審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成28ワ10147 職務発明対価等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成30ネ10004 職務発明対価請求控訴事件 | 判例 | 特許 |
平成25ワ30271 職務発明対価金請求事件 | 判例 | 特許 |
平成29ネ10099 職務発明対価等請求控訴事件 | 判例 | 特許 |
平成29ワ393 損害賠償請求事件 | 判例 | 特許 |
元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
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事件 |
平成
29年
(ワ)
38795号
民事訴訟請求事件
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5原告A 被告日本電気株式会社 同訴訟代理人弁護士 ア仁 同 羽田長愛 |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2018/02/28 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
10 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
被告は,原告に対し,1000万円を支払え。 15 第2 事案の概要等 1 事案の要旨 本件は,被告の従業員であった原告が,被告が保有していた特許第286997 8号の特許(以下「本件特許」という。)に関し,原告は本件特許に係る発明(本 件特許の願書に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1記載の発明。以下「 本20 件発明」という。)の発明者であるとして,被告に対し,特許法35条(平成16 年法律第79号による改正前のもの。以下同じ。)3項の規定による相当の対価の 支払請求権(以下「本件対価請求権」という。なお,原告は,特許法35条1項か ら4項までの条文に書かれている「相当の対価」を請求すると主張するところ,特 許法35条において「相当の対価」との文言が使用されているのは同条3項のみで25 ある。)に基づき,1000万円の支払を求めた事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲の証拠等により容易に認められる 1 事実) ? 当事者 原告は,昭和59年4月から昭和63年6月までの間,被告に雇用されていた。 ? 本件特許 5 被告は,次の内容により特定される本件特許の出願人であり,特許権者であった (甲1ないし4,弁論の全趣旨)。 特 許 番 号 特許第2869978号 登 録 日 平成11年1月8日 出 願 番 号 特願昭63-24146810 出 願 日 昭和63年9月26日 公 開 番 号 特開平2-87628 公 開 日 平成2年3月28日 発 明 の 名 称 半導体装置 発 明 者 原告15 特許請求の範囲 【請求項1】第1の導電層と,前記第1の導電層を覆う第1の層間絶縁膜と, 前記第1の層間絶縁膜上に設けられ前記第1の導電層上に重ねて敷設された 第2の導電層と,前記第2の導電層を覆う第2の層間絶縁膜と,前記第2の 層間絶縁膜上に設けられ前記第1及び第2の導電層の積層部においてこれら20 を横切って敷設された第3の導電層とを備える半導体装置であって,前記第 1の層間絶縁膜は,前記第1の導電層の上面部を覆う第1の部分と前記第1 の導電層の側面部を覆う第2の部分とを少なくとも有し,前記第2の導電層 は,前記第1の層間絶縁膜の前記第1の部分上に設けられた第3の部分と前 記第1の層間絶縁膜の前記第2の部分上に設けられた第4の部分とを少なく25 とも有し,前記第2の導電層の前記第3の部分の膜厚は,前記第2の導電層 の前記第4の部分の膜厚よりも薄いことを特徴とする半導体装置。 2 ? 出願補償金及び登録補償金の支払 被告は,本件発明につき,原告に対し,出願補償金及び登録補償金を支払った。 3 争点 ? 本件発明に係る相当の対価の額は幾らか(争点1) 5 ? 本件対価請求権は時効により消滅したか(争点2) 4 争点に対する当事者の主張 ? 争点1(本件発明に係る相当の対価の額は幾らか)について 【原告の主張】 本件特許に係る特許公報(甲1ないし4),原告が作成したメモ(甲5)及び特10 許法の法文(甲7)によれば,被告は,平成11年1月8日から平成14年1月8 日まで,本件発明を実施していたといえるところ,このことなどに照らせば,本件 発明につき原告が受けるべき相当の対価の額は,1000万円である。 【被告の主張】 否認する。なお,被告が本件発明を実施した事実はない。 15 ? 争点2(本件対価請求権は時効により消滅したか)について 【被告の主張】 ア 本件対価請求権は,特許法35条3項に基づくものであり,その消滅時効期 間は10年間である。 イ 被告は,本件発明を実施していないため,原告に実績補償金を支払った事実20 はないが,仮に,原告が主張するとおり,被告が本件発明を平成11年1月8日か ら平成14年1月8日まで実施していたとしても,被告は,当時,従業員がした発 明の実施の有無を毎年7月頃に調査し,実施が確認できた場合には実績補償金を当 該年の12月末日までに支払うこととされていたから(乙1),原告は,平成14 年12月31日には,実績補償金の支払を請求することができた。 25 したがって,本件対価請求権の消滅時効の起算日は,遅くとも平成14年12月 31日であるから,原告が本件訴えを提起した平成29年11月15日には,本件 3 対価請求権について消滅時効が完成している。 ウ 被告は,本件の第1回口頭弁論期日において,原告に対し,上記消滅時効を 援用する旨の意思表示をした。これにより,本件対価請求権は時効により消滅した。 【原告の主張】 5 ア 原告の預貯金通帳(甲6)によれば,被告が平成14年12月末日に実績補 償金を支払ったとの事実はない。 イ 原告は,平成29年11月13日に本件の訴状を作成して提出しているから, 消滅時効は成立していない。 |
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当裁判所の判断
10 1 争点2(本件対価請求権は時効により消滅したか)について ? 特許法35条3項は,「従業者等は,契約,勤務規則その他の定により,職 務発明について使用者等に特許を受ける権利…を承継させ…たときは,相当の対価 の支払を受ける権利を有する。」と規定しているから,同条項に基づく相当の対価 の支払請求権は,原則として,特許を受ける権利を承継させたときに発生し,その15 時点から,権利を行使することができることになり,その時点が本件対価請求権の 消滅時効の起算点となるものというべきである。もっとも,勤務規則その他の定に, 使用者等が従業者等に対して支払うべき対価の支払時期に関する条項がある場合に は,その支払時期が相当の対価の支払を受ける権利の消滅時効の起算点となると解 される(最高裁平成13年(受)第1256号同15年4月22日第三小法廷判決20 ・民集57巻4号477頁参照)。 これを本件についてみるに,前記前提事実(第2,2)及び弁論の全趣旨によれ ば,原告が本件発明をしたこと,本件発明が職務発明(性質上,被告の業務範囲に 属し,かつ,当該発明をするに至った行為が原告の当時の職務に属するものである 発明)であることが認められる上,被告が原告に出願補償金及び登録補償金を支払25 ったこと,原告が訴状に「原告が被告に所属していた…間に書いた特許」と記載し ていることなどを総合すると,原告は,遅くとも被告による本件特許の出願日(昭 4 和63年9月26日)までに,被告に対し,本件発明につき特許を受ける権利を承 継させたことが認められる。 そして,証拠(乙1)によれば,被告は,少なくとも平成11年から平成12年 にかけて,毎年7月頃には職務発明の実施の有無を調査し,実施が確認できた場合 5 にはその年の12月中に実施補償金を支払っていたことが認められ,弁論の全趣旨 によれば,この取扱いは,被告の勤務規則その他の定に基づくものであって,平成 14年においても継続していたものと推認することができる。そうすると,仮に, 原告が主張するとおり,被告が平成11年1月8日から平成14年1月8日まで本 件発明を実施したとの事実が認められたとしても(原告が提出した証拠〔甲1ない10 し5,7〕によっても,被告が本件特許につき第1年度から第3年度までの特許料 を納付したことがうかがわれるのみであって,被告が本件発明を実施したとの事実 を認めるには至らないが,この点は,ひとまず措く。),原告は,遅くとも平成1 4年12月末日までには,本件対価請求権を行使することができたこととなる。 特許法35条3項の規定による相当の対価の支払を求める請求権は,従業者等と15 使用者等との衡平を図るために法が特に設けた債権であるから,その消滅時効期間 は10年と解すべきである(民法167条1項)ところ,上記説示したところによ れば,仮に,本件発明に係る相当の対価であって,未払のもの(不足額)が存在し ていたとしても,原告が本件訴訟を提起した時点(当庁が訴状を受け付けた平成2 9年11月15日)より前に,消滅時効が完成していたことは明らかである(民法20 166条1項,167条1項)。 したがって,被告が本件の第1回口頭弁論期日(平成30年1月15日)に上記 時効を援用したこと(当裁判所に顕著な事実)により,本件対価請求権は,時効に より消滅したというべきである。 ? この点に関し,原告は,原告が平成29年11月13日に本件の訴状を作成25 して提出しているから,時効は成立していないと主張する。 しかし,上記?のとおり,原告が本件訴訟を提起した同月15日時点で,本件対 5 価請求権につき10年の消滅時効期間が経過していたことが明らかであり,このこ とは,原告が本件の訴状を同月13日に作成したとしても,何ら変わるものではな いから,原告の上記主張は,採用することができない。 2 結論 5 以上によれば,その余の争点につき判断するまでもなく,原告の請求には理由が ないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 |