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関連審決 異議2000-73277
関連ワード 進歩性(29条2項) /  上位概念 /  技術常識 /  特許出願日 /  参酌 /  実施 /  設定登録 /  新規事項追加(新規事項の追加) /  訂正の目的 /  請求の範囲 /  減縮 /  拡張 /  変更 /  釈明 /  訂正明細書 /  取消決定 /  異議申立 / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 36号 特許取消決定取消請求事件
原告 株式会社オービックビジネスコンサルタント
訴訟代理人弁護士 生田哲郎,山田基司,池田博毅
同弁理士 瀬谷 徹,斎藤栄一
被告 特許庁長官太田信一郎
指定代理人 今井義男,片岡栄一,小林信雄,林 栄二,高橋泰史
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/12/03
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が異議2000−73277号事件について平成13年11月27日にした決定を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
主文同旨
前提となる事実
1 特許庁における手続の経緯 (1) 本件特許 特許権者 株式会社オービックビジネスコンサルタント(原告) 発明の名称 「コンピュータのプログラム処理信号入力方法及びその装置」 特許出願日 平成7年7月4日(特願平7-191147号) 特許設定登録日 平成11年12月24日 特許番号 特許第3015862号 (2) 本件手続 特許異議申立日 平成12年8月24日 特許異議事件番号 異議2000-73277号 訂正請求日 平成13年3月23日 訂正の手続補正書提出 平成13年6月6日 異議の決定日 平成13年11月27日 決定の結論 「特許第3015862号の請求項1ないし6に係る特許を取り消す。」 決定謄本送達日 平成13年12月17日(原告に対し) 2 本件発明の要旨【請求項1】コンピュータ表示装置面内にウインドウ枠を設けたウインドウ表示内でポインティングデバイス入力手段を使用してプログラム処理を行えるウインドウ構造体のデータ構造を有するウインドウ形式オペレーティングシステムに制御されたコンピュータのプログラム処理信号入力方法であって,プログラム処理により機能を設定できるファンクションキーを有するキー入力装置の前記ファンクションキー列パターンとその各キー毎に現在のプログラム処理機能名とを前記ウインドウ表示内に表示するステップと,前記キー入力装置のファンクションキー列の各キーの機能は前記ウインドウ表示内に表示された前記機能名に一致させるステップと,前記ファンクションキーを押下することによって,その機能のプログラム処理が行えるステップとを備え,前記ウインドウ表示内に表示するステップは,その画面内の文字列・グラフ・表を所定量ずつ上/下/左/右に移動させる機能名表示ステップと,前記ファンクションキー列のパターンを,前記ウインドウ枠の上/下/左/右の各枠のいずれかに並行させるパターン表示ステップと,該ファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔の比は使用キー入力装置の各キー間の位置間隔の比に一致するように,前記使用キー入力装置の種類のパターンを前記プログラム処理に際して設定するパターン設定手段を備え,前記パターン設定手段によって前記使用キー入力装置のファンクションキーと同じ前記間隔の比のパターンを前記ウインドウ表示内に表示させる間隔表示ステップとを備えることを特徴とするコンピュータのプログラム処理信号入力方法。
【請求項2】請求項1記載のコンピュータのプログラム処理信号入力方法において,前記ウインドウ表示内に表示された機能名のあるファンクションパターン表示位置に前記ポインティングデバイス入力手段でポインタを合せて入力処理が行えることを特徴とするコンピュータのプログラム処理信号入力方法。
【請求項3】請求項1または2記載のコンピュータのプログラム処理信号入力方法において,前記ポインティングデバイス入力手段はマウスポインティングデバイスであることを特徴とするコンピュータのプログラム処理信号入力方法。
【請求項4】コンピュータ表示装置のウインドウ表示画面で主としてポインティングデバイス入力手段によりプログラム処理を行うウインドウ形式オペレーティングシステムに制御されたコンピュータのプログラム処理信号入力装置であって,プログラム処理機能を入力できるファンクションキー列を有するキー入力装置と,前記ウインドウ表示画面に前記ファンクションキー列のパターンを表示し現在のプログラム処理機能名を前記ファンクションキー毎に表示する表示制御手段と,ファンクションキー列パターンへのポインティングデバイス入力手段によるクリックあるいはファンクションキーの押下によって,その機能のプログラム処理を行わせる制御手段とを備え,前記表示制御手段は,その画面内の文字列・グラフ・表を所定量ずつ移動させる機能名表示手段と,前記ファンクションキー列パターンを前記ウインドウ表示画面の上,下,左,右の各枠の少くとも一つに並行して表示するパターン表示手段と,該前記ファンクションキー列パターンを表示するに際して,前記ファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔比を,使用している前記キー入力装置のファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔比に一致するように表示する間隔表示手段とを備えることを特徴とするコンピュータのプログラム処理信号入力装置。
【請求項5】前記ポインティングデバイス入力手段はマウスポインティングデバイスであることを特徴とする請求項4記載のコンピュータのプログラム処理信号入力装置。
【請求項6】使用している前記キー入力装置の種類を識別する識別手段と,使用することのできる複数のキー入力装置のファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔比を記憶する記憶手段を備え,ファンクションキー列パターンを表示するに際しては,前記識別手段により使用しているキー入力装置を識別し,前記記憶手段よりその位置間隔比を読出し,前記表示制御手段により前記位置間隔比のファンクションキー列パターンを表示することを特徴とする請求項4または5記載のコンピュータのプログラム処理信号入力装置。
3 決定の理由 本件決定の理由は,【別紙】「異議の決定の理由」に記載のとおりである。
要するに,@ 本件訂正請求に対する補正は,訂正請求書の要旨を変更するものであるから,採用することができず,本件訂正請求も,新規事項の追加であり,特許請求の範囲変更するものであるから,認められない,A 特許異議の申立てについて,請求項1に係る発明と刊行物1(武井一巳「秀丸参上!」,本訴甲4)記載の発明とは,相違点(1)ないし(3)の点で相違するが,これらはいずれも刊行物1及び刊行物2(藤田洋史「秀丸エディター&秀Termディスク&マニュアル」,本訴甲5)に記載のものから容易になし得るものである,B 請求項2,3に係る発明は,請求項1を引用しており,同じ理由で,刊行物1,2記載のものから容易になし得るものである,C 請求項4に係る発明と刊行物1に記載された発明とは,相違点(1)ないし(3)の点で相違するが,これらはいずれも刊行物1及び刊行物2に記載のものから容易になし得るものである,D 請求項5に係る発明は,請求項4を引用しており,同じ理由で,刊行物1,2記載のものから容易になし得るものである,E 請求項6に係る発明は,請求項4又は5を引用しており,刊行物1記載のものと請求項6に係る発明とは,請求項4で記載した相違点(1),(2),(3)で相違し,さらに相違点(4)で相違しているが,相違点(1),(2),(3)については,上記と同じ理由で,相違点(4)については,刊行物3(マイクロソフト株式会社「Microsoft WINDOWS QUICK ユーザーズガイド Version 3.1」,本訴甲6)及び刊行物1記載のものから容易になし得るものである,F よって,本件請求項1〜6に係る発明についての特許は,特許法29条2項の規定により拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める,というものである。
原告主張の決定取消事由の要点
原告は,本訴においては,決定が本件訂正請求に対する補正を採用せず,本件訂正請求も認めなかった点は争わない。以下のとおり,本件訂正請求前の請求項1ないし6に係る発明についての特許を取り消した点について,決定の取消事由を主張するものである。
1 取消事由1(請求項1に係る発明の相違点(3)の判断の誤り) (1) 決定は,請求項1につき,刊行物1記載の発明との相違点(3)として,「請求項1に係る発明が『ファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔の比は使用キー入力装置の各キー間の位置間隔の比に一致するように,前記使用キー入力装置の種類のパターンを前記プログラム処理に際して設定するパターン設定手段を備え,前記パターン設定手段によって前記使用キー入力装置のファンクションキーと同じ前記間隔の比のパターンを前記ウインドウ表示内に表示させる間隔表示ステップ』を備えているのに対し,刊行物1記載の発明は,このような構成が明確に示されていない点」であると認定している。
(2) そして,決定は,相違点(3)についての判断として,刊行物1における「従来のMS-DOSの画面」の記載では,ファンクションキー列のパターンを,画面の下にファンクションキーに対応させるように,キー間隔を適度の間隔とし,5番目のキーと6番目のキーとの間隔を他のキー間の間隔よりも長くして表示していることが示されていることを挙げ,刊行物2には,ファンクションキー列のパターンを,ウインドウの下枠に沿いファンクションキーに対応させるように,4番目のキーと5番目のキー及び8番目のキーと9番目のキーとの間を空けるように表示していることが示されていることを挙げている(下線は原告が付したもの)。
しかし,上記の下線部分については,刊行物1及び刊行物2に記載されていない。
刊行物1には,単に,5番目と6番目のキーとの間隔を他のキー間の間隔よりも長くして表示することが示されているにすぎず,接続されているキーボード(キー入力装置,以下この意味で使用する。)のファンクションキーの実際の配列が,表示画面と同様に,5番目のキーと6番目のキーとの間が離れるような配置とされているものであるとの記載はない。すなわち,当該画面表示が現実のキーボードのファンクションキーのキー配列(間隔)に対応するものであるとの記載はない。また,MS-DOSにおいて,複数のキーボードの接続を認識し得るという記載もない。
刊行物2の記載も,12個のファンクションキーの4番目のキーと5番目のキーとの間隔,及び8番目のキーと9番目のキーとの間隔を空けるように表示することが記載されているにすぎず,接続されているキーボードのファンクションキーの実際の配列が,4番目のキーと5番目のキーとの間隔,及び8番目のキーと9番目のキーとの間隔が離れるような配置とされていることを示す記載はない。すなわち,当該画面表示が現実のキーボードのファンクションキーのキー配列(間隔)に対応するものであるとの記載はない。
(3) 原告代理人がファンクションキーの数や位置間隔の一方又は双方が異なる数種類のキーボードを用いて行った,「秀丸エディタ(ver3.13)」のファンクションキー表示機能の確認結果(甲3,検証結果報告書)によっても,秀丸エディタのファンクションキー表示機能は,現実のキーボードのファンクションキーの配列(間隔)を画面上に再現するものではなく,ユーザが選択した表示数だけのファンクションキーを,それぞれあらかじめ定められた配列パターンに従って表示するだけのものである。
(4) 一方,請求項1に係る発明は,上記のものとは異なり,キーボードの種類に応じて,そのキーボードの実際のファンクションキーの位置間隔の比に従って画面上にファンクションキーを描画するものである。これにより,ユーザがソフトウェアを使用する場合に,感覚的に容易に,実際のキーボードと画面との対応をとることができるという顕著な作用効果を得ることができる。
このような技術思想が,単に,あらかじめ定められたキーとキーとの間隔を空けてファンクションキーを表示するだけのものとは,根本的に異なることは明らかである。
刊行物1及び刊行物2の記載と,「ファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔の比を使用キー入力装置の各キー間の位置間隔の比に一致するように表示させる」という発想との間には,著しい距離があるのである,よって,刊行物1及び刊行物2の記載から,この発想に想到することは容易ではない。
(5) ところが,決定は,「キー操作を正確に早く行え,誤操作を少なくするために,どのようにファンクションキー列のパターンを配列表示させるかは,どのようなキー入力装置が接続されているかを考慮し,当業者が適宜決定し得る事項にすぎず,また刊行物1及び2の上記記載の事項を応用すれば,ファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔の比は使用キー入力装置の各キー間の位置間隔の比に一致するように表示させるようにすることは当業者が適宜なし得ることと認められる」と判断したが,進歩性の判断を明らかに誤っている。
2 取消事由2(請求項4に係る発明の相違点(3)の判断の誤り) 決定は,請求項4についても,相違点(3)として,上記の請求項1と同旨の認定判断を行っている。すなわち,決定は,請求項4につき,相違点(3)として,「請求項4に係る発明が『ファンクションキー列パターンを表示するに際して,前記ファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔比を,使用している前記キー入力装置のファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔比に一致するように表示する間隔表示手段』を備えているのに対し,刊行物1記載の発明には,ファンクションキーと同じ前記間隔の比のパターンを前記ウインドウ表示内に表示させるようにした構成が示されていない点」であると認定している。そして,相違点(3)についての判断として,前記1と同様に,刊行物1及び刊行物2の示すところを説示した上,「キー操作を正確に早く行え,誤操作を少なくするために,どのようにファンクションキー列のパターンを配列表示させるかは,どのようなキー入力装置が接続されているかを考慮し,当業者が適宜決定し得る事項にすぎず,また刊行物1及び2の上記記載の事項を応用すれば,ファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔の比は使用キー入力装置の各キー間の位置間隔の比に一致するように表示させることは当業者が適宜なし得ることと認められる」と判断した。
しかし,相違点(3)についての決定の上記判断は,前記1で主張したのと同様の理由により誤っている。
3 取消事由3(請求項6に係る発明の相違点(4)の判断の誤り) 決定は,請求項6につき,刊行物1記載の発明との相違点(4)として,「請求項6に係る発明が『使用している前記キー入力装置の種類を識別する識別手段と,使用することのできる複数のキー入力装置のファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔比を記憶する記憶手段を備え』ているのに対し,刊行物1の発明にはそのような構成が示されていない点」であると認定した上,「刊行物3には,接続されているキーボードの種類を識別して表示すること,複数種のキーボードが接続可能であることが,示されており,そのためには,複数のキーボードに関するデータ(デバイスドライバ)を記憶しており,記憶データとして,例えば接続することのできる複数のキー入力装置のファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔比を記憶させるようにすることは,当業者が適宜なし得ることと認められ」ると判断した。
しかし,刊行物3は,OS(Windows)に関する文献であって,OSが複数のキーボードを接続し認識し得ること,及び設定されているキーボードの種類(設定時にユーザが打ち込むもの)を表示し得ることが記載されているだけである。すなわち,刊行物3には,「使用することのできる複数のキー入力装置のファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔比を記憶する記憶手段」に関する記載は一切ない。
刊行物3に,接続されているキーボードの規格をWindowsが識別することができるという記載があるとしても,ソフトウェアにおいて,どのようなキー入力装置が接続されているのかの識別結果を考慮し,独自に記憶したファンクションキー配列の情報を用いて,現実のキーボードに対応したファンクションキー表示を行うという発想との間には,大きな隔たりがある。
また,前記のとおり,刊行物1及び刊行物2には,使用キー入力装置の種類を識別する旨の記載はない。
以上,刊行物1又は刊行物2に刊行物3を組み合わせてみても,複数のキーボードごとにその実際のキーボードのファンクションキーの位置間隔に対応した位置間隔で画面表示を行うという発想を有し,そのために,ファンクションキー列パターンの各キー間の位置関係比を記憶させるという構成を採用することとの間には,大きな隔たりがあり,当業者が適宜なし得るものではない。
4 取消事由4(請求項1及び請求項4に係る発明の相違点(1)の判断の誤り) 請求項1又は4に係る発明は,現在表示されているウインドウ画面表示に合わせて応用プログラムが各ファンクションキーに割り当てた機能を表示するというものである。もし仮に請求項1又は4に係る発明がそのような構成を有していないとすれば,請求項1又は4において,あえて「現在の」という文言を付す必要はない。
すなわち,本件明細書の記載からして,本件発明は,ファンクションキーの割当てがシステム側であらかじめなされるもので,ユーザにより任意に割り付けられるものではないものであることは,明らかである。請求項1又は4の「現在の」との文言には,「過去の」機能名表示や「未来の」機能名表示が想定されており,それぞれの状況に応じたシステムによる割り付けがなされていることになる。
これに対し,刊行物1,2に記載された発明は,ユーザが任意にファンクションキーを割り付けるものであり,技術思想が異なる。
したがって,請求項1又は4に係る発明は,刊行物1,2記載の発明から当業者が容易になし得るものではない。
5 取消事由5(請求項1及び請求項4に係る発明の相違点(2)の認定及び判断の誤り) (1) 請求項1又は4に係る発明は,本来,マウスというポインティングデバイスの使用が原則とされているOS(Windows)上で使用されるアプリケーションソフトウエアの中で,特に経理会計ソフトウェアなどにおいては,あえてファンクションキーにスクロール機能を割り付けることが有用であることを見出し,そのようなソフトウエアにおいて,はじめからファンクションキーにスクロール機能を割り付けてユーザに提供することを目的とするものである。
確かに,刊行物1には,「秀丸エディタ」において,ユーザがファンクションキーに種々の処理機能を与えることができることが記載されており,スクロール機能を有していることについての一般的な記載がある。しかし,それは,ユーザがファンクションキーに割り付けることができる機能のひとつとして,スクロール機能があることを示すにすぎない。
したがって,決定は,相違点(2)の認定を誤っている。
(2) なお,相違点(2)については,請求項1について,「請求項1に係る発明が『ウインドウ表示内に表示するステップは,その画面内の文字列・グラフ・表を所定量ずつ上/下/左/右に移動させる機能名表示ステップ』を備えているのに対し,刊行物1記載の発明は,そのようなステップを含んでいない点」と認定すべきであり,請求項4について,「請求項4に係る発明が『表示制御手段は,その画面内の文字列・グラフ・表を所定量ずつ移動させる機能名表示手段』を備えているのに対し,刊行物1記載の発明は,ファンクションキー列のキー機能として画面内の文字列・グラフ・表を所定量ずつ移動させる機能をもたせ該機能名を表示させているかは示されていない点」と認定すべきである。
そして,このような相違点を前提としても,刊行物1には,上記のような技術思想について記載は一切ないので,画面内の文字列・グラフ・表を所定量ずつ上/下/左/右に移動させる処理機能を与えるようにすることは,刊行物1の記載から当業者が適宜容易になし得ることとは認められない。
被告の主張の要点
1 取消事由1及び2に対して 決定において,刊行物1の記載事項として,「第15頁に記載された上の図には,従来のMS-DOSの画面が示され,下枠に並行させてファンクション列の長方形のパターンが表示され,各パターンには, , ,…… が表示され,と表示されたパターンと と表示されたパターンとの間隔は,他のパターン間の間隔より広くなっていることが示されており」(決定の三-2-イ(1))と認定したが,このことは,刊行物1の第15頁の上の図から明らかに読みとれるものであり,また,刊行物2の記載事項として,「第31頁の図の下には「秀丸エディターのメニューから,ファイルをマウスでクリックしてみた。ファイル関連のメニューが表示されている。」とあり,そしてウィンドウの下枠に並行させてファンクションキー列の長方形のパターンが表示され,各パターンには, , ……とプログラム処理名が記載され,パターンは12個あり,4つ目と5つ目のパターンの間隔と8つ目と9つ目のパターンの間隔は,他のパターン間隔より広くなっていることが,図に示されているものと認められる。」(決定の三-2-ロ)と認定したが,このことは,第31頁から明らかに読みとれる事項であり,この限りにおいて,刊行物1,2記載事項の上記認定に何らの誤りはない。
また,本件出願時,パーソナルコンピュータのキーボードのファンクションキーの配列に関し,本件明細書(甲2,段落番号【0033】,【0039】)にも記載されているように,5番目と6番目のファンクションキーの間隔が他のキー間隔よりも離れて配置された10個のファンクションキーをもつキーボード(本件明細書の図6に示されるような日本電気社製等のパーソナルコンピュータで使用されているもの),4番目と5番目,及び8番目と9番目のファンクションキー間の間隔がそれぞれ他のキー間隔より離れて配置された12個のファンクションキーをもつキーボード(本件明細書の図7に示されるIBM社製等のパーソナルコンピュータで使用されているもの)があることは当業者の技術常識であるから,表示画面上に10個のファンクションキーが示され,ファンクションキー列のパターンを,画面の下に,キー間隔を適度の間隔とし,5番目のキーと6番目のキーとの間隔を他のキー間の間隔よりも長くして表示されているならば,日本電気社製等のパーソナルコンピュータであり,表示画面上に12個のファンクションキーがあり,4番目のキーと5番目のキー及び8番目のキーと9番目のキーとの間隔を空けるように表示されているならば,IBM社製等のパーソナルコンピュータであると容易に推測し得るのである。したがって,決定が,請求項1及び4につき,相違点(3)の検討で,「刊行物1における「従来のMS-DOSの画面」の記載では,ファンクションキー列のパターンを,画面の下にファンクションキーに対応させるように,キー間隔を適度の間隔とし,5番目のキーと6番目のキーとの間隔を他のキー間の間隔よりも長くして表示していることが示され,刊行物2には,ファンクションキー列のパターンを,ウインドウの下枠に沿いファンクションキーに対応させるように,4番目のキーと5番目のキー及び8番目のキーと9番目のキーとの間隔を空けるように表示していることが示されている。」と,特に「ファンクションキーに対応させるように」と認定したことに何らの誤りはない。
なお,原告は,甲第3号証(検証結果報告書)を提出しているが,これはOSとして「Microsoft社製WindowsXP Home Edition」,「秀丸エディタ:バージョン3.13」を使用しており,本件出願後のものであり,そのまま採用されるべきものではない。しかしながら,甲第3号証に基づく原告の主張に対し,以下に見解を述べておく。
本件出願時,本件明細書にも記載されて(甲2,段落番号【0033】,【0039】)いるように,5番目と6番目のファンクションキーの間隔が他のキー間隔よりも離れて配置された10個のファンクションキーを持つキーボードからなる日本電気社製等のパーソナルコンピュータ,4番目と5番目,及び8番目と9番目のファンクションキー間の間隔がそれぞれ他のキー間隔より離れて配置された12個のファンクションキーを持つキーボードからなるIBM社製等のパーソナルコンピュータがあり,特別の理由がない限り,通常,ユーザは,ファンクションキーに割り付けられる機能を最大限に使うようにするものであり,例えば,IBM社製のパソコンを使用していれば,当然キーボードには12個のファンクションキーがあるので,12個のファンクションを割り当て表示させようとするものであり,また「秀丸」エディタは,これらのキーボード(日本電気社製パーソナルコンピュータ,IBM社製パーソナルコンピュータ)に対応することができるように,ユーザがファンクションキーの表示数を選択し得るよう,汎用性をもって設計され,選択をユーザに委ねているものと解される。
そうすると,ユーザが選択するものであるが,使用しているキーボードに対応させて,ファンクションキー列のパターンを,画面の下にファンクションキーに対応させるように,キー間隔を適度の間隔とし,5番目のキーと6番目のキーとの間隔を他のキー間の間隔よりも長くして表示させること,ファンクションキー列のパターンを,ウインドウの下枠に沿いファンクションキーに対応させるように,キー間隔を適度の間隔とし,4番目のキーと5番目のキー及び8番目のキーと9番目のキーとの間隔を空けるように表示させることは,原告が提出した甲第4号証にも示唆されているといえる。
そして,従来技術として,ファンクションキー列のパターンを,画面の下にファンクションキーに対応させるように,キー間隔を適度の間隔とし,5番目のキーと6番目のキーとの間隔を他のキー間の間隔よりも長くして表示すること,ファンクションキー列のパターンを,ウインドウの下枠に沿いファンクションキーに対応させるように,4番目のキーと5番目のキー及び8番目のキーと9番目のキーとの間隔を空けるように表示することがあり,キー操作を正確に早く行え,誤操作を少なくするために,どのようにファンクションキー列のパターンを配列表示させるかは,どのようなキー入力装置が接続されているかを考慮し,当業者が適宜決定し得る事項にすぎず,上記の従来技術を応用すれば,ファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔の比を使用キー入力装置の各キー間の位置間隔の比に一致するように表示させるようにすることは,当業者が適宜なし得ることと認められる。したがって,決定が,「キー操作を正確に早く行え,誤操作を少なくするために,どのようにファンクションキー列のパターンを配列表示させるかは,どのようなキー入力装置が接続されているかを考慮し,当業者が適宜決定し得る事項にすぎず,また刊行物1及び2の上記記載の事項を応用すれば,ファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔の比は使用キー入力装置の各キー間の位置間隔の比に一致するように表示させるようにすることは当業者が適宜なし得ることと認められる。」としたことに何らの誤りはない。
2 取消事由3に対して 刊行物3の第244頁の「Windowsセットアップ」の段落には,「Windowsセットアップは,現在コンピュータに組み込まれているハードウェアおよびソフトウェアを認識して,それらの情報を表示します。また,新しく組み込まれたハードウェアやソフトウェアを自動的に検出してセットアップ作業を行い,Windows上で利用できるようにします。」と記載されている。この記載の技術的意味は,Windowsをセットアップする場合,既発売されているキーボード等のドライバをWindowsの方で用意しておき,パーソナルコンピュータに接続されているキーボードを認識して,そのキーボード名を表示させるということである。してみると,刊行物3には,接続されているキーボードの種類を識別して表示することや,複数種のキーボードを接続し得ることが記載されているのであるから,Windowsがキーボードに関するデータを記憶していることは明らかである。
原告は「刊行物3は,OS(Windows)に関する文献である。」とも主張するが,OSもプログラムで構成されるものであり,その手段,構成は他のアプリケーションソフトウエアにも応用し得るものである。
そして,刊行物3記載の「キーボード」は,本件請求項6に係る発明の「キー入力装置」に相当し,刊行物3には,接続されているキー入力装置の種類を識別することが記載され,Windowsは,接続されているキー入力装置に関するデータを記憶しているのであるから,そのデータに,キーボード名はもちろんのこと,ドライバソフトや,「接続することのできる複数のキー入力装置のファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔比を記憶させるようにすること」は,当業者が適宜なし得ることであって,決定における進歩性の判断に誤りはない。
3 取消事由4に対して 請求項1及び4には,原告が主張するような構成が記載されておらず,請求項1及び4のどのような構成をもって,このように主張しているのか不明であり,請求項に記載された事項に基づかない主張である。そして,刊行物1に記載されたものも,少なくとも現在表示されているウインドウ画面表示に合わせて,「秀丸」エディタという応用プログラムが各ファンクションキーに割り当てた機能を表示するものであることは,明らかである。
また,原告は,「ファンクションキーの割当てがシステム側(「オペレーティングシステム」を略した「システム」の意味であると解される。)であらかじめなされる」ように,すなわちファンクションキーの割当てがオペレーティングシステムでなされるかのように主張するものであると解される。しかし,このことについては,本件明細書の記載(例えば,段落番号【0030】,【0031】等),本件明細書の図3の記載等を参照しても,何ら示されていないところである。
一方,刊行物1記載のものは,ユーザが任意に,使いやすいように,実行したい機能をファンクションキーに割り付けて,画面に表示することができるようにし,次回以降そのプログラムを立ち上げた後,その割り当てた機能を自動的に表示することができるものである。また,ファンクションキーに対する機能の割り付けを変更したければ,変更することができるものである。したがって,刊行物1に記載されたものも,本件請求項1〜6に係る発明と同様に,ファンクションキーに割り付けられている機能を,画面上にも表示することができるようにしたことが記載されており,技術思想が異なるとはいえない。
したがって,原告の主張は,失当であり,採用されるべきものではない。
4 取消事由5に対して 刊行物1には,ファンクションキーに種々の処理機能を与えること,その機能として,スクロールアップ,スクロールダウンを割り当てることができることのほか,ファンクションキーに対応して表示されたパターンに機能名を表示させるような技術思想が記載されており,請求項1に係る発明と刊行物1記載のものとの相違点(2),また請求項4に係る発明と刊行物1に記載されたものとの相違点(2)として認定したところに誤りはない。
また,ウィンドウズというOSがマウスというポインティングデバイスを使用してプログラム処理を行うことは,本件出願前,当業者に周知の技術事項であり,刊行物1記載のものは,ユーザが任意に,使いやすいように,実行したい機能をファンクションキーに割り付けて,次回以降そのプログラムを立ち上げた後,その割り当てた機能を自動的に表示するものである。実行したい機能を最初から固定して表示するか,ユーザが選択し割り付け,次回立ち上げた後は割り付けられた機能を固定的に表示するかは,単なる設計上の問題であり,実行したい機能として上/下/左/右のスクロール機能をファンクションキーに固定的に割り付け,かつ表示させるようにすることは,刊行物1の記載のものから,当業者であれば容易に推考し得るものであり,決定における進歩性の判断に誤りはない。
当裁判所の判断
1 取消事由1(請求項1に係る発明の相違点(3)の判断の誤り)について (1) 本件明細書(甲2)には,以下の記載がある。
@ 「本発明は,…応用プログラム処理におけるウインドウ表示画面内の文字列文章,グラフ,表などの少しずつの移動をしながら,その検索処理あるいは修正・追加および新規記入などの入力処理が短時間となる単純な操作で行えるコンピュータのプログラム処理信号入力方法とその装置を目的とする。」【0008】 A 「図2は,本実施例のコンピュータのプログラム処理信号入力装置におけるWindowsなどのウインドウ形式オペレーティングシステム8aとアプリケーションソフトウエア8bとの関係を模式的に示した説明図であり,…22は…アプリケーションソフトウエアを実行したときにそのアプリケーションソフトウエア上のプログラム処理機能を入力するためのファンクションキー列パターンを表示すると共に,現在のプログラム処理機能を各ファンクションキーパターン毎に表示する表示制御手段,23はキー入力装置15の種類の識別手段およびそれらのファンクションキーの各キーの位置間隔比を記憶する手段である。」【0030】 B 「これらの表示制御手段22,識別手段23,制御手段24はアプリケーションソフトウェア8bに設けられている。」【0030】 C 「次に,このプログラム処理信号入力装置による応用プログラム処理信号入力動作について説明する。図3(a)は各種応用プログラムの処理開始前のファンクションキー機能処理のフローチャートを示すものである。ステップS1,S2でキー入力装置15の種類を外部の選択スイッチなどで選択する。後述するように自動設定でもよい。ステップS3,S4でウインドウ表示画面の枠に並行して選択したファンクションキー列パターンを表示する。更にステップS5でその各パターンの下に機能名を表示する。」【0031】 D 「次に,図3(b)は,キー入力装置の種類を識別手段により自動設定する場合の応用プログラム処理信号入力動作を示すフローチャートである。…先ず,ステップS11においてWINDOWSソフトウェア上でアプリケーションソフトウエア…本実施例ではこのアプリケーションは経理会計ソフトである…が起動すると,続くステップS12で入力装置15の種類を識別し,そのファンクションキーの位置間隔比を記憶データから読み出す。そして,ステップS13に進んでCRTディスプレイ2の画面上に例えば図4に示す経理会計ソフトのウインドウ画面40を表示する。」【0031】 E 「図4のアプリケーションウインドウ40の…表示されたファンクションキー列パターン41a〜41jは,ステップS12で,識別したキー入力装置15の種類と記憶手段から読出したファンクションキーの位置間隔比を基に表示される各ファンクションキー列パターンの各々や配置位置を図6に示す実際のキー入力装置50のキーボード50におけるファンクションキー50a〜51jの配置間隔比に合致させる。」【0034】 F 「ステップS14では,キー入力装置50のファンクションキーあるいは…ポインティングデバイス装置14からの信号があれば,次のステップS15でファンクションキーあるいは…ポインティングデバイス装置14により選択されたファンクションキー列パターンの処理機能に応じた前記画像スクロール機能,印刷機能,画面切り替えなどを実行する。ステップS14でファンクションキー又はポインティングデバイスによる入力信号でなければ,ステップS16でそのキー入力機能を処理する。」【0035】 G 「前記ファンクションキー列のパターンの各キー間の位置間隔の比は使用キー入力装置の各キー間の位置間隔の比に一致するようにパターン設定手段でパターン設定するのでウインドウ表示画面内のファンクションキーを見ればキー入力装置のどのファンクションキーを押下すればよいか直ちに判別できる。」【0023】 H 「表示制御手段によりファンクションキー列のパターンを表示するに際し,前記ファンクションキー列のパターンの各キー間の位置間隔比を,使用しているキー入力装置のファンクションキー列のパターンの各キー間の位置間隔比に一致するように表示することで,キー操作中のキー入力装置のファンクションキー操作により応用プログラム実行中における表示画面上の表示ボタン操作を行うに際し,間違いなく,素早くキーを押下できることを可能にし,すなわち使用中のキー入力装置の操作すべきファンクションキーと表示画面上の表示パターンとの関係の把握を容易にし,キー操作誤りの発生を抑制する。」【0026】 I 「ファンクションキー列パターンはコンピュータのキー入力装置の種類にそのキー位置間隔比が一致させて表示されているので,ファンクションキーの各機能を利用者は素早く読取ることができ,キー操作が正確に早く行えて,誤操作を少なくする効果がある。」【0041】 上記@〜Fによれば,本件発明は,応用プログラムのプログラム処理信号入力方法に関し,Windowsセットアップを起動したときに使用キー入力装置の種類を選択設定しておき,その後本件発明に係る「プログラム処理信号入力方法」を備えた応用プログラムを起動したときに,同プログラムによってキー入力装置の種類を認識し,同プログラムが別途記憶しているファンクションキー列パターンの「位置間隔の比」情報を用いて,同使用キー入力装置の「位置間隔の比」に応じてファンクションキー列パターンの表示を行うとともに,処理機能名を表示するものであることが認められる。
さらに,上記G〜Iによれば,上記相違点(3)に係る構成は,ユーザがファンクションキー列パターンを見ただけで,同パターンとファンクションキーとの位置的な対応関係から,押下すべきファンクションキーを直ちに判別することができ,キー操作を素早く正確に行う作用効果を奏することが認められる。
(2) そこで,引用例である刊行物1ないし3について検討する。
(2-1) 刊行物1(甲4)について (2-1-1) 刊行物1には,ファンクションキーに関して以下の記載のあることが認められる。
a 「本書で解説する「秀丸エディタ for Windows Version1.10」は,次のような特徴を持っている。」(19頁) b 第15頁の「従来のMS-DOSの画面」と題する図には画面を示す枠が記載され,その下部に複数の長方形パターンが下枠に並行して表示され,各パターンには記号が表示されると共に,パターンとパターン との間隔は,他の間隔より広くなっていることが読みとれる。
c 「秀丸ではファンクションキーの表示を行わない設定が可能だが,この4つの状態にメニューや機能をフルに割り付けているようなときは,ファンクションキー表示を行うよう設定したほうがいいだろう。このファンクションキー表示は,- の の設定で,ファンクションキー表示をONにしておけばいい」(198〜199頁)。
d 「動作環境の設定」とのタイトルに続き,動作環境を設定するウインドウ「動作環境」が記載され(68頁),秀丸エディタを動かす際のウィンドウ内の各種動作環境を設定するウインドウ「動作環境-ウインドウ」が記載され(69頁),同ウインドウには,「□ファンクションキー表示(U) キー数:○8 ○10 ◎12」との設定項目の表示が見える。
e 「ファンクションキー表示(U) 秀丸…の機能を実行するために,いくつかのメニューを表示させることもある。これらの機能やメニューは,ファンクションキーにも設定されている。デフォルトでは,このファンクションキーは表示されていないが,「ファンクションキー表示」をONにすると,ウィンドウ最下行にファンクションキーが表示される。この機能では,表示するファンクションキーの数を選ぶことができる。選べるのは8,10,12個のいずれか。後述するが,秀丸にはユーザーが自由にファンクションキーに機能やメニューを割り当てることができる。」(78頁) f 「DOSのエディタでも,ファンクションキーをカスタマイズし,好きなキーに好きなメニューや機能を割り当てることができるソフトもあったが,秀丸のカスタマイズは強力だ。ファンクションキーへのメニューや機能の割り当てが,ユーザーの好きなように自由に設定できるようになっているのである。」(198頁) g 「自由にカスタマイズできるファンクションキーだから,単純にキーがどんな機能か,といった解説はできない。どのようにでも好きな機能やメニューが割り当てられるのだ。そこで秀丸の初期設定のキー割り当ての状態で,それぞれのファンクションキーに割り当てられている機能を説明しておくことにしよう。」(199頁)との記載に続き,同頁に〜 の各キーにつき,状態(そのまま)で割り当てる機能として,「秀丸ヘルプ」,「単語をコピー」,「選択開始」「切り抜き」…「行番号表示」を示す表が記載され,続く200頁以降には,上記ファンクションキーをそのまま押した状態に設定されているもの(ノーマルファンクションキー)として,上記「秀丸ヘルプ」,「単語をコピー」,「選択開始」,「切り抜き」…の説明がされている。
h 「ファンクションキーはキーボードから押してもいいし,ファンクションキー表示部分にマウスカーソルを合わせてクリックすることで,ファンクションキーを押した状態にすることもできる。」(200頁) (2-1-2) 上記によれば,「秀丸エディタ」につき以下の点が認められる。
Windows上で動く応用プログラムである。
画面最下行にファンクションキーを表示することができる。通常の設定では表示はしないが,から開くウインドウ 内の項目の「ファンクションキー表示」をONにすることにより表示される。表示するキーの数を8,10,12個から選ぶこともできる。
ファンクションキーには,初期設定により,その機能が割り当てられているが,ユーザが自由にファンクションキーに機能を割り当てることもできる。
キーボードのファンクションキーを押すこと,及び表示されたファンクションキーをクリックすることにより,実行すべき機能を指定する。
(2-2) 刊行物2(甲5)には以下の記載が認められる。
第31頁の図には,ウインドウの下部に複数の長方形パターンが下枠に並行して表示され,各パターンには, , などの記載があり,4番目と5番目のパターンの間と,8番目と9番目のパターンの間の2箇所は,間隔をもって区切られ,残りのパターン間は線により区切られていることが読みとれる。
(2-3) 刊行物3(甲6)には,ファンクションキーにつき格別の記載は認められない。
(3) 以上をもとに,取消事由1の有無について検討する。
(3-1) 刊行物1によれば,そこに記載された「従来のMS-DOSの画面」のパターン, , ,…… がプログラム処理機能の種別を示す記号であり,かつ,表示された各パターンが各ファンクションキーに対応するものであること,パターンとパターン との間隔は他の間隔より広いことが認められる。しかし,刊行物1においては,パターンとパターン との間隔が他の間隔より広いことの意義について,何らの記載もなく,また,使用しているキー入力装置(キーボード)との関係についても記載がないのであって,他にこれらのことを認定し得る証拠もない。
また,刊行物2(甲5)によれば,前記のとおり,4番目と5番目とのパターンの間と,8番目と9番目とのパターンの間の2箇所は,間隔を設けることによって区切られ,残りのパターンの間は線だけにより区切られているのであるが,刊行物2において,区切られ方にこのような相違が存在する意義について,何らの記載もなく,また,使用しているキー入力装置(キーボード)との関係についても記載がないのであって,他にこれらのことを認定し得る証拠もない。
そして,刊行物3(甲6)については,前記のとおり,ファンクションキーにつき格別の記載はない。
以上のように,刊行物1ないし刊行物3のいずれにも,使用キー入力装置(キーボード)のファンクションキーの各キー位置間隔と画面のファンクションキー列パターンの位置間隔との関係について記載はなく,上記相違点(3)に係る「ウインドウに表示された各キー間の位置間隔の比は,使用キー入力装置の各キー間の位置間隔の比に一致する」との構成について,記載されているということはできない。
(3-2) 確かに,刊行物1(甲4)の上記記載eによれば,応用プログラムである「秀丸エディタ」が,初期設定又は後のユーザ設定により各ファンクションキーに機能を割り当てることは明らかであるから,応用プログラムがファンクションキーにプログラム処理機能を割り当てる点において,本件発明と異なるものではない。
しかし,「秀丸エディタ」がその実行中に使用キー入力装置(キーボード)の種類を識別することについて,刊行物1には記載がなく,使用キー入力装置の「位置間隔の比」につきその情報を得る手段を欠いているのであるから,仮に刊行物1又は刊行物2が,画面のパターン間隔が使用キー入力装置のキー間隔に一致することを示唆するとしても,適用することは困難であるといわざるを得ない。
(3-3) 以上によれば,「キー操作を正確に早く行え,誤操作を少なくするために,どのようにファンクションキー列のパターンを配列表示させるかは,どのようなキー入力装置が接続されているかを考慮し,当業者が適宜決定し得る事項にすぎず,また刊行物1及び2の上記記載の事項を応用すれば,ファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔の比は使用キー入力装置の各キー間の位置間隔の比に一致するように表示させるようにすることは当業者が適宜なし得ることと認められる」との相違点(3)についての決定の判断は,誤りであるといわざるを得ない。
(3-4) 被告は,10個のファンクションキーを有し,5番目と6番目のキーの間隔が他の間隔よりも広いキー入力装置(日本電気社製等パソコン用)は,本件出願時,当業者の技術常識であったから,パターンとパターン との間隔が他の間隔より広くなっている刊行物1の画面が上記10個のファンクションキーを有するキー入力装置が接続されたコンピュータの画面であることは,容易に推測をすることができるとした上で,刊行物1には「ファンクションキー列のパターンを,…ファンクションキーに対応させるように…表示する」ことが記載されていると主張する。そして,被告は,このことは,刊行物2の記載と12個のファンクションキーを有し,4番目と5番目及び8番目と9番目のキーの間隔が他の間隔より広いキー入力装置(IBM社製等パソコン用)との関係からもいえると主張する。
上記日本電気社製等パソコン用及びIBM社製等パソコン用というファンクションキー数の異なる2つのキー入力装置が存在することが技術常識であったことは認められる。そして,同技術常識参酌した際,刊行物1又は刊行物2に記載の画面のキー位置間隔が,それぞれ,日本電気社製等パソコン用キー入力装置又はIBM社製等パソコン用キー入力装置のファンクションキーの位置間隔を模したものであることも推測し得る。したがって,表示するパターンの位置間隔に限ってみれば,刊行物1及び刊行物2には「ファンクションキー列のパターンを,…ファンクションキーに対応させるように…表示する」ことが記載されているものといえるかのようである。
しかし,前判示のとおり,刊行物1(甲4)及び刊行物2(甲5)に,使用キー入力装置のファンクションキーの位置間隔と画面に表示されるファンクション列パターンの位置間隔との関係についての記載がないのであるから,刊行物1の画面において,10個のファンクションキーが表示され,その5番目と6番目のキーの間隔が他の間隔よりも広いように表示されているからといって,接続されているキー入力装置が日本電気社製等パソコン用キー入力装置であることを推測し得るものではなく,同様に,刊行物2の画面において,12個のファンクションキーが表示され,その4番目と5番目及び8番目と9番目のキーの間隔が他の間隔より広いように表示されているからといって,接続されているキー入力装置がIBM社製等パソコン用キー入力装置であることを推測し得るものではない。したがって,刊行物1,2を精査しても,画面におけるファンクションキー列のパターンを,キー入力装置におけるファンクションキーに対応させるように表示することが記載されているとは認めるに足りないのであって,被告の上記主張は,採用することができない。
(3-5) 被告は,また,「秀丸エディタ」は,機能の割当てと表示数の選択とをユーザが自由にできる一方,ユーザは,通常,機能の割当てには使用キー入力装置のファンクションキーを最大限に使おうとし,表示数として使用キー入力装置のキー数を選択するものであるから,刊行物1には,ユーザの選択によるものではあるが,ファンクションキー列パターンを使用キー入力装置のファンクションキーに対応させるように表示することが示唆されている旨主張する。
刊行物1の「ファンクションキーをフルに使い,たくさんの機能を割り当てていれば12個表示させるのもいいし,あまり割り当てないなら8個でもいいだろう。」(78頁)との記載によれば,「フルに使い,たくさんの機能を割り当ててい」る場合もあれば,「あまり割り当てない」場合もあることを想定していることが認められる。刊行物1の記載によれば「最大限に使う」とは必ずしもいえない。
また,刊行物1の「画面がうるさく感じるようなら,思い切ってファンクションキーを消してしまってもいい。」(78頁)との記載によれば,「フルに使い,たくさん機能を割り当ててい」る場合でも,「画面がうるさく感じる」ようなときには,その一部だけを表示するために表示数を選択することがうかがえる。
そうすると,ファンクションキー列パターンを使用キー入力装置のファンクションキーに対応させるように表示することを,ユーザが常に意識しているともいえない。被告の主張は採用の限りではない。
2 取消事由2(請求項4に係る発明の相違点(3)の判断の誤り)について 前記1と同様の理由により,請求項4に係る発明の相違点(3)についての決定の判断もまた誤りであるといわざるを得ない。
3 以上によれば,決定は,請求項1及び請求項4に係る発明について,それぞれの相違点(3)についての判断を誤ったものであり,取消事由4,5について判断するまでもなく,これらの発明の進歩性を否定した決定の判断は,違法であるといわざるを得ない。
そして,前記のとおり,請求項2及び請求項3に係る発明は,請求項1を引用しており,決定は,請求項1に係る発明と同じ理由で特許は許されないと判断したものであるから,請求項1に係る発明と同様に,相違点(3)についての判断を誤り,進歩性を否定した違法があるといわざるを得ない。
また,前記のとおり,請求項5に係る発明は,請求項4を引用しており,請求項6に係る発明は請求項4又は5を引用しているところ,決定は,請求項4に係る発明と同じ理由で(ただし,請求項6に係る発明については,それに加えて相違点(4)が存在し,この点も想到容易であるとした。),特許は許されないと判断したものであるから,請求項4に係る発明と同様に,相違点(3)についての判断を誤り,進歩性を否定した違法があるといわざるを得ない(請求項6に係る発明については,相違点(4)の判断の誤りに関する取消事由3について判断するまでもない。)。
上記違法は,決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであり,請求項1ないし6に係る特許を取り消すべきものとした決定は,取消を免れない。
4 結論 以上のとおり,原告の本訴請求は理由があるので,本件決定を取り消すこととし,主文のとおり判決する。
追加
【別紙】異議の決定の理由異議2000-73277号事件,平成13年11月27日付け決定(下記は,上記決定の理由部分について,文書の書式を変更したが,用字用語の点を含め,その内容をそのまま掲載したものである。)理由一.手続の経緯本件特許3015862号の請求項1〜6に係る発明についての出願は、平成7年7月4日に出願したものであって、平成11年12月24日にその発明について特許の設定登録がされ、その後、その特許について、異議申立人岡林茂により特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、指定期間内である平成13年3月23日に訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由が通知され、訂正請求がなされたが却下され、その後平成13年6月6日付けで訂正に対する手続補正書が提出されたものである。
二.訂正の適否についての判断二-1.訂正請求に対する補正の適否について二-1-イ.訂正請求に対する補正の内容特許権者は、全文訂正明細書を以下のように補正することを求めたものである。
補正点(1):請求項1の「……前記応用プログラムのデータ入力処理のため、
機能名を現在の画像に合わせて表示する前記表示ステップと、その表示名に一致する機能を現在の表示毎に付与する前記機能ステップと、その状態でファンクションキーを押下する前記実行ステップとをそれぞれ繰返す各ステップによりデータ入力する……」を、「……前記応用プログラムのデータ入力処理のため、現在のプログラムの処理機能名を各ファンクションキーパターン毎に表示する前記表示ステップと、その表示名に一致する機能を現在の表示画像毎に付与する前記機能付与ステップと、その状態でファンクションキーを押下する前記実行ステップとをそれぞれ繰返す各ステップによりデータ入力する……」と補正する点。
補正点(2):請求項4の「……前記応用プログラムのデータ入力処理のため、
その応用プログラムが予め定めた機能名を現在の各画像に合わせてファンクションキー列パターンへ表示する表示制御手段と、そのファンクション列キーパターンのキー押下により、その機能のプログラム処理を行わせる前記制御手段をそれぞれ繰返す各手段によりデータ入力する……」を、「……前記応用プログラムのデータ入力処理のため、現在のプログラムの処理機能名を各ファンクションキーパターン毎に表示する表示制御手段と、そのファンクション列キーパターンのキー押下により、その機能のプログラム処理を行わせる前記制御手段をそれぞれ繰返す各手段によりデータ入力する……」と補正する点。
二-1-ロ.訂正請求に対する補正の適否補正点(1)(2)の補正は、訂正事項の削除、及び訂正請求書の要旨を変更しない範囲での軽微な瑕疵の補正とは認められず、新たに訂正事項を加える、あるいは訂正事項を変更するものと認められ、請求書の要旨の変更と認められる。
したがって、上記補正は、訂正請求書の要旨を変更するものであるから、特許法第120条の4第3項で準用する同法第131条第2項の規定に違反するものであり、採用しない。
二-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張変更の存否二-2-イ.訂正の内容特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
(1)請求項1の記載を「コンピュータ表示装置面内にウインドウ枠を設けたウインドウ表示内でポインテイングデバイス入力手段を使用して応用プログラム処理を行えるウインドウ構造体のデータ構造を有するウインドウ形式オペレーティングシステムに制御されたコンピュータのプログラム処理信号入力方法であって、プログラム処理により機能を設定できるファンクションキーを有するキー入力装置の前記ファンクションキー列パターンとその各キー毎に現在の応用プログラム処理機能名とを前記ウインドウ表示内に表示する表示ステップと、前記キー入力装置のファンクションキー列の各キーの機能は前記ウインドウ表示内に表示された前記機能名に一致させる機能付与ステップと、前記ファンクションキーを押下することによって、その機能のプログラム処理が行える実行ステップとを備え、前記ウインドウ表示内に表示する表示ステップは、その応用プログラムの画面内の文字列・グラフ・表を所定量ずつ上/下/左/右に移動させる機能名表示ステップと、前記ファンクションキー列のパターンを、前記ウインドウ枠の上/下/左/右の各枠のいずれかに並行させるパターン表示ステップと、該ファンクションキー列パダーンの各キー間の位置間隔の比は使用キー入力装置の各キー間の位置間隔の比に一致するように、前記使用キー入力装置の種類のパターンを前記プログラム処理に際して設定するパターン設定手段を備え、前記パターン設定手段によって前記使用キー入力装置のファンクションキーと同じ前記間隔の比のパターンを前記ウインドウ表示内に表示させる間隔表示ステップとを備え、前記応用プログラムのデータ入力処理のため、機能名を現在の画像に合せて表示する前記表示ステップと、その表示名に一致する機能を現在の表示画像毎に付与する前記機能付与ステップと、その状態でファンクションキーを押下する前記実行ステップとをそれぞれ繰返す各ステップによりデータ入力することを特徴とするコンピュータのプログラム処理信号入力方法。」と訂正する。
(2)請求項4の記載を、
「コンピュータ表示装置のウインドウ表示画面で主としてポインティングデバイス入力手段により応用プログラム処理を行うウインドウ形式オペレーティングシステムに制御されたコンピュータのプログラム処理信号入力装置であって、プログラム処理機能を入力できるファンクションキー列を有するキー入力装置と、前記ウインドウ表示画面に前記ファンクションキー列のパターンを表示し現在の応用プログラム処理機能名を前記ファンクションキー毎に表示する表示制御手段と、ファンクションキー列パターンへのポインテイングデバイス入力手段によるクリックあるいはファンクションキーの押下によって、その機能のプログラム処理を行わせる制御手段とを備え、前記表示制御手段は、その応用プログラムの画面内の文字列・グラフ・表を所定量ずつ移動させる機能名表示手段と、前記ファンクションキー列パターンを前記ウインドウ表示画面の上、下、左、右の各枠の少くとも一つに並行して表示するパターン表示手段と、該前記ファンクションキー列パターンを表示するに際して、前記ファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔比を、使用している前記キー入力装置のファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔比に一致するように表示する間隔表示手段とを備え、前記応用プログラムのデータ入力処理のため、その応用プログラムが予め定めた機能名を現在の各画像に合せてファンクションキー列パターンへ表示する表示制御手段と、そのファンクションキー列パターンのキー押下により、その機能のプログラム処理を行わせる前記制御手段をそれぞれ繰返す各手段によりデータ入力することを特徴とするコンピュータのプログラム処理信号入力装置。」と訂正する。
(3)明細書段落番号【0009】の記載を、
「【課題を解決するための手段】本発明に係るコンピュータのプログラム処理信号入力方法は、コンピュータ表示装置面内にウインドウ枠を設けたウインドウ表示内でボインティングデバイス入力手段を使用して応用プログラム処理を行えるウインドウ構造体のデータ構造を有するウインドウ形式オペレーティングシステムに制御されたコンピュータのプログラム処理信号入力方法であって、プログラム処理により機能を設定できるファンクションキーを有するキー入力装置の前記ファンクションキー列パターンとその各キー毎に現在の応用プログラム処理機能名とを前記ウインドウ表示内に表示する表示ステップと、前記キー入力装置のファンクションキー列の各キーの機能は前記ウインドウ表示内に表示された前記機能名に一致させる機能付与ステップと、前記ファンクションキーを押下することによって、その機能のプログラム処理が行える実行ステップとを備え、前記ウインドウ表示内に表示する表示ステップは、その応用プログラムの画面内の文字列・グラフ・表を所定量ずつ上/下/左/右に移動させる機能名表示ステップと、前記ファンクションキー列のパターンを、前記ウインドウ枠の上/下/左/右の各枠のいずれかに並行させるパターン表示ステップと、該ファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔の比は使用キー入力装置の各キー間の位置間隔の比に一致するように、前記使用キー入力装置の種類のパターンを前記プログラム処理に際して設定するパターン設定手段を備え、前記パターン設定手段によって前記使用キー入力装置のファンクションキーと同じ前記間隔の比のパターンを前記ウインドウ表示内に表示させる間隔表示ステップとを備え、前記応用プログラムのデータ入力処理のため、機能名を現在の画像に合せて表示する前記表示ステップと、その表示名に一致する機能を現在の表示画像毎に付与する前記機能付与ステップと、その状態でファンクションキーを押下する前記実行ステップとをそれぞれ繰返す各ステップによりデータ入力することを特徴とする。」と訂正する。
(4)明細書段落番号【0014】の記載を、
「本発明に係るコンピュータのプログラム処理信号入力装置は、コンピュータ表示装置のウインドウ表示画面で主としてポインティングデバイス入力手段により応用プログラム処理を行うウインドウ形式オペレーティングシステムに制御されたコンピュータのプログラム処理信号入力装置であって、プログラム処理機能を入力できるファンクションキー列を有するキー入力装置と、前記ウインドウ表示画面に前記ファンクションキー列のパターンを表示し現在の応用プログラム処理機能名を前記ファンクションキー毎に表示する表示制御手段と、ファンクションキー列パターンへのポインテイングデバイス入力手段によるクリックあるいはファンクションキーの押下によって、その機能のプログラム処理を行わせる制御手段とを備え、前記表示制御手段は、その応用プログラムの画面内の文字列・グラフ・表を所定量ずつ移動させる機能名表示手段と、前記ファンクションキー列パターンを前記ウインドウ表示画面の上、下、左、右の各枠の少くとも一つに並行して表示するパターン表示手段と、該前記ファンクションキー列パターンを表示するに際して、前記ファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔比を、使用している前記キー入力装置のファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔比に一致するように表示する間隔表示手段とを備え、前記応用プログラムのデータ入力処理のため、その応用プログラムが予め定めた機能名を現在の各画像に合せてファンクションキー列パターンへ表示する表示制御手段と、そのファンクションキー列パターンのキー押下により、その機能のプログラム処理を行わせる前記制御手段をそれぞれ繰返す各手段によりデータ入力することを特徴とする。」と訂正する。
二-2-ロ.当審の判断上記訂正事項(1)(2)は、特許請求の範囲減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正であり、上記訂正事項(3)及び(4)は、訂正後の特許請求の範囲の記載との整合を図るための明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正であるので、上記訂正事項(1)及び(2)について検討する。
上記訂正事項(1)は、「応用プログラムのデータ入力処理のため、機能名を現在の画像に合せて表示する前記表示ステップ」と訂正し、上記訂正事項(2)は、「応用プログラムのデータ入力処理のため、その応用プログラムが予め定めた機能名を現在の各画像に合せてファンクションキー列パターンへ表示する表示制御手段」と訂正しており、以下「機能名を現在の画像に合せて」表示することについて検討する。願書に添付した明細書又は図面の段落番号【0024】には「コンピュータのプログラム処理信号入力装置によれば、表示制御手段によりウインドウ表示画面上で応用プログラムにおけるプログラム処理機能を入力するファンクションキー列のパターンを表示し現在のプログラム処理機能名を前記ファンクションキー毎に表示し、制御手段によりキー入力装置のファンクションキーの押下でも、そのキーに対応して前記応用プログラムにおける前記プログラム処理機能を実行できるので、マウスによる前記ファンクションキー機能使用頻度が多く、しかもキー入力装置よりの文字・数字の入力がファンクションキーの押下が多い場合などでは、マウスを使用せず、キー入力装置のファンクションキー押下とすれば、すべてキー入力装置で処理が可能となり全体的にボタン操作に伴う肉体的な負担が軽減される。」と記載され、同段落番号【0030】には、「図2は、本実施例のコンピュータのプログラム処理信号入力装置におけるWINDOWSなどのウインドウ形式オペレーティングシステム8aとアプリケーションソフトウェア8bとの関係を模式的に示した説明図であり、図において21はウインドウ形式オペレーティングシステム8aとアプリケーションソフトウェア8bによって制御されているコンピュータ本体、22は後述するウインドウ表示画面25上でアプリケーションソフトウェアを実行したときにそのアプリケーションソフトウェア上のプログラム処理機能を入力するためのファンクションキー列パターンを表示すると共に、現在のプログラム処理機能を各ファンクションキーパターン毎に表示する表示制御手段、」と記載されているように、「現在のプログラム処理機能を各ファンクションキーパターン毎に表示する」ことは記載されている。しかしながら、「機能名を画像に合わせて」表示することは、願書に添付した明細書又は図面には記載されておらず、上記のように訂正することは、新規事項の追加であり、特許請求の範囲変更するものである。
二-2-ハ.むすびしたがって、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する同第126条第2、3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
三.特許異議の申立てについて三-1.本件発明特許第3015862号の請求項1〜6に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】コンピュータ表示装置面内にウインドウ枠を設けたウインドウ表示内でポインティングデバイス入力手段を使用してプログラム処理を行えるウインドウ構造体のデータ構造を有するウインドウ形式オペレーティングシステムに制御されたコンピュータのプログラム処理信号入力方法であって、プログラム処理により機能を設定できるファンクションキーを有するキー入力装置の前記ファンクションキー列パターンとその各キー毎に現在のプログラム処理機能名とを前記ウインドウ表示内に表示するステップと、前記キー入力装置のファンクションキー列の各キーの機能は前記ウインドウ表示内に表示された前記機能名に一致させるステップと、
前記ファンクションキーを押下することによって、その機能のプログラム処理が行えるステップとを備え、前記ウインドウ表示内に表示するステップは、その画面内の文字列・グラフ・表を所定量ずつ上/下/左/右に移動させる機能名表示ステップと、前記ファンクションキー列のパターンを、前記ウインドウ枠の上/下/左/右の各枠のいずれかに並行させるパターン表示ステップと、該ファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔の比は使用キー入力装置の各キー間の位置間隔の比に一致するように、前記使用キー入力装置の種類のパターンを前記プログラム処理に際して設定するパターン設定手段を備え、前記パターン設定手段によって前記使用キー入力装置のファンクションキーと同じ前記間隔の比のパターンを前記ウインドウ表示内に表示させる間隔表示ステップとを備えることを特徴とするコンピュータのプログラム処理信号入力方法。
【請求項2】請求項1記載のコンピュータのプログラム処理信号入力方法において、前記ウインドウ表示内に表示された機能名のあるファンクションパターン表示位置に前記ポインティングデバイス入力手段でポインタを合せて入力処理が行えることを特徴とするコンピュータのプログラム処理信号入力方法。
【請求項3】請求項1または2記載のコンピュータのプログラム処理信号入力方法において、前記ポインティングデバイス入力手段はマウスポインティングデバイスであることを特徴とするコンピュータのプログラム処理信号入力方法。
【請求項4】コンピュータ表示装置のウインドウ表示画面で主としてポインティングデバイス入力手段によりプログラム処理を行うウインドウ形式オペレーティングシステムに制御されたコンピュータのプログラム処理信号入力装置であって、プログラム処理機能を入力できるファンクションキー列を有するキー入力装置と、前記ウインドウ表示画面に前記ファンクションキー列のパターンを表示し現在のプログラム処理機能名を前記ファンクションキー毎に表示する表示制御手段と、ファンクションキー列パターンへのポインティングデバイス入力手段によるクリックあるいはファンクションキーの押下によって、その機能のプログラム処理を行わせる制御手段とを備え、前記表示制御手段は、その画面内の文字列・グラフ・表を所定量ずつ移動させる機能名表示手段と、前記ファンクションキー列パターンを前記ウインドウ表示画面の上,下,左,右の各枠の少くとも一つに並行して表示するパターン表示手段と、該前記ファンクションキー列パターンを表示するに際して、前記ファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔比を、使用している前記キー入力装置のファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔比に一致するように表示する間隔表示手段とを備えることを特徴とするコンピュータのプログラム処理信号入力装置。
【請求項5】前記ポインティングデバイス入力手段はマウスポインティングデバイスであることを特徴とする請求項4記載のコンピュータのプログラム処理信号入力装置。
【請求項6】使用している前記キー入力装置の種類を識別する識別手段と、使用することのできる複数のキー入力装置のファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔比を記憶する記憶手段を備え、ファンクションキー列パターンを表示するに際しては、前記識別手段により使用しているキー入力装置を識別し、前記記憶手段よりその位置間隔比を読出し、前記表示制御手段により前記位置間隔比のファンクションキー列パターンを表示することを特徴とする請求項4または5記載のコンピュータのプログラム処理信号入力装置。
三-2.引用した刊行物の記載事項当審が平成13年1月16日に通知した取消理由において引用した刊行物は、以下のとおりである。
刊行物1:武井一巳「秀丸参上!」(1994-1-5)ナツメ社p.15、p.19、p.68-69、p.78、p.114-115、p.198-200、p.213-216(甲第1号証)刊行物2:藤田洋史「秀丸エディター&秀Termディスク&マニュアル」(1993-11-30)アスキー出版局p.31(甲第2号証)刊行物3:「MicrosoftWINDOWSQUICKユーザーズガイドVersion3.1」(1993-11-25)マイクロソフト株式会社p.244-246三-2-イ.刊行物1の記載事項(1)第15頁に記載された上の図には、従来のMS-DOSの画面が示され、
下枠に並行させてファンクション列の長方形のパターンが表示され、各パターンには「C1」、「CU」、「CA」、……「^Z」が表示され、[SU]と表示されたパターンと「VOID」と表示されたパターンとの間隔は、他のパターン間の間隔より広くなっていることが示されており、MS-DOSにおいて、表示されたパターン「C1」、「CU」、「CA」、……「^Z」はファンクションキーF1、
F2、R3……F10に対応し、プログラム処理機能であることは周知である。
(2)第15頁に記載された下の図には、WindowsのGUI環境としてプログラムマネージャのウインドウが示され、第19頁には「秀丸エディタ」(応用プログラム)がWindos(Windows3.1)上で動くことが記載されている。そしてWindows3.1は、コピュータ表示装置面内にウインドウ枠を設けたウインドウ表示内でマウス等のポインティングデバイス入力手段を使用してプログラム処理を行えるウインドウ構造体のデータ構造を有するウインドウ形式オペレーティングシステムであることは、周知である。
(3)第68〜69頁には、秀丸エディタを動かす際のウィンドウ内の各種動作環境を設定することが記載され、第69頁の上図には、ファンクションキーの表示をすべきか否かを選択し、表示を選択したときに、そのキー数を8、10、12個が選択できることが、示されている。
(4)第78頁には、「ファンクションキー表示(U)」という項で、以下のことが記載されている。
「秀丸にはたくさんの機能がある。また、それらの機能を実行するために、いくつかのメニューを表示させることもある。これらの機能やメニューは、ファンクションキーにも設定されている。デフォルトでは、このファンクションキーは表示されていないが、「ファンクションキー表示」をONにすると、ウィンドウ最終行にファンクションキーが表示される。
この機能では、表示するファンクションキーの数を選ぶことができる。選べるのは8、10、12個のいずれか。後述するが、秀丸にはユーザーが自由にファンクションキーに機能やメニューを割り当てることができる。」(第2〜9行目)。
(5)第114〜115頁には、「キー割り当ての実際」で、「[f1]キー(実際には四角形内に、f1と記載されているが、以下このように記載する)にファイルメニューを割り当てる」ための手順が記載されている。
(6)「DOSのエディタでも、ファンクションキーをカスタマイズし、好きなキーに好きなメニューや機能を割り当てることができるソフトもあったが、秀丸のカスタマイズは強力だ。ファンクションキーへのメニューや機能の割り当てが、ユーザーの好きなように自由に設定できるようになっているのである。」(第198頁第2段落)、「秀丸ではファンクションキーの表示を行わない設定が可能だが、
この4つの状態にメニューや機能をフルに割り付けているようなときには、ファンクションキー表示を行うよう設定したほうがいいだろう。
このファンクションキー表示は、[その他(O)]-[動作環境(E)..].の[ウィンドウ(W)]の設定で、ファンクションキー表示をONにしておけばいい」(第198頁下から第3行目〜第199頁第2行目)。
(7)「ファンクションキーはキーボードから押してもいいし、ファンクションキー表示部分にマウスカーソルを合わせてクリックすることで、ファンクションキーを押した状態にすることもできる。」(第200頁第第3〜5行目)。
(8)第213〜214頁には、「秀丸エディタの操作方法」「その他の機能」として、
「スクロールアップ画面を1行アップさせる。スクロールアップというのは、文書に対するカーソル位置はそのままで、画面を上に巻くこと。
スクロールダウンスクロールアップとは逆に、画面が下に降りてくる。これがスクロールダウン。
文書に対するカーソル位置はそのままで、画面を1行分おろすことができる。」(第215頁第6〜11行目)ようにした機能があり、上記(5)(6)に記載されたことからして、この機能をファンクションキーに割り当てることができるものである。
そうすると、刊行物1には、
コンピュータ表示装置面内にウインドウ枠を設けたウインドウ表示内でポインティングデバイス入力手段を使用してプログラム処理を行えるウインドウ構造体のデータ構造を有するウインドウ形式オペレーティングシステムに制御されたコンピュータのプログラム処理信号入力するものであって、
プログラム処理により機能を設定できるファンクションキーを有するキー入力装置の前記ファンクションキー列パターンを前記ウインドウ表示内に表示し、
前記ファンクションキーを押下することによって、その機能のプログラム処理が行え、
前記ウインドウ表示内に表示する際には、その画面内の文字列・グラフ・表を所定量ずつ上/下に移動させられ、前記ファンクションキー列のパターンを、前記ウインドウ枠の下に並行させるようパターンを表示させるようにした、
処理信号を入力するコンピュータのプログラム処理信号を入力する発明が記載されている。
三-2-ロ.刊行物2の記載事項第31頁の図の下には「秀丸エディターのメニューから、ファイルをマウスでクリックしてみた。ファイル関連のメニューが表示されている。」とあり、そしてウィンドウの下枠に並行させてファンクションキー列の長方形のパターンが表示され、各パターンには「ファイル」、「次の秀…」、「ウィンドウ…」……とプログラム処理名が記載され、パターンは12個あり、4つ目と5つ目のパターンの間隔と8つ目と9つ目のパターンの間隔は、他のパターン間隔より広くなっていることが、図に示されているものと認められる。
三-2-ハ.刊行物3の記載事項Windowsセットアップの場合に、現在Windowsで設定されているキーボードも含めたハードウエアが表示されることが、また基本ハードウエアの変更でキーボードも変更できることが記載され、接続されているキーボードの種類を識別して表示すること、接続され得るキーボードが複数あること、そしてキーボードに関するデータ(ドライバソフト)は、ハードディスクやフロッピーディスクのような記憶装置に記憶されていることが示唆されている。
三-3.第29条第2項違反について三-3-イ.請求項1に係る発明について(a)ここで請求項1に係る発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、請求項1に係る発明と刊行物1に記載された発明とは、
コンピュータ表示装置面内にウインドウ枠を設けたウインドウ表示内でポインティングデバイス入力手段を使用してプログラム処理を行えるウインドウ構造体のデータ構造を有するウインドウ形式オペレーティングシステムに制御されたコンピュータのプログラム処理信号入力する場合において、
プログラム処理により機能を設定できるファンクションキーを有するキー入力装置の前記ファンクションキー列パターンを前記ウインドウ表示内に表示させ、
ファンクションキーを押下することによって、その機能のプログラム処理が行えるようにし、
ファンクションキー列のパターンを、前記ウインドウ枠の下枠に並行させてパターン表示させるようにした、
コンピュータのプログラム処理信号入力方法、
で一致し、以下の点で相違している。
相違点(1):請求項1に係る発明が「プログラム処理により機能を設定できるファンクションキーを有するキー入力装置の前記ファンクションキー列パターンとその各キー毎に現在のプログラム処理機能名とを前記ウインドウ表示内に表示するステップと、前記キー入力装置のファンクションキー列の各キーの機能は前記ウインドウ表示内に表示された前記機能名に一致させるステップ」を備えているのに対し、刊行物1記載の発明はこのような構成が明確に示されていない点。
相違点(2):請求項1に係る発明が「ウインドウ表示内に表示するステップは、
その画面内の文字列・グラフ・表を所定量ずつ上/下/左/右に移動させる機能名表示ステップ」を備えているのに対し、刊行物1記載の発明は、ファンクションキー列のキー機能として左/右に移動させるようにした機能を含んでいない点。
相違点(3):請求項1に係る発明が「ファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔の比は使用キー入力装置の各キー間の位置間隔の比に一致するように、
前記使用キー入力装置の種類のパターンを前記プログラム処理に際して設定するパターン設定手段を備え、前記パターン設定手段によって前記使用キー入力装置のファンクションキーと同じ前記間隔の比のパターンを前記ウインドウ表示内に表示させる間隔表示ステップ」を備えているのに対し、刊行物1記載の発明は、このような構成が明確に示されていない点。
(b)相違点について検討する。
相違点(1):刊行物2記載のものには、ウインドウ内に表示されたファンクションキー列のキー毎にプログラム処理機能名を表示するような構成が記載されており、また刊行物1にも、従来のOSであるMS-DOSにおいて、ファンクションキー列のキー毎にプログラム処理機能名を表示するような構成が示されている(三-2-イ(1))。そして「キー入力装置のファンクションキー列の各キーの機能はウインドウ表示内に表示された前記機能名に一致させる」ことは、従来のOSであるMS-DOSでも行われており(三-2-イ(1))、当業者が適宜なし得ることと認められ、ファンクションキー列のキー毎にプログラム処理機能名を表示するような構成またキー入力装置のファンクションキー列の各キーの機能はウインドウ表示内に表示された前記機能名に一致させる構成を、刊行物1記載の発明を適用することは、当業者が容易になし得ることと認められる。
相違点(2):刊行物1記載の発明には、ファンクションキーに種々の処理機能を与えることが記載されており(三-2-イ(4)、(5))、この処理機能としてスクロール機能、つまり画面内の文字列・グラフ・表を所定量ずつ上/下/左/右に移動させる処理機能を与えるようにすることは、当業者が適宜なし得ることと認められ、そしてその際にパターンに機能名も表示させるようにすることは、刊行物2記載のもの及び刊行物1記載(三-2-イ(1))から当業者が容易になし得ることと認められる。
相違点(3):刊行物1における「従来のMS-DOSの画面」の記載では、ファンクションキー列のパターンを、画面の下にファンクションキーに対応させるように、キー間隔を適度の間隔とし、5番目のキーと6番目のキーとの間隔を他のキー間の間隔よりも長くして表示していることが示され(三-2-イ(1))、刊行物2には、ファンクションキー列のパターンを、ウインドウの下枠に沿いファンクションキーに対応させるように、4番目のキーと5番目のキー及び8番目のキーと9番目のキーとの間隔を空けるように表示していることが示されている。そしてキー操作を正確に早く行え、誤操作を少なくするために、どのようにファンクションキー列のパターンを配列表示させるかは、どのようなキー入力装置が接続されているかを考慮し、当業者が適宜決定し得る事項にすぎず、また刊行物1及び2の上記記載の事項を応用すれば、ファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔の比は使用キー入力装置の各キー間の位置間隔の比に一致するように表示させるようにすることは当業者が適宜なし得ることと認められる。
よって請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
三-3-ロ.請求項2、3に係る発明について刊行物1には、ウインドウ表示内に表示された機能のあるファンクションパターン表示位置にマウス等のポインティングデバイスでポインタを合せて入力処理が行えることが記載されており、ポインティングデバイス入力手段はマウス等ポインティングデバイスの上位概念である。そして請求項2、3に係る発明は、請求項1を引用しており、そうすると、刊行物1記載の発明と請求項2、3に係る発明とは、
上記三-3-イ(a)で記載した相違点で相違し、上記三-3-イ(b)で記載した判断と同じ理由で、刊行物1、2記載のものから容易になし得るものである。
よって請求項2、3に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
三-3-ハ.請求項4に係る発明について(a)請求項4に係る発明と刊行物1記載の発明とを対比する。
請求項4に係る発明と刊行物1に記載された発明とは、
コンピュータ表示装置のウインドウ表示画面で主としてポインティングデバイス入力手段によりプログラム処理を行うウインドウ形式オペレーティングシステムに制御されたコンピュータのプログラム処理信号入力装置であって、
プログラム処理機能を入力できるファンクションキー列を有するキー入力装置と、
前記ウインドウ表示画面に前記ファンクションキー列のパターンを表示する表示制御手段と、
ファンクションキー列パターンへのポインティングデバイス入力手段によるクリックあるいはファンクションキーの押下によって、その機能のプログラム処理を行わせる制御手段とを備え、
ファンクションキー列パターンを前記ウインドウ表示画面の下枠の一つに並行して表示するパターン表示手段と、
を備えたコンピュータのプログラム処理信号入力装置、
で一致し、以下の点で相違する。
相違点(1):請求項4に係る発明が「ウインドウ表示画面に前記ファンクションキー列のパターンを表示し現在のプログラム処理機能名を前記ファンクションキー毎に表示する表示制御手段」を備えているのに対し、刊行物1記載の発明は、プログラム処理機能名をウインドウ内に表示されたファンクションキー列のキー毎に表示するような構成が示されていない点。
相違点(2):請求項4に係る発明が「表示制御手段は、その画面内の文字列・グラフ・表を所定量ずつ移動させる機能名表示手段」を備えているのに対し、刊行物1記載の発明は、ファンクションキー列のキー機能として画面内の文字列・グラフ・表を所定量ずつ移動させる機能をもたせ該機能名を表示させているかは明確に示されていない点。
相違点(3):請求項4に係る発明が「ファンクションキー列パターンを表示するに際して、前記ファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔比を、使用している前記キー入力装置のファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔比に一致するように表示する間隔表示手段」を備えているのに対し、刊行物1記載の発明には、ファンクションキーと同じ前記間隔の比のパターンを前記ウインドウ表示内に表示させるようにした構成が示されていない点。
(b)以下相違点について、検討する。
相違点(1):刊行物2記載のものには、ウインドウ内に表示されたファンクションキー列のキー毎にプログラム処理機能名を表示するような構成が記載されており、また刊行物1にも、従来のOSであるMS-DOSにおいて、ファンクションキー列のキー毎にプログラム処理機能名を表示するような構成が示されており(三-2-イ(1))、ファンクションキー列のキー毎にプログラム処理機能名を表示するような構成を、刊行物1記載の発明に適用することは、当業者が容易になし得ることと認められる。
相違点(2):刊行物1記載のものには、ファンクションキーに種々の処理機能を与えることが記載されており(三-2-イ(4)、(5))、この処理機能としてスクロール機能、つまり画面内の文字列・グラフ・表を所定量ずつ移動させる処理機能を与えるようにすることは当業者が適宜なし得ることと認められ、そしてその際にその機能名を表示させるようにすることは、上記相違点(1)で述べたように当業者が容易になし得ることと認められる。
相違点(3):刊行物1記載の「従来のMS-DOSの画面」の記載では、ファンクションキー列のパターンを、画面の下にファンクションキーに対応させるように、キー間隔を適度の間隔とし、5番目のキーと6番目のキーとの間隔を他のキー間の間隔よりも長くして表示していることが示され(三-2-イ(1))、刊行物2には、ファンクションキー列のパターンを、ウインドウの下枠に沿いファンクションキーに対応させるように、4番目のキーと5番目のキー及び8番目のキーと9番目のキーとの間隔を空けるように表示していることが示されている。そしてキー操作を正確に早く行え、誤操作を少なくするために、どのようにファンクションキー列のパターンを配列表示させるかは、どのようなキー入力装置が接続されているかを考慮し、当業者が適宜決定し得る事項にすぎず、また刊行物1及び2の上記記載の事項を応用すれば、ファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔の比は使用キー入力装置の各キー間の位置間隔の比に一致するように表示させることは当業者が適宜なし得ることと認められる。
よって請求項4に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
三-3-ニ.請求項5に係る発明について刊行物1には、ウインドウ表示内に表示された機能のあるファンクションパターン表示位置にマウス等のポインティングデバイスでポインタを合せて入力処理が行えることが記載されており、そして請求項5に係る発明は、請求項4を引用している。そうすると、刊行物1記載の発明と請求項4に係る発明とは、上記三-3-ハ.(a)で記載した相違点で相違し、上記三-3-ハ.(b)で記載した判断と同じ理由で、刊行物1、2記載のものから容易になし得るものである。
よって請求項5に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
三-3-ホ.請求項6に係る発明について請求項6に係る発明は、請求項4または5を引用しており、そうすると、刊行物1記載のものと請求項6に係る発明とは、上記三-3-ハ(a)で記載した相違点(1)、(2)、(3)で相違し、さらに請求項6に係る発明が「使用している前記キー入力装置の種類を識別する識別手段と、使用することのできる複数のキー入力装置のファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔比を記憶する記憶手段を備え」ているの対し、刊行物1の発明にはそのような構成が示されていない点(相違点(4))で相違している。
相違点について検討する。
相違点(1)、(2)、(3)については、上記三-3-ハ(b)で記載した判断と同じである。
相違点(4):刊行物3には、接続されているキーボードの種類を識別して表示すること、複数種のキーボードが接続可能であることが、示されており、そのためには、複数のキーボードに関するデータ(デバイスドライバ)を記憶しており、記憶データとして、例えば接続することのできる複数のキー入力装置のファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔比を記憶させるようにすることは、当業者が適宜なし得ることと認められ、刊行物1記載のものに刊行物3記載のものを適用して、使用している前記キー入力装置の種類を識別する識別手段と、使用することのできる複数のキー入力装置のファンクションキー列パターンの各キー間の位置間隔比を記憶する記憶手段を備えるように構成することは、当業者が容易になし得ること認められる。
よって請求項6に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
四.むすびしたがって、本件請求項1〜6に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定により拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令205号)第4条第2項の規定により、結論の通り決定する。
平成13年11月27日
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 古城春実
裁判官 田中昌利