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事件 平成 24年 (行ケ) 10127号 審決取消請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2012/12/19
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成24年12月19日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成24年(行ケ)第10127号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成24年12月5日

判 決

当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための

付加期間を30日と定める。

事実及び理由

第1 請求

特許庁が不服2010−18353号事件について平成23年11月22日にし

た審決を取り消す。

第2 事案の概要

本件は,原告が,後記1のとおりの手続において,特許請求の範囲の記載を後記

2とする本件出願に対する拒絶査定不服審判の請求について,特許庁が同請求は成

り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は後記3のとお

り)には,後記4の取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。

1 特許庁における手続の経緯

(1) 原告は,平成12年6月13日,発明の名称を「電磁干渉遮蔽装置」とする

特許を出願した(甲5。特願2001−576733。パリ条約による優先権主張

日:平成12年(2000年)4月18日,米国。請求項の数27)。

特許庁は,平成22年4月5日付けで拒絶査定をしたため,原告は,同年8月1

3日,これに対する不服の審判を請求するとともに,同日付けで手続補正をした

(甲8。以下「本件補正」という。)。




(2) 特許庁は,これを不服2010−18353号事件として審理し,平成23

年11月22日,本件補正を却下した上,「本件審判の請求は,成り立たない。」

との本件審決をし,その謄本は,同年12月6日,原告に送達された。

2 本件補正前後の特許請求の範囲の記載

(1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載(平成21年11月12日付

け誤訳訂正書(甲7)による誤訳訂正及び同日付け手続補正書(甲6)による補正

後のもの)は,次のとおりである。なお,文中の「/」は,原文における改行箇所

を示す。以下,特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を「本願発明」という。

長さと,頂面と,底面とを有し,電磁放射を遮蔽するガスケット装置において,

/第1エラストマー材料と,/この第1エラストマー材料を頂面から底面まで二分

する導電性の第2エラストマー材料で形成した薄いバーと/を具え,/前記頂面と

底面との間に,前記ガスケット装置を通じて,前記第2エラストマー材料の薄いバ

ーによる導電路が存在していることを特徴とするガスケット装置

(2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。なお,

文中の「/」は原文における改行箇所を,下線部は補正箇所を示す。以下,特許請

求の範囲の請求項1に記載された発明を「本件補正発明」といい,本件補正発明に

係る明細書(甲5〜8)を,図面を含めて「本件補正明細書」という。

長さと,頂面と,底面とを有し,電磁放射を遮蔽するガスケット装置において,

/第1エラストマー材料と,/この第1エラストマー材料を頂面から底面まで二分

する導電性の第2エラストマー材料で形成した薄いバーであって,前記第2エラス

トマー材料に導電性粒子を混練して導電性を有する,該薄いバーと/を具え,/ 前

記薄いバーの幅が0.5〜20ミルの範囲内にあるものとし,/前記頂面と底面と

の間に,前記ガスケット装置を通じて,前記第2エラストマー材料の薄いバーによ

る導電路が存在していることを特徴とするガスケット装置

3 本件審決の理由の要旨

(1) 本件審決の理由は,要するに,@本件補正発明は,後記アの引用例に記載さ




れた発明並びに後記イ及びウの周知例1及び2に記載された周知技術に基づいて当

業者が容易に発明をすることができたものであり,特許出願の際独立して特許を受

けることができないものであるから,本件補正は却下すべきものである,A本願発

明も,上記引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明

することができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受ける

ことができない,というものである。

ア 引用例:特表平8−504059号公報(甲1)

イ 周知例1:実願昭60−31547号(実開昭61−149399号)のマ

イクロフィルム(甲2)

ウ 周知例2:特開平1−235398号公報(甲3)

(2) 本件審決が認定した引用例に記載された発明(以下「引用発明」という。)

並びに本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。

ア 引用発明:長さと,頂面と,底面とを有するEMI遮蔽ガスケットにおいて,

弾性泡沫断面と,この弾性泡沫断面を頂面から底面まで二分する導電性のシールド

であって,1000分の1.5インチの厚さのポリプロピレンフィルムの薄層の両

側を銅で金属被覆して導電性を有する,該シールドとを具え,前記頂面と底面との

間に,前記EMI遮蔽ガスケットを通じて,前記シールドによる電導路が存在して

いるEMI遮蔽ガスケット

イ 一致点:長さと,頂面と,底面とを有し,電磁放射を遮蔽するガスケット装

置において,第1エラストマー材料と,この第1エラストマー材料を頂面から底面

まで二分する導電性の薄いバーであって,導電性を有する,該薄いバーとを具え,

前記頂面と底面との間に,前記ガスケット装置を通じて,前記薄いバーによる導電

路が存在しているガスケット装置

ウ 相違点1:本件補正発明は,薄いバーが「第2エラストマー材料で形成し

た」ものであって,「前記第2エラストマー材料に導電性粒子を混練して導電性を

有する」ようにしたものであり,導電路が「第2エラストマー材料の薄いバー」に




よって存在しているのに対して,引用発明は,薄いバーに相当するシールドが「1

000分の1.5インチの厚さのポリプロピレンフィルムの薄層の両側を銅で金属

被覆して導電性を有する」ようにしたものであり,導電路に相当する電導路が「シ

ールド」によって存在している点

エ 相違点2:本件補正発明は,薄いバーの幅が「0.5〜20ミルの範囲内に

ある」のに対して,引用発明は,薄いバーに相当するシールドの幅がどの程度の大

きさか明らかでない点

4 取消事由

(1) 本件補正発明の容易想到性に係る判断の誤り(取消事由1)

引用発明の認定の誤り

イ 相違点1の認定の誤り

ウ 相違点1に係る判断の誤り

エ 相違点2に係る判断の誤り

(2) 本願発明の容易想到性に係る判断の誤り(取消事由2)

第3 当事者の主張

1 取消事由1(本件補正発明の容易想到性に係る判断の誤り)について

〔原告の主張〕

(1) 引用発明の認定の誤りについて

ア 導電性外被の存在を看過した誤りについて

(ア) 本件補正発明の「薄いバー」は,ガスケット装置の頂面から底面までを二

分するものである。本件補正後の特許請求の範囲の請求項2には,薄いバー自体が

突出していることが明記されているから,本件補正発明の突出部は,薄いバーの一

部であることは明らかである。突出部を有するガスケットの場合,上側の突出部の

上面及び第1ガスケット材料の上面が「ガスケット装置の上面」であり,下側の突

出部の下面及び第1ガスケット材料の下面が「ガスケット装置の底面」に相当する

から,突出部を有するガスケットであっても,突出部を有しないガスケットと同様




に,薄いバーは,ガスケットの頂面から底面まで,ガスケット装置を通じて延在し

ており,当該「薄いバー」により,ガスケット装置を通じて導電路が形成されてい

るということができる。

(イ) 引用例によると,引用例に記載された発明のEMI遮蔽ガスケットは,導

電性外被がガスケットの配置されている継ぎ目を横切る導電性の連続性を維持し,

EMIシールドに吸収されたエネルギーは,電気伝導体(ガスケットが用いられて

いる電気器具のハウジングの壁など)と接触する導電性外被を伝わって地面に放散

されるものである。また,EMI遮蔽ガスケットは,弾性泡沫断面及びEMIシー

ルドとともに,導電性の連続性を維持する導電性外被を備え,導電性外被が電気伝

導体に接触することにより,EMIシールドに吸収されたエネルギーが地面に放散

されるものである。

すなわち,引用例に記載された発明は,導電性外被を備えることにより,はじめ

て,EMI遮蔽ガスケットとしての機能を奏することができるものであって,導電

性外被は必要不可欠な部材である。

被告は,引用例には,導電性外被を有しない構成も開示されていると主張するが,

引用例は,外被という概念とは関係なく,EMI遮蔽ガスケットの特定の構造上の

特徴について開示しており,当該構造を備えるEMI遮蔽ガスケットとしては,導

電性外被を設けた構成のみを開示しているものである。実際,引用例において,各

図とともに具体的に説明されている実施例は,全て導電性外被を備えるものである。

また,引用例の特許請求の範囲の請求項18に記載された発明も,EMI遮蔽ガ

スケットの特定の構造上の特徴を有するものにすぎず,導電性外被については何ら

記載されていない。

したがって,引用例には,導電性外被を有しない構成は開示されていないものと

いうべきである。

(ウ) 本件審決は,引用例に記載された発明に必要不可欠である導電性外被の存

在を看過して引用発明を認定したものであり,誤りである。




イ 「頂面」と「底面」という用語を複数の意味で使用している誤りについて

(ア) 本件補正発明における「長さと,頂面と,底面とを有し,電磁放射を遮蔽

するガスケット装置」とは,ガスケット装置が,長さ,頂面及び底面を有すること

を意味し,「頂面」と「底面」が,ガスケット装置の「頂面」と「底面」であるこ

とは文脈上明らかである。

また,「突出」とは,「高く鋭く突き出ること。ほかの水準にくらべて,突き出

ていること」を意味するから,頂面と底面とから突出する薄いバーは,頂面及び底

面の一部を構成しているというべきである。本件補正発明における「前記頂面と底

面とから前記第2エラストマー材料の前記薄いバーが突出している」とは,頂面及

び底面の一部を形成する薄いバーが,頂面及び底面を形成する他の部分(第1エラ

ストマー材料よりなる部分)の水準と比較して突き出ていることを意味するもので

ある。

さらに,本件補正発明は,「前記頂面と底面との間に,前記ガスケット装置を通

じて,前記第2エラストマー材料の薄いバーによる導電路が存在している」との構

成を有するものであるから,同発明の「薄いバー」は,ガスケット装置の頂面から

底面まで,ガスケット装置を通じて延在しており,当該「薄いバー」により,ガス

ケット装置を通じて導電路が形成されていることは明らかであって,上記「頂面」

と「底面」はガスケット装置の「頂面」と「底面」を意味することは明らかである。

したがって,本件補正発明における「頂面」と「底面」とは,ガスケット装置の

「頂面」と「底面」を意味するものというべきである。

(イ) 引用例の【図4】によれば,EMIシールドは,弾性泡沫断面の頂面から

底面までを二分してはいるものの,導電性外被を含むEMI遮蔽ガスケット全体を

その頂面から底面まで二分していないことは明らかである。

引用例に記載された発明の,「前記頂面と底面との間に,前記EMI遮蔽ガスケ

ットを通じて,前記シールドによる導電路が存在しているEMI遮蔽ガスケット」

における「前記頂面と底面」とは,導電性外被により形成されるEMI遮蔽ガスケ




ットの頂面及び底面を意味するのか,弾性泡沫断面の頂面及び底面のいずれを意味

するのか,不明である。

したがって,本件審決は,導電性外被により形成される「EMI遮蔽ガスケット

の頂面及び底面」と,「弾性泡沫断面の頂面及び底面」という実質的に異なる概念

とを識別することなく,「頂面」と「底面」という同じ用語で表記しているもので

あって,本件審決の引用発明の認定は,不明瞭かつ矛盾したものというほかない。

ウ 小括

以上によると,引用例に記載された発明は,次のとおり認定すべきである。なお,

下線部は原告による修正箇所を示す。

長さと,ガスケット頂面と,ガスケット 底面とを有するEMI遮蔽ガスケットに

おいて,弾性泡沫断面と,この弾性泡沫断面を弾性泡沫断面の頂面から底面まで二

分する導電性のシールドとを具え,前記EMI遮蔽ガスケットのガスケット頂面と

ガスケット底面との間に,前記EMI遮蔽ガスケットを通じて,前記シールド及び

導電性外被A,Bによる導電路が存在しているEMI遮蔽ガスケット

(2) 相違点1の認定の誤りについて

前記のとおり,本件審決の引用発明の認定は誤りであるから,相違点1の認定も,

同様に誤りであり,正しくは,次のとおり認定すべきである(以下「原告主張相違

点1」という。)。なお,下線部は原告による修正箇所を示す。

原告主張相違点1:本件補正発明では,第2エラストマー材料に導電性粒子を混

練して導電性を有するように形成した薄いバーによって第1エラストマー材料をガ

スケット装置の頂面から底面まで二分し,ガスケット装置の頂面と底面との間に,

ガスケット装置を通じて,薄いバーによる導電路を存在させているのに対し,引用

例に記載された発明では,シールドが弾性泡沫断面のみを二分しており(すなわち,

ガスケット装置の導電性外被は二分されておらず),シールド及び導電性外被A,

Bによってガスケット装置の頂面と底面との間に電導路を存在させている。

(3) 相違点1に係る判断の誤りについて




引用例に記載された発明と本件補正発明との相違点は,原告主張相違点1のとお

り認定されるべきであるところ,本件審決の相違点1の認定の是非にかかわらず,

本件審決の相違点1に係る判断は,次のとおり誤りである。

ア 薄いバーによりガスケット装置の頂面と底面との間にガスケット装置を通じ

て導電路を形成することについて

(ア) 本件補正発明の「頂面」と「底面」は,ガスケット装置の「頂面」と「底

面」を意味するから,同発明では,ガスケット装置の頂面と底面との間に,ガスケ

ット装置を通じて,第2エラストマー材料の薄いバーによる導電路が存在している。

これに対し,引用例に記載された発明のシールドは,弾性泡沫断面のみを二分す

るもので,導電性外被を二分しておらず,同発明のEMI遮蔽ガスケットでは,ガ

スケット頂面と底面との間に存在する電導路は,シールドと,導電性外被A及びB

との合計3つの部材により形成されている。

仮に,引用例に記載された発明において,当業者が導電性粒子と混練したエラス

トマー材料でシールドを形成することを想到し得たとしても,導電性粒子と混練し

たエラストマー材料でシールドを形成しただけでは,依然として,導電性外被A及

びBを備えることにより,ガスケット装置の頂面と底面との間に導電路が形成され

るのであって,シールドのみによりガスケット装置を通じて導電路が形成されるこ

とはない。

したがって,引用例に記載された発明において,エラストマー材料に導電性粒子

を混練して形成したシールドを用いたとしても,本件補正発明の構成である,ガス

ケット装置の頂面と底面との間に,エラストマー材料のシールドによる導電路を,

ガスケット装置を通じて存在させる構成に想到することはできない。

(イ) 引用例に記載された発明において,仮に,ガスケット頂面及び底面までシ

ールドを延在させることによりシールドによる導電路を形成したり,導電性外被を

配置しないことによりシールドをガスケット頂面及び底面まで延在させて導電路を

形成すると,シールドを構成する金属材料がハウジングの壁などと直接接触し,異




なる金属の緊密な接触により生じる電流で腐食が生じ,引用例に記載された発明の

目的である,腐食の防止を達成することはできない。

したがって,当業者は,何らの動機付けなくして,そのような試みをすることは

しないというべきである。

イ 薄いバーを形成する材料について

本件審決は,電磁放射を遮蔽するガスケット装置において,シールド部材をエラ

ストマー材料に銀などの導電性粒子を混合して形成することは,当業者であれば容

易に想到し得るとする。

しかしながら,周知例1及び2は,金属粉等の導電性粒子を含有するゴムを,電

磁波シールド用のパッキンのゴム層に使用し得ることを開示するのみであって,引

用例に記載された発明のように,吸収したエネルギーを地面に放散する機構を前提

としていない。引用例に記載された発明のようなEMIガスケットにおいて,地面

に接地させるガスケット部分(導電路)ではなく,遮蔽メカニズムを構成する部分

(ガスケット内部に存在するシールド)の材料として,金属粉等の導電性粒子を含

有するゴムを使用することまで,周知技術であるということはできない。

また,引用例に記載された発明のシールドは,電磁干渉を吸収及び/又は反射す

るための部材であるのに対し,導電性外被は,導電体と電気的に接触することによ

りシールドが吸収したエネルギーを地面に放散するとともに,腐食の発生を抑制す

るための部材であるから,求められる機能が異なる2つの部材について,一方の部

材の材料を変更した際,必ずしも他方の部材も同材料とするわけではない。

したがって,シールドの材料として,エラストマー材料に導電性粒子を混練した

材料を使用することが周知技術であることを前提として,当業者が,エラストマー

材料に導電性粒子を混練して導電性を有するシールドとすることを容易に想到し得

るとした本件審決の判断は,誤りである。

ウ 小括

以上によると,本件審決の相違点1に係る判断は誤りである。




(4) 相違点2に係る判断の誤りについて

本件審決は,薄いバーの幅について,本件補正発明の数値範囲に臨界的な意義が

認められず,当業者が適宜行うことができる範囲内の事項であるとする。

しかしながら,第1エラストマー材料をガスケット装置の頂面から底面まで二分

する薄いバーを有するガスケット装置において,圧縮性向上,コスト低減及び電気

的接触域の確保の全てを実現するために薄いバーの幅を規定するという技術思想自

体,引用例並びに周知例1及び2には存在しないのであるから,当業者は,周知技

術に基づいて,薄いバーの幅を数値限定することに想到し得ないものである。

したがって,本件審決の相違点2に係る判断は誤りである。

(5) 本件補正発明の奏する顕著な効果について

本件審決は,本件補正発明が奏する効果は,引用例に記載された発明及び周知技

術から当業者が予測し得る範囲内のものであって,格別なものとはいえないとする。

しかしながら,引用例に記載された発明のガスケットは,導電性外被を有してい

るため,簡便な製造方法での製造が不可能であり,多数の工程を経る必要がある。

これに対し,本件補正発明は,優れた遮蔽効果を発揮するのみならず,簡便な製

造方法での製造が可能となるなど,引用例に記載された発明及び周知技術からは当

業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものである。

(6) 小括

以上のとおり,本件審決は,引用例に記載された発明の認定並びに本件補正発明

と引用例に記載された発明との相違点の認定を誤り,相違点に係る判断を誤ったも

のといわざるを得ず,したがって,本件補正発明は,引用発明及び周知技術に基づ

いて,当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

〔被告の主張〕

(1) 引用発明の認定の誤りについて

ア 導電性外被の存在を看過した誤りについて

(ア) 本件補正明細書には,第1ガスケット材料の頂面(底面)と導電バーの頂




面(底面)とが一致し,突出部を有しないガスケットに関する実施例と,第1ガス

ケット材料の頂面(底面)から第2材料が突出し,第2材料の区域(突出部)を有

するガスケットに関する実施例が開示されている。

そして,本件補正後の特許請求の範囲の請求項2には,「前記頂面と底面とから

前記第2エラストマー材料の前記薄いバーが突出している請求項1のガスケット装

置」と記載され,さらに,同請求項3には,「前記第2エラストマー材料の突出し

ている部分の幅が前記薄いバーの幅より一層大きい請求項2のガスケット装置」と

記載されていることからすると,本件補正発明は,突出部の有無については特定し

ない上位概念のガスケットに関する発明であるというべきである。

(イ) 引用例では,導電性外被を必要不可欠なものとはしないEMI遮蔽ガスケ

ットがまず開示され,その下位概念として導電性外被を有するEMI遮蔽ガスケッ

トが記載されているのであり,導電性外被を有する実施例について具体的に説明さ

れているからといって,引用発明が導電性外被を有する構成に限定されるわけでは

ない。実際,引用例の特許請求の範囲の請求項18には,導電性外被を有しない構

成が発明として特定され,請求項1には,導電性外被を有する構成が発明として特

定されているのである。

したがって,引用発明のEMI遮蔽ガスケットにおいて,導電性外被は必要不可

欠な部材であるとの原告の主張は失当である。

(ウ) 本件審決は,本件補正発明が「突出部を有しないガスケット」のみならず,

「突出部を有するガスケット」をも含む上位概念の発明であることから,引用発明

についても,引用例の記載事項を総合し,本件補正発明の記載に倣って整理して,

「導電性外被を有しないガスケット」と「導電性外被を有するガスケット」とを含

上位概念の発明として認定したものである。

イ 「頂面」と「底面」という用語を複数の意味で使用している誤りについて

(ア) 本件補正発明における「第1エラストマー材料を頂面から底面まで」の

「頂面」と「底面」は,文理解釈上,「第1エラストマー材料」の「頂面」と「底




面」を意味することは明らかである。

他方,本件補正発明における「長さと,頂面と,底面とを有し,電磁放射を遮蔽

するガスケット装置」の「頂面」と「底面」は,文理解釈上,ガスケット装置が

「頂面」と「底面」を有することを意味するとしても,それが具体的に何の「頂

面」と「底面」を意味するのかは不明である。

もっとも,本件補正発明における「前記頂面と底面との間に,前記ガスケット装

置を通じて,前記第2エラストマー材料の薄いバーによる導電路が存在している」

の「頂面」と「底面」は「前記」のものとされていること,前記ア(ア)の本件補正

後の特許請求の範囲の請求項2及び3の記載によると,本件補正発明の頂面(底

面)は,その面よりも上(下)を第2エラストマー材料が覆い得るものであること

からすると,第2エラストマー材料が覆う面は,第1エラストマー材料の面にほか

ならない。

(イ) したがって,本件補正発明の「頂面」と「底面」とは,第1エラストマー

材料の「頂面」と「底面」と解すべきである。

ウ 小括

以上によると,本件審決の引用発明の認定に誤りはない。

(2) 相違点1の認定の誤りについて

本件審決の引用発明の認定に誤りがない以上,相違点1の認定についても,同様

に,誤りはない。

(3) 相違点1に係る判断の誤りについて

ア 薄いバーによりガスケット装置の頂面と底面との間にガスケット装置を通じ

て導電路を形成することについて

(ア) 引用発明は,導電性外被を有しない構成を含むものであるから,当該構成

では,ガスケット頂面と底面との間に存在する電導路は,シールドのみによって形

成されることになり,エラストマー材料に導電性粒子を混練して形成したシールド

を採用すれば,本件補正発明の構成である,ガスケット装置の頂面と底面との間に,




ガスケット装置を通じて,エラストマー材料のシールドによる導電路が存在する構

成に想到し得ることは明らかである。

引用発明のうち,導電性外被を有する構成の場合,ガスケット頂面と底面との間

に存在する電導路は,シールドと,導電性外被A及びBとの合計3つの部材により

形成されることになる。しかし,本件補正発明のうち,突出部を有する構成におい

ては,導電路は薄いバーと上下の突出部との合計3つの部材により形成されること

になり,引用発明との間に差異は存在しない。

また,引用発明のシールドは,弾性泡沫断面のみを二分しており,導電性外被を

二分していないが,本件補正発明の薄いバーも,第1ガスケット材料(第1エラス

トマー材料)のみを二分しており,突出部を二分するものではないから,この点に

ついても差異は存在しない。

(イ) 原告は,引用発明において,導電性外被は必要不可欠であると主張するが,

当該主張は,本件補正発明が突出部を有しない構成に限定され,引用発明が導電性

外被を有する構成に限定されることを前提とするものであるから,原告の主張はそ

の前提自体が誤りである。

また,引用例には,電流による腐食が存在しない応用例が記載されているから,

腐食の問題は,引用発明において導電性外被を配置しないことの阻害要因とはなら

ない。しかも,腐食の問題は,当業者が容易に解決し得る問題にすぎない。

(ウ) 引用例によると,引用発明において,導電性外被は必須ではないが,ガス

ケットを電気器具のハウジングと電気的に接触させることが望ましいとされている。

本件補正発明においても同様であると解される。

したがって,仮に,引用例において,導電性外被を有しない構成が開示されてい

ないとしても,引用発明において導電性外被を取り除くことは,当業者であれば必

要に応じて適宜容易になし得ることというべきである。

イ 薄いバーを形成する材料について

引用発明のうち,導電性外被を有する構成と,本件補正発明のうち,突出部を有




する構成とは,いずれも突出部(導電性外被)と薄いバー(シールド)とを備えて

いる点で一致しており,引用発明のうち,導電性外被を有しない構成と,本件補正

発明のうち,突出部を有しない構成とは,いずれも薄いバー(シールド)を備えて

いる点で一致しているから,いずれにせよ相違点1は,薄いバーとシールドとの材

料における相違にすぎない。

また,本件審決は,電磁放射を遮蔽するガスケット装置において,シールド部材

をエラストマー材料に銀などの導電性粒子を混合して形成することの具体例として,

周知例1及び2を例示したものであり,これらはいずれも電磁エネルギーを反射及

び/又は吸収することによって継ぎ目を通る電磁干渉を抑制する機能を有するもの

である。引用発明においても,同様の機能を有するのであるから,シールドについ

て,同様の機能を果たす上記周知技術を適用することは,当業者であれば容易に想

到し得るものである。

ウ 小括

以上のとおり,本件審決の相違点1に係る判断に誤りはない。

(4) 相違点2に係る判断の誤りについて

引用発明も,本件補正発明と同様に,電気的接触域の確保と圧縮性やコストの低

減を課題とするものである。

また,本件補正発明における薄いバーの幅に係る数値範囲には,臨界的意義を認

めることができないから,薄いバーの幅を規定することについて,格別な技術的意

義を見いだすこともできない。

したがって,当業者が,上記課題を解決するために,薄いバーの幅を適宜設定す

ることは,設計的事項にすぎないというべきである。

以上のとおり,本件審決の相違点2に係る判断に誤りはない。

(5) 本件補正発明の奏する顕著な効果について

引用発明も優れた遮蔽効果を奏するものであるところ,本件補正発明が引用発明

と比較して格別顕著な作用効果を奏することを裏付ける具体的証拠はない。




また,引用例は,導電性外被を有しない構成についても開示しており,当該構成

は,導電性外被を有する構成と比較して,簡便に製造できることは明らかである。

したがって,原告が主張する本件補正発明の効果は,引用発明及び周知技術から

当業者が予測し得る範囲内のものであって,格別顕著なものということはできない。

(6) 小括

本件審決の引用発明の認定,本件補正発明と引用発明との相違点の認定並びに相

違点に係る判断には,以上のとおり,誤りはなく,したがって,本件補正発明は,

引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものと

いうべきである。

2 取消事由2(本願発明の容易想到性に係る判断の誤り)について

〔原告の主張〕

取消事由1について主張したとおり,本件補正発明は,引用例に記載された発明

及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから,

特許出願の際独立して特許を受けることができないものということはできず,本件

補正を却下した本件審決の判断は誤りである。

また,本件補正発明が,引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者

容易に発明をすることができたものではない以上,本願発明も,同様に,引用例

に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができた

ものということができないことは,明らかである。

したがって,本件審決の本願発明の容易想到性に係る判断は誤りである。

〔被告の主張〕

取消事由1について主張したとおり,本件補正発明は,引用発明及び周知技術

基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許出願の際

独立して特許を受けることができないものというべきであって,本件補正を却下し

た本件審決の判断に誤りはない。

したがって,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに限定を加えた本件補正




発明が,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができ

たものである以上,本願発明も,同様に,引用発明及び周知技術に基づいて,当業

者が容易に発明をすることができたものであるとした本件審決の判断に誤りはない。

第4 当裁判所の判断

1 本件補正発明について

本件補正発明の特許請求の範囲は,前記第2の2(2)に記載のとおりであるところ,

本件補正明細書(甲5〜8)には,おおむね次の記載がある。

(1) 本件補正発明は,電子装置を電磁干渉から遮蔽することに関し,また特に,

有効な電磁シ−ルを行うのに必要な導電材料の量を最少にするガスケットに関する

発明である(【0001】)。

特に,コンピュータ産業では,装置に種々の開口又は継ぎ目があり,装置内から

エネルギーを周囲に放射する可能性があるため,電磁干渉を遮蔽する必要がある

(【0002】)。

現在,電磁干渉を遮蔽する最も普通の方法は,導電編成組織を巻き付けた熱可塑

性発泡体を用いたガスケットによってシールする方法である。このガスケットは,

I/Oバックプレーンの開口の幅にほぼ相当する幅を有するストリップ状で,厚さ

は約3.2mm(1/8インチ) であり,コネクタと中間不銹鋼板との間を接触さ

せるには十分な形状を有する。編成ストリップの孔はダイスにより切除してあり,

最終使用者がコネクタに接近することが可能である。大地への終端は編成組織によ

って行う。この編成組織はコネクタベースに接触しており,中間板に接地している。

中間板はフレームに接触していなければならず,通常,この接触は数個の不銹鋼指

片によって達成できる。この指片は中間板の端縁から突出しており,フレームの内

壁を摩擦する(【0004】)。

この従来技術では,いずれの端部においても,エネルギーが漏出し,エネルギー

の集中又はアンテナ効果が生じるという問題点がある(【0005】)。

また,発泡体心部が特にウレタン発泡体の場合,圧縮により変形してしまう傾向




があるのみならず,編成組織はストリップに剛性を与えるから,ガスケットを圧縮

するために必要な変形の力を増大してしまうという問題点もある(【0006】)。

さらに,製造のためには多数の工程が必要であることや(【0007】),中間

板自体が脆弱であり,ガスケットの圧縮負荷のための支持材としては,最適なもの

とはいえないという問題点もある(【0008】)。

(2) 本件補正発明は,導電エラストマー材料の薄いストリップ(バー)を第1ガ

スケット材料内に介挿し,導電バーが露出しているガスケットの両側の導電表面間

に導電路を生じさせるものである(【0009】)。

本件補正発明の他の態様は,ガスケットをほぼ平坦なものにし,第1ガスケット

材料の一部を切除し,I/Oバックプレーンのために,ガスケットにおいて望まし

いようにコネクタを貫通し得るようにするものである。切除部は導電バーをコネク

タに対して露出することにより,接地のための導電路を提供する(【0010】)。

本件補正発明は,有効な電磁干渉の遮蔽を達成すること,使用する高価な導電材

料を最少にする可撓性導電ガスケットを得ることを目的とする(【0011】)。

(3) 本件補正発明のガスケットは,容易に圧縮できる押出発泡体から基本的に製

造されており,間けつ的に離間する4つの導電バーを有する。熱可塑性発泡体の欠

点に鑑み,基本的なガスケット材料は圧縮変形に対する優れた抵抗を呈するシリコ

ーンのような非導電性の熱硬化性ゴムであるのが好ましい(【0014】)。

非常に薄い4つの導電ゴムバーを使用して,ガスケットを通ずる中間板への接地

を行う。導電バーは頂部から底部までの接地をするよう,横断面に貫通して突出し

ていることにより,圧縮可能な押出発泡体又はスポンジのセグメントを相互に分離

している。押出発泡体の厚さは中間板とコネクタハウジングとの間の接地部への代

表的な通路の長さであり,これにより導電路を最小にし,シールド効果値を改善す

る。従来技術では,電磁波が大地に達するためには,ガスケットの周縁の周りに完

全に迂回移動し,反射,放射,屈折及び他の表面へのエスケープが生じる可能性が

あったが,本件補正発明の導電バーは,導電クロスを用いた製品と比較して,優れ




た遮蔽効果を発揮する(【0017】)。

本件補正発明の導電バーは,良好な電気的性能を発揮し,可撓性を有するゴム引

き導電金属であるのが好ましい。いかなるゴム結合剤を用いてもよく,金属として

は銀,ニッケル,アルミニウム,銅及び不銹鋼がある。導電性の銀又はニッケル粒

子を有するシリコーン結合剤は良好に作用する(【0018】)。

本件補正発明の導電バーの幅を最小にすれば圧縮性が向上し,コストを減らすこ

とができる。2ないし6ミルが好ましいが,0.5ないし20ミルの範囲にある場

合,可撓性と導電性との良好なバランスが得られる(【0020】)。

本件補正発明は,コンピュータのI/Oバックプレーンの特定の問題点を解決す

るガスケットのみならず,D字状バルブ又はP字状バルブのような古くからのガス

ケットに代わり,形状の中心に貫通する1個の導電バーを有するストリップとして

の一層小さなシールガスケットにも使用することができ,高価な金属の使用量を最

少にすることから,従来の導電ガスケットよりもコストを節約することができる。

このような形態の実施例では,ガスケットの全長に延びている導電バーを有する長

方形の横断面のストリップガスケットの第1ガスケット材料は,導電バーの両側に

ある。ガスケットのための溝状受容器を有する電子包囲体内のガスケットは,包囲

体から蓋に接地する(【0028】【0029】【図9】【図10】)。

従来技術と同様の横断面を有する導電ガスケットも,本件補正発明を利用して製

造できる。本件補正発明の第1ガスケット材料から製造された横断面がD字状,P

字状及びO字状のガスケットに係る実施例では,導電性の第2材料からなる薄いバ

ーはガスケットをその頂部から底部まで二分している。例えばD字状及びO字状の

数個の共通な横断面形状では,好ましいことに2つの等しい横断面に二分されてい

るが,本件補正発明は,そのような形状に限定されるものではない。例えば50ミ

ルから25.4mm(1インチ)までの代表的な全体の厚さを有するガスケットの

場合,薄いバーは通常,0.5ないし20ミルの厚さの範囲内にあり,2ないし1

0ミルの厚さの範囲が好ましい。このガスケットの頂面及び底面(すなわち,導電




包囲体に接触しようとする表面)で,第2材料の区域が表面から僅かに突出してい

るのが好ましく,良好な電気的接触区域を得るためには,この第2材料の区域はバ

ーの厚さより一層広いのが好ましい。第2材料の表面の突出部は高さを4ミル程度,

幅を少なくとも20ミル(50ミルより広いことが好ましい。)とすれば,十分な

電気的接触区域が確保される(【0030】【図11A】〜【図11C】)。

2 取消事由1(本件補正発明の容易想到性に係る判断の誤り)について

(1) 引用例の記載について

引用例(甲1)には,おおむね次の記載がある。

ア 特許請求の範囲

(ア) 請求項1:第1及び第2の導電体間の継ぎ目を通過する電磁干渉を遮蔽す

るガスケットであって,当該ガスケットが,弾性泡沫断面;第1及び第2の導電体

間の継ぎ目を通過する電磁干渉を遮蔽するために泡沫断面内に埋め込まれているシ

ールド;及び泡沫断面の外側表面の少なくとも一部分を覆い,シールドと電気的に

接触する継ぎ目のない導電性外被であって,シールドから第1の導電体へと電流を

伝えるために該断面に配置されている当該外被を含む,当該電磁干渉遮蔽ガスケッ



(イ) 請求項18:第1及び第2の導電体間の継ぎ目を通過する電磁干渉を遮蔽

するガスケットであって,当該ガスケットが,縦軸に沿う細長い弾性泡沫断面;及

び 第1及び第2の導電体間の継ぎ目を通過する電磁干渉を遮蔽するために泡沫断面

内に埋め込まれている,縦軸に平行な方向に伸長するシールドを含む,当該電磁干

渉遮蔽ガスケット

イ 発明の背景

(ア) 引用例に記載された発明は,一般に電磁干渉(EMI)遮蔽用ガスケット,

特に,弾性泡沫断面に埋め込まれたEMIシールドを含むEMI遮蔽用ガスケット

に関する発明である。

電子装置の操作中に生じた電磁エネルギーが適切に遮蔽できない場合,他の電子




装置と干渉する可能性がある。電磁干渉を回避するためには,全ての電磁エネルギ

ー源を適切に遮蔽し,地面に放散させることが必要である。

しかしながら,アクセスパネルを有する装置では,アクセスパネル又は扉とハウ

ジングとの間の間隙が,電磁干渉の自然な漏出ルート及び侵入ルートとなることか

ら,効果的な遮蔽は困難である。

(イ) 電磁干渉に対する効果的なシールドとして用いられるガスケットは,電磁

干渉を吸収及び/又は反射することができ,さらにガスケットが配置されている継

ぎ目に対して可能な限り連続的な電導路を確立することができるものでなければな

らない。高い導電率を有する金属構造物がEMI遮蔽に用いられるが,導電率は無

限ではないので,遮蔽された電磁場の一部分はシールドの向こうに伝えられ,シー

ルド内の電流を支援するため,この電流を地面に放散させる電導路が必要となる。

従来のEMI遮蔽ガスケットは,このような特性と,一定の最小閉鎖抵抗を提供

すること等のガスケットとして必要な他の特性を両立させることができなかった。

また,EMI遮蔽ガスケットは,異なる金属が互いに接触した際に生じる電流によ

る腐食によって損傷を受けないという特性を有していることも重要である。

(ウ) 引用例に記載された発明は,電気器具のハウジング内の継ぎ目を通る電磁

干渉の遮蔽を改良すること,構築コストを低くすること,遮蔽用に広範囲の材料を

利用できるようにすること,小さな断面を有することによってハウジングの扉及び

アクセスパネルに対する閉鎖抵抗を最小にすることを目的とするものである。

ウ 発明の要旨

引用例に記載された発明は,前記イ(ウ)の各目的を達成するために,2つの導電

体間の継ぎ目を通る電磁干渉を遮蔽する構成を採用するものである。引用例に記載

された発明は,弾性泡沫断面に埋め込まれた電磁シールドの構成を有するものもあ

り,このガスケットを2物体間の継ぎ目に配置すると,シールドが電磁エネルギー

を反射及び/又は吸収することによって継ぎ目を通る電磁干渉を抑制する。

また,ガスケットは,泡沫断面の外側表面の少なくとも一部分を覆う,継ぎ目が




ない導電性の外被を有してもよい。この導電性外被は,EMIシールドだけではな

く,継ぎ目を囲む複数の導電体の少なくとも一方とも電気的に接触するように泡沫

断面上に配置されており,通過する電磁干渉の結果として,EMIシールドによっ

て吸収されたエネルギーは地面に放散され,ガスケットの適切な作動が促進される。

そのほか,EMIシールドは,金属性材料のヒモ,金属被覆糸,金属被覆布,金

属被覆繊維及びそれらの組合せによるものであってもよい。

エ 詳細な説明

(ア) 引用例に記載された発明の実施例では,泡沫断面によるガスケットは,長

方形の横断面を有し,軸に沿って伸長する。代表的なガスケットのサイズは,各末

端について約0.1インチから0.5インチの範囲であるが,必要に応じて,種々

の断面とサイズとで形成することができる。

(イ) ガスケットには,電磁干渉を反射及び/又は吸収する遮蔽メカニズムや,

シールドから吸収エネルギーを放散させるために地面に向かう電導路の2つの構成

部分が適切なEMI遮蔽のために必要である。

(ウ) EMIシールドは,例えば,1000分の1.5インチの厚さのポリプロ

ピレンフィルムの薄層の両側を銅で金属被覆したポリエステルの不織布の膜から形

成されたものや,金属被覆糸や金属箔により形成されたもののみならず,種々の材

料及び構造のものでもよい。

また,導電性外被についても,種々の材料を使用することができる。例えば,約

85重量%のサントプレンの熱可塑性エラストマー樹脂と,約15重量%の電導カ

ーボン粒子とを混合すれば,適切な組成物となる。

(エ) 引用例に記載された発明は,電流による腐食及び天然元素に対する曝露を

避ける構成を有する実施例もある。この場合,ハウジングを形成する材料は,腐食

や曝露に配慮した材料を選択することになる(【図2】)。

引用例に記載された発明の別の実施例では,ガスケットは,泡沫断面を完全には

取り囲んではいない導電性外被を有する。外被断面は,EMIシールドの先端がそ




の外側表面を突き破る場所でのみ泡沫断面の外側表面に配置され,外被断面とシー

ルドとの間の電気的接触を効果的にする。このようなガスケットは,閉鎖力が小さ

いことが要求される部位で使用するのが望ましい(【図4】)。

(2) 本件審決の引用発明の認定の当否

ア 導電性外被の存在を看過した誤りについて

(ア) 前記1(3)によると,本件補正明細書には,本件補正発明の実施例として,

第1ガスケット材料の頂面(底面)と導電バーの頂面(底面)とが一致する,突出

部を有しないガスケット(【0029】【図9】【図10】)が記載され,また,

別の実施例として,第1ガスケット材料の頂面(底面)から第2材料が突出し,第

2材料の区域を有するガスケット(突出部を有するガスケット。【図11A】〜

【図11C】)が,それぞれ記載されているものである。

また,本件補正後の特許請求の範囲の請求項2及び3は,「前記頂面と底面とか

ら前記第2エラストマー材料の前記薄いバーが突出している請求項1のガスケット

装置」「前記第2エラストマー材料の突出している部分の幅が前記薄いバーの幅よ

り一層大きい請求項2のガスケット装置」と定めていることからすると,本件補正

発明は,上記請求項2及び3のガスケットの上位概念である,突出部の有無につい

ては特定しないガスケットが記載され,上記請求項3には,【図11A】などに図

示された突出部を有するガスケットが記載されているものということができる。

したがって,本件補正発明は,突出部を有するガスケット及び突出部を有しない

ガスケットのいずれをも含む発明であると解すべきである。

(イ) 前記(1)ウによると,引用例に記載された発明も,弾性泡沫断面に埋め込ま

れた電磁シールドの構成を有するものと,泡沫断面の外側表面の少なくとも一部分

を覆う,継ぎ目がない導電性の外被を有するものとがあるから,引用例には,シー

ルドのみを有する,導電性外被を有しないガスケットと,シールドのみならず導電

性外被を有するガスケットのいずれについても開示されているか,少なくとも示唆

されているものということができる。




また,前記(1)アによると,引用例の特許請求の範囲の請求項18には,導電性外

被が発明特定事項とはされていないから,導電性外被を有しないガスケットに係る

発明が記載されているものであり,同請求項1には,導電性外被が発明特定事項

されているから,導電性外被を有するガスケットに係る発明が記載されているもの

ということができる。

したがって,引用例に記載された発明は,導電性外被を有するガスケット及び導

電性外被を有しないガスケットのいずれをも含む発明であると解すべきである。

(ウ) この点について,原告は,引用例に記載された発明に必要不可欠な導電性

外被の存在を看過した本件審決の認定は,誤りであると主張する。

しかしながら,前記のとおり,引用例には,導電性外被を有するガスケット及び

導電性外被を有しないガスケットのいずれをも含む発明が開示されているものであ

るから,引用例に記載された発明において,導電性外被が必要不可欠の構成である

ということはできない。

したがって,原告の前記主張は,その前提自体が誤りであって,採用することが

できない。

イ 「頂面」と「底面」という用語を複数の意味で使用している誤りについて

引用例に記載された発明は,導電性外被を有するガスケット及び導電性外被を有

しないガスケットのいずれをも含む発明であるところ,弾性泡沫断面,シールド及

び導電性外被の位置関係は明瞭であって,導電性外被を有するガスケットの場合,

「長さと,頂面と,底面とを有するEMI遮蔽ガスケット」は,導電性外被の頂面

及び底面を意味し,導電性外被を有しないガスケットの場合,弾性泡沫断面の頂面

及び底面を意味するものということができる。

原告は,引用例に記載された発明が,導電性外被を有する構成に限定されること

を前提として,導電性外被により形成される「EMI遮蔽ガスケットの頂面及び底

面」と,「弾性泡沫断面の頂面及び底面」という実質的に異なる概念とを識別して

いない本件審決の引用発明の認定は,不明瞭かつ矛盾したものであると主張する。




しかしながら,引用例に記載された発明は,導電性外被を有するガスケットに限

定されるものではなく,また,弾性泡沫断面,シールド及び導電性外被の位置関係

も明瞭である以上,原告の主張は,その前提自体が誤りである。

したがって,原告の前記主張は採用できない。

ウ 小括

以上のとおり,本件審決の引用発明の認定に誤りはない。

(3) 相違点1の認定の誤りについて

原告は,本件審決の引用発明の認定が誤りであることを前提として,相違点1の

認定もまた,誤りであると主張するが,その前提自体に理由がないことは,前記(2)

のとおりである。

したがって,原告の主張は採用できず,本件審決の相違点1の認定に誤りはない。

(4) 相違点1に係る判断の誤りについて

ア シールド部材をエラストマー材料に導電性粒子を混合して形成することの動

機付けについて,

(ア) 周知例1(甲2)は,電磁波シールド用パッキンに係る文献であるところ,

同文献には,従来,電磁波シールド用パッキン(ガスケット)としては,シリコー

ンゴムに金属粉などを配合した銀系シリコーンゴム,ニッケル系,銀系などのシリ

コーンゴムを材料として金型により成形しているが,材料内部に多量の金属充I剤

を含むために硬く,筐体間に実装するのが困難である場合があったこと,充I剤を

減らすと,電磁波シールド効果も減少すること, 電磁波シールド用パッキンにおい

て,隙間から外部に漏洩する恐れのある電磁波はパッキンの電磁波シールド層によ

って遮断することにより,シールド効果が発揮されることが記載されている。

(イ) 周知例2(甲3)は,導電性パッキンに係る文献であるところ,導電性パ

ッキンのゴムにカーボンブラックや金属粉,金属短繊維等の導電性フィラーを混入

すると,導電性が付与され,装置本体と扉との間をシールし,電磁波シールドとし

ての効果が発揮されることが記載されている。




(ウ) 以上によると,電磁放射を遮蔽するガスケット装置において,シールド部

材をエラストマー材料に銀などの導電性粒子を混合して形成することは,本件優先

日前に周知技術であったものと認めることができる。

(エ) 前記(1)エ(ウ)によると,引用例には,引用発明において,EMIシールド

が種々の材料及び構造のものでもよいことが開示されているから,EMIシールド

を他の材料や構造のものに変更することが記載又は示唆されているということがで

きる。

したがって,引用発明において,引用例の記載や示唆に倣い,EMIシールドに

ついて,シールド部材をエラストマー材料に銀などの導電性粒子を混合して導電性

を有するシールドに形成する前記周知技術を適用することは,当業者が容易に想到

し得るものというべきである。

イ 原告の主張について

(ア) 原告は,仮に,引用発明において当業者が導電性粒子と混練したエラスト

マー材料でシールドを形成することを想到し得たとしても,導電性外被A及びBを

備えることにより,ガスケット装置の頂面と底面との間に導電路が形成されるので

あって,シールドのみにより,導電路がガスケット装置を通じて形成されることは

ないから,引用発明において,エラストマー材料に導電性粒子を混練して形成した

シールドを用いたとしても,本件補正発明の構成である,ガスケット装置の頂面と

底面との間に,エラストマー材料のシールドによる導電路を,ガスケット装置を通

じて存在させる構成に想到することはできないと主張する。

しかしながら,原告の主張は,引用発明が導電性外被を有する構成に限定される

ことを前提とするものであって,その前提自体が誤りである。引用発明は,導電性

外被を有しない構成をも含んでおり,その場合,EMI遮蔽ガスケットの頂面とガ

スケット底面との間に存在する電導路は,シールドのみによって形成されることに

なり,本件補正発明と同様の構成を実現することができるものである。

また,本件補正発明は,突出部を有する構成をも含んでおり,その場合,本件補




正発明においても,導電路は薄いバーと上下の突出部との合計3つの部材により形

成されることになり,この点に関しても引用発明との間に差異は存在しない。

(イ) 原告は,引用発明において,ガスケット頂面及び底面までシールドを延在

させることによりシールドによる導電路を形成したり,導電性外被を配置しないこ

とによりシールドをガスケット頂面及び底面まで延在させて導電路を形成すると,

異なる金属の緊密な接触により生じる電流で腐食が生じるため,引用発明の目的を

達成することができなくなるから,当業者は,何らの動機付けなくして,そのよう

な試みをすることはしないと主張する。

しかしながら,電流による腐食が問題とならない環境(水分が抑制された環境

等)においては,腐食の防止を考慮する必要はないし,前記(1)エ(エ)によると,引

用例には,電流による腐食が生じない実施例も開示されているから,腐食の問題は,

引用発明において導電性外被を配置しないことの阻害要因とはならない。しかも,

腐食発生の問題は,当業者が材料の選択により容易に解決し得る問題である。

(ウ) 原告は,引用発明のようなEMIガスケットにおいて,地面に接地させる

ガスケット部分ではなく,遮蔽メカニズムを構成する部分の材料として,金属粉等

の導電性粒子を含有するゴムを使用することまで,周知技術であるということはで

きないし,引用発明のシールドは,電磁干渉を吸収及び/又は反射するための部材

であるのに対し,導電性外被は,導電体と電気的に接触することによりシールドが

吸収したエネルギーを地面に放散するとともに,腐食の発生を抑制するための部材

であるから,機能が異なる2つの部材について,一方の部材の材料を変更した際,

必ずしも他方の部材も同材料とするわけではないと主張する。

しかしながら,本件補正発明は,突出部を有するガスケット及び突出部を有しな

いガスケットのいずれをも含む発明であり,引用発明も,導電性外被を有するガス

ケット及び導電性外被を有しないガスケットのいずれをも含む発明である。

引用発明が導電性外被を有するガスケットであり,本件補正発明が突出部を有す

るガスケットであるとすると,いずれも突出部(導電性外被)と薄いバー(シール




ド)とを備えている点で一致しており,本件補正発明と引用発明との相違点1は,

薄いバーとシールドとの材料の相違にすぎないことになる。

また,引用発明が導電性外被を有しないガスケットであり,本件補正発明が突出

部を有しないガスケットとであるとすると,いずれも薄いバー(シールド)を備え

ている点で一致しており,本件補正発明と引用発明との相違点1は,薄いバーとシ

ールドとの材料の相違にすぎないことになる。

したがって,相違点1は,いずれにせよ,薄いバーとシールドとの材料の相違で

あるということができるところ,前記ア(ア)及び(イ)のとおり,周知技術は,いず

れも電磁エネルギーを反射及び/又は吸収することによって継ぎ目を通る電磁干渉

を抑制する機能を奏するものであり,引用発明においても,シールドは,電磁エネ

ルギーを反射及び/又は吸収することによって継ぎ目を通る電磁干渉を抑制する機

能を奏するものであるから,引用発明のシールドに,同様の機能を発揮する周知技

術を適用することは,当業者であれば容易に想到し得ることである。

また,前記(1)エ(ウ)によると,引用例には,導電性外被として,金属被覆以外の

エラストマー樹脂を用いたものも開示されているから,引用発明において,エラス

トマー材料に導電性粒子を混練して形成したシールドを採用する際,併せて導電性

外被も同一の材料とすることは,むしろ合理的である。

(エ) 以上のとおり,原告の前記主張はいずれも採用できない。

ウ 小括

よって,当業者は,引用発明及び周知技術に基づいて,相違点1の構成に容易に

想到し得るものというべきであって,本件審決の相違点1に係る判断に誤りはない。

(5) 相違点2に係る判断の誤りについて

ア 前記1(3)によると,本件補正明細書には,薄いバーの幅の好適な範囲は,ガ

スケットの全体の厚さに応じて定まること(【0030】),薄いバーの幅の数値

範囲は,圧縮性やコストの観点からすると,小さいほど好ましいが,可撓性や導電

性との良好なバランスを考慮すると,0.5ないし20ミルの範囲にあることが望




ましいこと(【0020】)が開示されているということができる。

しかしながら,本件補正明細書の記載からすると,上記数値範囲の上限及び下限

の数値を境にして,特性に急激な変化があるとまで認めることはできず,また,ガ

スケットの材料や配合比が異なれば,圧縮性やコストも異なることは技術常識であ

る。

したがって,本件補正発明の薄いバーの幅に係る数値限定には,臨界的な意義が

あるとまで認めることはできず,この数値限定は,当業者が適宜行うことができる

範囲内の設計的事項であるというべきである。

イ 前記(1)エ(ウ)によると,引用例には,シールドの厚さについて,1000分

の1.5インチ(1.5ミルに相当)の厚さのポリプロピレンフィルムの薄層の両

側を銅で金属被覆した構成が開示されているから,引用例には,本件補正発明の数

値範囲内の数値が記載又は示唆されているものということができる。

ウ したがって,薄いバーの幅について,相違点2に係る数値範囲に設定するこ

とは,当業者が容易に想到し得るものというべきである。

この点について,原告は,第1エラストマー材料をガスケット装置の頂面から底

面まで二分する薄いバーを有するガスケット装置において,圧縮性向上,コスト低

減及び電気的接触域の確保の全てを実現するために薄いバーの幅を規定するという

技術思想自体,引用例並びに周知例1及び2には存在しないから,当業者は,周知

技術に基づいて,薄いバーの幅を数値限定することに想到し得ないと主張する。

しかしながら,前記(1)イ(ウ)のとおり,引用例には,引用発明の課題として,電

磁干渉の遮蔽の改良,構築コストの低減,閉鎖抵抗を最小にすることなどが記載さ

れているから,引用発明も,圧縮性向上,コスト低減及び電気的接触域の確保の全

てについて課題としており,これらの課題に基づいて,薄いバーの幅を適宜設定す

ることは,当業者にとって設計的事項にすぎないということができる。

また,本件補正発明の薄いバーの幅に係る数値限定に,臨界的な意義があるとは

いえない以上,薄いバーの幅を本件補正発明のとおり数値限定することについて,




格別な技術的意義を見いだすことはできない。

したがって,原告の前記主張は採用することができない。

エ 以上によると,本件審決の相違点2に係る判断に誤りはない。

(6) 本件補正発明の奏する顕著な効果について

原告は,本件補正発明は,優れた遮蔽効果を発揮するのみならず,簡便な製造方

法での製造が可能となるなど,引用発明及び周知技術からは当業者が予測し得ない

顕著な効果を奏するものであると主張する。

しかしながら,本件補正発明の遮蔽効果については,本件補正明細書に比較実験

の結果等が記載されているわけではなく,また,引用例にも優れた遮蔽効果を発揮

する旨が記載されていることからすると,本件補正発明が引用発明と比較して格別

顕著な作用効果を奏するものということはできない。

また,引用例には,導電性外被を有するガスケットと比較して製造がより簡便な

導電性外被を有しないガスケットも記載されているものである。

したがって,原告が主張する本件補正発明の効果は,引用発明及び周知技術から

当業者が予測し得る範囲内のものであって,格別顕著なものということはできない。

以上によると,原告の前記主張は採用することができない。

(7) 小括

よって,本件補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発

明をすることができたものというべきである。

3 取消事由2(本願発明の容易想到性に係る判断の誤り)について

前記2のとおり,本件補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容

易に発明をすることができたものであり,特許出願の際独立して特許を受けること

ができないものであるから,本件補正を却下した本件審決の判断に誤りはない。

そして,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに限定を加えた本件補正発明

が,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたも

のである以上,本願発明も,同様の理由により,引用発明及び周知技術に基づいて,




当業者が容易に発明をすることができたものであるとした本件審決の判断に誤りは

ない。

4 結論

以上の次第であるから,原告の請求は棄却されるべきものである。

知的財産高等裁判所第4部



裁判長裁判官 土 肥 章 大




裁判官 井 上 泰 人




裁判官 荒 井 章 光





( 別紙)
当事者目録



原 告 ヴァンガード プロダクツ

コーポレイション

同訴訟代理人弁理士 杉 村 憲 司

杉 村 興 作

澤 田 達 也

冨 田 和 幸

下 地 健 一

大 倉 昭 人

寺 嶋 勇 太

前 田 勇 人

荒 木 淳

福 尾 誠

大 串 賢

村 松 由 布 子

山 口 雄 輔

上 村 欣 浩

石 川 雅 章

川 原 敬 祐

吉 田 憲 悟

塚 中 哲 雄

田 中 達 也

吉 澤 雄 郎

池 田 浩




坪 内 伸

岡 野 大 和

結 城 仁 美

色 部 暁 義

伊 藤 怜 愛

井 土 美 由 紀

鈴 木 治

高 橋 林 太 郎

田 浦 弘 達

河 合 隆 慶

片 岡 憲 一 郎

徳 永 博

末 野 徳 郎

被 告 特 許 庁 長 官

同指定代理人 川 本 眞 裕

冨 岡 和 人

樋 口 信 宏

守 屋 友 宏