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関連ワード 発明者 /  29条の2(拡大された先願の地位) /  出願公開 /  優先権 /  国内優先権 /  特許出願日 /  設定登録 /  請求の範囲 /  減縮 /  審決確定(審決が確定) / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 319号 審決取消請求事件
原告 アンドウケミカル株式会社
訴訟代理人弁理士 江原省吾,田中秀佳,白石吉之,城村邦彦,熊野剛,山根広昭
被告 タキイ種苗株式会社
被告 株式会社ティエス植物研究所
被告 株式会社東海化成
被告ら訴訟代理人弁理士 廣江武典
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/12/19
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 特許庁が無効2000−35208号事件について平成14年5月21日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は各自の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
主文第1項と同旨の判決。
訴訟費用は被告らの負担とする。
前提となる事実
1 特許庁における手続の経緯 (1) 本件特許 特許権者 原告 発明の名称 「育苗ポット用樹脂成形体及びその製造装置」 特許出願日 平成10年3月13日(国内優先権主張日平成9年3月14日) 設定登録日 平成11年2月26日 特許番号 特許第2891987号 (2) 本件手続 無効審判請求日 平成12年4月17日(無効2000-35208号) 訂正請求日 平成12年7月31日 審決日(第1次) 平成13年1月9日 審決の結論(同) 「訂正を認める。本件審判の請求は,成り立たない。」 審決謄本送達日 平成13年2月2日(原告に対し) 審決取消訴訟提起 平成13年2月20日(原告による) (第1次) (東京高裁平成13年(行ケ)第75号) 判決言渡日(同) 平成14年1月30日 判決の結論(同) 「特許庁が無効2000-35208号事件について平成13年1月9日にした審決を取り消す。」 審決日(第2次) 平成14年5月21日(本件審決) 審決の結論(同) 「訂正を認める。特許第2891987号の請求項1に記載された発明についての特許を無効とする。」 審決謄本送達日 平成14年5月31日(原告に対し) 2 本件審決の理由の要旨 訂正請求は適法でありこれを認める。本件の請求項1に係る発明(本件発明1)は,本件出願日前に出願され当該出願後に出願公開されたものの願書(特願平9-20674号)に最初に添付した明細書又は図面に記載された先願発明と同一であり,しかも,本件発明1と先願発明の発明者が同一でなく,本件出願の時に本件発明1と先願発明の出願人が同一でもないから,本件特許は,特許法29条の2の規定に違反してなされたものであり,同法123条1項2号に該当し,無効とすべきものである。
3 本件審決が判断の対象とした本件発明1の要旨(後記5の訂正審決による訂正前のもの)【請求項1】 ほぼ正方形に開口した上端の上端開口部と,底部と,底部の周縁と上端開口部の周縁との間の側部とを備えたコップ形状を有し,かつ,所定の樹脂材料を主成分とした複数個の育苗ポットを縦横方向に整列させて平面配置したもので,相互に隣接する前記育苗ポットの上端開口部の周縁を構成するそれぞれの隣接対向辺に,隣接する育苗ポット同士を微小な幅寸法でのみ連結する連接部を一体的に形成し,各育苗ポットに土壌を収容した状態で所望の育苗ポットを,隣接する他の育苗ポットから引き千切ることにより前記連接部を破断可能としたことを特徴とする育苗ポット用樹脂成形体。
4 後記5の訂正審決による訂正後の本件発明1の要旨【請求項1】 ほぼ正方形に開口した上端の上端開口部と,底部と,底部の周縁から立ち上がって前記上端開口部の周縁に到る側部とを備え,前記上端開口部の周縁の四隅部にのみ鍔部が形成されたコップ形状を有し,かつ,所定の樹脂材料を主成分とした複数個の育苗ポットを縦横方向に整列させて平面配置したもので,相互に隣接する前記育苗ポットの上端開口部の前記四隅部を除く周縁を構成するそれぞれの隣接対向辺に,隣接する育苗ポット同士を微小な幅寸法でのみ連結する連接部を一体的に形成し,各育苗ポットに土壌を収容した状態で所望の育苗ポットを,隣接する他の育苗ポットから引き千切ることにより前記連接部を破断可能としたことを特徴とする育苗ポット用樹脂成形体。
5 訂正審決の確定 原告は,本訴係属中の平成14年10月17日,本件特許につき,特許請求の範囲減縮等を目的として,明細書の訂正をする審判を請求したところ(訂正2002-39222号),同年11月28日,当該訂正を認める旨の審決があり,その謄本は同年12月4日に原告に送達され,訂正審決は確定した。
原告主張の審決取消事由
本件審決は,第2の3に記載の本件発明の要旨を認定し,これに基づき,第2の2のとおり,本件特許は,特許法29条の2の規定に違反してなされたものであり,同法123条1項2号に該当し,無効とすべきものであるなどとしているが,第2の5のとおり特許請求の範囲減縮を目的とする訂正を認める審決が確定し,本件発明の要旨が第2の4のとおり訂正されたことにより,本件審決は,結果的に本件発明の要旨の認定を誤ったことになり,瑕疵があるものとして取消しを免れない。
当裁判所の判断
第2に記載の事実関係は,本件証拠及び弁論の全趣旨により認めることができ,これらの事実関係に照らせば,原告主張の事由により本件審決は取り消されるべきものであり,本訴請求は理由がある(なお,被告らは,上記訂正を認める審決が出される前において,本訴が不適法であることや審決取消事由の主張がなく本訴は直ちに棄却されるべきであるなどと主張したが,上記事実関係に照らせば,いずれも採用の限りではない。)。
よって,原告の請求は理由があるからこれを認容し,訴訟費用の負担につき行訴法7条,民訴法62条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 塩月秀平
裁判官 田中昌利