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関連審決 審判1997-9472
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成14ワ10511特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成11ワ3012特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成14ワ12410損害賠償請求事件 判例 特許
平成15ワ4285損害賠償等請求事件 判例 特許
平成15ワ4287損害賠償等請求事件 判例 特許
関連ワード 特許を受ける権利 /  発明者 /  協議 /  技術的思想 /  創作性(創作) /  製造方法 /  新規性 /  公然実施(29条1項2号) /  頒布された刊行物 /  進歩性(29条2項) /  公知技術 /  技術的範囲 /  出願公開 /  発明の詳細な説明 /  実質的に同一 /  警告 /  実施料相当額 /  時効 /  抵触 /  援用権(援用) /  権利の濫用(権利濫用) /  対象製品 /  出願経過 /  技術的意義 /  均等 /  均等論 /  置き換え /  置換 /  置換可能性 /  同一の作用効果 /  置換容易性 /  容易に想到(容易想到性) /  意識的除外(意識的に除外) /  禁反言 /  特許発明 /  実施 /  加工 /  交換 /  構成要件 /  差止請求(差止) /  侵害 /  過失推定(過失の推定) /  損害額 /  算定方法 /  販売数量(販売数) /  実施料 /  不法行為(民法709条) /  同意 /  実施権 /  専用実施権 /  実施許諾(実施の許諾) /  拒絶査定 /  拒絶理由通知 /  請求の範囲 /  拡張 /  変更 /  異議申立 / 
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事件 平成 11年 (ワ) 12586号 特許権侵害差止等請求事件
平成 13年 (ワ) 3381号 特許権侵害差止等請求事件
甲事件原告 日本繊食有限会社(以下「原告会社」とい う。) 乙事件原告 A(以下「原告A」という。)
原告両名訴訟代理人弁護士 小林淳郎
被告 日本食研株式会社(以下「被告日本食研」という。)
被告 やまと食品工業株式会社(以下「被告やまと」という。)
被告両名訴訟代理人弁護士 平野和宏
補佐人弁理士 大西正夫
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2002/10/29
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1(1) 被告日本食研は、別紙第1製品目録記載の各製品の譲渡、又はその譲渡の申出をしてはならない。
(2) 被告やまとは、別紙第1製品目録記載の各製品の生産、譲渡、又はその譲渡の申出をしてはならない。
2 被告やまとは、別紙第2製品目録記載の各製品の生産、譲渡、又はその譲渡の申出をしてはならない。
3 被告日本食研は、被告やまと製造に係る別紙こんにゃく目録記載の構造を有するこんにゃく(別紙第1製品目録記載の包装体に封入されているものを含む。)並びにその半製品(同こんにゃくの構造を備えているが、未だ製品として完成していないもの)を廃棄せよ。
4 被告やまとは、その製造に係る別紙こんにゃく目録記載の構造を有するこんにゃく(別紙第1製品目録及び第2製品目録記載の包装体に封入されているものを含む。)並びにその半製品(同こんにゃくの構造を備えているが、未だ製品として完成していないもの)を廃棄せよ。
5 被告らは、原告会社に対し、連帯して金574万1391円及びこれに対する平成13年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6 被告日本食研は、原告会社に対し、金120万4501円及びこれに対する平成14年3月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
7 被告やまとは、原告会社に対し、金127万9212円及びこれに対する平成14年3月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
8 被告日本食研は、原告Aに対し、金808万6913円及びこれに対する平成14年3月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
9 被告やまとは、原告Aに対し、金542万8380円及びこれに対する平成14年3月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
10 原告らの甲事件及び乙事件のその余の各請求をいずれも棄却する。
11 訴訟費用については、甲事件及び乙事件を通じてこれを5分し、その2を被告らの連帯負担とし、その余を原告らの連帯負担とする。
12 この判決は、第5項ないし第9項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
(甲事件) 1 被告らは、別紙第1製品目録記載の各製品の生産、使用、譲渡、貸渡し若しくは輸入、又は、その譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
2 被告やまとは、別紙第2製品目録記載の各製品の生産、使用、譲渡、貸渡し若しくは輸入、又は、その譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
3、4 主文第3項及び第4項と同じ。
5 被告らは、原告会社に対し、連帯して金7000万円及びこれに対する平成13年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6 被告日本食研は、原告会社に対し、金400万円及びこれに対する平成14年3月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
7 被告やまとは、原告会社に対し、金600万円及びこれに対する平成14年3月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(乙事件) 8 被告日本食研は、原告Aに対し、金2500万円及びこれに対する平成14年3月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
9 被告やまとは、原告Aに対し、金1500万円及びこれに対する平成14年3月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は、「筋組織状こんにゃくの製造方法及びそれに用いる製造装置」の特許発明の特許権及び「表面筋状薄肉こんにゃく」の考案の実用新案権の権利者及び専用実施権者である原告らが、被告らに対し、被告らの製造販売するこんにゃくは、@主位的に同特許発明技術的範囲に属する製造方法又は製造装置を使用して製造されたものである、A予備的に同考案の技術的範囲に属すると主張して、その製造等の差止めと損害賠償及び不当利得返還を請求した事案である。
1 争いのない事実等 (1) 原告会社は、食物繊維の加工販売を業をする会社であり、原告Aはその代表取締役である。
被告日本食研は、農産物等の加工販売等を業とする会社、被告やまとは、
こんにゃく等の製造販売を業とする会社である。
(2) 原告Aは、次の特許権(以下「本件特許権」といい、その特許発明を「本件発明」という。)を有している。なお、本件発明は、Bの出願に係るものであるが、原告Aは、平成6年2月25日、同人から特許を受ける権利を譲り受けたものである(甲113)。
ア 発明の名称 筋組織状こんにゃくの製造方法及びそれに用いる製造装置 イ 特許番号 第1912343号 ウ 出願日 昭和61年3月1日(特願昭61-44489号) エ 公開日 昭和62年9月5日(特開昭62-201555号) オ 出願公告日 平成6年5月18日(特公平6-36727号) カ 登 録 日 平成7年3月9日 キ 特許請求の範囲は、本判決末尾添付の特許公報(以下「本件特許公報」といい、その明細書を「本件特許明細書」という。)該当欄記載のとおりである。
ク 本件発明の構成要件は、次のとおり分説するのが相当である。
【請求項1】 A こんにゃく粉に適度の水を加えて膨潤させ、これにゲル化剤を加えて得られたこんにゃくのりを、
B 押出し直後の圧力開放により糸状こんにゃくのりが膨張して糸状こんにゃくのり同志がゲル化前の短時間のうちに外力を加えることなく接するようにノズル押出し直後の糸状こんにゃくのり間のすき間を3o以下とした多孔のノズルで押出し、
C 加熱処理前又は加熱処理と同時に一体化することを D 特徴とする筋組織状こんにゃくの製造方法
【請求項2】 E ホッパー中に投入されたこんにゃくのりを多孔のノズルから押出す押出装置において、
F 前記ノズルを平行ノズルとしてその押出し孔間隙(a)を3o以下に小、
又はノズル押出し直後の糸状こんにゃくのり間のすき間(c)が3o以下の小さい傾斜ノズルとし、
G 押出し後の圧力開放により糸状こんにゃくのりが膨張して糸状こんにゃくのり同志がゲル化前の短時間のうちに外力を加えることなく接して一体化するようにしてなることを H 特徴とする筋組織状こんにゃくの製造装置。
(3) 原告Aは、次の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という。)を有している。
ア 考案の名称 表面筋状薄肉こんにゃく イ 登録番号 第2150363号 ウ 出 願 日 昭和63年9月24日(実願昭63-124955号) エ 公 開 日 平成2年3月30日(実開平2-46589号) オ 出願公告日 平成7年2月1日(実公平7-3915号) カ 登 録 日 平成10年12月11日 キ 実用新案登録請求の範囲は、本判決末尾添付の実用新案公報(以下「本件実用新案公報」という。)該当欄記載のとおりである。
ク 本件考案の構成要件は、次のとおり分説するのが相当である。
A' 個々に独立した多数個のノズルが1〜2列に連設された押出ノズルから、
B' 太さ3o以下に押出された糸状こんにゃくを即横幅方向へ一体化して、
C' 長手方向に多数の凹条(2)と凸条(3)を表面に有し、
D' 凸条(3)部分の厚肉部が3o以下であって、凹条(2)部分の薄肉部が半透明の縞模様を形成してなる E' 表面筋状薄肉こんにゃく。
(4) 原告会社は、原告Aから、本件特許権の専用実施権の設定を受け、平成8年4月22日、その旨の登録を経由した(甲2)。
また、原告会社は、原告Aから、本件実用新案権の専用実施権の設定を受け、平成11年4月22日、その旨の登録を経由した(甲4)。
(5)ア 被告やまとは、別紙第1製品目録記載の製品をOEM生産し、被告日本食研はこれを販売している。被告日本食研は、同製品を株式会社須藤食品(以下「須藤食品」という。)からも仕入れているが、被告やまとから仕入れた製品には、被告やまとの製造であることを示す製造所の固有記号「CL」が付されている(甲6、8、114)。
また、被告やまとは、別紙第2製品目録記載の製品を製造、販売している。
イ 別紙第1製品目録及び別紙第2製品目録記載の各製品には、被告やまとの製造に係るこんにゃく(以下「被告こんにゃく」という。)が封入されており、
原告らは、被告こんにゃくは別紙こんにゃく目録記載の構成を有すると主張している。
ウ 別紙第1製品目録及び「寄せ鍋糸こんにゃく」を除く別紙第2製品目録記載の製品(これらの製品を「被告サラダ製品」という。)には、被告こんにゃくのほか、海藻及びドレッシング(たれ)が封入されている。
(6) 被告やまとは、平成7年3月9日ころまでは別紙「ロ号目皿の外観写真」に示される目皿(以下「ロ号目皿」という。)を、同日ころ以降は別紙イ号目皿目録記載の目皿(以下「イ号目皿」という。)を用いて、被告こんにゃくを製造していた(以下、ロ号目皿を用いた製造方法、製造装置、製品を「ロ号方法」、「ロ号装置」、「ロ号こんにゃく」といい、イ号目皿を用いた製造方法、製造装置、製品を「イ号方法」、「イ号装置」、「イ号こんにゃく」という。)。
なお、イ号目皿は、2列1組で各列をずらし並列状に配列された直径1.2o、連通孔で連通された中心間の間隔1.72oの主孔と、該主孔間をジグザグ状に連通する幅0.23o以上0.26o未満の連通孔とから成る目皿である。
(7) イ号方法、イ号装置及びイ号こんにゃく、ロ号方法、ロ号装置及びロ号こんにゃくについて、原告らは、別紙「構成対比表(当事者主張)」の「原告らの主張」欄記載のとおりであると主張し、被告らは同別紙の「被告らの主張」欄記載のとおりであると主張する。
そうすると、被告らは、本件発明及び本件考案の構成要件のうち、次の構成を争い、その余の構成については争いがないものと認められる(なお、別紙「構成対比表(当事者主張)」の「被告らの主張」欄には、イ号及びロ号方法・装置が「ホッパー中に投入された(こんにゃくのり)」(構成要件E)との構成、「ノズルを平行ノズルとして」(構成要件F)との構成を備えていることの記載はないが、弁論の全趣旨によれば、被告らはこの点について明らかに争わないものと解される。)。
ア(ア) イ号方法について a 「押出し直後の圧力開放により糸状こんにゃくのりが膨張して糸状こんにゃくのり同志がゲル化前の短時間のうちに外力を加えることなく接するようにノズル押出し直後の糸状こんにゃくのり間のすき間を3o以下とした多孔のノズルで押出し」(構成要件B)、「加熱処理前又は加熱処理と同時に一体化する」(構成要件C)との構成 b 「筋組織状こんにゃくの製造方法」(構成要件D)との構成 (イ) イ号装置について a 「多孔のノズル」(構成要件E)との構成、「押出し後の圧力開放により糸状こんにゃくのりが膨張して糸状こんにゃくのり同志がゲル化前の短時間のうちに外力を加えることなく接して一体化するようにしてなる」(構成要件G)との構成 b 「筋組織状こんにゃくの製造方法」(構成要件H)との構成 (ウ) イ号こんにゃくについて a 「個々に独立した多数個のノズル」(構成要件A')との構成、「押出された糸状こんにゃくを即横幅方向へ一体化(する)」(構成要件B')との構成 b 「凸条(3)部分の厚肉部が3o以下であって、凹条(2)部分の薄肉部が半透明の縞模様を形成してなる」(構成要件D')との構成 イ(ア) ロ号方法について a 「押出し直後の圧力開放により糸状こんにゃくのりが膨張して糸状こんにゃくのり同志がゲル化前の短時間のうちに外力を加えることなく接するようにノズル押出し直後の糸状こんにゃくのり間のすき間を3o以下とした多孔のノズルで押出し」(構成要件B)、「加熱処理前又は加熱処理と同時に一体化する」(構成要件C)との構成 b 「筋組織状こんにゃくの製造方法」(構成要件D)との構成 (イ) ロ号装置について a 「押出し後の圧力開放により糸状こんにゃくのりが膨張して糸状こんにゃくのり同志がゲル化前の短時間のうちに外力を加えることなく接して一体化するようにしてなる」(構成要件G)との構成 b 「筋組織状こんにゃくの製造方法」(構成要件H)との構成 (ウ) ロ号こんにゃくについて a 「押出された糸状こんにゃくを即横幅方向へ一体化(する)」(構成要件B')との構成 b 「凸条(3)部分の厚肉部が3o以下であって、凹条(2)部分の薄肉部が半透明の縞模様を形成してなる」(構成要件D')との構成 2 争点 (1) 主位的請求(特許権に基づく請求) ア イ号及びロ号方法の構成要件Dの充足性、イ号及びロ号装置の構成要件Hの充足性 イ ロ号方法の構成要件B、Cの充足性及びロ号装置の構成要件Gの充足性 ウ イ号方法の構成要件B、Cの充足性及びイ号装置の構成要件E、Gの充足性 エ 仮にイ号方法・装置が上記構成を文言上備えていない場合に、イ号方法・装置は本件発明と均等なものとして、その技術的範囲に属するか。
(2) 予備的請求(実用新案権に基づく請求) ア イ号及びロ号こんにゃくの構成要件D'の充足性 イ ロ号こんにゃくの構成要件B'の充足性 ウ イ号こんにゃくの構成要件A'、B'の充足性 エ 仮にイ号こんにゃくが上記構成を文言上備えていない場合に、イ号こんにゃくは本件考案と均等なものとしてその技術的範囲に属するか。
(3) 権利濫用(明白な無効理由) (4) 過失の有無 (5) 損害ないし不当利得の額 (6) 消滅時効
争点に関する当事者の主張
1 主位的請求(本件発明の技術的範囲の属否)について (1) 争点(1)ア(イ号及びロ号方法の構成要件Dの充足性、イ号及びロ号装置の構成要件Hの充足性)について 〔原告らの主張〕 ア 構成要件D、Hの「筋組織状こんにゃく」とは、本件発明を実施して製造されるこんにゃくの断面形状を特定したものではないから、主孔がジグザグ状に配置されたイ号及びロ号目皿によって帯状こんにゃくを製造するイ号及びロ号方法・装置は、「筋組織状こんにゃくの製造方法」(構成要件D)との構成、「筋組織状こんにゃくの製造装置」(構成要件H)との構成を備えているというべきである。
イ 被告らは、「筋組織状こんにゃく」とは束状のこんにゃくを意味し、薄くて扁平な帯状(リボン状)又は筒状(マカロニ状)のこんにゃくを含まないと主張するが、本件特許明細書中にはこんにゃくの形状をそのように限定する旨の記載はない。
被告らは、上記のように解釈すべき理由として、本件実用新案の出願手続において原告Aが本件発明を引用例とする拒絶理由通知に対して提出した意見書の記載部分を挙げるが、同記載部分は、本件特許明細書中に「束状、中空状とは異なる表面筋状薄肉こんにゃく」の具体的記載がないとの事実を述べたにすぎず、本件発明が本件考案にいう「表面筋状薄肉こんにゃく」を含まないという趣旨ではない。
また、本件考案について進歩性が認められ、本件実用新案登録出願が登録された(本件実用新案に係る拒絶査定に対する審判事件(平成9年審判第9472号)の審決(甲50)参照)のは、本件発明に係る公開特許公報には、「個々に独立した多数個のノズルが1〜2列に連設された押出ノズルから、押し出された糸状こんにゃくを即横方向へ一体化する」ことにより成形すること(本件考案の構成要件A'、B')、及び「凸条部分の厚肉部が3o以下であって、凹条部分の薄肉部が半透明の縞模様になっている」こと(同構成要件D')については何も記載されていないこと、本件実用新案登録出願に係る明細書には、本件特許明細書には記載のない、味、食感、外観に関する作用や効果も記載されていることが評価されたためであり、本件考案が実用新案登録されたことをもって、本件発明の技術的範囲が本件考案に係る表面筋状薄肉こんにゃくの製造方法や製造装置を含まないとすることはできない。
したがって、本件実用新案権の出願経緯に基づき本件特許明細書の特許請求の範囲の記載を限定して解釈しなければならないいわれはなく、被告らの主張は特許法70条を無視したもので失当である。
〔被告らの主張〕 ア 原告Aは、本件実用新案の登録出願手続において、本件特許出願に係る公開特許公報を引用例とする拒絶理由通知を受け、平成6年7月12日付意見書において、本件実用新案の技術は「引例には、たしかに、多孔のノズルから押出されたこんにゃくを一体化させることが記載されていますが、これは主に本願第4図に示すような束状になったこんにゃくであり、薄くて扁平な帯状(リボン状)又は筒状(マカロニ状)のこんにゃくは記載されていません。」との意見を述べている(乙5)。
すなわち、出願人(かつ本件実用新案権者)である原告A自身、本件発明は、本件考案に係る表面筋状薄肉こんにゃくを製造する方法や装置を含まないことを自認し、仮に自認しているとはいえないとしても、このような主張をして本件考案の登録を受けたのであるから、原告らが、本訴訟において薄くて扁平は帯状又は筒状のこんにゃくの製造装置及び製造方法が本件発明の技術的範囲に属すると主張することは禁反言により許されない。
イ さらに、本件発明の出願公開後である平成3年7月25日に出願された特公平7-71451号特許公報(乙24)記載の「帯状こんにゃくの製造方法及び絞り出しノズル並びに帯状こんにゃく及び帯状こんにゃくを主成分とする低カロリー食品」に係る特許発明(以下「乙24発明」という。)について、本件発明の存在にかかわらず登録されている(特許第2043443号。乙25)。
ウ 上記ア記載の出願経過や、上記イ記載の乙24発明の登録の事実からして、本件発明の「筋組織状こんにゃく」(構成要件D、H)とは、束状になったこんにゃくを意味し、薄くて扁平な帯状(リボン状)又は筒状(マカロニ状)のこんにゃくは含まないと解すべきである。
エ イ号及びロ号方法・装置は、薄い帯状(リボン状)のこんにゃくの製造方法・装置であるから、「筋組織状こんにゃく」の製造方法(構成要件D)、「筋組織状こんにゃく」の製造装置(構成要件H)との構成を備えていない。
(2) 争点(1)イ(ロ号方法の構成要件B、Cの充足性及びロ号装置の構成要件Gの充足性)について 〔原告らの主張〕 ア ロ号目皿は、被告らが主張するように直径約1.5oの主孔の直近の中心間の間隔が約1.0〜約2.5oであるとしても(なお、原告らが測定したところ、
孔間隔が2.5oに達する部分は存在しなかった。)、ロ号目皿を用いたロ号方法・装置は、「押出直後の圧力開放により糸状こんにゃくのりが膨張して糸状こんにゃくのり同志がゲル化前の短時間のうちに外力を加えることなく接して一体化」するものであるから、ロ号方法は構成要件B、Cを、ロ号装置は構成要件Gを充足する。
イ 被告らは、ロ号方法・装置は、主孔からこんにゃくのりが押し出された後、揺動により連結一体化するものであり、押出直後の圧力開放による膨張によって一体化するものではないと主張するが、ロ号目皿の一定でない孔間隔には、膨張後の揺動を主張するまでもなく、吐出膨張のみによって、こんにゃくのりが一体化する孔間隔が存在する。部分的であるとしても、本件発明の技術的範囲に含まれる。
ロ号目皿からこんにゃくのりを吐出する際、膨張によってこんにゃくのりが一体化することは、技術検討書2(甲45)及び技術検討書3(甲75)の実験結果から明らかである。
〔被告らの主張〕 ア ロ号目皿は、2列1組で各列をずらし並列状に配列された直径約1.5o(なお、該直径の寸法はバリ取りした部分を含まない寸法であり、バリ取りした部分を加えると直径約2oとなる。)、直近の中心間の間隔約1.0o〜約2.5o(なお、一部直近の主孔同士が繋がっているものがある。)の主孔からなる。
イ ロ号方法・装置は、主孔からこんにゃくのりが押し出された後、揺動により連結一体化するものであり、主孔から吐出された後の圧力開放による膨張により一体化するものではないから、ロ号方法は構成要件B、Cを、ロ号装置は構成要件Gを充足していない。
ウ 原告らは、ロ号目皿を用いた製造方法ないし製造装置について、部分的であるとしても本件発明の技術的範囲に含まれると主張するが、仮にロ号目皿の一部が本件発明の技術的範囲に属するとしても、他の部分が本件発明の技術的範囲に属さない以上、当該部分から糸状こんにゃくを吐出する製造方法ないし製造装置は、本件特許権の侵害にはならないし、これの実施について、損害賠償や不当利得返還の請求という特許権の行使が問題となることはない。
(3) 争点(1)ウ(イ号方法の構成要件B、Cの充足性及びイ号装置の構成要件E、Gの充足性)について 〔原告らの主張〕 ア イ号方法・装置は、@主孔の間を設けてもこんにゃくのりは連通孔からはほとんど吐出されず、主孔から吐出されたこんにゃくのりによって筋状こんにゃくが形成されること、A本件発明の方法ないし装置によって製造されたこんにゃくも、イ号方法・装置によって製造されたイ号こんにゃくも、両者の外観は一見してほとんど同じであること、Bしかも、連通孔を付加することによって生ずる新たな作用効果は全くないこと、Cイ号目皿の主孔の間隙は3o以下であるところ、この間隙であれば、こんにゃくのりの吐出膨張率の関係から、連通孔は何の役にも立たないことを指摘できる。
イ そうすると、イ号目皿は、こんにゃくの製造において、何の作用効果も生じない不要な連通孔部分を付加したものにすぎず、「押出直後の圧力開放により糸状こんにゃくのりが膨張して糸状こんにゃくのり同志がゲル化前の短時間のうちに外力を加えることなく接して一体化」する「多孔のノズル」を備えた単独孔目皿と実質的に同一であるといえる。
ウ したがって、イ号目皿を用いたイ号方法・装置は、構成要件B、Cないし構成要件E、Gを文言上充足する。
〔被告らの主張〕 ア 本件発明とイ号方法・装置とは、以下の相違点がある。
(ア) 孔の構造等の相違について 本件発明は、糸状こんにゃくのりとして押し出すための個々独立した多孔のノズルからの押出を構成要素とするのに対し、イ号方法・装置は、主孔間をジグザグに連通する連通孔が設けられ、該連通孔と主孔とからのこんにゃくのりの押出を構成要素とするものである。
(イ) こんにゃくのりの形状、一体化時期の相違について 本件発明では、押出し直後の圧力開放により、糸状こんにゃくのりが膨張して糸状こんにゃくのり同志がゲル化前の短時間のうちに外力を加えることなく接触することにより、押出後に糸状こんにゃくのりが一体化するものである。
これに対し、イ号方法・装置では、既に連結一体化されたこんにゃくのりが押し出されるものであり、糸状こんにゃくのり自体も存在しない。
(ウ) こんにゃくのりのすき間の存否の相違について 本件発明では、押出し直後の糸状こんにゃくのり間のすき間が3o以下であることを構成要素とする。上記糸状こんにゃくのりのすき間は、糸状こんにゃくが押出時には、個々独立したものであることから生じるものである。
これに対し、イ号方法・装置では、押出時にこんにゃくのりが既に連結一体化されているため、本件発明のようなすき間は生じない。
(エ) 作用効果の相違について イ号方法・装置では、こんにゃくのりを主孔のみならず連通孔からも押し出すため、本件発明のように主孔だけから押し出す場合と比較して、こんにゃくのりの押出が円滑になされる。
また、イ号方法・装置では、押出時から既に連結一体化したこんにゃくを成形するため、本件発明に係るこんにゃく製品とは異なり、押出後のこんにゃくが一体化不十分なために分離したり、幅方向に切断しても長手方向に分離したりなどすることがない。
さらに、イ号方法・装置では、連通孔から吐出したこんにゃくのりが薄肉こんにゃくを形成しようとした時に、その薄肉こんにゃくは、主孔から吐出されたこんにゃくのりの膨張によっていわば押しつぶされてしまうのではなく、イ号こんにゃくの襞状の部分を形成する。イ号こんにゃくにおいてはその襞状の部分があるため、こんにゃくを幅方向に引き延ばす実験をしたところ、本件発明のように単独孔目皿を用いて製造したこんにゃくよりも小さい力で延びることが認められる(乙75)。
イ 本件特許出願前の公知文献である実開昭55-157896号公開実用新案公報(乙3。以下「乙3公報」という。)には、こんにゃくの押出し成形孔の側壁部に突条を設け、こんにゃくの表裏両面に切込み条を存在させて押出し成形されるようにすることにより、味のしみ込みが良好で、かつこんにゃく特有の滑感触のない口当たりの良好なこんにゃくが製造できることが記載され、その成形孔は図面に示されている。
このことからも、こんにゃくのりの押出時に既に連結一体化されて押し出されるイ号方法・装置は、本件発明の技術的範囲に属するものではないことが明らかである。
ウ したがって、イ号方法は、構成要件B、Cを充足せず、また、イ号装置は、構成要件E、Gを充足しない。
(4) 争点(1)エ(イ号方法・装置は本件発明と均等なものとしてその技術的範囲に属するか)について 〔原告らの主張〕 仮にイ号目皿が連通孔を有することから、イ号方法が構成要件B、Cを、
イ号装置が構成要件E、Gを備えていないとしても、イ号方法・装置は、次のとおり、本件発明の構成と均等であり、その技術的範囲に属するものというべきである。
ア 非本質的部分について 本件発明の特徴的部分は、@ノズル押出直後の多数本の糸状こんにゃくのり同士が押出圧力の開放により膨張しゲル化前の短時間のうちに外力を加えることなく接する点、Aそのために押出し孔の間隙を3o以下とした点にある。
イ号目皿は、隣接する主孔と主孔の間に連通孔部分があるが、塑性流動体の特性上、細い連通孔部分からは、粘性のあるこんにゃくのりはほとんど流出しないし、主孔から押し出されたこんにゃくのりは流速が速いので、連通孔部分のそれより大きく膨張して拡がるから、連通孔から押し出されたごく少量のこんにゃくのりでは、ほとんど薄肉こんにゃくは形成されない。そして、イ号目皿の実際の間隙の長さでは、主孔から押し出されたこんにゃくのりは、吐出膨張のみによって接触一体化する。
したがって、イ号目皿に連通孔があることは、筋組織状こんにゃくを製造するためには意味のないものである。イ号方法・装置と本件発明との間の異なる部分である目皿の連通孔の有無は、本件発明の本質的部分ではない。
置換可能性について 上記のとおり、こんにゃくの製造方法ないし製造装置において、単独孔目皿を連通孔付目皿(イ号目皿)に置き換えても、同一の作用効果を奏するものであり、置換可能性がある。
置換容易性について 被告やまとは、ハタノヤ株式会社(以下「ハタノヤ」という。)及びオリヒロ株式会社(以下「オリヒロ」という。)から目皿を購入していたところ、両社がイ号目皿の製造販売を開始した平成7年当時において、本件発明は既に公開された公知技術であった。ハタノヤ及びオリヒロは、平成4年5月ころから平成7年2月ころまでは連通孔のない個々に独立した孔の目皿を製造販売していたが、本件特許権等に抵触するおそれがあると考えて、同目皿の製造を中止した上、時期を置かずして同年3月ころから連通孔のあるイ号目皿の製造販売を早速開始している。
ハタノヤは、平成7年3月7日に「多条蒟蒻」の考案の実用新案登録出願をし(実願平7-2628号)、同年6月28日に登録となったが、特許庁審査官は同考案に対して「進歩性を欠如されるものと判断されるおそれがある」と技術評価している。
以上の事情からすると、目皿の主孔の間に連通孔を設けた連通孔付目皿を用いてこんにゃくを製造することは、被告らが連通孔付目皿(イ号目皿)を用いるようになった平成7年ころの時点において、当業者が容易に想到することができたといえる。
公知技術との関係について 連通孔付目皿(イ号目皿)を用いたこんにゃくの製造方法及び装置は、
本件発明の特許出願がなされた昭和61年当時における公知技術と同一ということもできないし、当業者が右出願時に公知技術から容易に推考することができたものであるということもできない。
禁反言の法理について 本件において、連通孔付目皿(イ号目皿)を用いたこんにゃくの製造方法及び装置が、本件特許出願手続において、特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情はない。
〔被告らの主張〕 イ号方法・装置において用いられる目皿は、「2列1組で各列をずらし並列状に配列された直径1.2o、連通孔で連通された中心間の間隔1.72oの主孔と、該主孔間をジグザグ状に連通する幅0.23o以上0.26o未満の連通孔」を備えたものであり、少なくとも、文言上「多孔のノズル」(構成要件B、E)との構成を備えていないという差異部分が存するところ、同差異部分は、本件発明の本質的部分に当たるというべきである。
本件発明の「多孔のノズル」(構成要件B、E)なる構成を、「個々に独立した多数個のノズルが1〜2列に連設された押出ノズル」(構成要件A')なる構成に置換するだけで別個の技術的思想創作と認められ、本質的部分の置換に該当することになるのであるから、単独孔なる構成を連通孔で連通された孔なる構成に置換することは、発明の本質的部分の置換である。
そして、争点(1)ウにおける〔被告らの主張〕のア(エ)記載のとおり、主孔間の連通孔の有無に伴って作用効果が異なることをも考慮すると、イ号方法・装置が本件発明と均等なものとしてその技術的範囲に属するとの原告らの主張は理由がない。
2 予備的請求(本件考案の技術的範囲の属否)について (1) 争点(2)ア(イ号及びロ号こんにゃくの構成要件D'の充足性)について 〔原告らの主張〕 イ号及びロ号こんにゃくは、凸条(3)部分の厚肉部が3o以下であり、凹条部の薄肉部は半透明で、厚肉部の明度との間に差があり、縞模様を呈している。
したがって、イ号及びロ号こんにゃくは、「凸条(3)部分の厚肉部が3o以下であって、凹条(2)部分の薄肉部が半透明の縞模様を形成してなる」(構成要件D')との構成を備えている。
〔被告らの主張〕 イ号及びロ号こんにゃくは、幅方向に多数の突条部とそれよりも一段窪んだ連結部とを有するものであるが、突状部の肉厚はイ号こんにゃくで約3.3〜約3.7o、ロ号こんにゃくで約4.67o以上であり、また、突状部及び連結部ともに同程度の明度の半透明である。
したがって、イ号及びロ号こんにゃくは、「凸条(3)部分の厚肉部が3o以下であって、凹条(2)部分の薄肉部が半透明の縞模様を形成してなる」(構成要件D')との構成を備えていない。
(2) 争点(2)イ(ロ号こんにゃくの構成要件B'の充足性)について 〔原告らの主張〕 ロ号こんにゃくは、構成要件B'を充足する。
その理由は、争点(1)イにおける〔原告らの主張〕に記載のとおりである。
〔被告らの主張〕 ロ号こんにゃくは、構成要件B'を充足しない。
その理由は、争点(1)イにおける〔被告らの主張〕に記載のとおりである。
(3) 争点(2)ウ(イ号こんにゃくの構成要件A'、B'の充足性)について 〔原告らの主張〕 イ号こんにゃくは、構成要件A'、B'を充足する。
その理由は、争点(1)ウにおける〔原告らの主張〕に記載のとおりである。
〔被告らの主張〕 イ号こんにゃくは、構成要件A'、B'を充足する。
その理由は、争点(1)ウにおける〔被告らの主張〕に記載のとおりである。
なお、初めから一本の凹凸のあるリボン状に押し出されて成形されるこんにゃくについては、本件実用新案登録出願前の公知文献として、乙3公報がある。
本件実用新案権の出願人である原告Aは、その出願手続において、乙3公報を引用例とする拒絶理由通知(乙6)に対して、乙3公報の第4図記載のこんにゃくと本件考案のこんにゃくとは内容が異なり、作用効果において顕著な差がある旨の意見を述べており(乙7)、初めから一本の凹凸のあるリボン状に押し出されて成形されるこんにゃくは、本件考案の技術的範囲に属しないことを明言している。
(4) 争点(2)エ(イ号こんにゃくは本件考案と均等なものとしてその技術的範囲に属するか)について 〔原告らの主張〕 イ号こんにゃくは、本件考案と均等なものとしてその技術的範囲に属する。
その理由は、争点(1)エにおける〔原告らの主張〕に記載のとおりである(ただし、本件考案の特徴的部分の捉え方については、@多数個のノズルが1〜2列に連接された押出ノズルから、太さ3o以下に押し出された糸状こんにゃくを即横幅方向へ一体化する点、A凸条部分の厚肉部が3o以下であって、凹条部分の薄肉部は半透明の縞模様を形成してなる表面筋状薄肉こんにゃくである点にあると置き換える。)。
〔被告らの主張〕 イ号こんにゃくが本件考案と均等なものとしてその技術的範囲に属するとの原告らの主張は理由がない。
その理由は、争点(1)エにおける〔被告らの主張〕に記載のとおりである。
3 争点(3)(権利濫用(明白な無効理由))について 〔被告らの主張〕 (1) 本件発明及び本件考案の出願前である昭和56年から、カネマタ食品工業株式会社(以下「カネマタ食品」という。)は、乙28ないし30に撮影されている目皿を開発し、昭和57年秋から乙30に撮影されている単独孔を配列した目皿(以下「カネマタ目皿」という。)を使用して、こんにゃくを製造販売している。
カネマタ食品は、当初は、カネマタ目皿を用いて製造したこんにゃくを、
それ以前から使用していた「きしめん風こんにゃく」の包材を利用し、その名称で販売していたが、昭和58年末ころからは「高級料亭の味しゃぶしゃぶ用こんにゃく」の名称で、かつその名称を記した包材を使用して、現在に至るまで販売している。現在販売されている「高級料亭の味しゃぶしゃぶ用こんにゃく」が、昭和58年の発売当初の製品と同一性のある商品であることは、同製品に付されたJANコードが同一であることからも明らかである。
カネマタ目皿を用いるこんにゃくの製造方法、製造装置は本件発明の構成要件を、同製造方法ないし製造装置を使用して製造されたこんにゃくは本件考案の構成要件を、いずれも備えている。
(2) したがって、本件発明及び本件考案には、いずれも新規性又は進歩性がなく、明らかな無効理由が存在するから、本件特許権及び本件実用新案権に基づく請求は、権利の濫用に当たり許されない。
(3) なお、原告らは、カネマタ食品が「きしめん風こんにゃく」ないし「高級料亭の味しゃぶしゃぶ用こんにゃく」の名称で販売していた商品は、「板コンニャク切込装置」の特許発明実施品を使用して製造したこんにゃくであると主張する。
しかし、カネマタ食品は、同特許発明実施品を使用して製造したこんにゃくを「ステーキこんにゃく」なる名称で販売したことがあるが、それほど売れなかったため、間もなく製造を中止したものであって、同特許発明実施品を使用して製造したこんにゃくを「きしめん風こんにゃく」ないし「高級料亭の味しゃぶしゃぶ用こんにゃく」の名称で販売していたものではない。
〔原告らの主張〕 (1) カネマタ食品が昭和57年秋からカネマタ目皿を使用したことについて、
何ら客観的な証拠は存在しない。仮に、カネマタ目皿が存在したとしても、それは単なる試作品であったかも知れず、また仮にカネマタ目皿を使用したとしても、本件発明及び本件考案の製造装置の構成要件と同一かどうか全く不明である。
さらに、カネマタ目皿を使用して製造したこんにゃく製品が、被告らの主張する「きしめん風こんにゃく」又は「高級料亭の味しゃぶしゃぶ用こんにゃく」であったかどうかの確証もない。カネマタ食品が、せっかく筋状のこんにゃくを開発し、付加価値を付けたのであれば、なぜそれを「きしめん風こんにゃく」の包材に入れ、きしめんのように平たい製品として販売するのか理解できない。
また、現在販売されている「高級料亭の味しゃぶしゃぶ用こんにゃく」に付されたJANコードと、昭和58年の発売当初の製品に付されたJANコードが同一であるとしても、そのことから、直ちに現在の商品と昭和58年の発売当初の製品とが同一性のある製品であるということはできない。
(2) カネマタ食品が販売したとする「高級料亭の味しゃぶしゃぶ用こんにゃく」の包装紙(乙53〜55)には「製法特許出願中」と記載されている。
カネマタ食品は「板コンニャク切込装置」の発明を昭和57年10月30日に特許出願し登録を得ているが(特許第1487034号)、同特許公報には板コンニャクの長手に沿って切込みを互い違いに設けたこんにゃくが記載され、同方法によれば、切込みによって煮だし汁の浸透面積が増し、味付けが容易になると記載されている。
そうすると、カネマタ食品が、昭和57年ころから、「きしめん風こんにゃく」とか「高級料亭の味しゃぶしゃぶ用こんにゃく」の名称で販売していたこんにゃくは、切込みのある板状こんにゃくであり、本件発明や本件考案に係る筋状のこんにゃくではなかったというべきである。
このことは、仮に、カネマタ食品が昭和57年ころに本件発明や本件考案に係る筋状のこんにゃくの製造販売を開始したとするならば、カネマタ食品はその特許出願をし、あるいは、本件発明又は本件考案の出願公告がなされたときに異議申立てをしたはずであるのに、それをしていないことからも明らかである。
(3) 以上によれば、本件発明及び本件考案には、いずれも新規性又は進歩性がなく明らかな無効理由が存在するとの被告らの主張は理由がない。
4 争点(4)(過失の有無)について 〔被告らの主張〕 (1) イ号方法、イ号装置及びイ号こんにゃくに関しては、仮に、イ号方法、イ号装置の使用及びイ号こんにゃくの製造、販売が本件特許権又は本件実用新案権を侵害するとしても、文言侵害が成立しないことは明らかであり、均等論が適用されて侵害が認められるにすぎない。
本件特許公報又は本件実用新案公報には、連通孔付き目皿を使用したイ号方法、イ号装置及びイ号こんにゃくはいずれも記載がなく、また、単独孔目皿を連通孔付き目皿に置換することが、上記各公報から見て自明な置換であるとはいえない。また、被告らは、いずれも目皿の製造業者ではなく、被告日本食研はこんにゃくの製造業者でもない。
(2) そうすると、公報による権利範囲の公示が過失推定の根拠であることからすれば、少なくとも、イ号方法、イ号装置の使用又はイ号こんにゃくの製造、販売が本件特許権又は本件実用新案権を侵害することについて、目皿の製造業者ではない被告ら(被告日本食研についてはこんにゃくの製造業者でもない。)に過失はなかったというべきである。
〔原告らの主張〕 (1) 均等論の適用によって侵害が認められるに至った場合であっても、侵害者の責任は、文言侵害の場合と変わるものがないというべきであるから、均等論によって侵害が認められるような場合には過失の推定が働かず、被告らに過失がないとする被告らの主張は理由がない。
(2) 被告らは、過失がないことの事情として、いずれも目皿の製造業者ではないし、被告日本食研はこんにゃくの製造業者でもないとの事実を主張する。
しかし、原告会社は平成7年4月3日に被告日本食研に対して謹告書を発送し、被告やまとも同月6日にその警告の事実を知るに至った。被告やまとは、そのころ、単独孔目皿(ロ号目皿)から連通孔付き目皿(イ号目皿)に変更したのであるが、これは、目皿業者から単独孔目皿は本件特許権に抵触するおそれがあるとの説明を受けたためであることは明らかである。
また、原告会社は、平成7年6月26日付けで被告日本食研と取引のある須藤食品に、連通孔付き目皿(イ号目皿)について均等論の適用がある旨示唆する文書を送付した。
そして、被告日本食研に対しては、原告会社が同年7月4日付けで同趣旨の文書を送付し、また、原告会社代理人が、平成7年10月31日到達の通告書を送付しており、これに対し、被告日本食研は、本件特許侵害事件についての対応は被告やまと及び須藤食品にすべて委せる旨の回答をした。
したがって、被告らは、イ号方法、イ号装置又はイ号こんにゃくについて、本件特許権又は本件実用新案権について均等論の適用を予想しなかったとはいえないのであって、被告らの同主張は理由がない。
5 争点(5)(損害ないし不当利得の額)について 〔原告らの主張〕 被告らは、原告らに対し、次のとおり損害賠償ないし不当利得返還義務を負う。別紙第1製品目録記載の製品の製造、販売については、被告らは共同不法行為責任を負う。
(1)ア 被告こんにゃく、被告サラダ製品の販売単価、販売数 被告こんにゃく、被告サラダ製品の販売単価、販売数は、下記(2)、(3)記載のとおりである。
なお、平成11年10月23日付け産経新聞(甲122)によれば、
「被告日本食研の『いきいきサラダ』は定価300円で全国に販売されており、年間出荷額が平成11年9月期で1億6200万円にのぼり……」と報道されており、この金額を比較すると、被告らが提出する被告日本食研の売上額を示す証拠(乙93の1等)は正確とはいえない。
イ 被告サラダ製品における被告こんにゃくの寄与率について (ア) 被告サラダ製品一袋の中には、被告こんにゃく、海藻、ドレッシング等が封入されているが、被告こんにゃくは、本件発明を実施して製造されたものであり、商品の中心をなしているものである。よって、被告サラダ製品全体に対する被告こんにゃくの寄与率は80%が相当であると考える。
(イ) 被告らは、被告サラダ製品における被告こんにゃくの原料費と、その他の海藻とドレッシング及び外袋の費用とを比較するが、海藻とドレッシング及び外袋の費用額は被告やまとの被告日本食研からの仕入値、すなわち被告日本食研の利益を含んだ価格であるから、これを比較することは相当ではない。
そもそも被告サラダ製品における侵害部分の「寄与率」とは、当該部分が商品全体の販売や利益にどのように寄与しているかを総合的に評価すべきものであり、考慮されるのは、被告らが主張するような原材料費ではなく、販売価格ないし付加価値である。
実施料率について 本件特許の公告時点においてその技術は完成されていたので、被告らは多額の開発費や設備投資を必要としなかった。本件発明の実施品は「サラダこんにゃく」「鍋用こんにゃく」として市場のニーズに応え、生産を維持できる需要が見込まれていた。被告らの商品の利益率も高い。よって、本件発明の実施料率は15%が相当であると考える。
エ そうすると、被告こんにゃくの販売によって原告らが被った損害、ないし不当利得の額は、下記(2)、(3)記載のとおりとなる。
(2) 甲事件(原告会社の請求)について ア 「いきいきサラダ 海藻+こんにゃく」、「いきいきサラダ 海藻と蒟蒻」(別紙第1製品目録1(1)、(2))について (ア) 被告やまと及び被告日本食研に対する不法行為に基づく損害賠償請求(特許法102条3項) a 商品一袋の被告日本食研の平均販売単価 200円 b 商品平均年間販売数 145万9000個 c 商品一袋に対する被告こんにゃくの寄与率 0.8 d 商品一袋に対する実施料率 0.15 e 侵害期間 平成8年9月8日(本件訴訟提起の3年前)から平成13年9月30日までの5年1か月 f 損害額 1億7799万円(200円×145万9000個×(5+1/12)年×0.8×0.15) (イ) 被告日本食研に対する不当利得返還請求 a 商品一袋の被告日本食研の平均販売単価 200円 b 商品平均年間販売数 145万9000個 c 商品一袋に対する被告こんにゃくの寄与率 0.8 d 商品一袋に対する実施料率 0.15 e 侵害期間 平成8年4月22日(本件特許の専用実施権設定日)から同年9月7日(本件訴訟提起の3年前)までの4か月 f 不当利得額 1167万円(200円×145万9000個×(4/12)年×0.8×0.15) (ウ) 被告やまとに対する不当利得返還請求 a 商品一袋の被告やまとの平均販売単価 125円 b 商品平均年間販売数 145万9000個 c 商品一袋に対する被告こんにゃくの寄与率 0.8 d 商品一袋に対する実施料率 0.15 e 侵害期間 平成8年4月22日(本件特許の専用実施権設定日)から同年9月7日(本件訴訟提起の3年前)までの4か月 f 不当利得額 729万円(125円×145万9000個×(4/12)年×0.8×0.15) イ 「蒟蒻海藻サラダ」、「海藻サラダ」(別紙第2製品目録1(1)、(2))について (ア) 被告やまとに対する不法行為に基づく損害賠償請求(特許法102条3項) a 商品一袋の被告やまとの平均販売単価 130円 b 商品平均年間販売数 10万個 c 商品一袋に対する被告こんにゃくの寄与率 0.8 d 商品一袋に対する実施料率 0.15 e 侵害期間 平成8年9月8日(本件訴訟提起の3年前)から平成13年3月31日までの4年7か月 f 損害額 715万円(130円×10万個×(4+7/12)年×0.8×0.15) (イ) 被告やまとに対する不当利得返還請求 a 商品一袋の被告やまとの平均販売単価 130円 b 商品平均年間販売数 10万個 c 商品一袋に対する被告こんにゃくの寄与率 0.8 d 商品一袋に対する実施料率 0.15 e 侵害期間 平成8年4月22日(本件特許の専用実施権設定日)から同年9月7日(本件訴訟提起の3年前)までの4か月 f 不当利得額 52万円(130円×10万個×(4/12)年×0.8×0.15) ウ 「寄せ鍋糸こんにゃく」(別紙第2製品目録1(3)) (ア) 被告やまとに対する不法行為に基づく損害賠償請求(特許法102条3項) a 商品一袋の被告やまとの平均販売単価 120円 b 商品平均年間販売数 6万個 c 商品一袋に対する被告こんにゃくの寄与率 1.0 d 商品一袋に対する実施料率 0.15 e 侵害期間 平成8年9月8日(本件訴訟提起の3年前)から平成13年3月31日までの4年7か月 f 損害額 495万円(120円×6万個×(4+7/12)年×1.0×0.15) (イ) 被告やまとに対する不当利得返還請求 a 商品一袋の被告やまとの平均販売単価 120円 b 商品平均年間販売数 6万個 c 商品一袋に対する被告こんにゃくの寄与率 1.0 d 商品一袋に対する実施料率 0.15 e 侵害期間 平成8年4月22日(本件特許の専用実施権設定日)から同年9月7日(本件訴訟提起の3年前)までの4か月 f 不当利得額 36万円(120円×6万個×(4/12)年×1.0×0.15) エ 弁護士費用 原告会社は、自己の権利を擁護するために、弁護士に依頼して本件訴訟を提起せざるを得なかったが、その弁護士費用相当の損害金としては300万円が相当である。
オ 甲事件の請求額は次のとおりとなる。
(ア) 被告らに対する不法行為に基づく損害賠償請求 原告会社は被告らに対し、ア(ア)記載の1億7799万円(損害賠償)とエ記載の300万円(弁護士費用)の合計額1億8099万円の内金として7000万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成13年10月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する(請求第5項)。
(イ) 被告日本食研に対する不当利得返還請求 原告会社は被告日本食研に対し、ア(イ)記載の1167万円(不当利得)の内金として400万円及びこれに対する平成14年3月15日付け訴状訂正申立書送達の日の翌日である平成14年3月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する(請求第6項)。
(ウ) 被告やまとに対する不法行為に基づく損害賠償及び不当利得返還請求 原告会社は被告やまとに対し、不法行為に基づく損害賠償として、イ(ア)記載の715万円、ウ(ア)記載の495万円(損害賠償)の合計1210万円の内金として360万円、不当利得返還として、ア(ウ)記載の729万円、イ(イ)記載の52万円、ウ(イ)記載の36万円の合計817万円の内金として240万円及びこれらに対する同平成14年3月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する(請求第7項)。
(3) 乙事件(原告Aの請求)について ア 「いきいきサラダ 海藻+こんにゃく」、「いきいきサラダ 海藻と蒟蒻」(別紙第1製品目録1(1)、(2))について (ア) 被告日本食研に対する不当利得返還請求 a 商品一袋の被告日本食研の平均販売単価 200円 b 商品平均年間販売数 145万9000個 c 商品一袋に対する被告こんにゃくの寄与率 0.8 d 商品一袋に対する実施料率 0.15 e 侵害期間 平成6年5月18日(公告日)から平成8年4月21日(本件特許の専用実施権設定日の前日)までの1年11か月間 f 不当利得額 6711万円(200円×145万9000個×(1+11/12)年×0.8×0.15) (イ) 被告やまとに対する不当利得返還請求 a 商品一袋の被告やまとの平均販売単価 125円 b 商品平均年間販売数 145万9000個 c 商品一袋に対する被告こんにゃくの寄与率 0.8 d 商品一袋に対する実施料率 0.15 e 侵害期間 平成6年5月18日(公告日)から平成8年4月21日(本件特許の専用実施権設定日の前日)までの1年11か月間 f 不当利得額 4194万円(125円×145万9000個×(1+11/12)年×0.8×0.15) イ 「蒟蒻海藻サラダ」、「海藻サラダ」(別紙第2製品目録1(1)、(2))について 被告やまとに対する不当利得返還請求 a 商品一袋の被告やまとの平均販売単価 130円 b 商品平均年間販売数 10万個 c 商品一袋に対する被告こんにゃくの寄与率 0.8 d 商品一袋に対する実施料率 0.15 e 侵害期間 平成6年5月18日(公告日)から平成8年4月21日(本件特許の専用実施権設定日の前日)までの1年11か月間 f 不当利得額 299万円(130円×10万個×(1+11/12)年×0.8×0.15) ウ 「寄せ鍋糸こんにゃく」(別紙第2製品目録1(3))について 被告やまとに対する不当利得返還請求 a 商品一袋の被告やまとの平均販売単価 120円 b 商品平均年間販売数 6万個 c 商品一袋に対する被告こんにゃくの寄与率 1.0 d 商品一袋に対する実施料率 0.15 e 侵害期間 平成6年5月18日(公告日)から平成8年4月21日(本件特許の専用実施権設定日の前日)までの1年11か月間 f 不当利得額 207万円(120円×6万個×(1+11/12)年×1.0×0.15) エ 弁護士費用 被告らによる上記アないしウ記載の期間における本件特許権侵害行為は不法行為に該当するところ、原告Aは、自己の権利を擁護するために、弁護士に依頼して本件訴訟を提起せざるを得なかったが、その弁護士費用相当の損害金としては被告日本食研について50万円、被告やまとについて50万円が相当である。
オ 乙事件の請求額は次のとおりとなる。
(ア) 被告日本食研に対する不当利得返還及び弁護士費用の請求 原告Aは被告日本食研に対し、ア(ア)記載の6711万円(不当利得)の内金2450万円、エ記載の50万円(弁護士費用)及びこれらに対する平成14年3月15日付け訴状訂正申立書送達の日の翌日である平成14年3月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する(請求第8項)。
(イ) 被告やまとに対する不当利得返還及び弁護士費用の請求 原告Aは被告やまとに対し、ア(イ)記載の4194万円、イ記載の299万円、ウ記載の207万円(以上は不当利得)の合計4700万円の内金1450万円、エ記載の50万円(弁護士費用)及びこれらに対する同平成14年3月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する(請求第9項)。
〔被告らの主張〕 (1) 原告らが主張する販売単価及び販売数量については否認する。
(2) 原告らが主張する被告サラダ製品における被告こんにゃくの寄与率(80%)は過大である。
被告サラダ製品におけるこんにゃくの原料費と、その他の海藻とドレッシング(たれ)及び外袋(こんにゃくと海藻とドレッシングの組合せをセットとして販売するための袋)の費用とを比較すると、こんにゃくの原料費の価格が商品価値に占める割合は極めて低い。
被告サラダ製品は、こんにゃくだけを単体で販売しているのではなく、ドレッシング及び海藻(ワカメ)と共にセットとして販売しているものであり、これにより、消費者に対し、こんにゃくのサラダという具体的なメニューを提供することが可能となり、売上に大きく寄与しているものである。
さらに、被告サラダ製品のドレッシングは、これだけの購入を求めてくる顧客もいるほどである。そもそも、サラダという料理はドレッシングの味で食べるのであり、このドレッシング自体の寄与は大きいものといわざるを得ない。被告サラダ製品は、消費者の嗜好を刺激するため、キャロットパウダーやパンプキンパウダーといった副原料を加えた商品として販売しているものもある。
被告こんにゃく単体を商品として販売しても売上がそれほど伸びなかったことは明らかであり、被告サラダ製品は、被告こんにゃくを、ドレッシングや海藻とのセットにしたという商品企画の観点からすれば、こんにゃくの形状は重要な問題ではなく、凹凸のない扁平なこんにゃくを用いても何ら商品価値は変わらないというべきである。
また、本件特許権ないし本件実用新案権は、孔間隙又はノズル押し出し直後の糸状こんにゃくのりのすき間を3o以下とした目皿の構成及びそれによるこんにゃくのりの圧力開放を利用した点がポイントであり、それ以外の装置の構成やこんにゃく製造の工程は、従来技術をそのまま利用しているものであるところ、目皿の構造は極めて単純であり、目皿自体を購入するとしても、せいぜい数万円程度のものにすぎない。
したがって、仮に被告らの行為が本件特許権ないし本件実用新案権を侵害するとしても、その寄与率は極めて小さいものというべきである。
(3) 原告らが主張する実施料率は過大である。
原告会社は、本件特許権及び本件実用新案権を有しているとして、本件実用新案公告後登録前に、本件特許権等を侵害するとして警告を行った第三者に対し、本件実用新案が登録になった後も、本件特許権及び本件実用新案権の実施に対し売上高の3%の実施料を支払う旨の実施許諾契約締結の申入れを行っている。
したがって、原告らが主張する実施料率15%が過大であることは明らかであって、仮に被告らが実施料相当額の損害賠償債務及び不当利得返還債務を負担するとしても、実施料率は3%よりもさらに低いものとされなければならない。
(4)ア 原告らは、被告やまとに対しても、被告日本食研の売上額を基準にした実施料相当額を損害賠償として請求しているが、仮に、イ号及びロ号こんにゃくの製造販売行為が本件特許権ないし本件実用新案権を侵害し、被告やまとが損害賠償責任を負担するとしても、被告やまとと被告日本食研は、同一の企業グループ内において製造部門と販売部門をそれぞれ分掌する関連会社であるなどの関係はなく、
その行為は別個のものであるから、被告やまとが負う実施料相当額損害額については、被告やまとの売上額を基準とすべきである。
イ 原告らが、同一の商品につき、被告やまと及び被告日本食研のそれぞれに対し、侵害者単数の場合と同様に実施料相当額を算出して別個に請求することは、二重に不当利得返還を請求することになり相当でない。仮に、被告らが同一の商品について別個に不当利得返還債務を負担するとしても、その合計額は、被告日本食研の売上高を基準に算定した実施料を上回ることはないというべきである。
(5) 原告らが損害賠償として請求する弁護士費用は過大である。
6 争点(6)(消滅時効)について 〔被告らの主張〕 (1) 仮に、イ号方法、イ号装置及びイ号こんにゃく、ロ号方法、ロ号装置及びロ号こんにゃくが、本件発明ないし本件考案の技術的範囲に属し、原告らが被告らに対して損害賠償請求権を有するとしても、原告は、遅くとも平成7年11月末日には、「損害及び加害者」を知っていたから、本件訴訟提起(平成11年9月7日受付)までに既に3年以上経過したイ号こんにゃく及びロ号こんにゃくの製造販売行為にかかる損害賠償請求権は時効により消滅した。
(2) 原告会社は、訴状においては、不法行為に基づく損害賠償として、別紙第1製品目録記載の製品に関し、被告らに対し連帯して3000万円の支払を請求していたが、平成14年3月15日付訴状訂正申立書により、不法行為に基づく損害賠償請求について、請求第5項に記載のとおり、請求の趣旨を拡張した。
仮に、イ号こんにゃくの製造販売行為が本件特許権又は本件実用新案権の侵害行為となり、原告会社の被告らに対する損害賠償請求権が認められる場合、原告会社の訴訟提起後であっても、上記請求の趣旨拡張までに侵害行為の日から3年以上経過したイ号こんにゃくの製造販売行為に係る損害賠償請求権で、当初の内金請求の額を超える損害賠償請求権は、消滅時効が成立する。
(3) 被告らは、本件訴訟において、上記消滅時効援用した。
〔原告らの主張〕 被告らの主張は争う。
争点に対する判断
1 争点(1)ア(イ号及びロ号方法の構成要件Dの充足性、イ号及びロ号装置の構成要件Hの充足性)について (1) 被告らは、本件発明の構成要件Dにいう「筋組織状こんにゃく」は、束状のこんにゃくに限定され、イ号及びロ号目皿によって製造される薄い帯状(リボン状)こんにゃくを含むものではないと主張する。
しかし、「筋組織状こんにゃく」との文言は、特許請求の範囲の記載からは、それが意味する形状が必ずしも明らかではないものの、文言上、被告らが主張するような束状のこんにゃくのみを意味するものとはいえない。
次に、本件特許明細書の【発明の詳細な説明】の記載を検討する(甲1)。
〈産業上の利用分野〉の項には、「本発明はこんにゃく粉を原料として得られる食品、詳しくは筋組織状こんにゃくの新規な製造方法及びそのための装置を提供するものである。」(2欄7行〜9行)と記載されている。
〈従来の技術〉の項には、「こんにゃくは今日まで、板こんにゃく、糸こんにゃく等として長年に亘って食されてきた。…こんにゃくは我国独特の食品であり、低カロリー食品として注目を集めているものの、その食感に難があり、普及が停滞しているようである。」(2欄11行〜3欄2行)、「これに対しこれまでに、こんにゃく食品業界において種々の改良が行われてきた。…こんにゃくの風味、歯切れ等を改良する試みは更になされ、糸状こんにゃくを集束することにより、従来得られなかった製品を得る方法が提案されている」(3欄3行〜14行)と記載されている。
〈発明が解決しようとする課題〉の項では、「糸状こんにゃくを集束することにより従来にないこんにゃく製品を得る試みは…集束された多数本の糸状こんにゃくの全てが部分的に結着されているものとか、端部又は中間部のみが結着されているものなどである。また、…多数本の糸状こんにゃくの周りを筒状こんにゃくで被覆して集束一体化したものも提案されている。このような糸状こんにゃくの集束一体化のうちでも、各糸状こんにゃくを接触する部分でのみ接着させて一体化させたもの及びその製法は、…歯切れ等を良くする一手段として次第に評価されつつある」(3欄18行〜29行)、「しかし、前記例示した従来技術はいずれも製法及びそのための装置が複雑であった」(3欄30行〜31行)、「(従来技術の一例では)ノズルの一般的な構造は孔径1〜3oφ、孔間隔10o程度である」(3欄39行〜40行)と記載されている。
〈課題を解決するための手段〉の項には、「本発明者は、従来の糸状こんにゃくの集束化が加熱ゲル化後に行われることにより…複雑な工程及び装置となっており、このような複雑な工程及び装置によらずとも糸状こんにゃくを一体化可能な方法及び装置について検討し、ここに本発明の完成をみたのである。その特徴とする点は、ノズル押出し直後の多数本の糸状こんにゃくのり同志が押出し圧力の開放により膨張しゲル化前の短時間のうちに外力を加えることなく接するように、ノズルの押出し孔間隙を小、又はノズル押出し直後の成形体間のすき間を小さくしたことにある。ノズルが平行ノズルの場合は押出し孔の間隙は3o以下がよく、又、
傾斜ノズルの場合にはノズル押出し直後の成形体間のすき間が3o以下となるように出口押出し孔間隙(a)を設けるとよい」(3欄47行〜4欄11行)と記載されている。
〈作用〉の項には、「本発明の方法及び装置によると、多数本の糸状こんにゃくのり同志がノズル加圧押出し直後の圧力開放により膨張しゲル化前の短時間のうちに接して、何ら外力を加えなくとも互いに接着する作用をし、これを加熱処理するとゲル化し、一体化強度が大な筋組織状こんにゃく製品が得られる。また、
従来のように糸状こんにゃく表面の水を取る工程も必要としないので、工程及び装置の簡略化が可能となる」(4欄17行〜24行)と記載されている。
〈発明の効果〉の項には、「本発明の筋組織状こんにゃくの製造方法及びそれに用いる製造装置は以上の通りであるから、従来の複雑な工程及び装置を一挙に簡略化でき、低コストでこんにゃく製品の多様化を達成できた。このことにより、製品からのスライスにも分離する等の難点のない、しかも、歯切れのよい製品が提供できることとなった」(7欄17行〜8欄4行)と記載されている。
上記記載からすれば、本件発明は、多数本の糸状こんにゃくを各糸状こんにゃくが接触する部分でのみ接着させて集束一体化することにより、風味、歯切れ等が改良された筋組織状こんにゃくを得る製造装置につき、従来技術では装置が複雑であったのを改良して簡略化することを課題とし、従来の加熱ゲル化後に糸状こんにゃくを押圧して一体化する装置では、ノズルの孔間隔が10o程度であったのを、平行ノズルの押出し孔間隙又は傾斜ノズルの押出し直後の成形体間のすき間を3o以下と小さくする構成を採用したことにより、多数本の糸状こんにゃくのり同士がノズル加圧押出し直後の圧力開放により膨張し、ゲル化前の短時間のうちに接して何ら外力を加えなくとも互いに接着するようにし、その後の加熱処理によりゲル化させるという簡略な装置によって、一体化強度が大きい筋組織状こんにゃく製品が得られるとの作用効果を奏するものであることが認められる。
そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載と、前記認定の本件発明の作用効果に鑑みれば、構成要件Dにいう「筋組織状こんにゃく」とは、多数本の糸状こんにゃくを接触する部分で接着させて集束一体化した構造のこんにゃくをいい、このような構造を有していれば製品の形状を問わないものと解するのが相当である。
なお、本件特許明細書の【発明の詳細な説明】の実施例の項には、本件発明の押出装置を用いて得られた製品として、多孔のノズルから吐出される糸状こんにゃくのりが束状に収束一体化されたもの(本件特許公報第7図)、あるいは、多層のスリット状のノズルからこんにゃくのりを吐出させたテープ状ないし帯状の多層構造のもの(同第8図)が示されているが、これらの形状に限定するような記載は本件特許明細書中に窺われないから、本件発明の「筋組織状こんにゃく」が上記の実施例のような形状のものに限定されると解することはできない。
(2) 被告らは、本件実用新案の登録出願手続において原告Aが提出した意見書の記載によれば、本件発明の構成要件D、Hにいう「筋組織状こんにゃく」は、束状又は多層のスリット状のこんにゃくに限定され、イ号及びロ号目皿により製造されるような帯状又は筒状のこんにゃくを含まないと解すべきであると主張する。
乙4、5によれば、原告Aは、本件実用新案の登録出願手続において、本件考案はその出願前に頒布された刊行物である本件特許出願に係る公開特許公報記載の考案に基づき当業者がきわめて容易に考案をすることができたとする拒絶理由通知を受けて、平成6年7月12日付で意見書を提出し、同意見書中には、「引例(本件特許出願に係る公開特許公報)には、たしかに、多孔のノズルから押出されたこんにゃくを一体化させることが記載されていますが、これは主に本願(本件実用新案)第4図に示すような束状になったこんにゃくであり、薄くて扁平な帯状(リボン状)又は筒状(マカロニ状)のこんにゃくは記載されていません。また、
この表面筋状薄肉こんにゃくは単なる帯状、束状あるいは中空状とは明確に異なる特別な作用効果を有しているのでありますが、その示唆もありません。」との記載があることが認められる。
しかし、同意見書が本件発明とは別の本件実用新案登録出願手続において、その出願人である原告Aの意見を述べたものであることを措くとしても、本件考案は、特定の形状ないし構造からなる「表面筋状薄肉こんにゃく」の考案であることが認められるのに対し、本件発明は多数本の糸状こんにゃくのり同士を従来と異なる方法で一体化する製造方法ないし装置に関するものであって、本件考案のようにこんにゃくの特定形状を問題とするものではない。上記意見書のこんにゃくの形状に関する記載内容は、本件考案に係る「表面筋状薄肉こんにゃく」の形状ないし構造が本件特許出願に係る公開特許公報に示されたこんにゃくの形状ないし構造と違うことをいうにすぎず、本件発明において製造されるこんにゃくの形状について、帯状(リボン状)のものを積極的に除外することを意図したものとは認められない。
(3) また、被告らは、本件発明の出願公開後に出願された帯状こんにゃくの製造方法等に関する乙24発明が登録された事実を本件発明にいう「筋組織状こんにゃく」が束状のものに限定される根拠として主張するが、本件発明の出願公開後に出願された帯状こんにゃくの製造方法等に関する特許発明が登録された事実が、直ちに本件発明の構成要件の解釈の根拠となるものではない。
しかも、乙24発明の特許請求の範囲の請求項1においては、絞り出しノズルは、「直径1o程度の小孔を微小間隔をあけて2等辺3角形の頂点位置に穿設してジグザグ状に連続する小孔群を設けて1組とし、この複数組を適宜間隔をあけて設けた板状体を用い、前記押し出す工程において絞り出されるこんにゃくの柱状体の内2等辺部分の2つは接線間で相互に接触し結合するが、底辺部分の2つは結合することなく熱湯中に押し出されるようにした」との具体的構成を有するものとして特定されている一方、乙24発明の明細書には、本件発明の構成要件B、Gのように糸状こんにゃくが圧力開放により外力を加えることなく一体化するという一体化の機構についての技術思想も記載されていないから、本件発明の技術と乙24発明の技術を基に、その方法により製造されるこんにゃくの形状のみを比較して、
その技術的範囲を捉えることも相当ではないというべきである。
(4) したがって、イ号及びロ号目皿により製造される帯状の被告こんにゃくも構成要件D、Hにいう「筋組織状こんにゃく」に該当し、イ号及びロ号方法は「筋組織状こんにゃく」の製造方法(構成要件D)との構成を、イ号及びロ号装置は「筋組織状こんにゃく」の製造装置(構成要件H)との構成を備えているというべきである。
2 争点(1)イ(ロ号方法の構成要件B、Cの充足性及びロ号装置の構成要件Gの充足性)について (1) ロ号目皿の外観は、別紙「ロ号目皿の外観写真」のとおりであり、同写真によれば、ロ号目皿は、2列1組で各列をずらし並列状に配列された主孔(一部直近の主孔同士が繋がっているものがあるほかは、主孔は個々に独立している。)が形成されていることが認められる。
そして、弁論の全趣旨によれば、ロ号目皿の主孔は直径約1.5o(なお、該直径の寸法はバリ取りした部分を含まない寸法であり、バリ取りした部分を加えると直径約2oとなる。)、直近の中心間の間隔約1.0o〜約2.5oであることが認められ、その他、これを覆すに足りる証拠はない。
(2) ロ号目皿を用いたロ号方法・装置について、原告らは、押出直後の圧力開放により糸状こんにゃくのりが膨張して糸状こんにゃくのり同士がゲル化前の短時間のうちに外力を加えることなく接して一体化すると主張し、これに対し被告らは、ロ号目皿で製造されるこんにゃくは、主孔からこんにゃくのりが押し出された後、揺動により連結一体化するものであり、主孔から吐出された後の圧力開放による膨張により一体化するものではないから、ロ号方法は構成要件B、Cを、ロ号装置は構成要件Gを充足しないと主張する。
すなわち、ロ号方法・装置によって製造されたロ号こんにゃくが、ロ号目皿から吐出された糸状こんにゃくのりが一体化して製造されるものであること自体は争いがなく、その一体化の機構が、押出直後の圧力開放によるものか、揺動によるものかが問題となる。
(3) そこで、単独孔目皿から吐出されるこんにゃくのりの挙動について検討する。
ア 原告らが提出した証拠により認められる事実は次のとおりである。
(ア) 甲75〜107によれば、次の事実が認められる(以下「原告実験@」という。)。
a 実験結果 直径1.2oの主孔の中心間の距離を1.72o及び1.81o、連通孔幅を0.3o及び0.5oに設定した6個の単独孔目皿と連通孔付目皿を用いて、
こんにゃくのりを吐出させ、それぞれ吐出後のこんにゃくのりの平均径を求めた結果は、下記表1のとおりである。
(表1:主孔の直径はいずれも1.2o) b これによれば、単独孔目皿の方が吐出膨張率が大きいものの、単独孔目皿及び連通孔付目皿のいずれの目皿においても、主孔部分から吐出されたこんにゃくのりは、隣接する主孔部分から吐出されたこんにゃくのりと接する程度に膨張することが認められる。
(イ) また、甲45(技術検討書2)によれば、次の事実が認められる(以下「原告実験A」という。)。
a 直径1.2oの主孔を、その中心間の距離を1.8o〜2.5oまで0.1o刻みに設定した8種類(それぞれ9個の主孔をジグザグではなく横一列に並べたもの)の単独孔ノズル部分を有する目皿を用いて、こんにゃくを製造したところ、主孔中心間の距離が2.2o以下であれば隣接する糸状こんにゃくのりが接して一体化し帯状となり、同距離が2.3o以上であれば、隣接する部分によっては糸状こんにゃくのりが離れたままとなり、ばらけて一体化が不完全となった。
b これによれば、直径1.2oの単独孔目皿から吐出されるこんにゃくのりは、糸状こんにゃくのりが完全に一体化する主孔中心間の最大間隔2.2o(主孔間隙1o)まで膨張するということができる。
イ 一方、被告側が提出した証拠により認められる事実は次のとおりである(なお、実験において用いられたいずれの目皿においても、その主孔の直径は1.2oである。)。
(ア) 平成12年5月24日及び同年6月6日に実施した円形の目皿を用いてこんにゃくのりを温水に吐出させるこんにゃく製造実験(検乙1、乙8〜11、38。以下「被告実験@」という。)について a 連通孔付目皿(イ号目皿。乙8)の場合 こんにゃくのりが、一体化した帯状のものとして、目皿から吐出された。
b 主孔中心間の距離1.72o、主孔数12個(ジグザグ配列)の単独孔目皿(乙10、38)の場合 単独孔から押し出された糸状こんにゃくのりが、押出し直後に一体化しなかった。
c なお、被告実験@における目皿から温水までの距離は明らかではない。
また、上記各目皿によって製造されたこんにゃくの形状を示す写真(乙14〜17)は、連通孔付目皿及び単独孔目皿のいずれの目皿を用いた場合でも、糸状こんにゃくのりが完全に一体化した帯状のこんにゃく製品が製造されたことを示している。
(イ) 平成12年6月22日に実施した長方形の目皿を用いた実験(乙18及び19の各1〜3、乙20、21、26、27、弁論の全趣旨。以下「被告実験A」という。)について a 主孔中心間の距離1.72o、主孔数12個(ジグザグ配列)、連通孔の幅0.5oの連通孔付目皿(乙26)の場合 連通孔付目皿から吐出されるこんにゃくのりは、目皿と温水の位置にかかわらず、一体化した帯状のものとして吐出された。
b 主孔中心間の距離1.72o、主孔数12個(ジグザグ配列)の単独孔目皿(乙27)の場合 単独孔目皿からそれぞれ5o、10o、100o離れたところで温水に浸けて製造したところ、吐出された糸状こんにゃくのりの一体化がいずれも不完全であった。特に5o離れたところから温水に浸けて製造したものは、ほとんど一体化しなかった。
(ウ) 平成12年8月7日に実施した円形の目皿を用いた実験(検乙2、
乙39〜42、乙43の1・2、乙44〜46。以下「被告実験B」という。)について a 主孔中心間の距離5o、主孔数7個(一列配列)、連通孔の幅0.3oの連通孔付目皿(乙39、41)の場合 5oの間隔を隔てて設けられた主孔を繋ぐ連通孔部分からも帯状こんにゃくのりが吐出され、同目皿から一体化したこんにゃくのりが吐出された。
b 半分が主孔中心間の距離1.72o、主孔数12個(ジグザグ配列)の単独孔目皿、半分が同様に設けられた主孔間を幅0.3oの連通孔で繋いだ目皿(乙40、43の1・2)の場合 目皿を水中につけて実験した場合、連通孔付目皿部分からは、一体化した帯状のこんにゃくのりが吐出されたが、単独孔目皿部分からは、糸状こんにゃくのりが一体化せずばらばらの状態で吐出された。
(エ) 平成12年8月16日に実施した長方形の目皿を用いた実験(乙59及び60の各1〜4、乙61、62。以下「被告実験C」という。)について a 主孔中心間の距離1.72o、主孔数12個(ジグザグ配列)、連通孔の幅0.5oの連通孔付目皿(乙61)の場合 ポンプの回転数(20rpm、50rpm、100rpm、200rpm)によらず、こんにゃくのりが一体化した状態で吐出された。
b 主孔中心間の距離1.72o、主孔数12個(ジグザグ配列)の単独孔目皿(乙62)の場合 ポンプの回転数(20rpm、50rpm、100rpm、200rpm)が大きいほど、目皿から吐出された糸状こんにゃくのりの膨張の程度が大きく、回転数が小さい場合には糸状こんにゃくのりの一体化は不完全である。
なお、被告実験Cの実験結果を示す証拠は、目皿から数p程度の間の糸状こんにゃくのりの挙動しか示されていないから、糸状こんにゃくのりが最終的にどの程度一体化したのかについては明らかではない。
(オ) 平成12年10月27日に公証人に検分を嘱託した上で実施した円形の目皿を用いた実験(乙64。以下「被告公正証書実験」という。)について ハタノヤは、下記記載の目皿を用い、目皿の位置を水温65℃の温水の水面上5p、同0.5p、同温水中の3通りに設定してこんにゃくのりを吐出させ、そのこんにゃくのりの形状、挙動を観察する実験を施行し、次の結果を得た。
a 主孔中心間の距離1.72o、主孔数12個(ジグザグ配列)、連通孔の幅0.5oの連通孔付目皿、及び主孔中心間の距離1.745o、主孔数6個(一列配列)、連通孔の幅0.5oの連通孔付目皿の場合 目皿と水面のいずれの位置関係においても、こんにゃくのりは、6筋の帯状となって、目皿から吐出された。
b 主孔中心間の距離1.72o、主孔数12個(ジグザグ配列)の単独孔目皿、及び主孔中心間の距離1.745、主孔数6個(一列配列)の単独孔目皿の場合 (a) 目皿の位置が水面上5pに設定された場合には、こんにゃくのりが6筋の帯状で目皿から吐出された。
(b) 目皿の位置が水面上0.5pに設定された場合には、こんにゃくのりが6筋の帯状で目皿から吐出されたものの、水中でばらばらの糸状となった。
(c) 目皿の位置が温水中に設定された場合には、こんにゃくのりは目皿から糸状となって吐出された。
ウ 以上を基に、単独孔目皿から吐出されるこんにゃくのりの挙動について検討する。
(ア) 原告実験@・A、被告実験@〜C及び被告公正証書実験において用いられた単独孔目皿は、いずれも、本件発明の「ノズルを平行ノズルとしてその押出し孔間隙(a)を3o以下に小…とし」との構成を充足するものである。
a 原告実験@によれば、主孔中心間の距離が1.72o及び1.81oの単独孔目皿から吐出されたこんにゃくのりは、隣接する糸状こんにゃくのり同士が接するほど膨張することを示している。また、原告実験Aによれば、主張中心間の距離が2.2o以下の単独孔目皿であれば、隣接する糸状こんにゃくのり同士が膨張して接することを示している。
b 一方、被告実験A・B、被告公正証書実験の単独孔目皿を用いた実験結果によれば、目皿の位置を温水の水面上0.5pに設定した場合及び温水中に設定した場合には、吐出された糸状こんにゃくのり同士が、一体化する暇なく温水に浸漬したことにより一体化が妨げられたのに対して、目皿の位置を温水の水面上5pに設定した場合においては、こんにゃくのりが目皿から吐出された後5p落下して温水に浸漬するまでの間に、糸状こんにゃくのり同士が接合して一体化し、温水に浸漬しても糸状に戻らなかったものである。
この実験結果は、単独孔目皿を使用したときには、こんにゃくのりは、短時間のうちに(長くとも吐出後5p落下するまでの間に)、外力を加えることなく糸状こんにゃくのり同士が接合して一体化すること、単独孔目皿から0.5p程度の位置で温水に浸漬した場合には上記一体化が妨げられることを示している。
また、被告実験Cは、ポンプの回転数が大きいほど、目皿から吐出された糸状こんにゃくのりの膨張の程度が大きく、回転数が小さい場合には糸状こんにゃくのりの一体化は不完全であることが示されている。
なお、被告実験@は、単独孔目皿を用いた場合も完全に一体化したこんにゃく製品が製造されているが、目皿から温水までの距離が明らかではないので、以下の考察の対象には含めないこととする。
c 以上の実験結果からすれば、主孔中心間の距離が2.2o(主孔の直径1.2o、孔間隙1o)程度の位置関係にある場合には、単独孔目皿から吐出された糸状こんにゃくのりは、目皿から0.5p程度の位置で温水に浸漬する等の条件下、あるいはこんにゃくのりの吐出速度を遅くした条件下でなければ、外力を加えることなく隣接する糸状こんにゃくのり同士が接合して一体化しており、その要因としては、原告実験@及び原告実験Aが示すように、各主孔から押し出された糸状こんにゃくのりが、押出し直後の圧力開放により直ちに膨張したことによるものと推認するのが自然である。
(イ) なお、乙58(工学院大学非常勤講師C作成の「連通孔付目皿(A)及び単独穴目皿(B)を流れるこんにゃくのりのVTRによる流動挙動に関する所見」と題する書面)には、被告実験@におけるこんにゃくのりの流動挙動を基にした所見として「単独穴目皿(B)ではバラス効果によるこんにゃくのりの膨張(同写真で見る限り)はそれほど顕著なものではなく、吐出口においてこんにゃくはそれぞれ独立して流出していて、膨張による接合挙動は認められない。単独目皿によるこんにゃくが接合するのは吐出した後、管壁とこんにゃくのりとの間の摩擦によるせん断力の不均一分布が原因で発生する前後左右の揺動、すなわち、こんにゃく自体の揺らぎに基づく衝突によるものであると推定されます。」(4頁18行目〜23行目)との記載がある。
しかしながら、同「所見」が考察の対象とするこんにゃくのりの吐出に係る前提条件が、被告公正証書実験におけるそれと同視し得るものと認めるに足りる証拠はない。
また、同「所見」には、「連通孔付目皿(A)からのこんにゃくのりの流動挙動は明らかなバラス効果による膨張が見られ…直径が約25%バラス効果によって膨張した事になります。」(同頁10行目〜15行目)との記載があるが、連通孔付目皿から吐出されたこんにゃくのりにバラス効果による膨張があるのに、単独孔目皿から吐出されたこんにゃくのりにそれがないことの理由が明らかではない。
上記乙58の所見には、以上のような疑問が存する上、上記原告実験@、原告実験A及び被告公正証書実験における、単独孔目皿においても帯状のこんにゃくのりが吐出されるとの実験結果を説明することができないものであるから、
同所見は、単独孔目皿から吐出された糸状こんにゃくのり同士が接合し一体化するのが、吐出直後の圧力開放により直ちに膨張することによるものであるとの上記推認を覆すに足りない。
被告らは、本件発明を実施した場合、押出後の圧力開放により糸状こんにゃくのり同士が膨張して接するのではなく、圧力開放された糸状こんにゃくのり同士の「揺動」によって接合すると主張するが、上記各証拠によっても同主張を認めるには足りず、他にこれを認めるに足りる証拠もない。
(4) ロ号目皿は、上記のとおり主孔の直径約1.5o、直近の中心間の間隔約1.0o〜約2.5oであって、直近の主孔同士が繋がっているものから、独立した主孔が約1oの間隙を隔てて隣接するものまで、主孔の配置はばらついた状況になっている。
しかし、ロ号目皿には、少なくとも独立した主孔が約1o以下の間隙をもって隣接する部分が多数存在し、この部分から吐出された糸状こんにゃくのりが一体化して帯状こんにゃくが製造されるのであって、その機構は、上記のとおり、押出直後の圧力開放により糸状こんにゃくのりが膨張して糸状こんにゃくのり同士がゲル化前の短時間のうちに外力を加えることなく接して一体化することによるものというべきであり、その他、これを覆すに足りる証拠はない。
(5) なお、被告らは、ロ号目皿の一部が本件発明の技術的範囲に属するとしても、他の部分が本件発明の技術的範囲に属さない以上、当該部分から糸状こんにゃくを吐出する製造方法ないし製造装置は、本件特許権の侵害にはならないと主張する。
しかし、ロ号目皿のうち、独立した主孔が約1o以下の間隙をもって隣接する部分に係る製造方法ないし製造装置が本件発明の技術的範囲に属することは前記のとおりであり、ロ号目皿の一部において直近の主孔同士が繋がっており独立した主孔から吐出されない部分があるとしても、ロ号目皿からその部分のみを分離できない以上、そのことによってロ号目皿を用いた製造方法ないし製造装置が本件発明の技術的範囲に属することが否定されるものではないというべきであり、被告らの同主張は理由がない。
(6) よって、ロ号方法は、「押出し直後の圧力開放により糸状こんにゃくのりが膨張して糸状こんにゃくのり同志がゲル化前の短時間のうちに外力を加えることなく接するようにノズル押出し直後の糸状こんにゃくのり間のすき間を3o以下とした多孔のノズルで押出し」(構成要件B)、「加熱処理前又は加熱処理と同時に一体化する」(構成要件C)との構成を、ロ号装置は、「押出し後の圧力開放により糸状こんにゃくのりが膨張して糸状こんにゃくのり同志がゲル化前の短時間のうちに外力を加えることなく接して一体化するようにしてなる」(構成要件G)との構成を備えているというべきである。
3 争点(1)ウ(イ号方法の構成要件B、Cの充足性及びイ号装置の構成要件E、
Gの充足性)について (1) 構成要件B、C及びE、Gの意義について 構成要件Bでは「糸状こんにゃくのりが膨張して糸状こんにゃくのり同志が…外力を加えることなく接する」、「糸状こんにゃくのり間のすき間を3o以下として多孔のノズル」とされ、構成要件Cでは「加熱処理前又は加熱処理と同時に一体化する」とされている。また、構成要件Eでは「多孔のノズル」とされ、構成要件Gでは「糸状こんにゃくのりが膨張して糸状こんにゃくのり同士が…一体化する」とされている。これらの文言に加え、前記2で認定した本件特許明細書の【発明の詳細な説明】の記載を考慮すると、「多孔のノズル」とは、それぞれの孔から糸状こんにゃくのりが吐出されるような独立した多数の孔を有するノズルを意味し、「糸状こんにゃくのりが膨張して糸状こんにゃくのり同士が…一体化する」とは、当初は分離した状態でノズルから吐出された糸状こんにゃくのりが、吐出後に膨張して互いに接触する部分で接着することにより糸状こんにゃくのり同士が一体化することを意味するものと解される。
(2) イ号目皿から吐出されるこんにゃくのりの挙動について検討する。
ア 被告公正証書実験において、目皿の位置を水面上0.5pに設定した場合及び上記温水中に設定した場合には、単独孔目皿から吐出された場合には水中でばらばらの糸状となったこんにゃくのりが、連通孔付目皿から吐出された場合には、
水中でもばらばらの糸状とならず、帯状となって、一体化されていたのであるから、連通孔付目皿の切込み部分からも、主孔部分から吐出される糸状こんにゃくのりを幅方向で結ぶ薄肉こんにゃくを形成する程度のこんにゃくのりが吐出されるものと推認される。
イ 原告らは、塑性流動体の特性上、0.5o幅の細いスリットからは、粘性のあるこんにゃくのりはごくわずかしか押し出されず、スリットから押し出される薄肉こんにゃくは形成されないと主張する。
(ア) この点について、甲41(技術検討書1)によれば、こんにゃくのりが非ビンガム塑性流動体(準塑性流動体)の流動特性を有するとして、直径1.2oの主孔部分と、0.5o×0.6oの連通孔部分のこんにゃくのりの流量比を計算したところ、こんにゃくのりの全体の流量のうち主孔部分を流れる割合は94%となったとの検討結果が示されている。
(イ) しかし、この検討結果は、前記数値の算出過程に照らすと、こんにゃくのりがそれぞれ独立して設けられた主孔部分と連通部分とを流れるとの前提に立った計算であり、主孔部分と連通部分が繋がった連通孔付目皿における実際の流動現象を定量的に示すものではないとも考えられるから、同検討結果は、上記ア記載のとおり、連通孔付目皿の切込み部分からも、主孔部分から吐出される糸状こんにゃくのりを幅方向で結ぶ薄肉こんにゃくを形成する程度のこんにゃくのりが吐出されるとの推認を覆すものではない。
ウ しかしながら、原告実験@によれば、直径1.2oの主孔中心間の距離が1.72o及び1.81oの連通孔付目皿においては、いずれも隣接する主孔部分から吐出されたこんにゃくのり同士が接する程度に膨張することが示されており、また、原告実験Aによっても、直径1.2oの単独孔目皿から吐出されるこんにゃくのりは、イ号目皿のように主孔間隙が1o以内であれば、吐出後の膨張により隣接する糸状こんにゃくのり同士が外力を加えることなく接して一体化することが示されており、これによれば、目皿から0.5p程度の位置で温水に浸漬するような場合を別とすれば、イ号目皿を使用した場合においても、押出し直後の圧力開放により、
主孔部分から吐出されたこんにゃくのりが直ちに膨張することによって、短時間のうちに外力を加えることなく接合するという一体化の機構を有しているということができる。
エ 結局、イ号方法・装置は、主孔部分から吐出されたこんにゃくのりが、連通孔部分から吐出されたスリット状のこんにゃくのりによって繋がった状態で吐出されるものの、押出し直後の圧力開放により主孔部分から吐出されたこんにゃくのりが膨張して、主孔部分から吐出されたこんにゃくのり同士がゲル化前の短時間のうちに外力を加えることなく接して一体化するものということができる。
(3) 以上に基づき、イ号方法の構成要件B、Cの充足性及びイ号装置の構成要件E、Gの充足性について検討する。
イ号目皿は、主孔部分と連通孔部分とから成る連通孔付目皿であり、前記実験によれば、主孔と連通孔のそれぞれから一体化したこんにゃくのりが吐出されるのであるから、独立した多数の孔を有するものではない。
したがって、イ号方法は「多孔のノズルで押出す」(構成要件A)との構成を、イ号装置は「多孔のノズルから押出す」(構成要件E)との構成を文言上備えているとはいえない。
また、イ号目皿を用いたこんにゃく製造装置のノズルから吐出された糸状こんにゃくのりは当初から分離しているものではなく、吐出時において、主孔部分から吐出される糸状こんにゃくのりを幅方向で結ぶ薄肉こんにゃくを形成する程度のこんにゃくのりは連通孔部分からも吐出されるから、イ号方法は「押出し直後の圧力開放により糸状こんにゃくのりが膨張して糸状こんにゃくのり同志がゲル化前の短時間のうちに外力を加えることなく接するように…押出し」(構成要件B)、
「加熱処置前又は加熱処理と同時に一体化する」(構成要件C)との構成を、イ号装置は「押出し後の圧力開放により糸状こんにゃくのりが膨張して糸状こんにゃくのり同志がゲル化前の短時間のうちに外力を加えることなく接して一体化するようにしてなる」(構成要件G)との構成を文言上備えているとはいえない。
4 争点(1)エ(イ号方法・装置は本件発明と均等なものとしてその技術的範囲に属するか)について (1) 特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても、@同部分が特許発明の本質的部分ではなく、A同部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって、B上記のように置き換えることに、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、C対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから同出願時に容易に推考できたものではなく、かつ、D対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは、同対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明技術的範囲に属するものと解するのが相当である(最高裁判所平成10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁参照)。以下、上記要件に従って、順に検討する。
(2) 非本質的部分(均等要件@)について ア 均等が成立するためには、特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品と異なる部分が特許発明の本質的部分ではないことを要するが、ここにいう特許発明の本質的部分とは、特許請求の範囲に記載された特許発明の構成のうちで、当該特許発明特有の課題解決手段を基礎付け、特有の作用効果を生じさせる特徴的な部分、言い換えれば、その部分が他の構成に置き換えられるならば、全体として当該特許発明技術的思想とは別個のものと評価されるような部分をいうものと解するのが相当である。
イ 本件発明は、前記1(1)記載のとおり、多数本の糸状こんにゃくをそれぞれが互いに接触する部分でのみ接着させて集束一体化することにより、風味、歯切れ等が改良された筋組織状こんにゃくを得る製造装置につき、本件発明の構成を採ることにより、簡略な装置によってその製造を実現したものであり、本件発明の本質的部分は、目皿から吐出された糸状こんにゃくのりが、圧力開放により膨張して、糸状こんにゃくのり同志が外力を加えることなく接して一体化するようにするために、こんにゃくのりの押出し孔間隙を3o以下の、又は押出し直後の糸状こんにゃくのり間のすき間を3o以下の小さい傾斜ノズルとした多孔のノズルを押出装置に設けたことにあるというべきである(ただし、前記2(3)ア(イ)で認定したように、本件証拠として提出された実験結果からすると、押出し孔(主孔)の直径が1.2oで、押出し孔(主孔)間隙が1oを超える場合には、糸状こんにゃくのりの一体化が不完全にしか生じないから、押出し孔の直径が1.2o程度の場合において、
本件発明特有の課題解決手段を基礎付け、特有の作用効果を生じさせるというためには、押出し孔間隙を1o以下に限定してとらえる必要がある。)。
ウ そうすると、前記3(2)記載のとおり、イ号方法・装置においては、押出し孔(主孔)間隙を1o以下とし、押出直後の圧力開放により主孔部分から吐出されたこんにゃくのりが直ちに膨張することによって、短時間のうちに外力を加えることなく接合するという一体化の機構を有しているのであるから、本件発明の上記本質的部分を備えているというべきであり、本件発明とイ号方法・装置との間で異なる構成部分、すなわち、構成要件B、Eが「多孔のノズル」と規定するのに対し、
イ号目皿は、主孔部分と連通孔部分とから成る連通孔付目皿であること、構成要件B、C及びGが「(当初は分離した状態の)糸状こんにゃく同士が…外力を加えることなく接して…一体化する」と規定するのに対し、イ号方法・装置は、連通孔部分から吐出されたスリット状のこんにゃくのりによって繋がった状態で吐出されるとの差異部分は、本件発明の本質的部分には当たらないものというべきである。
エ なお、被告らは、争点(1)ウの〔被告らの主張〕ア(エ)記載のとおり、イ号方法・装置と本件発明との間には作用効果の差異があると主張する。
(ア) 被告らは、イ号こんにゃくには、イ号目皿の連通孔から吐出されたこんにゃくのりによって形成される襞状部分が存在し、単独孔目皿を用いて製造されたこんにゃくよりもより小さい力で延びるとの作用効果の差異を指摘するところ、乙75によれば、単独孔目皿によって製造されたこんにゃくの方が、連通孔付目皿によって製造されたこんにゃくより、引き延ばすのに大きな力が必要で、かつ、引っ張るのを停止した以降の過重の低下の程度が小さいことが認められるが、
同証拠が示す上記差異の程度は、「一体化強度が大な筋組織状こんにゃく製品が得られる」(本件特許公報4欄21〜22行)、「製品からのスライスにも分離する等の難点のない、しかも歯切れのよい製品が提供できることとなった。」(同8欄2〜4行)という本件発明の作用効果を失わしめるほど大きいものとはいえない。前記作用効果は、イ号こんにゃくにおいても達成されているといえる。
また、乙12〜17(イ号目皿と単独孔目皿とによって製造されたこんにゃくの断面形状(引き延ばした状態を含む)の写真)によれば、イ号目皿と単独孔目皿とによって製造されたこんにゃくの断面形状には、それほど顕著な違いがあるものではない。
しかも、イ号目皿と単独孔目皿によって製造されたこんにゃくにおける引き延ばし力や断面形状において若干の差異があるとしても、そのことが、こんにゃく製品の風味、歯切れ等において差異が生ずる程度のものということはできない。
(イ) 被告らは、イ号方法・装置は、本件発明の技術と比較して、こんにゃくのりの押出が円滑になされる、製造されるこんにゃく製品が一体化不十分なために分離したり、幅方向に切断しても長手方向に分離したりなどすることがないと主張する。
しかし、上記(ア)記載のとおり、イ号目皿と単独孔目皿とによって製造されたこんにゃくの断面形状には、それほど顕著な違いがないのである。
また、被告実験A・B及び被告公正証書実験が示すように、水中ないし水面上0.5pの位置に目皿を設置した場合に、連通孔付目皿では一体化した帯状こんにゃくの製造が可能であるのに、単独孔目皿ではそれができないという差異があり、そうした条件によっては、押出の円滑さに差異が生じたり、単独孔目皿においては吐出されたこんにゃくのりの一体化が不十分になることもあり得ることになる。しかし、弁論の全趣旨によれば、被告やまとはイ号目皿を用いてイ号こんにゃくを製造する際には、目皿から5p離れたところで温水に押し出していることが認められ、そのほかに、通常のこんにゃく製造装置において、水中で目皿からこんにゃくのりを押し出す構成や、目皿から押し出されたこんにゃくのりがわずか0.5p程度落下して温水に浸漬するような構成が採用されていることを認めるに足りる証拠はない。そうすると、被告らの上記主張は、そのような通常採用されない条件下における単独孔目皿と連通孔付目皿との間の作用効果の差異を主張するものにすぎないというべきであり、そのような通常採用されない条件下における作用効果の差異をもって、単独孔目皿と連通孔付目皿の各構成の上記差異部分が本件発明の本質的部分であるとすることはできない。
(3) 置換可能性(均等要件A)について 上記3(2)記載のとおり、イ号方法・装置は、主孔部分から吐出されたこんにゃくのりは、連通孔部分から吐出されたスリット状のこんにゃくのりによって繋がった状態で吐出されるものの、押出し直後の圧力開放により主孔部分から吐出されたこんにゃくのりが膨張して、主孔部分から吐出されたこんにゃくのり同士がゲル化前の短時間のうちに外力を加えることなく接して一体化するものであり、「孔間を0.23o〜0.26o幅のスリットで連結した多孔のノズル」の構成は特段の作用効果を奏するものではなく、特段の技術的意義を見い出すことができない。
そうであれば、本件発明の「(連通孔のない)多孔のノズル」を、イ号方法・装置の上記構成に置換したとしても、本件発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏することは明らかである。
(4) 容易想到性(均等要件B)について 本件発明の各構成は、本件特許出願に係る特開昭62-201555号公開特許公報(公開日:昭和62年9月5日、乙23)に掲載されたものである。なお、同公開特許公報の特許請求の範囲においては、構成要件B、Gにおける「圧力開放により糸状こんにゃくのりが膨張して」との構成はなく、構成要件B、Gにおける「外力を加えることなく接して一体化する」との構成は「接する」と記載されていたものであるが、上記構成は、同公開特許公報の〈問題点を解決するための手段〉の項(2頁左下欄18〜20行)、〈作用〉の項(2頁右下欄12〜15行)に記載されていたことが認められる。
さらに、被告やまとは、平成7年3月ころまで連通孔のないロ号目皿を用いてこんにゃくの製造をしていたこと、上記のとおり、イ号方法・装置の「主孔間を0.23o〜0.26o幅のスリットで連結した多孔のノズル」の構成が特段の作用効果を奏するものではないことを併せ考えれば、被告やまとがイ号目皿の使用を開始した平成7年3月当時、イ号目皿を使用して、本件発明の「(孔間にスリットのない)多孔のノズル」を、イ号方法・装置の上記構成に置換することは、当業者が容易に想到することのできたものというべきである。
(5) 容易推考性(均等要件C)について イ号方法・装置が、本件発明の特許出願時である昭和61年3月1日当時における公知技術と同一又は当業者がこれから上記出願時に容易に想到することができたものであると認めるに足りる証拠はない。
(6) 意識的除外(均等要件D)について イ号方法・装置における「孔間を0.23o〜0.26o幅のスリットで連結した多孔のノズル」との構成が、本件特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情の存在を認めるに足りる証拠はない。
(7) したがって、イ号方法・装置は、本件発明の構成と均等なものであって、
その技術的範囲に属するものというべきである。
5 以上によれば、イ号方法・装置及びロ号方法・装置は、本件発明の技術的範囲に属し、イ号及びロ号方法・装置によるイ号及びロ号こんにゃくの製造行為、イ号及びロ号こんにゃくの譲渡行為は、本件発明の実施に当たる(特許法2条3項1〜3号)というべきである(原告らの請求は、主位的に本件特許権、予備的に本件実用新案権に基づくものであるから、主位的請求に係る本件特許権侵害の事実が認められる以上、本件実用新案権侵害については判断しない。)。
なお、原告らは、被告らに対して別紙第1製品目録記載の各製品の、被告やまとに対して別紙第2製品目録記載の各製品の、それぞれ生産、使用、譲渡、貸渡し若しくは輸入、又は、その譲渡若しくは貸渡しの申出の差止めを請求しているが(請求第1項及び第2項)、被告日本食研が別紙第1製品目録記載の各製品の生産、使用、貸渡し若しくは輸入、又はその貸渡しの申出をしている事実又はそのおそれがあることを認めるに足りる証拠はなく、また、被告やまとが別紙第1製品目録及び別紙第2製品目録記載の各製品の使用、貸渡し若しくは輸入、又はその貸渡しの申出をしている事実又はそのおそれがあることを認めるに足りる証拠はない。
また、乙116によれば、被告やまとが、平成14年7月15日付けで姫路手形交換所の取引停止処分を受けたことが認められるが、同事実から、直ちに、被告やまとがイ号及びロ号こんにゃくを製造販売するおそれがなくなったということはできない。
6 争点(3)(権利濫用(明白な無効理由))について (1) 被告らは、カネマタ食品は、本件発明及び本件考案の出願前である昭和56年から、乙28ないし30に撮影されている目皿(単独孔を束状(乙28)、同心円状(乙29)、横一列に12個配列(乙30)した目皿)を開発し、昭和57年秋からカネマタ目皿(乙30)を使用して、こんにゃくを製造販売しており、当初は、カネマタ目皿を用いて製造したこんにゃくを、それ以前から使用していた「きしめん風こんにゃく」の包材を利用し、その名称で販売していたが、昭和58年末ころからは「高級料亭の味しゃぶしゃぶ用こんにゃく」の名称で現在に至るまで販売していると主張する。
(2) カネマタ食品の上記製品の販売経緯について、後掲証拠によれば次の事実が認められる。
ア カネマタ食品は、昭和56年6月ないし10月ころ、「きしめん風こんにゃく」という商品名の製品を株式会社岐阜高島屋及び川口屋糸貫に納入しており(乙35の1・2)、そのラベルは、昭和58年1月26日に7000枚印刷されている(乙36の1)(なお、被告らは、カネマタ目皿を用いる前の「きしめん風こんにゃく」を製造した目皿の写真として乙65を提出する。)。
イ カネマタ食品は、昭和59年10月ころから、「高級料亭の味しゃぶしゃぶ用こんにゃく」という商品名の製品を株式会社ニチイ、株式会社高島屋、株式会社川口屋スーパーチェン(以下「川口屋」という。)、株式会社岐阜高島屋、株式会社ヤナゲンに納入しており(乙31〜34の各1・2、乙120の4・5)、そのラベルは昭和58年11月24日にその印刷製版を作成し、1万1100枚印刷されている(乙36の2)。
そして、「高級料亭の味しゃぶしゃぶ用こんにゃく」のラベルは、昭和58年11月に印刷した上記のもの、平成2年9月に印刷したもの、現在使用中のもののいずれにおいても「製法特許出願中」と表示され(なお、現在の一部の製品においては同表示は付されていない。)、「独特な製法にて厳選された原料を使用して居りますので比(此)の風味は、皆様方には一層の御満足をしていてだけるものと思います。」と記載されており、またいずれのラベルにも同一のJANコードが付されている(甲66、67、乙53〜55)。
ウ カネマタ食品が、現在製造販売している「高級料亭の味しゃぶしゃぶ用こんにゃく」は、糸状こんにゃくが左右一列に繋がった帯状(リボン状)の形状をしている(甲68、69)。
(3) さらに、「高級料亭の味しゃぶしゃぶ用こんにゃく」という商品名の製品の製法、形状を示すものとして、被告らは次のような証拠を提出する。
ア 乙56並びに乙119の2〜4及び120の12〜14(カネマタ食品の専務取締役が作成又はその記載内容を証明した文書)、乙57並びに乙119の5及び120の3・15(川口屋のシステム部部長(昭和55年当時は同社糸貫店の食品担当(乙98、99))が作成又はその記載内容を証明した文書)、乙119の8及び120の16(カネマタ食品の代表取締役がその記載内容を証明した文書)には、カネマタ食品では、昭和57年秋から目皿の穴を斜めにあけることによって、押し出された糸こんにゃくを帯状に一体化する技術を思いつき、この方法によって製造した表面が凹凸の筋状になり、凹部が凸部より肉薄で、凹凸が縞模様になった新商品を販売したが、当初旧製品の「きしめん風こんにゃく」の包材が残っていたので、これを利用して販売し、昭和58年末からは、「高級料亭の味しゃぶしゃぶ用こんにゃく」という商品名で、新しい包材を使用して販売するようになったとの内容が記載されている。
イ また、乙89(株式会社清水万蔵商店の専務取締役作成の陳述書)、乙119の6及び120の7(同専務取締役がその記載内容を証明した文書)、乙119の7及び120の8(三星セロファン株式会社の営業部長がその記載内容を証明した文書)には、カネマタ食品で、昭和59年ないし60年ころから、波条の凹凸の筋がある薄い帯状のこんにゃくを製造していたという趣旨の記載がある。
ウ さらに、乙119及び120の各9(カネマタ食品の専務取締役がその記載内容を証明した文書)、同10(被告やまとの取締役会長がその記載内容を証明した文書)並びに同11(株式会社清水万蔵商店のDがその記載内容を証明した文書)には、昭和56年以前から孔や溝から押し出されたこんにゃくのりが膨張して、押し出された孔や溝よりも少し大きくなることは業界の常識であったという趣旨の記載がある。
(4) なお、カネマタ食品の特許出願に関しては、次の事実が認められる。
ア カネマタ食品は、昭和57年10月30日に、「板コンニャク切込装置」の発明に係る特許出願をしている(特公昭63-31177号特許公報、甲72)。同公報によれば、その特許請求の範囲は「円板状の刃を複数枚適巾に設けた刃身体二箇を平行に互いに刃先が交互となり、且つ適間隔となるように設けて同時回転を可能とし、上方に板コンニャク送入口を、また下方に送出口を設けたことを特徴とする板コンニャク切込装置。」と記載されており、その発明の詳細な説明の項には、同特許出願に係る発明は、板こんにゃくに刃でこのような切込を設けることによって、煮物の時に煮だし汁に触れる面積を多くして味の浸透を容易にすることを目的とする旨記載されている(同特許公報1欄18〜22行、2欄2〜5行)。これによれば、カネマタ食品の上記特許は、既に形成された板こんにゃくに刃物を用いて切込みを入れる発明であり、圧力開放による糸状こんにゃくのりの膨張を利用してこれを一体化する本件発明とは全く構成を異にするものである。
このほかに、カネマタ食品が昭和56年ないし59年ころ、こんにゃくの製造方法ないし装置に関して特許出願をしている事実を認めるに足りる証拠はない。
イ なお、被告らは、カネマタ食品が「板コンニャク切込装置」の特許発明実施品として、商品名「ステーキこんにゃく」の製品を販売していたと主張し、
その製品ラベル(乙66)を提出するが、同製品ラベルには、同製品が、こんにゃくをフライパンで焼いてたれを付けて食べる食品であることが記載されているものの、こんにゃくの形状がどのようなものかについては何ら記載がなく、しかも「高級料亭の味しゃぶしゃぶ用こんにゃく」のラベルに記載されているような「製法特許出願中」との記載もないから、同証拠から直ちに「板コンニャク切込装置」の特許発明実施品が「ステーキこんにゃく」であると認めることはできない。
(5) 上記(2)記載の事実は、いずれも「高級料亭の味しゃぶしゃぶ用こんにゃく」との商品名の製品が販売されていたことを示すものにすぎず、昭和57年ころ当時の製品の製造方法、製品形状を客観的に示すものではない。
なお、同製品のラベルには現在まで同一のJANコードが付されていること、及び現在の製品は糸状こんにゃくが左右一列に繋がった帯状(リボン状)の形状をしていることが認められるものの、同一のJANコードが付されていることから、直ちに、昭和57年ころの製品が、現在の製品と同一の形状をしていること、
さらには同じ製法で作られていることを推認することはできない。カネマタ目皿の形状を示す写真(乙30)が提出されているが、同目皿がいつ、どのように用いられたかを客観的に裏付ける証拠はない。
また、上記(3)ア及びイ記載の各内容は、当時販売されていたこんにゃくの製造方法、商品形状を客観的に裏付けるものということはできないし、同ウ記載の孔や溝から押し出されたこんにゃくのりが膨張して、押し出された孔や溝よりも少し大きくなるという知見が、仮に昭和56年以前から業界の常識であったとしても、そのことから、カネマタ食品が当時販売していた製品の形状がどのようなものであったかを推察することはできない。
さらに、上記(2)記載のとおり、「高級料亭の味しゃぶしゃぶ用こんにゃく」の包材には「製法特許出願中」と記載されているのであるから、カネマタ食品は同こんにゃくの製法に係る特許出願をしているのが通常であるというべきところ、上記(4)記載のとおり、そのころカネマタ食品が出願したものは、昭和57年10月30日の出願に係る「板コンニャク切込装置」の特許発明のみであって、同特許発明は、板こんにゃくに刃物で切込みを入れる技術に関するものであり、本件発明や本件考案の技術とは異なるものであって、この事実は「高級料亭の味しゃぶしゃぶ用こんにゃく」の形状は本件発明や本件考案の技術とは異なるものであった可能性を示唆するものである。
そうすると、被告ら提出の上記証拠をもってしても、「高級料亭の味しゃぶしゃぶ用こんにゃく」の具体的な製造方法、製品形状を認めるには足りないものというべきである。
(6) 以上によれば、被告らが主張する本件発明及び本件考案の出願前の公然実施の事実を認めるには足りないというべきであるから、被告らの同主張は理由がない。
7 争点(4)(過失の有無)について (1) 被告らは、イ号方法・装置に関し、均等論が適用されて侵害が認められる場合には、公報による権利範囲の公示が過失推定の根拠であることからすれば、目皿の製造業者ではない被告ら(被告日本食研についてはこんにゃくの製造業者でもない。)に過失はなかったというべきであると主張する。
(2) 上記のとおり、イ号方法・装置は、本件発明と均等なものとしてその技術的範囲に属するものであり、被告やまとがイ号方法・装置を使用してイ号こんにゃくを製造する行為、被告やまと及び被告日本食研がイ号方法により生産されたイ号こんにゃくを販売等する行為は、本件特許権を侵害するものであり、特許法103条によれば、被告やまと及び被告日本食研は、その侵害について過失があったものと推定されるというべきであり、このことは、同条が過失が推定される場合を文言侵害の場合に限定していないことからすれば、均等論が適用されて侵害が認められる本件のような場合であっても異なることはない。
(3)ア 被告らは、いずれも目皿の製造業者ではないこと、被告日本食研はこんにゃくの製造業者ではないことを過失がないことの事情をして主張する。
イ しかし、原告会社ないし原告ら代理人は被告日本食研に対して平成7年4月3日付け(甲51)、同年7月4日付け(甲158)、同年10月30日付け(甲159、160)で被告こんにゃくの製造、販売行為が本件特許権を侵害するものであることを警告する趣旨の書面を送付しており(これらは、本件訴訟における不法行為による損害賠償請求の対象期間の始期より前である。)、被告やまとは、上記平成7年4月3日付けの書面の送付の事実をそのころ知るに至っている(弁論の全趣旨及び甲51中のFAX送信者を示す記載)。なお、上記平成7年7月4日付け書面においては「裁判の判断に均等論が確立されつつあることをご承知おきください。」と均等論の適用についても言及している。
また、被告やまとは、同年11月10日付け書面で原告会社に対し、被告やまとのこんにゃく製造方法は、本件発明の技術的範囲に属するものではないとの回答をし(甲161の3)、被告日本食研は、同月14日付け書面で、原告ら代理人に対し、被告やまと及び須藤食品が責任をもって対応する旨の回答をしている(甲161の1)。
ウ 被告らが主張するように、被告らがいずれも目皿の製造業者ではないことや、被告日本食研はこんにゃくの製造業者ではないとの事情のみから、直ちに過失の推定が覆るということはできないのみならず、上記のような交渉の経緯に照らせば、イ号方法・装置が均等論の適用によって本件発明の技術的範囲に属するという事情があるとしても、被告らに過失がなかったとは到底いえないというべきである。
したがって、被告らの同主張は理由がない。
8 争点(5)(損害ないし不当利得の額)について (1) 被告こんにゃくを用いた製品の売上額について ア(ア) 「いきいきサラダ 海藻+こんにゃく」、「いきいきサラダ 海藻と蒟蒻」の被告日本食研の売上額について 被告日本食研は同製品を被告やまと及び須藤食品から仕入れて販売しているが、弁論の全趣旨によれば、被告日本食研は、被告やまと及び須藤食品からの各仕入製品を分けることなく売上台帳に記載していることが認められ、したがって、被告やまとからの仕入製品の販売額を集計するには、被告日本食研の同製品(被告やまと及び須藤食品からの仕入分)の販売合計を被告やまと及び須藤食品の各仕入額に応じて按分して算出するのが相当である。
乙115によれば、同算定方法による被告日本食研の売上額は、別紙売上集計表記載1のとおりであることが認められ、その合計額は次のとおりとなる。
a 平成6年5月18日〜平成8年4月21日 合計 4億0434万5666円 b 平成8年4月22日〜同年9月7日 合計 6022万5034円 c 平成8年9月8日〜平成13年9月30日 合計 2億3706万9567円 (イ) 「いきいきサラダ 海藻+こんにゃく」、「いきいきサラダ 海藻と蒟蒻」の被告やまとの被告日本食研に対する売上額は、乙77の1によれば、別紙売上集計表2記載のとおりであることが認められ、その合計額は次のとおりとなる。なお、乙77の1により認められる被告やまとの売上額と、被告日本食研の被告やまとからの仕入額(乙93の4)とは一致しない部分があるが、弁論の全趣旨によれば、それは被告やまとの売上計上時期と被告日本食研が仕入を検収する時期のズレによるものであると認められ、被告やまとの売上額を認定する際には、被告やまとの売上計上時期に従った集計(乙77の1)に基づけば足りるものと解される。
a 平成6年5月18日〜平成8年4月21日 合計 2億2773万7339円 b 平成8年4月22日〜同年9月7日 合計 2047万0637円 (ウ) 「蒟蒻海藻サラダ」の売上額は、乙77の2によれば別紙売上集計表記載3のとおりであることが認められ、その合計額は次のとおりとなる。
a 平成6年5月18日〜平成8年4月21日 合計 165万3095円 b 平成8年4月22日〜同年9月7日 合計 56万7904円 c 平成8年9月8日〜平成13年9月30日 合計 289万7663円 (エ) 「海藻サラダ」の売上額は、乙77の3によれば別紙売上集計表記載4のとおりであることが認められ、その合計額は次のとおりとなる。
a 平成6年5月18日〜平成8年4月21日 合計 3万0920円 b 平成8年4月22日〜同年9月7日 合計 8万7711円 c 平成8年9月8日〜平成13年9月30日 合計 209万2753円 (オ) 「寄せ鍋糸こんにゃく」の売上額は、乙77の4によれば別紙売上集計表記載5のとおりであることが認められ、その合計額は次のとおりとなる。
a 平成6年5月18日〜平成8年4月21日 合計 1679万9051円 b 平成8年4月22日〜同年9月7日 合計 164万4439円 c 平成8年9月8日〜平成13年9月30日 合計 1349万3138円 イ 上記認定の販売額を超えて、被告らが被告こんにゃく、被告サラダ製品を販売した事実を認めるに足りる証拠はない。
なお、原告らは、被告日本食研の販売額を示す証拠として「被告日本食研の『いきいきサラダ』は定価300円で全国に販売されており、年間出荷額が平成11年9月期で1億6200万円にのぼり……」と記載されている平成11年10月23日付け産経新聞(甲122)を提出するが、同記事に示された年間出荷額は、仮に被告日本食研の回答を基にしたものであったとしても、いかなる資料を基にした金額かは明らかではないから、同書証は、被告らが売上台帳ないし仕入台帳を基に集計した上記認定の販売額を覆すに足りるものではない。
(2) 寄与率について ア 被告らは、こんにゃくの原料費の価格が商品価値に占める割合は極めて低いと主張する。
そして、乙77の1〜3によれば、被告やまとにおけるこんにゃくの原料費と、その他の海藻とドレッシング(たれ)及び外袋(こんにゃくと海藻とドレッシングの組合せをセットとして販売するための袋)の費用を比較すると、次のとおりであることが認められる。
(ア) 「いきいきサラダ」 a こんにゃくの原料費:10.58円〜18.58円 b その他の費用(合計:44円〜51.5円) 海藻:23円〜29.5円、たれ:15円〜16円、外袋:6円 (イ) 「蒟蒻海藻サラダ」 a こんにゃくの原料費:10.58円〜18.58円 b その他の費用(合計:50円) 海藻:29.5円、たれ:13.5円、外袋:7円 (ウ) 「海藻サラダ」 a こんにゃくの原料費:10.58円〜18.58円 b その他の費用(合計:65.28円) 海藻:29.5円、たれ:13.5円、外袋:22.28円 なお、弁論の全趣旨によれば、被告やまとは海藻、ドレッシング(たれ)及び外袋を被告日本食研から仕入れていることが認められるから、上記海藻、
たれ及び外袋の金額は、被告日本食研からの仕入値に基づくものである。したがって、海藻、たれ及び外袋の金額には、他社から仕入れた仕入額に被告日本食研の利益が付加されているものと推認できる。
イ しかしながら、甲5〜10によれば、「いきいきサラダ 海藻+こんにゃく」、「いきいきサラダ 海藻と蒟蒻」、「蒟蒻海藻サラダ」は、いずれも海藻、こんにゃく及びドレッシングから成る商品で、その包装体の表面には、同商品名が記載されるとともに、海藻やレタス等の野菜の上にこんにゃくが乗った写真が掲載されており、包装体の裏面には、「食物繊維とミネラルが豊富です。陸のヘルシーと海のヘルシーが、おいしく出会いました。」、「ミネラルが豊富に含まれる海藻と、食物繊維たっぷりの蒟蒻が、おいしく出会いました。」、「こんにゃくと海藻のヘルシー最強コンビ」と記載されていることが認められ、これらの商品においては、海藻とこんにゃくとが重要な構成要素であることが強調されているといえる。
また、甲11・12によれば、「海藻サラダ」は、海藻、こんにゃく及びドレッシングから成る商品で、その包装体は透明であって、包装体の外側から内容物のかなりの部分をこんにゃくが占めることが分かり、また、包装体に貼られたラベルには、同商品名と、その下に「海藻はお水で5分間ひたしてください」「生食用こんにゃく そのまま生で食べられます」との記載があり、海藻やレタス等の野菜の上にこんにゃくが乗った写真が掲載されていることが認められ、この「海藻サラダ」についても、海藻とこんにゃくとが重要な構成要素であることが強調されているといえる。
ウ また、被告サラダ製品のこんにゃくは、ドレッシングをかけてサラダとして食べるものであることから、ドレッシングが良くからむ必要があるというべきところ、本件発明が前記1(1)記載のとおり、多数本の糸状こんにゃくを各糸状こんにゃくが接触する部分でのみ接着させて集束一体化することにより、風味、歯切れ等が改良された筋組織状こんにゃくを得る製造装置に関するものであって、本件発明に係る製造方法・装置は、製造されるこんにゃくの形状をサラダ用に適したものにしているというべきであり、イ号方法・装置も同様の機能を果たしているといえる。
エ そうすると、上記こんにゃくの原料費や、海藻、たれ及び外袋の費用額(ただし、この費用額には被告日本食研の利益が含まれていることを考慮すべきである。)のほか、被告サラダ製品は、海藻とこんにゃくとが重要な構成要素とされていること、イ号方法・装置を使用することによって製造されるこんにゃくの形状がサラダ用に適したものになっているといえることからすると、被告サラダ製品において、被告こんにゃくが占める寄与率は、40%とするのが相当である。
(3) 実施料率について ア 不法行為に基づく損害賠償の算定(特許法102条3項)における実施料率について 乙101によれば、原告会社は、本件発明の実施許諾契約締結の申入れを行った際、実施契約金を50万円、実施料として、実施契約による製品売上金額の3%(ただし、1か年の最低保証実施料を60万円とすること、過去の販売実績分については別に協議すること)との条件を提示していることが認められる。
しかし、特許法102条3項は、平成10年法律第51号による改正前は「特許発明実施に対し通常受けるべき金銭の額に相当する額の金銭」(改正前は102条2項)と定められていたところ、同改正によって「通常」との文言が削除され、「特許発明実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭」とされたものであり、このような改正の経緯に照らせば、同法102条3項に基づく損害の算定に当たっては、必ずしも当該特許権についての実施許諾契約における実施料率に基づかなければならない必然性はなく、そうした実際の実施許諾契約における実施料率や業界相場等も考慮に入れつつ、特許発明の技術内容や重要性、侵害の態様、侵害者が侵害行為によって得た利益、権利者と侵害者との競業関係や特許権者の営業政策等を総合考慮して、相当な実施料率を定めるべきである。
本件発明は、上記1(1)記載のとおり、多数本の糸状こんにゃくをそれぞれが互いに接触する部分でのみ接着させて集束一体化することにより、風味、歯切れ等が改良された筋組織状こんにゃくを得る製造装置につき、本件発明の構成を採ることにより、簡略な装置によってその製造を実現したという特色を有するものであること、上記のとおり、原告会社は本件発明の実施許諾契約締結の申込みをするに際し3%の実施料率を提案しているが、その際には、1か年の最低保証実施料を60万円とすること、過去の販売実績分については別に協議することとの条件を提示していること等を考慮すると、特許発明実施に対し受けるべき金銭の額は売上額(被告サラダ製品については、上記寄与率を乗じた金額)の5%が相当であるというべきである。
イ 不当利得返還請求における実施料率について 不当利得返還請求においては、原告らが被告らに対し実施許諾した場合に得られるであろう実施料相当額が原告らにとって損失であり、被告らにとって利得に当たるというべきであるが、この実施料相当額の算定に当たり用いる実施料率も、上記アにおける実施料率5%と同様に解すべきである。
(4) 以上によれば、不当利得額及び損害賠償額は次のとおりとなる。
ア(ア) 「いきいきサラダ 海藻+こんにゃく」、「いきいきサラダ 海藻と蒟蒻」 a 平成6年5月18日〜平成8年4月21日 (a) 被告日本食研の売上額を基準に算出すると 808万6913円(4億0434万5666円×0.4×0.05) (b) 被告やまとの売上額を基準に算出すると 455万4747円(2億2773万7339円×0.4×0.05) b 平成8年4月22日〜同年9月7日 (a) 被告日本食研の売上額を基準に算出すると 120万4501円(6022万5034円×0.4×0.05) (b) 被告やまとの売上額を基準に算出すると 40万9413円(2047万0637円×0.4×0.05) c 平成8年9月8日〜平成13年9月30日 474万1391円(2億3706万9567円×0.4×0.05) (イ) 「蒟蒻海藻サラダ」 a 平成6年5月18日〜平成8年4月21日 3万3062円(165万3095円×0.4×0.05) b 平成8年4月22日〜同年9月7日 1万1358円(56万7904円×0.4×0.05) c 平成8年9月8日〜平成13年9月30日 5万7953円(289万7663円×0.4×0.05) (ウ) 「海藻サラダ」 a 平成6年5月18日〜平成8年4月21日 618円(3万0920円×0.4×0.05) b 平成8年4月22日〜同年9月7日 1754円(8万7711円×0.4×0.05) c 平成8年9月8日〜平成13年9月30日 4万1855円(209万2753円×0.4×0.05) (エ) 「寄せ鍋糸こんにゃく」 a 平成6年5月18日〜平成8年4月21日 83万9953円(1679万9051円×0.05) b 平成8年4月22日〜同年9月7日 8万2222円(164万4439円×0.05) c 平成8年9月8日〜平成13年9月30日 67万4657円(1349万3138円×0.05) (オ) 弁護士費用 本件事案の内容、訴訟の経過、損害認容額のほか、差止請求が認容されていること等を勘案すると、被告らの負担に帰すべき弁護士費用は、100万円が相当である。
イ そうすると、原告らの金銭請求は、次の限度で理由がある。
(ア) 甲事件(原告会社の請求)について a 被告やまと及び被告日本食研に対する不法行為に基づく損害賠償請求(請求第5項) 被告らに対し、連帯して金574万1391円及びこれに対する平成13年10月1日(不法行為の後の日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金 b 被告日本食研に対する不当利得返還請求(請求第6項) 被告日本食研に対し金120万4501円及びこれに対する平成14年3月20日(平成14年3月15日付け訴状訂正申立書送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金 c 被告やまとに対する不法行為に基づく損害賠償及び不当利得返還請求(請求第7項) (a) 「いきいきサラダ 海藻+こんにゃく」、「いきいきサラダ 海藻と蒟蒻」 40万9413円(不当利得) (b) 「蒟蒻海藻サラダ」 5万7953円(不法行為) 1万1358円(不当利得) (c) 「海藻サラダ」 4万1855円(不法行為) 1754円(不当利得) (d) 「寄せ鍋糸こんにゃく」 67万4657円(不法行為) 8万2222円(不当利得) (e) 損害賠償額合計(77万4465円) 不当利得額合計(50万4747円) 被告やまとに対し金127万9212円(77万4465円+50万4747円)及びこれに対する平成14年3月20日(平成14年3月15日付け訴状訂正申立書送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金 (イ) 乙事件(原告Aの請求)について a 被告日本食研に対する不当利得返還請求(請求第8項) 被告日本食研に対し金808万6913円及びこれに対する平成14年3月20日(平成14年3月15日付け訴状訂正申立書送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金 b 被告やまとに対する不当利得返還請求(請求第9項) (a) 「いきいきサラダ 海藻+こんにゃく」、「いきいきサラダ 海藻と蒟蒻」 455万4747円(不当利得) (b) 「蒟蒻海藻サラダ」 3万3062円(不当利得) (c) 「海藻サラダ」 618円(不当利得) (d) 「寄せ鍋糸こんにゃく」 83万9953円(不当利得) (e) 合計(542万8380円) 被告やまとに対し金542万8380円及びこれに対する平成14年3月20日(平成14年3月15日付け訴状訂正申立書送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金 c 原告Aは、不法行為に基づく損害賠償として、乙事件に係る弁護士費用を請求する。これに対し、被告らは、争点(6)における〔被告らの主張〕の(1)に記載のとおり、同損害賠償請求権は時効により消滅したと主張する。
乙事件が対象とする被告らの販売期間は、平成6年5月18日から平成8年4月21日までであるところ、前記7(3)記載のとおり、原告会社ないし原告ら代理人は被告日本食研に対し、平成7年4月3日付け、同年7月4日付け、同年10月30日付けで被告こんにゃくの製造、販売行為が本件特許権を侵害するものであることを警告する趣旨の書面を送付しているから、原告らは遅くとも平成7年4月3日には被告らによる被告こんにゃく、被告サラダ製品の製造、販売行為及び同行為が本件特許権を侵害するものであることを認識していたものというべきである。
被告らが、本件訴訟において、上記消滅時効援用したことは訴訟上明らかである。
したがって、被告らの平成6年5月18日から平成8年4月21日までのイ号こんにゃく及びロ号こんにゃくの製造販売行為は不法行為に当たるとしても、同不法行為によって発生した損害である弁護士費用相当額についての賠償請求権は、時効により消滅したというべきである。
(ウ) 被告らは、上記(ア)aの請求に関し、被告やまとと被告日本食研との行為は別個のものであるから、被告やまとが負う実施料相当額損害額について、被告やまとの売上額を基準にすべきであると主張する。
しかし、同請求に係る別紙第1製品目録記載の製品は、前記第2の1(5)ア記載のとおり、被告やまとがこれをOEM生産、すなわち、被告日本食研が販売することを前提とし、被告日本食研の製品であることを示す包装表示を付して、消費者に渡る商品として完成させ、それを被告日本食研に販売しているのである。そうすると、同商品の製造販売行為について、被告やまとの製造及び被告日本食研に対する販売行為と、被告日本食研の販売行為とは密接な関連共同性があるから、両者の行為は共同不法行為(民法719条)に当たるというべきである。
したがって、被告日本食研の販売額を基準とした実施料相当額の損害について、被告日本食研と被告やまとは連帯してその損害賠償を支払う責任を負うのであり、この点に関する被告らの主張は理由がない。
(エ) また、被告らは、同一の商品につき、被告やまと及び被告日本食研のそれぞれに対し、侵害者単数の場合と同様に実施料相当額を算出して別個に請求することは、二重に不当利得返還を請求することになると主張する。
確かに、権利者があらかじめ実施許諾をする場合には、実施品たる同一商品が流通する過程で一回だけ実施料を収受できるのが通常であることからすると、無断で特許権を実施されたことにより権利者が被る実施料相当額の損失についても、流通過程を通じて全体として一個のものと考えるべきである。
そうすると、上記ア(ア)a及びbの各(a)、(b)に記載の被告日本食研の売上額を基準にした不当利得額と、被告やまとの売上額を基準にした不当利得額は、被告らの主張するように、原告らが一方の被告から支払を受ければ、その限度で原告らの損失が填補され、他の被告から重ねて請求することができない関係にあるというべきである。
したがって、甲事件に関し、主文第6項の被告日本食研に対して120万4501円の支払を命じる部分と、主文第7項の被告やまとに対して127万9212円の支払を命じる部分のうち40万9413円の部分、及び、乙事件に関し、主文第8項の被告日本食研に対して808万6913円の支払を命じる部分と、主文第9項の被告やまとに対して542万8380円の支払を命じる部分のうち455万4747円の部分は、原告らが一方の被告から支払を受ければ、その限度で原告らの損失が填補され、他の被告から重ねて請求することができない関係に立つ。
9 争点(6)(消滅時効)について 原告会社は、訴状においては、不法行為に基づく損害賠償として、別紙第1製品目録記載の製品に関し、被告らに対し連帯して金3000万円の支払を請求していたが、平成14年3月15日付訴状訂正申立書により、不法行為に基づく損害賠償請求について、請求第5項に記載のとおり、請求の趣旨を拡張したものであるが、同拡張部分について、被告らは争点(6)における〔被告らの主張〕の(2)に記載のとおり消滅時効の主張をする。
しかし、上記のとおり、請求第5項に係る不法行為に基づく損害賠償請求の認容額は当初の訴状における請求額の範囲内であるので、同訴状訂正申立書による拡張部分についての消滅時効に関する被告らの主張は理由がない。
10 よって、主文のとおり判決する。
追加
(別紙)第1製品目録1商品名(1)「いきいきサラダ海藻+こんにゃく」(2)「いきいきサラダ海藻と蒟蒻」2製造所包装紙に「製造所の固有記号がCL」と記載されている。
(別紙)第2製品目録1商品名(1)「蒟蒻海藻サラダ」(2)「海藻サラダ」(3)「寄せ鍋糸こんにゃく」2製造所やまと食品工業株式会社(別紙)こんにゃく目録1こんにゃくの構造(1)糸状こんにゃくが2列横幅方向へ一体化して、
(2)長手方向に多数の凹条と凸条の表面を有し、
(3)凸条部分の厚肉部が3o以下であって、
(4)凹条部分の薄肉部が半透明の縞模様を形成している、
(5)表面筋状薄肉こんにゃくである。
2こんにゃくの図面(別紙)イ号目皿目録ロ号目皿の外観写真構成対批表(当事者主張)売上集計表
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 阿多麻子
裁判官 前田郁勝
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