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審判番号(事件番号) データベース 権利
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事件 平成 13年 (ワ) 27381号 特許権及び意匠権侵害差止等請求事件
原告 石川島建材工業株式会社
訴訟代理人弁護士 中島和雄
補佐人弁理士 高柴忠夫
被告 明電セラミックス株式会社
訴訟代理人弁護士 光石忠敬
同 光石俊郎
補佐人弁理士 田中康幸
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2002/09/27
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は,別紙物件目録(2)記載のインサート器具を製造し,販売し,販売の申出をし,又は輸入してはならない。
2 被告は,その保有する上記インサート器具を廃棄せよ。
3 被告は,原告に対し,金1万6020円及びこれに対する平成13年12月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 原告のその余の請求を棄却する。
5 訴訟費用は,これを10分し,その1を被告の,その余を原告の負担とする。
6 この判決は,第3項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
1 主文第1項,第2項と同旨 2 被告は,別紙物件目録(1)記載のインサート器具を製造し,販売し,販売の申出をし,又は輸入してはならない。
3 被告は,その保有する上記インサート器具を廃棄せよ。
4 被告は,原告に対し,金5421万円及びこれに対する平成13年12月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
1 争いのない事実等 (1) 当事者 ア 原告は,コンクリート製品,土木建設資材の製造販売等を目的とする株式会社である。
イ 被告は,セラミックス及びセラミックス製品の製造販売等を目的とする株式会社である。
(2) 原告の有する特許権 ア 原告の有する特許権 原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,その発明を「本件発明」という。また,本件特許の明細書を「本件特許明細書」という。)を有している。
発明の名称 インサート器具 登録番号 第1671524号 出願年月日 昭和60年12月16日 出願番号 特願昭60-282465 出願公告日 平成3年5月28日 登録年月日 平成4年6月12日 特許請求の範囲 【請求項1】 「コンクリート構造物内に埋設され全体がセラミックスもしくは着色されたセラミックスにより形成されたインサート本体と,このインサート本体に設けられる挿入孔に一端部が挿入されてねじ結合されるボルトとを備えるインサート器具であって,前記インサート本体は,前記コンクリート構造物内に埋設された状態における手前側に所定長さ形成された径が略同一な同径部分と,この同径部分に連続し奥側に向かうにしたがって漸次大径となるテーパ状の大径部分とから構成され,この大径部分のテーパ面の角度は,挿入孔の軸方向に対して1〜45°の範囲に設定されており,一方,前記インサート本体の挿入孔は,インサート本体の長さ方向に沿って同軸的に貫通した状態で設けられ,かつ,該挿入孔の奥側の内周面には,前記ボルトのおねじに螺合されるめねじが形成され,このめねじのねじ山数は,6山〜25山の範囲に設定されていることを特徴とするインサート器具。」 イ 本件発明の構成要件(以下「構成要件」という。) 本件発明の構成要件を分説すると,以下のとおりである。
A コンクリート構造物内に埋設され全体がセラミックスもしくは着色されたセラミックスにより形成されたインサート本体と,このインサート本体に設けられる挿入孔に一端部が挿入されてねじ結合されるボルトとを備えるインサート器具であって, B 前記インサート本体は,前記コンクリート構造物内に埋設された状態における手前側に所定長さ形成された径が略同一な同径部分と, C この同径部分に連続し奥側に向かうにしたがって漸次大径となるテーパ状の大径部分とから構成され, D この大径部分のテーパ面の角度は,挿入孔の軸方向に対して1〜45°の範囲に設定されており, E 一方,前記インサート本体の挿入孔は,インサート本体の長さ方向に沿って同軸的に貫通した状態で設けられ,かつ,該挿入孔の奥側の内周面には,前記ボルトのおねじに螺合されるめねじが形成され,このめねじのねじ山数は,6山〜25山の範囲に設定されていることを特徴とする F インサート器具 (3) 原告の有する意匠権 原告は,次の意匠権(以下,「本件意匠権」といい,その登録意匠を「本件意匠」という。)を有している。
出願年月日 昭和62年7月31日 登録年月日 昭和63年11月15日 登録番号 第755800号 意匠に係る物品 コンクリート構築物用埋込み具 登録意匠 別紙「本件意匠公報」記載のとおり (4) 被告製品 ア 被告製品(1)について 被告は,別紙物件目録(1)記載のインサート器具(以下「被告製品(1)」という。)を製造販売している(被告製品(1)の具体的な構成に関しては,別紙「被告製品(1)の構成に関する当事者の主張」記載のとおり,争いがある。)。
イ 被告製品(2)について 被告は,別紙物件目録(2)記載のインサート器具(以下「被告製品(2)」といい,被告製品(1)と合わせて「被告製品」という。)を製造販売している(被告製品(2)の具体的な構成に関する被告の主張は,別紙「被告製品(2)の構成に関する被告の主張」記載のとおりである。)。
2 事案の概要 本件は,原告が被告に対し,(1)本件特許権に基づいて,被告が製造販売する被告製品(1)の製造販売等の差止め等及び損害賠償を請求すると共に,(2)本件意匠権に基づいて,被告が製造販売する被告製品(2)の製造販売等の差止め等及び損害賠償を請求する事案である。
3 本件の争点 (1) 被告製品(1)は,本件発明の技術的範囲に属するかどうか ア 被告製品(1)が,構成要件Aを充足するかどうか イ 被告製品(1)が,構成要件Cを充足するかどうか ウ 被告製品(1)が,構成要件Dを充足するかどうか (2) 被告製品(2)の製造販売等は,本件意匠権侵害するかどうか (3) 原告の損害額
争点に関する当事者の主張
1 争点(1)アについて 【原告の主張】 (1) 構成要件Aにおいては,「ボルトを備えるインサート器具」とされているところ,本件特許明細書中の実施例第1〜第6図には,ボルト挿入孔が描かれているのみで,ボルト自体は描かれていない。したがって,本件発明における「ボルトを備える」は,「ボルトを備えることとなる」の明瞭な誤記である。そして,被告製品(1)は,「ボルトを備えることとなる」から,構成要件Aを充足する。
(2) 仮に,明瞭な誤記ではないとしても,被告製品(1)については,その雌ねじ部に挿入孔を通してボルトを備えるためのみに製造販売される器具であるから,特許法101条1項による間接侵害として,本件特許権の侵害とみなされる。
【被告の主張】 構成要件Aは,インサート器具の形状に係るものであり,「ボルトを備えるインサート器具」と明記されているところ,被告製品(1)は,雌ねじを備えるインサート器具であるから,構成要件Aを充足しない。
2 争点(1)イ及びウについて 【原告の主張】 (1) 被告製品(1)は,スリーブ側から中央付近に向かって外径がゆるやかな曲線を描きつつ拡大しており,インサート本体部の最大径はスリーブの径よりも大きいから,構成要件C(「奥側に向かうにしたがって漸次大径となるテーパ状の大径部分」)を充足する。
また,被告製品(1)は,該曲線のスリーブ側の起点と最大径となる位置とを結ぶ直線のインサート本体部の長さ方向に対する角度は約16度であり,該曲線の接線のインサート本体部の長さ方向に対する最大角度は20〜30度であるから,構成要件D(「この大径部分のテーパ面の角度は,挿入孔の軸方向に対して1〜45°の範囲に設定されており,」)を充足する。
(2) テーパの意義 ア 辞書及び辞典類(甲5ないし10)によると,「テーパ」の語は,通常の意味においては,「しだいに細くなること」とされており,本件発明においては,大径部分が同径部分に向かって次第に細くなっている形状を形容して,通常の意味における「テーパ」という表現を使用したのである。
市販の機械用語の辞典類の図解には,側面が直線である場合の図を示したものが多いが,これは実際にテーパ状の形状の機器類には側面直線のものが多いことから,直線の場合を代表させて図解したにすぎず,側面が直線の場合に限るとか,緩やかな曲線を描きつつ先細りとなる場合が除外されるなどの記載はない。
テーパが機械用語である場合,JISの定義(投影図又は断面図における相交わる2直線間の相対的な広がりの度合い。)と一般の機械用語辞典の定義(相対する両面が対称的に傾斜しているとき)とでは大きく異なっているのであるから,JISの定義を唯一のものとして,側面が直線の場合に限るということはない。
イ 日本及び米国の企業が出願した特許等公報(甲11ないし20)によると,側面が曲線の場合を「テーパ」,「テーパ付き」,「テーパ状」などと表現している。
ウ 通常の商取引の場において,側面が曲線の場合を「テーパ」とする表現が用いられている(甲21ないし23)。
エ 本件特許明細書には,テーパ状ないしテーパ面が直線の場合に限ることや曲線の場合を除外することをうかがわせる記載はない。本件発明の技術思想は,材質にセラミックスを選択したことによる,大径部分の奥に向かって拡大する部分のもたらす「くさび効果」の点にあり,側面が直線であるか曲線であるかは関係ない。本件特許明細書の図面は,大径部分のテーパ状が直線の場合を代表させて本件発明の実施例を示したものであって,これをもって,本件発明におけるテーパ状やテーパ面が直線の場合に限定される理由はない。
オ 本件発明における「テーパ面の角度」(構成要件D)とは,「テーパ面」の奥に向かう広がりの度合いをいうもので,「テーパ面」が直線であれ,曲線であれ,その広がりの度合いを数値化するためには角度で示すことになるから,「テーパ面の角度」との表現を用いているのであり,「テーパ面の角度」との表現から,側面が直線でなければならない理由は,本件発明に関する限り存在しない。
そして,被告製品(1)が構成要件Dを充足することは上記のとおりである。
(3) 被告製品(1)の最大径となる中央付近から奥側に向かってゆるやかな曲線を描きつつ縮小しているという点は付加的構成にすぎない。
【被告の主張】 (1) JIS工業用語大辞典における「テーパ」の定義は,「投影図又は断面図における相交わる2直線の相対的な広がりの度合い」というものであって,本件発明における「テーパ」の意義も,この定義に合致している。
JIS日本工業規格は,工業標準化法によって制定された鉱工業品の規格である。JIS規格は専門技術的であり,正確であるという特徴を有するから,日常用語との差は,意味の広狭ではなく,専門技術性ないし正確性の差である。
(2) 原告が本件特許出願後に出願した実用新案(甲11。以下「別件実用新案」という。)は,本件発明における問題点を解決したものである。すなわち,別件実用新案明細書には,「出願人は,たとえば第7図に示すような形状をしたセラミック製のインサート本体を提案した(特願昭60-282465号「インサート器具」参照)。」,「ところが,このような構成のインサート本体2では,インサート本体2の外周面のテーパがほぼ一直線状に形成されているために,インサート本体2の天面2bとテーパ面2a上部との間の付近におけるインサート本体2自身の肉厚Dがインサート本体2の外周縁に向って薄くなる結果,コンクリート内でインサート本体2に引抜力を作用させると,インサート本体2の天面の外周縁近傍が貝がら状に割れる可能性が高いといった問題点があった。」,「かかる目的を達成するため,この考案は,構造物内に埋設されるインサート本体と,このインサート本体に一端部が挿入されて,・・・・・かつ,前記本体部は,その外周面に外径が本体部の下端に向かうに従い縮小するテーパ状の受け面を有し,しかも,この受け面は全体的に外側に膨出する形態の球面状をなして」いる。
この別件実用新案明細書の記載からすると,本件発明の「テーパ」が側面が直線である場合に限定されることは明らかである。
(3) 被告製品(1)は,インサート本体の側面が直線ではないから,構成要件C及びDを充足しない。
3 争点(2)について 【原告の主張】 (1) 本件意匠は,基本的には頭部と台部からなるコンクリート構築物用埋込み具であるから,取引の観点から最も看者の注意を惹く部分はその全体形状であり,全体形状が意匠の要部とみるべきである。したがって,本件意匠と被告製品(2)の意匠との類否は,主として正面図及び側面図間の対比によって決せられるべきである。
ア 両者は,頭部,台部の各基本形状及びその組合わせにおいて略同一であり,頭部上方の正面,背面の2個所に半円弧状の切欠面を設ける点及び台部の上端に接して側面視で底辺を上にした三角形状の突起を円周方向に沿って90度間隔で4個設けている点でも同一である。
被告製品(2)の意匠においては,本件意匠に比して,切欠面がやや深くかつ大きく,円弧の向きが逆となっている点及び台部の突起が正面視において略長方形である点が相違するにすぎない。
イ 一般に切欠面は全体形状の中に埋没吸収されてしまい,その形状については,あまり看者の注意を惹くことはない個所である。したがって,被告製品(2)の意匠と本件意匠とにおける,切欠面の大きさ,深さの差異や半円弧の向きの違いは,とるに足らないものである。また,台部突起の正面視形状の差異も微小な差異にすぎないものであって,看者の注意をほとんど惹かないものである。
(2) したがって,被告製品(2)の意匠と本件意匠は類似する。
【被告の主張】 (1) 本件意匠の要部 本件意匠の要部は,@インサート本体について,肩部からその外周面が下辺部に向かって漸次ゆるやかに縮小する鉢状の形状,Aインサート本体の隅丸の逆三角形を呈する形状の削成面を設けていることである。その理由は以下のとおりである。
ア 本件意匠の類似意匠 本件意匠には別紙類似意匠目録(1)及び(2)記載の類似意匠(以下「類似意匠1」,「類似意匠2」という。)がある。類似意匠1及び2のインサート本体は,肩部からその外周面が下辺部に向かって漸次ゆるやかに縮小する鉢状の形状をしており,隅丸の逆三角形状の削成面が設けられているが,これらの意匠のスリーブにはいずれも突出部が設けられていない。
類似意匠とは,「登録意匠にのみ類似する意匠」(旧意匠法10条1項)であり,本意匠の類似の範囲を確認するものであるから,上記インサート本体の形状及び隅丸の逆三角形状の削成面を設けていることは,本件意匠の要部というべきである。
イ 別件登録意匠 別紙別件登録意匠目録(1)ないし(5)記載のとおり,原告は,本件意匠と同日出願で同日登録の意匠を有している。このうち,別紙別件登録意匠目録(1)記載の意匠は,スリーブに4か所の突出部が設けられている点は本件意匠と同じであるが,インサート本体の形状が中ふくらみになっている点及び削成面の形状が菱形で凹面になっている点で異なる。そうすると,インサート本体につき,肩部からその外周面が下辺部に向かって漸次ゆるやかに縮小する鉢状の形状であること及び隅丸の逆三角形状の削成面を設けていることは,本件意匠の要部というべきである。
ウ 本件意匠は,先駆的な意匠ではない。すなわち,コンクリート構築物用埋込み具において,逆円錐台形にしたインサート本体と円筒形に形成されたスリーブとによって構成される形状は,乙2(実開昭50-118717),本件特許の公開公報(昭62-141236)などによって,本件意匠出願前に十分に示されている。また,スリーブに設けられた突出部の形状は,乙3(「土と基礎」1985年11月号の広告)によって本件意匠出願前に示されている。
(2) 本件意匠と被告製品(2)の意匠との類否 両意匠は,以下の点で相違している。
ア インサート本体の外周面の正背面側の上方肩部付近に設けられた削成面の形状について,本件意匠は,隅丸の逆正三角形状であるのに対して,被告製品(2)は,下辺を水平な段差状の切り欠きとし上方に向かって半楕円形状としたものである点 イ スリーブの上縁部の突出部の形状について,本件意匠は,正面視が瓜の種の上半分を切截したがごとき形状で,側面視が下方向きの楔状に形成されているのに対して,被告製品(2)は,正面視が縦矩形状で,側面視が下方向きの楔状を呈する板状に形成されている点 ウ インサート本体の形状について,本件意匠は,肩部から下辺部に向かって漸次ゆるやかに縮小する鉢状の形状であるのに対して,被告製品(2)は,卵形の球面の形状で,肩部から途中の最大径部を経て下辺部に向かって曲線を描きつつ縮小する点 エ インサート本体の上縁について,本件意匠は,上の縁を斜状の面取り状に形成しているのに対して,被告製品(2)は,円板状の板を貼り付け形成している点 オ スリーブの手前側の端面の形状について,本件意匠は平坦であるのに対して,被告製品(2)は,外周部にリング状の突起が設けられている点 (3) 本件意匠と被告製品(2)の意匠の対比 以上を前提に検討すると,本件意匠と被告製品(2)の意匠は,本件意匠の要部である@インサート本体の形状の点及びAインサート本体の削成面の形状において相違し,他にも上記のとおり相違しているから,両者は美感を異にする。
4 争点(3)について 【原告の主張】 (1)ア 被告製品には,被告製品(1),被告製品(2)を通じて,それぞれ同一構造でサイズのみ異なる「M-10」,「M-12」及び「M-16」の3サイズの製品があるところ,被告は,現在まで,M-10を2190本,M-12を15万9149本,M-16を1万1486本販売した。
被告の上記販売本数中,被告製品(1)が9割,その余が被告製品(2)であると考えられる。
イ 一方,原告製品にも上記3種のサイズがあるところ,被告が被告製品の販売を開始した平成12年10月時点における,原告の1本あたりの利益額は,それぞれ,M-10が約21円,M-12が約25円,M-16が約43円であった。したがって,被告の各サイズの販売による特許法102条1項の損害としては,それぞれ以下のとおりである。
M-10 4万5990円(2190本×21円) M-12 397万8725円(15万9149本×25円) M-16 49万3898円(1万1486本×43円) 合計 451万8613円(17万2825本) (2)ア 被告は,平成12年10月2日に設立されたところ,それより前においては,株式会社明電舎が被告製品の製造販売を行っていた。被告及び株式会社明電舎が被告製品の製造販売を行った結果,原告製品を販売していたジャパンライフ株式会社(以下「ジャパンライフ」という。)は,以下のとおり,原告製品の価格引き下げを余儀なくされた。
(ア) M-10 従前の価格 210円 平成12年7月 140円 平成12年11月 130円 (イ) M-12 従前の価格 270円 平成12年4月 250円 7月 230円 11月 200円 平成13年4月 190円 7月 180円 (ウ) M-16 従前の価格 500円 平成11年4月 480円 平成12年4月 460円 7月 340円 11月 330円 平成13年7月 300円 イ 以上のジャパンライフによる価格引下げに伴って,原告は,同社への出荷価格の引下げを余儀なくされた。原告の現実の出荷価格と,M-10については平成13年4月以前の125円との差額,M-12については平成11年6月以前の170円との差額,M-16について平成11年5月以前の295円との差額に,それぞれ対応する出荷本数を乗じた額が,被告による被告製品の製造販売によって原告が被った損害ということになる。
1本当たり出荷価格差額 対応出荷本数 出荷額低下金額 M-10 平成13年4月以降23円 2802本 6万4446円 M-12 平成12年10月 20円 7万9702本 159万4040円 平成12年11月以降45円 100万1788本 4508万 460円 M-16 平成12年10月以降20円 1万9402本 38万8040 円 平成13年5月以降67円 3万8290本 256万5430円 合計 4969万2416円 (3) 上記(1)及び(2)の合計額は,5421万1029円となり,このうち,原告は被告に対し,5421万円の支払を求める。
【被告の主張】 (1) 原告の主張は,いずれも争う。
(2) 平成12年10月から平成13年4月までの間における被告製品(2)の販売個数は,2340個であり,売上げ総額は,32万400円である。
被告製品(2)の製造販売によって被告には利益が生じていない。
(3) 被告は,平成14年5月までに,被告製品(2)の製造金型及び在庫をすべて廃棄処分し,被告製品(2)の製造販売事業から撤退した。
当裁判所の判断
1 争点(1)イ及びウについて (1) 証拠(甲4ないし22,24)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。
ア 本件特許明細書(甲4)には,以下の記載がある。
(ア) 「作用」 セラミックスによって形成されたインサート本体のめねじは,挿入孔の奥側の内周面であって錨着力を得るための拡大頭部として機能する大径部分に位置して設けられているため,通常の使用状態における荷重,すなわち,ボルトに引張力としての荷重が作用すると,めねじを有するインサート本体外周のテーパ面はくさび効果を発揮し,インサート本体全体には引張力が圧縮力に変換した荷重が作用することとなる。したがって,インサート本体にクラックや分断などを発生させる原因である引張力はほとんど生じることがない。つまり,前記ボルトからの荷重は,大径部分のテーパ面によって一様に荷重が受けられ,インサート本体の錨着力(定着力)が強まり,特に,このテーパ面の角度が1〜45°の範囲にあるため,大径部分の上端で引張応力による圧力の集中を防止し得て,該テーパ面に圧縮力としての荷重を受ける作用を発揮させることができるものである。
(イ) 「実施例」 a 45°以上とすると,大径部分1aの上部,ボルトによる引張力がそのまま引張り力として作用するおそれがあり(中略) また,テーパ面3の角度θを15〜30°の範囲に収める如くすると,上部での耐力の低下を一層防止することができるので,好ましい。
b ボルトが例えば吊りボルトとして使用されている場合に,そのボルトに常に引張力としての荷重が作用しても,大径部分1aの外周面(テーパ面)3により一様に荷重が受けられ,いわゆるクサビ効果が発揮され,全体的に圧縮力としての荷重が作用することになる。また,この状態において,テーパ面3には,その角度θが1〜45°に設定されているので,上部での耐力の低下を防止し得て,テーパ面3の途中でクラックなどが生じるのが防止される。
イ 原告が本件特許出願後に出願した別件実用新案明細書(甲11)中には,以下の記載がある。 (ア) 「従来の技術」 出願人は,たとえば第7図に示すような形状をしたセラミック製のインサート本体を提案した(特願昭60-282465号「インサート器具」参照)。すなわち,これは,構造物内に埋設されるインサート本体2全体を,インサート本体2の下端に向かうに従いその外径が縮小する逆円錐台上に形成したもので,インサート本体2に作用する荷重を,インサート本体外周のテーパ面2aによって一様に受けるように形成したものである。(中略)ところが,このような構成のインサート本体2では,インサート本体2の外周面のテーパがほぼ一直線状に形成されているために,インサート本体2の天面2bとテーパ面2a上部との間の付近におけるインサート本体2自身の肉厚Dがインサート本体2の外周縁に向って薄くなる結果,コンクリート内でインサート本体2に引抜力を作用させると,インサート本体2の天面の外周縁近傍が貝がら状に割れる可能性が高いといった問題点があった。
(イ) 「考案が解決しようとする課題」 第1に,従来のセラミック製インサート本体2では,インサート本体2の外周面のテーパがほぼ一直線状に形成されているために,インサート本体2の天面2bとテーパ面2a上部との間の付近におけるインサート本体2自身の肉厚Dがインサート本体2の外周縁に向って薄くなる結果,コンクリート内でインサート本体2の引抜力を作用させると,インサート本体2の天面の外周縁近傍が貝がら状に割れる可能性が高いといった問題点である。(以下省略) (ウ) 「課題を解決するための手段」 前記本体部は,その外周面に外径が本体部の下端に向かうに従い縮小するテーパ状の受け面を有し,しかも,この受け面は全体的に外側に膨出する形態の球面状をなしており,(以下省略) (エ) 「作用」 前記構成のインサート器具によれば,本体部の外周面に有る受面が外側に膨出する形態の球面状をなしているために,その受圧面積が大きく,この結果,本体部の頭部(上部)に作用する力と下部に作用する力がほぼ均等になって,コンクリート内でインサート本体に引抜力が作用しても,本体部の頭部外周縁が壊れたりすることがなくなる。特に,本体部の受面はその上部に行くに従って垂直に傾いていくので,本体部頭部の割れを確実に防止することができる。
ウ 辞書及び辞典類における「テーパ」の項には,以下の記載があることが認められる。
(ア) 製図では品物の片面だけが傾斜しているときこれをこう配といい,相対する両側面が対称的に傾斜しているとき,これをテーパという。したがって円すい状の場合(きりの柄,工作機械の主軸穴の傾斜など)はテーパである(甲9。図解機械用語辞典第3版 工業教育研究会編)。
また,同解説部分には,「テーパとこう配」として,台形が記載され,テーパとはa-b/lという記載がある(別紙「テーパ解説図」図1参照)。
(イ) 【tapere】回転体あるいは中央線に対し勾配が対称である物体の,2点間の径または幅の変化の割合。2点での径(幅)をa,b(a>b),2点間の距離をlとすれば,テーパー=(a-b)/lである(甲10。土木用語大辞典) (ウ) taper 投影図又は断面図における相交わる2直線間の相対的な広がりの度合い。(備)対象物が円すい面の場合に,この度合いを角度で表したものをテーパ角度,比率で表したものをテーパ比という(甲24。JIS工業用語大辞典第2版)(別紙「テーパ解説図」図2参照)。
(エ) しだいに細くなる,先細になる,しだいに細くする,先細にする(甲5。小学館ランダムハウス英和大辞典)。
(オ) 小ろうそく,細いろうそく,先細の形,先細り(甲6。リーダース英和辞典) (カ) 先が細くなること(甲7。大判カタカナ語新辞典)。
(キ) 機械用語で,わずかの傾斜をつけること。たとえばキーのように根元から先端にいくにしたがって断面がしだいに小さくなり,キーを打ち込んだとき,確実に固定するようになっているようなキーを,テーパーがついているキーという。また軸などでも,ある部分からその直径がしだいに小さくなっているようなとき,テーパーがついているという。先細にしたねじはテーパーねじ,先細のリーマーはテーパーリーマー,先細のピンはテーパーピンという(甲8。日本大百科全書)。
エ 原告が提出している特許等の公報(甲12ないし20)によると,以下の事実が認められる。
(ア) 原告が提出している特許公報における「発明の名称」は,テーパ導波路(甲12),コンクリート圧送用テーパ管(甲13),テーパロッドの加工方法(甲14),入射テーパ光導波路およびそれを用いた波長変換素子(甲15),交互に配置されたテーパ付素子放射器と導波管放射器とを備えた多帯域フェーズドアレイアンテナ(甲16),らせん形テーパ切断状切り欠きを備えモーメント容量を最適化された衝撃ビーム(甲17),テーパ付き導波管のアレイを備えた直視型表示装置(甲18),締付け固着具(甲19),テーパードスロットアンテナ(甲20)というものである。
(イ) 上記各特許公報においては,必ずしも直線でないものについて,「テーパ」という用語が用いられている。
(ウ) 上記各特許公報のうち,「テーパ角」に関して記載したものとして,テーパ付き導波管のアレイを備えた直視型表示装置の公報(甲18)があるところ,同特許明細書中の第5図における角度を表示している図面形状は,直線である(原告主張の第8図は,角度を示すものではない)。
オ 証拠(甲21ないし23)によると,インターネット上で販売されている商品に関し,以下の事実が認められる。
(ア) 「テーパーマグ」は,米国テーパービジョン社が共同研究した光ファイバーで光(像)を伝送する新しい方式のルーぺであり,「光の透過性を高める,断層が六角形のハニカム形光ファイバーを高密度に束ねて加熱,これを引いてテーパー状に加工した物です。」との説明がされている(甲21)が,その形状は必ずしも直線ではない。
(イ) 「ラベラー」によるラベルの貼り方に関して,「テーパー側面」と記載されている(甲22)ところ,その側面の形状は必ずしも直線ではない。
(ウ) 「花春 浮子ラインナップ」中の「逆テーパトップ」及び「浅ダナ逆テーパ」の形状(甲23)は,必ずしも直線ではない。
(2) 以上認定の事実に基づき,構成要件C及びDの「テーパ」の意義について検討する。
ア 一般に「テーパ」という言葉は,必ずしも直線のものだけには用いられていないことが認められる。しかし,テーパの「角度」が問題となる場合には,「テーパ」が直線であることが想定されているものと認められる(甲24,18)。しかるところ,本件発明は,テーパ面の角度の数値を限定したものである(構成要件D)。
そして,本件発明において,テーパ面の角度が1度ないし45度と限定されており(構成要件D),本件特許明細書中において,この角度は15度から30度の範囲に収めるのが好ましいとされているのは,テーパ面の角度が45度を超えると,大径部分の上部において,ボルトによる引張力がそのまま引張力として作用し,テーパ面の途中でクラックなどが生じるおそれがあるためであるが,このように,テーパ面の角度いかんによってクラックなどが生じるという現象は,インサート本体部の外周面が直線であるときに起こるものと考えられる。なぜならば,インサート本体部の外周面が,内側にくぼむ形状であれば,上記数値限定いかんにかかわらず,上端は周囲のコンクリート中に突出することになり,引張力が作用してクラックなどが生じるおそれが高くなるのに対し,インサート本体部の外周面が,外側に膨らみ,上部が垂直に近づくような形状であれば,上記数値限定いかんにかかわらず,その上部に引張力が作用してクラックなどが生じるおそれが小さくなるものと認められるからである。上記別件実用新案に係る考案は,本件発明の上記角度を限定することに代えて,外側に膨らむ形状を採用することによって,クラックなどの発生を防止したものと認められる。
イ そうすると,本件発明における「テーパ」は直線のもののみを指すものと解するのが相当である。
(3) 証拠(検甲1)によると,被告製品(1)においては,大径部分は,スリーブ側から中央付近に向かって外径が曲線を描きつつ拡大し,最大径となる中央付近から奥側に向かってゆるやかな曲線を描きつつ縮小しており,直線ではないと認められるから,構成要件Cの「テーパ状」及びDの「テーパ面」を充足しないものと認められる。
(4) 以上からすると,原告の本件特許権に基づく請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
2 争点(2)について (1) 証拠(乙4ないし10,検甲2)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。
ア 本件意匠の構成 (ア) 基本的構成態様 正背面に削成面を形成した,下辺部にかけて外周面がゆるやかな丸みを帯びて次第に縮小するインサート本体部と,上縁部の正背面と左右側面の4か所に突出爪部を有する円筒形のスリーブとによって構成されており,インサート本体部の底面部に同軸的にスリーブが嵌合されており,上方部から下方部に向かって貫通する穴(インサート本体部内はネジ穴)が設けられている。
(イ) 具体的構成態様 a インサート本体部は,肩部からその外周面が下辺部に向かって漸次ゆるやかに縮小する鉢形の形状である。
b 削成面は,インサート本体部の上縁部から肩部の外周面にかけて形成され,上縁径の約1/3幅で,隅丸の逆正三角形状を呈している。
c インサート本体部の上縁に2段の細い縁取りがあり,上の縁が斜状の面取り状に形成されている。上面部の穴は解放されている。
d 突出爪部は,正面視において上半分を切截した瓜の種のごとき形状で,側面視において上方から下方にかけて楔状である。
e スリーブの手前側の端面の形状は平坦である。
イ 被告製品(2)の意匠の構成 (ア) 基本的構成態様 正背面に削成面を形成した,下辺部にかけて外周面がゆるやかな丸みを帯びて次第に縮小するインサート本体部と,上縁部の正背面と左右側面の4か所に突出爪部を有する円筒形のスリーブとによって構成されており,インサート本体部の底面部に同軸的にスリーブが嵌合されており,上方部から下方部に向かって貫通する穴(インサート本体部内はネジ穴)が設けられている。
(イ) 具体的構成態様 a インサート本体部は,肩部から下方に向かって外部に膨出し,途中の最大径部を経て下辺部に向かって次第に縮小する形状である。
b 削成面は,肩部付近から膨出球面状をなす外周面の最大径部までを垂直に削成して,下辺を水平な直線状としたものであって,その上方に向かって半楕円形状となっている。
c インサート本体部上面に薄い円板状の板が貼り付けられている。
d 突出爪部は,正面視において縦矩形状で,側面視において上方から下方にかけて楔状である。
e スリーブの手前側の端面の外周部にリング状の突起が設けられている。
ウ 類似意匠及び別件登録意匠の存在 (ア) 本件意匠には,別紙類似意匠目録(1)及び(2)の類似意匠が存在する。
(イ) 原告は,本件意匠出願日に,別紙別件登録意匠目録(1)ないし(5)各記載の意匠登録出願を行い,それぞれ意匠登録された。
(2) 被告は,公知意匠として,公開実用新案公報(乙2),本件特許の公開公報及び「土と基礎」1985年11月号の広告(乙3)を挙げる。
しかしながら,公開実用新案公報(乙2)に記載されているインサートの形状,本件特許のインサートの形状(甲4)は,いずれも,正面視においてインサート本体部の側面が直線であり,インサート本体部に削成面は形成されておらず,スリーブに突出爪部も形成されていないのであるから,本件意匠とは異なるものである。また,「土と基礎」1985年11月号の広告(乙3)に記載されているものは,インサート本体部とスリーブからなるものではなく,本件意匠とは大きく異なるものである。
したがって,以上の各意匠については,本件意匠と被告製品(2)の意匠の類否を検討するに当たって考慮しないこととする。
(3) 本件意匠と被告製品(2)の意匠を対比すると,次のようにいうことができる。ア 基本的構成態様は,同じである。
イ 被告製品(2)の意匠のインサート本体部は,肩部から下方に向かって外部に膨出し,途中の最大径部を経て下辺部に向かって次第に縮小する形状であるので,本件意匠のインサート本体部の形状(肩部からその外周面が下辺部に向かって漸次ゆるやかに縮小する鉢形の形状)と異なるが,証拠(検甲2)によると,被告製品(2)の意匠の肩部から下方への膨出は,わずかであって,インサート本体部を全体として見た場合,下辺部に向かって次第に縮小するという印象が強いものと認められるから,この差異は,看者の注意を惹くとはいえない。
ウ 被告製品(2)の意匠の削成面は,肩部付近から膨出球面状をなす外周面の最大径部までを垂直に削成して,下辺を水平な直線状としたものであって,その上方に向かって半楕円形状となっているので,本件意匠の削成面の形状(インサート本体部の上縁部から肩部の外周面にかけて形成され,上縁径の約1/3幅で,隅丸の逆正三角形状を呈している形状)と異なるが,ほぼ同じ位置に削成面があることは共通しており,その大きさもさして違わないから,上記の形状の差は,微差にすぎないものというべきであって,看者の注意を惹くとはいえない。
エ 被告製品(2)の意匠の突出爪部は,正面視において縦矩形状であるので,本件意匠の突出爪部の形状(上半分を切截した瓜の種のごとき形状)と異なるが,突出爪部が存在する位置や大きさは,被告製品(2)の意匠と本件意匠ではさして異ならず,側面視において上方から下方にかけて楔状である点も同じであるから,上記の形状の差は,微差にすぎないものというべきである。
オ 被告製品(2)の意匠は,インサート本体部上面に薄い円板状の板が貼り付けられているのに対し,本件意匠では,インサート本体部の上縁に2段の細い縁取りがあり,上の縁が斜状の面取り状に形成されており,上面部の穴が解放されている点,及び被告製品(2)の意匠は,スリーブの手前側の端面の外周部にリング状の突起が設けられているのに対し,本件意匠では,このような突起はなく平坦である点が異なるが,証拠(検甲2)によると,被告製品(2)の意匠においても,インサート本体部の中央部にはネジ穴が存し,薄い円板状の板は,その上に貼り付けたものにすぎないと認められること,本件意匠における,インサート本体部の上縁の2段の縁取りは,細く目立たないものであること,証拠(検甲2)によると,被告製品(2)の意匠におけるリング状の突起はほとんど目立たないものであることが認められるから,これらの違いも微差にすぎないものというべきである。
カ そうすると,本件意匠と被告製品(2)の意匠は,類似しているものと認められる。
(4) 被告は,上記(1)認定の類似意匠及び別件登録意匠との対比から,本件意匠の要部は,@インサート本体について,肩部からその外周面が下辺部に向かって漸次ゆるやかに縮小する鉢状の形状,Aインサート本体の隅丸の逆三角形を呈する形状の削成面を設けていることであると主張する。
しかしながら,上記(1)認定の類似意匠は,本件意匠とは,上記@,Aの各点について共通しているが,そうであるからといって,上記@,Aの各点について少しでも異なる意匠は,本件意匠と類似するものではないとまでいうことはできない。上記(3)認定のとおり,上記@,Aの各点において,被告製品(2)の意匠は,本件意匠とは異なるものの,その違いは小さく看者の注意を惹くとはいえない。したがって,上記類似意匠の存在は,被告製品(2)の意匠が本件意匠と類似するとの上記(3)の認定を左右するものではない。
また,別紙別件登録意匠目録(1)記載の意匠は,スリーブに4か所の突出部が設けられている点で本件意匠と同じであるが,インサート本体部の形状が中ふくらみになっている点及び削成面の形状が菱形で凹面になっている点で,本件意匠と異なる。しかし,別紙別件登録意匠目録(1)記載の意匠における,インサート本体部が中ふくらみになっている形状や削成面の形状は,被告製品(2)の意匠とは大きく異なっているから,別紙別件登録意匠目録(1)記載の意匠が本件意匠とは別の意匠であるからといって,被告製品(2)の意匠が本件意匠に類似しないということはできない。別紙別件登録意匠目録(2)ないし(5)記載の意匠は,スリーブに4か所の突出部が設けられていない,スリーブの径が上又は下に向かって広がっているなど,被告製品(2)の意匠とは明らかに異なるものであるから,これらの登録意匠の存在は,被告製品(2)の意匠が本件意匠と類似するとの上記(3)の認定を左右するものではない。
(5) 以上からすると,被告製品(2)を製造販売する行為は,本件意匠権侵害しているということになる。 3 争点(3)について (1) 証拠(乙13,15)及び弁論の全趣旨によると,被告は,平成12年10月から平成13年4月までの間に被告製品(2)を販売し,その個数は,2340個であること,被告製品(2)の総売上額は,32万400円であること,被告は,被告製品(2)の販売によって結果的には利益を得ていないこと,以上の事実が認められる。
(2) 原告は,平成12年10月時点における,被告製品に対応する原告製品の1本当たりの利益額は,M-10が約21円,M-12が約25円,M-16が約43円であったと主張するが,その事実を認めるに足りる証拠はない。
また,原告は,被告が被告製品を製造販売したことにより,原告製品の値下げを余儀なくされた結果,損害を被ったと主張するが,上記認定したとおり,被告は,これまでに被告製品(2)を2340個しか販売しておらず,総売上額も32万400円であるから,直ちに,被告が被告製品(2)を製造販売したことにより,原告が原告製品の値下げを余儀なくされたとまでは認められず,他にこの事実を認めるに足りる証拠はない。
(3) 被告が被告製品(2)を製造販売する行為は,原告が有する本件意匠権侵害する行為であるから,原告は,被告に対し,本件意匠権に係る実施料相当額を請求することができると解されるところ,本件意匠権に係る実施料率は,売上額の5%であるとするのが相当であるから,原告の損害額は,1万6020円(32万400円×0.05)となる。
(4) 被告は,平成14年5月までに,被告製品(2)の製造金型及び在庫をすべて廃棄処分し,被告製品(2)の製造販売事業から撤退したと主張するが,それについての証拠としては,陳述書(乙13)とカタログ(乙14)があるのみであり,被告が,本訴において,本件意匠権侵害を争っていることをも考慮すると,いまだ被告製品(2)を製造し,販売し,販売の申出をし,輸入することの差止め及び被告が保有する被告製品(2)の廃棄を命ずる必要がないとまでは認められない。
4 以上のとおり,原告の本件請求は,主文掲記の範囲で理由があるから,主文のとおり判決する。
追加
(別紙)物件目録(1)(被告製品(1)【別紙物件目録(1)図面参照】)aコンクリート構造物内に埋設される全体がセラミックスにより形成されたインサート本体部とスリーブからなり,このインサート本体部に設けられたボルト挿入孔にめねじを備えるインサート器具であって,b該器具は,コンクリート構造物内に埋設された状態における手前側に所定の長さの径が略同一なセラミックス製円筒状のスリーブと,cこのスリーブの奥側に接着剤で接合された全体的に外側に膨出する球面状のインサート本体部であって,該インサート本体部はスリーブの外径より小さいスリーブ側から中央付近に向かって外径がゆるやかな曲線を描きつつ拡大し,最大径となる中央付近から奥側に向かってゆるやかな曲線を描きつつ縮小している。インサート本体部の最大径はスリーブの径より大きいd該曲線のスリーブ側の起点と最大径となる位置とを結ぶ直線のインサート本体部の長さ方向に対する角度は約16度であり,該曲線の接線インサート本体部の長さ方向に対する最大角度は20〜30度であるe前記挿入孔は,スリーブ及びインサート本体部の長さ方向に沿って同軸的に貫通した状態で設けられ,かつ該挿入孔の奥側の内周面には,ボルトの雄ねじに螺合される雌ねじが形成され,この雌ねじのねじ山数は,10山〜13山である。
fインサート本体部上方側面の表面は,2個所の対称位置において上向きに半楕円形状で段差状の切り欠きが形成されていて,該切り欠きはインサート本体部の長さ方向と平行な平面を形成しているdインサート器具別紙第1図面記載のインサート器具(訴状図面添付)物件目録(1)(被告製品(1)図面)(別紙)物件目録(2)(被告製品(2))別紙第2図面記載のインサート器具(答弁書図面添付)物件目録(2)(被告製品(2)図面)(別紙)【被告製品(1)の構成に関する当事者の主張】【原告主張】aコンクリート構造物内に埋設される全体がセラミックスにより形成されたインサート本体部とスリーブからなり,このインサート本体部に設けられたボルト挿入孔にめねじを備えるインサート器具であって,b該器具は,コンクリート構造物内に埋設された状態における手前側に所定の長さの径が略同一なセラミックス製円筒状のスリーブと,cこのスリーブの奥側に接着剤で接合された全体的に外側に膨出する球面状のインサート本体部であって,該インサート本体部はスリーブの外径より小さいスリーブ側から中央付近に向かって外径がゆるやかな曲線を描きつつ拡大し,最大径となる中央付近から奥側に向かってゆるやかな曲線を描きつつ縮小している。インサート本体部の最大径はスリーブの径より大きいd該曲線のスリーブ側の起点と最大径となる位置とを結ぶ直線のインサート本体部の長さ方向に対する角度は約16度であり,該曲線の接線インサート本体部の長さ方向に対する最大角度は20〜30度であるe前記挿入孔は,スリーブ及びインサート本体部の長さ方向に沿って同軸的に貫通した状態で設けられ,かつ該挿入孔の奥側の内周面には,ボルトの雄ねじに螺合される雌ねじが形成され,この雌ねじのねじ山数は,10山〜13山である。
fインサート本体部上方側面の表面は,2個所の対称位置において上向きに半楕円形状で段差状の切り欠きが形成されていて,該切り欠きはインサート本体部の長さ方向と平行な平面を形成しているdインサート器具【被告主張】aコンクリート構造物内に埋設される全体がセラミックスもしくは着色されたセラミックスにより形成されたインサート本体とスリーブとからなり,このインサート本体に設けられたボルト挿入孔に雌ねじを備えるインサート器具であって,b該器具は,コンクリート構造物内に埋設された状態における手前側に所定の長さの径が同一なセラミックス製円筒状のスリーブと,cこのスリーブの奥側にこのスリーブの径と異なる径を持ち接着剤で接合された全体的に外側に膨出する球面状のインサート本体であって,該インサート本体はスリーブの外径より小さいスリーブ側から中央付近に向かって外径が曲線を描きつつ拡大し,最大径となる中央付近から奥側に向かってゆるやかな曲線を描きつつ縮小している(d原告主張に係るdの部分は,被告製品(1)には存在しない。)e前記挿入孔は,スリーブ及びインサート本体の長さ方向に沿って同軸的に貫通した状態で設けられ,かつ該挿入孔の奥側の内周面には,ボルトの雄ねじに螺合される雌ねじが形成され,この雌ねじのねじ山数は,10山〜13山であるgインサート本体上方側面の表面は,2個所の対称位置において上向きに半楕円形状で段差状の切り欠きが形成されていて,該切り欠きはインサート本体部の長さ方向と平行な平面を形成しているfインサート器具(別紙)【被告製品(2)の構成に関する被告の主張】aコンクリート構造物内に埋設されるセラミックスもしくは着色されたセラミックスにより形成されたインサート本体及びプラスチックにより形成されたスリーブとからなり,このインサート本体に設けられた挿入孔にめねじを備えるインサート器具であって,b該器具は,コンクリート構造物内に埋設された状態における手前側に所定の長さの径が同一なプラスチック製円筒状のスリーブと,cこのスリーブの奥側に不連続で全体的に外側に膨出する球面状のインサート本体であって,該インサート本体はスリーブ側から中央付近に向かって外径が曲線を描きつつ拡大し,最大径となる中央付近から奥側に向かってゆるやかな曲線を描きつつ縮小している。
e前記挿入孔は,スリーブ及びインサート本体の長さ方向に沿って同軸的に貫通した状態で設けられ,かつ,該挿入孔の奥側の内周面には,ボルトのおねじに螺合されるめねじが形成され,このめねじのねじ山数は,10山〜13山である。
gインサート本体上方側面の表面は,2個所の対称位置において上向きに半楕円状で段差状の切り欠きが形成されていて,該切り欠きはインサート本体の長さ方向と平行な平面を形成している。
hスリーブの手前側の端面の外周部にリング状の突起が設けられている。
iスリーブのインサート本体側の端部には,インサート本体の挿入孔内に嵌め込まれるための嵌合部が形成されてインサート本体との間が着脱自在とされている。
jスリーブのインサート本体側の端部には,正面視において縦矩形状,側面視において下方向きの楔状を呈する板状の突出物が円周方向へ90度ずつの間隔をおいて4個設けられている。
fインサート器具である。
(別紙)・テーパ解説図(甲24,9の図を組み合わせたもの)甲9を図1,甲24を図2とする。
・本件意匠公報(甲26)類似意匠目録(1)出願年月日平成7年11月30日登録年月日平成9年12月26日登録番号第755800号の類似1意匠に係る物品コンクリート構築物用埋込み具登録意匠別紙「意匠公報@」記載のとおり(2)出願年月日平成7年11月30日登録年月日平成9年12月26日登録番号第755800号の類似2意匠に係る物品コンクリート構築物用埋込み具登録意匠別紙「意匠公報A」記載のとおり別件登録意匠目録(1)出願年月日昭和62年7月31日登録年月日昭和63年11月15日登録番号第755797号意匠に係る物品コンクリート構築物用埋込み具登録意匠別紙「意匠公報B」記載のとおり(2)出願年月日昭和62年7月31日登録年月日昭和63年11月15日登録番号第755798号意匠に係る物品コンクリート構築物用埋込み具登録意匠別紙「意匠公報C」記載のとおり(3)出願年月日昭和62年7月31日登録年月日昭和63年11月15日登録番号第755799号意匠に係る物品コンクリート構築物用埋込み具登録意匠別紙「意匠公報D」記載のとおり(4)出願年月日昭和62年7月31日登録年月日昭和63年11月15日登録番号第755801号意匠に係る物品コンクリート構築物用埋込み具登録意匠別紙「意匠公報E」記載のとおり(5)出願年月日昭和62年7月31日登録年月日昭和63年11月15日登録番号第755802号意匠に係る物品コンクリート構築物用埋込み具登録意匠別紙「意匠公報F」記載のとおり
裁判長裁判官 森義之
裁判官 内藤裕之
裁判官 上田洋幸
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