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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成20行ケ10065審決取消請求事件 判例 特許
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平成20行ケ10273審決取消請求事件 判例 特許
平成21行ケ10130審決取消請求事件 判例 特許
平成20行ケ10441審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 発明者 /  技術的思想 /  物の発明 /  製造方法 /  新規性 /  29条1項3号 /  容易に実施 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  慣用技術 /  実施可能要件 /  試行錯誤 /  技術常識 /  発明の詳細な説明 /  着想 /  技術的意義 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  交換 /  構成要件 /  実施権 /  通常実施権 /  設定登録 /  請求の範囲 /  減縮 /  変更 /  審決確定(審決が確定) /  国際公開 / 
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事件 平成 20年 (行ケ) 10243号 審決取消請求事件
原告X
訴訟代理人弁護 士松田純一
同 鈴木英之
同 佐久 間幸司
同 大橋君平
同 復代理人弁護 士伊藤卓
同 西村公芳
訴訟代理人弁理 士滝口昌司
同 大津洋夫
被告ペ パーレット株式会社
訴訟代理人弁護 士卜部忠史
同 中島雪枝
同 山内宏光
同 復代理人弁護 士小嶋順平
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2009/07/21
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が無効2007-800177号事件について平成20年5月27日にした審決を取り消す。
事案の概要
1本件は,被告が特許権者であり発明の名称を「動物用排尿処理材」とする特許第2534031号の請求項1〜5について,原告が平成19年8月28日付けで無効審判請求(無効2007-800177号事件,以下「本件無効審判請求」という )をしたところ,特許庁が平成20年5月27日付けで請求 。
不成立の審決(以下「本件審決」という )をしたことから,原告がその取消 。
しを求めた事案である。
なお,本件特許に関し,本件無効審判請求に先立つ平成19年8月17日付けで株式会社大貴(以下「訴外会社」という )から請求項1〜5について無 。
効審判請求(無効2007-800166号事件,以下「別件無効審判請求」という )がなされ,その中で訴外会社が平成20年4月24日付けで訂正請 。
求をしたところ,特許庁は,本件審決後の平成20年6月24日付けで,上記訂正を認めた上,請求不成立の審決(以下「別件審決」という )をしたこと 。
から,訴外会社がその取消しを求めた審決取消請求事件が当庁に係属し(知財高裁平成20年(行ケ)第10288号 ,本件訴訟と並行して審理が進めら )れている。
2争点は,?@本件無効審判請求には別件無効審判請求における訂正請求の内容を通知等しなかった手続上の違法があるか,?A本件特許の請求項1〜5に係る発明が 下記引用例との関係で新規性 特許法29条1項3号 又は進歩性 特 , ()(許法29条2項)を有するか,?B本件特許に係る明細書に実施可能要件違反があるか(平成6年法律第116号による改正前の特許法36条〔以下「旧36条」という 〕4項 ,等である。 。)記・特開平6-315330号公報(発明の名称「動物の排泄物処理材並びにその製造方法及び装置 ,出願人 株式会社大貴,公開日 平成6年11月 」15日,甲1。以下「甲1刊行物」といい,これに記載された発明を「甲1発明」という )。
・特開平6-237661号公報(発明の名称「茶殻を使用する動物の排泄物処理材 ,出願人 株式会社大貴〔訴外会社 ,公開日 平成6年8月30 」 〕日,甲2。以下「甲2刊行物」といい,これに記載された発明を「甲2発明」という )。
・WO93/14626(発明の名称「動物の排泄物処理材及びその製造方法 ,出願人 株式会社大貴〔訴外会社 ,国際公開日 1993年〔平成5 」 〕年〕8月5日,甲3。以下「甲3刊行物」といい,これに記載された発明を「甲3発明」という )。
・特開平5-328866号公報(発明の名称「動物の排泄物処理材及びその製造方法 ,出願人 株式会社大貴〔訴外会社 ,公開日 平成5年12月 」 〕14日,甲4。以下「甲4刊行物」といい,これに記載された発明を「甲4発明」という )。
〈判決注〉上記旧36条4項の規定は,次のとおり。
「4前項第三号の発明の詳細な説明には,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に,その発明の目的,構成及び効果を記載しなければならない 」。
当事者の主張
1 請求の原因(1) 特許庁における手続の経緯ア被告は,平成6年12月29日,名称を「動物用排尿処理材」とする発明について特許出願(特願平6-339975号)をし,平成8年6月27日に特許第2534031号として設定登録を受けた(請求項の数5。
以下「本件特許」という。特許公報は甲11 。)イこれに対し原告が,平成19年8月28日付けで本件特許の請求項1〜(),, 5について特許無効審判請求 本件無効審判請求 をしたので 特許庁は同請求を無効2007-800177号事件として審理した上,平成20年5月27日 「本件審判の請求は,成り立たない」旨の審決をし,その ,謄本は平成20年6月6日原告に送達された。
ウ一方,訴外会社である株式会社大貴は,本件無効審判請求に先立つ平成19年8月17日,同じく本件特許の請求項1〜5について特許無効審判請求(別件無効審判請求)をし,同請求は無効2007-800166号事件として審理されたが,その中で訴外会社は平成20年4月24日付け(), で特許請求の範囲変更等を内容とする訂正請求 甲17 をしたところ特許庁は,本件審決後の平成20年6月24日付けで,上記訂正を認めた上 「本件審判の請求は,成り立たない」旨の審決(別件審決)をし,そ ,の謄本は平成20年6月30日訴外会社に送達された。
(2) 発明の内容ア本件特許の請求項1〜5(以下順に「本件発明1」〜「本件発明5」といい,これらを総称して「本件発明」という )は,次のとおりである。 。
・ 請求項1】【吸水性を有する動物用排尿処理材であって,上記処理材が排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめる表層にて被覆されていることを特徴とする動物用排尿処理材。
・ 請求項2】【上記核部分が表層より暗色系の顔料又は染料にて着色されていることを特徴とする請求項1記載の動物用排尿処理材。
・ 請求項3】【上記核部分が無機顔料を含有していることを特徴とする請求項1記載の動物用排尿処理材。
・ 請求項4】【上記核部分が水溶性の顔料又は染料にて着色されていることを特徴とする請求項1記載の動物用排尿処理材。
・ 請求項5】【上記核部分が白色度の低いパルプから成り,表層が白色度の高いパルプから成ることを特徴とする動物用排尿処理材。
イなお,平成20年6月24日になされた別件審決において認められた,訂正後の発明の内容は,以下のとおりである(下線部は訂正部分 。)・ 請求項1】【吸水性を有する動物用排尿処理材であって,上記処理材が排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめる表層にて被覆した複合層構造を有し,該排尿を吸収した表層を通し該露見が得られ,上記複合層構造にして排尿の有無を判別する構成を有することを特徴とする動物用排尿処理材。
・ 請求項2】【上記核部分が表層より暗色系の顔料又は染料にて着色されていることを特徴とする請求項1記載の動物用排尿処理材。
・ 請求項3】【上記核部分が無機顔料を含有していることを特徴とする請求項1記載の動物用排尿処理材。
・ 請求項4】【上記核部分が水溶性の顔料又は染料にて着色されていることを特徴とする請求項1記載の動物用排尿処理材。
・ 請求項5】【上記核部分が白色度の低いパルプから成り,表層が白色度の高いパルプから成ることを特徴とする請求項1記載の動物用排尿処理材。
(3) 審決の内容ア審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その理由の要点は,?@本件発明1〜本件発明4は,甲1発明〜甲4発明と同一ではない(特許法29条1項3号 ,?A本件発明1〜本件発明5は,甲1発明〜甲4発明に基 )づいて容易に想到できたとはいえない(特許法29条2項 ,?B本件特許 )明細書の発明の詳細な説明に当業者が容易に実施することができる程度にその発明の目的,構成及び効果が記載されていないということはできない(特許法旧36条4項 ,というものである。 )イなお,審決が認定した甲1発明〜甲4発明の内容,本件発明1と甲1発明〜甲4発明との相違点は,次のとおりである。
〈甲1発明〜甲4発明の内容〉「吸収性を有する動物用排尿処理材であって,上記処理材が,核部分を有し,該核部分が表層にて被覆されている動物用排尿処理材 」。
〈相違点〉本件発明1は,表層が,排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめるのに対し,甲1発明〜甲4発明にはそのような構成がない点。
(4) 審決の取消事由しかしながら,審決には以下のとおりの誤りがあるから,違法として取り消されるべきである。
ア 取消事由1(手続上の誤り)本件特許は,別件無効審判請求事件(無効2007-800166号事件)において,平成20年4月24日付けで訂正請求がなされている。そして,特許第2534031号として存在することができる特許は一つだけであるから,ある無効審判請求事件の審理係属中に他の無効審判請求事件で訂正請求が出されたのであれば,権利者の最新の意思が反映された訂正請求の内容に基づき無効理由の有無が判断されることが必要となる。
このことは,例えば,無効成立審決取消訴訟の係属中に,当該特許権の特許請求の範囲減縮を目的とする訂正審決が確定した場合には,当該審決を取り消さなければならないとされていること(最高裁平11年3月9日第三小法廷判決・民集53巻3号303頁)にも反映されている。このような事態を避けるため,特許庁における手続では,本件無効審判請求事, , 件の審理においても 訂正請求の内容を反映させる手続をとる必要があり具体的には,無効審判請求人(原告)に対しては,訂正請求が出された他の無効審判事件と同様に,特許法134条の2第2項及び同法施行規則47条の3の規定に準じ,その内容を通知し,反論の機会を与えるべきであった。
しかるに,本件無効審判請求事件では,そのような手続を採用することなく,結果として審理の対象を誤る事態に導き,当事者に反論の機会が与えられなかった点に手続上の瑕疵があるから,審決は取り消されるべきである。
イ 取消事由2(新規性の判断の誤り)(ア) 本件発明1についての新規性の判断の誤りa審決は,甲1発明における動物用排尿処理材の表層は,コーヒー抽出液抽出残渣の褐色を隠すため,本件発明1と比べて「厚い」ものでなければならないとし これを理由に 甲1刊行物には 表層 が 排 ,,「」 「尿を吸収すると核部分の色を露見せしめる」という構成が実質的に記載されていない旨認定する。
,, , しかし 甲1発明は コーヒー抽出液抽出残渣の褐色を隠すためにコーヒー抽出液抽出残渣を含む造粒物の表面を着色物の層で被覆するというものであるが,本件発明1と甲1発明の動物用排尿処理材は,ともに顧客の希望する商品として提供されるから,同程度の大きさの粒(造粒物)に形成されるものであり,そうであれば,甲1発明における動物用排尿処理材も自ずとその核部分(の大きさ,厚さ)とその表層の厚さは限定されるというべきである。
この点,甲1発明において,着色物の層を厚くすることは,たとえコーヒー抽出液抽出残渣の褐色を隠すためではあっても,動物用排尿処理材粒子の直径及び長さを増加させ,その寸法を動物用排尿処理材の商品としての粒子の大きさを超えて大きくすることであるから,いわば不良品を形成することになり,到底採用できるものではない。
そして,甲1発明において,着色物としての紙粉の層の厚さが薄ければ,紙粉の層が排尿を吸収した場合に不透明性が失われて,コーヒー抽出液抽出残渣を含む造粒物の褐色が露見すると想定されることは審決も認めるところであり,このような紙(紙粉)が水に濡れた際の性質(下層のものを透けて見えるようにする性質)などをも考慮すると,甲1刊行物に「表層」が「排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめる」という構成が実質的に記載されていない旨の審決の認定は明らかに誤りである。
bまた,甲1発明は,コーヒー抽出液抽出残渣の粒子を着色して造粒し,その段階でコーヒーの色を隠した造粒物とすることもでき(甲1・段落【0005,実施例(例7)には,灰色に着色されたコーヒ 】)ー抽出液抽出残渣配合物の表層を,当該灰色を隠すために更に紙粉の(【】 層でコーティングすることが記載されている 甲1・段落 0064〜【0067 。】)この場合,甲1発明の「コーヒーの色を隠した造粒物」が本件発明1の「核部分」に対応し,甲1発明の「紙粉コーティング」による紙粉の層が本件発明1の「表層」に対応するから,核部分はコーヒー抽出液抽出残渣の褐色ではない。
そうすると,このような核部分を隠すために着色物の層を厚くする必要はないから,この意味でも前記aの審決の認定は誤りである。
c前記bのとおり,甲1発明では造粒段階において造粒物の色を灰色等の別の色に着色することができるから,造粒物表面にある着色物の層の役割は,二次的な着色というよりも,尿に触れたときに粒子相互(【】, を接着させて凝集塊を形成する機能 甲1刊行物・段落 0020【0023】参照)にある。そうすると,甲1発明における着色物の層は,凝集塊を形成するために必要な一定量付着すれば足り,着色物の層を殊更に厚くする必要はない。
そして,本件発明1も,甲1発明と同じく核部分にコーヒー豆処理後の残渣粉を使用するものであるから 「コーヒー抽出液抽出残渣を ,含む造粒物=核部分」の色を隠す機能が要求される点では,本件発明1の「表層」と甲1発明の「着色物の層」とに差異はない。むしろ,上記bのとおり,核部分が別の色に着色されている甲1発明の「着色物の層 の方が核部分の色を隠す必要性が低いといえ 甲1発明の 着 」 ,「色物の層」の厚さが,本件発明1の「表層」に比べて厚いと判断する根拠とはならない。
したがって,この意味でも審決の前記aの認定は誤りである。
d本件発明1において 「表層」が「処理材が排尿を吸収しても核部 ,分の色を露見せしめる表層」であるといえるためには,水に濡れて透明になる材料や水に溶けた染料が滲出又は滲潤しやすい材料で形成されることが不可欠であると解される。そうでないと,例えば水に濡れない材料や撥水性の材料で形成されている場合には 本件発明 1 の 表 ,「層」が「処理材が排尿を吸収しても核部分の色を露見せしめる」に至らないからである。
この点,紙は水に対して浸透性を有するものであり,核部分の水溶(「」 性染料を滲出又は滲潤するものであるから 門屋卓ほか編 製紙科学263〜264頁,昭和57年6月30日・有限会社中外産業調査会発行,甲15 ,仮に着色物の層を厚くしても「排尿を吸収すると核 )部分の色を露見せしめる」現象は大なり小なり現れるものである。その意味で,本件発明1における「排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめる」という点は,動物用排尿処理材が排尿を吸収した時に自然に現れる現象を記載したものである。
そして,甲1発明の実施例(例7)における動物用排尿処理材にあっては,紙粉コーティング装置により着色造粒物に被着される紙粉の量は4kgであり,動物用排尿処理材の重量は25.48kgであるから,表層の紙粉の量は15.7重量%,表層の紙粉の厚さは,表層の紙粉の量から按分すると,概略5mm×0.157÷2=0.4mmである。ここで,紙粉は 「水に浸すと紙の白さや不透明性が失わ ,れる」性質を有するものであるから(前掲「製紙科学」551頁,甲13 ,0.4mmの厚さの紙粉の層は 「排尿を吸収すると核部分の ) ,色を露見せしめる」表層にほかならない。
この点,甲1刊行物の実施例(例7)における動物用排尿処理材の表層が 「排尿を吸収すると,核部分の色が表層を通して見えるよう ,になる」性質を有することについての再現実験報告書が,事実実験公正証書(甲16,以下「甲16公正証書」といい,そこに記載された実験を「甲16実験」という )である。すなわち,甲16実験は, 。
本件特許に無効事由があることを明らかにするため,甲1刊行物記載の実施例7の動物の排泄物処理材を,同記載の製造方法に従って実際に製造し,これに水分をかけ,その変化を確認するものである。甲16実験の結果,アンモニア水がかかった試料の表層部は,核部と同様のコーヒー色を呈し,目視により周囲のアンモニア水が振りかからなかった試料と判別可能であることが確認された。また,半透明様になった表層部から核部のコーヒー色が透けて見える状況も報告された。
これにより,核部分に含有された材料の色であるコーヒー色が表層を通じてしみ出して浸潤する露見状況及び核部分のコーヒー色が半透明様の状態になった表層を通じ 透過して露見する状況が確認できた 写 , (真31,写真36 。)したがって,甲1刊行物からは,本件特許出願時における周知慣用技術として 「吸水性を有する動物の排泄物処理材であって,造粒部 ,(本件特許の「核部分」に相当する。コーヒー類似の茶色ないし茶灰色 )が,表面着色部(本件特許の「表層」に相当する。白色 )にて 。 。
被覆されていることを特徴とする動物の排泄物処理材」との構成に係る動物の排泄物処理材が製作されており,同排泄物処理材は,実質的に 「前記処理材が排尿などの水分を吸収したときに,残された表面 ,着色部(表層)に造粒部の色(核部分であるコーヒー類似の茶色ないし茶灰色)が染み出して,あるいは,造粒部の色(核部分であるコーヒー類似の茶色ないし茶灰色)が半透明様になった表層を通して見える状態となるものであること」との性質を有するものであったことが認められる。
上記実施例に記載の動物用排尿処理材は本件発明の出願前において既に公知の事実であり,甲16実験は,この実施例の「処理材が排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめる表層にて被覆されている」ことを端的に示すものである。
そうすると,甲1発明は 「吸水性を有する動物用排尿処理材であ ,って,上記処理材が排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめる表層にて被覆されていることを特徴とする動物用排尿処理材」というべきであるから,この意味でも,審決の前記aの認定は誤りである。
e本件発明1の出願前においては,表層を形成する技術が未だ確立されておらず,本件発明1の明細書にも表層の形成方法が明確に記載されていないところ,本件発明1と甲1発明は同じ動物用排尿処理材であり,ともに顧客の希望する商品として提供されるものであるから,。, 両者は同程度の大きさに形成されると考えるのが自然である 例えば甲1発明の動物用排尿処理材が直径5mm,長さ10mmに形成されるのであれば,本件発明1の動物用排尿処理材においても,ほぼ同様の寸法に形成されるとみるのが普通である。
,「」「」 , この場合 本件発明1の 表層 及び甲1発明の 表面着色部 はともに,直径が5mm,長さ10mmに形成される処理材の表面を覆うものである以上,本件発明1の「表層」の厚さと甲1発明の「表面着色部」の厚さは,大差なくほぼ同様の寸法に形成されるとみることができる。同一の条件の下では,同一の結果が得られるのは自然の理であるから,甲1発明の表面着色部においても,乾いた状態では,造粒物コーヒー抽出液抽出残渣の褐色の色を隠すものであり かつ処,,「理材が排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめる」ものであるといえる。
そうすると,甲1発明は 「処理材が排尿を吸収すると核部分の色 ,を露見せしめる」構成を備えるものというべきであるから,この意味でも,審決の前記aの認定は誤りである。
f以上と同様の理由で,審決の甲2発明〜甲4発明との関係における判断についても誤りがあるというべきである。
(イ) 本件発明2についての新規性の判断の誤りa審決は,甲1刊行物には,核部分が表層より暗色系の顔料又は染料にて着色されていることが記載又は示唆されているということはできないとする。
しかし,甲1刊行物においては 「着色造粒物 (コーヒー抽出液抽 ,」出残渣に着色物質の紙粉を混合して造粒されたもの)に更に紙粉コーティング装置で被覆物質が被着されたものが「被覆物質が被着されたコーヒー抽出液抽出残渣の着色造粒物」とされているように(実施例・例7参照「着色造粒物」を形成する「着色物質の紙粉」と,紙粉 ),コーティング装置52で被着される「被覆物質の紙粉」とは区別されており,このコーヒー抽出液抽出残渣を造粒し,この造粒物を紙粉を含む被覆物質により被覆し,最終的に白色に仕上げて,コーヒーの色を隠した造粒物とすることができるものとされている(甲1刊行物・段落【0005 【0020 。 】,】)そうすると,甲1発明は,コーヒー抽出液抽出残渣の着色造粒物が黒色の着色物質で着色されたものであったとしても,紙粉コーティング装置52に送って,紙粉を含む被覆物質により被覆して白色に仕上げて,動物の排泄物処理材とする例も含まれるものであり,審決の上記判断は誤りである。
bまた,甲1刊行物の実施例(例7)における着色造粒物であるコーヒー抽出液抽出残渣は灰色であり,完成した製品は全体が白色を呈している。つまり,コーヒー抽出液残渣からなる核部分の色は灰色であり,それを二次的に着色した猫砂の色は白色である。このことは,核部分が表層より暗色系に着色されることを示しており,上記審決の判断とは異なる。
, 。 したがって この意味においても審決の上記aの判断は誤りである,, , cさらに 甲1刊行物には 二次的に着色する着色物質の層について衛生的な雰囲気や,室内の色彩の調和を図るために排泄物処理材の色彩を決定することが示されており(段落【0076,そうすると,】)審決が,コーヒー抽出液残渣を黒色に着色した場合,更に二次的に黒色に着色すると考えるのが自然であるとの判断は甲1の記載とは異な, 。 るものであり 審決の判断は甲1刊行物の記載に基づくものではない(ウ) 本件発明3についての新規性の判断の誤り審決は,甲1刊行物には,核部分に白色の無機顔料である炭酸カルシウム,酸化チタン又は合成パールを配合した際に,更に二次的に何色に着色するかは記載されておらず,二次的に紙粉で着色した場合でも,白色に着色された核部分を白色の紙粉で被覆することになって,表層が排尿を吸収しても核部分の色を露見せしめる構成とはならないとする。
しかし,前記(ア)のとおり,動物用排尿処理材において,表層をいかに形成するか未だ確立されておらず,本件発明1も表層をいかに形成するかについて示していないため,甲1発明の表面着色部と本件発明1の表層とはともに同一に形成されるとみられるところ,本件発明1においては,炭酸カルシウムといった白色の無機顔料をコーヒー抽出液抽出残渣に充填物として含ませる場合にも 「処理材が排尿を吸収すると核部 ,分の色を露見せしめる」構成となることが示されているから(段落【0005【0007,甲1発明において核部分に無機顔料が含まれて 】,】)いたとしても,表層が排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめるという構成を有するということができる。
そして,甲1刊行物の実施例(例7)には,核部分が,含水率68%のコーヒー抽出液抽出残渣28kg(乾燥重量8.96kg ,着色物 )質として紙粉(繊維長0.5〜0.3mm)4kg,配合物質として紙粉(繊維長0.8〜1.5mm)6kg,安息香酸ナトリウム20g及び吸水性ポリマー1.5キログラムを混合し,この混合物(20.48kg)を造粒して,直径6.4mm,長さ12.5mmの細い円柱状の灰色の造粒物として形成されることが示されているところ,この造粒物は,コーヒー抽出液抽出残渣が乾燥重量で8.96kg,着色物質として紙粉が4kg,配合物質として紙粉が6kg,安息香酸ナトリウムが20g及び吸水性ポリマーが1.5kgの混合物の造粒物であり,コーヒー抽出液抽出残渣の割合は,8.96÷20.48×100=42.75重量%である。
このように,コーヒー抽出液抽出残渣より多い紙粉が混合されても,コーヒー抽出液抽出残渣の褐色の色が皆無になるわけではないから,造粒物の色は,紙粉の白色とコーヒー抽出液抽出残渣の褐色の色が斑に混合してほぼ灰色を呈し,白色にはならない。
そうすると,甲1発明は「白色に着色された核部分を白色の紙粉で被覆すること」にはならないのであって,審決の前記判断は誤りである。
(エ) 本件発明4についての新規性の判断の誤り本件発明4に対する審決の判断は,いずれも本件発明1に対する判断を前提とするものであるところ 上記判断に誤りがあることは 前記(ア) , ,のとおりである。
ウ 取消事由3(進歩性判断の誤り)(ア)甲1発明の「表面着色部」を構成する紙粉はパルプ粉を包含するものであるところ,前記のとおり,紙粉は水に浸すと紙の白さや不透明性が失われる性質を有するものであるし,紙粉は,水溶性染料を滲出又は滲潤する性質を有するものでもあるから,本件発明1の「排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめる表層」を甲1発明に対する相違点とみても,当該相違点は,甲1発明の「表面着色部」のコーティング材の中から紙粉を選択した場合に,当然に現れる上記性質に基づく現象を意味するにすぎない。
そして,本件発明1には表層をいかに形成するかについて何ら特定されていないが,甲1発明において,パルプ粉等の紙粉は,コーヒー液抽出残渣の褐色の色を隠す着色材とされ,紙粉コーティングに使用されるものであるから,本件発明1は,甲1発明における表層の作製方法を適用して動物用排尿処理材を作製するに当たり,コーヒー抽出液抽出残渣の褐色を隠す目的で紙粉を選択した程度のことであり,当業者であれば格別の発明力を要することなく想到できるものであって,その作用効果も甲1刊行物の記載の示す範囲を出ない。
したがって,本件発明1は,その出願前に,当業者が,甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
これに対し審決は,甲1発明においてはコーヒー抽出液抽出残渣の褐色を隠すために着色物を厚くするものであるから その表面着色部は 排 ,「尿を吸収すると露見せしめる表層」とするものではないとするが,前記イのとおり,このような審決の判断は,商品としての動物用排尿処理材に要求される外径及び長さを無視し,また甲1刊行物の実施例(例7)に示される動物用排尿処理材の寸法等(直径5mm,長さ10mm,表層の紙粉の厚さ0.4mm〔ほぼティッシュペーパー5枚分に相当 )〕を看過するものである。
(イ)また,前記イで述べたことを前提とすれば,審決の本件発明2〜5に係る容易想到性の判断に誤りがあることは明らかである。
エ 取消事由4(実施可能要件の判断の誤り)(ア)審決は,本件発明の「動物用の排尿吸収材」において,表層が排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめるように構成することは,当業者, 。 ならば格別困難なく実施し得るとするが 審決の上記判断は誤りであるa本件特許明細書(甲11)は,表層に使用する材料として 「故紙,パルプ 白色度の低いパルプ白色度の高いバージンパルプパ ()」,「 」,「ルプスラッジ (段落【0014「白色度の高いバージンパルプ」 」】),段落 0015パルプ繊維又は粉体段落 0016故 (【】),「」(【】),「紙パルプ「バージンパルプ (段落【0017「有機繊維又はそ 」,」】),の粉粒体「シリカ「ゼオライト「ベントナイト (段落【00 」,」,」,」20「パルプ繊維「パルプ (段落【0021 )として,表層 】),」,」】に使用する材料を例示するのみであり,ここに列挙する材料を使用して,いかなる手法・構造により核部分を被覆して表層を形成するかについて示すところがない。
この点,本件発明の出願前においては,動物用排尿処理材における表層形成技術は未だ確立していなかったから,本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された表層について,前記パルプ等の素材をもって前記発明の詳細な説明に記載のように単に核部分を被覆するだけでは,被覆された粒子を動かしたり,乾燥したりすると剥落し,表層を形成することができない状態にあり,排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめる表層を有する動物用排尿処理材とはなり得なかったものである。
なお審決は,上記段落【0021】にシリカに吸水性があることを前提とする記載があることに関し,シリカ等の無機物も粉流体にすれば,粒子間に水を吸収すると考えられるし,シリカ等は吸水性のある多孔質のものが一般に知られているとするが(審決20頁下4行〜下1行 ,シリカは石英に代表される二酸化珪素の別称であり,二酸化 )珪素はゼオライト等とは異なり吸水性を有しておらず 「吸水性のあ ,」 , る多孔質のものが一般的に知られている ということはできないから審決の上記判断は誤りである。
bまた,請求項1は 「上記処理材が…表層にて被覆されている」と ,特定するに止まり,その記載上,表層が何に接触して被覆するのか明確でないし,本件特許明細書の発明の詳細な説明を見ても,表層が何に付着するか明確でない。
この点,本件特許明細書(甲11)には,発明の効果として 「こ,の発明によれば…又表層によって良好な外観性を付与することができる。従って内部(核部分)には機能を損なわない範囲で任意の材質を選択できる(段落【0024 )と記載されているが,この記載に 。」】おいて 特に 核部分としないで内部 核部分とするのは表 ,,,「()」,「層」の内部の一例として「核部分」を示すものであるから,表層の内部の構成は明確でない。
cまた,本件発明1の動物用排尿処理材の核部分はどのようにして形成されているのか,表層は核部分に対してどのような組成で,どのような構造で形成されているのか,また,核部分と表層部分の明度の差, , をどの程度とするか その際の表層部分の厚さはどの程度とするか等物の発明において,殊に,表層について考慮すべき事項は何も記載されていない。
例えば,本件発明4は 「上記核部分が水溶性の顔料又は染料にて ,。」 着色されていることを特徴とする請求項1 記載の動物用排尿処理材と規定され,その態様として,本件特許明細書(甲11)には,「…顔料又は染料は水溶性のものを用い,排尿の吸収によって顔料又は染料が表層に滲出し核部分の色を露見できるようにする。」(段落【0006】)と記載されているが,上記態様において,核部分にどのような顔料または染料をどの程度の量使用し,さらに,表層にどのような材料を用いて,どの程度の厚さで形成すれば上記「表層に滲出し核部分の色を露見できる」ことが可能となるかを示唆する記載は一切見られない。そのため,審決においては,コーヒー抽出液抽出残渣の褐色を隠すために着色物の紙粉の層を厚くする場合は 「表層」が「排尿 ,を吸収すると核部分の色を露見せしめる」という構成が実質的に記載されているものではないとしており,これは,着色物の紙粉の層が厚,「」 「 」 い場合は表層 が 排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめることができないことを示すものである。審決におけるこの判断は,表層にどのような材料を用いて,どの程度の厚さで形成することが明確でなければならないということを示すものである。
さらに,本件特許明細書(甲11)の実施例には,核部分及び表層部分に,どのような材料を,どの程度使用し,どのような製造工程で製造するか等,通常の実施例に相当する記載がなく,具体的な製造方法といえるものは一切開示されていない。
d以上のとおり,本件特許明細書には,本件発明に規定された「排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめる表層にて被覆」した複合層構造とするための具体的な実施方法が記載されていない。そのため,核部分と表層部の材料の選択,核部分の大きさと表層部の厚さ,核部分と表層部との明度差など,相互に関連する考慮すべき事項が多岐にわたり,技術常識を考慮しても,当業者に期待し得る程度を超えた試行錯誤が必要となるものであって,これらは「適宜選択」できるものではない。
したがって,本件特許明細書の発明の詳細な説明は,本件発明の発明の構成に欠くことができない事項である「吸水性を有する動物用排尿処理材であって,処理材が排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめる表層にて被覆されていることを特徴とする動物用排尿処理材 」。
について,当業者が容易にその実施をすることができる程度に,その発明の構成及び効果が記載されているということはできない。
eこの点,審決は,本件発明1の「動物用の排尿吸収材」において,表層が排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめるように構成するに際して,選択した材料に応じて,表層である例えば紙粉の厚さを適宜選択して,動物の尿を吸収すると核部分の色を露見せしめるようにすることは,当業者であれば,格別困難なく実施し得ると認められるとする。
しかし,本件特許明細書には,表層を形成するのに,吸水性ポリマーや接着剤の使用の必要性について何も記載されていないのであるから,紙粉の厚さを適宜選択した程度では,当業者といえども,明細書の記載に基づいて格別困難なく動物用排尿処理材を実施し得るとはいえない。
そして,本件発明1において,表層の原材料として,吸水性樹脂又は接着剤を記載していないが 「吸水性樹脂又は接着剤」を加入する ,補正は,平成6年法律第116号による改正前の特許法17条2項の, 「」 規定により 願書に最初に添付した明細書に 吸水性樹脂又は接着剤の記載がないから,補正をすることができない。
本件発明1において,そのような性質の動物用排尿処理材とするためには,本件特許明細書の記載では足りず,さらに,核部分と表層部の材料の選択,核部分の大きさと表層の厚さ,核部分と表層部との明度差など,相互に関連する考慮すべき構造に係る事項が多岐にわたり開示されることが必要である。さもなくば,そのような性質の動物用排尿処理材を得るためには,技術常識を考慮しても,当業者に期待し得る程度を超えた試行錯誤を課することとなり,当業者といえども容易に実施をすることができない。
なお,訴外会社である株式会社大貴は,自社の独自技術に基づきその製品を製造しているのであって,本件特許明細書の記載とは無関係である。
(イ)また,本件特許明細書には 「水溶性染料 (請求項4)が具体的に ,」いかなる染料を使用するものであるか 「暗色系の顔料 (請求項2)が ,」いかなる顔料をいうのか,具体的な記載がない。染色や着色の分野において 「非水溶性の染料」及び「水溶性の顔料」とは,どのようなもの ,か不明であるから,当業者が容易に実施することはできない。この点審決は 「非水溶性の顔料又は染料」及び「水溶性の顔料又は染料」につ ,いて,それぞれ 「非水溶性の(顔料又は染料 」及び「水溶性の(顔料 , )又は染料 」の意味に解されると判断するが(審決20頁下8行〜下5 )行 ,上記判断の根拠は説明されていない。 ),,,, (ウ) また 本件特許明細書は 本件特許3に関連して 炭酸カルシウムクレー,珪石等の無機物を水に溶解させて処理材に配合することを示しているが(段落【0023,上記無機物は水に不溶であるから,当業 】)者は本件特許3の内容を容易に実施することはできない。
2 請求原因に対する認否請求原因(1)ないし(3)の各事実はいずれも認めるが,同(4)は争う。
3 被告の反論審決の認定判断は正当であり,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
(1) 取消事由1に対し原告は,別件無効審判請求事件(無効2007-800166号事件)の中で被告が訂正請求を行った際,特許庁は原告に対し,本件無効審判事件においても特許法134条の2第2項及び同法施行規則47条の3の規定に準じてその内容を通知し,反論の機会を与えるべきであり,かかる手続が採用されなかったことが手続上の瑕疵に当たる旨主張する。
しかし,そもそも同一の特許権を対象として無効審判事件が起きたとしても,その当事者,提出する攻撃防御方法及び審判の進行は,全く異なる。訂正請求は無効審判における被請求人の防御方法の一つであり,請求人に対する訂正請求書の送達などの手続は,この防御方法に対する攻撃方法の提出の機会を与えることにすぎないから,被請求人がかかる防御方法を提出しない事件においては,そもそも,これに対する請求人の攻撃方法の提出はあり得ない。
したがって,ある無効審判事件において訂正請求がなされた際,特許法134条の2第2項等を準用して別の無効審判事件においてもその訂正請求書を送達するなどの手続を取るべき基礎ないし準用すべき根拠は存在しないから,原告の主張は失当である。
なお,特許法上,複数の無効審判請求事件を併合審理すべき義務を定めた規定はなく,併合審理するか否かの判断は特許庁の裁量に委ねられている。
(2) 取消事由2に対しア 本件発明1についての新規性の判断の誤りにつき(ア)a原告は,甲1発明は商品としての動物用排尿処理材の大きさから自ずと着色物である表層の厚さが限定され,甲1発明の表層は排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめる構成が特許請求の範囲に実質的に記載されていると主張するところ,同主張は,甲1発明はこれに用いられる着色物による表層は一定の薄さがあれば当然に核部分の色が透けて見え又は核部分の色がしみ出して見える性質を有しても構わないとの思想を内在していることを前提とするものである。
しかし,甲1発明の特許請求の範囲には,請求項1から請求項3が記載されているが,このいずれにも核部分の色が表層を通して(複合層を維持したまま)見えるようになることを構成とする旨の記載が一切存在しないし,甲1刊行物のそのほかの部分においてもかかる記載は存在しない。むしろ,甲1発明は,その段落【0003】及び【0021】に記載されているとおり,排尿を吸収しても核部分の色が見えないようにすることをその発明の目的とし,この目的を達成する内容とする手段が記載されているものである。
bすなわち,甲1発明は,段落【0005】において,造粒物の表面はコーヒー抽出液抽出残渣の固有の色と異なる色を有する着色物質により着色されるとされ,?@コーヒー抽出液抽出残渣を着色して造粒物を作る,?Aこの造粒物を二次的に着色する,?Bコーヒー抽出液抽出残渣を造粒し造粒物を着色物質により着色する,といった3つの製法が記載されている。そして,段落【0006】では,着色物質として白色のもの,黒色のもの,青色のもの,緑色のもの又は黄色のものを用いる旨が記載されている。?@及び?Bは,着色のタイミングが異なるものの,単にコーヒー抽出液抽出残渣を着色物質により着色するだけの, , 製法であり これも甲1発明を実施する製法の一内容とされているが上記のとおり,黒色など遮光性が高く着色物質には下層の色を透視し又は下層の色がしみ出して見えるようにするには不適切な色・物質を使用することも想定していること,白色の着色物質の場合でも白色の鉱物の中でも遮光性が強い酸化チタンも使用することを想定していることなどからすると,甲1発明が当然に核部分の色が透けて見え又は核部分の色がしみ出して見える性質を有しても構わないとの思想を有しているとの前提自体が誤っているというべきである。
cさらに,段落【0035】から【0042】の記載に見られるように,実施例の例1から例3までは,攪拌装置でコーヒー抽出液抽出残渣,着色物質及び配合物質(これは,接着能,吸水性及び殺菌作用を与えるために混合される。段落【0020】参照 )を攪拌して造粒 。
装置で押し出し造粒した後,噴霧装置で着色物質である炭酸カルシウムや配合物質である高吸水性樹脂等を噴霧して乾燥させるとの製法が記載されている。
これらは,前記?Aの製法を実施する例であるが,例1から例3の実施例を見ると,炭酸カルシウムや塩化ナトリウムが配合されたコーヒー抽出液抽出残渣は,最初の攪拌・造粒により白色の造粒物となり,その後炭酸カルシウムや高吸水性樹脂等の被覆物質(これらは,上記のとおり,着色,吸水性,接着能等を付与する目的を有する )噴霧。
されて全体が白色の製品にできあがることが記載されている。
そして,これらを猫が排泄に使用した後については,排泄した部分が容易に取り出すことができたこと,脱臭性に優れ,においが発生することを避けることができたことなどが記載されてはいるが,使用部分と未使用部分とを変色により区別できた旨は記載されていない。むしろ 【発明が解決しようとする課題】の項目において 「コーヒー抽 , ,, , 出液抽出残渣の褐色の色は 動物の飼い主の好むところでないために問題とされている。
ところで,動物の排泄物処理材は,一般に,室内で使用されるために,衛生的な感じを与える色調であることが要求されている。本発明は,コーヒー抽出液抽出残渣のもつ褐色の色彩による動物排尿処理材としての商品価値の低下に係る問題点を解決することを目的としている 」としているように,甲1発明は,室内で使用した場合に(すな 。
わち,動物の排尿を吸収した場合に)衛生的な色調を保つことを目的とし,さらに【作用】の項目には「コーヒー特有の色が隠されて,排泄物処理材の使用時における,例えば室内の調度との調和,衛生感,使用者の好み及び色彩雰囲気等に応じることが可能」と記載されているように,使用時,すなわち排尿の吸収によっても変色しないことが指向されているのである。
さらに,そもそも,これらの実施例では,被覆物質に紙粉は用いられておらず,かえって鉱物であり遮光性を有する炭酸カルシウムが被覆物質として使用されているのである。
このように,造粒物及び表層の双方が白色となる製法が実施例として挙げられていること,使用後の変色により使用部分と未使用部分とを区別することができたとの記載がなく,むしろ変色しないことを指向していること,鉱物であり遮光性のある炭酸カルシウムが被覆物質として使用されていることなどからすると,甲1発明が当然に核部分の色が透けて見え又は核部分の色がしみ出して見える性質を有しても構わないという思想を有しているとの前提自体が誤っているというべきである。
,【】【】, dまた 段落 0046 から 0052 の記載に見られるように例4及び例5の実施例では,攪拌装置によってコーヒー抽出液抽出残渣,着色物質及び配合物質を攪拌し,造粒装置で造粒した後,第1噴霧ノズルから炭酸カルシウムや高吸水性樹脂等を噴霧し,第2噴霧ノズルから紙粉を噴霧するとの実施例が記載されている。そして,いずれの実施例も着色物質には白色の炭酸カルシウムが用いられ,最初の造粒物自体も白色であり,第2噴霧後に乾燥させて完成させた後も白色である。こうして,造粒物から表層に至るまでが全体的に白色となっており,もともと,吸水すると新たに現れる色が存在しない。
また,猫が使用した後を観察した状態も述べられ,アンモニア臭を感じなかったこと,排泄した部分については容易に取り出すことがで( 。【】。) きた 配合物質により接着したからであろう 段落 0020 参照, 。 ことは記載されているが 変色したことは記載されていないのであるさらに,第1噴霧ノズルからは被覆物質として白色の鉱物であり遮光性を有する炭酸カルシウムが使用されており,この被覆をさらに覆うため第2噴霧ノズルから紙粉が噴霧されている。
そして,段落【0049】には,この2回の噴霧の効果について,「二回の噴霧により被覆物質の被着を行うことができる。この場合,一回目の噴霧と同様の被覆物質の配合で再度繰り返し行うことしてもよいが,着色物質の比率を一回目の噴霧の場合より高めて行うことにより,着色効果を高めることができる 」と記載されているように, 。
この2回の噴霧は着色効果を高め,排尿の前後を通じて下層の色が見えることを防止することを目的としている。
このように,造粒物,第1噴霧及び第2噴霧のいずれもが白色となる製法が実施例として挙げられていること,第1噴霧においては鉱物であり遮光性を有する被覆物質が使用されていること,2回の噴霧は着色効果を高め排尿の前後を通じて下層の色が見えることを防止することを目的としていること,使用後に変色により使用部分と未使用部分とを区別する記載がないこと(むしろ変色しないことを指向していることは上記のとおりである )などからすると,甲1発明が当然に 。
核部分の色が透けて見え又は核部分の色がしみ出して見える性質を有しも構わないという思想を有しているとの前提自体が誤っているというべきである。
e段落【0053】から【0055】には,尿pH指示薬を使用する。,, 実施例6が記載されている これによると コーヒー抽出液抽出残渣着色物質及び配合物質を攪拌・造粒して白色造粒物を作り,造粒物に第1噴霧ノズルからポバール及び紙粉の被覆物質が噴霧され,第2噴霧ノズルから紙粉が噴霧され,乾燥後に尿pH指示薬が塗布されるとの製法が記載されている。
なお,尿pH指示薬を用いる場合については,段落【0012】に「着色物質及び配合物質の色彩を例えば白一色に揃えると,指示薬の発色の確認が容易となり,適宜の指示薬を配合して,動物の排泄物による検診を簡単に行うことができる,段落【0013】に「尿pH 。」指示薬の場合は,使用される着色物質及び配合物質はpHに影響を与えないものとされる 」などとあるとおり,指示薬の発色が確認しや 。
すいようにすることを重視している。例6の実施例に用いられた指示薬はBTB溶液であるが,同溶液は,pHにより色が変化し,酸性で,,,, は黄色 弱酸性では黄緑色 中性では緑色 弱アルカリ性では緑青色アルカリ性では青色を呈するが(乙1ないし3 ,かかる発色の確認 )を正確に行うためには,指示薬の色の変化のほかに核部分の色までもが表層から透けて見え又はしみ出して見えることを避ける必要があることは明らかである。現に,甲1発明における上記記載において,着色物質と配合物質の色彩を白一色に揃えると指示薬の発色の確認が容易となる旨が記載されており,核部分の色が見えるようになることは予定していないことを読み取ることができる。
こうした記載からは,甲1発明が,排尿により,指示薬の発色のほかに核部分の色が透けて見え又はしみ出して見えるような性質を有しても構わないという思想を有しているとの前提自体が誤っているというべきである。
fちなみに,現実に,被告が,本件特許権を実施して「ブルーノ」の名で製品を製造・販売するまで,表層を維持したまま核部分の色が透けて見え又はしみ出して見えることにより,使用部分と未使用部分とを区別する動物用排尿処理材は,市場にはなかった(乙4ないし乙15 。)また,訴外会社である株式会社大貴は,平成11年11月19日,特許通常実施契約により被告から本件特許権に関する通常実施権を付与され(乙16 ,同通常実施権実施することにより初めて,平成 )12年から,同様の製品をペットライン株式会社(以下「ペットライン社」という )にOEM(相手先ブランド生産)による供給を始め 。
。 () たのである 平成11年4月に発行されたペット用品カタログ 乙1には,訴外会社の供給先であるペットライン社の商品として,排尿により色が変わる猫砂は掲載されていない。しかし,平成12年4月発行の同カタログ(乙2)には,ペットライン社の新商品として「お花畑シリーズひなげし」が掲載されており,同商品は排尿により色が変わることを謳っている。カタログに上記の掲載があるだけでなく,同業者も,平成11年に被告が業界で初めて色が変わる猫砂を製造・販売し,訴外会社は平成12年から同様の製品を製造・販売し始めたことを認めている(乙6ないし乙15 。)(イ)原告は,甲1発明の実施例7において,着色物の層でコーヒー抽出液抽出残渣の褐色を被覆する前に着色物の層で薄められて灰色にされており,表層はその灰色を隠すものであるから,コーヒー抽出液抽出残渣の褐色を隠す場合と異なり,表層の厚さは薄く,審決は事実に反する旨主張する。
原告の上記主張は,甲1発明が,排尿により,指示薬の発色のほかに核部分の色が透けて見え又はしみ出して見えるような性質を有しても構わないという思想を有していることを前提としているが,その前提自体が誤りであることは,前記(ア)のとおりである。
なお原告は,甲1発明の実施例7の再現実験を行った結果とする甲16公正証書を提出し,これにより,甲1発明は,排尿の吸収により核部分の色が透けて見え又はしみ出して見えることを構成とすることが実質的に記載されていることを裏付けようとする。しかし,そもそも甲16実験は,甲1発明の実施例7で挙げられている配合物質(吸水性樹脂)とは異なる原材料を用いており(第2・1 ,そのはがれやすさ等が異 ), , なり得るほか 実施例7では噴霧ノズルで被覆物質が噴霧されるところ甲16実験では,被覆物質を手で振りかけてかき回すことにより塗布した旨が記載されており(第2・2(5,やはり被覆物質の厚さ・密度 ))・接着度などが実施例7に記載された製造方法の場合とは異なり得る。
また,甲16実験でコーティング用被覆物質としてポリビニルアルコールが用いられていることが記載されているところ,ポリビニルアルコールは,糊の役割を果たすものであり,この濃度及び量が被覆物質を噴霧した際の接着度に影響を与えるが,甲16実験における使用濃度・使用量等は明らかではなく,この点でも同号証記載の実験は,実施例7の製造方法とは異なり得るものである。
したがって,甲16公正証書に基づいて,甲1発明は,排尿の吸収により核部分の色が透けて見え又はしみ出して見えることを構成とすることが特許請求の範囲に実質的に記載されていると解されるべきではない。
(ウ)原告は,甲1発明においては,造粒段階の造粒物の色はすでに灰色等の別の色に着色されているから,着色物の役割は二次的な着色よりも凝集塊の形成機能にあり,殊更に着色物の層を厚くし核部分の色を隠す必要はないから,審決は誤りである旨主張する。
,,,,, しかし 原告の上記主張は 前記のとおり 甲1発明が 排尿により指示薬の発色のほかに核部分の色が透けて見え又はしみ出して見えるような性質を有しても構わないという思想を有していることを前提としている点において誤りである。
また,甲1刊行物の段落【0046】〜【0048【0050】〜】,〜【0055】において,実施例4から実施例6が被覆物質を2回噴霧することにより被覆物質の被着を行う例として記載されており 段落 0 ,【】, , 049 において 2回の噴霧により被覆物質の被着を行うことができ着色物質の比率を1回目の噴霧の場合より高めて行うことにより着色効果を高めることができることが記載されている。このように,より着色効果を高める方法も実施例として挙げられていることからすると,被覆物質の役割は単なる凝集塊の形成だけにあるのではなく,核部分の色を隠す目的・役割があるというべきであって( 作用】の項目には,着色 【物質は,コーヒーの色を隠し,使用時における調度との調和,衛生感,使用者の好みに応じることが可能であることが明確に記載されている,核部分の色を隠す必要はないとする原告の主張は,誤りである。 。)(エ)原告は,甲1発明は,本件発明1と同様に 「水に濡れて透明になる ,材料」又は「水に溶けた染料が滲出又は滲潤し易い材料」である紙粉を表層に用い,さらに,その表層の厚さは実施例7によると0.4mmであり,排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめる表層にて被覆されているといえるから,審決は誤りであると主張する。
,,,,, しかし 原告の上記主張は 前記のとおり 甲1発明が 排尿により指示薬の発色のほかに核部分の色が透けて見え又はしみ出して見えるような性質を有しても構わないという思想を有していることを前提としている点において誤りである。
また,被覆物質の厚さを0.4mmであるとする原告の上記計算は造粒物の密度と被覆物質の密度とがほぼ同じであることを前提とするものであり,造粒物と被覆物質とでは使用する材料が異なるし,また造粒物は攪拌混合された後,1c?u当たり数kgから数十kgの強い圧力で押し出し造粒されたものであるのに対し被覆物質は噴霧されただけであるから,両者の密度は大きく異なり,原告が主張するような単純な計算で被覆物質の厚さを算出することはできない。むしろ,造粒物の密度が大きく,被覆物質の密度は小さいことからすると,原告が主張するよりも被覆物質の厚さが厚いものと考えられる。したがって,原告の主張は誤りである。
(オ)原告は,本件発明1と甲1発明とは,表層部の材料を同じくするほか,各発明により製造される動物用排尿処理材の寸法もほぼ同じであるから,いずれの表層部も排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめるものであり,審決が,甲1発明は排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめるという構成が実質的に記載されているということはできないと判断したことは誤りである旨を主張する。
しかし,本件発明1は,本件特許明細書(甲11)の【実施例 ,段】落【0014【0016【0020【0021】などに記載され 】,】,】,ているように,その表層をパルプ繊維,粉体等の有機繊維を主として使用するが,散乱等を防止するために重量を付加する目的で無機物も含ませるなどして製造するものであり,表層は主としてパルプ等の繊維で形成される。
これに対し,甲1発明における実施例1ないし3は,コーヒー抽出液抽出残渣に着色物質である炭酸カルシウムと配合物質である小麦粉,ポリビニルアルコール,茶殻,高吸水性樹脂,澱粉糊などを攪拌混合して白色の造粒物を製造した後,着色物質である炭酸カルシウムと配合物質である高吸水性樹脂及びポリビニルアルコールを噴霧して製造するものである。また,甲1発明における実施例4ないし6は,白色造粒物を製造した後,第1噴霧ノズルから炭酸カルシウム,高吸水性樹脂,ポリビ, , ニルアルコールを噴霧し 続いて第2噴霧ノズルから?@炭酸カルシウム高吸水性樹脂,ポリビニルアルコール(以上は実施例4 ,?A紙粉(以 )上は実施例5,6)を噴霧して製造するものである。このように,実施例1から実施例6においては,造粒物の色自体が白色であり,その後に噴霧される着色物質も白色であるが,かかる各実施例は,特許請求の範囲として挙げられている請求項1ないし請求項3を実施するための例であるから,かかる例が挙がっていること自体,甲1発明が排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめるとの思想を前提としていないことの表れというべきである。実施例7から実施例10のように,造粒物が灰色となり白色の被覆用着色物質で被覆される例が掲げられていたとしても,この理は変わらない。
そもそも,甲1発明はコーヒー抽出液抽出残渣を着色物質により着色してコーヒーの色を隠した造粒物を作るものであり,色の種類はさまざまな色が予定され,紙粉は,数ある色の中でも白色の着色物質として使用することを予定している一材料にすぎず,ほかの着色物質に変更可能なものにすぎないから,甲1発明は,被覆用着色物質が白色以外のものを使用することも予定しているし,白色のものであっても遮光性の強い(【】, 鉱物である酸化チタンも使用することを予定している 段落 0005【0006】参照 。。)また,寸法についても,各業者により異なっており,統一された規格はない。製品の長さはまちまちであるし,直径も3mmから7mm程度の幅の差がある。
したがって,本件発明1と甲1発明とは,表層部の材料・製品の大きさを同じくするとはいえないし,甲1発明は表層部が排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめるとの思想を前提としていないから,原告の前記主張は誤りである。
(カ)原告は,甲2発明〜甲4発明との関係における審決の判断も,同様の理由により誤りである旨主張する。
,, , aしかし 甲2発明は 茶殻に配合物質及び着色物質を攪拌混合させさらに被覆物質を噴霧するものであるところ,前記(ア)ないし(オ)で主張したのと同様の反論が妥当する。また,甲2刊行物の段落【0031】に記載されているように,着色物質及び配合物質が攪拌混合された茶殻配合物は,着色物質の色に応じて,白色,黄色,緑色又は青色等の色を呈するとされ,また段落【0057】に記載されているように,実施例1ないし4は,白色の着色物質を中心にされているが,白色に代えて白色以外の色彩の着色物質を単独又は適宜混合して使用することができるとされている。さらに,段落【0034】から【0057】に記載された実施例1ないし4は,いずれも,茶殻,着色物質及び配合物質を攪拌混合して白色の造粒物を形成した後,第1噴霧ノズルから紙粉,高吸水性樹脂等の被覆用の着色物質を噴霧し,さらに第2噴霧ノズルから紙粉,木粉,高吸水性樹脂等の被覆用着色物質を噴霧して動物用排尿処理材を製造しているが,着色物質としては,段落【0008】に記載されているとおり,種々の色のものがあり,黒色のものや鉱物のように遮光性のある色や鉱物も記載されていることからすると,これらを二重に噴霧することも予定されているのであるから,甲2発明は,到底,排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめる構成とするとの思想を有しているとはいえないものである。
b次に,甲3発明についても,前記(ア)〜(オ)の主張が妥当する。さらに,甲3刊行物には被覆物質の着色効果を高める方法が記載され,当該着色物質としては,白色,黒色,青色,緑色又は黄色の物質が予定され(4頁参照,この中には遮光性のある色や鉱物もあることも併 。)せて考えると,甲3発明は,到底,排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめる構成とするとの思想を有しているとはいえないものである。
cまた,甲4発明についても,前記(ア)〜(オ)で主張したことが妥当するから,同発明は,到底,排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめる構成とするとの思想を有しているとはいえないものである。
イ 本件発明2についての新規性判断の誤りにつき(ア)原告は,コーヒー抽出液抽出残渣に混合する「着色物質の紙粉」と「」「」 , 着色造粒物 を被覆する 被覆物質 とは区別されるべきものであり甲1刊行物の段落【0020】の記載からはコーヒー抽出液抽出残渣の着色造粒物を,紙粉を含む被覆物質により被覆して最終的に白色に仕上げる例もあること,実施例7は造粒物をコーティング装置に送り配合物質の紙粉で被覆する例であること,二次的な着色についての上記審決の判断は甲1刊行物の段落【0076】の記載とは異なることなどから,上記審決の判断は誤りである旨主張する。
しかし,本件発明2は,本件発明1と同様に,核部分の色を露見せしめる表層にて被覆されていることを特徴とするものであるが,甲1発明は,前記アのとおり,かかる思想を有しないから,そもそも上記主張は当たらない。
また,甲1発明は,コーヒー抽出液抽出残渣に混合する「着色物質」と着色造粒物を被覆する 被覆物質 とを区別して 被覆物質 には 着 「」「」「色物質」よりも暗色系の色彩を用いることを示唆してはいない。
,【】 「,, なお 段落 0076 の 使用場所の色調に合わせて 種々の色調即ち適宜の色彩の排泄物処理材を選ぶことが可能となり,衛生的な雰囲気はもとより,室内の色彩の調和を保つことができる 」との記載から, 。
直ちに二次的に表層部を着色する色彩が造粒物の色彩よりも淡い色とすることを予定しているとはいえないのであって,審決の判断が誤りであるとはいえない。
ウ 本件発明3についての新規性判断の誤りにつき,, , 原告は 審決の判断は 甲1刊行物の例7等を無視するものであるから誤りである旨主張するが,上記実施例7においても,そもそも排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめる構成とするとの思想を有しているとの前提を欠くことは,前記アのとおりである。
また,甲1発明が,被覆用着色物質として白色以外のものも使用することを想定していることも前記のとおりであり,このことからも,排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめる構成とするとの思想を有しているとの前提を欠くことは明らかである。
したがって,原告の上記主張は誤りであるエ 本件発明4についての新規性判断の誤りにつき原告は,本件発明4に対する審決の判断は,いずれも本件発明1に対する判断を前提としているため,誤りである旨を主張するが,審決の本件発明1に対する判断に誤りはないから,原告の主張は誤りである。
(3) 取消事由3に対し原告は,動物用排尿処理材に要求される外径及び長さには限度があり,例えば甲1刊行物の実施例7では表層の厚さは0.4mmにすぎず,甲1発明の表層においても排尿を吸収すると核部分の色が透過し又は滲潤することにより見えるようになること,本件発明1は,甲1発明の表層を形成する物質の中から紙粉を選択した程度であることなどから,当業者であれば,甲1発明から本件発明1を容易に想到することができるものであると主張する。
しかし,甲1刊行物の実施例7の表層の厚さに関する原告の主張が失当であることは前記のとおりである。また,排尿を吸収すると核部分の色が表層を透過し又は滲潤することにより見えるようにすることが甲1発明の構成でないことについても,前記のとおりである。
そして,前記のとおり,被告が本件発明1を実施して動物用排尿処理材を製造・販売するまで,市場には排尿を吸収すると色が変わる製品はなく,訴外会社は,本件発明1の通常実施権を取得した後,初めて同様の製品を製造・販売し始めたのである。
以上によれば,当業者であれば,引用発明1から本件発明1〜5を容易に想到し得たとはいえない。
(4) 取消事由4に対し原告は,当業者が本件発明を容易に実施することはできないから,本件発明は無効である旨主張する。
しかし,本件発明は,排尿を吸収すると核部分の色が透過又は滲潤することにより見えるようになることで,使用部分と未使用部分とを区別することができることをその構成要件とする発明である。
そして,本件特許明細書(甲11)の【実施例】には使用する材料が記載され,段落【0012】から【0021】まで,核部分を故紙パルプで作り表層をそれよりも白色度の高いパルプ 例えばバージンパルプ で作る例 段落 0 ()(【014,核部分をコーヒー豆処理後の残渣粉で形成して表層を故紙パルプ又 】)はバージンパルプ等で作る例(段落【0016【0017,核部分を着色 】,】)し表層を明色にして明度に差をつけて排尿を吸収したときに,核部分の色が表層をとおして露見するとの例(段落【0019 )が記載され,かかる例から 】は,表層の厚さ,表層に用いる材料の量,表層の吹きつけ方,核部分に使用する材料又は着色料等を工夫することにより,多大な実験を要することなく,前記の構成要件を満たす動物用排尿処理材を製造することは可能である。
実際に,訴外会社が,平成11年11月19日,原告に対し,特許通常実施,, 契約により被告から本件特許権に関する通常実施権を付与した後 訴外会社は被告の製造方法に関する指導を受けることなく,本件特許に係る特許公報を基にして,色が変わる猫砂を製造・販売し始めたのである。したがって,本件特許明細書に詳細な製造方法まで逐一記載されていないからといって実施可能要件を欠くとはいえない。
なお,水溶性顔料の用語が各種特許公報に用いられていることは明らかであるし,仮にかかる用語が技術用語ではないとしても,前記の構成要件を得るための製造方法が分からず本件発明を実施することができないなどということはない。
当裁判所の判断
1請求原因(1)(特許庁における手続の経緯 ,(2)(発明の内容 ,(3)(審決 ))の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。
2 取消事由1(手続上の誤り)について原告は,別件無効審判請求事件(無効2007-800166号事件)の中で被告が訂正請求を行った際,特許庁は原告に対して,本件無効審判請求事件においても特許法134条の2第2項及び同法施行規則47条の3の規定に準じてその内容を通知し反論の機会を与えるべきであり,かかる手続が採用されなかったことが手続上の瑕疵に当たる旨主張する。
しかし,別件無効審判請求は審決取消訴訟が平成20年(行ケ)第10288号事件として当庁に係属中で未確定であり(弁論の全趣旨 ,これが未確定 )である以上,本件無効審判請求事件において審判の対象とされるべき特許の内容は訂正前のもの,すなわち本件特許である。そして,特許無効審判請求事件は,同一特許を対象とするものであっても,明文の規定がない限り,請求人からの請求毎に別々に審理・判断されるべきものであり,一方の審判請求事件において訂正の請求があったからといってそれが他方の審判請求事件に当然に効力が生じることはない。したがって,別件無効審判請求事件において被請求人たる被告から訂正請求がなされたとしても,本件無効審判請求事件において被請求人から訂正請求がなされていない以上,これらを審理する特許庁において別件訂正請求の内容を本件無効審判請求人(原告)に通知したり反論の機会を与える法的義務が生じるものではないというべきである。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
3 取消事由2(新規性の判断の誤り)について(1) 本件発明の意義ア 本件発明の内容は,前記第3,1(2)アのとおりである。
,(),。 イ また 本件特許明細書 本件特許公報・甲11 には 次の記載がある(ア)産業上の利用分野・「この発明はセルロース繊維等の有機繊維又は有機粉等を主成分として粒状化又はペレット状化等した吸水性を有する動物用排尿処理材に関する段落 0。」(【001 )】(イ)従来の技術・「特許第1696885号によってパルプ又はこれらの残渣を主成分とし,これに無機充填材を配合し粒状化した愛玩動物用排尿処理材が提供され,これを契機としてパルプ化する前の木粉又はコーヒー豆の抽出残渣を主成分としたもの,又はこれに適宜着色等を施し商品性を高めた排尿処理材が出願されるに至っているが,最近これら処理材に排尿のペーハーによって変色する薬剤を配合して,使用前と使用後の状態を判別できるようにした動物用排尿処理材が提供されている(段落【0002 ) 。」】(ウ)発明が解決しようとする問題点・「上記排尿処理材の使用部分(排尿された部分)と未使用部分(排尿されていない部分)の判別がつけば,使用部分のみを交換することができるので経済的であり,又放置して異臭を放つ問題も解消できるが,従来例は排尿のペーハーによって変色する薬剤の使用を前提としている。例えばそれだけで家庭内で使用される排尿処理材としての適性が疑われ,商品性を損なう。加えて便器に流した後の廃水処理の問題も懸念される(段落【0003 ) 。」】(エ)問題点を解決するための手段・「この発明は,前記吸水性を有する動物排尿処理材において,これを排尿を吸収すると核部分の色を露見できるようにした表層で覆い,複合層構造にして排尿の有無を判別できるようにした思想を提供する。この複合層構造によって,前記薬剤を使用せずに 上記判別を可能にした処理材が形成できる段落 0 , 。」(【004 )】・「一例として上記核部分は顔料又は染料によって表層より暗色系の着色を施し上記判別を可能にする。他例として核部分に積極的に着色を施さず,素材が本来有する母材色を利用して,表層より核部分が暗色系になるように使い分けし上記判別を可能にする(段落【0005 ) 。」】・「又上記顔料又は染料は水溶性のものを用い,排尿の吸収によって顔料又は染料が表層に滲出し核部分の色を露見できるようにする(段落【0006 ) 。」】・「又上記処理材に炭酸カルシューム又はクレー等を主成分とする無機顔料を充填物として含ませることによって処理材に重みを付け,散乱,動物への付着を防止しつつ上記露見構造とする。無機顔料は重量付与効果に適しているが,有機顔料又は有機染料による着色は廃水処理において適正である(段落【00。」07 )】(オ)作用・「この発明によれば排泄物処理材を複層構造にして,排尿の含水により表層を通して核部分の色を露見できるので,排尿によって発色する薬剤を用いずに,排尿における使用前と使用後の状態を的確に判別でき,使用部位のみを交換する利点も享受できる(段落【0008 ) 。」】(カ)実施例「 () ・前記のように対象とする動物排尿処理材は例えばパルプ パルプ残渣を含む又は木粉又はコーヒー豆の粉砕体又はコーヒー蒸留後の残渣等に代表される有機繊維又は有機粉を主成分とする吸水材から成る。これら吸水材には無機充填材,でん粉,吸水性ポリマー等を選択的に配合する。又上記処理材として藁の粉砕物,紙の粉砕物(紙粉,小紙片)を用いる(段落【0009 ) 。」】・「図1,図2に示すように,上記粒状物1又はペレット状物2を形成する吸水材は核部分1a,2aを,排尿を吸収すると核部分1a,2aの色を露見せしめる表層1b,2bにて被覆している(段落【0011 ) 。」】・「一例として核部分1a,2aは表層1b,2bより暗色系の顔料又は染料にて着色し,上記排尿吸収時に表層1b,2bを通し該着色が露見されるようにする。上記核部分1a,2aは単層構造にして,上記着色を施すか,又は複層構造にしてその最外層を着色層とする(段落【0012 ) 。」】・「他例として上記核部分1a,2aは組成する繊維又は粉粒体自身が有する母材色によって表層1b,2bより暗色にする (段落【0013 ) 。」】・「換言すると,表層1b,2bを核部分1a,2aより明色(白等の無色と言われる色を含む)にし,核部分1a,2aをこれより暗色にする。素材自身が有する母材色を利用する手段として,核部分1a,2aを故紙パルプ(白色度の低いパルプ)で作り,表層1b,2bをそれより白色度の高いバージンパルプ等で作る。ここにパルプとはパルプスラッジを含む(段落【0014 ) 。」】・「故紙パルプはインキ成分によって付色されており,暗灰色を呈する。これをこれより白色度の高いバージンパルプ等の繊維又は粉体から成る表層1b,2bで被覆し,排尿の吸収時に表層1b,2bを通して核部分1a,2aの色が露見できるようにする(段落【0015 ) 。」】・「又は核部分1a,2aをコーヒー豆処理後の残渣粉にて形成し,表層1b,2bをパルプ繊維又は粉体等の吸水性を有する素材にて被覆する(段落【0。」016 )】・「上記核部分1a,2aを形成するコーヒー豆処理後の残渣は褐色を呈しており,表層1b,2bは故紙パルプにしてもバージンパルプにしてもその明度において白色度がはるかに高い。これを利用して排尿の吸収時に,表層1b,2, 。」(【】) bを通して核部分1a 2aの色が露見できるようにする段落 0017・「又他例として核部分1a,2aに非水溶性の顔料又は染料にて着色を施し,上記判別可能な構造にすることができる(段落【0018 ) 。」】・「更に他例として核部分1a,2aの全体又は外層部分に水溶性の顔料又は染。 ,, 料にて着色を与える この実施例においては排尿にて含水する時 核部分1a2aの着色が表層1b,2bに滲潤して核部分の色を露見し使用後と使用前を判別できるようにしている。この発明は核部分1a,2aと表層1b,2bとを前者を暗色にし,後者を明色にして,明度に差をつけて,排尿吸収時に表層1b,2bを通して核部分1a,2aの色を露見できるようにした思想を開示している(段落【0019 ) 。」】・「又この発明は核部分1a,2aと表層1b,2bとを異材質にして排尿吸収時に表層1b,2bを通して核部分1a,2aの色を露見できるようにした思想を開示している。… (段落【0020 ) 」】・「上記思想に従った一適例について再述すると,核部分1a,2a(パルプ繊維)に顔料又は染料にて積極的に着色を施し,これを上記着色を施していない表層1b,2b(パルプ繊維)で被覆することによって鮮明な露見色を得ることができ,又パルプは入手が容易で安価であり,商品性を高める(段落【0。」021 )】(キ)効果・「この発明によれば吸水材から成る動物用排尿処理材において,その核部分と表層とに明度に差を持たせた複層構造とする,又は核部分に表層より暗色系の着色を施した複層構造にすると言う着想により,排尿吸収時に表層を通して核部分の色が露見できるようにした上記処理材が提供でき,従来の排尿のペーハーを検出して変色する薬剤を用いずに,使用前と使用後の判別が的確に行なえる上記処理材の形成が可能であり,これにより使用後の処理材のみを交換できる利点も享受できる。又表層によって良好な外観性を付与することができる。
従って内部(核部分)には機能を損なわない範囲で任意の材質を選択できる 」。
(段落【0024 )】,, , ウ 以上によれば 本件発明は 吸水性を有する動物用排尿処理材において使用前と使用後の状態を色により判別できるようにしたものである。従来技術においては,排尿処理材に排尿のペーハー(PH,水素イオン濃度指数)によって変色する薬剤を配合して上記判別を行うものがあったが,薬剤の使用は家庭内で使用される排尿処理材としての適性の観点及び便器に流した後の排水処理の観点から問題があったことから,本件発明1は,排尿を吸収すると核部分の色を露見できるようにした表層で覆い,複合層構造にして排尿の有無を判別できるようにした思想を提供するものであり,これにより上記薬剤を用いることなく,使用前と使用後の判別が的確に行える動物用処理材の形成を可能ならしめたものである。また,本件発明2〜5は,上記本件発明1を引用しつつ(ただし,本件発明5は,引用する請求項が特定されていない ,その核部分の構造について特徴を持たせた )従属項である。
(2) 本件発明1と甲1発明の対比ア甲1刊行物には,動物用排尿処理材を構成する「表層」について,次の記載がある。
・「 産業上の利用分野】本発明は,動物,特に猫科及び犬科動物並びにその他愛 【玩動物等の動物の粒状の排泄物処理材の製造方法及びその装置に関し,特に,焙煎コーヒー豆からコーヒー抽出液を抽出する際に生じる焙煎コーヒー豆のコーヒー抽出液抽出残渣の有効利用を図る,動物,特に猫科及び犬科動物並びにその他愛玩動物等の動物の粒状の排泄物処理材の製造方法及びその装置に関する(段落【00。」01 )】・「 従来の技術】家畜,愛玩動物等の動物の排泄物処理材,特に屋内での排泄物 【処理材としては,砂,ベントナイト,ゼオライト,製紙用パルプ,パルプスラッジなどを小塊状に成形して使用されている。この種の愛玩動物の排泄物処理材は,例えば室内で使用されるところから,清潔で,衛生的であることが望まれ,使用後,清潔さ及び衛生上の点から,廃棄処理され易いのが望まれる。しかし,砂,ゼオライト,ベントナイトなどの無機物の場合は,使用時,砕けて埃となり易く,また,使用後放置する間に汚臭を発生しても,非可燃物であるため焼却処理を行うことができず,また下水等に流すこともできない。そこで,消臭効果が低く,価格が高いが,吸水能に優れ,可燃物であるところから,製紙用パルプ及び紙粉の小塊状成形物が使用されている。また,本発明者は,焙煎コーヒー豆のコーヒー抽出液抽出残渣,所謂コーヒー粕が,大きい吸臭能を有する点に着目して,コーヒー抽出液抽出。」(【】) 残渣を動物の排泄物処理材として有効利用することを提案した段落 0002・「 発明が解決しようとする課題】このコーヒー抽出液抽出残渣の有効利用は, 【コーヒー抽出液の抽出残渣が,缶コーヒー,インスタントコーヒー等のコーヒー飲料の需要の増加に伴い,膨大な量に上り,しかもコーヒー抽出液抽出残渣には,多量の脂肪が含有されていて,その処理に多大の費用を要しているところから,コーヒー飲料産業の最大の課題を解決するものである。しかし,コーヒー抽出液抽出残渣の褐色の色は,動物の飼い主の好むところでないために,問題とされている。ところで,動物の排泄物処理材は,一般に,室内で使用されるために,衛生的な感じを与える色調であることが要求されている。本発明は,コーヒー抽出液抽出残渣のもつ褐色の色彩による動物排泄物処理材としての商品価値の低下に係る問題点を解決することを目的としている(段落【0003 ) 。」】・「本発明において,製造される焙煎コーヒー豆のコーヒー抽出液抽出残渣の造粒物の表面は,該コーヒー抽出液抽出残渣の本来有する色,即ち,該コーヒー抽出液。, 抽出残渣の固有の色と異なる色を有する着色物質により着色されている この場合コーヒー抽出液抽出残渣の粒子を該着色物質により着色し,次いでこの着色されたコーヒー抽出液抽出残渣の粒子を造粒して,コーヒーの色を隠した造粒物とするもでき,またこの造粒物に二次的に更に着色することもできる。またこの他に,コーヒー抽出液抽出残渣を造粒し,この造粒物を該着色物質により着色して,コーヒーの色を隠した造粒物とすることができる(段落【0005 ) 。」】・「本発明において,着色物質として,顔料及び染料を使用することができる。このような顔料及び染料には,白色のものとして,紙粉,炭酸カルシウム,酸化チタン及び合成パールがあり,… (段落【0006 ) 」】・「着色されたコーヒー抽出液抽出残渣造粒物は,依然コーヒー臭を有し,且つ脂肪を含有するが,コーヒー抽出液抽出残渣の造粒物の表面を着色物質で被覆することにより,コーヒー臭い及び表面の脂肪による感触は緩和される。… (段落【0 」007 )】・「本発明において,着色物質及び配合物質の色彩を例えば白一色に揃えると,指示薬の発色の確認が容易となり,適宜の指示薬を配合して,動物の排泄物による検診を簡単に行うことができる。… (段落【0012 ) 」】・「本発明において,このような指示薬を配合する場合には,指示薬の発色を容易に検出できるようにするために,コーヒー抽出液抽出残渣の乾燥粒子の表面を白色に着色し,これに白色乃至略白色の配合物質に指示薬を添加混合したものを配合するのが好ましい。この場合,上記の白色の顔料及び染料に替えて,白色乃至略白色の増量材等の配合物質を着色物質として使用することができる。したがって,例えば上に列記の白色の着色物質以外に,例えば,ベントナイト,ゼオライト,炭酸カルシウム及び石膏等の鉱物質の白色配合物質,並びに小麦粉,紙粉,製紙用パルプ粉,製紙スラッジ及びCMC等の白色配合物質を,コーヒー抽出液抽出残渣粒子の表面の着色物質として,使用することができる。尿pH指示薬の場合は,使用される着色物質及び配合物質はpHに影響を与えないものとされる。例えば紙粉,チタン白等が使用される(段落【0013 ) 。」】・「 作用】本発明において,動物の排泄物処理材は,脱臭に優れるコーヒー抽出 【液抽出残渣を含む造粒物が,例えば噴霧により塗布された着色物質で着色されているので,コーヒー特有の褐色の色が隠されて,排泄物処理材の使用時における,例えば室内の調度との調和,衛生感,使用者の好み及び色彩雰囲気等に応じることを可能とし,商品の多色化に応じて,適宜の色調に製造することができる。本発明において,動物の排泄物処理材はコーヒー抽出液抽出残渣を含む造粒物表面が着色物質で着色されているので,表面に付着した排泄物は,処理材により容易に包むことができ,排泄物の汚臭等は,コーヒー抽出液抽出残渣に吸着されて周囲に汚臭が放散されることはない(段落【0021 ) 。」】・「…さらに,本発明の排泄物処理材は,特に着色物質で着色してあるので,尿検査用指示薬を配合しても,その発色を際立たせることが容易であり,動物の排泄した尿の色を検査して,動物の健康状態を監視することが容易となる(段落【00。」22 )】イ以上の記載によれば,甲1発明は,脱臭に優れるコーヒー抽出液抽出残渣を原料として動物の排泄物処理材を製造するに当たり,同残渣の粒状物(本件発明1における核部分に相当)の呈する褐色が飼い主の好む色でないことから,これを解決するために,コーヒー抽出液抽出残渣を造粒する際,残渣粒子を着色し,またこれを二次的に更に着色し,又はコーヒー抽出液抽出残渣を造粒したものを着色することによって,コーヒーの色を隠した造粒物とすることができるというものである。
ここで,甲1発明における着色物の層は,本件発明1における「表層」, () に相当するものであり これはコーヒー抽出液抽出残渣の粒状物 核部分が有する色(褐色)を隠すために施されるものであるということができるところ,甲1刊行物には 「表層」がもつ核部分の色(褐色)を隠すとい ,う機能が,排尿吸収前のみにおいて奏するものか,それとも排尿吸収後においても奏するものかについて明示的な記載はなく,原告は,これが排尿吸収前のみに奏すべき機能であると主張する。
しかし,甲1発明は,室内で使用されるために衛生的な感じを与える色調を持つことが要求されているところ(段落【0003,このような要】)求は排尿吸収前に限られるものではなく,排尿吸収後においても求められていると解される これに加えて 上記段落 001200130 。,【】,【】,【022】のとおり,甲1発明は,尿との接触により発色する指示薬の配合を許容するものであるといえるところ,仮に甲1発明が排尿吸収後において核部分の色(褐色)を隠す機能を失うと,排尿吸収によってコーヒー抽出液抽出残渣の色(褐色)が発現してしまい,指示薬の発色を容易に確認し得ないことになる。さらに,甲1刊行物には,指示薬の発色を容易に検出するために「表層」を構成する着色物質として白色ないしほぼ白色が好ましい旨記載されているところ,排尿吸収後に核部分の色が見えてしまうということになれば,着色物質として敢えて上記のような色を選択使用して指示薬の発色を際立たせるようにしても意味がないことになりかねない。
以上のような事情を併せ考慮すれば,甲1発明において着色物の層が有する核部分の色を隠すという機能は,排尿吸収前のみならず,排尿吸収後においても奏することを,その基本的な技術的思想とするものということができる。これに反する原告の主張は採用することができない。
ウそうすると,甲1刊行物には,排尿吸収後において表層に核部分の色が浸潤したり透過するなどして露見するようになることが実質的に記載され, ,, ていると認めることはできず 本件発明1と甲1発明とは 本件発明1は表層が,排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめるのに対し,甲1発明にはそのような構成がない点において相違するから,両発明が同一であるということはできない。
エ(ア)これに対し原告は,甲16公正証書を提出し,甲1刊行物の実施例における例7を再現した甲16実験の結果得られた動物用排尿処理材は,排尿吸収後において,表層と核部分とから成る複合層構造を維持したまま,核部分の色が浸潤したりあるいは透過して表層を通して見える, 。 構成を有するから 甲1発明も上記構成を有するものであると主張する(イ)しかし,前記イのとおり,甲1発明は,排尿吸収後においても核部分の色が見えないようにすることを技術思想とするものであるから,甲16実験の結果,原告が主張するような動物用排尿処理材が製造されたとしても,これをもって甲1発明の実施品ということはできない。
(ウ)また,甲16公正証書には,紙粉のコーティングについて,次の記載がある。
・「(4)コーティング用被覆物質の混合上記により計測してビニール袋に入れた原材料?Eないし?Gをミキサーで攪拌混合した(第2「事実実験 ,2「実施例7資料の作成」(4)) 。」」・「(5)コーティング…?A上記により形状をそろえた造粒物を各容器分ごとに,順次振動ふるいの上に置き,振動させながら,先ほど混合しておいたコーティング用被覆物質を,手で上から振りかけて手でかき回しながら手動で噴霧・塗布した(写真22 。付着しなかった被覆物質の塊は手で取り除いた。また,これら造粒 )物をふるいに入れ,振動ふるいの上に置き,手でかき回し塗布した(写真23 。…)?Bこれら2回の作業により被覆された造粒物は,前記の乾燥機に入れて乾燥した(同(5))。」以上によれば,甲16実験は,造粒物に対して紙粉をコーティングするに際し,コーティング用被覆物質を手で振りかけて手でかき回す程度の作業を行っているにすぎない。
(エ)他方,甲1刊行物における実施例の例7についての記載である段落【0064】〜【0067】には紙粉コーティング装置52の具体的構成について記載がないものの 「スクリュ押し出し造粒機50の出口に ,は,押し出された造粒物が互いに付着し合わないように,振動コンベアー51が設けられている。振動コンベアー51の出口には,接着機能を有する配合物質が噴霧され,着色物質の紙粉がまぶされる。配合物質及び着色物質が添加された造粒物は紙粉コーティング装置52に送られる。紙粉コーティング装置52は,図3にその詳細が示されている。振動コンベアー51には,接着機能を有する配合物質を,造粒物に添加するために,バインダー添加用のスプレー53が設けられている。バインダー添加スプレー53は,バインダータンク54の出口に設けられているギァポンプ55に接続し,定量弁56を備える流路57に接続している。振動コンベアー51には,さらに,紙粉添加用のフィーダー58が設けられている。紙粉添加用のフィーダー58は,底部にロータリーバルブ59を備える紙粉添加用の原料ホッパー60の出口下方から,紙粉コーティング装置52に延びて設けられている(段落【0058, 。」】)「配合物質及び着色物質が添加された造粒物は,紙粉コーティング装置52に送られる。紙粉コーティング装置52には,スクリュ押し出し機とコンベアースクリーンが設けられている。スクリーン押し出し機は,造粒物の表面に付着した紙粉が造粒物の表面から容易に剥落しないように,常に造粒物粒子に外力を加えるために,出口に向けて細くなるよう()」(【】), に形成されている 図3参照段落 0059との記載によれば紙粉コーティング装置52には,造粒物に付着しない紙粉を除去するために,振動コンベア61が設けられており,振動コンベアー61の出口は流動乾燥機62に接続しており,付着しない紙粉が除去された造粒物は,10%以下の水分含量になるまで流動乾燥されることが記載されている。
以上によれば,甲1発明における紙粉コーティング装置52とは,図3における振動コンベア51より後ろのスクリュ押し出し機63からコンベアスクリーン70までの一連の装置を指すと解される。すなわち,例7の実施態様では,段落【0061】のとおり,造粒物は振動コンベア51の出口で接着機能を有する配合物質が噴霧され着色物質の紙粉がまぶされ(段落【0058 )た後,出口に向けて細く形成されたスク 】リュ押し出し機63に送られて造粒物の表面に付着した紙粉が容易に剥落しないように紙粉コーティングが加圧下で行われ,コンベアスクリーン64で付着しなかった余分な紙粉が取り除かれ,コンベアスクリーン66で配合物質又はバインダーが噴霧され,回転式シフター67で紙粉が添加された後,上述の紙粉コーティング以下の工程が再度繰り返されるというものと認められる。
(オ)そうすると,甲16実験の上記(ウ)の工程が,出口に向けて細く形成されたスクリュ押し出し機を用いて造粒物の表面に付着した紙粉が容易に剥落しないように加圧下で紙粉をコーティングするという甲1発明の工程に相当するといえないことは明らかである。
したがって,この意味においても,甲16実験を前提とする原告の主。 , 張は採用することができない その他原告の甲16実験に関する主張は前記認定を左右するものではない。
オ(ア)また原告は,本件発明1と甲1発明の動物用排尿処理材は,ともに顧客の希望する商品として提供されるから,同程度の大きさの粒に形成されるものであり,そうであれば甲1発明における動物用排尿処理材も自ずとその核部分の大きさ・厚さとその表層の厚さが限定されるから,紙が水に濡れた際の一般的な性質からすれば,甲1発明の表層は排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめるという構成が実質的に記載されている旨主張する。
しかし,甲1刊行物の記載をみても,甲1発明の造粒物ないし表層に相当する部分について原告の上記主張のように限定すべき理由は見当たらず,甲1刊行物をもって甲1発明における動物用排尿処理材の表層の厚さが原告主張のように限定されるものと解することはできない。
また,原告の上記主張について,動物用排尿処理材が複合層構造を採る場合に,その表層の厚さ等が常に核部分の色を露見せしめる程度に限定されるとの技術常識があることをいうものと解したとしても,そのような技術常識の存在を認めるに足りる証拠はない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(イ)また原告は,甲1発明の実施例(例7)には,コーヒー抽出液抽出残渣の粒子を灰色に着色して造粒することができるなど,核部分の色を隠すために着色物の層を厚くする必要がない場合がある旨主張する。
しかし,原告の指摘する実施例(例7)には,灰色に形成した造粒物について 「造粒されたコーヒー抽出液抽出残渣の着色造粒物は,紙粉 ,コーティング装置52に送られ,噴霧装置19に送られ,噴霧ノズル22から,紙粉4kg,ハイモ株式会社製の高吸水性樹脂ハイモサブ500(登録商標)600g及びポリビニルアルコール400gの被覆物質が噴霧された。被覆物質が被着されたコーヒー抽出液抽出残渣の着色造粒物は,振動コンベアー61,流動乾燥器62に送られ,乾燥された。
乾燥されたコーヒー抽出液抽出残渣の着色乾燥造粒物の1mm以上の粒径のものが除かれ,コンベヤによつて取出し,直径5mm,長さ10mmの猫のトイレ用の砂が得られた(段落【0066 )として,灰色 。」】に造粒した上で更にコーティングを施すことが記載されている。
このように,甲1発明は,たとえ核部分が灰色に着色された場合であると否とにかかわらず,排尿吸収時に表層が当該核部分の色を露見しないよう被覆することをその技術的意義に含むものということができるから,上記の点を考慮に入れてもなお甲1発明は前記相違点を有するものといわざるを得ない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(ウ)また原告は,甲1発明では造粒段階において造粒物の色を褐色以外の色に着色することができることからすると,甲1発明における造粒物表面の着色物の層の役割は尿に触れたときに粒子相互を接着させて凝集塊を形成する機能にあるとみるべきであり,同機能を発揮させるためには殊更にこれを厚くする必要はないとか,本件発明1と甲1発明とでは核部分の色を隠す機能が要求される点で差異がなく,むしろ,核部分が別の色に着色されている甲1発明の方が着色物の層(表層)が厚くならない旨主張する。
しかし,甲1発明は,たとえ核部分が灰色に着色された場合であると否とにかかわらず,排尿吸収時に表層が当該核部分の色を露見しないよう被覆することをその技術的意義に含むものであることは前記(イ)に説示したとおりであって,たとえ甲1発明の着色物の層に凝集塊を形成する機能があってもこの点が左右されるものではない。また,前記イ,ウに説示したところから明らかなとおり,甲1発明は,表層が排尿を吸収しても核部分の色を露見せしめないものであり,この点で本件発明1と相違するものであることからすると,甲1発明における表層は単に核部分の色を隠すだけではなく,排尿吸収時にも当該核部分の色が露見しない程度の厚さを有するものでなければならないというべきであるから,甲1発明の核部分が別の色に着色されていたとしても,それにより直ちに甲1発明の方が本件発明1より表層が厚くならないということはできない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(エ)また原告は,本件発明1における「排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめる」との構成は,動物用排尿処理材が排尿を吸収した時に自然に現れる現象を記載したものであるところ,実施例(例7)に基づく甲1発明の動物用排尿処理材における表層の紙粉の厚さは0.4mmであるから,甲1発明の表層は「排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめる」ものである旨主張する。
しかし,原告の上記主張は甲1発明の表層が排尿吸収時に当該核部分の色を露見せしめないものであることを看過する点で,その前提において採用することができないし,原告の主張する表層の紙粉の厚さについてみても,これは甲1刊行物の実施例(例7)における表層の紙粉の量と動物用排尿処理材の重量から按分して求めたものにすぎないなど,同実施例における表層の厚さが常にこの値になるべきものと評価することはできない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(オ)また原告は,本件発明1の出願前においては表層を形成する技術が未だ確立されていなかったから,同じ動物用排尿処理材である本件発明1と甲1発明とは同じ程度の大きさに形成され,表層の厚さも同様と解すべきであるから,甲1発明は排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめる構成を備えるものである旨主張する。
しかし,前記(ア)に説示したとおり,甲1刊行物の記載上,甲1発明の造粒物ないし表層について原告主張のように限定すべき理由は見当たらず,また,動物用排尿処理材が複合層構造を採る場合に,その表層の厚さ等が常に核部分の色を露見せしめる程度に限定されるとの技術常識があると認めることもできないから,原告の上記主張は採用することができない。
(3) 本件発明1と甲2〜甲4発明との対比原告は,本件発明1は甲2発明〜甲4発明との関係においても新規性を欠, 「」 くものである旨主張するが その具体的根拠については 以上と同様の理由と述べるのみで具体的に主張するところがない。
そして,甲2発明〜甲4発明は,核部分の材料において甲1発明と異なるものの,核部分の色が露見しないように表層を着色する点においては甲1発明と同様であって,以上の説示が同様に妥当するというべきであるから,原告の上記主張は採用することができない。
(4) 本件発明2〜4と甲1〜甲4発明との対比原告は,本件発明2〜本件発明4についても新規性が欠如する旨主張するが,これらの発明はいずれも本件発明1を引用する従属項であり,本件発明1が甲1発明〜甲4発明との関係で新規性に欠けるものでないことは前記のとおりであるから,原告の上記主張はその前提において採用することができない。
4 取消事由3(進歩性判断の誤り)について原告は,本件発明1の相違点に係る構成が甲1〜甲4発明から容易想到であると主張する。
しかし,前記3のとおり,本件発明1の技術的な意義は排尿に触れることで核部分の色が露見する点にあるのに対し,甲1発明の技術的な意義は核部分の色が露見しないことにあり,また,前記3に説示したところに照らせば,甲1刊行物には本件発明のように排尿を吸収した場合に核部分の色が露見することは記載も示唆もされていないというべきであるから,甲1発明に基づいて本件発明1が容易想到ということはできない。その他,甲2〜4刊行物の記載をみても,これらから本件発明1が容易想到であるということもできない。
なお原告は,この点に関する審決の判断が,商品としての動物用排尿処理材に要求される外径及び長さを無視するものであるとか 甲1刊行物の実施例 例 ,(7)により示唆される動物用排尿処理材の寸法等を看過するものであるなどと, ,, 主張するが これらの主張を採用することができないことは 前記3(2)オ(ア)(エ)において説示したとおりである。
, , また原告は 本件発明2〜5についても同様に容易想到であると主張するが本件発明2〜5が前提とする本件発明1が容易想到であるということができない以上,これらの発明についても容易想到ということはできない。
5 取消事由4(実施可能要件の判断の誤り)について原告は,本件発明は本件特許明細書の記載に基づいて実施可能であるということはできない旨主張する。
しかし,本件特許明細書(本件特許公報・甲11)の記載内容及び本件発明の意義は前記3のとおりであるところ,これによれば,本件発明は,核部分を繊維又は粉体で成る表層で覆い,表層が排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめるようにした動物用排尿処理材であり,このような本件発明において,表層が排尿を吸収すると核部分の色を露見せしめるように構成するに際し,選択した材料に応じて表層である例えば紙粉の厚さを適宜選択して,動物の尿を吸収すると核部分の色を露見せしめるようにすることは,特許法旧36条4項にいう当業者(発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)であれば格別困難なく実施し得るものというべきである。
これに対し原告は,本件発明の出願前(平成6年12月29日前)においては動物用排尿処理材における表層形成技術は未だ確立していなかったなどと主張するが,紙を水に浸すと紙の不透明性が失われ透けて見えるようになることが技術常識であることは,原告自身が指摘するところであり,このような性質を応用して表層を形成することが困難であると解することはできない。
その他,原告は染料ないし顔料,シリカの吸水性等を問題とするが,これらはいずれも上記当業者において適宜選択すべき事柄に属するものというべきであって,その点に関する明細書の記載が本件発明の実施を困難ならしめるものとは認められない。
したがって,原告の上記主張はいずれも採用することができない。
6 結論以上によれば,原告主張の取消事由はすべて理由がない。
よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 森義之
裁判官 澁谷勝海