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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成20ワ7901損害賠償請求事件 平成20ワ7782損害賠償請求事件 判例 特許
平成20ワ14169損害賠償請求事件 判例 特許
平成20ワ9736特許侵害予防等請求事件 判例 特許
平成21ワ18950特許権侵害差止請求事件 判例 特許
平成21ワ1652損害賠償請求事件 判例 特許
関連ワード 準拠法 /  技術的範囲 /  対象製品 /  特許発明 /  加工 /  構成要件 /  構成要件充足性 /  業として /  差止請求(差止) /  侵害 /  相当因果関係 /  不法行為(民法709条) /  請求の範囲 /  変更 /  管轄 / 
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事件 平成 20年 (ワ) 9732号 特許侵害予防等請求事件
京都市<以下略>
原告日 本電産株式会社
訴訟代理人弁護 士松本司井上裕史 田上洋平
補佐人弁理士北村秀明 大韓民国<以下略>
被告三 星電機株式会社
訴訟代理人弁護 士城山康文岩瀬吉和 諏訪公一
訴訟代理人弁理 士龍華明裕
補佐人弁理士飯山和俊 森川剛一
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2009/11/26
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1本 件 訴 え を 却 下 す る 。
2訴 訟 費 用 は 原 告 の 負 担 と す る 。
事実及び理由
全容
第1当事者の求める裁判1原告1被告は,別紙物件目録記載のモータの譲渡の申出をしてはならない。
()2被告は,原告に対し,300万円及びこれに対する平成20年10月14 ()日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3訴訟費用は被告の負担とする。
()4仮執行の宣言 ()2被告1本案前の答弁()主文同旨2本案の答弁()ア原告の請求をいずれも棄却する。
イ訴訟費用は原告の負担とする。
第2請求原因1原告の特許権1特許権()原告は,次の特許(以下「本件特許」という )に係る特許権(以下「本 。
件特許権」という。また,下記「特許請求の範囲 【請求項1】の発明を 」「本件特許発明」という )を有している。。
特 許 番 号特許第3688015号出願日平成7年5月19日登録日平成17年6月17日発明の名称モータ特許請求の範囲「 請求項1】【ベースプレートと,該ベースプレートに立設された支持部材と,該支持部材に装着された軸受手段と,該軸受手段を介して回転支持された回転部材と,該回転部材に設けられたロータマグネットと,該ロータマグネットに対向して設けられたステータとを備え,該支持部材は,該ベースプレートに設けられた孔部へ嵌合して挿入され,該支持部材の挿入端が塑性加工されることにより,該支持部材が該ベースプレートに固定されてなるモータにおいて,該孔部の周縁部には,周方向に形成される欠損部と,該支持部材の挿入端の塑性変形部を収容するテーパ部と,が設けられ,該欠損部によって,該テーパ部の形成時に発生する加工歪みが吸収されることを特徴とするモータ 」。
2構成要件の分説()本件特許発明は次の構成要件に分説することができる。
Aベースプレートと,該ベースプレートに立設された支持部材と,該支持部材に装着された軸受手段と,該軸受手段を介して回転支持された回転部材と,該回転部材に設けられたロータマグネットと,該ロータマグネットに対向して設けられたステータとを備え,B該支持部材は,該ベースプレートに設けられた孔部へ嵌合して挿入され,該支持部材の挿入端が塑性加工されることにより,該支持部材が該ベースプレートに固定されてなるCモータにおいて,D該孔部の周縁部には,周方向に形成される欠損部と,該支持部材の挿入端の塑性変形部を収容するテーパ部と,が設けられ,E該欠損部によって,該テーパ部の形成時に発生する加工歪みが吸収されることを特徴とするFモータ。
3作用効果()本件特許発明は上記の構成により次の作用効果を奏する。
ア本件特許発明の構成のモータにあっては,その孔部には,周縁部に欠損部が設けられ,且つ塑性加工により形成されるテーパ部が設けられているため,テーパ部が塑性加工される際に生じる他部位への出張り等がその欠損部に吸収されベースプレートは平面な状態を維持したままテーパ部を形成することができる。しかも,テーパ部には,支持部材の挿入端の塑性加工により変形した変形部が収容されるため,その支持部材は,ベースプレートを平面な状態を維持して固定される (本件特許に係る明細書の段落 。
【0009 )】イベースプレートの孔部には,周縁部に欠損部が設けられているため,テーパ部を塑性加工により形成する際,他部位への出張り等がその欠損部に吸収されベースプレートは平面な状態を維持することができる。しかも,テーパ部には,支持部材の挿入端の塑性加工により変形した変形部が収容されるため,その支持部材は,ベースプレートを平面な状態を維持して固定される (同【0031 )。】2被告の行為1被告物件の販売()被告は,日本国内において,業として別紙物件目録記載のモータ(以下「被告物件」という )の譲渡の申出を行っている。 。
2被告物件の構成()被告物件の構成は,別紙被告物件説明書に記載のとおりであり,これを本件特許発明構成要件に即して分説すると,以下のとおりとなる。
aベースプレート2と,該ベースプレート2に立設された軸受支持部材4と,軸受支持部材4に装着された滑り軸受8と,該滑り軸受8を介して回転支持されたロータ14と,ロータ14に設けられたロータマグネット22と,ロータマグネット22に対向して設けられたステータ6とを備え,b軸受支持部材4は,ベースプレート2に設けられた孔部2bへ嵌合して挿入され,軸受支持部材4の挿入端4fが加締められることにより,軸受支持部材4がベースプレート2に固定されてなるcモータにおいて,d孔部2bの周縁部には,周方向に形成される欠損部5aと,軸受支持部材4の挿入端4fの塑性変形部を収容するテーパ部5bと,が設けられ,e該欠損部5aによって,該テーパ部5bの形成時に発生する加工歪みが吸収されることを特徴とするfモータ。
3構成要件充足性1被告物件の構成aは本件特許発明構成要件Aを充足する。
()ロータ14は,回転自在に支持されている回転軸12に固定され,回転軸とともに自在に回転するから,本件特許発明構成要件Aにおける「回転部材」に該当する。
2被告物件の構成bないしfは,それぞれ本件特許発明構成要件Bないし()Fを充足する。
3被告物件の作用効果は本件特許発明と同一である。
()4よって,被告物件は本件特許発明技術的範囲に属する。 ()4原告の損害原告は,本件訴訟の遂行のため弁護士費用の負担を余儀なくされたものであり,被告の本件特許権侵害相当因果関係のある原告の弁護士費用相当額の損害は,300万円が相当である。
5よって,原告は,被告に対し,特許法100条1項に基づき被告物件の譲渡の申出の差止め並びに民法709条不法行為に基づく損害賠償として300万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20年10月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
第3本案前の争点及び同争点に係る当事者の主張1本案前の争点本件訴えにつき,我が国に国際裁判管轄があるか。
2争点に係る当事者の主張【原告の主張】1民訴法に規定する裁判籍()ア不法行為地(民訴法5条9号)被告の特許権侵害不法行為に基づく損害(弁護士費用)が発生したのは,原告本店所在地である京都市であるから,民訴法5条9号及び6条1項2号により,大阪地方裁判所に専属管轄が存在する。なお,被告は,日本に主たる事務所ないし営業所を有しないし,日本における代表者やその他の主たる業務担当者を有しないから,日本に普通裁判籍を有しないと主張するが,原告は,民訴法4条4項,5項に基づく管轄原因を主張するものではないから,被告の上記主張は当を得ない。
イ譲渡の申出の事実以下の事実からすれば,被告が日本国内で被告物件の販売の申出を行っていることは明白である。
被告は,日本国内で閲覧可能なウェブサイトにおいて被告物件を紹介(ア)するとともに,被告物件の販売の申出を行っている。すなわち,同ウェSlim ODD ブサイト(甲4-3,4-4)には,被告物件が含まれる「」の「(販売問合せ)欄に「」と記載されてMotorSales InquiryJapan 」Overseas Network Sales お り「( 海 外 ネ ッ ト ワ ー ク ) の 「 ,」(販売本部)として「」が記載されている。
Headquarter Japan 」被告物件は,日本法人であるパイオニア株式会社や東芝サムスンスト(イ)レージ・テクノロジー株式会社において評価の対象となっている。
被告の経営顧問であるXが,日本国内において被告の業務に従事して(ウ)いる。
本件訴状は,東京都内の被告の主たる事務所又は営業所と考えられる(エ)場所において,一旦被告に送達されたが,その後,被告は何らかの理由により受領を拒否した上,訴状の謄写をした。仮に,被告に日本における主たる業務担当者も,主たる事務所ないし営業所も存在しないのであれば,被告宛の特別送達が受領されることは起こり得ないし,被告が原告からの訴状が送達された事実を知ることもあり得ない。したがって,被告には,日本国内において被告宛の送達を受領する者が存在する。
ウ譲渡の申出のおそれ仮に,被告が日本国内において被告物件の譲渡の申出を行っていないとしても,上記事実関係からすれば,少なくとも譲渡の申出のおそれが存在する。
原告が本件特許権を有し,被告が本件特許権を侵害する行為をし又はそのおそれが存在するのであるから,被告の日本における行為により原告の法益に損害(又はそのおそれ)が生じたことは明白である。
エよって,本件は民訴法に規定する裁判籍が日本国内にある場合に該当する。
2特段の事情について()ア本件は,日本国特許権の侵害訴訟であるから,準拠法も日本法であり,証拠方法も日本に存在する。したがって,日本の裁判所において判断することが最も適切である。また,日本国内における被告による被告物件の譲渡の申出ないし申出のおそれの存在に関する証拠方法は日本国内に存在する。
イ被告は,韓国最大かつ世界的に著名な企業グループであるサムスングループに所属する法人であり,日本を含む多くの国に販売拠点を有している。
したがって,被告をして日本において応訴させることが被告に過大な負担を課すことにはならない。
ウよって,本件について日本で裁判を行うことが当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念に反するという特段の事情は存在しない。
3以上のとおり,本件について,民訴法に規定する裁判籍が日本国内にあり, ()また,日本で裁判を行うことが当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念に反する特段の事情もないから,日本の国際裁判管轄が肯定されることは明らかである。
【被告の主張】1不法行為地について()原告は,弁護士費用相当の損害が発生したのが原告の本店所在地である京都市であることから,民訴法6条1項2号により大阪地方裁判所に管轄があると主張する。しかし,原告の主張によれば,日本全国各地でなされた特許権侵害行為及び世界各国でなされた特許権侵害行為のいずれについても,原告本店所在地が不法行為地とされてしまうのであり,明らかに不合理である。
原告が主張する訴訟遂行のための弁護士費用の支払は,特許侵害から直接生じた損害ではなく,原告が弁護士を依頼することを選択したことによる二次的,派生的に生じた結果である。したがって,弁護士費用の支払地にまで不法行為管轄を認めるべきではない。
よって,本件において,原告本店所在地を不法行為地とすることはできない。
2譲渡の申出又はそのおそれの証明がないこと()ア被告のウェブサイトについて被告のウェブサイトには,被告物件のうち「DMBSFC05B/M」及び「DMBSFC07R」の記載はないから,少なくとも同物件について,ウェブサイト上何らの譲渡の申出を行っていないことは明らかである。
また 「DMBSFC06M」については,訴え提起時のウェブページに ,原告主張の記載があるものの,対象製品の購買を目的とするものではなく,一般的な問合せを受ける場合に備えるためのものであり,被告物件の譲渡の申出が行われる可能性を示唆するものではない。なお,被告は,現在,上記品番の掲載や 「」の「」の掲載をし , Slim ODD MotorSales Inquiryていない(乙3 。)イ他社の評価の対象となっていること他社が被告の製品をどのように評価しているかは,被告の関知するところではないし,被告物件が評価の対象となっていることを聞いたこともない。
また,被告は,原告が挙げる日本法人に対して被告物件の譲渡の申出を一切行っていない。
ウ経営顧問のXについてXは,被告物件の商談等はおろか,モータの営業活動に関与したことも一切ない。経営顧問の職は,既存の技術,知識,人的ネットワークを土台にして,経営諮問をする役割であり,経営に参加するものではなく,営業活動を行うものでもない。
エ送達受領について被告は日本に主たる事務所又は営業所を有しない。
原告は,本件訴状が日本国内で一旦被告に送達されたと主張するが,被告は,国際送達を経て初めて本件訴状を受領した。
オ製造中止について被告物件のうち 「DMBSFC05M」及び「DMBSFC06M」 ,については,既に生産が終了しており,譲渡の申出のおそれはない。また,「DMBSFC05B」についても,近日中にその生産を終了する予定である。
カ以上のとおり,原告は,被告が日本国内で被告物件の譲渡の申出を行っていることを合理的に判断できる程度の証明をなし得ていない。また,譲渡の申出のおそれについても,原告は,抽象的に指摘するばかりで,具体的なおそれを一切明らかにしていない。
3特段の事情について ()ア原告は,被告に応訴能力があると主張するが,被告は日本において子会社を有しておらず,サムスングループの一つが日本に販売拠点を有しているとしても,あくまで別法人である。
イ証拠収集の観点からも,被告は,独自で日本に経営基盤を有しているものではなく,被告の経済活動の本拠は韓国にあり,被告物件に係る証拠も製造・供給されている韓国に集中している。
ウ被告にとって,日本で被告物件の譲渡の申出等を行っていないにもかかわらず,日本で裁判を提起されるのは,全く予測可能性がないところである。
エしたがって,仮に,本件について,日本に民訴法上の裁判籍があったとしても,日本で裁判を行うことが当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念に反する特段の事情が存在するから,日本に国際裁判管轄はない。
4日本に管轄があるとすれば,それは東京地方裁判所であること()仮に日本に国際裁判管轄が認められたとしても,民訴法5条9号不法行為管轄があるとするならば,ホームページ上の「」の記載,Sales Inquiry経営顧問の名刺,東芝サムスンストレージ・テクノロジー株式会社(本店所在地:東京都港区<以下略>)やパイオニア株式会社(本店所在地:東京都目黒区<以下略>)などに対する譲渡の申出又はそのおそれのいずれを根拠としても,不法行為地は東京であり,管轄は東京地方裁判所にあるはずであって(民訴法6条1項1号 ,大阪地方裁判所に管轄はない。 )第4本案前の争点に関する当裁判所の判断1国際裁判管轄の判断基準我が国の裁判所に提起された訴訟の被告が,外国に本店を有する外国法人である場合には,当該法人が進んで服する場合のほか日本の裁判権は及ばないのが原則であるが,例外として,被告が我が国と法的関連を有する事件について,我が国の国際裁判管轄を肯定すべき場合のあることは,否定し得ないところである。ただし,どのような場合に我が国の国際裁判管轄を肯定すべきかについては,国際的に承認された一般的な準則が存在せず,国際的慣習法の成熟も十分でないため,当事者間の公平や裁判の適正・迅速の理念により条理に従って決定するのが相当である(最高裁判所昭和55年(オ)第130号同56年10月16日第二小法廷判決・民集35巻7号1224頁 。)そして,我が国の民訴法の規定する裁判籍のいずれかが我が国内にあるときには,原則として,我が国の裁判所に提起された訴訟事件につき,被告を我が国の裁判籍に服させるのが相当であるが,我が国で裁判を行うことが当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念に反する特段の事情があると認められる場合には,我が国の国際裁判管轄を否定すべきである(最高裁判所平成5年(オ)第1660号同9年11月11日第三小法廷判決・民集51巻10号4055頁 。)本件訴えは,特許権侵害差止請求(特許法100条1項)と特許権侵害不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)が併合して提起されたものであるから,以下,それぞれの請求について,上記判断基準に従って我が国に国際裁判管轄があるかどうかについて検討することとする。
2不法行為に基づく損害賠償請求について1民訴法の規定する裁判籍の有無()ア原告は,被告の特許権侵害行為(我が国における譲渡の申出)によって本件訴訟の提訴を余儀なくされ,弁護士費用相当の損害を被ったと主張し,同損害は,原告の本店所在地である京都市において発生したとして,民訴法5条9号(不法行為地の裁判籍)により我が国に裁判籍があると主張する。
ところで,民訴法5条9号不法行為地の裁判籍の規定に依拠して我が国の国際裁判管轄を肯定するためには,原則として,被告が我が国においてした行為により原告の法益について損害が生じたことの客観的事実が証明されることを要し,かつそれで足りると解される(最高裁判所平成12年(オ)第929号同13年6月8日第二小法廷判決・民集55巻4号727頁 。)そうすると,我が国において損害が発生したことが証明されるのみでは足りず,不法行為の基礎となる客観的事実として原告が主張する事実,すなわち,本件においては日本国特許権である本件特許権の侵害事実としての,我が国における被告物件の譲渡の申出の事実が証明される必要があるというべきである。
そこで,以下,被告が我が国において被告物件の譲渡の申出をした事実が認められるかどうかについて検討する。
イウェブサイトによる譲渡の申出原告は,被告が被告のウェブサイトにおいて被告物件の譲渡の申出をしていると主張する。
たしかに,本件訴え提起時点で閲覧可能な被告のウェブサイト(英語表記)において「(スリム オプティカル ディスク ドラSlim ODD Motor 」イブ モータ)を紹介するウェブページ(甲4-1-1)が存在し,同ページの「」という項目を選択すると,別のページ(甲4Part Number List-1-2)が表示され,同ページには被告物件の一つである「DMBSFC06M」の品番が掲載されていることが認められる(ただし,被告は,Part Number 本件口頭弁論終結時〔平成21年9月29日〕までに「」の項目を削除した〔乙3。
List 〕)また,同サイトにおいて製品一覧を示したウェブページ(甲4-3)の「」欄の「(販売問合せ)として,Slim ODD MotorSales Inquiry 」「(日本)も掲げられており,海外ネットワークを示したページJapan 」(甲4-4)においては 「」として,日本での拠点 , Sales Headquarter(東京都港区<以下略>)が示されていることが認められる。
Slim ODD さらに,被告の日本語表記のウェブサイトにおいても 「,」を紹介するウェブページ(甲7)が存在し,同ページの「購買にMotor関するお問合せ」という項目を選択すると 「」の販売 , Slim ODD Motorに係る問合せフォーム(甲8:」欄に「」と表記)が表示 「 SectionSalesされ,同ページの「製品に関するお問合せ」という項目を選択すると,「」の製品に係る問合せフォーム(甲9:」欄Slim ODD Motor Section 「に「」と表記)が表示されることが認められる。また,同サイトのTech海外事業場を紹介するウェブページ(甲10)において,日本における販売法人として東京と大阪の拠点が掲載されていることが認められる。
しかしながら,上記英語表記のウェブサイトは,被告の製造する製品の, , 一つとして 「」を全世界に向けて紹介するものでありSlim ODD Motor日本語で表記された「」の販売・製造に関する問合せフ Slim ODD Motorォーム(甲7〜9)についても,プルダウンの選択次第で様々な製品に変更ができるものであり(乙7の1 ,品番や具体的な仕様についても何ら )示されていない。そうであるから,同フォームが表示されていることをもって,被告物件につき譲渡の申出があったとは認められない。
また,被告のウェブサイトの中には,被告物件のうち一部の品番(DMBSFC06M)が掲載されているページ(甲4-1-2)も過去には存在したが,同ページが英語で表記されていることに加え,同ページには当該品番のモータの定格電流,定格電圧,騒音及び振動が示されているにすぎず,同モータの他の具体的な仕様については何ら示されていないのであり,また問合せフォームにもリンクしていないのであるから,当該品番のモータの一般的な紹介にとどまるというべきであり,同モータについて,我が国において譲渡の申出があったとは認められない。
したがって,被告が,上記ウェブサイトにおいて被告物件の譲渡の申出をしたとは認められない。
ウ原告営業部長の陳述原告営業部長であるYは,その陳述書(甲5)において,被告物件がパイオニア株式会社や東芝サムスンストレージ・テクノロジー株式会社において,製品に搭載すべきか否かの評価の対象になっている旨陳述する。しかし,この陳述書の陳述記載のほかに被告物件がこれら日本法人において評価の対象となっていることを窺わせる証拠はないから,同陳述記載のみに基づいて,たやすくその内容を真実と認めることはできない。
また,同営業部長は,その陳述書(甲6)において,被告の従業員が日本法人である「A社」や「B社」を訪問して営業活動を行ったとの情報を入手した旨陳述する。しかし,同陳述記載は,伝聞に基づくものであり,その情報の入手経路も明らかでない上 「A社」や「B社」の具体的な会 ,社名も明らかにしておらず,同事実を争う被告にとって十分な反証をなし得ないものであるから,同陳述記載の内容をたやすく真実と認めることはできない。
エ被告の経営顧問の名刺原告は,被告の経営顧問であるXが日本国内で営業活動をしていると主張する。
たしかに,日本語で標記された被告の「経営顧問」の肩書を付した同人の名刺(甲3)からすると,同人が我が国において被告の何らかの業務に携わっていることが推認できる。しかし,同証拠のみによっては,Xが我が国において具体的な営業活動を行ったという事実を推認することはできず,まして同人が我が国において被告物件の譲渡の申出をしたことを窺わせるものとはいえない。
オ送達の経緯原告は,本件訴状が我が国において被告に一旦送達できたことを主張する。しかし,送達の経緯をもって,被告が我が国において被告物件の譲渡の申出をしたことを推認することができないことは当然である。
カ小括以上のとおり,本件全証拠をもってしても,被告が我が国において被告物件の譲渡の申出を行った事実を認めるに足りない。
よって,特許権侵害不法行為に基づく損害賠償請求については,被告が我が国において特許権侵害行為をし,同行為により原告の法益について損害が生じたとの客観的事実関係が証明されたものとはいえないから,民訴法5条9号不法行為地の裁判籍を認めることはできない。
2上記のように,不法行為に基づく損害賠償請求について,我が国に民訴法()に規定する裁判籍が認められないのであるから,我が国で裁判を行うことが当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念に反する特段の事情があるかどうかについて判断するまでもなく,同請求について我が国に国際裁判管轄を肯定することはできない。
3特許権侵害差止請求について1原告は,特許権侵害差止請求について管轄原因を主張していないが,他方()で,本件は日本国特許権の侵害に係る訴訟であり,我が国の裁判所において侵害の有無を判断することが最も適切であると主張し,譲渡の申出のおそれがあるとも主張する。
たしかに,原告は,日本国特許権である本件特許権に基づいて,我が国における被告物件の譲渡の申出の差止めを求めているのであり,準拠法も本件特許権の登録国法である日本国特許法になると解される(最高裁判所平成12年(受)第580号同14年9月26日第一小法廷判決・民集56巻7号1551頁 。したがって,我が国における譲渡の申出の事実が証明されなか )った場合であっても,そのおそれを具体的に基礎づける事実(そのおそれが抽象的なおそれでは足りず,具体的なものであることを要するのは当然である )が証明された場合には,条理により,我が国の国際裁判管轄を肯定す 。
る余地もある。
しかしながら,前記2(1)で認定・説示したとおり,本件においては,我が国において被告物件の譲渡の申出がなされたとは認められず,また,同認定事実からは,被告が我が国において被告物件の譲渡の申出をする具体的なおそれがあると推認することもできず,他にそのおそれがあることを具体的に認定し得る証拠はない。
2よって,特許権侵害差止請求についても,我が国の国際裁判管轄を肯定()することはできない。
第5結論以上のとおり,本件訴えは,特許権侵害不法行為に基づく損害賠償請求に係るもの及び特許権侵害差止請求に係るもののいずれについても,我が国の国際裁判管轄が認められないものであるから,訴訟要件を欠くものとして,これを却下することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61条を適用して主文のとおり判決する。
追加
田中俊次裁判長裁判官北岡裕章裁判官山下隼人裁判官別紙物件目録1品番DMBSFC05B/M2品番DMBSFC06M3品番DMBSFC07R4上記品番のモータのほか,別紙被告物件説明書記載の構成を有するモータ。
以上別紙被告物件説明書1構成aベースプレート2と,該ベースプレート2に立設された軸受支持部材4と,軸受支持部材4に装着された滑り軸受8と,該滑り軸受8を介して回転支持されたロータ14と,ロータ14に設けられたロータマグネット22と,ロータマグネット22に対向して設けられたステータ6とを備え,b軸受支持部材4は,ベースプレート2に設けられた孔部2bへ嵌合して挿入され,軸受支持部材4の挿入端4fが加締められることにより,軸受支持部材4がベースプレート2に固定されてなるcモータにおいて,d孔部2bの周縁部には,周方向に形成される欠損部5aと,軸受支持部材4の挿入端4fの塑性変形部を収容するテーパ部5bと,が設けられ,e該欠損部5aによって,該テーパ部5bの形成時に発生する加工歪みが吸収されることを特徴とするfモータ。
2図面(1)被告物件の裏面写真(2)被告物件の断面図((1)のA1-A2での断面図)(3)ベースプレートの裏面図(4)被告物件の挿入端4fの塑性変形部分の拡大図((2)の破線円部分)