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審判番号(事件番号) データベース 権利
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事件 平成 23年 (ワ) 24355号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 東京地方裁判所 
判決言渡日 2012/10/30
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
平成24年10月30日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成23年(ワ)第24355号 特許権侵害差止請求事件

口頭弁論終結日 平成24年8月2日

判 決

東京都大田区<以下略>

原 告 キヤノン株式会社

訴訟代理人弁護士 増 井 和 夫

同 橋 口 尚 幸

同 齋 藤 誠 二 郎

東京都豊島区<以下略>

被 告 株式会社オーム電機

訴訟代理人弁護士 小 林 幸 夫

同 弓 削 田 博

同 坂 田 洋 一

訴訟代理人弁理士 河 野 英 仁

同 安 田 恵

主 文

1 被告は,別紙物件目録(1)及び(2)記載の各インクタンクの輸入,販

売又は販売のための展示をしてはならない。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

3 この判決の第1項は,仮に執行することができる。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

主文第1項と同旨

第2 事案の概要

1 事案の要旨




本件は,発明の名称を「液体インク収納容器,液体インク供給システムおよ

び液体インク収納カートリッジ」とする特許第3793216号(以下,この

特許を「本件特許」,この特許権を「本件特許権」という。)の特許権者であ

る原告が,被告による別紙物件目録(1)及び(2)記載の各インクタンク(以下「被

告各製品」と総称し,それぞれを「被告製品1」,「被告製品2」という。)

の輸入,販売及び販売の申出が本件特許権の直接侵害及び間接侵害(特許法1

01条2号)に当たる旨主張して,被告に対し,特許法100条1項に基づき,

被告製品の輸入,販売等の差止めを求めた事案である。

2 争いのない事実等(証拠の摘示のない事実は,争いのない事実又は弁論の全

趣旨により認められる事実である。)

(1) 当事者

ア 原告は,各種光学機械器具の製造及び販売等を業とする株式会社であ

る。

イ 被告は,電気器具類の販売等を業とする株式会社である。

(2) 原告の特許権

ア 原告は,本件特許の特許権者である。

本件特許は,原告が平成16年11月15日に特許出願(優先権主張日

平成15年12月26日及び平成16年10月22日・優先権主張国日

本,特願2004−330952号。以下「本件出願」という。)をし,

平成18年4月14日に特許権の設定登録設定登録時の請求項の数1

6)がされたものである。

イ 本件特許について,株式会社プレジールほか4社が平成21年5月19

日に特許無効審判請求(無効2009−800101号事件)をしたとこ

ろ,原告は,同年8月3日,本件出願の願書に添付した明細書及び特許請

求の範囲について,特許請求の範囲減縮誤記の訂正及び明りょうでな

い記載の釈明を目的とする訂正請求(請求項1,2,5,11,12,1




3及び16を訂正し,請求項3,4,6ないし10,14,15を削除し,

これに伴い,明細書の発明の詳細な説明の訂正等をするもの。以下,この

訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)をした(甲24)。

特許庁は,平成22年1月26日,上記特許無効審判事件について,本

件訂正を認めた上で,「特許第3793216号の請求項1ないし7に係

る発明についての特許を無効とする。」との審決(以下「第1次審決」と

いう。)をした(甲22)。

これに対し原告は,同年2月17日,第1次審決の取消しを求める審決

取消訴訟(知的財産高等裁判所平成22年(行ケ)第10056号事件)

を提起した。なお,本件訂正のうち,請求項3,4,6ないし10,14,

15の削除に係る部分等は,第1次審決の当事者に対する送達により同月

5日に確定した(甲23)。

知的財産高等裁判所は,平成23年2月8日,第1次審決を取り消すと

の判決を言い渡した。この判決について上告受理の申立て(最高裁判所平

成23年(行ヒ)第193号事件)がされたが,最高裁判所は,同年9月

29日,上告不受理とする旨の決定をし,これにより上記判決が確定し

た(甲13,19)。

その後,特許庁は,上記特許無効審判事件について更に審理をし,同年

11月15日,「訂正を認める。本件審判の請求は,成り立たない。」と

の審決(以下「第2次審決」という。)をし,第2次審決は,同年12月

26日に確定し,平成24年1月19日,その旨の登録がされた(甲22,

23)。

第2次審決の確定により,本件訂正のうち,上記確定部分を除くその余

の部分(請求項1,2,5,11,12,13及び16の訂正及びこれに

伴う明細書の発明の詳細な説明の訂正に係る部分)が確定した。

(3) 発明の内容




ア 本件訂正後の特許請求の範囲は,請求項1ないし7から成り,その請求

項1及び請求項3の記載は,次のとおりである(以下,本件訂正後の請求

項1に係る発明を「本件訂正発明1」,同請求項3に係る発明を「本件訂

正発明2」といい,これらを併せて「本件各訂正発明」という。下線部は

訂正箇所である。なお,同請求項3は,設定登録時の請求項5を訂正した

ものである。)。

「【請求項1】 複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッ

ジと,該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装

置側接点と,前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納

容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部か

らの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え,該受光手段で該光

を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出す

る液体インク収納容器位置検出手段と,搭載される液体インク収納容器

それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的

接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを

有し,前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体イ

ンク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液

体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置

を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク

収納容器において,前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と,

少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な

情報保持部と,前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部

と,前記接点から入力される前記色情報に係る信号と,前記情報保持部

の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部

と,を有することを特徴とする液体インク収納容器。」

「【請求項3】 複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載し




て移動するキャリッジと,該液体インク収納容器に備えられる接点と電

気的に接続可能な装置側接点と,該液体インク収納容器からの光を受光

する位置検出用の受光部を一つ備え,該受光部で該光を受光することに

よって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納

容器位置検出手段と,搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接

点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係

る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有する記録装置と,

前記記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容
器と,を備える液体インク供給システムにおいて,前記液体インク収納

容器は,前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と,少なくとも

液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と,

前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための

光を発光する発光部と,前記接点から入力される前記色情報に係る信号

と,前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光

部を発光させる制御部と,を有し,前記受光部は,前記キャリッジの移

動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置さ

れ,前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体イン

ク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体

インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を

検出することを特徴とする液体インク供給システム。」

イ 本件各訂正発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,各

構成要件を「構成要件1A1」,「構成要件2A1」などという。)。

(ア) 本件訂正発明1

1A1 複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと,

1A2 該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能

な装置側接点と,




1A3 前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容

器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光

部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え,該受光

手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の

搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と,

1A4 搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続す

る前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信

号を発生するための配線を有した電気回路とを有し,

1A5 前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液

体インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基

づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収

納容器の搭載位置を検出する記録装置の

1A6 前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器にお

いて,

1B 前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と,

1C 少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持

可能な情報保持部と,

1D 前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部と,

1E 前記接点から入力される前記色情報に係る信号と,前記情報保持

部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する

制御部と,

1F を有することを特徴とする液体インク収納容器。

(イ) 本件訂正発明2

2A1 複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移

動するキャリッジと,

2A2 該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能




な装置側接点と,

2A3 該液体インク収納容器からの光を受光する位置検出用の受光

部を一つ備え,該受光部で該光を受光することによって前記液体

インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置

検出手段と,

2A4 搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続す

る前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信

号を発生するための配線を有した電気回路とを有する記録装置

と,

2B 前記記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク

収納容器と,

2C を備える液体インク供給システムにおいて,

2D1 前記液体インク収納容器は,前記装置側接点と電気的に接続可

能な前記接点と,

2D2 少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保

持する情報保持部と,

2D3 前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光す

るための光を発光する発光部と,

2D4 前記接点から入力される前記色情報に係る信号と,前記情報保

持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発

光させる制御部と,を有し,

2E 前記受光部は,前記キャリッジの移動により対向する前記液体イ

ンク収納容器が入れ替わるように配置され,

2F 前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体

インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき

前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器




の搭載位置を検出する

2G ことを特徴とする液体インク供給システム。

(4) 被告の行為等

ア 原告は,インクジェットプリンタである「PIXUS MP990」「P


IXUS iP7500」及び「PIXUS iP4500」(以下「原告

製プリンタ」と総称する。)並びに原告製プリンタに使用可能なインクタ

ンクである「BCI−321系」及び「BCI−7e系」(以下,それぞ

れを「原告インクタンク1」,「原告インクタンク2」といい,これらを

併せて「原告各インクタンク」という。)を製造し,販売している。

原告各インクタンクは,本件訂正発明1の実施品であり,原告インクタ

ンク1又は原告インクタンク2を装着した原告製プリンタは,本件訂正発

明2の実施品である。

イ(ア) 被告は,被告各製品を輸入し,日本国内で,被告製品1を原告イン

クタンク1の互換品として,被告製品2を原告インクタンク2の互換品

としてそれぞれ販売し,又は販売のため展示している。

(イ) 被告各製品は,本件訂正発明1の構成要件1A1,1A2,1A4,

1A6,1B及び1Cを充足する。

(ウ) 被告製品1又は被告製品2を装着した原告製プリンタは,本件訂正

発明2の構成要件2A1,2A2,2A4,2B,2D1及び2D2を

充足する。

(5) 前訴の訴訟経過

原告は,平成21年1月5日,被告に対し,本件特許権に基づいて,被告

が原告インクタンク2の互換品等として販売するインクタンクである「IN

K−C7E系」及び「INK−CGB9」の輸入,販売等の差止めを求める

訴訟(東京地方裁判所平成21年(ワ)第63号事件。以下「本件前訴」とい

う。)を提起した。本件前訴は,原告とリーブテクノロジーズ株式会社ほか




3社間の関連事件(東京地方裁判所平成21年(ワ)第59号事件ないし同第

62号事件)と弁論が併合されて審理されたが,平成21年12月17日,

和解(以下「前訴和解」という。)により終局した。

前訴和解には,@原告は,被告に対し,被告が販売するインクタンクであ

る「「OHM」7Eシリーズ」(INK−C7E系)及び「「OHM」32

1シリーズ」(「INK−CBK321」,「INK−CY321」,「I

NK−CM321」 「INK−CC321」 (以下,
及び ) これらを併せて「前

訴被告製品」という。)について,●(省略)●などの和解条項がある(乙

17)。

3 争点

本件の争点は,被告各製品についての本件訂正発明1の技術的範囲の属

否(争点1),被告による被告各製品の輸入,販売等についての本件訂正発明

2に係る本件特許権の間接侵害(特許法101条2号)の成否(争点2),特

許法104条の3第1項に基づく本件特許権の権利行使制限の抗弁の成否(争

点3)である。

第3 争点に関する当事者の主張

1 争点1(被告各製品の本件訂正発明1の技術的範囲の属否)について

(1) 原告の主張

ア 被告各製品の構造

被告製品1の構造は,別紙1の「第1 図面の説明」及び「第2 構造

の説明」記載のとおりである(甲3,4の1ないし3,5,12)。

また,被告製品2の構造は,別紙2の「第1 図面の説明」及び「第2

構造の説明」記載のとおりである(甲6,7の1ないし3,8,9,10

の1ないし3,11,12)。

イ 本件訂正発明1の「光」が赤外線を含むこと

本件訂正発明1の「光」は,以下に述べるとおり,可視光に限定される




ものではなく,「赤外線」を含むものと解すべきであり,本件訂正発明1

の「発光部」は,赤外線を発する構成のものも含まれる。

(ア) 本件訂正発明1の「光」について

a 「光」は,「可視光線に限定することもあるが,ふつうは紫外線,

赤外線をあわせ波長が約1nm〜1mmの範囲にある電磁波を光と

よぶ。」と定義され(岩波理化学辞典(第5版))(甲18),「赤

外線」も通常は光に含まれるものと説明されており,可視光と赤外線

との違いは波長の違いだけである。

本件訂正発明1の特許請求の範囲(本件訂正後の請求項1)に

は,「光」の波長を特定の領域に限定する記載は存在せず,また,「発

光部」について「受光手段(受光部)に投光するための光を発光する

発光部」と記載されているだけで,発光の機能としては,「(光照合

処理のための)受光部への投光機能」だけが要件として記載されてお

り,「ユーザへの告知機能(報知機能)」は要件として記載されてい

ないのであるから,この「光」には,可視光のみならず,「赤外線」

も含まれると解すべきである。

b 本件訂正後の明細書(以下,図面を含めて「本件訂正明細書」とい

う。甲24)の記載によれば,本件各訂正発明の課題は,キャリッジ

に複数の液体インク収納容器を搭載して使用する記録装置において,

記録装置と液体インク収納容器との間の配線の方式に共通の信号線

を用いる共通バス接続方式を採用した場合でも,各液体インク収納容

器がインク色に従ってキャリッジの所定の位置に正しく装着されて

いるか否か,すなわち,インクタンクの搭載位置間違いを検出するこ

とにあり,この課題を解決するための手段として,本件各訂正発明

は,「インクタンクがキャリッジ上の正しい搭載位置に搭載された場

合と,誤った搭載位置に搭載された場合とで,インクタンクの発光部




が発光する位置が異なり,この発光位置の相違に起因して,受光部の

受光結果に違いが現れ,その結果,インクタンクが正しい搭載位置に

あるか否かを検出することができる」という光照合処理の構成を採用

した点にある(段落【0009】,【0010】,【0019】,【

0020】,【0080】ないし【0094】,【0108】ないし

【0113】等)。この光照合処理の原理からすれば,「光」の波長

にかかわらず,「共通バス接続方式を採用した場合でも,インクタン

クの搭載位置間違いを検出する」という作用効果を奏するものである

から,光照合処理で利用される「光」の波長が特定の領域(例えば,

可視光領域)に制限される理由は存在しないし,光照合処理で利用さ

れる「光」から「赤外線」が除外される理由も存在しない。

また,本件訂正明細書全文を通して,「可視光」以外の「光」を利

用して,光照合処理を否定する趣旨の記載は存在せず,「光」を「可

視光」に限定する記載は存在しない。

c もっとも,本件訂正明細書中には,「光照合処理を実現するのに必

要な,受光部への投光機能」と「インクタンクの装着状態の良否やイ

ンクタンクの装着位置の適否(光照合処理により検出された誤装着)

などをユーザに報知するのに必要な,ユーザへの告知機能」を同時に

実現するために,インクタンクの発光部として「可視光を発するLE

D」を採用した構成が,実施例として記載されている。

しかし,これらの実施例は,本件各訂正発明の一実施態様を説明し

たものにすぎず,特許請求の範囲に「ユーザへの告知機能」が記載さ

れていない本件訂正発明1の権利範囲がそのような実施態様に限定

されることはない。また,本件訂正明細書中には,光照合処理による

誤装着検出後,プリンタ本体側の表示器やパソコンのモニタを通じて

ユーザへの誤装着の告知を行うことも記載されており,インクタンク




のLEDの発光以外の方法でユーザへの誤装着の告知を行うことが

開示されている(段落【0036】,【0037】,【0068】,

【0105】,【0114】等)。

d 以上によれば,本件訂正発明1の「光」は,可視光に限定されるも

のではなく,「赤外線」を含むというべきである。

(イ) 被告の主張について

a(a) 被告は,後記のとおり,原告は,本件前訴において,本件訂正

後の請求項1の「光」とは可視光を意味するとの主張を繰り返し行

っていたにもかかわらず,本訴において,本件訂正後の請求項1

の「光」に赤外線も含まれると主張することは,禁反言の法理に照

らし,許されない旨主張する。

しかし,原告が,本件前訴において,発光部にユーザへの「告知

機能」があると説明したのは,前訴被告製品が本件各訂正発明の実

施例と同様に可視光を用いていたため,明細書に,実施例として,

可視光を発する発光部によりユーザに誤装着されたインクタンク

を告知する構成が開示されていることを説明し,前訴被告製品もこ

のような実施例と同じ構成であることを説明したにすぎないもの

であり,「光」を可視光に限定する趣旨の説明ではなかったから,

本訴において原告が本件訂正後の請求項1の「光」に赤外線も含ま

れると主張することは,禁反言の法理に反するものではない。

したがって,被告の上記主張は理由がない。

(b) また,被告は,後記のとおり,原告が,本件前訴において,「本

特許発明の作用効果」としてユーザへの可視光による報知を一貫

して主張しておきながら,前訴和解の成立後に,かかる作用効果を

奏さない被告各製品も本件各訂正発明の技術的範囲に属すると主

張することは,前訴和解の成立の経緯からも,禁反言の法理及び信




義則に反する旨主張する。

しかし,被告の上記主張に理由がないことは,前記(a)のとおり

である。むしろ,被告は,前訴和解において,前訴被告製品が光照

合処理の構成に対応する本件特許の侵害品であることを認め,販売

を取りやめたにもかかわらず,発光部の発光が可視光ではなく赤外

線であるという点のみを変更し,それ以外は前訴被告製品と同じ構

成を有する被告各製品を販売しているものであり,かかる被告の行

為は,前訴和解を姑息な手段で回避する意図によるものといわざる

を得ず,信義則に反するものといえる。

b さらに,被告は,後記のとおり,米国におけるUS2010/01

41715A1(以下「米国715発明」という。)の特許出願の審査

手続において,米国特許商標庁審査官がした特許許可通知(乙21の

1)において,本件特許の関連特許である米国特許第7,237,8

81号(以下「米国881特許」という)が,先行技術として引用さ

れた上,米国881特許に係る発明は非可視光を利用しない発明であ

ると認定されているから,本件訂正発明1も同様に解釈すべきである

旨主張する。

しかし,米国881特許は,米国で成立した米国の特許であり,そ

の米国特許商標庁における解釈をもって,日本国で成立した本件特許

が同じように解釈されることにはならないし,また,乙21の1は,

米国715発明の非自明性について説明したものであって,その説明

の中で,米国881特許は先行技術として考察されているにすぎず,

米国881特許の請求項の解釈は行われていない。

したがって,被告の上記主張は失当である。

(ウ) 小括

以上のとおり,本件訂正発明1の「光」は,「赤外線」を含むものと




解すべきであるから,本件訂正発明1の「発光部」は,赤外線を発する

構成のものも含まれる。

構成要件1A3,1A5,1D,1E及び1Fの充足

被告各製品の発光部(LED)は,原告製プリンタに設置された受光手

段に投光するための赤外線を発するものであるが(前記ア),本件訂正発

明1の「発光部」には赤外線を発する構成のものも含まれるから,構成要

件1Dの「受光手段に投光するための光を発光する発光部」に該当する。

そして,前記アのとおり,被告各製品を原告製プリンタに装着した場合,

前述の光照合処理(前記イ(ア)b)が行われ,被告各製品がキャリッジ上

の正しい搭載位置に搭載されているか否かを検出することができるから,

被告各製品は,構成要件1A3及び1A5を充足する。その検出結果は,

原告製プリンタに接続されたモニター上のウインドウで,「プリンタはオ

ンラインです。」(インクタンクが全て正しい位置に装着された場合),

あるいは「正しい位置に取り付けられていないインクタンクがありま

す。 (誤装着がある場合)
」 と表示されてユーザへ報知される(甲4の2,

3,7の2,3,10の2,3)。

また,被告各製品には,発光部の発光を制御する制御部とインク色を示

す色情報を保持可能な情報保持部とが一体となったICチップ103が

設けられているから,被告各製品は,構成要件1Eを充足する。

さらに,被告各製品は,「液体インク収納容器」であるから,構成要件

1Fを充足する。

以上によれば,被告各製品は,本件訂正発明1の構成要件1A3,1A

5,1D,1E及び1Fを充足する。

エ まとめ

以上のとおり,被告各製品は,本件訂正発明1の構成要件1A3,1A

5,1D,1E及び1Fを充足し,また,被告各製品が構成要件1A1,




1A2,1A4,1A6,1B及び1Cを充足することは,前記争いのな

い事実等(4)イ(イ)のとおりである。

したがって,被告各製品は,本件訂正発明1の構成要件を全て充足する

から,その技術的範囲に属する。

(2) 被告の主張

ア 本件訂正発明1の「光」は可視光に限定されること

本件訂正発明1の「光」は,以下に述べるとおり,可視光のみに限定し

て解釈すべきであり,本件訂正発明1の「発光部」は,可視光を出力する

部位を意味するというべきである。

(ア) 本件訂正発明1の「光」について

本件訂正明細書発明の詳細な説明の各記載(段落【0001】ない

し【0004】,【0006】ないし【0013】,【0019】,【

0020】,【0022】,【0032】ないし【0047】,【00

57】,【0058】,【0060】,【0061】,【0072】な

いし【0074】,【0077】,【0079】,【0103】,【0

104】,【0107】ないし【0114】,【0117】ないし【0

120】,【0127】,【0130】ないし【0132】,【013

8】)及び図面(図3ないし13,18,28,34ないし37)には,

本件各訂正発明は,インクタンクの搭載位置をユーザに知らせる(「報

知」)ために,複数のインクタンクに対して共通バス接続方式を用いて

LEDなどの「表示器の発光制御」を行い,インクタンクの搭載位置を

特定してその間違いを検出できるようにしたものであること,すなわ

ち,ユーザへの「報知」を「発光手段」で行い,そのインクタンクの搭

載位置を特定するための「発光手段」としてLEDなどの「表示器」を

用い,上記「表示器」の「発光」によりインクタンクの搭載位置を「ユ

ーザ」に「認識」させ,「ユーザ」に対してインクタンクを正しい位置




に再装着することを促す処理を行うものであることが開示されている。

一方で,本件訂正明細書に開示された本件各訂正発明の実施例は,全て

可視光を用いた実施例であって,不可視光を用いた実施例の記載はな

い。

そして,「表示」とは,「はっきり表に現れた形で示すこと」をいう

から(岩波国語辞典第七版新版)(乙16),上記「表示器」がユーザ

に報知するために行う「発光」が可視光を発することを意味することは

自明である。また,本件訂正発明1の特許請求の範囲(本件訂正後の請

求項1)には「光らす」との記載があるところ,「光らす」とは「光る

ようにする。光らせる。つやを出す。」,「光る」とは「ぴかっと光を

放つ。」の意であり(広辞苑(第五版)),不可視光が「ぴかっと光を

放つ。」わけはないから,特許請求の範囲の記載自体からも「光」が可

視光のみを意味することは明らかである。

したがって,本件訂正明細書の上記記載及び図面を参酌すれば,本件

訂正発明1の「光」とは,インクタンクの搭載位置を「ユーザ」に知ら

せること(「報知」)を可能にすべく,LEDなどの「表示器」によっ

て発光され,かつ,「ユーザ」がその発光を「認識」できる「可視光」

のみに限定して解釈すべきであり,また,本件訂正発明1の「発光部」

とは,可視光を出力する部位を意味するというべきである。

(イ) 禁反言の法理

原告は,本件前訴において,訴状(乙3の5頁4行〜8行,16頁1

2行〜末行,37頁末行〜38頁12行,38頁26行〜39頁12

行),平成21年2月26日付け「原告第1主張書面」(乙4の6頁2

7行〜7頁3行),同年5月18日付け「原告第2準備書面」(乙5の

7頁21行〜27行),同年7月31日付け「原告第3準備書面」(乙

6の9頁22行〜29行,10頁6行〜27行,26頁12行〜19行,




27頁25行〜28頁1行),同年9月16日付け「原告第4準備書

面」(乙7の5頁15行〜18行)及び同年10月9日付け「原告第5

準備書面」(乙8の11頁末行〜12頁17行)をもって,前訴被告製

品との対比とは関係なく,本件特許の有効性を議論する中で,設定登録

時の請求項1あるいは本件訂正後の請求項1の「光」とは,可視光を意

味するとの主張を繰り返し行っていたにもかかわらず,本訴において,

本件訂正後の請求項1の「光」には赤外線も含まれると主張することは,

禁反言の法理に照らし,許されないというべきである。

また,原告は,本件前訴において,「本件特許発明の作用効果は,…

バス接続による制御がなされるので,インクタンクの発光部は,搭載位

置検出のみならず,ユーザーへの光による報知を行うことができ

る」(乙6等)と一貫して主張していたことから,被告は,ユーザへの

可視光による報知を行う前訴被告製品の販売を停止すべく,原告との間

で前訴和解をし,可視光を用いた前訴被告製品を輸入,販売,引渡し及

び販売のための展示をしないことなどを合意するとともに,原告が本件

前訴で一貫して主張していた「本件特許発明の作用効果」を奏しない,

すなわち,ユーザへの報知を行うことが不可能な被告各製品を販売する

に至ったものである。このように,原告は,本件前訴において「本件特

許発明の作用効果」としてユーザへの可視光による報知を一貫して主張

しておきながら,前訴和解の成立後に,かかる作用効果を奏さない被告

各製品も本件訂正発明1の技術的範囲に属すると主張しているもので

あって,前訴和解の成立の経緯からも,原告の主張は,禁反言の法理及

信義則に反するものといえる。

(ウ) 当業者の認識(米国特許商標庁の審査官の認定・判断)

当業者というべき米国特許商標庁審査官は,米国法人であるSTAT

IC CONTROL COMPONENTS社が米国特許商標庁に




特許出願をした米国715発明について,2011年(平成23年)8

月26日付けでその請求項11に係る発明についての特許許可通知(乙

21の1)を行ったが,その許可理由中で,本件特許の関連特許である

米国881特許のインクタンクは可視光を利用するものと認定した上

で,米国881特許を含む先行技術は,非可視光を利用する発明を含ま

ず,可視光を利用するものであるから,米国715発明の請求項11に

係る発明には特許性があると判断しており,このことは,当業者が,本

件訂正発明1の「光」は可視光に限られるとの認識を有していることを

意味するというべきである。

構成要件1A3,1A5,1D及び1Eの非充足

被告各製品は,赤外線を発するのみで,可視光を発光することはないか

ら(乙1,2,23),本件訂正発明1の「受光手段に投光するための光

を発光する発光部」の構成を欠いている。

したがって,被告各製品には,本件訂正発明1の構成要件1A3,1A

5,1D及び1Eの「発光部」が存在しないから,被告各製品は,これら

構成要件を充足しない。

ウ まとめ

以上によれば,被告各製品は,本件訂正発明1の構成要件1A3,1A

5,1D,1E及び1Fを充足しないから,本件訂正発明1の技術的範囲

に属さない。

2 争点2(本件訂正発明2に係る本件特許権の間接侵害の成否)について

(1) 原告の主張

構成要件2A3,2D3ないし2Fの充足

被告製品1又は被告製品2を装着した原告製プリンタが,本件訂正発明

2の構成要件2A1,2A2,2A4,2B,2D1及び2D2を充足す

ることは,前記争いのない事実等(4)イ(ウ)のとおりである。




そして,前記1(1)で述べたのと同様の理由により,被告各製品の発光

部(LED)は構成要件2D3の「受光手段に投光するための光を発光す

る発光部」に該当し,被告製品1又は被告製品2を装着した原告製プリン

タは,光照合処理(前記1(1)イ(ア)b)を行い,被告各製品がキャリッ

ジ上の正しい搭載位置に搭載されているか否かを検出することができる

から,構成要件2A3,2D3ないし2Fを充足する。

また,被告製品1又は被告製品2を装着した原告製プリンタは,「液体

インク供給システム」であるから,構成要件2C及び2Gを充足する。

以上によれば,被告製品1又は被告製品2を装着した原告製プリンタ

は,本件訂正発明2の構成要件を全て充足し,その技術的範囲に属する。

イ まとめ

以上のとおり,被告製品1又は被告製品2を装着した原告製プリンタ

は,本件訂正発明2の技術的範囲に属するところ,被告各製品は,物の発

明である本件訂正発明2の「その物の生産に用いる物」であって,共通バ

ス接続方式を採用しつつも,インクタンクの搭載位置間違いを検出すると

いう本件訂正発明2による「課題の解決に不可欠なもの」に該当するとい

えるから,被告による被告各製品の輸入及び販売について,特許法101

条2号の間接侵害が成立する。

(2) 被告の主張

前記1(2)で述べたのと同様の理由により,被告各製品の発光部(LED)

構成要件2D3の「受光手段に投光するための光を発光する発光部」に該

当しないから,被告製品1又は被告製品2を装着した原告製プリンタ

は,「発光部」(構成要件2D3,2D4,2F)の構成を欠いており,本

件訂正発明2の技術的範囲に属さない。

したがって,被告各製品は,本件訂正発明2の「その物の生産に用いる物

に該当しないから,被告による被告各製品の輸入及び販売について特許法1




01条2号間接侵害が成立するとの原告の主張は理由がない。

3 争点3(本件特許権に基づく権利行使制限の抗弁の成否)について

(1) 被告の主張

本件各訂正発明に係る本件特許には,以下のとおりの無効理由があり,特

許無効審判により無効とされるべきものであるから,特許法104条の3

1項の規定により,原告は,被告に対し,本件各訂正発明に係る本件特許権

を行使することはできない。

ア 本件訂正発明1に係る無効理由(進歩性の欠如)

本件訂正発明1は,本件出願の優先権主張日前に頒布された刊行物であ

る乙9(特開2002−370378号公報)及び乙10(特開平2−2

79344号公報)に記載された発明に基づいて,当業者が容易に想到

ることができたものであるから,進歩性が欠如し,本件訂正発明1に係る

本件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項

2号)がある。

(ア) 本件訂正発明1と乙9に記載された発明との対比

乙9の記載事項(請求項11,段落【0003】,【0033】,【

0034】 【0037】
, ないし【0039】 【0043】
, 及び図2(別

紙刊行物図面参照))を総合すれば,乙9には,「複数の液体インク収

納容器(インクカートリッジCA1〜CA6)を搭載して移動するキャ

リッジと,該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能

な装置側接点と,搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と

接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信

号を発生するための配線を有した電気回路(制御回路30)とを有する

記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器に

おいて,前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と,少なくとも

液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部




と,を有することを特徴とする液体インク収納容器」が記載されている。

そして,本件訂正発明1と乙9記載の液体インク収納容器(以下「乙

9発明@」という場合がある。)とを対比すると,次のとおりの相違点

があるが,その余の構成は一致する。

(相違点1)

「液体インク収納容器」が搭載される側の記録装置が,本件訂正発明

1では,「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容

器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部から

の光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え,該受光手段で該光を

受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する

液体インク収納容器位置検出手段」(構成要件1A3)を有し,「前記

キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納

容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体インク

収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出す

る」構成(構成要件1A5)を有するのに対し,乙9発明@では,これ

らの構成を有しない点。

(相違点2)

本件訂正発明1では,「液体インク収納容器」が「前記受光手段に投

光するための光を発光する前記発光部」(構成要件1D)を有するのに

対し,乙9発明@では,このような構成を有しない点。

(相違点3)

本件訂正発明1では,「液体インク収納容器」の「制御部」が「前記

接点から入力される前記色情報に係る信号と,前記情報保持部の保持す

る前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する」構成(構成要件

1E)を有するのに対し,乙9発明@では,このような構成を有しない

点。




(イ) 乙10の開示事項

相違点1ないし3に係る本件訂正発明1の各構成は,本件出願の優先

権主張日当時における技術常識参酌することにより当業者が乙10

に記載されている事項から導き出せる事項であるから,乙10に記載さ

れているに等しい事項である。

a(a) 乙10には,次のような記載がある。

@ 「カラー印刷システムのもう一つの欠点は,少なくとも構成色

に対し別個の印刷ヘッドを用いるものにおいては,プリンター内

部で印刷ヘッドが不注意から誤った位置に取りつけられる事で

ある。もしマゼンタのインクがあるべきところにシアンのインク

の印刷ヘッドが位置していれば,印刷されたものは不良となろ

う。」(2頁右下欄1行〜7行)

A 「本発明は,従来のインクジェット印刷システムにおける以上

の欠点またはその他の欠点を,印刷ヘッドを特性化するデータを

記憶できる記憶素子を各印刷ヘッドに付随させて提供すること

によって解決することを目的とする。 (2頁右下欄9行〜13


行)

B 「本データは印刷ヘッドの本性,あるいはその動作特性の一つ

またはそれ以上を特性化することが可能である。このような動作

特性には,印刷ヘッド内のインクの色,…などを含むことができ

る。このデータは印刷ヘッドから読み取ることができ,所望に応

じて使用または表示できる。 (2頁右下欄15行〜3頁左上欄


1行)

C 「一つまたはそれ以上の印刷アッセンブリー12,各印刷アッ

センブリーに付随する記憶素子14…を備えた本発明の実施

による印刷装置10」(3頁左上欄14行〜18行)




D 「この記憶素子は,たとえば,…半導体メモリー…によって構

成される。このメモリーには印刷ヘッドに関するデータが記憶さ

れる。かかる情報は,…印刷ヘッドのある種の動作特性(…イン

ク色…)を特性化する。このデータは印刷ヘッドから読み取られ,

所望に応じ使用または表示されうる。 (3頁右上欄14行〜左


下欄4行)

E 「キャリッジ34の通路近傍に取りつけられ印刷ヘッドがその

位置を通過する都度印刷ヘッドの磁気片メモリー14を読み書

きする磁気読取/書込みヘッド44」(3頁右下欄7行〜10

行)

F 「印刷ヘッドとプリンターの間のデータ通信は,読取/書込み

ヘッドによってなされる必要はない。かわりに,光学的,あるい

は無線のカップリング等,他の送信技術を用いることもでき

る。」(6頁右上欄10行〜14行)

G 「従来のような印刷ヘッドの取り付け位置の誤りによる印刷不

良も簡単に防止することができる。 (6頁左下欄12行〜14


行)

(b) 乙10の上記記載事項及び第2図(FIG.2)(別紙刊行物

図面参照)によれば,乙10には,インクタンクの搭載位置間違い

検出に関する技術的課題(上記(a)@)及びその課題を解決する中

核的技術的思想(上記(a)A)が記載され,その具体的な構成(上

記(a)BないしE)が記載されている。乙10記載の「発明の実施

例」は,オリフィスの板のミスアライメントを補償する点に重点が

置かれた説明であるが,印刷ヘッドの記憶素子に記憶された印刷ヘ

ッド内のインクの色を含んだデータは「印刷ヘッドから読み取られ,

所望に応じ使用または表示されうる。」(上記(a)D)と記載され




ていることからすると,各インクタンクの色を読み取り,表示する

ことによって,インクタンクの取り付け位置の誤りを検出する構成

を乙10の記載から十分に読み取ることができる。

b そして,乙10の前記a(a)Fの記載は,読取/書込みヘッド44

を「光学的カップリング」に置換することを示唆するものといえるか

ら,上記記載に接した当業者であれば,以下のとおり,技術常識を参

酌することにより,乙10に記載されている事項として,相違点1な

いし3に係る本件訂正発明1の各構成を導き出すことができる。

(a) 技術常識

@ 乙12の1の(米国特許第5567063号明細書)によれば,

光学的カップリングが,発光素子としての発光ダイオードと,受

光素子としての光センサ素子で構成されることは,技術常識であ

る。

A 乙13(特許第2706849号公報)によれば,プリンタ分

野において,光学的カップリングを用いた識別情報の照合は,技

術常識である。

B 乙25(特開昭57−6782号公報)によれば,プリンタ分

野において,光学的カップリングを相対移動する物体の位置検出

に利用することは,技術常識である。

C 乙24(国際公開WO2002/040275号再公表特許公

報)によれば,インクカートリッジの誤装着を検出する技術に関

し,インクカートリッジの位置に応じて,識別データをデータバ

ス上に送信し,インクカートリッジ側から識別データに対する応

答があるか否か判定する処理は,技術常識である。

(b) 相違点1に係る本件訂正発明1の構成について

@ 乙10記載の読取/書込みヘッド44は,「光学的カップリン




グ」(前記a(a)F)として把握することができる。

そして,光学的カップリングが,発光素子としての発光ダイオ

ードと,受光素子としての光センサ素子で構成されることは,技

術常識であること(前記(a)@),インクタンクに設けられた記

憶素子の情報をプリンタへ送信する必要性から,発光素子をイン

クタンク側に設け,受光素子をプリンタ側に設けることは必然で

あることからすると,相違点1に係る本件訂正発明1の構成

中,「記録装置が,前記キャリッジの移動により対向する前記液

体インク収納容器が入れ替わるように(受光手段が)配置され」

との部分(構成要件1A3)は,乙10の前記a(a)Eの記載に

対応し,また,相違点1に係る本件訂正発明1の構成中の「前記

液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受

光手段を一つ備え」との部分(構成要件1A3)は,磁気読取/

書込みヘッド44を光学的カップリングとして把握したプリンタ

側の受光素子に対応する。

次に,前記(a)A及びBの技術常識参酌すると,相違点1に

係る本件訂正発明1の構成中の「該受光手段で該光を受光するこ

とによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体イ

ンク収納容器位置検出手段を有し」との部分(構成要件1A3)

は,乙10の「光学的カップリング」(前記a(a)F)の構成と

して記載されているに等しい事項である。

A 前記(a)A及びCの技術常識参酌すると,乙10の「光学的

カップリング」(前記a(a)F)において,発光素子は,プリン

タ側の制御によって発光することは明らかであり,また,インク

タンクの装着位置の誤りを防止するという目的からすると,キャ

リッジに装着され,磁気読取/書込みヘッド44に対向している




べきインクカートリッジの発光素子を光らせ,プリンタ側の受光

素子がその光を受光し,その受光結果に基づいて,インクタンク

の搭載位置を検出していることは明らかである。

したがって,相違点1に係る本件訂正発明1の構成中の「前記

キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク

収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記

液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭

載位置を検出する」との部分(構成要件1A5)は,乙10の「光

学的カップリング」(前記a(a)F)の構成として記載されてい

るに等しい事項である。

(c) 相違点2に係る本件訂正発明1の構成について

前記(a)@の技術常識参酌すると,相違点2に係る本件訂正発

明1の構成(構成要件1D) 乙10の
は, 「光学的カップリング」(前

記a(a)F)の構成として把握することができるから,乙10に記

載されているに等しい。

(d) 相違点3に係る本件訂正発明1の構成について

前記(a)Aの技術常識参酌すると,相違点3に係る本件訂正発

明1の構成(構成要件1E) 乙10の
は, 「光学的カップリング」(前

記a(a)F)の構成として把握することができるから,乙10に記

載されているに等しい。

(e) 小括

以上によれば,相違点1ないし3に係る本件訂正発明1の各構成

は,「光学的カップリング」によるインクタンクの装着位置の誤り

の検出の構成として,乙10に記載されているに等しい事項である。

(ウ) 容易想到性

a 組合せの動機付けの存在




乙10,乙11(特開2002−79685号公報)及び乙24に

よれば,インクカートリッジ(インクタンク)の装着位置の誤りを検

出するという課題は,平成2年から平成14年にわたり,インクジェ

ットプリンタ分野における主要な課題として存在しており,このよう

な技術開発の流れにおいて,当業者はインクタンクの装着位置の誤り

の検出を重要課題として認識し得る状況にあった。

そして,共通バス接続方式を採用した乙9発明@においては,共通

の信号線を用いて複数のインクタンクから情報を取得することにな

るので,インクタンクの装着位置の誤りを検出できなくなることは,

技術的に明らかであるから,乙9に接した当業者であれば,共通バス

接続を利用しつつインクタンクの装着位置の誤りを検出するという

課題に容易に想到することができたものである。

b 乙9と乙10の組合せの容易想到性

乙9と乙10は,技術分野が共通し,インクタンクの装着位置の誤

りの検出という技術的課題が共通する。

しかるところ,乙10の「光学カップリング」の構成は,乙9の通

信手段である「バス接続配線」では不可能なインクタンクの装着位置

の誤りの検出を可能にする通信手段であり,乙9発明@の上記aの技

術的課題を解決するものであること,乙9の「バス接続配線」によれ

ば,プリンタ側の制御回路は,インクタンクの位置にかかわらず,イ

ンクタンクに備えられた記憶装置から情報を読み出し,あるいは情報

を書き込むことができるのに対し,乙10の「光学的カップリング」

では,インクタンクが所定の位置(磁気読取/書込みヘッド44に対

向する位置)になければ,このような情報の読み出し及び書き込みが

不可能であり,このように乙9の通信手段たる「バス接続配線」と乙

10の通信手段たる「光学的カップリング」とは,その目的ないし機




能が異なることからすると,乙9及び乙10に接した当業者であれば,

乙9と乙10を組み合わせて,乙9発明@及び乙10の構成を共通化

することを容易に想到することができたものである。

そして,前記(イ)のとおり,相違点1ないし3に係る本件訂正発明

1の各構成は,乙10に「光学的カップリング」によるインクタンク

の装着位置の誤りの検出の構成として記載されているに等しい事項で

あるから,当業者であれば,乙9発明@に乙10に開示された上記事

項を適用して,本件訂正発明1を容易に想到することができたもので

ある。

(エ) まとめ

以上によれば,本件訂正発明1は,当業者が,乙9及び乙10に記載

された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,

進歩性が欠如している。

イ 本件訂正発明2に係る無効理由(進歩性の欠如)

本件訂正発明2は,本件出願の優先権主張日前に頒布された刊行物であ

る乙9及び乙10に記載された発明に基づいて,当業者が容易に想到する

ことができたものであるから,進歩性が欠如し,本件訂正発明2に係る本

件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項

号)がある。

(ア) 本件訂正発明2と乙9に記載された発明との対比

本件訂正発明2と乙9記載の液体インク供給システム(以下「乙9発

明A」という場合がある。)とを対比すると,次のとおりの相違点があ

るが,その余の構成は一致する。

(相違点A)

「液体インク収納容器」が搭載される側の記録装置が,本件訂正発明

2では,「該液体インク収納容器からの光を受光する位置検出用の受光




部を一つ備え,該受光部で該光を受光することによって前記液体インク

収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」(構

成要件2A3)を有し,「前記受光部は,前記キャリッジの移動により

対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され」た構

成(構成要件2E)を有するのに対し,乙9発明Aでは,これらの構成

を有しない点。

(相違点B)

本件訂正発明2では,「液体インク収納容器」が「前記液体インク収

納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する発光

部と,前記接点から入力される前記色情報に係る信号と,前記情報保持

部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる

制御部」(構成要件2D3及び2D4)を有するのに対し,乙9発明A

では,このような構成を有しない点。

(相違点C)

本件訂正発明2では,「前記キャリッジの位置に応じて特定されたイ

ンク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光

結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク

収納容器の搭載位置を検出する」構成(構成要件2F)を有するのに対

し,乙9発明Aでは,このような構成を有しない点。

(イ) 容易想到性

前記ア(ウ)で述べたのと同様の理由により,当業者であれば,乙9発

明Aに乙10に開示された事項(相違点AないしCに係る本件訂正発明

2の各構成)を適用して,本件訂正発明2を容易に想到することができ

たものである。

(ウ) まとめ

以上によれば,本件訂正発明2は,当業者が,乙9及び乙10に記載




された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,

進歩性が欠如している。

(2) 原告の主張

ア 本件訂正発明1に係る無効理由に対し

(ア) 相違点1ないし3に係る本件訂正発明1の各構成の不開示

被告主張の本件訂正発明1と乙9発明@との一致点及び相違点は認

める。

しかし,乙10には,光通信技術(光学的カップリング)を利用して,

プリンタがインクタンクに設けた記憶素子内の情報を読み取るという

構成が開示されているだけであって,「光学的カップリング」に関する

具体的構成の開示はなく,どのようにしてインクタンクの誤装着を検出

するのか,その具体的な構成が何ら記載されていないから,被告主張の

技術常識参酌しても,乙10に相違点1ないし3に係る本件訂正発明

1の各構成の具体的な開示があるということはできない。また,被告が

上記技術常識の根拠等として挙げる各文献(乙11,乙12の1,13,

24,25等)においても,相違点1ないし3に係る本件訂正発明1の

各構成の具体的な開示はなく,本件訂正発明1の光照合処理に関する記

載も示唆もない。

(イ) 乙9と乙10の組合せの動機付けの不存在

a 技術的課題の不開示

本件訂正発明1の課題は,単なるインクタンクの装着位置の誤りの

検出ではなく,共通バス接続方式を採用した場合でも,インクタンク

の装着位置の誤りを検出するということにある。このような発明の課

題は,乙9及び乙10のいずれにも開示されておらず,それ自体新規

な課題であって,本件出願の優先権主張日当時,当業者が容易に想到

し得る技術的課題ではなかったものである。




b 乙9の「バス接続配線」と乙10の「光学的カップリング」の組合

せについての動機の欠如

乙10記載の「光通信手段(光学的カップリング)」は,インクタ

ンクとプリンタ本体との間で情報のやり取りを行う通信手段である。

一方,乙9の「バス接続配線」も,インクタンクとプリンタ本体との

間で情報のやり取りを行う通信手段である。

このように乙9の「バス接続配線」も,乙10の「光学的カップリ

ング」も,インクタンクとプリンタ本体との間で情報をやりとりする

通信手段であるという点で,その目的ないし機能が同じであるから,

当業者の技術常識からすれば,いずれか一方を選択することしかあり

得えず,これら両通信手段を併用しようとする動機は生じない。

乙9に対して乙10を適用した場合に想到される形態は,乙9の通

信手段たる「バス接続配線」を,乙10の通信手段たる「光学的カッ

プリング」に置き換えたものにしかならない。ただし,このような置

き換えを行ってしまうと,乙9及び本件訂正発明1の骨格たる「バス

接続配線」がなくなってしまうので,両者を組み合わせて本件訂正発

明1に想到することには,阻害事由がある。

(ウ) まとめ

以上のとおり,乙10には相違点1ないし3に係る本件訂正発明1の

各構成の具体的な開示はなく,また,乙9発明@に乙10の「光学的カ

ップリング」を組み合わせる動機付けが存在しないから,当業者が乙9

及び乙10に記載された発明に基づいて本件訂正発明1を容易に想到

することができたものということはできない。

したがって,本件訂正発明1は当業者が乙9及び乙10に記載された

発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないから,被告

主張の本件訂正発明1に係る無効理由は理由がない。




イ 本件訂正発明2に係る無効理由に対し

被告主張の本件訂正発明2と乙9発明Aとの一致点及び相違点は認め

る。

しかし,前記アで述べたのと同様の理由により,本件訂正発明2は当業

者が乙9及び乙10に記載された発明に基づいて容易に発明をすること

ができたものではないから,被告主張の本件訂正発明2に係る無効理由は

理由がない。

第4 当裁判所の判断

1 争点1(被告各製品の本件訂正発明1の技術的範囲の属否)について

(1) 被告各製品の構造等

証拠(甲3ないし12,乙1,2,23(枝番のあるものは枝番を含む。

以下同じ。),検甲1,2)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品1の構造

は,別紙1の「第1 図面の説明」及び「第2 構造の説明」記載のとおり

であること,被告製品2の構造は,別紙2の「第1 図面の説明」及び「第

2 構造の説明」記載のとおりであることが認められ,これに反する証拠は

ない。

被告各製品が本件訂正発明1の構成要件1A1,1A2,1A4,1A6,

1B及び1Cを充足することは,前記争いのない事実等(4)イ(イ)のとおり

であり,また,被告各製品は,「液体インク収納容器」であるから,構成要

件1Fを充足する。

(2) 被告各製品についての構成要件1A3,1A5,1D及び1Eの充足性

前記(1)認定の被告各製品の構造によれば,被告各製品は,原告製プリン

タに設置された受光手段に投光するための赤外線を発する発光部(LED)

を有している。

原告は,本件訂正発明1の「光」は赤外線を含むものと解すべきであり,

本件訂正発明1の「発光部」(構成要件1A3,1A5,1D及び1E)は,




赤外線を発する構成のものも含まれるから,被告各製品の発光部は本件訂正

発明1の「発光部」に該当し,被告各製品は,構成要件1A3,1A5,1

D及び1Eを充足する旨主張する。

そこで,まず,本件訂正発明1の「光」は赤外線を含むものと解すべきか

どうかについて判断し,その上で,被告各製品が構成要件1A3,1A5,

1D及び1Eを充足するかどうかについて判断することとする。

ア 本件訂正発明1の「光」について

(ア) 特許請求の範囲の記載

本件各訂正発明の特許請求の範囲(本件訂正後の請求項1及び3)の

記載は,前記争いのない事実等(3)アのとおりである。

(イ) 本件訂正明細書の記載事項

本件訂正明細書(甲24)の「発明の詳細な説明」には,次のような

記載がある(この記載中に引用する図1ないし5,17,20,21,

29及び30については,別紙明細書図面参照)。

a 「【技術分野】 本発明は,液体インク収納容器,液体インク供給

システムおよび液体インク収納カートリッジに関し,詳しくは,イン

クジェット記録で用いられるインクタンクのインク残量など,液体イ

ンク収納容器の状態に関する報知をLEDなどの発光手段によって

行う構成で用いられる液体インク収納容器,液体インク供給システム

および液体インク収納カートリッジに関するものである。」(段落【

0001】)

b 「【背景技術】 近年,デジタルカメラの普及に伴って,パーソナ

ルコンピュータ(PC)を介さずにデジタルカメラと記録装置として

のプリンタとを直接接続して印刷する用途(ノンPC記録)が増えつ

つある。さらにデジタルカメラに着脱可能に用いられる情報記憶媒体

であるカードタイプの情報記憶媒体を直接プリンタに装着してデー




タ転送を行い,印刷を行う形態(ノンPC記録)も増えつつある。一

般的にプリンタのインクタンク内のインク残量はPCを介してモニ

タ上で確認する手法が知られているが,上記ノンPC記録を行う場合

においても,PCを介することなくインクタンク内のインク残量を把

握したいという要望が高まっていた。つまりユーザが,インクタンク

内のインク残量が少ないことが分かれば,例えば,記録を始める前に

予め新しいインクタンクに交換し記録の途中でインク量不足のため

に記録が実質的にできなくなる事態を未然に防止できる。」(段落【

0002】),「従来,このようなインクタンクの状態をユーザに報

知する構成として,LEDなどの表示素子を用いたものが知られてい

る。特許文献1には,記録ヘッドと一体のインクタンクに2つのLE

Dが設けられ,これらが2段階のインク残量に応じてそれぞれ点灯す

ることが記載されている。また,特許文献2にも同様に,インク残量

に応じて点灯するランプをインクタンクに設けることが記載されて

いる。同文献では,記録装置で用いる4つのインクタンクそれぞれに

上記のランプを設けることも開示されている。」(段落【0003

】),「一方,さらなる高画質化の要求から従来の4色(ブラック,

イエロー,マゼンタ,シアン)インクに,濃度の薄い淡色マゼンタ,

淡色シアンといったインクが使われるようになってきており,さらに

はレッド,ブルーインクといったいわゆる特色インクの使用も提案さ

れてきている。このような場合,インクジェットプリンタに対しては

7〜8個といったインクタンクを個別に搭載することになる。その際

に,間違った装着位置へのインクタンクの搭載を防止する機構が必要

となってくる。特許文献3には,インクタンクがキャリッジに搭載さ

れる際の,キャリッジの搭載部とインクタンク相互の係合の形状をイ

ンクタンクごとに異ならせ,これにより,インクタンクが誤った位置




に装着されることを防止している構成が開示されている。」(段落【

0004】)

c 「【発明が解決しようとする課題】 上述の特許文献2に記載され

ているようにインクタンクにランプが設けられている場合であって

も,インク残量が少ないとして認識しているインクタンクを本体側制

御部が特定する場合には,そのような認識に基づくランプの点灯など

のために信号を送るべきインクタンクを特定しなければならない。例

えばインクタンクが間違った位置に装着されていた場合には,インク

がなくなっていないインクタンクについてインク残量なしと間違っ

て表示する可能性がある。従って,ランプ等表示器の発光制御では,

搭載されるインクタンクの搭載位置を特定することが必要と な

る。」(段落【0006】),「インクタンクの搭載位置を特定する

構成としては,上述したように,搭載部とインクタンクが係合する相

互の形状を搭載位置ごとに異ならせるものがある。しかしながら,こ

の場合は特に,インクの色ないし種類ごとに異なる形状のインクタン

クを製造する必要があり,製造効率やコストの点で不利となる。(段


落【0007】),「他の構成として,インクタンクの電気接点とキ

ャリッジ等の搭載位置における本体側の電気接点とが接続して形成

される回路の信号線を,搭載位置ごとに個別のものとする構成が考慮

される。例えば,インクタンクのインク色情報をそのインクタンクか

ら読み出し,LEDの点灯などを制御するための信号線を搭載位置ご

とに個別のものとすることにより,読み出した色情報がその搭載位置

に適合していなければインクタンクが誤って搭載されていることを

知ることができる。」(段落【0008】),「しかしながら,この

ような信号線をインクタンクもしくは搭載位置ごとに個別なものと

する構成は,信号線の数を増すものである。特に,上述したように最




近のインクジェットプリンタなどでは,用いるインクの種類を多くす

ることにより画質の向上を図るのが一つの傾向としてある。このよう

なプリンタでは,特に信号線の数が増すことはコストを増すなどの要

因となる。一方で,配線数を削減するためにはバス接続といった所謂

共通の信号線の構成が有効であるが,単にバス接続のような共通の信

号線を用いる構成では,インクタンクもしくはその搭載位置を特定す

ることができないことは明らかである。 (段落
」 【0009】 ,
) 「本

発明はこのような問題を解消するためになされたものであり,その目

的とするところは,複数のインクタンクの搭載位置に対して共通の信

号線を用いてLEDなどの表示器の発光制御を行い,この場合でもイ

ンクタンクなど液体インク収納容器の搭載位置を特定した表示器の

発光制御をすることを可能とすることにある。 (段落
」 【0010】)

d 「【課題を解決するための手段】 そのために本発明では,複数の

液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと,該液体インク

収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と,前記

キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替

わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受

光する位置検出用の受光手段を一つ備え,該受光手段で該光を受光す

ることによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体

インク収納容器位置検出手段と,搭載される液体インク収納容器それ

ぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接

続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを

有し,前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体

インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前

記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭

載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液




体インク収納容器において,前記装置側接点と電気的に接続可能な前

記接点と,少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を

保持可能な情報保持部と,前記受光手段に投光するための光を発先す

る前記発光部と,前記接点から入力される前記色情報に係る信号と,

前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光

を制御する制御部と,を有することを特徴とする。」(段落【001

1】),「さらに,本発明は,複数の液体インク収納容器を互いに異

なる位置に搭載して移動するキャリッジと,該液体インク収納容器に

備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と,該液体インク収

納容器からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え,該受光部

で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置

を検出する液体インク収納容器位置検出手段と,搭載される液体イン

ク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して

共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有し

た電気回路とを有する記録装置と,前記記録装置の前記キャリッジに

対して着脱可能な液体インク収納容器と,を備える液体インク供給シ

ステムにおいて,前記液体インク収納容器は,前記装置側接点と電気

的に接続可能な前記接点と,少なくとも液体インク収納容器のインク

色を示す色情報を保持する情報保持部と,前記液体インク収納容器位

置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する発光部と,前

記接点から入力される前記色情報に係る信号と,前記情報保持部の保

持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御

部と,を有し,前記受光部は,前記キャリッジの移動により対向する

前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され,前記キャリッ

ジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の

前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体インク収納




容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する

ことを特徴とする。」(段落【0013】)

e「【発明の効果】 以上の構成によれば,記録装置の本体側の接点(コ

ネクタ)と接続する液体インク収納容器であるインクタンクの接

点(パッド)を介して入力される信号と,そのインクタンクの色情報

とに基づいて発光部の発光を制御するので,先ず,搭載される複数の

インクタンクが共通の信号線によってその同じ制御信号を受け取っ

たとしても,色情報に合致するインクタンクのみがその発光制御を行

うことができ,これにより,インクタンクを特定した発光部の点灯な

ど発光制御が可能となる。次に,このようなインクタンクを特定した

発光制御が可能な場合,例えばキャリッジに搭載された複数のインク

タンクについて,その移動に伴い所定の位置で順次その発光部を発光

させるとともに,上記所定の位置での発光を検出するようにすること

により,発光が検出されないインクタンクは誤った位置に搭載されて

いることを認識できる。これにより,例えば,ユーザに対してインク

タンクを正しい位置に再装着することを促す処理をすることができ,

結果として,インクタンクごとにその搭載位置を特定することができ

る。」(段落【0019】),「この結果,複数のインクタンクの搭

載位置に対して共通の信号線を用いてLEDなどの表示器の発光制

御を行い,この場合でもインクタンクなど液体インク収納容器の搭載

位置を特定した表示器の発行制御をすることが可能となる。 (段落


【0020】)

f 「1. 機械的構成 1.1 インクタンク(図1〜図5) 図

1(a),(b)および(c)は,それぞれ,本発明の第1の実施

態に係る液体収納容器であるインクタンクの側面図,正面図および底

面図,図2はその側断面図である。なお,本説明において,インクタ




ンクの正面とは,ユーザに向き合うことでその操作(着脱操作等)お

よびユーザへの情報提供(後述するLEDの発光)を可能とする面を

言う。」(段落【0022】),「 図3〜図5を用い,本実施形態

の主要部である基板100の構成および機能について説明する。ここ

で,図3(a)および(b)は本発明の第1の実施形態に係るインク

タンクに配置される基板の機能の概略を説明するための模式的側面

図,図4(a)および(b)は,それぞれ,図3の主要部の拡大図お

よびそのIVb方向断面の矢視図,図5(a)および(b)は,それ

ぞれ,第1の実施形態に係るインクタンクに取り付けられる制御基板

100の一例を示す側面図および正面図である。」(段落【0032

】),「記録ヘッド105’を備えた記録ヘッドユニット105に一

体化されているホルダ150の第1係止部155および第2係止部

156に対し,インクタンク1の第1係合部5および第2係合部6が

それぞれ係合することで,インクタンク1がホルダ150に装着さ

れ,固定される。またこのとき,ホルダ150に設けられた接点(以

下コネクタと称す)152と,インクタンクに設けられた基板100

の外側に向かって位置する面に設けられた接点としての電極パッド

102(図5(b))とが接触し,電気的接続が可能となる。」(段

落【0033】),「インクタンク1の内側に向かって位置する基板

100の面には,LEDなど可視光を発生する第1発光部101と,

この発光部を制御する制御素子103とが設けられており,コネクタ

152よりパッド102を介して供給される電気信号により,制御素

子103は第1発光部101の発光の制御を行う。なお,図5(a)

は,制御素子103を基板100に実装した後に,保護用の封止剤で

これを被覆した状態を示している。また,インクタンクが収納してい

るインクの色やインク残量などの情報を記憶させておくメモリ素子




を搭載する場合にも,これを同じ位置に実装して封止剤で被覆するこ

とができる。」(段落【0034】),「ここで,上述したように,

インクタンク1の底面および正面をなす両面が交わる部分にあって,

支持部材3の支持部分の下方には,本実施形態の主要部をなす基板1

00が配設されている。この配設部位において,インクタンク1には

両面をつなぐ斜面が形成されている。従って,第1発光部101が発

光すると,その一部は斜面に沿ってインクタンク1の正面側から外に

向かって投光される。」(段落【0035】),「かかる配置とした

基板100を用いることで,記録装置(ひいてはこれが接続されるコ

ンピュータなどのホスト装置)だけでなく,ユーザに対しても,第1

発光部101を兼用してインクタンク1に係る所定の情報を直接提

示することが可能となる。すなわち,図3(a)に示すように,ホル

ダ150を搭載するキャリッジの走査範囲の端部にあって図の右上

方向に投光される光を受容する位置に受光部を配置し,その部位にキ

ャリッジが位置したときに第1発光部101の発光を制御すること

で,記録装置側は受光部の受光内容からインクタンク1に係る所定の

情報を認識することが可能となる。また,例えば走査範囲の中央にキ

ャリッジを位置させて第1発光部101の発光を制御することで,図

3(b)に示すように,ユーザはその発光状態を目視することにより

インクタンク1に係る所定の情報を認識することが可能とな

る。」(段落【0036】),「インクタンク(液体収容容器)1の

所定の情報とは,インクタンク1の装着状態の良否(すなわち装着が

完全であるか否か),装着位置の適否(インク色に対応して予め定め

られているホルダ上の装着位置に正しく装着されているか否か) さ


らにはインク残量の有無(十分なインク量が残っているか否か)など

であり,発光の有無や発光の状態(点滅など)によりそれらの情報の




提示が可能となるのである。発光の制御およびそれに伴う情報提示の

態様については,制御系の構成の説明の項において詳述する。」(段

落【0037】),「上記基板100ないし第1発光部101の配置

および動作に好ましい構成としては,図4(a)および(b)に示す

ものが挙げられる。すなわち,第1発光部101および制御素子10

3が設けられている基板100の面に対向するインクタンク1の部

分には,第1発光部101により発光された光が第1受光部210や

ユーザの視界に円滑に到達するようにする目的で,少なくとも光

軸(矢印)に沿って空間1Aを形成しておくことが望ましい。また,

同じ目的のために,支持部材3の配設位置および形状を適切に定める

ことで,光軸が遮断されないようにする。さらに,ホルダ150には

光軸を確保するための穴(もしくは光透過性の部分)150Hが設け

られている。」(段落【0038】),「1.2 変形例(図6〜図

13) 以上述べた構成は例示であって,第1発光部101を兼用し

て記録装置およびユーザに対しインクタンク1に係る所定の情報を

提示することが可能であれば,適宜の変形を行うことができる。この

項ではそのいくつかについて説明する。 (段落
」 【0039】 ,
) 「以

上の各構成においては,ユーザの目や受光部に向かう光軸が積極的に

確保されるように,光軸を遮る部材の位置や形状を適切に定めたり,

開口や透光性の部分を設けたりすることが好ましい。しかしこれによ

らずとも,ユーザの目や受光部に光を導く構成を採ることは可能であ

る。」(段落【0046】),「図12(a)および(b)は,その

ための構成例を示すものであり,第1発光部101が発する光を所要

の位置に向けて導くための光ファイバなどの導光性部材154を配

設してある。すなわち,かかる導光性部材154によって,第1受光

部210(図12(a))およびユーザの目(図12(b))に対し,




インクタンク1に係る所定の情報を伝達することが可能とな

る。」(段落【0047】)

g 「図17に示すように,本実施形態のプリンタ200は,記録ヘッ

ドおよびインクタンクを搭載したキャリッジが走査のための移動を

して記録を行う機構などプリンタの主要部分が,本体カバー201お

よびその他のケース部分によって覆われているプリンタ本体と,その

前後にそれぞれ設けられる排紙トレイ203と,自動給紙装置(AS

F)202とを備えたものである。また,本体カバーを閉じた状態お

よび開いた状態の両方で本プリンタの状態を表示するための表示器,

電源スイッチおよびリセットスイッチを備えた操作部213が設け

られている。」(段落【0068】),「各インクタンク1のタンク

ホルダ部を備えた記録ヘッドユニット105には,前述したように,

各インクタンクに対応してコネクタが設けられており,それぞれのコ

ネクタは装着されるインクタンク1に設けられている基板のパッド

と接触する。これにより,それぞれのLED101について,図25

〜図27にて後述されるシーケンスに従った点灯ないし点滅の制御

が可能となる。」(段落【0072】),「具体的には,上記のタン

交換位置では,それぞれのインクタンク1についてインク残量が少

なくなったとき,その該当するインクタンク1のLED101を点灯

もしくは点滅させる。また,キャリッジの移動範囲において,上述の

回復ユニットが設けられた位置と反対側の端部付近には,受光素子を

有した第1受光部210が設けられている。これにより,キャリッジ

205の移動に伴ってそれぞれのインクタンク1のLED101が

この受光部210を通過する際にLED101を発光させ,その光を

受光したときのキャリッジ205の位置に基づいてキャリッジ20

5におけるそれぞれのインクタンク1の位置を検出することができ




る。さらに,LEDの点灯などの制御の他の例として,上記タンク交

換位置で,インクタンク1が正しく装着されたときにそのタンクのL

ED101を点灯させる制御を行う。これらの制御は,記録ヘッドの

インク吐出などの制御と同様,フレキシブルケーブル206を介して

本体側の制御回路からそれぞれのインクタンクに対して制御デー

タ(制御信号)が送られることによって実行される。」(段落【00

73】),「キャリッジ205の移動範囲の一方の端部近傍に設けら

れる第1受光部210は,インクタンク1のLED101からの発光

を受けて,それに応じた信号を制御回路300へ出力する。制御回路

300は,後述のように,この信号に基づき,それぞれのインクタン

ク1のキャリッジ205における位置を判断することができる。ま

た,キャリッジ205の移動経路に沿ってエンコーダスケール209

が設けられるともに,キャリッジ205にはエンコーダセンサ211

が設けられる。このセンサの検出信号はフレキシブルケーブル206

を介して制御回路300に入力し,これにより,キャリッジ205の

移動位置を知ることができる。この位置情報は,各記録ヘッド吐出制

御に用いられるとともに,図25などにて後述される,インクタンク

位置を検出する光照合処理において用いられる。」(段落【0079

】)

h 「図20に示すように,インクタンク1に対する信号配線は,4本

の信号線からなり,また,4つのインクタンク1に共通の信号配線(所

謂バス接続)である。すなわち,それぞれのインクタンク1に対する

信号配線は,インクタンクにおけるLED101の発光およびその駆

動などを行う機能素子群103の動作などの電力供給にかかる電源

信号線「VDD」およびアース信号線「GND」と,後述されるよう

に,制御回路300から,LED101の点灯,点滅などの処理に関




する制御信号(制御データ)などを送るための信号線「DATA」お

よびそのクロック信号線「CLK」の4本の信号線から構成される。

実施例においては4本の信号線による説明を行うが,本発明はこれ

に限定されるものでなく例えばアース信号を別構成で達成すること

により「GND」線を省略することも可能である。 「CLK」 「D
また と

ATA」の信号線を共有して一本で構成することも可能である。(段


落【0081】),「一方,各インクタンク1の基板100には,こ

れら4本の信号線の信号によって動作する制御部103およびそれ

によって動作するLED101が設けられている。」(段落【008

2】),「図21はこれら制御部などが設けられた基板の詳細を示す

回路図である。同図に示すように,制御部103は,入出力制御回

路(I/O CTRL)103A,メモリーアレイ103BおよびL

EDドライバ103Cを有して構成される。入出力制御回路103A

は,本体側の制御回路300からフレキシブルケーブル206を介し

て送られてくる制御データに応じて,LED101の表示駆動やメモ

リーアレイ103Bに対するデータの書き込みおよび読み出しを制

御する。メモリーアレイ103Bは,本実施形態ではEEPROMの

形態のものであり,インク残量,収納するインクの色情報の他,その

インクタンクの固有番号や製造ロット番号などの製造情報等のイン

クタンク個体情報を記憶することができる。なお,色情報はインクタ

ンクの出荷時または製造時に,その収納しているインクの色に対応し

て,メモリーアレイ103Bの所定のアドレスに書き込まれる。例え

ばこの色情報は,図23,図24にて後述されるように,インクタン

クの識別情報(個体情報)として用いられ,これにより,インクタン

クを特定してメモリーアレイ103Bに対するデータの書き込みや

メモリーアレイ103Bからデータの読み出しを行い,また,そのイ




ンクタンクのLED101の点灯,消灯を制御することが可能とな

る。メモリーアレイ103Bに書き込まれ,また,読み出されるデー

タには,例えば,インク残量のデータがある。本実施形態のインクタ

ンクには,前述したようにその底部にプリズムが設けられ,インクの

残量が少なくなったときはこのプリズムを介して光学的にその旨を

検出することができる。本実施形態では,これに加え,制御回路30

0は,吐出データに基づいて記録ヘッドごとの吐出数をカウントし,

それに基づいてインクタンクごとのインク残量を計算する。そして,

この残量情報をそれぞれ対応するインクタンクのメモリーアレイ1

03Bに書き込み,また,読み出す処理を行う。これにより,メモリ

ーアレイ103Bはその時点のインク残量の情報を保持することが

でき,この情報は,例えば,上記プリズムを用いたインク残量検出と

併用したより精度の高い残量検出に用いられたり,装着されたインク

タンクが新しいものか,あるいは一度用いられて再装着されたもので

あるかなどを判断するために用いられたりする。」(段落【0083

】),「LEDドライバ103Cは,入出力制御回路103Aから出

力される信号がオンのときLED101に電源電圧を印加するよう

動作し,これにより,LED101を発光させる。従って,入出力制

御回路103Aから出力される信号がオンの状態にあるとき,LED

101は点灯状態となり,上記信号がオフの状態にあるとき,LED

101は消灯状態となる。」(段落【0084】),「図23は,上

述したメモリーアレイ103Bに対するデータの書き込みおよび読

み出しの動作をそれぞれ説明するためのタイミングチャートであり,

図24は,LED101の点灯および消灯の動作をそれぞれ説明する

タイミングチャートである。」(段落【0086】),「図23に示

すように,メモリーアレイ103Bへの書き込みでは,本体側の制御




回路300からインクタンク1の制御部103における入出力制御

回路103Aに対し,信号線DATA(図20)を介して「開始コー

ド+色情報」,「制御コード」,「アドレスコード」,「データコー

ド」の各データ信号が,クロック信号CLKに同期してこの順で送ら

れてくる。「開始コード+色情報」は,その「開始コード」信号によ

って,一連のデータ信号の始まりを意味し,また,「色情報」信号に

よってこの一連のデータ信号の対象となっているインクタンクを特

定する。なお,ここでのインクの「色」とはY,M,C等のインク色

だけでなく濃度の異なるインクをも含むものである。」(段落【00

87】),「「色情報」は,同図に示すように,インクの

色「K」,「C」,「M」,「Y」に対応したコードを有しており,

入出力制御回路103Aは,このコードが示す色情報とメモリーアレ

イ103Bに格納されている自身の色情報とを比較し一致している

ときにのみ,それ以降のデータ信号を取り込む処理を行い,一致しな

いときは,それ以降のデータ信号の取り込みを無視する処理を行う。

これにより,図20に示した共通の信号線「DATA」を介して,本

体側からデータ信号をそれぞれのインクタンクに共通に送っても,そ

れに上述の色情報を含めることによってインクタンクを特定するこ

とができ,書き込み,読み出し,LEDの点灯,消灯など,その後の

データ信号に基づく処理を,その特定したインクタンクに関してのみ

行うことが可能となる。この結果,4つのインクタンクに対して共通

の(1本の)データ信号線を介して送信されるデータによってデータ

の書き込みなどのほか,LEDの点灯,消灯の制御を行うことができ,

これらの制御に要する信号線の数を本発明のように少なくすること

が可能となる。なお,このような共通の(1本の)データ信号線を用

いる構成は,インクタンクの数に限定されずに同じものとすることが




できることは,以上の説明からも明らかである。」(段落【0088

】)

i 「光照合処理は,正常に装着されたインクタンクそれぞれが正しい

位置に装着されているか否かを判断する処理である。本実施形態で

は,インクタンクの装着位置について,例えば,インクタンクと装着

位置の形状を他のインクのインクタンクが装着できないような形状

とし,それぞれの色のインクタンクに対応して装着位置を定めるよう

な構成をとらないことから,それぞれの色のインクタンクについて本

来の位置でないところに誤って装着される可能性がある。このため,

本光照合処理を行い,誤って装着されている場合は,ユーザにその旨

を知らせるものである。これにより,特に,インクタンクの形状を色

ごとに異ならせることなく,インクタンクの製造の効率化や低コスト

化を図ることができる。 (段落
」 【0108】 ,
) 「図29(a) (d)


および図30(a)〜(d)は,この光照合処理を説明する図であ

る。」(段落【0109】),「図29(a)に示すように,先ず,

第1受光部210に対して,図中左側から右側へ移動キャリッジ20

5を開始する。そして,最初に,イエローインクのインクタンク1Y

が装着されるべき位置のインクタンクが第1受光部210に対向す

る位置で,インクタンク1YのLED101を発光させる(図24に

て説明したように,実際は点灯し所定時間後消灯すること,以下,本

照合処理では同様) インクタンク本来の正しい位置に装着されてい


るとき,第1受光部210はLED101の発光を受光することがで

き,制御回路300は,その装着位置にはインクタンク1Yが正しく

装着されていると判断する。」(段落【0110】),「キャリッジ

205を移動しつつ,同様にして,図29(b)に示すように,マゼ

ンタインクのインクタンク1Mが装着されるべき位置のインクタン




クが第1受光部210に対向する位置で,インクタンク1MのLED

101を発光させる。同図に示す例は,インクタンク1Mが正しい位

置に装着されていて第1受光部210はその発光を受光することを

示している。順次,図29(b)〜(d)に示すように,判断する装

着位置を変えながら発光を行って行く。これらの図は,正しい位置に

装着されている例を示している。」(段落【0111】),「これに

対し,図30(b)に示すように,マゼンタインクのインクタンク1

Mが装着されるべき位置にシアンインクのインクタンク1Cが誤っ

て装着されているときは,第1受光部210に対向しているインクタ

ンク1CのLED101は発光せず,別の位置に搭載されているイン

クタンク1MのLED101が発光する。この結果,このタイミング

では,第1受光部210は受光できないことから,制御回路300は,

その装着位置にはインクタンク1M以外のインクタンクが装着され

ていると判断する。これに対応して,図30(c)に示すように,シ

アンインクのインクタンク1Cが装着されるべき位置にマゼンタイ

ンクのインクタンク1Mが誤って装着されており,第1受光部210

に対向しているインクタンク1MのLED101は発光せず,別の位

置に搭載されているインクタンク1CのLED101が発光 す

る。」(段落【0112】),「以上説明した光照合処理を行うこと

により,制御回路300は本来の位置に装着されていないインクタン

クを特定することができる。また,装着されるべき位置に正しいイン

クタンクが装着されていなかった場合には,その装着位置において,

他の3色のインクタンクを順に発光させる制御を行うことによって,

その装着位置に誤って何色のインクタンクが装着されてしまったか

を特定することもできる。」(段落【0113】),「図25におい

て,上述したステップS105の光照合処理の後,ステップS106




でこの処理が正常終了したか否かを判断する。光照合が正常終了した

と判断したときは,ステップS107で,操作部213の表示器を例

えばグリーンに点灯して,本処理を終了する。一方,正常の終了でな

いと判断したときは,ステップS109で操作部213の表示器を例

えばオレンジで点滅するとともに,ステップS110で,ステップS

105で特定した,本来の正しい位置に装着されていないインクタン

クのLED101を,例えば点滅あるいは点灯する。これにより,ス

テップS108で,ユーザが本体カバー201を開けたとき,本来の

正しい位置に装着されていないインクタンクを知ることができ,正し

い位置への再装着を促すことができる。」(段落【0114】)

(ウ) 検討

a 本件訂正発明1の特許請求の範囲(本件訂正後の請求項1)の記載

中には,「前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部」

との記載があり,「発光部」が発光する「光」は,「受光手段に投光

するための光」であると規定しているが,この「光」を特定の領域の

波長に限定したり,可視光に限定する旨の文言は存在しない。

加えて,甲18(岩波理化学辞典(第5版))に,「光」は,「可

視光線に限定することもあるが,ふつうは紫外線,赤外線をあわせ波

長が約1nm〜1mmの範囲にある電磁波を光とよぶ。 との記載が


あること,本件訂正明細書(甲24)の「発明の詳細な説明」中には,

本件訂正後の請求項1の「光」の用語を定義する記載や,この用語を

普通の意味とは異なる特定の意味で使用することを説明した記載が

ないことに照らすならば,本件訂正後の請求項1の「光」は,その文

理上,可視光に限定されるものではなく,赤外線を含むものと解され

る。

b 次に,本件訂正後の請求項1の文言,前記(イ)の本件訂正明細書




の「発明な詳細の説明」の記載事項及び各図面を総合すれば,本件訂

正明細書には,@従来,キャリッジに複数のインクタンクを搭載して

使用する記憶装置としてのプリンタにおいては,インクタンクの誤装

着を防止するために搭載位置を特定する構成として,インク色に対応

するインクタンクの搭載位置を定めた上,搭載部とインクタンクが係

合する相互の形状を搭載位置ごとに異ならせ,他のインク色のインク

タンクが装着できないようにする構成や,インクタンクの電気接点と

キャリッジ等の搭載位置における本体側の電気接点とが接続して形

成される回路の信号線を,搭載位置ごとに個別のものとし,この個別

の信号線を用いてインクタンクからインク色情報を読み出し,インク

タンクが正しい位置に装着されているか否かを検出する構成が提案

されていたが,これらの構成では,インク色ごとに異なる形状のイン

クタンクを製造したり,信号線の配線数を増す必要があり,コスト増

の要因となるなどの課題があったこと,A一方で,信号線の配線数を

削減するための配線方式としては,複数のインクタンクと記録装置と

の間に共通の信号配線を用いる共通バス接続方式が有効であるが,共

通バス接続方式を採用した場合,全てのインクタンクからの信号が共

通の信号配線で送信されてくるため,インクタンクからの信号を受信

しただけでは当該インクタンクがキャリッジ内に装着されているこ

とを検出することはできても,その搭載位置を特定することができ

ず,それが正しい搭載位置に装着されているか否かを検出できないと

いう課題があったこと,B本件訂正発明1は,共通バス接続方式を採

用しながらも,各インクタンクがインク色に応じてキャリッジの所定

の位置に正しく装着されているか否かを検出することを目的とし,上

記課題を解決するための手段として,キャリッジに搭載された複数の

インクタンクにそれぞれのインク色情報を保持可能な情報部と,本体




側の記憶装置に設けられた受光部に投光するための光を発光する発

光部と,その発光を制御する制御部とを設け,インクタンクが受光部

に対向する位置で発光する場合には受光部が受光できるようにし,キ

ャリッジを相対移動させることにより,所定の位置で各インクタンク

と受光部とを対向させ,本来装着されるべき位置のインク色のインク

タンクを順次発光させ,受光部が受光できたときは当該インク色のイ

ンクタンクが本来の正しい搭載位置に装着されていると判断し,受光

部が受光できなかったときは受光部に対向する位置には誤ったイン

ク色のインクタンクが装着されていると判断するという「光照合処

理」(前記(イ)i)の方法を採用することにより,共通バス接続方式

を採用しつつインクタンクの装着位置の誤りを検出するという作用

効果を奏するようにした点に技術的意義があることが開示されてい

るものと認められる。

そして,上記「光照合処理」は,インクタンクの発光部が発する光

が赤外線であっても行うことができること(甲3ないし12)からす

ると,本件訂正発明1の上記技術的意義に鑑みても,本件訂正発明1

の「光」から赤外線を除外すべき理由はない。

c 以上によれば,本件訂正発明1の「光」は,原告が主張するとおり,

赤外線を含むものと解すべきである。

(エ) 被告の主張に対する判断

被告は,@本件訂正明細書の「発明の詳細な説明」の記載及び図面を

参酌すれば,本件訂正発明1の「光」は,ユーザが発光部の発光を認識

できる可視光にのみ限定して解釈すべきであること,A原告は,本件前

訴において,本件訂正発明1(本件訂正後の請求項1)の「光」は,可

視光を意味するとの主張を繰り返し行っていたにもかかわらず,本訴に

おいて,この「光」に赤外線も含まれると主張することは,禁反言の法




理に反し,許されないこと,B当業者である米国特許特許商標庁審査官

は,本件訂正発明1の「光」は可視光に限定されると認識していたこと

を理由に(以下,それぞれを「被告の主張@」などという。),本件訂

正発明1の「光」は,可視光に限定して解釈すべきであり,赤外線は含

まれない旨主張する。

しかしながら,被告の主張は,以下のとおり理由がない。

a 被告の主張@について

被告は,本件訂正明細書発明の詳細な説明の各記載(段落【00

01】ないし【0004】,【0006】ないし【0013】,【0

019】,【0020】,【0022】,【0032】ないし【00

47】,【0057】,【0058】,【0060】,【0061】,

【0072】ないし【0074】,【0077】,【0079】,【

0103】,【0104】,【0107】ないし【0114】,【0

117】ないし【0120】,【0127】,【0130】ないし【

0132】,【0138】)及び図面(図3ないし13,18,28,

34ないし37)には,本件各訂正発明は,インクタンクの搭載位置

のユーザへの「報知」を「発光手段」で行い,そのインクタンクの搭

載位置を特定するための「発光手段」としてLEDなどの「表示器」

を用い,「表示器」の「発光」によりインクタンクの搭載位置を「ユ

ーザ」に「認識」させ,「ユーザ」に対してインクタンクを正しい位

置に再装着することを促す処理を行うものであることが開示され,ま

た,本件訂正明細書に開示された本件各訂正発明の実施例は,全て可

視光を用いた実施例であって,不可視光を用いた実施例の記載がない

ことを参酌すると,本件訂正発明1の「光」とは,インクタンクの搭

載位置を「ユーザ」に知らせること(「報知」)を可能にすべく,L

EDなどの「表示器」によって発光され,かつ,「ユーザ」がその発




光を「認識」できる「可視光」のみに限定して解釈すべきである旨主

張する。

しかしながら,本件訂正発明1の特許請求の範囲(本件訂正後の請

求項1)には,「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色

の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果

に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収

納容器の搭載位置を検出する記録装置」との記載はあるが,「液体イ

ンク収納容器」の「発光部」が発光する「光」をユーザに認識させる

ことにより,「液体インク収納容器の搭載位置」をユーザへ報知する

ことを規定した明示の記載や,これを規定したことをうかがわせる記

載はない。

もっとも,被告が指摘する本件訂正明細書発明の詳細な説明の記

載及び図面中には,「本発明」の実施例として,インクタンクに設け

られたLEDなどの表示器の可視光を発生する発光部が発光するこ

とにより,記録装置側は受光部の受光内容からインクタンクに係る所

定の情報(装着状態の良否,装着位置の適否,インクの残量等)を認

識することが可能となるだけでなく,ユーザがその発光状態を目視す

ることによりインクタンクに係る所定の情報を認識することが可能

となり,ユーザに上記情報を直接提示することが可能となることが開

示されているが(例えば,前記(イ)f,図3(別紙明細書図面参照)

等),上記のとおり,本件訂正後の請求項1には,「発光部」が発光

する「光」により「液体インク収納容器の搭載位置」をユーザへ報知

することを規定した記載はないことに照らすと,本件訂正発明1

の「液体インク収納容器」の「発光部」は,上記実施例のように,イ

ンクタンクの発光部が記録装置に対する当該インクタンクに係る所

定の情報の提供の提示とユーザに対する上記情報の提供の直接提




示(報知)の両方を兼用する構成のものに限定されるものと解すべき

理由はなく,上記実施例(本件訂正明細書記載の他の同様の実施例を

含む。)は,本件訂正発明1の一実施態様を説明したにすぎないもの

といわざるを得ない。また,本件訂正明細書には,「発明の効果」(前

記(イ)e)として,「例えばキャリッジに搭載された複数のインクタ

ンクについて,その移動に伴い所定の位置で順次その発光部を発光さ

せるとともに,上記所定の位置での発光を検出するようにすることに

より,発光が検出されないインクタンクは誤った位置に搭載されてい

ることを認識できる。これにより,例えば,ユーザに対してインクタ

ンクを正しい位置に再装着することを促す処理をすることができ,結

果として,インクタンクごとにその搭載位置を特定することができ

る。」(段落【0019】)との記載があり,「ユーザに対してイン

クタンクを正しい位置に再装着することを促す処理」をできることが

示されているが,このユーザに対する「促す処理」の手法がインクタ

ンクの「発光部」それ自体によってされなければならないとする記載

はなく,一般的に知られているプリンタと接続したPC(パソコン)

を介してそのモニタ上で確認する手法(段落【0002】)や,プリ

ンタ本体の表示器(段落【0068】)などで表示する手法が除外さ

れるべき理由はない。

さらに,被告は,「表示」とは,「はっきり表に現れた形で示すこ

と」をいうから(乙16),LEDなどの「表示器」がユーザに報知

するために行う「発光」が可視光を発することを意味することは自明

であり,また,本件訂正後の請求項1には「光らす」との記載がある

ところ,「光る」とは「ぴかっと光を放つ。 の意であり
」 (広辞苑(第

五版)),不可視光が「ぴかっと光を放つ。」わけはないから,特許

請求の範囲の記載自体からも「光」が可視光のみを意味する旨主張す




るが,いずれも独自の見解であって,採用することはできない(なお,

広辞苑(第六版)には,「光」とは,「目に感ずる明るさ。目を刺激

して視覚を起こさせる物理的原因。その本質は可視光線を主に赤外線

・紫外線をふくめ,波長が約1ナノメートルから1ミリメートルの電

磁波。」を意味するとの記載があり,「光」には,可視光線以外の赤

外線が含まれることが示されている。)。

したがって,被告の上記主張は,理由がない。

b 被告の主張Aについて

(a) 被告は,原告は,本件前訴において,訴状(乙3の5頁4行〜

8行,16頁12行〜末行,37頁末行〜38頁12行,38頁2

6行〜39頁12行),平成21年2月26日付け「原告第1主張

書面」(乙4の6頁27行〜7頁3行),同年5月18日付け「原

告第2準備書面」(乙5の7頁21行〜27行),同年7月31日

付け「原告第3準備書面」(乙6の9頁22行〜29行,10頁6

行〜27行,26頁12行〜19行,27頁25行〜28頁1行),

同年9月16日付け「原告第4準備書面」(乙7の5頁15行〜1

8行)及び同年10月9日付け「原告第5準備書面」(乙8の11

頁末行〜12頁17行)をもって,前訴被告製品との対比とは関係

なく,本件特許の有効性を議論する中で,設定登録時の請求項1あ

るいは本件訂正後の請求項1の「光」とは,可視光を意味するとの

主張を繰り返し行っていたにもかかわらず,本訴において,本件訂

正後の請求項1の「光」に赤外線も含まれると主張することは,禁

反言の法理に照らし,許されない旨主張する。

しかしながら,まず,被告が指摘する本件前訴の訴状の記載箇所

は,本件訂正前の明細書(甲2)記載のインクタンクの発光部が可

視光を発する実施例の記載に基づいて,設定登録時の請求項1及び




5に係る各発明を利用する態様を説明したものであり,その中に

は,インクタンクの発光部の制御(発光,点滅)によりユーザー(ユ

ーザ)に対してインクタンクの情報を分かりやすく提供することを

可能にした旨の記載があるが,上記記載箇所の文言から,設定登録

時の請求項1及び5の「光」の用語を可視光に限定する趣旨を明示

したことを読み取ることはできないし,また,前訴被告製品は,上

実施例と同様に,可視光を発するインクタンクであったこと(争

いがない。)に照らすならば,上記記載をもって,そのような限定

解釈をすべきことを原告が主張したものと解することはできない。

次に,被告が指摘する「原告第1主張書面」ないし「原告第5準

備書面」の記載箇所は,被告が本件前訴で主張した本件特許の無効

理由に対する原告の反論が記載された部分であり,その中には,設

定登録時の請求項1及び5に係る各発明あるいは本件各訂正発明

が,被告主張の引用文献記載の発明とは異なり,インクタンクの位

置情報等をインクタンク自体の発光によってユーザーに直接的に

通知するという機能を可能とした旨の記載や,ユーザーへの報知も

発光部によって実現する機能を有している旨の記載がある。例え

ば,「原告第3準備書面」(乙6)中には,「乙第11号証と乙第

12号証」(本訴乙29及び30)は,「いずれも,インクタンク

に設けた標識手段を光学的に読み取る技術を開示している。,
」「光

の使用という点だけが共通点であって,インクタンクには何らの電

気的な制御も行われない。本件特許発明では,インクタンクとバス

接続し,インクタンクの状態を把握するなどの高度の制御を実現し

つつ,その配線と制御機能に,発光/受光部を加えることによって,

インクタンクの誤装着検知を行い,さらにユーザーへの報知も発光

部によって実現するという一連の機能を可能にしている。(以上,





26頁12行〜19行)との記載がある。他方で,「原告第3準備

書面」(乙6)中には,「訂正請求項1及び3において明記された

ように,インクタンクに発光手段を設け,キャリッジに搭載されて

移動するインクタンクと対向し,インクタンクの発光を受光し得

る(必要な強度で受光し得る)位置に受光手段を設ける。キャリッ

ジが移動すると,各インクタンクと受光手段の位置関係が変動する

ので,例えば,各インクタンクが,受光手段の正面に来たときに発

光させるようにすると,予定どおりに発光されたインクタンクは,

正しい位置に取り付けられていること及び発光機能が正常である

ことが確認される。予定どおりに受光しない場合には,当該インク

タンクの発光機能が故障しているか,または,装着位置が誤ってい

ることが認識される。何らかの異常が検知された場合には,利用者

に報知し,印刷を開始する前に,インクタンクの発光機能や装着状

態を正常のものとすることができる。 (9頁6行〜17行) 「こ
」 ,

の手段を設けることによって,構造が簡易で安価なバス接続を使用

する利益を享受しながら,あたかも全部のインクタンクにつき個別

の配線を設けたのと同じように,インクタンクの位置を含む情報を

取得し,かつ,発光などの動作を制御することができるようになっ

た。」(9頁18行〜21行),「このように,多様な利用価値を

有しているけれども,本件特許発明の構成が備える最も重要な機能

は,各インクタンクを所定の位置(例えば受光手段の正面位置)で

発光させることにより,インクタンクが正しい位置に搭載され,か

つ正しく機能していることを確認できることである。この本件特許

発明の特徴は,被告引用のいずれの公知文献にも記載されておら

ず,また,どのように公知文献を組み合せても到達できるものでは

ない。」(9頁末行〜10頁5行)との記載部分があり,これらの




記載部分に照らすならば,原告は,本件前訴において,「本件特許

発明の構成が備える最も重要な機能」は,「各インクタンクを所定

の位置(例えば受光手段の正面位置)で発光させることにより,イ

ンクタンクが正しい位置に搭載され,かつ正しく機能していること

を確認できること」,すなわち,「光照合処理」(前記(ウ)b)を

採用した点にあり,この点が,設定登録時の請求項1及び5に係る

各発明あるいは本件各訂正発明と被告主張の引用文献記載の発明

との最も重要な相違点であると主張していたものと認められ,「ユ

ーザーへの報知も発光部によって実現する機能」は,「多様な利用

価値」の一つとして付随的な相違点として主張していたにすぎない

ものとうかがわれる。

したがって,被告が指摘する「原告第1主張書面」ないし「原告

第5準備書面」の記載箇所をもって,原告が,本件前訴において,

本件訂正後の請求項1及び3の「光」の用語を可視光に限定して解

釈すべきことを明示していたということはできないし,また,この

ような限定解釈を前提に被告が本件前訴で主張した本件特許の無

効理由を回避しようとしたということもできない。

以上によれば,原告が本訴において本件訂正後の請求項1の「光」

に赤外線も含まれると主張することは禁反言の法理に照らし許さ

れないとの被告の上記主張は,理由がない。

(b) また,被告は,原告が,本件前訴において,「本件特許発明

作用効果」としてユーザへの可視光による報知を一貫して主張して

おきながら,前訴和解の成立後に,かかる作用効果を奏さない被告

各製品も本件訂正発明1の技術的範囲に属すると主張することは,

前訴和解の成立の経緯からも,禁反言の法理及び信義則に反する旨

主張する。




しかしながら,前記(a)で述べたのと同様の理由により,被告の

上記主張は理由がない。

c 被告の主張Bについて

被告は,当業者というべき米国特許商標庁審査官は,米国715発

明の特許出願の審査手続においてした特許許可通知(乙21の1)の

許可理由中で,本件特許の関連特許である米国881特許のインクタ

ンクは可視光を利用するものと認定した上で,米国881特許を含む

先行技術は,非可視光を利用する発明を含まず,可視光を利用するも

のであるから,米国715発明の請求項11に係る発明には特許性が

あると判断しており,このことは,当業者が,本件訂正発明1の「光」

は可視光に限られるとの認識を有していることを意味する旨主張す

る。

しかしながら,乙21の1は,米国特許商標庁審査官が日本で成立

した本件特許に係る特許発明に関する見解を示したものではないか

ら,被告の上記主張は,採用することができない。

(オ) 小括

以上のとおり,本件訂正発明1の「光」は赤外線を含むものと解すべ

きであるから,本件訂正発明1の「発光部」(構成要件1A3,1A5,

1D及び1E)には,赤外線を発する構成のものも含まれるというべき

である。

構成要件1A3,1A5,1D及び1Eの充足性

被告各製品の発光部(LED)は,原告製プリンタに設置された受光手

段に投光するための赤外線を発するものであるが,本件訂正発明1の「発

光部」は,赤外線を発する構成のものも含まれるから(前記ア(オ)),本

件訂正発明1の「発光部」(構成要件1A3,1A5,1D及び1E)に

該当する。




そして,被告各製品を原告製プリンタに装着した場合,「光照合処理」

が行われ,被告各製品がキャリッジ上の正しい搭載位置に搭載されている

か否かを検出することができること(甲3ないし12)及び前記(1)の被

告各製品の構造を総合すれば,被告各製品は,本件訂正発明1の構成要件

1A3,1A5,1D及び1Eを充足するものと認められる。

(3) まとめ

以上によれば,被告各製品は,本件訂正発明1の構成要件を全て充足する

から,本件訂正発明1の技術的範囲に属するものと認められる。

2 争点2(本件訂正発明2に係る本件特許権の間接侵害の成否)について

(1) 被告製品1又は被告製品2を装着した原告製プリンタが,本件訂正発明

2の構成要件2A1,2A2,2A4,2B,2D1及び2D2を充足する

ことは,前記争いのない事実等(4)イ(ウ)のとおりである。

そして,前記1で述べたのと同様の理由により,被告各製品の発光部(L

ED)は本件訂正発明2の「発光部」(構成要件2D3,2D及び2F)に

該当し,被告製品1又は被告製品2を装着した原告製プリンタは,光照合処

理(前記1(2)ア(ウ)b)を行い,被告各製品がキャリッジ上の正しい搭載

位置に搭載されているか否かを検出することができるから,構成要件2A

3,2D3ないし2Fを充足する。

また,被告製品1又は被告製品2を装着した原告製プリンタは,「液体イ

ンク供給システム」であるから,構成要件2C及び2Gを充足する。

以上によれば,被告製品1又は被告製品2を装着した原告製プリンタは,

本件訂正発明2の構成要件を全て充足し,その技術的範囲に属する。

(2) 以上のとおり,被告製品1又は被告製品2を装着した原告製プリンタは,

本件訂正発明2の技術的範囲に属するところ,被告各製品は,物の発明であ

る本件訂正発明2の「その物の生産に用いる物」であって,共通バス接続方

式を採用しつつも,インクタンクの搭載位置間違いを検出するという本件訂




正発明2による「課題の解決に不可欠なもの」に該当するといえるから,被

告による被告各製品の輸入及び販売について,特許法101条2号の間接侵

害が成立するというべきである。

3 争点3(本件特許権に基づく権利行使制限の抗弁の成否)について

被告は,本件各訂正発明は,本件出願の優先権主張日前に頒布された刊行物

である乙9(特開2002−370378号公報)及び乙10(特開平2−2

79344号公報)に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができ

たものであって,本件各訂正発明に係る本件特許には,特許法29条2項に違

反する進歩性欠如の無効理由があり,特許無効審判により無効にされるべきも

のであるから,同法104条の3第1項の規定により,原告は,本件各訂正発

明に係る本件特許権を行使することができない旨主張する。

(1) 本件訂正発明1に係る無効理由の有無

ア 乙9の記載事項等

(ア) 乙9には,次のような記載がある(この記載中に引用する図2につ

いては,別紙刊行物図面参照)。

a 「【請求項11】 識別情報を格納する記憶装置を備える印刷記録

材容器が複数装着される印刷装置であって,前記複数の印刷記録材容

器に備えられた各記憶装置をバス接続にて接続する信号線と,前記印

刷記録材容器の交換要求を検出する交換要求検出手段と,前記印刷記

録材容器の交換完了を検出する交換完了検出手段と,前記複数の印刷

記録材容器が全て装着されているか否かを判定する装着判定手段と,

前記複数の印刷記録材容器が全て装着されていると判定された場合

には,前記信号線を介して前記各記憶装置と通信できるか否かを判定

する通信判定手段と,前記各記憶装置と通信できないと判定された場

合には,前記識別情報に基づいて,通信できなかった記憶装置を備え

る印刷記録材容器を特定する第1の印刷記録材容器特定手段とを備




える印刷装置。」

b 「【発明の属する技術分野】 本発明は,バス接続されている記憶

装置を備えた印刷記録材容器が複数個用いられる場合に,印刷記録材

容器の有無を検出する技術に関する。」(段落【0001】)

c 「【従来の技術】 記憶装置を備える印刷記録材容器,例えば,イ

ンクカートリッジが実用化されている。記憶装置には,例えば,印刷

記録材(インク)の量に関するデータ,インクの種類に関するデータ,

インクカートリッジの製造年月日情報等が格納されている。カラープ

リンタでは,通常,少なくともシアンインク,マゼンタインク,イエ

ロインク,ブラックインクの4色が用いられる。したがって,ブラッ

クインクカートリッジとカラーインクカートリッジといった2個の

インクカートリッジ,または各インク色毎に4個のインクカートリッ

ジがプリンタに装着される。」(段落【0002】),「また,イン

クカートリッジに備えられた各記憶装置と制御回路とを接続する信

号線数を低減するために,各記憶装置を識別するための信号線を廃止

し,共通のバスを用いて各記憶装置を接続するバス接続の技術が知ら

れている。この技術では,バス接続されている各記憶装置を特定(識

別)するために,各記憶装置に対してユニークに割り当てられた識別

子が利用される。」(段落【0003】)

d 「【発明が解決しようとする課題】 しかしながら,バス接続形式

では,インクカートリッジの取り外しは検出できるものの,複数のイ

ンクカートリッジが同時に取り外された場合には,どのインクカート

リッジが取り外されたかを特定することができないという問題があ

った。さらに,インクカートリッジに備えられた各記憶装置とプリン

タの制御回路との通信が正常に行われない場合には,いずれの記憶装

置(インクカートリッジ)に異常が発生しているか報知されず,ユー




ザは全てのインクカートリッジを脱着して確認しなければならなか

った。」(段落【0004】),「本発明は,上記問題を解決するた

めになされたものであり,バス接続されている記憶装置を備える印刷

記録材容器が印刷装置に複数装着される際に,印刷記録材容器に発生

している通信異常を検出し,報知することを目的とする。また,いず

れの印刷記録材容器が装着されていないかを検出することを目的と

する。さらに,記憶装置と印刷装置との通信が正常に行われない場合

に,いずれの印刷記録材容器に備えられている記憶装置が異常である

かを検出することを目的とする。」(段落【0005】)

e 「本発明の第3の態様に係る印刷装置は,複数の印刷記録材容器が

全て装着されている場合に,信号線を介して各記憶装置と通信できる

か否かを判定し,各記憶装置と通信できないと判定された場合には,

識別情報に基づいて,通信できなかった記憶装置を備える印刷記録材

容器を特定するので,いずれの印刷記録材容器に備えられている記憶

装置が異常であるかを検出することができる。また,正常に通信を実

行することができない印刷記録材容器を報知する構成を備えれば,ユ

ーザは,全ての印刷記録材容器について脱着を繰り返すことなく,一

見して,通信を正常に行うことのできない印刷記録材容器を識別する

ことができる。」(段落【0019】)

f 「本実施例に係る印刷記録材容器の異常検出装置は,インクジェッ

ト式カラープリンタ(印刷装置)10に適用されている。」(段落【

0032】),「カラープリンタ10は,…キャリッジ11に搭載さ

れた印字ヘッドIH1〜IH6を駆動してインクの吐出およびドッ

ト形成を行う機構と,このキャリッジ11をキャリッジモータ12に

よってプラテン13の軸方向に往復動させる機構と,紙送りモータ1

4によって印刷用のカット紙Pを搬送する機構と,制御回路30とか




ら構成されている。」(段落【0033】),「キャリッジ11には

インクカートリッジCA1〜CA6が装着されている」(段落【00

34】)

g 「次に,図2および図3を参照してインクカートリッジに備えられ

ている記憶装置と制御回路30(パーソナルコンピュータPC)との

接続状態について説明する。図2はキャリッジ11上に装着されてい

るインクカートリッジCA1〜CA6と制御回路との接続状態を概

略的に示す説明図である。」(段落【0036】),「各記憶装置2

1〜26は,既述のように,インクジェットプリンタ用の6色のイン

クカートリッジCA1〜CA6それぞれ備えられている。また,本実

施例では,記憶装置として不揮発的に記憶内容を保持すると共に記憶

内容を書き換え可能なEEPROMを用いた。各記憶装置21〜26

は,その内部に,識別情報を格納する記憶素子(メモリアレイ),送

信されてきた識別情報と記憶素子内に格納されている識別情報とを

比較するIDコンパレータ,命令コードを解析するオペレーションデ

コーダ,アドレス位置をカウントアップするアドレスカウンタ,記憶

素子に対する読み出し/書き込みを制御するI/Oコントローラ等

を備えている。」(段落【0037】),「各記憶装置21〜26内

の記憶素子に格納されている識別情報は,それぞれインクカートリッ

ジCA1〜CA6内に収容されているインク色を識別するための識

別情報である。各記憶装置21〜26は,制御回路30から識別情報

が送信されてくると送信されてきた識別情報と自己の識別情報とを

比較解析し,解析した識別情報が記憶素子内に格納されている識別情

報と一致する場合には,アクセス許可の応答信号を制御回路30に対

して送り返す。これによって,制御回路30は,アクセスを所望する

インクカートリッジCA1〜CA6に対して選択的にアクセスする




ことができる。」(段落【0038】),「各記憶装置21〜26の

データ信号端子DT,クロック信号端子CT,リセット信号端子RT

は,データバスDB,クロックバスCB,リセットバスRBを介して

それぞれ接続されている。」(段落【0039】)

h 「制御回路30は,CPU31を介して,クロック信号生成機能,

リセット信号生成機能,電源監視機能,電源回路,データ記憶回路お

よび各回路を制御する制御機能を実現する制御装置であり,記憶装置

21〜26に対するアクセスを制御する。制御回路30は,カラープ

リンタ10の本体側に配置されており,電源がオンされると,データ

信号線DL記憶装置21〜26から,インク消費量,インクカートリ

ッジの装着時間といったデータを取得しデータ記憶回路に記憶する。

また,電源がオフされる際には,データ信号線DLを介して記憶装置

21〜26に対して,それぞれインク消費量,インクカートリッジの

装着時間といったデータを書き込む。」(段落【0042】),「制

御回路30は,記憶装置21〜26に対してアクセスする場合には,

リセット信号生成回路に対してリセット信号RSTの生成を要求す

る。制御回路30は,インクカートリッジCAの装着の有無,通信の

状態を検出する際には,インクカートリッジCA1〜CA6に対応す

る識別情報を順次,データ信号線DL上に送出する。これに対して,

アクセスを所望するインクカートリッジCAが決まっている場合に

は,アクセスを所望するインクカートリッジCAの識別情報が先頭列

に格納されているデータ列をデータ信号線DL上に送出して,各イン

クカートリッジCA1〜CA6の記憶装置21〜26に送信 す

る。」(段落【0043】)

(イ) 本件訂正発明1と乙9記載の液体インク収納容器(乙9発明@)と

の間には,次のとおりの相違点があるが,その余の構成が一致すること




は,争いがない。

(相違点1)

「液体インク収納容器」が搭載される側の記録装置が,本件訂正発明

1では,「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容

器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部から

の光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え,該受光手段で該光を

受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する

液体インク収納容器位置検出手段」(構成要件1A3)を有し,「前記

キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納

容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体インク

収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出す

る」構成(構成要件1A5)を有するのに対し,乙9発明@では,これ

らの構成を有しない点。

(相違点2)

本件訂正発明1では,「液体インク収納容器」が「前記受光手段に投

光するための光を発光する前記発光部」(構成要件1D)を有するのに

対し,乙9発明@では,このような構成を有しない点。

(相違点3)

本件訂正発明1では,「液体インク収納容器」の「制御部」が「前記

接点から入力される前記色情報に係る信号と,前記情報保持部の保持す

る前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する」構成(構成要件

1E)を有するのに対し,乙9発明@では,このような構成を有しない

点。

イ 乙10の開示事項

被告は,相違点1ないし3に係る本件訂正発明1の各構成は,本件出願

優先権主張日当時における技術常識参酌することにより当業者が乙




10に記載されている事項から導き出せる事項であるから,乙10に記載

されているに等しい事項である旨主張するので,以下において検討する。

(ア) 乙10には,次のような記載がある(この記載中に引用する第2図

については,別紙刊行物図面参照)。

a 「〔発明の技術分野〕 本発明はインクジェット印刷ヘッド等の印

刷アッセンブリーに関し,さらに具体的には,かかるアッセンブリー

をそれらを用いる印刷装置に特性化する技術に関する。 (1頁右欄


13行〜17行)

b 「カラー印刷システムのもう一つの欠点は,少なくとも構成色に対

し別個の印刷ヘッドを用いるものにおいては,プリンター内部で印刷

ヘッドが不注意から誤った位置に取りつけられる事である。もしマゼ

ンタのインクがあるべきところにシアンのインクの印刷ヘッドが位

置していれば,印刷されたものは不良となろう。」(2頁右下欄1行

〜7行)

c 「〔発明の目的〕 本発明は,従来のインクジェット印刷システム

における以上の欠点またはその他の欠点を,印刷ヘッドを特性化する

データを記憶できる記憶素子を各印刷ヘッドに付随させて提供する

ことによって解決することを目的とする。 (2頁右下欄8行〜13


行)

d 「〔発明の概要〕 本データは印刷ヘッドの本性,あるいはその動

作特性の一つまたはそれ以上を特性化することが可能である。このよ

うな動作特性には,印刷ヘッド内のインクの色,量あるいは印刷ヘッ

ド本体上のオリフィス板の位置などを含むことができる。このデータ

は印刷ヘッドから読み取ることができ,所望に応じて使用または表示

できる。」(2頁右下欄14行〜3頁左上欄1行)

e 「〔発明の実施例〕 第1図乃至第3図は,一つまたはそれ以上の




印刷アッセンブリー12,各印刷アッセンブリーに付随する記憶素子

14…を備えた本発明の実施例による印刷装置10を示す。 (3頁


左上欄13行〜18行)

f 「印刷ヘッド12のハウジングには,記憶素子14が取りつけてあ

り,この記憶素子は,たとえば,磁性媒体片,半導体メモリー,レー

ザーによる書込み読取りの可能な光学媒体等によって構成される。こ

のメモリーには印刷ヘッドに関するデータが記憶される。かかる情報

は,印刷ヘッドの本性(製造日,製造場所,ロット番号,シリアル番

号,その他),あるいは印刷ヘッドのある種の動作特性(オリフィス

のアライメント,インク色,インクの液位,動作周波数,インクの希

釈度,その他)を特性化する。このデータは印刷ヘッドから読み取ら

れ,所望に応じ使用または表示されうる。」(3頁右上欄13行〜左

下欄4行)

g 「図示した実施例では,この更新はキャリッジ34の通路近傍に取

りつけられ印刷ヘッドがその位置を通過する都度印刷ヘッドの磁気

片メモリー14を読み書きする磁気読取/書込みヘッド44によっ

て行われる。」(3頁右下欄7行〜11行),「好適には,プリンタ

ー10が電源投入される都度,印刷ヘッド12がこの読取/書込みヘ

ッド44を通過し,印刷ヘッドの磁気片メモリー上のインクの液位の

データが読みとられるのが望ましい。(3頁右下欄11行〜15行)


h 「本発明は印刷ヘッド上の磁気片メモリーに言及しつつ説明されて

きたが,他の記憶素子も容易に採用されうる。」(6頁右上欄4行〜

6行),「また,印刷ヘッドとプリンターの間のデータ通信は,読取

/書込みヘッドによってなされる必要はない。かわりに,光学的,あ

るいは無線のカップリング等,他の送信技術を用いることもでき

る。」(6頁右上欄10行〜14行)




i 「〔発明の効果〕 以上説明したように,本発明を用いることによ

り,オリフィス板のミスアラインメントを簡単に補償でき,また,イ

ンク切れに関する警報も簡単にユーザーに与えることができる。さら

に,従来のような印刷ヘッドの取り付け位置の誤りによる印刷不良も

簡単に防止することができる。」(6頁左下欄8行〜14行)

(イ) 乙10の上記記載事項及び第2図を総合すれば,乙10には,イン

ク色に応じて別個の印刷ヘッド(印刷ヘッド12)を用いた印刷装置(プ

リンター1)において,各印刷ヘッド12に,インク色に関するデータ

が記憶された記憶素子14(例えば,磁気片メモリー14)をそれぞれ

取り付けるとともに,各印刷ヘッド12が装着されたキャリッジ34の

通路近傍に磁気読取/書込みヘッド44を取り付け,キャリッジ34の

移動により,各印刷ヘッド12と磁気読取/書込みヘッド44を相対移

動させ,所定の位置で磁気読取/書込みヘッド44が対向する位置にあ

る印刷ヘッド12の記憶素子14からインク色情報を読み取とること

により,各印刷ヘッドとプリンター1との間のデータ通信を行い,各印

刷ヘッド12が誤装着されているか否かを検出する構成が開示されて

いることが認められる。

加えて,乙10の「印刷ヘッドとプリンターの間のデータ通信は,読

取/書込みヘッドによってなされる必要はない。かわりに,光学的,あ

るいは無線のカップリング等,他の送信技術を用いることもでき

る。」(前記(ア)h)との記載によれば,乙10には,乙10記載の印

刷装置において,磁気片メモリー14を読み書きする磁気読取/書込み

ヘッド44を用いる代わりに,「光学的カップリング」によるデータ送

信技術を用いて,各印刷ヘッドと印刷装置との間の通信を行うことによ

り,各印刷ヘッドが誤装着されているか否かを検出することができるこ

とが示唆されているものいえる。




しかしながら,乙10には,「光学的カップリング」による印刷ヘッ

ド(インクタンク)の装着位置の誤りを検出する具体的構成の記載がな

く,しかも,乙10記載の印刷装置において,磁気読取/書込みヘッド

44を用いる代わりに,「光学的カップリング」によるデータ送信技術

を採用しただけでは,「光学的カップリング」を構成する受光素子と対

向する位置にある印刷ヘッド12を発光させる構成となるにすぎ

ず,「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体イ

ンク収納容器の前記発光部」を「光らせ」たり,「その光の受光結果に

基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容

器の搭載位置を検出する」構成(構成要件1A5)や,このような「発

光部の発光を制御する」構成(構成要件1E)とはならないことに照ら

すならば,乙10において,相違点1ないし3に係る本件訂正発明1の

各構成が開示されているものと認めることはできない。

また,乙10記載の印刷装置は,複数のインクタンクと記録装置との

間に共通の信号配線を用いる共通バス接続方式を採用した構成のもの

ではないことに照らすならば,乙10の上記記載部分は,本件訂正発明

1のように共通バス接続方式を採用した上で,「光学的カップリング」

による印刷ヘッド(インクタンク)の装着位置の誤りを検出することが

できることを示唆するものと認めることもできない。

(ウ) これに対し被告は,乙12の1(米国特許第5567063号明細

書),乙13(特許第2706849号公報),乙24(国際公開WO

2002/040275号再公表特許公報),乙25(特開昭57−6

782号公報)に記載された技術常識参酌することにより,相違点1

ないし3に係る本件訂正発明1の各構成は,乙10記載の「光学的カッ

プリング」の構成として把握することができるから,乙10に記載され

ているに等しい旨主張する。




しかしながら,被告の主張は,以下のとおり理由がない。

a 乙12の1の記載事項

乙12の1(乙12の2は,その訳文)の「図3(b)は,発光ダイ

オード30によりデータを送信し,光センサ素子31により受信する

光学的方法を示すものである。」(訳文4頁8行〜10行)との記載

及び「図3(b)」(FIG.3b)(別紙刊行物図面参照)によれば,

乙12の1には,発光素子としての発光ダイオードによりデータを送

信し,受光素子としての光センサ素子により受信するという,光学的

方法によるデータの送受信方法が開示されていることが認められる。

したがって,乙12の1には,被告が主張するように,発光素子と

しての発光ダイオードと受光素子としての光センサ素子によりデー

タの送信を行う光学的カップリングが開示されているといえる。

しかし,他方で,乙12の1は,「コードレスプリンタヘッド制御

システム」に関するものであって,乙12の1には,共通バス接続方

式を採用した場合における上記光学的方法によるデータの送受信方

法の適用については,記載も示唆もない。

b 乙13の記載事項

(a) 乙13には,次のような記載がある(この記載中に引用する第

2図については,別紙刊行物図面参照)。

@ 「【請求項1】 発光素子と,受光素子と,外部制御装置から

の1本の信号ラインに接続され前記発光素子又は受光素子の駆

動を制御する駆動制御素子とを同一パツケージ内に持ち,入力信

号を発光素子にて一旦光に変換し,この光を受光素子で再び電気

信号に変換して出力する。信号の入出力を行う部位を複数箇所有

する情報機器に使用される光結合装置であつて,前記駆動制御素

子に,識別符号を記憶する記憶手段と,外部制御装置より識別符




号が入力されたとき,その識別符号が前記記憶手段に記憶された

自己の識別符号と一致しているか否かを判別する判別手段と,該

判別手段が自己の識別符号と一致していると判別したとき,発光

素子又は受光素子を駆動させる駆動手段とが設けられたことを

特徴とする光結合装置。」

A 「〈産業上の利用分野〉 本発明は,信号の入・出力を行なう

場合に用いられる光結合装置(フオトカプラ)及びこれを利用し

たプログラマブルコントロラー,プリンター,フアクシミリ,複

写機等の情報機器に関する。」(2頁左欄8行〜12行)

B 「〈発明が解決使用とする課題〉 しかし,従来のフオトカプ

ラでは,フオトカプラの使用個数の増加により,その基板内を走

るパターン及び機器内を走るリード線の総延長は,かなりの長さ

が必要となり,かなりのスペースを取つてしまうため,機器のコ

ンパクト化の弊害になつている。本発明は,上記に鑑み,基板内

パターン及び機器内のリード線の削減を図り,機器の小型化を実

現できる光結合装置及びこれを利用した情報機器の提供を目的

とする。」(2頁左欄20行〜29行)

C 「〈課題を解決するための手段〉 (1) 本発明請求項1によ

る課題解決手段は,第1図ないし第5図の如く,発光素子1と,

受光素子2と,外部制御装置Cからの1本の信号ラインLに接続

され前記発光素子1または受光素子2の駆動を制御する駆動制

御素子3,8とを同一パツケージ内に持ち,入力信号を発光素子

1にて一旦光に変換し,この光を受光素子2で再び電気信号に変

換して出力する,信号の入出力を行う部位を複数箇所有する情報

機器に使用される光結合装置であつて,駆動制御素子3,8に,

識別符号を記憶する記憶手段11,21と,外部制御装置Cより




識別符号が入力されたとき,その識別符号が前記記憶手段11,

21に記憶された自己の識別符号と一致しているか否か判別す

る判別手段12A,22Aと,該判別手段12A,22Aが自己の

識別符号と一致していると判別したとき,発光素子1または受光

素子2を駆動させる駆動手段12B,22Bとが設けられたもの

である。」(2頁左欄30行〜46行)

(b) 乙13の上記記載事項及び第2図を総合すれば,乙13には,

発光素子と,受光素子と,1本の信号ラインに接続された発光素子

の駆動を制御する駆動制御素子とを同一パッケージ内に持ち,駆動

制御素子に識別符号を記憶する記憶手段を設け,外部制御装置より

識別符号が入力されたとき,その識別符号が記憶手段に記憶された

自己の識別符号と一致しているか否かを判断し,一致していると判

断したとき,発光素子又は受光素子を駆動させる光結合装置に係る

技術が開示されていることが認められる。

また,乙13記載の上記技術は,共通バス接続方式を採用するこ

とを前提とした技術であることがうかがわれる。

しかし,他方で,乙13には,上記技術を適用してインクタンク

の装着位置の誤りを検出することについては,記載も示唆もない。

c 乙24の記載事項

(a) 乙24には,次のような記載がある(この記載中に引用する図

11ないし14については,別紙刊行物図面参照)。

@ 「技術分野 本発明は,印刷装置における印刷記録材容器の識

別技術に関し,さらに詳細には印刷記録材容器交換に際して正し

い印刷記録材容器が装着されたか否かを識別する技術に関す

る。」(7頁18行〜20行)

A 「発明の背景 複数色のインクカートリッジ(印刷記録材容器)




を備えるカラープリンタにおいて,インクカートリッジの交換

におけるインクカートリッジの誤装着,すなわち,交換されるべ

きインク色とは異なるインクカートリッジの装着,を防止するた

めの技術が提案されている。例えば,インク色毎にインクカート

リッジの外形形状を変更し,誤ったインクカートリッジが物理的

に装着できないようにする技術が知られている。」(7頁21行

〜26行)

B 「パーソナルコンピュータPCは,制御回路30を介して第n

番目のインクカートリッジを交換位置まで移動させる(ステップ

S210)。なお,パーソナルコンピュータPCはnの初期値と

して「1」を用いるものとし,以下の説明ではn=1として説明

する。したがって,図12に示すように,先ず,第1番目のイン

クカートリッジCA1が,交換用開口部14に対応する位置まで

移動させられる。ここで,交換用開口部14が形成されている位

置と各インクカートリッジCAとの移動距離は,ホームポジショ

ンからのキャリッジ101の移動距離としてそれぞれ設定され

ている。したがって,インクカートリッジCAを所定の位置まで

移動させる際には,各インクカートリッジCAに応じて設定され

ている距離だけキャリッジ101を移動させればよい。なお,キ

ャリッジ101の移動距離はリニアエンコーダ等を利用して正

確に計測(検出)することができる。また,インクカートリッジ

CA2,CA3,CA4についても図13および図14に示すよ

うに,順次,交換用開口部14に対応する位置まで移動させられ

る。」(18頁10行〜21行),「インクカートリッジCA1

が装着されると(ステップS220:Yes),インクカートリ

ッジCA1の記憶装置20が保有する識別データに対応する識




別 データをデータバ スDB上に送信する (ステップS2 3

0)。」(18頁24行〜27行),「パーソナルコンピュータ

PCは送信した識別データに対して応答があるか否かを判定す

る(ステップS240)。すなわち,装着されるべきインクカー

トリッジCA1が装着されている場合には,送信された識別デー

タに対応する識別データを保有する記憶装置20が応答し,誤っ

たインクカートリッジCAが装着されている場合には,いずれの

記憶装置も記憶装置20に対応する識別データに対して応答す

ることができない。」(18頁28行〜32行),「パーソナル

コンピュータPCは,応答がない場合には(ステップS240:

No) 誤ったインクカートリッジCAが装着されている旨を報


知し(ステップS250),ステップS220に戻り,再度,正

しいインクカートリッジCAの装着を検出する」(18頁32行

〜35行)

(b) 乙24の上記記載事項及び図11ないし14を総合すれば,乙

24には,共通バス接続方式を採用した複数色のインクカートリッ

ジを備えるプリンタにおいて,インクカートリッジを所定の交換

開口部14に対応する位置まで移動させ,インクカートリッジを1

個ずつ交換し,その都度,交換されたインクカートリッジの位置に

対応する識別データをデータバス上に送信し,応答があれば正しい

インクカートリッジが装着されたと判断し,応答がなければ誤った

インクカートリッジが装着されたと判断する構成が開示されてい

ることが認められる。

しかし,他方で,乙24には,インクカートリッジに発光部を設

けることやプリンタ側に受光手段を設けることについて,記載も示

唆もない。




d 乙25の記載事項

(a) 乙25には,次のような記載がある(この記載中に引用する第

1図については,別紙刊行物図面参照)。

@ 「この発明は印字ヘッドを格別に移動することなくタブ設定を

行なうことのできる タブ設定機構を備え た印字装置に関 す

る。」(1頁左欄19行〜右欄1行),「この発明は上記事情に

もとづいてなされたもので,その目的は,タブ設定を容易にかつ

迅速に行なうことのできるタブ設定機構を備えた印字装置を提

供することにある。」(1頁右欄18行〜2頁左上欄1行)

A 「第1図は例えばタイプライター,作表機,ビリングマシン等

のようなタブ設定機構を備えた印字装置の概略構成を示すもの

で,1はプラテンである。このプラテン1に対しガイド軸2,2

および係止部材3が平行に配設されている。前記ガイド軸2,2

にはキャリヤ4が装着され,プラテン1に対し平行移動可能にな

っている。」(2頁左上欄3行〜10行)

B 「前記キャリヤ4には検出器14が装着されている。この検出

器14には受光素子が取着されており,点灯している前記操作体

6〜12を前記受光素子によって検出することによりタブ位置

が検出されるようになっている。 (2頁左上欄19行〜右上欄


4行)

C 「なお,この発明は前記実施例に限定されるものではない。例

えば,前記実施例では操作体に発光素子を装着し,検出器に受光

素子を装着した場合を示したが,操作体に受光素子を装着し,検

出器に発光素子を装着するようにしてもよい。 (2頁右下欄1


4行〜18行)

(b) 乙25の上記記載事項及び第1図を総合すれば,乙25には,




タブ設定機構を備えた印字装置において,タブ位置の検出(位置決

め)のために,発光素子と受光素子とを利用する構成が開示されて

いることが認められる。

しかし,他方で,乙25には,上記構成を適用してインクタンク

の装着位置の誤りを検出することについては,記載も示唆もない。

e 検討

(a) 被告は,@光学的カップリングが,発光素子としての発光ダイ

オードと,受光素子としての光センサ素子で構成されること(乙1

2の1) Aプリンタ分野における光学的カップリングを用いた識


別情報の照合(乙13),Bプリンタ分野において,光学的カップ

リングを相対移動する物体の位置検出に利用すること(乙25),

Cインクカートリッジの誤装着を検出する技術に関し,インクカー

トリッジの位置に応じて,識別データをデータバス上に送信し,イ

ンクカートリッジ側から識別データに対する応答があるか否か判

定する処理(乙24)は,いずれも技術常識であり,これらの技術

常識を参酌すると,相違点1に係る本件訂正発明1の構成は乙10

の「光学的カップリング」の構成として記載されているに等しい事

項である旨主張する。

しかしながら,被告が主張する上記@ないしCの技術 常 識

は,「光学的カップリング」を用いて共通バス接続方式を採用した

インクカートリッジの誤装着を検出する具体的な構成を示したも

のではないから,これらを参酌しても,本件出願の優先権主張日当

時,乙10に接した当業者において,乙10の「光学的カップリン

グ」の具体的構成として相違点1に係る本件訂正発明1の構成を想

起し,あるいは上記構成に想到することは困難であったものといわ

ざるを得ない。




また,@乙12の1には,光学的カップリングが,発光素子とし

ての発光ダイオードと,受光素子としての光センサ素子で構成され

ることの開示があることは認められるものの,共通バス接続方式を

採用した場合における上記光学的方法によるデータの送受信方法

の適用については,記載も示唆もないこと(前記a),A乙13に

は,発光素子と,受光素子と,1本の信号ラインに接続された発光

素子の駆動を制御する駆動制御素子とを同一パッケージ内に持ち,

駆動制御素子に識別符号を記憶する記憶手段を設け,外部制御装置

より識別符号が入力されたとき,その識別符号が記憶手段に記憶さ

れた自己の識別符号と一致しているか否かを判断し,一致している

と判断したとき,発光素子又は受光素子を駆動させる光結合装置に

係る技術が開示されているものの,上記技術を適用してインクタン

クの装着位置の誤りを検出することについては,記載も示唆もない

こと(前記b(b)),B乙24には,共通バス接続方式を採用した

複数色のインクカートリッジを備えるプリンタにおいて,インクカ

ートリッジを所定の交換用開口部14に対応する位置まで移動さ

せ,インクカートリッジを1個ずつ交換し,その都度,交換された

インクカートリッジの位置に対応する識別データをデータバス上

に送信し,応答があれば正しいインクカートリッジが装着されたと

判断し,応答がなければ誤ったインクカートリッジが装着されたと

判断する構成が開示されているものの,インクカートリッジに発光

部を設けることやプリンタ側に受光手段を設けることについては,

記載も示唆もないこと(前記c(b)),C乙25には,タブ設定機

構を備えた印字装置において,タブ位置の検出(位置決め)のため

に,発光素子と受光素子とを利用する構成が開示されているもの

の,上記構成を適用してインクタンクの装着位置の誤りを検出する




ことについては,記載も示唆もないこと(前記d(b))に照らすと,

乙12の1,13,24,25の各記載事項を参酌しても,本件出

願の優先権主張日当時,乙10に接した当業者において,乙10

の「光学的カップリング」の具体的構成として相違点1に係る本件

訂正発明1の構成を想起し,あるいは上記構成に想到することは困

難であったものといわざるを得ない。

したがって,相違点1に係る本件訂正発明1の構成は乙10

の「光学的カップリング」の構成として記載されているに等しい事

項であるとの被告の主張は,採用することができない。

(b) 被告は,前記(a)@の技術常識(乙12の1)を参酌すると,

相違点2に係る本件訂正発明1の構成は乙10の「光学的カップリ

ング」の構成として記載されているに等しい事項である旨主張す

る。

しかしながら,相違点2に係る本件訂正発明1の構成は,共通バ

ス接続方式を採用することを前提とした「液体インク収納 容

器」(構成要件1A4ないし1A6,1B,1F)の「発光部」の

構成であるところ,乙10記載の印刷装置は,複数のインクタンク

と記録装置との間に共通の信号配線を用いる共通バス接続方式を

採用した構成のものではなく(前記イ(イ)),また,前記aで述べ

たように,乙12の1には,共通バス接続方式を採用した場合にお

ける光学的方法によるデータの送受信方法の適用について,記載も

示唆もないことに照らすならば,被告の上記主張は,採用すること

ができない。

(c) 被告は,前記(a)Aの技術常識(乙13)を参酌すると,相違

点3に係る本件訂正発明1の構成は乙10の「光学的カップリン

グ」の構成として記載されているに等しい事項である旨主張する。




しかしながら,乙10記載の印刷装置において,磁気読取/書込

みヘッド44を用いる代わりに,「光学的カップリング」によるデ

ータ送信技術を採用しただけでは,「光学的カップリング」を構成

する受光素子と対向する位置にある印刷ヘッド12を発光させる

構成となるにすぎず,「前記キャリッジの位置に応じて特定された

インク色の前記液体インク収納容器の前記発光部」を「光らせ」,

このような「発光部の発光を制御する」構成(構成要件1E)とは

ならないこと(前記(イ)),乙13には,乙13記載の技術を適用

してインクタンクの装着位置の誤りを検出することについて,記載

も示唆もないこと(前記b(b))に照らすならば,被告の上記主張

は,採用することができない。

(d) 以上によれば,乙10には相違点1ないし3に係る本件訂正発

明1の各構成の具体的な開示はないというべきであるから,上記各

構成が乙10に記載されているに等しい事項であるとの被告の主

張は,理由がない。

容易想到性について

(ア) 前記イのとおり,乙10には相違点1ないし3に係る本件訂正発明

1の各構成の具体的な開示はない。

また,仮に乙10の「光学的カップリング」の構成として相違点1な

いし3に係る本件訂正発明1のいずれかの構成が開示されているもの

と認め得るとしても,乙9には,共通バス接続方式を採用しつつ「光照

合処理」(前記1(2)ア(ウ)b)の方法を採用することによりインクタ

ンクの装着位置の誤りを検出することを示唆する記載はないこと,乙1

0には,共通バス接続方式を採用した上で,「光学的カップリング」に

よる印刷ヘッド(インクタンク)の装着位置の誤りを検出することがで

きることを示唆する記載はないこと(前記イ(イ))に照らすならば,被




告が主張するように共通バス接続方式を採用した乙9発明@にインク

タンクが正しい搭載位置に装着されているか否かを検出できないとい

う課題があることは自明であることを考慮してもなお,本件出願の優先

権主張日当時,乙9及び乙10に接した当業者において,乙9発明@に

乙10に開示された上記構成を組み合わせる動機付けがあったものと

認めることはできない。

したがって,当業者が乙9及び乙10に記載された発明に基づいて相

違点1ないし3に係る本件訂正発明1の各構成を容易に想到すること

ができたものと認めることはできない。

(イ) 以上によれば,本件訂正発明1は当業者が乙9及び乙10に記載さ

れた発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないから,

被告主張の本件訂正発明1に係る無効理由は理由がない。

(2) 本件訂正発明2に係る無効理由の有無

ア 本件訂正発明2と乙9記載の液体インク供給システム(乙9発明A)と

の間には,次のとおりの相違点があるが,その余の構成が一致することは,

争いがない。

(相違点A)

「液体インク収納容器」が搭載される側の記録装置が,本件訂正発明2

では,「該液体インク収納容器からの光を受光する位置検出用の受光部を

一つ備え,該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容

器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」(構成要件

A3)を有し,「前記受光部は,前記キャリッジの移動により対向する前

記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され」た構成(構成要件

E)を有するのに対し,乙9発明Aでは,これらの構成を有しない点。

(相違点B)

本件訂正発明2では,「液体インク収納容器」が「前記液体インク収納




容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する発光部と,

前記接点から入力される前記色情報に係る信号と,前記情報保持部の保持

する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部」(構

成要件2D3及び2D4)を有するのに対し,乙9発明Aでは,このよう

な構成を有しない点。

(相違点C)

本件訂正発明2では,「前記キャリッジの位置に応じて特定されたイン

ク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果

に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容

器の搭載位置を検出する」構成(構成要件2F)を有するのに対し,乙9

発明Aでは,このような構成を有しない点。

イ 被告は,乙9及び乙10に記載された発明に基づいて,当業者が相違点

AないしCに係る本件訂正発明2の各構成に容易に想到することができ

た旨主張する。

しかしながら,前記(1)と同様の理由により,被告の主張する技術常識

参酌しても,当業者が乙9及び乙10に記載された発明に基づいて相違

点AないしCに係る本件訂正発明2の各構成を容易に想到することがで

きたものと認めることはできない。

したがって,本件訂正発明2は当業者が乙9及び乙10に記載された発

明に基づいて容易に発明をすることができたものではないから,被告主張

の本件訂正発明2に係る無効理由は理由がない。

(3) まとめ

以上のとおり,被告主張の本件各訂正発明に係る無効理由はいずれも理由

がないから,原告が特許法104条の3第1項の規定により本件各訂正発明

に係る本件特許権を行使することができないとの被告の主張は,理由がな

い。




4 結論

以上によれば,原告の請求は理由があるからこれを認容することとし,主文

のとおり判決する。



東京地方裁判所民事第46部



裁判長裁判官 大 鷹 一 郎




裁判官 上 田 真 史




裁判官 石 神 有 吾





(別紙) 物件目録(1)

下記(1)ないし(4)のいずれかの表示を付し,液体インクを充填したインクタンク

(1) 商品上の表示:「OHM」,「OHM-CBK321S」,「キヤノン用イン

クカートリッジ BCI−321BK互換」

インクの種類:「ブラック」

(2) 商品上の表示:「OHM」,「OHM-CY321S」,「キヤノン用インク

カートリッジ BCI−321Y互換」

インクの種類:「イエロー」

(3) 商品上の表示:「OHM」,「OHM-CM321S」,「キヤノン用インク

カートリッジ BCI−321M互換」

インクの種類:「マゼンタ」

(4) 商品上の表示:「OHM」,「OHM-CC321S」,「キヤノン用インク

カートリッジ BCI−321 C互換」

インクの種類:「シアン」





(別紙) 物件目録(2)

下記(1)ないし(6)のいずれかの表示を付し,液体インクを充填したインクタンク

(1) 商品上の表示:「OHM」,「OHM-CBK7ES」,「キヤノン用インク

カートリッジ BCI−7eBK互換」

インクの種類:「ブラック」

(2) 商品上の表示:「OHM」,「OHM-CY7ES」,「キヤノン用インクカ

ートリッジ BCI−7eY互換」

インクの種類:「イエロー」

(3) 商品上の表示:「OHM」,「OHM-CM7ES」,「キヤノン用インクカ

ートリッジ BCI−7e M互換」

インクの種類:「マゼンタ」

(4) 商品上の表示:「OHM」,「OHM-CC7ES」,「キヤノン用インクカ

ートリッジ BCI−7e C互換」

インクの種類:「シアン」

(5) 商品上の表示:「OHM」,「OHM-CPM7ES」,「キヤノン用インク

カートリッジ BCI−7ePM互換」

インクの種類:「フォトマゼンタ」

(6) 商品上の表示:「OHM」,「OHM-CPC7ES」,「キヤノン用インク

カートリッジ BCI−7ePC互換」

インクの種類:「フォトシアン」





(別紙1)

第1 図面の説明

別添1の図1(a)ないし(e),図2(a)ないし(c)は,被告製品1及びその正面

下端部に設けられた基板を示す図面であって,図1(a)は被告製品1の内部構

造を表した右側面図,図1(b)は正面図,図1(c)は底面図,図1(d)は上面図,

図1(e)は背面図,図2(a)ないし(c)はそれぞれ,被告製品1の正面下端部に

設けられた基板の,インクタンク取り付け時の裏面,側面,及び表面の拡大図

である。

第2 構造の説明

1 被告製品1は,以下の各号の構成を備えた原告製プリンタ(商品名PIXU

S MP990等)に対して着脱可能なインクタンクである。

@ 複数のインクタンク(液体インク収納容器)が搭載され,左右に移動する

キャリッジを有する。

A 各インクタンクに備えられる接点と電気的に接続可能なプリンタ側接点

を有する。

B 前記キャリッジの移動により対向するインクタンクが入れ替わるように

配置され,各インクタンクに設けられた基板の発光部LEDからの赤外線

を受光する受光手段(光センサ)を有する。

C 上記複数のプリンタ側接点をバス接続(共通に電気的接続)し色情報に係

る信号を発生するための配線を有した電気回路を有する。

2 図1(b) に示されるように,インクタンク1は支持部材3を有している。支

持部材3は原告製プリンタの前記キャリッジ上のタンクホルダへの装着操作

等を行う際に被支持部を中心に変位可能な構成である。

3 図1(b)及び(e) に示されるように,インクタンク1は,その正面及び背面

に原告製プリンタのタンクホルダ側の係止部にそれぞれ係合可能な第1係合

部5及び第2係合部6が設けられ,これらの係合によってインクタンク1のタ




ンクホルダへの装着状態が確保される。

4 図1(c) に示されるように,インクタンク1の底面には,タンクホルダへの

装着時に,記録ヘッドのインク導入口と結合してインク供給を行うためのイン

ク供給口7が設けられている。

5 図1(a)及び(b) に示されるように,インクタンク1の正面下端部には,基

板100が設けられている。

6 図1(a) に示されるように,インクタンク1の内部には,インク供給口7の

上方に位置する負圧発生部材(インク吸収体)収納室15と液体インクを収納

するインク収納室11とを有している。

7 インク収納室11の上方は,バッファー室12Bを介して大気連通部12A

につながる通気路(図1(a)ないし(e)には不図示)が設けられている。

8 図2(a)及び(b) に示されるように,基板100の裏面(インクタンク1の

内側に向いた面)には,赤外線を発光する発光部101(LED)と,発光部

の発光を制御する制御部とインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と

が一体となったICチップ103が設けられており,ICチップ103は封止

樹脂104によって被覆されている。さらに,基板100の表面(インクタン

ク1の外側に向いた面)には,インクタンクがタンクホルダに保持された状態

で原告製プリンタのプリンタ側接点と電気的に結合する接点102も設けら

れている。

9 接点102を介して供給される電気信号及び電力により,ICチップ103

は発光部101の発光の制御を行う。ICチップ103上の制御部は,接点1

02から入力される信号中の色情報と,同チップ上の情報保持部に保持された

インクタンクの色情報を比較し,それらが同一である場合に,接点102から

入力される信号の指示に従って発光部101の発光を行う。

10 インクタンクがキャリッジ上の正しい位置に装着されているか否かの確認が必

要になった場合,プリンタ側の制御装置は,前記キャリッジを移動させて受光手段




に対向するインクタンクを入れ替え,キャリッジの位置に応じて特定される特定の

色のインクタンクの発光部101を前記9記載の方法で発光させ,その発光を受光

手段で受光し,その受光結果に基づき,各色のインクタンクの搭載位置を検出する。





(別添1)





(別紙2)

第1 図面の説明

別添2の図1(a)ないし(e),図2(a)ないし(c)は,被告製品2及びその正面

下端部に設けられた基板を示す図面であって,図1(a)は被告製品2の内部構

造を表した右側面図,図1(b)は正面図,図1(c)は底面図,図1(d)は上面図,

図1(e)は背面図,図2(a)ないし(c)はそれぞれ,被告製品2の正面下端部に

設けられた基板の,インクタンク取り付け時の裏面,側面,及び表面の拡大図

である。

第2 構造の説明

1 被告製品2は,以下の各号の構成を備えた原告製プリンタ(商品名PIXU

S iP7500等)に対して着脱可能なインクタンクである。

@ 複数のインクタンク(液体インク収納容器)が搭載され,左右に移動する

キャリッジを有する。

A 各インクタンクに備えられる接点と電気的に接続可能なプリンタ側接点

を有する。

B 前記キャリッジの移動により対向するインクタンクが入れ替わるように

配置され,各インクタンクに設けられた基板の発光部LEDからの赤外線

を受光する受光手段(光センサ)を有する。

C 上記複数のプリンタ側接点をバス接続(共通に電気的接続)し色情報に係

る信号を発生するための配線を有した電気回路を有する。

2 図1(b) に示されるように,インクタンク1は支持部材3を有している。支

持部材3は原告製プリンタの前記キャリッジ上のタンクホルダへの装着操作

等を行う際に被支持部を中心に変位可能な構成である。

3 図1(b)及び(e) に示されるように,インクタンク1は,その正面及び背面

に原告製プリンタのタンクホルダ側の係止部にそれぞれ係合可能な第1係合

部5及び第2係合部6が設けられ,これらの係合によってインクタンク1のタ




ンクホルダへの装着状態が確保される。

4 図1(c) に示されるように,インクタンク1の底面には,タンクホルダへの

装着時に,記録ヘッドのインク導入口と結合してインク供給を行うためのイン

ク供給口7が設けられている。

5 図1(a)及び(b) に示されるように,インクタンク1の正面下端部には,基

板100が設けられている。

6 図1(a) に示されるように,インクタンク1の内部は,インク供給口7の上

方に位置する負圧発生部材(インク吸収体)収納室15と液体インクを収納す

るインク収納室11とを有している。

7 インク収納室11の上方は,バッファー室12Bを介して大気連通部12A

につながる通気路(図1(a)ないし(e)には不図示)が設けられている。

8 図2(a)及び(b) に示されるように,基板100の裏面(インクタンク1の

内側に向いた面)には,赤外線を発生する発光部101(LED)と,発光部

の発光を制御する制御部とインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と

が一体となったICチップ103が設けられており,ICチップ103は封止

樹脂104によって被覆されている。さらに,基板100の表面(インクタン

ク1の外側に向いた面)には,インクタンクがタンクホルダに保持された状態

で原告製プリンタのプリンタ側接点と電気的に結合する接点102も設けら

れている。

9 接点102を介して供給される電気信号及び電力により,ICチップ103

は発光部101の発光の制御を行う。ICチップ103上の制御部は,接点1

02から入力される信号中の色情報と,同チップ上の情報保持部に保持された

インクタンクの色情報を比較し,それらが同一である場合に,接点102から

入力される信号の指示に従って発光部101の発光を行う。

10 インクタンクがキャリッジ上の正しい位置に装着されているか否かの確認が

必要になった場合,プリンタ側の制御装置は,前記キャリッジを移動させて受




光手段に対向するインクタンクを入れ替え,キャリッジの位置に応じて特定さ

れる特定の色のインクタンクの発光部101を前記9記載の方法で発光させ,

その発光を受光手段で受光し,その受光結果に基づき,各色のインクタンクの

搭載位置を検出する。





(別添2)





(別紙) 刊行物図面

1 乙9

【図2】




2 乙10





3 乙12の1




4 乙13





5 乙24





6 乙25





(別紙) 明細書図面



【図1】




【図2】





【図3】




【図4】





【図5】




【図17】





【図20】




【図21】





【図29】 【図30】