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関連審決 異議1998-70682
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事件 平成 20年 (ワ) 7416号 損害賠償請求事件
平成 20年 (ワ) 11277号 損害賠償請求事件
神奈川県相模原市<以下略>
本訴原告(反訴被告)株 式会社イー・ピー・ルーム東京都港区<以下略>
本訴被告(反訴原告)住 友石炭鉱業株式会社
同訴訟代理人弁護士冨永敏文
同 尾原央典
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2008/09/30
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1本訴原告(反訴被告)の本訴請求に係る訴えを却下する。
2本訴原告(反訴被告)は,本訴被告(反訴原告)に対し,105万円及びこれに対する平成20年5月2日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
3訴訟費用は,本訴反訴を通じ,本訴原告(反訴被告)の負担とする。
4この判決は第2,3項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
全容
第1請求1本訴(1)請求の趣旨本訴被告(反訴原告。以下「被告」という。)は,本訴原告(反訴被告。
以下「原告」という。)に対し,10万円及びこれに対する平成20年2月29日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
(2)被告の答弁2ア本案前の答弁主文第1項と同旨イ請求の趣旨に対する答弁原告の本訴請求を棄却する。
2反訴(1)請求の趣旨主文第2項と同旨(2)原告の答弁被告の反訴請求を棄却する。
第2事案の概要本訴は,原告が,同人の有していた放電焼結装置についての特許に対して被告がした異議申立ては権利の濫用として不法行為に当たると主張して,被告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,885万円の損害の一部請求として10万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成20年2月29日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
反訴は,被告が,原告の提起した本訴(東京地方裁判所平成20年(ワ)第7416号事件)に係る訴え,東京地方裁判所平成20年(ワ)第8836号事件に係る訴え,同庁平成19年(ワ)第23460号事件に係る訴え,同庁平成19年(ワ)第23951号事件に係る訴えは,関連訴訟の確定判決等により認められなかった請求と実質的に同一の請求を行うものであり,これらの訴訟提起が不法行為に該当すると主張して,原告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,再度の応訴等のために委任した弁護士に支払った費用合計105万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成20年5月2日(反訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
31前提事実(認定事実については末尾に証拠を掲記する。)(1)原告が有していた特許権原告は,以下の特許権(以下「本件特許権」といい,本件特許権の特許請求の範囲請求項1ないし3に係る特許を「本件特許」,本件特許に係る発明を「本件発明」という。)を有していた。(甲1)特 許 番 号第2640694号発明の名称放電焼結装置出願年月日平成2年9月18日優先日平成2年2月2日公開日平成4年1月14日公 開 番 号特開平4-9405号登録年月日平成9年5月2日(2)被告による特許異議の申立て等ア被告は,平成10年2月13日,本件特許について,特許異議の申立てをし(平成10年異議第70682号。以下「本件特許異議申立て」という。),特許庁は,平成13年7月4日,本件特許を取り消すとの決定をした(以下「本件取消決定」という。)。
本件取消決定の理由は,平成7年3月14日付けの手続補正は明細書又は図面の要旨を変更するものであり,本件特許の出願日は平成7年3月14日とみなされるから,本件発明は,その出願前に頒布された刊行物(特開平4-9405号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件特許は,特許法29条2項に違反してされたものである,というものである。(甲2)イ原告は,本件取消決定の取消しを求めて,東京高等裁判所に取消訴訟を提起した(同庁平成13年(行ケ)第369号事件)。同裁判所は,平成15年4月9日,原告の請求を棄却する旨の判決を言い渡した(以下「本4件取消訴訟判決」という。)。(甲3)ウ本件取消決定は,平成15年10月9日,上告不受理決定等により確定し,同月22日,本件特許の登録を抹消する旨の登録がされた。(甲4)(3)関連訴訟ア東京地方裁判所平成18年(ワ)第4428号,同第6631号事件(以下「前訴事件?@」という。)(甲17,乙1,弁論の全趣旨)(ア)前訴事件?@は,原告が,被告に対し,本件特許異議申立ては,実公昭46-5289号公報(甲6。以下「甲6公報」という。)が存在するにもかかわらずされたものであり,不法行為に当たる旨主張して,損害の一部請求として10万円の支払を求めるとともに,本件取消決定の取消理由が無効であることの確認などを求めた事案である。
(イ)東京地方裁判所は,平成18年6月30日,上記不法行為に基づく損害賠償請求を棄却し,上記無効確認請求を却下する旨の判決(甲17,乙1)をした。同判決において,上記不法行為に基づく損害賠償請求については,要旨次のとおり判示されている。
a原告は,本件特許異議申立ては不法行為法上違法である旨主張する。
平成6年法律第116号による改正後の特許法113条は,何人も特許法29条違反等の事由があるときは,特許庁長官に対し,異議の申立てをすることができる旨規定していたものであり,本件特許異議申立ては特許法により認められた権利の行使であるから,それが不法行為法上違法となるには,権利の濫用に当たる事情が必要であると解される。しかしながら,本件特許異議申立てが権利の濫用に当たることを認めるに足りる事実の主張立証はない。
bしたがって,原告の不法行為に基づく損害賠償請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。
(ウ)上記判決は確定している。
5イ東京地方裁判所平成18年(ワ)第11210号事件(以下「前訴事件?A」という。)(甲18,乙2,弁論の全趣旨)(ア)前訴事件?Aは,原告が,被告に対し,本件特許異議申立ては権利の濫用として不法行為に当たる旨主張して(すなわち,本件発明についての出願に関する平成7年3月14日付けの手続補正に係る事項は,甲6公報により公知であり,上記補正は要旨変更には該当せず,本件取消決定における本件特許を取り消した理由は存在しないから,本件特許異議申立ては権利の濫用として許されない旨主張して),15億円損害の一部請求として10万円の支払を求めた事案である。
(イ)東京地方裁判所は,平成18年8月31日,要旨次のとおり判示して,上記不法行為に基づく損害賠償請求を棄却する旨の判決(甲18,乙2)をした。
a平成6年法律第116号による改正後の特許法113条は,申立期間内であれば,利害関係の有無を問わず,何人であっても特許異議を申し立てることができるものとしていた。そして,特許法119条,150条が,職権で証拠調べをすることができる旨規定していたこと,特許法120条が,特許権者,特許異議申立人等が申し立てない理由についても,審理することができる旨規定していたことに照らせば,特許異議においては,職権による審理が許容されていたのであって,当事者の提出した主張や証拠に拘束されることなく特許庁の判断がされるものであった。
b原告と被告との間で,特許異議申立てが禁止されていたとは到底いえないのであって,被告による本件特許異議申立てを,法によって万人に認められた異議申立権を濫用したものということはできず,本件特許異議申立てが原告に対する不法行為に該当するということはできない。
6(ウ)上記判決は確定している。
ウ東京地方裁判所平成18年(ワ)第17644号事件(以下「前訴事件?B」という。)(甲19,乙3)(ア)前訴事件?Bは,原告が,被告に対し,主位的に,本件特許異議申立ては権利の濫用であって不法行為に当たると主張して(すなわち,本件発明についての出願に関する平成7年3月14日付けの手続補正に係る事項は,当業者が容易に想到し得るものであり,また,甲6公報により公知であったから,上記補正は要旨変更には該当せず,本件取消決定における取消理由は理由がないのであって,本件特許異議申立ては権利の濫用として許されない旨主張して),15億円の損害の一部請求として10万円の支払を求め,予備的に,被告が原告の著作権を侵害したと主張して,1億円の損害の一部請求として10万円の支払を求めた事案である。
(イ)東京地方裁判所は,平成18年10月24日,上記主位的請求及び予備的請求に係る訴えをいずれも却下する旨の判決(甲19,乙3)をした。同判決において,上記主位的請求については,要旨次のとおり判示されている。
a金銭債権の数量的一部請求訴訟で敗訴した原告が残部請求の訴えを提起することは,特段の事情がない限り,信義則に反して許されない。
b前訴事件?Bにおける主位的請求は,前訴事件?@及び前訴事件?Aにおける損害賠償請求と同一の理由に基づく損害賠償請求の残部を請求するものであり,上記各前訴事件における損害賠償請求と同一の事実を審判の対象とし,同一の理由に基づいて再度裁判所の判断を求めようとするものであって,実質的には上記各前訴事件で認められなかった請求及び主張を蒸し返すものと評価せざるを得ない。また,前訴事件?Bにおける主位的請求は,上記各前訴事件の確定判決により当該損害7賠償請求権の全部について紛争が解決されたとの被告の合理的期待に反し,被告に二重の応訴の負担を強いるものというべきである。
上記各前訴事件においても,本件特許異議申立てが権利の濫用に当たるか否かが主な争点となり,原告は同争点について主張,立証を尽くしたものであって,原告が上記各前訴事件において訴訟活動を充分になし得なかった事由は存しないから,原告の前訴事件?Bにおける主位的請求を認めないと当事者間の公平を害するような特段の事情もない。
c前訴事件?@及び前訴事件?Aで敗訴した原告が,前訴事件?Bにおいて本件特許異議申立てが不法行為に当たることを理由とする損害賠償請求をすることは,信義則に反し,許されないというべきである。
エ知的財産高等裁判所平成18年(ネ)第10086号事件(以下「前訴事件?B控訴事件」という。)(乙4)(ア)原告は,前訴事件?Bにおける判決を不服として,知的財産高等裁判所に控訴を提起した。なお,原告は,控訴審において,予備的請求に係る訴えを取り下げた。
(イ)知的財産高等裁判所は,平成19年3月28日,原判決(甲19,乙3)における理由と同じ理由により,前訴事件?Bの訴えは,信義則に反し,訴権の濫用に当たり許されないものであるとして,訴えを却下する旨の判決(乙4)をした。
オ東京地方裁判所平成18年(ワ)第22355号,同第26612号事件(以下「前訴事件?C」という。)(乙5)(ア)前訴事件?Cの本訴は,原告が,被告に対し,以下の損害賠償を求めた事案である。
a本件特許異議申立ては,特許出願前の特許第96574号「硬質金属合成物製造装置」公報及び甲6公報に基づき取消決定無効事由を有8することが明らかであり,特許法に認められた本件特許異議申立ては権利の濫用として許されないから,権利濫用による損害金の一部金5万円(以下「本訴請求?@」という。)b本件特許異議申立ては,東京高裁判決昭和32年(行ナ)第33号に基づき取消決定無効事由を有することが明らかであり,特許法に認められた本件特許異議申立ては権利の濫用として許されないから,権利濫用による損害金の一部金5万円(以下「本訴請求?A」という。)c本件特許異議申立ては,特許出願前の甲6公報に基づき取消決定無効事由を有することが明らかであり,特許法に認められた本件特許異議申立ては権利の濫用として許されないから,権利濫用による損害金の一部金5万円(以下「本訴請求?B」という。)d本件特許異議申立ては,東京高裁判決昭和32年(行ナ)第58号に基づき取消決定無効事由を有することが明らかであり,特許法に認められた本件特許異議申立ては権利の濫用として許されないから,権利濫用による損害金の一部金5万円(以下「本訴請求?C」という。)e本件特許異議申立ては,上記aないしdのとおり,本件取消決定要旨変更に基づく取消理由は全部無効であり,無効な要旨変更に基づいてした刊行物特開平4-9405号に記載された発明,及び対比・判断には取消決定無効事由を有することが明らかであり,特許法に認められた本件特許異議申立ては権利の濫用として許されないから,権利濫用による損害金の一部金5万円(以下「本訴請求?D」という。)f取引基本契約の債務不履行により原告に被らせた損害金の一部金5万円(以下「本訴請求?E」という。)g原告の著作権を侵害して原告に被らせた損害金の一部金5万円(以下「本訴請求?F」という。)h原告の放電焼結装置の設計図,部品図一式貸してくれといって占有9し,原告に被らせた損害金の一部金5万円(以下「本訴請求?G」という。)i被告が占有する原告の放電焼結装置の設計図,部品図一式により放電焼結装置を製造販売して原告に被らせた損害金の一部金5万円(以下「本訴請求?H」という。)j部品図の署名「A」を切り取り,設計図に切り貼りし,偽造して原告に被らせた損害金の一部金5万円(以下「本訴請求?I」という。)(イ)前訴事件?Cの反訴は,被告が,原告に対し,本訴請求?@ないし?Dに係る訴えは,関連訴訟の確定判決等により認められなかった請求と実質的に同一の請求を行うもので,これに係る訴訟の提起が不法行為に該当するとして,再度の応訴のために委任した弁護士に支払った費用10万5000円の支払を求めた事案である。
(ウ)東京地方裁判所は,平成19年1月31日,本訴請求?@ないし?Dに係る訴えをいずれも却下し,本訴請求?Eないし?Iの請求をいずれも棄却し,反訴請求を認容する旨の判決(乙5)をした。
本訴請求?@ないし?D,?E,?Gないし?Iに係る原告の主張及びそれに対する判示は,要旨次のとおりである。
a本訴請求?@ないし?Dについて(a)原告の主張平成7年3月14日付けの手続補正に係る事項は,甲6公報により,本件特許の出願時において,周知,慣用であったから,要旨変更に当たらず,本件取消決定は無効とされるべきものであり,被告による本件特許異議申立ては権利の濫用として許されない。
原告は,被告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,15億円の損害の一部請求として各5万円(総額25万円)の支払を求める。
10(b)裁判所の判断本訴請求?@ないし?Dは,前訴事件?@及び前訴事件?Aにおける請求と同一の不法行為による損害賠償請求権に基づく請求であり,前訴事件?@及び前訴事件?Aにおいて数量的一部請求であったことから,その残部請求をしているものであって,実質的に,前訴事件?@及び前訴事件?Aで認められなかった請求及び主張を蒸し返すものであるといわざるを得ず,前訴事件?@及び前訴事件?Aの確定判決によって同請求権の全部について紛争が解決されたとの被告の合理的期待に反し,被告に二重の応訴の負担を強いるものということができる。
そして,原告において,本訴請求?@ないし?Dに係る訴えを提起することがやむを得ないといった特段の事情も認められない。
そうすると,前訴事件?@及び前訴事件?Aにおいて敗訴した原告が,本件特許異議申立てが不法行為を構成すると主張する損害賠償請求の訴えを提起することは,信義則に反して許されないというべきである。
b本訴請求?Eについて(a)原告と被告とは,取引基本契約を締結し,その上で,原告作成の設計図による製品を,原告がB社において製造して被告に納入する旨の合意(以下「本件製造納入合意」という。)をしたにもかかわらず,原告作成の設計図による放電焼結装置については,本件製造納入合意が履行されず,被告は,原告が作成した図面一式を詐欺に当たる手段で取得し,C社に交付して放電焼結装置を製造させた。
被告の上記行為は,原告と被告との間における本件製造納入合意に反する債務不履行に当たる。
原告は,被告に対し,債務不履行による損害賠償請求権に基づき,1億円の損害の一部請求として5万円の支払を求める。
11(b)裁判所の判断原告の主張する本件製造納入合意がされたこと,被告が,原告が作成した図面一式を詐欺に当たる手段で取得し,これらの図面を用いて,C社に放電焼結装置を製造させたことを裏付ける証拠は,何ら提出されておらず,これらの事実を認めることはできないから,本訴請求?Eに係る主張は認められない。
c本訴請求?Gについて(a)原告の主張被告は,被告の方式で図面番号を付したいから,本件原告設計図,部品図を貸してくれと言って占有し,原告に損害を被らせた。
被告の上記行為は詐欺に当たる不法行為となる。
原告は,被告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,15億円の損害の一部請求として5万円の支払を求める。
(b)裁判所の判断原告の主張に係る事実を裏付ける証拠はない上,その他,詐欺の不法行為の成立を基礎付ける具体的な主張もないから,本訴請求?Gに係る主張は認められない。
d本訴請求?Hについて(a)原告の主張被告は,被告が占有する本件原告設計図により放電焼結装置を製造販売し,原告に損害を被らせた。
被告の上記行為は横領に当たる不法行為となる。
原告は,被告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,15億円の損害の一部請求として5万円の支払を求める。
(b)裁判所の判断原告の主張に係る事実を裏付ける証拠は提出されておらず,原告12の主張する不法行為の成立を認めることはできないから,本訴請求?Hに係る主張は認められない。
e本訴請求?Iについて(a)原告の主張被告は,原告設計図の原告代表者署名部分を切り取り,被告の名称欄を切り貼りして,被告設計図を作成した。
被告の上記行為は,私文書偽造に当たる。
原告は,被告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,15億円の損害の一部請求として5万円の支払を求める。
(b)裁判所の判断原告の主張に係る事実を裏付ける証拠は提出されておらず,原告の主張する不法行為の成立を認めることはできない。また,被告において作成したと原告が主張する設計図の右下隅には,図面の番号や型式番号等が記載されるとともに,被告の名称が大きく英語表記で記載されており,これによって,上記設計図は,被告作成名義のものであると解されるから,被告が被告作成名義のものを作成したとすれば,偽造の問題が生じる余地はない。
以上によれば,本訴請求?Iに係る主張は認められない。
カ知的財産高等裁判所平成19年(ネ)第10015号事件(以下「前訴事件?C控訴事件」という。)(乙6)(ア)原告は,前訴事件?Cにおける判決を不服として,知的財産高等裁判所に控訴を提起した。原告は,控訴審において,本訴請求?@ないし?Dに係る訴えを取り下げて,新たに,以下の請求を択一的に請求した。
a本件特許異議申立ては,特許出願前の特許第96574号「硬質金属合成物製造装置」公報並びに甲6公報に基づき取消決定無効事由を有することが明らかであり,特許法に認められた本件特許異議申立て13は権利の濫用として許されないから,権利濫用による損害金5万円(以下「控訴請求?@」という。)b本件特許異議申立ては,東京高裁判決昭和32年(行ナ)第33号に基づき取消決定無効事由を有することが明らかであり,特許法に認められた本件特許異議申立ては権利の濫用として許されないから,権利濫用による損害金5万円(以下「控訴請求?A」という。)c本件特許異議申立ては,特許出願前の甲6公報に基づき取消決定無効事由を有することが明らかであり,特許法に認められた本件特許異議申立ては権利の濫用として許されないから,権利濫用による損害金5万円(以下「控訴請求?B」という。)d本件特許異議申立ては,東京高裁判決昭和32年(行ナ)第58号に基づき取消決定無効事由を有することが明らかであり,特許法に認められた本件特許異議申立ては権利の濫用として許されないから,権利濫用による損害金5万円(以下「控訴請求?C」という。)e本件特許異議申立ては,上記aないしdのとおり,本件取消決定要旨変更に基づく取消理由は全部無効であり,無効な要旨変更に基づいてした刊行物特開平4-9405号に記載された発明,及び対比・判断には取消決定無効事由を有することが明らかであって,特許法に認められた本件特許異議申立ては権利の濫用として許されないから,権利濫用による損害金5万円(以下「控訴請求?D」という。)(イ)知的財産高等裁判所は,平成19年8月28日,本訴請求?Eないし?I及び反訴請求に係る控訴をいずれも棄却し,控訴請求?@ないし?Dに係る訴えをいずれも却下する旨の判決(乙6)をした。
控訴請求?@ないし?D,本訴請求?E,?Gないし?Iに係る原告の主張及びそれに対する判示は,要旨次のとおりである。
a控訴請求?@ないし?Dについて14(a)原告の主張被告は,小型SPS(放電プラズマ焼結機DR.SINTER・LAB,SPS-510L)を製造販売して一台少なくとも50万円以上の利益を得た。
小型SPSに係る本件特許異議申立ては,権利の濫用として許されない。
原告は,被告に対し,不法行為による損害賠償として,択一して権利濫用による上記小型SPSの製造販売に係る損害金5万円の支払を求める。
(b)裁判所の判断本訴請求?@ないし?D及び控訴請求?@ないし?Dを子細に検討すると,いずれも,結局は被告が本件特許異議申立てをしたことが権利濫用として許されないから不法行為に該当する,というものである。
本訴請求?@ないし?Dに係る訴えを提起することが,前訴事件?@及び前訴事件?Aとの関係で信義則に反して許されないとした原判決(乙5)の理由及び判断は正当である。
そして,控訴請求?@ないし?Dも,上記信義則の適用との関係では本訴請求?@ないし?Dと実質的な差異はないと解されるから,控訴請求?@ないし?Dに係る訴えを提起することも,前訴事件?@及び前訴事件?Aとの関係で信義則に反し,不適法である。
b本訴請求?Eについて(a)原告の主張原告と被告との間において,本件製造納入合意がされた。
平成6年10月7日,被告は原告に対し,「図面修正,加筆等ありますので,図面原紙宅急便で送って下さい。」と要求した。原告は,修正,加筆後図面原紙は返却されるものと信じて送付したところ,被告は原告に同月14日付けで,小型焼結機図面コピー一式を15送付し,図面原紙を返さずに騙し取り,平成7年7月12日,取引基本契約を維持したまま原告に対する発注を停止し,現在に至っている。
被告は,C社に放電焼結装置を製造させ,上記図面一式を原告から詐欺に当たる手段で取得したものである。
被告の上記行為は信義則に違背する。
(b)裁判所の判断取引基本契約の他に,原告が主張する本件製造納入合意のような具体的な合意が存在したことを認めるに足りる証拠はないから,本件製造納入合意があったことを認めることはできない。本件製造納入合意が認められない以上,被告が原告から図面を詐欺に当たる手段で取得したとの主張はその前提を欠くことになる上,被告が図面一式を原告から詐欺に当たる手段で取得したと認めるに足りる証拠もない。
以上によれば,本訴請求?Eは理由がない。
c本訴請求?Gについて(a)原告の主張上記b(a)のとおり,被告は,図面原紙を返さず騙し取ったものであるから,詐欺による不法行為が成立する。
(b)裁判所の判断被告が原告に対し具体的な放電燒結装置の製造の発注を行ったことを認めることはできず,被告が本件製造納入合意をしたと認めることはできないものである。また,原告も記名押印した取引基本契約の第19条には,原告が作成した図面等の所有権は被告に帰属することを原告も同意していたものであり,原告が平成6年10月14日被告から図面コピー1式の送付を受けた際やその後においても,16図面原紙を返してもらっていない旨直ちに異議を申し出た形跡もない。
以上に照らせば,被告の詐欺行為を認めることはできないから,本訴請求?Gは理由がない。
d本訴請求?Hについて(a)原告の主張上記c(a)のとおり,被告は,図面原紙を騙し取って占有しているものであるから,横領による不法行為が成立する。
(b)裁判所の判断上記c(b)に照らせば,被告が図面原紙を騙し取って占有しているから,横領による不法行為が成立する旨の原告の主張は採用することができず,本訴請求?Hは理由がない。
e本訴請求?Iについて(a)原告の主張被告は,原告が被告から強いて使うようにと言って渡された用紙に,鉛筆で作図した50枚の部品図の中から,例えば一枚の図面を選んで,原告の署名を切り取り,設計図に貼り付けて,原告の署名があるとするものの,かかる行為は私文書偽造に当たり不法行為が成立する。
(b)裁判所の判断本件全証拠によっても,被告から強いて使うようにと言って原告が渡された用紙に,原告が鉛筆で作図した50枚の部品図の中から,被告が例えば一枚の図面を選んで,原告の署名を切り取り,設計図に貼り付けたことを認めるに足りる証拠はない。認定に係る事実経過等に照らせば,当時,被告が原告の図面に対し修正,加筆等を行うことは当事者間の当然の了解事項であったとみることができるか17ら,結局,被告が,原告の署名を切り取り,設計図に貼り付けて原告の署名とするという行動をとる動機自体も認めることができない。
以上によれば,本訴請求?Iは理由がない。
(ウ)上記判決は,平成19年9月14日,確定した(乙10,22)。
2本訴に係る当事者の主張〔原告〕(1)本件特許異議申立ての理由の概要は,「本件発明についての出願に関する平成7年3月14日付けの手続補正は,明細書又は図面の要旨を変更するものであり,本件発明についての出願の出願日は,平成7年3月14日とみなされるから,本件発明は,その出願前に頒布された刊行物1(特開平4-9405号公報。甲10)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件特許は,特許法29条2項の規定に違反してなされたものである」というものであり,ここで「要旨変更」とは,「放電燒結装置において,チャンバーを電極に対して相対的に移動させるために,一方の電極に固定したフランジにベローズを介してチャンバーの一端部を支持する代わりに,電極に嵌合したチャンバーフランジにチャンバーの一端部を支持する構造とする補正は要旨変更である。」というものである。
本件取消決定においては,「放電燒結装置において,電極に嵌合したチャンバーフランジにチャンバーの一端部を支持する構造とすることは,平成7年3月14日より前に公知であったと認められるから,チャンバーを電極に対して相対的に移動させるために,一方の電極に固定したフランジにベローズを介してチャンバーの一端部を支持する代わりに,電極に嵌合したチャンバーフランジにチャンバーの一端部を支持する構造とすることは,当業者が容易に想到し得るものである。」とし,手続補正に係る事項が,補正の時点で公知であれば,「当業者が容易に想到し得るものである。」,すなわち,要旨変更とはならないとした。
18上記のとおり,本件取消決定においては,公知の判断時を平成7年3月14日としている。
他方,本件取消訴訟判決においては,「電極に嵌合したフランジでチャンバーを支持する構造は,平成2年2月2日(本件特許の優先日)以前に公知であったとは認定していないことが明らかである。」と判示した。
上記のとおり,本件特許異議申立てにおいては,手続補正が要旨変更になるか否か,すなわち,手続補正に係る事項が公知となった時点がいつであるかが争点となっている。
(2)本件取消決定が確定した後である平成15年10月20日になって,原告は,本件取消決定に無効理由が存在することを立証し得る甲6公報を発見した。
(3)甲6公報によれば,「電極に嵌合したチャンバーフランジにチャンバーの一端部を支持する構造」が公知技術となった時点は,本件特許の出願日(優先日平成2年2月2日)より前の昭和46年2月24日であり,平成7年3月14日付けの手続補正を「要旨変更である」として本件特許を取り消した本件取消決定は無効な理由に基づくものである。
(4)そうすると,被告が行った本件特許異議申立ては,その申立て理由に無効理由が存在することが明らかである。
被告は,甲6公報が存在するにもかかわらず,故意又は過失により,本件特許について,本件特許異議申立てを行った。
被告による本件特許異議申立ては,権利濫用によるものとして不法行為に該当し,被告は,これにより原告が受けた損害を賠償する責任を負う。
(5)被告は成形圧力20トンの放電プラズマ燒結機の見積書(見積価格2950万円。甲15)をD社に提出し,これを販売して利益を得た。
原告は,被告に対して本件特許権について実施権を設定することにより,実施料等の利益を得るべきところ,被告が権利を濫用して本件特許を取り消19したことにより,得べかしり利益(実施料)885万円(2950万円×30%)を喪失した。
(6)よって,原告は,被告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,被告による上記権利の濫用により原告が被った損害885万円の内金10万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成20年2月29日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。
(7)被告の主張に対する反論ア甲第17ないし19号証の判決は,原告が書証として提出した甲6公報を何らの理由も示さずに排斥したから,いずれも破棄されるべきものである。
本件本訴は,甲6公報に基づき,被告による本件特許異議申立てが権利の濫用によるものである旨を主張し,損害賠償を請求するものであるから,上記各訴訟の蒸し返しではなく,信義則に反するものではない。
イ本件取消決定が確定した後である平成15年10月20日になって,原告は,本件取消決定に無効理由が存在することを立証し得る甲6公報を発見したのであり,甲6公報に基づく主張は,甲第3号証の判決の既判力抵触しない。
〔被告〕(1)本案前の主張本訴に係る訴えは,既に判決が確定している訴え(甲17ないし19)の蒸し返しにすぎず,信義則に反するものとして,却下されるべきである。
(2)請求の原因に対する認否等ア原告の主張は,不知ないし否認する。
イ本訴請求は,確定判決(甲17ないし19)の既判力抵触するものとして,棄却されるべきである。
203反訴に係る当事者の主張〔被告〕(1)東京地方裁判所平成20年(ワ)第7416号事件(本件本訴。以下「20-7416号事件」という。)の提起が違法であることア20-7416号事件は,被告が本件特許異議申立てをしたことが不法行為に該当するとして損害賠償を請求する事件である。
イ前訴事件?C(乙5)において,原告は,被告が本件特許異議申立てをしたことが不法行為に該当するとして損害賠償を請求したものの,敗訴した。
そして,前訴事件?C控訴事件(乙6)において,原告は上記請求に係る部分については控訴しなかったため,乙第5号証の判決は確定した。
ウまた,原告は,乙第5,6号証の判決により,敗訴した確定判決と実質的に同一の訴訟を提起することが,相手方(被告)に対する不法行為に該当し,違法であることを充分認識していた。
エよって,原告が,前訴事件?Cに係る訴えと実質的に同一の訴えである20-7416号事件を提起したことは,被告に対する不法行為に該当する。
(2)東京地方裁判所平成20年(ワ)第8836号事件(乙25。以下「20-8836号事件」という。)の提起が違法であることア20-8836号事件は,被告が設計図を横領したとして,不法行為に基づく損害賠償を請求した事件である。
イ前訴事件?C(乙5)において,原告は,被告が設計図を横領したとして,不法行為に基づく損害賠償を請求したものの,敗訴した。
原告は上記判決を不服として控訴したものの,控訴が棄却され(乙6),同判決は確定した。
ウまた,原告は,乙第5,6号証の判決により,敗訴した確定判決と実質的に同一の訴訟を提起することが,相手方(被告)に対する不法行為に該当し,違法であることを充分認識していた。
21エよって,原告が前訴事件?C及び前訴事件?C控訴事件に係る訴えと実質的に同一の訴えである20-8836号事件を提起したことは,被告に対する不法行為に該当する。
(3)東京地方裁判所平成19年(ワ)第23460号事件(乙10,22。以下「19-23460号事件」という。)の提起が違法であることア19-23460号事件は,被告が設計図の署名欄を切除して被告の名称を貼り付けて設計図を作成したことが私文書偽造であり,不法行為に該当するとして損害賠償を請求した事件である。
イ上記事件における請求は,敗訴した確定判決(乙5,6)と実質的に同一の訴えであり,19-23460号事件において,同事件に係る訴えは,前訴事件?C及び前訴事件?C控訴事件に係る訴えの蒸し返しであって,信義則に反するとして,訴えを却下する旨の判決(乙10)がされた。
ウよって,原告が,前訴事件?C及び前訴事件?C控訴事件に係る訴えと実質的に同一の訴えである19-23460号事件を提起したことは,被告に対する不法行為に該当する。
(4)東京地方裁判所平成19年(ワ)第23951号事件(乙11,24。以下「19-23951号事件」という。)の提起が違法であることア19-23951号事件は,被告が設計図を訴外会社に交付して放電燒結装置を製造させた行為が債務不履行に該当するとして損害賠償を請求した事件である。
イ上記事件において原告が主張する事実は,敗訴した確定判決(乙6)や同事件の判決以降にされた判決に係る訴訟において,請求原因として主張された事実とほぼ同一であり,19-23951号事件において,先行訴訟で認められなかった請求及び主張を蒸し返すもの,あるいは,これらの先行訴訟(確定したものを除く)と重複するものであり,信義則ないし二重起訴の禁止規定に抵触するとして,当該訴えを却下する旨の判決がされ22た(乙11)。
ウよって,原告が前訴事件?C控訴事件に係る訴え等と実質的に同一の訴えである19-23951号事件を提起したことは,被告に対する不法行為に該当する。
(5)損害ア被告は,20-7416号事件(本件本訴)の応訴及び本件反訴の提起のために,弁護士費用として42万円の出費を余儀なくされた(乙20の1・2)。
イ被告は,20-8836号事件の応訴のために,弁護士費用として21万円の出費を余儀なくされた(乙21の1・2)。
ウ被告は,19-23460号事件の応訴のために,弁護士費用として21万円の出費を余儀なくされた(乙16,18)。
エ被告は,19-23951号事件の応訴のために,弁護士費用として21万円の出費を余儀なくされた(乙17,18)。
(6)よって,被告は,原告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,105万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成20年5月2日(反訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。
〔原告〕(1)被告の主張は否認ないし争う。
(2)20-7416号事件における原告の主張は,甲6公報に基づく新規の主張である。
上記事件の争点は,手続補正をした事項が公知となった時点にあるから,前訴事件?C及び前訴事件?C控訴事件に係る訴えとは訴訟物が異なる。
原告は,前訴事件?C控訴事件における乙第6号証の判決に対し,再審請求中である。
23(3)被告の主張する20-8836号事件は,被告に所有権が帰属しない原告の図面原紙を複製して製造販売した事実に対する訴えであり,前訴事件?C及び前訴事件?C控訴事件に係る訴えとは異なる。
原告は,乙第6号証の判決に対し,再審請求中である。
(4)被告の主張する19-23460号事件及び19-23951号事件は,いずれも係争中である。
また,原告は,乙第6号証の判決に対し,再審請求中である。
(5)被告の主張する上記各訴えは,いずれも,前訴とは訴訟物が異なる。
(6)原告は,前訴事件?C控訴事件において,本件特許異議申立てに関する訴えを取り下げた。
第3当裁判所の判断1本訴請求(本案前の答弁)について(1)本訴請求は,要するに,甲6公報が存在することにより本件特許について取消理由が存しないにもかかわらず,本件特許異議申立てを行った被告の行為は,権利濫用によるものとして不法行為に当たるとして,被告に対し,損害賠償を請求するものである。
他方,前提事実(3)ア及びイによれば,前訴事件?@及び前訴事件?Aにおける請求は,いずれも,本件特許異議申立てを行った被告の行為が不法行為に当たるとして,被告に対し,損害賠償を請求するものである。
以上のとおり,本訴請求,並びに前訴事件?@及び前訴事件?Aに係る請求は,同一の請求を含むものの,いずれも損害額として主張する金額の数量的な一部請求をしていることから,訴訟物としては別個のものであると解される。
(2)ところで,一個の金銭債権の数量的一部請求は,当該債権が存在しその額は一定額を下回らないことを主張して上記額の限度でこれを請求するものであり,債権の特定の一部を請求するものではないから,このような請求の当否を判断するためには,おのずから債権の全部について審理判断することが24必要になる。数量的一部請求を全部又は一部棄却する旨の判決は,このように債権の全部について行われた審理の結果に基づいて,当該債権が全く現存しないか又は一部として請求された額に満たない額しか現存しないとの判断を示すものであって,言い換えれば,後に残部として請求し得る部分が存在しないとの判断を示すものにほかならない。したがって,上記判決が確定した後に原告が残部請求の訴えを提起することは,実質的には前訴で認められなかった請求及び主張を蒸し返すものであり,前訴の確定判決によって当該債権の全部について紛争が解決されたとの被告の合理的期待に反し,被告に二重の応訴の負担を強いるものというべきである。以上の点に照らすと,金銭債権の数量的一部請求訴訟で敗訴した原告が残部請求の訴えを提起することは,特段の事情がない限り,信義則に反して許されないと解するのが相当である(最高裁平成9年(オ)第849号,同10年6月12日第二小法廷判決,民集52巻4号1147頁)。
(3)これを本件についてみると,前述のとおり,本訴請求は前訴事件?@,前訴事件?Aにおける請求と同一の不法行為による損害賠償請求権に基づく請求であり,前訴事件?@及び前訴事件?Aの判決が確定した後に,前訴事件?@,前訴事件?Aの残部請求に該当する本件訴えを提起することは(甲19及び乙3から,本訴が前訴事件?@,前訴事件?Aの判決確定後に提起されていることが明らかである。),実質的に,前訴事件?@,前訴事件?Aで認められなかった請求及び主張を蒸し返すものであり,上記各前訴事件の確定判決によって,当該債権の全部について紛争が解決されたとの被告の合理的期待に反し,被告に二重の応訴の負担を強いるものというべきである。
そして,本件については,原告において,本訴に係る訴えを提起することがやむを得ないといった特段の事情も認められない。
したがって,前訴事件?@,前訴事件?Aにおいて敗訴した原告が,本訴に係る訴えを提起することは,信義則に反して,許されないというべきである。
25(4)原告の主張について原告は,前訴事件?@の判決(甲17)及び前訴事件?Aの判決(甲18)は,いずれも,原告が書証として提出した甲6公報を何らの理由も示さずに排斥したから,破棄されるべきものであると主張する。
前訴事件?@の判決における判示の要旨は,前提事実(3)ア(イ)に,前訴事件?Aの判決における判示の要旨は,同(3)イ(イ)に,ぞれぞれ記載のとおりであり,これらの判示は,甲6公報の存在が,被告による本件特許異議申立てが権利濫用によるものとして不法行為を構成するものであるか否かの判断を左右するものではないことを示すものといえる。したがって,前訴事件?@の判決,前訴事件?Aの判決には,原告主張に係る違法はない。
そもそも,甲6公報の存在が,前訴事件?@及び前訴事件?Aにおける裁判所の判断を左右するに足る事情であるとは認められないのであって,この点が,前記特段の事情に該当するものであるとはいえない。
(5)以上によれば,本訴に係る訴えは,信義則に反し許されないものとして不適法な訴えであるから,却下されるべきものである。
2反訴請求(不当訴訟による損害賠償請求)について(1)民事訴訟を提起した者が敗訴の確定判決を受けた場合において,上記訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは,当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである上,提訴者が,そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である(最高裁昭和60年(オ)第122号,同63年1月26日第三小法廷判決,民集42巻1号1頁)。
そして,上記判示は,当該敗訴の確定判決に係る訴えの提起自体についての不法行為の該当性を判断する場合だけでなく,当該敗訴の確定判決後の,26実質的に同一の訴訟の提起・維持に係る不法行為の該当性を判断する場合についても,同様に適用されると解するのが相当である。
(2)20-7416号事件(本件本訴)の提起の違法性についてア前記1(3)で述べたとおり,前訴事件?@,前訴事件?Aにおいて敗訴した原告が,本件本訴に係る訴えを提起することは,信義則に反して,許されないというべきである。
イ加えて,前提事実によれば,原告は,20-7416号事件を提起する以前に,前訴事件?Bを提起し,同事件において,主位的に,20-7416号事件に係る請求と同一の不法行為による損害賠償請求権に基づく請求をし,同事件の判決(甲19,乙3)において,前訴事件?@及び前訴事件?Aで敗訴した原告が,前訴事件?Bの主位的請求(本件特許異議申立てが不法行為に当たることを理由とする損害賠償請求)をすることは,信義則に反し,許されないというべきである旨判示され,敗訴した(なお,原告は同判決を不服として控訴したものの,上記結論は維持された。)。さらに,原告は,20-7416号事件を提起する以前に,前訴事件?Cを提起し,同事件において,20-7416号事件に係る請求と同一の不法行為による損害賠償請求権に基づく請求(本訴請求?@ないし?D)をし,同事件の判決(乙5)において,前訴事件?@及び前訴事件?Aで敗訴した原告が,前訴事件?Cの本訴請求?@ないし?D(本件特許異議申立てが不法行為に当たることを理由とする損害賠償請求)をすることは,信義則に反し,許されないというべきである旨判示され,敗訴した。しかも,前訴事件?Cにおいては,被告が上記本訴請求?@ないし?Dに係る訴えの提起が不法行為に該当する旨主張して,原告に対し,不法行為による損害賠償を請求した反訴請求が認容された。原告は同判決を不服として控訴したものの,控訴審判決(乙6)においても,上記反訴請求に係る結論が維持されるとともに,原告が控訴審において新たに追加した控訴請求?@ないし?Dについては,前訴事件27?@及び前訴事件?Aとの関係で信義則に反し,不適法である旨判示され,敗訴した。
20-7416号事件は前訴事件?C控訴事件の判決(乙6)が確定した後に提起されたものであり,上記経過に照らせば,同事件は,原告において,その主張する権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものであることを知りながらあえて提起したものであると評価せざるを得ない。
ウ以上によれば,20-7416号事件の提起は,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものというべきであり,被告に対する不法行為を構成するものと解するのが相当である。
(3)20-8836号事件の提起の違法性についてア乙第25号証によれば,20-8836号事件に係る請求は,原告が所有権を有し,被告が占有する図面及び部品図面を横領したとして,不法行為に基づき損害賠償を請求するものである。
他方,前提事実(3)オ及びカ記載のとおり,原告は,前訴事件?C及び前訴事件?C控訴事件において,被告が占有する図面及び部品図面を横領したとして,不法行為に基づき損害賠償を請求している。
したがって,20-8836号事件に係る請求は,前訴事件?C及び前訴事件?C控訴事件に係る請求(本訴請求?G及び本訴請求?H)と同一の不法行為による損害賠償請求権に基づく請求であり,前訴事件?C控訴事件の判決(乙6)が確定した後に,20-8836号事件に係る訴えを提起することは,実質的に,前訴事件?C及び前訴事件?C控訴事件で認められなかった請求及び主張を蒸し返すものであり,前訴事件?C控訴事件の確定判決によって,当該債権の全部について紛争が解決されたとの被告の合理的期待に反し,被告に二重の応訴の負担を強いるものというべきである。原告において,20-8836号事件を提起することがやむを得ないといった特段の事情も認められない(乙5,6,25)。
28したがって,前訴事件?C及び前訴事件?C控訴事件において敗訴した原告が,20-8836号事件を提起することは,信義則に反して,許されないというべきである。
イ20-8836号事件は上記前訴事件?C控訴事件の判決(乙6)が確定した後に提起されたものであり,同事件は,原告において,その主張する権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものであることを知りながらあえて提起したものであると評価せざるを得ない。
ウ以上によれば,20-8836号事件の提起は,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものというべきであり,被告に対する不法行為を構成するものと解するのが相当である。
(4)19-23460号事件の提起の違法性についてア証拠(乙10,22,23)によれば,19-23460号事件に係る請求は,被告が,原告作成に係る放電プラズマ焼結機の部品図から,原告代表者名である「A」の署名部分を切除し,これを原告が作成した放電プラズマ焼結機の設計図に貼り付けた行為が私文書偽造に当たるとして,不法行為に基づき損害賠償を請求するものである。
他方,前提事実(3)オ及びカ記載のとおり,原告は,前訴事件?C及び前訴事件?C控訴事件において,部品図の署名「A」を切り取り,設計図に切り貼りし,私文書偽造に当たる行為をしたとして,不法行為に基づき損害賠償を請求している。
したがって,19-23460号事件に係る請求は,前訴事件?C及び前訴事件?C控訴事件に係る請求(本訴請求?I)と同一の不法行為による損害賠償請求権に基づく請求であり,19-23460号事件に係る訴えの提起は,実質的に,前訴事件?C及び前訴事件?C控訴事件で認められなかった請求及び主張を蒸し返すものであり,前訴事件?C控訴事件の確定判決によって,当該債権の全部について紛争が解決されたとの被告の合理的期待に29反し,被告に二重の応訴の負担を強いるものというべきである。原告において,19-23460号事件を提起することがやむを得ないといった特段の事情も認められない(乙10,22,23)。
したがって,前訴事件?C及び前訴事件?C控訴事件において敗訴した原告が,19-23460号事件を提起することは,信義則に反して,許されないというべきである。
なお,東京地方裁判所は,19-23460号事件について,平成20年2月22日,同事件の提起は信義則に照らして許されないものである旨判示して,訴えを却下する旨の判決をした(乙10)。原告は,同判決を不服として控訴したものの,知的財産高等裁判所は,同年7月16日,同事件に係る訴えは,信義則に照らして許されないものであるとして,控訴を棄却する旨の判決をした(乙23)。
イ19-23460号事件は上記前訴事件?C控訴事件の判決言渡後(同判決の言渡日は平成19年8月28日である。乙6)に提起されたものであると認められ(乙22によれば,訴状の作成日付は平成19年9月10日である。),かつ,前訴事件?C控訴事件の判決(乙6)は同月14日に確定しているから,19-23460号事件は,原告において,その主張する権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものであることを知りながらあえて提起・維持したものであると評価せざるを得ない。
ウ以上によれば,19-23460号事件の提起・維持は,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものというべきであり,被告に対する不法行為を構成するものと解するのが相当である。
(5)19-23951号事件の提起の違法性についてア証拠(乙11,24)によれば,19-23951号事件に係る請求は,原告と被告との間で,原告代表者設計に係る放電焼結機を原告が被告に製造納入する旨の契約が締結されていたにもかかわらず,被告が放電焼結機30に係る設計図を詐取し,C社に放電焼結機を製造納品させたことが上記製造納入契約の債務不履行に当たるなどと主張して,債務不履行による損害賠償を請求するものと解される。
他方,前提事実(3)オ及びカ記載のとおり,原告は,前訴事件?C及び前訴事件?C控訴事件において,原告作成の設計図による製品を,原告が被告に製造納入する旨の合意がされたにもかかわらず,原告作成の設計図による放電焼結装置については,上記合意が履行されず,被告は,原告が作成した図面一式を詐欺に当たる手段で取得し,C社に交付して放電焼結装置を製造させたことが上記合意の債務不履行に当たるなどと主張して,債務不履行による損害賠償を請求するものである。
したがって,19-23951号事件に係る請求は,前訴事件?C及び前訴事件?C控訴事件に係る請求(本訴請求?E)と実質的には同一の債務不履行による損害賠償請求権に基づく請求であり,19-23951号事件に係る訴えの提起は,実質的に,前訴事件?C及び前訴事件?C控訴事件で認められなかった請求及び主張を蒸し返すものであり,前訴事件?C控訴事件の確定判決によって,当該債権の全部について紛争が解決されたとの被告の合理的期待に反し,被告に二重の応訴の負担を強いるものというべきである。原告において,19-23951号事件を提起することがやむを得ないといった特段の事情も認められない(乙11,24)。
したがって,前訴事件?C及び前訴事件?C控訴事件において敗訴した原告が,19-23951号事件を提起することは,信義則に反して,許されないというべきである。
なお,東京地方裁判所は,19-23951号事件について,平成20年4月24日,同事件の提起は信義則ないし二重起訴の禁止規定に抵触するものである旨判示して,訴えを却下する旨の判決をした(乙11)。
イ19-23951号事件は上記前訴事件?C控訴事件の判決言渡後(同判31決の言渡日は平成19年8月28日である。乙6)に提起されたものであると認められ(乙24によれば,訴状の作成日付は平成19年9月13日である。),かつ,前訴事件?C控訴事件の判決(乙6)は同月14日に確定しているから,19-23951号事件は,原告において,その主張する権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものであることを知りながらあえて提起・維持したものであると評価せざるを得ない。
ウ以上によれば,19-23951号事件の提起・維持は,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものというべきであり,被告に対する不法行為を構成するものと解するのが相当である。
(6)原告は,反訴請求につき縷々反論するものの,いずれも失当であり,採用の限りでない。
(7)損害証拠(乙16,17,18,乙20の1,乙21の1)及び弁論の全趣旨によれば,?@被告は,原告の20-7416号事件の提起により,応訴を余儀なくされ,そのために被告訴訟代理人弁護士に訴訟の追行を委任し,弁護士費用を支払ったこと(乙20の1),?A被告は,原告の20-8836号事件の提起により,応訴を余儀なくされ,そのために被告訴訟代理人弁護士に訴訟の追行を委任し,弁護士費用として21万円を支払ったこと(乙21の1),?B被告は,原告の19-23460号事件の提起により,応訴を余儀なくされ,そのために被告訴訟代理人弁護士に訴訟の追行を委任し,弁護士費用として21万円を支払ったこと(乙16),?C被告は,原告の19-23951号事件の提起により,応訴を余儀なくされ,そのために被告訴訟代理人弁護士に訴訟の追行を委任し,弁護士費用として21万円を支払ったこと(乙17),?D被告は,本件反訴の提起・追行を,被告訴訟代理人弁護士に委任し,弁護士費用を負担したこと,?E上記?@と上記?Dにより被告が支払った弁護士費用は合計42万円であることが認められる。
32上記合計105万円は,被告が自己の権利擁護のために応訴,又は訴えの提起を余儀なくされ,訴訟追行を被告訴訟代理人弁護士に委任したことにより負担した弁護士費用であり,本件事案の内容,請求額,その他本件に表れた一切の事情を斟酌すると,上記105万円全額が,原告による不法行為相当因果関係のある損害というべきである。
(8)以上によれば,原告は,被告に対し,不法行為に基づき,105万円及びこれに対する不法行為(訴えの提起及び本件反訴提起時までの訴訟の維持)の後の日である平成20年5月2日(反訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金を支払う義務を負う。
3よって,主文のとおり判決する。
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