運営:アスタミューゼ株式会社
  • ポートフォリオ機能


追加

関連審決 審判1999-6749
関連ワード 新規性 /  進歩性(29条2項) /  遡及 /  分割出願 /  拒絶査定 /  拒絶理由通知 /  変更 /  不服申立 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 15年 (行コ) 218号 裁決取消請求控訴事件
控訴人 A
被控訴人 特許庁長官 今井康夫
指定代理人 千葉俊之
同 須藤哲也
同 小林進
同 佐藤一行
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/12/11
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 控訴人 (1) 原判決を取り消す。
(2) 特許庁が,14行服特許第35号事件(「平成11年審判第6749号事件において特許庁審判長『B』殿が平成14年6月24日付で出した補正命令」に対する「行政不服審査法による審査請求事件」)について,平成14年11月1日にした裁決を取り消す。
(3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人 主文と同旨
事案の概要
控訴人は,その特許出願(昭和62年8月17日を出願日とする特許出願(以下「原出願」という。)の分割出願としてなされた,発明の名称を「同時オン防止手段」とする,平成9年特許願第63735号の特許出願。以下「本件出願」という。)に対し,拒絶をすべき旨の査定を受けたため,この拒絶査定に対する不服の審判を請求し,特許庁は,これを平成11年審判第6749号(以下「本件査定不服審判」という。)として審理した。控訴人は,本件査定不服審判の手続の過程において,拒絶をすべき旨の通知を2回受け,2回目の拒絶理由通知に対し,手続補正書(甲第15号証。以下「本件補正書」という。)を提出した。特許庁審判長は,控訴人に対し,上記手続補正書に方式上の不備があるとして補正を命じた(甲第3号証。以下「本件補正命令」という。)。控訴人は,本件補正命令は,「違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為である」旨主張して,行政不服審査法に基づき,同補正命令の取消しを求める旨の審査請求(以下「本件審査請求」という。)をした。被控訴人は,これを14行服特許第35号として審理し,その結果,本件審査請求を却下する旨の裁決(甲第1号証。以下「本件裁決」という。)をした。控訴人は,本件裁決の取消しを求める訴えを東京地方裁判所に提起した。東京地方裁判所は,控訴人の請求を棄却する,との判決をした。
当事者間に争いのない事実等並びに争点及び争点に対する当事者の主張は,次のとおり付加するほか,原判決の事実及び理由「第2 事案の概要」,「第3 前提となる事実」,「第4 当事者の主張」記載のとおりであるから,これを引用する。
1 当審における控訴人の主張の要点 原判決は,なすべき判断を多数遺脱しており,判断自体も誤っている。
(1) 判断の遺脱が多数あること @ 原判決は,控訴人が求めた,本件補正命令の内容が特許法に違反するか否かという実体の問題(a本件発明の遡及出願年が昭和62年であるかどうか,b本件補正書に方式違反があるか否か,cその結果,本件補正命令が無効であるか否か)について判断をしていない。
本件補正命令は,昭和62年当時の特許法(以下「旧特許法」という。)17条2項の規定に違反してなされたものであるから,本来義務のないことを行わせ,強制する,すなわち,本来存在しない義務を違法,勝手に形成する,違法な補正命令である。
本件補正命令は,「本来存在しない義務を違法,勝手に形成する,行政庁の違法または不当な処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当することが明白である。
補正命令の処分性について判断した東京地方裁判所平成3年12月13日判決(乙第1号証)において判断の対象となった補正命令は,本件補正命令とは内容の異なるものであるから,上記判決中の判断は,本件補正命令には当てはまらないというべきである。
A 原判決は,本件補正命令は法令を正当に適用したものというべきであり,本件補正書に対して特許法133条2項に基づき本件補正命令を発した点も正当である,と判断した。
しかし,上記判断は,平成5年法律第26号の附則2条1項についての判断を遺脱し,同規定に違反してなされたものであって,誤りである。同規定によれば,本件補正命令の根拠とされた特許法施行規則様式第13部分は,本件出願には適用されないので,本件補正書に方式上の不備はないから,本件補正命令が違法であることは明白である。
B 原判決は,仮に本件裁決が正しいとしたときに生じる,次の法的な矛盾について全く判断していない。
a 仮に,本件補正書に係る手続が却下され,その手続却下処分(以下,単に「手続却下処分」という。)に対して控訴人が行政不服審査法による審査請求(以下「第2審査請求」という。)をした場合に,本件補正書に方式違反がなければ,手続却下処分は取り消されることになる。その取消しの根拠は,本件補正命令が特許法に違反してなされた無効なものであることであり,第2審査請求の手続において,本件補正命令を無効なものとするため,本件補正命令を取り消すことになる。行政行為である本件補正命令には公定力があるからである。
手続却下処分に対する第2審査請求の手続において本件補正命令を取り消して無効とすることができるのに,本件審査請求の手続において,本件補正命令が「行政庁の違法または不当な処分その他公権力の行使」に該当しないという理由で,それができないのは,法的に矛盾する。
b 本件裁決により,本件補正命令については不可変更力が発生するため,手続却下処分に対する第2審査請求手続においては,もはや本件裁決を覆して本件補正命令を取り消して無効とすることができなくなり,その結果,手続却下処分も取り消すことができなくなる,という法的な矛盾が生じる。
c 第2審査請求手続において,手続却下処分を取り消すためには,まず本件補正命令を取り消さなければならないことは,上述のとおりである。
ところが,本件裁決における「本件補正命令は,特許法133条2項の規定によりなされたものであるところ,本件補正書に不備があることを指摘してその補正を促す行為であり」との判断に不可変更力が発生するため,第2審査請求手続において,上記裁決の判断を覆して本件補正命令を取り消すことができなくなり,その結果,手続却下処分も取り消して無効にすることができない,という法的な矛盾が生じる。
C 原判決は,控訴人が指摘した著作である「行政法がわかった[改訂第2版]」(甲第21号証),「最新 法令用語の基礎知識」(甲第22号証)を根拠とする,「補正命令」は「下命」に該当し,「下命」は「行政行為」であり,「行政行為」は「処分」に該当するので,「補正命令」は「処分」に当たる,との控訴人の主張についての判断をしていない。
(2) 判断の誤りがあること @ 原判決には,最高裁昭和39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁(判決注・以下「昭和39年最高裁判決」という。)の判示に反しているという意味で,判断の誤りがある。
同判決は,公定力のある行政庁の行為を行政庁の公権力の行使に当たる行為である,としている。「補正命令」は公定力を有するから,これが「行政庁の公権力の行使に当たる」ことは明らかである。
A 本件補正命令は,本来存在しない義務を違法,勝手に形成するものであるから,権利義務を形成するものであることは明白である。本件補正命令が公定力を有することは上記のとおりであるから,昭和39年最高裁判決に照らし,本件補正命令が処分性を有することは明白である。
原判決は,最高裁昭和43年4月18日第一小法廷判決・民集22巻4号936頁(判決注・以下「昭和43年最高裁判決」という。)の判示に反しているという意味で,判断の誤りがある。同最高裁判決は,「行政不服審査法が行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に対して不服申立を認めているのは,この種行為が国民の権利義務に直接関係し,その違法又は不当な行為によって国民の法律上の利益に影響を与えることがあるという理由に基づくものである。従って,行政庁の行為であっても,性質上右のような法的効果を有しない行為は,行政不服審査法の対象となり得ないと解すべきである。」と判断している。これに対し,原判決は,「行政不服審査法は行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に対して不服申立てを認めているが(同法1条),それは,この種行為が直接国民の権利義務を形成し,又はその権利義務の範囲を確定するものであるという理由に基づくものであるから,行政庁の行為であっても,その性質上このような法的効果を有しないものは同法による不服申立ての対象とならないというべきである。」として,昭和43年最高裁判決の判断中の「違法又は不当な行為によって」との部分を除外して判断している。このような判断が,同最高裁判決の趣旨に反することは明らかである。
B 原判決は,控訴人が指摘した著作である「行政法がわかった[改訂第2版]」(甲第21号証),「最新 法令用語の基礎知識」(甲第22号証)を根拠とする,「補正命令」は「下命」に該当し,「下命」は「行政行為」であり,「行政行為」は「処分」に該当するので,「補正命令」は「処分」に当たる,との控訴人の主張についての判断を誤った。
控訴人の主張が正当であることは,昭和39年最高裁判決に対する解説書(別冊ジュリスト 行政判例百選U[第四版]398,399頁),最高裁第三小法廷昭和29年9月28日判決(昭和25年(オ)第168号),昭和43年最高裁判決,神戸地裁昭和42年11月29日判決(昭和38年(行)18号,昭和39年(行ウ)12号),福岡地判昭和49年8月30日判決(昭和42年(行ウ)26号)からも明らかである。
C 原判決は,「手続の補正を命ぜられた審判当事者が補正命令に応じなければ,・・当該手続が却下されることになるが・・・。」と判断した。しかし,この判断は誤りである。
本件出願の出願年は昭和62年であるから,本件補正書については,昭和62年当時の旧特許法17条2項が適用されるべきである。旧特許法には,補正命令に従わないときに本件補正書を却下する(又は無効にする。)ことができる権限を審判長に与える規定は存在しない。本件において,本件補正書が却下されることはないから,行政不服審査の機会は,本件補正命令のときしかない。この点からも,本件補正命令が行政不服審査の対象であることは明らかである。旧特許法18条は,特許庁長官だけで手続を無効にすることができる権限を与えている。同規定は,審判長が指定した期間内に手続の補正がなされない場合を除外している。
2 当審における被控訴人の主張の要点 (1) 本件補正命令は,控訴人が行った審判事件の手続について方式上の瑕疵があることを指摘し,その補正の機会を与え,補正を促したものであって,直ちに被控訴人の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものではないから,行政不服審査法1条1項に規定する行政庁の処分に該当しない。
本件裁決は,本件補正命令が行政庁の処分に該当せず行政不服審査法40条1項に基づき,本件審査請求が不適法なものであるとしてこれを却下したのであるから,審査請求の内容に立ち入って審理しなかったことは当然のことである。
(2) 本件出願は,原出願から分割された新たな特許出願であって,発明の新規性,進歩性(特許法29条),先願(同法39条)の要件については,本件出願の時を基準として判断される(特許法44条2項)。しかし,あくまでも原出願とは別個の独立した特許出願であるから,別段の定めのない限り,その手続について適用される法令が本件出願がなされた時点におけるものとなるのは,当然である。原出願時(昭和62年当時)の特許法が適用されるべきであるとする控訴人の主張は,独自の見解にすぎず,失当である。
当裁判所の判断
当裁判所も,控訴人の本訴請求は理由がない,と判断する。その理由は,次のとおり付加するほか,原判決の「第5 当裁判所の判断」記載のとおりであるから,引用する。
1 判断遺脱の主張について @ 控訴人は,本件においては,本件補正命令の内容が特許法に違反するか否かについての実体的判断をすべきであるのに,原判決はこの判断を遺脱した,と主張する。
しかしながら,本件補正命令は,補正を促すにとどまるものであって,補正を命ぜられた者の権利義務を直接形成し,あるいはその権利義務の範囲を確定するものではないから,行政不服審査法に基づく不服申立ての対象となる行政庁の処分には当たらない,と解すべきである。このことを理由に,本件審査請求を不適法として却下した本件裁決及びこれを支持した原判決の判断に誤りはない。このように,本件審査請求が不適法なものとして却下されるべきものである以上,本件補正命令の内容の特許法違反の有無という本件審査請求の実体的内容について判断する必要は,存在しないことが明らかである。
控訴人は,本件補正命令は,「本来存在しない義務を違法,勝手に形成する,行政庁の違法または不当な処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当する,と主張する。しかしながら,本件補正命令は,補正を促すものであるにとどまり,命令を受けた者に義務を課するものではないことは上記説示のとおりである。
補正命令を受けた者がこれに応じなかった場合に当該手続が却下されることがあり得(本件補正命令の根拠条文となるのは現行特許法133条2項であること,および,その理由は,原判決(9頁18行〜10頁1行)説示のとおりである。原告がこれに応じない場合には,同条3項により,本件補正に係る手続が却下されることがあり得る。),却下された場合に法律上の不利益が生じることは,確かである。
しかし,この不利益は,あくまで却下決定による効果であって,補正命令そのものの効果ではない。補正命令を受けただけの段階においても,これに応じなければ当該手続が却下されることがあり得る状況が生じ,その限りにおいては,受ける前に比べて不利益な立場に陥るということはできる。しかし,そういう状況にあっても,補正命令を受けた者は,命令に応じて補正するか,応じないで当該手続が却下される危険を選ぶかの自由を有しているのであり,かつ,却下された後は,却下そのものにつき争うことが認められているのであるから,却下そのものにつき争う機会のほかに,上記不利益の存在を理由に,補正命令そのものについてまでも争う機会を与える必要はないというべきである。
控訴人は,補正命令の処分性について判断した東京地方裁判所平成3年12月13日判決(乙第1号証参照)において判断の対象となった補正命令と本件補正命令とは内容が異なる,との控訴人の主張について,原判決が判断を遺脱した,と主張する。しかしながら,本件補正命令が行政不服審査法に基づく不服申立ての対象となる行政庁の処分には当たらない,との上記判断は,東京地方裁判所の判決で判断の対象となった補正命令と本件補正命令とが内容において同一であることを前提とするものではなく,また,両者の内容が同一でなければ上記判断をすることができないというわけのものではないことは,明らかである。控訴人の主張は,その前提を欠くものである。
A 控訴人は,平成5年法律第26号の附則2条1項によれば,本件補正書に方式上の不備はなく,本件補正命令が違法であることは明白である,と主張する。しかしながら,本件審査請求が不適法なものとして却下されるべきものである以上,本件補正命令の内容の特許法違反の有無という本件審査請求の実体的内容について判断する必要はないことは,上に説示したとおりである。控訴人の主張は,本件補正命令の内容の特許法違反の有無について実体的判断をすべきである,との主張に帰するものであり,採用することができないことが,明らかである。
B 控訴人は,本件補正命令には,行政行為として公定力があるとし,このことを前提に,本件補正書に係る手続が却下され,その手続却下処分に対し控訴人が行政不服審査法による第2審査請求をした場合において,本件補正書に方式違反がないとして手続却下処分を取り消す場合には,本件補正命令を取り消して無効にすることになる,このことと,本件補正命令が「行政庁の違法または不当な処分その他公権力の行使」に該当しないとの理由で本件補正命令を無効にすることができないとする判断とは法的な矛盾を生じる,と主張する。
しかしながら,本件補正命令は,補正を促すものであるにとどまり,命令を受けた者に義務を課するものではないことは,前記説示のとおりである。本件補正命令には,これが取り消されない限り,命令を受けた者が拘束を受け,だれもがその有効を前提にして行動しなければならないという意味での公定力はないというべきである。第2審査請求において本件補正書に方式違反がないとして手続却下処分を取り消すことになるとしても,取り消すに当たり,本件補正命令を取り消す手続をとることは必要でないから,控訴人の主張する法的矛盾は生じない。
控訴人は,本件裁決により,本件補正命令に不可変更力が発生するため,手続却下処分に対する第2審査請求手続において,もはや本件裁決を覆して本件補正命令を取り消して無効とすることができなくなり,その結果,手続却下処分も取り消すことができなくなる,という法的な矛盾が生じる,と主張する。
しかしながら,第2審査請求において本件補正書に方式違反がないとして手続却下処分を取り消すに当たり,本件補正命令を取り消す手続をとる必要がないことは,上記説示のとおりである。控訴人の主張はその前提を欠くものである。
C 控訴人は,甲第21,第22号証の文献を根拠に,「補正命令」は講学上の「下命」に該当し,「下命」は「行政行為」であり,「行政行為」は「処分」に該当するので,本件補正命令は行政不服審査の対象となる適格を有する,と主張し,原判決は控訴人のこの主張に対する判断を遺脱している,と主張する。
しかしながら,本件補正命令は,補正を促すものであるにとどまり,命令を受けた者に義務を課するものではないから,行政不服審査の対象となる処分には当たらないと解すべきことは,既に,繰り返し説示したとおりである。上記文献は,補正命令の行政不服審査の対象としての適格性について直接述べたものではなく,その記載内容をみても,上記判断を左右するものではない,というべきである。
2 判断の誤りの主張について @ 控訴人は,本件補正命令が公定力を有することを前提に,昭和39年最高裁判決に照らすと,本件補正命令は,行政不服審査の対象となる適格を有する,と主張する。しかしながら,控訴人の主張がその前提を欠くことは,1のBで述べたところから明らかである。
A 控訴人は,本件補正命令は,本来存在しない義務を違法,勝手に形成するものであるから,権利義務を形成するものである,と主張する。しかしながら,本件補正命令が命令を受けた者に義務を課するものではないことは,1で述べたとおりである。控訴人の主張はその前提を欠くものである。
控訴人は,原判決が,本件補正命令の行政不服審査の対象適格を否定するに当たり,「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たるか否かについて判断したのみで,「違法又は不当な」処分その他公権力の行使に当たる行為に当たるか否かについて判断しなかったのは,昭和43年最高裁判決に反し,誤りである,と主張する。
しかしながら,本件補正命令が直接国民の権利義務を形成し,又はその権利義務の範囲を確定するものでなく,「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当しないと認められる以上,行政不服審査の対象適格を否定するのに十分であり,それ以外に,本件補正命令が「違法又は不当な」処分であるか否かについて審理判断する必要がないことは,1@で説示したところから明らかである。
昭和43年最高裁判決は,行政不服審査の対象適格の有無の判断に当たり,当該行政行為が「違法又は不当」であるか否かについて審理判断しなければならないとしたものではない。
B 控訴人は,甲第21,第22号証の文献等を根拠に,「補正命令」は講学上の「下命」に該当し,「下命」は「行政行為」であり,「行政行為」は「処分」に該当するので,本件補正命令は行政不服審査の対象となる適格を有する,と主張する。しかしながら,この主張に理由がないことは,1Cで説示したとおりである。
控訴人がその主張の根拠として挙げる,判例や判例解説は,いずれも上記判断を左右するものとは認められない。
3 以上のとおりであるから,控訴人の主張はいずれも理由がなく,他にも,本件裁決にこれを取り消すべき誤りがあることを認めるに足りる資料を,本件記録中に見いだすことはできない。
結論
以上によれば,控訴人の請求を棄却した原判決は正当である。そこで,本件控訴を棄却することとし,控訴費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法67条,61条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 阿部正幸
裁判官 高瀬順久