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事件 令和 2年 (ネ) 10024号 特許権侵害差止等請求控訴事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2022/10/20
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
令和4年10月20日判決言渡

令和2年(ネ)第10024号 特許権侵害差止等請求控訴事件

(原審・大阪地方裁判所平成30年(ワ)第3226号)

口頭弁論終結日 令和4年9月8日

5 判 決



控 訴 人 株 式 会 社 フ ジ 医 療 器



同訴訟代理人弁護士 重 冨 貴 光

10 古 庄 俊 哉

石 津 真 二

手 代 木 啓

杉 野 文 香

辻? 本 希 世 士

15 辻? 本 良 知

松 田 さ と み

同訴訟復代理人弁護士 三 上 藍

同補佐人弁理士 丸 山 英 之



20 被 控 訴 人 ファミリーイナダ株式会社



同訴訟代理人弁護士 三 山 峻 司

矢 倉 雄 太

同訴訟代理人弁理士 北 村 修 一 郎

25 森 俊 也

同訴訟復代理人弁護士 西 川 侑 之 介


1
主 文

1 原判決を次のとおり変更する。

被控訴人は、別紙物件目録記載1のマッサージ機を製造し、販売し、

輸出し又は販売の申出をしてはならない。

5 被控訴人は、別紙物件目録記載2のマッサージ機を製造し、販売し、

又は販売の申出をしてはならない。

被控訴人は、別紙物件目録記載1及び2の各マッサージ機を廃棄せ

よ。

被控訴人は、控訴人に対し、3億9154万9273円及び別紙認

10 容額一覧の「認容額」欄記載の各金員に対する「遅延損害金起算日」

欄記載の各日から支払済みまで「遅延損害金利率(年)」欄記載の各

割合による金員を支払え。

控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。

2 訴訟費用は、第1、2審を通じて、これを5分し、その4を控訴人の

15 負担とし、その余を被控訴人の負担とする。

3 この判決の第1項 、 及び は、仮に執行することができる。

事 実 及 び 理 由

第1 控訴の趣旨

1 原判決を次のとおり変更する。

20 2 主文第1項 ないし と同旨

3 被控訴人は、別紙物件目録記載3ないし8の各マッサージ機を製造し、販売

し、又は販売の申出をしてはならない。

4 被控訴人は、別紙物件目録記載3ないし8の各マッサージ機を廃棄せよ。

5 被控訴人は、控訴人に対し、15億円及び別紙請求額一覧の表1の「請求額」

25 欄記載の各金員に対する「遅延損害金起算日」欄記載の各日から支払済みまで

「遅延損害金利率(年)」欄記載の各割合による金員を支払え。


2
第2 事案の概要(略称は、特に断りのない限り、原判決に従う。)

1 事案の要旨

本件は、発明の名称を「椅子式施療装置」とする特許第4504690号(以

下「本件特許A」といい、本件特許Aに係る特許権を「本件特許権A」という。、


5 発明の名称を「椅子式マッサージ機」とする特許第5162718号(以下「本

件特許B」といい、本件特許Bに係る特許権を「本件特許権B」という。)及び

特許第4866978号(以下「本件特許C」といい、本件特許Cに係る特許

権を「本件特許権C」という。)の特許権者である控訴人が、被控訴人による別

紙物件目録記載1ないし12の各マッサージ機(以下「被告各製品」と総称し、

10 それぞれを同目録の番号に応じて、「被告製品1」などという。)の製造、販売

等が本件特許権AないしCの侵害に当たる旨主張して、被控訴人に対し、特許

100条1項及び2項に基づき、被告各製品の製造、販売等の差止め及び廃

棄を求めるとともに、特許権侵害不法行為に基づく損害賠償請求の一部とし

て、15億円及び訴状送達の日の翌日から支払済みまでの遅延損害金の支払を

15 求める事案である。

原審は、被告各製品は、本件特許AないしCに係る発明の技術的範囲に属さ

ないとして、その余の点について判断することなく、控訴人の請求をいずれも

棄却した。

控訴人は、被告製品1ないし8について本件特許権A及びCに係る請求を棄

20 却した部分について、控訴の趣旨(ただし、遅延損害金請求については当審に

おける拡張分を含む。)の限度で、原判決を不服として、本件控訴を提起した。

また、控訴人は、当審において、平成27年4月12月以前の損害に係る部分

の予備的請求として、不当利得返還請求を追加する訴えの変更をした。

2 前提事実(証拠の摘示のない事実は、争いのない事実又は弁論の全趣旨によ

25 り認められる事実である。)

当事者


3
ア 控訴人は、医療機器、健康機器、家庭用電気機械器具等の製造販売等を

目的とする株式会社である。

イ 被控訴人は、電気マッサージ器、美容体育機器、電気用品等の製造販売

等を目的とする株式会社である。

5 本件特許A

ア 東芝テック株式会社は、平成16年1月15日、本件特許Aに係る特許

出願(特願2004−7782号。以下「本件出願A」という。 をした
) (乙

A1)。

その後、控訴人は、本件出願Aに係る特許を受ける権利の譲渡を受け、

10 平成18年10月11日付けで、その旨の出願人名義変更届をした(乙A

2)。

控訴人は、平成22年4月30日、本件特許権Aの設定登録(請求項の

数1)を受けた(甲1、2)。

イ 本件特許Aの特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである(以

15 下、請求項1に係る発明を「本件発明A」という。 。


【請求項1】

座部と、該座部の後部に取り付けられた背凭れとを備え、

前記座部には、腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻をマッサ

ージする尻用エアバッグのうち、少なくとも尻用エアバッグが設けられ、

20 前記背凭れには、少なくとも腰用施療子が設けられた椅子式施療装置で

あって、

利用者の腰を施療する際に、前記尻用エアバッグを膨らませて前記利用

者の腰の高さ位置を徐々に高くしながら、前記腰用施療子を作動させる制

御手段を設けたことを特徴とする椅子式施療装置。

25 ウ 本件発明Aを構成要件に分説すると、次のとおりである。

【本件発明A】


4
A 座部と、該座部の後部に取り付けられた背凭れとを備え、

B 前記座部には、腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻をマッ

サージする尻用エアバッグのうち、少なくとも尻用エアバッグが設けら

れ、

5 C 前記背凭れには、少なくとも腰用施療子が設けられた

D 椅子式施療装置であって、

E 利用者の腰を施療する際に、前記尻用エアバッグを膨らませて前記利

用者の腰の高さ位置を徐々に高くしながら、前記腰用施療子を作動させ

る制御手段を設けた

10 F ことを特徴とする椅子式施療装置。

本件特許C

ア 控訴人及びしげるテック株式会社(旧商号「京和装備株式会社」 以下
。 「し

げるテック」という。)は、平成18年8月11日に出願した特許出願(特

願2006−220454号。以下「本件親出願」又は「原出願」という。

15 乙C8)の一部を分割して、平成20年10月27日、本件特許Cに係る

特許出願(特願2008−276064号。以下「本件出願C」という。)

をした(乙C9)。

控訴人及びしげるテックは、平成23年2月8日付けの拒絶理由通知

(以下「本件拒絶理由通知」という。乙C11)を受けたため、同年5月

20 9日付けで、特許請求の範囲及び明細書について手続補正(以下「本件補

正」という。乙C13)をした後、同年6月1日、特許査定(乙C14)

を受けた。

その後、控訴人は、しげるテックから、本件出願Cに係る特許を受ける

権利の譲渡を受け、同年7月28日付けで、その旨の出願人名義変更届を

25 した(甲C68、69(枝番のあるものは枝番を含む。特に断りのない限

り、以下同じ。 )
)。


5
控訴人は、同年11月25日、本件特許権Cの設定登録(請求項の数5)

を受けた(甲5、6)。

イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし5の記載は、次のとおり

である(以下、請求項の番号に応じて、請求項1に係る発明を「本件発明

5 C−1」などという。 。


【請求項1】

座部及び背凭れ部を有する椅子本体と、該椅子本体の両側部に肘掛部を

有する椅子式マッサージ機において、

前記肘掛部に、内側後方から施療者の前腕部を挿入するための前腕挿入

10 開口部と、該前腕挿入開口部から延設して肘掛部の内部に施療者の手部を

含む前腕部を挿入保持するための空洞部が設けられ、

前記空洞部は、前記肘掛部の幅方向左右に夫々設けた外側立上り壁及び

内側立上り壁と底面部とから形成され、

前記外側立上り壁及び内側立上り壁の上面前端部に空洞部の先端部の上

15 方を塞ぐ形態で手掛け部が設けられており、

前記肘掛部が、

前部に前記底面部と前記外側立上り壁と前記内側立上り壁と前記手掛け

部とに囲われ、前記空洞部に位置する施療部と、

後部に前記底面部と前記外側立上り壁によりL型に形成され、前記前腕

20 挿入開口部に位置する施療部とを備え、

それぞれの施療部に膨縮袋が夫々設けられている事を特徴とする椅子式

マッサージ機。

【請求項2】

前記肘掛部は、中部に前記底面部と前記外側立上り壁と手掛け部により

25 コ型に形成された施療部を備えており、

前記底面部と前記手掛け部とでは、施療者の前腕部を載置しうるための


6
載置面が異なっており、底面部の載置面よりも手掛け部の載置面の方が高

い位置に形成されている事を特徴とする請求項1記載の椅子式マッサージ

機。

【請求項3】

5 前記前腕挿入開口部の前記外側立上り壁及び前記底面部の二面において

互いに対設する位置に各々膨縮袋が設けられており、

外側立上り壁の下部において、膨縮袋の下部の縁部を止着すると共に、

前記底面部の外側立上り壁側に、もう一つの膨縮袋の外側立上り壁側の縁

部を止着している事を特徴とする請求項1記載の椅子式マッサージ機。

10 【請求項4】

前記前腕挿入開口部の前記外側立上り壁の下部において、前記膨縮袋の

下部に形成された縁部を止着すると共に、前記前腕挿入開口部の前記底面

部における前記外側立上り壁側に他方の前記膨縮袋に形成された縁部を前

記外側立上り壁側に止着して構成した事を特徴とする請求項3記載の椅子

15 式マッサージ機。

【請求項5】

前記肘掛部は、椅子本体に対して前後方向に移動可能に設けられており、

前記背凭れ部のリクライニング角度に応じた所定の移動量を保持しながら

該背凭れ部のリクライニング動作に連動して前記肘掛部が椅子本体に対し

20 て前後方向に移動するようにした事を特徴とする請求項1乃至4記載の椅

子式マッサージ機。

ウ 本件発明C−1ないしC−5(以下、これらを併せて「本件各発明C」

という。)を構成要件に分説すると、次のとおりである。

【本件発明C−1】

25 A 座部及び背凭れ部を有する椅子本体と、該椅子本体の両側部に肘掛部

を有する椅子式マッサージ機において、


7
B 前記肘掛部に、内側後方から施療者の前腕部を挿入するための前腕挿

入開口部と、該前腕挿入開口部から延設して肘掛部の内部に施療者の手

部を含む前腕部を挿入保持するための空洞部が設けられ、

C 前記空洞部は、前記肘掛部の幅方向左右に夫々設けた外側立上り壁及

5 び内側立上り壁と底面部とから形成され、

D 前記外側立上り壁及び内側立上り壁の上面前端部に空洞部の先端部

の上方を塞ぐ形態で手掛け部が設けられており、

E 前記肘掛部が、

E−1 前部に前記底面部と前記外側立上り壁と前記内側立上り壁と前

10 記手掛け部とに囲われ、前記空洞部に位置する施療部と、

E−2 後部に前記底面部と前記外側立上り壁によりL型に形成され、

前記前腕挿入開口部に位置する施療部とを備え、

F それぞれの施療部に膨縮袋が夫々設けられている

G 事を特徴とする椅子式マッサージ機。

15 【本件発明C−2】

H 前記肘掛部は、中部に前記底面部と前記外側立上り壁と手掛け部に

よりコ型に形成された施療部を備えており、

I 前記底面部と前記手掛け部とでは、施療者の前腕部を載置しうるため

の載置面が異なっており、底面部の載置面よりも手掛け部の載置面の方

20 が高い位置に形成されている

J 事を特徴とする請求項1記載の椅子式マッサージ機。

【本件発明C−3】

K 前記前腕挿入開口部の前記外側立上り壁及び前記底面部の二面にお

いて互いに対設する位置に各々膨縮袋が設けられており、

25 L 外側立上り壁の下部において、膨縮袋の下部の縁部を止着すると共に、

前記底面部の外側立上り壁側に、もう一つの膨縮袋の外側立上り壁側の


8
縁部を止着している

M 事を特徴とする請求項1記載の椅子式マッサージ機。

【本件発明C−4】

N 前記前腕挿入開口部の前記外側立上り壁の下部において、前記膨縮袋

5 の下部に形成された縁部を止着すると共に、前記前腕挿入開口部の前記

底面部における前記外側立上り壁側に他方の前記膨縮袋に形成された

縁部を前記外側立上り壁側に止着して構成した

O 事を特徴とする請求項3記載の椅子式マッサージ機。

【本件発明C−5】

10 P 前記肘掛部は、椅子本体に対して前後方向に移動可能に設けられてお

り、前記背凭れ部のリクライニング角度に応じた所定の移動量を保持し

ながら該背凭れ部のリクライニング動作に連動して前記肘掛部が椅子

本体に対して前後方向に移動するようにした

Q 事を特徴とする請求項1乃至4記載の椅子式マッサージ機。

15 被控訴人の行為等

ア 被控訴人は、平成22年4月30日以降、被告製品1の製造、販売、輸

出を行い、被告製品2ないし8の製造、販売を行っていた。

このうち、被告製品1は、海外向け製品で、輸出期間は平成26年5月

から令和3年3月までであり、被告製品2は、日本国内向け製品で、平成

20 19年12月から平成22年3月まで製造され、製造終了後も平成28年

10月まで販売されていた(乙C31、C47ないしC49)。

イ 被告製品1及び2は、別紙1「被告製品1ないし8説明書」の第1の

1 及び2 記載のとおりであり、同1 記載のaないしd、f、同2

記載のa、d、f、g、i、pの構成を有する。

25 被告製品3、5及び8は、別紙1「被告製品1ないし8説明書」の第

2の1記載のとおりであり、同2記載のaないしd、fのとおりの構成


9
を有する。

被告製品4、6及び7は、別紙1「被告製品1ないし8説明書」の第

3の1記載のとおりであり、同2記載のaないしd、fのとおりの構成

を有する。

5 ウ 被告製品1ないし8は、本件発明Aの構成要件A、D及びFをいずれも

充足する。

被告製品1及び2は、本件発明C−1の構成要件A、D、F及びG、本

件発明C−2の構成要件I、本件発明C−5の構成要件Pをいずれも充足

する。

10 3 争点

? 本件特許A関係

ア 被告製品1ないし8の本件発明Aの技術的範囲の属否(争点1−1)

イ 本件特許Aに係る無効の抗弁の成否(争点1−2)

AS−878に係る発明(公然実施発明)を引用例とする本件発明A

15 の新規性欠如(無効理由1)

FMC−350に係る発明(公然実施発明)を引用例とする本件発明

Aの新規性欠如(無効理由2)

明確性要件違反(無効理由3)

本件特許C関係

20 ア 被告製品1及び2の本件各発明Cの技術的範囲の属否(争点2−1)

構成要件充足性(争点2−1−1)

a 本件発明C−1及びC−2の構成要件充足性(争点2−1−1−1)

b 本件発明C−3ないしC−5の構成要件充足性(争点2−1−1−

2)

25 均等論(争点2−1−2)

イ 本件特許Cに係る無効の抗弁の成否(争点2−2)


10
乙C19を主引用例とする本件各発明Cの進歩性欠如(無効理由1)

明確性要件違反(無効理由2)

特許法17条の2第3項補正要件違反(無効理由3)

本件発明C−2に係るサポート要件違反(無効理由4)

5 ウ 被控訴人が賠償又は返還すべき控訴人の損害額等(争点3)

第3 争点に関する当事者の主張

1 争点1−1(被告製品1ないし8の本件発明Aの技術的範囲の属否)につい

て(本件特許A関係)

次のとおり原判決を訂正し、当審における当事者の補充主張を付加するほか、

10 原判決の別紙「本件特許権A関係の請求に関する事実及び理由」の第2の1記

載のとおりであるから、これを引用する。

? 原判決の訂正

ア 原判決9頁3行目を「1 争点1−1(被告製品1ないし8の本件発明

Aの技術的範囲の属否) と改め、
」 同頁6行目から16行目までを次のとお

15 り改める。

「 被告製品1ないし8の構成は、別紙1「被告製品1ないし8説明書」

の第1の1 、第2の2、第3の2記載のとおりである。以下のとおり、

被告製品1ないし8は、構成要件B、C及びEを充足するから、本件発

明Aの技術的範囲に属する。」

20 イ 原判決9頁18行目を「ア 構成要件Bの充足」 同頁19行目の
と、 「意

義」を「「尻用エアバッグ」の意義」と、同頁23行目の「本件明細書A」

を「本件出願Aの願書に添付した明細書(以下、図面を含めて「本件明細

書A」という。甲2)と改め、10頁1行目から3行目までを次のとおり

改める。

25 「 被控訴人の主張について

被控訴人は、構成要件Bの「腿をマッサージする腿用エアバッグ、


11
および尻をマッサージする尻用エアバッグのうち、少なくとも尻用エ

アバッグが設けられ」との構成は、「腿用エアバッグ」があるときは、

その「腿用エアバッグ」は、
「尻用エアバッグ」と同時制御されている

ことを要すると解される旨主張する。

5 しかしながら、構成要件Bは、
「腿用エアバッグ」が腿をマッサージ

する機能を有することについて言及しているだけであって、本件発明

Aの特許請求の範囲(請求項1)には、
「腿用エアバッグ」と「尻用エ

アバッグ」との連動ないし同時制御に係る記載はなく、また、本件明

細書Aの記載を見ても、
「腿用エアバッグ」が「尻用エアバッグ」と同

10 時制御されることは予定されていないから、被控訴人の上記主張は失

当である。

小括

以上のとおり、被告製品1ないし8は、本件発明Aの「尻用エアバ

ッグ」を備えているから、構成要件Bを充足する。」

15 ウ 原判決10頁4行目を「イ 構成要件Cの充足」と、同頁5行目の「意

義」 「腰用施療子」の意義」と改め、同頁12行目の「及びE」を削り、
を「

同頁17行目の「「腰用施療子」
構成要件C及びE)」を「構成要件C」と

改める。

エ 原判決11頁15行目の「している。」を「している(甲A1、A2、A

20 17) 」と、同頁24行目の「されている。
。 」を「されている(甲A7、A

8、A18) 」と、12頁5行目の「されている。
。 」を「されている(甲A

1、A4、A19) 」と、同頁12行目の「されている。
。 」を「されている

(甲A7、A9、A20) 」と、同頁19行目の「されている。
。 」を「され

ている(甲A7、A9、A21) 」と、同頁末行の「されている。
。 」を「さ

25 れている(甲A1、A6、A22) 」と改める。


オ 原判決13頁5行目から25行目までを削る。


12
カ 原判決14頁7行目を「ア 構成要件Bの非充足」と、同頁8行目の「意

義」を「「尻用エアバッグ」の意義」と改め、同頁20行目の「及びE」を

削る。

キ 原判決16頁8行目から10行目までを次のとおり改める。

5 「 「前記座部には、腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻を

マッサージする尻用エアバッグのうち、少なくとも尻用エアバッグが

設けられ」の意義等

構成要件Bの「腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻をマ

ッサージする尻用エアバッグのうち、少なくとも尻用エアバッグが設

10 けられ」との構成は、その文言から、
「腿用エアバッグ」が設けられて

いる場合には、「腿用エアバッグ」は、単に膨らむだけでなく、「尻用

エアバッグ」とともに、利用者の腰の高さ位置を徐々に高くすること

に寄与しなければならないと理解される。また、本件明細書Aの記載

から、「腿用エアバッグ」があるときは、その「腿用エアバッグ」は、

15 「尻用エアバッグ」と同時制御されていることを要することが理解さ

れる。

しかるところ、被告製品1ないし8における「腿用エアバッグ」は、

「尻用エアバッグ」の膨張による利用者の身体の上方への持ち上げと

いう形での「徐々に高くしながら」する腰の位置の移動に寄与するよ

20 うな膨張をするわけではないから、上記構成を備えていない。

小括

以上によれば、被告製品1ないし8は、いずれも構成要件Bを充足

しない。」

ク 原判決16頁11行目を「イ 構成要件Cの非充足」と、同頁12行目

25 の「意義」を「「腰用施療子」の意義」と改め、同頁末行の「及びE」を削

る。


13
ケ 原判決17頁13行目の「「腰用施療子」
構成要件C及びE)」を「構成

要件C」と改める。

コ 原判決19頁7行目から20頁16行目までを削る。

当審における当事者の補充主張(構成要件Eの充足性)

5 (控訴人の主張)

原判決は、被告製品1ないし8は、構成要件Eを充足しないから、本件発

明Aの技術的範囲に属さないと判断したが、以下のとおり、原判決の判断は、

被告製品1ないし3、5ないし8について誤りがある。

構成要件Eのクレーム解釈の誤り

10 原判決は、本件明細書Aの記載(【0001】ないし【0007】)を参

酌すると、本件発明Aは、体格が小さいなどの理由から利用者の腰の位置

と腰用エアバッグの位置とが一致しない場合には、利用者の腰部に対して

十分なマッサージを行うことができないことから、尻用エアバッグを膨ら

ませることにより利用者の腰の高さ位置を徐々に高くするなどの調整を

15 して、利用者の腰部に対して十分なマッサージを行おうとするものである

と述べた上で、このような本件発明Aの技術的意義に鑑みると、構成要件

Eの「利用者の腰を施療する際に、前記尻用エアバッグを膨らませて前記

利用者の腰の高さ位置を徐々に高くしながら、前記腰用施療子を作動させ

る制御手段を設けた」(構成要件E)とは、「尻用エアバッグ」につき、利

20 用者の腰の位置と腰用エアバッグの位置とが一致しない場合に、その不一

致を解消して利用者の腰部に対して十分なマッサージを行うことができ

る程度に「利用者の腰の高さ位置を徐々に高く」させる制御手段を設けた

ことを意味するものと解されると判断した。

しかしながら、本件発明Aの特許請求の範囲(請求項1)には、
「前記尻

25 用エアバッグを膨らませて前記利用者の腰の高さ位置を徐々に高く」する

ことは記載されているが、それを超えて、利用者の腰の高さ位置の変化量、


14
変化の程度を規定する記載はない。

次に、本件明細書Aの【0001】ないし【0007】には、本件発明

Aの技術分野、背景技術、発明が解決しようとする課題、課題を解決する

ための手段及び発明の作用効果が記載されているが、尻用エアバッグによ

5 る利用者の腰の高さ位置の変化量、変化の程度については、何ら記載がな

く、本件明細書A全体を見ても記載も示唆もない。また、本件明細書Aの

【0007】の「利用者の腰の高さ位置を徐々に調整できるので、腰部に

対して十分な施療を行うことができる。 との記載は、
」 腰の高さ位置を徐々

に調整することによって、調整をしない場合よりも、腰部に対して十分な

10 施療を行うことができる効果が得られる旨を記載したものであり、腰の高

さ位置の変化量や変化の程度は問題としていないことに鑑みると、本件発

明Aの技術的意義は、腰の高さ位置を徐々に高くして調整するという「構

成」を備えることで、そのような調整をしない椅子式施療装置に比して、

腰部に対して十分な施療を行うことができるという「作用効果」を奏する

15 ことにあるというべきである。

さらに、利用者の腰の位置と腰用施療子の位置の不一致の程度は様々で

あり、そのような不一致を解消する程度を数値などで特定することは不可

能であることからすると、原判決が述べる「利用者の腰の位置と腰用エア

バッグの位置とが一致しない場合に、その不一致を解消して利用者の腰部

20 に対して十分なマッサージを行うことができる程度」が具体的にいかなる

程度であるか不明であり、本件発明Aの技術的範囲を適切に画定するもの

とはいえない。

以上によれば、構成要件Eの「前記尻用エアバッグを膨らませて前記利

用者の腰の高さ位置を徐々に高く」するとは、その文言どおり、単に、尻

25 用エアバッグを膨らませることによって、腰の空間的位置が上方向に徐々

に変位していることをいい、利用者の腰の高さ位置の変化量や変化の程度


15
は問題にならないと解すべきであるから、原判決の上記判断は誤りである。

イ 被告製品1ないし3、5ないし8の構成要件Eの充足

原判決は、被告製品1ないし3、5ないし8は、
「尻用エアバッグ」を膨

らませることにより利用者の腰の高さ位置を16o又は32o程度高く

5 することができるが、それによって利用者の腰の位置と腰用エアバッグ

(腰用施療子)の位置との不一致を解消することができないから、構成要

件Eを充足しない旨判断した。

しかしながら、前記アのとおり、構成要件Eの「前記尻用エアバッグを

膨らませて前記利用者の腰の高さ位置を徐々に高く」するとは、その文言

10 どおり、単に、尻用エアバッグを膨らませることによって、腰の空間的位

置が上方向に徐々に変位していることをいうものと解すべきであるとこ

ろ、原判決が認定するように、被告製品1ないし3、5ないし8は、
「尻用

エアバッグ」を膨らませることにより利用者の腰の高さ位置を16o又は

32o程度高くすることができるから、いずれも構成要件Eを充足する。

15 また、仮に原判決における構成要件Eのクレーム解釈を前提としても、

人体の腰部には多数の施療対象点があり(甲A14ないしA16) これら


の施療対象点を的確に押圧施療することにより十分なマッサージ効果が

得られることからすると、腰部の施療対象点と腰用施療子による押圧箇所

の不一致の程度が16o又は32oであって腰用施療子により腰部に対

20 して十分な施療を行うことが可能となる場面は当然に存在するから、被告

製品1ないし3、5ないし8の「尻用エアバッグ」も、利用者の腰の位置

と腰用施療子の位置とが一致しない場合に、その不一致を解消して利用者

の腰部に対して十分なマッサージを行うことができる程度に「利用者の腰

の高さ位置を徐々に高く」させるものであるということができる。

25 以上によれば、被告製品1ないし3、5ないし8は、構成要件Eを充足

するから、原判決の上記判断は誤りである。


16
(被控訴人の主張)

被告製品1ないし3、5ないし8は構成要件Eを充足しないとした原判決

の判断に誤りはない。

構成要件Eのクレーム解釈の誤りの主張に対し

5 原判決は、構成要件Eの「前記尻用エアバッグを膨らませて前記利用者

の腰の高さ位置を徐々に高くしながら」という機能的な動作態様の記載か

ら、その意味が一義的に明らかではないため、本件明細書Aの記載(【00

01】ないし【0007】)を参酌して、その意味を明らかにしたものであ

り、ごく一般的なクレーム解釈手法を採るものであって、原判決のクレー

10 ム解釈に控訴人主張の誤りはない。

構成要件Eの非充足

原判決は、被告製品1ないし3、5ないし8に係る尻用エアバッグの

膨張による腰の高さ位置の変化を確認する試験について、尻用エアバッ

グが膨張したことにより被験者の腰の高さ位置が高くなった程度は、控

15 訴人に最大限有利に考えても、16o又は32oであるが、人間の一般

的な体格等を踏まえると、利用者の腰の位置と腰用エアバッグの位置と

の間に不一致がある場合に、腰部に十分なマッサージを行うために解消

されるべき不一致の程度は32oを超えると考えられるとして、被告製

品1ないし3、5ないし8についての構成要件Eの充足性を否定したも

20 のであり、極めて至当な認定判断である。

控訴人は、人体の腰部には多数の施療対象点があり(甲A14ないし

16)、これらの施療対象点を的確に押圧施療することにより十分なマ

ッサージ効果が得られることからすると、利用者の腰の位置と腰用エア

バッグの位置の不一致の程度が16o又は32oの範囲に収まる場合

25 が当然に想定されるとして、被告製品1ないし3、5ないし8は、
「尻用

エアバッグ」を膨らませることによって、利用者の腰の位置と腰用施療


17
子の位置とが一致しない場合に、その不一致を解消して利用者の腰部に

対して十分なマッサージを行うことができる程度に「利用者の腰の高さ

位置を徐々に高く」させるものであるから、構成要件Eを充足する旨主

張する。

5 しかしながら、例えば、被告製品1及び2についてみると、別紙1「被

告製品1ないし8説明書」の第1の図3に矢印で示されている「腰用エ

アバッグ」は、背もたれに固定されて動かない腰用エアバッグであり、

その縦横長は、260o×120oであること(乙A34)に照らすと、

たかだか16o又は32o程度の上下の移動では、体格差がある様々な

10 利用者の腰の位置と腰用施療子の位置とが常に一致して、不一致が解消

されるなどということはない。

また、人体の腰部には多数の施療対象点があるとの点は、本件明細書

Aの記載に基づかないものであり、失当である。

したがって、控訴人の上記主張は理由がない。

15 2 争点1−2(本件特許Aに係る無効の抗弁の成否)について(本件特許A関

係)

(被控訴人の主張)

本件特許Aには、以下のとおりの無効理由があり、特許無効審判により無効

とされるべきものであるから、特許法104条の3第1項の規定により、控訴

20 人は、被控訴人に対し、本件特許権Aを行使することはできない。

無効理由1(AS−878に係る発明(公然実施発明)を引用例とする本

件発明Aの新規性欠如)

ア AS−878について

控訴人は、本件出願Aの出願前の平成15年7月、製品名「FUJI

25 IRYOKI CYBER−Relax S. ・型番
O」 「AS−878」

のマッサージチェア(以下、単に「AS−878」という。)を販売して


18
いた(乙A42、A43)。

AS−878は、別紙4の図1及び2に示すように、@座部と当該座

部の後部に背もたれ部を備えた椅子本体を有するマッサージチェアで

あり、座部の左右方向の両端部に肘掛部を、座部の前端の下方に脚部を

5 備えている、A椅子本体の背もたれ部に、身長方向(上下方向)に移動

する機械式施療子であるもみ玉が設けられ、もみ玉は、利用者の腰の位

置から首の位置まで身長方向に移動すること、身長方向の移動範囲の特

定の位置でもみ動作やたたき動作を行うこと、身長方向に移動しながら

もみ動作やたたき動作を行うことが可能である、B椅子本体の座の座面

10 上面の利用者の尻が位置する部分に、上方へ膨張し、臀部底面を押圧し

てマッサージする尻エアーバッグが、座の座面上を左右方向に延在して

1個設けられている、C尻エアーバッグの前方には、利用者の大腿部を

マッサージするももエアーバッグが設けられ、座の座面上を左右方向に

延在し、左右の両太ももを1個のエアーセルでマッサージをし、さらに、

15 背もたれ部には腰部に対して、前方に膨縮してマッサージする腰エアー

バッグが設けられている(乙A42、A44、A45)。

また、AS−878は、
「自動コース」の「腰コース」を選択すると、

特定の時間帯において、尻エアーバッグの膨張動作と腰位置でのもみ玉

のたたき動作が並行して行われ、このとき、少なくとも15oは腰の高

20 さ位置が高くなっており、「尻用エアバッグの膨張により利用者の腰の

高さ位置が高くなることが特段の困難を伴うことなく直接確認できる

最中に、腰用施療子により腰部を施療」している(乙A45、A48)。

前記 及び によれば、AS−878により実施された発明(AS−

878に係る発明)は、本件出願Aの出願前に公然実施されていたもの

25 であり、次のとおりの構成を有する。

a 座部と、該座部の後部に取り付けられた背もたれ部とを備え、


19
b 座部には、腿をマッサージする、ももエアーバッグ、および尻をマ

ッサージする尻エアーバッグが設けられ、

c 背もたれ部には、身長方向に移動するもみ玉が設けられ、当該もみ

玉は身長方向の移動範囲に利用者の腰の位置を含んで移動する

5 d マッサージチェアであって、

e 「自動コース」の「腰コース」において、利用者の腰を施療する際

に、尻エアーバッグを膨らませる工程と、身長方向の移動範囲におい

て利用者の腰に位置したもみ玉の作動状態(もみ動作及びたたき動作)

とを同時に発現させる制御手段を設けた

10 f マッサージチェア。

イ 本件発明AとAS−878に係る発明の同一性

AS−878に係る発明の構成aないしfは、本件発明Aの構成要件

ないしFの構成にそれぞれ相当するものであり、AS−878に係る発明

は、本件発明Aの上記構成を全て備えているから、本件発明Aは、AS−

15 878に係る発明(公然実施発明)と同一の発明である。

そうすると、本件特許Aには、特許法29条1項2号に違反する無効理

由(同法123条1項2号)がある。

無効理由2(FMC−350に係る発明(公然実施発明)を引用例とする

本件発明Aの新規性欠如)

20 ア FMC−350について

被控訴人は、本件出願Aの出願前の平成14年12月頃、製品名「F

AMILY MEDICALCHAIR i.1」
・型番「FMC−35

0」のマッサージチェア(以下、単に「FMC−350」という。)を販

売していた(乙A17、A19ないしA24、A27、A28、A35)。

25 前記 と証拠(乙A26、A35ないしA41)によれば、FMC−

350により実施された発明(FMC−350に係る発明)は、本件出


20
願Aの出願前に公然実施されていたものであり、次のとおりの構成を有

する。

a 座と、該座の後部に取り付けられた背凭れとを備え、

b 座には、腿をマッサージする太もも用エアーセル、および尻をマッ

5 サージする尻用エアーセルが設けられ、

c 背凭れには、身長方向に移動するもみ玉が設けられ、当該もみ玉は

身長方向の移動範囲に利用者の腰の位置を含んで移動する

d マッサージチェアであって、

e 「自動コース」の「メディカルコース」のうち、
「腰・筋肉疲労改善

10 コース」において、利用者の腰を施療する際に、二位置切替三方弁を

開の位置にして尻用エアーセルを膨らませる工程と、身長方向の移動

範囲において利用者の腰に位置したもみ玉の作動状態(もみ動作及び

叩き動作)とを同時に発現させる制御手段を設けた

f マッサージチェア。

15 イ 本件発明AとFMC−350に係る発明の同一性

FMC−350に係る発明の構成aないしfは、本件発明Aの構成要件

AないしFの構成にそれぞれ相当するものであり、FMC−350に係る

発明は、本件発明Aの上記構成を全て備えているから、本件発明Aは、F

MC−350に係る発明(公然実施発明)と同一の発明である。

20 そうすると、本件特許Aには、特許法29条1項2号に違反する無効理

由(同法123条1項2号)がある。

無効理由3(明確性要件違反)

本件発明Aの構成要件Eの「利用者の腰の高さ位置を徐々に高くしながら」

にいう「徐々に」とは、どの程度の時間を掛ける必要があるのかが明確でな

25 いため、本件発明Aの外延が不明確である。

そうすると、本件発明Aの特許請求の範囲(請求項1)の記載は、不明確


21
であり、特許法36条6項2号の要件(明確性要件)に適合しないから、本

件特許Aには、同号に違反する無効理由(同法123条1項4号)がある。

(控訴人の主張)

無効理由1に対し

5 構成要件Eの充足性は、@尻・腰同時動作及びA腰位置上昇動作の2つに

よって証明される。ところが、被控訴人提出のAS−878に係る動画(乙

A45、A48)から、腰用施療子が動作していること及び腰位置が上昇し

ていることを客観的に確認することができない。上記動画では、利用者の腰

の位置が上下方向に変位しているようにも見受けられるが、これは、利用者

10 の肩から首にかけてのラインの角度の変位に伴うものであって、利用者の身

体全体が略垂直に上がっているからではない。また、乙A45ないしA47

の動画及び写真は、利用者が着座しない状態における動作状況を撮影したも

のであるから、これらをもって利用者の腰の位置が有意に上昇することを証

明したことにはならない。

15 したがって、AS−878が構成要件Eの構成を備えているとはいえず、

本件発明Aは、AS−878に係る発明と同一の発明であるとはいえないか

ら、無効理由1は理由がない。

無効理由2に対し

被控訴人提出のFMC−350に係る動画(乙A41)から、腰用施療子

20 が動作していること及び腰位置が上昇していることを客観的に確認すること

ができない。

したがって、FMC−350が構成要件Eの構成を備えているとはいえず、

本件発明Aは、FMC−350に係る発明と同一の発明であるとはいえない

から、無効理由2は理由がない。

25 無効理由3に対し

本件発明Aは、数値限定発明ではなく、構成要件Eの「徐々に」について


22
も、特定の秒数を区切って発明の要旨の外延を画するものではないから、無

効理由3は理由がない。

3 争点2−1(被告製品1及び2の本件各発明Cの技術的範囲の属否)につい

て(本件特許C関係)

5 次のとおり原判決を訂正し、当審における当事者の追加主張を付加するほか、

原判決の別紙「本件特許権C関係の請求に関する事実及び理由」の第2の1記

載のとおりであるから、これを引用する。

原判決の訂正

ア 原判決148頁6行目を「争点2−1(被告製品1及び2の本件各発明

10 Cの技術的範囲の属否)(本件特許C関係)」と改め、同頁8行目から11

行目までを次のとおり改める。

「 被告製品1及び2の構成

被告製品1及び2の構成は、別紙1「被告製品1ないし8説明書」

の第1の2 記載のとおりである。」

15 イ 原判決148頁14行目を「 争点2−1−1−1(本件発明C−1

及びC−2の構成要件充足性) と、
」 同頁24行目の「存在すること」 「備


えられていなければならないこと」と改め、同頁末行の「そうすると、」の

後に「構成要件B及びCの記載から読み取れることは、
「空洞部」が、施療

者の手部を含む前腕部を肘掛部の内部に挿入保持するように外側立上り

20 壁、内側立上り壁及び底面部の3要素から形成されていることだけである

から、」を加える。

ウ 原判決149頁3行目の「本件明細書C」を「本件出願Cの願書に添付

した明細書(以下、図面を含めて「本件明細書C」という。甲6)と改め、

同頁10行目の「【0046】」の後に「、【図8】」を加える。

25 エ 原判決150頁2行目の「本件」から3行目の「という。 」までを「本


件親出願(乙C8)」と改め、同頁17行目末尾に行を改めて次のとおり加


23
える。

「e 原判決の判断の誤り

原判決は、本件発明C−1の特許請求の範囲(請求項1)の記載

に基づく解釈として、@構成要件Cの記載によれば、「外側立上り

5 壁」 「内側立上り壁」及び「底面部」の3要素により形成された部


分をもって成るものが「空洞部」であり、
「空洞部」に「外側立上り

壁」 「内側立上り壁」及び「底面部」が存在しない部分が許容され


ると解されず、
「空洞部」全体にわたって「内側立上り壁」が存在す

ることを要する、A構成要件Dの記載によれば、
「空洞部の先端部」

10 に「内側立上り壁の…前端部」が存在することは明らかであるとこ

ろ、
「内側立上り壁の…前端部」という記載は、更に「空洞部の先端

部」以外にその後方部分にも「内側立上り壁」が存在することを示

唆するものと理解される、B構成要件Bの記載によれば、
「前腕挿入

開口部」は、「空洞部」の一部ではなく、「空洞部」とは別の「肘掛

15 部」の構成部分でありつつ、
「空洞部」に連続して設けられた部分で

あると解され、また、
「前腕挿入開口部」と「空洞部」から成る「肘

掛部」中における「前腕挿入開口部」と「空洞部」の相対的な位置

関係は、「空洞部」が前部に、「前腕挿入開口部」が後部に位置する

と解され、さらに、
「前腕部を挿入保持する」ように「空洞部」が構

20 成される、C構成要件E、E−1、E−2の記載によれば、
「前腕挿

入開口部」が「内側後方から施療者の前腕部を挿入するための」部

分であるところ、そこに位置する施療部は「底面部」と「外側立上

り壁」によりL型に形成されていることから、当該施療部には「内

側立上り壁」が存在しないと解されること、
「前腕挿入開口部から延

25 設して…設けられ」ている「空洞部」が、
「肘掛部」中の別の構成部

分であることに鑑みると、
「内側立上り壁」の有無が「空洞部」 「前



24
腕挿入開口部」とを画するものであるとの示唆を看取することもで

き、そもそも、「前腕挿入開口部」につき、「内側後方から施療者の

前腕部を挿入するための」ものと特定されていること自体、
「前腕挿

入開口部から延設して…設けられ」 「空洞部」
た の内側側方からは、

5 「空洞部」に「施療者の前腕部を挿入する」ことができないことを

示唆するものと解される、D他方、請求項1の記載から、
「空洞部」

中に「内側立上り壁」が存在しない部分があるとの示唆を読み取る

ことはできないとして、本件発明C−1の「空洞部」
構成要件B、

C)とは、その全体にわたって「内側立上り壁」を備えるものをい

10 うと解される旨判断した。

しかしながら、@及びDについては、構成要件B及びCから読み

取れる事項は、「該前腕挿入開口部から延設して肘掛部の内部に施

療者の手部を含む前腕部を挿入保持するための空洞部」が「外側立

上り壁」 「内側立上り壁」及び「底面部」という3要素から形成さ


15 れていることであり、他方で、「空洞部」のどの部分に、「外側立上

り壁」、
「内側立上り壁」及び「底面部」を設けるべきかについては、

請求項1には何ら記載がない。
「空洞部」が上記3要素から成ること

と、上記3要素をどのように形成するかは別問題であるから、
「空洞

部」に「外側立上り壁」 「内側立上り壁」及び「底面部」が存在し


20 ない部分が許容されると解されないとの原判決の判断には、論理の

飛躍がある。

Aについては、構成要件Dには、
「空洞部の先端部」以外の後方部

分における「内側立上り壁」の範囲については記載も示唆もなく、

また、構成要件Dの記載は、
「空洞部の先端部」とその後方部分の一

25 部に形成されている構成も、本件発明C−1の「空洞部」に該当す

ると解釈することと矛盾しないから、構成要件Dから「内側立上り


25
壁」が「空洞部」全体に及ぶべきことを読み取ることはできない。

Bについては、構成要件Bの記載によれば、
「前腕挿入開口部」は

「肘掛部」の「内側後方から施療者の前腕部を挿入するため」の部

材であり、
「空洞部」は「肘掛部の内部に施療者の手部を含む前腕部

5 を挿入保持するため」の部材であると定義されるところ、いずれも

「前腕」を「挿入」する機能を実現する部材であることで共通する

ことからすると、「前腕挿入開口部」と「空洞部」は、「前腕部を挿

入する部分」において重なることが示唆されているから、両者に厳

密な線引きをすべき理由はない。また、仮に構成要件Bの記載につ

10 いて原判決の解釈を前提としても、
「内側立上り壁」が「空洞部」の

一部に形成されている構成であっても、
「肘掛部」 「空洞部」 「前
に と

腕挿入開口部」とが別構成として設けられ、
「肘掛部」において「空

洞部」が前部に、
「前腕挿入開口部」が後部に位置する構成とするこ

ともできるから、本件発明C−1の「空洞部」は、その全体にわた

15 って「内側立上り壁」を備えるものでなければならないという結論

が論理必然的に導き出されるわけではない。

Cについては、構成要件E、E−1、E−2は、
「肘掛部」中にお

ける「前腕挿入開口部」と「空洞部」の位置関係等を直接規定した

ものではなく、また、構成要件E−2から読み取れる事項は、
「前腕

20 挿入開口部」に位置する施療部が底面部と外側立上り壁によりL型

に形成されているということだけであり、そのことから直ちに、
「内

側立上り壁」の有無が「空洞部」と「前腕挿入開口部」とを画する

ことを看取できるものではない。

したがって、原判決の挙げる@ないしDは、本件発明C−1の「空

25 洞部」
構成要件B、C)は、その全体にわたって「内側立上り壁」

を備えるものと解釈することの根拠となるものではないから、原判


26
決の上記判断は誤りである。

? 次に、原判決は、本件発明C−1の「空洞部」(構成要件B、C)

とは、その全体にわたって「内側立上り壁」を備えるものをいうと

解されることは、本件明細書Cの記載及び本件特許Cの出願経過

5 らも裏付けられると述べ、具体的には、@本件明細書C記載の本件

発明C−1の技術的意義に鑑みると、本件発明C−1は、肘掛部の

長さ方向全域に「外側立上り壁」と「内側立上り壁」が形成された

椅子式マッサージ機を前提として、肘掛部の内側後方から施療者の

前腕部を挿入可能となるように「内側立上り壁」を廃した「前腕挿

10 入開口部」を設けたと認められるから、そのような肘掛部の「内側

後方から施療者の前腕部を挿入するための前腕挿入開口部」と、そ

こから「延設して肘掛部の内部に…設けられ」ている「空洞部」と

は、
「内側立上り壁」の有無により画されるものと理解されるし、
「手

掛け部」を設けたのは手部及び前腕部の広範を同時にマッサージす

15 るために肘掛部の前端部にまで「内側立上り壁」が形成されている

ことを踏まえたものである以上、本件発明C−1における「肘掛部

の幅方向左右に夫々設けた外側立上り壁及び内側立上り壁と底面

部とから形成され」た「空洞部」の「内側立上り壁」は、手部及び

前腕部の広範を同時にマッサージすることができるように、「空洞

20 部」全体にわたって存在することが想定されているといえる、A本

件親出願の明細書(乙C8)の【0046】 【0047】及び図1


4は、本件明細書Cの【0046】 【0047】及び図14と同様


に、前腕部施療機構の中部に「内側立上り壁」が形成されていない

実施例に関する記載であるところ、これらは、本件出願Cの出願に

25 当たり、本件親出願の請求項からの変更の根拠として挙げられてい

ない、本件補正時に提出された平成23年5月9日付け意見書(以


27
下「本件意見書」という。乙C12)において、控訴人は、本件各

発明Cが、「肘掛部の長さ方向全域に前腕部施療機構として左右一

対の立上り壁を設けた椅子式マッサージ機」に関する発明であり、

「施療者の肘関節付近にまで左右一対の立上り壁が存在すること

5 による施療者の肘関節付近の圧迫による不快感を解消し、更に前腕

部施療機構を有していても施療者が起立及び着座を快適に行う事

ができるようにした施療機を提供するもので」あるとした上で、
「空

洞部の先端部」に設けた「手掛け部」に関しては、そこに「内側立

上り壁」が存在することを前提とした説明をしつつ、
「前腕挿入開口

10 部」に関しては、そこには「内側立上り壁」がない形状にしたとす

る説明をしている、他方、請求項2、すなわち肘掛部の中部に「前

記底面部と前記外側立上り壁と手掛け部によりコ型に形成された

施療部」を設けることについても説明しているが、そこで言及され

ている本件明細書Cの記載のうち、関係するのは【0046】のみ

15 である、本件拒絶理由通知に示された「引用文献2」
(乙C19)と

本件補正後の発明(本件発明C−1及びC−2)との相違について、

「引用文献2」に開示された前腕部施療部は「肘挿入用凹溝」であ

り、その断面形状は略横向き「凹」字状であるのに対し、本件補正

後の発明においては、前腕挿入開口部に位置する施療部は「底面部」

20 及び「外側立上り壁」により形成された断面略「L型」であり、ま

た、手掛け部が形成される空洞部に位置する施療部は、「底面部」、

「外側立上り壁」 「内側立上り壁」及び「手掛け部」に囲われた形


状(実施の形態では「ロ型」)であるため、その構成が相違する旨説

明している、断面が略「コ」字状の前腕部施療部の問題点として、

25 前腕挿入開口部においては、上面に位置する部分が腕部の載脱をス

ムーズに行う上で障害となり、手掛け部においては「内側立上り壁」


28
が存在しないため、施療者の体重を掛ける上で不安が残ることを指

摘している、こうした説明内容に加え、本件補正により「前記底面

部と前記外側立上り壁と手掛け部によりコ型に形成された施療部

を備え」る請求項2(本件発明C−2)を請求項1の従属項として

5 追加したにもかかわらず、当該発明における上記略「コ」字状の前

腕部施療部の問題点の有無等に関する説明が見当たらないことに

鑑みると、本件補正における控訴人の説明は、請求項2の追加にか

かわらず、本件発明C−1の「空洞部」につき、その全体にわたっ

て「内側立上り壁」が存在する構成を前提としていたと理解される、

10 B本件明細書Cの【0046】及び図14の記載が本件親出願から

分割出願(本件出願C)や補正(本件補正)にもかかわらず一貫

して存在する点については、本件発明C−1に係る特許請求の範囲

の請求項1の記載自体から「空洞部」につき、その全体にわたって

「内側立上り壁」が存在する構成と理解されることに鑑みると、分

15 割出願や補正による本件特許Cの発明の内容の変化に応じてこれ

らの記載が補正等されなかった結果にすぎないと見るべきである

旨判断した。

しかしながら、@については、本件明細書Cには、本件発明C−

1の一実施形態(本件発明C−2の実施例)として、肘掛部の中部

20 に外側立上り壁、手掛け部、底面部よりコ型に形成された施療部を

設けたマッサージ機の記載があり(【0046】、図14)、図14で

は、コ型に形成された施療部、すなわち、内側立上り壁が存在しな

い部分が空洞部(62a)と図示されており、また、別の実施形態

を示す図8においても、内側立上り壁が存在しない部分が空洞部

25 (62a)と図示されている。これらの記載を参酌すれば、本件発

明C−1の「空洞部」は、肘掛部中の内側立上り壁が存在する部分


29
に限られるわけではなく、その全体にわたって「内側立上り壁」を

備えることを要しないことは明らかである。

また、本件発明C−1は、肘掛部の長さ方向全域に立上り壁を設

けることによる不都合(?上腕部内側の肘関節付近を圧迫し不快感

5 を与える、 腕部の載脱行為を妨げる、 快適な起立及び着座を妨

げるという不都合)を解決することを課題とし(【0005】ないし

【0008】 、?及び
) の課題は、前腕挿入開口部の内側立上り壁

を廃したことにより、 の課題は、肘掛部に手掛け部を設けたこと

により解決したものであり、それを超えて、
「内側立上り壁」の有無

10 が「空洞部」と「前腕挿入開口部」とを画し、空洞部はその全体に

わたって内側立上り壁を備えるものであるという「空洞部」が備え

るべき構成を導くことはできない。

さらに、本件明細書Cの【0016】には、底面部及び外側立上

り壁の二面において膨縮袋を備えることで前腕部に対するマッサ

15 ージを実施することができる旨が記載されていることに照らすと、

手部及び前腕部の広範を同時にマッサージするためには、「底面部」

及び「外側立上り壁」の二面が存在すれば足り、
「内側立上り壁」が

「空洞部」の全体にわたって存在することは想定されていない。

次に、A及びBについては、本件親出願の分割出願として本件出

20 願Cを出願するに際し、本件親出願の明細書(乙C8)の【004

6】【0047】及び図14を分割要件を満たすことの根拠として


挙げられていないからといって、本件特許Cの出願経過において、

本件発明C−1の「空洞部」をその全体にわたって「内側立上り壁」

が存在する構成に限定したという控訴人の意思が客観的に表され

25 ているとはいえない。むしろ、控訴人は、本件意見書において、請

求項1及び2に係る本件補正の根拠として、本件出願Cの願書に最


30
初に添付した明細書(以下「本件出願Cの当初明細書」という。乙

C9)の【0046】を明確に挙げていること、当該段落は本件明

細書Cの【0046】と同じであり、
「内側立上り壁」が備えられて

いない部分を「空洞部(62a)」として指し示した「図14」の構

5 成を説明していることからすると、
「空洞部」についてその全体にわ

たって「内側立上り壁」が存在することを要しないことを前提とし

ていたことは明らかであり、本件明細書Cの【0046】及び図1

4の記載が存在することは本件特許Cの発明の内容の変化に応じ

てこれらの記載が補正等されなかった結果にすぎないとの原判決

10 のBの判断は誤りである。

また、被控訴人がAで指摘する本件意見書における説明は、
「空洞

部」と「内側立上り壁」の関係については何ら言及されておらず、

控訴人が、空洞部をその全体にわたって「内側立上り壁」が存在す

る構成に限定する意思を客観的に表明しているということはでき

15 ない。

したがって、原判決の挙げる@ないしBは、本件発明C−1の「空

洞部」
構成要件B、C)は、その全体にわたって「内側立上り壁」

を備えるものと解釈することを裏付けとなるものではないから、原

判決の上記判断は誤りである。」

20 オ 原判決150頁19行目の「以下の図」の後に「 「別紙5「主張図面(被


告製品1及び2)」記載1参照)」を加え、同頁23行目から24行目にか

けての「外側側面部」を「外側壁面部」と、同頁24行目の「内側側面部」

を「内側壁面部」と改め、同頁末行に行を改めて次のとおり加える。

「 別紙5「主張図面(被告製品1及び2)」記載1において、被告製品1

25 及び2の「空洞部」として特定された部分は、本件発明C−1の「空洞

部」(構成要件B、C)に相当する。


31
仮に本件発明C−1の「前腕挿入開口部」と「空洞部」とが重なり合

わない別構成であると解するとしても、同別紙記載1のとおり、被告製

品1及び2の腕ユニットである「肘掛部」には、その「後部」に内側後

方から施療者の前腕部を挿入するための「開口部」が存在する。被告製

5 品1及び2の「開口部」は、本件発明C−1の「前腕挿入開口部」
(構成

要件B)に相当する。また、被告製品1及び2の「肘掛部」には、その

「前部」から「中部」にかけて、
「開口部」から延設して肘掛部の内部に

施療者の手部を含む前腕部を挿入保持するための「空洞部」が存在し、

かかる「空洞部」は「外側壁面部」 「内側壁面部」及び「底面部」から


10 形成されているから、被告製品1及び2の「空洞部」は、本件発明C−

1の「空洞部」(構成要件B、C)に相当する。」

カ 原判決154頁13行目の「腕ユニットの中部には」 「腕ユニットは、


別紙5「主張図面(被告製品1及び2)」記載1のとおり、前部・中部・後

部に分けることができ、その中部には」と改め、同頁21行目末尾に行を

15 改めて次のとおり加える。

「カ 小括

以上のとおり、被告製品1及び2は、構成要件B、C、E、E−1

及びE−2を充足するから、本件発明C−1の技術的範囲に属し、ま

た、構成要件Hを充足するから、本件発明C−2の技術的範囲に属す

20 る。」

キ 原判決154頁23行目から155頁9行目までを次のとおり改める。

「 被告製品1及び2の構成の主張に対し

被告製品1及び2が控訴人主張の構成b、c、e、e−1、e−2、

h、jないしo、qを有することは否認する。」

25 ク 原判決155頁10行目を「 本件発明C−1及びC−2の構成要件

充足性の主張に対し」と、同頁末行の「本件各発明C」を「本件発明C−


32
1」と改める。

ケ 原判決156頁4行目の「本件各発明C」を「本件発明C−1」と、同

頁7行目の「分割出願時の補正」を「本件補正」と改め、同頁14行目末

行に行を改めて次のとおり加える。

5 「e 控訴人の主張について

本件発明C−1の「空洞部」
構成要件B、C)のクレーム解釈に係

る原判決の判断の誤りをいう控訴人の主張は、いずれも理由がない。

原判決が判示するとおり、本件発明C−1の特許請求の範囲(請求

項1)の記載それ自体から、本件発明C−1の「空洞部」が後方にあ

10 る「挿入開口部」から延設されて隣接し、
「手部を含む前腕部」を挿入

できるものであって、外側立上り壁及び内側立上り壁と底面部とから


形成され」ている必要があることは明らかである。

控訴人は、本件明細書Cの【0016】において、底面部及び外

側立上り壁の二面において膨縮袋を備えることで前腕部に対する

15 マッサージを実施することができる旨が記載されていることを根

拠に「内側立上り壁」が「空洞部」の全体にわたって存在すること

は想定されていない旨主張するが、【0016】は、「前腕挿入開口

部」についての記載であり、「空洞部」に関する記載ではない。

? 原判決が判示するとおり、本件明細書Cに【0046】や図14

20 が存在することは、本件親出願の分割出願である本件出願Cや本件

補正による本件特許Cの発明の内容の変化に応じてこれらの記載

が補正等されなかった結果にすぎない。

控訴人は、本件出願Cの出願時に提出された上申書(以下「本件

上申書」という。乙C10)において、本件明細書Cの【0046】

25 や図14が本件親出願の請求項1からの変更箇所についての根拠

とされていないことについて合理的な説明をしていない。


33
また、控訴人が指摘する本件意見書(乙C12)の記載は、構成

要件Cの追加変更に関する根拠を示しているのではなく、本件明細

書Cの【0046】が、
「前記肘掛部が、前部に前記底面部と前記外

側立上り壁と前記内側立上り壁と前記手掛け部とに囲われ、前記空

5 洞部に位置する施療部と、後部に前記底面部と前記外側立上り壁に

よりL型に形成され、前記前腕挿入開口部に位置する施療部とを備

え」
構成要件E、E−1、E−2)という本件補正の根拠として使

用されているにすぎないから、【0046】の記載のうち、「コ型施

療部69a」に関する記載は、本件補正の「根拠」として機能して

10 いない。

さらに、控訴人が論拠とする図8は、肘掛け部のうち、前腕挿入

開口部に当たる位置における膨縮袋の配設を示した断面説明図で

あって、図8における「62a」との記載は、
「空洞部62a」の「後

方位置」にある「前腕挿入開口部」を示すに当たり、
「空洞部62a」

15 を仮想線で示したものにすぎないから、控訴人が主張するような、

「空洞部」に「内側立上り壁」を備えない部分があることを示した

ものではない。」

コ 原判決156頁16行目から17行目までを次のとおり改める。

「 被告製品1及び2は、別紙5「主張図面(被告製品1及び2)」記載2

20 に示すように、手部又はその一部に内側立上り壁が存在するものの、前

腕部には内側立上り壁が存在しないから、前腕部の一部にまで及ぶ「内

側立上り壁」が存在する「空洞部」
構成要件B、C)を備えていない。」

サ 原判決158頁16行目の「(以下」から17行目末尾までを「(乙C1

9)」と、同頁18行目の「乙C19発明」を「乙C19記載の発明」と改

25 める。

シ 原判決160頁11行目末尾に行を改めて次のとおり加える。


34
「カ 小括

以上のとおり、被告製品1及び2は、構成要件B、C、E、E−1、

E−2及びHを充足しないから、本件発明C−1及びC−2の技術的

範囲に属さない。」

5 当審における当事者の追加主張

ア 争点2−1−1−2(本件発明C−3ないしC−5の構成要件充足性

(控訴人の主張)

本件発明C−3の「外側立上り壁」
構成要件K)とは、肘掛部の幅方

向外側に設けられた壁であると解される。また、本件明細書Cの記載

10 (【0017】、図8)から、本件発明C−3により実現されるマッサー

ジは、外側立上り壁の存在によって内側に倒れ込んだ膨縮袋により斜め

上方向から押圧されるものであることが理解されることからすると、

「前記外側立上り壁の下部」
構成要件L)とは、膨縮袋が膨張する際に

外側立上り壁の存在により略斜め上方向から施療者の腕を施療できる

15 程度に下の位置であることを意味すると解される。

被告製品1においては、別紙5「主張図面(被告製品1及び2)」記載

3のとおり、外壁エアバッグ1が突出部に、被告製品2においては、同

別紙記載5のとおり、外壁エアバッグ1及び2が突出部にそれぞれ止着

されている。上記各突出部は、外側壁面部の内側に設けられたものであ

20 り、外側壁面部の一部をなし、「外側立上り壁」(構成要件K)に該当す

る。

そして、被告製品1の外壁エアバッグ1と被告製品2の外壁エアバッ

グ1及び2は、外側壁面部の存在により施療者の腕を略斜め上方向から

施療するから、外側壁面部の「下部」において止着されているといえる。

25 したがって、被告製品1及び2は、
「外側立上り壁の下部において、膨

縮袋の下部の縁部を止着する」
構成要件L)に相当する構成を備えてい


35
るから、構成要件K及びLを充足する。

また、前述のとおり、被告製品1及び2は本件発明C−1の構成要件

を全て充足するから、構成要件Mも充足する。

以上によれば、被告製品1及び2は、本件発明C−3の構成要件を全

5 て充足する。

前記 と同様の理由により、被告製品1及び2は、構成要件N及びO

を充足するから、本件発明C−4の構成要件を全て充足する。

前述のとおり、被告製品1及び2は本件発明C−1の構成要件を全て

充足するから、構成要件Qを充足する。

10 そうすると、被告製品1及び2は、本件発明C−5の構成要件を全て

充足する。

(被控訴人の主張)

a 本件発明C−3の特許請求の範囲(請求項3)の記載及び本件明細

書Cの記載(【0044】、図8)によれば、本件発明C−3の「外側

15 立上り壁」
構成要件K)は、外側壁面部と内部壁面とからなるもので

ある。また、
「下部」とは「下の部分」
(乙C29)をいい、
「下」とは

「基準とする点より相対的に低い方向、または位置」
(乙C30)であ

ること、
「外側立上り壁」における基準とする点とは、外側立上り壁の

高さ方向の中央部であることからすると、構成要件Lの「外側立上り

20 壁の下部において、膨縮袋の下部の縁部を止着する」にいう「下部」

とは、「外側立上り壁の中央部より相対的に低い位置の部分において、

膨縮袋の下部の縁部を止着する」であると解釈するのが相当である。

このような解釈は、図8の記載にも沿うものである。

しかるところ、被告製品1は、別紙5「主張図面(被告製品1及び

25 2) 記載3に示すように、
」 底壁エアバッグの縁部と外壁エアバッグ2

の縁部は、底面部の外側壁面部側の箇所に止着され、また、外壁エア


36
バッグ1は、突出部の頂面に止着されており、外側壁面部自体には止

着されていない。そして、突出部は、外側壁面部と内部壁面とからな

るものではないから、本件発明C−3の「外側立上り壁」 構成要件K)


に含まれない。

5 次に、突出部の頂面は、同別紙記載4のとおり、外側壁面部を構成

する外壁と上壁のうち、外壁の「中央部」付近に位置しているから、

外壁エアバッグ1は、構成要件Lの「外側立上り壁の下部において、

膨縮袋の下部の縁部を止着する」との構成を備えておらず、また、外

壁エアバッグ2も、底面部に止着されているから、上記構成を備えて

10 いない。

b 被告製品2については、別紙5「主張図面(被告製品1及び2)」記

載5及び6に示すように、外壁エアバッグ1及び2は、突出部の頂面

に止着されているが、前記aと同様の理由により、突出部は、本件発

明C−3の「外側立上り壁」
構成要件K)に含まれず、また、突出部

15 の頂面は、同別紙記載6のとおり、外側壁面部を構成する外壁と上壁

のうち、外壁の「中央部」付近に位置しているから、外壁エアバッグ

1及び2は、構成要件Lの「外側立上り壁の下部において、膨縮袋の

下部の縁部を止着する」との構成を備えていない。

c そして、被告製品1及び2が本件発明C−1の構成要件B、 E、
C、

20 E−1、E−2を充足しないことは、前述のとおりであるから、被告

製品1及び2は、本件発明C−3の構成要件をいずれも充足しない。

前記 と同様の理由により、被告製品1及び2は、本件発明C−4の

構成要件N及びOをいずれも充足しない。

被告製品1及び2が本件発明C−1の構成要件B、C、E、E−1、

25 E−2を充足しないことは、前述のとおりであるから、被告製品1及び

2は、本件発明C−5の構成要件Qを充足しない。


37
イ 争点2−1−2(均等論

(控訴人の主張)

仮に本件発明C−1の「空洞部」
構成要件B、C)は、その全体にわた

って「内側立上り壁」を備える構成であると解した場合には、被告製品1

5 の「空洞部」は、
「前部」とされる部分には「内側壁面部」が備わっている

が、「中部」とされる部分には、「内側壁面部」が備わっておらず、その全

体にわたっては「内側壁面部」を備えていない点で本件発明C−1と相違

することとなるが(以下、この相違部分を「本件相違部分」という。 、以


下のとおり、被告製品1及び2は、均等の第1要件ないし第3要件を充足

10 するから、本件発明C−1の特許請求の範囲に記載された構成と均等なも

のとして、本件発明C−1の技術的範囲に属する。

加えて、被告製品1及び2は、前記アの(控訴人の主張)のとおり、構

成要件H、I、K、L、N及びP充足するから、本件発明C−2ないしC

−5の技術的範囲に属する。

15 第1要件(相違部分が本質的部分でないこと)

本件発明C−1は、肘掛部の長さ方向全域に前腕部施療機構として左

右一対の立上り壁を設けた従来技術には、施療者の肘関節付近にまで立

上り壁が形成されることにより、@上腕部内側の肘関節付近を内側立上

り壁が圧迫し、施療者に不快感を与える、A前腕部施療機構における腕

20 部の載脱行為を妨げる、B肘掛部の前端部の上面が開口されており、起

立及び着座の際に体重を掛けることが困難であるといった課題があっ

たことから、かかる課題を解決し、
「前腕部施療機構における腕部の載脱

をスムーズに行うよう構成すると共に、前腕部施療機構を有していても

施療者が起立及び着座を快適に行う事」を目的とするものである(本件

25 明細書Cの【0005】ないし【0008】 。


しかるところ、本件相違部分は、本件発明C−1の上記課題や目的と


38
何ら関係がなく、本件発明C−1の本質的部分ではないから、被告製品

1及び2は、第1要件を充足する。

第2要件(置換可能性

本件発明C−1は、
「着座した施療者が立ち上がる際、或いは着座する

5 際において、前記内側立上り壁による前腕部内側の摺擦を回避しながら

前記手掛け部に体重を掛けて行うことができる。」という作用効果を奏

するところ(本件明細書Cの【0014】 、本件相違部分に係る本件発


明C−1の構成を被告製品1及び2の構成と置き換えたとしても、本件

発明C−1の上記作用効果と同一の作用効果を奏する。

10 したがって、被告製品 1 及び2は、第2要件を充足する。

第3要件(置換容易性

本件相違部分は内側立上り壁が空洞部の一部にのみ備えられている

点にあるところ、内側立上り壁の長さをどのようにするかは設計的事項

にすぎないから、本件相違部分に係る本件発明C−1の構成を被告製品

15 1及び2の構成と置き換えることは、容易に想到することができたもの

といえる。

したがって、被告製品1及び2は、第3要件を充足する。

第4要件及び第5要件に係る被控訴人の主張について

被控訴人の主張は争う。

20 (被控訴人の主張)

被告製品1及び2は、均等の第1要件ないし第5要件をいずれも充足し

ないから、本件発明C−1の特許請求の範囲に記載された構成と均等なも

のということはできない。

第1要件の主張に対し

25 本件発明C−1の本質的部分は、施療者の肘関節付近の圧迫による不

快感を解消するために、「施療者の肘関節付近を前腕挿入開口部として、


39
底面部と外側立上り壁によりL型に構成し、その部分の内側立上り壁を

なくし(構成要件E−2)、前腕挿入開口部に延設する(連続して設けら

れる)空洞部を外側立上り壁及び内側立上り壁と底面部から形成する(構

成要件C)」という特徴構成を具備していること、すなわち、「肘掛部の

5 長さ方向に延びる内側立上り壁が施療者の手部から前腕部の肘関節付近

の手前にまでわたって存在すると共に、施療者の肘関節付近(前腕挿入

開口部に位置する施療部)において内側立上り壁が存在しない構成であ

ること」である。

しかるところ、被告製品1及び2の構造は、
「空洞部において、手部を

10 除き前腕を挿入保持するための部分に内側立上り壁が備えられていない」

という構造であり、本件相違部分は、本件発明C−1の本質的部分の相

違である。

したがって、被告製品1及び2は、第1要件を充足しない。

第2要件の主張に対し

15 被告製品1及び2において、本件発明C−1の作用効果を奏するため

に必要な前腕部施療機構の構成である、手部を除く前腕部に相当する部

分には「内側立上り壁」が設けられていない以上、肘掛部の長さ方向に

形成された左右一対の立上り壁を用いて手部を除き前腕部をマッサージ

することができない。

20 したがって、被告製品1及び2は、本件発明C−1の目的を達するこ

とはできず、同一の作用効果を奏するものとはいえないから、第2要件

を充足しない。

第3要件の主張に対し

本件相違部分は、設計的事項にとどまらないから、被告製品1及び2

25 は、第3要件を充足しない。

第4要件(容易推考性)


40
被告製品1及び2は、本件出願Cの出願前に頒布された刊行物である

乙C19(特開2005−287831号公報)及び乙C20(特開2

005−28045号公報)に記載された発明から、容易に推考するこ

とができたものであるから、第4要件を充足しない。

5 第5要件(意識的除外等の特段の事情)

「空洞部」が「前記肘掛部の幅方向左右に夫々設けた外側立上り壁及

び内側立上り壁と底面部とから形成され」
構成要件C)との構成は、本

件出願Cの際に追加変更された構成であり、構成要件Cの上記追加変更

により、
「空洞部」に「内側立上り壁」を備えない部分がある構成が、外

10 形的、客観的にみて意識的に除外されたことが明らかである。

したがって、被告製品1及び2は、本件出願Cの出願手続において、

本件発明C−1の特許請求の範囲から意識的に除外されたものであり、

本件発明C−1の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとい

えない特段の事情が存するから、被告製品1及び2は、第5要件を充足

15 しない。

4 争点2−2(本件特許Cに係る無効の抗弁の成否)について(本件特許C関

係)

(被控訴人の主張)

本件特許Cには、以下のとおりの無効理由があり、特許無効審判により無効

20 とされるべきものであるから、特許法104条の3第1項の規定により、控訴

人は、被控訴人に対し、本件特許権Cを行使することができない。

無効理由1(乙C19を主引用例とする本件各発明Cの進歩性欠如)

ア 乙C19記載の発明

本件出願Cの出願前に頒布された刊行物である乙C19の記載(【00

25 21】ないし【0023】【0070】ないし【0073】【0077】
、 、 、

【0078】、図16、17、20、22、28)によれば、乙C19には、


41
次のとおりの発明(以下「乙C19発明」という。)が記載されている。

【乙C19発明】

a 座部3a及び背凭れ部5aを有する椅子本体2aと、該椅子本体2a

の両側部に肘掛部6aを有する施療機1aにおいて、

5 b 肘掛部6aに、肘部施療部623aに対応して肘挿入用凹溝61aが

開口している施療者の前腕部を挿入するための前腕挿入開口部と、該前

腕挿入開口部から延設して肘掛部6aの内部に施療者の手部を含む前

腕部を挿入保持するための肘挿入用凹溝61aが設けられ、

c 肘挿入用凹溝61aは、外面立上り部と底面部と上面部とから形成さ

10 れ、

d 外面立上り部の上面前端部に肘挿入用凹溝61aの先端部の上方を

塞ぐ形態で上面部が設けられており、

e 肘掛部6aが、

e−1 前部に底面部と外面立上り部と上面部とに囲われ、肘挿入用凹

15 溝61aに位置する手部施療部621aに対応する部分と、

e−2 後部に底面部と外面立上り部によりL型に形成され、前腕挿入

開口部に位置する肘部施療部623aに対応する部分とを備え、

f 手部施療部621a、前腕部施療部622a及び肘部施療部623a

に膨縮袋が夫々設けられている

20 g 事を特徴とする施療機1a。

イ 本件発明C−1の容易想到性

本件発明C−1と乙C19発明との対比

本件発明C−1と乙C19発明との一致点及び相違点は、次のとおり

である。

25 【一致点】

「a 座部及び背凭れ部を有する椅子本体と、該椅子本体の両側部に肘


42
掛部を有する施療機において、

b 肘掛部に、肘部施療部に対応して肘挿入用凹溝が開口している施

療者の前腕部を挿入するための前腕挿入開口部と、該前腕挿入開口

部から延設して肘掛部の内部に施療者の手部を含む前腕部を挿入

5 保持するための肘挿入用凹溝が設けられ、

c 肘挿入用凹溝は、外面立上り部と底面部と上面部とから形成され、

d 外面立上り部の上面前端部に肘挿入用凹溝の先端部の上方を塞ぐ

形態で上面部が設けられており、

e 肘掛部が、

10 e−1 前部に底面部と外面立上り部と上面部とに囲われ、肘挿入

用凹溝に位置する手部施療部に対応する部分と、

e−2 後部に底面部と外面立上り部によりL型に形成され、前腕

挿入開口部に位置する肘部施療部に対応する部分とを備え、

f 手部施療部、前腕部施療部及び肘部施療部に膨縮袋が夫々設けら

15 れている

g 事を特徴とする施療機。」である点。

【相違点】

本件発明C−1と乙C19発明との相違点は、構成要件の分説に従え

ば、以下のとおり、相違点1ないし4となるが、実質的には、本件発明

20 C−1の「空洞部」は、
「内側立上り壁」を有しているのに対し、乙C1

9発明の「肘挿入用凹溝61a」は、
「内側立上り壁」を有していない点

で相違するという点に集約される(以下、かかる相違点を「本件相違点」

という。 。


(相違点1)

25 本件発明C−1は、構成要件Cにおいて「空洞部は、肘掛部の幅方向

左右に夫々設けた外側立上り壁及び内側立上り壁と底面部とから形成さ


43
れ」ており、空洞部が内側立上り壁を有しているのに対して、乙C19

発明は、肘挿入用凹溝61aが、外面立上り部と底面部と上面部とから

構成され、内側立上り壁を有していない点。

(相違点2)

5 本件発明C−1は、構成要件Dにおいて「前記外側立上り壁及び内側

立上り壁の上面前端部に空洞部の先端部の上方を塞ぐ形態で手掛け部が

設けられて」いるのに対して、乙C19発明は、外面立上り部の上面前

端部に肘挿入用凹溝61aの先端部の上方を塞ぐ形態で上面部が設けら

れているものの、肘挿入用凹溝61aが内側立上り壁を有していない点。

10 (相違点3)

本件発明C−1は、構成要件E−1において「前部に前記底面部と前

記外側立上り壁と前記内側立上り壁と前記手掛け部とに囲われ、前記空

洞部に位置する施療部」が構成されているのに対して、乙C19発明は、

手部施療部621aに対応する部分において、肘挿入用凹溝61aが、

15 底面部と外面立上り部と上面部とを有しているものの、内側立上り壁を

有していない点。

(相違点4)

本件発明C−1は、構成要件Bにおいて「前記肘掛部に、内側後方か

ら施療者の前腕部を挿入するための前腕挿入開口部と、該前腕挿入開口

20 部から延設して肘掛部の内部に施療者の手部を含む前腕部を挿入保持

するための空洞部が設けられ」ているのに対して、乙C19発明は、肘

部施療部623aに対応して肘挿入用凹溝61aが開口している施療

者の前腕部を挿入するための前腕挿入開口部に、施療者の前腕部が内側

後方から挿入されるか否かが明記されていない点。

25 乙C20記載の発明

本件出願Cの出願前に頒布された刊行物である乙C20(特開200


44
5−28045号公報)の記載(請求項1、【0003】 【0004】
、 、

【0029】ないし【0031】、
【0034】、
【0035】、
【0043】、

【0064】、図1、2、7ないし12)によれば、乙C20には、次の

とおりの発明(以下「乙C20発明」という。)が記載されている。

5 「 肘掛け部7の施療者の手に対応する部分に、内側後方から施療者の

手を挿入するための後側の開口27と、該後側の開口27から延設し

て施療者の手部を挿入保持するためのトンネル状支持体22が設けら

れ、

施療者の手に対応して肘掛け部7に設けられたトンネル状支持体

10 22は、肘掛け部7の幅方向左右に夫々設けた左右の側面部24、2

4と底面となる肘掛け部上面7aとから形成され、

左右の側面部24、24を繋ぐ上面にトンネル状支持体22の上方

を塞ぐ形態で上面部25が設けられており、

肘掛け部7が、前部に肘掛け部上面7aと左右の側面部24、24

15 と上面部25とに囲われ、トンネル状支持体22に位置する施療部と、

トンネル状支持体22にエアセル33、34、35が設けられてい

る」マッサージ機。

相違点の容易想到性

乙C20発明においては、左右の側面部24、24、上面部25及び

20 肘掛け部上面7aにより、トンネル状支持体22が形成されているとこ

ろ、乙C20発明のトンネル状支持体22は、本件発明C−1の「空洞

部」に、乙C20発明の左右の側面部24、24は、本件発明C−1の

「外側立上り壁」及び「内側立上り壁」に、乙C20発明の肘掛け部上

面7aは、本件発明C−1の「底面部」にそれぞれ相当するから、乙C

25 20発明の上記トンネル状支持体22は、
「内側立上り壁」を備え、本件

相違点に係る本件発明C−1の構成を有している。


45
そして、乙C19発明と乙C20発明とは、
「椅子型マッサージ機に関

する発明」という技術分野、
「手に効果的な施療を施す」という課題、乙

C19発明では肘部挟持機構62a を有する肘挿入用凹溝61a により、

手部に対しても圧迫施療、指圧施療及び揉み施療を効果的に施し、乙C

5 20発明ではエアセル33、34、35を有するトンネル状支持体22

により手を確実にマッサージする効果を有するという作用効果や機能の

点で共通すること、トンネル状支持体22を、乙C20発明のように底

面部(肘掛け部上面7a)に対して外側立上り壁、内側立上り壁(側面

部24、24)、上面部(上面部25)を設けて手部を四方向で囲むか、

10 乙C19発明のように底面部に対して外側立上り壁、上面部を設け手部

を三方向で囲むかは、本件出願Cの出願前に共に公知の構造であり、当

業者にとって選択的な構造であったことからすると、当業者は、乙C1

9及びC20に基づいて、乙C19発明の肘挿入用凹溝61において、

乙C20発明の構成を適用する動機付けがあるといえるから、本件相違

15 点に係る本件発明C−1の構成とすることを容易に想到することができ

たものである。

ウ 本件発明C−2ないしC−5の容易想到性

本件発明C−2について

本件発明C−2と乙C19発明とを対比すると、乙C19発明は、本

20 件発明C−2の「前記底面部と前記手掛け部とでは、施療者の前腕部を

載置しうるための載置面が異なっており、底面部の載置面よりも手掛け

部の載置面の方が高い位置に形成されている」との構成(構成要件I)

及び「請求項1記載の椅子式マッサージ機」の構成(構成要件J)を備

えていない点で相違する。

25 しかるところ、構成要件Jに係る相違点が容易想到であることは、前

記イのとおりである。


46
そして、前記イ のとおり、乙C20発明は、
「左右の側面部24、2

4を繋ぐ上面にトンネル状支持体22の上方を塞ぐ形態で上面部25が

設けられており、肘掛け部7が、前部に肘掛け部上面7aと左右の側面

部24、24と上面部25とに囲われ」ているから、肘掛け部上面7a

5 よりもトンネル状支持体22の上面部25の方が高い位置に形成されて

おり、構成要件Iに係る本件発明C−2の構成に相当する構成を有する

ところ、乙C20発明の構成e、e1、e2は構成要件Iに係る本件発

明C−2の構成に相当するものであり、乙C19発明に乙C20発明の

構成を適用する動機付けがあることは、前記イ のとおりであるから、

10 当業者は、乙C19及びC20に基づいて、乙C19発明において、構

成要件Iに係る本件発明C−2の構成とすることを容易に想到すること

ができたものである。

本件発明C−3について

本件発明C−3と乙C19発明とを対比すると、乙C19発明は、本

15 件発明C−3の「前記前腕挿入開口部の前記外側立上り壁及び前記底面

部の二面において互いに対設する位置に各々膨縮袋が設けられており」

との構成(構成要件K) 「外側立上り壁の下部において、膨縮袋の下部


の縁部を止着すると共に、前記底面部の外側立上り壁側に、もう一つの

膨縮袋の外側立上り壁側の縁部を止着している」との構成(構成要件L)

20 及び「請求項1記載の椅子式マッサージ機」の構成(構成要件M)を備

えていない点で相違する。

しかるところ、構成要件Mに係る相違点が容易想到であることは、前

記イのとおりである。

そして、構成要件K及びLに係る本件発明C−3の構成は、乙C21

25 (特開2003−153970号公報) 【0023】
の 、
【0025】、
【0

027】 図7ないし9等及び乙C22
、 (特開2003−319990号


47
公報)の【0032】ないし【0034】 【0036】ないし【004


1】、図1、2ないし5、6等に開示されている。乙C19発明と乙C2

1及びC22記載の発明とは、「椅子型マッサージ機」という技術分野、

「手に効果的な施療を施す」という課題、その作用機能において共通す

5 るから、乙C19発明に乙C21及びC22記載の構成を適用する動機

付けがある。

したがって、当業者は、乙C19ないしC22に基づいて、乙C19

発明において、構成要件K及びLに係る本件発明C−3の構成とするこ

とを容易に想到することができたものである。

10 本件発明C−4について

本件発明C−4と乙C19発明とを対比すると、乙C19発明は、本

件発明C−4の「前記前腕挿入開口部の前記外側立上り壁の下部におい

て、前記膨縮袋の下部に形成された縁部を止着すると共に、前記前腕挿

入開口部の前記底面部における前記外側立上り壁側に他方の前記膨縮袋

15 に形成された縁部を前記外側立上り壁側に止着して構成した」との構成

構成要件N)及び「請求項3記載の椅子式マッサージ機」の構成(構

成要件O)を備えていない点で相違する。

しかるところ、相違点Nに係る本件発明C−4の構成は、本件発明C

−3の構成要件K及びLの構成と実質的に相違するものではない。

20 そして、構成要件Oに係る相違点が容易想到であることは、前記 の

とおりであるから、当業者は、乙C19ないしC22に基づいて、乙C

19発明において、構成要件Nに係る本件発明C−4の構成とすること

容易に想到することができたものである。

本件発明C−5について

25 本件発明C−5と乙C19発明とを対比すると、乙C19発明は、本

件発明C−5の「前記肘掛部は、椅子本体に対して前後方向に移動可能


48
に設けられており、前記背凭れ部のリクライニング角度に応じた所定の

移動量を保持しながら該背凭れ部のリクライニング動作に連動して前記

肘掛部が椅子本体に対して前後方向に移動するようにした」との構成(構

成要件P)及び「請求項1乃至4記載の椅子式マッサージ機」との構成

5 (構成要件Q)を備えていない点で相違する。

しかるところ、構成要件Qに係る相違点が容易想到であることは、前

記 ないし 及び前記イのとおりである。

そして、構成要件Pに係る本件発明C−5の構成は、乙C20に記載

があり(【0017】 【0023】ないし【0026】 【0027】
、 、 、図

10 4ないし6等)、また、本件出願Cの出願当時、周知の構成であったとこ

ろ(例えば、乙C23(特開平10−179675号公報) 乙C24
、 (特

開2005−177279号公報) 乙C19発明に乙C20発明の構成


を適用する動機付けがあることは、前記イ のとおりであるから、当業

者は、乙C19、C20及び本件出願Cの出願当時の周知技術に基づい

15 て、乙C19発明において、構成要件Pに係る本件発明C−5の構成と

することを容易に想到することができたものである。

エ 小括

以上によれば、本件各発明Cは、乙C19ないしC22及び本件出願C

の出願当時の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができ

20 たものであるから、本件特許Cには、特許法29条2項に違反する無効理

由(同法123条1項2号)がある。

無効理由2(明確性要件違反)

本件発明C−1の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本件明細書Cの

記載によれば、本件発明C−1の椅子式マッサージ機は、肘掛部に、
「前腕挿

25 入開口部」と、前腕挿入開口部から延設・連続して肘掛部の内部に「空洞部」

が設けられていること(構成要件B) 「空洞部」は、前記肘掛部の幅方向左



49
右に夫々設けた外側立上り壁及び内側立上り壁と底面部とから形成されるこ

と(構成要件C) 「前部」に前記底面部と前記外側立上り壁と前記内側立上


り壁と前記手掛け部とに囲われ、
「空洞部」に位置する施療部が設けられてい

ること、
「後部」に前記底面部と前記外側立上り壁によりL型に形成され、
「前

5 腕挿入開口部」に位置する施療部とを備えること(構成要件E−1及びE−

2)、本件明細書Cの【0046】及び図14には、「外側立上り壁及び内側

立上り壁と底面部とから形成され」た空洞部は「前部」にのみ存在し、
「前記

底面部と前記外側立上り壁によりL型に形成され」た挿入開口部は「後部」

に存在することが記載されていることからすると、
「前部」には、内側立上り

10 壁を有する「空洞部」が存在し、
「後部」には、内側立上り壁を有しない「前

腕挿入開口部」が存在するものとして、本件発明C−1の「空洞部」と「前

腕挿入開口部」とは、その領域が区別されている。

一方、本件明細書Cの【0046】及び図14の記載を根拠に、本件発明

C−1の「空洞部」は、外側立上り壁と内側立上り壁と底面部を備える箇所

15 が一部でもあれば足り、内側立上り壁を備えない箇所をも含めて「空洞部」

と解釈されるとするならば、
「空洞部」と「前腕挿入開口部」との分水嶺が極

めて不明確となる。

そうすると、本件発明C−1の特許請求の範囲(請求項1)の記載は、不

明確であり、特許法36条6項2号の要件(明確性要件)に適合せず、また、

20 本件発明C−1を発明特定事項として直接又は間接に引用する本件発明C−

2ないしC−5の特許請求の範囲(請求項2ないし5)の記載も、これと同

様であるから、本件特許Cには、同号に違反する無効理由(同法123条

項4号)がある。

無効理由3(特許法17条の2第3項補正要件違反)

25 本件発明C−1の「空洞部」は、その全体にわたって「内側立上り壁」を

備えるものをいい、少なくとも施療者の前腕部の一部まで及ぶ「内側立上り


50
壁」が存在するものを意味するものと解される。

本件出願Cの当初明細書(乙C9)記載の実施例等には、肘掛部の「中部」

に内側立上り壁を備えない構成としつつ、
「前部」の内側立上り壁、外側立上

り壁、底面部を備える空洞部においては手部のみを施療できる構成しか開示

5 がなく、
「中部」を「コ型」と構成しつつ、内側立上り壁、外側立上り壁、底

面部から形成される「空洞部」において、
「手部を含む前腕部」を挿入保持で

きる構成については記載も示唆もない。

しかるところ、本件補正は、
「中部」に内側立上り壁を備えない「コ型」と

形成された施療部を備えた本件発明C−2(請求項2)を追加する補正事項

10 を含むものであるから(乙C12、C13)、本件補正は、新規事項を追加す

るものであって、特許法17条の2第3項の要件に適合しない。

したがって、本件特許Cには、同項に違反する無効理由(同法123条

項1号)がある。

無効理由4(本件発明C−2に係るサポート要件違反)

15 本件発明C−2の特許請求の範囲の記載(請求項2)から、本件発明C−

2は、肘掛部の「中部」をコ型に構成し、
「前部」には底面部と外側立上り壁、

内側立上り壁から形成される「空洞部」を備えており、当該「空洞部」は、

手部を含む前腕部を挿入保持でき、
「前腕部」をも施療できるものであること

を理解できる。また、本件発明C−2の構成要件Jで引用する請求項1(本

20 件発明C−1)の「空洞部」は、少なくとも施療者の前腕部の一部まで及ぶ

「内側立上り壁」が存在するものを意味する。

一方で、本件明細書Cの発明の詳細な説明には、
「中部」がコ型の構成は開

示されているものの、底面部、外側立上り壁、内側立上り壁の三面を含む空

洞部である「前部」においては、「手部」のみを挿入保持でき、「手部」を施

25 療するための膨縮袋を備える実施例のみが記載されているにとどまり、「前

部」において、
「前腕部」を挿入保持でき、膨縮袋などにより「手部」を含む


51
「前腕部」を施療できる旨の記載も示唆もない。

そうすると、本件明細書Cの発明の詳細な説明の記載及び本件出願Cの出

願当時の技術常識から、本件発明C−2の課題を解決できると認識すること

ができないから、本件発明C−2は、特許法36条6項1号の要件(サポー

5 ト要件)に適合しない。

したがって、本件発明C−2に係る本件特許Cには、同号に違反する無効

理由(同法123条1項4号)がある。

(控訴人の主張)

無効理由1に対し

10 乙C19発明に乙C20発明を適用しようとすれば、乙C19発明におけ

る手を掛けることができる肘掛部6aの「上面部」に対して、乙C20発明

のトンネル状支持体22により形成される「開口部」を配設することになる

から、そもそも、乙C19発明に乙C20発明を適用しても、本件発明C−

1には至らない。

15 また、乙C19発明は、
「椅子本体肘掛部の上面に人体腕部或いは肘部を挟

持状に保持して施療を実施するための立上り壁を設けているので、腕部或い

は肘部に心地よい施療が行えるのであるが、腕部或いは肘部の施療を望まな

い場合や肘掛部に肘を単に載せたい場合には、これが邪魔になって不快感を

与える可能性があり、また、見栄えも悪くデザイン上の問題もあった」とい

20 う従来技術における課題を解決するとともに、各施療者の個人差にも適応で

きる施療を行わせ、且つ、更なる新規の施療効果や利便性を有する優れた施

療機を提供する事」を目的とするものであるのに対し、乙C20発明は、
「手

は、胴体に比べて軽いため、肘掛けから上方に向けて押圧すると、手が上方

に逃げて十分なマッサージ感が得られないことがある」という課題を解決し、

25 「手を確実にマッサージすること」を目的とするものであり、両発明が解決

しようとした課題及び目的は異なるから、乙C19発明に乙C20発明を適


52
用する動機付けを欠くものである。

さらに、乙C19発明の肘挿入用凹溝61aの前部の手部施療部621a

に、乙C20発明のトンネル状支持体22を適用しようとすると、これらは

物理的に衝突し、また、乙C19発明の肘掛部6aの前部を覆うような乙C

5 20発明のトンネル状支持体22を適用した場合には肘掛部の上面部に肘を

載せたい時にトンネル状支持体の上面部が邪魔になるから、乙C19発明に

おいて乙C20発明を適用することには阻害要因がある。

したがって、被控訴人の無効理由1は理由がない。

無効理由2に対し

10 被控訴人は、
「前腕挿入開口部」と「空洞部」を区分けする基準が不明確で

ある旨主張するにすぎず、本件発明C−1の特許請求の範囲(請求項1)の

具体的記載が不明確であることを述べるものではないから、被控訴人の明確

性要件違反の主張は、その主張自体理由がない。

また、本件発明C−1は、構成要件Bから、肘掛部に「前腕挿入開口部」

15 と「空洞部」を備え、
「前腕挿入開口部」が内側後方から施療者の前腕部を挿

入するための構成であり、
「空洞部」が前腕挿入開口部から延設して肘掛部の

内部に施療者の手部を含む前腕部を挿入保持するための構成であることが特

定されているから、「前腕挿入開口部」及び「空洞部」の内容は明確である。

したがって、無効理由2は理由がない。

20 無効理由3に対し

本件発明C−1の「空洞部」は、その一部に「内側立上り壁」が存在する

構成を含むものであり、本件出願Cの当初明細書の【0046】及び図14

に開示された実施形態は、内側立上り壁が存在する部分において施療者の手

部のみを挿入保持するか否かとは無関係に本件発明C−2の実施形態を開示

25 するものである。

したがって、本件補正(乙C13)は、本件出願Cの出願当初明細書の記


53
載の範囲内のものであり、新規事項を追加するものではないから、無効理由

3は理由がない。

無効理由4に対し

本件発明C−2は、本件明細書Cの記載から、当業者がその課題を解決

5 できると認識できるものであり、サポート要件に適合するから、無効理由4

は理由がない。

5 争点3(被控訴人が賠償又は返還すべき控訴人の損害額等)について(本件

特許C関係)

(控訴人の主張)

10 特許法102条2項に基づく損害額

ア 特許法102条2項の適用

被控訴人は、被告製品1及び2の輸出又は販売により、本件特許権C

侵害したから、これにより控訴人が被った損害を賠償する義務がある。

特許権者に、侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得

15 られたであろうという事情が存在する場合には、特許法102条2項

適用が認められると解すべきであり、同項の適用に当たり、特許権者に

おいて、特許発明実施していることを要件とするものではない。

そして、特許法102条2項により推定される損害の性質は、特許権

者の売上減少による逸失利益であるから、侵害品の存在により売上げが

20 減少するという関係にある製品(需要者が共通する製品、同じ需要が向

く製品。以下「競合品」という場合がある。)を特許権者が販売していれ

ば、特許権者に損害が発生したことが基礎づけられ、 かかる事情がある

といえる。

しかるところ、被告製品1及び2は、
「肘掛部に施療者の前腕部をマッ

25 サージする前腕部施療機構を備えた椅子式マッサージ機」であり、この

ようなマッサージ機の購入を希望する需要者は、前腕部施療機構を備え


54
た椅子式マッサージ機であれば、いずれも比較の対象とするから、かか

るマッサージ機は、被告製品1及び2と需要者が共通し、同じ需要が向

く製品に該当し、競合品に当たると解すべきである。

控訴人は、平成23年1月1日から令和3年12月31日までの間、

5 別紙14のとおり、●●●●●●●●●の海外の市場向けに、
「肘掛部に

施療者の前腕部をマッサージする前腕部施療機構を備えた椅子式マッ

サージ機」であるEC−2700、EC−2800、EC−3700、

EC−3800、EC−3850、EC−3900、JP−1000、

JP−1100、JP−870、Premium4.0、Premiu

10 m4D、Premium4S及び4D−970(以下、これらを併せて

「控訴人製品1」という。 を販売した
) (甲C8ないしC17、C65)。

控訴人製品1は、海外向け製品である被告製品1の競合品である。

なお、控訴人が海外向け製品を譲渡・輸出する可能性がある国・地域

は、特定の国・地域に限定されているわけではなく、日本から全世界に

15 向けた譲渡・輸出の可能性がある。しかも、日本の特許権の効力が及ぶ

のは、日本の領域内のみであることからすると、問題とすべきは、日本

国内から海外の譲渡・輸出行為における控訴人製品1と被告製品1との

競合であり、日本の領域外の個々の国・地域の市場における競合ではな

いから、控訴人と被控訴人がそれぞれ海外のどの国・地域に向けて製品

20 を譲渡・輸出しているかは、特許法102条2項の適用の可否には影響

しないと解すべきである。

次に、控訴人は、平成23年11月25日以降、日本国内において、

「肘掛部に施療者の前腕部をマッサージする前腕部施療機構を備えた椅

子式マッサージ機」であるAS−760、AS−830、AS−840、

25 AS−1000及びAS−1100(以下、これらを併せて「控訴人製

品2」という。)を販売した(甲C3ないしC7、C57)。控訴人製品


55
2は、被告製品2の競合品である。

したがって、本件においては、特許法102条2項の適用が認められ

るべきである。

この点に関し、被控訴人は、@特許権者に、侵害者による特許権侵害

5 がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在するという

ためには、特許権者が当該特許の作用効果と同様の作用効果を奏する代

替競合品(侵害品と市場で販売時期が重なるもの)であって、かつ、侵

害主張をする相手方の特許権を侵害しない製品を販売していることを要

すると解すべきである、A控訴人製品1及び2は、本件各発明Cの作用

10 効果を奏するものではない、Bまた、控訴人製品1及び2は、大阪地方

裁判所に係属中の被控訴人を「原告」、控訴人を「被告」とする特許権侵

害訴訟(大阪地方裁判所平成29年(ワ)第7384号事件。以下「別

件訴訟」という。 において被控訴人が請求理由として主張する被控訴人


保有の特許第4617275号(以下「別件特許2」という。乙C15

15 6、C157)及び特許第5009445号(以下「別件特許3」とい

う。乙C154、C155)の侵害品である、Cしたがって、控訴人製

品1及び2は、特許権者が当該特許の作用効果と同様の作用効果を奏す

る競合品(侵害品と市場で販売時期が重なるもの)ではなく、また、侵

害主張をする相手方の特許権を侵害しない製品であるとはいえないから、

20 本件においては、上記事情は存在せず、特許法102条2項の適用要件

を欠く旨主張する。

しかしながら、特許権者の製品が侵害品との競合品といえるためには、

両製品の需要者が共通すれば足り、特許権者の製品が当該特許の作用効

果と同様の作用効果を奏するものである必要はない。また、本件各発明

25 Cの作用効果に係る腕部の載脱、起立及び着座がしやすいかという要素

は、需要者が製品を選択する際に考慮する要素ではあるが、椅子式マッ


56
サージ機の需要者自体を分ける要因ではない。さらに、本件各発明Cの

作用効果を奏する製品であることを要求することは、特許法102条

項の適用要件として特許発明実施品であることを要することに等しい

から、妥当でない。

5 次に、控訴人製品1及び2は、そもそも別件特許2及び3のいずれの

侵害品でもない。また、特許権侵害訴訟において、他人の特許権を侵害

しているとしてその製造、販売等の差止めが認められるのは、将来にお

ける製造、販売分のみであり、特許権者の競合品が事後的に他人の侵害

品であると判断されたとしても、現に、当該競合品が市場に流通したと

10 いう事実が認められる以上は、侵害者の侵害品に向けられていた需要が

当該競合品に向かうという関係性が認められるから、侵害者による特許

侵害行為により特許権者に損害が発生したこと、すなわち、特許権者

に、侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであ

ろうという事情が存在することを否定することはできない。さらに、特

15 許権者が他人の特許を実施したことにより得た利益は、事後的に当該他

人との間で調整を図れば足りることである。

したがって、被控訴人の上記主張は、その前提において、失当である。

イ 被控訴人の利益(限界利益)

売上高

20 a 平成23年11月から令和3年3月までの期間の被告製品1及び2

の売上高は、別紙8のとおり、被告製品1については合計●●●●●

●●●●●●●円、被告製品2については合計●●●●●●●●●円

(ただし、返品及び値引き分を除く。)である(乙C47)。

また、上記期間の被告製品1及び2の販売数量(輸出台数又は販売

25 台数。以下同じ。)は、別紙9のとおり、被告製品1については合計●

●●●●●台、被告製品2については合計●●台(ただし、返品●台


57
分を除く。)である(乙C47)。

b この点に関し、被控訴人は、被告製品1の売上高から、「部品費等」

及び「マーケティングサポート費用」を控除すべきである旨主張する。

しかしながら、被控訴人主張の「部品費等」は、瑕疵ある製品に対

5 するアフターサービスに関する費用であり、被告製品1の売上高とは

関係がない。また、被控訴人主張の「マーケティングサポート費用」

は、被控訴人内部で「値引き」として計上しているものにすぎず、被

告製品1の売上高と関係がないのみならず、その算定方法に合理的根

拠がない。

10 したがって、被控訴人の上記主張は失当である。

経費

被控訴人は、被告製品1について、@仕入(上海買入)費用、A材料

費、B製造ロス費、C大山工場組立費用、D製造物流費、Eデザイン費

用、F歩積金、GWEEE、H認証、I商標登録等、JL/C ユーザンス

15 が、被告製品2について、@仕入(上海買入)費用、A材料費、B製造

ロス費、C大山工場組立費用、D製造物流費、Eデザイン費用、F配送

費用及び組立費用が、それぞれ被告製品1及び2の製造・輸出又は製造・

販売に直接関連して追加的に必要となった経費である旨主張する。

被控訴人の上記主張のうち、被告製品1については、 A及びDを、
@、

20 被告製品2については、@、A、D及びFをそれぞれ売上高から控除す

べき経費として認めるが、以下のとおり、その余は争う。

a 被告製品1及び2関係

B製造ロス費については、被控訴人が製造の過程で発生する不良品

の割合を●%と仮定した帳簿上の金額であって、その金額が実際に支

25 出されたことが立証されていないのみならず、被告製品1及び2を1

台輸出又は販売するごとに追加的に必要となる費用でない。


58
C大山工場組立費用については、その金額が実際に支出されたこと

が立証されていないのみならず、固定費としての人件費であって、被

告製品1及び2の製造に従事する従業員の担当業務の具体的内容や従

事状況が明らかでない以上、被告製品1及び2を1台輸出又は販売す

5 るごとに追加的に必要となる費用であるとはいえない。

Eデザイン費用については、被控訴人提出の業務委託契約書(乙C

150)、仕訳日記帳(乙C151)、計算シート(乙C152)は内

部資料にすぎないこと、請求書等の支出を示す客観的裏付けが提出さ

れていないことからすると、その金額が実際に支出されたことが立証

10 されていない。また、上記業務委託契約書7条には●●●●●●●●

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

との記載があることに照らすと、デザインのロイヤリティ料率に関す

る合意があるはずであるが、当該合意に関する証拠が提出されていな

いため、上記計算シートにおいてロイヤリティ料率が●●●%として

15 計算されていることの根拠も不明である。

b 被告製品1関係

F歩積金、GWEEE、H認証、I商標登録等、JL/C ユーザンス

は、いずれも、客観的な資料を正確に反映したものではなく、実際に

支出された金額を示したものではない。

20 また、F歩積金は、被控訴人において会計上積み立てられた金額に

すぎないこと、GWEEEは、被控訴人の製品一般にかかる抽象的な

リサイクル費用であること、H認証は、被告製品1について1度取得

すればよいこと、I商標登録等は、被告製品1の製造又は販売に紐づ

いて増減するようなものではないこと、JL/C ユーザンスは、被控訴

25 人が任意に選択した決済手段であって、被告製品1の製造、輸出と関

連性のない営業外費用であることなどからすると、いずれも、被告製


59
品1を1台製造、輸出するごとに追加的に必要となる費用ではない。

限界利益額

a 被控訴人が被告製品1の輸出及び被告製品2の国内販売により受

けた利益額は、別紙10の「利益額」欄記載のとおり、前記 aの売

5 上高から前記 の経費を控除後の合計●●●●●●●●●●●●円で

ある。

b ところで、消費税法基本通達5−2−5柱書及び によれば、
「無体

財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無体財産権の権利者が収

受する損害賠償金」は、資産の譲渡等の対価に該当するものとされて

10 いることからすれば、特許法102条2項の「侵害の行為により利益

を受けているとき」にいう「利益」には消費税相当分も含まれると解

すべきである。

このことは、侵害行為の態様が輸出行為である場合でも変わりはな

く、特許権者が特許権侵害による損害の填補を受けるためには、課税

15 されるであろう消費税相当分についても、上記「利益」に該当すると

いうべきである。

そして、資産の譲渡等の時期は、特許権侵害行為時であるから、平

成23年11月25日から平成26年3月31日までの期間の消費税

率は5%、同年4月1日から令和元年9月30日までの期間の消費税

20 率は8%、同年10月1日以降の消費税率は10%となる。

そうすると、被控訴人が被告製品1の輸出及び被告製品2の国内販

売に係る侵害行為により受けた特許法102条2項の利益額(限界利

益額)は、別紙10の「限界利益額(消費税相当分を含む)」欄記載の

とおり、合計●●●●●●●●●●●●円となり、上記利益額は、同

25 項により、控訴人の受けた損害額と推定される(以下、この推定を「2

項推定」という場合がある。 。



60
ウ 推定覆滅事由の主張に対し

被控訴人は、@特許発明が被告製品1及び2の部分のみに実施されてい

ること、A市場における競合品の存在、B市場の非同一性、C被控訴人の

営業努力(ブランド力、宣伝広告)、D被告製品1及び2の性能(機能、デ

5 ザイン等本件各発明C以外の特徴)は、2項推定の覆滅事由に該当する旨

主張するが、以下のとおり、いずれも理由がない。

特許発明が被告製品1及び2の部分のみに実施されていることにつ

いて

a 本件各発明Cの技術的意義は、従来の椅子式マッサージ機が有して

10 いた左右一対の立上り壁が存在することにより手部及び前腕部の広範

を同時にマッサージできるという従来技術の利点を活かしながら、外

側立上り壁と底面部とでL字に構成される前腕部挿入開口部を設ける

ことにより、従来の椅子式マッサージ機が有していた立上り壁が不必

要に圧迫して不快感をもたらす要因を解消し、腕部の載脱をスムーズ

15 に行うよう構成するとともに、施療者が起立及び着座を快適に行うこ

とができるようにしたことにある(本件明細書Cの【0005】ない

し【0008】、
【0013】 。
) また、本件発明C−5の技術的意義は、

背もたれ部のリクライニング動作に連動して肘掛部が椅子本体に対し

て前後方向に移動することにより、背もたれ部のリクライニング角度

20 に関係なく、肘掛部に設けた前記前腕部施療機構における前腕部の位

置が可及的に変わらないようにする事ができ、安定した前腕部に対す

るマッサージを行う事ができるようにしたことにある(【0018】 。


本件各発明Cの作用効果は、少なくとも前腕部施療機構の一部に内

側立上り壁が存在することを前提として、マッサージ機の快適な使用

25 を実現することにある。

椅子式マッサージ機においてどの部位に対応したマッサージが可


61
能であるかは需要者が製品選択において特に着目する点であり、被告

製品1及び2のカタログでは、本件各発明Cの構成及び作用効果が訴

求されている。例えば、被告製品1のカタログ(乙C40)には、肘

掛部において内側立上り壁が設けられていること、前腕部挿入開口部

5 が設けられていること、肘掛部全体にエアセルが設けられていること、

肘掛部が背もたれ部のリクライニング動作に連動して前後方向に移動

することが写真で明確に示されており、内側立上り壁を設けつつ、ス

ムーズな腕部の載脱が可能である構成であることを一見して認識する

ことができ、また、被告製品1が手部及び前腕部の広範を同時にマッ

10 サージできることが文章(2頁)で説明されている。被告製品2のカ

タログ(乙C54)も、これと同様である。

そして、手部及び前腕部の広範に同時にマッサージを行う椅子式マ

ッサージ機の購入を希望する需要者は、上記カタログの記載も踏まえ

て、被告製品1及び2の購入を決定するから、本件各発明Cに顧客吸

15 引力が認められることは明らかである。

したがって、本件各発明Cが被告製品1及び2の部分のみに実施

れているものであるとしても、2項推定の覆滅事由に該当しない。

b この点に関し、被控訴人は、本件発明C−1及びC−2の作用効果

は、公知技術である乙C19記載のマッサージ機の構成によって奏す

20 るものであり、
「内側立上り壁」の構成は、上記作用効果とは関係がな

い、控訴人自身が本件各発明Cの実施品を販売していないなどとして、

本件各発明Cの技術的価値ないし技術的意義はほとんどない旨主張す

る。

しかしながら、乙C19記載のマッサージ機は、内側立上り壁を一

25 切廃したものであって、少なくとも前腕部施療機構の一部に内側立上

り壁が存在することを前提としている本件各発明Cの上記作用効果を


62
奏するものではない。

また、控訴人が本件各発明Cを実施するか否かは種々様々な事情を

考慮したうえでの経営戦略に関わるものであるから、控訴人が本件各

発明Cを実施していないことをもって直ちに本件各発明Cの技術的意

5 義が低いなどとはいえない。

したがって、被控訴人の上記主張は失当である。

市場における競合品の存在について

被控訴人は、被控訴人の製造する他の製品やパナソニック株式会社(以

下「パナソニック」という。 、大東電機工業株式会社(以下「大東電機」


10 という。 等の他の競合者の製品を列挙し、
) 被告製品1及び2の販売がさ

れなかったとしても、国内及び海外の市場において、その需要は他社の

競合品に向かい、控訴人製品1及び2に向くという関係にはないから、

このような他社の競合品の存在は、2項推定の覆滅事由に該当する旨主

張する。

15 しかしながら、被控訴人が挙げる他社製品の中には、被告製品1と同

時期に販売されていたのか不明な海外向け製品、日本から海外への輸出

品とはいえない製品、被告製品2と販売時期の重なりがない国内向け製

品、価格が高額(30万円弱ないし40万円超)であるため被告製品2

と競合するとはいえないものなど、被告製品1及び2の輸出又は販売が

20 なかったとしても需要が向かないと考えられるものが含まれているから、

被控訴人の上記主張は失当である。

市場の非同一性について

a 被告製品1について

日本の特許権の効力が及ぶのは、日本の領域内のみであるから、市

25 場の同一性について問題とすべきは、日本国内から海外への譲渡・輸

出行為における控訴人製品1と被告製品1との競合であり、控訴人と


63
被控訴人がそれぞれ海外のどの国・地域に向けて製品を譲渡・輸出し

ているかは、影響しないと解すべきである。

また、控訴人は、平成23年1月1日から令和3年12月31日ま

での間、別紙14のとおり、●●●●●●●●●の海外の市場向けに、

5 「肘掛部に施療者の前腕部をマッサージする前腕部施療機構を備えた

椅子式マッサージ機」を販売しており、日本国内における海外顧客に

向けた製品の輸出・販売という市場だけでなく、仕向国(地域を含む。

以下同じ。)ごとの輸出・販売先の海外市場も共通している。

したがって、被告製品1と控訴人製品1の市場が異なるとの被控訴

10 人の主張は理由がない。

b 被告製品2について

控訴人製品2は、控訴人のホームページや家電量販店の通販サイト

等から購入できるところ、殆どの需要者は、
「マッサージ機」の購入を

検討する際、通販サイト等を利用し、その中で正規品と中古品・B級

15 品を比較し、最終的に購入する商品を決定することからすれば、通販

サイト等で控訴人製品2を購入できる以上は、被告製品2と控訴人製

品1及び2の市場は共通している。

したがって、被告製品2の市場と控訴人製品2の市場が異なるとの

被控訴人の主張は理由がない。

20 被控訴人の営業努力(ブランド力、宣伝広告)について

控訴人は、
「マッサージチェアのパイオニア的メーカー」として知られ

ていること(乙C50)、マッサージチェアの市場シェアは、控訴人、被

控訴人及びパナソニックで3分されており、平成29年以降は、控訴人

が販売台数によるシェアで約50%、販売金額によるシェアで40%超

25 を獲得していること(乙C51、C52)、被控訴人が受賞しているグッ

ドデザイン賞は控訴人も受賞しており(甲C59) 被控訴人のみがデザ



64
イン性に優れたマッサージチェアを製造販売しているとは認識されてい

ないこと、控訴人と被控訴人は、米国におけるマッサージ機市場におい

て主要な日本のマッサージ機メーカーであり、いずれも当該市場におけ

るマーケットリーダーであると位置づけられていること(甲C43) 米


5 国における被控訴人のブランド力が控訴人に比して高いということもで

きないことに鑑みると、被控訴人が自社のブランド力の根拠として列挙

する事情の多くは控訴人にも該当するものであり、2項推定を覆す程度

に、被控訴人のブランド力が高いとはいえない。

次に、被控訴人が指摘する専門家による監修や著名人による宣伝、電

10 光掲示板での広告掲載等は、控訴人を含む他のマッサージ機メーカーも

実施しており(甲C60ないしC63)、特段珍しいものではなく、通常

の広告宣伝活動の範疇を超えるものではない。

また、被控訴人は、ニューヨークのタイムズスクエアにある電光掲示

板に被告製品1の広告を掲載することについて、多額の広告費を投入し

15 ていることが格別の営業努力であるなどと主張する。

しかし、多額の費用を投じた広告宣伝が必ずしも需要者の購買動機に

結びつくとは限らないし、多くの需要者の目に触れるという点では、電

光掲示板への広告掲載はテレビCMの放映等と変わりはなく、米国にお

ける被控訴人の営業努力は通常の範囲を超えたものとはいえないから、

20 被控訴人の主張は理由がない。

被告製品1及び2の性能(機能、デザイン等本件各発明C以外の特徴)

について

被控訴人は、被告製品1に関し、デザインに関する賞を受賞している

などと主張する。

25 しかし、前記 のとおり、米国のマッサージ機市場において、控訴人

と被控訴人は共にマーケットリーダーと位置づけられており、被控訴人


65
が米国において賞を受賞していることは、米国における被控訴人のブラ

ンド力に何ら影響を与えていないこと、そもそも、需要者がマッサージ

チェアを選択する際にチェックする要素として被控訴人自らが列挙して

いる項目には、マッサージ機のデザインは含まれていないことに照らす

5 と、被告製品1のデザインには顧客吸引力は認められない。

また、被告製品1及び2が被控訴人保有の特許や意匠等の実施品であ

るとしても、そのことから直ちに2項推定の覆滅が認められるものでは

なく、当該特許や意匠等の実施が被告製品1及び2の売上げに貢献して

いることを具体的に主張立証されなければならないが、そのような主張

10 立証はされていない。

さらに、被控訴人は、本件各発明Cには顧客吸引力がないなどと主張

するが、被告製品1及び2のカタログに、本件各発明Cの構成及び作用

効果が訴求されていること、本件各発明Cが顧客吸引力を有しているこ

とは、前記 aのとおりであるから、被控訴人の上記主張は失当である。

15 エ まとめ

以上によれば、控訴人の特許法102条2項に基づく損害額は、別紙1

0の「限界利益額(消費税相当分を含む)」欄記載のとおり、合計●●●

●●●●●●●●●円である。

控訴人は、上記損害額の一部である別紙請求額一覧の表1記載の「請求

20 額内訳」欄の「被告製品1に係る損害額」欄及び「被告製品2に係る損害

額」欄記載の各金額(合計●●●●●●●●円)を請求する。

オ 推定覆滅部分に係る特許法102条3項に基づく損害額(予備的主張)

仮に控訴人主張の覆滅事由による推定の覆滅が認められる場合には、

当該覆滅部分に係る損害について特許法102条3項に基づく実施料

25 相当額の損害賠償を請求することができると解すべきである。

特許法102条3項は、自ら特許発明実施していない特許権者にお


66
いても実施料相当額の損害賠償請求を認めることを前提として、現に無

許諾で侵害品が販売されたことを損害(侵害者から得べかりし実施料

喪失)発生の基礎として捉えて実施料相当額の損害を算定する規定であ

る。

5 一方、同条2項の推定が覆滅されるのは、侵害行為がなければ特許権

者が販売することができたとする製品との因果関係であり、理論上は推

定が覆滅される部分に相応する販売数量を想定することができるから、

当該部分の数量についてライセンス機会の喪失を理由に同条3項の損害

額を請求できるとする基礎がある。特許法等の一部を改正する法律(令

10 和元年法律第3号。以下「令和元年改正特許法」という場合がある。)に

より、同条1項が改正されたが、これは、知的財産権には、権利者が自

実施すると同時に、権利をライセンスして利益を得ることができると

いう性質があることに鑑み、売上減少による逸失利益(同項1号)のみ

ならず、ライセンス機会の喪失による逸失利益(同項2号)についても

15 特許権者が受けた損害の額とすることを明確にし、従前議論のあった同

条1項と同条3項のいわゆる重畳適用を肯定したものである。この趣旨

は、同条2項と同条3項の関係にも妥当する。

特許法102条2項と同条3項との重畳適用が認められることは、覆

滅事由の内容により異なるものと解すべきではない。

20 競合品の存在、市場の非同一性、ブランド力を理由とする覆滅事由は、

侵害品に向かっていた需要が全て特許権者の製品に向かうわけではない

から、特許権者の売上減少による逸失利益が認められないことを理由と

するものであるが、他方で、現実には推定覆滅部分に係る数量分の侵害

品も販売されているのであり、その分についてはライセンス機会の喪失

25 による逸失利益を観念できる。

また、特許発明侵害品の一部のみに実施されていること、侵害品の


67
性能を理由とする覆滅事由は、需要を形成する一要因にすぎず、侵害

に向かっていた事情が全て特許権者の製品に向かうかどうかを判断する

一要素であるから、上記市場の非同一性等を理由とする覆滅事由と区別

する理由はない。

5 そして、覆滅事由ごとに特許法102条3項の適用の有無を区別する

ことは、実施料率の算定が煩雑になり妥当でない。そもそも製品の需要

形成には様々な要因が複合的に絡み合っており、覆滅事由ごとに覆滅割

合を認定して当該覆滅部分にライセンス機会の喪失による逸失利益が認

められるか否かを認定判断することは実際上困難である。

10 したがって、推定覆滅部分については全体として特許法102条3項

の適用を認めた上で、各覆滅事由に係る事情は実施料相当額の算定にお

いて考慮されるべきである。

本件においては、後記 ア と同様の理由により、推定覆滅部分に係

る被告製品1及び2の売上高に10%を乗じた額に消費税相当分を加

15 算した額を特許法102条3項に基づく損害額として請求できるとい

うべきである。

特許法102条3項に基づく損害額

ア 株式会社帝国データバンク作成の「平成21年度特許庁財産制度問題

調査研究報告書 知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方

20 に関する調査研究報告書〜知的財産(資産)価値及びロイヤルティ料率

に関する実態把握〜」(以下「本件報告書」という。甲C18、C19、

乙C39)の表V−10には、
「国内企業のロイヤルティ料率」に関する

アンケート結果として、産業分野を「一般機械」とするロイヤルティ料

率は4.2%(「各国市場料率データ・日本」)と記載されている。

25 また、表V−11には、1997年から2008年までの産業分野を

「機械」とする「司法決定によるロイヤルティ料率」は平均値4.4%、


68
中央値5.0%、最高値10%(件数25件)、表V−12には、200

4年から2008年までの産業分野を「機械」とする「司法決定による

ロイヤルティ料率」は平均値3.9%、最大値10.0%、最小値1.

0%(件数12件)と記載されている。

5 さらに、椅子式マッサージ機である被告製品1及び2は、医療機器で

あるところ、特許権の技術分野別のロイヤルティ料率では、「医療機器」

の技術分野についての実施料率は、平均5.0%、最大値14.5%と

記載されている(本件報告書の表2−2)。

ところで、前腕部施療機構を備えた椅子式マッサージ機において、前

10 腕部施療機構に前腕部をスムーズに載脱できること、前腕部の広範囲に

対する効果的・安定的なマッサージを行うことができることは顧客の商

品選択に影響する重要な要素であり、本件各発明Cは大きな価値を有す

るものであって、被告製品1及び2の売上げ及び利益への貢献が大きい。

また、控訴人は、競業者に対しライセンスを許諾しない方針を有して

15 いるから、控訴人が被控訴人に対して本件各発明Cの実施許諾を行う場

面を想定した場合、業界水準の実施料率での実施許諾を行うことはあり

得ず、極めて高い実施許諾料を設定せざるを得ない。

さらに、特許権侵害をした者に対して事後的に定められる実施料率は、

通常の実施料率に比べて自ずと高額となるべきである。

20 その他本件に現れた諸事情を総合考慮すると、上記実施料率は、10%

を下らない。

そして、前記 イ bと同様の理由により、被告製品1及び2の売上

高に10%を乗じた額に消費税相当額を加算した額を特許法102条

3項の損害額として請求できるというべきである。

25 イ 以上によれば、控訴人の特許法102条3項に基づく実施料相当額の損

害額は、別紙12の「実施料相当額(消費税相当分を含む)」欄記載の合計


69
●●●●●●●●●●●円である。

弁護士費用

被控訴人による本件特許権Cの侵害相当因果関係のある弁護士費用相

当の損害額は、特許法102条2項に基づく損害額に係る請求との関係では、

5 別紙請求額一覧の表1の「弁護士費用相当額」欄記載のとおり、合計●●●

●●●●円が、同条3項に基づく損害額に係る請求との関係では、同別紙の

表2の「弁護士費用相当額」欄記載のとおり、合計●●●●●●●●●円が

相当である。

消滅時効の主張に対し

10 被控訴人は、平成27年4月12日以前の本件特許権Cの侵害に係る不法

行為に基づく損害賠償請求権について、本件訴訟の提起時点(平成30年4

月13日)で、平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前

民法」という。)724条前段所定の消滅時効が完成していた旨主張する。

しかしながら、被告製品1及び2の取扱説明書には各製品の斜視図しか記

15 載されておらず(甲7、8)、その記載から、肘掛部の構成、肘掛部におけ

る膨縮袋の止着態様、リクライニング動作を理解することはできないことか

らすると、被告製品1及び2は、実機を購入しない限り、本件各発明Cの技

術的範囲に属するかどうかを把握することはできない。

しかるところ、控訴人は、被控訴人による別件訴訟の提起(平成29年7

20 月31日)を契機として本件訴訟提起の準備を開始し、その際に、被告製品

1を購入して初めて被告製品1及び2が本件各発明Cの技術的範囲に属する

ことを認識した。

そうすると、控訴人は、それ以前に本件特許権Cの侵害に係る「損害」及

び「加害者」を知っていたとはいえないから、本件訴訟提起の時点では、控

25 訴人の被控訴人に対する本件特許権Cの侵害に係る不法行為に基づく損害賠

償請求権の消滅時効が完成していなかった。


70
したがって、被控訴人の上記主張は理由がない。

不当利得返還請求(予備的請求関係)

仮に平成27年4月12日以前の損害に係る不法行為に基づく損害賠償

請求権について被控訴人主張の消滅時効の成立が認められる場合、控訴人は、

5 法律上の原因なく、実施料相当額(特許法102条3項に基づく実施料相当

額)の利益を受け、控訴人に同額の損失を及ぼしたものである。

したがって、控訴人は、被控訴人に対し、不当利得返還請求権に基づき、

別紙13の「不当利得額」欄記載の●●●●●●●●●●●円の支払を求め

ることができる。

10 小括

控訴人は、被告製品1及び2について特許法102条2項に基づく損害額

(前記 )又は同条3項に基づく損害額(前記 )のいずれか認容額の高い

方を本件特許権Cの侵害不法行為に基づく損害額として選択的に主張する。

また、仮に平成27年4月12日以前の損害に係る不法行為に基づく損害

15 賠償請求権について被控訴人主張の消滅時効の成立が認められる場合には、

当該損害に係る部分の予備的請求として、不当利得返還請求(前記 )をす

る。

よって、控訴人は、被控訴人に対し、@本件特許権Cの侵害不法行為

基づく損害賠償請求権に基づき、損害額の一部である15億円及び別紙請求

20 額一覧の表1の「請求額」欄記載の各金員に対する「遅延損害金起算日」欄

記載の各日から支払済みまで「遅延損害金利率(年)」欄記載の各割合による

遅延損害金の支払(前記 )を、又は選択的に、●●●●●●●●●●●円

及び別紙請求額一覧の表2の「請求額」欄記載の各金員に対する「遅延損害

金起算日」欄記載の各日から支払済みまで「遅延損害金利率(年)」欄記載の

25 各割合による遅延損害金の支払(前記 )を、A@の平成27年4月12日

以前の損害に係る部分の予備的請求として、不当利得返還請求権に基づき、


71
別紙13の「不当利得額」欄記載の●●●●●●●●●●●円及びこれに対

する平成30年4月26日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで改正前

民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(前記 )を求める。

(被控訴人の主張)

5 ? 特許法102条2項に基づく損害額の主張に対し

ア 特許法102条2項の不適用

特許権の侵害により特許権者に損害が発生していることが、特許法1

02条2項の適用要件であり、特許権者に損害が発生しているというた

めには、特許権者に、侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利

10 益が得られたであろうという事情が存在する必要がある。

そして、かかる事情が存在するというためには、特許権者が特許発明

実施品に相当する製品、すなわち当該特許の作用効果と同様の作用効

果を奏する代替競合品(侵害品と市場で販売時期が重なるもの)であっ

て、かつ、侵害主張をする相手方の特許権を侵害しない製品を販売して

15 いることを必要とすると解すべきである。

また、仮に特許権者の製品が当該特許の作用効果と同様の作用効果を

奏する代替競合品に当たらない場合には、市場が侵害品と特許権者の製

品に二分されているような特殊な事情があることを必要とすると解すべ

きである。

20 a 被告製品1について、被控訴人は、国ごとに当該国所在の被控訴人

とは別法人の代理店から注文を受け、当該代理店に輸出しており、輸

出後の販売は、当該代理店のそれぞれが独立した行為として行ってお

り、被控訴人は関与していない。

また、被告製品2は、平成22年3月に生産を終了し、終了後は、

25 家電量販店での販売は行われず、本件特許権Cの設定登録日(平成2

3年11月25日)以降は、B級品」
「 や処分品として販売されていた。


72
そして、控訴人製品2のうち、AS−760、AS−1000、A

S−1100は、被告製品2と販売時期が異なるから、いずれも被告

製品2の代替競合品とはいえない。

b 控訴人製品1及び2の前腕施療機構の構成は、内側立上り壁のない

5 コ字状の肘掛部又は肘掛部の左右全域にわたって一対の内側立上り壁

が設けられ、凹状に形成された肘掛部であり(甲C3ないしC17)、

控訴人製品1及び2は、いずれも本件各発明Cと同様の作用効果を奏

する製品ではない。

また、控訴人製品1及び2は、本件出願Cの出願前から販売されて

10 いた肘掛部に前腕部をマッサージする前腕施療機構のある周知な構成

の製品にすぎず(乙C206ないしC211等)、市場が、被告製品1

及び2と控訴人製品1及び2に二分されているような状況にはなかっ

た。

控訴人製品1のうち、EC−2700、EC−2800、EC−37

15 00、JP−1000、JP−1100、Premium4S及び控訴

人製品2は、いずれも被控訴人保有の別件特許2又は別件特許3の侵害

品であるから、本来であれば販売も輸出もできなかった製品である。

そうすると、これらの製品は、市場で自由に販売できるものではなく、

被告製品1及び2の輸出又は販売がなければ、輸出又は販売できたであ

20 ろうという関係性はないから、代替競合品であるとはいえない。

したがって、本件においては、特許法102条2項は適用されない。

イ 被控訴人の利益(限界利益)

売上高

a 控訴人主張の被告製品2の売上高、被告製品1及び2の各販売数量

25 は、いずれも認めるが、被告製品1の売上高は否認する。

b 被控訴人は、被告製品1について、米国の販売代理店と被控訴人間


73
の覚書(乙C130)に基づいて、●●●●●●●●●●●●●●●

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

●●●●●●●●●●●●●●(乙C131ないしC134) かかる


5 費用は、販売価格の実質的な値引きに当たる。

また、被控訴人は、被告製品1について、海外の代理店に輸出販売

する際、販促目的で、販売単価に販売数量を乗じた売上げから製品1

台当たり「マーケティングサポート費用」名目での値引きを行ってお

り、海外の代理店からは、値引き後の代金の支払を受けている(乙C

10 46、C47、C131、C136等)。

したがって、被告製品1の売上高には、
「部品費等」及び「マーケテ

ィングサポート費用」は含まれないと解すべきであり、これらは、別

紙8の「売上高」欄の「被告製品1」欄記載の金額から控除すべきで

あるから(控除額の内訳は、乙C47の末尾添付の「値引きの内訳」

15 のとおり)、被告製品1の売上高は、別紙11の「売上高」欄の「被告

製品1」欄記載のとおり、合計●●●●●●●●●●●●円となる。

経費

被告製品1及び2の輸出又は販売に直接関連して追加的に必要となっ

た経費は、以下のとおりである(乙C129、C205、C273)。

20 a 被告製品1 合計●●●●●●●●●●●●円

@ 仕入(上海買入)費用 ●●●●●●●●●●●●円

A 材料費 ●●●●●●●●●●●円

B 製造ロス費 ●●●●●●●●円

C 大山工場組立費用 ●●●●●●●●●●●円

25 D 製造物流費 ●●●●●●●●●●●円

E デザイン費用 ●●●●●●●●円


74
F 歩積金 ●●●●●●●●●円

G WEEE ●●●●●●●●●円

H 認証 ●●●●●●●●●円

I 商標登録等 ●●●●●●●●円

5 J L/C ユーザンス ●●●●●●●●●円

b 被告製品2 合計●●●●●●●●●円

@ 仕入(上海買入)費用 ●●●●●●●●●円

A 材料費 ●●●●●●●●円

B 製造ロス費 ●●●●●●円

10 C 大山工場組立費用 ●●●●円

D 製造物流費 ●●●●●●●円

E デザイン費用 ●●●●●●●円

F 配送費用及び組立費用 ●●●●●●●●円

c 補足説明

15 被告製品1及び2関係

B 製造ロス費

製造過程で一定数の不良品の発生が避け難いことから、一定割

合の金額を経費として計上しているものであり、製造原価の一種

である。

20 C 大山工場組立費用

仕掛品に部品を組み立てて完成するための人件費であり、一定

額の加工費レートに対し、製品ごとにあらかじめ定まる組み立て

に要する時間を乗じて算出している。

E デザイン費用

25 被告製品1及び2のプロダクトデザインを有名デザイナーで

あるAに外注した費用である。デザイン費用は、被告製品1及び


75
2のそれぞれの本社仕切価格に対して、予め合意した料率を乗じ、

算出されている。

? 被告製品1関係

F 歩積金

5 製品の販売地域における営業活動・販促活動等の諸費用に充て

ることを目的とする費用であって、米国FDA(米国食品医薬品

局)における登録更新費用、香港における広告費用・サービスセ

ンター設置に係る費用、EU低電圧指令による取扱説明書の言語

追加費用、米国向け製品の不具合対応費用、米国及びドイツ向け

10 製品に搭載した「モーター」
「プーリー」を販売代理店に供給する

費用に充てられている(乙C140ないしC145、C173な

いしC183)。

G WEEE

電気電子機器廃棄物の再利用やリサイクルに要する費用(英国

15 での登録・更新費用等)であって、製品単価に上乗せして回収し

ている(乙C140ないしC145、C187ないしC190)。

H 認証

輸出先の国における認証(CD−LVD認証、CD−EMC認

証、cTUYus認証)を受けるために要した費用である(乙C

20 141ないしC145、C193ないしC196)。

I 商標登録等

輸出先の国における商標や特許、意匠の出願・登録・維持等に

要する費用である(乙C140ないしC145、C197、C1

98)。

25 J L/Cユーザンス

海外代理店等との間における信用状取引(L/C(Lette


76
r of Credit)決済)の銀行手数料(信用状確認手数料、

信用状通知手数料)である(乙C140ないしC145、C19

9、C200、C202、C204)。

限界利益額

5 a 被控訴人が被告製品1の輸出により受けた利益額(限界利益額)は、

別紙11の「限界利益額」欄の「被告製品1」欄記載のとおり、前記

bの売上高から前記 aの経費を控除後の合計●●●●●●●●●

●●●円である。

一方、被告製品2については、同別紙の「限界利益額」欄の「被告

10 製品2」欄記載のとおり、前記 aの売上高から前記 bの経費を控

除すると、マイナスとなるから、被告製品2の国内販売に係る利益額

(限界利益額)は、ゼロである。そうすると、被控訴人は、被告製品

の販売により「利益」
(特許法102条2項)を受けているといえない

から、被告製品2の国内販売に係る損害については、同項を適用する

15 ことはできない。

b この点に関し、控訴人は、消費税法基本通達5−2−5柱書及び

によれば、無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無体財産


権の権利者が収受する損害賠償金」は、資産の譲渡等の対価に該当す

るものとされていることからすれば、特許法102条2項の「侵害

20 為により利益を受けているとき」にいう「利益」には消費税額相当分

も含まれると解すべきである旨主張する。

しかしながら、輸出取引については消費税が免除されているところ

(消費税法7条1項1号) 被告製品1は輸出製品である。
、 被控訴人は、

被告製品1の輸出による販売に関し、そもそも販売先(海外販売代理

25 店)から消費税相当額を収受していない。

また、消費税は、課税事業者に対して、年度末で締めて、翌年の通


77
知される納税時期に、その課税売上高に対して課された消費税と材料

仕入れ等により支払った消費税を相殺し、相殺後の差額を課税事業者

が納付する制度であり、販売先から当該販売金額に応じて収受した消

費税相当額は、課税事業者の利益になることが制度上予定されている

5 性質のものではないし、消費税相当額は、侵害者が不法行為により得

た利益でもない。

さらに、上記基本通達は、単に損害賠償金を受け取った者に対して

消費税の納税義務が発生することを説明したものにすぎず、仮に控訴

人が本件訴訟に係る損害賠償金について納税義務を課せられるとして

10 も、納税義務が発生するのは、損害賠償金の受領時以後のことであり、

不法行為の発生時ではない。

したがって、消費税相当額は、特許法102条2項の「侵害の行為

により利益を受けているとき」にいう「利益」に含まれると解するこ

とはできないから、控訴人の上記主張は理由がない。

15 ウ 推定覆滅事由

控訴人主張の2項推定は、以下のとおりの覆滅事由により、全部覆滅さ

れる。

特許発明が被告製品1及び2の部分のみに実施されていること

a 被告製品1及び2は、いずれもマッサージ機能を有する背もたれ、

20 座、上腕ユニット、前腕ユニット、フットレストから構成され、肩、

背、腰、腕(上腕及び前腕)、脚(ふくらはぎ及び足裏)を対象として

マッサージを行う椅子式マッサージ機である(甲7、8)。

しかるところ、本件各発明Cは、椅子式マッサージ機のうち、
「前腕

部をマッサージする前腕施療機構」に関する発明であり、マッサージ

25 の対象となる部位は、前腕部のみに限定されており、しかも、本件各

発明Cの技術的意義は、前腕部に関する構造及び作用効果に限定され


78
ているから、本件各発明Cは、被告製品1及び2の部分のみに実施

れている。

b 本件明細書Cには、本件発明C−1及びC−2は、施療者の肘関節

付近にまで内側立上り壁が形成されていること及び肘掛部の前端部の

5 上面部が開口されていることという従来技術の構成の有する課題【0


005】ないし【0017】、図18ないし20)に対し、@前腕部施

療機構におけるスムーズな前腕部の載脱が可能となり、施療者が起立

及び着座を快適に行う事ができる 【0013】 、
( ) A着座した施療者が

立ち上がる際、或いは着座する際において、前記内側立上り壁による

10 前腕部内側の摺擦を回避しながら手掛け部に体重を掛けて行うことが

できる(【0014】 、B空洞部において、各膨縮袋により施療者の手


部を上下に挟圧するマッサージを実施する事ができる(【0015】 、


C空洞部の後方位置に設けられた外側立上り壁及び底面部でL型に形

成された前腕挿入開口部でも前腕部に対するマッサージを実施する事

15 ができる(【0016】)という作用効果を奏することが記載されてい

る。

一方で、本件発明C−1及びC−2の@ないしCの作用効果は、本

件出願Cの出願前の公知技術である乙C19記載の構成【0073】
( 、

図16、17、20)によって奏すること、本件発明C−1及びC−

20 2と乙C19記載のマッサージ機とは、本件発明C−1及びC−2が

前腕を含まない手部に「内側立上り壁」の構成を有するのに対し、乙

C19記載のマッサージ機が上記構成を有していないという点でのみ

相違するが、この「内側立上り壁」の構成は、上記@ないしCの作用

効果とは関係がなく、技術的価値ないし技術的意義はほとんどない。

25 控訴人自身も、本件各発明Cの実施品を販売しておらず、乙C19記

載のマッサージ機と同じ「コ」の字状の肘挿入用溝を有する製品又は


79
「凹」の字状の肘挿入用溝を有する製品を販売しているにとどまる。

したがって、本件発明C−1及びC−2の@ないしCの作用効果は、

顧客吸引力を有するものではなく、本件各発明Cの技術的意義は、公

知技術と差がない。

5 c 需要者が椅子式マッサージ機を選択するに当たり着目する要素は、

@マッサージ機能、A便利な機能や装備、Bサイズや重量等である(乙

C50)。

@のマッサージ機能は、例えば、部位(自分がマッサージしたい部

位に対応した製品であるか) もみ位置自動調整
、 (使用者の体格に合わ

10 せて、もみ玉やローラーの位置を自動調整する機能があるか) 自動コ


ース数(疲労回復、リラックス、ストレッチなど、使用者の目的に合

わせてマッサージメニューを組み合わせた自動コースを何種類搭載し

ているか)である。

Aの便利な機能や装備は、例えば、フットレスト付き(脚部のマッ

15 サージ機能を備えているか) 電動リクライニング
、 (リラックスした姿

勢でマッサージを受けるため、背もたれの角度を電動で変えることが

できる機能を備えているか) リモコン収納
、 (子どものいたずらや誤操

作を防ぐために、付属のリモコンをひじかけなど本体に収納できるか)、

キャスター(重量のあるマッサージ機でもスムーズに移動できるよう

20 に、チェアの下に車輪が備わっているか)、タイマー(使いすぎを防ぐ

ため、マッサージの時間を指定して、指定した時間が経過すると自動

で電源がオフになる機能があるか) 液晶パネルリモコン
、 (稼働状態な

どを表示する液晶パネルを搭載しているか) 折りたたみ収納
、 (大型の

マッサージ機を省スペースで収納するため、背もたれなどを折りたた

25 んでコンパクトに収納できるか) ヒーター機能
、 (寒い季節でも快適に

マッサージ機を使用できるように、マッサージ機本体を電熱で暖める


80
ことができるか)である。

Bのサイズや重量は、例えば、マッサージチェアはサイズが大きく

なるので、設置場所や保管場所のスペースに合わせて、最適なサイズ

や重量がどのようなものかである。

5 これらの要素は、本件各発明Cの作用効果とは関係がないから、本

件各発明Cは、被告製品1及び2の購買動機の形成に寄与していない。

d 以上のとおり、本件各発明Cは被告製品1及び2の部分のみに実施

されており、また、本件各発明Cには顧客吸引力を有する作用効果が

なく、被告製品1及び2の購買動機の形成に寄与していないから、本

10 件各発明Cが被告製品1及び2の部分のみに実施されていることは、

2項推定の覆滅事由に該当する。

市場における競合品の存在

a 株式会社矢野経済研究所の調査によると、国内のマッサージチェア

の市場規模は、平成28年(2016年)時点において、出荷台数ベ

15 ースで約43万台、金額ベースで約567億円であり、控訴人、パナ

ソニック、大東電機及び被控訴人の4社が、出荷台数で78.1%、金

額ベースで82.6%のシェアを占めていた(乙C51)。また、平成

26年度(2014年度)から令和元年度(2019年度)にかけて、

販売台数ベースで約10万台から約5万台、金額ベースで約240億

20 円から約130億円で推移し、控訴人が販売台数ベースで31.6%

から52.8%、金額ベースで33.0%から43.9%のシェアを、被

控訴人が販売台数ベースで16.5%から33.5%、金額ベースで2

2.6%から31.9%のシェアを、パナソニックが販売台数ベース

で24.1%から34.8%、金額ベースで30.9%から40.0%の

25 シェアを占め、控訴人が占めるシェアと拮抗していた(乙C52)。

b 控訴人以外の多くのメーカー(パナソニック等)は、本件出願Cの


81
出願前から、国内市場において、控訴人主張の競合品である「肘掛部

に前腕部をマッサージする前腕施療機構を備えている椅子式マッサー

ジ」コの字状の肘挿入用溝を有する製品又は凹の字状の肘挿入用溝を


有する製品)を製造販売し、また、海外にも輸出している(乙C79

5 ないしC81等)。特に、米国では、「肘掛部に前腕部をマッサージす

る前腕施療機構を備えている椅子式マッサージ」として、控訴人及び

被控訴人のほかに、控訴人の別会社であるLITEC久工及びDr.

Fuji(10機種)、大崎マッサージチェア(控訴人がOEM供給)

(39機種)、パナソニック(6機種)、フジタ(Fujita)
(12

10 機種)、インフィニティ(Infinity)
(19機種)、KYOTA

(5機種)の製品も販売されており、被告製品1と販売期間の重なる

「肘掛部に前腕部をマッサージする前腕施療機構を備えている椅子式

マッサージ」製品に占める控訴人製品1及び2の割合は94機種中7

機種にすぎない(甲C39ないしC41、C43、乙C268等)。

15 したがって、仮に被告製品1及び2が販売されなかったとしても、

国内及び海外の市場において、消費者、取引者(海外の代理店を含む。)

の需要は、他社の競合品に向くことは明らかであり、控訴人製品1及

び2に向くという関係性はないから、このような他社の競合品の存在

は、2項推定の覆滅事由に該当する。

20 市場の非同一性

a 被告製品1について

被告製品1は、輸出品であり、海外の市場で需要があるからこそ、

日本での輸出及びそれに伴う販売があることからすると、被告製品1

の市場は、海外の市場である。

25 仕向国に対する輸出は、当該仕向国の仕様の製品として輸出され、

電圧仕様が各国で異なるほか、製品に必要な認証や許可も各国で異な


82
り(例えば、乙C239ないしC244)、現地のメーカーの競合品の

販売状況も異なること、被控訴人が被告製品1の輸出により受けた利

益は、輸出先の仕向国の市場機会を利用したものであることからする

と、被告製品1と控訴人製品1の市場の同一性の範囲は、仕向国ごと

5 に考えるべきである。控訴人の主張するような日本国内限りで完結し

た仕向国の国枠を外した海外全般の輸出市場なるものは存在しない。

そして、控訴人主張の別紙14によれば、控訴人製品1については、

仕向国に1桁又は2桁の台数しか輸出実績のないような製品が多く、

また、被告製品1の仕向国と一部は共通するが、異なる国も多い。

10 このように被告製品1の仕向国と控訴人製品1の仕向国が異なる

ことは、市場が同一でないこと、すなわち、市場で競合しないことを

意味するから、2項推定の覆滅事由に該当する。

b 被告製品2について

被告製品2は、もともと家電量販店において販売されていた製品で

15 あるが、平成22年3月に生産を終了し、終了後は、家電量販店での

販売は行われず、本件特許権Cの設定登録日(平成23年11月25

日)以降は、被控訴人の自社の通販サイトで、
「B級品」や処分品とし

て、大幅に値引きして販売されていた。一方、控訴人製品2は、家電

量販店を主要な販売先とするものであり、被告製品2とは市場が異な

20 る。

このように被告製品2の市場と控訴人製品2の市場が異なること

は、2項推定の覆滅事由に該当する。

被控訴人の営業努力(ブランド力、宣伝広告)

被控訴人は、マッサージチェア業界を長年にわたり牽引してきた老舗

25 であり、トップクラスのシェアを競う業界のリーディングカンパニーで

あって、そのブランド力が確立されている(乙C50ないしC52、C


83
61)。特に、米国における被控訴人のブランド力は、絶大であり、被控

訴人の製品(「Inada chair」)は、様々な賞を受賞している

(乙C65ないしC68) 米国への被告製品1の輸出は、
。 被控訴人のブ

ランド力によるところが大きい。

5 また、被控訴人は、著名な鍼灸師の監修を受けたり、コラボ商品を販

売したり、タレントを起用した宣伝をしたり、店頭で特別の説明員が付

き添うなど、被告製品1及び2を含む被控訴人取扱製品について独自の

宣伝広告を行ってきた(乙C63、C64、C70等)。例えば、米国で

は、平成26年9月にニューヨークのタイムズスクエアにある電光掲示

10 板(Thomson Reuters Building)で被告製品

1の広告画像を大撮するなど(乙C69)、巨額の広告費を投じ(乙C1

61) 強力な宣伝広告活動を展開してきた。
、 このように被告製品1に関

しては、競業他社にはできない格別の営業努力を行ってきた。

被告製品1及び2の輸出又は販売には、被控訴人独自のブランド力や

15 通常の範囲を超えた宣伝広告が寄与しているから、かかる控訴人の営業

努力は、2項推定の覆滅事由に該当する。

被告製品1及び2の性能(機能、デザイン等本件各発明C以外の特徴)

a 被告製品1は、ボタンをクリックするだけで、16の異なる事前に

プログラムされたマッサージコース、操作が簡単で、操作に手動が必

20 要な複雑なリモコンのない簡便さや、世界的に有名なデザイナーAの

協力による受賞歴のあるデザイン、特に独自の身体スキャン技術で体

を測定し、指圧点を検知してユーザ自身の背中の形状に合わせたマッ

サージ機能(乙C40)などが、訴求ポイントとなっている。

また、被控訴人は、被告製品1の訴求ポイントに係る特許を多数保

25 有し(乙C222ないしC238)、さらには、被告製品1のデザイン

は多数の国で意匠登録されており(乙C213ないし221) デザイ



84
ンが優れていることが輸出に貢献している。

一方で、被告製品1のカタログには、本件各発明Cの特徴である内

側立上り壁の存在によるアームレストの機能や構成に関する記載はな

く、本件各発明Cの作用効果は、被告製品1の顧客吸引力に寄与して

5 いない。

b 被告製品2は、
「手技・指圧ひきもみ機能」「フルアーム機能」「全
、 、

身ストレッチ機能」 「新ゆらぎ機能」 「ヤングプログラム」の新機能
、 、

やデザイン性、特に体型により異なる指圧ポイントを光センサーで自

動的に検索し各部位の筋肉と指圧ポイントを効果的に施療するメディ

10 カルプログラム、シーソー式4つ玉ユニット&超スローシステムやブ

ランコ式エアー押し出しメカによるマッサージ機能(乙C54)が、

訴求ポイントとなっている。被控訴人が被告製品2の訴求ポイントに

係る特許を多数保有していること、被告製品2のデザインが優れてい

ることが被告製品2の販売に貢献していることは、被告製品1と同様

15 である。

一方で、被告製品2のカタログには、本件各発明Cの特徴である内

側立上り壁の存在によるアームレストの機能や構成に関する記載はな

く、本件各発明Cの作用効果は、被告製品2の顧客吸引力に寄与して

いない。

20 c したがって、前記a及びbの被告製品1及び2の性能(機能、デザ

イン等本件各発明C以外の特徴) 2項推定の覆滅事由に該当する。
は、

まとめ

以上のとおりの覆滅事由により、2項推定は全部覆滅されるというべ

きである。仮に2項推定の覆滅が一部にとどまるとしても、その覆滅割

25 合は99.5%ないし99.9%である。

エ 推定覆滅部分に係る特許法102条3項に基づく損害額(予備的主張)


85
について

特許法102条1項2号は、特許権者の実施相応数量を超える数量又

は特定数量について、別途ライセンスが観念できる場合には実施料相当

額を特許権者の損害として認めている。同項において、特許権者が自己

5 実施できたと推定される部分(1号)とは別にライセンスをし得た部分

(2号)とを区別し観念できるのは、同項が、侵害者の販売する「数量」

に基づいて、権利者の逸失利益に係る損害額を算定する方法を採用して

いるからにほかならない。すなわち、当該損害額算定の評価の枠組みか

ら漏れた数量部分につき、権利者が自己実施とは別にライセンスをし得

10 たという余地があるので、同条3項の重畳適用を許したにすぎない。

他方、同条2項は、侵害者の「利益」を権利者の逸失利益と推定する

損害額算定方法をとっており、同項の推定が覆滅されるのは、最終計算

の結果としての損害額であり、計算過程の途中数値である侵害品の数量

の一部が計算の基礎から除かれるわけではない。

15 したがって、同項の推定を覆滅する過程において、権利者のライセン

スの機会の喪失による逸失利益をも含む全ての逸失利益が評価し尽され

ているというべきであるから、推定覆滅部分に対して同条3項を適用す

ることは、権利者の損害の二重評価となり、許されない。

同条1項2号が新設された令和元年改正特許法において、同条2項に

20 ついて実施料相当額の損害が明文において規定されなかったのは、この

ような趣旨によるものと解される。

仮に推定覆滅部分について特許法102条3項の重畳適用が認めら

れる場合が理論的にあり得るとしても、推定覆滅部分全てに一律に重畳

適用が肯定されるべきではなく、覆滅事由の内容を踏まえて、権利者が

25 ライセンスをし得たか否か(ライセンス機会があったか否か)という同

項の重畳適用の基礎があるか検討する必要がある。実施能力を理由とす


86
る数量的な推定覆滅部分については同条3項の重畳適用の基礎がある

としても、それ以外の推定覆滅部分については同項の重畳適用の基礎は

ない。

そして、本件の覆滅事由に係る推定覆滅部分については、以下のとお

5 り、本件特許権Cのライセンスをし得たと解する余地はないから、重畳

適用は認められない。

a 「特許発明侵害品の部分のみに実施されていること」を覆滅事由

とする推定覆滅部分は、特許発明が貢献又は寄与していない部分であ

るから、そもそも特許権の保護範囲に含まれず、特許権者がライセン

10 スをし得たものとはいえない。当該部分について特許法102条3項

の重畳適用を認めることは、特許権の保護範囲外の損害を認めること

になり、損害填補の趣旨に反するものである。

b 「市場における競合品の存在」を覆滅事由とする推定覆滅部分は、

侵害品が存在しない場合において、当該侵害品に向かっていた需要は、

15 特許権者の製品ではなく、他社の競合品へ向かっていたと考えられる

部分である。そもそも、当該他社に対するライセンスの機会というの

は、このようなライセンスを特許権者が現実に行っていれば、競合の

程度問題として覆滅事由において評価されている事項である。競合品

が存在したことを覆滅事由とする推定覆滅部分には、権利者において、

20 ライセンスを現実に行う余地はないため、ライセンス機会はない。

c 「市場の非同一性」を覆滅事由とする推定覆滅部分は、被告製品1

については、海外市場で被告製品1(海外輸出製品)の販売がなかっ

たならば、控訴人において逸失利益が生じていたであろうという事情

がないことによるものである。すなわち、輸出に際して海外市場の事

25 業者から受け取る対価は、あくまで海外市場に基づく利益であり、こ

のような海外市場における利益まで特許法102条2項の推定が及ぶ


87
ものと解し、日本国内の特許権に基づいて独占することは、特許権の

保護範囲を逸脱しており、法が予定していないものである。海外市場

における販売をも見据えて(仕向国で対応特許権を登録取得しておく

など対応を行い) 仕向国における特許権に基づきライセンスする場合


5 はあっても、日本国の特許権に基づいて当該仕向国への輸出行為のみ

を切り取り、ライセンスする場合は現実に考え難く、ライセンスによ

実施料相当額の得べかりし利益を得られなかったとは言い難い。

d 「被控訴人の営業努力(ブランド力、宣伝広告)」を覆滅事由とする

推定覆滅が認められるためには、通常の範囲を超える格別の工夫や営

10 業努力をしたという程度まで達する必要があり、このような営業努力

は特許権の保護範囲に含まれないから、推定覆滅が認められた以上は、

当該推定覆滅部分は、特許法102条2項において評価し尽されると

いうべきである。

したがって、仮に侵害者に対してライセンスがされていればその実

15 施料相当額について侵害者に支払義務があることを前提としても、当

実施料相当額は同条3項のみの適用によって評価され、同条2項と

3項が重畳適用されることはないものと解するのが相当である。

e 「被告製品1及び2の性能(機能、デザイン等本件各発明C以外の

特徴) を覆滅事由とする推定覆滅部分は、
侵害品において特許権者の

20 特許発明以外の性能が優れており、これにより製品の付加価値が上が

り、他の製品よりも利益を乗せて売ることができたという部分であり、

当該部分は、特許権の保護範囲に含まれないから、特許法102条

項と3項の重畳適用を認める合理性はない。

仮に本件において特許法102条3項の重畳適用が認められる推定

25 覆滅部分があるとしても、当該推定覆滅部分に係る実施料率は、後記

と同様の理由により、0.5%に満たないというべきである。


88
特許法102条3項に基づく損害額の主張に対し

控訴人の主張は争う。

椅子式マッサージ機に関する特許は、民生品に関するものであるから、そ

実施料率は、医療機器の分類中の最小値付近(例えば、本件報告書の表2

5 −2記載の最小値0.5%)と捉えるのが合理的である。

加えて、前記 ウ で述べたように、本件各発明Cの技術的意義が乏しい

こと、本件各発明Cの作用効果は、公知技術により既に奏していたものであ

り(控訴人主張の「前腕部施療機構を備えた椅子式マッサージ機において、

前腕部施療機構に前腕部をスムーズに載脱できること、前腕部の広範囲に対

10 する効果的・安定的なマッサージを行うことができること」との作用効果も、

これと同様である。 、
) 本件各発明Cの特徴的構成部分である「内側立上り壁」

を備えることによる技術的な作用効果は皆無であるから、他の競合品による

代替可能性も高いこと、本件各発明Cの特徴的構成部分及び作用効果の被告

製品1及び2の売上げ及び利益に対する貢献度も皆無か又は極めて乏しいこ

15 となどに鑑みると、特許法102条3項に基づく損害額の算定の基礎となる

実施料率は、0.5%にすら満たないというべきである。

弁護士費用について

控訴人の主張は争う。

消滅時効

20 ア 控訴人の被控訴人に対する平成27年4月12日以前の本件特許権Cの

侵害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権は、本件訴訟の提起時点(平

成30年4月13日)で、控訴人が損害及び加害者を知った時から、3年

の消滅時効期間が経過していたから、改正前民法724条前段所定の消滅

時効が完成していた。

25 すなわち、@被告製品1及び2の販売や機能に関する情報は、被控訴人

のウェブサイトで閲覧又はダウンロードできるカタログや取扱説明書の


89
ほか、家電量販店などにおける販促活動、その他の宣伝広告活動(カタロ

グ)によって、誰でも容易に知り得る情報であること、A控訴人と被控訴

人は、マッサージ機業界においてシェア上位を競い合う競業者であり、互

いの製品の動向(構造、機能等)に常に関心を有しており、平成21年か

5 ら平成24年頃にも、多数のマッサージ機、多数の特許権を対象として複

数の特許権侵害訴訟や特許無効審判等を経験した関係にあることからす

ると、控訴人が、被控訴人の新製品動向やその機能に関し、逐次に調査検

討していたといえること、B控訴人が平成28年12月9日に被控訴人に

対しクロスライセンスの対象として提示したリスト(乙C43の2)及び

10 控訴人が被控訴人に送付した平成29年1月31日付け「知的財産の取り

扱いについて」と題する書面(乙C44)において、本件特許Cが挙げら

れていたことからすると、控訴人がその当時被告製品1及び2について本

件各発明Cの技術的範囲の属否について検討していたことは明らかであ

ること、C控訴人が、平成20年5月に被告製品2の製造、販売等が開始

15 されてから僅か5か月後に、本件出願Cの出願(分割出願)をしたことは、

控訴人が被告製品2の発売の事実を知って、これを技術的範囲に含めるよ

うに特許請求の範囲を設定して本件出願Cの出願(分割出願)をしたこと

が推察されることを総合すると、控訴人は、被告製品1及び2の製造、販

売、輸出の開始後まもない頃、被告製品1及び2の製造、販売、輸出等の

20 事実及びその構造・機能等を認識し、被告製品1及び2が本件各発明Cの

技術的範囲に属することを認識していたというべきであるから、控訴人の

被控訴人に対する本件特許権Cの侵害に係る不法行為に基づく損害賠償

請求権は、本件訴訟の提起時点(平成30年4月13日)で、控訴人が損

害及び加害者を知った時から3年の消滅時効期間が経過し、消滅時効が完

25 成していた。

イ 被控訴人は、令和4年8月23日の当審第1回弁論準備手続期日におい


90
て、控訴人に対し、控訴人の被控訴人に対する平成27年4月12日以前

の本件特許権Cの侵害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権について、

消滅時効援用した。

不当利得返還請求(予備的請求)の主張に対し

5 控訴人の主張は争う。

第4 当裁判所の判断

1 争点1−1(被告製品1ないし8の本件発明Aの技術的範囲の属否)につい

て(本件特許A関係)

? 本件明細書Aの記載事項について

10 ア 本件明細書A(甲2)には、次のような記載がある(下記記載中に引用

する図1ないし6については別紙2を参照)。

【技術分野】

【0001】

本発明は椅子式施療装置に係り、特に利用者の腰を施療するのに好適

15 な椅子式施療装置に関する。

【背景技術】

【0002】

椅子式施療装置は、座部と、この座部の後部にリクライニング可能に

取り付けられた背凭れとを備え、利用者は、この椅子式施療装置に腰掛

20 けた状態で施療行為を受けることができる。このような椅子式施療装置

において、座部には、腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻を

マッサージする尻用エアバッグが設けられ、また背凭れには、首・肩を

マッサージする首・肩用エアバッグ、背中をマッサージする背中用エア

バッグ、および腰をマッサージする腰用エアバッグが設けられ、これら

25 各エアバッグを膨縮させて利用者の各部位に対してマッサージを行うよ

うになっている(・・・)。


91
【発明が解決しようとする課題】

【0003】

しかしながら、上記従来の技術では、腰用エアバッグは背凭れに固定

され、上下方向に高さ位置を調整することができない構成であるため、

5 例えば体格の小さな利用者が座った場合、その利用者の腰の位置と腰用

エアバッグの位置とが一致せず、利用者は腰とは異なる部位(例えば、

腰よりも上部の背中側)をマッサージされることになり、意図する部位

に十分なマッサージを受けることができない。

【0004】

10 本発明の課題は、腰部に対してマッサージによる十分な施療を行うこ

とのできる椅子式施療装置を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0005】

上記課題を解決するために、本発明では、尻用エアバッグを膨らませ

15 て利用者の腰の高さ位置を調整できるようにした。例えば、本発明は、

座部と、該座部の後部に取り付けられた背凭れとを備え、前記座部には、

腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻をマッサージする尻用エ

アバッグのうち、少なくとも尻用エアバッグが設けられ、前記背凭れに

は、少なくとも腰用施療子が設けられた椅子式施療装置であって、利用

20 者の腰を施療する際に、前記尻用エアバッグを膨らませて前記利用者の

腰の高さ位置を徐々に高くしながら、前記腰用施療子を作動させる制御

手段を設けたことを特徴としている。

【0006】

上記構成によれば、体格の小さな利用者が座った場合に、尻用エアバ

25 ッグに空気を供給して尻用エアバッグを膨らますと、利用者は尻部が持

ち上げられ、これにより、利用者の腰の位置は徐々に高くなる。その結


92
果、利用者の腰の位置と腰用施療子の位置とが一致して、利用者が意図

する部位に十分なマッサージを行うことができる。

【発明の効果】

【0007】

5 本発明によれば、利用者の腰の高さ位置を徐々に調整できるので、腰

部に対して十分な施療を行うことができる。

実施例1】

【0009】

図1は、実施例1による椅子式施療装置1の外観を示した斜視図であ

10 る。この椅子式マッサージ装置1は、肘掛け兼用の脚2、脚2に支持さ

れた座部3、座部3の後部にリクライニング可能に装着された背凭れ4、

および座部3の前側下部に装着された足載せ台5を備えている。

【0010】

背凭れ4の上部には、首・肩用施療子として、首・肩用エアバッグ6

15 R、6L(Rは右側の部品を、Lは左側の部品をそれぞれ示す。以下同

じ。)と、揉み球7R、7Lとが設けられている。エアバッグ6R、6L

は空気が給排気されて膨縮動作を繰り返し、揉み球7R、7Lはエアバ

ッグ6R、6Lの膨縮動作に伴って、利用者の首・肩に対するマッサー

ジを行う。

20 【0011】

背凭れ4の高さ方向中央には、背中用施療子として背中用エアバッグ

8R、8Lが設けられている。これらエアバッグ8R、8Lは空気が給

排気されて膨縮動作を繰り返し、利用者の背中に対するマッサージを行

う。

25 【0012】

背凭れ4の下部には、腰用施療子として腰用エアバッグ9R、9Lが


93
設けられている。これらエアバッグ9R、9Lも空気が給排気されて膨

縮動作を繰り返し、利用者の腰に対するマッサージを行う。

【0013】

また、座部3には、背凭れ4に近い側に尻用エアバッグ10が、背凭

5 れ4から遠い側に腿用エアバッグ11がそれぞれ設けられ、尻用エアバ

ッグ10は利用者の尻に対するマッサージを行い、腿用エアバッグ11

は利用者の腿に対するマッサージを行う。

【0014】

さらに、足載せ台5の前側には左右に脚配設溝5R、5Lが形成され、

10 このうち脚配設溝5Rの両側には脚用エアバッグ12R、12Rが、ま

た脚配設溝5Lの両側には脚用エアバッグ12L、12Lがそれぞれ対

向配置されている。

【0015】

なお、図1において、符号13は、希望するマッサージを利用者が設

15 定入力するためのリモコンである。

【0016】

図2は、上記各エアバッグの動作を制御するための制御系統図である。

【0017】

首・肩用エアバッグ6R、6Lには空気ホース14が、背中用エアバ

20 ッグ8R、8Lには空気ホース15が、腰用エアバッグ9R、9Lには

空気ホース16がそれぞれ接続されている。空気ホース14、15、1

6は1つに合流して空気ホース17の一端に結合され、この空気ホース

17の他端は上半身ポンプ18の吐出側に接続されている。

【0018】

25 尻用エアバッグ10には空気ホース19が、腿用エアバッグ11には

空気ホース20が、脚用エアバッグ12R、12Lには空気ホース21


94
がそれぞれ接続されている。空気ホース19、20、21は1つに合流

して空気ホース22の一端に結合され、この空気ホース22の他端は下

半身ポンプ23の吐出側に接続されている。

【0019】

5 空気ホース14、15、16の途中には電磁弁(分配弁)24、25、

26がそれぞれ設けられ、また空気ホース19、20、21の途中には

電磁弁(分配弁)27、28、29がそれぞれ設けられている。なお、

電磁弁24、25、26および電磁弁27、28、29は三方弁で構成

されている。

10 【0020】

また、制御手段として制御回路30が設けられ、この制御回路30は、

上半身ポンプ18、下半身ポンプ23、電磁弁24、25、26、およ

び電磁弁27、28、29にそれぞれ電気的に接続されている。また、

制御回路30にはリモコン13も電気的に接続されている。なお、制御

15 回路30はマイコンで構成され、座部3(図1参照)の下側に配置され

ている。

【0021】

次に、上記構成の椅子式施療装置1の作用について説明する。

【0022】

20 利用者が椅子式施療装置1に腰掛けて、利用者の腰の高さが腰用エア

バッグ9R、9Lの位置に一致すれば問題はなく、利用者はリモコン1

3を操作して腰用エアバッグ9R、9Lを作動させることにより、腰に

対するマッサージを受けることができる。

【0023】

25 しかし、体格の小さな利用者が座った場合は、利用者の腰の位置と腰

用エアバッグ9R、9Lの位置とが一致しないため、利用者は腰に対す


95
る十分なマッサージを受けることができない。

【0024】

このようなとき、利用者はリモコン13を操作して高さ位置調整モー

ドに設定する。高さ位置調整モードが設定されると、制御回路30は、

5 図3に示すように、例えば時刻t1において、下半身ポンプ23を作動

させるとともに電磁弁27を制御して、下半身ポンプ23で圧縮された

空気を尻用エアバッグ10に流入させる。これにより、尻用エアバッグ

10を膨らませて、利用者は腰用エアバッグ9R、9Lに対して腰の位

置を調整する。

10 【0025】

そして時刻t1から所定時間経過して時刻t2になったとき、制御回

路30は、電磁弁27を制御し電磁弁27を閉にして、尻用エアバッグ

10の膨らんだ状態を保持するとともに、下半身ポンプ23の作動を停

止させる。

15 【0026】

その後、制御回路30は、時刻t3において、上半身ポンプ18を作

動させるとともに、電磁弁26を制御して、上半身ポンプ18で圧縮さ

れた空気を腰用エアバッグ9R、9Lに流入させて腰用エアバッグ9R、

9Lを膨らます。

20 【0027】

次に、制御回路30は、時刻t4において、電磁弁26を制御して電

磁弁26を閉にし、腰用エアバッグ9R、9Lの膨らんだ状態を保持す

るとともに、上半身ポンプ18の作動を停止させる。さらに、時刻t5

において、電磁弁26を制御して腰用エアバッグ9R、9L内の圧縮空

25 気を外部に排気させ、腰用エアバッグ9R、9Lを縮ませる。

【0028】


96
そして、上記時刻t3〜t5の動作を繰り返すことにより、利用者の

腰に対するマッサージを行う。

【0029】

腰に対するマッサージを停止させるときは、利用者がリモコン13に

5 対して停止の操作を行うことにより、腰に対するマッサージが終了し、

制御回路30は、時刻t6において、電磁弁27を制御し尻用エアバッ

グ10内の圧縮空気を外部に排気させ、尻用エアバッグ10を縮ませる。

【0030】

実施例によれば、利用者の腰の位置と腰用エアバッグ9R、9Lの

10 位置とを一致させることができ、利用者は腰に対する十分なマッサージ

を受けることができる。

【0031】

図4は本実施例の変形例である。この変形例では、尻用エアバッグ1

0と共に腿用エアバッグ11を膨縮させるようにしている。すなわち、

15 腿用エアバッグ11を、尻用エアバッグ10と同様に、時刻t1におい

て膨らませ、時刻t6において縮ませている。腰用エアバッグ9R、9

L、上半身ポンプ18、および下半身ポンプ23に対する制御は図3の

場合と同様である。

【0032】

20 この変形例によれば、尻用エアバッグ10と共に腿用エアバッグ11

を膨らませるようにしているので、腰用エアバッグ9R、9Lに対して

利用者をより確実に持ち上げることができる。

実施例2】

【0033】

25 図5は実施例2を示している。本実施例では、尻用エアバッグ10を

徐々に膨らますようにしている。実施例1では、電磁弁27を開にした


97
とき、下半身ポンプ23からの圧縮空気を尻用エアバッグ10に一気に

流入させていたが、本実施例では、時刻t1において電磁弁27を開に

したときに、下半身ポンプ23からの圧縮空気が尻用エアバッグ10に

徐々に流入するように電磁弁27の開度を制御する。そして、尻用エア

5 バッグ10に圧縮空気が徐々に流入しているときに、腰用エアバッグ9

R、9Lを作動させる。また、下半身ポンプ23は時刻t5’まで作動

させ、時刻t5’において、電磁弁27を制御して尻用エアバッグ10

の膨らんだ状態を保持する。

【0034】

10 本実施例によれば、利用者は徐々に持ち上げられている最中に、腰用

エアバッグ9R、9Lによって腰がまんべんなくマッサージされること

になり、腰部近傍に対する充分なマッサージを受けることができる。

【0035】

また、利用者は、所定量持ち上げられた後(つまり時刻t5’から時

15 刻t6の間) 実施例1の場合と同様なマッサージを受けることができる。


【0036】

図6は本実施例の変形例である。この変形例では、図5の場合と同様、

尻用エアバッグ10と共に腿用エアバッグ11を徐々に膨張させるよう

にしている。腰用エアバッグ9R、9L、上半身ポンプ18、および下

20 半身ポンプ23に対する制御は図4と同様である。

イ 前記アの記載事項によれば、本件明細書Aには、本件発明Aに関し、次

のような開示があることが認められる。

腿をマッサージする腿用エアバッグ、尻をマッサージする尻用エアバ

ッグが設けられた座部と、この座部の後部にリクライニング可能に取り

25 付けられた、首・肩をマッサージする首・肩用エアバッグ、背中をマッ

サージする背中用エアバッグ、腰をマッサージする腰用エアバッグが設


98
けられた背凭れとを備え、各エアバッグを膨縮させて利用者の各部位に

対してマッサージを行うことができる椅子式施療装置においては、従来、

腰用エアバッグは背凭れに固定され、上下方向に高さ位置を調整するこ

とができない構成であるため、腰部に対して意図する部位に十分なマッ

5 サージを受けることができないという問題があった 【0002】
( 、
【00

03】 。


「本発明」は、腰部に対してマッサージによる十分な施療を行うこと

のできる椅子式施療装置を提供することを課題とし、その課題を解決す

るための手段として、座部には、腿をマッサージする腿用エアバッグ、

10 および尻をマッサージする尻用エアバッグのうち、少なくとも尻用エア

バッグが設けられ、背凭れには、少なくとも腰用施療子が設けられた椅

子式施療装置であって、利用者の腰を施療する際に、前記尻用エアバッ

グを膨らませて前記利用者の腰の高さ位置を徐々に高くしながら、前記

腰用施療子を作動させる制御手段を設けるという構成を採用した(【0

15 004】 【0005】 。
、 )

これにより、
「本発明」は、尻用エアバッグに空気を供給して尻用エア

バッグを膨らますと、利用者は尻部が持ち上げられ、利用者の腰の高さ

位置を徐々に高くなるよう調整できるので、腰部に対して十分な施療を

行うことができるという効果を奏する(【0006】 【0007】 。
、 )

20 被告製品1及び2の構成要件充足性について

ア 被告製品1及び2の構成

被告製品1及び2が、別紙1「被告製品1ないし8説明書」の第1の1

記載のとおりの構成及び 記載のaないしd、fの構成を有することは、

前記前提事実記載のとおりである。

25 そして、上記認定事実と証拠(甲7、甲A1、A2、A17、乙A8、

A9)によれば、被告製品1及び2は、別紙1の図3記載の「尻用エアバ


99
ッグA」が、座部上面に配置され、上方に膨張し、臀部底部を押圧するこ

と、
「Seat」エアーコース/「座」エアーコース利用中に、尻用エアバッグ

Aを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に16mm 程度高くすること

ができることが認められる。

5 そうすると、被告製品1及び2は、次のaないしfの構成を有すること

が認められる。

a 座部と、該座部の後部に取り付けられた背もたれ部とを備え、

b 前記座部には、腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻をマッ

サージする尻用エアバッグAが設けられ、

10 c 前記背もたれ部には、腰用エアバッグが設けられた

d マッサージチェアであって、

e 「Seat」エアーコース/「座」エアーコース利用中に、尻用エアバッ

グAを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に16mm 程度高くしな

がら、腰用エアバッグを作動させる制御手段を設けた

15 f ことを特徴とするマッサージチェア。

構成要件Bの充足性

被告製品1及び2が本件発明Aの構成要件A、D及びFを充足するこ

とは、前記前提事実記載のとおりである。

本件発明Aの構成要件B 「前記座部には、
( 腿をマッサージする腿用エ

20 アバッグ、および尻をマッサージする尻用エアバッグのうち、少なくと

も尻用エアバッグが設けられ」)の記載から、少なくとも「座部」に「尻

をマッサージする尻用エアバッグ」が設けられていれば、構成要件Bを

充足するものと解される。

そして、被告製品1及び2の構成bによれば、被告製品1及び2の尻

25 用エアバッグAは、
「座部」に設けられた「尻をマッサージする」エアバ

ッグであり、構成要件Bの「尻用エアバッグ」に相当するから、被告製


100
品1及び2は、構成要件Bを充足するものと認められる。

これに対し、被控訴人は、@本件発明Aの構成要件Bの「腿をマッサ

ージする腿用エアバッグ、および尻をマッサージする尻用エアバッグの

うち、少なくとも尻用エアバッグが設けられ」との構成は、
「腿用エアバ

5 ッグ」が設けられている場合には、
「腿用エアバッグ」は、単に膨らむだ

けでなく、
「尻用エアバッグ」とともに、利用者の腰の高さ位置を徐々に

高くすることに寄与しなければならないと理解される、A被告製品1及

び2の「腿用エアバッグ」は、
「尻用エアバッグ」の膨張による利用者の

身体の上方への持ち上げという形での「徐々に高くしながら」する腰の

10 位置の移動に寄与するような膨張をするわけではないから、被告製品1

及び2は、構成要件Bを充足しない旨主張する。

しかしながら、構成要件Bの文言から、少なくとも「座部」に「尻を

マッサージする尻用エアバッグ」が設けられていれば、構成要件Bを充

足するものと解されることは、前記 のとおりである。

15 そして、被控訴人の上記主張は、構成要件Bに記載のない「腿用エア

バッグ」の動作に係る構成を発明特定事項に加えて解釈するものであっ

て、本件発明Aの特許請求の範囲(請求項1)の記載に基づかないもの

であるから、その前提において採用することができない。

なお、被控訴人は、本件発明Aの「尻用エアバッグ」は、腰を施療す

20 る際に、尻部をマッサージして利用者を上方に押し上げる方向に膨張し

て利用者の腰の高さ位置を高くできる構成であることが必須である旨主

張するが、この点は、被告製品1及び2の構成要件Eの充足性の問題で

あるので、ここでは検討しない。

構成要件Cの充足性

25 本件発明Aの特許請求の範囲(請求項1)の記載から、構成要件Cの

「前記背凭れには、少なくとも腰用施療子が設けられた」にいう「腰用


101
施療子」は、
「背凭れ」に設けられた腰を施療(マッサージ)する部分で

あることを理解できる。

一方で、本件発明Aの特許請求の範囲(請求項1)には、
「腰用施療子」

を特定の構成のものに限定する記載はない。

5 次に、本件明細書Aには、
「腰用施療子」について定義した記載はない。

また、本件明細書Aには、「腰用施療子」に関し、実施例1として、「背

凭れ4の下部には、腰用施療子として腰用エアバッグ9R、9Lが設け

られている。これらエアバッグ9R、9Lも空気が給排気されて膨縮動

作を繰り返し、利用者の腰に対するマッサージを行う。 【0012】 、

( )

10 「本実施例によれば、利用者の腰の位置と腰用エアバッグ9R、9Lの

位置とを一致させることができ、利用者は腰に対する十分なマッサージ

を受けることができる。 (
」【0030】 、実施例2として、
) 「本実施例に

よれば、利用者は徐々に持ち上げられている最中に、腰用エアバッグ9

R、9Lによって腰がまんべんなくマッサージされることになり、腰部

15 近傍に対する充分なマッサージを受けることができる。 (
」 【0034】)

との記載があり、図1には、腰用エアバッグ9R、9Lが示されている。

一方で、本件明細書Aには、
「腰用施療子」を腰用エアバッグ9R、9

Lの構成のものに限定する記載はない。

以上の本件発明Aの特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本件明細

20 書Aの記載によれば、構成要件Cの「腰用施療子」は、
「背凭れ」に設け

られた腰を施療(マッサージ)する部分をいい、特定の構成のものに限

定されないと解される。

そして、被告製品1及び2の構成cの「腰用エアバッグ」は、
「背もた

れ部」に設けられた腰をマッサージするエアバッグであり、構成要件

25 の「腰用施療子」に相当するから、被告製品1及び2は、構成要件Cを

充足するものと認められる。


102
これに対し、被控訴人は、本件発明Aの「腰用施療子」は、背凭れの

定位置にあるものを意味し、身長方向に移動可能なものは「腰用施療子」

には該当しないと解されるところ 【0012】
( 、
【0022】、
【0023】、

図1等)、被告製品1及び2は、身長方向に移動可能な「もみ玉」も備え

5 ており、
「もみ玉」の位置を利用者の腰の位置と一致させ、腰部の意図す

る部位にマッサージを行うものであるが、この「もみ玉」は「腰用施療

子」に該当しないから、構成要件Cを充足しない旨主張する。

しかしながら、本件発明Aの特許請求の範囲(請求項1)の記載及び

本件明細書Aの記載によれば、構成要件Cの「腰用施療子」 「背凭れ」
は、

10 に設けられた腰を施療(マッサージ)する部分をいい、特定の構成のも

のに限定されないと解されること、被告製品1及び2は、構成cの「腰

用エアバッグ」を備えており、これが「背もたれ部」に設けられた腰を

マッサージするエアバッグであり、構成要件Cの「腰用施療子」に相当

することは前記 のとおりであるから、被控訴人の上記主張は採用する

15 ことができない。

構成要件Eの充足性

「利用者の腰を施療する際に、前記尻用エアバッグを膨らませて前記

利用者の腰の高さ位置を徐々に高くしながら、前記腰用施療子を作動さ

せる制御手段を設けた」(構成要件E)の意義について

20 a 本件発明Aの特許請求の範囲(請求項1)の記載から、構成要件

の「制御手段」は、
「尻用エアバッグを膨らませて利用者の腰の高さ位

置を徐々に高く」させながら、
「腰用施療子を作動させ」て、腰を施療

する制御を行うことを理解できる。一方で、本件発明Aの特許請求の

範囲(請求項1)には、利用者の腰の高さ位置の変位量や変位の程度

25 等を特定する記載はない。

次に、前記イ 認定のとおり、本件明細書Aには、本件発明Aに関


103
し、従来の椅子式施療装置においては、腰用エアバッグは背凭れに固

定され、上下方向に高さ位置を調整することができない構成であるた

め、腰部に対して意図する部位に十分なマッサージを受けることがで

きないという問題があったことから(【0002】【0003】 、本件
、 )

5 発明Aは、腰部に対してマッサージによる十分な施療を行うことので

きる椅子式施療装置を提供することを課題とし、その課題を解決する

ための手段として、座部には、腿をマッサージする腿用エアバッグ、

および尻をマッサージする尻用エアバッグのうち、少なくとも尻用エ

アバッグが設けられ、背凭れには、少なくとも腰用施療子が設けられ

10 た椅子式施療装置であって、利用者の腰を施療する際に、前記尻用エ

アバッグを膨らませて前記利用者の腰の高さ位置を徐々に高くしなが

ら、前記腰用施療子を作動させる制御手段を設けるという構成を採用

し(【0004】【0005】 、これにより、尻用エアバッグに空気を
、 )

供給して尻用エアバッグを膨らますと、利用者は尻部が持ち上げられ、

15 利用者の腰の高さ位置を徐々に高くなるよう調整できるので、腰部に

対して十分な施療を行うことができるという効果を奏すること 【00


06】 【0007】
、 )の開示がある。

また、本件明細書Aには、構成要件Eの「制御手段」に関し、
「図2

は、上記各エアバッグの動作を制御するための制御系統図である。」

20 (【0016】 、
) 「首・肩用エアバッグ6R、6Lには空気ホース14

が、背中用エアバッグ8R、8Lには空気ホース15が、腰用エアバ

ッグ9R、9Lには空気ホース16がそれぞれ接続されている。空気

ホース14、15、16は1つに合流して空気ホース17の一端に結

合され、この空気ホース17の他端は上半身ポンプ18の吐出側に接

25 続されている。 (
」 【0017】 、
) 「尻用エアバッグ10には空気ホース

19が、腿用エアバッグ11には空気ホース20が、脚用エアバッグ


104
12R、12Lには空気ホース21がそれぞれ接続されている。空気

ホース19、20、21は1つに合流して空気ホース22の一端に結

合され、この空気ホース22の他端は下半身ポンプ23の吐出側に接

続されている。 (
」 【0018】 、
) 「また、制御手段として制御回路30

5 が設けられ、この制御回路30は、上半身ポンプ18、下半身ポンプ

23、電磁弁24、25、26、および電磁弁27、28、29にそ

れぞれ電気的に接続されている。また、制御回路30にはリモコン1

3も電気的に接続されている。なお、制御回路30はマイコンで構成

され、座部3(図1参照)の下側に配置されている。 (
」 【0020】 、


10 「図5は実施例2を示している。本実施例では、尻用エアバッグ10

を徐々に膨らますようにしている。実施例1では、電磁弁27を開に

したとき、下半身ポンプ23からの圧縮空気を尻用エアバッグ10に

一気に流入させていたが、本実施例では、時刻t1において電磁弁2

7を開にしたときに、下半身ポンプ23からの圧縮空気が尻用エアバ

15 ッグ10に徐々に流入するように電磁弁27の開度を制御する。そし

て、尻用エアバッグ10に圧縮空気が徐々に流入しているときに、腰

用エアバッグ9R、9Lを作動させる。また、下半身ポンプ23は時

刻t5’まで作動させ、時刻t5’において、電磁弁27を制御して

尻用エアバッグ10の膨らんだ状態を保持する。 (
」 【0033】、
) 「本

20 実施例によれば、利用者は徐々に持ち上げられている最中に、腰用エ

アバッグ9R、9Lによって腰がまんべんなくマッサージされること

になり、腰部近傍に対する充分なマッサージを受けることができる。」

(【0034】 、
) 「また、利用者は、所定量持ち上げられた後(つまり

時刻t5’から時刻t6の間) 実施例1の場合と同様なマッサージを


25 受けることができる。 (
」 【0035】)との記載がある。上記記載と図

2及び5によれば、本件明細書Aには、制御手段30は、下半身ポン


105
プ23からの圧縮空気が尻用エアバッグ10に徐々に流入するように

電磁弁27の開度を制御し、尻用エアバッグ10に圧縮空気が徐々に

流入しているときに、腰用エアバッグ9R、9Lを作動させる制御を

行うこと、この制御により、利用者は尻用エアバッグ10が膨らんで

5 尻部が徐々に持ち上げられている最中に、腰用エアバッグ9R、9L

によって腰がまんべんなくマッサージされることになり、腰部近傍に

対する充分なマッサージを受けることができることの開示があること

が認められる。

一方で、本件明細書Aには、制御手段30の制御による利用者の腰

10 の高さ位置の変位量や変位の程度等に関する記載はなく、また、上記

制御によって利用者の腰の高さと腰用エアバッグ9R、9Lの位置の

不一致を是正した具体例や腰部近傍に対するマッサージ効果がどの程

度のものであるのかを具体的に示した記載もない。

以上の本件発明Aの特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本件明

15 細書Aの記載によれば、構成要件Eの「制御手段」は、
「尻用エアバッ

グを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に高く」させながら、
「腰

用施療子を作動させ」て、腰の施療を行う制御を行うものであれば、

利用者の腰の高さ位置の変位量及び変位の程度やその制御による具体

的な効果を特定のものに限定するものではないものと解される。

20 b これに対し、被控訴人は、構成要件Eの「前記尻用エアバッグを膨

らませて前記利用者の腰の高さ位置を徐々に高くしながら」という機

能的な動作態様の記載から、その意味が一義的に明らかではないため、

本件明細書Aの記載 【0001】
( ないし【0007】)を参酌すると、

構成要件Eは、
「尻用エアバッグ」につき、利用者の腰の位置と腰用エ

25 アバッグの位置とが一致しない場合に、その不一致を解消して利用者

の腰部に対して十分なマッサージを行うことができる程度に「利用者


106
の腰の高さ位置を徐々に高く」させる制御手段を設けたことを意味す

るものと解すべきである旨主張する。

しかしながら、前記aで説示したとおり、本件発明Aの特許請求の

範囲(請求項1)には、構成要件Eの「制御手段」の制御による利用

5 者の腰の高さ位置の変位量や変位の程度等を特定する記載はなく、本

件明細書Aの記載も、これと同様である。

また、本件明細書Aの記載全体をみても、本件発明Aにより体格差

がある様々な利用者の腰の位置と腰用施療子の位置とが常に一致して

不一致が解消されるとの記載はなく、そのような示唆もない。

10 したがって、構成要件Eの「制御手段」は、利用者の腰の位置と腰

用エアバッグの位置とが一致しない場合に、その不一致を解消して利

用者の腰部に対して十分なマッサージを行うことができる程度に「利

用者の腰の高さ位置を徐々に高く」させる制御を行うものであること

が必須であるとはいえないから、被控訴人の上記主張は採用すること

15 ができない。

被告製品1及び2について

a 被告製品1及び2の構成eによれば、被告製品1及び2は、「Seat」

エアーコース/「座」エアーコース利用中に、尻用エアバッグAを膨

らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に16mm 程度高くしながら、腰

20 用エアバッグを作動させる制御手段(構成e)を備えるものであり、

この制御手段は、尻用エアバッグを膨らませて利用者の腰の高さ位置


を徐々に高く」させながら、
「腰用施療子を作動させ」て、腰の施療を

行う制御を行うものであり、構成要件Eの「制御手段」に相当するか

ら、被告製品1及び2は、構成要件Eを充足するものと認められる。

25 b これに対し、被控訴人は、別紙1「被告製品1ないし8説明書」の

第1の図3に矢印で示されている「腰用エアバッグ」は、背もたれに


107
固定されて動かない腰用エアバッグであり、その縦横長は、260o

×120oであること(乙A34)に照らすと、たかだか16o又は

32o程度の上下の移動では、体格差がある様々な利用者の腰の位置

と腰用施療子の位置とが常に一致して、不一致が解消されるなどとい

5 うことはないから、被告製品1及び2は、構成要件Eを充足しない旨

主張する。

しかしながら、前記 で説示したとおり、構成要件Eの「制御手段」

は、 尻用エアバッグを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に高く」


させながら、
「腰用施療子を作動させ」て、腰の施療を行う制御を行う

10 ものであれば、利用者の腰の高さ位置の変位量及び変位の程度やその

制御による具体的な効果を特定のものに限定するものではないものと

解され、また、利用者の腰の位置と腰用エアバッグの位置とが一致し

ない場合に、その不一致を解消して利用者の腰部に対して十分なマッ

サージを行うことができる程度に「利用者の腰の高さ位置を徐々に高

15 く」させる制御を行うものであることが必須であるとはいえない。

そして、腰の位置が16mm 程度上昇することも、構成要件Bの「腰

の高さ位置を…高くし」に含まれるというべきであるから、被控訴人

の上記主張は採用することができない。

オ まとめ

20 以上によれば、被告製品1及び2は、本件発明Aの構成要件を全て充足

するから、その技術的範囲に属する。

被告製品3の構成要件充足性について

ア 被告製品3の構成

被告製品3が、別紙1の第2の1記載のとおりの構成及び2記載のaな

25 いしd、fの構成を有することは、前記前提事実記載のとおりである。

上記認定事実と証拠(甲9、甲A1、A3、A7、A8、A11、A1


108
8、乙A10)によれば、被告製品3においては、別紙1の図6記載の「尻

用エアバッグA」は、座部上面に配置され、上方に膨張し、臀部底部を押

圧すること、
「クイックコース」 「体幹トレーニングコース」
又は 利用中に、

尻用エアバッグAを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に16mm 程

5 度高くしながら、腰の辺りでもみ玉を作動させることができることが認め

られる。

そうすると、被告製品3は、次のaないしfの構成を有することが認め

られる。

a 座部と、該座部の後部に取り付けられた背もたれ部とを備え、

10 b 前記座部には、腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻をマ

ッサージする尻用エアバッグAが設けられ、

c 前記背もたれ部には、背中及び腰を施療するもみ玉が設けられた

d マッサージチェアであって、

e 「クイックコース」又は「体幹トレーニングコース」利用中に、尻

15 用エアバッグAを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に16 mm

程度高くしながら、腰の辺りでもみ玉を作動させる制御手段を設けた

f ことを特徴とするマッサージチェア。

構成要件充足性

被告製品3が本件発明Aの構成要件A、D及びFを充足することは、

20 前記前提事実記載のとおりである。

そして、被告製品3の構成bの「尻用エアバッグA」は構成要件Bの

「尻用エアバッグ」に、構成cの「もみ玉」は構成要件Cの「腰用施療

子」に相当するものと認められるから、被告製品3は、構成要件B及び

Cを充足するものと認められる。

25 被告製品3は、
「クイックコース」又は「体幹トレーニングコース」利

用中に、尻用エアバッグAを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に


109
16mm 程度高くしながら、腰の辺りでもみ玉を作動させる制御手段(構

成e)を備えるものであり、この制御手段は、
「尻用エアバッグを膨らま

せて利用者の腰の高さ位置を徐々に高く」させながら、
「腰用施療子を作

動させ」て、腰の施療を行う制御を行うものであり、構成要件Eの「制

5 御手段」に相当するものと認められる。

そうすると、被告製品3は、構成要件Eを充足するものと認められる。

これに反する被控訴人の主張は採用することができない。

以上によれば、被告製品3は、本件発明Aの構成要件を全て充足する

から、その技術的範囲に属する。

10 被告製品4の構成要件充足性

ア 被告製品4の構成

被告製品4が、別紙1の第3の1記載のとおりの構成及び2記載のaな

いしd、fの構成を有することは、前記前提事実記載のとおりである。

上記認定事実と証拠(甲11、乙A7、A15)によれば、被告製品4

15 は、座部上面から立ち上がる施療板の内側面に配置され、施療板の下部の

一端を支点として施療板を反力受けとして内側方に膨張し、臀部側面を挟

持する「尻用エアバッグC」を有することが認められるが、尻用エアバッ

グC及び背もたれ部のもみ玉が同時に動作すること及び尻用エアバッグC

が膨らむことによって利用者の腰の高さ位置が高くなることを認めるに足

20 りる証拠がない。

そうすると、被告製品4は、次のaないしdの構成を有することが認め

られる。

a 座部と、該座部の後部に取り付けられた背もたれ部とを備え、

b 前記座部には、尻をマッサージすることができる尻用エアバッグC

25 が設けられ、

c 前記背もたれ部には、首、背中及び腰を施療するもみ玉が設けられ


110


d マッサージチェア。

構成要件充足性

被告製品4の構成は、前記アのとおりであり、構成要件Eに相当する構

5 成を有すると認めることはできない。

したがって、その余の点について判断するまでもなく、被告製品4は本

件発明Aの技術的範囲に属さない。

被告製品5の構成要件充足性

ア 被告製品5の構成

10 被告製品5が、別紙1の第2の1記載のとおりの構成及び2記載のaな

いしd、fの構成を有することは、前記前提事実記載のとおりである。

上記認定事実と証拠(甲12、甲A1、A4、A19、乙A11、A1

6)によれば、被告製品5においては、別紙1の図6記載の「尻用エアバ

ッグA」が、座部上面に配置され、上方に膨張し、臀部底部を押圧するこ

15 と、
「ストレッチコース」「ストレス解消コース」又は「カラダのばしコー


ス」利用中に、尻用エアバッグAを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々

に32mm 程度高くしながら、腰の辺りでもみ玉を作動させることができる

ことが認められる。

そうすると、被告製品5は、次のaないしfの構成を有することが認め

20 られる。

a 座部と、該座部の後部に取り付けられた背もたれ部とを備え、

b 前記座部には、腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻をマ

ッサージする尻用エアバッグAが設けられ、

c 前記背もたれ部には、背中及び腰を施療するもみ玉が設けられた

25 d マッサージチェアであって、

e 「ストレッチコース」 「ストレス解消コース」又は「カラダのばし



111
コース」利用中に、尻用エアバッグAを膨らませて利用者の腰の高さ

位置を徐々に32mm 程度高くしながら、腰の辺りでもみ玉を作動させ

る制御手段を設けた

f ことを特徴とするマッサージチェア。

5 イ 構成要件充足性

被告製品5が本件発明Aの構成要件A、D及びFを充足することは、

前記前提事実記載のとおりである。

そして、被告製品5の構成bの「尻用エアバッグA」は構成要件Bの

「尻用エアバッグ」に、構成cの「もみ玉」は構成要件Cの「腰用施療

10 子」に相当するものと認められるから、被告製品5は、構成要件B及び

Cを充足するものと認められる。

被告製品5は、
「ストレッチコース」「ストレス解消コース」又は「カ


ラダのばしコース」利用中に、尻用エアバッグAを膨らませて利用者の

腰の高さ位置を徐々に32mm 程度高くしながら、腰の辺りでもみ玉を作

15 動させる制御手段(構成e)を備えるものであり、この制御手段は、
「尻

用エアバッグを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に高く」させな

がら、
「腰用施療子を作動させ」て、腰の施療を行う制御を行うものであ

り、構成要件Eの「制御手段」に相当するものと認められる。

そうすると、被告製品5は、構成要件Eを充足するものと認められる。

20 これに反する被控訴人の主張は採用することができない。

以上によれば、被告製品5は、本件発明Aの構成要件を全て充足する

から、その技術的範囲に属する。

被告製品6の構成要件充足性

ア 被告製品6の構成

25 被告製品6が、別紙1の第3の1記載のとおりの構成及び2記載のaな

いしd、fの構成を有することは、前記前提事実記載のとおりである。


112
上記認定事実と証拠(甲13、甲A7、A9、A20、乙A12)によ

れば、尻用エアバッグB(座部上面に配置され、内側方に膨張し、臀部側

面を押圧するもの。以下同じ。)を膨らませながら、もみ玉が作動すること

が認められ、被告製品6に人形を載せて作動させ、これを撮影した動画(甲

5 A9)では、利用者の腰の高さ位置を示す目印が数ミリ程度移動している

ことを目視できるものの、同動画からは、上記目印の移動が、もみ玉の動

きに応じた上体の動きを反映したことによるものか、尻用エアバッグが膨

らむことによって腰の位置の変化したことによるものかが明らかではなく、

尻用エアバッグBが膨らむことによって利用者の腰の高さ位置が高くなる

10 ことを認めるに足りない。

そうすると、被告製品6は、次のaないしfの構成を有することが認め

られる。

a 座部と、該座部の後部に取り付けられた背もたれ部とを備え、

b 前記座部には、尻をマッサージすることができる尻用エアバッグB

15 が設けられ、

c 前記背もたれ部には、首、背中及び腰を施療するもみ玉が設けられ



d マッサージチェアであって、

e 「ストレッチ運動コース」 「ロッキング&マッサージコース」又は


20 「クイックマッサージコース」利用中に、尻用エアバッグBを膨らま

せながら、腰の辺りでもみ玉を作動させる制御手段を設けた

f ことを特徴とするマッサージチェア。

構成要件充足性

被告製品6の構成は前記アのとおりであり、尻用エアバッグBを膨らま

25 せながら、腰の辺りでもみ玉を作動させる制御手段(e)を備えているも

のの、「尻用エアバッグを膨らませて」「利用者の腰の位置を徐々に高くす


113
る」
構成要件E)に相当する構成を有すると認めることはできないから、

被告製品6は、構成要件Eを充足しない。

したがって、その余の点について判断するまでもなく、被告製品6は本

件発明Aの技術的範囲に属さない。

5 被告製品7の構成要件充足性

ア 被告製品7の構成

被告製品7が、別紙1の第3の1記載のとおりの構成及び2記載のaな

いしd、fの構成を有することは、前記前提事実記載のとおりである。

上記認定事実と証拠(甲14、甲A1、A7、A10、A21、乙A1

10 3)によれば、尻用エアバッグBを膨らませながら、もみ玉が作動するこ

とが認められ、被告製品7により利用者が施療を受ける様子を撮影した動

画(甲A10)では、利用者の腰の高さ位置を示す目印が数ミリ程度移動

していることを目視できるものの、同動画からは、上記目印の移動が、も

み玉の動きに応じた上体の動きを反映したことによるものか、尻用エアバ

15 ッグが膨らむことによって腰の位置の変化したことによるものかが明らか

ではなく、尻用エアバッグBが膨らむことによって利用者の腰の高さ位置

が高くなることを認めるに足りない。

そうすると、被告製品7は、次のaないしfの構成を有することが認め

られる。

20 a 座部と、該座部の後部に取り付けられた背もたれ部とを備え、

b 前記座部には、尻をマッサージすることができる尻用エアバッグB

が設けられ、

c 前記背もたれ部には、首、背中及び腰を施療するもみ玉が設けられ



25 d マッサージチェアであって、

e 「全身疲労回復コース」 「肩・筋肉疲労改善コース」 「腰・筋肉疲
、 、


114
労改善コース」 「全身クイックコース」 「腰集中コース」又は「骨盤
、 、

おしりコース」利用時に、尻用エアバッグBを膨らませながら、腰の

辺りでもみ玉を作動させる制御手段を設けた

f ことを特徴とするマッサージチェア。

5 イ 構成要件充足性

被告製品7の構成は前記アのとおりであり、尻用エアバッグBを膨らま

せながら、腰の辺りでもみ玉を作動させる制御手段(e)を備えているも

のの、「尻用エアバッグを膨らませて」「利用者の腰の位置を徐々に高くす

る」
構成要件E)に相当する構成を有すると認めることはできないから、

10 被告製品7は、構成要件Eを充足しない。

したがって、その余の点について判断するまでもなく、被告製品7は本

件発明Aの技術的範囲に属さない。

被告製品8の構成要件充足性

ア 被告製品8の構成

15 被告製品8が、別紙1の第2の1記載のとおりの構成及び2記載のaな

いしd、fの構成を有することは、前記前提事実記載のとおりである。

上記認定事実と証拠(甲15、甲A1、A6、A22、乙A14)によ

れば、被告製品8においては、別紙1の図6記載の「尻用エアバッグA」

が、座部上面に配置され、上方に膨張し、臀部底部を押圧すること、
「おし

20 り快適コース」利用中に、尻用エアバッグAを膨らませて利用者の腰の高

さ位置を徐々に16mm 程度高くしながら、腰の辺りでもみ玉を作動させる

ことができることが認められる。

そうすると、被告製品8は、次のaないしfの構成を有することが認め

られる。

25 a 座部と、該座部の後部に取り付けられた背もたれ部とを備え、

b 前記座部には、腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻をマ


115
ッサージする尻用エアバッグAが設けられ、

c 前記背もたれ部には、背中及び腰を施療するもみ玉が設けられた

d マッサージチェアであって、

e 「おしり快適コース」利用中に、尻用エアバッグAを膨らませて利

5 用者の腰の高さ位置を徐々に16mm 程度高くしながら、腰の辺りでも

み玉を作動させる制御手段を設けた

f ことを特徴とするマッサージチェア。

構成要件充足性

被告製品8が本件発明Aの構成要件A、D及びFを充足することは、

10 前記前提事実記載のとおりである。

そして、被告製品8の構成bの「尻用エアバッグA」は構成要件Bの

「尻用エアバッグ」に、構成cの「もみ玉」は構成要件Cの「腰用施療

子」に相当するものと認められるから、被告製品8は、構成要件B及び

Cを充足するものと認められる。

15 被告製品8は、
「おしり快適コース」利用中に、尻用エアバッグAを膨

らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に16mm 程度高くしながら、腰の

辺りでもみ玉を作動させる制御手段(構成e)を備えるものであり、こ

の制御手段は、「尻用エアバッグを膨らませて利用者の腰の高さ位置を

徐々に高く」させながら、
「腰用施療子を作動させ」て、腰の施療を行う

20 制御を行うものであり、構成要件Eの「制御手段」に相当するものと認

められる。

そうすると、被告製品8は、構成要件Eを充足するものと認められる。

これに反する被控訴人の主張は採用することができない。

以上によれば、被告製品8は、本件発明Aの構成要件を全て充足する

25 から、その技術的範囲に属する。

小括


116
以上のとおり、被告製品1ないし3、5及び8は、本件発明Aの技術的範

囲に属するが、被告製品4、6及び7は、本件発明Aの技術的範囲に属さな

い。

2 争点1−2(本件特許Aに係る無効の抗弁の成否)について(本件特許A関

5 係)

無効理由1(AS−878に係る発明(公然実施発明)を引用例とする本

件発明Aの新規性欠如)について

ア AS−878に係る発明の公然実施の有無について

証拠(乙A42、A43)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人は、本件

10 出願Aの出願前の平成15年7月以降、日本国内において、AS−878

を販売していたこと、AS−878は、別紙4の図1及び2に示すような

構成を有することが認められる。

そして、当業者は、AS−878を外部から観察し、又は実際に使用し、

その動作を確認及び分析することにより、AS−878の構成及び機能を

15 知り得る状況にあったものと認められるから、AS−878に係る発明は、

本件出願前に公然実施されていたものと認められる。

イ AS−878に係る発明の内容について

前記アの認定事実と証拠(乙A42、A45、A48)及び弁論の全

趣旨によれば、ASA−878に係る発明として、次の構成を有する発

20 明を認定することができる。

a 座部と、背もたれ部とを備え、

b 座部には、腿をマッサージするエアーバッグ及び尻をマッサージす

るエアーバッグ(尻用エアバッグ)が設けられ、

c 背もたれ部には、腰を施療することができるもみ玉及びエアーバッ

25 グ(腰用エアバッグ)が設けられた

d マッサージチェアであって


117
e 「自動コース」の「腰コース」により利用する場合、尻用エアバッ

グが2秒程度かけて膨らんで利用者の腰の位置を少なくとも15mm

程度上げながら、同時に、もみ玉が腰の位置で作動する制御を行う制

御手段を設けた

5 f マッサージチェア。

これに対し、控訴人は、AS−878に係る動画(乙A45、A48)

では、利用者の腰の位置が上下方向に変位しているようにも見受けられ

るが、これは、利用者の肩から首にかけてのラインの角度の変位に伴う

ものであって、利用者の身体全体が略垂直に上がっているからではなく、

10 上記動画から、腰用施療子が動作していること及び腰位置が上昇してい

ることを客観的に確認することができないとして、AS−878が前記

の構成eの制御手段を有することの立証はない旨主張する。

しかし、乙A48の動画によると、尻エアーバッグの膨張及び収縮に

よる座部の位置の変化に応じて腰の位置が変動し、少なくとも15mm 程

15 度は高くなっていることが認められ、この変化は利用者の肩から首にか

けてのラインの角度の変異が反映されたものとは認められない。また、

分解したAS−878の動作を撮影した動画(乙A45)によると、尻

用エアバッグが膨張するとき、同時にもみ玉が利用者の腰の位置で動作

していることが認められる。

20 そうすると、AS−878において、尻用エアバッグが膨らんで腰の

位置を上げると同時に、利用者の腰の位置で、もみ玉が作動していると

いうことができるから、AS−878は、前記 の構成eの制御手段を

有するものと認められる。

したがって、控訴人の上記主張は理由がない。

25 ウ 本件発明AとAS−878に係る発明との同一性

本件発明AとAS−878に係る発明を対比すると、AS−878に係


118
る発明の構成の尻用エアバッグ及びもみ玉はそれぞれ本件発明Aの「尻用

エアバッグ」及び「腰用施療子」に相当し、AS−878に係る発明の構

成aないしd及びfは、本件発明Aの構成要件AないしD及びFの構成に

相当するものと認められる。

5 そして、AS−878に係る発明では、
「尻用エアバッグが2秒程度かけ

て膨らんで利用者の腰の位置を少なくとも15mm 程度上げながら、同時に、

もみ玉が腰の位置で作動する」制御を行う制御手段(構成e)を有すると

ころ、尻用エアバッグが2秒程度かけて膨らむことにより利用者の腰の位

置を15mm 程度上げており、「尻用エアバッグを膨らませて利用者の腰の

10 位置を徐々に高く」しながら、同時に、腰用施療子を作動させる制御手段

が設けられていると認められるから、AS−878に係る発明は、本件発

明Aの構成要件Eの構成を備えるものと認められる。

そうすると、AS−878に係る発明は本件発明Aの構成要件Aないし

Fの構成を全て備えるから、本件発明Aは、AS−878に係る発明と同

15 一の発明であると認められる。

これに反する控訴人の主張は採用することができない。

小括

以上によれば、被控訴人主張の無効理由1は理由があるから、その余の点

について判断するまでもなく、控訴人は、被控訴人に対し、本件特許権Aに

20 基づいて権利行使することができない(特許法104条の3第1項、123

条1項2号、29条1項2号)。

3 争点2−1(被告製品1及び2の本件各発明Cの技術的範囲の属否)につい

て(本件特許C関係)

? 本件明細書Cの記載事項について

25 ア 本件明細書C(甲6)には、次のような記載がある(下記記載中に引用

する図1ないし4、6ないし20については別紙3を参照)。


119
【技術分野】

【0001】

本発明は、肘掛部に施療者の前腕部をマッサージする前腕部施療機構

を備えた椅子式マッサージ機に関するものである。

5 【背景技術】

【0002】

従来の、座部と背凭れ部、そして該座部の左右両側に肘掛部を設けた

椅子式マッサージ機において、肘掛部の上部に前腕部施療機構を備えて、

着座した施療者の腕部をマッサージする形態のものは既に存在し、市場

10 では商品化されている。

【0003】

例えば、図19に示すような、前腕部施療機構を備えた椅子式マッサ

ージ機が開示されている。すなわち、手揉機能付施療機1として、肘幅

方向両側に各々立上り壁211・211を設けた肘掛部21を椅子本体

15 2の両側に設けており、その肘掛部21の各立上り壁211・211間

に人体手部を各々嵌脱自在で該人体手部に膨縮施療を付与し得るよう、

圧縮空気給排気手段を配設して成り、施療者が着座状態で人体手部を両

肘掛部21・21上面部に安定的に保持させて、人体手部及び腕部を効

率良く空圧施療する事ができるよう構成したものである。尚、肘掛部2

20 1の前側上面部は、立上り壁211が形成されておらず、平坦になって

いる。

【0004】

さらに、前述したような左右一対の立上り壁を左右の肘掛部の長さ方

向全域に夫々設けた形態のものを図20に示す。すなわち、凹部の内壁

25 に、人体の肢体を挿入するための空間を設けるように空気袋を夫々取着

して施療部を形成し、空気袋に空気を給排気して空気袋を膨張及び収縮


120
させる給排気装置を連通して設けてなるエアーマッサージ機3を、椅子

20の肘掛けの上部全域に設けた構成である。

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

5 ところで、従来の図20に示すような、肘掛部の長さ方向全域に前腕

部施療機構として左右一対の立上り壁を設けた椅子式マッサージ機は、

手部及び前腕部の広範を同時にマッサージする事ができて便利であるが、

施療者の肘関節付近にまで該各立上り壁が形成されているため、図18

に示すように、上腕部内側の肘関節付近を施療者側である内側立上り壁

10 623が圧迫して、施療者に不快感を与えたり、また、前腕部施療機構

における腕部の載脱行為を妨げたりするなどの欠点があった。特に、施

療者の身長が低くて小柄である程、内側立上り壁623による圧迫が大

きくなると考えられる。

【0006】

15 また、着座した施療者が立ち上がる際、或いは着座する際において、

通常は肘掛部の前端部を手で掴んで体重を掛けるのであるが、図20に

示す形態の椅子式マッサージ機は、肘掛部の前端部にまで左右の立上り

壁が形成されているため、肘掛部の前端部の上面部が開口された形態と

なり、そのような部分に体重を掛ける事は困難であった。

20 【0007】

一方で、左右一対の立上り壁を設けた椅子式マッサージ機において、

図19に示すような肘掛部の前側上面部に該立上り壁が形成されず、平

坦になった部分を有する構成のものに関しては、該平坦になった部分を

手掛け部として体重を掛ける事ができるのであるが、左右一対の立上り

25 壁間に形成される凹部の底面部と、該手掛け部の平坦になった部分とが

同じ高さの同面であるため、手掛け部を掴んで立ち上がろうとする際、


121
前述した図18に示すのと同様、内側立上り壁623によって上腕部内

側の肘関節付近が圧迫を受け、その付近と共に前腕部の内側が摺擦され

ながら、凹部から腕部が離脱する事になり、この場合も施療者に対して

不快感を与えるものとなると考えられ、解決すべく問題となっていた。

5 【0008】

そこで、本発明は、上記問題点を解消する為に成されたものであり、

施療者の腕部に対し、前腕部施療機構の立上り壁が不必要に圧迫して不

快感をもたらす要因を解消し、前腕部施療機構における腕部の載脱をス

ムーズに行うよう構成すると共に、前腕部施療機構を有していても施療

10 者が起立及び着座を快適に行う事ができるよう構成した椅子式マッサー

ジ機を提供する事を目的とするものである。

【課題を解決するための手段】

【0009】

すなわち、本発明の椅子式マッサージ機は、座部及び背凭れ部を有す

15 る椅子本体と、該椅子本体の両側部に肘掛部を有する椅子式マッサージ

機において、前記肘掛部に、内側後方から施療者の前腕部を挿入するた

めの前腕挿入開口部と、該前腕挿入開口部から延設して肘掛部の内部に

施療者の手部を含む前腕部を挿入保持するための空洞部が設けられ、前

記空洞部は、前記肘掛部の幅方向左右に夫々設けた外側立上り壁及び内

20 側立上り壁と底面部とから形成され、前記外側立上り壁及び内側立上り

壁の上面前端部に空洞部の先端部の上方を塞ぐ形態で手掛け部が設けら

れており、前記肘掛部が、前部に前記底面部と前記外側立上り壁と前記

内側立上り壁と前記手掛け部とに囲われ、前記空洞部に位置する施療部

と、後部に前記底面部と前記外側立上り壁によりL型に形成され、前記

25 前腕挿入開口部に位置する施療部とを備え、それぞれの施療部に膨縮袋

が夫々設けられたものとしている。


122
【0010】

また、本発明の椅子式マッサージ機は、前記前腕挿入開口部を、前記

空洞部の後方位置に設けられた外側立上り壁及び底面部で形成し、前記

前腕挿入開口部の前記外側立上り壁及び前記底面部の二面において互い

5 に対設する位置に各々膨縮袋が設けられたものとしている。

【0011】

さらに、本発明の椅子式マッサージ機は、前記前腕挿入開口部の前記

外側立上り壁の下部において、前記膨縮袋の下部に形成された縁部を止

着すると共に、前記前腕挿入開口部の前記底面部における前記外側立上

10 り壁側に他方の前記膨縮袋に形成された縁部を前記外側立上り壁側に止

着して構成したものとしている。

【0012】

また、本発明の椅子式マッサージ機は、前記肘掛部は、椅子本体に対

して前後方向に移動可能に設けられており、前記背凭れ部のリクライニ

15 ング角度に応じた所定の移動量を保持しながら該背凭れ部のリクライニ

ング動作に連動して前記肘掛部が椅子本体に対して前後方向に移動する

ようにしたものとしている。

【発明の効果】

【0013】

20 よって、本発明の椅子式マッサージ機は、前記肘掛部の内側後方から

施療者の前腕部を挿入するための前腕挿入開口部を有しており、該前腕

挿入開口部から延設して肘掛部の内部に施療者の手部を含む前腕部を挿

入保持するための空洞部が設けられており、前記空洞部は、前記肘掛部

の幅方向左右に夫々設けた外側立上り壁及び内側立上り壁と底面部とか

25 ら形成され、且つ、前記空洞部の前記外側立上り壁及び内側立上り壁の

上面前端部に手掛け部が設けられており、前記手掛け部の下面部及び前


123
記空洞部の底面部における上面部に膨縮袋が夫々設けられたものとして

いるため、前腕部施療機構におけるスムーズな前腕部の載脱が可能とな

り、施療者が起立及び着座を快適に行う事ができる。

【0014】

5 すなわち、着座した施療者が立ち上がる際、或いは着座する際におい

て、前記内側立上り壁による前腕部内側の摺擦を回避しながら前記手掛

け部に体重を掛けて行うことができる。

【0015】

加えて、前記空洞部において、前記各膨縮袋により施療者の手部を上

10 下に挟圧するマッサージを実施する事ができる。

【0016】

また、本発明の椅子式マッサージ機は、前記前腕挿入開口部を、前記

空洞部の後方位置に設けられた外側立上り壁及び底面部で形成し、前記

前腕挿入開口部の前記外側立上り壁及び前記底面部の二面において互い

15 に対設する位置に各々膨縮袋が設けられたものとしているため、空洞部

の後方位置でも前腕部に対するマッサージを実施する事ができる。

【0017】

さらに、本発明の椅子式マッサージ機は、前記前腕挿入開口部の前記

外側立上り壁の下部において、前記膨縮袋の下部に形成された縁部を止

20 着すると共に、前記前腕挿入開口部の前記底面部における前記外側立上

り壁側に他方の前記膨縮袋に形成された縁部を前記外側立上り壁側に止

着して構成したものとする事により、外側立上り壁及び前腕挿入開口部

の底面部の二面において、挟圧マッサージを実施する事ができる。

【0018】

25 また、前記肘掛部は、椅子本体に対して前後方向に移動可能に設けら

れており、前記背凭れ部のリクライニング角度に応じた所定の移動量を


124
保持しながら前記背凭れ部のリクライニング動作に連動して前記肘掛部

が椅子本体に対して前後方向に移動するように構成する事により、背凭

れ部のリクライニング角度に関係なく、肘掛部に設けた前記前腕部施療

機構における前腕部の位置が可及的に変わらないようにする事ができ、

5 安定した前腕部に対するマッサージを行う事ができる。

【発明を実施するための最良の形態】

【0019】

以下に、本発明の椅子式マッサージ機を、図面に示す一実施形態に基

づきこれを詳細に説明する。図1は本発明の椅子式マッサージ機の一実

10 施形態を示す斜視図であり、図2は本発明の椅子式マッサージ機の一実

施形態を示す使用時の斜視図であり、図3及び図4は本発明の椅子式マ

ッサージ機の一実施形態を示す使用時の右側面図であり、図5は本発明

の椅子式マッサージ機における背凭れ部の一実施形態を示す横断面説明

図であり、図6は本発明の椅子式マッサージ機における肘掛部の一実施

15 形態を示す使用時の平面説明図であり、図7乃至図12は本発明の椅子

式マッサージ機における肘掛部の一実施形態を示す縦断面説明図であり、

図13乃至図16は本発明の椅子式マッサージ機における肘掛部の一実

施形態を示す斜視説明図であり、図17は、本発明の椅子式マッサージ

機の一実施形態を示す使用時の部分正面説明図であり、図18乃至図2

20 0は従来技術を示す参考図である。

【0020】

すなわち、本発明の椅子式マッサージ機は、図1乃至図3の実施形態

で示したように、施療者の臀部または大腿部が当接する座部11a、及

び施療者の背部が当接する背凭れ部12aを有する椅子本体10aと、

25 該椅子本体10aの両側部に肘掛部14aを有する椅子式マッサージ機

1aであり、前記背凭れ部12aは、座部11aの後側にリクライニン


125
グ可能に連結されると共に、座部11aの前側に上下方向へ揺動可能に

連結した足載せ部13aを設け、また、背凭れ部12aの左右両側に前

方に向かって突出した側壁部2aを夫々配設している。

【0021】

5 図1に示すように、前記背凭れ部12aには、その中央部に左右一対

の施療子31aを備えた昇降自在の施療子機構3aを設けている。該施

療子機構3aは、背凭れ部12aの内部左右に設けた左右一対のガイド

レール32aに沿って背凭れ部12aの上端から下端にかけて昇降する

ようにしている。

10 【0022】

前記施療子機構3aは、モータ等を駆動源として前記左右一対の施療

子31aを作動させる機械式のマッサージ機構であり、前記背凭れ部1

2aに凭れた施療者の首部、背部、腰部、臀部等の背面全域を、たたき、

揉み、ローリング、振動、指圧などの多様な形態で施療するようにした

15 ものである。

【0023】

また、前記椅子式マッサージ機1aの各所定の位置には、空気の給排

気により膨縮を繰り返す事が可能な膨縮袋4aを夫々埋設している。該

膨縮袋4aは、エアーコンプレッサー及び各膨縮袋4aに空気を分配す

20 るための分配器等からなる空気給排装置42aによる給排気により膨縮

動作を行うようにしており、該空気給排装置42aは前記座部11aの

下部空間に配備している。

【0024】

前記空気給排装置42aによる前記各膨縮袋4aの膨縮動作によって、

25 施療者の所定の施療部位を押圧、指圧等を実施する事ができるものであ

り、また、複数の膨縮袋4aを対となるよう対設させた場合には、挟圧


126
等の施療も行う事ができ、更に、各膨縮袋4aを膨張状態に保つように

した場合は、施療者の所定の部位を一定の時間保持する事も可能として

いる。

【0025】

5 また、前記椅子式マッサージ機1aには、前記背凭れ部12aの左右

上部及び左右下部に夫々膨縮袋4aを適宜に適数設けられるものであり、

これら膨縮袋4aを適位置に配設することより、施療者の背中及び腰部

を押圧、または左右両側から挟圧するような施療を行うよう構成するこ

とができる。

10 【0026】

また、前記座部11aには、後部側に臀下部用、また腿部用の膨縮袋

4aを夫々埋設して、主に下方から上方に押圧する施療を行うようにし

ている。

【0030】

15 本発明の椅子式マッサージ機1aは、図1及び図6に示すように、前

記肘掛部14aに、前記肘掛部14aの内側後方から施療者の前腕部を

挿入するための前腕挿入開口部61aを有しており、また、該前腕挿入

開口部61aから延設して肘掛部14aの内部に施療者の前腕部を挿入

保持するための空洞部62aを設けている。

20 【0031】

さらに、前記椅子式マッサージ機1aは、前記空洞部62aの内部壁

面621aの各所に施療者の前腕部にマッサージを施すための前腕部施

療機構6aを設けて構成している。

【0032】

25 前記空洞部62aは、前記肘掛部14aの幅方向左右に夫々設けた外

側立上り壁622a及び内側立上り壁623aと、底面部624aとか


127
ら形成しており、該外側立上り壁622a及び内側立上り壁623aの

前記各内部壁面621aに、前腕部施療機構6aを設けている。尚、適

宜底面部624aにも該前腕部施療機構6aを設ける事ができる。

【0033】

5 前記底面部624aは、施療者の前腕部を載置しうるための載置面と

して形成されている。該底面部624aに手部や前腕部を載置した状態

で、前腕部施療機構6aによる施療を実施できるようにしている。

【0034】

前記前腕部施療機構6aは、前記膨縮袋4aからなる形態のものでも

10 よく、図6及び図7に示すように、施療者の手部と前腕部に対し夫々挟

圧マッサージが行えるように、前記空洞部62aの長さ方向前後に左右

一対の膨縮袋4a・4aを夫々設ける事ができる。すなわち、空洞部6

2aの長さ方向前側に設けられた前記左右一対の膨縮袋4aは、手部に

対応し、また空洞部62aの長さ方向後側に設けられた前記左右一対の

15 膨縮袋4aは、前腕部に対応するよう構成する事ができる。

【0035】

さらに、手部に対応した前記左右一対の膨縮袋4aと、前腕部に対応

した左右一対の前記膨縮袋4aとを、同時に、または交互に膨縮させる

ようにする事により、変化に富んだマッサージが実現できる。

20 【0036】

前記肘掛部14aの上面部には、前記空洞部62aを隔てて施療者の

前腕部を載置しうるための載置面63aが形成されている。よって、施

療者が前腕部施療機構6aによる施療を所望しない時に、該載置面63

aに前腕部を載置しておく事ができる。該載置面63aは、前記底面部

25 624aの位置より高いので、身長の高い施療者にとって便利な肘掛け

となる。


128
【0037】

図1に示すように、前記肘掛部14aには、前記外側立上り壁622

a及び内側立上り壁623aの上面前端部に、着座した施療者が立ち上

がる際、或いは着座する際において、体重を掛けるための手掛け部65

5 aを設けている。すなわち、前記空洞部62aの先端部の上方を塞ぐよ

うな形態に手掛け部65aを形成している。

【0038】

また、図17に示すように、前記底面部624aと前記手掛け部65

aとの各載置面は異なり、底面部624aよりも手掛け部65aの載置

10 面の方が高い位置に形成されているため、施療者が着座状態から立ち上

がろうとして、手掛け部65aを掴む際、既に前腕部は底面部624a

から上方へ移動し、また、前記空洞部62aから脱出しているため、図

18に示す従来の構成のように、前記内側立上り壁623aによる前腕

部内側の摺擦を回避する事ができる。

15 【0039】

さらに、図13に示すように、前記手掛け部65aの下面部及び前記

底面部624aの上面部に、前記膨縮袋4aを夫々設けて、手部を上下

に挟圧するよう構成する事も可能である。

【0040】

20 このような、前記前腕部施療機構6aにおける手部に対する上下挟圧

動作と、前述したような手部に対する左右からの挟圧動作とを、同時に、

または交互に行うことにより、変化に富んだマッサージが可能となる。

【0041】

また、図13に示すように、前記底面部624aにおいて、手部に対

25 応した前記左右一対の膨縮袋4aの他にも前腕部に対応した左右一対の

前記膨縮袋4aの位置に、適宜前記膨縮袋4aを設ける事ができる。


129
【0042】

前腕部に対応した前記各左右一対の膨縮袋4aと、それに対応するよ

う底面部624aに設けられた膨縮袋4aとを、同時に、または交互に

行うことにより、変化に富んだマッサージが可能となる。或いは、左右

5 一対の膨縮袋4aを膨張保持させた状態で、底面部624aに設けられ

た膨縮袋4aを上方へ膨張させる事により、前腕部を安定させた状態で

圧迫感のあるマッサージを実施する事ができる。

【0043】

また、図13に示すように、前記空洞部62aにおいて前腕部に対応

10 した前記各膨縮袋4aよりも後方である位置に、前記膨縮袋4aを設け

てもよい。この後方の位置に、前腕挿入開口部61aを設けているため、

前記内側立上り壁623aは形成されていないが、図8に示すように、

前記外側立上り壁622a及び前記底面部624aの二面において、互

いに対設するよう膨縮袋4a・4aを設ける事ができる。

15 【0044】

この場合、図8に示すように、前記外側立上り壁622aの下部にお

いて、膨縮袋4aの下部の縁部41aを止着すると共に、前記底面部6

24aの外側立上り壁622a側に、もう一つの膨縮袋4aの外側立上

り壁622a側の縁部41aを止着して構成してもよい。これにより、

20 外側立上り壁622a及び前記底面部624aの二面において、挟圧マ

ッサージを実施する事ができる。

【0045】

図13に示す前記前腕部施療機構6aは、前部に口型施療部66a、

中部に凹型施療部67a、後部にL型施療部68aを夫々備えた構成に

25 したものを例示している。すなわち、口型施療部66aは、前記底面部

624a、前記外側立上り壁622a及び内側立上り壁623a、手掛


130
け部65aにより口型に囲われた施療部であり、凹型施療部67aは、

底面部624aと外側立上り壁622a及び内側立上り壁623aによ

り凹型に形成する施療部であり、L型施療部68aは、底面部624a

と外側立上り壁622aとによりL型に形成する施療部である。

5 【0046】

図14に示す形態は、前部に口型施療部66a、中部にコ型施療部6

9a、後部にL型施療部68aを夫々備えたものである。該コ型施療部

69aは、前記底面部624a、前記外側立上り壁622a、手掛け部

65aによりコ型に形成する施療部となる。

10 【0047】

この形態は、特に前腕部の中腹に対する上下方向の挟圧を可能として

いる。また、手掛け部65aの面積が大きくなるため、施療者が手掛け

部65a上面部に手を置いて起立または着座がし易くなる。

【0048】

15 また、図15に示すのは、前部及び中部に口型施療部66a、後部に

L型施療部68aを夫々備えた構成であり、特に前腕部の中腹に対する

施療をさらに充実させる形態のものである。

【0049】

図9に示すのは、前記口型施療部66aに設けた前記膨縮袋4aの、

20 他の配置形態である。すなわち、下部を底辺とし上部を頂点とする三角

型の空洞部62aの内面に夫々膨縮袋4aを設けている。このように構

成する事により、図9に示すように手のひらを下にして載置したり、ま

たは図10に示すように手部を縦にして載置したりする事ができ、施療

者の好みに応じられる。

25 【0050】

または、図11に示すように、前記空洞部62aを口型に形成すると


131
共に、三角型になるよう複数の膨縮袋4aを連結し、膨縮袋4aで形成

した三角型の内部に手部や前腕部を挿入する事も可能である。この場合、

口型に形成した空洞部62aの内部で、自由に手部や前腕部を回転する

事ができ、施療者は好みの姿勢で施療を受ける事ができる。

5 【0051】

或いは、口型に形成した空洞部62aの内部に、輪型の膨縮袋4aを

設けてもよい。該輪型の膨縮袋4aは、図12に示すように手部や前腕

部の周部を隈無く挟圧する事ができる。

【0052】

10 また、図4に示すように、前記肘掛部14aは、椅子本体10aに対

して前後方向に移動可能に設けられており、前記背凭れ部12aのリク

ライニング角度に応じた所定の移動量を保持しながら前記背凭れ部12

aのリクライニング動作に連動して前記肘掛部14aが椅子本体10a

に対して前後方向に移動するようにしている。

15 【0053】

すなわち、前記肘掛部14aの下部に前後方向に回動するための回動

部141aを設けると共に、肘掛部14aの後部で回動可能に前記背凭

れ部12aの側部と連結する連結部142aを設けて構成している。

【0054】

20 または、図示しないが、前記回動部141aの代わりに、ガイドレー

ルなどを採用した水平スライド機構を設けて、前記肘掛部14a全体が

前記背凭れ部12aのリクライニング動作と連動して、水平にスライド

移動するようにしてもよい。

【0055】

25 図1に示すように、前記空洞部62aの先端部には、前腕部施療機構

6aを含めた全マッサージ機構の動作を停止するための安全停止スイッ


132
チ64aを備えている。該安全停止スイッチ64aを備える事により、

例えば、施療者が前記椅子本体10aから即座に離れて避難する必要が

生じるなどの緊急事態において、前記膨縮袋4aの挟圧により施療者の

身体、または手腕や脚などの肢体が拘束されていたとしても、指先で安

5 全停止スイッチ64aを操作して、直ちに膨縮袋4aの内部気圧を緩和

させて、身体や肢体を離脱する事ができる。

【0056】

前記椅子式マッサージ機1aの操作を行うため、図1に示すように、

リモートコントローラ等の操作部5aを前記背凭れ部12aの左右にあ

10 る前記各側壁部2aのうち、片側前方に備えており、該操作部5aによ

って、電源の入切、前記施療子機構3aや前記空気給排装置42a及び

各前記膨縮袋4aによる施療の種類や強度等の選択、また、前記背凭れ

部12aのリクライニングや前記足載せ部13aの上下動の調節等、椅

子式マッサージ機1aの全ての機能に対する操作を行うようにしている。

15 尚、操作部5aの操作は、図示しないが、液晶画面等の操作表示部や操

作ボタン、またはダイヤル等の操作指示部等で行うようにしてもよい。

【0057】

また、図16に示すように、前記空洞部62aの先端部に、前記操作

部5aとは別に、操作具51aを取り付けて、操作部5aで行う操作を

20 該操作具51aにて行い得るよう構成する事ができる。

【0058】

前記操作具51aは、施療者が手部にて操作し易いレバー511a及

び実行ボタン512aを備えたスティック方式のものを採用できる。該

レバー511aは、前後方向または左右方向に動かすか、或いは四方ま

25 たは八方など、周囲に動かす事により、選択操作する事ができる形態の

もので、前記操作部5aの前記液晶画面を確認しながら選択を行い、次


133
いで実行ボタン512aを押して決定する事ができる。

【0059】

尚、前記操作具51aは、施療者の腕部の長さの違いに対応するため、

前後にスライド調節するためのスライド調節手段513aを備えてもよ

5 い。該スライド調節手段513aは、図示しないが摺動レール及び摺動

部材から構成する事ができる。また、必要に応じて、前記操作具51a

に前記安全停止スイッチ64aを配備してもよい。

【0060】

さらに、前記操作部5aまたは前記操作具51aによる前記椅子式マ

10 ッサージ機1aの操作に伴う制御は、電子制御であり、また、予めプロ

グラムされたデータに基づく動作や、施療者が任意に入力したプログラ

ムデータに基づいて動作するようにしてもよい。

【0061】

前記椅子式マッサージ機1aに関しては、これまで主に椅子型のもの

15 を示したが、これに限らず、例えば、他に少なくとも施療者の臀部また

は大腿部が当接する座部と施療者の背部が当接する背凭れ部を設けてな

るマット型やベッド型にも上記の構成を適用する事ができ、そのような

形態の場合は、該背凭れ部または座部の左右両側に、前述した前腕部施

療機構6aを設けて構成する事ができる。

20 イ 前記アの記載事項によれば、本件明細書Cには、本件発明C−1に関し、

次のような開示があることが認められる。

施療者の腕部をマッサージする前腕部施療機構として肘掛部の長さ

方向全域に左右一対の立上り壁を設けた、従来の椅子式マッサージ機に

おいては、施療者の肘関節付近にまで該各立上り壁が形成されているた

25 め、上腕部内側の肘関節付近を施療者側である内側立上り壁が圧迫して、

施療者に不快感を与えたり、前腕部施療機構における腕部の載脱行為を


134
妨げたりするなどの欠点があり、また、肘掛部の前端部にまで左右の立

上り壁が形成されているため、肘掛部の前端部の上面部が開口された形

態となり、着座した施療者が立ち上がる際又は着座する際、そのような

部分に体重を掛けることは困難であるという問題があった(【0002】、

5 【0004】ないし【0006】 。


一方で、肘掛部の前側上面部は立上り壁が形成されておらず、平坦に

なった部分を有する前腕部施療機構として左右一対の立上り壁を設けた、

従来の椅子式マッサージ機においては、施療者が着座状態で人体手部を

両肘掛部上面部に安定的に保持させることができるが、左右一対の立上

10 り壁間に形成される凹部の底面部と、手掛け部としての平坦になった部

分が同じ高さの同面であるため、手掛け部を掴んで立ち上がろうとする

際、内側立上り壁によって上腕部内側の肘関節付近が圧迫を受け、その

付近と共に前腕部の内側が摺擦されながら、凹部から腕部が離脱する事

になり、施療者に対して不快感を与えるという問題があった 【0003】
( 、

15 【0007】 。


「本発明」は、前記 の問題点を解消し、施療者の腕部に対し、前腕

部施療機構の立上り壁が不必要に圧迫して不快感をもたらす要因を解

消し、前腕部施療機構における腕部の載脱をスムーズに行うよう構成す

ると共に、前腕部施療機構を有していても施療者が起立及び着座を快適

20 に行うことができるよう構成した椅子式マッサージ機を提供すること

を目的とし、上記椅子式マッサージ機を提供することを課題とするもの

であり、その課題を解決するための手段として、
「本発明」の椅子式マッ

サージ機は、前記肘掛部の内側後方から施療者の前腕部を挿入するため

の前腕挿入開口部を有しており、該前腕挿入開口部から延設して肘掛部

25 の内部に施療者の手部を含む前腕部を挿入保持するための空洞部が設

けられており、前記空洞部は、前記肘掛部の幅方向左右に夫々設けた外


135
側立上り壁及び内側立上り壁と底面部とから形成され、且つ、前記空洞

部の前記外側立上り壁及び内側立上り壁の上面前端部に手掛け部が設

けられており、前記手掛け部の下面部及び前記空洞部の底面部における

上面部に膨縮袋が夫々設けられたものとする構成を採用した(【000

5 8】 【0013】 。
、 )

これにより「本発明」は、前腕部施療機構におけるスムーズな前腕部

の載脱が可能となり、施療者が起立及び着座を快適に行うことができる

という効果を奏する(【0013】 【0014】 。
、 )

争点2−1−1−1(本件発明C−1及びC−2の構成要件充足性)につ

10 いて

ア 被告製品1及び2の構成

被告製品1及び2が別紙1「被告製品1ないし8説明書」の第1の2

記載のとおりの構成及び 記載のa、d、f、gの構成を有すること

は、前記前提事実記載のとおりである。

15 前記 の認定事実と証拠(甲7、8、乙C15ないしC17、C25、

C40)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品1及び2は、次のaない

し g の構成を有することが認められる。

a 座部及び背もたれ部を有する椅子本体と、該椅子本体の両側部に腕

ユニットを有するマッサージチェアにおいて、

20 b 腕ユニットの内側後方から施療者の前腕部を挿入するための開口部

が設けられ、該開口部から延設して腕ユニットの内部に手部を含む前

腕部を挿入保持するための空間(前腕保持部)が設けられ、

c 前腕保持部は、腕ユニットの幅方向外側に設けられた外側壁面部及

び底面部を有し、前部には、さらに腕ユニットの幅方向内側に設けら

25 れた内側壁面部を有し、

d 前腕保持部の前部には、内側壁面部と前記外側壁面部の上方に先端


136
部上方を塞ぐ形態でアームレスト(レスト部)が設けられており、

e 腕ユニットが、

e−1 前部に底面部と外側壁面部と内側壁面部とアームレストとに

囲われ、前腕保持部に位置する施療部と、

5 e−2 後部に底面部と外側壁面部により略L型に形成され、開口部

に位置する略L型施療部とを備え、

f 前部には手プレスユニット(エアバッグ) 後部には前腕プレスユニ


ット(エアバッグ)がそれぞれ設けられた

g マッサージチェア。

10 イ 被告製品1及び2の本件発明C−1の構成要件充足性

「空洞部」(構成要件B、C)について

a 被告製品1及び2が本件発明C−1の構成要件A、D、F及びGを

充足することは、前記前提事実記載のとおりである。

本件発明C−1の特許請求の範囲(請求項1)の記載から、本件発

15 明C−1の「空洞部」は、
「肘掛部」に「前腕挿入開口部から延設して

肘掛部の内部に施療者の手部を含む前腕部を挿入保持するため」に設

けられ(構成要件B) 「前記肘掛部の幅方向左右に夫々設けた外側立


上り壁及び内側立上り壁と底面部とから形成され」ていること(構成

要件C)を理解できる。そして、「手部を含む前腕部」にいう「前腕」

20 は、一般に、肘から手首までの部分(乙C6)を、
「手部」にいう「手」

は、一般に、手首から先の部分(乙C7)を意味する。

一方で、本件発明C−1の特許請求の範囲(請求項1)には、
「空洞

部」を形成する「内側立上り壁」が空洞部の長さ方向全域に設けられ

る必要があることを規定した記載はない。

25 次に、前記 イ認定のとおり、本件明細書Cには、本件発明C−1

に関し、施療者の腕部をマッサージする前腕部施療機構として肘掛部


137
の長さ方向全域に左右一対の立上り壁を設けた、従来の椅子式マッサ

ージ機においては、施療者の肘関節付近にまで該各立上り壁が形成さ

れているため、上腕部内側の肘関節付近を施療者側である内側立上り

壁が圧迫して、施療者に不快感を与えたり、前腕部施療機構における

5 腕部の載脱行為を妨げたりするなどの欠点があり、また、肘掛部の前

端部にまで左右の立上り壁が形成されているため、肘掛部の前端部の

上面部が開口された形態となり、着座した施療者が立ち上がる際又は

着座する際、そのような部分に体重を掛けることは困難であるという

問題があり(【0002】【0004】ないし【0006】 、また、肘
、 )

10 掛部の前側上面部は立上り壁が形成されておらず、平坦になった部分

を有する前腕部施療機構として左右一対の立上り壁を設けた、従来の

椅子式マッサージ機においては、施療者が着座状態で人体手部を両肘

掛部上面部に安定的に保持させることができるが、左右一対の立上り

壁間に形成される凹部の底面部と、手掛け部としての平坦になった部

15 分が同じ高さの同面であるため、手掛け部を掴んで立ち上がろうとす

る際、内側立上り壁によって上腕部内側の肘関節付近が圧迫を受け、

その付近と共に前腕部の内側が摺擦されながら、凹部から腕部が離脱

する事になり、施療者に対して不快感を与えるという問題があったこ

とから(【0003】【0007】 、本件発明C−1は、施療者の腕部
、 )

20 に対し、前腕部施療機構の立上り壁が不必要に圧迫して不快感をもた

らす要因を解消し、前腕部施療機構における腕部の載脱をスムーズに

行うよう構成すると共に、前腕部施療機構を有していても施療者が起

立及び着座を快適に行うことができるよう構成した椅子式マッサージ

機を提供することを課題とし、その課題を解決するための手段として、

25 前記肘掛部の内側後方から施療者の前腕部を挿入するための前腕挿入

開口部を有しており、該前腕挿入開口部から延設して肘掛部の内部に


138
施療者の手部を含む前腕部を挿入保持するための空洞部が設けられて

おり、前記空洞部は、前記肘掛部の幅方向左右に夫々設けた外側立上

り壁及び内側立上り壁と底面部とから形成され、且つ、前記空洞部の

前記外側立上り壁及び内側立上り壁の上面前端部に手掛け部が設けら

5 れており、前記手掛け部の下面部及び前記空洞部の底面部における上

面部に膨縮袋が夫々設けられたものとする構成を採用し【0008】
( 、

【0013】 、これにより、前腕部施療機構におけるスムーズな前腕


部の載脱が可能となり、施療者が起立及び着座を快適に行うことがで

きるという効果を奏すること(【0013】 【0014】
、 )の開示があ

10 る。

また、本件明細書Cには、「空洞部」に関し、「本発明の椅子式マッ

サージ機1aは、図1及び図6に示すように、前記肘掛部14aに、

前記肘掛部14aの内側後方から施療者の前腕部を挿入するための前

腕挿入開口部61aを有しており、また、該前腕挿入開口部61aか

15 ら延設して肘掛部14aの内部に施療者の前腕部を挿入保持するため

の空洞部62aを設けている。 (
」 【0030】 、
) 「さらに、前記椅子式

マッサージ機1aは、前記空洞部62aの内部壁面621aの各所に

施療者の前腕部にマッサージを施すための前腕部施療機構6aを設け

て構成している。 (
」 【0031】、
) 「前記空洞部62aは、前記肘掛部

20 14aの幅方向左右に夫々設けた外側立上り壁622a及び内側立上

り壁623aと、底面部624aとから形成しており、該外側立上り

壁622a及び内側立上り壁623aの前記各内部壁面621aに、

前腕部施療機構6aを設けている。尚、適宜底面部624aにも該前

腕部施療機構6aを設ける事ができる。 (
」 【0032】 、
) 「前記前腕部

25 施療機構6aは、前記膨縮袋4aからなる形態のものでもよく、図6

及び図7に示すように、施療者の手部と前腕部に対し夫々挟圧マッサ


139
ージが行えるように、前記空洞部62aの長さ方向前後に左右一対の

膨縮袋4a・4aを夫々設ける事ができる。すなわち、空洞部62a

の長さ方向前側に設けられた前記左右一対の膨縮袋4aは、手部に対

応し、また空洞部62aの長さ方向後側に設けられた前記左右一対の

5 膨縮袋4aは、前腕部に対応するよう構成する事ができる。 【003



4】 、
)「図1に示すように、前記肘掛部14aには、前記外側立上り壁

622a及び内側立上り壁623aの上面前端部に、着座した施療者

が立ち上がる際、或いは着座する際において、体重を掛けるための手

掛け部65aを設けている。すなわち、前記空洞部62aの先端部の

10 上方を塞ぐような形態に手掛け部65aを形成している。 (
」 【003

7】 、
)「また、図13に示すように、前記空洞部62aにおいて前腕部

に対応した前記各膨縮袋4aよりも後方である位置に、前記膨縮袋4

aを設けてもよい。この後方の位置に、前腕挿入開口部61aを設け

ているため、前記内側立上り壁623aは形成されていないが、図8

15 に示すように、前記外側立上り壁622a及び前記底面部624aの

二面において、互いに対設するよう膨縮袋4a・4aを設ける事がで

きる。 (
」 【0043】 、
) 「図13に示す前記前腕部施療機構6aは、前

部に口型施療部66a、中部に凹型施療部67a、後部にL型施療部

68aを夫々備えた構成にしたものを例示している。すなわち、口型

20 施療部66aは、前記底面部624a、前記外側立上り壁622a及

び内側立上り壁623a、手掛け部65aにより口型に囲われた施療

部であり、凹型施療部67aは、底面部624aと外側立上り壁62

2a及び内側立上り壁623aにより凹型に形成する施療部であり、

L型施療部68aは、底面部624aと外側立上り壁622aとによ

25 りL型に形成する施療部である。 (
」 【0045】 、
) 「図14に示す形態

は、前部に口型施療部66a、中部にコ型施療部69a、後部にL型


140
施療部68aを夫々備えたものである。該コ型施療部69aは、前記

底面部624a、前記外側立上り壁622a、手掛け部65aにより

コ型に形成する施療部となる。 (
」 【0046】 、
) 「また、図15に示す

のは、前部及び中部に口型施療部66a、後部にL型施療部68aを

5 夫々備えた構成であり、特に前腕部の中腹に対する施療をさらに充実

させる形態のものである。 (
」 【0048】)との記載がある。そして、

図8には、内側立上り壁が存在せず、外側立上り壁622a及び底面

部624aによりL型に形成された空間に空洞部を表す符号「62a」

が示されており、また、図14には、内側立上り壁が存在せず、底面

10 部624a、外側立上り壁622a及び手掛け部65aによりコ型に

形成された空間に空洞部を表す符号「62a」が示されている。

一方で、本件明細書Cには、
「空洞部」を形成する「内側立上り壁」

が空洞部の長さ方向全域に設けられる必要があることについての記載

や示唆はなく、かえって、上記のとおり、施療者の腕部をマッサージ

15 する前腕部施療機構として肘掛部の長さ方向全域に左右一対の立上り

壁を設けた、従来の椅子式マッサージ機には、施療者側の内側立上り

壁が上腕部内側の肘関節付近を圧迫して、施療者に不快感を与えたり、

前腕部施療機構における腕部の載脱行為を妨げたりするなどの欠点が

あることの開示がある。

20 以上の本件発明C−1の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本

件明細書Cの記載を総合すれば、本件発明C−1の「空洞部」は、
「肘

掛部の幅方向左右に夫々設けた外側立上り壁及び内側立上り壁と底面

部とから形成」され、かつ、
「前腕挿入開口部から延設して肘掛部の内

部に施療者の手部を含む前腕部を挿入保持」する部分であるが、その

25 長さ方向全域に内側立上り壁が存在することを必須のものとするので

はなく、その長さ方向の一部に内側立上り壁が存在する構成のものも、


141
「空洞部」に該当するものと解される。

b これに対し、被控訴人は、@本件発明C−1の特許請求の範囲(請

求項1)の記載から、本件発明C−1の「空洞部」が後方にある「挿

入開口部」から延設されて隣接し、
「手部を含む前腕部」を挿入できる

5 ものであって、「外側立上り壁及び内側立上り壁と底面部とから形成

され」ている必要があるから、本件発明C−1の「空洞部」は、その

全体にわたって「内側立上り壁」を備えるものをいい、少なくとも施

療者の前腕部の一部まで及ぶ「内側立上り壁」が存在するものをいう、

A本件明細書Cの記載によれば、内側立上り壁と外側立上り壁に蓋を

10 する形で設けることにより、「起立及び着座時の内側立上り壁による

前腕部の摺擦を回避する」ものであるから、本件発明C−1の「空洞

部」は、少なくとも前腕部の一部にまで「内側立上り壁」が及んでい

なければならない、B本件出願Cに係る本件補正によって、本件発明

C−1の「空洞部」は、
「前記肘掛部の幅方向左右に夫々設けた外側立

15 上り壁及び内側立上り壁と底面部とから形成され」たものに限定され、

本件明細書Cの図14の「コ型」の形態の肘掛部は、本件発明C−1

の「空洞部」に含まれない構成となったが、他方で、本件明細書Cに

【0046】の記載や図14が存在するのは、本件上申書(乙C10)

及び本件意見書(乙C12)の記載に照らすと、本件出願Cの出願又

20 は本件補正の際に、補正等がされなかった結果にすぎないし、また、

図8における「62a」との記載は、「空洞部62a」の「後方位置」

にある「前腕挿入開口部」を示すに当たり、
「空洞部62a」を仮想線

で示したものにすぎないから、
「空洞部」に「内側立上り壁」を備えな

い部分があることを示したものではないなどとして、本件発明C−1

25 の「空洞部」は、その全体にわたって「内側立上り壁」を備えるもの

をいい、少なくとも施療者の前腕部の一部まで及ぶ「内側立上り壁」


142
が存在するものを意味する旨主張する。

しかしながら、@及びAについては、前記aで説示したとおり、本

件発明C−1の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本件明細書C

の記載から、本件発明C−1の「空洞部」は、その全体にわたって「内

5 側立上り壁」を備えるものをいうものと解することはできないし、ま

た、施療者の前腕部の一部まで及ぶ「内側立上り壁」が存在するもの

を意味すると解することもできない。

次に、Bについては、控訴人及びしげるテックが本件出願Cの出願

時に提出した本件上申書(乙C10)には、
変更箇所においては、原

10 出願の分割直前の明細書の[0032]、
[0033]、
[0034]、
[0

037]及び図面[図1]〜[図4][図6][図7][図13][図
、 、 、 、

16]に記載された事項に基づく発明を新たに追加記載したものであ

る」との記載があるところ、本件上申書は、本件出願Cが分割の実体

的要件を満たすことを説明すること等を目的とするものであって、本

15 件出願Cに係る特許請求の範囲減縮を目的とするものではないこ

と、上記記載部分は、本件出願Cの特許請求の範囲、明細書又は図面

に記載された事項が、原出願の分割直前の特許請求の範囲、明細書又

は図面に記載された事項の範囲内にあることを説明したものと認め

られ、上記記載部分に掲げられていない明細書の段落や図面に記載さ

20 れた実施例について本件出願Cに係る特許発明技術的範囲から除

外する意思が表れているとはいえない。

また、本件補正によって、空洞部の一部をコ型施療部とする構成を

有する本件発明C−2の特許請求の範囲(請求項2)を追加し、さら

に、本件補正と同時に提出した本件意見書(乙C12)において、請

25 求項1の補正内容に関し、「肘掛部が、前部に前記底面部と前記外側


立上り壁と前記内側立上り壁と前記手掛け部とに囲われ、前記空洞部


143
に位置する施療部と、後部に前記底面部と前記外側立上り壁によりL

型に形成され、前記前腕挿入開口部に位置する施療部とを備え」るこ

とは、本願明細書の【0045】及び【0046】欄に記載していま

す」と述べて、本件明細書Cの【0046】を引用して本件補正が新

5 規事項の追加には当たらない旨を説明していることに鑑みると、控訴

人が、本件補正によって、本件発明C−1の特許請求の範囲から、空

洞部の一部にのみ内側立上り壁が存在する実施態様を意識的に除外

したものと認めることはできない。

そうすると、本件特許Cの出願経過を考慮しても、本件発明C−1

10 の「空洞部」は、その全体にわたって「内側立上り壁」を備えるもの

をいうものと解すべき理由はない。

以上によれば、被控訴人の上記主張は採用することができない。

c そこで、被告製品1及び2が本件発明C−1の「空洞部」を有する

かどうか検討する。

15 被告製品1及び2は、前記ア のaないしgの構成を有するところ、

被告製品1及び2の「腕ユニット」、
「外側壁面部」、
「内側壁面部」、
「底

面部」「アームレスト(レスト部)
、 」及び「(手・前腕)プレスユニッ

ト」は、本件発明C−1の「肘掛部」「外側立上り壁」「内側立上り
、 、

壁」「底面部」「手掛け部」及び「膨縮袋」にそれぞれ相当するもの
、 、

20 と認められる。

そして、別紙1「被告製品1ないし8説明書」の第1の図4及び5

の写真に示すように、被告製品1及び2の構成bの「前腕部を挿入す

るための開口部から延設して腕ユニットの内部に手部を含む前腕部

を挿入保持するための空間(前腕保持部)(別紙1の図5記載の点線


25 ?付近から前方(点線 方向)部分)は、全体にわたって底面部と外

側立上り壁が存在し、その前部には、内側立上り壁も存在し、底面部


144
と外側立上り壁と内側立上り壁と先端部上方を塞ぐアームレストに

よりロ型の空間が形成されていることが認められる。

そうすると、被告製品1及び2の前腕保持部は、全体にわたって底

面部と外側立上り壁が存在し、「前腕部を挿入するための開口部から

5 延設して肘掛部の内部に施療者の手部を含む前腕部を挿入保持」する

部分であって、その前部は、
「肘掛部の幅方向左右に夫々設けた外側立

上り壁及び内側立上り壁と底面部とから形成」され、その長さ方向の

一部に内側立上り壁が存在するから、本件発明C−1の「空洞部」に

相当するものと認められる。

10 これに反する被控訴人の主張は採用することができない。

「前腕挿入開口部」(構成要件B)について

a 本件発明C−1の特許請求の範囲(請求項1)の記載から、本件発

明C−1の「前腕挿入開口部」は、
「肘掛部」に「内側後方から施療者

の前腕部を挿入するため」に設けられた開口部であって、
「前腕挿入開

15 口部から延設して肘掛部の内部に施療者の手部を含む前腕部を挿入保

持するため」の「空洞部」が設けられていること(構成要件B)を理

解できる。そして、「延設」とは、「延ばし設けること」を意味するこ

とに照らすと、「前腕挿入開口部から延設して」とは、「前腕挿入開口

部」を起点として延ばし設けられていることを理解できるから、本件

20 発明C−1の「空洞部」は、
「前腕挿入開口部」を起点とするものであ

り、
「前腕挿入開口部」は「空洞部」の一部を構成することを理解でき

る。

次に、本件明細書Cには、「前腕挿入開口部」に関し、「本発明の椅

子式マッサージ機は、前記前腕挿入開口部を、前記空洞部の後方位置

25 に設けられた外側立上り壁及び底面部で形成し、前記前腕挿入開口部

の前記外側立上り壁及び前記底面部の二面において互いに対設する位


145
置に各々膨縮袋が設けられたものとしているため、空洞部の後方位置

でも前腕部に対するマッサージを実施する事ができる。 【0016】 、

」 )

「本発明の椅子式マッサージ機1aは、図1及び図6に示すように、

前記肘掛部14aに、前記肘掛部14aの内側後方から施療者の前腕

5 部を挿入するための前腕挿入開口部61aを有しており、また、該前

腕挿入開口部61aから延設して肘掛部14aの内部に施療者の前腕

部を挿入保持するための空洞部62aを設けている。 (
」 【0030】 、


「また、図13に示すように、前記空洞部62aにおいて前腕部に対

応した前記各膨縮袋4aよりも後方である位置に、前記膨縮袋4aを

10 設けてもよい。この後方の位置に、前腕挿入開口部61aを設けてい

るため、前記内側立上り壁623aは形成されていないが、図8に示

すように、前記外側立上り壁622a及び前記底面部624aの二面

において、互いに対設するよう膨縮袋4a 4aを設ける事ができる。
・ 」

(【0043】)との記載があり、また、図6には、空洞部62aの後

15 方において、前腕挿入開口部61aが存在することが示されている。

上記記載によれば、本件明細書Cには、「前腕挿入開口部」は、「空洞

部の後方」において「外側立上り壁及び底面部で形成」され、
「空洞部」

の一部を構成することの開示があることが認められる。

以上の本件発明C−1の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本

20 件明細書Cの記載によれば、本件発明C−1の「前腕挿入開口部」は、

「肘掛部」に「内側後方から施療者の手部を含む前腕部を挿入するた

め」に設けられた開口部であって、
「空洞部」の一部を構成する部分で

あるものと解される。

b そして、被告製品1及び2の構成bの「開口部」
(別紙1の図5記載

25 の点線?付近)は、
「肘掛部」に「内側後方から施療者の前腕部を挿入

するため」に設けられた開口部であって、
「空洞部」の一部を構成する


146
部分であるから、本件発明C−1の「前腕挿入開口部」に相当するも

のと認められる。

c これに対し、被控訴人は、被告製品1及び2の開口部は、内側側方

から施療者の前腕部を挿入するものであり、 内側後方から施療者の前


5 腕部を挿入するため」に設けられた開口部とはいえないから、本件発

明C−1の「前腕挿入開口部」に当たらない旨主張する。

しかしながら、被告製品1及び2は、
「腕保持部の前部には、内側壁

面部と前記外側壁面部の上方に先端部上方を塞ぐ形態でアームレスト

(レスト部)が設けられて」(構成d)いるため、構成bの「開口部」

10 に「腕ユニットの側方から手部を含む前腕部を挿入する場合において

も、内側後方から前方に向けて、手部を含む前腕部を挿入する動作を

伴うから、構成bの「開口部」は、
「内側後方から施療者の前腕部を挿

入するため」に設けられた開口部に相当するものである。

したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。

15 構成要件B及びCの充足性

以上によれば、被告製品1及び2は、本件発明C−1の「空洞部」及

び「前腕挿入開口部」を備えるから、構成要件B及びCを充足する。

構成要件E−1及びE−2の充足性

被告製品1及び2の「腕ユニット」、
「外側壁面部」、
「内側壁面部」、
「底

20 面部」 「アームレスト(レスト部) 、
、 」 「前腕保持部」及び「開口部」は、

本件発明C−1の「肘掛部」 「外側立上り壁」 「内側立上り壁」 「底面
、 、 、

部」「手掛け部」「空洞部」及び「前腕挿入開口部」に相当することは、
、 、

前記 及び 認定のとおりである。

そうすると、被告製品1及び2の構成e−1の「腕ユニット」の「前

25 部に底面部と外側壁面部と内側壁面部とアームレストとに囲われ、前腕

保持部に位置する施療部」及び構成e−2の「腕ユニット」の「後部に


147
底面部と外側壁面部により略L型に形成され、開口部に位置する略L型

施療部」は、本件発明C−1の構成要件E−1(「前記肘掛部」の「前部

に前記底面部と前記外側立上り壁と前記内側立上り壁と前記手掛け部と

に囲われ、前記空洞部に位置する施療部」)の構成及び構成要件E−2

5 (「後部に前記底面部と前記外側立上り壁によりL型に形成され、前記前

腕挿入開口部に位置する施療部及び構成要件E−2」 の構成にそれぞれ


相当するものと認められる。

これに反する被控訴人の主張は採用することができない。

まとめ

10 以上によれば、被告製品1及び2は、本件発明C−1の構成要件を全

て充足するから、その技術的範囲に属する。

ウ 被告製品1及び2の本件発明C−2の構成要件充足性

被告製品1及び2が本件発明C−1の構成要件を全て充足すること

は、前記イ認定のとおりであり、また、被告製品1及び2が本件発明C

15 −2の構成要件Iを充足することは、前記前提事実記載のとおりである。

証拠(甲7、8、乙C15ないしC17、C25、C40)及び弁論

の全趣旨によれば、被告製品1及び2は、
「腕ユニットは、中部に、底面

部と外側壁面部と、後方に向かうにしたがって幅の狭くなるアームレス

トにより、略コ型に形成された施療部」との構成(構成h)を有するこ

20 とが認められる。

本件発明C−2の特許請求の範囲(請求項2)の記載から、構成要件

Hの「施療部」は、
「肘掛部」の「中部」に「前記底面部と前記外側立上

り壁と手掛け部によりコ型に形成された」構成であることを理解できる。

一方で、本件発明C−2の特許請求の範囲(請求項2)には、「コ型」

25 の施療部を形成する底面部、外側立上り壁及び手掛け部の形状を規定す

る記載はない。また、本件明細書Cには、
「図14に示す形態は、前部に


148
口型施療部66a、中部にコ型施療部69a、後部にL型施療部68a

を夫々備えたものである。該コ型施療部69aは、前記底面部624a、

前記外側立上り壁622a、手掛け部65aによりコ型に形成する施療

部となる。 (
」 【0046】 、
) 「この形態は、特に前腕部の中腹に対する上

5 下方向の挟圧を可能としている。また、手掛け部65aの面積が大きく

なるため、施療者が手掛け部65a上面部に手を置いて起立または着座

がし易くなる。 (
」 【0047】)との記載があるが、特許請求の範囲(請

求項2)の記載と同様に、
「コ型」の施療部を形成する底面部、外側立上

り壁及び手掛け部の形状を特定の形状のものに限定する記載はない。

10 そして、被告製品1及び2の「腕ユニット」、
「底面部」、
「外側壁面部」

及び「アームレスト」は、本件発明C−2の「肘掛部」 「底面部」 「外
、 、

側立上り壁」及び「手掛け部」にそれぞれ相当することからすると、被

告製品1及び2の構成hの「略コ型に形成された施療部」は、構成要件

Hの「施療部」に相当するものと認められる。

15 これに反する被控訴人の主張は採用することができない。

以上によれば、被告製品1及び2は、本件発明C−2の構成要件を全

て充足するから、その技術的範囲に属する。

争点2−1−1−2(本件発明C−3ないしC−5の構成要件充足性)に

ついて

20 ア 被告製品1の本件発明C−3及びC−4の構成要件充足性

被告製品1が本件発明C−1の構成要件を全て充足することは、前記

イ認定のとおりである。

証拠(甲7、8、乙C15、C16、C40)及び弁論の全趣旨によ

れば、被告製品1は、次のk及びlの構成を有することが認められる。

25 k 開口部の外側壁面部及び底面部の二面において互いに対設する位置

に、外側壁面部側に外壁エアバッグ1及び外壁エアバッグ2が、底面


149
部側に底壁エアバッグがそれぞれ設けられており、

l 外側壁面部の内側面に形成された突出部の頂面に外壁エアバッグ1

の下部の縁部を止着するとともに、底面部の外側壁面部側に、外壁エ

アバッグ2及び底壁エアバッグの外側壁面部側の縁部を止着している。

5 a 本件発明C−3の特許請求の範囲(請求項3)の記載から、本件発

明C−3の「外側立上り壁」
構成要件K)とは、肘掛部の幅方向外側

に設けられた壁であると解される。また、構成要件Lの「前記外側立

上り壁の下部」とは、外側立上り壁の全体を上下方向に観察した場合

の下半分の位置を指すものと解される。

10 b 被告製品1は、別紙5「主張図面(被告製品1及び2)」記載3のと

おり、外側立上り壁に当たる「外側壁面部」に外壁エアバッグ1が、

底面部に底壁エアバッグが設けられており、外側壁面部の内側面に形

成された突出部の頂面に外壁エアバッグ1の下部の縁部が止着されて

いるところ(構成k、l) 「突出部」は外側壁面部の内側面に設けら


15 れた膨らみのある部分であって、その位置関係及び形状から、
「外側立

上り壁」の一部を構成するものと評価できる。そして、突出部の頂面

は、内側立上り壁の下端ではないものの、外側立上り壁の全体を上下

方向に観察した場合の下半分すなわち下部に位置するということがで

きるから、外側立上り壁の下部に外壁エアバッグ1の下部の縁部が止

20 着されているといえる。また、底面部の外側立上り壁にもう一つの膨

縮袋である底壁エアバッグの外側壁面部側の縁部が止着されている。

そうすると、被告製品1は、本件発明C−3の構成要件K及びLを

充足する。

c これに対し、被控訴人は、@被告製品1は、別紙5「主張図面(被

25 告製品1及び2) 記載3に示すように、
」 底壁エアバッグの縁部と外壁

エアバッグ2の縁部は、底面部の外側壁面部側の箇所に止着され、ま


150
た、外壁エアバッグ1は、突出部の頂面に止着されており、外側壁面

部自体には止着されておらず、突出部は、外側壁面部と内部壁面とか

らなるものではないから、本件発明C−3の「外側立上り壁」
(構成要

件K)に含まれない、A突出部の頂面は、同別紙記載4のとおり、外

5 側壁面部を構成する外壁と上壁のうち、外壁の「中央部」付近に位置

しているから、外壁エアバッグ1は、構成要件Lの「外側立上り壁の

下部において、膨縮袋の下部の縁部を止着する」との構成を備えてお

らず、また、外壁エアバッグ2も、底面部に止着されているから、上

記構成を備えていないとして、被告製品1は、本件発明C−3の構成

10 要件K及びLを充足しない旨主張する。

しかしながら、前記bの認定に照らし、被控訴人の上記主張は採用

することができない。

以上によれば、被告製品1は、本件発明C−3の構成要件を全て充足

するから、その技術的範囲に属する。

15 また、被告製品1は、前記 と同様の理由により、本件発明C−4の

構成要件を全て充足するから、その技術的範囲に属する。

イ 被告製品2の本件発明C−3及びC−4の構成要件充足性

被告製品2が本件発明C−1の構成要件を全て充足することは、前記

イ認定のとおりである。

20 証拠(甲8、乙C15ないしC17、C25)及び弁論の全趣旨によ

れば、被告製品2は、次のk’及びl’の構成を有することが認められ

る。

k’開口部の外側壁面部及び底面部の二面において互いに対設する位置

に、外側壁面側に外壁エアバッグ1及び外壁エアバッグ2が、底面部

25 側に底壁エアバッグが設けられているが、外壁エアバッグ1、外壁エ

アバッグ2及び底壁エアバッグはいずれも、前腕の延出方向に沿って


151
二分割されており、

l’外側壁面部の内側面に形成された突出部の頂面に外壁エアバッグ1

及び外壁エアバッグ2の下部の縁部を止着するとともに、底面部の外

側壁面部側に、底壁エアバッグの外側壁面部側の縁部を止着している。

5 a 被告製品2の構成k’及びl’の「突出部」は、別紙5「主張図面

(被告製品1及び2) 記載5のとおり、
」 外壁エアバッグ1及び2が突

出部にそれぞれ止着されている。

そして、上記突出部は、外側立上り壁に相当する「外側壁面部」の

内側面に形成された膨らみのある部分であって、
「外側立上り壁」の一

10 部を構成するものと認められるから、突出部の頂面は「外側立上り壁

の下部」に当たる。

そうすると、被告製品2は、本件発明C−3の構成要件K及びLを

充足する。

b これに対し、被控訴人は、被告製品2は、別紙5「主張図面(被告

15 製品1及び2) 記載5及び6に示すように、
」 外壁エアバッグ1及び2

は、突出部の頂面に止着されているが、突出部は、本件発明C−3の

「外側立上り壁」(構成要件K)に含まれず、また、突出部の頂面は、

同別紙記載6のとおり、外側壁面部を構成する外壁と上壁のうち、外

壁の「中央部」付近に位置しているから、外壁エアバッグ1及び2は、

20 構成要件Lの「外側立上り壁の下部において、膨縮袋の下部の縁部を

止着する」との構成を備えていないとして、被告製品2は、本件発明

C−3の構成要件K及びLを充足しない旨主張する。

しかしながら、前記aの認定に照らし、被控訴人の上記主張は採用

することができない。

25 以上によれば、被告製品2は、本件発明C−3の構成要件を全て充足

するから、その技術的範囲に属する。


152
また、被告製品2は、前記 と同様の理由により、本件発明C−4の

構成要件を全て充足するから、その技術的範囲に属する。

ウ 被告製品1及び2の本件発明C−5の構成要件充足性

被告製品1及び2が本件発明C−1の構成要件を全て充足することは、

5 前記 イ認定のとおりであり、また、被告製品1及び2が本件発明C−5

構成要件Pを充足することは、前記前提事実記載のとおりである。

そうすると、被告製品1及び2は、本件発明C−5の構成要件を全て充

足するから、その技術的範囲に属する。

小括

10 以上のとおり、被告製品1及び2は、本件各発明Cの技術的範囲に属する。

4 争点2−2(本件特許Cに係る無効の抗弁の成否)について(本件特許C関

係)

無効理由1(乙C19を主引用例とする本件各発明Cの進歩性欠如)につ

いて

15 ア 乙C19の記載事項について

乙C19(特開2005−287831号公報)には、次のような記載

がある(下記記載中に引用する図1ないし3、16ないし21、36ない

し38については別紙6を参照)。

a 【特許請求の範囲

20 【請求項1】

座部両側に肘掛部を備えると共に座部後部に背凭れ部を備えた椅子

本体において、該椅子本体の背凭れ部両側に、施療者両脇部を両側か

ら挟持状に保持して施療し得る脇部保持手段、或いは施療者両脇部を

保持して上方へ持上げ可能に保持し得る脇部持上手段の少なくとも一

25 以上を配備した事を特徴とする施療機。

【請求項2】


153
座部両側に肘掛部を備えると共に座部後部に背凭れ部を備えた椅子

本体において、該椅子本体の両肘掛部の内側に肘挿入用凹溝を備える

と共に、各肘挿入用凹溝に、肘部を挟持状に保持して施療し得る肘部

挟持手段を配備した事を特徴とする施療機。

5 b 【技術分野】

【0001】

本発明は、人体に対して様々な施療を快適に実施する事ができるよ

うにした椅子式の施療機に関するものである。

【背景技術】

10 【0002】

従来から、人体の様々な部位を施療する事ができる施療機として、

例えば図36及び図37に示したような椅子や、図38に示したよう

な手揉機能付施療機がある。

【0003】

15 図36及び図37に示した椅子は、座部11と起伏可能な背凭れ部

12と挿入用凹溝28を左右に夫々備えた足載部3と座部11左右に

配置された肘掛部11cとを有する椅子本体2において、座部11と

背凭れ部12と足載部3の左右に配置された挿入用凹溝28とには、

それぞれ空気供給装置4から給排気される圧縮空気により膨縮する膨

20 縮袋16〜20、26、27が夫々備えており、背凭れ部12におい

ては主に人体の胴部裏側を施療する事ができ、また足載部3では主に

脹ら脛部を施療でき、座部11においては主に大腿部を夫々施療する

事ができるように構成している。

【0004】

25 また、前記背凭れ部12には、背もたれ部12が起立位置から座面

に対して略150度の角度で倒れる起倒範囲では人体の脇の下に引っ


154
掛ることがなく、背もたれ部12が前記略150を超えて倒れた時に

人体の脇の下に引っ掛ることができるようにすべく、背もたれ部12

の下部寄りに配設された係合凸部51が設けられており、背もたれ部

12が略150度以上倒された時点から、脇係合凸部51が着座者の

5 脇の下に引っ掛って、下腿が足載せ台3に拘束された着座者をその頭

部方向に引っ張るように構成し、ストレッチ作用をも実施する事がで

きるようにしている。(特許文献1)

【0005】

また、図38に示したような手揉機能付施療機は、前記椅子のよう

10 な人体の胴部や脚部の施療の他に、人体腕部或いは肘部を施療可能な

ものとしたものであり、該手揉機能付施療機は、背凭れ部と座部と肘

掛部21とからなる椅子本体2の該肘掛部21に、それぞれ上面外側

に立上り壁211を設けると共に該立上り壁211及び肘掛部21の

上面に空気供給装置4により膨縮する膨縮袋12を夫々配設しており、

15 肘掛部21の上面に載置された人体腕部或いは肘部を挟持状に保持し

つつ膨縮袋12にて施療を実施するように構成している。 特許文献2)


【発明が解決しようとする課題】

【0006】

ところで、上記特許文献1のような従来の椅子は、施療者の脇の下

20 位置で施療動作を行なわない一対の係合凸部が背凭れ部表面両側の固

定位置で常時突出状に配置されているため、背凭れ部を後方へ倒伏さ

せて係合凸部による脇部持上げを行う時以外には邪魔で不要なもので

あり、しかも、施療者が着座した場合に、背中の位置がこの背凭れ部

の中央部に位置するよう着座した場合は問題ないのであるが、施療者

25 が不意に背凭れ部の中央から外れて係合凸部上に凭れてしまった場合

には、該凸部が人体背部或いは腰部等に激突して痛み等による不快感


155
を与えたり大怪我をしたりする可能性が高いものである。このような

可能性は、特に骨粗鬆症等の多い高齢者にとっては、最も危険度の高

いものである。

【0007】

5 また、特許文献1のような従来の椅子は、一対の係合凸部が背凭れ

部表面両側の固定位置で常時突出状に配置されている為、見栄えが悪

くデザイン上の問題においても芳しくないものであり、しかも、係合

凸部は施療者の座高の違いによっても適応できないものであり、座高

が長身の施療者にとっては該凸部の脇部における引っ掛かり具合が甘

10 くなり、逆に座高が短身の施療者にとっては引っ掛かり具合が強すぎ

て不具合を生じるという問題もある。

【0009】

次に、上記特許文献2のような従来の手揉機能付施療機は、椅子本

体肘掛部の上面に人体腕部或いは肘部を挟持状に保持して施療を実施

15 するための立上り壁を設けているので、腕部或いは肘部に心地良い施

療が行なえるのであるが、腕部或いは肘部の施療を望まない場合や肘

掛部に肘を単に載せたい場合には、これが邪魔になって不快感を与え

る可能性があり、また、見栄えも悪くデザイン上の問題もあった。

【0010】

20 本発明は上記各種の問題点に鑑みて、各問題点を解消すると共に各

施療者の個人差にも適応できる施療を行なわせ、且つ、更なる新規の

施療効果や利便性を有する優れた施療機を提供する事を目的とするも

のである。

c 【課題を解決するための手段】

25 【0011】

すなわち、本発明の請求項1の施療機は、座部両側に肘掛部を備え


156
ると共に座部後部に背凭れ部を備えた椅子本体において、該椅子本体

の背凭れ部両側に、施療者両脇部を両側から挟持状に保持して施療し

得る脇部保持手段、或いは施療者両脇部を保持して上方へ持上げ可能

に保持し得る脇部持上手段の少なくとも一以上を配備した事を特徴と

5 するものである。

【0012】

また、本発明の請求項2の施療機は、座部両側に肘掛部を備えると

共に座部後部に背凭れ部を備えた椅子本体において、該椅子本体の両

肘掛部の内側に肘挿入用凹溝を備えると共に、各肘挿入用凹溝に、肘

10 部を挟持状に保持して施療し得る肘部挟持手段を配備した事を特徴と

するものである。

d 【発明の効果】

【0018】

よって、本発明の請求項1の施療機では、座部両側に肘掛部を備え

15 ると共に座部後部に背凭れ部を備えた椅子本体の背凭れ部両側に、施

療者両脇部を両側から挟持状に保持して施療し得る脇部保持手段、或

いは施療者両脇部を保持して上方へ持上げ可能に保持し得る脇部持上

手段の少なくとも一以上を配備したものであるため、脇部保持手段に

よって施療者の両胴部乃至両脇部を安定させた状態で効果的に保持し

20 て胴部乃至脇部の圧迫施療や指圧施療及び揉み施療を施す事ができる

と共に、脇部持上手段によって安定させた状態で施療者の両胴部乃至

両脇部を上方へ保持するよう持上げて肩部の持上げ施療をも施す事が

でき、しかもこれによる上半身のストレッチ作用をも同時にもたらす

事ができる。

25 【0021】

本発明の請求項2の施療機は、座部両側に肘掛部を備えると共に座


157
部後部に背凭れ部を備えた椅子本体の両肘掛部の内側に、肘挿入用凹

溝を備えると共に各肘挿入用凹溝に肘部を挟持状に保持して施療し得

る肘部挟持手段を配備したものであるため、施療者が肘部や腕部及び

手部の施療を施したい場合には、肘挿入用凹溝内に施療者の肘部や腕

5 部及び手部を挿入して、肘部挟持手段による安定した施療部位の圧迫

施療や指圧施療及び揉み施療を効果的に施す事ができる。

【0022】

また、本発明の請求項2の施療機は、肘挿入用凹溝を両肘掛部の内

側に備えているので、従来のように肘掛部上部に肘や腕を持上げて施

10 療する必要が無く、リラックスした姿勢で肘部や腕部及び手部の施療

部位の圧迫施療や指圧施療及び揉み施療を適宜に施療できる。

【0023】

更に、本発明の請求項2の施療機は、肘挿入用凹溝を両肘掛部の内

側に備えており、肘掛部上部には従来の立上り壁のような障害となる

15 ものを設けていないため、施療者が単に肘掛部に肘部を載置させたい

場合においても、通常の椅子と同様にリラックスした着座姿勢で肘部

や腕部及び手部を載置させる事ができる。

e 【0036】

図1乃至図3は、本発明の施療機1aに使用される椅子本体2aの

20 一実施形体を示したものであり、該椅子本体2aは、施療者が着座す

る座部3aと、該座部3a後方に配備され、進退機構51aの進退動

作に連動して起倒自在に移動する背凭れ部5aが取り付けられており、

且つ前記座部3aの前方下部には足載部4aが進退機構41aの進退

動作と連動して出没自在に取付けられ、前記座部3aの左右両側には

25 肘掛部6aを夫々設けて椅子型に形成されたものとしている。

【0070】


158
図16乃至図21は、他の実施形態を示したものであり、本発明の

施療機1aの前記椅子本体2aの背凭れ部5aに、前記脇部保持機構

53a及び前記脇部持上機構54aを設けると共に、椅子本体2aの

左右に夫々設けられた肘掛部6aの内側に各々肘挿入用凹溝61aを

5 設けると共に背凭れ部5a左右には、上腕肩部挿入用凹溝63aを

夫々設けたものを例示している。

【0071】

前記各肘挿入用凹溝61aには、施療者の肘部や腕部及び手部を挟

持状に保持して施療し得る肘部挟持機構62a(肘部挟持手段)を配

10 備しており、図17に示すように施療者が肘部や腕部及び手部の施療

を所望する際に該肘挿入用凹溝61aに肘部等の施療部位を挿入する

だけで施療を受けられるように構成している。

【0072】

前記肘部挟持機構62a(肘部挟持手段)は、各肘挿入用凹溝61

15 aに、空気供給装置7aにより膨縮する膨縮袋等を配置しており、そ

の膨縮は上記と同様に、操作リモコン8aや肘掛部6aの内部に設け

ている制御回路84aにより制御されるようにしており、肘部挟持機

構62aにより、図20に示すような肘部や腕部及び手部等の周部を

挟圧保持または挟圧膨縮して心地よい施療を施す事ができる。

20 【0073】

図16及び図17は、前記肘部挟持機構62aが、手部を施療する

手部施療部621aと、前腕部を施療する前腕部施療部622aと、

肘周部を施療する肘部施療部623aとに分割して配備された肘部挟

持機構62aである場合を例示しており、施療者が所望する施療部位

25 に応じて夫々が前記制御回路84aにより制御され、挟圧反復膨縮や

アトランダム膨縮、或いは一定間挟圧膨縮保持等の膨縮動作を実施


159
るようにする事ができ、施療者の受ける施療が最適な効果をもたらす

ものとなるよう、例えば、適宜の設定プログラムや入手プログラムに

よる設定施療コースや選択施療コースに基づき制御回路84aで制御

され、挟圧反復膨縮やアトランダム膨縮、或いは一定間挟圧膨縮保持

5 等の膨縮動作を自動実行或いは選択実行させる事ができる。

【0074】

図21に示すように、施療者肘部を前記肘挿入用凹溝61aに挿入

すると共に、前記肘部挟持機構62aにて施療者肘部を膨縮保持した

状態を保ちながら、前記背凭れ部5aを後方へ倒伏させた場合、図中

10 の延び分Wで表すように、その延び分Wの範囲で施療者の腕部全体を

ストレッチする事ができ、また、前記脇部保持機構53aや前記脇部

持上機構54aと併用すれば、各機構62a・53a・54aの各作

用に加えてこれらの相乗効果を有する各種施療作用をもたらす事がで

きる。

15 【0075】

また、上記したように、図16乃至図20には、前記背凭れ部5a

の左右両側の施療者上腕部及び肩部付近に位置する前記上腕肩部挿入

用凹溝63aが夫々設けられており、該上腕肩部挿入用凹溝63aに

は、施療者上腕部及び肩部付近を挟持状に保持して施療し得る上腕肩

20 部挟持機構64a(上腕肩部挟持手段)を配備しており、図17に示

すように、施療者が上腕部または肩部付近の施療を所望する際に該上

腕肩部挟持機構64aの上腕肩部挿入用凹溝63aに上腕部または肩

部付近を挿入するだけで施療を受けられるよう構成している。

【0076】

25 前記上腕肩部挟持機構64a(上腕肩部挟持手段)は、該上腕肩部

挿入用凹溝63aに前記空気供給装置7aにより膨縮する膨縮袋等を


160
配置したものであり、図18に示すように、上腕部の周部または肩部

付近を挟圧保持または挟圧膨縮施療を実施する事ができる。

【0077】

図16及び図17に示す実施形態では、前記上腕肩部挟持機構64

5 aを、施療者肩付近を施療する肩部施療部641aと、施療者上腕部

を施療する上腕部施療部642aとに分割した上腕肩部挟持機構64

aを例示しており、これにおいても、施療者が所望する施療部位に応

じて夫々が前記制御回路84aにより制御され、挟圧反復膨縮やアト

ランダム膨縮、或いは一定間挟圧膨縮保持等の膨縮動作を実施するよ

10 うにする事ができ、施療者の受ける施療が最適な効果をもたらすもの

となるよう、例えば、適宜の設定プログラムや入手プログラムによる

設定施療コースや選択施療コースに基づき制御回路84aで制御され、

挟圧反復膨縮やアトランダム膨縮、或いは一定間挟圧膨縮保持等の膨

縮動作を自動実行或いは選択実行させる事ができるようにしている。

15 【0078】

尚、前記肘部挟持機構62a及び前記上腕肩部挟持機構64aを利

用しない場合においては、通常の椅子と同様に肘掛部6aの上部や背

凭れ部5a前面には突出物や突出壁がないため邪魔になる事はなく、

上面に施療者の肘部を容易に載置してリラックスできると共に、施療

20 者の背部に当接して不快感を与えたり着座時に衝撃を与えたりする事

もなく、見栄えが良く綺麗な状態で維持されるものでる。

前記 の記載事項によれば、乙C19には、次のような開示があるこ

とが認められる。

a 施療者の脇の下位置で施療動作を行なわない一対の係合凸部が背凭

25 れ部表面両側の固定位置で常時突出状に配置されている従来の椅子式

の施療機は、係合凸部が人体背部或いは腰部等に激突して痛み等によ


161
る不快感を与えたり、大怪我をしたりする可能性が高い、見栄えが悪

くデザイン上の問題においても芳しくない、係合凸部は施療者の座高

の違いによっても適応できないなどの問題があり、また、椅子本体肘

掛部の上面に人体腕部或いは肘部を挟持状に保持して施療を実施する

5 ための立上り壁を設けている従来の手揉機能付施療機は、腕部或いは

肘部の施療を望まない場合や肘掛部に肘を単に載せたい場合には、立

上り壁が邪魔になって不快感を与える可能性があり、見栄えも悪くデ

ザイン上の問題もあった【0002】
( ないし【0007】 0009】 。

【 )

b 「本発明」は、前記各種の問題点に鑑み、各問題点を解消すると共

10 に各施療者の個人差にも適応できる施療を行わせ、かつ、更なる新規

の施療効果や利便性を有する優れた施療機を提供することを目的とし、

課題とするものであり、この課題を解決するための手段として、
「本発

明」の請求項2の施療機は、座部両側に肘掛部を備えると共に座部後

部に背凭れ部を備えた椅子本体において、該椅子本体の両肘掛部の内

15 側に肘挿入用凹溝を備えると共に、各肘挿入用凹溝に、肘部を挟持状

に保持して施療し得る肘部挟持手段を配備した構成を採用した 【00


10】 【0012】 。
、 )

これにより「本発明」の請求項2の施療機は、施療者が肘部や腕部

及び手部の施療を施したい場合には、肘挿入用凹溝内に施療者の肘部

20 や腕部及び手部を挿入して、肘部挟持手段による安定した施療部位の

圧迫施療や指圧施療及び揉み施療を効果的に施すことができ、また、

肘挿入用凹溝を両肘掛部の内側に備えているので、従来のように肘掛

部上部に肘や腕を持上げて施療する必要が無く、リラックスした姿勢

で肘部や腕部及び手部の施療部位の圧迫施療や指圧施療及び揉み施療

25 を適宜に施療でき、さらに、肘挿入用凹溝を両肘掛部の内側に備えて

おり、肘掛部上部には従来の立上り壁のような障害となるものを設け


162
ていないため、施療者が単に肘掛部に肘部を載置させたい場合におい

ても、通常の椅子と同様にリラックスした着座姿勢で肘部や腕部及び

手部を載置させることができるという効果を奏する 【0021】
( ない

し【0023】 。


5 イ 乙C20の記載事項について

乙C20(特開2005−28045号公報)には、次のような記載が

ある(下記記載中に引用する図1ないし12については別紙7を参照)。

【特許請求の範囲

【請求項1】

10 座部及び背もたれ部を有する椅子本体と、

前記座部の側方に備わった肘掛け部と、

前記肘掛け部に載せた被施療者の手を内部に入れることができるよう

に前記肘掛け部から立設されたトンネル状支持体と、

前記トンネル状支持体の内面に設けられて膨張・収縮するマッサージ

15 用エアセルと、

を備えていることを特徴とするマッサージ機。

【技術分野】

【0001】

本発明は、マッサージ機、マッサージ具及びマッサージ方法に関する

20 ものである。

【背景技術】

【0002】

マッサージ機には、空気の給排により膨張・収縮するエアセルを備え

た空気式のものが存在する。エアセルは、椅子の背もたれ部、座部、又

25 は脚載部に配置されるのが一般的である。

特許文献1には、空気によって伸縮する蛇腹状の伸縮筒を肘掛け上部


163
に配置したものが記載されている。この場合、被施療者の手を上方に押

圧することになる。

【発明が解決しようとする課題】

【0003】

5 手は、胴体に比べて軽いため、肘掛けから上方に向けて押圧すると、

手が上方に逃げて十分なマッサージ感が得られないことがある。

そこで、本発明の課題は、手を確実にマッサージすることにある。

【課題を解決するための手段】

【0004】

10 本発明は、座部及び背もたれ部を有する椅子本体と、前記座部の側方

に備わった肘掛け部と、前記肘掛け部に載せた被施療者の手を内部に入

れることができるように前記肘掛け部から立設されたトンネル状支持

体と、前記トンネル状支持体の内面に設けられて膨張・収縮するマッサ

ージ用エアセルと、を備えていることを特徴とするマッサージ機である。

15 肘掛け部にトンネル状支持体が設けられているため、手を簡単にトンネ

ル状支持体内部にいれることができる。そして、トンネル状支持体の内

部に入れられた手に対してトンネル状支持体内面に設けられたエアセ

ルによってマッサージを行うため、手の逃げが防止され、手を確実にマ

ッサージすることができる。

20 【0005】

前記トンネル状支持体は、前後方向両側が開口しており、後方の開口

から手を挿入可能であって、前方の開口から指先を出すことが可能であ

るのが好ましい。この場合、指先をトンネル状支持体の前方から出すこ

とができるため、指先が自由となって拘束感を低減させることができる。

25 【0006】

前記マッサージ用エアセルは、膨張することにより手を前記肘掛け部


164
に押し付け可能であるのが好ましい。トンネル状支持体の内面から肘掛

け部に押し付けるようにマッサージすることで、簡単な構成で手の逃げ

を防止でき確実なマッサージが行える。

【0007】

5 前記肘掛け部には、前記マッサージ用エアセルによって押し付けられ

た手に対して指圧を行う指圧子が設けられているのが好ましい。エアセ

ルによる押付力を利用して指圧を行うことで、手に対する効果的な指圧

が行える。

【0008】

10 前記肘掛け部には、前記マッサージ用エアセルによって押し付けられ

た手に対して振動マッサージを施す振動発生装置が設けられているの

が好ましい。エアセルによって押し付けられたときに振動を発生すると

振動が効率よく手に伝達され、振動マッサージ効果が高まる。

【0009】

15 前記トンネル状支持体は、トンネル状の外側部材と、前記外側部材の

内側であって当該外側部材との間に空間を保って設けられた内側部材

と、を備え、前記マッサージ用エアセルは、前記内側部材に取り付けら

れ、前記外側部材と前記内側部材との間の空間は、当該マッサージ用エ

アセルへ空気を供給するための配管が設置される配管用空間であるの

20 が好ましい。この場合、エアセルへの配管を通すためのスペースがトン

ネル状支持体内に確保できる。

【0010】

前記トンネル状支持体は、前後移動可能に設けられているのが好まし

い。トンネル状支持体が前後移動可能であれば、被施療者の所望の位置

25 等に適宜位置を変更することができる。

トンネル状支持体は、肘掛け部に対して相対移動可能であってもよい


165
し、トンネル状支持体が設けられた肘掛け部が、座部に対して相対移動

可能であってもよい。

【0011】

より具体的には、前記肘掛け部は、前記背もたれ部が後方に倒れると

5 連動して後方移動し、前方に起きあがると連動して前方移動するように

設けられ、前記肘掛けの前記前後移動によって前記トンネル状支持体が

前後移動するのが好ましい。背もたれ部が後方に倒れると、手の位置も

後方になるため、背もたれ部の起伏(リクライニング)に連動して肘掛

け部を前後移動させることで、背もたれ部のリクライニングにかかわら

10 ずマッサージ位置を略一定に保つことができる。

【0012】

前記トンネル状支持体は、その前後方向長さが、被施療者の手首より

先だけが内部に位置する程度に設定されており、前記マッサージ用エア

セルが手のひら又は手の甲のマッサージ用とされているのが好ましい。

15 【0013】

他の観点からみた本発明は、肘掛け部を有する椅子型のマッサージ機

であって、肘掛け部の上方に、空気の給排によって膨張収縮するエアセ

ルを備え、前記エアセルは、下方へ膨張することにより、前記肘掛け部

に載せた手に対して前記肘掛け部に押し付けるように設けられている

20 ことを特徴とする。エアセルが肘掛け部に向かって下方へ膨張して、手

を肘掛け部に押し付けることで、肘掛け部によって手の逃げを防止しつ

つエアセルによる押圧が行える。

【0014】

手用マッサージ具に係る本発明は、椅子の肘掛け部に装着して用いら

25 れる手用マッサージ具であって、前記肘掛け部に装着されて、当該肘掛

け部に載せた被施療者の手を内部に入れることができるトンネル状支


166
持体と、前記トンネル状支持体の内面に設けられ、膨張・収縮すること

で手に対するマッサージを行うエアセルと、を備えていることを特徴と

する手用マッサージ具。この場合、トンネル状支持体に設けられたエア

セルによって手を逃がすことなく、確実にマッサージを行える。

5 【発明を実施するための最良の形態】

【0016】

以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。

図1は、椅子型のマッサージ機1を示している。この椅子型マッサー

ジ機1は、座部2と、座部2の後部に配置された背もたれ部3と、座部

10 の前部に配置された脚載部4と、を有する椅子本体5を具備している。

【0020】

座部2の左右両側には、肘掛け部7、7が配置されており、被施療者

は、手を肘掛け部7、7に載せてリラックスすることができる。肘掛け

部7は、その後部が背もたれ部3の左右側面に取り付けられており、座

15 部2の左右両側方位置において前方に延設されている。肘掛け部7は、

その後部が背もたれ部3内部において背もたれ部としての骨格をなす背

もたれフレーム(図示省略)に対して枢着されており、左右方向の軸9

まわりに回動自在である。つまり、肘掛け部7は、その後部が回動基部

となっている。一方、肘掛け部7の前部は、他所に取り付けられておら

20 ず、回動自由端となっている。したがって、肘掛け部7は、回動基部(軸

9)を中心に回動することができ、図1及び図2のようにその前部が略

前方を向いた状態や、図3のように、その前部が上方に向くように後方

に回動して起き上がった状態をとることができる。なお、左右の肘掛け

部7、7は、それぞれ独立して回動可能であるが、両者7、7が一体的

25 に回動してもよい。また、一方の肘掛け部7だけが回動可能であっても

よい。


167
【0021】

回動基部(軸9)を中心とした肘掛け部7の後方回動の範囲は、図1

及び図2のように、肘掛け部7が座部2の側方に位置している状態(=

第1位置)から、図3のように肘掛け部7が(起き上がった)背もたれ

5 部3の側方に位置している状態(=第2位置)に制限されている。

【0022】

第1位置が、肘掛け部7の通常の使用位置である。第1位置にある肘

掛け部7には、被施療者が手を載せることができる。一方、肘掛け部7

が邪魔な場合や、被施療者が座部2の側方から着座又は離座したい場合

10 (以下、座部側方からの着座又は離座を「側方着離座」という)には、

図3に示すように、肘掛け部7を第2位置まで回動させることで、座部

2の側方に側方着離座にとって邪魔な肘掛け部7が存在しない状態と

なり、被施療者は楽に側方着離座を行うことができる。

【0023】

15 図4及び図5に示すように、自由端である肘掛け部7の前部は、ガイ

ド機構11によって支持されており、このガイド機構11が、背もたれ

部3のリクライニングに連動した肘掛け部7の移動をガイドしている。

ガイド機構11は、座部2の側部に設けられたガイド体12と、当該

ガイド体12によってガイドされるように肘掛け部7に設けられた被ガ

20 イド部13と、を有して構成されている。なお、肘掛け部7は、自重に

よって前部が下方回動するように設けられているため、肘掛け部7を自

重に逆らって持ち上げない限り、ガイド体12と被ガイド部13との接

触は自然に維持される。また、肘掛け部7は、自重によって前部が下方

回動するのに代えて又は加えて、バネ等の付勢具によって下方回動する

25 ように付勢されていてもよい。

【0026】


168
図6のように、背もたれ部3を後方に倒すと、軸9を介して背もたれ

部3に取り付けられている肘掛け部7は、前部が前方を向いたまま背も

たれ部3に引っ張られて後方に移動する。このとき、肘掛け部7は、背

もたれ部3に対して回動自在であり、肘掛け部7の前部は、ローラ12

5 によって前後動自在に支持されているだけであるため、肘掛け部7の後

方移動は妨げられない。

また、背もたれ部3が倒れることで、軸9の位置も下方に移動するた

め、肘掛け部7は全体的に(特に、後側が)下方にも移動する。

【0028】

10 被ガイド部13は、後側が上下に厚肉であり、前側が薄肉となってお

り、当接ガイド面13aは、前方上向きに傾斜している。このため、肘

掛け部7が後方移動して、当接ガイド面13aの前部がローラ12と当

接すると、肘掛け部7の前部がやや下がり、横臥状態において、被施療

者が手を置き易くなる。

15 肘掛け部7の上面7aは、前後移動の全範囲において、常に座部上面

2aよりも上方に位置している。このため、被施療者は、着座状態であ

っても横臥状態であっても適切な状態で手をおくことができる。

【0029】

図7〜図12は、左右の肘掛け部7にそれぞれ設けられた手用マッサ

20 ージ具20を示している。なお、手用マッサージ具20は、一方の肘掛

け部7だけに設けられていても良い。

このマッサージ具20は、手首よりも先の部分(hand)をマッサ

ージするのに適したものであり、特には、手首より先であって指を除く

部分をマッサージするのに適したものであり、肘掛け部7に載せた手を

25 入れることができるトンネル状の支持体22を有している。なお、マッ

サージ具20を手首よりも肩側の部位へのマッサージ用としてもよい。


169
【0030】

トンネル状支持体22は、肘掛け部7の幅方向両側に位置して肘掛け

部7上方に延びる側面部24と、肘掛け部7の上方で左右の側面部24、

24を繋ぐ上面部25と、を備えている。支持体上面部25は、肘掛け

5 部上面7aとの間に手を入れることができる程度の高さに配置されて

いる。また、左右の側面部24の間の間隔は、それらの間に手を入れる

ことができる程度に設定されている。ここでは、側面部24と上面部2

5とは連続した円弧形状として形成されて支持体22全体がアーチ状

となっており、両者24、25の境界がはっきりしないが、両者24、

10 25の境界がわかるような形状であってもよい。

【0031】

支持体22は、前後方向(肘掛け部7の長手方向)両側27、28が

開口しており、後側の開口27から手を支持体22内側に挿入させるこ

とができ、前側の開口28から挿入した手(指先)を出すことができる。

15 支持体22は、手の甲(手のひら)がその内部に位置し、手首よりも肩

側及び指先は、支持体22外に位置する程度の前後方向長さに設定され

ており、手の甲又は手のひらをマッサージするのに適した大きさとなっ

ている。また、支持体22は、肘掛け部7に手を置いたときに手の甲又

は手のひらがくる位置、すなわち肘掛け部7の前部に取り付けられてい

20 る。

【0032】

支持体22は、肘掛け部7の前端よりもやや後方に位置して支持体2

2の前側開口28から出した指先を肘掛け部上面7aに載せることが

可能となっている。また、前側開口28から出た指の指関節を内側に曲

25 げることができるようなっている。つまり、肘掛け部7の上面7aの前

端は、下方に傾斜した下方傾斜面7bとなっており、下方傾斜面に指を


170
置くことで指を曲げてリラックスした状態で手のひら又は手の甲への

マッサージを受けられるようになっている。

また、肘掛け部7の前端に、下方傾斜面7bがなくとも、支持体22

内部に手のひら又は手の甲を位置させつつ、指を前側開口28から出し

5 た場合に、指の根元位置を載せることができ、かつ肘掛け部7前端より

も指先が前方に位置するように支持体22の位置が設定されていれば、

指を曲げることはできる。

いずれの場合でも、指が曲げられる位置に支持体22が設けられてい

ることで、リラックスした状態で手へのマッサージが受けられる。

10 【0033】

支持体22は、外側に位置する外側部材30と、当該外側部材30よ

りも内側に位置する内側部材31との組み合わせによる内外2重構造

となっている。

外側部材30は、樹脂又は金属などの硬質の材料によって形成されて

15 いる。また、外側部材30は、アーチ状に形成されており、マッサージ

具20の最表面に位置する部材であるため化粧カバーとしての機能を

持っている。また、外側部材30は、マッサージ具20全体を肘掛け部

7へ取り付けるための取付部材としての機能を持っており、外側部材3

0の下部30a、30bは肘掛け部7の下部へ向けて内側に延設されて

20 おり、これらの下部30a、30bがネジなどの固定具(図示省略)に

よって肘掛け部7に固定される。

【0034】

内側部材31は、樹脂又は金属などの硬質の材料によって形成されて

おり、外側部材30との間に空間が形成されるように配置されており、

25 その両下端が外側部材30の内面に取り付けられている。アーチ状の内

側部材31の内面には、空気の給排によって膨張収縮して手を押圧する


171
エアセル33、34、35が設けられている。エアセルとしては、内側

部材31の頂部付近に取り付けられた第1エアセル(上エアセル)33

と、内側部材31の左右の側面付近に取り付けられた第2エアセル(側

部エアセル)34、35とが備わっている。

5 【0035】

図10に示すように、第1エアセル33は、下方に向けて膨張するよ

うに設けられており、手を下方に押圧することができる。第2エアセル

34、35は、第1エアセル33と一部重複して配置されており、下部

が取付具(ネジ、ピン等)によってそれぞれ内側部材31に取り付けら

10 れている。第2エアセル34、35の上部は内側部材31に取り付けら

れておらず膨張自由端となっている。このため、第2エアセル34、3

5は、下部より上部の方が大きく膨張する。なお、第2エアセル34、

35のエアセル側部は、膨張量が大きくなるように蛇腹状に形成されて

いる。第2エアセル34、35は、手を左右から下方に押圧することが

15 できる。また、図10に示すように、第1エアセル33と第2エアセル

とを同時に膨張させると、下方への押圧量を大きくすることができる。

【0041】

肘掛け部上面7aのうち、支持体22によって形成されたトンネルの

底面となる範囲には、手に振動マッサージを施すための振動発生装置4

20 8が設けられている。この振動発生装置48は、肘掛け部上面7aが凹

状形成され、肘掛け部内部に埋設されている。振動発生装置48は、肘

掛け部上面7aに対して突出する指圧子49を備えており、支持体22

内部に入れられた手には、この指圧子49を介して振動が局所的に伝え

られる。図9に示すように、指圧子49は、肘掛け部7の左右幅方向中

25 央位置に対して左右方向に偏って配置されている。具体的には、肘掛け

部7の左右幅方向中央位置に対して座部2寄りの位置(左手用の肘掛け


172
部7であれば右側;右手用の肘掛け部7であれば左側)に偏倚して配置

されている。指圧子49が中央位置に対して座部2寄りに偏倚している

ことで、手のひらにある経穴である「労宮」乃至その近傍(手のひらの

親指寄りの範囲)を確実に指圧することができる。

5 【0042】

なお、手の広い範囲にまんべんなく振動を与えたい場合には、指圧子

49はなくともよい。また、指圧子49は、振動が発生していないとき

にも、手に指圧を施すことができる。

【0043】

10 図11及び図12に示すように、支持体22によって形成されたトン

ネルの底面となる肘掛け部上面7aには、手のひらが下向きにして載置

される。このように肘掛け部上面7aは、略平坦な手のひら載置面とな

っている。手のひら載置面7aの上方に間隔をおいて配置されている内

側部材31(支持体22)に設けられているエアセル33、34、35

15 が下方へ向けて膨張すると(図12参照)、当該エアセル33、34、3

5は手の甲に当接して手(ハンド)を手のひら載置面7aに押し付けな

がら押圧マッサージを行う。手を載置面7aに押し付けながらマッサー

ジするため、手の逃げが防止される。

エアセル33、34、35によって手を下方へ押圧することで、肘掛

20 け部上面7aとの間との間で手を上下から挟んでマッサージすること

ができる。すなわち、手の上下方向挟持マッサージが行える。

【0064】

なお、エアセルとしては、内側部材31(支持体22)と別体である

必要はなく、内側部材31(支持体22)内面と、当該内側部材31(支

25 持体22)内面に張り付けられた布体とによって囲まれた空間に空気が

給排されることによって前記布体が膨張 収縮するものであってもよい。



173
また、支持体22の前後方向長さは、任意に設定できる。マッサージ

部位も手のひらや手の甲に限られず、指又は手首より片側の範囲もマッ

サージできるものであってもよい。

また、支持体22に設けられるエアセルの配置・数は、適宜変更可能

5 である。

ウ 本件発明C−1の容易想到性について

前記ア の乙C19の記載事項によれば、乙C19には、被控訴人主

張の乙C19発明(前記第3の4の(被控訴人の主張)の ア)が記載

されていることが認められる。

10 そこで、本件発明C−1と乙C19発明とを対比すると、本件発明C

−1の「空洞部」は、
「前記肘掛部の幅方向左右に夫々設けた外側立上り

壁及び内側立上り壁と底面部とから形成され」る(構成要件C)のに対

し、乙C19発明の「肘挿入用凹溝61a」は、
「外面立上り部と底面部

と上面部とから形成され」
(構成c)「内側立上り壁」が存在しないもの


15 と認められるから、両発明は、少なくとも、乙C19発明が本件発明C

−1の「空洞部」における「内側立上り壁」の構成を備えていない点(以

下「相違点α」という。)で相違する。

被控訴人は、@乙C20発明のマッサージ機のトンネル状支持体22

は、左右の側面部24、24、上面部25及び肘掛け部上面7aにより

20 形成されているところ、左右の側面部24、24は、本件発明C−1の

「外側立上り壁」及び「内側立上り壁」に、肘掛け部上面7aは、本件

発明C−1の「底面部」にそれぞれ相当するから、乙C20発明のマッ

サージ機は、相違点αに係る本件発明C−1の構成(「空洞部」における

「内側立上り壁」 を有している、
) A乙C19発明と乙C20発明とは、

25 「椅子型マッサージ機に関する発明」という技術分野、
「手に効果的な施

療を施す」という課題、乙C19発明では肘部挟持機構62a を有する


174
肘挿入用凹溝61a により、手部に対しても圧迫施療、指圧施療及び揉

み施療を効果的に施し、乙C20発明ではエアセル33、34、35を

有するトンネル状支持体22により手を確実にマッサージする効果を

有するという作用効果や機能の点で共通すること、トンネル状支持体2

5 2を、乙C20発明のように底面部(肘掛け部上面7a)に対して外側

立上り壁、内側立上り壁(側面部24、24)、上面部(上面部25)を

設けて手部を四方向で囲むか、乙C19発明のように底面部に対して外

側立上り壁、上面部を設け手部を三方向で囲むかは、本件出願Cの出願

前に共に公知の構造であり、当業者にとって選択的な構造であったこと

10 からすると、当業者は、乙C19及びC20に基づいて、乙C19発明

の肘挿入用凹溝61において、乙C20発明の構成を適用する動機付け

があるといえるから、相違点αに係る本件発明C−1の構成とすること

容易に想到することができた旨主張する。

しかしながら、被控訴人の主張は、以下のとおり理由がない。

15 a 前記イの乙C20の記載事項によれば、乙C20には、被控訴人主

張の乙C20発明(前記第3の4の(被控訴人の主張)の イ )が

記載されていることが認められる。

乙C20には、トンネル状支持体22に関し、
「前記肘掛け部に載せ

た被施療者の手を内部に入れることができるように前記肘掛け部から

20 立設されたトンネル状支持体」請求項1) 前記トンネル状支持体は、
( 「


前後方向両側が開口しており、後方の開口から手を挿入可能であって、

前方の開口から指先を出すことが可能であるのが好ましい。 【000



5】 、
)「前記トンネル状支持体は、トンネル状の外側部材と、前記外側

部材の内側であって当該外側部材との間に空間を保って設けられた内

25 側部材と、を備え」【0009】、
( )「前記トンネル状支持体は、その前

後方向長さが、被施療者の手首より先だけが内部に位置する程度に設


175
定されており、前記マッサージ用エアセルが手のひら又は手の甲のマ

ッサージ用とされているのが好ましい。 (
」 【0012】 、
) 「手用マッサ

ージ具に係る本発明は、椅子の肘掛け部に装着して用いられる手用マ

ッサージ具であって、前記肘掛け部に装着されて、当該肘掛け部に載

5 せた被施療者の手を内部に入れることができるトンネル状支持体と、

前記トンネル状支持体の内面に設けられ、膨張・収縮することで手に

対するマッサージを行うエアセルと、を備えていることを特徴とする

手用マッサージ具。この場合、トンネル状支持体に設けられたエアセ

ルによって手を逃がすことなく、確実にマッサージを行える。(
」【00

10 14】 、
) 「このマッサージ具20は、手首よりも先の部分(hand)

をマッサージするのに適したものであり、特には、手首より先であっ

て指を除く部分をマッサージするのに適したものであり、肘掛け部7

に載せた手を入れることができるトンネル状の支持体22を有してい

る。(
」 【0029】、
)「トンネル状支持体22は、肘掛け部7の幅方向

15 両側に位置して肘掛け部7上方に延びる側面部24と、肘掛け部7の

上方で左右の側面部24、24を繋ぐ上面部25と、を備えている。

支持体上面部25は、肘掛け部上面7aとの間に手を入れることがで

きる程度の高さに配置されている。また、左右の側面部24の間の間

隔は、それらの間に手を入れることができる程度に設定されている。

20 ここでは、側面部24と上面部25とは連続した円弧形状として形成

されて支持体22全体がアーチ状となっており、両者24、25の境

界がはっきりしないが、両者24、25の境界がわかるような形状で

あってもよい。 (
」 【0030】)との記載がある。

上記記載及び図1、7ないし12によれば、乙C20記載のトンネ

25 ル状支持体22は、肘掛け部7に立設され、その内部に施療者の「手」

を挿入保持するためのものであり、肘掛け部7の幅方向両側に位置し


176
て肘掛け部7上方に延びる側面部24と、肘掛け部上面7aと、肘掛

け部7の上方で左右の側面部24、24を繋ぐ上面部25とを備え、

左右の側面部24、24は「外側立上り壁」及び「内側立上り壁」に、

肘掛け部上面7aは「底面部」にそれぞれ相当することが認められる。

5 そうすると、乙C20記載のトンネル状支持体22は、
「前記肘掛部

の幅方向左右に夫々設けた外側立上り壁及び内側立上り壁と底面部と

から形成され」た構成(構成要件C)を有するものといえるから、相

違点αに係る本件発明C−1に相当する構成(「空胴部」における「内

側立上り壁」)を有するものと解される。

10 b 乙C19の請求項2、【0012】 【0070】
、 、図16、17及び

20の記載から、乙C19発明は、乙C19の請求項2(「座部両側に

肘掛部を備えると共に座部後部に背凭れ部を備えた椅子本体において、

該椅子本体の両肘掛部の内側に肘挿入用凹溝を備えると共に、各肘挿

入用凹溝に、肘部を挟持状に保持して施療し得る肘部挟持手段を配備

15 した事を特徴とする施療機。 )記載の発明の一実施形態であることを


理解できる。

乙C19には、「肘挿入用凹溝」に関し、「図16乃至図21は、他

実施形態を示したものであり、…椅子本体2aの左右に夫々設けら

れた肘掛部6aの内側に各々肘挿入用凹溝61aを設けると共に…を

20 夫々設けたものを例示している。 (
」 【0070】 、
) 「前記各肘挿入用凹

溝61aには、施療者の肘部や腕部及び手部を挟持状に保持して施療

し得る肘部挟持機構62a(肘部挟持手段)を配備しており、図17

に示すように施療者が肘部や腕部及び手部の施療を所望する際に該肘

挿入用凹溝61aに肘部等の施療部位を挿入するだけで施療を受けら

25 れるように構成している。 (
」 【0071】 、
) 「前記肘部挟持機構62a

(肘部挟持手段)は、各肘挿入用凹溝61aに、空気供給装置7aに


177
より膨縮する膨縮袋等を配置しており、…肘部挟持機構62aにより、

図20に示すような肘部や腕部及び手部等の周部を挟圧保持または挟

圧膨縮して心地よい施療を施す事ができる。 (
」 【0072】)との記載

がある。また、図20には、肘掛部6aの内側において、外面立上り

5 部と底面部と上面部とから形成され、三方向が囲まれた、コ字状の肘

挿入用凹溝61aが示されている。

しかるところ、乙C19には、コ字状の肘挿入用凹溝61aにおい

て内側立上り壁を設けることについては記載も示唆もない。

かえって、乙C19には、
「上記特許文献2のような従来の手揉機能

10 付施療機は、椅子本体肘掛部の上面に人体腕部或いは肘部を挟持状に

保持して施療を実施するための立上り壁を設けているので、腕部或い

は肘部に心地良い施療が行なえるのであるが、腕部或いは肘部の施療

を望まない場合や肘掛部に肘を単に載せたい場合には、これが邪魔に

なって不快感を与える可能性があり、また、見栄えも悪くデザイン上

15 の問題もあった。 (
」 【0009】)との記載があり、図38には 肘掛

部の上面に立上り壁211を設けた従来の手揉機能付施療機が示され

ていること、
「本発明の請求項2の施療機は、肘挿入用凹溝を両肘掛部

の内側に備えており、肘掛部上部には従来の立上り壁のような障害と

なるものを設けていないため、施療者が単に肘掛部に肘部を載置させ

20 たい場合においても、通常の椅子と同様にリラックスした着座姿勢で

肘部や腕部及び手部を載置させる事ができる。 (
」 【0023】)との記

載があることからすると、乙C19には、請求項2記載の発明は、従

来の手揉機能付施療機の肘掛部上部に設けられた立上り壁が、単に肘

掛部に肘部を載置させたい場合に邪魔になって不快感を与える可能性

25 があり、見栄えも悪くデザイン上の問題もあったため、手揉機能付施

療機において、肘掛部に立上り壁を設けることなく、肘挿入用凹溝を


178
両肘掛部の内側に備える構成を採用したことの開示があることが認め

られる。

次に、乙C20には、
「マッサージ機には、空気の給排により膨張・

収縮するエアセルを備えた空気式のものが存在する。エアセルは、椅

5 子の背もたれ部、座部、又は脚載部に配置されるのが一般的である。

特許文献1には、空気によって伸縮する蛇腹状の伸縮筒を肘掛け上部

に配置したものが記載されている。この場合、被施療者の手を上方に

押圧することになる。 【0002】 、

( )「手は、胴体に比べて軽いため、

肘掛けから上方に向けて押圧すると、手が上方に逃げて十分なマッサ

10 ージ感が得られないことがある。そこで、本発明の課題は、手を確実

にマッサージすることにある。 (
」 【0003】 、
) 「本発明は、座部及び

背もたれ部を有する椅子本体と、前記座部の側方に備わった肘掛け部

と、前記肘掛け部に載せた被施療者の手を内部に入れることができる

ように前記肘掛け部から立設されたトンネル状支持体と、前記トンネ

15 ル状支持体の内面に設けられて膨張・収縮するマッサージ用エアセル

と、を備えていることを特徴とするマッサージ機である。肘掛け部に

トンネル状支持体が設けられているため、手を簡単にトンネル状支持

体内部にいれることができる。そして、トンネル状支持体の内部に入

れられた手に対してトンネル状支持体内面に設けられたエアセルによ

20 ってマッサージを行うため、手の逃げが防止され、手を確実にマッサ

ージすることができる。 (
」 【0004】)との記載がある。上記記載か

ら、乙C20には、空気によって伸縮する蛇腹状の伸縮筒を肘掛け上

部に配置した手をマッサージする従来のマッサージ機においては、被

施療者の手を上方に押圧することになり、手が上方に逃げて十分なマ

25 ッサージ感が得られないことがあるという問題があったため、その問

題を解決するための手段として、乙C20記載のマッサージ機は、ト


179
ンネル状支持体を備えた構成を採用し、これにより、手の逃げが防止

され、手を確実にマッサージすることができるという効果を奏するこ

との開示があることが認められる。

一方で、乙C19発明の肘挿入用凹溝61aは、肘掛部の内側に設

5 けられ、三方向が囲まれた、コ字状の構成であるため、肘部挟持機構

62a(肘部挟持手段)の膨縮袋の膨縮により、手が上方に逃げて十

分なマッサージ感が得られないといった問題が生じるものと認めるこ

とはできない。また、乙C19発明の肘挿入用凹溝61aは、三方向

が囲まれた、コ字状であって、施療者側の内側が開放され、
「施療者が

10 肘部や腕部及び手部の施療を所望する際に該肘挿入用凹溝61aに肘

部等の施療部位を挿入するだけで施療を受けられるように構成」され

ていること(【0071】)を理解できるから、肘挿入用凹溝61aの

全部又は一部において4方向を囲む構成とする動機付けは見いだせな

い。

15 以上によれば、乙C19及びC20に接した当業者が、乙C19発

明の肘挿入用凹溝61aにおいて、乙C20記載のトンネル状支持体

22の構成を適用して、内側立上り壁を設けて手部を四方向で囲む構

成とする動機付けがあるものと認めることはできないから、相違点α

に係る本件発明C−1の構成を容易に想到することができたものと認

20 めることはできない。

したがって、被控訴人の前記主張は理由がない。

以上のとおり、相違点αに係る本件発明C−1の構成を容易に想到

ることができたものとは認められないから、その余の点について判断す

るまでもなく、当業者は、乙C19及びC20に基づいて、本件発明C

25 −1を容易に想到することができたものと認められない。

エ 本件発明C−2ないしC−5の容易想到性について


180
本件発明C−2ないしC−5は、本件発明C−1の特許請求の範囲(請

求項1)の記載を直接又は間接に発明特定事項構成要件J、M、O及び

Q)に含むものである。

しかるところ、本件発明C−1を容易に想到することができたものと認

5 められないことは、前記ウのとおりであるから、その余の点について判断

するまでもなく、当業者は、乙C20ないしC22及び本件出願Cの出願

当時の周知技術に基づいて、本件発明C−2ないしC−5を容易に想到

ることができたものと認められない。これに反する被控訴人の主張は理由

がない。

10 オ 小括

以上によれば、被控訴人主張の無効理由1は理由がない。

無効理由2(明確性要件違反)について

被控訴人は、@本件発明C−1の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び

本件明細書Cの記載によれば、本件発明C−1の「空洞部」と「前腕挿入開

15 口部」とは、「前部」に内側立上り壁を有する「空洞部」が存在し、「後部」

に内側立上り壁を有しない「前腕挿入開口部」が存在するものとして、その

領域が区別されている、A仮に本件明細書Cの【0046】及び図14の記

載を根拠に、本件発明C−1の「空洞部」は、外側立上り壁と内側立上り壁

と底面部を備える箇所が一部でもあれば足り、内側立上り壁を備えない箇所

20 をも含めて「空洞部」と解釈されるとするならば、
「空洞部」と「前腕挿入開

口部」との分水嶺が極めて不明確となるから、本件発明C−1の特許請求の

範囲(請求項1)の記載は、不明確であり、明確性要件に適合せず、本件発

明C−2ないしC−5の特許請求の範囲(請求項1)の記載も、これと同様

である旨主張する。

25 しかしながら、前記3 イ aのとおり、本件発明C−1の「前腕挿入開

口部」は、
「肘掛部」に「内側後方から施療者の手部を含む前腕部を挿入する


181
ため」に設けられた開口部であって、
「空洞部」の一部を構成する部分である

ものと解される。そして、本件発明C−1の特許請求の範囲(請求項1)に

は、肘掛部に「前腕挿入開口部」と「空洞部」が設けられていること、
「前腕

挿入開口部」が「内側後方から施療者の前腕部を挿入するため」のものであ

5 り、
「空洞部」が「前腕挿入開口部から延設して肘掛部の内部に施療者の手部

を含む前腕部を挿入保持するため」のものであることが特定されており、
「前

腕挿入開口部」及び「空洞部」の内容は、明確である。

したがって、被控訴人の上記主張は採用することができないから、無効理

由2は理由がない。

10 無効理由3(特許法17条の2第3項補正要件違反)について

被控訴人は、@本件発明C−1の「空洞部」は、少なくとも施療者の前腕

部の一部まで及ぶ「内側立上り壁」が存在するものを意味する、A本件出願

Cの当初明細書(乙C9)記載の実施例等には、肘掛部の「中部」に内側立

上り壁を備えない構成としつつ、
「前部」の内側立上り壁、外側立上り壁、底

15 面部を備える空洞部においては手部のみを施療できる構成しか開示がなく、

「中部」を「コ型」と構成しつつ、内側立上り壁、外側立上り壁、底面部か

ら形成される「空洞部」において、
「手部を含む前腕部」を挿入保持できる構

成については記載も示唆もない、B本件補正は、
「中部」に内側立上り壁を備

えない「コ型」と形成された施療部を備えた本件発明C−2(請求項2)を

20 追加する補正事項を含むものであるから(乙C12、C13)、本件補正は、

新規事項を追加するものであって、特許法17条の2第3項の要件に適合し

ないから、本件特許Cには、同項に違反する無効理由がある旨主張する。

しかしながら、前記3 イ bで説示したとおり、本件発明C−1の特許

請求の範囲(請求項1)の記載及び本件明細書Cの記載から、本件発明C−

25 1の「空洞部」は、その全体にわたって「内側立上り壁」を備えるものをい

うものと解することはできないし、また、施療者の前腕部の一部まで及ぶ「内


182
側立上り壁」が存在するものを意味すると解することもできないから、被控

訴人の上記主張は、その前提(上記@)を欠くものであって、採用すること

ができない。

したがって、被控訴人主張の無効理由3は理由がない。

5 無効理由4(本件発明C−2に係るサポート要件違反)について

被控訴人は、@本件発明C−2の特許請求の範囲の記載(請求項2)から、

本件発明C−2は、肘掛部の「中部」をコ型に構成し、
「前部」には底面部と

外側立上り壁、内側立上り壁から形成される「空洞部」を備えており、当該

「空洞部」は、手部を含む前腕部を挿入保持でき、
「前腕部」をも施療できる

10 ものであることを理解できる、A構成要件Jで引用する請求項1(本件発明

C−1)の「空洞部」は、少なくとも施療者の前腕部の一部まで及ぶ「内側

立上り壁」が存在するものを意味する、B本件明細書Cの発明の詳細な説明

には、
「中部」がコ型の構成は開示されているものの、底面部、外側立上り壁、

内側立上り壁の三面を含む空洞部である「前部」においては、
「手部」のみを

15 挿入保持でき、
「手部」を施療するための膨縮袋を備える実施例のみが記載さ

れているにとどまり、「前腕部」を挿入保持でき、膨縮袋などにより「手部」

を含む「前腕部」を施療できる旨の記載も示唆もない、Cそうすると、本件

明細書Cの発明の詳細な説明の記載及び本件出願Cの出願当時の技術常識

ら、本件発明C−2の課題を解決できると認識することができないから、本

20 件明細書Cの発明の詳細な説明の記載はサポート要件に適合しない旨主張す

る。

しかしながら、前記3 イ bで説示したとおり、本件発明C−1の特許

請求の範囲(請求項1)の記載及び本件明細書Cの記載から、本件発明C−

1の「空洞部」は、その全体にわたって「内側立上り壁」を備えるものをい

25 うものと解することはできないし、また、施療者の前腕部の一部まで及ぶ「内

側立上り壁」が存在するものを意味すると解することもできないから、被控


183
訴人の上記主張は、その前提(上記A)を欠くものであって、採用すること

ができない。

したがって、被控訴人主張の無効理由4は理由がない。

小括

5 以上によれば、被控訴人主張の無効理由1ないし4はいずれも理由がない

から、被控訴人の無効の抗弁の主張は理由がない。

5 争点3(被控訴人が賠償又は返還すべき控訴人の損害額等)について(本件特

許C関係)

? 被控訴人による被告製品1及び2の輸出又は販売について

10 ア 証拠(甲C20ないしC37、乙C212、C273)及び弁論の全趣

旨によれば、被控訴人は、平成26年5月から令和3年3月までの間、米

国、カナダ、英国、ドイツ、ロシア、南アフリカ、アラブ首長国連邦(U

AE)、サウジアラビア、オーストラリア、ベトナム、フィリピン、韓国等

を仕向国として、別紙9の「被告製品1」欄記載のとおり、被告製品1を

15 合計●●●●●●台輸出したこと、仕向国別の輸出台数は、別紙15の「被

告製品1(台)」欄記載のとおりであることが認められる。

イ 証拠(乙C31、C47、C246)及び弁論の全趣旨によれば、被控

訴人は、平成23年11月25日から平成28年10月までの間、日本国

内において、インターネット通販等で、別紙9の「被告製品2」欄記載の

20 とおり、被告製品2を合計●●台販売したこと(返品●台分を除く。)が認

められる。

ウ 前記3 のとおり、被告製品1及び2は、本件各発明Cの技術的範囲

属するから、被控訴人による被告製品1及び2の輸出又は販売は、本件特

許権Cの侵害行為に該当する。

25 特許法102条2項に基づく損害額について

ア 特許法102条2項の適用の可否について


184
特許権者が特許権侵害を理由に民法709条不法行為に基づく損害

賠償を請求する場合には、特許権者において、侵害者の故意又は過失、

自己の損害の発生、侵害行為と損害との間の因果関係及び損害額を立証

する必要があるところ、特許法102条2項は、特許権者が故意又は過

5 失により自己の特許権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた

損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利

益を受けているときは、その利益の額は、特許権者が受けた損害の額と

推定すると規定している。

この規定の趣旨は、特許権者による損害額の立証等には困難が伴い、

10 その結果、妥当な損害の填補がされないという不都合が生じ得ることに

照らして、侵害者が侵害行為によって利益を受けているときは、その利

益の額を特許権者の損害額と推定し、これにより立証の困難性の軽減を

図ったものであり、特許権者に、侵害者による特許権侵害行為がなかっ

たならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には、特許

15 権者がその侵害行為により損害を受けたものとして、特許法102条

項の適用が認められると解すべきである(知的財産高等裁判所平成25

年2月1日特別部判決、知的財産高等裁判所令和元年6月7日特別部判

決参照)。そして、同項の規定の趣旨に照らすと、特許権者が、侵害品と

需要者を共通にする同種の製品であって、市場において、侵害者の侵害

20 行為がなければ輸出又は販売することができたという競合関係にある製

品(以下「競合品」という場合がある。)を輸出又は販売していた場合に

は、当該侵害行為により特許権者の競合品の売上げが減少したものと評

価できるから、特許権者に、侵害者による特許権侵害行為がなかったな

らば利益が得られたであろうという事情が存在するものと解するのが相

25 当である。また、かかる事情が存在するというためには、特許権者の製

品が、特許発明実施品であることや、特許発明と同様の作用効果を奏


185
することを必ずしも必要とするものではないと解すべきである。

a これを本件についてみると、@前記3 によれば、本件明細書Cに

は、本件各発明Cの技術分野は、椅子式マッサージ機のうち、
「肘掛部

に前腕部施療機構を有する椅子式マッサージ機に関するもの」である

5 こと(【0001】 、市場において商品化されている、座部の左右両側


に設けた肘掛部の上部に前腕部施療機構を備えて、着座した施療者の

腕部をマッサージする形態の従来の椅子式マッサージ機においては、

前腕部施療機構として肘掛部に設けた内側立上り壁によって、上腕部

内側の肘関節付近を圧迫したり施療者に不快感を与えたり、腕部の載

10 脱行為を妨げたりするなどの欠点があり、また、手掛け部を掴んで立

ち上がろうとする際、内側立上り壁によって上腕部内側の肘関節付近

が圧迫を受け、施療者に対して不快感を与えるという問題があったと

ころ、本件各発明Cは、上記問題点を解決し、前腕部施療機構におけ

るスムーズな前腕部の載脱が可能となり、施療者が起立及び着座を快

15 適に行うことができるという効果を奏すること 【0002】
( ないし【0

008】【0013】
、 )が開示されていること、A椅子式マッサージ機

において、どの部位に対応したマッサージが可能であるかという点は、

需要者が製品選択において特に着目する点の一つであること(乙C5

0)に鑑みると、椅子式マッサージ機の需要者には、肘掛部に前腕部

20 施療機構を備え、着座した施療者の前腕部をマッサージする機能を欲

する需要者と、そのような機能を必ずしも欲しない需要者が存在する

ものと認められる。

b 証拠(甲11ないし17、38ないし41、甲C8ないしC17、

C20、C65)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人は、平成23年

25 1月1日から令和3年12月31日までの間、●●●●●●●●●●

●●●●●●●●を仕向国として、別紙14のとおり、
「肘掛部に施療


186
者の前腕部をマッサージする前腕部施療機構を備えた椅子式マッサー

ジ機」である控訴人製品1(EC−2700、EC−2800、EC

−3700、EC−3800、EC−3850、EC−3900、J

P−1000、JP−1100、JP−870、Premium4.

5 0、Premium4D、Premium4S及び4D−970)を

輸出したこと、このうち、平成26年から令和3年までの間における

被告製品1と共通の仕向国への輸出台数は、別紙15の「控訴人製品

1(台)」欄記載のとおり、合計●●●●台であることが認められる。

本件において、特許権者の製品と侵害品が市場において侵害者の侵

10 害行為がなければ輸出することができたという競合関係にあるかどう

かは、仕向け先の当該仕向国における市場ごとに判断するのが相当で

ある。これに反する控訴人の主張は採用することができない。

そして、上記認定事実と前記 アの認定事実によれば、@控訴人は、

平成26年から令和3年までの間、別紙15の「控訴人製品1(台)」

15 欄記載のとおり、被告製品1と共通の仕向国●●●●●●●●へ、控

訴人製品1を合計●●●●台輸出したこと、A控訴人製品1は、
「肘掛

部に施療者の前腕部をマッサージする前腕部施療機構を備えた椅子式

マッサージ機」である点において、被告製品1と需要者を共通にする

同種の製品であって、施療者の前腕部をマッサージできるという機能

20 が共通することに鑑みると、控訴人製品1は、上記共通の仕向国の各

市場において、被告製品1が輸出されなければ輸出することができた

という競合関係にある製品(競合品)であることが認められるから、

控訴人製品1について、控訴人に、被控訴人による本件特許権Cの侵

害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在す

25 るものと認められる。

したがって、被告製品1の輸出に係る控訴人の損害額の算定に関し


187
ては、特許法102条2項が適用される。

c 次に、証拠(甲C3ないしC7、C56、C57、乙C55ないし

C59)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人は、平成23年1月1日

から令和3年12月31日までの間、日本国内において、別紙16記

5 載のとおり、「肘掛部に施療者の前腕部をマッサージする前腕部施療

機構を備えた椅子式マッサージ機」である控訴人製品2(AS−76

0、AS−830、AS−840、AS−1000及びAS−110

0)合計●●●●●●●を販売したことが認められる。

上記認定事実と前記 イの認定事実によれば、控訴人製品2は、
「肘

10 掛部に施療者の前腕部をマッサージする前腕部施療機構を備えた椅

子式マッサージ機」である点において、被告製品2と需要者を共通に

する同種の製品であって、施療者の前腕部をマッサージできるという

機能が共通することに鑑みると、控訴人製品2は、市場において、被

告製品2が販売されなければ販売することができたという競合関係

15 にある製品(競合品)であることが認められるから、控訴人製品2に

ついて、控訴人に、被控訴人による本件特許権Cの侵害行為がなかっ

たならば利益が得られたであろうという事情が存在するものと認め

られる。

したがって、被告製品2の販売に係る控訴人の損害額の算定に関し

20 ては、特許法102条2項が適用される。

これに対し、被控訴人は、@特許権者に、侵害者による特許権侵害

為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在すると

いうためには、特許権者が当該特許の作用効果と同様の作用効果を奏す

る代替競合品(侵害品と市場で販売時期が重なるもの)であって、かつ、

25 侵害主張をする相手方の特許権を侵害しない製品を販売していること

を必要とすると解すべきである、A控訴人製品1及び2の前腕施療機構


188
の構成は、内側立上り壁のないコ字状の肘掛部又は肘掛部の左右全域に

わたって一対の内側立上り壁が設けられ、凹状に形成された肘掛部であ

って、控訴人製品1及び2は、いずれも本件各発明Cと同様の作用効果

を奏するものではないから、代替競合品であるとはいえないし、また、

5 控訴人製品1のうち、EC−2700、EC−2800、EC−370

0、JP−1000、JP−1100、Premium4S及び控訴人

製品2は、いずれも被控訴人保有の別件特許2又は別件特許3の侵害

であり、本来であれば販売も輸出もできなかった製品であるから、被告

製品1及び2の輸出又は販売がなければ、輸出又は販売できたであろう

10 という関係性はない、Bしたがって、本件においては、控訴人に上記@

の事情が存在しないから、特許法102条2項の適用は認められない旨

主張する。

しかしながら、特許権者が、侵害品と需要者を共通にする同種の製品

であって、市場において、侵害者の侵害行為がなければ輸出又は販売す

15 ることができたという競合関係にある製品(競合品)を輸出又は販売し

ていた場合には、特許権者に、侵害者による特許権侵害がなかったなら

ば利益が得られたであろうという事情が存在するものと認められ、かか

る事情が存在するというためには、特許権者の製品が、特許発明実施

品であることや、特許発明と同様の作用効果を奏することを必ずしも必

20 要とするものではないことは、前記 で説示したとおりである。

また、控訴人製品1及び2が被控訴人の別件特許2及び3の侵害品で

あることが特許権侵害訴訟の判決により確定しているものではないのみ

ならず、上記の競合品が事後的に他人の侵害品であると判断されたとし

ても、現に、当該競合品が市場において侵害品と同じ時期に流通してい

25 た事実が認められる以上は、侵害者の侵害品に向けられていた需要が当

該競合品に向かうという関係性が認められるから、特許権者に、侵害


189
による特許権侵害がなかったならば利益が得られたであろうという事情

が存在することを否定することはできない。

したがって、被控訴人の上記主張は、その前提において採用すること

ができない。

5 イ 被控訴人の利益(限界利益)

被告製品1関係

a 売上高について

乙C47によれば、平成23年11月から令和3年3月までの期

間の被告製品1の売上高は、別紙8の「被告製品1」欄記載のとお

10 り、合計●●●●●●●●●●●●円であることが認められる。

? この点に関し、被控訴人は、被告製品1の売上高から、部品費等」


及び「マーケティングサポート費用」を控除すべきである旨主張す

る。

しかしながら、被控訴人主張の部品費等は、商品販売後に初期不

15 良に対応するための部品の価格相当額及びこれを郵送するための

国際郵便EMSの費用であるというのであるから、アフターサービ

スに関する費用に相当するものであり、被告製品1の売上高そのも

のとは関係がない。

また、被控訴人主張のマーケティングサポート費用は、被控訴人

20 が、米国の販売店が米国内において様々な販促を行うための費用を

サポートするために、被控訴人内部の会計処理上「値引き」として

計上しているというのであるから、販売促進費用に相当するもので

あり、被告製品1の売上高そのものとは関係がない。

したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。

25 b 経費について

被控訴人は、被告製品1について、@仕入(上海買入)費用(●●


190
●●●●●●●●●●円)、A材料費(●●●●●●●●●●●円)、

B製造ロス費(●●●●●●●●円)、C大山工場組立費用(●●●●

●●●●●●●円)、D製造物流費(●●●●●●●●●●●円)、E

デザイン費用(●●●●●●●●円)、F歩積金(●●●●●●●●●

5 円)、GWEEE(●●●●●●●●●円)、H認証(●●●●●●●

●●円) I商標登録等
、 (●●●●●●●●円) JL/C ユーザンス
、 (●

●●●●●●●●円)は、被告製品1の製造、輸出に直接関連して追

加的に必要となった経費(合計●●●●●●●●●●●●円)である

旨主張する。

10 被控訴人主張の@仕入(上海買入)費用、A材料費及びD製造物

流費が、控除すべき経費に当たること(以上、合計●●●●●●●

●●●●●円)は、当事者間に争いがない。

そこで、以下において、被控訴人主張のB製造ロス費、C大山工

場組立費用、Eデザイン費用、F歩積金、GWEEE、H認証、I

15 商標登録等、JL/C ユーザンスが、被告製品1の製造、輸出に直接

関連して追加的に必要となった経費に当たるどうかについて判断

する。

B 製造ロス費について

一般に、製造過程において不良品が生じることは不可避といえ

20 ることからすると、実質的に製造原価の一部と評価することがで

きるから、製造ロス費(●●●●●●●●円)
(乙C129、C1

40ないしC145、C273)は、被告製品1の製造、輸出に

直接関連して追加的に必要となった経費に当たるものと認められ

る。

25 C 大山工場組立費用について

被控訴人の主張によれば、被控訴人の従業員の人件費であるが、


191
大山工場に勤務する被控訴人従業員の業務の具体的内容や被告製

品1の製造に関する従事状況は明らかでないことに照らすと、被

告製品1の製造、輸出に直接関連して追加的に必要となった経費

に当たるものと認めることはできない。

5 E デザイン費用について

被控訴人がデザイン費用(●●●●●●●●円)を支出したこ

とを客観的に裏付ける証拠はなく、また、被告製品1を1台製造、

輸出するごとに必要な費用であるか明らかでないから、被告製品

1の製造、輸出に直接関連して追加的に必要となった経費に当た

10 るものと認めることはできない。

F 歩積金について

まず、被控訴人が主張する1台当たりの歩積金の額は、被控訴

人内部で便宜的に割り付けた金額であるものと認められ(乙C1

40ないしC145) 被告製品1の製造、
、 輸出に直接関連して追

15 加的に必要となったものということはできない。

次に、被控訴人が歩積金から支出したとする取扱説明書作成費

用のうち、平成28年3月頃支出分の被告製品1に係る●●●●

●●●円(4製品分の翻訳代の4分の1に当たる●●●●●●●

円及び被告製品1に係る inDesign 編集代●●●●●●●円の合

20 計額)
(乙C182、C183)は、平成27年度の被告製品1の

製造、輸出に直接関連して追加的に必要となった経費に当たるも

のと認められる。

このほか、被控訴人がアメリカ食品医薬品局(FDA)に支払

った金員(乙C173ないしC177)については、被告製品1

25 の製造、輸出のためのみに支出されたものであるか明らかではな

く、被控訴人が歩積金から支出したとするその余の費用について


192
も、これと同様であるから、いずれも被告製品1の製造、輸出に

直接関連して追加的に必要となったものと認めることはできない。

G WEEEについて

WEEEは、英国の廃電気・電子機器リサイクル指令による英

5 国政府への登録費用であり、被控訴人が英国に向けて被告製品1

を輸出するに当たり、輸出総重量に応じて、法令上負担しなけれ

ばならない費用であることからすると(乙C189、C190)、

被告製品1の製造、輸出に直接関連して追加的に必要となった経

費に当たるものと認められる。

10 そして、被控訴人が被告製品1の合計●●●台に応じたWEE

Eとして●●●●●●●米国ドル(●●●●●●●円・為替レー

ト1米国ドル約106円で計算)を支払ったこと(乙C189)

からすると、1台当たり●●●円(●●●●●●●円÷●●●)

と認めるのが相当である。

15 そうすると、被控訴人主張のWEEEの金額(●●●●●●●

●●円)のうち、●●●●●●●円(別紙15記載の「英国」へ

の輸出台数●●●台×●●●円)の限度で、被告製品1の製造、

輸出に直接関連して追加的に必要となった経費に当たるものと認

められる。

20 H 認証について

被控訴人主張の認証(●●●●●●●●●円)については、被

控訴人が被告製品1を輸出先の仕向国で販売するために必要とな

るCB−LVD、CB−EMC等の認証を取得するため、平成2

6年3月頃、●●●●●●●●●米国ドル(●●●●●●●●円・

25 為替レート1米国ドル102.86円で計算)を支払ったことが

認められるが(乙C193ないしC196) これを超える金額を



193
支払ったことを客観的に裏付ける証拠はない。そうすると、被控

訴人主張の認証の金額のうち、●●●●●●●●円の限度で、平

成26年度の被告製品1の製造、輸出に直接関連して追加的に必

要となった経費に当たるものと認められる。

5 I 商標登録等について

被告製品1を1台製造、輸出するごとに必要な費用であるもの

と認められないから、被告製品1の製造、輸出に直接関連して追

加的に必要となった経費に当たるものと認めることはできない。

J L/Cユーザンスについて

10 被告製品1を1台製造、輸出するごとに必要な費用であること

を認めるに足りる証拠はないから、被告製品1の製造、輸出に直

接関連して追加的に必要となった経費に当たるものと認めること

はできない。

? 以上によれば、被告製品1については、別紙17記載2 のとお

15 り、@仕入(上海買入)費用(●●●●●●●●●●●●円)、A材

料費(●●●●●●●●●●●円)、B製造ロス費(●●●●●●●

●円)、D製造物流費(●●●●●●●●●●●円)、F歩積金(●

●●●●●●円)、GWEEE(●●●●●●●円)、H認証(●●

●●●●●●円)の合計●●●●●●●●●●●●円が被告製品1

20 の製造、輸出に直接関連して追加的に必要となった経費に当たるも

のと認められる。

これに反する被控訴人及び控訴人の主張はいずれも採用すること

ができない。

c 限界利益額について

25 前記a及びbによれば、被控訴人が被告製品1の輸出により得た

限界利益額は、別紙17記載2?の「限界利益額」欄記載のとおり、


194
前記aの売上高合計●●●●●●●●●●●●円から前記bの経

費合計●●●●●●●●●●●●円を控除後の合計●●●●●●

●●●●●●円である。

? この点に関し、控訴人は、消費税法基本通達5−2−5柱書及び

5 によると、「無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無

体財産権の権利者が収受する損害賠償金」は、資産の譲渡等の対価

に該当するものとされていることからすれば、特許法102条2項

の「侵害の行為により利益を受けているとき」にいう「利益」には

消費税相当分も含まれると解すべきであり、このことは、侵害行為

10 の態様が輸出行為である場合でも変わりはないから、限界利益の額

に消費税相当分を加算すべきである旨主張する。

しかしながら、輸出取引については消費税が免除されているとこ

ろ(消費税法7条1項1号) 輸出製品である被告製品1は消費税の


課税対象とならず、被控訴人は、被告製品1の譲渡等の際に消費税

15 相当額の支払を受けるものではなく、「侵害の行為により利益を受

け」るものではないから、控訴人の上記主張は採用することができ

ない。

被告製品2関係

a 売上高について

20 被告製品2の値引き額及び返品に対する返金額は、被告製品2の販

売に対する対価とはいえないから、被告製品2の売上高に含まないと

認めるのが相当である。

そして、乙C47によれば、平成23年11月から令和3年3月ま

での期間の被告製品2の売上高は、別紙8の「被告製品2」欄記載の

25 とおり、合計●●●●●●●●●円であることが認められる。

b 限界利益額について


195
被控訴人は、被告製品2について、@仕入(上海買入)費用(●●

●●●●●●●円)、A材料費(●●●●●●●●円)、B製造ロス費

(●●●●●●円)、C大山工場組立費用(●●●●円)、D製造物流

費(●●●●●●●円)、Eデザイン費用(●●●●●●●円)、F配

5 送費用及び組立費用(●●●●●●●●円)は、被告製品2の製造、

販売に直接関連して追加的に必要となった経費(合計●●●●●●●

●●円)である旨主張する。

しかるところ、@仕入(上海買入)費用、A材料費、D製造物流費

及びF配送費用及び組立費用(以上、合計●●●●●●●●●円)が、

10 被告製品2の製造、販売に直接関連して追加的に必要となった経費に

当たることは、当事者間に争いがない。

そうすると、被告製品2の売上高●●●●●●●●●円(前記a)

よりも控除すべき経費(合計●●●●●●●●●円)が多いから、そ

の余の点について判断するまでもなく、被控訴人が被告製品2の販売

15 により得た限界利益額は、ゼロである。

まとめ

以上によれば、被控訴人が被告製品1の輸出により得た限界利益額は、

●●●●●●●●●●●●円であり、この限界利益額は、特許法102

条2項により、控訴人が受けた損害額と推定される(以下、この推定を

20 「本件推定」という。 。一方、被控訴人が被告製品2の販売により得た


限界利益額は、ゼロであるから、同項の推定は及ばない。

ウ 推定の覆滅について

被控訴人は、@特許発明が被告製品1の部分のみに実施されているこ

と、A市場における競合品の存在、B市場の非同一性、C被控訴人の営

25 業努力(ブランド力、宣伝広告)、D被告製品1の性能(機能、デザイン

等本件各発明C以外の特徴)は、本件推定の覆滅事由に該当する旨主張


196
するので、以下において判断する。

特許発明が被告製品1の部分のみに実施されていること

被告製品1は、別紙1「被告製品1ないし8説明書」の第1の図

1ないし5に示すように、座部と座部の後部に取り付けられた背も

5 たれ部とを備える椅子本体と、椅子本体の両側に腕ユニット(レス

ト部)とを有するマッサージチェアである。座部には、利用者の腿

をマッサージする腿用エアバッグ、尻をマッサージする尻用エアバ

ッグ、背もたれ部には、利用者の腰を施療する腰用エアバッグが設

けられており、腕ユニットには内側後方から施療者の前腕を挿入す

10 るための開口部があり、開口部から延設して腕ユニットの内側に施

療者の手部を含む前腕部を挿入保持するための前腕保持部を有し、

また、腕ユニットは、椅子本体に対して前後方向に移動可能に設け

られており、背もたれ部のリクライニング角度に応じた所定の移動

量を保持しながら該背もたれ部のリクライニング動作に連動して

15 腕ユニットが椅子本体に対して前後方向に移動することができる。

証拠(乙C40、C54)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品

1は、独自の赤外線スキャン技術で体を測定し、指圧ポイントの特

定の場所にマッサージをする機能(指圧点探知) 子供を対象とした


「ヤングコース」プログラム機能、ボタンをクリックするだけで、

20 16の異なる事前にプログラムされたマッサージセッション及び

様々な手動マッサージの組合せを選択できる機能(準備書面(被控

訴人第17回)の別紙2−1、2)を有し、
「マッサージ機構」とし

て、首(指圧・ひきもみ)、肩(バリエーション指圧・もみ玉マッサ

ージ)、腕(フルアーム機能)、背中(もみ玉マッサージ)、サイドプ

25 レス(エアー指圧)、座面(エアー&バイブ)、腰(もみ玉とエアー

指圧)、ふくらはぎ(エアー指圧)、足先(エアー指圧)の機構を備


197
えていることが認められる。

? 本件明細書Cの記載によれば、本件各発明Cの技術的意義は、座

部の左右両側に設けた肘掛部の上部に前腕部施療機構を備えて、着

座した施療者の腕部をマッサージする形態の従来の椅子式マッサ

5 ージ機においては、前腕部施療機構として肘掛部に設けた内側立上

り壁によって、上腕部内側の肘関節付近を圧迫したり施療者に不快

感を与えたり、腕部の載脱行為を妨げたりするなどの欠点があり、

また、手掛け部を掴んで立ち上がろうとする際、内側立上り壁によ

って上腕部内側の肘関節付近が圧迫を受け、施療者に対して不快感

10 を与えるという問題があったところ、本件各発明Cは、上記問題点

を解決し、前腕部施療機構におけるスムーズな前腕部の載脱が可能

となり、施療者が起立及び着座を快適に行うことができるという効

果を奏することにある(前記 ア a)。

そうすると、本件各発明Cは、椅子式マッサージ機の構造のうち、

15 「肘掛部の前腕部施療機構」に関する発明であり、被告製品1にお

いては、「腕ユニット」(肘掛部)及びアームレスト(手掛け部)に

係る部分のみに実施されていることが認められる。

? 証拠(乙C50)及び弁論の全趣旨によれば、需要者が椅子式マ

ッサージ機を選択するに当たり着目する要素は、@マッサージ機能

20 (例えば、自分がマッサージしたい部位に対応した製品であるか、

使用者の体格に合わせて、もみ玉やローラーの位置を自動調整する

機能があるか、使用者の目的に合わせてマッサージメニューを組み

合わせた自動コースを何種類搭載しているかなど)、A便利な機能

や装備(例えば、脚部のマッサージ機能、電動リクライニング機能、

25 リモコン収納、キャスター、タイマー、液晶パネルリモコン、折り

たたみ収納、ヒーター機能を備えているか)Bサイズや重量(例え


198
ば、設置場所や保管場所のスペースに合わせて、最適なサイズや重

量がどのようなものか)、Cデザイン等であることが認められる。

しかるところ、本件各発明Cの前腕部施療機構におけるスムーズ

な前腕部の載脱が可能となり、施療者が起立及び着座を快適に行う

5 ことができるという効果は、椅子式マッサージ機の基本的な機能で

あるマッサージ機能そのものではなく、
「腕部」のマッサージを行う

際の付随的なものにすぎない。

また、被告製品1のカタログ(乙C40)及び被告製品1と同様

の構成の被告製品2のカタログ(乙C54)においても、被告製品

10 1及び2が、前腕部施療機構におけるスムーズな前腕部の載脱が可

能となり、施療者が起立及び着座を快適に行うことができる効果を

奏することは、紹介されていない。

以上を総合すると、本件各発明Cの技術的意義は高いとはいえず、

被告製品1の購買動機の形成に対する本件各発明Cの寄与は限定

15 的であるというべきであるから、被控訴人が被告製品1の輸出によ

り得た限界利益額(前記イ )には、本件各発明Cが寄与していな

い部分を含むものと認められる。

したがって、本件各発明Cが被告製品1の部分のみに実施されて

いることは、本件推定の覆滅事由に該当するものと認められる。

20 b 市場における競合品の存在

被控訴人は、控訴人以外の多くのメーカー(パナソニック等)は、

本件出願Cの出願前から、被告製品1の競合品である「肘掛部に前腕

部をマッサージする前腕施療機構を備えている椅子式マッサージ」を

海外に輸出しており(乙C79ないしC81等)、特に、米国では、控

25 訴人及び被控訴人のほかに、控訴人の別会社であるLITEC久工及

びDr.Fuji(10機種)、大崎マッサージチェア(控訴人がOE


199
M供給)
(39機種) パナソニック
、 (6機種) フジタ
、 (Fujita)

(12機種)、インフィニティ(Infinity)
(19機種)、KY

OTA(5機種)の製品も販売されており、被告製品1と販売期間の

重なる「肘掛部に前腕部をマッサージする前腕施療機構を備えている

5 椅子式マッサージ」製品に占める控訴人製品1の割合は94機種中7

機種にすぎないこと(甲C39ないしC41、C43、乙C268等)

からすると、被告製品1が販売されなかったとしても、海外の市場に

おいて、消費者、取引者(海外の代理店を含む。)の需要は、控訴人製

品1ではなく、他社の競合品に向くことは明らかであるから、このよ

10 うな他社の競合品の存在は、本件推定の覆滅事由に該当する旨主張す

る。

そこで検討するに、乙C79ないしC81から、控訴人のほか、パ

ナソニック及び大東電機が、肘掛部に前腕部施療機構を有する椅子式

マッサージ機を海外に輸出し、パナソニックの製品は、米国、カナダ、

15 香港において販売され、大東電機の製品は中国の現地法人が販売して

いることが認められる。また、株式会社矢野経済研究所の「セルフケ

ア健康機器の市場実態と将来展望 2017年版」(乙C51)には、

海外展開では、パナソニックや控訴人、被控訴人などは、中国などア

ジアへの展開に力を入れていること、大東電機は欧米や中国でOEM

20 展開を行っていることなどの記載がある。さらに、甲C43には、2

014年(平成26年)から2018年(平成30年)までの期間の米

国における高級マッサージチェア市場において、控訴人、被控訴人、

大崎マッサージチェア及びパナソニックが主要なベンダーであること

が記載されている。

25 しかしながら、本件においては、平成26年から令和3年までの間

の被告製品1が輸出された米国その他の各仕向国の市場における椅子


200
式マッサージ機のシェア、控訴人以外の他社(国内外のメーカー)の

「肘掛部に前腕部をマッサージする前腕施療機構を備えている椅子式

マッサージ」製品の販売状況等を認めるに足りる的確な証拠はない。

そうすると、被控訴人主張の他社の競合品の存在は、被告製品1の

5 限界利益額と控訴人の受けた損害額との間の相当因果関係を否定すべ

き事情に当たるとはいえないから、本件推定の覆滅事由に該当するも

のと認めることはできない。

したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。

c 市場の非同一性

10 前記 ア及び前記ア bの認定事実を総合すると、別紙15のとお

り、平成26年5月から令和3年3月までの間、被告製品1は、米国

等の17の国・地域を仕向国として輸出され、その輸出台数は●●●

●●●台であること、控訴人製品1は、同期間において、被告製品1

と共通の仕向国へ輸出され、その輸出台数は●●●●台であること、

15 被告製品1の上記輸出台数のうち、控訴人製品1が輸出されていない

仕向国へ輸出されたものは●●●●台であることが認められる。

しかるところ、控訴人製品1が輸出されていない上記仕向国のそれ

ぞれの市場においては、控訴人製品1は、被告製品1の輸出がなけれ

ば輸出することができたという競合関係があるということはできず、

20 被告製品1が輸出されることによって控訴人製品1の売上げが減少す

るという関係になかったというべきであるから、被告製品1と控訴人

製品1は、仕向国が異なる限度で、市場が同一でなかったものと認め

られる。

以上によれば、平成26年5月から令和3年3月までの間に輸出さ

25 れた被告製品1のうち、控訴人製品1が輸出されていない仕向国への

輸出分(合計●●●●台)があることは、本件推定の覆滅事由に該当


201
するものと認められる。

d 被控訴人の営業努力(ブランド力、宣伝広告)について

証拠(乙C51、C62、C67、C69)によれば、@被控訴人

が、平成16年には価格ベースで15%のシェアを占めるなど日本の

5 マッサージチェア業界における大手企業であること(乙C51) A平


成16年ないし18年に被告製品1以外の被控訴人の製品が日本国内

でグッドデザイン賞を受賞し(乙C62) 米国でもエキサイト賞の受


賞歴(乙C67)があること、B平成26年9月にニューヨークのタ

イムズスクエアに設置された電光掲示板において、被控訴人の米国現

10 地代理店が米国において急成長している企業5000社に選ばれた旨

の広告をしたこと(乙C69)が認められる。

他方で、控訴人と被控訴人は、米国におけるマッサージ機市場にお

いてマーケットリーダーであると位置づけられていること(甲C43)、

控訴人も、平成15年にグッドデザイン賞を受賞していること(甲C

15 59)が認められる。

そうすると、上記@ないしBの事情から、被控訴人のブランド力や

被告製品1の宣伝広告が、被告製品1の購買動機の形成に寄与したと

まで認めることはできない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。

したがって、被控訴人主張の営業努力(ブランド力、宣伝広告)は、

20 本件推定の覆滅事情に該当するものと認めることはできない。

e 被告製品1の性能(機能、デザイン等本件各発明C以外の特徴)に

ついて

被控訴人は、被告製品1は、ボタンをクリックするだけで、16の

異なる事前にプログラムされたマッサージコース、操作が簡単で、操

25 作に手動が必要な複雑なリモコンのない簡便さや、世界的に有名なデ

ザイナーAの協力による受賞歴のあるデザイン、特に独自の身体スキ


202
ャン技術で体を測定し、指圧点を検知してユーザ自身の背中の形状に

合わせたマッサージ機能(乙C40)などが訴求ポイントとなってい

ること、被控訴人は、被告製品1の訴求ポイントに係る特許を多数保

有していること(乙C222ないしC238) 被告製品1のデザイン


5 は多数の国で意匠登録されており(乙C213ないしC221) デザ


インが優れていることからすると、被告製品1の性能(機能、デザイ

ン等本件各発明C以外の特徴)は、本件推定の覆滅事由に該当する旨

主張する。

そこで検討するに、被告製品1のカタログ(乙C40)には、
「デザ

10 イン」に関し、
「受賞歴のあるデザイン 世界的に有名なデザイナーA

がBの指圧マッサージの専門家と協力して、DreamWaveを開

発しました。その結果、革新とデザインで数々の賞を受賞した美しい

椅子が生まれました。」との記載(準備書面(被控訴人第17回)の別

紙2−1、2)がある。また、被告製品1と同様の構成の被告製品2

15 のカタログ(乙C54)には、被告製品2の写真に「多機能性インテ

リアとして自然な存在感で置かれるようデザインをされています」な

どの記載がある。

しかしながら、上記各カタログの記載及び前記d認定の被控訴人の

受賞歴、被控訴人主張の意匠登録の事実を勘案しても、被告製品1の

20 デザインが被告製品1の購買動機の形成に寄与したとまで認めること

はできない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。

また、被控訴人主張の被告製品1に係る機能等が被告製品1の購買

動機の形成に寄与したことを認めるに足りる証拠はない。

したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。

25 以上のとおり、本件各発明Cは、椅子式マッサージ機の構造のうち、

「肘掛部の前腕部施療機構」に関する発明であり、被告製品1において


203
は、「腕ユニット」(肘掛部)及びアームレスト(手掛け部)に係る部分

のみに実施されていること、平成26年5月から令和3年3月までの間

に輸出された被告製品1のうち、控訴人製品1が輸出されていない仕向

国への輸出分(合計●●●●台)があること(市場の非同一性)は、本

5 件推定の覆滅事由に該当すること、本件各発明Cの前腕部施療機構にお

けるスムーズな前腕部の載脱が可能となり、施療者が起立及び着座を快

適に行うことができるという効果は、椅子式マッサージ機の基本的な機

能であるマッサージ機能そのものではなく、
「腕部」のマッサージを行う

際の付随的なものであり、また、本件各発明Cの技術的意義は高いとは

10 いえず、被告製品1の購買動機の形成に対する本件各発明Cの寄与は限

定的であること、控訴人製品1が輸出されていない仕向国への輸出分

(合計●●●●台)は、被告製品1の輸出台数(●●●●●●台)の7%

に相当することを総合考慮すると、被告製品1の購買動機の形成に対す

る本件各発明Cの寄与割合は1割と認めるのが相当であり、上記寄与割

15 合を超える部分については、被告製品1の限界利益額と控訴人の受けた

損害額との間に相当因果関係がないものと認められる。

したがって、本件推定は、上記限度で覆滅されるものと認められるか

ら、特許法102条2項に基づく控訴人の損害額は、別紙17記載3の

「推定覆滅後の額」欄記載のとおり、被告製品1の限界利益額の1割に

20 相当する合計●●●●●●●●●●●円と認められる。

エ 推定覆滅部分に係る特許法102条3項に基づく損害額(予備的主張)

について

特許法102条3項は、特許権者は、故意又は過失により自己の特許

権を侵害した者に対し、その特許発明実施に対し受けるべき金銭の額

25 に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求す

ることができると規定し、同条5項本文(令和元年改正特許法による改


204
正前の同条4項本文)は、同条3項の規定は、同項に規定する金額を超

える損害の賠償の請求を妨げないと規定している。そして、特許権は、

特許権者の実施許諾を得ずに、第三者が業として特許発明実施するこ

とを禁止し、その実施を排除し得る効力を有すること(特許法68条

5 照)に鑑みると、特許法102条3項は、特許権者が、侵害者に対し、

自ら特許発明実施しているか否か又はその実施の能力にかかわりな

く、特許発明実施料相当額を自己が受けた損害の額の最低限度として

その賠償を請求できることを規定したものであり、同項の損害額は、実

施許諾の機会(ライセンスの機会。以下同じ。)の喪失による最低限度の

10 保障としての得べかりし利益に相当するものと解される。

一方で、特許法102条2項侵害者の侵害行為による「利益」の額

(限界利益額)は、侵害品の価格に販売等の数量を乗じた売上高から経

費を控除して算定されることに照らすと、同項の規定により推定される

特許権者が受けた損害額は、特許権者が侵害者の侵害行為がなければ自

15 ら販売等をすることができた実施品又は競合品の売上げの減少による逸

失利益に相当するものと解される。

特許権者は、自ら特許発明実施して利益を得ることができると同時

に、第三者に対し、特許発明実施を許諾して利益を得ることができる

ことに鑑みると、侵害者の侵害行為により特許権者が受けた損害は、特

20 許権者が侵害者の侵害行為がなければ自ら販売等をすることができた実

施品又は競合品の売上げの減少による逸失利益実施許諾の機会の喪失

による得べかりし利益とを観念し得るものと解される。

そうすると、特許法102条2項による推定が覆滅される場合であっ

ても、当該推定覆滅部分について、特許権者が実施許諾をすることがで

25 きたと認められるときは、同条3項の適用が認められると解すべきであ

る。


205
そして、特許法102条2項による推定の覆滅事由には、同条1項と

同様に、侵害品の販売等の数量について特許権者の販売等の実施の能力

を超えることを理由とする覆滅事由と、それ以外の理由によって特許権

者が販売等をすることができないとする事情があることを理由とする覆

5 滅事由があり得るものと解されるところ、上記の実施の能力を超えるこ

とを理由とする覆滅事由に係る推定覆滅部分については、特許権者は、

特段の事情のない限り、実施許諾をすることができたと認められるのに

対し、上記の販売等をすることができないとする事情があることを理由

とする覆滅事由に係る推定覆滅部分については、当該事情の事実関係の

10 下において、特許権者が実施許諾をすることができたかどうかを個別的

に判断すべきものと解される。

これを本件についてみるに、前記ウ認定の本件推定の覆滅事由は、特

許発明が被告製品1の部分のみに実施されていること及び市場の非同

一性であり、いずれも特許権者の実施の能力を超えることを理由とする

15 ものではない。

しかるところ、市場の非同一性を理由とする覆滅事由に係る推定覆滅

部分については、被控訴人による被告製品1の各仕向国への輸出があっ

た時期において、控訴人製品1は当該仕向国への輸出があったものと認

められないことから、当該仕向国のそれぞれの市場において、控訴人製

20 品1は、被告製品1の輸出がなければ輸出することができたという競合

関係があるとは認められないことによるものであり(前記ウ c) 控訴


人は、当該推定覆滅部分に係る輸出台数について、自ら輸出をすること

ができない事情があるといえるものの、実施許諾をすることができたも

のと認められる。

25 一方で、本件各発明Cが侵害品の部分のみに実施されていることを理

由とする覆滅事由に係る推定覆滅部分については、その推定覆滅部分に


206
係る輸出台数全体にわたって個々の被告製品1に対し本件各発明Cが寄

与していないことを理由に本件推定が覆滅されるものであり、このよう

な本件各発明Cが寄与していない部分について、控訴人が実施許諾をす

ることができたものと認められない。

5 そうすると、本件においては、市場の非同一性を理由とする覆滅事由

に係る推定覆滅部分についてのみ、特許法102条3項の適用を認める

のが相当である。

a これに対し、控訴人は、特許発明侵害品の一部のみに実施されて

いることを理由とする覆滅事由は、需要を形成する一要因にすぎず、

10 侵害品に向かっていた事情が全て特許権者の製品に向かうかどうかを

判断する一要素であるから、市場の非同一性等を理由とする覆滅事由

と区別する理由はないこと、覆滅事由ごとに特許法102条3項の適

用の有無を区別することは、実施料率の算定が煩雑になり妥当でなく、

そもそも製品の需要形成には様々な要因が複合的に絡み合っており、

15 覆滅事由ごとに覆滅割合を認定して当該覆滅部分にライセンス機会の

喪失による逸失利益が認められるか否かを認定判断することは実際上

困難であることからすると、本件各発明Cが侵害品の部分のみに実施

されていることを理由とする覆滅事由に係る推定覆滅部分についても、

特許法102条3項の適用を認めるべきである旨主張する。

20 しかしながら、前記 で説示したとおり、上記推定覆滅部分は、個々

の被告製品1に対し本件各発明Cが寄与していないことを理由に本件

推定が覆滅されるものであり、このような本件各発明Cが寄与してい

ない部分について、控訴人が実施許諾をすることができたものとは認

められないから、控訴人の上記主張は採用することができない。

25 b また、被控訴人は、@特許法102条1項において、特許権者が自

実施できたと推定される部分(1号)とは別にライセンスをし得た


207
部分(2号)とを区別し観念できるのは、同項が、侵害者の販売する

「数量」に基づいて、権利者の逸失利益に係る損害額を算定する方法

を採用しているからであり、他方で、同条2項は、侵害者の「利益」

を権利者の逸失利益と推定する損害額算定方法をとっており、同項の

5 推定が覆滅されるのは、最終計算の結果としての損害額であり、計算

過程の途中数値である侵害品の数量の一部が計算の基礎から除かれる

わけではなく、同項の推定を覆滅する過程において、権利者のライセ

ンスの機会の喪失による逸失利益をも含む全ての逸失利益が評価し尽

されているというべきであるから、推定覆滅部分に対して同条3項を

10 適用することは、権利者の損害の二重評価となり、許されない、A同

条1項2号が新設された令和元年改正特許法において、同条2項につ

いて実施料相当額の損害が明文において規定されなかったのは、この

ような趣旨によるものと解される、B仮に推定覆滅部分について同条

3項の重畳適用が認められる場合が理論的にあり得るとしても、被告

15 製品1について、
「市場の非同一性」を理由とする覆滅事由に係る推定

覆滅部分につき、輸出に際して海外市場の事業者から受け取る対価は、

あくまで海外市場に基づく利益であり、このような海外市場における

利益まで特許法102条2項の推定が及ぶものと解し、日本国内の特

許権に基づいて独占することは、特許権の保護範囲を逸脱しており、

20 法が予定していないものであり、また、日本国の特許権に基づいて仕

向国への輸出行為のみを切り取り、ライセンスする場合は現実に考え

難く、ライセンスによる実施料相当額の得べかりし利益を得られなか

ったとは言い難いとして、本件推定の推定覆滅部分については、同条

3項を適用することはできない旨主張する。

25 しかしながら、@及びAについては、前記 で説示したとおり、特

許権者は、自ら特許発明実施して利益を得ることができると同時に、


208
第三者に対し、特許発明実施を許諾して利益を得ることができるこ

とに鑑みると、侵害者の侵害行為により特許権者が受けた損害は、特

許権者が侵害者の侵害行為がなければ自ら販売等をすることができた

実施品又は競合品の売上げの減少による逸失利益実施許諾の機会の

5 喪失による得べかりし利益とを観念し得るものと解されるところ、特

許法102条2項の規定により推定される特許権者が受けた損害額は、

特許権者が侵害者の侵害行為がなければ自ら販売等をすることができ

実施品又は競合品の売上げの減少による逸失利益に相当するもので

あるのに対し、同項による推定の推定覆滅部分について、特許権者が

10 実施許諾をすることができたと認められるときは、特許権者は、売上

げの減少による逸失利益とは別に、実施許諾の機会の喪失による実施

料相当額の損害を受けたものと評価できるから、特許権者の損害を二

重に評価することにはならない。また、同条1項2号が新設された令

和元年改正特許法において、同条2項について、同条1項2号と同様

15 の法改正がされなかったからといって直ちに同条2項による推定の推

定覆滅部分について同条3項の適用を否定すべき理由にはならないと

いうべきである。

次に、Bについては、前記 のとおり、市場の非同一性を理由とす

る推定覆滅部分に係る輸出台数について、控訴人は本件特許権Cの実

20 施許諾をすることができたものと認められる。

したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。

そこで、市場の非同一性を理由とする本件推定の覆滅事由に係る推定

覆滅部分について、特許法102条3項に基づく損害額について判断す

る。

25 @株式会社帝国データバンク作成の「知的財産の価値評価を踏まえた

特許等の活用の在り方に関する調査研究報告書〜知的財産(資産)価値


209
及びロイヤルティ料率に関する実態把握〜」
(本件報告書)の「1.技術

分類別ロイヤルティ料率(国内アンケート調査)」の「 アンケート調

査結果」には、
「特許権におけるロイヤルティ料率の平均値について、全

体では3.7%となった。 (50頁)
」 、表U―3に、「個人用品または家

5 庭用品」が平均3.5%、最大値7.5%、最小値0.5%(件数13)、

「器械」が平均3.5%、最大値9.5%、最小値0.5%(件数63)

(52頁)、
「4.司法決定によるロイヤルティ料率」の表V―12には、

「産業別司法決定ロイヤルティ料率(2004年〜2008年) につい


て「産業分野」を「機械」とする司法決定によるロイヤルティ料率は平

10 均値3.9%、最大値10.0%、最小値1.0%(件数12)
(109

頁)との記載があること、A前記ウ のとおり、本件各発明Cは、椅子

式マッサージ機の構造のうち、
「肘掛部の前腕部施療機構」に関する発明

であり、被告製品1の部分のみに実施されていること、本件各発明Cの

前腕部施療機構におけるスムーズな前腕部の載脱が可能となり、施療者

15 が起立及び着座を快適に行うことができるという効果は、椅子式マッサ

ージ機の基本的な機能であるマッサージ機能そのものではなく、「腕部」

のマッサージを行う際の付随的な効果であり、また、本件各発明Cの技

術的意義は高いとはいえず、被告製品1の購買動機の形成に対する本件

各発明Cの寄与は限定的であること、B実施許諾をするに当たり消費税

20 相当額を含めて実施許諾料を定める場合があり得ること、その他本件に

現れた諸般の事情を総合考慮すると、上記推定覆滅部分に係る特許法1

02条3項に基づく損害額は、被告製品1の売上高に実施料率1%を乗

じた額と認めるのが相当である。

そして、前記ウ 及び別紙8によれば、上記推定覆滅部分に相当する

25 被告製品1の売上高は、被告製品1の輸出台数の7%に相当する●●●

●●●●●●●●円(●●●●●●●●●●●●円×7%。小数点以下


210
四捨五入。以下同じ。)であることが認められるから、特許法102条

項に基づく損害額は、別紙17記載3の「覆滅部分の実施料相当額」欄

記載のとおり、合計●●●●●●●●円(●●●●●●●●●●●円×

1%)となる。

5 これに反する控訴人及び被控訴人の主張はいずれも採用することがで

きない。

オ まとめ

以上によれば、被告製品1についての控訴人の特許法102条2項に基

づく損害額及び同項の推定覆滅部分に係る同条3項に基づく損害額の合

10 計額は、別紙17記載3の「損害額(合計)」欄記載のとおり、●●●●●

●●●●●●円となる。

特許法102条3項に基づく損害額について

ア 被告製品1について

前記 エ の認定事実によれば、控訴人の特許法102条3項に基づ

15 く損害額は、被告製品1の売上高に実施料率1%を乗じた額と認めるの

が相当である。

そうすると、控訴人の特許法102条3項に基づく損害額は、別紙1

7記載4の「被告製品1」の「実施料相当額」欄記載のとおり、合計●

●●●●●●●●円となる。

20 これに反する控訴人及び被控訴人の主張はいずれも採用することがで

きない。

前記 オ認定の控訴人の特許法102条2項に基づく損害額及び同項

の推定覆滅部分に係る同条3項に基づく損害額の合計額●●●●●●●

●●●●円は、前記 認定の控訴人の同条3項に基づく損害額●●●●

25 ●●●●●円よりも高いから、被告製品1に係る控訴人の損害額は、上

記合計額となる。


211
イ 被告製品2について

被告製品2は、被告製品1と同様の構成を有することに鑑みると、被告

製品2についての控訴人の特許法102条3項に基づく損害額は、被告製

品1と同様に、被告製品2の売上高に実施料率1%を乗じた額と認めるの

5 が相当である。

そうすると、控訴人の特許法102条3項に基づく損害額は、別紙17

記載4の「被告製品2」の「実施料相当額」欄記載のとおり、合計●●●

●●●●円となる。

これに反する控訴人及び被控訴人の主張はいずれも採用することがで

10 きない。

弁護士費用について

控訴人の被告製品1に係る損害額(前記 オ)及び被告製品2に係る損害

額(前記 イ)の合計額は、別紙17記載5の「損害額小計」欄記載のとお

り、●●●●●●●●●●●円となる。

15 そして、本件事案の性質・内容、本件の認容額、原審及び当審の審理経過

等諸般の事情を斟酌すると、被控訴人の本件特許権Cの侵害不法行為と相

当因果関係のある弁護士費用相当額は、別紙17記載5の「弁護士費用」欄

記載のとおり、合計●●●●●●●●●円と認めるのが相当である。

消滅時効の成否について

20 被控訴人は、控訴人は、被控訴人による被告製品1及び2の製造、販売、

輸出の開始後間もない頃、被告製品1及び2の製造、販売、輸出等の事実及

びその構造・機能等を認識し、被告製品1及び2が本件各発明Cの技術的範

囲に属することを認識していたから、控訴人の被控訴人に対する平成27年

4月12日以前の本件特許権Cの侵害に係る不法行為に基づく損害賠償請求

25 権は、本件訴訟の提起時点(平成30年4月13日)で、控訴人が損害及び

加害者を知った時から3年の消滅時効期間が経過し、消滅時効により消滅し


212
た旨主張する。

そこで検討するに、不法行為に基づく損害賠償請求権は、
「損害及び加害者

を知った時」から3年が経過したとき、時効により消滅するが(改正前民法

724条) 「損害及び加害者を知った時」とは、被害者において、加害者に


5 対する賠償請求が事実上可能な状況の下に、その可能な程度にこれらを知っ

た時を意味し、
「被害者が損害を知った時」とは、被害者が損害の発生を現実

に認識した時をいうと解される(最高裁平成8年 第2607号同14年1

月29日第三小法廷判決・民集56巻1号218頁参照)。

これを本件についてみると、控訴人が、被告製品1及び2について、その

10 販売等の開始後間もなく、本件各発明Cの技術的範囲に属することを知って

いたことを認めるに足りる証拠はない。

この点に関し、被控訴人は、控訴人において被告製品1及び2が本件各発

明Cの技術的範囲に属していることを知っていたことは明らかである事情と

して、控訴人と被控訴人の従前からの関係に照らせば、控訴人は、被控訴人

15 の製品動向や機能に関し常に関心を有し、調査検討をしていたと考えられる

こと、控訴人と被控訴人との間で平成28年に行われていたクロスライセン

ス契約締結に向けた交渉において、控訴人が、対象となる特許権リストに本

件特許Cを挙げていたこと、控訴人が、被告製品2の製造販売等の開始(平

成20年5月)から5か月後に本件特許Cに係る分割出願(本件出願C)を

20 したことなどを挙げるが、仮にこれらの事情が認められるとしても、そのこ

とから直ちに控訴人において被告製品1及び2が本件各発明Cの技術的範囲

に属することを知っていたと認めるには足りず、被控訴人の主張は単なる憶

測にとどまるものというべきである。また、この点は措くにしても、証拠(甲

C50ないしC52、乙C43ないしC45)によると、上記交渉において、

25 平成28年12月9日に控訴人が提示した特許権リストに本件特許Cが記載

されていることが認められるものの、その後、被控訴人が、双方が提示した


213
特許権リストについて、双方で対象と思われる製品を指定して技術的範囲

属否検討を行うことを提案したのに対し、控訴人が、平成29年1月31日、

「当初から一件一件の属否論、無効論を行うことは想定しておりません。 と


属否について検討することを否定する回答をし、結局、クロスライセンス

5 契約締結には至らなかったことが認められる。このような経緯に照らすと、

控訴人が、被告製品1及び2につき、本件各発明の技術的範囲の属否検討を

行ったと認めることはできないから、被控訴人の上記主張はいずれにしても

採用することができない。

したがって、控訴人の被控訴人に対する平成27年4月12日以前の本件

10 特許権Cの侵害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権が時効により消滅し

たとの被控訴人の主張は理由がない。

小括

以上によれば、本件における控訴人の損害額は、別紙17記載5の「合計」

欄記載のとおり、合計3億9154万9273円となる。

15 よって、控訴人は、被控訴人に対し、本件特許権Cの侵害による不法行為

に基づく損害賠償として3億9154万9273円及び別紙認容額一覧の

「認容額」欄記載の各金員に対する「遅延損害金起算日」欄記載の各日から

支払済みまで「遅延損害金利率(年)」欄記載の各割合による遅延損害金の支

払を求めることができる。

20 第5 結論

以上によれば、控訴人の請求は、被控訴人に対し、被告製品1及び2の販売

等の差止め及び廃棄を求めるとともに、3億9154万9273円及び別紙認

容額一覧の「認容額」欄記載の各金員に対する「遅延損害金起算日」欄記載の

各日から支払済みまで「遅延損害金利率(年)」欄記載の各割合による金員の支

25 払を求める限度で理由があり、その余はいずれも理由がないから棄却すべきも

のである。


214
したがって、原判決は一部不当であって、本件控訴は一部理由があるから、

原判決を本判決主文第1項のとおり変更することとして、主文のとおり判決す

る。



5 知的財産高等裁判所特別部




裁判長裁判官

大 鷹 一 郎

10




裁判官

菅 野 雅 之



15


裁判官

本 多 知 成




20 裁判官

東 海 林 保




裁判官

25 勝 又 来 未 子




215
別紙

物件目録



1 製品名 INADADREAMWAVE

5 型 番 HCP−11001

2 製品名 ファミリーメディカルチェアSOGNO

型 番 FMC−10000

3 製品名 ファミリーメディカルチェアルピナス

型 番 FMC−LPN10000

10 4 製品名 ファミリーメディカルチェアダブル・エンジンユニバーサル

型 番 FMC−WU100

5 製品名 ファミリーメディカルチェア3S匠

型 番 FMC−S8100

6 製品名 ファミリーイナダチェアユメロボ

15 型 番 FIC−R100

7 製品名 ファミリーメディカルチェア3A

型 番 FMC−9200

8 製品名 ファミリーメディカルチェアX.1

型 番 FMC−730

20 9 製品名 ファミリーメディカルチェア3S

型 番 FMC−S330

10 製品名 ファミリーメディカルチェアエスボディ

型 番 FDX−S300

11 製品名 ファミリーメディカルチェアネセサ

25 型 番 FMC−N230



216
12 製品名 ファミリーメディカルチェアルピナスライト

型 番 FMC−LPN9000




217
(別紙1)

被告製品1ないし8説明書



第1 被告製品1及び2について

5 1 本件特許A関係

被告製品1及び2の説明

ア 被告製品1は、図1及び図2に示すように、座部と、当該座部の後部に

取り付けられた背もたれ部とを備えたマッサージチェアである。

図3に示すように、座部には、利用者の腿をマッサージする腿用エアバ

10 ッグ、及び尻をマッサージする尻用エアバッグAが設けられており、また、

背もたれ部には、利用者の腰を施療する腰用エアバッグが設けられている。

尻用エアバッグAは、座部上面に、左右に分離して配置され、上方へ膨

張し、臀部底面を押圧する(甲9、乙A10)。

被告製品2は、被告製品1と同様の構成を有する。

15 イ 被告製品1の制御手段による動作は、
「Manual Selection Mode」
(自由選

択コース)中の「Seat」
(座)エアーコース、被告製品2の制御手段による

動作は「自由選択コース」中の「座」エアーコースにおいて発現する。

控訴人主張の被告製品1及び2の構成

a 座部と、該座部の後部に取り付けられた背もたれ部とを備え、

20 b 前記座部には、腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻をマッサ

ージする尻用エアバッグAが設けられ、

c 前記背もたれ部には、腰用エアバッグが設けられた

d マッサージチェアであって、

e 利用者の腰を施療する際に、尻用エアバッグAを膨らませて利用者の腰

25 の高さ位置を徐々に高くしながら、腰用エアバッグを作動させる制御手段

を設けた


220
f ことを特徴とするマッサージチェア。

2 本件特許C関係

被告製品1及び2の説明

被告製品1は、図1に示すように、座部と背もたれ部を備える椅子本体と、

5 椅子本体の両側に腕ユニット(レスト部)とを有するマッサージチェアであ

る。

図4及び5に示すように、腕ユニットには内側後方又は側方から施療者の

前腕を挿入するための開口部があり、開口部から延設して腕ユニットの内側

に施療者の手部を含む前腕部を挿入保持するための空間を有する。

10 被告製品2は、被告製品1と同様の構成を有する。

控訴人主張の被告製品1及び2の構成

ア 本件発明C−1との関係における構成

a 座部及び背もたれ部を有する椅子本体と、該椅子本体の両側部に腕

ユニットを有するマッサージチェアにおいて、

15 b 腕ユニットに、内側後方から施療者の前腕部を挿入するための開口部

と、該開口部から延設して腕ユニットの内部に施療者の手部を含む前腕

部を挿入保持するための空洞部が設けられ、

c 空洞部は、腕ユニットの幅方向左右にそれぞれ設けた外側壁面部及び

内側壁面部と底面部とから形成され、

20 d 外側壁面部及び内側壁面部の上面前端部に空洞部の先端部の上方を

塞ぐ形態でレスト部が設けられており、

e 腕ユニットが、

e−1 前部に底面部と外側壁面部と内側壁面部とレスト部とに囲われ、

空洞部に位置するロ型施療部と、

25 e−2 後部に底面部と外側壁面部によりL型に形成され、開口部に位

置する L 型施療部とを備え、


221
f それぞれの施療部にエアセルがそれぞれ設けられている

g ことを特徴とするマッサージチェア。

イ 本件発明C−2との関係における構成

h 腕ユニットは、中部に底面部と外側壁面部とレスト部によりコ型に

5 形成されたコ型施療部を備えており、

i 底面部とレスト部とでは、施療者の前腕部を載置しうるための載置面

が異なっており、底面部の載置面よりもレスト部の載置面の方が高い位

置に形成されている

j ことを特徴とする前記ア記載のマッサージチェア。

10 ウ 本件発明C−3との関係における構成

k 開口部の外側壁面部及び底面部の二面において互いに対設する位置

に各々エアセル1及びエアセル2が設けられており、

l 外側壁面部の下部において、エアセル1の下部の縁部1を止着すると

ともに、底面部の外側壁面部側に、エアセル2の外側壁面部側の縁部2

15 を止着している

m ことを特徴とする前記ア記載のマッサージチェア。

エ 本件発明C−4との関係における構成

n 開口部の外側壁面部の下部において、エアセル1の下部に形成され

た縁部1を止着するとともに、開口部の底面部における外側壁面部側に

20 他方のエアセル2に形成された縁部2を外側壁面部側に止着して構成

した

o ことを特徴とする前記ウ記載のマッサージチェア。

オ 本件発明C−5との関係における構成

p 腕ユニットは、椅子本体に対して前後方向に移動可能に設けられてお

25 り、背もたれ部のリクライニング角度に応じた所定の移動量を保持しな

がら該背もたれ部のリクライニング動作に連動して腕ユニットが椅子


222
本体に対して前後方向に移動するようにした

q ことを特徴とする前記アないしエ記載のマッサージチェア。




223
〔図1〕被告製品1及び2(前面斜視図)



背もたれ部




座部 腕ユニット

(レスト部)




〔図2〕被告製品1




224
〔図3〕被告製品1




〔図4〕被告製品1




225
〔図5〕被告製品1




226
第2 被告製品3、5及び8について(本件特許A関係)

1 被告製品3、5及び8の説明

被告製品5は、座部と、当該座部の後部に取り付けられた背もたれ部とを

備えたマッサージチェアである。図6に示すように、座部には、利用者の腿

5 をマッサージする腿用エアバッグ、及び尻をマッサージする尻用エアバッグ

Aが設けられており、また、背もたれ部には、利用者の腰を施療するもみ玉

が設けられている。

尻用エアバッグAは、座部上面に、左右に分離して配置され、上方へ膨張

し、臀部底面を押圧する(乙A11、A16)。

10 被告製品3及び8は、被告製品5と同様の構成を有する(甲9、乙A10、

A14、A16)。

被告製品3の制御手段による動作は、
「メインコース」中の「クイックコー

ス」及び「プロフェッショナルコース」中の「体幹トレーニングコース」、被

告製品5の制御手段による動作は、「自動コース」中の「ストレッチコース」

15 及び「ストレス解消コース」並びに「お好みコース」中の「カラダのばしコ

ース」、被告製品8の制御手段による動作は、「メディカルコース」中の「お

しり快適コース」において発現する。

2 控訴人主張の被告製品3、5及び8の構成

a 座部と、該座部の後部に取り付けられた背もたれ部とを備え、

20 b 前記座部には、腿をマッサージする腿用エアバッグ、および尻をマッサー

ジする尻用エアバッグAが設けられ、

c 前記背もたれ部には、背中及び腰を施療するもみ玉が設けられた

d マッサージチェアであって、

e 利用者の腰を施療する際に、尻用エアバッグAを膨らませて利用者の腰の

25 高さ位置を徐々に高くしながら、もみ玉を作動させる制御手段を設けた

f ことを特徴とするマッサージチェア。


227
〔図6〕被告製品5




228
第3 被告製品4、6及び7について(本件特許A関係)

1 被告製品4、6及び7の説明

被告製品7は、座部と、当該座部の後部に取り付けられた背もたれ部とを

備えたマッサージチェアである。図7に示すように、前記座部の左右両側に

5 は、利用者の尻をマッサージすることができる尻用エアバッグBが設けら

れており、また、図8に示すように、背もたれ部には、利用者の首、背中及

び腰を施療するもみ玉が設けられている。

尻用エアバッグBは、底面部の左右各端に分離して設けられ、座面上部に

配置され、内側方に膨張し、臀部側面を挟持する(甲14、乙A13)。

10 被告製品4及び6は、被告製品7と同様の構成を有する(乙A7、A12、

A15。ただし、被告製品4の尻用エアバッグの形状を除く。 。


被告製品4の制御手段による動作は、
「メディカルコース」中の「全身コー

ス」「腰集中コース」「求心コース」及び「遠心コース」
、 、 、被告製品6の制御

手段による動作は、
「メディカルコース」中の「ストレッチ運動コース」「ロ


15 ッキング&マッサージコース」及び「クイックマッサージコース」、被告製品

7の制御手段による動作は、メディカルコース」 「全身疲労回復コース」
「 中の 、

「肩・筋肉疲労改善コース」及び「腰・筋肉疲労改善コース」 「クイックコ


ース」中の「全身クイックコース」及び「腰集中コース」並びに「快適コー

ス」中の「骨盤おしりコース」において発現する。

20 2 控訴人主張の被告製品4、6及び7の構成

a 座部と、該座部の後部に取り付けられた背もたれ部とを備え、

b 前記座部には、尻をマッサージすることができる尻用エアバッグBが設け

られ、

c 前記背もたれ部には、首、背中及び腰を施療するもみ玉が設けられた

25 d マッサージチェアであって、

e 利用者の腰を施療する際に、尻用エアバッグBを膨らませて利用者の腰の


229
高さ位置を徐々に高くしながら、もみ玉を作動させる制御手段を設けた

f ことを特徴とするマッサージチェア。




230
〔図7〕 被告製品7




〔図8〕 被告製品7




231
(別紙2)

本件明細書A



【図1】




【図2】




232
【図3】




【図4】




233
【図5】




【図6】




234
(別紙3)

本件明細書C



【図1】 【図2】




【図3】 【図4】




235
【図6】 【図7】




【図8】 【図9】




236
【図10】 【図11】




【図12】 【図13】




237
【図14】 【図15】




【図16】 【図17】




238
【図18】 【図19】




【図20】




239
(別紙4)

AS−878

〔図1〕 斜視図




〔図2〕 座の写真(シートカバー無)




240
(別紙5)

主張図面(被告製品1及び2)

1 腕ユニット(控訴人主張)



外側壁面部




内側壁面部




開口部 空洞部

2 乙C16(被控訴人作成の「実機検証報告書」)の【写真6】(被控訴人主張)




241
3 被告製品1の肘掛部の各エアバッグの止着箇所の拡大図(控訴人 被控訴人主張)





4 被告製品1の肘掛部の断面図(被控訴人主張)




242
5 被告製品2の肘掛部の各エアバッグの止着箇所の拡大図(なお、図においては外

壁エアバッグ1、2が突出部の頂面よりも下方で止着されているが、実際は突出の

頂面に止着されている。下記6についても同じ。(控訴人・被控訴人主張)





6 被告製品2の肘掛部の断面図(被控訴人主張)




243
(別紙6)

乙C19



【図1】 【図2】




【図3】




244
【図16】




【図17】




245
【図18】 【図19】




【図20】 【図21】




246
【図36】 【図37】




【図38】




247
(別紙7)

乙C20



【図1】 【図2】




【図3】 【図4】




248
【図5】 【図6】




【図7】 【図8】




249
【図9】 【図10】




【図11】 【図12】




250