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事件 平成 20年 (ワ) 10819号 特許権侵害差止等請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 大阪地方裁判所 
判決言渡日 2013/02/21
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
平成25年2月21日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官

平成20年(ワ )第10819号 特許権侵害差止等請求事件

口頭弁論終結日 平成24年9月25日

判 決



原 告 株 式会社 松 井 製 作 所



同訴訟代理人弁護士 畑 郁 夫

同 平 野 惠 稔

同 重 冨 貴 光

同 浦 田 悠 一

同訴訟代理人弁理士 河 野 登 夫

同 河 野 英 仁

同 野 口 富 弘



被 告 株式会社 カ ワ タ



同訴訟代理人弁護士 室 谷 和 彦

同 面 谷 和 範

同補佐人弁理士 鈴 江 正 二

同 木 村 俊 之

主 文

1 被告は,別紙イ号製品目録記載の製品を生産し,譲渡し又は譲渡の申出

をしてはならない。

2 被告は,別紙ロ号製品目録記載ロ−1−1号製品,同ロ−1−2号製品,

同ロ−2−2号製品,同ロ−3−1−乙号製品及び同ロ−3−2−乙号製

1
品を生産し,譲渡し又は譲渡の申出をしてはならない。

3 被告は,別紙イ号製品目録記載の製品を廃棄せよ。

4 被告は,原告に対し,687万5290円及びうち70万8258円に

対する平成20年9月2日から,うち616万7032円に対する平成2

3年7月7日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払

え。

5 原告のその余の請求を棄却する。

6 訴訟費用はこれを3分し,その2を原告の負担とし,その余は被告の負

担とする。

7 この判決は,1,2,4及び6項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由

第1 当事者の求めた裁判

1 原告

(1)被告は,別紙イ号製品目録記載の製品を生産し,譲渡し,輸出し,輸入し

又は譲渡の申出をしてはならない。

(2)被告は,別紙ロ号製品目録記載の各製品を生産し,譲渡し,輸入し又は譲

渡の申出をしてはならない。

(3)被告は,(1)及び(2 )の各製品及びこれらの半製品を廃棄せよ。

(4)被告は,原告に対し,2億2000万円及びこれに対する平成20年9月

2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

(5)訴訟費用は被告の負担とする。

(6)仮執行宣言

2 被告

(1)原告の請求をいずれも棄却する。

(2)訴訟費用は原告の負担とする。

第2 事案の概要

2
1 前提事実(証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない。)

(1)当事者

原告は,化学,製薬,製紙,食品,繊維工業用諸機械の製造及び販売並び

にこれらに附帯する工事の施工等を目的とする会社である。

被告は,合成樹脂加工機械の設計,製作及び販売並びに機械器具設置工事

の設計及び施工等を目的とする会社である。

(2)原告の有する特許権

原告は,以下の特許(以下「本件特許」といい,本件特許出願に係る明細

書を「本件明細書」という。各請求項に係る発明を併せて「本件各特許発明

という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有する。

登録番号 3767993号

発明の名称 粉粒体の混合及び微粉除去方法並びにその装置

出願年月日 平成10年1月17日

登録年月日 平成18年2月10日

特許請求の範囲

【請求項1】

流動ホッパーと一 時貯留ホッパーとの間に 縦向き管と横向き管 からなる供

給管を設け,前記流動ホッパーの出入口は,前記供給管のみと連通 してあり,

材料供給源 からの 材料 を 吸引空気源 の 気力 により前記 供給管 を 介 して 流動

ホッパー内に吸引輸 送 するとともに混合し,その混合済み材料を前記一時貯

留ホッパー内へ落下するようにする操作を 繰 り返しながら行なう粉粒体の混

合及び微粉除去方法に おいて,

流動ホッパーへの 材料の吸引輸送は,吸引 輸送の停止中に前回吸引輸送し

た混合済み材料が流動ホッパーから一時貯留ホッパーへと降下する 際に,前

記混合済み材料の充填レベルが供給管の横向 き管における最下面の 延長線の

近傍または該延長線 よりも下方に降下する前に開始するようにすることを特

3
徴とする粉粒体の混合及び微粉除去方法。

(以下,上記請求項に係る発明を「本件特許発明1」という。)

【請求項2】

排気口にガス導管 を 介して吸引空気源を 接続した流動ホッパー と,該流動

ホッパーの出入口と 縦 方向に連通した縦向 き 管と,この縦向き管 に 横方向に

連通され材料供給源 からの材料が供給される 横向き管とからなる 供給管と,

該供給管に接続された一時貯留ホッパーとからなり,

前記流動ホッパーの出入口は,前記供給管 のみと連通してあり,

前記供給管の横向 き 管における最下面の 延長線の近傍位置または 該延長線

より上方位置に,前記 吸引空気源を停止する前に混合された混合済み材料の

充填レベルを,該吸引空気源を停止している 場合に検出するための レベル計

を設けてなることを特 徴とする粉粒体の混合及び微粉除去装置。

(以下,上記請求項に係る発明を「本件特許発明2」という。)

(3)構成要件の分説

本件各特許発明は,以下のとおり,分説することができる。

本件特許発明


A−1 流動ホッパー と一時貯留ホッパーとの間に縦向き管と 横向 き管か

らなる供給管を設け,

A−2 前記流動ホッパーの出入口は,前記 供給管のみと連通 してあり,

材料供給源からの材料 を吸引空気源の 気力により前記供給管 を介して流

動ホッパー内に吸引輸 送するとともに混合し,

A−3 その混合済み 材料を前記一時貯留ホッパー内へ落下するようにす

る操作を繰り返 しながら行なう粉粒体の混合及び微粉除去方法にお いて,

流動ホッパーへの 材料の吸引輸送は,吸引輸送の停止中に前回吸引輸


送した混合済み 材料が 流動ホッパーから一時貯留ホッパーへ と降下する

際に,前記混合済み材料の充填レベル が供給管の横向き管に おける 最下

4
面の延長線の近傍または該延長線よりも下方に降下する前に 開始するよ

うにすることを特徴とする

粉粒体の混合及び微粉除去方法。


イ 本件特許発明

排気口にガス導管 を介して吸引空気源を 接続した流動ホッパー と,


B−1 該流動ホッパーの出入口と縦方向に 連通した縦向き管と,

B −2 この 縦向 き 管 に 横 方 向 に 連通さ れ 材料供給源 からの 材料 が 供給

される横向き管とからなる供給管と,

該供給管に接続さ れた一時貯留ホッパー とからなり,


前記流動ホッパー の出入口は,前記供給管のみと連通してあり,


前 記 供給管 の 横向 き 管 に おけ る 最 下面の 延長線 の 近傍位 置または 該


延長線より上方位置に,前記吸引空気源を停 止する前に混合された混合

済み材料の充填レベル を,該吸引空気源を停 止している場合に検出する

ためのレベル計を設け てなることを特徴とする

粉粒体の混合及び微粉除去装置


(4)被告の行為

被告は,平成15年4月から平成23年7月7日まで,別紙イ号製品目録

記載の流動ホッパー 商品名 パワーリダクションホッパ」 以下
( 「 , 「イ号製品」

という。)を,業として生産し,譲渡し,輸出し及び譲渡の申出を行った(被

告がイ号製品を輸入しているかについては当事者間に争いがある。 。


イ号製品の構成は,別紙イ号製品目録記載のとおりである。

被告が別紙ロ号製品目録記載の各製品(以下「ロ−1−1号製品」などと

いい,併せて「ロ号製品」という。)を販売していたか等については,当事者

間に争いがある(後記第3の7−1)。

2 原告の請求

原告は,被告に対し,以下の請求をしている。

5
本件特許権に基づ き,イ号製品の生産,譲渡,輸出,輸入又は譲渡の申出
@

差止請求

本件特許権に基づ き,ロ号製品の生産,譲渡,輸入又は譲渡の申出の差止
A

請求

本件特許権に基づ き,イ号製品及びロ号製品並びにこれらの半製品の廃棄
B

請求

不法行為に基づ き,2億2000万円の 損害賠償及びこれに対する本件訴
C

状送達の日の翌日(平成20年9月2日)から支払済みまで民法所 定の年5

分の割合による遅延損 害金の支払請求

3 争点

(1)イ号製品の本件特許発明2の技術的範囲への 属否 (争点1)

イ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を充足するか(争点 1−1)


イ イ号製品は,本件特許発明2と均等なものとして,その技術 的範囲に属

するか (争点1−2)

(2)イ号製品に係る被告の行為による本件特許権(本件特許発明1)に対する

間接侵害の成否(特許法101条4号) (争点 2)

イ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係る特許権に対


する特許法101条4号間接侵害が成立するか (争点2−1)

イ イ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係る特許権に対

する特許法101条 4号の間接侵害均等なものとして,特許権侵害が成

立するか (争点2−2)

(3)イ号製品に係る被告の行為による本件特許権(本件各特許発明)に対する

間接侵害の成否(特許法101条2号,5号) (争点 3)

イ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明2に係る特許権に対


する特許法101条2号間接侵害が成立するか (争点3−1)

イ イ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係る特許権に対

6
する特許法101条5号間接侵害が成立するか (争点3−2)

(4)ロ号製品の本件各特許発明技術的範囲への 属否等 (争点4)

ロ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を充足するか(争点 4−1)


イ ロ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係る特許権に対

する特許法101条4号間接侵害が成立するか (争点4−2)

(5)本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものであるか

(争点 5)

本件各特許発明は,本件特許出願前に 頒布された特開平9−15517


1号公報(以下「引用 例1」という。)に記載された発明(以下「 引用発明

1−1」という。 と同一のものであるか又は当業者が引用発明1−1に基


づいて容易に発明することができたものであるか (争点5−1)

イ 本件各特許発明は,当業者が本件特許出願前に頒布された実 開 平3−3

2936号公報(以下「引用例2」という。)に記載された発明(以下「引

用発明2」という。 に 基づいて容易に発明することができたものであるか


(争点5−2)

本件各特許発明は,当業者が引用例1に記載された発明(以下「引用発


明1−2」という。 に 基づいて容易に発明することができたものであるか


(争点5−3)

本件各特許発明は,当業者が本件特許出願前に被告によって 公然実施


された発明(以下「被告公然実施発明」という。 基づいて 容易 に発明す
)に

ることができたものであるか (争点5−4)

本件各特許発明は,発明(特許法29 条 1項柱書)として未完 成のもの


であるか (争点5−5)

カ 本件特許には,サポート要件(特許法36条6項1号)違反があるか

(争点5−6)

(6)先使用権の成否

7
被告は,本件特許権について,先使用による通常実施権(特許法79条

を有するか (争点 6)

(7)損害賠償,差止め及び廃棄請求の成否 (争点7)

損害賠償請求の成 否 (争点 7−1)


差止め及び廃棄請求の成否 (争点 7−2)

第3 争点に関する当事者の主張

1−1 争点1−1(イ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を 充足するか)

について

【原告の主張】

以下のとおり,イ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を 充足する。

(1)イ号製品の構成

別紙イ号製品目録記載のとおりである(前提事実(4))。

(2)構成要件充足性

構成要件E及びFの 充足性


(ア) 「混合」の意義

本件特許発明2に お いて,「混合」とは, 攪拌」や「流動」と同 義で


あり,具体的には以下の4つの場合が含まれる。

同一材料について,材料が空気と混合さ れる場合
@

同一材料について,前回混合した材料と 今回投入された材料が混合
A

される場合

同一材料について,粉砕した材料とバージン材が混合される場 合
B

バ ージン材 と マス タ ーバッチ 又は 添 加 剤 という 異種材料 が混合 さ
C

れる場合

なお,粉粒体がホッパー装置に空気輸送される前に乾燥機等で混合 さ

れた場合であっても, ホッパー装置内でも混合はされるから,この 場合

も含まれる。

8
(イ) イ号製品の用途

プ ラスチック 成 型 の分野に お いて, 上 記 (ア )B 又は C のいずれにも当

たらない場合は,ほと んど想定することができない。

したがって,イ号製品についても,相異 なる樹脂材料の供給装 置に装

着して販売される場 合と,ユーザーにおいて 相異なる樹脂材料の 供給装

置に連結される場合を合わせると,ほぼ100%が相異なる樹脂 材料の

供給装置に連結される。

よって,イ号製品は, 混合」
「 という用途 に用いられるものであるから,

イ号製品の構成eは本件特許発明2の構成要件Eに,構成fは構 成要件

Fに相当し,イ号製品は上記各構成要件を充足する。

構成要件Cの充足性

イ 号製品の 構 成 c の「 延伸部 (47)」は 構 成要件 C の「一 時貯留ホッ

パー」に相当するから,イ号製品は構成要件 Cを充足する。

その余の構成要件の 充足性


イ号製品の構成aは本件特許発明2の構成要件Aに,構成b−1は構成

要件B−1に,構成b −2は構成要件B−2に,構成dは構 成要件 Dにそ

れぞれ相当し,イ号製品は上記各構成要件を 充足する。

【被告の主張】

以下のとおり,イ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を充足 しない。

(1)構成要件Eの非充足

「混合」の意義


本件特許発明2にお いて,
「混合」とは複数 の異種材料を混ぜ合わ せるこ

とをいうものであり,1種類の材料を微粉除去のために攪拌・流動させる

ことは含まない(粉砕材とバージン材が異種材料であることは争わ ない。。


また,当該装置内 に おいて複数の異種材料 を混ぜ合わせることをいい,

すでに混合された材料 をホッパー装置内で 攪拌・流動させる場合も 含まな

9
い。

イ イ号製品の用途

イ号製品は,ロ号製品の部品として製造,販売されるものである。

ロ号製品は,@ 単 一材料の微粉除去に用いられるもの,A 混 合済み材

料 の微粉除去に用いられるもの(ロ−1−2号製品,ロ−2−2号製品,

ロ−3−1号製品,ロ−3−2号製品)及び B オ ートセレク タ ー を用い

た粉砕材とバージン材 の混合に用いられるもの(ロ−1−1号製品)の3

種類に分類できる。

平 成18年2月10日から平成23年3月までの 期 間に おけ るロ号製

品の販売総数1163 台のうち885台(約 76.1%)は単一材料の微粉

除去に用いられるもの(@)であり,202 台(約17.3%)は混合済み

材料の微粉除去に用いられるもの(A)であ った。オートセレクタ ーを用

いた粉砕材とバージン材の混合に用いられるもの B )
( は, か30台 約



2.6%)にすぎない。残りの46台(約4 .0%)の用途は不明である。

上 記 B 以 外 のロ号製品(イ号製品)は,「混合」に用いられるものでは

なく,構成要件Eを充足しない。

(2)構成要件Fの非充足

前 記 (1 )のと お り,イ号製品は,その 大 半が 異種材料 の混合に用いられる

ものではない。そもそも,それ自体としては樹脂材料を収容した ホッパーと

横向き管とが連通して設置されていない部品にすぎず,粉粒体の混合及び微


粉除去装置」ではない。

したがって,イ号製品は構成要件Fも充足 しない。

(3)構成要件Cの非充足

イ号製品は, 時貯留ホッパーを有してお らず, 成要件Cを 充足しない。
一 構

1−2 争点1−2(イ号製品は,本件特許発明2と均等なものとして,その技

術的範囲に属するか)について

10
【原告の主張】

仮に,イ号製品の「延伸部(47)」 構成c)はホッパー形状ではなく,円筒


形であるから,本件特許発明2の「一時貯留ホッパー」 構成要件 C)と相違す


るとしても,以下のと おり,イ号製品は,本件特許発明2と均等なものとして,

その技術的範囲に属するものである。

(1)イ号製品と本件特許発明2の相違点が非本質 的部分であること

本件特許発明2は, 材料の充填レベルを 検 出するためのレベル 計を設置す

ることによって,材料 が未混合のまま一時貯留場所に落下することを防ぐと

いう作用効果を奏するものである。その本 質 的部分は,センサー の設置位置

にあり,材料を一時貯留する場所の形態が ホッパー形状であるか 否 かは発明

の本質と関係がない。

したがって,上記相違点は本件特許発明2の非本質的部分である。

(2)置換可能性

本件特許発明2の「一時貯留ホッパー」を,イ号製品の「延伸部 (47)」

置き換えても同一の作用効果を奏するから,これらは置き換えが 可能であ

る。

(3)置換容易性

本 件特許発明2の「一 時貯留ホッパー 」を,イ号製品の「 延伸部 (47 )」

置き換えられることは,本件明細書(甲 2)の段落【0043 】 にも記載

されている。

したがって,被告がイ号製品を製造販売した時点においても, 上 記置き換

えをすることは容易に 想到することができたものである。

(4)イ号製品の構成が公知技術から容易に推考さ れないこと

イ号製品の構成は,本件特許出願時点に おける公知技術と同一のものでは

ないし,公知技術から 容易に推考できたものでもない。

(5)包袋禁反言など特段の事情はないこと

11
本 件特許出願に係る 手続 に お いて,イ号製品の 上 記 (1 )の 相違点 に係る 構

成が【特許請求の範 囲】から意識的に除外さ れたものであるなど の特段の事

情はない。

【被告の主張】

争う。

2−1 争点2−1(イ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係

る特許権に対する特許法101条4号の間接 侵害が成立するか)に ついて

【原告の主張】

以下のとおり,イ号製品は,本件特許発明1に係る方法の使用のみ用いる

物であるから,イ号製品に係る被告の行為 に ついて,本件特許発明1に係る特

許権に対する特許法101条4号間接侵害が成立する。

(1)イ号製品の動作

イ号製品の動作は,以下のとおりである。

流動ホッパー (2)の出入り口と縦方向に 連通した縦向き管 (4 A)と,
@

該縦向き管(4A)の中途に連通連設した 横向き管(4B )とから成る
A

供 給管 ( 4 ) の 縦向 き 管 ( 4 A ) を下方に 延伸 してなる 延伸部 ( 47 ) が設 け
B

られている。

前記流動ホッパー の出入口は,前記供給管のみと連通してあり,吸引空
C

気源 を 運転 することによ っ て 流動ホッパー (2 )及び 供給管 (4 ) 内 の 空気 が

吸引され,これに 伴っ て,乾燥機(51),粉 砕機(52)等に各収容されてい

る 相異 なる樹脂 材料 は 横向 き 管 (4 B )から 吸 い 込 まれ, 流動ホッパー (2 )

内で均質に混合される。

混合さ れた樹脂材料は縦向き 管(4A)を兼 用する延伸部(47)
流動中に,
D

に 堆積 せずに, レベル 計 (70 )よりも 高 い 位 置で 流動 を 続け る。一方で,

供給管(4)の下端は流動せず,静止状態を保つ。

吸引空気源を停止すると,流動が停止し, 均質に混合された樹脂 材料が

12
供給管に落下し,縦向 き管(4A)を 兼用する 延伸部(47)に貯留さ れる。そ

して成 形 機の 材料消 費 動 作に合 わ せて 供給管 (4 )内 の 均質 に混合 さ れた樹

脂 材料 の レベル が 低 下していき, や がてこれが レベル 計 (70 )に 検 出 さ れ

る。

この検出に関連して 吸引空気源を起動すると,新たな樹脂材料 が 横向き

管(4B)から 吸い込まれ流動ホッパー(2)内 で混合がなされる。

縦向 き管(4A)内 のレベル 計(70)までの充填物 は必ず均
以上の反復で,

質に混合されたものとなる。

ま た,微細粉は フィル タを 透過 して 流動ホッパー (2 )から 空気 と 共 に 排
E

出され,微粉を除去する。

上 記のような 流動ホッパー (2 )へ の樹脂 材料 の輸 送 再 開 ,すな わ ち 吸引
F

レベル計(70)が 供給管の 横向き管(4B )よりも 上方に位
空気源の起動は,

置していることから,前 回 輸 送 の混合済み 材料 が 流動ホッパー (2 )から 縦

向き管(4A)を兼用する延伸部(47 )へと降 下する際に,混合済み 材料の充

填レベル が 供給管 の 横向 き 管 (4 B )よりも下方に 降 下する前に 開始 するこ

ととなる。

(2)構成要件充足性

イ号製品の動作@ ないしBは本件特許発明1の構成要件A−1を,同動作

Cは本件特許発明1の 構成要件A−2を,同 動作Dは構成要件A −3を,同

動作Fは構成要件B を,同動作DからFまでは構成要件Cを,それぞれ充足

する。

(3)イ号製品が本件特許発明1に係る方法の使 用にのみ用いられるものである

こと

前記1−1【原告の主張】(2)ア (イ)と同 様である。

【被告の主張】

以下のとおり,イ号製品は,本件特許発明1に係る方法の使用のみ用いる

13
物ではないから,イ号製品に係る被告の行 為 について,本件特許発明1に係る

特許権に対する特許法101条4号間接侵害は成立しない。

(1)イ号製品の使用方法に係る構成要件の非充足

前 記1−1 【 被告の主 張】 (1 )のと お り,イ号製品は「混合」に用いられ

るものではないから,その使用方法は本件特許発明1の構成要件A −2, −


3,B及びCを充足しない。

また,同(3)のとお り,イ号製品は「一時貯留ホッパー」を有しておらず,

本件特許発明1の構成要件A−1,A−3及びBも充足しない。

(2)イ号製品が本件特許発明1に係る方法の使 用にのみ用いられるものではな

いこと

前 記1−1 【 被告の主 張】 (1 )イのと お り,イ号製品は,主に1 種類 の 材

料を対象とする微粉除去装置として使用さ れるものであり,本件特許発明

に係る方法の使用にのみ用いられる物ではない。

2−2 争点2−2(イ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係

る特許権に対する特許法101条4号の間 接 侵害均等なものとして,特許権

侵害が成立するか)に ついて

【原告の主張】

イ号製品の 延伸部(47)」 構成c ) 形状はホッパー形状ではなく,
仮に, 「 ( の

円筒形であるから,本件特許発明1の「一 時貯留ホッパー」 構成要件A−1,


A−3及びB)と相違 するとしても,前記1−2【原告の主張】 と同様に,上

記相違点は本件特許発明1の非本質的部分であり,置換可能性及び置換容易性

もあり,イ号製品の 構 成は公知技術から容易 に推考されるものではなく,包袋

禁反言などの特段の事 情もない。

したがって,イ号製品は,本件特許発明1に係る方法の使用のみ用いる

均等なものであるから,イ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明

1に係る特許権に対する特許法101条4号間接侵害均等なものとして,

14
特許権侵害が成立する。

【被告の主張】

争う。

3−1 争点3−1(イ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明2に係

る特許権に対する特許法101条2号の間接 侵害が成立するか)に ついて

【原告の主張】

仮に,イ号製品が 単 体では本件特許発明2の技術的範囲に属さないとしても,

以下のとおり,イ号製品を製造,販売等する行為については,本件特許発明

に係る特許権に対する特許法101条2号間接侵害が成立する。

(1)本件特許発明2に係る 物の生産に用いる物であること

イ号製品を含む製品(ロ号製品)は,本件特許発明2の各構成要件を充足

するから,イ号製品は本件特許発明2に係る 物の生産に用いる物である。

(2)本件特許発明2による 課題の解決に不可欠なものであること

従来技術では,一 時貯留ホッパー(チャ ージホッパー)の中程 位 置にレベ

ル計が設けられてお り,成形機が材料を消 費して材料のレベルが レベル計の

位置より下方に至れ ば ,混合ホッパーへの 次 回材料の輸送が開始さ れるよう

になっていた。そのような状態で輸送が開始されると,材料の大部 分は混合

ホッパーに吸引輸送さ れるものの,材料の一 部は未混合のまま一 時貯留ホッ

パーに,直接,落下してしまうという課題があった。

本件特許発明2は, 流動ホッパーと一時貯留ホッパーとの間に 縦向き管と

横向き管からなる供給管を設け,材料供給源 からの材料を吸引空気源の気力

により前記供給管を 介 して流動ホッパー内 に 吸引輸送するとともに混合し,

その混合済み材料を前記一時貯留ホッパー内へ落下するようにする 操作を繰

り返しながら行なう粉粒体の混合及び微粉除去装置において,流動ホッパー

へ の 材料 の輸 送 は,前 回 輸 送 の混合済み 材料 が 流動ホッパー から一 時貯留

ホッパーへと降下する 際に,前記混合済み 材料の充填レベルが供給管の横向

15
き管における最下面の 延長線の近傍または 該延長線よりも下方に 降 下する前

に開始するようにすることを特徴とすることによって,上記課題 を 解決した

ものである。

上記課題の解決は,イ号製品をロ号製品に 組み込むことによっ て 初めて実

現されるものであるから,イ号製品は,本件特許発明2による課題 の解決に

不可欠なものである

(3)日本国内において広く 一般に流通しているものではないこと

日本国内において 広 く一般に流通しているものとは,ねじ,釘 , 電球,ト

ランジスター等のような日本国内において 広 く普及している一般 的な製品,

すなわち他の用途にも用いることができ, 市 場において一般に入 手可能な状

態にある規格品,普及品をいう。

イ号製品は広く普 及している一般的な製品ではないし,規格品, 普及品で

もない。

(4)被告の悪意

本件特許権に係る特許公報は,平成18年4月19日に発行さ れた。


原告と被告は,粉粒体の混合及び微粉除去方法並びに装置の研究 開発に

携わっている当業者であり,被告は,常に年 来の競業者である原告の特許

取得状況に関心を抱いていた。

したがって,被告は,遅くとも同月中には本件特許発明2が原告の特許

発明であること及びイ号製品がその発明の実施に用いられることを 知った

(主位的主張)。

イ 原告は,平成19年2月28日付けの原告製品カタログにお いて,本件

特許発明2の実施品とともに本件特許に係る特許番号を掲載した。

同カタログは,平成19年3月上旬には,原告のホームページ からダウ

ンロードできる状態 にあった。原告は,平成19年6月6日から9日まで

に開催された,被告も 参加していた展示会でも,同カタログを配布 した。

16
したがって,被告は,遅くとも平成19年3月上旬又は上記展示 会の初

日である同年6月6日の時点で同カタログ を入手し,本件特許発明2が原

告の特許発明であること及びイ号製品がその発明の実施に用いられること

を知った(予備的主張 1)。

被告は,遅くとも,原告から警告書を 受 けた平成19年11月14日に


は,本件特許発明2が原告の特許発明であること及びイ号製品がその発明

実施に用いられることを知った(予備的主 張2)。

被告は,遅くとも,本件訴状の送達を 受 けた平成20年9月1日には,


本件特許発明2が原告の特許発明であること及びイ号製品がその発明の実

施に用いられることを 知った(予備的主張3)。

【被告の主張】

以下のとおり,イ号製品に係る被告の行 為 について,本件特許発明2に係る

特許権に対する特許法101条2号間接侵害は成立しない。

(1)本件特許発明2による 課題の解決に不可欠なものではないこと

イ号製品のみでは,本件特許発明2による 課題を解決することはできず,

本件特許発明2による発明の課題の解決に 不可欠なものは複数の 材料供給源

とイ号製品との組合せである。

また,イ号製品は従来技術の構成を備えたものにすぎない。

したがって,イ号製品は,本件特許発明2による課題の解決に 不可欠なも

のには当たらない。

(2)日本国内において広く 一般に流通しているものであること

被告は,本件特許登録前の平成15年4月から継続してイ号製品を販売し

てきた。

また,イ号製品は 規格品又は標準使用品であり,特注品ではな く ,需用者

が市場において自由に 購入することができるものである。

したがって,日本国 内において広く一般に 流通しているものである。

17
(3)被告が悪意ではないこと

被告が本件特許権に ついて認識したのは,原告から警告を受け た平成19

年11月14日であり,それ以前には認識していなかった。

そ もそも,前記1−1 【 被告の主 張】 (1 )と同 様 の理由から, ほ と んど の

イ号製品は本件特許発明2の実施に用いられるものではなく,被告は現時点

においてもイ号製品が本件特許発明2の実施に用いられることに つ いて悪意

でない。

3−2 争点3−2(イ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係

る特許権に対する特許法101条5号の間接 侵害が成立するか)に ついて

【原告の主張】

仮に,イ号製品の製造,販売等によって,本件特許発明1に係る特許権に対

する特許法101条 4号の間接侵害が成立 しないとしても,以下のとおり,イ

号製品を製造,販売等する行為については,本件特許発明1に係る特許権に対

する特許法101条5号間接侵害が成立する。

(1)本件特許発明1に係る方法の使用に用いる物 であること

別紙ロ号製品目録記載のとおり,ロ号製品は,イ号製品と材料供給装置か

らなり,ホッパー装置のレベル計(70)から得られる信号に応動 して材料供

給装置からホッパー装 置へ複数の樹脂材料 の 供給を行うように連 繋稼働され

る二装置の組である。

前記2−1【原告の主張】(1 )及び(2 )と同様の理由から,ロ号製品を使用

する行為は本件特許発明1に係る方法を使用する行為に当たる。

したがって,イ号製品は本件特許発明1に係る方法の使用に用いる物であ

る。

(2)本件特許発明1による 課題の解決に不可欠なものであること

本件特許発明1が解 決しようとする課題は,本件特許発明2と同 様である。

前 記3−1 【 原告の主 張】 (2 )と同 様 に, 上 記 課題 の 解 決は,イ号製品を

18
ロ号製品に組み込む ことによって初めて実 現 されるものであるから,イ号製

品は,本件特許発明1による課題の解決に不可欠なものである。

(3)日本国内において広く 一般に流通しているものではないこと

前記3−1【原告の主張】(3)と同様である。

(4)被告の悪意

前記3−1【原告の主張】(4)と同様である。

【被告の主張】

前記3−1【被告の主張】と同様である。

4−1 争点4−1(ロ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を 充足するか)

について

【原告の主張】

仮に,イ号製品が 単体では本件特許発明2の 技術的範囲に属さないとしても,

以下のとおり,ロ号製品は,本件特許発明2の技術的範囲に属する。

(1)ロ号製品の構成

被告は,イ号製品を 他の装置と組み合わ せて,ロ号製品として製造,販売

している。

ロ号製品の構成は,別紙ロ号製品目録記載のとおりである。

(2)構成要件充足性

前記1−1【原告の主張】(1)と同様 に,本件特許発明2において「混合」

とは粉粒体がホッパー装置に空気輸送される前に乾燥機等で混合 さ れるか否

かにかかわらず,ホッパー装置内で混合されることをいう。

仮に,イ号製品が 単 体では混合のために 使 用されないため,本件特許発明

2の構成要件E及び F を充足しないとしても,イ号製品とロ号製品の各gの

構成との組合せは,異種材料の混合を当然の前提としている。

そうすると,上記 構 成要件の「混合」を除 く,その他の構成要件について

は,前記1−1及び1−2の各【原告の主 張】のとおり,ロ号製品に組み合

19
わされたイ号製品が 充足しているから,ロ号製品は,いずれも本件特許発明

2の技術的範囲に属するものである。

【被告の主張】

前記1−1【被告の主張】(1)アのとおり,本件特許発明2にお いて,
「混合」

とは当該装置内にお いて複数の異種材料を混 ぜ合わせることをいい,すでに混

合された材料を混ぜ合 わせることをいうものではない。

前記1−1【被告の主張】
(1)イのとお り,ロ−1―1号製品を除くその余

のロ号製品は,異種材料を流動ホッパー内 に 吸引輸送するものではなく,すで

に混合された1材料 数種類の材料からなる) 流動ホッパー内に 吸引輸送し,
( を

微粉除去をするものである。

したがって,これらのロ号製品は,少な く とも本件特許発明2の 構成要件

及びFを充足するものではない。

4−2 争点4−2(ロ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係

る特許権に対する特許法101条4号の間接 侵害が成立するか)に ついて

【原告の主張】

仮に,イ号製品の製造,販売等によって,本件特許発明1に係る特許権に対

する特許法101条 4号の間接侵害が成立 しないとしても,以下のとおり,ロ

号製品に係る被告の行 為については,本件特許発明1に係る特許権に対する特

許法101条4号の間 接侵害が成立する。

(1)ロ号製品の動作

被告は,イ号製品を 他の製品と組み合わ せて,ロ号製品として製造,販売

している。

ロ 号製品の 動 作は前記2−1 【 原告の主 張】 (1 )と同 じ である(仮に,イ

号製品の 動 作が 上 記 動 作をしていな く ても,ロ号製品は 上 記 動 作をしてい

る。。


(2)構成要件充足性

20
前記1−1【原告の主張】(1)と同様 に,本件特許発明1において「混合」

とは粉粒体がホッパー装置に空気輸送される前に乾燥機等で混合 さ れるか否

かにかかわらず,ホッパー装置内で混合されることをいう。

仮に,イ号製品が 単 体では混合のために 使 用されないため,イ号製品の動

作が本件特許発明1の 構成要件A−1,A −3,B及びCを充足 しないとし

ても,ロ号製品は,いずれもホッパー装置内で粉粒体を混合するものである。

そうすると,上記 構 成要件の「混合」を除 く,その他の構成要件について

は,前記2−1及び2−2の各【原告の主 張】のとおり,ロ号製品に組み合

わされたイ号製品の 動 作が充足しているから,ロ号製品の動作は,いずれも

本件特許発明1の技術 的範囲に属するものである。

(3)本件特許発明1に係る方法の使用についてのみ用いる物であること

前 記 (2 )のと お り,ロ号製品は,いずれも 必然 的に混合に用いられるもの

であるから,本件特許発明1に係る方法の使 用についてのみ用いる 物である。

【被告の主張】

前記1−1【被告の主張】(1)アと同 様に,本件特許発明1にお いても,
「混

合」とは当該装置内 に おいて複数の異種材料 を混ぜ合わせることをいい,すで

に混合された材料を混 ぜ合わせることをいうものではない。

前 記1−1 【 被告の主 張】 (1 )イのと お り,ロ−1 ― 1号製品を除いたロ号

製品は,異種材料を 流動ホッパー内に吸引 輸 送するものではなく ,すでに混合

された1材料(数種類 の材料からなる)を 流動ホッパー内に吸引 輸 送し,微粉

除去をするものである。

したがって,これらのロ号製品は, なく とも本件特許発明1の 構成要件A−


2,A−3,B及び C を充足するものではな く,本件特許発明1に係る方法の

使用にのみ用いる物でもない。

5−1 争点5−1(本件各特許発明は,引 用発明1−1と同一のものであるか

又は当業者が引用発明1−1に基づいて容易 に発明することができたものであ

21
るか)について

【被告の主張】

以下のとおり,本件各特許発明は,引用発明1−1と同一のものであるか又

は当業者が引用発明1−1に基づいて容易 に発明することができたものである。

(1)引用発明1−1の内容

引用例1には,以下の発明(引用発明1−1)が記載されている。

引用発明1−1−1


「材料混合タンク 本体と,材料貯留タンクやホッパー等の材料収容手段

との間に縦向きの材料供給兼排出管と横向 きの材料供給管からなる 管部材

を設け,材料供給源 からの材料をエアー吸引手段の気力により前記 管部材

を介して材料混合タ ンク本体内に吸引輸送 するとともに混合し,その混合

済み材料を前記材料収容手段へ落下するようにする操作を繰り返 しながら

行なう粉粒体の混合及び微粉除去方法であっ て,

材料混合タンク本体へ の材料の吸引輸送は, 吸引輸送の停止中に前 回吸引

輸 送 した混合済み 材料 が 材料 混合タ ンク 本体から 材料収容手段へ と 降 下

する際に,前記混合済み材料の充填レベルが 材料供給管における最 下面の

延長線よりも下方に降 下する前に開始するようにする,粉粒体の混合及び

微粉除去方法。」

イ 引用発明1−1−2

「エアー吸引口にエアー配管を介してエアー吸引手段を接続した 材料混

合タンク本体と,該材料混合タンク本体に設 けられた第一の孔部と 縦方向

に連通した材料供給兼排出管と,この材料供給兼排出管に横方向に 連通さ

れ材料供給源からの材料が供給される材料供給管とからなる管部材 と,材

料供給兼排 出 管 の下 端部 に 接続さ れた 材料貯留 タ ンクやホッパー 等の 材

料収容手段とからなり,

前記材料供給管におけ る最下面の延長線より 上方位置に,前記エアー吸引

22
手段を停止する前に混合された混合済み材料 の充填レベルを,該エアー吸

引手段 を 停 止している 場 合に 検 出するための レベル 計を設 け るとともに,

前 記 材料供給管 は 材料供給兼排 出 管 に対して 略水 平ないしは 上 方から下

方に向けての下り勾配 に設けてなる,粉粒体の混合及び微粉除去装 置。」

(2)本件特許発明1の新規 性又は進歩性の欠如

新規性欠如


本件特許発明1では流動ホッパー の出入口が供給管のみと連通するのに

対し,引用発明1−1−1では流動ホッパー の出入口が供給管のみと連通

していない点で相違しており,その余の構成は一致する。

この相違点 は格別のものではなく ,引用発明1−1−1と本件特許発明

1は同一のものである。

進歩性欠如

流 動ホッパー の出入口が 供給管 のみと 連通 する 構 成は本件特許出願 時

点で周知の技術であっ た。

したがって,引用発明1−1−1において, 流動ホッパーの出入口を供

給管のみと連通させるという本件特許発明1の構成を採用することは,当

業者が容易に想到し得 たことである。

(3)本件特許発明2の進歩 性欠如

引用発明1−1−2と本件特許発明2との対比


本 件特許発明2では 流動ホッパー の出入口が 供給管 のみと 連通 するの

に対し,引用発明1−1−2では流動ホッパーの出入口が供給管のみと連

通していない点で相違 しており,その余の構 成は一致する。

イ 従来技術

流 動ホッパー の出入口が 供給管 のみと 連通 する 構 成は本件特許出願 時

点で周知の技術であっ た。

したがって,引用発明1−1−2において, 流動ホッパーの出入口を供

23
給管のみと連通させるという本件特許発明2の構成を採用することは,当

業者が容易に想到し得 たことである。

【原告の主張】

以下のとおり,本件各特許発明は, 用発明1−1と同一のものではないし,


当業者が引用発明1−1に基づいて容易に発明することができたものでもない。

(1)引用発明1−1の内容

引用発明1−1−1


(ア) 前記【被告の主張】(1)アのうち, 材料供給源からの材料をエアー吸


引手段の気力により前記管部材を介して材料 混合タンク本体内に 吸引輸

送するとともに混合し,その混合済み材料 を前記材料収容手段へ落 下す

るようにする操作を 繰 り返しながら行なう」 旨の構成が引用例1に記載

されていることは否認 する。

引用発明1−1−1では, レベル計によ って,材料混合タンク内の混

合済みの粉粒体混合 材料の貯留量を検出し, 材料供給源から材料 混合タ

ンクへの粉粒体材料 の 供給量を制御し,材料 混合タンク内の混合済みの

粉粒体混合材料の貯留 量を,粉粒体混合材料 の使用量にかかわらず,常

に一定とすることができる。これにより, 気 密性を有する材料収容手段

側に,常に過不足な く ,安定して,混合済みの粉粒体混合材料を 排 出で

き,混合済みの粉粒体混合材料を排出する 度毎にエアー吸引手段 を 停止

する必要がなく,ほぼ ,無期限に連続運転 をすることができるというも

のである。

(イ) 前記【被告の主張】(1)アのうち, 材料混合タンク本体への材料 の吸


引輸送は,吸引輸送 の 停止中に前回吸引輸 送 した混合済み材料が 材料混

合タンク本体から材料収容手段へと降下する 際に,前記混合済み 材料の

充填レベルが材料供給管における最下面の 延長線よりも下方に降 下する

前に開始するようにする,旨の構成が 引用例 1に記載されていることも


24
否認する。

引用発明1−1−1のレベル計は,材料 混合タンク内の混合済みの粉

粒体混合材料の貯留 量 を,粉粒体混合材料 の 使用量にかかわらず, 常に

一定とするために設け られているものである。

イ 引用発明1−1−2

前 記 ア と同 様 の理由から,前記 【 被告の主 張】 (1 )イのうち「前記 材料

供給管における最下面の延長線より上方位置に,前記エアー吸引手段を停

止する前に混合された混合済み材料の充填レベルを,該エアー吸引手段を

停 止している 場 合に 検 出するための レベル 計を設 け るとともに,」の 構 成

が引用例1に記載されていることは否認する。

(2)本件特許発明1の新規 性及び進歩性

引用発明1−1−1と本件特許発明1との対比


前記(1)ア (ア)のと おり,引用例 1には,本件特許発明1の構成要件Aに

相当する記載がなく, (イ)のとお り, 成要件Bに相当する記載もない。
同 構

イ 本件特許発明1の 新規性

本件特許発明1は, 構成要件A及びBの 構 成により,材料の吸引 輸送を

開始した際に,材料 の一部が未混合のまま一 時貯留ホッパーへ直 接 に送ら

れるのを防止するという作用効果を奏するものである。

これに対し,引 用発明1−1−1は,前記 (1)アのとお り, エアー吸引


手段の作動時に,材料供給兼排出管から材料 混合タンク内に粉粒体 材料を

供給しつつ,材料混合タンク内へ供給された粉粒体材料を気流混合 させな

がら,同時進行的に,混合済みの粉粒体混合 材料を材料排出専用 管 より排

出して,混合済みの粉粒体混合材料を得ることができる。」及び「 レベル計

によって,…材料混合タンク内の混合済みの粉粒体混合材料の貯留 量を,

粉粒体混合材料の使用 量にかかわらず,常 に,一定とできる。」という作用

効果を奏するものである。

25
したがって,引用発明1−1−1は,本件特許発明1と全く異 なる技術

的思想に基づくものであり,本件特許発明1と同一のものではない。

本件特許発明1の進歩性


引用発明1−1−1は,材料混合タンクに 材料供給管と材料排出 専用管

とを分離して設けることにより,吸引輸送と混合済み材料の排出を同時進

行的に並列に行うものである。材料混合タンク(流動ホッパー)の出入口

を供給管のみと連通さ せる(本件特許発明構成要件A−2)と, 吸引輸

送 と混合済み 材料 の 排 出を同 時 進 行的に並 列 に行うとした発明の目的に

反する方向に変更することになる。

したがって,引用発明1−1−1において,流動ホッパーの出入口を供

給管 のみと 連通さ せることは,当業者が 容易 に 想到 し 得 ることではない。

こ のように本件特許発明1と 引 用発明1−1−1は 構 成が明らかに 相

違し,作用効果も全く異なるものであるから,本件特許発明1は,当業者

が 引 用発明1−1−1に 基づ いて 容易 に発明することができたものでも

ない。

(3)本件特許発明2の進歩 性

引用発明1−1−2と本件特許発明2との対比


前 記 (1 )イのと お り, 引 用 例 1には,本件特許発明2の 構 成要件 D 及び

Eに相当する記載がない。

イ 本件特許発明2の 進歩性

前 記 (2 )イと同 様 に,本件特許発明2は, 材料 の 吸引 輸 送 を 開始 した 際

に,材料の一部が未 混合のまま一時貯留ホッパーへ直接に送られるのを防

止するという作用効果 を奏するものであるのに対し,引用発明1−1−2

は,これと全く異なる 技術的思想に基づくものである。

このように構成が明らかに相違しており,作用効果も全く異なるもので

あるから,本件特許発明2は,当業者が引 用発明1−1−2に基づ いて容

26
易に発明することができたものではない。

5−2 争点5−2(本件各特許発明は,当業者が引用発明2に基づいて容易に

発明することができたものであるか)について

【被告の主張】

以下のとおり,本件各特許発明は,当業者が引用発明2に基づ いて容易に発

明することができたものである。

(1)引用発明2の内容

引用例2には,以下の発明(引用発明2)が記載されている。

引用発明2−1


「混合ホッパーと チ ャージホッパーなど の 受部との間に縦向きの分岐管

部と横向きの分岐管部 からなるY字状管を設 け,材料供給源からの 材料を

吸引空気源のガス力 により前記Y字状管を 介 して混合ホッパー内 に 吸引輸

送するとともに混合し,その混合済み材料 を前記受部内へ落下するように

する操作を繰り返しながら行なう粉粒体の混合及び微粉除去方法であって,

混合ホッパーへの材料 の吸引輸送は,混合済み材料の充填レベル が 横向き

の分岐管部における 最 下面の延長線よりも下方に降下した後に開始 するよ

うにする,粉粒体の混合及び微粉除去方法。」

イ 引用発明2−2

「接続管部にガス導管を介して吸引空気源 を接続した混合ホッパーと,

該混合ホッパーの出入口と縦方向に連通した分岐管部と,この縦向 きの分

岐管部に横方向に連通され材料供給源からの 材料が供給される横向 きの分

岐管部とからなるY字 状管と,該Y字状管 の 縦向きの分岐管部の下 端部に

接続されたチャージホッパーなどの受部とからなり,

前記混合ホッパーの出入口は,前記Y字状管 のみと連通してあり,

前記横向きの分岐管部 における最下面の延長線より下方位置に,前記吸引

空気源を停止する前に混合された混合済み 材料の充填レベルを, 該吸引空

27
気源を停止している場 合に検出するためのレベル計を設けるとともに,

前記横向きの分岐管部 は縦向きの分岐管部 に対して下方から上方に 向けて

の上り勾配に設けてなる,粉粒体の混合及び微粉除去装置。」

(2)本件特許発明1の進歩 性欠如

引用発明2−1と本件特許発明1の対比


[一致点]

いずれも,流動ホッパーと一時貯留ホッパーとの間に縦向き管と 横向き

管からなる供給管を設 け,材料供給源からの 材料を吸引空気源の気力によ

り前記供給管を介して 流動ホッパー内に吸引 輸送するとともに混合し,そ

の混合済み 材料 を前記一 時貯留ホッパー内へ落 下するようにする 操 作を

繰り返しながら行なう粉粒体の混合及び微粉除去方法である。

[相違点]

本件特許発明1では,流動ホッパーへの材料の吸引輸送が,吸引 輸送の

停 止 中 に前 回吸引 輸 送 した混合済み 材料 が 流動ホッパー から一 時貯留

ホッパーへと降下する 際に,前記混合済み材料の充填レベルが供給管の横

向 き 管 に おけ る 最 下面の 延長線 の 近傍 または 該延長線 よりも下方に 降 下

する前に開始される。これに対し,引用発明2−1では,流動ホッパーへ

の材料の吸引輸送が,混合済み材料の充填レベルが供給管の横向き 管にお

ける最下面の延長線よりも下方に降下した後 に開始される。

容易想到性

(ア) 引用発明1−1との組 合せによる容易想到性

引用発明1−1では,気流混合装置におけ る流動ホッパー(材料 混合

タンク本体)への材料 の吸引輸送は,吸引 輸 送の停止中に前回吸引 輸送

した混合済み材料が 流動ホッパー(材料混合タンク本体)から一 時貯留

ホッパー(材料貯留 タ ンクやホッパー等の 材料収容手段)へと降 下する

際に,混合済み材料 の 充填レベルが供給管 ( 縦向きの材料供給兼排 出管

28
と横向きの材料供給管 からなる管部材)の 横向き管(材料供給管 )にお

ける最下面の延長線よりも下方に降下する前に開始される。

したがって,引用発明1−1は,前記ア の 相違点に係る本件特許発明

1の構成を有するものであり,これを引用発明2−1に適用することに

より,本件特許発明1の構成に至ることは容易である。

(イ) 被告公然実施発明との 組合せによる容易想到性

被告は,平成8年8月ころ,バルブレスア ドオンホッパー(被告 公然

実施発明。バルブレス ローダともいう。)を製造し,株式会社コ ーダに販

売した。

被告公然実施発明の 内容は,以下のとおりである。

「流動ホッパー(ロ ーダホッパ)と一時貯留ホッパー(シュート )との

間に縦向き管と横向 き 管からなる供給管を設 け,材料供給源からの 材料

を 吸引空気源 の 気力 により前記 供給管 を 介 して 流動ホッパー (ロ ーダ

ホッパ)内に吸引輸 送 するとともに粉取りし,その粉取り済み材料 を前

記一時貯留ホッパー ( シュート)内へ落下するようにする操作を 繰 り返

しながら行なう粉粒体の微粉除去方法において,

流動ホッパー(ローダホッパ)への材料の 吸引輸送は,吸引輸送 の 停止

中に前回吸引輸送した粉取り済み材料が流動ホッパー(ローダホッパ)

から一時貯留ホッパー (シュート)へと降 下する際に,前記粉取 り済み

材料の充填レベルが 供給管の横向き管におけ る最下面の延長線よりも下

方に降下する前に開始 するようにすることを特徴とする粉粒体の微粉除

去方法。」

そうすると,被告 公然実施発明は,前記 ア の相違点に係る本件特許発

明1の構成を備えたものであり,これを引 用発明2−1に適用すること

によって,本件特許発明1の構成に至ることは容易である。

(ウ) 前記アの[相違点]が 単なる設計事項であること

29
レベル計の位置は,一時貯留ホッパーの 容 量,吸引輸送される 材料の

供給量,成形機への 排 出量,吸引力等に応じ て,設計的に決定さ れる事

項である。

そうすると,引用発明2−1のレベル計を,横向き管の最下面の 延長

線の近傍又は該延長線 より上方に配置することは,当業者であれ ば適宜

になし得た設計変更 にすぎず,本件特許発明1は,当業者が容易 に 想到

することができたものである。

(3)本件特許発明2の進歩 性欠如

引用発明2−2と本件特許発明2の対比


[一致点]

排気口にガス導管を 介して吸引空気源を接続した流動ホッパーと,該流

動ホッパーの出入口と 縦方向に連通した縦向 き管と,この縦向き管 に横方

向 に 連通さ れ 材料供給源 からの 材料 が 供給さ れる 横向 き 管 とからなる 供

給管と,該供給管に接続された一時貯留ホッパーとからなり,

前記流動ホッパーの出入口は,前記供給管のみと連通してある,

粉粒体の混合及び微粉除去装置である。

[相違点]

本件特許発明2では,供給管の横向き管に おける最下面の延長線 の近傍

位置または該延長線より上方位置に,前記吸引空気源を停止する前に混合

された混合済み材料の 充填レベルを,該吸引空気源を停止している 場合に

検出するためのレベル 計を設けている。これに対し, 用発明2−2では,


供給管の横向き管における最下面の延長線より下方位置に,前記吸引空気

源を停止する前に混合 された混合済み材料の 充填レベルを,該吸引空気源

を停止している場合に 検出するためのレベル 計を設けている。

容易想到性

(ア) 引用発明1−1との組 合せに基づく容易想到性

30
引用発明1−1は, 横向き管(材料供給管 )における最下面の 延長線

より上方位置に,前記 吸引空気源を停止する前に混合された混合済み材

料の充填レベルを, 該吸引空気源を停止している場合に検出するための

レベル計を設けるものである。

したがって,引用発明1−1は,前記ア の 相違点に係る本件特許発明

2の構成を備えるものであり,これを引用発明2−2に適用することに

より,本件特許発明2の構成に至ることは容易である。

(イ) 被告公然実施発明との 組合せに基づく容易想到性

被告公然実施発明は,以下の構成を有するものである。

「排気口にガス導管 を介して吸引空気源 を 接続した流動ホッパー と,

該流動ホッパーの出入口と縦方向に連通した 縦向き管と,この縦向 き管

に横方向に連通され 材料供給源からの材料 が 供給される横向き管 とから

なる供給管と,該供給管に接続された一時貯留ホッパーとからなり,

前記流動ホッパーの出入口は,前記供給管のみと連通してあり,

前記供給管の横向き 管 における最下面の延長線の近傍位置または 該延長

線より上方位置に,前記吸引空気源を停止する前に粉取りされた粉 取り

済み材料の充填レベル を,該吸引空気源を 停 止している場合に検 出する

ためのレベル計を設け てなることを特徴とする微粉除去装置。」

そうすると,被告 公然実施発明は,前記 ア の相違点に係る本件特許発

明2の構成を有するものであり,これを引 用発明2−2に適用すること

により,本件特許発明2の構成に至ることは 容易である。

(ウ) 前記アの[相違点]が 単なる設計事項であること

前記(2)イ (ウ)と同 様である。

【原告の主張】

以下のとおり,本件各特許発明は,当業者が引用発明2に基づ いて容易に発

明することができたものではない。

31
(1)引用発明2の内容

引用発明2は, 混合 ホッパーの材料の排出 導通路には下方から上 方に向け


て上り勾配の輸送短 管 を接続するとともに, 排出導通路の軸線と輸 送短管の

軸線とが交差する角 を 鋭角とし,さらに, 受 部の中程位置,すな わ ち,輸送

短管における最下面の 延長線より下方位置に レベル計を設けた構 成」のもの

である。

(2)本件特許発明1の進歩 性

引用発明1−1との組合せによる容易想到性がないこと


以下のとおり, 用発明2−1に引用発明1−1を適用することにより,


本件特許発明1の構成に想到することはできない。

(ア) 引 用発明1−1には前記 【 被告の主 張】 (2 )ア の 相違点 に係る 構 成の

開示がないこと

前 記5−1 【 原告の主 張】 (1 )のと お り,本件特許発明1の 構 成要件

Bは,引用例1において記載も示唆もない。

また,引用発明1−1及び2には,課題 ,作用又は機能の共通性 がな

く,引用発明2に引 用発明1−1を適用することの動機づけとなり 得る

ものもない。

(イ) 阻害要因があること

引用発明2−1は, 受部の中程位置に設 け られたレベル計が材料 要求

信号を発信したときに,吸引空気源をオン にし,材料が輸送短管 を 介し

て混合ホッパーに吸引 輸送され,混合ホッパー内で混合される。 吸引空

気源の作動を停止した 場合,混合ホッパー内 で混合された材料が下方に

落下し,レベル計が設 けられた受部の中程 位 置から上方に向かっ て 充填

される。このときに, 充填された混合済み 材料が,排出導通路に対して

下方から上方に向け て 上り勾配をなして接続された輸送短管に逆 流 しな

いように,つまり充填された混合済み材料 が輸送短管における最 下面の

32
延長線を越えないように,レベル計の位置を 受部の中程位置に設 け てい

る。

仮にレベル計を輸 送 短管における最下面の 延長線より上方位置に設け

た場合には,吸引空気源の作動を停止したときに,混合済み材料 が輸送

短管内に逆流して充填されてしまい,受部 に 確実に落下しないという問

題が生じる。

したがって,引用発明2−1では,レベル 計を輸送短管におけ る 最下

面の延長線より上方 位 置に設ける構成は積 極 的に排除されているのであ

り,引用発明2−1に 引用発明1−1の構 成を適用するには阻害要 因が

ある。

イ 被告公然実施発明との組合せによる容易想到性がないこと

以下のとおり,引用発明2−1に被告公然実施発明を適用することによ

り,本件特許発明1の 構成に想到することはできない。

(ア) 被告公然実施発明の構 成等

被告公然実施発明の実施は否認する。

その構成に係る前記 【被告の主張】(2)イ(イ)も否認する。

被告は,被告公然 実施発明の「上下にほぼ 円筒状の外形を有する ホッ

パー」が本件特許発明1の「流動ホッパー 」に相当する旨主張する。し

かし,被告公然実施発明のホッパーは形状 が ほぼ円筒状であるため,混

合される材料が吸引エアーによって吸い上 げ られた後,ホッパー上 方に

張り付いて全く流動しないものであるから, 流動ホッパー」ではない。


被告公然実施発明は,吸引輸送の材料 の動線上にフィルターを設 けて,

そのフィルターで微粉を濾過するものにす ぎ ず,本件特許発明1のよう

に,材料を微粉とともに流動ホッパー内で 流動(攪拌混合)させて,攪

拌混合の結果,材料 から微粉を振り落として除去するものではない。被

公然実施発明は, 材料混合を行わないものであり,未混合の材料 の一

33
部が一時貯留ホッパー に落下するということはないから,混合済み 材料

自体を利用して未混合の材料をブロックするという課題自体がない。

被告公然実施発明は,金属製のY字管の下 側に材料を予熱するための

ヒータを設け,かつレベル計として静電容 量 形の近接スイッチを 採 用し

たことにより,近接ス イッチ(レベル計に 相 当する)を枝管部より下方

には設けることができない。そのため,ホッパーとY字管を分離 した構

成とし,それらの間に金属製ではないガラス管を介装させ,唯一 取 り付

け可能な位置として,そこに近接スイッチ を設けざるを得なかっ たもの

である。

このように,被告 公然実施発明のレベル 計(近接スイッチ)は,本件

特許発明の目的や解決 課題,作用効果とは何 らの関係もないものである。

し たが っ て,被告 公然 実施発明には,前記 【 被告の主 張】 (2 )ア の 相

違点に係る本件特許発明1の構成等は全く開 示されていない。

(イ) 阻害要因があること

前記ア(イ)と同様である。

(3)本件特許発明2の進歩 性

引用発明1−1との組合せによる容易想到性がないこと


前 記5−1 【 原告の主 張】 (1 )のと お り,本件特許発明2の 構 成要件 D

及びEは,引用例1に おいて記載も示唆もない。

そもそも,引用発明1−1と引用発明2−2は,課題,作用又は機能の

共通性がなく,引用発明2−2に引用発明1−1を適用することの 動機づ

けとなり得るものもない。

したがって,引用発明2−2に引用発明1−1を適用することにより,

本件特許発明2の構成に想到することはできない。

阻害要因があることについては前記(2)ア(イ)と同様である。

イ 被告公然実施発明との組合せによる容易想到性がないこと

34
前記(2)イと同様である。

5−3 争点5−3(本件各特許発明は,当業者が引用発明1−2に基づいて容

易に発明することができたものであるか)に ついて

【被告の主張】

以下のとおり,本件各特許発明は,当業者が引用発明1−2に 基づいて容易

に発明することができたものである。

(1)引用発明1−2の内容

引用例1には,以下の図が記載されている。




上 記 図 に記載 さ れた発明は,前記5−2 【 被告の主 張】 (1 )の 引 用発明2

の構成を有するものである。

(2)本件各特許発明との対 比

前記5−2【被告の主張】(2)ア 及び同(3 )アと同様である。

(3)容易想到性

前記5−2【被告の主張】(2)イ (イ)及び同(3)イ (イ)と同様 である。

【原告の主張】

引用発明1−2の レベル計は,粉粒体混合 材料収容容器内の所 定 の位置に取

り付けられ,粉粒体混合材料収容容器内に 排 出された粉粒体混合 材料の量を計

35
測するものである。また,粉粒体混合材料収容容器内の粉粒体混合 材料がレベ

ル計の位置に下がるまでは,成形機へ粉粒体混合材料の供給のみが行われるの

で,粉粒体混合材料 を 過不足なく成形機に 供給するためには,レベル計を粉粒

体混合材料収容容器内 に設置するのが極めて 自然である。

これらのことからすれば,引用発明1−2のレベル計は,粉粒体混合材料収

容容器内の所定位置にあれば,必要かつ十 分であり,あえてレベル 計の位置を

粉粒体混合材料収容容 器内と異なる位置に 変更しなければならない理由がない。

引用発明1−2の レベル計の位置を被告 公然実施発明等のレベル 計の位置に

変更する動機付けはな く,当業者が,本件各特許発明の構成に到達 するために

したはずであるという 示唆等も存在しない。

したがって,本件各特許発明は,当業者が 引用発明1−2に基づ いて容易に

発明することができたものではない。

5−4 争点5−4(本件各特許発明は,当業者が被告公然実施発明に基づいて

容易に発明することができたものであるか)について

【被告の主張】

以下のとおり,本件各特許発明は,当業者が被告公然実施発明に 基づいて容

易に発明することができたものである。

(1)被告公然実施発明の内容

前記5−2【被告の主張】(2)イ (イ)及び同(3)イ (イ)のとお りである。

(2)本件各特許発明との対 比

本件特許発明1との対比


被告公然実施発明と本件特許発明1を対 比 すると,以下の一致 点 及び相

違点がある。

[一致点]

流動ホッパーと一 時貯留ホッパーとの間に 縦向き管と横向き管 からなる

供給管を設け,材料供給源からの材料を吸引空気源の気力により前記供給

36
管を介して流動ホッパー内に吸引輸送するとともに処理し,その 処 理済み

材料を前記一時貯留ホッパー内へ落下するようにする操作を繰り 返 しなが

ら行なう粉粒体の処理方法において,

流動ホッパーへの材料 の輸送は,吸引輸送 の 停止中に前回吸引輸 送 した処

理済み材料が流動ホッパーから一時貯留ホッパーへと降下する際 に,前記

処理済み材料の充填レベルが供給管の横向 き 管における最下面の 延長線よ

りも下方に降下する前に開始するようにする,粉粒体の処理方法である。

[相違点]

本件特許発明1では,流動ホッパーで行なう処理が粉粒体の混合及び微

粉除去であるのに対し,被告公然実施発明では,微粉除去である。

イ 本件特許発明

被告公然実施発明と本件特許発明2を対 比 すると,以下の一致 点 及び相

違点がある。

[一致点]

排気口にガス導管 を 介して吸引空気源を 接続した流動ホッパー と,該流

動ホッパーの出入口と 縦方向に連通した縦向 き管と,この縦向き 管 に横方

向に連通された材料供給源からの材料が供給される横向き管とからなる供

給管と,該供給管に接続された一時貯留ホッパーとからなり,

前記流動ホッパーの出入り口は,前記供給間のみと連通してあり,

前記供給管の横向き 管 における最下面の延長線より上方位置に,前記吸引

空気源を停止する前に 処理された処理済み 材料の充填レベルを, 該吸引空

気源を停止している 場 合に検出するための レベル計を設けてなる,粉粒体

の処理装置である。

[相違点]

本件特許発明2では,流動ホッパーにお いて粉粒体の混合及び微粉除去

を行なう粉粒体の混合及び微粉除去装置であるのに対し,被告公然 実施

37
明では,流動ホッパー において粉粒体の微粉除去を行なう粉粒体の微粉除

去装置である。

(3)進歩性欠如

本件特許発明


流動ホッパーにお いて,微粉除去のみならず,混合も行なう粉粒体の混

合及び微粉除去方法は 周知である。

したがって,この 周 知技術を被告公然実施発明に適用し,流動ホッパー

で微粉除去のみならず,混合も行なうようにすることに格別の困難 はない。

よって,当業者が被告公然実施発明に周 知技術を適用することにより上

記相違点に係る構成に 想到することは容易である。

イ 本件特許発明

上記アと同様に,当業者が被告公然実施発明に周知技術を適用すること

により上記相違点に係る構成に想到することは容易である。

【原告の主張】

前 記5−2 【 原告の主 張】 (2)イ及び (3)イのと おり,被告 公然 実施発明は,

材料の流動(攪拌混合)を伴うものではな く ,材料の混合と混合を 伴う微粉の

完全な除去を行うものでもない。ホッパー の 内側ほぼ全体にわた っ て設けられ

たフィルターで材料を 捕集し,微粉をフィル ターで濾過するものである。

したがって,未混合の材料の一部が一時貯留ホッパーに落下するという本件

特許発明の解決しようとする課題自体がな く,本件各特許発明と被告公然実

施発明とは技術的思想 が全く異なる。

また,被告公然実施発明について,微粉除去のみならず,混合も行なう粉粒

体の混合及び微粉除去方法として用いる動 機 付けは存在しない。 む しろ,微粉

除去と混合を行う方法を実現するためには,被告が主張する周知技術の構成を

そのまま用いるだけでよいのである。

これらのことからすれば,本件各特許発明は,当業者が被告公然 実施発明に

38
基づいて容易に発明することができたものではない。

5−5 争点5−5(本件各特許発明は,発明として未完成のもの(特許法29

条1項柱書)であるか)について

【被告の主張】

以下のとおり,本件各特許発明は,発明として未完成のもの(特許法29条

1項柱書)である。

(1)本件各特許発明の構成

材料が未混合のまま一時貯留ホッパーに 落 下するという現象を 防 止するた

めには,何らかの手段 により,吸引輸送中 は 横向き管における最 下面の延長

線よりも下方が混合済み材料で充填された 状態になっていることが 必要であ

る。

しかしながら,本件各特許請求の範囲には,吸引輸送中に上記 延長線より

下方が常に混合済み 材料で充填された状態 になっているという記載がない。

充填された状態を維 持 するためには,どのような手段を用いれば 可能である

のかについて,発明の 詳細な説明にも何らの記載はない。

したがって,本件各特許発明では,材料 を 吸引輸送している時 に,成形機

への材料の供給がな さ れると,横向き管に おける最下面の延長線 よりも下方

には 材料 が 充填さ れた 状態 にならないので, 材料 が 未 混合のまま一 時貯留

ホッパーへ落下するという現象を防止することができない。

(2)本件各特許発明が発明として未完成のものであること

発明が完成されているというためには,その技術内容が,当該技術分野に

おける通常の知識を有する者が反復実施して目的とする作用効果 を 挙げるこ

とができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていな ければな

らない。

前 記 (1 )のと お り,本件各特許発明は,発明の目的とする作用 効果 ( 材料

が未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下するのを防止する)を奏 することが

39
できないから,発明として未完成のものである。

【原告の主張】

以下のとおり,本件各特許発明は,発明として未完成のもの(特許法29条

1項柱書)ではない。

(1)従来技術

従来技術でも,エアー吸引手段や吸引空気源による吸引中は材料 が落下し

ないようにすることができる。

本件各特許発明でも,エアー吸引手段や吸引空気源による吸引中 は,仮に

成形機による消費により材料の充填レベル が 横向き管における最 下面の延長

線よりも下方に低下し,該延長線よりも下方の縦向き管に空間が 形 成された

としても,吸引力により混合中の材料は落下しない。

したがって,前記【 被告の主張】は誤りである。

(2)本件各特許発明が解決しようとする課題と作用効果

前 記 (1 )の 従来 技術 では, エアー吸引手段や吸引空気源 による 吸引中 は 材

料が落下しないようにすることができるものの,材料の吸引輸送 が 開始され

る際には,材料の一 部 が未混合で落下してしまう,という解決す べ き課題が

あった。

本件各特許発明は,この課題(材料の吸引 輸送が開始される際 に,材料の

一部が未混合のまま一 時貯留ホッパーへ直 接 に送られるのを防止すること)

を解決しようとするものであり,その作用効果を実際に奏するものである。

5−6 争点5−6(本件特許には,サポート要件違反(特許法36条6項1号

があるか)について

【被告の主張】

以下のとおり,本件特許には,サポート要件 違反(特許法36条 6項1号)

がある。

(1) 本件特許に係る【特許請求の範囲】が本件明細書の【発明の詳細な 説明】

40
の範囲を超えるものであること

前記5−5 被告の主張】 1 )のとおり,材料が未混合のまま一 時貯留ホッ
(


パーに落下するという 現象を防止するためには,何らかの手段により,吸引

輸送中は横向き管に おける最下面の延長線 よりも下方が混合済み 材料で充填

された状態になっていることが必要である。

しかし,本件各特許請求の範囲には,吸引 輸送中に上記延長線 より下方が

常に混合済み材料で充填された状態になっているという記載がない。

したがって,本件特許に係る【特許請求の範囲】は,本件明細書の【発明

の詳細な説明】の範囲 を超えるものである。

(2) 本件明細書の【発明の 詳細な発明】の記載が 不十分なものであること

前記 (1)のとおり,材料が未混合のまま一 時貯留ホッパーに落下するとい

う現象を防止するためには,何らかの手段 により,吸引輸送中は 横向き管に

おける最下面の延長線 よりも下方が混合済み 材料で充填された状態 になって

いることが必要である。

原告は, 形機の作動と材料供給のタイ ミングを制御することにより,
「成 吸

引 輸 送中 は 上 記 延長線 より下方が 常 に混合済み 材料 で 充填さ れた 状態 にな

る」旨主張する。しかし,本件明細書の【 発明の詳細な説明】にそのような

記載はなく,どのような手段を用いるかにつ いては何らの記載もない。

【原告の主張】

前 記5−5 【 原告の主 張】 (1 )のと お り, 従来 技術 でも, エアー吸引手段や

吸引空気源による吸引中は材料が落下しないようにすることができた。

本件各特許発明でも,エアー吸引手段や吸引空気源による吸引中 は,仮に成

形機による消費により 材料の充填レベルが 横向き管における最下面の延長線よ

りも下方に低下し, 該延長線よりも下方の 縦向き管に空間が形成 さ れたとして

も,吸引力により混合 中の材料は落下しない。

前記【被告の主張】 は,その前提に誤りがある。

41
6 争点6(被告は,本件特許権について, 先使用による通常実施権(特許法7

9条)を有するか)に ついて

【被告の主張】

被告公然実施発明の 内容は,前記5−2【 被告の主張】(2)イ (イ )及び(3 )イ

(イ)のとおりである。

そして,被告公然実施発明とイ号製品を対 比すると,フィルター 及び流動ホッ

パーの形状が相違するのみであって,他は一 致するから,実質的には同一の構

成を有するものである。

仮にイ号製品が本件各特許発明の技術的範 囲に属するのであれ ば ,被告は,

本件特許出願前である平成8年の時点にお いて,本件特許出願に係る発明の内

容を知らないで自らその発明をし,特許出願の際現に日本国内に お いてその発

明の実施である事業をしていた者に当たる。

したがって,被告は,本件特許権について,先使用による通常 実施権を有す

る。

【原告の主張】

前記5−2 原告の主張】2 )イ及び(3)イのとおり,
( 被告公然実施発明のホッ


パーは形状がほぼ円 筒状であり,混合される 材料が吸引エアーによ って吸い上

げられた後,ホッパー上方に張り付いて全 く流動しないものであ っ て,イ号製

品の構成とは異なるものである。

また,被告公然実施発明は,材料混合を行 わないものであるから,未混合の

材料の一部が一時貯留ホッパーに落下するということはなく,混合済み材料自

体を利用して未混合の 材料をブロックするという本件各特許発明の 課題もない。

このように,被告 公然実施発明の内容は,本件各特許発明とは 異 なるもので

あるから,被告が,本件特許権について, 先使用による通常実施権を有するこ

とはない。

7−1 争点7−1( 損害賠償請求の成否)について

42
【原告の主張】

被告は,不法行為に 基づき,以下の損害賠償責任を負うものである。

(1) 特許法102条1項に 基づく請求

被告は,平成18年2月10日から平成23年7月7日までの間に合計1

222件のイ号製品を販売した(なお,ロ号製品は,イ号製品を 組 み込んだ

ものであり,ロ号製品を販売した行為による 損害についても,イ号製品の販

売に含める。。


イ号製品のうち少 な くとも95%は本件各特許発明侵害するものである。

また,原告の本件各特許発明に係る実施品1台当たりの利益は,8万96

66円である。

したがって,原告は,以下の1億0409万3521円の損害を 受けたも

のと推定される。

[ 計 算 式 ] 1,222× 0.95× 89,666=104,093,521(判決 注: 本 来 は当 該 計 算 式

によれば1億0409万3259円となる。)

(2) 特許法102条2項に 基づく請求

被告が平成18年2月10日から現在までに被告の行為により 受 けた利益

の額は2億2000万円を下回らない。

上記利益の額は,原告が受けた損害の額と 推定される。

【被告の主張】

(1) 被告製品の販売数量

イ号製品


被告は,平成18年2月10日から平成23年7月7日までの間に合計

1222台のイ号製品を販売した。

なお,平成18年2月10日から平成19年11月2日までの 期 間にお

けるイ号製品の販売数 量は508台である。

イ ロ号製品

43
本件特許登録後,原告からの警告書を受領 するまでの期間(平成18年

2月10日〜平成19年11月2日)にお いて販売されたイ号製品508

台のうち,他の装置と 組み合わせたロ号製品の販売台数は,以下の合計8

2台である。

(ア) ロ−1−1号製品 9台

(イ) ロ−1−2号製品 34台

(ウ) ロ−2−2号製品 32台

(エ) ロ−3−1−甲号製品 0台

(オ) ロ−3−1−乙号製品 3台

(カ) ロ−3−2−甲号製品 0台

(キ) ロ−3−2−乙号製品 4台

(ク) ロ−4−1号製品 0台

(2) 特許法102条1項に 基づく請求について

原告製品1台当たりの利益は否認する。

また,原告製品はイ号製品と競合するものではなく,
「特許権者がその侵害

の行為がなければ販売することができた物 」ではない。イ号製品は 乾燥機の

付属品として販売さ れるものであり,原告製品と競合するのはイ号製品では

なく,乾燥機自体である。

(3) 特許法102条2項に 基づく請求について

否認する。

7−2 争点7−2(差止め及び廃棄請求の成否)について

【原告の主張】

間接侵害品としてイ号製品の生産等を差し止めると,異種混合を用途としな

い装置へのイ号製品の 組込み等も禁じられることになるが,特許法101条

号所定の客観的要件及び主観的要件の充足 を 条件に,このような差止めも認め

たのが平成14年の特許法改正である。

44
本件では,前記のと おり特許法101条 5号所定の客観的要件及び主観的要

件は充足されるから,イ号製品の生産等を差し止めうることに問題 はない。

【被告の主張】

(1) 差止請求の成否

イ号製品


イ号製品は大半が 単 一材料の微粉除去に 使 用されており,これらは本件

特許権を侵害するものではない。

当該用途に使用さ れるものについてまで差止めを認めるのは著 し く過剰

であり,不当である。

イ ロ号製品

被告が,ロ−4−1号製品を製造販売したのは本件特許登録前の平成1

7年7月ころであり,その後はない。

また,ロ−3−1 ― 甲号製品及びロ−3−2−甲号製品を製造販売した

ことはない。

したがって,少な く とも,これらの製品に係る製造販売等の差止請求

は理由がない。

(2) 廃棄請求の成否について

ロ号製品を構成するイ号製品及び材料供給装置は,それぞれ別 個の製品


として製造されてお り,各装置は顧客の工 場内において接続されて 使用さ

れるものである。

したがって,被告は,ロ号製品の在庫を有しない。

イ 半製品

「半製品」とは,
侵害の予防に必要な行 為」が「差止請求権の実現のた

めに必要な範囲内」であることを要することからすれば,転用不可能な段

階にまで仕上げられたものをいう。

ロ号製品の材料供給装置を構成する各装 置(例えば乾燥機等)は,イ号

45
製品と接続しない態様 でも使用されるものである。

したがって,材料供給装置を構成する各 装 置及びその未完成品は 非侵害

用途に転用可能であり,ロ号製品の「半製品」に該当することはあり得な

い。

第4 当裁判所の判断

1−1 争点1−1(イ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を 充足するか)

について

(1) 本件特許発明2の構成要件E及びFにおける「混合」の意義

特許請求の範囲の記載


本件特許発明2に係る【特許請求の範囲】 の記載によれば,本件特許発

明2に係る「物」である「粉粒体の混合及び微粉除去装置」 構成要件F)


は,材料供給源から 供給された粉粒体を流動ホッパー内において「混合」

する構成のものであること,
「混合」と「微粉除去」を同時に行うものであ

ることが読み取れる。

一般に,「混合」とは「まじりあうこと。また,まぜあわせること。」を

いい, ぜあわ せる」とは「二つ 以上のものをまぜていっしょにする」こ
「ま

とをいう。

また,粉体工学用語辞典(乙39)には,以下の記載がある。

mixing = 攪拌 , 配 合
「 混合 粉粒体の混合は,主として 固 体の 状態 に

ある二種類あるいはそれ以上の異なった性質 の材料を,乾いた状態 あるい

はごく少量の液体成分が入った状態で,そのまま混ぜ合わせて, 組 成につ

いて一様均質な状態 を 得ることの総称をさ す。撹拌や転動は,このような

均一組成の混合物を得 るための操作手段の一 つである。(以下略)」

「攪拌とは,攪拌槽 内 にある流体や粉粒体を 適当な攪拌羽根あるいは流体

の強制流れを用いてかき混ぜることをいい, 単位操作の一つである。攪拌

操作の目的は,混合,分散,物質移動,反 応 ,加熱・冷却などの諸 操作を

46
効率よく行うことであり,目的に応じた攪拌装置あるいは流動装 置が使用

される。」

実用プラスチック用 語辞典(甲22)にも,以下の記載がある。

mixer, blender
「混合機

数種の物質ないしは 材料粒子をそれぞれの粒子間に均一に分散 さ せるこ

とを混合といい,このために用いられる機械を混合機という。(以下略)」

機械工学事典(乙57)にも,以下の記載がある。

「混合(08/10)mixing

複数のものを,それぞれの変化を伴うことなく,まぜ合わせることをい

う。(以下略)」

これらのことからすると,当業者においても,一般的な意義と同様 のも

のとして解釈していることが認められる。

そうすると,本件特許発明2の構成要件E及び構成要件Fの「混合」に

ついても,2つ以上の 異なった性質の材料を混ぜ合わせることをいうもの

と一応解される。

イ 本件明細書の【発明の詳細な説明 】の記載

(ア) 本件明細書には,以下の記載がある。

「 0001】


【発明の属する技術分野】

本発明は,プラスチック成形材料,医薬品 材料,加工食品材料 等の粉

粒体(本明細書では 単 に材料とも言う。)を混合するとともに,該 粉粒体

に付着している微粉( ダストも含む広義のものをいう)を除去する,粉

粒体の混合及び微粉除去方法とその装置に関 する。

【0002】

【従来の技術】

従来,この種の粉粒体の混合装置としては,実開平3ー32936号

47
公報に記載されているようなものが知られている。

【0003】

こ の 従来 の混合 装 置は,輸 送管 を 介 して 材料供給源 と 接続 した混合

ホッパーに,ガス導管 を介して吸引空気源 を 接続し,前記混合ホッパー

の出入口に接続された 材料の排出導通路には下方から上方に向け て 上り

勾配の輸送短管を接続 するとともに,排出 導通路の軸線と輸送短 管 の軸

線とが交差する角を 鋭角とし,さらに前記 排 出導通路の下端部には 中程

位置にレベル計を設 け たチャージホッパー (一時貯留ホッパー)を 接続

している。このような 構成によって,吸引空気源の気力により混合すべ

き材料を前記輸送短 管 を介して混合ホッパー内に吸引輸送するとともに

混合し,その混合済み 材料は前記チャージホッパー内へ落下するように

してなるものである。

【0004】

上記従来例では,輸 送短管は混合ホッパー の材料の排出導通路 に対し

て下方から上方に向け て上り勾配にして接続 しているため,材料供給源

からの材料は,吸引空気源の気力により輸 送 短管を介して前記混合 ホッ

パー内へスムーズに輸 送され,吸引空気源 の 気力により混合されるもの

であるから,機械的な 攪拌手段や混合手段 を設ける必要がない。そのた

め,混合材料を機械的に破損したりするのを 防止できるなどの多 く の利

点を有していて,光デ ィスク用の装置としても用いることができる。

【0005】

【発明が解決しようとする課題】

しかしながら,前記 従来例の混合装置によれば,イ) 時貯留ホッパー
( 一

(チャージホッパー )には中程位置にレベル 計を設けており,成 形 機が

材料 を 消 費して 材料 の レベル が レベル 計の 位 置より下方に 至 れ ば 混合

ホッパーへの次回材料 の輸送が開始されるようになっている。すな わち,

48
次回材料が輸送される 時には,輸送短管の出口とレベル計の位置との間

には空間ができた状態 になっている。そのような状態で輸送が開始され

ると,材料の大部分は混合ホッパーへ吸引 輸 送されるものの,材料 の一

部は未混合のまま一 時貯留ホッパーへ直接 に 落下してしまうという 問題

が生じていた。」

「 0008】


そこで,本出願の請求項1と2に記載の発明は,上記(イ)に記載の

問題を解消するために提案された発明であ っ て,材料が未混合のまま一

時貯留ホッパーへ直接 に送られるのを防止することを目的としている。」

「 0010】


【課題を解決するための手段】

上記目的を達成するため提案された請求項1記載の発明は,流動ホッ

パーと一時貯留ホッパーとの間に縦向き管 と 横向き管からなる供給管を

設け,材料供給源からの材料を吸引空気源 の 気力により前記供給管 を介

して流動ホッパー内 に 吸引輸送するとともに混合し,その混合済み 材料

を前記一時貯留ホッパー内へ落下するようにする操作を繰り返しながら

行なう粉粒体の混合及び微粉除去方法にお いて,流動ホッパーへ の 材料

の吸引輸送は,吸引 輸 送の停止中に前回吸引 輸送した混合済み材料 が流

動ホッパーから一時貯留ホッパーへと降下する際に,前記混合済み 材料

の充填レベルが供給管 の横向き管における 最 下面の延長線の近傍 または

該延長線よりも下方に 降下する前に開始するようにすることを特 徴 とす

る。

【0011】

ま た,請求項2記載の発明は請求項1記載の方法を実施する 装 置で

あって,排気口にガス導管を介して吸引空気源を接続した流動ホッパー

と,該流動ホッパー の出入口と縦方向に連通 した縦向き管と,この 縦向

49
き管に横方向に連通さ れ材料供給源からの 材料が供給される横向 き 管と

からなる供給管と,該供給管に接続された一 時貯留ホッパーとからなり,

前記流動ホッパーの出入り口は,前記供給管 のみと連通してあり,前記

供給管の横向き管に おける最下面の延長線 の 近傍位置または該延長線よ

り上方位置に,前記 吸引空気源を停止する前に混合された混合済み 材料

の充填レベルを,該吸引空気源を停止している場合に検出するためのレ

ベル計を設けてなることを特徴としている。」

「 0015】


【作用】

請求項1記載の方法によれば,材料は吸引空気源の吸引気力により流

動ホッパー内へ吸引 輸 送されて混合され, 吸引空気源が停止すると一時

貯留ホッパーへ落下する。その際,第1回 目の吸引輸送時には一 時貯留

ホッパー内は勿論のこと,横向き管におけ る 最下面の延長線の近傍 また

は該延長線よりも下方の縦向き管は空の状態 になっている。このため,

材料の大部分は流動ホッパー内ヘ吸引輸送さ れるものの,材料の一 部は

その重力により空状態 の一時貯留ホッパー内へ未混合のまま落下する。

【0016】

このようにして,一 時貯留ホッパーの下方には未混合の材料が混 じっ

てしまうが,この第1 回目の材料は後工程 (成形機など)の調整 運転用

材料として消費され, 次回の材料は第1回 の 材料のレベルが横向 き 管に

おける最下面の延長線 の近傍または該延長線 よりも下方に落下する前に

開始されるものであるから,第2回目以降 の 吸引輸送においては, 横向

き管における最下面の 延長線の近傍または 該延長線よりも下方には 材料

が充填された状態にな っている。従って, 吸引輸送される材料はその充

填された材料によっ て一時貯留ホッパーへ の 落下は阻止され,未 混合の

まま一時貯留ホッパーへ落下するという問題 が解消する。

50
【0017】

請求項2記載の装 置によれば,供給管の 横向き管における最下面の延

長線の近傍または該延長線よりも上方位置には,材料の充填レベル を検

出するためのレベル計が設けられている。すなわち,材料の吸引 輸 送を,

充填レベルが横向き 管 における最下面の延長線の近傍または該延長線よ

りも下方に落下する前に開始する際のその 開始時点は,該延長線 よりも

上 方に設 け られた レベル 計によ っ て正 確 に 捉 えることができるように

なっている。 って,
従 この装置では材料が未混合のまま一時貯留ホッパー

へ落下するということはない。」

(イ) 上 記 (ア )の記載の 他 に,本件明細書を 子 細に 検 討 しても,本件各特許

発明における「混合」の意義について,前記 アと異なるものと解 す べき

記載は見当たらない。

なお,粉砕材とバージン材が異種材料であることは当事者間で争いが

ない。

そうすると,原告が「混合」に含まれると主張する4つの場合のうち

(前記第3の1−1 【原告の主 張】 (2 )ア (ア )) B 同 一材料 に ついて,


粉 砕 した 材料 と バージン材 が混合 さ れる 場 合及び C バ ージン材 と 他 の

異種材料が混合される 場合は含まれるものの, 同一材料について,
@ 材

料が空気と混合される 場合と, 同一材料 について, 回混合した材料

A

と今回投入された材料 が混合される場合( 単 に,同一材料が追加 さ れて

攪拌,流動される場合)は,含まれないと解 される。

(ウ) 混合済みの材料の攪拌 ,流動

ところで,上記 (ア)の【0003 】及び【 0004】の記載によれば,

本件各特許発明は, 従来技術を前提とした発明であること,当該 従来技

術は,吸引空気源の 気力により混合すべき 材料を,前記輸送短管 を 介し

て混合ホッパー内に 吸引輸送するとともに混合し,その混合済み 材料は

51
前記チャージホッパー内へ落下するようにしてなる構成のものであるこ

とが認められる。また, 0005 】の記載によれば,本件各特許発明


解決しようとする課題 は,上記従来技術では,材料の輸送が開始さ れる

と,材料の大部分は混合ホッパーへ吸引輸 送されるものの,材料 の一部

は未混合のまま一時貯留ホッパーへ直接に 落 下してしまうという 問題が

生じていたことであると認められる。さらに, 0011】の記載によれ


ば,本件特許発明2は本件特許発明1の方法を実施する装置であること,

【0017】の記載によれば,本件特許発明2の装置においては, 材料

が未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下するということはないことも認

められる。

これらの記載によれ ば,本件各特許発明に おける「混合」とは, 材料

供給源から供給される 複数の材料を「混合 ホッパー」 流動ホッパー)内


において混ぜ合わせることをいうものである。そして,ホッパー に輸送

される前の時点で複数 の材料(異種材料)が一旦「混合」がされていた

場合にも,混合ホッパー内において,新たな 材料の追加がなくても 撹拌

又は流動がされる以上 ,
「混合」 含む構成要件を充足すると解するのが


相当であり,この場合を除くべきものと解釈 する理由は見当たらない。

この点に関する被告の主張は採用することができない。

(2)イ号製品の構成要件充足性

別紙イ号製品目録記載のとおり,イ号製品は,それ自体としては 材料供給

源に接続されていないから,複数種類の材料 を対象とすることを前提とした

装置であるとまでは 認 めるに足りず,同一 材料の微粉除去にのみ用いること

が可能な構成のものである(当事者間に争いがない)。

そうすると,少な く とも本件特許発明2の 構成要件F「粉粒体の混合及び

微粉除去装置」を充足 するとは認めがたいというほかない。

よって,イ号製品が本件特許発明2の技術 的範囲に属するということはで

52
きない。

1−2 争点1−2(イ号製品は,本件特許発明2と均等なものとして,その技

術的範囲に属するか)について

原告は,イ号製品の 構成が本件特許発明2の構成要件Cを充足 しないとして

も,本件特許発明2と 均等なものとして,その技術的範囲に属する 旨主張する。

しかしながら,前記1−1のとおり,イ号製品は,それのみでは,本件特許

発明2の構成要件F を 充足しないから,原告の上記主張の当否にかかわらず,

均等侵害が成立することはない。

なお,前述のとお り,被告は,イ号製品が 他の構成要件(E及び F)を充足

することや本件各特許発明進歩性についても争っていることからすれば,イ

号製品について,均 等侵害が成立すること 自 体は争っていると解 さ れる。しか

しながら,被告は,前記第3の1−2【 原告の主張】(1 )ないし(3 )の主張につ

いて,争うことを明らかにしておらず,イ号製品の構成が公知技術 から容易に

推考されないことにつ いては,後記5のとお りである。

2−1 争点2−1(イ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係

る特許権に対する特許法101条4号の間接 侵害が成立するか)に ついて

前記1−1のと おり,イ号製品は,それ自 体としては材料供給源 に接続され

ておらず,複数種類の 材料を対象とすることを前提とした装置ではなく,同一

材料の微粉除去にのみ用いることも可能な構 成のものである。

そうすると,イ号製品は,本件特許発明1に係る「方法の使 用にのみ用いる

物」には当たらないから,イ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明

1に係る特許権に対する特許法101条4号間接侵害は成立しない。

2−2 争点2−2(イ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係

る特許権に対する特許法101条4号の間 接 侵害均等なものとして,特許権

侵害が成立するか)に ついて

原告は,イ号製品の 構成が本件特許発明1の「一時貯留ホッパー 」 構成要件


53
A−1,A−3及び B )の構成を有しないとしても,特許法101 条4号の間

侵害の成立は否定さ れず,均等侵害が成立 する旨主張する。

しかしながら,前記2−1のとおり,イ号製品は,本件特許発明1に係る「方

法の使用にのみ用いる 物」には当たらないから,原告の上記主張 の当否にかか

わらず,均等侵害(特許法101条4号)が成立することはない。

なお,前記1−2と同様,イ号製品において, 時貯留ホッパー」と「延伸
「一

部 (47 )」とに つ いて,本件特許発明1の 非 本 質 的 部 分であり,置 換可能性 ,

置換容易性があることについて,被告は争うことを明らかにしていない。

また,イ号製品の 構 成が公知技術から容易 に推考されないことに ついては,

後記5のとおりである。

3−1 争点3−1(イ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明2に係

る特許権に対する特許法101条2号の間接 侵害が成立するか)に ついて

(1)本件特許発明2に用いるものであること

イ号製品は,混合」
「 を行うか否か 構成要件E及びF) 一時貯留ホッパー」
( 「


を備えているか否か( 構成要件C)という 点 を除き,本件特許発明2の構成

要件を充足している(被告は争うことを明らかにしない。。そして,次のと


おり,イ号製品は,本件特許発明2の装置生産に用いることができる。

すなわち,イ号製品は, 記4−1のとお り,ロ号製品の一部(たとえば,


ロ1−1・2号)として用いられる結果,本件特許発明2の構成要件を充足

すると認めることができる。また,前記1−1によると,イ号製品は,ロ号

製品の構成をとらな く ても,混合にも用いることが可能な構成といえる。な

お,このときでも,一 時貯留ホッパー(本件特許発明2の構成要件 C)の具

備 が求められるが,イ号製品の 延伸部 (47 )は,一 時貯留ホッパー の用を 果

たしているということができるだけでなく ,前記1−2のとおり,一時貯留

ホッパーを延伸部に置き換えることによる 均 等侵害の要件についても,これ

を認めることができる。

54
(2)本件特許発明2の課題 の解決に不可欠なものであること

「発明による課題 の解決に不可欠なもの」とは,特許請求の範 囲に記載


された発明の構成要 素 (発明特定事項)とは 異なる概念であり,当 該発明

の構成要素以外の物であっても, の生産や 方法の使用に用いられる道具,


原料なども含まれ得る。

他方において,特許請求の範囲に記載された発明の構成要素であ っても,

その発明が解決しようとする課題とは無関 係に従来から必要とさ れていた

ものは,
「発明による 課題の解決に不可欠なもの」には当たらない。すなわ

ち,それを用いることにより初めて「発明の 解決しようとする課題 」が解

決されるような部品, 道具,原料等が「発明による課題の解決に 不可欠な

もの」に該当するものというべきである。 換 言すれば,従来技術 の 問題点

を解決するための方法として,当該発明が 新 たに開示する,従来 技術に見

られない特徴的技術手段について,当該手段 を特徴付けている特有の構成

ないし成分を直接もたらす,特徴的な部材 ,原料,道具等が,これに該当

するものと解される。

したがって,特許請求の範囲に記載された 部材,成分等であっ ても,課

題解決のために当該 発明が新たに開示する特 徴的技術手段を直接形 成する

ものに当たらないものは,
「発明による課題 の解決に不可欠なもの」には当

たらない。

前記1−1(1)イ(ア)の本件明細書の記載によれば,
イ 本件各特許発明が解

決しようとする課題 は,吸引空気源から材料 の輸送が開始されると,材料

の大部分は混合ホッパーへ吸引輸送されるものの,材料の一部は 未 混合の

まま一時貯留ホッパーへ直接に落下してしまうという問題があっ たことで

ある(段落【0005 】。


本 件特許発明1が 開 示 する, 上 記 課題 を 解 決するための 手段 は, 流動


ホッパーへの材料の 吸引輸送は,吸引輸送 の 停止中に前回吸引輸 送 した混

55
合済み材料が流動ホッパーから一時貯留ホッパーへと降下する際 に,前記

混合済み材料の充填レベルが供給管の横向 き 管における最下面の 延長線の

近傍または該延長線 よりも下方に降下する前に開始するようにすること」

である(段落【0010】。


また,本件特許発明2は,本件特許発明1の方法を実施する装 置であっ

て,前記供給管の 横向 き管における最下面の 延長線の近傍位置または該延


長線より上方位置に, 材料の充填レベルを 検 出するためのレベル 計を設け

てなること」により,これを実施するものである(段落【0011 】。


これらの記載によれ ば,従来技術の問題点 を解決するための方法として,

本件各特許発明が新 たに開示する,従来技術 に見られない特徴的 技術手段

は, 流動ホッパーへ の材料の輸送は, 回 輸送の混合済み材料が 流動ホッ
「 前

パーから一時貯留ホッパーへと降下する際 に,前記混合済み材料 の 充填レ

ベルが供給管の横向 き 管における最下面の 延長線の近傍または該延長線よ

りも下方に降下する前に開始するようにすること」であり,これを実施

る具体的な構成(装 置)は,
「前記供給管 の 横向き管における最下面の延長

線の近傍位置または 該延長線より上方位置に,材料の充填レベル を 検出す

るためのレベル計を設 け」るというものである。

別紙イ号製品目録記載のとおり,イ号製品の構成eは, 横向き 管(4B)


より 上 側 に, 縦向 き 管 (4 A )内 の樹脂 材料 の レベル を, 該吸引空気源 を 停

止している場合に計測 するレベル計(70)が設けられている。」というもの

である。これは,本件特許発明2に係る上 記「従来技術に見られない特徴

的技術手段」と同一であるから,イ号製品は 課題解決のために本件特許発

明2が新たに開示する特徴的技術手段を直 接形成するものに当たるという

べきである。

したがって,イ号製品は,本件特許発明2による課題の解決に 不可欠な

ものであると認めることができる。

56
(3)日本国内において広く 一般に流通しているものではないこと

特許法101条2号所定の「日本国内に お いて広く一般に流通 しているも

の」とは,典型的には,ねじ,釘,電球, トランジスター等のような,日本

国内において広く普 及している一般的な製品,すなわち,特注品ではなく,

他の用途にも用いることができ,市場にお いて一般に入手可能な 状態にある

規格品,普及品を意味 するものと解するのが 相当である。

本件では,イ号製品の構成(特に構成e )を備えたホッパーが,日本国内

において広く普及している一般的な製品又は 市場において一般に入 手可能な

状態にある規格品, 普 及品であること(及びその裏付けとなる事実)を認め

るに足りる主張立証はない。

(4)被告の悪意

被告が現に本件特許権に係る特許公報 を 閲覧したことを認めるに足りる


主張立証はない。

この点に関する原告の主位的主張を採用することはできない。

イ 平成19年2月28日付け原告製品カタログ(甲86)には, 詰まり
「目

対策したフィルタや 混合精度を上げるための レベル制御等日々革 新 してい

るマツイオリジナル製品 特許登録番号 3767993,3754129」

との記載があることは 認められる。

しかしながら,当 該 記載のみによっては,特許発明の内容や当 該 製品の

どの構成が特許の対象 となっているのかなど は全く読み取れない。

そうすると,被告が当該カタログを閲覧 したか否かにかかわらず,当該

カタログの記載のみをもって,被告の悪意を 認めることはできない。

したがって,原告の 予備的主張1も採用することはできない。

証拠(乙19,20)によれば,原告は,被告に対し,平成19年11


月2日付けで,本件特許権に係る特許公報 及び被告製品カタログ を同封し

た上で,イ号製品が本件特許権を侵害する 旨 の警告書を送付し,当 該書面

57
は遅くとも同月14日までには被告に到達したことが認められる。

そうすると,被告は,平成19年11月14日時点では,本件特許発明

2が原告の特許発明であること及びイ号製品がその発明の実施に用いられ

ることを知ったものと 認めることができる。

なお,平成19年11月以前に被告が配布 していたパンフレット 甲4)


及びカタログ(甲37,38)には,パワ ーリダクションホッパ (イ号製

品)の説明として以下の記載がある。

「成形機へ輸送した原 料を吸引エアーで流動させることで撹拌機等を使用

せずに混合及び樹脂粉,異物粉の除去を行います。又,オートセレクター

(2種吸引切替機)を セットすることで,2 種原料又は粉砕材との混合が

可能です。」

これらの記載によれ ば,被告は,同月以前の段階で,イ号製品が 複数の

材料の混合に用いられることのある(本件特許発明2の装置の一 部 として

用いられることのある)ものであることは認 識していたことが認められる。

(5)被告の行為について

前 提事実 (4 )のと お り,被告は,イ号製品を生産し,譲渡し,輸出し及び

譲渡の申出を行っていたものである。

原告は,被告がイ号製品を輸入していた 旨 主張するものの,この主張を認

めるに足りる主張立証はない。

また,輸出について特許法101条2号間接侵害は成立しない。

そうすると,被告の行為のうち,イ号製品を生産し,譲渡し及び譲渡の申

出をする行為について同号の間接侵害が成立 するものというべきである。

3−2 争点3−2(イ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係

る特許権に対する特許法101条5号の間接 侵害が成立するか)に ついて

(1) 本件特許発明1に係る方法の使用に用いる物 であること

前 記3−1 (1 )と同 様 ,イ号製品は,その 構 成 自 体からして,本件特許発

58
明1に係る方法の使用にも用いることができると認められる。

(2) 本件特許発明1の課題 の解決に不可欠なものであること

前 記3−1 (2 )と同 様 の理由により,イ号製品は,本件特許発明1の 課題

の解決に不可欠なものであると認めることができる。

(3) その他の要件

前記3−1(3 )から(5)までに述べたのと同様の理由により,遅くとも平成

19年11月14日以 降,被告がイ号製品に ついて,生産し,譲渡し及び譲

渡の申出を行うことに ついて,本件特許発明1に係る特許権に対する間接侵

害(特許法101条5号)が成立するということができる。

4−1 争点4−1(ロ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を 充足するか)

について

(1) イ号製品のみによる本件特許発明2の技術的範囲への属否

前記1−1のとおり,本件特許発明2の「混合」とは,@ 同一 材料につい

て,材料が空気と混合 される場合やA 同一 材料について, 回混合した材料


と今回投入された材料 が混合される場合 単 に,
( 同一材料が追加 さ れて撹拌,

流動される場合)を 含 まないが,B 同一材料について,粉砕した 材料とバー

ジン材 が混合 さ れる 場 合及び C バ ージン材 と 他 の 異種材料 が混合 さ れる 場

合を含む。また,材料供給源から供給される 複数の材料を,「混合 ホッパー」

(流動ホッパー)内 に おいて混ぜ合わせることをいい,ホッパー に輸送され

る前の時点で「混合」がされていたとしても,混合ホッパー内でも「混合」

がされる以上,構成要件の充足性を左右しない。

前記1−1,1−2及び3−1のとおり,イ号製品単体では上 記「混合」

の用途を常に有しているとはいえず,他の 装 置と組み合わせて用いられる場

合で,これを充足するときに限り,本件特許発明2の技術的範囲 に 属するも

のと認めることができる。

(2) イ号製品を 他 の 装 置と 組 み合 わ せたロ号製品の本件特許発明2の 技術 的

59
範囲への属否

別紙ロ号製品目録記載のとおり,ロ−1−1号製品の構成g1は,ホッパー

装 置と 連通 する 材料供給管 の入り口に オートセレク タ (80 )を有し, 手 前の

乾燥 機 (51 )や 粉 砕 機 (52 )から 供給さ れる 相異 なる樹脂 材料 を ホッパー装

置(イ号製品)に供給 する材料供給装置であるから,イ号製品と 組 み合わせ

られることにより,ロ号製品は,ホッパー装 置(イ号製品)にお いて,相異

なる樹脂材料を混合する装置であるということができ,本件特許発明2の構

成要件E及びFを充足 するものと認められる。

その余のロ号製品の各構成gについても, ホッパー装置に連通 する材料供

給管の手前に,複数 のタンクやホッパー等があり,これらから, 複数の相異

なる樹脂材料が供給 ,混合され,混合済みの 相異なる樹脂材料を ホッパー装

置(イ号製品)に供給 する材料供給装置であることが認められる。そうする

と,ロ−1−1号製品と同様,イ号製品と 組 み合わせられることにより,や

はり本件特許発明2の 構成要件E及びFを充足するものと認められる。

したがって,ロ号製品は,いずれも本件特許発明2の各構成要件を充足す

るものであり,本件特許発明2の技術的範囲 に属するものである。

4−2 争点4−2(ロ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係

る特許権に対する特許法101条4号の間接 侵害が成立するか)に ついて

前記4−1と同様, 同一材料について, 砕した材料とバージン材が混合

B

される場合及びC バ ージン材と他の異種材料が混合される場合は,本件特許発

明1の「混合」に相 当するところ,イ号製品に材料供給装置gを 組 み合わせた

ロ号製品は,混合済みの相異なる樹脂材料 を ホッパー装置(イ号製品)に供給

し,同装置内で混合を行うものである。

したがって,前記2−1,2−2及び3−2において検討したところを総合

すると,ロ号製品は,本件特許発明1に係る方法の使用についてのみ用いる

であるといえる。

60
したがって,ロ号製品の製造,販売をする行為によって,本件特許発明1に

係る特許権の間接侵害(特許法101条4号)が成立する。

5 争点5(本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものであるか)

について

(1) 争点5−1及び5−2について

平成23年6月8日法律第63号による 改 正前の特許法167 条 によれば,

特許無効審判又は延長 登録無効審判の確定審 決の登録があったときは,同一

の事実及び同一の証拠に基づいてその審判を請求することができない。

被告は,本件特許に ついて無効審判請求( 無効2008−800092)

をし,争点5−1及び5−2と同一の事実及び同一の証拠(5−2について

は,引用例2に記載 さ れた引用発明2と引 用 例1に記載された引 用発明1)

に基づいて無効を主 張 したこと,本件特許発明2について,上記請求は成り

立たないとする審決(乙29)がされ,これに対する審決取消訴訟について

も,知財高裁平成22年3月29日判決(平成21年(行ケ )第10142号)

において請求棄却の判決がされて,その後 ,同審決が確定したこと,本件特

許発明1については平成22年10月19日 付け審決で請求は成り 立たない

とする審決(甲57)がされて確定したことが認められる。

したがって,これらの無効理由によっては,本件特許が特許無効審判によ

り無効にされるべきものと認めることはできない。

(2) 争点5−2から5−4までについて

被告は,本件特許に ついて無効審判請求( 無効2009−800161)

をし,争点5−2から5−4までと同一の事実及び同一の証拠(5−2につ

いては,引用例2に記載された引用発明2と 公然実施発明)に基づ いて無効

を主張したこと,同請求については成り立たないとする審決がされ 甲58)
( ,

当該審決に対する審 決 取消訴訟についても, 知財高裁平成23年9月6日付

け 判決(平成22年 (行 ケ )第10361号)に お いて請求棄却の判決が さ れ

61
て(甲90),その後 ,同審決が確定したことが認められる。

したがって,これらの無効理由によっても,本件特許が特許無効審判によ

り無効にされるべきものと認めることはできない。

(3) 争点5−5及び5−6について

従来技術


引用例1(乙5の3の段落【0009 】)には,以下の記載があることが

認められる。

「材料混合タンク 本体102内に供給さ れた粉粒体材料A,B , Cは,

エアー吸引手段121の吸引状態が続く限り,その吸引ガスの力 により,

材料供給兼排出管へ落 下することはない。」

また,引用例2(乙5の4の6頁)には,以下の記載があることが認め

られる。

「混合ホッパー内 の混合中の材料は,吸引空気源の吸引状態が続く限り,

その吸引ガス力により 排出導通路へ落下することがない。」

イ 被告の主張に対する判断

被告は,材料が 未混合のまま一時貯留ホッパーに落下するという 現象を


防止するためには, 何 らかの手段により, 吸引輸送中は横向き管 に おける

最下面の延長線よりも下方が混合済み材料 で 充填された状態にな っ ている

ことが必要である」 旨 主張し,これを前提として本件各特許発明は発明と

して未完成のものである(争点5−5)及び本件特許にはサポート 要件違

反がある(争点5−6)と主張する。

上記アの従来技術 によれば,吸引輸送中 は,材料が一時貯留ホッパーに

落下するという現象 は生じないことが認められるから,上記被告の主張は

前提を誤っているというべきであり,採用することができない。

6 争点6(先使用権の成否)について

被告は,被告公然 実施発明が本件各特許発明技術的範囲に属 することを前

62
提として,先使用による通常実施権を有する 旨主張する。

し かしながら,前記5 (2 )のと お り, 無効審 判請求に係る 審 決 取 消 訴訟に お

いて,被告公然実施発明は本件各特許発明技術的範囲に属するものではない

旨の判断がされて確定 している。

上記被告の主張は,前訴の確定判断に対する実質的な蒸し返しに当たるとい

うべきであり,信義則 に反するものとして許 されない。

なお,被告公然実施発明に係る組立図(乙9)によっても,同発明は,微粉

除去機能を付加したものに過ぎず,複数の 材料を混合するためのものと認める

ことはできない。また,微粉除去未了の材料 が一時貯留ホッパー に 落下すると

いう課題の存在や, レベル計の位置の設定 に ついての技術的意義 を 窺わせる記

載もない。したがっ て,被告公然実施発明が本件各特許発明の技術 的範囲に属

するということはできず,先使用権の主張はその前提を欠くものである。

7−1 争点7−1( 損害賠償の成否)につ いて

(1) 平成19年11月14日より前の損害

前記3−1・2のと おり,平成19年11月14日以前には,イ号製品に

係る本件特許権に対する間接侵害は成立しないので,同期間の損 害はロ号製

品についてのみ計算することとする。

なお,前記4−1 ・ 2のとおり,ロ号製品は本件特許発明2の 技術的範囲

に属するものであるから,ロ号製品に係る被告の行為については本件特許発

明2に係る特許権の 直 接侵害が成立するとともに,本件特許発明1に係る特

許権の間接侵害も成 立 するが,これにより原告の損害に与える影響 は変わら

ないというべきであるから,以下,本件特許発明2に係る特許権の 直接侵害

に係る損害について算 定することとする。

証拠(乙92の2)によれば,平成19年11月14日以前に おけるロ号

製品の販売数量は合計82台であることが認 められる。

また,証拠(甲96 〜98)及び弁論の 全趣旨によれば,原告が販売する

63
イ号製品に対応する本件各特許発明実施品の定価は20万円,22万円,

23万円,30万円のものがあること,当 該 実施品から得られる 利益は平均

で●●●●●●円であること,当該実施品は 乾燥機等の付属品として販売さ

れる場合があり,その 場合における乾燥機等の価格を含む販売額 総 額は取引

ごとに著しく異なること,この販売額総額 に 占める上記実施品の販売価格は

全体の1割を切ることも多いことが認められる(原告第26準備 書面添付の

別表)。

さらに,証拠(乙93〔枝番省略))及び弁論の全趣旨によれ ば ,被告は,

イ号製品を乾燥機の 標準装備品又はオプション品として販売していることが

認められる。

これらの事情に加え,本件に係る一切の事 情を総合考慮すると, 上記損害

額の算定に当たっては,上記ロ号製品の販売 数量及び上記原告の実施品に係

る平均的な利益●●●●●●円を前提とした 上で,本件特許発明2の販売に

係る寄与率を●●● として,これらを乗じ た金額について上記損 害 額と認め

るのが相当である。

そうすると,平成19年11月14日以前のロ号製品の販売に つ いては,

●●●●●●●円の限 度で原告の損害賠償 請求には理由がある(特許法10

2条1項)。

[計算式]●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

(2) 平成19年11月14日以降の損害

前記3の1・2のと おり,平成19年11月14日以降におけ るイ号製品

の製造販売については特許法101条2号,5号の間接侵害が成立 する。

また,乙92の2によれば,平成19年11月14日から平成23年7月

7日までの間におけ るイ号製品の販売数量 は,714台であることが認めら

れる。

上記台数には,ロ号製品に組み込んで販売したものもあるが,特許法10

64
2 条 1項に 基づく 算 定 に当た っ ては,前記 (1 )と同 様 に 算 定 するのが 相 当で

あるから,平成19年11月14日以降におけるイ号製品の販売に ついては,

●●●●●●●●円の限度で理由がある(特許法102条1項)。

[計算式]●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

(3) 特許法102条2項による算定との対比

原 告は特許法102 条 2項に 基づく 主 張 もしているとこ ろ ,前記 (1 )及び

(2)を上回る 損害が発生したと認めるに足りる主張立証はない。

そうすると,原告の被告に対する損害賠償 請求は,合計687万5290

円の限度で理由がある。

(4) 遅延損害金

な お , 遅延損 害金に つ いては, (1 )の 損 害に つ いては,請求 どお り平成2

0年9月2日からの 遅延損 害金を, (2 )の 損 害に つ いては,販売の日 時 が 不

明であるため,最後 の販売日である平成23年7月7日からの遅延損害金の

支払を命じるのが相当である。

7−2 争点7−2(差止め及び廃棄請求の成否)について

(1) 差止請求の成否

イ号製品に係る請求


被告は,イ号製品に ついて,大半が単一 材料の微粉除去に使用 さ れてお

り,これらは本件特許権を侵害するものではなく,当該用途に使 用 される

ものについてまで差止めを認めるのは著し く過剰であり,不当である旨主

張する。

しかしながら,前記3−1・2のとおり,イ号製品は,本件各特許発明

による課題の解決に 不可欠なものに当たり,これを製造販売等する行為に

は,特許法101条 2号,5号の間接侵害が成立する。そして, 顧客が,

被告からロ号製品を 購 入した後,イ号製品に オートセレクター等を 接続す

るなどして,本件特許発明1に係る方法の 使 用に又は本件特許発明2に係

65
る装置として用いることが可能であることは被告も争っていない。そもそ

も,被告代表者作成の論文(甲65)には, ほとんどの成型 加工 メーカー


が成形機サイド,あるいはコンベアの端に各 種の粉砕機を設置し,スプル・

ランナあるいは成形不 良品を粉砕し, 生原 料化している。 旨の記載があ
再 」

る。

これらのことからすれば,イ号製品につ いては,その用途にかか わらず,

製造販売等の差止めの 必要性があるものと 認 めるのが相当であり,これを

認めることが被告に 過 剰な負担を課すものであるとは認めることができな

い(販売先の利用 態様 に応じて限定することは現実的にも不可能であるし,

その必要があるとも認 めがたい。。


なお,前記3−1 ・ 2のとおり,原告は,イ号製品の輸入の差止めも求

めているところ,被告がイ号製品を輸入していることを認めるに 足 りる証

拠はない。また,輸出について特許法101 条2号及び5号の間 接 侵害

成立しない。

したがって,本件請求のうち,輸出入の差止めを求める部分を除き,イ

号製品の製造,販売等の差止めを求める部分には理由がある。

イ ロ号製品

前記4−1・2のと おり,ロ号製品に係る被告の行為については,本件

特許発明2に係る特許権の直接侵害及び本件特許発明1に係る特許権の間

侵害が成立する。

なお,被告が本件特許登録後にロ−4−1号製品の製造販売をしたこと

を認めるに足りる証拠はない。また,ロ−3−1―甲号製品及びロ−3−

2−甲号製品を製造販売したことを認めるに 足りる証拠もない。

したがって,本件請求のうち,これらの製品を除いたロ号製品に係る製

造販売等の差止めを求める部分には理由がある。

(2)廃棄請求の成否について

66
イ号製品については,被告も在庫を有することを認めており,その廃棄


を求める請求には理由がある。

イ 被告は,ロ号製品を構成するイ号製品及び材料供給装置は,それぞれ別

個の製品として製造 さ れており,各装置は 顧客の工場内において 接続され

て使用されるものであるから,ロ号製品の在庫を有しない旨主張する。

他に,被告がロ号製品の在庫を有することを認めるに足りる主 張立証は

ないから,ロ号製品の廃棄を求める請求には理由がない。

これ以上に,本件において半製品の廃棄請求を認めるまでの 必 要性があ


るとは認めるに足りない。

8 結 論

よって,主文のとお り判決する。

大阪地方裁判所第26民事部



裁判長裁判官 田
山 陽 三




裁判官 松 充
川 康




裁判官 田
西 昌 吾




67
(別紙)

イ号製品目録

以下のaないしfの構 成を有する図1の装置。

流 動ホッパー (2 )と 天蓋 の 排気 口に エル ボ 型 の 排気管 (22 )が 突 設 さ れて ホー


スを介して吸引空気源 が連結されている。

流動ホッパー (2)の出入口と縦方向 に連通した縦向き管 (4A)と,
b−1

該 縦向 き 管 (4 A )の 中途 に 連通連 設した 横向 き 管 (4 B )とから成る 供給管
b −2

(4)が設けられている。

供給管の縦向き管 (4A)を下方に延伸してなる 延伸部 (47 )が設 け られている。


延伸部(47 )が供給管(4)と連通されている。


横向き管(4 B)より上側に,縦向 き管(4A)内の樹脂材料の レベルを,該吸引空


気源を停止している場 合に計測するレベル計 (70)が設け られている。

流 動ホッパー (2 )の 上端 には 天蓋 が設 け られ,その下 側 には 排気 及び微細粉を


透過させるフィルタが設けられている。




68
【図1】




69
(別紙)

ロ号製品目録

イ号製品と,その横向 き管(4B)に,それぞれ以下の材料供給管 (50)を介

して樹脂材料の気送を 可能に連結される材料供給装置g(それぞれ 図2−1−1〜

図2−4参照)とからなり,

材料供給装置からホッパー装置へ複数の樹脂 材料の供給を行うように連繋稼働さ

れる二装置の組。



1 ロ−1−1号製品(図2−1−1)

g1 相異なる樹脂材料を各収容するタンク ,乾燥機又は粉砕機から選択された

同一種又は異種の少な くとも2機(図示の例 は乾燥機51及び粉砕 機52)が

材料供給管 (53)(54)それぞれを 介 して入 側 に 接続さ れ,出 側 に 材料供

給管(50)が接続さ れ,入側の材料供給管 を選択的に切り替える 切替弁を備

える 装 置( オートセレク タ : 80)。出 側 の 材料供給管 (50)は 図 1の ホッ

パー装置に与えられる。レベル計(70)の 信号は,吸引空気源(55)の駆

動/停止の制御に使用 される。



2 ロ−1−2号製品(図2−1−2)

g2 相 異 なる樹脂 材料 を各 収容 するタ ンク 又は粉 砕 機から 選択 さ れた同一

種又は異種の少なくとも2機(図示の例はタ ンク(57)及び粉砕 機(52))

が 材料供給管 (53)(54)それぞれを 介 して入 側 に 接続さ れ,出 側 に 材料

供給管(50)が接続され,入側の材料供給管を選択的に切り替える切替弁を

備 える オートセレク タ(80) 材料供給管 (50)の出 側 には, 供給材料 を


乾燥する乾燥機(51)が接続され,乾燥さ れた材料がホッパー装 置に供給さ

れる。レベル計(70)の信号は,吸引空気源の駆動/停止の制御 に使用され

る。

70
3 ロ−2−2号製品(図2−2−2)

g3 相異なる樹脂 材料(図示の例は,新材 と粉砕材)を各収容するタンク(6

1)(62)及びタンク(61)(62)それぞれから供給される樹脂材料を収

容するストックタンク(63)を備 えるミックタンク。ストックタ ンク(63)

の出側に接続された 材料供給管(50)には,供給材料を乾燥する 乾燥機(5

1)が接続され,乾燥された材料がホッパー装置に供給される。 レベル計(7

0)の信号は,吸引空気源の駆動/停止の制御に使用される。



4 ロ−3−1−甲号製品(図2−3−1− 甲)

g4 相異なる樹脂材料を各収容するタンク(71)
(72)
(73)それぞれか

ら供給される樹脂材料 の嵩(又は質量)を計 量する計量ホッパー(74)及び

計量済み配合材料を収容しておく貯留ホッパー(75)を組み合わ せてなる装

置(オートカラー)であり,貯留ホッパー(75)の排出口は材料供給管(5

0)に連結され,ホッパー装置に連なる。レベル計(70)の信号は,吸引空

気源(55)の駆動/ 停止制御に使用される。



5 ロ−3−1−乙号製品(図2−3−1−乙)

g5 相異なる樹脂 材料をミキシングドラム で混合し,ミキシングドラムから排

出された配合材料を 収容しておく貯留ホッパー(75)を組み合 わ せてなる装

置(オートカラー)であり,貯留ホッパー (75)の排出口は材料供給管(5

0)に連結され,ホッパー装置に連なる。 レベル計(70)の信 号は,吸引空

気源(55)の駆動/ 停止制御に使用される。



6 ロ−3−2−甲号製品(図2−3−2− 甲)

g6 相異なる樹脂 材料を各収容するタンク (71)(72)(73)それぞれか

71
ら供給される樹脂材料 の嵩(又は質量)を計 量する計量ホッパー (74)及び

計量済み配合材料を 収容しておく貯留ホッパー(75)を組み合 わ せてなる装

置(オートカラー) 貯留ホッパー(75)の出側に接続された材料供給管(5


0)には供給材料を乾燥する乾燥機(51) 接続され,
が 乾燥された材料がホッ

パー装置に供給される。レベル計(70)の 信号は,吸引空気源 の 駆動/停止

の制御に使用される。



7 ロ−3−2−乙号製品(図2−3−2−乙)

g7 相異なる樹脂 材料を各収容するタンク (71)(72)(73)それぞれか

ら供給される樹脂材料 をミキシングドラム で混合し,ミキシングド ラムで混合

された配合材料を収容 しておく貯留ホッパー (75)を組み合わ せてなる装置

(オートカラー) 貯留ホッパー
。 (75)の出側に接続された材料供給管(50)

には供給材料を乾燥する乾燥機(51) 接続され,
が 乾燥された材料がホッパー

装置に供給される。 レベル計(70)の信 号は,吸引空気源の駆 動 /停止の制

御に使用される。



8 ロ−4−1号製品(図2−4)

g8 相異なる樹脂 材料の新材及び粉砕材を各収容するタンク,乾燥機又は粉砕

機の少なくとも2機(同一種の2機でもよい。図示の例は乾燥機51及び粉砕

機52)及びこれらそれぞれに定量切り出し 装置(図示の例は定 量切り出し装

置51a 及び定量切り出し装置52a)を備 え,当該定量切り出し 装置には材料

供給管(50)が接続されている。レベル 計(70)の信号は, 吸引空気源の

駆動/停止制御に使 用 される。この材料供給装置を材料供給管(50)に順次

追加していくことで設 備の拡張がなされる。




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