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審判番号(事件番号) データベース 権利
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事件 平成 17年 (ワ) 3037号 特許権侵害差止請求権不存在確認等請求事件
原告 株式会社システックキョーワ
訴訟代理人弁護士 辰巳和男 高瀬久美子
訴訟代理人弁理士 高田修治
補佐人弁理士 奥村文雄
被告P
訴訟代理人弁護士 山元眞士
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2006/07/27
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告が,意匠登録番号第1065539号(同号類似の1が合体したもの),,, の意匠権に基づき 原告に対し別紙物件目録第1記載の製品を使用し 販売し譲渡の申出をする行為を差し止める権利を有しないことを確認する。
2 被告が,特許番号第3650955号の特許権に基づき,原告に対し別紙物件目録第2記載の製品を製造し,使用し,販売し,譲渡の申出をする行為を差し止める権利を有しないことを確認する。
3 被告が,伊丹簡易裁判所平成15年(ノ)第81号事件について平成16年2月17日に成立した調停の調停調書の調停条項2項に基づき締結された開き戸の地震時ロック装置の実施許諾契約に基づき,原告に対し別紙物件目録第2記載の製品を製造し,使用し,販売し,譲渡の申出をする行為を差し止める権利を有しないことを確認する。
4 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
請求
主文同旨
請求の趣旨に対する答弁
1 本案前の答弁本件訴えを却下する。
2 本案の答弁原告の請求をいずれも棄却する。
事案の概要
本件は,別紙物件目録第1記載の製品(以下「原告製品1」という )を販。
売しており,別紙物件目録第2記載の製品(以下「原告製品2」といい,原告製品1と併せて「原告製品」という )を製造販売している原告が,被告に対 。
し,原告製品1の販売行為等について被告が後記意匠権に基づく差止請求権を有しないことの確認を求めるとともに,原告製品2の製造販売行為等について被告が後記特許権及び後記調停条項によって締結された実施許諾契約に基づく各差止請求権を有しないことの確認を求めている事案である。
これに対し,被告は,意匠権及び特許権に基づく差止請求不存在確認請求につき確認の利益の不存在を,実施許諾契約に基づく差止請求不存在確認請求につき管轄不存在を理由に両請求に係る本件訴えの却下を求めるとともに,予備的に本案について,原告が原告製品1を販売し後記意匠権侵害するおそれがあること,原告製品2の製造販売行為は被告の有する後記特許権の間接侵害(特許法101条1号,2号)に当たり,あるいは後記調停条項によって締結された実施許諾契約に基づく差止請求権を有することを理由として,原告の請求を争っている。
(。 ) 1 争いのない事実等 末尾に証拠の掲記のない事実は当事者間に争いがない( ) 被告の有する意匠権 1ア 被告は,意匠に係る物品を「自動錠の本体側金具」とする次の意匠権を有している。
(ア) 意匠登録番号第1065539号(以下「本件意匠権」という )。
(イ) 前同号の類似の1(以下「本件類似意匠権」という )。
イ 原告が製造販売する原告製品1に係る意匠は,被告の有するア(ア)記載の意匠権に係る意匠と類似する(甲6の1,18 。)( ) 被告の有する特許権 2ア 被告は,下記特許権を有している(以下「本件特許権」と,その特許を「本件特許」といい,その請求項1ないし4に係る発明を「本件発明1」ないし「本件発明4」といい,これらを総称して「本件発明」という。その平成15年10月26日提出の手続補正による訂正後の明細書を「本件明細書」という。甲20,34 。)特許番号 第3650955号発明の名称 地震時ロック方法及び地震対策付き棚出願日 平成11年3月18日(特願平11-116988)公開日 平成12年9月26日(特開2000-262343)登録日 平成17年3月4日特許請求の範囲【請求項1】地震時に扉等がばたつくロック状態となるロック方法において棚本体側に取り付けられた装置本体の扉等が閉じられた状態からわずかに開かれるまで当たらない係止体が地震時に扉等の開く動きを許容しない状態になり,前記係止体は扉等の戻る動きとは独立し扉等の戻る動きで解除されず地震時に扉等の開く動きを許容しない状態を保持し,地震のゆれがなくなることにより扉等の戻る動きと関係なく前記係止体は扉等の開く動きを許容して動き可能な状態になる扉等の地震時ロック方法【請求項2】請求項1の地震時ロック方法を用いた地震対策付き開き戸【請求項3】請求項1の地震時ロック方法を用いた地震対策付き引き出し【請求項4】請求項1の地震時ロック方法を用いた地震対策付き棚イ 本件発明は,次の構成要件に分説するのが相当である。
【請求項1】A 地震時に扉等がばたつくロック状態となるロック方法においてB 棚本体側に取り付けられた装置本体の扉等が閉じられた状態からわずかに開かれるまで当たらない係止体が地震時に扉等の開く動きを許容しない状態になり,C 前記係止体は扉等の戻る動きとは独立し扉等の戻る動きで解除されず地震時に扉等の開く動きを許容しない状態を保持し,D 地震のゆれがなくなることにより扉等の戻る動きと関係なく前記係止体は扉等の開く動きを許容して動き可能な状態になるE 扉等の地震時ロック方法【請求項2】F 請求項1の地震時ロック方法を用いた地震対策付き開き戸【請求項3】G 請求項1の地震時ロック方法を用いた地震対策付き引き出し【請求項4】H 請求項1の地震時ロック方法を用いた地震対策付き棚( ) 原告製品2の構成 3原告製品2は,別紙物件目録第2記載の構成を備えており,かつ本件発明の構成要件Eを充足する。
原告は,原告製品2を台所用棚等のメーカーに対して販売しており,取引先が同製品をばね付き蝶番のついた棚の生産に用いることを知っている。
( ) 本件実施許諾契約等の締結 4ア 原告と被告は,平成10年12月25日 「開き戸の地震時ロック装置 ,の実施許諾契約書 (乙1)に基づき,開き戸の地震時ロック装置に関す 」る実施許諾契約を締結した(以下「本件実施許諾契約」という 。。)また,同日 「実施許諾契約に関する覚え書き」と題する書面による契 ,約を締結した。
イ 原告と被告は,平成11年9月18日 「開き戸の地震時ロック装置の ,実施許諾契約のうち実施料支払いに関して以下の覚書をする 」として,。
以下の内容の「実施許諾契約に関する覚書 (以下「本件覚書」という。 」甲22)による契約を締結した。
「1.製品名@ 感知式ラッチ KSL-1(判決注・原告製品1を指す )。
A 耐震ロック-2 KSL-2(判決注・原告製品2を指す )。
2.実施数の報告乙(判決注・原告を指す。以下同じ )は製造し,販売した感知式 。
ラッチ(KSL-1)および耐震ロック-2(KSL-2)の販売合計数を契約書第7条により3ケ月毎(毎年1月・4月・7月・10月の末日)に販売先毎の個数を集計し,甲(判決注・被告を指す。以下同じ )に報告する。。
3.実施料の支払方法@ 乙は2項の各月末日に集計した個数に対する実施料を,翌々月の乙の支払日(毎月25日-休日の場合は翌日)に甲の指定の金融機関に振込み支払をする。
A 振込みをもって甲に対する実施料の支払を完了したものとする。
(以下,省略 」)ウ 原告は,平成15年7月17日,被告を相手方として本件実施許諾契約,, に基づく実施料の減額を求める調停の申立てをし 平成16年2月17日次の内容の調停が成立した(甲21,83。以下 「本件調停」といい, ,本件調停により合意された調停条項を「本件調停条項」といい,本件調停条項によって新たに締結された実施許諾契約を「本件新実施許諾契約」という 。。),() (ア) 原告と被告は 本件実施許諾契約書を本日 平成16年2月17日合意解約する。
(イ) 原告と被告は 「平成11年3月18日に相手方が出願した(出願 ,番号特願平11-116988)の『地震時ロック方法及び地震対策付き棚』の発明・考案・意匠」について,被告は原告に対して実施許諾していないことを確認する。
(ウ) 原告と被告は,本件実施許諾契約締結に際し締結した覚書に定める合意の効力を,本日以降,失効させるものとする。
(エ) 原告と被告は,本日,下記の点を変更するほかは本件実施許諾契約と同一内容の契約(本件新実施許諾契約)を改めて締結する。これにより,本件新実施許諾契約は,本件実施許諾契約の内容を以下のとおり変更した上で,新たに原告と被告の間で締結された。
1条(定義)( )『本件発明等』とは甲(判決注・被告を指す。以下同じ )の 1 。
名義において平成10年12月25日までに出願された全ての発明,考案及び意匠の開き戸の地震時ロック装置に関するものをいう。
( )『本件発明等に係る製品』とは甲が図面を引き渡した特定の開 2き戸の地震時自動ロック装置(S型自動ロック装置という)をいう。
( )『実施』とは特許法,実用新案法及び意匠法に定義する実施の 3用語に従った行為をいう。
1条の2(本件発明等の開示)契約対象は甲の名義において平成10年12月25日までに出願された全ての発明,考案及び意匠の開き戸の地震時自動ロック装置に関するものとして特定されており公開されるまでは甲はそれを開示しない。
2条(実施権の付与)( ) 甲は乙(判決注・原告を指す。以下同じ )に対し本件発明 1 。
,, 等に係る製品を本契約期間中に日本国で製造し 日本国で販売し外国で製造させ及び日本国に輸入する通常実施権を付与する。
( ) 甲は乙に対し,本件発明等が特許又は登録されたときは通常 2実施権を登録することを予約する。
3条(実施)( ) 乙は乙の責任で本件発明等に係る製品の金型を製作し及びそ 1の成形品が完成するまでのテストをして販売開始するものとする。
( ) 甲は前項の金型の製作及びその成形品のテストについて乙に 2技術的な協力をする。
( ) 乙が契約後6か月以内に金型の製作及びその成形品のテスト 3を完了しない場合は甲は本契約を19条に従って解除することができる。
4条(実施料)( ) 乙は甲に対して本契約に基づいて乙に付与される実施権の対 1価として製造した製品1個につき15円を実施料として支払う。
( ) 前項の金額は為替変動,乙の客先への販売価格の変更等の理 2由のいかんを問わず契約期間中は変更しない。
5条(実施料支払義務の発生時期)乙の甲への前条の実施料支払義務は本件発明等に係る製品を客先に販売した日に発生する。
6条(実施料の支払方法)( ) 乙は甲に対し3ケ月毎にまとめて前条の規定により支払義務 1の発生した実施料額を各翌月末日限り,現金を持参または送金して支払うものとする。
( ) 本契約が期間満了または解除により毎月末日以外の日に終了 2したときは前項の実施料支払は本契約終了の日から30日以内になされるものとする。
( ) 乙が前2項に定める期間内に実施料を支払わないときは乙は 3甲に対して同期間経過後完済まで年12%の割合による遅延損害金を支払うものとする。
6条の2(実施料の支払に関する特約 (省略))7条(実施料に関する報告義務)乙は日本又は外国での製造ロット毎に甲に対して下記事項を記載した報告書を作成しておきそれらを3ケ月毎にまとめて甲に送付するものとする。
a 本件発明等に係る製品の製造数b 出荷予定の相手方とその数量8条(品質管理に関する報告義務 (省略))9条(帳簿の閲覧検査)乙は本契約締結の日以降における本件発明等に係る製品の実施について詳細記録した関係帳簿を作成し日本で保管しておくものとし,甲が求めた場合は当該帳簿を日本で閲覧検査に提供しなければならない。
10条(実施料の不返還)ないし14条(秘密保持義務 (省略))15条(競業避止義務)乙は本契約期間中は甲の書面による事前の承諾がない限り自己ま,, たは第三者のために本件発明等に抵触する競業類似品を製造 使用,。 販売等をし あるいはその仕様を開示して第三者に製造せしめない16条(不争義務)ないし19条(契約解除 (省略))20条(契約終了後の措置)1. 本契約が期間の満了,解除その他理由のいかんを問わず終了したときは乙は直ちに本件発明等の製造等の実施を停止しなければならない。
2. 本契約が期間の満了,解除その他理由のいかんを問わず終了したときは乙とその客先の間にいかなる問題が発生しても乙の責任及び負担でその問題を解決すべきものとし甲は責任を負わない。
21条(管轄の合意)本契約に関する訴訟,調停の管轄裁判所はQ特許事務所の所在地を管轄する裁判所とする。
22条(別途協議事項 (省略 」))( ) 本件訴訟に至る経緯(確認の利益を基礎づける事情) 5ア 被告は,原告に対し,平成16年9月6日到達の書面で,原告に実施料支払債務の不履行があることを理由とする停止条件付きの本件新実施許諾契約解除の意思表示をし,同月20日の経過をもって,原告と被告の間の本件新実施許諾契約は解除された(弁論の全趣旨 。)イ 被告は,平成16年10月,原告を被告として,平成16年3月1日から同年9月20日までの未払の実施許諾料及び同月21日から同月末日までの間に発生した実施許諾料相当損害金の支払を求める訴えを神戸地方裁判所伊丹支部に提起した(同裁判所平成16年(ワ)第342号実施許諾料請求事件。乙3 。同事件の訴状(乙3)には,請求原因として,平成1 )6年3月1日から同年7月末日までの販売実績報告数量が,平成15年8月1日から平成16年2月末日までの販売実績報告数量の平均値と比較すると極端に減少している一方で,原告の販売先に対しては概ね従前どおりの規模の取引が継続して行われているようであり,結局,原告は販売個数を過少申告していたものであるとして,平均販売実績と申告販売個数との相違数量に対する未払実施許諾料を算定し,未報告期間については平均販売実績に基づいて実施許諾料額及び実施許諾料相当損害額を算定した旨の記載がある。
ウ 被告は,原告の複数の取引先に対し,原告製品2をばね付き蝶番と併用した場合にはその吊り戸棚等は,本件特許権に抵触する,今後は原告とではなく吊り戸棚等を販売されている貴社と直接契約することとしたい,もしも実施契約して頂けない場合には特開2004-300919号,特開2000-262343号(判決注・本件特許に係る公開公報 ,特開2)000-179216号について本書をもって特許法65条警告とさせて頂きますので,該出願が特許登録された際には遡って吊り戸棚等の販売価格の5%の補償金のお支払をお願いしたく考えている,との内容の平成17年2月18日付けの書面を送付した(甲7。以下「本件警告書」という。。)なお,本件警告書には,原告製品1に関する知的財産権として本件意匠権及び本件類似意匠権が挙げられていた。
2争点( ) 本件意匠権及び本件特許権に基づく差止請求不存在確認の訴えにつき 1確認の利益があるか (争点1)。
( ) 原告による本件意匠権侵害のおそれはあるか (争点2) 2 。
( ) 本件特許権に基づく差止請求不存在確認請求について 3ア 開き戸にばね付き蝶番と原告製品2を併用した地震対策付き開き戸・引き出し・棚(以下「原告側製品」という )が本件発明の技術的範囲に属 。
し,原告製品2の製造販売行為は,本件特許権の間接侵害に当たるか。
(ア) 構成要件A充足性(争点3)(イ) 構成要件B充足性(争点4)(ウ) 構成要件C充足性(争点5)(エ) 構成要件D充足性(争点6)イ 本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものであって,本件特許権に基づく権利行使は許されないか。
(ア) 特許法36条6項1号及び2号該当性(争点7)(イ) 特許法等の一部を改正する法律(平成14年法律第24号)による改正前の特許法(以下「旧特許法」という )36条4項該当性(争点 。
8)(ウ) 特許法29条1項3号該当性(争点9)(エ) 特許法29条2項該当性(争点10)(オ) 特許法29条の2該当性(争点11)(カ) 先使用の抗弁(仮定抗弁)の成否(争点12)( ) 本件新実施許諾契約20条1項に基づく差止請求について 4ア 訴えの追加的変更によって追加された請求の趣旨第3項の訴えは,専属的合意管轄を無視してなされたものであり 管轄違背の違法があるか 争 ,。 (点13)イ 原告による原告製品2の製造販売行為に対して本件新実施許諾契約20条1項に基づく差止請求権は認められるか (争点14)。
ウ 被告による本件新実施許諾契約20条1項に基づく差止請求権の行使は権利濫用に当たるか (争点15)。
争点に関する当事者の主張
1 争点1(本件意匠権及び本件特許権に基づく差止請求不存在確認の訴えにつき確認の利益があるか)について【被告の主張】原告は,平成16年3月ころから本件新実施許諾契約の対価を支払わなくなったため,被告は,同契約を解除した。その結果,本件新実施許諾契約20条1項により,被告は,原告に対して原告製品の実施を停止することを請求し得る契約上の差止請求権を有している。
また,被告は,原告を被告として,前記争いのない事実等( )イのとおり,5未払の実施許諾料及び実施許諾料相当損害金の支払を求める訴えを提起しており,原告製品についての原告と被告間の紛争は,同訴訟のみで解決可能なのであるから,本件意匠権及び本件特許権に基づく差止請求権の不存在確認の訴えには,確認の利益はない。
原告が,被告に対する製品販売実績を被告にすべて報告してきたことは否認し,原告製品1の製造停止までの実施料全額を被告に支払ったとの点は知らない。なお,原告から被告に対する製品販売実績の月次報告は,原告製品1及び2の数量を合算した数量でのみなされており,被告は,原告がいかなる取引先,, に対していずれの商品をいかなる数量販売したのかは知らされておらず また原告から原告製品1の製造を停止したという報告も受けていない。
原告製品2が本件新実施許諾契約の対象から除外されたとの主張については,後述のとおり争い,かつ否認する。また,被告は,原告に対し,本件新実施許諾契約20条1項に基づき原告製品2の製造販売等の差止めを請求できるから,原告は本件特許権に基づく差止請求権の不存在を確認する必要はなく,その請求に係る訴えに確認の利益はない。
【原告の主張】( ) 本件意匠権に基づく差止請求不存在確認の訴えについて 1,,, 原告は 平成16年9月17日をもって原告製品1の製造を廃止し 今後原告製品1を製造する計画は全くない。また,原告は,これまでに製造した原告製品1すべての販売数量を正確に報告し,その実施料を全額支払済みである。なお,原告が販売した原告製品1は,販売先からさらに第三者に流通している。これらの原告製品1は,いわゆる権利消尽の理論により,本件意匠権の効力は及ばない。
また,後述するとおり,本件調停条項により本件新実施許諾契約の対象は原告製品1のみとなったにもかかわらず,被告は,原告製品2もその対象商品であると主張してその実施料の履行遅滞を理由として本件新実施許諾契約を解除した。
以上によれば,原告が被告の有する知的財産権を侵害していないことは明らかであるが,それにもかかわらず,被告は,本件警告書において原告が被。,, 告の知的財産権を侵害しているかのように警告した これによって 原告は被告に対し既に適法に実施料を支払って権利消尽した原告製品1の在庫品の販売が不能になるばかりか,すでに得意先に販売済みの原告製品1についても引取りを求められる公算が大きい。
また,被告が原告と競争関係にあるということができないために,被告の行為を営業誹謗行為と主張することもできず,本訴以外に原告が法的救済を受ける方策は存在しない。
よって,本件意匠権に基づく差止請求不存在確認の訴えについて,確認の利益は十分に存在する。
( ) 本件特許権に基づく差止請求不存在確認の訴えについて 2被告は,原告の取引先に対して,ばね付き蝶番を取り付けた棚に取引先が原告製品2を取り付ける行為が本件特許権の侵害に当たるとして,本件警告書を送付している。
原告は,原告製品2をばね付き蝶番を備え付けた棚に取り付けることを前提として販売しているため,原告の原告製品2の製造販売行為につき被告から本件特許権の間接侵害に当たるとしてその製造販売の差止請求の訴えを提起されるおそれがあり,それによる不利な影響を予め阻止する必要がある。
また,被告は,得意先に原告製品の不買を働きかけて間接的に原告を牽制し,。 ており 実質的に被告は原告に対して警告をしていると解することができるこれによって,原告製品2の販売が不能になり,既に販売済みの原告製品2の引取りを求められるおそれが高いことは,原告製品1について主張したのと同様である。
2 争点2(原告による本件意匠権侵害のおそれはあるか)について【被告の主張】原告は,原被告間に有効に本件実施許諾契約が存在していたときから,ことさらに原告製品1,2の個別の製造販売個数を被告に明らかにしようとせず,(「 」 。) 一旦大量に製造して小池イマテクス株式会社 以下 小池イマテクス というに販売した原告製品1を買い戻して別顧客に販売するなどしている。したがって,被告としては,将来原告が何らかの形で本件意匠権侵害する行為に出るかもしれないという疑いを払拭できない。
【原告の主張】原告は,これまでに製造した原告製品1の在庫品により,今後の得意先からの発注に対応することが可能となったので,平成16年9月17日をもって原告製品1の製造を完全に停止し,平成18年5月11日,原告製品1の唯一の金型を廃棄した。これによって,原告は,原告製品1の製造能力を喪失した。
,, , 原告は これまで製造した原告製品1はすべて小池イマテクス等に販売しその数量も被告に対して報告した上で,被告に対して本件実施許諾契約及び本件新実施許諾契約に基づく実施料を全額支払っている。今後,再び原告製品1を製作する必要も,その意図も全くない。
原告が本件調停成立後は,原告製品1をすべて小池イマテクスに一括販売するようにしたのは,被告による営業妨害が本件調停成立前から行われており,,, 被告に得意先を知られないようにするため小池イマテクスに一括販売した後その個数を被告に対して報告してそれに応じた実施料を支払い,さらに同社からこれを買い戻して,自己固有の得意先に対して販売しているのである。したがって,原告による現在の原告製品1の使用,譲渡等の実施行為は,それが業としてなされる実施(意匠法23条)であっても,いわゆる権利消尽の理論により,本件意匠権の効力は及ばないものである。
よって,原告による販売行為等による本件意匠権侵害のおそれは存在せず,被告は本件意匠権に基づく差止請求権(同法37条)を行使することはできない。
3 争点3(原告側製品の本件発明の技術的範囲の属否及び原告製品2の製造販売行為についての間接侵害の成否について-構成要件A充足性)について【被告の主張】( ) 原告製品2の構成について 1原告製品2は,別紙イ号物件目録に記載された家具,吊り戸棚等の棚に装備された地震時ロック装置である。
その構成の要旨は,以下のとおりである。
a 地震時に扉等がばたつくロック状態となるロック方法である。
b 棚本体側に取り付けられた装置本体に扉等が閉じられた状態からわずかに開かれるまでに当たらない係止体がある。
c 係止体に地震時の状態と地震終了時の状態がある。
d 係止体の地震時の状態:(a) 地震時に扉等の開く動きを許容しない状態になる。
(b) 扉等の戻る動きとは独立し扉等の戻る動きで解除されず前記状態を保持する。
e 係止体の地震終了時の状態:地震のゆれがなくなることにより扉等の戻る動きと関係なく扉等の開く動きを許容して動き可能な状態になる。
以上の家具,吊り戸棚等に装備された地震時ロック装置である。
( ) 構成要件Aの「ばたつくロック状態となるロック方法」とは,一般用語 2の「ばたつく」状態であって扉等が係止されることなく単に開く方向に停止されるロック方法である。
扉等が「ばたつく」状態にあるとき扉等は地震のゆれの強さにかかわらず閉じられた位置とわずかに開かれて係止体に当たっている位置との間において「ばたつく」のである。
したがって 「ばたつく」という構成により地震終了時に収納物等の外的 ,な力が作用しない限り係止体は拘束状態のままにならないため地震終了時の解除操作が不要になるという効果がある。
原告側製品(開き戸にばね付き蝶番と原告製品2を併用した開き戸の地震対策付き開き戸・引き出し・棚)に係る棚は,原告製品2とばね付き蝶番を併用しその係止具の弾性片における摩擦力よりも蝶番の力が強いため収納物等の外的な力が作用しなければばたつきが停止することのない(つまり本件発明で定義された「ばたつく )ロック方法になっている。 」( ) なお,原告は,本件特許権の存在を知っており,かつ販売先のキッチン 3メーカー等が原告製品2のロック装置をばね付き蝶番のついた棚の生産にのみ,あるいはそれらの棚にも用いることを知りながら,業として原告製品2の製造販売等の実施をしている。
また,原告製品2は,本件特許権の請求項4の地震対策付き棚の課題の解決に不可欠なものである。
したがって,原告による原告製品2の製造販売等の実施行為は,特許法101条1号又は2号の間接侵害に該当し,本件特許権に基づく差止請求の対象となるものである。
【原告の主張】( ) 原告側製品の技術的構成は,以下のとおりである。 1a’地震時には,開き戸が開く方向に回動すると,係止体が支持体の弾性片を押し下げながら係止部に当接する(別紙動作説明図(原告)@,A,B参照 。このとき,弾性片の弾性復元力により係止体が上方に付勢され, )球体が蓋の下面と係止体の鍔部との間に挟持される。そして,ばね付き蝶番を用いた開き戸の場合には,係止体に対する弾性片の圧着力よりも,このばねの弾性力が勝ってこのばねの弾力によって開き戸が強制的に閉じられるというロック方法(別紙動作説明図(原告)C,D,E参照 。)b’収納装置本体側に取り付けられたロック装置本体の開き戸が閉じられた状態からわずかに開かれるまで係止部に当たらない係止体が地震時に最低1個の球体が鍔部の上面に載置されることで係止体の上動を阻止し,係止体が弾性片を押し下げて係止部に係止可能になり,開き戸を若干開く程度に規制し,開き戸の開く動きを許容しない状態になり,c’係止体は,地震時に,開き戸の戻る動きとは独立し開き戸の戻る動きで解除されず,開き戸の開く動きを許容しない状態を保持し,d’地震のゆれがなくなることにより開き戸の戻る動きと関係なく係止体が開き戸の開く動きを許容して動き可能な状態になることはなく,地震のゆれがなくなっても,開き戸のロック状態は,あくまでも開き戸が戻る(すなわち)閉じる方向の動きと連動して,その動きに従属して,解除するのである。
e’開き戸の地震時ロック方法f’開き戸にばね付き蝶番と開き戸の地震時閉止装置とを併用した地震対策付き開き戸・引き出し・棚( ) 本件発明と,原告側製品の構成を対比すると,上記( )のd’は構成要件 21Dとは異なることは明らかである。よって,原告側製品は構成要件Dを充足しない。
( ) 被告は,本件特許の出願経過において提出した回答書(甲44)におい 3て 「 ばたつかなくなる』ものは当然…範囲外であります 「 扉等がばた ,『 」,『つくロック状態』を示す図18及び図19の実施例では地震時に係止体は扉等の係止具に係止せず(扉等の開く動きは)単に停止されます 「図18」,及び図19の実施例は図6及び図7の実施例の構成から『係止体が扉等(の係止具)に係止』する構造のみを除去している 「ばたつくロック状態と 」,なるロック方法という表現である以上『ばたつく』状態と『ばたつかない』状態のいずれも許容されたロック方法ではない」と説明している。これによれば,被告は,@扉が係止体と係止具とによって係止される場合,A地震時に扉がばたつかないロック状態となるロック方法,B地震時に扉がばたつくロック状態となったり,地震時に扉がばたつかないロック状態となったりする場合のロック方法を,本件発明1の技術的範囲から意識的に除外したことは明らかである。
ばね付き蝶番併用の原告側製品に係る棚等においては,地震が続く間に,収納物のもたれかかりがなくても,係止体は係止具(支持体)と係止し,扉をそれ以上開く方向への動きを許容しない状態になることを予定した方法であるので,構成要件Aを充足しない。
4 争点4(原告側製品の本件発明の技術的範囲の属否及び原告製品2の製造販売行為についての間接侵害の成否について-構成要件B充足性)について【被告の主張】構成要件Bの「棚本体に取り付けられた装置本体に扉等が閉じられた状態からわずかに開かれるまで当たらない係止体」とは,通常使用時も地震時も閉止状態を含めてそこからわずかに開かれるまでの間は開き戸とは接触しないということである。
すなわち,本件発明の係止体は通常使用時に開き戸が閉じられる途中に(閉止の前に 軽く退避するだけであり わずかに開かれるまでに当たらない 逆 )「 」 (にわずかに開けば当たる)係止体である。
原告側製品に係る棚も,通常使用時も地震時も「わずかに開かれるまで当た」(),。 らない 逆にわずかに開けば当たる係止体であり 本件発明と相違しないなお,原告は,原告側製品における係止体の停止位置が,本件発明における停止位置と異なるから,原告側製品は構成要件Bを充足しないと主張するが,「」 , わずかに開かれるまで当たらない ことについては両者には何ら相違はなくまた量的な相違による著しい効果はないのであるから,原告の主張は理由がない。
【原告の主張】構成要件Bの係止体は,地震時に係止具の奥の壁面に当たる手前のわずかに開かれた位置で係止具との関係でばたつくロック状態になるようにするため係止具には係止することなく単に開き停止されるものである。
そして,地震時には,その係止体を開き停止させるために地震を検知した球がロック位置まで移動してすぐに係止体を上記停止位置で当たる前に開き停止(ロック)させるものである。
これに対し,原告側製品に係る棚においては,係止体は,ずっと手前で係止具に設けられた弾性片の傾斜面に当たる(衝突する)構成になっている(別紙動作説明図(原告 。)したがって,原告製品2の係止体が係止具に当たる位置は,本件発明1と異なるので,構成要件Bを充足しない。
5 争点5(原告側製品の本件発明の技術的範囲の属否及び原告製品2の製造販売行為についての間接侵害の成否について-構成要件C充足性)について【被告の主張】係止体の地震時の状態に関する構成要件Cの意義は,地震時に球が独立してロック位置に移動し扉等の戻る動きでは安定位置に戻らないから解除状態にならず係止体の動き不能状態が保持されるという意味であり,係止体の球による動き不能状態は扉等の戻る動きに左右されないという意味である。
原告側製品に係る棚も,係止体の球による動き不能状態は扉等の戻る動きに左右されず保持されるから,本件発明1,4と同じである。
【原告の主張】原告側製品に係る棚は,地震継続中に球体が係止位置に来たとしても,それだけでは足らず,それとともに係止体自身も球の係止位置の真下(弾性片の頂上部)に来なければ,結局係止具(の係止部)と係止できない構成をとっているから,構成要件Cを充足しない。
6 争点6(原告側製品の本件発明の技術的範囲の属否及び原告製品2の製造販売行為についての間接侵害の成否について-構成要件D充足性)について【被告の主張】( ) 本件明細書の実施例の図19の構成と,原告側製品における地震終了時 1の状態を図示したのが,別紙動作説明図(被告)である。
ア A.の図(係止体が拘束されて地震終了する場合)。() この図は本件特許の実施例19の地震終了時の状況である 係止体 6が係止具(7)に拘束されている(例えば,収納物のもたれかかり,扉等(91)のヒンジの摩擦等の外的な力が作用して扉等がわずかに開いて地震終了する)場合である。この様に拘束されている場合には係止体は係止具から開く方向の力を受け,その結果球(9。なお,以下番号の記載は省略する )は係止体に押さえられて動くことができない。この図の拘束状 。
態から係止体を解放するためには,使用者の押す力による扉等の戻る動きが必要である。
すなわち,原告のいう特別の手段(解放のための扉等の戻る動き)を講じることにより 球は動き可能となりそのロック位置から安定位置へと 扉 ,(等の戻る動きと関係なく)復帰する。つまり,拘束状態から解放すれば係止体は「扉等の戻る動きと関係なく…動き可能な状態」になる。
以上は,原告側製品においても同様である(a.の図 。)イ Aの2.の図(収納物等の外的な力が作用せず係止体が拘束されて地震終了する場合)この図は,例えば開く方向に強いゆれがあった直後に地震終了する場合における本件特許の実施例図19の地震終了直後の状態であり,係止体が係止具に拘束されている。
この様に拘束(地震終了直後に拘束)された場合には係止体は係止具から開く方向の力を受け,その結果球は係止体に押さえられて動くことができない。
図示の拘束状態は,扉等のヒンジの摩擦等がなければ外見で分からない程度のわずかな扉等の戻る動きにより消滅するが,摩擦等があればばね付き蝶番の力又は使用者の押す力による扉等の戻る動きが必要である。
以上は,原告側製品においても同様である(aの2の図 。)すなわち,aの2.の図は,例えば開く方向に強いゆれがあった直後に地震終了する場合における原告製品2の地震終了直後の状態であり,原告製品2の係止体は係止具(その弾性片)に拘束されている。
ここで原告側製品の扉等はばね付き蝶番による閉じる方向の力を伴うことが必須要件となっているので,aの2.の図に示す状態は地震終了直後だけであり,その後直ちに扉等はばね付き蝶番により閉じられていく。
閉じられる過程で拘束状態から係止体が解放されれば球は動くことが可能となりロック位置から安定位置へと(扉等の戻る動きと関係なく)復帰する。
以上で明らかなとおり,本件発明も原告側製品もその係止体が地震終了直後に拘束状態になった場合には拘束状態から解放しなければ係止体は「動き可能な状態」にはならない。原告側製品においても拘束状態から解放すれば係止体は「扉等の戻る動きと関係なく…動き可能な状態」になり本件発明と同一である。
ウ B.の図(係止体が拘束されずに地震終了する場合)この図は,扉等が閉じられた時点で「ゆれがなくなる」場合である。
すなわち,本件明細書の実施例の図19においてゆれがなくなる地震終了時に扉等が閉じられた状態であり係止体が係止具から離れており拘束されていない場合である。
この様に扉等が閉じられて地震終了する場合には,係止体は係止具から力を受けないため球は動くことが可能である。
すなわち,この様な場合には「扉等の戻る動き」はないのであるが,それにもかかわらず球は自然に動いてそのロック位置から安定位置へと(扉等の戻る動きと関係なく)復帰する。
すなわち,係止体は「扉等の戻る動きと関係なく…動き可能な状態」になる。以上は,原告側製品も同じである(図面は省略する 。。)( ) このように,地震のゆれがなくなった際,係止体と係止具を当接状態か 2ら解放するための開き戸の「解放のための戻る動き」が当然に必要であるから,構成要件Dの「扉等の戻る動きと関係なく前記係止体が扉等の開く動きを許容して動き可能な状態になる」の「扉等の戻る動き」の概念には,係止体を係止具から解放するための戻る動きを含まない。つまり,構成要件Dの「扉等の戻る動きと関係なく」との用語は,係止体が拘束されて地震が終了するという特別な条件ではその拘束から解放する必要はあるが動き不能状態の原因(本件特許の実施例では球がロック位置にあること)を「扉等の戻る動き」により除去する必要はなく (球が置かれる底面の傾斜により)自然 ,に除去されるとの概念として用いられていると解釈すべきである。
そして,上記のとおり,原告製品2も係止体を係止具(その弾性片)から解放してやれば「扉等の戻る動き(具体的には,使用者が扉を押したり,蝶番の力で戻したりする動き と関係なく係止体は動き可能な状態になる 別 )」 (紙動作説明図(被告)図a ,図aの2 。..)したがって,原告製品2の構成要件dは本件発明1の構成要件Dと同一である。
( ) 原告は,被告の審査過程において提出した書面などによれば,ばね付き 3蝶番による扉等の戻る動きを用いて係止体を解除させる方法(構成)を含まないものと限定して本件特許を取得した,と主張する。
しかし,いずれの記載も動き不能状態の原因を除去するのに「扉等の戻る動き」は必要ないとの解釈を前提とするものであって,被告の主張とは矛盾しない。
【原告の主張】( ) 構成要件Dには「関係なく」という用語が使用されており,構成要件C 1には「独立して」という用語が使用されている。
,, 関係とは あるものが他のものと何らかのかかわりを持つことをいうから「扉等の戻る動きと関係なく前記係止体は」は 「前記係止体が扉等の戻る ,動きと何らかのかかわりを持たないこと」という意味になる。
独立とは 他に束縛または支配されないことをいうとされているから 前 ,, 「記係止体は扉等の戻る動きとは独立し」は 「前記係止体が扉等の戻る動き ,に束縛または支配されないこと」という意味になる。
「」「」, , 関係なく と 独立して は 以上のように同じ意味を有しているので便宜上,以下「関係なく」に統一する。
構成要件Dの「扉等の戻る動き」については,本件明細書中には戻る動きを生じさせる原因の種類を特定する記載がないから,単純に戻る動き一般を想定すればよいことになる。
扉等は,扉等を閉じる方向に移動させるに足りる何らかの種類の強制力が外部から加わらなければそのままの位置に制止していることになる。ところが,構成要件Dは「係止体は,扉等の戻る動きと関係なく,扉等の開く動きを許容して動き可能な状態になる」というのであるから,係止体は 「扉等,の戻る動き」がなくても,すなわち外部からのいかなる種類の強制力が扉等に加わらなくとも,自動的に扉等の開く動きを許容してこれを動き可能な状態にさせるという技術的手段を必須のものとする方法であるといわなければならない。
,, ,, したがって 構成要件Dは 地震のゆれがなくなることにより 係止体は扉等の閉じる方向への移動がなくても,常に自動的に扉等の開く動きを許容して扉等を動き可能な状態にする,すなわち,常に必ずロックが自動的に解除されることを意味する。
( ) また,被告は,特許庁に対する平成14年11月26日付け「優先審査 2に関する事情説明書」の中で 「特許2860295号の解除方法は扉の動 ,きを用いて解除するものである。一方本願発明は…〔地震のゆれがなくなることにより扉等の戻る動きと関係なく前記係止体は扉等の開く動きを許容して動き可能な状態になる〕ものであり扉等の動きを用いて解除するものではない。すなわち該公報に示されたものとは相違する 」と主張し,平成15 。
年2月7日,本件特許の拒絶理由通知書に対する意見書の中で 「本願発明,の請求項1及び2は『扉等の戻る動きと関係なく係止体は解除可能な状態になる』ものであり扉等の戻る動きを用いて解除するものではない」と主張していた。また,被告は,平成15年10月26日,特許庁に対し,本件特許の拒絶査定不服審判請求書を提出し「該特許(判決注・特許第2860295号)はあくまでも扉等の閉じる動きにより解除するもの(旧式のロック方法)であり本願発明における『係止体は扉等の戻る動きとは独立し扉等の戻る動きで解除されず (重要な改良点)とした新しいロック方法とは明確に 』異なっている」と主張した。
そうすると,被告は,特許庁に対し,本件発明の技術的範囲につき,構成要件Dの解釈として,ばね付き蝶番による扉等の戻る動きを用いて係止体を解除させる方法(構成)を含まないと限定して本件特許を取得したのであるから,本件発明の技術的範囲には,このようなばね付き蝶番による扉等の戻る動きを用いて係止体を解除する方法(構成)は包含されないものというべきである。
( ) 原告製品2を使用した原告側製品では,地震のゆれがなくなったときに 3ロックを解除するには必ず扉に対してその閉じる(戻る)方向への強制力を加える必要がある。ばね付き蝶番は,扉に強制力を与える機能を果たしている。
よって,原告側製品は,構成要件Dを充足しない。
それゆえ,原告が,取引先において非侵害品の方法に使用する目的で原告製品2を販売したり,取引先において非侵害品(物)の実施に使用する目的で原告製品2を販売したとしても,そのような原告の行為は,本件発明の間接侵害には該当しない。
7 争点7(権利行使制限の抗弁-特許法36条6項1号及び2号該当性)について【原告の主張】( ) 特許を受けようとする発明が明確であるかどうかの判断は,単に請求項 1の記載だけではなく,明細書・図面や出願当時の技術常識を考慮して行うべきである。
また,特許を受けようとする発明が明確であるとは,発明が実体的に明確であるだけでは足りず,請求項に記載された発明が明確であることを要するという意味である。
本件特許の請求項1には「扉等がばたつくロック状態」との記載があり,その実施例として図18,図19,図20を示している。
そして 本件明細書の発明の詳細な説明には 係止体 2 の係止部 2 ,, 「() (e)は扉等の係止具(5)の係止部(5a)に係止することなく単に停止さ」。 れるものであり地震時に扉等がばたつくロック状態となる との記載があるしかし,かかる文章を読んでもそれだけでは扉等がばたつく説明としては不完全であって,当業者にとって理解できない。
本件明細書中には「ばたつく」とかその反対概念である「ばたつかない」のいずれの概念についても,それ以上に説明されていないから,結局「扉等がばたつくロック状態」の明確な定義がなされていないことになるから,請求項に記載された発明が明確でないということになる(2号違反 。)( ) 仮に上記( )に関して,本件明細書の発明の詳細な説明に「ばたつく」の 21概念を示唆する記載があったとしても,その内容を発明の詳細な説明中に記載しなければ,請求項の記載だけでは詳細な内容が明らかにならない点を補充するという明細書の機能が果たされないことになる。
本件では,本件明細書の実施例の図面・説明だけでは「扉等がばたつかないロック状態」がいかなる状態を指すのか不明であり,発明の詳細な説明には特許法が要求する程度の発明の開示がないから,本件発明1については,発明の詳細な説明に記載がないということになる(1号違反 。)( ) また,本件特許の請求項1には「扉等が閉じられた状態からわずかに開 3かれるまで当たらない係止体」との記載があるが,ここにいう「当たらない係止体」が,何に当たるのか不明確である。
この点について被告は 「当たらない」といえば「いかなるものにも当た ,らない」という意味であるというが,単なる弁解にすぎない。したがって,本件明細書の特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項2号に違反する。
( ) 仮に上記( )の「係止体」の当たるものが「扉等」であるとすれば 「係 43 ,止体」が「扉等」に当たって扉等をロックする技術的構成が詳細な説明中に記載されていない。したがって,特許法36条6項1号に違反する。
( ) 本件発明は,その名称が「地震時ロック方法」とされているけれども, 5請求項1に記載された各状態を実現するという目的を達成するために必要な具体的手段・手順などが詳細な説明中に一切記載されていないから,結局,特許を受けようとする発明が不明確であるといわざるを得ない。よって,本件明細書の特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項2号に違反する。
( ) 請求項1の「わずかに」の意味は不明確である 6被告は 「わずかに」は,特許請求の範囲について一般的に用いられてい ,る用語であるというが,決して一義的に明らかな用語ではなく,課題の解決との関係で極めて多義的なものである。したがって,それぞれ発明の詳細な説明中でその技術的意味が説明されて定義が与えられているが,本件明細書の発明の詳細な説明には「わずかに」について全く説明はない。
よって,本件特許には,特許法36条6項2号に該当する違法がある。
( ) 以上のように,本件明細書の特許請求の範囲の記載は,特許法36条6 7項1号及び2号に違反するものであり,同法123条1項4号に該当する無効理由がある。
【被告の主張】本件明細書の記載によれば「係止」は扉等が「開く方向も閉じる方向も動き停止される」との定義と解釈できる。
「ばたつくロック状態となるロック方法」とは一般用語の「ばたつく」状態であって,扉等が「係止されることなく単に開く方向に停止される」ロック方法であることは明らかであり何ら不明瞭ではない。
また本件明細書においては 「ばたつくロック状態」と「ばたつきのほとん ,どないロック状態」が対照的に区別され係止した場合における遊びの存在は暗示されているのであるから「ばたつく」という動きは遊びに起因する動きとは質的に異なるものであることは明らかであり,原告の「ばたつくロック状態がいかなる状態をいうのかについて発明の詳細な説明に実質的な記載がない」との主張は理由がない。
「」 , わずかに開かれるまで当たらない は対象を特定していないのであるから「装置本体の係止体」がわずかに開かれるまではいかなるものにも当たらないという意味である。
係止体は「扉等」に係止具が取り付けられそれに当たり,開く動きを許容しない。
日本語で対象を特定せず「当たらない」といえば,いかなるものにも当たらないという意味である。
よって,本件明細書の特許請求の範囲の記載には,原告主張の無効理由はない。
8 争点8(権利行使制限の抗弁-旧特許法36条4項該当性)について【原告の主張】本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0005】の21から22文,28文,95文には不明瞭な記載があり,当業者が技術上の意義を理解できないから,旧特許法36条4項違反の違法があり,本件特許には,同法123条1項4号の無効理由がある。
【被告の主張】争う。
9 争点9(権利行使制限の抗弁-特許法29条1項3号該当性)について【原告の主張】( ) 特開平10-317772号の公開特許公報(甲25。以下「甲25公 1報」という )には本件発明と同一発明が記載されている。 。
( ) 特開平10-115140号の公開特許公報(甲29。以下「甲29公 2報」という )に記載された発明と本件発明1を対比すると,両者の構成要 。
件は同一である。
( ) よって,本件発明は特許法29条1項3号に該当する発明であるから, 3同法123条1項2号所定の無効理由がある。
【被告の主張】甲25公報に係る発明は「戸当たり」機能を持った係止体によって地震時に「当たった位置」すなわち閉じられた位置で開き戸をロックするロック方法である( 戸当たり」機能とは 「開き戸を閉じた時に扉が行き過ぎないように」 「,する機能である 。。)開き戸に「当たる」こととその当たる位置で該開き戸との間に遊びがあってはならない「戸当たり」の係止体における後記10【被告の主張】記載の技術課題自体全く記載されていない(開示されていない)のであって本件発明の新規性のみならず進歩性を否定する公知文献とは到底ならない。
10 争点10(権利行使制限の抗弁-特許法29条2項該当性)について【原告の主張】( ) 当業者は,甲25公報と特開平9-78925号(甲26。以下「甲2 16公報」という )に記載された発明に基づいて容易に本件発明を想到する 。
ことができた。
( ) その相違点1は 「地震のゆれがなくなることにより(起因して)扉等 2,の開く動きを許容するという構成」が上記甲26公報に開示されていない点,, であるが これは甲25公報及び甲29公報の各発明に開示されているからこれを適用すれば,その要件を具備することは極めて容易である。
( ) その相違点2は,本件明細書の請求項1記載の地震時ロック方法を請求 3項3,4に記載された「引き出し 「棚」に用いることまでは開示していな 」い点であるが 「引き出し 「棚」に上記記載の地震時ロック方法を用いる ,」ことは,当業者にとって容易に想到可能な技術であると解される。
( ) 以上によれば,本件発明は,進歩性という特許要件を欠くこと明らかで 4ある。
よって,本件特許には,特許法123条1項2号所定の無効理由がある。
【被告の主張】( ) 甲25公報と甲26公報のいずれにも本件発明の重要な技術課題,すな 1わち@開き戸の動き始めと係止体の動き始めに時間差を確保すること,A通常使用時に不必要な衝撃を受けないこと,B開き戸の浮き上がりがあっても確実作動し誤作動もないこと,C地震終了時に危険回避できること,の開示がない。したがって,両公知文献を組み合わせて本件発明を想到することは技術課題の開示がないという阻害要因があるから,当業者にとって容易でない。
( ) 本件発明は,開閉の度に「動く」係止体でありながら,このような係止 2体は,甲25公報に係る発明のように「戸当たり」機能を前提とした発想であったのを逆に「戸当たり」を否定し「ばたつくロック状態となるロック方法」にしたのである(甲26公報に係る発明は,通常使用時の開閉においてそもそも動かない係止体を用いている点で本件発明と技術思想を異にする 。このように「戸当たり」を否定することは,いわゆる意外性があり, 。)意外性があるという阻害要因となるから,当業者にとって想到することは容易ではなく進歩性がある。
( ) また,甲25公報に係る発明のロック方法では,施工時の取付けの狂い 3等によって,閉止状態で開き戸がきちんと閉じられずに開く方向に浮き上が,, った状態になっている場合には 係止体が常に持ち上がった状態になるから地震検出体としての球がロック位置に移動できないことになり,地震が起こっても作動しない(確実作動しない 。さらに,開き戸が閉止状態で開き戸 )が開く方向に浮き上がった状態になっている場合には,通常使用時において開き戸を閉じるとその勢いで開き戸が閉じる方向にたわんだ後に戻って浮き上がることになるが,その様な動きにより球は(閉じる毎に係止体の振動により動くから)持ち上がる係止体にロック位置で挟まれてしまうことになるから開き戸はロック状態になってしまう。
すなわち,通常使用時に開き戸を閉じるたびに開き戸はロックされ(誤作動し)強制解除しなければ使用者は開き戸を開くことができないという致命的欠陥になる。この様な欠陥があるからこそ逆に,甲25公報記載のロック方法においては通し孔Fによる強制解除手段を必ず設けておかなければならないといえる。
これに対して本件発明の係止体は,開き戸が「わずかに開かれるまで当たらない」係止体であり閉止状態で係止体は開き戸に当たらないのであるから仮に開き戸が浮き上がった状態になったとしても「当たらない 。したがっ」て,地震が起これば確実作動するし,通常使用時の誤作動もないから,少なくとも誤作動のために強制解除手段を設けておく必要はない。
したがって,本件発明は,甲25公報に係る発明と比較してロック作動を確実にし,危険回避するという効果が著しいのであるから,著しい効果を達成できたという阻害要因が存在するので当業者にとって想到することは容易ではない。したがって,甲25公報と,これに係る発明とはそもそもロック方法の技術思想において異なる甲26公報とを合わせて本件特許には特許法29条2項の無効理由があるとする原告の主張は理由がない。
11 争点11(権利行使制限の抗弁-特許法29条の2該当性)について【原告の主張】( ) 平成11年3月2日に公開された特許第3048357号特許公報(以 1下「甲35公報」という。なお,その公開公報(特開2000-248812号公開特許公報)は甲27)について原告が出願した甲35公報に係る特許出願は,本件特許の出願日前の出願であって,その出願後に出願公開された。本件発明1ないし4は,この甲27公報に記載されている明細書及び図面に記載された発明と同一か,少なくとも実質的に同一であるから,本件特許は特許法29条の2に違反して特許されたものであり,同法123条1項2号の無効理由がある。
( ) 平成11年3月9日に公開された特開2000ー257323号公開特 2許公報)が (以下「甲28公報」という )について ,。
本件発明は,本件特許出願の日前に特許出願された甲28公報に係る発明と同一である。よって,本件特許には,特許法123条1項2号所定の無効理由がある。
【被告の主張】( ) 甲35公報は,原告製品2と類似するが同一ではない試作品に係る発明 1の特許出願についての公報であって,本件発明と同一ではない。よって,原告の主張は理由がない。
( ) 本件発明の係止体は,地震のない通常使用時に扉等が開かれる際に動く 2係止体である。
これに対し,甲28公報に記載されている係止体は,地震のない通常使用時に扉等が開かれる際に静止したままであり動かない係止体であって,本件発明とはロック方式が異なる。よって,本件特許の無効理由にはならない。
12 争点12(先使用の抗弁の成否-仮定抗弁)について【原告の主張】原告が平成11年3月2日に出願した甲35公報に係る発明と,本件発明が同一又は実質的に同一であることは,上記11【原告の主張】( )において主1張したとおりである。特許法79条にいう発明の実施である事業の準備とは,特許出願に係る発明と同じ内容の発明につき即時実施の意図があり,かつ,その意図が客観的に認識され得る態様,程度において表明されていることをいうところ,原告は,上記出願日以前に,甲35公報に係る発明を完成させ,かつその実施品を製造販売する目的及び設備を有していたのであり,原告が,本件特許の出願日(平成11年3月18日)において,同条項にいう事業の準備をしていたことは明らかである。したがって,原告は,甲35公報の発明の詳細な説明に記載された実施例を具体化する事業の準備をしている者に該当する。
先使用による通常実施権は,特許出願の際に当該通常実施権者が現に準備していた実施形式だけでなく,これに具現化された発明と同一性を失わない範囲内において変更された実施形式にも及ぶものである。
原告が事業の準備をしていた実施形式は,甲35公報の実施例の図面記載の概念を具現化した製品であるが,これと原告がその後に商品化して実際に工業生産している原告製品2とは同一性を失わない範囲内での実施形式であると解することができる。
そうすると,原告は,上記通常実施権に基づき,原告製品2について,適法に実施行為を行うことができるというべきである。したがって,原告自身の実施行為について,直接侵害は存在しない。
, , また 原告が適法に製造した原告製品2を得意先が原告から購入して使用し,。 地震対策付き棚等を製造販売する行為は本件特許権に抵触するものではない, 。 よって 原告の得意先に対する原告製品2の販売行為も間接侵害にあたらないよって,仮に原告の原告製品2の製造販売行為が本件発明の技術的範囲に属,, , , するとしても 原告は 上記のような先使用権を有するから その実施行為は被告の本件特許権を侵害するものではない。
【被告の主張】甲35公報に記載のロック装置と原告製品2のロック装置は同一ではない。
原告製品2は仕切りにより仕切られた振動エリアにおいて球が動くのであるが,甲35公報はその図2に示されるように仕切りのない縁部の上で球が動くのであり,最も重要な地震時の球のロック位置への動き及び地震終了時の球の安定位置への戻る動きにおいて異なるのであって,機能に影響する重要な構成において異なるロック装置について先使用権はない。
しかも,甲35公報に開示されていない「ばたつく」ロック方法にするためのばね付き蝶番と弾性片の結合について先使用権が成立しないことはいうまでもない。
13 争点13(訴えの追加的変更によって追加された請求の趣旨第3項の訴えは,専属的合意管轄を無視してなされたものであり,管轄違背の違法があるか )について。
【被告の主張】本件新実施許諾契約21条には,同契約に関する紛争の管轄裁判所は,被告の事務所所在地(被告住所地と同じ)とされているのであるから,原告が同契約に基づく請求権に関する本件請求の趣旨第3項の請求を訴えの追加的変更により定立することは,同契約の管轄合意に反している。
【原告の主張】請求の趣旨第3項の訴えは,訴え変更の要件を具備しているし,旧請求について受訴裁判所に管轄権があれば,原則として新請求についても関連裁判籍を生じる(民事訴訟法7条 。よって,被告の主張は理由がない。 )14 争点14(原告による原告製品2の製造販売行為に対して本件新実施許諾契約20条1項に基づく差止請求権は認められるか )について。
【被告の主張】( ) 原告製品2は,本件実施許諾契約の対象とされたか否か,また,本件新 1実施許諾契約の対象から除外されたか否か。
ア 被告は,平成10年9月頃に原告製品1を開発したところ,同年夏頃,原告代表者から実施を許諾してほしいという申出があり,同年12月25日,本件実施許諾契約を締結し,同日,専ら解約についての条項を定めた同日付けの「実施許諾契約に関する覚え書き」による契約を締結した。
被告は,原告製品1に関連して,当時合計3件の特許出願や意匠出願をしていたが,いずれも当時公開されていたものではなく,また原告にも公開していない。すなわち,特定の知的財産権を実施許諾するという合意がなされたのではなく,仮に出願後登録が認められなかったとしてもノウハウの使用契約のみでも有効であるという前提で,本件実施許諾契約は成立した。
イ 原告製品2は,被告が実験の結果分かった原告製品1の欠点や,アドバイスをしたことを基に,原告が図面を引くという作業をして(被告が図面を提供してはいない ,具体的には原告製品1(上下動する係止体を球 。)でロック状態と解除状態を切り替えるという構成)をベースにし,原告製品1の係止体を通常使用時に下降した状態に設計変更したものである。い,, 。 わば 原告製品2は 原告と被告の共同開発により作製されたものである原告も,原告製品1をベースに設計変更しただけという意味で,原告製品2が被告の権利範囲に属することに異論はなかった。そして,原告製品2が市販可能な製品となった時点で,原被告間で本件覚書による契約を締結した。これによって,本件実施許諾契約の対象製品に原告製品2を追加した。
その後,原告は,本件調停成立時まで,原告製品2についても被告に対して約定どおりの実施許諾料を支払い続けてきたのである。
ウ 本件調停においては,原告から原告製品2については全く話が出てこなかった。本件調停の申立内容も実施許諾料の減額請求のみであり,原告製品2の権利関係に問題があることからこれを本件実施許諾契約の対象から外してほしいなどといった要求が出ているとは,被告は調停委員からは一度も聞いたことがない。
また,本件実施許諾契約と同時に締結した平成10年12月25日付けの「実施許諾契約に関する覚え書き」は,原告からの要請に基づき,その破棄に被告は応じているが,本件覚書の破棄については,何ら原告からは要請がなかった。
被告は,本件調停成立後の本件新実施許諾契約は,本件実施許諾契約及びこれと一体となる本件覚書の契約条項に若干の修正をして継続しているという認識である。契約対象物件の変更は全く考えていない。
エ 本件実施許諾契約は,特許等出願の実施許諾契約という形をとっているが,出願内容は契約締結当初から明示・特定されておらず,その後に出願が特許等の権利として認められなかった場合の契約の効力に関しても何らの約定はない。結局,同契約は原告製品2として具体化された被告の考案を原告が実施することについての実施許諾契約である。
原告が,契約成立後に,被告出願が特許になっているか,抵触するか等の個別の出願を問題として契約の効力を争うことは,債務不履行によって契約が解除された後になってそのことを問題にすることにより,契約存続時以上の利益を受ける結果となり不当である。
現に本件新実施許諾契約解除時点においては被告出願のすべてが消滅していたわけではなく,その意味において契約締結時と契約解除時における状況に何も変化はなかったのであるから,原告製品2がいずれの被告出願に対応するか検討するまでもなく,原告製品2が本件新実施許諾契約の実施許諾の対象である以上,同契約20条1項に基づき原告は原告製品2の実施停止義務を負う。
( ) 原告製品2の製造販売行為は,本件新実施許諾契約20条1項の「本件 2発明等の製造等の実施」に該当するか否か。
。, 原告の主張は争う 原告製品2が本件新実施許諾契約の対象であることは上記( )のとおりであり,そうである以上,同契約20条1項に基づき,原 1告製品2の実施行為に対して差止請求権を行使できることは明らかである。
【原告の主張】( ) 原告製品2は,本件実施許諾契約の対象とされたか否か,また,本件新 1実施許諾契約の対象から除外されたか否か。
ア 被告は,本件新実施許諾契約と本件実施許諾契約は実質的に同一であると主張するが,否認する。本件実施許諾契約は,本件調停条項1項により調停成立と同時に合意解約されており,本件覚書による合意は,付随的合意にすぎないから本件実施許諾契約とともに消滅した。また,本件調停条項2項( )により,原告が競業避止義務を負う製品の概念が変更されたこ 3とに伴い,原告製品2は明確に契約の対象ではなくなったが,原告製品1は引き続き契約の対象として残っており,しかも本件覚書に記載された支払方法に従って実施料を支払っていたために,あえて本件調停条項の中では本件覚書から「原告製品2に関する合意部分」が失効したことを明言しなかったまでである。
イ 原告は,被告から本件実施許諾契約15条の「本件発明等に係る製品と競合する類似製品」に原告製品2が該当すると強硬に言われたため,該当しないと考えたものの,被告との軋轢を避けるために対価を払っていたものである。
,, ウ 原告は 本件調停手続で原告製品2に係る本件覚書に言及してはないが被告が本件覚書を調停委員に示す必要があると考えれば,示せばよかったのである。被告自身も,本件覚書は細目具体的な実施料支払方法に関する付随的合意であって,到底原告製品2を本件実施許諾契約の対象とすることを目的とするような重要なものとは考えていなかったのである。その証拠に,被告は平成14年3月11日付けの手紙(甲56)をもって,原告に対し,単価を15円に下げて合意するか,同年5月31日で本件実施許諾契約を終了させるかを選択するよう迫ってきた。しかしその際,被告は本件実施許諾契約と平成10年12月25日付けの覚書についてのみ記載し,本件覚書については言及していないが,これは本件覚書の締結が,独立した契約の締結ではないことを裏付ける。
( ) 原告製品2の製造販売行為は,本件新実施許諾契約20条1項の「本件 2発明等の製造等の実施」に該当するか否か )について。
ア 被告は,原告製品2に関して,原告の得意先に対し,本件警告書を送付している。
イ 被告は,原告製品2が本件調停条項によって成立した本件新実施許諾契約の対象に含まれているから,本件新実施許諾契約にも承継された20条,, 1項を援用して 平成16年9月6日付内容証明郵便による解除によって契約上の差止請求権を取得しているとして,原告製品2の「実施の停止」を答弁書で求めている。
仮に20条1項の文言のとおり「本件発明等の製造等の実施」行為の差止請求権が問題になるとしても 本件新実施許諾契約1条1項によれば 本 ,「件発明等」とは「甲の名義において平成10年12月25日までに出願された全ての発明の開き戸の地震時自動ロック装置に関するものをいう」と定義されているので,本件発明のように平成11年3月18日に出願された発明は,上記「本件発明等」に該当せず,したがってまた20条1項の「本件発明等の製造の実施」の「本件発明等」にも当たらない。
「本件発明等の製造の実施」とは表現はあいまいであるが 「本件発明,に抵触する行為」を指すと解されるところ,原告製品2は,これには該当しないから,たとえ,被告が主張するような,契約上の差止請求権なるものが理論的に発生する余地があるとしても,本件においては,その発生要件を具備しておらず,この差止請求権は発生する余地がない。
15 争点15(被告による本件新実施許諾契約20条1項に基づく差止請求権の行使は権利濫用に当たるか )について。
【原告の主張】原告製品2に関連する特許7件のうち6件につき,特許が無効であることが確定している。そして,残る1件の特許に原告製品2は抵触しない。しかも,原告は被告から原告製品2に関する図面の引渡しも受けておらず,他に秘密情報の開示も受けていないから,秘密保持義務も負わない。
本件実施許諾契約締結後におけるこのような重要な事情の変化があり,かつ原告が秘密保持義務すら負わない場合において,契約終了後まで原告製品2に関する競業避止義務があるとしてその債務不履行責任を求める行為は,独占禁止法上の不公正な取引方法に該当し違法である。
したがって,たとえ,原告製品2の製造販売行為が形式的に本件新実施許諾契約20条1項に該当するとしても,被告が原告に対して同契約に基づく差止請求権を行使することは権利の濫用に当たる。
【被告の主張】本件新実施許諾契約20条1項の契約終了後に実施を停止する義務を課する条項は,独占禁止法に違反するものではない。被告は,原告以外に4社に対して同種の実施許諾をしており,他の代替製品が既に市場に存在しているため,競争が制限されることはないからである。
争点に対する判断
1 争点1(本件意匠権及び本件特許権に基づく差止請求不存在確認の訴えにつき確認の利益はあるか)について( ) 確認の訴えは,訴えを提起した者の権利又は法律的地位に危険・不安定 1が現存し,かつ,その危険・不安定を除去する方法として原告・被告の間で当該権利又は法律的地位の存否を既判力のある判決をもって確定することが有効かつ適切であると認められる場合に限り,確認判決を求める法律上の利益(確認の利益)のある適法な訴えと認められる。
( ) 本件意匠権に基づく差止請求不存在確認の訴えについて 2原告は,原告製品1は平成16年9月17日をもって製造を中止したと主張し,平成18年5月11日に原告製品1の金型を廃棄したことを立証した(後記2 。これによれば,原告は,今後,被告が本件意匠権侵害すると )主張している原告製品1の製造販売を行わないと主張しているのであり,そうである以上,原告が今後も原告製品1を販売等することを前提として,これらの行為について被告が本件意匠権に基づく差止請求権を有しないことの確認を求めることについて法律上の利益を有するのか疑問の余地がないではない。
しかし,他方,被告は,原告製品1についても,原告製品2とともに,未払の実施許諾料及び実施許諾料相当損害金がある旨主張して,原告に対しこれらの金員の支払を求める訴えを提起しており(前記争いのない事実等( )5イ ,本件訴訟においても,原告が今後原告製品1を販売し,本件意匠権を )侵害するおそれがあると主張している(後記争点2に関する被告の主張 。)また,被告が取引先に対して送付した本件警告書には原告製品1に関する知() 的財産権として本件意匠権が挙げられている 前記争いのない事実等( )ウ5ため,これを読んだ取引先は,原告製品1が本件意匠権侵害しているのではないかと受け取るのが通常である。
弁論の全趣旨によれば,原告は,一旦,小池イマテクスに原告製品1を一括販売した上,これを同社から買い戻し,さらにこれを他の取引先に対して販売しているものと認められる。原告の主張によれば,原告の小池イマテクスに対する一括販売分については,被告に対し実施許諾料を全額支払ったというのであるから,かかる原告の主張を前提とする限り,その時点で意匠権に基づく差止請求権は消尽し,小池イマテクスから買い戻した原告製品1を他の取引先に販売する行為は,何ら本件意匠権侵害するものではないことになる。しかるに,本件新実施許諾契約解除後も上記他の取引先が被告から本件警告書が送付されることによって,原告においては,同取引先から原告製品1が被告の本件意匠権侵害するものであるとの疑いをもたれ,原告製品1に関する販売契約等を解除され,又は原告製品1の今後の販売が阻害されるおそれが存在するものといえる。さらに,上記未払実施許諾料等請求訴訟において被告が,原告がこれまで支払った原告製品1を含む製品の実施許諾料が不足していると主張し,本件新実施許諾契約を解除していること(前記争いのない事実等( )ア)によれば,被告から,今後,原告が販売する原 5告製品1について,実施料の支払がなされていない,すなわち実施許諾を欠くものとして,本件意匠権に基づく差止請求がなされるおそれがあるから,原告は,原告製品1について,本件意匠権に基づく差止請求権を有しないことを既判力のある判決をもって確認を求める利益を有するものというべきである。
被告は,上記未払実施許諾料等請求訴訟のみで原告製品1に関する紛争は解決可能であるから本件特許権に基づく差止請求不存在確認の訴えには確認の利益はないと主張するが,同訴訟のみでは,上記の点についての原告の法律的地位の不安定さを解消することはできないから,この点に関する被告の主張は理由がない。
( ) 本件特許権に基づく差止請求不存在確認の訴えについて 3被告は,原告の複数の取引先に対し,原告製品2をばね付き蝶番と併用した場合にはその吊り戸棚等は,本件特許権に抵触する,今後は原告とではなく吊り戸棚等を販売されている貴社と直接契約することとしたい,もしも実施契約して頂けない場合には本件特許を含む出願公開中の特許出願に関しての特許法65条警告とする旨の本件警告書を原告の取引先に送付している(前記争いのない事実等( )ウ 。本件警告書の上記内容は,要するに,ば 5)ね付き蝶番を取り付けた棚に取引先が原告製品2を取り付けることは特許権侵害行為となり得ることを告知しているものであり,結局,原告が原告製品2を販売することが本件特許権の間接侵害に当たる旨を告知しているものといえる。被告の本件警告書の送付行為によって,原告には取引先から原告製品2に関する販売契約等を解除されるおそれが存在し,ひいては被告から原告に対して本件特許権に基づく差止め等の請求がなされるおそれも存在するということができる。したがって,原告は現在の法律的地位の不安定を除去するために,原告と被告の間において,被告の原告に対する本件特許権に基づく差止請求権の不存在を確認する法律上の利益を有するというべきである。
,, 被告は 原告を被告として提起した前記未払実施許諾料等請求訴訟のみで,,, 原告と被告間の紛争は解決が可能であると主張するが 同訴訟では 原告が本件警告書により,原告製品2の販売をすることができなくなることによる逸失利益相当の損害の発生を防止することはできないなど,原告の現在の法,。 律的地位の不安定を除去することはできないから 被告の主張は理由がないまた,被告は本件新実施許諾契約20条1項に基づく差止請求権がある以上は,本件特許権に基づく差止請求権の不存在を確認する必要はないとも主張するが,被告が本件特許権の設定登録前の実施行為につき補償金請求権を示唆する本件警告書を原告の取引先に対して送付している以上,原告自身にとっても補償金支払義務の存否という法律的地位の不安定を除去する必要があることからすると,本件新実施許諾契約20条1項に基づく差止請求権の存否にかかわりなく,原告は,本件特許権に基づく差止請求権の不存在を確認する法律上の利益を有することが明らかである。
2 争点2(原告による本件意匠権侵害のおそれはあるか)について( ) 原告が被告に対して,平成16年2月18日から同年9月17日までの 1間に小池イマテクスに販売した原告製品1の売上帳記載(甲23の1ないし7)の販売個数相当分の実施料を支払ったことは,当事者間に争いがない。
また,証拠(甲90)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成18年5月11日,タイ国から原告製品1の金型(2個で1組となっているもの)を取り寄せた上,公証人の面前でこれを破壊したことが認められる。加えて,原告代表者は,その陳述書(甲71,72)において,原告製品1が本件意匠権に係る意匠に類似することを認めた上で,上記実施料支払済み分以外に原告製品1を製造販売しない旨を重ねて言明していることが認められる。
( ) 被告は,本件実施許諾契約及び本件新実施許諾契約の存続期間中も,原 2告がことさら原告製品1,原告製品2それぞれの個別の製造販売個数を被告に明らかにしようとしなかったことや,原告が小池イマテクスに一括販売した原告製品1を買い戻して顧客に販売するなどしていることから,原告が将来,本件意匠権侵害する行為に出るかもしれないという疑いを払拭することはできないと主張する。
しかし,証拠(甲72,76ないし78)及び弁論の全趣旨によれば,被告は本件調停が成立する前から,原告製品と特定してはいないものの,自ら開発した地震対策ロック方法の類似品を使用すると,特許出願人として原告の取引先に対し補償金請求をすることがある旨の警告書を原告の取引先に送,, 付しており 原告が小池イマテクスに対して原告製品1を一括販売したのは原告の取引先を隠し,同取引先に対する警告書の送付を防止するための措置であったと認められる。また,被告がこれらの警告書を原告の取引先に送付することができたことによれば,本件調停成立前は原告は本件実施許諾契約に基づき販売先毎に販売数量を被告に報告していたものと認められること,さらに,本件実施許諾契約及び本件新実施許諾契約上,実施料支払義務は客先に販売した日に発生するとされているため(5条。前記争いのない事実等( )ウ ,原告が取引先に販売した形式にしなければ被告に対する実施料支 4)払義務が発生しないこと,被告に対する製造販売個数の報告を原告製品1と原告製品2とで一括して行ってきたのは,本件覚書2条において 「販売合,計数」の報告をすることと定めていることによるものと認められるから(前記争いのない事実等( )イ ,本件調停成立前の実施料の支払について原告 4)に特段の不審な点はなく,また,本件調停成立後に小池イマテクスに対して一括販売したことについても上記のとおり合理的な理由がある。その他,原告が今後,原告製品1を製造するおそれがあるとは認められない。なお,原告が一旦小池イマテクスから買い戻した製品を他の取引先に販売することは,これらの製品については原告が被告に実施料を支払って意匠権消尽させたものである以上,本件意匠権侵害するものとはいえない。
よって,現時点(本件口頭弁論終結日時点)においては,原告による原告製品1の販売等が本件意匠権侵害するおそれ(意匠法37条1項)があるものとは認められない。
( ) 以上によれば,本件意匠権に基づく差止請求権の不存在確認の訴えは, 3理由があるから,これを認容すべきである。
なお,原告は,訴状の請求の趣旨第1項において「被告は,意匠登録番号第1065539号,同号類似の1の各意匠権に基づ」く差止請求権の不存在確認を求める旨記載して,本件類似意匠権に基づく差止請求権の不存在確認も求めている しかし 平成10年法律第51号による改正前の意匠法 以 。, (下「旧意匠法」という )に規定されていた類似意匠制度は,本意匠の保護 。
(紛争の防止,権利行使の迅速化)のため,本意匠の権利範囲(類似範囲)を客観的に明確にすることを目的とするものであって,類似意匠の意匠権は本意匠の意匠権と合体するが(旧意匠法22条 ,その意義は本意匠の意匠 )権の権利範囲を確認するものにほかならない。したがって,本意匠の意匠権を離れて類似意匠の意匠権に基づき権利行使をすることはできないから,本意匠の意匠権とは別に類似意匠の意匠権に基づく差止請求権の不存在確認を求める法律上の利益はないものというべきである。しかし,原告の請求は,本意匠の意匠権とは別の独立した権利としての類似意匠の意匠権のみに基づく差止請求権の不存在確認を別途求める趣旨ではなく,類似意匠の意匠権と合体した一体としての本意匠の意匠権に基づく差止請求権の不存在確認を求める趣旨であると解されるから,主文においては,類似意匠の意匠権に基づく差止請求権の不存在確認請求だけを取り出して同請求を不適法却下することはしないこととする。
3 争点6(原告側製品の本件特許権の技術的範囲への属否及び原告製品2の間接侵害の成否について-構成要件D充足性)について( ) 原告製品2が,別紙物件目録第2記載の構成を備えることは当事者間に 1争いがなく,弁論の全趣旨によれば,原告製品2がほぼ別紙イ号物件目録の図面記載の構成を備えることが認められる。さらに,その地震開始から地震終了時までの動作状況は,別紙動作説明図(原告)及び同(被告)の記載並びに証拠(甲55)によれば,次のとおりであると認められる(なお,以下においては,別紙イ号物件目録の図面及び同図面内の名称を用いることとする。。)ア 平常時平常時には,地震検出体A,B及びCは,鍔部の天井面を外向きに傾斜,。,, させているため いずれも外側の安定位置にある そのため 平常時には係止体は上下方向に可動となり,扉等に取り付けられた係止具が開き方向に移動し,上下に動き可能な弾性片が係止体に当たる場合には係止体が軽く持ち上げられるため,扉等は抵抗を受けることなく開閉することができる。
イ 地震開始時地震時には,ゆれによって原告製品2内部の安定位置にあった地震検出体のうち少なくとも1つがその安定位置から係止体の鍔部天井面(係止位置)に移動し,蓋の下面と係止体鍔部との間に挟まれて固定される。この状態で,地震のゆれによって扉等が開こうとすると,係止具に設けられた弾性片の傾斜面を摺動して傾斜面に沿って弾性片を押し下げながら係止具の弾性片頂上部に達して係止具の壁面に当接するが,係止体の鍔部天井面(係止位置)にある地震検出体の存在のために上動が阻止され,かつ弾性片によって押し上げられるため,係止体も,地震検出体も動くことができない状態(別紙動作説明図(被告)aの2.の場合)になることがある。
ウ 地震終了時上記イのような状況になった場合,地震のゆれがなくなっただけでは,係止体が係止された状態(ロック)は解除されない。
この係止状態を解除するためには,手で押す,あるいは棚等に予めばね付き蝶番を取り付けておいてその弾性を利用して扉等に戻る動きを付勢することによって,係止体下端の弾性片との間に働く摩擦力を上回る強制力を外部から加える必要がある。
ただし,弁論の全趣旨によれば,原告側製品においては,ばね付き蝶番を併用することにより,係止体に対する弾性片の圧着力よりも,このばねの弾性力が勝って,ばねの弾力により開き戸等は強制的に閉じられるものと認められるので,結局,別紙動作説明図(被告)aの2の場合においても,係止体に弾性片の頂上部が押圧される状態が生じるものの,係止することなく直ちに弾性片が閉じる方向に移動するものと認められるから,これをもって拘束あるいは係止状態には該当しないというべきである。
( ) 本件発明の構成要件Dの「地震のゆれがなくなることにより扉等の戻る 2動きと関係なく前記係止体は扉等の開く動きを許容して動き可能な状態になる」との文言によれば,係止体は,地震のゆれがなくなった時には,扉等の戻る動きを許容するような動きが可能な状態となるものであることは一応理解することができる。しかし 「扉等の戻る動きと関係なく」動きが可能な ,状態になるという意味については,係止体が扉等の閉じる方向への移動がなくても 常に自動的に扉等の開く動きが可能な状態になることをいうのか 原 ,(告の主張 ,強制的にロック状態となった原因(本件明細書記載の実施例で )は球がロック位置にあること)を「扉等の戻る動き」により除去する必要はないということを意味するにとどまるのか(被告の主張)は,上記文言からは必ずしも明らかではない。本件明細書には,本件発明の構成について7頁の18行ないし25行に記載があり,図18ないし図20に実施例が挙げられているが,構成要件Dの「扉等の戻る動きと関係なく」の意味に関する記載は見当たらない。
,, 「() そこで 本件明細書中の本件発明以外の参考例を見ると 装置本体 1の係止体(6)が扉等の係止具(7)に係止し扉等のばたつきのほとんどないロック状態となる扉等の地震時ロック方法」に関する説明がなされている箇所(本件特許に係る特許公報(甲34)6頁45行以下)には「地震が終わると使用者は隙間を有してロックされている図10及び図11の状態の開き戸(91)を係止保持力以上の力で押す。これにより係止状態が解除され図10及び図11の状態から図6及び図7に示す様に係止体(6)は係止具(7)の絞り(7c)を通過し開口(7a)へと戻り開き戸(91)の開閉は自由になる。一方球(9)については地震が終わると係止状態の解除と関係なく振動エリアAの床面の傾斜により後端室A9に戻る」と記載されており,この記載によれば,構成要件Dの「扉等の戻る動き」の記述は,係止体を拘束状態から解放すること,すなわち解放のための扉等の戻る動きについてはこれを含まない概念として用いられているものと認められる。
ところで,本件発明においては,別紙動作説明図(被告)図A.のように係止体が拘束されて地震が終了する場合のあることが当然に想定されるところ,そのような特別な場合には,係止体をその拘束(扉等の開く動きを許容しないという意味で,係止される場合が含まれる )状態から解放する必要 。
があるのは当然である。
したがって,構成要件Dの「扉等の戻る動きと関係なく」動きが可能な状態になるという意味は,係止体が扉等の戻るあらゆる動きと関係なく動き可能な状態になるという意味ではなく,係止体が拘束(係止される場合が含まれる)されて地震が終了するという特別な場合を除き(この場合は,その拘束から解放する必要がある,強制的にロック状態となった原因を除去す 。)るために扉等の戻る動きを必要とすることはない,という意味であると解するのが相当である。
他方,原告側製品は,前記( )のとおり,ばね付き蝶番を併用する構成を 1採用することにより,地震終了時に係止体が係止する構造にはなっていないから,そもそも係止体が係止され,あるいは拘束されるという場合を想定することができない。
よって,原告側製品については,係止体が拘束(係止される場合が含まれる )されて地震が終了するという特別な場合を想定することができない以 。
上,別紙動作説明図(被告)aの2.のロック状態の原因を除去するためにばね付き蝶番による扉等の戻る動きを必要とするので,構成要件Dを充足しない。
被告は,別紙動作説明図(被告)aの2.の状態を拘束状態であると主張するが,既に判示したとおり,原告側製品においては,ばね付き蝶番を併用することによって,係止体に弾性片の頂上部が押圧される状態は生じるものの,係止することなく直ちに弾性片は閉じる方向に移動するのであり,そもそも係止体が係止され,あるいは拘束されるという場合を想定することができないから,被告の主張は失当である。
( ) したがって,原告側製品は,本件発明の構成要件Dを充足しない。 3( ) 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告製品2を 4使用した原告側製品は本件発明2ないし4の,原告製品2を使用した地震時ロック方法が本件発明1の各技術的範囲に属するとは認められず,原告製品,。 2の製造販売が特許法101条1号2号の間接侵害を構成することはないしたがって,被告との間で本件特許権に基づく差止請求権を有しないことの確認を求める原告の請求は,争点7ないし11について判断するまでもなく理由があるから,これを認容すべきである。
(, 4 争点13 訴えの追加的変更によって追加された請求の趣旨第3項の訴えは専属的合意管轄を無視してなされたものであり,管轄違背の違法があるか)について被告は,本件新実施許諾契約21条に同契約に関する訴訟・調停の管轄裁判所を被告の特許事務所の所在地を管轄する裁判所(神戸地方裁判所伊丹支部)とする旨の専属的合意管轄の規定があるにもかかわらず,本件新実施許諾契約に基づく差止請求不存在確認の訴えを追加的変更によって追加し,当裁判所において審理することは違法であると主張する。
しかし,訴えの追加的変更(民事訴訟法143条1項)も「一の訴えで数個の請求をする場合」に該当するから 「法令に専属管轄の定めがある場合」を ,除き(同法13条 ,一の請求について管轄権を有する裁判所にその訴えを提 )起することができる(同法7条 。被告は,請求の趣旨第3項の訴えについて )は,いわゆる専属的合意管轄の規定があると主張するのみであり,法令に専属管轄の定めがある場合に該当しないから,他の訴えについて当裁判所が管轄を有する限り,請求の趣旨第3項の訴えについても当裁判所が管轄を有することになる。
そして,本件特許権に基づく差止請求権の不存在確認請求に係る訴え(請求の趣旨第2項)は,特許権に基づく差止請求権を訴訟物とする特許権に関する,, , 。 訴えであるから 同法6条1項 4条1項により 当裁判所に管轄が存在するしたがって,これと併合提起された請求の趣旨第3項の訴えも,民事訴訟法7条,6条1項により,当裁判所が管轄を有することになる。よって,被告の主張は理由がない。
5 争点14(原告による原告製品2の製造販売行為に対して本件新実施許諾契約20条1項に基づく差止請求権は認められるか)について( ) 本件新実施許諾契約20条(契約終了後の措置)1項は 「本契約が期 1 ,間の満了,解除その他理由のいかんを問わず終了したときは乙(原告)は直ちに本件発明等の製造等の実施を停止しなければならない 」と定める。そ。
して,本件実施許諾契約にも全く同じ条項があり,この点は特に変更が加えられていない(前記争いのない事実等( )ウ 。4)したがって,本件新実施許諾契約が終了した際に,原告が「停止」すべき義務を負うのは 「本件発明等の製造等の実施」である。そこで,原告が同 ,契約終了後に原告製品2を製造販売することが,ここにいう「本件発明等の製造等の実施」に当たるか否かが問題となる。
まず,ここにいう「本件発明等」とは,本件新実施許諾契約1条(定義)1号によれば,被告の名義において平成10年12月25日までに出願された発明,考案及び意匠の開き戸の地震時自動ロック装置に関するものをいうとされている(前記争いのない事実等()ウ 。また,本件新実施許諾契約 4)20条1項にいう「実施」とは,同契約1条3号によれば,特許法,実用新案法及び意匠法に定義する実施の用語に従った行為をいうと定義されている(),,, 前記争いのない事実等( )ウ から 物の発明については その物の生産 4使用,譲渡等(譲渡及び貸渡し)若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為であり,方法の発明については,その方法の使用をする行為ということになる(特許法2条3項1,2号 。そして,被告は,原告製品2について,そ )の実施許諾のもととなる「本件発明等」としては本件特許権に関する本件発明以外には具体的に主張していないから,結局,原告製品2について原告が本件新実施許諾契約に基づく「停止」義務を負うのは,原告製品2が本件新実施許諾契約にいう「本件発明等」の実施許諾品に当たり,かつ,原告が本件新実施許諾契約終了後に行う原告製品2の製造販売が本件特許権を侵害する(すなわち,原告製品2を使用した原告側製品が本件発明2ないし4の,原告製品2を使用した地震時ロック方法が本件発明1の各技術的範囲に属する)ことを要するものと解すべきである。
なお,被告は,本件実施許諾契約の締結に当たって,実施許諾の対象とする発明,考案,意匠は特定されておらず,本件新実施許諾契約の締結に当たって,本件発明が実施許諾の対象から除外されたとしても,原告製品2は同契約の対象から除外されるものではなく,原告製品2が本件新実施許諾契約の対象であれば,原告製品2の製造販売行為につき原告に対する同契約20条1項に基づく差止請求権が発生すると主張する。
しかしながら,本件新実施許諾契約上,被告が実施権を付与した対象製品は 「本件発明等に係る製品」であるところ,これは「甲が図面を引き渡し ,た特定の開き戸の地震時ロック装置(S型自動ロック装置という 」と定義)されているものであって(1条2項,2条1項 ,実施料はそのように特定 )された製品を対象とし,その実施権付与の対価として支払われるものである(4条1項 。このように,本件新実施許諾契約においては,実施権の付与 )及び実施料の支払の対象となる製品は,一定の要件を満たす原告と被告の合意によって定まるものとしているといえ 「本件発明等」の実施品に当たる ,か否かのみが同契約の対象とする唯一の基準とされているものではなく,厳密な意味では「本件発明等」の実施品に該当しないものも含む余地があるも,。,, のであり 同契約20条1項とは規定の仕方を異にする したがって 単に原告製品2が本件新実施許諾契約の対象となっていれば,原告製品2の製造販売につき同契約20条1項が適用されるという被告の主張は採用できず,同条項に基づく差止請求権が発生するには,上記のとおり,原告によって同条項の「本件発明等」に該当する特定の発明,考案,意匠の権利範囲に属する製造等の実施行為がなされることを要すると解すべきである。
( ) 本件発明は,平成11年3月18日に出願された発明であって,平成1 20年12月25日までに出願された発明に当たらないから,本件新実施許諾契約にいう「本件発明等」に当たらないということもできるが,この点はひとまず措き,仮に,本件発明が本件新実施許諾契約にいう「本件発明等」に該当するとしても,前記3説示のとおり,原告製品2を使用した原告側製品が本件発明2ないし4の,その地震時ロック方法が本件発明1の各技術的範囲に属さず,原告製品2の製造販売が本件特許権を侵害するものではないのであるから,原告による原告製品2の製造販売は本件新実施許諾契約にいう「本件発明等の製造等の実施」に当たらないことになる。したがって,本件新実施許諾契約終了後に原告が原告製品2を製造販売する行為は,同契約20条1項所定の要件を満たさないことになるから,被告は原告に対し,同契約に基づく原告製品2の製造販売の差止めを求めることはできないというべきである。
( ) したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件新実施許諾 3契約20条1項に基づく差止請求権の不存在確認請求は理由があるから,これを認容すべきである。
6 よって,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官 西理香
裁判官 西森みゆき