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関連ワード 公知技術 /  技術的範囲 /  対抗要件 /  置き換え /  実施 /  交換 /  構成要件 /  構成要件充足性 /  方法の使用 /  業として /  侵害 /  損害額 /  実施料 /  不法行為(民法709条) /  請求の範囲 / 
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事件 平成 12年 (ワ) 5684号 損害賠償請求事件
原告 サイバーテックコーポレイト ホール ディングス リミテッド
訴訟代理人弁護士 大塚芳典
同 渡邊敏
補佐人弁理士 梶原克彦
同 松尾憲一郎
被告 サミー株式会社
訴訟代理人弁護士 飯田秀郷
同 栗宇一樹
補佐人弁理士 米山淑幸
同 黒田博道
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2001/11/29
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
被告は、原告に対し、金1億円及びこれに対する平成12年6月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
(以下、別紙イ号物件目録記載のパチンコ遊技台を「イ号物件」、別紙イ号方法目録記載の方法を「イ号方法」、別紙ロ号物件目録記載のパチンコ遊技台を「ロ号物件」、別紙ロ号方法目録記載の方法を「ロ号方法」という。) 1 本件は、次の特許権(以下「本件特許権」といい、その特許出願の願書に添付された明細書(以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲第1項に記載された発明を「本件発明」という。)を有する原告が、業としてイ号物件及びロ号物件を製造販売する被告に対し、イ号物件をイ号方法により運用すること及びロ号物件をロ号方法により運用することは、本件発明の技術的範囲に属し、イ号物件はイ号方法の使用にのみ使用する物、ロ号物件はロ号方法の使用にのみ使用する物であって、イ号物件及びロ号物件の製造販売は本件特許権を侵害するものとみなされるとし、不法行為に基づき、1億円の損害賠償を請求した事案である。なお、原告は、本件特許権を、本件特許権の登録時の特許権者から譲り受けたものであるが、
同時に本件特許権侵害による損害賠償請求権の譲渡も受け、被告との関係で、債権譲渡の対抗要件を備えている。
特 許 番 号 第1892201号 発明の名称 パチンコ遊技における出球数設定方法及びそれに使用する呼出し表示装置 出願年月日 平成元年5月13日 出 願 番 号 01-120145 出願公告年月日 平成5年12月16日 出願公告番号 05-087273 登録年月日 平成6年12月26日 2 基礎となる事実 (1) 原告は、本件特許権の登録時の特許権者であったa及びbから、本件特許権を譲り受け、平成11年6月8日、登録を了した(甲第1号証)。
(2) 被告は、業としてイ号物件及びロ号物件を製造販売している(甲第3ないし第5号証、第7号証、弁論の全趣旨。ただし、イ号物件及びロ号物件の構成には、後記第3、1及び3のとおり一部に争いがあり、又は被告による認否のない部分がある。)。
イ号物件はイ号方法により運用され、ロ号物件はロ号方法により運用される(ただし、イ号方法及びロ号方法の構成には、後記第3、2及び4のとおり一部に争いがある。イ号物件及びイ号方法並びにロ号物件及びロ号方法の各争いのない部分について、イ号物件がイ号方法により運用されること及びロ号物件がロ号方法により運用されることは、当事者間に争いがない。)。
(3) 本件発明の構成要件を分説すると、次のとおりである。
A 初期設定された数の出玉によるパチンコ遊技台の終了時に、
B 乱飾表示装置の乱飾表示を停止させ、
C-1 該表示によって追加出球数または追加出球数を表わす符号を表示して C-2 追加出球数を設定する D ことを特徴とするパチンコ遊技における出球数設定方法 (4) 原告は、a及びbから、平成11年6月8日、本件特許権を譲り受けるのと同時に、同日までに生じた本件特許権侵害による損害賠償請求権を譲り受けた。
a及びbは、被告に対し、その債権譲渡の通知を内容証明郵便をもって行い、同内容証明郵便は、平成12年9月12日、被告に到達した(甲第8号証の1、2)。
3 争点 (1) イ号物件の構成 (2) イ号方法の構成 (3) ロ号物件の構成 (4) ロ号方法の構成 (5) イ号方法及びロ号方法は、構成要件A(「初期設定された数の出玉によるパチンコ遊技台の終了時に」)を充足するか。
(6) イ号方法及びロ号方法は、構成要件A及びB(「初期設定された数の出玉によるパチンコ遊技台の終了時に、乱飾表示装置の乱飾表示を停止させ」)を充足するか。
(7) イ号方法及びロ号方法は、構成要件C-1(「該表示によって追加出球数または追加出球数を表わす符号を表示して」)を充足するか。
(8) イ号方法及びロ号方法は、構成C-2(「追加出球数を設定する」)を充足するか。
(9) イ号方法及びロ号方法は、構成D(「パチンコ遊技における出球数設定方法」)を充足するか。
(10) 本件発明の技術的範囲は、特開平1(昭64)-56084号公開特許公報に開示されている技術との関係で、どのように解釈すべきか。
(11) 本件特許権の侵害があるとした場合、損害額はいくらか。
争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(イ号物件の構成)について (1) 原告の主張 イ号物件の構成は、別紙イ号物件目録記載のとおりである。
(2) 被告の主張 別紙イ号物件目録「2 図面の説明」の「図5-2は変動入賞装置の分解説図」という部分、「3 図面中の符号の説明」の「711左ガイド、712右ガイド、713扉軸、72スイング板、73軸、74ソレノイド、75ソレノイド、
8′センサ、81′センサ、N-1装置前カバー、N-2装置後カバー」という部分、「4 構造の説明」の(8)の部分及び別紙イ号物件目録添付の図5-2は、いずれも、イ号方法が本件発明の技術的範囲に属するか否かを判断するためには不要であるから、認否しない。
別紙イ号物件目録のその余の部分は認める。
2 争点(2)(イ号方法の構成)について (1) 原告の主張 イ号方法の構成は、別紙イ号方法目録記載のとおりである。
(2) 被告の主張 イ号方法目録「5 大当たり遊技状態」の「ケ」のうち「ただし実際には、変動入賞装置Nの構造上、遊技球は次のように導かれる。すなわち、ガイド扉71が開放して扉裏面の左右ガイド711、712の間を通過した遊技球は、スイング板72上に導かれる。スイング板72は大入賞口開放始めでは、必ず特定領域8の方向に下り傾斜しており、その傾斜は遊技球が特定領域8に入賞するまで保たれる。したがって、スイング板72上に落下した遊技球は必然的に特定領域8に誘導され、確実に特定領域8を通過する。換言すれば、大入賞口7に入賞しながら特定領域8を通過する遊技球がなかったと判断される可能性は、大入賞口7に遊技球が複数個入賞する限り現実にはあり得ない。」という部分は否認する。侵害方法を特定するための目録は、評価にわたる内容を極力排除すべきであり、客観的に特定されるべきであるからである。
「5 大当たり遊技状態」の「コ」のうち「したがって、ガイド扉71が最大開放回数だけ開放するか否かは、大入賞口7の特定領域8に遊技球が入球するか否かに係っているが、実際には、前記スイング板72の機能により、大入賞口7に入賞した遊技球は、特定領域8に誘導されて、確実に特定領域8を通過するため、ガイド扉71は、最大開放回数だけ開放されることが保証されている。」という部分は否認する。この部分は、「したがって、ガイド扉71が最大開放回数だけ開放するか否かは、大入賞口7の特定領域8に遊技球が入球するか否かに係っており、「大当たり」になっても、常にガイド扉71が最大開放回数だけ開放することは一切保証されていない。実際には、ガイド扉71が開放するのが1回で大当たりが終了する場合もあれば、7回や10回で大当たりが終了することもある。」とすべきである。
別紙イ号方法目録のその余の部分は認める。
3 争点(3)(ロ号物件の構成)について (1) 原告の主張 ロ号物件の構成は、別紙ロ号物件目録記載のとおりである。
(2) 被告の主張 別紙ロ号物件目録「2 図面の説明」の「図5-2は変動入賞装置の分解説図」という部分、「3 図面中の符号の説明」の「712中央ガイド、713扉軸、72シャッタ、73誘導板、74ソレノイド、741プランジャ、742ブラケット、75ソレノイド、76当て板、8′センサ、81′センサ、N-1装置前カバー、N-2後基板」という部分、「4 構造の説明」の(8)の部分及び別紙ロ号物件目録添付の図5-2は、いずれも、ロ号方法が本件発明の技術的範囲に属するか否かを判断するためには不要であるから、認否しない。ただし、「4 構造の説明」の(8)のうちの「非特定領域81の右端側には、遊技球を特定領域8方向に反発させるための当て板76が立設されている。」という記述は誤りである。当て板76は、遊技球が非特定領域にスムーズに入球するために立設したものである。
別紙ロ号物件目録のその余の部分は認める。
4 争点(4)(ロ号方法の構成)について (1) 原告の主張 ロ号方法の構成は、別紙ロ号方法目録記載のとおりである。
(2) 被告の主張 ロ号方法目録「5 大当たり遊技状態」の「ケ」のうち「ただし実際には、変動入賞装置Nの構造上、遊技球は次のように導かれる。すなわち、ガイド扉71が開放して扉裏面の中央ガイド712により左右に振り分けられ、左側に振り分けられた遊技球は直接、右側に振り分けられた遊技球は同時に当て板76に当たって反発して、遊技盤正面左側の特定領域8に導かれる。この際シャッタ72は、
ソレノイド74の作動により当然特定領域8を開放している。したがって、大入賞口7に入賞した遊技球は必然的に特定領域8に誘導され、確実に特定領域8を通過する。換言すれば、大入賞口7に入賞しながら特定領域8を通過する遊技球がなかったと判断される可能性は、大入賞口7に遊技球が複数個入賞する限りにおいて限りなく0に近い。」という部分は否認する。大入賞口7に入賞した遊技球の全部が特定領域に導かれるわけではない。「遊技機取扱主任者の手びき」(社団法人日本遊技関連事業協会編、甲第15号証)に添付された「遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則(抄)」には、第1種特別電動役物(イ号物件及びロ号物件のガイド扉)の規格について、「特定領域を通過する遊技球の数は、第1種特別電動役物の作動により入口が開き、又は拡大する大入賞口にあっては当該大入賞口に入賞する遊技球のおおむね3分の1を、第2種特別電動役物の作動によりその入口が開き、又は拡大する大入賞口にあっては当該大入賞口に入賞する遊技球の数のおおむね10分の1を、それぞれ超えるものでないこと。」(甲第15号証161頁23行ないし28行)と規定しており、イ号物件及びロ号物件は、この規格に従うように設計されている。
「5 大当たり遊技状態」の「コ」の記載の後に、「「大当たり」になっても、常にガイド扉71が最大開放回数だけ開放することは一切保証されていない。実際には、ガイド扉71が開放するのが1回で大当たりが終了する場合もあれば、7回や10回で大当たりが終了することもある。」と付加すべきである。
別紙ロ号方法目録のその余の部分は認める。
5 争点(5)(構成要件Aの充足性)について (1) 原告の主張 ア 構成要件Aの意義 (ア)@ 本件明細書には、出球及び追加出球に関して、次のような記載がある。「店側であらかじめ客側が儲かる遊技台と店側が儲かる遊技台をバランス良く設定しておく。」(本件特許権の特許公報(以下「特許公報」という。)2欄12行ないし14行)、「客側が儲かる場合は、一般的にはいわゆる「遊技台の終了」による。終了は、役物に当たった場合にある一定の球数を無条件で出すものである。しかし、従来のこの方法では次のような課題があった。即ち、大半の客は偶然をあてにするとはいえ、より多くの利益を得ようと入場するわけで、遊技台を終了させてもいつも決まった出球数では、客側の遊び心や射倖心を刺激するにはもうひとつ魅力に欠ける。」(同2欄17行ないし3欄2行)、「[発明の目的]本発明は、パチンコ遊技におけるいわゆる「遊技台の終了」時の出球数を、ある一定の数ではなく段階的に設定し、出球数の設定にもある程度ギャンブル性を持たせることによって客側の遊び心を満足させ、ひいては店側の営業成績の向上につなげる方法及び装置を提供することを目的とする。」(同3欄3行ないし10行)。
このような記載からすると、本件発明は、役物に当たった場合に、
従来のように一定数の出球を出すにとどまらず、追加球数を設定して、射倖性を付加したものである。
A 本件明細書の[発明の構成]の項には、次のような記載がある。
「乱飾表示装置の表示は人が判読するか、または機械が電気的に判読する。人(通常は店員)が判読する場合は、その通報を基に人が出玉設定制御装置を操作して出球数を表示に合わせて設定する。表示を機械が電気的に判読する場合は、乱飾表示装置から追加出球数の操作信号を出玉設定制御装置に送り、該出玉設定制御装置から前記信号を発したパチンコ遊技台に追加出球数の設定信号を送るようにして設定する。出球数は段階的に数種類が設定される。例えば、現在の終了時の一般的な出球数は4000個であるので、基準を4000個とし、他に8000個、12000個等遊技台の終了後、同じ遊技台で引き続き遊べる持球を設定する。当然追加出玉数が0の場合もある。具体例をあげると、乱飾装置として一個のデイジタル表示器を乱飾点滅させる構造のものでは、「0」表示で12000個、「3,8」表示では8000個、「1,7」表示では持球終了、「2,4,5,6,9」表示では4000個のようにパチンコ遊技台全体の出玉数が設定される。」(同3欄40行ないし4欄16行)、「呼出し表示装置の乱飾表示部は、遊技台本体の所定の信号(通常は役物に当たって終了するときに発生させる信号)を感知することにより乱飾表示が停止する。その表示は出球数または出球数を表わす符号である。」(同4欄23行ないし27行)。
このような記載からすると、本件発明は、パチンコ遊技台の終了時の出球とは別に、乱飾表示により追加出球の数を何種類か設定し、乱飾表示により客の獲得球数を変化させ、その射倖心を刺激しているものである。
B 本件明細書の(作用)の項には、次のような記載がある。「第1図乃至第3図を参照して本実施例の作用を説明する。@遊技者がパチンコ遊技台Aで遊技中は、乱飾表示部5は乱飾表示されている。A遊技者が大役に当ると大当りとなり、パチンコ遊技台Aから乱飾表示部5の表示部基板50に信号が送り込まれる。B表示部基板50から信号が送られ、呼出し表示灯3が点滅し、スピーカー9から効果音が出力される。C数秒後、乱飾表示部5の乱飾表示が停止し、数字が表示される。この数字を店員が確認し、制御室に連絡する。D制御室は、対象となるパチンコ遊技台の出球数を設定する。「0」表示では12000個、「3,8」表示では8000個、「1,7」表示では持球終了、「2,4,5,6,9」表示では4000個に設定してパチンコ遊技を終了させる。」(同5欄19行ないし6欄8行)。また、本件明細書の[発明の効果]の項には、次のような記載がある。
「本発明は上記構成を有しており、パチンコ遊技におけるいわゆる「遊技台の終了」時の出球数をある一定の数ではなく段階的に設定し、その選択にもギャンブル性を持たせることによって客側の遊び心、及び射倖心をよりいっそう刺激することができ、店側の営業成績の向上につなげることができる。」(同6欄13行ないし19行)。
このような記載からすると、本件発明は、前記@で述べたと同様に、役物に当たった場合に、従来のように一定数の出球を出すにとどまらず、追加球数を設定するものである。
C 上記@ないしBのとおり、本件発明は、役物に当たった場合に、従来のように一定数の出球を出すだけではなく、追加球数を段階的に設定しているものである。そして、構成要件Aの「初期設定された数の出玉による」とは、「予め決められた出球数による」という意味である。
(イ) 本件明細書には、「客側が儲かる場合は、一般的にはいわゆる「遊技台の終了」による。終了は、役物に当たった場合にある一定の球数を無条件で出すものである。」(特許公報2欄17行ないし19行)という記載があり、「終了」が定義されていることから、構成要件Aの「パチンコ遊技台の終了時に」とは、「パチンコ遊技台の役物にパチンコ球が入賞した場合に」という意味である。
(ウ) 上記(ア)、(イ)によれば、構成要件Aは、「出球数が予め決められたパチンコ遊技台が大当たりになった場合に」、すなわち「出球数が予め決められたパチンコ遊技台の役物にパチンコ球が入賞した場合に」という意味であり、言い換えれば、「予め決められた出球数によるパチンコ遊技台の役物に当たった場合にある一定の球数を無条件で出す場合に」という意味である。
(エ) 特許第2599921号の特許公報(甲第19号証)の記載によれば、パチンコホールが放出球数の制限をするか否かによってパチンコ遊技台の大当たり(フィーバ)後の遊技台の運用が異なることが分かる。パチンコ遊技台における「打ち止め」は、パチンコホールの営業方法により決定されるパチンコ遊技台の運用方法にすぎない。したがって、構成要件Aの「パチンコ遊技台の終了」を、パチンコホールにおける限られた営業方法である「打ち止め」と解釈すべきではない。
イ イ号方法及びロ号方法による充足性 (ア) イ号方法においては、第2の抽選により「確変大当たり」となった後、「高確率移行大当たり遊技状態」となる。高確率移行大当たり遊技状態においては、大入賞口7が開放するが、大入賞口7が1回開放している間には必ず10個の入賞球があり、入賞球は必ず特定領域8を通過するようになっているから、大入賞口7は必ず14回開放する。大入賞口7に遊技球が入賞すると1個当たり14個の賞球が払い出される。これにより、高確率移行大当たり遊技状態においては、必ず1960個の出球があることが保証されている。なお、実際には、大入賞口7が1回開放している間に入る入賞球は11個以上である場合もあり、1960個は、
平均の出球数である。そこで、高確率移行大当たり遊技状態における1960個の出球が、構成要件Aの「初期設定された数の出玉」に該当する。
そして、確変大当たりとなる時が、「出球数が予め決められたパチンコ遊技台の役物にパチンコ球が入賞した場合」、すなわち構成要件Aに該当するから、イ号方法は構成要件Aを充足する。
(イ) ロ号方法においては、第2の抽選により「確変大当たり」となった後、「高確率移行大当たり遊技状態」となる。高確率移行大当たり遊技状態においては、大入賞口7が開放するが、大入賞口7が1回開放している間に入る入賞球は10個であり、入賞球は必ず特定領域8を通過するようになっているから、大入賞口7は必ず15回開放する。大入賞口7に遊技球が入賞すると1個当たり15個の賞球が払い出される。これにより、高確率移行大当たり遊技状態においては、必ず2250個の出球があることが保証されている。なお、実際には、大入賞口7が1回開放している間に入る入賞球は11個以上である場合もあり、2250個は、平均の出球数である。そこで、高確率移行大当たり遊技状態における2250個の出球が、構成要件Aの「初期設定された数の出玉」に該当する。
そして、確変大当たりとなる時が、「出球数が予め決められたパチンコ遊技台の役物にパチンコ球が入賞した場合」、すなわち構成要件Aに該当するから、ロ号方法は構成要件Aを充足する。
ウ 被告は、「パチンコ遊技台の終了時」が「打ち止め」を意味することの根拠として、本件発明の特許出願前に発行された公開特許公報及び公開実用新案公報の記載を挙げるが、これらは、「パチンコ遊技台の終了」が「打ち止め」であることを証明する文言が一つも記載されていないから、被告の主張の裏付けとはならない。
(2) 被告の主張 ア 構成要件Aの「パチンコ遊技台の終了時」の充足性 (ア) 本件発明の特許出願前に発行された公開特許公報及び公開実用新案公報(特開昭55-16675、特開昭55-52778、特開昭56-68476、特開昭56-97472、特開昭57-183883、特開昭58-109080、特開昭58-203784、実開昭58-13289、実開昭58-43489、特開昭60-99280、特開昭60-150770、実開昭60-94285、特開昭62-11482、特開昭62-87179、特開昭62-167583、実開昭62-6876、特開昭63-288180)の記載及び本件明細書の記載(「客側が儲かる場合は、・・・無条件で出すものである。」(特許公報2欄17行ないし19行)、「大半の客は・・・もうひとつ魅力に欠ける。」(同2欄21行ないし3欄2行)、「出球数は・・・同じ遊技台で引き続き遊べる持球を設定する。」(同4欄5行ないし9行)、「呼出し表示灯3は・・・店員に知らせる。」(同5欄8行ないし11行)、「制御室は、・・・パチンコ遊技を終了させる。」(同6欄4行ないし8行)、「本発明は上記構成を有しており、・・・店側の営業成績の向上につなげることができる。」(同6欄13行ないし19行))によれば、パチンコ遊技台の終了とは、「打ち止め」、すなわち、遊技客がパチンコ遊技台に打ち込んだ玉数(アウト玉)からパチンコ遊技台が払い出した球数(セーフ玉)を減じた数(差玉)が、予め定められたマイナスのある初期値に達した場合にパチンコ遊技台が使用停止となることを意味する。
本件明細書においては、「いわゆる「遊技台の終了」」(同3欄4行ないし5行)と記載されており、「いわゆる」とは、「世間でいわれている」という意味であるから、「いわゆる「遊技台の終了」」という文言の意味が、原告が独自に定義するようなものでないことは明らかである。本件明細書においては、「持球終了」(同4欄14行、6欄6行ないし7行)という文言が用いられていることから、予め定められた出球数が「持球」とされ、この「持球」がなくなることが「持球終了」と表現されていることは明らかである。
構成要件Aを、特許請求の範囲に記載のない「出球数が予め決められたパチンコ遊技台が大当たりになった場合に」、「出球数が予め決められたパチンコ遊技台の役物にパチンコ球が入賞した場合に」又は「予め決められた出球数によるパチンコ遊技台の役物に当たった場合にある一定の球数を無条件で出す場合に」と置き換えて理解する原告の解釈は誤りである。このように置き換えると、本件明細書中の「遊技台の終了」に関する部分の大半が意味不明となる。
(イ) イ号方法及びロ号方法には、「打ち止め」によるパチンコ遊技台の終了はないから、イ号方法及びロ号方法は、構成要件Aを充足しない。
構成要件Aの「初期設定された数の出玉」の充足性 イ号方法及びロ号方法には、初期設定された数の出玉を観念することはできないから、イ号方法及びロ号方法は、構成要件Aを充足しない。
ウ 原告は、イ号方法の「高確率移行大当たり遊技状態」においては、必ず1960個の出球があることが保証されていると主張する。しかし、大入賞口7の開放は、最長29秒であり、大入賞口7に10個の遊技球が入賞しないうちに29秒が経過し、変動入賞装置Nのガイド扉71が元の状態に戻ってしまう可能性があること、大入賞口7に入賞した遊技球が特定領域8を通過しない場合があり、大入賞口が常に14回開放するとは限らないことから、常に1960個の賞球が払い出されることが保証されているわけではなく、最大1960個の賞球が払い出される可能性があるにすぎない。ロ号方法の高確率移行大当たり遊技状態においても、同様に、大入賞口7に10個の遊技球が入賞しないうちに、変動入賞装置Nのガイド扉71が元の状態に戻ってしまう可能性があること、大入賞口7に入賞した遊技球が特定領域8を通過しない場合があり、大入賞口が常に15回開放するとは限らないことから、常に2250個の賞球が払い出されることが保証されているわけではなく、最大2250個の賞球が払い出される可能性があるにすぎない。
6 争点(6)(構成要件A及びBの充足性)について (1) 原告の主張 ア 構成要件A及びBの「初期設定された数の出玉によるパチンコ遊技台の終了時に、乱飾表示装置の乱飾表示を停止させ」とは、出玉数が予め決められたパチンコ遊技台が大当たりになったことを条件として乱飾表示装置の乱飾表示を停止させることを意味する。本件明細書の(作用)の項の記載(特許公報5欄19行ないし6欄8行)においても、大当たりと判定された後に乱飾表示部の表示部基板に信号が送られ、数秒後に乱飾表示が停止し、「1、7」表示では持球終了としてパチンコ遊技を終了させる旨記載されており、乱飾表示後に遊技が終了するように記載されている。したがって、乱飾表示装置の乱飾表示を停止させる動作以前に、出玉数が予め決められたパチンコ遊技台が大当たりになっていれば足りる。
イ イ号方法及びロ号方法は、大当たりとなった後、乱飾表示が停止し、その後、高確率移行大当たり遊技状態に至るので、構成要件A及びBの「初期設定された数の出玉によるパチンコ遊技台の終了時に、乱飾表示装置の乱飾表示を停止させ」という要件を充足する。
(2) 被告の主張 ア イ号方法及びロ号方法においては、通常遊技状態において、遊技球が、
役物である電動チューリップ6に入賞してから第2の抽選が行われ、その結果確変大当たりになる可能性があり、確変大当たり(以下、この時点を「T1」と表示する。)となった後、液晶表示装置の変動表示が停止し(以下、この時点を「T2」と表示する。)、その後、高確率移行大当たり遊技状態となり、同状態が終了すると(以下、この時点を「T3」と表示する。)、高確率の通常遊技状態となる。
構成要件Aの文理から、同構成要件の「初期設定された数の出玉による」とは、初期設定された数の出球が初期設定どおりに払い出されることがパチンコ遊技台の終了の原因であることを意味する。仮に構成要件Aの「パチンコ遊技台の終了時」という文言を、原告主張のように、パチンコ遊技台の役物にパチンコ球が入賞した時点又は大当たりとなった時点(T1)と解するとしても、イ号方法及びロ号方法においては、これらの時点は、未だ「通常遊技状態」中であって、大入賞口7の開放は全く行われておらず、この時点では、その後の「大当たり遊技状態」で最大数の出球が払い出される可能性が存するだけであって、出球の払出しは未だ行われていない。したがって、パチンコ遊技台の役物にパチンコ球が入賞すること又は大当たりとなることは、出球の払出しを原因とするとはいえず、イ号方法及びロ号方法は、構成要件Aを充足しない。
構成要件A及びBは、「初期設定された数の出玉によるパチンコ遊技台の終了時に、乱飾表示装置の乱飾表示を停止させ」という文言であることから、乱飾表示装置の乱飾表示が停止する時点は、パチンコ遊技台の終了時である。仮に構成要件Aの「パチンコ遊技台の終了時」という文言を、原告主張のように、パチンコ遊技台の役物にパチンコ球が入賞した時点又は大当たりとなった時点(T1)と解するとしても、これらの時点においては、液晶表示装置の変動表示は未だ停止していないから、「パチンコ遊技台の終了時に、乱飾表示装置の乱飾表示を停止させ」とはいえない。「パチンコ遊技台の終了時」という文言を、液晶表示装置の変動表示が停止した時点(T2)と解すると、構成要件A及びBは、同じ趣旨の文言の無意味な繰り返しになり、特許請求の範囲の解釈として成り立たない。「パチンコ遊技台の終了時」という文言を、高確率移行大当たり遊技状態を脱して高確率の通常遊技状態へ移行する時点(T3)と解すると、その時点は、液晶表示装置の変動表示が停止してからかなり時間が経過してしまっているので、「パチンコ遊技台の終了時に、乱飾表示装置の乱飾表示を停止させる」とはいえない。したがって、
「パチンコ遊技台の終了時」という文言を、T1、T2、T3のいずれの時点と解するとしても、イ号方法及びロ号方法は、構成要件A及びBを充足しない。
7 争点(7)(構成要件C-1の充足性)について (1) 原告の主張 後記8(1)のとおり、確変大当たりとなると、その後必ず確変大当たり又は通常大当たりとなり、イ号方法においては1960個又は2240個、ロ号方法においては2250個の出球があることが保証され、これが構成C-2の「追加出玉数を設定する」に該当する。そこで、液晶表示装置4に確変大当たりを表わす図柄を示すことが、構成要件C-1の「該表示によって追加出球数または追加出球数を表わす符号を表示して」に該当する。したがって、イ号方法及びロ号方法は、構成要件C-1を充足する。
(2) 被告の主張 原告が、イ号方法において1960個又は2240個、ロ号方法において2250個の出球が保証され追加出球が設定されると主張するのは、当初の確変大当たり(T1)とそれに伴う液晶表示装置の変動表示の停止(T2)の後、高確率移行大当たり遊技状態を経て、高確率の通常遊技状態に入り(T3)、第2の抽選によって確変大当たり又は通常大当たりとなり、高確率移行大当たり遊技状態又は通常確率移行大当たり遊技状態を終了したとき(以下、この時点を「T4」と表示する。)に、その高確率移行大当たり遊技状態又は通常確率移行大当たり遊技状態における出球の最大数としてあり得るということにすぎない。液晶表示装置の変動表示の停止(T2)の時点で、後のT4の時点における出球数を予測し、それを表示することは不可能であるから、イ号方法及びロ号方法は、構成要件C-1を充足しない。
後記8(2)のとおり、イ号方法及びロ号方法には「追加出球」という概念がないから、この点でも、イ号方法及びロ号方法は、構成要件C-1を充足しない。
8 争点(8)(構成要件C-2の充足性)について (1) 原告の主張 ア 確変大当たりとなると、高確率移行大当たり遊技状態を経て高確率の通常遊技状態となる。そして、高確率の通常遊技状態においては、次のaないしdのような措置がとられ、大当たりとなる確率が高められ、必ず通常大当たり又は確変大当たりとなる。言い換えれば、電動チューリップへの遊技球の入球機会の増加により、通常確率の通常遊技状態と比較して大当たり間の遊技球の消費が少なくなる(高確率の通常遊技状態では玉持ちがよくなる。)。
a 第2の抽選において大当たりとなる確率を通常確率の通常遊技状態(イ号方法及びロ号方法とも2/637)よりも高確率(イ号方法においては7/637、ロ号方法においては11/637)に設定する。
b 第1の液晶表示装置の変動開始から停止までの時間を通常確率の通常遊技状態(イ号方法においては約9.3秒)よりも短縮する(イ号方法においては約9.3秒又は3.8秒。なお、ロ号方法においては、この時間は、通常確率の通常遊技状態及び高確率の通常遊技状態とも変わらず、約9.0秒又は約5.4秒である。)。
c 第2の液晶表示装置の変動開始から停止までの時間を通常確率の通常遊技状態(イ号方法及びロ号方法とも約29秒)よりも短縮する(イ号方法及びロ号方法とも約5.1秒)。
d 電動チューリップの開成(花弁体の間隔が広がる)時間を通常確率の通常遊技状態(イ号方法及びロ号方法とも約0.2秒)よりも延長する(イ号方法においては約3.8秒、ロ号方法においては約4.0秒)。
イ 確変大当たり又は通常大当たりとなると、高確率移行大当たり遊技状態又は通常確率移行大当たり遊技状態となり、イ号方法においては、高確率移行大当たり遊技状態で1960個(前記5(1)イ(ア)のとおり)、通常確率移行大当たり遊技状態で2240個(通常確率移行大当たり遊技状態においては、大入賞口7が開放するが、大入賞口7が1回開放している間には必ず10個の入賞球があり、入賞球は必ず特定領域8を通過するようになっているから、大入賞口7は必ず16回開放し、大入賞口7に遊技球が入賞すると1個当たり14個の賞球が払い出されるから、通常確率移行大当たり遊技状態においては、必ず2240個の出球があることが保証されている。なお、実際には、大入賞口7が1回開放している間に入る入賞球は11個以上である場合もあり、2240個は、平均の出球数である。)の出球が必ずあり、ロ号方法においては、高確率移行大当たり遊技状態及び通常確率移行大当たり遊技状態でいずれも2250個(高確率移行大当たり遊技状態については前記5(1)イ(イ)のとおり。通常確率移行大当たり遊技状態についても、高確率移行大当たり遊技状態と同様に2250個の出球が保証されている。)の出球が必ずある。
ウ したがって、確変大当たりとなると、その後必ず確変大当たり又は通常大当たりとなり、イ号方法においては1960個又は2240個、ロ号方法においては2250個の出球があることが保証される。この出球が保証されることが構成C-2の「追加出玉数を設定する」に該当するから、イ号方法及びロ号方法は、構成要件C-2を充足する。
(2) 被告の主張 本件明細書の記載及びその意味するところからすると、「追加出球数」とは、「打ち止め」後、持球数として新たに設定されるものを意味し、その持球数を払い出すと、再度「打ち止め」となると解すべきである。イ号方法及びロ号方法においては、「打ち止め」はなく、追加出球という概念もない。
また、イ号方法及びロ号方法においては、第2の抽選によって、液晶表示装置の変動表示停止時の図形の組合せは決定しており、図形の表示はその抽選結果に従うだけのものであって、イ号物件及びロ号物件も、ユーザーであるパチンコホールも、何らの設定行為を行うこともなく、順次、各種の遊技状態を所定の手順で繰り返すのであり、液晶表示装置によって何らの設定も行っていないから、「追加出球数を設定する」というようなことはない。
原告は、イ号方法において、高確率移行大当たり遊技状態で1960個、
通常確率移行大当たり遊技状態で2240個、ロ号方法において、高確率移行大当たり遊技状態及び通常確率移行大当たり遊技状態でいずれも2250個の出球が保証されていると主張する。しかし、前記5(2)ウのとおり、高確率移行大当たり遊技状態で1960個(イ号方法)及び2250個(ロ号方法)の出球数が保証されているわけではない。また、同様に、通常確率移行大当たり遊技状態でも、イ号方法においては、大入賞口7に10個の遊技球が入賞しないうちに、変動入賞装置Nのガイド扉71が元の状態に戻ってしまう可能性があること、大入賞口7に入賞した遊技球が特定領域8を通過しない場合があり、大入賞口が常に16回開放するとは限らないことから、常に2240個の賞球が払い出されることが保証されているわけではない。ロ号方法においても、大入賞口7に10個の遊技球が入賞しないうちに、変動入賞装置Nのガイド扉71が元の状態に戻ってしまう可能性があること、
大入賞口7に入賞した遊技球が特定領域8を通過しない場合があり、大入賞口が常に15回開放するとは限らないことから、常に2250個の賞球が払い出されることが保証されているわけではない。イ号方法及びロ号方法におけるこれらの個数は、払い出される可能性のある最大個数にすぎない。
原告の主張のとおり、仮に高確率移行大当たり遊技状態の平均出球数が1960個(イ号方法)又は2250個(ロ号方法)であり、高確率移行大当たり遊技状態を離脱して高確率の通常遊技状態になった場合に、電動チューリップへの入球の機会が増加し、大当たりを発生させたとしても、それをもって「追加出球数を設定する」に該当するということはできない。イ号方法及びロ号方法は、最初の「打ち止め」がないから、再度の「打ち止め」もなく、再度の「打ち止め」を成立させるための追加出球数の設定もない。
したがって、イ号方法及びロ号方法は、構成要件C-2を充足しない。
9 争点(9)(構成要件Dの充足性)について (1) 原告の主張 イ号方法及びロ号方法は、追加出球数を設定するから、構成Dの「パチンコ遊技における出球数設定方法」という要件を充足する。
被告は、イ号方法及びロ号方法は、パチンコ遊技台の運用方法であって設定方法ではないと主張するが、運用方法であってもその中に設定行為又は設定動作がなければ、パチンコホールの商業的な営業運用は成り立たない。
(2) 被告の主張 イ号方法及びロ号方法は、パチンコホールにおけるパチンコ遊技台の運用方法であって、いかなる意味においても出球数を設定していないし、その設定方法も存在しない。したがって、イ号方法及びロ号方法は、構成要件Dを充足しない。
10 争点(10)(公知技術との関係)について (1) 被告の主張 本件発明の特許出願前に発行された特開平1-56084号公開特許公報とイ号方法及びロ号方法とを対比すると、イ号方法及びロ号方法では第2の抽選で「大当たり」になったときに液晶表示装置の変動表示を停止するのに対し、上記公報記載の発明では、可変表示装置のドラム状可変表示部材の停止がランダムになされ、その停止時における表示に基づいて「特定表示状態」か否かが判断される点が異なるだけで、その余の構成はほとんど同じである。仮に、本件発明の技術的範囲を、原告が主張するように解釈し、イ号方法又はロ号方法が本件発明の技術的範囲に属するとすれば、本件発明は、その特許出願前の公知技術を包含してしまうことになり、本件特許権に無効事由があることになってしまうから、そのような無効事由を内在させるような解釈をすることはできない。
(2) 原告の主張 被告主張の特開平1-56084号公開特許公報に開示されている技術は、入賞確率の向上にだけ関係するものであり、イ号物件及びロ号物件のように大当たり図柄を特定図柄と非特定図柄に分けて表示し、特定図柄の表示のみにより次回大当たりを保証する機能が働くような構造になっていないから、同技術は、イ号方法及びロ号方法とは根本的に異なる。
11 争点(11)(損害)について (1) 原告の主張 被告は、イ号物件及びロ号物件の製造販売を平成11年1月初めごろ開始し、販売価格は1台当たり18万円以上であり、年間3万台以上を販売している。
被告は、平成12年3月末日までに、イ号物件及びロ号物件につき年間54億円以上の売上げを有し、実施料は少なくとも3パーセントであるから、原告が受けた実施料相当損害は1億円以上である。原告は、被告に対し、その損害賠償の内金1億円及びこれに対する不法行為の後である平成12年6月14日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(2) 被告の主張 原告主張の事実は否認し、主張は争う。
当裁判所の判断
1 争点(1)ないし(4)(イ号物件、イ号方法、ロ号物件、ロ号方法の構成)について イ号物件、イ号方法、ロ号物件、ロ号方法の構成については、前記第3の1ないし4の各「被告の主張」において争いがあるか認否をしない部分を除いて、当事者間に争いがない。以下の構成要件充足性の判断は、上記争いがあるか認否のない部分の構成を確定するまでもなく、争いのない部分によって可能である(以下、
「イ号方法及びロ号方法」とは、構成のうち争いのない部分をいう。)。
2 争点(5)(構成要件Aの充足性)について (1)ア 本件発明の特許出願前に発行された公開特許公報及び公開実用新案公報には、次のような記載がある。
(ア) 特開昭55-16675号公開特許公報(発明の名称 パチンコゲーム機の打止制御装置 乙第1号証の1) 「パチンコゲーム機1台当りの打込球総数を計数する打込球計数手段と、同じく上記遊技台1台当りの賞球総数を計数する賞球計数手段と、上記各総数の差を計数する減算手段と、この減算手段の計数値が予め定められた打止契約個数以上になったときに前記パチンコゲーム機を打止にする打止設定手段とを備えたものにおいて、前記減算手段の計数内容が予め定められた所定値を超過したときに前記打止契約個数で打止設定が行なわれるように補償する補償手段を設けたことを特徴とするパチンコゲーム機の打止制御装置。」(1頁左欄4行ないし14行) 「一般にパチンコホールにおいては、1人の遊技客がパチンコゲーム機1台当りについて所定の契約個数以上の利益球(パチンコホール側から見た場合損失球)を得た場合には、そのパチンコゲーム機を所謂打止にさせるようにしている。しかして従来においては、多数のパチンコゲーム機について各パチンコゲーム機1台当りの賞球総数から同じく該パチンコゲーム機1台当りの打込球総数を差し引くと共に、この差し引き数が打止契約個数以上になったときに上記パチンコゲーム機を打止めにする構成の打止制御装置が供されている。」(1頁右欄2行ないし12行) (イ) 特開昭55-52778号公開特許公報(発明の名称 パチンコ遊技場の監視制御装置 乙第1号証の2) 「またマイクロコンピュータ9は、パチンコ遊技店が利益となる球数(操作レバー2により弾発された遊技球の数又はアウト球の数で、操作レバー2の操作回数を計数し、又は遊技球の供給数を第3検出素子15で検出する)と、損失となる球数(セーフ球、賞球、補給球などで、第1検出素子8、第2検出素子13、第4検出素子18などで検出する)との差を演算し、その演算値が打止め数として設定された個有値(例えば2,000個)に達すると補給球排出駆動装置20への補給指示信号の発信を止めて遊技を停止させるとともにパチンコ機表面に打止め表示を表示器22によって行うのである。」(3頁左下欄19行ないし右下欄12行) 「さらに可搬型指令装置32はその操作面34に、打止指令スイッチ50及び打止解除指令スイッチ51を有する。打止指令スイッチ50は、管理者が店内を巡回している際に打止にしたいと判断したパチンコ機1に指令装置32を接続して操作することにより、当該パチンコ機1の補給球排出装置20及び供給停止装置25の一方又は両方を停止ロック状態にさせ、かくしてこのパチンコ機を打止状態にする。」(6頁左下欄2行ないし10行) (ウ) 特開昭56-68476号公開特許公報(発明の名称 パチンコ機 乙第1号証の3) 「しかるに中央処理部54はセーフ球検出パルスが到来するごとに得られる損益球数データを、データメモリ55の打止め設定数エリアの記憶データを読出して比較し、打止め設定数を越したときこれを検出して前面枠2に設けた表示装置90の打止め表示器91のドライバ89を出力ポート87を介して駆動して打止めとなったことを遊技者に知らせる。これと同時に、出力ポート59を介しさらにD-A変換装置60を介して与えられていた駆動出力を消失させて発射装置61を停止させると共に、出力ポート83を介しさらにドライバ84を介して与えられていた駆動出力を送出させないようにして賞球補給装置92を停止させる。かくして制御装置52によって打止め機能を実現する。」(5頁左下欄7行ないし右下欄1行) (エ) 特開昭56-97472号公開特許公報(発明の名称 パチンコゲーム機の打止制御装置 乙第1号証の4) 「例えばパチンコゲーム機X1において最初の遊技客が3000個の打込球によって5000個の賞球を得たとすると、該遊技客は2000個の利益球を得ることになって打止契約個数を超過する。この場合、パチンコゲーム機X1の出力端子Aから500個のパルスが、及び出力端子Bから300個のパルスが夫々出力されるから、賞球計数手段1は、その入力端子P1に入力された500個のパルスに対応した数値信号「5000」を出力し、また打込球計数手段2は、その入力端子P1に入力された300個のパルスに対応した数値信号「3000」を出力する。従って減算手段3は入力端子PA1に対する入力即ち数値信号「5000」から入力端子PB1に対する入力即ち数値信号「3000」を差し引いたその差即ち数値信号「+2000」を打止設定手段5の入力端子P1に出力する。このため打止設定手段5の出力端子S1から打止信号が出力されて発光ダイオードL1が点灯し、パチンコゲーム機X1が打止になったことを表示する。そして、この表示によりパチンコゲーム機X1の遊技客に対して打止になった旨を伝えて該パチンコゲーム機X1から退去させると共に各計数手段1,2の計数内容をリセットさせる。」(3頁左上欄14行ないし右上欄17行) (オ) 特開昭57-183883号公開特許公報(発明の名称 パチンコ遊技機の管理装置 乙第1号証の5) 「従来のパチンコ機においては、遊技者へのサービスの目的で、打込玉が或る特定のセーフ孔あるいは入賞領域へ入賞すると、所定数のヤクモノを開成したり、或るヤクモノを所定時間開成していた。このため、従来では、パチンコ遊技状態によって賞品玉を付与するにしても、特定の入賞領域への入賞に基づいて所定数のヤクモノを開成したりするのみであるため、遊技者がパチンコ機を打止させるまで遊技して多量の賞品玉を獲得しようと思えば、優れた遊技技術と長時間連続遊技するのに耐えうる忍耐力を要していた。このため、1台のパチンコ遊技機で打止制御されるまでの多量の賞品玉を獲得するのは、パチプロと称される熟練者が多かった。」(2頁左下欄19行ないし右下欄13行) (カ) 特開昭58-109080号公開特許公報(発明の名称 パチンコ機の打止制御方式 乙第1号証の6) 「一般にパチンコ機では、客への放出玉数である出玉数から客の打込玉数である入玉数を引いた数が、予め設定された打止設定数を超えたときに打止として、1人の遊技客が無制限にパチンコ玉を獲得することを防止している。」(1頁右欄6行ないし10行) (キ) 特開昭58-203784号公開特許公報(発明の名称 パチンコ遊技装置 乙第1号証の7) 「差玉合計カウンタ48の計数値が打止設定数に達すると、差玉・打止設定数比較回路49の出力信号が打止信号として出力されて発光・音響表示装置35が作動すると同時にシャッタ26が作動してパチンコ遊技が不可能になる。」(2頁右下欄19行ないし3頁左上欄4行) (ク) 実開昭58-13289号公開実用新案公報(考案の名称 ゲーム機 乙第1号証の8) 「而して本考案の目的はコインや玉等の遊技媒体の数量の出入りを計数し、予め設定した数量に達するとゲーム機本体を自動的に終了停止すると共に、
終了表示器を点灯して終了確認を確実に行なうことができるゲーム機を提供することにある。」(明細書1頁20行ないし2頁4行) (ケ) 実開昭58-43489号公開実用新案公報(考案の名称 パチンコ機の総打止数表示装置 乙第1号証の9) 「周知のようにパチンコ機は、その遊技盤面上に複数の入賞口やいわゆるヤクモノと呼ばれる変動入賞装置が配設されていて、遊技客が購入したパチンコ球を遊技盤面に沿って打ち込んだとき、パチンコ球がある確率で入賞口または変動入賞装置へ入賞したとすると、これに応じて一定数の賞球を払出すものである。
このようなパチンコ機で遊技する場合、入賞口や変動入賞装置に入賞する確率の高い、従って払い出される賞球数の多いパチンコ機ほど遊技者に有利なパチンコ機といえるが、他方でパチンコ遊技店側から見れば営業上の損失が多いパチンコ機ということになるので、現在のパチンコ機ではそのバランスを考慮して、パチンコ機1台から遊技客が賞球として得られる最大獲得数が、例えば3000個とか5000個にいわゆる「打止数」として決められていて、排出された賞球総数がこの打止数に達すると遊技の続行を不能とするようになっている。パチンコ遊技の進行に伴う各時点での、以後打止に至るまでの賞球排出可能数(以後、総打止数という)は、
前記打止数からその時点までに排出された賞球の総数を差し引いたものであり、遊技の進行と共に変化する。」(明細書2頁12行ないし3頁13行) (コ) 特開昭60-99280号公開特許公報(発明の名称 パチンコ台の終了および開放制御方式 乙第1号証の10) 「一般に、パチンコ店では、各パチンコ台について、打止めにする玉数が予め定められており、客が獲得した玉数を自動的にカウントし、その数が打止め玉数に達したとき、自動的に打止め制御を行なってその台を終了台とし、以後の使用を停止する処理を行なっている。」(1頁右欄8行ないし13行) (サ) 特開昭60-150770号公開特許公報(発明の名称 パチンコ機の賞球排出制御装置 乙第1号証の11) 「一般に、パチンコ店では一台当たり許容できる最大賞球排出数を打止数と称して定めている。即ち、遊戯者がその数に等しい数の賞球を手にした時点でその台での以後の遊戯を禁止するようにしている。」(8頁右下欄8行ないし12行) (シ) 実開昭60-94285号公開実用新案公報(考案の名称 パチンコ遊技台の集中管理装置 乙第1号証の12) 「一般に、この種集中管理装置においては、店内の各パチンコ遊技台に配設されている検出器群によって検出されるアウト玉数やセーフ玉数等のデータを入力し、パチンコ遊技台と遊技客との間のパチンコ玉の授受に関する差数(以下差玉数と言う)を各パチンコ遊技台について算出し、その値があらかじめ設定された値に達したときにそのパチンコ遊技台の打止め装置を作動させる。」(明細書2頁3行ないし10行) (ス) 特開昭62-11482号公開特許公報(発明の名称 パチンコ遊技場におけるパチンコ機の打止表示装置 乙第1号証の13) 「この打止状態となったパチンコ機では管理装置10からの打止制御信号により賞球の排出停止、打球の発射装置のモータ駆動停止、打球の供給停止などが発生し、パチンコ遊技することができない。」(4頁右上欄19行ないし左下欄3行) (セ) 特開昭62-87179号公開特許公報(発明の名称 パチンコホール用集中管理装置 乙第1号証の14) 「パチンコホールにおいては、パチンコゲーム機における差玉数、即ちアウト玉(打込球)及びセーフ玉(賞球)の差が所定の打止設定値に達したときには、そのパチンコゲーム機を所謂打止として同一遊技者の遊技を規制するようにしており、この場合の打止設定値は法令により規定された上限値以下の範囲でパチンコホール毎に適宜に決定しているのが現状である。」(1頁右欄4行ないし11行) (ソ) 特開昭62-167583号公開特許公報(発明の名称 遊技場の集中管理装置 乙第1号証の15) 「このようなパチンコ遊技場においては、通常、パチンコ機のパチンコ球の流れはコンピュータを用いて管理され、打込球と補給球との差などが計数される。すなわち、このようなパチンコ遊技機の管理装置においては、補給球と打込球との差が予め定められた一定数以上に達すると、そのパチンコ機への補給を停止させ、該パチンコ機を打止制御し、さらに当該パチンコ機の台番号、打込球数と補給球数との差数および打止制御された日付と時間等を記録する。」(2頁左下欄9行ないし18行) (タ) 実開昭62-6876号公開実用新案公報(考案の名称 パチンコホール用集中管理装置 乙第1号証の16) 「この種のパチンコホール用集中管理装置にあっては、通常パチンコホール内の景品交換カウンタの奥方等に設けられ、各パチンコゲーム機毎のアウト玉及びセーフ玉の差を演算すると共にその演算結果が予め定められた打止設定値に達したパチンコゲーム機が生じたときに当該パチンコゲーム機を打止にするように構成されている。ところが、上記のような打止機能は同一のパチンコゲーム機に同一遊技者が連続してゲームを行なってそのパチンコゲーム機を打止にした場合のみ正しく働くものであるため、現実には前の遊技者がある程度の利益パチンコ玉を得てこれを打止にしないまま遊技終了したパチンコゲーム機において、次の遊技者がこれを打止にした場合等には、その遊技者が得たパチンコ玉数が打止設定値より大幅に少ないことがある。このため、従来においては打止されたパチンコゲーム機が生ずる毎に、従業員がそのパチンコゲーム機まで出向いて実際の出玉数を確認し、
これが大幅に少ない場合にはその従業員が景品交換カウンタまで戻ることにより(或はパチンコホール内の複数箇所に設けられた店内放送設備を利用することにより)、その打止を解除すると共に、パチンコホール用集中管理装置のオペレータに対して一定個数のパチンコ玉をサービス玉として追加供給するように指示を与えるようにしており、以て遊技者とのトラブルを未然に回避するようにしている。」(明細書2頁7行ないし3頁13行) (チ) 特開昭63-288180号公開特許公報(発明の名称 弾球遊技機の管理装置 乙第1号証の17) 「この種従来の弾球遊技機においては、前述したような打止条件が成立して打止指令信号が発せられると直ちに弾球遊技機が打止制御されるため、弾球遊技機が特定遊技状態の継続期間中であっても直ちに打止制御されて遊技者がそれ以上遊技をすることができなくなり、せっかく遊技者にとって有利となる特定遊技状態が発生しているにもかかわらずその特定遊技状態が終了するまで遊技を続行することができないこととなり、遊技者に大きな不満を抱かせるという欠点があった。」(2頁左上欄11行ないし20行) イ これらの記載によれば、「打ち止め」とは、遊技客がパチンコ遊技台に打ち込んだ球数(アウト玉)からパチンコ遊技台が払い出した球数(セーフ玉)を減じた数(差玉)が、予め定められたマイナスのある初期値に達した場合に、パチンコ遊技台が使用停止となることを意味するものと認められ、また、本件発明の特許出願時には、パチンコ遊技台について「打ち止め」を設定するのが一般的であったことが認められる。そして、「打ち止め」は、パチンコ遊技台を使用停止とすることであるから、パチンコ遊技台の終了とも表現することができる。前記(ク)実開昭58-13289号公開実用新案公報には「終了停止」、「終了表示器」、「終了確認」という文言が用いられ、(コ)特開昭60-99280号公開特許公報にも「終了台」という文言が用いられており、「打ち止め」が実際にパチンコ遊技台の「終了」としても表現されていたことが認められる。したがって、本件発明の特許出願時の当業者は、「遊技台の終了」が「打ち止め」を意味すると理解していたものと認められる。
本件明細書には、「いわゆる「遊技台の終了」」(特許公報2欄3行ないし4行、17行ないし18行、3欄4行ないし5行、6欄14行)と記載されていることから、本件明細書における「遊技台の終了」とは、本件発明の特許出願時に当業者が理解するところの意味によるものと認められる。そうすると、本件明細書における「遊技台の終了」とは、「打ち止め」を意味するというべきである。
ウ 本件明細書の「客側が儲かる場合は、一般的にはいわゆる「遊技台の終了」による。終了は、役物に当たった場合にある一定の球数を無条件で出すものである。」(特許公報2欄17行ないし19行)という記載は、その意味が直ちに明らかであるとはいえない。しかし、「遊技台の終了」が「打ち止め」を指すとすると、その意味は、「客側が儲かる場合は、一般的にはいわゆる打ち止めによる終了に至った場合である。役物に当たった場合は、一定の賞球を無条件で出す。打ち止めは、このような役物に次々に当たり、アウト玉からセーフ玉を減じた数(差玉)が、マイナスのある一定の初期値に達したときに生ずるものである。」ということであると考えられる。
そして、本件明細書中の「遊技台の終了」に関するその余の記載箇所についても、「遊技台の終了」を「打ち止め」と解釈すると、次のとおり、その意味を理解することができる。
(ア) 「本発明は、パチンコ遊技におけるいわゆる「遊技台の終了」時に、出球数を段階的に設定するパチンコ遊技における出球数設定方法・・・に関する。」(特許公報2欄3行ないし6行)という記載は、「本件発明は、パチンコ遊技における打ち止めの時に、出球数を段階的に設定するパチンコ遊技における出球数設定方法・・・に関する。」という意味であると考えられる。
(イ) 「大半の客は偶然をあてにするとはいえ、より多くの利益を得ようと入場するわけで、遊技台を終了させてもいつも決まった出球数では、客側の遊び心や射倖心を刺激するにはもうひとつ魅力に欠ける。」(同2欄21行ないし3欄2行)という記載は、「大半の客は偶然をあてにするとはいえ、より多くの利益を得ようと入場するわけで、パチンコ台が打ち止めになるまで遊技してもいつも決まった出球数を得るだけでは、客側の遊び心や射倖心を刺激するにはもうひとつ魅力に欠ける。」という意味であると考えられる。
(ウ) 「本発明は、パチンコ遊技におけるいわゆる「遊技台の終了」時の出球数を、ある一定の数ではなく段階的に設定し」(同3欄4行ないし6行)という記載は、「本件発明は、パチンコ遊技における打ち止めの時の出球数を、ある一定の数ではなく段階的に設定し」という意味であると考えられる。
(エ) 「現在の終了時の一般的な出球数は4000個であるので、基準を4000個とし、他に8000個、12000個等遊技台の終了後、同じ遊技台で引き続き遊べる持球を設定する。」(同4欄6行ないし9行)という記載は、「現在、遊技台が打ち止めになるまでの出球数(初期設定値)は一般的に4000個であるので、基準を4000個とし、他に8000個、12000個等、遊技台がいったん打ち止めとなった後、同じ遊技台で引き続き遊べる持球を設定する。」という意味であると考えられる。
(オ) 「呼出し表示装置の乱飾表示部は、遊技台本体の所定の信号(通常は役物に当たって終了するときに発生させる信号)を感知することにより乱飾表示が停止する。」(同4欄23行ないし26行)という記載は、「呼出し表示装置の乱飾表示部は、遊技台本体の所定の信号(通常は役物に当たって打ち止めになるときに発生させる信号)を感知することにより乱飾表示が停止する。」という意味であると考えられる。
(カ) 「台の終了時、乱飾表示が停止する前の数秒間、乱飾表示の動きに合わせてスピーカーから様々な効果音を出力することは任意である。」(同4欄30行ないし32行)という記載は、「打ち止めとなる時、乱飾表示が停止する前の数秒間、乱飾表示の動きに合わせてスピーカーから様々な効果音を出力することは任意である。」という意味であると考えられる。
(キ) 「呼出し表示灯3は・・・役物に当たって台が終了するときに点滅し、店員に知らせる。」(同5欄8行ないし11行)という記載は、「呼出し表示灯3は・・・役物に当たって台が打ち止めとなるときに点滅し、店員に知らせる。」という意味であると考えられる。
(ク) 「制御室は、対象となるパチンコ遊技台の出球数を設定する。
「0」表示では12000個、「3,8」表示では8000個、「1,7」表示では持球終了、「2,4,5,6,9」表示では4000個に設定してパチンコ遊技を終了させる。」(同6欄4行ないし8行)という記載は、「制御室は、対象となるパチンコ遊技台の追加の出球数を設定する。「0」表示では12000個、
「3,8」表示では8000個、「1,7」表示では追加の出球がなく持球終了、
「2,4,5,6,9」表示では4000個に設定し、追加出球が設定された場合には引き続き遊技を続行し、出球の数が、新たに設定した追加出球数に達したときにパチンコ遊技を終了させる。」という意味であると考えられる。
エ 原告は、本件明細書の「客側が儲かる場合は、一般的にはいわゆる「遊技台の終了」による。終了は、役物に当たった場合にある一定の球数を無条件で出すものである。」(特許公報2欄17行ないし19行)という記載を根拠として、
構成要件Aの「パチンコ遊技台の終了時に」とは、「出球数が予め決められたパチンコ遊技台が大当たりになった場合に」、「出球数が予め決められたパチンコ遊技台の役物にパチンコ球が入賞した場合に」又は「予め決められた出球数によるパチンコ遊技台の役物に当たった場合にある一定の球数を無条件で出す場合に」という意味であると主張する。しかし、本件明細書の(作用)の項には、「第1図乃至第3図を参照して本実施例の作用を説明する。@遊技者がパチンコ遊技台Aで遊技中は、乱飾表示部5は乱飾表示されている。A遊技者が大役に当ると大当りとなり、
パチンコ遊技台Aから乱飾表示部5の表示部基板50に信号が送り込まれる。B表示部基板50から信号が送られ、呼出し表示灯3が点滅し、スピーカー9から効果音が出力される。C数秒後、乱飾表示部5の乱飾表示が停止し、数字が表示される。この数字を店員が確認し、制御室に連絡する。D制御室は、対象となるパチンコ遊技台の出球数を設定する。「0」表示では12000個、「3,8」表示では8000個、「1,7」表示では持球終了、「2,4,5,6,9」表示では4000個に設定してパチンコ遊技を終了させる。」(同5欄19行ないし6欄8行)という記載がある。これによれば、Aにおいて遊技者が役物に当たり大当たりとなったこととは別に、その後の事項として、Dにおいてパチンコ遊技の終了が記載されており、「遊技台の終了」が役物に当たった場合等であるという原告の主張は、
本件明細書のこの部分の記載とは相容れない。また、原告の指摘する本件明細書の前記部分(同2欄17行ないし19行)は、文理上、その意味が直ちには明らかでなく、「終了」という文言を明確に定義しているということはできない。したがって、原告の主張は採用することができない。
原告は、本件明細書の複数の記載箇所を指摘し(前記第3、5(1)ア(ア)@ないしB)、本件発明は、役物に当たった場合に追加球数を段階的に設定するものであると主張する(前記第3、5(1)ア(ア)C)。しかし、構成要件Aの「パチンコ遊技台の終了」が役物に当たった場合等であるという原告の主張の直接の根拠として指摘されているのは、前記第3、5(1)ア(イ)のとおり、本件明細書の「客側が儲かる場合は、一般的にはいわゆる「遊技台の終了」による。終了は、役物に当たった場合にある一定の球数を無条件で出すものである。」(同2欄17行ないし19行)という記載だけである。その余の指摘箇所は、構成要件Aの「パチンコ遊技台の終了」が役物に当たった場合等であるということを所与の前提として、追加出球数の設定を根拠付けるものとして挙げられているにすぎないと考えられる。そうであるとすれば、これまで述べてきたところに照らして、原告の主張は、採用することができない。
原告は、特許第2599921号の特許公報(発明の名称 パチンコ台の表示装置 甲第19号証)の記載を挙げ、構成要件Aの「パチンコ遊技台の終了」を、パチンコホールにおける限られた営業方法である「打ち止め」と解釈すべきではないと主張する。しかし、「打ち止め」を設定しない営業方法が同特許公報に記載されていたとしても、前記ア、イのとおり、本件発明の特許出願時には、パチンコ遊技台について「打ち止め」を設定するのが一般的であったと認められ、
「打ち止め」が限られた範囲でのみ行われていた営業方法であったとはいえない。
したがって、本件発明の特許出願時の当業者が「遊技台の終了」をもって「打ち止め」を意味すると理解していたものと認定することは妨げられず、この点に関する原告の主張は、採用することができない。
(2) イ号方法及びロ号方法は、通常確率の通常遊技状態又は高確率の通常遊技状態、高確率移行大当たり遊技状態又は通常確率移行大当たり遊技状態の四つの遊技状態が交互に出現するように継続して運用されるものであり、「打ち止め」はないから、構成要件Aの「パチンコ遊技台の終了」はなく、イ号方法及びロ号方法は構成要件Aを充足しない。
3 争点(7)(構成要件C-1の充足性)について (1) 後記4のとおり、イ号方法及びロ号方法においては、「打ち止め」がないことから、「打ち止め」後の追加出球数の設定ということもなく、したがって追加出球数又は追加出球数を表す符号を表示するということもなく、イ号方法及びロ号方法は、構成要件C-1を充足しない。
(2) 原告は、確変大当たりとなると、その後必ず確変大当たり又は通常大当たりとなり、イ号方法においては1960個又は2240個、ロ号方法においては2250個の出球があることが保証され、これが構成C-2の「追加出球数を設定する」に該当するとし、液晶表示装置4に確変大当たりを表す図柄を示すことが、構成要件C-1の「該表示によって追加出球数または追加出球数を表わす符号を表示して」に該当すると主張する。
しかし、原告が、追加出球数が設定されたと主張するのは、当初の確変大当たり(T1)とそれに伴う液晶表示装置の変動表示の停止(T2)の後、高確率移行大当たり遊技状態を経て、高確率の通常遊技状態に入り(T3)、第2の抽選によって確変大当たり又は通常大当たりとなり、高確率移行大当たり遊技状態又は通常確率移行大当たり遊技状態を終了したとき(T4)に、その高確率移行大当たり遊技状態又は通常確率移行大当たり遊技状態における出球が保証されているということにすぎない。当初の液晶表示装置の変動表示の停止(T2)より再度の高確率移行大当たり遊技状態又は通常確率移行大当たり遊技状態の終了(T4)までは、上記のとおり、各種の段階を経なければならず、相当程度の時間の経過を要することから、液晶表示装置の変動表示の停止時(T2)の表示により、再度の高確率移行大当たり遊技状態又は通常確率移行大当たり遊技状態の終了時(T4)における出球が設定されたということは困難であり、この点からも、原告の主張は、採用することができない。
4 争点(8)(構成要件C-2の充足性)について (1)ア 本件明細書の出球又は追加出球に関する記載は、次のとおりである。
(ア) 「本発明は、パチンコ遊技におけるいわゆる「遊技台の終了」時に、出球数を段階的に設定するパチンコ遊技における出球数設定方法及びそれに使用する呼出し表示装置に関する。」(特許公報2欄3行ないし6行) (イ) 「大半の客は偶然をあてにするとはいえ、より多くの利益を得ようと入場するわけで、遊技台を終了させてもいつも決まった出球数では、客側の遊び心や射倖心を刺激するにはもうひとつ魅力に欠ける。」(同2欄21行ないし3欄2行) (ウ) 「本発明は、パチンコ遊技におけるいわゆる「遊技台の終了」時の出球数を、ある一定の数ではなく段階的に設定し、出球数の設定にもある程度ギャンブル性を持たせることによって客側の遊び心を満足させ」(同3欄4行ないし8行) (エ) 「乱飾表示の停止による表示は、出球数を直接表わすようにしてもよいし、出球数を間接的に表わすようにしてもよい。また、出球数は遊技者にも直ちに分かるようにして遊び心を満足させるのが望ましく、上記における後者の場合は換算表を表示しておく必要がある。」(同3欄34行ないし39行) (オ) 「乱飾表示装置の表示は人が判読するか、または機械が電気的に判読する。人(通常は店員)が判読する場合は、その通報を基に人が出玉設定制御装置を操作して出球数を表示に合わせて設定する。表示を機械が電気的に判読する場合は、乱飾表示装置から追加出球数の操作信号を出玉設定制御装置に送り、該出玉設定制御装置から前記信号を発したパチンコ遊技台に追加出球数の設定信号を送るようにして設定する。」(同3欄40行ないし4欄4行) (カ) 「出球数は段階的に数種類が設定される。例えば、現在の終了時の一般的な出球数は4000個であるので、基準を4000個とし、他に8000個、12000個等遊技台の終了後、同じ遊技台で引き続き遊べる持球を設定する。当然追加出球数が0の場合もある。」(同4欄5行ないし10行) (キ) 「具体例をあげると、乱飾装置として一個のデイジタル表示器を乱飾点滅させる構造のものでは、「0」表示で12000個、「3,8」表示では8000個、「1,7」表示では持球終了、「2,4,5,6,9」表示では4000個のようにパチンコ遊技台全体の出玉数が設定される。」(同4欄11行ないし16行) (ク) 「呼出し表示装置の乱飾表示部は、遊技台本体の所定の信号(通常は役物に当たって終了するときに発生させる信号)を感知することにより乱飾表示が停止する。その表示は出球数または出球数を表わす符号である。」(同4欄23行ないし27行) (ケ) 「制御室は、対象となるパチンコ遊技台の出球数を設定する。
「0」表示では12000個、「3,8」表示では8000個、「1,7」表示では持球終了、「2,4,5,6,9」表示では4000個に設定してパチンコ遊技を終了させる。」(同6欄4行ないし8行) イ ところで、構成要件Aの「パチンコ遊技台の終了時」とは、前記のとおり「打ち止め」時を意味すると解され、構成要件Aの「初期設定された数の出玉」とは、パチンコ遊技台が「打ち止め」になるまでの出球数として初期設定された出球数(差玉)を意味すると解される。本件発明の構成要件の文言からすると、構成要件C-1、C-2の「追加出球数」の「追加」とは、構成要件Aの「初期設定された数の出玉」に対して追加する趣旨であると認められる。そうすると、構成要件C-2(「追加出球数を設定する」)は、初期設定された数の出球が払い出されて「打ち止め」となった時に、更に追加の出球数(差玉)を設定することを意味すると解される。そして、前記ア(ア)ないし(ケ)の出球又は追加出球に関する本件明細書の記載からすると、パチンコ遊技台は、本来、「打ち止め」により遊技が停止されるはずであるが、追加出球数が設定された場合は、更にパチンコ遊技が続行されるものと認められ、構成要件C-2の「追加出球数を設定する」とは、「打ち止め」となったときに、段階的に追加出球数を設定し、新たに設定された追加出球数の出球が払い出されるまで更にパチンコ遊技を続行し、出球が追加出球数に達したときにパチンコ遊技が終了するように、追加出球数を設定することを意味すると解される。
(2) イ号方法及びロ号方法においては、「打ち止め」はなく、「打ち止め」時の追加出球数の設定もない。したがって、イ号方法及びロ号方法は、構成要件C-2を充足しない。
5 結論 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、イ号方法及びロ号方法は、本件発明の技術的範囲に属さない。したがって、イ号物件及びロ号物件の製造販売が本件特許権を侵害するものとみなされることもない。
よって、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 中平健
裁判官 田中秀幸