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関連審決 不服2006-17832
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成21行ケ10247審決取消請求事件 判例 特許
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平成21行ケ10353審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 頒布された刊行物 /  アクセス /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  引用発明の認定 /  発明特定事項 /  一致点の認定 /  相違点の認定 /  周知技術 /  発明の詳細な説明 /  参酌 /  技術的意義 /  置き換え /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  構成要件 /  拒絶査定不服審判 /  拒絶査定 /  請求の範囲 /  独立特許要件 / 
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事件 平成 21年 (行ケ) 10418号 審決取消請求事件

原告 ヤフー株式会社
訴訟代理人弁理士佐藤武史
同 八 木澤史彦
被告 特許庁長官
指定代理人 五十嵐 努
同 大野克人
同 廣瀬文雄
同 小林和男
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2010/09/30
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が不服2006-17832号事件について,平成21年11月10日にした審決を取り消す。
第2当事者間に争いのない事実1特許庁における手続の経緯原告は,平成15年4月30日,発明の名称を「キャラクター画像を含んだ2画面を送信するシステムおよび方法,コンピュータプログラム,プログラム記録媒体」とする発明について,特許出願(特願2003-125648。以下「本願」という。)をしたが,平成18年7月10日付けで拒絶査定を受け,同年8月15日,これに対する拒絶査定不服審判(不服2006-17832号事件)を請求し,同年9月13日付けで手続補正書を提出した(以下「本件補正」という。)。
特許庁は,上記請求について審理の上,平成21年11月10日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「審決」という。)をし,その謄本は,同月24日,原告に送達された。
2特許請求の範囲本願明細書の特許請求の範囲について,本件補正前の請求項1の記載は,次のとおりである(以下,この発明を「本願発明」という。)。
「【請求項1】ユーザが登録したアバターを含んだ画面をネットワーク経由で送信するシステムであって,前記アバターの構成要素となり得る各アイテムの画像データが登録されたアイテムデータベースと,前記アイテムのうち,経時的に変化し得る成長アイテムについて,その変化を規定する変化規則が登録された変化規則データベースと,ユーザ毎に,各ユーザのアバターを構成するアイテムに関するアイテム情報が登録されたアバターデータベースと,前記アバターデータベースに登録されたアイテム情報に該当するアイテムの画像データに基づいてアバターを生成し,その際,前記成長アイテムについては前記変化規則データベースに登録された変化規則に応じた画像を用いる手段と,該生成したアバターを含んだ画面データをネットワーク経由で送信する手段と,を備えることを特徴とするシステム。」3また,本件補正後の請求項1の記載は次のとおりである(下線部が本件補正により付加された。以下,この発明を「本件補正発明」といい,本願明細書とは,本件補正後のものをいうこととする。)。
「【請求項1】ユーザが登録したアバターを含んだ画面をネットワーク経由で送信するシステムであって,前記アバターの構成要素となり得る各アイテムの画像データが登録されたアイテムデータベースと,前記アイテムのうち,経時的に変化し得る成長アイテムについて,その変化を規定する変化規則が登録された変化規則データベースと,ユーザ毎に,各ユーザのアバターを構成するアイテムに関するアイテム情報が登録されたアバターデータベースと,前記アバターデータベースに登録されたアイテム情報に該当するアイテムの画像データに基づいてアバターを生成し,その際,前記成長アイテムについては前記変化規則データベースに登録された変化規則に応じた画像を用いる手段と,該生成したアバターを含んだ画面データをネットワーク経由で送信する手段と,を備え,前記成長アイテムは,人の顔を表す顔アイテム又は人の頭髪を表す頭髪アイテムを含み,前記顔アイテムの変化は髭が伸びることであり,前記頭髪アイテムの変化は頭髪が伸びることであり,前記変化規則は,過去一定期間における前記画面データの送信回数が所定回数以下の場合に前記成長アイテムの画像を変化させること,又は,前記成長アイテムが現在の画像となってからの経過期間が所定期間以上の場合に前記成長アイテムの画像を変化させることを含む ことを特徴とするシステム。」3審決の理由(1)別紙審決書写しのとおりである。要するに,本件補正発明は,本願の出願4前に頒布された刊行物である特開2002-78974号公報(以下「引用例」という。)に記載された発明(以下「引用発明」という。)及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができず,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するとして,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下し,本願発明についても,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明と同様,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとして,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないと判断した。
(2)上記判断に際し,審決が認定した引用発明の内容並びに本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,以下のとおりである。
ア引用発明の内容 「ゲーム機1のユーザが保有するキャラクタに関する情報(キャラクタ情報)をネットワークを介して送信するゲームキャラクタシステムにおいて, 前記キャラクタ情報をユーザ毎に格納する記憶部を備え, 前記キャラクタ情報は,キャラクタ特有情報と,共通情報から構成されており, 前記キャラクタ特有情報には,“3次元情報 ”,“属性 ”,及び “アイテム装着情報”が含まれており, 前記“3次元情報 ”は,キャラクタの外観を特定するものであり,それには,キャラクタの体の部位毎の,形状,材質,及びテクスチャが含まれており,5 前記 “アイテム装着情報 ”には,キャラクタの体の部分毎の,このキャラクタが装着することができるアイテムと,その装着状況を示すデータが含まれており, 前記“アイテム装着情報 ”に応じて,キャラクタは,頭部に,サングラスaとヘッドホンbを装着したり,胴部に,Tシャツbを装着するようになっており, 前記共通情報には,“アイテム ”,“社会情報 ”,“履歴情報 ”,および“セキュリティ情報 ”が含まれており, 前記“履歴情報 ”には,ゲームの利用時間や,ゲーム毎のキャラクタが登場した時間などの利用履歴や,アイテムの売買履歴が含まれており,利用履歴に従って,キャラクタが歳を取るようにすることができ, ユーザは,目,鼻,口,または髪型などのパーツを,所定のパーツリストから選択して編集したり,手足の長さや身長を調整するようにして,キャラクタを編集することができる,ゲームキャラクタシステム。」イ一致点 ユーザが登録したキャラクタの表示情報をネットワーク経由で送信するシステムであって, ユーザ毎に,各ユーザのキャラクタを構成するアイテムに関するアイテム情報が登録された記憶部と, 前記記憶部に登録されたアイテム情報に該当するアイテムの画像データに基づいてキャラクタを生成する手段と, を備え, 上記キャラクタについて,経時的に変化し得る,所定の変化を規定する変化規則が登録されたシステム。
ウ相違点 (ア)相違点16アイテムから構成され,経時的に変化し得る,キャラクタに関して,本件補正発明におけるキャラクタはアバターであって,本件補正発明のシステムは,アバターを含んだ画面を送信するシステムであり,生成したアバターを含んだ画面をネットワーク経由で送信する手段を備えているのに対して, 引用発明におけるキャラクタは,ゲーム機1で行われるゲーム上で利用されるキャラクタであって,引用発明のシステムは,ネットワークを介してキャラクタ情報を送信するゲームキャラクタシステムである点。
(イ)相違点2本件補正発明は,アバターの構成要素となり得る各アイテムの画像データが登録されたアイテムデータベースを備えているのに対して, 引用発明は,そのような各アイテムの画像データが登録されたデータベースについて明示されていない点。
(ウ) 相違点3本件補正発明は,アイテムのうち,経時的に変化し得る成長アイテムについて,その変化を規定する変化規則が登録された変化規則データベースを備え, 前記成長アイテムは,人の顔を表す顔アイテム又は人の頭髪を表す頭髪アイテムを含み,前記顔アイテムの変化は髭が伸びることであり,前記頭髪アイテムの変化は頭髪が伸びることであり, さらに,アバターを生成する際,前記成長アイテムについては前記変化規則データベースに登録された変化規則に応じた画像を用いるのに対して, 引用発明は,そのような変化規則データベースについての記載がなく,また,キャラクタが歳を取るときに,キャラクタの外観がどのように変化するのかも明確でない点。
7(エ) 相違点4本件補正発明は,ユーザ毎に,各ユーザのアバターを構成するアイテムに関するアイテム情報が登録されたアバターデータベースを備えているのに対して, 引用発明は,ユーザ毎に,キャラクタの体の部分毎の形状などが含まれる“3次元情報 ”,及びキャラクタが装着するアイテムに関する “アイテム装着情報”を記憶部に格納している点。
(オ) 相違点5変化規則に関して,本件補正発明の変化規則は,過去一定期間における前記画面データの送信回数が所定回数以下の場合に前記成長アイテムの画像を変化させること,又は,前記成長アイテムが現在の画像となってからの経過期間が所定期間以上の場合に前記成長アイテムの画像を変化させることを含むのに対して, 引用発明は,利用履歴に従って,キャラクタが歳を取るようにすることができるとしか記載されていない点。
第3当事者の主張1審決の取消事由に係る原告の主張審決は,本件補正発明の独立特許要件の有無の判断において,引用発明の認定を誤り(取消事由1),一致点の認定を誤り(取消事由2),相違点2,3の相互の関連を考慮せず,容易想到性の判断を誤り(取消事由3),相違点1ないし相違点5に関する容易想到性の判断を誤り(取消事由4ないし9),これらの誤りは,いずれも審決の結論に影響を及ぼすから,審決は取り消されるべきである。すなわち,(1)引用発明の認定の誤り(取消事由1)審決は,「引用発明は,利用履歴に従って,キャラクタが歳を取るようにすることができるから,キャラクタについて所定の変化を規定する変化規則8が登録されていることは明白である。」と認定する。
しかし,引用例には,「利用履歴」に従ってキャラクタが歳を取る構成は記載されているが,「利用履歴」をある条件に当てはめることによる「変化規則」は記載されていない。キャラクタを「変化規則」により変化させる構成とは,「利用履歴」が何らかの条件を満たしたときに初めてキャラクタを変化させる仕組みであり,引用発明のようにキャラクタの「利用履歴」に従って変化させるだけの構成とは異なるから,引用発明について,「キャラクタについて所定の変化を規定する変化規則が登録されている」とはいえない。
したがって,審決は,引用発明の認定を誤ったものである。
(2)一致点の認定の誤り(取消事由2) ア変化規則の登録に関する一致点の認定の誤り審決は,一致点について,「上記キャラクタについて,経時的に変化し得る,所定の変化を規定する変化規則が登録されたシステム。」と認定する。
しかし,この認定は,取消事由1の主張のとおり(上記(1) ),誤って認定された引用発明に基づいてなされたものである。
したがって,審決の一致点の認定には誤りがある。
イキャラクタの表示情報に関する認定の誤り 審決は,一致点について,「引用発明のキャラクタサーバが送信するキャラクタ情報は,キャラクタを表示するための情報を含むから,引用発明と本件補正発明はともに,キャラクタの表示情報をネットワーク経由で送信するシステムである点で共通である。」と認定する。しかし,引用発明には,審決の認定に係る「キャラクタの表示情報」及び「キャラクタを表示するための情報」との記載はなく,またその意味も不明である。
また,審決は,キャラクタ情報に関して,引用例に記載のない「キャラクタ情報がキャラクタを表示するための情報を含んでいる」との事項を認9定した。しかし,引用例には,「ゲーム機1は,ネットワーク2を介して,キャラクタサーバ3から,キャラクタサーバ3が格納している,ゲーム機1のユーザが保有するキャラクタに関する情報(以下,「キャラクタ情報」と称する)」と記載され(段落【0022】),同記載によれば,「キャラクタ情報」とはユーザが保有するキャラクタに関する情報と定義されているので,上記審決の認定は,誤りである。なお,引用例には“3次元情報”,“アイテム装着情報”の記載があるが,“3次元情報”は,キャラクタを表示するための画像そのものではなく,「キャラクタの外観を特定」し,キャラクタを構成させ,画像を選択するための情報であり(段落【0039】),“アイテム装着情報”は,キャラクタそのものではなく,キャラクタが何を装着しているかを示す情報である(段落【0044】)から,これらが本件補正発明のような画像に埋め込まれた画像情報とは異なる。
したがって,審決は,引用例にない不明確な表現をした上,引用例に記載のない事項についての記載があるものとして認定して,一致点としているので,その認定は誤りである。
(3)相違点2,3の相互の関連を考慮せずに容易想到とした判断した誤り(取消事由3)審決は,本件補正発明について,成長するのはアイテムであり,アバターは,アバターデータベースに登録されている通常のアイテムの画像と変化規則データベースに登録されている変化規則に応じた画像を組み合わせて構成される仕組みであることを認定し,相違点2において,アバターは,アイテムデータベースの画像により構成されていると認定し,相違点3において,成長アイテムが登録されている変化規則データベースに関して認定する。すなわち,本件補正発明は,成長アイテムを通常のアイテムと組み合わせて,画像を構成することにより,アバターの成長をネット上の閲覧者に見せる構10成というのであるから,進歩性の判断においては相違点2及び同3の相互の関係が考慮されるべきであり,両者の相互の関係を考慮すれば,アイテムデータベースに登録されているのはアイテムの画像データであり,成長するのはアバターそのものではなくアバターの構成要素であるアイテムのうちの成長アイテムであって,アイテムデータベースに成長アイテムの画像が登録されていることが本件補正発明の特徴的な構成の1つであることが分かる。
しかし,審決は,相違点2及び同3に係る構成の容易想到性について,相違点2及び同3の相互の関係を考慮することなく,それぞれ個々別々に容易想到性を判断した点で誤りがある。
したがって,審決は,相違点を看過して進歩性判断を行った誤りがある。
(4)相違点1に関する容易想到性判断の誤り-その1(取消事由4)審決は,相違点1について,本件補正発明はアバターを画面に含めて送るのに対して,引用発明はゲーム機のゲーム上で利用するためのキャラクタ情報を送る仕組みであることを認定する。
しかし,審決は,相違点1の不当な抽象化により,本件補正発明がサーバ側で完成したアバターを画面に含めて送信する技術であるのに対し,引用発明がゲーム機である端末でキャラクタを完成させる技術であるという相違点の認定に至っておらず,サーバと端末の役割や役割を実現する技術の相違について検討していない。
また,引用発明のキャラクタは,ゲーム内の空間を動き回るのに対し,本件補正発明のアバターは,画面に貼り付いて,画面の一部として利用者に閲覧させるものであるから,引用発明のキャラクタと本件補正発明のアバターとでは機能が異なるが,審決は,機能の相違についても検討していない。
さらに,引用発明は,利用者のゲーム機上のゲームでのみ利用するキャラクタの情報を送る構成を備え,ゲームを面白くすることを課題とするのに対し,本件補正発明は,ユーザが他ユーザに向けて,情報送信するため,サー11バ内でキャラクタの表示が完成される必要があり,この機能により他ユーザに向けて情報を発信し,ネット上のコミュニティを活性化させることを課題とするから,引用発明と本件補正発明は,互いに課題が相違するが,審決は,課題の相違についても検討していない。
以上のとおり,審決には,相違点1に関する容易想到性判断の誤りがある。
(5)相違点1に関する容易想到性の判断の誤り-その2(取消事由5) ア審決は,特開2002-8062号公報(甲2)及び「加治貴,他2名“身近なデジタル機器で自在につくる 意外にハマった!”,日経ゼロワン,日経ホーム出版社,2002年11月1日,第77巻,73頁右上欄の「分身を使い会話を楽しむ」」(甲3)を引用し,「アバターについて,髪型など外観を部分的に変えられるようにすることは,本願出願前に周知(以下,「周知技術1」という。)である。」と認定した。そして,審決は,相違点1についての容易想到性の判断に当たり,「引用発明と周知技術1とは,ともにユーザの分身として仮想空間上に表示されるキャラクタに関するものであ」るとして,周知技術1において認定していなかった「仮想空間上に表示される」という特徴を掲げ,「引用発明のアイテムから構成され,経時的に変化し得るキャラクタに周知技術1のアバターを適用し,アバターについて,アイテムから構成され,経時的に変化し得るようにすることは当業者が容易に想到し得る」と判断した。
しかし,審決は,周知技術1としては認定しなかった「仮想空間上に表示される」という構成を前提としている点で誤りがあり,周知技術1の上記構成の認定根拠が明らかでない。また,周知技術1は,キャラクタを動き回らせることが可能なゲーム空間のような仮想空間でなく,2次元画像である掲示板やチャットの画面に貼り付けるものであり,引用発明のようにキャラクタがゲーム空間を動き回ることを想定したものではなく,周知技術1を引用発明に適用する動機付けや根拠は存在しない。さらに,周知12技術1と引用発明とはいずれも,分身という表記方法が用いられている点で共通するが,周知技術1における分身は,ユーザが自分を表現することを目的としたものであるのに対し,引用発明の分身では,ユーザがゲームのストーリ上の人物になり代わることを目的とするものである点で相違し,周知技術1を引用発明に適用するに当たり,阻害要因があるといえる。
したがって,審決は,阻害要因を看過して相違点1に関する容易想到性を判断した誤りがある。
イ審決は,相違点1について,「アバターはWeb上のコミュニティで用いられ,アバターを含む画面データを送信することは普通に行われているから,生成したアバターを含む画面データを送信する手段を設けて,上記相違点1のごとく構成することにも格別の困難性はない」と判断する。
しかし,審決の判断は,以下のとおり誤りがある。すなわち,審決には,「普通に行われている」ことの根拠が示されていない。また,仮に,「普通に行われている」ことが周知技術であったとしても,それは,Web上のコミュニティ内のメンバー間で自分の分身としてのアバターを見せて楽しむもので,メンバー全員がアバターを見られるようにする技術であるのに対し,引用発明は,利用者がゲーム上でキャラクタを利用し,楽しむもので,単一のゲーム機に情報を送る技術である点で相違するから,上記周知技術と引用発明とは利用状況が異なり,引用発明に適用することは容易とはいえない。
したがって,審決は,阻害要因を看過して相違点1に関する容易想到性を判断した誤りがある。
(6)相違点2に関する容易想到性の判断の誤り(取消事由6)審決は,特開2002-94675号公報(甲4)及び特開2002-8062号公報(甲2)を引用し,「仮想空間上に表示されるキャラクタの構成要素(パーツ)となる画像データを登録したデータベースは,本願出願前13に周知(以下,「周知技術2」という。)である。」と周知技術2を認定し,相違点2について,「引用発明に周知技術1を適用する際に,周知技術2を併せて適用し,アバターの構成要素となり得る各アイテムの画像データが登録されたデータベースを設けて,当該画像データを利用することに格別の困難性はない」と判断した。
しかし,「仮想空間」は,特開2002-94675号公報には記載がなく,周知技術とはいえない。審決は,コンピュータ上での画面作成という,何ら特徴のない技術を,「仮想空間」という言葉に置き換え,意図して,特開2002-94675号公報と特開2002-8062号公報の間に関連性を導いたものである。
したがって,審決は,周知技術2の認定を誤り,誤って認定した周知技術2に基づいて,相違点2に関する容易想到性を判断した誤りがある。
(7)相違点3に関する容易想到性の判断の誤り(取消事由7) 審決は,相違点3について,「引用発明は,ユーザが登録したキャラクタについて,経時的に変化し得る,所定の変化を規定する変化規則が登録されていることは自明であるから,変化規則を登録したデータベースを設けることに格別の困難性はない。」と判断する。
しかし,取消事由1の主張のとおり(上記(1) ),本件補正発明の「変化規則」とは,データの送信回数(利用履歴に相当する)が所定回数以下の場合にキャラクタについて所定の変化を実施する構成であり,「利用履歴」が何らかの条件を満たしたときに初めてキャラクタを変化させる仕組みであるが,引用例には,このような条件は示されていない。
したがって,審決は,引用発明の認定を誤り,同認定を前提とした引用発明に基づき相違点3に関する容易想到性を判断した誤りがある。
(8)相違点4に関する容易想到性の判断の誤り(取消事由8) 審決は,相違点4について,「関連するデータをデータベースに登録して14管理することは普通に行われており,引用発明において,ユーザ毎に“3次元情報”及び“アイテム装着情報”が格納される記憶部として,データベースを用いることに格別の困難性を見出せない。」と判断する。
しかし,本件補正発明は,コミュニティ内で,他ユーザにアバターを公開できるようにするための情報を格納するためのデータベースであるのに対し,引用発明は,個人でゲームを楽しむ上でのユーザ管理のための情報を記憶するデータベースであり,記憶部であって,本件補正発明と引用発明のデータベースは構成が異なるから,審決は,本件補正発明と引用発明のデータベースの構成の相違を看過したものである。
したがって,審決は,データベースの構成の相違を看過して相違点4に関する容易想到性を判断した誤りがある。
(9)相違点5に関する容易想到性の判断の誤り(取消事由9)審決は,特開2003-76846号公報(甲7)及び特開2002-221891号公報(甲8)を引用し,「仮想空間上のキャラクタの画像を,ユーザによるアクセス頻度が少ない場合に変化させることは,本願出願前に周知(以下,「周知技術4」という。)」である。」と周知技術4を認定し,相違点5について,周知技術4をも参酌して,「過去一定期間における画面データの送信回数が所定回数以下の場合に成長アイテムの画像を変化させること,又は,成長アイテムが現在の画像となってからの経過期間が所定期間以上の場合に前記成長アイテムの画像を変化させようとすることは,当業者が適宜設計し得る」と判断する。
しかし,審決には,以下のとおり誤りがある。
すなわち,特開2003-76846号公報及び特開2002-221891号公報のいずれにも「仮想空間」の記載がない。審決は,コンピュータ上での画面作成について,「仮想空間」を含めた技術として,周知技術4を認定した点に誤りがあり,相違点5に関する容易想到性の判断にも誤りがあ15る。
また,特開2003-76846号公報に記載された発明の作用効果は,家計簿を楽しむためにアクセス回数によりキャラクタを変化させることであり,特開2002-221891号公報に記載された発明の作用効果は,学習のためのモチベーション向上のため,キャラクタを変化させることであるのに対し,本件補正発明の作用効果は,「ネット上のコミュニティを活性化させる」(甲12)ことであり,周知技術4と本件補正発明との作用効果が異なるから,本件補正発明を容易に想到するとはいえない。
したがって,審決は,周知技術4の認定を誤り,作用効果の相違を看過して相違点5に関する容易想到性を判断した誤りがある。
2被告の反論審決の認定,判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
(1)取消事由1(引用発明の認定の誤り)に対し原告は,引用発明には,「利用履歴」に従ってキャラクタが歳を取る構成は記載されているものの,「利用履歴」を,ある条件に当てはめることによる「変化規則」は記載されていないと主張する。
しかし,引用発明は,「利用履歴に従って,キャラクタが歳を取るようにすること」を,コンピュータがプログラムを実行して実現している以上,「利用履歴」と「キャラクタが歳を取る」ことの関係について明確な条件がコンピュータに登録されていなければ動作できないから,引用例に接した当業者は,引用発明においても,キャラクタが歳を取る際に利用履歴が満たすべき条件が定義された「変化規則」と呼ぶべきものが当然に使用されていると理解できる。
したがって,「引用発明は,利用履歴に従って,キャラクタが歳を取るようにすることができるから,キャラクタについて所定の変化を規定する変化規則が登録されている」とした,審決の引用発明の認定に誤りはない。
16 (2)取消事由2(一致点の認定の誤り)に対しア変化規則の登録に関する一致点の認定の誤りについて 原告は,上記(1) のとおり,引用発明の認定に誤りがあるから,本件補正発明の引用発明の一致点を「上記キャラクタについて,経時的に変化し得る,所定の変化を規定する変化規則が登録されたシステム。」と認定した点に誤りがあると主張する。
しかし,上記(1) のとおり,引用発明について,「キャラクタについて所定の変化を規定する変化規則が登録されている」とした,審決の引用発明の認定に誤りはないから,これを前提とした取消事由2(一致点の認定の誤り)も理由がない。
イキャラクタの表示情報に関する認定の誤りについて 原告は,?審決は,一致点について,引用発明には「キャラクタの表示情報」及び「キャラクタを表示するための情報」が開示されていると認定するが,そのような記載はなく,またその意味も不明である,?審決は,一致点について,「引用発明のキャラクタサーバが送信するキャラクタ情報は,キャラクタを表示するための情報を含むから,引用発明と本件補正発明はともに,キャラクタの表示情報をネットワーク経由で送信するシステムである点で共通である。」と認定したが,同認定は誤りである,と主張する。
しかし,引用発明のキャラクタ情報に含まれる“3次元情報”,“アイテム装着情報”は,キャラクタを表示するための情報ということができるのであり(引用例の段落【0035】〜【0039】,【0044】〜【0046】,図4,図5,及び図7),審決は,それらの情報を意味するものとして,「キャラクタを表示するための情報」との表現を用いるのであるから,「引用発明のキャラクタサーバが送信するキャラクタ情報は,キャラクタを表示するための情報を含む」と認定したことに誤りはない。
17その上で,審決は,引用発明の「キャラクタを表示するための情報」が含まれる「キャラクタ情報」をネットワークを介して送信することと,本件補正発明の「アバターを含んだ画面」をネットワーク経由で送信することに共通する構成を一致点として,「引用発明と本件補正発明はともに,キャラクタの表示情報をネットワーク経由で送信するシステムである点で共通である。」と判断したものであり,「キャラクタの表示情報」は,引用発明の「キャラクタを表示するための情報」が含まれる「キャラクタ情報」と本件補正発明の「アバターを含んだ画面」の双方を含む意味であるから,審決における「キャラクタを表示するための情報」と「キャラクタの表示情報」の使い分けは明確であり,引用例に記載のない構成を,記載があるものとして一致点を認定したとはいえない。
したがって,審決の一致点の認定に誤りはない。
(3)取消事由3(相違点2,3の相互の関連を考慮せずに容易想到とした判断した誤り)に対し原告は,審決には,相違点2及び同3に係る構成についての容易想到性をそれぞれ別々に判断し,相違点2及び同3の相互の関係を考慮して,容易想到性を判断しなかった誤りがある,と主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。すなわち,審決は,相違点2及び同3を個別的に判断したものではなく,各相違点を総合的に判断し,その作用効果についても検討した上,当業者が容易に発明をすることができたと結論づけたものであり,誤りはない。
また,本件補正発明のシステムについて,通常アイテムと成長アイテムとでアイテムデータベースにおける管理に違いがある旨の記載はないから,アイテムデータベースに成長アイテムの画像データが登録される点が相違点として認定されていないことが相違点の看過であるともいえない。
したがって,審決に,相違点の看過による進歩性判断の誤りはない。
18(4)取消事由4(相違点1に関する容易想到性判断の誤り-その1)に対し原告は,相違点1に関して,?本件補正発明がサーバ側で完成したアバターを画面に含めて送信する技術であるのに対し,引用発明がゲーム機である端末でキャラクタを完成させる技術であるという相違について検討していない,?引用発明のキャラクタは,ゲーム内の空間を動き回るのに対し,本件補正発明のアバターは,画面に貼り付いて,画面の一部として利用者に閲覧させるとの相違について,検討していない,?引用発明は,利用者のゲーム機上のゲームでのみ利用するキャラクタの情報を送る構成を備え,ゲームを面白くすることを課題とするのに対し,本件補正発明は,ユーザが他ユーザに向けて,情報送信するため,サーバ内でキャラクタの表示が完成される必要があり,この機能により他ユーザに向けて情報を発信し,ネット上のコミュニティを活性化させることを課題とするから,課題の相違について検討していない,点に誤りがあると主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。すなわち,?サーバと端末の機能の相違については,原告主張に係る本件補正発明の構成は,特許請求の範囲の記載に基づくものではないから,原告の主張は,主張自体失当である。また,?アバターとキャラクタとの機能の相違については,本件補正発明には,当該アバターが利用者に閲覧させるとの構成やアバターが動くとの構成についての記載はないこと,他方,アバターがゲームで使用されていたこと(乙1・273頁),画面内で動くことができる動的なアバターが使用されていたこと(乙1・275頁),画面に貼り付ける静的なアバターが使用されていたこと(甲3・73頁)がいずれも,本願出願前に普通に行われていたことに照らすと,アバターとキャラクタとの違いはなく,原告の主張は根拠がない。さらに,?審決は,課題の相違を前提とした上で,容易想到性判断をしたものではないから,原告の主張は,その主張自体失当である。なお,本件補正発明の課題は,「ネットワーク上においてユーザが登録19したキャラクター画像を時間の経過と共に変化させることができるようにすること」(本願明細書の段落【0006】)であり,「ネット上のコミュニティを活性化することができる」(段落【0031】)は,本件補正発明の課題ではなく,好適な一例の作用効果を記載したものである。
以上のとおり,審決には,相違点の看過した誤りはない。
(5)取消事由5(相違点1に関する容易想到性の判断の誤り-その2)に対し原告は,?周知技術1は,キャラクタを動き回らせることが可能なゲーム空間のような仮想空間でなく,2次元画像である掲示板やチャットの画面を対象とするのに対し,引用発明は,キャラクタがゲーム空間を動き回ることを想定したものであって,周知技術1を引用発明に適用する動機付けや根拠が存在しないから,引用発明に周知技術1を適用して,本件補正発明の構成に至ることは困難である,また,?上記周知技術は,Web上のコミュニティ内のメンバー間で自分の分身としてのアバターを見せて,メンバー全員がアバターを見られるようにする技術であるのに対し,引用発明は,利用者がゲーム上でキャラクタを利用し,単一のゲーム機に情報を送る技術である点において相違するので,両者を組み合わせることは容易でない,などと主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。
まず,引用発明と周知技術1は,ともにユーザの分身として仮想空間上に表示されるキャラクタに関するものであり,キャラクタの外観を部分的に変えられる点において共通し,引用発明のキャラクタも周知技術1のアバターも,コンピュータにより作成されて表示されるものであって,コンピュータが作成した空間,すなわち仮想空間にレイアウトされるものである点に照らすならば,引用発明に周知技術1を適用する動機付けや根拠が存在するといえる。
また,アバターをWeb上のコミュニティで用いることは,本願出願前に20既に一般向けに提供されていたサービスであり(乙1・274頁,甲3・73頁,本願明細書の段落【0002】),アバターを含んだ画面データを送信することも,従来技術として行われているから(本願明細書の段落【0002】及び【0003】,甲3・73頁,乙2,乙4の段落【0020】,【0046】及び【0047】,乙5の【請求項1】及び【請求項2】),本願出願前に,アバターはWeb上のコミュニティで用いられ,アバターを含む画面データを送信することが普通に行われていたこと,「アバターを含む画面を送信する」技術を,引用発明のゲームキャラクタシステムに適用することについて阻害要因はない。
したがって,審決の判断に誤りはない。
(6) 取消事由6(相違点2に関する容易想到性の判断の誤り)に対し原告は,特開2002-94675号公報に,「仮想空間」との記載がなく,審決のした周知技術の認定及びこれに基づく容易想到性の判断に誤りがあると主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。
特開2002-94675号公報のキャラクタは,コンピュータにより作成されて表示されるものであって,コンピュータが作成した空間,すなわち仮想空間上にレイアウトされたものであるから,特開2002-94675号公報の段落【0028】及び図5には,キャラクタが仮想モール中を移動することが記載されている。そうすると,本願出願前に,仮想空間上に表示されるキャラクタの構成要素(パーツ)となる画像データを登録したデータベースが周知技術であったといえる。
したがって,周知技術2についての審決の認定に誤りはなく,相違点2について,容易想到であるとした審決の判断に誤りはない。
(7)取消事由7(相違点3に関する容易想到性の判断の誤り)に対し 原告は,本件補正発明の相違点3に係る構成が容易であるとした審決の判21断に誤りがあると主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり,理由がない。すなわち,上記(1) のとおり,引用発明について,「キャラクタについて所定の変化を規定する変化規則が登録されている」とした審決の引用発明の認定に誤りはないから,取消事由1の主張を前提とした原告の主張は理由がない。
(8) 取消事由8(相違点4に関する容易想到性の判断の誤り)に対し 原告は,本件補正発明の相違点4に係る構成が容易であるとした審決の判断に誤りがあると主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり,理由がない。すなわち,本件補正発明は,アバターデータベースがコミュニティ内で,他ユーザにアバターを公開できるようにするための情報を格納することを構成要素とするものではないから,原告の主張は,その主張自体失当である。
審決は,相違点4として,記憶部がデータベースであるか否かの違いを認定した上で,関連するデータをデータベースに登録して管理することは普通に行われており,引用発明において,ユーザ毎に“3次元情報”及び“アイテム装着情報”が格納される記憶部として,データベースを用いることは困難でないと判断したが,審決の同判断に誤りはない。
(9)取消事由9(相違点5に関する容易想到性の判断の誤り)に対し原告は,周知技術4を組み合わせることによって,本件補正発明の作用効果は,「ネット上のコミュニティを活性化させる」(甲12)ことを容易に想到することはできないなどと主張する。
しかし,原告の主張は,いずれも理由がない。
すなわち,本件補正発明では,アバターをネット上のコミュニティにおいて使用することについては特定されていないこと,「ネット上のコミュニティの活性化を図ることもできる。」(本願明細書の段落【0031】)という作用効果は,好適な1例を示したにすぎないこと,本願補正発明の作用効22果は「ネットワーク上においてユーザが登録したキャラクター画像を時間の経過と共に変化させることが可能となる。」(本願明細書の段落【0037】)であること,他方,周知技術4は,時間の経過と共にキャラクタを変化させるという点で,本件補正発明及び引用発明と共通の作用効果を有しているといえることから,本願補正発明に至ることが容易であるとした審決の判断に誤りはない。
第4当裁判所の判断 当裁判所は,以下のとおり,原告の主張する取消事由はいずれも理由がなく,審決の結論に誤りはないものと判断する。
1取消事由1(引用発明の認定の誤り)について原告は,?引用例には,「利用履歴」に従ってキャラクタが歳を取る構成は記載されているものの,「利用履歴」をある条件に当てはめることによる「変化規則」は,記載されていない,?ところで,キャラクタを「変化規則」により変化させる構成とは,「利用履歴」が何らかの条件を満たしたときに初めてキャラクタを変化させる仕組みであり,引用発明のようにキャラクタの「利用履歴」に従って変化させるだけの構成とは異なる,?したがって,引用発明について,「キャラクタについて所定の変化を規定する変化規則が登録されている」とした審決の認定に誤りがある,と主張する。
しかし,原告の上記主張は,以下のとおり,理由がない。
すなわち,本件補正発明の特許請求の範囲(請求項1)は,「前記アイテムのうち,経時的に変化し得る成長アイテムについて,その変化を規定する変化規則が登録された変化規則データベースと,(中略)を備え,」,「前記アバターデータベースに登録されたアイテム情報に該当するアイテムの画像データに基づいてアバターを生成し,その際,前記成長アイテムについては前記変化規則データベースに登録された変化規則に応じた画像を用いる手段」,及び「前記変化規則は,過去一定期間における前記画面データの送信回数が所定回23数以下の場合に前記成長アイテムの画像を変化させること,又は,前記成長アイテムが現在の画像となってからの経過期間が所定期間以上の場合に前記成長アイテムの画像を変化させることを含む」と記載されている。同記載によれば,本件補正発明の「変化規則」は「利用履歴」をある条件に当てはめることにより画像を変化させるものであるということができる。
他方,引用発明は,「利用履歴に従って,キャラクタが歳を取るようにすることができ」るものの,利用履歴に従ってキャラクタが歳を取ることを実現するための変化規則の具体的な内容を規定しておらず,引用発明が「利用履歴に従って,キャラクタが歳を取るようにすることができ」ることは,必ずしも過去一定期間における前記画面データの送信回数が所定回数以下の場合や画像変化後の経過期間が所定期間以上である場合に,所定の画像が変化することを意味するものではない。したがって,引用発明は,本件補正発明の「前記変化規則は,過去一定期間における前記画面データの送信回数が所定回数以下の場合に前記成長アイテムの画像を変化させること,又は,前記成長アイテムが現在の画像となってからの経過期間が所定期間以上の場合に前記成長アイテムの画像を変化させることを含む」との構成において,相違する。
しかし,審決は,上記の構成の相違点については,「本件補正発明は,アイテムのうち,経時的に変化し得る成長アイテムについて,その変化を規定する変化規則が登録された変化規則データベースを備え(中略)るのに対して,引用発明は,そのような変化規則データベースについて記載がなく,また,キャラクタが歳を取るときに,キャラクタの外観がどのように変化するのかも明確でない点」(相違点3),及び「変化規則に関して,本件補正発明の変化規則は,過去一定期間における前記画面データの送信回数が所定回数以下の場合に前記成長アイテムの画像を変化させること,又は,前記成長アイテムが現在の画像になってからの経過期間が所定期間以上の場合に前記成長アイテムの画像を変化させることを含むのに対して,引用発明は,利用履歴に従って,キャラ24クタが歳を取るようにすることができるとしか記載されていない点」(相違点5)として認定している。
したがって,仮に審決の認定に,引用発明の認定について適切を欠く点があったとしても,本件補正発明と引用発明との相違点として認定されている以上,結論に影響を及ぼすことはなく,この点の原告の主張は失当である。
2取消事由2(一致点の認定の誤り)について(1)変化規則の登録に関する一致点の認定の誤りについて原告は,取消事由1の主張を前提に,審決は,一致点として,「上記キャラクタについて,経時的に変化し得る,所定の変化を規定する変化規則が登録されたシステム。」と認定するが,引用発明の認定の誤りに基づくものであり,審決の一致点の認定に誤りがあると主張する。
しかし,上記1のとおり,審決に,原告主張の引用発明の認定の誤りがあり,「変化規則が登録されたシステム」を一致点としたことに適切を欠く点があったとしても,相違点全体の看過はなく,結論に影響を及ぼすものではないから,原告の主張は失当である。
(2)キャラクタの表示情報に関する認定の誤りについて原告は,?審決は,一致点について,「引用発明のキャラクタサーバが送信するキャラクタ情報は,キャラクタを表示するための情報を含むから,引用発明と本件補正発明はともに,キャラクタの表示情報をネットワーク経由で送信するシステムである点で共通である。」と判断し,「キャラクタの表示情報」と「キャラクタを表示するための情報」という2つの類似表現を用いるが,これらの表現は引用例にはなく,その意味も不明である,?審決は,「キャラクタ情報」に関しても,引用発明にない「キャラクタ情報がキャラクタを表示するための情報を含んでいる」という構成を認定するが,同認定には根拠がないと主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり,採用できない。
25引用例の記載によれば,「キャラクタ」としては,ユーザ本人の代わりを務めるもの又はペットキャラクタが想定されること,「キャラクタ情報」は,ゲーム機1(ユーザのコンピュータ)のユーザが保有するキャラクタに関する情報をいうものであり,その中には“3次元情報”,“属性”,“アイテム情報”,“アイテム”,“社会情報”,“履歴情報”,“セキュリティ情報”が含まれること,これらには,キャラクタの外観の画像やキャラクタと共に示されるアイテムの画像を特定して表示させる情報が含まれることが,記載されている(段落【0021】,【0022】,【0025】,【0037】〜【0055】,図4〜8)。そうすると,「キャラクタ情報」には,ユーザ本人の代わりを務めるものであるキャラクタの外観の画像やキャラクタと共に示されるアイテムの画像を特定して表示させる情報が含まれるということができ,審決が,本件補正発明と引用発明との一致点の認定において,「キャラクタ情報には,ユーザ本人の代わりを務めるものであるキャラクタの外観を特定する情報やキャラクタと共に示されるアイテムの画像を特定して表示させる情報が含まれる」との趣旨で,「キャラクタ情報は,キャラクタを表示するための情報を含む」と記載した点に,不合理な点はない。一方,審決が,一致点として認定した「キャラクタの表示情報」は,ユーザが登録したキャラクタを表示させるべく,ネットワーク経由で送信される情報を意味するものと理解できるから,その趣旨に不明確な点はない。また,審決がこのように表記したことによって,審決の結論に影響を与えることはない。
以上のとおりであり,原告のこの点の主張は,失当である。
3取消事由3(相違点2,3の相互の関連を考慮せずに容易想到とした判断した誤り)について原告は,本件補正発明の特徴的な構成は,アイテムデータベースに成長アイテムの画像が登録されていることであるから,容易想到性の判断においては,相違点2及び同3の相互の関係を考慮して判断すべきであったにもかかわらず,26相違点2及び同3を個々別々に判断して,容易想到であると判断した誤りがある,と主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり理由がない。
すなわち,「アイテムデータベースに登録されているのがアイテムの画像データであること」,「成長するのがアバターそのものではなくアバターの構成要素であるアイテムのうちの成長アイテムであること」は,それぞれ審決が相違点2,同3として検討した事項に含まれている。他方,原告が本件補正発明の特徴的な構成の1つであると主張する「アイテムデータベースに成長アイテムの画像が登録されていること」は,上記「アイテムの画像データをアイテムデータベースに登録すること」及び「成長アイテムがアイテムの一つであること」を個々別々に検討することによっては,十分に尽くすことができない,格別の技術的意義を含むものではない。
なお,「本件補正発明のように構成したことによる効果も引用発明,及び周知技術から予測できる程度のものであって,格別のものではない。」(審決書14頁)との審決の記載によれば,審決は,作用効果を含めて,相違点2及び同3を総合的に判断したことが窺える。
したがって,原告の主張は失当である。
4取消事由4(相違点1に関する容易想到性判断の誤り-その1)について原告は,審決においては,本件補正発明がサーバ側で完成したアバターを画面に含めて送信する技術であるのに対し,引用発明がゲーム機である端末でキャラクタを完成させる技術であるという相違点の認定に至らず,サーバと端末の役割や役割を実現する技術の相違について検討していない,と主張する。
しかし,原告の上記主張は,以下のとおり理由がない。
すなわち,審決は,相違点1に関して,本件補正発明が「アバターを含んだ画面データ」を「生成」した上で「送信する」ものであって,端末ではなくサーバにおいて画面データを生成した上で送信を行う点において引用発明と相違27するが,同相違点は,サーバで画面データを生成して送信することは周知であり,引用発明においてこの周知技術を採用することは当業者が容易になし得たとしており,サーバと端末の役割や役割を実現する技術が異なることを当然の前提としていると認められる。したがって,審決がサーバと端末の役割や役割を実現する技術の相違を検討していない旨の原告の主張は,その主張自体失当である。
次に,原告は,引用発明のキャラクタは,ゲーム内の空間を動き回るのに対し,本件補正発明のアバターは,画面に貼り付いて,画面の一部として利用者に閲覧させるものであるから,引用発明のキャラクタと本件補正発明のアバターとでは機能が異なるにもかかわらず,審決は,機能の相違について検討していないと主張する。
しかし,原告の上記主張も,以下のとおり理由がない。
すなわち,特許請求の範囲の記載によれば,本件補正発明における「アバター」と「画面」との関係としては,「アバターを含む画面」との文言により「画面」に「アバター」が含まれる旨が特定される一方,「画面」に「アバター」が含まれる際の具体的な態様については特定されておらず,アバターが画面に貼り付いて画面の一部として利用者に閲覧させるものであるか否かは特定されていない。なお,発明の詳細な説明においても,いずれの記載も「画面」に「アバター」が含まれることを示すにとどまり,「画面」に「アバター」が含まれる際の具体的な態様を特定する記載は見当たらない。したがって,原告の主張は,特許請求の範囲発明の詳細な説明に基づく主張でないから,採用の限りでない。
さらに,原告は,引用発明は,利用者のゲーム機上のゲームでのみ利用するキャラクタの情報を送る構成を備え,ゲームを面白くすることを課題とするのに対し,本件補正発明は,ユーザが他ユーザに向けて,情報送信するため,サーバ内でキャラクタの表示が完成される必要があり,この機能により他ユーザ28に向けて情報を発信し,ネット上のコミュニティを活性化させることを課題としているにもかかわらず,審決は,この点を判断していないと主張する。
しかし,原告の上記主張も,以下のとおり理由がない。
すなわち,特許請求の範囲(請求項1)の記載によれば,本件補正発明は,ユーザが登録したアバターをユーザのコンピュータの画面に表示させるべく情報をネットワーク経由で送信するシステムであることは特定されているが,他ユーザに向けて情報送信するものであることは特定されていない。また,「アバター」とは,ユーザ本人を象徴するキャラクタ画像を意味すると理解し得るが(本願明細書の段落【0002】),他のユーザに示されるものに限定されるとはいえない。また,本願明細書の発明の詳細な説明によれば,本件補正発明の課題は,「ネットワーク上においてユーザが登録したキャラクター画像を時間の経過と共に変化させることができるようにする」(段落【0006】)ことであり,「ユーザ間のコミュニティの更なる活性化も期待できる」こと(段落【0005】),「ネット上のコミュニティの活性化を図ることもできる」こと(段落【0031】)は,本件補正発明の課題ではなく,本件補正発明がWeb上のコミュニティで用いられた場合に予測される望ましい作用効果の一例にすぎないと解される(段落【0046】,【0058】)。したがって,原告の主張は,特許請求の範囲の記載に基づく主張でないから,採用の限りでない。
以上のとおりであり,相違点1に関する審決の容易想到性判断の誤りがあるとの原告の主張は失当である。
5取消事由5(相違点1に関する容易想到性の判断の誤り-その2)について(1)原告は,審決において,周知技術1において認定していなかった「仮想空間上に表示される」という構成を前提として,引用発明に周知技術1を適用することが容易であると判断したが,周知技術1の上記構成の認定根拠が明らかでないと,主張する。
29しかし,原告の上記主張は,採用できない。すなわち,コンピュータの画面上に表示された現実社会の一部をシミュレーションした世界や空間を「仮想世界」や「仮想空間」と称することは一般的な用語と認められる(乙1)。審決は,周知技術1について,このような用語により,アバターがユーザのコンピュータ画面に表示されることを指して「仮想空間上に表示される」と表現したものであると理解できる。原告の主張は,採用の限りでない。
また,原告は,周知技術1は,キャラクタを動き回らせることが可能なゲーム空間のような仮想空間でなく,2次元画像である掲示板やチャットの画面に貼り付けるものであり,引用発明のようにキャラクタがゲーム空間を動き回ることを想定したものではなく,周知技術1を引用発明に適用する動機付けや根拠が存在しないと主張する。
しかし,原告のこの点の主張も,採用できない。確かに,原告主張のとおり,周知技術1は,アバターを2次元画像である掲示板やチャットの画面に貼り付けるものであり(甲3),引用発明のようにキャラクタがゲーム空間を動き回ることを想定したものではない。しかし,甲3には「自分の分身であるアバターを設定し,ネット上に持てるのが特徴だ。」,「アバターは(中略)自分と似せてもいいし,奇抜にして目立つのもいい。」との記載があることから,周知技術1における「アバター」は,ユーザ本人を象徴し,その分身としてユーザの代わりを務めるキャラクタ画像をいうものであることと理解できる。そして,引用発明のキャラクタはゲーム上でユーザの代わりを務めるものであり(引用例の段落【0025】),仮想空間上でユーザ本人の代わりを務める点で,周知技術1のアバターと共通するから(甲3),引用発明に周知技術1を適用する動機付けや根拠が存在するというべきである。原告の主張は,採用の限りでない。
原告は,周知技術1における分身は,ユーザが自分を表現することを目的としたものであって,引用発明の分身のように,ユーザがゲームのストーリ上の30人物になり代わることを目的とするものではないから,周知技術1を引用発明に適用するには,機能の目的やユーザが利用するための動機などの相違による阻害要因があると主張する。
しかし,原告のこの点の主張も理由がない。すなわち,周知技術1における「アバター」は,ユーザの代わりを務めるキャラクタ画像をいうものであると理解され,周知技術1のアバターと引用発明のキャラクタは,コンピュータの画面上でユーザの代わりを務める点で共通しており,ユーザが自分を表現することを目的としたものであっても,ユーザがゲームのストーリ上の人物になり代わることを目的とするものであっても,ユーザ本人の代わりを務めるキャラクタ画像を仮想空間上に表示するという目的は同じであるから,周知技術1を引用発明に適用することを阻害する要因はない。
以上のとおりであって,審決は,阻害要因を看過して相違点1に関する容易想到性を判断した誤りがあるとの原告の主張は失当である。
(2)原告は,審決が,相違点1について,「アバターはWeb上のコミュニティで用いられ,アバターを含む画面データを送信することは普通に行われている」ことを前提として,容易想到性を判断しているが,Web上のコミュニティ内のメンバー間で自分の分身としてのアバターを見せて楽しむもので,メンバー全員がアバターを見られるようにする技術であるのに対し,引用発明は,利用者がゲーム上でキャラクタを利用し,楽しむもので,単一のゲーム機に情報を送る技術である点で相違するから,上記周知技術と引用発明とは利用状況が異なり,引用発明に適用することは容易とはいえない,などと主張する。
しかし,上記(1) のとおり,審決において引用発明と対比される甲3記載の技術は,アバターをユーザ本人の代わりを務めるものとして用いるものであることが明らかであり,この点で引用発明と共通し,ユーザ本人の代わりを務めるものを変化させて楽しむことができる点でも共通するから(引用例の段落【0004】,甲3の73頁),甲3記載の技術を引用発明に適用するについ31て,格別の阻害要因が存在するとはいえない。
したがって,原告の主張は失当である。
6取消事由6(相違点2に関する容易想到性の判断の誤り)について原告は,審決においては,相違点2について,「仮想空間上に表示されるキャラクタの構成要素(パーツ)となる画像データを登録したデータベース」が周知技術2であると認定し,容易想到性を判断したが,「仮想空間」は,特開2002-94675号公報には記載がないから,周知技術2の認定及びこれに基づく容易想到性の判断に誤りがある,と主張する。
しかし,原告の上記主張は,以下のとおり失当である。
すなわち,上記5(1) のとおり,コンピュータの画面上に表示された現実社会の一部をシミュレーションした世界や空間を「仮想世界」や「仮想空間」と称することは一般的な語法と認められるから,審決が,周知技術2について,「仮想空間上に表示されるキャラクタの構成要素(パーツ)となる画像データを登録したデータベース」と認定した趣旨は,「コンピュータの画面に表示されるキャラクタの構成要素(パーツ)となる画像データを登録したデータベース」との事項を指すものと理解され,同事項は,特開2002-94675号公報の段落【0017】,【0018】(甲4)及び特開2002-8062号公報の段落【0012】(甲2)に示されるから,審決の周知技術2の認定に誤りがあるとはいえない。
したがって,原告の主張は失当である。
7取消事由7(相違点3に関する容易想到性の判断の誤り)について原告は,取消事由1の主張(上記第3の1(1) )を前提に,審決が,相違点3について,容易想到であるとした判断に誤りがあると主張する。
しかし,原告の主張は,採用の限りでない。すなわち,上記1のとおり,審決は,引用発明において「利用履歴」をある条件に当てはめることによる「変化規則」との事項は記載していないが,同事項は,それぞれ,別途相違点とし32て摘示した上,それぞれについて容易想到性の有無を判断している。
したがって,審決に,原告主張の引用発明の認定の誤りがあるか否かにかかわらず,原告の主張は,結論に影響を及ぼすものではないから,主張自体失当である。
8取消事由8(相違点4に関する容易想到性の判断の誤り)について原告は,相違点4について,本件補正発明は,コミュニティ内で,他ユーザにアバターを公開できるようにするための情報を格納するためのデータベースであるのに対し,引用発明は,個人でゲームを楽しむ上でのユーザ管理のための情報を記憶するデータベースであって,本件補正発明と引用発明のデータベースは構成が異なるから,審決は,本件補正発明と引用発明のデータベースの構成の相違を看過して,相違点4に関する容易想到性を判断した誤りがあると主張する。
しかし,原告の上記主張は,以下のとおり失当である。
引用発明の,キャラクタの体の部分ごとの形状,体の部分ごとの装着可能アイテムは,対応する画像データがアイテムデータベースに登録されることが示されていないものの,表示される映像に登場するユーザ本人の代わりを務めるキャラクタ画像の構成要素となる点で,本件補正発明の「アイテム」に対応するものといえる。そして,引用発明のキャラクタ特有情報(引用例の段落【0037】,【0038】)は,“属性”,“3次元情報”,“アイテム装着情報”といった,ユーザごとに格納され登録された,ユーザ本人の代わりを務めるキャラクタ画像に関する情報であるから,本件補正発明の「アイテム情報」に相当し,引用発明の「記憶部」は,このアイテム情報が登録された手段である点で本件補正発明の「アバターデータベース」に対応する。また,上記4のとおり,「アバター」との語は,必ずしも他ユーザに提示されるもののみを意味するとはいえない。審決は,本件補正発明の「アバターデータベース」と引用発明の「記憶部」を対比した上,引用発明のアイテムに対応する画像データ33がアイテムデータベースに登録されていないことについて,相違点4として「本件補正発明は,ユーザ毎に,各ユーザのアバターを構成するアイテムに関するアイテム情報が登録されたアバターデータベースを備えているのに対して,引用発明は,ユーザ毎に,キャラクタの体の部分毎の形状などが含まれる“3次元情報”,及びキャラクタが装着するアイテムに関する“アイテム装着情報”を記憶部に格納している点。」と認定し,同認定を基礎に,「引用発明において,ユーザ毎に“3次元情報”及び“アイテム装着情報”が格納される記憶部として,データベースを用いることに格別の困難性を見出せない。」と容易想到性の判断をしているから,審決が相違点を看過して相違点4について容易想到性の判断をした誤りがあるとはいえない。
したがって,原告の主張は失当である。
9取消事由9(相違点5に関する容易想到性の判断の誤り)について原告は,審決には,相違点5について,周知技術4を適用して,周知技術4の認定及び,容易想到性の判断に誤りがあると主張する。
しかし,原告の上記主張は,理由がない。すなわち,上記5(1) のとおり,コンピュータの画面上に表示された現実社会の一部をシミュレーションした世界や空間を「仮想世界」や「仮想空間」と称することは一般的な語法と認められるから,審決が,周知技術4について,「仮想空間上のキャラクタの画像を,ユーザによるアクセス頻度が少ない場合に変化させること」と認定した点は,「コンピュータの画面に表示されたキャラクタの画像を,ユーザによるアクセス頻度が少ない場合に変化させること」との事項をいうものと理解され,この事項は,特開2003-76846号公報の段落【0046】,【0047】(甲7)及び特開2002-221891号公報の段落【0027】(甲8)に示されるから,審決の周知技術4の認定に誤りがあるとはいえない。
また,特開2003-76846号公報には,家計簿を楽しむためにアクセス回数によりキャラクタを変化させること,特開2002-221891号公34報に記載された発明の作用効果は学習のためのモチベーション向上のため,キャラクタを変化させることと記載されていること,他方,本件補正発明は「アバターに対するユーザ本人の愛着が湧き易く,アバターの利用促進が期待できる」ことが記載され,本件補正発明においてアバターが時間と共に変化することによる作用効果として記載されていること(本願明細書の段落【0005】)に照らすならば,両者は,作用効果において共通する。審決が,相違点5について,容易想到であるとした判断に誤りはない。
したがって,原告の主張は失当である。
10 小括以上によれば,原告の主張する取消事由はいずれも失当であり,審決の結論に影響を及ぼすものではない。原告は,その他縷々主張するが,いずれも採用の限りでない。したがって,審決が取り消されるべきであるとする原告の請求は理由がない。
第5結論よって,原告の請求は,理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 飯村敏明