯からなる履歴表示部を備える表示板14は、7セグメント表示素子によって数字を表示し得るのみであって、カタカナ、ひらがな、図形等を表示することができない。したがって、文字と図形を表示することができる表示板に該当せず、構成要件Bの「文字・図形を表示する表示板」という構成を充足しない。
3 争点(3)(構成要件Dの充足性)について (1) 原告らの主張 ア(ア) 構成要件Dの「作動状況」は、文言上、「打ち止め状態の検出、打ち止め指令、打ち止め表示信号」に限定して解釈する余地はない。実施例にも、
「打ち止め状態の検出、打ち止め指令、打ち止め表示信号」以外に、フィーバ状態(特許公報6欄18行以下)、不正行為状態(同6欄42行以下)という「作動状況」の例示がある。ホールコンピュータは打ち止めのためにあるものではないこと、現在では打ち止めを行わないのが一般的であり、パチスロというパチンコ機の普及により、ホールコンピュータによる打ち止めを行う余地がなくなったことから、「作動状況」の一つとして打ち止めが必須であるということはできない。
「作動状況」の一つについてでも中央制御装置を不要とした場合には、システムが簡単かつ安価となるという本件発明の作用効果を達成することができる。
被告製品は、中央制御装置専用に接続する専用の端子を備えているわけではなく、「打ち止め」を表示させるための信号を入力する端子を備えているだけであり、その端子への打ち止め信号の入力によりランプを点灯させるだけである。そこで、打ち止め信号の入力には中央制御装置が必須のものではなく、別の制御装置からの打ち止め信号、例えば、パチンコ台ごとに打ち止めを管理する制御装置を付けて、その制御装置から被告製品へ打ち止め信号を入力しても、充分に作動する。又は、中央制御装置からの打ち止め信号をパチンコ台に入力し、パチンコ台から更に呼出しランプに出力するようにしても十分に作動する。そうであるから、
被告製品を使って打ち止めの操作をする場合に、中央制御装置は必須のものではなく、被告製品は、中央制御装置なしで単独でも使用することができる。
(イ) したがって、構成要件Dの「パチンコ台および呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて」とは、作動状況を示す信号の少なくとも一つがパチンコ台及び呼出しスイッチから入力され、それに基づくことを意味する。打ち止め状態の作動状況を示す信号が中央制御装置から入力されたとしても、
それ以外の作動状況を示す信号がパチンコ台及び呼出しスイッチから入力される場合は、構成要件Dを充足する。
(ウ)a 被告は、特開昭62-11482号公開特許公報(乙第4号証)、実願昭57-185293号(実開昭59-93483号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(乙第11号証)、雑誌「プレイグラフ」第22巻第2号(有限会社プレイグラフ、昭和61年2月20日発行、乙第12号証)に基づき、従来、パチンコ遊技店では、打ち止め状態を含む作動状況を示す信号を集中管理するため、中央制御装置(ホールコンピュータ)を必要としていたが、本件発明は、この中央制御装置をなくすとともに、それに必要とされる配線等もなくしてシステムを簡易化し、これにより安価な表示装置を提供することを解決課題としており、中央制御装置をなくすことを本質的特徴としているが、被告製品は、基本的には乙第12号証に記載された「BIG SUPER U」というパチンコ台の表示装置と機能的に同一であり、打ち止め状態の検出、打ち止め指令、打ち止め表示信号については、本件発明の機能を有せず、中央制御装置を必要としているから、本件特許権を侵害しないと主張する。
b しかし、乙第4号証、第11号証及び第12号証に記載された表示装置は、コントロール室等に備えられた中央制御装置(ホールコンピュータ)で入力された種々のデータを表示するものであり、端末の表示器としてのみ機能するものにすぎず、表示装置自体がCPUを有する制御装置を備えるものではない点で、
本件発明及び被告製品と根本的に相違する。
また、乙第11号証及び第12号証に記載された表示装置は、単にランプを点灯又は点滅させ、パチンコ台が打ち止め状態であることを遊技者に可視表示するものにすぎず、CPUやメモリを備えたものではないから、本件発明に係る表示装置や被告製品のように、制御装置が複数の表示内容を記憶するメモリとCPUとを備え、CPUがパチンコ台及び呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を示すプログラムをメモリから読み出して表示板及びランプに表示させる機能を備えたものとは、根本的に相違する。
被告製品は、CPUにより、メモリに記憶された複数の表示内容を読み出して表示する機能を備えたものであり、そのような機能を備えず、単にランプを点灯させて表示を行う、乙第12号証に記載された「BIG SUPER U」というパチンコ台表示装置とは、全く異なる機能を備えたものである。
(エ) 被告は、本件明細書の実施例の記載に基づき、被告製品の表示板は、パチンコ台の過去のデータ、履歴を数字で示しているにすぎず、これらはパチンコ台の作動状況に対応する表示内容を表示しているのではないと主張する。
しかし、発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、実施例の記載のみによって定められるべきではない。
(オ)a 被告は、被告製品では、過去のデータは表示板のみに表示されてランプには反映されず、また、打ち止め中か否か又は呼出し中か否かといったパチンコ台の作動状況については、ランプが点灯、点滅するだけで表示板には表示されないから、構成要件Dの「表示板およびランプ」に表示されるものではないと主張する。
b しかし、構成要件Dは、「CPUは、・・・前記表示板およびランプに表示させる」と定めているから、CPUが表示板とランプの双方を表示させる構成を備えていれば、表示板とランプに同時に表示させなくても、構成要件Dを充足する。実施例でも、例えばフィーバの場合には、「フィーバ中」、「ヤッタ!ヤッタ!おめでとうございます」、「ジャンジャンお取り下さい」等のメッセージが表示されるが、ランプには何も表示されない(特許公報6欄18行以下)。したがって、構成要件Dの「表示板およびランプ」の意味は、この両者を一体としてとらえた、「及び」と「又は」の双方を指すものとして解釈されるべきであり、表示装置として「表示板およびランプ」が一体として存在し、その装置に表示させれば構成要件Dを充足する。
構成要件Dは、「CPUはパチンコ台および呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて・・・表示させる」という構成を採るところ、「および」という語について、被告主張のような解釈によれば、パチンコ台と呼出しスイッチは、同時にパチンコ台の作動状況を示す信号をCPUに入力しなければならないことになる。しかし、そうすると、被告製品の構成Eにおいて、呼出し中であるという作動状況を示す信号は、呼出しスイッチからしか入力されないから、この点でも、構成Eは構成要件Dを充足しないこととなってしまう。そこで、
この点でも、入力装置として、「パチンコ台および呼出しスイッチ」が一体として存在し、その装置から入力されていれば、構成要件Dは充足すると解すべきである。
(カ) 仮に構成要件Dがこのように解釈されなくても、CPUが入力信号及び出力動作の双方を処理することができれば、構成要件Dを充足していると解すべきである。
イ 被告製品は、構成Eによれば、呼出しスイッチ22をオンすると制御装置25を構成するワンチップマイクロコンピュータ29のCPU28がオン信号を検出し、メモリ30に記憶してある内容に従い、ランプ(ホ号物件ではランプ部)が点灯するように制御する。また、大当たりが出た場合は、パチンコ台Aの端子からCPU28へ大当たりを報じる信号が入力され、CPU28は、メモリ30に記憶してある内容に従い、ランプ(ホ号物件ではランプ部)の交互点灯(ホ号物件では点滅)、流れ点灯を行うように制御する。大当たりを報じる信号は、メモリ30(及び/又はメモリ32)に記憶され、CPU28はこれを用いて表示板14に大当たりの履歴などを表示する。
したがって、被告製品においては、作動状況を示す信号がパチンコ台及び呼出しスイッチから入力され、それに基づいて、CPUが、作動状況に対応する表示内容を示すプログラムをメモリから読み出して表示板及びランプに表示させるということができ、被告製品は構成要件Dを充足する。
(2) 被告の主張 ア(ア)a 終戦後パチンコ産業が盛んになりだした当時においては、ランプと呼出しスイッチとからなるパチンコ台の表示装置が使用されていた。その後、このような表示装置に呼出し応答表示板と補給表示板を設け、パチンコ台に補給用スイッチを設けるものが提案された。しかし、これらの表示装置には、打ち止め機能(表示)は備えられていなかった。昭和48年ごろ、大型店にミニコンピュータが導入され、昭和53年ごろにはコンピュータによる集中管理方式が採用され、昭和55年ごろにドラム式フィーバー機が出現し、パチンコ業界において、各パチンコ台の出玉、入玉、台売上等のデータ収集を1台のコンピュータで管理するとともに、任意に設定した出玉、入玉の差が所定数を超えた場合に当該パチンコ台を打ち止めにするように管理する、(ホール)コンピュータによる集中管理方式がパチンコ店の大型化とともに主流となった。
b フィーバー機の出現後、特定の客が特定のパチンコ台を独占し、大量の玉を受け取ることを防止するため、乙第11号証により、パチンコ台ごとに係員呼出しスイッチ、係員呼出し告知部と打ち止め用告知部とを備え、打ち止め用告知部を集中管理装置に電気的に接続して、遊技に供した球数と賞として排出した球数の差が所定数を超えた場合、集中管理装置が打ち止め用告知部のランプを点灯又は点滅させ、トラブル時には、係員呼出しスイッチのボタンを押すことによりランプを点灯させるようにした「パチンコ機の打止め表示装置」が提案された。
また、乙第4号証には、パチンコ機の「打止表示装置14」として、「パチンコ機列2の上方に、各パチンコ機1ごとに」(乙第4号証3頁右下欄5行ないし6行)設けられており、「少くとも打止回数を数値としてデジタルで可視表示する打止回数表示手段15と、打止状態であることをランプなどにより可視表示する打止表示手段16とを有し、両表示手段15、16を電気的制御手段17により電気的に制御して所望の状態を表示させるもの」(同3頁右下欄7行ないし13行)が開示されている。「打止表示装置14」には、「上記した各手段15、
16、17以外にも、打止状態が解放されたときに一時的に点灯表示する打止解放表示手段18、打球がパチンコ機の遊技部内で詰った場合などにおいて遊技者が操作する呼出操作部19、該操作部19が操作されたときに点灯表示する呼出表示手段20などを設けてもよい」(同3頁右下欄14行ないし20行)とされている。
また、乙第4号証には、パチンコ機1が遊技に供されているときに集中的に管理するための管理装置10が開示されており、この管理装置は、「いわゆる制御用コンピューターであって、少くとも、CPU、メモリー、表示手段等を備えて各パチンコ機1からの遊技データを収集して、記憶、演算すると共に、各パチンコ機1の制御を行う」(同3頁右上欄9行ないし13行)ものである。そして、「各パチンコ機の損失データと利益データの差数が予め設定されている打止め数に達すると、管理装置10は当該パチンコ機に対して打止め指示を発して当該パチンコ機の遊技を制御するのであるが、同時にこの検出出力を管理装置10が当該パチンコ機の打止めデータとして記憶する」(同3頁左下欄13行ないし19行)とされている。このため、「電気的制御手段17」は、パチンコ機1に設けた「賞球タンクスイッチ7からの球不足信号と、管理装置10からの打止指令信号とにより判別して該当するパチンコ機の打止回数表示手段15の表示数値を一進させ、打止回数を加算表示するとともに、打止表示手段16に打止状態を可視表示させる」(同4頁右上欄11行ないし18行)ものである。要するに、「打止回数表示手段15」が本件発明の「表示板」に相当し、「打止表示手段16」、「呼出表示手段20」が本件発明の「ランプ」に相当し、「呼出操作部19」が本件発明の「呼出しスイッチ」に相当し、「管理装置10」及び「制御手段17」が本件発明の「制御装置」に相当する。したがって、乙第4号証には、表示板及びランプが制御手段を介してコンピュータに接続されていること、パチンコ台がコンピュータに接続されていること、パチンコ台及び呼出しスイッチから入力されるいずれの作動状況でもランプが点灯するとともに、パチンコ台の打ち止め時に表示板に数字が表示されることが開示されている。このように、乙第4号証及び第11号証において、パチンコ台の表示装置に打ち止め表示が加わり、打ち止め状態の検出、打ち止めに対する指令等を中央管理装置によって行うものが開示された。
c 乙第12号証には、宝電機株式会社製の五つの機能を有する「BIG SUPER U」というパチンコ台表示装置が掲載されており、「終了・開放の表示」の項には、「終了や打止を自動的に表示し、モーターが停止する。開放や終了は表示ランプの点滅で知らせ、同時にモーターも復帰する。これらはすべてコンピュータ(ホールコンピュータ)で制御される。」旨が記載されている。ここでいう「コンピュータ」とは、ホールコンピュータを意味し、各パチンコ台から出玉数、入玉数の信号がホールコンピュータに入力され、その差が所定数になったときに、打ち止め表示とモーター停止(打ち止め)信号を発するものである。また、磁石不正使用、高圧パルス不正使用、特電役・電役の表示、トラブル(呼出し)等の検出及び表示はパチンコ台又は呼出しスイッチからの信号に基づいて表示されるものであり、乙第4号証、第11号証に記載されたパチンコ台の表示装置に更に磁石不正使用防止等の機能が付加されたものである。
d これらによれば、本件発明の特許出願がされた昭和62年ごろには、パチンコ業界においては、すでにホールコンピュータによる集中管理方式が広く採用され、打ち止め制度が行われ、ホールコンピュータによりパチンコ台ごとに出玉、入玉を管理してパチンコ台への打ち止め指令を出す一方、表示装置に打ち止めであることを表示することが業界の主流であった。
(イ) 本件明細書の「発明の背景」の項においては、各パチンコ台ごとに打ち止めや打ち止め回数を表示するものとして特開昭62-11482号公開特許公報(乙第4号証)記載のもの等が挙げられ、「この種の従来の装置は、複数のテレビ等の表示器をコントロール室の中央制御装置で集中管理するものであった。すなわち中央制御装置で種々のデータを入力して端末の表示器に表示するものであった。このように中央の制御装置と端末の表示器とを設ける場合には、全体のシステムが複雑になりシステムが高価になるという問題があった。また小規模のパチンコ遊技場には導入が困難であった。」(特許公報3欄4行ないし11行)という指摘がされ、その上で、「発明の目的」の項においては、「パチンコ台毎にその台に関する作動状況等の情報を表示でき、この表示に際して中央制御装置などが不要でシステムが非常に簡単で安価になり、小規模のパチンコ遊技場にも適するパチンコ台の表示装置を提供することを目的とする」(特許公報3欄14行ないし18行)ことが記載されている。
つまり、本件発明は、打ち止め状態を含むすべてのパチンコ台及び呼出しスイッチの作動状況等の情報を、各パチンコ台ごとに設けた表示装置で処理、
表示するようにして、パチンコ遊技場で従来から集中管理のため必要としていた中央制御装置(ホールコンピュータ)をなくすとともに、それに必要とされる配線等もなくしてシステムを簡易化し、これにより安価な表示装置を提供することを解決課題とするものであり、この点が本件発明の本質的部分である。なお、本件発明の実施例には、パチンコ台の作動状況を示す信号として、打ち止め信号、フィーバー信号、不正信号等が記載されており、打ち止め信号は、打ち止めセンサが予定玉数の放出を検出して打ち止め信号を出力する場合に打ち止め表示を行い、また、この時パチンコ台の玉の供給を停止して使用不能とする(この場合、中央制御装置は設置されていないため、表示装置内で打ち止め等の信号を出すものと考えられる。)旨が記載されている。
このように、本件発明は、少なくとも打ち止めに関する信号をパチンコ台及び表示装置に信号として出力していた中央制御装置を必要とせず、打ち止め制御、打ち止め表示を含むパチンコ台に関する作動状況の情報は、すべて当該パチンコ台及び呼出しスイッチからの信号に基づくようにしたものと解釈されるべきである。
(ウ) したがって、構成要件Dの「パチンコ台および呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて」とは、少なくとも打ち止めを含む作動状況を示す信号のすべてがパチンコ台及び呼出しスイッチから入力され、それに基づくことを意味する。打ち止めの作動状況を示す信号が中央制御装置から入力される場合は、構成要件Dを充足しない。
イ 被告製品においては、構成Fのとおり、パチンコ台からセーフ玉及びアウト玉の計数が中央制御装置に入力され、中央制御装置は、打ち止め信号をパチンコ台へ出力するとともに、打ち止め表示信号を被告製品へ出力するものであって、
被告製品の制御装置25は、打ち止め状態であるか否かの検出機能を全く有さず、
単に、中央制御装置からの指令に基づき、打ち止め表示をするだけであり、本件発明において不要とされる中央制御装置を必要とするものである。被告製品は、基本的には乙第12号証に記載された「BIG SUPER U」というパチンコ台の表示装置と機能的に同一である。そこで、被告製品は、少なくとも打ち止めを含む作動状況を示す信号のすべてがパチンコ台および呼出しスイッチから入力されるとはいえず、構成要件Dを充足しない。
ウ 本件発明の表示板は、実施例からも明らかなように、開放台か否か、打ち止め中か否か、呼出し中か否かなどのパチンコ台の作動状況に対応する表示内容を表示するものである。しかし、被告製品の表示板14は、構成Eによれば、パチンコ台の過去のデータ、履歴を数字で表示しているだけであり、それは開放台か否か、打ち止め中か否か、呼出し中か否かなどのパチンコ台の作動状況に対応する表示内容を表示しているのではない。
したがって、被告製品の表示板は、本件発明の「表示板」には当たらない。
構成要件Dの「表示板およびランプに表示させる」とは、ある作動状況に対応する表示内容を、表示板とランプの双方に表示することを意味する。実際問題として、フィーバー等が生じた場合、それを他人にも知らせて玉がよく出ることを印象付け、景気付けることが必要であり、単にメッセージを表示するだけでなく、ランプを点灯又は点滅することは必要である。しかし、被告製品においては、
構成Eによると、仮に被告製品の7セグメントで表示されている「過去のデータ」である数字が何らかの意味でパチンコ台の作動状況を表示するものであると考えたとしても、その過去のデータは表示板のみに表示されるもので、ランプには反映されず、「表示板およびランプ」に表示されるものではない。また、構成E及びFによれば、呼出し中又は打ち止めなどのパチンコ台の作動状況について、被告製品は単にランプが点灯、点滅するだけで表示板には表示されず、「表示板およびランプ」に表示されるものではない。
したがって、この点でも、被告製品は、構成要件Dを充足しない。
オ 被告の主張は、構成要件Dの「作動状況」を「打ち止め状態の検出、打ち止め指令、打ち止め表示信号」に限定するものではない。
本件明細書の作用効果の欄にも記載されているように、全体システムが非常に簡単で安価になるのは、中央制御装置を全く不要としたためであり、ある作動状況等のためには中央制御装置は不要であるが、ほかの作動状況等のためには中央制御装置を必要とするという場合は、本件発明の技術的範囲に属さない。
また、被告製品は、中央制御装置(ホールコンピュータ)からの打ち止め信号等に基づいて打ち止め状態になったことをランプで表示することを目的としたものであり、中央制御装置と別にパチンコ台ごとに打ち止めを管理する制御装置を取り付けてこの制御装置から呼出しランプに打ち止め信号を入力したり、中央制御装置からの打ち止め信号をパチンコ台にいったん入力し、このパチンコ台から更に呼出しランプに出力するような特殊な使用方法は念頭に置いていない。
4 争点(4)(進歩性)について (1) 被告の主張 ア 本件発明は、構成要件AないしDのとおりである。
イ 本件発明の特許出願前に頒布された刊行物の記載は次のとおりである。
(ア) 乙第1号証の1(「あすのホール経営′86」プレイグラフ臨時増刊号、昭和61年9月25日発行)275頁下欄の広告、乙第1号証の2(月刊誌「娯楽産業」昭和61年2月号、昭和61年2月5日発行)33頁下段の記事及び乙第1号証の3(ステイタスカウンターのパンフレット、昭和61年1月付け、杉本電器株式会社作成)には、「業界初マイコン搭載の押釦スイッチ」である「ステイタス」として、「ノーマル」、「フィーバー」、「カウンター」の3種類が開示されている。
しかるところ、乙第1号証の1ないし3には、本件発明の構成要件AないしC、及び構成要件Dのうち、パチンコ台及び呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を表示板およびランプに表示させる点が開示されている。
(イ) 乙第2号証(特開昭52-105038号公開特許公報)には、パチンコ台に用いられるマイクロコンピュータの構成が示されており、本件発明の構成要件Cが開示されている。
(ウ) 乙第3号証(特開昭54-29230号公開特許公報)には、各パチンコ台の稼動状況等を各台ごとに管理できるようにした電子管理装置が開示されている。
しかるところ、乙第3号証には、本件発明の構成要件A、構成要件Bのうち、文字・図形を表示する表示板と制御装置とが一つの筐体に装着されている点、構成要件Cを示唆する技術的思想、及び構成要件Dのうち、パチンコ台から入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を表示板に表示させる点が記載されている。
(エ) 乙第4号証(特開昭62-11482号公開特許公報)には、本件発明の従来例の一つであるパチンコ機の打止表示装置が開示されている。
しかるところ、乙第4号証には、本件発明の構成要件A及びCが記載されているとともに、構成要件Bのうち、文字を表示する表示板と、ランプと、呼出しスイッチと、制御装置とが装着されている点が記載されている。さらに、乙第4号証には、構成要件Dのうち、CPUがパチンコ台から入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を示すプログラムをメモリから読み出して表示板及びランプに表示させる点、及び呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容をランプに表示させる点が記載されている。
(オ) 乙第5号証(特開昭60-114284号公開特許公報)には、CPU及びメモリを備えた端末装置にパチンコ台の稼動状況等のデータが入力されたときに、これらのデータがCPU及びメモリで処理されて表示部に表示されることが開示されている。
しかるところ、乙第5号証には、本件発明の構成要件C、及び構成要件Dのうち、CPUがパチンコ台から入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を示すプログラムをメモリから読み出して表示板に表示させる点が記載されている。
(カ) 乙第6号証(実願昭49-60659号(実開昭50-149186号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム)は、
パチンコ機用表示ランプに関するものである。
しかるところ、乙第6号証には、本件発明の構成要件Aが記載されており、また、構成要件Bのうち、文字・図形を表示する表示板と、ランプと、呼出しスイッチと、制御装置(コンピュータ)とを装着している点が記載されている。
さらに、構成要件Dのうち、CPUがパチンコ台から入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を示すプログラムをメモリから読み出して表示板及びランプに表示させる点、及びCPUが呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を示すプログラムをメモリから読み出して表示板及びランプに表示させる点が記載されている。
(キ) 乙第7号証の1(実願昭60-185906号(実開昭62-92877号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム)には、電子回路を内蔵した呼出しランプが開示されている。また、乙第7号証の2(「プログラム学習によるマイコン制御 応用編」松下電器産業株式会社、昭和60年10月28日発行)は、一般的な技術常識を示す文献である しかるところ、乙第7号証の1には、本件発明の構成要件Aが記載され、また、構成要件Bのうち、文字を表示する表示板と、ランプと、呼出しスイッチと、制御装置(電子回路)とを装着している点が記載されている。そして、パチンコ台及び呼出しスイッチから入力信号が入ると、電子回路(コンピュータ)が作動し、いずれかのランプが点灯すること、また、その点灯パターンでパチンコ台の作動状況を示すことも開示されている。さらに、電子回路(コンピュータ)であれば、乙第7号証の2からも明らかなように、CPU、メモリを備えていることは自明であるから、本件発明の構成要件Cだけでなく、構成要件Dのうち、CPUがパチンコ台及び呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を示すプログラムをメモリから読み出して表示板及びランプに表示させる点も開示されている。
(ク) 乙第8号証(実願昭50-33437号(実開昭51-116079号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム)は遊技機の表示装置に関するものである。
しかるところ、乙第8号証には、本件発明の構成要件Aが記載されており、また、構成要件Bのうち、文字を表示する表示板と、ランプ、呼出しスイッチが一つの筐体に装着されている点が開示されている。さらに、本件発明の構成要件Dのうち、パチンコ台及び呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を表示板及びランプに表示させる点が開示されている。
ウ 前記イ(ア)のとおり、乙第1号証の1ないし3には、本件発明の構成要件A、B及びCと同一の構成が記載されている。本件発明と乙第1号証の1ないし3に記載された構成との相違点を挙げるとすれば、構成要件Dのうち、CPUが作動状況に対応する表示内容を示すプログラムをメモリから読み出すという点についての具体的な記載がない点のみである。
しかし、マイクロコンピュータであれば、メモリにプログラムを記憶させておき、このプログラムを必要に応じてCPUが呼び出して処理することは当然のことであり、構成要件Dのうち上記の部分は、自明であるか、当業者であれば容易に予測し得ることである。構成要件Dが公知技術から自明であることは、乙第4号証ないし第8号証に鑑みても明らかである。
また、構成要件Dのうち、CPUがパチンコ台から入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を示すプログラムをメモリから読み出して表示板及びランプに表示させる点は、乙第4、第5号証に開示されており、CPUが呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を示すプログラムをメモリから読み出して表示板及びランプに表示させる点は、乙第6号証、第7号証の1、2、第8号証に開示されている。
エ 以上によれば、本件発明は、その特許出願前に頒布された乙第1号証の1ないし3に記載された発明に基づいて、又はその特許出願前に頒布された乙第1号証の1ないし3、第2ないし第6号証、第7号証の1、2、第8号証に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができた(特許法29条2項)といえる。
オ(ア) 乙第1号証の3の右下隅には「東京通商産業局長表彰受賞」と記載されており、被告大阪営業所a作成の平成13年2月22日付け証明書(乙第17号証)に、昭和61年4月ごろから「ステイタスカウンター」の製造販売が行われていた旨記載されていることから、これらに開示されている「ステイタス」が、本件発明の特許出願前に市場で現実に販売され公知となっていたことは明らかである。
「ステイタスカウンター」は、パチンコ遊技場の遊技機用表示ランプであるから、パチンコ台ごとに設置されるのは明らかであり、乙第1号証の1ないし3に掲載された写真において、呼出しスイッチの左隣に位置する番号がパチンコ台の台番を示す番号であることから、「ステイタスカウンター」がパチンコ台ごとにその上方に設置されるものであることは明らかである。したがって、「ステイタスカウンター」には構成要件Aが開示されている。
「ステイタスカウンター」の外観図、部品配置図及び制御装置図(乙第18号証)には、7セグメントからなる大当たり回数表示部と、ランプL1、L2と、呼出しスイッチと、制御装置とが一つの筐体内に装着されていることが示されている。原告らの主張によれば、このような7セグメントの表示板も本件発明の表示板に含まれることになるから、「ステイタスカウンター」には、構成要件Bが開示されている。
乙第17、第18号証によれば、「ステイタスカウンター」は、メモリとCPUとからなる1チップのマイクロコンピュータ(三菱電機株式会社製 品番:M50760-915P)を装着している。マイクロコンピュータであれば、
CPUがメモリに記憶させたプログラムを必要に応じて呼び出し、処理することは明らかであり、前記マイクロコンピュータが、大当たり回数表示部とランプL1、
L2にそれぞれ接続され、これらを作動させることから、メモリが複数の表示内容を記憶していることは明らかである。したがって、「ステイタスカウンター」には構成要件Cが開示されている。
構成要件Dは、構成要件B、Cの具体的動作を単に説明しているにすぎない。例えば、「ステイタスカウンター」の制御装置図及び回路構成図(乙第18号証)によれば、その制御装置には、パチンコ台の大当たり検出センサから大当たり入力線が接続されている一方、大当たり回数表示部とランプL1、L2が接続されているから、パチンコ台で大当たり(フィーバー)が発生した時には、その信号がマイコンのCPUに入力され、メモリから複数の表示内容のプログラムを呼び出し、大当たり回数表示部に大当たり回数を表示するとともに、ランプをパッシングさせる。このことは、「各種動作状態を示す表示内容」(乙第18号証)の写真からも明らかである。「ステイタスカウンター」では、その呼出しスイッチがマイクロコンピュータに接続されていないが、これは、「ステイタスカウンター」を使用するパチンコホールにそのような必要がなかったためであり、技術的に困難であったことを意味するものではない。また、呼出しスイッチを操作することにより、
ランプを点灯し、表示板に文字を表示することは、乙第6号証、第7号証の1、
2、第8号証に開示されている。そこで、呼出しスイッチにマイクロコンピュータを接続して、表示板に多種多様な動作表示を行わせ、同時にランプを点滅させることは当業者にとって容易なことであった。したがって、「ステイタスカウンター」には、構成要件Dが開示されていた。
「ステイタスカウンター」は、打ち止めに関する機能はないが、メモリとCPUを備えている。打ち止めに関して中央制御装置を必要とせず、表示装置内の電子制御装置によって打ち止め及びその表示を行う表示装置が乙第3号証により公知であったから、「ステイタスカウンター」のメモリ、CPUの容量を増強させて打ち止めに関する電子制御を行わせることは、当業者であれば容易に想到することができたといわざるを得ない。7セグメント表示板を液晶式表示板に置換することは、特開昭56-75186号公開特許公報(乙第16号証)、実願昭59-3945号(実開昭60-116394号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(乙第19号証)によって開示されており、当業者であれば容易に想到することができる。
(イ) したがって、本件発明は、その特許出願前に「ステイタスカウンター」の製造販売によって公然実施された発明に基づいて、容易に発明をすることができた(特許法29条2項)といえる。
(ウ) なお、構成要件Dの「作動状況を示す信号」を、「打ち止め状態を含む作動状況を示す信号」と解釈せず、「打ち止め状態を除くその他の作動状況を示す信号」と解釈するとすれば、「ステイタスカウンター」が、本件発明の構成要件を充足するパチンコ台の表示装置として、本件発明の特許出願前に公然実施されていたこととなる。
カ このように、本件特許には無効理由(特許法123条1項2号)が存在することが明らかである。したがって、本件特許権に基づく差止め、損害賠償等の請求は、権利の濫用に当たり許されない。
(2) 原告らの主張 被告の主張は争う。
5 争点(5)(損害額)について (1) 原告らの主張 被告は、パチンコ台の表示装置の専業メーカーであり、平成11年5月1日から平成12年4月末日までの間に約39億4900万円の売上げを上げており、そのうち被告製品の売上げが占める割合は5パーセントを下らないから、同期間の被告製品の売上げは1億9745万円を下らない。
純利益率は10パーセントであるから、被告は、被告製品の製造販売により、同期間に少なくとも1975万円の純利益を上げており、特許法102条2項により、この純利益の額は、原告らが受けた損害の額と推定される。原告らは、被告に対し、この内金1000万円を請求する。
(2) 被告の主張 原告らの主張の事実は否認し、主張は争う。
6 争点(6)(競争関係)について (1) 被告の主張 原告らはパチンコ台の表示装置を販売しており、そうでなくてもパチンコ台の表示装置を製造販売している者から特許の実施料を徴収しており、被告はパチンコ台の表示装置である被告製品を製造販売しているから、原告らと被告は競争関係にある。
(2) 原告らの主張 被告の主張のうち、原告株式会社呉商がパチンコ台の表示装置を販売していること、原告らが、パチンコ台の表示装置を製造販売している者から特許の実施料を徴収していることは認め、その余の事実は否認し、主張は争う。原告株式会社サミットは、パチンコ台の表示装置を販売していない。
7 争点(7)(虚偽事実の告知)について (1) 被告の主張 ア 原告らは、被告の取引先十数社に対し、平成12年9月13日付け内容証明郵便をもって、同取引先が販売している被告の製造に係るパチンコ台の表示装置は本件特許権を侵害するものであるからその販売の中止を求めるという趣旨の通知をした。
イ 被告が取引先に販売している被告製品は、本件特許権を侵害するものではないから、同取引先が販売している被告の製造に係るパチンコ台の表示装置が本件特許権を侵害するものであるということは、虚偽の事実である。そして、これを被告の取引先に通知することによって被告の営業上の信用が害されるから、前記アの通知をした行為は、不正競争防止法2条1項14号に該当する。また、このような行為により被告の営業上の利益が侵害されるおそれがある。
(2) 原告らの主張 ア 被告の主張アのうち、原告らが、被告の取引先十数社に対し、平成12年9月13日付け内容証明郵便をもって通知をしたことは認める。通知の内容については、「被告製品が、原告らの特許を侵害するものであるから、被告はその販売を直ちに中止せよ。」という意義であることを前提として、これを認める。
イ 被告の主張イの事実は否認し、主張は争う。
当裁判所の判断
1 争点(3)(構成要件Dの充足性)について (1) 本件発明の構成要件Dは、「前記CPUはパチンコ台および呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を示すプログラムを前記メモリから読出して前記表示板およびランプに表示させることを特徴とするパチンコ台の表示装置。」というものであるが、その意味するところを本件明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて検討する。本件明細書の「産業上の利用分野」の項には、「本発明は、パチンコ台の上方等に取付けられて、その台の作動状況、例えば開放台か否か、打止中か否か、呼出し中か否か等の種々の情報を表示するために用いるパチンコ台の表示装置に関するものである。」(特許公報2欄6行ないし9行)と記載されている(甲第2号証による。以下同じ。)。
本件明細書の「発明の背景」の項には、次のとおり記載されている。「パチンコ遊技場において、遊技者は台を選択するに当って台毎の打止回数や、開放台であるか否か、あるいは優秀台であるか否か等の情報を得たいと望んでいる。そこで複数の台につきこれらの情報をテレビ画面に一括して表示することがすでに提案されている(例えば特開昭61-98274号、特開昭60-114284号)。
また各台毎に打止や打止回数等を表示するものも提案されている(例えば実開昭59-137776号、同59-93483号、同61-182781号、特開昭62-11482号等)。しかしこの種の従来の装置は、複数のテレビ等の表示器をコントロール室の中央制御装置で集中管理するものであった。すなわち中央制御装置で種々のデータを入力して端末の表示器に表示するものであった。このように中央の制御装置と端末の表示器とを設ける場合には、全体のシステムが複雑になりシステムが高価になるという問題があった。また小規模のパチンコ遊技場には導入が困難であった。」(同2欄11行ないし3欄11行)。
本件明細書の「発明の目的」の項には、「本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、パチンコ台毎にその台に関する作動状況等の情報を表示でき、この表示に際して中央制御装置などが不要でシステムが非常に簡単で安価になり、小規模のパチンコ遊技場にも適するパチンコ台の表示装置を提供することを目的とする。」(同3欄13行ないし18行)と記載されている。
本件明細書の「発明の効果」の項には、「表示装置は1つの筐体毎に独立して作動し、取付けられるパチンコ台毎の作動状況をそれぞれ表示できる。すなわち多数の表示装置を統轄する中央制御装置が不要であり、全体システムが非常に簡単で安価になる。またパチンコ台数に対応して表示装置を設定すれば足りるので、
小規模の遊技場にも容易に導入可能である。」(同7欄17行ないし8欄4行)」と記載されている。
(2) このような本件明細書の記載によれば、本件発明の特許出願前には、パチンコ台の表示装置を中央制御装置で集中管理し、中央制御装置から種々のデータを入力して端末の表示器に表示するものが知られていたが、本件発明は、表示装置を独立に作動させ、パチンコ台ごとの作動状況をそれぞれ表示するように構成すること、すなわち「CPUはパチンコ台および呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を示すプログラムを前記メモリから読出して前記表示板およびランプに表示させることを特徴とするパチンコ台の表示装置」(構成要件D)という構成を採用することにより、多数の表示装置を統轄する中央制御装置を不要とし、システム全体が非常に簡単で安価であり、小規模の遊技場にも容易に導入可能であるという効果を奏するものということができる。
したがって、構成要件Dの「パチンコ台および呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて」とは、文字通り、パチンコ台と呼出しスイッチから入力される信号に基づくことを意味し、中央制御装置から送られる作動状況を示す信号に基づくことを含まないものと解すべきである。作動状況を示す信号のうちたとえ一部でも、中央制御装置から送られる信号に基づいて表示を行うならば、中央制御装置を不要とするという効果を奏することができず、システム全体が非常に簡単で安価であり、小規模の遊技場にも容易に導入可能であるという効果を奏することができない。
このような解釈は、構成要件Dの「パチンコ台および呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて」という文言に忠実な解釈ということができ、構成要件の文言を殊更限定して解釈するものということはできない。
(3) 被告製品は、構成Fによれば、中央制御装置50が、打ち止め表示信号を表示装置10の入力インターフェース41を介して制御装置25へ出力し、制御装置25が打ち止め表示信号を受けてランプを点灯させるものであり、中央制御装置から送られる作動状況を示す信号に基づいて表示を行うものである。そうすると、
構成要件Dの「パチンコ台および呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて」という構成を充足しない。
したがって、被告製品は、本件発明の技術的範囲に属さない。
なお、原告は、被告製品を使って打ち止め操作をする場合に、中央制御装置は必須のものではなく、被告製品は中央制御装置なしで単独でも使用することができると主張するが、構成Fによれば、被告製品は、中央制御装置から出力される打ち止め表示信号に基づいて表示を行うから、原告のこの点に関する主張は、被告製品とは前提を異にするものというべきであり、採用することはできない。
(4) そうすると、その余の点につき判断するまでもなく、被告製品の製造、販売及び使用は、いずれも本件特許権を侵害しないものというべきである。
2 争点(6)(競争関係)について 原告株式会社呉商がパチンコ台の表示装置を販売していること、原告らが、
パチンコ台の表示装置を製造販売している者から特許の実施料を徴収していることは、当事者間に争いがない。
不正競争防止法2条1項14号の「競争関係」にあるというためには、現実に具体的な競争関係にあることを要せず、広く同種の商品又は役務について業務を行い、顧客獲得のために競争関係があれば足りるものと解すべきである。前記のとおり、原告株式会社呉商はパチンコ台の表示装置を販売しており、原告らはパチンコ台の表示装置を製造販売している者から特許の実施料を徴収している。一方、被告は、パチンコ台の表示装置である被告製品の製造販売を行っている(前記第2の2基礎となる事実(4))。そうすると、原告らと被告は、パチンコ台の表示装置という同種の商品について業務を行っているものであり、これらの販売業者やこれらを導入するパチンコ遊技場などを顧客として獲得するについて競争関係にあるといえる。
したがって、原告らと被告は、不正競争防止法2条1項14号の「競争関係」にあるものと認められる。
3 争点(7)(虚偽事実の告知)について (1) 乙第13号証、第14号証の1ないし15及び弁論の全趣旨によれば、原告らは、被告の取引先であり、被告製品の販売を行っている錦商事株式会社、三栄実業株式会社、大都販売株式会社、コア電子株式会社、有限会社北英商事、株式会社アカミズ電機、株式会社ユムラ商事、株式会社エレコン総業、ジーピーエム株式会社広島支店、株式会社四国宝商事、有限会社中国ニシキ、株式会社四国エース電研、USS方式自動補球工事有限会社、原建設株式会社、有限会社ダイシンシステムに対し、平成12年9月13日付けの内容証明郵便をもって、「貴社が販売されております呼出ランプの中には、通知会社の所有する特許権(特許第2599921号、同2599922号、同2686497号)に抵触しているものが含まれています。通知会社としては、製造者に対し製造販売を取りやめるよう請求し、一部については、訴訟提起もしておりますが、未だ製造販売を中止されないことから、
やむを得ず、販売しておられる貴社に対しても、呼出ランプの販売が当社特許権を侵害することを警告させていただき、販売中止を申し入れる次第です。このまま販売を続けられますと、当該呼出ランプを使用しておられるホールの方々に対しても、使用の差止等を求めることになりかねませんので、販売を直ちに中止してください。」という通知をしたことが認められ(原告らが被告の取引先十数社に対し、
平成12年9月13日付け内容証明郵便をもって通知したことは、当事者間に争いがない。)、この通知の趣旨は、通知先が行う被告製品の販売が原告らの登録番号第2599921号、第2599922号の特許権及び本件特許権を侵害すること、並びに被告製品の販売の中止を要請することであると認められる。
前記1(1)ないし(4)のとおり、被告製品の製造、販売及び使用はいずれも本件特許権を侵害しないから、前記通知のうち、被告製品の販売が本件特許権を侵害するということは虚偽の事実であると認められる。そして、このような虚偽の事実を被告の取引先に通知することが、被告の営業上の信用を害する行為であり、不正競争防止法2条1項14号の「営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」に該当することは、明らかである。また、被告製品が本件特許権を侵害するとすれば、被告の取引先は、原告らからの販売差止めや損害賠償の請求を避けるなどの理由により、被告と被告製品の取引を中止するなどに至ることから、
このような虚偽の事実の告知又は流布により、被告の営業上の利益が侵害されるおそれ(不正競争防止法3条1項)もあるものと認められる。
(2) したがって、被告は、原告らに対し、被告が製造販売する被告製品が本件特許権を侵害するという事実を、文書又は口頭で告知し又は流布することの差止めを求めることができる。
4 以上によれば、本訴請求は理由がないから、これを棄却し、反訴請求は理由があるから、これを認容することとし、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 中平健
裁判官 田中秀幸