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事件 平成 23年 (ワ) 4836号 特許権侵害差止等請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 大阪地方裁判所 
判決言渡日 2013/01/17
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
平成25年1月17日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官

平成23年(ワ)第4836号 特許権侵害差止等請求事件

口頭弁論終結日 平成24年9月18日

判 決



原 告 株式会社メディオン・リサーチ・

ラボラトリーズ



同訴訟代理人弁護士 山 田 威一郎

同訴訟代理人弁理士 松 井 宏 記

同補佐人弁理士 田 中 順 也

同 立 花 顕 治



被 告 有限会社サンクス製薬

(以下「被告サンクス」という。)




被 告 株式会社サレア化研

(以下「被告サレア」という。)



上記両名訴訟代理人弁護士 竹 岩 憲 爾

同 塚 本 一 博

同補佐人弁理士 宮 崎 伊 章

同 的 場 照 久



1
被 告 株式会社 K B C

(旧商号:株式会社カルゥ。以下「被告カルゥ」という。)



同訴訟代理人弁護士 村 岡 友 一

同 原 田 裕 康

主 文

1 本件訴えのうち被告サンクスに対し別紙被告製品目録記載1から3まで

の製造,販売の差止めを求める部分を却下する。

2 被告サンクスは,別紙被告製品目録記載1から3までの各製品を輸出し,

販売若しくは輸出の申出をし,又は別紙被告製品目録記載4から6まで及び

8の各製品を製造し,販売し,輸出し,販売若しくは輸出の申出をしてはな

らない。

3 被告サンクスは,別紙被告製品目録記載4から6まで及び8の各製品を廃

棄せよ。

4 被告サンクスは,原告に対し,1400万円及びこれに対する平成23年

1月8日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,被告カルゥと

連帯して)を支払え。

5 被告サレアは,同目録記載4から7−1までの各製品を製造し,販売し,

輸出し又は販売若しくは輸出の申出をしてはならない。

6 被告サレアは,前項記載の各製品を廃棄せよ。

7 被告サレアは,原告に対し,985万0379円及びこれに対する平成2

3年1月8日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,被告カ

ルゥと連帯して)を支払え。

8 被告カルゥは,同目録記載4から13までの各製品を製造し,販売し,輸

出し又は販売若しくは輸出の申出をしてはならない。


2
9 被告カルゥは,前項記載の各製品を廃棄せよ。

10 被告カルゥは,原告に対し,2億8859万1466円並びに内2億69

07万0894円(ただし,1400万円の限度で被告サンクスと,985

万0379円の限度で被告サレアと,それぞれ連帯して)に対する平成23

年1月8日から及び内1952万0572円に対する同年4月29日から,

それぞれ支払済みまで年5分の割合による各金員を支払え。

11 原告のその余の請求をいずれも棄却する。

12 訴訟費用は,原告に生じた費用の3分の1を被告らの連帯負担とし,4分

の1を被告カルゥの負担とし,被告サレアに生じた費用の3分の1を原告の

負担とし,被告カルゥに生じた費用の8分の1を原告の負担とし,その余は

各自の負担とする。

13 この判決は,2,4,5,7,8,10 及び 12 項に限り,仮に執行するこ

とができる。

事実及び理由

第1 当事者の求めた裁判

1 原告

(1)被告サンクスに対する請求

ア 被告サンクスは,別紙被告製品目録記載1から6まで,8及び14の各

製品を製造し,販売し,輸出し又は販売若しくは輸出の申出をしてはなら

ない。

イ 被告サンクスは,前項記載の各製品を廃棄せよ。

ウ 主文4項と同旨

(2)被告サレアに対する請求

ア 被告サレアは,同目録記載4から7−1まで及び14の各製品を製造し,

販売し,輸出し又は販売若しくは輸出の申出をしてはならない。


3
イ 被告サレアは,前項記載の各製品を廃棄せよ。

ウ 被告サレアは,原告に対し,2億6320万2450円(ただし,被告

カルゥと連帯して)及びこれに対する平成23年1月8日から支払済みま

で年5分の割合による金員を支払え。

(3)被告カルゥに対する請求

ア 被告カルゥは,同目録記載4から14までの各製品を製造し,販売し,

輸出し又は販売若しくは輸出の申出をしてはならない。

イ 被告カルゥは,前項記載の各製品を廃棄せよ。

ウ 被告カルゥは,原告に対し,4億円並びに内3億円(ただし,1400

万円の限度で被告サンクスと,2億6320万2450円の限度で被告サ

レアと,それぞれ連帯して)に対する平成23年1月8日から及び内1億

円に対する同年4月29日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合によ

る各金員を支払え。

(4)訴訟費用は被告らの負担とする。

(5)仮執行宣言

2 被告ら

(1) 原告の請求をいずれも棄却する。

(2) 訴訟費用は原告の負担とする。

第2 事案の概要

1 前提事実(証拠等の掲記がない事実は当事者間に争いがない。)

(1) 当事者

原告は,医薬品・医薬部外品・化粧品・医療用機械器具・美容 機 器・福祉

用具の研究,開発,製造,販売及びこれらの コンサルティング業務 等を目的

とする会社である。

被告サンクス及び被告サレアは,いずれも医薬部外品の製造販売等を目的

とする会社である。

4
被告カルゥは,美容器具・化粧品の開発 並びに卸・小売及び輸出 入業等を

目的とする会社である。

(2) 原告の有する特許権

原告は,以下の特許(以下「本件特許」といい,本件特許に係 る各発明を

併せて「本件各特許 発明」という。また,本件特許出願に係る明細書を「本

件明細書」という。 係る特許権(以下「本件特許権」という。
)に )を有する。

特許番号 4659980号

発明の名称 二酸 化炭素含有粘性組成物

出願年月日 平成10年10月5日

優先日 平成9年11月7日

公開日 平成11年5月20日

登録年月日 平成23年1月7日

特許請求の範囲

【請求項1】

部分肥満改善用化粧 料 ,或いは水虫,アト ピ ー性皮膚炎又は褥創 の治療用

医薬組成物として使 用 される二酸化炭素含 有 粘性組成物を得るためのキット

であって,

1)炭酸塩及びアル ギ ン酸ナトリウムを含 有する含水粘性組成物 と,酸を含

む顆粒(細粒,粉末) 剤の組み合わせ;又は

2)炭酸塩及び酸を 含む複合顆粒(細粒, 粉末)剤と,アルギン 酸ナトリウ

ムを含有する含水粘性組成物の組み合わせ

からなり,

含水粘性組成物が, 二酸化炭素を気泡状で 保持できるものであることを特徴

とする,

含水粘性組成物中で 炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の 二酸化炭素

を含有する前記二酸化 炭素含有粘性組成物を 得ることができるキッ ト。

5
(以下,上記請求項に 係る発明を「本件特許 発明1」という。)

【請求項2】

得られる二酸化炭素含 有粘性組成物が,二酸 化炭素を5〜90容量%含有

するものである,請求項1に記載のキット。

(以下,上記請求項に係る発明を「本件特許発明2」という。)

【請求項3】

含水粘性組成物が, 含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させた 後 にメス

シリンダーに入れたときの容量を100としたとき,2時間後に お いて50

以上の容量を保持できるものである,請求項1又は2に記載のキッ ト。

(以下,上記請求項に 係る発明を「本件特許 発明3」という。)

【請求項4】

含水粘性組成物がアル ギン酸ナトリウムを2 重量%以上含むもので ある,

請求項1乃至3のいずれかに記載のキット。

(以下,上記請求項に 係る発明を「本件特許 発明4」という。)

【請求項5】

含有粘性組成物が水 を87重量%以上含む ものである,請求項1 乃至4の

いずれかに記載のキッ ト。

(以下,上記請求項に 係る発明を「本件特許 発明5」という。)

【請求項7】

請求項1〜5のいずれかに記載のキットから 得ることができる二酸 化炭素

含有粘性組成物を含む 部分肥満改善用化粧料 。

(以下,上記請求項に 係る発明を「本件特許 発明7」という。)

【請求項8】

顔,脚,腕,腹部, 脇腹,背中,首,又は 顎 の部分肥満改善用で あ る,請

求項7に記載の化粧料 。

(以下,上記請求項に 係る発明を「本件特許 発明8」という。)

6
【請求項9】

部分肥満改善用化粧 料 ,或いは水虫,アト ピ ー性皮膚炎又は褥創 の治療用

医薬 組 成 物 として 使 用 さ れる 二酸 化 炭素含 有 粘性組 成 物 を 調 製する 方法 で

あって,

1)炭酸塩及びアル ギ ン酸ナトリウムを含 有する含水粘性組成物 と,酸を含

む顆粒(細粒,粉末) 剤;又は

2)炭酸塩及び酸を 含む複合顆粒(細粒, 粉末)剤と,アルギン 酸ナトリウ

ムを含有する含水粘性組成物;

を用いて,含水粘性組 成物中で炭酸塩と酸 を 反応させることにより 気泡状の

二酸化炭素を含有する 二酸化炭素含有粘性組 成物を調製する工程を 含み,

含水粘性組成物が, 二酸化炭素を気泡状で 保持できるものである, 二酸化炭

素含有粘性組成物の調 製方法。

(以下,上記請求項に 係る発明を「本件特許 発明9」という。)

【請求項10】

調製される二酸化炭素含有粘性組成物が, 二酸化炭素を5〜90 容量%含

有するものである,請求項9に記載の調製方法。

(以下,上記請求項に 係る発明を「本件特許 発明10」という。)

【請求項11】

含水粘性組成物が, 含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させた 後 にメス

シリンダーに入れたときの容量を100としたとき,2時間後に お いて50

以上の容量を保持できるものである,請求項9又は10に記載の調 製方法。

(以下,上記請求項に 係る発明を「本件特許 発明11」という。)

【請求項12】

含水粘性組成物がアル ギン酸ナトリウムを2 重量%以上含むもので ある,

請求項9乃至11のいずれかに記載の調製方法。

(以下,上記請求項に 係る発明を「本件特許 発明12」という。)

7
【請求項13】

含有粘性組成物が水 を87重量%以上含む ものである,請求項9 乃至12

のいずれかに記載の調 製方法。

(以下,上記請求項に 係る発明を「本件特許 発明13」という。)

(3) 構成要件の分説

本件各特許発明は,以下のとおり分説することができる。

ア 本件特許発明

1−A 部分肥満改善 用化粧料,或いは水虫 ,アトピー性皮膚炎又は褥創

の治療用医薬組成物として使用される二酸化 炭素含有粘性組成物を

得るためのキットであって,

1 −B 炭 酸塩 及びアル ギ ン 酸ナ トリウ ム を 含 有する 含水粘性組 成 物 と,

酸を含む顆粒(細粒, 粉末)剤の組み合わせ ;又は

炭酸塩及び酸を含む複 合顆粒(細粒,粉末) 剤と,アルギン酸ナト

リウムを含有する含水粘性組成物の組み合わ せ

からなり,

1−C 含水粘性組成 物が,二酸化炭素を気泡状で保持できるものである

ことを特徴とする,

1−D 含 水粘性組 成 物 中で 炭酸塩 と 酸 を 反応さ せることにより 気泡状

の二酸化炭素を含有する前記二酸化炭素含有 粘性組成物を得ること

ができるキット。

イ 本件特許発明

2−A 得られる二酸 化炭素含有粘性組成物 が,二酸化炭素を5〜 90容

量%含有するものであ る,

2−B 請求項1に記載のキット。

ウ 本件特許発明

3−A 含水粘性組成物が,含水粘性組成物中で炭酸塩と 酸を反応させた

8
後にメスシリンダーに 入れたときの容量を100としたとき,2時

間後において50以上の容量を保持できるものである,

3−B 請求項1又は2に記載のキット。

エ 本件特許発明

4−A 含水粘性組成物がアルギン 酸ナトリウムを2重量%以上含むもの

である,

4−B 請求項1乃至3のいずれかに記載のキット。

オ 本件特許発明

5−A 含有 粘性組成物が水を87 重量%以上含むもので ある,

5−B 請求項1乃至 4のいずれかに記載の キット。

カ 本件特許発明

7−A 請求項1〜5のいずれかに記載のキットから得ることができる二

酸化炭素含有粘性組成 物を含む

7−B 部分 肥満改善用化粧料。

キ 本件特許発明

8−A 顔, 脚,腕,腹部,脇腹, 背中,首,又は顎の部分肥満改善用で

ある,

8−B 請求項7に記載の化粧料。

ク 本件特許発明

9−A 部分肥満改善 用化粧料,或いは水虫 ,アトピー性皮膚炎又は褥創

の治療用医薬組成物として使用される二酸化 炭素含有粘性組成物を

調製する方法であって,

9−B 1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウ ムを含有する含水粘性組成物

と,酸を含む顆粒(細粒,粉末)剤;又は

2)炭酸塩及び酸を含む複合顆粒(細粒,粉末)剤と,アルギン酸

ナトリウムを含有する 含水粘性組成物;

9
を用いて,含水粘性組 成物中で炭酸塩と酸を 反応させることにより

気泡状の二酸化炭素を 含有する二酸化炭素含 有粘性組成物を調製す

る工程を含み,

9−C 含水粘性組成物が,二酸化 炭素を気泡状で保持できるものである,

9−D 二酸化炭素含 有粘性組成物の調製方法。

ケ 本件特許発明10

10−A 調製される 二酸化炭素含有粘性組 成物が,二酸化炭素を5〜9

0容量%含有するものである,

10−B 請求項9に記載の調製方法。

コ 本件特許発明11

11−A 含水粘性組成物が,含水粘性組 成物中で炭酸塩と酸 を 反応させ

た後にメスシリンダ ーに入れたときの容量を100としたとき,

2時間後において50以上の容量を保持できるものである,

11−B 請求項9又は10に記載の調製方法。

サ 本件特許発明12

12−A 含 水粘性組成物がアルギ ン酸ナトリウムを2重量%以上含むも

のである,

12−B 請求項9乃至11のいずれかに記載の調製方法 。

シ 本件特許発明13

13−A 含 有粘性組成物が水を87重量%以上含むものである,

13−B 請求項9乃至12のいずれかに記載の調製方法 。

(4) 原告と被告サンクスとの間における従前からの経緯(甲3の1・2)

ア 原告から被告サンクスに対する製造委託

原告は,平成11年9月から,本件各特許発明実施品である製品(以

下「原告製品」という。)を製造販売していた。

原告は,被告サンクスに対し,平成13年10月20日から原告製品の

10
製造を委託した。

イ 原告と被告サンクスとの間におけ る前件訴訟

原告は,被告サンクスが,原告に対し,前記製造委託契約を解除する旨

の意思表示をした後,原告に無断で,原告製品の類似品である別紙被告製

品目録記載1から3までの製品(以下,同目録記載の製品を番号順に「被

告製品1」な ど といい, 併 せて「被告各製品」という。)を製造販売する

などしたとして,平成16年7月1日,前記製造委託契約の債務不履行

基づき,上記各製品の製造販売の差止め及び 損害賠償を求める訴え(大阪

地方裁判所平成16年 (ワ)第7539号損害 賠償等請求事件)を提 起した。

同事件では,平成18年4月27日,被告サンクスに対し,上記各製品の

製造販売の差止め及び 損 害 賠償 として200万円の支払を 命 じる判決が

され,同年5月12日,確定した。なお,上記損害賠償額は,前記製造委

託契約 の 解除 による 逸失利益 及び平成15年10月こ ろ から平成16年

5月 末 までの上記被告各製品の販売による 損 害を 算定 することが 困難 で

あっ たことから, 民 事訴訟 法 248 条 を 適 用して 算定さ れたもので あ る。

(5) 被告らの行為

ア 被告サンクス

被告サンクスは,被告製品1から6まで及び8を製造し,被告カルゥに

販売した(被告製品6につき乙15)。

イ 被告サレア

被告サレアは,被告製品4から6までを製造し,これらの製品と被告製

品7−1を被告カルゥに販売した。

ウ 被告カルゥ

被告カルゥは,被告製品5から12までを販売した(被告カルゥが,被

告製品4及び13を販売したことについては,後記のとおり争いが ある。)

エ 被告各製品

11
被告各製品は,いずれも,ジェル剤と顆粒剤とからなるキットで あり,

容器でジェル剤と顆粒剤を混ぜ合わせ,肌 に 直接塗布して使用する化粧料

である(甲10,12の各1・2,甲13,15,16,甲17の1〜8,

甲18,甲19,20の各1〜3,甲21 〜 23の各1・2,甲 28の1

〜3,弁論の全趣旨)。

また,被告各製品は,いずれも,ジェル 剤 として水,アルギン 酸ナトリ

ウム及び炭酸水素ナ トリウムを使用し,顆粒剤として,コハク酸 又はアス

コルビン酸を使用している(甲9,27,弁論の全趣旨)。

2 原告の請求

原告は,被告らの行 為について,本件特許 発明1から5までに 関 する直接侵

害及び同7から13までに関する特許法101条1号又は2号の間 接侵害(被

告製品13については本件各特許発明1から5までに関する直接 侵害と本件特

許発明7及び8に関する間接侵害)が成立するとして,以下の請求をしている。

(1) 被告サンクスに対する請求

ア 本件特許権に基づ く被告製品1から6まで,8及び14の各製品の製造

販売等の差止

イ 本件特許権に基づ く前項記載の各製品の廃棄

ウ 特許法65条1項に基づく一部請求として1400万円の補 償 金及びこ

れに対する本件特許が 登録された日の翌日から支払済みまで民法所定の年

5分の割合による遅延損害金の支払(ただし,被告カルゥと連帯して)

(2) 被告サレアに対する請求

ア 本件特許権に基づ く被告製品4から7−1まで及び14の各製品の製造

販売等の差止

イ 本件特許権に基づ く前項記載の各製品の廃棄

ウ 特許法65条1項に基づく2億6320万2450円の補償 金及びこれ

に対する本件特許が 登 録された日の翌日から支払済みまで民法所定 の年5

12
分の割合による遅延損 害金の支払(ただし,被告カルゥと連帯して。 お,


後記第3の8【原告の主張】(2)エのとお り,原告は,上記補償 金の額に

ついて,主位的には1億7113万2900円,予備的には985万03

79円であると主張するに至っているものの,請求の減縮はしていない。)

(3) 被告カルゥに対する請求

ア 本件特許権に基づ く被告製品4から14までの各製品の製造販売等の差

止め

イ 本件特許権に基づ く前項記載の各製品の廃棄

ウ 特許法65条1項に基づく一部請求として3億円の補償金及びこれに対

する本件特許が登録 さ れた日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の

割合による遅延損害金の支払(ただし,前記(1)ウ及び(2)ウの各限度

でその余の被告らと連帯して)

不法行為に 基づく1億円の損害賠償及びこれに対する本件訴状送達の日

の 翌 日から支払済みまで 民法所定 の年5分の割合による 遅延損 害金の支

払(なお,後記第3の9【原告の主張】エのとおり,原告は,上記 損害賠

償の額について,5726万7840円であ ると主張するに至っているも

のの,請求の減縮はしていない。)

3 争点

(1) 被告各製品は,本件各特許発明技術的範囲 に属するか (争 点1)

(2) 本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものであるか

ア 本件各特許発明 は,当業者が,本件特許の優先日前に頒布さ れた特公平

7−8779号公報(以下「乙2公報」という。)に記載された発明(以下

「乙2発明」という。 に基づいて容易に発明 することができたものである


か (争点 2−1)

イ 本件各特許発明 は,当業者が,本件特許の優先日前に頒布さ れた特開昭

60−215606号 公報(以下「 乙3公報 」という。)に記載さ れた発明

13
(以下「乙3発明」という。 基づいて容易に発明することができたもの
)に

であるか (争点 2−2)

ウ 本件特許には,実 施可能要件又はサポート要件の違反があるか

(争点2−3)

エ 本件特許には,明確性要件の違反があるか (争点 2−4)

オ 本件特許に係る補 正は,違法なものであ るか (争点 2−5)

(3) 被告カルゥは,被告製品4及び13を販売したか (争 点3)

(4) 補償金請求の可否 (争 点4)

(5) 損害賠償請求の可否 (争 点5)

第3 争点に関する当事者の主張

1 争点1(被告各製品は,本件各特許発明技術的範囲に属するか)について

【原告の主張】

以下のとおり,被告各製品は,本件各特許発明の各構成要件をいずれも充足

するから,本件各特許 発明の技術的範囲に属 するものである。

(1) 被告各製品の構成

ア 被告各製品は,次 の構成からなるもので ある。

a 脂肪代謝の活性化,たるみ改善,リフトアップ,小顔等の部分 痩せ効

果 を有する ジェ ル 状 化粧 料 として 使 用 さ れる 二酸 化 炭素 を 含 有する

ジェルを得るためのキットであって,

b 炭 酸水素ナ トリウ ム 及びアル ギ ン 酸ナ トリウ ム を 含 有する ジェ ル 剤

と,コハク酸,リンゴ酸又はアスコルビン酸 を含む顆粒剤の組み合 わせ

からなり,

c ジェル剤と顆粒剤 を混ぜ合わせたジェルが,二酸化炭素を気泡状で保

持できる,

d ジェル剤の中で炭酸塩とコハク酸,リン ゴ酸又はアスコルビン 酸を反

応さ せることにより 気泡状 の 二酸 化 炭素 を 含 有する ジェ ルを 得 ること

14
ができるキット。

イ 被告各製品の有する他の構成

被告サンクスは,当 初,原告のOEM製品を製造していたもので あり,

その後も,大きな成分 比率の変更はなされていないことに鑑みると,被告

各製品が以下の構成を 具備するものであることは明らかである。

e 前記アdの反応によって発生する二酸化 炭素の含有量は,ジェ ル剤の

5〜90容量%の範囲 に収まる。

f ジ ェ ル中で 炭酸水素ナ トリウ ム と 酸 を 反応さ せた 後 にメス シ リン

ダーに入れたときの容量を100としたとき,2時間後において50以

上の容量を保持できる。

g ジェル剤は,アル ギン酸ナトリウムを2 重量%以上含む。

h ジェル剤は,水を87重量%以上含む。

(2) 対比

ア 本件特許発明

前記(1)アで指摘 した被告各製品の構成は,次のとおり,本件特許発明

1の各構成要件に相 当するから,被告各製品は,いずれも,本件特許発明

1の各構成要件を充足 する。

構成aは,構成要件1−Aに相当する。

構成bは,構成要件1−Bに相当する。

構成cは,構成要件1−Cに相当する。

構成dは,構成要件1−Dに相当する。

イ 本件特許発明2〜 5

前記(1)イで指摘 した被告各製品の構成は,次のとおり,本件特許発明

2から5までの各構 成要件に相当するから,被告各製品は,本件特許発明

2から5までの各構成要件を充足する。

構成eは,構成要件2−Aに相当するから,被告各製品は,本件特許発

15
明2の各構成要件を充足する。

構成fは,構成要件3−Aに相当するから,被告各製品は,本件特許発

明3の各構成要件を充足する。

構成gは,構成要件4−Aに相当するから,被告各製品は,本件特許発

明4の各構成要件を充足する。

構成hは,構成要件5−Aに相当するから,被告各製品は,本件特許発

明5の各構成要件を充足する。

ウ 本件特許発明

前記アのとおり,被告各製品は,ジェル 剤 と顆粒剤のキットからなる化

粧料であり,本件特許 発明1の各構成要件を 充足する。被告各製品を購入

した需要者は,上記2 剤を混ぜ合わせて,自らジェル状の「部分 肥満改善

用化粧料」を生成することが予定されてお り,それ以外の用途は 考 えられ

ない。また,上記2 剤 のキットは本件特許 発明7の課題解決のために不可

欠なものであり,被告らは,被告各製品が,
「部分肥満改善用化粧 料」を生

成するために使用されることを認識している。

したがって,被告各製品を製造,販売する行為は,本件特許発明 7に係

る特許権の間接侵害に当たる。

エ 本件特許発明

前記ウのとおり,被告各製品の製造,販売は,本件特許発明7に 係る特

許権の間接侵害に当たるところ,被告各製品は,主に顔の部分肥満改善に

使用されているので,被告各製品を製造,販売する行為は,本件特許発明

8に係る特許権の間接 侵害に当たる。

オ 本件特許発明

前記(1)ア,(2)アのとおり,被告各製品は,ジェル剤と顆粒剤 のキッ

トからなる化粧料で あ り,本件特許発明1の各構成要件を充足するもので

あるところ,本件特許 発明9は,本件特許 発明1の2剤を使用して 二酸化

16
炭素含有粘性組成物を 調製する方法を内容としている。

そして,被告各製品は,それを購入した 需 要者によって,上記2 剤を混

ぜ合わせて,自ら二酸 化炭素を含んだジェル 状の「部分肥満改善用化粧料」

を調製することが予定されており,それ以外の用途は考えられない。また,

上記2剤のキットは,本件特許発明9の課題解決のために不可欠 なもので

あり,被告らは,被告各製品が「部分肥満改善用化粧料」を調製するため

に使用されることを認識している。

したがって,被告各製品を製造,販売する行為は,本件特許発明 9に係

る特許権の間接侵害に当たる。

カ 本件特許発明10 〜13

前記(1)イで指摘 した被告各製品の構成は,次のとおり,本件特許発明

10〜13までの各構 成要件に相当する。

構成eは,構成要件10−Aに相当する。

構成fは,構成要件11−Aに相当する。

構成gは,構成要件12−Aに相当する。

構成hは,構成要件13−Aに相当する。

前記オのとおり,被告各製品を製造,販売する行為は,本件特許 発明9

に係る特許権の間接 侵害に当たるところ,上記のとおり,被告各製品は,

本件特許発明10から13までの構成要件 A を充足するので,被告各製品

を製造,販売する行 為 は,本件特許発明10 〜13までの各発明 に 係る特

許権の間接侵害にも当たる。

(3) 上記各構成要件の「部分肥満改善」について

ア 「部分肥満改善」の意義

「部分肥満改善」とは, 肥満を部分的に改善すること」をいい,
「 「部分

肥満改善用化粧料」とは,特定の部位の肥満 を改善する効果を有する化粧

料 をいう。 例 え ば ,当 該 化粧 料 を 顔 に 使 用すれ ば , 顔 の 肥満 が 解 消 さ れ,

17
いわゆる「小顔」効果 が得られることになり,腕や足などの部位に 使用す

れば,その部位の肥満 を改善させる効果が得 られる。

イ 被告各製品の「部分肥満改善用化粧料」 該当性

被告各製品のパンフ レットやその他の広告宣伝には,
「部分痩せ」 小顔」


「脂肪代謝の活性化」などの効果が記載されている。

「部分痩せ」が「部分肥満改善」と同義で あることは明らかであ り, 小


顔」も顔の部分痩 せ効果を意味する。 脂肪 代謝の活性化」は,肥満を改善


させるメカニズムをそのまま表したものであ る。

したがって,被告各製品は,いずれも「部分肥満改善用化粧料 」に当た

る。

【被告らの主張】

被告各製品は,いずれも「部分肥満改善」効果を奏するものではなく,少な

くとも構成要件1− A ,7−B,8−A及び9−Aを充足するものではないか

ら,本件各特許発明技術的範囲に属するものではない。

(1) 【原告の主張】(1)及び(2)は否認ないし争う。

(2) 上記各構成要件の「部分肥満改善」について

ア 「部分肥満改善」の意義

本件明細書の記載によれば, 回の使用ですぐ効果が得られる」
「1 ものは

「肌質改善等の美容 目的」のものとされて お り,本件各特許発明 の「部分

肥満改善」は「1日1 回の使用を1か月以上」という比較的長期 間にわた

り継続することにより 得られる効果とされている。

イ 被告各製品の「部分肥満改善用化粧料」 該当性

被告各製品は,
「1日1回の使用を1か月以上」という比較的長期間にわ

たり使用を継続することを必要とするものではないから,肌質 改善 等の美


容目的」に用いられるものである。

そもそも被告各製品は,脂肪代謝の活性 化,
「 たるみ改善, フ トア ップ,


18
小顔,部分痩せ」の 効果を奏するものではないから,
「部分肥満改善用化粧

料」には当たらない。

2 争点2−1(本件各特許発明は,当業者が, 乙2発明に基づいて 容易に発明

することができたものであるか)について

【被告らの主張】

以下のとおり,本件各特許発明は,当業者が,乙2発明に基づいて 容易に発

明することができたものである。

(1) 乙2公報に記載された 発明

乙2公報には,以下の構成要件からなる 発明(乙2発明)が記載 されてい

る。

A 用時混 合型発泡性化粧料であ り,2剤型である。

B−1 水溶性高分 子 及び/又は粘土鉱物 と 炭酸塩とを常温固形 の ポリエチ

レングリコールで被覆 した固形物を第2剤とする。

B−2 酸性物質を水 に溶解して得られる水 溶液を第 1 剤とする。

D 炭酸ガスの 泡 が徐々に発生すると 共 に水溶性高分子及び / 又は粘土

鉱物の粘性によって 安 定的な泡を生成し, 炭酸ガスの保留性を高 める

ことができる。

(2) 乙2発明と本件各特許 発明との対比

ア 一致点

乙2発明と本件各特許発明は,いずれも 二酸化炭素含有粘性組 成 物を得

るためのものである。

乙2発明の「発泡性 化粧料」は「炭酸ガ スによる血行促進作用によって

皮膚を賦活化させる」ものであるから,本件各特許発明の「部分 肥満改善

用化粧料」と実質的に同一のものである。

本件各特許発明のアルギン酸ナトリウム は,乙2発明の水溶性 高 分子及

び/又は粘土鉱物に含 まれる。

19
イ 相違点

乙2発明が「水溶液 」と「常温固型のポ リ エチレングリコールで被覆し

た固型物」とを組み合 わせるものであるのに対し,本件各特許発明 は「含

水粘性組成物」と「 顆粒(細粒,粉末)剤 」とを組み合わせるものである。

(3) 容易想到性

乙2発明と本件各特許発明の実質的な作用効果は同じであ り,前記(2)イ

の相違点は,本件各特許発明が乙2発明の 作 用効果の持続時間を 延 長したこ

とによるものであって,単なる設計事項にす ぎない。

【原告の主張】

以下のとおり,本件各特許発明は,当業者が,乙2発明に基づいて 容易に発

明することができたものではない。

(1) 乙2発明と本件各特許 発明との対比

乙2発明は,酸を 含む水溶液(第1剤, 非ゲル状)と炭酸塩及び 水溶性高

分子(増粘剤)を含む 固型物(第2剤,非ゲ ル状)を組み合わせるものであ

る。これによれば, 酸 を含む水と炭酸塩及び 増粘剤を含む顆粒が 混 合された

後,増粘剤が増粘するまでの間に発生した 二酸化炭素が空気中に 拡散される

ことになり,気泡状の 二酸化炭素を十分に保持できるものではない。

これに対し,本件各特許発明は, 酸を含む顆粒」と, 炭酸塩と 水溶性高
「 「

分子(アルギン酸ナ トリウム等の増粘剤)と 水を含む含水粘性組 成 物(含水

ゲル) 組み合わせるものである。含水粘性組成物中において,炭酸塩と酸
」を

を反応させて二酸化 炭素を発生させるもので あるから,気泡状の 二酸化炭素

を保持する量,ひいては二酸化炭素の皮下へ の供給量が大きいものである。

(2) 容易想到性

乙2発明は,酸を含む水溶液(第1剤,非ゲ ル状)を炭酸塩及び 水 溶性高

分子(増粘剤)を含む 固型物(第2剤,非ゲ ル状)と組み合わせることを不

可欠の構成とするものである。したがって, 乙2発明の第1剤を本件各特許

20
発明の「酸を含む顆粒 」に,第2剤を本件各特許発明の「炭酸塩 と 水溶性高

分子(増粘剤)と水を 含む含水粘性組成物( 含水ゲル)」に,それぞれ変更

るには阻害要因がある。

そもそも乙2発明にお いて,炭酸塩及びアル ギン酸ナトリウムを含 有する


含水粘性組成物」と「 酸を含む顆粒」の組 合せという本件各特許 発明の構成

を採用する動機づけは 皆無である。

乙2公報には,炭酸 ガ スに血行促進作用の あ ることが記載されているにす

ぎず,部分肥満改善 の用途に使用できることを示唆する記載もない。血行促

進によって皮膚に一 時 的な恩恵をもたらすことは予測できても,部分肥満を

劇的に改善できることまでは到底予測することができるものではない。

以上のとおり,本件各特許発明の構成は乙 2 発明から導き出されるもので

はないし,本件各特許 発明の効果も乙2発明 から予測することができる効果

を遙かに超える格別顕 著なものである。

3 争点2−2(本件各特許発明は,当業者が, 乙3発明に基づいて 容易に発明

することができたものであるか)について

【被告らの主張】

以下のとおり,本件各特許発明は,当業 者が,乙3発明に基づ いて容易に発

明することができたものである。

(1) 乙3発明の内容

乙3公報の製造例 4には,以下の構成要件からなる発明(乙3 発明)が記

載されている。

A 炭酸ガス(二酸 化 炭素ガス)による血 行 促進作用を有するパ ッ ク剤の発

明である。当該パッ ク 剤は,ポリビニルアル コール,カルボキシ メチルセ

ルロース,各種天然ガ ム質等の水性粘性物 質 を主剤とし,これに 種々の添

加成分を配合したものである。造膜過程に お いて皮膚に刺激を与 え,血行

を促進すると共に, 皮膚表面の汚れを吸着 して清浄する皮膜化粧 料 の一つ

21
である。

B 炭酸塩と酸を組み合わせて二酸化炭素を 発生させるものである。

C 炭酸塩及び ポリビニルアルコールとカルボキシメチルセ ルロースナトリ

ウムを含む含水粘性組 成物である。

D 含水粘性組 成物中で炭酸塩と酸を 反応させることにより,気泡状の二酸

化炭素を含有する二酸 化炭素含有粘性組成物 を得ることができる。

(2) 乙3発明と本件各特許 発明との対比

ア 本件特許発明1及び9との対比

乙3公報には,水性粘性物質,増粘剤及びポ リビニルアルコールとカル

ボキシメチルセルロースナトリウムが記載さ れているものの,本件特許発

明1及び9のアルギン 酸ナトリウムは明示さ れていない。

乙3公報には,本件特許発明1及び9の「顆粒(細粒,粉末)剤」に相

当する記載及び部分肥満改善用である旨の記載がない。

イ 本件特許発明2及び10との対比

乙 3 公報 には, 二酸 化 炭素 を5 〜 90 容量%含 有する」に 相 当する記


載がない。

ウ 本件特許発明3及び11との対比

乙3公報には,メスシリンダーに 入れたときの容量を100としたとき,


2 時 間 後 に お いて50以上の 容量 を 保持 できる」に 相 当する記載がない。

エ 本件特許発明4及び12との対比

乙3公報には,アルギ ン酸ナトリウムの含有 量に関する記載がない。

オ 本件特許発明5及び13との対比

乙3公報には,水がど の程度含まれるかに関 する記載がない。

カ 本件特許発明7及び8との対比

前記アのと おり, 3公報には,
乙 部分肥満改善用である旨の記載がない。

(3) 容易想到性

22
ア 本件特許発明1及び9

乙3公報の水性粘性物 質又は増粘剤である「 ポリビニルアルコールとカ

ルボ キシ メチル セ ル ロ ース ナ トリウ ム 」に代えて, 他 の 公 知 文 献 ( 乙 2,

乙4〜6)に記載された「アルギン酸ナトリウム」を採用することは容易

である。

前記2【被告の主張】のとおり, 乙2公報には「常温固型のポリエチレ

ングリコールで被覆した固型物」が記載されており,これは本件特許発明

1及び9の顆粒(細粒 ,粉末)剤に相当する。したがって,この乙 2発明

の構成を乙3発明の構 成に採用することも容易である。

乙 3 公報 には,「本 パ ッ ク 剤 は 使 用 時 内 容物 を 吐 出 さ せて被 パ ッ ク部 位

に 塗布 する。」という記載が あ り,これは「部分 肥満改善 用化粧 料 」に 相

当する記載である。

イ 本件特許発明2及び10

本件特許発明2及び10の数値は何らの限定 にもなっておらず,せいぜ

い 二酸 化 炭素含 有 量 を 好 適範囲 に 保つ ということを 意 味 するものにす ぎ

ない。したがって,当 業者であれば容易に想到し得る構成である。

ウ 本件特許発明3及び11

乙2公報にはガス保留試験が記載されており,当該試験においてシ リン

ダー(直径5p,高さ 50p)に入れた泡の 高さを測定すると25 p以上

であるとされている。これを容積に変換すると,490.6m?以上であり,

容積比率は50以上で ある。

当該構成を乙3発明の 構成に採用することも 容易である。

エ 本件特許発明4及び12

含 水粘性組 成 物 の 粘性 又は 発泡性 を 考 慮 して 含 有 量 を ど の 程 度にする

かは,当業者にとって 適宜設定することが容易な事項である。

オ 本件特許発明5及び13

23
本件特許出 願に係る当初明細書では,含水粘性組成物が 水を87重量%

以上含むことによる臨界的意義は明示されて おらず,単に本件明細書の実

施例20の「89.6 重量部」を基準に定められたものにすぎない。

カ 本件特許発明7及び8

前記アのと おり,乙3公報には,
「部分肥満改善用化粧 料」に相当する記

載がある。

【原告の主張】

以下のとおり,本件各特許発明は,当 業者が,乙3発明に基づいて容易に発

明することができたものではない。

(1)乙3発明の内容

乙3公報には,炭酸 ガス又は炭酸ガス発 生 物質を含有するパッ ク 剤が記載

されている。製造例 4は,ゲル化剤として ポ リビニルアルコール及びカルボ

キシメチルセルロース ナトリウムを含むとともに炭酸水素ナトリウ ムを含む

A剤と,ゲル化剤としてポリビニルアルコ ールを含むとともに酒石 酸を含む

B剤とを,使用時に混 合して使用するパック 剤である(乙3発明)。

(2)乙3発明と本件各特許 発明との対比

本件各特許発明の 含水粘性組成物(含水 ゲ ル)はアルギン酸ナ トリウムを

含むものであるのに対し,乙3公報には,アルギン酸ナトリウム を 配合する

ことに関する記載も示 唆もない。

(3) 容易想到性

ア 動機付けや示唆の 不存在

前記(2)のとおり, 乙3公報には,アル ギ ン酸ナトリウムを配 合するこ

とに関する記載も示唆 もない。

イ 阻害要因

本件各特許発明に 含 まれるアルギン酸ナ トリウムは,二酸化炭素 を気泡

状で保持することができる粘性を備えるものの,造膜成分としては機能し

24
ないものである。皮膚 に塗布しても乾燥して 皮膜が形成されることはなく,

粘性を有する状態が 保持され,発生した二酸 化炭素を効率的に維 持 する状

態を保ち,持続的に 皮膚に浸透させることにより,部分肥満を改善 するこ

とができるものである。

これに対し,乙3 発明は,皮膚上で乾燥 さ せて皮膜を形成させる パック

剤であり, 膜過 程に おいて皮膚に刺激を与 えて血行を促進するとともに,


皮膚表面の汚れを吸着 して清浄する化粧料 に 係る発明である。発 生した二

酸化炭素を効率的に 維 持し,皮膚に対する 浸透量を増大させることを目的

とするものではなく,本件各特許発明と乙3 発明とは課題が全く異 なる。

以上によれば,乙 3 発明にアルギン酸ナ トリウムを採用するには 阻害要

因があるといえる。

ウ 「部分肥満改善用化粧料」という用途に関する記載も示 唆もないこと

乙 3 公報 及びその 他 の被告らが 引 用する 刊 行 物 ( 乙 2,4 〜 6)には,

二酸 化 炭素 に 血 行 促進作 用が あ ること又は 発 生した 二酸 化 炭素 により 皮

膚に物理的刺激を与えられることが記載されている。しかしながら,部分

肥満を改善する効果に ついては一切記載がなく,示唆もない。

エ 本件特許発明2から5まで及び7から13まで

本件特許発明2から5まで及び7から13までは,本件特許発明 1に従

属 する 発明 又は本件特許 発明 1と実 質 的に同一の 発明 若しくはこれに 従

属する発明である。

したがって,これらの発明についても,前記アないしウと同様の理由に

より,当業者が容易に 発明することができたものではない。

4 争点2−3(本件特許には, 施可能要件又はサポート要件の違反 があるか)


について

【被告らの主張】

以下のとおり,本件特許には, 施可能要件又はサポート要件の違反がある。


25
(1) 本件明細書の記載

本件明細書には,本件各特許発明による部分肥満改善効果につ いて以下の

試験例が記載されている。

ア 試験例8

「41歳男性。ふっくらとした頬と太いウエ ストを痩せさせたいと 希望し,

実施例8の組成物を1日1回15分間右頬に30g, 部に100g 塗布し


た。2ヶ月後に右頬が5名の評価者全員により明らかに小さくなっ たと判

断された。腹部はウエ ストが6p減少した。」

イ 試験例9

「37歳女性。ふっくらとした頬と荒れ肌, 肌のくすみに悩み,種々の化

粧品を試したが効果が 得られなかった。実施 例20の組成物50g を1日

1回10分間顔全体に 塗布したところ,1回 目の塗布で肌のくすみが消え

て白くなり,きめ細かい肌になった。2週間 後には3名の評価者全 員によ

り,顔がちいさくなっ たと判断された。」

ウ 試験例13

「36歳女性。二の腕 の太さを気にしていたため,実施例18の組 成物3

0g を左の二の腕に塗布し,食品包装用フィルム(製品名サランラ ップ,

旭化成社製)をその上からまいて6時間放置 したところ,二の腕の 周囲長

が2p減少した。」

(2) 実施可能要件又はサポ ート要件の違反があること

ア 二酸化炭素の作 用により前記(1)の試験例のような効果を得 られないこ

とは,一般常識及び医 学的見地から明らかで ある。

したがって,本件各特許発明に係る請求項の記載は,実施可能性 が示さ

れておらず(実施可能 要件違反) その作用 効果も発明の詳細な説明の記載


によって裏付けられていない(サポート要件 違反)。

イ 本件各特許 発明は,含水粘性組成 物と酸を含む顆粒(細粒,粉末)を組

26
み合わせたものであるところ,前記(1)の各 試験例で用いられた組 成物は,

いずれもクエン酸であ る。

酸を含む顆粒剤と酸 とは全く別物であり,本件各特許発明に係る請求項

の記載は,いずれも前記(1)の各試験例によ って裏付けられているとはい

えない(サポート要件 違反)。

【原告の主張】

以下のとおり,本件特許に実施可能要件又はサポート要件の 違反はない。

(1) 追加試験結果

前記 被告らの主張】
【 (1)の本件明細書の記載に加え, 験成績証 明書 甲
実 (

32)によれば,本件特許に係る二酸化炭素含有粘性組成物に部分 肥満改善

の効果があることは 明 らかである。なお,上記実験成績証明書は,平成22

年9月6日付けで特許 庁に提出した意見書 に記載された実験結果 をまとめた

ものである。

(2) 実施可能要件又はサポ ート要件の違反はないこと

ア 血中の二酸化炭素 濃度が高まると,酸素 がヘモグロビンから 解 離しやす

くなること(ボーア 効果)が知られており, 二酸化炭素による生理機能へ

の影響は医学的見地 からも明らかである。本件特許出願前にボーア 効果は

知られていたものの,ボーア効果によって部分肥満を改善できることは明

らかにされておらず, 多量の二酸化炭素を 経皮吸収させる技術も 知 られて

いなかった。このような状況の中で,本件各特許発明は,気泡状 の 二酸化

炭素を含水粘性組成 物 中に封じ込めることにより多量の二酸化炭素 を皮下

組織に供給することで,部分肥満が改善 できることを確認したものである。

これらのことは,本件明細書に記載された前記【被告らの主張】 (1)の

各試験例及び前記(1)の追加試験結果によ っ て十分に裏付けられて おり,

当業者が十分に認識することができる事項で ある。

したがって,本件特許に実施可能要件又はサポート要件の違反はない。

27
イ 本件各特許 発明の「酸を含む顆粒 (細粒,粉末)剤」は,酸と他の成分

から構成されるものに限定はされず,酸のみから構成されるものも当然に

含まれる。

周 知 のと お り,ク エ ン 酸 は 常温 に お いて 粉末状 の 酸 で あ るから, 酸 を


含む粉末剤」に当たるのであり,前記【被告らの主張】(2)イには理由が

ない。

5 争点2−4(本件特許には,明確性要件の違反があるか)について

【被告らの主張】

「部分肥満改善」という概念は,一般に用いられているものではない。

本件明細書の記載によれば,
「部分肥満改善」とは「肥満を部分的に改善する

こと」をいうもので あ るが,前記4【被告らの主張】(2)アのと お り,一般常

識又は医学的見地からして部分的に肥満が改善されることはあり得 ない。

したがって,本件特許は,一般常識及び医 学的見地からして理 解 しがたい用

途限定を付したもので あるから,明確性要件に違反する。

【原告の主張】

エステや化粧料の分野 において,
「部分肥満改善」とは部分痩せを 意味する単

語として一般に認識さ れている。

本件明細書では, 顔,脚,腕,腹部,脇腹,背中,首,顎などの部分肥満を


改善できる」「部分 痩 せ」等の文言を用いて「部分肥満改善」の 意義を説明し


ており,上記の一般的理解と何ら異なるものではない。

6 争点2−5(本件特許に係る補正は,違法なものであるか)について

【被告らの主張】

以下のとおり,本件特許に係る補正は,特許 法17条の2第3項に 違反する

違法なものである。

(1) 平成19年2月6日付 け補正

当該補正は,請求項1(本件特許発明1)に「部分肥満改善用化粧料」の

28
文言を追加したもので ある。

本件特許出願に係 る当初の明細書には, 痩身化粧料」
「 「部分肥満に有効な

製剤」の記載はあるものの,「部分肥満改善 用化粧料」という記載はない。

したがって,上記補 正は明細書に記載した事項の範囲外のもので ある。

(2) 平成22年9月6日付 け補正

当該補正は,請求項1(本件特許発明1)に「酸及び増粘剤を含む顆粒(細

粒,粉末)剤」の文言を追加したものである。

上記補正は,前記4 【被告らの主張】(1)の試験例に係る記載を 根拠にす

るものであるが,前記のとおり,これらの 試験例で用いられたのはクエン酸

であり, 酸を含む顆粒(細粒,粉末)剤」ではない。


したがって,上記補 正も明細書に記載した事項の範囲外のもので ある。

【原告の主張】

以下のとおり,本件特許に係る補正は,特許 法17条の2第3項に 違反する

ものではない。

(1) 平成19年2月6日付 け補正

「製剤」は化粧料と医薬の双方を含む語で あり,「部分肥満に有 効な製剤」

と「部分肥満改善用化粧料」が別のもので あ るとする被告らの主 張 は誤りで

ある。

また,本件特許出 願 に係る当初明細書には, 所望する部位に使 用すれば,


その部 位 を 痩 せ さ せられる 二酸 化 炭素含 有 粘性組 成 物 」 「 該 組 成 物 が, ???


部分肥満解消作用???なども有することを 発 見して本発明を完成した」「顔,


脚,腕,腹部,背中, 首,顎などの部分肥満 を改善できる項27記載の痩身

化粧料」「化粧料としては,部分痩せ???効果などがあり」「本 発明の組成物
, ,

は,???所望する部位 に使用すれば,その部 位を痩せさせられる。」等の記載

がある。

これらの記載からしても,上記補正は明細書に記載した事項の 範囲外のも

29
のではない。

(2) 平成22年9月6日付 け補正

本件特許出願に係 る当初の請求の範囲には「炭酸塩含有含水粘性組成物と

酸の顆粒(細粒,粉末 )剤を含む項6記載の キット」等の記載があ るが, 酸


の顆粒(細粒,粉末 ) 剤」と「酸を含む顆粒 (細粒,粉末)剤とは実質的に

同一の概念であるから,何ら新規事項を追加 してはいない。

したがって,上記補 正も明細書に記載した事項の範囲内のもので ある。

7 争点3(被告カルゥは,被告製品4及び13を販売したか)について

【原告の主張】

被告カルゥは,株式会社グレース・アイコ に対し,被告製品4及び13を販

売していた。

【被告カルゥの主張】

否認する。

8 争点4(補償金請求の 可否)について

【原告の主張】

以下のとおり,被告らは,被告各製品の製造販売について特許法65条に基

づく補償金支払義務を負う。

(1) 被告サンクス

ア 本件各特許発明に 関する悪意

被告サンクスは,前提事実(4)のとおり,原告から本件各特許 発明に関

する製品の製造委託 を 受けた平成13年10月20日ころには,本件各特

許発明の内容を知っていた。

イ 上記製造委託契約解除後,本件特許登録前における販売数量及び売上高

(ア) 被告製品1

販売数量1万2000回分

売上高89万7000円

30
(イ) 被告製品2

販売数量1万0908回分

売上高98万6265円

(ウ) 被告製品3

販売数量7700回 分

売上高187万3100円

(エ) 被告製品4

販売数量194万9092回分

売上高1億6061万9026円

(オ) 被告製品6

販売数量19万2813回分

売上高1501万4225円

(カ) 被告製品8

販売数量2万3400回分

売上高200万2000円

実施料

化学分野の特許に関 する実施料率の平均は 約5.3%であり,判決におい

て認定された実施料率 の平均は約6.1%( 最大値は約20%)で ある。

後記9のとおり,被告各製品は9割以上の 高い利益率の製品で あ るとこ

ろ,利益率に対する本件特許の寄与は大きい。

原告は,本件特許権を侵害する製品を販売していた被告ら以外の第三者

との間で,実施料率 に 換算すると11%に 相 当する支払を受ける内 容の和

解をした。

これらの事情からすれば,実施料率は10 %が相当である。

エ 補償金額

(ア) 主位的主張

31
被告各製品の最終 小 売価格は1回分当たり平均約1500円で あ ると

ころ,実施料はその10%である1回当たり150円が相当であ る(な

お,このように計算 した場合,被告サレア及び被告カルゥとの関係 では

重複する損害の限度で連帯債務となる。以下,被告サレア及び被告カルゥ

に対する請求についても同様である。。


そうすると,補償 金 額は,前記イの販売 数 量合計219万5913回

分に150円を乗じた3億2938万6950円となる。

[計 算 式 ]

2,195,913×150=329,386,950

(イ) 予備的主張

仮に前記(ア)の主 張 が採用されないとしても,実施料は,売上 高 の1

0%が相当である。

そうすると,補償 金 額は,前記イの各売上 高の10%を合計した18

13万9160円となる。

(2) 被告サレア

ア 本件各特許発明に 関する悪意

被告サレアは,被告サンクスの担当者で あった P1 が設 立した法人

であり,平成18年4月12日に設立された当初から本件各特許 発明の内

容を知っていた。

イ 被告サレア設立後 ,本件特許登録前における販売数量及び売上 高

(ア) 被告製品4

販売数量 58万0886回分

売上高5518万4196円

(イ) 被告製品5及び6

販売数量 合計48万8000回 分

売上高合 計3255万2000円

32
(ウ) 被告製品7−1

販売数量 3万回分

売上高201万円

(エ) 被告製品9

販売数量 4万2000回分

売上高875万7600円

実施料

前記(1)ウと同じ。

エ 補償金額

(ア) 主位的主張

実施料は,被告各製品の最終小 売価格の10%である1回当たり15

0円が相当である。

そうすると,補償金額は,前記イの販売数量合計114万0886回

分に150円を乗じた1億7113万2900円となる。

[計 算 式 ]

1,140,886×150=171,132,900

(イ) 予備的主張

仮に前記(ア)の主張が採用されないとしても,実施料 は,売上高の1

0%が相当である。

そうすると,補 償金額は,前記アの各売上高の10%を合 計 した98

5万0379円となる。

(3) 被告カルゥ

ア 本件各特許発明に 関する悪意

原告は,被告カルゥに対し,平成16年12月21日付けで,本件各特

許発明の内容を記載した書面を提示して警告をした。

イ 上記警告後,本件特許登録前における販売数量及び売上高

33
(ア) 被告製品4及び13

販売数量 合計1080万6060回分

売上高合 計27億0151万5000円

(イ) 被告製品6から12まで

販売数量 合計50万5320回 分

売上高合 計1億2606万8838円

実施料

前記(1)ウと同じ。

エ 補償金額

(ア) 主位的主張

実施料は,被告各製品の最終小 売価格の10%である1回当たり15

0円が相当である。

そうすると,補 償金額は,前記イの販売数量合計1131万1380

回分に150円を乗じた16億9670万7000円が相当となる。

[計 算 式 ]

11,311,380×150=1,696,707,000

(イ) 予備的主張

仮に前記(ア)の主張が採用されないとしても,実施料 は,売上高の1

0%が相当である。

そうすると,補償金額 は,前記イの各売上高 の10%を合計した2億

8275万8383円となる。

【被告らの主張】

前記2及び3【被告らの主張】のとおり,本件特許に先行する同 様 の特許が

成立しており,被告各製品以外にも原告製品と類似する製品が安価 かつ多量に

広告販売されている。

このような市場環境等からすれば,10%の実施料率は高額にすぎ る。

34
化粧料の効能として「部分肥満改善」という 効果を示して販売することは薬

事法にも違反するものである。

これらのことからすれ ば,実施料率は1%を下回る。

【被告サンクスの主張】

前記(1)アは否認する。

【被告サレアの主張】

前記(2)アは否認する。

【被告カルゥの主張】

前記(3)アは認める。

9 争点5(損害賠償請求の可否)について

【原告の主張】

以下のとおり,被告カルゥは,合計5726万7840円の損 害 賠償義務を

負う。

(1) 販売 数 量 及び売上 高 (平成23年1月7日から平成24年2月27日ま

で)

ア 被告製品6から12まで

販売数 量合 計15万3136回 分(判決注 :原告は売上 高 につ いて33

52万6580円で あると主 張していたとこ ろ,以下のと お り主 張を 訂正

したが,対応する販売 数量に関する主張を訂 正しなかった。)

売上高合計3610万9600円

イ 被告製品13

販売数量1万0432回分

売上高260万8000円

(2) 経費

ア 被告製品6から12まで

被告各製品1回分当たりの仕入金額は約70円である。

35
そうすると,前記(1)アの販売数量に70円を乗じた1071万952

0円のみが経費である。

[計 算 式 ]

153,136×70=10,719,520

イ 被告製品13

上記アと同様に前記(1)イの販売数量に70円を乗じた73万0240

円のみが経費である。

[計 算 式 ]

10,432×70=730,240

(3)利益

被告カルゥが,前記(1)の被告各製品を販売したことにより受け た利益の

額は,前記(1)の売上高合 計3871万7600円から前記(2)の 経費合計

1144万9760円を減じた2726万7840円である。

原告は,同額の損害を受けたものと推定さ れる(特許法101条 2項)

(4) 弁護士費用

原告は,本件訴訟及び本件訴訟に 関連した仮 処分事件にお いて,弁護士費

用,調査費用及び執行 手続費用等の支出を余 儀なくされた。

これらの費用のうち3000万円は,被告カルゥの上記不法行為 と相 当因

果関係のある損害であ る。

【被告カルゥの主張】

(1) 被告製品6から12までの売上高

被告製品6から12までの平成23年3月1日から平成24年2月27日

までの売上高は,合計 3381万7000円である。

(2) 経費

ア 仕入価格

(ア) 被告製品6及び7

36
仕入価格 は20包(1包が1回 使用分)当たり2600円である。

上記期間における販売 包数は,被告製品6が7万980包,被告製品

7が合計3万0360 包である。

したがって,仕入価格 は合計1317万4200円である。

(イ) 被告製品8

仕入価格 は20包当たり2820円であり,上記期間における販売包

数は7500包である。

したがっ て,仕入価格は105万7500円である。

(ウ) 被告製品10

仕入価格 は20包当たり2600円であり,上記期間における販売包

数は3万6000包で ある。

したがっ て,仕入価格は468万円である。

(エ) 被告製品12

仕入価格は10包当たり1541円であり,上記期間における販売 包

数は4800包である。

したがっ て,仕入価格は,73万9600円である。

(オ) 合計

仕入価格 は合計1965万1300円である。

イ 販売管理費

被告カルゥの平成23年3月1日から平成24年2月29日までの期間

における総売上高は3億3815万6413円であり,販売管理費は1億

5181万4636円である。

上記期間におけ る被告各製品の売上額 は,前記(1)のとおり3381万

7000円であり,これは総売上高の10% である。

したがって,総 売上高に係る販売管理費のうち10%である1518万

1463円は,被告各製品の売上のための 経 費として控除される べ きであ

37
る(主位的主張)。

少なくとも,販売 管理費は固定費と変 動 費の両方の性質を有するから,

1002万7000円の限度では控除される べきである(予備的主 張)。

(3) 利益

前記(1)から(2)を 控除すると,利益額 は マイナス101万5763円(主

位的主張)又は413万8700円(予備的主張)である。

(4) 弁護士費用

争う。

第4 当裁判所の判断

1 争点1(被告各製品は,本件各特許発明技術的範囲に属するか)について

被告らは,被告各製品について,本件各特許発明構成要件1− A,7−B,

8−A及び9−Aの「部分肥満改善用化粧 料 」には当たらないから,本件各特

許発明の技術的範囲には属さない旨主張する。

しかしながら,以下のとおり,被告各製品は,上記各構成要件の「部分肥満

改善用化粧料」に当たり,本件各特許発明技術的範囲に属するものと認める

ことができる。

(1) 被告各製品の構成

前提事実(5)エ及び弁論の全趣旨によると,被告各製品は次の 構 成からな

るものであると認めることができる。

a 脂肪代謝の活性 化,たるみ改善,リフ トアップ,小顔等の部分 痩せ効果

を有するジェル状化粧 料として使用される 二酸化炭素を含有する ジェルを

得るためのキットであって,

b 炭酸水素ナトリウ ム及びアルギン酸ナ トリウムを含有するジェ ル剤と,

コハク酸又はアスコル ビン酸を含む顆粒剤の 組み合わせからなり,

c ジェル剤と顆粒剤 を混ぜ合わせたジェ ルが,二酸化炭素を気泡状で保持

できる,

38
d ジェル剤の中で 炭酸塩とコハク酸又はアスコルビン酸を反応さ せること

により気泡状の二酸化 炭素を含有するジェルを得ることができるキット。

(2) 本件各特許発明構成要件充足性

ア 本件特許発明

前記(1)のとおり,被告各製品は,構成 a からdまでを有するところ,

これらの構成は,構 成要件1−A,1−B,1−C及び1−Dをそれぞれ

充足し,本件特許発明 1の技術的範囲に属 すると認めることができる(な

お, 成要件中
構 「部分 肥満改善」 該当性につ いては, 記(3)のと おり。。
の 後 )

イ 本件特許発明2〜 5

証拠(甲7)によると,被告サンクスは,当初,原告のOEM 製品を製

造しており,その際 ,本件各特許発明を実 施 していたものと認めることが

できる。

本件特許発明2から5までの内容は,本件特許発明1を実施するに当た

り,当然備えるべ き内 容であったり(本件特許発明2,4及び5),その作

用効果を説明したにす ぎない内容であったり(本件特許発明3)するもの

である。被告サンクス及び被告サレアは,これらの発明に係る構 成要件充

足性について否認ないし争うと述べるだけ で,具体的な認否・反 論をして

いない。

これらの事情を総 合 考慮すると,被告各製品は,本件特許発明 2から5

までの技術的範囲にも 属するものであると認 めるのが相当である。

ウ 本件特許発明7及び8

前記(1)のとおり,被告各製品は,ジェ ル 剤と顆粒剤のキットからなる

化粧料であり,本件特許発明1の各構成要件を充足するが,被告各製品を

購入した需要者は,上記2剤を混ぜ合わせて,自らジェル状の「部分肥満

改善用化粧料」を調 製し,生成することが 予定されており,それ以外の用

途は考えられない。

39
したがって,被告各製品を製造,販売する行為は,本件特許発明 7に係

る特許権の間接侵害に当たるといえる。

また,上述のとお り,被告各製品の製造,販売は,本件特許発明 7に係

る特許権の間接侵害に当たるところ,後記(3)のとおり,被告各製品は,

主に顔の部分肥満改善 に使用されているので,被告各製品を製造,販売す

る行為は,本件特許発明8に係る特許権の間 接侵害にも当たるといえる。

エ 本件特許発明

前記(1)のとおり,被告各製品(なお,原告が被告製品13に つ いて同

発明に係る間接侵害を主張していないため,同製品を除く。)は,ジェル剤

と顆粒剤のキットからなる化粧料であり,前記アのとおり,本件特許発明

1の各構成要件を充足 するものであるとこ ろ ,本件特許発明9は,本件特

許発明1の2剤を使 用して二酸化炭素含有 粘性組成物を調製する 方法を内

容としている。

そして,被告各製品は,それらを購入した 需要者が,上記2剤 を 混ぜ合

わせて,自ら二酸化 炭素を含んだジェル状 の「部分肥満改善用化粧 料」を

調製することが予定さ れており,それ以外の用途は考えられない。

したがって,被告製品13を除く被告各製品を製造,販売する行 為は,

本件特許発明9に係 る特許権の間接侵害に当たる(前記アと同様 「部分肥

満改善」の該当性につ いては,後記(3)のと おり。。


オ 本件特許発明10 〜13

前記イのとおり,被告各製品(前記エと同 様に被告製品13を除 く。)は

本件特許発明2から5までの技術的範囲に 属 するものであると認 められる

ところ,前記エのと お り,これらの製品は, 購入した需要者が,上記2剤

を混ぜ合わせて,自ら 二酸化炭素を含んだ ジェル状の「部分肥満改善用化

粧料」 調製することが予定されており,
を それ以外の用途は考えられない。

したがって,被告製品13を除く被告各製品を製造,販売する行 為は,

40
本件特許発明10から13までに係る特許権の間接侵害に当たる。

(3) 「部分肥満改善」につ いて

ア 被告各製品に係る広告宣伝

後 掲各証拠によれば ,被告各製品の広告宣 伝 には以下の記載が さ れてい

るものと認められる。

(ア) 被告製品1を紹介するウェブページ(甲10の2)

「肌自体が健全になり,代謝が活発化。余分なもの(老廃物・メラ ニン)

を どんどん 排泄 することで 皮膚 がしま っ て 透 明 感 の あ る 小顔 へ と 導 き

ます。「エステサロン生まれのリフトアップ 」


(イ) 被告製品2を紹介するウェブページ(甲12の1)

「たった1回で顔やせ,美白を実感。」

(ウ) 被告製品5の商品説明 文書(甲16)

「KIARA(C O2 ジェル)は,傷 の治療薬の研究過程で発見さ れま

した。本製品の製造の 元になった医薬品は,深い傷を早くきれいに治し

ましたが,同時に脂肪 がなくなっていくのを 試験担当ドクターが発 見し

たのです。

そ こで,その医薬品を自分の 顔 半 分に 塗布 したとこ ろ , 誰 が 見 ても

はっきりわかるほど顔 半分が見事に痩せました。この結果をうけて 皮膚

科や美容外科のドクタ ーに協力を求め効果を 検討したところ,顔痩 せは

ほぼ100%誰にでも 効くことがわかりました。」

「3,部分痩せ

毎日パックします。

早い人は1週間で効果が出せますが,普通 は1ヶ月を目安にしてくだ

さい。

美白効果が出にくい人でも顔痩せ効果は確 実です。

腕・足・腹部にも効果がありますが,2ヶ 月以上の使用が必要です。」

41
「 肌細 胞 に 栄養 が行き 渡 り 肌細 胞 が 活性 化する ???代 謝 がよくなる・ 顔

痩せ・美白効果」

「細胞間質液が排泄さ れる=部分痩せ(短期 )」

「脂肪代謝が活性化さ れる=部分痩せ(長期 )」

「脂肪代謝の活性化→ 小顔」

(エ) 被告製品6

a 商品説明文書(甲 17の1)

「細胞本来のはたらきが活発になると,細胞 中の細胞間質液が排泄 さ

れ,脂肪代謝が活性化します。たるみが解消 され,フェイスラインも

すっきりとひきしまり,小顔への効果も期待 できます。」

「気になるたるみがス ッキリ!

フェイスラインがキュ ッとひきしまった???

これまでとの「ちがい」を実感 !

セルCO 2ゲルを1回パックしただけで,肌がぴんっ とはってひきし

まった感じ???。 まで気になっていた鼻の 横のたるみや, ごにかけ



てのラインもス ッキ リし, 触 っ てみると 指 をは ね返 すような 弾 力感

が!肌のトーンも少し 明るくなったような感 じで,いざという時には

手放せませんね。」

b ウェブページ(甲17の2。 甲17の3から8までの各ウェブペー

ジにも同旨の記載があ る。)

「KIARA(キアラ セルCO2ゲル)は, 傷の治療薬の研究過程 で

発見されました。本製品の製造の元になった医薬品は,深い傷を早 く

きれいに治しましたが,同時に脂肪がなくな っていくのを試験担当 ド

クターが発見したのです。

そこで,その医薬品を自分の顔半分に塗布したところ,誰が見ても

はっきりわかるほど顔 半分が見事にひきしまりました。この結果をう

42
けて皮膚科や美容外科 のドクターに協力を求め効果を検討したとこ ろ,

誰にでも効くことがわ かりました。」

「4.小顔効果

老廃物 が排出されますので, 顔がキュッと引き締まります。

また,肌にハリが出てきますので,たるみがちな部分がリフトアップ

されます。」

(オ) 被告製品7−1を紹介 するウェブページ(甲 18)

「小顔も美白も乾燥も !あなたの肌悩みを全 部解決!」

「14日目 小顔にな ってる?!」

「友達に「痩せた ね」って言われた。リ フトアップ効果もあるって 聞い

ているし。これはきっ とシスのおかげだね! ラッキー♪」

「すっきりシャープな フェイスラインをゲッ ト」

「頬のもたつきが解消 されて,−3キロくらいは細く見えるように」

(カ) 被告製品8を紹介するウェブページ (甲 19の1。甲19の2及び3

の各ウェブページにも同旨の記載がある。)

「ブリーズベールCO 2GEL は, の治療薬の研究過程で発見されまし


た。

本 製品の 元 にな っ た医薬品は, 深 い 傷 を 早 くきれいに治しましたが,

同時に脂肪がなくなっ ていくのを,試験担当 ドクターが発見したのです。

そこで,その医薬品を自分の顔半分に塗っ たところ,はっきりわ かる

ほど顔半分が見事に痩 せました。」

「部分痩せ(顔痩 せ)

毎日パックします。早い人は1週間で変化があらわれますが,普通は

1ヶ月間を目安にしてください。美白結果がでにくい人でも,顔痩 せの

結果はでやすいでしょ う。 ・足・腹部にも お使いいただけますが。 ヶ
腕 2

月以上のご使用が必要です。」

43
(キ) 被告製品9を紹介するウェブページ (甲 20の1。甲20の2及び3

の各ウェブページにも同旨の記載がある。)

「床ずれ治療などで,医療機関でも有効性と 安全性が注目される「 炭酸

ガス」。

セルバルーンは,ジェル内で発生する二酸 化炭素が素肌を経て,血管

内へ浸透。

血液から細胞へ浸透 した新鮮な酸素によっ て,肌細胞が活発になりコ

ラーゲン合成が促進さ れます。これにより,ハリのあるキメ細やかな素

肌を取り戻すことはもちろん, 陳代謝が UP し老廃物が排泄し” 白”



効果が現れたり,脂肪細胞の減少で“小顔”効果,線維芽細胞の活性化

による”しわの改善”など,様々な肌のトラ ブルの解消が期待できるの

です。」

(ク) 被告製品10のチラ シ(甲21の1。甲 21の2のウェ ブペ ージにも

同旨の記載がある。)

「エステやクリニックで使用されている小顔・美肌などのアンチエ イジ

ング効果を提供するための専門的なパックで,元々は,とこずれ等の治

療薬の 開発 中に 多 くの医 師 による 臨 床 結 果 で 美肌効果 が 発 見 さ れて 誕

生したドクターズコスメです。」

「美白効果,シミ・小ジワの軽減はもちろん ,脂肪燃焼効果も高く,引

き締まったフェイスラインを実現します。」

「脂肪の代謝が活発化 される???継続することによる痩身効果」

(ケ) 被告製品11を紹介するウェブページ 甲 22の1。 22の2のウェ
( 甲

ブページにも同旨の記載がある。)

「PEARL BLANC 炭 酸パック CO2(二酸化炭素)が肌を通して血管

拡張させ,皮膚組織 の新陳代謝を活発にして美肌を促進させます。

これは医学的根拠に 基づくもので,大変画 期的な美容法です。

44
1日15?30分の パックで,顔やせ・小顔・ニキビ・シ ミ・くすみ・

シワ・たるみ等の改善 ,予防に効果があります。」

「 言 わ れた 通 り1 週 間 毎 日 続 け たら,友人に「 痩 せた ? 」と 聞 かれた。

フェイスラインが引 き締まり小顔になった。これはクセになる! 」

(コ) 被告製品12のチラ シ(甲23の1。甲 23の2のウェ ブペ ージにも

同旨の記載がある。)

「美白効果・シミ・小ジワの軽減はもちろん脂肪燃焼効果もあり,引き

締まったフェイスラインを実現します。」

「今までのエステでは限界があったリフトア ップが可能に」

(サ) 被告製品13を紹介するウェブページ(甲28の3)

「こんな悩みを持っている方におススメです。 小顔」

「炭酸ガス(二酸化炭素)がお肌の美活力を 高め,血行をよくし, 新陳

代謝が活発になり皮膚 再生機能を上げることにつながります。

ツ ヤ の あ る お肌 を 保 ち 効果 の 早 さ が 期 待 できる 炭酸 ガ ス パ ッ クは 小顔

効果があるコスメとしても,注目の的です。」

構成要件充足性

前記アの被告各製品に係 る 広告宣伝 の内 容からすれ ば,被告各製品は,

小顔効果 ,顔 や せ,部分 痩 せの効果 を奏する化粧 料として販売 さ れている

ことが認められる。

そうすると,被告各製品が本件各特許発明 の「部分 肥満改善 用化粧 料 と

して使用される」という構成を文言上充足することは明らかである。

被告らは,前記アの被告各製品に 係る広 告宣 伝 には 関 与していない旨主

張 する。しかしながら,上記各広 告宣伝は,その 体裁・内容自 体 からして

真 正 に成立したもので あ ると 認めることができる(被告らも第 三 者の 作 成

名 義 で 真 正に成立した文 書 で あることにつ いてまで争 っ ているとは 解さ れ

ない。。そして,被告各製品に つ いて上記のような 類似した広 告宣 伝が さ


45
れ ていることからすれ ば ,被告らが,小売 店 等に対し,上記のような 作 用

効果 を 奏 する化粧料として被告各製品を販売していることは優 に 認 められ

るものというべきであ る。

2 争点2−1(本件各特許発明は,当業者が, 乙2発明に基づいて 容易に発明

することができたものであるか)について

(1) 乙2発明の内容

乙2公報には,以下の記載がある。

「 特許請求の範囲


酸性物質を水に溶解 して得られる水溶液を第1剤として,水溶性 高 分子及び

/又は粘土鉱物と炭酸塩とを常温固型のポ リ エチレングリコールで被覆した

固型物を第2剤とする用時混合型発泡性化粧 料。

発明の詳細な説明

(技術分野)

本発明は,炭酸ガスによる血行促進作用によ って皮膚を賦活化さ せる,ガス

保留性,経日安定性 , 官能特性及び皮膚安 全性に優れた発泡性化粧 料に関す

る。

(従来技術)

血行促進などの目的で 炭酸ガスを配合した化粧料が従来から提案 さ れている。

例えば特開昭59−141512号公報には「水性化粧料に炭酸 ガ スを配合

して耐圧容器に密閉 したことを特徴とする化粧料」が提案されている。しか

し,これらの化粧料 は,容器を耐圧性にしなくてはならない為, コ ストが高

くなるという欠点を有していた。

(発明の開示)

そこで本発明者らは,上記の事情に鑑み鋭 意 研究した結果,後記特 定組成の

発泡性化粧料は,2 剤 型である為経日安定性 に優れ,炭酸塩と水 溶 性高分子

をポリエチレングリ コ ールで被覆してなる第2剤と酸性物質であ る第1剤を

46
用時混合する際に, 炭酸ガスの泡が徐々に 発 生すると共に水溶性 高 分子及び

/又は粘土鉱物の粘性 によって安定な泡を生成し,炭酸ガスの保 留 性が高ま

る事を見出し,本発明 を完成するに至った。

(発明の目的)

本発明の目的は,ガ ス 保留性,経日安定性 , 官能特性等に優れた 発泡性化粧

料を提供することにあ る。」

(2) 乙2発明と本件各特許 発明との対比

前提事実(2)のとおり,本件各特許 発明に係る「物」であ る「二酸化炭素

含有粘性組成物」は,
「1)炭酸塩及びアル ギン酸ナトリウムを含 有する含水

粘性組成物と,酸を 含む顆粒(細粒,粉末 ) 剤の組み合わせ;又は2)炭酸

塩及び酸を含む複合 顆粒(細粒,粉末)剤 と,アルギン酸ナトリウ ムを含有

する含水粘性組成物の 組み合わせ」からなるものである。

これに対し,前記(1)のとおり,乙 2発明に係る「物」で ある「用時混合

型発泡性化粧料」 「 酸性物質を水に溶解して得られる水溶液を第1剤とし
は,

て,水溶性高分子及び /又は粘土鉱物と炭酸塩とを常温固型のポ リ エチレン

グリコールで被覆した 固型物を第2剤と」し,これらを使用時に 混 合して生

成されるものである。

証拠(甲39,40)によると,本件各特許発明の上記構 成では,含水粘

性組成物中で酸と炭酸塩を反応させることにより,組成物中に発 生した二酸

化炭素を気泡状で保持 することができる( 構 成要件1−D)のに対し,乙2

発明の構成では,発 生した気泡状の二酸化 炭素は空気中に拡散してしまい,

気泡状の二酸化炭素を 保持する組成物は得られないことが認められる。

(3) 容易想到性

前記(2)のと おり,乙2発明は,本件各特許発明と構成及び作用効果のい

ずれの点においても相違するものである。

被告らは,乙 2発明において本件各特許発明に係る「物」である「二酸化

47
炭素含有粘性組成物 」の構成を採用することが単なる設計事項で あ るなどと

述べるのみであって, 乙2発明に基づいて本件各特許発明の構成に 至る動機

付けや示唆の存在を認 めることもできない。

そうすると,本件各特許発明について,当業者が,乙2発明に基づいて容

易に発明することができたものであるとは認 めることができない。

3 争点2−2(本件各特許発明は,当業者が, 乙3発明に基づいて 容易に発明

することができたものであるか)について

(1) 乙3発明の内容

乙3公報には,以下の記載がある。

「1.発明の名 称

パック剤

2.特許請求の範囲

1.炭酸ガ ス又は炭酸ガス発生物 質を含有することを特 徴とするパック



2.炭酸ガ ス発生物質が炭酸塩と 酸である特許請求の範囲第1項記載の

パック剤

3.炭酸ガスの 存在する雰囲気が pH4〜7である特許請求の範囲 第1項

又は第2項記載のパッ ク剤

3.発明の詳 細な説明

本発明は パック剤に関し,更に 詳細には,炭酸ガスによる血行促進作

用によって皮膚をしっ とりさせることができるパック剤に関する。」

(2) 乙3発明と本件各特許 発明との対比

前記2(2)のとお り,本件各特許発明に 係 る「物」である「二酸 化炭素含

有粘性組成物」 含水粘性組成物中で酸と炭酸塩を反応させることにより,
は,

組成物中に発生した 二酸化炭素を気泡状で 保持することができるものである。

しかし,乙3公報 には,上記構成及び作 用 効果のいずれについても記載が

48
ない。

(3) 容易想到性

前記(2)のと おり,乙3発明は,本件各特許発明と構成及び作用効果のい

ずれの点においても相違するものである。

乙3発明にお いて本件各特許発明に 係る「物」である「二酸化炭素含有粘

性組成物」の構成を 採 用する動機付けや示 唆 の存在についても認 めることは

できない。

むしろ,前記(1)によれば,乙3発明は,皮膚上に皮膜を 形成するもので

あり,皮膚への二酸化 炭素の浸透量を増大さ せることができないものである。

皮膜を形成させずに, 発生させた二酸化炭素 を持続的に保持させるという本

件各特許発明の構成を 採用すると,乙3発明 の本来の目的を阻害することに

なる。

これらのことからすれば,本件各特許発明について,当業 者が,乙3発明

に基づいて容易に発明 することができたものであるとは認めることができな

い。

4 争点2−3(本件特許には, 施可能要件又はサポート要件の違反 があるか)


について

(1) 本件明細書の記載

本件明細書には以下の各試験例が記載されている。

ア 試験例8

「41歳男性。 っくらとした頬と太いウエ ストを痩せさせたいと 希望し,


実施例8の組成物を1日1回15分間右頬に30g, 部に100g 塗布し


た。2ヶ月後に右頬 が5名の評価者全員により明らかに小さくな っ たと判

断された。腹部はウエ ストが6p減少した。」

イ 試験例9

「37歳女性。ふっくらとした頬と荒れ肌, 肌のくすみに悩み,種々の化

49
粧品を試したが効果が 得られなかった。実施 例20の組成物50g を1日

1回10分間顔全体に 塗布したところ,1回 目の塗布で肌のくすみが消え

て白くなり,きめ細かい肌になった。2週間 後には3名の評価者全 員によ

り,顔が小さくなったと判断された。」

ウ 試験例13

「36歳女性。二の腕 の太さを気にしていたため,実施例18の組 成物3

0g を左の二の腕に塗布し,食品包装用フィルム(製品名サランラ ップ,

旭化成社製)をその上からまいて6時間放置 したところ,二の腕の 周囲長

が2p減少した。」

(2) 実施可能要件又はサポ ート要件違反の有無

前記(1)の記載によれば,各試験例に用いられた組成物は,いずれもアル

ギン酸ナトリウムと 炭酸水素ナトリウムを 含む含水粘性組成物にク エン酸を

混合したものであること,当該組成物により 発生した二酸化炭素 を 含水粘性

組成物中に封じ込め,これを経皮適用することにより,部分肥満 を 改善でき

たことが読み取れる。

これらの記載によれ ば,気泡状の二酸化 炭素を保持することが 可能な含水

粘性組成物(アルギ ン 酸ナトリウムを含む含水粘性組成物)中で, 固形状の


酸」と「含水粘性組 成 物に溶解させた炭酸塩 」とを反応させることにより,

当該含水粘性組成物 中に二酸化炭素を効率 的に封じ込め,これを用いて部分

肥満を改善できるという本件各特許発明の 構 成及び作用効果につ いて,当業

者であれば直ちに理解 できる事項であると認 めることができる。

被告らは, 酸を含む顆粒」と酸は異なる旨主張するが,後記6のとおり,


実質的には同一のものであり,この点に 関する被告らの主張には理由がない。

したがって,本件特許に実施可能要件又はサポート要件の 違反があるとは

認めることができない。

5 争点2−4(本件特許には,明確性要件違反 があるか)について

50
(1) 刊行物の記載

後掲各文献には,以下の記載がある。

ア P2 監 修『機能性化粧品の開発U』(1996)189頁(甲41)

「最近のボディケア化粧品の傾向をみると,効能効果を重 視した機能性ボ

ディケア化粧品が主流 を占めるようになってきており,96年現在 におい

ては,以下の2 つ の機 能 が 最 も 重 要ではないかと 考 えている。第1は

「ビューティケアニーズ」に対応した「スリ ミング機能」であり,第2は

「トラブルケアニーズ」に対応した「敏感肌 対応機能」である。」

「スリミング 化粧品は90年以降成 長が顕著になってきた分野であり,9

5年4月に日本で発売 されたクリスチャン・ディオール社のスヴェ ルトが,

発売6か月で100万 個を売る爆発的なヒッ トとなったことで,一 大市場

を形成するに至った。 「肥満を大きく分けると,単純に脂肪が蓄積 された


タイプと水太り・むくみ太りのタイプがあるが,前者は脂質分解促進によ

り,後者は体液(血液 ・リンパ液)の循環の 促進により解消される。」

イ P3 著 『1日1分から 巻くだけでやせる! 1本のバンドですっき

りスリム』(2009)6頁(甲42)

「 気になる部分がやせたい」という部分やせが,なかなかうまくいかない


という悩みを,本当に 多くの女性から聞きます。「根本的な問題は,体の


バランスにあります。 つまり,姿勢と骨盤が ゆがんでいることであ り,そ

のゆがみを正し,バランスをよくすることが 大切なポイントとなります。」

ウ P4 著 『薬いらずのボディ・メイク』(2002)69頁(甲43)

「部分やせに 挑戦!腕,太もも,お腹,お尻」 積極的に エネルギーを消費


し,腕,太もも,お腹 ,お尻などの気になる部分を引き締めましょ う!」

「部分やせトレーニングプログラム (省略)」

エ P5 著 『らくらく部分やせ』(2007)49頁( 甲44)

「一般のダイエットではむずかしい部分ヤセ が可能」

51
(2) 本件各特許発明の「部分肥満改善用化粧料」という構成の明確性

そもそも「部分肥満改善」は,字義どお りに解釈すれば,体を部分的にや

せさせることをいうものと解される。本件 明細書には,本件各特許 発明に係

る「物」である「二酸 化炭素含有粘性組成 物 」を「所望する部位 に 使用すれ

ば,その部位を痩せ さ せられる」旨の記載( 甲2・3頁)があり,これも上

記解釈と付合する。前記4(1)の本件明細書 に記載された各試験例 では,
「部

分肥満改善」の効果が 具体的に示されてもいる。

したがって,本件 明細書において「部分 肥満改善」の意義は明確 であると

いえる。

また,前記(1)の各文献の記載によれば,
「部分肥満改善」と同 義である「部

分やせ」の語について,化粧料やエステの分 野の当業者において,一般に用

いられているものであ ることが認められる。

これらのことからすれば,本件特許に明確性要件違反があるとは 認めるこ

とができない。

6 争点2−5(本件特許に係る補正は,違法なものであるか)について

(1) 平成19年2月6日付 け補正

当該補正は請求項1(本件特許発明1)に「部分肥満改善用化粧 料 」の文

言を追加したもので あ るところ,被告らは,本件特許出願に係る当 初明細書

に「痩身化粧料」「部分肥満に有効な製剤 」の記載があるものの,「部分肥満

改善用化粧料」の記載はないことからすれ ば ,新規事項を追加したものであ

る旨主張する。

しかしながら,当初明細書に記載された「部分肥満に有効な製剤 」と「部

分肥満改善用化粧料 」とを比較すると,構 成及び作用効果の点に お いて,実

質的な差は全くなく, 単に「製剤」を「化粧 料」と言い換えたにす ぎないも

のである。

したがって,上記補 正 について,明細書に記載した事項の範囲外のもので

52
あるとはいえない。

(2) 平成22年9月6日付 け補正

上記補正は請求項1(本件特許発明1)に「 酸及び増粘剤を含む顆粒(細

粒,粉末)剤」の文言を追加したものであ り,前記4【被告らの主 張】(1)

の各試験例に係る記載を根拠にするもので あ るところ,被告らは,これらの

試験例で用いられたのはクエン酸であり, 酸 を含む顆粒(細粒, 粉末)では

ないことからすれば, 新規事項を追加したものである旨主張する。

しかしながら, 酸の顆粒剤 」と「 酸を含む顆粒剤」との間に実質的な差違


があるとする主張立証は全くなく,むしろ 同 義のものと解するのが 通常の解

釈であるというべきで ある。

したがって,上記補 正 についても,明細書 に記載した事項の範囲 外のもの

であるとはいえない。

7 争点3(被告カルゥは,被告製品4及び13を販売したか)について

被告カルゥは,株式会社グレース・アイコに対し,被告製品4及び13を販

売したことはなく,被告カルゥと代表取締役 が共通である別法人の有限会社カ

ルゥ(丙A8)が販売したものである旨主張 する。

しかしながら,被告カルゥは,平成23年11月30日受付けの 準 備書面4

において,被告製品13が被告カルゥの取扱 製品であることを認 めており,被

告サンクス及び同サレアも,平成23年11月30日付け準備書 面 において同

旨の主張をしている。また,被告サレアの 得意先元帳(乙10の1 〜5)によ

れば,被告サレアが,有限会社カルゥではなく,株式会社カルゥ(被告カルゥ

を指すと考えられる。)に対し,被告製品4を販売したことも認められる。上記

のとおり,有限会社カルゥは,被告カルゥと代表取締役が共通で あ るから,有

限会社カルゥが上記各製品を販売したことに ついて,被告カルゥが立証するこ

とは極めて容易であ ると考えられるにもかか わらず,被告カルゥは 裏付けとな

る証拠を全く提出しない。

53
これらのことからすれ ば,被告カルゥが,株式会社グレース・アイ コに対し,

被告製品4及び13を販売したものと認めるのが相当である。

8 争点4(補償金請求の 可否)について

(1) 被告サンクス

ア 本件各特許発明に 関する悪意

原告と被告サンクスとの間における平成14年5月27日付 け委託製造

契約書(甲7)には,以下の記載がある。文中の「甲」は,原告を 指す。

第1条(対象)

本件契約の対象は,甲 が開発した基本処方及び技術(出願番号 特許平

9−305151及び 国際出願PCT/JP 98/04503)を 使用し,

甲が従来製造・販売していた製品(メディプ ローラー) 改 良した製品
を (以

下「本件製品」という),もしくは本件製品を 構 成する ジェ ル(以下「本

件ジェル」という)で ある。

第2条(目的)

甲は,本契約に定めるところにより,本件製品あるいは本件ジェ ルの製

造を乙に委託し,乙はこれを引き受ける。」

上記第1条に記載されたPCT/JP98/ 04503は,本件特許に

係 る 国 際 出 願 で あ ることからすれ ば ( 甲 2),被告サンクスは, 少 なくと

も上記 委託 製造 契約 を 締 結した 時点 に お いて本件各特許 発明 の内 容 を 認

識していたものと認めるのが相当である。

イ 被告各製品の販売 数量及び売上高

証拠(甲3の1,乙14の1〜10,乙15の1〜20,乙16の1〜

39)及び弁論の全趣 旨によれば,被告サンクスが,前記アの製造 委託契

約を解除した後,本件特許登録までに販売した被告各製品の販売数 量及び

売上高は,以下のとお りであると認めることができる。

(ア) 被告製品1

54
販売数量1万2000 回分

売上高89万7000円

(イ) 被告製品2

販売数量1万0908 回分

売上高98万6265円

(ウ) 被告製品3

販売数量 7700回分

売上高187万3100円

(エ) 被告製品4

販売数量 194万9092回分

売上高1億6061万9026円

(オ) 被告製品6

販売数量 19万2813回分

売上高1501万4225円

(カ) 被告製品8

販売数量 2万3400回分

売上高200万2000円

ウ 補償金額

(ア) 算定の基礎となる売上 高

上記イの販売数量の合計は219万5913回分,売上高の合計 は1

億8139万1616円となる。

原告は,上記被告各製品の販売に係る相当な実施料率は,最終小 売価

格(1回分当たり1500円)の10%に販売数量を乗じた3億293

8万6950円で あ る旨主 張 する(主 位 的主 張 )。しかしながら, 最 終

小売価格を基準に計算 することは不相当であ り(そもそも,売上高 を超

える金 額 で あ り, 不相 当という ほ かない。 , 採 用することはできない。


55
(イ) 実施料

前記2(2)のとおり,本件各特許発明に係 る「物」である「二酸 化炭

素含有粘性組成物」は,含水粘性組成物中で 酸と炭酸塩を反応させるこ

とにより,組成物中に 発生した二酸化炭素を 気泡状で保持することがで

きるというもので あ り,「部分 肥満改善 用化粧 料 」として用いられるも

のである。このような本件各特許発明の構成及び作用効果は,被告各製

品の本質的効用をなすものというべきである。

被告らは,本件特許に先行する同様の特許が存在するなどと主張 する

ものの,前記2及び3のとおり,被告らが類似の技術として主張する公

知発明は,いずれも構 成及び作用効果の点に おいて本件各特許発明 とは

異なるものである。

これらのことからすると,本件各特許発明実施に対し受けるべ き金

銭の額に相当する額(実施料)は,合 計で売上高の10%とするのが相

当というべきである。

(ウ) 小括

そうすると,上記イの各売上高の10%を合計した1813万916

0円の支払を求める原告の予備的主張には理由がある。

原告の被告サンクス製薬に対する補償金請求は,一部請求である14

00万円であるから理由がある。

なお,上記請求に係 る債務は,後記(3)ウのとおり,被告カルゥの補

償金債務との間で連帯 債務の関係にある。

(2) 被告サレア

ア 本件各特許発明に 関する悪意

被告サレアの代表者である P1 が被告サンクスの従業員であったこ

と,前件訴訟の判決日である平成18年4月27日の直前である同月12

日に被告サレアが設立 されたことは当事者間で争いがない。前記(1)アの

56
とおり,被告サンクスは,遅くとも平成14年5月27日の時点では,本

件各特許 発明 の内 容 を 知 っ ていたもので あ る上, 甲 3によれ ば ,原告は,

前件訴訟において,特許査定を受ける前の本件特許の存在及び被告製品1

から3がその技術的範囲に属する旨を主張していたことも認められる。

このような被告サレア代表者の経 歴や,被告サレアが被告各製品を販売

するに至った経緯からすれば,被告サレアは,設立当初から本件各特許発

明の内容を知っていたものと認めるのが相当である。

イ 被告各製品の販売 数量及び売上高

証拠(乙9の1〜11,乙10の1〜5,乙 11の1・2,乙12の1

〜3, 13)
乙 及び弁論の全趣旨によれば ,被告サレアが, 立さ れた後,


本件特許登録までに販売した被告各製品の販売数量及び売上高は,以下の

とおりであると認めることができる。

(ア) 被告製品4

販売数量58万0886回分

売上高5518万4194円

(イ) 被告製品5及び6

販売数量合 計48万8000回分

売上高合 計3255万2000円

(ウ) 被告製品7

販売数量 3万回分

売上高201万円

(エ) 被告製品9

販売数量 4万2000回分

売上高875万7600円

ウ 補償金額

前記(1)ウと同様の理由から,この点に関する原告の主位的主張を 採用

57
することはできず,実 施料率は売上高の10 %とするのが相当であ る。

そうすると,前記イの各売上高の10%を合 計した985万0379円

の支払を求める原告の 予備的主張には理由が ある。

なお,上記請求に係 る債務は,後記(3)ウのとおり,被告カルゥの補償

金債務との間で連帯債務の関係にある。

(3) 被告カルゥ

ア 本件各特許発明に 関する悪意

原告が,被告カルゥに対し,平成16年12月21日付けで,本件各特

許 発明 の内 容 を記載した 書 面 を提 示 して 警 告をしたことに つ いては当事

者間で争いがない。

イ 被告各製品の販売 数量及び売上高

証拠(丙A1〜7)及び弁論の全趣旨によれば,被告カルゥが,前記ア

警告を受けた後,本件特許登録までに販売した被告製品6から12まで

販売数量は合計50万5320回分であ り,売上高は合計1億2606

万8838円であることが認められる。

また,証拠(甲61)及び弁論の 全趣旨によれば,被告カルゥが上記期

間中に販売した被告製品4及び13の販売 数 量 は合 計 1080万606

0回分であることが認 められる。このうち1 回分当たりの販売額に 関する

立証はないものの,上記被告製品6から12までの販売額から推計 すると,

1回分当たり249円であると推定するのが合理的であり,被告製品4及

び13の売上 高 は合 計 26億9070万8940円で あ ると 認 められる。

[計算式]

126,068,838÷505,320≒249

249×10,806,060=2,690,708,940

ウ 補償金額

前記(1)ウと同様の理由から,この点に関する原告の主位的主張を 採用

58
することはできず,実 施料率は売上高の10 %とするのが相当であ る。

そうすると,前記イの各売上高の10%であ る2億6907万0894

円の支払を求める限度で原告の予備的主張には理由がある。

なお,前記イの売上は,被告サンクス又は被告サレアにおいて発 生した

前記売上高の全部を含むものではないし,売上げごとの対応関係も 必ずし

も明らかではないとこ ろ,原告は,被告サンクス又は被告サレアに おいて

発生した売上高を基礎 として算出した各補償 金の額の限度で,被告カルゥ

に対し,被告サンクス又は被告サレアと連帯した補償金支払を求めている

から,その限度で認容 することとする。

9 争点5(損害賠償請求の可否)について

(1) 販売 数 量 及び売上 高 (平成23年1月7日から平成24年2月27日ま

で)

証拠(丙A5〜7)及び弁論の全趣旨によれば,被告カルゥが,本件特許

登録後,販売した被告製品6から12までの販売数量は,合計15万313

6回分であり,売上 高 は,合計3610万9600円であることが 認められ

る。

また,証拠(甲61)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品13の販売数

量は1万0432回 分であることが認められる。前記8(3)アと同 様に,1

回分当たりの販売額 は249円であると推 定 するのが合理的であ る。そうす

ると,被告製品13の売上高は,合計259万7568円となる。

[計算式]

249×10,432=2,597,568

(2) 経費及び利益額

ア 被告製品6から12まで

証拠(丙A9,丙A11〜14)及び弁論の 全趣旨によれば,被告製品

6から12までの仕入額は,合計1965万1300円であると認 めるこ

59
とができる。

なお,被告カルゥは販売管理費を控除するべ きである旨主張するところ,

営業全体に要した販売 管理費について主張立証するのみで,被告各製品の

販売に係る具体的な販売管理費については何 ら主張立証していない。そも

そも被告各製品を販売するに当たり,固定経 費以外に変動経費としての販

売管理費を要したと認 めるに足りる主張立証もない。

そうすると,被告製品6から12までの販売による限 界 利益 は,前記

(1)の売上 高 3610万9600円から上記 仕 入額 1965万1300

円を控除した1645万8300円であると 認めるのが相当である。

[計算式]

36,109,600-19,651,300=16,458,300

イ 被告製品13

被告製品13の仕入額に関する主 張立証はない。そうすると,上記被告

製品6から12までの 仕 入額 で あ る1 回 分当たり128円で あ ると 推 定

するのが相当である。

[計算式]

19,651,300÷153,136≒128

そうすると,被告製品13に係る 仕入額は,合計133万5296円で

あると認められる。

[計算式]

128×10,432=1,335,296

前記アと同 様の理由から,被告カルゥが主張する販売管 理費を控除する

ことは相当でない。

よって,被告製品13の販売による限界利益は,前記(1)の売上高合計

259万7568円から上記 仕 入額 を 控 除 した126万2272円で あ

ると認めるのが相当で ある。

60
[計算式]

2,597,568−1,335,296=1,262,272

ウ 利益額合計

以上によると,被告製品6から13までの売上に係る利益合計額 は17

72万0572円となる。

[計算式]

16,458,300+1,262,272=17,720,572

(3) 損害賠償請求に関する判断

以上によれば,被告カルゥによる被告各製品の販売に係る損害 額 は,合計

1772万0572円であると認めるのが 相 当である。なお,寄与 度減額を

認めるに足りる主張立証はない。

(4) 弁護士費用

この1割に相当する180万円の弁護士費用は本件と相当因果関係のある

損害である。

(5) 小括

したがって,原告の被告カルゥに対する 損 害賠償請求は,1952万05

72円の限度で理由が ある。

10 被告各製品の製造販売等の差止め及び廃棄請求の可否

(1) 被告製品1から3までに係る製造販売等の差止め及び廃棄請求の可否

前提事実(4)のと おり,前件訴訟にお いて,被告サンクスに対し,被告製

品1から3までの製造販売の差止めを命ずる判決がされて確定している。

そうすると,本件訴えのうち被告サンクスに対し被告製品1から3までの

製造販売の差止めを求める部分につ いては,特 段の事情 がない限り訴えの利

益を認 めることはできないが,上記特段 の事情 に係 る主 張立証はないから,

これを却下する(前件訴訟で命 じられなかった,輸出と,販売若しくは輸出

の申出の差止めを求める限度で認容する。。


61
前件訴訟に係 る判決の後 ,被告サンクスが被告製品1から3までを販売し

た事実 や在 庫品を有することを 認めるに 足りる証拠もないから,これらの製

品に係る廃棄請求にも理由がない。

(2) 被告製品4から13までに係る製造販売等の差止め及び廃棄請求の 可否

これらの被告製品に 係 る製造販売等の差止め及び廃棄請求には理由がある

ものと認める。

(3) 被告製品14に係る製造販売等の差止め及び廃棄請求の可否

前記(1)及び(2)の限度で,被告製品1から13までの製品に係 る製造,

販売等の差止めを求める原告の請求には理由がある。

これ以上に,本件において被告製品14(被告各製品の構 成)によっ て特

定される製品の 将来 におけ る製造販売等の差止 や廃棄請求を 認めるまでの必

要性があるとは認めるに足りないというべきである。

11 結論

よって,主文のとおり判決する。

大阪地方裁判 所第26民事部



裁判長裁判官 山 田 陽 三




裁判官 松 充 康





裁判官 田
西 昌 吾




62
(別紙)

被告製品目録

1 ヴィータゲル

2 ラ・ムーンジ ュエル

3 アローニングジェル

リボーン CO2 ジェル


5 キアラ

キアラセル CO2 ゲル


SIS NO.9
7−1 リカバリーマスク

SIS NO.9 CO2 GEL DX
7−2

ブリーズベール CO2 ゲル


CO2 ゲル
9 セルバルーン

CO2 ジェルパック
10 トリコプラチ ナム

CO2 ゲル
11 パールブラン

ローズメゾ ン CO2 スぺリアマスク
12

13 リアウェイク ジェル

14 上記のほか,以下の構成からなる製品

あ.たるみ改善,リ フ トアップ,小顔等の部分痩せ効果を有する化粧料とし

て使用される二酸化炭素を含有するジェルを 得るためのキットであって,

い.炭酸水素ナトリウ ム,アルギン酸ナトリウム及び水を含有する ジェル剤

とコハク酸,リンゴ酸 ,アスコルビン酸等の 酸を含む顆粒剤の組 み合わせ

からなり,

う.ジェル剤と顆粒剤 を混ぜ合わせたジェ ルが,二酸化炭素を気泡状で保持

できることを特徴とする

え.ジェル剤の中で 炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の 二酸化炭素

を含有するジェルを得 ることができるキット。

63