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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成19ワ12631特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
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関連ワード 製造方法 /  新規性 /  29条1項3号 /  頒布された刊行物 /  新規性喪失(新規性の喪失) /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  公知技術 /  技術的範囲 /  先行技術 /  発明の詳細な説明 /  優先日 /  対象製品 /  均等 /  均等論 /  置き換え /  同一の作用効果 /  容易に想到(容易想到性) /  意識的除外(意識的に除外) /  禁反言 /  特許発明 /  実施 /  加工 /  構成要件 /  業として /  差止請求(差止) /  侵害 /  損害額 /  不法行為(民法709条) /  拒絶査定不服審判 /  拒絶査定 /  拒絶理由通知 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 19年 (ワ) 11981号 特許権侵害差止等請求事件
大韓民国京畿道<以下略>
原 告A
訴訟代理人弁護 士平尾正樹
補佐人弁理士鈴木弘男 大阪府守口市<以下略>
被 告清水産業株式会社大阪府寝屋川市<以下略>
被 告株式会社セイエイ
上記両名訴訟代理人弁護士堀越靖司
同 千葉恵子
上記両名補佐人弁理 士中島幹雄
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2008/01/22
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求1被告らは,別紙物件目録記載の物品を生産し,使用し,譲渡若しくは貸渡しをし,輸入し又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
2被告らは,原告に対し,連帯して,金1440万円及びこれに対する平成19年6月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要,「 」 , 本件はコンパクト型豆乳・豆腐製造機 に関する特許権を有する原告が被告らが販売している別紙物件目録記載の製品は上記特許権に係る特許発明技術的範囲に属するとして,被告らに対して,特許法100条1項に基づき,上記製品の製造・販売等の行為の差止めを求めるとともに,民法709条及び特許法102条3項に基づき 不法行為による損害賠償金及びこれに対する 不 , (法行為の後である)訴状送達の日の翌日から支払済みまでの間の遅延損害金の支払を求めた事案である。
1前提となる事実等(後記(4)アの事実以外については,当事者間に争いがない )。
(1) 被告らア被告清水産業株式会社(以下「被告清水産業」という )は,大阪府守 。
口市に登記簿上の本店を有する株式会社であり 被告株式会社セイエイ 以 ,(下「被告セイエイ」という )は,被告清水産業の関連会社であって,大 。
阪府寝屋川市に登記簿上の本店を有する株式会社である。
イ被告らは,いずれも家庭日用品の企画,製造及び輸入等を主たる業務としている。
(2) 原告の特許権ア原告は 次の特許 以下本件特許 というにつき特許権 以下 本 ,(「」。)(「件特許権」という )を有している。 。
a)特 許 番 号第3129698号b)発明の名称コンパクト型豆乳・豆腐製造機c)出願日平成10年7月15日d)優先日平成9年7月22日e)登録日平成12年11月17日イ本件特許の出願の願書に添付された明細書(ただし,平成11年6月15日及び同12年5月31日にそれぞれ補正された後のもの。以下,上記補正後の明細書を「本件明細書」という )の「特許請求の範囲」請求項 。
1の記載は,次のとおりである(以下,請求項1記載の発明を「本件特許発明」という。本判決添付の特許公報参照。。)「大豆破砕用ブレードが下端部に設置され下方に延伸した回転軸を駆動させるための駆動手段及び前記駆動手段の作動を制御するための制御部が内装されたリテンションカップと,前記駆動手段及び制御部に電気的に連結された電源接続用アダプタが設置されたカバーとから構成される上部本体アセンブリと;取りはずし自在に取りつけられた前記リテンションカップにより閉鎖され,破砕された大豆から浸出された豆乳が収集される円筒状の下部本体と;前記大豆粉砕用ブレードを内側に置き,破砕のための大豆が収納され,前記回転軸の下端部に設置されたブレードにより破砕される大豆から出た液状の豆乳は通過するが,固形物であるおからは通過し得ないようにするふるいを有し,前記下部本体内部の中央に位置するおから槽本体と,前記おから槽本体の上部を覆い,前記おから槽本体と分離可能に結合され,前記リテンションカップに固定的に取り付けられたキャップとで構成されるおから槽アセンブリと;前記リテンションカップの底面に取り付けられて,前記おから槽アセンブリの外部の前記下部本体内に位置し,前記制御部より制御される加熱手段とから構成されることを特徴とするコンパクト型豆乳・豆腐製造機 」。
ウ本件特許発明構成要件に分説すると,次のとおりである。
a)構成要件イ(上部本体アセンブリ)?@構成要件イ-1大豆破砕用ブレードが下端部に設置され下方に延伸した回転軸を駆動させるための駆動手段及び前記駆動手段の作動を制御するための制御部が内装されたリテンションカップ?A構成要件イ-2前記駆動手段及び制御部に電気的に連結された電源接続用アダプタが設置されたカバーb)構成要件ロ(下部本体)取りはずし自在に取りつけられた前記リテンションカップにより閉鎖され,破砕された大豆から浸出された豆乳が収集される円筒状の下部本体c)構成要件ハ(おから槽アセンブリ)?@構成要件ハ-1前記大豆粉砕用ブレードを内側に置き,破砕のための大豆が収納され,前記回転軸の下端部に設置されたブレードにより破砕される大豆から出た液状の豆乳は通過するが,固形物であるおからは通過し得ないようにするふるいを有し,前記下部本体内部の中央に位置するおから槽本体?A構成要件ハ-2前記おから槽本体の上部を覆い,前記おから槽本体と分離可能に結合され,前記リテンションカップに固定的に取り付けられたキャップd)構成要件ニ(加熱手段)前記リテンションカップの底面に取り付けられて,前記おから槽アセンブリの外部の前記下部本体内に位置し,前記制御部より制御される加熱手段e)構成要件ホ(コンパクト型豆乳・豆腐製造機)(3) 被告らの行為被告らは,遅くとも平成14年から,業として,別紙物件目録記載の製品(以下「被告製品」という )を 「らくらく豆乳メーカーEX」の商品名 。,で販売している。
(4) 被告製品についてア被告製品の構成は,別紙物件目録の(2)以下に記載のとおりである(なお,被告は,別紙物件目録中に「リテンションカップの他にはおから槽本体の上部を覆うキャップ等の部品は存在しない」という事実を明記するよう求め,それ以外の別紙物件目録の記載については,これを認めている。
しかし,別紙物件目録の(2)以下は,そもそも被告製品の構成を示すために作成されたものであるから,被告製品中にどのような部材がどのような状態で存在するかが具体的に記載されていれば足りるのであって,特定の部材が「存在しない」ことを積極的に記載することまでは必要とされてい。,,「」 ないというべきである また 本件においては 後記のように キャップという用語の意義自体が一つの争点となっているのであるから 「キャッ ,プ等の部品は存在しない」と明示的に記載することは,むしろ不適切であるといわなければならない。これらの点を考慮すると,被告製品の構成については,別紙物件目録のとおり記載して,特定するのが相当である。。)イ被告製品は,本件特許発明構成要件イ-1,イ-2,ロ,ニ及びホをそれぞれ充足する。
また,被告製品は,本件特許発明構成要件ハ-1のうち 「前記大豆 ,粉砕用ブレードを内側に置き,破砕のための大豆が収納され,前記回転軸の下端部に設置されたブレードにより破砕される大豆から出た液状の豆乳は通過するが,固形物であるおからは通過し得ないようにするふるいを有するおから槽本体」の構成を備えている。
2争点, ()。 (1) 被告製品の構成は 本件特許発明構成要件ハ-1を充足するか 争点1, ()。 (2) 被告製品の構成は 本件特許発明構成要件ハ-2を充足するか 争点2(3) 被告製品の構成は,本件特許発明構成要件ハ-2と均等か(争点3 。)(4) 本件特許は 特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか 争 , (点4 。)(5) 被告らの行為について差止めの必要性が認められるか(争点5 。)(6) 被告らの行為は共同不法行為か(争点6 。)(7) 原告の損害額は幾らか(争点7 。)第3争点に関する当事者の主張1争点1(被告製品の構成は,本件特許発明構成要件ハ-1を充足するか)について(1) 原告の主張ア被告製品の「フィルターカップ」は,本件特許発明構成要件ハ-1の「おから槽本体」に該当し,かつ 「下部本体」内部の中央に位置するか ,ら,被告製品の構成は,本件特許発明構成要件ハ-1を充足する。
イ被告製品が構成要件ハ-1の「前記下部本体内部の中央に位置するおから槽本体」の構成を備えていることは客観的に明らかであり,被告らもこの点について積極的に否認してはいない。
被告らは,被告製品は,底部に把手を有する「フィルターカップ」が,「」,「」, リテンションカップ 側壁下部に固定キャップ を介在させないで分離可能に直接取り付けられている点で,本件特許発明構成要件ハ-1とは異なる,と主張する。しかし,被告製品のそれらの構成は,本件特許発明構成要件ハ-1とは無関係である。
(2) 被告らの主張ア被告製品の フィルターカップ が本件特許発明構成要件ハ-1の お 「」 「から槽本体」に該当することは認める。
イしかし 被告製品は 底部に把手を有する フィルターカップ がリ ,,「」 ,「テンションカップ」側壁下部に 「固定キャップ」を介在させないで,分 ,離可能に直接取り付けられている点で,本件特許発明構成要件ハ-1とは異なる。
2争点2(被告製品の構成は,本件特許発明構成要件ハ-2を充足するか)について(1) 原告の主張ア被告製品は 「リテンションカップ」の側壁下端の外周縁に溝が形成さ ,れており,使用時は「フィルターカップ(おから槽本体 」をこの溝と嵌 )合させ,使用が終わったら嵌合を解いて洗浄するものであって,上記溝によるねじ込み式の分離手段により「おから槽本体」の分離が可能となっており,かつ 「おから槽本体」が取り付けられたときは,その上部が「リ ,テンションカップ」の下部により覆われるものであるから,本件特許発明構成要件ハ-2を充足する。
イ被告らは,被告製品には「前記おから槽本体の上部を覆い,前記おから槽本体と分離可能に結合され,前記リテンションカップに固定的に取り付けられたキャップ」が存在しないと主張する。
しかし 「キャップ」とは 「広辞苑」には「鉛筆・万年筆などの帽子 ,,状のふた」とあり,YAHOOの国語辞典には「先端にかぶせる物。瓶のふたや万年筆のさやなど」とある。つまり 「キャップ」は先端にかぶせ ,るふたやさやのことをいう。次に 「ふた(蓋 」は 「広辞苑」には「物 ,),、、、、
の口をおおいふさぐもの」とあり,YAHOOの国語辞典には「物の口にあてがってふさぐもの」とある。以上から 「キャップ」とは「物の口に ,かぶせて塞ぐもの」という意義であることがわかる。
被告製品の「リテンションカップ」の下部は 「フィルターカップ」の ,口にかぶせて「フィルターカップ」をふさいでいるから,上記の意義において「フィルターカップ」の「キャップ」である。そして,この「キャップ」は,?@「フィルターカップ(おから槽本体 」の上部を覆い,?A「フ )ィルターカップ(おから槽本体 」と分離可能に結合され,?B「リテンシ )ョンカップ」に固定的に取り付けられているから,被告製品は本件特許発明構成要件ハ-2を充足する。
被告製品の「キャップ ( リテンションカップ」の下部)は 「リテン 」「 ,ションカップ」と一体成型されている。しかし,被告製品の「キャップ」,「」 構造と同一構造を別部材として作り その別部材を リテンションカップの下部に固定的に取り付けるのと,被告製品のように一体成型するのとでは,製造方法が違うだけで,同じである。
(2) 被告らの主張ア被告製品は 「おから槽本体」に相当する「フィルターカップ」を直接 ,「リテンションカップ」に着脱自在に固定する構成を有するものであり,本件特許発明構成要件ハ-2,すなわち「前記おから槽本体の上部を覆い,前記おから槽本体と分離可能に結合され,前記リテンションカップに固定的に取り付けられたキャップ」に相当する部材は取り付けられていない。
イ特許請求の範囲に記載された用語の意義は,願書に添付した明細書の記載及び図面が明確である以上,これら以外の文献を参照して解釈する必要はない。この点から言って 「キャップ」の意義は,本件明細書の記載及 ,び本件特許の出願の願書に添付された図面(以下「本件図面」という )。
にあるとおり 「リテンションカップ」とは別に「おから槽本体」を覆う ,蓋を意味することは明らかである。
本件明細書の「発明の詳細な説明」中には 「フィルターカップ(おか ,ら槽本体)を直接リテンションカップに取り付けた構造」は具体的に記載されていない。本件特許発明構成要件ハ-2の「キャップ」の構造は,「フィルターカップ(おから槽本体)の上を直接覆うキャップであり,このキャップはリテンションカップとは別の部材であり,このキャップはリテンションカップに固定的に取り付けられている」のに対して,被告製品の「フィルターカップ(おから槽本体 」は 「リテンションカップ」に ),直接取り付けられているという点で,その構造が全く異なるものである。
3争点3(被告製品の構成は,本件特許発明構成要件ハ-2と均等か)について(1) 原告の主張アいわゆるボールスプライン事件の最高裁判決は,次の要件を満たす場合には,特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品と異なる部分が存する場合であっても特許権侵害になることを認めている。
a)その部分が特許発明の本質的部分ではなく,b)その部分を対象製品等におけるものと置き換えても,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって,c)そのように置き換えることに,当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という )が,対象製品等の製 。
造等の時点において容易に想到することができたものであり,d)対象製品等が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれからその出願時に容易に推考できたものではなく,e)対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないとき。
イ本件は,前記最高裁判決の各要件を充足している。
a)本件特許発明の本質的部分は 「おから槽本体」を分離可能の構成と ,することによって,おからの取り出しや「おから槽本体」の洗浄を容易にする点にあるから,おから製造時に「おから槽本体」の上部を覆い,おから製造後に「おから槽本体」を分離できる構造があればよく 「キ,ャップ」という部材の存在は本件特許発明の本質的部分ではない。
b)「キャップ」を被告製品の「リテンションカップ」の下部構造に置き換えても,本件特許発明の目的を達し,その効果をそのまま奏することができる。
c)本件明細書の「発明の詳細な説明 【0023】には 「分離型キャ 」,ップ41aの外周縁には,おから槽本体42aとの締結のための複数の固定溝48が形成されるので,左右方向へのねじり回転により締結及び解錠が行われ」との記載があり,本件図面の【図6】にその構成が描かれている。被告製品の「フィルターカップ」の締結及び分離手段はまさにこれと同じである。そして 「分離型キャップ」を除外して 「おか , ,ら槽本体」を同一技術手段をもって「リテンションカップ」に直接取り付けることは,当業者が容易推考可能であった。
d)被告らの調査によっても,本件特許発明の特許出願時において 「お,から槽本体」を分離可能とする構成を採用した公知技術はなく,また当業者が同構成を容易に推考できたとする先行技術は存在しなかった。
e)本件特許発明の出願過程において,被告製品の構成を特許請求の範囲から意識的に除外した事実はなく,その他被告製品が本件特許発明技術的範囲に属さないと解釈すべき特段の事情はない。
(2) 被告らの主張ア最高裁は,ボールスプライン事件において均等論を採用した。しかし,これは一方の部材と他方の部材とが均等の役目を果たしていることを根拠に判断しているものであって,本件のように,構成要件に記載の部材,すなわち「固定キャップ」が全くないものにまで均等論を適用するのは不適当である。
均等論の各要件についての反論a)「おから槽本体を分離可能の構成とする」ことは,本件特許発明の本質的部分ということはできない。
b)原告は 「キャップ」を被告製品の「リテンションカップ」の下部構 ,造に置き換える,と述べているが,本件特許発明においてもリテンションカップを有しているから 「置き換える」という表現は意味不明であ ,る。
また,本件特許発明が奏する効果としては,おから槽本体とこの上に有する固定キャップのごく狭い範囲の内面を洗浄するだけで容易に洗浄することができるのに対して,被告製品は,洗浄に際し,おから槽本体と,リテンションカップの複雑な形状の内面を洗浄しなければならない点で洗浄が煩わしいという,本件特許発明に劣る効果を奏する。
c)本件図面の【図6】は,本件特許発明の別の実施の形態であり 「駆,動手段50の回転軸が短駆動軸52aと長従動軸59に分離構成され,長従動軸59が分離型キャップ41aの長従動軸ホルダ47内に収納される点である (本件明細書の「発明の詳細な説明 【0019「お 」 」】),から槽アセンブリ40aは,分離型キャップ41aとおから槽本体42aとから構成され (中略)分離型キャップ41aの外周縁には,おか ,ら槽本体42aとの締結のための複数の固定溝48が形成されるので,」( 【】) 左右方向へのねじり回転により締結及び解錠が行われ同 0023と記載されているように,回転軸を短駆動軸52aと長従動軸59に分離構成し,かつおから槽アセンブリ40aの内部の洗浄を容易にすることを前提にしている以上,この分離型キャップを除外して構成することは,当業者といえども容易になし得るものではない。
d)原告は,本件特許発明の特許出願時において 「おから槽本体」を分 ,離可能とする構成を採用した公知技術はない,と述べている。
しかし,本件特許の出願前に公開された中国特許庁の実用新案公開特許公報(乙5の1)には,おから槽本体を分離可能とする構成が記載されている。したがって,上記構成は,既に公示されている上記刊行物から,当業者が容易に推考できたものである。
e)本件明細書の「特許請求の範囲」請求項1には 「前記下部本体内部 ,の中央に位置するおから槽本体と,前記おから槽本体の上部を覆い,前記おから槽本体と分離可能に結合され,前記リテンションカップに固定的に取り付けられたキャップとで構成されるおから槽アセンブリ」と明確に記載されている。原告は,特許査定を受けるために,上記下線部分を,不服審判請求時の手続補正書によって追加したものであるから,上記下線部分を有しない製品を特許請求の範囲から意識的に除外したものである。
4争点4(本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか)について(1) 被告らの主張ア刊行物記載による新規性の喪失本件特許発明のすべての構成要件は,本件特許の出願の優先日である平成9年7月22日より前の平成7年10月18日に外国において頒布された刊行物である中国特許庁の実用新案特許説明書(乙3の1。以下「引用文献1」という )に記載されているから,特許法29条1項3号に該当 。
し,同法123条1項2号により,本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものである。
a)引用文献1には 「付図についての説明」として 「1は通風蓋で, , ,2は蓋で,3は長軸電機で,4は変圧器で,5は下の台座で,6はカップ本体で,7はノブで,8は刃で,9はヒータで,10は台座で,11はフィルターカバーで,12は電気回路で,13は階段で(乙3の,」1 (その訳文に相当する)乙3の2中の説明書3ページの3行目から ,5行目)と記載されており,また 「付図1を参照し,本実用新案オー ,マチック(判決注: オートマチック」の誤記と認める )豆乳機は主 「 。
に三つの部分に分けられる (中略)第二部分は,カップ本体(6)の蓋 。
の密封筒であり,カップ本体(6)の上部にあり,密封筒は蓋(2)と下の台座(5)により緊密に固定されており,ねじでしっかり止めてもよい。
下の台座の階段(13)は下の台座(5)の内壁を形成している。電気回路(12),変圧器(4)は密封筒の中の台座(5)の階段(13)の上に固定され,長軸電機(3)の位置は密封筒の中の下の台座(5)の内壁に固定されている(乙3の1,乙3の2中の説明書3ページの7行目から14 。」行目)と記載されている。
これらの記載中 「刃(8)」は構成要件イ-1の「大豆破砕用ブレー ,ド」に 「長軸電機(3)」は同「下方に延伸した回転軸を駆動させるた ,」 ,「,」「」 , めの駆動手段 に電気回路(12) 変圧器(4) は同制御部 に「台座(5)」は同「リテンションカップ」にそれぞれ相当するから,構成要件イ-1は,引用文献1に記載されていることになる。
,「」 ,「」, また蓋(2) は 構成要件イ-2の カバー に相当するところ乙3の2中には「電源接続用アダプタ」が明記されていないが,駆動手段や制御部が電源を必要とすることは明らかであるから 「蓋(2)」が ,電源接続用アダプタを有していることは当然である。
したがって,構成要件イ(上部本体アセンブリ)は,引用文献1に記載されている。
b)引用文献1には 「台座(5)はカッブ(判決注: カップ」の誤記と , 「認める。以下同じ )本体の(6)のカッブ蓋として兼用されたので,下 。
の台座(5)の円周とカッブ本体(6)の上口の円周と合わなければならない。豆乳機の使用過程は下記の如く。カッブ本体(6)から蓋として兼用された台座(5)を全体に取り外し (中略)更に,台座全体をカッブ本 ,体(6)の上口に入れ (中略)長軸の軸部にある刃(8)は浸された豆を ,粉砕し,豆乳はカッブ本体(6)に流入し(乙3の1,乙3の2中の ,」説明書4ページの8行目から14行目)と記載されている。
この記載中 「カッブ本体(6)」は構成要件ロの「下部本体」に相当 ,し,また引用文献1の説明書付図の図1には 「カップ本体(6)」及び ,「台座(5)」が示され 「カップ本体(6)」の上に「台座(5)」が置か ,れ 「カップ本体(6)」は「台座(5)」により閉鎖されているから,構 ,成要件ロ(下部本体)は,引用文献1に記載されている。
c)引用文献1には 「長軸電機(3)の長軸が下にあるフィルターカバー ,(11)の底部に差し込まれ,刃(8)が軸部に接続され,浸された豆はその中で加工され,粉砕され,濾過される。加工された豆乳はフィルターカバー(11)の下部を透過し,カップ本体の中に流入する(乙3の。」1,乙3の2中の説明書3ページの20行目から同4ページの2行目)と記載されている。
この記載中フィルターカバー(11) がふるいを有することは フ ,「」「ィルターカバー(11)」から豆乳が「カップ本体」に流入することから明らかであるから,この「フィルターカバー(11)」は,構成要件ハ-1の「おから槽本体」に相当し,構成要件ハ-1は,引用文献1に記載されている。
また,引用文献1には 「フィルターカバー(11)の上面と下の台座 ,(5)の下の面と繋げて固定し,ボルトで固定してもよく,鋲接,溶接してもよい(乙3の1,乙3の2中の説明書3ページの18行目から 。」20行目)と記載されており,また 「フィルターカバー(11)も取り ,外し,浸された豆をフィルターカバー(11)に入れ(乙3の1,乙,」)。 3の2中の説明書4ページの11行目及び12行目 と記載されているここには明記されていないものの 「フィルターカバー(11)」内に ,浸された豆を入れるには,フィルター本体からキャップ又はふたを分離する必要があることは当然であるから,上記の各記載のうち第二の記載中にある二つの「フィルターカバー(11)」の用語のうち,前者の「フィルターカバー(11)」は「キャップ又はふた」を,後者の「フィルターカバー(11)」は「フィルター本体」を,それぞれ意味することは明らかであり,構成要件ハ-2は,引用文献1に記載されている。
したがって,構成要件ハ(おから槽アセンブリ)は,引用文献1に記載されている。
d)引用文献1には 「ヒータ(9)は下の台座(5)の底部に据付,加熱部 ,分はフィルターカバー(11)の外側と下にある(乙3の1,乙3の 。」2中の説明書4ページの2行目及び3行目)と記載されており,構成要件ニ(加熱手段)は,引用文献1に記載されている。
e)引用文献1には 「本実用新案オートマチック豆乳機 (乙3の1, , 」乙3の2中の説明書3ページの7行目)と記載されており,これは構成要件ホの「コンパクト型豆乳・豆腐製造機」に相当するから,構成要件( ) , 。 ホ コンパクト型豆乳・豆腐製造機 は 引用文献1に記載されているイ前記アについての補足説明仮に,本件特許発明構成要件ハ-2中の「おから槽本体と分離可能に結合されたキャップ」という構成が引用文献1に明確に記載されていないとしても,本件特許の出願の優先日である平成9年7月22日より前の平成6年9月14日に外国において頒布された刊行物である中国特許庁の公開特許公報(乙4の1。以下「引用文献2」という )には 「破砕部に 。,ついて,軸のスリーブ6の上部を下カバー7の下部に固定し,軸スリーブ,」 ベース4を通して豆乳を盛るための閉め開け可能の篩カバー3と接続し(乙4の1 (その訳文に相当する)乙4の2の4ページの4行目及び5 ,行目)と記載され,また引用文献2の説明書付図の図1には,閉め開け可能な「篩カバー3」の上部に「キャップ」を有することが示されているから 引用文献1の説明書付図の図1に示されている フィルターカバー(1 , 「1)」もその上部に「キャップ」を有するものであることがわかる。
進歩性の欠如仮に,構成要件ハ-2中の「おから槽本体と分離可能に結合されたキャップ」という構成が引用文献1に記載されていないとしても 「浸された ,豆をフィルターカバー(11)に入れ (乙3の1,乙3の2中の説明書4 」ページの11行目及び12行目)るためには 「フィルター本体」と「フ ,ィルターカバー」とを分離可能に構成しなければならない(分離しなければ 「フィルター本体」に浸した豆を入れることができない)ことから, ,上記の構成は,当業者が引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。
したがって,本件特許発明は,特許法29条2項に該当し,同法123条1項2号により,本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものである。
(2) 原告の主張ア被告らの主張アに対する反論被告らは,引用文献1の記載のうち 「フィルターカバー(11)も取り ,外し,浸された豆をフィルターカバー(11)に入れ(乙3の1,乙3 ,」の2中の説明書4ページの11行目及び12行目 との記載を 前者の フ ),「ィルターカバー(11)」は「キャップ又はふた」を,後者の「フィルターカバー(11)」は「フィルター本体」を意味するとして,豆を「フィルター本体」内に入れるために「キャップ又はふた」と「フィルター本体」は分離可能であるなどと憶測している。
しかし,両者が分離可能であるのなら,分離するための機構や構成が記載されているはずだが,引用文献1には 「フィルターカバー(11)」が ,「キャップ又はふた」と「フィルター本体」に分離可能である旨の記載は全くない(そもそも 「キャップ又はふた」や「フィルター本体」という ,のは被告らが作り出した名称であって,引用文献1のどこにも記載されていない。さらに,引用文献1の説明書付図の図1にも,両者を分離す 。)るための溝,ピン,ねじ機構などの構成は全く描かれておらず,もとより「キャップ又はふた」も「フィルター本体」も描かれてはいない。
被告らが指摘する引用文献1の「フィルターカバー(11)も取り外し,浸された豆をフィルターカバー(11)に入れ 」との記載には,その前に ,「台座(5)を全体に取り外し 」との記載があり(乙3の1,乙3の2中 ,の説明書4ページの10行目及び11行目 ,これらの記載部分は 「台 ),座(5)を全体に(すなわち,長軸電機,変圧器等やフィルターカバーと一緒に)取り外し (その結果)フィルターカバー(11)も取り外し (別 , ,に設けた開閉窓や搬入路を通して)浸された豆をフィルターカバー(11)に入れ 」との意味である。 ,イ被告らの主張イに対する反論引用文献2の説明書付図の図1には,引用文献1の説明書付図の図1とは異なり,篩カバーの四隅近傍位置に突起が描かれており,説明書(乙4の2の3ページ)には 「閉め開け可能の篩カバー」と記載されている。 ,したがって,引用文献2に記載された篩カバーは,開閉可能ではあるものの,決して分離可能ではない。
被告らは,引用文献2の説明書付図の図1には,閉め開け可能な「篩カバー3」の上部に「キャップ」を有することが示されているから,引用文献1の説明書付図の図1に示されている「フィルターカバー(11)」もそ「」 ,, の上部に キャップ を有するものであることがわかる と述べているが意味不明な主張であって,理解することができない。
ウ被告らの主張ウに対する反論既に述べたとおり,引用文献1にも引用文献2にも 「フィルターカバ ,ー(篩カバー 」を分離可能とする記載は全くなく,これら引用文献の説 )明書付図にも 「フィルターカバー(篩カバー 」を分離するための機構 , )や構成が一切書かれていない。
これに対して 被告らは 豆を入れるためには フィルター本体 と フ ,,「」 「ィルターカバー」とを分離可能に構成しなければならないと述べている。
しかし,豆を入れる方法は 「フィルターカバー」の上面や側面に開閉 ,可能な窓を設けたり,外部から「フィルターカバー」に達する搬入路を設けたりする等の様々な方法があり 「フィルター本体」と「フィルターカ ,バー」とを分離可能に構成する方法に限定されるものではない。
それどころか 「フィルター本体」の上面開口部から豆を入れ,その後 ,「フィルター本体」を「キャップ又はふた」に固定する方法では,破砕手段たる「刃」が「フィルター本体」内に山積みされた豆に当たって 「フ,ィルター本体」を「キャップ又はふた」に固定するのに不便であるばかりか 「フィルター本体」内の「刃」より下の部分に豆がたまってしまい, ,豆を十分に破砕することができない。したがって,当業者は 「フィルタ ,ーカバー」を固定した後 「フィルターカバー」内に 「刃」の上方から , ,豆を入れる方法しか考えない。
以上より 「おから槽本体と分離可能に結合されたキャップ」との構成 ,は,引用文献1及び引用文献2から当業者が容易に想到できるものではない。
5争点5(被告らの行為について差止めの必要性が認められるか)について(1) 原告の主張被告らは,前記第2の1(3)のとおり,被告製品を販売しているほか,被告製品を自ら使用したり,貸し渡したり,中国等で製造してこれを輸入したりしている可能性があり,また,将来それらの行為をするおそれがある。
(2) 被告らの主張否認する。
6争点6(被告らの行為は共同不法行為か)について(1) 原告の主張前記第2の1(1)アのとおり,被告セイエイは被告清水産業の関連会社である。両社の企業規模から考えると,被告清水産業が親会社であって製品の企画開発を行っているのであろうから,被告清水産業が被告製品を調達し,被告セイエイは被告清水産業とともにそれを販売しているものと推定される。
したがって,被告清水産業と被告セイエイは,本件特許権を侵害する共同不法行為者であるということができる。
(2) 被告らの主張否認する。
7争点7(原告の損害額は幾らか)について(1) 原告の主張ア被告清水産業の取扱商品は合計22種類であり,過去3年間の年間売上額は平均して約35億円であるから,1商品当たりの平均年間売上額は約1億6000万円である。
イ前記の事実から,被告製品の過去3年分の売上総額は約4億8000万円と推定することができる。被告らの本件特許発明実施に対し原告が受けるべき金銭の額(特許法102条3項)は,被告製品の売上総額の3パ, 。 ーセントが相当であるから 原告の受けた損害の額は1440万円である(2) 被告らの主張否認する。
第4当裁判所の判断1争点1(被告製品の構成は,本件特許発明構成要件ハ-1を充足するか)について(1) 被告製品の「フィルターカップ」が本件特許発明構成要件ハ-1の「おから槽本体」に該当することは,当事者間に争いがない。また,前記第2の1(4)アによれば,被告製品の構成は,別紙物件目録の(2)以下記載のとおりであるから,被告製品の「フィルターカップ」が「下部本体内部の中央に位置する」ことは明らかである。
したがって,被告製品の構成は,本件特許発明構成要件ハ-1を充足する。
(2) 被告らは 被告製品は 底部に把手を有する フィルターカップ がリ ,,「」 ,「テンションカップ」側壁下部に 「固定キャップ」を介在させないで,分離 ,可能に直接取り付けられている点で,本件特許発明構成要件ハ-1とは異なる,と主張する。
, 「」, しかし 被告らが主張する被告製品の フィルターカップ の上記構成は本件特許発明構成要件ハ-1に記載された「おから槽本体」が「下部本体」 , 内部の中央に位置する との構成と内容的に何ら矛盾するものではないから「」 , 被告製品の フィルターカップ が被告ら主張のような構成を有することは被告製品の構成が本件特許発明構成要件ハ-1を充足するかどうかについての前記(1)の判断を左右するものではない。
2争点2(被告製品の構成は,本件特許発明構成要件ハ-2を充足するか)について(1) 本件明細書の「特許請求の範囲」請求項1は 「キャップ」について 「前 ,,」, 記リテンションカップに固定的に取り付けられたキャップ と記載しており,「」 「」 この記載自体から 構成要件ハ-2の リテンションカップ と キャップとはそれぞれ別個の部材であり,前者に後者が固定的に取り付けられていることが本件特許発明の構成とされていることが明らかである。なお,本件明細書中の「発明の詳細な説明」及び「図面の簡単な説明」の記載並びに本件図面を参照しても,本件特許発明の具体的な実施態様として 「リテンショ ,ンカップ」と「キャップ」とが別個の部材から成る構成のもののみが開示されており 「リテンションカップ」の下部に「キャップ」の機能を奏させる ,構成のもの,すなわち 「リテンションカップ」とは別に「キャップ」に相 ,当する独立した部材を有しない構成のものが本件特許発明に含まれることを示唆するような記述は何ら存在しない。
(2) 別紙物件目録の(2)以下に記載のとおり,被告製品には 「リテンション ,カップ」に別個の部材として固定的に取り付けられた「キャップ」に相当する部材が存在しないことが明らかであるから,被告製品は,本件特許発明構成要件ハ-2を充足しない。
(3) 原告は,被告製品の「リテンションカップ」の下部が「キャップ」に相当する旨を主張する。しかし,前記(1)のとおり,本件特許発明においては,「リテンションカップ」と「キャップ」はそれぞれ別個の部材から構成されているものであるから,前者の一部が後者を兼ねるという構成のものが,構成要件ハ-2を充足しないことは明らかである。
3争点3(被告製品の構成は,本件特許発明構成要件ハ-2と均等か)について当裁判所は,次に述べるとおり,本件特許発明の特許出願手続における手続補正等の経緯に照らし,被告製品の構成が,特許請求の範囲から除外されたものに当たるとみるべき特段の事情があり,均等論のいわゆる第5要件により,原告の均等の主張は理由がないと判断する。
(1) 本件特許の出願中の補正の経緯ア原告は,平成10年7月15日に本件特許の出願をした。その願書に添付された明細書の「特許請求の範囲」請求項1の記載は,次のとおりであった (甲7)。
「大豆破砕用ブレードが下端部に設置された回転軸を駆動させるための駆動手段及び前記駆動手段の作動を制御するための制御部が内装されたリテンションカップと,前記駆動手段及び制御部に電気的に連結された電源接続用アダプタが設置されたカバーとから構成される上部本体アセンブリと;前記上部本体アセンブリにより閉鎖され,破砕された大豆から浸出された豆乳が収集される円筒状の下部本体と;破砕のための大豆が収納され,前記回転軸の下端部に設置されたブレードにより破砕される大豆から出た液状の豆乳は通過するが,固形物であるおからは通過し得ないようにするふるいを有し,前記下部本体の中央部に位置するおから槽本体と,前記おから槽本体を覆うキャップとから構成されるおから槽アセンブリと;前記おから槽アセンブリの外部の前記下部本体内に位置し,前記制御部により制御される加熱手段とから構成されることを特徴とするコンパクト型豆乳・豆腐製造機 」。
イこれに対して,特許庁審査官は,平成11年2月22日に拒絶理由通知書を起案し,同年3月23日に同通知書を発送した (甲8)。
ウ原告は,平成11年6月15日に手続補正書を提出し,明細書の「特許請求の範囲」請求項1の記載を補正した。補正後の請求項1の記載は,次のとおりであった(下線部が補正部分である(甲10)。)。
「大豆破砕用ブレードが下端部に設置された回転軸を駆動させるための駆動手段及び前記駆動手段の作動を制御するための制御部が内装されたリテンションカップと,前記駆動手段及び制御部に電気的に連結された電源接続用アダプタが設置されたカバーとから構成される上部本体アセンブリと,取りはずし自在に取りつけられた前記上部本体アセンブリにより閉鎖さ, , れ 破砕された大豆から浸出された豆乳が収集される円筒状の下部本体と前記大豆粉砕用ブレードを内側に置き,破砕のための大豆が収納され,前記回転軸の下端部に設置されたブレードにより破砕される大豆から出た液状の豆乳は通過するが,固形物であるおからは通過し得ないようにするふるいを有し,前記下部本体内の中央部に位置するおから槽本体と,前記おから槽本体の上部を覆うキャップとから構成されるおから槽アセンブリと,前記おから槽アセンブリの外部の前記下部本体内に位置し,前記制御部により制御される加熱手段とから構成されることを特徴とするコンパクト型豆乳・豆腐製造機 」。
エこれに対して,特許庁審査官は,平成12年1月11日に拒絶査定を起案し,同年2月8日に査定の謄本を発送した (甲11) 。
オ原告は,平成12年5月2日に拒絶査定不服審判を請求した (弁論の 。
全趣旨)併せて,原告は,平成12年5月31日に手続補正書を提出し,明細書の「特許請求の範囲」の記載を補正した。補正後の「特許請求の範囲」請求項1の記載は,次のとおりであった(下線部が補正部分である(甲。)。
12,乙2)「大豆破砕用ブレードが下端部に設置され下方に延伸した回転軸を駆動させるための駆動手段及び前記駆動手段の作動を制御するための制御部が内装されたリテンションカップと,前記駆動手段及び制御部に電気的に連結された電源接続用アダプタが設置されたカバーとから構成される上部本体アセンブリと;取りはずし自在に取りつけられた前記リテンションカップにより閉鎖され,破砕された大豆から浸出された豆乳が収集される円筒状の下部本体と;前記大豆粉砕用ブレードを内側に置き,破砕のための大豆が収納され,前記回転軸の下端部に設置されたブレードにより破砕される大豆から出た液状の豆乳は通過するが,固形物であるおからは通過し得ないようにするふるいを有し,前記下部本体内部の中央に位置するおから槽本体と,前記おから槽本体の上部を覆い,前記おから槽本体と分離可能に結合され,前記リテンションカップに固定的に取り付けられたキャップとで構成されるおから槽アセンブリと;前記リテンションカップの底面に取り付けられて,前記おから槽アセンブリの外部の前記下部本体内に位置し,前記制御部より制御される加熱手段とから構成されることを特徴とするコンパクト型豆乳・豆腐製造機 」。
カ本件特許の出願は,平成12年9月25日に特許査定された (甲1) 。
(2) 特段の事情について前記(1)の手続補正の経緯を踏まえて検討するに,本件特許の出願時の明細書と平成12年5月31日に手続補正書を提出して補正した後の本件明細書の「特許請求の範囲」請求項1の記載内容を比較すると 「キャップ」に ,ついて,当初は「前記おから槽本体を覆うキャップ」というのみの記載であり 「リテンションカップ」と「キャップ」との関係について具体的に何も ,規定されていなかったものであるのに対し,上記補正後は「前記おから槽本体の上部を覆い,前記おから槽本体と分離可能に結合され,前記リテンションカップに固定的に取り付けられたキャップ」という記載に補正され 「キ,ャップ」を「リテンションカップ」に固定的に取り付けることを明記したものであることが認められる。
このような手続補正の経緯にかんがみると,原告は,本件明細書の記載を補正することにより 「キャップ」について 「おから槽本体」との関係を ,,明記したのみならず 「リテンションカップ」との関係も明記し 「リテン , ,ションカップ」とは別の部材として存在し,これに固定的に取り付けられるものであることを明示したのであるから,被告製品のように「リテンションカップ」が「キャップ」の機能を奏するもの,すなわち 「リテンションカ ,ップ」とは別に「キャップ」に相当する独立した部材を有しないものを含まない趣旨を明確にしたものということができる。
なお,本件特許発明の出願時の明細書の「特許請求の範囲」請求項1においては 「リテンションカップ」と「キャップ」との関係については具体的 ,に何も規定していなかったのであるから,当初から,両者が独立した別個の部材の場合のみを限定して規定していたのか,両者が一部材として一体成形されたようなものも包含して規定していたのかについては必ずしも明確ではない。しかし,均等論のいわゆる第5要件については,禁反言の法理に照らし,均等を主張することが許されない特段の事情が存在するかどうかを判断すべきであるから,当初の特許請求の範囲に明確に包含されていたものが補正により意識的に除外された場合のみならず,当初の特許請求の範囲に包含されているかどうかが不明確であったものが補正により包含されないことが明確にされた場合にも,禁反言の法理に照らし,第5要件により,特段の事情が存在するというべきである。
以上によれば,原告は,本件特許発明について,その手続補正等の出願の経緯において,被告製品のような構成のもの,すなわち 「リテンションカ ,ップ」とは別に「キャップ」に相当する独立した部材を有しない構成のもの, , が その技術的範囲に含まれないことを明らかにしたものと認められるからこのような場合においては,均等論のいわゆる第5要件の根拠とされる禁反言の法理に照らし,被告製品について原告の均等の主張を認めることはできない。よって,被告製品は,本件特許発明技術的範囲に属すると認めることはできない。
第5結論よって,本訴請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理, , 由がないからこれらを棄却し 訴訟費用の負担につき民訴法61条を適用して主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 設樂隆一
裁判官 杉浦正典
裁判官 古庄研