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事件 平成 19年 (ワ) 4544号 特許権侵害差止請求事件
アメリカ合衆国カリフォルニア州<以下略>
原告インターナショナル レクティファイヤー コーポレーション
訴訟代理人弁護士上山浩
同 川井信之
訴訟代理人弁理士谷義一
同 新開正史
補佐人弁理士濱中淳宏 東京都千代田区<以下略>
被告新 電元工業株式会社
訴訟代理人弁護士松本直樹
同 牧野知彦
補佐人弁理士畑中孝之
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2007/12/25
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は,原告の負担とする。
3本件につき原告のために控訴の付加期間を30日と定める。
事実及び理由
全容
第1請求1被告は,別紙物件目録記載の製品を生産し,譲渡し,輸入し,又は譲渡の申出をしてはならない。
2被告は,その占有に係る前項記載の製品を廃棄せよ。
3訴訟費用は被告の負担とする。
第2事案の概要本件は 「最小限の内部および外部構成要素を有する安定制御IC」につい ,ての特許権(特許番号第3808435号)を有している原告が,被告が製造・販売した別紙物件目録記載の半導体装置が上記特許権の特許発明均等であり,その生産・譲渡・輸入・譲渡の申出が上記特許権を侵害したものであると主張して,被告に対し,上記半導体装置の生産・譲渡・輸入・譲渡の申出の差止及び上記半導体装置の廃棄を求めている事案である。
1前提となる事実等(当事者間に争いがないか,該当箇所末尾掲記の各証拠及び弁論の全趣旨により認められる )。
( ) 原告が有している特許権1原告は,次の特許権を有している(以下 「本件特許権」といい,その特 ,許を「本件特許」という(甲1,甲2)。)。
ア特 許 番 号第3808435号イ発明の名称最小限の内部および外部構成要素を有する安定制御ICウ出願日平成13年6月18日エ優先日2000年(平成12年)6月19日オ登録日平成18年5月26日カ本件特許の特許出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という )の特許請求の範囲の請求項6の記載は,次のとおりである(以下, 。
請求項6の特許発明を「本件特許発明1」という。本判決添付の本件特許の特許公報(以下「本件公報」という )参照。。。)「ランプ駆動回路に対して可変周波数発振信号を提供する安定器制御用集積回路内の回路であって,各充電サブサイクル中に充電抵抗を通して充電され,各放電サブサイクル中に放電抵抗を通して放電されるコンデンサの両端間の電圧の値に応答して,前記充電サブサイクルと前記放電サブサイクルを交互に行う発振回路と,上向きのランピング電圧に応答して前記充電サブサイクルと前記放電サブサイクルの周波数を変動させる周波数可変回路であって,前記周波数が変動するように前記ランピング電圧が上昇するにつれて前記充電抵抗と前記放電抵抗の少なくとも一方を変更する周波数可変回路と,を含むことを特徴とする回路 」。
キ本件明細書の特許請求の範囲の請求項7の記載は 次のとおりである 以 ,(下,請求項7の特許発明を「本件特許発明2」といい,本件特許発明1と併せて「本件各特許発明」という。本判決添付の本件特許の特許公報参照。。)「前記周波数が円滑に変動するように前記ランピング電圧が上昇するにつれて,前記周波数可変回路は前記充電抵抗と前記放電抵抗の少なくとも一方を円滑に変更することを特徴とする請求項6に記載の回路 」。
( ) 構成要件2本件各特許発明構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した各構成要件をその符号に従い「構成要件1-A」のように表記する。。)ア本件特許発明11-Aランプ駆動回路に対して可変周波数発振信号を提供する安定器制御用集積回路内の回路であって,1-B各充電サブサイクル中に充電抵抗を通して充電され,各放電サブサイクル中に放電抵抗を通して放電されるコンデンサの両端間の電圧の値に応答して,前記充電サブサイクルと前記放電サブサイクルを交互に行う発振回路と,1-C上向きのランピング電圧に応答して前記充電サブサイクルと前記放電サブサイクルの周波数を変動させる周波数可変回路であって,1-D前記周波数が変動するように前記ランピング電圧が上昇するにつれて前記充電抵抗と前記放電抵抗の少なくとも一方を変更する周波数可変回路と,1-Eを含むことを特徴とする回路。
イ本件特許発明22-A構成要件1-Aに同じ(ランプ駆動回路に対して可変周波数発振信号を提供する安定器制御用集積回路内の回路であって ),2-B構成要件1-Bに同じ(各充電サブサイクル中に充電抵抗を通して充電され,各放電サブサイクル中に放電抵抗を通して放電されるコンデンサの両端間の電圧の値に応答して,前記充電サブサイクルと前記放電サブサイクルを交互に行う発振回路と ),2-C構成要件1-Cに同じ(上向きのランピング電圧に応答して前記充電サブサイクルと前記放電サブサイクルの周波数を変動させる周波数可変回路であって ),2-D前記周波数が変動するように前記ランピング電圧が上昇するにつれて前記充電抵抗と前記放電抵抗の少なくとも一方を変更する周波数可変回路とを含み,2-E前記周波数が円滑に変動するように前記ランピング電圧が上昇するにつれて,前記周波数可変回路は前記充電抵抗と前記放電抵抗の少なくとも一方を円滑に変更すること2-Fを特徴とする回路。
( ) 被告製品3被告は,訴外松下電工株式会社(以下「松下電工」という )の指定した 。
仕様に基づき,松下電工の製造・販売するランプの安定器の部品として,別紙物件目録記載の半導体装置(以下「被告製品」という )を製造・販売し 。
ている。
本件各特許発明との対比において,被告製品の構成を示すと,別紙回路図のとおりである(乙3 。)( ) 本件各特許発明と被告製品との対比 4被告製品の構成は,別紙回路図のとおりであり,これによれば,被告製品は,ランプ駆動回路に対して可変周波数発振信号を提供する安定器制御用集積回路内の回路である(構成要件1-A,1-E,2-A,2-F 。)したがって,被告製品は,本件特許発明1の構成要件のうち,構成要件1-A及び1-Eを充足し,本件特許発明2の構成要件のうち,構成要件2-A及び2-Fを充足する。
他方,被告製品は,充電サブサイクルと放電サブサイクルの周波数の変動を,タイマ発振器の出力を受けたカウンタの計数(以下「クロック信号の計数」という )が所定回数に達することに応答して行っており,上向きのラ 。
ンピング電圧に応答して行うものではない点で,構成要件1-C及び2-Cの「上向きのランピング電圧に応答して」並びに構成要件1-D,2-D及「 」。 び2-Eの 前記ランピング電圧が上昇するにつれて を文言上充足しない2本件の争点( ) 被告製品の構成は,構成要件1-B及び2-Bを充足するか(争点1 。
1 )( ) 被告製品の構成は,構成要件1-C及び2-Cと均等か(争点2 。
2 )( ) 被告製品の構成は,構成要件1-D及び2-Dと均等か(争点3 。
3 )( ) 被告製品の構成は,構成要件2-Eと均等か(争点4 。
4 )( ) 本件特許は無効とされるべきものか(争点5 。
5 )3争点に関する当事者の主張( ) 争点1(被告製品の構成は,構成要件1-B及び2-Bを充足するか )1 。
についてア原告の主張被告製品は,構成要件1-B及び2-Bをいずれも充足する。
)被告製品は,Ctピンに接続されるコンデンサCtの容量と,コンデaンサCtの充電又は放電経路に設けられる抵抗の抵抗値とにより定まる発振周波数で自己発振する発振回路を含んでいる。すなわち,各充電サブサイクル中に充電抵抗を通して充電され,各放電サブサイクル中に放電抵抗を通して放電されるコンデンサの両端間の電圧の値に応答して,前記充電サブサイクルと前記放電サブサイクルを交互に行う発振回路を含んでいる。
)被告は,被告製品はカレントミラー回路を介して発振用コンデンサをb充電しており,抵抗を介してではないとして,構成要件1-B及び2-Bを充足しないと主張する。
しかし,被告の主張は,請求項の文言が「抵抗」であり「抵抗器」ではないことを看過しており,失当である。本件明細書は,例えば,段落番号【0004【0009】等にあるように 「抵抗」と「抵抗器」 】, ,とを区別して用いている。そして 「抵抗」には 「抵抗器」だけでな ,,く,カレントミラー回路のように構成素子や回路の一定の電気的特性を利用することで回路を流れる電流量を制限し得るものが含まれる。カレントミラー回路は,入力側の電流に比例した電流を出力側に発生させるようになっているから,抵抗値が入力側の電流量に依存して変化する点において,一定の抵抗値を有する通常の抵抗器とは異なるものの,出力側の電流を制限する機能を有しているという点では「抵抗」に該当することは明白である。
イ被告の反論被告製品は,構成要件1-B及び構成要件2-Bを充足しない。
)被告製品は,カレントミラー回路を介して充電及び放電がされるものa,「 」,「 」 であり充電抵抗を通して充電され放電抵抗を通して放電されるものではない。
カレントミラー回路の出力側の電流は,基準側の電流に比例するだけであり,抵抗器の場合のようにかかった電圧に比例するものではないから,この点で抵抗器と異なる。
被告製品がカレントミラー回路を介して充電している理由は,主に精度のためである。すなわち,抵抗器を流れる電流で直接コンデンサに充,, , 電する場合には 充電が進むにつれて コンデンサの電圧が上がるため, 。 電流が小さくなっていき 電圧の上昇がしきい値付近でゆっくりになるこのため,しきい値がばらつくと周波数が大きくずれてしまう。これに対して,カレントミラー回路を介した場合には,コンデンサが一定の電流で充電されるから,電圧が直線的に上昇することになり,しきい値の前後でも電圧上昇率が一定で小さくならない。このため,ICのしきい値がばらついても,発振器の周波数はそれほどずれなくなり,周波数精度を高めるという利点がある。
, 「」「」b)原告は 構成要件1-B及び2-Bの文言は 抵抗 であり 抵抗器ではないから,カレントミラー回路も「抵抗」に該当すると主張する。
しかし,原告主張では,あらゆる回路素子は何らかの値の「抵抗」であるから,要件として意味がないことになってしまう。構成要件1-B及び2-Bの「抵抗」が「抵抗器」の意味であることは明らかである。
( ) 争点2(被告製品の構成は,構成要件1-C及び2-Cと均等か )につ2 。
いてア原告の主張周波数の変動をクロック信号の計数が所定回数に達することにより行うという被告製品の構成は,構成要件1-C及び2-Cの「上向きのランピング電圧に応答して」と均等である。
)安定器制御用集積回路は,所定の周波数で発振する発振回路を含んでaおり,その周波数をプレヒートモード,イグニッションランプモード,。, ランモードの順に低くなるよう制御する必要がある 本件各特許発明はこの周波数の変動の制御を,発振回路の時定数を決定するコンデンサと抵抗のうち,充電抵抗と放電抵抗の少なくとも一方を変更することで実現する点に特徴がある。また,それぞれのモードを急激に切り換えるのではなく,プレヒートモード,イグニッションランプモード,ランモードと円滑に切り換えることも,本件各特許発明の本質的部分に当たる。
ランピング電圧の上昇に伴って周波数を変動するようにしているのは,プレヒートモード又はイグニッションランプモードに必要な時間を設定するためであり,コンデンサが充電されて所定の電圧まで上昇する時間を各モードに必要な時間として利用するのが,本件各特許発明におけるランピング電圧の役割である。
被告製品は,Ctimerピンに接続されたコンデンサCtimerの容量により定まる周波数のクロックに基づいて,これらモードの移行,() , を制御するものの ある動作 モード に必要な時間を設定するために, , コンデンサの充電時間を用いることも クロック信号を計数することも周知の事項であり,いずれを選択するかは設計事項に過ぎない。
したがって,この点の相違は本件各特許発明の本質的部分ではない。
被告は,本件各特許発明は,部品点数ないし構成素子数を減らすところに意義があるのに対し,被告製品は構成素子が多くても確実に所定の動作をするようにした回路構成となっているので,本質的部分が異なる旨主張する。確かに,本件各特許発明は,従来技術において,充電抵抗を変更する手段として用いられていたコンパレータを不要とすることで回路の簡素化を可能とするものである。しかし,被告製品も,充電抵抗を変更する手段においてコンパレータを不要とする構成を採用しており,この点では,本件各特許発明と同様に回路の簡素化を行っている。
被告製品の構成素子数が,本件各特許発明と無関係な部分でいくら多かろうと,それは本件とは無関係な議論である。したがって,本件各特許発明と被告製品は,本質的部分において異なるところはない。
)ある動作(モード)に必要な時間を設定するために,コンデンサの充 b電時間を用いても,クロック信号を計数しても,結果は同じであり,周波数の変動の制御を,発振回路の時定数を決定するコンデンサと抵抗のうち,充電抵抗と放電抵抗の少なくとも一方を変更することで実現することができる。
よって,この相違点を置換することは可能である。
被告は,本件各特許発明は,回路の簡素化を内容とするものであるのに対し,被告製品は,回路の構成素子数が増加しているから,置換可能性を欠くと主張する。しかし,ここで問題としているのは,充電抵抗の変更とそれに伴う周波数の変動を,ランピング電圧の上昇により行うことと,クロック信号の計数が所定回数に達することにより行うこととの置換可能性であるから,被告の主張は的外れであり,反論になっていない。
)ある動作(モード)に必要な時間を設定するために,コンデンサの充c電時間を用いることも,クロック信号を計数することも,周知の事項であり,いずれを選択するかは設計事項にすぎない。
したがって,この相違点を置換することは容易である。
)本件各特許発明のランピング電圧の上昇を被告製品のクロック信号のd計数に置換したとしても,本件各特許発明の構成は,公知技術と同一又は当業者が出願時に容易に推考できたものとはいえない。
)被告製品が出願手続において本件各特許発明の請求項から意識的に除e外されたものに当たる等の特段の事情は認められない。
イ被告の反論周波数の変動をクロック信号の計数が所定回数に達することにより行うという被告製品の構成は,構成要件1-C及び2-Cの「上向きのランピング電圧に応答して」と均等とはいえない。
)本件明細書によれば,本件各特許発明は,コンパレータの数を節約し aて,最小の部品点数ないし構成素子数で構成できるようにするところに意義がある。これに対し,被告製品は,むしろ反対に,コンパレータの数も余計に使っており,構成素子数が多くても確実に所定の動作をする, 。 ようにした回路であり 本件各特許発明とは本質的に違ったものであるまた,本件各特許発明は 「ランピング電圧」との文言のとおり,コ ,ンデンサに充電が進むことによってダラダラと電圧が上昇することを利用して変更のタイミングをとっており,その際,弊害を無視して,コン,(〔〕。) パレータを省き FET 本件公報の 図5 の46がこれに該当するだけにするというものである。これに対し,被告製品は,発振周波数変更のタイミングをデジタル回路でクロック信号をカウントして決めており,デジタル信号であるカウンタの出力によって,カレントミラー回路の電流値を切り換えている。両者はコンパレータが入っていない点で共通するとしても,被告製品は,ダラダラとした上昇を利用するのではな, , く デジタル信号を利用するからコンパレータを必要としないのであり本件各特許発明とは全く違う。
さらに,原告は 「ランピング電圧」の「上昇」が少しずつ進むのに ,つれて少しずつ抵抗,ひいては発振周波数が変化するという点に,本件各特許発明と後記の乙4発明との差異があるというのであるから,この点が本件各特許発明の本質的部分であることは明らかである。
被告製品において,周波数の変動をクロック信号の計数が所定回数に達することにより行うことと,本件各特許発明構成要件1-C及び2-Cにおける「上向きのランピング電圧に応答して…周波数を変動させる」との差異は,本質的部分の一つである。
,「」,b)ボールスプライン事件最高裁判決は特許発明の目的 に照らして置き換えても同様に目的を達することが要件であるとしている。本件明細書によれば,本件各特許発明が簡素化を内容とするものであるのに対し,被告製品の構成素子数はむしろ増加しているのであるから,置換可能ではない。原告は切替のところにはコンパレータがないと主張するものの,カウンタ等の回路がなければ動作しないのであるから,無意味な比較である。
( ) 争点3(被告製品の構成は,構成要件1-D及び2-Dと均等か )につ3 。
いてア原告の主張)被告製品における周波数の変動は,3つのカレントミラー回路をモーaドの移行に伴い順次切り離すことにより,カレントミラー回路内の抵抗を切断するよう制御することで実現されている。被告製品は,その周波数の計測結果から明らかなとおり,周波数が円滑に変動するようになっているから 「前記ランピング電圧が上昇するにつれて」を除き,構成 ,要件1-D及び2-Dを充足する。
)上記( )アと同じ理由により,被告製品のカレントミラー回路を用いb1, 「 」 た構成は 構成要件1-D及び2-Dの 前記充電抵抗と前記放電抵抗を充足する。
)上記( )アと同じ理由により,周波数の変動をクロック信号の計数がc2所定回数に達することにより行うという被告製品の構成は,構成要件1-D及び2-Dの「前記ランピング電圧が上昇するにつれて」と均等である。
イ被告の反論)被告製品の発振周波数が穏やかに変化するのは,別の回路(スイープa回路)を加えることで達成されている。したがって,構成要件1-D及び2-Dは「前記ランピング電圧」に合わせて円滑に「変更」することを意味するとの原告の主張によれば,被告製品は構成要件1-D及び2-Dを充足しない。
)上記( )イと同じ理由により,被告製品のカレントミラー回路を用いb1, 「 」 た構成は 構成要件1-D及び2-Dの 前記充電抵抗と前記放電抵抗を充足しない。
)上記( )イと同じ理由により,周波数の変動をクロック信号の計数がc2所定回数に達することにより行うという被告製品の構成は,構成要件1-D及び2-Dの「前記ランピング電圧が上昇するにつれて」と均等とはいえない。
( ) 争点4(被告製品の構成は,構成要件2-Eと均等か )について4 。
ア原告の主張)被告製品における周波数の変動は,三つのカレントミラー回路をモーaドの移行に伴い順次切り離すことにより,カレントミラー回路内の抵抗を切断するよう制御することで実現されている。被告製品は,その周波数の計測結果から明らかなとおり,周波数が円滑に変動するようになっているから 「前記ランピング電圧が上昇するにつれて」を除き,構成 ,要件2-Eを充足する。
,,「」 原告は 被告主張のように 構成要件2-Eは 前記ランピング電圧「」 。 を直接にうけて 円滑に変更する ことを意味するとは主張していない本件各特許発明と後記の乙4発明との重要な相違は,乙4発明が点灯傾斜用のコンデンサを用いている点にあるのではなく,乙4発明がモード切替にコンパレータを用いていることにあるのである。
)上記( )アと同じ理由により,被告製品のカレントミラー回路を用いb1た構成は,構成要件2-Eの「前記充電抵抗と前記放電抵抗」を充足する。
)上記( )アと同じ理由により,周波数の変動をクロック信号の計数がc2所定回数に達することにより行うという被告製品の構成は,構成要件2-Eの「前記ランピング電圧が上昇するにつれて」と均等である。
イ被告の反論)被告製品の発振周波数が穏やかに変化するのは,別の回路(スイープa回路)を加えることで達成されている。したがって,構成要件2-Eは「前記ランピング電圧」を直接にうけて「円滑に変更」することを意味するとの原告の主張によれば,被告製品は構成要件2-Eの「円滑に変更」を充足しない。
)上記( )イと同じ理由により,被告製品のカレントミラー回路を用いb1た構成は,構成要件2-Eの「前記充電抵抗と前記放電抵抗」を充足しない。
)上記( )イと同じ理由により,周波数の変動をクロック信号の計数がc2所定回数に達することにより行うという被告製品の構成は,構成要件2「 」。 -Eの 前記ランピング電圧が上昇するにつれて と均等とはいえない( ) 争点5(本件特許は無効とされるべきものか)について5ア被告の主張本件各特許発明は 特開平11-260583号公報 乙4 以下乙 , (。,「4公報」といい,これに記載された発明を「乙4発明」という,EP。)0059064A1公報(乙5。以下 「乙5公報」といい,これに記載 ,された発明を「乙5発明」という )に記載された公知の発明と同一であ 。
り,若しくは,これに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条1項又は同条2項の規定に違反して特許されたものである。したがって,本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものであり,同法104条の3第1項により,原告の本件特許権の行使は許されない。
)乙4発明による新規性の欠如についてa?@乙4発明は,蛍光ランプの点灯のためのICであり,五つの基本動作モードを持ち,これは可変周波数の発振によるものであるから,構成要件1-A及び2-Aを充足する。
?A乙4文献の図13の抵抗6が放電抵抗で,これを通してコンデンサCtが放電される。乙4発明は,その電圧に応じて,充電サブサイクルと前記放電サブサイクルを切り換えて交互に行う回路であり,これを以て発振する。充電の際は,Ctピンに接続された定電流源による(すなわちカレントミラー回路を通す)から,抵抗を通していないものの,原告主張の充電抵抗にはカレントミラー回路を含むとの解釈を前提とすれば,乙4発明は,構成要件1-B及び2-Bを充足する。
?B乙4文献の図13のCPHピンに接続されたコンデンサ24に充電が進むことで電圧が上昇し,これが「上向きのランピング電圧」に当たる この電圧がコンパレータに入力され コンパレータの他端子 負 。 ,(性側端子)に4ボルトがかけられているので,4ボルトよりも高くなると,切替が起こって周波数を変動させる。よって,乙4発明は,構成要件1-C及び2-Cを充足する。
?C乙4発明においては,予熱時(プレヒート時)は,Rtに加えて抵抗16が並列になって充電抵抗となり,コンデンサ24の電圧が上昇して4ボルトを越えると,コンパレータが切り換わって,抵抗16が切り離され,これによって充電抵抗が「変更」されて周波数が変化する「周波数可変回路」であるから,構成要件1-D及び2-Dを充足する。
原告は,構成要件1-D及び2-Dの「ランピング電圧が上昇するにつれて…抵抗…を変更する」とは,ランピング電圧の変化に応じて抵抗値が変わることであり,抵抗値が階段状に切り換わる場合を含まないから,乙4発明のように,充電抵抗・放電抵抗の切り換えにコンパレータを用いた従来の回路は構成要件1-D及び2-Dを充足しないと主張する。しかし,字義からすれば,上昇に応じてさえいれば,ある段階で不連続に切り換わるというのでも該当するというのが通常の理解であるし,請求項6に従属する請求項7においては,構成要件2-Eとして「円滑」に変化する旨が追加して規定されている。さらに,同じく請求項6に従属する請求項8においては 「コンパレータ ,を含まない」とされている。これらの要件のない請求項6には 「コ,ンパレータを用いた従来の回路」であっても含まれると解釈するのが当然であり,構成要件1-D及び2-Dについての原告の主張は失当であって,乙4発明は,構成要件1-D及び2-Dを充足する。
?D構成要件2-Eの「円滑に変更する」の意味は不明瞭であるが,乙4発明も発振が途切れないように切替がなされているから,構成要件2-Eを充足する。
原告は,構成要件2-Eは「前記ランピング電圧」を直接にうけて「」, , 円滑に変更 することを意味するから コンパレータを介した上で点灯傾斜用のコンデンサ28を利用している乙4発明は,構成要件2-Eを充足しないと主張する。そのような原告の主張に従えば,被告製品は構成要件2-Eを充足せず非侵害であることは上記( )イ )の4aとおりであるものの,そもそも,構成要件2-Eは 「前記ランピン ,グ電圧が上昇するにつれて」でありさえすれば 「前記ランピング電 ,圧」の穏やかな上昇を直接にうけての「円滑」ではなくてもいいものと考えられる。そうであれば,別の点灯傾斜用コンデンサの働きによりスムーズな周波数変更という目的を達している乙4発明も,構成要件2-Eを充足する。
)乙4発明による進歩性の欠如についてb?@上記)のとおり,原告の解釈を前提とすれば,乙4発明は本件各 a特許発明構成要件をすべて充足する。
?A仮に,乙4発明が構成要件1-B及び2-Bの「充電抵抗を通して充電され」を充足しないとしても,乙4発明は,放電については「放電抵抗を通して」いるのであるから,当業者は,充電についても同様にすることを容易に想到できる。
?B仮に,構成要件1-D及び2-Dの「ランピング電圧が上昇するにつれて」を限定解釈して,乙4発明が構成要件1-D及び2-Dを充足しないとしても,乙4発明でも,円滑な周波数の変更は実現しているのであるから,乙4発明と構成要件1-D及び2-Dの相違は些末であり,当業者は乙4発明に基づき構成要件1-D及び2-Dに容易に想到できる。
?C仮に,乙4発明が構成要件2-Eを充足しないとしても,乙4発明でも,円滑な周波数の変更は実現しているのであるから,乙4発明と構成要件2-Eの相違は些末であり,当業者は乙4発明に基づき構成要件2-Eに容易に想到できる。
)乙4発明及び乙5発明による進歩性の欠如についてc?@上記)のとおり,原告の解釈を前提とすれば,乙4発明は本件各 a特許発明構成要件をすべて充足する。
?A仮に,構成要件2-EがFETのゲート電圧が段々と変化しているのでゆっくり切断されるという限定した意味であり,乙4発明が構成要件2-Eを充足しないとしても,乙5公報には,FETの伝導性が段々と変化していくことを,蛍光灯などの放電灯の電子点灯回路の周波数の切替のために利用することが開示されているから( FIG. 「5A」のC17の電圧が次第に変化し,これに応じてFET2の伝導性が次第に変化する,乙4発明と乙5発明とを組み合わせること 。)で,本件各特許発明容易に想到し得るものであり,進歩性がない。
)乙5発明による進歩性の欠如についてd上記 )?Aのとおり,乙5公報には,FETの伝導性が段々と変化しcていくことを,蛍光灯などの放電灯の電子点灯回路の周波数の切替のために利用することが開示されているから,本件各特許発明は,乙5発明に基づき,容易に想到し得るものであり,進歩性がない。
イ原告の反論本件各特許発明は,乙4発明と同一ではなく,乙4発明又は同発明と乙5発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものでもなく,特許法29条1項及び同条2項に該当するものではない。したがって,本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものには当たらない。
)本件各特許発明の回路は,コンデンサ24の電圧の上昇に応じて,スaイッチ(PMOS)46をゆっくり開き,RPHピンがRTピンからゆっくり切断される。
構成要件1-D及び2-Dの「ランピング電圧が上昇するにつれて…抵抗…を変更する」とは,ランピング電圧の変化に応じて抵抗値が変わることである。具体的には,RPHピンの回路を徐々に切り離すことにより,抵抗器16を流れる電流を少なくして,実質的に抵抗値を滑らかに変化させることであり,抵抗器を接続するか否かの択一的な切り換えを行うことではない。
なお,コンパレータを用いて抵抗器を切り換える場合には,コンパレータに入力される電圧が一定値を超えたところで抵抗器の切り換えが発生し,抵抗値が階段状に段階的に切り換わることになるから,構成要件1-D及び2-Dを充足しない。
)乙4公報の図13の回路では,コンデンサ24の電圧が4V以下のとbき,抵抗器16はアースに接続される。つまり,抵抗器16は,RTピンとアースとの間の抵抗器RTと並列に接続される。コンデンサ24の電圧が4Vを超えると,コンパレータが切り換わってMOSFETがOFFになり,抵抗器16は回路素子として機能しなくなる。すなわち,しきい値電圧4Vを境に,抵抗器16をRPHピンに接続するか否かの択一的な制御を行っている。
また,乙4公報の図2,表4には,点灯傾斜のためのコンデンサ28,, をRPHピンに接続することが記載されており このコンデンサ28が抵抗器16がアースから切り離されても,コンデンサ28に充電されている間だけ抵抗器16に電流が流れるようにして,点灯傾斜を実現している。
)したがって,乙4発明は,構成要件1-D及び2-Dを充足しない。
cまた,本件各特許発明は,充電抵抗・放電抵抗の切り換え回路にコンパレータを不要とすることで簡素化したのみならず,点灯傾斜用のコンデンサも不要とするという技術的思想であり,従来の回路から単純にコンパレータを削除しても円滑な点灯傾斜が実現されるわけではないから,乙4発明に基づいて本件各特許発明のような回路構成を当業者が容易に想到できるわけではない。
)被告は,構成要件1-D及び2-Dにはモード切替が円滑に行われなdいものを含む旨主張する。しかし,被告主張のように「ある段階で不連続に切り換わる」ことを意味するのであれば 「電圧が所定のしきい値 ,を越えた場合に」と規定すべきであるにもかかわらず,構成要件1-D。「」, 及び2-Dはそのように規定されていない上昇するにつれて とはその文言上,電圧の連続的変化に応じて連続的に変更する,すなわち円滑に変更するという意味であることが明らかである 「ランピング」と 。
いう文言も,傾斜という意味を有しているから 「ある段階で不連続に ,切り換わる」という解釈は妥当でない。
第3当裁判所の判断1争点1(被告製品の構成は,構成要件1-B及び2-Bを充足するか )に。
ついて( ) 構成要件1-B及び2-Bにおいて 「抵抗」という文言は 「各充電サ1 ,,ブサイクル中に充電抵抗を通して充電され,各放電サブサイクル中に放電抵抗を通して放電されるコンデンサ (下線は当裁判所が付加した )という 」 。
文脈において用いられている。
すなわち,ここにいう「抵抗」とは,コンデンサの充電及び放電の際に,それを介して電流を流すという役割を有する回路の一構成要素として,あえて記載されているものである。
また,本件明細書において,この「抵抗」を明確に定義した記載はないものの 「 発明の実施形態の詳細な説明 」欄には,構成要件1-B及び2- ,( )Bが規定する「発振回路」並びにコンデンサの充電及び放電に関し 「図4,は,本発明による発振回路10の詳細回路図である( 0013「M。」【】),OSFET24を“オン”にし,それにより,タイミングコンデンサC はTデッドタイム抵抗器28を介してCOMに放電し続ける( 0016,。」【】)「 “”,“”。 MOSFETスイッチ24は 開 になり スイッチ30は 閉 になるその結果,タイミングコンデンサC は,以下の式で示す速度でタイミングT抵抗器R を介してVCCに向かって指数関数的に充電する( 002 T 。」【1「スイッチ36は“閉”になり,スイッチ30は“開”になり,スイ 】),ッチ24は“閉”になる。その場合,タイミングコンデンサC は,以下のT式で示す速度でデッドタイム抵抗器28を介してCOMに向かって指数関数的に放電する( 0024 )と記載されており,タイミングコンデンサ 。」【】C がデッドタイム抵抗器28,タイミング抵抗器R という「抵抗器」をT T介して充電及び放電することが開示されている。
以上によれば,構成要件1-B及び2-Bの「抵抗」とは,回路に電気抵抗を与えるために用いる器具ないし素子である「抵抗器」を意味すると解するのが相当である。
( ) 被告製品は,コンデンサへの充電及び放電をカレントミラー回路を介して 2行っており,カレントミラー回路は「抵抗器」には該当しないものであるから(弁論の全趣旨 ,構成要件1-B及び2-Bを充足しない。 )( ) これに対し,原告は,構成要件1-B及び2-Bの「抵抗」には,カレン3トミラー回路のように構成素子や回路の一定の電気的特性を利用することで回路を流れる電流量を制限し得るものが含まれると主張する。
しかし,単なる配線にも抵抗は存在するものであり,上記( )のとおり,1あえて特許請求の範囲に「充電抵抗を通して「放電抵抗を通して」と記 」,載されていることからすると,原告の主張が単なる配線をもこれに含む趣旨であれば,その主張を採用することはできない。また,抵抗器を介して流れる電流は,かかった電圧に比例し,コンデンサへの充電が進むにつれて,コンデンサの電圧の上昇により小さくなっていくのに対し,カレントミラー回路の出力側の電流は,基準側の電流に比例し,コンデンサの電圧の上昇にもかかわらず,一定の大きさであり,抵抗器による電流量の制限とカレントミラー回路による電流量の制限とはその性質を異にするものである(弁論の全趣旨 。本件明細書には,このように抵抗器とは性質を異にする電流量の制 )限を達成し得るものが「抵抗」の中に含まれることを明らかにした記載がないことはもちろんのこと,このような解釈を示唆する記載も見当たらず,当業者において,そのように解釈することは困難である。そうすると,仮に,原告の主張が単なる配線は含まない趣旨であったとしても,原告の主張を採用することはできない。
2争点2(被告製品の構成は,構成要件1-C及び2-Cと均等か )につい 。
て上記1によれば,被告製品は,本件各特許発明技術的範囲に属しないというべきであるが,事案の内容に鑑み,さらに進んで,争点2も判断する。
(1) 本件明細書には,次の記載がある(甲2。下線は当裁判所が付加した。。)ア「本発明は,蛍光ランプまたは高輝度放電ランプを制御するための電子安定器()に関し,より詳細には,必要とする内部および外electronic ballast部構成要素がより少ない電子安定器に関する( 発明の背景 【000 。」〔〕1 )】イ「一般に知られている安定器内のように ’623号特許の安定制御回路 ,では,CPHピンを固定しきい値と比較するためのコンパレータを含むプレヒートタイマの実現が必要である。さらに,この発振回路では複数のコンパレータを必要とする。上記および他の構成上の詳細により,チップの内側と外側の両方で追加の構成要素が必要になる。したがって,内部および外部構成要素の数を最小限にしながら,主要安定器機能を実行する安定制御ICを提供することにより 従来技術を改善することができる発 , 。」(〔明の背景 【0007 )〕】ウ「本発明は,使用するコンパレータが少なく,サブ回路()のsub-circuit機能を結合し,それにより,必要な内部および外部構成要素の数を削減する電子安定器を提供することにより,前述のような従来技術の欠点を克服するものである( 発明の概要 【0008 ) 。」〔〕】エ「より具体的には,本発明のチップは,コンパレータ回路を1つ必要とするだけであることが好都合な発振回路を含む。さらに,ランププレヒート回路はタイミング抵抗器()と並列のプレヒート抵抗器 timing resistor()を使用してプレヒート周波数()をプ preheat resistor preheat frequencyログラミングし,MOSFETスイッチのゲートの電圧はランピング()し,周波数タイミング入力からプレヒートピンを(したがってrampプレヒート抵抗器も)徐々に切り離す(( 発明の概要 【0 disconnect )。」〔〕009 )】オ「図4は,本発明による発振回路10の詳細回路図である。従来の安定器ICとは対照的に,この発振回路はコンパレータ12を1つ必要とするだけであることが好都合であり,したがって,シリコン内に実施するのに必要なレイアウト空間を大幅に削減する。したがって,ICの全体的なサイズを縮小することができる( 発明の実施形態の詳細な説明 【001 。」〔 〕3 )】カ「本発明のこの好ましい発振器は,以前の安定器ICの発振回路より回路数が少なくなり,特に,必要なコンパレータは1つだけになる( 発明。」〔の実施形態の詳細な説明 【0032 ) 〕】キ「図5は,本発明の好ましい実施形態によるプレヒート回路40の回路図である。都合の良いことには,プレヒート回路40はコンパレータを一切必要としない( 発明の実施形態の詳細な説明 【0033 ) 。」〔 〕】ク「プレヒート中は,このICがより高いプレヒート周波数で発振することが必要である。これに続いて,イグニッション周波数から最終的なランまたは最小周波数への円滑な下方掃引が発生する。これを行うために,外部コンデンサCは,CPHピンから流れ出る内部の5μAの電流源44PHによりCOMからVCCへ線形に充電される。また,CPHピンはPMOSトランジスタ46のゲートにも接続され,このトランジスタがピンRPHとピンRTを接続する。この構成では,プレヒート中に発振器周波数がより高くなるように,抵抗器R が抵抗器Rに並列に接続されている。
T PHPMOSのしきい値は約1.5ボルトなので,プレヒート期間は,コンデンサCがCOMから(VCC-1.5ボルト)までランプ()すPH rampるのに要する時間として定義される。コンデンサCが(VCC-1. PH5V)からVCCまで充電し続けるにつれて,スイッチ46はゆっくり開,, 。, き それにより ピンRPHがRTからゆっくり切断される これにより周波数は プレヒート周波数から最終ラン周波数までゆっくり遷移する 図 , ()。」(〔 〕【】) 7のタイミング図を参照発明の実施形態の詳細な説明0034ケ「プレヒート回路40の有利な特徴は,1)抵抗器R に並列な抵抗器RTを使用してプレヒート周波数をプログラミングすること,2)PMO PHS46のゲートにおける電圧をランピング()してRPHピンを rampingRTピンから円滑に切断すること,3)既存のコンデンサCランプを PHイグニッション用のランプ()としても使用することである。プレ rampヒートタイマの古典的な実施例では,CPHピンを固定しきい値と比較するためのコンパレータが必要である。本発明のプレヒート回路40で上記の3つの機能を結合することにより “コンパレータなし”のプレヒート ,タイマが実現され,それにより,ICの全体的なサイズが縮小される 」。
( 発明の実施形態の詳細な説明 【0035 ) 〔 〕】(2) 本件明細書の上記記載によれば,本件各特許発明は,従来の安定制御回路では,複数のコンパレータが必要となり,チップの内側と外側の両方で追加の構成要素が必要になるという課題を解決するために(上記(1)イ ,コン)パレータの使用を少なくし,サブ回路の機能を結合することにより,必要とされる内部構成要素及び外部構成要素の数を削減した電子安定器を提供するものである(上記(1)アないしウ 。そして,本件明細書においては,本件 )各特許発明では,従来の安定器ICとは対照的に,発振回路に必要なコンパレータが一つだけであること(上記(1)エないしカ ,プレヒート回路には )コンパレータを一切必要としないこと(上記(1)キ,ケ)が「好都合」であることが強調され,使用するコンパレータの数を最小限としたことにより,(, )。 ICの全体的なサイズが縮小されることが記載されている 上記(1)オ ケそうすると,本件各特許発明は,安定制御ICで使用するコンパレータの数を減らすこと,また,安定制御ICの内部構成要素及び外部構成要素の数を最小限にすることをその目的とし,そのために次のような実施例を開示するものであると認められる。
「 発明の実施形態の詳細な説明 」欄に開示された実施例においては, ( )プレヒート回路に使用するコンパレータの数の減少は 「CPHピンを固定 ,しきい値と比較するためのコンパレータ」を削減して,CPHピンをPMOSトランジスタ46のゲートに直接接続することにより実現されており,その結果として,コンデンサCに接続されたCPHピンの電圧が上昇し続PHけるにつれて,スイッチの役割を果たすPMOSトランジスタ46がゆっく, , り開いて 抵抗器R と並列接続された抵抗器Rの接続をゆっくり切断しT PH周波数をゆっくり遷移させていることが認められる。
これを前提に,構成要件1-C及び2-Cの「上向きのランピング電圧に応答して」の意義を検討すると,本件各特許発明において,周波数の変更を「上向きのランピング電圧に応答して」行うことは,使用するコンパレータの数を減らすという本件各特許発明の目的を達成するために,従来コンデンサとMOSトランジスタのゲートの間に設けられていたコンパレータを削除して,コンデンサとMOSトランジスタのゲートとを直結したことの必然的な帰結であって,単に各モードに必要な時間を設定するためだけのものではないと認められる。
したがって,構成要件1-C及び2-Cの「上向きのランピング電圧に応答して…周波数を変動させる」ことと,被告製品の「クロック信号の計数が所定回数に達することにより周波数を変動させる」という構成との差異は,本件各特許発明の本質的部分に係る差異であると認められる。
また,被告製品は 「クロック信号の計数が所定回数に達することにより ,周波数を変動させる」という構成を採用するために,タイマ発振器及びカウンタから成るタイマ回路を設けており,このような被告製品の構成は,ICの内部構成要素の数を最小限にするという本件各特許発明の目的に反していると考えられ,この点からも,上記の差異は,本質的な差異であるということができるし,上記構成に置換することで,本件各特許発明の目的を達することができなくなったというべきである。
なお,構成要件1-C及び2-Cの「上向きのランピング電圧に応答して…周波数を変動させる」とは,電圧の上昇に応じて周波数を徐々に変動させることを意味すると解されるから,被告製品の「クロック信号の計数が所定回数に達することにより周波数を変動させる」という構成自体では,同一の作用効果を奏しているということもできない。
(3) 以上によれば,被告製品の構成は,構成要件1-C及び2-Cと均等なものであると解することはできない。
3争点3(被告製品の構成は,構成要件1-D及び2-Dと均等か )及び争 。
点4(被告製品の構成は,構成要件2-Eと均等か )について 。
上記1及び2で述べたところによれば,被告製品の「クロック信号の計数が所定の回数に達することによりカレントミラー回路により周波数を変動させる」との構成は,構成要件1-D及び2-Dの「前記ランピング電圧が上昇するにつれて前記充電抵抗と前記放電抵抗の少なくとも一方を変更する周波数可変回路 と均等なものであると解することはできないし 構成要件2-Eの 前 」 ,「記周波数が円滑に変動するように前記ランピング電圧が上昇するにつれて,前記周波数可変回路は前記充電抵抗と前記放電抵抗の少なくとも一方を変更する」と均等なものであると解することもできないことは明らかである。
4結論よって,原告の本訴請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がないから,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 設樂隆一
裁判官 関根澄子
裁判官 古庄研