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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成11ワ12586特許権侵害差止等請求事件 平成13ワ3381特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成14ワ11630損害賠償請求事件 判例 特許
平成12ワ17298損害賠償等請求事件 判例 特許
平成11ワ5104特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成14ワ10511特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
関連ワード 確実性 /  製造方法 /  新規性 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  技術常識 /  発明の詳細な説明 /  実質的に同一 /  実施料相当額 /  権利の濫用(権利濫用) /  存続期間 /  参酌 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  加工 /  構成要件 /  差止請求(差止) /  侵害 /  損害額 /  販売数量(販売数) /  実施料 /  実施権 /  専用実施権 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 14年 (ワ) 17983号 特許権侵害差止等請求事件
原告 シロウマサイエンス株式会社
原告A
上記両名訴訟代理人弁護士 渡邊敏
同訴訟復代理人弁護士 森利明
同補佐人弁理士 平山洲光
同 菊池武胤
同 中野圭二
被告 天龍化学工業株式会社
訴訟代理人弁護士 中本勝
同 藤本卓司
同 緒方賢史
補佐人弁理士 石井暁夫
同 東野正
同 西博幸
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2004/04/14
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告は,別紙イ号物件目録(原告)記載のプラスチック製インジェクション容器を製造,販売,使用又は販売のため展示してはならない。
2 被告は,その本店,営業所及び工場に存する前項の物件並びにその半製品及び仕掛品を廃棄し,同物件の製造に必要な金型等の製造設備を除去せよ。
3 被告は,原告らに対して,2370万円及びこれに対する平成14年9月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は,プラスチック製インジェクション容器の製法についての特許権を有する原告A及び同特許権についての専用実施権を有する原告シロウマサイエンス株式会社(以下「原告シロウマ」という。)が,プラスチック製インジェクション容器を製造,販売している被告に対して,同容器の製造方法が上記特許権を侵害するとして,同製品の製造,販売等の差止めと損害賠償等を求めている事案である。
1 争いのない事実等 (1) 原告Aは,以下のとおりの特許権(以下「本件特許権」といい,その発明を「本件発明」という。)を有しており,原告シロウマは,本件特許権について専用実施権の設定を受け,平成14年9月26日,その登録がされた(甲1ないし3)。なお,本件特許権は,平成15年10月31日の経過により,その存続期間が終了した。
特許番号 第1870421号 発明の名称 プラスチック製インジェクション容器の製法 出願日 昭和58年10月31日 登録日 平成6年9月6日 特許請求の範囲 別紙特許公報写しの該当欄記載のとおり(以下,同公報掲載の明細書を「本件明細書」という。) (2) 本件発明の構成要件を分説すると,次のとおりとなる。
A 小径のインジェクション口部3の外周に設けたネジ部4と, B 該インジェクション口部3に絞り板部2を介して連なる直径に対して肉厚の薄い大径の容器筒体1の外周に設けた把持用凹部5とを有する容器筒体1の C 前記ネジ部4と把持用凹部5とを型決めする外型材と, D 容器筒体1内に設けた抜き勾配のない中子との間に溶融プラスチックを射出し,溶融プラスチックの固化後, E 容器筒体1の前記ネジ部4と把持用凹部5とを外型材で支持した状態で容器筒体1内に設けた抜き勾配のない中子を抜き取ることを特徴とする F プラスチック製インジェクション容器の製法 (3) 被告は,プラスチック製インジェクション容器を製造,販売している(以下,被告の製造販売するプラスチック製インジェクション容器を「被告製品」といい,その製造方法を「被告製法」という。なお,後記のとおり,被告製品の構成及び被告製法については,一部争いがある。)。 (4) 被告製法は,本件発明の構成要件A及びFを充足する。
2 争点 (1) 被告製法及び被告製品の構成はどのようなものか。
(2) 被告製法は本件発明の構成要件を充足するか。
ア 被告製法は,本件発明の構成要件B,C,Eの「把持用凹部」を具備するか。
イ 被告製法は,本件発明の構成要件C,Eの「外型材」を具備するか。
ウ 被告製法は,本件発明の構成要件Eの「容器筒体の前記ネジ部と把持用凹部とを外型材で支持した状態で・・・中子を抜き取る」を具備するか。
エ 被告製法における「中子」は,本件発明の構成要件D,Eの「抜き勾配のない中子」に当たるか。
(3) 本件特許には,明らかな無効理由が存在するか。
(4) 原告らの損害額はいくらか。
3 争点に対する当事者の主張 (1) 争点(1)について (原告らの主張) 被告製法及び被告製品の各構成は,それぞれ別紙イ号方法目録(原告)及びイ号物件目録(原告)記載のとおりである。
被告は,イ号物件目録(原告)図1の容器筒体1の一次製品にノズル14とプランジャー10を装着した被告製品を製造,販売している。被告製品のうち,ノズル14とプランジャー10を装着していないものは半製品である。
(被告の反論) 被告製法及び被告製品の各構成は,それぞれ別紙イ号方法説明書(被告)及びイ号物件説明書(被告)記載のとおりである。
被告は,被告製品をユーザーに出荷するに際しては,容器とプランジャーは分離して出荷しており,プランジャーはユーザーの工場においてシーリング剤を充填してから容器に装着される。したがって,シール剤を充填していない容器にプランジャーが装着されている態様は存在しない。
(2) 争点(2)ア(構成要件B,C,Eの「把持用凹部」)について (原告らの主張) 被告製品のうちの,割り成形部6のテーパ部6cと略平行部6aが本件発明の「把持用凹部」に該当する。原告が,富山県工業技術センター保有の表面形状測定機によって,接触型であるマール社製の「ペントメータコンセプト」を使用して被告製品を測定したところ,上記凹部の深さは約0.2ミリメートル前後であった(甲10の1)。このように0.2ミリメートルの深さを有する凹部は,抜き勾配のない中子を抜くに際しての抵抗を支える支持力を有している。
この点について,被告は,上記凹部の深さは0.1ミリメートル以下である旨主張するが,被告の測定は不正確であって,これを前提とすることはできない。
したがって,被告製法は,各構成要件の「把持用凹部」を具備する。
(被告の反論) ア 各構成要件における「把持用凹部」の意義 本件発明においては,抜き勾配のない中子を抜くに際しての抵抗は,把持用凹部のみによって支持されている。したがって,各構成要件の「把持用凹部」は,中子の抜き抵抗に抗して,容器が移動しないように保持できる深さ,すなわち,外型材と噛み合えるだけの深さのあるものに限定されるものと解すべきである。
イ 対比 被告製品における6aの凹部の深さは0.1ミリメートルより小さいから,抜き勾配のない中子を抜くに際しての抵抗を支える支持力はない。この点,原告は,被告製品の平行部6aと一体成形部7との間の半径の寸法差は0.2ミリメートルであると主張する。しかし,公的な専門機関である奈良県工業技術センターにおける測定結果によれば,上記の寸法差は,平均で0.1ミリメートル以下であった(乙29ないし31)。
仮に,被告製品の一体成形部7と平行部6aとの間に0.2ミリメートルの半径差があったとしても,中子の後退初期における割り成形部の収縮を考慮すれば,その程度の段差では中子の抜き抵抗を支持することは到底できない。
したがって,被告製法は,各構成要件の「把持用凹部」を具備しない(なお,被告製品において6aの凹部を設けたのは,美感向上の目的のためである。)。
(3) 争点(2)イ(構成要件C,Eの「外型材」)について (原告らの主張) 被告製法は,各構成要件の「外型材」を具備する。
(被告の反論) ア 各構成要件における「外型材」の意義 本件明細書には,容器筒体の外面を形成する部材として,「外型材」と記載され,それ以外の限定はないこと,外型材が容器のネジ部と把持用凹部とを型決めする割り型であることからすると,各構成要件の「外型材」とは,一つ(一対)の外型材によって容器筒体の外面の全部を形成するものであると解すべきである。
イ 対比 被告製法における外型は,割り式外型と一体式外型とから成っているから,各構成要件の「外型材」とはいえない。
したがって,被告製法は,各構成要件の「外型材」を具備しない。
(4) 争点(2)ウ(構成要件Eの「容器筒体の前記ネジ部と把持用凹部とを外型材で支持した状態で・・・中子を抜き取る」)について (原告らの主張) 被告製法は,本件発明の「容器筒体の前記ネジ部と把持用凹部とを外型材で支持した状態で・・中子を抜き取る」を具備する。
この点,被告は,被告製法では,中子の抜きに対する抵抗は支持体11によって支持している旨主張する。しかし,容器筒体は長手方向に大きく収縮するから,容器本体から中子を抜く際は,容器筒体の収縮により支持体と容器筒体の端面間には隙間が生じており,容器筒体の端部が支持体に接合することはなく,したがって,支持体によって容器筒体を支持することはできない。
(被告の反論) 被告製法では,中子の抜きに対する抵抗は,中子に抜き勾配を設けると共に容器筒体1の端面に当たっている支持体11によって支持されているのであるから,被告製法は,「容器筒体の端面を支持体で支持した状態で」中子を抜き取るものである。
この点,原告は,容器筒体から中子を抜くまでに容器筒体は収縮しているから,容器筒体を支持体で支持できない旨主張する。しかし,被告製法においては,容器筒体は型抜きされてから冷却されるのであり,金型に嵌っている状態では相当の高温であること,型抜き前は中子の規制を受けて収縮できない状態であることから,中子を抜く工程では容器筒体に成形収縮は殆ど生じていない。原告の上記主張は失当である。
したがって,被告製法は,各構成要件の「容器筒体の前記ネジ部と把持用凹部とを外型材で支持した状態で・・中子を抜き取る」を具備しない。
(5) 争点(2)エ(構成要件D,Eの「抜き勾配のない中子」)について (原告らの主張) ア 各構成要件の「抜き勾配のない中子」の意義 各構成要件の「抜き勾配のない中子」とは,抜き勾配が全くない中子のみを指すのではなく,射出成形の技術常識に照らして,抜き勾配とはいえない程度の僅かな勾配のある中子を含む趣旨と理解すべきである。そして,射出成形の抜き勾配に関する各文献(甲8の1ないし4)には,技術上採用し得る最小抜き勾配は0.5度である旨の記載があることから,抜き勾配が0.5度未満の中子は,「抜き勾配のない中子」に含まれる。
イ 対比 被告製法における中子の先端と基端の寸法差について,被告の主張を前提としても,その勾配は0.055度から0.054度の範囲であり,射出成形の技術上の最小抜き勾配である0.5度の10分の1以下の勾配があるにすぎない。
したがって,被告製法における中子の勾配は技術上無視しうる程度の勾配であり,被告製法における中子は「抜き勾配のない中子」に当たる。
(被告の反論) ア 各構成要件の「抜き勾配のない中子」の意義 各構成要件の「抜き勾配のない中子」とは,以下の理由から,その先端と基端とで寸法差が全くないストレートの中子を指すと解すべきである。
(ア) 特許請求の範囲の「抜き勾配のない中子」という文言からすれば,上記のように解するのが相当である。
(イ) 本件明細書の発明の詳細な説明欄には,発明の効果として「筒体1の内径を変えることなく」と記載されている。その先端と基端で寸法差のない中子を用いない限り,この効果を満たさない。
(ウ) 原告は,射出成形の抜き勾配に関する各文献には,技術上採用し得る最小抜き勾配は0.5度である旨の記載がある旨主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。@まず,乙16の3,37,38,甲8の1及び2などの文献からは,射出成形の技術分野において,一般的な抜き勾配より小さい勾配であっても,抜き勾配として理解されていることが分かる。Aまた,原告がその根拠として挙げている各文献における「抜き勾配」は,突き出しピンや突き出し板を使用して型抜きする場合の角度を意味する。
これに対して,本件において問題とされているシーリング剤用の容器の製法は,突き出しピンを使用した一般的な射出成形法とは異なり,突き出しピンを使用せずに中子を直接に抜く型抜き方法であり,このような場合の抜き勾配は,突き出しピンを使用した通常の型抜き方法に比べてはるかに小さくてもよい。Bさらに,原告の主張する0.5度の抜き勾配を被告製品に当てはめると,中子の先端と基端との間の寸法差は,直径差で約3.8ミリメートルとなるが,このような抜き勾配を設けない中子が,すべて「抜き勾配のない中子」に含まれると解することはあまりにも技術常識からかけ離れた解釈である(被告製品において,そのような直径差を設けると,プランジャーの弾性変形許容量を遥かに超えるため,シーリング剤の押し出し途中でプランジャーは停止してしまう。)。
イ 対比 被告製法における中子は,先端が基端よりも直径で約0.4ミリメートル小径となっている。
被告製法においては,プランジャーは僅かに変形するため,容器筒体には若干の内径差が存在してもよい点に着目し,プランジャーの動きの確実性と成形の容易性・確実性とを両立させるべく,直径差で約0.4ミリメートルの抜き勾配を設けたのである。
したがって,被告製法における中子は「抜き勾配がない中子」とはいえない。
(6) 争点(3)について (被告の主張) 本件特許には,以下のとおり,明らかな無効理由が存在するから,本件特許権に基づく権利行使は権利の濫用に当たる。
新規性欠如 本件特許の出願日以前である昭和55年4月15日に発行された米国特許第4197967号明細書(乙16の1。以下「米国967号明細書」という。)は,「押し出し式カートリッジ用ピストン-シリンダーユニット」に関するもので,ピストン(プランジャ)が入る容器筒体1,絞り板部2,ねじ式の口部から成るとともに,筒体1のうち絞り板部2の近くに1条の環状凹部Aを形成しているプラスチック製の容器が明記されている。
米国967号明細書には,容器の製造方法は記載されていないが,米国967号明細書に接した当業者は,同公報に記載されている容器は射出成形法によって製造されていると把握すること,同容器の製造方法については,「外型材で把持用凹部を把持した状態で中子で引き抜くこと」,「環状凹部を設けることによって中子の抜き勾配をなくせること」を把握できることから,同公報には,本件発明の構成が実質的に記載されている。
したがって,本件発明は新規性を欠いている。
進歩性欠如 (ア) 米国967号明細書記載の発明 米国967号明細書記載の発明により,当業者が製品を製造する場合には,外型材で環状凹部を把持した状態で中子を抜くという工程を経ること,及び環状凹部を外型材で把持することによって中子の抜き勾配をなくせることは,容易に想到できる。したがって,本件発明は米国967号明細書に基づいて容易に発明できたものであり,進歩性を欠く。
(イ) 354号公報と259号公報との組合せ a 特公昭54-22354号公報(乙37。以下「354号公報」という。)には,「ネジ部とフランジと絞り板部と容器筒体とを備えた容器の製造方法において,外型枠11と中子1との間の空間に溶融樹脂を充填してから,中子を後退させることによって型抜きする」という発明が記載されている。そして,354号公報の6欄1ないし2行目の「主体胴部が形成品として精度が高い均一強度の肉厚になる」との記載は,「主体胴部は肉厚が全体として均一になっている」ことと同義であるから,354号公報においては,主体胴部の内面を形成する中子14は必然的に抜き勾配のないものとなる。
そうすると,本件発明と354号公報記載の発明とは,本件発明は中子を抜くに際しての容器の「把持用凹部」を外型材で把持しているのに対して,354号公報では「フランジ」を外型材で把持している点において相違する。
b 他方,実公昭57-13259号公報(乙16の3。以下「259号公報」という。)は,筒状容器の射出成形に関する技術に係るものであるが,同公報には,「インキタンク1の端の環溝13中にインキタンク1製造の際にインキタンク1を射出成形工具から引き出すためのクランプジョウが係入する。驚くべきことに,この種の公知の射出成型法によってインキタンク1の内壁のテーパーを,追従ピストン5の完璧な機能が保証される程度に小さく保持することが達成される。」(4欄14ないし20行)との記載があり,また,同公報のインキタンクにおいて,環溝13を備えている部分を成形するためには割り型が必要であることは金型業者が何らの推考もなしに想起し得ることであるから,同公報には,「インキタンクの環溝を外型材で把持した状態で抜き勾配が殆どない中子を抜く」という技術が開示されている。
c したがって,本件発明は,354号公報記載の発明に259号公報記載の技術を組み合わせることによって容易に想到できたといえ,本件発明は進歩性を欠く。
ウ 記載要件不備 本件発明に係るプラスチック製インジェクション容器の製法は,外型について,容器筒体のごく一部を成形するための割り式外型と,容器筒体の大部分を成形するための一体式外型とで形成されることが必須である。しかし,本件明細書及び図面には,外型材の全体が割型で形成されているとしか推測できないような記載がされている。したがって,本件明細書及び図面には,当業者が実施できる程度に発明が記載されていないというべきである。本件特許には改正前の特許法36条3項に違反する無効理由が存在する。
エ 先後願違反 実用新案登録第1975468号の実用新案(以下「本件実用新案」という。)に係る考案と本件発明とはカテゴリーが相違するだけであり,実質的に同一である。
したがって,本件特許には特許法39条2項規定の無効理由が存在する。
(原告らの反論) ア 米国967号明細書について 米国967号明細書には,中子に関する記載,容器の製造方法についての記載はないから,同公報を理由に本件発明が新規性又は進歩性を欠いているということはできない。
イ 354号公報と259号公報との組合せについて (ア) 354号公報には,本件発明の「抜き勾配のない中子」,「直径に対して肉厚の薄い大径の容器筒体」,「把持用凹部」の記載がなく,354号公報に記載された技術と本件発明とでは,上記の各点で相違する。
(イ) 259号公報に記載された技術は,絞り板部が周縁部分ではフランジ状になっている点,及び環溝13の深さはインクタンク1の側面部の厚さを超えている点で,本件発明と相違する。
(ウ) したがって,本件発明は,354号公報記載の発明及び259号公報記載の技術の組合せにより,当業者が容易に発明することができたということはできない。
ウ 記載要件不備について 争う。
エ 先後願違反について 本件発明と本件実用新案に係る考案とは実質的に同一とはいえない。
(7) 争点(4)について (原告らの主張) ア 原告Aと原告シロウマとは,平成14年7月22日に,本件特許権について,専用実施権設定契約を締結し,同年9月26日に,その旨の専用実施権設定の登録がされた。
また,原告Aは,原告シロウマに対して,同年7月22日,本件特許権に基づく損倍賠償請求権のうち過去3年分の請求権を譲渡し,同年10月7日の第1回口頭弁論期日において,その旨被告に通知した。
イ(ア) 特許法102条2項による請求(主位的請求) 被告は,被告製品を,単価20円で,平成6年5月から平成11年12月までの間に合計4080万本,平成12年1月から平成15年8月までの間に合計2760万本販売した。
そして,被告の利益率は5パーセントであると推測されるから,被告が被告製品を販売したことにより得た利益は6840万円(6840万本×20円×0.05)である。
原告らは,そのうち2370万円を請求する。
(イ) 特許法102条3項による請求(予備的請求) 本件発明の実施料率は5パーセントが相当であるから,実施料相当額は,6840万円(6840万本×20円×0.05)である。
原告らは,そのうち2370万円を請求する。
ウ 被告は,被告製品の単価は,容器本体の価格からノズルとプランジャーの価格を控除した価格であると主張する。
しかし,ノズルは容器のネジ部を利用してねじ込むものであり,プランジャーは容器の中の内容物を外に押し出すために必要な器具であり,両者はともに,容器の利用に不可欠のものであるから,被告の上記主張は失当である。
(被告の認否・反論) ア 原告らの主張のうち,平成12年1月以降の被告製品の販売数量が合計2760万本であったことは認める。
イ 被告製品の単価は約17円であったが,この価格には,被告製品の容器本体のみでなくノズルとプランジャーや,絞り板部の内面に容着された口部を塞ぐためのアルミ箔の価格も含まれているから,原告の損害額の算定の基になる容器本体の単価としては,上記販売価格から,上記のノズル,プランジャー及びアルミ箔の価格及び容着コストを控除しなければならないが,そのようにして算定された単価は8ないし9円である。
当裁判所の判断
1 被告製法における「中子」は,構成要件D,Eにいう「抜き勾配のない中子」といえるか(争点(2)エ) (1) 各構成要件の「抜き勾配のない中子」の意義 ア 「抜き勾配」の一般的な意味及び機能 証拠(甲8の1ないし4,乙44)によれば,「抜き勾配」とは,射出成形において,金型キャビティから成形品を離脱させるとき,又は成形品から金型コアを離脱させるときに生じる抵抗を減少させて,離脱を容易にする目的で,成型品や金型コアに設けられる勾配のことをいうものと認められる。本件明細書(手続補正後のもの。以下同じ。)の「発明の詳細な説明」欄には,本件発明にいう「抜き勾配」の意義をこれと異なる意味に解すべき記載はないから,本件発明の「抜き勾配」とは,「抜き抵抗の減少を図る目的で設けられた勾配」,又は「抜き抵抗の減少をもたらす効果を有する勾配」の意味であると解すべきである。
イ 本件明細書の記載 本件明細書には,「本発明はプラスチック製インジェクション容器の製法に関する。インジェクション容器は,従来から,直径50o,長さ250oに対し,肉厚1o程度の比較的に肉厚の薄い同一内径,同一外径の細長い容器筒体からなり,筒体内部に密封状態で収納したシリコン等の空気に触れると硬化する内容物を,容器筒体の後部開口にピストン式に嵌合した中蓋で押圧して,容器筒体の先端部に絞り板部を介して設けた小径のインジェクション口部から吐出させるものである。」(1欄15行ないし25行),「射出成形加工では,中子と外型枠との間に溶融プラスチックを射出し,固化後に中子を抜き取るのであるが,この場合,溶融プラスチックは,例えば,ポリエチレンで約2%程度固化時に収縮するように,固化時に収縮して中子に密着する性質を有するから,本発明に係るインジェクション容器のように,同一内径及び同一外径で細長くて肉厚の薄い容器筒体の一端部に絞り板部を介して小径のインジェクション口部を設けたものを,外型枠でインジェクション口部をその外周ネジ部で支持して,容器筒体が収縮して密着した中子を抜き取ろうとすると,支持力の働かない絞り板部に引張力が集中して,インジェクション口部が取れてしまったり,筒部に割れや変形が生じたりして満足なプラスチック製インジェクション容器が得られない問題があった。」(2欄12行ないし3欄1行),「容器筒体1は,その外周を外型材によって,インジェクション口部3のネジ部4と,容器筒体1の把持用凹部5を支持されるから,容器筒体1内から抜き勾配のない中子を抜き取ったとしても,絞り板部2には引張力が加わらず,中子を,第1図上,右方に円滑且つ簡単に引き抜くことができ,そのとき,インジェクション口部3が取れたり,絞り板部2と共に筒体1に割れや変形を生じることはない。」(4欄13行ないし21行),「成形加工時に,外型材と,抜き勾配のない中子との間に溶融プラスチックを射出することによって,小径のインジェクション口部3の外周のネジ部4と共に,(中略)肉厚を薄くする把持用凹部5を同時に成形することができることによって,前記容器筒体1の前記ネジ部4と把持用凹部5とを型決めする外型材は,成形型材として機能し,同時に,そのまま成形直後に容器筒体を筒体長手方向に沿った引張力に抗して確実に支持するインジェクション容器の中子抜き取り用の外周支持枠材としての機能を備えることととなるから,抜き勾配のない中子を抜き取るとき,従来のように,絞り板部に引張力が集中して加わらないので,インジェクション口部が取れたり,筒部に割れや変形が生じることなく,溶融プラスチックの固化直後に,抜き勾配のない中子をそのまま抜き取ることができ」(手続補正書右欄3行ないし19行)との各記載がある(甲1)。
ウ 小括 上記のとおり,本件明細書の「発明の詳細な説明」欄には,従来技術及び発明が解決しようとする課題として「本発明に係るインジェクション容器のように,同一内径及び同一外径で細長くて肉厚の薄い容器筒体の一端部に絞り板部を介して小径のインジェクション口部を設けたものを,外型枠でインジェクション口部をその外周ネジ部で支持して,容器筒体が収縮して密着した中子を抜き取ろうとすると,支持力の働かない絞り板部に引張力が集中して,インジェクション口部が取れてしまったり,筒部に割れや変形が生じたりして満足なプラスチック製インジェクション容器が得られない問題があった。」との記載がされている。
本件発明は,このような課題の解決を目的とするものであるから,このような課題の存しない容器筒体は,そもそも対象とならないのであって,このような課題の存する「同一内径及び同一外径で細長くて肉厚の薄い容器筒体」のみを対象とすることは明らかである。特に「抜き勾配のない中子」の意味の確定との関係では,容器筒体の内径の寸法差が重要になるが,この点,本件発明は,「インジェクション容器の容器筒体の内径がすべての箇所において同一であり,実質的に全く勾配がない容器筒体」を,その対象としていることは明らかである。
本件発明は,容器筒体の内径が全く同一であるインジェクション容器を対象として,把持用凹部を設けることにより,中子を抜く際に容器に生じる引張力を同把持用凹部でも支持させて,インジェクション口部が取れたり,筒部に割れや変形が生じるという課題を解決したものである。
したがって,構成要件D,Eの「中子」は,その径がすべての箇所において同一であり,勾配が全くないものを指すと解するのが相当である。以上のとおり,本件明細書の「発明の詳細な説明」欄の記載を参酌すれば,本件発明の「抜き勾配のない中子」とは,製造誤差による場合を除き,勾配が実質的に全く存在しない中子を意味するものと解すべきである。
これに対して,原告は,射出成形の抜き勾配に関する各文献(甲8の1ないし4)の記載を根拠に,射出成形の技術常識では,抜き勾配は最小0.5度以上必要であるので,「抜き勾配のない中子」とは,0.5度未満の勾配のある中子を含むと主張する。しかし,抜き勾配の上記値は,あくまでも,一般的な目安にすぎないものであり,中子に勾配が存在すれば,抜くことを容易にする効果があることは明らかであるから,この点の原告の主張は採用できない。
(2) 対比 証拠(乙12の1及び2,20)並びに弁論の全趣旨によれば,被告製法においては,容器筒体の長さは216ミリメートル,中子の直径は約48ミリメートルであることが認められ,中子の先端は基端よりも直径で約0.4ミリメートル小径となっており(争いがない。),弁論の全趣旨によれば,中子には0.055度ないし0.054度の勾配が存在することが認められる。
そして,弁論の全趣旨によれば,被告製法における中子に設けられた勾配は,中子の抜き抵抗を減少させる目的で設けられたものと推認できる(本件全証拠によっても,被告製法における中子の勾配が上記以外の目的で設けられたことを窺わせる事実は認められない。)から,上記勾配は製造誤差により生じたものではなく,また,中子の勾配が極めて僅かであっても当該中子を成形物から離脱させる際の抵抗は減少するから,被告製法における中子は,上記の勾配を設けたことにより抜き抵抗が減少したものと認められる。
したがって,被告製法における中子は本件発明の「抜き勾配のない中子」には当たらないというべきである。
2 以上のとおりであるから,本件特許に明らかな無効理由が存在するか否か等の争点について判断するまでもなく,原告らの請求は理由がないから,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 榎戸道也
裁判官 佐野信
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