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審判番号(事件番号) データベース 権利
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関連ワード 公然知られ(29条1項1号) /  公然実施(29条1項2号) /  頒布された刊行物 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  公知技術 /  29条の2(拡大された先願の地位) /  技術的範囲 /  発明の詳細な説明 /  実施料相当額 /  存続期間 /  均等 /  均等論 /  置換 /  置換可能性 /  置換容易性 /  禁反言 /  実施 /  権原 /  構成要件 /  構成要件充足性 /  業として /  侵害 /  損害額 /  実施料 /  不法行為(民法709条) /  実施権 /  専用実施権 /  設定登録 /  請求の範囲 /  変更 / 
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事件 平成 15年 (ワ) 2644号 損害賠償請求事件
原告 アビリット株式会社
訴訟代理人弁護士 大場正成
同 尾崎英男
同 嶋末和秀
同 飯塚暁夫
被告 有限会社リックコーポレーション
訴訟代理人弁護士 杉本進介
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2005/05/30
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
請求
被告は,原告に対し,金5875万円及びこれに対する平成15年2月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は,原告が被告に対し,被告によるパチスロ遊技機の製造販売が原告の有する後記特許権の専用実施権侵害に当たるとして,不法行為に基づく損害賠償(訴状送達日の翌日からの民法所定年5分の割合による遅延損害金を含む。)を求めた事案である。
1 争いのない事実 (1) 当事者 原告は,パチスロ遊技機,パチンコ遊技機関連製品等の製造及び販売等を目的とする株式会社である。
被告は,パチスロ遊技機を含む遊技機の製造及び販売等を目的とする有限会社である。
(2) 原告の特許権 原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許請求の範囲の請求項1記載の発明を「本件発明」という。)の専用実施権(以下「本件専用実施権」という。)を有する。
特許番号 特許第2126128号 発明の名称 スロツトマシン 出願日 昭和60年11月27日 特許権設定登録日 平成9年1月28日 特許請求の範囲 別紙特許公報の該当欄記載のとおり 専用実施権設定登録日 平成14年2月7日 専用実施権の範囲 地域 日本全国 期間 本件特許権の存続期間満了まで 内容 全範囲 (3) 本件発明の構成要件 本件発明の構成要件は,次のとおりに分説できる。
A 周面に複数個の絵柄が配列された複数のドラムと, B 各ドラムを個別に駆動および停止させる駆動機構と, C 前記駆動機構が各ドラムを一斉始動させることに応答して抽選を実行する抽選手段と, D 前記抽選手段による抽選が当たったときボーナスゲームへ移行させるための特定の絵柄配列が有効な停止ライン上に揃うよう前記駆動機構による各ドラムの停止動作を制御する停止制御手段とを有するスロツトマシンにおいて, E 前記抽選手段による抽選結果を遊技者(特許請求の範囲には,「遊戯者」と記載されているが,「遊技者」の誤記と認められるので,以下では,本件明細書に「遊戯者」と記載されていても,すべて「遊技者」と表記する。)へ報知するための報知手段と, F 前記抽選手段による抽選が当たったとき前記報知手段を作動させ,ボーナスゲームへ移行させるための特定の絵柄配列が有効な停止ライン上に揃うまで前記報知手段の作動を継続させる報知制御手段とを具備して成る G スロツトマシン。
(4) 被告の行為 被告は,業として,別紙物件目録記載の2種類のスロットマシン(以下,「イ号製品」及び「ロ号製品」といい,両者を合わせて「被告製品」という。)を製造,販売した。
(5) 構成要件充足性 被告製品は,本件発明の構成要件A,B,E及びGを充足する。
2 争点 (1) 被告製品は,構成要件Cを充足しないが,本件発明と均等か。
(2) 被告製品は,構成要件Dを充足するか。
(3) 被告製品は,構成要件Fを充足するか。
(4) 本件特許権には,明らかな無効理由があるか。
(5) 原告の損害額は,いくらか。
3 争点に関する当事者の主張 (1) 争点(1)(均等の成否)について (原告の主張) 本件発明の構成要件Cにおいては,「前記駆動機構が各ドラムを一斉始動させることに応答して抽選を実行する抽選手段」と規定しているのに対し,被告製品における抽選手段は,始動レバーの操作後,ドラムの一斉始動より前に抽選を実行するから,被告製品は,構成要件Cに該当しない。しかし,以下に述べるように,被告製品は,本件発明と均等である。
均等論 (ア) 第1要件(差異が本件発明の本質的部分に関しないこと) 本件発明は,ゲーム開始操作後に機械内部で抽選処理を行い,当選した場合にボーナス入賞の絵柄配列が揃いやすいようドラムの停止を制御する方式のスロットマシンにおいて,当選を遊技者に報知するところに特徴があり,それが本件発明の本質的部分である。これに対し,本件発明(構成要件C)と被告製品との文言上の差異は,抽選を行うタイミングが,ドラムの回転開始後か(本件発明),それとも始動レバー操作とドラムの回転開始の間か(被告製品)という点にあるにすぎない。
したがって,本件発明と被告製品の相違は,本件発明の本質的部分に関するものではない。
(イ) 第2要件(置換可能性) 本件発明と被告製品の相違部分が被告製品の構成に置換されても,本件発明の特徴的構成(当選が遊技者に報知され,報知が継続すること)に何ら影響を及ぼすものではなく,作用効果は同一であるから,置換可能性がある。
(ウ) 第3要件(置換容易性) 被告製品における抽選手段は,被告が独自に設計を行ったのではなく,原告や他のスロットマシンメーカーと同様の設計を採用した結果にすぎないから,被告製品の製造時において,被告製品のように置換することは容易であった。
(エ) 第4要件(公知技術から自明でないこと) 本件発明は,公知技術に対して進歩性があり,また,被告製品の置換された構成も公知技術から自明と評価される内容ではない。
(オ) 第5要件(包袋禁反言など特段の事情のないこと) 本件特許の出願手続には,原告が被告製品の置換に対して均等の主張を行うことが妨げられるような特段の事情は存在しない。
イ 小括 被告製品は,本件発明の構成要件C以外の全ての構成要件を充足し,かつ,本件発明と相違する部分についてもいわゆる均等の五要件を満たすから,本件発明の技術的範囲に属する。
(被告の主張) 被告製品は,以下のとおり,本件発明と均等とはいえない。
ア 第1要件について 被告製品と本件発明とは,構成要件Cだけではなく,後記(2),(3)のとおり,構成要件D及びFにおいても異なっており,被告製品は,本質的部分において本件発明と相違する。
イ 第3要件について 被告製品と本件発明とは,構成要件C,D及びFが異なっており,その相違部分の置換は容易ではない。
ウ 第4要件について 本件発明は,後記(5)のとおり,公知技術に対し進歩性がなく,また,被告製品も公知技術から自明なものである。
(2) 争点(2)(構成要件Dの充足性の有無)について (原告の主張) ア 構成要件Dの「揃うよう」の意義 本件発明は,スロットマシンにおいて,ボーナス当選をしていても,ボーナス絵柄が揃わないために,ボーナス当選を知らない遊技者が途中でゲームを止めたり,他のゲーム機に移ってしまったりすることがあるという問題を解消することを目的とするものであり,ボーナス当選をしてもボーナス絵柄が直ちに揃わないことがあることが当然の前提となっている。このような本件発明の趣旨及び本件明細書の発明の詳細な説明の記載に照らせば,構成要件Dの「特定の絵柄配列が有効な停止ライン上に揃うよう前記駆動機構による各ドラムの停止動作を制御する」における「揃うよう」とは,「揃いやすいように」という意味に解釈すべきである。
イ 充足性 被告製品においては,ボーナス当選をした場合は,していない場合に比べてボーナス図柄が揃いやすいように,CPUによりドラムの停止操作を制御している。
したがって,被告装置は,構成要件Dを充足する。
(被告の主張) ア 構成要件Dの「揃うよう」の意義 構成要件Dの「揃うよう」制御するとは,特定の絵柄配列が揃うようにドラムの停止動作を操作することであり,「揃わない」場合も含まれるような操作を意味するものではない。すなわち,「揃うよう」にと「揃いやすいように」とは,明らかに意味が異なるのであり,「揃うよう」の意義を,「揃わない」場合をも含む「揃いやすいように」と解釈することは許されない。
イ 非充足性 被告製品は,抽選処理により内部当たり(ボーナス当選)すると,特定の図柄配列(ボーナス図柄)が揃いやすいように,CPUにより回胴停止操作を制御している。すなわち,被告製品においては,内部当たり(ボーナス当選)すると,内部当たり(ボーナス当選)していない場合よりも特定の図柄配列(ボーナス図柄)が揃いやすく制御されるが,内部当たり(ボーナス当選)をするだけで,必ず特定の図柄(ボーナス図柄)が停止ライン上に揃うように制御しているわけではない。
したがって,被告製品は,特定の絵柄配列が「揃うよう」ドラムの停止動作を制御するものではないから,構成要件Dを充足しない。
(3) 争点(3)(構成要件Fの充足性の有無)について (原告の主張) ア 構成要件Fの「抽選が当たったとき」の意義 構成要件Fの「抽選が当たったとき」とは,「抽選が当たったとき直ちに」という意味ではなく,「当選が当たった場合に」を意味するものと解釈すべきである。
イ 充足性 被告製品においては,遊技者に当選を報知させる方法が,「報知タイプ1」と「報知タイプ2」の2通りある(別紙物件目録の4,(2)参照)が,いずれも,構成要件Fの「抽選が当たったとき」を充足する。
すなわち,前記のとおり,本件発明の目的は,ボーナス当選を知らない遊技者がゲームを途中で止めたり,ゲーム機を変更したりしてしまうことを防止することにあるが,この目的を達成するためには,少なくとも,報知タイプ1のように,当該ゲームの終わる前に報知すれば十分であることは明らかである。当該ゲームは既に行われており,遊技者がその結果を確認せずにゲームを止めることはないからである。
また,報知タイプ2は,次のサイクルのゲームの開始直後に報知するものであるから,ボーナス当選のあった当該ゲームだけでゲームを止めてしまう遊技者は,報知タイプ2の報知を受けないことになる。しかし,スロットマシンの1ゲームのサイクルは,一般に5秒ないし7秒程度の短い時間で実行され,これが何回も繰り返して行われるものであるから,遊技者がボーナス当選したゲームでゲームを止めてしまう確率は低いといえる。したがって,被告製品の報知タイプ1のように,当選した当該ゲームの終わる前に報知を行う場合はもちろん,報知タイプ2のように,当選したゲームの次のゲームサイクルの開始直後に当選の報知を行っても,本件発明の目的を十分達成できる。
このように,被告製品においては,ボーナス当選した当該ゲームにおいて,あるいは,遅くとも次のゲームの始動レバー操作の時点で,報知手段を作動させているから,「抽選が当たったとき」に報知手段を作動させるものであり,かつ,ボーナス絵柄が揃うまでその作動が継続する。
したがって,被告製品は,構成要件Fを充足する。
(被告の主張) ア 構成要件Fの「抽選が当たったとき」の意義 構成要件Fの「抽選が当たったとき」とは,「抽選が当たったとき直ちに」を意味するものと解釈すべきである。
イ 非充足性 被告製品は,抽選処理を行った後,内部当たり(ボーナス当選)か否かを判断し,内部当たり(ボーナス当選)の場合は,報知タイプ1か報知タイプ2かの選択がなされる。その後,減算カウンタの値が0か否かを判別し,0であれば減算カウンタをスタートさせ,その後回胴回転を開始する。さらに,回胴回転停止ボタンが操作されると,対応するドラムの停止制御がなされ,全ドラムが停止されたか否かの判別がなされる。そして,これらの処理の後,報知タイプ1の場合は,ここで報知手段が作動される。
しかし,報知タイプ2の場合は,ここでも報知手段は作動されず,当該ゲームの中において報知手段は作動されない。そして,次回ゲームのメダル投入処理,BETボタン処理,精算ボタン処理を経て,回胴回転始動装置が押されるまで,報知手段は作動しない。すなわち,当該ゲームが終了しても,遊技者には内部当たり(ボーナス当選)の報知がされず,その時点でメダルがなくなったり,これまでずっと当たりがなかったことから,今回のゲームも当たらなかったと考えて,ゲームを止めてしまうことが生じ得る。この場合は,本件発明の「この発明によれば,遊技者は,器体内での抽選結果を報知手段の作動により知ることができるから,抽選が当たったのを知らずに途中でゲームを止めたり,他のマシンに移ったりすることがなくなり,ボーナスゲームの楽しみを確実に享受し得,遊技者へのサービスを向上できる。」との効果もないことになる。
したがって,被告製品は,「抽選が当たったとき」に報知手段を作動させるものではないから,構成要件Fを充足しない。
(4) 争点(4)(明らかな無効理由の有無)について (被告の主張) ア 特許法29条の2について 本件発明に係る特許出願(以下「本件特許出願」という。)の日より前の実用新案登録出願に係る実開昭61-191081号公報(乙3)には,入賞リクエスト信号が発生したことに応答して作動する表示装置が設けられ,ゲーム中に同信号が発生すると,同表示装置が同信号の発生を報知する考案が記載されており,この考案は本件発明と同一であるから,本件発明は,特許法29条の2の規定により特許を受けることができない。
イ 特許法29条2項について 特開昭59-186580号公報(乙4)に記載された発明(以下「乙4発明」という。)は,マイクロコンピュータの利用により,電子的に統括制御されたスロットマシンに関する発明である。同公報には,スロットマシンにおいて,発生させた乱数をテーブルメモリのデータと照合し,その照合結果に応じてリールの停止制御を行うこと,すなわち,内部当たりを行うことが記載されており,乙4発明は,本件発明の構成要件AないしD及びGを備えている。
また,特開昭58-177679号公報(乙5)に記載された発明(以下「乙5発明」という。)は,スロットマシン等の機械の動作の停止状態によって優劣を競う遊技機器に関し,特に機器の動作中に各停止時の優勢の状態をプレイヤーに指示するようにした遊技機器に関する発明である。同公報には,スロットマシンのようなゲーム機において,動作中の状態の優勢の表示を行う指示手段を設け,プレイヤーに認識されることが記載されている。
さらに,特開昭56-36983号公報(乙6)に記載された発明(以下「乙6発明」という。)は,弾球遊技機における効果音発生装置に関する発明である。同公報には,入賞時などに異なる効果音を発することが記載されている。
乙4ないし乙6の各公報は,いずれも本件特許出願前に頒布された刊行物であり,本件発明は,これらの刊行物に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたから,特許法29条2項により特許を受けることができない。
ウ 特許法29条1項1号又は2号について 米国のスロットマシンとは別に,いわゆるパチスロといわれる我が国のスロットマシンの歴史は,昭和50年代に0号機と呼ばれるものが登場したのが始まりである。当初のパチスロ遊技機が0号機と呼ばれているのは,昭和60年に「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(風営法)が改正され,その後,パチスロ遊技機は保安電子通信技術協会(保通協)の型式認定を受けることになり,それを1号機と呼んだので,その型式認定を受ける前のものを0号機と呼んだことに由来する。
ところで,0号機及び当初1号機においては,内部当たり(抽選当たり)の場合に,パチスロ遊技機本体の集中端子板からの内部当たり信号を受けて,パトライトというライトを点滅させて遊技者に告知を行うことが一般的であった。
すなわち,原告が本件発明の本質的部分であると主張する,パチスロ遊技機において内部当たり(抽選当たり)を遊技者に告知することは,本件特許出願前の0号機及び当初1号機において一般的に行われていた。
したがって,本件発明は,その出願前に公然知られた発明又は公然実施された発明であり,特許法29条1項1号又は2号により特許を受けることができない。
(原告の主張) ア 特許法29条の2について 乙3記載の考案に係るスロットマシンにおいては,内部抽選に当選し,かつ,「7-7-7」のシンボルの組み合わせが揃ったときにボーナスゲームが開始するところ,内部抽選に当選したことにより入賞リクエスト信号が発生すると,表示ランプ16が点灯し,リクエスト信号が発生し,ボーナスゲームとなるシンボルの組み合わせが得やすいようにドラム(リール)が停止制御される状態になっていることを表示する。しかし,表示ランプが点灯するのは,当該1ゲームのみであり,次のゲームまでは点灯を継続しないから,ボーナス絵柄が揃うまで報知を継続するものではない。
したがって,乙3記載の考案は,本件発明の構成要件Fを備えていなから,特許法29条の2の無効理由は成り立たない。
イ 特許法29条2項について (ア) 乙5発明について 乙5発明は,非熟練遊技者のアシストをするための指示手段を設けることにより,技量による結果の不平等を少なくしようとする遊技機の発明であり,乙5発明における「指示手段」は,本件発明の「報知手段」(内部当たりを報知するもの)とは全く異なる。すなわち,スロットマシンにおいては,高速で回転する3つのリール(ドラム)を停止ボタンを押して停止させるところ,熟練遊技者はリールを所望の位置で停止させることができるのに対し,非熟練遊技者にはそれが困難であることから,乙5発明は,各表示窓の上部に設けた指示用ランプを点灯させるなどし(指示手段),その瞬間にストップボタンを押せば,当たり役が揃うように構成して,非熟練遊技者のアシストをするというものである。
したがって,乙5発明は,本件発明の構成要件E及びFを備えていない。
(イ) 乙6発明について 乙6発明は,パチンコなどの弾球遊技機の遊技の興趣を高めるための効果音の発生装置の発明にすぎず,乙6発明の「効果音」は,本件発明の「報知手段」(内部当たりを報知するもの)とは全く異なる。すなわち,乙6発明は,パチンコなどの弾球遊技機において,「遊技状態に適した電子音で効果音を発生でき,音響的効果を増大でき,遊技者の弾球遊技をより一層楽しくすることができるなどの効果」を奏するものであり,当該効果音は,内部当たりを報知するものではない。
したがって,乙6発明は,本件発明の構成要件E及びFを備えていない。
(ウ) 小括 よって,本件発明は,乙4発明ないし乙6発明に基づき,当業者が容易に発明することができたものではない。
ウ 特許法29条1項1号又は2号について 被告の主張を争う。本件特許出願の日である昭和60年11月27日より前に,パチスロ遊技機の0号機及び1号機において,パトライトにより内部当たりを遊技者に報知していたことは,否認する。
(5) 争点(5)(原告の損害額)について (原告の主張) ア イ号製品の製造販売による損害 被告は,本件専用実施権の登録日である平成14年2月7日から同年12月末日までに,イ号製品を,少なくとも4100台,1台当たり25万円以上で販売した。その製造販売行為は,本件専用実施権侵害するところ,本件専用実施権実施により原告が受け取るべき実施料相当額は,1台当たり,少なくとも販売金額の5%に相当する1万2500円である。
したがって,イ号製品について原告が請求し得る損害金の合計額は,5125万円となる。
12,500円×4,100台=51,250,000円 イ ロ号製品の製造販売による損害 被告は,遅くとも平成14年3月1日よりロ号製品の製造販売を開始し,同年12月末日までに,少なくとも600台を1台当たり25万円以上で販売した。
したがって,ロ号製品について原告が請求し得る損害金の合計額は,750万円となる。
12,500円×600台=7,500,000円 ウ 小括 よって,原告は,被告に対し,上記損害の合計額である5875万円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である平成15年2月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(被告の主張) 原告の主張を争う。
当裁判所の判断
1 争点(3)(構成要件Fの充足性の有無)について (1) 本件明細書の記載 本件明細書の発明の詳細な説明には,以下の記載がある(甲3)。
ア 発明の技術分野 「この発明は,複数のドラムを一斉始動させた後,停止ボタンによりこれらを停止させた際,停止ライン上に並ぶ各ドラムの絵柄が所定の配列をとるか否かによりゲームの勝負を決定するスロツトマシンに関する。」(2欄3行〜7行) イ 発明の背景 「従来のスロツトマシンは,全てのドラムを一斉回転させた後,遊技者が適当なタイミングで停止ボタンを順次押操作することにより,対応するドラムが順次停止するよう構成してあり,絵柄表示窓の停止ライン上に所定の絵柄が並んだとき,これを入賞となして,所定配当率のメダルを放出させている。また近年のスロツトマシンでは,ゲームの興趣と期待感とを一層向上させるため,入賞の中でもある特定の絵柄配列が成立したとき,通常のゲームとは別に,高配当のメダルの払出しが期待できるゲーム(これを「ボーナスゲーム」という)ができるように工夫されている。この場合に,従前のスロツトマシンでは,ドラムの始動に応じて,器体内の回路で抽選処理を行い,この抽選が当たったとき,ボーナスゲームにかかる絵柄配列が停止ライン上に揃い易いようにドラム駆動源の動作を制御している。
ところが,器体内での抽選結果は遊技者にとっては全く不明であるため,抽選が当たっていても,ボーナスゲームにかかる絵柄配列が直ちに有効ライン上に揃わなければ,遊技者は途中でゲームを止めたり,或いはゲーム対象の機械を変更したりすることがあり,遊技者へのサービスに欠けるという問題があった。」(2欄9行〜3欄5行) ウ 発明の目的 「この発明は,上記問題を解消するためのものであって,器体内での抽選結果を遊技者に報知することにより,遊技者へのサービス向上を実現したスロツトマシンを提供することを目的とする。」(3欄7行〜10行) エ 発明の効果 「この発明によれば,遊技者は,器体内での抽選結果を報知手段の作動により知ることができるから,抽選が当たったのを知らずに途中でゲームを止めたり,他のマシンに移ったりすることがなくなり,ボーナスゲームの楽しみを確実に享受し得,遊技者へのサービスを向上できる。しかも報知手段はボーナスゲームへ移行させるための特定の絵柄配列が揃うまで作動を継続させるから,遊技者は抽選当りの効果がボーナスゲームにかかる絵柄配列が揃うまで享受し得ることを認識でき,その間,大きな期待をもって毎回のゲームを楽しむことができる。またゲーム結果とは別に,抽選結果への期待度も高まるから,従来のスロツトマシンにない新たなゲームの興趣を遊技者に付与できる」(3欄27行〜41行) (2) 構成要件Fの「抽選が当たったとき」の意義 ア 上記の本件明細書の記載によれば,ドラムの始動に応じて,機器内の回路で抽選処理を行い,この抽選が当たったとき,ボーナスゲームにかかる絵柄配列が停止ライン上に揃いやすいようにドラム駆動源の動作を制御していた従来のスロットマシンにおいては,機器内での抽選結果が遊技者に不明であるため,抽選が当たっていても,ボーナスゲームに係る絵柄配列が直ちに有効ライン上に揃わなければ,遊技者は途中でゲームを止めたり,あるいはゲーム機を変更したりすることがあり,遊技者へのサービスに欠けるという問題があったこと,本件発明は,この問題を解決課題とし,機器内での抽選結果(当選)を遊技者に報知することにより,遊技者へのサービス向上を実現したスロットマシンを提供することを目的とするものであること,本件発明に係るスロットマシンは,上記のような従来のスロットマシンにおいて,抽選手段による抽選結果(当選)を遊技者に報知するための「報知手段」(構成要件D)及び抽選手段による「抽選が当たったとき」報知手段を作動させ,ボーナスゲームへ移行させるための特定の絵柄配列が有効な停止ライン上に揃うまで前記報知手段の作動を継続させる「報知制御手段」(構成要件F)を備えることにより,「遊技者は,抽選が当たったのを知らずに途中でゲームを止めたり,他のマシンに移ったりすることがなくなり,ボーナスゲームの楽しみを確実に享受でき,しかも,遊技者は,抽選当りの効果がボーナスゲームにかかる絵柄配列が揃うまで享受し得ることを認識でき,その間,大きな期待をもって毎回のゲームを楽しむことができ,また,ゲーム結果とは別に,抽選結果への期待度も高まるから,従来のスロットマシンにない新たなゲームの興趣を遊技者に付与できる」という効果を奏するものであること,以上の事実が認められる。
イ 上記認定のとおり,本件発明が,「報知手段」(構成要件D)及び「報知制御手段」(構成要件F)により上記のような発明の効果を奏するものであることからすれば,報知制御手段が報知手段を作動させる「抽選手段による抽選が当たったとき」とは,「抽選が当たったとき直ちに」か,遅くとも抽選を実行した当該ゲーム中で各ドラムが停止する以前の時期を意味するものと解するのが相当である。
これに対し,原告は,「抽選が当たったとき」とは「抽選が当たったとき直ちに」ではなく,「抽選が当たった場合に」を意味するものと解釈すべきであると主張する。しかしながら,そのように報知手段が作動する時期に関する限定のない解釈を採るとすると,当該ゲームが完全に終了した後に抽選が当たったことを報知する構成も本件発明に含まれることとなり,遊技者が報知される以前に途中でゲームを止めたり他のマシンに移ったりする事例が生じ,本件発明における上記効果を奏しない場合が含まれることとなるから,上記主張は採用することができない。
(3) 構成要件Fの充足性の有無 ア 被告製品の構成 別紙物件目録によれば,被告製品は,次の構成を有することが認められる。
(ア) 被告製品は,ボーナスゲームができるスロットマシンであり,機器内にボーナスゲームに係る抽選手段,及び,抽選が当たったときのボーナス当選を,報知ランプの点滅により遊技者に報知する報知手段を備えている。被告製品の報知手段には,報知タイプ1と報知タイプ2があり,これをゲームの進行に従った被告製品の制御動作として見ると,次のとおりとなる。
@ メダルを投入し(遊技メダル貯留装置を使用しないで遊技する場合),又はBETボタンを操作してゲームを開始し,回胴回転始動装置が押されると(図1-6及び図2-6のST2,以下では,単に「ST2」などと表記する。),前回ボーナス当選し,ST6で報知タイプ2であった場合は,ここで報知ランプを点滅する(ST-3)。
A その後,抽選処理(ST4)を行い,ボーナス当選となった場合には(ST-5),報知タイプ1か報知タイプ2かが選択される(ST6)。
B 次に,減算カウンタの値が0か否かを判別し(ST7),0であればまずST9に進み,減算カウンタをスタートさせ(ST9),その後回胴回転を開始する(ST8)。減算カウンタの値が0でないときは,ループにより減算カウンタの値が0になるまでST7を繰り返す。
C 回胴回転停止ボタンが操作されると(ST10),対応するドラムの停止制御がなされる(ST11)。その後,全ドラムが停止されたか判別し(ST12),全ドラムが停止されていなければ,ST10に戻り,全ドラムが停止するまで繰り返される。この時,ボーナス当選している場合は,ボーナス図柄が揃いやすいように,CPUにより回胴停止操作を制御する。
D 全ドラムが停止した後,入賞判定処理がされ(ST14),入賞によるメダル払出しがあるか否かの判定により(ST15),払出しがある場合はメダルの払出しがされ(ST16),払出しがない場合はそのまま素通りする。
E 以上のST14,ST15,ST16の各ステップの後に,ST6で選択された報知方式が報知タイプ1である場合は,ここで報知ランプを点滅する(ST13)。
F さらに,入賞図柄がボーナス図柄か否かを判別し(ST17),ボーナス図柄でない場合は,ST1からの処理に戻る。ボーナス図柄の場合は,報知ランプが消灯し(ST18),ボーナスゲームに移行する(ST19)。
(イ) 以上のとおり,被告製品における報知タイプ1は,ボーナス当選をした当該ゲームの全ドラムが停止しただけではなく,その後の入賞判定処理,メダル払出し有無の判定及びその後の払出し処理(入賞の場合)を行った後に報知ランプの点滅を開始するものであり,報知タイプ2は,ボーナス当選をしたゲームの次のゲームにおいて,メダル投入処理,BETボタン処理の後,回胴回転始動装置が押された直後に報知ランプの点滅を開始するものである。
構成要件Fへの属否 上記のとおり,被告製品は,ボーナス当選をしたゲームについて,入賞判定処理,メダル払出し有無の判定及びその後の払出し処理(入賞の場合)が行われた後,当該ゲームが終了した時点で(報知タイプが1の場合),又は,ボーナス当選をしたゲームの次のゲームが開始された直後(報知タイプが2の場合)に報知手段を作動させるものである。したがって,抽選が当たったとき直ちに報知手段を作動させるものではなく,また,当該ゲームで各ドラムが停止する以前に報知手段を作動させるものでないことも明らかである。
なお,原告は,報知タイプが1の場合について,報知手段が作動する時点では未だゲームが終了していないかのように主張するが,ボーナス当選をしたゲームについて,全ドラムが停止し,入賞判定処理,メダル払出し有無の判定及びその後の払出し処理(入賞の場合)が行われた時点で,次のゲームをスタートさせることができる以上,遅くともこの時点でボーナス当選をした当該ゲームは終了したと解するのが相当であり,報知タイプ1の場合は,その後に報知ランプが点滅するのであるから,上記主張を採用する余地はない。
また,原告は,スロットマシンの1ゲームのサイクルが短く何回も繰り返して行われるものであるから,遊技者がボーナス当選したゲームでゲームを止めてしまう確率は低く,報知タイプ2のように,当選したゲームの次のゲームサイクルの開始直後に当選の報知を行っても,本件発明の目的を十分達成できる旨主張する。しかしながら,遊技者が,抽選が当たったのを知らずに途中でゲームを止めたり,他のマシンに移ったりする問題があることは,原告自身が本件明細書において,本件発明が解決すべき課題として指摘するところであり,遊技者がボーナス当選したゲームでゲームを止めてしまう確率は低いとする上記主張は,この明細書の指摘と相反し上記解決課題の存在を否定するものであって,到底,採用することができない。
したがって,被告製品は,「抽選手段による抽選が当たったとき報知手段を作動させ」るものではないから,構成要件Fを充足しない。
2 結論 以上の次第で,原告の請求は,その余の点につき判断するまでもなく理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
追加
(別紙)物件目録1.製品名イ号製品は,型式名「ブルーラグーン-30」と称する回胴式遊技機である。
ロ号製品は,型式名「クウケン-30」と称する回胴式遊技機である。
2.図面の説明図1-1イ号製品の本体正面写真図1-2イ号製品の本体内部写真図1-3イ号製品の遊技機内部の各回胴の回胴図柄写真図1-4イ号製品の正面外部構造図図1-5イ号製品の制御装置のブロック図図1-6イ号製品のCPUの動作制御を説明するためのフローチャート図2-1ロ号製品の本体正面写真図2-2ロ号製品の本体内部写真図2-3ロ号製品の遊技機内部の各回胴の回胴図柄写真図2-4ロ号製品の正面外部構造図図2-5ロ号製品の制御装置のブロック図図2-6ロ号製品のCPUの動作制御を説明するためののフローチャート3.構成及び動作の説明(1)構成@遊技機正面外部の中部パネルは,表面に凹凸がなく,回胴上の図柄を識別するための窓が形成されている。遊技機内部には,図1-3の回胴図柄が巻き付けられた3個の回胴(左から第1回胴,第2回胴,第3回胴)が一列に配列されている。回胴停止時に窓を通じて視認できる図柄の数は,1つの回胴につき5個であり,そのうち中央の3個は完全な形で,最上部と最下部のものは,それぞれ図柄の一部が視認でき,全部で5×3の15個である(図1-1,図2-1)。
A中部パネル左側には,遊技メダル投入枚数表示ランプ1,2及び3が上からそれぞれ3,2,1,2,3の順で並んでおり,その下には遊技開始表示ランプが,さらにその下には右側に1BETボタンと左側に2BETボタンがそれぞれ配置されている。
また,中部パネルの窓下部には,左から遊技メダル貯留枚数表示器,遊技補助表示器,遊技メダル払出枚数表示器がそれぞれ横一列に並んでおり,遊技メダル貯留枚数表示器の下にはMAXBETボタンが,遊技メダル払出枚数表示器の右側には遊技メダル投入口がそれぞれ設けられている。
さらに,中部パネルの最下段には,左から回胴回転始動装置,第1回胴用停止ボタン,第2回胴用停止ボタン,第3回胴用停止ボタン,投入メダル詰まり返却ボタン,精算ボタン,ドアキーがそれぞれ配置されている。
B中部パネル右側には役物連続作動装置作動時入賞回数表示LEDが縦一列に並んでおり,その右側には,上からチャンス表示ランプ,遊技中止表示ランプ,再遊技表示ランプ,遊技メダル貯留表示ランプ,遊技メダル払出表示ランプ,遊技メダル投入表示ランプがそれぞれ配置されている。
C上部パネルの最上部には,入賞の表示や役物連続作動装置の作動等を表示するための,3種類の遊技状態表示ランプが合計5個(A1-aが1個,A1-bが2個,A1-cが2個)横一列に配置されている。
(2)操作(その1-遊技メダル貯留装置を使用しないで遊技する場合)@遊技メダル投入遊技メダルセレクター(CG:投入された遊技メダルを選別する為のユニット)が遊技メダル受付状態となっている場合は,遊技メダル投入口(A3-c)より遊技メダルを1〜3枚投入することができる。
3枚を超えて投入すると,4枚目からの遊技メダルは遊技メダル払出口(A5-a)から受け皿(A5-c)へ返却される。
ア遊技メダルを1枚投入すると,遊技メダル投入音が鳴り,遊技メダル投入枚数表示ランプ1(A2-a)が点灯し回胴回転始動装置(A3-d)が受付可能となる。
イ遊技メダル2枚を投入すると,遊技メダル投入音が鳴り,遊技メダル投入枚数表示ランプ2(A2-b)が点灯する。
ウ遊技メダル3枚を投入すると,遊技メダル投入音が鳴り,遊技メダル投入枚数表示ランプ3(A2-c)が点灯し遊技メダルセレクター(CG)が遊技メダル返却状態になる。
A回胴回転規定枚数の遊技メダルを投入後,回胴回転始動装置(A3-d)を操作すると,回胴(BG)が回転する。但し,精算ボタン(A3-f),停止ボタン(A3-e),1BETボタン(A3-h),2BETボタン(A3-i),又はMAXBETボタン(A3-j)のいずれかを操作している状態では,回胴回転始動装置(A3-d)を操作しても回胴(BG)は回転しない。
ア回胴回転始動装置(A3-d)を操作すると,回胴(BG)が3個同時に回転を始める。
イ遊技メダルセレクター(CG)は遊技メダル返却状態となる。
ウ前回の遊技で回胴(BG)が回転を始めてから4.1秒経過していない場合に,回胴回転始動装置(A3-d)を操作すると,回胴(BG)は回転しない。
前回の遊技で回胴(BG)が回転を始めてから4.1秒経過後に回胴(BG)が3個同時に回転を始める。
エ回胴(BG)が回転を始めると,回胴(BG)のすべてが正常回転しているかを検出し,停止ボタン(A3-e)の操作が受付可能な状態となる。
なお,回胴(BG)のすべてが正常回転していることが検出されない場合は,正常回転するまで,停止ボタン(A3-e)の操作が受付可能な状態にはならない。
オ回胴回転始動装置(A3-d)を操作した後から,回胴(BG)がすべて停止するまでの間に遊技メダル投入口(A3-c)より投入された遊技メダルは,遊技メダル払出口(A5-a)から受け皿(A5-c)へ返却される。
B回胴回転の停止回胴(BG)を任意に選択し,それに対応した停止ボタン(A3-e)を操作することにより,回胴(BG)を停止させることができる。ただし,精算ボタン(A3-f),回胴回転始動装置(A3-d),停止ボタン(A3-e),1BETボタン(A3-h),2BETボタン(A3-i),又はMAXBETボタン(A3-j)のいずれかを操作している状態では,停止ボタン(A3-e)を操作しても回転中の回胴(BG)を停止させることはできない。
ア停止ボタン(A3-e)が操作されると,対応した回胴(BG)が停止する。
イ残りの回転しているいずれかの回胴(BG)も同様に回胴(BG)を任意に選択し,停止ボタン(A3-e)を操作して停止させる。
ウ回胴(BG)に対応した停止ボタン(A3-e)を同時に2個以上操作した場合,一番早い方の回胴(BG)1個だけが停止する。
停止ボタン(A3-e)を操作し続けた場合は,残りの停止ボタン(A3-e)を操作しても対応する回胴(BG)は停止しない。
C図柄の入賞判定回胴(BG)がすべて停止したときに,投入した遊技メダル枚数に応じた有効ライン上で入賞及び作動に係る図柄組合せの判定を行う。
@遊技メダル1枚投入時は中央の1ラインが有効ラインとなる。
A遊技メダル2枚投入時は中央,上段,下段の3ラインが有効ラインとなる。
B遊技メダル3枚投入時は中央,上段,下段,斜めの5ラインが有効ラインとなる。
投入した遊技メダル枚数に応じた有効ライン上に,入賞に係る図柄の組合せが表示された場合は次のアが実行され,表示されなかった場合は次のイが実行される。
ア入賞に係る図柄の組合せが表示された場合(ア)遊技メダル払出口(A5-a)から受け皿(A5-c)へ遊技メダルを払出す。
(イ)遊技メダル払出し中(遊技メダルの払出終了まで)に遊技メダル投入口(A3-c)より投入された遊技メダルは,遊技メダル払出口(A5-a)から受け皿(A5-c)へ返却される。
(ウ)遊技メダル払出しが終了すると,遊技メダルセレクター(CG)は遊技メダル受付状態になる。
(エ)遊技メダル投入の状態に移る。
(オ)入賞に係る図柄の組合せが重複した場合でも,遊技メダルの払出し枚数は15枚を超えない。
イ入賞に係る図柄の組合せが表示されなかった場合(ア)遊技メダルセレクター(CG)は遊技メダル受付受状態になる。
(イ)遊技メダル投入の状態に移る。
(3)操作(その2-遊技メダル貯留装置を使用して遊技する場合)@遊技メダルの貯留遊技メダル貯留装置は,遊技メダル投入口(A3-c)から規定枚数を超える遊技メダルを投入した場合,又は入賞により遊技メダルが払出される場合に,遊技メダルを最高50枚まで貯留し,1BETボタン(A3-h),2BETボタン(A3-i),又はMAXBETボタン(A3-j)の操作で,貯留されている遊技メダルを投入するための装置である。
ア遊技メダル貯留枚数表示器(A2-m)のデジタル表示が点灯している場合は,遊技メダル貯留装置を使用している状態であることを示している。
遊技メダル貯留枚数表示器(A2-m)のデジタル表示が消灯している場合は,精算ボタン(A3-f)を操作することで遊技メダル貯留装置を起動させることができる。
遊技メダル貯留装置を起動させると,遊技メダル貯留枚数表示器(A2-m)に,「0」が表示され,遊技メダル貯留装置が使用できる状態となる。
イ遊技メダル投入口(A3-c)より投入された遊技メダルは,4枚目から投入するごとに遊技メダル貯留装置に貯留され,遊技メダル貯留枚数表示器(A2-m)に貯留された遊技メダル枚数がデジタル表示される。
ウ遊技メダルセレクター(CG)が遊技メダル返却状態の場合は,遊技メダル投入口(A3-c)より投入された遊技メダルは,遊技メダル払出口(A5-a)から受け皿(A5-c)へ返却され,遊技メダル貯留装置には貯留されない。
A貯留されている遊技メダルの投入ア遊技メダル貯留装置を使用し遊技メダルが貯留されている状態で,遊技メダルセレクター(CG)が受付状態のとき,1BET(A3-h),2BETボタン(A3-i),又はMAXBETボタン(A3-j)を操作することにより,貯留されている遊技メダル枚数以内及び規定枚数以内の遊技メダルの投入を行うことができる。
(ア)1BETボタン(A3-h)は1枚の遊技メダルを遊技するための投入ボタンである。
1BETボタン(A3-h)を操作すると,遊技メダルを1枚投入した状態となり,遊技メダル貯留枚数表示器(A2-m)にデジタル表示されている遊技メダル貯留装置内の遊技メダル枚数が1減算されてデジタル表示される。但し,遊技メダル投入口(A3-c)から遊技メダルを1枚投入するか,1BETボタン(A3-h)を操作して1枚の遊技メダルで遊技ができる状態の場合は,1BETボタン(A3-h)を操作しても貯留されている遊技メダルは投入されない。
(イ)2BETボタン(A3-i)は2枚の遊技メダルで遊技をするための投入ボタンである。
2BETボタン(A3-i)を操作すると,遊技メダルを2枚投入した状態となり,遊技メダル貯留枚数表示器(A2-m)にデジタル表示されている遊技メダル貯留装置内の遊技メダル枚数が2減算されてデジタル表示される。但し,遊技メダル投入口(A3-c)から遊技メダルを2枚投入するか,2BETボタン(A3-i)を操作して2枚の遊技メダルで遊技ができる状態の場合は,2BETボタン(A3-i)を操作しても貯留されている遊技メダルは投入されない。
(ウ)MAXBETボタン(A3-j)は3枚の遊技メダルで遊技をするための投入ボタンである。
MAXBETボタン(A3-j)を操作すると,遊技メダルを3枚投入した状態となり,遊技メダル貯留枚数表示器(A2-m)にデジタル表示されている遊技メダル貯留装置内の遊技メダル枚数が3減算されてデジタル表示される。
但し,遊技メダル投入口(A3-c)から遊技メダルを3枚投入するか,MAXBETボタン(A3-j)を操作して3枚の遊技メダルで遊技ができる状態の場合は,MAXBETボタン(A3-j)を操作しても貯留されている遊技メダルは投入されない。
(エ)遊技メダル貯留枚数表示器(A2-m)にデジタル表示されている遊技メダル貯留装置内の遊技メダル枚数より多い対応枚数の投入ボタンを操作した場合は,貯留されている遊技メダルがすべて投入される。
イ役物遊技の場合は規定枚数が1枚のため,1BETボタン(A3-h),2BETボタン(A3-i),又はMAXBETボタン(A3-j)のいずれを操作しても貯留されている遊技メダルは1枚だけ投入される。
ウ遊技メダルセレクター(CG)が受付不可の場合は,1BETボタン(A3-h),2BETボタン(A3-i),又はMAXBETボタン(A3-j)のいずれを操作しても貯留されている遊技メダルは投入できない。
B入賞に係る図柄の組合せが表示された場合ア入賞によって払出される遊技メダルは,遊技メダル貯留装置を使用している状態で,貯留されている遊技メダル枚数が50枚未満の場合,遊技メダル貯留装置に合計50枚まで貯留される。
このとき,遊技メダル貯留枚数表示器(A2-m)は,貯留した遊技メダル枚数を加算してデジタル表示をする。
イ払出される遊技メダルを遊技メダル貯留装置に貯留している途中に,貯留されている遊技メダル枚数が50枚になった場合,残りの払出し枚数分の遊技メダルは,遊技メダル払出口(A5-a)から受け皿(A5-c)へ払出される。
C遊技メダル貯留装置の精算ア遊技メダル貯留装置を使用して遊技メダルが貯留されている場合に,精算ボタン(A3-f)を操作すると,遊技メダル貯留装置に貯留されている遊技メダルの精算となり,貯留されている遊技メダルを遊技メダル払出口(A5-a)から受け皿(A5-c)へ払戻しされる。
なお,自動精算有りモードに設定されている場合は,役物連続作動増加装置の作動終了後,自動的に貯留されている遊技メダルを精算する。
イ遊技メダル貯留装置に貯留されている遊技メダルが精算されると,遊技メダル貯留枚数表示器(A2-m)にデジタル表示されている遊技メダル枚数を1枚払戻すごとに1ずつ減算してデジタル表示する。
ウ貯留されている遊技メダルを払戻している間は,遊技メダルセレクター(CG)は遊技メダル返却状態になる。
このとき,遊技メダル投入口(A3-c)から投入された遊技メダルは遊技メダル払出口(A5-a)から受け皿(A5-c)へ返却される。
エ貯留されている遊技メダルの精算が終了すると,自動的に遊技メダル貯留装置は解除される。
なお,自動精算有りモードに設定されている場合の役物連続作動増加装置の作動終了後においては,貯留されている遊技メダルの精算が終了しても遊技メダル貯留装置は解除されない。
D遊技メダル貯留装置の解除ア遊技メダル貯留装置を使用している場合に,精算ボタン(A3-f)を操作すると,遊技メダル貯留装置を解除する。
イ遊技メダル貯留装置を解除するときに遊技メダルが貯留されている場合は,遊技メダル貯留装置の精算を行ってから,遊技メダル貯留装置を解除する。
ウ遊技メダル貯留装置を解除すると,遊技メダル貯留枚数表示器(A2-m)のデジタル表示は消灯し,遊技メダル貯留装置を使用しない状態となる。
4.制御動作の説明図1-5および図2-5に記載されているように,主基板(MBD-01)上のCPUは以下の信号の出し入れを行っている。まず,操作スイッチ及び表示ランプ基板(SWL-01)を介して,投入メダルセンサー信号@,投入ボタン信号1(1BET)E,投入ボタン信号2(2BET)F,投入ボタン信号3(MAXBET)G,回胴回転始動装置信号D,第1回胴回転停止装置信号A,第2回胴回転停止装置信号B,第3回胴回転停止装置信号C,及び精算ボタン信号Gが与えられ,逆に,遊技状態表示ランプ信号,メダル投入許可コイル信号,回胴停止ボタンLED信号,スピーカ1信号を出している。また,配線中継基板(INT-01)を介して,第1回胴センサー信号I,第2回胴センサー信号J,第3回胴センサー信号Kが与えられ,逆に,第1回胴図柄表示ランプ信号,第1回胴モーター信号,第2回胴図柄表示ランプ信号,第2回胴モーター信号,第3回胴図柄表示ランプ信号,第3回胴モーター信号を出している。
以上の信号の出し入れに関する,CPUの具体的な制御動作は,図1-6及び図2-6に示されているように,以下のとおりである。
(1)まず,メダル投入があると(遊技メダル貯留装置を使用しないで遊技する場合),遊技メダル投入処理(ST1-1)を行い,次のBETボタン処理(ST1-2)へ移る。メダル投入がない場合は,遊技メダル投入処理を素通りして次のBETボタン処理(ST1-2)へ移る。BETボタン処理(ST1-2)では,1BETボタン,2BETボタン,またはMAXBETボタンの操作があると(遊技メダル貯留装置を使用して遊技する場合),それぞれに対応したBETボタン処理(ST1-2)を行い,次の精算ボタン処理(ST1-3)へ移る。いずれのBETボタンも操作されていない場合(遊技メダル貯留装置を使用しないで遊技する場合)は,BETボタン処理(ST1-2)を素通りして次の精算ボタン処理(ST1-3)へ移る。精算ボタン処理(ST1-3)では,精算可能な場合は精算処理が行われ,精算可能でない場合はそのまま素通りする。
精算ボタン処理(ST1-3)後,回胴回転始動装置が押されないと(ST2),その場でループを形成するのではなく,メダル投入処理(ST1-1)の前まで戻る。回胴回転始動装置が押されると(ST2),前回ボーナス当選しST6で報知タイプ2であった場合は,ここで報知ランプを点滅する(ST-3)。
(2)その後抽選処理(ST4)を行い,ボーナス当選となった場合には(ST-5),報知タイプ1か報知タイプ2かの選択がなされる(ST6)。
ボーナス当選とは,原告が指摘するとおり,ボーナスゲームに移行するチャンスを得る当選のことである(実際にボーナスゲームに移行するためには,さらにボーナス図柄が揃うことが必要(ST17)である。)。
なお,報知タイプが2種類あることも原告指摘のとおりであるが,その内容は,厳密には原告指摘のものとは異なる。
報知タイプ1:当該ゲームの全ドラム停止だけではなく,その後入賞判定処理,メダル払い出し有無の処理を行った後で,報知ランプの点滅を開始するもの。
報知タイプ2:次回のゲームのメダル投入処理,BETボタン処理後,始動レバー操作直後に報知ランプの点滅を開始するもの。
(3)次に,減算カウンタの値が0か否かを判別し(ST7),0であればまずST9に進み,減算カウンタをスタートさせ(ST9),その後回胴回転を開始する(ST8)。減算カウンタの値が0でないときは,ループにより減算カウンタの値が0になるまでST7を繰り返す。
(4)更に,回胴回転停止ボタンが操作されると(ST10),対応するドラムの停止制御がなされる(ST11)。その後,全ドラムが停止されたか判別し(ST12),全ドラムが停止されていなければ,ST10に戻り,全ドラムが停止するまで繰り返される。この時,ボーナス当選している場合は,ボーナス図柄が揃いやすいように,CPUにより回胴停止操作を制御している。
(5)全ドラムが停止した後,入賞判定処理がなされ(ST14),入賞によるメダル払い出しがあるか否かの判定により(ST15),払い出しがある場合はメダルの払い出しがなされ(ST16),払い出しがない場合はそのまま素通りする。
(6)以上のST14,ST15,ST16の各ステップの後に,ST6で選択された報知方式が報知タイプ1である場合は,ここで報知ランプを点滅する(ST13)。
(7)さらに,入賞図柄がボーナス図柄か否かを判別し(ST17),ボーナス図柄でない場合は,ST1からの処理に戻る。ボーナス図柄の場合は,報知ランプが消灯し(ST18),ボーナスゲームに移行する(ST19)。
以上図1-1図1-2図1-3図1-4番号の説明図1-5図1-6図2-1図2-2図2-3図2-4番号の説明図2-5図2-6
裁判長裁判官 清水節
裁判官 田公輝
裁判官 榎戸道也