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関連ワード 進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  公知技術 /  設定登録 /  訂正審判 /  請求の範囲 /  減縮 /  取消決定 / 
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事件 平成 16年 (行ケ) 509号 特許取消決定取消請求事件
原告 ソニー株式会社
訴訟代理人弁理士 小池 晃
同 田村榮一
同 伊賀誠司
同 藤井稔也
同 野口信博
被告 特許庁長官小川洋
指定代理人 岡野卓也
同 西川惠雄
同 岡田孝博
同 宮下正之
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2005/03/30
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 特許庁が異議2003−70766号事件について平成16年9月28日にした決定中,「特許第3326642号の請求項1,5,6及び11に係る特許を取り消す。」との部分を取り消す。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
1 原告の請求 (1) 主文1項と同旨。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 当事者間に争いのない事実 (1) 特許庁における手続の経緯 原告は,発明の名称を「基板の研磨後処理方法およびこれに用いる研磨装置」とする特許第3326642号の特許(平成5年11月9日出願,平成14年7月12日設定登録。以下「本件特許」という。請求項の数は14である。)の特許権者である。
本件特許に対し,請求項1ないし14につき,特許異議の申立てがあり,特許庁は,この申立てを,異議2003-70766号事件として審理した。原告は,この審理の過程で,平成16年4月5日,本件特許の出願に係る願書に添付した明細書の訂正の請求をした。特許庁は,上記事件につき審理し,その結果,平成16年9月28日,「訂正を認めない。特許第3326642号の請求項1乃至14に係る特許を取り消す。」(以下,請求項1ないし14に係る発明をまとめて「本件各発明」という。)との決定をし,同年10月18日,その謄本を原告に送達した。
(2) 決定の理由 要するに,本件各発明は,公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定に該当する,したがって,本件特許は,請求項1ないし14のいずれについても,この規定に違反して登録されたものである,ということである。
(3) 訂正審判の確定 原告は,本訴係属中に,本件特許の出願に係る願書に添付した明細書の訂正をすることについて審判を請求した。特許庁は,これを訂正2005-39010号事件として審理し,その結果,平成17年2月22日に訂正(以下「本件訂正」という。)することを認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)をし,これが確定した。本件訂正は,請求項1,5,6,及び11(以下,これらの請求項に係る発明を「本件訂正発明」という。)を順次請求項1ないし4とした上で次のとおり訂正するというものである(請求項2ないし4,7ないし10,12ないし14は削除された。)。
(4) 本件訂正前の本件訂正発明の特許請求の範囲 「【請求項1】基板に研磨処理を施した直後から後処理が終了するまでの間,シャワーヘッド又は超音波加湿器により,該基板の湿潤状態を維持することを特徴とする基板の研磨後処理方法。
【請求項5】前記薬液洗浄工程ではスピン洗浄を行うことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の基板の研磨後処理方法。
【請求項6】基板に研磨処理を施す研磨ユニットと,該基板の洗浄処理を行う洗浄ユニットと,該基板のリンスおよび乾燥を行うリンス/乾燥ユニットとを備え,隣接するこれらユニット間が,シャワーヘッド又は超音波加湿器により前記基板を湿潤雰囲気下で搬送可能なユニット間湿潤搬送機構により連結されてなることを特徴とする研磨装置。
【請求項11】前記薬液洗浄室は,スピン洗浄手段を備えてなることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の研磨装置。」 (5) 本件訂正後の本件訂正発明の特許請求の範囲(下線部が本件訂正による訂正箇所である。) 「【請求項1】化学機械研磨ユニット において 基板 に対して 化学機械研磨 を施す化学機械研磨工程 と, 前記化学機械研磨 ユニット により 化学機械研磨 が施された 前記基板 を,洗浄ユニット の互いに 隣接 する 複数 の洗浄室 に順次搬送 して ,物理洗浄 と薬液洗浄 の洗浄処理 を施す洗浄工程 と, リンス /乾燥 ユニット において 前記洗浄 ユニット により 洗浄 された 前記基板にリンス 及び乾燥処理 を施すリンス /乾燥工程 を有し, 互 いに 隣接 し,ゲートバルブ が設けられた 隔壁 により 分離 された 前記化学機械研磨 ユニット と前記洗浄 ユニット との 間,及び互いに 隣接 し,ゲートバルブ が設けられた 隔壁 により 分離 された 前記洗浄 ユニット と前記 リンス /乾燥 ユニット との間に亘って ,前記 ゲートバルブ を介して 前記基板 を搬送 する 際,前記化学機械研磨ユニット と前記洗浄 ユニット との 間,及び前記洗浄 ユニット と前記 リンス /乾燥ユニット との 間にそれぞれ 配置 された シャワーヘッド 又は超音波加湿器 を備える ユニット 間湿潤搬送機構 により 湿潤状態 を維持 して 搬送 するとともに , 前記洗浄 ユニット の前記複数 の洗浄室間 に設けられた ゲートバルブ を介して前記洗浄室間 に亘って 前記基板 を搬送 する 際,前記洗浄室間 に配置 された シャワーヘッド 又は超音波加湿器 を備える ユニット 内湿潤搬送機構 により 湿潤状態 を維持して 搬送 することを 特徴 とする 基板 の研磨処理方法 。
【請求項2】前記薬液洗浄 は,スピン 洗浄 により 行われる ことを特徴とする請求項1記載の基板の研磨処理方法 。
【請求項3】基板に対して 化学機械研磨 を施す化学機械研磨 ユニット と, 前記化学機械研磨 ユニット により 化学機械研磨 が施された 前記基板 の物理洗浄 を行う少なくとも 1基の物理洗浄室 と,前記基板 の薬液洗浄 を行う少なくとも1基の薬液洗浄室 とが 互いに 隣接 して 設けられ ,各洗浄室 において 前記基板 を順次洗浄 する 洗浄 ユニット と, 前記洗浄 ユニット により 洗浄 された 前記基板 にリンス 及び乾燥処理 を施すリンス /乾燥 ユニット とを 有し, 前記化学機械 ユニット と,前記洗浄 ユニット と,前記 リンス /乾燥工程 ユニット とは 直列 に配列 され , 互 いに 隣接 する 前記化学機械研磨 ユニット と前記洗浄 ユニット との 間及 び前記洗浄 ユニット と前記 リンス /乾燥 ユニット との 間は,それぞれ ゲートバルブ が設けられた 隔壁 により 分離 されるとともに ,前記化学機械研磨 ユニット と前記洗浄ユニット との 間及 び前記洗浄 ユニット と前記 リンス /乾燥 ユニット との 間のそれぞれに ,シャワーヘッド 又は超音波加湿器 を有し,前記各 ユニット 間に亘って 搬送 される 前記基板 の湿潤状態 を維持 して 搬送 する ユニット 間湿潤搬送機構 が設けられ , さらに ,前記洗浄 ユニット の互いに 隣接 する 前記複数 の洗浄室間 に,シャワーヘッド 又は超音波加湿器 を備えるとともに ゲートバルブ を備え,前記 ゲートバルブ を介して 前記洗浄室間 に亘って 搬送 される 前記基板 の湿潤状態 を維持 して 搬送する ユニット 内湿潤搬送機構 が設けられていることを 特徴 とする 研磨装置 。
【請求項4】前記薬液洗浄室は,スピン洗浄手段を備えていることを特徴とする請求項3記載の研磨装置。」3 当裁判所の判断 上記当事者間に争いのない事実によれば,本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1,5,6及び11の記載に基づき,その発明を認定し,これを前提に,特許法29条2項の規定に違反して登録された特許であることを理由に,同請求項について本件特許を取り消した決定の取消しを求める訴訟の係属中に,当該特許に係る特許請求の範囲減縮を含む訂正の審判が請求され,特許庁は,これを認める本件訂正審決をし,これが確定したということができる。
決定は,これにより,結果として,本件訂正前の上記請求項1,5,6及び11について判断の対象となるべき発明の要旨の認定を誤ったことになり,この誤りが上記請求項について決定の結論に影響を及ぼすことは明らかである。したがって,決定は,上記請求項につき,取消しを免れない。
以上によれば,本訴請求は理由がある。そこで,これを認容し,訴訟費用の負担については,原告に負担させるのを相当と認め,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法62条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 佐藤久夫
裁判官 設樂隆一
裁判官 若林辰繁