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審判番号(事件番号) データベース 権利
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事件 平成 25年 (行ケ) 10173号 審決取消請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2014/02/12
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成26年2月12日判決言渡

平成25年(行ケ)第10173号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成26年1月27日

判 決



原 告 X 1



原 告 X 2

両名訴訟代理人弁理士 佐 々 木 功

川 村 恭 子

久 保 健

山 崎 嘉 久




被 告 特 許 庁 長 官

指 定 代 理 人 豊 永 茂 弘

吉 水 純 子

瀬 良 聡 機

堀 内 仁 子



主 文

原告らの請求を棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。



事 実 及 び 理 由

第1 原告らの求めた判決




特許庁が不服2012−8654号事件について平成25年5月13日にした審

決を取り消す。



第2 事案の概要

本件は,特許出願拒絶審決の取消訴訟である。争点は,補正についての独立特許

要件(進歩性実施可能要件)の有無である。

1 特許庁における手続の経緯

原告X1は,2005年(平成17年)7月11日,名称を「天然鉱石を使用し

た還元水の製造方法」とする発明につき,国際特許出願(PCT/JP2005/

012753,特願2006−529028号,優先権主張日:平成16年7月2

3日,特願2004−240166号,優先権主張日:平成17年4月6日,特願

2005−109853号・甲24〜26)をし,原告X2が出願人の地位の一部

譲渡を受け,出願人に追加された。原告らは,平成24年2月3日付けで拒絶査定

を受けた(甲28)ので,同年5月11日,手続補正書(甲30・以下「補正明細

書」という。)により特許請求の範囲減縮を含む本件補正をするとともに,これ

に対する不服審判請求をした(甲29,不服2012−8654号)。特許庁は,

平成25年5月13日,本件補正を却下した上,「本件審判の請求は,成り立たな

い。」との審決をし,その謄本は同月23日,原告らに送達された。



2 本願発明の要旨

(1) 本件補正後の請求項1(補正発明)

「遠赤外線放射率80%以上の金属マグネシウムと,遠赤外線放射率80%以上の

天然鉱石である麦飯石と,トルマリンと,ブラックシリカとを選択し,

これらを5mm以下の粉末または粒状物若しくはこれらをバインダーで小径のボ

ール状に形成した混合物とし,

該金属マグネシウムと天然鉱石との粉末または粒状物の混合物に水を接触させて




pH7〜8のマイナスの還元電位を有する還元水とすること

を特徴とする還元水の製造方法。」

(下線部が補正箇所。)

(2) 本件補正前の請求項1(補正前発明)

「遠赤外線放射率80%以上の複数の天然鉱石を選択し,

これらを5mm以下の粉末または粒状物若しくはこれらをバインダーで小径のボ

ール状に形成した混合物とし,

該天然鉱石の粉末または粒状物の混合物に水を接触させてマイナスの還元電位を

有する還元水の製造方法。」

3 審決の理由の要点

(1) 引用発明について

ア 引用例1(特開2004−174301号公報,甲1)には,以下の引

用発明1が記載されている。

「マグネシウムと,トルマリンとを選択し,

これらを粒体の混合物とし,

該マグネシウムとトルマリンとの粒体の混合物に水を接触させてアルカリ性のマ

イナスの還元電位を有する還元水(飲料水)とする,

還元水の製造方法。」

イ 引用例2(特開2004−160386号公報,甲2)には,以下の引

用発明2が記載されている。

「麦飯石充填フィルターと,接触した水を水素水(還元水)にする『マグネシウ

ム,黒曜石,トルマリン,抗菌砂,風化サンコ゛等を収容したステック』を用いる,

還元水(飲料水)の製造方法。」

(2) 独立特許要件について

進歩性(特許法29条2項)について

補正発明は,引用発明1及び引用発明2並びに周知技術に基づいて,本願優先権




主張日当時,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(ア) 補正発明と引用発明1との一致点と相違点は,次のとおりである。

【一致点】

「金属マグネシウムと,天然鉱石であるトルマリンとを選択し,

これらを粒状物の混合物とし,

該金属マグネシウムとトルマリンとの粒状物の混合物に水を接触させてマイナス

の還元電位を有する還元水とする

還元水の製造方法。」

【相違点1】

補正発明では,「遠赤外線放射率80%以上の」金属マグネシウムと,「遠赤外線

放射率80%以上の」天然鉱石である「麦飯石と,」トルマリンと「,ブラックシリ

カと」を選択しているのに対して,引用発明1では,マグネシウム(金属マグネシ

ウム)と,トルマリン(天然鉱石であるトルマリン)とを選択しているものの,上

記「」内の事項の特定がない点。

【相違点2】

補正発明では,
「pH7〜8の」マイナスの還元電位を有する還元水であるのに対

して,引用発明1では,
「アルカリ性の」マイナスの還元電位を有する還元水である

点。

【相違点3】

補正発明では,
「5mm以下の」粒状物であるのに対して,引用発明1では,粒体

(粒状物)であるものの,上記「」内の事項の特定がない点。

(イ) 相違点に関する審決の判断は,以下のとおりである。

a 相違点1について

引用発明1において,還元水を製造するマグネシウム(金属マグネシウム)及び

トルマリン(天然鉱石であるトルマリン)は,遠赤外線放射により水の改質を行う

ことができるものであり,また,麦飯石及びブラックシリカが,還元水を製造する




と共に遠赤外線放射により水の改質を行うことができるものであることは,本願優

先権主張日前に周知の事項である。したがって,マグネシウム,トルマリン,麦飯

石及びブラックシリカは,還元水を製造すると共に遠赤外線放射により水の改質を

行うことができるものであり,そうである以上,引用発明1において,還元水を製

造すると共に遠赤外線放射により水の改質を行うものとして,金属マグネシウムと

トルマリンを用いることに加えて麦飯石とブラックシリカをも用いる(選択する)

ことは,当業者であれば容易に想起し得ることである。

そして,引用発明1において,還元水を製造すると共に遠赤外線放射により水の

改質を行うものとして,マグネシウム,トルマリン,麦飯石及びブラックシリカを

用いる際,遠赤外線放射率が平均98%であるブラックシリカを用い,さらに,こ

のブラックシリカと同じく遠赤外線放射率が高いトルマリン(94.4%)及び麦

飯石(89.3%)についても,これを用いて水の改質を行うことは,
「遠赤外線放

射率が低ければ効果(影響)が少ない」ことも考慮すると,当業者であれば普通に

行うことであるというべきである。

また,引用発明1のマグネシウム(金属マグネシウム)と補正発明の金属マグネ

シウムとは,単元素金属(組成物ではない物質)であって結晶構造等のバリエーシ

ョンがないものであることから,物性としての遠赤外線照射率(80%以上)も含

め実質的に同じものであるというべきである。

したがって,相違点1に係る補正発明の発明特定事項とすることは,引用発明1

及び引用発明2並びに本願優先権主張日前に周知の事項に基づいて,当業者であれ

ば容易になし得ることである。

b 相違点2について

一般に,高いpH値の水を中和して飲料水基準(pH値が5.8以上8.6以下)

の飲料水を製造することは,本願優先権主張日前に周知の事項(例えば,特開昭6

3−252589号公報の特に1頁参照)であり,また,飲料水としての嗜好性を

高めるために,マイナスの還元電位を有するアルカリ性の還元水に酸性液を添加し




て(中和して)マイナスの還元電位を有する中性の還元水(飲料水)を製造するこ

とも,本願優先権主張日前に周知の事項(例えば,特開2003−10865号公

報の特に【0005】参照)であり,引用発明1と上記周知の事項とは,飲料水を

製造するという点で共通している。

そうすると,引用発明1において,
「アルカリ性の」マイナスの還元電位を有する

還元水(飲料水)について,飲料水基準を満たすと共に飲料水としての嗜好性を高

めるために,この還元水を中和してマイナスの還元電位を有する,例えばpH7〜

8の還元水(飲料水)を製造するという,上記の点で共通する該周知の事項を適用

することは,引用例1に「アルカリ水の中和」を排除する旨の開示がないことも考

慮すると,当業者であれば容易に想起し得ることである。

したがって,相違点2に係る補正発明の発明特定事項とすることは,引用発明1

及び引用発明2並びに本願優先権主張日前に周知の事項に基づいて,当業者であれ

ば容易になし得ることである。

c 相違点3について

一般に,粒状物(改質材)に水を接触させてマイナスイオン水を製造するときの

粒状物の形状について,粒径が1mm程度の粒状物(改質材)を用いることは,本

優先権主張日前に周知の事項(例えば,特開2003−24956号公報の【0

030】ないし【0032】
【表1】参照)であり,引用発明1と上記周知の事項と

は,粒状物(改質材)に水を接触させて改質水を製造するという点で共通している。

そうすると,引用発明1において,粒状物(改質材)に水を接触させて還元水(改

質水)を製造するときの粒状物の形状について,粒径が「1mm程度(5mm以下)

の」粒状物(改質材)を用いるという,上記の点で共通する該周知の事項を適用す

ることは,粒状物(改質材)の粒径が小さいほど水との接触効率が高まる(改質効

率を高められる)ことも考慮すると,当業者であれば容易に想起し得ることである。

したがって,相違点3に係る補正発明の発明特定事項とすることは,引用発明1

及び引用発明2並びに本願優先権主張日前に周知の事項に基づいて,当業者であれ




ば容易になし得ることである。

d そして,補正発明の「還元水を飲料水として使用することができる

等」の作用効果は,引用発明1及び引用発明2並びに本願優先権主張日前に周知の

事項(特に,マイナスの還元電位を有する中性の飲料水を製造すること)に基づい

て,当業者であれば十分に予測し得るものである。

e よって,補正発明は,引用発明1及び引用発明2並びに本願優先権

主張日前に周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたもので

ある。

実施可能要件(特許法36条4項1号)について

補正明細書は,「還元水(飲料水)」と「活性酸素の除去」と「ドロドロの血液を

サラサラにすること,健康回復,ガン細胞発生の抑制,脳細胞の活性化によるアル

ツハイマー病発症の撲滅」の因果関係を証明(立証)する科学的,合理的な根拠を

何ら示すものではなく,補正明細書の【0030】
【0031】に示されている「血

液がサラサラになる」現象は,水分を十分に摂取したことによる結果であるとみる

こともできることから,
「ドロドロの血液をサラサラにすること,健康回復,ガン細

胞発生の抑制,脳細胞の活性化によるアルツハイマー病発症の撲滅」を達成するも

のは「還元水(飲料水)」である,更にいうと,この還元水を製造する「還元水(飲

料水)の製造方法」であると直ちにいうことはできない。

そうすると,補正明細書は,補正発明の目的の一つである「ドロドロの血液・・・

撲滅」を達成する「還元水(飲料水)の製造方法」を記載するものではない,つま

り,当業者が発明を実施する(目的を達成する)ことができる程度に明確にかつ十

分に記載したものであるとはいえない。

よって,補正明細書は,特許法36条4項1号に規定する要件を満たすものでは

ない。

(3) 補正前発明の進歩性について

本件補正における請求項1の補正事項は,請求項1に記載した発明を特定するた




めに必要な事項を限定すると共に不明りょうな記載を釈明するものであることから,

補正前発明は,補正発明を包含している。

そうすると,補正発明を包含する補正前発明も同じく,引用発明1及び引用発明

2並びに本願優先権主張日前に周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をする

ことができたものである。

また,出願時明細書(国際出願時の明細書)は,当業者が発明を実施することが

できる程度に明確にかつ十分に記載したものであるということはできず,特許法3

6条4項1号に規定する要件を満たすものではない。



第3 原告ら主張の審決取消事由

審決には,補正発明についての進歩性判断及び実施可能要件の判断を誤り,本件

補正を却下した違法がある。

1 補正発明の進歩性判断の誤り

(1) 補正発明の作用効果について

審決は,補正発明の作用効果を誤認しており,その結果,当業者が補正発明の作

用効果を十分予測できると判断したもので,誤りである。

補正発明は,
「pH7〜8のマイナスの還元電位を有する還元水」を簡単に製造で

きるようにすることを課題とし,その課題を解決したものである。

また,補正明細書の段落【0010】【0014】に,「水と(を)接触させるだ

けで」と記載されているとおり,中和などの付加的な工程を必要とせず,
「pH7〜

8のマイナスの還元電位を有する還元水」を製造できることが,補正発明の顕著な

作用効果である。すなわち,甲14(特開2003−252685号公報)にある

とおり,本願優先権主張日前において,マイナスの還元電位を有する還元水を製造

すること自体,容易ではなく,また,甲22(特開2003−10865号公報)

にあるとおり,本願優先権主張日前において,pH7〜8の還元水を製造すること

は困難であり,アルカリ性の還元水を製造し,中和して中性にすることが行われて




いた。引用例1の段落【0028】
【表1】を見れば,本願優先権主張日前において,

還元水の酸化還元電位をマイナスにしようとすればアルカリ性になり,弱アルカリ

性にしようとすれば酸化還元電位がプラスになり,pH7〜8とマイナスの還元電

位とを両立させることは困難であったことが分かる。そのような中で,補正発明は,

「中和などの追加的な工程を必要とせず,混合物に水を接触させるだけでpH7〜

8のマイナスの還元電位を有する還元水を簡単に製造できる」という顕著な作用効

果を奏するもので,このような効果は当業者に予測できるものではない。

(2) 相違点1に関する進歩性判断の誤りについて

還元水を製造できるとされている物質,遠赤外線を放射するとされている物質,

その他水を改質するとされている物質には,金属マグネシウム,トルマリン,麦飯

石,ブラックシリカの他にも多数のものが存在する。

補正発明は,これら多数の物質のなかから,特に,金属マグネシウムと,麦飯石

と,トルマリンと,ブラックシリカとを選択し,混合したところに特徴があるとこ

ろ,審決で引用された文献には,「水を改質するとされている多数の物質のなかか

ら,特に,金属マグネシウムと,麦飯石と,トルマリンと,ブラックシリカとを選

択」する試みをしたはずであるという示唆は存在しない。

また,補正発明は,この選択により,「pH7〜8のマイナスの還元電位を有す

る還元水」を製造できるという顕著な効果を奏するものであり,この顕著な効果は,

いずれの文献の記載からも予測することができない。

そうすると,水を改質するとされている非常に多くの物質のなかから,「pH7

〜8のマイナスの還元電位を有する還元水」を製造できる物質の組合せを見つける

ことは,当業者にとって容易ではない。

(3) 相違点2に関する進歩性判断の誤りについて

前記(1)のとおり,補正発明は,中和などの追加的な工程を必要とせず,「pH7

〜8のマイナスの還元電位を有する還元水」を簡単に製造できるものであるから,

引用発明1において,製造されたアルカリ性のマイナスの還元電位を有する還元水




を,「中和してpH7〜8にする」ように変更した発明は,補正発明とは異なるも

のである。そうすると,審決が,相違点2に係る補正発明の発明特定事項とするこ

とは,引用発明1及び引用発明2並びに本願優先権主張日前に周知の事項に基づい

て当業者であれば容易になし得ることであると判断したのは,誤りである。

また,審決には,相違点2に係る進歩性判断の論理付けが示されているというこ

とはできない。



実施可能要件(特許法36条4項1号)の判断の誤りについて

審決は,補正発明の作用効果を誤認した結果,補正発明を当業者が実施できる程

度に明確かつ十分に記載されていないという誤った判断をしている。

補正発明は,
「pH7〜8のマイナスの還元電位を有する還元水」を簡単に製造で

きるようにすることを課題とし,その課題を解決したものであるところ,補正発明

に係る「還元水の製造方法」で使用される「混合物」をいかにして製造するかにつ

いては,補正明細書の段落【0024】〜【0027】に明確に記載されている。

また,補正発明にかかる「還元水の製造方法」で「混合物」に水をどのように接

触させるかについては,補正明細書の段落【0030】【0031】に明確に記載


されている。

したがって,当業者が補正明細書に従って補正発明を実施すれば,
「pH7〜8の

マイナスの還元電位を有する還元水」を製造することができるものであるから,補

正明細書には,当業者が補正発明の実施をできる程度に明確かつ十分に記載されて

いる。

よって,審決における「補正明細書は,特許法36条4項1号に規定する要件を

満たすものではない」との判断は,誤りである。



第4 被告の反論

審決のした独立特許要件に関する判断には,いずれも誤りがない。




1 補正発明の進歩性判断について

(1) 原告ら主張1(1)に対し

補正明細書には,pHに関する直接的な記載として「【0035】更に,本願発明

で製造された還元水については,最高酸化還元電位が−1,250ミリボルト(m

V)は電解によるORPが−350mV前後という数値に比べたら比較にならない

強力なものである。しかも一般にORPのマイナス電位が高ければpHは11〜1

2前後が普通であるが必要に応じてpH7〜8程度までは調整が可能であるという

ことがこの発明の還元水の特徴でもあり,従って利用度はこの後広範囲に拡大して

いくものと思われる。」があるのみであり,ここには,「中和などの追加的な工程を

必要とせず,混合物に水を接触させるだけで」
「pH7〜8のマイナスの還元電位を

有する還元水」を製造することについての明記はない。上記の記載は,少なくとも

「追加的な調整によりpHを11〜12前後から7〜8にすることで」pH7〜8


のマイナスの還元電位を有する還元水」を製造すること,つまり,pH11〜12

前後(アルカリ性)からpH7〜8(中性)に調整(中和)することを包含するも

のである。

また,補正明細書には,混合物に接触させた還元水をそのまま飲用することの記

載(段落【0030】【0031】)があるものの,pHと還元電位を結びつけて簡

単に製造できるという記載はない。

以上から,請求項1(ないし4)の記載には,
「中和などの追加的な工程を必要と

せず,混合物に水を接触させるだけで」
「pH7〜8のマイナスの還元電位を有する

還元水」を製造することについての明記はなく,補正明細書からして「中和してp

H7〜8のマイナスの還元電位を有する還元水」を製造することが包含されている

から,原告らの主張は,特許請求の範囲の記載に基づく主張ではない。

(2) 原告ら主張1(2)に対し

審決の判断のとおり,引用発明1におけるマグネシウム(金属マグネシウム)及

びトルマリン(天然鉱石であるトルマリン)は,還元水を製造すると共に遠赤外線




放射により水の改質を行うことができるものであり,また,麦飯石及びブラックシ

リカも,還元水を製造すると共に遠赤外線放射により水の改質を行うことができる

ものである。ここで,引用発明1において,金属マグネシウム及びトルマリンの他

に何を用いるかの決定にある程度の試行錯誤が要求されるとしても,麦飯石及びブ

ラックシリカが,金属マグネシウム及びトルマリンと同じく還元水を製造すると共

に遠赤外線放射により水の改質を行うことができるものである以上,引用発明1に

おいて,還元水を製造すると共に遠赤外線放射により水の改質を行うものとして,

金属マグネシウム及びトルマリンを用いることに加えて麦飯石とブラックシリカを

も用いる(選択する)こと,つまり,金属マグネシウム,トルマリン,麦飯石及び

ブラックシリカの組合せを見つけることは,当業者であれば容易に想起し得ること

である。

また,補正明細書には,
「中和などの追加的な工程を必要とせず,混合物に水を接

触させるだけで」
「pH7〜8のマイナスの還元電位を有する還元水」を製造するこ

とについて,例えば,麦飯石及びブラックシリカの組合せ等の実施(比較)結果が

示されていないことから,金属マグネシウム,トルマリン,麦飯石及びブラックシ

リカの組合せに格別の技術的意義があるとはいえない。

そうすると,金属マグネシウムとトルマリンを用いることに加えて麦飯石とブラ


ックシリカをも用いる(選択する)ことは,当業者であれば容易に想起し得ること

である」という審決の判断に誤りはない。

(3) 原告ら主張1(3)に対し

補正発明は,
「中和などの追加的な工程を必要とせず,混合物に水を接触させるだ

けで」
「pH7〜8のマイナスの還元電位を有する還元水」を製造することに限定さ

れるものではなく,
「中和してpH7〜8のマイナスの還元電位を有する還元水」を

製造することを包含するものである。

したがって,引用発明1において,製造されたアルカリ性のマイナスの還元電位

を有する還元水を「中和してpH7〜8にする」ように変更した発明は,補正発明




であり,また,中和して飲料水にすることが周知技術(甲21,22)であること

からして,審決の判断は正しく,論理付けは示されているといえる。



実施可能要件(特許法36条4項1号)の判断について

審決は,補正明細書において,「還元水(飲料水)」と「活性酸素の除去」と「ド

ロドロの血液をサラサラにすること,健康回復,ガン細胞発生の抑制,脳細胞の活

性化によるアルツハイマー病発症の撲滅」の因果関係を証明(立証)する科学的,

合理的な根拠は何ら示されていないことを前提にするものであるが,原告らは,上

記に対して何ら主張するものではない。

また,前記1(1)において述べたとおり,原告らの作用効果に関する主張は成り立

たないから,上記の作用効果を前提とする原告らの主張は失当である。



第5 当裁判所の判断

1 補正発明について

補正明細書(甲30)によれば,補正発明につき,以下のことを認めることがで

きる。

補正発明は,高い遠赤外線放射率を有する複数の天然鉱石を粉砕しミックスした

状態で使用して,マイナスの還元電位を有する還元水の製造方法に関するものであ

る(段落【0001】。


従来,天然鉱石を使用した酸化還元水を製造するものとして,水を還元触媒又は

天然石,セラミックの少なくとも1種類と還元触媒とからなる活性材に接触通過さ

せることによってミネラル還元水を製造する方法や(段落【0004】,麦飯石,


ミネラル石,ラジウム鉱石,トルマリン,還元セラミックを充填したカラムに天然

水又は精製水を通過させてミネラル水を生成する方法が知られているが(段落【0

005】,これまでに開発され,強力な還元水であると強調されていたほとんどの


水は,酸化還元電位が+100〜+200ミリボルトであって,しばらく放置して




おけば+300〜+400ミリボルトの普通の水で還元水ではないものが多く,高

価な電解水であってもボトルに詰めた状態で4〜5日経過すれば+200ミリボル

ト程度になってしまうものが多かった(段落【0009】。また,従来の種々の技


術手段は複雑であった。

そこで,補正発明は,簡単な手段でありながら,水と接触させるだけで余計な動

力を必要とせずに,マイナスの還元電位を有する還元水を製造できるようにするこ

とを解決課題とし(段落【0010】,遠赤外線放射率80%以上の金属マグネシ


ウムと,遠赤外線放射率80%以上の天然鉱石である麦飯石と,トルマリンと,ブ

ラックシリカとを選択し,これらを5mm以下の粉末若しくは粒状物又はこれらを

バインダーで小径のボール状に形成した混合物とし,該金属マグネシウムと天然鉱

石との粉末又は粒状物の混合物に水を接触させてpH7〜8のマイナスの還元電位

を有する還元水とすることによって(段落【0011】,短時間に必要量と必要マ


イナスミリボルトの強力還元水が製造できるという効果を奏するものである(段落

【0013】。




2 引用発明1について

引用例1(甲1)によれば,以下のことが認められる。

引用発明1は,水中の溶存水素濃度を高くするための高水素濃度水製造用構造物

の改良に関し(段落【0001】),従来,溶存水素濃度を高めた水を飲用に使用

すると,人体内の活性酸素を減少でき,健康の維持増進に効果があることが知られ

ており,また,溶存水素濃度が高く還元力のある水を使用して洗顔等を行うと,肌

の汚れが落ちやすく,肌への水分補給を行いやすいので,肌の老化の抑制に効果が

あることも知られているが,このような,水中の溶存水素濃度が高められた高水素

濃度水を製造するための装置は,水中に水素を吹き込むための特別の大がかりな装

置が必要で,家庭用,個人用の用途,特に携帯用途に適さないという問題があった

(段落【0002】,【0004】)。また,家庭用の電気分解式の装置等により




製造した高水素濃度水をPET(ポリエチレンテレフタラート)ボトル等に詰めて,

使用時まで保存しておくことも考えられるが,水素は非常に軽い気体なので短時間

で水中から空気中に放散してしまい,使用時に十分な水素濃度を確保できないとい

う問題もあった(段落【0005】)。そこで,引用発明1は,使用時に十分な水

素濃度を確保できる簡易な高水素濃度水製造用構造物を提供することを目的として

(段落【0006】),側面に複数の穴があけられ,一方側の端部が開口し他方側

の端部が閉じられた柱状容器と,頂部に少なくとも1つの穴があけられ,前記開口

を覆う蓋と,前記柱状容器の中に収容された布製の袋と,前記布製の袋の中に収容

され,水中の溶存水素濃度を高くするための高水素濃度化剤とを備える高水素濃度

水製造用構造物とすることによって(段落【0007】),柱状容器中に,布製の

袋に収容された高水素濃度化剤を入れるので,水中で振ったときに布製の袋が振動

に合わせて変形し,攪拌効果により水と高水素濃度化剤との接触が促進される(段

落【0008】,段落【0037】)という効果を奏するというものである。この

高水素濃度化剤は,マグネシウムであることが好適であり,さらに,トルマリンを

含むことが好適であり,マグネシウムと水が接触している限り十分な水素を常に発

生でき(段落【0009】,【0010】),実施例として,マグネシウムと,ト

ルマリンとを選択し,これらを粒体の混合物とし,該マグネシウムとトルマリンと

の粒体の混合物に水を接触させることによって,アルカリ性のマイナスの還元電位

を有する還元水(飲料水)の製造方法が示されている(段落【0020】,【00

23】,【0026】,【0028】〜【0030】)。



3 補正発明の進歩性判断について

(1) 作用効果について

原告らは,補正明細書の段落【0010】 【0014】の記載等を根拠として,


補正発明は,
「中和などの追加的な工程を必要とせず,混合物に水を接触させるだけ

でpH7〜8のマイナスの還元電位を有する還元水を簡単に製造できる」という顕




著な作用効果を奏するものであるのに,補正発明の作用効果を誤認し,作用効果が

当業者に十分予測し得るものであるとした審決の判断は誤りであると主張する。

補正発明における「pH7〜8」とのpH値の特定は,本件補正により,請求項

1に付加された事項であるところ,pH値については,出願当初の明細書(甲24

の2,以下「当初明細書」という。)の段落【0036】には,「更に,本願発明で

製造された還元水については,最も強力なものは酸化還元電位が−1,250mV

のものであったが,これは電解によって得られる酸化還元電位が−350mV前後

という数値に比べたら比較にならない強力なものである。しかも一般にORPのマ

イナス電位の数値が大きければP.Hは11〜12前後が普通であるが必要に応じ

てP.H7〜8程度までは調整が可能であるということがこの天然鉱石還元水の特

徴でもあり,従って利用度はこの後広範囲に拡大していくものと思われる。(補正


明細書の段落【0035】の記載事項も同じ。)との記載があるのみで,当初明細書

中に,上記以外にpHについての記載はない。そして,この段落には,必要に応じ

てpH7〜8程度まで調整が可能であることは記載されているものの,混合物を水

と接触させるだけでpH7〜8のマイナスの還元電位を有する還元水が製造できる

ことは記載されていない。

原告らが上記主張の論拠として主張する補正明細書の段落【0010】には,
「簡

単な手段でありながら,水と接触させるだけで余計な動力を必要とせずに,マイナ

スの還元電位を有する還元水を製造出来るようにすることに解決課題を有する。と


記載されているのみであり,また,段落【0014】には,「金属マグネシウムと,

複数種類の天然鉱石を所要割合で混合(組み合わせ)した固形物または微粒体であ

って,これに水を接触させるだけで還元水となる」旨の記載があるのみで,いずれ

にもpHに関する記載はない。当初明細書及び補正明細書には,天然鉱石を利用し

た還元水についての従来技術は,マイナスの酸化還元電位の還元水を製造するのに,

水を循環又は流動させることが必要であり,装置も処理手段も複雑であった旨が記

載されており,その後に,解決課題を記載した上記段落【0010】が置かれてい




ることに照らすと,両明細書には,マイナスの還元電位を有する還元水を,余計な

動力を必要とせずに水と接触させるだけという簡易な方法で製造できることが開示

されていると見るのが自然であって,混合物を水と接触させるだけで他の工程を経

ずにpH7〜8とできることについてまで述べているものとは認めることができな

い。

また,補正明細書を見ても,金属マグネシウム又は天然鉱石により構成される混

合物の組成物の組合せのみによってpH7〜8程度とすることができる旨を示す記

載はなく,その組成物の組合せや組成割合によって,pH7〜8程度まで調整が可

能であることを示すような実験結果も示されていない。

なお,補正明細書における還元水の飲用試験例(段落【0030】【0031】
, )

には,中和などの付加的な工程を経た旨の記載がない。しかし,この試験例では,

時間の経過と酸化還元電位数値との関係及び飲用効果が示されているのであって,

pH値に着目した飲用例が示されたものではないことや,高いpH値の水を中和し

て飲料水基準(pH値が5.8以上8.6以下)の飲料水を製造すること(特開昭

63−252589号公報・甲21)や,飲料水としての嗜好性を高めるために酸

性液を添加して中和し,マイナスの還元電位を有する中性の還元水である飲料水を

製造すること(特開2003−10865号公報・甲22)が本願優先権主張日前

に周知であったことを考慮すれば,上記段落に中和などの付加的工程の記載がない

ことが,そのような中和工程の不存在を示すものと見ることはできない。

そうすると,pHが11〜12前後の還元水を必要に応じてpH7〜8程度まで

調整が可能であるという補正明細書の記載(段落【0036】)は,中和などの付加

的な工程を行うことによって還元水のpHを7〜8にするものを含んでいるといえ

る。

以上から,補正発明は,常に中和などの追加的な工程を必要とせず,混合物に水

を接触させるだけでpH7〜8のマイナスの還元電位を有する還元水を簡単に製造

できるとの顕著な効果を有するものとはいえず,原告らの主張は採用できない。




(2) 相違点1に関する進歩性判断について

原告らは,還元水を製造できるとされている物質,遠赤外線を放射するとされて

いる物質,その他水を改質するとされている物質には,多数のものが存在するとこ

ろ,補正発明は,これら多数の物質の中から,特に,金属マグネシウムと,麦飯石

と,トルマリンと,ブラックシリカとを選択し,混合したところに特徴があるのに,

引用例には,これらの選択をする試みをしたはずであるという示唆は存在しない旨

主張する。

ア 補正明細書において,天然鉱石で構成される混合物の組成の選択により,

「pH7〜8のマイナスの還元電位を有する還元水」が水と接触させるだけで簡易

に製造できるとの開示がなされているとはいえないことは,前記(1)のとおりであ

り,他に,金属マグネシウム,麦飯石,トルマリン及びブラックシリカの選択に関

する技術的意義を示す記載もない。

イ そして,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事項が本願優先

権主張日以前に周知であったと認められる。

麦飯石が,マイナスイオンを発生するものであることは,周知事項であるところ

(特開2001−161414号公報・甲6,特開2003−306034号公報・

甲7) 水をマイナスイオン化することによって還元水が製造されること
, (特開20

00−317414号公報・甲8)も,周知であるから,麦飯石が還元水を製造す

ることができるものであることも,本願優先権主張日前に周知の事項である。また,

ブラックシリカが還元水を製造することができるものであること(特開2003−

252685号公報・甲14)も,本願優先権主張日前に周知の事項である。

さらに,遠赤外線放射により水の活性化(改質)が行われることは,周知の事項

であるところ(特開2001−276852号公報・甲18,特開2002−14

3866号公報・甲19) 引用発明1におけるマグネシウム及びトルマリンが遠赤


外線放射により水の活性化を行うことができるものであることは,本願優先権主張

日前の周知事項である(マグネシウムにつき,特開平6−233830号公報・甲




17,トルマリンにつき,特開2002−81657号公報・甲9,特開2003

−154386号公報・甲10,特開2003−275328号公報・甲12,甲

18)。そして,麦飯石,ブラックシリカについても,同様に,遠赤外線放射によ

り水の活性化を行うことができるものであることは,周知であった(麦飯石につき,

甲9,10,ブラックシリカにつき,甲12,特開2004−41524号公報・

甲15,特開2003−210592号公報・甲16)。

以上によれば,引用発明1のマグネシウム,トルマリンと同様に,麦飯石,ブラ

ックシリカについても還元水を製造することができ,かつ,遠赤外線による水の活

性化を行うものであることは,本願優先権主張日前に周知であったといえる。

ウ そうすると,上記アのとおり,補正発明において,その混合物の組成に

特段の技術的意義が窺われない以上,引用発明1において,還元水を製造するとと

もに遠赤外線放射により水の活性化(改質)を行うものとして,金属マグネシウム,

トルマリンに加えて,麦飯石及びブラックシリカを用いて,相違点1に係る補正発

明の発明特定事項とすることは,当業者であれば必要に応じて適宜なし得るもので

ある。

したがって,「金属マグネシウムとトルマリンを用いることに加えて麦飯石とブ

ラックシリカをも用いる(選択する)ことは,当業者であれば容易に想起し得るこ

とである」とした審決の判断に誤りはない。

(3) 相違点2に関する進歩性判断について

原告らは,補正発明は,「混合物に水を接触させ」ることにより「pH7〜8の

マイナスの還元電位を有する還元水」を製造できるものであって,中和などの追加

的な工程を必要とせず,「pH7〜8のマイナスの還元電位を有する還元水」を簡

単に製造できるものであるから,引用発明1において,製造されたアルカリ性のマ

イナスの還元電位を有する還元水を,「中和してpH7〜8にする」ように変更

た発明は,補正発明とは異なるものであり,審決のした相違点2の判断は誤りであ

ると主張する。




しかし,上記のとおり,補正発明は,中和などの付加的な工程を行うことによっ

て,還元水のpHを7〜8にするものを含んでいると認められるから,原告らの主

張は前提において誤っている。

そして,前記のとおり,アルカリ性の水を飲料水基準にしたり,飲料水として嗜

好性を高めるために,酸性液を添加して中和し,中性の飲料水を製造することは周

知であるから,引用発明1において,アルカリ性のマイナスの還元電位を有する還

元水を,飲料水基準にしたり,飲料水として嗜好性を高めるために,還元水である

飲料水を中和して,pH7〜8とすることは,当業者であれば容易に想到し得るも

のである。したがって,この旨の判断を示した審決の判断には誤りはない。

(4) 以上により,補正発明は,引用発明1及び本願優先権主張日前に周知の事

項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,補正発明が進

歩性を欠くとした審決の結論に誤りはない。

そうすると,補正発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができないも

のであるから,特許法36条4項1号の判断について検討するまでもなく,補正を

却下した審決の判断に誤りはない。



第6 結論

以上によれば,原告ら主張の取消事由は理由がない。

よって,原告らの請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。




知的財産高等裁判所第2部



裁判長裁判官

清 水 節





裁判官
中 村 恭




裁判官

中 武 由 紀






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