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事件 平成 14年 (ネ) 2944号 特許権侵害差止等請求控訴事件
控訴人(第1審原告) 株式会社友定建機
訴訟代理人弁護士 筒井豊
補佐人弁理士 苗村正
被控訴人(第1審被告) 株式会社サヌキ
訴訟代理人弁護士 西口徹
補佐人弁理士 浅谷健二
裁判所 大阪高等裁判所
判決言渡日 2003/01/21
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
控訴の趣旨等
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,原判決添付別紙物件目録記載のモルタル注入器を製造,販売してはならない。
3 被控訴人は,控訴人に対し,1380万円及びこれに対する平成13年9月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 3につき仮執行宣言[以下,「第2 事案の概要」,「第3 争点に関する当事者の主張」及び「第4 当裁判所の判断」の部分は,原判決「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」,「第3 争点に関する当事者の主張」及び「第4 争点に対する判断」の部分を付加訂正した。ゴシック体太字の部分が,当審において内容的に付加訂正を加えた主要な箇所であるが,それ以外の字句の訂正,部分的削除等については,特に指摘していない。]
事案の概要
本件は,「モルタル打設装置」の特許発明の特許権者である控訴人が被控訴人に対し,被控訴人の製造,販売するモルタル注入器は同特許発明技術的範囲に属すると主張して,その製造等の差止めと,損害賠償として1380万円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である平成13年9月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求したものである。
原審は,控訴人の請求をいずれも棄却したため,控訴人が控訴を提起した。
1 争いのない事実 (1) 控訴人は,次の特許権を有している(そのうち,特許請求の範囲の請求項1及び請求項2の特許発明を,以下「本件発明」という。)。
ア 発明の名称 モルタル打設装置 イ 登録番号 第2644985号 ウ 出 願 日 平成7年9月4日(特願平7-226647号) エ 公 開 日 平成9年3月18日(特開平9-72082号) オ 登 録 日 平成9年5月2日 カ 特許請求の範囲は,原判決添付別紙特許公報(甲2。以下「本件公報」という。)該当欄記載のとおりである。
(2) 本件発明の特許請求の範囲の請求項1及び請求項2は,次のとおり分説するのが相当である。
ア 請求項1 A 内孔を有する筒状をなしかつ先端に前記内孔に通じる吸込・吐出口を設けしかも後端にガイド蓋を取付けた基筒と, B 前記ガイド蓋に遊挿され基筒の長さ方向にのびるロッドの先端に,前記内孔をシール効果を有して摺動するピストンを設けたピストン軸体とからなり, C かつロッドの移動に伴うピストンの後方動によって前記吸込・吐出口からモルタルを吸込み,かつ前方動によって吸込・吐出口からモルタルを吐出するモルタル打設装置であって, D 前記基筒の後端に,モルタルのノロの洩れを防ぐ洩れ防止部を設けたことを特徴とする E モルタル打設装置。
イ 請求項2 A'ないしC' 請求項1の構成要件AないしCと同じ D' 前記基筒の後端に,モルタルのノロの洩れを防ぐ洩れ防止部を設けてあり,当該洩れ防止部は,前記基筒との間に間隙を隔てて周回しかつ先端に向けて立上がることにより,基筒との間で環状の液溜りを形成する周壁部であることを特徴とする E' 請求項1の構成要件Eと同じ (3) 被控訴人は,原判決添付別紙物件目録(以下「イ号物件目録」という。)記載のモルタル注入器(以下「被控訴人製品」という。)を製造,販売している(なお,当事者双方に争いがないとされた控訴人の平成14年2月13日付準備書面(控訴人第2回)添付の物件目録には,符号8aが示す部分を「洩れ防止部」と表記されているが,被控訴人は,被控訴人製品が構成要件D,D'の「洩れ防止部」との構成を備えていないと主張しているので,混同を避けるために,イ号物件目録における符号8aを「洩れ防止空間」と表記する。)。
(4) 被控訴人製品は,構成要件A,B,C及びEの構成を備えている。
2 争点 (1) 被控訴人製品は,「モルタルのノロの洩れを防ぐ洩れ防止部」(構成要件D,D')との構成を備えているか。
(2) 損害の発生及び額
争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(被控訴人製品は,「モルタルのノロの洩れを防ぐ洩れ防止部」(構成要件D,D')との構成を備えているか。)について 〔控訴人の主張〕 (1) 「モルタルのノロの洩れを防ぐ洩れ防止部」の解釈について 「モルタルのノロの洩れを防ぐ洩れ防止部」とは,「空気抜き用の孔」のみならず,ガイド蓋とロッドとの「嵌合い隙間」を含む「基筒の後端」からのモルタルのノロの漏れを防ぐ「洩れ防止部」をいうと解すべきである。その理由は,以下のとおりである。
ア 本件発明は,「特に上向き作業時におけるモルタルの基筒後端からの洩れを防止しうるモルタル打設装置」に関する発明であり,基部に設けられた「空気抜き用の孔」からのモルタルのノロの漏れだけにとどまらず,「基筒後端」からのモルタルのノロの漏れを防止することを目的・効果とする発明である。基筒後端の他の箇所,例えばガイド蓋とロッドとの「嵌合い隙間」からのモルタルのノロの漏れは防止しないというのであれば,本件発明の目的・効果は何ら達成されたことにならない。
イ 本件発明に係るモルタル打設装置において,空気抜き用の孔を,どの箇所に,どのように設けるかは,単なる設計事項にすぎない。本件公報に,ガイド蓋の基部以外に空気抜き用の孔を設ける技術的思想が示唆されているか否かというようなことは,本件発明の解釈上何の関わりもないのである。
すなわち,モルタルを注入ないし打設する器具において,ピストンの摺動に伴う空気抜きのために,空気抜き用の孔を基筒の後端のガイド蓋に設けることが一般的な技術であったとしても,「液溜り」からなる漏れ防止部を形成して「ピストンから後方に基筒の内周面を伝わり落ちるノロを前記洩れ防止部で止める」ことを本質的な特徴事項とする本件発明が知られているとき,ガイド蓋7の基部の空気抜き用の孔を閉止して,何らかの箇所に空気抜き用の孔を設けることは,本件発明の技術的思想の枠内における単なる設計事項であり,実施容易な技術にすぎない。
ウ 当審における補充主張 本件発明における「モルタルのノロの洩れを防ぐ洩れ防止部」が目的とするモルタルのノロの漏れを,ガイド蓋7の基部に設けられた空気抜き用の孔26からのもののみに限定して解釈しなければならない理由はない。
すなわち,ガイド蓋とロッドとの間の小隙間については,「前記ピストン軸体3は,前記ガイド蓋7のガイド部25に多少のゆとりを持って遊挿され」(4欄31〜32行)ると記載され,また,「この空気抜きは,前記ガイド部25と前記ロッド5との間の小隙間においても多少行われる」(5欄15〜16行)と記載されているのであるから,この小隙間が「空気抜き用の孔」を構成することは本件発明において予想していたところである。
(2) 被控訴人製品の構成要件D,D'の充足性について ア 被控訴人製品は,シリンダー2aの後端にガイド部41(周壁部10)が設けてあり,しかも,そのガイド部41(周壁部10)は,シリンダー2aとの間に間隙を隔てて周回しかつ先端に向けて立ち上がる形状をなしてシリンダー2aとの間で環状の液溜り9aを形成し,ガイド蓋7aと進退ロッド5aとの「嵌合い隙間」からモルタルのノロが外部へ漏れることを防止する機能を果たすものであるから,被控訴人製品は,「モルタルのノロの洩れを防ぐ洩れ防止部」を備えているといえる。
イ 被控訴人製品のガイド蓋7aは,空気抜き用の孔を塞ぐという従来技術とは異なる構成を採用することによって,ガイド蓋7aに設けられているガイド部41に,シリンダー2aとの間で環状の液溜り9aを構成する周壁部10としての機能を新たに付与したものである。
被控訴人製品のガイド部41(周壁部10)が,モルタルのノロの漏れ防止の作用効果を有することは,控訴人補佐人が行った実験(甲9),すなわち,被控訴人製品と,被控訴人製品のガイド蓋7aのガイド部41(周壁部10)を取り除いたもの(改造品)(検甲2)とにおいて,一定量の液状物を後端から注入した後,後端部からの液状物の漏れの有無及び漏れ出る箇所を確認し,かつ,ガイド蓋7aに貯留した液状物の量を計測する実験において,後端から注入した100ccの液状物のうち,ガイド部41(周壁部10)と進退ロッド5aとの間の小隙間から漏れ出た液状物の量が,被控訴人製品の場合には約62ないし66ccとなるのに対し,被控訴人製品の改造品の場合には約95ないし96ccに達したことからも明らかである(なお,被控訴人製品のガイド蓋とロッドとの小隙間から液状物が流出したのであるから,その小隙間が空気抜き用の孔を構成していることも疑いのない事実である。)。
ウ 被控訴人は,被控訴人製品が,シリンダー2a内のモルタルのノロが,通用口(入口)51から進退ロッド5aの内部を通り,通用口(出口)52から適宜排出されることになると主張するが,そのようなことが現実に起こるとは到底考えられない。
エ 当審における補充主張 (ア) 本件発明は,「液溜り」にモルタルのノロを溜めることにより,ピストンから後方に基筒の内周面を伝わり落ちるモルタルのノロの漏れを防止するものであるが(言い換えれば,「液溜り」の容量を超えてあふれ出るモルタルのノロの漏れを防止することまで発明の目的とするものではない。),被控訴人製品も,その「液溜り」にモルタルのノロを溜めることにより,ピストンから後方に基筒の内周面を伝わり落ちるモルタルのノロの漏れを防止するものである点で本件発明と同じであり,したがって,被控訴人製品は,本件発明と技術的思想を同じくするものである。
(イ) また,イ号物件目録の2頁20行に「貫通孔60aの直径と進退ロッド5aの直径との差は約1o」とあり,かつ,被控訴人製品の進退ロッド5aの直径は19o(検甲1)であるから,ガイド蓋とロッドとの間の小隙間の面積は30.6o2である。他方,「通用口(入口)51」の直径は8oであり,かつロッド面に存在するから,その面積は100.5o2となり,この結果,被控訴人製品の小隙間は,全空気抜き用の孔の約23%を占めている。
(ウ) 実際にも,「通用口(入口)51」をテープ等で閉じた状態においても,ロッドは容易に進退し得るのであるから,ガイド蓋とロッドとの間の小隙間が空気抜き用の孔を構成していることは明らかであり,本件発明の構成,技術的思想と何ら異ならない。
(エ) 被控訴人製品が,甲7に示された小高さのガイド部,あるいは甲8に示された高さのないガイド部を選択することも可能であったにもかかわらず,現実の被控訴人製品では,甲2の図9と同様のガイド蓋を選択した上,ガイド部41(周壁部10)の基部60からの突出長さL1を約24oとし,かつ,「第10図に示すように,モルタル注入器を傾けた場合においても,ノロがガイド部41(周壁部10)の上端を越えるまでは,洩れ防止空間8aで貯留することができる」(同目録3頁7〜9行)構成を採用したのであるから,被控訴人製品のガイド部41(周壁部10)が,「洩れ防止機能」を発揮する液溜まりを備えた構成を採用していることは明らかであり,この結果,被控訴人製品のガイド部41が,前記構成要件D,D′の洩れ防止部に該当し,当該構成要件を充足することは明白である。
(3) したがって,被控訴人製品は,構成要件D,D'を充足する。
〔被控訴人の主張〕 (1) 「モルタルのノロの洩れを防ぐ洩れ防止部」の解釈について 本件発明は,「ガイド蓋に空気抜き用の孔が設けられている」ことを前提とするものであり,構成要件D,D'の「モルタルのノロの洩れを防ぐ洩れ防止部」とは,ガイド蓋の空気抜き用の孔からモルタルのノロが漏れることを防ぐ「洩れ防止部」と解すべきである。その理由は,以下のとおりである。
ア 一般に,モルタル打設装置には,基筒の後端開口にガイド蓋(ノロ洩れ防止とロッドの案内のための蓋)が取り付けられている。一方,基筒内はモルタルの吸込み・吐出の際に気圧差が生じ,これがロッドの引き・押し動作の抵抗となるため,基筒の内と外を連通させる「空気抜き用の孔」が不可欠な要素とされている。
この「空気抜き用の孔」は,その機能上,移動するピストンより常に背後に位置する必要があるため,設定位置はおのずと限定され,その条件を満たす位置がガイド蓋(の基部)であると考えられていた。このような知見に基づき,従来のガイド蓋は,モルタルのノロ漏れが予見されるにもかかわらず,「空気抜き用の孔」が必ず設けられていた。
本件公報に示されたガイド蓋7は,基部24に二つの空気抜き用の孔26,26が設けられている。本件公報の発明の詳細な説明の欄の【従来の技術】,【発明が解決しようとする課題】,【発明の実施の形態】及び【発明の効果】の項には,いずれにも一貫して「基部に空気抜き用の孔を設けたガイド蓋」が記載されているばかりでなく,基部以外に空気抜き用の孔を設ける思想は全く示唆されていない。
イ 本件発明における「洩れ防止部」の技術的思想は,本件公報の記載からすれば,モルタル打設装置にとって不可欠の空気抜き用の孔が,ガイド蓋に設けられていても,洩れ防止部によって空気抜き用の孔の入口を塞がずに(通気を確保して),かつ入口をガードすることで,基筒の内周面を流れ落ちるモルタルのノロを止め,入口に侵入するのを阻止するものである。
ウ 本件公報の特許請求の範囲の各請求項の記載から「洩れ防止部」の技術的思想を把握してみる。
本件発明(請求項1)は,「洩れ防止部」は基筒の内周面を伝い流れるモルタルのノロを空気抜き用の孔の前で止めることで,空気抜き用の孔から漏れ出るのを防止する思想であり,本件発明(請求項2)は,請求項1で止めたモルタルのノロを周壁部が形成する液溜めで溜めるものである。
また,本件公報の請求項3の発明は,前記周壁部が基筒とガイド蓋との間で挟持される受け部材で形成された点,同請求項4の発明は,前記受け部材が基筒とガイド蓋との間をシールする弾性材である点,また請求項5は請求項1の洩れ防止部がモルタルのノロを吸収する吸収材から成る点を特徴としている。
「洩れ防止部」の技術的思想は,これらの五つの請求項が明示する最大公約数,すなわち,「洩れ防止部」が,基筒の後端,すなわち基筒とガイド蓋との間,つまり「空気抜き用の孔の前側に配置され,ノロが空気抜き用の孔に侵入するのを止める」考え方である。
したがって,「洩れ防止部」は,単に漏れの原因である空気抜き用の孔自体を塞ぐ思想のものでないことは,この点からも明らかである。
エ 基筒の内周面を伝い流れるモルタルのノロは,空気抜き用の孔の入口の前に衝立状に配置される請求項1記載の洩れ防止部で受け止められる。したがって,モルタルのノロは空気抜き用の孔の手前で止められ,空気抜き用の孔の入口に侵入し得ない。さらに,空気抜き用の孔の手前で止められたモルタルのノロは,請求項2記載の洩れ防止部と基筒との間で形成する液溜めで溜められる。
一方,ロッドとガイド部との嵌め合い隙間(小隙間)の両端面は,口が開いたままである。つまり,小隙間の開口(入口)の前に立ちはだかるものがない。したがって,本件発明の構成を採ったとしても,ロッドの外周面を伝い流れるモルタルのノロは,直接小隙間の入口から侵入し,小隙間の出口から外部へ漏れ出るおそれがある。
オ 当審における補充主張 控訴人は,当審で,新たに「空気抜き用の孔」とは「ガイド蓋に設けられた空気抜き用の孔」のみならず,ガイド部とロッドとの「嵌合い隙間」(小隙間)が「空気抜き用の孔」を構成すると主張し,その根拠として,「この空気抜きは,前記ガイド部25と前記ロッド5との間の小隙間においても多少行われる。」(5欄15〜16行)との記載を挙げている。しかし,この記載から,「小隙間」を「空気抜き用の孔」と記載したものとは到底読むことができない。
すなわち,本件公報に示されたガイド蓋7には,基部24に二つの空気抜き用の孔26,26が設けられている。本件公報の「発明の詳細な説明」欄の各項には,いずれにも一貫して「基部に空気抜き用の孔を設けたガイド蓋」が記載されているばかりでなく,基部以外に空気抜き用の孔を設ける思想は全く示唆されていない。本件公報の「発明の詳細な説明」においては,「ガイド蓋に設けた空気抜き用の孔からの液漏れ防止」について記載されているものの,基筒後端の他の箇所,例えばガイド蓋とロッドとの「嵌合い隙間」(小隙間)からの液漏れ防止をすることは記載されていないし,示唆する記述もない。そもそも,この「ガイド部25とロッド5との小隙間」は,筒状のガイド部を貫通するロッドが軋みなく滑り動くように案内するための「嵌め合い」による結果的に生じた隙間のことであって,ピストンの摺動に伴う空気抜きのみを目的として積極的,専用的に設けられる「ガイド蓋の空気抜き用の孔26」とは,その意義も機能も構成も全く異なる別のものである。したがって,前記5欄15ないし16行の記載をもって,この小隙間(嵌合い隙間)からの液漏れを防止することまで記載しているものとは考えられず,「空気抜き用の孔」にはガイド部とロッドとの「嵌合い隙間」の小隙間を含まない。
控訴人は,小隙間の面積を計算したり,液状物の漏れ出た実験結果をるる主張しているが,これらは本件発明の課題である「ガイド蓋に設けた空気抜き用の孔」からの漏れる量に関するものではないから,被控訴人製品が本件発明の効果を奏していることの裏付けとなるものではない。
(2) 被控訴人製品の構成要件D,D'の充足性について ア 被控訴人製品は,ガイド蓋7aに空気抜き用の孔が設けられていないから,ガイド蓋の空気抜き用の孔からモルタルのノロが漏れることを防ぐ「洩れ防止部」を備えていない。
なお,被控訴人製品はガイド蓋7aに「成型金型の孔62」が存在し,これがパッキン63で覆われているが,「成型金型の孔62」は,ガイド蓋7aを成型する際に,技術上必然的に発生する孔であって,モルタル注入器としての製品上,何らかの役割を果たすものではない。
イ 本件発明は,前記のとおり,ガイド蓋に設けた空気抜き用の孔を確保しつつ,空気抜き用の孔からのモルタルのノロの漏れを防止するものであるが,被控訴人製品は,進退ロッド5aの先端側(ピストン部4aのすぐ背後)に通用口(入口)51を開口し,握り部32aの適所に通用口(出口)52を開口して,これにより,シリンダー2a内と外気との新たな連通路を実現させ,モルタル打設装置における新規な通気方法を提供するものである。
また,被控訴人製品は,シリンダー2a内のモルタルのノロが,通用口(入口)51から進退ロッド5aの内部を介して握り部32aへ導かれ,握り部32aに溜まったモルタルのノロは,通用口(出口)52から適宜排出されることになるから,本件発明のように,空気抜き用の孔にモルタルのノロが侵入するのを洩れ防止部で防ぐことを主眼とする思想のものではない。
ウ 被控訴人製品は,漏れの原因であるガイド蓋の空気抜き用の孔を塞いだものということができるが,モルタルのノロが漏れ出る孔を塞ぐ工夫は万人の常識ともいえるものであり,本件発明の技術的思想とは異なるものである。
(3) したがって,被控訴人製品は,構成要件D,D'を充足しない。
2 争点(2)(損害の発生及び額)について 〔控訴人の主張〕 被控訴人は,平成11年10月から平成13年8月までの間に,被控訴人製品を販売単価2000円で2万3000個販売し,その売上額は4600万円となる。
被控訴人は被控訴人製品の販売により販売額の30%の純利益に相当する1380万円の利益を得ているから,控訴人は,被控訴人による被控訴人製品の販売行為により,同額の損害を被ったものと推定される(特許法102条2項)。
〔被控訴人の主張〕 控訴人の主張事実は争う。
当裁判所の判断
1 争点(1)(被控訴人製品は,「モルタルのノロの洩れを防ぐ洩れ防止部」(構成要件D,D')との構成を備えているか。)について (1) 「モルタルのノロの洩れを防ぐ洩れ防止部」の解釈について 控訴人は,「モルタルのノロの洩れを防ぐ洩れ防止部」とは,「空気抜き用の孔」のみならず,ガイド蓋とロッドとの「嵌合い隙間」を含む「基筒の後端」からのモルタルのノロの漏れを防止するものをいうと主張し,被控訴人は,ガイド蓋の「空気抜き用の孔」からのモルタルのノロの漏れを防止するものをいうと主張するので,この点について検討する。
ア 本件発明の特許請求の範囲には,「基筒の後端に,モルタルのノロの洩れを防ぐ洩れ防止部を設けた」と記載されているから,「洩れ防止部」とは,モルタル打設装置の基筒の後端,すなわち「ガイド蓋」からのモルタルのノロの漏れを防ぐものと解される。
なお,本件発明でいう「モルタル」とは,モルタル,比較的粘度の小さいセメント,コンクリート,比較的細粒の砂を用いた土壁用の液体を総称したものである(本件公報3欄4〜6行)。また,ノロとは,「あま」ともいい,「セメント・石灰・プラスターなどを水だけで練ったペースト状のもの」をいう(株式会社彰国社発行「建築大辞典」)。
しかしながら,モルタル打設装置の「ガイド蓋」には,ロッドとの嵌合い隙間や,空気抜き用の孔などの隙間が開いており,「洩れ防止部」がガイド蓋のどこからモルタルのノロが漏れるのを防止するものであるかについては,特許請求の範囲の記載上,必ずしも明らかではない。
イ そこで,発明の詳細な説明の記載を考慮する。
(ア) 【発明の属する技術分野】の項には,「本発明は,特に上向き作業時におけるモルタルの基筒後端からの洩れを防止しうるモルタル打設装置に関する。」(本件公報2欄13〜15行)と記載されている。
(イ) 【従来の技術】の項には,「建築中の建物などにおいて,サッシの周囲の壁の形成,溶接の仮止め,あるいは土壁の形成などに際して,モルタル……を手作業で塗込めるのは作業性が悪いため,近年,手持ち式のモルタル打設装置が開発されている。」(3欄2〜8行),「このモルタル打設装置は,図9に示すように,内孔hを有する筒状をなしかつ先端に吸込・吐出口eを設けしかも後端にパッキンpを介してガイド蓋gを取付けた基筒aと,前記ガイド蓋gに遊挿され基筒aの内部でその長さ方向にのびるロッドrの先端に,前記内孔hをシール効果を有して摺動するピストンtを設けたピストン軸体bとを具える。」(3欄9〜15行)と記載されている。
そして,従来の技術を説明するための部分断面図である図9には,基筒の後端のガイド蓋gに空気抜き用の孔dが設けられ,また,同ガイド蓋には,ロッドrとの摺動部分に,先端に向けて立ち上がるガイド部が設けられたモルタル打設装置が記載されている。
(ウ) 【発明が解決しようとする課題】の項には,従来の手持ち式のモルタル打設装置が有していた課題として,「前記基筒aの内孔hに断面径において寸法誤差があったり,前記ピストンtを内孔hできつく嵌入させ過ぎるとピストン軸体bを動かすのに大きな力を必要とするなどの理由でピストンtを余りきつく内孔hに嵌入できなかったりするため,ピストンtと基筒aの内周面との間からモルタルの液,セメントミルク,すなわちノロが漏れ,このものが特に上向き作業のときにガイド蓋gの方に向かって基筒aの内周面を伝わり落ちて,このガイド蓋gに設けた空気抜き用の孔dから落下し,作業者の顔,手,作業服等を汚すことがある。」(3欄24〜34行),「本発明は,基筒の後端に,モルタルのノロの洩れを防ぐ洩れ防止部を設けることを基本として,特に上向き作業中でのノロの洩れを防止しうるモルタル打設装置の提供を目的としている。」(3欄35〜38行)と記載されている。
(エ) 【発明の実施の形態】の項には,次の各記載がある。
a 「ガイド蓋7は,基筒2の後端を塞ぐ基部24に前記ロッド5を案内する円筒状のガイド部25を突設し,かつその周囲に空気抜き用の孔26を設けている。さらに前記基部24の前面に環状の隆起部39を形成している。」(4欄23〜27行),「前記ピストン軸体3は,前記ガイド蓋7のガイド部25に多少のゆとりを持って遊挿され(る)」(4欄31〜32行) b 「本実施形態では,前記基筒2の後端に,この基筒2との間で環状の液溜り9を形成する周壁部10からなる洩れ防止部8を設け,これによってピストン4と基筒2の内周面との間から洩れて基筒2内周面を伝わり落ちるモルタルのノロが前記ガイド蓋7に設けた前記孔26から洩れ出るのを防ぐ。」(4欄47行〜5欄2行) c 「前記洩れ防止部8をなす周壁部10は,本実施形態では図2,図3に示すように,前記基筒2の後端に設けた前記端キャップ21と,前記ガイド蓋7との間で周辺部が挟持される基板部34,およびこの基板部34から,基筒2との間に間隙Gを隔てて前記ガイド部25の廻りで周回して先端に向けて立上がることにより,基筒2の内面との間で環状の前記液溜り9を形成する円筒状の立上げ部35からなる受部材11の前記立上げ部35によって形成される。」(5欄3〜11行),「なお前記立上げ部35とガイド部25との間及び前記基板部34と前記隆起部39との間には,前記孔26に通じる隙間36が設けられ,空気抜きの便宜を図っている。この空気抜きは,前記ガイド部25と前記ロッド5との間の小隙間においても多少行われる。なお前記基板部34は,隆起部39に係止する突部40をその周辺部後面に設けている。」(5欄12〜18行) d 「前記吸収材13は,基筒2の内周面の添着されかつ後端がガイド蓋7に接する円環状の基体を具えるとともに,この基体の内周面とガイド蓋7のガイド部25との間に,空気抜き用の孔26に通じる隙間51が形成される。なお吸収材13を基筒2に剥離可能な接着剤を用いて接着してもよい。」(6欄2〜7行) (オ) 【発明の効果】の項には,「叙上の如く本発明のモルタル打設装置は,基筒の後端に,モルタルのノロの洩れを防ぐ洩れ防止部を設けている。従って,特に上向き作業中において,ピストンから後方に基筒の内周面を伝わり落ちるモルタルの液,すなわちノロを前記洩れ防止部で止めることができ,ガイド蓋に設けた空気抜き用の孔からのノロの洩れを防止し,その作業者への降り懸かりを防ぎうる。」(6欄17〜24行),「請求項2の発明において,前記洩れ防止部を,基筒との間で環状の液溜りを形成する周壁部によって形成したときには,基筒の内周面に沿って伝わり落ちるノロを前記液溜りで受けて溜めることができ,ノロの洩れを確実に防ぎうる。」(6欄25〜29行)と記載されている。
ウ(ア) 前記のとおり,本件公報の発明の詳細な説明においては,「ガイド蓋の空気抜き用の孔からのノロの洩れ防止」について記載されているものの,基筒後端の他の箇所,例えば,ガイド蓋とロッドとの「嵌合い隙間」からのモルタルのノロの漏れ防止をすることは記載されていないし,これを示唆するような記述も見当たらない。なお,本件公報中に「この空気抜きは,前記ガイド部25と前記ロッド5との間の小隙間においても多少行われる。」(5欄15〜16行)との記載はあるが,当該記載部分に該当する実施例を示す図2及び図3によると,洩れ防止部8は,ガイド部25とは別の部分として設けられており,洩れ防止部8の形状等からみても,上記記載部分が洩れ防止部8によってガイド部25と前記ロッド5との間の「小隙間」からのモルタルのノロの漏れを防止することまで記載しているものとは考えられない。
(イ) また,本件発明の出願前の公知技術である実開昭62-164972号公開実用新案公報(甲7),実公平4-17819号実用新案公報(甲8)に開示された「モルタル注入器」ないし「手押しモルタルポンプ」の考案の実施例を示す図によれば,いずれも基筒(シリンダー)の後端のガイド蓋に空気抜き用の孔が設けられており,空気抜き用の孔がガイド蓋に設けられていない構成は開示されていない。このようなガイド蓋に空気抜き用の孔を設ける点は,本件公報の従来技術を示す図9においても同様である。したがって,モルタルを注入ないし打設する器具において,ピストンの摺動に伴う内孔の空気抜き及び空気の注入を速やかに行い,それによってピストンの摺動を円滑に行わせるために,空気抜き用の孔を基筒の後端のガイド蓋に設けることが一般的な技術であったということができる。
そうすると,本件発明は,従来,モルタル打設装置において,ピストンの摺動を円滑に行うために空気抜き用の孔が必要であり,その空気抜き用の孔は基筒の後端のガイド蓋に設けることが一般的であったところ,当該空気抜き用の孔からモルタルのノロが漏れるという問題点があったために,ガイド蓋に空気抜き用の孔を確保しつつ,その空気抜き用の孔からモルタルのノロが漏れることを防ぐために「洩れ防止部」を設けたところに技術的特徴があるものというべきである。
(ウ) 控訴人は,本件発明は空気抜き用の孔のみならず,ガイド蓋とロッドとの小隙間からのモルタルのノロの漏れを防止することも課題とするものであると主張する。
しかし,仮に,本件発明がガイド蓋とロッドとの小隙間からのモルタルのノロの漏れ防止をも課題とし,ガイド部がそのモルタルのノロの漏れ防止機能を有する「洩れ防止部」に該当し得るとするならば,本件発明の実施例や従来技術を示す図9において「ガイド部」が記載されているのであるから,同ガイド部が「洩れ防止部」に該当し得る旨の記載があってしかるべきところ,本件公報にはそうした記載はなく,前記のとおり「洩れ防止部」がガイド部とは別の部分として構成された記載があるにとどまる。
そして,前記のとおり,本件公報においては,ガイド蓋とロッドとの小隙間からのモルタルのノロの漏れ防止を課題とすることや,同小隙間からのモルタルのノロの漏れを防止するための「洩れ防止部」の具体的構成が記載されていないから,控訴人が主張する同小隙間からのモルタルのノロの漏れを防止する「洩れ防止部」は,本件公報において当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分な記載(特許法36条4項,同法施行規則24条の2参照)がなされているとはいえない。
のみならず,本件公報に記載されている従来技術を示す図9においても,基筒aの後端を塞ぐガイド蓋gの基部にロッドrを案内する円筒状のガイド部が突設されているところ,このガイド部も,ガイド蓋とロッドとの小隙間からのモルタルのノロの漏れを防止する作用効果を奏することは明らかであるが,これが従来技術とされている以上,本件発明がガイド蓋とロッドとの小隙間からのモルタルのノロの漏れ防止を課題としているとはいえない。けだし,そのように考えないと,本件発明の対象に従来技術も包含される結果となるからである。
したがって,控訴人の前記主張は理由がない。
(エ) なお,控訴人は,ガイド蓋の基部の空気抜き用の孔を閉止して,何らかの箇所に空気抜き用の孔を設けることは,本件発明の技術的思想の枠内における単なる設計事項であり,実施容易な技術にすぎないと主張する。
しかしながら,前記(イ)のとおり,本件発明は,ガイド蓋に空気抜き用の孔を確保しつつ,その空気抜き用の孔からモルタルのノロが漏れることを防ぐために「洩れ防止部」を設けたところに技術的特徴を有するところ,ガイド蓋の空気抜き用の孔自体を閉止して,別の箇所に空気抜き用の孔を設けることは,モルタルを打設する器具における基筒後端のガイド蓋に設けられた空気抜き用の孔からのモルタルのノロの漏れの防止という,解決すべき課題の点では共通性が認められるものの,課題解決のための手段としては別異の発想に基づくものといえる。また,本件証拠上,モルタルを打設する器具において,基筒後端のガイド蓋以外の場所に空気抜き用の孔を設けることを開示ないし示唆するような先行技術の存在も認めるに足りないことを併せ考慮すると,ガイド蓋以外の箇所に空気抜き用の孔を設けることが,本件発明から容易に推考できる技術であるとは考え難い。
したがって,控訴人の前記主張は採用できない。
(オ) また,控訴人は,本件公報中に「この空気抜きは,前記ガイド部25と前記ロッド5との間の小隙間においても多少行われる。」(5欄15〜16行)との記載があることを根拠に,ガイド蓋7とロッド5との間の小隙間も「空気抜き用の孔」である旨主張するが,前記(ア),(ウ)のとおり,本件発明は,ガイド蓋とロッドとの小隙間からのモルタルのノロの漏れ防止を課題とするものではなく,このことは,上記小隙間が「空気抜き用の孔」としての作用を奏しているか否かとは無関係である。すなわち,前記イの発明の詳細な説明の各記載によると,「空気抜き用の孔」は,ガイド蓋に設けられたもので,ガイド蓋とロッドとの小隙間を除いたものを意味するというべきである。
したがって,上記控訴人の主張を採用することはできない。
(カ) 以上によれば,構成要件D,D'の「洩れ防止部」とは,特許請求の範囲の記載上はその意味が明確でないものの,発明の詳細な説明参酌すると,ガイド蓋に設けられた空気抜き用の孔(ガイド蓋とロッドとの小隙間を除く。)からのモルタルのノロの漏れ防止の機能を有する部分のことであると解することができる。
(2) 被控訴人製品の構成要件D,D'の充足性について ア 「洩れ防止部」についての前記解釈を前提にすると,イ号物件目録第5,第8ないし第10図のとおり,被控訴人製品のガイド蓋7aは,空気抜き用の孔を備えていないから,被控訴人製品は,ガイド蓋の空気抜き用の孔からの「モルタルのノロの洩れを防ぐ洩れ防止部」を備えていないというべきである。
イ 控訴人は,被控訴人製品のガイド部41(周壁部10)が,「洩れ防止機能」を発揮する液溜まりを備えた構成を採用しており,この結果,被控訴人製品のガイド部41(周壁部10)が,前記構成要件D,D′の洩れ防止部に該当する旨主張する。
しかし,本件発明がガイド蓋とロッドとの小隙間からのモルタルのノロの漏れ防止を課題とするものでないことは,前記(1)ウのとおりである。
また,本件公報に記載の図9(従来の技術を説明するための部分断面図)の「ガイド蓋」にも「基筒との間に間隙を隔てて周回しかつ先端に向けて立ち上がる」周壁部が設けられているところ,被控訴人製品のガイド部41(周壁部10)は,図9の周壁部とほぼ同様の構成であって,それ以上に「洩れ防止機能」を奏するために特有の構成を備えているわけではないから,ガイド部41(周壁部10)をもってモルタルのノロの「洩れ防止部」ということはできない。
したがって,いずれにしても,控訴人の前記主張を採用することはできない。
ウ ところで,甲9によれば,被控訴人製品(検甲1)及び被控訴人製品のガイド蓋7aのガイド部41(周壁部10)を取り除いたもの(改造品)(検甲2)を用いて,一定量の液状物を後端から注入した後,後端部からの液状物の洩れの有無及び洩れ出る箇所を確認し,並びにガイド蓋7aに貯留した液状物の量を計測する実験を行ったところ,後端から注入した100tの液状物のうち,ガイド部41(周壁部10)と進退ロッド5aの小隙間から,被控訴人製品の場合には約62ないし66t,被控訴人製品の改造品の場合には約95ないし96tの液状物が漏れ出たという結果が得られたことが認められる。
しかし,この実験結果は,ガイド蓋7aと進退ロッド5aとの小隙間から漏れる液状物の量を比較するものであって,本件発明の課題である「空気抜き用の孔」からの漏れる量に関するものではないから,被控訴人製品が本件発明の効果を奏していることの裏付けとなるものではない。
エ そのほか,原審及び当審における当事者提出の各準備書面記載の主張に照らし,原審及び当審で提出された全証拠を改めて精査しても,前記アないしウの認定判断を左右するほどのものはない。
2 前記1で検討したところによれば,被控訴人製品は,構成要件D,D'の「モルタルのノロの洩れを防ぐ洩れ防止部」との構成を充足せず,本件発明の請求項1又は請求項2の技術的範囲に属するとはいえない。
したがって,控訴人の請求は,その余の争点につき判断するまでもなく,いずれも理由がない。
結論
以上の次第で,控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がない。
よって,主文のとおり判決する。
(平成14年11月6日口頭弁論終結)
裁判長裁判官 竹原俊一
裁判官 小野洋一
裁判官 西井和徒