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事件 平成 23年 (ワ) 10712号 不当利得返還請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 大阪地方裁判所 
判決言渡日 2012/10/18
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
平成24年10月18日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官


平成23年(ワ)第10712号 不当利得返還請求事件

口頭弁論終結日 平成24年7月19日

判 決

原 告 株式会社ヘリオス

同訴訟代理人弁護士 山 田 威一郎

同訴訟代理人弁理士 松 井 宏 記

同補佐人弁理士 立 花 顕 治

同 田 中 順 也

同 山 下 未知子

被 告 日本無線株式会社

同訴訟代理人弁護士 水 谷 直 樹

同 岩 原 将 文

同訴訟代理人弁理士 吉 田 研 二

同 石 田 純

同 橋 本 信 吾

同補佐人弁理士 堀 江 哲 弘

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1 当事者の求めた裁判

1 原告

(1)被告は,原告に対し,1億2000万円及びこれに対する平成16年1月
1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

(2)訴訟費用は被告の負担とする。

(3)仮執行宣言

2 被告

主文同旨

第2 事案の概要

1 前提事実(当事者間に争いがない。)

(1)当事者

原告は,電気通信機器,電気通信システム,精密機器,民生機器,産業機

器の開発と製造および技術提供業等を目的とする会社である。

被告は,電気通信機械ならびに付属装置および付属品の製造および販売等

を目的とする会社である。

(2)原告の有する特許権

原告は,以下の2つの特許(以下「本件特許1」及び「本件特許2」とい

い,併せて「本件各特許」といい,各請求項に係る発明を,後記のとおり,

「本件特許発明1−1」などという。また,それぞれの出願明細書を「本件

特許1明細書」及び「本件特許2明細書」といい,併せて「本件各明細書」

という。)について各特許権(以下「本件特許権1」及び「本件特許権2」と

いい,併せて「本件各特許権」という。)を有する。

ア 本件特許1

特許番号 3353890号

発明の名称 通信端末装置,着信履歴表示方法及びプログラム

出願年月日 平成14年3月19日

登録年月日 平成14年9月27日

特許請求の範囲

【請求項1】発呼側端末から呼び出されたにも拘わらず,当該呼び出し
に対して不応答の場合には,通知された前記発呼側端末のID番号及び

不応答であった旨の情報を着信履歴として記憶すると共に,記憶された

前記着信履歴を表示手段に表示して,選択された前記ID番号に基づい

て前記発呼側端末に折り返して発呼することが可能な通信端末装置に

おいて,呼び出し時間又は呼び出し回数などの呼出継続時間を計測する

計測手段と,前記呼出継続時間を前記着信履歴と関連付けて記憶する記

憶手段と,前記着信履歴及び前記呼出継続時間に基づいて制御を行う制

御手段とを具備し,前記制御手段は,前記表示手段に着信履歴として前

記発呼側端末のID番号を表示する場合,前記呼出継続時間が所定条件

を満足するとき,第1不応答表示を行う一方,前記所定条件を満足しな

いとき,第2不応答表示を行うものの,前記発呼側端末のID番号が電

話帳メモリに登録されている番号の一つと一致したら,第1不応答表示

を行うこと,を特徴とする通信端末装置。(以下,同請求項に係る発明

を「本件特許発明1−1」という。)

【請求項2】請求項1に記載の通信端末装置において,前記制御手段は,

第2不応答表示している前記発呼側端末のID番号が選択されて折り

返し発呼の指示を受けた場合,前記表示手段に第1注意情報を表示する

こと,を特徴とする通信端末装置。(以下,同請求項に係る発明を「本

特許発明1−2」という。)

【請求項3】請求項2に記載の通信端末装置において,前記制御手段は,

前記表示手段に第1注意情報を表示した後,更に発呼指示を受けた場合,

前記発呼側端末のID番号に発呼すること,を特徴とする通信端末装置。

(以下,同請求項に係る発明を「本件特許発明1−3」という。)

【請求項17】発呼側端末から呼び出されたにも拘わらず,当該呼び出

しに対して不応答の場合には,通知された前記発呼側端末のID番号及

び不応答であった旨の情報を着信履歴として記憶すると共に,記憶され
た前記着信履歴を表示手段に表示して,選択された前記ID番号に基づ

いて前記発呼側端末に折り返して発呼することが可能な通信端末装置

の着信履歴表示方法において,呼び出し時間又は呼び出し回数などの呼

出継続時間を計測する計測ステップと,前記呼出継続時間を前記着信履

歴と関連付けて記憶する記憶ステップと,前記着信履歴及び前記呼出継

続時間に基づいて制御を行う制御ステップとを含み,前記制御ステップ

は,前記表示手段に着信履歴として前記発呼側端末のID番号を表示す

る場合,前記呼出継続時間が所定条件を満足するとき,第1不応答表示

を行う一方,前記所定条件を満足しないとき,第2不応答表示を行うも

のの,前記発呼側端末のID番号が電話帳メモリに登録されている番号

の一つと一致したら,第1不応答表示を行うこと,を特徴とする着信履

歴表示方法。(以下,同請求項に係る発明を「本件特許発明1−17」

という。)

【請求項18】請求項17に記載の着信履歴表示方法において,前記制

御ステップは,第2不応答表示している前記発呼側端末のID番号が選

択されて折り返し発呼の指示を受けた場合,前記表示手段に第1注意情

報を表示すること,を特徴とする着信履歴表示方法(以下,同請求項に

係る発明を「本件特許発明1−18」という。。


【請求項19】請求項18に記載の着信履歴表示方法において,前記制

御ステップは,前記表示手段に第1注意情報を表示した後,更に発呼指

示を受けた場合,前記発呼側端末のID番号に発呼すること,を特徴と

する着信履歴表示方法。(以下,同請求項に係る発明を「本件特許発明

1−19」という。)

【請求項20】通信端末装置に着信履歴表示処理手順を実行させるプロ

グラムであって,前記通信端末装置は,発呼側端末から呼び出されたに

も拘わらず,当該呼び出しに対して不応答の場合には,通知された前記
発 呼側端末のID番号及び不応答であった旨の情報を着信履歴として

記憶すると共に,記憶された前記着信履歴を表示手段に表示して,選択

された前記ID番号に基づいて前記発呼側端末に折り返して発呼する

ことが可能であり,前記着信履歴表示処理手順は,呼び出し時間又は呼

び出し回数などの呼出継続時間を計測する計測手順と,前記呼出継続時

間を前記着信履歴と関連付けて記憶する記憶手順と,前記着信履歴及び

前記呼出継続時間に基づいて制御を行う制御手順とを含み,前記制御手

順は,前記表示手段に着信履歴として前記発呼側端末のID番号を表示

する場合,前記呼出継続時間が所定条件を満足するとき,第1不応答表

示を行う一方,前記所定条件を満足しないとき,第2不応答表示を行う

ものの,前記発呼側端末のID番号が電話帳メモリに登録されている番

号の一つと一致したら,第1不応答表示を行うこと,を特徴とするプロ

グラム。(以下,同請求項に係る発明を「本件特許発明1−20」とい

う。)

イ 本件特許2

特許番号 3431624号

発明の名称 通信端末装置,通信システム,着信情報表示方法

及びプログラム

出願年月日 平成14年10月7日

登録年月日 平成15年5月23日

特許請求の範囲

【請求項3】発呼側端末から呼び出されたにも拘わらず,当該呼び出し

に対して不応答の場合には,通知された前記発呼側端末のID番号及び

不応答であった旨の情報を着信履歴メモリに記憶すると共に,前記着信

履歴メモリに記憶した複数のID番号を表示手段に表示して,選択され

た1つのID番号に基づいて発呼側端末に折り返して発呼することが
可能な通信端末装置において,発呼又は着呼に利用する電話番号を記憶

する電話帳メモリと,呼び出し時間又は呼び出し回数などの呼出継続時

間を計測する計測手段と,前記呼出継続時間を通知された発呼側端末の

ID番号と関連付けて記憶する記憶手段と,前記発呼側端末のID番号

及び前記呼出継続時間に基づいて制御を行う制御手段と,着信音を発生

するリンガーと,前記呼出継続時間と所定時間とを比較して,「ワン切

り」か否かを判断する判断手段とを具備し,前記制御手段は,呼び出し

に対して不応答で,前記表示手段に前記発呼側端末のID番号又は対応

する名称を表示する場合,前記呼出継続時間が所定条件を満足するとき,

第1不応答表示を行う一方,前記所定条件を満足しないとき,第2不応

答表示を行うものの,前記発呼側端末のID番号が前記電話帳メモリに

登録されている番号の一つと一致したら,第1不応答表示を行うととも

に,着信情報を受信した場合,「ワン切り」に該当しないとき,前記リ

ンガーの着信音を発生させる一方,該当するとき,着信音を発生させな

いこと,を特徴とする通信端末装置。
(以下,同請求項に係る発明を「本

特許発明2−3」という。)

【請求項4】少なくとも基地局及び通信端末装置からなる通信システム

において,前記通信端末装置は,前記基地局を経由して,発呼側端末か

ら呼び出されたにも拘わらず,当該呼び出しに対して不応答の場合には,

通知された前記発呼側端末のID番号及び不応答であった旨の情報を

着信履歴メモリに記憶すると共に,前記着信履歴メモリに記憶した複数

のID番号を表示手段に表示して,選択された1つのID番号に基づい

て発呼側端末に折り返して発呼することが可能であり,更に,発呼又は

着呼に利用する電話番号を記憶する電話帳メモリと,呼び出し時間又は

呼び出し回数などの呼出継続時間を計測する計測手段と,前記呼出継続

時間を通知された発呼側端末のID番号と関連付けて記憶する記憶手
段と,前記発呼側端末のID番号及び前記呼出継続時間に基づいて制御

を行う制御手段と,着信音を発生するリンガーと,前記呼出継続時間と

所定時間とを比較して,「ワン切り」か否かを判断する判断手段とを具

備し,前記制御手段は,呼び出しに対して不応答で,前記表示手段に前

記発呼側端末のID番号又は対応する名称を表示する場合,前記呼出継

続時間が所定条件を満足するとき,第1不応答表示を行う一方,前記所

定条件を満足しないとき,第2不応答表示を行うものの,前記発呼側端

末のID番号が前記電話帳メモリに登録されている番号の一つと一致

したら,第1不応答表示を行うとともに,着信情報を受信した場合,
「ワ

ン切り」に該当しないとき,前記リンガーの着信音を発生させる一方,

該当するとき,着信音を発生させないこと,を特徴とする通信システム。

(以下,同請求項に係る発明を「本件特許発明2−4」という。)

【請求項7】発呼側端末から呼び出されたにも拘わらず,当該呼び出し

に対して不応答の場合には,通知された前記発呼側端末のID番号及び

不応答であった旨の情報を着信履歴メモリに記憶すると共に,前記着信

履歴メモリに記憶した複数のID番号を表示手段に表示して,選択され

た1つのID番号に基づいて発呼側端末に折り返して発呼することが

可能であって,且つ,発呼又は着呼に利用する電話番号を記憶する電話

帳メモリ及び着信音を発生させるリンガーを具備する通信端末装置の

着信情報表示方法において,呼び出し時間又は呼び出し回数などの呼出

継続時間を計測する計測ステップと,前記呼出継続時間を通知された発

呼側端末のID番号と関連付けて記憶する記憶ステップと,前記発呼側

端末のID番号及び前記呼出継続時間に基づいて制御を行う 制御ス

テップと,前記呼出継続時間と所定時間とを比較して,「ワン切り」か

否かを判断する判断ステップとを含み,前記制御ステップは,呼び出し

に対して不応答で,前記表示手段に前記発呼側端末のID番号又は対応
する名称を表示する場合,前記呼出継続時間が所定条件を満足するとき,

第1不応答表示を行う一方,前記所定条件を満足しないとき,第2不応

答表示を行うものの,前記発呼側端末のID番号が前記電話帳メモリに

登録されている番号の一つと一致したら,第1不応答表示を行うととも

に,着信情報を受信した場合,「ワン切り」に該当しないとき,前記リ

ンガーの着信音を発生させる一方,該当するとき,着信音を発生させな

いこと,を特徴とする着信情報表示方法。(以下,同請求項に係る発明

を「本件特許発明2−7」という。)

【請求項8】通信端末装置に着信情報表示処理手順を実行させるプログ

ラムであって,前記通信端末装置は,発呼側端末から呼び出されたにも

拘わらず,当該呼び出しに対して不応答の場合には,通知された前記発

呼側端末のID番号及び不応答であった旨の情報を着信履歴メモリに

記憶すると共に,前記着信履歴メモリに記憶した複数のID番号を表示

手段に表示して,選択された1つのID番号に基づいて発呼側端末に折

り返して発呼することが可能であって,且つ,発呼又は着呼に利用する

電話番号を記憶する電話帳メモリ及び着信音を発生させるリンガーを

具備し,前記着信表示処理手順は,呼び出し時間又は呼び出し回数など

の呼出継続時間を計測する計測手順と,前記呼出継続時間を通知された

発呼側端末のID番号と関連付けて記憶する記憶手順と,前記発呼側端

末のID番号及び前記呼出継続時間に基づいて制御を行う制御手順と,

前記呼出継続時間と所定時間とを比較して,「ワン切り」か否かを判断

する判断手順とを含み,前記制御手順は,呼び出しに対して不応答で,

前記表示手段に前記発呼側端末のID番号又は対応する名称を表示す

る場合,前記呼出継続時間が所定条件を満足するとき,第1不応答表示

を行う一方,前記所定条件を満足しないとき,第2不応答表示を行うも

のの,前記発呼側端末のID番号が前記電話帳メモリに登録されている
番号の一つと一致したら,第1不応答表示を行うとともに,着信情報を

受信した場合,「ワン切り」に該当しないとき,前記リンガーの着信音

を発生させる一方,該当するとき,着信音を発生させないこと,を特徴

とするプログラム。(以下,同請求項に係る発明を「本件特許発明2−

8」という。)

(3)構成要件の分説

本件各特許発明は,以下のとおり分説することができる。

ア 本件特許発明1−1ないし1−3

(ア) 本件特許発明1−1

A 発呼側端末から呼び出されたにも拘わらず,当該呼び出しに対して

不応答の場合には,通知された前記発呼側端末のID番号及び不応答

であった旨の情報を着信履歴として記憶すると共に,

B 記憶された前記着信履歴を表示手段に表示して,選択された前記I

D番号に基づいて前記発呼側端末に折り返して発呼することが可能な

通信端末装置において,

C 呼 び出し時間又は呼び出し回数などの呼出継続時間を計測する計

測手段と,

D 前 記呼出継続時間を前記着信履歴と関連付けて記憶する記憶手段

と,

E 前 記着信履歴及び前記呼出継続時間に基づいて制御を行う制御手

段とを具備し,

F 前記制御手段は,前記表示手段に着信履歴として前記発呼側端末の

ID番号を表示する場合,前記呼出継続時間が所定条件を満足すると

き,第1不応答表示を行う一方,前記所定条件を満足しないとき,第

2不応答表示を行うものの,前記発呼側端末のID番号が電話帳メモ

リに登録されている番号の一つと一致したら,第1不応答表示を行う
こと,

G を特徴とする通信端末装置。

(イ) 本件特許発明1−2

A 請求項1に記載の通信端末装置において,

B 前記制御手段は,第2不応答表示している前記発呼側端末のID番

号が選択されて折り返し発呼の指示を受けた場合,前記表示手段に第

1注意情報を表示すること,

C を特徴とする通信端末装置。

(ウ) 本件特許発明1−3

A 請求項2に記載の通信端末装置において,

B 前記制御手段は,前記表示手段に第1注意情報を表示した後,更に

発呼指示を受けた場合,前記発呼側端末のID番号に発呼すること,

C を特徴とする通信端末装置。

イ 本件特許発明2−3

A 発呼側端末から呼び出されたにも拘わらず,当該呼び出しに対して不

応答の場合には,通知された前記発呼側端末のID番号及び不応答で

あった旨の情報を着信履歴メモリに記憶すると共に,

B 前記着信履歴メモリに記憶した複数のID番号を表示手段に表示し

て,選択された1つのID番号に基づいて発呼側端末に折り返して発呼

することが可能な通信端末装置において,

C 発呼又は着呼に利用する電話番号を記憶する電話帳メモリと,

D 呼び出し時間又は呼び出し回数などの呼出継続時間を計測する計測

手段と,

E 前記呼出継続時間を通知された発呼側端末のID番号と関連付けて

記憶する記憶手段と,

F 前記発呼側端末のID番号及び前記呼出継続時間に基づいて制御を
行う制御手段と,

G 着信音を発生するリンガーと,

H 前記呼出継続時間と所定時間とを比較して,「ワン切り」か否かを判

断する判断手段とを具備し,

I 前記制御手段は,呼び出しに対して不応答で,前記表示手段に前記発

呼側端末のID番号又は対応する名称を表示する場合,前記呼出継続時

間が所定条件を満足するとき,第1不応答表示を行う一方,前記所定条

件を満足しないとき,第2不応答表示を行うものの,前記発呼側端末の

ID番号が前記電話帳メモリに登録されている番号の一つと一致した

ら,第1不応答表示を行うとともに,

J 着信情報を受信した場合,「ワン切り」に該当しないとき,前記リン

ガーの着信音を発生させる一方,該当するとき,着信音を発生させない

こと,

K を特徴とする通信端末装置。

(4)被告の行為

被告は,平成15年ころ,PHS方式の携帯電話(品番AH−30001

V及びAH−30002V。以下,併せて「被告製品」という。)を製造販売

した。

2 原告の請求

原告は,被告に対し,被告の行為により本件各特許権を権限なく使用された

として,不当利得に基づき,1億2000万円の利得返還及びこれに対する平

成16年1月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金

の支払を求めている。

3 争点

(1)被告製品は,本件特許発明1の技術的範囲に属するか

ア 被告製品は,本件特許発明1−1の技術的範囲に属するか(争点1−1)
イ 被告製品は,本件特許発明1−2の技術的範囲に属するか(争点1−2)

ウ 被告製品は,本件特許発明1−3の技術的範囲に属するか(争点1−3)

(2)被告製品は,本件特許発明2−3の技術的範囲に属するか (争点2)

(3)本件特許1は,特許無効審判により無効とされるべきものであるか

ア 先願発明の有無(特許法29条の2) (争点3−1)

進歩性欠如の有無(特許法29条2項) (争点3−2)

ウ サポート要件違反の有無(特許法36条6項1号) (争点3−3)

(4)利得額 (争点4)

第3 争点に関する当事者の主張

1 争点1−1(被告製品は,本件特許発明1−1の技術的範囲に属するか)に

ついて

【原告の主張】

以下のとおり,被告製品は,本件特許発明1−1の技術的範囲に属するもの

である。

なお,被告製品は,後記2,3のとおり,本件特許発明1−2,同1−3の

技術的範囲にも属するところ,本件特許発明1−1ないし1−3と本件特許発

明1−17ないし1−20は,発明のカテゴリーが相違するのみである。この

ため,被告製品は,本件特許発明1−1ないし1−3の技術的範囲に属するこ

とにより,当然に本件特許発明1−17ないし1−20の技術的範囲にも属す

る。

(1)被告製品の構成

被告製品の構成は,以下のとおりである。

@ 相手方からの着信があった場合,通常の設定の場合にはただちに着信音

が鳴る。

A 電話帳機能が設けられており,電話帳に登録された相手方から電話がか

かってきた場合には,登録されている相手の名前がディスプレイに表示さ
れる。また,電話帳に登録されている相手方の名前を選択し,決定ボタン

を押せば,当該相手方に電話がかかる。

B 相手方からの通話があったにもかかわらず応答しなかった場合,不在着

信記録として,日付,時刻とともに,相手方の電話番号を32桁まで記憶

するよう設定されている。

C 不在着信記録はディスプレイに表示され,ディスプレイに表示された不

在着信履歴の電話番号を選択し,通話ボタンを押せば,相手方の電話番号

に折り返し電話を掛けることができる。

D 着信があってから,電話が切れるまでの時間(約3秒以内であるか否か)

を計測するタイマー機構を備えている。

E 3秒以内の着信であったことと,着信があった電話番号とを関連付けて

記憶するメモリーを備えている。

F ワン切りチェッカー機能をONにした場合,電話帳に登録されていない

電話番号からの着信に対して,着信があってから約3秒後に着信音やバイ

ブレータ,着信LEDが動作する。

G ディスプレイに着信履歴を表示する一覧表示画面及び詳細表示画面に,

相手方電話番号を表示する際,電話帳に登録されていない相手からの着信

であり,3秒以内に切れてしまった場合には着信履歴の表示画面に「!」

マークが表示され,それ以外の場合には「!」マークは表示されず,単に

相手方の電話番号又は電話帳に登録されている氏名が表示される。

H 着信履歴の表示画面で「!」マークが表示された電話番号を選択して通

話ボタンを押し,折り返し電話をかけようとした場合,ディスプレイに「ワ

ン切りの可能性があります」「通話キーで発信します」との表示がなされ,

再度,通話ボタンを押さないと電話がかからないようになっている。

(2)構成要件充足性

被告製品の構成は,本件特許発明1−1の構成要件を全て充足する。
本件特許発明1の構成要件CないしFの充足性については次のとおりであ

る。

構成要件

構成要件Cの「呼出継続時間を計測する計測手段」は,着信があってか

ら切断されるまでの時間が一定時間以上であったかについて計測するこ

とができる任意の手段をいう。

前記(1)Dのとおり,被告製品は,着信があってから,電話が切れるま

での時間を計測するタイマー機構を備えている。ここでいう「着信があっ

てから,電話が切れるまでの時間」が,構成要件Cにおける「呼び出し時

間」及び「呼出継続時間」に当たり,「タイマー機構」が構成要件Cにお

ける「計測手段」に当たる。

そして,前記(1)Fのとおり,被告製品は,着信があってから切断され

るまでの時間が3秒以上であったか否かについて計測し,電話帳に登録の

ない相手からの着信に関しては,3秒を経過した後に着信音を鳴らす構成

を有している。

なお,構成要件Cは,全ての着信の呼出継続時間について計測するもの

ではないから,後記【被告の主張】(2)アは,前提において誤っている。

構成要件

前記アからすれば,構成要件Dの「記憶手段」によって記憶される「呼

出継続時間」は,必ずしも時間数である必要はなく,0又は1のフラグで

あってもよい。

前記(1)Eのとおり,被告製品は,3秒以上の着信について着信音を鳴

らすことにした場合,着信があった電話番号と不在フラグ(着信に対して

応答したか否かを示す1ビットの情報)とを含む「着信履歴」に関連付け

て,「着信音非報知フラグ」(0又は1)を記憶している。

したがって,被告製品は,構成要件Dの「呼出継続時間」を「着信履歴」
と「関連付けて記憶する記憶手段」を有するものである。

構成要件

前記(1)Fのとおり,被告製品の構成は,ワン切りチェッカー機能をO

Nにした場合,電話帳に登録されていない電話番号からの着信に対しては,

着信があってから約3秒後に着信音やバイブレータ,着信LEDが動作す

るというもので,構成要件Eの「着信履歴」と「呼出継続時間」に基づく

制御がなされている。

構成要件

前記(1)Gの被告製品の構成のうち,着信時間が3秒以上である場合が

構成要件Fの「呼出継続時間が所定条件を満足するとき」に当たる。これ

に対し,着信時間が3秒以内で,電話帳に登録されていない相手方であっ

た場合が,構成要件Fの「前記所定条件を満足しないとき」で,かつ「発

呼側端末のID番号が電話帳メモリに登録されている番号の一つと一致」

しないときに当たる。

ま た,「!」マークが表示されず,単に相手方の電話番号又は電話帳に

登録されている氏名の表示される状態が構成要件Fの「第1不応答表示」

にあたり,「!」マークが表示されている状態が構成要件Fの「第2不応

答表示」に当たる。

【被告の主張】

以下のとおり,被告製品は,本件特許発明1−1の技術的範囲に属するもの

ではない。

(1)被告製品の構成

前記【原告の主張】(1)のうちB,DないしGは否認し,その余は認める。

ア 被告製品の構成B

被告製品が記憶するのは,構成Bの内容に限られない。受信者が着信に

応答したか否かを示す不在フラグ,発呼側が電話番号を非通知としていた
か否かを示す非通知フラグ,着信時に所定の条件を満たし着信音を鳴らし

たか否かを示す着信音非放置フラグも記録している。

イ 被告製品の構成D

被告製品は,着信時からの経過時間を計測することはあるものの,着信

が切断されるまでの「呼出継続時間」を計測することはない。

すなわち,相手方から発呼(発信)があった場合,携帯端末への着信時

から応答せずに着信が終了したときに,発呼が切断されるまでの所要時間

を計測するタイマー機能は具備していない。

ウ 被告製品の構成E

被告製品は,携帯端末への着信時から着信に応答しないまま着信が終了

するまでの時間(呼出継続時間)について,3秒以内であったか否かを記

憶するものではない。

エ 被告製品の構成F

被告製品は,ワン切りチェッカー機能をONにした場合も,相手方から

の番号が非通知であったときは,着信後,直ちに着信音を鳴らすものであ

り,原告による構成Fの特定は不正確である。

オ 被告製品の構成G

被告製品において着信終了後の操作により「!」マークが表示されるの

は,ワン切りチェッカーという機能をONにした場合に限られるし,非通

知の着信に関して「!」が表示されることはないから,原告による構成G

の特定も不正確である。

(2)構成要件充足性

被告製品は,本件特許発明1−1の各構成要件のうち,少なくとも以下の

構成要件を充足しない。

構成要件

構成要件Cの「呼出継続時間」は,着信から切断までの継続時間をいう
ものであり,
「呼出継続時間を計測する計測手段」は,全ての着信について

着信と同時に呼出継続時間の計測を開始するものである。

前記【原告の主張】(1)Dの被告製品の構成である保留時間減算チェッ

カーは,3秒を初期値として設定し,時間の経過に伴い減算して0秒に達

すると,減算を自動的に停止する構成のものであり,着信から切断までの

継続時間を計測するものではない。

また,この保留時間減算チェッカーによる処理は,非通知の着信につい

てされることはないから,全ての着信についてされるものでもない。

したがって,上記被告製品の構成は,構成要件Cの「呼出継続時間を計

測する計測手段」には当たらない。

構成要件

前記アのとおり,被告製品は,
「呼出継続時間」を計測する手段を有しな

いから,これを「記憶する記憶手段」もない。

そもそも,構成要件Aによれば,着信履歴は不応答であった旨の情報を

含むものであるから,構成要件Dの記憶手段は,着信終了後に「記憶する

記憶手段」である。これに対し,前記【原告の主張】(1)D及びEの被告

製品の構成である保留時間減算チェッカー及び着信音非報知フラグによる

処理は,いずれも着信終了前に完了するものである。

したがって,これらの被告製品の構成は,構成要件Dを充足しない。

構成要件E及びF

前記イのとおり,被告製品は,「呼出継続時間」を「記憶する記憶手段」

がないから,これに「基づいて制御を行う制御手段」もない。

また,前記イのとおり,構成要件A等によれば,構成要件E及びFの「制

御手段」 着信終了後に制御を行うものであるところ,
も, 前記イのとおり,

被告製品の保留時間減算チェッカー及び着信音非報知フラグによる処理は,

着信終了前に行われるものであるから,上記「制御手段」に当たらない。
2 争点1−2(被告製品は,本件特許発明1−2の技術的範囲に属するか)に

ついて

【原告の主張】

被告製品の構成は前記1【原告の主張】(1)のとおりである。

被告製品が,本件特許発明1−1の技術的範囲に属することは前記1【原告

の主張】のとおりである(本件特許発明1−2の構成要件A)。

被告製品の構成Hは,本件特許発明1−2の構成要件Bに当たり,被告製品

は,本件特許発明1−2の構成要件を全て充足する。

【被告の主張】

被告製品は,前記1【被告の主張】(2)ウのとおり,制御手段を有しないの

で,本件特許発明1−2の構成要件Bを充足しない。

3 争点1−3(被告製品は,本件特許発明1−3の技術的範囲に属するか)に

ついて

【原告の主張】

被告製品の構成は前記1【原告の主張】(1)のとおりである。

被告製品が,本件特許発明1−2の技術的範囲に属することは前記2【原告

の主張】のとおりである(本件特許発明1−3の構成要件A)。

被告製品の構成Hは,本件特許発明1−3の構成要件Bに当たり,被告製品

は,本件特許発明1−3の構成要件を全て充足する。

【被告の主張】

被告製品は,前記1【被告の主張】(2)ウのとおり,制御手段を有しないの

で,本件特許発明1−3の構成要件Bを充足しない。

4 争点2(被告製品は,本件特許発明2−3の技術的範囲に属するか)につい



【原告の主張】

以下のとおり,被告製品は,本件特許発明2−3の技術的範囲に属するもの
である。

なお,本件特許発明2−3と,本件特許発明2−4,2−7及び2−8は,

発明のカテゴリーが相違するのみである。このため,被告製品は,本件特許発

明2−3の技術的範囲に属することにより,当然に本件特許発明2−4,2−

7及び2−8の技術的範囲にも属する。

(1)被告製品の構成

前記1【原告の主張】(1)のとおり。

(2)構成要件充足性

被告製品の構成は,本件特許発明2−3の構成要件を全て充足する。

本件特許発明2−3の構成要件DないしF,H及びIの充足性については

次のとおりである。

構成要件

前記1【原告の主張】(2)アと同様である。

構成要件

前記1【原告の主張】(2)イと同様である。

構成要件

前記1【原告の主張】(2)ウと同様である。

構成要件

前記ア及びイのとおり,被告製品は,
「呼出継続時間」を「計測する計測

手段」及び「記憶する記憶手段」をいずれも有しており,これに基づいて

「ワン切り」か否かを判断するものである。

構成要件

前記1【原告の主張】(2)エと同様である。

構成要件

構成要件Jの「着信情報」とは,単に,基地局から呼出しがあった場合

を指す広い概念であり,当然に着信報知の概念を含む用語である。 【被
後記
告の主張】(2)カの「基地局と通信端末の通信が回復した際に基地局から

送られてくる情報」といった特殊な用語として限定解釈されるべきもので

はない。

前記1【原告の主張】(1)Fのとおり,被告製品は,電話帳に未登録の

相手からの着信があり,当該着信が3秒以内であった場合には,ワン切り」


と判断して着信音を鳴らさず,3秒を超えたときに着信音をならすもので

ある。これは,構成要件Jの「着信情報を受信した場合,
「ワン切り」に該

当しないとき,前記リンガーの着信音を発生させる一方,該当するとき,

着信音を発生させないこと」に当たる。

【被告の主張】

以下のとおり,被告製品は,本件特許発明2−3の技術的範囲に属するもの

ではない。

(1)被告製品の構成

前記1【被告の主張】(1)のとおり。

(2)構成要件充足性

被告製品は,少なくとも以下の構成要件を充足しない。

構成要件

前記1【被告の主張】(2)アと同様である。

構成要件

前記1【被告の主張】(2)イと同様である。

構成要件

前記1【被告の主張】(2)ウと同様である。

構成要件

前記ア及びイのとおり,被告製品は,
「呼出継続時間」を「計測する計測

手段」及び「記憶する記憶手段」をいずれも有しないから,これに基づい

て「「ワン切り」か否かを判断する判断手段」も有しない。
構成要件

前記1【被告の主張】(2)ウと同様である。

構成要件

構成要件Jの「着信情報」とは,着呼時に着信側の通信端末に送信され

てくる着信報知をいうものではない。本件特許1明細書の記載によれば,

着信側の通信端末が圏外であったり,電源がオフであったりして,着信報

知ができなかった場合に,その後に通信端末が圏内や電源オンとなって,

基地局と着呼側の通信が回復した際に,基地局から送られてくる発呼側の

ID情報等をいうものである。

被告製品は,着信時に基地局と着呼側の通信端末が通信を行うことがで

きなかった場合に,基地局と着呼側の通信が回復した後,基地局から着信

側の通信端末に発呼側のID情報及び呼出継続時間が送信されることはな

く,このときにリンガーの着信音に関する処理をすることもない。

したがって,構成要件Jを充足するものではない。

5 争点3−1(先願発明の有無)について

【被告の主張】

以下のとおり,本件特許発明1は,乙14発明と同一である。

(1)乙14発明の内容

乙14公報には,以下の構成を有する通信端末装置(乙14発明)が記載

されている。

1A 発呼側端末からの着信(呼び出し)に対して無応答(不応答)の場合

に,不審な着信であること又は不在着信であることとともに発信者番号

を着信履歴として記憶する。

1B 記憶された着信履歴を表示手段であるLCD115に表示して,ユー

ザが着信履歴を選択して発呼操作を行うことにより,発呼側端末に折り

返して発呼することが可能である。
1C 着信によって開始されるバイブレータの振動及び/又はリンガの着信

音鳴動の時間であって着信が終了するまでの時間である「着信報知時間」

が測定される。

これと同様,着信によって開始されるバイブレータの振動及び/又はリ

ンガの着信報知の回数であって着信が終了するまでの呼び出し回数であ

る「着信報知回数」が測定される。

1D 無応答(不応答)のまま着信が終了した場合,着信報知時間(着信報

知回数)が所定時間(所定回数)内であり,かつ発信者番号が電話帳及

び/又は発信履歴に記憶されていなかったときには,着信報知時間(着

信報知回数)が短かったことを示す情報を含め「不審な着信」として着

信履歴に記憶される。それ以外は,不在時に着信があったことを示す情

報を含む「不在着信」として発信者番号が着信履歴に記憶される。

1E 着信報知時間(着信報知回数)が短かったことを示す情報を含めた着

信履歴に基づいて制御を行う制御手段を有する。

1F 1Eの制御手段は,ユーザーが着信履歴のLCD115への表示機能

を実行した際に,「不審な着信」については通常の着信及び「不在着信」

とは異なる着信履歴表示を行う(例えば,別の色で電話番号を表示,ま

たは着信があったことのみを表示して電話番号を表示しない等)。

1G これらの構成を有する通信端末装置

2B これらに加えて,
「不審な着信」である旨が記憶されている着信履歴を

「第2不応答表示」として表示する場合,当該着信履歴に対して発呼操

作の指示を受けたときには,
「第1注意メッセージ」に相当する警告メッ

セージを表示する。

3B 「第1注意情報」に相当する警告メッセージを表示した後,更に,発

呼指示を受けた場合,発呼側端末の「ID番号」に相当する発信者番号

に発呼する。
(2)本件特許1に関する各発明と乙14発明との対比

ア 乙14発明の構成1Aないし1Gは,それぞれ,本件特許発明1−1の

構成要件AないしGと同一である。

イ 本件特許発明1−2との対比

(ア) 構成要件A,C

前記アのとおり,乙14発明の構成1Aないし1Gは,本件特許発明

1−1の構成要件と同一である。

(イ) 構成要件

乙14発明の構成2Bは,本件特許発明1−2の構成要件Bと同一で

ある。

ウ 本件特許発明1−3との対比

(ア) 構成要件A,C

前記イのとおり,乙14発明の構成1Aないし1G及び2Bは,本件

特許発明1−2の構成要件と同一である。

(イ) 構成要件

乙14発明の構成3Bは,本件特許発明1−3の構成要件Bと同一で

ある。

(3)訂正について

原告の予定している訂正で,本件特許発明1に付加される構成(構成要件

H,I)は,乙14発明の出願前において,既に周知慣用技術であり,いず

れも乙14公報に記載されている。

したがって,上記訂正がされたとしても,同訂正にかかる本件特許発明1−

1が乙14発明と同一であることには変わりがなく,本件特許発明1−1に

係る特許は無効であること(特許法29条の2)を免れない。

【原告の主張】

(1)相違点の存在
発呼側端末のID番号が格納されているのは,本件特許発明1−1では構

成要件Fの「電話帳メモリ」であるのに対し,乙14発明では「電話帳及び/

又は発信履歴」である点において,相違する。

「電話帳及び発信履歴」が意味する範囲は,
「電話帳に登録され,かつ,発

信履歴にも登録された履歴」をいうのに対し,
「電話帳又は発信履歴」が意味

する範囲は,「電話帳と発信履歴の双方」をいうものであるから,「電話帳メ

モリ」のみを範囲とする本件特許発明1−1の構成要件Fとは異なるもので

ある。

したがって,本件特許発明1は,乙14発明と同一ではない。

(2)訂正による無効理由の解消

原告は,本件特許1の請求項1について,訂正審判請求を予定しており,

上記訂正により,被告の主張する無効理由は解消される。

ア 原告は,上記請求項の末尾「第1不応答表示を行うこと,を特徴とする

通信端末装置。」とあるのを「第1不応答表示を行うことと,前記表示手段

には,前記着信履歴に含まれる前記発呼側端末のID番号の一覧が表示さ

れ,前記発呼側端末のID番号の一覧には,前記第1不応答表示又は前記

第2不応答表示のうち対応する表示がされた前記発呼側端末のID番号が

含まれること,を特徴とする通信端末装置。」と訂正する予定である。

イ 前記アの訂正後の請求項1を構成要件に分説すると,次のとおり,構成

要件H,Iを追加したこととなる。

「F(略)第1不応答表示を行うことと

H 前記表示手段には,前記着信履歴に含まれる前記発呼側端末のID

番号の一覧が表示され,

I 前記発呼側端末のID番号の一覧には,前記第1不応答表示又は前

記第2不応答表示のうち対応する表示がされた前記発呼側端末のID

番号が含まれること,
G を特徴とする通信端末装置。」

ウ また,上記訂正は訂正の要件を満たしており,かつ,被告製品は,上記

訂正後の本件特許発明1−1の技術的範囲に属する。

6 争点3−2(進歩性欠如の有無)について

【被告の主張】

以下のとおり,本件特許発明1は,乙15発明及び乙16発明に基づいて容

易に発明することができたものである。

(1)乙15発明の内容

乙15公報には,以下の構成を有する通信端末装置(乙15発明)が記載

されている。

ア 呼出信号が,約1.0秒の鳴動と約2.0秒の休止とを交互に繰り返す信

号であることを利用して,呼出信号の休止状態が2.0秒を超えた場合に,

呼出信号の受信停止,すなわち,不応答の着信であることを判断,検出し

て,ベルの鳴動回数と「発信者番号情報」とを対応づけて記録する。

イ 記憶された着信に関する情報に基づいて,発呼側端末に折り返して発呼

する。

ウ 「発信者番号情報」が電話帳メモリに登録されている番号の1つと一致

する場合には,ベルの鳴動回数が所定条件を満足しない場合においても,

所定条件を満足する場合と同様に,ベルの鳴動回数及び「発信者番号情報」

を対応づけて記録し,
「発信者番号情報」が電話帳メモリに登録されている

番号の1つと一致しない場合には,ベルの鳴動回数が所定条件を満足する

場合のみ,ベルの鳴動回数及び「発信者番号情報」を対応づけて記録する。

エ 「被呼出し状態の継続期間」
(ベルの鳴動回数)及び電話番号が電話帳に

登録されているか否かの情報に応じて,着信に関する情報を区別して記録

し,着信に関する情報を表示する際には,上記区別に応じて,表示態様を

異ならせる。
具体的には,

@ 「着信履歴」として「発呼側端末のID番号」に相当する「発信者番

号」を表示する場合,「呼出継続時間」に相当する「被呼出し状態の継

続期間」(ベルの鳴動回数)が所定条件を満足するとき,第1不応答表

示を行う一方で,所定条件を満足しないとき,第2不応答表示を行う。

A 「発信者番号情報」が電話帳メモリに登録されている番号の1つと一

致する場合には,「被呼出し状態の継続期間」(ベルの鳴動回数)が所定

条件を満足しない場合においても,所定条件を満足する場合と同様に扱

い,「発信者番号情報」が電話帳メモリに登録されている番号の1つと

一致しない場合には,上記所定条件を満足するか否かで扱う。

(2)乙16発明の内容

乙16公報には,以下の構成を有する通信端末装置(乙16発明)が記載

されている。

「発信側電話番号履歴情報が表示され,これに対して発呼操作を行うこと

で折り返し発呼ができるものの,着信拒否を行った相手への発呼操作に対し

ては,注意情報を表示し,さらに発呼指示があった場合に,折り返し発呼す

る。」

(3)本件特許1に関する各発明と乙15発明との対比

ア 本件特許発明1−1との対比

乙15発明は,本件特許発明1−1と以下の点で相違するほか,構成が

共通である。

(ア) 構成要件

前記(1)エのとおり,乙15発明は,「被呼出し状態の継続時間」(ベ

ルの鳴動回数)及び電話番号が電話帳に登録されているか否かの情報に

応じて,着信に関する情報を区別して記録し,着信に関する情報を表示

する際には,上記区別に応じて,表示態様を異ならせるものである。
したがって,着信に関する情報の表示制御について,ベルの鳴動回数

のランクに応じて制御がなされるものであって,
「呼出継続時間」に相当

する「被呼出状態の継続時間」
(ベルの鳴動回数)そのものに基づいて制

御がされるものではない。

(イ) 構成要件

構成要件Fは,前記(1)エの@及びAの構成を組み合わせたものであ

るのに対し,乙15発明は,これらの構成を同一の実施例における異な

るバリエーションとしている。

イ 本件特許発明1−2との対比

乙15発明には,本件特許発明1−2の構成要件Bに対応する構成がな

い。

ウ 本件特許発明1−3との対比

乙15発明には,本件特許発明1−3の構成要件Bに対応する構成がな

い。

(4)容易想到性

ア 本件特許発明1−1の容易想到性

前記1【原告の主張】(2)によれば,「呼出継続時間」に基づいて間接

的に制御を行う場合も本件特許発明1−1の技術的範囲に含まれるから,

前記(3)ア(ア)は,実質的な相違点ではない。

前記(3)ア(イ)の相違点に関し,前記(1)エの@及びAの構成を組み合

わせることには阻害要因がなく,当業者にとって容易である。

したがって,本件特許発明1−1は,当業者が,乙15発明に基づいて

容易に発明することができたものである。

イ 本件特許発明1−2の容易相当性

前記(2)のとおり,乙16発明には,本件特許発明1−2の構成要件

に対応する構成が記載されている。
乙 15発明に上記相違点に関する乙16発明の構成を適用することは,

当業者にとって容易である。

ウ 本件特許発明1−3の容易想到性

前記(2)のとおり,乙16発明には,本件特許発明1−3の構成要件

に対応する構成が記載されている。

乙15発明に上記相違点に関する乙16発明の構成を適用することは,

当業者にとって容易である。

【原告の主張】

以下のとおり,本件特許発明1は,乙15発明及び乙16発明に基づいて容

易に発明することができたものではない。

(1)乙15発明の内容

前記【被告の主張】(1)エは誤りである。

乙15公報には,発信者番号情報の表示時における点滅終期の早さや表示

色を制御するための条件として,発信者番号情報が「電話帳メモリに登録」

されているか否かを判断することについて,全く記載がない。

乙15発明は,発信者番号情報にかかわらず,ベルの鳴動回数の条件にの

み応じて表示方法が決定されるものである。

したがって,前記【被告の主張】(1)エAの構成は,記載されていない。

そもそも,被告の主張する上記構成の内容自体が意味不明なものであり,

何ら具体的な技術的事項を想定することができないものである。

(2)容易想到性

前記(1)のとおり,乙15発明には,本件特許発明1−1の構成要件Fに

対応する構成がない。

他にこの構成を明らかにする公知文献等もないから,本件特許発明1は,

乙15発明及び乙16発明に基づいて容易に発明することができたものでは

ない。
7 争点3−3(サポート要件違反の有無)について

【被告の主張】

本件特許1の当初の出願明細書には,本件特許発明1の構成要件Fのうち「前

記呼出継続時間が所定条件を満足するとき,第1不応答表示を行う」構成が記

載されていない。

したがって,本件特許1には,サポート要件違反がある。

【原告の主張】

仮に当初の出願明細書に記載がなかったとしても,サポート要件違反となる

ことはないから,前記【被告の主張】は失当である。

8 争点4(利得額)について

【原告の主張】

被告は,平成15年1月から12月までの間に,1台2万円で少なくとも2

0万台の被告製品を製造,販売した。

本件各特許発明実施料相当額は3%であるから,原告は,被告に対し,1

億2000万円の不当利得返還請求権を有する。

【被告の主張】

否認又は争う。

第4 当裁判所の判断

被告製品は,本件特許発明2−3の技術的範囲に属すると認めることができ

ないし(争点2に対する判断),本件特許1のうち,本件特許発明1−1ないし

1−3に係る部分は,特許無効審判により無効とされるべきものであることが

認められる(争点3−1に対する判断)。

以下,詳述する。

1 争点2(被告製品は,本件特許発明2−3の技術的範囲に属するか)につい



以下のとおり,被告製品は,少なくとも本件特許発明2−3の構成要件Jを
充足しないから,本件特許発明2の技術的範囲に属するということはできない。

(1)本件特許発明2−3の構成要件Jのうち「着信情報を受信した場合」の意



ア 【特許請求の範囲】の記載に基づく解釈

前提事実(3)のとおり,構成要件Jは,「着信情報を受信した場合,「ワ

ン切り」に該当しないとき,前記リンガーの着信音を発生させる一方,該

当するとき,着信音を発生させないこと,」というものである。

原告は,このうち「着信情報」の意義について,一般的に「基地局から

の呼出し」,すなわち「着信報知」を含む概念である旨主張する。

確かに「着信情報」の文言だけをみれば,そのように解することも可能

とも考えられるが,他方で,本件特許発明2−3の構成要件A等では,基

地局からの呼出しについて「発呼側端末からの呼び出し」と記載されてお

り,
「着信情報」は,これと区別して記載されているものとみることもでき

る。

したがって,
【特許請求の範囲】の記載からは,必ずしも一義的に明らか

なものではない。

イ 【発明の詳細な説明】の記載に基づく解釈

本件特許2明細書(甲4)をみると,
発明の詳細な説明】の項に以下の

記載があるほかには,「着信情報」に関する記載はない。

「更に,他の第1実施例を記載すると,例えば通信端末装置が圏外や電源

がオフの場合には,基地局は当該通信端末装置に着信報知ができない。そ

こで,通信ネットワーク側の交換制御装置に当該通信端末装置への着信情

報(少なくとも,発呼側のID情報及び呼出継続時間情報を含む)を記憶

させ,圏内や電源がオンとなった場合に,記憶した着信情報を知らせるよ

うにすることもできる。また,通信端末装置は,着信情報を受信した場合,

「ワン切り」や悪徳業者に該当しないときには,着信音を発生させる一方,
該当するときには,着信音を発生させないようにしてもよい。何故ならば,

その様な危険な発呼者をわざわざ知らせる必要もなく,後にユーザが確認

すればいいからである。(段落【0083】
」 )

上記記載によれば,「着信情報」は,「着信報知」と明確に区別されてお

り,@ 通信端末装置が圏外や電源がオフの場合に,A 通信ネットワーク

側の交換制御装置に記憶されるものであり, 少なくとも発呼側のID情
B

報及び呼出継続時間情報を含むものであることが認められる。

したがって,上記記載によれば,「着信情報」について,「基地局からの

呼出し」,すなわち「着信報知」を含むものと解釈することはできない。

出願経過

(ア) 後掲各証拠によれば,以下の事実が認められる。

原告は,本件特許2の出願審査手続において,平成15年1月23日

及び同月27日,手続補正書(乙8,9)を提出し,【特許請求の範囲

のうち,本件特許発明2−3に関する請求項に,
「前記制御手段は,前記

ID番号が前記電話帳メモリに登録されている番号の一つと一致したら

着信音を発生させる一方,一致しなければ所定時間だけ着信音を発生さ

せず,その後所定時間経過したら着信音を発生させること」という構成

要件を追加する補正をした。

特許庁審査官は,原告に対し,同年3月18日付けで拒絶理由通知

(乙10)を発送し,
「当初明細書等には,着信当初は,着信音を発生さ

せず,その後所定時間経過したら着信音を発生させることは一切記載さ

れていない。 として,
」 上記補正が新規事項の追加に当たる旨の指摘をし

た。

これを受けて,原告は,同年4月16日,上記補正後の請求項を前提

事実(2)イ【請求項3】の内容に改めて補正する手続補正を行い(乙1

1),これにより特許査定をされた。原告は,この手続補正の根拠につい
て,同日付けの意見書(乙12)で,前記イの本件特許2明細書段落【0

083】の記載に基づくものであるとしている。

(イ) 前記(ア)の出願経過によれば,原告は,審査官から「前記制御手段は,

前記ID番号が前記電話帳メモリに登録されている番号の一つと一致し

たら着信音を発生させる一方,一致しなければ所定時間だけ着信音を発

生させず,その後所定時間経過したら着信音を発生させること」という

構成が新規事項に当たるとして拒絶理由通知を受けたことから,この構

成を含まないものとして手続補正をし,これにより特許査定を受けたも

のというほかない。

前記アの原告の主張は,本件特許発明2−3の構成要件Jの意義につ

いて,上記拒絶理由通知を受けた構成と同一であるというものにほかな

らないから,上記出願経過に照らせば,包袋禁反言の法理により許され

ないものというべきである。

エ 小括

これらのことからすると,本件特許発明2−3の構成要件Jの「着信情

報」とは,@ 通信端末装置が圏外や電源がオフの場合に,A 通信ネット

ワーク側の交換制御装置に記憶されるものであり, 少なくとも発呼側の
B

ID情報及び呼出継続時間情報を含むものをいうと解するほかない。

(2)被告製品の構成

被告製品について,@ 通信端末装置が圏外や電源がオフの場合に,A 通

信ネットワーク側の交換制御装置に記憶されるものであり, 少なくとも発
B

呼側のID情報及び呼出継続時間情報を含むものとしての「着信情報」を受

信する構成を有する旨の主張立証はない。この場合に,リンガーの発生を制

御する構成を有する旨の主張立証もない。

したがって,被告製品について,本件特許発明2−3の構成要件Jを充足

するとは認めることができない。
2 争点3−1(先願発明の有無)について

以下のとおり,本件特許発明1は,乙14発明と同一であると認められる。

(1)乙14公報に関する出願明細書には,以下の記載がある。

ア 「無応答のまま着信が終了した場合,着信報知時間の測定を終了する(S

209)。次に,終了までの着信報知時間と設定時間(着信履歴記録対象と

する最低時間)とを比較し(S211),設定時間以内であった場合には受

信した発信者番号が端末内の電話帳及び/又は発信履歴に記憶されている

か否か確認する(S213)。その結果,電話帳及び/又は発信履歴に記憶

されていなかった場合には不審な着信であるので,着信報知時間が短かっ

たことを示す情報を含め「不審な着信」として着信履歴に記憶し,
(略)発

信者番号が端末内の電話帳及び/又は発信履歴に記憶されている場合は,

不在時に着信があったことを示す情報を含む「不在着信」として発信者番

号を着信履歴に記憶する(S215)。そして,その後,ユーザーが着信履

歴のLCD115への表示機能を実行した際に,着信時間が短かった「不

審な着信」の記憶については応答した着信及び「不在着信」とは異なる着

信履歴表示を行う(例えば,別の色で電話番号を表示,または着信があっ

たことのみを表示して電話番号を表示しない等)」
。(段落【0014】。


「無応答のまま着信が終了した場合,着信報知回数のカウントを終了する

(S409)。次に,終了までの着信報知回数と設定回数(着信履歴記録対

象とする最低回数)とを比較し(S411),設定回数以内であった場合に

は発信者番号が端末内の電話帳及び/又は発信履歴に記憶されているか否

か確認する(S413)。その結果,電話帳及び/又は発信履歴に記憶され

ていなかった場合には不審な着信であるので,着信報知回数が短かったこ

とを示す情報含め「不審な着信」として着信履歴に記憶し,
(略)発信者番

号が端末内の電話帳及び/又は発信履歴に記憶されている場合は,不在時

に着信があったことを示す情報を含む「不在着信」として発信者番号を着
信履歴に記憶する。そして,ユーザーが着信履歴のLCD115への表示

機能を実行した際に,
「不審な着信」については通常の着信及び「不在着信」

とは異なる着信履歴表示を行う(例えば,別の色で電話番号を表示,また

は着信があったことのみを表示して電話番号を表示しない等)ようにして

もよい。(段落【0019】
」 )

イ 「図3は本発明の第1の実施の形態である携帯電話機の発呼時の処理フ

ローチャートである。着信履歴の表示機能が実行されLCD115に表示

された着信履歴に対し「発呼キー」を1回押すことによる発呼操作が行わ

れると(S301),その着信履歴の電話番号が前記の「不審な着信」であ

るかどうかを判断する(S303)。その結果,「特別な着信」でなかった

場合には発信を開始して(S309) 処理を終了する。
, 」
(段落【0015】)

ウ 「(略)バイブレータの振動及び/又はリンガの着信音鳴動による着信報

知時間(以下,「単に着信報知時間」と称す)を測定し,(略) (段落【0


012】「無応答のまま着信が終了した場合,着信報知時間の測定を終了


する(S209)(略)(段落【0014】
。 」 )

「(略)バイブレータの振動及び/又はリンガの着信音鳴動による着信報知

回数(以下,単に「着信報知回数」と称す)をカウントし,
(略)(段落【0


017】「無応答のまま着信が終了した場合,着信報知回数のカウントを


終了する(S409) (略)(段落【0019】
。 」 )

エ 「S303の結果,「不審な着信」であった場合には,発呼の前にユー

ザーに対して「この着信は設定時間以内に切断されました。発呼します

か?」などの警告メッセージをLCD115に表示する(S305)。続い

て,LCD115に「通常発信」「184発信」「発信しない」といった選

択肢を表示し,ユーザは当該表示にしたがって選択操作を行う(S307)。

S307で「184発信」が選択された場合には184発信(番号非通知

発信)を行って(S311)処理を終了する。また,
「通常発信」が選択さ
れた場合には通常発信を行って(S309)処理を終了する。
(略)(段落


【0016】)

「図5は本発明の第2の実施の形態である携帯電話機の発呼時の処理フ

ローチャートである。着信履歴の表示機能が実行されLCD115に表示

された着信履歴に対し「発呼キー」を1回押すことによる発呼操作が行わ

れると(S501),ユーザが選択した着信履歴が前記の「不審な着信」で

あるかどうかを判断する(S503)(略) (段落【0020】
。 」 )

「S503の結果,
「不審な着信」であった場合には,発呼の前にユーザー

に対して「この着信は設定回数以内に切断されました。発呼しますか?」

などの警告メッセージをLCD115に表示する(S505)。続いて,L

CD115に「通常発信」「184発信」「発信しない」といった選択肢を

表示し,ユーザは当該表示にしたがって選択操作を行う(S507)」
。(段

落【0021】)

オ 「S507で「184発信」が選択された場合には184発信(番号非

通知発信)を行って(S511)処理を終了する。また,
「通常発信」が選

択された場合には通常発信を行って(S509)処理を終了する。(略)」

(段落【0022】)

(2)乙14発明の内容

前記(1)によると,乙14公報には,以下の構成を有する通信端末(乙14

発明)が記載されているものと認められる。

1A 発呼側端末からの着信(呼び出し)に対して無応答(不応答)の場合

に,不審な着信であること又は不在着信であることとともに発信者番号

を着信履歴として記憶する。

1B 記憶された着信履歴を表示手段であるLCD115に表示して,ユー

ザが着信履歴を選択して発呼操作を行うことにより,発呼側端末に折り

返して発呼することが可能である。
1C 着信によって開始されるバイブレータの振動及び/又はリンガの着信

音鳴動の時間であって着信が終了するまでの時間である「着信報知時間」

が測定される。

これと同様,着信によって開始されるバイブレータの振動及び/又はリ

ンガの着信報知の回数であって着信が終了するまでの呼び出し回数であ

る「着信報知回数」が測定される。

1D 無応答(不応答)のまま着信が終了した場合,着信報知時間(着信報

知回数)が所定時間(所定回数)内であり,かつ発信者番号が電話帳及

び/又は発信履歴に記憶されていなかったときには,着信報知時間(着

信報知回数)が短かったことを示す情報を含め「不審な着信」として着

信履歴に記憶される。それ以外は,不在時に着信があったことを示す情

報を含む「不在着信」として発信者番号が着信履歴に記憶される。

1E 着信報知時間(着信報知回数)が短かったことを示す情報を含めた着

信履歴に基づいて制御を行う制御手段を有する。

1F 1Eの制御手段は,ユーザーが着信履歴のLCD115への表示機能

を実行した際に,「不審な着信」については通常の着信及び「不在着信」

とは異なる着信履歴表示を行う(例えば,別の色で電話番号を表示,ま

たは着信があったことのみを表示して電話番号を表示しない等)。

1G これらの構成を有する通信末端装置

2B これらに加えて,
「不審な着信」である旨が記憶されている着信履歴を

「第2不応答表示」として表示する場合,当該着信履歴に対して発呼操

作の指示を受けたときには,
「第1注意メッセージ」に相当する警告メッ

セージを表示する。

3B 「第1注意情報」に相当する警告メッセージを表示した後,更に,発

呼指示を受けた場合,発呼側端末の「ID番号」に相当する発信者番号

に発呼する。
(3)本件特許発明1−1と乙14発明との対比

乙14発明の各構成は前記(2)のとおりであるが,同発明と本件特許発明

1−1ないし1−3を対比すると,1Fを除いた乙14発明の構成が本件特

許発明1−1ないし1−3の各構成要件と同一であることについて,原告は,

これを明らかには争っていない。

原告は,前記第3の5【原告の主張】のとおり,発呼側端末のID番号が

格納されているのは,本件特許発明1−1では構成要件Fの「電話帳メモリ」

であるのに対し,乙14発明では「電話帳及び/又は発信履歴」である点に

おいて相違する旨主張する。

一般に,
「及び」は,名詞相互をつなぎ,それらの指すものに一括して言及

する場合に使われる接続詞であるのに対し,「又は」は,@ 複数のうち少な

くとも一つが成り立つこと, 複数のうちどれか一つだけが成り立つことを
A

いう場合に使われる接続詞である。

そうすると,乙14発明の「電話帳及び/又は発信履歴」という文言から

すれば,電話帳と発信履歴のいずれか一つだけの場合も含まれることが認め

られ,これと異なる解釈をとるべき理由は見当たらない。

そうすると,乙14発明の構成には,
「電話帳」のみに発呼側端末のID番

号が格納されているものとする構成も含まれるから,この点において,本件

特許発明1−1と相違するとはいえない。

よって,本件特許発明1−1ないし1−3は,乙14発明と同一であると

認めることができる。

(4)訂正による無効理由の解消の可否について

原告は,本件特許発明1−1の構成要件F「第1不応答表示を行うこと,」

の部分を,
「第1不応答表示を行うことと,前記表示手段には,前記着信履歴

に含まれる前記発呼側端末のID番号の一覧が表示され,前記発呼側端末の

ID番号の一覧には,前記第1不応答表示又は前記第2不応答表示のうち対
応する表示がされた前記発呼側端末のID番号が含まれること, に訂正する


ことを予定しており,これにより前記(3)の無効理由が解消される旨主張す

る。

上記主張がいわゆる訂正の再抗弁として十分なものであるかはさておき,

仮に上記訂正が許されたとしても,以下のとおり,訂正後の本件特許発明1−

1ないし1−3も乙14発明と同一であるというべきである。

確かに,乙14公報には,第1不応答表示又は第2不応答表示を表示する

に当たり,一覧表示を前提としたものであるか又は個別表示を前提としたも

のであるかに関する明示的な記載が見当たらない。

しかしながら,乙19の1ないし4によれば,乙14発明の出願前におい

て着信履歴を一覧表示することは,携帯電話機一般に実装されていた周知慣

用技術であったことが認められる。乙14公報には,個別表示に限ることを

前提したものと解釈すべき記載も見当たらないことからすれば,乙14公報

に接した当業者は,乙14公報に係る着信履歴の表示の方法として,当然に

一覧表示の構成を想起したはずである。

そうすると,乙14公報には,第1不応答表示又は第2不応答表示を表示

するに当たり,一覧表示をする構成も記載されているものと同視することが

できるというべきである。

この乙14発明の構成は,原告が訂正により本件特許発明1−1に加えよ

うとする「前記表示手段には,前記着信履歴に含まれる前記発呼側端末のI

D番号の一覧が表示され,前記発呼側端末のID番号の一覧には,前記第1

不応答表示又は前記第2不応答表示のうち対応する表示がされた前記発呼側

端末のID番号が含まれること,」という構成と同一である。

し たがって,仮に上記訂正が許されたとしても前記 3 の無効理由は解消

されない。

3 結論
よって,主文のとおり判決する。

大阪地方裁判所第26民事部



裁判長裁判官 山 田 陽 三




裁判官 松 川 充 康




裁判官 西 田 昌 吾