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関連審決 訂正2010-390006
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成29ネ10038 損害賠償請求控訴事件 判例 特許
平成29ネ10089 虚偽事実の告知・流布差止等請求,特許権侵害差止等請求控訴事件 判例 特許
平成29ワ393 損害賠償請求事件 判例 特許
平成29ネ10072 損害賠償請求控訴事件 判例 特許
平成27ワ8736 特許権侵害行為差止等請求事件 判例 特許
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事件 平成 27年 (ワ) 23843号 特許権侵害差止等請求事件
5原告フルタ電機株式会社
同訴訟代理人弁護士 小南明也
被告 有限会社白石海苔機械センター (以下「被告白石」という。)
被告A 10 (以下「被告A」という。)
被告 B商会こと B (以下「被告B」という。)
被告 株式会社共立機械商会 15 (以下「被告共立」という。)
被告ら訴訟代理人弁護士 塩見渉 塩見明
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2017/12/13
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告白石は,別紙物件目録1及び2記載の「生海苔異物除去機」を,譲20 渡し,貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
2 被告白石は,別紙物件目録3記載の「固定リング」を,譲渡し,貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
3 被告白石は,別紙物件目録4記載の「板状部材」又は「ステンチップ」を,譲渡し,貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならな25 い。
4 被告白石は,その保持する別紙物件目録1及び2記載の「生海苔異物1除去機」,同3記載の「固定リング」並びに同4記載の「板状部材」又は「ステンチップ」を廃棄せよ。
5 被告白石は,原告に対し,6181万7048円及びこれに対する平成27年5月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 6 被告Bは,別紙物件目録1及び2記載の「生海苔異物除去機」を,譲渡し,貸し渡し,輸出し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
7 被告Bは,別紙物件目録3記載の「固定リング」を,譲渡し,貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
10 8 被告Bは,別紙物件目録4記載の「板状部材」又は「ステンチップ」を,譲渡し,貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
9 被告Bは,その保持する別紙物件目録1及び2記載の「生海苔異物除去機」,同3記載の「固定リング」並びに同4記載の「板状部材」又は15 「ステンチップ」を廃棄せよ。
10 被告Bは,原告に対し,5122万5180円及びこれに対する平成27年11月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
11 被告共立は,別紙物件目録1及び2記載の「生海苔異物除去機」を,譲渡し,貸し渡し,輸出し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはな20 らない。
12 被告共立は,別紙物件目録3記載の「固定リング」を,譲渡し,貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
13 被告共立は,別紙物件目録4記載の「板状部材」又は「ステンチップ」を,譲渡し,貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならな25 い。
14 被告共立は,その保持する別紙物件目録1及び2記載の「生海苔異物2除去機」,同3記載の「固定リング」並びに同4記載の「板状部材」又は「ステンチップ」を廃棄せよ。
15 被告共立は,原告に対し,3464万1548円及びこれに対する平成27年11月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払5 え。
16 原告の被告白石及び被告Bに対するその余の請求並びに被告Aに対する請求をいずれも棄却する。
17 訴訟費用は,原告と被告白石との間では,これを2分し,その1を原告の負担とし,その余は被告白石の負担とし,原告と被告Aとの間では10 原告の負担とし,原告と被告Bとの間では,これを100分し,その1を原告の負担とし,その余は被告Bの負担とし,原告と被告共立との間では被告共立の負担とする。
18 この判決は,第1項ないし第3項,第5項ないし第8項,第10項ないし第13項及び第15項に限り,仮に執行することができる。
15 事 実 及 び 理 由第1 請求1 被告白石又は被告Aは,別紙物件目録1及び2記載の「生海苔異物除去機」を,譲渡し,貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
20 2 被告白石又は被告Aは,別紙物件目録3記載の「固定リング」を,譲渡し,貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
3 被告白石又は被告Aは,別紙物件目録4記載の「板状部材」又は「ステンチップ」を,譲渡し,貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
25 4 被告白石又は被告Aは,その保持する別紙物件目録1及び2記載の「生海苔異物除去機」,同3記載の「固定リング」並びに同4記載の「板状部材」又は3「ステンチップ」を廃棄せよ。
5(主位的請求)被告白石及び被告Aは,原告に対し,連帯して6181万7048円及びこれに対する平成27年5月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を5 支払え。
(予備的請求)被告白石は,原告に対し,6181万7048円及びこれに対する平成27年5月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6 被告Bは,別紙物件目録1及び2記載の「生海苔異物除去機」を,譲渡し,10 貸し渡し,輸出し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
7 被告Bは,別紙物件目録3記載の「固定リング」を,譲渡し,貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
8 被告Bは,別紙物件目録4記載の「板状部材」又は「ステンチップ」を,譲渡し,貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
15 9 被告Bは,その保持する別紙物件目録1及び2記載の「生海苔異物除去機」,同3記載の「固定リング」並びに同4記載の「板状部材」又は「ステンチップ」を廃棄せよ。
10(主位的請求)被告白石,被告A及び被告Bは,原告に対し,連帯して5146万092020 円及びこれに対する平成27年11月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(予備的請求)被告Bは,原告に対し,5146万0920円及びこれに対する平成27年11月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
25 11 被告共立は,別紙物件目録1及び2記載の「生海苔異物除去機」を,譲渡し,貸し渡し,輸出し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
412 被告共立は,別紙物件目録3記載の「固定リング」を,譲渡し,貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
13 被告共立は,別紙物件目録4記載の「板状部材」又は「ステンチップ」を,譲渡し,貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
5 14 被告共立は,その保持する別紙物件目録1及び2記載の「生海苔異物除去機」,同3記載の「固定リング」並びに同4記載の「板状部材」又は「ステンチップ」を廃棄せよ。
15(主位的請求)被告白石,被告A及び被告共立は,原告に対し,連帯して3464万15410 8円及びこれに対する平成27年11月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(予備的請求)被告共立は,原告に対し,3464万1548円及びこれに対する平成27年11月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
15 16 訴訟費用は被告らの負担とする。
17 仮執行宣言第2 事案の概要1 本件は,発明の名称を「生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置」とする発明に係る特許権(特許番号第3966527号。以下「本件20 特許権」又は「本件特許」といい,特許請求の範囲請求項1,3及び4記載の各発明をそれぞれ「本件発明1」,「本件発明3」及び「本件発明4」といい,これらを併せて「本件各発明」という。)を有する原告が,別紙物件目録1及び2記載の「生海苔異物除去機」(以下,併せて「被告装置」という。)は本件各発明の技術的範囲に属し,また,被告装置の部品である別紙物件目録3記25 載の「固定リング」(以下「本件固定リング」という。)及び同4記載の「板状部材」又は「ステンチップ」(以下「本件板状部材」という。)は本件各発5明の実施品に当たる被告装置の「生産にのみ用いる物」(特許法101条1号)に当たるから,被告らが被告装置,本件固定リング及び本件板状部材(以下,併せて「被告製品」という。)の譲渡,貸渡し又は譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為は本件特許権を侵害する行為であると主張して,被告らに対し,以5 下のとおり請求する事案である。
(1) 被告白石又はその代表者である被告Aに対し,特許法100条1項に基づき,被告製品の譲渡,貸渡し又は譲渡若しくは貸渡しの申出の差止めを求めるとともに,同条2項に基づき,被告製品の廃棄を求め,併せて,@主位的には被告白石及び被告Aに対し,特許権侵害の共同不法行為(被告Aに対し10 ては予備的に会社法429条1項)による損害賠償請求権に基づき,連帯して損害6181万7048円及びこれに対する不法行為の後の日(被告白石に対する証拠保全申立書等の送達の日の翌日)である平成27年5月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,A予備的には被告白石のみに対し,特許権侵害不法行為による損害賠償請15 求権に基づき,上記@と同額の支払を求める(請求の趣旨第1項ないし第5項)。
(2) 被告Bに対し,特許法100条1項に基づき,被告製品の譲渡,貸渡し又は譲渡若しくは貸渡しの申出(被告装置については輸出も含む。)の差止めを求めるとともに,同条2項に基づき,被告製品の廃棄を求め,併せて,@20 主位的には被告白石,被告A及び被告Bに対し,特許権侵害の共同不法行為による損害賠償請求権に基づき,連帯して5146万0920円及びこれに対する不法行為の後の日(本訴状送達の日の翌日)である平成27年11月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,A予備的には被告Bのみに対し,特許権侵害不法行為による損害賠25 償請求権に基づき,上記@と同額の支払を求める(請求の趣旨第6項ないし第10項)。
6(3) 被告共立に対し,特許法100条1項に基づき,被告製品の譲渡,貸渡し又は譲渡若しくは貸渡しの申出(被告装置については輸出も含む。)の差止めを求めるとともに,同条2項に基づき,被告製品の廃棄を求め,併せて,@主位的には被告白石,被告A及び被告共立に対し,特許権侵害の共同不法5 行為による損害賠償請求権に基づき,連帯して3464万1548円及びこれに対する不法行為の後の日(本訴状送達の日の翌日)である平成27年11月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,A予備的には被告共立のみに対し,特許権侵害不法行為による損害賠償請求権に基づき,上記@と同額の支払を求める(請求の趣旨第1110 項ないし第15項)。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨により認定することができる事実)(1) 当事者ア 原告は,海苔製造加工に必要とする機械の製造販売業者であり,その15 他各種農業用及び各種水産用機械器具並びに各種風水力機械の製造,販売,施工等を目的とする株式会社である。
イ 被告白石は漁業用機器及び資材の販売並びに修理等を目的とする株式会社(特例有限会社)であり,被告Aはその代表取締役である。
被告Bは,「B商会」の屋号で,海苔機械販売修理業をその住所地に20 おいて行う事業者である。
被告共立は,海苔乾燥機械販売設計工事等を目的とする株式会社である。
(2) 本件特許権ア 原告は,次の本件特許権を有している。
25 登 録 番 号 特許第3966527号発明の名称 生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止7装置出 願 日 平成10年6月12日登 録 日 平成19年6月8日訂正審決日 平成22年2月25日5 イ 本件特許に関しては,上記のとおり,訂正審判事件(訂正2010−390006)の平成22年2月25日付け審決(同年3月9日確定)により訂正が認められている。同訂正後の本件特許に係る特許請求の範囲,明細書及び図面の内容は,別紙特許審決公報中の特許訂正明細書(以下「本件訂正明細書等」という。)に各記載のとおりである。(甲10 3)(3) 本件特許の特許請求の範囲本件特許の特許請求の範囲(請求項の数5)のうち請求項1,3及び4の記載(本件各発明)は,それぞれ本件訂正明細書等の各該当項に記載のとおりである。
15 (4) 本件各発明の構成要件の分説本件各発明をそれぞれ構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞれの記号に従い「構成要件A1」などという。また,構成要件B2,B’2及びB”2を併せて「構成要件B2等」という。)。
ア 本件発明120 A1 生海苔排出口を有する選別ケーシング,2 (及び)回転板,3 この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,4 (並びに)異物排出口25 5 をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,8B 前記防止手段(A3)を,1 突起・板体の突起物とし,2 この突起物を,前記選別ケーシングの円周端面に設ける構成とした5 C 生海苔異物分離除去装置(A5)における生海苔の共回り防止装置。
イ 本件発明3A1〜5(本件発明1と同一)B’ 前記防止手段(A3)を,10 1 突起・板体の突起物とし,2 この突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成としたC 生海苔異物分離除去装置(A5)における生海苔の共回り防止装置。
15 ウ 本件発明4A1〜5(本件発明1と同一)B” 前記防止手段(A3)を,1 突起・板体の突起物とし,2 この突起物を選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランス20 に設ける構成としたC 生海苔異物分離除去装置(A5)における生海苔の共回り防止装置。
(5) 被告製品ア 被告装置25 (ア) 被告装置のうち別紙物件目録1記載の「生海苔異物除去機」(以下「被告装置(WK型)」という。)は,訴外渡邊機開工業株式会社(以9下「渡邊機開」という。)が「渡邊式異物除去(洗浄)機」との商標を付して製造,販売する生海苔異物除去(洗浄)機であり,型名「WK−500」,「WK−550」,「WK−600」及び「WK−700」で示される。
5 被告装置(WK型)は,いずれも本件固定リング及びその内側に回転自在に遊嵌された回転円板を構成部品としている。
(イ) 被告装置のうち別紙物件目録2記載の装置は,型名を「LS−R」,「LS−S」,「LS−G」及び「LS−S」とする「生海苔異物除去機」(以下「被告装置(LS型)」という。)である。なお,被告装置10 (LS型)が,被告装置(WK型)の製品名を変更したものにすぎないかどうかについては,当事者間に争いがある。
イ 本件固定リング本件固定リングは各被告装置に4個又は6個付設され,同各リングには本件板状部材が1個以上取り付けられている。
15 ウ 本件板状部材本件板状部材は,本件固定リングに各1個以上取り付けられた金属製の部材であり,同リングの上部及び側面(クリアランス側)に突出するように設置されている。
(6) 被告装置の構成20 被告装置の構成を分説すると,以下のとおりである(以下,それぞれの記号に従い「被告構成α1i」などという。)。なお,本件固定リングは以下の「環状固定板4」に当たり,本件板状部材は以下の「板状部材8」に当たる。(弁論の全趣旨)α1i 吸引ポンプ用連結口を有するケーシング部材725 ii 及び環状固定板42 回転円板3103 板状部材84 異物排出口55 をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される異物選別槽A(その底部を構成する底板2を含む。)を有する生海苔異物除去機5 β 板状部材8につき,1 その形状は厚さ数mm,長方形状の「板状」である。
2 板状部材8は,環状固定板4の表面4bの一部に形成された凹部に嵌め込むようにして取り付けられ,ボルトで固定される。
板状部材8の高さは環状固定板4の凹部よりも高いため,その表面部10 分が環状固定板4の表面4bよりも約1mm突出するよう「表面側の突出部」を形成する。また,板状部材8の側面部分は環状固定板4の内周側面部(内周端面)4aよりも僅かに突出して,環状固定板4と回転円板3とで形成された環状隙間C内に「側面側の突出部」を形成する。
γ 被告装置は,底板2に環状固定板4が取り付けられていて環状固定板15 4の内側に円形孔が形成されていると共に,底板2に異物排出口5を備えている異物選別槽Aと,板状部材8と,モーターによって駆動される回転軸により回転する回転円板3が前記円形孔の内側に回転自在に遊嵌され,環状固定板4の内周側面部(内周端面)4aと,回転円板3の側面部(端面)3aとで形成された環状隙間Cと,前記円形孔の下側に配20 備されていて,吸引ポンプ用連結口を有するケーシング部材7などからなる装置形態(システム)を包含する生海苔異物除去機である。
(7) 構成要件の充足性被告装置の構成は,本件発明1,3及び4の構成要件A1,A2,A3,A4,A5,B,B’,B”,B1,B’1,B”1をそれぞれ充足する25 (ただし,構成要件A1の充足性の前提となる,構成要件の文言と被告装置の構成の対応関係についての主張は,後記のとおり,当事者間で異なってい11る。)。
(8) 被告らの行為ア 被告白石は,渡邊機開から被告装置(WK型)を購入し,第三者に販売した。
5 イ 被告Bは,被告白石から被告装置(WK型)を購入し,主に九州地区の海苔生産業者に対して同装置を販売した。
被告共立は,被告白石から被告装置(WK型)を購入し,主に瀬戸内地区の海苔生産業者に対して同装置を販売した。
(9) 渡邊機開の他の装置10 ア 渡邊機開は,平成9年秋又はこれ以降に,「WK−3型用大荒ゴミ取り機」(以下「乙5装置」という。)を製造した(ただし,乙5装置の構成及びその製造・販売の時期については,当事者間に争いがある。)。
イ 渡邊機開は,平成10年9月11日,「生海苔の異物分離器及び異物除去装置」に係る発明を特許出願し(特願平10−258335号。以15 下,同出願に係る発明を「乙16の2発明」といい,同出願に係る明細書及び図面を「乙16の2明細書等」という。),同月以降,同発明の実施品である生海苔異物除去機「WK−3型Rタイプ」を発売した。
(乙16の2,27,28,弁論の全趣旨)(10) 渡邊機開に対する仮処分決定20 原告は,平成26年2月26日,被告装置(WK型)が本件各発明の技術的範囲に属するなどと主張して,当庁に対し,渡邊機開による被告装置(WK型)の製造,販売等の差止めを求める仮処分を申し立てた。
当庁は,同年10月31日,上記仮処分を発令する旨の決定(甲9)をした(以下「本件仮処分決定」という。)。
25 (11) 被告白石に対する証拠保全申立書等の送達原告は,佐賀地方裁判所武雄支部に対して証拠保全を申し立て,同申立書12及び疎明資料は平成27年5月25日に被告白石に送達されたところ,同申立書及び疎明資料には原告が被告白石に対して損害賠償を請求する予定であることが記載されていた。(弁論の全趣旨)(12) 消滅時効援用5 被告らは,平成29年4月28日の本件弁論準備手続期日で陳述された被告準備書面(7)において,本件訴訟の提起日(平成27年8月25日)から3年を遡る平成24年8月25日(被告白石については,仮に平成27年5月25日に催告があったと認められるならば,その時点から3年を遡る平成24年5月25日)以前の被告らの行為に基づく原告の損害賠償請求権に10 ついて,消滅時効援用する旨の意思表示をした。
(13) 先行文献本件特許の出願日(平成10年6月12日)よりも前に公開された文献として,以下のものがある。
ア 特開平8−140637号公報(公開日平成8年6月4日。乙1。以15 下「乙1公報」といい,同公報に係る発明を「乙1発明」という。)イ 特開平5−71027号公報(公開日平成5年3月23日。乙8。以下「乙8公報」という。)ウ 実開平7−40644号公報(公開日平成7年7月21日。乙9。以下「乙9公報」という。)20 エ 実開平3−91423号公報(公開日平成3年9月18日。乙10。
以下「乙10公報」という。)3 争点(1) 被告装置(LS型)の製造,販売の有無(2) 被告装置が本件各発明の技術的範囲に属するか25 ア 構成要件B2等の充足性イ 構成要件Cの充足性13(3) 本件固定リング及び本件板状部材の譲渡等が間接侵害に該当するか(4) 本件各発明は特許無効審判により無効にされるべきものかア サポート要件違反(本件発明1につき)イ 進歩性欠如(本件各発明につき)5 (5) 先使用による通常実施権の有無ア 乙5装置に係る事業に基づく渡邊機開の先使用権イ 乙16の2発明の実施である事業の準備に基づく渡邊機開の先使用権(6) 被告Aに対する差止請求の可否(7) 共同不法行為等の成否10 (8) 過失推定の覆滅の有無(9) 損害発生の有無及びその額(10) 消滅時効の成否第3 争点に関する当事者の主張1 争点(1)(被告装置(LS型)の製造,販売の有無)について15 〔原告の主張〕渡邊機開は,本件仮処分決定の対象となった被告装置(WK型)につき,構成を同じにしたまま,その製品名のみを「LS−R」,「LS−S」,「LS−G」及び「LS−S」と変更して,平成27年以降もその販売を継続した(被告装置(LS型))。現に,被告白石に対する証拠保全の際,その倉庫に20 保管されていた「LS−G」には本件固定リング及び本件板状部材が設置されており,その構成は被告装置(WK型)から全く変更されていない。
また,被告白石は,既に仕入れた被告装置(WK型)の「WK−550」を「LS−G」に名称変更した上,訴外有限会社鶴商(以下「鶴商」という。)に販売していた。
25 このように,渡邊機開及び被告白石は,被告装置(WK型)のみならず被告装置(LS型)についても販売等を行っていたものであって,被告らが被告装14置(LS型)の販売等を行うおそれは十分に認められる。
〔被告らの主張〕否認する。被告装置(LS型)は,被告装置(WK型)の商品名のみを変更したものではなく,新形状の固定リングと回転円盤を装着した装置であり,本5 件特許権を侵害していない。
証拠保全に係る検証調書には,被告Aが「機械3は,元々仕入れたWK−600型の機械を,本件検証の対象である板状部材等を使用しない仕様にし,LS−G型という型名にして展示会に出品した」旨の説明をしたと記載されているが(甲17の1,2頁),この記載は誤っており,機械3の写真も同機械を10 写したものではない。
また,被告白石が鶴商に対して販売したのは「WK−550」であって,「LS−G」というのは,その請求書上の誤った表示にすぎない。
2 争点(2)ア(構成要件B2等の充足性)について〔原告の主張〕15 (1) 構成要件B2被告装置の構成β2では,板状部材(ツメ)8の側面部分が環状固定板4の内周側面部(内周端面)4aよりも僅かに突出するような「側面側の突出部」を形成しているから,突起物が,環状固定板4(選別ケーシングの一部)の円周端面に設けられていることは明らかである。
20 よって,被告装置の構成β2は,本件発明1の構成要件B2(この突起物を選別ケーシングの円周端面に設ける構成とした)に該当する。
(2) 構成要件B’2被告装置の構成β2では,板状部材(ツメ)8の表面部分が環状固定板4の表面4bよりも約1mm突出するような「表面側の突出部」を形成してい25 るから,突起物が,環状固定板4(選別ケーシングの一部)の円周面に設けられている。また,同部材8は,「側面側の突出部」によって円周面に設け15られている。
よって,被告装置の構成β2は,本件発明3の構成要件B’2(この突起物を選別ケーシングの円周面に設ける構成とした)に該当する。
(3) 構成要件B”25 被告装置の構成β2では,板状部材(ツメ)8の側面部分が環状固定板4の内周側面部(内周端面)4aよりも僅かに突出するような側面側の突出部を形成し,当該突出部が構成要件B”2の「クリアランス」に相当する(環状)隙間C内に存在することは明らかである。
よって,被告装置の構成β2は,本件発明4の構成要件B”2(この突起10 物を選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに設ける構成とした)に該当する。
〔被告らの主張〕(1) 構成要件B2について被告装置の突起物が環状固定板4の内周端面に設けられていることは認め15 るが,当該環状固定板4は選別ケーシングの一部ではないから,構成要件B2(この突起物を前記選別ケーシングの円周端面に設ける構成とした)を具備しない。
(2) 構成要件B’2について被告装置の突起物が環状固定板4の内周面に設けられていることは認める20 が,当該環状固定板4は選別ケーシングの一部ではなく,回転板でもないから,構成要件B’2(この突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成とした)を具備しない。
(3) 構成要件B”2について被告装置のクリアランスは,環状固定板4と回転板によって形成され,板25 状部材8の突出部も,このクリアランスに設けられているから,構成要件B”2(この突起物を選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに設16ける構成とした)を具備しない。
3 争点(2)イ(構成要件Cの充足性)について〔原告の主張〕本件各発明においては,「共回りを防止する防止手段」(被告装置では板状5 部材8)だけでは生海苔の共回りを防止できず,それを含むシステム(装置の体系)が存在しなければ,本件各発明の意図する作用効果を奏しない。
被告装置の構成γは,「共回りを防止する防止手段」たる板状部材8などからなる共回り防止のための装置体系(システム)を包含する生海苔異物分離除去装置であるから,構成要件Cに該当する。
10 〔被告らの主張〕被告装置が構成要件A3に該当することは認めるが,前記2の〔被告らの主張〕のとおり,被告装置は構成要件B2,B’2及びB”2を充足しない生海苔異物分離除去装置であるから,構成要件Cの「生海苔異物除去装置」には該当しない。
15 4 争点(3)イ(本件固定リング及び本件板状部材の譲渡等が間接侵害に該当するか)について〔原告の主張〕本件各発明は「生海苔の共回り防止装置」に関する発明であるところ,本件固定リングに相当する「環状固定板4」及び本件板状部材に相当する「板状部20 材8」だけでは「共回り防止装置」に該当しない。
したがって,本件固定リング及び本件板状部材はそれぞれ本件各発明の技術的範囲に属する物(被告装置)の生産にのみ用いる物であり,これらの譲渡等又は譲渡等の申出をする行為は本件特許権侵害とみなされる(特許法101条1号)。
25 〔被告らの主張〕本件固定リング及び本件板状部材が被告製品の生産にのみ用いる物であると17しても,被告装置は本件特許権を侵害するものでないから,本件固定リング及び本件板状部材を譲渡するなどの行為は本件特許権侵害に該当しない。
5 争点(4)ア(サポート要件違反(本件発明1につき))について〔被告らの主張〕5 本件訂正明細書等の段落【0026】は,【図3】及び【図4】を参照しながら防止手段6を設ける位置を説明しているので,ここでは,「クリアランスの目詰まりを無くす」という本件発明1の目的にかなう効果を期待できるクリアランスの近傍に突起物を設けるものであることが明示されている。
しかし,本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)には,回転板(構成要件10 A2)と,生海苔排出口を有する選別ケーシング(構成要件A1)とがどのような配置関係になっているかが記載されていないから,「この突起物を,前記選別ケーシングの円周端面に設ける構成とした」(構成要件B2)という記載のみでは,「クリアランスの目詰まりを無くす」という本件発明1の目的にかなう効果を期待できる配置位置に突起物が配置されるものであるかどうか明ら15 かではなく,【図3】及び【図4】を参照しながら防止手段6を設ける位置を説明している本件訂正明細書等の段落【0026】の記載内容を超えた範囲の発明をも包含する記載になっている。
したがって,本件発明1は「発明の詳細な説明に記載したもの」ではないものも含むことになっており,特許法36条6項1号に規定されている要件(サ20 ポート要件)に違反するものとして,無効にされるべきものである(同法123条1項4号)。
〔原告の主張〕本件訂正明細書等の段落【0026】に,「防止手段6は,一例として寸法差部Aに設ける。図3,図4の例では,選別ケーシング33の円周端面33b25 に突起・板体・ナイフ等の突起物を1ケ所又は数ヶ所設ける。・・・また図7の例は,選別ケーシング33(枠板)の円周面33a(内周端面)に回転板3184の円周端面34bが内嵌めされた構成のクリアランスSでは,このクリアランスSに突起・板体・ナイフ等の突起物の防止手段6を設ける。」と記載されているとおり,【図3】及び【図4】において,防止手段6を選別ケーシング33の円周端面33bに設けていることが明示されている。さらに,【図7】5 に示されたクリアランスSの位置関係(回転板34の円周端面34bと,選別ケーシング33の円周面33a(内周端面)とで形成される。)からすれば,当業者がこの【図7】を見れば,防止手段6を,回転板の円周端面34b(「円周面」の下位概念)か,選別ケーシングの円周端面(円周面33a(内周端面))のいずれかに固定することを容易に看取し得る。
10 このように,本件発明1はその実施例が【図3】及び【図4】で明示的に示され,【図7】等を見ても,本件発明1の課題(共回り防止)が解決できることは当業者において容易に認識できる。
また,本件訂正明細書等の記載を参酌すれば,他の要件とあいまって,「突起・板体の突起物」を「選別ケーシングの円周端面に設ける構成」とすること15 で,本件発明1の課題が解決できると認識できることは明らかである。
6 争点(4)イ(進歩性欠如(本件各発明につき))について〔被告らの主張〕(1) 乙1発明乙1公報には,以下の発明(乙1発明)が記載されている。
20 ア 乙1発明は生海苔の異物(ゴミ,エビ,アミ糸等,以下同じ)分離除去装置に関し,生海苔混合液(生海苔と塩水とを適宜濃度に調合したもの)から異物を分離する際に使用されるものである。(乙1公報の段落【0001】)イ 第二分離除去具20は,前記フレーム30に螺子止めされた円板状の25 底板部21とこの底板部21の周縁に立設された周筒部22とこの周筒部22の上端内周縁に連設された環状枠板23とから構成されている。
1924は環状固定板であり,前記環状枠板23の内周縁に螺子止めされている。この環状固定板24は前記環状枠板23の内周側に延出し,後記第一回転板51の外周縁とのクリアランスCを調節する(図4を参照のこと)。なお,この環状枠板23と環状固定板24とがこの発明の「環5 状枠板部」を構成する。また,25は第二分離除去具20内に設置された管状の排出路であり,その上端は前記環状枠板23に開口するとともにその下端は前記周筒部22に開口している。この周筒部22の開口にはコック261を有する排出管26が連設されている。さらに,27は第二分離除去具20内に設置された管状の連通路であり,その上端は前10 記環状枠板23に開口するとともにその下端は前記周筒部22に開口している。この周筒部22の開口には上方に延びる連通管28が連設されている。この連通管28の機能については後記する。29は流出口であり(図2参照のこと),前記周筒部22に設置され,異物を除去された混合液を前記バッチ水槽11に流れ落とす。(乙1公報の段落【00115 5】)ウ 61は円筒状の混合液連設タンクであり,前記第二分離除去具20の環状枠板23の外周縁に外嵌めされている。また,この連設タンク61の上端縁には前記第二分離除去具20と同じ構成の第一分離除去具70が配置されている。ただし,環状固定板74と第一回転板81とのクリ20 アランスSは前記第二分離除去具20よりも大であり,また,分離した生海苔と水との混合液を第二分離除去具20上に落下させる必要上,第二分離除去具20における底板部21の代わりにガイド筒77が設けられている。第一分離除去具70において,72は周筒部,73は環状枠板,75は管状の排出路,76はコック761 を有する排出管である。
25 (乙1公報の段落【0020】)エ 原料供給管91を介して生海苔混合液(生海苔と塩水とを適宜濃度に20調合したもの)を主タンク90内に供給する。そして,第一モータ11を駆動させることによって第一分離除去具70の第一回転板81・・を回転させる・・・。すると,第一分離除去具70において主タンク90内の混合液が渦を発生し,混合液中の大異物は第一回転板81の遠心力5 によってクリアランスSを越えて環状枠板73側に集積する。このため,生海苔のみが水とともに前記クリアランスSを通過して下方に流れる。
このとき,第一回転板81は回転しているため,前記クリアランスSに生海苔は詰まりにくいものである。また,小異物は生海苔および水とともに前記クリアランスSを通過して下方に流れ,連設タンク61内に混10 合液として供給される。(乙1公報の段落【0023】)オ 除去された異物を排出する場合は,主タンク61へ混合液を供給するのを停止して,水のみを供給してタンク(主タンク90及び前記連設タンク61)内の混合液比率を薄くしてタンク(主タンク90及び前記連設タンク61)内に生海苔が存在していないことを確認した後,コック15 261,761 を開いて排出管26,76から大小の異物をそれぞれ排出する。(乙1公報の段落【0025】)(2) 本件各発明と乙1発明の対比本件各発明と乙1発明は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される20 生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置という点で一致する。
他方,本件各発明と乙1発明は,以下の点で相違する。
ア 本件発明1が,「この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段(構成要件A3)」を備えており(相違点1),「前記防止手段を,突起・板体の突起物とした(構成要件B,B1)」構成で25 あり(相違点2),「この突起物を選別ケーシングの円周端面に設ける構成(構成要件B2)」(相違点3−1)とした,「生海苔異物分離除21去装置における生海苔の共回り防止装置(構成要件C)」(相違点4)であるのに対して,乙1発明は,「共回りを防止する手段」を備えていない点。
イ 本件発明3が,「この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防5 止する防止手段(構成要件A3)」を備えており(相違点1),「前記防止手段を,突起・板体の突起物とした(構成要件B’,B’1)」構成であり(相違点2),「この突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成(構成要件B’2)」(相違点3−2)とした,「生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置(構成要件10 C)」(相違点4)であるのに対して,乙1発明は,「共回りを防止する手段」を備えていない点。
ウ 本件発明4が,「この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段(構成要件A3)」を備えており(相違点1),「前記防止手段を,突起・板体の突起物とした(構成要件B”,B”1)」構15 成であり(相違点2),「この突起物を選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに設ける構成(構成要件B”2)」(相違点3−3)とした,「生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置(構成要件C)」(相違点4)であるのに対して,乙1発明は,「共回りを防止する手段」を備えていない点。
20 (3) 相違点の容易想到性本件特許出願よりも前から,乙5装置において「生海苔の異物分離除去装置では前記隙間(クリアランス)に異物などが詰まるので,このような詰まりが生じることを防止するため,前記隙間(クリアランス)にL型金具の刃部を挿入し,前記隙間(クリアランス)を周方向に移動させる」ことが公然25 と実施され,公知であった。
また,乙8公報ないし乙10公報によれば,回転体の回転に伴って生じる22共回りの発生を防止するため,突起物を,共回りの発生を防止する上で好適な個所に配備することは公知であった。
したがって,乙1発明において,乙5装置で公然と実施され公知であったクリアランスに異物などが詰まることを防止するための手段を採用するに当5 たり,@クリアランスに刃部を挿入して,これをクリアランスを周方向に移動させる(相違点3−3)ことや,これに代えて,A共回りの発生を防止する上で好適な個所に突起物を配備する(相違点3−1)ことや,Bクリアランスを形成する「回転板の外周面」や,「回転板の外周面に対向する部材の内周面」に,突起・板体の突起物を設ける(相違点3−2)ことは,本件特10 許出願当時,当業者において容易に想到できたものと認められる。
(4) 小括以上のとおり,乙1発明に基づいて,乙5装置で公然実施されていた公知技術や乙8公報ないし乙10公報の公知技術を参照して,本件各発明の構成に至ることは,本件特許出願の当時,当業者に容易であったといえるから,15 本件各発明は特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同法123条1項2号に該当し,無効とすべきである。
〔原告の主張〕(1) 「WK−3型用大荒ゴミ取り機」について被告らは,渡邊機開の製品「WK−3型用大荒ゴミ取り機」(乙5装置)20 の構成が,本件特許出願前に公然と実施され,その構成が公知であった旨主張するが,原告は否認する。本件特許出願前に販売されたとする「WK−3型用大荒ゴミ取り機」の構成が,被告ら主張の構成であったことを裏付ける客観的証拠は存在しない。
(2) 乙8公報ないし乙10公報について25 乙1発明には「共回り」を防止するという技術的思想が全く開示されておらず,このような乙1発明に対して,単に,目詰まり防止手段を付加するこ23との容易性のみ論じても無意味である。
また,乙8公報ないし乙10公報は,本件各発明と技術分野が異なる上,その「共回り」は本件とは全く異なった意義で用いられているものであるから,参酌の余地はない。
5 7 争点(5)ア(乙5装置に係る事業に基づく渡邊機開の先使用権)について〔被告らの主張〕(1) 乙5装置に係る事業生海苔異物分離除去装置である乙5装置(WK−3型用大荒ゴミ取り機)は,平成9年秋に渡邊機開によって製造・販売され,本件特許出願(平成110 0年6月12日)の時点では公然と実施されていた。
乙5装置は,生海苔混合液を狭い隙間(クリアランス)を通過させることにより,生海苔混合液に含まれている異物であって,当該隙間を通過できない大きさの異物を分離除去する場合に,前記隙間に異物などが詰まる現象が発生することから,この問題を解決するため,前記隙間に薄い板状の部材を15 挿入して移動させ,前記隙間が詰まることを防止していたものである。
すなわち,乙5装置の実施形式に具現されている技術的思想は,「生海苔の異物分離除去装置において,生海苔と海水との混合液である生海苔混合液をして狭い隙間を通過させることにより前記生海苔混合液に含まれている異物であって当該隙間を通過できない大きさの異物を分離除去する際に,前記20 隙間に異物などが詰まることを防止する手段を設ける」(以下「本件技術的思想A」という。)というものである。
よって,渡邊機開は,本件各発明の内容を知らないで,自ら本件技術的思想Aを完成させ,本件特許の特許出願の際現に日本国内において,同技術的思想実施である事業をしていた者に該当する。
25 (2) 被告装置が乙5装置に係る発明の範囲内であること生海苔異物分離除去装置である被告装置は,板状部材8について,その表24面部分が環状固定板4の表面よりも突出する「表面側の突出部」を形成し,その側面部分が環状固定板4の内周側部分(内周端面)4aよりも僅かに突出して,環状固定板4と回転円板3とで形成された環状隙間C内に「側面側の突出部」を形成する構成を備えていることにより,環状隙間Cに目詰まり5 が生じることを防止できるものである。
このような,被告装置の実施形式に具現されている「生海苔の異物分離除去装置において,生海苔と海水との混合液である生海苔混合液をして狭い隙間を通過させることにより前記生海苔混合液に含まれている異物であって当該隙間を通過できない大きさの異物を分離除去する際に,前記隙間に異物な10 どが詰まることを防止する手段を設ける」という技術的思想は,乙5装置の実施形式に具現されていた本件技術的思想Aと同一のものである。
(3) 小括したがって,渡邊機開は本件特許権に対して先使用権(特許法79条)を有しているから,渡邊機開が被告装置を製造・販売等する行為は,本件特許15 権を侵害しない。
〔原告の主張〕被告らは,被告装置の製造者である渡邊機開の有する先使用権援用しようとするが,以下のとおり,渡邊機開の有する先使用権は存在しない。
(1) 被告らが主張する乙5装置の構成及びその製造・販売の時期については,20 否認する。
(2) また,乙5装置が被告らの主張のとおりの構成を有するものとすると,乙5装置は,外槽の内側に設けられた濾筒の上端縁と,帽状キャップの下面に突設した筒状部材の端面の環状鍔との間に水平方向に延びる隙間を形成し,当該隙間を介して生海苔混合液が押し出されることによって,生海苔と異物25 とを分離する装置において,当該隙間に異物が詰まって,隙間を通過する生海苔混合液の量が少なくなるという課題を解決するために,濾筒の内側に回25転可能に装入された回転ブラシ筒にL型金具を取り付け,そのL型金具の刃部が当該隙間に挿入されて,回転ブラシ筒の回転に伴って当該隙間を移動することによって,当該隙間への異物の詰まりを防止するという発明を具現しているものと認めることができる。
5 そうすると,乙5装置に具現された発明は,その発明の対象となる装置の基本的構成が本件各発明に係る装置の基本的構成と全く異なっていることが明らかであり,また,そこで,隙間(クリアランス)の目詰まりを防止するという課題を解決するために採用された技術的手段の具体的な構成も,乙5装置に係る発明と本件各発明とでは,大きく異なっている。
10 さらに,被告装置に係る発明は,本件各発明と同様に,その発明の対象となる装置の基本的な構成及びその課題を解決するために採用された技術的手段の具体的な構成のいずれにおいても,乙5装置に係る発明と大きく異なるといわざるを得ず,被告装置は乙5装置の実施形式に具現された発明と同一の範囲内のものということはできない。
15 (3) 以上であるから,乙5装置の構成に関する被告らの主張を前提とした場合でも,乙5装置の実施形式に具現された発明は,本件各発明とも,被告装置に係る発明とも,全く異なるものというべきである。
したがって,仮に原告による本件特許出願の際に渡邊機開が乙5装置に係る事業を実施していたとしても,そのことに基づいて,渡邊機開が被告装置20 に関して本件特許権についての先使用権を有すると判断することはできない。
8 争点(5)イ(乙16の2発明の実施である事業の準備に基づく渡邊機開の先使用権)について〔被告らの主張〕(1) 乙16の2発明及びその実施である事業の準備25 渡邊機開は,平成10年9月11日に「生海苔の異物分離器及び異物除去装置」に係る乙16の2発明の特許出願をしたところ,同発明に係る装置は,26固定盤の環状溝と回転盤の環状突条で通過路(通過間隙S)が形成されており,そこを生海苔が通過するが,その通過間隙Sに目詰まりが生ずることをウレタンゴム板を介することによって清掃(除去)するというものであった(【請求項2】,【請求項5】,段落【0007】,【0011】,【005 30】ないし【0034】)。
渡邊機開は,同月,同発明の実施品である生海苔異物除去装置「WK−3型Rタイプ」を発売したが,当該装置は,「下部固定盤及び上部回転盤の双方にウレタンゴム板をはめ込み,上部回転盤のウレタンゴム板は,上部回転盤が下部固定盤に対して回転する際に,環状突条のテーパ部をはみ出る部分10 が下部固定盤の環状溝壁面をこするようにして,上部回転盤の環状突条(テーパ部)と下部固定盤の環状溝で形成される隙間(クリアランス)を清掃し,目詰まりを防止する」との技術的思想(以下「本件技術的思想B」という)を具現化していた。
渡邊機開は,平成10年4月下旬に本件技術的思想Bを完成させ,同年615 月8日には,実施装置の製造のために,異物清掃(除去)にかかる部品の設計図面(以下「乙17図面」と総称する。)を含む最終的な設計図面を完成させ,遅くとも同日には,当該装置の量産化への準備に着手していた。
ここで,乙16の2発明の清掃手段も,本件各発明の防止手段も,ともに間隙の目詰まりを防止するためのものである。乙16の2発明においてはウ20 レタンゴムの突条により環状溝及び間溝を常時清掃する,すなわち突条の板を間隙(クリアランス)に干渉させ,その目詰まりを防ぐ作用効果を奏するものであって,本件各発明の防止手段と同一である。
したがって,渡邊機開は,本件各発明の内容を知らないで,自ら完成させ,本件特許の出願日(平成10年6月12日)以前において,現にその事業の25 準備をしていたものである。
(2) 被告装置が乙16の2発明の範囲内であること27本件技術的思想Bは,平成10年9月発売の生海苔異物除去装置「WK−3型Rタイプ」に実施され,被告装置においても,板状突起物をクリアランスに設けるという構成により実施されている。
(3) 小括5 したがって,渡邊機開は本件特許権に対して先使用権(特許法79条)を有しているから,渡邊機開が被告装置を製造・販売等する行為は,本件特許権を侵害しない。
〔原告の主張〕被告らは,被告装置の製造者である渡邊機開の有する先使用権援用しよう10 とするが,以下のとおり,渡邊機開の有する先使用権は存在しない。
(1) 乙16の2発明ア 本件各発明と乙16の2発明とは,生海苔混合液を入れる槽の中で固定された部材の円周面と回転体の円周面との間に形成される環状のクリアランス(通過路)を利用して,異物を除去する生海苔異物分離除去装15 置において,当該クリアランス(通過路)に目詰まりが発生することを防止するための手段を設けた発明であるとの点で共通する。
しかし,本件各発明は,その防止手段である突起・板体の突起物を回転板や選別ケーシングの円周面(円周端面)に設ける構成を含んでいるが,本件訂正明細書等の【図4】及び【図6】から明らかなように,本20 件各発明においては,クリアランスを形成する一方の選別ケーシングに設けられた突起物は,クリアランスを形成する他方の回転板に摺接するものではなく,同様に,回転板に設けられた突起物も,他方の選別ケーシングに摺接するものとはされていない。
すなわち,本件各発明は,クリアランスを形成する選別ケーシング又25 は/及び回転板の円周面(円周端面),あるいはクリアランス自体に突起物が設けられるものであるが,当該突起物がクリアランスを形成する28選別ケーシングや回転板に摺接することなしに,クリアランスの目詰まりを防止することができる発明である。
これに対して,乙16の2発明の実施品であるWK−3型Rタイプに具現された技術的思想は,上部回転盤にはめ込まれたウレタンゴム板が,5 下部固定盤の環状溝壁面をこするようにして,隙間(クリアランス)を清掃するというものであるから,乙16の2発明が採用する技術的手段と本件各発明が採用する技術的手段とは,その具体的な構成において互いに異なるものであるというべきであり,これは単なる実施形式の違いということはできない。
10 したがって,本件各発明の技術的思想とWK−3型Rタイプに具現された技術的思想は同一ではない。
イ さらに,本件各発明の技術的範囲に属する被告装置についても,目詰まりを防止するための手段である本件板状部材は,ウレタンゴム等の弾性素材ではなく金属製であって,環状固定板の表面及び側面から僅かに15 突出して,「表面側の突出部」及び環状隙間内の「側面側の突出部」を形成しているにすぎず(被告構成β2),当該突出部が回転円板に摺接するように構成されているものではないから,被告装置は,乙16の2発明の実施形式に具現化された発明と同一の範囲内のものということはできない。
20 したがって,渡邊機開が,被告装置に関して,乙16の2発明に基づき本件特許権に係る先使用権を有すると判断することはできない。
(2) 本件特許出願時における事業の準備の有無被告らは,渡邊機開は平成10年4月下旬に乙16の2発明に係る技術的思想を完成させ,同年6月8日には乙16の2発明の実施品であるWK−325 型Rタイプの設計図面(乙17図面)を完成させて,その量産化に係る事業の準備をしていたと主張する。
29しかし,渡邊機開が平成10年9月11日までに乙16の2発明を完成させて,同日これを特許出願したことは認められるものの,渡邊機開が同年4月下旬までに同発明を完成させたこと,同年6月6日の展示会に出品されたのが同発明の実施品(WK−3型Rタイプ)の試作機であったこと,同月85 日に同実施品の最終的な設計図面が完成したこと等については,いずれも客観的な裏付けを欠き,この点に関するDの陳述書(乙19,28)の記載は信用することができない。
したがって,渡邊機開が,原告による本件特許出願(平成10年6月12日)の際,現に乙16の2発明について即時実施の意図を有しており,かつ,10 その即時実施の意図が客観的に認識される態様,程度において表明されていたものとは認められないから,その「事業の準備」をしていたということはできない。
9 争点(6)(被告Aに対する差止請求の可否)について〔原告の主張〕15 (1) 主位的主張被告白石は,被告Aの個人営業に係る会社であり,実質的には被告Aと一体であって,被告白石による被告製品の取引は,被告Aの意思にのみ基づいて成立しており,被告A自身の不法行為とも評価すべき一体のものである。
(2) 予備的主張20 被告Aは原告に対して明らかに敵意を抱き,渡邊機開を積極的に支援しようとするものであって,仮に被告白石に対してのみ被告製品の販売等を禁止する差止判決が下されたとしても,被告Aにおいて,被告白石とは別法人格であると称して自己名義(又は別の法人名義)を用いて判決で禁止された行為を継続する可能性が極めて高い。
25 そして,被告製品の取引業務のほとんどは,被告Aの意思のみに基づき極めて容易に行い得るものであるから,被告Aが被告白石を使わないで本件製30品の販売を継続することは極めて容易である。
したがって,法人格否認の法理の趣旨から,被告白石を被告Aと実質的に同一法人格と考えるべきであり,少なくとも被告製品の取引に限っては,被告白石の行為は被告A自身の行為とみなすべきである。
5 〔被告Aの主張〕被告白石は,独立した一個の企業体として,自らの計算において事業活動をしており,法人格が全くの形骸にすぎないものではないし,法律の適用を回避するため法人格を濫用しているものでもないから,被告白石の行為を被告Aの行為と評価する余地は全くない。
10 10 争点(7)(共同不法行為等の成否)について〔原告の主張〕(1) 被告白石の販売に係る損害賠償請求(請求の趣旨第5項)ア 被告白石及び被告Aの共同不法行為等(主位的請求)本件特許権の設定登録日は平成19年6月8日であるから,同日以降15 現在に至るまで,被告白石及び被告Aが渡邊機開から購入した被告製品を販売する行為は本件特許権侵害を構成し,被告白石及び被告Aには共同不法行為が成立する。
仮に,被告Aの行為を被告白石の行為と一体として見ることができないとした場合,被告白石の不法行為は,その代表取締役である被告Aに20 よって主導されたものであり,同人の故意に基づくものである。すなわち,被告Aは,被告白石の代表取締役としてその職務を行うについて,上記不法行為を自ら悪意で率先したものであるから,会社法429条1項に基づき,原告に対して損害を賠償する責任を負う。
イ 被告白石の不法行為(予備的請求)25 仮に被告白石及び被告Aの連帯責任に関する主張が認められないとしても,被告白石について損害賠償責任が認められることはいうまでもな31い。
(2) 被告Bの販売に係る損害賠償請求(請求の趣旨第10項)ア 被告白石,被告A及び被告Bの共同不法行為(主位的請求)被告Bが販売した被告製品は,全て被告白石から購入したものである。
5 そして,被告白石及び被告Aは,被告Bが被告製品を自ら使用するのではなく,それを第三者(ユーザー,二次代理店等の販売店)に転売することを当然知っていた。
したがって,被告Bによる被告製品の販売という不法行為は,被告白石及び被告Aと共謀して行われたものであり,また少なくとも被告白石10 及び被告Aの幇助によって行われたものであるから,被告白石,被告A及び被告Bには原告に対する共同不法行為が成立する。
イ 被告Bの不法行為(予備的請求)仮に被告白石及び被告Aと被告Bとの連帯責任に関する主張が認められないとしても,被告Bについて損害賠償責任が認められることはいう15 までもない。
(3) 被告共立の販売に係る損害賠償請求(請求の趣旨第15項)上記(2)の主張を被告共立に対して援用する。
〔被告らの主張〕否認する。
20 11 争点(8)(過失推定の覆滅の有無)について〔被告らの主張〕(1) 被告白石について被告白石は平成19年頃より渡邊機開の被告装置を取り扱っているが,単なる販売業者にすぎず,当初より特許権侵害の可能性など意識になく,本件25 特許権の存在も知らない状況で,被告装置の販売活動を継続していた。そして,平成22年6月4日,原告から同月2日付けの書面を受領し,本件特許32権侵害により被告装置の販売等を中止するよう求められて,初めて本件特許権の存在等を知ったものである。
したがって,被告白石において,平成22年6月3日以前の段階で特許の調査を期待することは不可能といってよく,同日以前の本件特許権侵害行為5 については過失は推定されない。
(2) 被告Bについて被告Bは平成19年から被告装置の販売を取り扱うようになったが,これは,一次販売店である被告白石から被告装置を仕入れ,それを二次販売店として海苔生産業者に販売する立場にすぎないものであって,被告装置に特許10 権侵害の可能性があるとか,本件特許権が存在するなどということは何ら認識せずに販売に従事していた。そして,平成22年6月4日,原告から同月2日付けの書面を受領し,本件特許権侵害により被告装置の販売等を中止するよう求められて,初めて本件特許権の存在等を知ったものである。
したがって,被告Bにおいて,平成22年6月3日以前の段階で特許の調15 査を期待することは不可能であり,同日以前の本件特許権侵害行為については過失は推定されない。
(3) 被告共立について被告共立は平成19年度から被告装置を取り扱っているが,これは,一次販売店である被告白石から被告装置を仕入れ,それを二次販売店として海苔20 生産業者に販売する立場にすぎなかった。被告共立において異物分離機を取り扱ったのは初めてであり,被告装置が特許権侵害の可能性があるとは考えたこともなく,本件特許権が存在することも知らなかった。そして,被告装置の販売を終了した後の平成27年11月20日頃,本訴状の送達を受け,そこで初めて本件特許権の存在等を知ったものである。
25 したがって,被告共立においては,過失は推定されない。
〔原告の主張〕33争う。
12 争点(9)(損害発生の有無及びその額)について〔原告の主張〕(1) 被告白石の販売に係る損害(請求の趣旨第5項)5 ア 被告装置の販売利益(特許法102条2項)被告白石による被告装置の販売数及び販売利益は,以下のとおりである(以下,金額は断りのない限り消費税相当額込み)。
(ア) WK−500型販売数: 3台 販売利益: 49万3500円10 (イ) WK−550型(新 品)販売数: 61台 販売利益:1361万5725円(中古品)販売数: 2台 販売利益: 65万1000円(ウ) WK−600型(新 品)販売数:135台 販売利益:3862万8600円15 (中古品)販売数: 1台 販売利益: 97万2000円(エ) WK−700型(「WK−600L」を含む。)販売数 : 5台 販売利益: 163万8000円(オ) 合計販売数 :207台(中古品3台を含む。)20 販売利益 :5599万8825円イ 本件固定リング及び本件板状部材(特許法102条2項)被告白石による本件固定リング及び本件板状部材の販売数及び販売利益は,以下のとおりである。
(ア) 本件固定リング25 販売数 :261個 販売利益:15万5866円(イ) 本件板状部材34販売数 :440個 販売利益: 4万2357円ウ 被告白石の利益の小計 5619万7048円エ 弁護士費用相当額原告は,被告白石及び被告Aの不法行為によって本訴提起を余儀なく5 されたところ,原告の被った弁護士費用相当額として上記ウの約10%相当額である562万円を請求する。
オ 合計 6181万7048円(2) 被告Bの販売に係る損害(請求の趣旨第10項)ア 被告装置の販売利益(特許法102条2項)10 (ア) 被告Bによる被告装置の販売数及び販売利益は,新品については別紙「被告Bの販売数及び販売利益」の「原告の対応」欄記載のとおりであり,整理すると以下のとおりとなる。
また,中古品については,整理すると以下のとおりとなる。
35以上をまとめると,被告Bによる被告装置の販売数及び販売利益は以下のとおりとなる。
(新 品)販売数:84台 販売利益:4640万1900円5 (中古品)販売数: 5台 販売利益: 280万6500円(合 計)販売数:89台 販売利益:4920万8400円(イ) 経費については,被告Bにおいて経費を要したとの主張を考慮し,1台当たり3万円(消費税相当額抜き)の経費を要するとの範囲で争わない(なお,平成27年度の中古品3台の販売分を除く。)。
10 (ウ) 小計 4649万5800円(計算式)49,208,400円−(31,500円×82台+32,400円×4台)=46,495,800円イ 本件固定リング及び本件板状部材(特許法102条2項)被告Bによる本件固定リング及び本件板状部材の販売数及び販売利益15 は,以下のとおりである。
(ア) 本件固定リング販売数:26個 販売利益:25万2010円(税抜)(イ) 本件板状部材販売数:26個 販売利益: 1万1990円(税抜)20 (ウ) 販売利益合計(消費税相当額込) 28万5120円36ウ 被告Bの利益の小計 4678万0920円エ 弁護士費用相当額原告は,被告白石,被告A及び被告Bの不法行為によって本訴提起を余儀なくされたところ,原告の被った弁護士費用相当額として上記ウの5 約10%相当額である468万円を請求する。
オ 合計 5146万0920円(3) 被告共立の販売に係る損害(請求の趣旨第15項)ア 被告装置の販売利益(特許法102条2項)被告共立による被告装置の販売数及び販売利益は,新品については被10 告ら作成の別紙「V 株式会社共立機械商会にかかる販売一覧表」の「1 新品」のとおりである。ただし,@平成24年11月10日の「WK−600」の販売価格を510万円とし,A平成25年11月2日の「WK−700」(「※3」との記載のある方)の販売価格を675万円として計算する。
15 以上を整理すると,以下のとおりとなる。
37また,中古品については,被告ら作成の別紙「V 株式会社共立機械商会にかかる販売一覧表」の「2 中古品」のとおりである。ただし,販売価格はそれぞれ165万円,170万円,350万円として計算する。
5 以上を整理すると,以下のとおりとなる。
以上をまとめると,被告共立による被告装置の販売数及び販売利益は以下のとおりとなる。
(新 品)販売数:43台 販売利益:2929万3949円10 (中古品)販売数: 3台 販売利益: 211万6500円(合 計)販売数:46台 販売利益:3141万0449円イ 本件板状部材(特許法102条2項)被告共立による本件板状部材の販売数及び販売利益は,以下のとおりである。
15 販売数:170個 販売利益:8万1099円ウ 被告共立の利益の小計 3149万1548円エ 弁護士費用相当額原告は,被告白石,被告A及び被告共立の不法行為によって本訴提起を余儀なくされたところ,原告の被った弁護士費用相当額として上記ウ20 の約10%相当額である315万円を請求する。
38オ 合計 3464万1548円(4) 被告らの主張に対する反論被告らは寄与度による減額を主張するが,被告装置の販売において本件固定リングを通常の固定リングの形状に変更して本件板状部材を取り付けられ5 ないようにした場合,当該装置は目詰まり防止の効果を奏することができず,顧客からは見向きもされず,販売することができない。
したがって,本件各発明の被告製品の販売に対する寄与度は,100%である。
〔被告らの主張〕10 (1) 被告Bの販売に係る損害(請求の趣旨第10項)についてア セット商品別紙「被告Bの販売数及び販売利益」の番号(02),(04),(05)及び(26)の各取引については「TM−6」とセットで販売され,番号(03)の取引については「AB塔」とセットで販売された15 ものであるから,これらのセット商品の時価相当額又は少なくとも実際の販売価格相当額を販売利益から控除すべきである。
また,別紙「被告Bの販売数及び販売利益」の番号(16),(21),(22),(29),(31)ないし(34),(40),(41),(49),(55),(57),(59)ないし(61),(620 3),(65)及び(66)の各取引については,新品又は中古の「タンク」とセットで販売されたものであるから,「タンク」の時価相当額又は少なくとも実際の販売価格相当額を販売利益から控除すべきである。
イ タンク整備代別紙「被告Bの販売数及び販売利益」の番号(03),(07)ない25 し(14),(17)ないし(20),(27),(28),(30),(36),(37),(42),(44)ないし(47),(51)な39いし(53)及び(64)の各取引については,販売利益からタンク整備代(5万円ないし8万円)を経費として控除すべきである。
ウ 下取り評価別紙「被告Bの販売数及び販売利益」の番号(06)の取引につき,5 売上帳簿に「下取り機」として95万円の記載があるが,当該下取り機は時価35万円相当のもので,差額の60万円は実質値引きであるから,この値引き分を販売利益から控除すべきである。
エ 販売手数料相当額別紙「被告Bの販売数及び販売利益」の番号(70)及び(71)の10 取引については,売上帳簿の記載からも明らかなとおり,それぞれ販売先に対し販売手数料(前者につき10万2000円,後者につき8万8500円)を負担しているため,経費として控除すべきである。
オ 設置費用被告装置の設置費用として,「WK−500」及び「WK−550」に15 ついては17万4000円,「WK−600」については19万1150円(平成19年度ないし平成25年度)又は20万8150円(平成26年度)を必要とする。
(2) 被告共立の販売に係る損害(請求の趣旨第15項)についてア 平成24年11月10日の販売20 平成24年11月10日の「WK−600」の販売については,実際には25万円を値引きしたため,販売価格(510万円)から25万円を控除すべきである。
イ 平成25年11月2日の販売平成25年11月2日の「WK−700」(「※3」との記載のある25 方)の販売については,値引き,据付材料費及び消費税相当額込みで675万円であり,同日の他の取引を参考にすると実際の販売価格は52405万円である。
ウ 中古品の販売について平成24年9月27日の中古品の販売価格は「点検,整備費及び据付け材料・工事費込」(乙50の1)で165万円であるから,これらの5 費用15万円を控除すべきである。
また,平成25年10月30日の中古品の販売価格は「整備費,据付け材料,工事費込み」(乙50の2)で170万円であるから,これらの費用15万円を控除すべきである。
さらに,平成26年10月24日の中古品の販売価格は「固定,選別10 プレート交換他整備済み」で350万円であるから,この費用40万円を控除すべきである。
(3) 寄与度について被告装置において,本件各発明はその全体に実施される発明ではなく,あくまでも本件板状部材で構成される「共回り防止装置」に限られる補助的・15 付属的な技術にすぎない。また,被告装置においては,その個有な構造である「回転円板を上下方向に稼動可能としてクリアランスの隙間を調整する構造」によりクリアランスの目詰まりを一定程度防止できるものであり,本件各発明の「共回り防止装置」の有用な期間は主に「ハタキ」の時期に限られる。
20 したがって,損害賠償額の算出に当たっては本件発明の寄与度を十分考慮すべきであるところ,その寄与度の程度については,構成全体に占める物理的・価値的な割合,稼動に際しての有用性の程度などの事情から,被告装置については10%,本件固定リングについては25%,本件板状部材については100%と考えるのが相当である。
25 13 争点(10)(消滅時効の成否)について〔被告らの主張〕41原告が被告白石,被告B及び被告共立による被告装置の販売行為を知ったのは,以下のとおり,いずれも平成19年のことであり,本訴提訴の平成27年8月25日から遡って3年より前の販売行為については消滅時効が成立する。
なお,被告白石については,仮に原告の主張どおり平成27年5月25日に催5 告があったとしても,その時点から遡って3年より前の販売行為について消滅時効が成立していることになる。
(1) 被告白石について原告が本件特許権の登録時(平成19年6月)から被告装置が同特許の侵害品であると判断し,調査を開始していたことは,原告代表者の報告書(甲10 13の1)に記載されたとおりである。また,海苔業界では,平成22年6月頃には,原告と株式会社親和製作所(以下「親和製作所」という。)との間に訴訟が係属していることが周知となり,販売店から渡邊機開も提訴するのかという問合せがされていた。
原告の佐賀営業所及び原告の関連会社である株式会社フルテック(以下15 「フルテック」という。)は,被告白石や被告Bが営業活動をしている福岡県西部から佐賀県東部・西部の区域をテリトリーとしており,その社員は,常に取引先又は海苔生産業者のところへ出入りし,情報収集していた。
被告白石は,有明海沿岸地域において,渡邊機開の製品の一次販売店として古くから業界に知られた存在であり,海苔業界は狭い業界であるから,原20 告は,同地域において被告白石が渡邊機開の製品を取り扱っていることを知っていた。
また,被告白石が平成12年9月に顧客に送付した「渡辺機開工業価格表」(乙64の1)が原告に転送されており,被告白石発行の「納品書」(平成21年10月付け。乙65の1)も取引業者から原告へ交付されていた。こ25 のように,原告は,以前から被告白石関連の情報を幅広く集めていた。
さらに,被告Bに出入りしていたフルテックの社員らは,「被告Bが被告42白石から被告装置を仕入れている。」旨の情報を得て,原告に報告していた。
(2) 被告Bについて被告Bとフルテックとは平成19年以降も常時取引があり,フルテックの社員であるC(以下「C」という。)ら数名は,週1回程度は被告Bの社屋5 に出入りしていた。その際,Cらは,被告Bが被告装置を被告白石から仕入れて販売していることを聞き,被告Bに保管している被告装置の現物を見ることは可能であり,実際に見ていた。このため,原告は早い時期から被告Bによる被告装置の販売行為を知っていたと思われる。
また,被告Bは,平成22年1月15日に「WK−600」をE(以下10 「E」という。)に販売したが,Cは,この取引に際し,同製品ではなく原告の製品を購入するよう再三要請していた(乙82)。フルテックは原告の関連会社であるから,原告は,この頃には,フルテックからの報告により,被告Bが被告製品を取り扱っていることを知っていた。
(3) 被告共立について15 被告共立は,主に兵庫県の瀬戸内沿岸地域を営業地域としており,その地域には原告の営業拠点はないものの,原告の製品を扱う販売店が営業拠点としての役割を果たしていた。被告装置は被告共立が初めて扱った異物分離機であり,平成19年当時,その情報は注目を集め,原告の製品の販売店により原告に伝えられていた。
20 〔原告の主張〕原告は,被告らが平成24年以前に被告装置を販売した事実を全く知らなかった。
原告が被告白石及び被告Bの被告装置の販売行為によって本件特許権が侵害され,それによって損害が発生したことを知ったのは,早くとも平成26年125 1月頃である。したがって,被告らによる被告製品の販売による損害賠償請求権の消滅時効が進行するとしても,その起算日は平成26年11月である。そ43して,原告は,平成27年8月25日付け訴状(被告白石に対しては平成27年5月25日の送達)によって初めて被告らに対して損害賠償を請求する旨明示したのであるから,消滅時効は中断している。
(1) 被告白石について5 原告が「渡辺機開工業価格表」(乙64の1)を入手したのは,平成12年より相当後においてであり,そこには旧型の「WK−3」型の記載しかない。また,被告白石発行の「納品書」(乙65の1)は,証拠保全手続の審尋手続(平成27年4月6日)において裁判官から疎明資料の提出を求められたため,入手したものであり,平成21年当時に保有していたものではな10 い。
被告製品の販売店は複数があるが,そのほとんどは被告白石経由ではない。
渡邊機開は,平成26年10月に仮処分決定が発出され,自ら販売できなくなったことから,被告白石を経由して販売することにしたものと考えられる。
(2) 被告Bについて15 被告Bは,平成10年から平成13年まで原告製品を取り扱っていたが,その後,親和製作所の製品を取り扱うようになった。このため,原告は,平成22年6月当時,被告Bは全て親和製作所の製品を取り扱っていると認識していた。ところが,原告が親和製作所の事業を引き継ぐことになった平成25年8月以降も被告Bからの注文がなかったことから,初めて,同被告が20 渡邊機開寄りであることを知ったものである。原告が,被告Bの取扱台数,被告白石からの仕入時期などについて具体的に認識したのは平成27年7月である。
また,Cが被告Bに保管してある被告装置を最初に見たのは平成28年であり,それより以前に確認したことはない。
25 (3) 被告共立について被告共立が生海苔異物除去機を大量に取り扱っていたという事実は,平成4427年5月27日付け証拠保全決定に基づく検証の際に初めて知ったものであり,それまでは,会社の存在を認識している程度であった。
第4 当裁判所の判断1 本件各発明の意義5 (1) 本件訂正明細書等には,次の記載がある。
ア 発明の属する技術分野・「本発明は,生海苔・海水混合液(生海苔混合液)から異物を分離除去する生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置に関する。」(段落【0001】)10 イ 従来の技術・「この異物分離機構を備えた生海苔異物分離除去装置としては,特開平8−140637号〔判決注:乙1公報〕の生海苔の異物分離除去装置がある。その構成は,筒状混合液タンクの環状枠板部の内周縁内に回転板を略面一の状態で僅かなクリアランスを介して内嵌めし,この回転15 板を軸心を中心として適宜駆動手段によって回転可能とするとともに,前記筒状混合液タンクに異物排出口を設けたことにある。この発明は,比重差と遠心力を利用して効率よく異物を分離除去できること,回転板が常時回転するので目詰まりが少ないこと,又は仮りに目詰まりしても,当該目詰まりの解消を簡易に行えること,等の特徴があると開示されて20 いる。」(段落【0002】)ウ 発明が解決しようとする課題・「前記生海苔の異物分離除去装置,又は回転板とクリアランスを利用する生海苔異物分離除去装置においては,この回転板を高速回転することから,生海苔及び異物が,回転板とともに回り(回転し),クリアラ25 ンスに吸い込まれない現象,又は生海苔等が,クリアランスに喰込んだ状態で回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない現象であ45り,究極的には,クリアランスの目詰まり(クリアランスの閉塞)が発生する状況等である。この状況を共回りとする。この共回りが発生すると,回転板の停止,又は作業の停止となって,結果的に異物分離作業の能率低下,当該装置の停止,海苔加工システム全体の停止等の如く,最5 悪の状況となることも考えられる。」(段落【0003】)・「前記共回りの発生のメカニズムは,本発明者の経験則では,1.生海苔(原藻)に根,スケール等の原藻異物が存在し,生海苔の厚みが不均等のとき,2.生海苔が束状,捩じれ,絡み付き等の異常な状態で,生海苔が展開した状態でない,所謂,生海苔の動きが正常でないとき,10 3.生海苔が異物を取り込んでいる状態,生海苔に異物が付着する等の状態であって,生海苔の厚みが不均等であるとき,等の生海苔の状態と考えられる。」(段落【0004】)エ 課題を解決するための手段・「請求項1の発明は,共回りの発生を無くし,かつクリアランスの目15 詰まりを無くすこと,又は効率的・連続的な異物分離(異物分離作業の能率低下,当該装置の停止,海苔加工システム全体の停止等の回避)を図ることにある。またこの防止手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置することを意図する。」(段落【0005】)・「請求項1は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,20 この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,前記防止手段を,突起・板体の突起物とし,この突起物を,前記選別ケーシングの円周端面に設ける構成とした生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り25 防止装置である。」(段落【0006】)・「請求項3の発明は,請求項1の目的を達成することと,またこの防46止手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置することを意図する。」(段落【0009】)・「請求項3は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並5 びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,前記防止手段を,突起・板体の突起物とし,この突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成とした生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置である。」(段落【0010】)10 ・「請求項4の発明は,請求項1の目的を達成することと,またこの防止手段を,クリアランスへの容易な設置を図ることを意図する。」(段落【0011】)・「請求項4は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並15 びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,前記防止手段を,突起・板体の突起物とし,この突起物を選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに設ける構成とした生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置である。」(段落【0012】)20 オ 発明の実施の形態・「本発明の生海苔混合液槽には,生海苔タンクから順次生海苔混合液が導入される。この導入された生海苔混合液の生海苔は,回転板とともに回転しつつ,順次吸込用ポンプにより回転板と選別ケーシングで形成される異物分離機構のクリアランスに導かれる。この生海苔は,このク25 リアランスを通過して分離処理される。この分離処理された生海苔及び海水は,選別ケーシングのケーシング内底面より連結口を経由して良質47タンクに導かれる。」(段落【0019】)・「このクリアランスに導かれる際に,生海苔の共回りが発生しても,本発明では,防止手段に達した段階で解消される(防止効果)。尚,前記防止手段は,単なる解消に留まらず,生海苔の動きを矯正し,効率的5 にクリアランスに導く働きも備えている(矯正効果)。」(段落【0020】)・「以上のような操作により,生海苔の分離が,極めて効率的にかつトラブルもなく行われることと,当該回転板,又は当該装置の停止等は未然に防止できる特徴がある。」(段落【0021】)10 カ 実施例・「1は異物分離除去装置で,この異物分離除去装置1は,生海苔混合液をプールする生海苔混合液槽2と,この生海苔混合液槽2の内底面21に設けた異物分離機構3と,異物排出口4と,前記異物分離機構3の回転板34を回転する駆動装置5と,防止手段6を主構成要素とする。」15 (段落【0023】)・「生海苔混合液槽2には,生海苔・海水を溜める生海苔タンク10と連通する生海苔供給管11が開口しており,この生海苔供給管11には供給用のポンプ12が設けられている。また分離処理された生海苔・海水をプールする良質タンク13を設ける。」(段落【0024】)20 ・「異物分離機構3は,分離した生海苔・海水を吸い込む連結口31,及び逆洗用の噴射口32を有する選別ケーシング33と,この選別ケーシング33に寸法差部Aを設けるようにして当該選別ケーシング33の噴射口32の上方に設けられた回転板34と,この回転板34の円周面34aと前記選別ケーシング33の円周面33aとで形成されるクリア25 ランスSと,で構成されている。前記寸法差部Aは,選別ケーシング33の円周端面33bと回転板34の円周端面34bとの間で形成する。」48(段落【0025】)・「防止手段6は,一例として寸法差部Aに設ける。図3,図4の例では,選別ケーシング33の円周端面33bに突起・板体・ナイフ等の突起物を1ケ所又は数ヶ所設ける。また図5の例は,生海苔混合液槽2の5 内底面21に1ケ所又は数ヶ所設ける。さらに他の図6の例は,回転板34の円周面34a及び/又は選別ケーシング33の円周面33a(一点鎖線で示す。)に切り溝,凹凸,ローレット等の突起物を1ケ所又は数ヶ所,或いは全周に設ける。また図7の例は,選別ケーシング33(枠板)の円周面33a(内周端面)に回転板34の円周端面34bが10 内嵌めされた構成のクリアランスSでは,このクリアランスSに突起・板体・ナイフ等の突起物の防止手段6を設ける。また図8の例では,回転板34の回転方向に傾斜した突起・板体・ナイフ等の突起物の防止手段6を1ケ所又は数ヶ所設ける。」(段落【0026】)・「尚,前記回転板34は,駆動装置5のモーター51に設けた回転軸15 52に昇降自在に設けられている。従って,逆洗槽14内の海水を,ホース15及び逆洗用ポンプ16を介して噴射口32より噴射して,この回転板34を押上げ,この押上げによりクリアランスSの寸法を拡げる構成となっている。」(段落【0027】)・「図中17は連結口31に設けた分離された生海苔・海水を良質タン20 ク13に導くホース,18はホース17に設けた吸込用ポンプをそれぞれ示す。」(段落【0028】)キ 発明の効果・「請求項1の発明は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,25 並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,防止手段を,49突起・板体の突起物とし,突起物を,選別ケーシングの円周端面に設ける生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置である。従って,この請求項1は,共回りの発生を無くし,かつクリアランスの目詰まりを無くすこと,又は効率的・連続的な異物分離(異物分離作業の5 能率低下,当該装置の停止,海苔加工システム全体の停止等の回避)が図れること,またこの防止手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置できること等の特徴がある。」(段落【0029】)・「請求項3の発明は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,10 並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,防止手段を,突起・板体の突起物とし,突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置である。従って,請求項1の目的を達成できることと,またこの防止15 手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置できること等の特徴を有する。」(段落【0031】)・「請求項4の発明は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生20 海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,防止手段を,突起・板体の突起物とし,突起物を選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに設ける生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置である。従って,請求項1の目的を達成できることと,またこの防止手段を,クリアランスへの容易な設置が図れること等の特徴を25 有する。」(段落【0032】)(2) 以上の記載によれば,本件各発明の意義は次のとおりである。
50ア 本件各発明は,生海苔・海水混合液(生海苔混合液)から異物を分離除去する生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置に関する。
従来,筒状混合液タンクの環状枠板部の内周縁内に回転板を略面一の5 状態で僅かなクリアランスを介して内嵌めし,この回転板を軸心を中心として適宜駆動手段によって回転可能とするとともに,前記筒状混合液タンクに異物排出口を設けた生海苔異物分離除去装置(乙1発明)がある。
この生海苔異物分離除去装置(又は,回転板とクリアランスを利用す10 る生海苔異物分離除去装置)においては,この回転板を高速回転することから,生海苔及び異物が回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない現象,又は,生海苔等がクリアランスに喰込んだ状態で回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない現象が生じ,究極的には,クリアランスの目詰まり(クリアランスの閉塞)が発生する。
15 このような「共回り」が発生すると,回転板の停止又は作業の停止となって,結果的に異物分離作業の能率低下,当該装置の停止,海苔加工システム全体の停止等のごとく,最悪の状況となることも考えられる。
イ 本件各発明は,従来の生海苔異物分離除去装置(乙1発明)の有する前記アの問題に鑑み,共回りの発生をなくし,かつクリアランスの目詰20 まりをなくすこと,又は効率的・連続的な異物分離を図ること等を目的に,「生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置」において,請求項1の発明(本件発25 明1)では,前記防止手段を,突起・板体の突起物とし,これを前記選別ケーシングの円周端面に設ける構成とし,請求項3の発明(本件発明513)では,前記防止手段を,突起・板体の突起物とし,これを回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成とし,請求項4の発明(本件発明4)では,前記防止手段を,突起・板体の突起物とし,これを選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに設ける構成とし5 た。
ウ 本件各発明によれば,共回りの発生をなくし,かつクリアランスの目詰まりをなくすこと,又は,効率的・連続的な異物分離(異物分離作業の能率低下,当該装置の停止,海苔加工システム全体の停止等の回避)が図れること,この防止手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置でき10 ること,この防止手段を,クリアランスへの容易な設置が図れること等の効果を奏する。
2 争点(1)(被告装置(LS型)の製造,販売の有無)について(1) 原告は,本件仮処分決定の対象となった被告装置(WK型)につき,全く同じ構成でありながら,その製品名のみを「LS−R」,「LS−S」,15 「LS−G」及び「LS−S」と変更されたもの(被告装置(LS型))が製造,販売されていると主張する。
(2) そこで検討するに,渡邊機開の平成27年2月13日付けパンフレット(甲19)には型名を「LS−R」,「LS−S」,「LS−G」及び「LS−L」とする装置が掲載されており,また作成日不詳のパンフレット(甲20 20の1・2)にも型名を「LS−S」及び「LS−G」とする装置が掲載されている。しかるに,これらの各装置の写真は,明らかに,従前のパンフレット(甲4,甲5の1ないし4)における「WK−500」(「LS−R」に対応),「WK−550」(「LS−S」に対応),「WK−600」(「LS−G」に対応)及び「WK−700」(「LS−L」に対応)の写25 真と同一であるものと認められる(型名のみ異なる。)。
そして,このうち型名を「LS−G」とするものについては,2台が平成5227年3月17日に渡邊機開から被告白石に販売され(甲17の1添付仕入帳52丁),このうち1台は被告白石から第三者に転売されている(甲17の2添付請求書6丁)。残り1台は被告白石により保管されていたところ,これについては,被告白石での証拠保全の検証時に「機械3」として確認さ5 れており,同検証の検証調書(甲17の1。以下「本件検証調書」という。)添付の写真によれば,その環状固定板に板状部材が取り付けられているのであって(同添付写真7ないし9丁),その構成は被告装置(WK型)と同一である。
また,型名を「LS−S」とするものについては,被告白石作成の請求書10 (甲17の2添付請求書9丁)によれば,被告白石は平成27年2月26日に鶴商に対して「LS−S」を販売していると認められる。
以上によれば,被告装置(LS型)は,被告装置(WK型)の型名を変更したにすぎず,その構成は被告装置(WK型)と同一であるというべきである。
15 (3) 被告らの主張に対する判断この点に関して被告らは,@本件検証調書の記載は検証結果を正しく反映していない,A被告白石が鶴商に対して販売したのは「WK−550」であり,請求書に「LS−G」と表示されているのは誤りであると主張する。
しかし,上記@については,被告Aが説明していない内容が検証調書に記20 載されているとは考え難く,また,機械3の写真についても同機械とは異なる機械の写真が同調書に掲載されていることをうかがわせる証拠はない。
また,上記Aについては,被告らは「LS−G」との表示が誤っていると主張するが,この表示が誤記であることをうかがわせる証拠は見当たらない。
したがって,被告らの上記主張は,いずれも採用することができない。
25 (4) 小括以上によれば,渡邊機開及び被告白石は,被告装置(WK型)のみならず,53これと構成を同じくする被告装置(LS型)についても販売等を行っていたものと認められるのであって,この被告装置(LS型)についても,被告白石,被告B及び被告共立において,将来,その販売等がされるおそれがあるものというべきである。
5 3 争点(2)ア(構成要件B2等の充足性)について(1) 本件各発明のうち,構成要件B2は,「この突起物を,前記選別ケーシングの円周端面に設ける構成とした」,構成要件B’2は,「この突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成とした」,構成要件B”2は,「この突起物を選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランス10 に設ける構成とした」というものであるところ,これらの構成要件に含まれる「選別ケーシング」が,構成要件A1の「生海苔排出口を有する選別ケーシング」を指すものであることは,本件各発明の特許請求の範囲の文言からして,明らかである。
この「選別ケーシング」(構成要件A1,B2等)について,原告は,被15 告装置の「吸引ポンプ用連結口を有するケーシング部材7」(被告構成α1i)及び「環状固定板4」(同ii)が一体として,本件各発明の「選別ケーシング」に当たるから,被告装置の板状部材8が,環状固定板4の表面の一部に形成された凹部に嵌め込むようにして取り付けられ,環状固定板4の表面及び側面からそれぞれ突出して「表面側の突出部」及び「側面側の突出部」20 を形成している構成(被告構成β2)が,本件各発明の構成要件B2等を充足すると主張する。
これに対し,被告らは,被告装置においては,吸引ポンプ用連結口を有するケーシング部材7と環状固定板4とが別個の部材であるから,「選別ケーシング」(構成要件A1,B2等)に該当するのは,吸引ポンプ用連結口を25 有するケーシング部材7のみであると主張し,これを前提に,「選別ケーシング」の一部でない環状固定板4に突起物が設けられている被告装置の構成54は構成要件B2等を充足しないと主張する。
(2) 「選別ケーシング」の意義ア そこで,検討するに,「選別ケーシング」(構成要件A1,B2等)については,本件各発明に係る特許請求の範囲において,「生海苔排出5 口を有する」もの(構成要件A1)であって,その円周端面又は円周面に突起物を設け(構成要件B2,B’2),あるいは,回転板との間にクリアランスを形成し,そこに突起物を設ける(構成要件B”2)ものであると規定されている。また,本件訂正明細書等には,「本発明の生海苔混合液槽には,生海苔タンクから順次生海苔混合液が導入される。
10 この導入された生海苔混合液の生海苔は,回転板とともに回転しつつ,順次吸込用ポンプにより回転板と選別ケーシングで形成される異物分離機構のクリアランスに導かれる。この生海苔は,このクリアランスを通過して分離処理される。この分離処理された生海苔及び海水は,選別ケーシングのケーシング内底面より連結口を経由して良質タンクに導かれ15 る。」(本件訂正明細書等・段落【0019】),「異物分離機構3は,分離した生海苔・海水を吸い込む連結口31,及び逆洗用の噴射口32を有する選別ケーシング33と,この選別ケーシング33に寸法差部Aを設けるにようにして当該選別ケーシング33の噴射口32の上方に設けられた回転板34と,この回転板34の円周面34aと前記選別ケー20 シング33の円周面33aとで形成されるクリアランスSと,で構成されている。」(同・段落【0025】),「防止手段6は,一例として寸法差部Aに設ける。図3,図4の例では,選別ケーシング33の円周端面33bに突起・板体・ナイフ等の突起物を1ケ所又は数ヶ所設ける。
・・・。さらに他の図6の例は,回転板34の円周面34a及び/又は25 選別ケーシング33の円周面33a(一点鎖線で示す。)に切り溝,凹凸,ローレット等の突起物を1ケ所又は数ヶ所,或いは全周に設ける。
55また図7の例は,選別ケーシング33(枠板)の円周面33a(内周端面)に回転板34の円周端面34bが内嵌めされた構成のクリアランスSでは,このクリアランスSに突起・板体・ナイフ等の突起物の防止手段6を設ける。また図8の例では,回転板34の回転方向に傾斜した突5 起・板体・ナイフ等の突起物の防止手段6を1ケ所又は数ヶ所設ける。」(同・段落【0026】)との各記載があり,【図1】ないし【図8】には,異物分離除去装置に設けられた選別ケーシング33が回転板34との間にクリアランスを形成しており,また,選別ケーシング33の内底部の連結口31から,ホース17が良質タンク13に繋がる構成や,10 防止手段6が選別ケーシング33の円周面33a若しくは円周端面33b又は回転板の円周面34a若しくは円周端面34bにそれぞれ設けられている構成が記載されている。
イ これらの記載によれば,本件各発明に係る生海苔異物分離除去装置において,「選別ケーシング」とは,回転板との間でクリアランスを形成15 して,当該クリアランスによって異物と生海苔を分離し,生海苔を選別して通過させるとともに,当該クリアランスを通過した生海苔・海水を,その内底部に設けられた連結口31(生海苔排出口)に集め,同連結口31を通じて良質タンク13に導くための部材であって,共回りを防止するための防止手段である突起物がその円周端面33b又は円周面3320 aに設けられることがあるものをいうと認めるのが相当である。
また,「選別ケーシング」を上記のような部材と解釈することは,その用語が,一般的に「選り分けること」を意味する「選別」の語と,「容器」ないし「容器形状のもの」を想起させる「ケーシング」の語とを組み合わせたものであることに照らしても妥当ということができる。
25 そして,本件訂正明細書等の段落【0026】及び【図7】には,選別ケーシング33が,回転板との間でクリアランスを形成する円周面3563aを有する「枠板」と,これと固定されている容器形状の部材との二つの部材から成る構成が示されているから,本件各発明の「選別ケーシング」は,それがただ一個の部材で構成されている場合はもちろんのこと,複数の部材が固定されて一体となって,上記のような構造と機能を5 備えた部材として構成されている場合をも含むものと解するのが相当である。
(3) 「選別ケーシング」の該当性被告装置は,吸引ポンプ用連結口を有するケーシング部材7(被告構成α1i)及び環状固定板4(同α1ii)と回転円板3(同α2)などが設けら10 れた異物選別槽A(同α5)において,異物選別槽Aの底板2に環状固定板4が取り付けられており,その内側の円形孔に遊嵌された回転円板3の側面部(端面)3aと,環状固定板4の内周側面部(内周端面)4aとで環状隙間Cが形成され,前記円形孔の下側に,吸引ポンプ用連結口を有するケーシング部材7が配備されているもの(同γ)である。また,弁論の全趣旨によ15 れば,被告装置の異物選別槽A内に生海苔と海水との混合液を投入した後,回転軸モーターによって回転円板3を回転させ,回転円板3上の混合液を同じように回転流動させつつ,吸引ポンプによる吸引を開始すると,混合液は,環状隙間Cを介してケーシング部材7内にそれぞれ強制的に吸引され,さらに,吸引ポンプ用連結口,ホースを介して,貯留槽内に投入されるものと認20 められる。
そうすると,被告装置においては,ケーシング部材7(被告構成α1i)及び環状固定板4(同α1ii)が,一体として,生海苔を分離して選別するために回転円板3との間でクリアランスを形成し,かつ,当該クリアランスを通過した生海苔・海水を集めて,吸引ポンプ用連結口からホースを介して25 貯留槽に導くための部材であるということができる。
しかも,ケーシング部材7と一体となる環状固定板4には,「表面側の突57出部」及び「側面側の突出部」を形成する板状部材8が取り付けられている(被告構成β2)。
したがって,被告装置のケーシング部材7と環状固定板4は,一体として,本件各発明の「選別ケーシング」,すなわち,回転板との間でクリアランス5 を形成して,当該クリアランスによって異物と生海苔を分離し,生海苔を選別して通過させるとともに,当該クリアランスを通過した生海苔・海水を,その内底部に設けられた連結口31(生海苔排出口)に集め,同連結口31を通じて良質タンク13に導くための部材であって,共回りを防止する手段である突起物がその円周端面33b又は円周面33aに設けられることがあ10 るもの,に該当すると認めるのが相当である。
(4) 構成要件B2等の充足性上記(3)のとおり,被告装置のケーシング部材7及び環状固定板4は,一体として本件各発明の「選別ケーシング」に該当するところ,被告構成β2では,環状固定板4に板状部材8が取り付けられており,この板状部材8が15 環状固定板4の表面及び側面からそれぞれ僅かに突出して,「表面側の突出部」と,環状固定板4と回転円板3とで形成された環状隙間C内に「側面側の突出部」とを形成しているのであるから,かかる被告構成β2は,突起物が,ケーシング部材7及び環状固定板4からなる「選別ケーシング」の,円周端面(構成要件B2),円周面(構成要件B’2),あるいは,選別ケー20 シングと回転板で形成されるクリアランス(構成要件B”2)に設けられた構成に相当するというべきである。
よって,被告装置は,本件各発明の構成要件B2等をいずれも充足するものであると認められる。
(5) 被告らの主張に対する判断25 ア この点に関して被告らは,前記のとおり,被告装置における吸引ポンプ用連結口を有するケーシング部材7と環状固定板4とは別個の部材で58あるから,「選別ケーシング」(構成要件A1,B2等)に該当するのは,吸引ポンプ用連結口を有するケーシング部材7のみであると主張する。
しかし,本件各発明の「選別ケーシング」が,複数の部材が固定され5 て一体となっている構成を含むことは,前記(2)イのとおりであるから,被告装置において,ケーシング部材7と環状固定板4とが別個の部材であるとしても,それらが被告装置の動作時に互いに固定されて一体的に機能している以上,ケーシング部材7及び環状固定板4が一体として「選別ケーシング」に該当することを否定することはできないというべ10 きである。
また,前記(3)のとおり,被告装置においては,環状固定板4と回転円板3との間に環状隙間Cが形成されて,そこで生海苔と異物を分離するものであるところ,かかる「選別」はケーシング部材7だけでは行えないのであるから,ケーシング部材7が単体で「選別ケーシング」に相当15 すると解することはできない。
したがって,被告装置の環状固定板4が本件各発明の「選別ケーシング」の一部でないことを前提に,板状部材8が環状固定板4に取り付けられた構成(被告構成β2)が本件各発明の構成要件B2等を充足しないとの被告らの上記主張は採用することができない。
20 イ また,被告らは,本件訂正明細書等の【図2】ないし【図7】のいずれにおいても,「選別ケーシング」を指す符号「33」は一の構成部材から引き出されているのであって,段落【0026】及び【図7】には選別ケーシング33が二つの部材から成る構成は記載されておらず,本件訂正明細書等の記載から,「選別ケーシング」には,複数の部材が固25 定されて一体となって構成されている場合も含まれると解釈することはできない旨主張する。
59しかし,本件訂正明細書等の段落【0026】には,「図7の例は,選別ケーシング33(枠板)の円周面33a(内周端面)に回転板34の円周端面34bが内嵌めされた構成のクリアランスSでは,このクリアランスSに突起・板体・ナイフ等の突起物の防止手段6を設ける。」5 との記載があり,【図7】には,「選別ケーシング33(枠板)」が,これとは別の部材(斜線の向きが,選別ケーシング33(枠板)とは異なる部材)とボルト締めされて一体のものとされている例が示されている。そうすると,段落【0026】及び【図7】の記載から,本件各発明において,複数の部材から形成されるものも「選別ケーシング」に該10 当するものとされていることが理解できる。被告らは「選別ケーシング」を指す符号「33」が一の構成部材から引き出されている点を指摘するが,かかる点をもって,本件各発明における「選別ケーシング」が一の部材から形成されるものに限られていると解することはできない。
加えて,本件各発明の特許請求の範囲には,「選別ケーシング」を一15 の部材から形成されるものに限定するような記載は存在せず,本件訂正明細書等の発明の詳細な説明にも,「選別ケーシング」が一の部材から形成されるものに限られることを示す記載は存しない。そして,本件各発明の特徴は前記1(2)記載のとおりであるところ,その作用効果の点で,「選別ケーシング」が一の部材から形成されるものに限定されるとすべ20 き理由もない。
したがって,被告らの上記主張は採用することができない。
4 争点(2)イ(構成要件Cの充足性)について被告らは,被告装置は構成要件B2等を充足しない生海苔異物分離除去装置であるから,構成要件Cの「生海苔異物除去装置」には該当しないと主張する25 が,被告装置が構成要件B2等を充足することは上記3で説示したとおりであるから,被告らの上記主張はその前提を欠き,採用することができない。
60以上によれば,被告装置の構成は,前提事実記載のとおり本件発明1,3及び4の構成要件A1,A2,A3,A4,A5,B,B’,B”,B1,B’1及びB”1を充足し,更に構成要件B2等(B2,B’2,B”2)及びCを充足するから,本件各発明の技術的範囲に属する。
5 5 争点(3)イ(本件固定リング及び本件板状部材の譲渡等が間接侵害に該当するか)について(1) 本件固定リングは,前記3(3)のとおり,被告装置における「選別ケーシング」の一部を構成する部材であり,回転板との間にクリアランスを形成するものである。
10 また,本件固定リングの表面には,本件板状部材を取り付けるための凹部が形成されており,本件板状部材は,本件固定リングの凹部に嵌め込まれてボルトで固定されている(被告構成β2)。
そして,本件固定リングに固定された本件板状部材は,「表面側突出部」及び「側面側突出部」を形成し,この突出部が,前記3のとおり,選別ケー15 シングの円周端面(本件発明1),回転板及び/又は選別ケーシングの円周面(本件発明3),あるいは,クリアランス(本件発明4)に設けられることによって,本件各発明における「共回りを防止する防止手段」として機能している。
(2) 以上によれば,本件固定リング及び本件板状部材は,いずれも,本件各発20 明の技術的範囲に属する物である被告装置の生産にのみ用いる物に該当すると認められる。
したがって,本件固定リング及び本件板状部材を譲渡し,貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為は,本件特許権を侵害するものとみなされる(特許法101条1号)。
25 6 争点(4)ア(サポート要件違反(本件発明1につき))について(1) 被告らは,本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載は,その発明61特定事項として,「回転板」と「選別ケーシング」との配置関係が規定されていないから,当業者が,「クリアランスの目詰まりを無くす」という本件発明1の目的にかなう効果を期待できることを本件訂正明細書等の発明の詳細な説明の記載に基づいて認識できる,「共回り防止手段」たる突起物を5 「選別ケーシング33の円周端面33b」に設ける態様のもの(本件訂正明細書等・段落【0026】,【図3】,【図4】)を超える発明を包含するものとなっており,本件発明1はサポート要件を満たさない旨主張する。
(2) 本件訂正明細書等には,前記1(1)記載のとおり,本件発明1は,「生海苔・海水混合液(生海苔混合液)から異物を分離除去する生海苔異物分離除10 去装置における生海苔の共回り防止装置に関する」(段落【0001】)ものであり,「この異物分離機構を備えた生海苔異物分離除去装置としては,特開平8−140637号の生海苔の異物分離除去装置がある。」(段落【0002】)と記載されている。そして,本件訂正明細書等に記載された本件発明1の課題(段落【0003】,【0004】),課題を解決するた15 めの手段(段落【0005】,【0006】),発明の実施の形態(段落【0019】ないし【0021】)及び実施例(段落【0023】ないし【0026】)によれば,本件発明1は,回転部材(第一回転板)と固定部材(環状枠板部)のクリアランスに生海苔を導入しつつ異物を回転部材による遠心力で円周方向に追いやり,生海苔のみが前記クリアランスを通過する20 ようにした生海苔異物分離除去装置を前提とする発明であることが理解できる。
したがって,特許請求の範囲(請求項1)の「生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液25 が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,」との記載から,本件発明1においては,固定部材である「選別ケーシング」62と回転部材である「回転板」との間にクリアランスがあることは自明であると認められる。
そうすると,請求項1に「クリアランス」との用語が記載されていなくても,本件発明1において「クリアランス」が形成される位置と,「回転板の5 回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段」である「突起物」が配備される位置との関係は,実質的に請求項1に規定されているといえる。
そして,この「クリアランス」が形成される位置と「回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段」である「突起物」が配備される位置との関係を実質的に規定した請求項1に記載された発明(本件発明1)10 は,本件訂正明細書等の段落【0023】ないし【0026】,【0029】,【図1】ないし【図4】等により裏付けられており,発明の詳細な説明に記載したものであると認められる。
以上によれば,本件発明1に係る特許請求の範囲の記載が,特許法36条6項1号の規定する要件を満たさないものであるとはいえない。
15 なお,本件訂正明細書等の記載によれば,「突起物」を「選別ケーシング」の「円周端面」に設けたことと,共回り防止という本件発明の効果は対応しているものといえるから,共回り防止という効果を期待することができないような態様が本件発明1に包含されているとは認められない。
(3) 以上のとおり,本件発明1は,発明の詳細な説明に記載したものであると20 認められるから,サポート要件(特許法36条6項1号)に違反するということはできない。よって,本件特許が,サポート要件違反を理由に特許無効審判により無効にされるべきものであるとはいえない。
7 争点(4)イ(進歩性欠如(本件各発明につき))について(1) 被告らは,当業者において,乙1発明に基づいて,乙5装置で公然実施さ25 れていた公知技術や乙8公報ないし乙10公報に記載された公知技術を参照して,相違点に係る本件各発明の構成を備えるようにすることは容易に想到63し得たことである旨主張する。
乙5装置の構成及びその製造,販売の時期については,当事者間に争いがあるが,これらの点は措き,被告らが主張する乙5装置の内容を前提として,被告らの上記主張について,以下判断する。
5 (2) 乙1発明についてア 乙1発明の概要乙1公報によれば,乙1発明の概要は以下のとおりである。
(ア) 乙1発明は,生海苔の異物分離除去装置に関し,生海苔混合液から異物を分離する際に使用されるものである(乙1公報・段落【0001】。
10 以下,同様に乙1公報の段落を摘示する。)。
従来の異物分離除去装置(特開平6−121660号・乙2)は,分離ドラムの周壁に所要数の分離孔を設け,前記分離ドラムを軸心を中心として回転させながらこのドラム内に生海苔混合液を供給し,前記分離孔を通過させることによって,前記生海苔混合液中の異物を分離除去す15 るというものであった(段落【0002】)。
この従来の異物分離除去装置では,生海苔混合液中の異物を前記分離孔の周縁に引っ掛けて排出口に流れるのを防止するものであるため,当該分離孔の周縁に異物が蓄積し,目詰まりが発生する結果,当該分離除去を能率良く行うためには,目詰まり噴射水によって洗浄するという洗20 浄装置を別途に設けなければならないという不都合があった(段落【0003】)。
(イ) 乙1発明は,従来の異物分離除去装置の前記(ア)の不都合を解消することを課題とし,当該課題を達成するために,生海苔異物分離除去装置において,筒状混合液タンクの底部周端縁に環状枠板部の外周縁を連設25 し,この環状枠板部の内周縁内に第一回転板を略面一の状態で僅かなクリアランスを介して内嵌めし,この第一回転板を軸心を中心として適宜64駆動手段によって回転可能とするとともに前記タンクの底隅部に異物排出口を設けたものである(段落【0005】)。
(ウ) 乙1発明によれば,第一回転板を回転させると,混合液に渦が形成されるため,生海苔よりも比重の大きい異物は遠心力によって第一回転板5 と前記環状枠板部とのクリアランスよりも環状枠板部側,すなわちタンクの底隅部に集積する結果,生海苔のみが水とともに前記クリアランスを通過して下方に流れ,このとき,第一回転板が回転しているため,前記クリアランスには生海苔が詰まりにくいものであって,乙1発明を使用すれば,異物が前記クリアランスに詰まりにくいため,従来のように10 目詰まり洗浄装置等を別途に設ける必要がなく,装置の維持がしやすい。
また,取扱いが簡易になり,生海苔の異物分離除去作業の作業能率を向上させることができる(段落【0009】,【0028】,【0029】)。
イ 以上によれば,乙1公報には,以下の発明(乙1発明)が記載されて15 いるものと認められる。
第一分離除去具は,第一回転板,第一回転板との間にクリアランスSを形成する環状固定板と環状枠板で構成される環状枠板部,環状枠板を連設するための周筒部,クリアランスSを通過した海苔混合液を連設タンクに排出するガイド筒,及び,異物を排出するための管状の排出路及20 びそれに続く排出管とで構成されており,筒状混合液タンクの底部周端縁に環状枠板部の外周縁を連設し,この環状枠板部の内周縁内に第一回転板を略面一の状態で僅かなクリアランスSを介して内嵌めし,この第一回転板を軸心を中心として適宜駆動手段によって回転可能とするとともに前記タンクの底隅部に異物排出口を設けたことを特徴とする生海苔25 の異物分離除去装置。
(3) 本件各発明と乙1発明との一致点及び相違点65本件各発明と乙1発明とを比較すると,その一致点及び相違点は以下のとおりであると認められる。
ア 一致点生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,並びに異物排出5 口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置である点。
イ 相違点本件各発明が,「防止手段を,突起・板体の突起物とし,この突起物を,選別ケーシングの円周端面に設け(本件発明1),回転板及び/又10 は選別ケーシングの円周面に設け(本件発明3),あるいは,選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに設ける(本件発明4)構成とした,回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段」を具備するのに対して,乙1発明はかかる防止手段を具備していない点。
(4) 相違点の容易想到性について15 ア 乙5装置の構成(ア) 被告らの主張する乙5装置の構成は,以下のとおりである。
上部が開放されている外槽には,下部に第2排水パイプが接続され,外槽の底部には送水筒が接続され,外槽の底部中央には回転軸が貫通しており,外槽内側には,回転軸が中心となるような配置で濾筒が設けら20 れ,濾筒は側壁に無数の微小通水孔が形成され,濾筒の上端縁に,鍔状のフランジ部があり,回転ブラシ筒を前記回転軸に貫通させて濾筒の内側に回転可能に装入させ,回転ブラシ筒の周壁には,途中で数か所切れて連続していないらせん状のブラシが設けられ,らせん状のブラシ先端は,濾筒の内周壁に当接するように形成されており,回転ブラシ筒の上25 端より所定間隔下であって,回転ブラシ筒の周壁にらせん状に取り付けられているブラシの最上部より少し低い高さ位置にL型金具を設け,赤66い囲み部材の上方の開放部を覆う帽状キャップの下面中央には,前記回転軸を受ける軸受孔が設けられ,短い筒状部材が帽状キャップの下面に突設され,短い筒状部材の端面には環状鍔が設けられ,帽状キャップを赤い囲み部材に取り付けた際に,該環状鍔は前記濾筒の上端縁と対向し5 隙間を形成するようになっており,L型金具は,濾筒の上端縁に当接するようにされ,水平方向に延びる該隙間に挿入されているL型金具の刃部が,該隙間を移動し,該隙間に異物が詰まって,該隙間を通過する生海苔混合液の量が少なくなることがなく,回転ブラシ筒の回転につれて濾筒内を上昇した生海苔混合液は,帽状キャップの環状鍔の下面と,濾10 筒の上端縁との間に形成される隙間を介して押し出され,排出樋を介して出されるWK−3型用大荒ゴミ取り装置。
(イ) 上記構成及び乙3の記載によれば,乙5装置における異物分離除去の方式は,生海苔混合液が,濾筒内を回転ブラシ筒の周壁にらせん状に設けられたブラシのスクリュー回転により下部から上部に上げられ,環状15 鍔の下面と濾筒の上端縁との間に形成される隙間を通過できない大異物は,吸引により第一排水パイプを介して外部へ排出除去され,大異物以外を含んだ生海苔混合液は,上記隙間から排出樋を介して排出され,次工程(より小さな異物を除去する工程)に送られるというものである。
イ 乙8公報ないし乙10公報に記載された公知技術20 (ア) 乙8公報に記載された公知技術乙8公報には,以下の公知技術が記載されている。
a 乙8公報に記載された技術は,紡績工場においてコーマ,カード精紡機その他各種繊維機械から発生する落綿吸引蒐集綿,あるいはシャーリング加工機から発生する切断されたシャーリング屑,起毛機にお25 いて発生する起毛屑,その他浮遊綿(これらを総称して「繊維屑」という。)を蒐集し,圧縮して排出する「繊維屑圧縮排出装置」に関す67る(乙8公報・段落【0001】。以下,同様に乙8公報の段落を摘示する。)。
b 従来の繊維屑圧縮排出装置において,嵩高い繊維屑の場合では,スクリュー羽根による掻き落しに際し,該スクリュー羽根に繊維屑が付5 着蓄積し,スクリュー羽根と共に回転する,いわゆる共回りを生ずるおそれがあり,この共回りを生じたときは繊維屑は下方に移行せず,スクリュー羽根内に充満し,綿詰まりを生じるなどの問題があった。
そこで,乙8公報に記載された技術は,スクリュー羽根の回転と共にケージ内面から掻き取られた繊維屑が共回りするのを防止することな10 どを目的とし,下部を小径とし,かつ開口した円錐状のケージと,該ケージ内に収納されるスクリュー羽根を備え,搬送気流と共に送り込まれる繊維屑をケージ内に上方から供給し,ケージを介して搬送気流を排出し,回転するスクリュー羽根によりケージに付着する繊維屑を掻落し,順次下方に押し下げ,下部開口部から圧縮して排出する繊維15 屑圧縮排出装置において,ケージ内面下方にはスクリュー羽根と共回りする繊維屑に対する共回り防止バーを上下方向に取り付け,スクリュー羽根の上方はケージ内面に,下方は上記共回り防止バー内面に可及的に近接する形状としたものである(段落【0005】ないし【0007】)。
20 c 乙8公報に記載された技術によれば,スクリュー羽根の回転に伴われる繊維屑の共回りによる綿詰まりを防止することができるという作用効果を奏する(段落【0022】)。
(イ) 乙9公報に記載された公知技術乙9公報には,以下の公知技術が記載されている。
25 a 乙9公報に記載された技術は,粉粒体フィーダの共回り防止に関する(乙9公報の段落【0001】。以下,同様に乙9公報の段落を摘68示する。)。
b 乙9公報に記載された技術は,回転羽根と共回りしようとする粉粒体を圧密を起こすことなく安定して排出させることを目的とし(段落【0003】),底板上に間隙を介して粉粒体供給用の内筒が設けら5 れ,該内筒と中心線を共有する外筒の下端を底板上に接続し,内外筒間に上記間隙から排出される粉粒体の円環状通路を形成し,該通路に排出口を設け,かつ底板の中心部に突設した直立回転体に中央回転羽根を設け,該回転羽根の先端に外筒の内周面に沿う外周回転リングを設け,該回転リングに設けた複数の外周回転羽根を内側に向わせてな10 る粉粒体フィーダにおいて,「上記底板上面に開き角均等な複数の半径線にそれぞれ均等角度で同一方向に交差する等長抵抗板を設け,該抵抗板の直上に上記中央回転羽根を配設してなる粉粒体フィーダにおける粉粒体の共回り防止用抵抗板」によって構成したものである(段落【0004】)。
15 c 乙9公報に記載された技術によれば,回転羽根と共回りを始めた粉粒体は,抵抗板まで運ばれ,抵抗板は斜めに取り付けてあるので粉粒体には外周部方向へ力が作用し,安定した排出が可能となるので,圧密を起こすことなく安定した排出が可能となる,という作用効果を奏する(段落【0005】,【0010】)。
20 (ウ) 乙10公報に記載された公知技術乙10公報には,以下の公知技術が記載されている。
a 乙10公報に記載された技術は,貯槽に溜められた原料を横送り用のフィーダで切り出す形式の原料供給装置に関する(乙10公報・1頁14行〜16行。以下,同様に乙10公報の記載を摘示する。)。
25 b 乙10公報に記載された技術は,従来の装置では,原料の性状によっては,原料がアジテータと一緒に貯槽の内周面に沿って回転する共69回り現象が発生し,充分な攪拌ができなくなって,開口からスクリュー部へ原料が流れていかないという現象を回避できる原料供給装置を提供することを目的とし(共回り現象が発生する原料としては,カーボンファイバーのミルド粉などを挙げることができる。2頁6行〜15 9行),貯槽の底部に横送り用のフィーダを取り付け,貯槽の内部でブリッジ防止用のアジテータを貯槽の内周面に沿って回転させながら原料の切り出しを実施するように構成するとともに,貯槽の内周面に内側に向かって延びる突起を,貯槽の周方向に設定位置を変更自在に取り付けたものである(3頁1行〜7行)。
10 c 乙10公報に記載された技術は,アジテータに伴われて共回りしようとした原料は,貯槽の内周面から内側に向かって延設された突起に衝突して原料の回転速度が低下し(3頁9行〜13行),貯槽の内部でブリッジ防止用のアジテータを貯槽の内周面に沿って回転させた場合であっても,原料の共回り現象を防止することができ,貯槽内での15 ブリッジ現象を防止するとともに貯槽からこの貯槽の底部に取り付けられた横送り用のフィーダに原料をスムーズに流すことができる,という作用効果を奏する(5頁7行〜14行)。
ウ 相違点の容易想到性について(ア) 乙1発明は,前記(2)アのとおり,従来の異物分離除去装置(乙2)20 が,分離ドラムの周壁に所要数の分離孔を設け,生海苔混合液を回転する分離ドラム内に供給し,分離孔を通過させることによって,生海苔混合液中の異物を分離ドラムの分離孔の周縁に引っ掛けて排出口に流れるのを防止するという方式(以下「従来方式」という。)であったため,分離孔の周縁に異物が蓄積し,目詰まりが発生するという課題を有する25 ものであったことから,かかる課題を解決することを目的とし,従来の異物分離除去装置(乙2)における異物分離除去の方式を変更して,固70定部材(環状枠板部)とこの内周縁内に内嵌めされた回転部材(第一回転板)との間のクリアランスに生海苔を導入しつつ,異物を,回転部材(第一回転板)の回転による遠心力によって,円周方向(クリアランスよりも環状枠板部側)に追いやり,生海苔のみを水とともにクリアラン5 スを通過させるようにしたもの(以下「回転板方式」という。)であり,かかる方式を採用したことにより,異物がクリアランスに詰まりにくく,従来の異物分離除去装置のように,目詰まり洗浄装置等を別途設けることを不要としたものであると認められる。
他方,本件各発明は,前記1(2)記載のとおり,乙1発明を従来技術10 とし,その有する課題の解決を目的として発明されたものであって,回転板方式による異物分離除去装置である乙1発明には,「共回り」の課題があることを見いだし,これを克服するために,回転板方式による異物分離除去装置において,回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段を設けたものである。
15 そうすると,乙1発明は,回転板方式を前提とする発明である点で本件各発明と共通するものであるが,乙1公報には,「共回り」,すなわち,「回転板を高速回転することから,生海苔及び異物が,回転板とともに回り(回転し),クリアランスに吸い込まれない現象,又は生海苔等が,クリアランスに喰込んだ状態で回転板とともに回転し,クリアラ20 ンスに,吸い込まれない現象であり,究極的には,クリアランスの目詰まり(クリアランスの閉塞)が発生する状況等」(本件訂正明細書等・段落【0003】)を防止することが乙1発明の課題である旨の記載はない。
したがって,乙1公報に接した当業者において,回転板方式による異25 物分離除去装置である乙1発明に前記「共回り」の課題があることを想起し得たと認めることはできない。
71(イ) 被告らは,乙1発明に基づいて,乙5装置で公然実施されていた公知技術を参照して本件各発明の構成に至ることは,当業者に容易であったと主張する。
しかし,乙1発明は本件各発明と同じく,固定部材と回転部材との5 間のクリアランスに生海苔を導入しつつ,異物を回転部材による遠心力により円周方向に追いやり,生海苔のみがクリアランスを通過するようにした回転板方式を前提とするものであるのに対し,乙5装置は,これとは異なり,異物を吸引により第一排水パイプを介して外部へ排出除去するという方式によるものである。このように,乙1発明と乙5装置と10 では,その前提とする異物分離除去に係る技術的思想(方式)が異なるから,仮に,乙1公報に接した当業者において,乙1発明には,なお,クリアランスに異物や生海苔の詰まりが生じるという問題があるという課題を想起し得たとしても,乙1発明に,それとは前提とする異物分離除去に係る技術的思想の異なる乙5装置を適用する動機付けがあったと15 は認められない。
また,乙5装置において,回転ブラシ筒,その周壁に設けられたブラシは,本件各発明の「回転板」には相当せず,環状鍔と濾筒の上端縁とで形成される隙間は,固定部材と回転板との間に形成されるものでもない。
20 そして,該隙間内を回転する「L型金具」は,大異物以外を含んだ生海苔混合液の通路である「隙間」に詰まった異物を単に除去するための手段にすぎず,回転板方式の異物分離除去過程において生じる「回転板の回転とともに回る生海苔の共回り」を防止する手段でもないから,仮に,当業者において,乙1発明に乙5装置を適用することを試みたとし25 ても,乙1発明において,相違点に係る本件各発明の構成を備えるようにすることが容易に想到し得たことであるとは認められない。
72(ウ) 被告らは,乙1発明に基づいて,乙8公報ないし乙10公報の公知技術を参照して本件各発明の構成に至ることは,当業者に容易であったと主張する。
しかし,乙8公報ないし乙10公報に記載された公知技術は,いず5 れも「共回り」の防止に係る技術ではあるが,「共回り」を防止しようとする対象物は,乙8公報では繊維屑,乙9公報では粉粒体,乙10公報ではカーボンファイバーのミルド粉などの原料であり,本件各発明の生海苔混合液のような液体を主流体としたものではなく,本件各発明のように,回転部材と固定部材のクリアランス部分において生じる「共回10 り」を対象としたものでもないから,本件各発明における「共回り」の防止と,乙8公報ないし乙10公報に記載された技術における「共回り」の防止は,技術的意義が相違する。
また,乙8公報ないし乙10公報に記載された技術は,いずれも,本件各発明のような異物が混入しているものを対象とした発明ではないか15 ら,そもそも異物分離除去装置ではなく,まして,本件各発明のような固定部材と回転部材とのクリアランスから異物を除去した対象物を通過させるという異物分離除去に係る回転板方式を前提とするものではないから,本件各発明における「選別ケーシング」や「回転板」を有するものでもない。
20 したがって,仮に,乙1公報に接した当業者において,乙1公報にはなおクリアランスに異物や生海苔の詰まりが生じるという問題があるという課題を想起し得たとしても,乙1発明に,そもそも異物分離除去装置ではなく,固定部材と回転部材とのクリアランスから異物を除去した対象物を通過させるという異物分離除去に係る回転板方式を前提とする25 ものでもない,乙8公報ないし乙10公報に記載された公知技術を適用する動機付けがあったとは認められない。
73さらに,仮に,当業者において,乙1発明に乙8公報ないし乙10公報に記載された公知技術を適用することを試みたとしても,乙1発明において,乙1発明の構成部材である「回転板」,「選別ケーシング」を有さない乙8公報ないし乙10公報に記載された発明をどのように適用5 するのか想定することはできず,相違点に係る本件各発明の構成とすることが容易に想到し得たことであるとは認められない。
(エ) 以上によれば,乙1発明を主引用例とし,これに乙5装置や乙8公報ないし乙10公報に記載された公知技術を組み合わせることによって,相違点に係る本件各発明の構成に容易に想到し得たものであると認める10 ことはできない。
(5) 小括以上のとおり,本件各発明は,本件特許の出願当時,当業者において,乙1発明を主引用例とし,それに乙5装置や乙8公報ないし乙10公報に記載された公知技術を組み合わせることによって,容易に発明をすることができ15 たものであるとはいえないから,本件特許が,被告らの主張する進歩性欠如の無効理由によって,特許無効審判により無効にされるべきものであるとはいえない。
8 争点(5)ア(乙5装置に係る事業に基づく渡邊機開の先使用権)について(1) 特許法79条は,「特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明20 をし,又は特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して,特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は,その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において,その特許出願に係る特許権について通常実施権を有する。」として,いわゆる先使用権を規定する。
25 この規定の「実施又は準備をしている発明・・・の範囲」とは,特許発明の特許出願の際に先使用権者が現に日本国内において実施又は準備をしてい74た実施形式に限定されるものではなく,その実施形式に具現されている技術的思想すなわち発明の範囲をいうものと解されるから,先使用権の効力は,特許出願の際に先使用権者が現に実施又は準備をしていた実施形式だけでなく,これに具現された発明と同一性を失わない範囲内において変更した実施5 形式にも及ぶものと解するのが相当である(最高裁昭和61年(オ)第454号同年10月3日第二小法廷判決・民集40巻6号1068頁参照)。
そして,「発明」とは,自然法則を利用した技術的思想創作をいうのであるが(特許法2条1項),それは,一定の技術的課題(目的)の設定,その課題を解決するための技術的手段の採用及びその技術的手段により所期の10 目的を達成し得るという効果の確認という段階を経て完成されるものであって,発明が完成したというためには,その技術内容が,当該技術分野における通常の知識を有する者が反復継続して目的とする効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていることが必要であると解される(前記最高裁昭和61年10月3日第二小法廷判決参照)。この15 ことからすれば,先使用権の基礎となる「発明」についても,その技術内容が抽象的な思想にとどまるものでは足りず,一定の技術的課題を解決するための技術的手段がその効果を挙げることができる程度に具体的かつ客観的なものとして構成されているものでなければならないと解するのが相当である。
(2) 乙5装置に係る発明について20 ア 前記7(1)のとおり,乙5装置の構成及びその製造・販売の時期については,当事者間に争いがあるが,被告らは,同装置の構成について,「上部が開放されている外槽には,下部に第2排水パイプが接続され,外槽の底部には送水筒が接続され,外槽の底部中央には回転軸が貫通しており,外槽内側には,回転軸が中心となるような配置で濾筒が設けら25 れ,濾筒は側壁に無数の微小通水孔が形成され,濾筒の上端縁に,鍔状のフランジ部があり,回転ブラシ筒を前記回転軸に貫通させて濾筒の内75側に回転可能に装入させ,回転ブラシ筒の周壁には,途中で数か所切れて連続していないらせん状のブラシが設けられ,らせん状のブラシ先端は,濾筒の内周壁に当接するように形成されており,回転ブラシ筒の上端より所定間隔下であって,回転ブラシ筒の周壁にらせん状に取り付け5 られているブラシの最上部より少し低い高さ位置にL型金具を設け,赤い囲み部材の上方の開放部を覆う帽状キャップの下面中央には,前記回転軸を受ける軸受孔が設けられ,短い筒状部材が帽状キャップの下面に突設され,短い筒状部材の端面には環状鍔が設けられ,帽状キャップを赤い囲み部材に取り付けた際に,該環状鍔は前記濾筒の上端縁と対向し10 隙間を形成するようになっており,L型金具は,濾筒の上端縁に当接するようにされ,水平方向に延びる該隙間に挿入されているL型金具の刃部が,該隙間を移動し,該隙間に異物が詰まって,該隙間を通過する生海苔混合液の量が少なくなることがなく,回転ブラシ筒の回転につれて濾筒内を上昇した生海苔混合液は,帽状キャップの環状鍔の下面と,濾15 筒の上端縁との間に形成される隙間を介して押し出され,排出樋を介して出されるWK−3型用大荒ゴミ取り装置」である旨主張する。
乙5装置が被告らの主張のとおりの上記構成を有するものとすると,乙5装置は,外槽の内側に設けられた濾筒の上端縁と,帽状キャップの下面に突設した筒状部材の端面の環状鍔との間に水平方向に延びる隙間20 を形成し,当該隙間を介して生海苔混合液が押し出される異物を吸引により第一排水パイプを介して外部へ排出除去することによって,生海苔と異物とを分離する装置において,当該隙間に異物が詰まって,隙間を通過する生海苔混合液の量が少なくなるという課題を解決するために,濾筒の内側に回転可能に装入された回転ブラシ筒にL型金具を取り付け,25 そのL型金具の刃部が当該隙間に挿入されて,回転ブラシ筒の回転に伴って当該隙間を移動することによって,当該隙間に詰まった異物を除去76し,当該隙間への異物の詰まりを防止するという発明を具現しているものと認めることができる。
イ 他方,本件各発明の構成要件は,前記第2,2(4)記載のとおりであって,前記1のとおり,本件各発明は,生海苔混合液槽の選別ケーシング5 の円周面と回転板の円周面との間に設けられた僅かなクリアランスを利用して,生海苔・海水混合液(生海苔混合液)から異物を分離除去する回転板方式の生海苔異物分離除去装置において,クリアランスの目詰まりが発生する状況が生じ,回転板の停止又は作業の停止を招いて,結果的に異物分離作業の能率低下等を招いてしまうとの課題を解決するため10 に,突起・板体の突起物を選別ケーシングの円周端面に設け(本件発明1),回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設け(本件発明3),あるいは,クリアランスに設けること(本件発明4)によって,共回りの発生をなくし,かつクリアランスの目詰まりをなくす等の効果を奏するものである。
15 そうすると,乙5装置に係る発明と本件各発明とでは,隙間(クリアランス)の目詰まりを防止するという課題を解決するために採用された技術的手段が大きく異なり,それに応じて発明の対象となる装置の基本的構成についても全く異なっているというべきである。
ウ また,被告装置は,前記第2,2(6)記載の被告構成α1iないしγの20 構成を有し,前記4のとおり本件各発明の技術的範囲に属するものと認められるところ,被告装置は,本件各発明に係る装置と同様に,回転板方式の生海苔異物除去機であり,本件各発明と同様の課題を解決するために,板状部材8を厚さ数mm,長方形状の「板状」とし(被告構成β1),環状固定板4の表面及び内周側部分(内周端面)よりも僅かに突25 出する構成とすること(被告構成β2)によって,環状固定板4の内周側面部(内周端面)と回転円板3の側面部(端面)とで形成された環状77隙間Cに目詰まりが生じることを防止しているものである。
そうすると,乙5装置に係る発明と被告装置とでは,課題を解決するために採用された技術的手段及び発明の対象となる装置の基本的構成のいずれにおいても大きく異なっているというべきであり,被告装置が乙5 5装置の実施形式に具現された発明と同一の範囲内のものということはできない。
(3) 被告らの主張に対する判断ア この点に関して被告らは,乙5装置の実施形式には「生海苔の異物分離除去装置において,生海苔と海水との混合液である生海苔混合液をし10 て狭い隙間を通過させることにより前記生海苔混合液に含まれている異物であって当該隙間を通過できない大きさの異物を分離除去する際に,前記隙間に異物などが詰まることを防止する手段を設ける」との本件技術的思想Aが具現されており,被告装置も,これと同じ技術的思想を具現したものであるから,被告装置に先使用権が及ぶと主張する。
15 しかし,前記(1)のとおり,「発明」というためには,その技術内容が抽象的な思想にとどまるものでなく,一定の技術的課題を解決するための技術的手段がその効果を挙げることができる程度に具体的かつ客観的なものとして構成されていなければならないと解されるところ,被告らが本件技術的思想Aとして主張する上記内容は,抽象的な思想にとどま20 り,課題解決のための技術的手段がその効果を挙げることができる程度に具体的かつ客観的なものとして構成されているということはできない。
イ また,被告らは,乙5装置は「隙間に異物などが詰まることを防止する手段」を設け,この防止手段を「平面視で環状の狭い隙間を生海苔混合液が通過していく方向に対して直交する方向から突起物を衝突させる」25 という構成にするという技術的思想を具現化したものであり,乙5装置に具現化された技術的思想と本件各発明の技術的思想とは同一性を有す78る旨主張する。
しかし,本件各発明は,固定部材と回転板との間のクリアランスに生海苔を導入しつつ,異物を回転板による遠心力により円周方向に追いやり,生海苔のみがクリアランスを通過するようにした回転板方式を前提5 とするものであるのに対し,乙5装置は,これとは異なり,異物を吸引により第一排水パイプを介して外部へ排出除去するという方式によるものであって,本件各発明と乙5装置とでは,その前提とする異物分離除去に係る技術的思想(方式)が異なる。
また,乙5装置において,回転ブラシ筒,その周壁に設けられたブラ10 シは,本件各発明の「回転板」には相当せず,環状鍔と濾筒の上端縁とで形成される隙間は,固定部材と回転板との間に形成されるものでもないし,該隙間内を回転する「L型金具」は,大異物以外を含んだ生海苔混合液の通路である「隙間」に詰まった異物を単に除去するための手段にすぎず,回転板方式の異物分離除去過程において生じる「回転板の回15 転とともに回る生海苔の共回り」を防止する手段でもない。そうすると,乙5装置は,大異物以外を含んだ生海苔混合液の通路である「隙間」に詰まった異物を単に除去するための手段にすぎず,「生海苔混合液に対して突起物を衝突させる」という技術的思想を具現化したものであるとは認められない。
20 したがって,乙5装置が上記技術的思想を具現化したものであるということはできず,乙5装置に具現化された技術的思想と本件各発明の技術的思想とが同一性を有するということもできない。
(4) 小括以上のとおり,渡邊機開が本件特許権に対して先使用権(特許法79条)25 を有しているとはいえず,これを前提とした被告らの主張は理由がない。
9 争点(5)イ(乙16の2発明の実施である事業の準備に基づく渡邊機開の先79使用権)について(1) 被告らは,渡邊機開が本件特許出願(平成10年6月12日)より前に乙16の2発明に具現された本件技術的思想Bを完成させ,同年6月8日にはその実施品であるWK−3型Rタイプの設計図面(乙17図面等)を完成さ5 せて,その量産化に係る事業の準備をしていたから,渡邊機開は本件技術的思想Bの範囲内といえる本件各発明について先使用権を有し,その先使用権は,本件技術的思想Bと同一性を失わない範囲内の被告装置にも及ぶと主張する。
(2) 乙16の2発明について10 ア 乙16の2明細書等の【請求項2】,【請求項5】及び【請求項6】並びに段落【0007】,【0010】,【0011】,【0030】ないし【0033】及び【0036】によれば,乙16の2発明は,外槽の下部へ,外周部に同心円状の環状溝を穿設した固定盤を固定し,この固定盤の内側に,前記環状溝と小間隙を保って嵌合する環状突条を有15 する回転盤を回転自在に設置し,前記回転盤の外側に,前記環状溝を通過する生海苔の排出手段を連接した生海苔異物除去装置において,環状溝と環状突条とで形成する生海苔の通過路に目詰まりが生じて,回転盤の回転が困難になり,又は著しい回転抵抗を生じるなどの問題点があることから,当該通過路の清掃手段を設けることとし,その清掃手段とし20 て,環状溝及び環状突条の間の溝壁と摺接するために,固定盤及び回転盤にウレタンゴム板,ポリウレタン,ポリプロピレン,ポリカーボネイトその他適度の弾性を有し,耐摩耗性,耐薬品性,耐老化性の優れたプラスチック類,合成ゴム類などを突設するものとし,これにより通過間隙の目詰まりを防止するようにした発明であると認められる。
25 そして,証拠(乙27,28,29)によれば,同発明の実施品であるWK−3型Rタイプにおいては,上部回転盤の環状突条(テーパ部)80と下部固定盤の環状溝で形成される隙間(クリアランス)の目詰まりを防止するために,下部固定盤及び上部回転盤の双方にウレタンゴム板をはめ込んで,上部回転盤が下部固定盤に対して回転する際に,その上部回転盤のウレタンゴム板が,環状突条のテーパ部をはみ出る部分で下部5 固定盤の環状溝壁面をこするようにして,隙間(クリアランス)を清掃し,その目詰まりを防止するという,具体的かつ客観的に構成された技術的手段が採用されていたことが認められる。
そうすると,被告らの主張するとおり,乙16の2発明の実施品であるWK−3型Rタイプにおいては,「下部固定盤及び上部回転盤の双方10 にウレタンゴム板をはめ込み,上部回転盤のウレタンゴム板は,上部回転盤が下部固定盤に対して回転する際に,環状突条のテーパ部をはみ出る部分が下部固定盤の環状溝壁面をこするようにして,上部回転盤の環状突条(テーパ部)と下部固定盤の環状溝で形成される隙間(クリアランス)を清掃し,目詰まりを防止する」という技術的思想(本件技術的15 思想B)が具現されていたということができる。
イ 他方,本件各発明は,前記1のとおり,生海苔混合液槽の選別ケーシングの円周面と回転板の円周面との間に設けられた僅かなクリアランスを利用して,生海苔・海水混合液(生海苔混合液)から異物を分離除去する回転板方式の生海苔異物分離除去装置において,クリアランスの目20 詰まりが発生する状況が生じ,回転板の停止又は作業の停止を招いて,結果的に異物分離作業の能率低下等を招いてしまうとの課題を解決するために,突起・板体の突起物を選別ケーシングの円周端面に設け(本件発明1),回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設け(本件発明3),あるいは,クリアランスに設けること(本件発明4)によって,25 共回りの発生をなくし,かつクリアランスの目詰まりをなくす等の効果を奏するものである。
81そうすると,本件各発明と乙16の2発明とは,生海苔混合液を入れる槽の中で固定された部材の円周面と回転体の円周面との間に形成される環状のクリアランス(通過路)を利用して,異物を除去する生海苔異物分離除去装置において,当該クリアランス(通過路)に目詰まりが発5 生することを防止するための手段を設けた発明であるとの点で共通するといえる。
しかし,本件各発明は,その防止手段である突起・板体の突起物を回転板や選別ケーシングの円周面(円周端面)に設ける構成を含んでいるが,本件訂正明細書等の【図4】及び【図6】から明らかなように,本10 件各発明においては,クリアランスを形成する一方の選別ケーシングに設けられた突起物は,クリアランスを形成する他方の回転板に摺接するものではなく,同様に,回転板に設けられた突起物も,他方の選別ケーシングに摺接するものとはされていない。すなわち,本件各発明は,クリアランスを形成する選別ケーシング又は/及び回転板の円周面(円周15 端面),あるいはクリアランス自体に突起物が設けられるものであるが,当該突起物がクリアランスを形成する選別ケーシングや回転板に摺接することなしに,クリアランスの目詰まりを防止することができる発明であるといえる。
これに対して,前記アのとおり,乙16の2発明の実施品であるWK20 −3型Rタイプに具現された本件技術的思想Bは,上部回転盤にはめ込まれたウレタンゴム板が,下部固定盤の環状溝壁面をこするようにして,隙間(クリアランス)を清掃するというものであるから,乙16の2発明が採用する技術的手段と本件各発明が採用する技術的手段とは,その具体的な構成において互いに異なるものであるというべきであり,これ25 は単なる実施形式の違いということはできない。
したがって,本件各発明の技術的思想とWK−3型Rタイプに具現さ82れた技術的思想が同一であるということはできない。
ウ この点に関して被告らは,本件技術的思想Bにつき,「摺接」は実施態様の一つにすぎず,上部回転盤にはめ込まれたウレタンゴム板が下部固定盤の環状溝壁面をこするようにしてクリアランスを清掃する技術に5 限定されると解すべき理由はないと主張する。
しかし,乙16の2発明及びその実施品であるWK−3型Rタイプに具現された本件技術的思想Bが,はめ込まれたウレタンゴム板が環状溝壁面をこするようにして,隙間(クリアランス)を清掃し目詰まりを防止するというものであることは,被告ら自らが主張するところであるば10 かりか,前記アで認定した乙16の2発明及びその実施品であるWK−3型Rタイプの技術内容,及び,乙16の2明細書等において「清掃手段は,環状溝及び環状突条の間の溝(間溝)壁と摺接する為に固定盤及び回転盤にウレタンゴム板を突設したものである」(段落【0007】),「前記においては,ウレタンゴム板を用いたが,ポリウレタン,15 ポリプロピレン,ポリカーボネイトその他適度の弾性を有し,耐摩耗性,耐薬品性,耐老化性の優れたプラスチック類,合成ゴム類などを使用することができる。」(段落【0010】)と記載されており,清掃手段が溝壁への「摺接」を前提とし,そのために適度な弾性を有し,摩耗に耐えるものであるとされていることに照らせば,乙16の2発明及びそ20 の実施品であるWK−3型Rタイプの技術的思想において,「摺接」が実施態様の一つにすぎないものと解することはできない。
したがって,被告らの上記主張は採用することができない。
エ 以上によれば,乙16の2発明は,本件各発明とは異なる発明であるから,仮に渡邊機開が本件特許出願の前に,自ら乙16の2発明を完成25 させていたとしても,渡邊機開は,本件各発明に関し,「特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし・・・た者」に当たるとい83うことはできない。
さらに,本件各発明の技術的範囲に属する被告装置についても,目詰まりを防止するための手段である本件板状部材は,ウレタンゴム等の弾性素材ではなく金属製であって,環状固定板の表面及び側面から僅かに5 突出して,「表面側の突出部」及び環状隙間内の「側面側の突出部」を形成しているにすぎず(被告構成β2),当該突出部が回転円板に摺接するように構成されているものではないから,被告装置は,乙16の2発明の実施形式に具現化された発明と同一の範囲内のものということはできない。
10 したがって,この点で,渡邊機開が被告装置に関して乙16の2発明に基づき本件特許権に係る先使用権を有するものとは認められない。
(3) 乙16の2発明の実施である事業の準備についてア 特許法79条の「発明の実施である・・・事業の準備」とは,その発明につき,いまだ事業の実施の段階には至らないものの,即時実施の意15 図を有しており,かつ,その即時実施の意図が客観的に認識される態様,程度において表明されていることを意味するものと解するのが相当である(前記最高裁昭和61年10月3日第二小法廷判決参照)。
イ 被告らは,渡邊機開において,平成10年4月下旬に乙16の2発明に係る本件技術的思想Bを完成させ,同年6月8日には,乙16の2発20 明の実施品であるWK−3型Rタイプの設計図面(乙17図面等)を完成させて,その量産化に係る事業の準備をしていたと主張する。
証拠(乙16の1・2,乙19,22,26,28)によれば,@渡邊機開が,平成10年3月までに,基本的な構造として,3本の溝が同心円状に形成されている下部固定盤と,その下部固定盤の3本の環状溝25 に対して上側から嵌合される3本の環状の突条を同心円状に備えている上部回転盤によって,同心円状に6条の環状の隙間を作り,その隙間に84生海苔と海水との混合液を強制的に通過させることにより,その隙間を通過できない異物を除去する構造を有する生海苔異物分離除去装置を開発し,同月12日,これを「生海苔の異物分離器及び異物除去装置」の発明(以下「乙16の1発明」という。)として特許出願(特願平105 −061497号)したこと,A渡邊機開が同年4月19日の「海苔生産機械・資材展」及び同年6月6日の「浅海増殖研究発表全国大会・機械資材展示会」に,自社の生海苔異物分離除去装置を出品し,同年7月28日頃までに機械名称を「WK−32」とする装置用の端子台接続図を作成したこと,Bその後,渡邊機開は,乙16の1発明と同じ基本構10 造を有するがその環状隙間に清掃手段を付加するなどした乙16の2発明について,同年9月11日に特許出願(特願平10−258335号。
発明の名称「生海苔の異物分離器及び異物除去装置」)をしたこと,C同月18日に白石海苔機械センターに対して,「WK−3型Rタイプ」と称する生海苔異物分離除去装置を販売したこと,の各事実を認めるこ15 とができる。
そして,この点に関して,当時渡邊機開の工場長であったDは,その陳述書(乙19,28)において,@平成10年3月下旬に,乙16の1発明の実施品の試作機の試運転を行ったが,環状隙間に生海苔が詰まって満足な運転ができなかったことから,当該隙間を清掃する部材を設20 けることを考え,下部固定盤に溝を作り,そこにウレタンゴム板を挿入した改良試作機を作った,A同年4月19日の展示会にこの改良試作機を出品したりしたが,なお目詰まり防止効果が不十分であったため,同月下旬には,下部固定盤だけでなく,上部回転盤にも溝を設け,そこにウレタンゴム板を挿入することで,環状隙間に生海苔が詰まることを防25 止できる装置(WK−3型Rタイプ)の試作機を完成させた,Bこの装置を同年6月6日の展示会に出品するとともに,同月8日には,ウレタ85ンゴム板のサイズを,上部回転盤用が「4×20×50」(mm),下部固定盤用が「4×20×49」(mm)と確定させて,最終的な設計図面(乙17図面を含む。)を作成した,Cその後同年9月11日に,この乙16の2発明を特許出願するとともに,同月頃,その実施品をWK−5 3型Rタイプとして発売した,と陳述する。
ウ しかし,本件においては,渡邊機開が平成10年9月11日までに乙16の2発明を完成させて,同日これを特許出願したことは認めることができるものの,渡邊機開が同年4月下旬までに同発明を完成させたこと,同年6月6日の展示会に出品されたのが同発明の実施品(WK−310 型Rタイプ)の試作機であったこと,同月8日に同実施品の最終的な設計図面が完成したこと等については,いずれも客観的な裏付けを欠くといわざるを得ない。
(ア) この点,確かに,乙17図面である3枚の設計図面には,いずれも作成日付を表す「H.10.6.8」(「平成10年6月8日」を意味す15 ると認められる。)との記載があり,そこには,WK−3型Rタイプに用いられる上部回転盤(乙17の1),下部固定盤(乙17の2),その他の部品及び上部回転盤と下部固定盤にそれぞれ挿入するウレタンゴム板(乙17の3)の各設計図が記載されている。そして,この下部固定盤の設計図(乙17の2)には,ウレタンゴム板をはめ込むための溝20 が図示されており,その長さが「71」(mm)と記載されている。
他方,被告らは,同設計図(乙17の2)とは別に,「H.10.6.8」との作成日付が記載された下部固定盤の設計図(乙18)を提出しているところ,これらの2枚の設計図の記載内容に照らすと,両設計図は,その基本的な部分が同じ内容であって,一方の設計図が他方の設計25 図をコピーして作成されたか,あるいは,両設計図がそれぞれ他の設計図からコピーして作成されたものであると考えられる。しかし,乙1886の設計図に記されたウレタンゴム板をはめ込むための溝の長さは,乙17の2の設計図に記された溝の長さより短く,「53」(mm)と記載されている。
この違いについて,前記Dは,その陳述書(乙28)で,溝の長さが5 53mmである乙18の設計図が当初のものであり,乙17の2の設計図の溝の長さ(71mm)は,その作成日付「H.10.6.8」より後に書き込まれたものであると説明するところ,その説明によれば,少なくとも乙17の2の設計図は,平成10年6月8日に作成された図面を元にして,同日付より後に,ウレタンゴム板をはめ込むための溝を加10 筆して作成されたものであることが明らかである。そして,このことに照らすと,その他の乙17図面や乙18の設計図についても,同日付に作成された図面を元にして,同日付より後に,ウレタンゴム板やそれをはめ込むための溝を加筆して作成された可能性が高いといわざるを得ない。
15 また,渡邊機開は,乙16の2発明に係る特許出願(平成10年9月11日)に先立って,同年3月12日に,乙16の2発明の生海苔異物除去装置と同じ基本構造を備えるが,その清掃手段(ウレタンゴム板)を有しない生海苔異物除去装置についての特許出願(乙16の1)をしているところ,これら二つの特許出願に用いられた上部回転盤の図(乙20 16の1・【図3】及び乙16の2・【図3】)と下部固定盤の図(乙16の1・【図4】及び乙16の2・【図4】)は,乙16の2発明に係るウレタンゴム板をはめ込むための溝の有無を除き,それぞれ同じものであるから,乙17図面に含まれる上部回転盤の設計図(乙17の1),下部固定盤の設計図(乙17の2),その他の部品の設計図(乙25 17の3)及びもう1枚の下部固定盤の設計図(乙18)は,上記のとおり加筆された可能性があるウレタンゴム板やそれをはめ込むための溝87についての記載部分を除くと,いずれも平成10年3月12日に特許出願された乙16の1発明の実施品のための設計図であると考えることもできる。
そうであれば,渡邊機開は,これらの設計図に記載された日付である5 同年6月8日の時点では,同年3月12日に出願した乙16の1発明の実施品に係る設計図面を作成したにすぎないこととなり,この時点で,後の同年9月11日に出願された乙16の2発明を完成させ,その発明の実施である事業の準備をしていたということにはならない。
(イ) また,上記のとおり,乙17の2の下部固定盤の設計図(溝の長さは10 71mm。)より前に作成されたとされる乙18の下部固定盤の設計図に記載された溝の長さは53mmであり,乙17図面のうち1枚(乙17の3)には,下部固定盤用の長さ49mmのウレタンゴム板の図が記載されており,前記Dも,渡邊機開が確定した下部固定盤用のウレタンゴム板のサイズが「4×20×49」であったと陳述する。
15 しかし,証拠(甲26の1・2)によれば,渡邊機開が,長さ49mmの下部固定盤用ウレタンゴム板として用いるウレタンゴム(3辺の寸法は,4mm×20mm×49mm)を購入したのは,平成10年8月3日が最初であり,その際,渡邊機開は,同サイズのウレタンゴムを2個購入し,その後,同月11日から29日の間に同サイズのウレタンゴ20 ム合計230個を購入しているが,他方,それ以前においては,渡邊機開は,同年6月29日に,3辺の寸法が4mm×100mm×1000mmである大きいサイズのウレタンゴムを購入しているにすぎない。
そうすると,渡邊機開が,下部固定盤に長さ53mmの溝を設け,そこに長さ49mmのウレタンゴム板をはめ込むことを決定したのは,渡25 邊機開が上記の大きいサイズのウレタンゴムを購入した平成10年6月29日よりも後のことであったと考えるのが自然である。
88(ウ) 加えて,仮にDの陳述どおりであれば,渡邊機開は,乙16の2発明について,その特許出願(平成10年9月11日)以前に,試作機を展示会(同年6月6日)に出品して,同発明を公知にしたことになるが,これは,特許を出願しようとする者の行動として合理的なものとはいえ5 ない。
(エ) 以上認定の諸事情に照らせば,Dの前記陳述のうち,乙16の2発明が平成10年4月下旬までに完成されたこと,同発明の実施品(WK−3型Rタイプ)の試作機を同年6月6日の展示会に出品したこと,及び,同月8日に同実施品の最終的な設計図面が完成されたことに関する部分10 は,いずれも客観的な裏付けを欠くものであり,しかも,その内容も不自然というべきであって,採用することができない。
そして,本件においては,このほかに,渡邊機開が,平成10年6月8日の時点で,上部回転盤及び下部固定盤に溝を設け,そこに清掃手段であるウレタンゴム板をはめ込んだ構成を有する乙16の2発明に係る15 装置を完成させ,その最終的な設計図面を作成するなどして,その発明の実施である事業の準備をしていたことを認めるに足りる的確な証拠はない。
エ 以上によれば,渡邊機開が,原告による本件特許出願(平成10年6月12日)の際,現に乙16の2発明について即時実施の意図を有して20 おり,かつ,その即時実施の意図が客観的に認識される態様,程度において表明されていたものとは認めることができないから,その「事業の準備」をしていたということもできない。
よって,この点からも,渡邊機開が,本件特許権について乙16の2発明に基づく先使用権を有するものであると認めることはできない。
25 (4) 小括以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,渡邊機開が乙1896の2発明の実施である事業の準備に基づいて本件特許権についての先使用権を有するとの被告らの主張は理由がない。
10 争点(6)(被告Aに対する差止請求の可否)について原告は,被告Aに対する差止請求の前提として,@被告白石は,被告白石は,5 被告Aの個人営業に係る会社であり,実質的には被告Aと一体である(主位的主張),A仮にそうでないとしても,法人格否認の法理の趣旨から,被告白石を被告Aと実質的に同一法人格と考えるべきであるなどと主張する。
しかし,本件全証拠によっても,被告Aとは別個の法人格を有する被告白石が実質的に被告Aと一体であると認めるに足りる証拠もなければ,その法人格10 を否認すべき特段の事情を認めるに足りる証拠もないというべきであるから,原告の上記主張は採用することができない。
11 争点(7)(共同不法行為等の成否)について(1) 被告白石の販売に係る損害賠償請求について(請求の趣旨第5項)ア 被告白石の不法行為について15 本件特許権の設定登録日(平成19年6月8日)以降における被告白石による被告製品の販売行為(前記第2,2(8)ア)は,本件特許権の侵害行為に当たるから,被告白石には不法行為が成立する。
イ 被告Aの共同不法行為等について原告は,被告Aには被告白石との共同不法行為が成立する旨主張する20 が,本件全証拠によっても,被告Aが,単なる被告白石の代表者としての行為を超えて別個に不法行為に及んだことを認めるに足りる証拠はないから,原告の上記主張は採用することができない。
また,原告は,被告Aには会社法429条1項の責任がある旨主張するが,本件全証拠によっても,被告Aが被告白石の上記アの不法行為を25 自ら悪意で行ったことを認めるに足りる証拠はないから,原告の上記主張は採用することができない。
90(2) 被告Bの販売に係る損害賠償請求について(請求の趣旨第10項)ア 被告Bの不法行為について本件特許権の設定登録日(平成19年6月8日)以降における被告Bによる被告製品の販売行為(前記第2,2(8)イ)は,本件特許権の侵害5 行為に当たるから,被告Bには不法行為が成立する。
イ 被告白石及び被告Aの共同不法行為について原告は,被告Bによる上記アの不法行為は被告白石及び被告Aと共謀して行われたものであるか,少なくとも被告白石及び被告Aの幇助によって行われたものであると主張する。
10 しかし,本件全証拠によっても,原告の主張するような共謀の事実を認めるに足りる証拠はないし,また,被告白石による被告Bへの被告製品の販売行為が,被告Bによる同製品の転売(上記アの不法行為)の幇助と評価し得る事情も,本件証拠上は認めるに足りない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
15 (3) 被告共立の販売に係る損害賠償請求について(請求の趣旨第15項)本件特許権の設定登録日(平成19年6月8日)以降における被告共立による被告製品の販売行為(前記第2,2(8)イ)は,本件特許権の侵害行為に当たるから,被告共立には不法行為が成立する。一方,上記(2)と同様の理由により,被告白石及び被告Aに共同不法行為が成立する旨の原告の主張20 は採用することができない。
12 争点(8)(過失推定の覆滅の有無)について本件特許権の設定登録日(平成19年6月8日)以降における被告白石,被告B及び被告共立における被告製品の販売行為(前記第2,2(8)ア及びイ)については,特許法103条により,上記各被告らの過失が推定される。
25 この点に関して被告らは,被告白石,被告B及び被告共立はいずれも単なる販売業者にすぎず,本件特許権の存在すら知らなかった旨を主張するが,これ91らの各事情は,上記各被告らの無過失を基礎付けるに足りるものとはいえなず,特許法103条による過失の推定は覆滅されない。
13 争点(9)(損害発生の有無及びその額)について(1) 被告白石の販売に係る損害(請求の趣旨第5項)5 ア 被告装置の販売利益(特許法102条2項)原告は,被告白石の平成19年6月8日以降における被告装置の販売数及び販売利益が以下のとおりであると主張するところ,この点については被告白石も明らかに争わない(ただし,平成25年度までは5%,平成26年度は8%の消費税相当額を含めてある。以下,同様に,金額10 は断りのない限り消費税相当額込みのもの。)。
(ア) WK−500型販売数: 3台 販売利益: 49万3500円(イ) WK−550型(新 品)販売数: 61台 販売利益:1361万5725円15 (中古品)販売数: 2台 販売利益: 65万1000円(ウ) WK−600型(新 品)販売数:135台 販売利益:3862万8600円(中古品)販売数: 1台 販売利益: 97万2000円(エ) WK−700型(「WK−600L」を含む。)20 販売数 : 5台 販売利益: 163万8000円(オ) 合計販売数 :207台(中古品3台を含む。)販売利益 :5599万8825円イ 本件固定リング及び本件板状部材(特許法102条2項)25 被告白石による平成19年6月8日以降における本件固定リング及び本件板状部材の販売数及び販売利益は,以下のとおりである(当事者間92に争いがない。)。
(ア) 本件固定リング販売数 :261個 販売利益:15万5866円(イ) 本件板状部材5 販売数 :440個 販売利益: 4万2357円ウ 被告白石の利益の小計 5619万7048円エ 弁護士費用相当額本件の不法行為相当因果関係のある弁護士費用相当額損害は,562万円となるものと認めるのが相当である。
10 オ 合計 6181万7048円(2) 被告Bの販売に係る損害(請求の趣旨第10項)ア 被告装置の販売利益(特許法102条2項)(ア) 証拠(乙35の1ないし乙42の3)及び弁論の全趣旨によれば,被告Bの平成19年6月8日以降における新品の被告装置の販売数及び販15 売利益(消費税相当額抜き)は別紙「被告Bの販売数及び販売利益」の「原告の対応」欄記載のとおりであると認められる。ただし,同別紙の番号(70)及び(71)の各取引については,「販売手数料」としてそれぞれ10万2000円(番号(70))及び8万8500円(番号(71))を控除することとし,販売利益の額を「18万8000円」20 (番号(70))及び「20万1500円」(番号(71))と読み替える。
そして,これに消費税相当額を加算し,中古品の販売数及び販売利益(当事者間に明らかな争いがない。)を併せると,平成19年6月8日以降における被告装置の販売数及び販売利益は,以下のとおりとなる。
25 (新 品)販売数:84台 販売利益:4619万6160円(中古品)販売数: 5台 販売利益: 280万6500円93(合 計)販売数:89台 販売利益:4900万2660円(イ) 経費については,原告の自認する1台当たり3万円(税抜)の範囲でこれを認める(なお,平成27年度の中古品3台の販売分を除く。)。
(ウ) 小計 4629万0060円5 (計算式)49,002,660円−(31,500円×82台+32,400円×4台)=46,290,060円イ 本件固定リング及び本件板状部材(特許法102条2項)被告Bによる本件固定リング及び本件板状部材の販売数及び販売利益は,以下のとおりである(当事者間に争いがない。)。
10 (ア) 本件固定リング販売数:26個 販売利益:25万2010円(税抜)(イ) 本件板状部材販売数:26個 販売利益: 1万1990円(税抜)(ウ) 販売利益合計(消費税相当額込) 28万5120円15 ウ 被告Bの利益の小計 4657万5180円エ 弁護士費用相当額本件の不法行為相当因果関係のある弁護士費用相当額損害は,465万円となるものと認めるのが相当である。
オ 合計 5122万5180円20 カ 上記認定の補足説明(ア) 「TM−6」及び「AB塔」について被告Bは,別紙「被告Bの販売数及び販売利益」の番号(02),(04),(05)及び(26)の各取引については「TM−6」とセットで販売され,番号(03)の取引については「AB塔」とセットで25 販売されたものであるから,これらのセット商品の時価相当額又は少なくとも実際の販売価格相当額を販売利益から控除すべきであると主張す94る。
しかし,被告Bの売上帳簿をみると,番号(02),(04)及び(05)の各帳簿(乙35の2ないし4)には「TM−6」の記載がない。また,番号(06)の帳簿(乙36の1)「TM−6」の記載はあ5 るものの,その売上金額は「0」円と記載されている。さらに,番号(03)の帳簿(乙35の5)には「AB塔」の記載があるものの,やはり,その売上金額は「0」円と記載されている。
したがって,被告Bの主張については,「TM−6」等を譲渡した事実自体を認めるに足りないか,仮に譲渡していたとしても被告装置の販10 売に伴い無償で譲渡したものにすぎず,これらの時価相当額等を販売利益から控除する根拠に乏しいものといわざるを得ない。
(イ) 「タンク」について被告Bは,別紙「被告Bの販売数及び販売利益」の番号(16),(21),(22),(29),(31)ないし(34),(40),15 (41),(49),(55),(57),(59)ないし(61),(63),(65)及び(66)の各取引については,新品又は中古の「タンク」とセットで販売されたものであるから,「タンク」の時価相当額又は少なくとも実際の販売価格相当額を販売利益から控除すべきであると主張する。
20 しかし,これも,上記各取引に係る売上帳簿(乙36の5・6・11,乙37の2・3・7・9・10・12・15,乙38の3,乙39の1・3ないし5,乙40の2ないし5)には「タンク」の記載がないか,記載があるとしてもその売上金額が「0」円と記載されている。
したがって,被告Bの主張については,新品又は中古の「タンク」を25 譲渡した事実自体を認めるに足りないか,仮に譲渡していたとしても被告装置の販売に伴い無償で譲渡したものにすぎず,これらの時価相当額95等を販売利益から控除する根拠に乏しいものといわざるを得ない。
(ウ) 「タンク整備代」について被告Bは,別紙「被告Bの販売数及び販売利益」の番号(03),(07)ないし(14),(17)ないし(20),(27),(25 8),(30),(36),(37),(42),(44)ないし(47),(51)ないし(53)及び(64)の各取引については,販売利益から「タンク整備代」(5万円ないし8万円)を経費として控除すべきであると主張する。
しかし,上記各取引に係る売上帳簿(乙35の5,乙36の3・7な10 いし10・12ないし18,乙37の4ないし6・11・13・14,乙38の1・4ないし6・8ないし10,乙40の6)には「タンク整備代」の記載がない。この点に関して被告Bは同被告作成の陳述書(乙74)を提出するが,単に顧客から整備を求められてそれに応じた旨が簡潔に記載されているにすぎず,客観的な裏付けを欠く。
15 したがって,被告Bの上記主張は採用することができない。
(エ) 「下取り評価」について被告Bは,別紙「被告Bの販売数及び販売利益」の番号(06)の取引につき,売上帳簿 (乙36の4) に「下取り機」として 95万円(「−950000」)の記載があるが,当該下取り機は時価35万円20 相当のもので,差額の60万円は実質値引きであるから,この値引き分を販売利益から控除すべきであると主張する(乙74の陳述書も同旨)。
しかし,上記「下取り機」の時価が35万円であることや,差額の60万円が実質値引きに相当することを裏付ける客観的証拠はない。被告Bは,当該取引の本体は「WK−500」であり,その販売価格は「325 40万円」と記載されているところ,この価格は番号(01)における「WK−500」の販売価格(250万円)と90万円の差があること96が値引きの証左であるとも主張するが,上記のとおり,売上帳簿(乙36の4)には「下取り機」として「−950000」との記載があるにすぎないことに照らすと,被告Bの上記主張は採用することができない。
(オ) 「販売手数料」について5 原告は,別紙「被告Bの販売数及び販売利益」の番号(70)及び(71)の取引にいう「販売手数料」(それぞれ「10万2000円」及び「8万8500円」)がいかなる性質のもので,誰に対して支払ったかも不明であるとして,売上げから控除すべきではない旨主張する。
しかし,この点については,被告Bは,購入業者から手数料の負担を10 求められ,それに応じたもので,販売のためのコストである旨説明するところ(乙74),この説明自体,取引の実態に反して著しく不自然,不合理であると断ずることもできない。そもそも,上記各「販売手数料」が売上帳簿(いずれも乙42の1)に明確に記載されており,この金額の記載自体が虚偽であることを裏付ける証拠もなく,当該売上帳簿に記15 載された売上額(「356万1840円」及び「309万0420円」)を超えて売上げが生じたことを認めるに足りる証拠もない。
したがって,上記各「販売手数料」については,売上額に含めない(被告製品本体の売上額から控除する)ことが相当である。
(カ) 「設置費用」について20 被告Bは,被告装置の設置費用として,「WK−500」及び「WK−550」については17万4000円,「WK−600」については19万1150円(平成19年度ないし平成25年度)又は20万8150円(平成26年度)を必要とする旨主張するとともに(乙74の陳述書も同旨),その内訳を説明する(平成29年1月31日付け被告ら準25 備書面(5)の別紙AないしC)。
しかし,上記設置費用には「夜間,早朝時間外手当」など直ちに必要97経費とまでは認められないような費目も含まれている上,被告装置ごとに実際に要した設置費用を具体的に示す証拠は存在せず,また,被告Bが上記設置費用を実際に支出したことを客観的に裏付ける証拠もないことに照らすと,被告Bの上記主張はにわかに採用し難い。
5 したがって,原告が自認している経費(1台当たり3万円〔税抜〕)を超えて現に費用が生じているものとは認めるに足りない。
(3) 被告共立の販売に係る損害(請求の趣旨第15項)ア 被告装置の販売利益(特許法102条2項)証拠(乙43ないし50)によれば,被告共立による被告装置の販売10 数及び販売利益は,新品については被告ら作成の別紙「V 株式会社共立機械商会にかかる販売一覧表」のとおりであると認められる。ただし,新品については,@平成24年11月10日の「WK−600」の販売価格を510万円とし,A平成25年11月2日の「WK−700」(「※3」との記載のある方)の販売価格を675万円として計算する。
15 また,中古品については,販売価格をそれぞれ165万円,170万円,350万円として計算する。
以上をまとめると,被告共立による被告装置の販売数及び販売利益は以下のとおりとなる。
(新 品)販売数:43台 販売利益:2929万3949円20 (中古品)販売数: 3台 販売利益: 211万6500円(合 計)販売数:46台 販売利益:3141万0449円イ 本件板状部材(特許法102条2項)被告共立による本件板状部材の販売数及び販売利益は,以下のとおりである。
25 販売数:170個 販売利益:8万1099円ウ 被告共立の利益の小計 3149万1548円98エ 弁護士費用相当額本件の不法行為相当因果関係のある弁護士費用相当額損害は,315万円となるものと認めるのが相当である。
オ 合計 3464万1548円5 カ 上記認定の補足説明(ア) 平成24年11月10日の販売について被告共立は,平成24年11月10日の「WK−600」の販売につき,実際には25万円を値引きしたため,販売価格(510万円)から25万円を控除すべきであると主張する。
10 しかし,上記販売に係る請求書の控え(乙48の1の1)には25万円の値引きをした旨の記載はない。被告共立は25万円の記載のある領収証(乙48の1の2)を提出するが,その日付は上記販売の日より1か月以上も後の日付(平成24年12月28日)である上,領収した金員が上記販売の値引き分である旨の記載もないことからすると,これを15 もって,被告共立が値引きに応じたものと認めることはできない。
したがって,被告共立の上記主張は採用することができない。
(イ) 平成25年11月2日の販売について被告共立は,平成25年11月2日の「WK−700」(「※3」との記載のある方)の販売(乙49の6)につき,値引き,据付材料費及20 び消費税相当額込みで675万円であり,同日の同種製品の他の取引(乙49の2)を参考にすると実際の販売価格は525万円であると主張する。
しかし,上記販売に係る請求書の控え(乙49の6)には「・・・様宅 に て 定 価 ¥ 7.000.000 値引き,据付け材料費,消費税込みで¥25 6.750.000に決定」との記載があり,他方で,同日の他の取引の請求書の控え(乙49の2)には「H.24定価¥7.000.000×0.75」との記載が99あり,同日に渡邊機開の他の製品の取引も記載されているとの事実が認められる。これによると,「WK−700」は定価を700万円とした上で,顧客との交渉や同時に取引される製品の有無等も考慮しながら個別に値引額が決められ,最終的な販売価格が決定されていたことがうか5 がわれる。そうすると,上記製品の販売価格(675万円)は,こうした事情も考慮した上で定められた販売価格であるというべきであり,被告共立の主張するように実際の販売価格が525万円であると認めることはできない。
したがって,被告共立の上記主張は採用することができない。
10 (ウ) 中古品の販売について被告共立は,@平成24年9月27日の中古品の販売価格は「点検,整備費及び据付け材料・工事費込」(乙50の1)で165万円であるから,これらの費用15万円を控除すべき,A平成25年10月30日の中古品の販売価格は「整備費,据付け材料,工事費込み」(乙50の15 2)で170万円であるから,これらの費用15万円を控除すべき,B平成26年10月24日の中古品の販売価格は「固定,選別プレート交換他整備済み」で350万円であるから,この費用40万円を控除すべきであると主張する。
しかし,確かに,上記各販売に係る請求書の控え(乙50の1ないし20 3)には「点検,整備費及び据付け材料・工事費込」などの記載があるものの,これらの費用の総額やその内訳については何ら記載がなく,他にこの費用の額を裏付けるに足りる証拠も存在しない。
したがって,被告共立の上記主張は採用することができない。
(4) 被告らの主張に対する判断25 被告らは,損害賠償額の算出に当たっては本件発明の寄与度を十分考慮すべきであり,その寄与度の程度については,被告装置については10%,本100件固定リングについては25%,本件板状部材については100%とする旨主張する。
しかし,本件各発明は,共回り現象の発生を回避してクリアランスの目詰まりをなくし,効率的・連続的な異物分離を実現するものであって,生海苔5 異物除去装置の構造の中心的部分に関するものというべきである。
すなわち,生海苔異物除去装置として,選別ケーシング(固定リング)と回転円板との間に設けられたクリアランスに生海苔混合液を通過させることによりクリアランスを通過できない異物を分離除去する装置が従来用いられていたとしても,本件各発明の解決課題を従来の装置が抱えていることは明10 らかであり,この点は需要者の購買行動に強い影響を及ぼすものと推察される。このことと,従来の装置の現在における販売実績等の主張立証もないことを考えると,本件各発明の実施は生海苔異物除去装置の需要者にとって必須のものであることがうかがわれる。
他方,本件各発明が被告製品に寄与する割合を減ずべきである旨の被告ら15 の主張は,いずれも具体性を欠くものにとどまる。
したがって,本件各発明が被告製品の販売に寄与する割合を減ずることは相当でない。
14 争点(10)(消滅時効の成否)について被告らは,原告が被告白石,被告B及び被告共立による被告装置の販売行為20 を知ったのはいずれも平成19年のことであるなどと主張して,消滅時効援用する。
しかし,民法724条前段の消滅時効の起算点は,被害者等が「損害及び加害者を知った時」すなわち損害及び加害者を現実に了知した時点であるところ,以下の理由から,被告らの主張は,いずれも採用することができない。
25 (1) 被告白石について被告白石は,@原告は,平成19年以降,被告装置が本件特許権を侵害101すると判断し,調査を開始していた,A原告が海苔生産地域に営業所や関連会社を設け,情報収集を行っていた,B被告白石は,有明海沿岸地域において,渡邊機開の製品の一次販売店として古くから業界に知られた存在であり,原告は被告白石が渡邊機開の製品を取り扱っていることを知っていた,Cフ5 ルテックの社員らも「被告Bが被告白石から被告装置を仕入れている。」旨の情報を得て原告に報告していた,などと主張する。
この点について,原告代表者の報告書(甲13の1)には,原告は,本件特許権が登録された平成19年6月頃から,被告装置が特許権侵害品であると判断して調査を開始していた旨の記載があり,この調査の中には被告装10 置の販売経路や販売業者の調査も含まれていたと考えるのが自然である。そして,上記当時,生海苔異物分離除去装置を製造したのは,主として,原告,渡邊機開,親和製作所の三社であったことを考慮すると,原告は,当然,被告白石の存在を認識しており,被告白石が渡邊機開の製品を取り扱っている可能性があることも認識していたと考えられる。
15 他方,被告白石が被告装置の譲渡等を行っていたことを原告が認識していたことを客観的に示す証拠は存在しない。被告白石がその根拠として挙げる「渡辺機開工業価格表」(乙64の1)は平成12年9月に被告白石からフルテックに届いたとされるものであり,平成19年時点での原告の認識を認めるに足りるものではなく,被告白石発行の「納品書」(乙65の1)に20 ついても,証拠(乙65の2)によれば,証拠保全手続の段階で原告が入手した可能性が高く,その発行の頃(平成21年10月)に原告が入手したと認めることはできない。
また,証拠(甲15)によれば,原告は,平成22年6月30日及び平成24年1月10日,被告白石に対し,親和製作所の製品の販売等の中止を25 求める通知をしているとの事実が認められる(甲15の資料5及び9)。これによれば,原告は,被告白石が親和製作所の製品の取扱いをしていたこと102は認識していたと考えられるが,渡邊機開の製品について被告白石との間で連絡・交渉があったことをうかがわせる証拠はない。
以上によれば,原告は,当然,被告白石の存在を認識しており,被告白石が渡邊機開の製品を取り扱っている可能性があることも認識していたとし5 ても,原告が損害を現実に了知したと主張する平成26年11月より以前の時点において,被告白石が被告装置の譲渡等を行っていることを現実に了知していたと認めるに足りる証拠はないというべきである。
(2) 被告Bについて被告Bは,@被告Bとフルテックとは平成19年以降も常時取引があり,10 フルテックは被告Bの取引内容を認識していた,AフルテックのCら数名は,週1回程度は被告Bの社屋に出入りしており,被告Bに保管している被告装置の現物を見ることは可能であり,実際に見ていた,B被告Bは,平成22年1月15日にWK−600をEに販売したが,Cは,この取引に際し,同製品ではなく原告の製品を購入するよう再三要請していたのであるから,原15 告は,この頃には,フルテックからの報告により,被告Bが被告製品を取り扱っていることを知っていた,などと主張する。
この点,証拠(乙74,81,被告B本人)によれば,被告Bとフルテックは昭和62年頃から取引があり,同被告は,平成10年頃には原告の製品を多く取り扱っていたところ,平成13年頃からは原告の製品に代えて親20 和製作所の商品を取り扱うようになり,その後,渡邊機開の製品を取り扱うようになったとの事実が認められる。また,Cは,被告Bを担当していたことから,平成19年より以前から被告Bを訪れた際に,同被告が使用している製品を実際に確認することも可能であったと考えられる。
他方,被告Bが被告装置を取り扱っていることについて,フルテック又25 はC個人から原告に報告がされ,原告がこれを了知していたことを示す的確な証拠は存在しない。
103また, 証拠(甲18)によれば,原告は,平成22年6月2日及び平成24年1月11日,被告Bに対し,親和製作所の製品の販売等の中止を求める通知をしているとの事実が認められる(甲18の資料2及び3)。これによれば,原告は,被告Bが親和製作所の製品の取扱いをしていたことは認識5 していたと考えられるが,渡邊機開の製品について被告Bとの間で連絡・交渉があったことをうかがわせる証拠はない。
以上によれば,原告は,被告Bが渡邊機開の製品を取り扱っている可能性があることも認識していたとしても,原告が損害を現実に了知したと主張する平成26年11月より以前の時点において,被告Bが被告装置の譲渡等10 を行っていることを現実に了知していたと認めるに足りる証拠はないというべきである。
(3) 被告共立について被告共立は,平成19年当時,被告装置を被告共立が扱ったとの情報は注目を集めており,原告の製品の販売店により原告に伝えられていたと主張す15 るが,これを裏付けるに足りる証拠はない。
したがって,原告が平成26年11月より以前の時点において,被告共立が被告装置の譲渡等を行っていることを現実に了知していたと認めることはできない。
15 結論20 以上によれば,原告の請求は,@被告白石に対し,特許法100条1項に基づき,被告製品の譲渡,貸渡し又は譲渡若しくは貸渡しの申出の差止めを求めるとともに,同条2項に基づき,被告製品の廃棄を求め,A被告白石に対し,不法行為に基づき,6181万7048円及びこれに対する不法行為の後の日(被告白石に対する証拠保全申立書等の送達の日の翌日)である平成27年525 月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,B被告Bに対し,特許法100条1項に基づき,被告製品の譲渡,貸渡104し又は譲渡若しくは貸渡しの申出(被告装置については輸出も含む。)の差止めを求めるとともに,同条2項に基づき,被告製品の廃棄を求め,C被告Bに対し,不法行為に基づき,5122万5180円及びこれに対する不法行為の後の日(本訴状送達の日の翌日)である平成27年11月20日から支払済み5 まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,D被告共立に対し,被告製品の譲渡,貸渡し又は譲渡若しくは貸渡しの申出(被告装置については輸出も含む。)の差止めを求めるとともに,同条2項に基づき,被告製品の廃棄を求め,E被告共立に対し,不法行為に基づき,3464万1548円及びこれに対する不法行為の後の日(本訴状送達の日の翌日)である平成2710 年11月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからその限度で認容し,被告白石及び被告Bに対するその余の請求及び被告Aに対する請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとする。なお,主文第4項,第9項及び第14項について仮執行宣言を付すのは相当でなく,また,主文第1項ないし第3項,第5項ないし第15 8項,第10項ないし第13項及び第15項について仮執行免脱宣言を付すのは相当でない。
よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第40部20裁判長裁判官佐 藤 達 文25105裁判官瀬 孝5裁判官勝 又 来 未 子106
事実及び理由
全容
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