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関連審決 異議2000-74040
関連ワード 発明者 /  頒布された刊行物 /  アクセス /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  一致点の認定 /  相違点の認定 /  慣用技術 /  技術常識 /  発明の詳細な説明 /  参酌 /  技術的意義 /  置き換え /  設定登録 /  請求の範囲 /  変更 /  取消決定 / 
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事件 平成 15年 (行ケ) 509号 特許取消決定取消請求事件
原告 コニカミノルタホールディングス株式会社(旧商号) コニカ株式会社
訴訟代理人弁護士 森崎博之
同 根本浩
同 弁理士 稲葉良幸
同 大貫敏史
同 土屋徹雄
被告 特許庁長官小川洋
指定代理人 江頭信彦
同 小川謙
同 井上信一
同 小曳満昭
同 伊藤三男
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2005/01/31
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が異議2000-74040号事件について平成15年9月29日にした決定を取り消す。
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯等 原告は,名称を「放射線画像情報読取装置」とする特許第3038428号発明(昭和63年1月29日にした特願昭63-19231号の一部につき新たな特許出願〔以下「本件特許出願」という。〕,平成12年3月3日設定登録,以下,その特許を「本件特許」という。)の特許権者である。
本件特許について,特許異議の申立てがされ,異議2000-74040号事件(以下「本件異議事件」という。)として特許庁に係属したところ,原告は,平成13年6月25日,本件特許出願の願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載等について訂正を求める訂正請求をした。
特許庁は,本件異議事件について審理した上,平成13年11月8日に「訂正を認める。特許第3038428号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。」との決定(以下「前決定」という。)をしたが,当庁平成13年(行ケ)第583号特許取消決定取消請求事件の判決(平成15年5月8日判決言渡し,以下「前判決」という。)により前決定が取り消され,前判決が確定したので,特許庁において,本件異議事件につき更に審理することとなり,原告は,平成15年8月19日,本件特許出願の願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載等について訂正(以下「本件訂正」という。)を求める訂正請求をした。
特許庁は,本件異議事件について更に審理した結果,同年9月29日,「平成15年8月19日付の訂正を認める。特許第3038428号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。」との決定(以下「本件決定」という。)をし,その謄本は,同年10月20日,原告に送達された。
2 本件訂正に係る明細書(以下,願書に添付した図面と併せて「本件明細書」という。)の特許請求の範囲記載の発明の要旨 【請求項1】放射線透過画像が記録された放射線画像変換パネルを読み取って,複数の画素からなるオリジナル画像データを得る読取手段と,前記読み取ったオリジナル画像データを前記放射線透過画像の縦方向及び横方向について同一の間引き率で間引くことにより間引き画像データを得る間引き手段と,前記間引き手段にて間引かれた間引き画像データの頻度分布に基づいて,前記放射線透過画像に応じた前記オリジナル画像データに対する階調処理条件を求める手段と,を有することを特徴とする放射線画像情報読取装置。 【請求項2】前記間引き手段は,前記読み取ったオリジナル画像データを1/4から1/32に間引くことを特徴とする請求項1記載の放射線画像情報読取装置。
(以下,【請求項1】,【請求項2】の発明を「本件発明1」,「本件発明2」という。) 3 本件決定の理由 本件決定は,別添決定謄本写し記載のとおり,本件発明1は,昭和62年5月7日に頒布された刊行物である特開昭62-97533号公報(審判刊行物1・本訴甲3,以下「刊行物1」という。)に記載された発明(以下「刊行物1発明」という。)及び特開昭56-116182号公報(本訴甲6,以下「甲6公報」という。)に記載された事項,その他の周知・慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件発明2が本件発明1に付加限定した点は,格別の技術的意義は認められず,特許法29条2項の規定により,いずれも特許を受けることができないものであり,本件発明1,2に係る本件特許は,拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであって,特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則14条の規定に基づく,特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)4条2項の規定により,取り消すべきものとした。
原告主張の本件決定取消事由
本件決定は,本件発明1と刊行物1発明との相違点についての判断を誤り(取消事由1),その結果,本件発明2の刊行物1発明に基づく進歩性についての判断を誤った(取消事由2)ものであるから,違法として取り消されるべきである。
1 取消事由1(本件発明1と刊行物1発明との相違点についての判断の誤り) (1) 審決は,本件発明1と刊行物1発明との一致点として,「『放射線透過画像が記録された放射線画像変換パネルを読み取って,複数の画素からなるオリジナル画像データを得る読取手段と,画像データの頻度分布に基づいて,前記放射線画像に応じた前記画像データに対する階調処理条件を求める手段と,を有すること(を)特徴とする放射線画像情報読取装置。』の点」(決定謄本6頁第3段落)を,相違点として,「本件発明1が,『読み取った画像データを前記放射線画像の縦方向及び横方向について同一の間引き率で間引くことにより間引き画像を得る間引き手段』を備え,頻度分布を取る画像データが,『前記間引き手段にて間引かれた間引き画像データ』であるのに対して,刊行物1発明では,読取られた放射線画像のヒストグラム等の画像情報の画質的要件を得るためのデータは,画像情報を忠実に表現できる範囲内に於て一部省略したものであるが,画像情報を忠実に表現できる範囲内に於て一部省略して抽出する手段,及び画質的要件を得るためのデータがどのようなものかについては,刊行物1のどこにもそれ以上の具体的な説明がなされていない点」(同頁第4段落)を認定した上,相違点について,「刊行物1発明において,読み取った画像データを前記放射線画像の縦方向及び横方向について同一の間引き率で間引くことにより間引き画像を得る間引き手段を備え,頻度分布を取る画像データを前記間引き手段にて間引かれた間引き画像データ,とすることは当業者が周知・慣用技術等を参酌して容易に推考できるものと認められ,本件発明1はそのようにしたものと格別異ならない」(同7頁下から第3段落)と判断した。
本件決定の本件発明1と刊行物1発明との一致点の認定及び相違点の認定は認めるが,相違点についての判断は,以下のとおり誤りである。
(2) 本件決定は,上記判断に当たって,「刊行物1発明におけるオリジナル画像データも画素毎の独立したディジタルデータであるから,このようなデータからなる画像情報を忠実に表現できる範囲内に於て一部省略して抽出する手段を考えると,画像処理に係る技術分野において,画像のデータを一部省略して抽出する手段として多くの画素からところどころを省く即ち『間引く』ようにする手段が周知・慣用のもの」(決定謄本6頁最終段落)と認定した。しかしながら,「一部省略」という概念は,「間引く」という概念とは全く異なるものである。すなわち,広辞苑第5版(甲7-1〜3)によれば,「一部」とは「全体のなかの或る部分」(甲7-1),「省略」とは「簡単にするために一部分を略してはぶくこと」(甲7-2)という意味であるから,「一部省略」とは,簡単にするために全体の中のある部分を略して省くという概念であると解すべきであり,他方,「間引く」とは,「間にあるものを除き,適当な間隔を保つ」(甲7-3)という意味である。したがって,「一部省略」という概念が「間引く」という概念と異なっていることは明らかであり,「一部省略して抽出する手段」と「『間引く』ようにする手段」とが全く異なる手段であることも明らかである。
(3) 本件決定は,「『間引く』ようにする手段が周知・慣用のもの」であることを示す刊行物として,特開昭61-180374号公報(甲4,以下「甲4公報」という。),特開昭62-202676号公報(甲5,以下「甲5公報」という。)及び甲6公報を引用した上,「刊行物1発明において画像のデータを一部省略して抽出する手段として間引き手段を採用するようにすることは,当業者ならば格別思考することなく想到する」(決定謄本7頁第2段落)としたが,ある対象の構成に周知・慣用技術を採用する場合,その周知・慣用技術の技術特性や具現化する際の構成が対象に適合するかどうかを検討し,適合する場合にのみ当該技術を採用することは,当業者の常識であり,これらを検討することなく短絡的に当該技術を採用することなど,どのような技術分野においてもおよそあり得ないことである。本件特許出願当時,画像処理分野における間引き処理の技術特性,具現化する際の構成は,当業者において以下のように把握されていた。
ア 技術特性 間引き処理は,画像のデータ量を少なくし,後段の処理量を減らせる一方,オリジナル画像に比べて情報が落ちてしまうため,細線など細かい模様を有する画像に対して適用することは好ましくない。このことは,甲5公報の「原画像と同一サイズに復元したときは,一般に細かい模様の部分の劣化が大きいものであった」(1頁右下欄第2段落)等の記載及び甲6公報の「このような方法(注,『読取画素を一定の割合で間引きして,その間引かれた後の少数の特定画素による・・・統計量を算出させるための演算処理を実行させるように』する方法)を採ると間引かれた画素中にたまたま細線の画像情報が含まれているとすると,その演算処理時に必要な情報の欠落を生じて判定誤差を生じてしまうという問題がある」(2頁左下欄第1段落)等の記載から明らかである。
イ 具現化する際の構成 間引き処理は,記憶装置(磁気ディスクなど)からオリジナル画像データを読み出し,当該読み出したオリジナル画像データに対して間引き処理を実行し,間引き処理後の画像データを記憶するという,3工程により具現化する。このことは,甲4公報の「まず,第2図に示す中央処理装置8の制御によって磁気ディスク5から原画像1の画像データを取り出す。・・・次に,中央処理装置8で上記原画像1の画像データについて適宜の比率で画素を間引いたり,補間演算をして画像サイズを縮小(10)する」(2頁右上欄最終段落〜左下欄)等の記載及び甲5公報の「このような原画像7のデータを記憶装置1から読み出し,まず,所定幅の二次元領域毎の画像特徴量を高速演算回路2で求める。・・・・次に,この画像特徴量8の示す値の大小に応じて,原画像7の各部分についてデータの間引き数を決定する」(2頁左下欄第2段落〜右下欄第2段落)等の記載から明らかである。
一方,刊行物1(甲3)には,「画像情報を忠実に表現できる範囲内に於て一部省略してもよい」(5頁左上欄最終段落〜右上欄第1段落)と記載されているが,上記のとおり「一部省略」と「間引き」とは全く異なる概念であるため,当業者は,刊行物1の上記記載から「間引き」に想到することはない。すなわち,「間引く」とは,間にあるものを除き,適当な間隔を保つということであるから,本件特許出願当時の当業者の認識では,画像処理において,オリジナル画像を間引くという技術は,オリジナル画像の細部を破壊するという技術であったものである。そして,特に医用放射線画像は,人体の生命にかかわる重要な診断を行うための極めて貴重な画像であるから,得られた画像の細部を破壊する,すなわち,得られた画像自体を無にするということは到底考えられないものであった。したがって,医用画像を扱う当業者は,刊行物1の上記記載から,医用画像を無にしても影響のない領域,すなわち,撮像した部位の存在しない領域を省略することであれば想到するとしても,撮像した部位をも無にすること,すなわち「間引く」ことに想到することはあり得ない。仮に,想到したとしても,当業者は,間引き処理はオリジナル画像データの情報が欠落するという技術特性を持つ技術として把握していたのであるから,刊行物1の上記記載から,オリジナル画像データの情報が欠落してしまう間引き画像データでは,当然に画像情報を忠実に表現することはできないと考え,刊行物1の上記記載の内容と間引き処理の技術特性とは適合せず,採用することができないと考えるのである。また,刊行物1の「この方法は放射線画像を一旦画像記憶装置に記憶させ,さらに演算処理する必要があるため,演算処理に長時間を要し放射線画像の読取りから表示までに時間がかかり,リアルタイム性に乏しいという重大な欠点を有していた」(3頁左下欄最終段落〜右下欄第1段落),「本発明(注,刊行物1発明)の目的は,放射線画像変換パネルに記録された放射線画像を読取って電気信号に変換する画像読取手段,前記電気信号を一時記憶する画像記憶手段,・・・・,前記画像読取手段と画像記憶手段との間に画像情報抽出手段を設けたことを特徴とする放射線画像読取表示装置によって達成される」(同頁右下欄第3段落)及び「前記した本発明の構成に於て,画像情報抽出部〔2〕の画像情報の抽出は,画像読取部〔1〕の放射線画像読取りと同時にリアルタイムに行われるので抽出に伴う時間的ロスは皆無である」(5頁左上欄第3段落)との記載からも明らかなように,刊行物1発明は,記憶装置にオリジナル画像をいったん記憶してから演算していたのではリアルタイム性が確保できないという課題の下で,オリジナル画像を記憶する前に画像情報を抽出する構成を採用したものである。
以上のとおり,画像処理分野における間引き処理の技術特性及び具現化する際の構成は,刊行物1発明に適合しないのであるから,仮に,甲4公報〜甲6公報から間引き処理が画像処理分野において周知・慣用技術であったとしても,これらの記載から,当業者が「刊行物1発明において画像のデータを一部省略して抽出する手段として間引き手段を採用する」ことはない。
(4) 本件決定は,放射線透過画像の処理という限定された技術分野において本特許出願時に間引き手段が周知・慣用ではないとしても,画像処理を扱う関連技術分野において間引き技術は周知・慣用であり,また間引き技術は本件発明1と同じ技術分野といえる甲4公報において採用されている(決定謄本7頁最終段落〜8頁第1段落)と認定した。
しかしながら,放射線透過画像の技術分野において間引き技術が周知・慣用でないからこそ,画像処理分野一般における間引き処理を,放射線透過画像の技術分野の刊行物1発明に採用するかどうかを検討する場合には,このような間引き処理の技術特性及び具現化する際の構成が刊行物1発明に適合するか否かを判断する必要があるが,間引き処理の技術特性及び具現化する際の構成のいずれも刊行物1発明には適合せず,刊行物1発明において間引き処理は採用し得ないことは上記(3)のとおりである。
(5) 本件決定は,甲6公報に「このような方法(注,『読取画素を一定の割合で間引きして,その間引かれた後の少数の特定画素による・・・統計量を算出させるための演算処理を実行させるように』する方法)を採ると間引かれた画素中にたまたま細線の画像情報が含まれているとすると,その演算処理時に必要な情報の欠落を生じて判定誤差を生じてしまうという問題がある」(2頁左下欄第1段落)との記載を認めながら,「放射線画像のような写真画像では,細線に相当する1〜数画素単位で隣接画素と輝度あるいは濃度が極端に変化するようなことは通常ほとんど生じないものと考えられて,間引きしてももとの情報が特段欠落してしまうことがないことは明らかである」(決定謄本9頁第1段落)と認定した。しかしながら,放射線透過画像には,毛細血管などの微細かつ重要な情報が多く含まれているのであり,さらに,放射線透過画像は,そもそも病変部などの発見を目的として診断に用いられるものであって,初期の病変部などは,数画素単位の領域である場合も珍しくない。このような放射線透過画像に対して間引き処理を適用した場合,診断に必要な情報が欠落してしまい,もはや診断に用いることができなくなってしまうことは明らかである。したがって,放射線透過画像を,「間引きしてももとの情報が特段欠落してしまうことがない」と認めることは,放射線透過画像に関する技術常識に反するものであり,誤りというほかない。
(6) 本件決定は,「本件発明1において当業者の予測を越える量的または質的に顕著な作用効果があるとは認められない」(決定謄本9頁第3段落)とした。しかしながら,「一部省略」と「間引き」とは異なる概念であり,間引き処理の技術特性及び具現化する際の構成は,刊行物1発明に適合しないのであるから,当業者は,刊行物1発明において,「読取画像データを間引」くことは想到し得ない。
2 取消事由2(本件発明2の刊行物1発明に基づく進歩性の判断の誤り) 本件発明2は,少なくとも本件発明1の構成を含むから,本件発明2の進歩性についての本件決定の判断も誤りである。
被告の反論
本件決定の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
1 取消事由1(本件発明1と刊行物1発明との相違点についての判断の誤り)について (1) 発明の属する技術分野における用語は,一般的な意味から発展した特定の意味で用いられることが定着している場合には,その特定の意味に解すべきことは当然のことである。そして,本件発明1の属するデジタル画像処理の分野では,「間引く」という用語は,時間的あるいは空間的に3個以上並んでいる信号から,適宜位置に位置する1個以上で並んでいる個数未満の信号を取り除くことを表す場合に用いられており,画素ごとのデジタルデータから成る画像情報の情報量を少なく(縮小)する手段としての「間引き」(「間引く」はその動詞形)については,例えば,縦横方向に1024画素ずつ正方形状に配列している画像を各方向に1/8に間引くといえば,普通は,各方向に隣接する8画素ずつを単位として,その各単位ごとにその中の所定位置の1画素のデータを残し,他の7画素のデータを省く(除く)ようにして,各方向に情報量を1/8に少なく(縮小)する(少なくした結果は縦横方向に128画素ずつ正方形状に配列している画像となる)ことを意味し,本件発明1のみならず,甲4公報及び甲6公報の記載も,このような意味で「間引き」の用語を用いていることは明らかである。そして,上記各単位ごとに見れば,1画素のデータを残し,他の7画素のデータを省く(除く)ことは,8画素全部のデータを利用せず,その中の7画素のデータを省く点で,「一部省略する」と表現され得るものであり,また,画像全体で見ても,1024×1024の全部を利用せず,その中の規定量の画素のデータを省くという点で,「一部省略する」と表現され得るものである。したがって,間引くことは,一部省略するという概念に含まれることは明らかであるから,「間引く」ことによりデータ量を少なくできるということが画像処理の分野で周知である以上,当業者は,データ量を少なくするための画像のデータを一部省略して抽出する手段の具体例として,間引くようにする手段(間引き手段)を採用することは,おのずと想到するというべきである。
(2) 刊行物1(甲3)において,「画像情報を忠実に表現できる範囲内に於いて一部省略してもよい」(5頁左上欄最終段落〜右上欄第1段落)としているのは,観察読影の対象画像を最適化するために画像情報抽出部〔2〕において抽出されるところのヒストグラム(頻度分布)等の画像情報を得るための画像データであって,後に階調処理などがされて観察読影の対象とされるところの画像記憶部〔3〕に記憶される全画素の画像データではない。したがって,刊行物1発明において,「一部省略」の態様として「間引き」を採用するとしても,観察読影対象画像の画素がオリジナル画像の画素に対して欠落するということはあり得ず,細部が破壊されるということがないことは明らかである。
間引き処理は,新たに発生させたデータや到来するデータにも適用し得る処理であり,記憶装置から読み出したデータにしか適用できない処理ではないから,刊行物1発明がオリジナル画像データを画像読取部〔1〕で発生させた直後にそれを画像記憶部〔3〕に記憶させるのと同時に画像情報抽出部〔2〕で抽出する構成を採っていることは,画像情報抽出部〔2〕に間引き処理を採用できないことの理由にはならない。刊行物1発明における「一部省略」の具体的技術として,「間引き」処理を採用できない理由はない。
(3) 原告は,画像処理分野一般における間引き処理を,放射線透過画像の技術分野の刊行物1発明に採用するかどうかを検討する場合には,このような間引き処理の技術特性及び具現化する際の構成が刊行物1発明に適合するか否かを判断する必要があるが,間引き処理の技術特性及び具現化する際の構成のいずれも刊行物1発明には適合しないと主張する。しかしながら,刊行物1発明における「一部省略」の具体的技術として,「間引き」処理を採用できない理由がないことは,上記(2)のとおりである。
(4) 刊行物1発明の一部省略して抽出する手段として間引き手段を採用したものも,本件発明1も,観察読影対象とするのは,オリジナル画像に対して階調処理などがされた後のオリジナル画像の全画素と同じ数の画素を有する画像であるから,数画素単位の領域の画像そのものが欠落するという意味での診断に必要な情報が欠落してしまうということはあり得ない。
(5) 原告は,「一部省略」と「間引き」とは異なる概念であり,間引き処理の技術特性及び具現化する際の構成は,刊行物1発明に適合しないのであるから,当業者は,刊行物1発明において,「読取画像データを間引」くことは想到し得ないと主張する。しかしながら,間引くことが一部省略するという概念に含まれることは上記(1)のとおりであり,原告の上記主張は,前提において誤りである。
2 取消事由2(本件発明2の刊行物1発明に基づく進歩性の判断の誤り)について 上記のとおり,本件決定の本件発明1と刊行物1発明との相違点についての判断に誤りはないから,その誤りを前提とする取消事由2は,理由がない。
当裁判所の判断
1 取消事由1(本件発明1と刊行物1発明との相違点についての判断の誤り)について (1) 原告は,「一部省略」という概念は,「間引く」という概念とは全く異なるものであるから,「刊行物1発明におけるオリジナル画像データも画素毎の独立したディジタルデータであるから,このようなデータからなる画像情報を忠実に表現できる範囲内に於て一部省略して抽出する手段を考えると,画像処理に係る技術分野において,画像のデータを一部省略して抽出する手段として多くの画素からところどころを省く即ち『間引く』ようにする手段が周知・慣用のもの」(決定謄本6頁最終段落)とした本件決定の認定は誤りであると主張する。
そこで,まず,「間引く」の用語についてみると,願書に添付すべき明細書は,様式第29により作成しなければならないところ(特許法施行規則24条),様式第29の〔備考〕8は,「用語は,その有する普通の意味で使用し,かつ,明細書全体を通じて統一して使用する。ただし,特定の意味で使用しようとする場合において,その意味を定義して使用するときは,この限りでない」と定めているが,本件明細書(甲9-2)には,「間引く」の用語の意味を定義した記載はないので,その有する普通の意味について検討する。
広辞苑第5版(甲7-1〜3)には,「間引く」の見出し語について,「間にあるものを除き,適当な間隔を保つ」(甲7-3)との記載がある。
また,本件明細書において,「間引く」の用語は,その連用形である「間引き」を含め,特許請求の範囲に,「前記読み取ったオリジナル画像データを前記放射線透過画像の縦方向及び横方向について同一の間引き率で間引くことにより間引き画像データを得る間引き手段と,前記間引き手段にて間引かれた間引き画像データの頻度分布に基づいて,前記放射線透過画像に応じた前記オリジナル画像データに対する階調処理条件を求める手段」(【請求項1】),「前記間引き手段は,前記読み取ったオリジナル画像データを1/4から1/32に間引く」(【請求項2】)との記載が,発明の詳細な説明に,「前記読み取ったオリジナル画像データを前記放射線透過画像の縦方向及び横方向について同一の間引き率で間引くことにより間引き画像データを得る間引き手段と,前記間引き手段にて間引かれた間引き画像データの頻度分布に基づいて,前記放射線透過画像に応じた前記オリジナル画像データに対する階調処理条件を求める手段」(段落【0019】),「前記間引き手段は,前記読み取ったオリジナル画像データを1/4から1/32に間引くことを特徴とする」(同),「フレームメモリ52から表示制御部51aに画像データを転送するときは,フレームメモリ52から主走査,副走査方向共に4画素おきに読出し,表示制御部51a内の表示メモリには連続して書込んでいく。これは,表示用CRTが512画素*640画素の表示解像力しか持たないので,主副共に1/4に間引くためのものである」(段落【0027】),「フレームメモリタイミング制御回路61は,1つの画素を読出すごとにDRAMのフレームメモリ52に対してRAS,CAS信号を与え,またリフレッシュ動作も制御する。上述のような制御により,撮影画像を1/4に間引きした画像データを得ることができる」(段落【0031】),「間引き率を変更するときはラッチ回路67及びラッチ回路68への設定値を変更することで成される。たとえば,ラッチ回路67及びラッチ回路68への設定値が+1のとき,連続アクセスとなるし,ラッチ回路67への設定値が-1でラッチ回路68への設定値が+1のときには左右反転画像を読出すことができる」(段落【0032】),「読取終了時,CPU50はラッチ回路65及びラッチ回路66に先頭アドレスを設定し,ラッチ回路67及びラッチ回路68に+32を設定して磁気ディスク制御部57内のバッファメモリに転送を行う。
このときの画素数は64*64画素の計4096画素になる。これは,主副走査共に1/32に画素間引きを行い,かつ画像を正方形にトリミングした形になる。CPU50はこの画像データを用い,画像の累積頻度分布を求め,画像の最適な表示特性である画像処理条件を求め,表示制御部51a内の表示用ルックアップテーブルの内容を変更する。このように,主副走査共に1/32に間引き(画素数は1/1024)するも,画像の持つ最大値,最小値,中央値などの特徴量や累積頻度分布はオリジナルの画像データと殆ど変化は起きないことを本発明者は見い出し,この現象を利用することで演算を極めて簡単化し,16ビットのマイクロプロセッサでも画像の最適な表示特性を得るのに殆ど時間遅れなく判定できるようにしている。図6(A)乃至図9(H)は各間引き率における累積頻度分布と頻度分布特性を例示する。本例でもわかるとおり,オリジナルな画像データの累積頻度分布(図6(A))と比較しても,32画素毎に間引いた累積頻度分布(図8(F))はほとんど同一の形状をしており,これを用いて画像状態を推定しても問題ない。また,これ以上の間引き率の画像を用いても(図9(G),(H)),その推定は,あまり狂わないので,ハード的にも,処理時間的にも効果がある」(段落【0035】),「X線画像は,画像周辺部の情報が全体に対して影響が低く,画像の抽出領域として上部及び下部を省いて抽出してもその特徴を損なうことは少ない。このような場合の中央部のみの読取制御や,読取画像が2048*2560画素よりも相当小さくなるときには間引き率を31,30,・・・と小さくして画像領域の範囲内で読取を行うなど読取領域と間引き率の適宜調整をラッチデータの変更で容易に行うことができる」(段落【0037】),「例として,主走査2048画素,副走査2464画素の画像を読取る場合,上部及び下部を夫々208ラインづつ省いた2048*2048画素の画像を1/32の画素間引きで64*64画素の抽出データを得ることができる」(段落【0038】),「画像の観察を細部にまで行うときには,キーボード53aの拡大とパニング用ファンクションキーにより,画像の拡大やパニングを行うことも可能になる。画像の拡大は,間引き率を減らしてフレームメモリから表示用メモリ81に転送することで可能であるし,パニングは画像を移動させる量だけ表示用メモリ81の読出し開始アドレスをずらし,CRTに新しく表われる分の画像のみを転送することで実現される」(段落【0042】)との記載がある。
さらに,本件発明1と同様,デジタル画像処理の技術分野に属すると認められる甲4公報には,「中央処理装置8で上記原画像1の画像データについて適宜の比率で画素を間引いたり・・・して画像サイズを縮小(10)する。すると,・・・その画像サイズがX方向にx1の画素数(例えば64)とされ,Y方向にy1の画素数(例えば64)とされた縮小画像11が得られる」(2頁左下欄)との記載が,甲5公報には,「ディジタル化された原画像のデータについて所定幅の二次元領域毎の画像特徴量を上記二次元領域を適宜の間隔で順次ずらしながらそれぞれ求め,上記各画像特徴量の大小に応じて原画像の各部分についてデータの間引き数を決定すると共に,この間引き数で上記原画像の各部分についてどの箇所のデータを間引くかを乱数を用いて決定し,上記間引き数及び間引き箇所の情報を用いて上記原画像のデータを間引くことによりX方向又はY方向或いはX,Y両方向に圧縮した画像を作り」(1頁左下欄「2.特許請求の範囲」),「従来の画像データの圧縮方法は,原画像の全体について一律に・・・間引き処理を行って一様に画像を圧縮することにより,データ量を少なくしていた」(同頁右下欄「従来の技術」)との記載が,甲6公報には,「従来の他の入力画像の特性判定方法としては,画像の2次元的な性質を把握するために,・・・現在処理対象の注目画素が如何なる性質の画素領域にあるかの判定を順次行なわせるようにしている。・・・しかし,このような判定方法では,統計量の抽出範囲すなわち特定画素領域を大きくしないと入力画像の特性を的確に把握することができず,またその判定処理を原稿面全域にわたって順次行なわせる必要があるために計算量が膨大なものになってしまっている。またその解決策として,読取画素を一定の割合で間引きして,その間引かれた後の少数の特定画素による前述の統計量を算出させるための演算処理を実行させるようにしているが,このような方法を採ると間引かれた画素中にたまたま細線の画像情報が含まれているとすると,その演算処理時に必要な情報の欠落を生じて判定誤差を生じてしまうという問題がある」(2頁右上欄第2段落〜左下欄第1段落)との記載がある。
これらの記載によれば,「間引く」の用語は,本来,「間にあるものを除き,適当な間隔を保つ」という意味であるところ,デジタル画像処理の技術分野においては,3個以上並んでいる信号から,適宜位置に位置する1個以上で並んでいる個数未満の信号を取り除くことを表す場合に用いられており,画素のデジタルデータから成る画像情報の情報量を少なく(縮小)する手段としての「間引き」ないし「間引く」については,例えば,縦横方向に1024画素ずつ正方形状に配列している画像を各方向に1/8に間引くといえば,普通は,各方向に隣接する8画素ずつを単位として,その各単位ごとにその中の所定位置の1画素のデータを残し他の7画素のデータを省く(除く)ようにして,各方向に情報量を1/8に少なく(縮小)する(少なくした結果は縦横方向に128画素ずつ正方形状に配列している画像となる)ことを意味するものとして使用されていることが認められ,本件明細書においても,「間引き」及び「間引く」の用語は,上記の意味で使用されているものと認められる。
他方,刊行物1(甲3)には,「該画像情報の抽出は,画像読取部〔1〕のA/D変換器114からの出力は画素として取扱われるデジタルデータであるので,すべての放射線画像信号を対象にする必要はなく,画像情報を忠実に表現できる範囲内に於て一部省略してもよい」(5頁左上欄最終段落〜右上欄第1段落)との記載があり,広辞苑第5版(甲7-1〜3)によれば,「一部」の見出し語について,「全体のなかの或る部分」(甲7-1),「省略」の見出し語について,「簡単にするために一部分を略してはぶくこと」(甲7-2)を意味するから,刊行物1の「一部省略」は,文言どおりに置き換えると,「画像情報を簡単にするため全画像情報の中のある部分を略して省くこと」を意味することとなり,上記意味において理解することに文脈上不自然なところはない。そして,本件発明1において,「間引く」の用語は,「例えば,縦横方向に1024画素ずつ正方形状に配列している画像を各方向に1/8に間引くといえば,普通は,各方向に隣接する8画素ずつを単位として,その各単位ごとにその中の所定位置の1画素のデータを残し他の7画素のデータを省く(除く)ようにして,各方向に情報量を1/8に少なく(縮小)する」ことを意味するものとして使用されていることは上記のとおりであり,これは,「画像情報を簡単にするため全画像情報の中のある部分を略して省くこと」の一態様であるということができる。
したがって,「間引く」は,「一部省略」に含まれるということができ,「一部省略」という概念は,「間引く」という概念とは全く異なるものであるとの原告の主張は,採用することができない。そして,甲4公報〜甲6公報の上記記載によれば,「間引く」ことによりデータ量を少なくすることは,本件特許出願前,デジタル画像処理の技術分野において周知であったと認められるから,「刊行物1発明におけるオリジナル画像データも画素毎の独立したディジタルデータであるから,このようなデータからなる画像情報を忠実に表現できる範囲内に於て一部省略して抽出する手段を考えると,画像処理に係る技術分野において,画像のデータを一部省略して抽出する手段として多くの画素からところどころを省く即ち『間引く』ようにする手段が周知・慣用のもの」(決定謄本6頁最終段落)とした本件決定の認定に誤りはない。
(2) 原告は,本件特許出願当時,当業者において,間引き処理は,技術特性として,画像のデータ量を少なくし,後段の処理量を減らせる一方,オリジナル画像に比べて情報が落ちてしまうため,細線など細かい模様を有する画像に対して適用することは好ましくなく,具現化する際の構成として,記憶装置(磁気ディスクなど)からオリジナル画像データを読み出し,当該読み出したオリジナル画像データに対して間引き処理を実行し,間引き処理後の画像データを記憶するという,3工程により具現化するものと把握されていたところ,オリジナル画像を間引くという技術は,オリジナル画像の細部を破壊し,特に医用放射線画像は,人体の生命にかかわる重要な診断を行うための極めて貴重な画像であるから,これを無にするということは到底考えられないものであり,また,刊行物1発明は,記憶装置にオリジナル画像をいったん記憶してから演算していたのではリアルタイム性が確保できないという課題の下で,オリジナル画像を記憶する前に画像情報を抽出する構成を採用したものであること等を理由に,画像処理分野における間引き処理の技術特性及び具現化する際の構成は,刊行物1発明に適合しない旨主張する。
しかしながら,間引き処理を具現化する際の構成として,記憶装置(磁気ディスクなど)からオリジナル画像データを読み出し,当該読み出したオリジナル画像データに対して間引き処理を実行し,間引き処理後の画像データを記憶するという,3工程により具現化するものと把握されていたとの点については,間引き処理の対象となる画像データが,記憶装置(磁気ディスクなど)から読み出したものでなければならない理由はなく,原告のこの点に係る主張は全く根拠を見いだし難い。
次に,間引き処理は,オリジナル画像の細部を破壊し,特に医用放射線画像は,人体の生命にかかわる重要な診断を行うための極めて貴重な画像であるから,これを無にするとの点については,刊行物1(甲3)において,「画像情報を忠実に表現できる範囲内に於いて一部省略してもよい」(5頁左上欄最終段落〜右上欄第1段落)としているのは,観察読影の対象画像を最適化するために画像情報抽出部〔2〕において抽出されるところのヒストグラム(頻度分布)等の画像情報を得るための画像データであって,画像記憶部〔3〕に記憶される全画素の画像データ(オリジナルデータ)ではないから,刊行物1発明において,「一部省略」の態様として「間引き」を採用するとしても,オリジナル画像の細部を破壊するものとは認められず,原告のこの点に係る主張は誤りというほかない。
さらに,刊行物1発明は,記憶装置にオリジナル画像をいったん記憶してから演算していたのではリアルタイム性が確保できないという課題の下で,オリジナル画像を記憶する前に画像情報を抽出する構成を採用したものであるとの点については,間引き処理は,記憶装置から読み出したデータにしか適用できないとする理由がないことは上記のとおりであり,新たに発生させたデータや到来するデータにも適用し得る処理であると認められるから,刊行物1発明がオリジナル画像データを画像読取部〔1〕で発生させた直後にそれを画像記憶部〔3〕に記憶させるのと同時に画像情報抽出部〔2〕で抽出する構成を採っていることは,画像情報抽出部〔2〕に間引き処理を採用できないことの理由にはならない。したがって,この点に係る原告の主張も理由がない。
以上のとおり,画像処理分野における間引き処理の技術特性及び具現化する際の構成は,刊行物1発明に適合しない旨の原告の主張は,採用することができない。
(3) 原告は,画像処理分野一般における間引き処理を,放射線透過画像の技術分野の刊行物1発明に採用するかどうかを検討する場合には,このような間引き処理の技術特性及び具現化する際の構成が刊行物1発明に適合するか否かを判断する必要があるが,間引き処理の技術特性及び具現化する際の構成のいずれも刊行物1発明には適合しないと主張する。しかしながら,画像処理分野における間引き処理の技術特性及び具現化する際の構成は,刊行物1発明に適合しない理由がないことは,上記(2)のとおりである。
(4) 原告は,放射線透過画像には,毛細血管などの微細かつ重要な情報が多く含まれているのであり,初期の病変部などは,数画素単位の領域である場合も珍しくなく,このような放射線透過画像に対して間引き処理を適用した場合,診断に必要な情報が欠落してしまい,もはや診断に用いることができなくなってしまうことは明らかであると主張する。しかしながら,刊行物1(甲3)において,「画像情報を忠実に表現できる範囲内に於いて一部省略してもよい」(5頁左上欄最終段落〜右上欄第1段落)としているのは,オリジナルデータでないことは上記(2)のとおりであるから,刊行物1発明において,「一部省略」の態様として「間引き」を採用するとしても,診断に必要な情報が欠落するものとは認められず,原告のこの点に係る主張は,誤りというほかない。
(5) 原告は,「一部省略」と「間引き」とは異なる概念であり,間引き処理の技術特性及び具現化する際の構成は,刊行物1発明に適合しないのであるから,当業者は,刊行物1発明において,「読取画像データを間引」くことは想到し得ず,「本件発明1において当業者の予測を越える量的または質的に顕著な作用効果があるとは認められない」(決定謄本9頁第3段落)とした本件決定の判断は誤りであると主張するが,「間引く」は,「一部省略」に含まれることは上記(1)のとおりであり,原告の上記主張は,前提において誤りである。
(6) 以上検討したところによれば,本件発明1と刊行物1発明との相違点について,「刊行物1発明において,読み取った画像データを前記放射線画像の縦方向及び横方向について同一の間引き率で間引くことにより間引き画像を得る間引き手段を備え,頻度分布を取る画像データを前記間引き手段にて間引かれた間引き画像データ,とすることは当業者が周知・慣用技術等を参酌して容易に推考できるものと認められ,本件発明1はそのようにしたものと格別異ならない」(決定謄本7頁下から第3段落)とした本件決定の判断に誤りはなく,原告の取消事由1の主張は理由がない。
2 取消事由2(本件発明2の刊行物1発明に基づく進歩性の判断の誤り)について 上記のとおり,本件決定の本件発明1と刊行物1発明との相違点についての判断に誤りはないから,その誤りを前提とする取消事由2の主張も,理由がない。
3 以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,他に本件決定を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 岡本岳
裁判官 早田尚貴