運営:アスタミューゼ株式会社
  • ポートフォリオ機能


追加

関連審決 不服2007-3224
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成20行ケ10175審決取消請求事件 判例 特許
平成18行ケ10404審決取消請求事件 判例 特許
平成19行ケ10055審決取消請求事件 判例 特許
平成18行ケ10221審決取消請求事件 判例 特許
平成19行ケ10206審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 頒布された刊行物 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  発明特定事項 /  周知技術 /  慣用技術 /  下位概念 /  発明の詳細な説明 /  限定的減縮 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  拒絶査定不服審判 /  拒絶査定 /  拒絶理由通知 /  請求の範囲 /  減縮 /  不服申立 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 19年 (行ケ) 10408号 審決取消請求事件
原告有限会社ミサトシステム
被告特 許庁長 官鈴木隆史
指定代理 人長由紀子
同長島孝志
同山本章裕
同小林和男
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2008/09/30
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が不服2007-3224号事件について平成19年10月24日にした審決を取り消す。
第2争いのない事実1特許庁における手続の経緯原告は,平成10年6月24日,発明の名称を「レジャーホテル料金精算システム」とする特許出願(平成10年特願第193687号。以下「本願」という。その請求項1の発明を「本願発明」という )をした。 。
特許庁は,平成18年7月10日付け拒絶理由通知(発送日同月18日)を行い,原告は,同年8月1日付け手続補正(受付日同月2日)を行うとともに,同月1日付け意見書(受付日同月2日)を提出した。
特許庁は,平成18年12月19日付け拒絶査定を行い,原告は,平成19, ( ) 年1月30日 これに対する不服の審判請求 不服2007-3224号事件をした(甲10 。)原告は,平成19年2月8日付け手続補正(明細書の段落【0003】を補正対象とする。甲11)及び同月15日付け手続補正(明細書の特許請求の範囲の請求項1を補正対象とする。甲12)を行ったが,同月15日付け手続補正について方式上の不備があるとして同年3月12日付けの手続補正指令を受け(甲13 ,同手続補正指令に従い,再度,同月26日付け手続補正(同年 )2月15日付け手続補正書を補正対象とする。甲14)を行った(以下,平成19年2月8日付け手続補正後の明細書を「本願明細書」という。。)特許庁は,平成19年6月15日付けで,同年2月15日付け手続補正を却下する決定を行うとともに(甲15。以下「平成19年6月15日付け補正却下決定」という,同年6月15日付けで拒絶理由を通知した(甲16 。 。) )原告は,平成19年7月31日付け意見書(甲17 ,同年10月10日付 )け上申書(乙2)を提出した。
特許庁は,平成19年10月24日 「本件審判の請求は,成り立たない 」 , 。
との審決(以下「審決」という )をし,その謄本は,同年11月14日,原 。
告に送達された。
2本願発明本願発明の特許請求の範囲の記載は,次のとおりである。
「電子マネーカードによりレジャーホテル利用料金の精算を行う電子マネーカード・リーダー/ライターと,前記電子マネーカード・リーダー/ライターと情報の授受を行うための周辺インターフェース回路と,電話網に接続したフロントコンピュータと通信を行うための通信インターフェース回路と,客室内電源やドア内の電気錠の制御や,テレビ/ビデオ,冷蔵庫,コンビニボックス,カラオケ,ゲーム等の有料設備の使用状況を検知するための入出力インターフェース回路と,プログラムメモリやレジスタメモリとして機能するメモリ回路と,前記各インターフェース回路やメモリ回路を統合的に制御するためのCPUを内蔵して構成した制御装置と,を客室内に設置し,宿泊若しくは休憩料金と有料設備利用料金の合計を請求金額として有料設備利用毎に逐次算出し,電子マネーカード・リーダー/ライターのモニタで確認することができ,退室時において電子マネーカードを電子マネーカード・リーダー/ライターのカード挿入口より挿入することにより請求金額の引落しができ,当該レジャーホテル内及び客室内において現金による精算を一切排除したことを特徴とする,レジャーホテル料金精算システム 」。
3審決の理由の要点( )別紙審決書写しのとおりである。要するに,本願発明は,特許出願前に1頒布された刊行物である引用例1ないし8に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。引用例1ないし8は次のとおりである。
引用例1特開平8-339405号公報(甲1)引用例2特開平10-111961号公報(甲2)引用例3石井孝利 図解電子マネー 東洋経済新報社 1996年 平 ,,,(成8年)7月18日,初版(甲3)引用例4特開平8-147361号公報(甲4)引用例5特開昭60-146390号公報(甲5)引用例6特開平7-271697号公報(甲6)引用例7特開平8-63532号公報(甲7)引用例8特開平1-295395号公報( )審決が,本願発明に進歩性がないとの結論を導く過程において認定した2引用例1に記載された発明(以下「引用発明」という,本願発明と引用発 。), ,。 明の対比 相違点及び作用効果についての判断の概要は 次のとおりであるア引用発明「プリペイドカードを利用して,ホテルやレンタルルーム等の客室等の施設の料金精算を行い,特定施設内の有料室内設備の利用時に利用料金を該カードから精算するシステムであって,,, カードの情報記録部に記録されている情報を読み取り 書込むものであるカード読取保管機と,カード読取保管機とは別体だが該カード読取保管機の一構成要素である室内電源制御盤及び電気錠とからなり,カード読取保管機内の有料施設制御部には,テレビ,ビデオ,冷蔵庫,電話等の各種の室内有料設備が接続され,カード読取保管機は,テレビ等の各種の室内有料設備Eに接続しその利用可否を制御して課金情報をCPUに通知する有料施設制御部と,演算制御手段としてのCPU(中央演算処理装置 ,RAM(ランダムア )クセスメモリ ,時計等と,タイマと,さらに案内部表示等を備え )CPUは,有料施設制御部,読取書込部,搬送保管部,電気錠,室内電源制御盤,案内表示部等を制御し,料金をカードより精算し,利用日,部屋番号,セキュリティコードの照合を行い部屋利用の許可等を等を(判決注「許可等を」の誤記と認める )行うものであって, 。
カード読取保管機は各客室毎に客室入口近傍に設置されカード読取保管機にカードを挿入すると,カード読取保管機はカードを取り込みカードの情報記録部に記録されている情報を読み取り,部屋料金を精算し,有料室内設備の利用料金を該カードから精算できるホテルやレンタルルーム等の特定施設内の有料室内設備の利用時に利用料金を該カードから精算するシステム」イ本願発明と引用発明の対比引用発明の「ホテルやレンタルルーム等の客室等の施設の料金精算を行い,特定施設内の有料室内設備の利用時に利用料金を該カードから精算するシステム」は,ホテルやレンタルルーム等を対象とした料金精算のためのものであり,そして「ホテル」には「レジャーホテル」も含まれるもの,「 」 であると認められることから 本願の レジャーホテル料金精算システムに相当する。
引用発明の 「ホテルやレンタルルーム等の特定施設内の有料室内設備 ,の利用時に利用料金を該カードから精算するシステム」の「カード読取保管機」は,カードの情報を読み書きするものであることから,一般に「カードによりレジャーホテル利用料金の精算を行う電子マネーカード・リーダー/ライター」の機能を含んでおり 「カード・リーダー/ライターと ,情報の授受を行うための周辺インターフェース回路」に相当する構成を有していると認められる。
・・・中略・・・以上を踏まえると,本願発明と引用発明とは,次の一致点及び相違点が認められる。
[一致点]「カードによりレジャーホテル利用料金の精算を行うカード・リーダー/ライターと,前記カード・リーダー/ライターと情報の授受を行うための周辺インターフェース回路と,客室内電源やドア内の電気錠の制御や,テレビ/ビデオ,冷蔵庫,コンビニボックス,カラオケ,ゲーム等の有料設備の使用状況を検知するための入出力インターフェース回路と,プログラムメモリやレジスタメモリとして機能するメモリ回路と,前記各インターフェース回路やメモリ回路を統合的に制御するためのCPUを内蔵して構成した制御装置と,を設置し,請求金額の引落しができる,レジャーホテル料金精算システム 」。
[相違点](1)相違点1本願発明の「カード」が 「電子マネーカード」であるのに対し,引 ,用発明の「カード」は「プリペイドカード」である点。
(2)相違点2本願発明が 「電話網に接続したフロントコンピュータと通信を行う ,ための通信インターフェース回路」を有するのに対し,引用発明では,その点が記載されていない点。
(3)相違点3本願発明の「制御装置」が 「客室内に設置」するものであるのに対 ,し,引用発明では 「部屋の入口近傍に設置される」ものであって 「客 , ,室内に設置」してあるかは明記されていない点。
(4)相違点4本願発明が 「宿泊若しくは休憩料金と有料設備利用料金の合計を請 ,求金額として有料設備利用毎に逐次算出し,電子マネーカード・リーダー/ライターのモニタで確認することができ,退室時において電子マネーカードを電子マネーカード・リーダー/ライターのカード挿入口より挿入することにより」請求金額の引落しができ 「当該レジャーホテル ,内及び客室内において現金による精算を一切排除したことを特徴とする」ものに対して,引用発明においては,そのような点が記載されていない点。
ウ相違点及び作用効果についての判断の概要(ア)相違点1〔カードの相違〕について電子マネーカードにより精算を行う技術及びそのための構成は,当業者が,引用例2の記載により知得できた技術である。また,電子マネーでホテルに係る精算を行う技術も,当業者が引用例3の記載から知得できた技術である。そして,料金精算システム及び電子マネーに係る技術は,コンピュータシステムに係る技術であって,コンピュータシステムに係る技術者であれば普通に知り得た技術である。
そうすると,ホテルの精算において,プリペイドカードに代えて電子マネーカードを用いるようにすることは,引用発明に,上記の知得した技術を採用して,当業者が容易になし得る事項である。
(イ)相違点2〔インターフェース回路の有無〕についてフロントに設置された又はフロントに係る業務を行うコンピュータシステムにおいて,各客室のデータを受信し,精算に係る処理を行うことは,引用例4及び5に記載されている。また,例えば引用例1の従来技術として記載されるように,センターにおいて,精算等のために各客室から情報を集め処理するためのコンピュータシステムは,一般的に用いられる技術にすぎず,その際には,客室等に設置された客室の情報を得るための端末等は,センターとの通信を行うものであって,そのためのインターフェース回路を有すると理解できる。そして,引用発明において,コンピュータシステムをどこに設置するかは,当業者が必要に応じ適宜設計する事項である。 また,通信を行う際に,電話網を用いることは,周知慣用技術である。
そうすると 「電話網に接続したフロントコンピュータと通信を行う ,ための通信インターフェース回路」を有する構成とすることは,当業者が引用発明から容易になし得た事項である。
(ウ)相違点3〔設置場所の相違〕について,(), ホテル等の客室の室内において精算 チェックアウト をすることは引用例5ないし7の記載から,当業者が知得できた事項であり,また,そのためのコンピュータシステムも周知の技術である。さらに,精算に係る装置をホテル等の客室の室内に設置して精算の処理を行う技術は,引用例5の精算装置に係る記載や引用例1の段落【0003】の記載から当業者が知得できたものである。そして,精算に係る処理を行うコンピュータシステムにおいて,精算に係る装置を部屋の内に設置し,室内で精算を行うことに利便があることは明らかである。
そうすると,当業者が上記の知得した技術等を用いて,引用発明のカード読取保管機について 「部屋の入口近傍に設置される」に代え 「客 , ,室内に設置」するとすることは,当業者が容易になし得た事項である。
(エ)相違点4〔精算の相違〕について,精算を行うに際に,前払,後払等の手法を用いることは,商習慣上一般的な事項である。後払で処理する際に,利用毎に逐次料金を算出して退出時に精算することも,普通に行われている事項にすぎず,ホテル等における精算において,前払も後払もともに一般的に用いられている手法にすぎない。また,引用例2及び8には,後払で精算する構成を有する装置が記載されている。さらに,料金等の対象となる情報をモニタで確認できる構成は一般的な技術にすぎない。電子マネーを用いる技術については,相違点1について述べたとおりである。なお,電子マネーにおいて,カードを用いた精算等の処理を行う際に,カードのリーダ/ライタのカード挿入口よりカードを挿入することが行われることは,普通に推考される手法である。そして,現金,プリペイドカード,電子マネー,クレジットカード等の複数の支払方法の内の一部のみでの支払を可能とする技術を採用すること,すなわち一部の支払方法を制限する技術を採用することは,商習慣を勘案し当業者が適宜行うべき設計事項にすぎず,また,支払のためのコンピュータシステムにおいて,そのような, 。 制限に対応したものとすることは 当業者が容易になし得る事項であるそうすると,引用発明において,逐次料金を算出して,退出時において精算する後払のものとし,現金による支払を行わないようにし 「宿,泊若しくは休憩料金と有料設備利用料金の合計を請求金額として有料設備利用毎に逐次算出し,電子マネーカード・リーダー/ライターのモニタで確認することができ,退室時において電子マネーカードを電子マネーカード・リーダー/ライターのカード挿入口より挿入することにより」請求金額の引落しができ 「当該レジャーホテル内及び客室内にお ,いて現金による精算を一切排除したことを特徴とする」ものとすることは,当業者が容易になし得た事項である。
(オ)作用効果について本願発明の奏する作用効果は当業者が引用例1ないし8から予測し得る範囲内のものであり,格別顕著な作用効果は認められない。
第3原告主張の取消事由審決は,次の取消事由1ないし8があるから,違法として取り消されるべきである。
取消事由1平成19年6月15日付け補正却下決定を前提に本願発明を認定した誤り取消事由2引用発明と本願発明の一致点に関し 引用発明が本願発明の レ ,「ジャーホテル料金精算システム」に相当する構成を備えると認定した誤り取消事由3引用発明と本願発明の一致点に関し 引用発明が本願発明の カ ,「ード・リーダー/ライターと情報の授受を行うための周辺インターフェース回路」に相当する構成を備えると認定した誤り取消事由4相違点1〔カードの相違〕に関する容易想到性の判断の誤り取消事由5相違点2〔インターフェース回路の有無〕に関する容易想到性の判断の誤り取消事由6相違点3〔設置場所の相違〕に関する容易想到性の判断の誤り取消事由7相違点4〔精算の相違〕に関する容易想到性の判断の誤り取消事由8本願発明の顕著な作用効果を看過した誤り1取消事由1(平成19年6月15日付け補正却下決定を前提に本願発明を認定した誤り)特許庁は 平成19年2月15日付け手続補正について 本願請求項1に 電 , ,「子マネーカードから得られる個人情報をフロントコンピュータのデータベースに蓄積して正確な個人情報を取得することを特徴とする」ことを追加するものであって,新たな発明特定事項を付け加えたものであり,限定的減縮と認められないと判断して,同年6月15日付け補正却下決定により補正を却下した。
しかし,上記却下決定は誤りである。すなわち,本願明細書の段落【0014】に「次に,ステップ3(S3)として利用客の有料設備利用情報や電子マネーカードから得られる個人情報を,制御装置1内の通信インターフェース回路12を経由して外部記憶装置であるフロントコンピュータ3のデータベースに蓄積する。該情報は有料設備の売上情報の把握および商品補充のための重要な情報源や宿泊台帳に代わる正確な顧客情報となる。従って,宿泊台帳の記入は不要となる 」と記載されている。また,平成19年2月15日付け手続補 。
正の補正事項は,補正前の請求項1の「情報」を明確にし,その下位概念を示すものである。以上のとおり,同日付け手続補正は,新たな処理に係る構成や新たな発明特定事項を追加するものではなく,特許請求の範囲限定的減縮に, 。 該当するから これを却下した同年6月15日付け補正却下決定は違法である平成19年2月15日付け手続補正は適法であり,これを却下した同年6月15日付け補正却下決定は違法であるにもかかわらず,審決は,同補正却下決定を前提に本願発明を認定したから,審決が行った本願発明の認定は誤りである。
2取消事由2 引用発明と本願発明の一致点に関し 引用発明が本願発明の レ ( ,「ジャーホテル料金精算システム」に相当する構成を備えると認定した誤り),, , レジャーホテルとは ラブホテルを意味し モーテル等のレジャーホテルは一般のホテルと異なり,客室等の施設のドアの解錠や施錠に鍵を利用しないホテルである(甲23,24 。本願発明のレジャーホテルも客室等の施設のド )アの解錠や施錠に鍵を利用しないものである。これに対して,引用発明は,ホテルの客室等の施設のドアの解錠と施錠を,プリペイドカードを鍵として用いて行うから,レジャーホテルを対象とするのではなく,一般のシティーホテルやビジネスホテルを対象とする発明であると理解される。
したがって,審決が,引用発明が本願発明の「レジャーホテル料金精算システム」に相当する構成を備えると認定したことは,誤りである。
3取消事由3 引用発明と本願発明の一致点に関し 引用発明が本願発明の カ ( ,「ード・リーダー/ライターと情報の授受を行うための周辺インターフェース回路」に相当する構成を備えると認定した誤り)本願発明の電子マネーカード・リーダー/ライターは,個人情報を含む電子マネーカードの情報を読み書きできるものである。これに対し,引用発明のカード読取保管機は,利用料金,利用日,部屋番号,セキュリティコードなど,個人情報を含まないカードの情報を読み書きするだけのものであって,個人情報を含む電子マネーカードの情報を読み書きできる電子マネーカード・リーダー/ライターの機能を含んでいないことは明白である。したがって,引用発明のカード読取保管機は,本願発明の「電子マネーカード・リーダー/ライターと情報の授受を行うための周辺インターフェース回路」に相当する構成を有していない。
また,電子マネーカード・リーダー/ライターの機能を備えたコンピュータ, ,“, ネットワーク決済システムが その動作を保障するためには 当然に 電話網フロントコンピュータ,通信インターフェース回路”を備えることが必要となる。これに対して,引用発明は,プリペイドカードを利用したシステムを開示しているにすぎず “電話網,フロントコンピュータ,通信インターフェース ,回路”の各構成を開示も示唆もしていない。したがって,審決が,引用発明が本願発明の「カード・リーダー/ライターと情報の授受を行うための周辺インターフェース回路」に相当する構成を備えると認定したことは,誤りである。
4取消事由4(相違点1〔カードの相違〕に関する容易想到性の判断の誤り)引用例2及び3は,電子マネーカードが複数の支払手段のうちの一手段であることを示しているのに対して,本願発明は,電子マネーカードのみが支払手段であると限定している点で相違する。また,引用発明では,利用客はホテルを利用する際に,必ずフロント等でプリペイドカードを現金で購入する必要があるのに対し,本願発明は,ホテル内での現金利用を排除する課題のもと,レジャーホテル内及び客室内において現金による精算を一切排除したことを特徴とする点で相違する。さらに,引用例2及び3は,電子マネーに関する具体的な技術内容を開示も示唆もないのに対して,本願発明は,電子マネーの精算機能をレジャーホテルの各客室内に個別に設置した構成である点で相違する。以上の相違点を総合すると,引用発明に引用例2及び3を適用しても,ホテルの精算において,プリペイドカードに代えて電子マネーカードを用いるようにすることを,当業者が容易に想到するとはいえない。
5取消事由5(相違点2〔インターフェース回路の有無〕に関する容易想到性の判断の誤り)本願発明は,各客室に設置された制御装置が「外部ネットワークである電話網に接続できる機能」を備え 「電話網と接続して外部決済機関との間で決済 ,」。,, ,, を行う ものである これに対し 引用例1 4 5に開示された通信機能は「同一ホテル内において,親機であるフロントコンピュータと,子機である各客室に設置された制御装置又は自動販売機との間のみで行われるいわゆる構内通信」であり,上記引用例には,各客室に設置された制御装置が外部ネットワークである電話網に接続できる機能を有することの開示も示唆もない。また,引用発明のカード読取保管機は,各客室の入ロ近傍に設けてプリペイドカード及び室内機器を制御するスタンドアローン型の制御装置であり,決してフロントコンピュータと通信を行うことはなく,電話網と接続して外部決済機関との間で決済を行うこともない。
したがって,引用発明において 「電話網に接続したフロントコンピュータ ,と通信を行うための通信インターフェース回路」を有するとすることは,当業者が容易に想到するとはいえない。
(〔〕 ) 6取消事由6 相違点3 設置場所の相違 に関する容易想到性の判断の誤り引用発明のカード読取保管機は客室外に設置されている。しかし,客室内に自動精算機が置かれている場合には 多くの課題があった 本願発明の段落 0 ,(【003。引用発明は,客室内への出入りにプリペイドカードを鍵として利用 】)する構成であるから,カード読取保管機の設置場所は必然的に室外になり,カード読取保管機を室内に設置すると引用発明の技術自体が成り立たないことになる。他方,引用例5ないし7には,客室内で精算を行うためのコンピュータシステムが記載されているが,引用発明のカード読取保管機の設置場所が室外に限定され,読取保管機を室内に設置すると引用発明の技術を実施することができないから,引用発明に引用例5ないし7を適用することには,阻害要因がある。
したがって,当業者が知得した技術等を用いて,引用発明のカード読取保管機について 「部屋の入口近傍に設置される」に代え 「客室内に設置」すると , ,することは,当業者が容易に想到するとはいえない。
7取消事由7(相違点4〔精算の相違〕に関する容易想到性の判断の誤り)ビジネス慣行上,支払における顧客の利便性や集客の観点から,より多くの支払方法が選択されるのが通常であるから,一つの支払方法に制限する技術を採用することは,設計事項であるとはいえない。本願発明の出願時における電子マネーの乏しい利用状況下では,電子マネーによる支払に限定した本願発明は,上記のビジネス慣行からは,成り立ち得ない。本願発明は,レジャーホテルの複雑な料金体系に対応しつつ,電子マネーカードを用いたコンピュータネットワーク決済システムを利用することで,レジャーホテル内及び客室内にお,, ける現金による精算を一切排除した構成であるのに対して 引用例2及び8はそのような複雑な料金体系に対応した決済システムを開示も示唆もしていない。
そうすると,本願発明における「宿泊若しくは休憩料金と有料設備利用料金の合計を請求金額として有料設備利用毎に逐次算出し,電子マネーカード・リーダー/ライターのモニタで確認することができ,退室時において電子マネーカードを電子マネーカード・リーダー/ライターのカード挿入口より挿入することにより」請求金額の引落しができ 「当該レジャーホテル内及び客室内に ,おいて現金による精算を一切排除したことを特徴とする」との構成は,引用発明に引用例2及び8を適用しても,当業者が容易に想到するとはいえない。
8取消事由8(本願発明の顕著な作用効果を看過した誤り)本願発明は,?@現金若しくは利用可能残金の十分あるプリペイドカードの持ち合わせがなくても現金による支払がないため,いつでも気軽にレジャーホテルを利用することができる,?A客室内には現金を扱う機器がなくなるため,盗難目的による機器の破壊がなくなる,?Bフロントコンピュータは利用客の有料設備利用情報や電子マネーカードから得られる顧客情報を管理するだけのものとなり,ホテル従業員による金額の改ざん等の不正がなくなる,更には精算業務が完全無人化されるため,ホテル従業員の大幅削減が図られる,?C電子マネーカードから得られる個人情報をフロントコンピュータのデータベースに蓄積することにより,宿泊台帳に代わる正確な顧客情報となる,との顕著な作用効果を有し,これらの作用効果は,当業者が引用例1ないし8から予測し得るものではないから,審決が,本願発明の奏する作用効果は当業者が引用例1ないし8から予測し得る範囲内のものであり,格別顕著な作用効果は認められないと判断したことは,誤りである。
第4被告の反論審決の認定判断はいずれも正当であって,審決を取り消すべき理由はない。
1取消事由1(平成19年6月15日付け補正却下決定を前提に本願発明を認定した誤り)について( )原告は,本願につき平成18年12月19日付け拒絶査定を受け,平成119年1月30日,これに対する不服の審判請求(不服2007-3224号事件)をした。原告は,平成19年6月15日付け補正却下決定を受け,その後,同年7月31日付け意見書(甲17 ,同年10月10日付け上申 )書(乙2)を提出したが,それらの中では,補正却下決定に対して不服を申し立てず,その他,拒絶査定不服審判において補正却下決定に対する不服申立てをしなかった。
したがって,審決が,平成19年6月15日付け補正却下決定の当否を判断することなく,同補正却下決定を前提に本願発明を認定したことに,誤りはなく,審決に違法はない。
( )平成19年2月15日付け手続補正によって追加された事項は,電子マ2ネーカードから個人情報を取得してフロントコンピュータのデータベースに蓄積するという処理により,正確な個人情報を取得するという結果を得ることを内容とするものである。しかし,補正前の請求項1には,電子マネーカードから個人情報を得ることやその個人情報を処理することについては何ら記載されていない。また,同日付け手続補正によって追加された事項の課題及び作用効果は,宿泊台帳の記入を不要とすることであり,これは,補正前の請求項1記載の発明に新たな課題を追加するものである。したがって,同日付け手続補正は,補正前の請求項1に記載された発明の発明特定事項に新たな発明特定事項を付け加えるものであって,特許請求の範囲限定的減縮には該当しない。
したがって,平成19年2月15日付け手続補正を却下した同年6月15日付け補正却下決定に誤りはなく,審決が同補正却下決定を前提に本願発明を認定したことは,誤りではなく,審決に違法はない。
2取消事由2 引用発明と本願発明の一致点に関し 引用発明が本願発明の レ ( ,「ジャーホテル料金精算システム」に相当する構成を備えると認定した誤り)について原告は,レジャーホテルという用語は,従前のラブホテルのみを意味するとした上で,レジャーホテルは,客室等の施設のドアの解錠や施錠に鍵を利用せず,本願発明のレジャーホテルも客室等の施設のドアの解錠や施錠に鍵を利用しないものであると主張し,この主張を前提として,審決が,引用発明が本願発明の「レジャーホテル料金精算システム」に相当する構成を備えると認定したことは誤りであると主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり,主張自体失当である。すなわち,レジャーホテルという語は 「ゴルフ場・プール・テニスコートなどが利用でき ,る,観光地や保養地のホテル」を指し,ラブホテルのみを意味するものではない。また,レジャーホテルでは,客室等の施設のドアの解錠や施錠に鍵を利用しないとはいえない。さらに,請求項1にはドアの解錠や施錠の運用形態についての記載はなく,本願発明のレジャーホテルが客室等の施設のドアの解錠や施錠に鍵を利用しないホテルを前提としたものであるとは認められない。原告の主張は,その前提自体採用することができず,失当である。
したがって 引用発明と本願発明の一致点に関し 引用発明が本願発明の レ , ,「ジャーホテル料金精算システム」に相当する構成を備えるとした審決の判断に誤りはない。
3取消事由3 引用発明と本願発明の一致点に関し 引用発明が本願発明の カ ( ,「ード・リーダー/ライターと情報の授受を行うための周辺インターフェース回路」に相当する構成を備えると認定した誤り)について原告は,本願発明の電子マネーカード・リーダー/ライターが,個人情報を含む電子マネーカードの情報を読み書きできるものであるとし,引用発明のカード読取保管機は,個人情報を含む電子マネーカードの情報を読み書きできる機能を含んでいないから,本願発明の「電子マネーカード・リーダー/ライターと情報の授受を行うための周辺インターフェース回路」に相当する構成を有していないと主張する。
しかし,請求項1には,本願発明の電子マネーカード・リーダー/ライターが,個人情報を含む電子マネーカードの情報を読み書きできることについては記載されていないから,本願発明の電子マネーカード・リーダー/ライターが個人情報を含む電子マネーカードの情報を読み書きできるものであるという原告の主張は,特許請求の範囲に基づく主張ではなく,主張自体失当である。
したがって 引用発明と本願発明の一致点に関し 引用発明が本願発明の カ , ,「ード・リーダー/ライターと情報の授受を行うための周辺インターフェース回路」に相当する構成を備えるとした審決の判断に誤りはない。
4取消事由4(相違点1〔カードの相違〕に関する容易想到性の判断の誤り)について本願発明における電子マネーカードは,電子マネーカード・リーダー/ライターにより金額に関する情報の読み書きが可能なカード,という程度のものであり,そうすると,本願発明に係る電子マネーカードは,本願出願前に知られていた一般的な電子マネーカードとして把握されるにとどまる。
他方,引用例2及び3の記載から,本願出願前に電子マネーカード(ICカード型電子マネー)が支払手段の一つとして一般に認知されていたことが把握される。また,引用例2の記載から,電子マネーカードがプリペイドカードやクレジットカードと代替可能な支払手段であることが把握され,引用例3の記, 。 載から ホテルでの料金精算に電子マネーカードを使用することが把握されるさらに,引用例2のタクシー料金精算装置については,プリペイドカード,クレジットカード,電子マネーカードなど有価物の種類に応じた精算処理を行うための手段を備えていることが当業者に自明であるといえる。そうすると,コンピュータシステムの技術者であれば,引用発明において,各客室における精算システムの支払手段であるプリペイドカードに代えて電子マネーカードを採用することは,容易に想到することができたし,その際に電子マネーカードによる精算処理を行うために必要な手段を設けることも,容易に想到することができた。
したがって,相違点1〔カードの相違〕に関し,引用発明における客室等施設の料金の精算手段であるプリペイドカードに代えて電子マネーカードを採用することは,当業者が容易に想到し得たとする審決の判断に誤りはない。
5取消事由5(相違点2〔インターフェース回路の有無〕に関する容易想到性の判断の誤り)について請求項1の記載により,本願発明について,各客室に設置された制御装置が外部ネットワークである電話網に接続できる機能を備えること,電話網と接続して外部決済機関との間で決済を行うことを認定することはできない。
他方,引用例4及び5によれば,フロントに係る業務を処理するコンピュータが各客室のデータを収集して所定の情報処理を行う構成のコンピュータシステムは,本願の出願前に一般的に知られていた。このようなコンピュータシステムは,各客室の端末等がフロントコンピュータと通信をするための通信手段としてのインターフェース回路を具えている。
引用発明のカード読取保管機は,いわゆるスタンドアローン型の制御装置であるが,引用発明においても各客室に有料の設備を備えており,その利用状況を集約的に把握し管理する要請は一般的に存在する。このような一般的要請に基づいて,引用発明において,フロントコンピュータと通信するためのインターフェース回路をカード読取保管機に備えるよう構成することは,当業者が容易になし得た事項であるといえる。そして,通信手段として周知の電話網を,外部との通信手段としてホテルのフロントコンピュータに接続することは一般的な構成である。したがって,電話網に接続されたフロントコンピュータと通信を行うための通信インターフェース回路を制御装置に備えるように構成することは,当業者が容易になし得たものである。
仮に,原告主張のように,本願発明が,各客室に設置された制御装置が「外部ネットワークである電話網に接続できる機能」を備え 「電話網と接続して ,外部決済機関との間で決済を行う」ものであるとしても,引用例3の記載からして,IC型電子マネーの電子マネーカードを支払手段として採用する場合には,そのような構成は,当業者が容易に想到し得たものである。
したがって,相違点2〔インターフェース回路の有無〕に関し,引用発明においても 「電話網に接続したフロントコンピュータと通信を行うための通信 ,インターフェース回路」を有するとすることは,当業者が容易になし得た事項であるとの審決の判断に誤りはない。
(〔〕 ) 6取消事由6 相違点3 設置場所の相違 に関する容易想到性の判断の誤りについて引用例5ないし7の記載によれば,ホテル等の客室内において精算(チェックアウト)をすること,そのためにコンピュータシステムを使用することは,本願の出願前に周知であった。また,引用例1及び5の記載によれば,客室内に精算装置を設置することは,本願の出願前に周知であった。さらに,引用例1の記載によれば,引用発明の目的,効果は,1枚のプリペイドカードをカード読取保管機にセットするのみで,ホテル等の複数の有料室内設備の利用料金及び客室等の施設そのものの料金を同時に精算できるシステムを提供することにあり,客室内に精算装置を設置することは,このような引用発明の目的,効果に資するものである。そうすると,客室内に精算に係る装置を設置してそれにより精算の処理を行うことは,本願の出願前に,当業者にとって周知であった。
引用発明のカード読取保管機は客室外に設置されているところ,審決は,引用発明のカード読取保管機が客室外に設置されていることを前提に判断を行っており,客室内に設置されているとの認定をしているものではないから,その点でも審決に違法はない。
したがって,当事者が知得した技術等を用いて,引用発明のカード読取保管機について 「部屋の入口近傍に設置される」に代え 「客室内に設置」すると , ,, 。 することは 当業者が容易になし得た事項であるとの審決の判断に誤りはない7取消事由7(相違点4〔精算の相違〕に関する容易想到性の判断の誤り)についてサービスや商品の提供者の利便性や顧客の囲い込みの点から特定の支払方法のみを採用することも商慣習として一般に行われているから,商慣習を勘案して特定の支払方法のみを採用することは,当業者が容易に想到し得る事項である。当業者であれば,複数の支払方法の一つとして電子マネーカードを選択することは容易になし得る。
したがって,引用発明を 「宿泊若しくは休憩料金と有料設備利用料金の合 ,計を請求金額として有料設備利用毎に逐次算出し,電子マネーカード・リーダー/ライターのモニタで確認することができ,退室時において電子マネーカードを電子マネーカード・リーダー/ライターのカード挿入口より挿入することにより」請求金額の引落しができ 「当該レジャーホテル内及び客室内におい ,」, て現金による精算を一切排除したことを特徴とする ものとすることについて当業者が容易になし得た事項であるとした審決の判断に誤りはない。
8取消事由8(本願発明の顕著な作用効果を看過した誤り)について本願発明の「?@現金若しくは利用可能残金の十分あるプリペイドカードの持ち合わせがなくても現金による支払がないため,いつでも気軽にレジャーホテルを利用することができる」との効果は,決済手段として電子マネーカードを採用しようとする当業者が予測できる範囲のものにすぎない。
「?A客室内には現金を扱う機器がなくなるため,盗難目的による機器の破壊がなくなる」との効果は,支払手段として電子マネーカードを採用して現金の使用を排除することにより必然的に得られる効果である。
引用発明においても,プリペイドカードの採用により精算業務の無人化を図っており,電子マネーカードの採用により精算業務の無人化を図り従業員を削減するという効果を得ることは 本願出願前に周知であった したがって?B , 。,「フロントコンピュータは利用客の有料設備利用情報や電子マネーカードから得られる顧客情報を管理するだけのものとなり,ホテル従業員による金額の改ざん等の不正がなくなる,更には精算業務が完全無人化されるため,ホテル従業員の大幅削減が図られる」との効果は当業者の予測の範囲内のものであった。
「?C電子マネーカードから得られる個人情報をフロントコンピュータのデータベースに蓄積することにより,宿泊台帳に代わる正確な顧客情報となる」との効果は,請求項1の記載に基づく効果ではない。
したがって,本願発明の奏する作用効果は,当業者が引用例1ないし8から予測し得る範囲内のものであり,格別顕著な作用効果は認められないという審決の判断に誤りはない。
第5当裁判所の判断1取消事由1(平成19年6月15日付け補正却下決定を前提に本願発明を認定した誤り)について( )手続の経緯について1本願につき,拒絶査定から審決までの特許庁における手続の経緯は,次のとおりである(前記第2,1 。)すなわち,特許庁は,平成18年12月19日付け拒絶査定を行い,原告は,平成19年1月30日,これに対する不服の審判請求(不服2007-3224号事件)をした(甲10 。原告は,平成19年2月8日付け手続 )補正(明細書の段落【0003】を対象とした補正。甲11)及び同月15日付け手続補正(明細書の特許請求の範囲の請求項1を対象とした補正。甲12)を行ったが,同月15日付け手続補正について方式上の不備があるとして同年3月12日付けの手続補正指令を受け(甲13 ,同手続補正指令 )に従い,再度,同月26日付け手続補正(同年2月15日付け手続補正書を対象とした補正。甲14)を行った。特許庁は,平成19年6月15日付けで,同年2月15日付け手続補正を却下する決定を行うとともに(甲15。
平成19年6月15日付け補正却下決定 ,同年6月15日付けで拒絶理由 )()。, (), を通知した 甲16原告は 平成19年7月31日付け意見書 甲17同年10月10日付け上申書(乙2)を提出した。特許庁は,平成19年10月24日 「本件審判の請求は,成り立たない 」との審決をし,その謄本 , 。
は,同年11月14日,原告に送達された。
( )判断2上記の手続経緯を前提として,判断する。
補正却下決定に対しては,不服を申し立てることはできず,拒絶査定不服審判(不服2007-3224号事件)を請求した場合における審判においてのみ,その不服を申し立てることができる旨規定されている(特許法53条3項 。前記( )のとおり,原告は,拒絶査定不服審判において補正却下決 )1定に対し不服を申し立てて,これを争うことはなかった。なお,平成19年7月31日付け意見書(甲17 ,同年10月10日付け上申書(乙2)を )提出しているが,それらにおいても,補正却下決定に対する不服申立てと実質的に解されるような記載はない。
そうすると,原告は,拒絶査定不服審判において,平成19年6月15日付け補正却下決定について不服を申し立てることがなかったのであるから,審決が,同補正却下決定の当否を判断することなく,同補正却下決定を前提として本願発明を認定したことに,誤りはない。
, ,,, 以上のとおり その余の点を判断するまでもなく 審決には 違法はなく取消事由1は理由がない。
2取消事由2 引用発明と本願発明の一致点に関し 引用発明が本願発明の レ ( ,「ジャーホテル料金精算システム」に相当する構成を備えると認定した誤り)について, , , 原告は レジャーホテルという語は ラブホテルのみを意味するとした上でレジャーホテルでは,客室等の施設のドアの解錠や施錠に鍵を利用せず,本願発明のレジャーホテルも客室等の施設のドアの解錠や施錠に鍵を利用しないものであると主張し この主張を前提として 審決が 引用発明が本願発明の レ ,,,「ジャーホテル料金精算システム」に相当する構成を備えると認定したことは誤りであると主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり,主張自体失当である。
( )まず,証拠(甲18,19,20,27,28,乙3)によれば,レジ1ャーホテルという語は 「ゴルフ場・プール・テニスコートなどが利用でき ,る,観光地や保養地のホテル 」を意味するのみならず,昭和60年ころか 。
らは,従前ラブホテルと呼ばれていたホテルをも含むようになったことが認められるが,いずれにせよ,従前のラブホテルのみを指すと認めることはできないので,原告の主張は,この点において失当である。また,証拠(甲2,),, , 3 24 によっても そもそも ラブホテル又はレジャーホテルにおいて一般的に,客室等の施設のドアの解錠や施錠に鍵を利用しないと認めることはできないので,原告の主張は,この点においても失当である。
そして,本願の請求項1には,施設のドアの解錠や施錠に関連する事項として 「客室内電源やドア内の電気錠の制御や ・・・有料設備の使用状況を , ,検知するための入出力インターフェース回路と ・・・前記各インターフェ ,ース回路やメモリ回路を統合的に制御するためのCPUを内蔵して構成した制御装置と,を客室内に設置し 」との記載がある。同記載からは,本願発 ,明のレジャーホテルは,ドア内の電気錠とその電気錠を制御する制御装置を客室内に備えるものであると理解されるが,他方,客室等の施設のドアの解錠,施錠の運用形態やその手段についての記載は一切ないので,請求項1の記載から,本願のレジャーホテルにおいて客室等の施設のドアの解錠や施錠に鍵を利用しないものであると認めることはできない。なお,本願明細書の実施例には,利用客が選択スイッチを押すことによりドアが解錠され,利用客が客室に入室するとドアが自動的に施錠され,退室時に精算が完了するとドアが解錠され,解錠,施錠に鍵を利用しないものが例示されている( 0【011】ないし【0014。しかし,実施例の説明に,鍵を利用しないも 】)のが示されているからといって,本願発明に係るレジャーホテルが,客室等の施設のドアの解錠や施錠に鍵を利用しないもののみを指すと解することはできない。
( )以上のとおり,本願発明のレジャーホテルが客室等の施設のドアの解錠2や施錠に鍵を利用しないものであるとの原告の主張は,採用することができない。また,この主張を前提として,審決が,引用発明が本願発明の「レジャーホテル料金精算システム」に相当する構成を備えると認定したことは誤りである,とする原告の主張も,採用することができない。
したがって,取消事由2は,理由がない。
3取消事由3 引用発明と本願発明の一致点に関し 引用発明が本願発明の カ ( ,「ード・リーダー/ライターと情報の授受を行うための周辺インターフェース回路」に相当する構成を備えると認定した誤り)について原告は,本願発明の電子マネーカード・リーダー/ライターが,個人情報を含む電子マネーカードの情報を読み書きできるものであるとし,これに対し,引用発明のカード読取保管機は,個人情報を含む電子マネーカードの情報を読み書きできる機能を含んでいないから,引用発明は,本願発明の「電子マネーカード・リーダー/ライターと情報の授受を行うための周辺インターフェース回路」に相当する構成を有していないと主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり理由がない。
すなわち,請求項1には,本願発明の電子マネーカード・リーダー/ライタ, , ーが 個人情報を含む電子マネーカードの情報を読み書きできることについて何ら記載がないから,本願発明の電子マネーカード・リーダー/ライターが個人情報を含む電子マネーカードの情報を読み書きできるものであるという原告の主張は,特許請求の範囲に基づく主張ではなく,採用することができない。
したがって,取消事由3は,理由がない。
4取消事由4(相違点1〔カードの相違〕に関する容易想到性の判断の誤り)について( )引用例2,3の記載等1ア引用例2の記載(ア)引用例2(甲2)には,電子マネーカード及びそれを用いた精算装置について,次のとおり記載されている。
「・・・前記タクシー利用料金の支払いが可能な有価物の記録情報を読み取って前記タクシー利用料金を精算処理する有価物精算手段と・・・を具備し ・・・前記有価物の記録情報の読み取りに供される有価物受 ,入部・・・を,タクシーの乗客が操作可能な部位に設けたことを特徴とするタクシー料金精算装置(請求項1)。」「前記有価物は,プリペイド・カード,クレジットカード,タクシー・チケット,電子マネーカードからなり,前記操作パネル部は,上記有価物の種類毎に,その種類に応じた専用の有価物受入部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のタクシー料金精算装置(請求項2)。」「また実施形態においては,クレジット・カードを例にポストペイド・, , カードによる精算について説明したが ICカードによって構成される所謂IDカード(個人専用カード)を利用して基地局や銀行等の金融機関との間で情報通信を行いながら精算処理を行い得るようにしても良い。特に電子マネーカードと称される情報端末の利用を可能としておけば,更に融通性に富んだ精算処理が可能となり,金融機関との間におけ。」(【】) る精算処理の簡略化を図ることも可能となる ・・・段落 0084(イ)前記(ア)の引用例2の記載によれば,引用例2には,電子マネーカードが,プリペイドカードやクレジットカードと同等な支払手段であることが示されており,また,各種有価物の種類に応じた精算のために必。, 要な装置構成を備えた精算装置が示されているものと認められる なお引用例2には,タクシー料金精算装置について,電子マネーカードによる精算を処理するための具体的な装置構成の記載はないが,引用例2の記載に照らせば,有価物受入部に挿入された有価物についてその種類に応じた精算処理を行うための手段を備えることは,当業者にとって自明であると認められる。
イ引用例3の記載(ア)引用例3(甲3)には,次のとおり記載されている。
ICカード型電子マネーについて 「ICカードには,超小型の特殊 ,なプロセッサ(マイクロ・プロセッサ)とメモリが備えられている。つまりカード型コンピュータである。メモリには保有する金額情報が蓄えられていて,銀行のATMで現物の通貨でなくメモリ上の記憶として,金額情報を預金したり引き出したりする(18頁本文1行ないし4 。」行「このICカードを読みとれる装置を備えた商店やレストランのレ ),ジスターやPOSは,お客のICカードから代金を減算し,お店のカードへ加算すればいい。お店のICカード内の金額は,電話回線を使って店の銀行口座に送金し,預金することもできる(18頁本文7行ない 。」し9行)と記載されている。
ICカード型電子マネーの一つである英国ナショナル・ウエストミンスター銀行(ナットウエスト)の電子マネー「モンデックス」の実用化実験について 「?@形態ICカード方式。自己の銀行口座から必要な ,金額を引き出して,ICカードに記憶させる(34頁本文4行ないし 。」6行「専用の支払い装置が使用される。商店,ホテル,ガソリンスタ ),ンド,バーなどで,支払い装置にカードを挿入すれば,代金相当額がカ,。」() ードから減算され 店のカードに加算される36頁2行ないし4行と記載されている。
(イ)前記(ア)の引用例3の記載によれば,電子マネーカードは,あらかじめ金額情報をICカードに記憶させておき,ホテルなどの施設で支払を行う場合は,ICカードから代金を減算し,現金を利用せずに即時に決済するものであることが認められる。
ウ引用例2,3の記載によれば,本願の出願前に,電子マネーカード(ICカード型電子マネー)が支払手段の一つとして一般に認知されていたことが認められ,コンピュータシステムの技術者である当業者であれば,電子マネーカードは現金を利用せずに即時に決済をするものであること,電子マネーカードはプリペイドカードやクレジットカードと代替可能な支払手段であること,ホテルでの料金精算のために電子マネーカードを支払手段として採用できることは,容易に知り得たものと認められる。
( )容易想到性についての判断2請求項1には,本願発明における「電子マネーカード」について 「電子,マネーカードによりレジャーホテル利用料金の精算を行う電子マネーカード・リーダー/ライター「宿泊若しくは休憩料金と有料設備利用料金の合計 」,を請求金額として有料設備利用毎に逐次算出し,電子マネーカード・リーダー/ライターのモニタで確認することができ,退室時において電子マネーカードを電子マネーカード・リーダー/ライターのカード挿入口より挿入することにより請求金額の引落しができ」るという事項が記載されているにとどまる。したがって,請求項1の記載から把握される本願発明における「電子マネーカード」とは,電子マネーカード・リーダー/ライターにより金額に関する情報の読み書きが可能であり,レジャーホテルの退室時における料金の精算に当たり,請求金額の引落しができるカードであると解される。
そうすると,引用発明における客室等施設の料金の精算手段であるプリペイドカードに代えて電子マネーカードを採用することは,コンピュータシステムに係る技術者であれば,容易に想到し得たものと認められる。
( )原告の主張に対して3ア原告は,引用例2及び3は,電子マネーカードが複数の支払手段のうちの一手段であることを示しているのに対し,本願発明は,電子マネーカードのみが支払手段であると限定している点で大きく異なると主張する。
しかし,引用発明においては,支払手段をプリペイドカードに限定しているから,プリペイドカードに代えて電子マネーカードを採用すれば,支払手段が電子マネーカードに限定されることは自明である。
イ原告は,引用発明では,利用客はホテルを利用する際に,必ずフロント,, 等でプリペイドカードを現金で購入する必要があるのに対し 本願発明はホテル内での現金利用を排除する課題のもと,レジャーホテル内及び客室内において現金による精算を一切排除したことを特徴とするものであり,引用発明と異なると主張する。
しかし,電子マネーカードは,現金を利用せずに即時に決済をするものであるから,支払手段を電子マネーカードとすれば,施設内での現金の利用が排除されることは,当業者にとって自明である。
ウ原告は,本願発明は,電子マネーの精算機能をレジャーホテルの各客室内に個別に設置した構成であるのに対し,引用例2及び3は,電子マネーに関する具体的な技術内容を開示も示唆もしていないから,引用例2及び3を引用発明に適用しても,本願発明の上記構成に当業者が容易に想到することはできないと主張する。
しかし,引用例3によれば,本願の出願前において,電子マネーカードに関する基本的な技術は公知であり,電子マネーカードの実用化実験等も行われていたことが認められるから,引用発明における客室等施設の料金の精算手段であるプリペイドカードに代えて電子マネーカードを採用した場合に,電子マネーカードによる精算処理を行うために必要な手段を設けることは,当業者が容易に想到できたものと認められる。
エそうすると,原告の主張を検討しても,引用発明における客室等施設の料金の精算手段であるプリペイドカードに代えて電子マネーカードを採用することは,コンピュータシステムに係る技術者であれば,容易に想到し得たものと認められる。
( )小括4以上のとおり,相違点1〔カードの相違〕に関し,引用発明における客室等施設の料金の精算手段であるプリペイドカードに代えて電子マネーカードを採用することは,コンピュータシステムに係る技術者であれば容易に想到し得たとする審決の判断に誤りはなく,取消事由4は理由がない。
5取消事由5(相違点2〔インターフェース回路の有無〕に関する容易想到性の判断の誤り)について( )引用例4,5の記載等1ア引用例4(甲4)には 「宿泊施設の各部屋の入口部に錠機構に対応し ,て付設され,フロントに置かれたフロントシステムと連動して,指定されたプリペイドカードの読取書込機能を有するドア開閉制御装置により,部屋のドアの開閉制御を行いうるようにしたホテルシステムにおいて,客に前以て個人識別機能を付与したプリペイドカードを持たせるとともに,このプリペイドカードに部屋のドアの開閉ができる鍵機能を与えることにより,客がホテル内の空室に直接出向いて,自己のプリペイドカードをその部屋のドア開閉制御装置に挿入すると,個人識別が自動的に行われるとともに,カード鍵機能が働いて部屋のドアの開錠が行われ,同時にカードの残高から部屋代金の引落しが行われて部屋への入室が可能となるとともに,個人識別情報の収録情報からフロントシステムによって宿泊台帳の調整が行えるようにしたことを特長とするとするホテル自動チェックインシステム(請求項1)が記載されている。 。」また,引用例5(甲5)には 「商品の販売のつど販売信号を共通の第 ,1の伝送路を介して送信する複数の商品販売手段,前記伝送路を介して前記販売信号を受信し,前記商品販売手段ごとに当該の商品販売金額を含む客室料金を算出する中央会計手段からなる客室料金合計システムにおいて,各々前記商品販売手段と対に設けられ前記中央会計手段から前記第1もしくは第2の共通の伝送路を介して前記客室料金を受信する手段と,該受信した前記客室料金を請求料金として記憶する記憶手段と,該記憶手段に記憶された請求料金を表示する手段と,投入された貨幣を識別し,金種信号を出力する貨幣鑑別手段と,該金種信号に基づき投入された貨幣の金額を,前記記憶手段に記憶された請求料金から差引き該請求料金を更新する手段と,該更新された請求料金が負の金額となったとき釣銭を払出す釣銭払出手段と,該払出された釣銭の金額を前記記憶手段に記憶された負の請求料金に加算し,該請求料金を更新する手段と,前記記憶手段の請求料金が更新されるつど,更新された請求料金を前記第1もしくは第2の伝送路を介して前記中央会計手段に送信する手段との各手段からなることを特徴とする客室料金精算装置(特許請求の範囲)が記載されている。 。」イ上記の引用例4及び5の記載によれば,フロントに係る業務を処理するコンピュータが各客室のデータを収集して所定の情報処理を行うコンピュ, 。 ータシステムは 本願の出願前に一般的に知られていたことが認められるそして,このようなコンピュータシステムにおいて,客室の情報を得るために各客室に設置された端末等は,フロントのコンピュータと通信するための手段を備えており,これは,本願発明におけるインターフェース回路に相当するものと認められる。
( )容易想到性についての判断2引用例4及び5に示されたような,フロントに係る業務を処理するコンピュータが各客室のデータを収集して所定の情報処理を行うコンピュータシステムは,各客室に備えられた設備の利用状況等を集約的に把握し管理しようとする要請に基づくものと認められ,このような要請は,ホテル等の設備の能率的な管理のために一般的に存在するものといえる。
引用発明におけるカード読取保管機は,各客室における室内有料施設の利用状況を検出し精算処理を行う機能を備えているが,他面,他との通信手段を備えていない。しかし,引用発明においても,各客室には有料設備が設けられているので,それらの利用状況を集約的に把握し管理しようとする要請は一般的に存在するといえる。そうすると,このような要請に基づいて,引用発明について,フロントコンピュータと通信するためのインターフェース回路をカード読取保管機に備えるように構成することは,当業者が容易になし得るものと認められる。
そうすると,電話網をフロントコンピュータに接続し,フロントコンピュータと通信を行うためのインターフェース回路を制御装置(引用発明のカード読取保管機)に備えることは,当業者が容易に想到し得たものと認められる。
( )原告の主張に対して3原告は,本願発明が,各客室に設置された制御装置が「外部ネットワークである電話網に接続できる機能」を備え 「電話網と接続して外部決済機関 ,との間で決済を行う」ものであると主張し,この主張を前提として,引用例1,4,5には,各客室に設置された制御装置が外部ネットワークである電話網に接続できる機能を有することの開示も示唆もなく,また,引用発明のカード読取保管機はスタンドアローン型の制御装置であり,フロントコンピュータと通信を行うことも電話網と接続して外部決済機関との間で決済を行うこともなく,したがって,引用発明において,各客室に設置された制御装置が「外部ネットワークである電話網に接続できる機能」を備え 「電話網 ,と接続して外部決済機関との間で決済を行う」ものとすることについて,当業者といえども容易に想到することができないと主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。
まず,請求項1には,電話網との接続に関して 「電話網に接続したフロ ,ントコンピュータと通信を行うための通信インターフェース回路・・・を内蔵して構成した制御装置」を備えることが記載されている。しかし,制御装置がフロントコンピュータと通信可能であるとの記載が,直ちに,フロントコンピュータが客室の制御装置と外部ネットワークである電話網とを接続する機能を備えていること,及び,客室の制御装置が電話網と接続していることを意味するものとはいえない。
のみならず,仮に,原告主張のとおり,本願発明が,各客室に設置された制御装置が 外部ネットワークである電話網に接続できる機能 を備え電 「 」,「話網と接続して外部決済機関との間で決済を行う」ものであるとしても,以下のとおり,上記の構成は,引用例3に基づいて容易に想到することができるというべきである。すなわち,引用例3に「このICカードを読みとれる装置を備えた商店やレストランのレジスターやPOSは,お客のICカードから代金を減算し,お店のカードへ加算すればいい。お店のICカード内の, ,。」 金額は 電話回線を使って店の銀行口座に送金し 預金することもできる(18頁本文7行ないし9行)と記載されていることから,ICカード型電子マネーの電子マネーカードから引き落とした請求金額を電話回線を使って銀行口座に電子的に送金する構成は,ICカード型電子マネーの電子マネーカードを支払手段として採用する場合には,当業者が容易に想到し得るものと認められる。そうすると,支払手段として電子マネーカードを採用するならば,各客室に設置された制御装置をして 「外部ネットワークである電話 ,網に接続できる機能」を備え 「電話網と接続して外部決済機関との間で決 ,」, 。 済を行う ものとすることは 当業者が容易に想到し得たものと認められる( )小括4したがって,相違点2〔インターフェース回路の有無〕に関し,引用発明においても 「電話網に接続したフロントコンピュータと通信を行うための ,通信インターフェース回路」を有するとすることは,当業者が容易になし得た事項であるとする審決の判断に誤りはなく,取消事由5は理由がない。
(〔〕 ) 6取消事由6 相違点3 設置場所の相違 に関する容易想到性の判断の誤りについて( )引用例5ないし7の記載等1「」 , ア引用例5の 特許請求の範囲 には前記5( )アのとおりの記載があり 1発明の詳細な説明には 「本発明は客がホテル等の客室に設置された客室 ,自動販売機(以下自販機と言う)から購入した商品の金額を含む客室料金。」( ) を客室で精算するための精算装置に関する1頁右欄9行ないし12行と記載されている。
引用例6(甲6)には,従来技術として 「・・・双方向の情報端末と ,しては,米国出願US5,077,067号に,ホテルなどのチェックアウトをホテルフロントに出向かずに,室内から行なえるような装置が開示されている ・・・ (段落【0004 )と記載されている。 。」】引用例7(甲7)には,従来技術として 「他の種類のテレビサービス ,は,テレビ受像機を介して,安全化されていない対話型のオーダ(発注)方式を提供する。このようなサービスは,一般に,ホテルにおいて提供され,オテル(判決注「ホテル」の誤記と認める )の客室からの遠隔チェ 。
ックアウト処理を可能にする。このようなサービスにおいて,ホテルの客には,客室内のテレビ受像機を介して,様々なチェックアウトオプション()。」(【】)。 選択肢 が提供される ・・・段落 0009と記載されている前記各引用例の記載によれば,ホテル等の客室の室内において精算(退室時のチェックアウトを含む)をすること,ホテル等の客室の室内における精算(チェックアウト)にコンピュータシステムを使用することは,公知であったと認められる。
イまた,引用例5によれば,引用例5に記載された発明に係る客室料金精算装置は,ホテル等の客室の室内に設置して精算の処理を行うものであると認められる。
引用例1には 「 発明が解決しようとする課題】ところで,客室内の室 ,【内設備,例えば,テレビ,ビデオ,冷蔵庫,電話等を有料室内設備として料金を徴収したい場合がある。このような各種有料室内設備の利用に対して料金を徴収する場合,?@:利用者にもプリペイドカードを渡して各々の設備にカード読取機を取り付ければ,各設備毎にカードで精算を行うことができる ・・・ (段落【0003 )と記載されており,従来技術とし 。」】て,客室の各種有料室内設備にプリぺイドカードの情報を読み取るためのカード読取機等を設置して客室内の各種有料設備の料金の精算を行うことが記載されている。
引用例1及び5の記載によれば,客室内に精算装置を設置することは,本願の出願前に公知であったことが認められる。
ウさらに,引用例1には 「そこで,本発明の目的は,一枚のプリペイド ,カードを所定の場所にセットするのみで,ホテルやレンタルルーム等の特定施設内の複数の有料室内設備を自由に使用でき,その利用時に利用料金を該カードから精算できるシステムを提供することである。また,客室等の施設そのものの料金も同時に精算できるシステムを提供することも目的とする(段落【0005「 発明の効果】本発明のプリペイドカー 。」】),【ドシステムでは,利用者は,カード入金精算機で容易にプリペイドカードを購入でき,購入した一枚のカードをカード読取保管機にセットすることで,複数の有料の室内設備について各設備毎にカードをセットすることなく,それらの設備を同時に利用できる。一方,ホテル等の施設提供者側で。」(【】) も無人で各種の利用料金を確実に徴収できる ・・・段落 0028と記載されており,これによれば,引用発明の目的,効果は,1枚のプリペイドカードをカード読取保管機にセットするのみで,客室内の複数の有料室内設備の利用料金及び客室等の施設そのものの料金を同時に精算できるシステムを提供することにあるものと認められる。そして,客室内に精算装置を設置して精算することは,このような引用発明の目的,効果に資するものと認められる。
エ前記認定によれば,ホテル等の客室内に精算に係る装置を設置して精算の処理を行うことは,本願の出願前に,公知であったと認められる。
( )容易想到性についての判断2以上の認定によれば,カードにより精算を行う装置をホテル等の客室内に設置し,客室内で精算を行うことは,周知の技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものと認められる。
もっとも,引用発明のカード読取保管機は,客室入口近傍に設置されているものであり,客室内に設置されていない。
しかし,引用例1には 「 従来の技術】従来,ホテル等では客室の鍵とし ,【てメカニカルキーの代わりにカードキーを利用してドアの解錠と施錠を制御するカードロックシステムがある。例えば,ホテルのフロントで客室の利用申込をした利用者に,客室番号等が記録されたカードキーを渡し,利用者はカードキーで客室ドアを開けた後,カードキーを持って入室するというものである。このような技術は,例えば特公昭58-51593号公報等で提案されている(段落【0002 )と,カードを鍵の代わりに用いること, 。」】また,客室の各種有料室内設備にプリぺイドカードの情報を読み取るためのカード読取機等を設置して客室内の各種有料設備の料金の精算を行うことが従来技術として記載されている。そして,客室内にプリぺイドカードの情報を読み取るためのカード読取機等を設置して客室内の各種有料設備の料金の精算を行う技術は,客室内に精算装置を設置して精算処理を行うことを示唆している。
また,前記( )ウのとおり,引用例1には,1枚のプリペイドカードをカ1ード読取保管機にセットするのみで精算できるシステムを提供するという引用発明の目的,効果が記載されている。
これらの記載によれば,引用例1に接した当業者が,引用発明のカード読取保管機を,カードによる解錠の手段としてではなく,利用料金の精算手段の観点からとらえることは,自然なことであると認められる。
したがって,前記のとおり,引用発明のカード読取保管機が部屋内に設置されていないとしても,そのことは,引用発明に,ホテル等の客室内に精算装置を設置して精算処理を行うという周知技術を適用することの阻害要因となるものではない。
したがって,当事者が知得した技術等を用いて,引用発明のカード読取保管機について 「部屋の入口近傍に設置される」に代え 「客室内に設置」す , ,るとすることは,当業者が容易になし得た事項であるとの審決の判断に誤りはなく,取消事由6は理由がない。
7取消事由7(相違点4〔精算の相違〕に関する容易想到性の判断の誤り)について( )引用例2,8の記載等1引用例2は,タクシー料金精算装置に係る発明の公開特許公報であり,その記載によれば,タクシーが目的地に到着して課金が停止された後の精算を前提としており,後払で精算する構成を有する装置が開示されているものと認められる。引用例8は,有料貸室の料金徴収装置に係る発明の公開特許公報であり,実施例の説明に「・・・使用可能時間を越えている場合には,規定の追加料金が支払われるまで退室を規制することで,使用者から使用時間に応じた規定の料金が徴収できることになる ・・・ (甲8は,引用例8に 。」係る出願の特許公報(登録)であり,7欄7行ないし10行に同じ記載がある )と記載され,正常使用時間を越えて使用された時間に相当する追加料 。
金については後払であることが開示されている。
前記4( )のとおり,引用発明における各室等施設の料金の精算手段であ2るプリペイドカードに代えて電子マネーカードを採用することは,コンピュータシステムに係る技術者であれば,容易に想到し得たものと認められる。
電子マネーにおいて,カードを用いた精算等の処理を行う際に,カードのリーダ/ライタのカード挿入口よりカードを挿入することは,普通に採用される方法であると認められる。
また,支払手段を多数とすることは商慣習として一般に行われているものの,他方で,支払手段を特定のものに限定することも,商慣習として一般的に行われている。引用発明においては,支払手段をプリペイドカードに限定しており,支払のためのコンピュータシステムを,そのような支払手段の制限に対応したものとすることも,当業者が容易になし得ると認められる。そ, , して 引用発明のプリペイドカードに代えて電子マネーカードを採用すれば支払手段が電子マネーカードに限定されることは自明である。
そして,前記4( )イのとおり,電子マネーカードは,現金を利用せずに1即時に決済をするものであるから,支払手段を電子マネーカードとすれば,施設内での現金の利用が排除されることは,当業者にとって自明である。
( )容易想到性についての判断2そうすると,引用発明を 「宿泊若しくは休憩料金と有料設備利用料金の ,合計を請求金額として有料設備利用毎に逐次算出し,電子マネーカード・リーダー/ライターのモニタで確認することができ,退室時において電子マネーカードを電子マネーカード・リーダー/ライターのカード挿入口より挿入することにより」請求金額の引落しができ 「当該レジャーホテル内及び客 ,室内において現金による精算を一切排除したことを特徴とする」ものとすることについては,当業者が容易に想到し得たものと認められる。
( )原告の主張に対して3ア原告は,支払における顧客の利便性や集客の観点からは,より多くの支払方法を選択するのが通常であるから,一部の支払方法に制限する技術の採用は設計事項であるとはいえず,本願発明の出願時における電子マネーの乏しい利用状況下では,電子マネーによる支払に限定した本願発明を想到するについて阻害要因があると主張する。
しかし,引用発明は,支払方法をプリペイドカードに限定するものであり,商慣習として支払方法を限定することもあると認められる。また,引用例2には,電子マネーカードを支払手段とすることが記載されており,電子マネーカードを支払手段とすることを特に妨げる事情があるとは認められない。したがって,原告の上記主張を採用することはできない。
イ原告は,本願発明は,レジャーホテルの複雑な料金体系に対応しつつ,電子マネーカードを用いたコンピュータネットワーク決済システムを利用することで,レジャーホテル内及び客室内における現金による精算を一切排除した構成であるところ,引用例2及び8は,そのような複雑な料金体系に対応した決済システムを開示も示唆もしていないと主張する。
しかし,本願の請求項1には,レジャーホテルの複雑な料金体系に対応することは記載されていないから,本願発明がレジャーホテルの複雑な料金体系に対応するものであるという主張は,特許請求の範囲の記載に基づかないものであり,採用することはできない。
( )小括4したがって,引用発明を 「宿泊若しくは休憩料金と有料設備利用料金の ,合計を請求金額として有料設備利用毎に逐次算出し,電子マネーカード・リーダー/ライターのモニタで確認することができ,退室時において電子マネーカードを電子マネーカード・リーダー/ライターのカード挿入口より挿入することにより」請求金額の引落しができ 「当該レジャーホテル内及び客 ,室内において現金による精算を一切排除したことを特徴とする」ものとすることについて,当業者が容易になし得た事項であるとした審決の判断に誤りはなく,取消事由7は理由がない。
8取消事由8(本願発明の顕著な作用効果を看過した誤り)について原告は,本願発明は,?@現金若しくは利用可能残金の十分あるプリペイドカードの持ち合わせがなくても現金による支払がないため,いつでも気軽にレジャーホテルを利用することができる,?A客室内には現金を扱う機器がなくなるため,盗難目的による機器の破壊がなくなる,?Bフロントコンピュータは利用客の有料設備利用情報や電子マネーカードから得られる顧客情報を管理するだけのものとなり,ホテル従業員による金額の改ざん等の不正がなくなる,更には精算業務が完全無人化されるため,ホテル従業員の大幅削減が図られる,?C電子マネーカードから得られる個人情報をフロントコンピュータのデータベースに蓄積することにより,宿泊台帳に代わる正確な顧客情報となる,との顕著な作用効果を有し,これらの作用効果は,当業者が引用例1ないし8から予測し得るものではないと主張する。
しかし,原告の主張する作用効果は,予測し得ない格別の効果ではなく,本件発明が引用例に基づいて容易に想到できるものとの判断を左右するものとはいえない。すなわち,上記?@ないし?Bは,いずれも電子マネーカードを利用す, , ることにより必然的に得られる効果 又は予測される範囲内の効果であるからこの点に関する原告の主張は失当である。また,上記?Cについては,請求項1には,本願発明の電子マネーカード・リーダー/ライターが,個人情報を含む電子マネーカードの情報を読み書きできることについて記載されていないか, , , ら この点に関する原告の主張は 特許請求の範囲に基づくものではないので主張自体失当である。
したがって,本願発明の奏する作用効果は,当業者が引用例1ないし8から予測し得る範囲内のものであり,格別顕著な作用効果は認められないという審決の判断に誤りはなく,取消事由8は理由がない。
9結論以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。原告はその他縷々主張するが,審決にこれを取り消すべきその他の違法もない。
よって,原告の本訴請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 中平健
裁判官 上田洋幸