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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成19ワ13513特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成19ワ3494特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
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平成20ワ2387特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
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事件 平成 20年 (ワ) 36028号 特許権侵害差止等請求事件
東京都大田区<以下略>
原告株 式会社寺岡精工
同訴訟代理人弁護士冨永博之 大阪市<以下略>
被告福 島工業株式会社
同訴訟代理人弁護士平山博史
同 林裕悟
同 都築康一
同 補佐人弁理 士森本聡
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2010/05/21
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求1被告は,別紙物件目録(1)ないし(3)記載の製品を製造し,販売し,販売の申出をしてはならない。
2被告は,別紙物件目録(1)ないし(3)記載の製品を廃棄せよ。
3被告は,原告に対し,4億4696万円及びこれに対する平成20年12月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要1本件は,浄水自動販売機に関する後記2,( )の特許の特許権者である原告2,, , が 被告が製造 販売する浄水自動販売機は上記特許権を侵害すると主張して被告に対し,特許法100条に基づき,被告製品の製造,販売等の差止め,被告製品の廃棄を求めるとともに,特許権侵害不法行為(民法709条,特許法102条1項)に基づき,損害賠償金4億4696万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20年12月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2前提となる事実(証拠等を掲記した事実を除き,当事者間に争いがない )。
( ) 当事者1ア原告は,各種計量機器等の開発,製造,販売,輸出入等を目的とする株式会社である (弁論の全趣旨)。
イ被告は,業務用冷凍・冷蔵庫,ショーケース,製氷器等の製造,販売等を目的とする株式会社である (弁論の全趣旨)。
( ) 原告の特許権2原告は,次の特許(以下,この特許に係る特許請求の範囲の請求項1記載の発明を「本件特許発明」といい,その特許を「本件特許 ,その特許権を」「本件特許権」といい,その明細書を「本件明細書」という。その特許公報(甲2)を別紙として添付する )特許権者である (甲1,2) 。。
ア登録番号特許第3815295号イ発明の名称浄水自動販売機ウ出願日平成13年10月29日エ出願番号特願2001-331230オ登録日平成18年6月16日カ特許請求の範囲「 請求項1】注入位置に購入者が持参の容器をセットすると,注水口か 【ら原水を浄化した浄水が前記容器に注水される浄水自動販売機において,前記注水位置に容器が置かれているか否かを検出する容器検出センサと,注水位置の前面に設けた扉の閉じ状態をロック或いは解除し得るロック機構を備え,電源投入時に前記扉の閉じ状態をロックし,購入者が浄水を購入する操作を行うと,前記注水口から所定量の排水, , が行われて 浄水装置から注水口に至る浄水の通路を洗浄すると共に洗浄後に前記扉のロックを解除し,容器が注水位置にセットされると容器に注水し,その後,容器の取り出しを前記容器検出センサが検出すると,前記扉の閉じ状態をロックするよう制御することを特徴とする浄水自動販売機。
【請求項2 (略 」】)( ) 本件特許発明構成要件の分説3本件特許発明構成要件を分説すると次のとおりであり,それぞれ「構成要件?」ないし「構成要件?」という。
?注水位置に購入者が持参の容器をセットすると,注水口から原水を浄化した浄水が前記容器に注水される浄水自動販売機において,?前記注水位置に容器が置かれているか否かを検出する容器検出センサと,?注水位置の前面に設けた扉の閉じ状態をロック或いは解除し得るロック機構を備え,?電源投入時に前記扉の閉じ状態をロックし,?購入者が浄水を購入する操作を行うと,前記注水口から所定量の排水が行われて,浄水装置から注水口に至る浄水の通路を洗浄すると共に,?洗浄後に前記扉のロックを解除し,容器が注水位置にセットされると容器に注水し,?その後,容器の取り出しを前記容器検出センサが検出すると,前記扉の閉じ状態をロックするよう制御することを特徴とする?浄水自動販売機( ) 被告の行為4被告は,平成18年6月ころから 「RO水自動販売機」と称する浄水自 ,動販売機(以下,被告が製造,販売する浄水自動販売機を「被告製品」という〔被告製品の構成については当事者間に争いがある)を製造,販売し。〕。
ている。
( ) 構成要件の充足5被告製品は,構成要件?の「所定量の排水」の点,構成要件?を除き,本件特許発明構成要件を充足する。
3争点( ) 被告製品の構成1( ) 構成要件の充足2ア構成要件?の「所定量の排水」の充足イ構成要件?の充足( ) 特許法104条の3第1項の権利行使の制限3ア新規性欠如(特許法29条1項1号)イ進歩性欠如(特許法29条2項)( ) 損害額(特許法102条1項)4第3争点に関する当事者の主張1争点( )(被告製品の構成)について1〔原告〕被告製品の構成は,別紙被告製品構成説明書〔原告 (1)〜(3)記載の 〕とおりである。
〔被告〕被告製品の構成は,別紙被告製品構成説明書〔被告〕記載のとおりである。
2争点( )(構成要件の充足)について2( ) 構成要件?の「所定量の排水」の充足 1〔原告〕被告製品において,所定時間バルブSV1(被告製品構成説明書〔被告〕図1,3)を開ければ,ある一定の圧力によって所定量の排水がなされることは物理法則上明らかであり 「時間」による排水制御は本件発明の「量」 ,,「」 による排水制御に含まれるのであるから 被告製品において 所定量の排水が行われることは明らかである。
本件明細書にも 「浄水装置10を稼働させて浄水(純水)を作り,注水 ,口12から排水する。この動作を所定時間(例えば,5秒間〜10秒間)行う(段落【0016 )と記載されており,浄水装置を所定時間だけ作動 。」】させて浄水の通路内の残留水を排水する本件特許発明実施例が開示されている。
〔被告〕被告製品では,タイプA〜Cのいずれにおいても,浄水装置を所定時間だけ作動させることによって浄水の通路内に残留する水を排水するものであり 「量」に基づく排水制御は行っていないから 「所定量の排水」によっ , ,て浄水の通路を洗浄しておらず,構成要件?を充足しない。
( ) 構成要件?の充足2〔原告〕被告製品においても,容器が注水位置にセットされた後に,容器に注水がなされていることには変わりはなく,その間に 「扉の閉じ状態の確認」と ,「給水ボタンの操作」が単に付加されているにすぎず,本件特許発明同一の作用効果を有する以上,構成要件?を充足することは明らかである。
〔被告〕本件特許発明では「容器が注水位置にセットされると容器に注水」しており,容器のセットが注水動作の開始条件とされているのに対して,被告製品では,タイプA〜Cのいずれにおいても,容器が容器設置台に設置されるだけでは足りず,扉を閉じ状態とすること,更に給水ボタンを操作することが注水動作の開始条件とされているため,本件特許発明と被告製品とでは明らかに注水動作の開始条件が異なっており,構成要件?を充足しない。
3争点( )(特許法104条の3第1項の権利行使の制限)について3( ) 新規性欠如(特許法29条1項1号) 1〔被告〕ア本件特許の出願前である平成13年3月15日から同月17日に開催された健康博覧会2001に出展され,日本国内で公知となっていた株式会社マーフィードの浄水自動販売機「WCBVDMF3」は,以下のように,本件特許発明構成要件?〜?のすべての構成を備え,本件特許発明同一の発明である(乙1の1〜4 。したがって,本件特許発明新規性欠如を理由 )として特許無効審判により無効とされるべきものであり,特許法104条の3第1項により,原告は被告に対し,本件特許権の侵害を理由として権利を行使することはできない。
イ「WCBVDMF3」は,購入者が持参した専用容器に浄水を販売する装置であり,構成要件?,?を備える(乙1の3 。)「WCBVDMF3」のセット確認センサーは構成要件?の容器検出センサと一致する(乙1の3,4 。)乙1の3に記載された扉ロック機能,乙1の4に記載された取出口ロックは,構成要件?の扉及び扉ロック機構と一致し,乙1の3に記載された「待機時…扉がロックされる安全機能」は構成要件?,?と一致する。
「WCBVDMF3」では,コインを投入すると扉を閉じた状態で注水口から排水が行われ,排水後に扉のロックが解除され,注水位置に容器がセットされると容器内に浄水の注水が行われるが,この動作は構成要件?,?と一致する。
〔原告〕,「 , ア本件特許発明構成要件?は購入者が浄水を購入する操作を行うと前記注水口から所定量の排水が行われて,浄水装置から注水口に至る浄水の通路を洗浄する」というものであるが,浄水自動販売機「WCBVDM」,「 ,。」, F3 の販売方法についてはコイン式・カード式・併用式 選択可能「3種類の販売方法が選択可能(乙1の3)と記載されているにすぎ 。」ず,購入操作を行うと扉をロックした状態で浄水装置から注水口に至る浄水通路の洗浄がなされることは,乙1の1〜4に開示されていない。したがって 「WCBVDMF3」は構成要件?を具備しない。 ,イ本件特許発明構成要件?は 「洗浄後に前記扉のロックを解除し,容 ,器が注水位置にセットされると容器に注水」するというものである 「W。
CBVDMF3」が「容器検出センサ」を備えていること,及び「扉のロック機構」を備えていることは認めるが,構成要件?の扉をロックした状態での洗浄後に扉のロックが解除され容器がセットできるようになるとの構成は乙1の1〜4に開示されておらず 「WCBVDMF3」は構成要 ,件?を具備しない。
ウ被告は 「WCBVDMF3」では 「コインを投入すると,扉を閉じ , ,た状態で注水口から排水が行われ,排水後に扉のロックが解除され,注水位置に容器がセットされると,容器内に浄水の注水が行われる」と主張するが,その根拠はどこにも示されていない。
エしたがって,本件特許発明が「WCBVDMF3」と同一の発明であり新規性を欠如するとの被告の主張には理由がない。
( ) 進歩性欠如2〔被告〕本件特許発明は,本件特許の出願日前に頒布された刊行物である下記の各刊行物に記載された発明,周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件特許は特許法29条2項に違反し,特許無効審判により無効にされるべきものであり,特許法104条の3第1項により,原告は,被告に対し,本件特許権の侵害を理由として権利を行使することはできない。以下詳述する。
(。 。 ?実公昭63-39807号公報 乙2 公告日:昭和63年10月19日以下,この刊行物を「乙2刊行物」という )。
?EDV-01の設計図面(乙3の1。発行日:平成10年6月26日。以下,この刊行物を「乙3の1刊行物」という )。
?EDV-01のパンフレット(乙3の2。発行日:平成11年5月ころ。
以下,この刊行物を「乙3の2刊行物」という )。
?経営&技術?14(乙4の2。発行日:平成11年10月ころ。以下,この刊行物を「乙4の2刊行物」という )。
?平成12年9月27日付け日刊工業新聞28面(乙5の1。発行日:平成12年9月27日。以下,この刊行物を「乙5の1刊行物」という )。
?浄水自動販売機(PWH-JHI型)取扱説明書(乙5の2。発行日:平成12年9月ころ。以下,この刊行物を「乙5の2刊行物」という )。
?特開2000-298769号公報(乙6。公開日:平成12年10月24日。以下,この刊行物を「乙6刊行物」という )。
?特開平3-171291号公報(乙7。公開日:平成3年7月24日。以下,この刊行物を「乙7刊行物」という )。
?特開昭53-9199号公報(乙8。公開日:昭和53年1月27日。以下,この刊行物を「乙8刊行物」という )。
?実願昭61-145620号(実開昭63-53179号)のマイクロフィルム(乙12。公開日:昭和63年4月9日。以下,この刊行物を「乙12刊行物」という )。
?特開昭61-204799号公報(乙13。公開日:昭和61年9月10日。以下,この刊行物を「乙13刊行物」という )。
?特許第2753102号公報(乙14。発行日:平成10年5月18日。
以下,この刊行物を「乙14刊行物」という )。
?富士時報?7(乙15。発行日:昭和62年7月ころ。以下,こvol.60の刊行物を「乙15刊行物」という )。
?富士時報?8(乙16。発行日:平成11年8月ころ。以下,こvol.72の刊行物を「乙16刊行物」という )。
?清涼飲料水自動販売機(ECOA)申請資料(甲12の4。発行日:平成。,「」。) 12年12月20日以下この刊行物を甲12の4刊行物というア乙6刊行物を主引用例とする主張(ア) 乙6刊行物記載の発明(以下「乙6発明」という )。
乙6発明(飲料提供装置)は,使い捨てられる内蔵のカップだけでなく,顧客が持ち込むマイカップ(非内蔵のカップ)に対しても飲料を供給できるマイカップ対応型の飲料自動販売機であり,搬送手段によりカップ出入口から飲料調合位置に搬送されたマイカップに対して飲料水を供給するものである。
(イ) 本件特許発明と乙6発明の共通点a注水位置に購入者が持参の容器をセットすると,注水口から飲料物が容器に注水される自動販売機である点(構成要件?)b注水位置に容器が置かれているか否かを検出する容器検出センサを備える点(構成要件?)c注水位置の前面に設けた扉の閉じ状態をロック或いは解除し得るロック機構を備える点(構成要件?)d電源投入時に扉の閉じ状態をロックする点(構成要件?)e購入者が購入操作を行うと,注水口から所定量の排水が行われて洗浄動作を行う点,また,洗浄動作時に扉がロックされている点(構成要件?)f洗浄後に扉のロックを解除し,容器が注水位置にセットされると容器に注水する点(構成要件?)gその後,容器の取り出しを容器検出センサが検出すると,扉の閉じ状態をロックするよう制御する点(構成要件?)h悪戯防止効果,塵埃の侵入防止効果という扉のロック機構を設けたことに伴う作用効果i洗浄水が容器内に入ることがなく,衛生的に優れるという作用効果(ウ) 本件特許発明と乙6発明との相違点a相違点1構成要件?,?において,本件特許発明が原水を浄化した浄水を販売する浄水自動販売機であるのに対して,乙6発明は,コーヒーやジュースなどの飲料水を販売する飲料提供装置である点b相違点2本件特許発明では,注水口から所定量の排水が行われて,浄水装置から注水口に至る浄水の通路を洗浄するのに対して(構成要件? ,)乙6発明では,湯水供給手段15から洗浄手段36までの供給ラインから湯水を攪拌具に対して注水し,又は冷水供給手段16から洗浄手段36までの供給ラインから冷水を攪拌具に対して注水し,攪拌具の洗浄を行う点(乙6発明では攪拌具を最終的な洗浄対象とするのに対して,本件特許発明では浄水の通路を最終的な洗浄対象とする点)c相違点3本件特許発明では,購入者が購入操作を行うと洗浄動作を実行するのに対して(構成要件? ,乙6発明では,洗浄中に購入操作(販売 )要求)があった場合に洗浄動作を継続するようになっており,洗浄動作の開始タイミングが異なる点(エ) 相違点の検討a相違点1について乙6発明に係る飲料提供装置(カップ式の飲料自動販売機)と本件特許発明の浄水自動販売機は,いずれも「自動販売機」の技術分野に。,, , 属する また 両発明は 国際特許分類上同じ分類に属するという点共に食品衛生法の規格基準の適用を受けるものであるという点,及び当業者が共通するという点で一致しており,乙6発明に係る飲料提供装置と本件特許発明の浄水自動販売機とは同じ技術分野に属する。
b相違点2,3について(副引用例:乙2刊行物)乙6発明と本件特許発明は最終的な洗浄対象が異なるが(相違点2 ,両発明の洗浄動作は配管内に水を流す点で共通しており,物理 )的には何らの差異もない。
注水口から所定量の排水を行って浄水装置から注水口に至る浄水の通路を洗浄するという技術思想(相違点2 ,購入動作を通路洗浄の )開始タイミングとするという技術思想(相違点3)は,乙2刊行物に明示されている周知技術である。
すなわち,乙2刊行物では,販売指令に基づきカップが販売口に搬送される以前に,電磁バルブを所定時間開放することにより,水出口パイプ内に残留する飲料水を販売に先立ってカップ外に排出しており,相違点2,3の構成及び動作と一致する。
また,本件特許発明の浄水通路を洗浄することに伴う作用効果は,乙2刊行物の記載から得られる作用効果と同一であって,当業者が予測し得るものであり,格別に顕著なものではない。
加えて,乙2刊行物の記載は,乙6発明と同一の技術分野に属するカップ式の飲料自動販売機に関するものであり,乙2刊行物の記載を乙6発明に適用することができない格別な事情はなく,阻害要因はない。
したがって,乙6発明に乙2刊行物記載の周知技術を適用すれば,当業者は,相違点2,3に係る構成を容易に想到できたといえ,本件特許発明進歩性は否定される。
c相違点2,3について(副引用例:乙5の1,2刊行物)乙5の1刊行物には「フィルターから出口までの配管内の水を毎回排出し切るため,衛生上,常に安全な水を供給できる 」と記載され。
ており,相違点2の,注水口から所定量の排水が行われて浄水装置から注水口に至る浄水の通路を洗浄するという構成は,本件特許の出願前にピュアウォーター販売が製造販売した浄水自動販売機に採用されていた周知技術であった。
また,乙5の2刊行物の「水の販売において,まず,コインを投入後直ちに濾過が始まり製造水による配管内の溜り水を洗浄排出後」の,「」,, 記載 乙5の1刊行物の 毎回排出し切る の記載から 相違点3の購入動作を通路洗浄の開始タイミングとするという技術思想も,本件特許出願時の周知技術であった。
乙5の1,2刊行物に記載されている作用効果は,本件特許発明構成要件?のように都度排水を行って浄水通路を洗浄したことで得られる作用効果と同一である。
乙5の1,2刊行物に記載された発明を乙6発明に適用することができない格別な事情はなく,阻害要因はない。
したがって,乙6発明に乙5の1,2刊行物に記載された周知技術を適用することにより,当業者は,相違点2,3に係る構成を容易に想到できたといえ,本件特許発明進歩性は否定される。
乙6発明に乙5の1,2刊行物記載の周知技術を適用することにより進歩性が否定されないとしても,更に乙2刊行物記載の周知技術を適用することにより,本件特許発明進歩性は否定される。
d相違点2,3について(副引用例:乙4の2刊行物)乙4の2刊行物の「溜めない場合でも配管には水が溜まるので,食品衛生法ではその都度捨てなければいけないことになっていまして」の記載から,構成要件?のように,購入操作のたびに浄水の通路に溜まっている滞留水を排水するという技術思想は,本件特許の出願以前の時点において既に食品衛生法の規格基準で定められていたことが分かる。また,少なくとも,配管内に溜まる水をその都度捨てるという技術思想が,浄水自動販売機の分野では当業者にとって周知技術として認識されていたことが分かる。つまり,構成要件?は,当業者であれば出願当時に周知となっていた法律,規則の内容,あるいは周知技術を,特許請求の範囲構成要件として挙げたものにすぎず,従来技術との差異を論じる際の発明の特徴要素とはなり得ないのである。
乙4の2刊行物は,乙6発明の飲料提供装置が適用を受ける食品衛生法に関するものであり,乙6発明に乙4の2刊行物記載の事項を適用することができない格別な事情はなく,阻害要因はない。
したがって,乙6発明に乙4の2刊行物記載の周知技術を適用することにより,当業者は相違点2,3に係る構成に容易に想到できたといえ,本件特許発明進歩性は否定される。
乙6発明に乙4の2刊行物記載の周知技術を適用することにより進歩性が否定されないとしても,更に乙5の1,2刊行物,乙2刊行物記載の周知技術を適用することにより,本件特許発明進歩性は否定される。
イ乙2刊行物を主引用例とする主張(ア) 乙2刊行物記載の発明(以下「乙2発明」という )。
乙2発明では,販売指令に基づきカップ6が販売口7に搬送される以前に,水出口パイプ4内を流れる飲料水の流れを制御する電磁バルブWVを所定時間開放して,水出口パイプ4の先端の吐出ノズル4aより飲料水を吐出し,販売ごとにバルブ出口側の水出口パイプ4内に残留する飲料水をカップ6外へ排出している。乙2発明では,販売の都度,電磁バルブWVを所定時間開放して,吐出ノズル4aよりパイプ4内に残留する飲料水を排出する 「都度排水」の動作を行う。 ,上記都度排水により,乙2発明によれば,水出口パイプ4内に残留する飲料水を販売に先立ってカップ6外へ排出するため,細菌等の繁殖した飲料水をカップに吐出することがなく,衛生的な飲料をカップ6に供給することができる。
(イ) 本件特許発明と乙2発明の共通点a注水位置に容器がセットされると,注水口から飲料物が容器に注水される自動販売機である点(構成要件?)b購入者が購入操作を行うと,注水口から所定量の排水が行われて,浄水の通路を洗浄する点(構成要件?)c洗浄後に容器が注水位置にセットされると容器に注水する点(構成要件?)d洗浄水が容器内に入ることがなく,衛生的に優れるという作用効果(なお,当該作用効果は乙9,10,11にも開示がある )。
(ウ) 本件特許発明と乙2発明との相違点a相違点1構成要件?,?に関して,本件特許発明が原水を浄化した浄水を販売する浄水自動販売機であるのに対して,乙2発明は,コーヒーやジュースなどの飲料水を販売する飲料自動販売機である点b相違点2構成要件?に関して,本件特許発明と異なり,乙2発明では容器検出センサを具備しない点c相違点3構成要件?に関して,本件特許発明と異なり,乙2発明ではロック機構を具備しない点d相違点4構成要件?に関して,本件特許発明と異なり,乙2発明では電源投入時に扉の閉じ状態をロックしない点e相違点5構成要件?に関して,本件特許発明と異なり,乙2発明では,飲料水通路の洗浄時に扉のロック状態を維持し,洗浄後に扉のロックを解除する構成ではない点f相違点6構成要件?に関して,本件特許発明と異なり,乙2発明では,容器への注水後に容器の取り出しを容器検出センサが検出すると扉の閉じ状態をロックするよう制御しない点g相違点7本件特許発明と異なり,乙2発明では,悪戯防止効果,塵埃の侵入防止効果という扉のロック機構を設けたことに伴う作用効果がない点(エ) 相違点の検討a相違点1について上記ア(エ)aと同様に,本件特許発明の浄水自動販売機と乙2発明の飲料自動販売機は同一の技術分野に属する。
b相違点2について乙3の1,2刊行物に記載された浄水自動販売機EDV-01は容器検出センサを備えている。また,容器検出センサは,乙6刊行物,乙25〜28に開示されている周知技術である。
c相違点3について乙3の1,2刊行物に記載された浄水自動販売機EDV-01は,扉とロック機構を備えている。注水位置の前面に設けられた扉,当該扉を「ロック或いは解除し得るロック機構」は,乙5の2刊行物,乙6〜8刊行物,乙12〜16刊行物等に開示されている周知技術である。
d相違点4について乙3の1,2刊行物に記載されたEDV-01は,常態において扉。 , をロックしている 乙5の2刊行物記載の浄水自動販売機においても常態において扉をロックしており,同様の動作は乙15刊行物にも開示された周知技術である。
e相違点5,6について扉のロック状態を維持したままで洗浄動作を行うことは,乙5の2刊行物,乙6刊行物,乙12〜15刊行物に開示された周知技術である。
洗浄後に扉のロックを解除することは,乙5の2刊行物,乙6刊行物,乙12刊行物に開示された周知技術である。
容器の取り出し後に再び扉を閉じ状態にロックすることは,乙5の2刊行物に開示されている。
乙3の1,2刊行物記載のEDV-01も,容器洗浄に先立って扉のロック状態を解除し,容器の取り出し後に再び扉を閉じ状態にロックする構成である。
f相違点7について悪戯防止効果,塵埃の侵入防止効果は,乙3の1,2刊行物記載のEDV-01,乙5刊行物,乙7刊行物,乙8刊行物,乙12〜16刊行物等に記載された扉のロック機構を設ける装置であれば,当然に得られる作用効果であり,格別顕著なものとはいえない。
g以上のように,乙3の1,2刊行物記載のEDV-01は,上記相違点1〜6の構成をすべて具備している。また,相違点7についても乙3の1,2刊行物記載のEDV-01は同様の作用効果を奏するものとなっている。
したがって,乙2発明に乙3の1,2刊行物記載のEDV-01の周知技術を適用すれば,当業者は,相違点1〜7に係る構成に容易に想到できたといえ,本件特許発明進歩性は否定される。
さらに,上記相違点1〜7は,乙3の1,2刊行物,乙5〜8刊行物,乙12〜16刊行物等に開示されている。したがって,乙2発明にこれらに記載された周知技術を適用すれば,当業者は,相違点1〜7に係る構成に容易に想到できたといえ,本件特許発明進歩性は否定される。
なお,乙2発明はあらかじめ装置内に内蔵されている内蔵カップを注水位置に搬送した後に飲料物を提供する内蔵カップ方式であるのに対し,乙6発明は,内蔵カップだけではなく,需要者が持参したカップに対しても飲料物を提供するマイカップ方式にも対応するものである点で相違があるが,マイカップに対しても内臓カップと同様に飲料物を提供できるようにすることは容器検出センサ等を採用することで解決済みの技術的課題であり,乙2発明への乙6発明の適用の阻害要因にはならない。また,撹拌具を有する乙6発明を撹拌具を有しない乙2発明へ適用することも,撹拌手段を有しない旧来式の飲料自動販売機を完成させることにすぎず,阻害要因とはなり得ない。
ウ乙3の1,2刊行物を主引用例とする主張(ア) 乙3の1,2刊行物記載の発明(以下「乙3発明」という )。
乙3発明は,購入者が持参したペットボトルなどの容器に対してミネラル水をはかり売りする自動販売機(EDV-01)である。
EDV-01は滞留水を単に捨てるのではなく,購入者が持ち込んだ容器を洗浄することに利用する。具体的には,EDV-01では,容器の口が上方に向く通常姿勢から,滞留水を塩素水とともに容器に流し込み,容器を左右に数回振って容器内を洗浄した後に,容器を天地逆姿勢として排水し,その後に容器を通常姿勢に戻し,最後に容器内に販売対象となる浄水を注水する。このような容器の自動洗浄機能をEDV-01は備える。
(イ) 本件特許発明と乙3発明の共通点a注水位置に購入者が持参の容器をセットすると,注水口から原水を浄化した浄水が容器に注水される浄水自動販売機である点(構成要件?,?)b注水位置に容器が置かれているか否かを検出する容器検出センサを備える点(構成要件?)c注水位置の前面に設けた扉の閉じ状態をロックあるいは解除し得るロック機構を備える点(構成要件?)d電源投入時に扉の閉じ状態をロックする点(構成要件?)e容器の取り出しを容器検出センサが検出すると,扉の閉じ状態をロックするように制御する点(構成要件?)f乙3発明では,滞留水を塩素水とともに注水口から排出して,これらを洗浄目的で容器内に注水しているのに対して,本件特許発明では滞留水を注水口から排出しており,滞留水の排出口が注水口である点でも両者は一致する。
g乙3発明の容器洗浄動作においては,浄水装置から注水口に至る浄水の通路に溜っている滞留水を(塩素水とともに)容器内に注水しており,結果として,浄水装置から注水口に至る浄水の通路を洗浄している点でも,両者は一致する。
(ウ) 本件特許発明と乙3発明との相違点a相違点1乙3発明では,購入者が浄水を購入する操作を行うと 「扉のロッ,ク解除↑注水位置への容器のセット↑扉をロック↑注水口から滞留水を塩素水と共に容器内に注水して容器洗浄↑浄水の注水動作↑容器の取り出し↑扉ロック」の動作を行うのに対して,本件特許発明では,「注水口から滞留水を排出↑注水位置への容器のセット↑浄水の注水動作↑容器の取り出し↑扉ロック」の動作を行う点(つまり,乙3発明では,浄水の注水動作に先立って滞留水を利用した洗浄動作を行うのに対して,本件特許発明では,浄水の注水動作に先立って滞留水を単に排出する点)b相違点2乙3発明では,洗浄動作に先立って扉のロックを解除するのに対して,本件特許発明では,滞留水の排水動作時には扉はロックされており,滞留水の排水動作後に扉のロックを解除する点(エ) 相違点の検討,() a乙4の2刊行物に記載されているように 乙3発明 EDV-01における滞留水を容器洗浄に利用するという発想は,食品衛生法で単に捨てることが求められていた滞留水を有効利用しようという思想に基づくものである。したがって,EDV-01を製造販売した協業組合オー・ド・ヴィ(以下「オー・ド・ヴィ」という )は,第1に滞。
留水を捨てることを考え,次に当該滞留水を有効利用した上で容器洗浄機能を考えたといえ,オー・ド・ヴィにとって,乙3発明から容器の洗浄機能を削除して,販売の都度,単に滞留水を捨てる形態の浄水自動販売機を作製することは容易なことであった。
これに対して本件特許発明は,乙3発明から上記の容器自動洗浄機能を廃したもので,単に装置の簡素化を図ったものにすぎない。容器の自動洗浄機能を備えるEDV-01の方が,容器の自動洗浄機能を具備しない本件特許発明の浄水自動販売機に比べて機構が複雑であり,その開発に技術的な困難を伴うことはいうまでもない。
したがって,相違点1のごとく,浄水の注水動作に先立って滞留水を単に排出する形態を採ることは,当業者において容易に想到できるものであり,本件特許発明進歩性は否定される。
b注水口から単に滞留水を排出する形態では,滞留水の排出動作時に注水位置に容器がセットされると,法律上販売できない滞留水が容器内に注水されるという不都合を招くため,常態における扉のロック状態を滞留水の排出動作時まで延長して,滞留水が容器内に入らないようにすることは,当業者にとって自然なことである。
したがって,乙3発明(EDV-01)から容器洗浄機能を削除した場合には,滞留水が容器内に注水されないように,滞留水の排出動作時に扉をロックするようにすること(相違点2)も,当業者であれ, 。 ば容易に想到できるものであり 本件特許発明進歩性は否定されるcまた,販売ごとに滞留水を排水するという技術思想は,乙2刊行物に明示されており,加えて,乙2刊行物には,注水位置に容器がない。, 状態で滞留水の排水を行うという技術思想も開示されている さらに乙12刊行物には,扉をロックした状態で注水口から洗浄液を排出するという技術思想が開示されている。
したがって,乙3発明(EDV-01)に,乙2刊行物記載の都度排水の技術思想を適用すれば,当業者は相違点1に係る構成を容易に想到することができ,乙12刊行物記載の扉をロックした状態で注水口から洗浄液を排出するという技術思想を適用すれば,当業者は相違点2に係る構成を容易に想到することができたといえ,本件特許発明進歩性は否定される。
なお,乙3発明(EDV-01)に係る容器洗浄機能は,上記aのように技術的には付随的な要素であり削除可能なものであるから,乙3発明と乙2刊行物記載の技術思想の組合せを論じる際に,乙3発明から容器洗浄機能を削除した上で,乙2刊行物記載の都度排水機能を組み合わせることが可能であり,当該洗浄機能の存在は本質的な阻害要因とはなり得ない。
エ甲12の4刊行物を主引用例とする主張(「」 (ア) 本件特許発明と甲12の4刊行物記載の発明 以下 甲12の4発明という )の共通点。
a注水位置に購入者が持参の容器をセットすると,注水口から原水を浄化した浄水が前記容器に注水される浄水自動販売機である点(構成要件?,?)b容器検出センサを備える点(構成要件?)c「注水位置の前面に設けた扉」を備える点(構成要件?)d購入者が浄水を購入する操作を行うと排水を行う点(都度排水 ,)() 及び浄水装置を排水始端として浄水の通路を洗浄する点 構成要件?e洗浄後に容器に注水する点(構成要件?)(イ) 本件特許発明と甲12の4発明との相違点a相違点1本件特許発明では,扉の閉じ状態を「ロック或いは解除し得るロック機構」を備えており,電源投入時に扉を閉じ状態にロックしているのに対して(常態において扉をロックしているのに対して ,甲12)の4発明では,ロック機構を具備せず,電源投入時に扉を閉じ状態にロックしていない点(構成要件?,?)本件特許発明と異なり,容器の取り出しを容器検出センサが検出しても,扉の閉じ状態をロックするように制御しない点(構成要件?)b相違点2本件特許発明では排水口と注水口とが一致しているのに対して,甲12の4発明では排水口と注水口とが異なる点(構成要件?)c相違点3本件特許発明では洗浄時に扉がロックされているのに対して,甲12の4発明ではそのようになっていない点d相違点4甲12の4発明では,本件特許発明の作用効果(浄水への雑菌混入防止効果,及び悪戯防止や塵埃の侵入防止効果)が得られない点(ウ) 相違点の検討a自動販売機の分野において,扉の閉じ状態を「ロック或いは解除し得るロック機構」を備えること,電源投入時に扉を閉じ状態にロックすること(常態において扉をロックすること ,容器の取り出し後に )扉の閉じ状態をロックすること(相違点1)は,乙7,12,15刊行物に開示された周知技術である。加えて,相違点4の「悪戯防止や塵埃の侵入防止効果」は,扉にロック機構を設ければ当然に得られるものであり特徴的なものではなく,これも進歩性肯定の根拠とはなり得ない。
, , 相違点2につき 都度排水時の排水口を注水口と同一とする形態は乙2刊行物及び乙5の1刊行物に開示された周知技術である。
相違点3につき,洗浄時に扉をロックすることは乙12刊行物に開示された公知技術である。したがって,相違点3のように,注水口からの都度排水動作時に扉をロック状態に維持して,物理的に容器のセットを不可にすることは,乙12刊行物に接した当業者であれば容易に想到し得る事項である。加えて,扉にロック機構を設けて常態において扉をロックする周知あるいは公知技術の態様を採用した場合には,注水口からの都度排水動作時に扉をロック状態に維持して,物理的に容器のセットを不可にすることは,常態における扉のロック状態を延長するものにすぎず,滞留水の容器への混入防止を図る最も簡単な解決方法であり,当業者であれば容易に想到し得る事項である。
また,乙2,12刊行物においても,洗浄液は容器内に混入されないようになっており,相違点4の浄水への雑菌混入防止効果は,進歩性肯定の根拠となるような特徴的なものではない。
b甲12の4発明,乙2発明,乙12,15刊行物記載の発明は,いずれも攪拌具洗浄機能や容器洗浄機能を具備しないものであり,その点で阻害要因は全くない。また,甲12の4発明と乙2発明は,共に都度排水に関する動作を含むもので作用や機能の共通性があり,さらに,衛生的な飲料物の提供という点で共通の課題を有するものであるから,両発明を組み合わせることには動機付けがある。
c以上のように,本件特許発明と甲12の4発明との相違点に係る構成は,乙2,7,12,15刊行物に記載されており,また,甲12の4発明に乙2,7,12,15刊行物記載の技術思想を適用するに当たり,その適用を妨げるような記載や示唆はない。よって,甲12の4発明に乙2,7,12,15刊行物記載の周知又は公知技術を適用すれば,当業者は,相違点に係る構成を容易に想到できたといえ,本件特許発明進歩性は否定される。
〔原告〕進歩性欠如についての被告の主張は否認ないし争う。
ア乙6刊行物を主引用例とする主張について(ア) 本件特許発明は,浄水装置から注水口までの通路が雑菌で汚染されやすく,そのまま浄水を容器に注入したのでは,容器に供給される浄水に雑菌が混入するという課題を解決するために,雑菌を含んだ浄水装置から注水口までの通路の洗浄液が誤って容器に注入されることを確実に防止することを目的としている。これに対し,乙6発明は 「カップ内で,飲料原料と稀釈液を撹拌具で攪拌調合して飲料とするタイプの飲料自動販売機において,撹拌具に付着する細菌等の汚染物質を除去して利用者に違和感のない飲料を提供すること」を目的とするものである。このように,乙6発明は撹拌具が存在することによって生じる汚染を防止するものであって,撹拌具を洗浄するために供給される稀釈液が雑菌によって汚染されているということに全く配慮しない点で本件特許発明とは課題,目的が決定的に異なる。
(イ) 乙6発明は,飲料原料(インスタントコーヒー,紅茶,ココア,砂糖及びミルクなどの粉末状のもの)と希釈液を攪拌して調合するタイプの自動販売機において,攪拌具に付着した飲料を洗浄するものであるが,攪拌具を洗浄することと本件特許発明の浄水通路全部を洗浄することとは作用効果の点でも物理的にも異なるものである。
攪拌具に付着した飲料を洗い落とすためには,攪拌後すぐに洗浄することが必要であり,乙6刊行物には,攪拌後飲料の入ったカップが取り出されて扉が閉まるとすぐに攪拌具の洗浄がなされることが記載されている。これに対し,本件特許発明においては,前回販売による容器への注水後,時間の経過とともに注水口から雑菌が侵入するのを防止するために,浄水装置から注水口までの通路の洗浄を行うのであるから,前回販売後,すぐに通路の洗浄をしておけばよいのではなく,次回販売の直前に通路の洗浄を行わないと意味がない。
乙6刊行物に攪拌具を洗浄することが記載されており,その洗浄時に希釈液の通路の一部が洗浄されるとしても,次回販売の直前に希釈液の通路全部(本件特許発明の浄水の通路全部に相当)の洗浄がなされなければ 「容器への雑菌の混入を防止する」という本件特許発明の効果は ,達成できないのであるから,乙6発明において攪拌具を洗浄することと本件特許発明において浄水通路全部を洗浄することとは,作用効果の点でも物理的にも異なっていることは明らかである。
(ウ) 乙6刊行物には構成要件?,?,?,?の記載も示唆もない。
乙6刊行物に,注水位置に購入者が持参の容器をセットすると注水口から飲料物が容器に注入される自動販売機である点(構成要件?)が記載されているという被告の主張は否認する。
乙6発明においてカップ内攪拌を行う場合には,購入者がカップステーション(注水位置)に持参の容器をセットした後,注水口からは飲料物はカップに注入されず,各飲料原料供給位置に搬送されて飲料原料が供給される。
また,被告は浄水と飲料水をまとめて飲料物としているが,乙6発明における飲料水の場合は,例外的な場合を除き攪拌具によるカップ内攪拌が必要であり,そのため攪拌具の洗浄が必要であるのに対し,浄水の場合は攪拌具によるカップ内攪拌は不要であり攪拌具の洗浄自体考えられない点で異なるため,乙6刊行物記載の飲料水と本件特許発明の浄水とを包含して飲料物とすることは妥当でない。
(エ) 乙6刊行物に,購入者が購入操作を行うと,注水口から所定量の排水が行われて洗浄動作を行う点 洗浄動作時に扉がロックされている点 構 , (成要件?)が記載されているという被告の主張は否認する。
乙6刊行物では,購入者が購入操作を行うと,閉じられていた扉が解錠され「マイカップセットのメッセージ」が出て購入者が持参したカップをカップステーションへセットする。また,カップ内攪拌が行われる場合には,飲料提供動作が終了した後,攪拌具の洗浄が行われ,カップ内攪拌が行われない場合には,攪拌具の洗浄は行われない。いずれにしても,購入者が購入操作を行った際に注水口から所定量の排水は行われない。構成要件?の「購入操作↑扉をロックしたまま浄水器から注水口までの浄水の通路洗浄」という構成は,本件特許発明の本質的な構成である。被告は,乙6刊行物において,単に攪拌具の洗浄が行われているときに扉がロックされていることをもって構成要件?が開示されていると主張するようであるが,乙6発明では 「購入操作↑扉を解錠して容 ,器セット↑容器に飲料注入↑攪拌↑扉を解錠して容器取り出し↑扉を施錠して攪拌具洗浄」の順に販売動作が行われているのであり,その手順が異なることは明らかである。
(オ) 乙6刊行物に,洗浄後に扉のロックを解除し,容器が注水位置にセットされると容器に注水する点(構成要件?)が記載されているという被告の主張は否認する。
本件特許発明においては 「購入操作↑扉ロックのまま洗浄↑扉を解 ,錠して容器セット↑容器に浄水注入」の順に販売動作が行われるのに対し,乙6発明においては 「購入操作↑扉を解錠して容器セット↑容器 ,に飲料注入↑攪拌↑扉を解錠して容器取り出し↑扉を施錠して攪拌具洗浄」の順に販売動作が行われるのであり,洗浄終了後に扉が解錠されるとは記載されていないため,洗浄中に扉が解錠されていることが想定されているといえ,乙6刊行物には構成要件?は開示されていない。
(カ) 乙6発明を認定するに当たって,技術的思想に配慮せず,本件特許発明を導くのに都合のよい構成のまとまりだけを抜き出して認定することは許されない。すなわち,乙6発明は,カップ内で飲料原料と稀釈液を撹拌具で攪拌調合して飲料とするタイプの飲料自動販売機において,撹拌具に付着する細菌等の汚染物質を除去して利用者に違和感のない飲料を提供することを目的とするものである。したがって,乙6発明を認定するに当たっては,撹拌具が存在しないものとして認定することはできない。なぜなら,撹拌具が存在することによって生じる課題を解決することが乙6発明の技術的思想であり,撹拌具を除去した構成を乙6発明として認定することは,その技術的思想を全く無視することになるからである。
(キ) 本件特許発明と乙6発明が,洗浄水が容器内に入ることなく衛生的に優れるという作用効果の点で共通するという被告の主張は争う。
乙6発明においては,攪拌具によるカップ内攪拌を行わない場合には攪拌具の洗浄はなされず,当然購入操作前の希釈液管路の排水(洗浄)も行われないため,希釈液管路の滞留水(洗浄水)が容器に入ることになる。また,攪拌具によるカップ内攪拌を行う場合には,攪拌具の洗浄は攪拌後すぐになされ,その後,次の購入操作まで時間があると希釈液管路の滞留水(洗浄水)がそのまま容器に入ることになる。
(ク) 相違点1の主張について乙6発明の飲料提供装置と本件特許発明の浄水自動販売機は技術分野,「, 的にみればほぼ同じであるが 本件特許発明は 購入操作が行われると扉をロックしたままの状態(容器を挿入できない状態)で注水口管路の排水を行って浄水装置から注水口に至る浄水の通路を洗浄し,その後に扉のロックを解除して容器をセットし,容器に汚染されていない浄水を注水する」点に特徴があるのに対し,乙6発明は,粉状の飲料原料と希釈液をカップにいれてカップ内において攪拌具で攪拌するタイプの飲料提供装置に関するものであり,浄水のように容器に注入すれば攪拌は不要なものとはその構成が相当異なっており,この点で技術的にも差異がある。むしろ,乙6刊行物に開示されたカップ内攪拌を要しない飲料提供装置が本件特許発明の浄水販売機と技術的には近く,その場合には当然攪拌具の洗浄はなされず,攪拌具の洗浄と浄水通路の洗浄を同視する被告の論理は適用できない。
(ケ) 相違点2の主張について乙6発明において攪拌具を洗浄する目的は 「飲料攪拌後,カップか ,ら引き上げられた攪拌具に付着している飲料が,待機中に変質して次に販売する飲料の中に入ったり,細菌の繁殖を促したりする危険を解消すること」である。したがって,浄水のように攪拌具によるカップ内攪拌を必要としない装置,あるいは乙6発明でカップ内攪拌の必要のないブラックコーヒー等の場合には攪拌具の洗浄はなされないのである。したがって,カップ内攪拌が必要な粉状の飲料原料を用いる場合に初めて攪拌具の洗浄が必要となり,結果的に希釈水通路の排水がなされるにすぎない。
乙6発明における洗浄対象は撹拌具であって,稀釈液の通路は洗浄対象ではないから 「最終的な洗浄対象」という概念を持ち出して両発明 ,の相違点とすることはできない。乙6発明においては,撹拌具が存在することによって生じる細菌等の汚染を防止することを目的としており,撹拌具は目的を達成するための必須の構成である。したがって,端的に「撹拌具を備えるか否か」を本件特許発明と乙6発明の相違点とすべきである。
(コ) 相違点3の主張について単に洗浄動作開始のタイミングが異なる点のみが相違するとする被告主張の相違点3は認められない。すなわち,本件特許発明においては,「購入操作↑扉ロックのまま洗浄↑扉を解錠して容器セット↑容器に浄水注入 の順に販売動作が行われるのに対し 乙6発明においては購 」 ,,「入操作↑扉を解錠して容器セット↑容器に飲料注入↑攪拌↑扉を解錠し」 。 て容器取り出し↑扉を施錠して攪拌具洗浄 の順に販売動作が行われるしたがって,単に洗浄動作開始のタイミングが異なるだけでなく,扉の施錠,解錠状況と洗浄開始時期,容器セットの時期,容器への注水時期がすべて異なる。
本件特許発明は,浄水の通路内の滞留水は時間が経過するほど雑菌等に汚染されやすいという事実に基づいて,新たな購入操作が行われる際に,その通路の洗浄を行うものであるのに対し,乙6発明は,撹拌具に付着した飲料原料は時間が経過すると水で洗い落とすことが困難なため,攪拌後すぐに洗浄するものである。したがって,本件特許発明は浄水の通路を洗浄(通路内の浄水を排出)するのに対し,乙6発明は,攪拌具に付着して固形化しやすい物を洗い落とす点でその洗浄の意味が全く異なる。
(サ) 被告は 「注水口から所定量の排水を行って,浄水装置から注水口に ,至る浄水の通路を洗浄するという技術思想「購入動作を通路洗浄の 」,開始タイミングとする技術思想」は乙2刊行物に明示された周知技術であると主張するが,乙2刊行物に記載された技術思想が周知技術であるとはいえない。また,洗浄の範囲が「浄水装置から注水口に至る浄水の通路」であることは開示されていない。
(シ) 乙6発明は,撹拌具を具備する飲料提供装置が持つ固有の課題(撹拌具に雑菌等の不衛生なものが付着すること)を解決するためになされたものである。したがって,乙6刊行物に接した当業者は,乙6発明は撹拌具を具備する飲料提供装置固有のものであると認識し,本件特許発明のような攪拌具を具備しない浄水の自動販売機とは異なるものであると考えたはずであり,本件特許発明の動機付けとなるものではない。
(ス) 乙2発明は攪拌具を必要としないものであるから,攪拌具を必要とする乙6発明の飲料提供装置とは全く別のものであり,その目的とするところも異なる。攪拌具を必要としない飲料提供装置と攪拌具を必要とする飲料提供装置とは,その構成,作用効果も異なり,組み合わせることはできない。また,乙2発明においては,希釈液通路の洗浄は飲料水をカップに注入する前になされるが,乙6発明においては,飲料提供動作の終了後に希釈液通路の洗浄を行う技術思想が開示されており,互いの技術思想が相矛盾する以上,両者を組み合わせることはできない。乙6発明に乙2発明を適用するには阻害要因がある。
(セ) 被告は,乙5の1,2刊行物には,相違点2,3に係る構成についての記載があると主張するが,否認する。また,乙5の2刊行物記載の浄水自動販売機が本件特許出願前に公知であった,又は公然実施されたということはできない。
(ソ) 被告が主張する乙4の2刊行物における記載は,厚生省等の指導を受けた一個人の見解にすぎず,そのような行政指導が全国一律になされていたとはいえない。また,そのような指導がされていたとしても,配管内の滞留水を捨てるということは,法による規制であって技術思想ではなく,乙6発明に乙4の2刊行物の記載を適用することによって,当業者が本件特許発明に想到できないことは明らかである。
イ乙2刊行物を主引用例とする主張について(ア) 注水位置に容器がセットされると,注水口から飲料物が容器に注水される自動販売機である点(構成要件?)が共通点であるとの被告の主張は否認する。構成要件?は 「注水位置に購入者が持参の容器をセット ,すると,注水口から原水を浄化した浄水が前記容器に注水される浄水自動販売機において」であり,下線部が乙2発明とは異なる。
(イ) 購入者が購入操作を行うと,注水口から所定量の排水が行われて,浄水の通路を洗浄する点(構成要件?)が共通点であるとの被告の主張は否認する。構成要件?は 「購入者が浄水を購入する操作を行うと,前 ,記注水口から所定量の排水が行われて,浄水装置から注水口に至る浄水の通路を洗浄する」というものであり,乙2発明は下線部の構成を備えていない。また,乙2発明は,希釈液として水道水を用いるものであり浄水を用いるものでなく,浄水装置も具備していない。
(ウ) 洗浄後に容器が注水位置にセットされると容器に注水する点(構成要件?)が共通するとの被告の主張は否認する。構成要件?は 「洗浄後,に前記扉のロックを解除し,容器が注水位置にセットされると容器に注水する」というものであり,下線部が乙2発明とは異なる。
(エ) 被告が主張する相違点5は否認する。被告は,相違点5を単に洗浄時に扉をロックし,洗浄後に扉を解除しない点としているが,本件特許発明の最も本質的特徴部分である構成要件?,?を無視しており,誤りである。相違点5は,乙2発明では 「購入操作があると扉をロックした ,状態で浄水装置から注水口に至る浄水の通路を洗浄し,洗浄終了後に扉(, のロックを解除して容器をセットし容器に浄水を注水する 構成要件?? 」構成ではないこととすべきである。 )また,相違点5に係る構成は,乙3の1,2刊行物に開示されておらず,その他の乙号証にも開示されていない。
(オ) 乙12〜14刊行物記載の発明は,高温の洗浄液による自動洗浄時に取出口から誤って手が入れられ,高温水が手にかかって火傷をする恐れ,, があるという課題を解決するためのものであるが 乙2発明においては洗浄水は常温であり手にかかって火傷をするという課題は存在しない。
課題が異なることから,乙2発明に乙12〜14刊行物の記載を適用することには阻害要因がある。
また,乙2発明に乙6刊行物の記載を適用するすることには,上記ア(ス)のように,阻害要因がある。
ウ乙3の1,2刊行物を主引用例とする主張について(ア) 被告は,機構が複雑なものの方が開発に技術的な困難を伴うと主張するが,必ずしもそうではない。総合的にみて,本件特許発明は乙3発明に劣るものではない。
(イ) 被告は,本件特許発明は単に乙3発明(EDV-01)から容器の自動洗浄機構を廃したものであると主張するが,滞留水は廃棄しなければならないという法的制約のもとで,乙3発明と本件特許発明とは異なる構成を採用したものであり,被告の主張は失当である。
(ウ) オー・ド・ヴィが第1に考えたのは,滞留水を捨てることではなく,持参式容器を浄水自動販売機内で洗浄することであり,被告の主張は失当である。
(エ) 本件特許出願当時,持参式容器を使用する浄水の自動販売機においては,自動販売機側で容器の洗浄を行う機構を備えていることが技術常識化しており,当業者が乙3発明から容器洗浄機能を排除することを想起することは容易にはなし得なかった。
(オ) 乙3発明は容器に滞留水を注入するものであるのに対し,乙2発明は容器には滞留水を注入しないものであって,相矛盾する作用,機能を持つ発明を組み合わせることはできない。
エ甲12の4刊行物を主引用例とする主張について(ア) 甲12の4発明は,通路の洗浄水の排水を,注水口からではなく,注水口に至る途中から分岐した専用の管路から行うものであるため,その装置には 「洗浄水が容器に入ってしまうおそれ」は全く存在しない。 ,そうすると,扉をロックする必要性は全くないのであり,単に扉をロックするだけの乙7刊行物や乙15刊行物,洗浄中に容器に洗浄液が入るのを防止する乙12刊行物を,甲12の4発明に適用する動機付けがない。
(イ) 甲12の4発明は,注水口からではなく,注水口に至る途中から排水, , を行うように構成し 容器がどのタイミングで注水位置に設置されても容器に洗浄液が入らないようにしたものである。これに対し,乙2発明は容器を設置する前に洗浄水を排出して,その後に容器を設置することにより容器に洗浄水が入らないようにしたものである。したがって,容器に洗浄液を入れないようにする構成が全く異なる両者を組み合わせることはできない。
4争点( )(損害額)について4( ) 原告の主張1被告は,平成18年6月16日以降現在まで被告製品を少なくとも435台製造販売している。原告が販売することができた浄水自動販売機の1台当たりの利益の額は81万円である。
したがって,原告は,被告の上記製造販売により,少なくとも,被告による製造販売台数435台に原告が販売することができた1台当たりの利益の額81万円を乗じた3億5235万円の損害(販売減少による損害)を受けた(特許法102条1項 。)さらに,原告は,被告の上記製造販売により,自動販売機の保守点検による利益(1台1月当たり1万5000円)を得ることができなかった。この保守点検の減少による損害は,1台1月当たりの利益額1万5000円に被告による製造販売台数435台と平成18年6月18日以降訴え提起時までの平均月数(29月×0.5)を乗じた9461万円である。
よって,原告は,販売減少による損害3億5235万円と保守点検減少による損害9461万円の合計4億4696万円の損害を被った。
( ) 被告の主張2否認ないし争う。
第4当裁判所の判断1当裁判所は,原告が請求の根拠とする本件特許発明は,その出願前に頒布された刊行物等により,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が容易に発明をすることができたものであるから,本件特許権は,特許法29条2項に違反し,特許無効審判により無効にされるべきものであり,特許法104条の3第1項により特許権者である原告はその権利を行使することができないと判断する。その理由は,以下に述べるとおりである。
2争点( )イ(進歩性欠如)について3( ) 乙6刊行物の記載1本件特許出願前に頒布された刊行物である乙6刊行物には,以下の記載がある。
?「 発明の属する技術分野】本発明は,カップ搬送方式およびカップ内攪 【。」 拌方式を採って非内蔵のカップに飲料を提供する飲料提供装置に関する(段落【0001 )】?「特公平7-104978号公報に記載されているように,衛生管理面でミキシングボールや注出管路の清掃等でメンテナンス作業が煩雑化するミキシングボールによる攪拌調合注出に変わるものとして,インペラやパドラーなどの攪拌具をカップ内に進入させて回転させるカップ内攪拌方式が普及されてきている。このようなカップ内攪拌方式では,飲料の一部として用いられる少量の希釈液を攪拌調合後の攪拌具に対して注水することにより,攪拌具を自動洗浄するようになっている。このような洗浄(カップ内洗浄)は,販売動作の都度,自動実行されることにより,次販売に対する衛生的な洗浄と合わせ,選択飲料種類が異なる場合の移り香の防止が有効に機能されるものとなっている(段落【0004 ) 。」】?「省資源化の観点から使い捨てられる内蔵のカップに対して,顧客所有のカップ(非内蔵のカップであり,以下,マイカップという)の利用が望まれてその実用化が進められている。この自動販売機では,カップステーションへのマイカップのセットおよびマイカップの大きさをそれぞれ検知し,セットされたマイカップの大きさに適した容量の飲料をマイカップ内に投入するようにしている(段落【0005 ) 。」】?「 発明が解決しようとする課題】…カップ搬送方式を採る自動販売機で 【は,機内に配置される各種の飲料原料の投下位置までカップを順次移動させて飲料原料をカップ内に受け取るとともにカップ内で攪拌混合する関係上,使用カップの制約を受けることからマイカップ利用化への実現を困難なものとしている。また,カップ内攪拌方式では,内蔵のカップを対象としており,この機能をマイカップに同様に用いた場合,マイカップの洗浄が不充分であったりすると,攪拌具に対する少量の希釈液によるカップ内洗浄では清潔感を重んじる次販売の利用者に対して違和感を与えかねない問題も内在すると考えられる。本発明は,このような点に鑑みなされたもので,カップ搬送方式およびカップ内攪拌方式を採る飲料提供装置において,利用者に対して違和感のない非内蔵のカップの利用を促進し,省資源化を図ることを目的とする(段落【0006】〜【0008 ) 。」 】?「 課題を解決するための手段】請求項1記載の飲料提供装置は,非内蔵 【のカップが出し入れされるカップ出入口部と,飲料原料供給位置に飲料原料を供給する飲料原料供給手段と,飲料調合位置に希釈液を供給する希釈液供給手段と,前記カップが載置されるカップ搬送部を有し,このカップ搬送部を前記カップ出入口部,飲料原料供給位置および飲料調合位置に搬送する搬送手段と,前記カップ出入口部のカップ搬送部へのカップのセットを検知するカップ検知手段と,前記飲料調合位置に搬送されるカップ内に進入して飲料原料と希釈液とを攪拌調合する攪拌手段と,前記飲料調合位置にカップが位置していない状態で前記攪拌手段を洗浄する洗浄手段と,前記攪拌手段による攪拌調合後の前記洗浄手段による洗浄が済んでいるか監視する洗浄監視手段と,前記カップ検知手段でカップのセットが検知されることでカップへの飲料提供動作を許容するとともに,前記洗浄監視手段によって前記攪拌手段の洗浄済が確認されていることによりその攪拌手段による攪拌調合を許容する制御手段とを具備しているものである。
そして,カップ出入口部で受け取る非内蔵のカップを搬送手段により飲料原料供給位置や飲料調合位置などに搬送するカップ搬送方式を採るとともに,飲料調合位置で非内蔵のカップ内に攪拌手段を進入させて飲料原料と希釈液とを攪拌調合するカップ内攪拌方式を採ったうえで,飲料調合位置にカップが位置していない状態で洗浄手段によって攪拌手段を十分に洗浄するとともに,洗浄監視手段によって攪拌手段の洗浄済が確認されていることを条件にその攪拌手段による攪拌調合を許容することで,利用者に対して違和感のない非内蔵のカップの利用を促進し,省資源化を図る(段。」落【0009【0010 )】,】?「請求項4記載の飲料提供装置は,請求項1ないし3いずれか記載の飲料,,,, 提供装置において 飲料調合位置は カップ出入口部にあり 制御手段は前記カップ出入口部から飲料提供済のカップが取り出された後に洗浄手段による攪拌手段の洗浄を実行させ,かつ,この洗浄手段による攪拌手段の洗浄を実行する前に次回の飲料提供要求があればその時点での洗浄手段による攪拌手段の洗浄を中止させるとともに次回の飲料提供動作の過程での前記飲料調合位置にカップが位置していない状態で洗浄手段による攪拌手段の洗浄を実行させるものである(段落【0015。 。」】)「 , , ? 請求項6記載の飲料提供装置は 請求項5記載の飲料提供装置において飲料調合位置に攪拌調合の不要な飲料を供給する飲料供給手段を有し,搬送手段は,攪拌調合の不要な飲料の提供時に,非内蔵のカップがセットされたカップ搬送部を搬送起点位置から飲料調合位置に移動させ,制御手段は,攪拌調合の不要な飲料の提供時に,攪拌手段による攪拌および洗浄手段による攪拌手段の洗浄を禁止させるものである(段落【0019 ) 。」】?「請求項7記載の飲料提供装置は,請求項1ないし6いずれか記載の飲料提供装置において,カップ出入口部を開閉する扉体と,この扉体の閉止を検知する扉体閉止検知手段と,前記扉体の閉止位置で解錠可能に施錠する施錠手段と,投入される貨幣を識別計数する貨幣処理部と,この貨幣処理部で所定金額以上の投入が確認されることで前記施錠手段を解錠させ,カップ検知手段で非内蔵のカップが検知されるとともに前記扉体閉止検知手段で扉体の閉止が検知されることで施錠手段を施錠させる施錠制御手段とを備えているものである。そして,カップ出入口部を開閉する扉体を所定金額以上の投入が確認されることで解錠して非内蔵のカップのセットを許容し,非内蔵のカップのセットが検知されるとともに扉体の閉止が検知されることで扉体を施錠して飲料提供を行なうので,扉体の解錠を必要最小限として,カップ出入口部からの悪戯を軽減する(段落【0021 , 。」】【0022 )】?【発明の実施の形態 「希釈液供給手段は,湯水供給手段からの湯 】2015水または冷水供給手段からの冷水を下降位置の攪拌具に対して注水 16 35して洗浄する洗浄手段として構成されている(段落【0037 ) 36 。」】?「前面扉には,略中央に販売口が形成され,この販売口の後方43 44 44にカップステーションが配設されている。販売口には販売口を 11 4444閉塞可能とるす扉体が開閉自在に取り付けられ,この扉体は,後述 45 45する扉体開閉手段によって自動開閉されるとともに,閉止状態で後述する施錠手段によって施錠,解錠される(段落【0039 ) 。」】?「制御部には,カップ搬送部へのカップ(内蔵カップまたはマイカ9156ップ)のセットを検知するカップ検知手段,扉体を自動開閉する扉 92459345 9445体開閉手段,扉体の閉止を検知する扉体閉止検知手段,扉体。, を閉止位置で施錠および解錠する施錠手段が接続されている そして95制御部は,攪拌調合後の洗浄手段による攪拌具の洗浄が済んで91 3635いるか監視する洗浄監視手段の機能と,マイカップ選択釦でマイカッ 48プの利用が選択されるとともにカップ検知手段でカップのセットが検 92知されることでマイカップへの飲料提供動作を許容し,洗浄監視手段によって攪拌具の洗浄済が確認されていることによりその攪拌具による35 35。」(【】, 攪拌調合を許容する制御手段の機能とを有している段落 0054【0055 )】15 ?「選択された飲料がカップ内攪拌対象である場合には,湯水供給手段や冷水供給手段などの希釈液供給手段から湯水や冷水などの希釈液16 20をマイカップに注入するとともに,攪拌具をマイカップ内の攪拌位置 35に下降させて回転させ,飲料原料と希釈液とをマイカップ内で攪拌調合する(ステップ。攪拌調合が終了したら(ステップ,攪拌具を上42 4335 ) )昇させて待機位置に復帰させ(ステップ,次のステップへ進む。 4445)そして,マイカップへの飲料注入が終了したら,販売口の扉体を解4445錠するとともに,扉体を自動開放する(ステップ。扉体の開放 45 4545 )が検知されるとともに(ステップ,カップ搬送部からのマイカッ4656)プの取り出しが検知されたら(ステップ,販売口の扉体を自動474445)閉鎖するとともに閉鎖後に鎖錠し(ステップ,扉体の閉鎖および4845)施錠が確認されたら(ステップ,続けて硬貨などの投入による次販売49 )の要求があるか確認する(ステップ。続けて次販売の要求がある場合50 )には,ステップ6に戻って次販売の飲料提供動作を実行し,一方,続けて次販売の要求がない場合には,前回の飲料提供動作でカップ内攪拌がなかったときを除き,マイカップ利用後の洗浄手段による攪拌具の洗浄3635(カップ外洗浄)を実行し,前面扉の図示しない表示部で洗浄中を表 43示させる(ステップ。攪拌具の洗浄は,例えば,攪拌具を所定 5135 35)3615 の洗浄位置に移動,回転させるなどして,洗浄手段の湯水供給手段からの湯水を攪拌具に対して注水して洗浄する。攪拌具の洗浄が終35 35了するまでの間は(ステップ,次販売の要求があるか監視する(ステ 52 )ップ。次販売の要求がある前に洗浄が終了したらステップ4に戻って53 )次販売に待機し,一方,洗浄が終了する前に硬貨などの投入による次販売の要求があった場合には,攪拌具の洗浄を継続したまま,ステップ635に戻って所定の販売金額以上の硬貨の投入の受け付け,内蔵カップを含むマイカップ利用の選択,飲料の選択までを許容し,洗浄が終了した後に飲料提供動作を実行する(段落【0076】〜【0079 ) 。」 】( ) 乙6刊行物記載の発明2上記( )の記載から,乙6刊行物には,少なくとも以下の構成を有するカ1ップ式の飲料提供装置に関する発明(以下「引用発明」という )が開示さ。
れていると認められる。
アカップ搬送部に顧客がマイカップをセットすると,注水口から飲料が前記マイカップに提供される飲料提供装置において,イ前記カップ搬送部にマイカップが置かれているか否かを検出するカップ検知手段と,ウカップ搬送部の前面に設けた扉体の閉じ状態を「ロック或いは解除し得る」施錠手段を備え,エ当初に前記扉体の閉じ状態をロックし,オ購入者が飲料を購入する操作を行うと,カ前記扉体のロックを解除し,マイカップがカップ搬送部にセットされるとマイカップに飲料を注入し,キその後,マイカップの取り出しを前記カップ検知手段が検出すると,前記扉体の閉じ状態をロックし,撹拌具を用いてカップ内撹拌を行った場合には,飲料供給後,マイカップを取り出した後に撹拌具の洗浄を行うよう制御するク飲料提供装置( ) 本件特許発明と引用発明との対比3本件特許発明と引用発明を対比すると,引用発明の「カップ搬送部「顧」,客「マイカップ「カップ検知手段「扉体「施錠手段」は,本件特 」,」,」,」,「」,「」,「」,「」,「」, 許発明の 注水位置購入者持参の容器容器検出センサ扉「ロック機構」にそれぞれ相当する。
また,引用発明の「飲料」と本件特許発明の「原水を浄化した浄水」とは飲料水等という点で引用発明の飲料供給と本件特許発明の注 「」,「()」「水」とは「 飲料水等)供給」という点で,引用発明の「飲料提供装置」と (「」,「」, 本件特許発明の浄水自動販売機とは飲料水等提供装置という点で引用発明の「当初」と本件特許発明の「電源投入時」とは「運転開始時」という点で,それぞれ共通すると認められる。
したがって,本件特許発明と引用発明との一致点及び相違点は,以下のとおりである。
〔一致点〕「注水位置に購入者が持参の容器をセットすると,注水口から飲料水等が前記容器に供給される飲料水等提供装置において,前記注水位置に容器が置かれているか否かを検出する容器検出センサと,注水位置の前面に設けた扉の閉じ状態を「ロック或いは解除し得る」ロック機構を備え,運転開始時に前記扉の閉じ状態をロックし,購入者が飲料水等を購入する操作を行うと,前記扉のロックを解除し,容器が注水位置にセットされると容器に飲料水等を注入し,その後,容器の取り出しを前記容器検出センサが検出すると,前記扉の閉じ状態をロックするよう制御することを特徴とする飲料水等提供装置」である点〔相違点1〕飲料水等提供装置について,本件特許発明が原水を浄化した浄水を販売, , する浄水自動販売機であり 撹拌具を必要としないものであるのに対して引用発明は,コーヒーやジュースなどの飲料を販売する飲料提供装置であり,必要に応じて撹拌具を用い,使用した場合には使用後に撹拌具の洗浄を行うものである点〔相違点2〕本件特許発明では,注水口から所定量の排水が行われて,浄水装置から注水口に至る浄水の通路を洗浄するのに対して,引用発明では,飲料の通路を洗浄する手段を有していない点〔相違点3〕本件特許発明では,購入者が購入操作を行うと,浄水の通路の洗浄動作を実行し,洗浄後に扉のロックを解除するのに対して,引用発明では,購入者が購入操作を行うと,扉のロックは解除されるが,その解除前に飲料の通路の洗浄動作は実行されない点( ) 相違点についての判断4そこで,上記相違点1ないし3に係る構成について,当業者が容易に想到できたものであるか否かについて検討する。
ア相違点1について乙6刊行物に記載された飲料提供装置(カップ式の飲料自動販売機)と本件特許発明の浄水自動販売機とは,いずれも飲料水等の自動販売機の技術分野に属し,食品衛生法の規格基準の適用を受ける食品の自動販売機に該当する(乙17,34)点でも共通している。また,原水を浄化した浄(, 水を販売する浄水自動販売機は従来から周知なものである 乙1の1〜43の1,2,乙4の1,2,乙5の1,2参照 。さらに,飲料水等提供 )装置において浄水を提供する場合に撹拌具及び撹拌具の洗浄を必要としないことは,当業者に明らかである。
そうすると,乙6刊行物に記載された飲料提供装置と本件特許発明の浄水自動販売機とは同じ技術分野に属するものであって,乙6刊行物に記載された技術事項を浄水自動販売機に転用することは当業者であれば容易に想到し得るものであり,また,転用に際し撹拌具及び撹拌具の洗浄を必要としないことは,当業者に明らかであるから,当業者は相違点1に係る構成を容易に想到できたものと認められる。
イ相違点2及び3について(ア) 乙2刊行物には,以下の記載がある。
?「 産業上の利用分野〕本考案は飲料自動販売機に関し,特に販売口 〔に自動搬送されたカツプに水槽内を介して冷却された飲料を適量吐出する構造のカツプ販売方式の自動販売機に関する(1欄)。」?「 考案が解決しようとする課題〕…水出口パイプ内に残留した冷水 〔中には吐出ノズルより侵入した細菌等が温度の上昇とともに繁殖するため,このような水を希釈水として飲料に添加することは衛生上問題である。そこで本考案は,水出口パイプ内に残留する飲料水を販売に先立つてカツプ外に排出することにより,常時適正温度のかつ衛生的な飲料をカツプに供給することが可能な飲料自動販売機の制御装置を提供することを目的とする(2欄〜3欄)。」?「 課題を解決するための手段〕本考案の制御装置は,水槽内を介し 〔て冷却された飲料水の流れを電磁バルブにより制御し,かつ,この電磁バルブの出口側には水槽外に引き出され先端に販売口に臨む吐出ノズルを有するパイプを接続し,販売指令に基づき販売口に搬送されたカツプに前記吐出ノズルから飲料水を吐出するようにした飲料自動販売機において,販売指令に基づきカツプが販売口に搬送される以前に前記電磁バルブを所定時間開放するとともに,カツプが販売口に搬出された後再び前記電磁バルブを所定時間開放する制御回路を設けるようにしたものである(3欄)。」?「 作用〕上記手段に基づく制御装置によれば,販売指令によりカツ 〔プが販売口に搬送されるのに先立つて電磁バルブが所定時間開放さ, 。 れ 販売指令毎にパイプ内に残留する飲料水がカツプ外に排出されるそしてカツプが販売口に搬出されると再び電磁バルブが所定時間開放され飲料水がカツプに供給される。したがつてパイプ内に残留して生温くなつた飲料水をカツプに供給することがなくなり,常に適性温度のかつ衛生的な飲料がカツプに供給できるようになる(3欄)。」?「 考案の効果〕…販売指令に基づきカツプが販売口に搬送される以 〔前に前記電磁バルブを所定時間開放するとともに,カツプが販売口に搬出された後再び前記電磁バルブを所定時間開放する制御回路を設け,販売毎にバルブ出口側のパイプ内に残留する飲料水をカツプ外に排出せしめるようにしたので,常に適正温度の飲料がカツプに吐出でき,かつ細菌等の繁殖した飲料水をカツプに吐出することもなく,衛。」 生的にも好ましい飲料を供給することができるという利点を奏する(5欄〜6欄)(イ) 以上の記載からすると,飲料自動販売機において飲料等の注水口から所定量の排水を行い注水口に至る飲料等の通路を洗浄するという技術的思想(相違点2に係る構成 ,購入者の購入操作の度に,飲料等が注水 )口から供給される前に,飲料等の注水口に至る飲料等の通路を洗浄するという技術的思想(相違点3に係る構成)は,本件特許出願前において開示されていたことが認められる。
また,上記アのとおり,本件特許発明と引用発明は飲料水等の自動販売機という同一の技術分野に属するが,乙2刊行物も飲料自動販売機に係るものであり,同一の技術分野に属するものである。
本件特許発明において浄水通路を洗浄することに伴う作用効果は,購入者が購入する浄水に雑菌が混入するのを確実に防止できること,雑菌が混入するのを防止する洗浄を容器に浄水を注水する直前に行うことによって,効果的で衛生的に優れた洗浄を可能にすることにある(本件明細書段落【0021】の【発明の効果。そして,この作用効果は乙 】)2刊行物に記載された飲料自動販売機の作用効果と同一であるから,乙2刊行物の記載から当業者が当然予測し得るものであって,格別に顕著なものということはできない。また,本件特許発明及び乙2刊行物記載の自動販売機の上記作用効果は,引用発明の課題(飲料提供装置において衛生的な洗浄を行うこと)とも共通するものである。
そうすると,乙2刊行物に記載された上記技術的思想(?飲料等の注水口から所定量の排水を行い注水口に至る飲料等の通路を洗浄すること,?購入者の購入操作の度に,飲料等が注水口から供給される前に,飲料等の注水口に至る飲料等の通路を洗浄すること)は,引用発明と同一の技術分野に属するものであり,かつ,課題や作用効果も共通している以上,引用発明に,乙2刊行物に記載された上記技術的思想を適用することは,当業者が容易に行い得るというべきである。
したがって,当業者は,相違点2,3に係る構成を容易に想到できたものと認められる。
( ) 原告の主張について5原告は,撹拌具を必要としない飲料提供装置と撹拌具を必要とする飲料提供装置は,その構成,作用効果が異なるから,引用発明に乙2刊行物の記載を組み合わせることはできない(阻害要因がある)と主張する。
,,, , しかし 上記( )? ?のように 引用発明における撹拌具の洗浄動作は1飲料提供後に,撹拌具を所定の洗浄位置に移動させるなどして,湯水供給手段からの湯水又は冷水供給手段からの冷水を撹拌具に注水して洗浄するものであって,乙2刊行物に記載された技術的思想である飲料等を供給する前に, , 行われる飲料等の通路の洗浄動作とは 洗浄時期や洗浄範囲の重なりはなく相互に影響することもないから,両者はそれぞれ独立したものであって,相互に関連するものではない。したがって,撹拌具の存在及びその洗浄の有無は,引用発明に乙2刊行物に記載された飲料等の通路洗浄を組み合わせる際の阻害要因になると認めることはできず,原告の上記主張は採用することができない。
3以上のとおり,本件特許発明は,当業者が引用発明及び乙2刊行物の記載に基づいて容易に発明をすることができたものであり,その特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから,原告は被告に対し本件特許権を行使することができない(特許法104条の3第1項 。)4結論よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 岡本岳
裁判官 坂本康博
裁判官 中村恭は,転任のため書名押印することができない。
裁判長裁判官 岡本岳