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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成15行ケ67特許取消決定取消請求事件 判例 特許
平成13行ケ337審決取消請求事件 判例 特許
平成12ネ1016特許権侵害差止請求控訴事件 判例 特許
平成16行ケ86審決取消請求事件 判例 特許
平成19行ケ10006審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 発明者 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  周知技術 /  着想 /  援用権(援用) /  参酌 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  設定登録 /  訂正審判 /  新たな無効理由 /  審決確定(審決が確定) /  申し立てない理由 / 
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事件 平成 15年 (行ケ) 35号 審決取消請求事件
原告 X1
原告 X2
原告ら訴訟代理人弁理士 鈴木秀雄,井上重三
被告 有限会社豊産業
被告 伸成技研株式会社(旧商号・横山産興株式会社)
被告ら訴訟代理人弁理士 河野茂夫,河野誠
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/02/26
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告らの請求を棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
原告らの求めた裁判
「特許庁が平成10年審判第35127号事件について平成14年12月16日にした審決を取り消す。」との判決。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯 原告らは,本件特許第1773618号「採肉養鶏用飼料添加物」の特許権者である。
本件特許の請求項1〜4に係る発明は,平成1年12月25日に特許出願されて,平成5年7月14日に設定登録がされた。
被告らは,請求項1〜に4に係る発明についての特許を無効とする旨の審判を請求し,平成10年審判第35127号事件として審理され,平成10年12月15日,上記発明に係る特許を無効にする旨の審決があった。その取消訴訟(当庁平成11年(行ケ)第17号)の係属中である平成11年10月7日,願書に添付した明細書を訂正することについての審判の請求(平成11年審判第39079号)を認める審決が確定したことにより,上記訴訟において平成12年11月7日に審決取消しの判決があって確定した。そこで,上記無効審判請求事件につき審理が再開された結果,平成14年12月16日,再度,上記発明に係る特許を無効にする旨の審決があり,その謄本は同月27日原告らに送達された。
以下においては,「原告」というときは原告らを指し,「被告」というときは被告らを指す。
2 本件発明の要旨(上記訂正審判請求によるもの) 1.孵化後60日以内の採肉鶏の飼料に混合するものを杜仲の葉としたことを特徴とする採肉養鶏用飼料添加物。
2.孵化後60日以内の採肉鶏の飼料に混合するものが前記杜仲の葉を加熱して乾燥させたものとしたことを特徴とする請求項1記載の採肉養鶏用飼料添加物。
3.前記杜仲の葉を加熱して乾燥させたものが粉末であることを特徴とする請求項2記載の採肉養鶏用飼料添加物。
4.孵化後60日以内の採肉鶏の飼料に混合するものが前記杜仲の葉を煮て抽出したエキスとしたことを特徴とする請求項1記載の採肉養鶏用飼料添加物。
3 被告主張の無効理由 請求人(被告)は,下記の証拠方法を提示し,請求項1に係る発明は審判甲第2号証及び審判甲第3号証に記載された発明に基づいて,また,請求項2及び3に係る発明は審判甲第1〜第4号証に記載された発明に基づいて,請求項4に係る発明は審判甲第1〜第3号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,請求項1〜4に係る発明は特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,上記訂正は特許法126条4項の規定に違反してされたものであり,その特許は,特許法123条1項8号に該当し,無効とすべきものである,と主張した。
記 審判甲第1号証:特開昭52-28922号公報(本訴甲第1号証) 審判甲第2号証:「東京新聞(1989年(平成元年)4月18日の夕刊)」7頁(本訴甲第2号証) 審判甲第3号証:昭和62年12月26日付け和漢医薬学会発行の「和漢医薬学会誌第4巻第3号」180〜191頁(本訴甲第3号証) 審判甲第4号証:1989年(平成元年)3月31日付け「日本経済新聞」29頁(本訴甲第4号証) 審判甲第5号証:東京地裁平成10年(ワ)第525号事件の「口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状」と当該事件の訴状の副本(本訴甲第5号証) 審判甲第6号証:1987年10月12日株式会社岩波書店発行「岩波理化学辞典(第4版)」,31頁,49頁,1106〜1107頁及び1366頁(本訴甲第6号証) 4 審決の理由の要点 (1) 請求項1に係る発明について 請求項1に係る発明において採肉鶏及び飼料の種類について限定がなく杜仲の葉の添加量について何ら限定されていないことは明らかである。また,「孵化後60日以内」とはその飼育期間であると認められる。
以上を踏まえて,請求項1に係る発明と審判甲第2号証に記載された発明とを対比すると,両者は,鶏の飼料に混合するものを杜仲の葉とした養鶏用飼料添加物で一致しているが,杜仲の葉を混合するのが,本件の請求項1に係る発明では,「孵化後60日以内の採肉鶏の飼料」であるのに対し,審判甲第2号証記載の発明では,「孵化後398日以降の採卵用の白色レグホンの飼料」である点で構成が相違しているものと認められる。
上記相違点について検討する。
審判甲第2号証には,杜仲の葉の老化防止作用を調べるために,ふ化後398日以降の採卵用の白色レグホンにおいて,7羽には杜仲の葉を5%混ぜたえさを与え,別の7羽には杜仲の葉を混ぜないえさを与えたところ,杜仲の葉を与えた7羽は,産卵率60%だったのが4週目から上昇し80%に回復し,杜仲の葉を与えない別の7羽の方は産卵率が50〜40%と下降し,これらの白色レグホンを解剖すると,杜仲の葉を与えた方は,杜仲の葉を与えない方よりも,タンパク質が多く,組織が若く健全に保たれていて,血液中のコレステロールも少なかったということが記載されている。
上記の記載により,孵化後60日以内の採肉鶏の飼料として杜仲の葉を混合したものを採用することが容易であるか否かについて検討する。
鶏の肉や,卵の質等を改善するために鶏用飼料の配合割合や添加物などを工夫することは当業者が日常的に行っている改善行動である。しかも,鶏用飼料に混合する添加物が,鶏の肉や,卵の質の双方を改善するための役割を持つことも一般的に周知(特開昭63-98361号公報(周知例1),特開昭63-192349号公報(周知例2))のことである。
また,血液中のコレステロールの量はその肉と脂肪の比に影響を与えることも周知(鶏においても上記周知例2(特に,6頁右上欄7行〜同左下欄6行参照))であり,審判甲第2号証には,杜仲の葉を与えた方は,杜仲の葉を与えない方よりも,タンパク質が多いということも記載されている。
そして,鶏肉中のタンパク質が多くなれば鶏肉の弾力性等にも影響し,歯ごたえや食味などが異なってくるであろうことは当業者にとって当然予測されることである。
そうすると,審判甲第2号証に,杜仲の葉を与えた方は,杜仲の葉を与えない方よりも,タンパク質が多く,組織が若く健全に保たれていて,血液中のコレステロールも少なかったということが記載されている以上,当業者が採肉用の鶏の飼料の添加物として,上記周知事項を考慮して杜仲の葉を採用しようとすることは当業者が容易になし得ることというべきである。
なお,鶏肉の食味などを調査するのに官能検査を採用して確認することは周知(周知例1)であり,請求項1に係る発明は杜仲の葉を採肉用の鶏の飼料の添加物として採用し,60日後にその食味などを上記官能検査により確認したものであって,上記審判甲第2号証の記載から当業者が採肉鶏についても食味などについても良くなる可能性があること,又は少なくとも食味などに影響があることが当業者に予測される以上,請求項1に係る発明のように60日以内の採肉鶏の飼料の添加物として杜仲の葉を採用することに当業者が格別の困難性を伴ったということはできない。
原告は,「審判甲第2号証の新聞記事の実験結果を詳細に発表した本件発明者らの研究論文を証拠として提示するとともに,その際冷凍保存されていた採卵鶏の鶏肉を用いて官能試験によりその肉質の良し悪しを評価した実験報告書を証拠として提出した。この実験報告によると,杜仲葉投与により老採卵鶏のタンパク質の量が増えたが,肉質は何ら改善されていない事実が判明した。」として,審判乙第3号証(実験報告書)を提出するとともに,この審判乙第3号証(産卵鶏の加齢変化に対する杜仲葉の長期投与の影響“その肉質の官能試験について”平成11年5月22日 作成者A X1(原告))の試験に用いられている産卵の最盛期を過ぎた老雌鶏(398日令,白色レグホン・・23週間の長期渡って杜仲葉を投与,559日令に達した老産卵鶏)の肉質について,「この審判甲第2号証の実験に供され冷凍保存されていた老産卵鶏の肉片について,官能試験によりその肉質が改善されたか否かを調べてみたが,タンパク質が増加してもその肉質は何ら改善されていなかった」と主張している。
しかしながら,審判乙第3号証の試験において,官能試験に供された鶏肉片は,杜仲の葉を混合した飼料を与えられた鶏,与えられなかった鶏のいずれも,審判甲第2号証(1989年4月18日付け東京新聞の記事)に記載された試験で使用されたものであって,その後約10年の長期にわたって冷凍保存されていたものである。
このように長期にわたって冷凍保存された肉片は,その肉質の劣化が進行しているものと推認されるから,そのような状態において試験された鶏肉片の肉質が,杜仲の葉を混合した飼料を,与えられた鶏のものと,与えられなかった鶏のものとの間で,大差ないとしても,このことをもって,審判甲第2号証に記載の試験に供された鶏肉片が,審判甲第2号証に記載の試験時において,その肉質に差がなかったことが証明されるものではない。しかも,該肉片は,通常の採肉鶏とは異なり,商業用の食肉としては供されない加齢が進んだ鶏であることを考慮すれば,肉質の官能試験において加齢の影響がはるかに大きく出ることも予測されることである。
したがって,原告の上記主張は採用できない。
(2) 請求項2,3に係る発明について 請求項2に係る発明は,請求項1に係る発明における飼料に混合する杜仲の葉を,加熱乾燥させたものに限定し,請求項3に係る発明はこの請求項2に係る発明の杜仲の葉を更に粉末にしたものであるが,杜仲の葉においても審判甲第4号証にみられるように葉を乾燥焙煎することが周知であり,しかも,飼料への配合形態を検討する際,その動物の嗜好性を考慮することは当業者が当然に留意すべき程度の事項(審判甲第1号証の記載事項参照)であるので,杜仲の葉を加熱乾燥させたものとしたり,更にそれを粉末にしたりすることは当業者が格別困難なこととすることはできない。また,上記のように構成する点に格別の効果を認めることができない。
(3) 請求項4に係る発明について 請求項4に係る発明は,請求項1に係る発明における飼料に混合する杜仲の葉を,煮て抽出したエキスとしたものであるが,このように杜仲の葉を,煮て抽出したエキスとすることは審判甲第3号証に記載されている如く既に知られており,飼料への配合形態を検討する際,その動物の嗜好性を考慮することは当業者が当然に留意すべき程度の事項(審判甲第1号証の記載事項参照)であるので,杜仲の葉を,煮て抽出したエキスとしたものを採用することは当業者が格別困難なこととすることはできない。また,上記のように構成する点に格別の効果を認めることができない。
(4) むすび 以上のとおりであるから,請求項1〜4に係る発明は審判甲第1〜4号証記載の発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり,上記訂正は特許法126条4項の規定に違反してされたものである。
よって,その特許は,特許法123条1項8号に該当し,無効とすべきものである。
原告主張の審決取消事由
1 取消事由1 (1) 審決は請求項1に係る発明について,「本件請求項1に係る発明において採肉鶏及び飼料の種類について限定がなく」と認定し,「「孵化後60日以内」とはその飼育期間であると認められる」と認定したのは誤りである。
請求項1に係る発明において,杜仲葉投与の対象としているのは「孵化後60日以内の採肉鶏」であり,これは天然の地鶏と肉質が対比されるいわゆる「ブロイラー」を指している。したがって請求項1に係る発明においては,杜仲葉を投与する対象たる採肉鶏の種類について明確に限定しており,そしてブロイラーは約60日以内で食肉として出荷されるから,「孵化後60日以内」とは単なる飼育期間ではなく採肉鶏の種類を限定しているものである。
審決が請求項1に係る発明と審判甲第2号証に記載の発明を対比し,相違点として挙げた「杜仲の葉を混合するのが,本件の請求項1に係る発明では,「孵化後60日以内の採肉鶏の飼料」であるのに対し,審判甲第2号証記載の発明では,「孵化後398日以降の採卵用の白色レグホンの飼料」である点で構成が相違しているものと認められる。」の点は形式的文言上の表現の限りにおいては争わないが,その文言上の実質的意味の解釈については争う。
審決は「本件請求項1に係る発明においては採肉鶏の種類について限定しておらず,孵化後60日以内とはその(採肉鶏)の飼育期間である。」との認定を踏まえ,「孵化後60日以内の採肉鶏」の意味を解釈して「種類のいずれかを問わない採肉鶏一般」と認定しているが,前記理由により誤りである。
(2) 明細書の記載から明らかなように,請求項1に係る発明において杜仲の葉を与えて肉質改善をなそうとしている採肉鶏とは,狭い鶏舎で飼われて運動不足のため肉質の歯ごたえ,柔軟性,コク,味が今一であるとされているものを指しており,飼育方法が違い運動も十分なされて肉質が優れており肉質改善の目標としている天然の地鶏と区別している。そして杜仲葉を採肉鶏に60日間与えることによって目的とする肉質改善の効果が得られたとしている。したがって「孵化後60日以内」とは杜仲葉の投与期間であり,食用に供するために市場への出荷に適した大きさにまで育てられた期間,すなわちその採肉鶏の出荷期間を意味している。そして「孵化後60日以内の採肉鶏」といえば,一般に「ブロイラー」と呼ばれる採肉用の若鶏を指すものと認識されており,この中にいわゆる天然の地鶏と称される採肉鶏は含まれない。
上記本件明細書の記載に合わせ,甲第13号証の1〜9の文献に照らしても,請求項1に係る発明において杜仲葉を与えて肉質改善の目的を達成しようとしている「孵化後60日以内の採肉鶏」とは,「ブロイラー」を指し,これに限定され,比内鶏,名古屋コーチン等のいわゆる天然の「地鶏」は含まれないこと当然であり,審決の「請求項1に係る発明と審判甲第2号証記載の発明との相違点」の技術的意味の解釈はその前提事項と相まって,事実誤認である。
2 取消事由2 (1) 審決は,「鶏用飼料に混合する添加物が,鶏の肉や,卵の質の双方を改善するための役割を持つことも一般的に周知(特開昭63-98361号公報(周知例1),特開昭63-192349号公報(周知例2))のことである。」と認定するが,誤りである。
周知例1,2には,このような指摘事項が一般的に周知であることは開示されていない。そこに示されているのは特定の種類の添加物であり,また鶏の肉質改善及び卵の質の改善の意味も特定のものに限定されている。したがってこの公開公報は周知例ではなく,単なる公知例である。
周知例1記載の発明は,鶏用飼料に活性炭粉末や木炭粉末等の炭化物質を含有させて飼育することにより,鶏肉及び鶏卵の弾力性を増し味覚を向上させることができるとするもので,鶏用飼料添加物の中には炭化物質のような特定の物において鶏肉と卵の質の双方を改善し得るものもあるという具体的な一例を示したものにすぎない。周知例1は,鶏肉及び鶏卵の弾力性を増し味覚を向上させることができたものであるが,専ら専門家による嗜好試験によってその効果を確かめているものであって,炭化物質を与えることによって鶏のタンパク質(筋肉タンパク質)の量が多くなったことに基づくものであるという記載や示唆はなされていない。杜仲の葉が炭化物質と同様に鶏肉と鶏卵の弾力性を増し,味覚を向上させる添加物に相当するということも,示唆されていない。
周知例2(特開昭63-192349号公報,甲第9号証)記載の発明は,鶏用飼料にゼオライトを含有させることにより鶏肉の肉と脂肪の比の改善と卵殻の強度の増強を図ることができるとする鶏用添加剤等に関するもので,ゼオライトのような,特定の添加剤の中には脂肪の比率という,鶏肉の肉質の一部と卵殻の強度という卵の質の双方の改善に寄与するものもあるとする,具体的な一例が示されているにすぎず,鶏の肉と卵の質の双方を改善することができる添加剤として杜仲の葉が開示又は示唆されているものではない。
(2) 「鶏肉中のタンパク質が多くなれば鶏肉の弾力性等にも影響し,歯ごたえや食味などが異なってくるであろうことが予測される」との審決の認定は,ブロイラーや地鶏の区別なく,一般的に採肉鶏全般の肉質の歯ごたえや食味に変化をもたらせることを意味するものである。しかし,請求項1に係る発明の目的ないし作用効果はこれと異なり,「孵化後60日以内の採肉鶏であるいわゆるブロイラーの肉質を,歯ごたえと,呑み込みやすさと,味の良さの点で地鶏の肉質とほとんど変わらないものとなす,すなわち従来のブロイラーより肉質がきめ細かく,締まりがあり,柔軟で,味が良いものとなす。」という点にある。
審判甲第2号証に記載の発明の老産卵鶏においては,老化が進行して筋肉タンパク質の分解速度が合成速度を上回って筋肉のタンパク質量が減少の一途であったため,杜仲葉の投与によってタンパク質の分解速度が抑えられて老化の進行が抑制された結果,杜仲葉を与えた方は与えない方よりも筋肉タンパク質の量が多かったということである。請求項1に係る発明の孵化後60日以内の採肉鶏は,日令が若く生長の一途で筋肉タンパク質の量が減少していることはないから,杜仲葉を与えても筋肉タンパク質の量が多くなることはなく,ブロイラーの肉質が地鶏並みの良い肉質に改善されたのはコラーゲンタンパク質が関与し杜仲葉の投与によってコラーゲンタンパク質の合成能力が高まったためであると考えたのである。このことは,本件出願後に本件発明者らの実験によって確かめられ,日本農芸化学会に発表した(甲第16号証の1,2)。
甲第15号証の官能試験の結果と審判甲第2号証に記載の発明の実験結果(甲第14号証)によって,審判甲第2号証記載の実験において杜仲の葉を与えた老産卵鶏の方は,それを与えなかった老産卵鶏の方よりもタンパク質が多く,組織が若く健全に保たれていて,血液中のコレステロールも少なく,これによって老化の進行が抑制されて産卵率の向上につながったが,「歯ごたえ」「呑み込み易さ」「味の良し悪し(美味しさ)」の各肉質の評価項目において両者の間で差がなかった,つまりタンパク質が多くても鶏肉の肉質改善には至らなかった(タンパク質が多いことと肉質改善とは無関係)という事実が明らかである。なお,ここでいうタンパク質とは,審判甲第2号証,甲第14号証,甲第15号証の記載からみて,筋肉タンパク質のことである。
(3) 「審判甲第2号証に,杜仲の葉を与えた方は,杜仲の葉を与えない方よりも,タンパク質が多く,組織が若く健全に保たれていて,血液中のコレステロールも少なかったということが記載されている以上,当業者が採肉用の鶏の飼料の添加物として,上記周知事項を考慮して杜仲の葉を採用しようとすることは当業者が容易になし得ることというべきである。」との審決の判断は誤りである。
審判甲第2号証に記載されている事実及び審決が周知事項としているものに記載されている事項は,請求項1に係る発明の「孵化後60日以内の採肉鶏に杜仲葉を与えることによりこの採肉鶏の肉質を天然の地鶏並みの肉質に改善する」との目的ないし課題とその解決手段である構成とは無関係のことである。これらの事項から到底予測できるものではない。
審判甲第2号証に記載の発明と請求項1に係る発明は,いずれも本件発明者によりされたものである。審判甲第2号証に記載の発明は,加齢に伴う老化が進行して産卵率が低下した老産卵鶏(孵化後398日令の白色レグホン)に杜仲葉を与えると,与えた方は与えない方より筋肉タンパク質の量が多く残り,産卵率が上昇して回復したことを内容とする実験成果についてのもので,請求項1に係る発明は,孵化後60日以内の採肉用若鶏に杜仲葉を与えるとその肉質が地鶏並みの美味い肉質に改善された実験成果に基づくもので,両者は杜仲葉を投与する目的(産卵率低下防止とブロイラーの地鶏並みの肉質改善),条件(投与対象の鶏の種類,日令,組織の生理状態,投与期間の長短の違い),結果(老化防止による産卵率の向上とブロイラーの地鶏並みの美味い肉質への改善)を異にする発明であるから,審判甲第2号証に記載の発明から請求項1に係る発明の推考容易性を論ずるのは不可能である。
審判甲第2号証に記載の発明における「タンパク質が多かった」との組織変化と請求項1に係る発明における「ブロイラーの地鶏並みの美味い肉質への改善」とは何ら関連性がなく,原告は,この肉質改善が起きた原因はコラーゲンタンパク質の合成促進にあると考えている。かかる予想外の肉質改善の結果は,実験して確認して見なければ分からないのが実状で,その成果を確かめたのは請求項1に係る発明が初めてである。
(4) 「鶏肉の食味などを調査するのに官能検査を採用して確認することは周知(上記周知例1)であり,請求項1に係る発明は杜仲の葉を採肉用の鶏の飼料の添加物として採用し,60日後にその食味などを上記官能検査により確認したものであって,審判甲第2号証の記載から当業者が採肉鶏についても食味などについても良くなる可能性があること,又は少なくとも食味などに影響があることが当業者に予測される以上,請求項1に係る発明のように60日以内の採肉鶏の飼料の添加物として杜仲の葉を採用することに当業者が格別の困難性を伴ったということはできない。」との審決の認定判断は誤りである。
鶏肉の食味などの官能検査そのものは一般的に行われているが,審判甲第2号証に記載の発明は採肉鶏の肉質改善とは無関係で,その記載事項から採肉鶏の食味が良くなる可能性ないし影響があることが予測されることはなく,請求項1に係る発明の課題の達成は官能検査によって初めて確認されたもので,予測不可能であった。
(5) 「このように長期にわたって冷凍保存された肉片は,その肉質の劣化が進行しているものと推認されるから,そのような状態において試験された鶏肉片の肉質が,杜仲の葉を混合した飼料を,与えられた鶏のものと,与えられなかった鶏のものとの間で,大差ないとしても,このことをもって,審判甲第2号証に記載の試験に供された鶏肉片が,審判甲第2号証に記載の試験時において,その肉質に差がなかったことが証明されるものではない。しかも,該肉片は,通常の採肉鶏とは異なり,商業用の食肉としては供されない加齢が進んだ鶏であることを考慮すれば,肉質の官能試験において加齢の影響がはるかに大きく出ることも予測されることである。」との審決の認定判断は誤りである。
この種の実験の常として冷凍保存方法は科学的に適切な方法を採用しており,長期保存においても肉質の劣化は生じていない。
平成11年に行った老産卵鶏の肉質に関する官能試験(甲第15号証)は,審判甲第2号証の新聞記事に記載の実験に供され約10年間冷凍保存されていた老産卵鶏の筋肉片を検体として使用したものであるが,その冷凍凍結保存方法及び検体作成時の融解方法はいずれも通常大学や研究機関で行われている生化学的実験方法に従って極めて安全かつ厳格に実施されたものであるから,肉質劣化の問題は生じない。
(6) 「該肉片(審判甲第2号証の実験に供された老産卵鶏の肉片)は,通常の採肉鶏とは異なり,商業用の食肉としては供されない加齢が進んだ鶏であることを考慮すれば,肉質の官能試験において加齢の影響がはるかに大きく出ることも予測されることである。」との審決の認定は,老産卵鶏と通常のブロイラーに対する杜仲の葉の生理的効果の違いを看過ないし誤認している。
請求項1に係る発明においては,審判甲第2号証に記載の発明の老産卵鶏の場合と異なり,孵化後60日以内の採肉鶏(通常のブロイラー)に杜仲の葉を投与しても,杜仲の葉を与えた方は杜仲の葉を与えない方よりもタンパク質(筋肉タンパク質)の量が多く,組織が若く健全に保たれていて,血液中のコレステロールも少なかったという生理的効果は生じない。孵化後60日以内の採肉鶏は,日令も若く生長期にあって,老化の進行により筋肉蛋白質の量が減少の一途という事情にはないからである。孵化後60日以内の採肉鶏(通常のブロイラー)の肉質が天然の地鶏の肉質と遜色のないものに改善されたのは,杜仲の葉の投与によって筋肉タンパク質の量の減少が抑制されて筋肉タンパク質が多くなったからではなく,ブロイラーの特にコラーゲンタンパク質の代謝の促進に不可欠なその合成能力が高められ,運動不足であるブロイラーの筋肉に運動の刺激を与えて鍛えたのと同じ効果が与えられたということによるものである。
本件明細書に,「[従来技術の説明]養殖用鶏(採肉鶏)は一般に,狭い鶏舎の中で飼われているため過度の運動不足になる。そのため,採肉鶏の体の皮下脂肪が貯まり,肉にきめ細かさが無く,締まりが無く,柔軟性が無くなるという欠点があった。・・・[作用]採肉鶏の飼料添加物となる杜仲の葉は,タンパク質(特にコラーゲンタンパク質)の代謝を促進し,運動不足である採肉鶏の筋肉に運動の刺激と同じ効果を与え,肉質において天然の物と遜色がなくなるようにする。」(甲第12号証5頁),「このことから,杜仲の葉は,鶏肉のタンパク質(特にコラーゲンタンパク質)の代謝を促進する上で不可欠なその合成能力を高める効果があり,採肉鶏の筋骨に運動の刺激を使って鍛えたのと同じ効果を与えるものであると考えられる。」(同6頁) と記載があるように,本件発明者らは,一般の採肉鶏(通常のブロイラー)と天然の地鶏との肉質の相違は,筋肉タンパク質の量が関係するのではなく,運動による刺激の豊富さ等飼育方法の違い等によりコラーゲンタンパク質の量が関係するのではないか,そして杜仲の葉はブロイラーのコラーゲンタンパク質の代謝を促進し,ブロイラーの筋骨に運動の刺激を使って鍛えたのと同じ効果を与えることができるのではないかと考え,かかる着想に基づいて杜仲葉を用いたブロイラーの地鶏並みの肉質改善に関する請求項1に係る発明をなし,所期の目的を達成する特有の効果を出荷に至るまでの飼育実験と肉質評価の官能試験により具体的に確認し明らかにしたものである。
3 取消事由3(本件発明2〜4に係る発明の容易想到性の判断の誤り) 請求項2〜4に係る発明は,請求項1に係る発明を更に限定したものであるから,請求項1に係る発明と同様,審判甲第2号証記載の発明との相違点についてその構成及び作用効果の困難性を有しており,審判甲第2号証と周知例1,2に基づき当業者が容易に予測し得るものではない。
4 取消事由4(手続違背) (1) 被告の申し立てない理由についての審理(特許法153条違反) 審決は職権で周知例1と周知例2を呈示して請求項1に係る発明の進歩性有無の審理をしている。この周知例1,2は,請求項1に係る発明と審判甲第2号証に記載の発明との相違点における請求項1に係る発明の「杜仲の葉を混合するのが孵化後60日以内の採肉鶏」の点が出願前周知であることを示しているものではないから,これらを新たな公知例として呈示し意見を求めるべきである。
周知例1,2は,被告が審判において新たな公知例として呈示していないから,これらを加えてした進歩性有無の審理は,被告の申し立てない理由について審理したこととなり,その審理結果について原告に通知し相当の期間を指定して意見を申し立てる機会を与えることなく審決をしたことになって,特許法153条2項の規定に違反する。
(2) 原告に反論の機会を与えなかったこと(特許法134条1項違反) 審決は,杜仲葉を与えた老産卵鶏の方は与えない方よりもタンパク質が多く産卵率低下は防止されたが肉質は双方とも差がなく改善されなかったことを示した審判乙第3号証の実験結果(甲第15号証)は,長期冷凍保存のため肉質劣化が進行し信頼性がないとして,その実験結果に基づく被告の主張を否定した。この認定は,被告が平成14年7月2日付け上申書(甲第20号証)で新たにした主張を採用したものであるが,この上申書は事前に原告に送付されることなく,審決謄本とともに原告に送付されたにとどまる(甲第21号証)。
無効審判において請求人による新たな主張があった場合,審判長は原告にそれに対する意見を求め反論の機会を与えるべきであり,前記上申書により被告の新たな主張があったにもかかわらず,その副本を原告に送付してそれに対する意見を求めることなく審決で判断したものであり,特許法134条1項の規定に違反する。
(3) 審理不尽 @ 本件発明において,杜仲葉投与の対象は,「孵化後60日以内の採肉鶏」,すなわち,孵化後60日以内の飼育で食用に供されるために出荷される採肉鶏であるいわゆる通常のブロイラーに限定される。
A 本件発明において,孵化後60日以内の採肉鶏であるブロイラーの肉質が天然の地鶏と遜色のないものに改善することができたのは,杜仲葉の投与によりブロイラーのコラーゲンタンパク質の代謝が促進されてその合成能力が高まり,その結果ブロイラーに運動の刺激を与えて鍛えたのと同様の効果が与えられたということに基づくものであり,杜仲葉の投与によりタンパク質(筋肉タンパク質)が多くなったことに基づくものではない。審判甲第2号証に記載の発明は,この杜仲葉の投与対象に対する生理的効果が根本的に異なる。これは,両者の杜仲葉を投与する対象の鶏種(ブロイラー対産卵鶏),日令(孵化後0日令対398日令),投与期間(60日間対23週161日間),組織の生理状態(加齢による老化の進行なし対加齢による老化の進行(タンパク質の減少)等の違いによる。
B 孵化後60日以内の採肉鶏であるブロイラーと比内鶏や名古屋コーチン等の天然の地鶏との肉質の差は,タンパク質の量ではなく,コラーゲンタンパク質(特に加熱肉における可溶性コラーゲン)の量の違いが大いに関与する。そして,ブロイラーに杜仲葉を与えて飼育すると,ブロイラーのコラーゲンタンパク質の代謝が促進されてその合成能力が高められ,ブロイラーの肉質が地鶏と遜色のないものに改善される。この二つの点は本件出願前には,本件発明者の推測を除き,一般的には知られておらず明らかにされていない。
したがって,本件出願前においては,孵化後60日以内の採肉鶏であるブロイラーに杜仲葉を与えて飼育することによって天然の地鶏並みの肉質に改善されるかどうかは,実際に実験をやり,肉質改善の評価を専門家による官能試験により確かめ,コラーゲンタンパク質の量の組織的変化を測定するまでは分からない,予測できないという実状にある。
本件発明においては,この飼育実験と肉質改善の評価の専門家による官能試験を業界で初めて行い,その事実を確認し確かめたものであり,そして後にコラーゲンタンパク質の量の組織的変化を測定しその事実を確認し発表するに至ったものである。
以上の@,A,Bの事実のほとんどの点は,本件無効審判において原告が証拠として呈示し,それに基づき主張してきたところであるが,審決は,これらの原告が呈示した証拠とそれに基づく原告の主張を参酌することなく,審判甲第2号証のタンパク質が多いとの記載を援用し「孵化後60日以内の採肉鶏に杜仲葉を与えれば,与えた方は与えない方よりもタンパク質が多くなり,その肉質も良くなる」ことが当業者に予測可能という誤った認定を前提として,審判甲第2号証に記載の発明と周知例1,2に基づいて本件発明の進歩性を否定したものであるから,審理不尽の違法がある。
当裁判所の判断
1 取消事由1,2について (1) 原告は,請求項1に係る発明においては,飼料を与える対象である「孵化後60日以内の採肉鶏」はいわゆる「ブロイラー」を指しているから,審決が「本件請求項1に係る発明において採肉鶏及び飼料の種類について限定がなく」とした認定,及び「「孵化後60日以内」とはその飼育期間であると認められる」とした認定はいずれも誤りであると主張している。原告はその根拠として,ブロイラーに関する文献(甲第13号証の1〜7)及び地鶏・銘柄鶏に関する文献(甲第13号証の8〜11)を示し,ブロイラーは孵化日からの飼育期間が60日以内であるのに対し,地鶏等はそれより長い期間(80日間以上)とされていることから,「孵化後60日以内の採肉鶏」はブロイラーを指すものと認識されていることを挙げている。
この主張の要点は,請求項1に係る発明において杜仲の葉を与えるのは,孵化後60日以内の採肉用若鶏であって,老化の進行がなく生長の一途をたどっているものであるから,これに老化防止効能がある杜仲の葉を与えても,審判甲第2号証の老産卵鶏と同様の生理効果は生じないというにある(甲第27号証の原告意見書)。この主張は,請求項1に係る発明と審判甲第2号証に記載の発明との間に認められる相違点について,これを容易に想到し得るものとした審決の認定判断の誤りの根拠をいうものである。
取消事由1では,請求項1では採肉鶏の種類がブロイラーである旨限定していることを前提にして主張を展開しているが,主張の要点が上記の点にある以上,これを前提にして,相違点に関してした審決の認定判断に誤りがないかについて以下判断を進める。なお,請求項1においては「孵化後60日以内の採肉鶏」と規定されているのみである。原告は,これをもって,狭い鶏舎で飼われ運動不足となっているブロイラーを指すと主張するかのようであるが,そのように一義的なものとして解すべきことを裏付ける証拠はない。請求項1に係る発明における採肉鶏の種類には限定がない旨の審決の認定に誤りはない。
(2) 周知例の認定の誤りについて 原告は,周知例1,2はいずれも特定の添加剤に関する例であり,添加剤一般について鶏の肉質及び卵の質の改善が周知であるとすることはできないから,審決の認定は誤りであると主張している。
しかしながら,鶏の肉質や卵の質などを改善するために鶏用飼料の配合割合や添加物などを工夫することは,当業者が日常的に行っている改善行動であることは自明のことと認められ,一般に鶏用飼料に混合する添加物は,鶏の健康状態を改善するために工夫されるものであると認めることができる。それが鶏の肉質や卵の質の双方を改善するための役割を持つことは,特に例示しなくても当業者間において普通に知られていると認めることができるのであって,周知例1,2はそのことを裏付けるものということができる。
(3) 「鶏肉中のタンパク質が多くなれば鶏肉の弾力性等にも影響し,歯ごたえや食味などが異なってくるであろうことは当業者にとって当然予測されることである。」との審決の認定判断について 審判甲第2号証には,タンパク質の量に関し,孵化後60日以内の採肉鶏は,日令が若く生長の一途で筋肉タンパク質の量が減少していることはないとする原告主張のような記載はないので,単に杜仲葉を与えた鶏の方がタンパク質が多いという審判甲第2号証の記載から,当業者が鶏肉の質も改善されるであろうという予測を行うのが自然であると認められ,結果的にその予測が正しかったことを原告は実験によって確認したのであるから,審決の上記認定判断に誤りがあるということはできない。
(4) 「審判甲第2号証に,杜仲の葉を与えた方は,杜仲の葉を与えない方よりも,タンパク質が多く,組織が若く健全に保たれていて,血液中のコレステロールも少なかったということが記載されている以上,当業者が採肉用の鶏の飼料の添加物として,上記周知事項を考慮して杜仲の葉を採用しようとすることは当業者が容易になし得ることというべきである。」との審決の認定判断について 審決には,肉質の改善がどのようなプロセスを経て行われるかということの分析はないが,審判甲第2号証には,杜仲葉が鶏に対して好ましい作用をすること,すなわち,杜仲葉を食べた方がタンパク質が多く,組織が健全に保たれていたこと,血液中のコレステロールの量が少なかったことが記載されているのであり,また,組織が健全である方が肉質が良いことは当然理解できる事項であって,当業者がそのような作用を持つとされる杜仲葉を添加した飼料を若い採肉鶏に与えると肉質が良くなるであろうと予測することは可能であり,肉質の改善が食味の改善にもつながるであろうということも当然予測できることと認めることができる。したがって,請求項1に係る発明は,審判甲第2号証に記載の発明に基づいて容易になし得るものと認められ,審決の上記認定判断に誤りはない。
原告の主張は,審判甲第2号証には,杜仲葉が老化防止作用を有することのみが開示されているというものであり,甲第25〜第27号証の意見書の記載もこの主張に沿うものであるが,審判甲第2号証に,杜仲の葉を与えた方は,杜仲の葉を与えない方よりも,タンパク質が多く,組織が若く健全に保たれていて,血液中のコレステロールも少なかったということが記載されている以上,これが若い採肉鶏にも作用することは,当業者として当然認識することと認めるべきであって,上記各意見書の記載も採用することができない。なお,本件明細書において,杜仲葉は,鶏肉のタンパク質の代謝を促進するのに不可欠な合成能力を高める効果があることが記載されている(甲第11,第12号証)。原告は,筋肉タンパク質ではなくコラーゲンタンパク質の代謝促進が,杜仲葉の作用であると主張するが,本件明細書においては,コラーゲンタンパク質以外のタンパク質の代謝促進作用を排除していないことからして,原告の主張は理由がない。
(5) 「鶏肉の食味などを調査するのに官能検査を採用して確認することは周知(上記周知例1)であり,請求項1に係る発明は杜仲の葉を採肉用の鶏の飼料の添加物として採用し,60日後にその食味などを上記官能検査により確認したものであって,審判甲第2号証の記載から当業者が採肉鶏についても食味などについても良くなる可能性があること,又は少なくとも食味などに影響があることが当業者に予測される以上,請求項1に係る発明のように60日以内の採肉鶏の飼料の添加物として杜仲の葉を採用することに当業者が格別の困難性を伴ったということはできない。」との審決の認定判断についても,上記(2),(3)の説示に照らせば,そこに誤りがあるということはできない。
(6) 原告は,審判乙第3号証の実験結果(甲第15号証)の試験が生化学的実験方法に従って極めて安全かつ厳格に実施されたものであるとして,この試験に使用された肉片につき「このように長期にわたって冷凍保存された肉片は,その肉質の劣化が進行しているものと推認される」とした審決の認定は誤りであると主張する。
しかしながら,上記実験の肉片に問題がないとしても,請求項1に係る発明が審判甲第2号証に記載の発明から容易になし得たものであり,肉質の改善も審判甲第2号証に記載の発明から予測可能であったことは前示のとおりであるから,比較試験の評価の適否が,審決の結論に影響を及ぼすものではない。
(7) その他,原告が取消事由1,2で主張するところも,上記説示したところによれば,理由がないものに帰する。
2 取消事由3(本件発明2〜4に係る発明の容易想到性の判断の誤りについて) 本件発明2〜4に関する原告の主張は,請求項1に係る発明が審判甲第2号証に記載の発明から容易になし得たものではないことを根拠とするものであるが,それが誤りであることは前示したとおりである。
3 取消事由4(手続違背について) (1) 被告の申し立てない理由について審理をしたとの主張(特許法153条の規定違反)について 周知例1,2は普通に知られていたことについての単なる事例であることは,前示のとおりであり,周知例1,2が新たな公知例であることを前提とする取消事由4の(1)の原告の主張は理由がない。
(2) 原告に反論の機会を与えなかったとの主張(特許法134条1項の規定違反)について 原告が主張する上申書における主張は,原告の提出した試験結果に対する意見であり,新たな無効理由の主張ではないから,審決に際し,特許権者である原告に対して上記上申書に対する意見が求められなかったとしても,そこに手続違背の違法があるということはできない。
(3) 審理不尽との主張について 原告が主張する審理不尽の違法は,要するに,請求項1〜4に係る発明は審判甲第1〜4号証記載の発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであるとした審決の判断に誤りがあるとするものである。そこに原告主張の誤りがないことは,上記各説示のとおりであるから,審理不尽に関する原告の主張も理由がない。
結論
以上のとおり,原告主張の審決取消事由は理由がないので,原告の請求は棄却されるべきである。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 塩月秀平
裁判官 古城春実
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