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事件 平成 23年 (行ケ) 10197号 審決取消請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2012/03/07
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成24年3月7日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成23年(行ケ)第10197号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成24年2月22日

判 決

原 告 ナ ブ テ ス コ 株 式 会 社

同訴訟代理人弁護士 磯 部 健 介

鈴 木 良 和

上 野 潤 一

被 告 特 許 庁 長 官

同 指 定 代 理 人 倉 田 和 博

川 本 眞 裕

黒 瀬 雅 一

板 谷 玲 子

主 文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求

特許庁が不服2010−22441号事件について平成23年5月9日にした審

決を取り消す。

第2 事案の概要

本件は,原告が,下記1のとおりの手続において,特許請求の範囲の記載を下記

2とする本件出願に対する拒絶査定不服審判の請求について,特許庁が,同請求は

成り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のと

おり)には,下記4の取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。

1 特許庁における手続の経緯




(1) 原告は,発明の名称を「回転駆動装置」とする発明につき,平成17年1

0月17日に特許出願(出願番号:特願2005−301261号。平成7年2月

21日に出願した特願平7−56680号の一部を5回にわたり新たな特許出願を

したもの)を行った(甲6)。

(2) 原告は,平成22年7月2日付けで拒絶査定を受け(甲15),同年10

月5日,不服の審判を請求するとともに(甲17),手続補正書を提出した(甲1

6。以下「本件補正」という。)。

(3) 特許庁は,上記請求を不服2010−22441号として審理し,平成2

3年5月9日,本件補正を却下した上,「本件審判の請求は,成り立たない。」と

の本件審決をし,その謄本は同月24日,原告に送達された。

2 本件補正前後の特許請求の範囲の記載

本件審決が対象とした,特許請求の範囲請求項1の記載は,以下のとおりである。

なお,文中の「/」は,原文の改行箇所である。以下,本件補正前の請求項1に記

載された発明(甲13)を「本願発明」,本件補正後の請求項1に記載された発明

を「本件補正発明」という。また,本件出願に係る本件補正後の明細書(甲16。

図面につき甲6)を「本願明細書」という。

(1) 本願発明

内歯歯車,該内歯歯車の歯数より若干少ない歯数を有するとともに,中心部が中

空に構成され,該内歯歯車に噛み合うピニオン,該ピニオンにクランク部が係合

し,前記ピニオンの中心から偏心した位置に配置されたクランクシャフト,該クラ

ンクシャフトを回転可能に支持するとともに,中心部が中空に構成され,前記内歯

歯車に対し相対回転可能なキャリア,前記クランクシャフトに固定された入力外歯

車,および,前記入力外歯車に噛み合う外歯車が設けられるとともに,その中心部

が中空に構成された回転体を備えた偏心差動減速機と,/前記回転体の回転軸線と

平行な出力軸を有するとともに,前記回転体より半径方向外側に配置された駆動モ

ータと,/その中央近傍に孔を有し,前記キャリアに取り付けられることで,該キ




ャリアとともに前記内歯歯車に対し相対回転可能であるとともに,該キャリアおよ

びピニオンの各中空に挿入された筒体とを備え,前記回転体が前記筒体を外側から

囲むよう配置されるとともに,前記駆動モータの回転を前記回転体に伝達するよう

にしたことを特徴とする回転駆動装置

(2) 本件補正発明(ただし,下線部分は本件補正による補正箇所である。)

内歯歯車と,該内歯歯車の歯数より若干少ない歯数を有するとともに,その中心

部が中空に構成され,該内歯歯車に噛み合うピニオンと,該ピニオンにクランク部

が係合し,前記ピニオンの中心から偏心した位置に配置された複数のクランクシャ

フトと,該各クランクシャフトを回転可能に支持するとともに,その中心部が中空

に構成され,前記内歯歯車に対し相対回転可能なキャリアと,前記各クランクシャ

フトに固定された入力外歯車と,該入力外歯車に噛み合う外歯車が設けられるとと

もに,その中心部が中空に構成された回転体とを備えた偏心差動減速機と,/前記

回転体の回転軸線と平行な出力軸を有するとともに,前記回転体より半径方向外側

に配置され,前記回転体を介して前記各クランクシャフトに回転を伝達する駆動モ

ータとを有する回転駆動装置において,/その中央近傍に孔を有し,前記キャリア

に取り付けられることで,前記キャリアとともに前記内歯歯車に対し相対回転可能

であるとともに,前記キャリアおよび前記ピニオンの各中空に挿入された筒体をさ

らに備え,/前記回転体が前記筒体を外側から囲むよう配置されるとともに,前記

駆動モータの出力軸の回転軸線を,前記内歯歯車と前記ピニオンとの噛み合い部よ

り半径方向内側に配置した,産業ロボットに用いられることを特徴とする回転駆動

装置

3 本件審決の理由の要旨

(1) 本件審決の理由は,要するに,@本件補正発明は,下記アの引用例に記載

された発明(以下「引用発明」という。)並びに下記イないしオの周知例に記載さ

れた周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特

許法29条2項の規定により,独立して特許を受けることができないものであるか




ら,本件補正は,平成18年法律第55号による改正前の特許法17条の2第5項

において準用する同法126条5項の規定により却下すべきものである,A本願発

明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができた

ものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができないと

いうのである。

ア 引用例:実願平1−127466号(実開平3−65039号)のマイクロ

フィルム(甲1)

イ 周知例1:特開平5−248501号公報(甲2)

ウ 周知例2:特開昭63−180751号公報(甲3)

エ 周知例3:特開平6−143186号公報(甲4)

オ 周知例4:特開平3−260436号公報(甲5)

(2) なお,本件審決は,その判断の前提として,引用発明並びに本件補正発明

と引用発明との一致点及び相違点を以下のとおり認定した。

ア 引用発明:内歯車と,該内歯車の歯数より若干少ない歯数を有するとともに,

その中央部に貫通孔が形成され,該内歯車に噛み合う差動外歯車と,該差動外歯車

の挿入孔に偏心カムが挿入され,前記差動外歯車の中心から偏心した位置に配置さ

れた複数本のクランク軸と,該各クランク軸を回転可能に支持するとともに,その

中央部に貫通孔が形成され,前記内歯車に対し相対回転可能なフランジ部と,前記

各クランク軸に固定された外歯車と,該外歯車に噛み合う外歯車が設けられるとと

もに,その中心部が中空に構成された回転スリーブとを備えた減速機と,前記回転

スリーブの回転軸線と平行な中空軸を有するとともに,前記回転スリーブと同軸に

配置され,前記中空軸を介して前記各クランク軸に回転を伝達する駆動モータとを

有する回転駆動装置において,中空空間を有し,前記フランジ部に取り付けられる

ことで,前記フランジ部とともに前記内歯車に対し相対回転可能であるとともに,

前記フランジ部および前記差動外歯車の各貫通孔に挿入された遮断スリーブをさら

に備え,前記回転スリーブが前記遮断スリーブと軸方向に並べて配置されるととも




に,前記駆動モータの中空軸の回転軸線を,前記内歯車と前記差動外歯車との噛み

合い部より半径方向内側に配置した,ロボットの関節構造に用いられる回転駆動装



イ 一致点:内歯歯車と,該内歯歯車の歯数より若干少ない歯数を有するととも

に,その中心部が中空に構成され,該内歯歯車に噛み合うピニオンと,該ピニオン

にクランク部が係合し,前記ピニオンの中心から偏心した位置に配置された複数の

クランクシャフトと,該各クランクシャフトを回転可能に支持するとともに,その

中心部が中空に構成され,前記内歯歯車に対し相対回転可能なキャリアと,前記各

クランクシャフトに固定された入力外歯車と,該入力外歯車に噛み合う外歯車が設

けられるとともに,その中心部が中空に構成された回転体とを備えた偏心差動減速

機と,前記回転体の回転軸線と平行な出力軸を有するとともに,前記回転体を介し

て前記各クランクシャフトに回転を伝達する駆動モータとを有する回転駆動装置に

おいて,その中央近傍に孔を有し,前記キャリアに取り付けられることで,前記キ

ャリアとともに前記内歯歯車に対し相対回転可能であるとともに,前記キャリアお

よび前記ピニオンの各中空に挿入された筒体をさらに備え,前記駆動モータの出力

軸の回転軸線を,前記内歯歯車と前記ピニオンとの噛み合い部より半径方向内側に

配置した,産業ロボットに用いられる回転駆動装置

ウ 相違点1:本件補正発明は,駆動モータが「回転体より半径方向外側に配置

され」ているのに対して,引用発明は,駆動モータが回転スリーブ(回転体)と同

軸上に配置されている点

エ 相違点2:本件補正発明は,「回転体が筒体を外側から囲むよう配置され」

ているのに対して,引用発明は,回転スリーブ(回転体)が遮断スリーブ(筒体)

と軸方向に並べて配置されている点

4 取消事由

本件補正発明の容易想到性に係る判断の誤り

(1) 相違点の認定の誤り(取消事由1)




(2) 相違点1に係る認定判断の誤り(取消事由2)

(3) 相違点2に係る認定判断の誤り(取消事由3)

第3 当事者の主張

1 取消事由1(相違点の認定の誤り)について

〔原告の主張〕

(1) 相違点の看過

引用発明においては,駆動モータは単に減速機の中心部に配置されているにすぎ

ないのに対し,本件補正発明において,「駆動モータを回転体より半径方向外側に

配置」し,かつ「駆動モータの出力軸の回転軸線を,内歯歯車とピニオンの噛み合

い部より半径方向内側に配置」するという構成がとられている。本件審決は,この

うち,「駆動モータを回転体より半径方向外側に配置」するという構成は,相違点

1として認定したが,「駆動モータの出力軸の回転軸線を,内歯歯車とピニオンの

噛み合い部より半径方向内側に配置」するという構成(以下「本件相違点」とい

う。)については,相違点として認定していない。

(2) 本件相違点に係る判断の誤り

本件補正発明は,本件相違点に係る「駆動モータの出力軸の回転軸線を,内歯歯

車とピニオンの噛み合い部より半径方向内側に配置」するという構成を採用するこ

とにより,駆動モータを含む回転駆動装置の小型化及び増速の防止を図っているが,

これは当業者が容易に想到できるものではない。

すなわち,複数のクランクシャフト及びクランク部を減速機中心部より外側に有

する第二世代以降の減速機においては,中心部より外側方向に幅が広がってしまい,

回転駆動装置がより大型化し,これが使用されるロボットの関節部も大型化してし

まうのみならず,上記関節部が大きく振動してしまうという問題が生じる。そこで,

本件補正発明においては,本件相違点に係る上記構成を採用することにより,回転

駆動装置の小型化及びこれが用いられるロボット等の関節部の振動の防止という2

つの目的を実現している。




また,駆動モータを減速機の中心部から離れた場所に配置した場合には,駆動モ

ータから回転体に対して回転力を伝える歯車が大口径となるため,増速の問題が生

じる。そこで,本件補正発明においては,本件相違点に係る構成を採用することに

より,駆動モータと回転体の距離を縮めることにより外歯車が大口径化することを

防ぎ,増速の問題が発生することをも回避しているのである。

〔被告の主張〕

(1) 原告も,引用発明の認定を認めているように,引用発明の「駆動モータの

中空軸の回転軸線を,前記内歯車と前記差動外歯車との噛み合い部より半径方向内

側に配置した」との認定に誤りはない。また,引用発明の「内歯車」,「差動外歯

車」及び「中空軸」は,それぞれ本件補正発明の「内歯歯車」,「ピニオン」及び

「出力軸」に相当する。よって,引用発明の「駆動モータの中空軸の回転軸線を,

前記内歯車と前記差動外歯車との噛み合い部より半径方向内側に配置した」との構

成と本件補正発明の「駆動モータの出力軸の回転軸線を,内歯歯車とピニオンの噛

み合い部より半径方向内側に配置した」との構成とは一致するから,本件相違点は

存在しない。

(2) 本件相違点は存在しないから,原告の主張は,その前提において誤りがあ

る。しかも,本願明細書には,原告が主張するような回転駆動装置の小型化及び

増速の防止やロボット等の関節部の振動の防止といった課題や作用・効果は,何ら

記載や示唆がされておらず,本願明細書に基づかない後付けの主張である。また,

上記構成は特段の技術的特徴点や技術的意義を有しないものである。

(3) 仮に,原告が主張するような作用・効果を奏するとしても,以下のとおり,

原告の上記主張に根拠はない。

駆動モータを配置する位置を回転駆動装置の軸中心に近づければ近づけるほど,

径方向に小型化できるとともに,回転駆動装置の重心が軸中心に近づくことから

振動しにくくなることは,当業者にとって技術常識であってそれ自体予測できな

いような作用・効果ではない。




また,本件補正発明の構成において,「内歯歯車とピニオンの噛み合い部」の

位置は,減速機の出力軸が所要の回転数となるように歯数を設計する際に決定され

るもので,噛み合い部を境にして,駆動モータを含む回転駆動装置が急に小型化又

は大型化したり,増減速比の特性に特段の変化をもたらすものでもないから,当該

位置関係に格別な技術的意義はない。

さらに,本件補正発明の上記構成には,内歯歯車の大きさをもっと大きくするこ

とにより実現する手段も含まれ,当該構成は,回転駆動装置の小型化という効果を

必ずしも導くものではない。

大型化するか否かは,減速機とモータの大小及びその配置によって決まるもので

あって,本件補正発明の上記構成によって一義的に導かれるものではない。

以上のとおり,本件審決の一致点及び相違点の認定に誤りはない。

2 取消事由2(相違点1に係る認定判断の誤り)について

〔原告の主張〕

(1) 駆動モータの役割・減速機の構造上の相違

周知例1ないし4に記載された減速機は第一世代の減速機であるのに対して,引

用発明は第二世代の減速機という構造上の違いがあり,駆動モータの役割も異なる。

そのため,引用発明における技術課題が周知例1ないし4に記載された減速機には

存在せず,これを引用発明に適用する動機付けが存在しない。

周知例1ないし4に記載された減速機は,いずれも第一世代の減速機であり,駆

動モータの役割はクランクシャフト及びクランク部を回転させることであり,駆動

モータの動力は直接クランクシャフト及びクランク部に伝えられる構造となってい

る。他方,第三世代の減速機である本件補正発明においては,駆動モータの役割は

複数のクランクシャフト及びクランク部に動力を伝えるための回転体に動力を伝え

ることであり,駆動モータの動力は回転体に伝えられる構造となっている。

このように,同じ駆動モータであっても,本件補正発明と,周知例1ないし4に

記載されたものの役割,構造は異なるものである。




(2) 技術課題及び作用効果の違い

ア 増速という技術課題について

引用発明においては,駆動モータから回転スリーブに回転を与えるため,かかる

回転をクランク軸に伝達する際にクランク軸に動力を伝える外歯車とにおいて,回

転スリーブの外歯車の直径がクランク軸端部の外歯車の直径より大きい場合には,

ここで増速が生じてしまうという問題がある。特に,相違点2の構成,すなわち,

回転体が筒体を囲むように構成される場合には,回転体の口径が大きくなるため,

増速という点は重大な問題となる。

そこで,本件補正発明においては,駆動モータを回転体より半径方向外側に配置

し,駆動モータからの動力を歯車を通じて回転体側面から与える構成を付加するこ

とにより,上記技術課題の解決を図っている。すなわち,当該歯車の直径を小さく

することにより,減速効果を生み出し,増速という問題点を解決することが可能と

なっているのである。

イ 駆動モータ巨大化という技術課題について

引用発明に相違点2の構成を加えることにより新たに発生する,駆動モータの巨

大化という技術課題を解決するために,本件補正発明においては,相違点1の構成

を加えて解決を図っている。これに対して,第一世代の減速機である周知技術につ

いては,このような技術課題はそもそも存在しない。

すなわち,引用発明において,相違点2の構成である,回転スリーブが遮断スリ

ーブを囲うように配置した場合には,回転スリーブが大口径の円筒型の回転体とな

ってしまう。この場合,駆動モータが回転スリーブの中心部にあった場合には,駆

動モータから回転スリーブに直接動力を与えるため,駆動モータを巨大化しなけれ

ばならない。その上,仮に駆動モータを回転スリーブの中心部に配置したまま,回

転スリーブが遮断スリーブを囲うように配置した場合には,回転スリーブの口径が

拡大するため,駆動モータがさらに巨大化することは避けられない。

そこで,本件補正発明においては,上記技術課題を回避するために,回転体が筒




体を外側から囲むように配置する一方において,駆動モータの巨大化を防ぐために,

相違点1の構成である,駆動モータを回転体より半径方向外側に配置し,駆動モー

タからの動力を歯車を通じて回転体側面から与えるという構造をとったものである。

これにより,本件補正発明においては,駆動モータが巨大化することを防いでいる。

(3) 適用上の阻害要因があること

ア 駆動モータ設置の物理的阻害要因について

第一世代の減速機は,中心部に入力軸のクランクシャフト及びクランク部がある

ため,減速機の中心部から半径方向外側部分において物理的な構造物はなく,ここ

に駆動モータを配置することについては阻害する要因はない。しかし,引用発明の

ような第二世代の減速機は,減速機の中心部から外れた箇所に複数のクランク軸及

び偏心カムが存在し,さらにこれに動力を与える外歯車が存在するため,同じ場所

である減速機の中心部から半径方向外側部分に駆動モータなどを配置するためには,

高速回転する回転スリーブに加え,回転スリーブの半径方向外側に位置する複数の

クランク軸及び偏心カム,さらにこれに動力を与える外歯車を回避しなければなら

ないが,その場合には,駆動モータを含む回転駆動装置は縦方向に大型化してしま

うため,物理的な阻害要因がある。しかも,引用発明においては,回転スリーブと

遮断スリーブが縦方向に連接して配置されているため,回転スリーブに動力を与え

ようと駆動モータを減速機の中心部から半径方向外側に配置すると,より縦方向に

大型化してしまうという問題点がある。

イ 駆動モータが中心部から外れることによる回転駆動装置の大型化・振動の発

生について

駆動モータが減速機の中心部から外れると,回転駆動装置の大型化,振動の発生

という問題が発生するため,相違点1の構成を採用することの阻害要因となってい

る。

ウ 駆動モータが中心部から外れることによる増速について

駆動モータが減速機の中心部から外れることにより,駆動モータから回転体に対




して回転力を伝える歯車が大口径となり,歯車の口径が回転体の口径に比して大き

くなる場合には,増速の問題が生じてしまうため,相違点1の構成を採用すること

の阻害要因となっている。

〔被告の主張〕

(1) 駆動モータの役割・減速機の構造上の相違について

周知例1ないし4は,減速機と駆動モータとを備えた回転駆動装置において,

駆動モータを減速機の中心部から外れた位置に配置することは,従来周知の技術

であることを示すものにすぎず,駆動モータの役割や構造を示したものではない。

しかも,引用発明の駆動モータと上記周知例記載の駆動モータとは,それぞれの

減速機を駆動する動力源である点で共通し,本件補正発明の駆動モータの役割も

共通している。また,当業者であれば,当然,第一世代及び第二世代の減速機の

技術を必要に応じて参照するものであるし,逆にそのことを阻害する事情もない。

そして,駆動モータがクランクシャフト及びクランク部に動力を伝えるために回

転体に動力を伝えることは,引用例に記載されている。

また,@一般に,駆動モータをどこに配置するかは,スペース等を考慮して当業

者が適宜決定し得る設計的事項であり,A相違点1に係る本件補正発明の構成に,

格別の技術的意義や作用効果はなく適宜配置されているものであって,B技術の改

良に当たって当該技術分野における周知の事項の適用を試みることは当業者が通常

期待される創作活動の範囲である。上記@ないしBの事項に照らすと,引用発明

において,駆動モータに上記従来周知の技術を適用して駆動モータを減速機の中

心部から外れた位置に配置し,相違点1に係る本件補正発明のように構成するこ

とは,当業者が必要に応じて適宜想到し得ることである。

(2) 技術課題及び作用効果の違いについて

ア 増速という技術課題について

本願明細書には,増速に関する事項や課題の記載や示唆はなく,本件補正発明に

も,外歯車の直径を小さくするといった増速(減速)に関する事項は特定されてい




ないから,原告の主張はその前提に誤りがある。

また,増速となるか減速となるかは,噛み合っている2つの歯車の歯数の比に

よって定まるものであり,引用例(第1図)にも,回転スリーブの外歯車の直径

がクランク軸端部の外歯車の直径より小さくなっており,減速するものが開示され

ている。しかも,駆動モータと減速機とが一体となった回転駆動装置は,駆動モー

タの回転を減速機により減速することを目的としているから,その途中に配置され

る歯車の噛み合いによって増速させることはなく,むしろ減速させることが自然で

ある。

イ 駆動モータ巨大化という技術課題について

本願明細書には,駆動モータの巨大化に関する事項や課題の記載や示唆はなく,

引用発明において,相違点2のように回転体が筒体を囲むように構成される場合で

も,筒体の口径を小さくすれば,回転体の口径も自ずと小さくなり,必ずしも駆動

モータが巨大化することはない。

そもそも,原告の主張は,本件審決の相違点2の判断に対するものであって,相

違点1の判断とは直接関係のないものである。

(3) 適用上の阻害要因について

ア 駆動モータ設置の物理的阻害要因について

引用例(第1図)のとおり,駆動モータは,駆動モータの中空軸他端部に減速

機の回転スリーブの基端部が,クランク軸に装着された外歯車より外側の位置で

挿入されて固定されており,減速機内部に組み込まれるものではなく,両者が干

渉することはないから,複数のクランク軸及び偏心カムと干渉しないように駆動

モータを配置することに何ら技術的困難性はなく,減速機の中心部から半径方向外

側に駆動モータなどを配置することに阻害要因はない。

また,本件補正発明においても,引用例の「外歯車」に相当する「外歯車」を回

避して駆動モータを配置しており(第4図),その結果,縦方向に大型化している

ものであるから,原告の主張には矛盾があり,その前提に誤りがある。




イ 駆動モータが中心部から外れることによる回転駆動装置の大型化・振動の発

生について

一般に駆動モータは,多種の大きさ,性能,出力及び用途のものが存在する。減

速機に比べて小型の駆動モータを使用すれば,相違点1の構成を採用して,駆動モ

ータを減速機の中心部から多少外れた位置に配置しても,回転駆動装置の大型化や

振動が発生することはない。よって,引用発明に相違点1に係る本件補正発明の構

成を採用することが技術的に不可能であるということはできない。むしろ,相違点

1の構成を採用する結果,引用発明のような組込式の専用の駆動モータを使用する

のではなく,汎用モータが採用できるので,価格,性能,大きさ等の選択肢が増え

る等の利点が生じるものであり,当業者が,当該回転駆動装置の利用目的を考慮し

つつ,それぞれの利点と欠点とを比較して適宜選択できるものである。

ウ 駆動モータが中心部から外れることによる増速について

駆動モータから回転体に対して回転力を伝える歯車に比べて,回転体側の外歯車

を大きくすれば減速するのであるから,引用発明に相違点1に係る本件補正発明の

構成を採用することが技術的に不可能であるということはできず,当該事項は,阻

害要因ではない。

3 取消事由3(相違点2に係る認定判断の誤り)について

〔原告の主張〕

(1) 周知技術と引用発明とは異なる減速機であること

周知例2及び3記載の減速機は,クランクシャフト及びクランク部が減速機の中

心部に1個しかない第一世代の減速機である。これに対して,引用発明は,第二世

代の減速機であり,第一世代の減速機とは構造が異なり,クランクシャフト及びク

ランク部が減速機の中心部から外れた箇所に複数存在する。かかる第二世代の減速

機は,第一世代の減速機と比べて部品点数が増え,構造が複雑化するというデメリ

ットがあるものの,クランクシャフト及びクランク部が複数存在するため,安定的

に動作するというメリットがある。




このように,周知例2及び3の減速機と引用発明の減速機とは,そもそもの構造

が異なるため,引用発明に周知技術を加えることは容易ではない。

(2) 引用発明の「回転スリーブ」と周知技術の「回転する部材」との間には,

技術課題及び作用効果の違いがあること

回転スリーブの技術課題・作用効果は,複数のクランク軸に動力を伝達すること

であり,遮断スリーブは回転スリーブと連続することにより減速機の中心部に中空

空間を作り出すことである。他方,第一世代の減速機における回転する部材が中空

の部材を外側から囲うような構成の技術課題は,回転する部材から入力される回転

の減速であり,その作用効果は,回転する部材と中空の部材との相互運動(偏心運

動)による減速(公転の取出し)であり,偏心差動減速機(遊星歯車減速機)の本

質的構成・機能である。このように両者の間に技術課題及び作用効果の共通性は全

くない。

なお,本件審決は,周知例3に,「筒状の回転部材である「入力要素」が筒状の

静止部材である「中空円筒軸」を外側から囲むように構成されている点,配線ケー

ブルが中空円筒軸の中空円筒軸の中心空洞域に配置されている点」が記載されてい

ると認定した。しかし,中空円筒軸は,減速機として必須の構成要素である中間要

素の一部にすぎないのに対し,本件補正発明においては,このような減速機の必須

要素とは全く異なる新しい別部材である筒体を付加しており,その構造は異なる。

さらに,かかる中空円筒軸は,軸受により入力軸の入力要素を支える支柱であり,

かかる中空円筒軸が存在しない場合には,入力軸の入力要素も存在し得ないという

本質的な役割を果たしている。

(3) 適用上の阻害要因があること

ア 回転スリーブと遮断スリーブとは双方が連接配置されていることが本質的な

要素となっていること

遮断スリーブと回転スリーブを連接して配置することにより,その中央部に潤滑

油から遮断された連続空間を形成し,ここに信号ケーブル等を配置することが目的




とされているから,双方が連接して配置されていることは,本質的要素である。

しかし,引用発明に相違点2の構成を加えることについては,これらを分断した

上で,さらに,回転スリーブが遮断スリーブを囲うように配置することが必要とな

る。かかる構成は遮断スリーブの本来の構造・作用効果と乖離しているため,当業

者は容易には想到し得ない。

イ 回転スリーブの大口径化に伴う駆動モータの巨大化

回転スリーブが遮断スリーブを囲うように配置した場合には,回転スリーブが大

口径の円筒型の回転体となってしまい,駆動モータが回転スリーブの中心部にあっ

た場合には,駆動モータから回転スリーブに直接動力を与えるため,駆動モータを

巨大化しなければならない。その上,仮に駆動モータを回転スリーブの中心部に配

置したまま,回転スリーブが遮断スリーブを囲うように配置した場合には,回転ス

リーブの口径が拡大するため,駆動モータがさらに巨大化することは避けられない。

そこで,本件補正発明においては,かかる適用上の阻害要因を排除するため,回

転体が筒体を外側から囲むように配置する一方において,駆動モータの巨大化を防

ぐために,相違点1の構成をとったものである。これにより,本件補正発明におい

ては,駆動モータが巨大化することを防いでいる。

ウ 回転スリーブの大口径化に伴う増速

回転スリーブが遮断スリーブを囲うように配置した場合には,回転スリーブが大

口径の円筒型の回転体となることによる増速の増大という阻害要因がある。すなわ

ち,引用発明においては,駆動モータから回転スリーブに回転を与えるため,かか

る回転をクランク軸に伝達する際にクランク軸に動力を伝える外歯車において,回

転スリーブの外歯車の直径がクランク軸端部の外歯車の直径より大きい場合には,

ここで増速が生じてしまうという問題点がある。そして,本件補正発明のように,

回転体が筒体を囲むように構成される場合には,回転体の口径が必然的により大き

くなるため,増速という点はさらに重大な問題となる。これは,引用発明に相違点

2の構成を加えることについての重大な阻害要因である。




(4) 相違点1,相違点2及び本件相違点を分断して判断していること

本件審決の最大の問題点は,相違点1の構造,相違点2及び本件相違点の構造を

全く関連性のないものであるとの前提の下,これらを分断して判断し,本件相違点

については相違点としてさえ認定がされていないことである。

しかし,本件補正発明は,相違点2の構成を採用することにより新たに発生する

技術課題や適用上の阻害要因を相違点1の構成を更に加えることにより回避し,さ

らに,相違点1の構成を更に加えることにより新たに発生する技術課題や適用上の

阻害要因を相違点3の構成を更に加えることにより回避するという,複雑かつ新た

着想をもってされた発明であり,本件審決のようにこれらを個別に判断した場合

には,本件補正発明の本質を見誤ることとなる。

〔被告の主張〕

(1) 周知技術と引用発明とは異なる減速機であることについて

引用発明において,回転スリーブ及び遮断スリーブは,それぞれ減速機の中心近

傍に配置され,回転スリーブは,駆動モータと減速機との間に配置されて駆動モー

タからの回転を減速機に伝達している。これに対し,周知例の回転部材及び静止部

材も減速機の中心近傍に配置され,回転部材は,駆動モータと減速機との間に配置

されて駆動モータからの回転を減速機に伝達している。そうすると,両者の回転駆

動装置における回転部材(回転スリーブ)及び静止部材(遮断スリーブ)の配置に

差異はない。

したがって,引用発明に周知技術を適用することは当業者にとって容易である。

(2) 引用発明の「回転スリーブ」と周知技術の「回転する部材」との間には,

技術課題及び作用効果の違いがあることについて

引用発明の「回転スリーブ」と周知技術の「回転部材」とは,ともに駆動モータ

からの動力を減速機構へ伝達するための入力軸として機能又は作用するものである

点で機能又は作用が共通し,引用発明の「遮断スリーブ」と周知技術の「筒状の静

止部材」とは,ともに内部に信号ケーブル等を通す中空空間を確保する筒体である




点で機能又は作用が共通するものである。

また,本件補正発明の回転体も何らかの形で支持されているはずであるが,本件

補正発明においては,「回転体が筒体を外側から囲むよう配置される」としか特定

されておらず,筒体が回転体を支持しているか否かは,何ら特定されていない。

そして,周知技術は,筒体が回転体を軸受を介して支持している構造(甲2〜

4)も,原告が主張するような筒体が回転体を支持していない構造(乙2〜4)も

包含するものである。

したがって,「回転体」と「筒体」の関係がいずれの構造であったとしても,

「回転体が筒体を外側から囲むよう配置される」ことは,当該技術分野において,

従来周知の技術であることに変わりがない。

(3) 適用上の阻害要因があることについて

ア 回転スリーブと遮断スリーブとは双方が連接配置されていることが本質的な

要素となっていることについて

引用発明の回転スリーブと遮断スリーブとは,それぞれが独立して潤滑油を遮

断し,信号ケーブル等を配置するものであるから,回転スリーブと遮断スリーブと

が連続(連接)して配置されることに,技術的な意義はない。

また,引用発明は,内部に潤滑油から遮断された中空空間を形成して,信号ケー

ブル等を配置することが本質的な意義の一つであり,しかも,回転部材である回転

スリーブに信号ケーブル等が接触するという課題を有しているものである。そして,

周知技術が,筒状の回転体の内部に配置した配線・配管が,回転体に接触すると断

線,摩滅等の不都合が起こるとの課題を解決するためにされたものであり,しかも,

当業者であれば,当然,第一及び二世代等の減速機の技術を必要に応じて参照す

るものである。そうすると,引用発明において,上記課題を解決するために,上

周知技術を適用し,回転スリーブが遮断スリーブを外側から囲むよう配置して,

相違点2に係る本件補正発明のように構成することは,当業者であれば容易に想到

できたことである。




イ 回転スリーブの大口径化に伴う駆動モータの巨大化について

本願明細書には,駆動モータの巨大化に関する事項や課題の記載や示唆はなく,

引用発明において,相違点2のように回転体が筒体を囲むように構成される場合で

も,筒体の口径を小さくすれば,回転体の口径も自ずと小さくなり,必ずしも駆動

モータが巨大化することはないから,原告の主張はその前提に誤りがある。

しかも,回転スリーブが遮断スリーブを囲うように配置した場合,駆動モータは

多少大型化することはあっても,巨大化することはない。仮に,巨大化しても,減

速機と駆動モータとを備えた回転駆動装置において,周知技術を引用発明に適用す

ることが技術的に不可能であるとか,適用することが引用発明の技術思想に反する

などということはない。よって,引用発明に上記周知技術を適用することに阻害要

因は存在しない。

ウ 回転スリーブの大口径化に伴う増速について

本願明細書には,増速に関する事項や課題の記載や示唆はなく,本件補正発明

においても,外歯車の直径を小さくするといった増速に関する事項は特定されてい

ないから,原告の主張はその前提に誤りがある。

また,相違点2のように回転体が筒体を囲むように構成される場合,回転スリー

ブの径を変えずに,遮断スリーブを小径化して回転スリーブの内部に延長すれば,

回転スリーブによる「増速の増大」も生じない。そして,遮断スリーブを小径化し

て延長する方が,他の構成要素を変更しなくても済むので,回転スリーブの径を大

きくして遮断スリーブを回転スリーブの内側に延長するよりも,技術的に自然であ

る。よって,引用発明に上記周知技術を適用することに阻害要因は存在しない。

(4) 相違点1,相違点2及び本件相違点を分断して判断していることについて

相違点1に係る本件補正発明の構成と相違点2に係る本件補正発明の構成は,技

術的に直接的な関連性はなく,それぞれが独立した構成であって,本件審決におい

てこれらを個別に判断したことに誤りはない。また,原告が本件相違点と主張する

構成は,本件補正発明と引用発明との一致点であって,相違点ではない。




第4 当裁判所の判断

1 本件補正発明について

本件補正発明は,前記第2の2記載のとおりであり,本件補正発明について,本

願明細書には,以下の記載がある(甲16)。

(1) 本件補正発明は,クランクシャフトを回転させることによってピニオンを

偏心回転させる偏心差動減速機を有する回転駆動装置に関する(【0001】)。

(2) 従来の回転駆動装置としては,内歯歯車,該内歯歯車のピン歯の歯数より

若干少ない歯数を有するとともに,中心部が中空に構成され,該内歯歯車に噛み合

う外歯歯車,該外歯歯車に偏心カムが係合し,前記外歯歯車の中心から偏心した位

置に配置されたカム軸,該カム軸を回転可能に支持するとともに,中心部が中空に

構成されたキャリア,前記カム軸に固定された平歯車及び前記平歯車に噛み合う平

歯車が設けられるとともに,その中心部が中空に構成された入力軸を備えた偏心差

動減速機と,前記入力軸の回転軸線に直交する出力軸を有するとともに,該入力軸

に傘歯車を介して出力軸から回転を伝達し,前記入力軸より半径方向外側に配置さ

れた駆動モータとを備え,前記駆動モータ,入力軸及びカム軸に固定された平歯車

を前記外歯歯車の軸方向片側に配置したものがある(【0003】)。

(3) 本件補正発明は,製作費を安価とすることができる回転駆動装置を提供す

ることを目的とする(【0004】)。

2 引用発明について

(1) 引用例の記載

引用例(甲1)には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 引用発明は,偏心差動減速機に関する。

イ 引用発明は,内部に潤滑油から遮断された中空空間を形成することにより,

信号ケーブル等の配置を容易に,かつ,装置全体を簡単かつ小型化することができ

る偏心差動減速機を提供することを目的とする。

このような目的は,前述した偏心差動減速機において,両端部が一対のフランジ




部の中央部に形成した貫通孔にそれぞれ密封状態で挿入され,中央部が差動外歯車

の中央部に形成した貫通孔に遊嵌された中空の遮断スリーブを設けることにより達

成することができる。

ウ この内側ケーシング内には駆動モータが収納され,この駆動モータは内側ケ

ーシングの内周に固定されたステータと,ステータ内に挿入され回転するロータと

を有する。ロータに挿入されて固定された中空軸は,後述する減速機の入力軸及び

駆動モータの出力軸の双方の機能を果たす。

エ フランジには軸受を介して複数本,ここでは3本のクランク軸の両端部がそ

れぞれ回転可能に支持され,これらのクランク軸は中央部に2個の偏心部としての

偏心カムを有する。そして,これらのクランク軸は前記支柱と周方向に交互に配置

されている。前記フランジ部間には2個の差動外歯車が配置され,各差動外歯車に

は支柱がそれぞれ遊嵌される遊嵌孔及びクランク軸の偏心カムがそれぞれ挿入され

る挿入孔が形成されている。さらに,前述のフランジ部及び差動外歯車の各中央部

にはそれぞれ貫通孔が形成されている。そして,前記挿入孔と偏心カムとの間には

ニードルベアリングが介装されており,また,前記差動外歯車の外周には多数の外

歯が形成されている。前記差動外歯車の外側を囲むように配置された円筒体と外側

ケーシングとの間にはクロスローラベアリングが介装されている。円筒体内にはリ

ング状をした内歯車が取付けられ,この内歯車の内周には差動外歯車の外歯に噛み

合う内歯が多数のピンにより形成され,これらの内歯の歯数は前記外歯の歯数より

若干,この実施例では1だけ多い。

オ 減速機の軸線上に配置された中空の遮断スリーブの一端部はフランジ部の前

記貫通孔に挿入されて取付けられ,その他端部はフランジ部の前記貫通孔に挿入さ

れて取付けられ,さらに,その中央部は差動外歯車の貫通孔に遊嵌されている。

カ 遮断スリーブとフランジ部間にはOリングがそれぞれ介装され,これにより,

遮断スリーブとフランジ部との間は密封状態となる。この結果,この遮断スリーブ

内には,潤滑油から遮断された中空空間が形成される。




キ 前記中空軸の他端部には中空である回転スリーブの基端部(一端部)が挿入

されて圧入により固定され,また,この回転スリーブの先端部(他端部)は中空軸

に近接する側のフランジ部の前記貫通孔に挿入されている。

ク この回転スリーブの先端部とフランジ部との間には,回転スリーブの回転時

にもこれらの間を密封状態に維持するシール部材が介装されている。この結果,中

空軸及び回転スリーブの内部にも減速機内を充満する潤滑油から遮断された中空空

間が形成されている。ここで,これらの中空空間及びテーブル内の中空空間は互い

に連続しており,この結果,割出し装置の回転軸線上に潤滑油から遮断された直線

状に延びる貫通した連続空間が形成される。そして,この連続空間は,例えばテー

ブル上に設置されたクランプ装置等に制御信号を送る信号ケーブル,油,空圧を給

排する油,空圧用配管,駆動力を伝達する伝達軸等を配置する空間として使用する。

ケ 前記各クランク軸の一端にはそれぞれ外歯車が固定され,これらの外歯車に

は前記回転スリーブの外周に形成された外歯車が噛み合っている。この結果,駆動

モータの回転力は中空軸,回転スリーブ,外歯車を介してクランク軸に付与され,

これらクランク軸を同期して回転させる。

コ 駆動モータが作動してその回転が中空軸,回転スリーブ,外歯車を通じて各

クランク軸に伝達され,該クランク軸が同期して回転しているとする。ここで,こ

れらクランク軸の偏心カムが差動外歯車の挿入孔に挿入されているため,差動外歯

車はクランク軸の回転により偏心回転(公転)する。このとき,差動外歯車の外歯

は内歯車の内歯に噛み合っているが,この内歯車の内歯の歯数は差動外歯車の外歯

の歯数より若干多いため,内歯車には差動外歯車の偏心回転が高比で減速されて伝

達される。

サ 引用発明は,割出し装置以外に,例えばロボットの関節構造,刃物台の駆動

装置に適用することもできる。

シ 第1図には,減速機と駆動モータとを有する回転駆動装置が図示されている。

(2) 引用例に記載された発明




上記(1)認定の記載事項及び図示内容から,引用例には,前記第2の3(2)のとお

り,本件審決が認定したとおりの引用発明が記載されているものと認められる。

3 取消事由1(相違点の認定の誤り)について

(1) 原告は,本件審決が本件相違点を看過したと主張する。

しかしながら,本件補正発明の「出力軸」は引用発明の「中空軸」に相当し,本

件補正発明の「内歯歯車」は引用発明の「内歯車」に相当し,本件補正発明の「ピ

ニオン」は引用発明の「差動外歯車」に相当するから,本件補正発明の「駆動モー

タの出力軸の回転軸線を,内歯歯車とピニオンの噛み合い部より半径方向内側に配

置した」との構成は,引用発明の「駆動モータの中空軸の回転軸線を,前記内歯車

と前記差動外歯車との噛み合い部より半径方向内側に配置した」との構成と一致す

る。よって,これを相違点としなかったことは,誤りではない。

(2) 原告は,本件相違点についての判断も誤っていると主張する。

しかしながら,原告が主張する本件相違点は,相違点とはいえないことは,上記

のとおりである。なお,「駆動モータを回転体より半径方向外側に配置」し,かつ

「駆動モータの出力軸の回転軸線を,内歯歯車とピニオンの噛み合い部より半径方

向内側に配置」する本件補正発明の構成のうち,「駆動モータを回転体より半径方

向外側に配置」するという構成については,相違点1として認定されており,その

際に「駆動モータの出力軸の回転軸線を,内歯歯車とピニオンの噛み合い部より半

径方向内側に配置」する構成とすることは,後記4のとおり,当業者が適宜に想到

し得ることである。

また,それにより奏する作用・効果も格別なものとはいえない。すなわち,駆動

モータを配置する位置を回転駆動装置の軸中心に近づければ近づけるほど,径方向

に小型化できるとともに,回転駆動装置の重心が軸中心に近づくことから振動しに

くくなることは,減速機の構造の違いによって変わるものではなく,当業者にとっ

技術常識であって,それ自体予測できないような作用・効果ではない。

(3) 小括




以上のとおり,取消事由1には理由がない。

4 取消事由2(相違点1に係る認定判断の誤り)について

(1) 相違点1について

ア 相違点1は,本件補正発明は,駆動モータが「回転体より半径方向外側に配

置され」ているのに対して,引用発明は,駆動モータが回転スリーブ(回転体)と

同軸上に配置されている点である。

イ 周知例1(甲2)の図2には,減速機において駆動モータが中心部から外れ

た位置に配置されていることが図示されており,周知例2(甲3)の図2には,調

和減速機においてモータが中心部から外れた位置に配置されていることが図示され

ており,周知例3(甲4)の図1には,中空減速機において駆動モータMRが中心

部から外れた位置に配置されていることが図示されており,周知例4(甲5)の図

1には,減速機においてモータからの力が伝達される入力軸が中心部から外れた位

置に配置されていることが図示されている。このように,減速機と駆動モータとを

備えた回転駆動装置において,駆動モータを減速機の中心部から外れた位置に配置

することは,従来周知の技術である。

ウ 一般に,駆動モータをどこに配置するかは,スペース等を考慮して当業者が

適宜決定し得る設計的事項であるところ,引用発明において,上記周知技術を考慮

しつつ設計変更を行って駆動モータを減速機の中心部から外れるように回転スリー

ブ(回転体)の外側に配置することは,当業者が容易に設計し得ることである。ま

た,その際に,駆動モータの中空軸の回転軸線を,内歯車と差動外歯車との噛み合

い部より半径方向内側に配置することも,当業者が適宜に想到し得ることである。

(2) 原告の主張について

ア 原告は,周知例1ないし4に記載された減速機は第一世代の減速機であるの

に対して,引用発明は第二世代の減速機という構造上の違いがあり,駆動モータの

役割も異なっているから,上記周知技術を引用発明に適用する動機付けが存在しな

いと主張する。




しかしながら,周知例1ないし4は,減速機と駆動モータとを備えた回転駆動装

置において,駆動モータを減速機の中心部から外れた位置に配置するという周知技

術を示しているものであり,本件審決も,駆動モータの役割や構造を示したものと

して摘示したものではない。そして,引用発明の駆動モータと上記周知技術におけ

る駆動モータとは,それぞれの減速機(例えばクランクシャフト及びクランク部)

を駆動する動力源である点で共通している。

また,乙1には,第二世代の減速機について,駆動モータから減速機の動力の伝

達に本件補正発明のように入力軸(回転体)を介して行っている技術が示されてい

る。このように,上記周知技術は,減速機の世代に関係しないものであるし,当業

者であれば,減速機の世代にかかわらず従来の技術を必要に応じて参照するもので

あり,そのことを阻害する事情もない。そして,技術の改良に当たって当該技術分

野における周知の事項の適用を試みることは,当業者が通常期待される創作活動の

範囲であるから,引用発明において上記周知技術を適用又は考慮することは,当業

者が容易に想到し得ることである。

イ 原告は,相違点1の構成には,相違点2の構成をとることにより新たに発生

する技術課題を解決するという作用効果も存在するから,引用発明に相違点1の構

成を加えることは,当業者が容易に想到できたものではない旨を主張する。

しかしながら,引用発明においても,回転スリーブの外歯車の歯数(直径)がク

ランク軸端部の外歯車の歯数(直径)より小さい場合には,減速されることになり,

また,駆動モータの回転を減速機により減速することを目的としているのであるか

ら,その途中に配置される歯車の噛み合いにおいても減速させることが自然である。

また,相違点2のように回転体が筒体を囲むように構成される場合においても,筒

体の口径を小さくすれば,回転体の口径もおのずと小さくなるのであるから,必ず

しも増速することはなく,駆動モータが巨大化することもない。

よって,相違点1の構成には,相違点2の構成をとることにより新たに発生する

技術課題を解決するという作用効果も存在する旨の原告の主張は,その前提に誤り




がある。

ウ 原告は,引用発明に,周知例として記載された減速機の相違点1の構造を付

加することについては阻害要因があると主張する。

しかしながら,引用発明においては,駆動モータは,駆動モータの中空軸他端部

に減速機の回転スリーブの基端部が,クランク軸に装着された外歯車より外側の位

置で挿入されて固定されているものであって,減速機内部に組み込まれるものでは

なく,両者が干渉することはない(第1図)。そうすると,複数のクランク軸及び

偏心カムと干渉しないように駆動モータを配置することに,特に技術的困難性は認

められない。また,減速機の中心部から半径方向外側に駆動モータなどを配置する

ことに阻害要因はない。

さらに,減速機に比べて小型の駆動モータを使用すれば,駆動モータを減速機の

中心部から多少外れた位置に配置しても,回転駆動装置の大型化や振動が発生する

ことはない。また,駆動モータから回転体に対して回転力(動力)を伝える歯車に

比べて,回転体側の外歯車を大きくすれば減速するから,引用発明に相違点1に係

る本件補正発明の構成を採用することは技術的に可能であって,阻害要因は認めら

れない。

なお,装置を小型化することは一般的な課題であり,そのために装置を構成する

部材やその配置を工夫することは,当業者の通常の創作活動であって,減速機と駆

動モータとを備えた回転駆動装置において,駆動モータや歯車部材の選定やその配

置を工夫して小型化しようとすることも,当業者が通常行う程度の創意工夫である。

また,減速機において,減速比や減速効率を高めることは,当業者であれば当然に

考慮することである。よって,引用発明に周知技術を適用する際に,上記事情を考

慮して適宜変更することも,当業者であれば容易に想到し得ることである。

(3) 小括

以上のとおり,取消事由2にも理由がない。

5 取消事由3(相違点2に係る認定判断の誤り)について




(1) 相違点2について

ア 相違点2は,本件補正発明は,「回転体が筒体を外側から囲むよう配置さ

れ」ているのに対して,引用発明は,回転スリーブ(回転体)が遮断スリーブ(筒

体)と軸方向に並べて配置されている点である。

イ 引用例には,遮断スリーブと回転スリーブによって形成される中空空間に信

号ケーブル等を配置することが記載されている。中空空間を構成する遮断スリーブ

は静止した部材であるが,もう1つの中空空間を構成する回転スリーブは高速回転

する部材であるから,中空空間に配置した信号ケーブル等が回転スリーブの内周面

に接触すると,信号ケーブル等が損傷するおそれがあることは明らかである。そう

すると,引用発明は,回転部材である回転スリーブに信号ケーブル等が接触すると

いう課題を有しているということができる。

ウ ところで,周知例2(甲3)には,回転部材である「ウェーブジェネレータ

4」が筒状の静止部材である「サーキュラースプライン及び継手」を外側から囲む

ように配置されているとともに,「サーキュラースプライン及び継手」の空間に

「ケーブル」が配設されていることが記載されており,また,周知例3(甲4)に

は,筒状の回転部材である「入力要素」が筒状の静止部材である「中空円筒軸」を

外側から囲むように配置されているとともに,配線ケーブルが中空円筒の中心空洞

域に配置されていることが記載されている。このように,減速機と駆動モータとを

備えた回転駆動装置において,駆動モータからの回転を減速機へ伝達する回転部材

が筒状の静止部材を外側から囲むように配置し,筒状の静止部材の中にケーブル等

を配置するように構成することは,従来周知の技術ということができる。そして,

上記周知技術においては,ケーブル等の損傷を避けることができるという作用効果

を奏することは明らかである。

エ そうすると,引用発明において,回転部材である回転スリーブに信号ケーブ

ル等が接触するという課題を考慮して,筒状の静止部材である遮断スリーブと中心

部が中空に構成された回転部材である回転スリーブに上記周知技術を適用し,回転




スリーブが遮断スリーブを外側から囲むよう配置することは,当業者が容易に想到

し得ることである。

(2) 原告の主張について

ア 原告は,引用発明と周知技術の技術課題・作用効果の違いがあり,また,本

件発明は第二世代の減速機であるのに対して周知技術の減速機は第一世代のもので

あるという違いがあるから,引用発明に相違点2の構成を加えることは,当業者が

容易に想到できたものではない旨を主張する。

しかしながら,周知例2及び3(甲3,4)には,減速機と駆動モータとを備え

た回転駆動装置において,駆動モータからの回転を減速機へ伝達する回転部材が筒

状の静止部材を外側から囲むように配置し,筒状の静止部材の中にケーブル等を配

置するように構成するという周知技術が示されている。そして,引用発明において,

上記周知技術の回転部材に相当する回転スリーブ及び静止部材に相当する遮断スリ

ーブは,それぞれ減速機の中心近傍に配置され,回転スリーブは駆動モータと減速

機との間に配置されて駆動モータからの回転を減速機に伝達しているものである。

これに対し,周知例2及び3の回転部材及び静止部材も,減速機の中心近傍に配置

され,回転部材は駆動モータと減速機との間に配置されて駆動モータからの回転を

減速機に伝達しているものである。よって,両者の回転駆動装置における回転部材

(回転スリーブ)及び静止部材(遮断スリーブ)の配置に差異はない。

しかも,引用発明において,上記周知技術の回転部材に相当する回転スリーブの

内部は,信号ケーブル等を配置するための空間であって,減速機としての本来の機

能とは直接関係ないものであり,当該空間に上記周知技術である筒状の静止部材を

配置することに関して,減速機の構造は何ら影響しない。また,引用発明の「回転

スリーブ」と第一世代の減速機を含む周知例2及び3の「回転部材」とは,ともに

駆動モータからの動力を減速機構へ伝達するための入力軸として機能・作用するも

のである点で機能・作用が共通し,引用発明の「遮断スリーブ」と周知例2及び3

の「筒状の静止部材」とは,ともに内部に信号ケーブル等を通す中空空間を確保す




る筒体である点で機能・作用が共通するものである。さらに,当業者であれば,世

代にかかわらず,減速機の技術を必要に応じて参照するものであり,そのことを阻

害する事情もない。そして,技術の改良に当たって当該技術分野における周知の事

項の適用を試みることは,当業者が通常期待される創作活動の範囲であるから,引

用発明において上記周知技術を適用又は考慮することは,当業者が容易に想到し得

るものである。

イ 原告は,引用発明に周知技術の構造を加えることについては,複数の阻害要

因があると主張する。

しかしながら,引用例には,前記2(1)カ,クのとおりの記載があり,また,第

1図には,遮断スリーブの一端部と回転スリーブの先端部(他端部)とは離間(分

断)したものが開示されている。よって,引用発明の回転スリーブと遮断スリーブ

とは,それぞれが独立して潤滑油を遮断し,信号ケーブル等を配置するものであっ

て,回転スリーブと遮断スリーブとが連続(連接)して配置されることに,技術的

な意義はない。

また,引用例には,前記2(1)イのとおりの記載があり,それによれば,引用発

明は,内部に潤滑油から遮断された中空空間を形成して,信号ケーブル等を配置す

ることが本質的な意義の一つということができる。しかも,引用発明は,回転部材

である回転スリーブに信号ケーブル等が接触するという課題を有しているものであ

る。

そして,周知例2及び3記載の周知技術は,筒状の回転体の内部に配置した配線

・配管が,回転体に接触すると断線,摩滅等の不都合が起こるとの課題を解決し得

る技術である。また,当業者であれば,当然,第一世代及び第二世代の減速機の技

術を必要に応じて参照するものであり,逆にそのことを阻害する事情もない。よっ

て,引用発明において,上記の課題を解決するために,上記周知技術を適用し,回

転スリーブが遮断スリーブを外側から囲むよう配置して,相違点2に係る本件補正

発明のとおり構成することは,当業者であれば容易に想到できたものと解される。




さらに,引用発明において,回転体が筒体を囲むように構成される場合でも,筒

体の口径を小さくすれば,回転体の口径もおのずと小さくなり,必ずしも駆動モー

タが巨大化することはなく,また,回転体が筒体を囲むように構成される場合,回

転スリーブの径を変えずに,遮断スリーブを小径化して回転スリーブの内部に延長

すれば,回転スリーブによる「増速の増大」も生じないから,引用発明に相違点2

に係る本件補正発明の構成を採用することに阻害要因はない。

なお,装置を小型化することは一般的な課題であり,そのために装置を構成する

部材やその配置を工夫することは,当業者の通常の創作活動であって,減速機と駆

動モータとを備えた回転駆動装置において,駆動モータや歯車部材の選定やその配

置を工夫し,筒体の口径を小さくして小型化しようとすることも,当業者が通常行

う程度の創意工夫である。また,減速機において,減速比や減速効率を高めること

は,当業者であれば当然に考慮することである。よって,引用発明に周知技術を適

用する際に,上記事情を考慮して適宜変更することも,当業者であれば容易に想到

し得ることである。

ウ 原告は,各相違点の相関関係を無視してこれを分断して判断したため,本件

審決の認定判断に誤りがある旨を主張する。

しかし,相違点1に係る本件補正発明の「駆動モータが回転体より半径方向外側

に配置されている」との構成は,駆動モータの配置に関する技術事項であり,相違

点2に係る本件補正発明の「回転体が筒体を外側から囲むよう配置されている」と

の構成は,回転体あるいは筒体の配置に関する技術事項であるから,両者は技術的

に直接的な関連性はなく,それぞれが独立した構成であって,本件審決においてこ

れらを個別に判断したことに誤りがあるとはいえない。

(3) 小括

以上のとおり,取消事由3にも理由がない。

6 結論

以上の次第であるから,本件補正発明の容易想到性を認めた本件審決の判断に誤




りはなく,原告の請求は棄却されるべきものである。

知的財産高等裁判所第4部



裁判長裁判官 滝 澤 孝 臣




裁判官 部 眞 規 子




裁判官 齋 藤 巌