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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成14ワ5107特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
関連ワード 技術的範囲 /  技術常識 /  発明の詳細な説明 /  優先権 /  共有 /  警告 /  優先日 /  特許発明 /  実施 /  構成要件 /  差止請求(差止) /  侵害 /  損害額 /  請求の範囲 /  変更 /  国内公表 / 
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事件 平成 13年 (ワ) 10456号 特許権侵害差止等請求事件
原告A
原告B
原告ら訴訟代理人弁護士 筒井豊
補佐人弁理士 西教 圭一郎
被告 株式会社亀山
訴訟代理人弁護士 中島敏
補佐人弁理士 一色健輔
同 黒川恵
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2003/01/30
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告は、別紙イ号物件目録、別紙ハ号物件目録及び別紙ニ号物件目録記載の各物件を製造、販売してはならない。
2 被告は、原告Aに対し、金1721万7600円及びこれに対する平成13年10月20日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告は、原告Bに対し、金1721万7600円及びこれに対する平成13年10月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は、「ドリル装置」の特許発明の特許権の共有者である原告らが、被告に対し、被告の製造、販売するドリル装置は同特許発明技術的範囲に属すると主張して、製造、販売の差止めと損害賠償及び特許法184条の10第1項前段の規定に基づく補償金を請求した事案である。
1 争いのない事実等(証拠の掲記がないものは当事者間に争いがない。) (1) 原告らは、次の特許権(以下「本件特許権」といい、その特許発明を「本件発明」という。)を共有している。
ア 発明の名称 ドリル装置 イ 登録番号 第2992344号 ウ 出 願 日 平成5年12月1日(特願平6-512817号) エ 公 表 日 平成8年5月28日(特表平8-504904号) オ 登 録 日 平成11年10月15日 カ 優先権主張番号 925491 優 先 日 1992年12月3日 優先権主張国 フィンランド キ 優先権主張番号 933074 優 先 日 1993年7月5日 優先権主張国 フィンランド ク 特許請求の範囲は、別紙特許公報(以下「本件公報」といい、その明細書を「本件明細書」という。)記載のとおり。
(2) 本件発明の特許請求の範囲の請求項1の構成要件は、次のとおり分説するのが相当である(なお、原告らは、後記(3)の被告物件が本件発明の特許請求の範囲の請求項1の発明のみならず、同請求項3の発明の技術的範囲にも属すると主張しているが、請求項3の構成要件は、請求項1の構成要件を引用するものであり、当事者間においても請求項1に規定する構成の構成要件該当性が争われているので、
請求項1の構成要件の分説についてのみ記載する。)。
@ 穿設されるべき孔内に送込まれることが意図され、好ましくは長手方向(s)に延長可能なドリル(1)を有し、
A そのドリル(1)は、ケーシング部(2)を有し、
B 本質的にはケーシング部(2)の内部には、少なくとも穿孔状態にある間は、ドリルユニット(3)があり、
C そのドリルユニット(3)のドリルヘッド(I)には、少なくとも、中央孔(R)を穿つための第1のドリル手段(4)と、ケーシング部(2)のために中央孔(R)を拡孔するための第2のドリル手段(5)と、穿孔屑を取除くための噴射手段(6)とを有し、
D それによって、少なくとも穿孔状態にある間は、第1のドリル手段(4)の長手軸(s)回りの回転動作(w4)と長手方向の衝突動作(t4)とが、
カウンターパートアセンブリによって、本質的にドリルユニット(3)のドリルヘッド(I)で、第1のドリル手段(4)に動力を伝達するように連結されている第2のドリル手段(5)に伝達され、
E 第2のドリル手段(5)は、該第2のドリル手段(5)の長手軸線sを中心に囲繞するケーシング部(2)の頭部(I’)に、継手アセンブリ(L)によって連結されて回転するように構成され、
F それによって、少なくとも第2のドリル手段(5)は、孔の底部に残されるが、第1のドリル手段(4)は、第1のドリル手段(4)を、穿設された孔から取除くことができるようにするために、第2のドリル手段(5)から取外し可能に構成され、
G 少なくとも、穿孔位置に噴射剤を導くための噴射手段(6)の第1の機構(6a)は、1つまたは好ましくは幾つかの偏心した流路によって、第1のドリル手段(4)の穿孔表面を通るように構成され、
H 穿孔屑を取除くための噴射手段(6)の第2の機構(6b)は、穿孔屑を少なくとも部分的にケーシング部(2)の内部に、ドリル手段(4、5)によって形成される穿孔表面を経て導くように構成されるドリル装置において、
I 穿孔屑を取除くための噴射手段(6)の第2の機構(6b)は、カウンターパートアセンブリのアセンブリ(V1)によって、好ましくはバヨネット原理によって動作するように作られた構成によって、穿孔屑を導くように構成され、
J これは前記ドリル手段(4、5)を一緒に回転するように連結し、穿孔状態では相互に長手方向の両方向に連結する K ことを特徴とするドリル装置。
(3) 被告は、平成8年末ころから別紙ハ号物件目録記載のドリル装置(以下「ハ号物件」という。)を、平成12年夏ころから別紙ニ号物件目録記載のドリル装置(以下「ニ号物件」という。)を、それぞれ製造、販売している(なお、被告は、ハ号物件の製造販売を平成12年夏には終了した旨主張している。)。
また、被告は、平成7年から、別紙イ号物件目録記載のドリル装置(以下「イ号物件」という。)を製造、販売してきた。原告は、被告が現在もイ号物件を製造販売し、又は現在製造販売が中止されているとしても将来これが再開される可能性があると主張しているのに対し、被告は、イ号物件の販売は平成8年ころに終了し、将来これを再開することはあり得ないと主張している(以下、イ号物件、ハ号物件及びニ号物件を合わせて「被告物件」という。)。
(4) ハ号・ニ号物件は構成要件G及びHを除くその余の構成要件を備えている(なお、被告の第一準備書面中に構成要件Cの充足性についても争う旨の記載があるが、弁論の全趣旨によれば、被告は構成要件Cの充足性について明らかに争っているとは認められない。)。
2 争点 (1) 被告はイ号物件を製造販売しているか、及び将来製造販売するおそれがあるか。
(2) ハ号・ニ号物件は、構成要件Gを備えているか。
(3) ハ号・ニ号物件は、構成要件Hを備えているか。
(4) 損害及び補償金の額
争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(イ号物件の製造販売)について 〔原告らの主張〕 (1) 被告は、平成7年にイ号物件の製造、販売を開始してから、現在に至るまでイ号物件を製造販売している。イ号物件の構成は、本件発明との対比に関係する範囲ではハ号・ニ号物件と共通であり、イ号物件は本件発明の技術的範囲に属する。
(2) 被告は、平成8年ころにイ号物件の製造販売を中止し、現在在庫を保有していない、その中止の理由は、イ号物件の噴射孔(噴流孔)が頭部に近い位置に設けられていることから技術的な支障が生じたことによるものであり、今後、イ号物件の製造、販売を再開することはあり得ないと主張する。
しかし、イ号物件とハ号物件との主たる相違が噴射孔の位置(イ号物件の噴射孔がインナービットの先端から19o(乙8によれば16o)、ハ号物件の噴射孔がインナービットの先端から46o)及びインナービットの全長(イ号物件は249o、ハ号物件は224o)の点のみであるので、イ号物件の製造を再開することは容易であるといえる。さらに、注入式長尺先受工法において、穿孔表面あるいは穿孔表面に近い側面に噴射孔を設けたドリルを用いることは何ら技術的な支障はなく、一般的に行われていることであるから、イ号物件の噴射孔が頭部に近い位置に設けられていることに伴って技術的な支障が生じたとの被告の主張は認めがたい。
したがって、被告は、現在に至るまでイ号物件を製造販売しているというべきであるし、将来被告がイ号物件の製造販売を再開する可能性は充分に認められる。
〔被告の主張〕 (1) 被告が平成7年8月から平成8年6月ころまでの間にイ号物件を製造、販売したことは認めるが、平成8年6月ころ以降、イ号物件を製造、販売した事実は否認する。
(2) 被告は、平成7年8月からイ号物件を販売したものであるが、イ号物件のように、土系地山を掘削対象とするドリル装置において噴射孔の位置が頭部に近い(穿孔表面からの距離16o)場合には、穿孔屑によって噴射孔が詰まる支障が生じ、商品として適格でなかったことから、平成8年4月に設計変更し、平成8年6月には販売を中止したものであり、現在、イ号物件の在庫も保有していない。
イ号物件の製造中止は技術的な支障が生じたことを理由とするものであるから、被告が、今後、イ号物件の製造、販売を再開することはあり得ない。
2 争点(2)(構成要件Gの充足性)について 〔原告らの主張〕 (1)ア 本件発明の構成要件Gは、「噴射手段(6)の第1の機構(6a)は、
……偏心した流路によって、第1のドリル手段(4)の穿孔表面を通るように構成され」ると規定するが、これは、「第1の機構(6a)」が「偏心した流路」のみによって構成される場合に限定する趣旨ではなく、偏心した流路と他の構成とが相まって、実質的に第1のドリル手段(4)の穿孔位置(すなわち、穿孔表面)に噴射剤を導くことができる機構であれば、その機構は第1のドリル手段(4)の穿孔表面を通るように構成されていると解することができる。なぜなら、第1の機構(6a)が果たすべき作用は、穿孔位置に噴射剤を導くことにあり、その作用を「偏心した流路」のみによって果たさなければならないとする合理的理由はないからである。
イ 被告は、本件発明が英国特許第959955号公報(乙1。以下「乙1英国特許公報」という。)及び同第1068638号公報(乙2。以下「乙2英国特許公報」という。)に記載の発明を改良したものであること等を理由として、本件発明が、岩盤掘削の際に発生する高熱を、噴射剤を穿孔位置に直接噴射することによって、穿孔位置の岩盤とドリル刃先を冷却し、合わせて穿孔で生じた岩石屑を取除くようにしたものであると主張する。
しかし、本件発明がこれらの英国特許の技術を改良したものであるとしても、これらの英国特許は噴射手段の噴流路、排出路に関連する発明に係るものではないし、本件発明は、ドリル装置にバヨネット原理を適用すると同時に、バヨネット原理を構成するカウンターパートアセンブリv1の凹所アセンブリ13bが形成する溝部を穿孔屑の排出路として機能するように構成し、それにより第1のドリル手段の大きさを最適(第1のドリル手段の有効直径が、ケーシング部の内直径の少なくとも60%、好ましくは75%よりも大きい。)にしたことを特徴とするものであって、噴射手段の噴流路、排出路を特徴とするものではない。
ウ 被告は、本件発明においては、「第1の機構(6a)」が、構成要件Hに規定する「第2の機構(6b)」とは別異に設けられたものであることを要すると主張するが、これらが部分的にせよ重なり合ってはならないと解すべき合理的理由はない。「穿孔位置に噴射剤を導くための第1の機構(6a)が第1のドリル手段(4)の穿孔表面を通るように構成されること」(構成要件G)と、「噴射屑を取除くための第2の機構(6b)が穿孔屑をケーシング部(2)の内部に、ドリル手段(4、5)によって形成される穿孔表面を経て導くように構成されること」(構成要件H)という構成要件が、それぞれ充足されれば足りると解すべきである。
(2)ア ハ号・ニ号物件においては、インナービット4の内部に設けられた長手軸流路6bと、長手軸流路6bから3か所の噴射孔60aに通じる偏心流路(a)6cと、噴射孔60aを通って、インナービット4の外周面に設けられ、かつ、前部がビット刃先10aの間に開口した凹部41を経て、インナービット4の穿孔表面に至るように噴射される。そして、具体的な構造の点でも、ハ号・ニ号物件では、長手軸流路6bから噴射孔60aまでの偏心流路(a)6cが斜め前方向に向かって設けられているため、噴射剤は斜め前方に噴射されることになり、噴射剤の高い圧力及び水量から考えて、噴射された噴射剤は必ずインナービット4及びリングビット5の穿孔表面に達する。しかも、リングビット5が凹部41の外周を囲んで配置されているため、噴射孔60aから噴射された噴射剤は、噴射孔60aの側方に拡散することなく、インナービット4とリングビット5の穿孔表面に効率的に導かれる。
以上によれば、ハ号・ニ号物件では、穿孔位置に噴射剤を導くための噴射手段6の第1の機構(噴射路6a)は、長手軸流路6b、偏心流路(a)6c及び噴射孔60aと、凹部41及びその外周を囲むリングビット5とが相まって、インナービット4の穿孔位置に噴射剤を導くことができるように構成されており、結局、
ハ号・ニ号物件の噴射手段6の第1の機構(噴射路6a)は、インナービット4の穿孔表面を通るように構成されていると解することができる。
イ なお、ニ号物件は、偏心流路(a)のほかに排出促進孔に通じる偏心流路(b)6dを備えているが、偏心流路(b)6dの内径は偏心流路(a)6cの内径よりも小さいことから、上記のとおり、ニ号物件の噴射手段6の第1の機構(噴射路6a)が、インナービット4の穿孔位置に噴射剤を導くことができるように構成されていることに変わりはない。
ウ そして、ハ号・ニ号物件は、注入式長尺先受工法(アンブレラ工法)だけでなく、水抜き工法にも用いられ、未固結土から中硬岩までの広範囲の地山を掘削対象とするドリル装置であるから、中硬岩のような岩盤系地山や大礫その他の礫混じりの土系地山を削孔するときには、インナービット4とリングビット5の穿孔表面で発生する穿孔屑を除去し、また、ビット刃先を冷却するために、噴射剤を穿孔表面に導く必要があり、このためにハ号・ニ号物件の噴射手段の第1の機構(噴射路6a)が上記の構成を備える必要があることは、当業者にとって明らかである。
エ したがって、ハ号・ニ号物件は、本件発明の構成要件Gを充足している。
〔被告の主張〕 (1)ア 本件発明の構成要件Gでは、「噴射手段(6)の第1の機構(6a)は」「穿孔位置に噴射剤を導くため」のものであって、該第1の機構(6a)は、
「1つまたは好ましくは幾つかの偏心した流路によって、第1のドリル手段(4)の穿孔表面を通るように構成され」ることが規定されている。
すなわち、本件発明では、噴射手段(6)の第1の機構(6a)の流路自体が、第1のドリル手段(4)の穿孔表面を通るように構成されることが必須要件とされており、こうした構成を採った結果として、噴射剤が穿孔表面に噴射されるものである。
また、「第1の機構(6a)」は、構成要件Hに規定する「噴射手段(6)の第2の機構(6b)」とは別異に設けられたものであることを要する。
イ 本件発明は、上記構成を採用することによって、岩盤掘削の際にドリルの金属製刃先と岩盤の高速度の摩擦により不可避的に発生する高熱を、噴射剤(例えば冷却用の水)を穿孔位置に直接噴射することによって、穿孔位置の岩盤とドリル刃先を冷却し、合わせて穿孔で生じた岩石屑を取除くようにした発明である。このことは、本件発明が、岩盤を穿孔するドリル装置に関する乙1英国特許公報及び乙2英国特許公報記載の発明を改良したものであること、岩盤の掘削においては金属製ドリル刃先と岩盤との高速の摩擦によって高熱が発生するので、安全性とドリル刃先の摩擦防止のために穿孔位置に冷却用噴射剤を直接噴射する必要があるという技術常識からも明らかである。
また、本件発明に係るドリル装置を、「土」系地山に対して使用してその穿孔表面に噴射剤を噴射させた場合には、「土」系地山自体を流動化させ、容易にこれを崩壊させて先受工法としての用をなさない虞れがあり、また粘土層を含む軟岩を穿孔した場合には、穿孔内でロッドがつかえて詰まってしまうことになりかねないから、本件発明のドリル装置はこうした地盤を掘削対象とするものではない。
ウ 原告らは、本件発明の特徴が、ドリル装置にバヨネット原理を適用すると同時に、バヨネット原理を構成するカウンターパートアセンブリv1の凹所アセンブリ13bが形成する溝部を穿孔屑の排出路として機能するように構成し、それにより第1のドリル手段の大きさを最適にしたことであると主張するが、こうした事項は、乙1英国特許公報、乙2英国特許公報及び米国特許第3382934号公報(乙7。以下「乙7米国特許公報」という。)に記載され、本件発明の特許出願時に公知であったものであるから、本件発明の特徴に当たるとすることはできない。
(2)ア ハ号・ニ号物件では、噴射手段の噴射路6aはインナービット4の穿孔表面となるビット刃先10aの先端から46o後方に離れた噴射孔60aから、凹部41(インナービット4の肩部から噴射孔60aまでの部分)に収容中の穿孔屑の後部に対して噴射されるものであり、噴射路6aが穿孔表面を通るように構成されていない。
さらに、ハ号・ニ号物件では、噴射孔60aに通じる偏心流路(a)6cは、前方45度の角度に設けられている。しかし、本件発明のように穿孔位置に噴射剤を噴射させ、これによって穿孔位置に生じた穿孔屑を取り除くドリル装置であるならば、穿孔表面に向けて噴射孔を設ければよいのであるから、ハ号・ニ号物件はそもそも穿孔表面に向けて噴射剤を噴射することを予定していないというべきである。
イ しかも、ハ号・ニ号物件は、その穿孔時においては、噴射孔60aから、凹部41に収容された穿孔屑の後部に対して噴射剤を噴射し、穿孔屑を流動化してこれを排出路60を経て後端部へ排出するものであり、噴射剤は、当該穿孔屑に妨げられて穿孔表面にまで噴射されることはない。
ウ また、ハ号・ニ号物件は、岩盤の掘削を目的とするドリル装置ではなく、未固結土の地山を中心として、中硬岩までの比較的硬くない地山を対象とするドリル装置であって、その噴射孔60aを穿孔表面から約46o後方に設けた理由は、未固結土等の地山においてはドリル装置が対象地盤に埋まり込んだ状態で作動することが多いため、噴射孔を穿孔表面を通るように構成することが不可能である上、穿孔表面を冷却する必要がないためである。
このように、ハ号・ニ号物件においては、本件発明に係るドリル装置と対象地盤を異にするため、噴射孔60aを設ける位置が、構成要件Gの構成とは明確に異なるものとなっている。
エ したがって、ハ号・ニ号物件は、本件発明の構成要件Gを充足しない。
3 争点(3)(構成要件Hの充足性)について 〔原告らの主張〕 (1) 本件発明の構成要件Hは、「噴射手段(6)の第2の機構(6b)」が、
「穿孔屑を少なくとも部分的にケーシング部(2)の内部に、ドリル手段(4、
5)によって形成される穿孔表面を経て導くように構成される」と規定するが、これは、噴射手段(6)の第1の機構(6a)が第1のドリル手段(4)の穿孔表面を通るように構成されている(構成要件G)ことから、第1の機構(6a)により穿孔表面に導かれた噴射剤が、第2の機構(6b)により、穿孔屑を少なくとも部分的にケーシング部(2)の内部に穿孔表面を経て導くように構成されることを表している。
そして、このような第2の機構(6b)の作用を実質的に可能とするのは、継続的に噴射される高圧の噴射剤が、第1の機構(6a)によって絶え間なく第1のドリル手段(4)の穿孔表面に導かれるとともに、噴射剤の高い圧力と水量とにより、穿孔表面に発生した穿孔屑が噴射剤と一緒に圧力の低いケーシング部(2)の内部に導かれ、ドリル装置の後方に排出されるという現象である。
(2) ハ号・ニ号物件においては、噴射剤が第1の機構(噴射路6a)によってインナービット4の穿孔表面に導かれるとともに、継続的に噴射される噴射剤の高い圧力と水量とにより、穿孔表面にある穿孔屑が噴射剤と一緒に圧力の低いケーシング部2の内部に導かれ、凹部41及び排出路60を通って排出されるように構成されている。
以上によれば、ハ号・ニ号物件は、本件発明の構成要件Hを充足する。
〔被告の主張〕 (1) 本件発明の構成要件Hでは、「穿孔屑を取除くための噴射手段(6)の第2の機構(6b)は、穿孔屑を少なくとも部分的にケーシング部(2)の内部に、ドリル手段(4、5)によって形成される穿孔表面を経て導くように構成される」ことが規定されている。すなわち、本件発明において、穿孔屑は、前記穿孔表面を通るように構成された噴射手段(6)の第1の機構(6a)の流路から噴射された噴射剤によって穿孔表面を経て第2の機構(6b)へ導かれると規定されており、これが本件発明の必須の構成要件である。
(2) これに対し、ハ号・ニ号物件の構成Hにおいては、穿孔表面に、リングビット5内部の約60%の面積をもって凹部41が広く開口しており、凹部41はドリル装置1の衝突動作t4と回転動作w4の作用により、ほとんどすべての穿孔屑をインナービット4の肩部8から噴射孔60a近辺までの凹部41に強制的に取り込むようになっており、噴射剤は凹部41に収容中の穿孔屑の後部に対して噴射され、これにより穿孔屑を流動化して噴射孔60a周辺からケーシング部の内側にある排出路60へ排出するように構成されている。
このように、ハ号・ニ号物件で噴射孔60aはインナービットの刃先から46o後方に離れた位置にあって、該位置で噴射されるのであり、穿孔表面を通る流路を有さない。また、凹部41には穿孔屑が取り込まれているから、噴射剤が穿孔表面に噴射されず、したがって穿孔屑が噴射剤によって穿孔表面の流路を経て第2の機構へ導かれることもない。
すなわち、ハ号・ニ号物件は、本件発明の構成要件Hの「穿孔屑を……ドリル手段(4、5)によって形成される穿孔表面を経て導くように構成される」との構成を備えていない。
4 争点(4)(損害及び補償金の額)について 〔原告らの主張〕 (1) 損害賠償請求 ア 被告物件は、インナービット(第1のドリル手段)、アウターリングビット(第2のドリル手段)及びケーシングシュー(ケーシング部)から成り、これら3点が必ず1個のセットとして販売されるが、他方、インナービット(第1のドリル手段)は約25回程度繰り返し使用することが可能であるのに対し、アウターリングビット(第2のドリル手段)及びケーシングシューは、1回の穿孔作業により回収不能となる場合が多い消耗品である。
イ 被告物件の販売価格は、次のとおりである。
(ア) インナービット 1個当たり24万円 (イ) アウターリングビット 1個当たり2万3000円 (ウ) ケーシングシュー 1個当たり9600円 ウ 被告は、本件特許が登録された平成11年10月15日から平成13年9月15日までの23か月間にアウターリングビットとケーシングシューをそれぞれ1万8400個販売した。
前述のとおり、インナービットは約25回程度繰り返して使用でき、アウターリングビット及びケーシングシューが概ね25セット販売されるごとに、1個のインナービットが販売されると推測することができるから、被告は、上記アウターリングビット及びケーシングシューとセットになるインナービットを736個(1万8400個÷25)販売した。
これらの販売総額は、次のとおりである。
(ア) インナービット 1億7664万円(24万円×736個) (イ) アウターリングビット 4億2320万円(2万3000円×1万8400個) (ウ) ケーシングシュー 1億7664万円(9600円×1万8400個) (エ) 販売総額 7億7648万円 エ 原告らは、被告が被告物件を製造、販売したことにより、本件発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の損害を受けたが、その損害額は上記販売総額の4%を下回ることはない。
したがって、原告らが受けた損害の総額は、3105万9200円となるところ、原告らの本件特許権の共有持分が均分であることから、原告らは、被告に対し、損害賠償として、それぞれその2分の1である1552万9600円を請求する。
(2) 補償金請求 ア 原告らは、特許法184条の10第1項前段の規定に基づき、本件国際特許出願について国内公表がなされた後である平成11年7月23日に、内容証明郵便により被告に対し警告書を送付するとともに、本件特許出願に係る公表特許公報及び手続補正書(平成11年1月27日特許庁提出分)を被告に送付し、上記警告書並びに公表特許公報及び手続補正書は、いずれも平成11年7月26日までに被告に到達した。
イ 前記警告書の送付により、原告らは、被告に対し、特許法184条の10第1項前段の規定に基づき、本件発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の補償金の支払請求権を有するところ、本件発明の実施に対し受けるべき金銭の額は、被告物件の販売価格の4%を下回ることはない。
ウ 被告は、警告書を受領した平成11年7月26日の翌日から本件特許権の登録日の前日までの2か月19日間に、アウターリングビットとケーシングシューをそれぞれ2000個販売し、それらとセットになるインナービットを約80個(2000個÷25個)販売した。
これらの販売総額は、次のとおりである。
(ア) インナービット 1920万円(24万円×80個) (イ) アウターリングビット 4600万円(2万3000円×2000個) (ウ) ケーシングシュー 1920万円(9600円×2000個) (エ) 販売総額 8440万円 エ したがって、原告らは、被告に対し、補償金として上記販売総額の4%である337万6000円の支払を請求する権利があるが、本件特許権の共有持分が均分であることから、原告らは、被告に対し、補償金として、それぞれその2分の1である168万8000円を請求する。
〔被告の主張〕 原告らの主張(2)ア記載の警告の事実は認めるが、その余の事実は否認する。
争点に対する判断
1 争点(1)(イ号物件の製造販売)について (1) 被告が平成7年8月から平成8年6月ころまでの間にイ号物件を製造、販売したことは当事者間に争いがない。しかし、被告が平成8年6月ころ以降、イ号物件を製造、販売した事実を認めるに足りる証拠はない。
(2) かえって、被告代表者作成に係る陳述書(乙8)によれば、被告は、平成7年8月ころから、イ号物件(インナービットの全長は249o)を製造、販売していたところ、その噴射孔がビット刃先の先端から16o(別紙イ号物件目録によれば19o)という近い位置にあるため、噴射屑が噴射孔に詰まり、噴射液(水)の噴射が十分にできないという支障が生じたため、平成8年7月に、噴射孔をビット刃先の先端から約46o後方に設置し、インナービットの全長を約224oにしたハ号物件に設計変更し、それ以後、現在までイ号物件を製造、販売していないこと、また、被告は現在イ号物件の在庫を保有していないことが認められる。
(3) 本訴において、原告らは、被告が警告書を受領した日の翌日である平成11年7月27日以降の被告物件の製造、販売行為に関して損害賠償ないし補償金を請求するものであるところ、被告が同期間内においてイ号物件を製造、販売した事実を認めるに足りる証拠はないから、原告らのイ号物件に係る損害賠償及び補償金の請求はいずれも理由がない。
(4) また、被告がイ号物件からハ号物件に設計変更したのは、上記のとおり噴射屑が噴射孔に詰まり、噴射液(水)の噴射が十分にできないという支障が生じたことによるものである。
この点について、アトラスコプコ株式会社作成の「アトラスコプコ製ロックツールス」と題するカタログ(甲11)によれば、注入式長尺先受工法に用いるドリルにおいて穿孔表面に噴射孔を設けたものが記載されていることが認められるが、一方、「Mining & Minerals Engineering」の1965年2月号に掲載された「打撃ドリルビットの設計(THE DESIGN OF PERCUSSIVE DRILLING BITS)」と題する記事(甲10)には、「フラッシングについて(ドリフター対DTH)」との見出しの下に、穴(噴射孔)の位置について、「穴から排出されるジェット水流により岩礫を取り除くフラッシュ穴の論理的な配置はビットの正面部の配置である。硬岩穿孔の際には、これが完全な配置であるといえるが、粘土層を含む軟岩を穿孔する際には、穿孔内でロッドがつかえて、詰まってしまうことになりかねない。」(訳文)と記載されていることが認められるから、こうした文献の記載によれば、
イ号物件のようにビット刃先の先端から16oないし19oの位置に噴射孔が設けられたドリルは、硬岩盤を対象とした場合には支障なく使用できるとしても、軟岩を対象として用いると噴射屑が噴射孔に詰まるという支障が生じる可能性があることとなる。
したがって、イ号物件は、対象岩盤によっては噴射屑が噴射孔に詰まるという支障が生じる可能性があるものであり、被告がこうしたイ号物件の抱える問題点を理由として、平成8年7月に、噴射孔をビット刃先の先端から約46o後方に設置したハ号物件に設計変更してこれを製造、販売するようになったというのも首肯できるところである。そして、上記設計変更によりイ号物件の製造販売を被告が中止してから、既に6年以上経過しているのであるから、イ号物件を例えば硬岩盤に用いたならばこうした支障は生じないとの事情を考慮しても、被告が今後イ号物件を製造、販売するおそれがあることを認めることはできないというべきである。
よって、原告らのイ号物件に係る製造、販売の差止請求については、その余の争点について判断するまでもなく理由がない。
2 争点(2)(構成要件Gの充足性)について (1)ア 本件発明の構成要件Gは、「穿孔位置に噴射剤を導くための噴射手段(6)の第1の機構(6a)は、……偏心した流路によって、……穿孔表面を通るように構成され」ると規定しているから、構成要件Gを充足するというためには、
「第1の機構(6a)」自体が穿孔表面を通るように構成されていることが必要となると解するのが、文言上自然な解釈であるといえる。
また、本件明細書の発明の詳細な説明においても、実施例の説明として「穿孔位置に噴射剤を導くための噴射手段6の第1の機構6aは、流路によって第1のドリル手段4の穿孔表面を貫いて配置されている。」(本件公報10欄31〜34行)と記載されており、実施例を示す第1図、第3図には、第1の機構6aの偏心した流路が、円筒形の第1のドリル手段の上部表面に開口している状態が示されており、こうした実施例の記載は、「第1の機構(6a)」自体が穿孔表面を通るように構成されているとの上記解釈と符合する記載となっている。
さらに、本件明細書において従来技術として掲げられている乙1英国特許公報及び乙2英国特許公報に記載されているドリル装置は、いずれも第1のドリル手段に相当するドリルビットの穿孔表面に噴射剤を導くための流路が開口しているものである。
イ 原告らは、構成要件Gにおいては、「第1の機構(6a)」が「偏心した流路」のみによって構成される場合に限定されるものではなく、偏心した流路と他の構成とが相まって実質的に第1のドリル手段(4)の穿孔位置(すなわち、穿孔表面)に噴射剤を導くことができる機構であれば、その機構は第1のドリル手段(4)の穿孔表面を通るように構成されていると解することができると主張する。
しかし、上記のとおり、構成要件Gにおいては、「噴射剤」が穿孔表面を通るように構成されていることが規定されているものではなく、「第1の機構(6a)」自体が穿孔表面を通るように構成されていることが規定されているのであって、その他、本件明細書の記載上、本件発明が「第1の機構(6a)」自体ではなく「噴射剤」が穿孔表面を通るように構成されていれば足りるとの解釈を裏付けるような記載は見当たらないから、原告らの上記主張は採用できない。
(2)ア ハ号・ニ号物件においては、長手軸流路6bから偏心流路(a)6cを通り、噴射孔60aに抜けるまでの間が、第1の機構(6a)に該当するものと解されるが、第1の機構(6a)は、穿孔表面ではなく、インナービット4の凹部41内に存在しているから、「第1の機構(6a)が穿孔表面を通るように構成されている」との構成を備えているとはいえない。
イ 原告らは、ハ号・ニ号物件において、穿孔位置に噴射剤を導くための噴射手段6の第1の機構(噴射路6a)は、長手軸流路6b、偏心流路(a)6c及び噴射孔60aと、凹部41及びその外周を囲むリングビット5とが相まって、インナービット4の穿孔位置に噴射剤を導くことができるように構成されており、結局、
ハ号・ニ号物件の噴射手段6の第1の機構(噴射路6a)は、インナービット4の穿孔表面を通るように構成されていると解することができると主張する。
しかし、構成要件Gでは「穿孔位置に噴射剤を導くための噴射手段(6)の第1の機構(6a)」が「穿孔表面を通るように構成され」ることを規定し、構成要件Hでは「穿孔屑を取除くための噴射手段(6)の第2の機構(6b)」が、「穿孔屑を少なくとも部分的にケーシング部(2)の内部に、ドリル手段(4、5)によって形成される穿孔表面を経て導くように構成される」ことを規定していることからすると、第1の機構(6a)と第2の機構(6b)とは別異の流路を意味するものと解される。
本件明細書の発明の詳細な説明に記載されている実施例においても、
「ここに開示された実施例において、穿孔位置に噴射剤を導くための噴射手段6の第1の機構6aは、流路によって第1のドリル手段4の穿孔表面を貫いて配置されている。この場合、噴射剤は、第1フレーム部4aの第2の端部IIを通って中心部に導かれ、それによって、噴射剤は、穿孔表面を偏心的に通っている3つの流路を介して、有益に第1のフレーム部4aのドリルヘッドに導かれる。」(本件公報10欄31〜38行)、「噴射手段の第2の機構として機能している流動溝6b……は、図1に示されるように、センタードリルの内部の流路6aと、センタードリルの穿孔表面上に置かれている運搬路6b’によって、センタードリル内の流路6aに結合している。」(11欄25〜29行)と記載されている。また、実施例を示す第1図及び第3図には、第1のドリル手段の中心部に長手軸方向に形成された溝から、偏心的に通っている3つの流路を介して第1のドリル手段の穿孔表面に開口するまでの流路(第1の機構(6a))と、同開口部から第1のドリル手段の穿孔表面上に凹状に形成されている運搬路を経て、第1のドリル手段の円筒状表面に長手方向に形成されている凹部を通り、ケーシング部2の内部に通じる流路(第2の機構(6b)))が設けられている状況が示されている。このような発明の詳細な説明における記載は、前記のとおり、第1の機構(6a)と第2の機構(6b)とは別異の流路を意味するとの解釈に符合する内容であり、その他、本件明細書において、第1の機構(6a)と第2の機構(6b)が別異の流路ではなく共有部分が存する場合を含むような記載は見当たらない。
原告らが主張する第1の機構(6a)は、長手軸流路6b、偏心流路(a)6c及び噴射孔60aに加え、凹部41及びその外周を囲むリングビット5により構成される流路を含むものであるが、凹部41及びその外周を囲むリングビット5により構成される流路部分は、穿孔表面から穿孔屑をケーシング部内部に導くための噴射手段の第2の機構(6b)に係る流路に該当する部分であるから、原告らの上記主張は、凹部41及びその外周を囲むリングビット5により構成される流路を第1の機構(6a)及び第2の機構(6b)が共有することを前提とするものであるところ、上記のとおり、本件発明においては、第1の機構(6a)と第2の機構(6b)が別異の流路ではなく共有部分が存する場合を含まないと解すべきであるから、原告らの第1の機構(6a)に関する上記主張を前提として、ハ号・ニ号物件が構成要件Gの構成を備えているとすることはできない。
(3) 以上によれば、ハ号・ニ号物件は、本件発明の構成要件Gを充足しているとはいえないから、特許請求の範囲の請求項1の発明及び請求項1を引用する請求項3の発明の技術的範囲に属するとはいえない。
3 よって、その余の争点について判断するまでもなく、原告らの請求はいずれも理由がないから、主文のとおり判決する。
追加
(別紙)イ号物件目録1物件の種類ドリル装置2図面の簡単な説明第1図ドリル装置の断面図第2図インナービットの側面図第3図先端側から見たドリル装置の平面図第4図(a)カウンターパートアッセンブリを解除した状態を示す先端側から見た平面図第4図(b)カウンターパートアッセンブリを解除した状態を示す側面から見た断面図第5図(a)カウンターパートアッセンブリを連結した状態を示す先端側から見た平面図第5図(b)カウンターパートアッセンブリを連結した状態を示す側面から見た断面図3図面の符号1ドリル装置2ケーシング部4インナービット5アウターリングビット6a噴流路6b排出路10a、10bビット刃先13a突起13b係合凹部41凹溝42フランジ60a噴流孔I’頭部R中央孔s長手方向、長手軸(線)t4衝突動作v1カウンターパートアッセンブリ(突起凹所アッセンブリ13a、13b)w4回転動作4構成未固結土から中硬岩までの広範囲の地山を掘削対象地盤とする注入式長尺先受工法に使用されて、穿設されるべき孔内に送り込まれるドリル装置1であり、インナービット4の長手軸方向sに延長可能となっており、
ドリル装置1は、ケーシング部2を有し、
ケーシング部2の内部には、穿孔状態にある間は、インナービット4が設けられ、
ケーシング部2の内部には、中央孔Rを穿つためのインナービット4のビット刃先10aと、穿孔屑を取り除くための噴射手段6とを有し、ケーシング部2には中央孔Rを拡孔するためのリングビット5のビット刃先10bが結合しており、
穿孔状態にある間は、インナービット4の長手軸s回りの回転動作w4と長手方向の衝突動作t4とが、カウンターパートアッセンブリv1(突起凹所アッセンブリ13a、13b)によって、インナービット4からリングビット5に伝達され、
リングビット5は、その長手軸線sを中心に囲繞するケーシング部2の頭部T’に連結されて回転するように構成され、
リングビット5は、孔の底部に残されるが、インナービット4は、インナービット4を穿設された孔から取り除くことができるようにするために、リングビット5から取り外し可能に構成され、
穿孔位置に噴射剤を導くための噴射手段の噴流路6aは、インナービット4の穿孔表面となるビット刃先10aの先端から19o後方に離れた噴流孔60を通り、かつ、当該噴流孔60からインナービット4の刃先10aまでのインナービット4の凹溝41を通ることによって、インナービット4の穿孔表面を通るように構成され、
穿孔屑を取り除くための噴射手段6の排出路6bは、穿孔屑を少なくとも部分的にケーシング部2の内部に、インナービット4の穿孔表面から、リングビット5の内側のインナービット4の凹溝41を経て導くように構成され、
穿孔屑を取り除くための噴射手段6の排出路6bは、インナービット4の凹溝41によって、穿孔屑を導くように構成され、
バヨネット原理によって動作するように作られたカウンターパートアッセンブリv1は、前記ドリル手段4、5を一緒に回転するように連結し、穿孔状態では相互に長手方向に連結する。
第1図第2図第3図第4、5図(別紙)ハ号物件目録1物件の種類ドリル装置2図面の簡単な説明第1図ドリル装置の断面図第2図インナービットの側面図第3図先端側から見たドリル装置の平面図第4図(a)カウンターパートアッセンブリを解除した状態を示す先端側から見た平面図第4図(b)カウンターパートアッセンブリを解除した状態を示す側面から見た断面図第5図(a)カウンターパートアッセンブリを連結した状態を示す先端側から見た平面図第5図(b)カウンターパートアッセンブリを連結した状態を示す側面から見た断面図第6図リングビット内部における凹部41の開口部の面積比率を示す図3図面の符号1ドリル装置2ケーシング部4インナービット5リングビット8肩部10aビット刃先(インナービットに設けられたもの)10bビット刃先(リングビットに設けられたもの)13a突起13b係合凹部41凹部(インナービット4の肩部8から噴射孔60aまでの部分)42フランジ6噴射手段6a噴射路6b長手軸流路6c偏心流路(a)60排出路(噴射孔60aからインナービットの後端方向の部分)60a噴射孔I’頭部R中央孔s長手方向、長手軸(線)t4衝突動作v1カウンターパートアッセンブリ(突起凹所アッセンブリ13a、13b)w4回転動作4ハ号物件の構成ハ号物件は、以下の構成を有するドリル装置である。
@地山を掘削対象地盤とする注入式長尺先受工法(アンブレラ工法)及び水抜き工法に使用されて、穿設されるべき孔内に送り込まれるドリル装置1であり、インナービット4の長手軸方向sに延長可能となっている。
Aドリル装置1は、ケーシング部2を有している。
Bケーシング部2の内部には、穿孔状態にある間は、インナービット4が設けられている。
Cケーシング部2の内部には、中央孔Rを穿つためのインナービット4の山形形状をなすビット刃先10aが120°の等間隔で矢尻状に配置され、ケーシング部2には中央孔Rを拡孔するためのリングビット5の山形形状をなすビット刃先10bが60°の等間隔で矢尻状に結合している。
D穿孔状態にある間は、インナービット4の長手軸s回りの回転動作w4と長手方向の衝突動作t4とが、カウンターパートアッセンブリv1(突起凹所アッセンブリ13a、13b)によって、インナービット4からリングビット5に伝達される。
Eリングビット5は、その長手軸線sを中心に囲繞するケーシング部2の頭部T’に連結されて回転するように構成されている。
Fリングビット5は、孔の底部に残されるが、インナービット4は、インナービット4を穿設された孔から取り除くことができるようにするために、リングビット5から取り外し可能に構成されている。
Gインナービット4の外周面には、120°の等間隔で設けられた凹部41が存在する。該凹部41は、前部がビット刃先10aの間に開口し、後部には噴射孔60aが設けられるとともに、インナービット4の後端方向に向かう排出路60に連通する。
H噴射孔60aは、ビット刃先10aの先端から46o後方に位置する。
Iインナービット4の内部には、その後端から長手軸sに沿う長手軸流路6bと、長手軸流路6bから3か所の噴射孔60aに通じる偏心流路(a)6cが設けられている。
J凹部41はリングビット5内部の約60%の面積をもって広く開口する。
Kバヨネット原理によって動作するように作られたカウンターパートアッセンブリv1(突起凹所アッセンブリ13a、13b)は、前記ドリル手段4、5を一緒に回転するように連結し、穿孔状態では相互に長手方向に連結する。
第1図第2図第3図第4、5図第6図(別紙)ニ号物件目録1物件の種類ドリル装置2図面の簡単な説明第1図ドリル装置の断面図第2図インナービットの側面図第3図先端側から見たドリル装置の平面図第4図(a)カウンターパートアッセンブリを解除した状態を示す先端側から見た平面図第4図(b)カウンターパートアッセンブリを解除した状態を示す側面から見た断面図第5図(a)カウンターパートアッセンブリを連結した状態を示す先端側から見た平面図第5図(b)カウンターパートアッセンブリを連結した状態を示す側面から見た断面図第6図リングビット内部における凹部41の開口部の面積比率を示す図3図面の符号1ドリル装置2ケーシング部4インナービット5リングビット8肩部10aビット刃先10bビット刃先13a突起13b係合凹部41凹部(インナービット4の肩部8から噴射孔60aまでの部分)42フランジ6噴射手段6a噴射路6b長手軸流路6c偏心流路(a)6d偏心流路(b)60排出路(噴射孔60aからインナービットの後端方向の部分)60a噴射孔60b排出促進孔I’頭部R中央孔s長手方向、長手軸(線)t4衝突動作v1カウンターパートアッセンブリ(突起凹所アッセンブリ13a、13b)w4回転動作x大径部4ニ号物件の構成ニ号物件は、以下の構成を有するドリル装置である。
@地山を掘削対象地盤とする注入式長尺先受工法(アンブレラ工法)及び水抜き工法に使用されて、穿設されるべき孔内に送り込まれるドリル装置1であり、インナービット4の長手軸方向sに延長可能となっている。
Aドリル装置1は、ケーシング部2を有している。
Bケーシング部2の内部には、穿孔状態にある間は、インナービット4が設けられている。
Cケーシング部2の内部には、中央孔Rを穿つためのインナービット4の山形形状をなすビット刃先10aが120°の等間隔で矢尻状に配置され、ケーシング部2には中央孔Rを拡孔するためのリングビット5の山形形状をなすビット刃先10bが60°の等間隔で矢尻状に結合している。
D穿孔状態にある間は、インナービット4の長手軸s回りの回転動作w4と長手方向の衝突動作t4とが、カウンターパートアッセンブリv1(突起凹所アッセンブリ13a、13b)によって、インナービット4からリングビット5に伝達される。
Eリングビット5は、その長手軸線sを中心に囲繞するケーシング部2の頭部T’に連結されて回転するように構成されている。
Fリングビット5は、孔の底部に残されるが、インナービット4は、インナービット4を穿設された孔から取り除くことができるようにするために、リングビット5から取り外し可能に構成されている。
Gインナービット4の外周面には、120°の等間隔で設けられた凹部41が存在する。該凹部41は、前部がビット刃先10aの間に開口し、後部には噴射孔60aが設けられるとともに、インナービット4の後端方向に向かう排出路60に連通する。
H噴射孔60aは、ビット刃先10aの先端から46o後方に位置する。
Iインナービット4の内部には、その後端から長手軸sに沿う長手軸流路6bと、長手軸流路6bから3か所の噴射孔60aに通じる偏心流路(a)6cが設けられている。
また、インナービット4の内部には、3か所の排出路60に向かって、長手軸流路6bから延びる偏心流路(b)6dが設けられ、偏心流路(b)6dは、排出路60の底部に設けられた排出促進孔60bに通じている。
J凹部41はリングビット5内部の約60%の面積をもって広く開口する。
Kバヨネット原理によって動作するように作られたカウンターパートアッセンブリv1(突起凹所アッセンブリ13a、13b)は、前記ドリル手段4、5を一緒に回転するように連結し、穿孔状態では相互に長手方向に連結する。
第1図第2図第3図第4、5図第6図
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 阿多麻子
裁判官 前田郁勝