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審判番号(事件番号) データベース 権利
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事件 平成 18年 (ワ) 9708号 特許権侵害行為差止請求事件
平成 19年 (ワ) 6486号 同請求事件
東京都千代田区<以下略>
本訴原告(反訴被告)破 産者株式会社三和メディアセンター破産管財人宮田眞東京都中野区<以下略>
本訴被告(反訴原告)A 東京都中野区<以下略>
本訴被告株式会社日本コロンクレンズ振興会
上記2名訴訟代理人弁護士浅野義治
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2007/08/24
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1本訴被告(反訴原告)A及び本訴被告株式会社日本コロンクレンズ振興会は,別紙イ号物件目録及びロ号物件目録記載の各物件を製造し,販売してはならない。
2本訴被告株式会社日本コロンクレンズ振興会は,前項記載の各物件及びそれらの半製品,前項記載の各物件の製造に供した金型並びに前項記載の各物件に関する広告を廃棄せよ。
3本訴被告(反訴原告)Aは,本訴原告(反訴被告)に対し,768万円及びこれに対する平成16年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4本訴被告(反訴原告)A及び本訴被告株式会社日本コロンクレンズ振興会は,本訴原告(反訴被告)に対し,連帯して,2038万7612円及2びこれに対する平成18年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5本訴原告(反訴被告)のその余の本訴請求及び本訴被告(反訴原告)Aの反訴請求をいずれも棄却する。
6訴訟費用は,本訴反訴を通じて,これを3分し,その1を本訴原告(反訴被告)の負担とし,その余は本訴被告(反訴原告)A及び本訴被告株式会社日本コロンクレンズ振興会の負担とする。
7この判決は,第1,3,4,6項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
全容
第1請求1本訴(1)主文第1項と同旨(2)本訴被告(反訴原告)A(以下「被告A」という。)及び本訴被告株式会社日本コロンクレンズ振興会(以下「被告会社」という。なお,被告Aと被告会社を併せて「被告ら」ということがある。)は,別紙イ号物件目録及びロ号物件目録記載の各物件,それらの半製品,上記各物件の製造に供した金型並びに上記各物件に関する広告を廃棄せよ。
(3)被告Aは,本訴原告(反訴被告。以下「原告」という。)に対し,1500万円及びこれに対する平成16年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(4)被告らは,原告に対し,連帯して,2600万円及びこれに対する平成18年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2反訴原告は,被告Aに対し,別紙イ号物件目録及びロ号物件目録記載の各回転打撃美容ローラーマッサージ器の専用実施権が存在しないことを確認する。
第2事案の概要31争いのない事実等(証拠を掲げていない事実は当事者間に争いがない。)(1)当事者ア株式会社三和メディアセンター(以下「三和メディアセンター」という。)は,広告代理業,広告の企画,立案,デザイン,製作,印刷及び出版並びに健康器具及び遊具の通信販売等を目的として,昭和55年10月2日に設立された株式会社であり,平成13年3月5日,株主総会決議により解散し,清算人にBが就任した。
三和メディアセンターは,平成13年12月19日,東京地方裁判所から破産宣告を受け,平成16年2月9日に費用不足を理由とする破産廃止決定を受けたものの,その後,平成18年4月20日,同裁判所から破産手続開始の決定を受けた。弁護士宮田眞は,同日,三和メディアセンターの破産管財人に選任された。(甲2ないし4)イ被告会社は,美容健康器具の開発及び製造販売等を目的として,平成16年3月9日に設立された株式会社であり,被告Aは,被告会社の代表取締役である。
(2)被告Aの特許権被告Aは,次の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許請求の範囲請求項1の発明を「本件特許発明」という。)を有する。
特 許 番 号第2577295号発明の名称回転打撃美容ローラーマッサージ器出願日平成4年12月25日登録日平成8年11月7日特許請求の範囲(請求項1)「身体のゼイ肉部をローリングし,酸化脂質等を除去して痩身のボディを作り上げるための美容マッサージ器であって,中空円筒体のローラと,その両側の開放端に着脱可能に装着されるキャップと,該キャッ4プを介して前記ローラを枢支する把持具を備え,前記ローラの外周側にはその円周方向に沿って等間隔に複数板のプレートが外周に接して係着されることを特徴とする回転打撃美容ローラーマッサージ器。」(3)本件特許発明構成要件の分説A身体のゼイ肉部をローリングし,B酸化脂質等を除去して痩身のボディを作り上げるためのC美容マッサージ器であって,D中空円筒体のローラと,Eその両側の開放端に着脱可能に装着されるキャップと,F該キャップを介して前記ローラを枢支する把持具を備え,G前記ローラの外周側にはその円周方向に沿って等間隔に複数板のプレートが外周に接して係着されることを特徴とするH回転打撃美容ローラーマッサージ器。
(4)専用実施権の設定被告Aは,平成11年8月31日ころ,三和メディアセンターとの間で,本件特許権(ただし,特許請求の範囲の請求項2を含む。)について,範囲を全部,対価の額を無償とする専用実施権を設定するとの合意をし(以下「本件専用実施権設定契約」といい,設定された専用実施権を「本件専用実施権」という。),同年9月27日,その旨の専用実施権設定登録(平成11年8月31日受付,受付番号003192)がされた。(甲5)(5)別紙イ号物件目録記載の美容ローラー(シングル型。以下「イ号物件」という。)及びロ号物件目録記載の美容ローラー(ダブル型。以下「ロ号物件」という。)は,それぞれ,各物件目録記載のとおりの構成を有しており,いずれも,構成要件AないしHを充足し,本件特許発明技術的範囲に属する。
2本件訴訟の概要5本件は,被告らが本件特許発明技術的範囲に属するイ号物件及びロ号物件を製造販売することによって三和メディアセンターの有する本件専用実施権侵害しているとして,三和メディアセンターの破産管財人である原告が,被告らに対し,特許法100条に基づき,イ号物件及びロ号物件の製造販売の差止め,上記各物件及びその半製品等の廃棄を請求するとともに,主位的に民法709条に基づき損害賠償を,予備的に民法703条に基づき不当利得の返還を請求し(本訴請求),これに対し,被告らは,三和メディアセンターがその店舗を閉鎖して営業活動を停止したこと,あるいは,三和メディアセンターについて破産宣告又は破産手続開始決定がされたことにより,本件専用実施権は消滅したか,そうでなくとも,本件専用実施権の履行不能により本件専用実施権設定契約を解除したなどと主張して,本訴請求につき争うとともに,本件特許権を有する被告Aが,原告に対し,本件専用実施権が存在しないことの確認を請求する(反訴請求)訴訟である。
なお,本訴における附帯請求は,いずれも不法行為の後の日である平成16年3月1日及び平成18年5月1日から各支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求である。
3本件の争点(1)本件専用実施権設定契約の有効性(2)本件専用実施権の消滅の有無及び本件専用実施権設定契約の解除の有効性(3)被告らによるイ号物件及びロ号物件の製造販売の有無(4)差止め等の必要性(5)損害ないし利得の額第3争点に関する当事者の主張1争点(1)(本件専用実施権設定契約の有効性)について〔被告らの主張〕6被告Aは,平成11年8月23日,本件専用実施権設定契約を締結した。しかしながら,これは,本件特許発明に関する商品を販売する新会社を設立するために,三和メディアセンターの名義で特別中小企業支援融資制度の適用を受けるべく,三和メディアセンターの代表者Cと通謀し,真実は三和メディアセンターに対して本件特許権の専用実施権を設定する意思がないのに,これがあるかのように仮装して,三和メディアセンターに本件特許権の専用実施権を設定するとの意思表示をしたものである。
したがって,本件専用実施権設定契約は,通謀虚偽表示によるものとして無効である。
〔原告の主張〕(1)否認する。
(2)仮に,本件専用実施権設定契約が通謀虚偽表示によるものであったとしても,破産管財人は,破産債権者全体の共同の利益のために善良な管理者の注意をもってその職務を行う者であり,ある財産が破産財団に属するか否かを主張するにつき,法律上利害関係を有する者であって,民法94条2項にいう「第三者」に当たる。したがって,被告Aは,上記虚偽表示につき善意の第三者である原告に対し,その無効を対抗することはできない。
2争点(2)(本件専用実施権の消滅の有無及び解除の有効性)について〔被告Aの主張〕(1)本件専用実施権の消滅についてア専用実施権者は,当該実施権の対象となる特許権に基づく事業を継続すべき義務を負う。三和メディアセンターは,平成13年3月5日ころその店舗を閉鎖してそれ以降の事業活動を停止したことにより,あるいは,遅くとも破産宣告又は破産手続開始決定を受けたことにより,本件専用実施権にかかる事業を継続することが不可能になったから,本件専用実施権は消滅した。
7イ三和メディアセンターについて,平成13年12月19日に破産宣告がされ,平成16年2月9日に破産廃止決定がされたのであるから,本件専用実施権は,権利主体の消滅により消滅したものと解すべきである。
ウ三和メディアセンターは特許法所定の特許料の支払をしなかったものであり,これにより,本件専用実施権を放棄したものと解すべきである。
(2)本件専用実施権設定契約の解除について三和メディアセンターは,店舗を閉鎖したことにより,あるいは,破産したことにより,本件専用実施権を行使するという義務を履行することが不可能になった。
そこで,被告Aは,原告に対し,平成19年3月22日送達の反訴状をもって,履行不能により,本件専用実施権設定契約を解除する旨の意思表示をした。
〔原告の主張〕否認ないし争う。
3争点(3)(被告らによるイ号物件及びロ号物件の製造販売の有無)について〔原告の主張〕(1)被告Aによる製造販売について被告Aは,平成14年12月から平成16年2月までの間,イ号物件及びロ号物件について合計月間1000個を下らない個数を製造し,「日本コロンクレンズ振興会」を製造元と表示した上,「トルマリン・ビューティーローラー」又は「スプルトン・プラチナ・ビューティーローラー」との商品名で販売した。
(2)被告会社による製造販売について被告会社は,平成16年3月から平成18年4月までの間,ロ号物件について月間1000個を下らない個数を製造し,「トルマリン・ビューティローラー」又は「スプルトン・プラチナ・ビューティローラー」との商品名で8販売した。
〔被告らの主張〕(1)被告Aについてア被告Aが,イ号物件及びロ号物件を製造販売したことがあること,被告Aがイ号物件及びロ号物件を製造販売するにつき「日本コロンクレンズ振興会」との屋号を使用したことがあることは認める。
イ原告の販売個数に関する主張は否認する。
被告Aは,イ号物件(シングル型)については,平成13年7月株式会社キャネット(以下「キャネット」という。)に対して1000個(単価3000円),平成14年12月ころ有限会社リバース(以下「リバース」という。)に対して500個(単価4500円)を,それぞれ販売し,また,ロ号物件(ダブル型)については,平成13年11月キャネットに対して1000個(単価2500円),平成15年4月ころリバースに対して1000個(単価5500円)を,それぞれ販売したのみである。
(2)被告会社についてア被告会社がロ号物件を製造販売したことはない。
被告会社は,平成16年5月ころ以降,「ビューティーローラー(ツイン)」,あるいは,「スプルトンプラチナビューティーローラー(ダブルあるいはツイン)」との商品名でダブル型の美容ローラー(以下「被告会社主張商品」という。)を製造販売している。しかしながら,被告会社主張商品は,ロ号物件とは全く構成の異なるものであり,本件特許発明技術的範囲に属しない。
イ被告会社主張商品の構成を分説すると次のとおりである。
a身体のゼイ肉部をローリングし,b酸化脂質等を除去して痩身のボディを作り上げるためのc美容マッサージ器であって,9d中空円筒体形状であるが外周面が多面形のローラとeその両端の開放端に分離不能に固着されるキャップとf該キャップを介して前記ローラを枢支する把持具を備えg前記ローラの外周側に複数枚のプレートを持たず,外周面が凸平面と凹平面とを交互に3つずつ連続させた一体成形の多面形であることを特徴とするh回転式美容ローラーマッサージ器ウ被告会社主張商品は,本件特許発明構成要件D,E,G及びHを充足せず,本件特許発明技術的範囲に属しない。
すなわち,被告会社主張商品は,@そのローラが外周面が凸平面と凹平面が交互に3つずつ配置されている一体成形の六角柱状のものである点(d),Aローラとキャップとが固着され,分離できない構造になっている点(e),Bローラには複数枚のプレートが係着されていない点(g),C凸平面と凹平面の段部が皮膚に刺激を与える回転式美容ローラーマッサージ器であって,本件特許発明のようにプレート両側縁が皮膚を打撃して強い刺激を与える回転打撃美容ローラーマッサージ器ではない点(h)で本件特許発明構成要件を充足しない。
(3)原告提出の証拠に対する反論等原告が被告らによる製造販売の根拠として挙げる以下の証拠は,いずれも,被告らによる製造販売を裏付けるものではない。
ア原告は,被告らがイ号物件及びロ号物件を製造販売している根拠として,平成18年7月ころにおいても,原告においてこれらの物件を市場で入手することができたことを挙げる(甲24ないし29)。しかしながら,原告が入手したイ号物件は,被告Aが平成14年にリバースに販売した前記500個のうちの,いまだ市場に流通していたものの1つであり,原告が入手したロ号物件は,被告Aが平成15年にリバースに販売した前記101000個のうちの,いまだ市場に流通していたものの1つであると考えられる。
イキュリオシティ・コミュニティ等のインターネット・ホームページ(甲9ないし12,18ないし20)について,被告らは関知していない。被告会社のインターネット・ホームページ(甲17)は,会社案内を目的としたものであり,ロ号物件の購入を勧誘するページを含んでいるものの,わずかに残っていた在庫整理のために売れればそれに越したことはないとの考えから掲載しているにすぎず,同ページ上の勧誘に基づいて販売した例はない。ダブル型(ロ号物件)用の箱(甲16)も,被告Aと本件特許権の専用実施権の設定契約をしたキャネットが製作したものであり,被告A又は被告会社が製作したものではない。新聞記事(甲21)における売上実績(発売以来7年間で約20万台販売)は,平成11年8月31日(専用実施権設定契約の日)以前のそれを指すもので,やや誇張されたものであるし,月産販売のペース(月産5000台のペースでは,生産が間に合わないほど)も,誇張されたもので正確ではない。
ウエリット株式会社(以下「エリット」という。)を問い合わせ先として記載している雑誌記事(甲42,44)に掲載されているロ号物件は,被告Aが平成15年にリバースに販売した前記1000個がエリットに転売され,その一部が在庫品として残っていたものであると思われる。しかしながら,被告Aは,エリットによるロ号物件の販売行為を関知していない。
また,被告Aは,甲41,42,44の雑誌記事の掲載には一切関知していない。
4争点(4)(差止め等の必要性)について〔原告の主張〕被告らは,イ号物件及びロ号物件を製造販売しており,本件専用実施権侵害を予防するためには,被告らによるイ号物件及びロ号物件の製造販売の差止11め並びに上記各物件及びその半製品,これらの製造に供した金型,これらの物件に関する広告の廃棄を求める必要がある。
〔被告らの主張〕争う。
5争点(5)(損害ないし利得の額)について〔原告の主張〕(1)損害額(主位的請求)ア被告Aによる販売分(ア)被告Aは,前述のとおり,平成14年12月から平成16年2月までの間,イ号物件及びロ号物件を製造販売し,本件特許発明実施した。
上記の間の被告Aによる販売個数は,月間1000個を下らない。
(イ)被告Aによる本件特許発明実施は,本件専用実施権に対する侵害行為であり,被告Aには特許法103条により過失が推定される。
(ウ)原告は,特許法102条3項に基づき,本件特許発明実施に対して受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。
本件特許発明実施に対して受けるべき金銭の額については,被告Aがキャネットとの間で,独立の対等な当事者として自由に合意したシングル型(イ号物件)についての1個当たりのロイヤリティーの額である1000円(消費税,地方消費税を除く。)を基礎とすべきである。
ダブル型(ロ号物件)のロイヤリティーの額については,被告Aとキャネットとの間で合意に至っていないものの,ダブル型(ロ号物件)は,シングル型(イ号物件)に比較して,本件特許発明の機能を倍加させる形態であり,1個当たりのロイヤリティーの額はシングル型(イ号物件)よりも高額になるものと考えることができるから,そのロイヤリティーの額は1個当たり1200円と考えるのが相当である。
12(エ)以上を基礎に損害額を算出すると,原告には,平成14年12月から平成16年2月までの15か月間の販売個数1万5000個に対する受けるべきロイヤリティー相当額として,1500万円ないし1800万円の損害が発生したことになる。
(計算式)1,000円×15,000個=15,000,000円1,200円×15,000個=18,000,000円(オ)原告は,被告Aに対し,上記損害の一部請求として,1500万円の支払を請求する。
イ被告会社による販売分(ア)被告会社は,被告Aと共謀して,前述のとおり,平成16年3月から平成18年4月までの間,ロ号物件を製造販売し,本件特許発明実施した。
上記の間の被告会社による販売個数は,月間1000個を下らない。
(イ)被告らによる本件特許発明実施は,本件専用実施権に対する侵害行為であり,被告らには特許法103条により過失が推定される。
(ウ)原告は,特許法102条3項に基づき,本件特許発明実施に対して受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。
上記アの(ウ)と同様に,ダブル型(ロ号物件)1個当たりのロイヤリティーの額を1200円として損害額を算出すると,原告には,平成16年3月から平成18年4月までの26か月間の販売個数2万6000個に対する受けるべきロイヤリティー相当額として,3120万円の損害が発生したことになる。
(計算式)1,200円×26,000個=31,200,000円(エ)原告は,被告らに対し,上記損害の一部請求として,2600万円の支払を請求する。
13ウ各被告の賠償額(ア)被告A被告Aは,原告に対し,上記ア(オ)及びイ(エ)の合計額である4100万円の損害賠償義務を負う。
(イ)被告会社被告会社は,原告に対し,被告Aと連帯して,上記イ(エ)の額である2600万円の損害賠償義務を負う。
(2)利得額(予備的請求)ア被告らは,専用実施権者の承諾なくイ号物件及びロ号物件を製造販売したことにより,本件特許発明実施料の支払を免れたものであるから,相当な実施料相当額が被告らの不当利得であり,その額は前記(1)ウの(ア)及び(イ)と同額である。
イ他方,専用実施権者たる三和メディアセンター又は原告には,被告らによる承諾なき本件特許発明実施により,本件特許発明の相当な実施料相当額の損失が発生し,その額は上記アと同額である。
ウよって,三和メディアセンター又は原告の損失と被告らの利得との間には因果関係があるから,原告は,被告らに対し,上記(1)ウと同額の各不当利得返還請求権を有する。
〔被告らの主張〕(1)否認ないし争う。
(2)被告Aは,イ号物件及びロ号物件を製造販売したことはあるものの,イ号物件(シングル型)については,平成13年7月キャネットに対して1000個(単価3000円),平成14年12月ころリバースに対して500個(単価4500円)を,それぞれ販売し,また,ロ号物件(ダブル型)については,平成13年11月キャネットに対して1000個(単価2500円),平成15年4月ころリバースに対して1000個(単価5500円)14を,それぞれ販売したのみである。
(3)被告会社は,イ号物件及びロ号物件を一切製造販売していない。
第4当裁判所の判断1争点(1)(本件専用実施権設定契約の有効性)について(1)被告らは,本件専用実施権設定契約は,被告Aが本件特許発明に関する商品を販売する新会社を設立するための融資を三和メディアセンターの名義で受けるために,三和メディアセンターの代表者であったCと通謀して行った虚偽表示によるものであるから無効である旨主張し,被告A作成の上申書(乙3)中には,これに沿うかのごとき部分(「私が且O和メディアの広告代不払のために専有実施権を与えたと宮田管財人は主張していますが,あくまでも新会社設立を目的としたものに間違いはありません。」)がある。
しかしながら,上記上申書の内容は,それ自体具体性を欠くものである上,何ら客観的裏付けを伴わないものであって,容易に信用することができない。
仮に,本件専用実施権設定契約の目的が三和メディアセンターにおいて新会社設立のための融資を受けることにあったとしても,そのことから直ちに,被告A及び三和メディアセンターに専用実施権設定の意思がなかったことになるわけではないことは明らかである。他に被告A及び三和メディアセンターにおいて本件専用実施権設定の意思を欠いていたことを認めるに足りる証拠はない。
(2)仮に,本件専用実施権設定契約が被告Aと上記Cとの間の通謀虚偽表示によるものであったとしても,三和メディアセンターの破産管財人である原告は,破産債権者全体の共同の利益のために,善良な管理者の注意をもってその職務を行わなければならない者であって(破産法85条),破産管財人に選任された後は,特段の法律行為を行ったか否かにかかわらず,ある財産が破産財団に属するかどうかを主張するにつき,法律上の利害関係を有する第三者に該当するというべきである。そして,弁論の全趣旨によれば,原告15は,三和メディアセンターの破産管財人に選任され,本件専用実施権設定契約につき法律上の利害関係を有するに至った当時,仮に上記契約が虚偽表示によるものであったとしても,そのことにつき善意であったと認められる。
したがって,被告Aは,本件専用実施権設定契約が無効であることを原告に対抗することはできない。
(3)上に述べたところによれば,争点(1)についての被告らの主張は理由がない。
2争点(2)(本件専用実施権の消滅の有無及び解除の有効性)について(1)本件専用実施権の消滅についてア被告Aは,専用実施権者は当該実施権の対象となる特許権に基づく事業を継続すべき義務を負うにもかかわらず,三和メディアセンターにおいて本件特許権に基づく事業を継続することが不可能になったから,本件専用実施権は消滅した旨主張する。
しかしながら,そもそも,専用実施権者が専用実施の権利を有するからといって,当然に実施の義務までも負うものと解すべき根拠はない。本件専用実施権設定契約中に専用実施権者が実施の義務を負う旨が定められていたなどの事情の主張立証のない本件においては,三和メディアセンターが,被告Aに対し,本件特許権に基づく事業を継続すべき義務を負っていたと認めることはできない。そうすると,三和メディアセンターが上記義務(債務)を負うことを前提として,当該義務(債務)の履行不能による本件専用実施権の消滅をいう被告Aの上記主張は理由がない。
イまた,被告Aは,三和メディアセンターにつき,破産宣告がされ,その後,破産廃止決定がされたことにより,三和メディアセンターは消滅し,本件専用実施権も権利主体の消滅により消滅した旨主張する。
しかしながら,破産廃止決定後であっても,清算すべき財産がある場合には,会社は消滅せず,なお権利能力を有するものと解されるから,三和16メディアセンターについて破産廃止決定がされたことを理由に,残余財産である本件専用実施権が消滅することはない。
被告Aの上記主張は理由がない。
ウさらに,被告Aは,三和メディアセンターが特許法所定の特許料の支払をしなかったから,本件専用実施権を放棄したものと解すべきである旨主張する。
しかしながら,被告Aと三和メディアセンターとの間において,専用実施権者である三和メディアセンターが特許権者である被告Aに代わって特許料を支払う旨の合意がされたなどの事実を認めるに足りる証拠はなく,三和メディアセンターが特許料を支払わなかったからといって,同社が専用実施権を放棄する意思を有していたと推認することはできない。
被告Aの上記主張も理由がない。
(2)本件専用実施権設定契約の解除について被告Aは,三和メディアセンターは,店舗を閉鎖したことにより,あるいは,破産したことにより,本件特許権を実施すべき義務を履行することが不可能になったから,本件専用実施権設定契約を解除する旨主張する。
しかしながら,前記(1)アで述べたとおり,三和メディアセンターが,被告Aに対し,本件特許権に基づく事業を継続すべき義務を負っていたと認めることはできないから,三和メディアセンターが上記義務(債務)を負うことを前提として,当該義務(債務)の履行不能による本件専用実施権設定契約の解除をいう被告Aの上記主張は理由がない。
なお,本件専用実施権設定契約中に,専用実施権者である三和メディアセンターが破産したなど一定の場合には,特許権者である被告Aにおいて,本件専用実施権設定契約を解除することができる旨が定められていたことを認めるに足りる証拠はなく,三和メディアセンターが破産したからといって,被告Aにおいて,本件専用実施権設定契約を直ちに解除することができるも17のと認めることはできない。
(3)以上のとおりであるから,争点(2)についての被告Aの主張はいずれも理由がない。
3争点(3)(被告らによるイ号物件及びロ号物件の製造販売の有無)について(1)前記争いのない事実等並びに証拠(甲7,8,16ないし29,34ないし40,42ないし48,50ないし118[以下,各号証につき枝番号の記載は省略し,特に枝番号を記載して限定したもの以外は,各枝番号すべてを含むものとする。],検証の結果,調査嘱託の結果)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。
ア被告Aは,平成11年8月31日ころ,三和メディアセンターとの間で,本件特許権について,範囲を全部とする専用実施権を設定するとの合意をし(本件専用実施権設定契約),同年9月27日,その旨の専用実施権設定登録がされた。(争いのない事実)イ被告Aは,平成13年7月1日,キャネットの代表者であるD(以下「D」という。)との間で,おおむね下記の内容等の記載のある契約書(甲7。以下「本件契約書1」という。)を取り交わした。(甲7)記被告AとDは,イ号物件(「スプルトンビューティーローラー」)の業務一切の権利譲渡について以下の通り契約を締結する。
(ア)被告Aは,Dに対し,被告Aが所有する在庫品(イ号物件)を完成品として引き渡す。
(イ)被告Aは,Dに対し,本件特許権について専用実施権を設定する。
(ウ)被告Aは,Dに対し,本件特許発明に係る製品の製作依頼先を紹介し,Dが上記製作依頼先に直接発注等をすることができるようにする。
(エ)被告Aは,Dに対し,本件特許発明に係る製品の顧客(納入先)を紹介し,Dが上記顧客から直接受注等をすることができるようにする。
18(オ)Dは,被告Aに対し,上記の(ア)の受領製品の1000個分について,1個につき,製品代として1000円,被告Aの技術指導料(ロイヤリティー)として500円を支払う。
Dが受領した製品の代金残部については,Dが顧客に納品した個数を基礎に,1個につき,製品代として1000円,被告Aの技術指導料として500円を支払う。ただし,Dの販売額が1個当たり3500円を上回った場合や下回った場合には,被告AとDが協議して上記金額を定める。
(カ)被告Aが,Dから製品を仕入れる場合には,原則として,1個当たり3500円とする。
(キ)Dが,被告Aから引き継いだ顧客に対して製品を納入する場合,Dは被告Aに対し,技術指導料(ロイヤリティー)として1個当たり500円を支払う。ただし,Dの販売額が1個当たり3500円を上回った場合や下回った場合には,被告AとDが協議して上記金額を定める。
(ク)現状製品のグレードアップによる製品単価の上昇は,技術指導料(ロイヤリティー)の協議対象とはしない。
ウ被告Aは,平成13年11月21日,Dとの間で,おおむね下記の内容等について記載のある契約書(甲8。以下「本件契約書2」という。)を取り交わした。(甲8)記被告A及びDは,ロ号物件(「スプルトンビューティーローラーW型」・専用実施権は別途契約によりDに譲渡済み)の業務について以下の通り契約を締結する。
(ア)被告Aの株式会社吉商(以下「吉商」という。)に対する債務軽減のため,Dは,吉商からロ号物件の仕掛品1000個を代金100万円で買い受ける。
19(イ)製品の製作又は製造,発注,製品受領,代金支払,製品の受注,納品,代金受取りはDが行う。
(ウ)被告Aは,Dと協議の下に,販売企画,営業及び直販体制を確立する。上記のため,Dは470万円を調達する。
(エ)上記(ウ)による利益等は,被告A及びDが半分ずつ享受する。
エDが代表者を務めるキャネットは,平成13年9月からイ号物件(シングル型)を,平成13年11月からロ号物件(ダブル型)を,それぞれ販売した。なお,キャネットは,イ号物件,ロ号物件の他に,ローラー部分が六角柱のものも販売していた。(弁論の全趣旨)オ被告Aは,平成14年12月及び平成15年4月,キャネットに対し,同社によるイ号物件,ロ号物件の製造販売は,本件特許権の侵害に当たる旨の各警告書を送付して,上記物件の製造販売の中止を求めた。(甲48の1・2,50の1・2,51)被告Aは,平成15年4月に発した上記警告書(甲51)中で,「キャネットがダブルローラーの販売において新型半導体ローラーの総代理店株式会社ハーベストジャパンの提案書を被告Aの販売商圏の中に流布したことにより,被告Aの販売するスプルトンビューティーローラーW型が旧型とみなされ,受注のキャンセルを受ける等,被告Aの損害は2000万円以上に及んだ。」旨言及していた。
カ被告Aは,平成16年10月ころ,キャネットやDらに対し,イ号物件及びロ号物件の製造販売の差止め並びに損害賠償等を求める訴えを提起した(当庁平成16年(ワ)第23002号事件)。なお,上記訴えはその後取り下げられた。(甲52,53,当裁判所に顕著な事実)キ原告は,平成17年5月ころ,被告A,キャネット及びDに対し,イ号物件及びロ号物件の製造販売の差止め並びに損害賠償等を求める訴えを提起した(当庁平成17年(ワ)第10708号事件)。
20上記訴訟の訴状において,原告は,「被告Aは,平成14年12月以降平成17年5月までの間にイ号物件及びロ号物件を本件特許実施商品として,1か月あたり1000個の割合で合計30,000個を売却している。」(番号3(1)@,15頁)と主張したのに対し,被告Aは,平成17年12月2日付け準備書面において(番号3(1)@,4頁),上記事実を認めた。(甲54,118)ク平成14年6月4日発行の日本工業新聞に,当時被告Aが屋号として用いていた「日本コロンクレンズ振興会」の「トルマリン・ビューティ・ローラー」についての記事が掲載された。同記事中には,次のとおりの記載がある。(甲21)(ア)日本コロンクレンズ振興会は,「トルマリン・ビューティ・ローラー」を開発し,全国で販売している。
(イ)平成14年4月に発売した,ローラーを2つに増やした新型(ロ号物件)は,生産が追い付かないほどの売れ行きであるという。価格は1万9800円で,月産5000個のペースでは生産が間に合わないほどである。
(ウ)被告Aは,イ号物件を,発売以来7年間で約20万個販売した。
ケ被告Aは,日本コロンクレンズ振興会の屋号を用いてイ号物件及びロ号物件を製造販売してきた。被告Aは,平成16年3月9日,美容健康器具の開発及び製造販売等を目的として,被告会社を設立し,自らその代表取締役に就任した。(争いのない事実)コ原告が平成17年6月14日に撮影した「トルマリン・ビューティ・ローラー」(ロ号物件)の梱包箱には,製造元として,「日本コロクレンズ振興会」と表示されていた(判決注・日本コロンクレンズ振興会を指すものと認められる。)。(甲16)サインターネットにおける宣伝・販売状況等21(ア)株式会社壮快薬品は,平成18年6月6日当時,自らが運営するホームページにおいて,「スプルトン・ビューティーローラー〔シングルタイプ〕」の商品名でイ号物件(税抜価格1万2800円)の,また「スプルトン・プラチナビューティーローラー」の商品名でロ号物件(税抜価格1万9800円)の通信販売をそれぞれ行っており,イ号物件及びロ号物件の販売社名として,被告会社が表示されていた。(甲18,19)株式会社壮快薬品は,平成18年12月11日当時も,上記ホームページにおいて,「スプルトン・プラチナビューティーローラー」の商品名でロ号物件(税抜価格1万9800円)の通信販売を行っており,その販売社名として,被告会社が表示されていた。(甲35)(イ)通信販売業者であるストアミックスが運営するホームページでは,平成18年6月6日当時,「スプルトン・プラチナ・ビューティーローラー(ツインタイプ)」の商品名でロ号物件(税込価格2万0790円)の通信販売を行っており,その製造者として,「日本コロンクレンズ振興会」と表示されていた。(甲20)(ウ)被告会社は,平成18年6月6日当時,ホームページを運営して,自社が取り扱う商品の通信販売を行っていた。同ホームページには,「スプルトン・プラチナ・ビューティーローラー」(ロ号物件)が掲載され,販売業者として,被告会社名が表示されており,ロ号物件の紹介等に関わるページでは,ロ号物件の効能・効果,ローラー部分の構造,使用方法,材質,サイズ,重量等や価格(税込価格2万0790円)が掲載されているほか,「買い物かごに入れる」とのボタンが設けられており,同ボタンをマウスでクリックすると,通信販売の申込手続に移行することができるようになっていた。(甲17,弁論の全趣旨)(エ)原告は,平成18年6月26日ころ,株式会社エイブルアクセスか22ら,ロ号物件1個を代金1万9800円(税抜価格)で,通信販売によって購入した。商品名は「スプルトンプラチナ・ビューティーローラー(ツインタイプ)」であり,商品外箱には,製造元として「日本コロンクレンズ振興会」が,その使用説明書には,製造元として「日本コロンクレンズ振興会」,販売元としてエリット株式会社が表示されていた。
(甲22,25,26,29,検証の結果)(オ)原告は,平成18年7月14日ころ,株式会社壮快薬品から,イ号物件1個を代金1万3440円(税込価格)で,通信販売によって購入した。商品名は「スプルトンビューティーローラー」であり,商品外箱には,製造元として「日本コロンクレンズ振興会」が表示され,その使用説明書には,日本コロンクレンズ振興会の記載の上に「アスワン株式会社」の表示がシール貼付されていた。(甲23,24,27,28,弁論の全趣旨,検証の結果)(カ)通信販売業者であるSTELLA表参道が運営するホームページでは,平成18年11月17日から同月22日までを入札期間として,「スプルトン・プラチナ・ビューティーローラー」の商品名でロ号物件のオークション販売を行っており,発売製造元として被告会社名を表示していた。(甲34)(キ)ライラック株式会社は,平成18年12月11日当時,同社が運営するホームページにおいて,「スプルトンプラチナビューティーローラー」の商品名でロ号物件(税込価格1万7800円)の通信販売を行っており,製造元として「日本コロンクレンズ振興会」を表示していた。
(甲36)(ク)株式会社もしもは,平成18年12月11日当時,同社が運営するホームページにおいて,「スプルトン・プラチナ・ビューティーローラー」の商品名でロ号物件(価格1万4700円)の通信販売を行ってい23た。同ホームページに掲載されたロ号物件の梱包箱は被告会社が当時使用していた箱と同一であった。(甲34,37,検証の結果,弁論の全趣旨)(ケ)ユニカ食品株式会社は,平成18年12月11日当時,自社が運営するホームページにおいて,「スプルトン・プラチナ・ビューティーローラー」の商品名でロ号物件(税込価格1万9800円)の通信販売を行っており,製造元として「日本コロンクレンズ振興会」を表示していた。(甲38)(コ)インターネットの女性向け情報サイトである「WomanRelease」では,平成18年12月11日当時,「スプルトン・プラチナ・ビューティーローラー」の商品名でロ号物件(税込価格2万0790円)の通信販売が行われており,製造元の所在地として被告会社の本店所在地が表示されていた。また,上記ページをプリントアウトした紙面のヘッダーには「日本コロンクレンズからスプルトンビューティローラーをあなたに!」と表示されていた。(甲39)(サ)総合ディスカウントショップである激得ランド特選館のホームページでは,平成18年12月11日当時,「スプルトン・プラチナ・ビューティーローラー」の商品名でロ号物件(価格1万9800円)の通信販売が行われていた。同ホームページに掲載されたロ号物件の梱包箱は被告会社が当時使用していた箱と同一であった。(甲34,40,検証の結果,弁論の全趣旨)(シ)株式会社講談社発行の雑誌「VoCE」平成18年9月号95頁には,「スプルトン・プラチナ・ビューティ・ローラー」の商品名でロ号物件(価格2万0790円)が紹介されており,問い合わせ先として記載されている電話番号は,株式会社エリットが使用するものであった。
(甲42,43)24(ス)株式会社千趣会発行の商品カタログ誌「BELLEMAISON住まいと雑貨2007年春夏号」(カタログの有効期限は平成19年6月25日。)367頁には,「スプルトン・プラチナ・ビューティーローラー」の商品名でロ号物件(税込価格2万0790円)が掲載されており,問い合わせ先としてエリット株式会社が表示されていた。
(甲44)(セ)有限会社セブンシーズ・インクは,平成19年2月21日当時,同社が運営するホームページにおいて,「スプルトンプラチナ・ビューティー・ローラー」の商品名でイ号物件(税抜価格1万2800円)の,「スプルトンプラチナ・ビューティー・ローラーツインタイプ」の商品名でロ号物件(税抜価格1万9800円)の,それぞれ通信販売を行っていた。(甲45)(ソ)株式会社メディカルプランニングは,平成19年2月21日当時,同社が運営するホームページにおいて,同社の取り扱う商品として,「スプルトン・ビューティーローラー」の商品名でイ号物件を,「スプルトン・プラチナ・ビューティーローラー」の商品名でロ号物件を掲載していた。(甲46)(タ)有限会社エヌズは,平成19年2月21日当時,同社が運営するホームページにおいて,「スプルトン・プラチナ・ビューティーローラー」の商品名でロ号物件(税込価格2万0790円)の通信販売を行っていた。(甲47)シ原告からの照会に対する回答等原告は,平成19年3月ころ,イ号物件及びロ号物件を販売していた者らに対し,被告A又は被告会社との間におけるイ号物件及びロ号物件の取引履歴の開示を求める通知書を送付した。上記通知に対する回答状況は,以下のとおりである。
25(ア)エリット株式会社,有限会社セブンシーズ・インクは何らの回答もしなかった。(甲56の1・2,57の1・2,70の1・2)(イ)株式会社壮快薬品は,エリット株式会社から「スプルトンビューティー・ローラー」を仕入れた旨の回答をした。(甲59)イー・アベニュー株式会社は,エリット株式会社から「スプルトン・プラチナ・ローラー(ツインタイプ)」(ロ号物件)を平成19年1月,合計24個仕入れた(仕入単価7920円),上記商品には製造元として被告会社が表示されていた旨の回答をした。(甲63)日本エコシステム株式会社は,「トルマリンプラチナビューティローラー(ツインタイプ)」をエリット株式会社から仕入れていた旨の回答をした。(甲66)(ウ)エリット株式会社は,平成19年3月8,9日ころ,株式会社ビューティーサイエンスやイー・アベニュー株式会社などに対し,「被告らと原告との間の紛争について,現在被告Aらに照会中である。被告Aからの連絡があり次第連絡をする。現時点では,エリット株式会社から購入した旨の回答にとどめてほしい。」旨を通知した。(甲61,63)(エ)有限会社メディカルプランニングは,平成17年9月に被告会社から,「スプルトンプラチナビューティーローラー」を144個仕入れた旨を回答した。(甲69)有限会社エヌズは,いずれもロ号物件である「トルマリンビューティーローラー」を「日本コロンクレンズ振興会」から平成15年10月から平成16年3月までの間に合計39個(仕入単価5940円),「スプルトン・プラチナ・ビューティーローラー」を被告会社から平成17年1月から平成19年3月までの間に合計656個(仕入単価6140円),それぞれ仕入れた旨を回答した。(甲78)株式会社東急ハンズは,「スプルトン・プラチナビューティーローラ26ー」を販売したことがあること,今後,上記商品に関する問い合わせは,メーカーである被告会社にしてほしい旨の回答をした。(甲94)株式会社千趣会は,「スプルトン・プラチナ・ビューティーローラー」を株式会社コスゲから仕入れて販売したことがある旨回答した。同回答書に添付された資料には,株式会社コスゲから仕入れた商品の製造元が被告会社,発売元がエリット株式会社である旨が記載されている。
(甲101)(オ)上記原告の照会中の質問事項である「ローラー部分が六角柱となっている類似商品を購入し,販売した事実があるか。」との質問に対し,ローラー部分が六角柱となっている物件(被告会社主張商品)を被告A又は被告会社から購入したことがある旨の回答はなかった。
ス株式会社三菱東京UFJ銀行練馬駅前支店の「日本コロンクレンズ振興会E」名義の口座の入金状況(調査嘱託の結果)(ア)平成14年3月以降平成18年3月までの間,エリット株式会社からの入金が頻繁に行われており,入金の合計額は2億3000万円を超える。
(イ)平成14年9月以降平成18年7月までの間,有限会社セブンシーズ・インクからの入金が頻繁に行われており,入金の合計額は5000万円を超える。
(ウ)上記の外,株式会社ラセーヌ,有限会社エフ・プランニング,有限会社メディカルプランニング,有限会社エヌズその他からの入金を合わせると,平成14年3月以降平成18年11月までの間の入金額は,合計4億9000万円を超える。
(2)被告Aは,イ号物件及びロ号物件を製造販売したことはあるものの,本件専用実施権設定登録がされた平成11年9月27日以降は,イ号物件については,平成13年7月にキャネットに対して1000個,平成14年1272月ころにリバースに対して500個,ロ号物件については,平成13年11月にキャネットに対して1000個,平成15年4月ころリバースに対して1000個を製造販売したにすぎないとして,上記以外の製造販売の事実を否認する。しかしながら,上記(1)で認定した事実によれば,被告Aは,少なくとも,平成16年3月9日に被告会社が設立されるより前において,自認する上記製造販売に限らず,イ号物件及びロ号物件を相当数製造販売していたことが認められる。
また,被告会社は,イ号物件及びロ号物件を販売したことはない旨主張する。しかしながら,上記(1)で認定した事実によれば,被告会社は,その設立日である平成16年3月9日以降,イ号物件及びロ号物件を相当数製造販売していることが認められる。
(3)被告会社は,平成16年5月ころ以降,「ビューティーローラー(ツイン)」,「スプルトンプラチナビューティーローラー(ダブル又はツイン)」との商品名で美容ローラーを製造販売しているものの,この美容ローラーはロ号物件ではなく,本件特許発明技術的範囲に属さない被告会社主張商品(ローラー部分が六角柱となっている物件)である旨主張する。
しかしながら,被告会社が製造販売する美容ローラーについて,被告Aが従前製造販売してきたロ号物件から被告会社主張商品に構成が変更され,被告会社において被告会社主張商品を販売していたとの事実を認めるに足りる証拠は存しない。
被告会社の製造販売する美容ローラーを取り扱う通信販売業者のホームページ等においても,また,被告会社自身のホームページにおいても,掲載されているのはロ号物件であって,ローラー部分が六角柱となっている物件は全く掲載されておらず,ホームページ上で掲げた製品ではなく,別個の製品を売っていたというのは不自然というほかないこと(なお,キハクショップのホームページ(甲31)には,「半導体ビューティーローラー(ボディ用28ダブル)」との商品名でローラー部分が六角柱となっている物件が掲載されているものの,その製造販売に被告会社が関与していたことを認めるに足る証拠はない。)や,原告が販売業者らに対して行った通知に対する回答においても,被告A又は被告会社の販売にかかるローラー部分が六角柱となっている物件を扱ったことがある旨回答した者が存在しないことは,上記(1)認定のとおりであり,これらの事実に照らせば,同認定中の被告会社の製造販売にかかる商品は被告会社主張商品ではなく,ロ号物件であると認められる。
4争点(4)(差止め等の必要性)について被告Aが,少なくとも,平成16年3月9日に被告会社が設立されるより前において,自認する前記販売に限らず,イ号物件及びロ号物件を相当数製造販売していたと認められること,被告会社がその設立日である平成16年3月9日以降,イ号物件及びロ号物件を相当数製造販売していることが認められることは,前記認定のとおりである。
そして,被告Aは,被告会社設立前においては自ら「日本コロンクレンズ振興会」の屋号を使用してイ号物件及びロ号物件を製造販売しており,その後,被告会社を設立し,以後,その代表取締役の地位にあることに鑑みると,被告会社設立後は,同社を主体として上記製造販売等を行っているとしても,いまだ,被告Aにおいても,イ号物件及びロ号物件を製造販売するおそれがあるというべきである。
以上によれば,被告A及び被告会社について,イ号物件及びロ号物件の製造販売の差止めを命ずる必要がある。
また,被告会社が平成16年3月9日以降,イ号物件及びロ号物件を相当数製造販売していること,その他前記3(1)で認定した事実に照らせば,被告会社は,イ号物件及びロ号物件の在庫品やそれらの半製品並びにその製造に使用する金型を所有しているものと推認することができ,被告会社について,その所有に係るイ号物件及びロ号物件並びにそれらの半製品,その製造に使用する29金型,イ号物件及びロ号物件に関する広告の廃棄を命ずる必要がある。しかしながら,被告Aが,被告会社が設立された平成16年3月9日以降,被告会社とは別に,自ら金型を所有し,これを用いてイ号物件及びロ号物件を製造販売し,あるいは,広告をしていたことを認めるに足りる証拠はないから,被告Aに対し,イ号物件及びロ号物件並びにそれらの半製品,その製造に使用する金型,イ号物件及びロ号物件に関する広告の廃棄を請求することはできない。
5争点(5)(損害ないし利得の額)について(1)被告Aは,三和メディアセンターとの間で,本件専用実施権設定契約を締結し,平成11年9月27日,本件専用実施権設定登録がされたにもかかわらず,その後も,本件特許発明実施品であるイ号物件及びロ号物件を製造販売し,本件専用実施権侵害したものであるから,少なくとも,上記侵害行為について過失が推定される(特許法103条)。
また,被告会社は,被告Aによって,平成16年3月9日に設立され,その後,本件特許発明実施品であるロ号物件を製造販売し,本件専用実施権侵害したものであるから,少なくとも,上記侵害行為について過失が推定される(特許法103条)。
そして,被告Aは,本件特許権を有する者であり,従前「日本コロンクレンズ振興会」の屋号を用いてイ号物件及びロ号物件を製造販売しており,その後,被告会社を設立して,その代表取締役に就任し,以後,被告会社を通じて,イ号物件及びロ号物件の製造販売を行ってきた者であるから,被告会社による本件専用実施権侵害について共同不法行為責任を負う。
(2)ところで,被告A及び被告会社は,被告らの販売数量,売上金額を証する証拠として,平成16年5月分から平成18年12月分までの請求書(乙4ないし23,27ないし38)を提出する。
しかしながら,有限会社エヌズに対する平成18年9月30日付け請求書(乙35の4)と有限会社エヌズから原告に開示された同日付け請求書(甲3078)とを対比すると,両者は同一の書式を用い,納品日,数量,単価,金額,備考欄の発注番号,請求金額欄の記載が全く同一であるにもかかわらず,平成18年9月5日,同月8日,同月20日及び同月22日納品にかかる品名のみが異なり,有限会社エヌズから開示された請求書では,品名がいずれも「スプルトンビューティーローラー(ツイン)」と記載されているのに対し,被告らから開示された請求書では,品名がいずれも「PTジェルセット」と記載されている。
同様に,有限会社エヌズに対する平成18年10月31日付け請求書(乙36の4)と有限会社エヌズから原告に開示された同日付け請求書(甲78)とを対比すると,両者は同一の書式を用い,納品日,数量,単価,金額,備考欄の発注番号,請求金額欄の記載が全く同一であるにもかかわらず,平成18年10月11日及び同月19日納品(数量が6のもの)にかかる品名のみが異なり,有限会社エヌズから開示された請求書では,品名がいずれも「プルトン・プラチナ・ビューティーローラー(ツイン」(判決注・スプルトン・プラチナ・ビューティーローラー(ツイン)を指すものと認められる。)と記載されているのに対し,被告らから開示された請求書では,品名がいずれも「PTジェルセット」と記載されている。
有限会社エヌズに対する平成18年11月30日付け請求書(乙37の4)と有限会社エヌズから原告に開示された同日付け請求書(甲78)とを対比すると,両者は同一の書式を用い,納品日,数量,単価,金額,備考欄の発注番号,請求金額欄の記載が全く同一であるにもかかわらず,平成18年11月15日納品にかかる品名のみが異なり,有限会社エヌズから開示された請求書では,品名が「スプルトンプラチナビューティーローラー」と記載されているのに対し,被告らから開示された請求書では,品名が「PTジェルセット」と記載されている。
有限会社エヌズに対する平成18年12月30日付け請求書(乙38の313)と有限会社エヌズから原告に開示された同日付請求書(甲78)とを対比すると,両者は同一の書式を用い,納品日,数量,単価,金額,請求金額欄の記載が全く同一であるにもかかわらず,品名のみが異なり,有限会社エヌズから開示された請求書では,品名が「スプルトンプラチナビューティーローラー」と記載されているのに対し,被告らから開示された請求書では,品名が「PTジェルセット」と記載されている。
これらの事実からすれば,被告らが提出した上記各請求書は,ロ号物件にかかる請求書であるにもかかわらず,その品名を「PTジェルセット」に置き換えることにより改ざんした後のものであると認められる。
そして,上記証拠の提出経過等(弁論の全趣旨)に鑑みると,被告A及び被告会社による改ざんが上記請求書に限られるものとは到底考えられず,証拠として提出された請求書(乙4ないし23,27ないし38)は,そのままには信用することができない。
(3)上記のとおり,被告らが開示した証拠(乙4ないし23,27ないし38)を採用することはできず,被告らが,上記証拠以外に販売数量を示す証拠を提出しないため,本件において,被告らによる販売数量を正確に把握することはできない。
しかしながら,上記3(1)で認定した事実によれば,被告Aは,三和メディアセンターとの間で本件専用実施権設定契約を締結し,平成11年9月,本件専用実施権について設定登録を経たにもかかわらず,平成13年7月には,Dとの間で,同人に対し,本件特許権について専用実施権を設定することや被告Aの所有する在庫品を販売することなどを内容とする契約を締結したこと,平成14年6月には,被告Aが,イ号物件を発売以来7年間で約20万個販売した旨の新聞記事が掲載されたこと,被告Aは,別件訴訟(当庁平成17年(ワ)第10708号事件)において,被告Aが平成14年12月以降平成17年5月までの間にイ号物件及びロ号物件を1か月当たり100320個の割合で合計3万個を販売している旨の原告の主張を認めていたこと,株式会社三菱東京UFJ銀行練馬駅前支店の「日本コロンクレンズ振興会E」名義の口座には,平成14年3月以降平成18年7月までに限っても,イ号物件及びロ号物件の通信販売,あるいは,卸売り等を行っているエリット株式会社や有限会社セブンシーズ・インクなどから,頻繁かつ多額の入金が行われていたことが認められ,これらの事実に照らせば,被告Aが,平成14年12月から平成16年2月までの間に製造販売したイ号物件及びロ号物件の数量は,控えめに認定しても,1か月につき合計1000個を下らないものと認めるのが相当である。
そして,上記事実に加え,被告会社が被告Aにより設立され,同被告が代表者に就任して,従前「日本コロンクレンズ振興会」の屋号を使用して被告Aが行っていた事業を引き続き行ってきたこと,前記認定の各ホームページにおけるイ号物件,ロ号物件の取扱状況に照らすと,イ号物件の販売数量はロ号物件の販売数量に比べ相当少ないものと考えられること,などを併せ考慮するならば,被告会社が,その設立日である平成16年3月9日以降平成18年4月までの間に製造販売した製品の数量は,ロ号物件だけでも,1か月につき1000個を下らないものと認めるのが相当である。
(4)原告は,特許法102条3項に基づき,専用実施権者がその特許発明実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額を損害額として主張するので,本件特許発明実施料相当額について検討する。
アイ号物件及びロ号物件は,いずれも,身体のぜい肉部をローリングし,酸化脂質等を除去して痩身のボディを作り上げるための美容マッサージ器である。このような美容機器の分野においては,一般に,その効果を実証的に説明して販売することが困難であるといえるものの,当該機器で用いられている技術に特許権が付与されている場合には,需要者や取引者は,特許権が付与されている事実に大きな信頼を寄せることになるということ33ができる。本件においても,イ号物件及びロ号物件の販売広告に当たって,これらが本件特許権の実施品であることが表示されている。
また,前記認定のとおり,被告AがDに対し,本件特許権について専用実施権を設定することなどを内容とする本件契約書1においては,Dの販売額がイ号物件1個当たり3500円である場合,ロイヤリティーを1個当たり500円とする旨の約定があり(なお,本件契約書1には,上記約定とは別に,Dが被告Aから譲り受けるイ号物件の在庫品1000個について,ロイヤリティーとして1個当たり合計1000円を支払う旨の約定があるが,本件契約書1を全体としてみれば,上記1個当たり1000円とのロイヤリティーの額は,Dが被告Aから譲り受けた在庫品1000個を対象とする場合に限られるものと認められる。),後記認定のとおり,イ号物件の需要者への販売価格を1万2800円とすると,1個当たり500円との使用料は販売価格の約4%となる。
そうすると,イ号物件及びロ号物件における,本件特許権の使用料相当額については,需要者への販売価格の4%相当額と認めるのが相当である。
イ本件においては,前記(3)で述べたとおり,被告A及び被告会社から,販売数量や販売価格を正確に示す証拠が提出されないため,これらを正確に把握することができない。
しかしながら,前記3(1)で認定した事実によれば,平成14年6月4日発行の日本工業新聞の記事には,ロ号物件の価格は1万9800円である旨の記載があること,被告会社は,自らのホームページにおいてロ号物件を税抜価格1万9800円で販売していたことが認められ,これらの事実を総合すると,損害額算定の基礎となるロ号物件の販売価格は1万9800円と認めるのが相当である。
また,前記認定事実によれば,株式会社壮快薬品は,平成18年6月5日当時,自らが運営するホームページにおいて,イ号物件を税抜価格1万342800円で販売していたこと,有限会社セブンシーズ・インクは,平成19年2月21日当時,同社が運営するホームページにおいて,イ号物件を税抜価格1万2800円で販売していたことが認められ,これらの事実を総合すると,損害額算定の基礎となるイ号物件の販売価格は1万2800円と認めるのが相当である。
なお,前記認定のとおり,被告Aが平成14年12月から平成16年2月までの間に製造販売したイ号物件及びロ号物件は,1か月につき合計1000個を下らないものと認められるものの,上記の当時のホームページ等におけるイ号物件,ロ号物件の取扱状況を示す証拠は存せず,各物件の販売個数の内訳を的確に認定することはできないから,損害の控えめな認定の観点からは,被告Aの上記販売にかかる使用料相当損害金の算定にあたっては,イ号物件の価格である1万2800円をもってするのが相当である。
ウ以上を前提に,被告Aが平成14年12月から平成16年2月までの間にイ号物件及びロ号物件を製造販売したことにより原告が被った使用料相当損害金は,以下の計算式のとおり,768万円となる。
(計算式)12,800円×1000個×15か月×4%=7,680,000円エさらに,被告会社が平成16年3月9日から平成18年4月までの間にロ号物件を製造販売したことにより原告が被った使用料相当損害金は,以下の計算式のとおり,2038万7612円となる。
(計算式)19,800円×1000個÷31日×23日×4%=587,612円(1円未満切捨て)19,800円×1000個×25か月×4%=19,800,000円587,612円+19,800,000円=20,387,612円オまとめ35(ア)被告Aは,不法行為に基づき,原告に対し,ウとエの合計額である2806万7612円の損害賠償責任を負う。
(イ)被告会社は,不法行為に基づき,原告に対し,被告Aと連帯して,エの2038万7612円の損害賠償責任を負う。
6結論以上によれば,原告の本訴請求は,特許法100条に基づき,被告A及び被告会社に対し,イ号物件及びロ号物件の製造販売の差止めと,被告会社に対し,上記各物件及びその半製品,金型並びに広告の廃棄を,同法102条3項に基づき,被告Aに対し,768万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成16年3月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払と,被告A及び被告会社に対し,連帯して,2038万7612円及びこれに対する不法行為の日の後である平成18年5月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,それぞれ求める限度で理由があるから,これを認容し,その余の本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却し,被告Aの反訴請求は理由がないからこれを棄却することとし,仮執行宣言の申立てについては,主文記載の限度でこれを相当と認め,その余は相当でないので却下することとして,主文のとおり判決する。
追加
阿部正幸裁判長裁判官平田直人裁判官36柵木澄子裁判官37(別紙)イ号物件目録(シングル型)別紙図面に示した下記構成の物件1図面の説明図1シングル型の正面図図2シングル型の側面図図3ローラの軸断面図図4図3のA-A断面図図5プレートの斜視図図6ローラ(内側)の斜視図2符号の説明1イ号物件2ローラ2a着脱不能な小円筒状の突出部2b進退可能な小円筒状の突出部3プレート5把持具10大径のローラ3構造の説明(1)ローラ(プラスチック製,符号2)は,図3,4に示すように中空円筒体からなるが,一端側は閉塞部となって小円筒状の突出部があり,他端側には進退可能な小円筒状の突出部が設けられており,それら小円筒状の突出部を枢支する把持具(符号5)が備えられている。
(2)前記ローラ2は,大径のアルミニウム合金製ローラ10に挿入されており,その大径のローラの外周側に円周方向に沿って等間隔に複数枚のプレ38ート3が外周に接して係着されている(図4)。
4作用把持具を握り,ローラをぜい肉部に当てぜい肉部に沿って,又はぜい肉部をつまみながらローラをローリングさせると,大径のローラの外周に係着されたプレートの両端部の力点とプレートの取り付け部位に当たる作用点がぜい肉部に適宜の力の押圧力を付加し,打撃エネルギーを伴う刺激を与える。
(注)平成14年10月ころ以降にキャネットが製造,販売したイ号物件においては,プレート3に半導体チップが装着されており,かつローラ2の内部にトルマリンプレートボールが挿入され,ローラ2に同トルマリンプレートボール挿入のための切れ込みが設けられているものがある。
被告Aが平成14年12月ころ以降に製造,販売したイ号物件でも,ローラ2の内部にトルマリンプレートボールが挿入され,ローラ2に同トルマリンプレートボール挿入のための切れ込みが設けられている。また,同被告が平成15年4月ころ以降に製造,販売したイ号物件には,プレート3にプラチナ含有塗料を塗布したものがある。
39イ号物件目録図面(別紙)40(別紙)41(別紙)ロ号物件目録(ダブル型)別紙図面に示した下記構成の物件1図面の説明図1ダブル型の正面図図2ダブル型の側面図図3ローラの軸断面図図4図3のA-A断面図図5プレートの斜視図図6ローラ(内側)の斜視図2符号の説明1ロ号物件2ローラ2a着脱不能な小円筒状の突出部2b進退可能な小円筒状の突出部3プレート5把持具10大径のローラ50握持部3構造の説明(1)ローラ(プラスチック製,符号2)は,図3,4に示すように中空円筒体からなるが,一端側は閉塞部となって小円筒状の突出部があり,他端側には進退可能な小円筒状の突出部が設けられており,それら小円筒状の突出部を枢支する把持具(符号5)が備えられている。
(2)前記ローラ2は,大径のアルミニウム合金製ローラ10に挿入されてお42り,その大径のローラの外周側に円周方向に沿って等間隔に複数枚のプレート3が外周に接して係着されている(図4)。
(3)上記(1),(2)からなる装置が2個並設され握持部に連結されている。
4作用把持具を握り,ローラをぜい肉部に当てぜい肉部に沿って,又はぜい肉部をつまみながらローラをローリングさせると,大径のローラの外周に係着されたプレートの両端部の力点とプレートの取り付け部位に当たる作用点がぜい肉部に適宜の力の押圧力を付加し,打撃エネルギーを伴う刺激を与える。
(注)平成14年10月ころ以降にキャネットが製造,販売したロ号物件においては,プレート3に半導体チップが装着されており,かつローラ2の内部にトルマリンプレートボールが挿入され,ローラ2に同トルマリンプレートボール挿入のための切れ込みが設けられているものがある。
被告Aが平成14年12月ころ以降に製造,販売したロ号物件でも,ローラ2の内部にトルマリンプレートボールが挿入され,ローラ2に同トルマリンプレートボール挿入のための切れ込みが設けられている。また,同被告が平成15年4月ころ以降に製造,販売したロ号物件には,プレート3にプラチナ含有塗料を塗布したものがある。
43ロ号物件目録図面(別紙)44(別紙)