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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成15ネ3034特許権侵害差止請求控訴事件 判例 特許
平成15ネ1112各特許権侵害差止請求控訴事件 判例 特許
平成15ネ514特許権侵害差止請求控訴事件 判例 特許
平成12ネ2645各損害賠償請求控訴事件 判例 特許
平成14ワ3043特許権侵害差止請求事件 判例 特許
関連ワード 製造方法 /  新規性 /  進歩性(29条2項) /  公知技術 /  技術的範囲 /  技術常識 /  先行技術 /  発明の詳細な説明 /  化学構造 /  優先権 /  薬事法 /  後発医薬品 /  援用権(援用) /  製造承認 /  対象製品 /  出願経過 /  参酌 /  均等 /  均等侵害 /  置き換え /  同一の作用効果 /  容易に想到(容易想到性) /  意識的除外(意識的に除外) /  特許発明 /  実施 /  構成要件 /  構成要件充足性 /  差止請求(差止) /  侵害 /  同意 /  実施権 /  拒絶理由通知 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 15年 (ネ) 2115号 特許権侵害差止等請求控訴事件

控訴人(1審原告) リヒター ゲデオン ベジェセティ ジャール アールテー
同代表者 A
同訴訟代理人弁護士 品川澄雄
同 吉利靖雄
同補佐人弁理士 岩田弘
同 中嶋正二
被控訴人(1審被告) 大原薬品工業株式会社
同代表者代表取締役 B
被控訴人(1審被告) 東洋ファルマー株式会社
同代表者代表取締役 C
上記両名訴訟代理人弁護士 辰巳和男
同補佐人弁理士 松居祥二
裁判所 大阪高等裁判所
判決言渡日 2004/02/06
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は、控訴人の負担とする。
事実及び理由
控訴の趣旨等
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人大原薬品工業株式会社は、別紙物件目録1及び2記載の物件を製造し、販売し並びに販売のために展示してはならない。
3 被控訴人東洋ファルマー株式会社は、別紙物件目録3及び4記載の物件を製造し、販売し並びに販売のために展示してはならない。
4 被控訴人大原薬品工業株式会社は、その所有する別紙物件目録1及び2記載の物件を廃棄せねばならない。
5 被控訴人東洋ファルマー株式会社は、その所有する別紙物件目録3及び4記載の物件を廃棄せねばならない。
6 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人らの負担とする。
7 仮執行宣言
事案の概要
1 本件は、控訴人が、被控訴人らに対し、別紙物件目録1ないし4記載の医薬品(以下、別紙物件目録1記載の医薬品を「対象医薬品1」、同2記載の医薬品を「対象医薬品2」、同3記載の医薬品を「対象医薬品3」、同4記載の医薬品を「対象医薬品4」といい、これらを併せて「対象医薬品」という。)の製造販売が控訴人の有する特許権を侵害すると主張して、特許権に基づく対象医薬品の製造、
販売及び販売のための展示の差止め並びに対象医薬品の廃棄を求めた事案である。
原判決は、控訴人の請求をいずれも棄却したため、控訴人が本件控訴を提起し、当審において均等侵害の主張を追加した。
(以下、控訴人を「原告」、被控訴人大原薬品工業株式会社を「被告大原薬品」、被控訴人東洋ファルマー株式会社を「被告東洋ファルマー」という。) 2 前提となる事実 次のとおり付加、訂正等するほかは、原判決2頁18行目から11頁10行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 2頁19行目冒頭に「ア 」を、同行目の「その特許出願」の前に「以下「本件特許権」という。」を各加え、同20行目の「本判決」を「原判決」と改める。
(2) 3頁15行目末尾の次に改行して、次のとおり加える。
「イ 東和薬品株式会社及び被告らは、本件特許権について、それぞれ特許庁に無効審判を請求した(無効2002-35349号、無効2002-35460号)。
原告は、無効2002-35460号事件については平成15年3月13日に、無効2002-35349号事件については同年5月14日にそれぞれ訂正請求書を提出して、いずれも下記のとおり本件明細書に記載された特許請求の範囲を訂正することを求める訂正請求(以下、併せて「本件訂正請求」という。なお、訂正部には下線を付した。)をした。
特許庁審判官は、無効2002-35460号事件について、平成15年7月2日付けで、「訂正を認める。本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、本件審決は確定した。また、特許庁審判官は、無効2002-35349号事件について、同年8月26日付けで、本件審決と同旨の審決をした(甲第19号証の1〜3、第24号証の1〜3、乙第26、第27号証)。
記 1.その融解吸熱最大がDSCで159℃にあり、その赤外スペクトルにおける特性吸収帯が3506、3103及び777p-1にあり、及びその融点が159〜162℃であることを特徴とする再結晶により 析出 された 形態学的 に均質 な「B」型のファモチジン。
2.形態学的に均質なファモチジン〔化学名:N-スルファモイル-3-(2-グアニジノ-チアゾール-4-イル-メチルチオ)-プロピオンアミジン〕の製造方法において、任意の形態学的組成のファモチジンを加熱下に水及び/又は低級脂肪族アルコール中に溶解し、及び「B」型の製造の場合には、生成物を、40℃以下の温度で迅速に過飽和させたその過飽和溶液から沈澱させ、そして目的生成物を、得られた結晶の懸濁液から分離することを特徴とする方法。」 (3) 3頁17行目の「本件明細書」の前に「本件審決により訂正された」を加え、同23行目を次のとおり改める。
「C 上記@ないしBを特徴とする再結晶により析出された形態学的に均質な「B」型のファモチジン。」 (4) 6頁末行から7頁14行目までを次のとおり改める。
「 被告大原薬品は、平成14年3月15日、原判決別紙物件目録1記載の医薬品(以下「被告医薬品1」という。)について、本件特許権の実施権者である山之内製薬が製造販売するH2受容体拮抗剤である「ガスター錠」と同一の後発医薬品として、また、同月11日、原判決別紙物件目録2記載の医薬品(以下「被告医薬品2」という。)について、同社が製造販売するH2受容体拮抗剤である「ガスター散」と同一の後発医薬品として、それぞれ薬事法14条1項に基づく厚生労働大臣の製造承認を取得した。
被告東洋ファルマーは、平成14年3月12日、原判決別紙物件目録3記載の医薬品(以下「被告医薬品3」という。)について、「ガスター錠」と同一の後発医薬品として、また、原判決別紙物件目録4記載の医薬品(以下「被告医薬品4」といい、被告医薬品1ないし4を併せて「被告医薬品」という。)について、
「ガスター散」と同一の後発医薬品として、それぞれ薬事法14条1項に基づく厚生労働大臣の製造承認を取得した。
被告らは、現在、被告医薬品を製造販売している(弁論の全趣旨)。」 (5) 11頁3行目から同10行目までを削る。
3 争点 (1) 被告医薬品と対象医薬品の同一性 (2) 被告医薬品は、本件特許発明構成要件を文言上充足し、本件特許発明技術的範囲に属するか否か。
(3) 被告医薬品は、本件特許発明の構成と均等なものとして、本件特許発明技術的範囲に属するか否か。
(4)ア 本件特許には無効事由が存在することが明らかであるか否か。
イ 被告らは、本件特許出願前の公知技術実施しているにすぎないか否か。
争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(被告医薬品と対象医薬品の同一性)について (1) 原告の主張 日本薬局方ファモチジンは、約15%以下のA型が混在するB型であるから、被告医薬品の原薬ファモチジンも同様に、約15%以下のA型が混在するB型である。
したがって、被告らが製造販売している被告医薬品は、対象医薬品と同一である。
(2) 被告らの主張 被告医薬品の原薬ファモチジンは、10%ないし25%のA型と、90%ないし75%のB型の混合物である。
2 争点(2)(被告医薬品は、本件特許発明構成要件を文言上充足し、本件特許発明技術的範囲に属するか否か。)について (1) 原告の主張 ア 構成要件の解釈 (ア) 本件特許発明は、化学名及び化学構造式で特定される化学物質として知られていたものの、結晶多形を有することは知られていなかったファモチジンについて、A型及びB型の結晶多形を有することを明らかにし、これを物質の物理的性質、すなわち、構成要件@ないしBの各パラメータにより特定したものである。
したがって、本件特許発明の対象となるファモチジンは、構成要件@ないしBの各パラメータを全て充足する、再結晶により析出された形態学的に均質なB型(構成要件C)と解すべきであり、純粋又はほぼ純粋なB型に限定する必要はない。
なお、構成要件Cにいう「均質(homogeneous)」とは、「多形混合物(mixture)」と対峙し、「純粋(pure)」を包含する用語であり、「一つ以上の指定された特性について、構造又は組成が一様である状態。異なる供給単位(瓶、包装物など)又は一つの供給単位から指定された大きさのサンプルを採取し、試験を行って特性値を決めたとき、その値が指定された不確かさの限界内にあることが判明したならば、その標準物質は、その指定された特性について均質であるという。」(JIS工業用語大辞典第5版・甲第23号証)と説明される。
したがって、A型を含んではいるが、構成要件@ないしBの各パラメータを満たすB型は、構成要件@ないしBの各パラメータ(特性値)という指定された特性について、その組成が一様であるといえるから、B型の均質体であり、構成要件Cを充足する。
(イ) 赤外吸収スペクトル分析法は、構成要件@ないしBの各パラメータの中で、唯一、分子レベルの構造解析機能も有している。結晶多形を有する化合物において、各結晶型由来の「特性吸収帯」を有するか否かに基づき結晶多形を識別する場合、測定対象の結晶がその結晶型由来の「特性吸収帯」を有すると同時に、
他の結晶型の「特性吸収帯」が存在しないことをもって、結晶多形を識別し得る。
また、日本薬局方は、297品目もの医薬品原薬について「赤外吸収参照スペクトル」を掲載している一方、融解吸熱最大や融点を確認試験の基準としているものはなく、技術常識からしても、物質の特定や同定に最も適したパラメータは、赤外吸収スペクトル(構成要件A)であるというべきである。
融解吸熱最大(構成要件@)及び融点(構成要件B)は、赤外吸収スペクトル(構成要件A)によって、対象物が、公知のA型とB型との混合物と区別された、本件特許発明の対象であるB型と同定された後、B型であることを確認するため補完的に用いられる特性である。
B型にA型が混合している場合、物質の機能や特性は、混合比率が少ないときはB型と実質的に同じであるが、混合比率が多いときはB型と異なってくる。そして、赤外吸収スペクトルよりもDSC測定による方が、より少量のA型の存在を鋭敏に検出することができる。A型が混合していても、DSC測定によってはA型の融解吸熱最大が検出されるが赤外吸収スペクトルによってはA型の特性吸収帯が検出されない場合は、A型の混合比率が少なく、物質の機能や特性はB型と実質的に同じであり、本件特許発明の作用効果が奏されるのに対し、A型の混合がDSC測定によってはもとより赤外吸収スペクトルによっても検出される場合は、
A型の混合比率が多く、物質の機能や特性はB型と実質的に異なる。
本件特許発明優先権主張日前に公知であったファモチジンは、A型とB型との比率が35ないし45:65ないし55で、A型の混合比率が高く、かつ、その比率が安定しない結晶混合物であり、このようにA型の比率が高いと、DSC測定によってはもとより、赤外吸収スペクトルによってもA型が検出される。
そして、本件特許発明優先権主張日前においては、赤外吸収スペクトルによってA型が検出されずB型のみが検出されるファモチジンは知られておらず、そのように赤外吸収スペクトルによってB型のみが検出されるファモチジンが、本件特許発明の対象である。
(ウ) したがって、本件特許発明構成要件を充足するB型とは、赤外吸収スペクトルにおけるB型の特性吸収帯、すなわち、構成要件Aに記載された3506、3103及び777p-1の特性吸収帯が検出され、かつ、A型の特性吸収帯、
すなわち、3450、1670、1138及び611p-1の特性吸収帯が検出されないファモチジンである。
なお、構成要件Aは、吸収波数の値は示していても吸収強度は特定していないから、吸収強度の強弱は関係がない。
(エ) 本件明細書(【0018】)の記載や原告の特許庁審査官に対する平成8年9月26日付け意見書(乙第13号証。以下「平成8年意見書」という。)の記載をもって、本件特許発明に係るファモチジンを純粋なB型に限定する趣旨と解するのは誤りである。本件明細書に純品を得る目的について、「明らかにされていない組成の多形混合物から区別する」(【0018】)と記載されていることから明らかなように、本件明細書及び平成8年意見書には、B型の物性値を確認するために純品のB型を得ることが可能である旨記載されているにすぎない。
化合物の物質特許において、請求項に化合物名のみが記載されている場合、その技術的範囲は、当該化合物の純品のみに限定されることはなく、作用効果の実質が確保される限り、多少の混合物が含まれる場合もその技術的範囲に属する。本件特許発明構成要件には、「100%の」と限定する文言はないから、B型100%に限定されると解釈してはならない。
イ 被告医薬品の構成要件該当性 (ア) 前記のとおり、被告医薬品に含まれている原薬ファモチジンは、約15%以下のA型が混在するB型である。
(イ) 東邦大学薬学部教授Dほか1名作成に係る平成15年4月10日付け実験報告書(甲第20号証の1。以下「D実験報告書」という。)によれば、次のaないしcのとおり、約15%以下のA型が混在するB型は、構成要件@ないしBの各パラメータを全て充足することが認められる。なお、他に融解吸熱最大が認められても、B型を示す融解吸熱最大が認められる限り、構成要件@を充足することに変わりはない。
a 構成要件@ A型とB型との比率が0:100から50:50までのファモチジンは、1℃/分の昇温速度で、B型結晶の融解に相当する約161℃に、融解吸熱最大が認められる。
b 構成要件A B型の特性吸収帯(3506、3103及び777p-1)は、A型とB型との比率が5:95から95:5までの試料で検出され、A型の特性吸収帯(3450p-1)は、A型とB型との比率が20:80から95:5までの試料で検出される。
すなわち、約15%以下のA型が混在するB型は、構成要件Aに記載されたB型の特性吸収帯が検出され、かつ、A型の特性吸収帯が検出されない。
c 構成要件B B型100%のファモチジンの融点(融け始め〜融け終わり)は160.3℃〜162.3℃に認められるところ、A型とB型との比率が0:100から30:70までのファモチジンは、融け始めが160.2℃〜160.7℃、
融け終わりが162.2℃〜162.9℃であって、B型100%のファモチジンとの差は0.6℃以下である。
(ウ) したがって、約15%以下のA型が混在するB型は、構成要件@ないしBの各パラメータを全て充足しており、構成要件@ないしBの各パラメータ(特性値)という指定された特性について、その組成が一様であるといえるから、
B型の均質体であり、構成要件Cも充足する。
(2) 被告らの主張 ア 本件特許発明技術的範囲は、B型100%のファモチジンに限られる。
その根拠は、以下のとおりである。
イ 本件明細書には、「形態学的に均一なファモチジン」(【0001】)と記載されているが、「形態学」とは、「結晶の幾何学的性質を研究する結晶学の一分科」のことであるから、本件明細書の上記記載は、「結晶体であって全体の中に異なる部分がなく、どの部分をとっても他の部分と同じ」ということを意味する。
本件明細書には、「両者の場合において研究者達は、組成が規定されない(明らかになっていない)「A」型及び「B」型の混合物を得ていたことが明白と思われる。」(【0003】)、「「A」型及び「B」型の結晶核」(【0008】)、「本発明は(中略)ファモチジンの「B」型に関する。」(【0011】)、「本方法が100%の形態学的純度を有する異なった型のファモチジンを製造するための(中略)技術を与え、及び正確にファモチジン多形を相互に並びに明らかにされていない組成の多形混合物から区別する」、「多形混合物の代わりに均質多形体を説明することの重要性を示すために、純粋な「A」型および「B」型のファモチジンの測定されたデータからの表を示す。」(【0018】)などと記載されている。本件明細書の【0019】以下の各表においても、A型とB型が峻別されており、かつ、B型100%のファモチジンと、A型とB型の混合物であるファモチジンも峻別されて取り扱われている。さらに、本件明細書には、「他の多形により汚染された両誘導体について95:5の比の異なった型の混合物」(【0030】)と記載されている。
このような本件明細書の記載によれば、本件特許発明に係るファモチジンは、B型100%のものに限られるとしか考えられない。
ウ 原告は、本件特許発明に係るファモチジンについて、平成8年意見書において、「純品なB型ファモチジン」(平成8年意見書[意見の内容]1頁28行)、「よって、純品たるB型ファモチジンは、A型とB型のファモチジンの混合物である引例1〜3記載のファモチジンとは相違し」(同意見書[意見の内容]2頁6ないし8行)、「よって、B型ファモチジンを純品で得ることは」(同意見書[意見の内容]2頁14行)などと述べており、このような出願経過に照らせば、
本件特許発明に係るファモチジンは、B型100%のものに限定される。
エ B型に少量のA型が混合していても、その混合比率が低く、赤外吸収スペクトルによってA型が検出されない場合に、物質の機能や特性がB型と実質的に同じであるということは、根拠がないし、そのようなことは、本件明細書には記載されていない。B型にA型がどの程度混合するとA型が検出されるかという点も明らかにされていない。
DSC融解吸熱のピークとしてB型のピークのほかにA型のピークが検出されても構成要件@が充足されると解する根拠を、本件明細書に見出すことはできない。
構成要件Bは、「融点が159〜162℃である」ということであるから、構成要件Bが充足されるためには、融点が上記の範囲内になければならず、融点が上記の範囲内になくても、おおよそ一致していればよいということはできない。
本件明細書(【0037】、【0038】、【0039】)には、A型とB型の物性が異なることが記載されており、本件特許発明は、B型100%の純品と、A型及びB型の混合物を区別することによって新規性進歩性が認められたのであるから、本件特許発明構成要件の解釈として、B型とA型の混合物をB型100%の純品と実質的に同じであるとすることはできないし、本件特許発明に係るファモチジンが、B型100%のもののほかB型同等物を含むとする根拠はない。
オ 仮に、本件特許発明に係るファモチジンにB型100%の純品の同等物が含まれるとしても、B型の混合比率が、測定値を四捨五入すれば100%になる99.5%以上のものを指すと解すべきである。
カ 原告は、約15%以下のA型が混在するB型は、本件特許発明構成要件を充足すると主張するが、本件明細書にそのような記載は全くない。
3 争点(3)(被告医薬品は、本件特許発明の構成と均等なものとして、本件特許発明技術的範囲に属するか否か。)について (1) 原告の主張 ア 対象製品に、特許請求の範囲に記載された構成と異なる部分があっても、@当該部分が特許発明の本質的部分でないこと、A当該部分を対象製品におけるものと置き換えても、当該発明の目的を達成することができ、同一の作用効果を奏すること、Bその置き換えを当業者が対象製品の製造の時点で容易に想到することができたこと、C当該対象製品が特許出願時の公知技術ではなく、また、それから出願時に容易に遂行できたものではないこと、D当該対象製品が特許出願時点において特許請求の範囲から意識的に除外されたものではないことの5要件を充足する場合は、特許発明技術的範囲に属すると解すべきである。
イ 本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載されているB型は純粋又はほぼ純粋なB型ファモチジンであると解しても、以下のとおり、被告医薬品は前記5要件を充足するから、本件特許発明均等物として、本件特許発明技術的範囲に属する。
(ア) @要件について 約15%以下のA型は、B型の中に含まれていても、それは本件特許発明の本質的部分ではなく、本件特許発明の本質的部分は本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載された三つのパラメータによって特定されるB型である。したがって、@要件は充足されている。
(イ) A要件について 約15%以下のA型が混在するB型は、前記三つのパラメータの全てを充足し、本件特許発明の目的を達成するとともに、同一の作用効果を奏する。したがって、A要件は充足されている。
(ウ) B要件について 被告らが被告医薬品を製造するに当たり、約15%以下のA型を混在させることには何ら困難はない。したがって、B要件は充足されている。
(エ) C要件について A型を含有するが、A型の赤外吸収スペクトルの特性吸収帯のピークを示さないB型は、本件特許発明の特許出願時点において公知ではなく、公知技術から容易に想到できるものでもなかった。したがって、C要件は充足されている。
(オ) D要件について 約15%以下のA型が混在するけれども、赤外吸収スペクトル特性吸収帯において、A型に特有の3450p-1付近のピークは認められないB型が、本件特許の特許出願時において特許請求の範囲から意識的に除外されたものでなかったことは明らかである。したがって、D要件は充足されている。
(2) 被告らの主張 ア @要件について 前記@要件を充足するか否かは、特許発明を全体として特許出願時における先行技術と対比することにより、課題の特徴的な解決手段を確定し、対象製品が上記解決手段を共通に備えているか否かにより決すべきである。
本件明細書の記載によれば、従来から存在したA型とB型の混合物の作用効果を著しく改善するという目的を達成したのがB型100%のファモチジンであると解されるから、A型が混在する被告医薬品は、本質的部分において本件特許発明の構成と異なる。したがって、@要件は充足されていない。
イ A要件について 前記のとおり、従来から存在したA型とB型の混合物の作用効果を著しく改善するという目的を達成したのがB型100%のファモチジンであると解されるから、A型が混在する被告医薬品がB型100%のファモチジンと同一の作用効果を奏するとはいえない。したがって、A要件は充足されていない。
ウ B要件について A型をB型に混ぜることは容易であるが、わざわざB型100%のファモチジンを精製した後に、原告の主張によれば薬効の劣るA型を混ぜるようなことは、被告らにとっても、当業者にとっても、到底考えられることではない。したがって、B要件は充足されていない。
エ C要件について A型とB型の混合物は、本件特許発明の特許出願以前から存在し、公知技術により容易に製造できた。したがって、C要件は充足されていない。
オ D要件について 原告は、平成8年意見書及び本件訂正請求において、特許請求の範囲をA型を含まないB型100%のファモチジンに限定したのであるから、A型が混在する被告医薬品は、特許請求の範囲から意識的に除外されたというべきである。したがって、D要件は充足されていない。
4 争点(4)(無効理由及び自由技術の抗弁)について 原告及び被告らの主張は、原判決21頁2行目から32頁2行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、22頁17行目の「多結晶形」を「結晶多形」と改める。
当裁判所の判断
1 争点(1)について 原告は、被告医薬品の原薬ファモチジンは、約15%以下のA型が混在するB型であると主張する。
しかしながら、原告は、被告医薬品の分析結果等の証拠を提出せず、被告医薬品の原薬ファモチジンの組成が原告の上記主張のとおりであることを認めるに足りる証拠はないから、上記主張は採用することができない(ちなみに、弁論の全趣旨によれば、被告医薬品は、現在市販されており、原告がこれを入手して分析することは可能な状況にある。)。
なお、第14改正日本薬局方に掲載されたファモチジンの参照赤外吸収スペクトル(甲第3号証の4)を、「Comparison of the polymorphic modifications of famotidine」(甲第7号証)566頁の図1(Figure1)に示されたA型の赤外吸収スペクトル及び図2(Figure2)に示されたB型の赤外吸収スペクトルと比較すると、A型よりはB型の赤外吸収スペクトルの方に類似しているものと認められるが、日本薬局方は、ファモチジンの結晶型や含有割合を特定した記載は全くしていないものと認められる(甲第3号証の1〜6、乙第6、第8号証)から、被告医薬品の原薬ファモチジンが日本薬局方に適合したファモチジンであることの一事をもって、直ちに被告医薬品の原薬ファモチジンが約15%以下のA型が混在するB型であると認めることもできない。
そして、被告医薬品の原薬ファモチジンにおけるA型の含有率については、
当事者間に争いがないのは10%ないし15%の範囲であるから、存在について立証のないA型の含有率が10%未満の部分についての請求は、その点で既に理由がないものというべきである。
そこで、以下においては、被告医薬品が10%ないし15%のA型を含有するB型であることを前提にして、本件特許発明構成要件充足性について検討する。
2 争点(2)について (1) 認定事実 本件明細書の記載については、原判決32頁6行目から37頁12行目まで、本件発明の出願経過については、原判決39頁9行目から40頁11行目までに記載のとおりであるから、これらを引用する。
(2) 特許請求の範囲の解釈 ア(ア) 本件特許発明は、「B型」のファモチジンを対象とするところ、
「B型」は、純粋なB型に限定されるのか、それとも一定比率以下のA型とB型との混合物を含むものであるのかについて検討する。
(イ) 前記認定のとおりの本件明細書の発明の詳細な説明の記載内容を検討すると、本件明細書は、従前結晶多形の存在が知られていなかったとされるファモチジンについて、融解吸熱最大、赤外吸収スペクトルの特性吸収帯及び融点を異にするA型とB型の複数の結晶型(結晶多形)があること、A型とB型は、物理化学的性質及び生体利用可能性において大きく相違し、結晶化の動力学的条件により結晶型が決せられることなどを前提として、特許請求の範囲において、純粋なB型とその製造方法を示したものであると理解することができる。特に、本件明細書の発明の詳細な説明の記載(【0018】、【0030】)からすれば、原告は、方法特許(請求項2及び3)に係る記載ではあるが、その最大の利点は、100%の形態学的純度を有するファモチジンを製造し、かつ、正確にファモチジン多形を相互に並びに明らかにされていない組成の多形混合物から区別することにあること、
他方、他の結晶型が5%含有されているものは純粋な結晶型ではないとの認識を明らかにしていることが認められる。
(ウ) しかも、平成8年意見書(乙第13号証。その記載内容は、原判決39頁18行目から40頁11行目までに記載のとおりである。)からすれば、原告は、本件特許発明の特許性について、本件特許発明の対象は純品なB型であるとして、A型とB型との混合物であった従来例との差異を強調することにより特許査定を得たことが認められる。
(エ) 以上によれば、本件特許発明の対象となるB型とは、基本的に、A型を全く含まない純粋なB型100%のファモチジン(以下「純粋なB型」という。)を意味するものと解するのが相当である。
(オ) これに対し、原告は、本件特許発明は、結晶多形を有するファモチジンを、物質の物理的性質により分類したものであって、結晶型のみに着目して混合物か純粋物かに分類したものではないから、本件特許発明の対象は、構成要件@ないしBの各パラメータを全て充足する、「形態学的に均質な」(上記各パラメータという指定された特性についてその組成の一様な)B型と解すべきであり、純粋なB型に限定する必要はなく、A型を含むB型についても、上記各パラメータを充足する限り本件特許発明技術的範囲に属すると主張する。
しかし、本件明細書の発明の詳細な説明には、構成要件@ないしBの各パラメータを充足するものがB型ファモチジンであること、方法特許(請求項2及び3)の目的が、正確にファモチジン多形を相互に並びに明らかにされていない組成の多形混合物から区別された、100%の形態学的純度を有するファモチジンを製造する点にあること等を示唆する記載があるのみであり、原告主張のようなものも本件特許発明の「ファモチジン」に含まれることをうかがわせる記載ないし示唆は全くないから、原告の上記主張は採用することができない。
イ(ア) もっとも、前記ア記載のとおり本件特許発明の対象となるB型とは、基本的に、A型を全く含まない純粋なB型を意味するものであるとしても、測定法の問題や絶対的に純粋な結晶は存在しないこと(弁論の全趣旨)に照らせば、
通常の測定法では検出できない程度のA型が混入したB型(以下「ほぼ純粋なB型」という。)についても、本件特許発明の対象となるB型に含まれると解する余地はある。そして、具体的に何%までA型が混入したとしても、ほぼ純粋なB型といい得るかについては、本件明細書の特許請求の範囲のみならず、発明の詳細な説明にも明示されていない(ただし、本件明細書中には、多くとも5%未満であることを示唆する記載【0030】は存在する。)が、本件特許請求の範囲第1項は、
融解吸熱最大(構成要件@)、赤外吸収スペクトル(構成要件A)及び融点(構成要件B)により、本件特許発明の対象を特定していることを考慮すると、上記の各構成要件について、本件特許請求の範囲第1項に記載されたB型の特性のみが検出され、A型の特性が検出されない程度しかA型を含んでいないB型も、ほぼ純粋なB型として、本件特許発明構成要件を文言上充足すると解することが可能であると考えられる。
そして、上記の、融解吸熱最大(構成要件@)及び赤外吸収スペクトル(構成要件A)について、B型の特性のみが検出され、A型の特性が検出されないという意味は、次の(イ)及び(ウ)のとおりである。
(イ) 融解吸熱最大について、本件明細書に、B型はDSCで159℃、
A型は167℃であることが明瞭に区分して記載されていること(【0002】、
【0010】、【0011】、【0016】及び【0017】等)からすれば、構成要件@の「その融解吸熱最大がDSCで159℃にあり、」とは、その融解吸熱最大がDSCで159℃にあり、A型の混入を示す高温側の融解吸熱最大が存在しないことを指すと解釈すべきである。
(ウ) 赤外吸収スペクトルについて、本件明細書に、B型の特性吸収帯は3506、3103及び777p-1にあり、A型のそれは3450、1670、1138及び611p-1であることが明瞭に区分して記載されていること(【0010】、【0011】、【0016】及び【0017】等)からすれば、構成要件Aの「その赤外スペクトルにおける特性吸収帯が3506、3103及び777p-1にあり、」とは、上記の特性吸収帯が検出されるのみならず、A型の混入を示す3450、1670、1138及び611p-1の特性吸収帯が検出されないことを指すと解釈すべきである。
(エ) なお、この点に関し、原告は、融解吸熱最大(構成要件@)及び融点(構成要件B)は、赤外吸収スペクトル(構成要件A)によって、対象物が、公知のA型とB型との混合物とは区別された、本件特許発明の対象であるB型と同定された後、B型であることを確認するため補完的に用いられる特性であると解すべきである旨主張するが、本件明細書にそれをうかがわせる記載ないし示唆は全くないばかりか、そのような解釈は構成要件@及びBを無視するに等しいものであって、採用することができない。
(3) 被告医薬品の構成要件該当性 ア 融解吸熱最大 (ア) 原告は、被告医薬品の分析結果を証拠として提出しておらず、被告医薬品の原薬ファモチジンについて、その融解吸熱最大がDSCで159℃にあり、A型の混入を示す高温側の融解吸熱最大が存在しないことを認めるに足りる証拠はない。
(イ) かえって、D実験報告書(甲第20号証の1)によれば、原告が製造したA型結晶(ロット番号W07022K)とB型結晶(同K2B155N)を、A型とB型との比率が10:90及び15:85になるように調製した各試料を分析したところ、1℃/分の昇温速度で、いずれも融解吸熱最大は161℃付近及び163℃付近に観察されたことが認められる(図6、8)。
したがって、10%ないし15%のA型が混在するB型については、
融解吸熱最大が二つ検出され、このうちの低温側(161℃付近)の融解吸熱最大はB型を示すものであるとしても、高温側(163℃付近)のそれは、明らかにA型の混入を示すものであると認められるから、構成要件@を充足しないというべきである。
(ウ) なお、D実験報告書(甲第20号証の1)によると、純粋なA型の融解吸熱最大は166℃であり、前記の高温側の融解吸熱最大である約163℃とは約3℃の差が存在するものの、D実験報告書によれば、純粋なB型については融解吸熱最大は約161℃のみであり、二つのピークは検出されていないことが認められることからすると、いずれにせよ高温側の融解吸熱最大はA型の混入を示すものであると考えられ、上記の差は前記認定判断を左右するものではない。
(エ) そして、他に被告医薬品の原薬ファモチジンが構成要件@を充足すると認めるに足りる的確な証拠はない。
イ 赤外吸収スペクトル (ア) 被告医薬品の原薬ファモチジンについて、B型の特性吸収帯(3506、3103及び777p-1)が検出され、かつ、A型の特性吸収帯(3450、
1670、1138及び611p-1)が検出されないことを認めるに足りる証拠はない。
(イ) かえって、D実験報告書(甲第20号証の1)によれば、A型とB型との比率が15:85になるように調整した試料について、3450p-1付近にショルダーが認められる(図24及び25)。
したがって、10%ないし15%のA型が混在するB型については、
A型の特徴である3450p-1の特性吸収帯が検出されないとは認めるに足りないから、構成要件Aを充足しないというべきである。
(ウ) そして、他に被告医薬品の原薬ファモチジンが構成要件Aを充足すると認めるに足りる的確な証拠はない。
ウ なお、原告は、被告らは、本件特許発明の技術によりB型を製造し、原告の別の特許発明の技術によりA型を製造し、これらを混合している旨主張するが、原告の上記主張が採用できないことは、原判決45頁21行目の「E実験報告書」から46頁11行目末尾までに記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、46頁5行目から6行目にかけての「F陳述書」を「被告大原薬品ファインケミカル開発部係長F作成の陳述書」と、同9行目の「10ないし25%のA型と75ないし90%のB型」を「10%ないし25%のA型と90%ないし75%のB型」と、同10行目の「推認される。」を「推認され、この推認を覆すに足りる証拠はない。」と各改める。
エ 以上のとおり、被告医薬品の原薬ファモチジンは、純粋なB型ではなく、構成要件@ないしBについて、本件特許請求の範囲第1項に記載されたB型の特性のみが検出され、A型の特性が検出されない程度しかA型を含んでいないほぼ純粋なB型であるともいえないから、本件特許発明構成要件を文言上充足しない。
3 争点(3)について (1) 明細書の特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても、@当該部分が特許発明の本質的部分ではなく、A当該部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、
同一の作用効果を奏するものであって、Bそのように置き換えることに、当業者が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、
C対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから同出願時に容易に推考できたものではなく、かつ、D対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは、このような対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明技術的範囲に属するものと解するのが相当である(最高裁判所平成10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁参照)ので、これを本件について検討する。
(2) 前記最高裁判決の@要件について ア(ア) 本件明細書は、前記のとおり、従前結晶多形の存在が知られていなかったファモチジンにおいて、融解吸熱最大、赤外吸収スペクトルの特性吸収帯及び融点を異にするA型とB型の複数の結晶型があること、A型とB型は物理化学的性質及び生体利用可能性において大きく相違し、結晶化の動力学的条件により結晶型が決せられることなどを前提として、特許請求の範囲において、純粋なB型とその製造方法を示したものであると認められる。
このことに、前記認定に係る本件特許発明出願経過をも参酌すれば、本件特許発明の特徴的部分は、上記のような知見に基づき、A型とB型との混合物ないしA型ファモチジンに比較してより優れた特性を有する純粋なB型ファモチジンを取り出し、これを構成要件@ないしBにより特定した点にあり、この点が本件特許発明の本質的部分であるというべきである。
(イ) 前記のとおり、B型中に、B型とは物理化学的性質及び生体利用可能性が大きく異なるA型が、10%ないし15%含まれる場合は、融解吸熱最大(構成要件@)により検出でき、また、15%含まれる場合は、赤外吸収スペクトル(構成要件A)によっても検出できるのであるから、これらのファモチジンは、
純粋なB型ファモチジンとは物理化学的性質が異なり、また、生体利用可能性についても異なる可能性があるということができ、その結果、本件特許発明の作用効果を奏しなくなるおそれがある。
(ウ) そして、本件特許発明において、前記構成要件@ないしBの各パラメータは、ファモチジンの結晶多形を特定するために、いずれも不可欠な要素であり、前記のとおり、本件特許発明の本質的部分というべきであるから、A型とB型が混合したファモチジンについて、前記構成要件@ないしBの各パラメータのうち少なくとも一つのパラメータを充足しない場合は、本件特許発明の対象となる純粋又はほぼ純粋なB型とは、本質的部分において相違があるというべきである。
イ 以上のとおり、当該ファモチジンが、A型とB型との混合物ないしA型ファモチジンから区別された純粋又はほぼ純粋なB型であるという点は、まさに本件特許発明の本質的部分にほかならず、10%ないし15%のA型を含有するB型であり、構成要件@及びAを充足しないファモチジンを原薬とする被告医薬品は、
特許請求の範囲に記載された構成と本質的な部分において異なるというべきであるから、前記最高裁判決の@要件を満たさない。
(3) 前記最高裁判決のD要件について 原告は、本件特許発明の特許出願手続において、特許請求の範囲を純粋なB型とその製造方法に限定し、意識的に、構成要件@ないしBの各パラメータにより検出されるほどのA型を含んだ混合物を除外したものと認めるのが相当である。
このことは、本件明細書の発明の詳細な説明の記載(特に【0018】及び【0030】)及び本件特許出願についてされた平成8年3月12日付けの拒絶理由通知(乙第12号証)に対し、原告が提出した平成8年意見書(乙第13号証)が、本件特許発明の対象は純品なB型であるとして、A型とB型との混合物であった従来例との差異を強調していることから明らかである。
そして、10%ないし15%のA型を含有するB型は、前記構成要件の@及びAを充足しない以上、本件特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものというべきであり、10%ないし15%のA型を含有するB型であるファモチジンを原薬とする被告医薬品は、前記最高裁判決のD要件を満たさない。
(4) したがって、被告医薬品は、その余の要件の該当性について判断するまでもなく、本件特許発明均等物として本件特許発明技術的範囲に属するものとは認められない。
4 その他、原審及び当審における当事者提出の各準備書面記載の主張に照らし、原審及び当審で提出、援用された全証拠を改めて精査しても、当審及び当審の引用する原審の認定、判断を覆すに足りない。
5 結論 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がなく、これと同旨の原判決は相当であるから、本件控訴は理由がなく棄却を免れない。
よって、主文のとおり判決する。
(口頭弁論終結の日 平成15年10月21日)
追加
別紙物件目録1約15%以下の「A型のファモチジン」が混在する再結晶により析出された形態学的に均質な「B型のファモチジン」を原薬とする「H2受容体拮抗剤」の錠剤(販売名「ガモファー錠10mg」「ガモファー錠20mg」)2約15%以下の「A型のファモチジン」が混在する再結晶により析出された形態学的に均質な「B型のファモチジン」を原薬とする「H2受容体拮抗剤」の散剤(販売名「ガモファー散2%」「ガモファー散10%」)3約15%以下の「A型のファモチジン」が混在する再結晶により析出された形態学的に均質な「B型のファモチジン」を原薬とする「H2受容体拮抗剤」の錠剤(販売名「ガスドック錠10mg」「ガスドック錠20mg」)4約15%以下の「A型のファモチジン」が混在する再結晶により析出された形態学的に均質な「B型のファモチジン」を原薬とする「H2受容体拮抗剤」の散剤(販売名ガスドック散2%)以上
裁判長裁判官 竹原俊一
裁判官 小野洋一
裁判官 中村心
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