運営:アスタミューゼ株式会社
  • ポートフォリオ機能


追加

この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成16ネ3458損害賠償請求控訴事件 判例 特許
平成11ネ2198特許権侵害に基づく販売差止等請求控訴事件 判例 特許
平成15ネ1223特許権侵害差止請求控訴事件 判例 特許
平成14ネ4193特許権侵害差止等請求控訴事件 判例 特許
平成13ネ3394特許権侵害差止等請求控訴事件 判例 特許
関連ワード 技術的思想 /  方法の発明 /  製造方法 /  新規性 /  進歩性(29条2項) /  公知技術 /  技術的範囲 /  先行技術 /  発明の詳細な説明 /  実質的に同一 /  対象製品 /  出願経過 /  参酌 /  均等 /  均等論 /  均等侵害 /  置き換え /  置換 /  置換可能性 /  置換容易性 /  意識的除外(意識的に除外) /  不存在 /  禁反言 /  特許発明 /  実施 /  間接侵害 /  構成要件 /  差止請求(差止) /  侵害 /  同意 /  拒絶理由通知 /  請求の範囲 /  変更 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 13年 (ネ) 2296号 特許権侵害差止請求控訴事件
控訴人(原告) ヴァイタル サインズ インコーポレイテッド
訴訟代理人弁護士 大場正成
同 尾崎英男
同 嶋末和秀
被控訴人(被告) テルモ株式会社
訴訟代理人弁護士 吉原省三
同 小松勉
同 三輪拓也
同 竹田吉孝
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/04/30
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 本件控訴を棄却する。
控訴費用は、控訴人の負担とする。
この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
控訴人の求めた判決
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人(被告)は、原判決別紙物件目録(一)及び(二)記載の各採血器を製造し、販売し、又は販売の申出をしてはならない。
3 被控訴人(被告)は、その占有する前項の採血器を廃棄せよ。
4 被控訴人(被告)は、原判決別紙方法目録(一)記載の方法により採血器を製造し、これを同目録(二)記載の方法により使用し又は使用させてはならない。
5 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人(被告)の負担とする。
との判決並びに仮執行の宣言。
事案の概要
本件は、注射器で採取した血液の遊離カルシウムイオン濃度をヘパリンの使用による誤差を減少させて測定する方法の発明(本件発明(1))及び血液試料中の遊離カルシウム濃度を測定する際に誤差を減少させるための抗凝血性綿撒糸の発明(本件発明(2))について特許権を有する控訴人が、@原判決別紙物件目録(一)及び同(二)記載の各採血器(被告製品)を原判決別紙方法目録(一)記載の方法で製造し、原判決別紙方法目録(二)記載の方法で自ら使用し又は第三者をして使用させる被控訴人の行為が、控訴人の有する本件発明(1)についての特許権を直接又は間接侵害し、A上記採血器(被告製品)を製造等する被控訴人の行為が控訴人の有する本件発明(2)についての特許権を侵害すると主張して、被控訴人に対し、上記各行為@、Aの差止め及び被告製品の廃棄を求めた事案である。
本件事案の概要は、次の1及び2のとおり当審における当事者の主張の要点を追加するほか、原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」のとおりである。なお、本判決も原判決の用法に従い、「本件発明(一)」、「本件発明(二)」(ただし、本判決中では「本件発明(1)」、「本件発明(2)」と表記し、両発明を合わせて「本件発明」という。)、「被告方法」、「被告製品」、及び「本件明細書」の各語を用いる。
1 控訴人の当審における主張(控訴理由)の要点 (1) 本件における均等の問題と原判決の誤り ア 本件発明の特徴的構成 本件発明の特徴とする構成は、所定量のヘパリン塩と所定量の水溶性充填剤の混合物を凍結乾燥して製造した綿撒糸を注射器に入れておくことにある。
この構成には、ヘパリン塩と水溶性充填剤の混合物を凍結乾燥して製造した綿撒糸を用いることにより、微量のヘパリン塩を含有した綿撒糸のみかけ体積が大きくなり、それによって必要最少量のヘパリンを注射器に採取された血液試料全体に迅速かつ容易に溶解させることができるという作用効果(「作用効果A」)がある。
なお、本件明細書(甲4)の発明の詳細な説明には、これとは別の作用効果、すなわち、ヘパリン塩に水溶性充填剤を混合して凍結乾燥による綿撒糸を製造すると、微量のヘパリン塩のみを凍結乾燥して製造した綿撒糸に比べ、綿撒糸の体積が増え、機械的強度も向上するので、綿撒糸の取扱いが容易になるという作用効果(「作用効果B」)が記載されているが、これは、最初に受けた拒絶理由通知(乙5)に対する平成9年7月14日付け手続補正(乙7)で、出願当初の特許請求の範囲の請求項1の構成要件のうち「該綿撒糸はそれぞれ綿撒糸を取扱うために注射器中に適当に配置するのに十分な充填剤量を有し」という構成要件を削除したことに伴い、本件発明の構成要件に対応するものではなくなった。したがって、本件明細書中の作用効果Bに関する説明記載は、実施例の説明にすぎないものとなった。
このような手続補正が可能であったのは、本件発明が作用効果Aのみによって発明として成り立ち、拒絶理由通知に引用された公知技術に照らしても、特許性が認められるために上記の構成要件による限定を必要としなかったからである。
均等の主張の要旨 被告方法(原判決別紙方法目録(一)、(二)記載の方法を合わせたもの)では、所定量のヘパリン塩と所定量の水溶性充填剤の混合物を注射器に入れて注射器内で凍結乾燥を行って綿撒糸を製造する。そのため、本件発明(1)の構成B1C(a 該混合工程の後この混合したヘパリン塩および充填剤を凍結乾燥して複数の綿撒糸を製造し、b 該綿撒糸の一つ又は複数を注射器に入れるが、)のうちの、綿撒糸を注射器外で製造し、次いで製造した綿撒糸を注射器に入れるという「順序」の点において、文言上、同構成要件に該当しないので、控訴人は、原審において均等による侵害を主張した。すなわち、被告方法が本件発明(1)の特徴的構成である、所定量のヘパリン塩と所定量の水溶性充填剤の混合物を凍結乾燥して製造した綿撒糸を注射器に入れておく構成を有し、その構成によって作用効果Aを奏し、それによって、低濃度ヘパリンを含有した血液採取器の商業的実用化がはじめて可能になったという事実に基づいて、均等による侵害を主張した。主張の要点は、上記の特徴的構成が本件発明(1)の本質的部分であり、綿撒糸を製造した後、注射器に入れるという「順序」は本件発明(1)の本質的部分ではない、また、上記「順序」が変わっても作用効果Aが奏されることにおいて違いはないから置換可能性があり、さらに上記「順序」を置換した方法は、被控訴人が高濃度ヘパリン注射器において以前から採用していた方法であるから、侵害時において置換容易であった、というものである。
ウ 原判決の誤り これに対し、原判決は前記手続補正書(乙7)とともに提出した平成9年7月14日付け意見書(乙8)の記載を理由として、均等の判断における「本質的な部分、意識的除外」の認定を行い、本件発明(1)の構成B1Cにつき、均等を否定する判断をした(原判決34頁9行〜39頁末行)。この原判決の認定、判断は、以下の(2)に述べるように、意見書の記載の断片を取り上げて「意識的除外」がなされたとするもので、不合理な認定である。「意識的除外」の認定は、それだけで均等論による特許発明の保護を否定するものであるから、出願記録上、出願人の「意識的除外」の意思が客観的に明らかである場合に限られるべきものであって、安易になされるべきではない。
また、原判決は、本件発明(1)の構成B1A(所定量の水溶性充填剤を用意し、)の「水溶性充填剤」を、「独立した固体として取り扱うのが容易な強度を有する凍結乾燥物を製造し得るような水溶性充填剤」の意味であると限定解釈した(原判決40頁4行〜50頁9行)。しかし、このような限定解釈は、以下の(3)に述べるように、特許請求の範囲の記載文言からあまりにも逸脱しており、しかも合理的な根拠がない。
以下、これらの点を各個に述べる。 (2) 本件発明(1)の構成要件B1Cに関する均等侵害について ア 本件における均等論の適用(「本件発明の本質的部分」及び「意識的除外等、均等の成立を妨げる特段の事情の不存在」) (ア) 均等論に関する最高裁判決で示された「置換された部分が発明の本質的部分ではないこと」という要件(均等の第1要件)における「発明の本質的部分」とは、東京地裁平成12年3月23日判決(生海苔の異物分離除去装置事件)の判示にあるとおり、「特許請求の範囲に記載された特許発明の構成のうちで、当該特許発明特有の課題解決手段を基礎付ける特徴的部分、言い換えれば、右部分が他の構成に置き換えられるならば、全体として当該特許発明技術的思想とは別個のものと評価されるような部分」をいい、「対象製品との相違が特許発明における本質的部分に係るものであるかどうかを判断するに当たっては、単に特許請求の範囲に記載された構成の一部を形式的に取り出すのではなく、特許発明先行技術と対比して課題の解決手段における特徴的原理を確定した上で、対象製品の備える解決手段が特許発明における解決手段の原理と実質的に同一の原理に属するものか、
それともこれらは異なる原理に属するものかという点から判断すべきもの」と解される。 そこで、本件発明の技術課題の解決手段における特徴的原理を確定するために、本件発明を先行技術と対比すると、本件発明に最も近い先行技術であることを被控訴人も認めている前記拒絶理由通知書記載の引用例2(乙6)は、ヘパリン塩が水分を吸収して潮解し、そのために血液と混合しにくくなるという問題を解決するために、ヘパリンよりも水溶性の低い物質をヘパリンと混合して生成した凍結乾燥物を採血管に封入する技術である。しかも、そのヘパリンは従来の高濃度ヘパリンであって、カルシウムイオン濃度測定のための低濃度ヘパリン塩を含有した注射器において、低濃度ヘパリン塩と水溶性充填剤の混合物を凍結乾燥して製造した綿撒糸を用いることは全く記載されていない。このような先行技術にかんがみれば、本件発明は、カルシウムイオン濃度測定のために低濃度ヘパリン塩を含有する血液採取用注射器を商業的に実用化することを新規な技術課題とし、その解決原理は、微量のヘパリンが採取された血液試料中に有効に溶解するように、ヘパリンと水溶性充填剤の混合物を凍結乾燥して製造した綿撒糸を使用することにあるということができる。
被告方法は、上記技術課題の解決原理において、何ら本件発明と異なるところがない。
(イ) 本件では均等の認定を妨げる包袋禁反言は成立しない。すなわち、
後記イで詳述するとおり、@出願人は、拒絶理由通知を回避するために、綿撒糸を製造した後、注射器に入れるという「順序」によって本件発明を限定する手続補正(乙7)を行ったわけではなく、A出願人の意見書(乙8)中の記載は、本件発明の構成の全部に言及してこれを説明したものであって、本件発明の構成の中の上記「順序」を強調したものではなく、Bまた、手続補正を伴わない意見書の主張が禁反言を生じることがあるとしても、それは特定の技術的事項について出願人が権利取得を放棄する意思を客観的に表明していることが出願記録上明らかに認められる場合に限られるというべきところ、本件は、そのような放棄の意思が明らかに認められる場合にも該当しない。
均等論の適用についての原判決の誤り 原判決は本件発明(1)と被告方法の均等侵害の有無を判断するとして、拒絶理由通知に対して出願人が提出した意見書(乙8)の記載に基づいて次のように判断した。
「右出願経過に照らすと、原告は、『綿撒糸を製造した後、これら綿撒糸の1つ又は複数を注射器に挿入する』工程そのものが、本件発明(1)の特徴であることを強調している。そうすると、右綿糸を製造する順序は、本件発明(1)の本質的部分であると解することができるし、さらに、右順序を踏まえない方法(被告方法のような、ヘパリン塩の水溶液を注射器に分注した後、注射器全体を凍結乾燥器に入れて、凍結乾燥物を製造する方法)を意識的に除外した趣旨であると解するのが相当である。」(原判決39頁5行〜末行) しかし、意見書の記載を客観的にみても、出願人は「綿撒糸を製造した後、これらの綿撒糸の1つ又は複数を注射器に挿入する」という順序が本件発明(1)の特徴であると強調してはいない。また、強調したという評価がなされる箇所があるとしても、だからといって、意見書の記載から、「順序」が発明の本質的部分であるとも、またその「順序」を踏まえない方法を意識的に除外したともいえない。
一般に、手続補正を伴わない事項についての意見書の記載は、公知技術に基づく拒絶理由に対するものであっても、必ずしも当然に意識的除外の意思を示すものとはいえない。本件では、問題とされた「順序」は手続補正によって加えられた限定ではなく、出願当初から特許請求の範囲に記載されていたものである。意見書における控訴人の主張は、本件発明(1)と引用例との全ての相違に言及して、本件発明(1)と引用例との相違を主張しようとするものであった。全ての相違に言及すれば、必然的に、「順序」も本件発明(1)を構成する内容として主張されることになるが、相違として述べられたことの全てが本件発明(1)の特徴の強調であるとは必ずしもいえないし、また、意識的除外であるともいえない。
拒絶理由通知に対する出願人の応答の意思は、手続補正の内容に最も明確に現われる。そこで、本件特許出願の当初の特許請求の範囲(甲2)と手続補正の内容(乙7)とを比較してみると、請求項1に関する手続補正のポイントは、@綿撒糸を凍結乾燥によって製造されるものに限定し、A当初の請求項1に記載されていた「該綿撒糸はそれぞれ、綿撒糸を取扱うため注射器中に適当に配置するのに十分な充填剤量を有し」の限定を削除し、綿撒糸の取扱いやすさ(機械的強度)のために十分な量の充填剤を用いることが発明の限定要件ではないとしたことにあったことが明らかである。
一方、原判決が引用した意見書の各記載は、手続補正後の請求項1の内容を全般的に述べたり、本件発明(1)と引用例との幾つもある差異を述べたうちの1つにすぎず、「綿撒糸を製造した後、これら綿撒糸の1つ又は複数を注射器に挿入する」工程の順序が本件発明(1)の特徴であることを強調したものではなく、また、この順序を踏まえない方法を意識的に除外する趣旨でもない。
そもそも拒絶理由通知(乙5)に示された引用例1ないし3は、いずれも本件発明とは非常に相違した技術に関する文献であり、出願人が意見書において、特に「順序」を強調する必要があるような文献ではないのである。
(3) 本件発明(1)の構成要件B1A(「水溶性充填剤」)の充足性について ア 原判決は本件発明(1)の「水溶性充填剤」の意義について、その文字通りに解釈すると「水溶性で、かつ増量のために用いられる物質であると解される」(判決40頁7、8行)が、特許請求の範囲の記載や明細書の記載を参酌して解釈すると「独立した固体として取り扱うのが容易な強度を有する綿撒糸を製造し得るような水溶性充填剤に限定されると解すべきである」と述べている(同40頁8行〜41頁2行)。しかし、本件発明の作用効果は作用効果Aにあり、作用効果Bと関連づけて「水溶性充填剤」の解釈に特許請求の範囲の記載にない限定を持ち込むことは合理的解釈ではない。本件発明(1)の「水溶性充填剤」は作用効果Aを奏すれば十分だからである。
イ 原判決は上記限定解釈の根拠の1つとして、特許請求の範囲の記載上、綿撒糸を製造後、これを注射器に入れるという工程が想定されていることを挙げている(原判決41頁4行〜8行)が、そのことは限定解釈の根拠となるものではない。
出願当初の明細書には、まさに原判決が限定解釈した内容に相当する構成「該綿撒糸はそれぞれ、綿撒糸を取扱うため注射器中に適当に配置するのに十分な充填剤量を有し」が特許請求の範囲に記載されていた。それが手続補正において削除されたのであるから、「独立した固体として取り扱うのが容易な強度」を有する綿撒糸を製造し得るという点が水溶性充填剤の限定要件となるものでないことは明らかである。
ウ また、原判決は本件特許明細書の発明の詳細な説明の中の記載を引用して、本件発明(1)の解決しようとした課題が、低ヘパリンの綿撒糸は寸法が極めて小さく取扱いが困難であることにあり、本件発明(1)は「ヘパリン塩と水溶性充填剤の混合液を凍結乾燥することにより、取扱いが容易な寸法及び強度を有する綿撒糸を製造・・・」することによってその課題を解決するものと解されると判断している。(原判決41頁9行〜50頁2行)。
しかし、前述のように、手続補正(乙7)によって水溶性充填剤の量に関する限定が発明の構成要件から削除され、これに関連する明細書中の記載は、本件発明(1)の実施例に関する記載であっても、本件発明(1)の構成要件自体を説明する記載ではなくなっているものであるから、手続補正後の発明に直接関係する記載とそうでない記載とをきちんと区別し、本件明細書の記載を正しく参酌して本件発明(1)の技術的範囲を解釈すれば、原判決のような限定解釈は採り得ない。
エ 原判決は、本件発明(1)では機械的強度の観点から綿撒糸が20mg/ml以上の密度を必要とするのに対し、被告方法における凍結乾燥物の密度は2.45mg/mlであるから独立した固体として取り扱えるだけの強度を有していないと判断した(原判決51頁5行〜9行)。
しかし、機械的強度の要請に基づく密度の下限に関する本件明細書中の記載は、
手続補正(乙7)によって本件発明(1)の必須の限定要件に関する記載ではなくなった。一方、綿撒糸が血液試料中に有効に溶解するために、約30mg/ml以下の密度であることが望ましいとの記載は、前記作用効果Aに関係する記載であるところ、被告方法の綿撒糸の密度はこの条件を満たしている。
オ 被告方法では、水溶性増量剤(ポリビニルピロリドン)を用いて凍結乾燥によってふわふわとした低ヘパリン綿撒糸を作成しており、これによって微量のヘパリンが採血された血液中に迅速かつ容易に分布し、必要最少量のヘパリンを血液試料全体に含有させることができる。要するに、本件発明(1)と被告方法では「水溶性充填剤」に関して何の相違もない。したがって、原判決が被告方法は「水溶性充填剤」の点でも本件発明(1)の技術的範囲に属さないと判断したのは誤りである。
2 被控訴人の反論の要点 (1) 均等の主張に対して 本件発明(1)と被告方法とが均等であるとの主張は争う。
本件発明の本質的部分は、血液試料に少量のヘパリンを添加するために、水溶性充填材としてグルコースポリマーを含有する、固体として独立して取扱い可能な綿撒糸を用いることにある。そして、請求項1(本件発明(1))においては、上記のような綿撒糸を別途製造してから注射器内に入れ、これを用いて血中のカルシウム濃度を測定する方法が特許請求されており、請求項4(本件発明(4))においては、特定の分子量の水溶性グルコースポリマー充填材を含む綿撒糸そのものが特許請求されているのである。
これに対して被告方法は、注射器内でヘパリンとポリビニルピロリドン混合物の凍結乾燥物を製造する(採血管ごと凍結乾燥する)というものであるから、錠剤に代わる綿撒糸を製造するというところから発展した本件発明とは発想が異なっており、本件発明の本質的部分を備えていない。また、上記凍結乾燥物は、独立した固体として取り扱うのに容易な強度を有するものではないから、ポリビニルピロリドンは、上記強度を有する凍結乾燥物を製造し得るような水溶性充填材ではない。
(2)本件発明(1)の構成要件B1Cについて ア 本件における均等論の不適用 (ア) 本件発明(1)の本質的部分について 構成要件B1Cの構成となっている工程は、本件発明(1)の本質的部分である。このことは、本件明細書(甲4)に「従来の技術」(【0002】以下)と対比して「発明の構成」が記載されているが、そのなかで注射器に入れる綿撒糸の製造方法(特に【0038】以下)をいろいろと説明していることからも明らかである。そして、出願過程において出願人が提出した意見書では、「綿撒糸を製造して」、「その一つ又は複数を注射器」に入れることが本件発明の従来技術と異なる点であり、特徴であると主張されているのである。したがって、B1Cの工程こそが公知技術と本件発明(1)との相違点であり、本質的部分である。
(イ) 作用効果の同一性について 控訴人の主張する作用効果は、特に本件発明に特有のものというわけではない。本件発明の特有の効果を挙げるとすれば、作用効果Bの「機械的強度も向上するので綿撒糸の取り扱いが容易になる」という点であろうが、これは、綿撒糸を製造して注射器に入れるというB1Cの構成に伴うものである。被告方法においては、このような工程をとっていないから、上記作用効果は問題にならない。
(ウ) 置換容易性について 被告方法は、採血管ごとヘパリン塩とポリビニルピロリドンの混合物を凍結乾燥するという技術思想に基づくものであるから、本件発明(1)とは発想が異なっており、B1Cの構成からの置換が容易であったとはいえない。
(エ) 包袋禁反言 出願過程における出願人の主張が侵害訴訟における技術的範囲の解釈について参考とされるのは、出願に係る発明を公知技術と区別するために補正を行った場合や、手続補正を伴わない場合の意見書の主張において権利取得の意思の放棄が客観的に明確な場合に限られるわけではない。本件においては、以下に述べるとおり、出願人は拒絶理由通知に対する意見書(乙8)において、本件発明について意図したところを主張しており、そのように主張して特許されたのであるから、権利行使の場面においてこれと異なる主張をすることは許されない。
イ 原判決の正当性 原判決が、意見書(乙8)の記載に基づいて、綿撒糸を製造し、これを注射器に入れるという工程ないし「順序」を本件発明(1)の本質的特徴をなす部分と判断したことは正しい。
控訴人は、意見書(乙8)は、前記「順序」を本件発明(1)の特徴として強調しておらず、ましてその順序を踏まえない方法を意識的に除外したともいえないと主張するが、意見書における説明は、客観的にみて、前記「順序」が本件発明(1)の特徴であることを強調しているものである。また、控訴人は、本件発明(1)について問題とされた「順序」は手続補正によって加えられた限定ではなく、出願当初から特許請求の範囲に記載されていたものであると主張するが、そのことは「順序」すなわち工程が本件発明(1)の本質的部分であったことを示すものに他ならない。控訴人は手続補正書(乙7)とこれを前提とした意見書(乙8)によって、この点を更に明確にしたのである。
控訴人は、手続補正の要点は、@綿撒糸を凍結乾燥によって製造されるものに限定し、A「該綿撒糸はそれぞれ、綿撒糸を取扱うため注射器中に適当に配置するのに十分な充填剤量を有し」という限定を削除することにあったと主張する。しかし、発明の本質的部分は、補正によっても変更することができないはずである。そして、その観点からみると、「該混合工程の後この混合したヘパリン塩及び充填剤を凍結乾燥して複数の綿撒糸を製造し;該綿撒糸の1つ又は複数を注射器に入れるが、この際1つ又は複数の綿撒糸は約15U.S.P単位より低いヘパリン塩活性を有し、;」という「綿撒糸を製造し」次に該綿撒糸の1つ又は複数を「注射器に入れる」という順序は、本件発明(1)の本質的部分として手続補正後も維持され、意見書(乙8)において、これに言及した主張がなされているのである。
また、控訴人は、意見書中の各記載は、いずれも前記「順序」を強調したものではないと主張するが、これらの記載は、引用例との相違を説明し、本件発明(1)の新規である点を主張したものであるから、控訴人の主張は成り立たない。
控訴人は、拒絶理由通知書(乙5)で引用された公知技術は、本件発明とは非常に相違した技術であると主張するが、引用例1(米国特許4371516号明細書、甲8)及び引用例2(特開平2-162258号公報、乙6)は、本件発明に非常に近い技術である。
重要なことは、拒絶理由通知に対して出願人が本件発明につき何と主張したかである。それは、本件発明についての出願人の認識を示すものであり、その主張を前提として特許されたものである以上、これと矛盾する主張は許されない。
(3) 本件発明(1)の構成要件B1A(「水溶性充填剤」)について ア 控訴人は、本件発明の作用効果は作用効果Aにあり、本件発明(1)の「水溶性充填剤」は、作用効果Aを有するものであれば十分であるから、原判決がこれを限定解釈したのは不合理であると主張する。しかし、明細書には作用効果Aが本件発明(1)の作用効果であるとは記載されていない。また、作用効果Aのみで足りるのであれば、特許請求の範囲に「順序」(プロセス)を記載したことが無意味となるし、先行技術である特開平2-162258号(引用例2、乙6)と作用効果において変わらないということになる。
イ 控訴人は、手続補正(乙7)で「該綿撒糸はそれぞれ、綿撒糸を取扱うため注射器中に適当に配置するのに十分な充填剤量を有し」という構成要件を削除していることをもって、「水溶性充填剤」について原判決の限定解釈は採ることができないと主張する。しかし、請求項1についての補正の前後を対比してみると、
控訴人の主張する削除は、補正前は「綿撒糸の一つを注射器に入れ」ることとしていたのに対し、補正後は「綿撒糸の一つ又は複数を注射器に入れる」こととすると共に、ヘパリン量を「一つ又は複数の綿撒糸」の含有するヘパリン量に改めるのに伴ってなされたものである。つまり、「注射器に適当に配置するのに十分な充填剤量」を有しなくてもよいということになったわけではなく、「綿撒糸を製造し」た後これを「注射器に入れる」という構成は補正の前後を通じて同じである。したがって、この補正をもって、作用効果Bに関する構成が削除されたと解することはできず、作用効果Aのみで足りることとなったということにもならない。
ウ 本件発明が「綿撒糸を製造し」た後これを「注射器に入れる」という構成を必須の要件としている以上、充填剤は、そのための機械的強度を保つための密度が必要である。そこで実施例では、「充填剤を使用する場合、約20mg/ml以下の濃度は容易に取扱うのには弱すぎる綿撒糸を生じることが判明した。約30mg/ml以上では、形成する綿撒糸は血液試料中に有効に可溶化するにはち密すぎる。」【0071】と述べられているのである。
エ 以上のとおり、控訴人の主張は、本件発明(1)が「綿撒糸を製造し」た後これを「注射器に入れる」という構成を必須の要件としていることを無視するものであり、理由のないものである。
当裁判所の判断
当裁判所も、控訴人の本訴請求は、いずれも理由がないから棄却すべきものであると判断する。その理由は、当審における控訴人の主張について次のとおり付加するほか、原判決の事実及び理由欄の「第三 当裁判所の判断」の一及び三(原判決33頁6行ないし40頁1行、及び52頁3行ないし57頁1行)のとおりである。
1 本件発明(1)について (1) 本件発明(1)の構成要件B1は、@所定量のヘパリン塩を用意し、A所定量の水溶性充填剤を用意し、B該ヘパリン塩と該充填剤とを合し、Ca該混合工程の後この混合したヘパリン塩および充填剤を凍結乾燥して複数の綿撒糸を製造し、b該綿撒糸の一つ又は複数を注射器に入れるが、Dこの際該一つ又は複数の綿撒糸は約15U.S.P単位より低いヘパリン活性を有し、というものである。
被告方法が構成要件B1Cの「複数の綿撒糸を製造し、該綿撒糸の一つ又は複数を注射器に入れる」という「順序」を踏むものでなく、したがって、構成要件B1Cを文言上充足しないことは、原判決の認定のとおりであり、控訴人も当審においてこの点を争うものではない。
そうすると、被告方法は、控訴人主張の構成要件B1Cに関する均等侵害が成り立たない限り、構成要件B1Aを充足すると否とにかかわりなく、本件発明(1)の技術的範囲に属するとはいえないことになる。
そこで、以下、被告方法について、控訴人主張の構成要件B1Cに関する均等侵害の成否を検討する。
(2) 証拠(乙5、7、8、甲2、3、4)及び弁論の全趣旨によれば、本件特許出願の経過は、原判決34頁10行ないし39頁4行に摘示のとおりであり、
出願人は、平成8年12月19日付拒絶理由通知(乙5)に対して、同9年7月14日付けで手続補正書を提出し(乙7)、特許請求の範囲を本件明細書記載のものに補正するとともに、同日付けで意見書(乙8)を提出したこと、及び、同意見書には本件発明に関して、
@ 「新請求項1は、本願発明がヘパリン塩の存在による誤差を回避しつつ、血液試料の遊離カルシウムイオン濃度を測定することを包含しています。この本願請求項1に記載した測定法は、従来血液試料を採取するときに注射器中に使用した量に比較して、少量のヘパリン塩を必要とするにすぎません。比較的僅少量のヘパリン塩を注射器中に使用することは、その小さい寸法のために多くの製造上及び取り扱い上の問題を有します(本願明細書【0017】【0018】)。本願測定法は、充填剤を減少量のヘパリンと共に包含して成形される1つ以上の綿撒糸を必要とします。更に、この綿撒糸は凍結乾燥法を用いて製造されます。すなわち、本願におけるヘパリンの減少量及び充填剤を含有する綿撒糸は注射器自体の中で混合されないということです。綿撒糸を製造した後、これら綿撒糸の1つ又は複数を注射器内に挿入します。・・・本願発明におけるこれらの多くの工程の組合わせは公知技術に見出すことはできません。」、
A 「(引用例1には)更に、ヘパリン塩及び充填剤の組合わせ綿撒糸を最初に凍結工程により製造し、次いで血液試料を採取(する)ために注射器中に挿入し、
配置することを示唆する教示も全くありません。」、
B 「(引用例2に関し)この公報中にも、凍結乾燥工程により綿撒糸を製造し、かつ次いで注射器中に綿撒糸を挿入配置し、・・・は記載されていません。」、
C 「本願発明以前に、綿撒糸を凍結乾燥法により製造し、かつ充填剤を含有することにより、その製造上及び取り扱い上の問題を解決して、更に綿撒糸中に存在するヘパリン量を減少させるという著しい特徴部に関する記載は全くありません。
特に、注射器中に綿撒糸を配置する前に凍結乾燥工程を用いて、必要とされる低量のヘパリン及び充填剤を組み合わせることに関して従来技術にはどんな示唆も見いだすことができません。」、
D 「新請求項4はその成分及び濃度により規定した本願発明により得られる綿撒糸に関するものです。・・・更に、この綿撒糸を使用することにより初めて、血液試料中の遊離カルシウムイオン濃度を測定する際にヘパリンの使用による誤差を現象することが可能になり、かつその製造及び取り扱い上の問題が解決されたのです。」と記載されていることが認められる。
(3) 上記(2)で認定した本件特許の出願経過に照らすと、出願人は、拒絶理由通知に対する意見書(乙8)の中で、補正後の特許請求の範囲に記載された発明が引用例記載の発明とは区別され、新規性及び進歩性を有するものであることを説明して、「綿撒糸を製造 した 後、これら綿撒糸の1つ又は複数を注射器内 に挿入します。・・・本願発明におけるこれらの多くの工程の組合わせは公知技術に見出すことはできません。」、「(引用例2には)綿撒糸を最初 に凍結工程により製造し、次 いで 血液試料を採取(する)ために注射器中 に挿入 し、配置 することを示唆する教示も全くありません。」(下線付加)等と主張していたことが認められる。
綿撒糸を製造した後、これを注射器内に入れる旨の説明は、意見書中に繰り返し表れており、説明の趣旨自体は明確であって、不用意な言明とも認められないところ、その内容は、これを客観的にみると、「綿撒糸を製造した後、・・・注射器内に挿入する」という工程の組合わせないし「順序」が公知技術との相違点であるとして、本件発明の新規性及び進歩性を説明しているものであり、上記工程ないし順序が本件発明の特徴的部分であることを言明したものであると理解される。
そして、出願人が特許請求した発明の特徴について、出願手続中で提出した意見書等において自ら説明し言明した事項は、通常、特許請求された発明の内容を、出願人自身の認識に基づいて、最も端的に表現したものということができるのであるから、均等論の適応が問題となる場面で、当該発明の特徴的部分がどこにあるかを把握するに当たっては、これらの言明を参酌して、出願に係る発明の特徴的部分を出願人の説明どおりのものとして理解することが、一般に合理的であると考えられる。本件においては、意見書の記載内容自体に照らしても、拒絶理由通知で指摘された公知技術との関係においても、特許出願手続の過程における出願人自身の言明に反して、綿撒糸を製造した後注射器内に入れるという「順序」が発明の特徴的部分ではないと理解すべき事情は認められない。
そうすると、本件発明(1)において、綿撒糸を製造し、その後に綿撒糸を注射器内に入れるという工程ないし順序は、本件発明(1)を特徴づける発明の本質的部分であると解するのが相当であり、この工程ないし順序を踏まない被告方法を本件発明(1)と均等のものということはできない。
(4) 控訴人は、意見書(乙8)では、引用例と本件発明との相違点のすべてに言及したため、前記「順序」も本件発明(1)を構成する内容として主張されることになったにすぎず、「綿撒糸を製造した後、注射器内に挿入する」という「順序」を発明の本質的要素として強調したことはないと主張する。しかし、同意見書中の記述が、客観的にみて、「まず綿撒糸を製造すること」ないし上記「順序」が本件発明を特徴づける要素であるという趣旨の主張であると認められることは前判示のとおりであるから、控訴人の主張は採用することができない。
また、控訴人は、意見書と同日付けで提出された手続補正書(乙7)では、「順序」によって本件発明(1)を限定する補正はしておらず、この同手続補正書による補正の趣旨からみても、意見書中の記述が「順序」によって本件発明(1)を限定する趣旨のものでなかったことが理解されるし、拒絶理由通知に示された引用例は、拒絶を回避するために順序により本件発明を限定する必要を生じさせるようなものではなかった、などと主張する。しかし、意見書は補正後の本件発明について、その特徴を説明しているものであるから、同時期になされた補正において「順序」による明示の限定がなされなかったいう事実があっても、そのことは意見書の内容が「順序」を発明の特徴として述べたものであると認定することを妨げるものではない。
特に、補正内容との関連でいうと、上記補正後の明細書の発明の詳細な説明中には、依然として「独立した固体として取り扱うのが容易な強度を有する綿撒糸」の製造に関する事項(控訴人主張の作用効果Bに関連する)が記載されており、これらの詳細な説明の記載全体を踏まえて意見書を読み、かつ請求項1の記載と照らし合わせて合理的に理解するときは、意見書中の記述は、原判決認定のとおり、「綿撒糸を製造した後、これら綿撒糸の一つ又は複数を注射器に挿入する」という工程そのものが本件発明(1)の特徴であることを強調したものということができる。
また、引用例との関係において発明を限定する必要がなかったと事後的に評価することができる場合であっても、出願人自身が自ら発明の特徴について述べていた事項は、均等論適用の場面で当該発明の特徴的部分を把握するうえで、重視されるべき解釈資料と位置づけられるのであり、本件においては、控訴人の上記主張を勘案しても、発明の特徴的部分を出願人の言明どおりのものとして把握することを不合理とする事情は存在しないというべきである。 以上のとおりであるから、綿撒糸を製造し、その後に綿撒糸を注射器内に入れるという工程ないし順序は本件発明(1)の特徴をなす本質的部分ではないとする控訴人の主張は、採用することができない。
(5) さらに、出願人が、拒絶理由通知に対する意見書(乙8)において、
「綿撒糸を製造した後、これらの綿撒糸の1つ又は複数を注射器に挿入する」という工程ないし順序は、公知技術に見いだすことができない旨主張し、この点に基づいて本件発明(1)の新規性及び進歩性を主張していたことは、別の観点からみると、
本件発明(1)を限定したものとも評価することができる。
出願経過記録を検討する第三者は、出願手続の過程で提出された出願人の意見書等の中でなされた表明に依拠して特許請求された発明を理解し、その技術的範囲についての予測を形成することも多いという事情を考えるとき、出願手続中で出願人自ら発明の新規性及び進歩性を基礎づける特徴として説明していた事項が権利成立後、権利行使の場面において、発明の本質的特徴に係わる事項ではないと主張され、均等論の適用が求められた場合に、これを安易に認めることは相当でないというべきである。本件においては、特許権取得の過程において、出願人自身が発明の特徴を主張することにより本件発明(1)を限定する趣旨とみられる言明をしているのであり、そのことからすると、均等の成立を妨げる特段の事情が存在するというべきである。
(6) 以上のとおりであるから、被告方法は、本件発明(1)の構成要件B1Cに関して、本件発明(1)と均等の構成を有するものとはいえない。
したがって、構成要件B1Aの充足性について判断するまでもなく、被告方法は、
本件発明(1)の技術的範囲に属するものとはいえない。
2 本件発明(2)について 被告製品中のヘパリンとポリビニルピロリドン混合物の凍結乾燥物が、文言上、
本件発明(2)の構成要件アAを充足しないこと、また、上記凍結乾燥物に関する控訴人の均等の主張に理由がないことは、原判決のとおり(52頁3行ないし57頁1行)であり、控訴人も当審において、この点を特に争わないところである。
したがって、被告製品は、本件発明(2)の技術的範囲に属するものとはいえない。
3 結論 以上検討したところによれば、控訴人の本訴請求はいずれも理由がなく、これらを棄却した原判決は相当である。よって、本件控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 塩月秀平
裁判官 古城春実