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関連ワード 29条の2(拡大された先願の地位) /  同一の発明 /  設定登録 /  訂正審判 /  請求の範囲 /  減縮 /  訂正明細書 /  取消決定 / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 75号 特許取消決定取消請求事件
原告 三菱化学株式会社
訴訟代理人弁理士 長谷川 曉司
被告 特許庁長官太田 信一郎
指定代理人 中島次一
同 谷口浩行
同 森田 ひとみ
同 林栄二
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/09/03
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 特許庁が異議2001−70915号事件について平成13年12月25日にした決定を取り消す。
2 訴訟費用は各自の負担とする。
事実及び理由
原告の請求
主文第1項と同旨の判決 訴訟費用は被告の負担とする。
前提となる事実
1 特許庁における手続の経緯 (1) 原告は、発明の名称を「光学部品用硬化性組成物」とする特許第3091976号(「本件特許」。平成2年11月15日出願、平成12年7月28日設定登録)の特許権者である。
(2)本件特許につき、特許異議の申立てがされ(異議第2001-70915号)、原告は、平成13年8月27日、本件特許出願の願書に添付した明細書(本件明細書)の特許請求の範囲の記載を別紙2のとおり訂正する訂正請求をした。
特許庁は、平成13年12月25日、「訂正を認める。特許第3091976号の請求項1に係る特許を取り消す。」旨の決定(本件決定)をし、その謄本を平成14年1月18日に原告に送達した。
(3)原告は、本件決定に対する特許取消決定取消請求訴訟の提起後である平成14年2月18日、本件特許につき訂正審判を請求した(訂正2002-39050)ところ、特許庁は、同年5月7日、「特許第3091976号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。」との審決(本件訂正審決)をし、その後本件訂正審決は確定した。
2 特許請求の範囲の記載 (1) 設定登録時の特許請求の範囲 別紙1のとおり (2) 本件訂正審決に係る訂正前の特許請求の範囲 別紙2のとおり (3) 本件訂正審決に係る訂正後の特許請求の範囲 別紙3のとおり 3 決定の理由の要点 本件決定は、平成13年8月27日付けの訂正請求に係る訂正を認めた上、本件発明の要旨を別紙2記載のとおり認定し、本件発明は、特開平4-80213号公報に記載された発明と同一の発明であるから、本件特許は、特許法29条の2の規定に違反してなされたものであり、同法113条2号に該当するので、その特許を取り消すべきものであると判断した。
原告主張の審決取消事由
本件訂正審決の確定により、本件明細書の記載が訂正され、出願時に遡って、訂正後の明細書により出願、特許査定等がされたものとみなされる(特許法118条)から、訂正前の明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて本件発明の要旨を認定した本件決定には、認定に誤りがあることになる。この誤りが本件決定の結論に影響を及ぼすべきものであることは明らかである。したがって、本件決定は、違法であって、取り消されるべきである。
当裁判所の判断
第2に記載の事実関係は、本件証拠及び弁論の全趣旨により認めることができ、
これによれば、本件訂正審決の確定により、本件明細書の特許請求の範囲の記載が別紙3のとおり訂正され、本件特許の特許請求の範囲減縮されたことは明らかである。
そうすると、本件決定が本件発明の要旨を本件訂正審決による訂正前の特許請求の範囲(別紙2)のとおりと認定したことは、結果的に誤りであったことになり、
この誤りが本件決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、本件決定は取り消されるべきである。
よって、原告の請求は理由があるから、これを認容し、訴訟費用の負担につき行訴法7条、民訴法62条を適用して、主文のとおり判決する。
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別紙1【請求項1】(A)光重合性のジエチレン性不飽和単量体(オリゴマーを除く)100重量部に対して、
(B)一般式(式中、Xはメチル基、メトキシ基又は塩素原子を示し、nは2又は3の数を示し、Rはフェニル基又はメトキシ基を示す。)で表わされる少なくとも1種の光重合開始剤を0.01〜0.3重量部、及び(C)10時間半減期の温度が50〜90℃の範囲にある有機過酸化物を0.02〜0.5重量部含有してなる光学部品用光硬化性組成物。
別紙2【請求項1】(A)光重合性のジエチレン性不飽和単量体(オリゴマーを除く。またイソシアネートエチル(メタ)アクリレートとチオール基含有化合物とを反応させて得られる化合物を10〜90重量%含むもの、並びにイソホロンジイソシアネートと2-ヒドロキシエチルメタクリレートとをモル比1:2で反応させた化合物、ポリエチレングリコールジアクリレート及びヘキサンジオールジアクリレートの混合物を除く)100重量部に対して、
(B)一般式(式中、Xはメチル基、メトキシ基又は塩素原子を示し、nは2又は3の数を示し、Rはフェニル基またはメトキシ基を示す。)で表わされる少なくとも1種の光重合開始剤を0.01〜0.3重量部、及び(C)10時間半減期の温度が50〜90℃の範囲にある有機過酸化物を0.02〜0.5重量部含有してなる光学部品用光硬化性組成物。
別紙3【請求項1】(A)光重合性のジエチレン性不飽和単量体(オリゴマーを除く。またイソシアネートエチル(メタ)アクリレートとチオール基含有化合物とを反応させて得られる化合物を含むもの、並びにイソホロンジイソシアネートと2-ヒドロキシエチルメタクリレートとをモル比1:2で反応させた化合物、ポリエチレングリコールジアクリレート及びヘキサンジオールジアクリレートの混合物を除く)100重量部に対して、
(B)一般式(式中、Xはメチル基、メトキシ基又は塩素原子を示し、nは2又は3の数を示し、Rはフェニル基またはメトキシ基を示す。)で表わされる少なくとも1種の光重合開始剤を0.01〜0.3重量部、及び(C)10時間半減期の温度が50〜90℃の範囲にある有機過酸化物を0.02〜0.5重量部含有してなる光学部品用光硬化性組成物。
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 塩月秀平
裁判官 古城春実