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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成20ワ14681補償金請求事件 判例 特許
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平成21ワ9793特許を受ける権利確認請求事件 判例 特許
平成20ワ10657職務発明に対する対価支払請求事件 判例 特許
平成18ワ27879補償金請求事件 判例 特許
関連ワード 冒認出願(冒認) /  特許を受ける権利 /  承継 /  発明者 /  職務発明 /  業務範囲 /  相当の対価(相当な対価) /  協議 /  産業上利用(29条1項柱書) /  創作性(創作) /  新規性 /  共同発明 /  インターネット /  新規性喪失(新規性の喪失) /  新規性喪失の例外(喪失の例外) /  29条の2(拡大された先願の地位) /  同一の発明 /  共同出願 /  名義変更 /  共有 /  着想 /  援用権(援用) /  実施 /  実施料 /  共同発明者 /  設定登録 /  移転登録 /  対価 /  拒絶査定 /  請求の範囲 /  変更 / 
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事件 平成 21年 (ワ) 297号 特許権移転登録手続等請求事件
原告株 式会社デーロス
訴訟代理人弁護士藤原誠 山川良知 安田嘉太郎 野口晋司 島田荘子 伊藤知佐 大塚千代 谷中克行 長谷川徹也 牧尚人 増山友彦
被告株 式会社ビルドランド
訴訟代理人弁護士小堀秀行 二木克明
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2010/11/18
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求1被告は,原告に対し,別紙特許目録記載1ないし3の各特許権について,譲渡を原因とする移転登録手続をせよ。
2原告が,別紙特許申請目録記載1ないし5の各発明について,特許を受ける権利を有することを確認する。
第2事案の概要本件は,原告が,被告を特許権者として登録されている別紙特許目録記載1ないし3の各特許権(以下,順に「本件特許権1」ないし「本件特許権3」といい,併せて「本件各特許権」という )に係る発明及び被告を出願人とする 。
別紙特許申請目録記載1ないし5の各特許出願(以下,順に「本件特許出願1」ないし「本件特許出願5」といい,併せて「本件各特許出願」という )。
に係る発明について,これらの発明につき特許を受けるべき真の権利者は原告であるとして,被告に対し,本件各特許権について移転登録手続を求め,出願中の本件各特許出願に係る発明については原告が特許を受ける権利を有することの確認を求めた事案である。
1判断の基礎となる事実(末尾に証拠の掲記のない事実は争いがない )。
( )当事者等1ア原告は,昭和36年11月2日に設立された土木建築工事業等を目的とするP1が代表取締役を務めている株式会社であり,平成16年6月1日に後記イの株式会社デーロス(以下「旧デーロス」という )を吸収合併。
し,その商号を田中建設株式会社から株式会社デーロスに変更した。
(甲1)イ旧デーロスは,P2が平成8年ころに設立した補修工事を主な業務内容とする株式会社であり,原告に吸収合併された当時,P2が代表取締役を務め,またP2とその妻P3(以下,両者を併せて「P2夫妻」という )が全株式を保有していた。 。
ウ被告は,P2が平成7年5月15日に設立した土木工事・建築工事及びその設計・施工等を目的とする株式会社である。(甲3)エP2は,被告については平成11年12月以降現在に至るまで代表取締役を務めており,また旧デーロスについては,設立時から原告に吸収合併された平成16年6月1日まで代表取締役を務めており,旧デーロスが原告に吸収合併された以降は平成19年12月23日までの間,P1とともに原告の代表取締役も務めていた。 (乙35)オP4は,平成16年6月21日に原告に入社し,同年11月25日から原告の取締役を務めている者である。 (甲21)カP5は,平成16年4月ころ,旧デーロスに入社した者であり,原告が旧デーロスを吸収合併したことにより原告の従業員となり,原告の企画開発部に所属するとともに北陸支店の支店長も務めていたが,P2が原告を退任したころに原告を退職し,現在はP2が設立した株式会社デーロス・ジャパン(設立当初の商号は株式会社サンライト。以下,商号の変更前後を問わず「デーロス・ジャパン」という )の専務取締役を務めている者 。
である。 (乙31,35)キP6は,平成15年9月に旧デーロスに入社し,原告が旧デーロスを吸収合併したことにより原告の従業員となり,原告の材料研究室に所属してセメントの性能試験などの業務を担当し,P2が原告を退任したころに原告を退職し,現在はデーロス・ジャパンの企画開発部材料研究室室長を務めている者である。 (乙32,証人P6)( )原告と旧デーロスの合併2原告は,平成16年6月1日,P2夫妻が保有していた旧デーロスの株式を合計1億円でP2夫妻から買い取った上,旧デーロスを吸収合併した(ただし,現在までに7000万円しか支払われていない。。)( )本件各特許権の設定登録3アP2は,平成16年12月3日,発明者をP2として本件特許権1に係る特許出願をし,平成19年11月21日に出願人名義をP2から被告に変更する出願人名義変更届を提出し,同年12月28日には被告を特許権者として本件特許権1の設定登録がなされた。
イ被告は,別紙特許目録記載のとおり,発明者をP2として本件特許権2及び本件特許権3に係る特許出願を行い,被告を特許権者とする本件特許権2,3の設定登録がなされた。
( )被告の特許出願4被告は,別紙特許申請目録記載のとおり,発明者をいずれもP2として本件各特許出願を行った(現在審査中である 。)( )本件各発明の内容5本件各特許権に係る特許請求の範囲の記載及び本件各特許出願に係る特許請求の範囲の記載は,別紙特許請求の範囲目録に記載のとおりである(以下,本件特許権1ないし本件特許権3に係る発明を順に「本件発明1」ないし「本件発明3」といい,本件特許出願1ないし本件特許出願5に係る発明を順に「本件発明4」ないし「本件発明8」という。また,本件発明1ないし本件発明8を併せて「本件各発明」ともいう。。)( )本件発明1及び本件発明2の発明者6本件発明1及び本件発明2の発明者は,いずれもP2である。
2争点( )本件発明3ないし本件発明8の発明者は誰か(争点1)1( )本件各発明は原告あるいは旧デーロスの職務発明であるか(争点2) 2( )原告は本件各発明について特許を受ける権利承継したか(争点3) 3( )原告は本件各特許権の移転登録手続を求めることができるか(争点4) 4第3争点に関する当事者の主張1争点1(本件発明3ないし本件発明8の発明者)について【原告の主張】( )本件発明3の発明者について1ア平成17年ころ完成した本件発明3において重要なのは,靱性具備繊維入りモルタルをコンクリート製用水路の補修材として利用するという着想と,当該着想に基づいていかなる種類・長さ・太さの繊維をいかなる割合で混入すれば補修材として所要の強度等の性質を具備するかという実験である。
イP4は,原告に入社する前から,農業水利施設の内面補修工事の工法開発等に携わっており,無機系材料を水路の内面補修材として使用する工法の開発を指導していたところ,無機系材料には施工後直ちにひび割れが発生し,所定水量を流すことができないという問題点があることを認識していた。そして,P4は,原告に入社した後,P2から,ひび割れ分散性,曲げ性能に優れたポリマー材料を開発していると聞き,性能評価に値する材料だと考え,靱性具備繊維入りモルタルをコンクリート製用水路の補修材として利用するという着想に至った。
ウ原告では,本件発明3を利用した靱性モルタルライニング工法を用いているが,同工法に使用する材料,とくにモルタルに混入する繊維量については,原告のメンテナンス事業部で研究しており,P6がP4の指示のもと材料の調整を行って本件発明に至ったのであるから,いかなる種類・長さ・太さの繊維をいかなる割合で混入すれば補修材として所要の強度等の性質を具備するかという実験に創作的に関与した者はP6である。このことは,P6が所属していた原告の材料研究室から「新靱性モルタル開発および評価「農業水路補修用靱性モルタル試験「農業用水路ライニン 」, 」,グ工法に関する研究」などの報告がされていることから明らかといえる。
エしたがって,本件発明3の発明者はP4及びP6である。
( )本件発明4の発明者について2平成17年ころ完成した本件発明4で重要なのは,コンクリート床版の補修材として繊維入りモルタルを利用するという着想と,当該着想に基づいていかなる種類・長さ・太さの繊維をいかなる割合で混入すれば補修材として所要の強度等の性質を具備するかという実験である。
そして,上記着想創作的に関与した者はP2であるが,実験について創作的に関与した者は原告の当時の従業員のP6である。原告では本件発明4を利用した工法をサイバーメッシュ工法と呼んでいるところ,P6がサイバーメッシュ工法のはく落防止耐久性試験についての報告をしていることからも,上記実験について創作的に関与していることは明らかである。
したがって,本件発明4の発明者はP2とP6である。
( )本件発明5の発明者について3本件特許出願2がされたころ,オリエンタル建設から原告の従業員であったP5宛てに落橋防止構造に関係する試験報告書等の資料(甲13)が送付されていること,P5が,本件発明5で使用されるロープを製造して実験を行っている東京製綱繊維ロープを訪れていることからすれば,本件発明5はP5が平成17年から平成18年ころに完成した発明であり,したがって発明者はP5である。
( )本件発明6の発明者について4平成17年ころから平成18年ころに完成した本件発明6で重要なのは,ポリマーセメントモルタルに配合する補強用の合成樹脂性短繊維を多数本並行に引き揃えた状態に集束するとともに,該各並行に引き揃えた合成樹脂製短繊維間を水溶性接着剤で接着して並行集束短繊維片を形成し,上記並行集束短繊維片の集合材中に減水剤を添加し袋内に封入するという着想及び減水剤と配合比合成樹脂製短繊維をいかなる比率で混入すれば繊維が最適に分散されるかという実験である。
P6は,靱性具備繊維入りモルタルの開発をしており,その一貫として,本件発明6に至る上記実験に創作的に関与しているから,本件発明6の発明者はP6である。
( )本件発明7及び本件発明8の各発明者について5P6が,各種補修工法について,いかなる種類・長さ・太さの繊維をいかなる割合で混入すれば補修材として所要の強度等の性質を具備するかという実験を行っていること,その中で,P6が従来のミキサーでは十分な攪拌効果が得られないので新しいミキサーが必要であるという発言をしていたことなどからすれば,本件発明7及び本件発明8はP6が平成17年ころに完成した発明であり,したがって発明者はP6である。
【被告の主張】本件発明3ないし本件発明8の各発明者は,特許公報又は公開特許公報(乙3〜9)に記載されているとおり,P2である。
原告が発明者であると主張するP4,P6及びP5は,いずれも自らが発明者であることを否定している。
2争点2(本件各発明は,原告あるいは旧デーロスの職務発明であるか)について【原告の主張】( )本件各発明が原告あるいは旧デーロスの職務発明に該当する。
1ア本件各発明が全体として原告あるいは旧デーロスの職務発明に該当することを推認させるものとして,次の事実を指摘することができる。
(ア)旧デーロスに関する事実a旧デーロスは,平成11年から平成15年12月(原告に吸収合併される)まで,補修工法及びそれに関連する特許出願をしていた。
b旧デーロスがした特許出願においては,発明者は「P2株式会社デーロス内」とされていた。
c旧デーロスの特許出願に要する経費は旧デーロスが負担していた。
dP2は,工法特許であることから,業務内容からして旧デーロス名義で出願するのがふさわしいと考えて,旧デーロスによる特許出願をしていた。
(イ)原告に関する事実a原告は,構造物の延命・補修工事を主な業務内容としている。
b原告(旧デーロスとの合併前)は,公共工事が目減りしてく中,生き残りのための事業を模索した結果,コンクリート補修事業を行うこととし,コンクリート補修事業を行っていた旧デーロスを買収した。
c原告の代表取締役であるP1は,新たな技術開発をしなければ市場で生き抜いていくことはできないと考え,市場に新しい技術を投入し続けることが必要であると考えていた。
イ本件各発明が原告あるいは旧デーロスの職務発明に該当することを推認させる本件各発明に関連する個別の事実として,次の事実を指摘することができる。
(ア)本件発明1についてa本件発明1に係る特許出願の費用等を支出したのは原告である(甲9 。)bP2が原告の代表取締役であった平成18年1月当時,本件発明1を使用した工法を原告の工法として紹介するパンフレット(甲11)が作成されており,P2もそのことを知っていた。
cP2が本件発明1の基礎になったと説明する乙24の1の特許公報に記載の発明(以下「乙24の1発明」という )について特許権を。
取得したのは,P2ではなく旧デーロスである。
d被告あるいはP2が本件発明1の基礎になった発明であると説明する乙10の公開特許公報に記載の発明(以下「乙10発明」という )についての特許出願をしたのは旧デーロスであり,その発明者
は「P2株式会社デーロス内」とされている。
eP2は,原告が本件発明1を使用して工事をしていることを認識していたが,P2及び被告は,原告に本件発明1の実施料を請求していない。
(イ)本件発明2についてa本件発明2は海底や河川底等公共工事が行われる場所における基礎杭に関する工法の発明である。
b鋼製基礎杭の耐食性改善は補修工法の性能に重大な影響を及ぼす。
c原告は公共工事の受注を事業の柱とする建設会社である。
(ウ)本件発明3についてa原告は,本件発明3を用いた工法で公共事業を受注すべく,受注に際して必要となる当該工法に使用する材料の性能試験(甲10)や試験施工(甲8の11等)を行っており,本件発明3を用いた工法開発に関する様々な会議をしていた(甲8の6等 。)b原告は,本件発明3を用いた工法を靱性モルタルライニング工法と呼んで実施していた。
c本件発明3の開発に必要な費用は,すべて原告が負担していた。
(エ)本件発明4についてa原告は,サイバーメッシュ工法と呼んでいる本件発明4を用いた工法につき,その開発のため会議を開いたり(甲8の1等 ,公的機関)に試験を依頼したりしていた(甲12の1等 。)bサイバーメッシュ工法の施工手順書(甲12の4)やパンフレット(甲12の5)が原告によって作成されている。
(オ)本件発明5についてa本件発明5が完成したのは平成17年から同18年ころであるところ,その当時,原告では,大手建設会社の独占状態にある橋の補修に携わることができないかが協議されていた。
b本件発明5について特許出願がされたころ,オリエンタル建設から,原告従業員であるP5宛に落橋防止構造に関係する試験報告書等の資料(甲13)が送付されている。
(カ)本件発明6ないし本件発明8について本件発明6が原告の従業員P6による原告の職務発明であることは,争点1の【原告の主張】( ),( )で主張した事実から明らかである。
45( )以上によれば,本件各発明が原告あるいは旧デーロスの職務発明に該当す 2ることは明らかである。
また仮に,被告が主張するように本件各発明の発明者がいずれもP2であったとしても,上記で指摘した点からすれば,本件各発明はいずれも原告あるいは旧デーロスの職務発明に該当する。
【被告の主張】( )本件発明2,本件発明5及び本件発明8は,その発明内容からして,原告1の業務範囲に属しておらず,かつ,発明当時のP2の職務に属するものでもないから,原告の職務発明になることはあり得ない。
本件発明5は平成6年以前に,本件発明1,本件発明3,本件発明4,本件発明6,本件発明7及び本件発明8は平成12年ころに,本件発明2は平成14年ころにそれぞれP2が発明したものであり,発明時期からしても,本件各発明が原告の職務発明でないことは明らかである。
そして,本件各発明についての特許出願に係る費用は,いずれも被告が負担している。
( )したがって,本件各発明は原告における職務発明ではない。
23争点3(原告は本件各発明について特許を受ける権利承継したか)について【原告の主張】( )P2との間の合意-本件発明1,2及び4に関して-1ア旧デーロスとP2との合意旧デーロスとP2との間では,P2の職務発明特許を受ける権利については,旧デーロスに帰属させる旨の合意があった。このことは,以下の各事実から明らかである。
(ア)旧デーロスは,平成11年から平成15年12月(原告に吸収合併される約半年前)まで,補修工法及びそれに関連する特許出願をしている。
(イ)P2は,工法特許であることから,業務内容からして旧デーロス名義で出願するのがふさわしいと考えて,旧デーロスによる特許出願をしていた。
イ原告とP2との合意原告とP2との間では,P2の職務発明特許を受ける権利については,原告に帰属させる旨の合意があった。このことは,以下の各事実から明らかである。
(ア)原告と旧デーロスの合併に際して,新日本アーンスアンドヤング税理士法人(以下「税理士法人」という )は,株価総額を約7000万 。
円と算定したが,これは旧デーロス名義の特許権が存在することを前提とした価格である。
(イ)原告は,旧デーロスを吸収合併する際,1億円で旧デーロスの株式を買い取っているが,原告の代表取締役であるP1は,P2に対し,1億円という買収額について,P2の技術と先見性を含めた金額である旨を説明していた。
ウしたがって,原告は,本件発明1,2及び4の特許を受ける権利をP2から承継している。
また仮に,本件発明3及び5ないし8の発明者がいずれもP2であるとしても,原告は,上記合意に基づき,これらの発明についての特許を受ける権利についてもP2から承継したことになる。
( )P4との間の合意-本件発明3に関して-2P4は,原告における職務発明につき特許を受ける権利は原告に帰属すると認識していたのであるから,原告とP4との間で,原告における職務発明につき,特許を受ける権利は原告に帰属させる旨の合意があったことは明らかである。
( )P6との間の合意-本件発明3,4,6,7及び8に関して-3P6の上司であったP4が,原告における職務発明についての特許を受ける権利は原告に帰属すると認識していたことからすれば,P6も同様の認識を有していたと推認される。したがって,P6と原告あるいは旧デーロスの間で,原告あるいは旧デーロスにおける職務発明についての特許を受ける権利は原告あるいは旧デーロスに帰属させる旨の合意があった。
( )P5との間の合意-本件発明5に関して-4P6と同様,P5と原告あるいは旧デーロスの間においても,職務発明についての特許を受ける権利は原告あるいは旧デーロスに帰属させる旨の合意があった。
【被告の主張】P2と原告あるいは旧デーロスとの間で,原告あるいは旧デーロスにおける職務発明につき,特許を受ける権利を原告あるいは旧デーロスに帰属させる旨の合意はされていない。かかる合意の存在を裏付ける証拠は一切ない。
またP4,P6及びP5についても,上記趣旨の合意がされた事実はない。
4争点4(原告が本件各特許権の移転登録手続を求めることができるか)について【原告の主張】( )上記3のとおり,原告は本件発明1ないし3について特許を受ける権利を1承継したのであるから,上記各発明について特許を受けるべき真の権利者である。しかしながら,これらの発明については,既に被告を特許権者とする特許登録がされているから,以下の事情に照らし,被告から原告に移転登録がされるべきである。
( )すなわち,原告の取締役であるP2が本件各発明について特許を受ける権利2を被告に譲渡する場合,当該譲渡行為は競業取引として原告の取締役会の承認を得ることが必要であるが(会社法356条1項1号 ,原告の取締役会は, )P2が本件各発明についての特許を受ける権利を被告に譲渡することを承認していない。そして,被告の代表取締役であるP2は,原告取締役会の承認がないことを認識している上,P2は被告の全株式を保有しており被告の利益はP2の利益と同視しうるから,本件においては,当該譲渡は無効というべきである。そうすると,原告が被告(被告と同視しうる被告の代表取締役であるP2)の行為によって,財産的利益である特許を受ける権利を失ったのに対し,被告は,法律上の原因なしに,本件各特許権を得ているということができる。
そして,P2は,職務発明についての特許を受ける権利を原告に譲渡した者であり,しかも,原告の代表取締役として原告を出願人として出願すべき立場にあった者であるから,かかる事情からすれば,本件各発明に関するP2又はP2が代表取締役を務める被告の特許出願行為は,原告による特許出願行為と同視すべきである。
( )したがって,本件各特許権は,原告が有していた特許を受ける権利と連続3性を有し,それが変形したものであると評価できるので,本件には,最高裁平成13年6月12日第三小法廷判決(以下「平成13年最高裁判決」という )の判例法理が適用されることから,本件各特許権の移転登録請求は認め 。
られるべきである。
仮に,本件に平成13年最高裁判決の判例法理が適用されないとしても,同判決はその射程外の事案における特許権の移転登録請求を否定したものではなく,上記に指摘した本件の事情からすれば,原告の本件各特許権の移転登録請求は認められるべきである。
【被告の主張】争う。
第4当裁判所の判断1争点3(原告は本件各発明について特許を受ける権利承継したか)について( )原告の被告に対する,本件各特許権についての移転登録請求及び本件各特1許出願に係る発明(本件発明4ないし8)についての特許を受ける権利を有することの確認請求は,いずれも原告が,本件各発明についての発明者から特許を受ける権利承継し,特許を受けるべき真の権利者であることを前提にするものであるが,以下に検討するとおり,原告の主張する発明者が本件各発明の発明者であると認められたとしても,原告がその特許を受ける権利承継した事実を認めることができないから,本件では,その前提となる争点1及び争点2で検討すべき事実関係如何にかかわらず,結論としてはすべて理由がないということになる。以下において,主張にかかる承継合意の存否について判断する。
( )P2と原告あるいは旧デーロスとの間の特許を受ける権利についての承継2合意についてア原告は,P2が発明者であることを認めている本件発明1,2,4について,その特許を受ける権利は原告に承継されている旨主張し,またP2が発明者であることを争っている発明についても,その発明者がP2であるのなら,その特許を受ける権利はすべてP2から原告に承継されていると予備的に主張しているところであるので,まずP2と原告との間に上記主張に係る合意があったのかを,まとめて検討する(なお,原告は,発明完成時の特許を受ける権利承継先が旧デーロスか原告であるかを明確に主張していないが,いずれにせよ,P2と旧デーロスあるいはP2と原告間のいずれの間にも特許を受ける権利承継合意は認められないから,以下においては,個別具体的な本件各発明を前提とすることなく,特許を受ける権利承継合意の存否について判断する。。)イ前記第2・1の事実並びに証拠(各項末尾に掲記のもの)及び弁論の全趣旨によれば,P2と旧デーロス,原告及び被告との関係等について,以下の事実が認められる。
(ア)P2による被告の設立等P2は,昭和54年から平成6年まで,構造物の補修を業とするショーボンド建設株式会社に勤めていたが,同社を退職した後の平成7年5月に建築用資材を販売することを主な業務とする被告を設立し,さらに平成8年ころに被告から材料を購入して建造物の補修工事を行うことを主な業務とする旧デーロスと土木工事や補修工事を主な業務とするデーロス・ジャパンを設立し,前記第2・1( )エのとおり,被告及び旧デ1ーロスの代表取締役を務めていた。(乙35,被告代表者)(イ)P2による旧デーロス代表者としての特許出願P2は,原告に吸収合併される前まで旧デーロスの代表取締役を務めていたが,旧デーロスの代表者として,原告に吸収合併される前,旧デーロスを出願人として別紙旧デーロス特許出願一覧表記載の各特許出願をしていた(ただし,同表記載?,?,?,?,?,?は他社との共同出願である。以下,同表記載の各特許出願を順に「旧デーロス特許出願?」〜「旧デーロス特許出願?」という。旧デーロス特許出願?, 。)?ないし?,?ないし?については,特許査定がされて特許権の設定登録がされているが,旧デーロス特許出願?,?及び?については,拒絶査定がされるなどしたため,特許権の設定登録はされていない。なお,旧デーロス特許出願?,?,?,?及び?に係る発明の発明者はP2であり,旧デーロス特許出願?及び?に係る発明についても,それらの共同発明者のうち人はP2である。(争いがない)1(ウ)原告による旧デーロスの吸収合併?原告の代表取締役であるP1は,公共工事が減少していく中で原告として事業を継続していく方策として,旧デーロスのコンクリート補修事業に着目し,平成14年ころから,旧デーロスに従業員を派遣するなどして旧デーロスの補修工事に関するノウハウの習得に努めるとともに,被告から補修工事用の材料(靱性モルタル等)を購入して補修工事の事業をしていた。
(甲32,甲33,証人P1,被告代表者)?原告は,上記?のような経緯において,旧デーロスに対して原告との合併を提案し,原告が被告を吸収合併するという提案もしたが,この提案は被告の受け入れるところではなかった。その後,原告と旧デーロスは協議を重ね,旧デーロスが原告に吸収合併されることを承諾したので,原告は,P2夫妻が保有する旧デーロスの発行済みの全200株の株式(P2:120株,P3:80株)を買い取ることとし,税理士法人に旧デーロスの株価の算定をさせたところ,税理士法人からは,平成16年1月30日時点の旧デーロスの1株当たりの株価は,類似業種比準価格が9万1300円(総額1826万円 ,時価純資)産価格が4万1835円(総額836万7000円)となる旨が報告された。
しかし,この算定額は,P2の希望するP2夫妻の株式の売却総額1億円と大きく乖離したものであったので,旧デーロスとの合併を強く望んでいた原告は,税理士法人に対し,P2が希望する金額に近づくように旧デーロスの株価を算定してもらいたい旨を伝えた。
(甲33,甲35の1)?そこで税理士法人は,株価の算定を見直し,原告に対し,平成16年2月20日時点の旧デーロスの株式評価額として下記の内容が記載された同月23日付けの株価算定書(甲30)を提出した。なお,算定書は,旧デーロスによる特許出願中の権利(甲35の2[旧デーロス名義の特許出願を一覧で表示したインターネットの検索画面をプリントアウトしたもの]に記載のもの)も算定の基礎として株式評価額を算出したものであるが,その算定結果に基づいて計算すると,旧デーロスの発行済み株式(200株)の総額は6600万6000円〜7225万3200円となる。(甲30,甲35の2)記株式評価額(1株当たり)収益還元価格593,494円〜655,967円純資産価格 41,835円類似業種比準価格 91,300円株式評価額330,030円〜361,266円収益:準資産:類似2:1:1?その後,原告は,P2夫妻と協議し,最終的には同人らが保有する旧デーロスの株式を総額1億円で買い取ることで合意した。
(甲33,証人P1,被告代表者)?原告は,旧デーロスとの間で,平成16年3月15日,合併契約書を取り交わし,P2夫妻から同人らの旧デーロスの株式全部を買い取り,同年6月1日,旧デーロスを吸収合併し,その結果,旧デーロスの財産は原告に全て承継され,また旧デーロスの従業員も全員原告に引き継がれた。
またP2は,原告が旧デーロスを吸収合併した当時,旧デーロスの代表取締役を務めていたが,旧デーロスが原告に吸収合併された平成16年6月1日からも,平成19年12月23日までの間,P1とともに原告の代表取締役を務めていた。
なお,原告は,P2夫妻に対し,現在までに旧デーロスの株式の買取価格1億円のうち7000万円しか支払っていない。
(甲2,甲33,乙36,証人P1,被告代表者)?原告は,旧デーロスを吸収合併する前から,被告から補修工事に用いる材料(靱性モルタル)を購入し,コンクリート擁壁の補修工事などを行っており,旧デーロスを吸収合併した後も,同様に被告から材料を購入して補修工事を続けていた。
(エ)P2による個人及び被告代表者としての特許出願P2は,原告代表取締役となった後も被告の代表取締役を務め,平成16年12月3日,発明者をP2とする本件特許権1に係る特許出願をP2個人としてなし,その後平成17年10月5日から平成19年2月8日までの間に,発明者をいずれもP2として自ら代表者を務める被告において本件特許権2,3に係る特許出願及び別紙特許申請目録記載のとおりの特許出願を行い,平成19年11月21日に本件特許権1に係る特許出願につき出願人名義をP2個人から被告に変更する旨の手続をした。
(オ)原告とP2との関係の解消?平成19年初め,原告の第47期(平成18年6月1日〜平成19年5月31日)のメンテナンス事業部の収益が大幅な赤字決算になることが判明した。
原告の取締役は,その原因が被告との取引にあると考え,P2に対し,その旨を伝えて協議をしばらく続けたが,互いに納得するような解決策が得られなかった。(甲22,乙35)?上記?の経緯でP1は,平成19年10月ころ,P2に対し,原告の代表取締役を解任する旨を伝え,P1とP2は,P2が原告の代表取締役を退任することを前提に,平成19年10月25日,原告が旧デーロスを吸収合併した当時の両者の合意内容を再度確認するために下記の内容が記載された「合併に伴う確認書 (乙38)を作成して 」取り交わした。 (乙38)記田中建設株式会社代表取締役社長P1(以下,甲という)と株式会社デーロス代表取締役社長P2(以下,乙という)は 「甲 ・ 乙」,」「合併当初,次の事項を確認し合意したものである。
1) 合併の主旨甲は,乙の技術力等を評価し,ウォータージェット工事を中心とした補修工事専門会社を構築することを目的とした。
2) 新会社の名称・役職について新会社の名称は,乙の所有する会社名「デーロス: 以下,新会(社という 」を継承すると共に,代表取締役社長を乙とし,人事, )運営を一任する。
なお,経営における資金繰りは,甲が全責任をもって行う。
3) 合併の方式合併の方式は,甲による乙の吸収合併とし,買収総金額金1億円とした。総額1億のうち7000万を当初に支払い,残金3000万は分割支払いとし,支払方法は別途協議する。
4)新会社の出資について乙は,新会社への出資金を金1000万とする。
5) 合併後の乙関連会社の取り扱い1.合併前の乙が所有する会社は以下のとおりである。
(株)デーロスウォータージェット・断面修復を主とした補修専門工事会社(有)ビルドランド(以下,丙という)補修用資機材の制作販売及び材料工法開発を主とした販売会社(株)サンライト(以下,丁という)デーロスの下請負を主とした施工工事会社2.合併後の丙は,新会社発展のため取り扱い商品等の供給を行うものとし,甲は,丙の継続的な事業展開に協力する。なお,乙が新会社社長を退任する場合は別途協議するものとする。
3.甲は,丁の社員等の一部を残し,合併後の新会社へ転籍を受け入れる。丁は,新会社発展のため協力する。
6) その他協議事項について本確認書に記載されていない事項,疑義についてはその都度,当事者が誠意をもって協議,解決を図るものとする。
?原告は,平成19年11月30日,被告との間で,特許番号第3578728号の特許権(旧デーロス特許出願?に基づいて設定登録された特許権 ,特許番号第3578729号の特許権(旧デーロス特 )許出願?に基づいて設定登録された特許権 ,特許番号386314 )2号の特許権(旧デーロス特許出願?に基づいて設定登録された特許権 ,特許番号3396669号の特許権(旧デーロス特許出願?に )基づいて設定登録された特許権 ,特許番号3455198号の特許 )権(旧デーロス特許出願?に基づいて設定登録された特許権 ,特許)番号3541023号の特許権(旧デーロス特許出願?に基づいて設定登録された特許権)及び特許番号3545383号の特許権(旧デーロス特許出願?に基づいて設定登録された特許権)の原告の持分を,いずれも被告に無償で譲渡する旨の合意をして,これにより吸収合併の結果,原告が特許権者あるいは特許権の持分権者となっていた特許権あるいは特許権の持分は被告のものとなった (乙22の1〜4)。
?P2は,平成19年12月24日,原告の取締役を退任した。
(甲32)ウP2と旧デーロス間における特許を受ける権利承継についての合意の有無について原告は,P2と旧デーロスとの間に職務発明についての特許を受ける権利承継させる旨の合意(将来にわたる一般的包括的な合意の趣旨と解される )があったと主張するが,その趣旨の合意の存在を示す直接的証拠 。
はない。
原告は,旧デーロスが,平成11年から平成15年12月(原告に吸収合併される約半年前)まで,P2の発明について,補修工法及びそれに関連する特許出願をしていることから,P2と旧デーロスとの間には,P2の職務発明についての特許を受ける権利を旧デーロスに承継させる合意があった旨の主張をする。
確かに,上記イ(イ)のとおり,旧デーロスが,単独あるいは他社と共同してコンクリート補修方法などの発明についてした別紙旧デーロス特許出願一覧表記載の特許出願のうち旧デーロス特許出願?,?,?,?及び?に係る発明の発明者はP2であり,旧デーロス特許出願?及び?に係る発明の共同発明者のうちの人はP2であることが認められるから,これら1の各発明についての特許を受ける権利をP2が旧デーロスに承継させた事実は認められる。その上,P2は,被告代表者尋問において,上記の出願経緯について,工法特許なので業務内容からして旧デーロス名義で出願するのがふさわしいと思ったからであると説明する供述をしている(速記録53頁)から,P2と旧デーロスとの間では,P2の職務発明についての特許を受ける権利を旧デーロスに帰属させる旨の合意があったことが推認されるようにも思われる。
しかし,旧デーロスには,従業者等がした職務発明について特許を受ける権利を旧デーロスに承継させる旨を定めた勤務規則があったとは認められないし,P2と旧デーロスとの間において,あらかじめ職務発明についての特許を受ける権利を旧デーロスに承継させる旨の合意を記した契約書等が作成されていたわけでもない(原告もその趣旨の主張はしていない。そして,そもそもその当時の旧デーロスの代表者は,P2自身で 。)あるから,代表者自身の職務発明を旧デーロスに承継させるか否かの取扱いについて明示的に予め定めていたものがない以上,P2が自らの発明を旧デーロスを出願人として出願することが事実上多かったとしても,それはあくまで,その個別の出願時にP2のそのときどきの判断によって当該発明についての特許を受ける権利をP2から旧デーロスに個別に承継させる合意をしたことを前提に出願をしていたことが認められるにすぎないものである。
そうすると,以上の事実関係から,そのような個別にされた具体的な合意を超えてP2と旧デーロス間の職務発明について特許を受ける権利承継に関する一般的包括的な合意があったと推認することはできないといわなければならない。
したがって,P2と旧デーロスとの間において,P2の職務発明についての特許を受ける権利を旧デーロスに承継させる旨の一般的包括的な合意があったと認めることはできないエP2と原告との間の合意の有無について(ア)原告は,P2と原告との間に職務発明についての特許を受ける権利承継させる旨の合意(将来にわたる一般的包括的な合意の趣旨と解される )があったと主張するが,その趣旨の合意の存在を示す直接的証 。
拠がないことは上記ウと同様である。
原告は,旧デーロスを吸収合併する際,旧デーロスの株式総額を税理士法人の評価額約7000万円から1億円に増額したが,これはP2の技術と先見性を評価に含めたからであり,原告代表者のP1は,その旨をP2に説明したのであるから,P2と原告との間では,原告代表者となるP2の職務発明についての特許を受ける権利は原告に帰属させる旨の合意があったことが明らかであると主張する。
確かに,原告が,旧デーロスを吸収合併するためP2夫妻とした株式価格の交渉の経緯は,上記イ(ウ)のとおりであり,旧デーロスの株価総額は税理士法人のした7000万円前後の評価額から,交渉の結果,1億円に増額されて,原告とP2夫妻との間で株式の売買契約がされたことが認められる。そして,この増額の理由について,原告の代表取締役であるP1は,その陳述書(甲33)において,P2に対し,P2が現に有し今後発想する全てを買収するために1億円という金額で旧デーロスの株式を買い取る旨を十分に説明したこと,またその前提に,P2からは,1億円という買収価格はP2という個人もセットで買うということで考えて欲しい旨の申し出があったことを述べている。
しかしながら,P1は,証人尋問においては,上記陳述書記載の前段部分に沿った証言をするものの,後者の内容に触れた証言はしておらず,単にP2もそのような認識を有していたはずだと証言するにとどまっている。そして,そればかりか吸収合併後のP2がした発明を原告名義で出願することを話したことはないと明言し,P2が社長である以上,原告名義で出願して当然であるとの認識さえ証言している。
他方,P2は,旧デーロスの株式の譲渡金額が税理士法人の算定額を上回る1億円になったのは,2億円ほどで購入したウォータージェットの機械を5年間で減価償却して税務申告をしていたが,12年ないし15年で減価償却するのが通常であることから,通常の減価償却方法で機械の現存価値を算定すれば旧デーロスの株価を高く評価することができる旨を説明して株式の譲渡価格を1億円とすることについて納得してもらうことができた旨の供述をしており(速記録24〜25頁 ,会社資)産の評価としては,この供述の方が合理的であることは明らかであり,P1自身も,買収価格の決定に際し,P2が,旧デーロスには機械があると言っていたと,P2の供述を一部裏付ける証言をしている(証人P1・速記録3頁 。)そうすると,P1がP2に対して増額についての理由を説明し,それについてP2が了解していたように述べる陳述書(甲33)自体も,そもそも内容が極めて曖昧なものにとどまり,むしろ法廷におけるP1の証言においてすら,旧デーロスが原告に合併された後のP2の発明を原告に承継させることの合意が具体的にされたことを否定するものであるから,P1の陳述書(甲33)記載の内容の説明が現実にあったとしても,それだけでは,原告とP2間でP2が将来する発明についての特許を受ける権利を原告に承継させる一般的包括的な合意がされたとは認めようがない。
その上,原告とP2が関係を解消する際に原告と旧デーロスの合併当時の合意内容を確認するため作成された平成19年10月25日付け「合併に伴う確認書 (乙38)においても,P2がする発明について 」の特許を受ける権利の帰属について触れる記載もない(なお,P1は,上記「合併に伴う確認書」が作成された背景事情等をるる述べて,内容に効力がないように証言しているが,弁護士に相談した上で作成したことも証言している以上,その法的効力に問題があるとは考えられない。
したがって,P2個人は上記確認書の当事者でなく,旧デーロスとP2個人とは異なるが,P2のする発明の承継について上記確認書に記載されていないということは,そのような点についての合意がされていなかったことをむしろ推認させるといえる。。)そもそも,原告には,従業者等の職務発明についての特許を受ける権利を原告に承継させる旨を定めた勤務規則が定められている事実は認められないから,旧デーロスを吸収合併するに当たり,P1がP2に対し,原告代表者として技術開発に努めて発明をなし,それを原告の特許権となるよう出願してくれることを期待していたもので,そのためP2の提案する資産評価の見直しにも応じて株式買取価格を1億円にするP2夫妻の提案を受け入れたとしても,それだけではP2の将来の職務発明についての特許を受ける権利を原告に承継させることが一般的包括的に合意されたと認めさせるにはほど遠いといわなければならない。
(イ)なお,証拠(甲9の1〜4)によれば,P2が,本件特許権1に係る特許出願に要した費用については,出願手続をした弁理士からP2個人宛の請求書を受け取ったものの,原告の預金からその支払をしたことが認められる。
しかしながら,かかるP2の行為が許されるものでないとしても,P2は,自らの名義で特許出願をしているのであるから,原告の預金から特許出願費用を支出したことをもって,原告に特許を受ける権利承継させる意思があったと認めることはできない。
(ウ)そして,他に,原告とP2との間において,P2が旧デーロスが原告に吸収合併された後の原告代表者としての職務発明について,その特許を受ける権利を原告に承継させる旨の一般的包括的な合意があったことを認めるに足りる証拠はない(原告は,税理士法人がした旧デーロスの株価総額が約7000万円であるとの算定に,旧デーロスが特許権者である特許権の評価が含まれていることが原告主張に係る吸収合併後の原告とP2間の合意の存在を推認させるものであるかのように主張するが,旧デーロスが特許権が旧デーロスの資産である以上,これらを評価対象として含むことは当然であり,そのことは主張に係る合意の存在を何ら推認させるものではない。。)オ以上のとおりであるから,本件においては,P2が原告(旧デーロスを含む )との間において,職務発明についての特許を受ける権利承継さ 。
せる旨の一般的包括的な合意をしたと認めることはできない(なお,本件における原告の主張中には,代表取締役であるP2が個人的利害から本件各発明を被告を出願人として出願したことの問題をいう部分があるが,本件における原告の各請求が認められるためには,原告が本件各発明についての特許を受ける権利承継した事実が積極的に認められなければならないから,仮にP2のした特許出願に主張に係る問題点があったとしても,それは原告の請求を根拠づけるものではない。。)( )P6と原告との間の合意の有無について3ア原告は,P6が本件発明3及び4の共同発明者(3についてはP4との,4についてはP2との共同発明)のうちの1人であり,かつ本件発明6ないし8の発明者でもあり,それがいずれも原告の職務発明であることを前提に,P6の上司であったP4が,原告における職務発明についての特許を受ける権利は原告に帰属すると認識していたことからすれば,P6も同様の認識を有していたと推認されるとして,P6と原告との間で,P6の職務発明についての特許を受ける権利(共同発明についてはその持分)を承継させる旨の合意(将来にわたる一般的包括的な合意の趣旨と解される )があったと主張する。 。
しかしながら,上記( )エで指摘したとおり,原告には,従業者の職務2発明についての特許を受ける権利を原告に承継させる旨を定めた勤務規則はなく,また,P6が,原告との間で,P6の職務発明についての特許を受ける権利を原告に承継させる旨を合意した契約書等が作成されたという事実もうかがえない。
そればかりかP6の証言によれば,同人には,自分がした発明についての特許を受ける権利が自分自身に帰属するのか勤務先の会社に帰属するのかという点については,その都度話合いで決めることになると思っているという程度の認識しかなかったことが認められるから(速記録14頁 ,)結局,以上の事実関係のもとでは,P6と原告との間で,その職務発明についての特許を受ける権利を勤務先会社である原告に承継させる旨の一般的包括的な合意がされたことを認めることはできないというほかない。
イしたがって,P6が原告の主張する上記各発明の発明者であり,その発明が職務発明であったとしても,原告との間において,職務発明についての特許を受ける権利承継させる旨の一般的包括的な合意があったと認めることはできない。
なお,P6は原告に吸収合併される前の旧デーロス当時からの従業員であるから,P6と旧デーロスとの間で,その職務発明についての特許を受ける権利を旧デーロスに承継させる旨の一般的包括的合意があったのであれば,旧デーロスを吸収合併した原告は,その合意の効力をP6に援用する余地があることになるが,そもそもP6と旧デーロスとの間では,上記合意があったことを認めるに足りる証拠はない。
( )P5と原告との間の合意の有無について4原告は,P5は本件発明5の発明者であり,P5と原告との間において,P5の職務発明についての特許を受ける権利は原告に帰属させる旨の合意(将来にわたる一般的包括的な合意の趣旨と解される )があったと主張す。
る。
しかしながら原告には,従業者の職務発明を原告に承継させる旨を定めた勤務規則はなく,また,原告とP5との間で,P5の職務発明についての特許を受ける権利を原告に承継させる旨の合意を記載した契約書等が作成された事実は認められない。
そのうえ,P5は,証人尋問において,職務発明であってもこれを原告に承継させる合意をしたとは証言していない。
したがって,P5においても,P6と同様,原告との間において,職務発明についての特許を受ける権利承継させる旨の一般的包括的な合意があったと認めることはできない。
なお,P5は原告に吸収合併される前の旧デーロス当時からの従業員であるから,P5と旧デーロスとの間で,その職務発明についての特許を受ける権利を旧デーロスに承継させる旨の合意があったのであれば,旧デーロスを吸収合併した原告は,その合意の効力をP5に援用する余地があることになるが,そもそもP5と旧デーロスとの間では,上記合意があったことを認めるに足りる証拠はない。
( )P4と原告との間の合意の有無について5ア原告は,本件発明3は,P4とP6との共同発明であると主張し,同発明は原告の職務発明であり,P4と原告との間において,P4の職務発明についての特許を受ける権利は原告に帰属させる旨の合意(将来にわたる一般的包括的な合意の趣旨と解される )があったと主張する。 。
イしかしながら,上記( )エで指摘したとおり,原告には,従業者の職務2発明を原告に承継させる旨を定めた勤務規則はなく,また,P4と原告との間で,その職務発明についての特許を受ける権利を原告に承継させる旨を合意した契約書等が作成されたという事実もうかがえない。
また原告から,本件発明3についてP4との共同発明者として主張されているP6においては,原告との間で特許を受ける権利承継する旨の合意があったものと認められないことは上記( )で認定したとおりである。
3そして,P4の証言中には,同人のした職務発明についての特許を受ける権利は会社に当然に帰属するものと認識していたとの証言部分(速記録11頁)があるけれども,その証言内容は,漠然としたものであり,職務発明であったとしても,その特許を受ける権利自体は発明者である従業員について生じ,しかも発明者には相当の対価の支払請求権が発生するという基本的権利関係を理解した上でされたものとは解されないものである。
そうすると,結局,P4が自分のした職務発明について特許出願時の取扱いについて無頓着であったとしても,原告における職務発明についての勤務規則等における取決めが上記認定のとおりにすぎず,しかも発明者であるP4との権利の処理が明確な合意のもとにされた事実が認められない以上,仮に本件発明3の共同発明者のうちの一人がP4であったとしても,P4と原告との間で,その特許を受ける権利の持分を承継する一般的包括的な合意があったものと認めることはできない。
( )以上に検討したところによれば,原告が主張するように,本件発明1及び6本件発明2がP2による職務発明,本件発明3がP6及びP4の共同発明による職務発明,本件発明4がP2及びP6による共同発明による職務発明,本件発明5がP5による職務発明,本件発明6ないし本件発明8がP6による職務発明であったとしても,P2,P6,P5及びP4のいずれについても,原告(旧デーロスを含む )との間において,その職務発明についての 。
特許を受ける権利を原告(旧デーロスを含む )に対して承継させる旨の一 。
般的包括的な合意をしたとは認められないから,原告が上記各発明についての特許を受ける権利承継したと認めることはできないまた,原告は,予備的に,本件各発明の発明者がP2であり,それが職務発明にあたることを前提としてその特許を受ける権利をP2から承継した旨の主張もするが,上記で検討したところからすれば,原告の予備的主張を前提としても,原告が本件各発明についての特許を受ける権利承継したと認められないことは明らかである。
さらに承継合意がいずれの関係でも認められない以上,本件各発明の発明がされた時期が,被告の主張する時期であったとしても,やはり原告が特許を受ける権利承継するものと認める余地がないことは同様である。
加えて,上記認定の事実によれば,原告主張にかかる発明者と旧デーロスないし原告との間で,本件各発明に係る特許を受ける権利に関する承継についての個別具体的合意がないことは明らかである。
したがって,本件発明1ないし3について原告が特許を受ける権利を有することを前提とする本件各特許権についての被告に対する移転登録請求及び本件各特許出願に係る発明(本件発明4ないし8)についての特許を受ける権利を原告が有することの確認を求める請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がない。
2争点4(原告が本件各特許権の移転登録手続を求めることができるか)について( )原告の被告に対する本件各特許権についての移転登録請求は,主張に係る1各発明者から,原告あるいは旧デーロスにその特許を受ける権利承継した事実が認めらず,したがって上記各請求は,その余の判断に及ぶまでもなく理由がないことは上記1で認定判断したとおりであるが,仮に原告が,本件発明1ないし3について,各発明者から特許を受ける権利承継した事実が認められたとしても,本件の事実関係のもとでは,その請求をそもそも認める余地はないので,以下において念のためその点について判断を示すこととする。
( )すなわち特許を受ける権利を有する者は,特許法の規定に従って,特許出2願をして特許登録を受けることにより,特許権者となることができる。特許を受ける権利は,発明と同時に発生し,発明者に原始的に帰属する。この権利は移転することができるから,特許を受けられるのは,発明者又は発明者から特許を受ける権利承継した者(以下「発明者等」という )に限られ。
る(特許法29条1項柱書,33条1項 。)そして,特許法は,発明者等でない者による特許出願(以下「冒認出願」という )については拒絶査定すべきこと(同法49条7号 ,冒認出願に 。 )基づいて特許登録がされた場合には特許が無効とされること(特許法123条1項6号)をそれぞれ規定するとともに,発明者等の救済として,冒認出願を先願から除外する規定(29条の2括弧書き,39条6項)及び新規性喪失の例外とする規定(30条2項)を設け,一定の条件の下で発明者等が特許出願することにより特許を受けられる場合があることを規定しているが,これはいずれも冒認出願による特許の無効を前提に,発明者等に別途に特許を受ける方法を残しているにすぎないものである。
以上からすると特許法の規定は,冒認出願に基づいて特許権の設定登録がされた場合には,当然には,発明者等が冒認出願者に対する特許権の移転登録手続を求めることはできない規定構造になっているものと解される。
( )そうすると,前記第2・1で認定したとおり,本件発明1については,平3成16年6月1日にP2が特許出願をした後,平成19年11月21日にP2から被告に出願人名義が変更され,同年12月28日に被告を特許権者として特許権(本件特許権1)の設定登録がされ,本件発明2については,平成17年12月27日に被告が特許出願をし,平成20年3月14日に被告を特許権者として特許権(本件特許権2)の設定登録がされ,本件発明3については,平成17年10月26日に被告が特許出願をし,平成21年10月2日に被告を特許権者として特許権(本件特許権3)の設定登録がされたというのであるから,原告の主張事実を前提としても,本件各特許権は冒認出願の結果得られた特許として無効と扱われる可能性があるだけであって,原告が本件発明1ないし本件発明3についての特許を受ける権利に基づき,これら本件各特許権の有効を前提として,被告に対し,その移転登録手続を求めることはできないということになる。
( )これに対し原告は,本件各特許権を被告が有するという事実関係は,原告4が被告(被告と同視しうる被告の代表取締役であるP2)の行為によって,財産的利益である特許を受ける権利を失ったのに対し,被告が法律上の原因なしに本件各特許権を得ている関係にあり,その上,P2は,職務発明についての特許を受ける権利を原告に譲渡した者であり,しかも原告の代表取締役として原告を出願人として出願すべき立場にあった者であるから,本件各発明に関するP2又はP2が代表取締役を務める被告の特許出願行為は,原告による特許出願行為と同視すべきであるので,本件各特許権は,原告が有していた特許を受ける権利と連続性を有し,それが変形したものであり,平成13年最高裁判決に照らし,本件各特許権の移転登録請求は認められるべきである旨主張する。
原告指摘にかかる平成13年最高裁判決は,特許を受ける権利共有者甲が他の共有者と共同してした特許出願につき,乙が甲から特許を受ける権利の持分を承継した旨の譲渡証書を添付して特許出願人を甲から乙に変更する出願人名義変更届を特許庁長官に提出したことにより,乙を共有者とする特許権の設定の登録がされた場合において,乙が甲の承諾を得ずに上記譲渡証書を作成した無権利者であって,特許権の設定の登録に先立って甲が乙に対し特許を受ける権利の持分を有することの確認を求める訴訟を提起しており,上記特許を受ける権利と当該特許権とが同一の発明に係るものであるなどの判示の事情の下においては,甲は,乙に対し,当該特許権の乙の持分につき移転登録手続を請求することができる旨判示した判例であるが,当該判例は,上記説示した冒認出願に関する現行特許法の規定構造を前提としても,特許を受ける権利を有する者が特許出願をしたなどの判示した一連の事実関係のもとでは,設定登録された特許権が,特許を受ける権利と連続性を有し,変形したものであると評価できることなどから,例外的に特許を受ける権利を有していた者の救済のために特許権の移転登録手続を請求することを認める余地がある旨判示したものと解すべきものである。
しかしながら,本件において原告が主張する上記事実関係がすべて認められたとしても,それは要するに発明者等と一定の契約関係ないし権利義務関係にある者が冒認出願をした結果,その者を特許権者として特許権が設定登録されたということにすぎず,その事実関係は,特許権の無効をもたらす典型的な冒認出願の事実関係と異なるところはないといわなければならない。
また,そもそも原告自身は,特許出願を全くしていないのであるから,本件各特許権が原告が有していた特許を受ける権利と連続性を有し,変形したものと評価する余地はないというほかない。そうすると,原告主張にかかる本件の事実関係に平成13年度最高裁判決の判例法理が及ぶとする原告主張は失当であって,現行の特許法の規定構造を前提とする限り,上記主張に係る事実関係に基づく原告の被告に対する本件各特許権の移転登録手続請求は認めることができないといわなければならない。
( )したがって,本件各特許権の移転登録手続を求める原告の請求は,上記15の認定判断如何にかかわらず,それ自体主張自体失当であって,その余の点について判断するまでもなく理由がないということになる。
3結語以上によれば,原告の請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
追加
別紙特許目録1特許番号4058506発明の名称コンクリート床版端部下面の補修工法出願人P2出願日平成16年12月3日登録日平成19年12月28日現特許権者被告移転登録申請時期平成19年11月21日2特許番号4094025発明の名称鋼管製基礎杭の耐食構造出願人被告出願日平成17年12月27日登録日平成20年3月14日現特許権者被告3特許番号4382029発明の名称コンクリート製用水路の内面補修構造出願人被告出願日平成17年10月26日登録日平成21年10月2日現特許権者被告別紙特許申請目録1出願番号2005-292820発明の名称橋梁におけるコンクリート床版裏面の補修構造出願人被告出願日平成17年10月5日2出願番号2005-342459発明の名称落橋防止構造出願人被告出願日平成17年11月28日3出願番号2005-358126発明の名称ポリマーセメントモルタル配合用短繊維パッケージ出願人被告出願日平成17年12月12日4出願番号2007-24247発明の名称セメント混練材の攪拌装置出願人被告出願日平成19年2月2日5出願番号2007-29697発明の名称セメント混練材の攪拌装置出願人被告出願日平成19年2月8日別紙特許請求の範囲目録1本件特許権1【請求項1】「下記のA乃至Eを含むコンクリート床版端部下面の補修工法。
A.橋台の床版支持座面と同支持座面に支持されたコンクリート床版の端部下面間に形成された横方向遊間を通じてウォータージェット装置の高圧水噴射ノズルを挿入し,該高圧水噴射ノズルによる高圧水噴射にて上記コンクリート床版の端部下面のコンクリート表層部を所要の帯域に亘りハツリ,該コンクリート表層部に埋設の鉄筋を露出させたハツリ帯域を形成する,B.上記コンクリート床版端面と上記橋台の床版支持座面内端の立ち上がり面との間に形成された縦方向遊間に上記横方向遊間を通じて曲げ弾性と圧縮弾性を有する合成樹脂発泡プレートから成る型板を反り曲げながら挿入し,該型板を圧縮による反発力で上記橋台の立ち上がり面とコンクリート床板端面とに密着させて上記ハツリ帯域の前端開放面と上記横方向遊間の前端面に亘り立ち上げる,C.上記床版支持座面上にハツリ帯域の下部開放面を覆う型枠を設置し,該型枠の前端面を上記型板の表面に当接する,D.上記型板と型枠とによって画成された上記ハツリ帯域内へビニロン繊維又はポリエチレン繊維を混入したポリマーセメントモルタルを高圧噴射し,該高圧噴射により該ポリマーセメントモルタルを上記鉄筋の裏側に回り込ませつつビニロン繊維又はポリエチレン繊維を上記鉄筋周面に絡みつかせ充填する,E.上記ポリマーセメントモルタルの硬化後上記型枠を除去し,上記型板を残存する」。
【請求項2】「下記のA乃至Eを含むコンクリート床版端部下面の補修工法。
A.橋脚の床版支持座面と同支持座面に支持されたコンクリート床版の端部下面間に形成された横方向遊間を通じてウォータージェット装置の高圧水噴射ノズルを挿入し,該高圧水噴射ノズルによる高圧水噴射にて上記コンクリート床版の端部下面のコンクリート表層部を所要の帯域に亘りハツリ,該コンクリート表層部に埋設の鉄筋を露出させたハツリ帯域を形成する,B.上記コンクリート床版端面と隣接コンクリート床版端面との間に形成された縦方向遊間に上記横方向遊間を通じて曲げ弾性と圧縮弾性を有する合成樹脂発泡プレートから成る型板を反り曲げながら挿入し,該型板を圧縮による反発力で上記コンクリート床板端面と隣接コンクリート床板端面に密着させて上記ハツリ帯域の前端開放面と上記横方向遊間の前端面に亘り立ち上げる,C.上記床版支持座面上にハツリ帯域の下部開放面を覆う型枠を設置し,該型枠の前端面を上記型板の表面に当接する,D.上記型板と型枠とによって画成された上記ハツリ帯域内へビニロン繊維又はポリエチレン繊維を混入したポリマーセメントモルタルを高圧噴射し,該高圧噴射により該ポリマーセメントモルタルを上記鉄筋の裏側に回り込ませつつビニロン繊維又はポリエチレン繊維を上記鉄筋周面に絡みつかせ充填する,E.上記ポリマーセメントモルタルの硬化後上記型枠を除去し,上記型板を残存する」。
2本件特許権2【請求項1】「鋼管製基礎杭の上端基礎杭部分の周面に限定して鉄筋を配筋すると共に,上記上端基礎杭部分の周面に周方向と軸線方向に間隔を置いてスペーサーを点配置し,該スペーサーを上記上端基礎杭部分に溶接すると共に,該スペーサーに上記鉄筋の要所を溶接し,上記上端基礎杭部分と鉄筋の配筋体を該スペーサーを介し一体構造とすると共に,上記上端基礎杭部分の周面と鉄筋の配筋体の内周面間に上記スペーサーを介し環状空隙を形成し,上記鉄筋の配筋体の外周面を補強樹脂繊維入りポリマーセメントモルタル被覆層(外層)で覆うと共に,同補強樹脂繊維入りポリマーセメントモルタルを上記環状空隙内に充填して鉄筋の配筋体の内周面と上記上端基礎杭部分の周面との間に補強樹脂繊維入りポリマーセメントモルタル被覆層(内層)を形成したことを特徴とする鋼管製基礎杭の耐食構造」。
3本件特許権3【請求項1】「水路を画成する底壁及び左右立ち上げ壁の各内面と左右立ち上げ壁上端面の表層コンクリートを連続して除去し,他方1立方メートル当たり,セメント300〜600kg,砂600〜1200kg,ポリマー樹脂10〜120kg,補強樹脂繊維10〜60kg,を主材とし,且つ上記補強樹脂繊維として接着剤にて弱接着し平形に集束した集束繊維を配合し混練して成る補強樹脂繊維入りポリマーセメントモルタルを用意し,該補強樹脂繊維入りポリマーセメントモルタルを上記底壁及び左右立ち上げ壁の各内面と左右立ち上げ壁上端面の表層コンクリート除去面域に塗布し補強用塗工材層を形成したことを特徴とするコンクリート製用水路の内面補修方法」。
【請求項2】「上記補強樹脂繊維として,繊維長5〜20mm,太さ10〜200μのビニロン繊維,又は同ポリエチレン繊維,又は同ビニロン繊維と同ポリエチレン繊維の混合繊維を用いたことを特徴とする請求項1記載のコンクリート製用水路の内面補修方法」。
【請求項3】「上記補強樹脂繊維入りポリマーセメントモルタルから成る補強用塗工材層中に上記表層コンクリート除去面域に亘る合成樹脂製メッシュを埋設し,該メッシュと上記補強樹脂繊維との絡み合い構造を形成したことを特徴とする請求項1記載のコンクリート製用水路の内面補修方法」。
4本件特許出願1【請求項1】「コンクリート床版裏面の表層コンクリートを除去し,該表層コンクリート除去面域を補強用塗工材層で修復する橋梁におけるコンクリート床版裏面の補修構造において,1立方メートル当たり,ポルトランドセメント300〜600kg,砂600〜1200kg,ポリマー樹脂10〜120kg,補強樹脂繊維10〜60kg,を主成分とする補強樹脂繊維入りポリマーセメントモルタルを上記表層コンクリート除去面域に塗布し上記補強用塗工材層を形成したことを特徴とする橋梁におけるコンクリート床版裏面の補修構造」。
【請求項2】「上記補強樹脂繊維として,繊維長5〜20mm,太さ10〜200μのビニロン繊維,又は同ポリエチレン繊維,又は同ビニロン繊維と同ポリエチレン繊維の混合繊維を用いたことを特徴とする請求項1記載の橋梁におけるコンクリート床版裏面の補修構造」。
【請求項3】「上記補強樹脂繊維入りポリマーセメントモルタルから成る補強用塗工材層中に上記表層コンクリート除去面域に亘る合成樹脂製メッシュを埋設し,該メッシュと上記補強樹脂繊維との絡み合い構造を形成したことを特徴とする請求項1記載の橋梁におけるコンクリート床版裏面の補修構造」。
5本件特許出願2【請求項1】「橋脚と橋桁端部間を連結材で連結して落橋を防止するようにした落橋防止構造において,上記連結材を繊維を編組して伸縮性を付与した編組条材にて形成したことを特徴とする落橋防止構造」。
【請求項2】「上記編組条材の両端に該編組条材と一体に輪形に編組した連結継手を設けたことを特徴とする請求項1記載の落橋防止構造」。
【請求項3】「上記編組条材が管構造を有することを特徴とする請求項1記載の落橋防止構造」。
【請求項4】「上記管構造を有する編組条材の管腔内に圧縮弾性を有する芯材を挿入した構造を有することを特徴とする請求項3記載の落橋防止構造」。
【請求項5】「上記編組条材に保護チューブを外挿したことを特徴とする請求項1又は2又は3又は4記載の落橋防止構造」。
6本件特許出願3【請求項1】「セメントと砂とポリマー樹脂から成るポリマーセメントモルタルに配合する補強用の合成樹脂製短繊維を封入したポリマーセメントモルタル配合用短繊維パッケージであって,該合成樹脂製短繊維の多数本を並行に引き揃えた状態に集束すると共に,該各並行に引き揃えた合成樹脂製短繊維間を水溶性接着剤で接着して並行集束短繊維片を形成し,該並行集束短繊維片の集合材中に減水剤を添加し袋内に封入したことを特徴とするポリマーセメントモルタル配合用短繊維パッケージ」。
【請求項2】「上記合成樹脂製短繊維がビニロン繊維又は/及びポリエチレン繊維から成ることを特徴とする請求項1記載のポリマーセメントモルタル配合用短繊維パッケージ」。
【請求項3】「上記袋内に気泡剤を添加したことを特徴とする請求項1記載のポリマーセメントモルタル配合用短繊維パッケージ」。
【請求項4】「上記合成樹脂製短繊維と減水剤の重量比が2〜4:1であることを特徴とする請求項1記載のポリマーセメントモルタル配合用短繊維パッケージ」。
7本件特許出願4【請求項1】「円筒形の外ドラムの下端を閉鎖する底板の中心部からドラム軸線上に回転駆動軸を立ち上げると共に,底板の中心部から該回転駆動軸を包囲する円筒形の内ドラムを立ち上げ,上記回転駆動軸の上端に冠ドラムを一体回転可に取り付け,該冠ドラムからアームを介して攪拌羽根を延出し,上記底板を内ドラムの下端から上記外ドラム下端へ向け下り傾斜せる傾斜底板にて形成し,上記外ドラムと内ドラム間に混練室を形成し,該混練室の底部外周部に上記傾斜底板下端と外ドラム下端にて鋭角の外周環状入隅部を画成すると共に,同混練室の底部内周部に上記傾斜底板上端と内ドラム下端にて鈍角の内周環状入隅部を画成し,上記攪拌羽根として上記鋭角の外周環状入隅部に沿って回転する外周入隅部攪拌羽根を備えると共に,上記鈍角の内周環状入隅部に沿って回転する内周入隅部攪拌羽根を備えることを特徴とするセメント混練材の攪拌装置」。
【請求項2】「上記内ドラム及び冠ドラムの直径と上記外ドラムの直径の比を1:3〜1:6に設定したことを特徴とする請求項1記載のセメント混練材の攪拌装置」。
【請求項3】「上記傾斜底板の傾斜角度を15度〜30度に設定したことを特徴とする請求項1記載のセメント混練材の攪拌装置」。
【請求項4】「上記外周入隅部攪拌羽根は上記鋭角の外周環状入隅部において上記外ドラム下端内面に沿って回転する第一攪拌羽根と,上記鋭角の外周環状入隅部において上記傾斜底板の下端傾斜面に沿って回転する第二攪拌羽根とから成り,上記内周入隅部攪拌羽根は上記鈍角の内周環状入隅部において上記内ドラム下端外面に沿って回転する第三攪拌羽根と,上記鈍角の内周環状入隅部において上記傾斜底板の上端傾斜面に沿って回転する第四攪拌羽根とから成ることを特徴とする請求項1記載のセメント混練材の攪拌装置」。
【請求項5】「上記外周入隅部攪拌羽根を形成する第一,第二攪拌羽根の少なくとも一方は上記鋭角の外周環状入隅部の角隅において回転する角隅攪拌部を有することを特徴とする請求項4記載のセメント混練材の攪拌装置」。
【請求項6】「上記内周入隅部攪拌羽根を形成する第三,第四攪拌羽根の少なくとも一方は上記鈍角の内周環状入隅部の角隅において回転する角隅攪拌部を有することを特徴とする請求項4記載のセメント混練材の攪拌装置」。
8本件特許出願5【請求項1】「有底の攪拌ドラムの上部開口を覆う蓋体を有し,該蓋体は金属製線材を格子組みし,該格子組み金属製線材間に多数の開放窓を形成したセメント混練材の攪拌装置において,上記蓋体は最外周部に環状金属製線材から成る環状ドラム当てを有し,該環状金属製線材から成る環状ドラム当てを上記攪拌ドラムの上部開口を画成する同ドラム上端の環状蓋当てに閉合する構成を有し,該環状ドラム当てを形成する環状金属製線材をヒンジを介して攪拌ドラム上端に片開き可能に取り付けたことを特徴とするセメント混練材の攪拌装置」。
【請求項2】「有底の攪拌ドラムの上部開口を覆う蓋体を有し,該蓋体は金属製線材を格子組みし,該格子組み金属製線材間に多数の開放窓を形成したセメント混練材の攪拌装置において,上記蓋体は最外周部に環状に配巡した金属製枠板を有し,該環状金属製枠板の外周縁部で環状ドラム当てを形成し,該環状金属製枠板の環状ドラム当てを上記攪拌ドラムの上部開口を画成する同ドラム上端の環状蓋当てに閉合する構成を有し,該環状ドラム当てを形成する環状金属製枠板をヒンジを介して攪拌ドラム上端に片開き可能に取り付けたことを特徴とするセメント混練材の攪拌装置」。
【請求項3】「上記ヒンジ部に上記蓋体を開いた時に攪拌ドラム内の攪拌羽根の回転を停止するスイッチを設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のセメント混練材の攪拌装置」。
【請求項4】「上記蓋体は太径の金属製線材から成る構造骨と,該構造骨間に配した構造骨間の開放窓を細分する細径の金属製線材から成る間骨を有する請求項1又は2記載のセメント混練材の攪拌装置」。
別紙旧デーロス特許出願一覧表?発明の名称コンクリート脱塩用装置およびこの装置を用いたコンクリート脱塩方法出願日平成11年4月19日出願番号H11-110558?発明の名称コンクリート補修方法出願日平成12年7月5日出願番号2000-204907特許番号第3541023号?発明の名称コンクリート構造物の下面補修装置及びその下面補修方法出願日平成12年12月4日出願番号2000-369221?発明の名称道路の補修方法出願日平成12年12月15日出願番号2000-382725特許番号第3396669号?発明の名称表面削り用ウォータージェット装置出願日平成13年5月18日出願番号2001-148914特許番号第3578728号?発明の名称表面削り用ウォータージェット装置出願日平成13年5月18日出願番号2001-148915特許番号第3578729号?発明の名称ウォータージェット噴出ノズル装置及び該装置を使用したハツリ方法出願日平成13年7月12日出願番号2001-211984?発明の名称コンクリート製構築物における埋設筋の補修方法と同埋設筋の配筋構造出願日平成13年7月17日出願番号2001-216722特許番号第3455198号?発明の名称発熱プレキャストコンクリート路板又は発熱現場打ちコンクリート路盤出願日平成13年12月26日出願番号2001-395183特許番号第3545383号?発明の名称舗装道路の補修方法出願日平成15年12月22日出願番号2003-425421特許番号第3863142号
裁判長裁判官 森崎英二
裁判官 達野ゆき
裁判官 山下隼人