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関連審決 無効2008-800211
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成21行ケ10352審決取消請求事件 判例 特許
平成21行ケ10326審決取消請求事件 判例 特許
平成21行ケ10033審決取消請求事件 判例 特許
平成21行ケ10265審決取消請求事件 判例 特許
平成21行ケ10137審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  相違点の認定 /  周知技術 /  発明の詳細な説明 /  遡及効 /  遡及 /  分割出願 /  実質的に同一 /  参酌 /  特許発明 /  実施 /  設定登録 /  請求の範囲 /  訂正明細書 / 
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事件 平成 21年 (行ケ) 10136号 審決取消請求事件
原告X
訴訟代理人弁理 士藤本昇
同 薬丸誠一
同 北田明
同 鶴亀史泰
被告共 同カイテック株式会社
訴訟代理人弁護 士高橋隆二
訴訟代理人弁理 士元井成幸
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2010/01/28
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1特許庁が無効2008−800211号事件について平成21年4月21日にした審決を取り消す。
2訴訟費用は,被告の負担とする。
事実及び理由
請求
主文同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯被告は,発明の名称を「植栽設備」とする特許第3979659号(平成9年8月29日に出願された特願平9-250023号を原出願として,平成18年10月20日に分割出願特願2006-286318号〕され,平成19年7月6日に設定登録された特許。以下「本件特許」という。)の特許権者である。
原告は,平成20年10月20日,本件特許(請求項の数4)の請求項1ないし4に係る発明について,特許無効審判(無効2008-800211号事件)を請求し,被告は,同年12月16日,願書に添付した特許請求の範囲及び明細書について訂正請求(以下「本件訂正」という。甲14の2)をした。
特許庁は,平成21年4月21日,「訂正を認める。本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「審決」という。)をし,その謄本は,平成21年5月7日,原告に送達された。
2 特許請求の範囲本件特許の願書に添付した,本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び2の記載は,次のとおりである(甲14の3。以下,本件訂正後の請求項1に係る発明を「特許発明1」といい,請求項2に係る発明を「特許発明2」という。なお,別紙「本件訂正明細書図面」参照)。
「【請求項1】底部と側面を有すると共に,該底部近傍に開口部を有する凹型のセルを有するマットフレーム内に植物育成材を設けてなる植栽マットを敷設面に複数敷き詰め,該敷き詰めた植栽マット群の外周に框を配設し,該框の被覆部を該框の側壁上端から該植栽マット群側へ突出して設け,該植栽マット群と該框の側壁間の隙間及び該植栽マット群の外周縁の上端部より該植栽マット群側の領域を該框の該被覆部で被覆することを特徴とする植栽設備。」【請求項2】前記框を前記敷設面に固定して配設し,前記框で前記敷き詰めた植栽マット群の位置ずれを防止することを特徴とする請求項1記載の植栽設備。」3 審決の理由(1)審決の理由を要約すると,以下のとおりである(別紙審決書写し参照)。
ア本件訂正は,特許法134条の2第1項ただし書の規定に適合し,かつ,同条5項において準用する同法126条3項及び4項の規定に適合する。
特許発明1は,特開平10-84774号公報(以下「引用例」という。なお,別紙「引用例図面」参照)に記載された発明(以下「甲2-1発明」という。)と対比すると,?複数の「植栽マット」が「敷き詰め」られた関係で配置されているため,「植物育成材入りプランタ」がそのような特定の位置関係を伴わずに「載置」されている甲2-1発明とは実質的に異なり,容易かつ短時間内に敷設等を行い得るとの新たな作用効果を有する点でも異なる,また,?被覆部で被覆する領域についても,植栽容器群と框の側壁間の隙間のみを被覆する甲2-1発明とは実質的に異なり,「植栽マット群の外周縁の上端部より該植栽マット群側の領域」をも被覆するため,框による植栽マット群の美感を高めるという新たな作用効果を有する点でも異なる,?よって,特許発明1は,甲2-1発明と実質的に同一であるとはいえない。
特許発明1は,甲3の主引用例に甲4ないし9記載の周知事項を適用することにより,又は,甲3,6,10ないし12記載の周知事項と,甲4ないし9記載の周知事項とを組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ本件出願の明細書等の記載は,原出願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲,図面に記載した事項の範囲内のものであって,分割出願の要件を満たすので,その遡及効が認められ,その遡及効がないことを前提として特許発明1が特許法29条2項に違反するとする原告の主張は理由がない。
(2)上記判断に際し,審決が認定した甲2-1発明(引用発明)の内容並びに特許発明1と甲2-1発明との一致点及び相違点は,以下のとおりである。
(甲2-1発明の内容)「底部と側面を有すると共に,該底部近傍に開口部を有する凹型構造内に用土を入れてなる用土入りプランタ3を載置部4に複数載置し,該載置したプランタ3群の外周に仕切部5を配設し,該仕切部5の突出部5aを該仕切部5の側壁上端から該プランタ3群側へ突出して設け,該プランタ3群と該仕切部5の側壁間の隙間を該仕切部5の該突出部5aで被覆することを特徴とする緑化構造。」(審決書11頁18行〜24行)(一致点)「底部と側面を有すると共に,該底部近傍に開口部を有する凹型構造内に植物育成材を設けてなる植物育成材入り植栽容器を載置部に複数載置し,該載置した植栽容器群の外周に框を配設し,該框の被覆部を該框の側壁上端から該植栽容器群側へ突出して設け,該植栽容器群と該框の側壁間の隙間を該框の該被覆部で被覆することを特徴とする植栽設備。」(審決書12頁10行〜15行)(相違点)「ア植栽容器が,特許発明1は,『凹型のセルを有するマットフレーム内に植物育成材を設けてなる植栽マット』であり,複数のそれらが,載置部としての『敷設面』に『敷き詰め』られているのに対し,甲2-1発明は,『凹型構造内に植物育成材を設けてなる植物育成材入りプランタ』であり,複数のそれらが載置部に『載置』されている点。
イ『被覆部で被覆する』領域について,特許発明1は,植栽容器群と框の側壁間の隙間に加えて,『植栽マット群の外周縁の上端部より該植栽マット群側の領域』をも被覆するのに対し,甲2-1発明では,そのような被覆領域を有さない点。」(審決書12頁17行〜25行)
当事者の主張
1 審決の取消事由に係る原告の主張審決には,以下のとおり,(1)甲2-1発明の認定の誤り(取消事由1),(2)相違点の認定の誤り(取消事由2及び3)がある。
(1) 取消事由1(甲2-1発明の認定の誤り)ア プランタ3の「載置」に係る認定の誤り甲2-1発明における複数の「プランタ3」は,「敷き詰め」られるものである。しかるに,審決が,単に「載置」されるものであると認定した点には,誤りがある。
(ア) 引用例には,従来は,「建物の屋上,バルコニー等を緑化する場合,・・・単に,植物が植えられたプランタ等を適当に配置したりしている場合が多い。」(甲2の1,段落【0002】【背景の技術】),「植物が植えられたプランタ等を適当に配置しているだけであり,しかもプランタ自体が見えるので,雑然としたイメージとなり易く,花壇のような景観の美しいものとするのは困難であった。」(段落【0003】【発明が解決しようとする課題】)のに対し,「本発明は上記事情に鑑みてなされたもので,建物の屋上,バルコニー等を容易に緑化するとともに,景観の美しいものとすることができるバルコニー等の緑化構造を提供することを目的としている。」(段落【0004】)と記載されている。また,引用例の図面には,プランタ3が複数敷き詰められた状態が記載されている(別紙「引用例図面」の【図1】,【図2】,【図4】,【図5】参照)。
(イ) なお,本件訂正後の明細書(甲14の4。以下「本件訂正明細書」という。)には,「本敷設方法では,・・・植栽マット1を敷き詰める際に,隣接する植栽マット1の相互間に所要経路の給水管配設用空間部22を形成するように敷き詰める。」(段落【0058】)と記載されているから,特許発明1及び2における「敷き詰め」の用語の解釈としては,必ずしも空隙を生ずることなく敷設面に敷く態様のみではなく,空隙を生じて敷設面に敷く態様をも含む(別紙「本件訂正明細書図面」の【図19】参照)。
イ 突出部5aの被覆領域に係る認定の誤り以下のとおり,甲2-1発明の「仕切部5」の「突出部5a」は,「プランタ3」に対する「仕切部5」の配置態様によっては,「プランタ群3の外周縁の上端部より該プランタ群3側の領域」をも被覆する。しかるに,審決が,そのような被覆領域を有しないと認定した点には,誤りがある。
引用例の【図1】(別紙「引用例図面」の【図1】)においても,仕切部5とプランタ3との間には若干の隙間が空いており,仕切部5をプランタ3により近づけて設置すれば,突出部5aは,おのずと,プランタ3群の外周縁の上端部よりプランタ3群側の領域を被覆することになるから,そのような被覆態様も含まれるものといえる。
以下のとおり,被覆対象物の外周縁の上端部より被覆対象物側の領域を被覆するという技術は周知である。たとえば,甲2-1発明の「突出部5a」に相当する部材を示した文献として,実願平2-63005号(実開平4-21242号)のマイクロフィルム(甲4,第2図)の「上板121」,特開平8-89088号公報(甲7,【図2】)の「鉤部12a」,実開昭59-130593号公報(甲8,第2図)の「笠木部5」及び実開昭63-167843号公報(甲9,第3図)の「張出し状被覆部3」が存在する。これらの文献では,被覆対象物の外周縁の上端部より被覆対象物側の領域をも被覆している。
そうすると,被覆部に係る前記周知技術参酌するならば,引用例には,甲2-1発明の「突出部5a」が,プランタ3群の外周縁の上端部よりプランタ3群側の領域を被覆することを示していると認定するのが自然である。
(2) 取消事由2(相違点の認定の誤り)ア 相違点アの認定の誤り審決は,「植栽容器が,特許発明1は,『凹型のセルを有するマットフレーム内に植物育成材を設けてなる植栽マット』であり,複数のそれらが,載置部としての『敷設面』に『敷き詰め』られているのに対し,甲2-1発明は,『凹型構造内に植物育成材を設けてなる植物育成材入りプランタ』であり,複数のそれらが載置部に『載置』されている点。」を相違点(相違点ア)として認定した(審決書12頁17行〜21行)。
しかし,審決の相違点アに係る認定は,次のとおり,誤りである。
(ア)まず,植栽マット(植物育成材入りプランタ)の位置関係については,前記主張のとおり,甲2-1発明も,複数の「プランタ」が「敷き詰め」られるものであるから,その点で特許発明1との相違はない。
(イ)また,「凹型のセルを有するマットフレーム内に植物育成材を設けてなる植栽マット」と「凹型構造内に植物育成材を設けてなる植物育成材入りプランタ」とが相違するとの点に関しては,審決は,「特許発明1の『セルを有するマットフレーム』について,訂正明細書等の記載を参酌すると,発明のいずれの実施形態においても,一つの『マットフレーム』が互いに連設する複数の『セル』を有するものであることから,特許発明1の『植栽マット』と,甲2-1発明の『植物育成材入りプランタ』は,一つの『植栽マット』及び『植物育成材入りプランタ』の有する凹型構造の数も,各凹型構造同士の構造的な関係においても異なるものである。」(審決書12頁下から7行目〜12頁下から2行)と認定した。
しかし,特許発明1の「植栽マット」について,「マットフレーム」に「セル」が複数設けられるものに限られるものではない。
すなわち,本件訂正後の請求項1には,「セル」を複数とする旨の記載はない。また,本件訂正明細書には,「尚,植栽マットは,底部近傍に開口部を有する凹型のセルが設けられ,該セルを互いにリブで連設してなるマットフレームと,該セル内に敷設されたフィルターと,該セル内で該フィルター上に形設された植物育成材からなるものとしてもよい。・・・」(甲14の4,段落【0008】)と記載され,複数のセルが連設される形態は,あくまでも選択的であるとされている。
したがって,特許発明1の「凹型のセルを有するマットフレーム内に植物育成材を設けてなる植栽マット」と,甲2-1発明の「凹型構造内に植物育成材を設けてなる植物育成材入りプランタ」との間に相違はない。
(ウ) なお,審決は,相違点アに関連して,「容易且つ短時間に敷設等を行うことができる。」との点を特有の効果として認定する。しかし,このような効果は,引用例に,「また,載置部4に,植物2が植えられたプランタ3を載置するだけで,バルコニーや屋上に容易に植栽が施され,また,プランタ3を取り替えるだけで,容易に植替が可能となる。」(甲2の1,段落【0009】,なお段落【0031】,【0033】も同旨)と記載されているとおり,甲2-1発明も奏する効果であり,特許発明1に特有の効果ではない。
イ 相違点イの認定の誤り審決は,「『被覆部で被覆する』領域について,特許発明1は,植栽容器群と框の側壁間の隙間に加えて,『植栽マット群の外周縁の上端部より該植栽マット群側の領域』をも被覆するのに対し,甲2-1発明では,そのような被覆領域を有さない点。」を相違点(相違点イ)として認定した(審決書12頁22行〜25行)。
しかし,審決の上記認定は,誤りである。
(ア)取消事由1で主張したとおり,甲2-1発明も,「突出部5a」が「プランタ群3の外周縁の上端部より該プランタ群3側の領域」をも被覆するので,この点で特許発明1との相違はない。
(イ)審決は,相違点イに関連して,「框による植栽マット群の美観を高める」との点を特有の効果として認定する。しかし,このような効果は,引用例に「・・・プランタ3自体は仕切部5によって隠され,・・・美しい景観となる。」(甲2の1,段落【0008】。また,段落【0031】,【0033】も同旨)と記載されているとおり,甲2-1発明も奏する効果であり,特許発明1に特有の効果ではない。
(3) 取消事由3(特許発明2に係る相違点認定の誤り)審決は,「特許発明2は框を敷設面に固定して配設し,框で敷き詰めた植栽マット群の位置ずれを防止するものである点で,甲2-1発明と相違する。」(審決書13頁下から4行〜下から2行)と認定する。
しかし,審決の認定は誤りである。甲2-1発明においても,「仕切部5」は固定され,そのため,「プランタ群3」の位置ずれを防止することができる。すなわち,引用例の「仕切部5」は,「下面側には段部5bが形成されており,この段部5bには,前記床面1に敷設された床材10の縁部が挿入されて,該床材10の縁部の見切りが行われるとともに,段部5bを床材10に当接させることで,仕切部5が床面1上に,倒れることなく安定的に設けられている。」(甲2の1,【図1】,段落【0024】)のであり,「仕切部5」は,床材10によって移動が規制され,結果的に床面1に固定された態様となる。また,そのために,「仕切部5」は,「プランタ群3」の位置ずれを防止する。
したがって,特許発明2が甲2-1発明と相違するとした審決の認定には誤りがある。
2 被告の反論(1) 取消事由1(甲2-1発明の認定の誤り)に対しア プランタ3の「載置」に係る認定の誤りに対し原告は,甲2-1発明における複数の「プランタ3」は,「敷き詰め」られるものであるといえるから,単に「載置」されるものであるとした審決の認定は,誤りであると主張する。
しかし,原告の主張は,次のとおり,理由がない。
すなわち,甲2-1発明において載置される複数の用土入りプランタ3は,以下の理由により,隣接するプランタ3との間に空隙があり,それらは特許発明1の敷き詰められる状態ではないといえる。
まず,引用例の【図1】,【図2】,【図4】及び【図5】(別紙「引用例図面」の【図1】,【図2】,【図4】及び【図5】参照)において,プランタ3は,隙間の空いた状態で載置されており,敷き詰められた配置は示されていない。
「載置」との文言は,敷き詰めることを意味しない。また,引用例においても,「敷き詰める」との文言は,「載置」の文言とは区別されて,空隙なく敷設するという意味で,床材ユニットピースの敷設について使用されている(段落【0029】の4行目,段落【0030】の8行目)。
イ 突出部5aの被覆領域に係る認定の誤りに対し原告は,甲2-1発明においては,仕切部5の突出部5aがプランタ群3の外周縁の上端部より該プランタ群3側の領域をも被覆することが開示されていると主張する。
しかし,原告の主張は,次のとおり,理由がない。
まず,引用例には,図面も含めて,原告主張のような記載はない。引用例の【図1】には,原告が自認するとおり,「突出部5a」がプランタ3の外周縁の上端部までしか突出していない状態が【図1】に記載されている。原告の主張は,【図1】に係る自認部分と矛盾し,失当である。
また,引用例には,「一方,プランタに植えられた植物は仕切部から上方に突出しているので,観賞することができ」(段落【0033】【発明の効果】)と記載されており,甲2-1発明の突出部5aは,植物が上方に突出することを妨害することのないように,植物が植えられたプランタ3の領域の外に配置されることを示しているから,上端部から植物が植えられている領域へはみだして被覆することは開示されていない。
なお,原告は,甲2-1発明において,仕切部5をプランタ3により近づけて設置すれば,突出部5aは,おのずとプランタ3の外周縁の上端部よりプランタ3側の領域を被覆することになると主張する。しかし,甲2-1発明に開示されていない事項を前提に仮説的な議論をするものであって,失当である。
(2) 取消事由2(相違点の認定の誤り)に対しア 相違点アの認定の誤りに対し原告は,甲2-1発明における複数の「プランタ3」は,「敷き詰め」られるものであるといえるから,単に「載置」されるものであるとした審決の認定は,誤りであると主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり,理由がない。
(ア) 甲2-1発明前記(1)アのとおり,甲2-1発明において載置される複数の用土入りプランタ3は,以下の理由により,隣接するプランタ3との間に空隙があり,それらは特許発明1の敷き詰められる状態ではないといえる。
(イ) 本件訂正明細書(甲1)?特許発明の請求項においては,「敷き詰める」と記載されているが,「敷き詰める」の用語の通常の意味は,「?強いて押さえつける。?一面に敷く。」と説明されているから(広辞苑第4版),「植栽マットを敷設面に複数敷き詰める」ことは,複数の植栽マットを空隙を生ずることなく敷設面に敷くことを意味すると理解される。
? 本件訂正明細書(甲1)には,「敷き詰め」に係る記載がある。
すなわち,「本敷設方法は,敷設面20に貯水槽トレー28を敷設した後,植栽マット1を貯水槽トレー28内に敷き詰める際に,植栽マット1の隣接相互間に所用経路の給水管配設用空間部22を形成するように敷き詰め,・・・」(段落【0092】),「図33の如く,給水管配設用空間部22を形成したときに曲がり部22aを有する場合,所定の大きさである1種類の貯水槽トレー28を敷き詰めた後,その貯水槽トレー28内に給水管配設用空間部22を形成し得る3種類の大きさのA,B,Cのマットフレーム2を組み合わせて敷設することにより,潅水装置配設用空間22以外の空隙を生ずることなく,マットを敷き詰めることができる(段落【0094】),「敷き詰め」に係る文言が記載されている(段落【0075】,【0082】,【0086】,【0099】,【0104】)。
これらの記載によれば,「敷き詰め」とは,複数の植栽マットを空隙を生ずることなく敷設面に敷くことを意味しているものと理解される。
?原告は,本件訂正明細書に「隣接する植栽マット1の相互間に所要経路の給水管配設用空間部22を形成するように敷き詰める。」(甲14の4,段落【0058】)との記載をもって特許発明1の「敷き詰める」とは空隙を生じて敷設面に敷く態様をも含むものと解される旨主張する。
しかし,当該記載は,植栽マット1の配置方法を説明したものであることは,「植栽マット1を敷き詰める際に」との記載(上記段落【0058】)であり,【図20】(別紙「本件訂正明細書図面」の【図20】参照)に示される給水管配設用空間部22間に配置される9枚の植栽マット1を隣接配置する方法として空隙なく植栽マット1を敷き詰める態様を述べたものであって,原告が主張するような意味において説明したものではない。
(ウ)以上のとおり,審決が認定した特許発明1と甲2-1発明との相違点アに誤りはなく,相違点は実質的な相違であるとする点においても誤りはない。
イ 相違点イの認定の誤りに対し原告主張の取消事由2の相違点イの認定の誤りは,取消事由1のイ(突出部5aの被覆領域に係る認定の誤り)と実質的に相違点はないとの主張であるから,前記主張のとおり,原告の主張は,理由がない。
(3) 取消事由3(特許発明2に係る相違点認定の誤り)に対し審決の特許発明2と甲2-1発明との対比に関してした認定に誤りはなく,原告の主張は失当である。原告は,甲2-1発明においては仕切部5が固定されていると主張するが,甲2-1発明にはそのような記載は一切なく,原告主張の事実をうかがわせるような記載もない。
当裁判所の判断
当裁判所は,以下に述べるとおり,審決のした相違点の認定には誤りがあり,取消事由2及び3に係る原告の主張は理由があると判断する。
1 取消事由2(相違点アの認定の誤り)について(1)審決は,相違点アとして,「植栽容器が,特許発明1は,『凹型のセルを有するマットフレーム内に植物育成材を設けてなる植栽マット』であり,複数のそれらが,載置部としての『敷設面』に『敷き詰め』られているのに対し,甲2-1発明は,『凹型構造内に植物育成材を設けてなる植物育成材入りプランタ』であり,複数のそれらが載置部に『載置』されている点。」(審決書12頁17行〜21行)と認定し,実質的に相違する理由として,次の2点を挙げる。すなわち,ア「特許発明1の『セルを有するマットフレーム』について,訂正明細書等の記載を参酌すると,発明のいずれの実施形態においても,一つの『マットフレーム』が互いに連設する複数の『セル』を有するものであることから,特許発明1の『植栽マット』と,甲2-1発明の『植物育成材入りプランタ』は,一つの『植栽マット』及び『植物育成材入りプランタ』の有する凹型構造の数も,各凹型構造同士の構造的な関係においても異なるものである。」(審決書12頁30行〜35行),イ「更に,特許発明1の複数の『植栽マット』は『敷き詰め』られた関係で載置されているのに対し,甲2-1発明の『植物育成材入りプランタ』は,各プランタが当該特定の位置関係を伴わずに単に『載置』されている点でも異なる。」(審決書12頁末行〜13頁3行)しかし,審決の認定は,次のとおり誤りである。
(2) 凹型構造の数及び構造的な関係において相違するとした点についてまず,特許発明1に係る特許請求の範囲の請求項1においては,「セル」を複数のものに限るとの記載はない。
また,本件訂正明細書の「発明の詳細な説明」にも,「セル」を複数のものに限るとする記載はない。かえって,本件訂正明細書(甲14の4)の段落【0008】【課題を解決するための手段】には,「尚,植栽マットは,底部近傍に開口部を有する凹型のセルが設けられ,該セルを互いにリブで連設してなるマットフレームと,該セル内に敷設されたフィルターと,該セル内で該フィルター上に形設された植物育成材からなるものとしてもよい。」と記載があり,同記載によれば,「セル」を連接する形態は,あくまでも選択的な事項であると理解するのが自然である。
そうすると,特許発明1において一つの「マットフレーム」が互いに連設する複数の「セル」を有するものに限られることを前提にして,特許発明1の「植栽マット」と,甲2-1発明の「植物育成材入りプランタ」とは,一つの「植栽マット」及び「植物育成材入りプランタ」の有する凹型構造の数及び各凹型構造同士の構造的な関係において,相違するとした審決の認定は,誤りである。
(3)特許発明1の「敷き詰め」と甲2-1発明の「載置」が相違するとした点についてア 特許発明1(ア) 本件訂正明細書の記載本件訂正明細書(甲14の4)には,「敷き詰め」について,以下の記載がある。
「【0057】さらに,上記保水層21上に給水管を配設する実施形態について説明する。図19(a)は保水層上に植栽マットを敷設して給水管を配設する場合の平面図,同図(b)は上記実施形態のE-E線断面図である。【0058】本敷設方法では,敷設面20に平面状の保水層21を形成した後,植栽マット1を敷き詰める際に,隣接する植栽マット1の相互間に所用経路の給水管配設用空間部22を形成するように敷き詰める。・・・」「【0092】本敷設方法は,敷設面20に貯水槽トレー28を敷設した後,植栽マット1を貯水槽トレー28内に敷き詰める際に,植栽マット1の隣接相互間に所用経路の給水管配設用空間部22を形成するように敷き詰め,該空間部22に貯水槽トレー28の側面上端部28a又は切り欠き凹部32(図示せず)で保持して給水管24を配設し,該空間部22の給水管24の上方から,マットフレーム2のリブ5と略同一平面を形成するカバー部材25を設けるものである。・・・」「【0094】図33の如く,給水管配設用空間部22を形成したときに曲がり部22aを有する場合,所定の大きさである1種類の貯水槽トレー28を敷き詰めた後,その貯水槽トレー28内に給水管配設用空間部22を形成し得る3種類の大きさのA,B,Cのマットフレーム2を組み合わせて敷設することにより,潅水装置配設用空間22以外の空隙を生ずることなく,マットを敷き詰めることができる。」(イ) 「敷き詰め」の意義上記記載によれば,特許発明1において,「敷き詰め」の語は,隣接する植栽マット1の相互間に所用経路の給水管配設用空間部22を形成し得る隙間が存在する配置を含めた意味で用いられている。
この点につき,被告は,「敷き詰め」との語は,【図19】(別紙「本件訂正明細書図面」の【図19】参照)ではなく,【図20】(同別紙図面の【図20】参照)に示される給水管配設用空間部22間に配置される9枚の植栽マット1を隣接配置する方法として,空隙なく植栽マット1を敷き詰める態様を示したものと主張する。しかし,被告の主張は,本件訂正明細書の「潅水装置配設用空間22以外の空隙を生ずることなく,マットを敷き詰めることができる」(段落【0094】)などの記載に反し,採用の限りでない。
イ 甲2-1発明(ア) 引用例の記載引用例(甲2の1)には,プランタ3の配置について,以下の記載がある。
「【0002】【背景の技術】建物の屋上,バルコニー等を緑化する場合,例えば,レンガ,ブロック,コンクリート等で枠組みをして,この枠組内に庭土を投入して均し,ここに植栽を施したり,あるいは,前記屋上やバルコニーに,単に,植物が植えられたプランタ等を適当に配置したりしている場合が多い。【0003】【発明が解決しようとする課題】ところが,前者の場合,庭土はそれが多量になると,庭土をバルコニー等にクレーン等を利用して搬入しなければならないので,かなり大掛かりなものとなり,また,庭土を入れた場合,そこに植栽を施したり,また,それを植替るのに手間がかかっていた。一方,後者の場合,植物が植えられたプランタ等を適当に配置しているだけであり,しかもプランタ自体が見えるので,雑然としたイメージとなり易く,花壇のような景観の美しいものとするのは困難であった。【0004】本発明は上記事情に鑑みてなされたもので,建物の屋上,バルコニー等を容易に緑化するとともに,景観の美しいものとすることができるバルコニー等の緑化構造を提供することを目的としている。【0005】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために,本発明の請求項1のバルコニー等の緑化構造は,例えば図1に示すように,バルコニーまたは屋上の床面1を防水処理し,この防水処理した床面上の一部に,植物2が植えられたプランタ3を載置し,このプランタ3が載置された載置部4と,その他の床面1aとの境界部に,前記プランタ3より高い仕切部5を設けたものである。」また,引用例の【図1】ないし【図5】(別紙「引用例図面」の【図1】〜【図5】)においても,プランタ3が整然と載置されている様子が認められる。
(イ) 「載置」の意義上記記載によれば,甲2-1には,従来の屋上,バルコニー等の緑化においては,植物の植えられたプランタ等を適当に配置することから,プランタも同時に見えることによって,美しい景観にすることが困難であるという問題点を解決するため,プランタより高い仕切部を設ける発明が記載されている。
ウ 小括(ア)以上のとおり,特許発明1においては,給水管配設用空間部22を形成し得るような「隙間」が存在する状態をも含めて,植栽マットを「敷き詰める」と記載されているのに対し,甲2-1発明においても,雑然としたイメージを排除して花壇のような美しい景観を造り出すように「載置」することが記載されている。特許発明1の「敷き詰め」と,甲2-1発明のプランタの「載置」との間に,格別の相違は存在しない。
なお,審決は,特許発明1には,「容易且つ短時間に敷設等を行うことができるという甲2-1発明にはない新たな作用効果を奏する」(審決書13頁5行,6行)とするが,甲2-1発明の「載置」と特許発明1の「敷き詰め」とにおいて,相違がない以上,特許発明1に「敷き詰め」ることに伴う格別の作用効果は存在しない。
(イ)被告は,引用例の【図1】,【図2】,【図4】及び【図5】においては,プランタ3が隙間の空いた状態で載置されており,敷き詰められて配置されていないから,特許発明1の敷き詰められた状態とは異なる旨主張する。しかし,特許発明1においても,「給水管配設用空間部22」の隙間が存在する状態をも含めた意味で「敷き詰める」との語が用いられているから,この点の被告の主張は採用できない。
また,被告は,引用例において,床材ユニットピースの敷設について「敷き詰める」との語が,プランタ3に係る「載置」と区別して用いられているから,特許発明1の「敷き詰める」配置態様とは同一といえない旨主張する。
しかし,被告の主張は,他の明細書における「敷き詰める」がどのような意味で用いられたかが,特許発明1の語の解釈に,直ちに影響を与えるものではないから,被告の主張は,その主張自体失当である。のみならず,引用例の記載に照らしても,被告の主張は,理由がない。
すなわち,引用例(甲2の1)には,以下の記載がある。
「【0029】前記床材10は,前記プランタ3が載置された載置部4以外の床面1aに,前記防水シート6上から敷設されたもので,多数の床材ユニットピース10a・・・を前記床面1a上に敷き詰めることによって構成されている。・・・」,「【0030】このように,前記床面1aに床材10を敷設すれば,床面1aに敷設された防水シート6が床材10によって覆われて保護されるので,該防水シート6の劣化を防止することができ,また,人の出入りや物の搬入,搬出等の際における防水シートの損傷を防止することができる。また,前記床材10は多数の床材ユニットピース10a…で構成されているので,これら床材ユニットピース10aを所定枚数敷き詰めることによって,床面1aの平面的な形状,大きさに対応した床材10を容易に敷設することができる。」以上のように,引用例では,「床材ユニットピース10a」の配置に関して,床面1aに敷設された防水シート6を床材10によって覆って保護する程度にまで配置する態様を指して,「敷き詰める」と表現していることに照らすならば,「敷き詰める」の語は,隙間が存在しないという意味で用いられ,【図1】等で示される程度の隙間が存在するプランタ3の配置とは区別していると理解できる。
そうすると,同じ「敷き詰める」との語であっても,特許発明1においては,「給水管配設用空間部22」の隙間が存在する状態をも含めた意味に用いられているのに対し,引用例においては,隙間が存在しないとの意味で用いられているのであり,引用例において区別されていることことを理由として相違点を認定することは,相当でない。
2 取消事由2(相違点イの認定の誤り)について審決は,相違点イとして,「『被覆部で被覆する』領域について,特許発明1は,植栽容器群と框の側壁間の隙間に加えて,『植栽マット群の外周縁の上端部より該植栽マット群側の領域』をも被覆するのに対し,甲2-1発明では,そのような被覆領域を有さない点。」(審決書12頁22行〜25行)と認定し,実質的に相違する理由として,同相違点によって,特許発明1は,框による植栽マット群の美観を高めるという甲2-1発明にはない新たな作用効果を奏する(審決書13頁11行〜19行)とした。
しかし,審決の認定は,次のとおり誤りである。
(1) 引用例の「仕切部5」についてア 引用例の記載引用例(甲2の1)には,「仕切部5」について,以下の記載がある(注 下線は,当裁判所において付した。)「【特許請求の範囲】【請求項1】バルコニーまたは屋上の床面が防水処理され,この防水処理された床面上の一部に,植物が植えられたプランタが載置され,このプランタが載置された載置部と,その他の前記床面との境界部に,前記プランタより高い仕切部が設けられていることを特徴とするバルコニー等の緑化構造。」「【0007】前記仕切部5は,前記プランタ3より高く,かつ,該プランタに植えられた植物2を隠さない程度の高さに形成されたもので,前記境界部に沿って延在するようにして設けられる。・・・」「【0008】請求項1のバルコニー等の緑化構造にあっては,バルコニーあるいは屋上の床面1の一部に設けられた載置部4に,植物2が植えられたプランタ3を載置することによって,該プランタ3自体は前記仕切部5によって隠され,一方,プランタ3に植えられた植物2は仕切部5から上方に突出しおり,しかも,該植物2は仕切部5によって,載置部4以外...の床面1aから分離しているので,あたかも花壇に植えられた植物のように美しい景観となる。」「【0024】前記仕切部5は,前記プランタ3より高く,かつ,該プランタ3に植えられた植物2を隠さない程度の高さに形成されたもので,前記境界部に沿って延在するようにして設けられている。また,前記仕切部5は,図1に示すように,内部が中空に形成された樹脂製のもので,その上部には,前記載置部4側に突出する突出部5aが,仕切部5の長手方向に延在するようにして形成されており,この突出部5aによって,仕切部5と,前記載置部4に該仕切部5と隣接して配置されたプランタ3との隙間を隠すようになっている。」「【0031】上述したように,本例のバルコニー等の緑化構造によれば,バルコニーの床面の一部に設けられた載置部4に,植物2が植えられたプランタ3を載置することによって,図8に示すように,該プランタ3自体は前記仕切部5によって隠され,一方,プランタ3に植えられた植物2は仕切部5から上方に突出しているので,該植物2を観賞することができ,しかも,該植物2は仕切部5によって,載置部以外の床面1aから分離しているので,あたかも花壇に植えられた植物2のように観え,美しい景観を造りだすことができる。また,前記載置部4に,植物2が植えられたプランタ3を載置するだけでバルコニー容易に植栽を施すことができ,..また,プランタ3を取り替えるだけで,植栽を容易に植替ることができる。」また,【図1】(別紙「引用例図面」の【図1】参照)では,突出部5aが載置部4側に突出し,この突出部5aによって,仕切部5と,前記載置部4に該仕切部5と隣接して配置されたプランタ3との隙間を隠すような図が示され,突出部5aの端部がプランタ3の外周縁の上端部まで達していること,そのため,バルコニー等に立つ者からは,プランターが見えないような図が示されている(別紙「引用例図面」の【図4】,【図8】参照)。
イ 判断(ア)上記の記載によれば,プランタ3より高い仕切部5は,バルコニーなどに立つ者から,プランタ3を隠すために設けられるものであり,甲2-1発明は,仕切部5を設けることにより,植物2を花壇に植えられたかのように見せ,美しい景観を造り出すことができるようにした発明である。
このような甲2-1発明の目的に照らすならば,突出部5aは,プランタ3をバルコニーなどに立つ者から隠れるような位置に配置されることは必須であるが,それをもって足りるのであって,プランタ3の外周縁の上端部を被覆しないことまでも必須であると解することはできない。
このような理解は,?「建物の屋上,バルコニー等を容易に緑化する・・・ことができる」(甲2の1【0004】)と記載され,「容易」に作業ができることが強調されていることに照らすならば,突出部5aをプランタ3の外周縁の上端部を被覆しないような位置のみに配置することを必須のものと解することは,不自然であること,?実願平2-63005号(実開平4-21242号)のマイクロフィルム(甲4,第2図)の「上板121」,特開平8-89088号公報(甲7,【図2】)の「鉤部12a」,実開昭59-130593号公報(甲8,第2図)の「笠木部5」及び実開昭63-167843号公報(甲9,第3図)の「張出し状被覆部3」が示されていることに照らすならば,被覆対象物の外周縁の上端部より被覆対象物側の領域を被覆することの方が自然であることと整合する。
(イ)この点に関し,被告は,引用例には,「一方,プランタに植えられた植物は仕切部から上方に突出しているので,観賞することができ」(段落【0033】)と記載されているから,突出部5aは,植物が上方に突出することを妨害することのないように,植物が植えられたプランタ3の領域の外に配置されることを示していると主張する。
しかし,被告の主張は,以下のとおり理由がない。すなわち,突出部5aの高さについては,「前記仕切部5は,前記プランタ3より高く,かつ,該プランタ3に植えられた植物2を隠さない程度の高さに形成されたもので,」(段落【0024】)と記載によれば,高さ方向のみではなく,水平方向においても,突出部5aが,プランタ3における植物が上方に突出することを妨害しない範囲内であれば,プランタ3群側に突出してプランタ3と仕切部5の側壁との隙間を被覆することも許容されるものと解される。上記記載部分が,突出部5aのプランタ3群側への突出がないことを必須のものとすると理解することはできない。
(2) 以上によれば,相違点イについての審決の認定は誤りである。
3 取消事由3(特許発明2についての相違点認定の誤り)について審決は,特許発明2と甲2-1発明とは,上記相違点ア及び相違点イと同様の点で相違する外,「特許発明2は框を敷設面に固定して配設し,框で敷き詰めた植栽マット群の位置ずれを防止するものである点」(審決書13頁下から4行,3行。以下「相違点ウ」という。)において相違すると認定した。
しかし,審決の上記認定は,次のとおり,誤りである。
相違点ウに関して引用例(甲2の1)には,以下の記載がある。
「【0024】前記仕切部5は,前記プランタ3より高く,かつ,該プランタ3に植えられた植物2を隠さない程度の高さに形成されたもので,前記境界部に沿って延在するようにして設けられている。また,前記仕切部5は,図1に示すように,内部が中空に形成された樹脂製のもので,その上部には,前記載置部4側に突出する突出部5aが,仕切部5の長手方向に延在するようにして形成されており,この突出部5aによって,仕切部5と,前記載置部4に該仕切部5と隣接して配置されたプランタ3との隙間を隠すようになっている。さらに,前記仕切部5の下面側には段部5bが形成されており,この段部5bには,前記床面1に敷設された床材10の縁部が挿入されて,該床材10の縁部の見切りが行われるとともに,段部5bを床材10に当接させることで,仕切部5が床面1上に,倒れることなく安定的に設けられている。」上記の記載によれば,甲2-1発明においても,仕切部5は床材10によってその移動が規制される結果,床面1に固定されるものであると認められ,そのため,仕切部5がプランタ3の位置ずれを防止することができるものであるといえる。
そうすると,相違点ウに関し,特許発明2と甲2-1発明は相違するとはいえず,両者は位置ずれが防止される点でも同一であり,その点に相違があるとした審決の認定判断は誤りである。これに反する被告の主張は採用の限りでない。
なお,前記(1)及び(2)で説示したとおり,相違点ア及びイが相違点であるとはいえないから,これを実質的な相違点であることを前提とした点において,前記審決の認定判断には,誤りがある。
4 結論以上によれば,原告主張の取消事由2及び3は理由があるから,審決を取り消すこととし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 大須賀滋
裁判官 齊木教朗