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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成16ワ24626特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成18ワ1223特許権侵害行為差止等請求事件 判例 特許
平成16ワ26092特許権侵害差止請求事件 判例 特許
平成18 21405損害賠償等請求事件 判例 特許
平成18ワ29704特許権侵害差止請求事件 判例 特許
関連ワード 進歩性(29条2項) /  同一技術分野(同一の技術分野) /  容易に発明 /  周知技術 /  公知技術 /  技術的範囲 /  発明の詳細な説明 /  クレーム /  権利の濫用(権利濫用) /  参酌 /  容易に想到(容易想到性) /  特許発明 /  実施 /  構成要件 /  構成要件充足性 /  業として /  侵害 /  実施料 /  実施許諾(実施の許諾) /  請求の範囲 / 
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事件 平成 16年 (ワ) 20374号 損害賠償請求事件
三重県桑名市<以下略>
原告 ドーエイ外装有限会社
訴訟代理人弁護士 大津卓滋
同原田活也
同前田修弥 大阪市<以下略>
被告 株式会社日本アルミ
訴訟代理人弁護士 山本哲男
同原田甫
同釜田佳孝
同高橋徹
同櫛田和代
補佐人弁理士 玉田修三
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2006/07/06
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は,原告に対し,金4万5000円及びこれに対する平成16年10月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
原告の請求
主文と同旨
事案の概要
本件は,壁面用目地装置に関する後記の特許権を有する原告が,被告が別紙イ号物件目録及び同ロ号物件目録記載の各製品(以下,それぞれ「イ号物件 「ロ」,号物件」といい,両製品を総称して 「被告各物件」という )を製造販売する ,。
行為が,同特許権を侵害すると主張して,被告に対し,特許権侵害による損害賠償を求めている事案である。
1 前提となる事実(当事者間に争いのない事実及び証拠により容易に認定され。,。 ) る事実 証拠により認定した事実については該当箇所末尾に証拠を掲げた()当事者1ア 原告は,建築工事,建築材料の製造及び販売,並びに建築技術の提供,施工及びその保証等を目的とする有限会社である。
イ 被告は,アルミニウム及びその他諸金属の材料及び製品の製造,並びに土木工事,建築工事等の設計,監理及び請負等を目的とする株式会社である。
( ) 原告の権利2,(「」。)(, 原告は 次の特許権 以下 本件特許権 という を有している 甲12。)ア 登 録 番 号 第2885363号イ 発明の名称壁面用目地装置ウ 出 願 日 平成7年11月28日エ 登 録 日 平成11年2月12日オ 請求項の記載本件特許権に係る明細書(以下「本件明細書」という。本判決末尾添付の特許公報(以下「本件公報」という )参照 )の特許請求の範囲の請 。。
求項1の記載は 次のとおりである 以下 請求項1記載の特許発明を 本 ,(, 「件特許発明」という 。。)「目地部を介して建てられた左右の建物の一方の建物の目地部の外側寄りの部位の躯体に固定された前方の先端部が内側に傾斜する支持板を有する支持体と,前記左右の建物の他方の建物の目地部の外側寄りの部位の躯体に固定された固定金具と,この固定金具に回動可能に取付けられた回動金具と,この回動金具に後端部が固定され,先端部が前記支持体の支持板とスライド移動可能に当接するように傾斜面に形成された目地プレートと,この目地プレートの背面に位置し,該目地プレートの先端部が前記支持板の内側に位置するのを阻止するように両端部が前記左右の建物の目地部の躯体あるいは前記支持体および固定金具に回動可能に取付けられたパンタグラフ形状に形成された伸縮リンクと,前記目地プレートを常時後方へ付勢する付勢スプリングとを備えることを特徴とする壁面用目地装置 」。
構成要件本件特許発明構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した各構成要件をその符号に従い「構成要件A」のように表記する 。。)構成要件A 目地部を介して建てられた左右の建物の一方の建物の目地部の外側寄りの部位の躯体に固定された前方の先端部が内側に傾斜する支持板を有する支持体と構成要件B 前記左右の建物の他方の建物の目地部の外側寄りの部位の躯体に固定された固定金具と構成要件C この固定金具に回動可能に取付けられた回動金具と構成要件D この回動金具に後端部が固定され,先端部が前記支持体の支持板とスライド移動可能に当接するように傾斜面に形成された目地プレートと構成要件E この目地プレートの背面に位置し,該目地プレートの先端部が前記支持板の内側に位置するのを阻止するように両端部が前記左右の建物の目地部の躯体あるいは前記支持体および固定金具に回動可能に取付けられたパンタグラフ形状に形成された伸縮リンクと構成要件F 前記目地プレートを常時後方へ付勢する付勢スプリングと構成要件G を備えることを特徴とする壁面用目地装置( ) 被告各物件について 3被告は,平成14年10月ころ,福岡県太宰府市石坂四丁目939番地2他における九州国立博物館新営工事において,エキスパンション・ジョイント工事(以下 「本件工事」という )を受注し,施工した際,被告各物件 ,。
を設置した。被告各物件の具体的構成は,別紙イ号物件目録及び同ロ号物件目録各記載のとおりである。
2争点( ) 被告各物件は,本件特許発明技術的範囲に属するか(争点1 。 1 )ア 被告各物件は,構成要件A( 支持体 )を充足するか(争点1-1 。 「」 ),(「」)()。 イ 被告各物件は 構成要件B 固定金具 を充足するか 争点1-2,(「」)()。 ウ 被告各物件は 構成要件C 回動金具 を充足するか 争点1-3エ 被告各物件は,構成要件D( 目地プレート )を充足するか(争点1 「」-4 。)オ 被告各物件は,構成要件E( 伸縮リンク )を充足するか(争点1- 「」5。)カ 被告各物件は,構成要件F( 付勢スプリング )を充足するか(争点 「」1-6 。)キ 被告各物件に特有の構成の存在は,構成要件充足性に影響するか(争点1-7 。)( ) 本件特許発明に係る特許は無効理由を有するか(争点2 。 2 )ア 本件特許発明に係る特許に対する無効主張は時機に後れた防御方法の提出に当たるか(争点2-1 。)イ 本件特許発明進歩性を有するか(争点2-2 。)( ) 被告各物件が被告の有する特許発明実施品であることは,被告による被 3告各物件の製造販売行為を正当化するか(争点3 。)( ) 損害(争点4)4
争点に関する当事者の主張
1 争点1(被告各物件は,本件特許発明技術的範囲に属するか )について。
( ) 争点1-1(被告各物件は,構成要件A( 支持体 )を充足するか )に 1 「」 。
ついて(原告の主張)ア イ号物件について) 構成要件Aにおける「支持体」に存在する傾斜面を有する「支持板」 aは,地震等によって目地部が狭くなるように揺れ動いた場合に,目地プレートの先端部を外側方向へガイドする機能と,地震などが発生していない通常時には,目地プレートの先端部を支持するための機能を有するものである。
イ号物件においては,目地部を介して建てられた左右の建物の,一方の建物(右側躯体)に固定された支持体取付下地材27,同下地材27に固定された傾斜面29である支持板,傾斜面29の先端部に支持面30が形成された支持体26が,同様の機能を果たしており,構成要件Aにおける「支持体」に該当する。したがって,イ号物件は,構成要件Aを充足する。
) 被告は,@本件特許発明の「支持体」は一部材で構成されているとこ bろ,イ号物件の支持部材部分は複数部材から構成されているから,本件特許発明における「支持体」には該当しない,A本件特許発明とイ号物件では,支持体の固定場所が相違する,Bイ号物件においては,傾斜面29以外に,カバープレートが建物外壁と並行移動するように鉛直に伸びた支持面30が設けられている点において相違するなどと主張する。
しかし,@イ号物件の支持部材部分が複数部材で構成されているとしても,構成要件Aにおける支持体に該当するものというべきである。また,Aイ号物件の支持体は,躯体に取りつけられている支持体取付下地材27に固定されているから,イ号物件の支持体は一方の建物の躯体に固定されているものである。さらに,Bイ号物件において,上記支持面30とカバープレートが並行移動するのは,カバープレートが取り付けられている建物がカバープレートの厚さ分だけ前方に移動し,かつ,目地部が狭くなる場合である。本件特許発明においても,そのような場合には「支持板」の内側に傾斜する端部が同支持面30と同一の機能を果たすものというべきである。したがって,被告の主張は採用することができない。
イ ロ号物件について) ロ号物件においても,イ号物件と同様に,目地部を介して建てられた a左右の建物の一方の建物(右側躯体)に固定された前方の先端部が内側に傾斜する傾斜面28と,同傾斜面28に固定された上面が傾斜面に形成された複数個の樹脂製戸当り25を有する支持体27が,地震等によって目地部が狭くなるように揺れ動いた場合に,目地プレート17の先端部を外側方向へガイドする機能と,通常時には目地プレート17の先端部を支持するための機能を果たしており,構成要件Aにおける傾斜面を有する「支持板」を有する「支持体」に該当するものである。
) 被告は,ロ号物件についても,支持体27が複数部材で構成されてい bるから,構成要件Aの「支持体」には該当しないと主張する。しかし,イ号物件と同様に,ロ号物件の支持体27が複数部材で構成されていたとしても,本件特許発明構成要件Aを充足することを否定する理由となるものではない。また,被告は,ロ号物件の支持体27の傾斜面28には,目地プレートの摺動性をなめらかにするために,樹脂製戸当り25が設置されていると主張する。しかし,そのような部材が設置されているとしても,ロ号物件が構成要件Aを充足するとの結論に変わりはない。
(被告の主張)ア イ号物件について) 構成要件Aにおいて 「支持体」は 「目地部を介して建てられた左右 a,,の建物の一方の建物の目地部の外側寄りの部位の躯体に固定された前方の先端部が内側に傾斜する支持板を有する支持体」とされているから,「支持板」が「支持体」の構造の一部を構成していること,すなわち,支持体は一部材から構成されることを前提としている(本件明細書実施例図1,図3,図9等参照 。)これに対し,イ号物件の支持部材部分は,支持体取付下地材27と支持体26の複数部材から構成されるものであるから,本件特許発明における「支持体」には該当しない。
) 構成要件Aにおける支持体は 「一方の建物……の躯体に固定された b ,……支持板を有する支持体」とされているのであるから,躯体に直接固定されるものである(本件明細書実施例図1,図3,図9等参照 。)これに対し,イ号物件では,直接躯体に取り付けられるのは支持体取付下地材27であり,支持体26は同支持体取付下地材27に固定されているものであるから,本件特許発明における「支持体」には該当しない。
) 構成要件Aにおける「支持体」は,前方の先端部が内側に傾斜する支 c持板を有する(本件明細書実施例図3参照 。)これに対し,イ号物件の支持体26は,躯体左側に近接する方向に向けて内側に傾斜する傾斜面29と,この傾斜面より躯体左側に向けて鉛直に延び,前記カバープレート部分の先端部を支持する支持面30が設けられているのであるから,傾斜面29以外に,カバープレートが建物外壁と並行移動するように鉛直に伸びた支持面30が設けられているものというべきであり,構成要件Aの「支持体」には該当しない。
イ ロ号物件について) イ号物件について述べたとおり,本件特許発明における「支持体」は a一部材から構成されているのに対し,ロ号物件の支持部材部分は樹脂製戸当り25と支持体27の複数部材から構成されており,本件特許発明における「支持体」には該当しない。
) ロ号物件の支持部材部分の傾斜面28には,本件特許発明の傾斜面に bは存在しない特有の構成である複数の樹脂製戸当り25が設けられている。同戸当りは,振動による目地プレート17先端のステンレス戸当り() , 可動側 24部分が直接金属製の傾斜面28と擦れ合うことを防止し樹脂製の戸当り25と擦れ合うことにより,目地プレート17の摺動性を滑らかにするという機能を有しており,本件特許発明における「支持体」には該当しない。
( ) 争点1-2(被告各物件は,構成要件B(固定金具)を充足するか )に 2 。
ついて(原告の主張)ア イ号物件についてイ号物件における,左右の建物の他方の建物(左側躯体)の目地部の外側寄りの部位の躯体に固定された固定金具10,固定金具10に複数個のボルト,ナットによって固定された目地プレート取付下地11で構成されているものは,構成要件Bにおける「左右の建物の他方の建物の目地部の外側寄りの部位の躯体に固定された固定金具」に該当する。
被告は,構成要件Bにおける「固定金具」は,単一の部材により構成されているべきものであることが明らかであるから,イ号物件においては,それが複数の部材により構成されている以上,構成要件Bにおける「固定金具」には該当しないと主張する。しかし,構成要件Bにおける「固定金」,, 具 が単一の部材で構成されている必要がないことは明らかであり また,, イ号物件の目地プレート取付下地11は 固定金具10に複数個のボルトナットで固定されているのであるから,本件特許発明の「固定金具」に該当するというべきである。したがって,イ号物件は,構成要件Bを充足する。
イ ロ号物件についてイ号物件において述べたとおり,構成要件Bの「固定金具」は,必ずしも単一の部材により構成されている必要があるわけではない。ロ号物件においては,左右の建物の他方の建物(左側の躯体)の目地部の外側寄りの部位の躯体に固定された固定金具6,同固定金具6に複数個の目地プレート固定ボルト39で固定された目地プレート取付用下地38が,構成要件Bにおける「固定金具」に該当するものというべきである。したがって,ロ号物件は,構成要件Bを充足する。
(被告の主張)ア イ号物件について構成要件Bにおける固定金具は 「前記左右の建物の他方の建物の目地 ,部の外側よりの部位の躯体に固定された固定金具」とされているのであるから,一部材だけから構成されるものである。
これに対し,イ号物件の固定部分は,固定金具10と固定金具補強リブ9の複数部材から構成されるのであるから,構成要件Bにおける「固定金具」に該当しない。
イ ロ号物件についてイ号物件と同様に,本件特許発明における固定金具は,一部材だけから構成されるものであるのに対し,ロ号物件の固定部分は,固定金具取付用。, ボルト8と固定金具6の複数部材から構成されるものである したがってロ号物件の固定部分は 「固定金具」に該当しない。 ,( ) 争点1-3(被告各物件は,構成要件C(回動金具)を充足するか )に 3 。
ついて(原告の主張)ア イ号物件についてイ号物件の回動金具2は,構成要件Cにおける「固定金具に回動可能に取付けられた回動金具」に該当する。したがって,イ号物件は,構成要件Cを充足する。
被告は,イ号物件の回動金具2は,固定金具10ではなく,目地プレート取付下地11とバネ固定金具12にネジで固定されていると主張するが,いずれにせよ,イ号物件の回動金具2が固定金具10に取り付けられていることに変わりはない。
イ ロ号物件についてロ号物件の回動金具11は,構成要件Cにおける「固定金具に回動可能に取付けられた回動金具」に該当する。したがって,ロ号物件は,構成要件Cを充足する。
被告は,イ号物件と同様に,ロ号物件においても,回動金具11は目地プレート取付用下地38とバネ固定金具5にネジで固定されていると主張するが,いずれにせよ,ロ号物件が構成要件Cを充足することは明らかである。
(被告の主張)ア イ号物件について構成要件Cにおいて 「回動金具」は 「固定金具に回動可能に取り付 ,,けられた回動金具」とされており 「固定金具」に取り付けられているも ,のとされている。
これに対して,イ号物件の回動金具2は,目地プレート取付下地11とバネ固定金具12にネジで固定されるものであり,固定金具10に取り付けられているものではない。したがって,イ号物件は構成要件Cを充足しない。
イ ロ号物件についてイ号物件と同様に,ロ号物件の回動金具11は,目地プレート取付用下地38とバネ固定金具5に回動金具取付ネジ3で固定されるものであり,固定金具6に取り付けられているものではない。したがって,ロ号物件は構成要件Cを充足しない。
( ) 争点1-4(被告各物件は,構成要件D( 目地プレート )を充足する 4 「」か )について。
(原告の主張)ア イ号物件について) 構成要件Dにおける「回動金具に後端部が固定され,先端部が前記支 a持体の支持板とスライド移動可能に当接するように傾斜面に形成された目地プレート」とは,回動金具に後端部が固定され,傾斜面の先端部が支持体の支持板にスライド移動可能に当接する構成を有するものである。
(。 ), イ号物件のカバープレート部分目地プレート21等からなる も後端部が回動金具2に固定され,先端部の傾斜面が支持体26の傾斜面29にスライド移動可能に当接するものであるから,構成要件Dにおける「目地プレート」に該当する。したがって,イ号物件は構成要件Dを充足する。
) 被告は,@本件特許発明の「目地プレート」は一部材で構成されてい b,, るが イ号物件のカバープレート部分は多数の部材から構成されているAイ号物件の目地プレート21は旋回防止片16により建物内側には回動しない構造になっている,Bイ号物件の目地プレート21の先端部と支持体は,建物外側の壁面に沿って並行してスライド移動することで躯体間の揺れ動きを吸収し,目地プレートが壁面に沿ったラインより外側に突出しない,C本件特許発明とイ号物件では,目地プレートの先端部の当接面が異なるなどと主張する。
しかし,@イ号物件のカバープレート部分が複数部材から構成されているからといって,本件特許発明の「目地プレート」に該当することに変わりはない。A本件特許発明においては,旋回防止片は構成要件とはされていないし,イ号物件に旋回防止片16があるとしても,結局のところカバープレートの先端部が,本件特許発明の「目地プレート」と同じく,支持体26とスライド移動可能に当接するように傾斜面に形成されているものである。さらに,Bイ号物件において,被告が主張するように,目地プレート先端部が壁面に沿って並行してスライド移動するのは,イ号物件の傾斜面29と目地プレートの先端部との間の微小な隙間においてのみであり,この隙間を超えて躯体間が当初位置より近接した場合には,やはり目地プレートの先端部が外側へ突出することとなるのであるから,被告の主張Bはその前提自体が誤りである。また,C本件特許発明とイ号物件との間では,目地プレートの先端部の当接面は,何ら異なるものではない。
したがって,イ号物件は,構成要件Dを充足するものである。
イ ロ号物件について(,, a) ロ号物件のカバープレート部分目地プレート17 吊元補強材13,, ,, 吊元継框14 バネ取付下地18 プレート補強横桟19 戸先框22傾斜面のステンレス戸当り24及びパッキン10で構成される )も,。
後端部が回動金具11に固定され,先端部の傾斜面のステンレス戸当り24が支持体27の傾斜面28の樹脂製戸当り25にスライド移動可能,「 」。 に当接するものであるから 構成要件Dの 目地プレート に該当するしたがって,ロ号物件は構成要件Dを充足する。
) 被告は,@ロ号物件のカバープレート部分は多数の部材から構成され bている,Aロ号物件の目地プレート17の先端部は樹脂製戸当り25と当接している,Bロ号物件の目地プレート17は旋回防止リブ12により建物内側には回動しない構造になっている点において,構成要件Dを充足しないと主張する。しかし,@ロ号物件のカバープレート部分が複数部材から構成されていたとしても,本件特許発明の「目地プレート」に該当することに変わりはない。また,Aロ号物件の目地プレート17の先端部が樹脂性戸当り25と当接しているとしても,ロ号物件においても目地プレート17の先端部が支持体27とスライド移動可能に当接するように傾斜面に形成されていることには変わりはない。さらに,B旋回防止リブ12は本件特許発明構成要件とはなっていないのみならず,旋回防止リブ12があるとしても,ロ号物件においては,カバープレート部分の先端部が,本件特許発明の目地プレートと同じく,支持体27の傾斜面28とスライド移動可能に当接するように傾斜面に形成されていることには変わりはない。
したがって,ロ号物件は,構成要件Dを充足するものである。
) 被告は,構成要件Dにおける「支持体の支持板とスライド移動可能に c当接するように傾斜面に形成された目地プレート」との部分は,作用的・機能的な表現で特定されているから,本件明細書に開示された具体的構成に基づいて技術的範囲を確定すべきである,と主張する。
しかし,この主張は,時機に後れた防御方法の提出であるから,民事訴訟法157条1項により却下されるべきである。すなわち,本件訴訟においては,平成17年11月29日の本件第7回弁論準備手続期日において,被告各物件が本件特許発明技術的範囲に属するか否かについての当事者双方の主張は終了したことが確認されたにもかかわらず,被,, 告は 平成18年3月23日の本件第10回弁論準備手続期日においてこの主張をしたものであり,被告が既に終了したはずの侵害論に関する主張をすることは,明らかに故意又は重過失による時機に後れた防御方法の提出であり,かつ,訴訟完結を遅延させるものである。
また,この構成要件Dは 「支持体」及び「目地プレート」の傾斜面 ,の構成を特定するための構成要件であって,何ら作用的・機能的表現ではない。したがって,同構成要件がいわゆる機能的クレームであることを前提とする被告の主張もまた,失当である。
(被告の主張)ア イ号物件について) 構成要件Dにおいて 「目地プレート」は 「この回動金具に後端部が a,,固定され,先端部が前記支持体の支持板とスライド移動可能に当接するように傾斜面に形成された目地プレート」とされており,一部材から構成されているものというべきである。
これに対し,イ号物件におけるカバープレート部分は,吊り元継框33,吊り元補強材35,目地プレート21,化粧材取付下地1,化粧材22,摺動ガイド板19,プレート補強横桟23,戸先框25,パッキン4及び戸当りゴム31という多数の部材から構成されているものであるから,構成要件Dの「目地プレート」には該当しない。
) 本件特許発明における「目地プレート」とイ号物件のカバープレート b部分は,機能においても異なる。
@ 本件特許発明の「目地プレート」は,回動金具により建物外側だけでなく建物内側にも回動するものであるのに対し,イ号物件の目地プレート21は旋回防止片16により建物内側には回動しない構造になっている。すなわち,本件特許発明においては,躯体左側と躯体右側がそれぞれ左右方向に拡がる形で変位し 「目地プレート」と「支持 ,板」が離反した場合には,目地プレートの先端部(支持板側と接する箇所)は付勢スプリングの押圧により建物内側に旋回して入り込むことになるが,イ号物件では,旋回防止片16があるためかかる旋回が生じず,建物内側に入り込むことはない。このようなイ号物件の構造は,被告が有する特許権(特許第2885659号。以下「被告特許権1」という。乙1,2)に係る特許発明(以下「被告特許発明1」という )を実施するものである。 。
「 」 「」「」 A 本件特許発明の 目地プレート の先端部と 支持体 の 支持板はすべて斜めにスライドすることで躯体間の揺れ動きを吸収する構造(,)。, となっている 本件明細書実施例図1図14等参照 これに対しイ号物件の目地プレート先端部と支持体26は,基本的には建物外側の壁面に沿って並行してスライド移動することで躯体間の揺れ動きを吸収する構造となっている。つまり,頻度の高い震度4程度までの地震による揺れの場合,躯体間が当初位置より近接しても,イ号物件においては壁面に沿って並行してスライドすることで躯体間の揺れ動きを吸収し,目地プレートが壁面に沿ったラインより外側に突出しないのに対し,本件特許発明においては,微震であっても躯体間が当初位置より近接すれば,目地プレート先端部が常時外部に突出することになり,該先端部の鋭角部分により事故が発生するおそれがある。
B 本件特許発明の「目地プレート」の先端部は,傾斜面が「支持板」の傾斜面に当接しているのに対し,イ号物件における目地プレートの先端部の傾斜面は,支持体26の傾斜面29に当接せず,建物外壁と並行する支持面30で当接している。
イ ロ号物件について) 本件特許発明の「目地プレート」は一部材よりなるものであるのに対 aし,ロ号物件におけるカバープレート部分は,イ号物件と同様に,吊元継框14,吊元補強材13,目地プレート17,戸先框22,戸先パッキン21,ゴムシート20,ステンレス戸当り(可動側)24,樹脂製戸当り(固定側)25,プレート補強横桟19といった多数の部材より構成されるものであるから,構成要件Dの「目地プレート」に該当しない。
「」 , b) 本件特許発明における 目地プレートとロ号物件の目地プレートは機能においても異なる。
@ 本件特許発明の「目地プレート」は,回動金具により建物外側だけでなく建物内側にも回動するが,ロ号物件の目地プレートは,イ号物件と同様,旋回防止リブ12により建物内側には回動しない構造になっている。ロ号物件もまた,被告特許発明1を実施するものである。
A ロ号物件の目地プレート先端部は,樹脂製戸当り25と当接している点においても,本件特許発明と異なる構成を有する。
構成要件Dは 「支持体」及び「目地プレート」について 「先端部が ,,前記支持体の支持板とスライド移動可能に当接するように傾斜面に形成された目地プレート」と,作用的・機能的に記載されているだけであって,「目地プレート」と「支持体の支持板(傾斜を有する)の部材同士の具 」体的な位置関係や具体的な構成は明らかにされていない。このように,特許請求の範囲に記載された発明の構成が作用的,機能的な表現で記載されている場合には,その記載のみによって発明の技術的範囲を明らかにすることはできず,当該記載に加えて明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌し,そこに開示された具体的な構成に示されている技術思想に基づいて当該発明の技術的範囲を確定すべきである。
そして,本件明細書の発明の詳細な説明に記載されている具体的な構成により示されている技術思想は,先に述べたとおり,通常時より,目地プレート10の先端部の傾斜面9を支持体6の支持板5(傾斜を有する)に外側から当接させて,目地プレート10を支持板5(傾斜を有する)によって支持し,支持体6の支持板5(傾斜を有する)に沿って目地プレート10の先端部が押し出されたり,離れたりすることが常態であるというものである。そこで,同技術思想に基づいて,本件明細書記載の実施例を基準として当業者が実施し得る構成を検討すると 被告各物件における支持体 2 ,(6,27)の傾斜面(29,28)と目地プレート(21,17)が間隔をおいて位置し,かつ,傾斜面同士でのスライド移動が常態ではないという構成まで本件特許発明技術的範囲に属すると解釈することは,本件特許発明の技術思想の範囲外というほかない。したがって,構成要件Dが機能的クレームであることを考慮すると,やはり被告各物件は構成要件Dを充足しないというほかない。
なお,原告は,被告のこの主張を時機に後れた防御方法の提出であると主張する。しかし,被告による上記主張は,本件訴訟当初からの主張を敷衍させたものにすぎず,まったく新たな主張ではないから,訴訟の完結を遅延させるものでもない。
(,(「」)。) ( ) 争点1-5 被告各物件は 構成要件E 伸縮リンク を充足するか 5について(原告の主張)ア イ号物件について) 構成要件Eにおける「目地プレートの背面に位置し,該目地プレート aの先端部が支持板の内側に位置するのを阻止するように,両端部が左右の建物の目地部の躯体あるいは支持体および固定金具に回動可能に取付けられたパンタグラフ形状に形成された伸縮リンク」とは,伸縮リンクが,目地プレートの先端部が支持板の内側に位置するのを阻止するように,同目地プレートの背面に位置し,左右の建物の目地部の躯体あるいは固定金具及び支持板に回動可能に取付けられた構成を意味する。
イ号物件の伸縮リンク(パンタグラフ)20は,目地プレートの背面に位置し,同目地プレートの先端部が支持板の内側に位置するのを阻止するように,一端部がパンタ取付回転金具17を介して固定金具10に取り付けられ,他端部がパンタ取付回転金具を介して右側躯体に固定された支持体取付下地材27に固定された支持体26の先端部より突出させた取付板に取り付けられているので,構成要件Eの「伸縮リンク」に該当する。したがって,イ号物件は構成要件Eを充足する。
) 被告は,イ号物件の伸縮リンク20の設置場所が,本件特許発明とは b異なるなどと主張するが,同物件の伸縮リンク20は 「両端部が左右,の建物の目地部の躯体あるいは支持体および固定金具に回動可能に取付」, 。 けられた ものであるから 構成要件Eを充足することは明らかである) 被告は,イ号物件においては,旋回防止片16が,躯体が左右方向に c拡がる形で変位した場合に,目地プレート先端部が建物内側に旋回して入り込むことを抑止する役割を有していると主張する。しかし,イ号物,, 件に旋回防止片16が存在するとしてもイ号物件の伸縮リンク20は躯体が左右方向に拡がる形で変位した場合に,目地プレート先端部が建物内側に旋回して入り込むことを抑止する機能を有するのであるし,そうでなければ伸縮リンク20を取り付ける意味はない。したがって,被告の主張は採用することができない。
イ ロ号物件について) ロ号物件の伸縮リンク(パンタグラフ)16は,目地プレート17の a背面に位置し,同目地プレート17の先端部が支持板の内側に位置するのを阻止するように一端部がパンタ取付用回動金具9を介して固定金具6に取り付けられ,他端部がパンタ取付用回動金具26を介して右側躯体に固定された支持体27に取り付けられているのであるから,構成要件Eの「伸縮リンク」に該当する。したがって,ロ号物件は構成要件Eを充足する。
) 被告は,ロ号物件においても,伸縮リンク16の取り付け位置が異な bるのみならず,旋回防止リブ12が,躯体が左右方向に拡がる形で変位した場合に,目地プレート先端部が建物内側に旋回して入り込むことを抑止する役割を有していると主張する。しかし,ロ号物件の伸縮リンク16の取り付け箇所は 「両端部が左右の建物の目地部の躯体あ ,るいは支持体および固定金具に回動可能に取付けられた」ものというべきであるし,ロ号物件に旋回防止リブ12が存在するとしても,ロ号物件の伸縮リンク16は,躯体が左右方向に拡がる形で変位した場合に,目地プレート先端部が建物内側に旋回して入り込むことを抑止する機能を有するのであるから,構成要件Eを充足するものというべきである。
(被告の主張)ア イ号物件について) イ号物件においては,伸縮リンク20の躯体右側寄りの端部は,支持 a体26の支持面30よりも左側かつ建物内側で連結される構造となっている。同構造は,イ号物件が,被告の特許権(特許第3431907号 「伸縮継手装置 。以下「被告特許権2」という。乙3,4)に 。」係る特許発明(以下「被告特許発明2」という )を実施していること 。
に基づくものであり,本件特許発明における構造とは明白に異なるものである。
) イ号物件における伸縮リンク20と本件特許発明における伸縮リンク b,。,, は その機能も異なるものであるすなわち 本件特許発明においては伸縮リンクは,本件明細書において 「 0020】……伸縮リンク1 ,【1によって目地プレート10が後方へ移動するのを阻止され,揺れが止まると元の状態に戻る 「 0028】……支持板の傾斜面より目地 。」,【プレートの先端部が離れても伸縮リンクによって目地プレートが後方に回動するのを阻止し,目地部の寸法が小さくなっても,目地プレートの先端部が元の状態の支持板上に戻る。したがって,目地プレートが損傷,。 」 したりするのを効率よく阻止して耐久性の向上を図ることができると記載されているように,地震等により建物の躯体が左右に伸長することにより,目地プレートの先端部が支持体の支持部より離れる場合,付勢スプリングの力により目地プレートは後方に回動する(目地プレートが当初所定位置より建物内側に入り込むこと)作用を伸縮リンクが阻止して後方への回動を阻止し,目地プレートが損傷したりするの防ぐというものである。
これに対し,イ号物件の旋回防止片16は,被告特許発明1のストッパを実施するものである。被告特許発明1におけるストッパは,同特許発明の明細書の「 0007 【課題を解決するための手段】……縁材 【】31には,カバープレート34が引張装置37により内方側へ倒れないように,ストッパ33aを設けたことを特徴とする伸縮継手である ,。」「 0008 【作用】……内方に倒れないようにストッパを設けてお 【】り,カバープレートの前記空隙内への角変位が阻止されるので,各躯体が相互に近接する方向に変位したときに,前記カバープレートが対向する躯体に設けられる縁材よりも空隙内へ押込まれたり,前記対向する躯体や縁材に当接して圧潰してしまうことが防がれる 「 0011】。」,【……縁材31には,カバープレート34が内方,矢符A1方向に倒れないように,ストッパ33aが設けてある 「 0016】……一方の 。」,【。, 躯体23が他方の躯体24に対して変位したものとして説明する まず図2(1)に示されるように,他方の躯体24に対して一方の躯体23が矢印B1で示す内方(図2(1)の下方)に変位したときには,カバ,, ープレート34は引張コイルばね37aによって 内方に引張られるがストッパ33aによって他方の躯体24に支持されているため,カバープレート34は他方の躯体24の側面28に対してほぼ直角な状態に保たれ,矢符A1方向に角変位しない。そのため,一方の躯体23が図1に示されるように初期位置に復帰したとき,この一方の躯体23およびそれに固定される縁材29などにカバープレート34が当接して,損傷することが防がれる 「 0023 【発明の効果】以上のように本発 。」,【 】,, 明によれば 引張装置を摺動性および可撓性を有する保護部材によって少なくとも当接側となる躯体の固定壁に設けるようにしたので,引張装置と他の部材との当接による相互の損傷が防がれる。またカバープレートの空隙の内方への角変位がストッパによって制限されるので,各躯体が相対的に近接したときに,カバープレートが損傷することが防がれ,円滑に初期位置に復帰させることができる」と記載されていることか 。
ら明らかなように,躯体が左右に伸長し,カバープレート先端部が支持,, , 体から離れた場合 イ号物件においては旋回防止片16の作用によりカバープレートは躯体右側の側面に対してほぼ直角な状態に保たれ,建物内側に角変位せず,その結果,躯体が初期位置に復帰したとき,この躯体右側の支持体にカバープレートが当接して,損傷することが防がれることとなっているのである。したがって,本件特許発明においては,躯体左側と躯体右側がそれぞれ左右方向に拡がる形で変位し,目地プレートと支持板が離反した場合には,目地プレートの先端部(支持板側と接する箇所)は,付勢スプリングの押圧により建物内側に旋回して入り込むことになるため,これを抑止するために伸縮リンクが設置されているのに対し,イ号物件においては,旋回防止片16がそのような動作を抑止しているのであるから,イ号物件における伸縮リンクと,本件特許発明における伸縮リンクにおいては,機能上の相違がある。よって,イ号物件の旋回防止片16は,本件特許発明における「伸縮リンク」には該当しない。
イ ロ号物件についてロ号物件においても,イ号物件と同様,伸縮リンク16の躯体右側部分は,支持体27の傾斜面28の先端部に近接した位置に取り付けられているのみならず,旋回防止装置における旋回防止リブ12により,目地プレートと支持体27の傾斜面28が離反した場合において,目地プレートの先端部(傾斜面側と接する箇所)が付勢スプリングの押圧により建物内側に旋回して入り込むことを抑止しているのであるから,本件特許発明における「伸縮リンク」とは機能上の相違があるものというべきである。
( ) 争点1-6(被告各物件は,構成要件F( 付勢スプリング )を充足す 6 「」るか )について。
(原告の主張)ア イ号物件についてイ号物件の引張装置15は,構成要件Fにおける「目地プレートを常時後方へ付勢する付勢スプリング」に該当する。したがって,イ号物件は構成要件Fを充足する。
被告は,イ号物件の引張装置15はカバープレートの後端部を建物内側に向かって引っ張る装置である点において本件特許発明おける「付勢スプリング」とは異なるなどと主張する。しかし,本件特許発明における「付勢スプリング」も,イ号物件の引張装置15も,いずれも目地プレートを建物内側に向かって引っ張る装置である。また,被告は,イ号物件の引張装置15は,回転性が高いことから装置内部の点検やメンテナンス時に便宜であるし,大きな変位にも対応できるなどと主張する。
しかし,イ号物件の引張装置15が内部点検やメンテナンス時に便宜であることは,イ号物件が本件特許発明技術的範囲に含まれるか否かとは関係がないことというべきである。
イ ロ号物件についてロ号物件の引張装置15(バネ)は,構成要件Fにおける「目地プレートを常時後方へ付勢する付勢スプリング」に該当する。したがって,ロ号物件は構成要件Fを充足する。
被告は,イ号物件と同様に,ロ号物件においても,引張装置15はカバープレートの後端部を建物内側に向かって引っ張る装置であるなどと主張する。しかし,本件特許発明における「付勢スプリング」も,ロ号物件の引張装置15も,いずれも目地プレートを建物内側に向かって引っ張る装置である。また,被告は,ロ号物件の引張装置15は,回転性が高いことから装置内部の点検やメンテナンス時に便宜であるし,大きな変位にも対応できるなどとも主張する。しかし,ロ号物件の引張装置15が内部点検やメンテナンス時に便宜であることは,ロ号物件が本件特許発明技術的範囲に含まれるか否かとは関係がないことというべきである。
(被告の主張)ア イ号物件について構成要件Fにおける「付勢スプリング」は 「目地プレート」の後端部 ,を引っ張ることにより目地プレートを常時後方へ付勢するものである(本件明細書実施例図1,図12等参照 。)これに対し,イ号物件における引張装置は,カバープレート部分の後端部から3分の1程度の背面部を建物内側に向かって引っ張る装置である。
また,同装置は,イ号物件がカバープレート部分を建物外側に大きく回転させることにより,カバープレート部分で覆われていた部分を開口させ,装置内部の点検,メンテナンスをすることを可能にするものである。本件特許発明においては 「付勢スプリング」が用いられていること 「回動 ,,金具」に「伸縮リンク」と「目地プレート」が一体的に固定されていることから 「目地プレート」を大きく回転させることができず,開口部分に ,おいて,点検,メンテナンスをすることはできない(本件明細書実施例図16は目地プレートが建物外側へ最大限に回転した図であるが,当初位置を0度とすると建物外側に10度しか開口できない。イ号物件の引張装置は,当初位置を0度とすると,約90度近くまで目地プレートを開口することが可能である 。イ号物件におけるカバープレート部分の外側への 。)回転性の高さは,振動により両躯体の間隔が狭まった場合(目地部が狭まった場合)や両建物が前後に変位した場合に,本件特許発明では限られた振幅による変位にしか対応できない(振動を吸収できない)のに対し,より大きな変位にも対応できるという利点がある。また,両躯体が前後に変位した場合(本件明細書実施例図16のようなケース)にも,同様に本件特許発明よりイ号物件の方がより大きい変位に対応できるのである。
イ ロ号物件についてイ号物件と同様に,ロ号物件の引張装置15も,目地プレートの後端部から3分の1程度の背面部を建物内側に向かって引っ張る装置である。同装置も,装置内部の点検,メンテナンスをすることを可能にする機能を奏しているのみならず,振動により両躯体の間隔が狭まった場合(目地部が狭まった場合)や両建物が前後に変位した場合においても,より大きな変位に対応できるものである。
( ) 争点1-7(被告各物件に特有の構成の存在は,構成要件充足性に影響す 7るか )について。
(原告の主張)ア イ号物件について,, ,, , 被告は イ号物件には 旋回防止片16 支持面30 止水シート33見切り材5が存在することから,イ号物件は,本件特許発明技術的範囲に属さないと主張する。しかし,イ号物件にこれらの各部材が存在するからといって,イ号物件が本件特許発明技術的範囲に属さないとする理由とはならないことは明らかである。
イ ロ号物件について被告は,ロ号物件には,旋回防止リブ12,ステンレスプレート30,見切り材1が存在することから,ロ号物件は本件特許発明技術的範囲に。, , , 属さないと主張する しかし イ号物件と同様に これらの部材の存在がロ号物件が本件特許発明技術的範囲に属さない理由とはならないことは明らかである。
また,被告は,ロ号物件の伸縮リンク16の躯体右側部分は,支持体27の傾斜面28の先端部に近接した位置に取り付けられているとも主張する。しかし,だからといって,ロ号物件の伸縮リンクの取り付け箇所は,「両端部が左右の建物の目地部の躯体あるいは支持体および固定金具に回動可能に取付けられた」ものであることに変わりはない。
(被告の主張)ア イ号物件についてイ号物件は,次のとおり,本件特許発明には存在しない特有の構成を備えており,本件特許発明技術的範囲に属さない。
) イ号物件は,本件特許発明においては存在しない旋回防止片16を有 aしている点において,本件特許発明とは明らかに異なるものである。同構成は,被告特許発明1に特有の構成である。
) イ号物件の支持体は,本件特許発明には存在しない支持面30を有し bている点において,本件特許発明とは明らかに異なる。
) イ号物件には,建物外側より雨水等が侵入することを目地部の入り口 c付近で阻止する役割を果たす止水シート33が設けられている点において,本件特許発明とは明らかに異なる。
) イ号物件には,カバープレート部分の後端部分(付け根側)と躯体左 d側間に生じる隙間より雨水,ゴミ,風,騒音等が侵入することを防止すると共に,カバープレート部分の後端部分の振動時における衝撃を吸収する機能を有する見切り材5を有している点において,本件特許発明とは明らかに異なる。
イ ロ号物件についてロ号物件も,イ号物件と同様に,本件特許発明には存在しない特有の構成を備えており,本件特許発明技術的範囲に属さない。
) ロ号物件も,イ号物件と同様に,本件特許発明においては存在しない a旋回防止リブ12を有している点において,本件特許発明とは明らかに異なるものである。
) ロ号物件は,本件特許発明には存在しないステンレスプレート30を b有している。本件特許発明においては,地震による変位により左右の躯体が近接した場合,目地プレートの先端部分の押し出しは,支持体の傾斜面で吸収することになるが,同傾斜面を超える目地プレートの押し出しがあった場合には,鋭角に形成された目地プレートの先端部分が支持体の傾斜面より飛び出してしまうため,建物外壁がロ号物件の設置場所のように目地プレートの外面と直交する方向に連続している場合においては,目地プレートの先端部が外壁と衝突することにより,目地プレートを含む装置を損壊するのみならず,建物を破壊したり,人に危害を加えるおそれがある。これに対し,ロ号物件におけるステンレスプレート30は,カバープレート部分の先端部分より躯体右側の壁面に沿って斜めに傾斜する状態で固定されているため,地震により躯体間が当初位置より近接し,カバープレート部分の先端部分が傾斜面28より飛び出しても,なお,長尺のステンレスプレート30がその先端部分をスライドして吸収するため,目地プレートを含む装置の損壊,建物の破壊,人に対する傷害といった事故が発生するおそれはない。
) ロ号物件の伸縮リンク16の躯体右側部分は,躯体間の変位により, cカバープレート部分の先端部分が,伸縮リンクの取付位置と傾斜面の先端部との間に入り込まないようにするため,支持体27の傾斜面28の先端部に近接した位置に取り付けられている。これに対し,本件特許発明においては,躯体間の変位によっては目地プレートの先端部分が支持体の先端部と伸縮リンクの間に侵入することがあるため,当初位置に復帰できなくなるだけでなく,壁面用目地装置が壊れたり,躯体を損傷するおそれもある。
) ロ号物件は,イ号物件と同様に,本件特許発明には存しない見切り材 d1を有している点で,本件特許発明とは明らかに異なる。
2 争点2(本件特許発明に係る特許は無効理由を有するか )について。
( ) 争点2-1(本件特許発明に係る特許に対する無効主張は時機に後れた防 1御方法の提出に当たるか )について。
(原告の主張)被告は,平成17年7月22日の本件第5回弁論準備手続期日において,本件特許発明が無効である旨の主張をする予定はないと述べたにもかかわら,,, ず 平成18年3月23日の本件第10回弁論準備手続期日において 突然本件特許発明が無効である旨の主張を追加した。しかし,この主張は,時機に後れた防御方法の提出であるから,民事訴訟法157条1項により却下されるべきである。
(被告の主張)被告は,上記期日において初めて無効主張をしたものの,同主張は,同期日において証拠と共にすべて提出されているし,原告及び裁判所に対して同主張を記載した準備書面を提出した時より終結時までに3か月弱しか経過していないことからすれば,同主張は訴訟の完結を遅延させるものではない。
( ) 争点2-2(本件特許発明進歩性を有するか )について 2 。
(被告の主張)ア 本件特許発明は,その出願前の公知技術である実願昭59-126462号 実開昭61-41711号 のマイクロフィルム(乙10 以下 乙 () 。「10文献」という。)及び実願平3-94561号(実開平5-38107号)のCD-ROM(乙11。以下「乙11文献」という )に記載さ。
(, 「 」 。), れた各考案 以下 それぞれ 乙10考案 のようにいう に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり,進歩性を有さないものである。
) 乙10考案における支承部材14,保持部材16,係合部16a,コ a,, 「 」 , イルバネ27は それぞれ 本件特許発明の 支持板を有する支持体「固定金具 「回動金具 「付勢スプリング」に該当する。 」,」,乙10考案におけるカバープレート15には傾斜面はないものの,構成要件Dの「目地プレート」の先端部の傾斜面は,二つの部材の重なる部位における2面同士をスムーズに摺動させて駆体の変位を吸収する技術として周知技術である 特開平5-287890号 乙12 以下 乙 ((。「12文献」という ,実開昭57-183336号(乙13。以下「乙 。)13文献」という ,特開平2-279871号(乙14。以下「乙 。)14文献」という 。したがって,カバープレート15は,本件特許 。)発明の「目地プレート」に該当する。また,乙10考案は,エキスパンションジョイントに関する考案であり,本件特許発明における壁面用目地装置と同一の技術分野に属するものである。
以上より,本件特許発明と乙10考案には,乙10考案には伸縮リンク(構成要件E)が存しない点においてのみ相違する。
) 乙11文献には,継手本体3(目地プレート)の背面に位置し,継手 b本体3(目地プレート)の先端部が,先端勾配部(支持板)の内側に位置するのを阻止するように,目地部の躯体に回動可能に取り付けられた,パンタグラフ式保持機構2が記載されている。
すなわち,乙11文献には 「 0028】また,両躯体A,Bの間 ,【隔部4が広がる方向かつ前方(矢印E方向)に変位した場合には,継手本体3が縁材カバー17,17の水平摺動面18,18上をスライドすると共に,ヒンジ部1,1の揺動により,継手本体3及びパンタグラフ式保持機構2が後方へ移動し,縁材カバー17,17の先端勾配部30,30に,継手本体3の傾斜状ガイド部10,10が隣接又は当接した状態となる 【0029】この先端勾配部30,30は,継 。
手本体3が図1の通常状態に戻る際に誘導面として機能する 」と記載。
されている。そして,別紙「乙11考案動作図」に図示されているとおり,乙11考案においては 「平常時」から大きく「駆体が左右に広 ,がった状態」では,継手本体(目地プレート)は駆体から離れてしまうが,パンタグラフ式保持機構により,その先端部は先端勾配部あるいは目地部の内側に入り込んでしまうことはない。つまり,乙11考案は,パンタグラフ式保持機構と先端勾配部とにより,駆体の広がりが収まると,先端勾配部の傾斜が誘導面として機能し,継手本体(目地プレート)の先端が平常時の位置に誘導されるのである。したがって,乙11考案のパンタグラフ式保持機構は,本件特許発明の「伸縮リンク」に該当する。
したがって,本件特許発明は,特許出願前に当業者が乙10考案及び乙11考案に基づいて容易に発明をすることができたものであり,進歩性を有さないというべきである。
イ 本件特許発明は,特許出願前に,当業者にとって,実願昭63-107330号(実開平2-30405号)のマイクロフィルム(乙16。以下「乙16文献」という。),又は特開平6-129024号公報(乙17。
以下「乙17文献」という。),又は実願平3-36343号(実開平5-89607号)のCD-ROM(乙18。以下「乙18文献」という。)又は被告の平成5年版製品カタログ(乙9。以下「乙9文献」という。)に記載の各考案,発明又は装置と,乙11考案より,容易に想到できるものであり,進歩性を有さないというべきである。
,, , すなわち 本件特許発明のうち 伸縮リンクを除いた各構成については乙16文献,乙17文献,乙18文献,乙9文献に各記載の各考案,発明又は装置に開示されており,さらに,乙11文献において伸縮リンクの構成が開示されているものといえる。
ウ 以上より,本件特許発明は,特許法29条2項により,進歩性を有さないというべきである。したがって,本件特許権に基づく権利行使は,特許法104条の3により,許されない。
(原告の主張)本件特許発明進歩性を有さないとの主張は争う。
乙11考案のパンタグラフ式保持機構は,単に中央部で目地プレートを支持するだけの機能を有するものにすぎず,乙10考案やそのほか被告が指摘する各考案,発明又は装置に乙11考案の同保持機構を組み合わせても,本件特許発明における「支持板の傾斜面より目地プレートの先端部が離れても伸縮リンクによって目地プレートが後方に回動するのを阻止する」構成を得ることはできないものである。
3 争点3(被告各物件が被告の有する特許発明実施品であることは,被告による被告各物件の製造販売行為を正当化するか )について。
(被告の主張)被告各物件は,被告特許発明1及び2の実施品である。被告は,被告特許権1及び2の特許権者であり,業として同各特許発明を独占的に実施する権利を専有しているから,被告がその実施品に当たる被告各物件を製造し,本件工事において設置したことは,その態様が特に権利の濫用等に当たらない限り権利の行使として当然に許されるものである(特許法68条,2条3項1号 。)(原告の主張)被告の上記主張は争う。
被告各物件が被告特許発明1及び2の実施品であったとしても,本件特許発明技術的範囲に属する以上は,被告の行為が正当化されないことは明らかである。
4 争点4(損害)について(原告の主張)( ) 被告は,被告各物件を製造し,本件工事においてこれを設置することによ 1り,原告が有する本件特許権を侵害した。本件工事における被告各物件の売り上げは150万円を下らない。
( ) 本件特許権が第三者に実施許諾がなされる場合,その実施料率は5パーセ 2ントを下らないところ,本件においては,被告が認める実施料率3パーセントとして,請求する。
以上より,原告は,被告による本件特許権の侵害により,特許法102条3項に基づいて,上記売り上げ150万円に3パーセントを乗じた4万5000円の損害を蒙ったものである。
(被告の主張)()争う。1( ) 被告が,本件工事において,被告各物件の売り上げとして少なくとも15 20万円を得たことは認める。
本件特許権が第三者に実施許諾がなされる場合であっても,その実施料率は5パーセントとなるものではない。3パーセント程度が相当である。
当裁判所の判断
1 争点1(被告各物件は,本件特許発明技術的範囲に属するか )について。
( ) 争点1-1(被告各物件は,構成要件A( 支持体 )を充足するか )に 1 「」 。
ついてア イ号物件について) 本件特許発明構成要件Aは 「目地部を介して建てられた左右の建 a ,物の一方の建物の目地部の外側寄りの部位の躯体に固定された 「前」,方の先端部が内側に傾斜する支持板を有する支持体」である。この記載によれば,構成要件Aの「支持体」は「前方の先端部が内側に傾斜する支持板 を有するものである本件明細書の 発明の詳細な説明 の 発 」。【】【明の効果】の欄において,同支持体は 「……地震等で左右の建物が左 ,右方向に揺れ動いても支持体の支持板の傾斜面に沿って目地プレート先端部が支持板が取り付けられた建物方向に突出して吸収したり,支持板の傾斜面より目地プレートの先端部が離れて吸収することができる 」。
(【】 ) , 本件公報 0027 7欄26行〜30行 と記載されているように構成要件Aの「支持体」は,地震等によって,左右の建物の目地部が狭くなるように揺れ動いた場合に,揺れを吸収するために目地プレートの先端部を外側方向へガイドする機能を奏し,左右の建物の目地部が広くなるように揺れ動いた場合に,先端部が離れて揺れを吸収するものと認められる。
) イ号物件であることが争いがないイ号物件目録の記載によれば,イ号 b物件の支持体26は,目地部を介して建てられた左右の建物の一方の建物(躯体右側)の外側寄りの躯体左側に面する側に固定されている支持体取付下地材27に固定されているものであり,建物の外側である前方側に傾斜面29を有するものである。なお,支持体26には傾斜面29に続いて支持面30が形成されている。そして,イ号物件においても,支持体26の傾斜面29は,地震等により左右の建物がその目地部が狭くなるように揺れ動いた場合においては,目地プレート先端部を外側方向へガイドする機能を奏し,その目地部が広くなるように揺れ動いた場合においては,目地プレートの先端部が傾斜面29から離れて揺れを吸収するものであることは,その構造から明らかである。したがって,イ号物件の傾斜面29は,構成要件Aの「内側に傾斜する支持板」に当たり,その支持体26は,構成要件Aの「前方の先端部が内側に傾斜する支持板を有する支持体」に該当するものである。したがって,イ号物件は構成要件Aを充足する。
被告は,@イ号物件の支持部材部分は複数部材から構成されていること,A本件特許発明とイ号物件では,支持体の固定場所が異なること,Bイ号物件においては,傾斜面29以外に,カバープレートが建物外壁と並行移動するように鉛直に伸びた支持面30が設けられている点において相違するなどと主張する。
しかし,上記@の被告の主張については,本件明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明においても 「支持体」が一部材で構成されて ,いるものと限定して解すべき記載はないこと(甲2 ,及び,イ号物件)の支持部材部分が複数部材で構成されているとしても,支持体26を構,, 成する各部材は 一体として固定されているものであることからすればイ号物件における支持体26は,全体として本件特許発明構成要件Aにおける「支持体」に該当するものであることは明らかである。
上記Aの被告の主張については,構成要件Aにおいては 「支持体」,は「建物の目地部の外側寄りの部位の躯体に固定された」ものであればよいのであり,イ号物件の支持体26が,建物の目地部の外側寄りの部位の躯体に固定された支持体取付下地材27を介して躯体に固定されているとしても,支持体26が「建物の目地部の外側寄りの部位の躯体に固定された」ものであることに変わりはない。
上記Bの被告の主張については,イ号物件において,地震等により建物の目地部が狭くなるように揺れ動いた場合,上記支持面30上をカバープレートが並行移動し,目地プレート21と支持体26が傾斜面29で当接して,その傾斜面29が揺れを吸収するために目地プレート21の先端部を外側方向にガイドすることになることからすれば,この傾斜面29が構成要件Aの「内側に傾斜する支持板」に当たるのであり,この傾斜面29に続いて支持面30が内側に水平方向に存在するからといって,この支持面30は本件特許発明との対比との関係においては単な,「」 る付加にすぎず イ号物件の支持体26が構成要件Aにおける 支持体に該当しないと解する理由にはならない。
被告の主張はいずれも採用することができない。
イ ロ号物件について) ロ号物件であることが争いがないロ号物件目録の記載によれば,ロ号 a物件においても,目地部を介して建てられた左右の建物の,一方の建物() , 右側躯体 に固定された前方の先端部が内側に傾斜する傾斜面28と同傾斜面28に固定された上面が傾斜面に形成された樹脂製戸当り25とを有する支持体27が,構成要件Aにおける「前方の先端部が内側に」。, 傾斜する支持板を有する支持体 に該当するものと認められる そしてこの支持体27は,一方の建物の目地部の外側寄りの部位の躯体に固定されているものであることは,同目録から明らかであるから,ロ号物件は,構成要件Aを充足するものと認められる。
) 被告は,ロ号物件についても,支持体27が複数部材で構成されてい bることから,構成要件Aの「支持体」には該当しないと主張する。しかし,ロ号物件の支持体27が複数部材で構成されているとしても,全体として構成要件Aにおける「支持体」に該当することは明らかである。
また,被告は,ロ号物件の支持体27の傾斜面28には,目地プレートの摺動性をなめらかにするために,樹脂製戸当り25が設置されているとも主張する。しかし,この樹脂製戸当り25は,傾斜面28に固定され,その上面が傾斜面に形成されているものであるから,この傾斜面28と,その傾斜面28の上に固定された樹脂製戸当り25が一体として構成要件Aの「支持板」に当たると解すべきである。また,仮に,目地プレート17の摺動性を高めるために傾斜面28上に固定されている樹脂製戸当り25が構成要件Aにおける「内側に傾斜する支持板」に当たるということができず,傾斜面28のみが「内側に傾斜する支持板」に,, 当たると解するとしても この樹脂製戸当り25は単なる付加にすぎず「」「 」 ロ号物件が 前方の先端部 に 内側に傾斜する支持板を有する支持体との構成を備えることに変わりはない。被告の上記主張は採用することができず,ロ号物件もまた,構成要件Aを充足するものというべきである。
( ) 争点1-2(被告各物件は,構成要件B( 固定金具 )を充足するか ) 2 「」 。
ア イ号物件について構成要件Bにおける「左右の建物の他方の建物の目地部の外側寄りの部位の躯体に固定された固定金具」は,構成要件A及び構成要件C( この「固定金具に回動可能に取付けられた回動金具 )からも明らかなとおり, 」() , 支持体 構成要件A が取り付けられていない方の建物の外側に固定され回動金具を取り付けるための部材である。イ号物件目録の記載によれば,イ号物件における,支持体26が設置された建物(躯体右側)の他方の建物(左側躯体)の目地部の外側寄りの部位の躯体に固定された固定金具10及び固定金具10に複数個のボルト,ナットにて固定された目地プレート取付下地11は,支持体26が設置された建物の他方の建物の外側寄りの部位に設置され,回動金具が固定されているのであるから,一体として固定されたものといえるのであり,全体として,構成要件Bにおける「固定金具」に該当するものというべきである。したがって,イ号物件は,構成要件Bを充足する。
被告は,イ号物件においては,固定金具10及び目地プレート取付下地,「」 11という複数部材により構成されている以上 構成要件Bの 固定金具には該当しないと主張する。しかし,本件明細書には,構成要件Bの「固定金具」が一部材で構成されているものに限定される趣旨の記載は見られないのであるから(甲2 ,被告の主張を採用することはできない。 )イ ロ号物件について,,, ロ号物件目録の記載によれば ロ号物件においても イ号物件と同様に支持体27が設置された建物(躯体右側)の他方の建物(躯体左側)の目地部の外側寄りの部位に固定された固定金具6,同固定金具6に複数個の目地プレート固定ボルト39で固定された目地プレート取付用下地38, 。,, が 固定金具に該当するものというべきである したがって ロ号物件は構成要件Bを充足する。
被告は,ロ号物件においても,複数部材により構成されている以上,構成要件Bの「固定金具」には該当しないと主張する。しかし,本件明細書には,構成要件Bの「固定金具」が一部材で構成されているものに限定される趣旨の記載は見られないのであるから(甲2 ,被告の主張を採用す )ることはできない。
( ) 争点1-3(被告各物件は,構成要件C( 回動金具 )を充足するか ) 3 「」 。
についてア イ号物件についてイ号物件目録の記載によれば,イ号物件において,回動金具2は,固定金具10に目地プレート取付ボルトナット8により固定された目地プレート取付下地11に,丁番取付ネジ3により固定されているものである。そして,固定金具10とこれに固定されている目地プレート取付下地11が全体として構成要件Bにおける「固定金具」に該当することは前記のとおりであるから,イ号物件における回動金具は,固定金具に回動可能に取り付けられているものというべきである。したがって,イ号物件は,構成要件Cを充足する。
被告は,イ号物件の回動金具は,目地プレート取付下地11とバネ固定金具12にネジで固定されるものであり,固定金具10に取り付けられるものではないと主張する。しかし,イ号物件の固定金具10と目地プレート取付下地11とが全体として構成要件Bの「固定金具」に該当するのであるから,被告の主張に理由がないことは明らかである。
イ ロ号物件について,,, ロ号物件目録の記載によれば ロ号物件においても イ号物件と同様に固定金具6に,目地プレート取付用下地38が目地プレート固定ボルトにより一体として固定され,回動金具11が,同目地プレート取付用下地38に回動可能に取り付けられているものである。そして,ロ号物件の固定金具6とこれに固定されている目地プレート取付用下地38が,全体として構成要件Bの「固定金具」に該当することは前記のとおりであるから,ロ号物件における回動金具は 「固定金具」に取り付けられているものと ,いうべきであり,構成要件Cを充足する。
被告は,ロ号物件の回動金具は目地プレート取付用下地38とバネ固定金具5に回動金具取付ネジ3で固定されるものであり,固定金具6に取り付けられるものではないと主張する。しかし,ロ号物件の固定金具6と目地プレート取付用下地38とが全体として構成要件Bの「固定金具」に該当するのであるから,被告の主張に理由がないことは明らかである。
( ) 争点1-4(被告各物件は,構成要件D( 目地プレート )を充足する 4 「」か )について。
ア イ号物件について) 構成要件Dは 「回動金具に後端部が固定され,先端部が前記支持体 a,の支持板とスライド移動可能に当接するように傾斜面に形成された目地プレート」との構成を定めている。イ号物件目録の記載によれば,イ号物件のカバープレート部分(目地プレート21,吊り元継框33,吊り元補強材35,化粧材取付下地1,化粧材22,摺動ガイド板19,プレート補強横桟23,戸先框25,パッキン4及び戸当りゴム31より構成される。以下同じ )は,後端部が回動金具2に固定されているも 。
のであり,その先端部は,躯体左側に近接する方向に向けて内側に傾斜する傾斜面(支持体26の傾斜面29と平行な傾斜面である)を有しており,左右の建物が目地部が狭くなるように揺れた場合には,同傾斜面は,支持体26の傾斜面29と当接して,さらにスライド移動可能なものと認められる。したがって,イ号物件のカバープレート部分は,構成要件Dにおける「目地プレート」に該当し,構成要件Dを充足する。
) 被告は,@イ号物件のカバープレート部分は多数の部材から構成され bている,Aイ号物件のカバープレート部分は旋回防止片16により建物内側には回動しない構造になっている,Bイ号物件のカバープレート部分の先端部と支持体は,震度4程度の地震による揺れの場合,建物外側の壁面に沿って並行してスライド移動することで躯体間の揺れ動きを吸収し,目地プレートが壁面に沿ったラインより外側に突出しない,C本件特許発明とイ号物件では,目地プレートの先端部の当接面が相違し,イ号物件におけるカバープレート部分の先端部の傾斜面は,支持体の傾斜面に当接せず,建物外壁と並行する支持面30で当接しているなどと主張する。
しかし,被告の主張@については,本件特許発明における「目地プレート」は,複数の建物の壁面部位の目地部を覆う機能を有するものであり(本件公報【0008】参照 ,本件明細書には,構成要件Cにおけ )る「目地プレート」が一部材で構成されているものに限定して解すべきであることを示唆する記載は見られない(甲2 。イ号物件のカバープ )レート部分が複数部材から構成されていたとしても,一体として,構成要件Cの「目地プレート」と同様の機能を果たしているものであり,これを構成要件Cの「目地プレート」に該当しないとする理由はない。
被告の主張Aについては,構成要件Dにおいては「目地プレート」が「先端部が……支持板とスライド移動可能に当接するように傾斜面に形成され」ていることが構成要件として規定されているのであり,同「目地プレート」に旋回防止片が付加されているか,あるいは,同防止片により建物内側へは回動しない構成となっているかどうかについては,何も規定していないのであるから,イ号物件の旋回防止片16が被告が主張するような機能を果たしているとしても,イ号物件のカバープレート部分が構成要件Dを充足することを否定する理由となるものではない。
被告の主張Bについては,確かに,イ号物件目録の記載によれば,イ号物件において,通常時には,支持体26の傾斜面29と目地プレート21の先端部の間には間隙が存在するから,被告が主張するように,建物が左右に揺れた場合には,当初,目地プレート21の先端部が支持体26の支持面30に沿って並行してスライド移動するものといえる。しかし,そのような平行移動は,イ号物件の傾斜面29と目地プレート21の先端部との間の微小な隙間においてのみ生じるものであり,この隙間を超えて躯体間が当初位置より近接した場合には,やはり目地プレート21の先端部の傾斜面が支持体26の傾斜面29に当接し,スライド移動して外側に突出する構造となっているものであるから,イ号物件の目地プレート21等からなるカバープレート部分は,構成要件Dの「先端部が前記支持体の支持板とスライド移動可能に当接するように傾斜面に傾斜された目地プレート」との要件を充足するものである。
被告の主張Cについては,確かに,イ号物件においては,上記のとおり,支持体26の傾斜面29と目地プレート21の先端部の間には間隙が存在するものの,建物が左右に揺れこの隙間を超えて躯体間が当初位置より近接した場合には,目地プレート21の先端部の傾斜面が支持体26の傾斜面29に当接し,スライド移動して外側に突出する構造となっているのであるから,イ号物件の目地プレート21等からなるカバープレート部分は,上記構成要件Dを充足するものであるというべきである。構成要件Dは,目地プレートの先端部が,支持板とスライド移動可能に当接するように傾斜面に形成されていることを規定しているのであるから,通常時において,目地プレートの先端部と支持板との間に間隙があるものでも,建物が左右に揺れた場合に,両者がスライド移動可能に当接するように傾斜面に形成されていれば,構成要件Dを充足するものというべきである。すなわち,本件特許発明においては,建物が左右,, 方向に揺れ動いた際に 左右の建物が近接することにより生じる揺れを目地プレートの先端部が支持板が取り付けられた建物方向に突出して吸(【】), 収するものとされているのであるから 本件公報 0027 等参照,, 目地プレートの先端部は 地震等により建物が左右方向に揺れ動いた際左右の建物が近接した場合において,目地プレートの先端部が支持板が取り付けられた建物方向に突出して揺れを吸収する機能を果たせば足りるものであり,目地プレートの先端部が,支持板の傾斜面に当初から当接している必要はないのである。
被告の上記各主張はいずれも採用することができない。
イ ロ号物件について(,, a) ロ号物件のカバープレート部分目地プレート17 吊元補強材13,, ,, 吊元継框14 バネ取付下地18 プレート補強横桟19 戸先框22。), 傾斜面のステンレス戸当り24及びパッキン10等で構成される も後端部が回動金具11に固定され,目地プレート17の先端部は,躯体左側に近接する方向に向けて内側に傾斜する傾斜面(支持体27の傾斜面28と平行な傾斜面である)を有しており,左右の建物が目地部が狭くなるように揺れ動いた場合には,同傾斜面は,支持体27の傾斜面28に固定された樹脂製戸当り25と,目地プレートの先端部の傾斜面に設置されたステンレス戸当り24を介して当接して,さらにスライド移動可能であるから,構成要件Dにおける「目地プレート」に該当する。
したがって,ロ号物件は構成要件Dを充足する。
) 被告は,@ロ号物件のカバープレート部分は多数の部材から構成され bている,Aロ号物件の目地プレート17の先端部は樹脂製戸当り25と当接している,Bロ号物件の目地プレート17は旋回防止リブ12により建物内側には回動しない構造になっている点において,構成要件Dを充足しないと主張する。
しかし,被告の主張@については,カバープレート部分が複数部材から構成されていたとしても,本件特許発明の「目地プレート」に該当することは,イ号物件において述べたとおりである。
被告の主張Aについては,ロ号物件の目地プレート17の先端部が樹脂性戸当り25と当接しているとしても,その上面が傾斜している樹脂製戸当り25が傾斜面28に一体として固定されている以上,全体として支持体27の傾斜面に相当するというべきであるから,ロ号物件においても目地プレートの先端部17が 「支持体の支持板とスライド移動 ,」。 可能に当接するように傾斜面に形成されていることには変わりがない被告の主張Bについては,イ号物件において述べたとおり,旋回防止リブ12が存在することをもって,ロ号物件が本件特許発明技術的範囲に属さないということはできない。被告の主張はいずれも採用することができない。
ウ 被告は,構成要件Dは 「支持体」及び「目地プレート」について,作 ,用的・機能的に記載されているだけであって 「目地プレート」と「支持 ,体の支持板 (傾斜を有する)の部材同士の具体的な位置関係や具体的な 」構成は明らかにされていない,と主張する。しかし,構成要件Dは,支持体及び目地プレートについて 「先端部が前記支持体の支持板とスライド ,移動可能に当接するように傾斜面に形成された目地プレート」と規定されているのであり,この記載によれば「支持体」及び「目地プレート」の具体的な構成が特定されて規定されているということができる。この記載が作用的・機能的にすぎるとの被告の主張は採用し得ない(なお,原告は,被告のこの主張が時機に後れたものであると主張する。しかし,被告のこの主張は,上記のとおり直ちに判断し得る内容であるから,訴訟の完結を著しく遅延するものということはできない 。。)(,(「」)。) ( ) 争点1-5 被告各物件は 構成要件E 伸縮リンク を充足するか 5についてア イ号物件について) 構成要件Eにおける「目地プレートの背面に位置し,該目地プレート aの先端部が支持板の内側に位置するのを阻止するように,両端部が左右の建物の目地部の躯体あるいは支持体および固定金具に回動可能に取付けられたパンタグラフ形状に形成された伸縮リンク」とは,伸縮リンクの両端部を左右の建物の固定金具及び支持板又は躯体に回動可能に取り付けることにより,伸縮リンクを目地プレートの背面に位置させ,同リンクにより目地プレートの先端部が支持板の内側に位置するのを阻止する機能を奏するパンタグラフ形状の伸縮リンクとの構成を意味する。すなわち,同「伸縮リンク」は,本件明細書に「……左右の建物3,3が地震等によって左右方向に揺れ動いた場合には,図14および図15に示すように支持体6の支持板5に沿って目地プレート10の先端部が押し出されたり,離れたりするが,この離れる場合には伸縮リンク11によって目地プレート10が後方へ移動するのを阻止され,揺れが止まる。」(【】), と元の状態に戻る 本件公報 0020 と記載されているように建物の離隔時(本件公報【図15】参照)には,目地プレート10の背面板26が伸縮リンク11に当接することにより,目地プレートの先端部が支持板の内側に位置することが阻止されるものである。また,左右の建物が,左右方向ではなく,前後方向に揺れ動いた場合には,本件明細書に「左右の建物3,3の前後方向の揺れは,図16に示すように回動金具8の回動により吸収し,上下方向の揺れは支持体6の支持板5と目地プレート10の先端部のスライド移動によって,その揺れ動きを吸収する (本件公報【0021 )と記載されており 【図16】にお 。」】,いて,前後方向に揺れた場合の動作について図示されている。本件明細書には,ほかに建物が前後方向に揺れ動いた場合における伸縮リンクの機能について直接説明する記載は存在しないものの 【図16】におい,て右側建物が更に同図面における上方に移動した場合,左右方向に揺れ動いた場合と同様に,目地プレートの先端部が支持板と当接しながら図面上方に移動し,最終的には目地プレート10が支持板5から外れることになること,及び,付勢スプリング37は,目地プレートを常時後方(右側建物側)に付勢すること(構成要件F参照)から,同スプリングの付勢力により,目地プレート10の背面板26が伸縮リンク11に当接することにより,目地プレートの先端部が支持板の内側に位置することが阻止されるものであることが明らかである。したがって,本件特許発明における伸縮リンクは,左右の建物が左右方向に揺れ動いた場合のみならず,前後方向に揺れ動いた場合においても,目地プレートの先端部が支持板の内側に位置することを阻止する機能を奏するものである。
) イ号物件目録の記載によれば,イ号物件の伸縮リンクは,カバープレ bート部分(目地プレート21)等の背面に位置し,その一端部がパンタ取付回転金具17を介して固定金具10に取り付けられ,他端部がパンタ取付回転金具を介して右側躯体に固定された支持体取付下地材27に固定された支持体26の先端部より突出した取付板に取り付けられているのであり,建物が揺れて左右の躯体が左右方向に離隔したとき,あるいはイ号図面の左側の躯体が右側の躯体に対して相対的に前方に離隔したときは,目地プレート21の根元側(回転中心側)下面が旋回防止片16に当接することにより,目地プレート21の先端部が支持体26の傾斜面29の内側に旋回して入り込むのを防止し,また,左側の躯体が右側の躯体に対して相対的に後方に離隔したときは,目地プレート21の先端側が支持体26の支持面30から離れて伸縮リンク20に当接し,これにより,目地プレート21の先端部が支持体26の傾斜面29の内側に大きく入り込むのを防止しているものであると認められる。特に,左右の躯体が左右方向に離隔しつつ,左側の躯体が右側の躯体に対して相対的に後方に離隔する場合は,目地プレート21の先端側が支持体26の支持面30から離れやすくなるため,伸縮リンク20による上記作用が顕著になると認められる。
よって,イ号物件の伸縮リンクは,構成要件Eを充足する。
) 被告は,@イ号物件の伸縮リンク20の設置場所は,支持体26の支 c持面30よりも左側かつ建物内側で連結される構造となっており,本件,,, 特許発明の構造とは異なる Aイ号物件においては 旋回防止片16が躯体が左右方向に拡がる形で変位した場合に,目地プレート先端部が建物内側に旋回して入り込むことを抑止する機能を奏していると主張する。
しかし,被告の主張@については,構成要件Eは 「両端部が……支,持体および固定金具に回動可能に取付けられた」との構成であるのに対し,イ号物件の伸縮リンク20は,その一端をパンタ取付回転金具を介して支持体26の先端部より突出した取付板に,その他端をパンタ取付用回転金具17を介して固定金具10に回転可能に取り付けられているのであるから,構成要件Eを充足するものである。
被告の主張Aについては,イ号物件に旋回防止片16が存在するとし,,「」, ても イ号物件の伸縮リンク20も 本件特許発明の 伸縮リンク もいずれも建物が左右及び前後方向に離隔する形で変位した場合に,目地プレート先端部が支持体26の傾斜面29の内側に旋回して入り込むことを抑止する機能を奏しているものであることは前記認定のとおりである以上,旋回防止片16は付加的なものにすぎず,イ号物件が構成要件Eを充足するという結論を左右するものではない。被告の主張はいずれも採用することができない。
イ ロ号物件についてロ号物件目録の記載によれば,ロ号物件は,その伸縮リンク16が,カバープレート部分(目地プレート17等)の背面に位置し,同目地プレートの先端部が支持体27の傾斜面28の内側に位置することを防止する機能を奏するように一端部がパンタ取付用回動金具9を介して固定金具6に取り付けられ,他端部がパンタ取付用回動金具26を介して右側躯体に固定された支持体27に取り付けられているのであるから 構成要件Eの 伸,「縮リンク」に該当し,構成要件Eを充足するものである。
被告は,ロ号物件においても,伸縮リンクの取り付け位置が異なるのみならず,旋回防止リブ12が存在することをもって,ロ号物件は構成要件Eを充足しないと主張する。しかし,イ号物件について述べたのと同様の理由により,被告の主張は採用することができない。
( ) 争点1-6(被告各物件は,構成要件F( 付勢スプリング )を充足す 6 「」るか )について。
ア イ号物件について,「」 a) 構成要件Fは 目地プレートを常時後方へ付勢する付勢スプリングというものである。ここにいう「後方」とは「目地プレート」の「後 ,方 (先端部側と反対の方向)であり,付勢スプリングが取り付けられ 」た建物の内側方向を意味することは明らかである。
イ号物件における引張装置15は,バネ固定金具12などを介して設置され,目地プレート21をその後方すなわち先端部側と反対の方向であり,引張装置15が取り付けられた建物の内側方向に付勢するものであると認められるから,構成要件Fを充足する。
) 被告は,@イ号物件の引張装置は,カバープレート部分の後端部から b3分の1程度の背面部を建物内側に向かって引っ張る装置である,Aイ号物件の引張装置は,回転性が高いことから装置内部の点検やメンテナンス時に便宜であるし,大きな変位にも対応できるなどと主張する。
しかし,被告の主張@については,イ号物件の引張装置が,カバープレート部分の後端部から3分の1程度の背面部を建物内側に向かって引っ張る装置であるとしても,構成要件Fにおける「目地プレートを……後方へ付勢する付勢スプリング」に当たるものであることは明らかである。
被告の主張Aについては,イ号物件における引張装置が内部点検やメンテナンス時に便宜であることは,イ号物件が本件特許発明技術的範囲に含まれるか否かについての判断とは無関係な事項であるというべきである。
被告の主張はいずれも採用することができない。
イ ロ号物件についてロ号物件の引張装置15(バネ)も,バネ固定金具5などを介して設置され,目地プレート17をその後方であり,引張装置15が取り付けられた建物の内側方向に付勢するものであると認められるから,イ号物件と同様に,構成要件Fにおける「付勢スプリング」に該当するものと認められる。したがって,ロ号物件は,構成要件Fを充足する。
被告は,@イ号物件の引張装置はカバープレートの後端部を建物内側に向かって引っ張る装置である,Aイ号物件の引張装置は,回転性が高いことから装置内部の点検やメンテナンス時に便宜であるし,大きな変位にも対応できるなどと主張する。しかし,被告のこの主張は,イ号物件におい,。 て述べたのと同様の理由により いずれも理由がないことは明らかである( ) 争点1-7(被告各物件に特有の構成の存在は,構成要件充足性に影響す 7るか )について。
被告は,イ号物件には,旋回防止片16,支持面30,止水シート33,見切り材5が存在すること,ロ号物件には,旋回防止リブ12,ステンレスプレート30,見切り材1が存在することを理由に,被告各物件は本件特許発明技術的範囲に属さないと主張する。しかし,これらはいずれも本件特許発明の特許請求の範囲には記載されていない構成のものであるから,単なる付加にすぎず,被告各物件にこれらの部材が存在することをもって,被告各物件が本件特許発明技術的範囲に属さない理由とはならないことは明らかである。被告の主張はいずれも採用することができない。
,, , ( ) 以上によれば 被告各物件は本件特許発明構成要件をすべて充足し 8その技術的範囲に属するものと認められる。
2 争点2(本件特許発明に係る特許は無効理由を有するか )について。
( ) 争点2-1(本件特許発明に係る特許に対する無効主張は時機に後れた防 1御方法の提出に当たるか )について。
被告は,平成16年11月4日の本件第1回口頭弁論期日から,平成18年1月19日の本件第8回弁論準備手続期日まで,一貫して,被告各物件が,, 本件特許発明技術的範囲に属することを争い 平成18年1月末日までに被告各物件が本件特許発明技術的範囲に属しないとの主張を終了する予定であったにもかかわらず,平成18年3月23日の本件第10回弁論準備手続期日において,突然,本件特許発明に係る特許が無効である旨の主張を追加したものであり,その防御方法の提出は時機に後れたものといわざるを得ない。しかし,本件訴訟においては,当該期日の約2か月後の本件第2回口頭弁論期日において,口頭弁論が終結されているのであるから,被告による無効主張については,これにより訴訟の完結が遅延したものとまでいうことはできない。したがって,被告による本件特許発明に対する無効の主張を,時機に後れた防御方法の提出として却下するのは相当ではない。
( ) 争点2-2(本件特許発明進歩性を有するか )について 2 。
ア 乙10考案と乙11考案,乙12発明,乙13考案,乙14発明の組み合わせについて本件特許発明の出願前の公知文献である乙10文献には,次の記載がある(乙10 。)) 考案の詳細な説明(産業上の利用分野 「この考案は,適宜の間隙を a )おいて対向する建物の床や壁などの躯体間を閉塞するのに用いるエキスパンションジョイントに関するものである (2欄3行目ないし5行 。」目)(実施例1 「……エキスパンションジョイント11は,第1図に示す )ように,間隙Aをおいて対向する躯体12,13間にまたがって前記間隙Aを閉塞するものであり,大別すると一方の躯体12に設ける支承部材14と,他方の躯体13に設けられ且つカバープレート15を保持する保持部材16とを備えている。前記支承部材14は,一方の躯体12の上面において間隙Aの長手方向に沿って設置するものであって,その上面が対向する躯体13の方向に下り勾配を成している。他方,保持部材16は,他方の躯体13の上面において同じく間隙Aの長手方向に沿って設置するものであり,前記間隙A側(第1図の左側)部分にカバープレート15の係合部16aを突設し,さらに,前記係合部16aから下方に,前記間隙A内に入り込み状態となるばね取付部16bが一体成形してある。なお,前記ばね取付部16bは,その下端が保持部材16を備えた躯体13に接近するように,途中から屈曲してある (5欄。」12行目ないし6欄12行目)「前記カバープレート15は,間隙Aを十分に閉塞しうる幅寸法を有すると共に,回動中心側である基端部の裏面に断面略円形状の係合溝15aを有しており,この係合溝15aを先述の保持部材16の係合部16aに回動自在な状態で係合している。……さらに,前記カバープレート15の基端部寄りには,ばね取付用の凹部15bが形成してあり,この凹部15bに上方から貫通させたねじ25と,前記ばね取付部16bの下端に下方から貫通させたねじ26とを引張り作用を有するコイルばね27の上下に夫々ねじ込むことによってカバープレート15とばね取付部16bとを連結し,カバープレート15を支承部材14に重ね合わせると共に,前記コイルばね27の引張作用で前記カバープレート15の先端部を支承部材14の傾斜した上面に圧接係止している。そして,このように取付けが成されたカバープレート15は,支承部材14および保持部材16とともに床面と滑らかに連なる状態になっている。……まず,躯体12,13間に水平方向の変位が生じた場合には,支承部材14の上面をカバープレート15の先端部が摺動することによって前記変位に追従し,同時に間隙Aの閉塞状態を保っている。さらに,前記躯体12,13間に上下方向の変位が生じた場合には,第4図に示すようにカバープレート15が基端部(係合部16aと係合溝15aとの係合部分)を中心に回動し,前記変位に追従するようになっている。このとき前記カバープレート15は,ばね取付部16bとの間に設けたコイルばね27で常に引張り作用を受けているため,支承部材14への圧接係止状態を保っており,同時に間隙Aを閉塞し続けている (7欄18行。」目ないし10欄7行目)(考案の効果 「……双方の躯体間にあらゆる方向の変位が生じてもば )ねの引張力でカバープレートによる閉塞状態を確実に保つことができ,しかもカバープレートの両端を挟持した従来のエキスパンションジョイントと比較して変位の吸収範囲を大きく得ることができるなどの効果を有する (14欄17行目ないし15欄2行目) 。」) 乙10文献の上記記載によれば,乙10考案における支承部材14, b保持部材16,係合部16a,コイルバネ27は,それぞれ,本件特許発明の「支持板を有する支持体「固定金具 「回動金具 「付勢ス 」,」,」,プリング」に該当する。
しかし 乙10考案におけるカバープレート15には構成要件Dの 傾 ,「斜面」がなく,また,乙10考案には構成要件Eの「伸縮リンク」に相当する構成がない。
したがって,乙10考案は,本件特許発明と対比すると,構成要件AないしC,同F及びGの点において同一の構成を有し,構成要件Dの目地プレート先端部に「傾斜面」がない点(以下「相違点1」という )。
及び構成要件Eの「伸縮リンク」が存しない点(以下「相違点2」という )において相違する。 。
) 次に,相違点2の容易想到性について判断する。 c@ 本件特許発明の出願前の公知文献である乙11文献には,次の記載がある(乙11 。)「 0004】……本考案は従来のこのような問題点を解決して, 【円滑に両躯体間の変動に順応できる伸縮継手を提供することを目的とする 」。
「 0006 【作用】……伸縮継手は,地震等にて,両躯体が相 【】対的に前後方向にずれてもヒンジ部が揺動し,両躯体が相対的に上下方向にずれてもパンタグラフ式保持機構が揺動して変動を吸収する。
【0007】さらに,両躯体の間隔部が大きく変化しても,パンタグラフ式保持機構が伸縮して変動を吸収し,上記間隔部が大きく狭まる場合,傾斜状ガイド部が躯体のコーナー部に摺接して,継手本体が躯体の外壁面に乗上げることにより,継手本体が損壊されずに,変動に追随可能となる。また,弾発保持機構は,継手本体を元の状態に復元させる 」。
実施例】……【【0009】……,この伸縮継手は,対向する両躯体間A,Bに,左右一対のヒンジ部1,1を介して折畳み伸縮可能なパンタグラフ式保持機構2を配設し,継手本体3にて両躯体A,B(の外壁コーナー部)の間隔部4を閉じ,さらに,継手本体3を前後(矢印E及びF)方向に移動自在かつ後方(矢印F方向)に弾発付勢する弾発保持機構5を,継手本体3とパンタグラフ式保持機構2との間に介装してある。……【0017】パンタグラフ式保持機構2は,図1と図2に示すように,複数の帯板材25…を重ね合わせて,ボルトナット結合26…等にて揺動可能に枢着したもので,図2の仮想線の如く,左右方向(矢印C方向)へ折畳み伸縮可能で,矢印J方向(図1に於て図面と直交方向)に相対的に揺動可能である。
【0018】さらに,パンタグラフ式保持機構2の左右両端には,ボルトナット結合26を介して,蝶番等からなるヒンジ部1,1の一端が枢着されると共に,ヒンジ部1,1の他端が,縁材14,14を介して両躯体A,Bに固着される。
【0019】このヒンジ部1,1は矢印Dの如く揺動可能で,該ヒンジ部1,1とパンタグラフ式保持機構2にて,両躯体A,Bの左右(矢印C方向 ,前後(矢印E及びF方向)及び上下(図2 )の矢印J方向で図1に於て図面と直交方向)の相対的移動を吸収する。
【0020】弾発保持機構5は (パネル7の裏面に固着された) ,支持部材19に挿通保持されたボルト20と,該ボルト20の先端に螺着されたナット21と,中間リング22,弾発部材23,及びバネ受け片24と,からなる。
【0021】ボルト20はパンタグラフ式保持機構2の中央の貫孔27,27に挿通されており,中間リング22,弾発部材23,及びバネ受け片24を介して,ボルト20ナット21にて,パンタグラフ式保持機構2に継手本体3が連結される。
【0022】これにより,継手本体3は,前後方向(矢印E及びF方向)に移動可能となる共に,ボルト20の軸心廻りに揺動可能となる 」。
「 0025】しかして,上述の如く構成された壁用の伸縮継手に 【よれば,地震等による両躯体A,Bの大きな変位に対して,次の如く,十分に対応可能となる。
【0026】両躯体A,Bの間隔部4が広がる方向に変位した場合,パンタグラフ式保持機構2が左右に伸びて追随し,両躯体A,Bが相対的に上下方向に変位した場合には,パンタグラフ式保持機構2が,図2の矢印Jの如く揺動して追随する。
【0027】さらに,両躯体A,Bが相対的に前後方向に変位した場合は,ヒンジ部1,1の揺動により変動に追随できる。
【0028】また,両躯体A,Bの間隔部4が広がる方向かつ前方(矢印E方向)に変位した場合には,継手本体3が縁材カバー17,17の水平摺動面18,18上をスライドすると共に,ヒンジ部1,1の揺動により,継手本体3及びパンタグラフ式保持機構2が後方へ移動し,縁材カバー17,17の先端勾配部30,30に,継手本体3の傾斜状ガイド部10,10が隣接又は当接した状態となる。
【0029】この先端勾配部30,30は,継手本体3が図1の通常状態に戻る際に誘導面として機能する。
【0030】次に,両躯体A,Bの間隔部4が狭まる方向に変位した場合は,パンタグラフ式保持機構2が折畳まれて縮むと共に,継手本体3の傾斜状ガイド部10,10が誘導傾斜面12,12に乗上げ,前方へ継手本体3が移動して変動に追随できる。
【0031】この状態から,さらに,間隔部4が狭まる方向に両躯体A,Bが変動すれば,移動量S≧間隙Hなる弾発保持機構5にて,さらに前方へ継手本体3が移動し,図3の如く,継手本体3の傾斜状ガイド部10,10が誘導傾斜面12,12を越えて,両躯体A,Bの外壁面に継手本体3の裏面が乗上げ,変動に追随する 」。
A 乙11文献には,上記のとおり,壁用の伸縮継手において,左右の両躯体が相対的に上下方向に揺れ動いた際,衝撃を吸収する機構として,パンタグラフ式保持機構2が開示されている。このパンタグラフ式保持機構2は,左右の各建物の間に,左右一対のヒンジ部を介して配置されており,さらに,継手本体3(本件特許発明における「目地プレート」に相当する)を前後方向に移動自在かつ後 。
方へ弾発付勢する弾発保持機構5が,継手本体3とパンタグラフ式保持機構2との間に介装されているものである。そして,継手本体3は,弾発保持機構5により,パンタグラフ式保持機構2側に付勢された状態で設置されていること,及び,乙11文献の上記記載からすると,乙11考案においては,継手本体3は,弾発保持機構5(弾発部材23)の有する付勢力により,パンタグラフ式保持機構2に対して平行状態となるように設置されており,地震などの揺れが加わった状態においては,当該平行状態を保ちつつ,ヒンジ部1又はパンタグラフ式保持機構2により揺れを吸収する構造を有しているものであると認められる。したがって,乙11考案のパンタグ,, ラフ式保持機構2は 継手本体3が地震で前後左右に揺れたときに継手本体3の先端部が傾斜面12を有する見切材13(本件特許発明における支持板に相当する)の内側に位置することを阻止すると。, の機能を奏するものと認めることはできない 乙11考案において継手本体3の先端部が,傾斜面12を有する見切材13の内側に位置する方向へ揺れ動いた場合,すなわち,両躯体A,Bの間隔部4が広がる方向かつ前方(乙11文献図1における矢印E方向)に変位した場合)には 「継手本体3が縁材カバー17,17の水平摺 ,動面18,18上をスライドすると共に,ヒンジ部1,1の揺動により,継手本体3及びパンタグラフ式保持機構2が後方へ移動し,縁材カバー17,17の先端勾配部30,30に,継手本体3の傾斜状ガイド部10,10が隣接又は当接した状態となる (乙11。」【0028 )のであるから,縁材カバー17の先端勾配部30が, 】, 継手本体3の傾斜状ガイド部10に隣接又は当接することによって継手本体3の先端部が,傾斜面12を有する見切材13の内側に位置することを阻止するとの機能を奏するものというべきである。
したがって,乙11考案のパンタグラフ式保持機構2は,地震等による揺れを吸収する機能を有するものの,本件特許発明における伸縮リンクの 「目地プレートの先端部が支持板の内側に位置する ,のを阻止する」という機能を奏するものではない。すなわち,本件特許発明における「伸縮リンク」と,乙11考案におけるパンタグラフ式保持機構2は,その取付方法,機能についての技術思想が異なるものというべきであり,目地プレートの先端部が内側に位置することをパンタグラフ式保持機構2により阻止するという機能を奏しているものではない。また,乙11文献には,このような構成や技術思想を示唆する記載も存しない。したがって,乙11文献においては,本件特許発明における伸縮リンクが開示されているものということはできない。
また,乙10考案に乙11考案のパンタグラフ式保持機構を組み合わせることに関する動機付けがあることを認めるに足りる証拠もない。すなわち,乙10考案は,カバープレート15を支承部材14に圧接係止する構造を有しているものであり,乙10文献には,両建物の変動により,カバープレート15の先端部が建物内側に入り込む状態に関する記載等は一切存しないことに照らせば,乙10考案に乙11考案のパンタグラフ式保持機構を組み合わせることに関する動機付けがあるものと認めることもできない。
以上によれば,乙10考案に乙11考案を組み合わせる動機付けも十分ではなく,また,仮に,乙10考案に乙11考案を組み合わせても,本件特許発明の構成に想到し得るものと認めることはできない。
被告は,乙11考案におけるパンタグラフ式保持機構2は,別紙「乙11考案動作図」記載のとおりに動作するのであるから,同保持機構は 「目地プレートの先端部が支持板の内側に位置するのを ,阻止する」機能を有していると主張する。
しかし,別紙「乙11考案動作図」は,いずれも被告により独自に作成されたものであり,乙11文献に掲載されているものではない(乙11 。むしろ,乙11考案においては,継手本体3は,弾 )発保持機構5(弾発部材23)の有する付勢力により,パンタグラフ式保持機構2に対して平行状態となるように設置されており,地,, 震などの揺れが加わった状態においては 当該平行状態を保ちつつヒンジ部1又はパンタグラフ式保持機構2により揺れを吸収する構造を有していることは前記認定のとおりであるから,被告が提出した上記動作図は,乙11考案の動作図であると認めることはできない。むしろ,同動作図は,地震等による揺れではなく,継手本体3に対して不自然な外力が作用した状態における動作を図示しているものというべきである。したがって,被告の上記主張は採用することができない。
イ 乙16考案又は乙17発明又は乙18考案又は乙9文献記載の装置と乙11考案の組み合わせについて被告は,本件特許発明のうち,伸縮リンクを除いた各構成については,乙16文献,乙17文献,乙18文献,乙9文献に各記載の各考案,発明又は装置に開示されており,さらに,乙11文献において伸縮リンクの構成が開示されているものといえるから,本件特許発明は,特許法29条2項により,進歩性を有さないというべきであるとも主張する。しかし,乙11文献においては,本件特許発明における伸縮リンクの構成が開示されていないことは先に述べたとおりであるし,各考案,発明又は装置と,乙11考案におけるパンタグラフ式保持機構2を組み合わせることに関する動機付けもまたこれを認めるに足りる証拠はないのであるから,これらの各発明,考案,装置を組み合わせることにより,当業者が本件特許発明容易に想到するものと認めることはできない。被告の主張は採用することができない。
3 争点3(被告各物件が被告の有する特許発明実施品であることは,被告による被告各物件の製造販売行為を正当化するか )について。
被告は,被告各物件は,被告特許発明1及び2の実施品である以上,被告がその実施品に当たる被告各物件を製造し,本件工事において設置したことは,その態様が特に権利の濫用等に当たらない限り特許権の実施行為として当然に許されるものであると主張する。しかし,仮に,被告各物件が被告特許発明1及び2の実施品であったとしても,それが本件特許発明技術的範囲に属する以上は,被告の行為が正当化され,本件特許権の侵害行為ではなくなるとする理由はない。被告の主張は採用することができない。
4 争点4(損害)について( ) 被告の本件工事における被告各物件の売り上げが150万円を下らないこ 1とは,当事者間に争いがない。
( ) 本件特許権が第三者に実施許諾がなされる場合,その実施料率は3パーセ 2ントを下らないことも,当事者間に争いがない。
よって,被告による本件特許権の侵害により原告が蒙った損害は,特許法102条3項により,上記売り上げ150万円に3パーセントを乗じた4万5000円となる。
結論
以上によれば,原告の請求は,理由があるからこれを認容し,訴訟費用の負担については,民訴法61条を,仮執行の宣言については同法259条を適用し,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 設樂隆一
裁判官 間史恵
裁判官 荒井章光