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関連審決 不服2020-3780
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事件 令和 3年 (行ケ) 10042号 審決取消請求事件
5
原告 アモセンス・カンパニー・リミテッド
同訴訟代理人弁理士 赤堀孝
同 高倉成男 10 同佐野惣一郎
同 山本雄介
同 坂井慎
被告特許庁長官 15 同指定代理人畑中博幸
同 酒井朋広
同 梶尾誠哉
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2022/02/14
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
20 2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
請求
25 特許庁が不服2020-3780号事件について令和2年11月6日にした 審決を取り消す。
1
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。) (1) 原告は、平成24年12月21日を国際出願日とする特願2014-54 8673号(パリ条約による優先権主張・2011年12月21日、優先権 5 主張国・韓国)の一部を分割して、平成29年12月1日、発明の名称を「無 線充電器用磁場遮蔽シート及びその製造方法と、それを用いた無線充電器用 受信装置」とする発明について特許出願(特願2017-231517号。
以下「本願」という。)をした。
(2) 原告は、平成31年2月25日付けで、特許法50条の2の通知を伴う拒10 絶理由通知を受けたため、令和元年6月5日付けで特許請求の範囲について 手続補正(以下「本件補正」という。)をしたが、同年11月20日付けで補 正を却下され、拒絶査定を受けた。
(3) 原告は、令和2年3月19日付けで、拒絶査定不服審判請求(不服202 0-3780号事件)をした(その際、本件補正の却下について争ったり、
15 新たな補正をしたりしていないので、審判の対象は、本件補正前のものとさ れている。 。
) 特許庁は、令和2年11月6日、
「本件審判の請求は、成り立たない」との 審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月24日、原告に送 達された。
20 (4) 原告は、令和3年3月23日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起 した。
2 特許請求の範囲の記載 (1) 本件補正前の特許請求の範囲は、請求項1から12からなり、その請求項 1の記載は、次のとおりである(以下、本件補正前の請求項1に係る発明を25 「本願発明」という。) 【請求項1】 2 多数の細片に分離された非晶質リボンからなる少なくとも1層の薄板磁性シ ートと、
前記薄板磁性シートの一面に、第1接着層を介して接着される保護フィルム と、
5 前記薄板磁性シートの他面に、一側面に備えられた第2接着層を介して接着 される両面テープとを含み、
前記多数の細片間の隙間は、前記第1接着層及び第2接着層の一部が充填さ れて、前記多数の細片を絶縁(isolation)させることを特徴とする、
無線充電器用磁場遮蔽シート。
10 (2) 本件補正後の請求項1(ただし、拒絶査定時に却下されたもの。)の記載 は次のとおりである(下線部は補正箇所)。
【請求項1】 多数の細片に分離された非晶質リボンからなる少なくとも1層の薄板磁性シ ートと、
15 前記薄板磁性シートの一面に、第1接着層を介して接着される保護フィルム と、
前記薄板磁性シートの他面に、一側面に備えられた第2接着層を介して接着 される両面テープとを含み、
前記多数の細片間の隙間は、前記第1接着層及び第2接着層の一部の接着剤20 が十分に充填されて、前記細片の全ての面が前記接着剤で覆われており、それ によって前記多数の細片が相互に絶縁(isolation)されていること を特徴とする、無線充電器用磁場遮蔽シート。
3 本件審決の要旨 (1) 本件審決が認定した引用文献1(特開2008-112830号公報。公25 開日平成20年5月15日)の引用発明、本願発明と引用発明の一致点及び 相違点は、次のとおりである。
3 ア 引用発明 シート基材上に接着層を介して薄板状磁性体シートを接着して形成され、
前記薄板状磁性体シートは、アモルファス合金薄帯からなり、平均形状 が0.9×1.2mm程度の複数の磁性体片に分割され、
5 前記薄板状磁性体シート上に接着剤付き保護フィルムを貼り付け、
電磁誘導を利用する非接触型充電方式の受電装置側に設けられ磁気シ ールドとして用いられる磁性シート。
イ 一致点及び相違点 (一致点)10 「多数の細片に分離された非晶質リボンからなる少なくとも1層の薄板磁 性シートと、
前記薄板磁性シートの一面に、第1接着層を介して接着される保護フィ ルムと、
前記薄板磁性シートの他面に、一側面に備えられた第2接着層を介して15 接着されるシート状の部材とを含む、
無線充電器用磁場遮蔽シート。」 (相違点1) 「シート状の部材」に関し、本願発明は「両面テープ」であるのに対し、
引用発明は「シート基材」である点。
20 (相違点2) 本願発明は、
「多数の細片間の隙間は、前記第1接着層及び第2接着層の 一部が充填されて、前記多数の細片を絶縁(isolation)させる」 に対し、引用発明はその旨の特定がされていない点。
(2) 本件審決は、本願発明は、引用発明及び引用文献2(特開2007-1225 3575号公報。公開日平成19年5月17日)に記載された技術事項か ら当業者が容易に発明することができたと判断した。相違点1及び2に関 4 する本件審決の判断は以下のとおりである。
ア 相違点1について 引用発明のシート基材は、分離後の薄板状磁性体の支持体としての機能 を有し、コイル、各種部品、機器筐体等に磁性シートを貼り付ける際に剥 5 がされるものを含むところ、引用文献2には、
「非接触で電力が供給される 装置に用いられる磁性シートにおいて、磁性部材の下面に両面テープを設 け、製造時に磁性部材を固定する役割を果たすと同時に、そのフィルムを 剥がしてループアンテナや整合回路等を接着、又は装置に貼り付ける。」 (以下「技術事項1」という。 が記載されている。
) そして、引用発明の「磁10 性シート」と引用文献2の上記「磁性シート」とは、非接触により電力を 受電する装置に用いられる点で共通し、さらに、引用発明の「シート基材」 と引用文献2の上記「両面テープ」とは、磁性体の支持及び他の部材への 貼り付け等の同様な機能を有していることから、引用発明の「シート基材」 に代えて引用文献2の上記「両面テープ」を採用し、相違点1の構成にす15 ることは当業者が容易になし得たことである。
イ 相違点2について 両面上に樹脂が積層された磁性シートをローラにより粉砕し、粉砕によ り生じた隙間に樹脂が入り込むことは、引用文献2にも記載されている (「一方の面に両面テープを貼り付け、他方の面に樹脂を形成したシート20 状の磁性部材をローラにより粉砕し、粉砕により空隙が生じることにより 磁性部材の一方の面に形成された樹脂及び磁性部材の他方の面に接着さ れた両面テープの樹脂からなる接着剤が浸透しやすくなる。 (以下「技術 」 事項2」という。 )ように、普通の事項である。
) ここで、引用発明の薄板状磁性体シートは、平均形状が0.9×1.2o25 程度の複数の磁性体片に分割されるのであるから、分割された磁性体片間 に隙間が生じることは自明のことである。また、接着剤が樹脂からなるこ 5 とは技術常識であるから、引用発明の「接着剤」及び引用文献2の上記「両 面テープ」に使用される接着剤は樹脂からなるといえる。
そして、引用発明における薄板磁性シートの分割は、
【0026】ないし 【0028】から、シート基材に薄板状磁性体を接着し、薄板状磁性体上 5 に接着剤付き保護フィルムを貼り付けた後、圧延ロールに通して折り曲げ たり、また、金型で押し割る等の方法や、金型やロールにあらかじめ決め られた凹凸パターンを設けておくことによって、薄板状磁性体3を所定形 状に割る方法により行われるのであるから、引用文献2の上記「両面テー プ」を採用したものにおいても、分割された磁性体片間の隙間の接着剤の10 一部が入り込むといえ、入り込んだ接着剤が分割された磁性体片を絶縁す ることは当然のことである。
そうすると、相違点2に係る構成も、引用発明に引用文献2に記載の技 術的事項1を採用することにより当業者が容易になし得たことである。
4 取消事由15 相違点2の容易想到性の判断の誤り
当事者の主張
1 原告の主張 (1) 本願発明について 本願の請求項1には、@多数の細片間の隙間は、第1接着層及び第2接着20 層の一部が充填されること、Aそれによって前記多数の細片を絶縁(iso lation)させることが発明特定事項として記載されており、@及びA を読み合わせれば、第1接着層及び第2接着層の接着剤は、多数の細片が互 いに絶縁させられるに十分な程度に充填されることが帰結される。
「充填」が 不十分であれば絶縁にならないから、
「絶縁させる」という限定から、充填が25 十分であることが導かれる(本願明細書の図13参照)。
したがって、多数の細片が互いに絶縁されており、そのことにより渦電流 6 損等の効果が生じることは、上記@及びAから導かれる技術的事項である。
なお、補正を却下された請求項1は、形式的には本件補正前の請求項1の 減縮であるが、生じる作用及び効果からすれば、実質的に同一である。
(2) 技術事項2の認定の誤り 5 ア 本件審決は、前記第2の3(2)イのとおり、「粉砕により空隙が生じるこ とにより磁性部材の一方の面に形成された樹脂及び磁性部材の他方の面 に接着された両面テープの樹脂からなる接着剤が浸透しやすくなる。」と の技術事項2を認定したが、引用文献2において、
「樹脂」は上部に塗布さ れる樹脂層5、6で使用される文言であり、他方の面に接着された両面テ10 ープには樹脂という文言は使用されていない。接着剤には、樹脂系のもの もあれば非樹脂系のものがあることは技術常識であり、多数の接着剤の候 補の中からあえて樹脂系のものを選択する事情も見当たらず、本件審決の 認定した技術事項2の「両面テープの樹脂からなる接着剤」の認定は誤り である。
15 また、引用文献2には、 低粘度の樹脂5が磁性部材2の内部に滲み込み」 「 (【0046】)との記載がある。すなわち、引用文献2において、
「樹脂が 磁性部材2に浸透」するのは、上部に塗布された低粘度の樹脂5が磁性部 材に浸み込むことを意味するのであって、下に配置された両面テープの接 着剤が浸み込むことを開示するものではない。引用文献2における「両面20 テープ」は、固定層としての機能を有するものであり(【0052】 、両面 ) テープの接着剤が低粘度の樹脂であった場合には、固定層としての機能を 発揮できなくなるから、本件審決が認定した「磁性部材の他方の面に接着 された両面テープの樹脂からなる接着剤が浸透しやすくなる」との技術事 項2の認定は誤りである。
25 イ 被告は、後記2(2)のとおり、一般に樹脂からなる接着剤を備えるテープ が圧力を加えられることによって、被着体に沿って接着剤が流動し、被着 7 体の凹部に流入することにより接着されることは技術常識である旨主張 するが、引用文献2には、
「両面テープの樹脂からなる接着剤」が「浸透」 及び「絶縁」することが示唆ないし開示されていないことは前記アのとお りであり、接着剤を備えるテープが圧力を加えられることにより、被着体 5 に沿って接着剤が流動し、被着体の凹部に流入することが技術常識である からといって、引用文献2に記載されていない事項を技術事項として認定 することはできず、被告の上記主張は理由がない。
(3) 相違点2に関する判断の誤り ア(ア) 本願発明は、前記(1)のとおり、@多数の細片間の隙間は、第1接着10 層及び第2接着層の一部が充填されること、Aそれによって前記多数の 細片を絶縁(isolation)させるという構成を採用する。すな わち、本願明細書の【0061】ないし【0063】のとおり、本願発 明は、渦電流の低減及び2次コイルの品質係数(Q)を増加させるとい う電気的特性の向上を図るために、多数の細片間に隙間を作り、その隙15 間に上層及び下層である第1接着層及び第2接着層の各々から細片間の 隙間を十分に充填し電気的に相互絶縁(isolation)するもの であり、具体的形態は本願明細書の【図13】のとおりである。
(イ) ところで、引用文献1には、
「上述した分割工程によれば磁性体片5 (複数に分割された薄板状磁性体3)間にほとんど物理的な空隙を生じ20 させることなく、薄板状磁性体3を電気的に分断することができる。」 (【0030】 、
) 「このように、磁性体片5間の隙間の発生を極力抑える (間隙部の面積比5%以下とする)ことによって、薄板状磁性体3の磁 気特性の低下を抑制することができると共に、間隙部(空隙)に起因す るノイズや磁束の漏れ等を抑制することが可能となる。 ( 」 【0031】)25 と記載されているように、引用発明は、磁性体片5(複数に分割された 薄板状磁性体片3)間の物理的空隙の発生を極力抑えることを目的とし 8 ている。そして、引用文献1には、接着剤を充填させて磁性体片を互い に絶縁させることについて開示も示唆もなく、分割された磁性体片が整 然と隔離された構造になるとは限らず、部分的には磁性体片が互いに接 触する構造になる場合もあり得るから、樹脂が浸透しても小片が接触す 5 るため「絶縁」するとは限らない。例えば、空洞を介して隣接された細 片同士であった場合には、その空洞及び接着剤の表面や界面において多 数の電流パスを容易に形成され得る状態であって絶縁されているとはい えない。
他方、引用文献2には、
「磁性部材2を粉砕することで磁性部材2に柔10 軟性を持たせると同時に磁性部材2が柔らかくなるので加工性がよくな り、加工時の負荷も少なくなる。しかも磁性部材2に空隙ができること から樹脂が磁性部材2に浸透しやすくなり、磁性部材2の柔軟性をさら に向上させることができるようになる。 ( 」 【0058】)と記載があるよ うに、引用文献2に記載された発明は、磁性部材2に柔軟性、加工性を15 向上させるために粉砕及び樹脂を浸透させるものであって、電気的特性 を向上させることは記載も示唆もなく、また、樹脂が磁性部材2に浸透」 「 という点についても、低粘度の樹脂が磁性部材の上側に塗布され、上側 からのみ内側の隙間に浸み込むだけであり、本願発明と比較して、樹脂 による隙間の浸み込みが十分な絶縁を得るものではない。
20 (ウ) 前記のとおり、引用発明は、分割した磁性体間にそもそも物理的空 隙の発生を極力抑えることを課題としており、これに対して、引用文献 2に記載された発明は、分割した磁性体の間の空隙を積極的に利用する ことを特徴としており、引用発明に引用文献2に記載された発明を適用 することは、引用発明の目的に反するものであって、技術分野が同じで25 あるとしても、阻害要因があり、結局のところ、適用する動機付けがな い。
9 イ 仮に、引用発明に引用文献2に記載された発明を適用する動機付けがあ るとしても、引用発明には空隙に樹脂を充填する記載はなく、引用文献2 には、前記アのような記載があるのみで、本願発明の「前記多数の細片間 の隙間は、前記第1接着層及び第2接着層の一部が充填されて、前記多数 5 の細片を絶縁(isolation)させることを特徴とする」ことは開 示も示唆もないから、相違点2の構成に想到し得ない。
(4) 小括 以上によれば、引用発明に引用文献2に記載された発明を適用する動機付 けもなければ、阻害要因すらあることに加え、仮に適用する動機付けがある10 としても、本件審決は、誤った技術事項2を前提として相違点2の構成が容 易想到である旨判断しているから、取り消されるべきである。
2 被告の主張 (1) 本願発明について ア(ア) 本願明細書の【0022】【0023】【0029】【0030】の 、 、 、
15 記載からすると、本願明細書には、渦電流を低減するための2つの構成、
すなわち、@非晶質リボンのフレーク処理によって渦電流による損失を 大きく減少させる発明、Aフレーク処理後にラミネート処理を行い、非 晶質リボンの細片の全ての面を接着剤で覆うことによって、細片が相互 絶縁されて渦電流の低減を図る発明が記載されている(以下、それぞれ20 「@の発明、 「Aの発明」という。 。
」 ) (イ) @の発明の「フレーク処理」について、本願明細書の【0061】、
【0062】 【0132】の記載によれば、本願明細書には、磁性シー 、
トをフレーク処理することにより、磁性シートが多数の細片に分離され ると渦電流による損失が減少することが記載されており、一般に「絶縁」25 とは、電流の流れを絶つことであることは技術常識であり、本願明細書 に記載された、磁性シートが多数の細片に分離されて渦電流による損失 10 が減少するとは、磁性シートが多数の細片に分離されて隙間が生じ、渦 電流の流れが絶たれることにほかならないから、磁性シートがフレーク 処理により多数の細片に分離されて生じた「隙間」は、
「多数の細片」を 「絶縁させる」構成である。
5 また、@の発明は、「保護フィルム(第1接着層を含む)、非晶質リボ ン、両面テープ(第2接着層を含む)」が順次積層されたものであり、本 願明細書に記載された「第1及び第2接着層12、31」は、
「アクリル 系接着剤」であり(【0055】 、
) 「第1接着層12及び第2接着層31 は、常温で加圧すると変形可能な接着剤」である 【0104】 ことや、
( )10 「前記フレーク処理は、例えば、保護フィルム1、非晶質リボン2a、
両面テープ3及びリリースフィルム4が順次積層された積層シート10 0を、第1及び第2フレーク装置110、120を通過させることによ って、非晶質リボン2aを多数の細片20に分離させる。この場合、分 離された多数の細片20は、両側面に接着された第1及び第2接着層115 2、31によって分離された状態を維持するようになる」 【0093】 ( ) との記載からすると、分離された(フレーク処理された)多数の細片を 維持しているのが第1及び第2接着剤である。
そうすると、フレーク処理によって分離された「多数の細片20」間 の「隙間」は、十分とまではいえなくても、多数の細片が接触せず、分20 離された状態で維持できる程度に、少なからず「第1及び第2接着層1 2、31」の一部が「充填され」ている構成であるということができる。
したがって、@の発明は、フレーク処理によって分離された「多数の 細片20」間の「隙間」によって渦電流の流れを断ち、
「多数の細片」を 「絶縁させる」状態にあり、その隙間には十分とまではいえなくても多25 数の細片が接触せず、分離された状態を維持できる程度に、少なからず 「第1及び第2接着層12、31」の一部が「充填されて」いるもので 11 あり、これが本願発明に相当するものである。
(ウ) これに対し、Aの発明は、
「細片の全ての面を接着剤で覆うことによ って、細片が相互絶縁されて」いるから、本件補正に係る請求項1に係 る発明に相当するものである。
5 イ 前記のとおり、本願明細書には、構成が異なる@の発明とAの発明が記 載されており、@の発明は本願発明であり、Aの発明が補正却下された手 続補正書の請求項1に係る発明に相当するものである。
したがって、本願発明は、
「隙間」に「第1接着層及び第2接着層」の一 部が少なからず充填されていれば足りるものであり、本願発明における10 「充填」と「絶縁」における技術的意義を踏まえた、本願発明、補正却下 された手続補正書の請求項1に係る発明及び引用発明との関係は、別紙4 のとおりである。
(2) 技術事項2の認定の誤りの主張に対し 引用文献2の「両面テープ」は樹脂からなる接着剤から形成されているこ15 とは技術常識である(乙3の【0020】、乙4の【0014】 。また、引用 ) 発明の「シート基材」上の「接着層」は、引用文献1の【0010】及び【0 012】によれば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等から構成されている。
一般に、樹脂からなる接着剤を備えるテープが圧力を加えられることによ って、被着体に沿って接着剤が流動し、被着体の凹部に流入することにより20 接着されることは技術常識であり(乙5ないし8)、引用文献2の「両面テー プ」は、
「固定層の一部であって、磁性部材2の下面に設けられて製造時に磁 性部材2を固定する役割を果たすと同時に、両面テープ3のフィルムを剥が してループアンテナや整合回路等を接着したり、RF-IDの装置に貼り付 けたりすることができる」ものである(【0052】)から、両面テープの接25 着剤が固定層としての機能を発揮できない程度の低粘度の樹脂ではないこと は明らかである。
12 そして、引用文献2には、
「工程4で、両面テープ3ごとローラ12を通過 させて磁性部材2を、複数の磁性体固片11に粉砕する。…しかも磁性部材 2に空隙ができることから樹脂が磁性部材2に浸透しやすくなり、磁性部材 2の柔軟性をさらに向上させることができるようになる。このローラ粉砕工 5 程は、磁性部材2に樹脂を印刷した後でも可能である。 ( 」 【0058】 、
) 「な お、ブレイク(粉砕、工程4)、打抜き(工程5)、塗装(工程6)の工程の 順番は、図6ないし図9に示すように、適宜変更することができる。( 」【00 67】)との記載があるように、これらの記載は、磁性部材2を粉砕して得ら れた「空隙」に「樹脂」が「浸透しやすくなる」という事象を説明するもの10 であり、両面テープ3に形成された接着剤(樹脂)が流動して、複数の磁性 体固片11間の隙間にも接着剤(樹脂)が入り込むことを意味する。
したがって、本件審決が認定した技術事項2の認定に誤りはない。
なお、後記(3)のとおり、本件審決においては、引用文献2は、引用発明が 「分割された磁性体片間の隙間に接着剤の一部が入り込」み(充填されて)、
15 「入り込んだ接着剤が分割されて磁性体片を絶縁する」ものになっているこ とを立証するための証拠であるから、仮に原告が主張するように技術事項2 の認定に誤りがあるとしても、相違点2の判断の結論に影響しないから、本 件審決を取り消す事由にならない。
(3) 相違点2の判断の誤りの主張に対し20 ア 引用文献1の「実際の使用に際しては、シート基材1や保護フィルム等 を剥がして接着層を露出させ、この接着層を利用してコイル、各種部品、
機器筐体等に貼り付けることも可能である」 (【0028】 との記載から、
) 引用発明における接着層は、フィルム等を剥がした後、他の部品に接着可 能なものであり、粘着性を有していることは明らかである。そして、この25 ような粘着性を有する接着剤が若干の圧力で流動し、被着体の表面の凹凸 に流入することは技術常識であり、引用発明の薄板状磁性シートは、圧延 13 ロールに通して折り曲げる等の方法によって分割しているから、粘着性を 有した接着層の一部は、該接着層が「樹脂系」か「非樹脂系」であるかに かかわらず、分割された磁性体片間の隙間に入り込む(充填されている) 構成であるといえる。
5 また、引用文献1の「次に、シート基材1に接着された薄板状磁性体3 に外力を加えて、薄板状磁性体3をシート基材1に接着された状態を維持 しつつ複数に分割する。…また、磁性シート4を例えば磁気シールド用磁 性体として用いる場合には、薄板状磁性体3の電流路を分断して渦電流損 を低減することが可能となる。 ( 」 【0026】)の記載によれば、引用発明10 は、
「薄板状磁性シート」が「磁性体片に分割され」ることによって、渦電 流損を低減するために電流路を分断するものであるから、分割された磁性 体片を電気的に導通させてしまう導電性の接着剤を採用することはない。
そうすると、引用発明における「接着層」は、導電性のものであってはな らず、「絶縁性」のものでなければならない。
15 したがって、引用発明は、隙間によって磁性体片を絶縁させることに加 え、分割された磁性体片間の隙間に入り込んだ(充填されている)接着層 の一部によっても、磁性体片を絶縁させる構成であるといえるから、相違 点2の構成は、引用発明が備える構成であるといえる。
これに対し、原告は、前記1(3)ア(イ)のとおり、引用発明は、各磁性体20 片が整然と隔離された構造になるとは限らず、少なくとも部分的に磁性体 片が接触する(非絶縁状態になる)構造になる場合もある旨主張するが、
上記の引用文献1の【0026】の記載に加え、
「また、磁性体個片を重ね て配置すると電気的な導通が生じて特性が低下する」 (【0006】 の記載 ) もみると、引用文献1では、磁性体片の接触を問題としているから、引用25 発明は、少なくとも部分的には磁性体片が互いに接触する(非絶縁状態に なる)構造を排除するものと理解することができる(なお、引用発明が「絶 14 縁させる」構造であることは、
「本願発明の微細クラックが形成されたFe 基ナノ結晶合金薄帯では…電力伝送を行う高周波領域で発生する渦電流 の経路に対してはその一部が破断し、絶縁状態または高抵抗の状態となっ ていて、渦電流の発生が抑制され、渦電流損失が低下している」 (乙10の 5 【0019】)ことからも裏付けられている。 。そうすると、薄板状磁性体 ) を複数の磁性体片に分割することによって薄板状磁性体の電流路を分断 する引用発明においても、複数の磁性体片同士が接触する構造ではなく、
磁性体片間の隙間により「絶縁させる」構造であることは明らかであるか ら、原告の上記主張は理由がない。
10 イ 本件審決は、相違点1について、引用発明に引用文献2に記載された技 術事項1を組み合わせることによって容易想到であると判断した上で(こ の点は、原告も争っていない。 、相違点2については、
) 「両面上に樹脂が積 層された磁性シートをローラにより粉砕し、粉砕により生じた隙間に樹脂 が入り込むこと」 (充填されていること)が「普通の事項」であることを前15 提として、「引用発明における薄板磁性シート」は、「圧延ロールに通して 折り曲げ」るなどの方法によって分割されて接着剤が入り込む(充填され ている)から、
「分割された磁性体片間の隙間に接着剤の一部が入り込むと いえ」 その構成が 、 「入り込んだ接着剤が分割された磁性体片を絶縁する」 構成であると説示しており、相違点2に係る構成は、引用文献1に明示的20 な記載がなくても引用発明が備える構成であり、
「普通の事項」 (技術常識) を立証するために引用文献2を挙げているのであって、引用発明に引用文 献2に記載された事項を組み合わせて容易想到と判断しているものでは ない。
原告は、前記1(3)アのとおり、引用発明に引用文献2に記載された事項25 ないし発明を適用する動機付けがなく阻害要因があると主張するが、上記 のとおり、本件審決は、引用文献2を副引用発明として判断しているわけ 15 ではないから、引用発明との動機付けや阻害要因については問題とならな い。
(4) 小括 以上によれば、本件審決が認定した技術事項2の認定に誤りはなく、引用 5 発明は、相違点2の構成を備えていることから、本件審決の判断にも誤りは なく、原告主張の取消事由は理由がない。
当裁判所の判断
1 本願明細書の記載事項について 本願明細書(甲5)には、別紙1のような記載があり、この記載事項によれ10 ば、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明に関し、次のような開示が あることが認められる。
(1) 「本発明」は、無線充電器用磁場遮蔽シートに関し、特に、携帯端末機器 等に充電器機能を非接触(無線)方式で実現するときに発生する交流磁場が 携帯端末機等の本体に及ぼす影響を遮断する、電力伝送効率に優れた無線充15 電器用磁場遮蔽シートに関する(【0001】 。
) (2) 従来の非接触型充電システムの受電装置は、送電効率向上のための結合強 化、発熱抑制のためのシールド性を向上させるために、1次コイル側とは反 対の面である2次コイルの表面に高透磁率及び大きな体積の磁性体(磁性シ ート)を配置するものがあるが、1次コイルのインダクタンスの変動が大き20 くなり、磁性体と1次コイルとの相対位置関係によって共振回路の動作条件 が十分な効果を発揮できる共振条件からずれてしまうという問題が発生し、
このような問題を解決するために、スパイラルコイル(受電側スパイラルコ イル:2次コイル)と二次電池の間、及び整流器と前記スパイラルコイルと の間の少なくとも1箇所に複数の磁性シート(磁性リボン)を含む複合磁性25 体を配置することによって、給電側スパイラルコイル(1次コイル)から発 生した磁束が回路基板及び二次電池等に鎖交するのを防止し、誘導起電力(電 16 磁誘導)に起因するノイズ及び発熱を抑制しながら、2次コイルの有無によ る1次コイルのインダクタンス変動量を制御することで、1次コイルが構成 する共振回路の共振性を向上させて発振を効果的に制御できる技術が提案さ れているが、電力伝送に用いられる100kHzの周波数による交流磁場が 5 非晶質リボンに印加されるとき、リボン表面の渦電流(Eddy Curr ent)の影響による応用機能の低下並びに無線充電時における効率の低下 及び発熱等の問題点がある(【0010】ないし【0012】 【0016】 。
、 ) (3) 無線充電器の2次コイルに誘導される電圧は、ファラデーの法則とレンツ の法則によって決定されるので、高い電圧信号を得るためには、2次コイル10 と鎖交する磁束の量が多いほど有利であり、磁束の量は2次コイルに含まれ た軟磁性材料の量が多いほど、材料の透磁率が高いほど大きくなり、特に無 線充電装置は、本質的に非接触による電力伝送であるため、送信装置の1次 コイルで作られる無線電磁波を受信装置の2次コイルに集束させるためには、
2次コイルが実装される磁場遮蔽シートが透磁率の高い磁性材料からなるこ15 とが必要であるが、従来の無線充電器用磁場遮蔽シートは、薄膜であると共 に遮蔽による発熱問題と無線充電効率を高めることができる解決方法を提示 しておらず、このため、
「本発明者」は、非晶質リボンの場合、リボンがフレ ークしてもインダクタンス(透磁率)の減少は少なく、磁気抵抗の減少が大 きくなされることによって、2次コイルの品質係数(Q)が増加するという20 点を見いだし、「本発明」に至った(【0020】 【0021】 。
、 ) (4) 「本発明」の目的は、非晶質リボンのフレーク処理によって渦電流(Ed dy Current)による損失を大きく減少させることにより携帯端末 機等の本体及びバッテリーに及ぼす磁場の影響を遮断すると同時に、2次コ イルの品質係数(Q)を増加させて、電力伝送効率に優れた無線充電器用磁25 場遮蔽シートを提供することにあり、また、
「本発明」の他の目的は、非晶質 リボンのフレーク処理後、圧着ラミネート処理によって非晶質リボンの細片 17 の隙間に接着剤を充填して水分の浸透を防止すると同時に、細片の全ての面 を接着剤(誘電体)で覆うことによって、細片を相互絶縁(isolati on)させて渦電流の低減を図ることで、遮蔽性能が低下することを防止で きる無線充電器用磁場遮蔽シートを提供することにある 【0022】【00 ( 、
5 23】 。
) (5) 「本発明」では、非晶質リボンのフレーク処理を行うことによって、渦電 流(Eddy Current)による損失を大きく減少させて、携帯端末 機器等の本体及びバッテリーに及ぼす磁場の影響を遮断すると同時に、2次 コイルの品質係数(Q)を増加させるので、電力伝送効率に優れており、ま10 た、
「本発明」では、非晶質リボンのフレーク処理後、圧着ラミネート処理に よって非晶質リボンの細片間の隙間に接着剤を充填して水分の浸透を防止す ると同時に、細片の全ての面を接着剤(誘電体)で覆うことによって、細片 を相互絶縁(isolation)させて渦電流の低減を図り、遮蔽性能が 低下するのを防止することができ、その結果、細片の全ての面を接着剤(誘15 電体)で覆うことによって、水分の浸透により非晶質リボンの外観の劣化及 び特性が悪化するのを防止することができるといった効果を有する(【00 29】 【0030】 。
、 ) 2 引用文献の記載事項について (1)ア 引用文献1(甲1)には、別紙2の記載があり、この記載事項によれば、
20 引用文献1には、次のような開示があることが認められる。
(ア) 携帯電話に代表される携帯型電子機器の小型軽薄化に伴って、携帯 型電子機器等に対する充電方式として、受電装置と給電装置の両方にコ イルを設け、これらコイル間での電磁誘導を利用して充電する方式であ る非接触型充電方式が注目されている(【0002】 ) 。
25 携帯型電子機器の受電装置に共振回路を適用する場合、薄型コイルと 磁性体(磁気コア)とで構成されたインダクタが必要とされ、アモルフ 18 ァス合金や微結晶合金からなるシート状の磁性体を用いることによって L値の向上を図ることができ、また、磁性体シートを磁気シールド等と して用いる場合において、磁性体シートを分割することで渦電流を抑制 することができるが、複数の磁性体個片を敷き置きする場合、隣接する 5 磁性体個片間にある程度の隙間の発生が避けられず、磁性体シートの特 性が低下しやすいなどの問題があった(【0004】 【0006】 。
、 ) (イ) 本発明は、薄板状磁性体(磁性シート)の当初の厚さを保ちつつ、低 コストで薄板状磁性体を分割することを可能とすると共に、分割した磁 性体間における隙間の発生を抑制した磁性シートの製造方法を提供す10 ることを目的とするものであり、本発明の態様に係る磁性シートの製造 方法は、シート基材上に接着層を介して薄板状磁性体を接着して磁性シ ートを形成する工程と、前記薄板磁性体を前記シート基材に接着された 状態を維持しつつ、外力により複数に分割する工程とを具備することを 特徴とするものである(【0007】 【0008】 。
、 )15 イ そして、引用文献1には、【発明を実施するための最良の形態】として、
「図1(a)および図2(a)に示すように、接着層2を有するシート基 材1を用意し、このシート基材1上に接着層2を介して薄板状磁性体3を 接着して磁性シート4を形成する。 ( 」 【0010】 、
) 「薄板状磁性体3とし ては各種の磁性体シート(フィルム)を用いることが可能であるが、アモ20 ルファス合金・・・等の磁性合金を使用することが好ましい。これらの磁性 合金は、いずれもロール急冷法や圧延法等で薄板化(薄帯化)することが 可能であるから、シート基材1上に接着した状態で外力を加えて分割する ことができる。 ( 」 【0013】 、
) 「次に、シート基材1に接着された薄板状 磁性体3に外力を加えて、薄板状磁性体3をシート基材1に接着された状25 態を維持しつつ、複数に分割する。具体的には、 (b) 図1 および図2(b) に示すように、薄板状磁性体3に外力を加えて複数の磁性体片5に分割す 19 る。このように薄板状磁性体3を複数の磁性体片5に分割することによっ て、磁性体シート4を例えばインダクタ用磁性体として用いる場合にQ値 の向上を図ることができる。また、磁性シート4を例えば磁気シールド用 磁性体として用いる場合には、薄板状磁性体3の電流路を分断して渦電流 5 損を低減することが可能となる。 ( 」 【0026】 、
) 「薄板状磁性体の分割工 程は、・・・金型やロールに予め決められた凹凸パターンを設けておくこと によって、薄板状磁性体3を所定形状に割る方法等も適用可能である。」 (【0027】 、
) 「なお、薄板状磁性体3の分割工程における磁性体片5の 飛び散りを防止するために、薄板状磁性体3上には接着剤付き保護フィル10 ム等をカバー層として貼り付けることができる。 【0028】 、
」 ( )「さらに、
上述した分割工程によれば磁性体片5(複数に分割された薄板状磁性体3) 間にほとんど物理的な空隙を生じさせることなく、薄板状磁性体3を電気 的に分断することができる。 ( 」 【0030】 、
) 「薄板状磁性体3の分割数は 特に限定されるものではなく・・・1024分割した場合には0.9×1.215 o程度となる。 ( 」 【0032】 、
) 「磁性シート4は非接触型充電方式の受電 装置側(例えば充填される電子機器側)に設けられる磁気シールドとして も有効である。 ( 」 【0039】)との記載があり、図1及び図2は以下のと おりである。
20 20 ウ 以上の記載を総合すると、引用発明は、
「シート基材上に接着層を介して 薄板状磁性体が接着され、さらに前記薄板状磁性体シートに接着剤付き保 5 護フィルムが貼り付けられている磁性シートであって、前記薄板状磁性シ ートは、アモルファス合金薄帯からなり、凹凸パターンが設けられたロー ルによって圧力が加えられることによって、平均形状が0.9×1.2m m程度の複数の磁性体片に分割され、電磁誘導を利用する非接触型充電方 式の受電装置側に設けられ磁気シールドとして用いられる磁性シート。」10 であると認められる。
(2)ア 引用文献2(甲2)には、
「本発明は、RF-ID、すなわち、ICカー ドやICタグなどの無線通信媒体との通信を行う無線通信媒体処理装置 に用いるアンテナ、あるいは無線通信媒体そのものに搭載されるアンテナ などにおいて、電磁誘導方式、マイクロ方式での通信性を向上させると共15 に、破損に強い磁性シートおよびこれを用いたアンテナ装置に関するもの である。 ( 」 【0001】 、
) 「…図1(a)は、本発明の実施の形態1におい て、両面テープを固定層として用いた場合の磁性シートの斜視図、
(b)は、
図1(a)の分解図、図2は、図1(a)のA-A断面図…である。( 」【0 036】 、
)「次に、両面テープについて説明する。両面テープ3は、固定層20 の一例であって、磁性部材2の下面に設けられて製造時に磁性部材2を固 定する役割を果たすと同時に、両面テープ3のフィルムを剥がしてループ アンテナや整合回路等を接着したり、RF-IDの装置に貼り付けたりす ることができる。 ( 」 【0052】 、
) 「本発明は、商品棚などに収納される非 21 接触ICカードやICタグなどの無線通信媒体に電力と送信データを供 給し、無線通信媒体から受信データを負荷変動により取得する無線通信媒 体処理装置であって、…(略) ( 」 【0108】)との記載があり、図1及び 図2は、以下のとおりである。
5 イ 以上の記載を総合すると、甲2には、非接触IDカードやICタグなど10 の無線通信媒体に電力が供給される装置に利用される磁性シートに関し て(【0001】【0108】 、磁性部材の下面に両面テープを設け、製造 、 ) 時に磁性部材を固定する役割を果たすと同時に、両面テープのフィルムを 剥がしてループアンテナや整合回路等を接着し、又は装置に貼り付ける (【0052】)ことが記載されているといえる(本件審決が認定した技術15 事項1)。
3 技術常識について 22 (1) 以下の各文献には次のような記載があることが認められる。
ア 「エレクトロニクス実装学会誌」(社団法人エレクトロニクス実装学会。
2003年第6巻第4号)(乙5) 「 基材に塗工された接着剤はその後、被着体に貼り付けられることにな 5 る。このとき、圧着により接着剤層は流動して被着体の凹凸面に追従して 行き、マクロな視点からの接着が進行する。そして、接着剤層の表面にあ るポリマー分子が被着体表面の分子とミクロな視点で(分子レベルで)接 近し、分子間相互作用が生じることで接着力が発現する。 (350頁) 」 イ 「接着のレオロジー」 (畑敏雄・日本ゴム協会誌第45巻第10号。1910 72年)(乙6) 「 接着の第2の過程は塗布のさいに、接着剤が流動して固体表面の凹凸 をうめてゆく過程、あるいは接触する2物質が界面で可塑的な変形をおこ す過程である。こうしてしだいに接着面積をふやしてゆくと接着力も時間 的に増大する。…粘着テープはわずかな指圧程度の圧力ですばやく一定の15 接着力を示すことが要求される。これはそのような条件で粘着剤が流動し て、ある程度の接着面積を確保することを意味し、ひとつのレオロジー過 程である。 (883頁) 」 「 とりわけ粘着テープは、指圧程度の小さな静的圧力で容易に流動し、
速い変形に対しては大きな抵抗力を示すという、典型的なレオロジー的性20 質を有した接着剤であって、レオロジーの観点をぬきにしては理解できな い。 (884頁) 」 ウ 「RFタグの開発技術」 (株式会社シーエムシー出版・2003年2月2 8日発行)(乙7) 「 粘着の定義をはじめにしておきたい。粘着とは粘弾性的な接着現象で25 あり、容易に流動して被着体に接触し付着し、剥離しようとする応力に対 して粘弾性的抵抗を示すような接着方式を指す。
23 … @ 投錨効果:古くからの理論。接着剤が被着体の表面凹部に流入し、物 理的なかみ合いにより引っかかりを生じ、抜けにくくなるとい考え方」 (1 31頁)。
5 エ 特開昭60-124679号公報(公開日昭和60年7月3日)(乙8) 「3 発明の詳細な説明 この発明は、セロハンテープ、粘着テープなどの感圧接着剤に関する。
従来のこのような感圧接着剤は、セロハン紙、クラフト紙、プラスチ ックフィルム、プラスチックシート、織布、不織布などの支持体の片面10 または両面全体に、天然ゴム、合成ゴム、塩化ゴムなどのエラストマー と、ロジン、ロジン誘導体、クマロン樹脂、テルペン樹脂、石油樹脂な どの粘着性付与剤と、フタル酸エステル、プロセスオイル、塩化パラフ ィン、ポリブデン、液状樹脂などの軟化剤と、充填剤、酸化防止剤など を加えた配合の感圧型接着剤あるいはアクリル共重合体単独からなる感15 圧型接着剤を塗布したもので、被着体に軽く押圧すると上記感圧型粘着 剤が常温で粘性流動して被着体に接合するものである。 (1頁右下欄1 」 4行〜2頁左上欄9行) オ 「有機樹脂による電子部品接合」(エレクトロニクス実装学会誌Vol. 7No.6。2004年)(乙11)20 「また、接着剤と被着体の界面部には機械的な力も働く。物質はミクロ的 にみれば完全に平滑なものはほとんどなく、鏡面加工した金属でさえもミ クロ的に見れば凹凸は存在すると考えられる。その凹凸へ液状の接着剤が 流れ込んで固体化することで、接着力が発現する。これを投錨効果(アン カー効果)という。凹凸への流れ込むことでの形状効果や接触面積の増大25 効果により、接着力が向上する。 (509頁) 」 。
(2) 以上の記載を総合すると、粘着テープやセロハンテープの接着剤等の基材 24 に塗工される接着剤は、圧力が加えられると、被着体の凹凸面に追従してい くことは、本件優先日当時における技術常識であった(以下、ここで認定し た技術常識を「本件技術常識」という。)と認められる。
4 相違点2の容易想到性の判断の誤りについて 5 (1) 本願発明について ア(ア) 本願発明は、
「多数の細片に分離された非晶質リボンからなる少なく とも1層の薄板磁性シートと、前記薄板磁性シートの一面に、第1接着 層を介して接着される保護フィルムと、前記薄板磁性シートの他面に、
一側面に備えられた第2接着層を介して接着される両面テープとを含み、
10 前記多数の細片の隙間は、前記第1接着層及び第2接着層の一部が充填 されて、前記多数の細片を絶縁(isolation)させることを特 徴とする、無線充電器用磁場遮蔽シート。(下線部は当審で付した。
」 )と の発明特定事項を有するものであるところ、下線部のとおり、
「前記多数 の細片の隙間は」と「前記第1接着層及び第2接着層の一部が充填され15 て」との間、
「前記第1接着層及び第2接着層の一部が充填されて」 「前 と 記多数の細片を絶縁…させる」との間のそれぞれに読点があることから、
「前記多数の細片の隙間は」は、@「前記第1接着層及び第2接着層の 一部が充填されて」と、A「多数の細片を絶縁させる」の両方の主語に 当たるものであるといえる。
20 そして、@の「充填され『て』」の「て」は、後に続く文節の原因を示 すために用いられる場合もあるが、並列関係で後に続く文節を続ける場 合にも用いられるため、本願明細書の記載をみてみると、本願明細書に は、
「本発明では、非晶質リボンのフレーク処理を行うことにより、渦電 流…による損失を大きく減少させて、携帯端末機器などの本体及びバッ25 テリーに及ぼす磁場の影響を遮断する…」【0029】 ( )とあり、実施例 にも、
「また、薄板磁性シート2が多数の細片20に分離される場合、渦 25 電流による損失を減少させることによって、バッテリーの発熱問題を遮 断できるようになる。 【0062】 との記載があり、
」 ( ) これらの記載は、
隙間に接着層の一部が充填されることによるのではなく、非晶質リボン を多数の細片に分離することで、渦電流による損失を減少させること、
5 すなわち、細片の絶縁を生じさせていることが開示されている。
そうすると、本願発明は、多数の細片の隙間が、
「第1接着層及び第2 接着層の一部が充填され」 「多数の細片を絶縁させる」状態にそれぞれ 、
あることを「特徴とする」ものと解することができ、
「第1接着層及び第 2接着層の一部が充填される」ことによって「前記多数の細片を絶縁」10 させるものと限定して解釈する理由はない。
(イ) 次に、
「充填」とは、一般に、
「あいた所につめてふさぐこと」 (広辞 苑第5版。甲12)を意味するところ、上記の発明特定事項からは、
「多 数の細片の隙間」の「充填」の程度は明らかではなく、
「多数の細片の隙 間」が「第1接着層及び第2接着層の一部」で完全に塞がれてしまうも15 のであると一義的に解釈することはできない。
そこで、
「充填」の用語の意義を解釈するために本願明細書の記載をみ てみると、確かに、
【発明が解決しようとする課題】【課題を解決するた 、
めの手段】 【発明の効果】 及び につき、非晶質リボンのフレーク処理後」 「 、
「圧着ラミネート処理によって細片間の隙間に接着剤を充填する」 「細 、
20 片の全ての面を接着剤(誘電体)で覆う」旨の記載が存在する(【002 3】【0027】 【0030】 。しかし、本願発明は、そもそも「非晶 、 、 ) 質リボンのフレーク処理後」 「圧着ラミネート処理によって細片間の隙 、
間に接着剤を充填する」 「細片の全ての面を接着剤(誘電体)で覆う」 、
との発明特定事項を何ら有していないし、前記(ア)のとおり、
「細片を相25 互絶縁させる」原因ないし手段として「細片の全ての面を接着剤(誘電 体)で覆う」ことに限定されるものでもないから、本願明細書の上記記 26 載はラミネート処理をした場合に係る記載と理解すべきであって、この ような記載の存在を理由として、
「多数の細片の隙間」が「第1接着層及 び第2接着層の一部の接着剤」によって完全に充填される(塞がれる) ものと解釈することはできない。
5 また、本願明細書には、【発明を実施するための最良の形態】として、
「 したがって、フレーク処理された積層シート200は、細片20の間 の隙間20aに接着剤を充填すると同時に、平坦化、スリム化及び安定 化のためのラミネート工程を実施する(S15)。その結果、水分の浸透 を防止すると共に、細片20の全ての面を接着剤で覆うことによって、
10 細片20を互いに分離させて渦電流の低減を図ることができる。 【01 ( 」 01】 、 前記ラミネート工程が完了すると、本発明に係る電磁波吸収 )「 シート10は、図13に示すように、非晶質リボン2aが多数の細片2 0に分離された状態で、第1接着層12及び第2接着層31がそれぞれ 部分的に細片20間の隙間20aを充填することで、非晶質リボン2a15 の酸化及び流動を防止する構造を有するようになる。 ( 」 【0108】)と の記載があり、
【図13】には、ラミネート処理後に第1接着層と第2接 着層が細片間の隙間に完全に充填される実施形態の記載があるが、これ らは、
【最良の形態】としての実施例の1つであるにすぎないというべき であり、こうした実施例の記載があるからといって、本願発明の構成と20 して、
「多数の細片の隙間」が「第1接着層及び第2接着層の一部の接着 剤」によって完全に充填される(塞がれる)ものと解釈することはでき ない。
(ウ) 加えて、前記第2の2(2)のとおり、原告は、本件補正において、
「前 記多数の細片間の隙間は、前記第1接着層及び第2接着層の一部の接着25 剤が十分に充填されて、前記細片の全ての面が前記接着剤で覆われてお り」と、
「細片間の隙間」が「第1接着層及び第2接着層の一部が十分に 27 充填され」「全ての面が前記接着剤で覆われる」ことによって、
、 「それに よって前記多数の細片が相互に絶縁」されることを特徴とする磁性シー トと補正し、これらの補正は特許請求の範囲減縮に当たる旨の「意見 書」(甲7)を提出していたことも、本願発明の構成としては、「多数の 5 細片の隙間」が「第1接着層及び第2接着層の一部の接着剤」が完全に 充填される(塞がれる)ものに限定されず、また、こうした「細片の全 ての面が前記接着剤で覆われる」ことによって多数の細片が「相互に」 絶縁される構成に限るものではないことを裏付けるもの というべきで ある。
10 (エ) 以上によれば、本願発明における「磁場遮蔽シート」には、原告が主 張するところの別紙4の最下段の構成だけではなく、「第1接着層及び 第2接着層の一部」が「多数の細片の隙間」の一部に「充填」される形 態である別紙4の上から3番目の構成(以下「本件構成」ともいう。)も 含まれるものであり、また、本願発明は、
「多数の細片の隙間」が「…接15 着層の一部が充填され」るという原因ないし手段によって「前記多数の 細片を絶縁…させる」ものに限定されるものではない。
イ これに対し、原告は、前記第3の1(1)のとおり、本願発明は、@多数の 細片間の隙間は、第1接着層及び第2接着層の一部が充填されていること、
Aそれによって前記多数の細片を絶縁(isolation)させること20 が発明特定事項であり、@及びAを読み合わせれば、第1接着層及び第2 接着層の接着剤は、多数の細片が互いに絶縁させられるに十分な程度に充 填されていることが帰結として導かれる旨主張する。
しかし、本願発明に係る請求項1の発明特定事項からは、第1接着層及 び第2接着層の一部が充填されるという原因ないし手段によって多数の25 細片を絶縁させるものと解することはできず、第1接着層及び第2接着層 の一部が充填されることによって多数の細片の相互絶縁がされるとの発 28 明特定事項は、本件補正によって減縮された発明であることは、前記ア(ア) 及び(ウ)のとおりである。
また、磁性シートが分割により細片されることにより、細片間に隙間が 存在すれば、隙間が接着剤で完全に充填(塞がれる)されなくても、細片 5 同士は電気的に絶縁されるのであるから(引用文献1の【0006】 【0 、
026】のほか、特開2011-134959号公報(公開日平成23年 7月7日。乙10)の【0019】には、
「本願発明の微細クラックが形成 されたFe基ナノ結晶合金薄帯では、…電力伝送を行う高周波領域で発生 する渦電流の経路に対してはその一部が破断し、絶縁状態…となっていて」10 との記載がある。 、
)「前記多数の細片の隙間は、前記第1接着層及び第2接 着層の一部が充填されて、前記多数の細片を絶縁(isolation) させる」という本願発明の特徴を満たすことができるといえる。
したがって、原告の上記主張は理由がない。
(2) 相違点2について15 ア 相違点2は、本願発明は、
「多数の細片間の隙間は、前記第1接着層及び 第2接着層の一部が充填されて、前記多数の細片を絶縁(isolati on)させる」のに対し、引用発明はその旨の特定がされていないという ものであるが、前記(1)のとおり、本願発明の構成は、多数の細片間の隙間 は、第1接着層及び第2接着層の一部によって完全に充填されるものとは20 限らず、本件構成が含まれるものであり、また、細片間の隙間が前記第1 接着層及び第2接着層の一部に充填されることによって多数の細片が絶 縁されるものに限るものではない。
イ これを前提として判断すると、引用文献1によれば、引用発明に係る磁 性シート4は、シート基材1上に接着層2を介して薄板状磁性体3を接着25 し、薄板状磁性体3上には接着剤付き保護フィルムを貼り付けて成るもの であり(【0010】 【0028】 、 、図1(a)、図2(a) ) 、 、こうした磁 29 性シート4に、シート基材1に接着された薄板磁性体3に外力を加えて、
薄板状磁性体3をシート基材1に接着された状態を維持しつつ、複数の磁 性体片5に分割する(【0026】)と、本件技術常識に鑑みれば、薄板磁 性体3を分割する工程によって生じる磁性体片5の隙間に薄板磁性体3 5 を上下に覆っている接着層及び保護フィルムの接着剤の一部が上記隙間 (凹部)に流動して充填されるものと認められる。なお、ここでいう「充 填」は、接着剤が磁性体片間の隙間を完全に接着剤で覆うものではなく、
本件構成のように、磁性体間の隙間の一部に接着剤の一部が入り込んで充 填されるものであってもよいことは前記アで説示したとおりである。
10 また、引用文献1には、
「シート基材1に接着された薄板状磁性体3に外 力を加えて、薄板状磁性体3をシート基材1に接着された状態を維持しつ つ複数に分割する。…磁性シート4を例えば磁気シールド用磁性体として 用いる場合には、薄板状磁性体3の電流路を分断して渦電流損を低減する ことが可能となる。 【0026】 との記載があることから、
」 ( ) 引用発明は、
15 薄板磁性体を複数の細片に分割することによって絶縁するものである。
そして、相違点1、すなわち、シート状の部材に関し、本願発明は両面 テープであるのに対し、引用発明はシート基材である点について、引用発 明のシート基材に代えて技術事項1を採用して相違点1の構成にするこ とは当業者であれば容易に想到し得た旨の本件審決の判断について、原告20 は争っていないところ、引用発明のシート基材の構成を両面テープの構成 とした場合であっても、本件技術常識に鑑みれば、両面テープの接着剤の 一部が磁性体片の隙間(凹部)に流動して充填されるものと認められる。
そうすると、相違点2は、引用発明及び本件技術常識により当業者であ れば容易に想到し得たものといえる。
25 ウ(ア) これに対し、原告は、前記第3の1(2)並びに(3)ア及びイのとおり、
@本件審決が認定した技術事項2の認定に誤りがあり、A引用発明に引 30 用文献2に記載された発明を適用することに阻害要因があり、B仮に適 用が可能であるとしても、引用発明には空隙に樹脂を充填する記載はな く、引用文献2には本願発明の「前記多数の細片間の隙間は、前記第1 接着層及び第2接着層の一部が充填されて、前記多数の細片を絶縁させ 5 る」ことの開示も示唆もないから、引用文献2を適用しても、相違点2 の構成には想到し得ない旨主張する。
確かに、引用文献2には、
「磁性部材2に空隙ができることから樹脂が 磁性部材2に浸透しやすくなり」 (【0058】 、
)「低粘度の樹脂層5が磁 性部材2の切断面をコーディングする(側面を覆う) ( 」 【0061】)と10 の記載があり、これらの記載は、磁性部材2の上部の樹脂が粉砕された 磁性部材の空隙に浸透することが開示されているに止まり、磁性部材2 の下面にある両面テープの接着剤が磁性部材の空隙に浸透することは開 示も示唆もないから、両面テープの接着剤が樹脂からなるものであるか 否かは措くとしても、引用文献2には両面テープの接着剤が粉砕により15 生じた磁性部材の空隙に浸透する旨の技術事項が開示されているとした 本件審決の技術事項2の認定は誤りというべきである。
しかし、前記イのとおり、引用発明及び本件技術常識に鑑みれば、薄 板磁性体3を分割する工程によって生じる磁性体片5の隙間に薄板磁性 体3を上下に覆っている接着層及び保護フィルムの接着剤の一部が上記20 隙間(凹部)に流動して充填されるものと認めることが可能であり、ま た、引用発明は、薄板磁性体を複数の細片に分割することによって絶縁 するものであるから、結局のところ、引用発明は相違点2の構成を備え ているものと認められるのであって、本件審決が認定した技術事項2の 認定に上記の誤りがあるとしても、結論を左右するものではないし、ま25 た、引用文献2に記載された事項の適用の動機付けについて判断するま でもないから、原告の上記主張は理由がない。
31 (イ) また、原告は、前記第3の1(3)ア(イ)のとおり、引用文献1には、接 着剤を充填させて磁性体片を互いに絶縁させることについて開示も示唆 もなく、分割された磁性体片が整然と隔離された構造になるとは限らず、
部分的には磁性体片が互いに接触する構造になる場合もあり得るから、
5 磁性体間の隙間に樹脂が浸透しても小片が接触するため「絶縁」すると は限らない旨主張する。
しかし、前記イのとおり、シート基材上に接着層を介して薄板状磁性 体が接着され、さらに前記薄板状磁性体シートに接着剤付き保護フィル ムが貼り付けられている磁性シートを、凹凸パターンが設けられたロー10 ルによって圧力を加えると、シート基材の接着層の接着剤と薄板磁性シ ートの上部の保護フィルムに付された接着剤の一部が分割した磁性体片 の隙間に流入し、分割された複数の磁性体片の隙間に流入した接着剤に よって、磁性体片が分離された状態が維持されるものといえる。
そして、前記イで指摘した引用文献1の【0026】の記載に加え、
15 引用文献1の【0006】には、
「磁性体シートを磁気シールド等として 用いる場合においても、磁性体シートを分割することで渦電流が抑制さ れるために有効である。例えば、特許文献1には複数の磁性体個片を敷 き置きした集合体をシート基材で保持した磁性シートが記載されている。
…また、磁性体個片を重ねて配置すると電気的な導通が生じて特性が低20 下するばかりでなく、…」との記載があることから、引用文献1では、
シート基材1に接着された薄板磁性体3に外力を加えて複数に分割した 磁性体片5が互いに接触するような構造になるものは、その構成に含ま れていないといえる。
したがって、原告の上記主張は理由がない。
25 (3) 小括 以上によれば、相違点2は、引用発明及び技術常識を踏まえると、当業者 32 であれば容易に想到し得たものであり、本件審決の判断は結論において相当 である。
5 結論 以上によれば、原告主張の取消事由については理由がなく、本件審決には取 5 り消すべき違法は認められないから、原告の請求は棄却されるべきである。
よって、主文のとおり判決する。
追加
10裁判長裁判官菅野雅之裁判官15中村恭裁判官岡山忠広2033 (別紙1)【発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】5本発明は、無線充電器用磁場遮蔽シート及びその製造方法と、それを用いた無線充電器用受信装置に関し、特に、携帯端末機器などに充電器機能を非接触(無線)方式で実現するときに発生する交流磁場が携帯端末機器などの本体に及ぼす影響を遮断する、電力伝送効率に優れた無線充電器用磁場遮蔽シート及びその製造方法と、
それを用いた無線充電器用受信装置に関する。
10【背景技術】【0002】携帯端末機、ビデオカメラなどの電子機器に搭載された二次電池の充電方法には、
2つのタイプの充電方式、すなわち、接触型充電方式と非接触型充電方式がある。
接触型充電方式は、受電装置の電極と給電装置の電極とを直接接触させることによ15って充電を行う方式である。
【0003】接触型充電方式は、その装置構造が単純であるので、幅広い応用分野で一般的に使用されてきたが、電子機器の小型化及び軽量化に伴って各種電子機器の重量が軽くなるにつれて、受電装置の電極と給電装置の電極との間の接触圧が不足し、充電不20良(充電エラー)を起こすなどの問題が生じている。また、二次電池は熱に弱く、
電池の温度上昇を防止する必要があるため、過放電及び過充電を起こさないように回路設計に注意を払わなければならなかった。このような問題に対処するために、
最近では、非接触型充電方式が検討されている。
【0004】25非接触型充電方式は、受電装置と給電装置の両方にコイルを設置することによって、電磁誘導を用いた充電方式である。
34 【0005】非接触型充電器は、フェライトコアを磁心とし、その周りにコイルを巻回することによって小型化を実現している。また、小型化及び薄型化のために、フェライト粉末とアモルファス粉末とを混合して樹脂基板を形成し、この樹脂基板にコイルなど5を実装する技術が提案された。しかし、フェライトは薄く加工すると脆くなり、且つ耐衝撃性が弱くなるため、機器の落下または衝突などによって受電システムに欠陥が発生するという問題があった。
【0006】また、電子機器の薄型化に対応して受電部分を薄型化するために、そのコイルとし10て、金属粉末ペーストを印刷して形成された平面コイルを採用した。この平面コイル及び磁性シートを用いて、結合を強化する構造が提案されている。これらの提案された構造では、磁性体(磁性シート)が、1次、2次コイル間の結合を強化するためのコア材として使用されている。
【0007】15一方、送電速度が大きくなると、隣接した変圧器間の欠陥だけでなく、その周辺部品で発熱による欠陥が発生しやすい。すなわち、平面コイルを使用する場合、平面コイルを通過する磁束が機器内部の基板などに連結されて、電磁誘導により発生する渦電流によって装置内部が発熱するようになる。その結果、大きな電力を送信できないため、充電時間が長くかかるなどの問題があった。
20【0008】このような問題に対処するために、磁性体(磁性シート)は、裏面に対するシールド材(shieldingmember)としても用いられている。十分なシールド効果を得るために、この磁性体(磁性シート)は、透磁率が大きく、且つ面積及び厚さが大きいほど好ましく、より有効なシールド効果を得ることができる。
25【0009】このような磁場遮蔽シートには、非晶質リボン、フェライト、磁性粉末が含まれた35 ポリマーシートなどのような磁性体を使用するのが一般的である。磁場遮蔽及び付加機能の性能を向上させための磁場集束効果については、磁気透磁率の高い非晶質リボン、フェライト、磁性粉末が含まれたポリマーシートの順で良好である。
【0010】5従来の非接触型充電システムの受電装置は、送電効率向上のための結合強化、発熱抑制のためのシールド性を向上させるために、1次コイル側とは反対の面、すなわち、2次コイルの表面に高透磁率及び大きな体積の磁性体(磁性シート)を配置する。このような配置では、1次コイルのインダクタンスの変動が大きくなり、磁性体と1次コイルとの相対位置関係によって、共振回路の動作条件が十分な効果を発10揮できる共振条件からずれてしまう問題が発生する。
【0011】特許文献1には、上記の問題を解決するために、共振性を向上させ、また、発熱を抑制することができる受電装置を提供することによって、受電装置を用いた電子機器及び受電システムは、送電電力を大きくすることが可能となり、充電時間の短縮15が可能な技術を提案している。
【0012】すなわち、特許文献1には、スパイラルコイル(受電側スパイラルコイル:2次コイル)と二次電池との間、及び整流器と前記スパイラルコイルとの間の少なくとも1箇所に複数の磁性シート(磁性リボン)を含む複合磁性体を配置することによっ20て、給電側スパイラルコイル(1次コイル)から発生した磁束が回路基板及び二次電池などに鎖交するのを防止し、誘導起電力(電磁誘導)に起因するノイズ及び発熱を抑制しながら、2次コイルの有無による1次コイルのインダクタンス変動量を制御することで、1次コイルが構成する共振回路の共振性を向上させて発振を効果的に制御できる技術を提案している。
25【0013】前記複合磁性体は、スパイラルコイルと隣接した第1磁性シートの第1磁気抵抗36 が60より小さいか又は同一であり、第1磁性シートに積層される第2磁性シートの第2磁気抵抗が100より大きいか又は同一であるように設定され、(第2磁気抵抗/第1磁気抵抗)値が1.0より大きいか又は同一であるように設定している。
【0014】5前記第1磁性シートは、第1非晶質リボンの両面に接着層を用いてポリカーボネート樹脂をそれぞれ接着して製造し、第2磁性シートは、相対的に比透磁率がさらに大きい第2非晶質リボンの両面に接着層を用いてポリカーボネート樹脂をそれぞれ接着して製造した後、第1磁性シートと第2磁性シートとを接着層を挟んで一体に接着させている。
10【0015】一方、フェライトシートまたは磁性粉末を含有したポリマーシートの場合、非晶質リボンに比べて磁気透磁率が多少低く、このような低い磁気透磁率の性能を改善しようとする場合、数十umの厚さの薄板である非晶質リボンに比べて厚さが厚くなるため、端末機のスリム化傾向に対応し難い部分がある。
15【0016】また、磁気透磁率が高い非晶質リボンの場合は、リボン自体が金属薄板なので厚さに対する負担はないが、電力伝送に用いられる100kHzの周波数による交流磁場が非晶質リボンに印加されるとき、リボン表面の渦電流(EddyCurrent)の影響による応用機能の低下、並びに無線充電時における効率の低下および発20熱などの問題点が発生する。
【0017】Co系やFe系非晶質リボンの場合は、熱処理を通じて若干の表面抵抗を高めることはできるが、渦電流の影響をさらに低くするために、リボンの表面積を減少させるフレーク(Flake)などの加工が施される場合に、磁気透磁率が著しく低25下して、遮蔽シートとしての機能が大きく低下する。
【0018】37 また、無線充電器の場合、充電器の効率を最大限に高めるために、電力伝送送信機に、受信部との整合(align)を助ける永久磁石を採用した構造が多いが、永久磁石の直流磁場によって、薄い遮蔽シートは着磁(飽和)現象が発生して性能が低下したり、また電力伝送効率が急激に低下したりするという問題が生じる。
5【0019】これによって、永久磁石の影響を受けずに遮蔽特性を奏するために、従来は、遮蔽シートの厚さを0.5T以上に非常に厚くしないと高い電力伝送効率を維持できないので、携帯端末機のスリム化を達成するための大きな障害となっている。
【特許文献1】公開特許第10-2010-0031139号10【発明の開示】【発明が解決しようとする課題】【0020】無線充電器の2次コイルに誘導される電圧は、ファラデーの法則(Faraday'slaw)とレンツの法則(Lenz'slaw)によって決定されるので、高い15電圧信号を得るためには、2次コイルと鎖交する磁束の量が多いほど有利である。
磁束の量は、2次コイルに含まれた軟磁性材料の量が多いほど、そして、材料の透磁率が高いほど大きくなる。特に、無線充電装置は、本質的に非接触による電力伝送であるので、送信装置の1次コイルで作られる無線電磁波を受信装置の2次コイルに集束させるためには、2次コイルが実装される磁場遮蔽シートが、透磁率の高20い磁性材料からなることが必要である。
【0021】従来の無線充電器用磁場遮蔽シートは、薄膜であると共に遮蔽による発熱問題と無線充電効率を高めることができる解決方案を提示していない。そこで、本発明者は、非晶質リボンの場合、リボンがフレークされてもインダクタンス(透磁率)の25減少は少なく、磁気抵抗の減少が大きくなされることによって、2次コイルの品質係数(Q)が増加するという点を認識し、本発明に至った。
38 【0022】したがって、本発明は、上記の従来技術の問題点を解決するために提案されたもので、その目的は、非晶質リボンのフレーク処理によって渦電流(EddyCurrent)による損失を大きく減少させることにより、携帯端末機器などの本体及び5バッテリーに及ぼす磁場の影響を遮断すると同時に、2次コイルの品質係数(Q)を増加させて、電力伝送効率に優れた無線充電器用磁場遮蔽シート及びその製造方法とそれを用いた無線充電器用受信装置を提供することにある。
【0023】本発明の他の目的は、非晶質リボンのフレーク処理後、圧着ラミネート処理によっ10て非晶質リボンの細片間の隙間に接着剤を充填して水分の浸透を防止すると同時に、
細片の全ての面を接着剤(誘電体)で覆うことによって、細片を相互絶縁(isolation)させて渦電流の低減を図ることで、遮蔽性能が低下することを防止できる無線充電器用磁場遮蔽シート及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】15【0026】上記の目的を達成するために、本発明は、多数の細片に分離された非晶質リボンからなる少なくとも1層の薄板磁性シートと;前記薄板磁性シートの一面に、第1接着層を介して接着される保護フィルムと;前記薄板磁性シートの他面に、一側面に備えられた第2接着層を介して接着される両面テープと;を含み、前記多数の細片20間の隙間は、前記第1接着層及び第2接着層の一部が充填されて、前記多数の細片を絶縁(isolation)させることを特徴とする無線充電器用磁場遮蔽シートを提供する。
【0027】本発明の他の特徴によれば、本発明は、少なくとも1層の非晶質リボンからなる薄25膜磁性シートの両側面に、保護フィルムと、露出面にリリースフィルムが形成された両面テープとを付着して積層シートを形成するステップと;前記積層シートをフ39 レーク処理して、前記薄膜磁性シートを多数の細片に分割するステップと;前記フレーク処理された積層シートをラミネート処理して、積層シートの平坦化及びスリム化と共に、前記保護フィルムと両面テープに備えられた第1及び第2接着層の一部を前記多数の細片の隙間に充填させて絶縁(isolation)させるステッ5プとを含むことを特徴とする無線充電器用磁場遮蔽シートの製造方法を提供する。
;【発明の効果】【0029】上記したように、本発明では、非晶質リボンのフレーク処理を行うことにより、渦電流(EddyCurrent)による損失を大きく減少させて、携帯端末機器な10どの本体及びバッテリーに及ぼす磁場の影響を遮断すると同時に、2次コイルの品質係数(Q)を増加させるので、電力伝送効率に優れている。
【0030】また、本発明では、非晶質リボンのフレーク処理後、圧着ラミネート処理によって非晶質リボンの細片間の隙間に接着剤を充填して水分の浸透を防止すると同時に、
15細片の全ての面を接着剤(誘電体)で覆うことによって、細片を相互絶縁(isolation)させて渦電流の低減を図り、遮蔽性能が低下するのを防止することができる。その結果、細片の全ての面を接着剤(誘電体)で覆うことによって、水分の浸透により非晶質リボンが酸化して外観の変化及び特性が悪化するのを防止することができる。
20【発明を実施するための最良の形態】【0036】添付した図1は、本発明に係る無線充電器用磁場遮蔽シートを示す分解斜視図である。図2は、第1実施例によって1枚のナノ結晶粒リボンシートを用いる例を示す断面図である。
25【0037】図1及び図2を参照すると、本発明の好ましい第1実施例に係る無線充電器用磁40 場遮蔽シート10は、非晶質合金またはナノ結晶粒合金のリボンを熱処理した後、
フレーク処理して多数の細片20に分離及び/またはクラックが形成された少なくとも1層以上の多層薄板磁性シート2と、前記薄板磁性シート2の上部に接着される保護フィルム1と、前記薄板磁性シート2の下部に接着される両面テープ3と、
5前記両面テープ3の下部に分離可能に接着されるリリースフィルム4とを含んでいる。
【0038】前記薄板磁性シート2は、例えば、非晶質合金またはナノ結晶粒合金からなる薄板のリボンを用いることができる。
10【0039】前記非晶質合金は、Fe系またはCo系磁性合金を用いることができ、材料コストを考慮するとき、Fe系磁性合金を用いることが好ましい。
【0040】Fe系磁性合金は、例えば、Fe-Si-B合金を用いることができ、Feが7015〜90atomic%、Si及びBの合計が10〜30atomic%であることが好ましい。Feとその他の金属の含量が高いほど飽和磁束密度が高くなるが、Fe元素の含量が多すぎると、非晶質を形成しにくいため、本発明では、Feの含量が70〜90atomic%であることが好ましい。また、Si及びBの合計が10〜30atomic%の範囲であるときに合金の非晶質形成能が最も高い。この20ような基本組成に、腐食を防止するためにCr、Coなどの耐腐食性元素を20atomic%以内に添加してもよく、他の特性を付与するように、必要によって他の金属元素を少量含めることができる。
【0041】前記Fe-Si-B合金は、例えば、結晶化温度が508℃であり、キュリー温度25(Tc)が399℃であるものを用いることができる。しかし、このような結晶化温度は、Si及びBの含量や、3元系合金成分以外に添加される他の金属元素及び41 その含量によって変動することができる。
【0042】本発明は、Fe系非晶質合金として、必要によって、Fe-Si-B-Co系合金を用いることができる。
5【0043】一方、前記薄板磁性シート2は、Fe系ナノ結晶粒磁性合金からなる薄板のリボンを用いることができる。
【0049】前記保護フィルム1は、図4に示すように、例えば、ポリエチレンテレフタレート10(PET)フィルム、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリフェニレンスルフィド(PPS)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素樹脂系フィルムなどの樹脂フィルム11を用いることができ、第1接着層12を介して薄板磁性シート2の一側面に付着される。
15【0051】本発明に用いられる保護フィルム1は、非晶質リボンシート2の一側面に付着されるとき、第1接着層12の他面に第1接着層12を保護するために付着されたリリースフィルム4aは除去した上で付着される。
【0052】20また、両面テープ3は、図5に示すように、例えば、PET(PolyethyleneTerephthalate)フィルムのようなフッ素樹脂系フィルムを基材32として使用し、両側面に第2及び第3接着層31、33が形成されたものを用い、第2及び第3接着層31、33の外側面にはリリースフィルム4が付着されている。前記リリースフィルム4は、両面テープ3の製造時に一体に形成され、
25遮蔽シート10を電子機器に付着するときに剥離されて除去される。
【0055】42 前記第1〜第3接着層12、31、33は、例えば、アクリル系接着剤を用いることができ、他の種類の接着剤を用いることももちろん可能である。
【0058】一方、無線充電器の受信装置が携帯端末機器100のバッテリーカバー5に設置5されて使用されるとき、無線充電器用磁場遮蔽シート10は、図16及び図17に示すように、2次コイル(受信コイル)6が遮蔽シート10に付着されて使用される。この場合、2次コイル6が共振回路を形成しているので、遮蔽シート10は、
2次コイル(受信コイル)6が形成する共振回路のインダクタンスに影響を及ぼすようになる。
10【0059】この場合、磁場遮蔽シート10は、送信装置からの無線電力信号が携帯端末機器100に及ぼす影響を遮断する磁場遮蔽の役割と同時に、受信装置の2次コイル6に無線電力信号が高効率で受信されるように誘導するインダクタとしての役割を果たす。
15【0060】薄板磁性シート2は、フレーク処理により多数の細片20に分離され、多数の細片20は、数十um〜3mm以下の大きさを有することが好ましい。
【0061】薄板磁性シート2は、フレーク処理が行われて多数の細片20に分離される場合、
20磁性シートのインダクタンス(L)値の減少よりも、磁気抵抗(R)の減少がさらに大きくなる。その結果、薄板磁性シート2のフレーク処理が行われると、受信装置の2次コイル6が形成する共振回路の品質係数(Q)が増加して、電力伝送効率が増加するようになる。
【0062】25また、薄板磁性シート2が多数の細片20に分離される場合、渦電流による損失を減少させることによって、バッテリーの発熱問題を遮断できるようになる。
43 【0063】さらに、本発明では、薄板磁性シート2が、図10に示すようにフレークされた後、
図13に示すようにラミネート処理されることによって、多数の細片20間の隙間20aに第1及び第2接着層12、31の一部が浸透して、多数の細片20が、誘5電体の役割をする接着剤により分離(isolation)がなされるようになる。
【0064】その結果、単純にフレーク処理のみが行われる場合、細片20の流動により細片20が互いに接触することによって細片20の大きさが増加して、渦電流損失が増加するという問題が発生することがあるが、ラミネーション処理により細片20の全10面が誘電体で覆われるので、このような問題が遮断される。
【0065】図2に示すように、本発明の第1実施例に係る無線充電器用磁場遮蔽シート10aは、薄板磁性シートとして1枚の非晶質リボンシート21を用い、一側面に保護フィルム1が接着され、他側面に両面テープ3を介してリリースフィルム4が接着15される構造を有する。
【0082】以下、本発明に係る磁場遮蔽シートの製造方法を、図7を参照して説明する。
【0083】まず、非晶質合金またはナノ結晶粒合金からなる非晶質リボン2aをメルトスピ20ニングによる急冷凝固法(RSP)で製造した後(S11)、熱処理後の後処理を容易にすることができるように、まず、一定の長さにカッティングして、シート状に積層する(S12)。
【0084】非晶質リボン2aが非晶質合金である場合、Fe系非晶質リボン、例えば、Fe-25Si-BまたはFe-Si-B-Co合金からなる30um以下の極薄型の非晶質リボンをメルトスピニングによる急冷凝固法(RSP)で製造し、所望の透磁率を44 得ることができるように積層された非晶質リボンを、300℃〜600℃の温度範囲で30分〜2時間の無磁場熱処理を行う(S13)。
【0091】さらに、前記非晶質リボンは、熱処理が行われると脆性が強くなり、後続工程でフ5レーク処理を実施するときに容易にフレークが行われるようになる。
【0092】次に、熱処理が行われた非晶質リボン2aを1枚または所望の層数の多層として使用して、一側に保護フィルム1を付着し、他側にリリースフィルム4が付着された両面テープ3を付着した状態でフレーク処理を実施する(S14)。
10【0093】前記フレーク処理は、例えば、保護フィルム1、非晶質リボン2a、両面テープ3及びリリースフィルム4が順次積層された積層シート100を、第1及び第2フレーク装置110、120を通過させることによって、非晶質リボン2aを多数の細片20に分離させる。この場合、分離された多数の細片20は、両側面に接着され15た第1及び第2接着層12、31によって分離された状態を維持するようになる。
【0094】使用可能な第1フレーク装置110は、例えば、図8に示すように、外面に複数の凹凸116が形成された金属ローラ112と、金属ローラ112と対向して配置されたゴムローラ114とで構成されてもよく、第2フレーク装置120は、図9に20示すように、外面に複数の球状のボール126が装着された金属ローラ122と、
金属ローラ122と対向して配置されるゴムローラ124とで構成されてもよい。
【0095】このように、積層シート100を第1及び第2フレーク装置110、120を通過させると、図10に示すように、非晶質リボン2aが多数の細片20に分離されな25がら、細片20の間には隙間20aが発生する。
【0096】45 非晶質リボン2aの多数の細片20は、数十um〜3mmの範囲の大きさを有するように形成されるので、反磁場を増加させてヒステリシスロスを除去することによって、シートに対する透磁率の均一性を高めるようになる。
【0097】5また、非晶質リボン2aは、フレーク処理により細片20の表面積を減少させることによって、交流磁場によって生成される渦電流(EddyCurrent)に起因する発熱問題を遮断することができる。
【0098】フレーク処理された積層シート200は、細片20の間に隙間20aが存在する10ようになり、この隙間20aに水分が浸透すると、非晶質リボンが酸化して非晶質リボンの外観が悪くなり、遮蔽性能が低下する。
【0099】また、フレーク処理のみ行われる場合、細片20の流動によって細片20が互いに接触することによって、細片20の大きさが増加して渦電流損失が増加するという15問題が生じ得る。
【0100】さらに、前記フレーク処理された積層シート200は、フレーク処理時にシートの表面不均一が発生することがあり、フレーク処理されたリボンの安定化が必要である。
20【0101】したがって、フレーク処理された積層シート200は、細片20の間の隙間20aに接着剤を充填すると同時に、平坦化、スリム化及び安定化のためのラミネート工程を実施する(S15)。その結果、水分の浸透を防止すると共に、細片20の全ての面を接着剤で覆うことによって、細片20を互いに分離させて渦電流の低減を図25ることができる。
【0102】46 前記ラミネート工程のためのラミネート装置400、500は、図11に示すように、フレーク処理された積層シート200が通過する第1加圧ローラ210と、第1加圧ローラ210と一定間隔を置いて配置される第2加圧ローラ220とで構成されるロールプレスタイプが適用されてもよく、図12に示すように、下部加圧部5材240と、下部加圧部材240の上側に垂直方向に移動可能に配置される上部加圧部材250とで構成される油圧プレスタイプが使用されてもよい。
【0103】フレーク処理された積層シート200を、常温または50〜80℃の温度で熱を加えた後、ラミネート装置400、500を通過させると、保護フィルム1の第110接着層12が加圧されながら、第1接着層12の一部の接着剤が隙間20aに流入すると共に、両面テープ30が加圧されながら、第2接着層31の一部の接着剤が隙間20aに流入して隙間20aを密封するようになる。
【0104】ここで、第1接着層12及び第2接着層31は、常温で加圧すると変形可能な接着15剤を使用するか、または熱を加えると変形する熱可塑性接着剤を使用してもよい。
【0105】そして、第1接着層12及び第2接着層31の厚さは、多数の細片の間の隙間20aを十分に充填することができるように、非晶質リボンの厚さに対して50%以上の厚さを有することが好ましい。
20【0106】また、第1接着層12及び第2接着層31の接着剤が隙間20aに流入することができるように、第1加圧ローラ210と第2加圧ローラ220との間隔、及び上部加圧部材が下降した状態での上部加圧部材250と下部加圧部材240との間隔は、積層シート200の厚さの50%以下に形成することが好ましい。
25【0107】本発明では、積層シート100、200の圧着及びフレーク処理を行うことができ47 るものであれば、いかなる装置を使用してもよい。
【0108】前記ラミネート工程が完了すると、本発明に係る電磁波吸収シート10は、図13に示すように、非晶質リボン2aが多数の細片20に分離された状態で、第1接着5層12及び第2接着層31がそれぞれ部分的に細片20間の隙間20aを充填することで、非晶質リボン2aの酸化及び流動を防止する構造を有するようになる。
【0109】最後に、前記ラミネートが行われた磁場遮蔽シート10は、電子機器に使用される場所及び用途に応じて、必要な大きさ及び形状にスタンピング加工されて製品化さ10れる。(S16)。
【0112】(湿度テスト)上記で得られた本発明に係る磁場遮蔽シート10、及びフレーク処理後にラミネート工程を経ていない積層シート200に対して、温度85℃、湿度85%で12150時間湿度テストを進行した。
【0113】その結果、フレーク処理のみ行った積層シート200の場合、図14Aに示すように、非晶質リボンが多数の細片に分離された状態の時に細片の間の隙間に水分が浸透して、非晶質リボンが酸化して外観が変化したことがわかる。本発明に係る磁場20遮蔽シート10は、図14に示すように、外観が変化していないことがわかる。
…【0122】図16は、本発明に係る磁場遮蔽シートが無線充電器の受信装置に適用された構造を示す分解斜視図である。図17は、図16の無線充電器用受信装置がバッテリ25ーカバーに組み立てられて携帯端末機器に結合されることを示す分解斜視図である。
【0123】48 図16を参照すると、本発明に係る磁場遮蔽シートが無線充電器の受信装置に適用されるとき、磁場遮蔽シート10の保護フィルムの上部には、両面テープ30bを用いて無線充電器の受信側2次コイル6が付着され、磁場遮蔽シート10の下部には、リリースフィルム4を除去して露出された両面テープの接着層33に仕上げ5材を付着させる。
【0124】また、前記アンテナ組立方法の代わりに、磁場遮蔽シート10のリリースフィルム4を除去し、両面テープ3に無線充電器の2次コイル6を付着することも可能である。
10【0125】前記2次コイル6と磁場遮蔽シート10との組立体は、図17に示すように、携帯端末機器100のバッテリーカバー5に両面テープ30aを用いて付着した後、バッテリーカバー5が携帯端末機器100に結合されると、磁場遮蔽シート10はバッテリー7をカバーする形態で使用される。
15【0126】前記磁場遮蔽シート10の組立位置は、バッテリーの外部に配置されること以外に、周知の他の方法で配置されることも勿論可能である。
【0127】前記2次コイル6は、周知のいかなる構造を有するものも使用可能である。例え20ば、2次コイル6は、図16に示したように、ポリイミド(PI)のような合成樹脂からなる基板6bに四角形、円形、楕円形のいずれか一つの形状からなるスパイラルコイル6aで構成されてもよい。
【0128】前記2次コイル6は、合成樹脂基板6bと両面テープ30bの代わりに、絶縁層の25役割を果たす一つの接着シート、例えば、両面テープに直接スパイラルコイル6aを転写方式で形成することによって、薄膜構造で組み立てることができる。
49 【0129】この場合、スパイラルコイル6aは、無線で電力を受信するものであるので、一般のコイルを平面インダクタの形態で巻線して基板に付着させて使用することも可能である。
5【0130】一方、携帯端末機器100には、本体の内部に、2次コイル6のスパイラルコイル6aから発生した交流電圧を直流に整流する整流器(図示せず)を含み、整流された直流電圧はバッテリー(二次電池)7に充電される。
【0131】10上記のように、2次コイル6と磁場遮蔽シート10との組立体を携帯端末機器100のバッテリーカバー5に備えられる場合、携帯端末機器に無線充電機能を非接触(無線)方式で実現するときに発生する交流磁場によって携帯端末機器100に及ぼす影響を遮断し、無線充電機能を行うのに必要な電磁波を吸収できるようになる。
15【0132】すなわち、本発明の磁場遮蔽シート10は、フレーク処理されて多数の細片20に分離された多層の磁性シート2を備えることによって、Q値が上昇して電力伝送効率が増加し、同時にフレーク処理によりリボンの表面積を減少させることによって、
交流磁場によって生成される渦電流(EddyCurrent)に起因する発熱問20題を遮断することができる。
【0133】その結果、送信装置の1次コイルから発生した磁束が、携帯端末機の回路基板及びバッテリー(二次電池)7などに鎖交することを遮断して、発熱を抑制する。
…25【実施例】【0144】50 (実施例1〜4、比較例1〜3)(磁場遮蔽シートの電気的特性)磁場遮蔽シートを使用していない場合(比較例1)、熱処理していない1枚の非晶質リボンシートを使用した磁場遮蔽シート(比較例2)熱処理された1枚のナノ結、
5晶粒リボンシートを使用した磁場遮蔽シート(比較例3)熱処理された1枚のナノ、
結晶粒リボンシートを使用し、フレーク処理した磁場遮蔽シート(実施例1)、熱処理された2枚のナノ結晶粒リボンシートを使用し、フレーク処理した磁場遮蔽シート(実施例2)、熱処理された3枚のナノ結晶粒リボンシートを使用し、フレーク処理した磁場遮蔽シート(実施例3)熱処理された4枚のナノ結晶粒リボンシートを、
10使用し、フレーク処理した磁場遮蔽シート(実施例4)をそれぞれ製造した。
【0145】遮蔽シートに適用された非晶質リボンは、Fe73.5Cu1Nb3Si13.5B9合金からなる非晶質リボンを、メルトスピニングによる急冷凝固法(RSP)で25umの厚さに製造した後、シート状にカッティングして、580℃、N2雰囲気、1時15間無磁場熱処理して得られた非晶質リボンシートを、PET基材を使用する10umの厚さの保護フィルムとPET基材を使用する10umの厚さの両面テープ(リリースフィルム別途)との間に挿入して積層シートを準備し、図8のフレーク処理装置及び図11のラミネート装置を用いて、フレーク及びラミネート処理を実施した。2枚以上のナノ結晶粒リボンシートを積層するときにシートの間に挿入された20両面テープは、PETフィルムの両面にアクリル系接着剤層が形成されたもので、
12umの厚さを有するものを使用した。
【0146】作製された遮蔽シートを無線充電器に使用するときに2次コイルに及ぼす影響を確認するために、遮蔽シートに結合された2次コイル、すなわち、測定コイルとし25て、12.2uHのインダクタンスと237mΩの抵抗を有する円形の平面コイルを使用した。LCRメータに測定コイルを連結した後、遮蔽シート上に位置させ、
51 約500gの重量を有する直六面体を測定コイル上に載置して一定の圧力を加えた状態で、LCRメータのセッティング値を100kHz、1Vに設定した後、インダクタンス(Ls)磁気抵抗、(Rs)インピーダンス、(Z)コイルの品質係数、(Q)を測定して、下記表1に示す。
5【表1】【0147】上記表1からわかるように、熱処理していないリボンを使用した遮蔽シート(比較例2)の場合、透磁率が低いため、2次コイルのインダクタンス(Ls)値は小さ10く、リボンの電気抵抗が低いため、磁気抵抗(Rs)値は大きく、よって、コイルの品質係数であるQ値が著しく低いことが確認できた。
【0148】熱処理されたリボンシートを使用した遮蔽シート(比較例3)の場合、透磁率が高くなって2次コイルのインダクタンス(Ls)値は大きくなり、熱処理によりリボ15ンシートに生成されたナノ結晶粒微細組織を通じてリボンシートの電気抵抗が大きくなって磁気抵抗(Rs)値が熱処理前に比べて大きく低下した。それによって、
コイルの品質係数(Q)値が熱処理前に比べて大きく上昇したことが確認できた。
【0149】また、熱処理されたリボンシートを使用すると同時に、リボンシートをフレーク52 (Flake)した遮蔽シート(実施例1)の場合、2次コイルのインダクタンス(Ls)値は大きく変化せず、磁気抵抗(Rs)値はフレーク処理しなかったときよりも非常に低かった。よって、全体的なコイルのQ値はさらに上昇したことがわかる。
5【0150】さらに、実施例1と比較してリボンシートの積層数を高くすればするほど、コイルの品質係数(Q)値は大きく上昇することが確認できた。
【0151】上記のように、本発明に係る遮蔽シートを無線充電器に使用すれば、2次コイルの10インダクタンス(Ls)とQ値が高くなり、磁気抵抗(Rs)値は減少することによって、無線充電器の2次コイルに対する送信装置から伝送された磁束の伝送効率の増大を図ることができる。
【産業上の利用可能性】【0176】15本発明の無線充電器用磁場遮蔽シートは、携帯端末機を含んだ各種ポータブル電子機器に適用されて、非接触(無線)方式で無線充電を実現するときに発生する交流及び直流磁場によって携帯端末機器などに及ぼす影響を遮断し、無線充電に必要な電磁波を吸収することを助ける無線充電器の磁場遮蔽シートに適用することができる。
53 54 55 556 57 (別紙2)【0002】携帯電話に代表される携帯型電子機器の小型軽薄化等に伴って、携帯型電子機器等に対する充填方式として非接触型充電方式が注目されている。非接触型充電方式5は、受電装置と給電装置の両方にコイルを設け、これらコイル間での電磁誘導を利用して充電する方式である。非接触型充電方式は電極同士を接触させないため、電極が剥き出しにならず錆びないという利点を有する。また、接触型充電方式では機器毎に異なる形状の接続プラグと充電器が使用されるが、電極を必要としない非接触型充電方式は充電器を共用化することができるという利点を有する。
10【0004】ところで、携帯型電子機器の受電装置に共振回路を適用する場合、携帯型電子機器に内蔵するために、薄型のコイルと磁性体(磁気コア)とで構成されたインダクタが必要とされる。インダクタの磁性体には伝送周波数に応じた材料が選択されるが、
数10kHz以上の周波数で多用されるフェライトは薄くすることが困難であると15共に、衝撃や急速な電力投入による熱歪等により割れやすいという難点を有している。一方、金属系の磁性材料である珪素鋼板やパーマロイは材料を薄くしないと損失が大きく、Q値、L値、透磁率が共に低いという難点を有している。これらに対して、アモルファス合金や微結晶合金からなるシート状の磁性体を用いることによって、L値の向上を図ることができる。
20【0006】また、磁性体シートを磁気シールド等として用いる場合においても、磁性体シートを分割することで渦電流が抑制されるために有効である。例えば、特許文献1には複数の磁性体個片を敷き置きした集合体をシート基材で保持した磁性シートが記載されている。ここでは、磁性シートをRFIDアンテナの磁性体として用いている。
25このように、複数の磁性体個片を敷き置きする場合、隣接する磁性体個片間にある程度の隙間の発生が避けられず、磁性体シートの特性が低下しやすい。また、磁性58 体個片を重ねて配置すると電気的な導通が生じて特性が低下するばかりでなく、磁性体シートの厚さも厚くなってしまう。複数の磁性体個片を敷き置きする方法は製造コストの増大も避けられない。
【特許文献1】特開2006-174223号公報5【発明の開示】【発明が解決しようとする課題】【0007】本発明の目的は、薄板状磁性体(磁性体シート)の当初の厚さを保ちつつ、低コストで薄板状磁性体を分割することを可能にすると共に、分割した磁性体間における10隙間の発生を抑制した磁性シートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】【0008】本発明の態様に係る磁性シートの製造方法は、シート基材上に接着層を介して薄板状磁性体を接着して磁性シートを形成する工程と、前記薄板状磁性体を前記シー15ト基材に接着された状態を維持しつつ、Q値の向上または渦電流損の低減のために外力により複数に分割する工程とを具備する磁性シートの製造方法であって、前記薄板状磁性体は、アモルファス合金または微結晶合金からなり、かつ5μm以上30μm以下の範囲の厚さを有し、前記磁性シートは100kHz以上の周波数帯で使用されることを特徴としている。
20【発明の効果】【0009】本発明の態様に係る磁性シートの製造方法によれば、薄板状磁性体の当初の厚さを保ちつつ、低コストで薄板状磁性体を複数に分割することができ、その上で分割した磁性体間における隙間の発生を抑制することが可能となる。従って、特性や信25頼性等に優れる磁性シートを低コストで提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】59 【0010】以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。図1および図2は本発明の一実施形態による磁性シートの製造工程を示す図である。まず、
図1(a)および図2(a)に示すように、接着層2を有するシート基材1を用意5し、このシート基材1上に接着層2を介して薄板状磁性体3を接着して磁性シート4を形成する。シート基材1は薄板状磁性体3の分割を阻害しない程度の可撓性と厚さを有しているものであればよく、各種の絶縁樹脂材料からなる樹脂フィルムを使用することができる。
【0011】10シート基材1には、例えば厚さが1μm以上100μm以下のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素樹脂フィルム等の樹脂フィルムが好適である。
15【0012】樹脂材質にもよるが、樹脂フィルムの厚さが100μmを超えるとシート基材1として用いた際に薄板状磁性体3の分割を阻害するおそれがある。一方、シート基材1の厚さが1μm未満であると、分割後の薄板状磁性体3の支持体としての機能が低下するおそれがある。接着層2にはアクリル樹脂、シリコーン樹脂、ブタジエ20ン樹脂等からなる接着剤やホットメルト等を適用することができる。
【0013】上述したような樹脂フィルムの表面に接着剤を塗布したり、あるいは予め接着剤付きの樹脂フィルムを用いることによって、接着層2を有するシート基材1とする。
このようなシート基材1上に接着層2を介して薄板状磁性体3を接着する。薄板状25磁性体3としては各種の磁性体シート(フィルム)を用いることが可能であるが、
アモルファス合金、微結晶合金、パーマロイ等の磁性合金を使用することが好まし60 い。これらの磁性合金は、いずれもロール急冷法や圧延法等で薄板化(薄帯化)することが可能であることから、シート基材1上に接着した状態で外力を加えて分割することができる。
【0020】5微結晶合金の具体例としては、
一般式:Fe100-c-d-e-f-g-hAcDdEeSifBgZh…(2)(式中、AはCuおよびAuから選ばれる少なくとも1種の元素を、DはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Ni、Coおよび希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素を、EはMn、Al、Ga、Ge、In、Snおよび10白金族元素から選ばれる少なくとも1種の元素を、ZはC、NおよびPから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、c、d、e、f、gおよびhは0.01≦c≦8at%、0.01≦d≦10at%、0≦e≦10at%、10≦f≦25at%、
3≦g≦12at%、15≦f+g+h≦35at%を満足する数である)で表される組成を有するFe基合金からなり、かつ面積比で組織の20%以上が粒径5015nm以下の微結晶粒からなるものが挙げられる。
【0023】薄板状磁性体3として用いるアモルファス合金薄帯は、例えばロール急冷法(溶湯急冷法)により作製することができる。具体的には、所定の組成比に調整した合金素材を溶融状態から急冷することにより作製される。微結晶合金薄帯は、例えば液20体急冷法によりアモルファス合金薄帯を作製した後、その結晶化温度に対して-50〜+120℃の範囲の温度で1分〜5時間の熱処埋を行い、微結晶粒を析出させる方法により得ることができる。あるいは、液体急冷法の急冷速度を制御して微結晶粒を直接析出させる方法によっても、微結晶合金薄帯を得ることができる。なお、
パーマロイは溶解インゴットや焼結インゴットを用いて鍛造、圧延等により薄帯化25することができる。
【0024】61 アモルファス合金や微結晶合金からなる薄板状磁性体3は、分割工程前に熱処理を施しておくことが好ましい。アモルファス合金や微結晶合金は熱処理を施すことで脆くなるため、後に詳述する分割工程で外力を加えた際に、容易に割る(複数に分割する)ことができる。熱処理は薄板状磁性体3をシート基材1に接着する前に5施すことが好ましい。アモルファス合金からなる薄板状磁性体3に対しては、大気雰囲気もしくは窒素やアルゴン等の雰囲気中にて300〜500℃の温度で0.1〜10時間の条件で熱処理を施すことが好ましい。微結晶合金からなる薄板状磁性体3に対しては、窒素やアルゴン等の雰囲気中にて550〜700℃の温度で0.1〜10時間の条件で熱処理を施すことが好ましい。
10【0025】上述したような磁性合金からなる薄板状磁性体3の厚さは5μm以上30μm以下の範囲とすることが好ましい。薄板状磁性体3の厚さが30μmを超えると、材料作製時にアモルファス化が困難となり、部分的な結晶の発生や内部歪の増加等によって、熱処理を施したアモルファス合金や微結晶合金からなる薄板状磁性体3で15あっても不均一な割れが生じやすくなり、所望の形状に分割しにくくなる。一方、
薄板状磁性体3の厚さは5μm未満であると材料自体の強度が弱くなることで、不均一な割れが生じやすくなる。薄板状磁性体3の厚さは10μm以上20μm以下の範囲とすることがより好ましい。
【0026】20次に、シート基材1に接着された薄板状磁性体3に外力を加えて、薄板状磁性体3をシート基材1に接着された状態を維持しつつ複数に分割する。具体的には、図1(b)および図2(b)に示すように、薄板状磁性体3に外力を加えて複数の磁性体片5に分割する。このように、薄板状磁性体3を複数の磁性体片5に分割することによって、磁性シート4を例えばインダクタ用磁性体として用いる場合にQ値の25向上を図ることができる。また、磁性シート4を例えば磁気シールド用磁性体として用いる場合には、薄板状磁性体3の電流路を分断して渦電流損を低減することが62 可能となる。
【0027】薄板状磁性体3の分割工程は、例えば磁性シート4を直接折り曲げて薄板状磁性体3を割ることにより実施される。このような方法以外にも、例えば磁性シート45を圧延ロールに通して折り曲げたり、また金型で押し割る等の方法を適用することができる。さらに、金型やロールに予め決められた凹凸パターンを設けておくことによって、薄板状磁性体3を所定形状に割る方法等も適用可能である。シート基材1や薄板状磁性体3の材質条件等によっては、一対の金型やロールの一方にゴム等の変形しやすい材料を用いてもよい。圧延ロールを用いる場合には一対のロールの10周速に差を設け、単なる圧力だけではなく、せん断力を加えることも有効である。
【0028】なお、薄板状磁性体3の分割工程における磁性体片5の飛び散りを防止するために、薄板状磁性体3上には接着剤付き保護フィルム等をカバー層として貼り付けることができる。また、接着剤付き保護フィルムは後工程時や使用時における磁性体15片5の脱落等を防止するために、分割工程後に薄板状磁性体3上に貼り付けてもよい。実際の使用に際しては、シート基材1や保護フィルム等を剥がして接着層を露出させ、この接着層を利用してコイル、各種部品、機器筐体等に貼り付けることも可能である。
【0029】20上述した分割工程は低コストで薄板状磁性体3を分割することができるだけでなく、薄板状磁性体3がシート基材1に接着された状態を維持しつつ実施されるため、
分割後の磁性体片5を脱落させることなく、かつ薄板状磁性体3の当初の厚さを保ちつつ、薄板状磁性体3を容易に分割することができる。従って、低コストでかつ効率よく複数に分割された薄板状磁性体3(複数の磁性体片5)を有する磁性シー25ト4を、特性や信頼性等を低下させることなく得ることが可能となる。
【0030】63 さらに、上述した分割工程によれば磁性体片5(複数に分割された薄板状磁性体3)間にほとんど物理的な空隙を生じさせることなく、薄板状磁性体3を電気的に分断することができる。具体的には、複数に分割された薄板状磁性体3の見掛け上の占有面積に対する間隙部(各磁性体片5間の隙間)の面積比を5%以下とするこ5とができる。間隙部の面積比は3%以下とすることがより好ましい。ここで、複数に分割された薄板状磁性体3の見掛け上の占有面積とは、当初の薄板状磁性体3の面積に相当するものであり、例えば図2(b)では複数の磁性体片5の集合体の最外形に基づく面積を示すものである。
【0031】10このように、磁性体片5間の隙間の発生を極力抑える(間隙部の面積比を5%以下とする)ことによって、薄板状磁性体3の磁気特性の低下を抑制することができると共に、間隙部(空隙)に起因するノイズや磁束の漏れ等を抑制することが可能となる。例えば、従来の磁性体個片を敷き置きする方法では、例えば磁性体個片同士の重なりを防ぐために隙間の発生が避けられず、これにより間隙部(空隙)の面積15比が増大する。さらに、隙間を最小限にして磁性体個片を整列させる場合には、製造コストが大幅に増加する。また、この場合でも間隙部(空隙)の面積比を十分に低減することはできない。
【0032】薄板状磁性体3の分割数は特に限定されるものではなく、磁性シート4の用途や20要求特性に応じて適宜に設定される。例えば、30×40mmの薄板状磁性体3を64分割した場合、磁性体片5の平均形状は3.7×5mm程度となり、256分割した場合には1.8×2.5mm程度、1024分割した場合には0.9×1.2mm程度となる。各磁性体片5の面積は0.01mm2以上25mm2以下の範囲とすることが好ましい。また、磁性体片の形状を長方形として配向させることで、特定方25向に対する透磁率等の磁気特性を向上させることができる。この場合、磁性体片のアスペクト比(長辺(長さ)/短辺(幅))を2以上とすることが有効である。
64 【0037】上述した実施形態の製造方法により得られる磁性シート4、すなわち複数に分割された薄板状磁性体3を有する磁性シート4は、例えばインダクタ用磁性体や磁気シールド用磁性体(ノイズ対策シートを含む)として用いられる。特に、100k5Hz以上の周波数帯で使用されるシート状磁性体(薄型磁性体)に好適である。すなわち、複数に分割された薄板状磁性体3に基づくQ値の向上効果や渦電流損の低減効果等は100kHz以上の周波数帯域でより良好に発揮される。従って、磁性シート4は100kHz以上の周波数帯で使用されるインダクタ用磁性体や磁気シールド用磁性体として好適である。
10【0038】磁性シート4の具体的な使用用途としては、例えばコイルおよび磁性体を有するインダクタとコンデンサとで構成される共振回路におけるインダクタ用磁性体が挙げられる。インダクタを構成するコイルは、スパイラルコイル等の平面型コイルであることが好ましい。このような磁性体(磁性シート4)とコイルとを有するイン15ダクタは、非接触型充電方式の受電装置側(例えば充填される電子機器側)に設けられる共振回路等に好適に用いられる。この共振回路のインダクタを構成する磁性体(磁性シート4)は、磁気シールドとしても機能するものである。
【0039】また、磁性シート4は非接触型充電方式の受電装置側(例えば充填される電子機器20側)に設けられる磁気シールドとしても有効である。このような磁気シールド(磁性シート4)は、例えば2次電池とスパイラルコイル(二次コイル)との間、整流器とスパイラルコイルとの間、電子デバイスとスパイラルコイルとの間、スパイラルコイルと回路基板との間から選ばれる少なくとも1箇所に配置される。
65 66 (別紙3)【発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】5本発明は、RF-ID、即ちICカードやICタグなどの無線通信媒体との通信を行う無線通信媒体処理装置に用いるアンテナ、あるいは無線通信媒体そのものに搭載されるアンテナなどにおいて、電磁誘導方式、マイクロ波方式での通信性を向上させると共に、破損に強い磁性シートおよびこれを用いたアンテナ装置に関するものである。
10【背景技術】【0002】従来、電磁誘導方式等による無線通信媒体との通信を行う、各種の無線通信処理装置が提案されている。図22は、従来の技術におけるアンテナ装置の分解斜視図である。図22に示すアンテナ装置100は、電磁誘導方式等による無線通信媒体と15の通信を行う無線通信処理装置や、無線通信媒体そのものに用いられる。このようなアンテナ装置は、周囲にある金属の影響を受け、磁界が弱くなり、通信に必要な相互インダクタンスが不十分となって、通信距離が短くなったり、通信ができなくなるという障害があった。そこで、金属の影響を受けないように、アンテナ102と金属とを樹脂スペーサー105等により離隔させたり、あるいは、フェライトな20どによる磁性部材料104をアンテナ102に近接、あるいは当接させて設置し、
アンテナ102の発する磁界を強化するなどの工夫がなされていた。
【0003】ここで、樹脂スペーサー105等を使用する場合は、設置時の調整や、その調整にまつわる作業性等が煩雑になるなど問題があった。また、磁性部材料104は焼結25された硬度のあるフェライトのバルク材料などが用いられていたが、落下時の割れや加工性が劣る問題があった。
67 【0004】このように、磁界を強化することを実現しつつ、破損への耐久性を持たせるために、たとえば、フレキシブル状の磁性体をアンテナの底面や、側面に設置するものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
5【特許文献1】特開2002-298095号公報【発明の開示】【発明が解決しようとする課題】【0005】しかしながら、
(特許文献1)に示されるフレキシブル状の磁性シートは、金属系10磁性粉末のセンダストや、パーマロイ等を使用するために、切断面から多量の金属系磁性粉末が欠落してしまうといった問題があった。また、フェライトのバルク材料をもちいた磁性シートにおいても、加工切断面よりフェライト磁性粉末が出てしまい電子基板に悪影響を及ぼすといった問題があった。
【0006】15本発明は、上記の問題に鑑み、電磁誘導方式やマイクロ波方式を用いて通信を行うアンテナにおいて、磁性シートの切断面からの金属系磁性粉末の欠落を防ぎ、信頼性の高い磁性シートおよびこれを用いたアンテナ装置、並びに磁性シートの製造方法を提供することを目的とする。
【発明の効果】20【0008】本発明は、磁性部材に接する側の樹脂の粘度が低いので、磁性部材の表面上で樹脂が拡散し易くなり、磁性部材から発生する磁性粉末を、拡散した樹脂で確実に固定することが出来る。一方、外部に露出する側の樹脂の粘度が高いので、保護層表面の強度を向上させることが出来る。これにより、磁性シートに(例えば撓みによる)25外部応力や(例えば落下による)衝撃を与えたとしても、磁性粉末の発生を抑制するものでありながら、クラック、割れ、欠けなどによる保護層表面の破損を少なく68 することが出来る。
…【0036】(実施の形態1)5まず、本発明の磁性シート1の形状、構造について説明する。図1(a)は、本発明の実施の形態1において、両面テープを固定層として用いた場合の磁性シートの斜視図、
(b)は、図1(a)の分解図、図2は、図1(a)のA-A断面図、図3は、本発明における実施の形態1の磁性シート1で、粘着層7を固定層として用いた場合の断面図、図4は、本発明における実施の形態1の磁性シート1で、樹脂層109を固定層として用いた場合の断面図である。
【0037】1は磁性シート、2は磁性部材、3は両面テープ、4は樹脂層、5は低粘度の樹脂層、6は高粘度の樹脂層である。図1及び図2に示された磁性シート1は、フェライト系磁性体を主成分とした磁性部材2、および両面テープ3や低粘度の樹脂層515や高粘度の樹脂層6などが形成された磁性シート1であり、この磁性シート1は、
ICカードやICタグなどの無線通信媒体に格納されてもよく、リーダーやリーダーライターなどの無線通信媒体処理装置に格納されてもよい。
【0038】磁性シートを構成する各部の詳細について、図1及び図2を用いて説明する。ま20ず、磁性部材2について説明する。磁性部材2は、シート状に形成されており、フェライトやパーマロイ、センダスト、珪素合板等の磁性材料で構成される。磁性部材2としては、軟磁性フェライトが好ましく、フェライト粉体を乾式プレス成形し、
焼成することにより焼成体、高密度のフェライト焼成体とすることができ、軟磁性フェライトの密度が3.5g/cm3以上であることが好ましい。更に軟磁性フェラ25イトの磁性体の大きさが、結晶粒界以上であることが好ましい。また磁性部材2は、
0.05mm〜1mm程度で形成されるシート状(あるいは板状、膜状、層状)の69 ものである。
【0046】樹脂としては、シリコン系、フェノール系、エポキシ系、ユリア系、メラミン系の熱硬化性樹脂やABS樹脂、ウレタン系、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂でもよ5い。低粘度の樹脂5は、1〜10Pa・sの粘度を有し、高粘度の樹脂6は10〜300Pa・sの粘度を有している。磁性部材2に接する面に低粘度の樹脂層5を設け、低粘度の樹脂層5の上に高粘度の樹脂層6を形成することで、低粘度の樹脂層5が磁性部材2の切断面をコーティングすることから磁性シート1の金属系磁性粉末の欠落を防止する。また、低粘度の樹脂5を磁性部材2の上に塗布することで、
10低粘度の樹脂5が磁性部材2の内部に滲み込み、バインダーの役割を果たし磁性シート1に柔軟性をもたせることができる。
【0047】また、低粘度の樹脂層5の上に高粘度の樹脂層6を設けることで、外部応力や衝撃に対してクラックや割れや欠け等の発生を防止することができるので、破損しにく15く、製造時や使用時、あるいは運搬時における耐衝撃性、耐久性を向上させることが可能となる。加えて、加工性がよくなり、加工時の負荷も少なくなるので、低コストも実現できる。
【0052】次に、両面テープ3について説明する。両面テープ3は固定層の一例であって、磁20性部材2の下面に設けられて製造時に磁性部材2を固定する役割を果たすと同時に、
両面テープ3のフィルムを剥がしてループアンテナや整合回路等を接着したり、RF-IDの装置に貼り付けたりすることができる。今回、両面テープ3を用いたが、
両面テープ3だけではなく微粘着テープ、粘着層7等であっても製造上問題はない。
【0057】25工程3で、磁性部材2を両面テープ3に貼り付ける。なお、固定層としては、特に両面テープ3ではなく、微粘着テープを貼り付けても、あるいは粘着材を塗布して70 もよい。
【0058】工程4で、両面テープ3ごとローラ12を通過させて磁性部材2を、複数の磁性体固片11に粉砕する。磁性部材2を粉砕することで磁性部材2に柔軟性を持たせる5と同時に磁性部材2が柔らかくなるので加工性がよくなり、加工時の負荷も少なくなる。しかも磁性部材2に空隙ができることから樹脂が磁性部材2に浸透しやすくなり、磁性部材2の柔軟性をさらに向上させることができるようになる。このローラ粉砕工程は、磁性部材2に樹脂を印刷した後でも可能である。
【0061】10工程6で、3.5Pa・sの低粘度のシリコーン系熱硬化性樹脂を、磁性部材2の全面にスクリーン印刷機によりスクリーン印刷を行う。樹脂層5は、低粘度なので、
磁性部材2の全面に拡散すると共に、磁性部材2の側面まで覆い、5〜50μmの膜厚の熱硬化性樹脂を、磁性部材2に形成する。低粘度の熱硬化性樹脂5を磁性部材2の上に形成することで、低粘度の樹脂層5が磁性部材2の切断面をコーティン15グする(側面を覆う)ことから、磁性シート1の金属系磁性粉末の欠落を防止する。
また、磁性部材2は予めローラで、複数の磁性体固片11に粉砕されているので、
低粘度の樹脂5がバインダーの役割を果たし磁性部材2及び磁性シート1に更に柔軟性をもたせることが可能となる。低粘度のシリコーン系熱硬化性樹脂をスクリーン印刷にて磁性部材2の上に印刷をおこなった後、恒温槽にて150℃で5分間で20仮乾燥を行う。
【0067】なお、ブレイク(粉砕、工程4)、打抜き(工程5)、塗装(工程6)の工程の順番は、図6ないし図9に示すように、適宜変更することが出来る。図6ないし図9は、
単層の場合における磁性シート及びアンテナ装置の工程図である。また、図10な25いし図13に示すように、複数の磁性部材2を積層してもよい。図10ないし図13は、磁性部材2を積層した場合における磁性シート及びアンテナ装置の工程図で71 ある。
・・・【0108】本発明は、商品棚などに収納される非接触ICカードやICタグなどの無線通信5媒体に電力と送信データを供給し、無線通信媒体から受信データを負荷変動により取得する無線通信媒体処理装置であって、特に自動で商品管理、書籍管理等が可能となる収納棚、展示棚以外の医薬品管理、危険物管理、貴重品管理システム等々などの、通信範囲を拡大させることが必要な用途にも適用できる。
1072 73 (別紙4)左図の構成却下発明本願発明引用発明の構成か?の構成か?(甲1文献)「隙間」は「充填されて」××-いないが「絶縁させる」構「十分に充填されて「充填されて」いな成」いないい「隙間」は(第1接着×◎◎層のみ)「充填されて」「「十分に充填されて「充填されて」おり「技術常識(甲2)か絶縁させる」構成」いないから「それに絶縁させる」構成ら「接着剤付き保護フィよって」「相互に絶ルム」が「充填されて」「縁されて」いない絶縁させる」構成「隙間」は(第1接着×◎◎層に加え第2接着層も「十分に充填されて「充填されて」おり「技術常識(甲2)か)「充填されて」「絶縁さ」いないから「それに絶縁させる」構成ら「両面テープ」も「充せる」構成よって」「相互に絶填されて」「絶縁させる」縁されて」いない構成「隙間」は「十分に充填◎◎○されて」「それによって」「特許請求の範囲を「充填されて」おり「接着層(接着剤)と相互に絶縁されて」いる減縮し本願発明を絶縁させる」構成と磁性シートの厚みによ構成限定した構成もいえるっては含まれる。
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