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関連審決 無効2001-35402
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成15行ケ74審決取消請求事件 判例 特許
平成20行ケ10210審決取消請求事件 判例 特許
平成23行ケ10009審決取消請求事件 判例 特許
平成21行ケ10281審決取消請求事件 判例 特許
平成22行ケ10057審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 製造方法 /  進歩性(29条2項) /  同一技術分野(同一の技術分野) /  容易に発明 /  周知技術 /  慣用技術 /  技術常識 /  発明の詳細な説明 /  共有 /  参酌 /  容易に想到(容易想到性) /  禁反言 /  実施 /  加工 /  設定登録 /  移転登録 /  請求の範囲 /  一部の訂正 / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 294号 審決取消請求事件
原告 千代田工営株式会社引受参加人 JFEスチール株式会社
両名訴訟代理人弁護士 近藤惠嗣
同 梅澤健脱退原告 JFEエンジニアリング株式会社
被告 新日本製鐵株式会社
同訴訟代理人弁護士 上谷清
同 宇井正一
同 笹本摂
同 山口健司
同訴訟代理人弁理士 亀松宏
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/12/24
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告及び引受参加人の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告及び引受参加人の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告及び引受参加人(以下「原告ら」という。) (1) 特許庁が無効2001-35402号事件について平成14年5月1日にした審決を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
前提となる事実(証拠を掲げたもの以外は当事者間に争いがない。)
1 特許庁における手続の経緯 (1) 脱退原告(旧商号・日本鋼管株式会社)及び原告(以下「脱退原告ら」という。)は,発明の名称を「鋼管杭及びその製造方法」とする特許第3168500号(平成7年6月5日出願,平成13年3月16日設定登録。以下「本件特許」といい,この特許に係る発明を「本件発明」という。)の特許権者である。
(2) 被告は,平成13年9月14日,本件特許について,これを無効とすることを求めて審判の請求をし,同請求は無効2001-35402号事件として特許庁に係属した。
脱退原告らは,平成13年12月10日,特許庁に訂正請求書を提出し,本件特許について特許請求の範囲及び発明の詳細な説明一部の訂正を認めるよう求めた。
(3) 特許庁は,上記事件について審理を遂げ,平成14年5月1日,上記訂正を認めるとした上,「特許第3168500号の請求項1〜4に係る発明についての特許を無効とする。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は同年5月13日に脱退原告らに送達された。
(4) 脱退原告らは,平成14年6月10日,本件審決を不服として,その取消しを求めて本訴を提起した。脱退原告は,平成15年4月1日,引受参加人に分割され,この会社分割により,本件特許の共有持分権は引受参加人に移転され,同年6月25日,その旨の移転登録がされた。そして,平成15年12月17日の当裁判所の決定により,引受参加人は原告として本件訴訟を引き受け,脱退原告は本件訴訟から脱退した。
2 前記訂正後の本件発明の要旨は,次のとおりである(甲11,12。請求項1ないし4に係る発明を「本件発明1ないし4」という。)。
【請求項1】 管状の杭本体の先端部分を,その先端外周に沿って螺旋状に切欠し,この螺旋状に切り欠いた杭本体の先端面に沿うようにして杭本体の2倍前後の直径を有し,螺旋翼及び掘削刃として働く螺旋状底板を固定してなることを特徴とする鋼管杭。 【請求項2】 螺旋状底板の中央部に,杭本体内に土砂の進入を許容する土砂進入口を設けたことを特徴とする請求項1記載の鋼管杭。
【請求項3】 管状の杭本体の先端部分を,その先端外周に沿ってほぼ1周にわたり螺旋状に切り欠き,前記杭本体の2倍前後の直径を有する環状円板に半径方向の切り込みを入れ,該環状円板を前記杭本体の螺旋状に切り欠いた先端面に沿うように曲げ加工して形成した掘削刃兼用の螺旋状底板を,前記杭本体の先端面に溶接して形成されることを特徴とする鋼管杭。 【請求項4】 管状の杭本体の先端部分を,その先端外周に沿ってほぼ1周にわたり螺旋状に切り欠く工程と,環状円板に半径方向の切り込みを入れ,該環状円板を前記杭本体の螺旋状に切り欠いた先端面に沿うように曲げ加工して掘削刃兼用の螺旋状底板を形成する工程と,前記杭本体の先端面に,前記螺旋状底板を溶接する工程とを有することを特徴とする鋼管杭の製造方法
3 本件審決の理由の要旨(甲10) (1) 本件発明1について ア 本件発明1と特開昭61-98818号公報(以下「刊行物1」という。)記載の「鋼製円筒体の下部周囲に,上下方向に延長する押込用傾斜前面の下端部から円筒体回転方向の後方に向かって斜めに上昇する狭巾円弧状の傾斜ブレードが固定されて,環状のドリルヘッドが構成され,かつそのドリルヘッドの上端面には,鋼管杭における開放された下端部が溶接により固着され,さらに前記傾斜ブレードは鋼製円筒体の内側および外側に突出した回転圧入式鋼管杭」の発明(以下「刊行物1記載の発明1」という。)とを対比すると,両者は,管状の杭の先端部分を,その先端外周に沿って螺旋状に切欠し,この螺旋状に切り欠いた先端面に沿うようにして杭本体より大きな直径を有し,螺旋翼及び掘削刃として働く螺旋状底板を固定してなる鋼管杭の点で一致し,以下の点で相違する。 (ア) 本件発明1では,全体が1本の管状の杭から構成されるのに対し,刊 行物1記載の発明1では,鋼管杭と,鋼管杭の下端部に溶接された鋼製円筒体とから杭が構成されている点(以下「相違点(1)」という。) (イ) 螺旋状底板が,本件発明1では,杭本体の2倍前後の直径を有するとしているのに対し,刊行物1記載の発明1では,杭本体より大径ではあるが,具体的にどの程度の直径であるか明記されていない点(以下「相違点(2)」という。) イ 上記各相違点について検討する。 (ア) 相違点(1)について 特開平2-194212号公報(以下「刊行物2」という。),特公平2-62648号公報(以下「刊行物3」という。)及び特開平7-11637号公報(以下「刊行物4」という。)には,本件発明1と同様に,全体が1本の管状の杭から構成され,その下端部に螺旋翼(刊行物2の「螺旋状の羽根」,刊行物3の「螺旋翼」,刊行物4の「ラセン翼」)を有する杭が記載されており,一方,実願昭59-68314号(実開昭60-181434号)のマイクロフィルム(以下「刊行物5」という。)には,刊行物1記載の発明1と同様に,鋼管からなる杭本体の下端部に螺旋翼を突設した先端杭を固着した基礎杭が記載されている。
したがって,下端部に螺旋翼を備える鋼管杭において,鋼管杭を,1本の鋼管で構成することも,溶接等で接続した鋼管で構成することも,本件特許出願前から周知慣用されている手段であり,刊行物1記載の発明1において,どちらの構成を適用するかは,当業者が必要に応じて適宜選択し得る程度の設計的事項である。 (イ) 相違点(2)について 刊行物3及び4には,下端部外周面に杭本体の外径のほぼ2倍の外径を有する螺旋翼を設けた鋼管杭が記載されており,刊行物1記載の発明1の傾斜ブレードを,刊行物3及び4に記載されているように,杭本体の2倍前後の直径を有するものとして,本件発明1の相違点(2)に係る構成とすることは,当業者が容易になし得た事項にすぎない。
(2) 本件発明2について 本件発明2は,本件発明1を「螺旋状底板の中央部に,杭本体内に土砂の進入を許容する土砂進入口を設けた」と技術的に限定したものであるが,刊行物1記載の発明1のものも,鋼製円筒体の下端に沿って狭巾円弧状の傾斜ブレードを設けたものであり,「鋼製円筒体1の肉厚分の土が鋼製円筒体1の外側および内側に押込移動され」(甲2の2頁右上欄12〜14行)ることから,傾斜ブレードの内周側は,杭本体内に土砂の進入を許容する土砂進入口に相当するものと認められる。 その余の部分に関する一致点・相違点については,前記(1)に述べたとおりである。 (3) 本件発明3について ア 本件発明3と刊行物1記載の発明1を対比すると,両者は,管状の杭の先端部分を,その先端外周に沿って螺旋状に切欠し,この螺旋状に切り欠いた先端面に沿うようにして杭本体より大きな直径を有し,掘削刃兼用の螺旋状底板を固定してなる鋼管杭の点で一致し,以下の点で相違する。 (ア) 本件発明3では,全体が1本の管状の杭から構成されるのに対し,刊行物1記載の発明1では,鋼管杭と,鋼管杭の下端部に溶接された鋼製円筒体とから杭が構成されている点(以下「相違点(3)」という。) (イ) 本件発明3では,環状円板に半径方向の切り込みを入れ,曲げ加工して螺旋状底板を形成しているのに対し,刊行物1記載の発明1では,どのように傾斜ブレードを形成しているのか明確にされていない点(以下「相違点(4)」という。) (ウ) 螺旋状底板が,本件発明3では,杭本体の2倍前後の直径を有するとしているのに対し,刊行物1記載の発明1では,杭本体より大径ではあるが,具体的にどの程度の直径であるか明記されていない点(以下「相違点(5)」という。) イ 上記相違点について検討する。 (ア) 相違点(3)について 刊行物2ないし4には,本件発明3と同様に,全体が1本の管状の杭から構成され,その下端部に螺旋翼(刊行物2の「螺旋状の羽根」,刊行物3の「螺旋翼」,刊行物4の「ラセン翼」)を有する杭が記載されており,一方,刊行物5には,刊行物1記載の発明1と同様に,鋼管からなる杭本体の下端部に螺旋翼を突設した先端杭を固着した基礎杭が記載されている。したがって,下端部に螺旋翼を備える鋼管杭において,鋼管杭を,1本の鋼管で構成することも,溶接等で接続した鋼管で構成することも,本件特許出願前から周知慣用されている手段であり,刊行物1記載の発明1において,どちらの構成を適用するかは,当業者が必要に応じて適宜選択し得る程度の設計的事項である。 (イ) 相違点(4)について 特開昭62-25612号公報(以下「刊行物6」という。)には,ドーナツ状の鋼鈑9(本件発明3の「環状円板」に相当する。)の一側を切断10して(本件発明3の「半径方向に切り込みを入れ」に相当する。)引張り状態で杭体3に固設することで螺旋状の掘鑿羽根を形成することが記載されており,また,鋼鈑を曲げ加工により加工することは周知技術であるから,刊行物1記載の発明1において,傾斜ブレードを刊行物6に記載されているようにドーナツ状の鋼鈑の一側を切断して,曲げ加工して形成することで,本件発明3の相違点(4)に係る構成とすることは当業者が容易になし得た事項にすぎない。 (ウ) 相違点(5)について 刊行物3及び4には,下端部外周面に杭本体の外径のほぼ2倍の外径を有する螺旋翼を設けた鋼管杭が記載されており,刊行物1記載の発明1の傾斜ブレードを,刊行物3及び4に記載されているように,杭本体の2倍前後の直径を有するとして,本件発明3の相違点(5)に係る構成とすることは,当業者が容易になし得た事項にすぎない。 (4) 本件発明4について ア 本件発明4と刊行物1の「鋼製円筒体の下部周囲に,上下方向に延長する押込用傾斜前面の下端部から円筒体回転方向の後方に向かって斜めに上昇する狭巾円弧状の傾斜ブレードを固定して環状のドリルヘッドを構成する工程と,鋼管杭の下端部に,ドリルヘッドを溶接する工程とを有する回転圧入式鋼管杭の製造方法」の発明(以下「刊行物1記載の発明2」といい,刊行物1記載の発明1と併せて「刊行物1記載の発明」という。)を対比すると,両者は,管状の杭の先端部分を,その先端外周に沿ってほぼ1周にわたり螺旋状に切り欠く工程と,杭の先端面に,掘削刃兼用の螺旋状底板を取り付ける工程とを有する鋼管杭の製造方法の点で一致し,以下の点で相違する。 (ア) 本件発明4では,全体が1本の管状の杭から構成されるのに対し,刊行物1記載の発明2では,鋼管杭と,鋼管杭の下端部に溶接された鋼製円筒体とから杭が構成されている点(以下「相違点(6)」という。) (イ) 本件発明4では,環状円板に半径方向の切り込みを入れ,該環状円板を杭本体の螺旋状に切り欠いた先端面に沿うように曲げ加工して螺旋状底板を形成する工程を有しているのに対し,刊行物1記載の発明2では,傾斜ブレードを形成する工程が明確にされていない点(以下「相違点(7)」という。) (ウ) 杭の先端面に,螺旋状底板を固定する際に,本件発明4では,溶接しているのに対し,刊行物1記載の発明2では,どのように固定しているのか明確にされていない点(以下「相違点(8)」という。) イ 上記相違点について検討する。 (ア) 相違点(6)について 刊行物2ないし4には,本件発明4と同様に,全体が1本の管状の杭から構成され,その下端部に螺旋翼(刊行物2の「螺旋状の羽根」,刊行物3の「螺旋翼」,刊行物4の「ラセン翼」)を有する杭が記載されており,一方,刊行物5には,刊行物1記載の発明2と同様に,鋼管からなる杭本体の下端部に螺旋翼を突設した先端杭を固着した基礎杭が記載されている。したがって,下端部に螺旋翼を備える鋼管杭において,鋼管杭を,1本の鋼管で構成することも,溶接等で接続した鋼管で構成することも,本件特許出願前から周知慣用されている手段であり,刊行物1記載の発明2において,どちらの構成を適用するかは,当業者が必要に応じて適宜選択し得る程度の設計的事項である。 (イ) 相違点(7)について 刊行物6には,ドーナツ状の鋼鈑9(本件発明3の「環状円板」に相当する。)の一側を切断10して(本件発明3の「半径方向に切り込みを入れ」に相当する。)引張り状態で杭体3に固設することで螺旋状の掘鑿羽根を形成することが記載されており,また,鋼鈑を曲げ加工により加工することは周知技術であるから,刊行物1記載の発明2において,傾斜ブレードを刊行物6に記載されているようにドーナツ状の鋼鈑の一側を切断して,被取付面である,螺旋状に切り欠いた先端面に沿うように曲げ加工して形成することで,本件発明4の相違点(7)に係る構成とすることは当業者が容易になし得た事項にすぎない。 (ウ) 相違点(8)について 鋼材相互を溶接により接続することは,従来から普通に行われていることであり,刊行物1記載の発明2において,傾斜ブレードを杭の先端に溶接により固定することは,当業者が必要に応じて適宜なし得た事項にすぎない。 (5) むすび したがって,本件発明1ないし4は,刊行物1ないし6記載の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
当事者の主張
(原告ら主張の取消事由) 本件審決は,@刊行物1記載の発明の構成について事実誤認をし,ひいては,本件発明と刊行物1記載の発明の構成に関する相違点を看過し,相違点(1),相違点(3)及び相違点(6)に関する容易想到性の判断を誤った(取消事由1)ほか,A相違点(2)及び相違点(5)に関する容易想到性の判断を誤り(取消事由2),さらに,B刊行物1記載の発明の製造方法について事実誤認をし,ひいては,本件発明4等と刊行物1記載の発明との製造方法に関する相違点を看過し,相違点(4),相違点(7)及び相違点(8)に関する判断を誤った(取消事由3)ものである。
1 取消事由1(本件発明と刊行物1記載の発明との構成に関する相違点の看過と相違点(1),相違点(3)及び相違点(6)に関する容易想到性判断の誤り) (1) 刊行物1記載の発明の構成についての事実誤認 本件審決は,刊行物1記載の発明1において,掘削刃の機能を果たしている部分が押込用傾斜前面2であることを認識せず,掘削刃としての働きがなく,「底板」でもない刊行物1記載の「狭巾円弧状の傾斜ブレード」(「傾斜ブレード4」)を本件発明1の「螺旋翼及び掘削刃として働く螺旋状底板」に相当すると認定したが,これは誤りである。
ア 掘削機能 刊行物1記載の発明において,掘削刃の機能を果たしている部分は刃3の刃先に相当する「押込用傾斜前面2」である。一方,本件審決が本件発明の「底板」と同様,「「掘削刃として働く」もの」,「「掘削兼用」とされるもの」と認定した「傾斜ブレード4」は,「あたかも木ねじのねじ山が木材に切込侵入するように地盤に切込侵入していくので,鋼管杭の回転力が推力に変換される」という機能を有するものである。したがって,刊行物1記載の「傾斜ブレード4」には,掘削刃としての働きはない。
刊行物1記載の「傾斜ブレード4」に螺旋翼としての機能があることは明らかであるから,この点を争うものではなく,また,確かに,本件発明を知った後になって刊行物1記載の「傾斜ブレード4」を見れば,それが掘削刃としての機能を有していると言えないこともない。
しかしながら,刊行物1には「傾斜ブレード4」が掘削刃として機能することを述べた記載はない。
イ 底板 刊行物1記載の「傾斜ブレード4」は,「木ねじのねじ山が木材に切込侵入するように地盤に切込侵入」するという機能を果たす必要から「狭巾」になっているのであるから,これを,垂直方向の力を受けて支持力を発揮することを目的とする本件発明の「底板」と同一視することはできない。
被告は,刊行物1記載の「傾斜ブレード4」が,杭の先端「底部」に取り付けられた螺旋状の板材であることが容易に分かる旨主張する。
しかしながら,刊行物1記載の第1図に断面が示されているとおり,「傾斜ブレード4」は,円筒体の内側及び外側に向かって傾斜する面を有し,これが「板材」でないことは明白である。
(2) 本件発明1等と刊行物1記載の発明との構成に関する相違点の看過と相違点(1),相違点(3)及び相違点(6)に関する容易想到性判断の誤り ア 鋼管杭とドリルヘッドとの関係で言えば,本件発明1等と刊行物1記載の発明とは,相違点(1),相違点(3)及び相違点(6)の点で相違するばかりでなく,本件発明1等においては,管状の杭本体の先端部分に螺旋翼及び掘削刃として働く螺旋状底板が固定されているのに対し,刊行物1記載の発明においては,このような螺旋状底板を備えていない点(「鋼管杭6」本体の下端に溶接される「ドリルヘッド5」において掘削刃の機能を果たしている部分は「押込用傾斜前面2」であり,「ドリルヘッド5」の先端にある「傾斜ブレード4」は掘削刃としての機能を有しない。)でも相違するものである。
イ 従来技術(刊行物2ないし4に記載された周知技術)において,杭本体の下端部に螺旋翼を備えた鋼管杭が存在したことは本件審決の指摘するとおりであるとしても,それらは,いずれも鋼管杭の外周面に螺旋翼を設けており,螺旋翼には掘削刃としての機能がないものであり,管状の杭本体の先端部分に螺旋翼及び掘削刃として働く螺旋状底板が固定されている本件発明1とは技術的性格が異なるものである。一方,刊行物1記載の発明では,「鋼製円筒体1」は,「ドリルヘッド5」としての機能(土を押し退けて鋼管杭の通り道を作る機能)を果たすため,「鋼管杭6」とは別体に構成され,「鋼管杭6」本体よりも肉厚であることが必要である。刊行物1記載の発明において,「鋼製円筒体1」をなくして「鋼管杭6」のみにしてしまうと,掘削刃がなくなり,ドリルヘッドとしての機能を果たさなくなる。
これらの点を考慮すれば,刊行物1記載の発明に上記の従来技術を適用して,上記各相違点に係る構成を容易に想到できるといえないことは明らかである。
しかるに,本件審決は,鋼管杭とドリルヘッドとの関係において,上記アで述べた相違点を看過し,相違点(1),相違点(3)及び相違点(6)のみを相違点として捉えた上,刊行物1記載の発明において,「鋼製円筒体1」が「鋼管杭6」本体と別体にそれよりも肉厚に製作されることが本質的要求であるのにこれを無視し,掘削刃を備えず,本件発明1等とは技術的性格を異にする従来技術の「杭本体の下端部に螺旋翼を備えた鋼管杭」を引用例として適用して,上記各相違点に係る構成を想到することは容易であると判断したものであり,この判断が誤りであることは明らかである。
2 取消事由2(相違点(2)及び相違点(5)に関する容易想到性判断の誤り) 刊行物1記載の発明における「傾斜ブレード4」は,「あたかも木ねじのねじ山が木材に切込侵入するように地盤に切込侵入していくので,鋼管杭の回転力が推力に変換される。」という機能を果たす必要から「狭巾」になっているのであるから,このような機能を果たすための螺旋翼が杭本体の2倍前後の直径を有することはない。一般の常識の範囲では,「ねじ」の「ねじ山」が本体の2倍の直径をもつ考え方はなく,刊行物1記載の「傾斜ブレード4」の技術背景は,まさに「ねじ」の発想を基本にしたものである。
これに対し,本件発明1及び3は,ねじの機能に加えて支持力を大きくする機能を付加した点で「ねじ」の技術分野とは異なるものであり,したがって,本件審決が,相違点(2)及び相違点(5)について,「刊行物1記載の発明1の傾斜ブレード4を,刊行物3及び4に記載されているように,杭本体の2倍前後の直径を有するものとして,本件発明1の相違点(2)等に係る構成とすることは,当業者が容易になし得た事項にすぎない。」旨の判断をしたのは誤りである。
3 取消事由3(本件発明4等と刊行物1記載の発明との製造方法に関する相違点の看過と相違点(4),相違点(7)及び相違点(8)に関する容易想到性判断の誤り) (1) 刊行物1記載の発明の製造方法に関する事実誤認 本件審決は,刊行物1記載の発明について,「鋼製円筒体の先端部は,予め,「先端外周に沿ってほぼ1周にわたり螺旋状に切り欠」いているものである。」と誤認し,刊行物1記載の発明に,「予め「先端外周に沿ってほぼ1周にわたり螺旋状に切り欠」いている」工程が存在すると誤認した。
刊行物1では,「鋼製円筒体1」と「傾斜ブレード4」の関係は,単に「固定」と表現され,「ドリルヘッド5」と「鋼管杭6」との関係が明確に「「ドリルヘッド5」の上端面には,「鋼管杭6」における開放された下端部が溶接により固着され」と記載されていることと区別されていることからして,刊行物1には「ドリルヘッド5」を作る際に,「鋼製円筒体1」を切り欠いてから,「傾斜ブレード4」を溶接することは示唆されていない。
本件審決の認定したような製造方法をとると,「押込用傾斜前面2」の傾斜や,「傾斜ブレード4」の断面形状及び前面の斜面をそれぞれ別に加工する必要が生じる。したがって,「傾斜ブレード4」を別に工作して「鋼製円筒体1」に溶接するとした場合,「押込用傾斜前面2」の傾斜加工や,「傾斜ブレード4」の断面形状及び前面の斜面加工といった複雑な加工工程が必要となるから,「ドリルヘッド5」が「鋼管杭6」から独立していることを考えると,最初から,「ドリルヘッド5」全体を鋳物で作るはずである。
したがって,本件審決の上記認定は,当業者の常識に反しているというべきである。
(2) 本件発明4等と刊行物1記載の発明とは,製造方法が予め杭の先端外周に沿ってほぼ1周にわたり切り欠いている工程が存在するか否かの点で相違するのに,本件審決はこの相違点を看過し,相違点(4)について,「刊行物1記載の発明1において,傾斜ブレードを刊行物6に記載されているようにドーナツ状の鋼板の一側を切断して,曲げ加工して形成することで,本件発明3の相違点(4)に係る構成とすることは当業者が容易になし得た事項にすぎない。」と判断し,相違点(7)及び相違点(8)についても,実質的に同趣旨の判断をしているが,この判断は誤りである。
(ア) 本件審決は,刊行物6の填圧螺子が杭の先端面ではなく外周面に設けられていることを看過している。
鋼管杭の外周にドーナツ状の「鋼鈑9」の一側を切断10して,曲げ加工して形成したものを溶接する場合には,ドーナツ状の鋼鈑9の内径と鋼管杭の外径が一致していれば,曲げ加工によって正確な螺旋面が形成されていなくても,「鋼板9」と鋼管杭との間に大きな隙間が開くことはない。したがって,これを溶接することは容易である。これに対して,本件発明4等のように,螺旋状底板を杭の先端面に溶接する場合には,螺旋状の切り欠きと曲げ加工された螺旋状底板との螺旋形状をぴったり合わせることは困難であり,多くの場合に,両者の間に隙間ができ,溶接が困難になったり,強固な溶接が不可能であったりする。
本件発明3及び4では,このような不利な条件をあえて採用しているが,それは,螺旋翼を杭の外周に取り付けるのではなく,螺旋状底板を杭先端面に取り付ければ,溶接部に大きな曲げモーメントがかからないという知見に基づいているからである。しかるに,刊行物1記載の発明の場合には,鋳物で一体に形成された「ドリルヘッド5」が用いられており,上記のような不利な条件にもかかわらず,「鋼製円筒体1」と「傾斜ブレード4」とを溶接することは示唆されていないし,刊行物6には,杭の外周面に螺旋翼を取り付けることしか記載されていない。
(イ) 本件発明を知った後になって,刊行物1記載の「傾斜ブレード4」を見れば,円筒体の外側及び内側に突出した「傾斜ブレード4」の内外にかかるモーメントが釣り合うことも理解可能である。
しかしながら,当業者といえども,刊行物1記載の「傾斜ブレード4」の掘削刃としての機能及び曲げモーメント不作用効果に着目し,「底板」に螺旋翼及び掘削メカの機能を持たせても,底板を杭本体に固定する部分を特別に強固にする必要がないことに気付くことは困難であり,刊行物1には,この点を示唆する記載は何もない。
かえって,刊行物1には,モーメントの釣り合いの効果を無視している記載が存在している。すなわち,「前記実施例の場合は,傾斜ブレード4が円筒体1の内外両側に突出しているが,その傾斜ブレード4は円筒体1の外側にのみ突出していてもよく」(甲2の2頁左下欄4〜7行)と記載されており,実施例として図示された形状においてたまたまモーメントの釣り合いが実現していたとしても,そのことに当業者が注意を払ってこの形状を利用しようとする動機付けにはなり得ない。
したがって,掘削刃としての機能及び曲げモーメント不作用効果に関する被告の主張はいわゆる「後知恵」であって,当業者が刊行物1記載の発明を見ても,杭本体の先端部を螺旋状に切り欠いてそこに螺旋状底板を固定するという本件発明3及び4を想到することは困難であったというべきである。
(ウ) したがって,本件審決の上記判断は誤りである。
(被告の反論) 1 取消事由1(本件発明と刊行物1記載の発明との構成に関する相違点の看過と相違点(1),相違点(3)及び相違点(6)に関する容易想到性判断の誤り)について (1) 刊行物1記載の発明の構成についての事実誤認の有無について ア 掘削機能 本件特許に係る明細書(以下「本件明細書」という。)の「掘削刃によって杭本体先端の土砂を掘削軟化させる一方」(甲11の2頁左欄7〜8行),「掘削刃により掘削軟化されて」(同13〜14行)との記載を参照すると,「掘削刃」とは,未掘削の土砂を掘削軟化する機能を営むものであると解されるところ,「螺旋状の板材」を先端(底部)に固定した鋼管杭においては,「螺旋状の板材」の下端部が,所定の角度をなして,鋼管杭の先端に対峙する土砂に当接するため,上記鋼管杭を抑圧しつつ地中に回転推進せしめれば,上記下端部が,該下端部に当接する土砂を掘削軟化することは,物理的に明白である。後記イのとおり,刊行物1記載の「傾斜ブレード4」は,杭の先端(底部)に螺旋状に取り付けられた板材であり,これが上記掘削機能を有することは明らかである。
刊行物1には,「傾斜ブレード4」が「掘削刃」として機能することを明示的に述べた記載はない。しかし,刊行物1記載の第1図ないし第4図に示された「ドリルヘッド5」の形状を見れば,「押込用傾斜前面2」の上下方向延長線上に「傾斜ブレード4」の端部(円周方向に垂直な端部)の面が存在するのであるから,鋼管杭に回転を付与すれば,「傾斜ブレード4」の円周方向に垂直な端部が,該端部の面に接する未掘削土砂を掘削する機能を営むことは,技術常識に則り容易に想定できることである。
刊行物1記載の「押込用傾斜前面2」が「掘削刃」として機能し,「傾斜ブレード4」が「あたかも木ねじのねじ山が木材に切込侵入するように地盤に切込侵入していくので,鋼管杭の回転力が推力に変換される。」という機能(以下,この機能を「切込侵入機能」ということがある。)を有するものとしても,「押込用傾斜前面2」が「掘削刃」として機能すること及び「傾斜ブレード4」が切込侵入機能を有することと,「傾斜ブレード4」が「掘削刃」として機能することとは,何ら矛盾するものではない。
上記のとおり,刊行物1記載の「傾斜ブレード4」が,本件発明における「掘削刃」の機能を有することは明らかである。
イ 底板 (ア) 「底板」とは,その字句の通常の意味に従えば,「物体の底部に設け られた板材」を意味する。そして,刊行物1記載の「傾斜ブレード4」は「鋼製円筒体1」の底部に設けられるものであるが,「鋼製円筒体1」は最終的に鋼管杭の下端部に溶接されて鋼管杭と一体となるものであるから(甲2の2頁右上欄3〜5行参照),「鋼管杭6」と「鋼製円筒体1」を1つの杭として認識し得ることは当然であり,しかも円筒体の内側及び外側に傾斜する面を有する「傾斜ブレード4」であっても,「板材」と呼び得ることは常識的に明らかであるので,上記「傾斜ブレード4」は,「杭本体の底部に設けられた板材」といえるものである。
したがって,刊行物1記載の「傾斜ブレード4」が本件発明の「底板」に相当することは明らかである。
(イ) 原告らは,刊行物1記載の「傾斜ブレード4」は,「木ねじのねじ山が木材に切込侵入するように地盤に切込侵入」するという機能を果たす必要から「狭巾」になっているのであるから,これを,垂直方向の力を受けて支持力を発揮することを目的とする本件発明の「螺旋状底板」における「底板」と同一視することはできない旨主張する。
しかしながら,刊行物1には,「前記傾斜ブレード4により鉛直方向の接地面積が増加するので,鉛直支持力が増大し」(甲2の2頁右下欄14〜16行)と記載されている。この記載から明らかなように,刊行物1記載の「傾斜ブレード4」にも,原告らが「底板」の機能として挙げる「垂直方向の力を受けて支持力を発揮する」機能は備わっているのであるから,本件発明の「螺旋状底板」と同一視できるものである。
刊行物1の「また傾斜ブレード4は,あたかも木ねじのねじ山が木材に切込侵入するように地盤に切込侵入していくので,鋼管杭の回転力が推力に変換される。」(甲2の2頁右上欄15〜18行)という記載は,「傾斜ブレード4」の切込侵入機能を,「木ねじのねじ山」の切込侵入に喩えているにすぎず,該機能は,本件明細書における「螺旋翼」の機能と同じ機能を表現したものである。そして,「螺旋翼」の機能を発揮させるためには,螺旋状の板材の直径が,「狭巾」と呼べる程度の長さ(つまり,杭本体の直径より若干長い程度の長さ)でなければならないという技術的な制限は存在しない。
(2) 本件発明1等と刊行物1記載の発明との構成に関する相違点の看過の有無と相違点(1),相違点(3)及び相違点(6)に関する容易想到性判断について ア 本件審決に原告ら主張の相違点の看過がないことは前記(1)に述べたとおりである。
イ 本件審決が認定するように,刊行物2ないし5を参酌すれば,「下端部に螺旋翼を備える鋼管杭において,鋼管杭を,1本の鋼管で構成することも,溶接等で接続した鋼管で構成することも,本件特許出願前から周知慣用されている手段」であることは明らかである。
そして,刊行物1記載の「傾斜ブレード4」が「螺旋翼」の機能を有することは既に述べたとおりであるから,刊行物1記載の「鋼管杭6」も,「下端部に螺旋翼を備える鋼管杭」の一種である。そうであれば,刊行物1記載の発明と,上記周知慣用手段とは同一の技術分野に属することになるから,刊行物1記載の「鋼管杭6」について,同一技術分野の周知慣用手段である上記手段を適用して,1本の鋼管とする構成を採用することは,当業者にとって容易に想到し得るものであることは明らかである。
この点に関する本件審決の判断に誤りはない。
ウ 原告らは,従来技術における下端部に螺旋翼を備えた鋼管杭は,いずれも鋼管杭の外周面に螺旋翼を設けたものであり,当該螺旋翼には掘削刃としての機能がないものであったのに対し,本件発明の「螺旋状底板」は,鋼管杭の先端面「底部」に直接固定されるものであり,かつ,掘削刃としての機能を有するものであり,両者は相違するものであるところ,本件審決はこの点を看過している旨主張する。
まず,従来技術における「螺旋翼」にも「掘削刃」の機能が本来的に備わっていることは前述のとおりである。
次に,従来技術の「螺旋翼」は,鋼管杭の外周面に設けられているのに対し,本件発明の「螺旋状底板」は,鋼管杭の先端「底部」に設けられるという相違点は,相違点(1),相違点(3)及び相違点(6)の容易想到性の判断には何ら影響する相違ではない。この点に関する原告らの主張が有意なものとなるためには,刊行物1記載の発明と従来技術(刊行物2ないし5記載の発明)との相違点(従来技術の「螺旋翼」は,鋼管杭の外周面に設けられているのに対し,刊行物1記載の「傾斜ブレード4」は,鋼管杭の先端(底部)に設けられるという点)が,「刊行物1記載の「鋼管杭6」を1本の鋼管杭で構成すること」を想到することに対する障害となるものと言えなければならない。そして,当該想到の障害と言えるためには,上記相違点が,刊行物1記載の発明と従来技術とが,技術分野が異なると評価される程度の相違点でなければならない。なぜなら,技術分野が同一ならば,刊行物1記載の発明に接した当業者が,当該技術分野の周知慣用手段である鋼管杭を1本で構成するという手段を利用することは容易に思いつくと言えるのに対し,技術分野が異なるとすれば,必ずしもそのようには言えないからである。
以上を前提に検討するに,刊行物1記載の「傾斜ブレード4」は従来技術の「螺旋翼」に相当するものであることは既に述べたとおりであるから,「螺旋翼」の取り付け位置が杭の外周面(従来技術)から先端(底部)に移動したとしても,刊行物1記載の発明が従来技術と同じく「下端部に螺旋翼を備える鋼管杭」という技術分野に依然として属していることは明らかである。したがって,上記相違点は,「刊行物1記載の「鋼管杭6」を1本の鋼管杭で構成すること」を想到することに対する障害となるものとは言えない。
エ 原告らは,刊行物1記載の発明では,「ドリルヘッド」は機能上の要求から本質的に別体として作られるものであり,したがって,刊行物1記載の発明において「ドリルヘッド5」と「鋼管杭6」を一体として作成することは予定されていないから,本件審決の判断は誤っている旨主張する。
原告らが刊行物1の「鋼製円筒体1」が「鋼管杭6」とは本質的に別体として構成されなければならないと主張する根拠は,刊行物1の「鋼製円筒体1の内周面は鋼管杭6の内周面よりも僅かに内側に突出し,鋼製円筒体1の外周面は鋼管杭6の外周面よりも僅かに外側に突出している」(甲2の2頁右上欄6〜9行)という記載にあることは明らかである。しかし,この記載は,「次にこの発明を図示の例によって詳細に説明する。第1図ないし第4図はこの発明の1実施例を示すものであって」(2頁左上欄14〜17行)という記載に続くものであるから,刊行物1記載の発明の実施例の構成を説明したものにすぎない。したがって,刊行物1記載の発明が「鋼製円筒体1の内周面は鋼管杭6の内周面よりも僅かに内側に突出し,鋼製円筒体1の外周面は鋼管杭6の外周面よりも僅かに外側に突出している」という構成(つまり,鋼製円筒体が鋼管杭よりも肉厚であるという構成)に限定されるものでないことは明らかである。
また,機能面から考えても,土中に鋼管杭の通り道を作るためには,「鋼製円筒体」の肉厚は,鋼管杭の肉厚と同じ厚さであれば足りることは物理的に明らかである。
そうであれば,「鋼製円筒体1」と「鋼管杭6」を別体ではなく,一体で製作したとしても,土中に鋼管杭の通り道を作るという機能は十分確保できるのであるから,「鋼製円筒体」を鋼管杭より肉厚にすること,ひいては鋼管とは別体として製造し,後に,両者を接続して一体化することは,刊行物1記載の発明の本質的な技術的要求ではない。
オ 原告らは,刊行物1記載の発明において,「鋼製円筒体1」をなくして「鋼管杭6」のみにしてしまうと,掘削刃がなくなり,ドリルヘッドとしての機能を果たさなくなる旨主張する。
これらの主張の趣旨は明らかではないが,刊行物1記載の「鋼製円筒体1」は掘削刃としての機能を有するものであるから,「鋼製円筒体1」は別体で作られることが本質的に要求されているという趣旨に思われる。仮にそうだとすれば,該主張は失当である。刊行物1記載の発明において,「押込用傾斜前面2」に掘削刃としての機能が備わるためには,「押込用傾斜前面2」付き「鋼製円筒体1」を「鋼管杭6」と別体で作成しなければならないとの技術的事情は存在しないからである。
2 取消事由2(相違点(2)及び相違点(5)に関する容易想到性判断の誤り)について (1) 既に述べたとおり,刊行物1記載の「傾斜ブレード4」は,従来技術の「螺旋翼」に相当するものである。そして,従来鋼管杭の「螺旋翼」には,実際に「杭本体の外径のほぼ2倍の外径」を有する「螺旋翼」が存在する。
そうであれば,「螺旋翼」に相当する刊行物1記載の「傾斜ブレード4」の外径を,従来から存在する「螺旋翼」と同じく「杭本体の外径のほぼ2倍の外径」とすることは,当業者にとって容易に想到し得ることは明らかである。
この点に関する本件審決の判断に誤りはない。
(2) 原告らは,刊行物1記載の「傾斜ブレード4」は,「ねじ」の発想を基本とし,「ねじ」の技術分野に属するものであり,ねじの機能を果たすための螺旋翼が杭本体の2倍前後の直径を有することはない旨主張する。
しかしながら,刊行物1記載の「傾斜ブレード4」は,「ねじ」の技術分野ではなく,「回転圧入式鋼管杭」の「螺旋翼」の技術分野に属するものであることは明らかであり,しかも,従来技術の「螺旋翼」の中に,実際に杭本体の2倍前後の直径を有する螺旋翼が存在している(刊行物3及び4)。
(3) 原告らは,本件発明1及び3は,ねじの機能に加えて支持力を大きくする機能を付加した点で「ねじ」の技術分野とは異なるものである旨主張する。 しかし,刊行物1の「傾斜ブレード4」も「鉛直方向の接地面積が増加するので,鉛直支持力が増大」(甲2の2頁右下欄14〜16行)するという機能を有するものであり,本件発明の「螺旋状底板」と機能面においても何ら異なるものではない。
3 取消事由3(本件発明4等と刊行物1記載の発明との製造方法に関する相違点の看過と相違点(4),相違点(7)及び相違点(8)に関する容易想到性判断の誤り)について (1) 刊行物1記載の発明の製造方法に関する事実誤認の有無について 刊行物1の記載には,「ドリルヘッド」をどのように作成するかについて述べた箇所は存在しない。
しかし,請求項の文言には,「傾斜前面2の下端部から円筒体回転方向の後方に向かって斜めに上昇する傾斜ブレード4が固定されて」とあり,「固定」という言葉が通常は別体の物同士をくっつける場合に用いる言葉であることからすれば,当業者は,「ドリルヘッド」を作成する方法として,「鋼製円筒体」と「傾斜ブレード」とを別体として作成し,後に溶接等により両者を固定する製造方法を想到するはずである。
仮に上記のように「固定」という文言から製造方法を一義的に導くことができないとしても,刊行物1記載の第1図ないし第4図で示された「ドリルヘッド5」の形態を参照した当業者は,少なくとも「「ドリルヘッド5」全体を鋳造等で一体として製造する方法」と,「「傾斜ブレード4」と「鋼製円筒体1」を別体として作成し,後に溶接等により両者を固定してなる「ドリルヘッド5」の製造方法」の両者を想到することは技術常識に照らし明らかである。
そして,「「傾斜ブレード4」と「鋼製円筒体1」を別体として製作し,後に溶接等により両者を固定してなる「ドリルヘッド5」の製造方法」においては,必然的に,「予め「先端外周に沿ってほぼ1周にわたり螺旋状に切り欠」いている工程」が伴うことは技術的に明らかである。
したがって,刊行物1には,「予め「先端外周に沿ってほぼ1周にわたり螺旋状に切り欠」く工程」が記載ないし示唆されているといえる。この点に関する本件審決の認定に事実誤認はない。
(2) 相違点(4)及び相違点(7)に関する容易想到性判断について ア 本件審決に原告ら主張の相違点の看過がないことは前記(1)に述べたとおりである。
イ 本件発明における「螺旋状底板」や刊行物1記載の「傾斜ブレード4」のような「螺旋状の板材」を作成する方法を考えた場合,当業者のみならず一般人でも,容易に,環状の円板の一側を切断して,曲げ加工して作成する方法を想到するであろうことは,証拠を示すまでもなく明らかである。
したがって,この点に関する本件審決の判断に誤りはない。
ウ 原告らは,刊行物6記載の填圧螺子は,杭の外周面に設けられるものであるところ,鋼管杭の外周に,ドーナツ状の鋼板の一側を切断して,曲げ加工して形成したものを溶接することは容易であるのに対し,同様に形成された螺旋状底板を杭の先端面に溶接する場合は,相当困難であり,したがって,刊行物6記載の方法を直ちに刊行物1記載の発明に適用することはできない旨主張する。
しかし,第1に,特許法36条4項は,「前項第3号の発明の詳細な説明は,通商産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に,記載しなければならない。」と規定されているにもかかわらず,本件明細書には,底板の螺旋形状への加工に関し,「杭本体の螺旋状の先端面に沿うように曲げ加工して」(請求項4)と記載されているだけであり,当該曲げ加工の具体的方法を示す記載は,「発明の詳細な説明」欄に存在しない。したがって,当該加工は当業者にとっては何の困難性もないものであると考えざるを得ない。
また,第2に,原告らは,本件特許の審査過程において,意見書で,「請求項4の発明では,極めて簡単な機械加工で製作ができる」(甲8の10頁9行)と述べている。原告らの上記主張は,この意見書における主張と明らかに矛盾するものであるから,禁反言の法理に照らし,許されない主張である。
エ 原告らは,本件発明が上記ウで記載したような不利な条件を採用したのは,螺旋状底板を杭先端面に取り付ければ,溶接部に大きな曲げモーメントがかからないという知見に基づいているからであるが,刊行物1には,「傾斜ブレード4」の溶接部に曲げモーメントがかからないという知見が記載も示唆もされていないが,かかる知見に基づかない限り,ドーナツ状の鋼板の一側を切断して,曲げ加工して形成した螺旋状底板を,杭先端に溶接するという発想は生まれてこないというべきである旨主張する。
しかし,上記ウで述べたとおり,螺旋状底板を杭の先端面に溶接するという製造方法は当業者にとって困難なものとはいえないから,上記主張はその前提において既に誤っている。
また,溶接部に大きな曲げモーメントがかからないという知見が刊行物1に記載されていないといっても,溶接部に大きな曲げモーメントがかからないという作用は,「鋼管杭の先端(底部)に,螺旋状の板材を固定した」という形状に由来するものであり,当該形状を刊行物1記載の発明も採用しているのであるから,刊行物1記載の発明においても必然的に生じる作用である。
さらに,刊行物1記載の第4図に示される「傾斜ブレード4」において,「鋼製円筒体1」の内側と外側に突き出る「ブレード巾」がほぼ等しいことからすれば,該「傾斜ブレード4」においては,「傾斜ブレード4」と「鋼製円筒体1」の溶接部に,大きな曲げモーメントが作用しないであろうことは,当業者であれば容易に分かることである。このように,原告ら主張に係る,「溶接部に大きな曲げモーメントがかからないという知見」は,刊行物1に実質的に開示されているものである。
原告らの上記主張はいずれにしても理由がない。
オ 刊行物1記載の「ドリルヘッド5」は,鋳物で一体に形成されるから,「傾斜ブレード4」を別に形成するという発想がそもそもない旨主張する。
この点に関する原告らの主張に理由がないことは,前記(1)に記載したところから明らかである。
(3) 相違点(8)に関する容易想到性判断について ア 相違点(8)に係る「鋼材相互を溶接により接続すること」は,本件審決認定のとおり,周知技術そのものであることは,論ずるまでもない。
この点に関する本件審決の判断に誤りはない。
イ 相違点(4)及び相違点(7)に関する容易想到性判断は,「傾斜ブレード4」を曲げ加工等で形成することが容易に想到できるかという問題であるのに対し,相違点(8)に関する容易想到性判断は,「傾斜ブレード4」を「鋼製円筒体1」に固定する際,溶接による方法を想到できるかという問題であり,両者は明らかに異なる問題である。それにもかかわらず,原告らは,相違点(4)及び相違点(7)に関する判断と相違点(8)に関する判断とが実質的に同じであるとの前提に立ち,相違点(8)に関する容易想到性判断の誤りについては,何ら具体的根拠を主張していない。この点に関する原告らの主張は失当である。
当裁判所の判断
1 取消事由1(本件発明1等と刊行物1記載の発明との構成に関する相違点の看過と相違点(1),相違点(3)及び相違点(6)に関する容易想到性判断の誤り)について (1) 刊行物1記載の発明の構成についての事実誤認の有無について 原告らは,本件審決が,刊行物1記載の発明1において,掘削刃としての働きがなく,「底板」でもない刊行物1記載の「狭巾円弧状の傾斜ブレード」(傾斜ブレード4)を本件発明1の「螺旋翼及び掘削刃として働く螺旋状底板」に相当すると認定したが,これは誤りである旨主張するので,以下検討する。
ア 掘削機能について (ア) 本件明細書(甲11)には,本件発明の作用として,「【作用】本発砂を掘削軟化して鋼管杭が地中に回転推進され,埋め込まれる。」(段落【0010】)と記載されており,この記載からして,本件発明の掘削明の鋼管杭によれば,・・・杭本体先端の螺旋状底板が掘削刃として土刃の機能は,土砂を掘削軟化する点にあると解される。
一方,刊行物1(甲2)には,「第1図ないし第4図はこの発明の1実施例を示すものであって,・・・鋼製円筒体1の下部周囲に,上下方向に延長する平面V字状の押込用傾斜前面2が設けられると共に,その傾斜前面2の下端部から円筒体回転方向の後方に向かって斜めに上昇する鋼製傾斜ブレード4が固定されて,環状のドリルヘッド5が構成され,かつそのドリルヘッド5の上端面には,鋼管杭6における開放された下端部が溶接により固着され,さらに前記傾斜ブレード4は鋼製円筒体1の内側および外側に突出し,また鋼製円筒体1の内周面は鋼管杭6の内周面よりも僅かに内側に突出し,鋼製円筒体1の外周面は鋼管杭6の外周面よりも僅かに外側に突出している。このように構成された回転圧入式鋼管杭を回転しながら地盤に圧入していくと,刃3における押込用傾斜前面2により,鋼製円筒体1の肉厚分の土が鋼製円筒体1の外側および内側に押込移動され,鋼製円筒体1内の土はあまり乱されることなく鋼管杭6内に侵入して残される。また傾斜ブレード4は,あたかも木ねじのねじ山が木材に切込侵入するように地盤に切込侵入していくので,鋼管杭の回転力が推力に変換される。」(2頁左上欄16行〜右上欄18行)と記載されている。
刊行物1の上記記載及び第1図ないし第4図によれば,刊行物1記載の発明においては,「鋼製円筒体1」の下部に上下方向に延長する「押込用傾斜前面2」を有する刃3が設けられ,その「押込用傾斜前面2」の下端部から上記円筒体回転方向に向かって斜めに上昇する2枚の「傾斜ブレード4」の各々が,先端全周のほぼ半円程度にわたって螺旋状に固定されていること,そして,「押込用傾斜前面2」の上下方向延長線上に「傾斜ブレード4」の端部(円周方向に垂直な端部)の面が存在し,「傾斜ブレード4」の回転方向先端の断面はほぼ三角形で,その前面に傾斜が付けられている(第1図ないし第4図)こと,「回転圧入式鋼管杭を回転しながら地盤に圧入していくと,刃3における押込用傾斜前面2により,鋼製円筒体1の肉厚部分の土地が鋼製円筒体1の外側および内側に押し込み移動され」,また,「傾斜ブレード4は,あたかも木ねじのねじ山が木材に切込侵入するように地盤に切込侵入していく」ことが認められる。
しかして,「鋼管杭6」に回転を付与し,「傾斜ブレード4」を地盤に切込侵入させれば,「傾斜ブレード4」の切込侵入方向先端面は,「ドリルヘッド5」の「刃3」の「押込用傾斜前面2」と同様,その先端断面の未掘削土砂を「傾斜ブレード4」の上側または下側に押し退けるものであり,このようにして「傾斜ブレード4」が該端部の面に接する未掘削土砂を掘削軟化する機能を営むことは,技術常識からして明らかである。
(イ) 刊行物1の上記記載によれば,「押込用傾斜前面2」は掘削刃としての機能を果たしていることが認められ,また,「傾斜ブレード4は,あたかも木ねじのねじ山が木材に切込侵入するように地盤に切込侵入していく」ものであり,これにより鋼管杭の回転力が推力に変換されること(甲2の2頁右上欄15〜18行)が認められるが,これらの点は「傾斜ブレード4」が掘削刃としての機能を有することと矛盾するものではない。
なお,「傾斜ブレード4」が螺旋翼としての機能を有することは当事者間に争いがない。
イ 底板について 一般的に板とは,薄く平たいものを意味するものであるところ,刊行物1記載の第1図ないし第4図からして,「傾斜ブレード4」は「ドリルヘッド5」を有する鋼製円筒体1の杭本体の先端部,すなわち底に固定されている薄く平たい形状をした部材と認められるので,刊行物1記載の「傾斜ブレード4」は本件発明の「底板」に相当するというべきである。
原告らは,「傾斜ブレード4」は,「鋼製円筒体1」の内側及び外側に向かって傾斜する面を有しており,板材でないことは明らかである,「傾斜ブレード4」は,「木ねじのねじ山が木材に切込侵入するように地盤に切込侵入」するという機能を果たす必要から「狭巾」になっているのであるから,これを,垂直方向の力を受けて支持力を発揮することを目的とする本件発明の「底板」と同一視することはできない旨主張するところ,上記第1図ないし第4図からすれば,「傾斜ブレード4」は,これらの図上,狭巾になっており,また,それは,「鋼製円筒体1」の内側及び外側に向かって傾斜する面を有しており,その断面は三角形であることが認められる。
しかしながら,上記第1図ないし第4図からして,「傾斜ブレード4」は,上記のような傾斜を有するものの,その傾斜角度は極めて小さく,全体としてみれば,板状の形状をしているから,それは板材と言って差し支えないものである。また,刊行物1(甲2)には,「前記傾斜ブレード4により鉛直方向の接地面積が増加するので,鉛直支持力が増大し」(2頁右下欄14〜16行)と記載されており,傾斜ブレード4が,「垂直方向の力を受けて支持力を発揮する」ことは明らかである。 (2) 本件発明1等と刊行物1記載の発明との構成に関する相違点の看過の有無と相違点(1),相違点(3)及び相違点(6)に関する容易想到性判断について ア 原告らは,鋼管杭とドリルヘッドの関係において,本件発明1等と刊行物1記載の発明とは,本件発明1等においては,管状の杭本体の先端部分に螺旋翼及び掘削刃として働く螺旋状底板が固定されているのに対し,刊行物1記載の発明においては,このような螺旋状底板を備えていない点で相違するものであるのに,本件審決はこの相違点を看過し,相違点(1),相違点(3)及び相違点(6)等のみを相違点として捉えた上,刊行物1記載の発明において,鋼製円筒体が鋼管杭本体と別体にそれよりも肉厚に作られることが本質的要求であるのにこれを無視し,また,掘削刃を備えず,本件発明1等とは技術的性格を異にする従来技術の「杭本体の下端部に螺旋翼を備えた鋼管杭」を適用して,上記各相違点に係る構成を想到することは容易であると判断したものであり,この判断は誤りである旨主張する。
イ そこで検討するに,原告らは,本件発明1等においては,管状の杭本体の先端部分に螺旋翼及び掘削刃として働く螺旋状底板が固定されているのに対し,刊行物1記載の発明においては,このような螺旋状底板を備えていない(「ドリルヘッド5」において掘削刃の機能を果たしている部分は「押込用傾斜前面2」であり,「ドリルヘッド5」の先端にある「傾斜ブレード4」は掘削刃としての機能を有しない。)点で相違する旨主張するが,「傾斜ブレード4」が螺旋翼としての機能を有するとともに,掘削刃の機能を併有しており,「傾斜ブレード4」は本件発明1等における「螺旋状底板」に相当するものであることは前記(1)ア,イに認定したとおりである。したがって,本件審決に,上記相違点を看過した瑕疵があるとする原告らの主張は採用できない。
ウ 相違点(1),相違点(3)及び相違点(6)に関する容易想到性判断の誤りについて (ア) 文中掲記の証拠によれば,次の事実が認められる。
a 刊行物2(甲3)には, @「鋼管を柱体にして,鋼管に螺旋状の 鋼板の羽根を取り付けることを特徴とするスクリュー杭。」(特許請求の範囲請求項1), A「前記鋼管柱体は,中空体よりなることを 特徴とする特許請求の範囲第1項記載の鋼管スクリュー杭。」(同請求項3)が開示されている。
b 刊行物3(甲4)には,「第1図は本発明において使用する鋼管杭の1実施例を示した側面図,第2図は同底面図で,これらの図において1は鋼管製の杭本体で,その下端には底板2が固設されており,底板2には下方に向けて掘削刃4,4が突設されている。また,杭本体1の下端部にはその外周面に沿って翼巾の大きい杭ネジ込み用の螺旋翼3が突設されている。この螺旋翼3は,図面に示すように,杭本体1の外径のほぼ2倍〜2倍強の外径を有しており,そしてほぼ1巻き強にわたり連続して形成されている。」(2頁3欄19〜29行)と記載されている。
c 刊行物4(甲5)には, @「鋼管杭の下端部外周面にラセン翼が 1巻き以上固設された杭であって,該鋼管杭の下端に掘削刃を有さず,掘削兼推進刃が該ラセン翼に重ねられて取付けられていることを特徴とする鋼管杭。」(特許請求の範囲【請求項1】), A「ラセン翼2は鋼製であり,その外径は鋼巻の1.5倍〜3倍程度が好ましく,さらに好ましくはほぼ2倍程度である。・・・ラセン翼2は通常熔接によって鋼管1に取付けられる。」(段落【0007】),B「鋼管1の先端は底板4を取付けて閉塞としてもよいし,開放のままでもよい。・・・この掘削兼推進刃3はラセン翼2の上側または下側に熔接等によって取付けられる。この際,掘削兼推進刃は鋼管杭本体にも熔接される方が強度の面で好ましい。」(段落【0008】)と記載されている。
d 刊行物5(甲6)には,@「鋼管・・・よりなる杭本体の下端に,この杭本体と同径の鋼管の下端に掘削刃を突設すると共に,その下部及びそれより所要距離隔てた上方位置の外周面に,それぞれ1巻きまたは数巻きにわたり螺旋翼を突設した先端杭を固着したことを特徴とする,基礎杭。」(実用新案登録請求の範囲),A「第1図,第2図において,Aは鋼管製または中空コンクリート製の杭本体,Bはこの杭本体Aの下端に溶接等の手段で固着7した先導杭である。」(3頁4〜7行),B「第3図は,本考案基礎杭における下端部分の他の実施例を示したもので,前記実施例においては鋼管1の下端は底板2により全面を塞いだものとなっているが,第3図の実施例は,底板2を環状に形成し,鋼管1内への通孔6を形成している。」(4頁19行〜5頁4行)と記載されている。 (イ) 上記の記載によれば,刊行物2,刊行物3及び刊行物4には,本件発明1と同様に,全体が1本の鋼管で構成され,その下端部に螺旋翼(刊行物2記載の「螺旋状の鋼板の羽根」,刊行物3記載の「螺旋翼」,刊行物4記載の「ラセン翼」。なお,刊行物3には杭本体の下端(底板2)に掘削刃4も突設されている。)を有する杭が記載されており,一方,刊行物5には,刊行物1記載の発明1と同様に,鋼管からなる杭本体の下端部に螺旋翼を突設した先端杭を固着した基礎杭が記載されており,下端部において螺旋翼を備える鋼管杭において,鋼管杭を1本の鋼管で構成することも,溶接等で接続した鋼管で構成することも,ともに本件特許出願前から周知の技術であったと認められる。
また,前記(1)ア認定の刊行物1の記載によれば,「鋼製円筒体1」は鋼管杭本体に溶接されて「鋼管杭6」と一体になるものであって(甲2の2頁右上欄3〜5行),「鋼管杭6」と「鋼製円筒体1」は実体は1つの杭としてみることもできる。そして,「鋼製円筒体1」の先端には螺旋状に「傾斜ブレード4」が取り付けられており,この「傾斜ブレード4」が螺旋翼及び掘削刃の機能を有することは前記(1)で認定したとおりであるから,刊行物1記載の発明に係る鋼管杭は,下端部に螺旋翼及び掘削刃を備える鋼管杭であるということができる。
そうすると,刊行物1記載の発明に上記周知技術を適用することに格別の阻害要因があるとはいえず,上記周知技術の適用により,先端に螺旋翼及び掘削刃を備える鋼管杭を,1本の鋼管で構成することは,当業者が容易に想到し得ることであると考えられる。
(ウ) この点に関し,原告らは,従来技術における下端部に螺旋翼を備えた鋼管杭が,いずれも,@鋼管杭の外周面に螺旋翼を設けたものであり,また,Aその螺旋翼が掘削刃としての機能を有しないという,本件発明1との相違点を看過し,安易に,刊行物1記載の発明に上記従来技術を適用すれば,本件発明1等を想到することができるとしているのは誤りである旨主張する。
しかしながら,鋼管杭に回転を付与し,従来技術における「螺旋翼」を地盤に切込侵入させれば,「螺旋翼」の切込侵入方向先端面は,その先端断面の掘削土砂を螺旋翼の上側または下側に押し退けるものであり,したがって,上記螺旋翼が切込侵入機能とともに「掘削刃」の機能を併有していることは明らかである(前記(1)ア参照)。また,上記イに説示したとおり,刊行物1記載の発明において,「傾斜ブレード4」は「螺旋翼」に相当するものであり,その取り付け位置が杭の外周から杭の先端に移動しても,それが従来技術における「下端部に螺旋翼を備える鋼管杭」であることに変わりはなく,両者は技術分野を同じくするものというべきであり,従来技術の「螺旋翼」が,鋼管杭の外周面に設けられている点は,刊行物1記載の鋼管杭を1本の鋼管杭で構成することを想到することについて,障害となるものとは言えない。
さらに,原告らは,刊行物1記載の発明において,ドリルヘッドとして機能する「鋼製円筒体1」が「鋼管杭6」本体とは別の部材で,「鋼管杭6」本体より肉厚にできているとし,それが同発明の本質的要求であるかのように主張するところ,原告らのこの主張の根拠は,刊行物1(甲2)の「鋼製円筒体1の内周面は鋼管杭6の内周面よりも僅かに内側に突出し,鋼製円筒体1の外周面は鋼管杭6の外周面よりも僅かに外側に突出している」(2頁右上欄6〜9行)という記載にあると考えられる。
しかし,上記記載は,刊行物1記載の発明の実施例の構成を説明したものにすぎないから,刊行物1記載の発明において,上記の構成を採用することは必須の要件でないというべきである。実際の機能面からしても,土中に鋼管杭の通り道を作るためには,「鋼製円筒体1」の肉厚は,「鋼管杭6」の肉厚と同じ厚さであれば足りることは物理的に明らかである。そして,「鋼製円筒体1」を別体としてでなく,鋼管杭を一体で作成したとしても,土中に鋼管杭の通り道を作るという機能は十分確保できるのであるから,「鋼製円筒体1」を「鋼管杭6」より肉厚にすること,ひいては「鋼管杭6」とは別体として製造し,後に,両者を接続して一体化することは,刊行物1記載の発明の本質的な要請ではないと解される。
エ 上記のとおり,本件審決に原告ら主張の相違点を看過した瑕疵はなく,また,本件審決の相違点(1),相違点(3)及び相違点(6)に関する容易想到性判断に誤りがあるとはいえない。
2 取消事由2(相違点(2)及び相違点(5)に関する容易想到性判断の誤り)について (1) 原告らは,刊行物1記載の発明の「傾斜ブレード4」の機能は,「あた かも木ねじのねじ山が木材に切込侵入するように地盤に切込侵入していくので,鋼管杭の回転力が推力に変換される。」というものであって,刊行物1記載の「傾斜ブレード4」の技術背景は,まさに「ねじ」の発想を基本にしたものであり,また,一般の常識の範囲では,「ねじ」の「ねじ山」が本体の2倍の直径をもつという考え方はないことからして,このような機能を果たすための螺旋翼が杭本体の2倍前後の直径を有することはない旨主張する。 しかしながら,前記1(2)ウに認定したとおり,刊行物3及び刊行物4には,鋼管杭の下端部外周面に杭本体の外径のほぼ2倍の外径を有する螺旋翼を設けるという技術が開示されているところ,刊行物1記載の「傾斜ブレード4」が鋼管杭の螺旋翼の機能(「土砂に食い込んで土の耐力を反力として地中に回転推進」する機能)を奏することは,前記1(1)アの説示から明らかであり,両者は技術分野を同じくするものと考えられるのであって,刊行物1記載の「傾斜ブレード4」に,刊行物3及び刊行物4記載の上記技術事項を適用することを妨げる要因があるとはいえない。
(2) 確かに,刊行物1(甲2)には,「傾斜ブレード4は,あたかも木ねじのねじ山が木材に切込侵入するように地盤に切込侵入していくので,鋼管杭の回転力が推進力に変換される。」(2頁右上欄15〜18行)と記載されているが,この記載は,「傾斜ブレード4」の螺旋翼の機能について,木ねじに喩えて説明したものにすぎず,「回転圧入式鋼管杭」の「螺旋翼」の技術分野と「ねじ」の技術分野とは異なるものと考えられ,実際にも,鋼管杭の螺旋翼に関し,「下端部外周面に杭本体の外径のほぼ2倍の外径を有する螺旋翼を設け」ることが刊行物3及び刊行物4に記載されている以上,「ねじ」の「ねじ山」が本体の2倍の直径を持つことはないという「ねじ」に関する一般常識により,刊行物1記載の鋼管杭の螺旋翼に係る技術事項が制限を受けるとは認められない。
(3) 原告らは,本件発明は,ねじの機能に加えて支持力を大きくする機能を付加した点で「ねじ」の技術分野とは異なるものであり,本件審決の相違点(2)及び相違点(5)についての判断は誤りである旨主張するところ,本件明細書(甲11)には,「鋼管杭の埋設完了後は,建物の支持荷重が杭本体及び螺旋状底板にそれぞれ作用し,この荷重に対する地盤の反力(鉛直方向の反力)が螺旋状底板及び杭本体にそれぞれ作用する。」(段落【0010】)と記載されており,この記載によれば,「螺旋状底板」は支持機能を有するものと認められる。
しかしながら,刊行物1(甲2)には,「傾斜ブレード4により鉛直方向の接地面積が増加するので,鉛直支持力が増大」するとの記載(2頁右下欄14〜16行)があり,この記載からすれば,刊行物1記載の「傾斜ブレード4」が本件発明における「螺旋状底板」と同様の支持機能を奏することは明らかである。
(4) 以上によれば,本件審決の相違点(2)及び相違点(5)に関する容易想到性判断に誤りがあるということはできない。
3 取消事由3(本件発明4等と刊行物1記載の発明との製造方法に関する相違点の看過と相違点(4),相違点(7)及び相違点(8)に関する容易想到性判断の誤り)について (1) 刊行物1記載の発明の製造方法に関する事実誤認の有無 原告らは,本件審決は,刊行物1記載の発明について,「鋼製円筒体の先端部は,予め,「先端外周に沿ってほぼ1周にわたり螺旋状に切り欠」いているものである。」と認定したが,この認定は誤りである旨主張する。
ア そこで検討するに,刊行物1記載の発明の特許請求の範囲には,「鋼製円筒体1の下部に,上下方向に延長する押込用傾斜前面2を有する刃3が設けられると共に,その傾斜前面2の下端部から円筒体回転方向の後方に向かって斜めに上昇する傾斜ブレード4が固定されて,環状のドリルヘッド5が構成され」との記載があり,この記載に加え,刊行物1記載の第1図ないし第4図を参照すれば,上記発明において,「傾斜ブレード4」が固定されている「鋼製円筒体1」の先端部は,螺旋状に切り欠いた如き形状をしていると認められるものの,刊行物1には先端部が上記形状をした「鋼製円筒体1」と「傾斜ブレード4」をどのように製造するかについての記載はない。
しかしながら,形状の異なる部材を組み合わせて1個の形状の物体を製作する場合に,両者は一体として鋳造等の方法により製作する方法と,両者を別体として製作した後,両者を溶接等により固定させて製作する方法とがあることは技術常識に属する事柄であり,したがって,刊行物1記載の第1図ないし第4図で示された「ドリルヘッド5」の形態に接した当業者は,少なくとも,「傾斜ブレード4」を含む「ドリルヘッド5」の全体を鋳造等で一体として製造する方法と,「鋼製円筒体1」と「傾斜ブレード4」を別体として製作し,「鋼製円筒体1」の先端部を先端外周に沿って予め切り欠いた後,これに「傾斜ブレード4」を溶接等により「鋼製円筒体1」の先端部に固定する製造方法の両方の製造方法を想到するものと考えられる。そして,このうちいずれの製造方法を採用するかは,当業者が適宜選択し得る事項というべきである。
原告らは,刊行物1では,「鋼製円筒体1」と「傾斜ブレード4」の関係が「固定」と記載され,他方,「ドリルヘッド5」と「鋼管杭6」との関係について「溶接により固着され」と記載されていることを根拠に,刊行物1には「ドリルヘッド5」を作る際に,「鋼製円筒体1」を切り欠いてから,「傾斜ブレード4」を溶接することは示唆されていない旨主張するが,通常,「固定」は動かないようにすることを意味するにとどまり,そのための手段までも規定するものではなく,溶接して固定することが排除されるとまで解することはできない。
なお,刊行物1記載の発明において,「傾斜ブレード4」と「鋼製円筒体1」を別体として作成すれば,「ドリルヘッド5」全体を鋳物で作るのに比べて複雑な加工工程が必要となることが考えられるが,そのことから,上記のとおり別体として製作する方法が当業者の常識に反するとまではいえない。
してみると,本件審決が,刊行物1記載の発明について,「鋼製円筒体の先端部は,予め,「先端外周に沿って螺旋状に切り欠」いているものである。」と断定した点は,適切を欠くというべきであるが,刊行物1には,予め「先端外周に沿って螺旋状に切り欠」く工程が示唆されているといえるから,本件審決はこの趣旨をいう限度で是認できるものである。
イ 次に,刊行物1の第1図ないし第4図に記載された,2枚ある「傾斜ブレード4」の1枚に注目すれば,「傾斜ブレード4」は「鋼製円筒体1」の先端全周の半周程度にしかわたっていない。
しかし,上記第1図ないし第4図によれば,2枚ある「傾斜ブレード4」のうちの1つが,2つの「押込用傾斜前面2」の1つの下端部から円筒体回転方向の後方に向かって斜めに上昇し,それが先端全周の半周程度にわたり,それに次いで,もう1つの「傾斜ブレード4」が,もう1つの「押込用傾斜前面2」の下端部から円筒体回転方向に向かって斜めに上昇する形状となっているのであって,全体的に見れば,鋼製円筒体の先端外周に沿った螺旋状の切り欠き部分は,ほぼ半周ごとに2つ存在し,切り欠き部分はほぼ1周にわたっていることになる。
本件審決が,刊行物1記載の発明について,「鋼製円筒体の先端部は,予め,「先端外周に沿ってほぼ1周にわたって螺旋状に切り欠」いているものである。」と認定したのは,不正確であるといわざるを得ないが,その趣旨は上記のとおりであると善解すべきである。
なお,上記第1図ないし第4図はあくまで刊行物1記載の発明の1実施例である(甲2の2頁左上欄16〜17行参照)。特許請求の範囲の文言上は,「傾斜ブレード4」の枚数に関する制限はなく,刊行物1記載の「傾斜ブレード4」は,発明の目的・効果を達成し得る限りにおいて,その枚数は適宜設定できるものと考えるべきである。そこで,刊行物1記載の「傾斜ブレード4」を1枚に設定した場合を想定すれば,「傾斜ブレード4」は,「あたかも木ねじのねじ山が木材に切込侵入するように地盤に切込侵入」する(甲2の2頁右上欄15〜17行)ものでなければならないから,「傾斜ブレード4」が1枚の場合にこの機能を発揮するためには,「傾斜ブレード4」が,「押込用傾斜前面2」の下端部から円筒体回転方向の後方に向かって斜めに上昇し,「鋼製円筒体1」のほぼ1周にわたって螺旋状に固定された構成になるものと解される。
(2) 本件発明4等と刊行物1記載の発明との製造方法に関する相違点の看過の有無と相違点(4)及び相違点(7)に関する容易想到性判断について ア 原告らは,本件発明4等と刊行物1記載の発明とは,製造方法が予め杭の先端外周に沿ってほぼ1周にわたり切り欠いている工程が存在するか否かの点で相違するのに,本件審決はこの相違点を看過し,相違点(4)について,「刊行物1記載の発明1において,傾斜ブレードを刊行物6に記載されているようにドーナツ状の鋼板の一側を切断して,曲げ加工して形成することで,本件発明3の相違点(4)に係る構成とすることは当業者が容易になし得た事項にすぎない。」と判断し,相違点(7)及び相違点(8)についても,実質的に同趣旨の判断をしているが,この判断は誤りである旨主張する。
イ そこで,検討するに,刊行物1記載の「ドリルヘッド5」を製造する場合,「鋼製円筒体1」と「傾斜ブレード4」を別体として製作し,「鋼製円筒体1」の先端部を先端外周に沿って予め切り欠いた後,これに「傾斜ブレード4」を溶接等により固定させる製造方法を採用することが,当業者において適宜選択し得る事項というべきことは,前記(1)で説示したとおりである。
したがって,本件審決に原告ら主張の製造方法に関する相違点を看過した瑕疵はない。
ウ 原告らは,本件審決が,相違点(4)及び相違点(7)について,「刊行物1記載の発明1において,傾斜ブレード4を刊行物6に記載されているようにドーナツ状の鋼板の一側を切断して,曲げ加工して形成することで,本件発明3の相違点(4)等に係る構成とすることは当業者が容易になし得た事項にすぎない。」旨の判断をしたのは誤りであるとし,その根拠として,本件発明3及び4のように,螺旋状底板を杭の先端面に溶接する場合において,螺旋状の切り欠きと曲げ加工された螺旋状底板の螺旋形状をぴったり合わせることは困難である旨主張する。
しかしながら,刊行物1記載の「ドリルヘッド5」を製造する場合,「鋼製円筒体1」と「傾斜ブレード4」を別体として製作し,「鋼製円筒体1」に「傾斜ブレード4」を溶接等の方法により固定させる製造方法を採用することが,当業者において適宜選択し得る事項というべきことは,上記イ記載のとおりである。
そして,刊行物6(甲7)には, 「先端を尖端に形成した杭体の先端部に螺旋状の掘鑿羽根又は掘鑿螺子を設け,後端に先端部に設けられた螺旋状の掘鑿羽根又は掘鑿螺子のねじピッチよりも間隔の狭いねじピッチに形成した填圧羽根又は填圧螺子を設けた事を特徴とする杭。」(特許請求の範囲),「而して螺旋羽根は第4図に示す如くドーナツ状の鋼鈑9の一側を切断10して引張り状態で杭体2に固設せしめれば極めて簡単に形成できる。」(2頁左上欄8〜11行)と記載されているとおり,鋼板を曲げ加工により加工することは周知の技術と認められるから,刊行物1記載の「傾斜ブレード4」のような「螺旋状の板材」を別体として製作するについて,当業者が,環状の円板の一側を切断して,曲げ加工して製作する方法を想到することは容易であると考えられる。また,本件明細書には,底板の螺旋形状への加工に関し,「杭本体の螺旋状に切り欠いた先端面に沿うように曲げ加工して」(請求項4)と記載されているだけであり,その「発明の詳細な説明」欄には当該曲げ加工の具体的方法を開示する記載は存在しない。したがって,その加工が,慣用技術と認められる通常の曲げ加工や溶接の技術と異なる困難性を有すると認めることはできない。
さらに,原告らは,刊行物1記載の発明を見た当業者が「傾斜ブレード4」の掘削刃としての機能及び曲げモーメント不作用効果に着目して,「底板」に螺旋翼及び掘削メカの機能を持たせても,「底板」を杭本体に固定する部分を特別に強固にする必要がないことに気付くことは困難であり,刊行物1には,この点を示唆する記載は何もなく,かえって,この効果を無視している記載が存在している旨主張する。
しかしながら,本件明細書(甲11)には,「鋼管杭の埋設完了後は,建物の支持荷重が杭本体及び螺旋状底板にそれぞれ作用し,この荷重に対する地盤の反力(鉛直方向の反力)が螺旋状底板及び杭本体にそれぞれ作用する。そして,螺旋状底板にはこの反力によって曲げモーメントも作用する。しかし,螺旋状底板が杭本体の先端に固定されていることから,杭本体には螺旋状底板の曲げモーメントが作用しない。」(段落【0010】)と記載されており,この記載からすれば,杭本体に曲げモーメントが作用しないという効果は,鋼管杭の先端部分に螺旋状の底板を固定した形状に由来するものであることが明らかである。
しかして,刊行物1記載の発明において,「傾斜ブレード4」は,鋼管杭に溶接され,これと一体となる「鋼製円筒体1」の先端に設けられるものであるところ,刊行物1(甲2)には,「傾斜ブレード4は鋼製円筒体1の内側および外側に突出し」(2頁右上欄5〜6行)との記載があり,また,刊行物1記載の第4図に示される「傾斜ブレード4」において,「鋼製円筒体1」の内側と外側に突き出る「ブレード巾」がほぼ等しくなっており,「傾斜ブレード4」がこのような状態で「鋼製円筒体1」に取り付けられる場合には,本件発明における「螺旋状底板」と同様,曲げモーメント不作用の効果を奏することは明らかである。したがって,刊行物1には,刊行物1記載の発明において,「傾斜ブレード4」と「鋼製円筒体1」の溶接部に大きな曲げモーメントが作用しないようにする技術が開示されているということができ,このことは,当業者であれば容易に想到できることというべきである。
エ 上記のとおり,本件審決に原告ら主張の相違点を看過した瑕疵はなく,また,本件審決の相違点(4)及び(7)に関する容易想到性判断に誤りがあるとはいえない。
(3) 相違点(8)に関する容易想到性判断について 相違点(8)に係る「鋼材相互を溶接により接続すること」は,周知慣用技術であり,刊行物1記載の発明2において,「傾斜ブレード4」を杭の先端に溶接により固定することは,当業者が必要に応じて適宜なし得た事項にすぎない。本件審決の相違点(8)に関する容易想到性判断に誤りはない。
原告らは,刊行物1記載の「ドリルヘッド5」は鋳物で一体として作られるものであるという前提に立って,本件審決の上記判断を非難するものと解されるが,刊行物1記載の発明において「ドリルヘッド5」を製造する場合,「鋼製円筒体1」と「傾斜ブレード4」を別体として製作し,「鋼製円筒体1」に「傾斜ブレード4」を溶接等の方法により固定させる製造方法を採用することが,当業者において適宜選択し得る事項であることは前記(2)イに記載したとおりであり,本件審決のこの点に関する判断は,この製造方法を採用することを前提とするものであるから,原告らの主張は,その前提を誤るものである。
4 以上によれば,原告らが取消事由として主張するところはいずれも理由がなく,本件審決には他にこれを取り消すべき瑕疵は見あたらない。
よって,原告らの本件請求は,理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 北山元章
裁判官 青蜉]
裁判官 沖中康人